- 1125/04/08(火) 19:31:59
- 2二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 19:34:27
来た!
我々は再びセクシーフォックスの元に集う! - 3125/04/08(火) 19:34:28
前スレだよ
【閲覧注意】ここだけ、ナギサ様がひっそりと入水する話|あにまん掲示板見たいよね書きますbbs.animanch.comホントはもう一つの話を完結させてからスレ立てしようとか、書き溜めてからスレ立てしようとか理性的なことを考えていたんだが……どうやら私は、締め切りが無いとまるっきり書けない性質でね
多分明日は全く更新できないけど、今日を無為にしない為にも無理矢理立たせたと言うわけだ
つまり全く書き溜められてない
すまん
- 4二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 19:35:43
取り敢えず10まで行かせなくてはならない!
そして明日は保守を続けなくてはならない - 5二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 19:36:59
即見つけられたラッキー
- 6二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 19:37:04
待ってたぜ
- 7125/04/08(火) 19:38:56
と言うかマジでごめん、ハーメルンに投げた方を待ってる人……
私何時になったら書き終えられるか全然わかんないじゃんね……
このまま永久に更新しなくてもおかしくないから怖いわ - 8二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 19:40:16
- 9二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 19:52:06
9!
- 10二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 19:52:57
あなたの帰還を歓迎します
- 11125/04/08(火) 20:03:13
- 12125/04/08(火) 20:03:25
――一体何時から、私は間違えていたのだろうか。
――何処まで遡れば、この悲劇を防ぐことが出来たのだろうか。
――こんな自問自答すら、結局は現実から逃げているに過ぎないというのに。
強いて言うならば、私の怠慢が招いた結果だろう。
一寸先の闇に怯え、勝手に絶望し、足を止めてしまった私が招いた――必然とも呼べる悲劇。
「だから、そう。この物語にはもう救いなんて一欠けらも残っては無いんだ。私が、救いの炎を費やしてしまったのだからね」
「これは……単なる懺悔さ。許して欲しい人物は既に此の世には居ないのだから、単なる懺悔」
「ほんの少しばかり、聞いてはくれないか? 心に楔を打ち込む意味でも――私が決して、忘れない為にも」 - 13125/04/08(火) 20:03:35
エデン条約。
私は一人、その先を少し覗いてしまったばかりに、勝手に絶望し、勝手に足を止めてしまった。
運命は決して変えられないのだと思い込んで――運命を書き換えた友の姿だけを、見過ごしてしまった。
「……」
あれから。
私は予知夢の制御、と言うよりかは能力を出来る限り使わないように生活していた。
見たくもない未来、見たくもない可能性の一部を見せ続けられ、それで勝手に疲弊していてはティーパーティとしても復帰することが難しかったからね。
「……?」
でも、予兆は確かにあったんだ。
あの日の数日前から、見えるトリニティの景色はやけに色褪せていて。
あの日の数日前から、聞こえるトリニティの音はやけに掠れていて。
あの日の数日前から、すれ違うトリニティ生の姿がやけに少なくて。
――あの日の前日には、決してナギサに近づけない未来しか見えなかったことを。
私は、全てが手遅れになって漸く気が付くことが出来たんだ。 - 14125/04/08(火) 20:05:22
ここまででワンシーンだ。
小難しい書き方をしてすまない……。
だが必要な話なんだ。これが無ければ私はブルーアーカイブに辿り着くことが出来ないからな……
あ、質問とか感想とか書きなぐりたくなったら下のスレを使ってくれ
ここだけ、ナギサ様がひっそりと入水する話 感想スレ|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/4753791/ん!!ん!ん!!魔除けbbs.animanch.com - 15125/04/08(火) 21:00:20
――何かがおかしい。
景色が、音が、人が。
トリニティを覆う全体の色彩が失われ、まるで廃墟のような静けさだけが校舎を満たしていた。
『これは……一体……』
この未来を見続けて既に三日は経過している。
初めは私の体調の問題とも思ったが、流石に日々色褪せ活気が失せていくトリニティを見せられてしまえばそうも言っていられなくなる。
『……また、ミネたちに色々と言われてしまうのだが』
溢した溜息に反し、足取りは軽くトリニティを進んで行く。
夢の中で動き回り続けていると、自然と目が覚める。
その状態で目が覚めてしまうと、私は夢と現を間違えたまま行動をしてしまうのだ。
絶対安静の筈の患者が、ベットから何の問題もなさそうに這い出ていれば、そりゃあ救護騎士団員に怒られると言うものだ。
だがこれは異常事態。
今ここで動かなければ、何時動くというのか。
脳内での正当化を完了し、一先ずティーパーティのテラスへと出てみる。
チラリと時計を確認したところ、今はお昼少し前。
この時間帯ならば、ミカは兎も角ナギサは確実に居るはずだった。
ティーパーティの雑務を一挙に熟す彼女は今、分派の垣根を越えて仕事をしている。
だからこそ、どの分派も目を光らせることが出来るティーパーティのテラスでここ最近は仕事をしているのだが……。 - 16125/04/08(火) 21:00:56
『……珍しいこともあったものだ』
そこにナギサの姿は無く、代わりと言ってはあれだがミカの姿だけがあった。
一体どういう風の吹き回しなのかと疑問には思うが、これが原因なのだろうか?
テーブルに並べられた資料に特段の違和感は無く、そこに予知夢の異常があるようには思えなかった。
『しかし、粛々と仕事をするならば私も小言を溢さずに――』
僅かな文句でも投げようかと彼女に近づき、気づいた。
彼女――ミカの恐ろしいまでの無表情に。
『……何なんだ全く』
背筋が凍るような、嫌な予感が背中を這い廻るような、奇妙な違和感だけが肥大化していく。
ミカは、お世辞にも政務には到底向いていない。
出来なくはないが、その何処か気分屋な性格が酷いズレを生んでしまう。
そんな彼女が、あんな……。
『……ナギサは何処に』
ナギサとミカは幼馴染だ。
あんな状態のミカを放って迄優先するべき事項が何かあるのかと、改めてテーブルに広げられた資料を確認する。
『……ん?』
その中の一つ、丁寧に置かれた一つの計画書が目に入る。
手に取ってみると、トリニティ自治区内にある花畑の解体工事と書いてあった。
何故これだけ丁寧に纏められていて……どの派閥にも分類されずに置かれているんだ? - 17125/04/08(火) 21:01:13
サンクトゥス、フィリウス、パテル。
どの派閥に承認、または確認された書類を送るのか。
凡そ三つに分けられる筈の書類の束の中で、これだけが異彩を放ち枠から外れて置かれている。
『これが――』
瞬間、意識が飛ぶ。
まるでこの先を見せぬよう何者かが邪魔をしたように、私の意識は夢から覚まさせられていった。
「――ちゃん」
恐らくナギサを呼ぶミカの声を最後に聞きながら、私の意識は完全に浮上した。
何故だか悲痛に濡れているような気がして、何故だか聴いてはならないような気がして。
形容し切れぬ違和感を覚えたまま、私はこの先を見ることは無かった。 - 18125/04/08(火) 21:04:05
これで本日の更新はお終いだ
明日は早いからな……
視点の関係上、まずはセイアが会場に居ない理由から書き出すことにした
謎……と言うか色々セイアが訳知り顔で口を挟むことが出来たのはこう言う事だ
この後もちょっと先の未来を覗き見しながら過去のセイアの追体験になりそうだ
皆も体調の変化を感じたら休むことに専念した方が良い
私はまだちょっと長引いてる
おやすみフォックスですまない…… - 19二次元好きの匿名さん25/04/08(火) 22:05:33
迂遠過ぎないエミュ良いね
- 20二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 02:13:19
おぉ、続き待ってた。
- 21二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 08:19:37
過去編!
分かるから嬉しいね - 22二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 15:18:56
乙
- 23二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 15:48:05
このレスは削除されています
- 24125/04/09(水) 22:29:40
酷い全身の気怠さとともに目が覚める。
ここ数日はろくに予知夢の能力を使わなかった反動か、久し振り動いたせいなのか、やけに辛い。
だが、ここで動かなければ後悔するだろう。
すぐさま枕元にあるスマホを手に取り、ナギサにメッセージを送る。
電話は流石に性急過ぎるし、何より聞きたい話を上手く聞き出せる自信も無い。
当たり障りのない挨拶から始めた文章は近況の確認に続き、仕事のし過ぎではないかと心配を重ね、最後に花畑に関する質問で締めた。
後は返信を待つばかりだ。
「……」
眠気はない。
体は怠い。
やるべき事はあるのに今は待つ事しかできない。
憂鬱に成るしかない現状を振り払うべく、垣間見たミカの状態を思考する。
大体、おかしいのだ。
彼女は今パテル派のトップから降ろされ、他派閥の書類の承認などできる立場には無いはずなのに。
「……いや、待て。よく思い出せ」
暗示るように、念じるように声に出す。
あの時見たテーブルの上に何が乗っていたのか。
――ティーカップは幾つ有った?
- 25125/04/09(水) 22:29:50
予知夢は、不思議な事に私自身の姿を見ることが出来ない。
それは私が過去から体を借りて見ている景色だからなのかもしれないが、どちらにせよ私を見ることはない。
だが、私が居た痕跡を消す事は出来ない。
脳裏に浮かび上がる情景には、確かに2つのティーカップが並べられていた。
……ろくに手を付けられていなかったような気もするが。
「つまり、私とミカで執務を熟していた、というわけか……ともすると、ナギサの体調が悪化したのか?」
異常なまでの仕事量。
キャパシティを考えていないように一人で抱え込むナギサ。
手伝いたくとも、今の私はポンコツだ。
いつ容体急変するか分からない奴を近くに置いていては、ナギサに余計な心労を更に与えかねないだろう。
「……しかし、それで倒れてしまっては本末転倒だろう?」
正しく、なんて。
誰が聞いているわけでもないに呟き、一つの方針を定める。
ナギサが倒れる未来を見たと言って、ミネを説得しよう。
少しはマシな展開が訪れるのでは、何て思っている時にスマホが震えた。
「……なるほど、そう来るか」
案の定、ナギサからの連絡だった。 - 26125/04/09(水) 22:30:06
[ご心配をおかけして申し訳ありません。
ティーパーティのホストとしてご心配になるお気持ちは分かります。
ですが、パテル派、フィリウス派の両陣営が完全に立ち上がるまで苦難の時は続くのだと思います。
ですから、お二人には一早く回復して貰わなければなりませんね。
その後はお二人に任せますので、一先ずは安静にして療養為さってください。
花畑ですが、そちらを会場とした親睦会を行おうと思っております。
無事に開催することが出来ましたらトリニティもようやく一段落出来ると思いますしね。
私もその日までは頑張ろうと思います。〕
それは此方の心配を受入れているようで、休む気はさらさら無いと言っていた。
これは少し、困った。
ナギサが今すぐにでもホストの座から逃れたいと思うのなら、私の脅迫は成功していただろう。
だが事実として、彼女はまだ責任を投げようとはしなかった。
これでは丸め込められるのは私とミネの方だ。
「……仕方が無い、か」
そこで私は――考えることを放棄した。
あの絶望と混沌に溢れたエデン条約を正常に戻し、運命を捻じ曲げた彼女のことだ。
きっと何かしら考えがあるのだろう。
その親睦会を超えてからが私たちの仕事になるのだろうと、そう考えた。
「……ならば余計な詮索は辞めだな。花畑も、何かしら問題が起こったのだろう。まあ」
――ナギサなら問題ないだろう。 - 27125/04/09(水) 22:30:21
ほんの少しだけ肩にかかった重荷を降ろし、信用と呼ぶ名の思い込みで、思考することを止めてしまった。
――後悔する日は、遠くは無かった。 - 28125/04/09(水) 22:33:59
と言うわけで、何とか今日更新が出来た……
ちょっと展開の練りが甘い気がするが……たぶん恐らくきっと大丈夫メイビー……
見切り甘々フォックスを晒さないとどうして止められなかったとなるのでどうしてもセクシー評価下げになってしまうだ……こればっかりはしょうがないんだ……
皆もSSを書くときは気を付けよう
ガバガバフォックスですまない…… - 29二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 22:39:29
まぁ…セイアの判断も一つの正解だよな…
自分で言ってたけど変に動いて体調をさらに崩したらもっとナギサとかに負担かけることになるだろうし…
よりひどい方向に言っていたかもしれないしなぁ… - 30125/04/10(木) 00:09:02
- 31二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 06:13:42
エデン条約のときにナギサが運命を捻じ曲げたから予知夢が絶対でないと考えられるからどうしようもない
- 32二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 12:19:21
ナギサって状況が状況なだけに腹心や相棒がいないんだよね
ここではそれが致命的だった - 33二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 18:47:31
一人で抱え込むのが当たり前になってると相談しようという発想すら湧かなくなるからね
- 34125/04/10(木) 19:29:19
ちょっと展開に悩んでいるからここは掲示板らしく賽子でも投げようと思う
何書いてんだか分からなくなってきたからな……
1.百合園セイアと秘密の部屋と炎のゴブレット
2.百合園セイアと不死鳥の騎士団と謎のプリンセス
dice1d2=2 (2)
- 35125/04/10(木) 19:30:12
なるほど……そう来るか……
であるならばその御心に従おうじゃないか
結果は変わらないのだからな - 36二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 20:51:17
被害でかいやつ選びやがったな!?
