- 1二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 00:37:11
瓦礫や放置された荷物に加え、破れた窓から所々に雪すら積もる始末。当然のように電気は通っておらず、割れた蛍光灯の破片が散らばっている。
廃れ果てた校舎の廊下も、見慣れてしまえばなんて事の無い物で。だから、隣を歩く先生が薄暗い校内に怯えている姿が面白くてならなかった。
227号特別クラス────私とノドカ、二人が拠点としている旧校舎。
ノドカは何やら知識解放戦線の方に用事があるようで、ここを留守にしている。ノドカが居なければいよいよ何もないこんな場所まで、わざわざ様子を見に来てくれた先生を二人でお出迎え出来なかったのは残念極まるが────。
「何か出そう、って?そうだねぇ、否定はできないかも?」
案外子供っぽい所もあるんだなと笑いながらからかってみると、ひきつった顔で冗談はやめろと首を振る先生。「熊が出るからね」と付け加えると、今度は違う方向性で怯えだしてしまった。
「あははっ、大丈夫大丈夫。追い返すだけなら簡単だし……なんなら仕留めて、豪勢に料理でもどう?」
肩から提げた相棒のグレネードランチャーを示しながら笑いかけるも、────なぜか、先生からの返事は無い。
「────先生?」 - 2二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 00:38:21
wktk
- 3二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 00:39:05
「────あはっ。何先生、怖いの?」
瓦礫や放置された荷物に加え、破れた窓から所々に雪すら積もる始末。当然のように電気は通っておらず、割れた蛍光灯の破片が散らばっている。
廃れ果てた校舎の廊下も、見慣れてしまえばなんて事の無い物で。だから、隣を歩く先生が薄暗い校内に怯えている姿が面白くてならなかった。
227号特別クラス────私とノドカ、二人が拠点としている旧校舎。
ノドカは何やら知識解放戦線の方に用事があるようで、ここを留守にしている。ノドカが居なければいよいよ何もないこんな場所まで、わざわざ様子を見に来てくれた先生を二人でお出迎え出来なかったのは残念極まるが────。
「何か出そう、って?そうだねぇ、否定はできないかも?」
案外子供っぽい所もあるんだなと笑いながらからかってみると、ひきつった顔で冗談はやめろと首を振る先生。「熊が出るからね」と付け加えると、今度は違う方向性で怯えだしてしまった。
「あははっ、大丈夫大丈夫。追い返すだけなら簡単だし……なんなら仕留めて、豪勢に料理でもどう?」
肩から提げた相棒のグレネードランチャーを示しながら笑いかけるも、────なぜか、先生からの返事は無い。
「────先生?」
振り返って目に入った先生の顔は、真っ直ぐ正面を見つめたまま────目を見開き、僅かに唇を震わせている。
「────」
先生の視線を辿る様に、廊下の先に目を向ける。割れた窓を木の板で塞いだために、一際薄暗い廊下の向こう側に────人影。
「先生。耳、塞いでくれる?」
言うが早いか抜いたランチャーを真っ直ぐ正面の人影に向け、迷わず引き金を引く。廊下の修繕が面倒だとかそういう感情は取り敢えず抜きにして榴弾を放った。
炸裂。閃光と轟音、大きく揺れが響く旧校舎。ぱらぱらと、小さな瓦礫が天井の隙間から零れ落ち、煙が舞い上がる。 - 4二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 00:39:22
「……やぁ、ごめんごめん。出ちゃったみたい」
状況が理解できないのか、耳を塞いだまま硬直している先生の顔を横目に────今度は、服の内側に備え持ったサバイバルナイフを抜き、それを隣に立つ「大人の形をした何か」に突き付ける。
「悪戯も程々にしなよ。寂しいのは分かるけど、さ」
驚いた表情のまま凍り付いた先生の顔。それが、溶け落ちるように黒い液体の様な物に塗れる。ごき、ごきと不快な音を立てながら首が直角に曲がり、溶け落ちた顔面に三つの空洞。不気味な笑顔が浮かび上がる。
“ し ぁ ああ ああああぁああ
惜 っ た ぁ あ ぁあああぁあああ
か な ああぁあ ああぁあああ“
瞬き、ひとつ。人影は、影も残さず消えて。
「………ふぅ」
遠くから、先生とノドカの声が聞こえてくる。私を呼ぶ声だ。
