TRPGのPCをコズミック・イラに放り込んでみた。3(TRPG風SS)

  • 1スレ主25/04/07(月) 10:25:59


    好きなTRPG[駅前魔法学園]のPCをC.E.に放り込んでみたリプレイ風SSです。

    基本はSSで、重要な行動をする際はダイスを振ります。



    感想や挿絵を送っていただければ主のやる気が三倍になるので、

    リプレイ作品を見るような気持ちでお付き合いください。


    https://bbs.animanch.com/board/4714183/?res=199


    前回

  • 2スレ主25/04/07(月) 10:26:43
  • 3スレ主25/04/07(月) 10:29:38


    綾瀬琉生(アヤセルイ)男 13歳 169㎝

    アリス 魔女術


    パイロット128  砲手69  操舵手48 メカニック145

    オペレーター30 艦長12 空間認識能力91  100を超えるとその世界最高(ノイマンが操舵手100)


    [駅前魔法学園]が一番好きなTRPGだった転生者。

    魔法を学び始めて以来、事ある毎に事件に巻き込まれ、それを解決してきた。

    その為「人生はほんのり刺激がある程度で十分」がモットーの昼行燈を気取っているが、

    巻き込まれた際にはいの一番に行動するほど責任感が強い。


    総合的に[前衛が務まる回復役]だが、手数が多いので他の分野でもそれなりに活躍できる。

    ただし得意分野(治療と調査、BOSS戦)以外は器用貧乏なので、専門家には劣る。 

  • 4スレ主25/04/07(月) 10:31:40


    魔導機神カンヘル

    全高18.2Ⅿ 重量4.5t

    動力:グランドータス式魔導エンジン

    装甲材質:オリハリュコニュム合金

    操縦方式:グランドータス式精神接続


    とある異世界で琉生が手に入れたファンタジー系ロボ。

    元は乗り手が現れず、遺跡で埃を被っていた発掘品だった。

    それを琉生が現地の技師と共に自身の知識と技術を応用して復活させ、以後彼の乗機となった。

    その世界独自の操縦方式の為、生身の体とな時感覚で操縦することができる。


    武装は空中・水上・水中・宇宙を自在にサーフィン方式で移動できるシールド。

    ある程度伸縮し、鞭の様に使えるグレイブと長棍。調整すればMS用の装備も問題無く使用できる。

  • 5スレ主25/04/07(月) 10:33:51


    綾瀬瑠璃(アヤセルリ)女 13歳 130㎝ Fカップ

    ウィザード 召喚術


    パイロット58 砲手74 操舵手83 メカニック6 オペレーター31

    艦長73 空間認識能力108


    琉生の二卵性の姉。産まれた時から妖精や精霊の類を見ることができた。結果魔法を学ぶことになり、

    特に召喚術に強い興味を持つようになった。

    単独で事件に巻き込まれることが多いが、すぐに味方を作れる人徳故に困ることはなかった。

    散歩というより旅行が趣味であり、その土地の文化や名物を楽しむのが生きがい。

    料理を含めて家事全般が得意で、世話焼きな面がある。


    干支に因んだ12体の召喚獣を、目的に合わせて召喚する。


    総合的には[サポート特化]、前線に出るよりも後衛として補助に回るのが一番得意。

    砲手に適性があるので、そちらに回ることが多い。

  • 6スレ主25/04/07(月) 10:36:59


    キラ・ヤマト 女 16歳 156㎝ Cカップ


    原作では男主人公だが、本作ではヒロイン。

    コーディネーターである事を気にせず優しく接してくれる琉生に好意を持つ。

    琉生の淹れるカフェオレ(甘め)と琉生の膝枕が好き。


    キラ>琉生の好感度131

    琉生>キラの好感度107


    70以下で自覚ありで異性として見てる

    80以下で夜のおかずにしてる

    それ以上だと二人きりの時に押し倒しそうになる

  • 7スレ主25/04/07(月) 10:48:01


    ラクス・クライン 女 16歳 158㎝ dice1d3=3 (3) カップ 1.A 2.B 3.C


    本SSにおいて琉生のもう一人のヒロイン。天然なお姫様のように振舞っているが、

    琉生とキラの前では素顔を見せる。キラの事はお互いに友人兼ライバルと思っている。

    琉生の淹れるコーヒーはdice1d2=1 (1) が好き。 1.苦め 2.甘め


    ラクス>琉生 117

    琉生>ラクス 76

  • 8スレ主25/04/07(月) 10:50:52

    前回のあらすじ

    クルーゼラスボスの本領発揮。
    琉生ラク確定。
    アスフレ確定。
    二コル、アスランを厳しめに説得。

  • 9スレ主25/04/07(月) 11:00:44

    月より出撃した地球連合軍第八艦隊が、地球衛星軌道に集結している敵軍を目指し
    暗闇が支配する宇宙空間を航行していた。その旗艦メネラオスのブリッジでは、艦隊司令官として、
    同軍准将デュエイン・ハルバートン提督が座乗している。
    ハルバートンは状況を確かめる為、隣に座る副官のホフマンに声を掛けた。

    「あと、どれくらいだ?」
    「あと四時間程で目的ポイントに到着します」
    「うむ。敵艦隊の数や他の情報は判るか?」
    「未だ、詳しい事は判っておりません」
    「アークエンジェルからの連絡は?」
    「ありません」
    「……そうか」

    ホフマンからの報告にハルバートンは頷き、少し考える込んだ。今から戦う相手の詳しい
    情報が有れば対処もし易くなるのだが、未だ確認も儘ならない。
    戦場となるポイントまでは距離も時間も有り、今の段階ではそこまでの対処は必要ないが、
    ただ、ハルバートンの頭の中ではアークエンジェルの事が気に掛かっていた。
    ――アークエンジェルは何をしているのだ……。まさか、敵の手に落ちたのではあるまいな……。
    コロニーの崩壊があったとは言え、本来ならば、既に月基地に到着していなければ可笑しいのだが、
    連絡も無く、未だ消息も不明で、開発責任者でもあるハルバートンの心を苛立たせていた。
    しかし今は、姿の見えないアークエンジェルよりも、目の前の敵を優先しなければならない。
    ハルバートンはモニターに目を向けると考えを切り替える事にした。敵軍の戦力が判らない以上、
    下手な小細工を仕掛けるよりも、今までの戦い方をする方が対処もしやすいと考え、ホフマンに告げる。

  • 10二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 12:18:20

    ルイはフルシティかフレンチが好きそうだけど、ラクス飲めるのか?

  • 11スレ主25/04/07(月) 18:34:14

    「では、いつも通り、補給艦隊はメネラオスの後方に下げる事にする。
    但し、メネラオスと距離を置き、護衛艦数隻を補給艦の前面に展開させておく」
    「しかし、それでは攻撃が薄くなりますが……」
    「メネラオスの前には、先鋒の精鋭達がおる。早々、やられる者達ではない。
    攻撃が薄くなる分は、補給艦護衛の攻撃機を投入すればよい」

    ハルバートンは絶対的な自信と自ら指揮する第八艦隊の将兵達に信頼を寄せているのか、言い切った。
    しかし、ホフマンはアークエンジェルやアラスカ本部から流れてくる噂を含め、慎重になっているのか、
    多少、心配そうな表情を見せる。

    「……敵の戦力も分からないのです。メネラオスも下げましてはどうでしょう?」
    「私が下がりすぎてどうする?そのような事をすれば、将兵の士気に差し障りが出るではないか!」
    「しかし……。いえ、申し訳ありません」

    ホフマンの心配を他所に、ハルバートンは冷静に応えこそするが、語気は怒りを含んだ物だった。
    その様子にホフマンは、言葉を濁しながらも尊敬する上官を立てる為、謝罪の言葉を口にした。
    ハルバートンにも、ホフマンの心配する気持ちが伝わったのか、首を振ると穏やかな表情を見せる。

    「……いや、貴様の気持ちだけは貰っておく。いつもの事だが、寝ている将兵は到着前に起こしておけ」
    「閣下、第八艦隊の将兵に、そのような間抜けはおりません」

    ホフマンは、ハルバートンの表情を見て安心したのか、自信に満ちたような顔で答えると、
    ハルバートンは満足そうな表情を見せる。
     
    「うむ。ホフマン、補給艦隊に打電を。戦闘中にアークエンジェルが現れる事があれば、直ぐに向かわせる。
    その時は、物資の搬入を迅速に行えと伝えろ」
    「了解しました」

    ハルバートンの指示にホフマンは頷くと、第八艦隊全艦に伝令を伝えた。
    第八艦隊の将兵達の士気は、宇宙空間の冷たさなど吹き飛ばすかのように高まりつつあった。

  • 12スレ主25/04/07(月) 21:02:26

    CICに座っていたトノムラが声を上げた。

    「……なんだ、これは……?」
    「どうしたの?」

    マリューは何事かと、顔を向けるとトノムラは慌てたように応えた。

    「――あ、はい。通信らしき電波を拾いました。だた、何分、電波が微弱なので、聞き取れにくくて……」
    「何かしら……?出力を上げて、聞き取れないかしら?」
    「……やってみます」
    「お願いね」

    トノムラは入ってくる電波を聞き逃さないように耳を傾ける。
    作業をしていたミリアリア達の手も緊張からか、動きを止めてトノムラに視線を向ける。
    聞き取る事に集中していたトノムラの表情が険しい物に変わると、絶句するかのように言葉を吐いた。

    「これって……!」
    「分かったの?」

    トノムラの表情から、マリューも強張った物へと変化した。頷きながらもトノムラは、マリューへと視線を向ける。

    「ええ……。確証がある訳ではありませんが、この付近を航行中のザフト艦の通信だと思われます」
    「どの辺りにいるか分かる?」
    「いいえ。ただ、電波状態が悪いんで、ザフト艦とはかなりの距離があると思います。
    内容からすると、地球衛星軌道に向かってるようですが……」
    「どう言う事かしら……?」

  • 13スレ主25/04/07(月) 22:01:55

    自分の知らない所で動いている事態にマリューは眉を顰めた。
    頭の中であらゆる可能性を巡らせるが、あまりにも情報が少な過ぎる。
    トノムラは、マリューの言葉が自分に向けられた物だと思い、首を横に振ると聞き取れた情報を伝える。

    「しかし、あと三時間程で地球軍艦隊と戦闘が行われるような事は聞き取れました」
    「そう……。地球軍艦隊は、どこの基地から出撃した物か判るかしら?」
    「流石にそこまでは……。ただ、規模が艦隊クラスのようですから月基地辺りではないでしょうか」
    「……その可能性高いわね。――フラガ大尉とアヤセ少尉、バジルール少尉を呼び出して!」
    「――了解しました!」

    マリューは指示を出すと、矢継ぎ早にチャンドラ二世に声を掛ける。

    「どれくらい掛かるか判る?」
    「戦闘が行われる宙域が詳しく判らないんで、何とも言えませんが、
    通常航行で地球衛星軌道でも五、六時間と言ったとこですかね」
    「その数字はデブリを抜ける時間も入ってるんだろう?」

    チャンドラ二世の言葉に、ノイマンが振り返り、聞き返した。

    「ああ。デブリを迂回して抜けるまでの予測も含めての数字だ」
    「デブリが無ければ、もっと早く到着するって事ね……」

    マリューは呟くとブリッジを暫しの沈黙が支配する。デブリを迂回していれば時間が掛かり、
    既に戦闘が終わった後に到着する事になる。かと言って、このまま合流して良いものかとも思う。
    しかし、自分が知らない状況が展開されて居るのだから、単独で動くより合流した方が少ないのでは?とも考えた。
    左手に見えるデブリ帯を見つめ時間を短縮する方法を考える。――デブリ帯が無ければ、
    すぐに行く事が出来るのに……。――ん!?マリューは、アークエンジェルで火力・破壊力が高く、
    デブリに容易く穴を開ける事の出来る兵器を思い出し、パルに声を掛けた。

  • 14二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 07:28:49

    そろそろ軌道上戦か

  • 15スレ主25/04/08(火) 10:07:06

    「……ローエングリンでデブリに穴は開けられるかしら?パル伍長、どう?」
    「――は?あ、はい。……可能ではありますが、連発で撃つ事になります」

    パルは自分に声が掛かると思わなかったのか、返事に間が空いたが、
    すぐにキーボードを叩くとマリューの問いに答えた。
    マリューは、聞きながらもチャンドラ二世に顔を向けて口を開く。

    「その上で、最大船速で巡航した場合は?」
    「デブリを抜けるまでの時間が読めないので、何とも言えませんが、恐らく……半分とは言いませんが、
    それ位は短縮出来ると思います。あくまで推測になりますが……」
    「一番エネルギーを喰うのを連発した上に、最大船速か……。艦長、
    いざ戦場に着いてもエンジンに負荷が掛かり過ぎて、パワーダウンを引き起こす可能性があります」

    チャンドラ二世は、考え込むようにモニターを覗き込むと、難しい顔をしながら答える。
    その言葉を聞いたノイマンが眉間に皺を寄せながらマリューに向き直ると言った。 

    「……そう。……デブリのすぐ側を通ったのが、仇になったって事ね。……どうすればいいのよ……」

    マリューの表情に険しさが増し、デブリを睨みながら呟いた。ビーム兵器の多いアークエンジェルにとって
    戦場でのパワーダウンは致命的な結果を招きかねない。最悪、戦場に着いたがいいが、
    ビーム兵器が使用不能という可能性だってある。ブリッジの空気は一気に重くなり、沈黙が支配する。
    それを突き破るかのように扉が開き、ムウを先頭に琉生と瑠璃とキラ、そしてトールがブリッジへと入って来た

    「――どうした?」
    「お呼び立てしてごめんなさい。ザフト軍の通信を傍受したんです。どうやら、大規模な戦闘が行われるようで……」
    「――えっ!?」
    「マジかよ……!俺達がのんびりしてる間に、情勢は動いてたって事か!」

  • 16スレ主25/04/08(火) 12:30:51

    何事かと聞いてきたムウに、マリューがいかにも困ったと言う表情で答えると、キラとムウが
    驚いた表情で声を上げた。綾瀬姉弟はCICのモニターを覗き込み、状況を確かめると口を開く。
     
    「……なるほどな。それで、艦長はどうするつもりなんだ?」
    「ええ、状況が状況なので……。私としては――」
    「――遅れました!何があったんですか!?」

    マリューが言いかけた処で扉が開き、ナタルが慌てながら飛び込んで来た。丁度、ナタルが来た処で、
    マリューは一から状況の説明をする事にした。それぞれが神妙な面持ちで説明に聞き入り、
    マリューが説明が終わるとナタルがすぐに口を開く。

    「それならば、我々も合流し、参戦するべきかと思いますが」
    「でも、時間的に間に合わないんだろ?」
    「時間を短縮する方法が無い訳では無いんです」
    「なら、それをやるしかないだろ」
    「……ただ……」

    ムウとマリューはやり取りを始めるが、竹を割ったようなムウの言葉に、マリューは言いにくそうな表情で
    言葉を濁す。はっきりしないマリューの言葉尻に琉生が助け船を出すように声を掛ける。

    「その方法に問題が?」
    「ええ。ローエングリンを連続で撃って、デブリに穴を開ける方法なんですが……。その後は最大船速で向かえば
    可能みたいですが、エンジンに負荷が掛かり過ぎて、パワーダウンを引き起こす可能性が……」
    「どっちにしても選択肢は艦隊に合流するか、このまま月に向かうかしか無いんだろ?どうすんだ?」

    理由を聞いたムウは、頭を掻き毟りながらマリューに聞き返した。
    マリューは苦慮しているのか、ムウの言葉に答えられぬまま、知らず知らずのうちに呟きが漏れる。

  • 17二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 13:55:59

    まあ、難しい選択だよな

  • 18スレ主25/04/08(火) 19:51:07

    「合流すれば、最低限、戦闘は避ける事は出来ないけれど、帰りは護衛が付く……。
    月基地へ向かうなら、到着までアークエンジェルだけで、これからの事を対処しなければならない……か」
    「艦長、どうなされますか?」

    ナタルが、マリューを見据えながら決断を迫る。マリューはゆっくりと考えている時間も無く、
    すぐにでも決断しなければならない。額に手を当てると目を瞑った ――エンジンパワー……か。
    ……リスクは大きいけど、護衛が着くなら合流する価値はあるはずよね……。
    マリューは息を軽く吐き、少しだけ顎を引くと目を見開く。

    「……合流しましょう。進路変更!艦首をデブリ帯に向け、ローエングリン発射態勢へ!
    細かいゴミはモビルスーツのビーム兵器で排除します。アヤセ少尉、ヤマト少尉、ケーニヒ准尉お願いできる?」

    琉生達は頷くとブリッジを後にする。
    それを見送ると、マリューはブリッジに残ったムウとナタルにも指示を与える。

    「フラガ大尉、バジルール少尉は、CICに。あと、バジルール少尉。合流する前に乗組員に食事を取らせるように
    通達して。メカニックとパイロット、その後にブリッジ要員と戦闘要員を優先するようにお願いね」
    「おう、了解了解!」
    「了解しました」

  • 19スレ主25/04/08(火) 21:28:49

    プラント本国では、地球軍艦による民間船シルバーウインド号の攻撃に対して、最高評議会議長
    シーゲル・クラインが抗議及び非難声明によって、一般民間人に対しては一応の形を見せた事となった。
    しかし、クラインが声明はそこまでであって、地球軍への報復には対しては言及しておらず、
    世論からはクラインに不満の声が上がっていた。それを見越したかのように、国防委員長パトリック・ザラが
    現在進行中の作戦の話こそ発表しなかったが、報復を仄めかす発言をした為、
    パトリック支持の声が増えている状況にあった。そんな中、評議会のメンバー、
    そしてクライン派として事後の対応に追われ、疲れた表情をしたユーリ・アマルフィが帰宅した。

    「今、戻った」
    「お帰りなさい」
    「……ただいま……お茶を貰えるかな」
    「はい」

    ユーリは微笑みながら返事をする妻のロミナの顔を見ると、安堵の表情を浮かべ脱いだ上着を手渡し、
    ソファーに腰を沈め、大きく溜息を吐き、窓の外に目を向ける。ユーリ自身、シルバーウインドを攻撃した地球軍艦を拿捕したと言う報告を聞いてからは、パトリックの言う通り、報復もやむなしだと思っていた。
    地球軍は軍艦を攻撃するならいざ知らず、民間船を攻撃した以上、これから先、無差別に攻撃して来る
    可能性が高まったのも同然だからだった。抗議声明に対し、未だに発表しない地球側を交渉のテーブルに
    引きずり出す為にも、現在行われている作戦が成功させ、これを足掛かりに和解、又は停戦まで持ち込む事が
    出来ればと、期待をしていた。
     
    「おじ様、お帰りなさい」

    ユーリは扉が開いたのにも気付かず、驚いたように声のした方向に顔を向けると、視線の先にはフレイが立っていた。
    扉が開いたのにも気付かない程疲れていたのかと、ユーリは苦笑いを浮かべる。
      
