- 1二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 22:18:21
急な問いかけにコーヒーを淹れる手が止まる。
あの人が―――私達に質問してきた。
この人は偶に私達によく分からない話をしてくる。普段はやれリンちゃんがイチゴミルクを飲ませてくれないだの、やれ最近の試験問題は味が無くて面白くないだのどうでもよい話ばかりだというのに。・・・この前はどうやったら仕事から抜け出せるかなんて話だったか。
でも、今のように変な話を投げてくることがある。・・・そして、こういう時は決まってあの人は自分の意見を述べない。というか、私達の答えを聞けば何も言わず満足そうにしている。これにはみんな辟易している。
「それは、前に言ってた古則の話ですか?」
そう言いながらいつも通りあの子が先に言った。
だが、あの人は何も言わない・・・これもいつも通り。
「・・・私は、無理だと思います」
そう言いながらあの子は席を立ってこちらに向かってきた。ああ、コーヒーをもらう心算か。
「そもそも、私達は同じ人間でありながら全く違う者同士です。同じ地区、同じ学園、同じ所に所属しながらその考え、魂胆は全く異なる。というか、本当に理解し合えるならこんな硝煙と火薬まみれの世界にはなっていませんよ」
コーヒーを受け取ろうとする手が来る。私は、それにカップの持ち手を向ける。それを手にする彼女の顔は、心底どうでも良さそうだった。
「・・・そうですか」
あの人があの子に返事する。その言葉は、相変わらず肯定とも否定ともとれない抑揚だ。それと、その声は私への回答を求める声でもある。
「・・・私は」
そこで見たのは、ここまで。 - 2二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 22:20:09
というわけでオリキャラSSを書いていこうと思います。
真面目な話マイペースにできるハーメルンとかpixivで良いのではという話なんですが、ここに思い入れがあるのでここでやります。生暖かい目で見て下さい。 - 3二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 22:23:04
いいね 楽しみにしてる
- 4二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 23:12:53
「次は ゲヘナ学園前 ゲヘナ学園前 お降りの際は ドア 横のボタンを押してください」
電車に響く声と共に目が覚める。どうやら寝てしまっていたらしい。
大勢の生徒と共にドアを潜り抜け、改札通り駅を抜ける。目的は一つ、ゲヘナ学園近くの公園で待ち合わせしているためだ。
私はシッテムの箱を取り出しモモトークを開く。書かれている待ち合わせの内容はこうだ。
「この時間にゲヘナの公園で集合。でも風紀委員の仕事で送れるかもしれないからその時は適当に時間をつぶしてね」
モモトークの送り主―空崎ヒナからのメッセージを確認してモモトークを閉じる。どうも大事な話、それも誰にも聞かれたくない内容のことを相談したいらしく送って来たらしい。彼女のことだ、おそらく本当に重大な話なのだろう。
私はシッテムの箱をしまうとそのまま前を歩き出
”うわっ”
「ウワァ!?」
・・・そうとしたところで人とぶつかってしまった。私は大丈夫だったが、灰色のてるてる坊主のような恰好をした向こうの人、おそらく生徒の子はそのまま大きく後ろに転んでしまった。
”だ、大丈夫!?ケガしてない?”
とっさにその子に手を差し伸べる。その子は痛がる仕草をしながら私の手を取りそのまま立ち上がる。おそらく被っているフードのせいで前が見えなかったのだろう。その隙間から赤い目がこちらをのぞき込んでいた。
「す、すみません、荷物を支えるので精一杯で・・・」
肩から伸びる帯を両手に持って少女が謝ってきた。よく見ると彼女は大きなショルダーバッグを背負っている。だいたい自動小銃一丁分と言ったところか。
”ええと、私はケガしてないから大丈夫だけど、君は”
「わ、私ですか?私は大丈夫です、この通り・・・」
どうやら怪我はしていないようだった。良かった。 - 5二次元好きの匿名さん25/04/04(金) 23:59:28
そう言っていただけるとありがたいです
- 6二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 02:37:33
「・・って、うん?」
その子の声色が変わる。その視線は、私の胸当たり、ネックストラップに入った「シャーレ」のIDカードへと向けられていた。
「も、もしや!」
その色は驚嘆の色。
「あなたが!!」
そして、感動の色も混ざっていた。
「シャーレの先生!!!???」 - 7二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 02:37:46
今日はここまで、おやすみなさい
- 8二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 03:40:10
スレはな、10までレスしないと落ちるんだ
- 9二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 03:45:54
9
- 10二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 03:46:50
10
- 11二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 13:37:04
このレスは削除されています
- 12二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 22:38:16
ほ
- 13二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 22:39:47
ほぉ、しゅ。
- 14二次元好きの匿名さん25/04/05(土) 22:48:59
※ちょっと修正
”はいこれコーヒー、冷たいやつだけど良い?”
「はい、ありがとうございます。何から何までいろいろと」
あの後私がシャーレの先生と知るや否やものすごい勢いで平謝りしてきたこの子を落ち着かせるべく、私は公園のベンチに座らせて飲み物(何が良いか聞いたところコーヒーとのことだった)を渡した。彼女は両手でそれを受け取ると美味しそうに飲み始めた。少し見えるフードの隙間から、真っ赤な髪がこちらを覗かせているのが見えた。
「あ」
彼女が何かに気づいてこちらを向く。夕暮れの空のような深紅の瞳が、私を移し出していた。
「えっと、先生?で良いのかな。先生、ここに来てまだ自己紹介がまだでしたね。ええと、フードもとって顔を見せて・・・」
そう言うと彼女はフードをとって見せた。その髪は、見せていた燃えるような色に加え、明るいレモンイエローのインナーカラーをしている。真っ赤に燃える赤と光のような黄色。そう、それはまるで・・・
「聖ユぐドラシア学園所属 赤妻ライハです。よろしくお願いします先生」 - 15二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 01:57:12
訂正
〇ユぐドラシア
×ユグドラシル - 16二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 11:28:03
保守してやるぜ
- 17二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 20:57:09
「聖ユグドラシル学園はキヴォトスの中でも辺境に位置していまして、ゲヘナからでもかなりの時間を要さなければたどり着けません。まあ、先生があそこに行くことはないとは思いますけどね」
聞いた事のない学園名について、彼女―――ライハが私に説明してくれた。
聖ユグドラシル学園は北の辺境に位置する小さな学園で、ほとんどの季節で雪が降っているらしい。そのため生徒の制服はどれも暖かい服装となっている。がしかし、それでは他の学園に行った際に大変な思いをするのでそもそも自治区を出ないか、出ても別の服を着ていくらしい。なるほど道理で見ないわけだ。
”それじゃあ、その服もここに来るために?”