- 37二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 21:13:12
ハリ◯タなのは分かるが
何が起こるの!?タイトルしか知らないだ!怖い! - 38二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 21:15:37
ネームドが大量に死ぬ章
- 39二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 21:28:06
不死鳥の騎士団ならまだしも謎のプリンスまで入れるのか…
キヴォトスのダンブルドアポジションは… - 40125/04/10(木) 21:31:16
- 41二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 21:33:53
- 42125/04/10(木) 22:15:45
それはナギサに手を貸すことを諦め、鈍化しつつも確実に悪化していくトリニティを彷徨い歩き始めて数日程経った頃だった。
『……な、なんだい……この場所は』
目覚めた場所は、全く持って見慣れぬ風景だけが広がっていた。
崩れ落ちた建物。まだ燃える意思を秘めた残骸。――嫌に見覚えのある壊れ切った校章。
『いや、待て……見覚えがあるはずだ、私はこれを』
そう、これはエデン条約調印式での光景に似ている。
降り注いだミサイルによって、会場は確かこのような惨状になっていた筈だ。
まさか既に過ぎ去った物が今になって見えてくるのか?
当惑した意識は現実を直視しないまま。
だが、決定的な事象を叩き付けられ漸く、私の頭は回り始めた。
「――」
『っ! なっ、ツルギ!? その傷は――』
背後から何かが倒れる音が響いたかと思えば、片翼が半分から先が無くなり右肩の先を失った――恐らくねじ切られた――正実の委員長であった剣先ツルギが倒れていた。
只事ではない負傷。
あの時でさえもここまでの怪我を負ったツルギは見えやしなかった。
遅れた確信ではあったが、今見ている景色がエデン条約での最悪の未来では無いことに気が付くことが出来た。
――要するに、これはこの先に起きるかもしれない事象だ。
- 43125/04/10(木) 22:15:56
〔……イア……! ……ア様! 応答……願……! セイ…様!!〕
ツルギに駆け寄る瞬間、何処かから私を呼ぶ声が響いた。
ホログラムが展開されていない辺り、端末は酷く損傷しているのかもしれない。
広がっていく血の泉に溺れていくツルギ。何処かから響く私を呼ぶ声。
『……ッ! すまない……!』
私は今にも潰えそうな命の灯を見捨てて、声の方に走った。
これは予知夢だ。現実で起きている事象ではない。
ならば助けた所で話の聞けそうもないツルギよりも先に、確実に情報が得られそうな方に走るのが賢明だろう。
『……すまない!!』
きっと現実では全て救って見せるから。
きっと未来では全て助けてみせるから。
だから、どうか許して欲しい。
そう思うのは、傲慢な答えだろうか?
瓦礫に埋もれるように、半分だけ顔を出した端末を拾い上げ、ノイズ交じりの音を聞く。
それは、何処までも私を地獄に叩き落す声しか返って来ないことを知らずに。
〔……めか! ミネ団長の次はセイア様が……わ、私たちは一体どうすれば――〕
『……冗談だろう?』 - 44125/04/10(木) 22:16:18
耳元に拾い上げられた端末が、瓦礫の下へ帰っていく。
ミネ団長に、続いて?
それは、つまり……。
再び拾い上げる気には、到底ならなかった。
次に聞こえてくる会話は、どうせ混乱の渦に塗れた言葉と呼べぬ狂騒だろうと容易に想像できたから。
『……まだだっ!!』
萎んだ心を膨らませるように、怯えた勇気を取り戻すように、宣誓するように叫ぶ。
『ここで諦め無かったからナギサは掴むことが出来た!』
トリニティが崩壊した原因も、その目的も、何もかもが霧の中。
『彼女の描いた楽園を――見事に証明してみせたんだ!』
だがこの場で悲嘆に暮れたまま立ち止まり続けるのは、確かに間違いだろう。
『ならば今度は、私の番だ!!』
継ぎ接ぎだらけの決意を掲げ、私はすぐに行動に移った。――移ろうとした。
まずは日時……カレンダーでもスマホでもいい。何時この事態が発生するのか、大まかな日時を把握しなければならない。
先ほどの端末からは既に音が途切れており、音が聞き取れないほどに瓦礫の下に潜って行ってしまったか、落下の衝撃で壊れてしまったか。
次に原因。何がトリニティをこうしたのか。
根本的な破壊の原因を見つけなければ、決して解決へは導けない。
――なら、正義実現委員会の部屋へ向かおう。 - 45125/04/10(木) 22:16:35
私が一歩、足を踏み出した途端。
タイムリミットが、やってきた。
「――」
『えっ――?』
音すらも置き去りにした刹那、その煌めく光に気づけたことすらも偶然だった。
マゼンタ色に輝く何かが視界を掠めた途端、私の意識は一瞬にして刈り取られていた。
やけにその色彩が脳裏に焼き付いたまま。 - 46125/04/10(木) 22:16:51
「――ッッッ!! はあっ! はあっ! はあっ……」
勢いのまま起き上がり、苦しくなった呼吸を整える。
脂汗が滲むのを感じ、酷く痛む胸を抑える。
――これでも、リハビリは毎日欠かさず行っているんだがね。
「……」
そんな軽口を一つでも飛ばしたかったのだが、揺れる頭と耐えきれない現実と呼べる未来に吐き気しか込み上げてこなかった。
何が原因か、何が問題か。
答えは到底、分かりかねていた。
だが、一つだけ明確な指針は定められた。
「――ナギサ」
あの端末から聞こえてきた声は、私を呼んでいた。
それに、どうしたらいいのかと。
こんな頼りない人間でさえも頼ろうと、それほどまでに切羽詰まっていた。
「必ず、守ってやる」
一番初めに狙われたのはナギサなのだろう。
それを知ったミカがどうなるか……少なくとも、学園の指揮など望めないだろう。
碌な指揮系統が取れぬまま、各個撃破されて行った未来が――あれだ。
「私が、楽園への証明を成し得てみせよう」 - 47125/04/10(木) 22:17:04
私はこの時、間違えた。
誰がトリニティの包囲網を突破し、誰がツルギを殺したのかと、必死に目を逸らしてしまった。
きちんと目を向けるべき場所を蔑ろにしたまま、歯車は確かに狂っていく。
地獄への暴走特急は、既に走り出していたのだ。 - 48125/04/10(木) 22:20:17
- 49二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 22:26:04
なんだろうこのあんこスレでダブルファンブル引いたときのような胃が重くなる感覚は…
- 50二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 22:26:57
- 51125/04/10(木) 22:33:33
- 52二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 22:33:35
- 53二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 06:04:31
早朝保守
- 54二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 15:03:54
保守
- 55二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 23:26:53
深夜保守
- 56二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 06:14:03
早朝保守
- 57二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 11:54:50
昼保守
- 58二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 16:17:40
夕保守
- 59二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 16:22:46
保守の間隔って10時間まで猶予あるよ?5時間毎にしてるっぽいけど
- 60二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 17:33:54
- 61二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 17:36:32
上がってきて感想ですらない保守のレスが並んでると萎えるのもわかるが落ちないより良いよ
まあ今回も上がってきて覗いたらこれだったわけですが - 62二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 17:39:48
なんでお互い喧嘩腰で皮肉っぽいこと言ってるの??SSスレなのに関係ないレスバするのやめてくれない??萎えてるとかどうでもいいわよ
- 63125/04/12(土) 17:54:28
おっと……とりあえず生き残っていることについて、保守してくれたことに感謝を述べさせて貰おう。ありがとう
そもそも私が一日だけ更新できないと言ったからね、今日は更新される予定だったんだ。
確実に残したかったと、そう思われるのは光栄の至りだね
さて、構成は出来ているから後は肉付けだけなんだけども……ちょっとリングフィットをやってしまってね……
頑張って一回は更新しよう。最低でも、一回は
腿上げフォックスですまない…… - 64125/04/12(土) 19:59:00
「――よろしいのですか?」
「ああ、私は寧ろ構わないのだけれどね。君たちにとっては業腹だろう?」
「……それは」
未来は未だ確定していないと信じて、私は一つ目の楔を打つ。
目の前の彼女はサンクトゥス分派内の反フィリウス派――否、反ナギサ派の人間だ。
勿論、公言しているわけではない。
だからこそ、彼女は何処か居心地が悪そうに此方の反応を窺っている。
思想がバレているのではないのかと、プライドをへし折る為の命令なのではないのかと。
そんな些末な考えを敢えて素知らぬ振りをして、淡々と答えていく。
「今の私に、ティーパーティのホストは務まらないよ……まだ、体調は万全では無いんだ」
「それは、もちろん理解しております」
「それに現行のホストがどれ程のタスクを熟しているのか分からないだろう? ……仮にホストが変わったとして、次のホストが碌にタスクも熟せずに潰れたら……君はどう思う」
「……! フィリウスよりも下だと、侮られてしまいますね」
「どうしてフィリウス派の名前が出てきたのか、私には理解しかねるが……その通りだろう。何も成せない無能の謗りを受けることになるだろうね」
言いたいことが分かったのか、怯えたような眼差しをしていた筈の彼女は、チーズを目の前にしたネズミのように目を輝かせていた。
そこで私は繰り返した。唇に当てた人差し指を振って。
「ティーパーティ現行ホスト、桐藤ナギサの仕事を手伝ってくれ。満遍なく、ね。彼女がティーパーティーを楽しむ余暇を与えられたら最高だな」
「はっ!!」
- 65125/04/12(土) 19:59:14
意気揚々と部屋を出ていく彼女に溜息を溢しながら、少し考える。
自身が自由に動かせる最大限の人材の数と、その範囲を。
(ティーパーティ関連はこれで情報が入ってくる……過激派も混ぜた。恐らく、グレーゾーンと言い張ったフィリス派の秘匿情報も流れて来るかもな……)
だがシスターフッド、救護騎士団、正義実現委員会、ETOに関して言えば書類上でしか情報を得ることが出来ないだろう。
……トリニティにあの惨状を巻き起こすのだ。
ただ破壊しただけなれば、私だってここまでの対策は施しはしない。
けれどもミネを討ち、ツルギをも倒し、ナギサすらも葬った。
確実に、何かしらの策が裏で蠢いている筈だ。
でなければ、こんなバカげた芸当を力押しで完遂する馬鹿が居ることになってしまう。
「さて……」
とりあえず、一発で私が扱える人材は全て放出し切ってしまったのだ。
だが仕方あるまい。現在のティーパーティの人材不足は誰が見ても明かだ。
ナギサが過労で倒れるのを防ぐ意味でも、サンクトゥスの同輩たちは此方で仕事して貰う方が助かると言うものだ。
では、どうするか。
ベットの上から動くことも儘ならない木偶坊でも、切れる手札が一枚だけ残っている。