    「……ただいま。ここの生活には慣れたかい?」
    「はい。さっきまで、お庭をお散歩してました」
    「そうか、それなら良かった。……ニコルやアスランは行ってしまったが、寂しくはないかい?」
    「……いいえ」

  • 20スレ主25/04/08(火) 22:01:00

    ユーリに対して、フレイは言葉を選びながら答えているのか、ややぎこちない。
    質問に、やはり同年代のニコルとアスランが任務の為、居なくなったのが寂しいのか、フレイは言葉を濁した。
    ユーリは、そんなフレイを見て思った通りだと感じながらも、フレイを気遣うように頷く。

    「……そうか」
    「……あの……、アスランの婚約者の……ラクスさんは……?」

    フレイもユーリの気遣いに気付いたのか、済まなそうな表情をしながらも、気になっていた事を口にした。
    ユーリが目線を外して首を横に振ると、フレイは俯いて呟く。

    「……そうですか」
    「君の責任ではないんだ。気にする必要はない」
    「……でも……」

    フレイは、ユーリの言葉に納得はしながらも、同じナチュラルである地球軍の軍艦が民間船を攻撃した上に、
    アスランの婚約者を殺してしまった事に引け目を感じて言葉を繋ごうとした。
    しかし、丁度、紅茶を入れ終わって戻って来たロミナが会話を聞いていたのか、俯くフレイに優しげに声を掛ける。

    「主人の言う通りよ。あなたが、そのような顔をする必要はないのですよ」
    「……おば様」
    「さあ、フレイさんも座って。あなた、お待たせしました」
    「ああ、ありがとう。さあ、フレイも座って」
    「……はい」

    フレイは居た堪れなくなりながらも、頷き椅子に腰を下ろした。ユーリは、紅茶を一口含むと息を吐く。

  • 21スレ主25/04/08(火) 22:01:33

    「ふう……」
    「お疲れのようですね」
    「ああ、心労が溜まるばかりだよ」

    愛する夫を気遣うロミナが心配するように声を掛けると、ユーリは頷いて愚痴を零した。

    「それで、どうなんですか?」
    「……クライン派にとっては、芳しくないよ」
    「そうですか」
    「それに知られてはいないが、既に軍は動いている。その為にニコル達も出撃してのだから予想もつくだろう」
    「……ええ」
    「……今回の作戦が、名目上、衛星軌道で戦闘が行われる予定になっているんだが、それだけでは無いんだ……」
    「――え!?」

    濁すように言うユーリの言葉に、フレイは驚きの声を上げた。
    ユーリはフレイを見ると、はっきりとした口調で告げる。 

    「君の前で話すべき事では無いと思うが、いずれは分かる事だ……」
    「どう言う事ですか?」
    「……ザフト軍は地球軍月基地に奇襲を掛ける」
    「――!」

    ロミナが聞き返すと、ユーリは眉間に皺を寄せ両手を顔の前で組んで、冷静に答えた。
    フレイは、事の大きさに言葉を出せないまま、驚きの表情を浮かべ青ざめた。
    ロミナも同様に、その作戦に従事しているニコルの事を心配してユーリに詰め寄る。 

  • 22スレ主25/04/08(火) 22:04:07

    「――ニコルは!?あなた、ニコルは大丈夫なんですか!?」
    「……それ以上の事は機密事項になっていて、衛星軌道の部隊なのか奇襲部隊なのかのさえ、
    私にも分からないんだよ……」

    妻を見据えたまま答えるユーリの言葉に、ロミナは更に表情を青くした。
    フレイも同様で顔色を更に青くさせ、震える足に力を入れ立ち上がり、ユーリに詰め寄る。

    「――そんな!アスランは!?アスランも分からないんですか!」
    「それも分からない……」

    ユーリは首を横に振ると同じように答えると、フレイは力が抜けたように腰を椅子に落とした。
    二人を見つめながらユーリが再び口を開く。

    「……どちらにしても……無事に帰って来てくれる事を祈るばかりだ……」

    呟くように言った言葉は、フレイとロミナには聴こえていなかった。
    ユーリは二人の表情を見て、作戦の成否を口にしなかった事を正解だと思った。

  • 23二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 06:03:26

    ニコルに何かあったらNJC開発が加速するな

  • 24二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 09:59:22

    まあ、結局地球に降りるだろうな

  • 25スレ主25/04/09(水) 14:30:59

    デブリ帯を無事に抜けたアークエンジェルの食堂は、マリューの命令で戦闘に入る前に、
    食事を済ませるようにと通達がされた為、異常な程に忙しく、交代要員も駆り出され、戦場と化していた。
    ラクスも同様でスタッフと共に忙しく働いているが、違う事があるとすれば、ラクスにはこれから
    ザフト軍と戦闘に入ると言う事が伝えられていない事だった。
    だが、この忙しさの余り、その事に気付く余裕すら無いようで、額に汗を浮かべながら働いている。
    ラクスは出来た食事をカウンターに出すと、並んで待っていた女性の乗組員に笑顔を向けた。

    「はい、お待たせしました!」
    「うん、ありがとう」
    「はい!――すぐにご用意しますので、お待ちくださいますか?」

    ラクスは女性の言葉に、嬉しそうに笑みを湛え、カウンターに並べた食事が無くなったのを確認して、
    次に待つ男性に頭を下げると、厨房の中に戻って行く。盛り付けを行っている台の前まで来ると、
    料理の入った寸胴鍋を運んで来た若い男性スタッフが、ラクスが手が空いていると思ったのか、声を掛ける。

    「上がったよ!その空の鍋、退かして!」
    「――はい!」
    「……いや、君じゃ、持ち上げるの大変だろ?俺がやるから、鍋を置いたらトレイに盛り付けてくれ」
    「はい!分かりましたわ!」

    ラクスが頷くと、男性スタッフは持っていた寸胴鍋を交換して、空になった鍋洗い場へと運んで行く。
    他のスタッフも並びながら、ラクスは盛り付けを始めた。ラクスが厨房内で盛り付けをしている事で、
    空いてしまったカウンターには、一緒に入っている若い女性スタッフが、いつの間にか入っていた。
    それから、しばしの間、盛り付けに専念した為、どの位時間が経ったのか分からないが、
    鍋の中身が半分近くが減っていた。ラクスは満足そうに、一度息を吐くと、カウンターの方から自分を
    呼ぶ声に気付き、顔を向けるとカウンターの向こう側から、中を窺うようにミリアリアが顔を覗かせていた。

  • 26スレ主25/04/09(水) 22:17:27

    「ラクス、忙しそうね」
    「ミリアリア!すぐにご用意しますから、待っててくださいね」
    「うん、ありがとう。今日は一緒に食べられないの?」
    「ええ。今日は、いつもに増して皆さんお忙しいですし、
    私だけ抜けてしまうのは、皆さんにご迷惑を掛けてしましますから」

    ラクスは残念そうな表情を浮かべると、ミリアリアも厨房の忙しさに納得して残念そうに頷いた。

    「……うん。がんばってね!」
    「はい!」

    ミリアリアの掛けてくれた言葉が嬉しかったのか、満面の笑みで頷くと、再び盛り付けを開始した。
    一方、カウンターの外では、交代で食事をしに来た少年達とマリュー、チャンドラ二世、
    パルが食事を受け取り、席に着き食事を始めようとしていた。

    「ザフトが集結してるって、どう事なんですかね?」
    「……さあ?分からないわ」
    「流石にはっきりとした情報が無いからな……」

     首を横に振るマリューに同調するかのように、チャンドラ二世が料理をスプーンで突付きながら頷いた。
     これから行われる戦闘に関しては、あまりにも情報が少なすぎて予測を立てるのが困難だった。
     サイは、今、分かっている情報を確認するかのように、マリューに聞いてみる。

    「でも、地球軍も艦隊を出してるんですよね?」
    「ええ。でも、ザフト軍がわざわざ衛星軌道で戦闘を行う理由があると思えないのよ」
    「あるとすれば、地球降下……地球の軍施設への攻撃ですかね?」
    「……そんな事あるんですか?」

  • 27スレ主25/04/09(水) 23:12:41

    マリューの言葉に、チャンドラ二世が自分の推測を言うと、カズイが信じられないとばかりに、驚いた表情を見せた。
    少し考えるような素振りをマリューは見せ、口を開く。

    「……可能性として捨てきれないけれど、ザフトがそんなに急ぐ理由も無いと思うのよ」
    「……ですよね」
    「でも、今は何よりも、地球軍艦隊に合流する事が先決ね。食事、早く済ませちゃいましょう」

    チャンドラ二世が頷くと、気を取り直すかのようにマリューが全員を見渡しながら言った。
    その場に居た、全員が頷くと止まってた手を動かし始め、そう時間も掛からず食事を終わらした。
    全員が席を立ち、ブリッジへと向かう為、マリューを先頭に食堂を後にする。
    最後尾を歩くミリアリアは、途中で前を歩くトールの手を掴んで立ち止まった。
    マリューは振り返ると、ミリアリアに声を掛ける。

    「どうしたの?」
    「あの……少しだけいいですか?」
    「分かったわ。でも、急いでね」
    「はい。ありがとうございます」

    事情を察して、マリューはトールとミリアリアを残して、先にブリッジに向かう。
    マリュー達が見えなくなると、ミリアリアはトールの手を離し、向かい合うと少し怒り気味に捲くし立てる。

    「……トール、どうして訓練なんて受けるのよ」

  • 28二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 01:31:56

    反応としては普通か

  • 29スレ主25/04/10(木) 10:40:51

    「キラ達だけに戦わせてばかりは嫌なんだよ」
    「だからって!キラはコーディネイターで、ルリ達は経験豊富な魔法使いで、トールはナチュラルなのよ!
    すぐに上手くなるわけ無いじゃない!」
    「うん……フラガ大尉にも言われたよ。だから、一端になるまでは実戦に出さないってさ。
    体力作りから始まったばっかり出し、まだ先の事だよ」

    トールは、以外にも穏やかに答えた。ミリアリアの言いたい事は分かっているかのように、トールは微笑む。
    いつも馬鹿な事をしている時のトールとは違う表情に、ミリアリアは泣きそうな表情になりながらも本心を伝える。

    「……そうだとしても……私は、トールに危ない目に遭って欲しくないの……」
    「俺は、キラ達だけにこの状況を背負わせたくないし、助けてやりたい。それに、俺、守りたい人が居るからさ……」

    トールは頷くと、ミリアリアを抱き寄せる。ミリアリアはトールの「守りたい人」と
    言うのが自分だと分かっているからこそ、今はそれ以上、何も言えなくなった。
    ミリアリアは、トールの腕の中で呟き、大切な人が傷つく事の無いように願う他無かった。

  • 30二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 16:15:08

    難しい選択だよなぁ

  • 31二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 18:27:05

    トールは生き延びることができるか

  • 32スレ主25/04/10(木) 21:32:55

    地球連合軍プトレマイオス基地に向かっているザフト軍の艦隊はエンジンを止め、
    慣性航行でレーダーに掛からないように進んでいた。未だ、肉眼では地球軍基地は豆粒のようにしか確認出来ない。
    エンジンを稼動させ、最大船速で移動すれば、そう時間は掛からない距離にあった。
    奇襲部隊の旗艦であるヴェサリウスの格納庫では、出撃の為にイザークがブリッツに
    乗り込み、ハッチを閉める処だった。

    「ったく、俺が先に出たいくらいだぜ!」
    「落ち着け、ディアッカ!」

    ブリッツのコックピットに取り付いて、文句を言うディアッカをイザークが嗜める。
    ディアッカは、まだ言い足りないのか、少し拗ねたように口を開く。

    「でも、衛星軌道上じゃ、そろそろ戦闘に入るんだろう?」
    「作戦は聞いただろう。ガキじゃあるまいし、もう少しなんだ、我慢しろ!」
    「ちぇっ!先に一人で出撃するからってさ……」
    「文句なら、隊長に言え!コックピットを閉めるぞ!ディアッカ、いい加減、離れろ!」

    イラつき始めたイザークは、声を荒げて怒鳴った。ディアッカは時間を確かめると、「もう時間かよ」と言って、
    足でブリッツの装甲を軽く蹴り、慣性に任せながら離れる。ブリッツから離れると大声でイザークに声を掛ける。

    「イザーク!俺が行くまで、のんびり隠れててくれ。見つかって、やられんじゃねえぞ!」
    「当たり前だ!貴様こそ、落ちるなよ!」
    「あいよ!」

  • 33スレ主25/04/10(木) 22:08:47

    イザークの怒鳴り声にディアッカは、手を上げて答えると着地してパイロットルームへと引き上げて行った。
    ブリッツのコックピットを閉じるとモニターに格納庫が映し出される。
    再度、計器類のチェックを行い出撃準備が整うと、クルーゼからの通信が入った。

    「イザーク、分かってると思うが失敗は許されん。頼んだぞ」
    「――は!必ずや成功させて見せます!」

    頷くイザークにクルーゼは「期待しているぞ」と言って通信切った。
    イザークは、ブリッツをリニアカタパルトへと進ませ、少し経つと発進OKのシグナルが点る。
     
    「――イザーク・ジュール!ブリッツ出るぞ!」

    イザークが叫ぶとブリッツは急激に加速し、ヴェサリウスから飛び出して行く。
    一度、バーニアを吹かし、更に加速を駆けると、イザークは隠蔽機構[ミラージュコロイド]を発動させる。
    機体の各所にある噴射口からガスのような物が噴出す。ブリッツは見る見るうちに闇へと溶けて行く。
    やがてブリッツの機体は完全に見えなくなり、肉眼やレーダーでも見つける事が出来なくなった。

  • 34二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 03:13:46

    月はダメそう

  • 35スレ主25/04/11(金) 09:41:05

    アークエンジェルの格納庫では、出撃を前にして整備兵達が各機動兵器のチェックの為に忙しく動いていた。
    キラはモニターを見ながら、物凄い勢いでキーボードを叩いて行く。

    「えっと、駆動系、クリア。武装プログラムっと……」

    時間が無い為、全部に目を通す事が出来ないのが不安だが、今はそんな事を言っている場合では無かった。
    「プログラム、行けそうか?」
    「ええ。みんな、頑張ってくれましたから。多分、大丈夫だと思います。後は僕が調整するだけです」
    「戦闘までに間に合うのか?」
    「大丈夫です!間に合わせます!」

    キラは顔をコンソールの小型モニターに向けたまま答える。マードックは、
    キラから今までとは違う気迫を感じ取り、ニヤリと笑う。

    「絶対、やられんじゃねえぞ」
    「ええ。必ず帰って来ます」
    「おう!頼んだぜ、坊主!」

    キラはモニターから顔を上げると、視線をマードックへと向けて頷いた。
    マードックも頷きコックピットを離れると、ストライクにランチャーパックを装備させる為に大声で指示を飛ばした。
    その間もキラはキーボードを叩き続けるが、ふと、訓練で琉生からのアドバイスを思い出し、手を止めた。
    ――無駄な動きは命取りになる。今は、狙いも全てオートにしているだろうが、細かい狙いは
    マニュアルでコントロール出来るようになるのが理想だな。――オートでは避けた相手を追う事しか出来ないが、
    細かい射撃が出来るようになれば、相手の動きを予測した箇所にピンポイントで撃ち込める。
    キラは、コンソールモニターから視線を外し、メインモニターに写るνガンダムへと視線を向けた。

    「射撃か……。プログラムに手を入れてみるか……」

    キラは呟くと、目線をコンソールモニターへと向け、もう一つのプログラムを立ち上げる。
    戦闘で少しでも自分が有利に立ち回る為に、やれる事はやって起きたかった。キラは、再びキーボードを叩き始めた。

  • 36スレ主25/04/11(金) 10:20:25

    キラがストライクのコックピットでプログラムの調整を行っている頃、琉生はカンヘルの
    コックピット内で出撃を待っていた。後の事を考えればジンで出るのが望ましいのだろうが、
    今は出し惜しみしていられる状態ではなかった。各部の調整を行っていると、
    ムウのメビウス・ゼロから通信回線が入って来た。

    「琉生!済まないが出る前に伝えておかなきゃいけない事があってさ」
    「?」
    「艦長からの伝言。これ、秘匿回線だから、コックピット開いてるなら閉じてもらえるか」
    「分かった」

    ハッチを閉め、ムウにその事を伝える。
     すると、少し間を置いて、マリューからの伝言の内容を伝える為に、ムウは少し真面目な感じで話し始めた。

    「んじゃ、伝えるわ。……もしも、戦況が不利だったり、勝ったとして、軍に捕まると思ったなら
    ルリと一緒に離脱してくれて構わないって。これ、俺と艦長以外は知らないからさ」
    「……いいのか?」
    「ああ。それに俺も艦長と同じ意見だ。お前さん達には世話になってるしな。俺達だけで庇い切れる
    もんじゃないのも分かってる。ただのガキなら何とか成るんだろうけどさ。そうも行かないし」

    確かに異世界人の魔法使いを、この世界の軍がどう扱うか分かったものじゃない。

    「まぁ、俺も、それまでに巧い言い訳でも考えとくさ。お互い、がんばりましょ。それじゃ!」

    ムウも分かってるとばかりに、おどけた感じで答えると、一方的に回線を切った。
    その後マードックから保健用の予備物資を受け取る。
    戦闘宙域まで、二、三十分と言った距離まで近づいていた。

  • 37二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 15:02:19

    使わずに済んだいいな

  • 38スレ主25/04/11(金) 21:25:02

    地球衛星軌道に到着した地球連合軍第八艦隊は、集結しているザフト軍を確認し、
    すぐに警告を発したが、案の定、ザフト軍は警告を無視し、近づくなら攻撃のをすると返答を返して来た。
    それに伴い、地球連合軍第八艦隊、旗艦メネラオスのブリッジでは、
    ハルバートンの戦闘の号令が、今、まさに発せられる処だった。

    「――艦対戦用意!」
    「――艦対戦用意!各艦、砲門開け!第一次攻撃部隊のメビウス、出撃せよ!」

    ハルバートンの号令を繰り返すように、ホフマンが指示を出して行く。
    地球連合軍第八艦隊の艦船はタイミングを合わせたかのように動き始めた。
    地球軍艦艇からメビウスが次々に発進して行く。
     
    「――敵の動きはどうか?」
    「敵艦よりモビルスーツ出てきます!――距離千五百!」
    「まだ、相手の砲撃が届かん距離だ。慌てる必要はない!メビウスは両翼にも展開させろ!」
    「敵モビルスーツ、識別!ジン、十!」

    ハルバートンは、CICに座るオペレーターに報告のを受けると頷いた。
    ザフト軍艦艇は数こそ、第八艦隊に比べれば若干少ない程度で、出撃して来るであろうモビルスーツの数が、
    艦の数からも明らかに少なすぎた。
    ホフマンは、ハルバートンの思った事を代弁するかのように、思った事を口にした。

    「先鋒で十機……少ないですな」
    「これから出てくる!抜かるなよ!」

    ハルバートンは頷くと、第八艦隊の将兵達に気合を入れるかの如く、声を張り上げた。
    今、ここに地球衛星軌道での戦闘が幕を開ける事となった。

  • 39スレ主25/04/11(金) 22:21:26

    ザフト軍は予定通り、地球軍艦隊の警告を無視した事で外では既に戦闘が始まっていた。
    第二次攻撃部隊に組み込まれたアスランは、イージスの暗いコックピットの中で出撃を待っている。
    その間にも、アスランの頭の中では色々な事が思い出されていた。
    ――アスラン、私達を追わないで!君と戦いたくないんだ。
    ――辛そうな、お顔ですのね……。
    ――そんなのおかしい……おかしいわよ……。友達なんでしょう……どうして戦わなくちゃいけないのよ!?
    ――でも、同じコーディネイターで……敵になってる人がいるくらいなんですよ……。
    言って分からない相手なら、倒すしかないじゃないですか!
     