「うん?この服ですか?この服は仕事用ですね」
”・・・仕事?”
「はい、仕事です。といってもアルバイトですけど」
ライハは身に纏っている灰色のポンチョを摘まみながら私の言葉に答えた。このような地味な服を着る仕事となればおそらく・・・
「はい、運び屋ですよ。まあそんなに警戒されるほど怪しいものは運んでませんけどね」
なるほど運び屋か。となれば後ろの荷物は運ぶためのものということか。
「出ないといっても辺境ですから買えるものも限られるんですよ。だからこんな感じでバイトしているんですが、いかんせんあの地域の仕事はどれも低賃金でやる価値がないんです。だからみんなこういう怪しい系のバイトをするんですよ。」
”それ本当に大丈夫?変なことに巻き込まれたりしないの?”
「変なこと?うーんそんな話は聞いたことないですね。まあ遭遇したとしても私達にはこれがありますので。
そういってライハはポケットから黒い剣・・・ハンドガンを取り出した。
「銃を撃たれても死なず、それでいてそれらをいくらでも使える。それが私達生徒の特権ですから」 - 18二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 01:45:19
”・・・そっか、それならいいけど”
「おや、怒らないのですか?『先生』ともなればこういうのには難色を示すものだと思うのですが」
”あはは、仕事柄そういう子はいっぱい見てきててね。もう今更なんだよね”
「はあ、今更ですか・・・」
”それに、私は『先生』だからね、生徒のやりたいようにさせたいんだよ”
「・・・それは、たとえ危険な目にあってもですか?」
”その時は助けるよ”
「・・・そうですか」
「助ける・・・ですか」 - 19二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 01:46:08
今更ながら質問などはいつでも返信しますよ
まあこんだけだらだら書いてたら誰も来ないとは思いますけど - 20二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 11:25:11
このレスは削除されています
- 21二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 21:20:43
このレスは削除されています
- 22二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 01:02:40
「では私はそろそろ行きますね。先生、重ねてお礼を言います。ありがとうございました」
そう言うとライハはフードを被り直して席を立った。
”ううん、私もちょうど時間を潰せて良かったよ。でもバイトは気を付けてね”
「あはは、さっきも言いましたが私には銃があるので大丈夫ですよ、それに届けたらすぐに自治区に戻りますので」
”そう、じゃあね”
「はい、さようなら」
ライハは別れを告げると私に背を向けて歩き始めた。相変わらずフードで顔が見えずらい様子で歩幅が若干せまそうだった。
「接触、完了。後は先生が空崎ヒナとの行動を待つだけ」
大勢の人が往来する中で、一人何かをつぶやく声がある。誰も知らない、気にも留めないその小さい声で、声の主はその言葉を紡ぐ。
「だが問題の空崎ヒナが情報をどれだけ掴んでいるのかは未だ把握できず仕舞い。やはり先生との接触はもっと先送りにすべきだったか。いやすでに彼女が先生に情報を渡そうとする以上、ここでやらねばいけなかった。なら次にするべきことは・・・」
手が肩にかけているショルダーから離れる。まるで、最初から何も重くなかったと言わんばかりに。
「・・・まあ私が行かなくても向こうから接触してくるだろう。そのために彼女は先生に会おうとしているんだから。」
「ファーストフェイズ、終了。セカンドフェイズへの準備へ移行」
誰にもいかないその声で、少女はビル街へと姿を消した。 - 23二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 10:01:39
不穏
- 24二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 19:16:18
保守よ
- 25二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 21:30:16
- 26二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 01:54:42
第二、開演
「先生、遅れてごめん。やっぱり風紀員の仕事で遅れちゃった」
ライハと別れてしばらくした後、公園の入り口からヒナがやってくるのが見えた。どうやら現場から直行したらしい。服が砂まみれになっていた。
”ううん、私もさっき来たばっかりだよ”
「そう?なら良いんだけど、隣良い?」
”うん。それで、話って?”
ヒナが私の隣に座るのを見て、私は間髪入れずに本題に入る。ヒナはそれを聞くとスマホから一枚の写真を私に見せてきた。
写真には黒いオートマタのようなものが写っていた。しかし、それはキヴォトスでよく見る顔がモニターになっているような人やカイザーの傭兵とは全く容姿が異なっていた。
彼らと同じなのは二本の足と頭部のみだ(その頭部も独特の雰囲気を醸して出しているが)。大きく異なる点が一つ。腕だ。この写真のオートマタは片腕が大きく湾曲しておりとても普通のものとは思えない容姿になっている。
”なに・・・これ?”
「雷帝の遺産よ」
”!?”
雷帝・・・かつてゲヘナに君臨した暴君だったか。そしてその遺産とはその雷帝の発明品。すなわち、雷帝が残したキヴォトスへの脅威。それは危険すぎるため情報が漏れないよう万魔殿が完全に消滅させていたはず。じゃあ、なんでその写真が?
「この写真は匿名で万魔殿に送られてきたものよ。正直誰かのイタズラだとは私も思うわ。でも雷帝の存在はゲヘナの中でもトップシークレット。そう簡単に一般人に漏れるような物じゃないわ」
”それが送られてきたから確実に何かある・・・と”
私の言葉にヒナが小さくうなずく。なるほど、だから私に話なければならなかったのか。キヴォトスを滅ぼす兵器が見つかった。しかしその場所がどこか全く分からない。それで私に協力を要請した。 - 27二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 01:56:27
- 28二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 10:09:38
頑張っとるんやな
- 29二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 16:19:45
このレスは削除されています
- 30二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 01:36:01
- 31二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 09:42:40
お待ちしてます
- 32二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 10:29:15
「と言っても、私が先生に頼みたいことは他のことなのよね」
”・・・ってえ?”