さて。どう、言い訳しようかな。そんな事を考えながら、ゆっくりと来た道を引き返した。 - 5二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 00:44:20
227号は色々ありそうだし、ノドカは霊感なさそうだし、シグレはめっちゃ慣れてそうだよね
こちらセルフサービスとなっておりますので、なにか思いついたらどんどん書いてけ - 6二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 01:00:44
なんか227号ってSSの数的にも少ないような気がする
ワイの推しなのに - 7二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 01:07:20
- 8二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 01:09:38
2年くらい先生やってるけどシグレは通常も温泉もお迎えできてないんだよね…
- 9二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 01:21:34
- 10二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 01:23:14
久々に見たな怪談スレ
- 11二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 01:24:37
- 12二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 01:54:30
ワシはノドカ推し
星を見るならホラーか怪しいけどUFOネタで一本書けそう - 13二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 02:01:58
- 14二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 02:13:56
- 15二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 04:11:41
どうして、こんな事に────。
件の温泉旅館が私達に遺した、数少ないその姿の痕跡。旧校舎を修復する際に比較的綺麗な形で残っていた、座敷の部屋もその一つに該当する。校舎の内装に似つかわしくはないが、淡い蝋燭の光で照らされた畳の上に腰を据えて夜の雪景色を眺めるのは風情があって、私もノドカも気に入っていた。
今日も布団を敷き、最早寝間着同然に使っている浴衣に着替えて、尻と湯たんぽで冷たい布団を温めながらノドカと談笑していた時だった。
「それにしても、今夜は────とっても賑やかだね、シグレちゃん」
不意に、何の脈絡も無く、全ての文脈を無視して。ノドカが、そう言った瞬間だった。
「あはは、あはは」「あーそ、びーま、しょ」「うふふふふふう」「おそらもとべそうだぁ」「こどもは、ゆきのこ」「かぜのこ」「げんきなこ」「「「「「キャハハハハハ」」」」」
部屋中に響く、複数の子供の笑い声。蠟燭の奥、布団の上で正座をするノドカ。その後方を、全く見覚えのない子供の姿が横切った。
一人ではない。二人、三人、四人……。辺りを見回せば、五人の子供たちが私たちの周りで輪を描き、軽い足取りで跳び回りながら周っている。
綺麗に切りそろえられた、おそろいの黒髪のおかっぱ。それぞれ違った模様の着物を着た、裸足の少女が五人。奇妙なのは、「どう頑張っても顔が見えない」事だ。例えるならば視界の端、眼球が捉えてはいるが意識を向けていないから認識できない空間。子供たちの顔面は視界の中心にあったとしてもそれと同様に、何故か顔として認識できず、黒い影がかかったような錯覚を覚える。
「ノドカ、逃げ「あはははは」「そとはきれいだよ」「あそぼう、あそぼ」「おにごっこ、しようよ」「あまいのがすき」「かくれんぼがいい」「かんけりは?」「キャハハハハ」
「────?シグレちゃん、どうしたの?」
挙げた声を、子供たちに掻き消される。その事にも、そもそもの子供たちの存在にも、ノドカはまったく違和感を覚えていないようだった。