    「ラクス……フレイ……俺は……俺達は、本当にこれでいいのか……?」

    アスランは、辛そうな表情で、今では死んでしまったかもしれない婚約者と、
    初めて友達となったナチュラルの少女の名前を口にした。
    勿論、シルバーウインドを攻撃した地球軍は憎い。しかし、元々、ラクスが聞けば喜ばないであろう、
    このような戦いに、アスラン自身、意義を見出してはいなかった。
    だが、プラントを守るザフト軍兵士として、戦わなければならない。戦い続けると言う事は、
    また何れ、キラとも戦わなければならないと言う事だった。
    そして、そのキラは、ラクスを殺した地球軍に組しているが、アスラン自身、キラはそんな奴じゃないと
    思いながらも、地球軍にいる以上、倒さなければならない敵である事に間違いはなかった。
    複雑に絡み合った想いや事実がアスランを苦しめていた。そんな中、イージスのコックピットに通信回線が入る。

  • 40二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 05:39:47

    ⭐️

  • 41スレ主25/04/12(土) 10:20:33

    「アスラン・ザラ、いるか?」
    「……ユウキ隊長!?……どうしたんですか?」
    「いや……本来なら、戦闘中に私的な通信使用は禁止なのだが、君の事が心配になってな」
    「――あ、ありがとうございます!」

    アスランはスピーカーから聞こえて来る、ユウキの声に驚きを隠せなかった。
    自らの教官であったユウキは、本人の言う通り、生真面目で作戦行動中に私用で
    通信を入れて来るような人間ではない。裏を返せば、心配しなければならない程、
    今のアスランの状態は回りからすれば酷いと言う事だった。

    「君の婚約者の事を考えれば、精神的にもきつかろう……。本来なら、
    出撃させるべきではないと思うが、そうも言ってられん状況でな……」
    「……いいえ。……私も……ザフトの兵士ですから」
    「……そうか。地球軍が憎いだろうが、憎しみだけで戦うな」
    「……はい」

    アスランは、ユウキに気に掛けて貰い恐縮しながらも、ラクスやキラの事が頭から離れないのか、
    あまり元気の無い声で返事をした。その様子に業を煮やしたのか、
    イージスのコックピットにユウキは怒りの声が響く。

    「――アスラン・ザラ!そのような府抜けた態度では、貴様も死ぬ事になるぞ!」
    「――!も、申し訳ありません!」

    突然の怒鳴り声にアスランは、慌てたように背筋を伸ばす。
    ユウキが声を荒げるような態度に出る事は、訓練校時代ならいざ知らず、余程の事が無い限り有り得ない。
    ユウキは、アスランに対して気合を入れるかのように言葉を続けた。

  • 42スレ主25/04/12(土) 12:46:43

    「戦う意思が有るのなら、そのような顔は二度と見せるな!」
    「――はい!」
    「分かっているとは思うが、既に先発のモビルスーツ隊は戦闘に入った。
    必ず生き残り、ラクス・クライン嬢の分まで生きろ!いいな!」
    「――は!」

    アスランはユウキに怒られ、自分がいかに弱かったかを実感する。今は軍の作戦行動中なのだ。ユウキが怒るのも
    無理はない。通信が切れるとヘルメットを脱ぎ、両手で気合を入れるように両頬を打った。余程、
    自分が許せなかったのか、両頬をかなり強打したらしく、顔を下に向けた顔を抱えるようにしながら、
    唸り声を上げる。

    「――っ!」
    「アスラン、僕達も出撃で――。……唸り声……ですか?アスラン、どうしたんですか?何かあったんですか?」

    丁度、その時、ニコルからの通信が入る。ニコルは、アスランの唸り声をまともに聞いてしまったらしく、
    心配のあまり呼びかけの声を出していた。アスランは下を向いたまま「……いや、何でもない」と返事をする。

    「……そう、ですか。……アスラン、さっきは言い過ぎました……。
    ラクスさんが居なくなって、一番辛いのはアスランなのに……」

    ニコルは合流した時に話した事を気にして、申し訳なさそうな声で謝罪をして来た。
    アスランは痛みから復活したのか、ヘルメットを被りながら答える。

  • 43二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 16:53:33

    アスランはメンタル不安定時は弱いから何とかなるかね

  • 44スレ主25/04/12(土) 21:04:20

    「……いや、気にしていない。今は、この作戦に集中しよう」
    「……はい。必ず成功させましょう」

    ニコルが頷くと、アスランはイージスをリニア・カタパルトへと移動させる。カタパルトの向こうでは、
    ビームや爆発の光りが見て取れた。アスランは、軽く深呼吸をすると、出撃確認の為の声を上げる。

    「――アスラン・ザラ、出る!」

    アスランの声と共に、イージスが勢い良く射出され閃光が瞬く戦場へと消えて行った。

  • 45スレ主25/04/12(土) 22:02:06

    地球衛星軌道上で、智将ハルバートン率いる地球軍第八艦隊とザフト軍特務隊FAITH隊長であるユウキが
    率いる艦隊が戦闘を行っていた。地球軍第八艦隊は、敵機動兵器であるモビルスーツと自軍の主力攻撃機である
    モビルアーマーの性能差は明白ではあったが、その差を数で補い、現状の戦況は有利に動いていた。
    その反対に、ザフト軍は臨時編成された艦隊ながらも、シルバーウインド号の一件もあり、将兵の士気は高く、
    モビルスーツの性能を生かし数的不利を覆そうと奮戦していた。
    その中、地球軍第八艦隊旗艦メネラオスのブリッジでは、ハルバートンが戦況を見つめていた。

    「――第一次攻撃隊のメビウス、損耗率、三五パーセント超えました!」
    「……やはり性能の差が出ているか」

    オペレーターの伝える報告に、ハルバートンはモビルアーマーではモビルスーツに対して不利であると言う、
    現実を目の前に苦い思いをしながら呟いた。ハルバートンの呟きを聞いたホフマンは、神妙な顔つきで聞いて来た。

    「第二攻撃部隊の出撃、いかがいたしますか?」
    「出せるか?」
    「既に整っております」

    ホフマンは軍人らしい返事を返した。その時、オペレーターの声が響く。

    「――敵艦より新たな機影!数、三〇以上!ザフト軍第二陣の攻撃部隊かと思われます!」
    「この数、本命が来おったか!」
    「第二攻撃部隊、出撃させます!」
    「うむ」
    「――第二次攻撃部隊、出撃!」

    ハルバートンが頷くと、ホフマンが声がブリッジに響き渡る。
    号令と共に、発進体勢に入っていたメビウス攻撃隊の第二陣が続々と艦を発進して行く。
    ハルバートンとホフマンが、飛び去って行くメビウスを見送る中、続々と報告の声が上がる。

  • 46スレ主25/04/12(土) 22:02:41

    「――敵モビルスーツ、識別!ジン、多数!先鋒の艦隊、砲撃戦開始しました」
    「――先方の艦より入電。敵軍に新型のモビルスーツが投入されているようで……えっ!?」
    「――どうした?」
    「――は!失礼しました!どうやら新型のモビルスーツのようです!ただ、該当する機種データがあったので……」
    「――はっきりせんか!」

    ハルバートンは、煮え切らない返事をするCICの将校に対して、苛着いたように怒声を浴びせる。
    怒鳴られた将校は座ったまま背筋を伸ばすと、すぐに報告を始める。

    「――は!該当機種、地球連合軍GAT-X一〇二 デュエル、GAT-X三〇三 イージスです!」
    「「――!」」
    「識別信号はザフト軍の物となっております」

    その報告に、ハルバートンは息を飲んだ。ザフト軍と引き離されたしまった、機体性能での戦力差を逆転させる為、
    自らが中心となって推し進めた来た計画で完成した機体を奪われてしまうとは、悪夢でしかなかった。
    それを知るホフマンが、苦汁の表情を浮かべながら口を開く。

    「――な、なんとした事か!」
    「――くっ!……よりにもよって、ザフトの手に落ちているとは!」
    「閣下、どういたしますか?」
    「――敵の手に落ちたとなれば、敵である事には変わりない!撃ち落とせ!」

    本来、味方であるはずのGATシリーズは、PS装甲を装備している以上、メビウスを主力としている地球軍には、
    今までのモビルスーツ以上の脅威だった。しかも、敵の手に渡ってしまった以上は、やはり敵でしかない。
    ハルバートンは、ホフマンの表情以上に鬼気迫る表情で、腹の底から声を上げると、
    ブリッジの空気が震えたかのように響き渡った。

  • 47二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 03:22:26

    先に合流できてないから驚くわな

  • 48二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 09:02:03

    全滅する前に合流出来るのか?

  • 49スレ主25/04/13(日) 12:02:05

    月の地球連合軍プトレマイオス基地を眼前に見据え、クルーゼが指揮を執るザフト軍艦隊は、
    ブリッツを単機出撃させると、再び慣性飛行でプトレマイオス基地へと近づいていた。
    エンジンを停止させ、慣性飛行をしているとは言え、流石に巨大な鉄の塊である戦艦が見つからない訳は無い。
    イザーク・ジュールが乗る、ブリッツを出撃させてから、二十分程の時間が経過していた。
    クルーゼは、一度、時計を見るとニヤリと微笑み、静かに口を開く。

    「……そろそろ、いい頃合いだな。モビルスーツ隊の発進準備をさせろ。艦隊は最大加速で地球軍月基地へ向かえ」
    「――は!全艦、発進せよ!」

    アデスの口から号令が響くとヴェサリウスの船尾に一瞬、青白い炎が見え、船は一気に加速し始める。
    ヴェサリウスを追うように他の艦も、船尾に炎の尾を引きながら加速して行く。
    クルーゼは、モニターを見据えながらも冷笑を浮かべながら、アデスに言い聞かせるように静かに口を開く。

    「アデス、敵も馬鹿ではないだろうから、我々が着く前に迎撃機を出して来るだろう。
    通常装備のジンとバスターを出せるようにしておけ。D装備の機体は後からでかまわん」
    「――は!」

    クルーゼはアデスの返事を聞き流し、受話器を手に持つと回線を開いた。

    「ディアッカ、準備は出来ているか?」
    「隊長、待ちくたびれましたよ」
    「――ふっ。それは悪い事をしたな。ディアッカ、分かって居ると思うが抜かるなよ」

    受話器から響くディアッカの声は、待っていたとばかりに喜々とした物だった。
    ディアッカの言いようにクルーゼは苦笑いを浮かべつつも、淡々と上官としての責務を勤める。
    言うべき事を伝えると受話器を置き、再び視線を眼前にある地球軍基地へと向ける。
    そこに吸い込まれるように艦隊から次々にモビルスーツが発進して行った。

  • 50スレ主25/04/13(日) 16:16:10

    アークエンジェルの厨房は完全に火が落とされ、静まり返った食堂は戦闘態勢に入った事を感じさた。
    アークエンジェルがザフト軍との戦闘に入る事を知らなかったラクスがその事を知ったのは、厨房での仕事を終え、
    部屋に戻る途中の事だった。ブリッジに向かおうとしたラクスを、
    厨房のスタッフ数人が引きずるように部屋の前までやって来た。

    「お願いします!私を艦長さんの所に――!」
    「あなたは、部屋で大人しくしていなさい」
    「――お願いします!」

    両脇を男性スタッフに固められ部屋の前に立つラクスは、女性スタッフに向かって懇願するかのように声を上げた。
    女性は両脇を固めているスタッフに対して「離して」と言うと、ラクスは開放される。
    ラクスの両脇を固めていた男性スタッフはブリッジへの通路を塞ぐように立ち位置を変えた。
    女性はラクスに対して、目線を外さずに告げる。

    「あなたの気持ちがどうあれ、アークエンジェルは地球軍の軍艦なの」
    「しかし、私なら――」
    「――思い上がらないで!」
    「――!」

    ラクスは「――戦いを止める事が出来るかもしれません」と続けようとしたが、言う事を聞かないラクスに対して
    業を煮やしたのか、女性は怒鳴りつけた。怒鳴りつけられたラクスは、驚き言葉を続ける事が出来ず、
    ただ息を飲んだ。厨房スタッフとて、ラクスのプラントでの立場を知らない訳ではない。
    マリューの命令があったとは言え、仕事を手伝ってくれるラクスに信頼を置き始めていた矢先でこの出来事だ。
    女性はラクスを見据える。

  • 51スレ主25/04/13(日) 21:08:17

    「あなたがプラントでどれ程の立場だとしても、ここでは、ただの民間人です。
    あなたにアークエンジェルや戦場を、どうこう出来る権利は無いのよ」
    「――!」

    ラクスは、女性から告げられた言葉に息を飲んだ。
    そして自ら置かれた立場を改めて自覚し、無力さに俯く他なかった。

    「早く部屋に入りなさい」

    女性は部屋に入るよう促すが、ラクスは俯いたまま肩を震わせ、目尻にかすかに涙を溜めていた。

    「……分からないの?……それなら」

    動かないラクスに、女性は眉間に皺を寄せると腰のホルスターの銃を抜いた。
    そして、スライドを引き、弾を薬室に送り込むとラクスに対して銃を構えた。
     今まで銃など向けられた事など無いラクスは、顔を上げると目を見開く。

    「――!」
    「あなたと同じコーディネイターの彼も出撃するわ。こんな事を言いたくないけど、あなたがブリッジに行って
    迷惑を掛けている間に、彼や私を含め、アークエンジェルのみんなが死ぬ事になるかもしれないのよ」
    「……ルイや……キラや……みなさんが……ですか……?」

    女性は強張った表情で告げると、ラクスは途切れ途切れに呟きながら、再び俯く。
    ラスクは、自分を受け入れてくれた琉生やアークエンジェルの乗組員に死んで欲しくはなかった。

  • 52スレ主25/04/13(日) 22:00:59

    「そうよ。だから、大人しく部屋に入りなさい。お願いだから、私にこんな真似をさせないで」
    「……はい……」

    女性の言葉にラクスは力無く頷いた。それを見た女性は息を吐く。本当は銃など向けたくはなかったのだろう。
    ほっとした表情で引き金から指を外した。すると、通路を塞いでいたスタッフ達の背後から、
    黄緑色の鮮やかなロボット鳥が飛んで来た。

    「トリィ」

    人工的な合成音の声を上げながらロボット鳥は、ラクスの肩に舞い降りた。

    「……ロボット鳥ですか?」
    「トリィ?」

    ラクスは肩にちょこんと泊まるロボット鳥に驚きながらも、手の平を出してみる。
    すると、ロボット鳥はラクスの手に跳ねるように跳び移った。女性が銃をホルスターに収めながらラクスに言う。 

    「このロボット鳥、彼女のじゃない」
    「……彼女?……キラの……ですか?」
    「ええ。何度か見たわ。銃を向けて悪かったわね。早く部屋に入って」
    「あ、はい……」

    女性に促され、ラクスは部屋に入ると扉が閉じられる。電気を点けていない部屋は暗い。
    ラクスは、瞳を潤ませながら手に乗るキラのロボット鳥を宝物のように見つめる。
    そして、戦闘を止める事の出来ない胸の内を呟く。

    「誰も助ける事の出来ない……私は……どうすれば良いのですか……?」

    ロボット鳥はラクスを覗き込むように見上げながら首を傾げた。
    今のラクスには、琉生とアークエンジェル、そして、戦場に居る全ての者の無事を祈る事しか出来なかった。

  • 53二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 02:46:44

    ここのラクス成長出来そうだけど

  • 54スレ主25/04/14(月) 10:05:41

    地球軍第八艦隊の猛攻の中、ザフト軍モビルスーツ隊は獅子奮迅の働きを見せていた。
    モビルスーツ一機に対してモビルアーマー五機分と言われるが、ザフト軍は決して戦力的には負けている訳では無い。しかし、一気に襲い掛かられれば、やはり絶対的な物量差は脅威でしかなかった。
    そのような戦いを強いられる中で、これだけ持ち堪えているのは、
    アスランにとっては皮肉にも士気を上げる原因にもなったラクスのお陰でもあった。
    アスランは戦場を見回し、自軍のモビルスーツの展開が薄い場所を見分けると、
    援護に向かう為にスロットルを開いた。

    「両翼の展開が薄いか!ニコル、俺は左翼の敵を叩く」
    「分かりました。僕は右に展開します」

    アスランの通信に応えるようにニコルが返事をすると、二人はそれぞれのポイントへと向かわせる。
    その中、ジンとは明らかに違う新型の機体の為か、執拗に狙われる。

    「このイージスを狙って来ているのか!?チョロチョロと!」

    アスランはハエのように集るメビウスに吐き捨てると攻撃を避けた。
    攻撃して来たメビウスをビームライフルで狙うが、攻撃を阻止するかのように他のメビウスが、
    すぐにイージスを攻撃して来た。

    「――ちっ!」

    舌打ちをすると、直ぐに回避行動に入り、反撃をする。撃ち落すが数が多く減ったと言う気がしなかった。
    これだけの物量差を見せ付けられると、本当に生き残れるのかと思ってしまうが、PS装甲を搭載した
    最新鋭機とは言えど、隙を見せれば死に繋がる。泣き言は言ってられない。

  • 55スレ主25/04/14(月) 11:40:11

    「――地球軍め!数だけは多い!」

    再び攻撃をして来たメビウスを叩き落すと吐き捨てる。終わりが有るのかと思える程、次々とイージスに襲い掛かる
    メビウスに、アスランは苛立ちを見せ始める。その時、味方艦からの通信回線が入って来る。

    「――北天側が抜かれました」
    「――展開している部隊は何をしているんだ!」

    内容を聞いたアスランは腹立たしげに言葉を吐くと、通信回線を開いた。
    その間にも操縦桿を動かしながら敵の攻撃を避ける。
    アスランは、戦闘管制担当のオペレーターに捲くし立てるように口を開き、北天側へと機体を向ける。

    「――こちら、イージス!両翼に部隊を割いてくれ!北天には俺が向かう!あと、状況を教えてくれ!」
    「――既に北天側には、中央の数機がカバーに回っています」
    「突破した敵機は!?」
    「突破した敵機は艦から迎撃機を出します。イージスは第一次攻撃隊のジンと交戦中の敵艦を叩いてください!」
    「――っ!了解!」

    アスランは新たな命令に舌打ちをすると、指示の通り、第一次攻撃隊と合流する為にイージスの向かう先を変える。
    最も砲火が激しい宙域に向かって、イージスはバーニアを噴かし飛んでいった。

  • 56二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 13:51:22

    ラクスストップ無しでいけるか?