「・・・匿名で届いたものはもう一つあるの」
予想外の言葉におもわず素っ頓狂な声を出してしまった。それを聞いたヒナはその私の声に若干呆れたのか、額に手を当てながら説明してきた。
「どうやらゲヘナにその遺産のありかを知っている人間がいるらしいの。でもずっと探しても一向に手がかりが掴めなくて。だから、先生にはそれを手伝ってほしくて、それで電話したのよ」
”な、なるほど”
よくよく考えればそうだ。ゲヘナ・・・というか三大校の情報網はとても優秀だ。雷帝の遺産とそれの場所を知ってる人がいるなんて情報が見つかれば血眼で探すはずだ。それこそ、私の助力を全く必要としないほどには。だがそれが全く見つからない。猫の手も借りたいということか。
”それは、どのくらい”
「一か月、先月に届いてから万魔殿が必死に探し始めて今日で一か月よ」
”・・・・・”
一か月、それだけの時間を費やして全く情報が掴めない。いや、それはそうだ。かつて雷帝の遺産だった列車砲シェマタはあのカイザーが態々軍を動かしてでも手に入れようとした代物だ。それが手に入ったとなれば情報を徹底的に秘匿しようとするのも納得だ。
”じゃあ、私のやるべきことは、その遺産がどこにあるか知ってる人を探すってことだね。”
「ええ、とても難しい話なのは承知よ。それでも、先生の力を借りないとこの件は全く解決できないの、お願いできるかしら」
”まかせて、私にできることならなんでもするよ” - 33二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 17:44:11
「そう言って貰えてうれしいわ」
ヒナは私に微笑みかけると、ベンチを降りて私の前に立った。ミキシングホワイトの髪が、太陽に照らされて純白に染まっていた。
「さっきも言ったけど今回はとても無茶な依頼だから、あんまり無理をs
しかしヒナの声は、左から鳴り響いた巨大な轟音―爆発音によってかき消された。瞬間、私とヒナは表情を変えて音源に目を向ける。そこは大量の煙と大勢の人間による悲鳴で埋め尽くされていた。ゲヘナではこういったテロのような被害が日常的に起こる。心では分かっていてもやはり慣れない。そんな私と違いヒナは自身の機関銃を持って私に言った。
「様子を見てくる。先生はここにいて風紀員に連絡して」
ヒナはそう言うと煙立ち込める現場へとかけていった。 - 34二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 01:01:43
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- 35二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 10:14:17
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- 36二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 16:04:57
面白い
続きが楽しみ - 37二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 17:29:42
その後事態はすぐに収拾した。どうやら戦闘用ロボが一斉に暴走したらしく、それとガス漏れが重なって起きたらしい。それゆえのあの大爆発というわけだ。しかし、そこはそれが日常茶飯事のゲヘナだ。すぐに風紀員と救急医学部が駆けつけて事態を収めた。問題が頻繁に起こるならば、それと同じくらい鎮めるのもまた早いということか。
今は救急医学部の生徒が怪我人の手当に当たっているところで、風紀員はほとんど戻っていった(様子からして別の現場に行ったらしい)。
・・・本来ならば私はヒナに挨拶してシャーレに戻るつもりだったのだが、怪我人の中に一人顔見知りを見つけた。否、見つけてしまったというべきなのかもしれない。真紅の長い髪を揺らしながら、彼女は私に、また申し訳なさそうに言った。
「い、いやーまさか、届け先で襲われそうになったところを銃で反撃したら変な所に当たってああなってしまうとは。バタフライエフェクトっもびっくりの事件ですね。あはは・・・」
“・・・・・”
こいつだ。赤妻ライハだ。さっき銃があるから大丈夫と言った瞬間この有様。しかも今回の事件を起こした張本人ときた。
「わ、私だってこんなことになるなんて思っていませんでしたよ!?まさか暴走した個体だ別の奴を攻撃して、それがまた変な所に当たって暴走、なんてドミノ倒し的大被害なんて
予想できないじゃないですか!そりゃあここはゲヘナですけど!!!」
“・・・・・・”
呆れて何も言えない。この子は自分が何を言っているのか分かっているのか。私はあまりの情けなさに言葉が出なかった。 - 38二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 00:53:33
うーん辛辣
- 39二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 04:09:59
「ああ、その子が原因だったのね。ひどく怯えていたからどうしようかと思っていたわ」
数名の風紀員を引き連れて、奥からヒナがやって来た。どうやら現場検証をしていたらしい。
「あ、えっと、風紀委員長さんでしたっけ?その、いくらなんでも至近距離から、その、ミニガンを撃ち込まれると滅茶苦茶びっくりすると言いますか。いやもちろん助けて頂いたのは理解していますよ!でも急に現れて「避けて」の一言で全部理解できるわけないじゃないですか!?それとこっちは色々と状況を理解していない中で走りまくっていたのでずっとパニックだったんです!!!」
「・・・・・」
ライハの急速な言葉の嵐に、ヒナは一瞬フリーズした。しかしすぐに元の調子に戻すと、額に手を当てた。心なしか、頬から汗を流しているように思えた。
「・・・この事態を引き起こした張本人の割には、ずいぶんと図々しい態度をとるのねあなた」
「あっ、いや、その」
「いいえ、それよりもあなた・・・」
突然、ヒナの目の色が変わるのを見た。呆れていたその顔が一瞬で瞳孔を開き、己の言葉を途切れさせる。それはまるで、目の前に渦が、サイクロンが現れるが如く吸い込まれていくようだった。ライハの、炎のような真紅と雷のようなレモンイエローの髪に、黄昏の空を見るかのような茜色の目に。彼女の意識が呑み込まれていく様だった。
「・・・あの」
「ッ!」
ライハが発した言葉でヒナは意識を取り戻した。ラベンダー色の目が元に戻った。
「私に、何かありますか?」
「・・・いえ、なんでもないわ。ごめんなさい、急に黙ってしまって」
ヒナは再び頬に手を当てた。今度は自身のことについての態度だろう。そして、再びライハの目を見ると、すぐさま言葉を発した。
「今回みたいなことはゲヘナじゃ頻繁に起こるわ。こんなことで毎回死にかけてるようならゲヘナに来ることは推奨できないわね。悪いことは言わないから元の学園に戻りなさい、いいわね?」
「わ、分かりました・・・」
自身の忠告が届いたのを聞くと、ヒナは私の方を向いた。その顔はまだいつもの余裕そうな顔からは遠かった。・・・よほどライハのことが気になるのだろうか? - 40二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 04:10:11
「それじゃあ私は帰るわ。さっき言いかけたけど、くれぐれも無茶はしないでね、今回はとても難しいから」
ヒナはそう言うと私とライハに背を向けて歩いて行った。他の風紀委員も私に一礼するとヒナの後を付いていった。 - 41二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 14:08:16
このレスは削除されています
- 42二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 21:15:46
このレスは削除されています
- 43二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 01:22:18
待機
- 44二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 04:40:09
「なんというか、不思議な方ですね」
”え?”