それはどの様な可能性でも覗き見ることが出来る、正しくワイルドカード。
「ミネに協力して貰おうか」
予知夢を使った、未来偵察だ。 - 66125/04/12(土) 19:59:24
「お断りします」
「……どうしても、駄目かい?」
エデン条約の折、死亡偽装の手伝いをした時に貰った個人連絡先でミネを呼ぶと彼女はすっ飛んで来てくれた。
そこで私の計画を話したが、ミネは鋭い視線を此方に向けて言い放つ。
「当たり前です! 睡眠薬を使った予知夢の行使など……! そんな危険な真似を認めるわけには参りません」
「君のそう言う真直ぐに己が正義を言い放てる様は好感が持てるよ……今だけは、捻じ曲げて貰うがね」
何のために、救護騎士団を介さずに直接連絡したのか。
政治的な意図があるならば、真っ先に相談先から外されることはミネ自身分かっているだろう。
くだらない話をする為に呼びつけられた訳では無いのは、ミネ自身も分かっているだろう。
だからこそ彼女は、酷く渋い顔を見せながら話の続きを促した。
促されるまま、彼女ならば無為に情報を広めたりはしないと信じて、私は口を開いた。
「トリニティに、未曽有の危機が迫っている」
「……それは、エデン条約程の規模でしょうか」
「いいや、それ以上さ……笑えるだろう?」
「私としては、頭が痛い限りなのですが」
溜息を吐きながらも、私がイカれたと判断せずに信じてくれたミネ。
その口調は少し軽いが、これならばまだ誰かに漏らしたりはしないだろう。
誰かが死ぬかもしれないという未来を抱えるのは、思いのほか心に影を落とす。
誰かに影を照らして貰う為に、打ち明けてしまいたくなる気持ちは今痛いほど分かるのだから。
だから彼女は今は知らなくていいんだ。
自分すらも死ぬ、地獄絵図に。 - 67125/04/12(土) 19:59:43
「それで、原因を突き止めるために予知夢を?」
「ああ……情けない話だが、今はただ将来的に危機が訪れるということしか判明していないのでね……」
「それは……」
具体的な被害規模を言っていないせいか、案の定ミネは難色を示していた。
……いや、そもそも彼女の立場からしてみれば認められる筈が無いか。
健康を害し、弱っている体を更に弱らせる行為だ。
「……分かりました。条件付きで、投薬を認めましょう」
「……良いのかい? 提案して言うのもおかしな話ではあるのだが」
もう一つのプランを実行しようかと諦めていた時、ミネは唐突に提案に乗ってくれた。
どういう風の吹き回しかとミネを見つめると、彼女は指を一つ立てて答えた。
「まずは大前提として、私がセイア様に投薬する薬の管理はさせて頂きます。ここが譲れないのであれば……交渉は決裂です」
「いや……構わない、君ならば何の問題も無いだろうからね」
「ありがとうございます。次に、リハビリの時間を長く取って貰います」
「ああ……寝たきりになる時間が増えるから、かな」
「それもありますが……そもそも投薬に頼らない睡眠を行って欲しいというのが一救護騎士団員の願いとしてもあります。他にも――」
それから薬の耐性やら、リハビリでの体力増強前の自然睡眠やら、過剰投与やらの説明をつらつらと受けた。
ミネが此方の身を案じてくれることに喜ばしくも、どうしようもなく悲しくもなった。
説明を終えたミネは、改めて三本目の指を立ててこういった。
「何か問題がありましたら、すぐに連絡をしてください」
「……分かった、肝に銘じておくよ。ところで今から使いたいんだが、出来るかい?」
「…………いいでしょう」 - 68125/04/12(土) 19:59:57
渋々。
本当に不本意と言った表情を見せながら、ミネは了承した。
三十分もかからない内に薬剤が用意され、投与の準備も完了する。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「どうか、これが最初で最後である事を願います」
ずるりと全身から力が抜け、急速に視界が狭まっていく。
叩き落される意識は、夢だと認識する前に現世から振り落とされて行く。
何故か、ミネの悲しそうな顔だけが脳裏に焼き付いていた。 - 69125/04/12(土) 20:04:25
とりあえず、今回の更新はここまでだ……
おかしい……想定の三分のニしか物語が進まないぞ……?
どうなっているんだいミカ、全然展開が進まないぞミカ
と言うかナギサ入水関係なくなってないか? なんで私バットエンド世界戦の話なんか書いているんだ?
……なんて正気に戻る前に話の続きでも書いていようか
もっと感想が書きやすいように書けれればいいんだがな、難しい物だ
リングフィットの疲れが蓄積してちょっともう一回更新できるかは分からない……すまない……
ランニングフォックスですまない…… - 70二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 20:06:32
入水したナギサをどうにかするための物語だから…
- 71二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 22:49:31
エデン後だけど夢での未来予知が出来る世界線FOXなんだね
- 72125/04/13(日) 01:30:47
僅かに残る酩酊感と共に目が覚める。
見慣れた天井、見慣れた室内。
今は何時なのかと、枕元に置いてある筈のスマホに手を伸ばした。
『……ない』
いつもならば置いてある場所に、スマホが見当たらない。
はて、昨夜は何処に置いたのだろうかと頭を動かし……漸く、思い出した。
『全く……これではミカを笑えないな……』
ここは夢の中だ。
ぼんやりとした頭が直前の行動を思い返しながら、足取り軽く私は部屋の外に出る。
あのトリニティ崩壊の原因を探るべく、私は夢の中へ舞い戻ってきたんだ。
いつ起こるのか、誰がやったのか、規模はどれ位か、目的は何なのか。
一寸先すら見通せない現状に光を灯す為に、まずは情報が必要だ。
最も荒事の情報が集まりやす場所と言えば正義実現委員会だろう。
何よりETOとは違い、私の足でも簡単に見に行くことが出来る。
次にシスターフッド。
アリウス生徒たちを抱えた彼女たちが不穏分子に成らない可能性は零とは到底言い切れない。
勿論、トリニティの転覆を狙う、だなんて馬鹿げた話では無く。
ミカのように何者かにいい様に動かされている可能性を見に行くことは重要だ。
最後に救護騎士団だが……。
彼女たちの働きは身を持って知っているし、何よりトップであるミネには未来の一端を教えた。
ならば、優先順位は他と比べて下がると言うものだ。
- 73125/04/13(日) 01:30:59
『そういえば、今日は何時ものトリニティみたいだね』
廊下を全力で駆け抜けながら、やけに校舎が騒がしいなんて、間違った感想が漏れる。
違う。これが本来のトリニティの騒がしさだ。
あの静まり返った校舎はこれから来る未来の話で――。
『……ん?』
違和感が、頭を揺らす。
トリニティが崩壊するよりも前に、何かが起きている……?
否、深く考えずとも分かるだろう。
つまりは。
『あれがトリニティを揺るがす初期微動だったと言うわけか……』
トリニティを揺るがす布石、最初の策。
これを止めることが出来れば、最悪の未来へ遠ざかることが出来るのかも知れない。
『……やってやるさ』
瞼の裏に映るのは、血の池に沈むツルギの姿。
あの時手を伸ばさなかった意味を持つためにも、私は走る。
正義実現委員会の部屋までは、そう遠い距離では無かった。 - 74125/04/13(日) 01:31:15
『三日後か……』
私は正実の子たちが事件処理している端末を後ろから見ながら、その日時確認していた。
今日、詳しく言えば80時間後位だろうか?
少なくとも、この期間に問題が発生することが無いことだけは分かった。
『それにしても、だ』
誰も資料に触れていない間に幾つかの書類を抜き取り、中身を確認していく。
だが、どれもこれも日常にありふれた程度の事件で溢れかえっており、情報収取は芳しくなかった。
『背に腹は代えられないな……』
真面に一つずつ見ていくなど、そんな時間は何処にもなかった。
ならばどうすれば良いか。
知っている人間に聞くのが一番手っ取り早いと言うものだ。
『やあ、唐突にすまない。ハスミ、少しばかり聞きたいことが有ってね」
「えっ!? せ、セイア様……いつからそこにいらっしゃったのですか?」
ハスミの背中を叩きながら話すと、彼女は私の存在に今気づいたように驚いた。
どうやら触れながら話しかけることで、私はこの世界に干渉することが出来るようだった。
……まあ入院中だと触れ込みがされているお偉方が急に目の前に現れてしまうことを考えると、目的の話を聞くのは中々に難儀してしまうのだが。
そんな本音はひた隠し、私は困惑するハスミに指を一つだけ立ててみせた。
「申し訳ないが、長々と説明している暇は無いんだ。たった一つだけ、聞きたいことがある」
「は、はあ……」
「ここ最近に起きた事件で何か突拍子の無いような……妙な事件は無かったかい?」 - 75125/04/13(日) 01:31:38
「それは……」
どうやら、当たりのようだ。
ハスミはその両目を大きく見開き、何処か怒りを含んだ瞳を此方に投げかけてきた。
「あのゲヘナの連中の事でしょうか?」
「ふむ……」
ゲヘナ……エデン条約機構を結んだとはいえ、ゲヘナのトップである万魔殿との関係は驚くほどに悪いと言えるだろう。
それでも暴力機関である風紀委員会との良好な関係を結べているからこそ、今のETOは存在が継続されている。
ならば、万魔殿が本気でこちらとことを構えようというのであれば、或いは。
「私が普段通っているDXメガ盛りパフェの店を爆破したあの……!!」
「ん? いやちょっと待ってくれ」
「テロリストグループ美食研究会の話でしょうか!!」
「……なるほど、それは大事件だね」
「でしょう!? それなのにツルギと来たらダイエットに丁度いいだろうなんて言ったんですよ!? やはりゲヘナ、信用なぞできませんね!!」
「やめてくれないか皮肉に全力で乗っかる真似は」
結局、正実で聞けた話はこの程度の物だった。
だが、確かな知見は得た。
ゲヘナが攻めて来る可能性。
あり得なくはない話だった。
少なくとも、トリニティを蹂躙しかねないパワーを秘めているのは事実だろう。
確たる証拠などは無いが、一つの候補として挙げて、対策を練る。
それが、それだけが、私にできる唯一の役割なのだから。 - 76125/04/13(日) 01:31:48
西へ東へ。
トリニティ校舎内を駆けずり回り、シスターフッドとETOのトリニティ支部にも顔を出したが、これと言った情報を得られることは無かった。
まだ目覚めることの無い身体を動かしながら、最後にナギサの下へとやってきたのだった。
『……やあ、ナギサ。私たちの同輩たちはきちんと仕事をしているかい?」
「……セイアさん? 大丈夫なんですか? こんな急に出歩いてしまって……」
「ああ、最近強めのリハビリを行っているからね。少しばかり、回復が早いんだ」
そんな雑段に花を咲かせながら、ナギサの様子を観察する。
特に大きな変化も見られず、自然な応対で此方が差し向けたサンクトゥスの人達への感謝を述べるナギサ。
思わず毒気が抜かれてしまう。
何をそんな感謝する必要があるのか、彼女たちの思惑が分からない君ではないだろうに……。
しかし事実として、ティーパーティの業務は幾分か楽になったらしい。
それならば良かったと、会話を切り上げナギサから視線を逸らす。
「それじゃあ、また会おうか。くれぐれも無理はしないでくれよ。私が万全の体調になるまでホストを保ち続けているだけでいいんだからな」
「元よりそれくらいしか出来ませんよ……それよりセイアさん、どちらへ向かわれるので?」
「何、少しばかりミカに聞きたいことが有ってね。今の限界を計る為にもちょっとそこまで行こうかと」
「……また、三人で紅茶でも楽しみたいものですね」
「幾らでも楽しめばいいじゃないか、まあ、全てが終わった後になるだろうがね」
彼女の言葉に答えながら、私はそっとその場を後にする。
まだ何も判明していない事実に、焦りで目を曇らせながら。 - 77125/04/13(日) 01:32:00
「……そう、ですね」
蚊の鳴くようなナギサの言葉が決して耳に入ることなく、セイアは走った。
二人の距離は、何処までも開いて行ったのだった。 - 78125/04/13(日) 01:33:36
今日の更新はここまで……ってもう日を跨いでいるんだね……
ちょっとと言うかかなり文章が怪しいかもしれないが許してくれ……
今日どうしても二回更新したかったんだ……
それじゃあ、おやすみ
