- 1龍影◆9BZ6kXGcio25/04/05(土) 20:48:12
- 2龍影◆9BZ6kXGcio25/04/05(土) 20:50:07
前スレ
https://bbs.animanch.com/board/4778835/?res=192
【禁止事項】
・無敵ムーブ(戦闘でダメージを受けない、回避し続ける、など)
・必要性の認められない確定ロール
・相手PLが嫌がっていることを強要する行為(特にR-18関連はデリケートなところなので扱いには気を付けて、事前相談忘れずに)
【世界観やパワーバランスを保つ上での禁止事項】
・版権設定の利用
・「地形を変えられる火力」を個人で設定し所有すること
・3勢力(K.I社、人自連、デスペラード)+インベイドよりも立場や規模が大きい勢力を設定すること
・なんでも高い水準で出来るキャラ、なんでも高い水準で出来る機体禁止(他の人の活躍機会を奪いかねないため)
・メタネタ禁止(「この世界は作り物だ~」や背後さんへの言及をキャラの目線で発言させるなど)
- 3龍影◆9BZ6kXGcio25/04/05(土) 20:50:34
Q1:参加してぇ!けど事前のキャラ登録って必須なの?テンプレはある?
A1:キャラシはあった方が色々スムーズだとは思うけど、無くても規約的なNGムーブさえしなけりゃ参加はOKだぜ!
テンプレらしいテンプレは特に無い(めんどうくさかった)からテレグラフなりで各自好きな様に書きたいこと書いてくれ!
↑の初期設定集から飛んだ先にあるスレ主のキャラシからテンプレとして項目を引用しても大丈夫だぜ!
Q2:キャラは1参加者につき何人まで?
A2:何人でもOKだぜ!複数陣営あるし下手に制限設けたらスカスカになるのが目に見えてるから……好きな様に作ってくれ!
Q3:コテハン(トリップ)は必須なの?
A3:必須じゃないぜ!でもトリップが無いってことはなりすましや乗っ取りが出ても判別方法が無いってことでもあるから、自衛手段としてコテハンを持っておくのは無難だぜ!
Q4:スレタイにR-18表記があるけどエロスレなの?
A4:一般誌のエロ描写とか元ネタ一般作品のエロ同人好き? 俺は好きなの……
エロメインじゃないけど「エロいことも割と自由に描写して良い」スレだから苦手な人がミスッて踏まない様に一応表記しているぜ!
「猥談耐性はあるけど自キャラにエロルさすのはなぁ……」って人でもOK、「自分は露骨なエロやりたくないです」って言っておけば良いぜ!
Q5:設定集に目通したけどなんか既視感ある設定ばっかりだな?
A5:へへっ - 4龍影◆9BZ6kXGcio25/04/05(土) 20:51:03
【テレグラフ(設定やキャラシート、R-18な文章を書いたりにどうぞ)】
h ttps://x.gd/mv4zw
【URL短縮用サイト(テレグラフのデフォルトURLだとあにまんのNGワードに引っ掛かってしまうのでこちらでURL短縮してから投稿してください)】
h ttps://x.gd/#google_vignette - 5龍影◆9BZ6kXGcio25/04/05(土) 20:51:19
保守!
- 6龍影◆9BZ6kXGcio25/04/05(土) 20:51:41
保守だお!
- 7ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/05(土) 20:52:25
支援
- 8ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/05(土) 20:53:10
立て乙です!!
- 9“有機の悪魔”◆OXAm1h6odk25/04/05(土) 21:19:45
立て乙ですー!
- 10逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/05(土) 21:19:46
保守がてら 前スレ>185&195
「映像、出します!!」
後方指揮所……という名のソドム奪還作戦部隊のために用意した補給所の仮設司令室……という名のハンガー……。
そこで部下が出した映像を見て、逆巻カンナは異質さと驚愕を隠せなかった。
「ここにきてまたインベイドの新型……!?! 隠し玉が多すぎるわよ!!」
思わず頭を掻きむしった。 先の戦闘結果はすでにカンナの耳にも届いている。
ケイの駆る蒼風、エイダン・リーのSyringe's 、ミハエル・ラインのウィルヘルミナらが中破。
王龍影のチャオレンに至っては最前衛を張り続けた影響で大破……と呼ぶことすら震えが走るほどの損傷状態。
つまり、現状頼れる奈落防衛戦の特記戦力はレイナード少佐、そしてデスペラードの企業主ハニアのみ。
あまりの事態の急変は、逆巻カンナをして戦場の無慈悲さを改めて理解する。
まずは敵の性能を見なければならない。そう感じつつ。
・・・・
……自企業の戦力をここに来て出せない。という事実を後悔した。
逆巻重工の保有する実働部隊――――月風24機で構成される部隊は、半数が損傷でオーバーホールで出撃不可。もう半数が青天市街への部隊教導に向かっている。
今彼らを呼び戻しても、間に合わないという判断でG-3ベース攻略戦への参加不可能状態だったのだ。
- 11龍影◆9BZ6kXGcio25/04/05(土) 21:36:53
- 12ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/05(土) 21:42:49
- 13ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/05(土) 21:45:56
「了解」
全高が一番高いからこそを活かした、光の範囲が広いライトが照らされる。
見えたものは――――。
「…………酷い」 ・・・・・・・・・
シミュレータの中の。絶望と粗野が極まる初期インベイド大戦シナリオのそれと似ていた。
追い詰められた時に出る荒っぽい口調は、そのシナリオをクリアするまでシミュレータールームから出るな。と14の頃に自分をぶち込んだ祖父への僅かな反抗心と、己を鼓舞するための……シミュレーター内の傭兵やネームドたちの模倣で……。
それさえも剥がれれば、悲しみと悔しさと、怒りが混ざる少年の声だった。
「頭部バルカンと高速速射砲で良ければ援護します。行ってください」
ケイはその案に賛成する。
- 14“有機の悪魔”◆OXAm1h6odk25/04/05(土) 21:47:23
前スレ>>197
【四つの尾の内の一つが複眼による狙撃補助と偵察兵級による観測を受けて、ビームサブマシンガンを的確にビームで撃ち落とす】
【────────ギョロリ、ギョロリと忙しなく裂けた瞳孔の眼球が蠢く。攻撃が失敗した。失敗の原因を分析し、原因を対策し、次に繋げろ】
【煙幕形成後に早期に離脱された。経験に依存する判断か闇雲の判断かは不明。偶然で処理可能な事象については選択肢の強要が必要】
【高速で“ゴモラ”と偵察兵級の間で相互通信が交わされて、その隙に脚部の横から貫かれた偵察兵級が質量兵器として投げられる】
『────────』
・・・・・・・・・・
【脚関節が真横に動いた。球体関節によって規格外の可動域を誇る脚部クローが投げられた偵察兵級の骸を掴み取り、そのまま同じ角度とより優れた速度で投げ返す】
【小技だ。だが機動力の観点で近接戦なら兎も角として射撃戦では致命打にならない。ならば何を実行すれば良いのか】
【ギョロリ、と戦場全体を俯瞰する。この敵だけに集中する必要はない。より全体的、長期的な戦略が重要だ】
『────────』
【今後のインベイド全体の利益を最低限確保する為に、合成級は超音速機動で後方司令部を殲滅目標に指定する───────1225km/hで、怪物が戦場を移動し始めた】
- 15ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/05(土) 21:54:06
- 16ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/05(土) 21:57:48
BF一機も満足に倒さず大将首だなんて随分と逃げ腰にゃ…!
【テイルアンカー先端のヒートナイフで投げ返された偵察型級を再び貫く。それを地面に叩きつけて反作用にてアメミットが跳ぶ】
【随伴する偵察型級から偵察型級へ。なにも大仰な仕掛けなど使わずとも追いすがる手段はある…ワイヤーを突き刺し足場代わりにして強襲級もどきもどきへと肉薄を図りつつ、拾ったガトリングガンを弾切れになるまで発砲していく】
《後方司令部!そっちにめんどいのが今向かってってるにゃ!ご覧の通りこっちは慢性的戦力不足にゃ!なる早で始末したいのは山々だけどそれもキツそう!》
《予想進路を送る!そっちに向かってくる事前提で罠か何か作れないかにゃ!?電磁ネットとか火炎放射器とか!!なんでもいい!!!》
- 17エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/05(土) 22:05:21
- 18龍影25/04/05(土) 22:05:30
- 19ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/05(土) 22:11:53
「勞の旦那! あくまでナノスキンで関節部を接合しただけだ! 万全とまではいかない本当に間に合わせだから無茶はできんぞ!」
ご忠告どうも! 整備長!
それとメビ!