「ほら、普通風紀委員みたいなお堅い役職の上司ってだいたい厳しい性格してるじゃないですか。だからあんな風に優しい言葉をかけるのって不思議だなと思いまして」
”・・・それは君がヒステリックになるからじゃないかな”
「あっ」
”はぁ・・・”
全く、この子は。
”でも、君の考えはちょっと違うんじゃないかな”
「え?」
”私も全部の学校の、全部の生徒を知っているわけじゃないから強くは言えないんだけど、少なくとも私が見てきた生徒達は、みんな誰かを思いやる気持ちでいっぱいだったよ。まあ、自分には厳しいけどね”
「・・・そうですか」 - 45二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 10:13:33
このレスは削除されています
- 46二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 15:55:03
続き楽しみ
- 47二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 23:55:32
すみません、ちょっと思い浮かべないのでまだ更新できないです。ただここを乗り越えたら当分は大丈夫だと思います多分。
- 48二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 08:37:20
待っています
- 49二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 17:41:06
「ってあれ?」
突然、ライハが焦り始めた。よく見て見るとポケットのあたりを探っている。ということは――
”まさか・・・”
「じゅ、銃が、無い・・・」
さっきの落ち着いた声から数十秒前のテンパった声に戻る。生徒―もといキヴォトスに住む人間にとって武器を持たないことは全裸で出歩くことに等しい。そして彼女の手持ちは(未だに強い存在感を放つ後ろの荷物を除いて)ない。つまり、彼女は武器がない。
”もしかして、逃げてる最中に落としたとか?”
「か、かもです。うう、あの時は逃げるのに精一杯で全然気が尽きませんでした・・・。今から新しい銃を買うお金なんてないのに・・・」
”・・・・・”
ずっと思っていたが、この子は自衛意識が薄すぎる気がする。運び屋のような危ないバイトは常に危険と隣り合わせなわけで、今のような事が起こるのは絶対に避けなければならない。そもそも銃があるというのは彼女たち生徒以外にも言える話で、状況としては対等、それどころか自身以外のほうが優勢なケースが多いのだ。そんな中で銃を落とすなんてことがあるというのは、運び屋、もといキヴォトスでは致命傷だ。この子には、到底向いているなんて言えない。
”その、一緒に探そうか?二人のほうが見つけやすいでしょ?”
「ほ、本当ですか!?あ、ありがとうございます、先生にはさっきからずっと貰ってばかりですね」
うん、これが終わればこの仕事は止めるように言おう。私は強く心に決めた。 - 50二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 00:15:09
- 51二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 06:39:17
このレスは削除されています
- 52二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 13:08:31
待機
- 53二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 18:28:48
硝煙の匂いがまだ立ち込める道を通り過ぎ、私とライハは廃墟の中に入る。すでに陽は落ちて辺りは真っ暗。今はかすかな街頭の灯りと月光を頼りに道を進んでいる。建物は爆発で跡形もなくなっていると思ったがそこはキヴォトス、あの程度の衝撃ではビクともしない。それゆえ、逃げる前の場所に戻るのは容易だった。
「確かここです、ここでロボが暴走して・・・」
見るとそこはあちこちが銃痕でいっぱいで、激しい銃撃戦があったことが伺える。まあ実際は乱射されまくったわけだが。
ライハはあちこち見回しながら歩き出した。おそらく逃げた道を辿っているから、見回しているのはあの拳銃が吹き飛ばされていないかを見るためだろう。よく見えるなと心から感心する。これが若さか。
「あっ!ありました私の銃!・・・ってうわ、ぺしゃんこになってる」
見ると銃が真っ平になっており、周囲に中の部品が飛び出ている。おそらくロボたちが踏みつぶしていったのだろう。残念ながらこれでは使い物にならない。だが、これは良い機会だ。
”ねえライハ、私と取引しない”
「・・・取引?」
”うん” - 54二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 00:34:39
先生の取引か、
- 55二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 08:18:05
さてどうなるか
- 56二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 12:54:54
”私がライハに銃を買ってあげるよ”
「!本当ですか!?
”ただし”
「ただし?」
”ライハにはこの仕事を止めてもらうよ”
「!?」
ライハは私の言葉を聞くや否や、すぐに立ち上がり私を警戒し始める。当然だろう。だがここで止めてはならない。
”正直、このまま君がこの仕事を続けると、もっと酷いことになると思う。根本的に、君はこの仕事が、危ないものが全く向いてないんだ”
「・・・ですが、それは」
「そもそもそんな仕事してないから、できないんでしょ?」 - 57二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 22:38:19
- 58二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 00:26:15
悲しみ(3敗)
- 59二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 10:04:58
このレスは削除されています
- 60二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 16:13:17
このレスは削除されています
- 61二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 00:02:11
このレスは削除されています
- 62二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 01:02:33
「!?」
不意に来た言葉に反応してその方向へ顔を向ける。コツコツという足音と共にその声の主らしき少女が、私のほうに迫ってくる。何度も聞いたその声は、無機質な・・・まるで敵に掛ける言葉のようだ。隙間から漏れ出る月光に照らされて、その少女は———空崎ヒナは再び投げかける。
「道理でおかしかったわけよ。そんな制服を、聖ユグドラシルのものを着てる生徒がまだいるなんてね」
「・・・何の話ですか」
「聞こえなかったかしら?ああ、こう言った方が良かったわね」
「わざわざとっくに廃校になった学校の制服を着てる生徒がいるなんて、おかしな話だと思わない?」 - 63二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 08:35:50
ヒナ…
- 64二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 15:44:14
さてどうなるか
- 65二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 22:18:10
“廃校・・・?”
