TRPGのPCをコズミック・イラに放り込んでみた。3(TRPG風SS)

  • 1スレ主25/04/07(月) 10:25:59


    好きなTRPG[駅前魔法学園]のPCをC.E.に放り込んでみたリプレイ風SSです。

    基本はSSで、重要な行動をする際はダイスを振ります。



    感想や挿絵を送っていただければ主のやる気が三倍になるので、

    リプレイ作品を見るような気持ちでお付き合いください。


    https://bbs.animanch.com/board/4714183/?res=199


    前回

  • 2スレ主25/04/07(月) 10:26:43
  • 3スレ主25/04/07(月) 10:29:38


    綾瀬琉生(アヤセルイ)男 13歳 169㎝

    アリス 魔女術


    パイロット128  砲手69  操舵手48 メカニック145

    オペレーター30 艦長12 空間認識能力91  100を超えるとその世界最高(ノイマンが操舵手100)


    [駅前魔法学園]が一番好きなTRPGだった転生者。

    魔法を学び始めて以来、事ある毎に事件に巻き込まれ、それを解決してきた。

    その為「人生はほんのり刺激がある程度で十分」がモットーの昼行燈を気取っているが、

    巻き込まれた際にはいの一番に行動するほど責任感が強い。


    総合的に[前衛が務まる回復役]だが、手数が多いので他の分野でもそれなりに活躍できる。

    ただし得意分野(治療と調査、BOSS戦)以外は器用貧乏なので、専門家には劣る。 

  • 4スレ主25/04/07(月) 10:31:40


    魔導機神カンヘル

    全高18.2Ⅿ 重量4.5t

    動力:グランドータス式魔導エンジン

    装甲材質:オリハリュコニュム合金

    操縦方式:グランドータス式精神接続


    とある異世界で琉生が手に入れたファンタジー系ロボ。

    元は乗り手が現れず、遺跡で埃を被っていた発掘品だった。

    それを琉生が現地の技師と共に自身の知識と技術を応用して復活させ、以後彼の乗機となった。

    その世界独自の操縦方式の為、生身の体とな時感覚で操縦することができる。


    武装は空中・水上・水中・宇宙を自在にサーフィン方式で移動できるシールド。

    ある程度伸縮し、鞭の様に使えるグレイブと長棍。調整すればMS用の装備も問題無く使用できる。

  • 5スレ主25/04/07(月) 10:33:51


    綾瀬瑠璃(アヤセルリ)女 13歳 130㎝ Fカップ

    ウィザード 召喚術


    パイロット58 砲手74 操舵手83 メカニック6 オペレーター31

    艦長73 空間認識能力108


    琉生の二卵性の姉。産まれた時から妖精や精霊の類を見ることができた。結果魔法を学ぶことになり、

    特に召喚術に強い興味を持つようになった。

    単独で事件に巻き込まれることが多いが、すぐに味方を作れる人徳故に困ることはなかった。

    散歩というより旅行が趣味であり、その土地の文化や名物を楽しむのが生きがい。

    料理を含めて家事全般が得意で、世話焼きな面がある。


    干支に因んだ12体の召喚獣を、目的に合わせて召喚する。


    総合的には[サポート特化]、前線に出るよりも後衛として補助に回るのが一番得意。

    砲手に適性があるので、そちらに回ることが多い。

  • 6スレ主25/04/07(月) 10:36:59


    キラ・ヤマト 女 16歳 156㎝ Cカップ


    原作では男主人公だが、本作ではヒロイン。

    コーディネーターである事を気にせず優しく接してくれる琉生に好意を持つ。

    琉生の淹れるカフェオレ(甘め)と琉生の膝枕が好き。


    キラ>琉生の好感度131

    琉生>キラの好感度107


    70以下で自覚ありで異性として見てる

    80以下で夜のおかずにしてる

    それ以上だと二人きりの時に押し倒しそうになる

  • 7スレ主25/04/07(月) 10:48:01


    ラクス・クライン 女 16歳 158㎝ dice1d3=3 (3) カップ 1.A 2.B 3.C


    本SSにおいて琉生のもう一人のヒロイン。天然なお姫様のように振舞っているが、

    琉生とキラの前では素顔を見せる。キラの事はお互いに友人兼ライバルと思っている。

    琉生の淹れるコーヒーはdice1d2=1 (1) が好き。 1.苦め 2.甘め


    ラクス>琉生 117

    琉生>ラクス 76

  • 8スレ主25/04/07(月) 10:50:52

    前回のあらすじ

    クルーゼラスボスの本領発揮。
    琉生ラク確定。
    アスフレ確定。
    二コル、アスランを厳しめに説得。

  • 9スレ主25/04/07(月) 11:00:44

    月より出撃した地球連合軍第八艦隊が、地球衛星軌道に集結している敵軍を目指し
    暗闇が支配する宇宙空間を航行していた。その旗艦メネラオスのブリッジでは、艦隊司令官として、
    同軍准将デュエイン・ハルバートン提督が座乗している。
    ハルバートンは状況を確かめる為、隣に座る副官のホフマンに声を掛けた。

    「あと、どれくらいだ?」
    「あと四時間程で目的ポイントに到着します」
    「うむ。敵艦隊の数や他の情報は判るか?」
    「未だ、詳しい事は判っておりません」
    「アークエンジェルからの連絡は?」
    「ありません」
    「……そうか」

    ホフマンからの報告にハルバートンは頷き、少し考える込んだ。今から戦う相手の詳しい
    情報が有れば対処もし易くなるのだが、未だ確認も儘ならない。
    戦場となるポイントまでは距離も時間も有り、今の段階ではそこまでの対処は必要ないが、
    ただ、ハルバートンの頭の中ではアークエンジェルの事が気に掛かっていた。
    ――アークエンジェルは何をしているのだ……。まさか、敵の手に落ちたのではあるまいな……。
    コロニーの崩壊があったとは言え、本来ならば、既に月基地に到着していなければ可笑しいのだが、
    連絡も無く、未だ消息も不明で、開発責任者でもあるハルバートンの心を苛立たせていた。
    しかし今は、姿の見えないアークエンジェルよりも、目の前の敵を優先しなければならない。
    ハルバートンはモニターに目を向けると考えを切り替える事にした。敵軍の戦力が判らない以上、
    下手な小細工を仕掛けるよりも、今までの戦い方をする方が対処もしやすいと考え、ホフマンに告げる。

  • 10二次元好きの匿名さん25/04/07(月) 12:18:20

    ルイはフルシティかフレンチが好きそうだけど、ラクス飲めるのか?

