- 1イブキじゃ抜けない…25/04/04(金) 19:23:49
そうだよ……イブキが悪い子だからマコト先輩もイロハ先輩もみーんな死んじゃったんだ。君があの時鍵を掛けていれば!君があの時無意味な好奇心なんて持たなかったら!きっと今頃いつも通り愚かしくも華やかに!愉快に笑い合っていたはずなのにねぇ!あーあ!全部イブキが悪いんだよ?ね?
「わーっ!?」
その瞬間目が覚めた。
あの夢を見ていたと思い出した。
最近見る夢はいつもこれだ。
吹き出した鮮血が、やがて重鈍に垂れ流され、生きようと足掻く瞳が徐々に曇っていき
「はっ……はっ……」
そして後ろから聞こえる声が自身を責め立てる。その声が少しずつ近づいてきている。
誰かに打ち明けたら少しでも楽になるのだろう。でも、口にするのが恐ろしかった。説明するためにあの夢を思い出すのが嫌だった。
そして、その夢を見ていたことも、数分もすれば忘れてしまう。起きるたびに思い出しては自分が信じられなくなる。
何かもっと恐ろしいことも忘れているのではないか、と。
だから、ただ身を屈めて震えていた。 - 2二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 19:25:19
怖いけど文才あるな
- 3二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 19:28:44
ヒステリックブルーかと思った
- 4イブキじゃ抜けない…25/04/04(金) 19:36:25
めっちゃ嬉しい。
朝日が昇る。清々しい気分だ。何か怖い夢を見たような気がするけれど、でも忘れてしまったのだからもうなにも怖くない。
「イロハ先輩!」
隣の部屋で寝ていたイロハ先輩に抱き付く。暖かくて良い匂いで、イロハ先輩と一緒にいる時が一番楽しい。一番大好きな人だ。
『でも死んだ』
「どうしました?イブキ、目が腫れてますよ」
優しく、イロハ先輩はイブキの頭を撫でてくれた。心配しているのが手のひらから伝わってきて心が温まるのに
「……なんでもない!」
なぜかゾワっと背筋に冷たいものが走るような気がした。何かを囁かれたような気がする。耳元で何かを……
何か、忘れてるものがとても重要な気がして、意味もわからない焦燥が心臓の鼓動に押し出されるように過呼吸気味に漏れていく
- 5二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 19:40:12
スレ画の黒イブキすき
- 6イブキじゃ抜けない…25/04/04(金) 19:45:55
マジ?めっちゃくちゃ嬉しいわ
そういえば……鍵は閉めていただろうか。
いや閉めているはずがない。普段からそんなことはしていない。
普段は考えないこんなことが頭の中で妙に気になっている。
なんで?
なんで今イブキは後ろを振り向けないの?
なんで後ろから流れる風がこんなにも恐ろしいの?
「い、イブキ!逃げますよ!」
聞いたこともないほど切羽詰まったイロハ先輩の声が、この嫌な予感を裏付けている。
待って
逃げるってどこから?扉は後ろにしかない。逃げようとしたら、そしたら一度振り向かないと
「イブキ!」
イロハ先輩はイブキの“真横”を見てそう言った。
- 7二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 19:49:19
なんだかすごいスレを見つけたような気がする
- 8二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 19:51:36
「私が…私が…。」のタイプが大好物なんですよ私は
- 9二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 19:53:31
何があったのだ
- 10イブキじゃ抜けない…25/04/04(金) 19:57:57
「……ッ!」
急いでイロハ先輩が見ていた方を向かないように、さっき入ってきた扉へ駆け出す。
後ろから追いかける小さな足音はきっとイロハ先輩だ。でもその後ろから来る大きな足音の正体はわからない。
「こっちです!」
イロハ先輩がイブキを抱え上げて、虎丸のある場所まで走り出した。
その時、大きく視点が変わったその時、一瞬だけチラリと見えてしまった。
今まで見たことのない、本当の殺意を込めた瞳というものを。突き刺すようなその視線が恐ろしくて、思わず目を瞑った。
ガクンと上に持ち上げられるような感覚がした。虎丸についたのだ。
「安心してくださいイブキ、なにも怖くありませんから……っ」
いつも余裕そうなイロハ先輩の、必死なその表情は今この事態がどれほど切迫しているのが言外に物語っていた。
そして、なにも怖くないと言うのはきっとイブキに向けてというよりも、自分自身に言い聞かせる意味合いの方が強いのだろうと言うことも。 - 11イブキじゃ抜けない…25/04/04(金) 20:10:47
無敵戦車虎丸の中にいるのに、頼れるイロハ先輩が隣にいるのに、後ろから迫る“ソレ”が今も一歩ずつイブキに、イロハ先輩に近づいてきていると言う事実がそれを塗り消す。
あの瞳が頭の中から離れない。あの重くのしかかるような、それでいて心臓を貫くような、鈍く光を反射する刃物が眼に突きつけられたかのような恐怖が頭の中を覆っている。
「い、イロハ先輩……」
「怖がらなくても大丈夫です……飛ばしますからねっ」
轟音を鳴り響かせ、ゴミ箱や街灯に当たることなんて一切気にしない全速力で、虎丸は走っている。
ガンッと、上から何かを叩きつけるような音が聞こえた。
「っ!?」
イロハ先輩が上を見上げた瞬間、こじ開けられたハッチからあの目がイブキを睨みつけた。 - 12二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:14:12
いやイブキはめちゃくちゃ抜けるだろ
- 13二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:15:45
ワイは昨日イブキで抜いたぞ
