- 1二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 01:31:14
ふらふらとする体を気力だけで動かして才羽ミドリは荒廃した街を歩き続ける
亡き友の銃を抱え、先の戦いで限界を迎えつつある双子の姉を背負い、あるかも分からない希望を信じて。
『モモイ、ミドリ、そろそろ目的地ですよ』
通話越しに彼女は淡々と、でも少し明るく話しかけてくる。
「ヒマリ先輩…残念ですけど、何もなさそうです。」
こんなに荒れた街だ
“あれ”に対抗する道具どころか、普段使いの武器すらまともにあるとは思えない
『いえ、元よりこの街自体には目的はないのです。…元が栄えていた場所ではあったので多少は期待してしまっていましたが』
ヒマリは残念そうにそう言うと、ミドリにある座標を告げる
『ゲマトリア。神秘を追求する探求者達がかつてエデン条約調印式の混乱に乗じて作り上げた物がそこにはあるはずです。』
「分かりました先輩。…洞窟?」
ミドリは送られてきた座標を元に瓦礫に埋もれた洞窟に入る
そこにはあった。エデン条約締結し、ハッピーエンドを迎えようとした矢先に暴れたゲマトリアの教義 『ヒエロニムス』が。
「ありましたよ!」
『ええ、本当に良かったです。非無機物でありながら、多大な戦力を持つそれなら…もしかしたら通用するかもしれません』
「…!どう起動するんですか」
言葉にこそ出さないがミドリの声には喜びが含まれていた。
『少々お待ち下さい。少し模索します。ですが、確実な方法が1つ。祈ることです。』 - 2二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 01:31:37
「そ、そんなんで大丈夫なんですか?」
想定外の返事に少し素っ頓狂な声が出てしまう
『…私は真面目ですよ?こほん、トリニティ総合学園の生徒たちの祈り、及び幸せな結末を望んだ2つの学園の祈りを歪曲したものがこれです。あなた方2人と私では限界はあるでしょうが、“あれ”のくるギリギリまで祈りましょう』
そう言うとヒマリは黙り込んで作業を始める
その様子を見たミドリは抱えていた姉をおろし、応急処置をする。
そしてヒエロニムスに向かってこの悲しみが無くなるように祈る
祈り初めて10分ほどたっただろうか。お姉ちゃんが意識を取り戻した
「うーん、ミドリ?ありがと…」
「お姉ちゃん!大丈夫!?」
「おかげでね。…ところで、これは?」
目覚めたお姉ちゃんはわたしに礼を言うとすぐにそれを聞いてくる。もうちょっと自分の事も心配してほしいんだけどなぁ。
内心そう思いながらも、ミドリはヒマリに教えてもらった内容を説明する
「…じゃあ私も祈るね」
そう言うとモモイも手を合わせ祈る
「この事件が解決して、またみんなで過ごせますように」 - 3二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 01:39:04
SS書くにしてはすごい時間に立ててる…期待で保守しとこう
- 4二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 01:48:59
神スレの予感
- 5二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 02:06:30
祈り続けて30分はたっただろうか。
目の前のそれは軋む音を立てる
『起動したようですね。後は備えるだk』
不快なノイズがはしり、白色のドローンの通話がきれ、地面に墜落する。
それと共に“それ”は現れた
生物とはとても言いがたく、もはや1つの巨大な構造物と化したそれ。その中心には黒いドレスを基調とした、赤色のヘイローを持つ少女がいた
わたしたちの大切な仲間であったアリス。
その本来の性質である『名も無き神々の王女』
「アリス!戻ってきて!」
お姉ちゃんのその呼びかけも虚しくアリス、いやAL-1Sはわたしたちに攻撃してくる。
構造物が形を変形して目の前で呼びかけるモモイを襲う
元々私たちの校舎であったミレニアム。それを分解・再構築した彼女は圧倒的な物量を元にした飽和攻撃をしてくる
それをとっさにステップで避けてお姉ちゃんを抱えてまた避ける。
「お姉ちゃん!戦うしかないよ!何度も説得したけど駄目だったよね!?」
「う、でも!アリスは…」
「そうやって戦ってきて、時間を稼いでくれたユウカたちや、ユズちゃんも犠牲になったんだよ!苦しいけど…戦うしか…」 - 6二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 02:17:14
お姉ちゃんは良い意味でも悪い意味でもお人よしだ。 自我がないとはいえ、ここまでむちゃくちゃにしてしまったことを許せるかも私には分からない。ただそれでも、わたしだって、できる事ならアリスちゃんを取り戻したい。でも、それはもう可能性と呼ぶには無理があるし、幻想と言った方が正しいだろう…
かつての仲間に銃を向け、己の想いを殺してミドリは銃撃を放つ。
が、AL-1Sはそれを無効化し、それだけでなく、弾丸を吸収する
「…やっぱ銃は効かないか」
ミドリはその動きに既視感があった