『すでにスキャンは終わらせました。この具合だと、レールガンを5発までなら撃てます』
キルパクするにゃぁ充分だな
ほんじゃ……出撃と行こうか! - 20ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/05(土) 22:12:47
- 21“有機の悪魔”◆OXAm1h6odk25/04/05(土) 22:13:16
【ギョロリ、と再び眼球が脈動する。次の瞬間には随伴していた偵察兵級が続々とその飛行高度を上昇させて上空600mまで飛翔してゆく】
【───────元より拡散した偵察兵級の大半は同じ高度を飛び回って戦場を俯瞰している。随伴機は随伴の必要があるかどうかの実験、及び肉盾の為に配置していたに過ぎない。敵に利するのなら固執する理由もない】
【ガトリングガンに対応する為に四つの尾がビームを吐き出し続けながら忙しなく動き回り、放たれる弾幕を真っ向から撃墜する】
『─────────』
【同時に、合成級自身も上空300mまで高度を上昇させている。その状態で超音速機動を維持しながら罠師級の糸を放てば地上までの間に即席のワイヤートラップが形成される。BFすらも高速で突っ込めば斬り裂かれる硬質糸だ】
【空中で機動する手段がなければ斬り裂かれ、仮に左右に避けてもプラズマ砲と機関砲が虎視眈々と敵を穿つべく待ち構えている】
『────────────』
【煙幕は逃げる方向を与えてしまったから仕留める事が出来なかった。ならば今度は避ける方向を意図的に狭める戦術を試行しようと合成級は判断した】
【合成級は、確実に戦術を学習しつつあった】
- 22ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/05(土) 22:16:13
- 23龍影25/04/05(土) 22:20:36
- 24ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/05(土) 22:24:33
- 25ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/05(土) 22:25:42
- 26ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/05(土) 22:31:43
前87
「これでこの波は…!」
【射撃級の弾幕を瞬時に変形即解除により回避】
「何をするにも数が多い…」
前94
『了解!射撃には射撃をぶつけます!』
【やる事がわかればやるだけだ。ミサイルは先程切ったばかり、だが手段をいくらでもある】
『当てはしないので、気にせず動いて下さいね!』
【アリオールの双眼が静かに光る。後ろからの弾幕を張れば最悪誤射が起こる。ならばどうするか?前衛で弾幕を張れば良いだけだ】
【今の位置から徐々に前へ移動。その間も重ライフル、バルカン、OEによる連続精密射撃で射撃級の急所を狙い撃つ。この狭さにこの数だ。雑に打っても当たりはする】 - 27オルフェリア◆OXAm1h6odk25/04/05(土) 22:34:06
「─────────そろそろだな」
【インベイドの骸を文字通り山程築き上げて、鋼鉄の天使は後方で地下回廊を拡張し続けている超大型インベイドを横目に通信を開いた】
【冷静に戦況を把握する。共に戦った機体と操縦士の性能であればオルフェリアにも理解出来た───彼女らならば実行可能だろう、と】
「戦線を1km程押し返すぞ。それだけしなければ熱の余波だけでも影響を受ける──────我が社の社員にはとても要求出来たものではないが、貴殿らなら可能だろう?」
【私も直前までは協力出来る、と呟いてから規格外大型実体剣を掲げてオルフェリアは感情の読めない声で音声認証を起動した】
「天使の沈黙が全てを閉ざす───生命の音さえもな。啼け、“アンゲロス”」
【背部に装着された推進機構“アンゲロス”が、コア粒子の大量消費を開始する─────────重装兵級の粒子ビームすら貪って、だ。鋼鉄の天使を前にして、全ての粒子ビームが受け止められる】
「行くぞ」 - 28ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/05(土) 22:44:28
- 29“有機の悪魔”◆OXAm1h6odk25/04/05(土) 22:44:33
- 30ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/05(土) 22:49:03
『…ここが頑張り所って訳ですね。ランセル・ナギエ!その御期待、全力で応えます!』
【その通信を受けとった途端、不覚にも口角が上がった。前線の押し返し。今の波の対処だけではない。それはかなりの難度だろう】
「だからこそ来た甲斐があった!」
【こういう状況にて、少しでも役に立てるよう自分は今ここいる。大火力の兵装は無いが、先程までと同じく敵を削る事はできる。ならばそれをしよう。言った通りの───全力で】
【重ライフルをセミオートからフルオートに。OEの機動制限も解除。オルフェリアが粒子攻撃を吸ってくれるおかげで機動範囲が格段に広がった。アリオールは床を、壁を、天井を、ぐるりぐるりと回り踊る】
【つまりは、弾幕の面が広がった】
- 31龍影25/04/05(土) 22:52:16
- 32ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/05(土) 22:56:17
《りょーかい。そこまで買われたら、応えなきゃ傭兵失格》
【クロノスの連中なんていけ好かないと思っていたウルヴィは、いつの間にかそれなりにオルフェリアを気に入っていた。嫌味ったらしさも企業特有の悪臭もない彼女の信頼は、心地よさを感じる】
《さぁ……狩りを始めよう》
【エルガレイオンのリミッターが下限値に固定される。ここからはウルヴィがBESTIAで、BESTIAはウルヴィだ。肺が灼ける、脳が潰れる、全身が引き裂かれる。理性が蒸発しそうになる中で、獣を引っ張るのは本能。機体が捉えた全ての情報を元に、突撃兵級を狩り、喰らう】
【断罪の天使が、飢餓の獣が、意志持つ人が、それぞれの全力で以てインベイドを掃討するのだろう】
- 33ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/05(土) 22:59:31
ところでだ! ハニヤの姉さん!
メビ曰く「今の所は只働き」らしいな!
報酬は2で良いか! - 34ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/05(土) 22:59:33
「洗剤……」
そういえば、龍影さんはいい匂いが良くするよな……という邪な考えを振り払った。
警戒を続ける。
ミハエルと話をするのも、恐怖や緊張を解すという意味だし問題ない。
……一夫多妻がありなら多夫一妻か多夫多妻もありなのか?という考えが浮かんだ。
それも振り払って監視する。
- 35ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/05(土) 22:59:46
【好き勝手な言われ様だが、銭ゲバは紛れもない事実だし否定のしようもない。金を裏切らない傭兵という分かりやすさこそハニヤの傭兵としての売りだ。デスペラードに散見される意味不明な思考回路の持ち主に比べれば銭ゲバ程度可愛いもの…】
【ではなぜそんなデスペラードが、後方司令部を守ろうと躍起になっているのか、それは─────】
─────あそこをやられたら金を出す奴がいなくなる!この死線をタダ働きにさせる事だけは決してならんのにゃぁぁあ゛!!!!!!!
【当然、金である】
もうすぐ司令部か………
【足を止め、狙撃銃をしっかりと構える…これまでの移動速度の計測から、どのポイントに撃てば本体に当たるかの推測は付けられた】
【しかしそれを避けるのは容易い事だろう。『避けさせる』のがハニヤの狙いだ】
あの重装BFの攻撃で落ちなくてもいい…!せめて高度を、弾幕さえどうにかできれば…近づければにゃ…!
【『隙』は作る。その一瞬でこの絶望的な戦況を変えてくれ─────ハニヤは友軍に祈りながら】
【狙撃銃のトリガーを、引いた】
- 36ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/05(土) 23:04:45
- 37ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/05(土) 23:05:37
- 38名もなき月風乗り傭兵◆ECPjTIh3Iw25/04/05(土) 23:08:24
――――隠れ潜んでいた。
インベイドの、BFの骸の中で、滑空砲を構えて。一体の月風が地表に隠れていた。
月風系列といえば、まさに踊るようなマニュアル操縦と高機動がウリだった。
――――彼はそれができないパイロットだった。
――――だから奈落防衛の最前線で、ひたすら隠れていた。
偵察型が出てからは、主機すらも落としていた。
腕とセンサーだけを動かせるようにして、ひたすらに狙いをつけられる瞬間を待っていた。
――――これを撃てば自分は死ぬだろう。
それは嘘でもなんでもなく現実になるはずだ。あのプラズマに焼かれて、俺は死ぬだろう。
月風乗りらしくない、あっけない死に方になるはずだ。
「知るか」
死ぬことは恥ではなかった。何もできず死ぬのが恥だと、彼は知っていた。
デスペラードが狙撃銃を撃ったのを見た。
あれをきっとあの禍々しいインベイドは躱すだろう。その後ろ姿が見えている。
なら、それを撃ち落とすことだけを考えることにした。
通信も出さず。機体を動かすこともせず。ただ、待った。
- 39龍影25/04/05(土) 23:10:02
- 40ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/05(土) 23:10:09
- 41エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/05(土) 23:11:07
『わかった。……ただ察してるとは思うが、僕に歩兵としての質は求めないでくれよ』
【その忠告のあと、機体を沈黙させ、コックピットのハッチを開く】
【パイロットスーツの上に防弾処置を施し、胸にサバイバル用ライトを指したフライトジャケットを着た小柄な男だ。手には新品同然のM6ASWとM18を携えている】
【『蒼風』のライトに照らされた明るい茶髪の下で、辺りに漂う悪臭に不快な反応を示す顔には、サイバーゴーグルがかけられている】
「あー……そういうのは、一度シャワーを浴びてから使った方が良いんじゃないかな?」
【腐敗臭に入り混じるミントと柑橘の鋭い香りに思わず鼻をつまみながら言う】
- 42オルフェリア◆OXAm1h6odk25/04/05(土) 23:11:28
- 43龍影25/04/05(土) 23:16:37
「大丈夫、ライフルマンは私だから。安心して。」
- 44ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/05(土) 23:17:43
- 45ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/05(土) 23:19:32
- 46龍影25/04/05(土) 23:24:08
- 47ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/05(土) 23:26:21
- 48“有機の悪魔”◆OXAm1h6odk25/04/05(土) 23:26:39
【合成級には、迫る狙撃銃の一撃とクラスターミサイルが見えていた。二つの攻撃なんて生易しい攻撃ではない。クラスターミサイルは複数個で、狙撃も移動速度を計算した上で放たれている】
・・・・
【──────────足りない】
【複数の眼球が絶えず警戒している。二百体に及ぶ偵察兵級が火点を尽く予測している。高火力の砲撃に苛まれたからこそ、新たに作り出された合成級の対地迎撃の精度は悪夢的であった】
『─────────』
【狙撃銃の着弾まで0.1秒も要らない。しかしそれだけの時間があれば観測してからでも30m更に高度を上昇させるのは容易い。狙撃を回避した】
【機関砲が即座に180°反転してクラスターミサイルの方角を向く。BFでは有り得ない球体関節は全方位への即時対応を可能としていて──────そして機関砲が火を噴く】
【数mm単位で続々と機関砲が反動まで全て含めて制御され、クラスターミサイルを次々に撃墜する。偵察兵級による複数角度からの軌道予想と速度観測があれば、ミサイルの軌道上に砲弾を“置く”程度は全く容易い】
【プラズマ砲が足を止めて狙撃に専念した機体へと撃ち返される。四つの尾が後方司令部へと細い粒子ビームを吐き出す。まだ、まだ、まだ!】
・・・・・・・ ・・・・・・・・・
【如何なる眼球も、如何なる偵察兵級も、同胞の骸に遮られてその下までは把握していなかった】
- 49エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/05(土) 23:30:54
- 50ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/05(土) 23:33:32
- 51ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/05(土) 23:34:22
- 52ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/05(土) 23:38:12
「こう───か?」
【今に突進せんとする騎兵級へ向けて、左手のブレードを投擲する。それはバズソーのように回転して突撃兵級を幾つか両断し、騎兵級が慌てて自身のブレードで防御しようとしたところで、BESTIAが投げたブレードに追いついて、斬撃の軌道を変えて騎兵級を斬り伏せる】
【速さはソロネのそれに及ばない、鋭さはアリオールのそれに追いつけない真似事。だが、獣は新たな学びを得た。こういう狩り方もあるのか、と】
【そのまま三人の進行速度に対して巣作りが追いついてない罠師級、どうにか射線を通そうとする射撃兵級、それらをマルチロックして肩部のミサイルを放つ。多重ロックオンの負荷が脳を炙り、神経が擦り切れそうになる】
【とにかく障害を排除して、殺し尽くして、前へ。二機と肩を並べ、ウルヴィは狩りの愉悦に口元を歪ませた】
- 53名もなき月風乗り傭兵◆ECPjTIh3Iw25/04/05(土) 23:42:34
- 54エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/05(土) 23:45:02
「ああ、わかった」
【より近くで感じられるハッカの匂いに腐敗臭が薄まる。……自分の鼻が麻痺している可能性もあるが、どちらにしろ集中が乱れる要因が減ったのは良いことだ】
【一呼吸して意識を切り替え、いつでも中に入れるように準備する】
- 55“有機の悪魔”◆OXAm1h6odk25/04/05(土) 23:45:03
『──────────』
【無数の眼球がギョロリ、ギョロリと蠢いて弾幕を見詰める。接近を防ぐ狙いだろう。確かに無防備に突っ込めば墜落しかねない威力である】
・・
【だが、文字通りの手数が足りない。機関砲が弾幕の方向を向く。四つの尾は偵察兵級の戦術支援システムで割り出したコンテナへと警戒を続けている。合成級は直進した】
【───────────ガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!】
【響く金属音。放たれた機関砲の速射は大地を穿つ事も、ゴルドラの機体に傷を付ける事もなかったが、しかし合成級も傷を負わずに後方司令部への更なる接近を遂行している】
・・・・・・・・・・・・・・・
【機関砲で命中弾を全て撃ち落とす。悪夢的技術を披露しながら、地下を貫通する硬質糸とプラズマ砲が立ち塞がる機体を無視して撃ち込まれる。四つの尾からの粒子ビームが誘導ミサイルを16分割した】
- 56龍影25/04/05(土) 23:48:57
- 57ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/05(土) 23:51:23
- 58ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/05(土) 23:52:07
にゃっ!