  • 11スレ主25/04/07(月) 18:34:14

    「では、いつも通り、補給艦隊はメネラオスの後方に下げる事にする。
    但し、メネラオスと距離を置き、護衛艦数隻を補給艦の前面に展開させておく」
    「しかし、それでは攻撃が薄くなりますが……」
    「メネラオスの前には、先鋒の精鋭達がおる。早々、やられる者達ではない。
    攻撃が薄くなる分は、補給艦護衛の攻撃機を投入すればよい」

    ハルバートンは絶対的な自信と自ら指揮する第八艦隊の将兵達に信頼を寄せているのか、言い切った。
    しかし、ホフマンはアークエンジェルやアラスカ本部から流れてくる噂を含め、慎重になっているのか、
    多少、心配そうな表情を見せる。

    「……敵の戦力も分からないのです。メネラオスも下げましてはどうでしょう?」
    「私が下がりすぎてどうする?そのような事をすれば、将兵の士気に差し障りが出るではないか!」
    「しかし……。いえ、申し訳ありません」

    ホフマンの心配を他所に、ハルバートンは冷静に応えこそするが、語気は怒りを含んだ物だった。
    その様子にホフマンは、言葉を濁しながらも尊敬する上官を立てる為、謝罪の言葉を口にした。
    ハルバートンにも、ホフマンの心配する気持ちが伝わったのか、首を振ると穏やかな表情を見せる。

    「……いや、貴様の気持ちだけは貰っておく。いつもの事だが、寝ている将兵は到着前に起こしておけ」
    「閣下、第八艦隊の将兵に、そのような間抜けはおりません」

    ホフマンは、ハルバートンの表情を見て安心したのか、自信に満ちたような顔で答えると、
    ハルバートンは満足そうな表情を見せる。
     
    「うむ。ホフマン、補給艦隊に打電を。戦闘中にアークエンジェルが現れる事があれば、直ぐに向かわせる。
    その時は、物資の搬入を迅速に行えと伝えろ」
    「了解しました」

    ハルバートンの指示にホフマンは頷くと、第八艦隊全艦に伝令を伝えた。
    第八艦隊の将兵達の士気は、宇宙空間の冷たさなど吹き飛ばすかのように高まりつつあった。

  • 12スレ主25/04/07(月) 21:02:26

    CICに座っていたトノムラが声を上げた。

    「……なんだ、これは……?」
    「どうしたの?」

    マリューは何事かと、顔を向けるとトノムラは慌てたように応えた。

    「――あ、はい。通信らしき電波を拾いました。だた、何分、電波が微弱なので、聞き取れにくくて……」
    「何かしら……?出力を上げて、聞き取れないかしら?」
    「……やってみます」
    「お願いね」

    トノムラは入ってくる電波を聞き逃さないように耳を傾ける。
    作業をしていたミリアリア達の手も緊張からか、動きを止めてトノムラに視線を向ける。
    聞き取る事に集中していたトノムラの表情が険しい物に変わると、絶句するかのように言葉を吐いた。

    「これって……!」
    「分かったの?」

    トノムラの表情から、マリューも強張った物へと変化した。頷きながらもトノムラは、マリューへと視線を向ける。

    「ええ……。確証がある訳ではありませんが、この付近を航行中のザフト艦の通信だと思われます」
    「どの辺りにいるか分かる?」
    「いいえ。ただ、電波状態が悪いんで、ザフト艦とはかなりの距離があると思います。
    内容からすると、地球衛星軌道に向かってるようですが……」
    「どう言う事かしら……?」

  • 13スレ主25/04/07(月) 22:01:55

    自分の知らない所で動いている事態にマリューは眉を顰めた。
    頭の中であらゆる可能性を巡らせるが、あまりにも情報が少な過ぎる。
    トノムラは、マリューの言葉が自分に向けられた物だと思い、首を横に振ると聞き取れた情報を伝える。

    「しかし、あと三時間程で地球軍艦隊と戦闘が行われるような事は聞き取れました」
    「そう……。地球軍艦隊は、どこの基地から出撃した物か判るかしら?」
    「流石にそこまでは……。ただ、規模が艦隊クラスのようですから月基地辺りではないでしょうか」
    「……その可能性高いわね。――フラガ大尉とアヤセ少尉、バジルール少尉を呼び出して!」
    「――了解しました!」

    マリューは指示を出すと、矢継ぎ早にチャンドラ二世に声を掛ける。

    「どれくらい掛かるか判る?」
    「戦闘が行われる宙域が詳しく判らないんで、何とも言えませんが、
    通常航行で地球衛星軌道でも五、六時間と言ったとこですかね」
    「その数字はデブリを抜ける時間も入ってるんだろう?」

    チャンドラ二世の言葉に、ノイマンが振り返り、聞き返した。

    「ああ。デブリを迂回して抜けるまでの予測も含めての数字だ」
    「デブリが無ければ、もっと早く到着するって事ね……」

    マリューは呟くとブリッジを暫しの沈黙が支配する。デブリを迂回していれば時間が掛かり、
    既に戦闘が終わった後に到着する事になる。かと言って、このまま合流して良いものかとも思う。
    しかし、自分が知らない状況が展開されて居るのだから、単独で動くより合流した方が少ないのでは?とも考えた。
    左手に見えるデブリ帯を見つめ時間を短縮する方法を考える。――デブリ帯が無ければ、
    すぐに行く事が出来るのに……。――ん!?マリューは、アークエンジェルで火力・破壊力が高く、
    デブリに容易く穴を開ける事の出来る兵器を思い出し、パルに声を掛けた。

  • 14二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 07:28:49

    そろそろ軌道上戦か

  • 15スレ主25/04/08(火) 10:07:06

    「……ローエングリンでデブリに穴は開けられるかしら?パル伍長、どう?」
    「――は?あ、はい。……可能ではありますが、連発で撃つ事になります」

    パルは自分に声が掛かると思わなかったのか、返事に間が空いたが、
    すぐにキーボードを叩くとマリューの問いに答えた。
    マリューは、聞きながらもチャンドラ二世に顔を向けて口を開く。

    「その上で、最大船速で巡航した場合は?」
    「デブリを抜けるまでの時間が読めないので、何とも言えませんが、恐らく……半分とは言いませんが、
    それ位は短縮出来ると思います。あくまで推測になりますが……」
    「一番エネルギーを喰うのを連発した上に、最大船速か……。艦長、
    いざ戦場に着いてもエンジンに負荷が掛かり過ぎて、パワーダウンを引き起こす可能性があります」

    チャンドラ二世は、考え込むようにモニターを覗き込むと、難しい顔をしながら答える。
    その言葉を聞いたノイマンが眉間に皺を寄せながらマリューに向き直ると言った。 

    「……そう。……デブリのすぐ側を通ったのが、仇になったって事ね。……どうすればいいのよ……」

    マリューの表情に険しさが増し、デブリを睨みながら呟いた。ビーム兵器の多いアークエンジェルにとって
    戦場でのパワーダウンは致命的な結果を招きかねない。最悪、戦場に着いたがいいが、
    ビーム兵器が使用不能という可能性だってある。ブリッジの空気は一気に重くなり、沈黙が支配する。
    それを突き破るかのように扉が開き、ムウを先頭に琉生と瑠璃とキラ、そしてトールがブリッジへと入って来た