声や言葉の調子から、悪意のような物は欠片も感じられない。だからといって警戒しないというのは危険だ。意思の有無に関わらず起こす行動が有害な場合もあるのは、人間にも共通する事なのだ。 - 16二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 04:13:02
「ろうそくだ」「ひがきれい」「のどかわいたー」「ゆーきやこんこん」「あられやこんこ」「はしれそりよー」「ちょっとちがうよ」「あはははは」「おねえちゃんたちは?」「こっち、おいでよ」
「……っ、こら。それはダメ」
…現に、今。子供の一人が、ノドカの服の裾を掴もうとしたのを、私は見逃さなかった。咄嗟に手を伸ばしその手を叩き落としていなければ、その先でノドカがどうなっていたか分かった物じゃない。
彼女らの行動の全てに理屈は無い。ただ、なるようになるだけなのだ。それを知っているからこそ、ノドカをその手に渡すわけには行かなかった。
数時間。蠟燭の炎に揺られながら、座敷童のようなナニカに取り囲まれたまま。きゃっきゃきゃっきゃと騒ぎ立てながら、隙を見てノドカを連れ出そうとする彼女らに警戒を向け続けるのにも疲れて来た頃合いだ。
この旧校舎では日常茶飯事────という程でもないが、こういう霊的な何かが良かれ悪しかれ影響を及ぼす事は少なくない。だが、それにしても今回のは特にしつこい方だと言える。
危ない瞬間は何度もあった。執拗にノドカだけを狙う彼女たちは、ありとあらゆる方向から、不規則に彼女に手を伸ばす。私の首の裏から髪をすり抜けてノドカに手を伸ばす事もあれば、身動ぎしたノドカの足首を掴もうとするときもあった。ノドカの手首をがっちりと掴まれた時はおしまいかと思ったが、幸いにも力はそこまで強く無いようで、引き剝がす事には成功した。
夜も更けてきて、次に襲い来るのは猛烈な眠気だ。だが、こうやってノドカを抱きしめたまま寝てしまって、目覚めて腕の中から彼女が消えている可能性を考えると、寝ている場合ではない。どうにか、しなければ。そうやって、あちらこちらに視線を泳がせ、打開策を探す。
子供。畳。襖。ノドカ。子供。ノドカの布団。子供。蠟燭。子供。子供。私の布団────。 - 17二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 04:13:44
「────!」
目に入った、私の布団。その僅かな膨らみに、カンポットの入ったボトルが隠れている事を思い出す。ばたばたと飽きずに駆け回る子供たちの足の隙間を縫って手を伸ばし、拾ったカンポットの蓋を開け────部屋中に、思い切りぶちまけた。
「わっ、わ…!?な、何してるの、シグレちゃ────」
驚くノドカは一旦後回し。いろいろと勿体ないしそもそもかなり危険だが、こうでもしないとこの子達は満足しないようだ。そのまま、今度は曲げていた足を一気に延ばし、蝋燭を根元から蹴り倒す。
発酵しかかったカンポットのアルコールに引火した火は、瞬く間に部屋中に広がり、煌々と光を放って綺麗な畳を黒く焼き焦がす。その時点で、子供たちは既に姿を消していた。
「────逃げるよ、ノドカ!」
今度こそ、と頭に付け足してから、抱いた彼女の軽い体を持ち上げて寒空の下へ。瞬時にかじかむ足を見て見ぬふりしながら大回りで旧校舎の反対側へ移動する。燃え盛る和室も吹き付ける雪と打ち消し合い、早々に鎮火する。
驚きからか、解放された事所以か、気を失ったように眠っているノドカの隣で────私も、疲れを隠せず倒れ伏せ、冷たい床の上で一晩を過ごす。
「シグレちゃん!みてみて、これ!凄いよ、こんなにいっぱい!!」
翌朝。和室周りの様子を見つつ、なんとか修復できないものかと考える私の下に、旧校舎の玄関前の雪に埋もれる形で箱一杯に物資が詰められたものを発見したノドカが、興奮した様子で駆け寄って来た。
報復すら覚悟していた私だが、もしやあの行動がお焚き上げみたいな効果を示して、彼女らも満足してくれたのかもしれない。……そう、思う事としよう。燃え滓から見つかった、五本のかんざしの燃え残りを眺めながら────あの一夜を、私はそう結論付ける事にした。 - 18二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 04:18:23
書いてみた。ぜひみんなも書いてみてくれ
- 19二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 07:14:13
書くのはええ!! そしておもしれえ!!