  • 57スレ主25/04/14(月) 20:45:20

    アークエンジェルのブリッジからも眼前で行われている戦闘の光が確認出来る程の距離に来ていた。
    最大船速での移動の為、戦闘の光は見る見るうちに大きく見えるようになる。その光の中にアークエンジェルは、
    この後、飛び込まなければならない。マリューは、その光景に息を飲みながら報告を待っていた。

    「――あと三六〇秒程で、目的ポイントに到達します。現在、戦闘が行われています」

    チャンドラが報告の為、声を上げるが、報告が無くとも見れば目の前で戦闘が行われている事を確認は出来る。
    マリューは目で見て分かる事よりも、第八艦隊の戦況が気になった。

    「戦況は分かる?」
    「流石にそこまでは……。ただ、電波がかなり入り乱れていますから、規模は大きいですね」
    「ええ。引き続き、分かる事が出て来たら報告を!」

    分かる事しか報告出来ないのは理解出来るが、マリューが欲しい情報は何一つ無い。
    マリューは、少し苛立たしげにチャンドラに言うと、顔をノイマンへと向ける。

    「――エンジンの方はどう?」
    「今の処は問題はありませんが……、ローエングリンを撃つのは無理だと思ってください」

    マリューは、こうなる事は分かってはいたが、再度、確認するかのように顔をナタルへと向けた。

    「他の兵装は?」
    「イーゲルシュテルン、コリントス等の兵器は問題はありませんが、
    ゴットフリート等のビーム兵器を多様するのは危険かもしれません」
    「……アグニに回して、エネルギーは問題は無いの?」
    「ゴットフリートに比べれば消費量は少ないですから、問題はありません。むしろ、
    ゴットフリートを使用するより、アヤセ准尉の射撃の方が遥かに撃墜率は高いはずです」

    マリューは、ローエングリン以外の兵器にも支障を来たす可能性がある事に眉間に皺を寄せるが、
    ナタルは、その事をあまり心配をしていないのか、軽く首を振ると真っ直ぐにマリューを見据えた。

  • 58スレ主25/04/14(月) 22:05:29

    「ええ。……だとしても、武器をフルに使用出来ないのは心許ないわね」

    マリューは頷くが、ナタルには、綾瀬姉弟が離脱する可能性がある事を伝えていない。
    その事を知らないナタルが瑠璃を当てにしているは分かるが、
    二人が離脱すればアークエンジェルの戦力は半減しする事は明らかだった。
    マリューは、ムウに二人に、離脱の事を伝えて貰った事を後悔はしてはいないが、
    せめて、この戦闘が終わるまでは残ってくれる事を願った。
    マリューの言葉を聞いたノイマンが、目の前に広がる宇宙空間を見据え、艦の操舵をしながら呟く。

    「どこかのタイミングで、エンジンを休ませる事が出来れば、持ち直す事も出来るんだけどな……」
    「……今は仕方ないわね。みんな、頼むわね」

    ノイマンの呟きを聞き取ったマリューは、険しい表情を浮かべながらもブリッジの全員に聞こえるように言った。
    アークエンジェルは、白い船体を滑らせるように光の尾を引いて、目の前の光の中へと進んで行った。

  • 59二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 04:14:20

    トール初陣だけど大丈夫か?

  • 60二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 09:16:57

    地球連合軍プトレマイオス基地では、ザフト軍の突然の来襲に慌てふためいていた。
    基地に居る者は、誰一人として、地球連合軍の宇宙の要であるプトレマイオス基地を
    攻撃して来るとは思っていなかった。
    基地内の司令部は状況報告が続々と入って来ていた。

    「――ザフト軍艦隊及び、敵モビルスーツ隊、接近中!」
    「ここを攻撃するつもりか?迎撃態勢に入れ!メビウスを出撃させろ!」
    「――は!」
    「コーディネイターめ!何を考えている!?」

    基地司令である壮年の男は指示を出すと、モニターに映る敵を睨みつけながら、予想外の来襲に吐き捨てた。
    慌しく士官たちが動く中、司令官が声を上げて新たなる指示を出す。

    「守備隊は迎撃態勢に入れ!出撃可能な艦艇は出撃させろ!何としても近付けさせるな!」

    その命令により、迎撃用の砲台が生えるように迫上がり、砲身がザフト軍へと向けられる。
    あとは、司令官の号令一つで火蓋が切られるのを待つばかりだった。

  • 61二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 13:31:21

    ハルバートン率いる地球軍第八艦隊は、戦闘を多少なりとも有利に進めてはいるが、
    それは僅かに天秤がこちら側に傾いているだけでしかない。いつ形勢を反されるか分からないだけに、
    ハルバートンは気を抜く事などは無かった。その中、旗艦メネラオスのブリッジに報告の声が伝えられた。

    「――戦域外に所属不明艦、出現!針路からすると、こちらに向かって来る模様」
    「――新手か!?」

    予想外の事にハルバートンが眉を顰めた。もし、敵新型艦であれば簡単に戦況など反されてしまうかもしれない。
    ホフマンはCICオペレーターに確認するかのように声を掛ける。

    「どこの艦か分からんのか?」
    「――分かりません!認識コードを持って無い模様です」
    「どう言う事だ……?もしや、アークエンジェルか!?」
    「判りかねます」

    報告にハルバートンは、この所属不明艦がアークエンジェルではないかと微かに期待をするが、
    ホフマンは険しい表情のまま、首を横に振った。そして、戦況を見据えながら報告を待った。
    実際、待ったのは、ほんの数分なのだろうが、それ以上に長く感じた。

    「――艦特定!艦籍、地球連合軍アークエンジェル級です!」
    「――アークエンジェルか!」
    「――なんと、無事だったのか!」

  • 62二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 21:11:14

    ハルバートンは報告に喜々とした表情を見せると、隣のホフマンは驚きの声を上げた。
    アークエンジェル級艦は、正しくアークエンジェルのみがロールアウトされているだけで、
    報告にあった艦は確実にアークエンジェルを指していた。
    ハルバートンは逸る期待を隠せぬようで立ち上がると、確かめるようにオペレーターに声を掛ける。
     
    「――アークエンジェルから連絡は!?信号は出していないのか?」
    「――ノイズが多い為、上手く聴き取れません!」
    「……もしや、イージス、デュエル同様にザフトに……」

    ホフマンの言葉通り、可能性として無い訳では無い。むしろ、イージス、デュエルが敵の手に落ちている以上、
    可能性が高い。ハルバートンは少し考え込むと、ホフマンを見据えながら口を開く。

    「……可能性が無い分けではないな。こちらからアークエンジェルに呼びかけろ!
    その上で反応が無いなら、敵と判断する!」
    「――は!」

    ハルバートンの指示にホフマンが頷く。――この状況でのアークエンジェルの出現が戦いの鍵になるのかもしれない。
    ハルバートンは胸に秘めつつ、行われている戦闘に目を向けた。

  • 63二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 05:35:05

    なんとか合流出来たか

  • 64二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 08:04:53

    このレスは削除されています

  • 65スレ主25/04/16(水) 08:07:37

    地球連合軍プトレマイオス基地を強襲中のザフト軍第二次攻撃隊は、前哨戦として
    基地より出撃したメビウスと戦闘を行っていた。その中には、バスターで出撃したディアッカの姿があった。

    「――遅い!」

    ディアッカがトリガーを引くとバスターの右腰に装備されている電磁レールガン、
    三五〇ミリ ガンランチャーが火を噴く。弾頭が散弾のように広がると、二機のメビウスに直撃し、
    モビルアーマーを鉄のゴミへと変えて行った。
     
    「よえーよ!ったく、数だけ多いだけで手応えが無いな」

    ディアッカは、本当にここが敵軍の宇宙での要なのかと疑いたくなり、吐き捨てる。しかし、まだ前哨戦でしかなく、本当の反撃がこれからなのも分かっていた。そうしている間にも、再び、メビウスがバスターへと襲い掛かる。

    「――食い物に集るハエみてえに!こっちはお前達に構ってらんないんだよ!」

    ディアッカは攻撃を避けながら毒づくと、狙いを着けてトリガーを引いた。
    また一機、撃破するとプトレマイオス基地へと視線を向け、バスターを向ける。

    「さて、とっとと、砲台を潰しちまうか」

    バスターに続くようにジン後を追いかけ、基地へと向かって行く。ディアッカの視線の先にある
    プトレマイオス基地周辺では、先に出撃した同僚であるイザーク・ジュールがどこかで息を潜めている。

    「イザークの奴、上手くやってくれよ。頼むぜ」

    ディアッカは呟くと、迎撃を開始した砲台をジンと共に潰しに掛かった。しかし、プトレマイオス基地からの
    砲撃は凄まじい物で、容赦無くジンを叩き落として行く。ここにプトレマイオス基地攻防戦の幕が上がった。

  • 66スレ主25/04/16(水) 12:44:37

    ユウキを指揮官として臨時編成されたザフト軍艦隊は、第八艦隊に押され気味の戦いを強いられていた。
    元々、編成された艦は、ほぼ全てが違う隊に属していたのだから、満足に連携など取るのは容易では無い筈で、
    逆に言えば良く戦っていると言える。臨時編成されたザフト軍艦隊の当初の目的は、地球軍基地から
    主力艦隊を引き離す事にあって、その任を果たしたとも言えたが、通常なら引く事も出来ただろう。
    しかし、ラクス・クラインの弔い合戦と言う意味合いが強く、プラントでの戦意高揚の為にも、
    負けると言う事だけは避けなければならなかった。
    その中、ザフト軍も所属不明艦をレーダーで捕捉した事が、戦闘中の各モビルスーツへ伝達されたのだった。

    「――所属不明艦!?」

    戦闘宙域右翼に展開したニコルは、デュエルのコックピットでスピーカーから聞こえて来る情報に耳を澄ました。
    そこへ、メビウスの編隊が攻撃を仕掛けて来る。
     
    「――っ!」

    スピーカーに気を取られていた為か、一瞬、反応が遅れるが、シールドで初弾を防ぐと、デュエルはバーニアを
    噴かして回避行動に入り、すれ違い様に狙いを合わせ反撃に転じる。ニコルは、回避行動の遅れた
    一機のメビウスにビームを直撃させると、二機目に狙いを合わせ、トリガーを引いた。
    右翼に展開している味方のジンも同様にメビウスに対して攻撃を仕掛けている。

    「――ふう……。危なかった……。油断しないようにしないと……」

    ニコルは息を吐くと、機体を動かしながら戦場を見回した。やはり、地球軍の攻撃機が多く、
    数では圧倒されているが、数分前に比べればこの宙域の敵の数も減ってきてはいた。
    そこへ、通信回線が入り、スピーカーからアスランの声が聞こえてきた。

    「――ニコル!所属不明艦が現れたのを聞いたか?」
    「あ、はい!聞いてます!しかし、いったい――」
    「――戦闘中の各機!所属不明艦は、ヘリオポリスで取り逃がした地球軍新型艦と同型と一致。
    恐らく、逃走した艦が現れたと思われる!各機、注意されたし!所属不明艦の進行ポイントは――」

  • 67二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 18:41:45

    いよいよか

  • 68スレ主25/04/16(水) 21:29:20

    ニコルがアスランに返事をしていると、新たな通信が入り、ヘリオポリスで自分達が取り逃がした
    アークエンジェルである事が分かった。二人は、その事実に息を飲んだ。

    「……僕があの船に一番近い場所に居るのか……」

    ニコルは呟いて、アークエンジェルの居る方向に目を向けた。――あの艦が現れたと言う事は、
    アスランの友達であるキラさんも来ている!?そんな事をニコルは考えていると、
    再び、スピーカーからアスランの声が聞こえてくる。

    「――そっちから来るぞ!注意しろ!」
    「――分かってます!」

    ニコルはアスランに返事をするとコンソールの通信ボタンを押し、後方に控える艦隊へ通信回線を開き
    、戦闘管制担当オペレーターへと繋げた。

    「こちらデュエル!ニコル・アマルフィです!所属不明艦に対しての指示をお願いします!」
    「――援護を向かわせた!右翼に展開中の部隊は、戦線を維持!援護が到着次第、
    デュエルはジンと共に所属不明艦の攻撃に向かってください!」
    「――了解!」

    ニコルは指示に頷くと回線を閉じ、アスランへと通信を繋ぐ。

    「アスラン!僕が迎撃に向かいます!」
    「――ニコル!俺も――」

  • 69スレ主25/04/16(水) 22:03:43

    ニコルはアスランが言いかけた処で、強制的に通信を閉じた。アスランの言いたい事は大体分かったし、
    彼をキラの所に向かわせたくはなかった。
    援護のジンが来るのを待っているのも、もどかしい位で、早くキラを説得しなければと心が焦る。

    「……何としても、アスランと戦わせませんよ」

    ニコルは宇宙空間を見ながら自らの決意を確かめるように呟いた。
    やがて、増援が来ると、ニコルは五機のジンと共にアークエンジェルへと向かって行った。

  • 70二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 01:52:31

    いつも楽しみにしています
    無理せず頑張ってください

  • 71スレ主25/04/17(木) 09:49:18

    イザークの目の前では、地球軍プトレマイオス基地の守備隊と、自分が所属するザフト軍モビルスーツ部隊
    との激しい戦闘が繰り広げられていた。集中砲火を浴びる味方機を見て、今すぐにでも飛び出して行きたい
    気持ちだが、作戦上、それはまだ出来なかった。――それも、もう少しの辛抱だ。待っていろよ……!
    イザークは顔を歪ませると自分に言い聞かせる。ブリッツは隠蔽機構"ミラージュコロイド"を展開させ、
    月の地表伝いに移動し、敵基地内の味方の攻撃の薄い場所を移動していた。
    このように隠れて戦うのは、イザークの性に合わなかった。しかし、これも作戦であり、
    この機体に自ら志願して乗っているのだから、仕方ない。勿論、味方の攻撃を喰らい、
    笑い者になるつもりは毛頭無い。それも、あと数分で終わる。
    やがて、港口が見えてきた。侵入をさせない為にか、隔壁は全開にはなっておらず、
    僅かに戦艦が一、二隻程が出られる位にしか開いてなかった。
    そこから、メビウスが出て来るのは、中にモビルアーマーを搭載していた空母なり、
    戦艦がまだ待機しているからであろう。
     
    「――フッ!ナチュラルどもが、俺がここに居るとも知らずにな――!」

    イザークはブリッツのPS装甲を展開させ、ミラージュコロイドを解除し、
    近くにあった砲台を五十ミリ高エネルギーレーザーライフルで次々と破壊して行く。
    そうしていると、一部の砲台がブリッツに対して攻撃をして来た。

    「――動けもしないそんな物で俺を落とせると思うな!」

    イザークは吐き捨てるとバーニアを噴かし、砲撃を避けながら次々に狙い撃つ。やがて、
    ブリッツの周りにあった砲台は全てが沈黙した。視線を港口に向けるとザフト軍艦隊を攻撃する為か、
    戦艦の船首が港口から生えるように出て来るのを確認する。
    数隻の戦艦が出ている以上、内部に突入した時に戦艦が残って居なければ、
    クルーゼの作戦に意味は無くなってしまう。

    「――戦艦か!?出させるか!」

  • 72スレ主25/04/17(木) 13:05:41

    イザークは、ブリッツのバーニアを噴かし、港口から出きっていないドレイク級戦艦のブリッジの前へと飛び出した。
    ――ここで艦橋を叩き潰せば、座礁させる事が出来る!

    「――沈めっ!」

    ブリッツは、左腕に装備されたグレイプニールを発射し、その爪で戦艦のブリッジを貫いた。
    グレイプニールを引き戻すと、ドレイク級戦艦はコントロールを失い、船体半ばを隔壁に引っ掛けるように座礁した。
    イザークは、そのままブリッツを基地内へと向けバーニアを噴かす。
    ドック内部は、ドレイク級戦艦が座礁した事で、後に続く艦艇が支えていた。
    それを無効化して行くように内部に移動しながらレーザーライフルで攻撃して行く。

    「――こちらブリッツ!敵基地内に入った!」

    イザークは通信回線を開き、怒鳴るように伝えると、そのまま内部へと向かう。
    プトレマイオス基地内部に突入したブリッツを追うように、拠点攻撃用重爆撃装備を施した
    D装備のジンが次々と突入して行った。

  • 73スレ主25/04/17(木) 21:02:45

    アークエンジェルは戦闘宙域に差し掛かり、ブリッジは緊迫した雰囲気になっていた。
    これが味方である地球軍の戦況が分かっていれば、また違うのかもしれない。
    CICの席に座り、トノムラが必死に通信をしているのだが、戦闘の為か電波状況が悪く、
    なかなか地球軍旗艦を確認出来ないでいた。
     
    「――メビウス・ゼロ、発進どうぞ!」

    ここまで来れば、何時攻撃されてもおかしくはない。ミリアリアの声がムウに発進許可を伝えると、
    カタパルトからメビウス・ゼロが宇宙空間に飛び出して行った。
    メビウス・ゼロは旋回して戻ってくると、ぴたりとアークエンジェルの横を並ぶように飛行する。
    マリューはメビウス・ゼロに視線を向けると、丁度その時、トノムラが声を上げる。
     
    「――地球軍第八艦隊のようです!」
    「――第八艦隊!こちらからも呼びかけて!」

    マリューは、すぐに指示を出すと、味方の艦隊が第八艦隊であった事で、
    更に安心したのか、ほっとした表情を見せた。ナタルも報告を聞き、表情を緩める。

    「艦長、やりましたね」
    「ええ、一先ずはね」

    マリューは頷くと前方を見据えながら、一度だけ大きく息を吐いた。そうしていると、再びトノムラが声を上げる。
     
    「――繋がりました!」
    「こっちに回して!」
    「――どうぞ!」
    「こちら地球連合軍大西洋連邦所属艦アークエンジェル!マリュー・ラミアス大尉です!ハルバートン提督を――」

    マリューは受話器を手に取ると、必死に呼びかけを始めた。
    すると、すぐに返答があり、モニターにノイズ混じりだが、ハルバートンの姿が映る。

  • 74スレ主25/04/17(木) 22:23:49

    「――アークエンジェルか!ヘリオポリス崩壊の知らせを受けた時は、もう駄目かと思ったぞ。良く生きていた!」
    「――ありがとうございます!お久しぶりです、閣下!」

    マリューは腰を上げ、そのまま敬礼をする。ハルバートンもアークエンジェルが
    無事だった事に安堵したのか、嬉しそうな表情を見せた。

    「うむ。だが、今は戦闘中だ。悠長に挨拶をしている時ではない。
    ザフト軍の中にX-ナンバーが二機、混じっている。どう言う事か説明をしてくれ」
    「――は!我々はヘリオポリスでザフト軍に襲撃を受け、四機のX-ナンバーを奪取され、
    その時、艦長以下、多数の戦死者が出ました。しかし、一機は無事に収容してあります。それからですが……」
    「……そうか、分かった……もういい。良くここまで艦と残りのGを守ってくれた」
    「……申し訳ありません」