    「――どうした?」
    「お呼び立てしてごめんなさい。ザフト軍の通信を傍受したんです。どうやら、大規模な戦闘が行われるようで……」
    「――えっ!?」
    「マジかよ……!俺達がのんびりしてる間に、情勢は動いてたって事か!」

  • 16スレ主25/04/08(火) 12:30:51

    何事かと聞いてきたムウに、マリューがいかにも困ったと言う表情で答えると、キラとムウが
    驚いた表情で声を上げた。綾瀬姉弟はCICのモニターを覗き込み、状況を確かめると口を開く。
     
    「……なるほどな。それで、艦長はどうするつもりなんだ?」
    「ええ、状況が状況なので……。私としては――」
    「――遅れました!何があったんですか!?」

    マリューが言いかけた処で扉が開き、ナタルが慌てながら飛び込んで来た。丁度、ナタルが来た処で、
    マリューは一から状況の説明をする事にした。それぞれが神妙な面持ちで説明に聞き入り、
    マリューが説明が終わるとナタルがすぐに口を開く。

    「それならば、我々も合流し、参戦するべきかと思いますが」
    「でも、時間的に間に合わないんだろ?」
    「時間を短縮する方法が無い訳では無いんです」
    「なら、それをやるしかないだろ」
    「……ただ……」

    ムウとマリューはやり取りを始めるが、竹を割ったようなムウの言葉に、マリューは言いにくそうな表情で
    言葉を濁す。はっきりしないマリューの言葉尻に琉生が助け船を出すように声を掛ける。

    「その方法に問題が?」
    「ええ。ローエングリンを連続で撃って、デブリに穴を開ける方法なんですが……。その後は最大船速で向かえば
    可能みたいですが、エンジンに負荷が掛かり過ぎて、パワーダウンを引き起こす可能性が……」
    「どっちにしても選択肢は艦隊に合流するか、このまま月に向かうかしか無いんだろ?どうすんだ?」

    理由を聞いたムウは、頭を掻き毟りながらマリューに聞き返した。
    マリューは苦慮しているのか、ムウの言葉に答えられぬまま、知らず知らずのうちに呟きが漏れる。

  • 17二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 13:55:59

    まあ、難しい選択だよな

  • 18スレ主25/04/08(火) 19:51:07

    「合流すれば、最低限、戦闘は避ける事は出来ないけれど、帰りは護衛が付く……。
    月基地へ向かうなら、到着までアークエンジェルだけで、これからの事を対処しなければならない……か」
    「艦長、どうなされますか?」

    ナタルが、マリューを見据えながら決断を迫る。マリューはゆっくりと考えている時間も無く、
    すぐにでも決断しなければならない。額に手を当てると目を瞑った ――エンジンパワー……か。
    ……リスクは大きいけど、護衛が着くなら合流する価値はあるはずよね……。
    マリューは息を軽く吐き、少しだけ顎を引くと目を見開く。

    「……合流しましょう。進路変更!艦首をデブリ帯に向け、ローエングリン発射態勢へ!
    細かいゴミはモビルスーツのビーム兵器で排除します。アヤセ少尉、ヤマト少尉、ケーニヒ准尉お願いできる?」

    琉生達は頷くとブリッジを後にする。
    それを見送ると、マリューはブリッジに残ったムウとナタルにも指示を与える。

    「フラガ大尉、バジルール少尉は、CICに。あと、バジルール少尉。合流する前に乗組員に食事を取らせるように
    通達して。メカニックとパイロット、その後にブリッジ要員と戦闘要員を優先するようにお願いね」
    「おう、了解了解!」
    「了解しました」

  • 19スレ主25/04/08(火) 21:28:49

    プラント本国では、地球軍艦による民間船シルバーウインド号の攻撃に対して、最高評議会議長
    シーゲル・クラインが抗議及び非難声明によって、一般民間人に対しては一応の形を見せた事となった。
    しかし、クラインが声明はそこまでであって、地球軍への報復には対しては言及しておらず、
    世論からはクラインに不満の声が上がっていた。それを見越したかのように、国防委員長パトリック・ザラが
    現在進行中の作戦の話こそ発表しなかったが、報復を仄めかす発言をした為、
    パトリック支持の声が増えている状況にあった。そんな中、評議会のメンバー、
    そしてクライン派として事後の対応に追われ、疲れた表情をしたユーリ・アマルフィが帰宅した。

    「今、戻った」
    「お帰りなさい」
    「……ただいま……お茶を貰えるかな」
    「はい」

    ユーリは微笑みながら返事をする妻のロミナの顔を見ると、安堵の表情を浮かべ脱いだ上着を手渡し、
    ソファーに腰を沈め、大きく溜息を吐き、窓の外に目を向ける。ユーリ自身、シルバーウインドを攻撃した地球軍艦を拿捕したと言う報告を聞いてからは、パトリックの言う通り、報復もやむなしだと思っていた。
    地球軍は軍艦を攻撃するならいざ知らず、民間船を攻撃した以上、これから先、無差別に攻撃して来る
    可能性が高まったのも同然だからだった。抗議声明に対し、未だに発表しない地球側を交渉のテーブルに
    引きずり出す為にも、現在行われている作戦が成功させ、これを足掛かりに和解、又は停戦まで持ち込む事が
    出来ればと、期待をしていた。
     
    「おじ様、お帰りなさい」

    ユーリは扉が開いたのにも気付かず、驚いたように声のした方向に顔を向けると、視線の先にはフレイが立っていた。
    扉が開いたのにも気付かない程疲れていたのかと、ユーリは苦笑いを浮かべる。
      
    「……ただいま。ここの生活には慣れたかい?」
    「はい。さっきまで、お庭をお散歩してました」
    「そうか、それなら良かった。……ニコルやアスランは行ってしまったが、寂しくはないかい?」
    「……いいえ」

  • 20スレ主25/04/08(火) 22:01:00

    ユーリに対して、フレイは言葉を選びながら答えているのか、ややぎこちない。
    質問に、やはり同年代のニコルとアスランが任務の為、居なくなったのが寂しいのか、フレイは言葉を濁した。
    ユーリは、そんなフレイを見て思った通りだと感じながらも、フレイを気遣うように頷く。

    「……そうか」
    「……あの……、アスランの婚約者の……ラクスさんは……?」

    フレイもユーリの気遣いに気付いたのか、済まなそうな表情をしながらも、気になっていた事を口にした。
    ユーリが目線を外して首を横に振ると、フレイは俯いて呟く。

    「……そうですか」
    「君の責任ではないんだ。気にする必要はない」
    「……でも……」

    フレイは、ユーリの言葉に納得はしながらも、同じナチュラルである地球軍の軍艦が民間船を攻撃した上に、
    アスランの婚約者を殺してしまった事に引け目を感じて言葉を繋ごうとした。
    しかし、丁度、紅茶を入れ終わって戻って来たロミナが会話を聞いていたのか、俯くフレイに優しげに声を掛ける。