【元々当たる芽のない狙撃。予てからゴルドラの警告もあり撃てば即動けるよう体勢を整えていたアメミットはプラズマを難無く躱す。】
【どうやら彼の重装BF乗りはK.Iの中でも良心的な類のようだ。酷い場合は警告無しで巻き込んでくる…まぁ、どの勢力も底辺は五十歩百歩なのだが】
【それよりもだ】
…面制圧すら抜かりないにゃんてね…!やっぱりもう一機くらい戦力が欲しいものにゃ
【万全の体制でなら、この程度のインベイド相手にここまで辛酸を舐めさせられる事はなかっただろう…そんな考えが脳裏に浮かび上がったのと時を同じく】
【背後に、閃光が走った】
友軍機による狙撃!?でも誰が…
【その問いに応えるように、狙撃手が骸の下から這いずり飛び上がる…極めて、覚束無い軌道で】
や…やめろ…!そんな動きじゃ──────!
- 59“有機の悪魔”◆OXAm1h6odk25/04/05(土) 23:52:38
- 60龍影25/04/05(土) 23:55:52
- 61エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/05(土) 23:57:08
- 62ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/05(土) 23:59:03
- 63ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/06(日) 00:00:05
……………
【バカが。命あっての物種だろう。】
なんで自分の命を捨てられるにゃ…!なんで自分の命を他人の為に使えるにゃ…!こんなクソみたいな世界で半端な善性なんて自分の寿命を縮めるだけだろ…!!
【こんな荒廃した世界でも金は要る】
【食べ物を買うにも、道具を買うにも、愛機を保つ為にも…だからこそ、ハニヤは金の亡者にならざるを得なかった】
…なに、お前はお前で無様晒してんだよ、もどきもどき
【───しかし、そんなものはただの一側面。銭ゲバの仮面の裏に潜むモノが】
お前の為に死んだ奴がいるんだ……!
【今、弾けた】
お前も一緒に、地獄に堕ちろぉぉぉぁぁぁぁぁぁア!!!!!!!!!
【ローラーが駆ける。テイルアンカーが強襲級もどきもどきを穿ち、地に落とさんと伸びる】
【その動きは、とても人間の反射速度とは思えない機敏さであった】
- 64龍影25/04/06(日) 00:00:16
- 65ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 00:02:01
- 66ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/06(日) 00:02:08
- 67ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 00:06:17
- 68オルフェリア◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 00:07:24
- 69エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/06(日) 00:14:23
- 70“有機の悪魔”◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 00:18:36
【爆炎に遮られて、偵察兵級の戦術支援システムも合成級自身の複眼も機能しない。結果としてリニア弾は確かに合成級の眼球の内の一つを破壊し、本体の全方位対応システムに一点の綻びを生んだ】
【遠隔からの意識共有で操縦される合成級に、感情というシステムは搭載されていない。機械的に自身の状況をチェックして、機械的に敵機の様子を観察する】
【人間とは思えない反射速度。論外。合成級の神経組織とは人間とは全くの別物として設計されているのだから、その程度は前提条件だろう】
『──────────』
【ギョロリ、ギョロリと蠢く眼球と偵察兵級による戦術支援システムの元で予測されるテイルアンカーの進路に機関砲で銃弾を“置く”】
【同時に規格外大型実体剣にも匹敵する硬度と巨大さの腕の刃が超高速で振るわれて、弾かれたテイルアンカーを切断するべく駆動する】
『──────────────』
【合成級には、その叫びの意味が分からなかった】
- 71ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/06(日) 00:18:55
- 72〈熱線砲“ソドム”〉◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 00:25:30
- 73ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 00:27:29
(……戦法が少し変わった?)
【先程までの動きとの違いをふと感じた。それは明確ではなく、あくまで感じた程度だが】
(頭も良い人なんだなぁ)
【凄い人は強くて賢い。改めて思うランセルだった】
『あ、ありがとうございます…!!』
【初見から、オルフェリアの人なりを知っているとは決して言えない程度の時間しか経っていない。それでもこの状況にて彼女から出た言葉。これにおべっかや褒め以外の何かを感じ取れる訳がない】
『オレはここの残存射撃級などを潰してから戻ります!』
【距離を取るならば、遠距離手段持ちを潰しておいて良いだろう。無論、全匹を相手取るつもりはない。少し残っての援護というだけだ】
- 74ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 00:29:23
- 75ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/06(日) 00:32:04
- 76オルフェリア◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 00:35:20
- 77ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/06(日) 00:36:07
【弾かれたテイルアンカーが軽々と刃をすり抜け、逆に腕を絡め取って今度こそ地面に叩き落とさんとする】
【…リニアガンの発射タイミングがこちらの目測より早すぎたか、即興のコンビプレーならこんな事もあるだろう】
次のチャージなんか待てるか…!その前に仕留める…
【先述の目測が果たせずとも、敵機はテイルアンカーの対処に目を向け過ぎて貴重な近接兵装を回してしまっている】
【ハニヤにとって、それだけで十分だった。】
あぁぁ゛ぁぁぁあ゛ぁぁぁぁあ゛ーーーーーッ゛!!!
【外套に包まれた魔獣がついに強襲級もどきもどきを捉える。合理性の欠片もなく、獰猛に、ビームクローが銃火器ばかりの腕を解体せんと振るわれる、振るわれる、振るわれる】
- 78ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 00:38:14
【最初は知らないままに奈落の底へ飛び込んだが、今は…いや、途中からはなんとなく分かっていた】
【気に入った相手ができたと思えばコレなのだから、やはりこの世界では他人に情を移すべきではないなと再確認させられる。というか、そんなのは最初から分かりきっていたはずだ。それでも──全てを押し殺すなど人間にはできないのだ】
《オルフェリア。あなたの剣は…綺麗だった》
《───いってらっしゃい》
【さよならと決めつけないのは、彼女を見送るウルヴィの、せめてもの抵抗だったのかもしれない。望み薄だとしても、願いたくなってしまったが故に】
《ランセル、少ししたら多分、衝撃が来る》
【“好機”──穴に潜り始めた頃にオルフェリアが言ったそれが、もうすぐ来るのだろう】
《その後で、エスコートしてほしい》
【虐殺級を討つためには、出来るだけ早く畳み掛けたい。ならば足が必要だ。この悪路でも彼ならばきっと、迅速に走破できるだろうとウルヴィは見込んで頼んだ】
《虐殺級に》
【まぁ、断られたらその時はその時だ。BESTIAも速い部類ではある】
- 79二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 00:39:03
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- 80ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 00:43:41
- 81“有機の悪魔”◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 00:45:49
【────────合成級は、間違えた】
【砲撃、射撃への執拗なまでの悪夢的対策に腐心し過ぎていた。だからこそ、近距離からのビームくろーに対応出来ない】
【咄嗟に脚部のクローを使おうとした頃には既に手遅れで、ビームクローが継ぎ接ぎだらけの合成級に突き刺さる】
【脚部のクロー、全壊。機関砲身、解体。プラズマ砲、破壊。規格外大型実体剣、分解。甲殻が、反応炉が、複眼が、交信器官が、尽く破壊される】
『───────────』
【機能を停止する間際に、合成級は疑問の籠もった無数の視線をハニヤに向けた】
【“どうして、たかが一機の消費でそこまで強くなれるのか。その変数は何だ?”】
【感情を持たぬ合成級には永劫解けない疑問を最後に、“有機の悪魔”は何処までも無機質に斃れた】
- 82〈熱線砲“ソドム”〉◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 00:49:03
- 83ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 00:49:28
- 84ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 00:51:09
- 85ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/06(日) 00:53:36
- 86ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 00:55:35
- 87ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 00:58:40
- 88エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/06(日) 00:59:39
「良い声だ。……さ、どうぞ」
【突入時の緊張で強張っていた動きはどこへやらをBFを操作するときのような澱みない手つきで、胸元に下げていた社員証を取り出して読み込ませる】
「座標か。それなら──
【身につけていたサイバーゴーグルに視線操作で広域回線へ繋げさせる。瞬間、表示された専用画面には、予想通りのアルファベットと数字の羅列が並んでいた】
ああ……全く素晴らしい働きだよ、オルフェリア・ソローネ」
【自身が最も信頼する仕事人の名を呟きながら、目にも止まらぬと表して良い動きで素早く座標を入力する】
「どうか、安らかに」
''どうか、生きてほしい''
【そして、攻撃を決定づけるキーを、二つの願いを込めて押し込んだ】
- 89逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 01:02:50
司令室とは名ばかりのハンガーが燃え盛って、避難をした場所で。
一秒でも長く見るぞ!と用意されていた簡易映像投影で。
逆巻カンナはそれを見た。
形状からして、クロノス社のソロネを模倣し、射撃と格闘を両立させていたはずのその機体は
しかしソロネと違い、近接格闘戦能力を全く発揮しきれていなかった。
戦線にあった多数の迎撃火線が合成級を縛り付けた果ての、BFの近接格闘戦による解体。
「…………」
その光景に、カンナは唖然とするしかなかった。
最前線から遠ざけられているはずの月風が、蒼風以外にもう一機いたという事実を押しのけるほどに。
生死にほど近いナニカを見せつけられたようで。
立ち尽くす彼女の前では、後ろであの月風がいつ、どこで。誰が操っていたのか。 社員たちが記録をひっくり返していた。
- 90オルフェリア◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 01:03:19
「あぁ、いってきます」
【──────やはり、感情の読めない声音でオルフェリアは言葉を返した】
【だから、心の内ではどうなのか。本人を除いては誰も知る事はないのだろう。或いは本人ですら理解し切れてはいないのかもしれない】