へとへとふぉっくすですまない…… - 79二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 06:12:48
この地点でもうナギサの様子はおかしいな…
- 80二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 07:23:44
信頼こそが正常な判断を妨げる障害、ナギサが足元を掬われる原因だったが
今回の場合は件のそれよりも破滅的な結果が待っているけどね - 81二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 09:21:57
この先がトリニティの壊滅で知り合いがたくさん死んじゃうってなると身を投げたナギちゃんも浮かばれないよ…
- 82125/04/13(日) 09:33:55
- 83二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 09:40:47
- 84二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 19:29:06
このセイア焦りのせいで信頼がこうあって欲しいって願望にちょっとすり替わってそうなのが良いし死が関わる核心を話せず抱え込みになってるのがエデン時のナギちゃんの追体験っぽい
- 85125/04/13(日) 19:55:10
……あれから、三日後。
トリニティ崩壊の原因を全く掴めることが無いまま、無為に日々が過ぎていった。
「――フィリウス派内でアリウス生徒への暴行や恫喝などが確認できましたが、大規模なグループとは言えませんでした。仮にその不祥事で現体制のままホストがサンクトゥスに移動させた場合、業務の遅延が確実に発生するかと……」
「ならば、一旦は状況証拠を集めるに留めて置くのが賢明だろう。内々で処理できた方がどちらにしても都合がいい」
成果自体は、あった。
ナギサが計画している親睦会の日を境に、トリニティに暗雲立ち込み始めていた。
その日にナギサは……何者かに狙われる。
「それならば我々は……」
「なあに、一先ずはフィリウスと共に業務に励んでいくべきだろう? 何よりも、すぐに離脱しては怪しまれてしまうからね」
「了解しました」
すっかり絆された同輩を見送りながら、思考の海に沈む。
ティーパーティ内に潜む過激派が原因かと思ったが、その線は無くなった。
一日二日は必死に粗探しをしていたせいか、醜くユーモアに欠ける報告を受けた。
だが、彼女はナギサの下で仕事をしていった御蔭か、考えを改めたらしい。
ナギサがエデン条約前に起こした、補習授業部の件。
彼女の人となりを知らず、調印式の会場にも居なかった者たちが真っ先に浮かべるナギサの姿の一つ。
謝罪行脚こそしてはいるものの、強権を振るう立場に納まり続けていることは如何な物かと、最もナギサを攻撃しやすい理由の一つ。
恐らくトリニティ内でナギサを狙おうとする者が居るのであれば、この情報だけに踊らされてしまっているのだろう。
…………だから、正直困っている。
てっきりサンクトゥス派が暴走するのかと、思い込んでいたのだから。
- 86125/04/13(日) 19:55:25
「……不味いな」
ナギサが開催する親睦会まで残り二日。
今夜と明日の昼間と夜中、その三回で原因を特定しなければならない。
……出来るのだろうか? そんな都合よく、見たい景色を見ることなど叶うのだろうか?
「……いや、そうだな。分からなければ親睦会など止めてしまえばいい」
グルグルと自身を追い詰める思考を止めるため、頬を叩く。
そうだ。止めてしまえばいい。
ナギサの命に関わると大きな声で喧伝しまくればいい。
私じゃあ足りなくともミカが居る、ミネが居る、ツルギだって居る。
そうなってしまえば、いよいよ持ってサンクトゥスの代表から降ろされそうだと自嘲しながら、眠りにつく。
(……ナギサとの約束を、破ってしまいそうだな)
交わしてはない、架空の未来の話。
ナギサのふとした願いすら守れない自分に嫌気が差しながらも、すんなりと意識を手放した。
次に目覚めるのが親睦会当日になることを知らないまま。 - 87二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 19:58:51
終わった…なにもかも……
- 88125/04/13(日) 19:59:08
やあ、適当に殴り書いた過去に殴り飛ばされそうな適当フォックスだ
ミカ……! 君のせいで整合性合わせるのがすっごい難しいんだぞ……! 聞いているのかミカ……!!
こう、ライブ感で書いているせいで全くと言っていい程展開が合致しないんだ
皆もライブ感で書くのはほどほどにしよう
エキセントリックフォックスですまない…… - 89二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 20:00:26
たまらねぇなぁ!!このライブ感ッ!!!!
- 90125/04/13(日) 23:15:36
鳥の囀りのみがやけに響く、早朝。
ティーパーティのテラスで目が覚めた。
『……ナギサは何処に』
夢だとすぐに分かった。
流石の私も突っ立ったまま眠ることなど出来ないのだから。
そんなふざけた思考を置き去りに、フィリウス派の執務室へと足を運ぶ。
私の決意によって未来が変えられたのであれば、ナギサが居る痕跡が見当たるはずだ。
……トリニティを覆う静寂を無視したまま、縋る様に執務室へと駆け出して行った。
夢だから、特に息切れすることも無く問題なく執務室へと到着する。
どうか何かが見つかりますようにと、祈って。
『……なんだい、この部屋は』
部屋を開けると、まず目に入ったのはスライドした本棚だった。
裏には既に開け放たれた押戸式の扉があり、その先には日光すら届かない地下へと延びる階段が続いていた。
明らかに異質。
だが、ナギサが普段使いする部屋から伸びる新たな通路は、新たな可能性が現れたように感じた。
足元すら覚束ない闇の中に一歩進み出ることに少しばかりの躊躇が有ったが、それでも必要な事だと思って一歩一歩足を踏み入れていった。
「……ゃん、どうして」
『! この声は……』
壁に手を当て転ばないように進んでいると、道の奥からすすり泣く声が響いてきた。
ミカの声だった。
- 91125/04/13(日) 23:15:53
「ナギちゃん……なんで……なんで死んじゃったのかなあ……」
『……ミカ』
階段の奥底にあった部屋は、行き止まりだった。
四方が知識の書で埋め尽くされ、品の良いイスとテーブルが一組だけ置かれている簡素な部屋と言えた。
……そんな部屋の中央で、ミカは椅子にも座らずに膝を抱えて幼子のように泣きじゃくっていた。
ここの階段を下りるためであろう持ってきたキャンドルは傍らに置かれ、その半分を既に溶かし尽くしていた。
正直、今の彼女と寄り添えるほど私の性格は優しくないだろう。
何よりも、取り返しのつかない世界に居る彼女と、まだ終ってはいない私では、そもそも精神的余裕にも天と地ほどの差が存在する。
『……ミカ」
「……セイアちゃん?」
だが、ここで彼女からの証言を見逃すわけにはいかなかった。
そんな使命感のみ駆られて、私は勢い任せに声をかけてしまった。
「ナギサの件は……残念だったね」
「ッ――」
「だが、こんな所で蹲っていることをナギサが望むと思っているのかい?」
「……てよ」
「私たちには……まだ、やるべき事が残っているんじゃないか?」
「セイアちゃんは黙ってなよ、何も救えないぼんくらなんだからさあ」
ミカはまだ膝に顔を埋めたまま、そんなことを言った。
……間違いではないだろう。この世界のナギサは、死んでしまったのだから。 - 92125/04/13(日) 23:16:14
「……あはは、言い返すこともできないんだったら無駄に煽るの、止めてくれない? ハッキリ言って鬱陶しいよ?」
「それは君がこんなにも辛気臭い場所で根を張っているのが原因だろう? 自身の怠惰を此方の責任にすり替えようとする事こそ止めて欲しいものだね」
「……あのさあ、そんなに私虐めて楽しいの? それとも何? ずっとナギちゃんに似たようなことしてたから代わりでも欲しいの?」
「そんな的外れな発言を聞きたいが為に声をかけた訳ではないのだが……それに、君と違ってナギサに似たようなことを言う機会は訪れなかったからね」
「……」
「……ミカ、せめて誰がナギサを攻撃したのかだけでも判別しなければ――」
「――うるっさいなあ!!! 黙っててよ!!!」
止めどなく溢れる涙を拭うことすらせずに、ミカは私の胸倉を掴んで叫んだ。
戸惑いながらミカを見上げると、彼女の瞳は何処も映すことは無く深淵を露わにしていた。
ミカの荒い吐息だけが顔にかかり、酷く追い詰めてしまったことを今更になって気が付いた。
「――分かってるよ」
「えっ……」
五分か、十分か。もしかすると一分も経っていないのかもしれない。
呼吸が落ち着いて行ったミカは、左手を震わせながらゆっくりと溢していった。
「セイアちゃんに言われなくても、こんなことしてる意味なんて無いって。ナギちゃんが求めてるわけ無いって、分かってる」
「でもさ、しょうがないでしょ……? 私はセイアちゃんみたいにすぐに前を向けない。他の皆みたいに、ナギちゃんの想いだけを背負って、前に進みだすなんて、出来ない」
「だって、だってさ――」 - 93125/04/13(日) 23:16:24
「私が、ナギちゃんを殺したような物でしょ……?」
そう言って笑う彼女の笑みは何処までも空虚で、私すら見ていなかった。 - 94125/04/13(日) 23:18:36
と言うわけで、本日の更新はここまでだ
ミカ……君が勢い任せで私を殴らないせいでプロットが……!!
変な所で区切られるのはそういうことだ……すまない……
明日は帰ってくるのが遅くなりそうで、更新できるかも分からない……
無責任フォックスですまない…… - 95二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 23:52:58
すみません、もしかして以前別のスレを立てていらっしゃったりはしていませんか?
- 96125/04/13(日) 23:54:53
- 97二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 00:26:09
そちらのスレのURLってわかりますか?
- 98二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 08:40:30
あーナギちゃん入水した後の未来か
- 99二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 08:41:04
ミカが魔女になるッ!?
- 100二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 08:49:44
何が怖いって他のバッドスチルも回収してそうな事よ
キヴォトス滅亡要員が居ないゲヘナって平和なのかもしれない - 101二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 18:36:47
ほ
- 102125/04/14(月) 21:45:11
ただいま……ミカが壊してくれたプロットは何とか復旧できそうだが更新するためには私の健康値が著しく足りなくてだね……
残念ながら更新は明日になりそうだ……
そして言われて気づいたんだがバットエンドスチルか……感情の方向性が少し違うが似たような表情なのは間違いないだろうね
あと、ノアのスレに関してはURLは貼らない
自身の想像力の貧困さをまざまざと見せつけられながら続きの創作を行うのは余りにも精神衛生上感心できないからね
……ようは伸びてもいないし、少しばかり恥ずかしいからだよ
詩集についてツラツラ書いてる間抜けが私だよ
気になったのなら、調べればいいさ
それじゃあ、おやすみ
臆病フォックスですまない…… - 103二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 01:08:45
- 104二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 06:03:25
ご自愛ください
- 105二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 13:13:26
お疲れ様です.