    「主人の言う通りよ。あなたが、そのような顔をする必要はないのですよ」
    「……おば様」
    「さあ、フレイさんも座って。あなた、お待たせしました」
    「ああ、ありがとう。さあ、フレイも座って」
    「……はい」

    フレイは居た堪れなくなりながらも、頷き椅子に腰を下ろした。ユーリは、紅茶を一口含むと息を吐く。

  • 21スレ主25/04/08(火) 22:01:33

    「ふう……」
    「お疲れのようですね」
    「ああ、心労が溜まるばかりだよ」

    愛する夫を気遣うロミナが心配するように声を掛けると、ユーリは頷いて愚痴を零した。

    「それで、どうなんですか?」
    「……クライン派にとっては、芳しくないよ」
    「そうですか」
    「それに知られてはいないが、既に軍は動いている。その為にニコル達も出撃してのだから予想もつくだろう」
    「……ええ」
    「……今回の作戦が、名目上、衛星軌道で戦闘が行われる予定になっているんだが、それだけでは無いんだ……」
    「――え!?」

    濁すように言うユーリの言葉に、フレイは驚きの声を上げた。
    ユーリはフレイを見ると、はっきりとした口調で告げる。 

    「君の前で話すべき事では無いと思うが、いずれは分かる事だ……」
    「どう言う事ですか?」
    「……ザフト軍は地球軍月基地に奇襲を掛ける」
    「――!」

    ロミナが聞き返すと、ユーリは眉間に皺を寄せ両手を顔の前で組んで、冷静に答えた。
    フレイは、事の大きさに言葉を出せないまま、驚きの表情を浮かべ青ざめた。
    ロミナも同様に、その作戦に従事しているニコルの事を心配してユーリに詰め寄る。 

  • 22スレ主25/04/08(火) 22:04:07

    「――ニコルは!?あなた、ニコルは大丈夫なんですか!?」
    「……それ以上の事は機密事項になっていて、衛星軌道の部隊なのか奇襲部隊なのかのさえ、
    私にも分からないんだよ……」

    妻を見据えたまま答えるユーリの言葉に、ロミナは更に表情を青くした。
    フレイも同様で顔色を更に青くさせ、震える足に力を入れ立ち上がり、ユーリに詰め寄る。

    「――そんな!アスランは!?アスランも分からないんですか!」
    「それも分からない……」

    ユーリは首を横に振ると同じように答えると、フレイは力が抜けたように腰を椅子に落とした。
    二人を見つめながらユーリが再び口を開く。

    「……どちらにしても……無事に帰って来てくれる事を祈るばかりだ……」

    呟くように言った言葉は、フレイとロミナには聴こえていなかった。
    ユーリは二人の表情を見て、作戦の成否を口にしなかった事を正解だと思った。

  • 23二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 06:03:26

    ニコルに何かあったらNJC開発が加速するな

  • 24二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 09:59:22

    まあ、結局地球に降りるだろうな

  • 25スレ主25/04/09(水) 14:30:59

    デブリ帯を無事に抜けたアークエンジェルの食堂は、マリューの命令で戦闘に入る前に、
    食事を済ませるようにと通達がされた為、異常な程に忙しく、交代要員も駆り出され、戦場と化していた。
    ラクスも同様でスタッフと共に忙しく働いているが、違う事があるとすれば、ラクスにはこれから
    ザフト軍と戦闘に入ると言う事が伝えられていない事だった。
    だが、この忙しさの余り、その事に気付く余裕すら無いようで、額に汗を浮かべながら働いている。
    ラクスは出来た食事をカウンターに出すと、並んで待っていた女性の乗組員に笑顔を向けた。

    「はい、お待たせしました!」
    「うん、ありがとう」
    「はい!――すぐにご用意しますので、お待ちくださいますか?」

    ラクスは女性の言葉に、嬉しそうに笑みを湛え、カウンターに並べた食事が無くなったのを確認して、
    次に待つ男性に頭を下げると、厨房の中に戻って行く。盛り付けを行っている台の前まで来ると、
    料理の入った寸胴鍋を運んで来た若い男性スタッフが、ラクスが手が空いていると思ったのか、声を掛ける。

    「上がったよ!その空の鍋、退かして!」
    「――はい!」
    「……いや、君じゃ、持ち上げるの大変だろ?俺がやるから、鍋を置いたらトレイに盛り付けてくれ」
    「はい!分かりましたわ!」

    ラクスが頷くと、男性スタッフは持っていた寸胴鍋を交換して、空になった鍋洗い場へと運んで行く。
    他のスタッフも並びながら、ラクスは盛り付けを始めた。ラクスが厨房内で盛り付けをしている事で、
    空いてしまったカウンターには、一緒に入っている若い女性スタッフが、いつの間にか入っていた。
    それから、しばしの間、盛り付けに専念した為、どの位時間が経ったのか分からないが、
    鍋の中身が半分近くが減っていた。ラクスは満足そうに、一度息を吐くと、カウンターの方から自分を
    呼ぶ声に気付き、顔を向けるとカウンターの向こう側から、中を窺うようにミリアリアが顔を覗かせていた。

  • 26スレ主25/04/09(水) 22:17:27

    「ラクス、忙しそうね」
    「ミリアリア!すぐにご用意しますから、待っててくださいね」
    「うん、ありがとう。今日は一緒に食べられないの?」
    「ええ。今日は、いつもに増して皆さんお忙しいですし、
    私だけ抜けてしまうのは、皆さんにご迷惑を掛けてしましますから」

    ラクスは残念そうな表情を浮かべると、ミリアリアも厨房の忙しさに納得して残念そうに頷いた。

    「……うん。がんばってね!」
    「はい!」

    ミリアリアの掛けてくれた言葉が嬉しかったのか、満面の笑みで頷くと、再び盛り付けを開始した。
    一方、カウンターの外では、交代で食事をしに来た少年達とマリュー、チャンドラ二世、
    パルが食事を受け取り、席に着き食事を始めようとしていた。

    「ザフトが集結してるって、どう事なんですかね?」
    「……さあ?分からないわ」
    「流石にはっきりとした情報が無いからな……」

     首を横に振るマリューに同調するかのように、チャンドラ二世が料理をスプーンで突付きながら頷いた。
     これから行われる戦闘に関しては、あまりにも情報が少なすぎて予測を立てるのが困難だった。
     サイは、今、分かっている情報を確認するかのように、マリューに聞いてみる。

    「でも、地球軍も艦隊を出してるんですよね?」
    「ええ。でも、ザフト軍がわざわざ衛星軌道で戦闘を行う理由があると思えないのよ」
    「あるとすれば、地球降下……地球の軍施設への攻撃ですかね?」
    「……そんな事あるんですか?」

  • 27スレ主25/04/09(水) 23:12:41

    マリューの言葉に、チャンドラ二世が自分の推測を言うと、カズイが信じられないとばかりに、驚いた表情を見せた。
    少し考えるような素振りをマリューは見せ、口を開く。