【オルフェリアはゆっくりと今日までの記憶を読み返していた】
【記憶の終点に辿り着くと同時に、虐殺級の所業を思い出す。オルフェリアには既に一つの確信が生まれていた】
- 91ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/06(日) 01:07:40
随分太っ腹だったみたいにゃあね、貰えるなら貰いたいところではあるにゃ…けど
『この場で最も勇敢だった馬鹿』への手向けだとしても、1億は高すぎるにゃよ…
【今回のインベイドを最も追い詰めた一撃は、あの名も知らぬ狙撃手だとハニヤは考える】
【あの場でじっとしていれば、生きていられた筈なのにそれすらも投げ打ってインベイド打倒に命を散らした…こんな世界でも、そんな馬鹿を弔う奴が1人くらいいたっていい。ハニヤは自分が貰う分け前の半分を彼の墓標代わりにするつもりだった】
潜入組はソドム奪還に向かってるにゃ、多分…もうそろそろ辿り着いているかも
今のミャーらが向かってどうにかなるとも思えんのにゃ、一旦補給する。護衛頼むにゃ
- 92オルフェリア◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 01:19:17
・・・
【────────────それは、一つの夜明けであった】
【〈熱線砲“ソドム”〉から放たれた粒子ビームは、星をも掴みそうな高さまで到達した後に隕石の如く地上に降り注いだ】
【クロノス・インダストリーが築き上げた最新鋭の粒子ビーム兵器は瞬時に砲撃座標の土砂を地下数百mまで消滅させ、地下回廊までの巨大な縦穴を逆に空けた───────その余波で弾け飛んだ空気の爆裂が、約42km離れたコロニー外壁付近の突撃兵級すら一時的に吹き飛ばす】
「オルフェリア・ソローネよりエイダン・リー工学事業部長。並びにレイナード・ハルト少佐へ。本日付けで退職させて頂く事になりますので、後はお願いします」
・・・・・・・・・・・
【虐殺級は、生存していた。翼脚が融解し、外殻も大きく削れていたが、それでも“ゴモラ”は地下までの地層と岩盤のお陰で生き延びた】
【“ソロネ”の推進機構は焼き付いていた。強襲級が金龍のビーム兵器によって関節がイカれたように、それをも上回る熱の余波を間近で受けた“ソロネ”は最早一般的な“スカッド・ソルジャー”と何ら変わりがなかった】
【────────────虐殺級が、思いっ切り仰け反った。地下回廊全体を呑み込むであろうプラズマの輝き。それを前にして、オルフェリアは上に逃げるのではなく下に進み出た】
【献身的な自己犠牲、ではない。二撃目を虐殺級に確実に命中させる為に、オルフェリアは自らの命と残存する戦力を天秤にかけた─────考えるまでもない】
【“ソロネ”──────SIGNAL LOST】
- 93ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 01:19:55
- 94“ゴモラ”◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 01:25:10
【プラズマ砲で対象を排除してから、その酷く巨大な怪獣は更に仰け反って進行方向を反転させた】
【狭い地下回廊では不可能な動きであるが、皮肉にも〈熱線砲“ソドム”〉によって開けられた縦穴が彼にその動作を可能とさせていた】
【目指す先は──────最初の“奈落”。虐殺級と名付けられたそのインベイドは、未だ生還を諦めてはいない。次の発射までに座標を変えればまだ勝ちの目は残っている】
『───────────ォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
【地下回廊内にて立ち塞がる二機のBFを進路上から排除するべく、超大型インベイドは咆哮した】 - 95ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/06(日) 01:29:42
- 96ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 01:32:19
- 97ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 01:41:38
【閃光が視界を埋め尽くし、世界を轟音が焼き払う】
【それから回復した五感の中で、まず働いたのは聴覚だった。虐殺級の叫びを聞きながら、ウルヴィの口元は三日月を描く。回線から“ソロネ”の文字が消えた。その意味を理解しながらも、今は振り払う】
《うん、よろしく。行き先は…アイツまで》
【確かな意志で示すのは、咆哮を上げる虐殺級だ】
『パージします』
【アリオールに搭乗したBESTIAの右腕が、飛んだ。この期に及んで自棄に走ったかと思えば…否】
【背面にマウントされていた巨大なナニカが、右腕のあった場所に接続される】
『不明なアクセスが確認されました
直ちに接続を解除して下さい』
【それは本来、BFに載せるべきではない異物。身の丈以上の鎖鋸が二枚、回転を始めて、唸り吠える】
《対惑星外生物用規格外二連突撃剣》
【純化された暴力の塊を突き出して、虐殺級へと向かう】
- 98エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/06(日) 01:41:47
- 99マルタ◆KPwoT407kA25/04/06(日) 01:43:42
【ヴァルハラテック自治区、アスガルドアカデミー僚内にて】
…ん?ねぇねぇシグレさん、今めっちゃ光らなかった?
「そうね。とても大きな光だった」
【マルタ・アーネルとシグレ・イェンネフェルト。2人の学生は本作戦には参加することが叶わなかった】
【理由は単純、ロスヴァイセとジークルーネのオーバーホールが間に合わなかったからだ。ヴァルハラテックからは『ヴァルキリー』の先行試作型が代わりに何機か向かってはいるが可もなく不可もない戦果であろう】
…誰か死んだのかな
「でしょうね。K.Iも人自連もデスペラードもそりゃあ死ぬわ。インベイドは人間を殺しに来ているもの」
そう、だね。………シグレさん
「なに?」
いや、なんと言いますか…何も出来ないのって、こんなに辛いんだって、思ってさ
「…そうね。ミカエラ博士には馬車馬の如く働いて早く私達のBFを直して貰わないと」
あはは…そうだね
【ミカエラ博士の負担が高すぎるのではないか…とも思ったが、それは捨て置くマルタだった】 - 100ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 01:53:42
- 101ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 02:13:32
- 102龍影25/04/06(日) 07:28:44
- 103ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/06(日) 08:26:10
- 104龍影25/04/06(日) 08:35:26
- 105ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 08:46:31
《……(ソロネの信号消失を確認)》
スイは計算する。彼女があの砲を確実に虐殺級へ撃つために戦い、死んだ可能性を。
そしてもう一つが、前者をこなしながらも、今なおか細い生存の可能性を掴むために、足掻いている可能性を。
論理的に考えればあり得るのは前者だ。だが彼女は、ソロネのパイロットは……。
《(この戦場最大の変数)》
《(貴方の生還を、私は望みます)》
スイは、生還を前提とした戦局計算を続ける。か細い可能性を探り続けることを、人は信じると呼ぶことを知らないままに。
「だい、じょうぶだから……」
そちらのペースで、と。モニターを睨みつけながら、ケイは地獄のような光景を見つめ続ける。
限界を迎えてなお、ギリギリの一線で彼は戦士だった。
- 106エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/06(日) 08:52:11
- 107龍影25/04/06(日) 08:55:58
- 108ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 09:02:21
- 109龍影25/04/06(日) 09:12:41
- 110ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 09:16:52
- 111ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/06(日) 09:19:11
- 112龍影25/04/06(日) 09:20:06
- 113ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 09:24:00
- 114エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/06(日) 09:28:16
- 115ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 09:38:00
「はい」
《エイダン・リーは最も危険な作業をこなしてくれました。その強い心に、敬意を》
ケイの内心を汲んだスイが、千切れ飛んだはずの集中を組み直すのに必死なケイの代弁だった。
昇降機が動けば、蒼風はそのまま離脱するための工程をこなすための準備に入るだろう。
- 116龍影25/04/06(日) 09:41:21
- 117ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/06(日) 09:41:57
- 118ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 09:55:25
- 119レイナード◆PPyRfvMZl625/04/06(日) 10:04:40
【濃紺色のスレイガンは、異星体の夥しい血の痕が広がる深紅の地平に、太陽の黒点じみて佇んでいた】
【回線に乗る声には隠し切れない疲労の色が滲む、最激戦地である地下やコロニー周辺域でなくとも、蛆の様に湧いて出るインベイドを潰しながら命綱となる補給路を確保する】
【クロノスの輸送トラックに載せられた補充用のコア粒子タンクは、いよいよ底を尽きかけていた】
「先に前線に復帰出来る機体から優先補給!損耗の激しい者は射程の長い実包兵器に換装!地形、インベイドの死体を盾に援護射撃に徹しろ!3番隊前に出過ぎだ!奴らは戦術を覚えている!安易に陣形を崩すな!」
(……とは言え、流石にそろそろ限界が近いぞ……!熱線砲奪還組は……!)
【額を伝い流れ落ちて来た汗の雫が目に染み、反射的に片瞳を閉じる、視野が狭まった間隙にスレイガンが手にしたサブマシンガンに小型インベイドが取り付いた震動がコックピットに響き】
【舌打ちをしながら機体の右手から先を切り離す、サーベルの光線はそのインベイドを、サブマシンガンごと切り裂いた】
【補給を終え上がって来たソルジャー部隊と入れ替わりに後方へと退がる、通信が繋がったのはその道中だった】
「どうしたオルフェリア、そちらの戦況を伝えろ、虐殺級の状況は────────────」
【いつもの、定時報告だと、思っていたから、刺々しい声色はあくまでいつも通りに返した】
【水分補給をしようと水のボトルを捻る、いつもの様に、無機質な声が戦況を伝えてくれるものだと思っていたから】
「……?何を言っている、こんなタイミングで……!?おい、オルフェリア!?」
・・・・・・・・・・・・・
【退職願など受け取っていない、背筋を迸る冷たい感触と共に張り上げようとした怒声は渇いた喉奥に張り付いて】
【直後、大地を焼き焦がさんとばかりの熱光が弾けた】
「────────────馬鹿野郎ッッッ!!!!!!」
- 120逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 10:47:17
「こっちの補給は最低限だけ残して!! 残りは奈落からの防衛線に回して!!」
『人自連の規格ですよ!? あっちのに合うかどうか……!!』
「先代が月風を開発する時、機体パーツ情報を取引にしたのは何のためだ!! この時のためだろう!やれ!!」
まだ被害の復旧が進んでいない後方司令部から、逆巻重工の粒子補充タンクや機体装備が奈落防衛線側の集積所への全力で走り始める。
K.I社側が拒んだとしても、カンナは受け入れさせるつもりだった。
なにせ逆巻重工製はクロノス社製とも補給規格がギリギリ合う設計ラインだ。 あちらにとってもありがたいはず。