- 106二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 21:26:22
ご自愛ください
- 107二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 00:52:02
待機!
- 108125/04/16(水) 07:52:08
「っ――どうして、そう思うんだい?」
何をふざけたことを抜かすんだ。あの時から君は不器用ながらも変わろうと努力を続けていたじゃないか。
口を突いて出そうになった言葉を飲み込み、冷静にミカからの発言を引き出す。
今の彼女と真面に取り合うより、そんな発言に至った経緯の方が大切だ。
自身の絶叫によって、心が真っ黒に塗り潰されていく彼女を知覚しながらも、友の心を踏み躙る自覚をしながらも、私は先に進む他ないのだ。
「……ナギちゃんの遺書、見たでしょ?」
「――……あ、ああ」
頭が真っ白になり、間抜けにも開いた口が塞がらなくなりそうになった。
遺書? 自らの死の可能性を予見していて、私たちに何の相談もせずにそんな馬鹿げた物を書いていた事実に狼狽えた。
私たちはそんなにも頼りないのかと、所詮立場上での仲間でしかなかったのかと絶望しそうになったが――違った。
「なら……分かるでしょ? ナギちゃんが自殺するまで自分を攻め続けた、補習授業部の件。私がさ、私があんな浅はかなことしなかったらきっとナギちゃんは今も笑ってた……! 自殺なんて考えなくて、迷惑かける人たちに頭を抱えながらトリニティを守れてた!!」
自殺。
ミカは、そう言った。
じゃあ、なんだ。
私の必死の抵抗は無意味なものだったのかと、決死の判断は結論を変えるには至らないと。
命を賭してまでトリニティを護ったナギサの耳には、所詮その時寝ていただけの私の言葉など耳には入らないと。
いや待て、冷静になれ。
- 109125/04/16(水) 07:52:24
(落ち着け、大切なのはそんなことではないだろう。必要なことはナギサを止めるための情報……つまり、遺書の内容だ)
「――ミカ、すまないが君がナギサから受け取った遺書を見せてくれないかい? 私が受け取った物と書かれている内容に大きな齟齬がありそうなんだ」
悔しくて、情けなくて、溢れんばかりの負の感情に蓋をして、必死に前を向こうとした。
それが冷静になることなのだと思い込んで。
「……他の子だったら嫌だけど、セイアちゃんなら、いいよ。特別に見せてあげる」
「すまない、恩に着るよ」
ミカが大事そうに隠した、ナギサからの最後の手紙を取り出す。
震える手で渡される紙に手を伸ばした途端。
――景色が、一変した。 - 110125/04/16(水) 07:52:41
『……えっ?』
視界一杯に広がる、パンジーの花畑。
その中央に位置する場所に設営されたテーブルに座るミカ、ミネ、サクラコの三人。
「――ねえ、二人とも遅くな~い?」
用意したケーキを突きながら文句を吐き出すミカからは、先程のような悲壮感は見られない。
……まさか、これは。
「まあ、お二人で積もる話もあるのでしょう」
「……ですが、やはり遅すぎるような」
二人の反応からも、既にナギサが亡くなっているとは到底思えなかった。
嫌な確信と共に、何故こんなことが起きているのか理解が出来なかった。
⦅予知夢中での時間移動……だが、どうして。こんなこと、今まで起こったことは無いぞ……?⦆
だが、文字通り見方を変えればもっと的確にナギサを止めることが出来るかも知れない。
いざと成ればふん縛ってでも止めることが出来るようになる。
何処までも前を向く努力をしていた私だったが、何処までも無駄であるという事実を突き付けられるまで、そう遠くは無かった。
悪夢が、始まった。 - 111125/04/16(水) 07:55:00
やあ、ホスト規制の煽りを受けるフォックスだよ
更新遅れてすまない……だが今日は後数回更新できそうだから期待してくれると、私が喜ぶ - 112二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 07:56:36
ふふ、期待しかしてないよ
- 113二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 11:37:19
このシーンに繋がるわけか・・・
- 114二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 13:47:23
こう言う時に役に立つのがハナコなのに…!
- 115125/04/16(水) 17:08:13
皆のスマホが一斉に鳴り響き、ミカのスマホに先生からの着信が届く。
先生は、何故かナギサの危機を知っていた。
その事に疑問を持つ者はこの場に居ない私だけで、誰もが神妙に語る先生の言葉に耳を傾けていた。
対策を論じる三人を他所に、黙り込んだミカが深呼吸をして――地面を踏み鳴らした。
まるで地震でも起きたかのように揺れる周囲に、三人は黙らざるを得なかった。
「――ふーっ……パテル派を主導にしてティーパーティ主体でナギちゃんは探すよ。二人はこの親睦会の撤収作業を恙無く終わらせてほしい。わかった?」
「……分かりました」
「サクラコ様!? ナギサ様の危機だというのにそれは」
“いや、ミカの言う通りだ……親睦会場内にまだ居るのであれば君たちに話が入るだろうし、それに……”
「私の我儘だよ、先生。ナギちゃん、ずっとこの親睦会楽しみにしてたの。それをナギちゃん自身のせいで台無しなったら可哀想じゃんね☆ だから、お願い」
きっと、サクラコと先生はトリニティ内での衝突を危惧したのだろう。
それをミカが飲み込んで、なんとか自体は進展させた。
三十分もしない内に、パテル派の半数以上のメンバーが集結し森の中を探しに走った。
二次遭難を防ぐためにも二人組が徹底され、それぞれの情報を集約する仮の通信基地局が花畑に設営された。
パテルから話を通されたフィリウス、サンクトゥスの面々も集まり、大規模な捜索が開始されてから一時間ほどが経った頃だろうか。
【――こちらGペア! ナギサ様を発見致しました!!】
その時は来た。
- 116125/04/16(水) 17:08:24
「ッ!! 場所は!!」
【ここは……どこだろう。そちらから方向は分かりませんか?】
「Gペアの移動ルートは!?」
「ただいま算出しています」
「それでは近場の者たちはその場に――」
【――ちょっと! ねえ待って嘘でしょ!?】
僅かに弛緩した空気が流れた途端、絶叫が通信の先から轟いた。
誰もが言葉を忘れたように静まり返り、悲鳴の続きを待っていた。
【――な、ナギサ様を救出するために飛び込んだ相方も同じように湖に浮かんでる!! ど、どういうことなの!?】
「……待って、浮かんでるって何?」
だが、ミカの言葉も届かないのか、錯乱した叫びだけが帰ってくるだけだ。
拳を強く握りしめながら、先程命令したパテル派の方を睨む。
彼女はおずおずと、ナギサを発見したペアが通ったルートをメモ書きされた紙を差し出した。
直後、ミカは跳ね飛んでそのルートへと向かって行った。
木々を薙ぎ倒しながら。
『……』
……なるほど、そう言う事かと得心がいく。
ここでもたついたせいでナギサを助けることが出来なかったのかと。
もっと早く、動かなければならないのかと。
時刻は午後七時を回っており、当たりは既に日の光が消え去り夜の帳が下り始めていた。 - 117125/04/16(水) 17:08:34
ミカが切り開く道を悠々と追いかけ、ナギサの下へと向かう。
その間に頭の中にあった疑問は複数あった。
何処でナギサは自殺できるような場所を見つけたのだろうか。
そもそもどうしてこんな変則的な予知夢が発生しているのか。
過去の私は、何故止められなかったのか。
《恐らくあの地下へと続く扉……あそこに湖のことが書かれていたんだろうな……目的は幾らでも想像できる》
《予知夢に関して言えば、分からないことが多いが……あの遺書。遺書に触れようとして視界が飛んだことを考えると原因は明らかなんだが……理由が皆目見当もつかない》
《過去の私も、似たような光景を見れたはずだ。それなのに一体何故ミカは泣いている? 助けられていない? ――いや、そもそも》
未来が、分岐している?
体の芯が凍る考えが過った。
ナギサを助けられない場合、今見ているような景色が広がり、私はナギサを助けることが出来るようになる。
ナギサを助けられた場合、過去の私は無事なナギサを見て安堵してしまい、ナギサを助けることが出来なくなってしまう。
《有り得るのか……!? だが、これならば合点がいく。未来は変える事が出来ると知っているからこそ想定できる事態だ。未来の私から過去の私へと情報を流す真似は出来たものではないからな》
溜息を溢しながら、再びミカについて行く。
過去がどうなるのか、未来がどうなってしまうのか、今は考えなくていい。
ただ情報を持ち帰ることが、今の私に出来る最大の行いだった。 - 118125/04/16(水) 17:09:11
そうして、ついた。
地獄絵図に。
「……えっ?」
『これは一体……』
銃声と怒号が飛び交う中、幾人もの生徒が倒れていた。
「――結んだ服が溺れた人に引っ掛かったら銃弾で剥がれないように当てて!」
「……これ、結局弾の威力で動かしてるんじゃ」
「間違っても水に入るな! 腰まで浸かった奴ら全員土座衛門に成ってる!!」
「ゴッホゴホ……おえええっ……」
「クソッ救援はまだか!!」
誰もが引きたく無い引き金を引いていた。
上半身下着姿のまま現場の指揮をする彼女も、跳ねる水滴に怯えていた。
次々と掬い上げられる生徒たちは、意識の無い者は酷く弱り切ったまま、意識の有る者は嘔吐に苦しみながら湖の周りに転がされていた。
これほどまでに即効性のある毒の湖なのだろうか?
飲むどころか触れるだけでここまでの被害を生み出すとは、相当なものだ。
「――ナギちゃん」
私は周囲に目を奪われていたが、ミカはすぐに救助されたナギサを見つけていた。
声のした方に目を向けると、寝苦しそうな表情のまま目を開けないナギサをミカが見下ろしていた。
「……残念ですが、ミカ様」
「……嘘、うそだよね」
『……ミカ』
ミカの慟哭が始まるのは、そう遅くはなかった。
計り知れない喪失感に溺れる彼女から、思わず目を逸らし、湖に目を向けると - 119125/04/16(水) 17:09:25
――視界一面に、パンジー畑が広がっていた。
『…………はっ?』
「――ねえ、二人とも遅くな~い?」
やけに気の抜けた、ミカの声。
いや、まだミカの慟哭も頭の中を揺らしている。
すぐさま視線を元に戻したが。
そこには、誰も、何もなかった。
悪夢は、まだ始まったばかりだった。 - 120125/04/16(水) 17:14:01
今回の更新はここまでだ
だから、事前に色々と知っていた訳だね
後、ハナコのことを過大評価し過ぎじゃあないかい?
この湖のことを知るには確かに彼女の能力は有用かも知れないが、ナギサの問題もトリニティの問題も残念ながら彼女の門外漢となる明後日の方向からのスマッシュヒットなんだ
……じゃあ誰に相談すればいいのかって?
私にも分からない
投げっぱなしフォックスですまない…… - 121二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 17:46:43
他者の心の問題はその当人以外と相談したところで何の意味もない
ただこの状況だとナギサと話し合ってもそれがトリガーになるだけかも - 122二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 17:49:39
(見てる未来が)止まって、戻って、また進んで……
- 123二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 18:44:09
確定してる未来…ってコト!?
- 124二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 18:53:26
ベアトリーチェを捕獲してしまったのが分岐の始まりだったり?