    「……可能性として捨てきれないけれど、ザフトがそんなに急ぐ理由も無いと思うのよ」
    「……ですよね」
    「でも、今は何よりも、地球軍艦隊に合流する事が先決ね。食事、早く済ませちゃいましょう」

    チャンドラ二世が頷くと、気を取り直すかのようにマリューが全員を見渡しながら言った。
    その場に居た、全員が頷くと止まってた手を動かし始め、そう時間も掛からず食事を終わらした。
    全員が席を立ち、ブリッジへと向かう為、マリューを先頭に食堂を後にする。
    最後尾を歩くミリアリアは、途中で前を歩くトールの手を掴んで立ち止まった。
    マリューは振り返ると、ミリアリアに声を掛ける。

    「どうしたの?」
    「あの……少しだけいいですか?」
    「分かったわ。でも、急いでね」
    「はい。ありがとうございます」

    事情を察して、マリューはトールとミリアリアを残して、先にブリッジに向かう。
    マリュー達が見えなくなると、ミリアリアはトールの手を離し、向かい合うと少し怒り気味に捲くし立てる。

    「……トール、どうして訓練なんて受けるのよ」

  • 28二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 01:31:56

    反応としては普通か

  • 29スレ主25/04/10(木) 10:40:51

    「キラ達だけに戦わせてばかりは嫌なんだよ」
    「だからって!キラはコーディネイターで、ルリ達は経験豊富な魔法使いで、トールはナチュラルなのよ!
    すぐに上手くなるわけ無いじゃない!」
    「うん……フラガ大尉にも言われたよ。だから、一端になるまでは実戦に出さないってさ。
    体力作りから始まったばっかり出し、まだ先の事だよ」

    トールは、以外にも穏やかに答えた。ミリアリアの言いたい事は分かっているかのように、トールは微笑む。
    いつも馬鹿な事をしている時のトールとは違う表情に、ミリアリアは泣きそうな表情になりながらも本心を伝える。

    「……そうだとしても……私は、トールに危ない目に遭って欲しくないの……」
    「俺は、キラ達だけにこの状況を背負わせたくないし、助けてやりたい。それに、俺、守りたい人が居るからさ……」

    トールは頷くと、ミリアリアを抱き寄せる。ミリアリアはトールの「守りたい人」と
    言うのが自分だと分かっているからこそ、今はそれ以上、何も言えなくなった。
    ミリアリアは、トールの腕の中で呟き、大切な人が傷つく事の無いように願う他無かった。

  • 30二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 16:15:08

    難しい選択だよなぁ

  • 31二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 18:27:05

    トールは生き延びることができるか

  • 32スレ主25/04/10(木) 21:32:55

    地球連合軍プトレマイオス基地に向かっているザフト軍の艦隊はエンジンを止め、
    慣性航行でレーダーに掛からないように進んでいた。未だ、肉眼では地球軍基地は豆粒のようにしか確認出来ない。
    エンジンを稼動させ、最大船速で移動すれば、そう時間は掛からない距離にあった。
    奇襲部隊の旗艦であるヴェサリウスの格納庫では、出撃の為にイザークがブリッツに
    乗り込み、ハッチを閉める処だった。

    「ったく、俺が先に出たいくらいだぜ!」
    「落ち着け、ディアッカ!」

    ブリッツのコックピットに取り付いて、文句を言うディアッカをイザークが嗜める。
    ディアッカは、まだ言い足りないのか、少し拗ねたように口を開く。

    「でも、衛星軌道上じゃ、そろそろ戦闘に入るんだろう?」
    「作戦は聞いただろう。ガキじゃあるまいし、もう少しなんだ、我慢しろ!」
    「ちぇっ!先に一人で出撃するからってさ……」
    「文句なら、隊長に言え!コックピットを閉めるぞ!ディアッカ、いい加減、離れろ!」

    イラつき始めたイザークは、声を荒げて怒鳴った。ディアッカは時間を確かめると、「もう時間かよ」と言って、
    足でブリッツの装甲を軽く蹴り、慣性に任せながら離れる。ブリッツから離れると大声でイザークに声を掛ける。

    「イザーク!俺が行くまで、のんびり隠れててくれ。見つかって、やられんじゃねえぞ!」
    「当たり前だ!貴様こそ、落ちるなよ!」
    「あいよ!」

  • 33スレ主25/04/10(木) 22:08:47

    イザークの怒鳴り声にディアッカは、手を上げて答えると着地してパイロットルームへと引き上げて行った。
    ブリッツのコックピットを閉じるとモニターに格納庫が映し出される。
    再度、計器類のチェックを行い出撃準備が整うと、クルーゼからの通信が入った。

    「イザーク、分かってると思うが失敗は許されん。頼んだぞ」
    「――は!必ずや成功させて見せます!」

    頷くイザークにクルーゼは「期待しているぞ」と言って通信切った。
    イザークは、ブリッツをリニアカタパルトへと進ませ、少し経つと発進OKのシグナルが点る。
     
    「――イザーク・ジュール!ブリッツ出るぞ!」

    イザークが叫ぶとブリッツは急激に加速し、ヴェサリウスから飛び出して行く。
    一度、バーニアを吹かし、更に加速を駆けると、イザークは隠蔽機構[ミラージュコロイド]を発動させる。
    機体の各所にある噴射口からガスのような物が噴出す。ブリッツは見る見るうちに闇へと溶けて行く。
    やがてブリッツの機体は完全に見えなくなり、肉眼やレーダーでも見つける事が出来なくなった。

  • 34二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 03:13:46

    月はダメそう

  • 35スレ主25/04/11(金) 09:41:05

    アークエンジェルの格納庫では、出撃を前にして整備兵達が各機動兵器のチェックの為に忙しく動いていた。
    キラはモニターを見ながら、物凄い勢いでキーボードを叩いて行く。

    「えっと、駆動系、クリア。武装プログラムっと……」

    時間が無い為、全部に目を通す事が出来ないのが不安だが、今はそんな事を言っている場合では無かった。
    「プログラム、行けそうか?」
    「ええ。みんな、頑張ってくれましたから。多分、大丈夫だと思います。後は僕が調整するだけです」
    「戦闘までに間に合うのか?」
    「大丈夫です!間に合わせます!」

    キラは顔をコンソールの小型モニターに向けたまま答える。マードックは、
    キラから今までとは違う気迫を感じ取り、ニヤリと笑う。

    「絶対、やられんじゃねえぞ」
    「ええ。必ず帰って来ます」
    「おう!頼んだぜ、坊主!」

    キラはモニターから顔を上げると、視線をマードックへと向けて頷いた。
    マードックも頷きコックピットを離れると、ストライクにランチャーパックを装備させる為に大声で指示を飛ばした。
    その間もキラはキーボードを叩き続けるが、ふと、訓練で琉生からのアドバイスを思い出し、手を止めた。
    ――無駄な動きは命取りになる。今は、狙いも全てオートにしているだろうが、細かい狙いは
    マニュアルでコントロール出来るようになるのが理想だな。――オートでは避けた相手を追う事しか出来ないが、
    細かい射撃が出来るようになれば、相手の動きを予測した箇所にピンポイントで撃ち込める。
    キラは、コンソールモニターから視線を外し、メインモニターに写るνガンダムへと視線を向けた。