そう思っていたカンナの真上を、熱線砲が奈落へ向けて飛び出していく。
「やった……!!」
砲台の奪還に成功した。砲撃が開始された。
僅かとはいえこれで戦局は好転するだろう……あとは、"統率個体"を撃破するだけだ。
「あとはもう信じるしかない」
人事は尽くされ、天命は最大限の味方になった。
(あとは、腹の底から力を絞り出しきったほうが勝ちになる)
カンナにもう、できることはなかった。
- 121ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 12:04:55
- 122“ゴモラ”◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 12:21:35
【“奈落”から約42km離れた地下数百mの地下回廊にて、“ゴモラ”は〈熱線砲“ソドム”〉の第二射よりも疾く退避を完了させる為にその強靭な三肢で地下回廊を這って前進しようとしていた】
・・・
【───────────────ゴポッ、という絶望的な音色が背後で響いている。虐殺級の放ったプラズマ砲の余波で岩盤が沸騰し、融解した結果として溶岩がゆっくりと流れていた】
『───────ォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!』
【“ゴモラ”という機体に搭載された特別な諸機能は全て停止していた。それでも約40mにも及ぶ巨躯が残っており、それを前進させるだけの膂力がある】
【〈熱線砲“ソドム”〉が着弾するまでの十数秒にも満たない時間、地下回廊を埋め尽くすような虐殺級の前進を阻止し続けなければならず───────蒸発したオルフェリアの戦力分析は、それが可能な戦力が地下回廊には揃っていると結論していた】
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!』
【超大型インベイドの眼球を超えて、その顎門全体を鎖鋸が切り裂く。激痛に苛まれながらも無感情な外星体はたまらない。身体の奥深くに刃を突き込まれて尚も前進し、より深く刺さるが気にしない】
- 123逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 12:31:40
「金龍? たしか……」
通信を聞き、記憶を引っ張り出す。確かクロノス社の、子会社だったかの重役の子。
少なくとも自分より年下だとは覚えていた。 しかし、BFパイロットをしているとは……
彼はどうやら、才能があった側なのだろう。
「支援は与えることは可能だ。補給車もそちらに行っている」
「ただし、君の提案している『虐殺級』を一度で殺せる兵装というのは、本来ストラクチャが持つべき武装だ」
僅かな嫉妬心が、カンナの声を少しだけ固くしたことに彼女自身気づいた。
「結論だけ言うとだ。その手の規格外兵装は私達の手元には存在していない……すまないね」
少し息を吐いて声色を戻そうとする口からは悔しさが漏れ、止まらない。
「だからこれは……別案と思って聞いて欲しい」
「我が社の月風系が装備可能な無反動滑空砲、ビームライフル、シールド内蔵装備……」
「その他弾薬類はもうそちらに回した――――自由に使って欲しい」
「ただし。警告するが……既にソドムの第二射体制は始まっている」
「君がやるべきは虐殺級の撃破ではなく、その他多数の有象無象を仲間とともに蹴散らすことだ」
「地下のことに介入するのはやめておけ」
心からの忠告であり、警告だった。 死を覚悟していくことと。
自分ならまぁできる、と漫然と思うまま行くのは違う。
カンナの目線で、金龍が自分の死を意識しているのかはわからなかったからこそ。警告した。
- 124ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 12:37:00
《ガッぁ…あゝァあ亜ぁアああアア!!!》
【行かせるものか、生かしてたまるか。ウルヴィは無意識に咆えていた。或いは痛みに耐え切れずに出た悲鳴なのかもしれない。熱暴走寸前まで出力を強制的に引き上げられたジェネレータが機体を焼くが、BESTIAはそれを無視してスラスターから限界以上の炎を噴き出す】
【突き刺さる鎖鋸を、より押し込む。命への執念まるごと、その肉を死ぬまで引き裂き続けるべく、惑星外生物を殺し尽くすためだけに造られた刃が駆動する】
【ウルヴィはソドムによる二射を、そもそも考慮していなかった。付き合わせたランセルも生きて帰さねばならないし、自分が死ぬつもりも無い。死線に命を投げ捨ててでも生き残るのが、獣の作法なのだから】
- 125ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 12:38:20
- 126奈落迎撃戦◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 12:41:34
【────────────“統率個体”の危機に、奈落から湧き出るインベイドの様子が一変する】
【戦術的に規則正しく活動していた無数の群体が無秩序な暴走状態に陥る。突撃兵級も、射撃級も、重装兵級も、騎兵級も、投射機級も、全てが自滅を厭わない殲滅行動を開始する】
『撃て!近寄らせるな!中距離からの射撃に専念し、敵を留め─────何だ、これは!?』
【─────────────────ギャア、と小さな音が響いた。再び響く。再び。再び。再び。続々と小さな音が重なって一つの大きな轟音の津波となる】
・・
【インベイドが自爆した。体内のコア粒子を意図的に過剰臨界させて突撃兵級が弾け飛ぶ。BFの装甲ですら傷付ける刃殻がゲリラ豪雨の如き勢いで前線に降り注ぎ、一瞬にして地獄絵図が拡大してゆく】
【一体一体の投射機級が1秒に10体のペースで突撃兵級を防衛線の内側に投げ込んで、空中で突撃兵級が爆散して破片を撒き散らす。雨。雨。雨!砲撃と破片の雨!遮二無二に騎兵級が隊列すら組まずに前に突き進み巻き添えを気にせずに炸裂し続ける破片の雨の中を突っ切る】
【無謀な突撃をした騎兵級損耗率は味方からの被害だけでも一割にも及ぶだろう。しかしそうだとしても足を止めずに特攻する】
【火力密度が足りなかった。“ゴモラ”は第二射までの十数秒という猶予を活かし、生じた僅かな意識の隙を最大限に活かすべく破滅の突撃令を命じた】
- 127逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 12:46:51
「頭が柔らかいことと、現実的判断は違うよ。金龍君」
「君には君の適材適所がある……君の機体がおそらくソロネ、よしんば基準を下げても蒼風と同じ速度で飛べないように」
「蒼風は君の機体のような重装甲と面制圧力をもっていない」
諭すような口調だった。
「君が君のいるべき場所にいなければ、死人が増えるだけだ……分かってくれ」
「詫びになるが、装備類の弾薬は全て無料だ。使い切りたまえよ?」
説教臭くなってしまったな、とカンナは金龍に詫びた。
蒼風に乗る少年は物分りが良すぎたが、まさかあそこまでの無茶をするとは思っていなかった。
パイロットという人種と。コンストラクターという人種の視点の違いなのかもしれない。
- 128ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 12:54:34
(ソドムの性能とこの現状…二度目が来るか!)
【未だ尚歩みを止めない化け物と、それを一度焼いた光の開けた穴を見やる】
(これ以上ここに居ては、いや、確証が得られない)
【今、一番速くゴモラを止められる方法。それは今、一番ゴモラを仕留めれる武器を使う事。アリオールにはそれは無い。だができる事は在る】
『手伝いますよ!!』
【BESTIAへ近づき、その鎖鋸を共に押し込む。長時間の噴射に向かないエンジン?構うものか。第一今は時間がない。ならば瞬間推力も役に立つ筈】
「言っただろランセル!”全力で”と!!」
【焼け石に水だろうが、独立起動したOEでも裂けた肉に弾丸を叩き込む。使える力は全て使う】
- 129ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 13:05:19
(聞かれてた......)
【バツが悪そうな顔になる】
OKOK、そこまで太っ腹なオファーを受けたら、文句の付け所が無いな
メビ
『ビームライフルとシールド、シールドに至ってはオプションが盛り沢山です』
良いね〜隠し武器って俺そういうの大好物〜
ほんじゃ......最後の出撃と行きますか!
- 130“ゴモラ”◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 13:07:10
『────────────────ォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!』
【──────────────ギチリ、と奥深くに押し込まれた鎖鋸が虐殺級の脳神経を切断する。全身の為に地面に踏み締めていた右後脚が脱力して頽れて、推進力が弱まる】
【二機程度のBFとは比べ物にならない程の推進力を備えていた筈の“ゴモラ”は、しかし度重なる戦闘と攻撃で大きく損傷していた。前進の為に必要な後脚は奈落の底へと叩き落とされる際に一本が千切れ、もう一本も機能停止────────そんな状態に陥った無感情な侵略者が、感情を爆発させた人間に勝てる筈もない】
【不可解。その疑問はハニヤの手で解体された合成級の最期の疑問と同型であった。何の変数が戦場に介入しているのか、無感情な“ゴモラ”には理解不能である】
・・・
【────────────────十三秒が経過していた。新たな“太陽”が、天に昇る】
- 131ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 13:21:26
- 132二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 13:29:38
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- 133逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 13:32:46
「二発目が行ったか……」
熱線砲を見送って、息を吐く。 既に前線はパンク寸前どころかところどころ断裂が起きている……インベイドがまた戦術を変えたためだ。
このままでは全てが保たない。
もし仮にあの二射目が外れた場合、"統率個体"となる虐殺級は射程外からロスト。
北方戦線以上の地獄がこの大陸を覆うことは想像に固くない。
「オルフェリア。ナギリ・ランセル。ウルヴィ……」
カンナが読み上げた名前はいずれも、この戦場の中で最上位のパイロットたちだ。
地下にいけるBFとしても、文字通りの最適解。
いや、むしろこの最上位のパイロットたちの直下にもエースたちが揃っていた事自体が奇跡。
これ以上のカードをめくることは人類には難しいだろう。
「頼む、生き残ってくれ……!!」
”統率個体”一体のためだけに彼らが死ぬなど、等価交換としても割に合わなさすぎるのだ。
二射目の範囲に彼女らがいないことを、カンナは強く願った。
太陽のような光が、後方司令部からも見えた。
- 134ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 13:39:23
- 135ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 13:44:30
- 136エピローグ◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 13:48:02
・・・・・・・・・
【────────────太陽が、墜ちてくる】
【そう錯覚してしまうだけの極光が一射目によって出来上がった縦穴に降り注ぎ、より奥深くまで縦穴を拡張すると共に熱の余波を撒き散らす】
【地下回廊を、閃熱が逆流する。濁流の如き人類の熱量が地下回廊を塞いでいた“ゴモラ”の肉体を一瞬にして融解させ尽くした】
【─────────熱の余波は、“ゴモラ”を融解させて。しかしそこで止まった。虐殺級のその巨体は水のようになるまで溶け落ちて、そして地下回廊内を緩やかに流れていった】
【奈落の底に差し込んだ月光が、祝福するかの如く穏やかであった】
- 137ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 14:00:00
メビ、あの光は一体なんだ
『座標特定......照合......どうやらランセルさん達がゴモラを打ち倒したようです』
マ?
『そのマです』
......それはいい知らせだな! こっちもとっとと終わらせるか!