- 14二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:17:59
- 15二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:19:09
- 16二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:19:27
- 17イブキじゃ抜けない…25/04/04(金) 20:24:31
いいやイブキは抜けない。
“ソレ”はイブキの体を軽々と持ち上げて、戦車の外に投げ捨てた。
「うわっ!?」
「イブキ!?このっ……」
イロハ先輩の叫び声のような言葉は途中で不自然に途絶えた。
まるでそこから消えてしまったかのように。
不安になって立ち上がり“ソレ”が見えることは恐ろしかったが、反射的に戦車の方を見るとそこには何もなかった。綺麗さっぱり、跡形もなく。
「イロハ先ぱ」
言いかけたところで、空が不気味な赤色に変色していることに気がついた。
「な、なにこれ……」
夕焼けが見えるような時間じゃない。そもそもこんな気味の悪い夕焼けなんて見たことが無い。
なにもかもがわからなくて、ただただ恐怖と困惑に押しつぶされそうなのを必死に堪えていた。 - 18二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:27:06
随分フィジカルの強い強盗だと思ったがなんか超常現象起きてるな
好奇心でなんかの封印解いちゃった? - 19二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:28:56
- 20二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:31:29
な・ん・で!?
- 21イブキじゃ抜けない…25/04/04(金) 20:42:14
何かを忘れている気がする。
取り返しのつかないような何かをしてしまったような、もうどうしようもない何かが起きてしまっているかのような、そんな気がしている。
「……」
よく見ると誰も人がいない。いつも騒がしいのがゲヘナのはずなのに喧騒も銃撃音も、鳥の鳴き声すらも聞こえない。
ゴトッ……と、何かが落ちる音がした。振り返るとそこには腕の千切れたイロハ先輩が虚な目をして立っていた。
カメラを首に掛け、足元には赤く綺麗なツノが転がり、背負っている銃は見紛うはずもないマコト先輩のものだった。
「なんで……」
イロハ先輩はイブキを見ると、急に正気に戻ったかのように驚愕の表情を顕にし、肩に掴みかかって怒鳴った。
「なんでここにいるんですかイブキ!」
「え……だ、だって」
なんで?なにが?なんでイロハ先輩は片腕がないの?虎丸はどこに行ったの? - 22二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:50:10
ぜ、全滅…
- 23二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 20:51:06
今日もイブキで抜こうかな
- 24ごめん本当はイブキで抜いてる…25/04/04(金) 21:03:02
混乱してる中、衝撃的な言葉が耳に叩き込まれた。
「早くゲヘナから出て行ってください!」
えっ……
いつも優しいイロハ先輩が、いつも寄り添ってくれるイロハ先輩が、こんなこと言うはずが……
「早くッ!もうゲヘナにイブキの居場所はないんです!」
そう怒鳴るイロハ先輩が怖くて泣き出して、逃げ出した。
ただただ悲しかった。不安で今一番抱きしめて欲しいイロハ先輩からの初めての拒絶が、正体不明の何かに追いかけられて怖かったことすら、イロハ先輩に突き放されたことに比べればよほどマシだった。
なにもわからないけれど、一つだけわかることがある。きっと今の状況は全て
「イブキが……悪い子だから」 - 25二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 21:03:55
ちゃんと言えたじゃねえか… スレ主!
- 26イブキは抜ける25/04/04(金) 21:25:05
気がつくと、空は青色に戻っていた。
「イブキ!探しましたよ!」
後ろからイロハ先輩の声がした。
「ご、ごめんなさいイロハ先輩!すぐに」
早くどこかに行かないと
「心配しました」
でも、イロハ先輩は両腕でイブキのことを抱きしめてくれた。
「イロハ先輩……?」
「本当に無事でよかったです」
「さっきのは……」
さっきのイロハ先輩とは真逆、いや、これが本当のイロハ先輩なんだ。
「さっきの不審者ならどこかに消えていきましたよ、今風紀委員と協力して事態の解決に動いてます」
「よ、よかったー!」
未だ消えない不安感の最中、それでもようやく訪れた平穏を強く抱きしめた。 - 27イブキは抜ける25/04/04(金) 21:49:50
結局犯人は見つからなかった。イブキとイロハ先輩の目撃証言以外に情報のかけらすら無かった。壊した物の修理費用は風紀委員が責務を怠っていたからだと風紀委員会に請求すると、マコト先輩は高らかに笑っていた。
けれど、その顔は引き攣っていて冷や汗をかいていた。
「……ヒナ、わかってると思うが」
部屋から出ると、マコト先輩は真剣そうな顔で電話をかけ始めた。
「行きましょうイブキ、今日は付きっきりで遊びましょうか」
「うん!」
イロハ先輩に手を引かれて、風紀委員会へ向かった。そこには万魔殿の部員達も沢山いて、いつものように険悪な雰囲気は無いけれどいつも以上にピリピリした雰囲気だった。
「悪かったわねイブキ、警備不足だったわ。でも安心して頂戴ここへは怪しい人は誰1人入れないから」
「ありがとうヒナ先輩!」
「……あっ」
なぜか、今の状況とは全く関係がないはずなのにある強烈なイメージが思い起こされた。 - 28イブキは抜ける25/04/04(金) 22:05:48
それは綺麗な箱を開ける直前の記憶だった。
つい最近、百鬼夜行連合学院へ遊びに行った時、木のパズルを開けたら開けられる箱を買って貰って、一日中それで遊んでたらようやく開けれて、確か中には……
箱の中になにが入っていたっけ?