    マリューは、ハルバートンの労いの言葉を受け、逆に四機のGATシリーズを守れなかった事に
    肩を落としながら謝罪の言葉を口にした。しかし、その姿を見たハルバートンは、
    状況が状況だっただけに仕方が無いと言った感じで口を開く。
     
    「何を謝る?確かに残ったのがG一機と言うのは心許ないが、
    君達はここまでアークエンジェルと、その残りの一機を守ってきたのだろう?」
    「しかし……」
    「――敵モビルスーツ、こちらに向かってきます!機数、七!距離六〇〇――!」

    マリューが口を開くと同時に、チャンドラ二世が敵機の報告の声を上げた。
    すぐにマリューは、言葉を飲み、ナタルに指示を出す。

    「――!迎撃用意!ナタル、少しの間、任せるわよ!」
    「――は!各ミサイル発射管、全門開け!バリアント両舷起動!
    アンチビーム爆雷、発射用意!――ゴットフリートは使えるか?」

    ナタルは頷くと戦闘準備の声を上げ、ノイマンに声を掛けた。ノイマンは顔をナタルに向けると真剣な表情で答える。

  • 75スレ主25/04/17(木) 22:26:05

    「――この状況では、あまり使って欲しくないです!」
    「ストライクはまだか?」
    「――はい!もう少し掛かるようです!」

    ノイマンの言葉にナタルは頷き、すぐにミリアリアに確認を取ると、
    ミリアリアは頷いて、ストライクの出撃に時間が掛かる事を報告した。
    ナタルは、すぐに通信回線を開くとアムロに繋いだ。

    「――アヤセ准尉!ゴットフリートを多用出来ん。申し訳まいが頼む。
    あと、ストライクの出撃にもう少々掛かるようだ」
    「――了解。状況報告はこっちにも流してくれ」
    「了解した」

    琉生の声が、ナタルの耳び響くと頷いた。その間にもマリューは、ハルバートンから指示を受けていた。

    「我々は、今、アークエンジェルとGを失う訳にはいかん。頼んだぞ」
    「――は!了解しました!」

    マリューは敬礼をすると通信回線は切れ、モニターからハルバートンの姿が消える。
    艦長席に腰を下ろすと、マリューはノイマンに指示を出す。

    「ノイマン曹長、指示のあったポイントに向かって!補給を受けるわ。敵モビルスーツを何としても振り切って」
    「――了解!」

  • 76スレ主25/04/18(金) 03:38:17

    アークエンジェルは地球軍第八艦隊旗艦メネラオスの後方に控える補給艦と合流すべく、進路を変更する。
    しかし、確実に敵のモビルスーツが接近しつつあった。

    イージスは、第一次攻撃隊の生き残りのモビルスーツと共に敵戦艦の攻撃に回っていた。
    第一次攻撃隊と言っても、生き残ったのは片手で数えられる程で、実質、一次、二次の混成部隊となっている。
    アスランは、アークエンジェルが現れた事で、戦闘管制担当のオペレーターに
    自分を向かわせるように要請したが却下され、今に至っていた。

    「あの艦が現れたんだ……キラが来ていると言うのに……!」

    悔しそうに言葉を吐きながらもアスランは、イージスをコントロールし続ける。
    そうしなければ、いつ撃ち落されてもおかしくはなかった。

    「――くっ!」

    イージスは敵艦からの飛来するミサイルを避けると、機体を翻し、近付くメビウスを撃ち落とした。
    アスランは、母親がユニウス・セブンで核攻撃で殺されて以来、
    これ程、地球軍を憎いとは思った日は無いかもしれない。地球軍が無ければ、母は死ぬ事は無かったし、
    きっと自分やキラもモビルスーツなんかに乗る事は無かったかもしれない。そして、
    ラクスやフレイだって平和に暮らして居たに違いない。
     
    「お前達が居なければ――!」

  • 77スレ主25/04/18(金) 09:01:04

    アスランは叫ぶと、地球軍ドレイク級戦艦のブリッジの目の前まで距離を一気に詰め、イージスの左腕を振り抜いた。
    ブリッジの正面をイージスの腕が突き破る。アスランは、イージスの腕を引き抜く為に、
    船体を蹴ると腕が抜けると同時に、ブリッジの中に充満していた酸素と、
    まだ生きているであろう地球軍兵士の体が、イージスの開けた穴から、一気に流れ出て来た。
    そして、宇宙空間に放り出された地球軍兵士が死ぬ瞬間を目の当たりにした。
    何度も戦いで人を殺しているのに、何故だかアスランは自らの行為に恐怖した。体を震わせ、何度も顔を横に振る。

    「――っ!俺は――、俺は――!」

    ――こんな事をしたいんじゃない!と、自らの八つ当たりに対して、言い訳染みた言葉を出そうと声を荒げるが、
    自らの行為に言葉が続かず、「くそっ!」自分に対して吐き捨てた。
    地球軍兵士の亡骸がイージスにぶつかり、そのまま流れて行く。
    ――これはみんなを守る為の戦争なんだ……これが戦争なんだ……仕方がないんだ……。
    アスランは、自らを納得させるように言い聞かせながらも、更に体の震えが酷くなった気がした。

  • 78二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 15:22:44

    アスフレ成立の影響が出てるな

  • 79スレ主25/04/18(金) 22:02:55

    補給を受ける為に、逃げるアークエンジェルを追って来たザフト軍モビルスーツを退ける為に、
    改造ジンに乗るムウとカンヘルに乗る琉生が奮闘していた。
    ストライクは整備が終わっていないので未だ出撃出来ず、トールのジンはエンジン部の直衛に回している。
    援護はアークエンジェルの砲台代わりになっている瑠璃の狙撃と、アークエンジェルからのミサイル攻撃のみ。
    しかし既に、琉生がデュエルを抑えていたいた。
     
    「――ちっ!援護があっても一人で五機は辛いぜ!」

    ムウは機体を逸らすと、ジンからの攻撃が横を通り抜けて行った。口からは、吐き捨てるような愚痴が零れた。
    アークエンジェルから援護のミサイルが飛んで来た事で、敵機は回避行動に入る。
    ムウは、それを狙い済ましたように、一機のジンに対してガンバレルを展開させた。

    「――甘いんだよ!」

    ガンバレルからの集中砲火がジン右腕を吹き飛ばすと、畳み掛けるようにビームライフルを発射し、
    ジンのボディに直撃し爆発した。ムウはガンバレルを戻すと、
    全力で回避運動に入るが、それを追うようにジンが迫って来た。

    「――ヤバイか!?」
    「――そこ!」

    瑠璃からの狙撃が、ジンを見事に捕らえ、一瞬にしてジンは溶けて行った。
    ムウは肝を冷やしながらも回避運動を続け、確認するように声を上げた。

    「――ルリか!?」
    「大丈夫ですか?」
    「ああ!まだ追っかけっこの最中だが、残り三機に減ったぜ。援護頼む!」
    「分かってます!こちらの攻撃に当たらないで」
    「――了解!――そこ!落ちろよ!」

  • 80二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 06:46:22

    ハルバートン提督は助かりそうだけど

  • 81スレ主25/04/19(土) 11:17:23

    ムウは前にジンを捕らえるとトリガーを引き、ガンバレルのリニアガンを連射した。
    一発がジンの頭部に当たると、一瞬、動きが止まる。そこをすかさず、ビームライフルでコックピットを直撃させる。

    「――おっしゃ!ルリ、キラはまだか?」
    「出撃体勢に入った!」

    瑠璃の声を聞くと、攻撃を回避しながら後方を確認する。マークするようにデュエルが付いて来ていた。

    「早くしてくれ!ジンじゃ相手に出来ないのがいるんだ!」

    基本性能が元と大差無い改造ジンではGATシリーズの機体を相手にするのは、あまりにも分が悪すぎる。
    ムウは苦々しい表情を浮かべると、スロットルを全開にして回避運動に入った。

  • 82スレ主25/04/19(土) 16:07:36

    地球連合軍プトレマイオス基地司令部では続々と報告の声が上げられていた。見るからに状況は芳しくない。
    突如、姿を現したブリッツの攻撃とドックへの侵入で、最悪の状況も想定しなければならない程だった。

    「――艦座礁!港口隔壁、閉まりません!敵モビルスーツ、多数、基地内に侵入!」
    「――くっ!どこに隠れていたと言うのだ!」

    司令官が鬼気迫る表情でモニターを見つめながら言葉を吐く。
    座っていたオペレーターが司令官へ顔を向けると、困惑気味の表情で報告を始める。

    「……侵入した新型機種特定しました……。地球連合軍……GAT-X二〇七 ブリッツです」
    「――な、なんだと……!?」

    司令官は愕然とした表情になった。GATシリーズは地球連合軍の切り札となるはずの機体だった。
    それがこうして、プトレマイオス基地を攻撃しているのだから、無理もない。
    そこへ、再び、追い討ちを掛けるように別のオペレーターが報告の声を上げる。

    「――基地上空の敵新型機、GAT-X一〇三 バスターです!」
    「……ハルバートンの計画が仇となったか!とにかく、ここをやらせる訳にはいかん!打ち落とせ!
    最深部、工場区、火薬庫に繋がる隔壁は全て閉鎖しろ!」

    報告を聞くと、その険しさが更に険しい表情へと変わって行くと、オペレーターが凍りついたように見つめていた。
    司令官は、すぐに大声で指示を出すとオペレーター達が再び動き出した。

    「第八艦隊はどうしている?」
    「現在、地球衛星軌道上で交戦中のようです」
    「――ちっ!地球の馬鹿どもが、ザフトの幼稚な作戦に掛かりおって!その皺寄せがこれかっ!
    第八艦隊にこの事を知らせてやれ!癪だが、月の各基地に支援要請だ!」

  • 83スレ主25/04/19(土) 18:54:39

    司令官の隣に立つ副官が第八艦隊の状況を答えると、腹立たしさを隠さないまま、新たな指示を出した。
    その間にも、続々と報告が上がり、そしてオペレーター達によって処理されて行く。

    「――ドック第二層隔壁閉まりません!敵モビルスーツ、ドック第三層侵入!」
    「――ちっ!……このままでは、ユーラシアの連中を増長させる材料にもなりかねん……」

    新たな報告に、司令官は舌打ちをすると、誰にも聞こえない程の声で呟いた。
    決断を下さなければ壊滅の危険性も有る。司令官は最終手段として、完全な守りに入る事を決定した。

    「下ろせる隔壁は全て下ろせ!対核用の隔壁もだ!場合に因ってはドックは破棄してもかまわん!」

    司令官の声がフロアに響き渡ると、オペレーター達が動揺したような表情を見せる。
    プトレマイオス基地は、元々、大西洋連邦の宇宙での要となる基地で、
    ドック、火薬庫、工場区、司令部などは核攻撃などにも耐えうるだけ強固な造りをしている。
    対核用の隔壁は通常の三倍近い厚みを持ち、特殊合金製を使用している為、早々突破は無理な代物なのだ。

    「――!し、しかし、それではドック内に残された味方が!」

    副官がオペレーター達の動揺を代弁するかのように声を上げた。
    それを睨みつけるように司令官は口を開く。その顔は鬼のような形相だった。

    「隔壁を下ろさずに基地内で艦船を爆発してみろ!この基地とて、唯では済まん!犠牲は已む得ん!」
    「――りょ、了解しました!」

    司令官の言葉を聞き、副官は顔を青ざめさせた。何があっても、このプトレマイオス基地を
    落とされる訳にはいかない。それは、地球連合宇宙軍内での覇権争いで大西洋連邦の敗北を意味する。
    敵はコーディネイターばかりではないのだ。

  • 84スレ主25/04/19(土) 21:03:17

    キラの目の前には宇宙空間が広がっていた。その先には光が瞬き、そして消えて行くのを繰り返している。
    既に、琉生も瑠璃もムウも出撃し、アークエンジェルの外でザフト軍との戦闘に突入していた。
    先ほどまで琉生と一緒にストライカーパックの同時使用ができるよう調整していた。
    キラは予想以上に掛かったプログラム調整を焦りながらも終わらし、
    ようやくカタパルトデッキにストライクを進めた処だった。
    背中にストライカーパックが装備されると、暗いストライクのコックピットにミリアリアの声が響く。

    「――ストライク、どうぞ!」
    「――キラ・ヤマト、ストライク行きます!」

    キラの声と共に、ストライクはアークエンジェルを飛び出して行く。
    そのままバーニア噴かし、瑠璃の改造ジンへと通信回線を開く。
     
    「ルリ、アークエンジェルをお願い!」
    「分かっている!キラこそ援護の砲撃に当たらないで!」
    「わかった!」

    瑠璃の声を聞くと、アークエンジェルから五〇メートル程離れてアグニを構える改造ジンを確認する。
    キラはバーニアを噴かし、ムウの援護へと急ぐ。
    戦闘はアークエンジェルから、それ程離れていな宙域で行われていた。
    すぐにコンソールの画面で敵機の数を確認する。数は三機。
    ムウに通信回線を開くと同時にPS装甲を展開させ、一番近くに居たジンへと攻撃を仕掛ける。
     
    「ムウさん、遅れました!援護に入ります!」
    「ようやく来たか!とっとと倒して補給を受けようぜ!」
    「はい!」

    ジンもストライクに気付いたのか、改造ジンからストライクへ攻撃対象を変え、ライフルで反撃して来た。
    キラは、ジンをイーゲルシュテルンで距離を取りながら出方を窺う。しかし、ジンは一気に距離を詰めて来た。

  • 85二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 22:25:03

    意外とAA組が強化されてるな

  • 86二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 08:14:15

    パーフェクト程じゃないけど使い回せるようにしたのか

  • 87スレ主25/04/20(日) 13:09:12

    「――今だ!当たれ!」

    キラは、すかさずストライクの右肩に装備されたガンランチャーに装備された一二〇ミリ対艦バルカン砲の
    トリガーを引いた。しかし、ジンは易々と攻撃を避け、反撃へと転じる。

    「――外れた!?狙いが甘かった!?――くっ!――機体が重い!?」

    キラは、エールパックにガンランチャーを装備している為か、機動性が落ちているように感じた。
    ジンの攻撃を何とか回避すると、再び距離を取る。キラは、アムロに教えてもらった事を反復するかのように
    回避行動を取りつつ、距離を詰め始めた。最初の攻撃が失敗したのは、
    マニュアルに切り替えるタイミングがうまく行かなかなかったのが原因だった。

    「――今度こそ!」

    マーカーがジンを捕らえると、キラはタイミングを見極めながら砲撃をマニュアルに切り替え、
    操縦桿を細かく動かす。そして、トリガーを引いた。バルカン砲が再び火を噴き、
    ジンの左肩からボディの上部を削って行く。頭部が吹き飛ぶと同時にジンは爆発を起こした。

    「やった!次は!?――ルイ!?」

    キラは、すぐに機体を旋回させるとカンヘルの位置を確認して、バーニアを噴かした。
    カンヘルはデュエルとドックファイトを繰り広げていた。追加装甲アサルトシュラウドのを装備したデュエルの
    スピードは予想以上に素早い。琉生は長棍を叩き込んだが、PS装甲の上に更に装甲がされている為、
    近接武器は実体しかないカンヘルでは完全なお手上げ状態だった。

    「――糞!ライフル置いて来たの失敗だった!」
    「その機体は私が相手をする!もう一機をお願い!」
    「すまん!こいつは頼んだ!」

  • 88スレ主25/04/20(日) 18:42:04

    「――追加装甲を装備しているからって!」

    何故だか知らないが、デュエルは追いかては来るが攻撃はして来ない。キラは、ストライクをデュエルの下へ
    と回り込ませると、デュエルの動きを封じ込める為に、三二〇ミリガンランチャーのトリガーを引いた――。

    「――えっ!?」

    発射されるはずのガンランチャーが発射されず、再度、トリガーを引くが、
    やはり、ガンランチャーは発射されなかった。

    「――プログラムミス!?――まずい!」

    キラは目の前に迫るデュエルを回避しようとするが、デュエルはストライクを捕まえようと手を伸ばした。
    デュエルがストライクを捕らえたのか、揺れがキラを襲う。

    「――うわっ!」
    「――攻撃をやめてください!キラ……キラ・ヤマトさんですよね?」

    突然、聞こえて来た声にキラは驚き、どうして自分の名前を知っているのかと戸惑った。
    モニターにはデュエルの腹部が映っていた。

    「――え!?……君は?君は誰?」
    「僕は、ニコル・アマルフィと言います。アスランの友達です」
    「――アスランの!?」
    「……はい。それからフレイ……フレイ・アルスターも友達です」

    久々にフレイの名を聞き、更に驚きが増す。アークエンジェルでの多忙な日々で、
    頭がフレイの事まで回らなかったが、好きな女性なのだから、忘れる筈も無い。

  • 89スレ主25/04/20(日) 22:16:27

    「――フレイ!?どうしてフレイ・アルスターを知ってるの!?」
    「アスランがへリオポリスで助けて仲良くなりました。今はプラントに居ます」
    「アスランが!?フレイは無事なの?」
    「はい。元気にしてますよ」

    ニコルの話を聞いたキラは、アスランがフレイ助けた事を、自分が知っている昔の彼らしく優しい行動だと思った。
    そして、同時にフレイが無事だった事に安堵する。しかし、
    それだけの理由で敵であるニコルが、声を掛けるはずなどありえない。

    「そう……良かった……。それで、僕に何の用?」
    「アスランもこの宙域にいます。アスランは、あなたとは戦いたくないんです。あなたが居れば、
    戦わなければいけなくなる……。だから、戦うのを止めてください!お願いします!」

    ニコルは、思い詰めるような感じでキラに自分の願いを話した。
     キラは、その話を聞き、アスランの為に一生懸命になれるニコルも優しい人間なんだと感じる。
     しかし、ニコルの願いを聞くと言う事は、一度決めた自分の覚悟を捻じ曲げる事になる。それは、友達やアークエンジェルの人達を裏切る事だった。そして、ニコルが言っていたフレイの事が引っ掛かり始める。

    「……私だって、アスランと戦いたくないよ!でも、みんなを傷つけて、私達の帰る場所を壊したのは
    君達じゃない!――もしかして、フレイはその為の人質なの!?」
    「――違います!フレイとは本当に友達なんです!人質なんかに取りません!信じてください!」
    「……信じていいんだね?……嘘なら許さないから!」

  • 90スレ主25/04/20(日) 23:05:14

    ニコルは取引に為に、フレイの事を話したのではないと必死に弁明しようとする。
    キラも、ニコルの必死さを感じ取ったのか、頷くと、釘を刺すように言葉を付け足した。
    キラの言葉に答えるように、ニコルは口を開くと、自分の想いをぶつける。