「・・・・・」
「・・・キヴォトスには数千の学園が存在する。それらにはゲヘナみたいに巨大なものもあれば、蟻のようにとても小さいものもあるのよ。先生だって知っているわよね?キヴォトスにはいくつもの廃校になった学園があることを。聖ユグドラシルだってその一つよ。ただし、廃校になったのは一年前、先生がキヴォトスに来る前だけど」
ヒナはそう言うと薄紫の双眸を私の隣にいる少女に向ける。ライハは何も言わずただ俯いていた。もしヒナの言っていることが真実なら、ライハの言っていたことは概ね嘘になる。おそらく、運び屋というのも。・・・なら、背中の荷物は一体?
「かつて聖ユグドラシルにいた生徒は全員他の学校に転入したはず。もしかしたらまだ制服を持っていてそれを着ているだけなんていう話もあるわね。でも、それを否定できる理由はある。ただ一人、あそこにいた生徒の中に、遺産の存在を確実に知る人物が」
ヒナはそういうとライハへと銃口を向ける。その目は完全に敵へ向ける視線だった。雷帝の遺産の持ち主、ゲヘナの脅威への。
「赤妻ライハ、いいや——
連邦生徒会長補佐、赤妻ライハ」 - 66二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 00:14:57
ライハちゃんそんなに位高かったの!?
- 67二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 09:53:44
待機!
- 68二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 15:10:19
「・・・・・」
急すぎる話の連続に言葉が詰まる。ヒナは何と言った?連邦生徒会長補佐だと?そんなもの全く聞いた事がない。文字通り汲み取るならライハはあの連邦生徒会長の補佐・・・つまり側近、主席行政官だったリンちゃんと同じくらい近くにいた人物になる。こんな子が?
「これが本当ならすべてが繋がる。遺産のことを知っているのも、万魔殿が一切足取りをつかめなかったのも。赤妻ライハ。かつて連邦生徒会長の右腕だったあなたならこんなこと造作でもないわね。そして、あの遺産の使い方もきっと」
「・・・・・」
「さあ、そろそろ何か言ったら?何も言わないなら私はこのままあなたを拘束する。それが嫌なら、早く遺産の場所を言いなさい」
「・・・ひとつ、ひとつだけ聞きたいことがあります」
「!」
「・・・それを知って、遺産の場所を知って、どうするつもりですか」
「もちろん即刻破壊するわ。あれは誰にも利用させてはいけないもの」
「・・・はぁ、そうですか」
ヒナの答えにライハは大きく息を吐く。まるで、そうだろうなと言わんばかりに呆れた返しをする。そして、抱えていた背中の荷物のショルダーから手を放す。
「まあ、どの道空崎ヒナには接触する必要があったわけだし、計画を早めても変わりなし、か」
ライハが顔を上げてヒナを見る。さっきまでのオドオドとした情けない声なんかとは全く違う、はっきりと威厳のある声で、彼女はヒナへ、同じ目をしながら言う。
「空崎ヒナ、あなた達が私を追いかけていたのは知っていた。その目的も含めて」
「!、なら・・・」
「だから、私の回答はこうだ。
セカンドフェイズ、開始」
瞬間、この空間は閃光に包まれた。 - 69二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 00:17:23
!?
- 70二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 08:27:34
- 71二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 17:33:08
「ッ!」
咄嗟の強い光と爆音に思わず目元を覆う。うかつだった、まさかあの一瞬で閃光弾を爆発させるとは。閃光弾の起爆時間はだいたい3秒。それを投擲、しかも片手で自分にバレずに栓を抜くことができるなんて。だが、それで大人しく黙るわけにはいかない。
空崎ヒナは混乱する自分の目と耳を無理やり制御して周りを見やる。赤妻ライハは当然そこにはいない、おそらくこの場から逃走したのだろう。だがいくら彼女とてこの一瞬でそう遠くに移動することは不可能なはず。なら追いつけるはず。
「逃がさない」
”ヒナ!?”
呼び留めようとする先生を余所に、空崎ヒナは廃墟を飛び出す。だがどこを見回しても彼女はいない。取り逃したか?いや時間はそこまで経っていない。おそらく近くの街角をすぐに曲がったか別の廃墟で隠れているはずだ。前者なら上から見れば一発で分かる。空崎ヒナはそう考え、自身の翼を広げ大きく跳躍し、そのまま翼を羽ばたかせて飛翔する。もし推察が正しいならルートは確実に絞られるはずだ。
赤妻ライハの逃走経路は全部で5つ。うち4つはこれで分かる。だが、彼女ならそれくらいのことは分かるはず。彼女の発言から察するに最初から彼女は自身に接触してそのまま逃走する気だった。つまり空崎ヒナを確実に知っている。当然、彼女が空を飛べることも。
ならば間違いなく赤妻ライハは廃墟の中にいる。問題はどの廃墟にいるか。一つでも予想を外せば捕まえることは確実に不可能。これまでのことを踏まえて考えるなら彼女がいるのは・・・
「目の前のビル・・・いや!」
空崎ヒナ翼を羽ばたせるのをやめ、すぐに地面に着陸し、元居た場所・・・すなわち先生の元にいく。
「・・・遅かった」
中に入るとそこには、赤妻ライハも、先生もいない、ただの暗闇があるだけだった。 - 72二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 23:47:59
先生拉致されたかな?
- 73二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 07:41:03
このレスは削除されています
- 74二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 15:38:58
無事を祈る
- 75二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 16:09:37
ヒナが廃墟を出たその一瞬で、私はライハに連れ去られる形で廃墟を出て遠くまで来た。確かにあの状況なら閃光弾を使って逃げるという選択を取るなら、あのまま一人猛ダッシュで走るかそのまま暗闇に身を潜めるのが普通だ。だが現実は違った。ライハは廃墟から出たのではなく、最初から背後に立ってヒナが出ていくの待っていたのだ。・・・私を、ヒナから離すために。
「ここまで来れば多少時間は稼げる。まあ、追いつかれるのも時間の問題ではあると思いますが」
“・・・・・”
「・・・悪いことをしたという自覚はありますよ。本当は私だってもっと良い形で会いたかったですし。まさか空崎ヒナに気づかれるとは思わなかったんですよ」
ライハは私に困った顔を向ける。さっきまでのオドオドとした様子は何処へやら、今はヒナが来るという少しの緊張感を走らせ、しかし明らかに肝を座らせているその様子は、なるほど彼女が只物ではないことを表している。
“ねえ、ライハ”
「はい」
“雷帝の遺産を使って、何をするつもりなの”
「・・・まあ、そうなりますよね」
ライハは大きく息を吐くと、私に視線を向ける。
「雷帝の遺産。確かにあれはとんでもない代物です。あのまま起動すれば、少なくともその周囲一帯はただでは済まないでしょう。それこそ巡行ミサイルが落ちるようなものです」
“だったらなおさら”
「ですが、それは攻撃用、悪意を持って使った場合の話」
ライハじゃ人差し指を突き立てて言う。
「私はあれを守るため・・・連邦生徒会を、会長の座を守るために使うんです」 - 76二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 23:57:55
待機
- 77二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 08:17:57
期待
- 78二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 12:22:57
“連邦を守るため?”