- 125二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 19:45:32
遺書、あったのか…
- 126125/04/16(水) 22:20:01
繰り返される三人の会話。
同じタイミングで鳴るスマートフォンたち。
ただ、既に差異は現れていた。
「ここは、私たちシスターフッドにお任せください。ナギサさんにはアリウスと言う恩義の繋がりが存在します。それに、この会場内でアリウス生徒が行方不明になったから捜索として散っていると、容易にカバーストーリーも立てられます」
“それだと、シスターフッドの立場は……”
「安心してください。私たちの黒い噂は、これだけではありませんから」
「……っミカ様!」
「――ふーっ、分かった。私たちは先に会場の撤収を優先させる。先んじて捜索に入って貰うね」
ミカの鶴の一声で、その場の決定は下った。
何か言いたげなミネ団長も黙って会場へと戻り、ミカも同様に会場へと駆けて行った。
……だが、結果は変わらなかった。
「――ナギサ様、嘘ですよね?」
『……悪趣味な夢だ』
恨むように、ナギサを囲むそのグループを睨んでしまう。
嘗てアリウス生徒だった白洲アズサを通じ、補習授業部の面々にも情報が渡ってしまい捜索に参加。
結果、御覧の有様と言うわけだ。
当惑するコハルに、苦し気な表情のアズサ。頭を抱えたまま蹲るヒフミに、少しばかり表情の悪いハナコ。
三者三葉の悲しみがありありと伝わり、思わず俯いてしまう。
- 127125/04/16(水) 22:20:31
――足元には、場違いに綺麗なパンジーが咲き乱れていた。
『――ッ!!』
「――ねえ、二人とも遅くな~い?」
間抜けな声。ミカだ。
また、また戻ってきた。
目覚めるわけでもなく、未来が見れなくなるわけでもなく、再び同じ地点に視点が戻る。
同じ言葉を交わし、同じ事象が起こり、同じ展開は――迎えない。
「――先ほどのナギサ様の状態、決して見過ごせるはずがありません!! これは我々、救護騎士団の使命です! ミカ様!」
「ですから、横暴を押し通すのは――」
「いや、いいよ。サクラコ」
「会場の撤去は私たちで行う、救護騎士団には架空の地域の救援用背を出したことにする。後々面倒かも知れないけど会場を恙無く終えるために人員が必要なのも事実だからね……」
どこかに振るい挙げてしまいそうな拳をゆっくりと解き、冷静にそんな判断を下すミカ。
心配そうにミネを見つめるサクラコが、やけに印象に残った。
……だが、結果は変わらなかった。
「――周辺探索をお願いします! これが人口の毒で無いのであれば元となる物があるはずです!」
『やはり、ダメなのか……』
ミネの号令の下、救護騎士団員が調査をしたところ、滝壺の裏に洞窟が繋がっているのが確認され、その奥に鬱蒼と生い茂るトリカブトのバイオームが形成されていた。
そこから不自然に湧き出ている地下水が湖へと流れ出ているようだった。
たかが花が咲いているだけで悲鳴が水音を超えて外にまで漏れ出ている辺り、相当量のトリカブトがあるのだろう。
しかし、それが分かった所で何だと言うんだ。
横たわるナギサに視線を戻し - 128125/04/16(水) 22:20:47
――再び花畑へと、姿を変えた。
『…………勘弁してくれないか』
「――ねえ、二人とも遅くな~い?」
思わず、泣き言が漏れ出る。
一体、これ以上私に何を見せつけるというんだ。
何時ものやり取りだと聞き流していると、風圧と共に何かが目の前を横切った。
慌てて飛んだものの方向に目を向けると、ミネが頬を抑えながら此方――背後に居るミカを睨んでいた。
「ねえ、ナギちゃんのピンチに内輪揉めとかバカみたいなことしないでくれる? 良いから全員で森の捜索に入るよ」
“ミカ! 今のは――”
「黙ってて。ちょっと冷静になれそうにないからさ、黙ってて」
「今のは私が問題でしたね……ミネさん迅速な判断を申し訳ございません」
「……気にしないでください。まずは、救護者の発見が大切ですから」
殴られたというのに、ミネはミカを心配そうに見つめていた。
対するミカはそんな視線にも気づけていないようだったが。
――そして煉獄が幕を開けた。 - 129125/04/16(水) 22:21:06
「あんた達アリウスがナギサ様を殺したんでしょう!?」
「私たちがっ! 助けてくれたナギサ様を殺すはずがない!! 影で暴力を振るってるお前らがやったんだろ!!」
「くそっ! やめろこんな所で暴れるんじゃない!!」
「要救助者が……! でもこんな場所じゃ治療も……」
「皆さん落ち着いてください! こんな所で争う必要なんて――」
「そういうアンタたちはどうしてナギサ様を守れていないのよ!!」
「誰か撃ち合いを止めてください! さっきからこの子の体調がおかしくて……」
「出来たら……そうしてますよ……組織単位での暴走……同じ規模の組織で無いと、アレを止めるのは……」
『……どうして、どうしてこうなるんだ』
ナギサの死体を見つけたトリニティ生徒たちは、誰かしらの陰謀だと騒ぎ立て、気が付けば銃を向け合い互いに互いを憎み合っていた。
ツルギもミネもミカも、ナギサの遺体を搬送するためにこの場を離れ。
ハスミやサクラコが必死に場の混乱を収めようとしているが、戦線が拡大し続ける速度の方が上で。
決して消えることの無い、大きな禍根を将来に残すだろうと言う嫌な確信だけは有った。
『……っ!!』
もう、いやだ。
もう嫌なんだ。見ていたくもない。
必死に覆った視界に、響き渡る怒号と銃声だけを耳にしながら、凄惨な結末だけが待つ未来に、私は再び目を閉じた。
どれくらい経った頃か、もう音すら聞こえない程の時間は経っただろうか。
恐る恐る、瞼を開き目に光が差し込む。
――そこには、パンジー畑が広がっていた。 - 130125/04/16(水) 22:21:47
『ッ!!』
走った。もう十分すぎるほど地獄は体験したのだ。
ならば、せめてナギサがどのタイミングで湖に入ったのかだけ確認しなければならかった。
『はっ! はっ! はっ!』
普段なら軽い筈の体が重い。
酷く重苦しい泥の中を駆けずり回るような息苦しさを感じる。
幾重もの予知夢で見た湖は容易く見つかり、思い知った。
『はーっ! はーっ! はーっ!』
血の気が引くのを感じる。
頭がやけに重い。
呼吸が、整えられない。
それは何度も見た姿だった。
それは何度も見た光景だった。
それが動くことは、ただの一度も無かった。
『……そんな』
ナギサが、死んでいた。
既に、ナギサは死んでいたのだ。
グルグルと回る思考に頭が追いつかず、やがて私の意識は遠のいて行った。
――気が付くと、パンジー畑の前で目覚めているのだが。
悪夢はまだ、終わらなかった。 - 131125/04/16(水) 22:21:59
目が覚める。
見慣れた、しかしどうして久方ぶりに見るような気がする自室の天井だった。
力無く枕元にあるスマホに手を伸ばし、今日の時刻を確認する。
「……ははっ」
渇いた笑いが漏れ出た。
今日は親睦会当日、時刻は既に四時を回っていた。
体が動く気がしなかった。
頭が思考を止めていた。
既に全てが、手遅れだった。
「……」
だが、それでも。
私の意地が、必死にミネへの番号をコールした。
最悪の道を避けるために。
今目指せる最善の道を通るために。
私はただ、電話した。
「――その必要は無いよ。先生」 - 132125/04/16(水) 22:24:35
と言うわけで本日の更新はここまでだ
実は私は、この先の展開だけを書こうとして第二部が来ると宣言していたんだ
補足説明で一部の三分のニ程度の文量かかっているんだが?
どういうつもりだいミカ、馬鹿なんじゃないのかい?
ここから、物語は加速していくことになるだろう
伏線は適当にばら撒けたんだ、その点で言えば十分だと言えるだろう
きっと明日も更新しよう、だからしっかりおやすみよ
ねむねむフォックスですまない…… - 133二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 22:30:31
おやすみフォックス
セルフループフォックスかわいいね - 134二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 22:37:33
発狂しかけフォックスと睡眠フォックス
いろんなフォックスがいるなぁ… - 135二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 23:41:00
お疲れフォックス
- 136二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 06:08:41
お休みフォックス
- 137二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 14:15:10
フフフ…FOX!
- 138二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 20:15:44
やめないか!
- 139125/04/17(木) 23:42:51
行った事などないが、息絶え動けなくなりそうな程見ていた会場に集まった三人と無事、連絡はついた。
通話をしている最中に、アリウスから押収されたワイヤーガンを同輩に取って来てもらい、随分前に出発する予定だった車に乗り込み、法定速度を少しばかり超えた速度で会場へとたどり着いた。
整備されていない道を駆け抜け、ミネたちとの合流を図る途中に同じくミカを追っていた先生と合流することに成功した。
相変わらず酷い顔色をしていると、どこか他人事ながら思った。
“セイア……大丈夫なのかい? 酷く窶れているように見えるけど……”
「それは、此方のセリフだよ……先生。まるで今にも倒れそうな顔色をしている」
指摘された先生は気づいていなかったのか、険しい顔を逸らして前だけを向いた。
……思えば、先生もナギサの危機には気づいていたみたいだし、本来野山を駆け回る事とは正反対の筈の私がこうして現場へと出ていること自体、彼にとっては嫌な予感を加速させる一助なのだろうな。
二人揃って、盛大に顔を洗って来た方が良い顔色なのだしな。
そんな阿呆な思考が頭を過って、言っておかねばならない事実を思い出した。
それは、自身の過ちを認めることで。
悲劇の運命を確定させる呟きなのだが。
「……先生、一つだけ、忠告させてくれ」
“……どうしたの”
「恐らく、ナギサは…………ぅっ……湖に、浮いているんだ」
“……”
「きっと、君にとって認めがたい方法で私はナギサを救出する……だが、これだけは忘れないでくれ」
「湖には、絶対に入らないでくれ……」
“……分かったよ”
そんな会話が終わった途端、木々の圧し折れる轟音が響き渡り視界の先にそれを成すミカ、心配そうに見つめる二人が居た。
――彼女の視線は、湖に浮かぶ白い羽に一瞬にして吸われてしまったのだけれど。
- 140125/04/17(木) 23:43:03
「――ナギちゃん」
“待つんだミカ!”
慌てて駆け出し、手を伸ばす先生だが一も二も早くミカは湖へと飛び込んだ。
弾ける水面から飛び散る水飛沫、先生は顔に当たらないように腕で庇ったおかげが、無事のようだった。
それより、問題は彼女たち――いや、ミカもか。
「セイア様! ここまでどうやって……いえ、それよりもお体の方は」
「心配無用だよ……一先ず、君たちも湖に入ったり、飲んだりはしないでくれよ? 色々と、不味い水なんだ、これは」
「し、しかしミカさんが既に……」
「無理だろうね……だからこれを持ってきた」
ミカが水面を掻き分けて進んでいたが、一定の深さのところまで行ったのか、全身が湖へと隠れてしまい、伸ばされた手だけが水面から上へと伸びていた。
多分、溺れている。
だが、私の心は酷く穏やかだった。
どうせ師にやしないと、高を括っているから?