- 138ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 14:05:28
《ァ……ん…waかtttた》
【大きく名前を呼ばれて、獣の奥にある理性、人の自我が再起する。BESTIAが“ゴモラ”の外殻の一部を持ちながら、二機は太陽の着弾地点から距離を取って】
【光が、五感を飲み込む】
《………たusかっ……た》
【獣に身を任せていれば、虐殺級と共に蒸発だっただろう。多大なダメージを負いながらも、生き残った事実を噛み締めると、ランセルに生き残らされた事に感謝する】
【『エルガレイオン』によるOSの乗っ取りを停止、辛うじて形を残す規格外の武器も沈黙。視界が墨汁を溢したように滲んで、呼吸する度に肺が鋭く刺される。無理をし過ぎた】
《帰り、も──》
【アリオールに向けたBESTIAからの回線は、ドスンと何かが落ちた音と共に沈黙する。回線が切れたわけではなく、繋がったままの沈黙だ】
- 139エピローグ◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 14:05:56
【同時刻、〈熱線砲“ソドム”〉による虐殺級の撃破によって自滅を厭わぬ殲滅行動を開始していたインベイドは“統率個体”から開放された】
【烏合の衆となったインベイド、合同部隊が殲滅を終えるまで二時間も経たなかった】
【────────こうして、G-3コロニー陥落を発端とする『地底事変』は終わりを迎えた】
【バルトス陸軍少将含む一個機甲師団、マキシム軍団及びマキシム准将、オルフェリア・ソローネ、キルケー部隊、そして合同作戦に参加したBFの七割のロストが最終的な被害状況となった】
【虐殺級インベイドによって極東からG-3コロニーまでを繋ぐ巨大な大陸横断地下回廊は暫定的に“ラビリンス”と呼称され、定期的に〈熱線砲“ソドム”〉による一掃と奈落から湧き出るインベイドの撃退業務はK.I社にコロニー住民の労働義務強化策に踏み切らせた】
【〈熱線砲“ソドム”〉の定期的運用の為のコア鉱石需要の増大、消滅したBF部隊再建の為の臨時案ではあったが、結果的にコロニー内部の反企業勢力と親人自連勢力を勢い付かせる結果となった】
【一方で〈熱線砲“ソドム”〉の威力を目の当たりにした人自連内部にも震撼が走った。K.I社の技術力の優越は知られていたものの、短距離弾道ミサイルに匹敵する射程を有する超巨大兵器は安全保障の観点で大きな問題となった】
【────────ビーム兵器を無効化する装甲を有すると判明したサイファーカルトに極めて高額の懸賞金がかけられたのも、その一環である】
【またデスペラードの環境には変化が起きた。定期的に旧G-3コロニーに押し寄せるインベイドを掃討する過程で多くのインベイド素材が供給され、それまでは回収が困難であったインベイド素材の価格が低下したのだ】
【前線でインベイドの素材を回収するには戦線を前に押し返す必要があるが、旧G-3コロニー跡ならば〈熱線砲“ソドム”〉による一掃後に回収すれば安全且つ定期的に回収できる。そのような理屈だ】 - 140エピローグ◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 14:07:24
【ここは、3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦う世界である】
- 141ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 14:16:29
「――――」
ソドム二射目が発射されたあとの後方司令部に、蒼風が着地した。
「龍影、降りて……」
そのまま、後部席に座る女性に降りることを促して。
彼女が降りたのを確認したあと。
ケイ自身も足を引っ掛ける形のワイヤーを利用して降りる。
地獄のソドム奪還作戦に参加し、生き残った精鋭のBF乗り達の中でも、五体満足な人達がワッ!と互いの肩を抱き合い喜ぶところを見て
一歩を踏み出し。
「あ」
ぐら、と地面に倒れた。
(あれ? おかしい……体が、うごか……)
《ケイ・サヤギリ。バイタル急変。意識レベル急低下》
《昏倒です。誰でもいいので医務室へ運んでください》
ケイの電子音声だけが、声を響かせていた。
合同部隊によるインベイド残党殲滅作戦に、蒼風の姿が現れることはなかった。
- 142ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 14:16:48
- 143ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 14:31:37
- 144ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 14:43:57
- 145レイナード◆PPyRfvMZl625/04/06(日) 14:50:34
(1/4)
「────────────報告書を御覧になられれば分かる通り、今回の戦場では、新種のインベイドが多数確認されています」
【空中に浮かぶ複数枚のホログラフィック・モニター、それのみを光源とした薄暗い室内で、一人の男がデスクと向かい合っている】
【目の下には深い深い“くま”が刻まれていて、それは男が酷い疲労困憊状態にあることを示す何よりのサインだった】
「その場凌ぎの数合わせじゃない、それぞれが我々の兵器に適応し、対処し、思考する、これは奴らの“進化”です。
奴らは学習しています、戦いを通じて人類の兵器を取り込み、その長所と短所を理解して、あまつさえ戦略を立てる知能すら得始めている……」
【モニターの一枚一枚には、それぞれに異なるスーツ姿の役員達が映し出されていて】
【円の様に浮かび上がった中心に、様子の異なる別のホログラム、文面の一番始めには『企業間紛争緊急停止案』という仰々しい文字列が並ぶ】
・・・・
「ここ数年という短い期間で……恐るべき速度で進化したとしか言い様がありません。
分かりませんか、同族同士で争っている場合ではない、我らが覇権企業として成すべきことは人類自由連盟と一時であっても停戦し、協力してインベイドへの対抗策を────────────」
『レイナード少佐、君はいつ理事会に意見出来る立場になった?』
「……何ですと?」 - 146レイナード◆PPyRfvMZl625/04/06(日) 14:50:53
(2/4)
【神経質な声色で、己が戦場で見たインベイドの進化を語る男の言葉を遮ったのは、恰幅の良い髭面の男性役員だった】
【資料の文面を今にも説明しようとしていた掌はぴたりと空中で静止する────────────何故、遮られたのか】
【分からない、という様子で片眉を上げて】
『出席を許している理由を履き違えてはならんな、報告書はもちろん読ませてもらったとも。
G-3コロニー及び戦略兵器ソドムの奪還、虐殺級インベイドの討伐、いち方面軍に匹敵する多数のインベイドを掃討、大変な戦果だ。
君は代理指揮官としての役割を十二分に果たしたと言える、本来は昇進や権限の拡大も考えるところだが』
『しかし、立場上は上官に当たる勞金龍大佐を飛ばして指揮を執ったのは重大な越権行為だ、その上当社にとって重大な戦力である“ソロネ”をロスト、キルケー部隊も壊滅状態に陥った。
……そうした汚点にも、功績との差し引きを考え目を瞑ろうと言う我々の温情だ、この上大局を見た気になって意見を通そうというのは些か業突くというものではないかな』
・・・・
【────────────嗚呼、そうか、コイツらは】
「私はッッ!私自身の出世や云々の為に申している訳ではないッッ!人類の、危急存亡の時だと言っているのです!
この度の戦いで我々はマキシム准将閣下を始めとした多くの優秀な将兵を失いました!また次、いつインベイドの大規模侵攻があるか分からないというこの状態で、下らぬ内輪揉めでこれ以上戦力を消耗する理が何処にあると言うのでしょう!
人類は団結せねばならんのです!クロノス・インダストリーの技術供与があれば人類自由連盟の物量と勢力規模はそのまま大きな戦力に転換され……!」
『口を慎め少佐!!これ以上の妄言は看過出来んぞ!!たかがいち地方の部隊指揮を任されているだけのBFパイロットが、企業戦略に嘴を挟むのか!!』
【思わず張り上げた声は枯れていた、畳み掛ける怒声、十分な酸素を取り込めずに肺は悲鳴を上げている】
【僅かな時間息継ぎをして、もう一度……そうとする前に再び役員の大声が訴えを妨げる、机を拳が叩き付けるけたたましい物音が暗い空間に響き渡った】 - 147レイナード◆PPyRfvMZl625/04/06(日) 14:51:23
(3/4)
『全体の戦況は依然として我々が優勢だ!コロニーの防衛システムは維持されている!今回の様な奇襲戦術はレアケースだからこそ成立するのだ、再現性のあるものではない!』
『停戦、停戦と気軽に言ってくれるがね……そもそも我々と彼奴らが敵対関係にあるのは、大戦初期に彼奴らがクロノス・インダストリーの傘下企業に降ることを良しとしなかったからだ』
『そうだ、企業戦争を始めた責は我々には無い、人自連の姿勢に変わりはあるまいよ、譲歩してやらねばならん理由が何処にある?』
『団結しようと言うのならば、人自連が解散し我らに協力をするのが筋というものだな』
『少しでも甘さを見せてみろ!逆巻やヴァルハラテックの女狐連中に寝首を掻かれるのがオチだ!そうなればクロノスは覇権企業の座から陥落するかもしれんのだぞ!』
『そうなった時、君が責任を取れるというのならば良いのだがね少佐』
・・・・・・・・・・
『とにかく、報告書は受領するが、こちらの企業間紛争緊急停止案は無かったものとする』
『まったくくだらん話に時間を取られた、我々には他にも重大な議題が山ほどあるというのに……』
『まぁまぁそれくらいに……厳しい戦いだったからね、疲れているのだろう、まずはしっかりと休みたまえ少佐、自分を労うことも大切だよ』
『さて、話を戻しましょう、先週予算案が通ったG-3コロニーの再建計画についてですが────────────』 - 148レイナード◆PPyRfvMZl625/04/06(日) 14:51:49
(4/4)
【────────────幾つも浮かんでいたモニターは、いつしか一枚のみを残して消え去っていた】
【己が提出した議案を映し出す、一層暗い一枚のみ】
【愕然とした表情でそれを睨み付けながら】
「………………………………、ッッッッッ!!」
【公務員はデスクに置かれていた小瓶を手に取った、震える手で、蓋を回す】
【錠剤を掌に落とし】
【落とし】
【落とし】
「……このクソッッッッタレがッッッッ!!!!!!」
【握り締めた掌が資料の山を、ホログラム投影機を、叩き落とした】 - 149ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 14:55:31
- 150ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 14:56:34
ったく、親分が死んだってのに次から次へと.......
『これぐらいお茶の子さいさいでは? 弾はまだまだ有りますよ』
それもそうだが、いかんせん目がそろそろキツくてな......
【精神的疲労が蓄積し、メビの発破をいつものように覇気を持って返せず、サイバネ化しているはずの目に違和感を覚える】
【ただの錯覚であるのは理解していても、それを無視する事はできなかった】
「大佐ー! 俺達も加勢しますぜ!」
「あなたの稼いだ時間のお陰で復帰出来たんだ! 恩返しさせて下さい! 」
【するとそこへ、ベースキャンプで補修を受けてた兵士が2人やって来る】
(へへっ......ようやく増援が来たか......)
そいつは嬉しい事言ってくれるね......
だったら逆巻CEOの奢りだ! 全弾インベイドにご馳走してやれ!