乙です、理解できても会話とか成り立たない方向で恐怖が感じられてちゃんとホラーになってるのいいですね…… - 20二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 11:22:43
ウルトラ霊媒体質のシグレ、ある日の異常な程の猛吹雪を境にやけに人ならざる者の数が増えたなと旧校舎の周りを散策してみたら、あの吹雪を乗り切れなかった動物たちの亡骸を大量に見つけて、可哀想だからと丁寧に弔ってあげたら逆に霊に懐かれてしばらく大量の小動物の霊にひっつかれたまま生活するシグレ。ノドカにもぼんやり見えてて羨ましがられる。
こういうガチホラーじゃないのでも大丈夫です。ゆるい百物語みたいなノリで量産しちゃおう。 - 21二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 20:17:00
保守
- 22二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 22:03:20
「あれ、珍しい。普通の人...か。レッドウィンターの子じゃなさそうだけど...こんな所までどうしたの?」
「遭難?なら、運が良かったね。ちょうどさっき焚火を起こしたところでさ。美味しい飲み物もあるし、暖を取りつつ一杯、どう?」
「あはは、怪しい物じゃないって。甘くて美味しい、果物のドリンクだよ。......ちょっと発酵してるかもだけど、まぁ細かいことは気にしーなーい」
「......どうしたの?こっちにおいでよ」
「ほら」
「おいで?」
「そう、あと、いっぽ────」
『私の姿を真似るなんて、大胆な事するね』
『......ごめんね、びっくりしたでしょ。怪我はない?』
『んー?さっきの?あれはー...可愛いいたずらっこだよ。”気にしない”、”気にしない”』
『さぁさ、”これでも飲んで”?”体が暖まるよ”』
『...震えちゃって、寒いの?......ん?私?』
『────ふふっ。どっちだろうね?』 - 23二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 23:50:18
誰も書いてくれないので私が一人で思いついたのを書き続けます。
閲注つけて立てればよかったな...嘔吐の描写とか首をアレする描写とかアウト寄りだろうし...
幽霊の悪戯にも慣れて来た頃にえげつない地雷踏まれて、恨み節を零しながら思いっきり吐いちゃうシグレを書こうと思ったんですけど...。 - 24二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 23:52:49
......「怪談」からズレて来ている気もする。
風呂敷広げれば色々出来そうだしいっそ爆破して立て直そうかしら... - 25二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 00:04:59
writeingとかテレグラフ挟めば閲覧注意描写もやっていいんじゃないですかね
爆破は……止めないけど既存SSも好きなので控えさせて…… - 26二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 00:15:04
- 27二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 00:27:07
- 28二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 00:30:56
1レス見て幽霊仕留めて料理にするのかと思ってしまった
- 29二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 00:47:22
このレスは削除されています
- 30二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 00:53:32
初っ端吐いてる所が見えちゃったのでワンクッション挟んで上げ直し。これ書きました。閲覧注意。人死にが出てるわけじゃないですが、嘔吐と首○りの描写を多分に含んでます。苦手な方はお気をつけて。