違う、彼女が溺れ死んだ夢は見なかったのだ。
数えるほども馬鹿らしい、夢の中で。
慣れた手つきでギミックの確認をして、ナギサに向かって冷静に引き金を引く。
銃口から飛び出した黒色のロープはナギサに向かって一直線に飛び、彼女の白い服を紅く染めていった。
「っセイア様!!」
我慢ならないと此方に怒声を浴びせるミネを、思わず白んだ目で見てしまう。 - 141125/04/17(木) 23:43:15
「ミネ、確かに既に落ち着いている人間を痛めつけるのは君のポリシーから見ても認め難い物だろう」
「だがな、これが一番犠牲が少ないんだ」
「分かってくれとは言わないよ。でも、黙っててくれないか? 嫌悪感でどうにかなってしまいそうだ」
よっぽど。
よっぽど酷い目をしていたのか、ミネは何も言い返すことなく引き下がった。
溜息を一つ溢しながら、グリップを捻る。
するとギミックが作動し、射出されたワイヤーが巻き取り始め水面に浮かぶナギサとそれに偶然引っ掛かったミカが徐々に此方へと近づいて来る。
まず、ミネが気づいた。
戦慄した表情を見せ、陸についたナギサの体温、心音、呼吸音を確認し――冷や汗を一つ流してすぐさま心臓マッサージへと移行した。
次に、サクラコが気づいた。
まるで物のようにミネに運ばれるナギサのその姿に生気がまるで感じられず、訪れた最悪を神に祈り始めていた。
先生は……多分、とっくに覚悟していた。
歯噛みしたまま天を仰ぎ、握られた拳からはどうしようもない諦念を感じざるを得なかった。
そうして――ミカが目を覚ました。
正直、驚いた。ここまでの道を切り開くためにかなりダメージを負ったはずだし、湖の水もそこそこ飲んでしまった筈だ。
まさかこの場で目覚めてしまうとは……。 - 142125/04/17(木) 23:43:26
友の涙声を聞きながら、私は空を見上げることしかできなかった。
何もできなかった無能が、恥知らずにも彼女に縋りつくことを、私自身が許せそうになかったから。
何よりも、涙一つも零れない自分が嫌だった。
夕焼けが、夜に飲み込まれて行く。
たった一つの光が途方もない闇によって奪われて行く。
きっとトリニティは、新たな光を求めるのだろう。
私が、成れるのだろうか。ナギサの代わりなど。
(……そうだとしても、やるしかないだろう)
だが、何時まで経っても、私の拳が握られることは無かった。
所詮、私も炎に縋った一人でしかないことに、まだ気が付かなかった。
ナギサの死は、隠蔽されることと成った。
セーフハウスの一つで療養しているというカバーストーリーを流し、暫く姿を隠すことを決めた。
ナギサの遺体は、シスターフッドの秘密の霊安室で保管されることと成った。
その際、数人のシスターフッドの生徒にバレてしまったが、サクラコ曰く問題の無い人物だそうだ。
親睦会も終わった。
ナギサの輸送も終わった。
だが、まだやるべきことが一つ残っていた。 - 143125/04/17(木) 23:43:37
「……」
深夜。
ナギサの遺体を見つけたメンバーがフィリウス派の執務室へと集まっていた。
輸送を手伝ってくれたシスターフッドの生徒たちは扉の前で人払いの為に立って貰って。
ナギサの銃、ロイヤルブレンドのマガジンに入っていた古めかしい鍵。
心当たりは、ここしかなかった。
「では、開けるよ」
ミカとミネに本棚は動かしてもらい夢で見た押戸式の扉の前に立つ。
扉の左側には少し膨らんだ鍵穴があり、試しに鍵の持ち手を差しこんでみると、重々しい音が鳴り響き悲鳴を上げながら扉は開いて行った。
案の定、地下へと続く階段があり、一歩先すらも見通せない暗闇に支配されているのもまた同じだった。
各々が用意した光源で先を照らす。
ミカと先生は端末のライトで、ミネはランタン、サクラコはキャンドルだ。
ミネを先頭に――続いて私が――階段を下りていく。
複数の足音が響き渡りながら降りていくそれは、秘密の会合のようで。
誰にもバレてはいけないという点は共通しているが、会話の内容は愉快な物では無くただそれぞれの緊張感を高めているに過ぎないのだが。
思考を明後日の方向に逃がしていると、ついてしまった。
最下層である、書物の部屋に。
そうして見つけた、否。この部屋に足を踏み入れた途端に目が入る様に鎮座された巨大な金庫。
ダイアルも無く、鍵穴のみのこれの中にナギサが最後に見せたかったものが - 144125/04/17(木) 23:43:49
……たぶんきっと、遺書が入っていると思う。
- 145125/04/17(木) 23:46:43
本日はここまで
なあミカ、プロットだと今回の更新分一行何だがこの速度の遅さは何だい? 亀かい? 歩みのノロさだけは負けないのかい?
盛りすぎフォックスですまない……描写の整合性を取った結果馬鹿みたいになっていてすまない……
これ多分次スレもありそうだな……
嫌な確信を覚えながら、おやすみなさい
爆盛フォックスですまない…… - 146二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 23:49:18
おやすみフォックス
そしてこのセイアは終わったあと自室かどっかで盛大に吐いてそうだな() - 147二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 00:09:29
詰みセーブって奴はこれだから…オラ!電車乗ってリセするぞ!
ヒント:エデン条約をぶっ壊しつつアリウスもぶっ壊しましょう スクラップ&スクラップ! - 148二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 06:15:38
おやすみなさい
- 149二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 15:27:56
保守
- 150二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 21:04:29
分岐は本当にベアトリーチェ捕縛なのか?もっと前に何かあったのでは?(ジークアクス並感)
- 151二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 00:31:47
- 152二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 06:26:50
黒服の言葉を信じるなら誰もがナギサなら大丈夫と思って誰もナギサの真意を確認しなかったことに原因があるから、必要なのはナギサに対するカウンセリングかな
- 153二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 10:45:33
やあ、泥酔フォクスだよ
昨日一杯お酒を飲んだら寝落ちしてお仕事にも遅刻しそうになったダメダメフォックスさ……
明日も用事があるし沢山更新出来そうもなくてすまない……
今日の午後一回は更新してみせよう
こう宣言しておかないとすぐ逃げるからな……
逃げ癖フォックスですまない…… - 154二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 10:49:07
やはりセイアは軟禁するべき
- 155二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 16:20:58
ん、ちびシロコはすぐ過激な手段に出ようとする
- 156125/04/19(土) 21:11:32
明らかに部屋から浮いた金庫に目を奪われ足を止める中、私だけが不用心に金庫に手を伸ばした。
少しばかり影になって、差し込みにくい鍵穴だった。
だが、中で動かすとすぐに鍵が合致し、あっさりと扉は開かれた。
「……これは」
「箱、でしょうか?」
「……」
焼き印の施された桐の箱が六つ、金庫の中に収められていた。
二つに重ねられたものが三つ。試しに真ん中の箱を手に取ってみると、そこにはシャーレの焼き印がされていた。
「……先生」
“……分かった”
一番に確認するには最もお誂え向きだろう。
皆の視線が先生の手元に集中する中、淀みない動作で箱の蓋は開けられた。
……私としては、案の定と言うものが鎮座していた。
“これは、手紙?”
「――っ」
「ミカ」
ただ【拝啓、先生へ】とだけ書かれた紙を見て、ミカも察してしまったらしい。
握っていたスマホすらも取り落とし、先生の持つ箱に思わず手が伸びていたミカを遮る様に、パテル派の焼き印がされた桐の箱をミカに手渡す。
どこかハッとしたような顔になり、私と視線が合って漸く、手渡された物に気が付いた。
「……ありがと」
- 157125/04/19(土) 21:11:49
震える手で何とか受け取った後、俯いて、絞り出すように呟いてからミカは闇に塗れた階段を駆け上って行った。
……落としてしまったスマホすらも、忘れて。
“ミカ……”
「私が、後で届けに行こう。……先生には、酷なことを押し付けることになりそうだからね」
「セイア様……この箱の中身が何なのか、ご存じなのですか?」
嫌な予感を感じていると、話について来れていないミネが不安そうに尋ねてきた。
……まあそうか。彼女はナギサの救護に手を尽くしていたから、揃えられた靴も見ていないのだろう。
ミカが衝動的に走り出したことで、良い物では無いことは察しているようだが。
サクラコは分かっているようで、沈痛な面持ちで此方の言葉を待っていた。
……私が言わなくては駄目なのだろうか?
いや、分かっている。ナギサの死を認めたくない幼い我儘を通せる時では無いのは。
成ると決めたのだろう。トリニティを照らす光に。
ならば、この程度のことは――。
「……これは、ナギサの遺書だと思う……各組織分、あるだろう?」
「なっ――!?」
事故では無かったのかと、自ら命を絶ったのかと驚愕な表情を浮かべるミネを他所に、私は金庫の中の箱の焼き印を確認してみる。
残る四つはサンクトゥス、救護騎士団、シスターフッド――そして、フィリウス。
「……」
フィリウスの箱は、ティーパーティであるパテル・サンクトゥスから二組織を挟んだ救護騎士団の上に置かれていた。
これを意図する意味は……。
私はフィリウスの焼き印が押された箱を、先生に渡した。 - 158125/04/19(土) 21:12:05
“これはナギサの派閥の物じゃ……”
「そうであるなら、きっと彼女ならシャーレの下……真ん中の下段にこれを置いているだろう。でも違う。これは、ティーパーティから離れた者へと宛てた手紙なんだよ」
“それは……”
考えすぎならば、それでもいい。
万一見られても、先生ならばトリニティに更なる混乱を齎すことは無いだろうと断言できる。
だが、考えすぎでないのであれば……。
「先生……貴方の判断で、これをヒフミに見せるか決めてくれないか?」
“……分かった、でも君たちの歩調に合わせられるかは分からないよ?”
「当然だ……無論、他の者に吹聴しないよう釘を刺してもらうよ。流石に、ティーパーティが瓦解する」
“考えたくも無いね……”
しっかりと受け渡し、残った箱もサクラコとミネに押し付ける。
……ミネのショックは未だ残っているのか、呆然としたまま受け取ったのが気がかりだが。
「――そろそろ時間だろう。出ようか」
フィリウス派の執務室への不法侵入。
仮にもティーパーティである私や、シャーレの先生であればまだ幾らでも誤魔化しが効くがこの二人は不味い。
取る物を取り、後ろ髪はやや引かれるものの、出ない訳にはいかなかった。
ミネと先生で本棚を元の位置へ戻し、可能な限り痕跡を消して部屋を出る。
部屋の前で待っていたシスターたちは、ここから走り去るミカを見た筈なのに、何も聞いては来なかった。
そうして、各々が日常へ戻る為に、この場は解散となった。
何処までも静かな会合は、今後のトリニティを予言しているように思えた。 - 159125/04/19(土) 21:12:15
「……」
自室に戻り、持って帰ってきた桐の箱を衣装箪笥の隅に隠すように置く。
とはいえ、手を伸ばせば容易に届くし、隠すと言っても扉を開ければ隙間から見える程度の隠蔽具合だ。
到底、隠しているとは言えないだろう。
「……全く、自分が情けないよ」
怖かった。
開けるのが、開くのが、認めるのが。
もうどうしようもない事は知っている筈なのに、自分自身が我儘に認めることだけを認めやしなかった。
倒れるように、蹲る様に、何処までも逃げるように。
ベットに横になって、箪笥越しに箱を見る。
ここからでは、箱があるか分からない。
中にあるかもしれないし、無いかもしれない。
確かに入れた記憶はあるが――そんな言葉遊びに逃げた。
(楽園だと信じるのであれば、楽園……か……)
ならば今は、何処までも出来の悪い悪夢の続きなのだろう。
きっと、そうであってほしい。
そんな夢想を続けて、私の意識は夢へと落ちた。 - 160125/04/19(土) 21:12:36
――鳥籠の中の鳥は眠る。
主人の愚かな行いを見ないように、肯定するように。
決して辿り着けない楽園を夢見て、足元から迫る危機から目を背けて。
それはまるで≪焼き直し≫のようで。
再び、罪を重ねる。 - 161125/04/19(土) 21:16:22
と言うわけで本日はここまでだ
漸く……漸く本題の曇らせ部分に入れそうだぞミカ! 君の番だぞ多分!!