    「――はい、嘘じゃないです!……へリオポリスの事は、確かに僕達に非はあります。だけど、
    あなたとアスランは友達なのに戦うなんて、おかしいですよ!それに、あなたはコーディネイターなんでしょう?」
    「――おかしい?私とアスランが戦うのがおかしいの?ナチュラルだからコーディネイターだからなんて
    関係無い!私は友達や大切な人達を守りたいから戦ってるんだ!」
    「――!」

    キラは、ニコルの言葉で火が着いたのか、捲くし立てるよに言うと、ニコルはショックを受けたように、
    一瞬、言葉を失った。そして、しばしの無言の後、泣きそうな声でキラに怒りをぶつけるように言葉を吐く。

    「……それじゃ、アスランは友達じゃないんですか!?アスランを傷つけるんですか!?」
    「……今だって友達だって思いたいし、傷つけたくないよ!でも……アスランがアークエンジェルに
    居るみんなや友達を攻撃するなら、私はアスランでも許さない!私は、みんなを守る為に戦うって決めたんだ!」
    「……そうですか……。どうしてもアスランの敵になると言うんですね!
    ――それなら、僕はアスランの為に戦います!」

    キラの言葉は、ニコルを絶望させる。ニコルは憎しみが分かる程、
    力のこもった言葉を吐き、ストライクを睨みつける。
    キラと言う人間は、ニコルにとって、本当の意味で敵になった。

  • 91二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 07:12:51

    この世界だとお互い認識するのか

  • 92二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 13:41:05

    ニコルなら事情知ってたらこうなるって思えるな

  • 93スレ主25/04/21(月) 22:16:07

    そのような状況の中、瑠璃の改造ジンはアグニの砲身はデュエルに向けられているが、
    ストライクが密着している為、撃つに撃てないでいた。
    ストライクとデュエルが絡まったまま動かない事に、琉生達が声を上げる。

    「キラが止まっているぞ!何があった!?」
    「キラの馬鹿野郎!なに止まってんだよ!二人共、ジンは頼んだ!」
    「分かった!キラを頼む!」
    「了解!」

    残り一機のジンに軽微なダメージを与えた処で、琉生がストライクを確認すると、旋回してストライクへと向かった。
    勿論、琉生が相手をしていたジンは急旋回をすると、カンヘルを追い始める。
    瑠璃はその間に、アグニの狙いをデュエルからジンへと変え、狙いを定める。

    「――当たって!」

    瑠璃はトリガーを引くと、アグニから光の束が走り出し、カンヘルを追うジンの側面にビームを直撃させる。
    ジンはビームに飲み込まれ、溶けると同時に爆発を起こした。

  • 94二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 06:36:21

    ルリ砲手として優秀やな

  • 95スレ主25/04/22(火) 08:42:20

    密着した状態のストライクとデュエルは睨み合ったまま、動かない。
    キラもニコルも互いがどの様に動くのか分からない為、動くに動けないでいたが、その均衡をニコルが崩す。
    デュエルは、ストライクを抱えるようにしていた左腕を解くと持っていたシールドで突き飛ばし、
    右手に持ったライフルを捨て、ビームサーベルを握った。

    「――覚悟してください!あなたをアスランには近付けさせません!」
    「やられる!?」
    「――くっ!逃がしませんよ!」

    キラは咄嗟に、バルカン砲のトリガーを引き、デュエルに向かって乱射をしながら回避行動はと入った。
    デュエルはシールドで防ぎつつ、回避しながらもストライクに近付こうとしていた。
    そこへ、カンヘルがデュエルの側面からストライクの援護に入る。

    「――馬鹿野郎!何やってんだ!」

    琉生は叫びながらグレイブを伸ばす、デュエルに向けて攻撃を放つ。
    その攻撃は。デュエルに直撃し、コックピットのニコルは激しい揺れに襲われた。

    「――うわ!?」

    琉生は、すぐに回避運動に入り、ストライクの方へと向かう。
    その隙に、ストライクはバーニアを噴かすと、一気にデュエルから距離を取った。

    「琉生、ごめん!」
    「とっとと、体勢を整えろ!一度、後退するぞ!」
    「――はい!」

    キラが頷くと、カンヘルはストライクから離れ、アークエンジェルへと向かう。
    ストライクも続こうとするが、デュエルがしつこく追いかけて来た。そこへ、瑠璃の援護が入る。

  • 96スレ主25/04/22(火) 13:53:23

    「――!」

    辛うじてデュエルは回避するが、続けて二射目が来る事を注意してか、回避運動に入るが、
    それでもストライクを追おうとした。
    ストライクはバーニアを噴かすとデュエルを引き離し、アークエンジェルへと向かった。
    その途中、前方に六機のメビウスを確認すると、その一機から通信が入った。
     
    「――新型か!あれは俺達が抑える。お前は早く下がれ!」
    「――はい!」

    キラは、返事をすると更にペダルを踏み込む。
    メビウス編隊とのすれ違いざまに再び通信が入った。先程の通信とは全く違う人物のようだ。

    「おい、新型の!戦いが終わったら、酒の一杯も奢れよ!」
    「――はい!みなさん、援護ありがとうございます!」

    キラは少し可笑しそうに笑うと、援護に来てくれた彼らに感謝し、アークエンジェルへと帰艦する。
    アークエンジェルは補給の為、地球軍第八艦隊旗艦メネラオスの後方に控える補給艦へと向かって行った。

  • 97二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 15:59:40

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  • 98スレ主25/04/22(火) 16:01:05

    地球連合軍プトレマイオス基地内への突入を成功させたイザーク・ジュールを始めとする
    ザフト軍モビルスーツ隊は、基地内ドック第三層ブロックまで進めていた。
    しかし、それと同時に奥に繋がる通路の隔壁が閉じられ、これ以上の侵攻が出来ない状態と成っていた。

    「――隔壁を下ろしただと!?こんな隔壁など――!」

    イザークは、腹立たしげに吐き捨てると、ブリッツのレーザーライフルを閉じた隔壁へと向け、トリガーを引いた。
    発射されたレーザーは隔壁に当たり爆発を起こすが、通常の隔壁とは違う対核用の隔壁の前では、
    僅かに削った程度の痕跡を残すのみだった。それを見たイザークは、顔をしかめながら苛立たし気に声を荒げる。

    「――破れないだと!?地球軍め!」
    「――ブリッツ、どうした?」

    イザークが隔壁を睨み付けながら声を上げると、後続として突入して来た、ジンの一機から通信が入った。
    足止めを喰らった事で、イザークは腹立たしさが抑えられないのか、怒鳴る様に答える。

    「隔壁が破れん!ここからの侵入は不可能だ!他に奥に侵入出来そうな場所を探せ!」
    「――了解!そうだな、そこの三機!それと、お前とお前!侵入可能な通路を探す。
    手伝え。残りはドック内の掃討と爆薬の設置だ」

    イザークの指示に答えたジンは、恐らくジンを束ねる隊長機なのか、次々とやって来る後続機に指示を出して行く。
    それの指示に付け加えるかの様に、イザークも注意を促す。

    「分かっているだろうが、今は艦を爆発させるな。ブリッジと攻撃兵器を潰せばいい」
    「――了解!」

    ドック内に分散した各モビルスーツから、指示に対しての返答がスピーカーを通じて聞こえて来た。
    モビルスーツ達は、地球軍の宇宙の要であるプトレマイオス基地破壊の為に、それぞれの作業へと向かって行った。

  • 99スレ主25/04/22(火) 22:38:35

    ブリッツの追撃を振り切ったアークエンジェルは、
    地球軍第八艦隊旗艦メネラオスの後方に控える補給艦隊と合流を果たそうとしていた。
    甲板には灰色のストライクと、アグニを構えた瑠璃のジンが周辺警戒をしている。
    ムウのジンはアークエンジェルへと着艦し、補給を受けていた。
    アークエンジェルは、正面に補給艦を捉えると高度と進入角度に注意しながら、
    ゆっくりと補給艦へと進んで行った。

    「アークエンジェル、停泊します」
    「――索敵確認。周辺に敵機は確認出来ません」

    艦をここまで操って来たノイマンがアークエンジェルが無事に合流した事を告げると、
    チャンドラが続くように報告を口にした。マリューは報告に対し頷くと、顔を引き締めたまま指示を飛ばす。

    「引き続き、各機に周辺警戒をさせて!」
    「――補給艦より入電。ハッチを開放せよ。との事です」
    「――格納庫、補給艦からの物資が来るわ!速やかに対応してちょうだい!」

    すぐにトノムラが補給艦からの通信を受け報告をする。
    マリューは、受話器を手にすると、矢継ぎ早にマードックへと補給艦からの指示を伝え、受話器を置いた。
    その顔には、ここまでの船旅がようやく報われたと言わんばかりの安堵の表情を浮かべ、大きく息を吐いた。

    「ふう……」
    「ようやくと言った所ですね」

    その様子を見たナタルは、第八艦隊が戦闘中の為、表情は軍人らしく引き締まってはいたが、
    気持ちは同じと言わんばかりの口調で声を掛けた。マリューは頷くと、背凭れに体を預けて微笑む。

    「ええ。ヘリオポリスから、ここまでの事を考えれば長かったわね」
    「そうですね。無事、合流出来ましたし、これで――」
    「――なんだよ、これ!?トノムラ、聞いたか!?」

  • 100二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 07:20:11

    月はダメそうだな

  • 101スレ主25/04/23(水) 09:33:32

    マリューとナタルが、遣り取りをしていると、チャンドラが慌てた様な表情で声を上げ、
    背中合わせに座るトノムラの方へ顔を向けた。
    声を掛けられたトノムラも、突然の事に慌てながら、チャンドラが聴いていたチャンネルに合わせ耳を傾ける。

    「――え!?ちょっと待ってくれ!……これって!?」
    「両名とも、どうした?」

    トノムラの表情は見る見るうちに険しい物に変わって行った。
    マリューは、その遣り取りを不安そうに見つめるが、見兼ねたナタルが険しい表情で、二人に声を掛けた。

    「……はい。恐らく、月のプトレマイオス基地からのメネラオスへの通信なんですが――」

    チャンドラは信じられないと言わんばかりの表情をナタルに向け、耳にした情報を報告をする。
    その報告を聞いたアークエンジェルの乗組員達は、皆、顔を青ざめさせる事となる。

  • 102スレ主25/04/23(水) 13:53:27

    月の表側に位置する地球連合軍プトレマイオス基地から齎された、ザフト軍強襲の一報に
    第八艦隊旗艦メネラオスのブリッジは、一時、騒然とした雰囲気となっていた。
    予想外の事態にオペレーター達は、この報せに困惑を隠せず、動揺が広がる。
    それは、艦隊を指揮するハルバートン、その隣に座る副官であるホフマンも同じで、驚きの声を上げていた。

    「――なんだと!?」
    「……これは!」

    ハルバートンは、今の今まで、この様な事態は全く想定しておらず、
    月基地にダイレクトに攻撃をして来るとは予想すらしていなかった。
    呆気に取られながらも、ハルバートンは声を張り上げ、オペレーターに指示を出す。

    「――プトレマイオス基地への回線開け!早くしろ!」
    「――は!」
    「……こんな事が起こっているとは……。閣下、我々は一刻も早く戻るべきではないでしょうか?」
    「……今更、戻った処で間に間に合わぬ。我々が戻った頃には、ザフトは後退を済ませておるわ」

    困惑の表情を見せるホフマンの進言に、ハルバートンは眉間に皺を寄せ、苦汁の表情で吐き捨てた。
    その言葉を聞いたホフマンは、自らの上官の吐く言葉を納得はしながらも、宇宙の要である
    自分達の帰るべき場所を守らなければと言う想いが先走る。

    「……しかし――」
    「――回線、繋がりました」

    ホフマンの言葉を遮り、オペレーターが基地との通信が開いた事を告げる。
    ハルバートンは、ホフマンを片手で制すると受話器を耳に当て、
    その向こう側に居るプトレマイオス基地指令官に声を掛けた。

  • 103スレ主25/04/23(水) 22:07:51

    「うむ。――ハルバートンだ。どうなっている?」
    「――ハルバートンか!?コーディネイターどもにしてやられたわ。
    今はドックに侵入され、閉じる事の出来ないドック以外、全ての隔壁を閉じた状態だ」
    「ドックに侵入を許したのか!?」
    「ああ。その突入の先陣を切ったのは、Gだ。恐らく、そちらの敵艦隊は囮だろう」
    「――!なんと言う事だ……!」

    自ら開発を推していた兵器が、自軍の基地を攻撃している。しかも、地上からの攻撃要請で第八艦隊を
    出撃させたとは言え、こうも容易く自分達の根城への攻撃を許してしまっている。
    この様な結果に、ハルバートンは、司令官の言葉に一瞬、絶句し、空いていた片手を額に当て、
    目を閉じた。 言葉を失ったハルバートンに、受話器の向こう側から司令官からの声が再び届く。

    「基地外にもGを確認している」
    「……ザフト軍め!忌々しい!――こちらでもGを二機確認している。朗報が有るとすれば、
    アークエンジェルと残りのGが合流した事だ。戦闘は我々が押している」
    「……そうか。こちらとて、落とされるつもりは無い。隔壁を下ろした以上、
    奴らとて突破するのは容易ではないからな。癪では有るが、月の各基地に支援要請を出した」
    「……どうにか成るか?」

    司令官からの報告に、ハルバートンは、基地が予想以上の危機的状況に有る事を容易に想像が出来た。
    ハルバートンは、長年の戦友でもある司令官を気遣うかの様に声を掛けると、すぐに返答が返って来た。

  • 104スレ主25/04/24(木) 07:57:32

    「成らなければ、ザフトとユーラシアにでかい顔をされるだけだ。その為にドックの破棄を決めたのだからな。
    第八艦隊はしばらく、此処へは帰港出来ないと思ってくれ」
    「……分かった。ザフト軍め、プトレマイオスを叩きに来るとは!これも元はと言えば、
    地球から見上げるばかりの馬鹿どもが、己の身の安全ばかり考えておるから、この様な事になるのだ!」
    「ああ。だが、今更言った処で、どうしようも無い。この事態に連中は、
    責任を私に押し付けて来るのだろうな。覚悟をせねばならないか……」
    「……それは、私とて同じだ。奪われたGがプトレマイオスを強襲したとなれば、矛先は私に向く。
    せめて、残ったGの開発を軌道に載せねばな……」

    大西洋連邦内部も一枚岩では無く、様々な派閥に分かれている。
    その中でも、宇宙軍側と地上軍側、そして、ブルーコスモスと言われるコーディネイターと言う
    種の殲滅を願う思想を持つ軍人と、純粋な軍人として国を守ろうとする者達の溝は予想以上に深い物だった。
    司令官の溜息交じりの言葉に、ハルバートンは、自分も立場は同じだと思いながらも
    、これからの行く末を思い、溜息を吐いた。

    「……うむ。プトレマイオスがこの状態だ。癪ではあるが、
    アークエンジェルは馬鹿どもの居るアラスカに降ろす他あるまい」
    「……分かった」

    司令官の言葉を聞いたハルバートンは頷き、その後、二言三言のやり取りの後、通信を切った。
    話を終えたハルバートンは、明らかに疲れた様な表情を浮かべていた。
    それでも、今は戦闘中である事を忘れてはおらず、すぐに表情を引き締め、
    少し考える様な素振りをすると、隣に座るホフマンに顔を向けた。

    「ホフマン、アークエンジェルを地球に降下させる。これ以上の戦闘は無意味だ。
    我々は艦隊を後退させるぞ。各艦に伝えよ。――アークエンジェルに回線を開け!」
    「はい、了解しました」

    ホフマンは頷くと、すぐに部下達に指示を出した。
    ハルバートンは目の前で光る、幾つもの爆発へと厳しい視線を向け、アークエンジェルとの回線が開くのを待った。

  • 105二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 13:16:10

    ⭐️

  • 106スレ主25/04/24(木) 22:18:11

    補給を受けているアークエンジェルのブリッジのモニターには、ハルバートンの姿が映し出されている。
    マリューはハルバートンから、これからの詳細な指示と命令の説明を受けている最中だった。

    「――と言う理由から、現状の人員編成のまま、君達にはアラスカに降りてもらう」
    「現状の人員編成のまま……ですか?」
    「うむ。本来なら、人員を割きたい所ではあるが、この戦闘に駆り出しているからな……。済まぬが承知してくれ」
    「……分かりました」

    説明を受けたマリューは、正直、承服し難い内容だったが、自らの教官でもあった
    ハルバートンの性格を知らない訳では無い。渋々ながら命令を受ける事とした。
    ハルバートンは、教え子であるマリューの性格を分かっていたのか、気にせずに言葉を続ける。

    「降下のタイミングは追って知らせる。それに合わせ、降下を開始しろ。それからだが、
    君たちは第八艦隊所属となる。我々にはGの力が必要となる。
    無事に届けてくれ。君達には苦労を掛けるが頼んだぞ!」
    「――は!」
    「うむ。直にGを見て置きたかったが、この状況では叶わぬ。せめてもの救いが、補給艦からの映像で
    確認出来る事くらいだな……。時に、ジンに似た機体と甲板に居る機体はモルゲンレーテの物か?」
    「「――!」」

    敬礼で答えるマリューにハルバートンは頷くと、突然のカンヘルと改造ジンの事を質問して来た。
    突然の事にマリューとナタルは息を飲んだ。カンヘル、そして綾瀬姉弟の上手い言い訳など浮かばず、
    ここまで来てしまっていた。マリューは、どう答えていいのか困りながらも、口を開く。

    「……あ、あの機体は……」
    「どうも歯切れが悪いようだが、話せぬ事でもあるのか?」
    「……いいえ……」
    「……艦長、私に説明させて頂けませんか?」

  • 107スレ主25/04/24(木) 22:20:27

    言い淀むマリューを見兼ねてか、ナタルが申し出て艦長席の隣へと立つ。
    マリューは頷くと、ナタルはハルバートンの映るモニターへと敬礼をする。
    ハルバートンに向かうナタルの表情は、かなり緊張した物となっていた。
    勿論、ナタルとて上手い言い訳が有る分けでは無い。しかし、ここで上手くやらなければ、
    自分達を守ってくれた綾瀬姉弟に対して、恩を仇で返す事になる。

    「提督、失礼します。副艦長を務めさせていただいています、ナタル・バジルール少尉であります」
    「うむ。ご苦労」
    「あの機体はヘリオポリスで強襲を受けた折に現れ、脱出を協力して貰いました。彼が居なければ我々は
    全滅していたかもしれません。搭乗者は提督の信頼に足りうる人物だと私は確信しております」

    ナタルは緊張しながらも、毅然とした態度で質問に答え、言い終えると直立不動のまま、
    ハルバートンの言葉を待つ。そのハルバートンは、ゆっくりと頷いた。

    「……そうか。それでは、各機体のパイロットに繋いで貰えるか?勿論、
    その機体のパイロットにもだ。せめて労いの言葉を掛けておきたい」
    「――は!」

    ナタルは敬礼で答えると、今の処は誤魔化し果せたと確信する。しかし、事情を知らない者達も、
    このブリッジには多く居た。マリュー、ナタル、ムウ、マードック、キラの五人以外は、綾瀬姉弟の素性は知らない。
    今、ブリッジに居る者達が、ハルバートンとの遣り取りを耳にしていた事を気にする余裕など、
    マリューとナタルには無かった。