no title | Writening ワンクッション。嘔吐・首○りの描写を多分に含みます。人死には出てないです。慣れて来た頃に地雷踏まれて珍しく動揺しちゃうシグレ、可愛いね。 趣味が悪い、趣味が悪い、趣味が悪い。 所謂「…writening.net - 31二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 01:19:52
- 32二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 08:51:34
出先からほしゅ
もう一本書けそうなので帰ったら投げるます。
いっぱい書いて夏までにガチ百物語つくっちゃおうかしら。投げてくれたら蒐集に加えるのでいつでもお待ちしておりまする - 33二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 13:16:26
書くの慣れてないから少し容赦
「先生も大変だね〜。いつも学園を行ったり来たりして、その上で私たちみたいな問題児の面倒を見ていてさ。」
"大変なのは否定しないけど、それが私の役目だからね。"
夜遅く、吹雪が建物にうなりをあげ襲いかかるなかこの二人、シャーレの先生と、未成年ながらもアルコールの味を覚えてしまった少女シグレは駄弁っていた。
レッドウィンターの中でも厄介な問題児たちが追放される227号はまさにボロ建築であったが、少なくとも住む場所として最低限の実用性を持っている。先生はここにいる生徒たちの様子を見にきた最中に吹雪により外から閉じ込められる形となった。先生が227号を訪れた際に吹雪に遭うのは今回が初めてではなかったが、
"にしても、今回の吹雪はかなり長いね。"
「おまけにここ最近だと強い方だね。バリケードもガタガタ言ってるよ。」
日はとっくに暮れ、夜は深くなっていった。
怒れる大自然は止まることを知らないのか、吹雪はなおも勢いを増し続けている。
この建物の設備は確かに整ってはいるが、古い建物には不安が残るものだ。少女と先生の二人は時間の有効活用も兼ねて点検をすることにした。
他の生徒たちが寝静まる中、二人は薄暗い廊下を渡っていく。
何か物が落ちたかのような大きな音が聞こえたとき、二人は立ち止まった。
彼らがいる階の左奥の部屋が発生源のようだった。
二人はさらに暗くなっていく廊下を歩み出すのだった。
「ここからだね。」
少女はドアを開けて確認した。
誰も、何もない部屋だったがふと窓、と呼ぶよりもバリケードと呼んだ方が相応しい箇所を見ると、バリケードの一部であっただろう細長い金属板が外れていた。
"じゃあ、直そうか。"
先生は板を拾って、それをとめれるものを探そうとした。が、バリケードの隙間から黒い何かがぶら下がっていることに気づいた。 - 34二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 13:16:46
先生は一瞬でそれを認識した。
手袋だった。
先生の頭に疑問符が浮かぶが、
それに中身があるかのように膨らんでおり、そしてゆっくりと這い出した時、疑問符は違和感、そして恐怖に変わった。
二人がいる部屋は2階。そこに何かが腕を伸ばしているのだ。その腕は、伸びてくるたびに骨が折れているかのような不快な音をあげながら、部屋にその存在をねじ込もうとしていた。
驚きの声を上げた先生の、その視線の先に何が"いる"かに気づいたシグレの行動は速かった。
彼女は懐から銀一色のスキットルを取り出し、ふたを外しそれをバリケードの穴から外に投げ出した。
腕は動きを止め硬直した。恐ろしく不気味な静寂が部屋を包む。
しかし、やがて腕は再び不快な音をあげながらバリケードの隙間から消えていった。
先生はいまだにショックが抜けきれず地べたから動けずにいたが、シグレがバリケードを修復し始め出したのを見て、ようやく動けるようになった。二人はバリケードを直した後、元いた部屋に戻ることにした。
「まあすごく雑に言うと、”でる”ってことだね。」
シグレは別のスキットルに口をつけ、静かにそれをあおる。
今だけは、先生は彼女を叱る気にもなれなかった。
「私たちにもアレがなんなのかはわからない。生きているかどうかすらもね。ただわかっている事があるとすれば、今日みたいなすごく強い吹雪の時に出てきて、内に入ろうとしてくること、あと、なんでか知らないけどアルコールの類に引き寄せられることだけ。」
“みんな、それのことを…”
「うん、知ってる。」
“そっか…”