    「射撃か……。プログラムに手を入れてみるか……」

    キラは呟くと、目線をコンソールモニターへと向け、もう一つのプログラムを立ち上げる。
    戦闘で少しでも自分が有利に立ち回る為に、やれる事はやって起きたかった。キラは、再びキーボードを叩き始めた。

  • 36スレ主25/04/11(金) 10:20:25

    キラがストライクのコックピットでプログラムの調整を行っている頃、琉生はカンヘルの
    コックピット内で出撃を待っていた。後の事を考えればジンで出るのが望ましいのだろうが、
    今は出し惜しみしていられる状態ではなかった。各部の調整を行っていると、
    ムウのメビウス・ゼロから通信回線が入って来た。

    「琉生!済まないが出る前に伝えておかなきゃいけない事があってさ」
    「?」
    「艦長からの伝言。これ、秘匿回線だから、コックピット開いてるなら閉じてもらえるか」
    「分かった」

    ハッチを閉め、ムウにその事を伝える。
     すると、少し間を置いて、マリューからの伝言の内容を伝える為に、ムウは少し真面目な感じで話し始めた。

    「んじゃ、伝えるわ。……もしも、戦況が不利だったり、勝ったとして、軍に捕まると思ったなら
    ルリと一緒に離脱してくれて構わないって。これ、俺と艦長以外は知らないからさ」
    「……いいのか?」
    「ああ。それに俺も艦長と同じ意見だ。お前さん達には世話になってるしな。俺達だけで庇い切れる
    もんじゃないのも分かってる。ただのガキなら何とか成るんだろうけどさ。そうも行かないし」

    確かに異世界人の魔法使いを、この世界の軍がどう扱うか分かったものじゃない。

    「まぁ、俺も、それまでに巧い言い訳でも考えとくさ。お互い、がんばりましょ。それじゃ!」

    ムウも分かってるとばかりに、おどけた感じで答えると、一方的に回線を切った。
    その後マードックから保健用の予備物資を受け取る。
    戦闘宙域まで、二、三十分と言った距離まで近づいていた。

  • 37二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 15:02:19

    使わずに済んだいいな

  • 38スレ主25/04/11(金) 21:25:02

    地球衛星軌道に到着した地球連合軍第八艦隊は、集結しているザフト軍を確認し、
    すぐに警告を発したが、案の定、ザフト軍は警告を無視し、近づくなら攻撃のをすると返答を返して来た。
    それに伴い、地球連合軍第八艦隊、旗艦メネラオスのブリッジでは、
    ハルバートンの戦闘の号令が、今、まさに発せられる処だった。

    「――艦対戦用意!」
    「――艦対戦用意!各艦、砲門開け!第一次攻撃部隊のメビウス、出撃せよ!」

    ハルバートンの号令を繰り返すように、ホフマンが指示を出して行く。
    地球連合軍第八艦隊の艦船はタイミングを合わせたかのように動き始めた。
    地球軍艦艇からメビウスが次々に発進して行く。
     
    「――敵の動きはどうか?」
    「敵艦よりモビルスーツ出てきます!――距離千五百!」
    「まだ、相手の砲撃が届かん距離だ。慌てる必要はない!メビウスは両翼にも展開させろ!」
    「敵モビルスーツ、識別!ジン、十!」

    ハルバートンは、CICに座るオペレーターに報告のを受けると頷いた。
    ザフト軍艦艇は数こそ、第八艦隊に比べれば若干少ない程度で、出撃して来るであろうモビルスーツの数が、
    艦の数からも明らかに少なすぎた。
    ホフマンは、ハルバートンの思った事を代弁するかのように、思った事を口にした。

    「先鋒で十機……少ないですな」
    「これから出てくる!抜かるなよ!」

    ハルバートンは頷くと、第八艦隊の将兵達に気合を入れるかの如く、声を張り上げた。
    今、ここに地球衛星軌道での戦闘が幕を開ける事となった。

  • 39スレ主25/04/11(金) 22:21:26

    ザフト軍は予定通り、地球軍艦隊の警告を無視した事で外では既に戦闘が始まっていた。
    第二次攻撃部隊に組み込まれたアスランは、イージスの暗いコックピットの中で出撃を待っている。
    その間にも、アスランの頭の中では色々な事が思い出されていた。
    ――アスラン、私達を追わないで!君と戦いたくないんだ。
    ――辛そうな、お顔ですのね……。
    ――そんなのおかしい……おかしいわよ……。友達なんでしょう……どうして戦わなくちゃいけないのよ!?
    ――でも、同じコーディネイターで……敵になってる人がいるくらいなんですよ……。
    言って分からない相手なら、倒すしかないじゃないですか!
     
    「ラクス……フレイ……俺は……俺達は、本当にこれでいいのか……?」

    アスランは、辛そうな表情で、今では死んでしまったかもしれない婚約者と、
    初めて友達となったナチュラルの少女の名前を口にした。
    勿論、シルバーウインドを攻撃した地球軍は憎い。しかし、元々、ラクスが聞けば喜ばないであろう、
    このような戦いに、アスラン自身、意義を見出してはいなかった。
    だが、プラントを守るザフト軍兵士として、戦わなければならない。戦い続けると言う事は、
    また何れ、キラとも戦わなければならないと言う事だった。
    そして、そのキラは、ラクスを殺した地球軍に組しているが、アスラン自身、キラはそんな奴じゃないと
    思いながらも、地球軍にいる以上、倒さなければならない敵である事に間違いはなかった。
    複雑に絡み合った想いや事実がアスランを苦しめていた。そんな中、イージスのコックピットに通信回線が入る。

  • 40二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 05:39:47

    ⭐️

  • 41スレ主25/04/12(土) 10:20:33

    「アスラン・ザラ、いるか?」
    「……ユウキ隊長!?……どうしたんですか?」
    「いや……本来なら、戦闘中に私的な通信使用は禁止なのだが、君の事が心配になってな」
    「――あ、ありがとうございます!」

    アスランはスピーカーから聞こえて来る、ユウキの声に驚きを隠せなかった。
    自らの教官であったユウキは、本人の言う通り、生真面目で作戦行動中に私用で
    通信を入れて来るような人間ではない。裏を返せば、心配しなければならない程、
    今のアスランの状態は回りからすれば酷いと言う事だった。