要塞都市エリドゥ。リオに殺されようとしたアリスを助けるために訪れた場所。そこで見たアビ・エシェフと同じ動きを王女はする。
「となると、今できるのはあれが完全に起動するまで耐えるだけかな」
相変わらず続いている攻撃を避け、避けれない物は、銃撃で相殺、もしくは破壊する。
正直ミドリの考えは賭けではあった。アリスの復活を望むのと同じように奇跡に依存している。ただ、ミドリは賭けに勝った
祈りが通じたのだ
ミドリの前で大きな爆発が起き、王女の攻撃を相殺する
それと共に、地響きをならし、ヒエロニムスが立ち上がる。 - 7二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 02:40:09
回歴するってタイトルでスタドリしか思い浮かばなかった
風信子ってヒヤシンスの別名なのね、期待 - 8二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 02:40:25
ヒエロニムスの攻撃は今までの私たちの攻撃とは違って明確にAL-1Sに通用していた
爆発…こそしているが、攻撃として見るならまるで魔術みたいな、そんな攻撃。今までの兵器とは違い、吸収はできないみたい
ただ、AL-1Sは甘くはなかった。
構築している構造物を作り替え、二丁の銃のような形となり、ヒエロニムスに銃弾を撃ち込む
瞬間に60発以上の玉がヒエロニムスを襲った
「…え?!嘘でしょ…あれネル先輩の」
ミドリの気づいたようにこの攻撃はネルの銃を再現し、技すらも再現してしまっていた
ヒエロニムスも流石に堪えたようで、うろたえる。その隙を見逃す訳も無く王女はまた新しく攻撃をしてくる。
構造物が砲台のように形をかえ、ビームを放つ
アビ・エシェフを思わせるその攻撃がヒエロニムスを襲う
「ミドリ…あれはまずいよ!」
「分かってる。」
あれに当たればひとたまりもない
ミドリはユズの銃を構え、急いでグレネード弾を撃ち込む
相殺こそできなかったがだいぶ軽減できたのか、ヒエロニムスは体勢を立て直し、最大級の火力を叩き込む
王女も再構成が間に合わず、防御を貫通し、大ダメージをくらったようだ。遠目に見てもアリスのボディは欠損している事が分かる
このまま押していければ! - 9二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 02:47:59
が、そんな淡い希望をあざ笑うが如く、無慈悲にも平坦な機械音声が響く
『プロトコル:アトラハシースの箱舟の主砲』
そうつげると、王女を纏う構造物が大きくうねり、唸り1つの巨大なレールガンを作り出す。
それは、かつてアリスが光の剣・スーパーノヴァと名付けて使っていた勇者の証明と瓜二つな巨大な主砲であった。
かつて勇者としてこの地を救ってきた剣は魔王の杖となり、希望を貫く
主砲から放たれた光はヒエロニムスを貫き、ミドリに向かってとんでくる - 10二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 03:00:08
ああ、…もしかして死ぬのかな
ヒマリ先輩。生き残ったみんなのこと…よろしくお願いします
ごめんねユズちゃん。私もそっちに行くよ
ごめんねアリスちゃん。助けてあげれなくて
ごめんねお姉ちゃん。1人だけ残しちゃって。
もはや諦めの中ミドリはそっと目をつむる
その直後、右肩に衝撃を感じる
だが、死ぬような痛みではない。それどころか優しさすらも感じる衝撃だった
目を開け、ゆっくりと痛みを感じた方向を見る
…才羽モモイが倒れていた - 11二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 03:21:50
「…っ!お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」
返事がない
近づきながらまた叫ぶ
「お姉ちゃん!ねえ!お姉ちゃんってば!っ…!うぅお姉ちゃん!!」
返事がない。ヘイローが点滅する。
「お姉ちゃん!ねえ、お願い!おねえちゃん!!!」
返事がない。ヘイローに亀裂が入る
揺さぶってまた叫ぶ
「お姉ちゃん!起きてよ!ねえ!お姉ちゃん!お姉ちゃんってば!お願い!頼むから!起きてよ!!お姉ちゃん!おねえちゃん!!!」
返事がない。自身のヘイローにも少し傷が入る
「おねえちゃん…おねえちゃん!うぅぅ。あぁねえ!おきてよ!おねえちゃん!!!」
姉としての気力だろうか。うっすらと目を開く。
「みど…り。なかないで…」
「おねえちゃん」
「ごめ…ね…。でも、だ…じょう…ぶ。ミドリは、わた…のじまんの…いもうと…だから。」
息も絶え絶えななか最後の気力を振り絞る
「じぶんを…せめないで…くるしくても…さい…ごには…はっぴ…えんどがまってるよ。」
ヘイローが砕けた - 12二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 03:34:13
「うぅお姉ちゃん…なんで。」
亡き姉を抱きしめて泣き続ける。自身のヘイローに亀裂が入る。それでも泣き続ける。王女の攻撃がとんできても避ける事が出来ず当たる
そうなるはずだった