いつの間にか吹雪は止み、月と星々が真っ暗な空を照らし出していた。
「私たちもそろそろ寝よっか。」
シグレは先生を寝床へ案内したかと思いきや、先生が寝るはずのベッドにモゾモゾと入り込んだ。
「前は断られちゃったからさ。」
とてもいい笑顔を浮かべながら彼女は腕を広げる。
疲れ果てていた先生は、彼女の提案を受け入れたのだった。
お目汚し失礼。
- 351◆ifPRYIRKeo25/04/09(水) 15:09:42
- 361◆ifPRYIRKeo25/04/09(水) 15:12:48
ええい。
書けたのでこっちも投下しておきまふ。そこまででもないけど流血あるので一応。
no title | Writening 心霊写真。この世ならざる物が、写真に写り込む現象。 解釈は様々だ。ただの自然現象だとか、人間の目が引き起こす錯覚だとかいうリアリストもいれば、亡者からのメッセージであるだとか厄の溜まった場所…writening.net - 37二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 15:19:22
除霊道具としてお酒をなおのことを手放せなくなったシグレ いると思うんですよこの方向性の世界観なら
- 381◆ifPRYIRKeo25/04/09(水) 15:27:51
手袋怪異がアルコール類に寄せられる奴、シグレが自分で発酵させたドリンクに寄せられて入って来ようとしてるのでは...?って本人が考えちゃって、ノドカ含む仲間を危険に晒してるのは自分なのでは、って堂々巡りの悩みをお酒呑んでなんとかやりくりしてたら最悪だなって思いました。いいね、夢が広がるね
- 39二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 15:35:09
霊に強い先生スレが前にあったよねー初手がミサキだったやつ
ここのシグレは大人に助けを求められるのか 自力でどうにかしないといけないのか - 40手袋の人25/04/09(水) 15:49:46
手袋怪異を書いたものです。
現実でもお酒もといアルコールは宗教とか神事にもよく関わるからキーアイテムになりそうだよね
日本だと乾杯とかの方面で神に捧げるものとしての歴史があるし、キリスト的なものだとワインはキリストの血とされる...
神秘にテクスチャーが存在するキヴォトスだと一体どう関わるのやら
あと、SS練習中なのでアドバイスがあれば是非とも...ひひひ - 411◆ifPRYIRKeo25/04/09(水) 23:19:40
煮詰まってきちゃった。
「鏡」をテーマになんか書こうと思ったんだけど何も思いつかない... - 42二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 01:37:15
あまり怖くない気はするけど書けたので一応…
ミ──ンミンミンミンミン…
ミ───ンミンミンミンミンミン…
ミ─────────────────ン…
────
夏。私たちにはあまり縁の無い季節だ。レッドウィンター自治区は年中寒く雪も降る。常夏とどっちがマシなのか時折考えるが、もうそんなことはないだろう。
少なくとも私にとっては常冬の方が合っているようだ。身体に纏わりつく嫌な熱気が教えてくれた。
「……あっつい…」
・・・
のんだ時の暑さとは違う。自分の中の熱がいつまでも出ていかないような。初めて自分の冬毛を憎む。
服はもう大半脱いだ。浴衣ならば通気性が良いので幾分かマシだったかもしれないが、予想できるものでもない。…戻った時に先生が居たらどうしようか。戻れそうになったら着なおしたほうがいいかもしれない…
ミ─────ンミンミンミン…
ミ──────────ンミンミンミンミンミンミン…
ミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミン……
絶え間なく聞こえるやかましい音が次第に苛立たしくなってきた。そもそもこれは何の音なのか。調子の外れたサイレンだろうか?だとしたらこの暑さへの警告なのだろう。
外に見える雪景色へと視線が吸い込まれる。雪にダイブしたいなどと思ったのは小学生の時依頼だ。…あの時はノドカと一緒に生き埋めにされてかなり怖かったし散々怒られたっけ。
…ノドカがここへ来てなくて良かったと心から思う。いつもあの大荷物なのにその上この暑さでは倒れてしまいそうだ。
ミンミンミンミンミンミン…
ミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミン…
額から汗が垂れてくる。温泉郷に作られていたサウナなるものを思い出す。体を冷やして「ととのう」までが一連の楽しみ方だと言われていたが、なるほど。この暑さから元の寒さに戻れば相当気持ちがいいだろう。ああ、早く元の旧校舎に戻ろう。足を動かし続けよう。止まると暑くて汗が噴き出る… - 43二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 01:38:47
ミ────ンミ────ンミ────ンミ────ンミ────ンミ────ンミ────ンミ────ン…
ミ─────ンミ─────ンミ─────ンミ─────ンミ─────ンミ─────ンミ─────ンミ─────ン…
飲み物というのはこんなに早くなくなるものだっただろうか。いつもなら十分なスキットルはとっくに空になり、いつもなら勝手に冷え切っている水はとてもぬるかった。
一刻も早く戻りたいが、進むべき方向は決まらなかった。
「はぁ…はぁ…」
彷徨っていて分かったことは、ここは旧校舎と同じようなつくりだが扉の先が本来とは別の場所へつながっていること、窓から出ることはできないこと、この音には音源となっている何かが存在しているであろうことだった。いま私にある道は2つに1つ。音が大きくなるほうへ進んで根源を探り、どうにかすること。もう1つは音が小さくなるほうへ進み、脱出を目指すこと。
…もし私の後に誰かが来たらきっと困る。みんな暑いのは苦手だろうし。
「がんばろっと…」
干からびる前に終わらせよう。今度はみんなと一緒にちゃんとした初めての夏を楽しもう… - 44二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 01:40:25
カナカナカナカナ……
いつしか視界は夕焼け色に染まっていた。鳴り響いていた音も変わり、どんどんうるさくなっているのに不安と静寂を感じさせるものに変わっていた。それなのに外は変わらない真っ白な雪景色。
「んっ!…」
喉が渇いた。喉からは血の味がした。口を開けたくないし喉を鳴らしたくもない。経験したことの無い感覚だが、まあ経験する必要はないだろう、こんなもの。飲み物がたっぷりと手に入る環境であることが恵まれているように思えてくる。普段寒さと冷たさの二重苦でしかないような飲み水がこれほど欲しくなるとは思わなかった。今はカンポットよりもお酒よりも水が飲みたい…
(そろそろかな…)
音は耳を畳んで帽子の中に入れてなお耳をふさぎたくなるほどだった。なぜかはわからないがあのサイレンでなくて良かった。…それでも頭が痛い。ほかの音が聞こえないからか、なおさら苛まれているような感覚になる。
カナカナカナカナカナカナ…
扉の先は外につながっていた。…ここは裏門付近の花壇だ。普段この地では意味を成していないが、黄緑色の雑草が生えている様子を見るに、やはり大した意味は元から無かったようだ。ここにつながっている扉は校舎に入る扉か門のみ。であればきっとここが終着点なのだろう。振り返ると、中は私たちのよく知っている旧校舎に戻っていた。もう少し見上げれば真っ赤な晴れ渡った空が広がっているのに。
そして横には巨大な…虫?の死骸が横たわっていた。
(これか…)
グレネードランチャーを構える。
「……」
嫌な予感がするが、引き金を引く。
カナカナカナカナカナカナ
シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛シ゛
「うわあぁっあ、がゲホッゲホッ!」
大きな虫は炎に包まれながら騒々しく飛び上がり、そしてすぐに落ちて痙攣し、動かなくなった。
「……」
気付けば足元は白く戻っていた。 - 45二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 01:43:32
比較的対応に手慣れている感じすき
こういうこともあってシグレのアルコール所持が227号内で大目に見られているとかありそう
想像しつつも安易な詮索は控える、洒落怖あじがありますねえ
何事であれ触らなければそう祟られない……それはそれとしてノリのいい落ち武者と骸骨で草生える
鏡というと定番なのは合わせ鏡とかですかねえ
象徴としては「真実を映す」とか「別の世界」とか?