「「了解!」」 - 151エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/06(日) 14:58:47
「体力回復に30分使う。それまでに機体の整備をできる限りでいいから頼む。それとライフルのチャージ、展開型シールドの補充を───」
【エイダンは後方司令部で待機していた整備班に『Syringe's』の兵装更新を急がせていた】
【ビーム砲が一つ使えなくなっただけで、戦闘継続自体は可能なのだ。体力を回復したら、一刻も早く残党殲滅に参加しなくてはならない】
【───背後でドサリと何かが……否、誰かが倒れる音がした。次いで、この数時間ですっかり聞き馴染んだAIの電子音声が耳に入る】
「ッ救護班、急患だ!すぐに彼を医務室へ運んでくれ!それと、逆巻重工CEOに御社のパイロットが倒れたと連絡を!」
【振り返ると、そこでは一人の少年が滂沱の汗を流しながら地面に倒れ伏していた。即座に潤したばかりの喉を張り上げて指示を飛ばし、彼をストレッチャーに運ばせる】
「……安全圏に入ったタイミングで糸が切れたか。全く、つくづく優秀なパイロットだ」
【それを見送って、先ほど蓋を開けた飲料ゼリーに口をつけながら、感心したように呟いた】
- 152ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 15:04:38
- 153逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 15:16:26
[エピローグ sideカンナ 1/◯]
「でさー……やっぱりこれ、通らない?」
カンナは、G-3攻略作戦終了後のデブリーフィングが始まるより前
ソドム奪還作戦がなし崩し的に始まった時点で、カンナは密室で人自連全体へある提案を提出していた。
――――クロノス社との一時休戦。そしてインベイドに占領された地域の奪還作戦だ。
「"統率個体"に、新型のインベイド。それとサイファーカルト……」
「はっきり言うけど。このままだとこの大陸自体が北方戦線より酷い地獄になるよ?」
《却下する。あの熱線砲ソドムとやらが、我々の元に撃たれない保証がないのだから》
カンナの目は冷たい。 分かっていることを、またもや言われたのだ。
カンナは既にクロノス社へ【逆巻重工のみ】という条件でクロノス社との武力干渉。衝突を避ける試みを行っていた。
それはある意味で一部が功を奏し、一部は悪い影響をもたらす。
功を奏した部分は――――過去、北方戦線への月風実働部隊の派遣でクロノス社とも信頼を稼いでいたこと。
悪い影響は――――逆巻重工はクロノス社と内通しているのではないか?という疑いだ。
それは一面でもって正しい。 実際、逆巻重工は当時試作も試作だった月風という当時の最新鋭機パーツの根幹……関節系データをビーム兵器技術、及び補給規格互換との交換の対価として提出していたのだから。
だが、このビーム兵器技術がなければ人自連のビーム兵器、ひいてはコア粒子技術の進歩はなかったと断言できるのがカンナからすれば。それは裏切りと言うよりも協力。と呼ぶべき取引と断言し続けていた。 - 154ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 15:19:24
- 155逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 15:29:27
[エピローグ sideカンナ 2/◯]
《何より、貴様は今回の件に際して半ば脅す勢いで依頼を発行したな》
《その結果、人自連全体の戦力がクロノス社のためだけに損耗させられたのだぞ!!》
「人類のための損耗だ。履き違えるなよ」
カンナの口調が鋭くなった。
いい加減、老人と老婆共の戯言にも飽きてきた。 彼らは人類という共同体全体の未来を共有できていない。
視座が違うというのは、まさにこのことだった。
だから、目を覚まさせてやると思った。
最前線で飛ぶ蒼風とチャオレン、ウィルヘルミナ。そして更に前を行くシリンシーズ。勢力を超えて団結し、突破口を作るBF達の映像を叩きつけた。
映像は切り替わり。虐殺級と戦うソロネや多数の機体……サンダータイガーの規格外兵装。
「さて、ここに支援していない企業たちもいるだろうから言っておくけど」
「私達の蒼風と一緒に飛んでいるのはクロノス社の機体だ」
「彼らに悪意があれば。既に蒼風は墜ちている」
蒼風を庇うスレイガンがいた。
「ヴァルハラテック機の不参加は悲しいことだけどさ……この映像の尊さがわからないなら。今すぐ若手に譲りなよ」
《貴様……!!》
刺激はあった、と思う。だが老人と老婆の目は盲いているとカンナは確信した。
ヴァルハラテックとNA社は……映像に動きがない。 様子見だろうか。 - 156ミハエル◆j28rRKKOSY25/04/06(日) 15:29:30
- 157ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 15:34:28
- 158逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 15:36:37
[エピローグ sideカンナ 3/◯]
だが、ヴァルハラテックとNA社側の映像が沈黙しているということは。
そこに価値があるとカンナは判断した。ナニカを。命の輝きと呼ぶべきものを見てくれていると。
カンナは願う。
「ま、この際言っておくけど――――クロノス社はスレイガンのパーツを依頼者に提供する報酬だ」
そして、その提供社の中には蒼風のパイロット。ケイ・サヤギリも含まれている。
「一人勝ちさせてもらうよ。悪いね♪」
《貴様アアアアアア!!!》
誰かが吠えた。 アレは確かSHINSEIのカスタムパーツの一部を提供している企業だったか。
スレイガン打倒を吠えていたくせに、プライドにかまけて自社傭兵を出さないとはお笑い草だ。
逆巻重工はスレイガンのパーツを得て、更に躍進する。
SHINSEI超えは難しいだろうが、カスタムパーツとして一部製品が使われる程度に流通してくれれば御の字といえる。 - 159ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 15:40:45
- 160東方大陸軍司令長官◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 15:42:50
・・・・・・・・
「─────ソローネ大将閣下。G-3コロニー陥落に対して、貴官は如何なる形で責任を取るおつもりでしょうか?」
「嘆かわしい態度だな、リアルベルグ准将。我々が今最優先で考えるべき事案は、此度の虐殺級が作り上げた地下回廊への対処法だろうに」
【やれやれと呆れるようにその首を振って、執務室の椅子に座る壮年の男性は〈熱線砲“ソドム”〉奪還の報告を聞いて真っ先に駆け付けた若い准将の態度を嘆いた───────マキシムとは比べ物にならない無能さだ、と】
「 しかしバルトス少将閣下とマキシムの失態、それから御息女の戦死にキルケー部隊の壊滅は貴官の指揮責任に帰結するのでは?」
「それで私を左遷させて後釜に君が座る魂胆かね?あぁ、返事は要らないよ。その顔を見れば分かる、大将という地位は高価なアクセサリーなどではないのだが、近頃はそれを理解していない者が多い」
【執務室の椅子からゆっくりと立ち上がる東方大陸軍司令長官は、前と比べて一回り老いた様だった】
「“安全”、というのは遅効性の毒だな。理事会のお偉方も〈熱線砲〉の奪還前までは私の判断に文句の一つも挟まなかったが、奪還した直後には責任追及の嵐だ──────全く全く、奪還前に署名させておいていなければ今頃は弾劾裁判だったな。お陰でスレイガンの“正規品”を流出させてもお咎めなしだ」
「ひ、──────閣下にK.Iの社員としての誇りはないのですか!?企業秘密を漏出など、そんな真似が許されて」
「卑怯者、と口にしなかったのは褒めてやる。許可については理事会が保障してくれている。“コネ”で成り上がった貴官は知らないのかもしれないが、根回しというのは身の安全を守る上で重要なのだよ」
【リアルベルク准将に背中を向けて、軍組織の中枢に潜り込んだ元“スカッド・ソルジャー”の操縦士であった老将は笑った】 - 161逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 15:48:52
[エピローグ sideカンナ 4/4]
「まぁ遅いか速いかさ。私達の行動は、巡り巡って人自連の利益になる」
《それは、そうだが……》
会議が黙りこくった。 ひとまずの追求合戦は、逆巻重工の勝ちになるだろう。
できればこのまま、対インベイドを重点する傭兵たちの信頼も得たい。
「まぁ別に、蹴るなら蹴るでいいさ。企業間抗争も勝手にすれば良い」
「でも、いつも通り私達逆巻重工は非干渉を貫かせてもらうし、クロノス社のコロニーにも自社の実働部隊は派遣させてもらう」
「私達の敵はインベイドだ。クロノスを敵対視し続ければ、後で痛い目を見るよ」
そう言って、逆巻カンナは発言を締めくくった。
これで少しでも老人たちに意識の変化があれば良いのだが、しばらくは望み薄だろう。
なに、ゆっくりと進めれば良い。 危機感が募れば人は団結する。
人自連のそういう気質は、カンナの好むところだ。 満足そうに会議室を出て。
『CEO!!! 蒼風のパイロットが昏倒状態に!!』
「はぁ!?!?!」
彼女は、会議中の余裕そうな顔を一瞬で引っ剥がされたのだった。 - 162ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 15:49:12
- 163東方大陸軍司令長官◆OXAm1h6odk25/04/06(日) 16:07:15
(……………全く。生き残る側は損だな)
【一時的に手を結び、対地級を撃墜した人自連所属の『月風』乗り。或いは共に無数の戦場を駆け抜け無数のインベイドを骸に変えたクロノス軍の戦友達を思い出す】
【彼らは正しくインベイドの脅威を認識しており、そして正しく認識する様な環境にいたからこそ、長生きする事が出来なかった】
【クロノス社も、人自連も、和平の提案を受け入れはしないだろう。それは老将にとって当然の結論であった】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【強大な勢力を保っている組織とは、インベイドの被害を大きく受けていない組織である】
「………………閣下が、重傷を負えば、業務は放棄せざるを得なくなりますよね」
「馬鹿を言え。頭が働くのなら病院のベッドだろうと働く───────リアルベルグ准将。短絡的な手段には出るのは、やめておけ。拳銃を使うのも、やめておけ」
【そんな短絡的な手段しか取れないから、同じ権力闘争でも次元が違う密度と深さの伏魔殿たる企業内派閥で出世が難しいのだと】
【───────己に銃を向ける彼に、忠告する】
「人を撃った事もないのだろう」
「黙れッ!」
【破裂音がして、それから熱い血潮が腹部から流れ出るのを感じる。生命の炎が人体という匣から零れ落ちるようにして脱落する─────ボロニアス・ソローネはため息を吐いた】
「腹部は致命傷だ。手脚の先を狙えるだけの腕前がなかったから的の大きい胴体を狙ったな。基礎的な射撃訓練すら怠けおって、一体どうやって士官学校を卒業したのだ……………………………………………………」
【諦めに満ちた嘆息を最後に漏らして、老将は沈黙した】
【クロノス・インダストリー、東方大陸軍司令長官ボロニアス・ソローネ───────暗殺により、死亡】
- 164ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/06(日) 16:07:49
【THUWAM】
【数々の激戦から3時間が経過した今、チョコマカと動き回ったインベイドがピタリと止まる】
『先ほど撃ったのが最後の弾と最後の敵性反応です。大佐、本日も素晴らしき戦いぶりでしたよ』
……よし! 終わり! 終わった! 他2人! 生きてるか!?