刹那、摩訶不思議な事が起きた
割れたモモイのヘイローの粒子が寄り添うようにミドリのヘイローに纏わり付いて、ヘイローを修復したのだ
それだけでない。倒れたはずヒエロニムスが呪文を唱え、青い光がミドリを包む
攻撃を受ける直前、ミドリはこの世界から姿を消した - 13二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 03:37:52
BADEND(王女覚醒)の世界線のミドリが本来起こりえない奇跡によって、本編世界線に転移し、生き抜くお話です。
幸せを掴み、2つの世界を救うまで - 14二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 03:42:03
ミレニアム勢のシリアスはいいぞ……
- 15二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 03:43:27
- 16二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 12:43:56
ほしゅ
- 17二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 14:33:53
トリニティ総合学園 通功の古聖堂前
「えっと、ここでよかったかな?」
聖園ミカはマップで確認し、中へと入る
「ナギちゃんも私にこれを任せるのはどうかと想うけど」
エデン条約。連邦生徒会長がゲヘナとトリニティ間の和平条約として進めてきた条約。その調印会場として選ばれた古聖堂の下見を任された彼女は不服そうにそう呟く。
「なんで、ゲヘナ嫌いの私にこの仕事をさせるかなぁ」
ゲヘナとトリニティの溝は深く、互いに嫌いあっている。彼女もその1人であった。
愚痴をこぼしながら古聖堂の内部、外部を確認していく。下手すれば数十年も使われていないそこは、流石に脆い場所もあれど修繕すれば使えるだろう。そう考えたミカは戻る。戻ろうとした。
して……ちゃ…なんで
微かではあるが近くで誰かの呟く声が聞こえる
好奇心からか、ミカは声のする方向に向かって歩いていった
めったに人が立ち入らない古聖堂の影。そこにその少女はいた - 18二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 17:33:23
金髪で緑色の目をしたその少女は遠目でも分かるほどにボロボロで、制服もどの学校の物が判別がつかなかった。
どうして…お姉ちゃん
先ほどは遠くで完全には聞き取れなかった言葉。彼女はうわごとのように呟き続け、力なく壁にもたれかかっていた。
「大丈夫!?すごいボロボロ…!」
私の経験した中でも最も危険な場面だろう。もし、このまま放っておいたら死んでしまう。そう直感が告げ、少女へと駆け寄りのぞき込んで声をかける
「どうしたの…?大丈夫だよね!?」
きっと私も今、傍からみたら錯乱しているのだろう。それでも、今できる呼びかけを続けるしかない。
少しして私の呼びかけに気づいたのだろうか。
少女のうわごとがやみ、私の事をゆっくりと見てくる。
「?……!?いったい、なにがおきてるの?」
正直、それは私が聞きたい。その想いはそっとしまい、正気を取り戻したであろう少女に向きあう
「えっと、酷くボロボロだけど何があったの?」
「……っ!うぅっ。」
困惑の視線を向けてきていた彼女は改めて起きた事を思いだしてしまったのだろう。とても苦しそうな表情を浮かべ今にでも泣きそうになった
「うわっごめん!!そういうつもりじゃないの!」
そう言い、何とか落ち着かせようと試行錯誤する - 19二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 17:44:23
「…あれはどこに?なんで街がこんなに綺麗なの?」
しばらくして、先ほどよりも落ち着いてきたのだろう。少女はぽつり、ぽつりと独り言を言い始める。さっきのように下手に刺激を与えれば、却って混乱させるだろう。そう考えミカはそっと傍で様子を見守っていた
「…ねえ、ここってどこ?」
「へ?」
自分のいる場所も分かっていないのだろうか。
「通功の古聖堂。トリニティ総合学園の大聖堂だよ。」
「え?どういう…こと?そこはもう…」
少女は私の答えに酷く混乱し、だが自身の中で1つの結論に至ったのか少し表情が緩む
「私の幻想かもしれないけど、もしかしたら…」
そう言うと、力すら抜けたのだろう。少女は気絶してしまった。 - 20二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:07:13
「大丈夫?…完全に気絶しちゃってるね。」
幸い、命に別状はなさそうでほあるがここまでボロボロなのだ。早く治療したほうが良いだろう。
そう思い、スマホを取り出して電話をかける
「ミネ団長!今すぐ通功の古聖堂に来れる?」
『ミカさん?どうかいたしましたか?』
「要救助者!できるだけ速くきて!」
『承知いたしました。セリナ、ハナエ治療の準備を』
スマホ越しに地面を蹴る音が聞こえ通話がきれた
数分後、現場に到着したミネはてきぱきと処置を進め、少女を抱えて病院へとかけていった