ホラーだとブラッディマリーとか……
総称すると「うつらないはずorうつることを予測できないものがうつる」か、逆に「うつるはずのものがうつらない」みたいな展開とかですかね?
『鏡に反射して気づかずに済むはずだったものが見えてしまった』とかも怪談で定番の「双眼鏡を覗いていたら……」みたいな文脈になりそう
全部素人考えですが!
- 46二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 01:49:45
- 47二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 01:50:43
>>44の後日談(独自設定あり)
旧校舎に戻って水を飲んでいると、寒いはずなのに汗がにじんできた。 ・・
…もしかして汗をかかなかったのは水分が失われてかけなかっただけなのだろうか。今日はのまない方がいいかな…
後日、トモエ先輩、先生と一緒に雪に埋もれた花壇にやって来た。
「ここに何かあるんですか?」
「たぶん、ね。はいこれ。」
"雪かき?"
「そう。じゃあ、やるよ。」
…しばらくすると、土が見えてきた。
「よし、じゃあここからは土を掘るよ。」
"まだやるの!?"
「今回はなかなか大変ですね…」
"「今回は」ってことは…" "前にもこんなことが?"
「そうですね、シグレちゃんの感覚は正確ですから。」
そのまましばらく掘っていると、想像通りのものが出てきた。
「やっぱりか…」
"これは…" "…どうして蝉の抜け殻がこんなに?"
「あれ、セミって名前だったんだ…(形が違う…)ともかく、それは私たちには分からないことだよ。」
「レッドウィンターに蝉はいませんからね。私も百鬼夜行に出向いたときに初めて知りましたから。」
"私たちを呼んだのは…"
「うん、どうするか相談しようと思って。トモエ先輩にも協力してもらってるんだ。」
「…怖い話が蔓延ってしまっては、チェリノちゃんたちが怖がってしまいますからね。」
先生は少し考えてから、いつも持っている端末に向かって何か言った。…気になっていたのだけど、音声入力なのかな…?
"(…私がどうにかできるモノではないみたいだ)" "(せめて、丁重に弔うことしか。)"
"…何か運ぶための道具はあるかな?"
「ちゃんとあるよ、箱とリヤカー。」
"…じゃあ、行こうか。" "トモエ、墓地の場所は知ってる?"
「はい、行きましょうか。事前に訪問の可能性は伝えていますから」
- 481◆ifPRYIRKeo25/04/10(木) 02:49:53
目を離した内にちょっと賑わってきてて嬉しい限り。ところで試作としてこんなものを作ってみたりもしました。
227号の百物語 | Writening「先生は『百物語』って、知ってる?どこかの地域の、伝統的な怪談のスタイルらしくてさ。詳しくは知らないけど」 「蠟燭を百本並べて、怪談を話していくの。一話語り終えるごとに、一本蝋燭を吹き消していっ…writening.net落ちて立て直すような事になったらと企んでたやつ。みんなで怖いのからゆるいのまで百個作って大変な事にしてやろうぜ、という。一応入れていいか分からなかったので自分で書いたのだけにしてます。好きに編集していいけどフォーマットは揃えてくれるとありがたい
仮にだけど本当に100行ったらデカめの何か書きます。ネタに走るなら百物語に出てきた怪異全部が一斉に襲って来るとか。先生擬き、五人の座敷童、大切な人の死に姿に化ける霊、手袋、ノリの良い落ち武者と骸骨、シグレによく似た被拷問者、巨大蝉...ここまでだけでもキャラだいぶ濃いぞ。
- 49手袋の人25/04/10(木) 09:19:21
227号...というかレッドウインター自体、怪異との相性が意外と悪くないかもしれない
元ネタの国にもフォルクローレはいっぱいあるし、これらがキヴォトスの中だとどうなったかとか考えるのもなかなか乙なものだね - 50二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 19:07:33
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