「はい」
“・・・本気で行ってるの?”
「本気じゃなかったら態々こんな大がかりなことはしませんよ」
確かに雷帝の遺産———列車砲シェマタは強力な兵器だった。あの時はアビドスのみんなと橘姉妹の協力でなんとか止めることができたから良かったものの、もしあれがそのまま野放しにされていれば今頃アビドスには多大な被害が出ていたに違いない。
「SRT特殊学園無き今、連邦生徒会は自らを守る手段がありません。事実何度も危機を迎えていますからね。そして、連邦生徒会長の座を狙うものがいたことも事実。だから必要なんです、兵器が、連邦を守るためのものが」
何かを守るために、自分を守るために武器を持つ。確かにこのキヴォトスでは日常だ。誰しもが当たり前のように銃を持つのがこの世界だ。
だが、そのために兵器を、キヴォトスを破壊するものを持つのは・・・
“そんなものがあっても、リンちゃん達は、連邦生徒会は、何も喜んだりなんてしたいよ」
「・・・それは、彼女たちが考えた場合の話でしょう?」
ライハは私の言葉にほんの少し黙りはしたものの、一切動揺せず返してきた。私の言うことは、最初から織り込み済みとうことだろうか。なら、尚更どうしてこんなことを・・・
「忘れましたか、私は連邦生徒会長補佐、連邦生徒会長に尽くす存在。その会長を守るのは、当然のことでしょう」
“ライハ、私が言いたいのはそういうことじゃ”
「自分でも、滅茶苦茶なことを言っている自覚はありますよ」
ライハが私に近づく。月光のみが差し込む暗闇に閉ざされた空間であっても、その存在を確かに放つ彼女の烈火と黄金の髪、暁色の双眸が私にその異様さを焼き付けてくる。
「ですが、それでは何も守れない、優しさだけじゃ、平和を望むだけではただ滅んでいくだけ。それじゃあ駄目だ、だから必要なんだ。彼女たちを守るための力が。」
“ライハ、私の話を最後まで”
「たとえ地獄で焼かれようと連邦を守る。それが私の役目、連邦生徒会長補佐たる私のあるべき姿です。」 - 79二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 15:41:21
異様だ。今までいろんな生徒に出会ってきた。だが、ここまで兵器に———力に拘る生徒は初めてだ。
何だ?何が彼女をここまで力に固執させる?
「さあ、どうしますか先生、このまま私を見逃すか、それとも私を止めるか」
「なら。私はあなたをここで倒さなきゃいけないわね」
上空から、大きく翼を羽たせ、少女がこちらを見下ろしていた。大きな猛禽類が、逃した獲物を見つけたが如く威圧。少女はそのままその武器を振り下ろす。
大きなため息と共に、そのハンターへ呼びかけた。
「随分と遅かったね。どこで油を売ってた?」
「生憎、これでも全速力で来たんだけどね。でも、もう逃がさない」
「そのようだね」
ライハはこちらに向き直ると、ずっと背中にかけていた大きな荷物・・・否、巨大なガンケースを下し取っ手に手を掛ける。
「先生、もし私を止めたいのであれば、全力で止めに来て下さい。説得なんかじゃない、力で、死ぬ気で私を止めてください。そして、遺産を破壊してください。それが、私の」
すんでの言葉は、上空から降り注ぐ紫色の豪雨によってかき消された。 - 80二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 23:27:04
ヒナァ!
流石だぞヒナァ!! - 81二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 07:54:27
待機!
- 82二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 13:42:51
自身が放った砲弾による粉塵を見つめながら、空崎ヒナはまだ上空に漂いその地点を見続ける。本来ならそのまま地上に降り立っていたと所を、彼女は翼を羽ばたかせ続ける。
理由は単純、獲物を狩るためだ。粉塵から脱出し、こちらを噛もうとする窮鼠の姿を。
「来たわね」
「!」
獲物が、赤妻ライハが後ろを下がりながらその姿を現す。片手に背中に背負っていた巨大なガンケースを、もう片方の手にショットガンを持ってこちらを見上げる。なるほどあれが彼女のメインウェポンか。
「どうしても逃がしてはくれなさそうか」
「当然、雷帝の遺産は破壊しなきゃいけない。だからあなたには負けてもらうわ」
「あっそうですか!」
赤妻ライハはすぐに空崎ヒナへ銃を発砲すると、すぐに背を向けて走り出す。だがこんなことでゲヘナの風紀員長は止まらない。ヒナはそれを避けると同時に、獲物を仕留めるべくすぐに赤妻ライハへ急接近する。
しかしそれは赤妻ライハとて同じ。ヒナの位置を背中で感じや否や、すぐに振り返り持っていたガンケースを投擲する。
ヒナはそれを受け止める。しかし直後に前から来た衝撃に驚きそのまま下へ着地する。真後ろにガンケースが落下する音がした。そうか、ガンケースをショットガンで撃ったのか。だが幸いこちらは無傷だ。
「ひとつ聞いて良いかしら」
「何か」
「何故あなたほどの人間があんなものに頼るのかしら」
「それはさっき聞いたんじゃなかった?」
「そうじゃないわ」
ヒナはマシンガンを構え直すとライハへ向き直す。上空から地上へ降り立てば狩人と獲物という立場は、一気に崩れる。ゲヘナの風紀員長と連邦生徒会長補佐。相容れぬ立場でありながらここでは等しく同じ目線。かつて諜報員だったヒナからすれば考えられぬことだろう。だからこそ分からない。なぜ彼女があれに執着するのか。よりによって彼女が。
「なぜ連邦生徒会長の一番近くにいたあなたが、あんなものに手を出すの?」 - 83二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 15:22:33
確かに何故だろう
- 84二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 23:14:35
ほ
- 85二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 07:40:01
待機
- 86二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 15:33:28
このレスは削除されています
- 87二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 15:41:49
「・・・へぇ」
「その様子だと、ビンゴのようね」
「嫌な所を付いてくる。流石はゲヘナの風紀員長、情報通だ」
そうだ。だからこそおかしいのだ。彼女が雷帝の遺産を使う理由は、確かに彼女が先生に言った通りなのだろう。そしてその結果先生は彼女へ異様さを感じたわけだ。
しかし先生が彼女について知っていることは、彼女が連邦生徒会長補佐という役職、いわば形であることだけ。それも、そのことを言ったのは空崎ヒナ自身だ。
知っているのだ、ヒナは。彼女が、連邦生徒会長補佐というのが何なのか、その中身を。
その在り方を。
ゆえに分からない。
「連邦生徒会長は雷帝を危険視していた。ゆえに対策を打った」
「だから私が補佐である。そう言いたいの?」
「・・・これ以上話しても、無駄なようね」
やはり自身の推察は間違っていなかったようだ。彼女は連邦生徒会長補佐というものの存在理由を分かっている。だが、彼女はそれを承知の上で雷帝の遺産を使おうとしている。
ならば、もはや何も言うことはあるまい。
ヒナは翼を開きマシンガンをライハに向ける。ライハもそれを察してか構えをとる。
「覚悟して」
「来い」