そもそも誰からどうやって買ったんだっけ?
「ひっ!?」
思案の中、イロハ先輩の小さな悲鳴がそれを掻き消した。
「どうしたの?イロハ先輩……って、えっ……」
イロハ先輩の足元にさっきまではなかったはずのボロボロの黒い紙が置いてあった。それにネバネバした赤いもので文字が書かれていた。
丹花イブキ
と。ただその5文字だけがその紙には書いてあった。
「イタズラ……なわけないですよね、風紀委員長!こっちに不審物が!」
しかし、まばたきをするともう既にその紙は消えていた。 - 29イブキは抜ける25/04/04(金) 22:11:18
今日は疲れたので明日再開します。
- 30二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 03:35:48
コトリバコ?
- 31イブキは抜ける25/04/05(土) 07:15:00
👀(実際この木組細工はコトリバコで知ったし元ネタではある)
その瞬間、思い出した。あの箱の中に入っていたのは、いや、貼り付いていたのは、真っ黒な目玉だった。
「あ、あぁ……」
箱の底に埋まっていたドス黒い瞳が、開けた瞬間イブキを睨みつけて、怖くなって放り投げたんだ。
「ね、ねぇイロハ先輩前に百鬼夜行連合学院に行った時に買った箱って、どこで買ったんだっけ?」
「箱?記憶に無いですね。でも最近百鬼夜行には行ってませんし騒動が片付いたらまあ旅行に行きましょうか」
えっ?いや、その時はイロハ先輩と2人で行ったはず。行ったのだって本当につい最近のはず。イロハ先輩が忘れるわけが無い。
そう“忘れるわけがない”のだ。
- 32イブキは抜ける25/04/05(土) 09:30:33
「えっ……」
見上げるとそこにいたイロハ先輩に右腕は無かった。窓ガラスから映る空は赤く変色していた。
「イブキ!何ボーッとしてるんですか!?早く逃げますよ!」
でも、左腕のないイロハ先輩はカメラも、ツノも、銃も、何も持ってはいなかった。
何も持っていない左手で、イブキに手を差し伸べた。その手を取って走り出す。
「う、うん?」
さっきとは違う。外からは静寂とは程遠い絶叫と怒声が鳴り響き、聞き慣れている環境音が耳に届いているのに、なぜかその声が怖いと感じた。
そして走っていると、突然掴んでいたはずの腕の感触が消えて、怒声が鳴り止んだ。
「あれ!?イブキちゃん!?なんでここに!?」
万魔殿の部員が驚いた顔でイブキに問いかけた。
「……えっ、イロハ先輩は?」
「戦車長ならちょうど今イブキが失踪したと全体連絡をかけて来たところだよ、一緒に戻ろうイブキちゃん」
そうして、近くにいた風紀委員の部員と3人でイロハ先輩のところへ戻った。
「大丈夫でしたか!?すみせんイブキ、私が目を離さなければ……」
そう謝るイロハ先輩だったけど、多分、目を離したとかは関係ないんだと思う。 - 33イブキは抜ける25/04/05(土) 10:16:45
「目を離した隙に……か、ヒナお前ならできるか?」
「可能ではあるけれど、そんな短時間に見えないところまでとすると直線距離で音を立てながらじゃ無いと無理よ」
「……」
「一応聞いておくが、お前が犯人なんて事は無いよな?」
「信頼してるから風紀委員会で迎え撃つって決めたんでしょう?」
「先生ももう直ぐ到着するそうよ、一度イロハは休ませて先生に交代してもらいましょう」
羽沼マコトは悩んでいた。万魔殿最強のイロハが戦車に乗った上で成す術なくイブキを奪われた、念には念を入れて恥を忍んで頼ったヒナですらこの有り様、ならばいくら戦力が増えても現状では勝ち目が見えない。イブキを守っている誰かがまばたきをしたらそれで終わりかねない。
「……いや、今回は逃げよう」