  • 108二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 06:51:23

    直接顔合わせは無しかな

  • 109スレ主25/04/25(金) 09:47:16

    ブリッジがハルバートンからの指示を受けている頃、格納庫では物資の搬入が既に始まっていた。
    ムウのジンの前を次々とコンテナが搬入されて来る。始末の悪い事に、両舷のカタパルトから補給を受けている為、
    ジンが格納庫から出られない状況となっていた。

    「おい!これじゃ、出れないぞ!早く退かしてくれ!」

    出られない苛立ちを隠せないのか、ムウがコックピットの中で怒鳴った。
    その声はマードックの耳にもヘッドホンを通じて聞こえて来ていた。
    マードックもムウと同じ様に、搬入を行っているスタッフへと怒鳴り声を上げる。

    「そのコンテナ!奥に突っ込んどけ!片方のカタパルトデッキは空けろ!ジンが出れねえだろうが!」
    「――無理です!」
    「ったく!一体、何なんだよ、この大型コンテナはよ!?」

    マードックは、スタッフの返事に文句を言いながら搬入されて来る大きなコンテナを見上げる。
    大小含めて、かなりの数のコンテナが搬入されて来る様だった。整備スタッフ達は、
    搬入の為に機械を動かし格納庫の片隅へと積み上げて行く。
    その光景を見ながら、マードックは思い出した様にムウへと通信を開く。

    「出撃待ってください!すぐは無理です!」
    「分かったよ、とにかく早くしてくれ!やられたらお終いなんだぜ!」
    「分かりましたよ!ったく、俺に言っても仕方ないでしょうが!」

    ムウの言い分も最もだが、どう足掻いても無理な物は無理な訳で、
    マードックは通信を切るとぶつくさと文句を言った。丁度、その時、マードックの後の方から声がした。

  • 110スレ主25/04/25(金) 14:22:34

    大型コンテナの中身はストライクの補修パーツとdice1d2=2 (2)


    1.スカイグラスパー

    2.上記に加えて残りのG兵器(バラした状態)

  • 111スレ主25/04/25(金) 22:16:03

    「責任者の方は居られますか?」
    「んっ?俺だが、何か用か?」
    「は!失礼します!これが搬入します補給リストです」
    「ああ。すまねぇ。新入りか?」
    「は!そうであります!」

    振り返ったマードックは補給リストを受け取ると、リストを持って来た若い兵士に声を掛ける。
    兵士はキラよりも若干年上だろう。マードックの問いに、生真面目に直立不動で答えた。
    マードックにとって、別にこの兵士はどうでも良かったのだが、一つ文句を言いたかったらしく険しい顔を見せる。

    「……何で上役が来ねぇんだ?カタパルトデッキを空けて貰わねえと
    ジンが出せねえだろ!やられたら終わりなんだぜ!?」
    「――申し訳ありません。しかし、これも迅速に搬入する為でして……。
    上官殿は、現在、船外で搬入作業の指揮をされております」
    「……そうかい。お前に文句言っても仕方ないんだがな。まぁ、とにかく、早くしてくれ。
    それより、あのコンテナはなんだ?」

    兵士は、マードックの文句に恐縮しながらも、自分の仕事を全うしようと答える。
    マードックは髪を掻きむしり、搬入されてるコンテナの中で特に大型の物を指さした。

    「何でも、新型機の予備部品と聞いております」
    「――!ザフトに持って行かれた機体の予備パーツも入ってるのか!?」

    兵士の言葉を聞き、マードックはリストに目を通すと思わず声を上げた。
    マードックの問いに兵士は頷き、事の説明を始める。

  • 112二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 07:29:29

    人数揃えば原作よりマシな戦力になるな

  • 113二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 14:44:06

    オリキャラ後何人出てくるんだ?

  • 114スレ主25/04/26(土) 22:10:54

    「はい。この艦が行方不明になってから、かなり時間がありましたから、提督閣下が製造元に部品を至急、
    送るよう要請したのです。その為、各部ごとの組み立てはされておりません」
    「全部、バラの状態って事か?」
    「はい。そうであります」

    兵士が答えると後から大型クレーンの動く音が聞こえ、マードックは振り向く。
    そこには、クレーンに吊られた戦闘機が搬入されている所だった。
    マードックは再びリストを捲り、何が搬入されているのかを確かめる。

    「ん?――スカイグラスパー、二機!?おいおい……大気圏用の機体じゃねぇかよ!」
    「ええ。先程ですが、提督閣下の指示でアラスカに降りる事が決まったそうです」
    「――マジかよ!?」

    兵士の言葉に、マードックは信じられないとばかりに声を上げる。
    この事を知っているのはブリッジ要員だけなのだから、マードックとっては正に寝耳に水だった。

  • 115二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 07:41:28

    パイロット足りるのか?

  • 116スレ主25/04/27(日) 11:30:02

    地球衛星軌道上で戦闘を継続中であるザフト軍は、数で押されつつも良く持ち堪えていた。
    元々、哨戒中の艦を寄せ集めた艦隊なのだから、今の戦況は善戦と言えるだろう。
    そんな中、その艦隊を指揮するユウキの元へと一報が届けられ、オペレーターが読み上げようとしていた。

    「――地球軍プトレマイオス基地へ奇襲を掛けた艦隊が基地内への突入に成功との報告がありました」
    「……そうか。クルーゼはプトレマイオスへの突入を成功させたか」

    ユウキにとって、ラウ・ル・クルーゼと言う男は、何を考えているのか分からず、余り信頼出来る男ではなかった。
    しかし、軍人としては、武勲を挙げプラントに貢献しているだけに一目置く存在ではあった。
    そのクルーゼ率いる艦隊が、非常に難しい敵基地突入と言う武勲を挙げたのだ。
    ユウキが感心するのは無理もなかった。ユウキはモニターへと目を向けると、オペレーターに声を掛ける。

    「こちらの戦況はどうだ?」
    「所属不明艦は敵艦隊からの増援により、取り逃がしたようです。
    報告では、敵艦の名はアークエンジェルとの事です」
    「アークエンジェルか……。地球軍は神にでも成ったつもりで居るのか……。その他の報告は?」
    「――は!戦線は押されているとは言え、撃墜されている数を考えれば、当初の予測を下回っております」

    報告を聞いたユウキは満足気に頷くと、ふと、アスランの事を思い出した。
    婚約者であるラクス・クラインの事が原因であるとは言え、アスランの教官をして居た頃からだが、
    あの様に他の事に気を囚われている姿を見た事が無かった。
    自分の優秀な教え子だけに、逆に心配になり、ふと、言葉が漏れる。

    「……アスラン・ザラはどうしている?」
    「――は!?……アスラン・ザラですか?」
    「……いや、奪取した機体の働きはどうだと聞いている」

    オペレーターは、ユウキからの個人名が出るとは思わず、聞き直した。
    ユウキも戦況を見渡す人間が、個人に囚われるのは問題が有ると思い、
    発言を誤魔化すかの様に首を振り、言い直した。

  • 117二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 14:54:36

    見事にすれ違ってるな

  • 118スレ主25/04/27(日) 15:44:04

    「お待ちください。……詳しい撃墜数は分かりませんが、報告によればイージスは多数の敵艦を沈めているようです。デュエルも多数撃墜してますが、敵新型艦、アークエンジェルの追撃には失敗しております」
    「そうか」

    ユウキは報告に頷くと思考を切り替え、この戦闘での引き際を模索し始める。
    ただでさえ押されているのだから、引き際を間違えれば全滅しかねない。
    これから先、人口の少ないプラントが地球軍と戦う上では、高々数十の艦隊と言えども貴重な戦力なのだ。
    それをむざむざ全滅させてしまうのは、愚者のする行為だった。
    敵基地奇襲の為に囮となった臨時編成の艦隊は、役目を終えた以上、戦闘を継続するのは無意味と判断する。

    「突入を成功させた以上、囮である我々は無理をする必要は無い。敵艦隊が今更戻った処で、
    間に合う訳でもないからな。各機に深追いするなと伝えろ。艦隊は徐々に後退させろ。気取られるな」
    「……しかし、敵艦隊後方に控える新型艦……取り逃がしたアークエンジェルはいかがしますか?」

    ユウキの命令を聞き、副官がアークエンジェルの事で判断を仰いで来た。
    奪取したイージス、デュエルの働きを見れば、敵艦にある新型モビルスーツもやはり脅威でしかない。
    副官の言う事はユウキにも分かるのだが、この作戦の目的は、あくまでも敵基地奇襲にある。

    「我々の目的はアークエンジェルの撃沈では無い。敵艦隊を誘き寄せる事で任務の半分は達成している。
    後は敵を消耗させつつも、我々が無事に帰還する事が任務だ。目的を間違えるな。いいな」
    「――は!艦隊を後退させつつ、距離が取れたらモビルスーツに後退信号を上げろ!」

  • 119スレ主25/04/27(日) 22:15:41

    ユウキは説くように言うと、副官は納得した様子で敬礼で返し、オペレーター達に指示を飛ばした。
    ――この戦いも、もうじき終わる。しかし、今、気を抜く訳に行かぬな。
    ユウキは、この艦隊が役目を無事に終える事の出来る様、再度、自らに言い聞かせた。

    モビルスーツで奮戦するザフト軍兵士達にも、クルーゼ艦隊が地球連合軍プトレマイオス基地内への
    突入に成功した事が伝えられていた。その所為か、先程よりも徐々にだが押し返し始めている。
    しかし、その中、アスランが乗るイージスは、何故か戦艦のブリッジに直接攻撃をする事を止め、
    砲塔を潰すのを優先していた。
    イージスは目立つだけあって、攻撃の的にも成り易く、その為、回避行動が多く取る事となった。
    その為、アスランは戦闘当初よりも動きが鈍く、精細を欠いた戦いを強いられて居た。

    「――くっ!」

    アスランはメビウスからの発射されたミサイルを避けると、イーゲルシュテルンで反撃に出るが、
    モビルアーマー特有の直線の動き早さに追いつく事が出来ず取り逃がす。
    イージスは、すぐに戦艦の砲塔へと向きを変え、バーニアを噴かす。しかし、
    そこへ他の艦からの攻撃が入り、一時的に戦艦への攻撃を諦める。
    アスランは仕方なくイージスを一時的に下げる事にし、北天側へと移動を開始する。

    「キラが……キラがすぐ近くに居ると言うのに、俺は……何も出来ないのか……」

    アスランは移動しながら呟く。フレイにキラへの伝言を頼みはしたが、
    思うよりも早い再会のチャンスが巡ってきていると言うのに、それを生かす事の出来ない自分に苛立っていた。

  • 120二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 08:02:14

    ⭐️

  • 121スレ主25/04/28(月) 12:16:57

    それに加え、地球軍兵士の死を目の当たりにし、自分自身の戦争行為と言う物に一抹の迷いも生じていた。
    ――俺は、プラントを守る為に戦っている……。でも、あんな事をしたい訳じゃない……。
    そう思いながらも、敵を撃つ事しか出来ない自分に、不甲斐なさを感じた。
    しかし、兵士なのだから、そんな事は思ってはいけないのかもしれない。
    アスランは首を振り、思考を振り払おうとする。そして、戦場を見渡した。
     
    「敵艦が徐々に下がってるいる!?後退をかけているのか?」

    北天からは前線が見下ろす事が出来、明らかに、モビルスーツが押して居ると言うよりも、
    敵先鋒の艦隊が後退している様に見えた。その時、スピーカーから、戦闘管制官の声が響いた。

    「――各機、新たな指示を伝えます。艦隊は後退を掛け、撤退準備に入ります。
    各モビルスーツは深追いはしないようお願いします。繰り返します――」
    「――撤退準備!?この戦いも終わるのか!」

    アスランは戦いの終わりが近い事に安心を覚えるが、キラの事が気に掛かった。
    キラをラクスの様に戦争の犠牲者にさせない為に、何としても説得しなければと、心が焦るのだった。

  • 122スレ主25/04/28(月) 16:37:44

    地球連合軍プトレマイオス基地内で戦艦の爆破作業に取り掛かっている
    突入部隊は、今の所、順調に作業を進めていた。
    その一方、隔壁を閉じられた為、更に基地最深部に繋がる通路を捜す事となった
    モビルスーツ達から、イザークの元へと、その探索結果が齎される。

    「――奥に繋がる通路は全て隔壁が降りている」
    「――ちっ!ナチュラルどもが!爆破作業はどうなっている!?」

    報告を聞いたイザークは、舌打ちをすると苛立ちを隠さないまま、
    爆破作業に入っているモビルスーツに作業状況を確認する。

    「――まだだ!もう少し時間が掛かる」
    「モタモタするな!早くやれ!」

    イザークは報告を耳にし、予想より遅い進行状況に怒鳴りつけた。
    ドックの第三層まで、ほぼ制圧しているとは言え、時間が掛かり過ぎれば、
    何時反撃を喰らうかもしれない。そんな事になれば、基地の破壊など更に困難になる事が目に見えている。
    その時、イザークの耳に味方の悲鳴が聞こえて来る。

    「――うわっ!」
    「――!?何があった?」
    「――敵艦からの攻撃が!う――」
    「――馬鹿が者が!どうして、命令通りに砲塔を潰しておかない!探索はもういい、敵を叩き潰せ!」

    イザークは命令が守られなかった事に怒鳴り声を上げ、戦艦の生きている砲塔を潰しに掛かる。
    ドックの中には、まだ多くの地球軍の兵士が残っている。逃げ場の無くなった彼らとて、
    ただ手を拱いている訳ではなかった。地球軍の兵士達は、バズーカやロケットランチャーを使い、
    モビルスーツを攻撃し始めた。まだ、攻防は終わる事は無かった。

  • 123スレ主25/04/28(月) 22:52:46

    ある地球軍兵士が目を覚ました。彼は乗る戦艦は基地を守る為にドックを出る所だったはずだった。
    しかし、突然現れたブリッツによりブリッジを潰され、船は座礁し、衝撃が襲って来た所までしか記憶が無かった。
    彼は体を横たえたまま、唸る様に声を上げた。

    「……うっ!……生きてるのか!?」

    彼は痛む体を起こし、自分が生きている事を確かめる。
    そして、回りに目を向け、さっきまでの自分と同じ様に体を横たえた仲間である整備兵達の安否を気に掛ける。

    「……みんな、大丈夫か!?」
    「……ううっ……」
    「……なんとか……。コーディネイターどもめ……何て事しやがるんだ!糞!」
    「……どうなってるんだ?」

    彼が呼びかけると、近くに居た三人が無事に目を覚まし、体を起こした。
    格納庫には、まだ多くの整備兵が居たはずだが、多くはコンテナなどの下敷きになったりと、凄惨な状態であった。
    彼は回りを見渡し、自分達以外の生き残りが居ないか探すが、
    灯りの落ちた格納庫は暗く、全部は見渡す事が出来なかった。

    「……分からない。どうなったのか、俺が確かめてみる。他に生きてる奴を集めてくれ」

    彼は、そう言うと、壁際にあるコンピュータ機器まで体を引きずりながら歩いて行く。
    それ以外の三人は言われた通り、生き残った仲間を探す為に歩き始めた。
    彼はコンソールのスイッチを入れると、モニターに再び光が点る。そしてキーボードを叩き始める。
    その間にも、生き残った者達は、三人に体を揺り動かされ目を覚ましていった。

  • 124二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 05:35:58

    もしラクスが帰るとしたらオーブでかね

  • 125スレ主25/04/29(火) 08:03:58

    「――糞!俺たちは見捨てられたのか!?」

    状況を調べていた彼は、モニターに映し出された結果に愕然とした。
    あまりの事に、彼はコンソールを叩くと大声で叫ぶ。

    「指令は、港口の第一、第二隔壁以外を全部下ろしやがった!俺たちは見捨てられたんだ!」
    「――えっ!?ほ、本当かよ……!?」
    「……なあ……俺達、死ぬのか……!?」

    生き残って居た者達が、続々と彼の元に集まり始めた。そして、
    全員、モニターを覗き愕然とした表情に変わって行く。その中、誰か唸る様に怒りの声を口にする。

    「……これも元はと言えば、コーディネイターどもの所為だ!許せねえ!」
    「このまま死ぬのはゴメンだ!……なあ、奴らに一泡吹かせてやろうぜ!」
    「ああ。死ぬなら、コーディネイターどもを道連れにしてやる!」
    「でも、どうするんだ?」

    それぞれが、同じ様にコーディネイターへの怒りを声を上げる。生き残った者達は、
    皆、同じ意見の様でだったが、どうするかの声が上がった。
    疑問の声に彼はキーボードを叩くと、基地の破損状況を示す図を呼び出す。
    そして、第一、第二隔壁の付近のダメージを示す図をモニターに映し出した。

    「見てみろ!第二隔壁が閉まらないのは、ケーブルが破損したのが原因だ。モーターもいくつかやられてるが、
    閉じる速度が遅いだけで問題無い。ケーブル交換が出来れば、奴らを閉じ込める事が出来るぞ!」
    「俺たち向きの仕事じゃねえかよ!隔壁が完全に閉まれば、俺達、生き残れるかもしれないぜ!」
    「なら、やるしかねえだろ!」
    「奴らにプトレマイオス基地を攻撃した事を後悔させてやる!」

    彼らは希望が見えた事に生気を取り戻したかの様に、その表情には活力に溢れ返っていた。
    そして、彼らは自分達が生き残る為、そして、ザフトを倒す為に動き出した。

  • 126スレ主25/04/29(火) 13:10:18

    アークエンジェル、そして、ストライクの追撃に失敗したデュエルは、
    逆にメビウスの迎撃に遭いながらも、四機を撃墜し、戦闘宙域へと戻って来た。
    デュエルのコックピットの中で、ニコルはストライクを落とす事が出来なかった事を後悔していた。
    今のアスランの為には、キラは居てはいけない存在なのだ。ニコルは唇を噛んだ。

    「――くっ!僕は……僕は……」
    『――各機、新たな指示を伝えます。艦隊は後退を撤退準備に入ります。
    各モビルスーツは深追いはしないようお願いします。繰り返します――』
    「……もうすぐ、この戦いも終わる……。アスランは無事ですか!?」

    そうしていると、新たな指示がモビルスーツ各機に出されているのを耳にし、
    ニコルは予想より早い後退に驚き、目の前に広がる閃光へと目を向けた。
    このどこかにアスランが居る。今はただ、アスランとキラが会うことが無い事を願う。
    ニコルは通信回線を開き、戦闘管制担当のオペレーターを呼び出した。

    「――こちら、デュエル!ニコル・アマルフィです!イージスの位置を教えてください!」
    「――イージスは、第一次攻撃部隊と共に敵先鋒の艦隊と交戦中だ。ブリッツは支援に向かわれたし。
    敵艦は徐々にだが後退している模様。もうすぐ戦闘も終わる。必要以上の交戦は避けろ」
    「――分かりました!デュエル、支援に向かいます!」

    ニコルは指示を受けると、デュエルの向かう先をアスランの居る宙域へと向ける。
    もうすぐこの戦闘が終わると言う希望と、アスランとキラが戦う事が無い様にと言う願いを胸にバーニアを噴かした。

  • 127スレ主25/04/29(火) 22:05:13

    ハルバートンの希望で短い時間ながら、各パイロットとの面談が執り行われ始めた。
    一番最初は大西洋連邦所属で正規の軍人でもある改造ジンに乗るムウだった。
    出撃出来ない改造ジンの中で、小さなモニターに映るハルバートンを前にしヘルメットを取ると、ムウは敬礼をする。

    「――第七機動艦隊、ムウ・ラ・フラガであります!」
    「おおっ!君が居てくれて幸いだった!今まで良くアークエンジェルとGを守ってくれた!」
    「いえ、さして役にも立ちませんで……」

    ハルバートンの言葉にムウはバツがが悪そうに答えた。
    しかし、ハルバートンは気にしていない様で、そのまま言葉を続ける。

    「エンディミオンの鷹と言われた君が居てくれた事も幸運の一つだろう」
    「私は本来なら、Gに乗る奴らの護衛で来ただけです。しかも、護衛任務は失敗した様な物です」
    「……と、いう事は?」

    ムウの言葉を聞いたハルバートンは、眉を顰めた。ムウはモビルスーツに乗る事無く
    死んで逝ったパイロット達の顔を思い出しながら事実を伝える。そのムウの表情は、悔しさを滲ませていた。

    「……パイロットは全員やられました」
    「それでは、誰がGに乗っているのだ?」

    ハルバートンの質問に、ムウは気を取り直し、口を開く。
    ストライクに乗るキラは共に戦っている仲間なのだから、胸を張って伝えなければいけない事実だからだ。

    「ええ、あの機体、ストライクにはヘリオポリスの学生が乗っています。名前はキラ・ヤマト。
    コーディネイターです。いい奴ですよ。実際に話してみれば分かると思いますが」
    「……そうか。君たちには地球に降りてもらう。大気圏用の新しい機体を用意してある。
    それを使い、引き続きアークエンジェルの守りを頼む事となった」
    「アーマー乗りの生き残りとしては、お断りできませんな」
    「うむ、頼んだぞ!アークエンジェルの事を宜しく頼む」

  • 128二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 06:18:15

    此処で手続きやってくれるか?