【精魂出せる物を全て出し切ったが、金龍は疲れているどころか元気であった】
【俗に言う“ハイになった”状態である。普段の任務が時間単位で行われる事が無かったため、自己防衛的な何かが働いた結果なのだろう】
「生きてます……」
「俺もなんとか……」
よしっ! それじゃ家に帰ったら10先だ! 今夜は寝かさないからなワッハッハッハ!!!! - 165ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 16:15:12
- 166ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 16:24:05
- 167ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 16:28:50
- 168ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 16:40:45
- 169ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 16:46:09
- 170ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 16:49:35
- 171ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 17:10:26
「はじ、め…まして?」
【コンピュータ?目の前の…滲んでよく見えないけど、この人?人?とウルヴィは困惑する】
【そしてランセルの声が、その勘違いを正した。二人(一人と一機?)の内容を、火傷したように疼く脳で咀嚼して、把握する】
「ありがと、う…ランセル」
【ランセルへと感謝を告げてから、右手で身体を起こそうとし…動かないので、裂けるような痛みがする左手を使って上体を起こす】
・・・・・・・
「虐殺級は…オルフェリアが、倒した」
【ようやく喋るのに慣れてきた口で、SUIの言葉をやや訂正を入れつつも肯定する。これをランセルが面白くないと言えば、ウルヴィはすぐに『オルフェリアとランセルが』へと訂正するだろう】
- 172ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 17:19:50
- 173ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 17:20:10
- 174ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 17:23:24
- 175ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 17:25:30
- 176ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 17:28:01
- 177ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 17:31:26
- 178龍影25/04/06(日) 17:39:04
「ん、ありがと…」
龍影はケイにお礼言う。直後、緊張の糸が切れたのかケイが倒れた。
「ケイ?!」
蒼風から降りて駆け寄る。少年は連続的な異常の無い呼吸をしている。寝てしまったようだった。龍影は安堵した。
「お疲れ様、ケイ。」
ストレッチャーが来るまで龍影は膝枕をして、少年の頭を撫でた。
「おい。なにいい感じで終わろとしている。」
整備長の声だ。顔が見れない。
「チャオレン…どうしたって?」
圧が上がる。
「王、ちゃんと話してくれ。」
少し声が震えている。
龍影は顔を上げる。整備長はくしゃくしゃと涙を流していた。
「整備長…」
龍影は何というべきか答えを探していると
「お帰り、龍影。」
整備長は娘のように接していた龍影の帰投を泣いて喜んだ。
「ただいま…」
龍影は父親のように慕う整備長に言った。
- 179ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 17:39:16
- 180ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 17:59:55
- 181ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 18:09:48
- 182胡散臭い女史◆KPwoT407kA25/04/06(日) 18:10:31
お疲れちゃ〜〜〜ん…
【帽子を目深に被った女性傭兵らしき人物が、自身の設営ベースに帰投する2機のBFに労いの言葉をかける】
大規模な戦いだったねぇ…ここまでの大事なら何がなんでも試作機の修繕を済ましておくべきだったかなー
《その事につきましてですが、は…『プロフェッサー』》
【うちの一機のパイロットが神経接続を解除し、機体から降りる】
「確認できたインベイドの中に、粒子攻撃を極端に低減する機構が散見されました。07と09の基本装備ではこれらの対処に手間取っていた可能性が高いものと…最悪、撃墜の可能性も」
ゲ、なんそれキモ
【今後はそういったインベイド対策も念頭に入れる必要がある。】
【─────ところで先日、ヴァルハラテック倉庫から量産予定の新型サンプルが2機盗まれた。】
【『ワーグナーモデル』の系譜を継ぎながらも整備性を高めた最新BF『ヴァルキリー』。装甲こそ全くの別物、メインフレームに比べて、デスペラードっぽく酷く低品質に見受けられるものなっているが、駆動系を見ればそれが件の盗品であることは一目瞭然だろう。例えば…】
スレイガンみたいな時代遅れの機体、うちでリバースエンジニアリングしてもどうにもなんないんだけどねぇ…ま、貰えるもんは貰っちゃいましょ
【『ヴァルハラテック最新機強奪事件』という自作自演の茶番の首謀者、ミカエラ・オルソン辺りなどには。】 - 183ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 18:13:49
- 184ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 18:20:30
- 185ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 18:27:57
- 186龍影25/04/06(日) 18:32:32
- 187ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 18:37:44
- 188ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 19:09:05
【嘆息の追及すらされず、真っ直ぐな声(と言ってもそれは端末から発せられるものなのだろうが)で続けろ、と言われれば、ウルヴィは困ってしまう】
【二度目のため息は、SUIへの降参を意味して──】
「綺麗で、強かった。刃…みたいに」
【ぽつりぽつりと、持ち得る言葉を紡ぐ】
「鋭くて、神秘的だった」
【ウルヴィから見たオルフェリアは、刃だった。より能く敵を断つ力と、流星のように閃く美。その融合の極地の戦いを見た】
「そして…折れない、曲がりもしない」
【ここからは僅かな時を共にした戦友の中に、ウルヴィが見出した部分】
「曇り無く、澄んでた」
【全ての行動に、迷いが無かった。必要だと判断すれば、実行する。結末がどうなれど、必ず】
「それで…結構、いい人だった」
【仄かに笑みを浮かべて締め括る言葉は、なんの変哲も飾り気もなく、人を評価するにしてはありきたり過ぎる。しかしそれは『クロノスの最強様』でも『鋼鉄の天使』でも『戦力としてのオルフェリア・ソローネ』でもなく】
・・・・・・・・・
【ただのオルフェリアに対して、ウルヴィが素直に感じた感想だった】
「ごめん、私は、これくらい」
【言い終えたウルヴィが、SUIに対して謝罪する。やはり自身の言葉などでは不足で、彼女(?)の求める水準には達せないだろう】
- 189ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 19:29:34
- 190ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 19:52:49
- 191ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 19:56:10
- 192ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 20:22:33
「……は、はは」
髪をかきあげたケイの瞳は――――狂気を帯びていた。
笑みは引きつり。歯が浮き出て。堪えきれない感情の渦を、どうにか処理し切ろうとしているような。
「はは……そっか……死んじゃったのか……あの人……」
死ぬと思えなかった人だった。少なくとも、死ぬのは『馬鹿』な自分のほうが先だと思っていた。
・・
――――俺より先に、死んだ。また。
「ありがとうございます。ウルヴィさん。楽になりました」
伝えたのは、恨み言でも憎悪でも怒りでもなく。根っからの感謝で。
どこか擦り切れてはてたBFの関節のような音が、聞こえたかもしれない。
「――――ケイ・サヤギリ? 起きていたのか!!」
扉を開けてきたのは、ソドム奪還作戦の折。ケイの吶喊に付き合ってくれた精鋭の生き残りだった。
所属はK.I社だったが、垣根などないかのように話しかけてくる。
ケイが、どうしたのかと聞くと。
「お前と会いたいってやつがいるんだ。……俺達と一緒に馬鹿をしたやつがな」
「重症を負った。もう死ぬからって……最期に、お前と話したいそうだ。」
ケイはベッドから即座に起き上がり、ふらつきながら走って。扉に手を付けた。
「教えてくれてありがとうございます、ウルヴィさん。用事ができたので行ってきます」
行って、彼はそのまま走り出す。
医者は匙を投げるような顔をしていた。
- 193ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 20:34:37
- 194ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 20:45:34
『……ああ、来てくれたんだね。蒼風のパイロット』
ぶっ倒れたって聞いたから、私のお仲間になると思ってたよ。
ケイの眼の前でそう力なく笑うのは、女性だった。 K.I社のパイロットスーツを来ている。
腹の周りを強引に包帯で巻かれて、脂汗も止まっていない。
「彼女は……」
『最初の吶喊のときは無事だった。やられたのは二度目の突撃のときだ。強襲級の突撃余波で姿勢を崩して……』
『重装兵級のビームを食らっちまったのさ。運がなかった』
男性K.I社パイロットの説明を、重症を負った女性が引き継いだ。
男性の方は肩を叩き、ケイに頼むと言った。
それがどういう意味なのか。ケイは知っていた。
『だから、アンタは悪くない。悪くなんてないよ……はは、むしろね。最高だった!!』
『部隊の仲間が、みんなサンドイッチされて死んで……私ももう死ぬってなった。その時にアンタと、その補助インターフェースが声をかけてくれた』
ケイの時計型を指差し、痛快だったよと。笑った。
『私の父さん……もう死んでるんだけどね。あの人が言ってたんだ。月風乗りは、みんな凄いってさ』
『嘘だと思ったよ。あんな巫山戯た機体に、乗りたがる馬鹿なんて今の時代いないって」
「ふ、ははっ。そのとおりだと思います。俺は馬鹿の一人です」
彼女の横たわるベッドの近くに備え付けられた椅子に。ケイは座る。
二人とも笑いながら、世間話をするように。
医務室にいる重傷者も軽傷者も、その言葉を聞くことに集中していた。 - 195ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 20:54:10
「…」
【既に走り去ってしまったケイから感じた、何かが軋む音】
【もう少し言い様があったのかもしれないとは、ウルヴィも思う。でもきっと、取り繕っても無駄だっただろう】
【所詮ウルヴィは傭兵だ。失う痛みとは無縁のオンリーロンリー、金にたかる蠅、屍肉に群がる鴉だ。そんな獣の言葉では、きっと届かない。届くわけもない。彼の心に届くべきはきっと、暖かな人の言葉であるべきなのだ】
「…そんなこと?」
【ランセルへと振り返る。確かに規格外の兵器は、修理費も規格外だ。だが】
【──上半身で勢いをつけて、任意では動かせない右腕を引っ張り出した】
「これのため…違う?」
【それはまるで切り離されたトカゲの尻尾のように痙攣していたと思えば、突然静まる。腕以外の何かであろうと暴れては、感覚が切り離されるの繰り返し。BFの右腕を切断するに足る理由、そしてその行いはきっと救助だと、ウルヴィは推測を導いており、確認するために問いかけた】
- 196ランセル◆hFOUpFQqt.25/04/06(日) 21:12:33
- 197二次元好きの匿名さん25/04/06(日) 21:13:47
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- 198ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 21:15:22
『ああ、楽しかった』
彼女は、話の途中で己の名をケイに明かした。
ファルマ。そう名乗る女性は、茶髪だった。
『アンタ達と一緒に突っ込んでる時、家族がね。部隊の仲間がね。私と一緒にコックピットにいたんだよ』
『いけ、いけ、行け。って。もっと早くって、叫んでくれていた。一緒に戦ってた』
そんなものは幻聴だ。でも、ケイはそれを感じることがあったから、何度も頷いた。
14の頃に閉じ込められて、シミュレーターの中でずっと何度も死んで生きた。
初期インベイド戦争シナリオをプレイしている時に。死んだデータのはずの仲間が、己に助言する感覚。己を急かす感覚。
ありとあらゆる声を聞いた経験が。事実だったから。ケイはシャロンの言葉に共感した。
『それで、アンタたちと一緒に戦ってねぇ……眩しくて……みんな、私を守って。私に、守らせてくれて……』
「はい。俺も、ファルマさんに助けられました」
覚えている。スカッド・ソルジャーに乗った彼女のマシンガンが、ケイの背後から飛んで、的確に射撃兵を削る様を見ていた。
彼女の弾には、誤射を常に恐れるはずのケイも恐れなかった。
『みんな死んだはずなのに。その後すぐに、アンタ達が新しい家族になったんだ』
「それは、はは。俺も、嬉しいですよ」
『ああ、そうだ。嬉しかった。嬉しかったんだ。一人になった私が、また一人じゃなくなったんだ!』
『天涯孤独にまたなった私に!家族が一気に増えた!!数十人も!! 最高だろ!!』
ファルマの、痛みにこらえるような叫びに。
前後を挟まれた地獄を共に過ごした彼らのうち、負傷兵の十人かがそうだ!!と叫んだ。人自連もK.Iもデスペラードも関係がなかった。
じゃあシャロン、てめぇは俺の姉貴だ!! 馬鹿言え俺の妹だ!!いいや私のお姉ちゃんよ!!と叫びの輪が広がる。
もはや収拾など付くレベルではなかった。 - 199ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/06(日) 21:26:10
「だったら、弁償は要らない」
【切断したことを自ら打ち明け、ウルヴィからの追及にも嘘を挟まない。彼こそ真面目じゃないかと思いながら、右腕を左手で戻す】
「契約も勿論。でも、ランセルは…私の命を助けた」
【契約としてのエスコートだけでなく、虐殺級との衝突に力を貸し、ソドムから退避を促し、そして今ここまで運んでくれた彼を、ウルヴィは見据える】
いくらでも請求して
「だから私に、 感謝を求めて 」
【気持ちの大きさとは、金額である。全ての傭兵の共通認識、或いは暗黙のルールだ。孤独に世界に投げ出された彼女は、それを唯一の倫理として今日まで従ってきた。故に感謝の方法もこれであるべきだと、疑っていなかった】
- 200ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/06(日) 21:33:13
「じゃあファルマ、俺のポジションどこだ!!ん!?」
『飛び入り参加の部隊長! だからあたしらの末っ子さ!!』
「ええ、まじかよぉ!!部隊長なんて無理無理!」
勘弁してくれ!と叫んだケイに
『アンタみたいな末っ子こっちだってお断りだわ!』『姉より死にたがりの末っ子なんて聞いたことがないね!』
『じゃああのチャオレンってのに乗ってたのは長女だな』
『『『『『良いやあいつはうちの末っ子が連れてきた嫁だ(よ)!!!』』』』
すいません一夜体を重ねただけの関係です……なんてことは言えず、苦笑いするしかなくて。
大騒ぎは医務室を超えて外にまで聞こえていく。