さてでは、掲示板らしく募集しようじゃないか
ここから下五名の生徒に焦点を当ててナギサ死後のトリニティを見ていく
勿論トリニティ生限定ではあるし、死亡を知らされていない子でも構わない
最後の日常パートだからな……空気感の差異が大切だ
では書き込んでくれると嬉しい - 162二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:24:22
浦和ハナコ
- 163二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:24:48
補習授業部…って言おうとしたけど五名だからここはあえてのアズサかな。
ハナコは知らなくても察しそう - 164二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:25:58
ミネ団長とかがいいかな
- 165二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:26:10
じゃああえてティーパーティーから遠いアイリ
- 166二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:26:35
スズミ
- 167二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:28:18
162が言ってからすごい人来たな。1人で複数レスしてそう
- 168二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:29:34
ミカ…とんでもなく暴走しそうだな……
- 169125/04/19(土) 21:31:29
ではここまでだね
ミカ……君が外れるとは正直思わなかったぞ……!
書き溜めていないのが功をそうしたな……では上から順に書いて行こうか……
まあ今日はもう無理なんだが……
しかしスズミ・アイリとは正直良いセンスをしている
空気感の差異も表れやすいしね
明日用事が無かったら全部書き切れた、なんて大言壮語を吐きながらおやすみなさい
不貞寝フォックスですまない…… - 170二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:39:32
楽しみにしてる
- 171二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:39:41
ゆっくり休め、ここかるが地獄だよ
- 172二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:48:41
なに、ナギサは一足先に楽園に行っただけさ
- 173二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 00:29:28
スズミが気になるな
- 174二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 01:09:39
まあミカに関してはその関係性故どうせ書いていただくことになりそう
- 175二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 07:20:49
ダイスは誰を選ぶのか……
個人的には医療従事者で「救護が必要なところに救護を!」がモットーなのにこうなるまで気付けなかった挙げ句、暫定救えなかったミネが気になるね。
ダイス結果を楽しみに待とう - 176125/04/20(日) 08:04:01
- 177二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 08:06:03
全員書くのか……
- 178二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 11:03:26
- 179二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 15:13:42
- 180二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 19:50:51
やっと全部読み終わった
ああ...ナギサ様...貴公の人間性も限界と見えた... - 181二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 22:20:38
一日に一回でも更新できるだけでも結構すごいと思うんですよ
- 182125/04/20(日) 22:44:10
ありがとう、褒められるのは存外心地良いものだね……おかげで筆を折りそうになった心を何とか引き留めることが出来た
いや全く持って馬鹿な話なのだがね。どこかのスレで見た次のガチャは水着ナギサが来る……何て。
そんな戯言を見事に真に受けてしまった訳だ。間抜けな事にね。
ブルアカライブを初めて見るものでね……ワクワクドキドキとしながら途中から見始めたらヒカリ・ノゾミ実装とね……。
別に彼女たちが嫌いだとかそんなことは全く無いんだ。むしろパヒャヒャと笑ってない方はドタイプであると言える。
けれど、けれどね……私は期待してしまったんだ……ナギサ様が責務から解放され穏やかに、でも年相応な笑みを浮かべる水着姿を……。
普通に考えればこのタイミングでナギサ別衣装よりもやるべきイベントがあると言われればその通りだと言わざるを得ないし、ハイランダー実装もタイミングとしてはおかしくはない。
むしろ手前の欲望通りにナギサ様が実装される訳ないだろうこの腐れ脳みそ野郎と言われればぐうの音も出ないまま膝から崩れ落ちるだけさ。
まあ端的に言うとちゃんと続きは書くがごめん今日はもう無理、寝る。と言うわけだ。
私に期待を抱かせた名も知らぬ誰かに呪詛でもかけながら寝ようと思ったが呪詛返しされそうなので枕を濡らしながら眠りにつこうか……。
泣き虫フォックスですまない…… - 183二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 22:49:21
まあ、先ちょ終わりくらいに来るだろうから…
- 184二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 00:01:56
同じ気持ちの狐がいてくれて嬉しいよ
- 185二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 08:24:28
このレスは削除されています
- 186二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 15:48:35
待機
- 187二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 22:35:44
保守
我々は望む、皆に悔恨をもたらすナギサ様を - 188125/04/21(月) 22:37:49
親睦会から翌日。
ティーパーティから正式に、ナギサは休息のため表舞台から一旦姿を消したことを知らせた。
補習授業部の失態を巻き返すように、エデン条約調印式から今まで走り続けてきた彼女に対し不満が噴出することは無かった。
代わりに、耳を疑うような話が飛び出てきたが。
「――だからナギサ様は平時の仕事を早めに処理していたのですね」
「……そうなのかい? いや、すまない。後任だというのに碌に情報共有が行われていなくてね」
「お気になさらないでください。元々はセイア様がサンクトゥス分派の方々をナギサ様のお力添えに成る様にお手伝いして頂けたからこそ、生まれた休息なのですから」
「そうかい……」
零れ落ちそうになる溜息を必死に拾い上げ、疑われないように取り繕う。
まさかここまで考えて……?
十分、あり得そうな話なのが辛かった。
凡そ一週間ほどはティーパーティが暇になる程度に雑務は片付けられていて、その間にナギサの代わりと成る為のマニュアルらしきものが数冊執務室で見つけてしまった。
笑顔で出ていくナギサの同輩を見送りながら、一人そっと、溜息を吐いた。
(全く……病み上がりにティーパーティのホストだって重労働だというのにETOやアリウス関連についても投げつけるつもりかい……? 聡明な君らしくもない判断ミスだよ。二人で手を取り合い支え合って……何て、夢物語を描きながらこれだって書いたのだろう? 君も知っての通り、私とミカの相性は余り良くは無いんだ。誰かが間を取り纏めなければただ只管衝突を繰り返すだけなんだ……君の、せいだぞ)
覇気無く恨み節をぶつけながら、虚ろな瞳でナギサが書いたであろうマニュアルをパラパラと捲っていく。
別に憎んでいるわけではない。ただ、彼女は何処か責任感が強い。
決して言葉に出すことは無いけれど、こうして思えば何処からともなく申し訳なさそうな顔をしながらナギサが現れてくれそうで。
そんな夢想をしながら、宛ても無くマニュアルを捲り続けていた。
「――やっぱり、困っているみたいですね?」
- 189125/04/21(月) 22:38:05
何処からともなく声が聞こえ、マニュアルを捲っていた手が止まる。
一体全体どこから入ってきたのやら。
声のした方に視線を向けるとハナコが窓辺を背に立っていた。
「……何処から入ってきたのかは、聞かないでおくよ。それよりも、やっぱりとはどういうことなのかい?」
「ナギサさんが病み上がりのセイアちゃんや、まだパテルトップに戻っていないミカさんにホストの座を渡して迄休むとは到底思えませんからね♡ 昨日一目お会いした時もどこか顔色が優れていませんでしたし……恐らく先生かミネさんが無理矢理休養を取らせたのではないですか?」
「ふむ……なるほど。君の目から見てもやはりナギサは働き過ぎだった訳か」
「ええ……到底真似したくはありませんが、必要な事なんでしょうね……それで、病み上がりの人間を少し補佐する為に来たんです。案の定セイアちゃんはどうしたら良いのか迷っていたみたいですし♡ ……それに、ナギサさんには少しばかり悪い事をしてしまいましたから」
特に意図は無かったのだが、マニュアルを捲っているのがハナコの目にはそう見えたらしい。
パタリとマニュアルを閉じ、まどろっこしい友人の為に紅茶の用意をする。
ティーパーティのホストとして、お茶の準備はするものだ。
だが、他の同輩を使う訳でもなく、自らの手で注ぐのはこれから密談を行いたいというサインだ。
私の体調を気遣い、そう言った慣例を無視する輩はそれなりに多いが、致し方ない事だろう。
それは優しさの表れでもあり、自身の愚かさを露呈させる、選民的なマナー。
こういった慣例の説明を一々しなくても良い所にも、私がハナコと気の置けない仲に成った一端を含んでいる。
……まあ、彼女も中々に厄介な性格をしているからね。私と同じように。
「そう言えば、ナギサさんは一体何処のセーフハウスで休養を? ヒフミちゃんがぜひ遊びに行きたいと言っていたんです」
「何バカな事を言っているんだ。ナギサは昨夜亡くなっただろう?」 - 190125/04/21(月) 22:38:15
「……えっ?」
――その失言に気づいたのは、ハナコが狐に摘ままれたような顔をしているのを見てからだった。
やらかした。失敗した。
今朝身嗜みを整えている最中に漏れ出た呪詛が今になってぶり返してきた。
相手を思わず、幸福な未来を吐き出す自分自身だと、一瞬でも錯覚してしまった。
「セイアちゃん……その、話は……」
到底、誤魔化せそうも無い。
きっと彼女の脳内では様々な陰謀が錯綜し、陰湿なトリニティの体質を更に嫌悪しているのだろう。
……それにそれは、間違いではない。
夢で見てきた中に、心に欲望を抱えている者たちは確かに居たのだから。
「――ハナコ、早速で悪いがナギサのしていた仕事の概要を教えて貰えないだろうか?」
「えっ……」
だから、笑った。
これ以上彼女をトリニティの政争に巻き込まない為にも、今、明確な線引きをした。
賢い彼女のことだ。分かっている筈だ、これが分水嶺だということは。
この先を知ること、その意味が。
「……わかり、ました」
「うん、ありがとう」
――やっぱり、彼女は賢しかった。 - 191125/04/21(月) 22:38:25
トリニティに突如現れた火中の栗、どころか導火線ギリギリのダイナマイト。
そんな物に近づけば、どうなるか。分からない訳では無かった。
失いたく無い者が出来た。
大切にしたい繋がりが生まれた。
傷つきたくない関係が生じた。
だから、彼女は私の提案を頷くしか無かった。
仮に昔のハナコで有ったのならば、自暴自棄に陥りかけていた彼女だったのならば。
多分ここで、喰らい付いてきた。
別に友情を疑う訳では無い。
ただ私との関係改善を諦める程度には、守りたいものがあった。
ただ、それだけの話なのだ。
(――だが、寂しいものだな)
自分から突き放して置いて何をと思う。
己が失態を棚に上げて何をと思う。
ハナコとの関係よりもナギサの死に引きずられている癖に何をと、思う。
ハナコの簡潔な説明によって、数冊に及ぶマニュアルはほんの数枚の紙切れにまで圧縮された。
けれども長居することも無く、彼女はさっさと部屋を後にしたのだった。
用意した紅茶はまだ暖かく、底には溶け切らない角砂糖が融解しながら漂っていた。
消えない甘さを、傍らのティースプーンで掻き混ぜ、掻き混ぜ、掻き混ぜた。
見えていた角砂糖は消え去り、僅かに濁った琥珀色だけが私の瞳を温めた。 - 192125/04/21(月) 22:38:40
「――うん、不味いな」
一口飲んで、そう思った。
ナギサの味に、慣れ過ぎてしまったのだろう。
また、少ししょっぱく感じた。 - 193125/04/21(月) 22:43:05
さて本日の……と言うか、このスレでの更新はここまでにしようか
また、次の話が出来たらスレを新たに建てよう
今度は儚さの破壊者、素振りで窓ガラスをぶち破る彼女が目印だ
先生も近くに居るのは危険だから離れたまえよ?
……実際私は遅筆だと思うのだがね。
理想は二時間で五千文字さ……だが現実は半分以下で留まってしまう
何とも歯がゆい物だ
まあなんやかんやで六万文字まで書けているのはこの掲示板のシステムのおかげだ
締め切りが無いと書けないのでね……同じようなこと言ってるな私……
聖闘士セイアですまない…… - 194二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 22:49:42
分かったよ、セイア
ゆっくり待ってるね - 195二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 00:05:56
ふふふ…FOX!!!
- 196二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 02:02:36
やめないか!
- 197二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 08:24:22
- 198二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 16:55:33
お疲れ様
また次も楽しみに待ってる - 199二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 23:35:43
このレスは削除されています
- 200二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 08:01:33
待機