    「君の婚約者の事を考えれば、精神的にもきつかろう……。本来なら、
    出撃させるべきではないと思うが、そうも言ってられん状況でな……」
    「……いいえ。……私も……ザフトの兵士ですから」
    「……そうか。地球軍が憎いだろうが、憎しみだけで戦うな」
    「……はい」

    アスランは、ユウキに気に掛けて貰い恐縮しながらも、ラクスやキラの事が頭から離れないのか、
    あまり元気の無い声で返事をした。その様子に業を煮やしたのか、
    イージスのコックピットにユウキは怒りの声が響く。

    「――アスラン・ザラ!そのような府抜けた態度では、貴様も死ぬ事になるぞ!」
    「――!も、申し訳ありません!」

    突然の怒鳴り声にアスランは、慌てたように背筋を伸ばす。
    ユウキが声を荒げるような態度に出る事は、訓練校時代ならいざ知らず、余程の事が無い限り有り得ない。
    ユウキは、アスランに対して気合を入れるかのように言葉を続けた。

  • 42スレ主25/04/12(土) 12:46:43

    「戦う意思が有るのなら、そのような顔は二度と見せるな!」
    「――はい!」
    「分かっているとは思うが、既に先発のモビルスーツ隊は戦闘に入った。
    必ず生き残り、ラクス・クライン嬢の分まで生きろ!いいな!」
    「――は!」

    アスランはユウキに怒られ、自分がいかに弱かったかを実感する。今は軍の作戦行動中なのだ。ユウキが怒るのも
    無理はない。通信が切れるとヘルメットを脱ぎ、両手で気合を入れるように両頬を打った。余程、
    自分が許せなかったのか、両頬をかなり強打したらしく、顔を下に向けた顔を抱えるようにしながら、
    唸り声を上げる。

    「――っ!」
    「アスラン、僕達も出撃で――。……唸り声……ですか?アスラン、どうしたんですか?何かあったんですか?」

    丁度、その時、ニコルからの通信が入る。ニコルは、アスランの唸り声をまともに聞いてしまったらしく、
    心配のあまり呼びかけの声を出していた。アスランは下を向いたまま「……いや、何でもない」と返事をする。

    「……そう、ですか。……アスラン、さっきは言い過ぎました……。
    ラクスさんが居なくなって、一番辛いのはアスランなのに……」

    ニコルは合流した時に話した事を気にして、申し訳なさそうな声で謝罪をして来た。
    アスランは痛みから復活したのか、ヘルメットを被りながら答える。

  • 43二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 16:53:33

    アスランはメンタル不安定時は弱いから何とかなるかね

  • 44スレ主25/04/12(土) 21:04:20

    「……いや、気にしていない。今は、この作戦に集中しよう」
    「……はい。必ず成功させましょう」

    ニコルが頷くと、アスランはイージスをリニア・カタパルトへと移動させる。カタパルトの向こうでは、
    ビームや爆発の光りが見て取れた。アスランは、軽く深呼吸をすると、出撃確認の為の声を上げる。

    「――アスラン・ザラ、出る!」

    アスランの声と共に、イージスが勢い良く射出され閃光が瞬く戦場へと消えて行った。

  • 45スレ主25/04/12(土) 22:02:06

    地球衛星軌道上で、智将ハルバートン率いる地球軍第八艦隊とザフト軍特務隊FAITH隊長であるユウキが
    率いる艦隊が戦闘を行っていた。地球軍第八艦隊は、敵機動兵器であるモビルスーツと自軍の主力攻撃機である
    モビルアーマーの性能差は明白ではあったが、その差を数で補い、現状の戦況は有利に動いていた。
    その反対に、ザフト軍は臨時編成された艦隊ながらも、シルバーウインド号の一件もあり、将兵の士気は高く、
    モビルスーツの性能を生かし数的不利を覆そうと奮戦していた。
    その中、地球軍第八艦隊旗艦メネラオスのブリッジでは、ハルバートンが戦況を見つめていた。

    「――第一次攻撃隊のメビウス、損耗率、三五パーセント超えました!」
    「……やはり性能の差が出ているか」

    オペレーターの伝える報告に、ハルバートンはモビルアーマーではモビルスーツに対して不利であると言う、
    現実を目の前に苦い思いをしながら呟いた。ハルバートンの呟きを聞いたホフマンは、神妙な顔つきで聞いて来た。

    「第二攻撃部隊の出撃、いかがいたしますか?」
    「出せるか?」
    「既に整っております」

    ホフマンは軍人らしい返事を返した。その時、オペレーターの声が響く。

    「――敵艦より新たな機影!数、三〇以上!ザフト軍第二陣の攻撃部隊かと思われます!」
    「この数、本命が来おったか!」
    「第二攻撃部隊、出撃させます!」
    「うむ」
    「――第二次攻撃部隊、出撃!」

    ハルバートンが頷くと、ホフマンが声がブリッジに響き渡る。
    号令と共に、発進体勢に入っていたメビウス攻撃隊の第二陣が続々と艦を発進して行く。
    ハルバートンとホフマンが、飛び去って行くメビウスを見送る中、続々と報告の声が上がる。

  • 46スレ主25/04/12(土) 22:02:41

    「――敵モビルスーツ、識別!ジン、多数!先鋒の艦隊、砲撃戦開始しました」
    「――先方の艦より入電。敵軍に新型のモビルスーツが投入されているようで……えっ!?」
    「――どうした?」
    「――は!失礼しました!どうやら新型のモビルスーツのようです!ただ、該当する機種データがあったので……」
    「――はっきりせんか!」

    ハルバートンは、煮え切らない返事をするCICの将校に対して、苛着いたように怒声を浴びせる。
    怒鳴られた将校は座ったまま背筋を伸ばすと、すぐに報告を始める。

    「――は!該当機種、地球連合軍GAT-X一〇二 デュエル、GAT-X三〇三 イージスです!」
    「「――!」」
    「識別信号はザフト軍の物となっております」

    その報告に、ハルバートンは息を飲んだ。ザフト軍と引き離されたしまった、機体性能での戦力差を逆転させる為、
    自らが中心となって推し進めた来た計画で完成した機体を奪われてしまうとは、悪夢でしかなかった。
    それを知るホフマンが、苦汁の表情を浮かべながら口を開く。

    「――な、なんとした事か!」
    「――くっ!……よりにもよって、ザフトの手に落ちているとは!」
    「閣下、どういたしますか?」
    「――敵の手に落ちたとなれば、敵である事には変わりない!撃ち落とせ!」

    本来、味方であるはずのGATシリーズは、PS装甲を装備している以上、メビウスを主力としている地球軍には、
    今までのモビルスーツ以上の脅威だった。しかも、敵の手に渡ってしまった以上は、やはり敵でしかない。
    ハルバートンは、ホフマンの表情以上に鬼気迫る表情で、腹の底から声を上げると、
    ブリッジの空気が震えたかのように響き渡った。

  • 47二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 03:22:26

    先に合流できてないから驚くわな

  • 48二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 09:02:03

    全滅する前に合流出来るのか?