怪物対怪物。今度はどっちが狩る側か分からない。だが一言言えるのは、そこはもはや言葉なぞ通らない場であることだけだ。 - 88二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 00:04:58
おぉ…
- 89二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 09:28:11
これはおおだな
- 90二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 17:32:33
うーん表現が難しい、ちょっと難航しそうです~
- 91二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 00:20:47
おまちしてます〜
- 92二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 08:58:37
たいき
- 93二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 15:47:34
もう少し時間下さい
- 94二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:52:28
おまちしてます
- 95二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 09:11:02
このレスは削除されています
- 96二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 11:57:08
先陣を切ったのはヒナだ。銃口から弾を発射させながら地面を蹴り、前に突っ込む。
対するライハも黙って見ていたわけではない。銃弾を避けるために左右へ飛びながらショットガンを発砲、こちらへ接近してくる。
まるでイオリを見ている気分だがあっちと違いこちらはヒナ一人だけなのか跳躍する幅が狭い代わりにより前へ来る。おそらく弾を避ける最短距離を選んでいるのだろう。・・・距離が近づく。
ライハは至近距離でショットガンを放つ。ヒナは屈んでそれを避け、そのままライハの頭目掛けて蹴りを入れる。だがライハはそれも一歩後ろに下がりそれを避け、そのままショットガンを発砲。さすがに反応しきれずこれは食らってしまった。
だが所詮は散弾銃の一発程度。これくらいでは一ミリも怯みはしない。
ヒナはすぐに体勢を立て直し再び正面へ向き直す。なるほど大体わかった。
おそらく彼女の基本戦法はショットガンの連射による速攻の制圧だ。本来ショットガンはある程度距離をとってからその銃弾の拡散性によって攻撃するための装備だ。だが彼女の場合は一気に距離を詰めてからカウンターの如く相手の攻撃に合わせてショットガンを発砲して一撃でダウンさせる戦法を使っている。一人ひとり、至近距離で放つことで一気に制圧するのだ。
なら話は簡単。近づかせなければ良いだけ。近づかなければショットガンの威力は落ちる。それにショットガンの装弾数はたかが知れている。さっきと同じ戦法は使えない。
ヒナはもう一度銃を構え突撃する。ライハも同様に回避する姿勢を見せる。
・・・が、彼女はショットガンを撃たず何かを投擲、そのまま大きく後退する。
「!」
間違いない、あれは閃光弾。このまま逃げるつもりか。
ヒナは翼を羽ばたかせ大きく跳躍し前へ出る。直後、巨大な閃光と爆音が五感を襲う。が、それで止まるのは不意に投げられた時だけ。意識してしまえばそれまでだ。ヒナはそのまま前へ突っ込む。
閃光が晴れた眼前、ライハが驚いた様子を見せる。届く、これなら。
ライハはショットガンを構える。だが間に合わない。ヒナは突き出されるショットガンを無視してそのままライハの懐へ侵入、そのまま蹴り上げた。 - 97二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 11:57:24
すみません更新遅れましたー!
- 98二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 15:14:28
- 99二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 23:36:57
このレスは削除されています
- 100二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 23:37:46
- 101二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 09:20:25
このレスは削除されています
- 102二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 18:34:32
このレスは削除されています
- 103二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 04:31:43
もう少し待って
- 104二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 05:03:07
「ッ!」
ライハはヒナの蹴りを受け止めきれず、そのまま蹴られた方向へと吹っ飛ぶ。だがすぐに着地し体勢を立て直す。流石に今ので止まってくれはしないか。
しかしここを逃せば彼女はまた厄介なことをしてくる。次はない。
ならここで仕留めるしかない。
ヒナは自身の両翼を大きく広げると左翼を自身の前に持ってきて、そこにマシンガンを乗せて構え、引き金を引く。瞬間、その銃弾は紫色の三叉のビームとなって放たれる。
『終幕:イシュ・ボシェテ』。空崎ヒナが放つ最強の一撃、一瞬にして規則違反者を制圧することのできる、彼女が持つ完璧なまでの破壊。さらにこれは三方向に飛ぶため回避は不可能。これを食らえば流石の赤妻ライハとてひとたまりもない。
それを察してかライハは小さく舌打ちをする。もはや逃げ場はない。
「終わりよ」
紫の一閃が命中する。瞬間、その場は周囲が破壊されたことによる砂塵に覆いつくされた。 - 105二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 13:55:53
そう言っていただけると本当励みになります
- 106二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 23:37:04
保守
- 107二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 09:10:57
このレスは削除されています
- 108二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 19:02:28
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- 109二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 01:07:42
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- 110二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 09:25:44
“ヒナ!”
後ろから声がして振り返ると、先生が自身の方へ来るのが見える。そうか、気にしてはいなかったがこんな近くで戦っていたのか。流れ弾が先生の方へ行けば大惨事だった。
“ヒナ、大丈夫だった?”