  • 129スレ主25/04/30(水) 10:01:41

    ハルバートンは、当たり前の様にストライクにコーディネイターが乗っているとは予想していなかった。
    その所為か、一瞬、驚きながらも冷静に今後の事を伝えた。ムウは、ハルバートンの
    表情の変化を見逃すはずも無く、「やはりな」と思いながらも茶化す様に答える。
    ムウの言葉を聞き、ハルバートンは満足そうに頷くと通信を切った。
    モニターからハルバートンの姿が見えなくなると、ムウは「やれやれ」と言いながら息を吐き、
    ヘルメットを被り直した。

    アークエンジェルが補給を受ける中、ストライクは瑠璃の改造ジンと肩を並べる様に甲板上で膝を着き、
    灰色の機体を宇宙に晒している。そのストライクのコックピットでは、キラがキーボードを叩いていた。
    理由は至極簡単な物で、先の戦闘でデュエルと対峙した際、三二〇ミリガンランチャーを発射しようとしたが、
    トリガーを引いても発射されなかった事にあった。しかし、その作業も、一時中断を余儀なくされる。

    『ヤマト少尉、第八艦隊司令、ハルバートン准将からの通信だ』
    「あ、はい。繋げてください」

    ナタルから連絡が入り、キラはキーボードを叩く手を止めた。
    ムウがハルバートンと話している間に、キラにも通達があった為、知ってはいたが、
    マリューやムウ以上に階級の高い軍人と話すのは初めての事で、キラは緊張を隠せずにいた。
    やがて、モニターにハルバートンの姿が映り、スピーカーを通して声が聞こえて来た。

    『君がキラ・ヤマト君か……。今まで良くストライクとアークエンジェルを守ってくれた。礼を言う。ありがとう』
    「――いいえ!こちらこそ、ありがとうございます!」

    キラはハルバートンから、いきなり礼を言われると思わず、緊張も相まって、上ずった声で答えた。
    それを見たハルバートンは、苦笑を浮かべると、頷き、口を開く。

  • 130二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 19:18:26

    ⭐️

  • 131スレ主25/04/30(水) 22:58:26

    『うむ、緊張する事はないぞ。君は謙虚だな。聞けば、君は学生……コーディネイターと言うではないか。
    ヘリオポリス以降、大変な目に遭ったと思うが、地球軍アラスカ基地に着くまでの辛抱だ。
    済まないが、もう少しだけ付き合って欲しい。基地に着けば除隊申請を出来るようにしておこう。
    勿論、君が望むのであれば、このまま軍籍を取る事も可能だ』
    「……はい。アークエンジェルには、友達も乗ってますから、僕も一緒に行くつもりでいました。
    軍籍については考えさせていただけませんか?」

    キラは正直に答えながらも、軍籍の事だけは、どうすべきか迷った。
    今は、友人達もアークエンジェルに乗っているから、こうしては居たが、
    正規の軍人でであるムウやマリューも、今やキラに取って、大切な人達なのだ。
    彼らを見捨てる事は出来ないが、本当にこのまま軍に入ってしまっていいのか迷い、そう答える他なかった。
    ハルバートンは少し残念そうな表情を浮かべたが、次の瞬間には表情を戻っていた。

    『そうか。時に、君は……友の為に戦っているのか?』
    「……最初は、そのつもりでした……。でも、今は友達ばかりではなく、
    大切な人達を守りたいから戦ってます。アークエンジェルの人達は、みんな良い人達ばかりで……。
    僕自身、何が正しいのかは、まだ分からないですけど、やれる事はやっておきたいですから……」

    キラは、ハルバートンから出て来た問いが青臭い物だった為に、最初は少し恥ずかしそうに問いに答えていたが、
    自分の言葉ではっきりと話して行くうちに、真剣な物へと変わって行く。
    ハルバートンは大きく頷き、キラに感心した様だった。

    『……いや、今は、それでいい。答えは自ら見つける物だ。
    いずれ、君自身の答えを見つける日が来るだろう。所で、君のご両親は?』
    「……両親ともナチュラルです」
    『……そうか。どんな夢を託して、君をコーディネイターとしたのか……』
    「……僕には、ナチュラルとかコーディネイターなんて事は関係ありません……。
    本当に大切な人達を守りたいだけですから。その為には力も必要ですし……」

  • 132二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 07:35:45

    原作より前向きだ

  • 133スレ主25/05/01(木) 11:36:22

    満足そうなハルバートンの表情がモニターから消えると、キラは再びキーボードを叩き始める。
    誰かが誰かを守る為に、何かを行う。それは見返りなどは無い。キラは己が為にキーボードを叩き続けた。

    ストライクと肩を並べ、甲板上で待機態勢に入っているカンヘルは、片膝を着きながらも左手に抱える
    ビームライフルは、常に戦場へと向けられていた。
    そのカンヘルのコックピットにスピーカーを通じて、ナタルの声が響いた。
     
    『――アヤセ少尉。第八艦隊司令、ハルバートン准将からの通信が入った』
    「俺に!?」

    琉生は突然の事に驚き、声を上げた。キラに通達が行っていたのにも関わらず、
    琉生にそれが無かったのは理由があった。ナタルとハルバートンの遣り取りを耳にした、
    一部のブリッジ要員が、綾瀬姉弟を何者なのかと疑問に持った事が原因だった。
    ナタルは、その事を含めて、ブリッジでの一部始終の内容こそ謝罪を兼ねて謝罪を口にする。

    『提督は、一言お礼が言いたいそうだ。それから、提督はカンヘルがモルゲンレーテの物だと思っておいでです』
    「モルゲンレーテ……ストライクを作ったオーブの国営企業か」

    ナタルから齎される情報に、琉生は頷きながらも、頭の中でどうすれば良いのかと考えを巡らす。
    そうしていると、ナタルが頼り無い声で謝罪の言葉を口にする。

    『……私に今、出来るのはそこまでだ。申し訳ない……』
    「いや、感謝してますよ」

    琉生の言葉を聞いたナタルの声は、申し訳なさを含んだ様に弱々しい物だった。
    しかし、ここまで来てしまったのだから、琉生に取っては引き返す事は出来ない。覚悟を決めた様に琉生は呟く。

  • 134スレ主25/05/01(木) 13:06:12

    「ここから先は、俺次第と言う事か……」
    『……そうだ……。あ、ストライクとの通信が終わったようだ。……繋ぐぞ』
    「分かった、繋いでください」

    ナタルの言葉を聞いた琉生は頷くとヘルメットを取り、少しの間、目を瞑る。
    この話しの内容次第で、自分がどうしなければならないか、決まる可能性が高い。
    琉生は、どうするかを考えながら、ハルバートンからの回線が入るのを待つのだった。

    アークエンジェルの甲板上でカンヘルはストライクと共に片膝を着き佇んでいた。その様な状態にあっても、
    カンヘルの持つビームライフルは常に戦場へと向けられ、いつでも発射は可能な状態であった。
    カンヘルのコックピットで琉生は目を瞑り、ハルバートンからの通信を待っていたが、
    やがて、モニターにアークエンジェルを介して、映像が送られて来た。
    モニターに映る地球連合軍の制服を着た男性が口を開くと、スピーカーから声が響く。

    『――私が第八艦隊司令、デュエイン・ハルバートンだ。
    今までストライクとアークエンジェルを守ってくれた。礼を言う』
    「いいえ。結果的にそうなっただけの事です」
    『だとしても、君が我が軍の最新兵器を守ってくれた事には変わりない。心から感謝する』
    「恐縮です」

    ハルバートンからの礼に、琉生は慎重かつ丁寧に答えた。
    何と言っても、相手は艦隊を指揮する人間なのだ。ましてや、琉生は、ここでは何の身分を証明する事が出来ない。
    ハルバートンの機嫌を損ねぬ様に、話を続けるのが得策と判断する。

  • 135二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 18:22:53

    どうやって誤魔化すのか楽しみ

  • 136スレ主25/05/01(木) 22:38:09

    『それでだが、君の名前は?』
    「名乗るのが遅れまして申し訳ありません。ルイ・アヤセと言います」
    『いや、構わん。君はモルゲンレーテの者なのだろう?ヘリオポリスがあの様な事になり、
    私としても甚だ遺憾である。地球連合軍を代表し、モルゲンレーテの開発協力に感謝の言葉と、
    オーブ国家に対し、ヘリオポリスでの被害に遭われた方々の速やかな回復と被災からの復興を祈念する』
    「いえ、自分は――」

    琉生はオーブの人間では無いのにも関わらず、その様な言葉を贈られた事に戸惑い、思わず言葉を詰まらせた。
    そして、ナタルの言った事を思い出す。
    『――提督はカンヘルがモルゲンレーテの物だと思っておいでだ』
    ハルバートンの話す姿を見る限り、琉生の事をオーブの人間だと勘違いをしているのは明らかだった。
    それなら、その勘違いに乗るのも手ではある。琉生はハルバートンに対して、慎重な面持ちで口を開く。

    「……それは、私ではなく、国の方にお伝え頂けますでしょうか」
    『うむ。そうさせてもらうつもりだ。今回の件では、君個人にも感謝している』
    「いいえ。自分としても、あの様な状況でアークエンジェルに乗せて頂き、感謝しています」
    『いや、構わぬ。時に君は、ストライクに乗っているキラ・ヤマト君と同じコーディネイターなのかね?』

    ハルバートンの勘違いに乗る事にした琉生は丁寧に受け答えをしつつも、ハルバートンからの問いに、
    この世界のナチュラルとコーディネイターと言う対立がここまで激しい物なのだと実感した。

    琉生は、一瞬、ストライクに目を向けると考える。――モルゲンレーテは、ナチュラル用に
    ストライクを造ったはずだ。それなら、カンヘルがナチュラル用だと思っていても可笑しくはないか……。
    琉生は、再びハルバートンの映るモニターへと顔を向ける。

  • 137二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 06:34:41

    そっちで押し切るか?

  • 138スレ主25/05/02(金) 10:46:24

    「……自分は――。……ナチュラルですが……」
    『――そうか!モルゲンレーテは良い物を造ってくれた!これで我々はプラントに対して、
    兵器的にも対抗出来ると言う物だ。君達の尽力に心から感謝する!』
    「……ありがとうございます」

    琉生の言葉を聞いたハルバートンの喜びようは、真面目な表情をしながらも興奮を見て取れる程、異様とも言えた。
    それ程、ナチュラルがモビルスーツを動かせると言う事実は、この世界では重要な事だった。
    ハルバートンの姿を見た琉生は「それ程の事か?」と、戸惑いを憶えつつも一応として礼で答えた。
    すると、ハルバートンは表情を硬くすると口を開く。

    『それでだが、アークエンジェルは地球に降りる事となる』
    「……地球に!?」
    『そうだ。そこでだが、引き続きアークエンジェルの警護をお願いしたい。ちなみに君は軍籍を持っているのかね?』

    ハルバートンの申し出は琉生に取って、都合の良い物で、
    受けるつもりではいたが、軍籍の事まで問われるとは思わなかった。

    「……いえ、自分は企業所属のテストパイロットなので……」

    地球連合に入る事は今でなくとも可能だと考えた琉生は、
    今は下手に拘束を受けるよりも、今後の選択肢を増やす為の選択を選んだ。
    琉生の返事を聞いたハルバートンは、残念そうな表情を浮かべた。

    『そうか……。勿論、君がオーブの人間である以上、強制は出来ん。君自身が決める事だが、どうかね?
    私としても、恩を仇で返すつもりは無い。勿論、都合が悪ければ離艦は認めるつもりだ』
    「……ありがとうございます。自分はアークエンジェルと共に地球に降りようと思っています。
    その間は今まで同様に協力させていただきます」
    『――そうか!それはありがたい!これを機にオーブと協力関係を結べれば、我々としては有り難いのだがな』
    「それは、一個人では何とも言えません。私としては先程言った通り、船を下りるまでは協力させていただいきます。そこでお願いがあります。現在、アークエンジェルでの立場なのですが、
    自分は同じ立場の姉と共に現地徴用士官と言う事になっています。一時的な措置とは言え、それをお認め頂きたい」

  • 139二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 13:36:53

    このレスは削除されています

  • 140スレ主25/05/02(金) 13:37:48

    琉生は、アークエンジェルの警護の見返りに条件を出した。それは、この先、
    もしも地球連合に所属する事になった場合、少しでも実績が有れば良い条件で入隊する事が出来る。
    それ以外にも、ハルバートンにはオーブの関係者と思われてはいるが、それは嘘でしかなく、
    この世界での自分達の身分を証明する物が無い。それを作るチャンスでもあった。
    ハルバートンは、一瞬、考え込む様な素振りを見せ、琉生を見据える。

    『……ほう。その理由は?』
    「……ラミアス、フラガ両大尉と話し合い、その様な事となりました。……乗組員は自分の事を
    軍属の人間だと思っています。事が事だけに、我々の正体がばれますと、この様な戦局では艦内の士気にも
    影響すると思われます。それを防ぐ為にも、出来れば艦内で私の身分を証明する物を頂きたいのですが……」

    言った以上、琉生も引き下がる訳にはいかない。これ程のチャンスは無い。口から出任せではあるが、
    冷静に理由を口にした。それを聞いたハルバートンは、モニターから目線を外し、腕組みをすると少し考え込んだ。

    『……なるほどな。……分かった、認めよう。少年達の物も作らねばならぬからな。特別措置として、
    君が我が軍の者であると言う証明出来る物を、至急、作らせるようにラミアス大尉に伝えておく。
    私としては、そのまま地球軍に籍を置いて欲しいくらいだがな。どうかな?』

    ハルバートンは頷くと、目線をモニターに戻して琉生の出した要求を飲む事を了承した。
    琉生は、その言葉に安心した表情を浮かべ、ハルバートンに向かって頭を下げる。

    「ありがとうございます。軍籍の事は考えさせていただきます」
    『――はっはは!そうか!それでは引き続きアークエンジェルを頼んだぞ、ルイ・アヤセ少尉!』
    「――了解しました」

    返答を聞いたハルバートンは、社交辞令的な言葉と分かっていながらも嬉しそうに笑い、
    仮初めではあるが、地球連合軍の階級で琉生の名を口にした。
    琉生は頷き、ハルバートンに向かって敬礼をした後にモニターを切った。

    「……俺は交渉人には向いて無いな……。まあ上手く行ってよかった」

  • 141スレ主25/05/02(金) 22:00:50

    琉生は、シートに体重を預けると大きく息を吐いた。そして、ヘルメットを被り直す。
    身分を証明する物が手に入るとは言え、まだ戦場に居るのだ。アークエンジェルが沈んでしまっては
    何の意味も無くってしまう。ヘルメットのバイザーを下ろすと、閃光が瞬く場所へと目を向けた。

    地球軍プトレマイオス基地ドック内では、戦艦の爆破作業に入っていたザフト軍モビルスーツ達が、
    戦艦の残った砲塔から攻撃を受ける事態が起こっていた。
    勿論、それ以外にもバズーカなどの兵器を使う地球軍将兵からの攻撃を受けている。
    一機のジンが、戦艦からの攻撃を巧みに避けながら砲塔へと距離を詰める。

    「――ナチュラルが――!」

    ジンのパイロットは叫ぶと、一気に砲塔へと降り立ち、サーベルを突き立てた。砲塔は小爆発を起こすと沈黙する。
    そこに、ブリッツに乗るイザークからの通信が入る。

    「そっちは済んだか?」
    『――ああ。これでデカイ攻撃は来ないはずだ』
    「残りの作業はどうなっている?」

    砲塔を潰したジンのパイロットが辺りを確認しながら返事をすると、スピーカーから再び、イザークの声が響く。
    恐らく、爆破作業を行っている他の機体に作業の進行状況を聞いているのだろう。

    「――現在、進行中!間もなく終了する!」
    「早く済ませろ!」

    スピーカーから爆破作業を行っているパイロットの声が響くと、イザークの怒鳴り声が再び響く。
    赤服と呼ばれるエリート達は、年齢が下であろうが立場は上だった。多くの中から選ばれた一握りの人間なのだから、当たり前なのだ。勿論、全ての赤服がそうではないが、それでも、ブリッツのパイロットの物の言い方は、
    どうにか成らない物かと感じる。同じ隊の者には悪いが、つくづく、ブリッツに乗るパイロットと同じ隊に
    所属していなくて良かったと彼は思った。気を取り直すと、湧いて出て来る地球軍兵士をどうするか考える。
    奴らは、バズーカやらを抱えて出て来るのだ。流石にモビルスーツと言えど、
    生身の人間相手に重装備の機体では対処はしにくい。

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