  • 49スレ主25/04/13(日) 12:02:05

    月の地球連合軍プトレマイオス基地を眼前に見据え、クルーゼが指揮を執るザフト軍艦隊は、
    ブリッツを単機出撃させると、再び慣性飛行でプトレマイオス基地へと近づいていた。
    エンジンを停止させ、慣性飛行をしているとは言え、流石に巨大な鉄の塊である戦艦が見つからない訳は無い。
    イザーク・ジュールが乗る、ブリッツを出撃させてから、二十分程の時間が経過していた。
    クルーゼは、一度、時計を見るとニヤリと微笑み、静かに口を開く。

    「……そろそろ、いい頃合いだな。モビルスーツ隊の発進準備をさせろ。艦隊は最大加速で地球軍月基地へ向かえ」
    「――は!全艦、発進せよ!」

    アデスの口から号令が響くとヴェサリウスの船尾に一瞬、青白い炎が見え、船は一気に加速し始める。
    ヴェサリウスを追うように他の艦も、船尾に炎の尾を引きながら加速して行く。
    クルーゼは、モニターを見据えながらも冷笑を浮かべながら、アデスに言い聞かせるように静かに口を開く。

    「アデス、敵も馬鹿ではないだろうから、我々が着く前に迎撃機を出して来るだろう。
    通常装備のジンとバスターを出せるようにしておけ。D装備の機体は後からでかまわん」
    「――は!」

    クルーゼはアデスの返事を聞き流し、受話器を手に持つと回線を開いた。

    「ディアッカ、準備は出来ているか?」
    「隊長、待ちくたびれましたよ」
    「――ふっ。それは悪い事をしたな。ディアッカ、分かって居ると思うが抜かるなよ」

    受話器から響くディアッカの声は、待っていたとばかりに喜々とした物だった。
    ディアッカの言いようにクルーゼは苦笑いを浮かべつつも、淡々と上官としての責務を勤める。
    言うべき事を伝えると受話器を置き、再び視線を眼前にある地球軍基地へと向ける。
    そこに吸い込まれるように艦隊から次々にモビルスーツが発進して行った。

  • 50スレ主25/04/13(日) 16:16:10

    アークエンジェルの厨房は完全に火が落とされ、静まり返った食堂は戦闘態勢に入った事を感じさた。
    アークエンジェルがザフト軍との戦闘に入る事を知らなかったラクスがその事を知ったのは、厨房での仕事を終え、
    部屋に戻る途中の事だった。ブリッジに向かおうとしたラクスを、
    厨房のスタッフ数人が引きずるように部屋の前までやって来た。

    「お願いします!私を艦長さんの所に――!」
    「あなたは、部屋で大人しくしていなさい」
    「――お願いします!」

    両脇を男性スタッフに固められ部屋の前に立つラクスは、女性スタッフに向かって懇願するかのように声を上げた。
    女性は両脇を固めているスタッフに対して「離して」と言うと、ラクスは開放される。
    ラクスの両脇を固めていた男性スタッフはブリッジへの通路を塞ぐように立ち位置を変えた。
    女性はラクスに対して、目線を外さずに告げる。

    「あなたの気持ちがどうあれ、アークエンジェルは地球軍の軍艦なの」
    「しかし、私なら――」
    「――思い上がらないで!」
    「――!」

    ラクスは「――戦いを止める事が出来るかもしれません」と続けようとしたが、言う事を聞かないラクスに対して
    業を煮やしたのか、女性は怒鳴りつけた。怒鳴りつけられたラクスは、驚き言葉を続ける事が出来ず、
    ただ息を飲んだ。厨房スタッフとて、ラクスのプラントでの立場を知らない訳ではない。
    マリューの命令があったとは言え、仕事を手伝ってくれるラクスに信頼を置き始めていた矢先でこの出来事だ。
    女性はラクスを見据える。

  • 51スレ主25/04/13(日) 21:08:17

    「あなたがプラントでどれ程の立場だとしても、ここでは、ただの民間人です。
    あなたにアークエンジェルや戦場を、どうこう出来る権利は無いのよ」
    「――!」

    ラクスは、女性から告げられた言葉に息を飲んだ。
    そして自ら置かれた立場を改めて自覚し、無力さに俯く他なかった。

    「早く部屋に入りなさい」

    女性は部屋に入るよう促すが、ラクスは俯いたまま肩を震わせ、目尻にかすかに涙を溜めていた。

    「……分からないの?……それなら」

    動かないラクスに、女性は眉間に皺を寄せると腰のホルスターの銃を抜いた。
    そして、スライドを引き、弾を薬室に送り込むとラクスに対して銃を構えた。
     今まで銃など向けられた事など無いラクスは、顔を上げると目を見開く。

    「――!」
    「あなたと同じコーディネイターの彼も出撃するわ。こんな事を言いたくないけど、あなたがブリッジに行って
    迷惑を掛けている間に、彼や私を含め、アークエンジェルのみんなが死ぬ事になるかもしれないのよ」
    「……ルイや……キラや……みなさんが……ですか……?」

    女性は強張った表情で告げると、ラクスは途切れ途切れに呟きながら、再び俯く。
    ラスクは、自分を受け入れてくれた琉生やアークエンジェルの乗組員に死んで欲しくはなかった。

  • 52スレ主25/04/13(日) 22:00:59

    「そうよ。だから、大人しく部屋に入りなさい。お願いだから、私にこんな真似をさせないで」
    「……はい……」

    女性の言葉にラクスは力無く頷いた。それを見た女性は息を吐く。本当は銃など向けたくはなかったのだろう。
    ほっとした表情で引き金から指を外した。すると、通路を塞いでいたスタッフ達の背後から、
    黄緑色の鮮やかなロボット鳥が飛んで来た。

    「トリィ」

    人工的な合成音の声を上げながらロボット鳥は、ラクスの肩に舞い降りた。

    「……ロボット鳥ですか?」
    「トリィ?」

    ラクスは肩にちょこんと泊まるロボット鳥に驚きながらも、手の平を出してみる。
    すると、ロボット鳥はラクスの手に跳ねるように跳び移った。女性が銃をホルスターに収めながらラクスに言う。 

    「このロボット鳥、彼女のじゃない」
    「……彼女?……キラの……ですか?」
    「ええ。何度か見たわ。銃を向けて悪かったわね。早く部屋に入って」
    「あ、はい……」

    女性に促され、ラクスは部屋に入ると扉が閉じられる。電気を点けていない部屋は暗い。
    ラクスは、瞳を潤ませながら手に乗るキラのロボット鳥を宝物のように見つめる。
    そして、戦闘を止める事の出来ない胸の内を呟く。

    「誰も助ける事の出来ない……私は……どうすれば良いのですか……?」

    ロボット鳥はラクスを覗き込むように見上げながら首を傾げた。
    今のラクスには、琉生とアークエンジェル、そして、戦場に居る全ての者の無事を祈る事しか出来なかった。

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