「私は平気、そっちは大丈夫だった?」
“私は大丈夫、でもライハが・・・”
赤妻ライハ、その名前を聞いて後ろを向く。未だ粉塵は止まず、赤妻ライハが今どうなっているか分からない。だが何も反応がないことから察するに、おそらくただで済んでいる様子ではないだろう。
「あれだけ撃っても別に死んだりはしないわ、まあ気絶の一つはしてるでしょうけど」
あれだけ騙されておいて、心配ごとは生徒の、それもゲヘナでもいないレベルの危険人物の安否とは。全くこの人は。
ヒナは再び先生へと顔を向ける・・・はずだった。
正直、これは悪癖なのだ。己が強いがため、たかが銃弾、それもライフル程度では傷一つ付きはしない。逆に居場所を特定する原因にもなりえる。ゆえにヒナは自身への攻撃には疎い。
だから反応できない。奇襲に、背後からくる空気を裂く刃に。
気づいた時には遅かった。腕に、何か熱い物が弾けた。 - 111二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 19:02:27
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- 112二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 01:13:54
このレスは削除されています
- 113二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 10:43:57
面白そうなスレ発見!
- 114二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 19:33:57
このレスは削除されています
- 115二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 00:32:28
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- 116二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 01:11:48
「ッ!?」
“ヒナ!?”
刹那、その熱は激しい痛みへと変貌する。反射的に抑えた患部から血液がドクドクと流れ出る感触が手に伝わる。
間違いない、刺された。それもこれは投擲用のナイフ。たまに不良たちがふざけて持っているお遊びのようなものではない、明らかに殺意を持って使うものだ。
しくじった、最初から彼女の狙いはこれだった。ショットガンで私を怯ませようとしたのも、閃光弾を用いて逃げようとしたのもすべて罠。最初から私を油断させるため。この一撃を与えるための。
「ああ、やっと掛かってくれた」
前方、粉塵の中から赤妻ライハが姿を現す。しかしその姿は少し服が汚れた程度で何一つ変わらない。
バカな、さっきの攻撃で無傷だと?あの攻撃は間違いなく彼女に命中していた。なのに何故彼女は平気でいられる!?
・・・いや、そんなことを考えている暇はない、まだいるなら、もう一度攻撃するまで。
ヒナは腕に刺さったナイフを引き抜き立ち上がる。
「まだやる気で?」
「もちろん、これくらいの傷なんて何回もしたわ」
ヒナは再び銃を構えライハへ放つ。ライハはさっきと同じようにそれを最短でよけながらこちらへ向かってくる。
避けられるのは関係ない、接近されるのも今はどうでも良いことだ。問題は何故さっきの攻撃を受けて無傷だったのか。それを解明しない限りはこちらに勝ち目はない。
ライハが至近距離まで迫る。このままショットガンを撃たれると先生にまで被害が及ぶ。なら・・・
地面を蹴って空を飛ぶ。もう一度空から攻撃を仕掛ける。
だが、ここにいるのはゲヘナ風紀員長と連邦生徒会補佐。怪物と怪物。
狩人と獲物ではない。
ライハはヒナが飛んだ直後、彼女の翼目掛けてナイフを投擲する。
ヒナはギリギリのところで避けることができた。だが咄嗟のことで体勢が崩れかける。そしてそれを逃さない彼女ではない。
ライハはすぐさまショットガンを構え連射する。ヒナはそれに耐えきれず地面へ落下する。
腕の傷が衝撃で激痛を伴う。だがなんとか距離を取ることができた。
ヒナは再び左翼を前に出しマシンガンを構える。それを察してかライハが小さく舌打ちする。
ヒナはもう一度必殺技を使った。 - 117二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 09:29:59
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- 118二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 15:19:50
このレスは削除されています
- 119二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 01:03:44
このレスは削除されています
- 120二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 01:14:47
- 121二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 09:54:23
期待
- 122二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 19:18:42
このレスは削除されています
- 123二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 01:11:30
ヒナがこちらへ、正確にはライハへ向かって銃を向ける。あの姿勢、もう一度あの技を使うつもりか。
だがそれは先ほど彼女によって防がれた(?)。ならヒナのやろうとしていることはおそらく・・・
「・・・ああ、なるほど」
私と時同じくしてライハもヒナの意図に気づく。
おそらくヒナの目的は彼女の防御手段の発見。なぜライハがさっきの攻撃を受けて無傷なのかを解明すること。
ヒナがトリガーに指を掛ける。
来る、ライハの防御手段が。 - 124二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 10:23:36
………「来る」…?
- 125二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 16:11:17
※修正します。
ヒナがこちらへ、正確にはライハへ向かって銃を向ける。あの姿勢、もう一度あの技を使うつもりか。
だがそれは先ほど彼女によって防がれた(?)。ならヒナのやろうとしていることはおそらく・・・
「・・・ああ、なるほど」
私と時同じくしてライハもヒナの意図に気づく。
おそらくヒナの目的は彼女の防御手段の発見。なぜライハがさっきの攻撃を受けて無傷なのかを解明すること。
ヒナがトリガーに指を掛ける。
一つ、ため息が漏れるのが聞こえた。 - 126二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 17:24:45
「まあ、やらないんだけど」
瞬間、ライハが私の視界から姿を消した。
その事に私は驚く、そんな暇はなかった。
足に衝撃が走る。その瞬間私は転倒しかけた。だが、後ろから伸びた腕が私の前に回ってきて私の体を支えた。
…いや、支えられたわけではない、拘束されたの間違いだ。
私の首に、ちょうど頸動脈の位置に何か冷たい鋭利なものが当たる感触を覚えた。視線を落とすとそこにはナイフが首に押し付けられていた。
…なるほど、確かにこれなら防げるか。
「銃を下せ、空崎ヒナ。このまま撃つなら先生の首を掻っ切る」
「…そんなのが脅しになると?」
「確かにあなたなら私だけを撃ち抜くことくらいは造作もないでしょう。でも引き金が引かれることぐらいいくらでも反応できる。さあどうする、空崎ヒナ」
「…」 - 127二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 00:25:10
保守がてらちょっと報告
実家から帰ってきたらホスト規制喰らってました。助けてください。 - 128二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 10:13:58
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