「ふう、団長に任せておけばひとまずは安心かな?…でも、心配だし私もあの子のお見舞いにいこうかな」
ミカはミネが駆けていった方向を見て歩き出した。 - 21二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:49:01
Tips:才羽ミドリ(回歴)
趣味:イラストメイキング、ゲーム
名も無き神々の王女が覚醒してしまった世界線で姉と共に希望を求めて戦い続けてきた。そのおかげか本編世界線よりも圧倒的な戦闘技術を持つ。
姉のスタンスにより攻撃よりも迎撃、カウンターを得意とする。が、真価を発揮するのは姉との連携である。主な攻撃手段は彼女自身の銃であるが、ユズの遺品であるグレネードランチャーも愛用している。 - 22二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 20:15:42
Tips:ミレニアムサイエンススクール跡地
旧三大校の一校
エリドゥを掌握した名も無き神々の王女は次にミレニアムサイエンススクールを標的とした。
美甘ネルを中心に抵抗を続けたが抵抗虚しく、王女はアトラハシースの箱舟でミレニアムの兵器、校舎を作り替え耐久戦の末敗北。一部の生き残りは逃亡を続けながら、王女に対抗手段を探している。
今では殆ど何も残っていない荒地である。 - 23二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 20:41:14
目の前に狭くも暖かい空間が広がる
カーテンから漏れる光が部屋をうっすらと照らし、私の視界に入ったモニターを引き立てる。
モニターの画面がつき、軽快な音楽と共にドット絵が画面を覆う。ふと、周りに意識を向けるとそこには3人の少女が、ワイワイとゲームを遊んでいる様子がおぼろげに見える。
ミドリ
そう呼ばれた気がする。
私もその声に応えようとすると3人に近づこうと動くと、1人の服とヘイローが変わり、また1人が霧のように霧散する。
いつしか暖かい空間は折りたたまれ、狭い洞窟と化していた。
そこで私を光が貫きーー
意識が明るくなる。目の前に映るのは暖かい白い天井と私をのぞき込む1人の少女だった - 24二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 22:26:04
けられていたブランケットをめくり、上半身を起こす
「あっ!起きた!」
目の前の少女は嬉しそうに跳ね、私が目覚めたことを喜ぶ。この人はさっき助けてくれた人だっけ?お姉ちゃんが私を庇って死んだ事にショックを受けてたから記憶が曖昧だ。
何とか先ほどのやりとりを思い出す
『通功の古聖堂。トリニティ総合学園の大聖堂だよ』
…この発言が正しいなら、ここはきっと過去の世界だ。仮に神がいるなら私にもう一度チャンスをくれたのかもしれない。
それを確かめるために周りに時計かカレンダーがないか確認する。が、見当たらない。
「まだ、混乱してる?」
キョロキョロと辺りを見回す私を心配してか少女は私に声をかけてくる
「はい。ちょっと予想外の事が起き続けてるので」
「?あんなにボロボロだったからね。…何が起きたかは今は聞かないけど。もっとお大事にしてね?」
「気をつけ…ます。ごめんなさい。変な質問になるんですけど今の年月を教えてほしいです」
流石に少女も困惑したのか少し困った表情で教えてくれる
「4月24日だよ。」
…確か私とお姉ちゃんが倒れた日は3月25日だ。
一ヶ月も何もせずに生きれるとは考えにくい。そうなるとやっぱり私は1年ほど過去に遡ったのだろう
もう。2度とは失わない。
そう決意した。 - 25二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 23:12:03
- 26二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 07:33:01
続きを楽しみに待ちます
- 27二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 17:12:11
SSスレは普通に保守って言って保守していいよね…?
- 28二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 20:18:12
4レス以上同じ単語でなければ多分問題は無いはず
- 29二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 00:27:02
「ねえねえ…おーい。聞いてる?」
思考を巡らせ続けていたからだろうか。
私に呼びかける少女の声に気づいていなかったようだ。
「ごめんなさい。少し考えごとをしていて」
そう言うと少女は膨らませていた頬を戻し、私に向きあう
「…私からも質問なんだけどさ。あなたってどこから来たの?」
「……」
困った。トラブルになるリスクを考慮すると迂闊にミレニアムとは答えられない。かといって他の学校を答えてもいずれボロが出るだろう。
「…答えられません。けど、各地を巡り続けていました。」
今言える最大の事実を伝える。
少女も納得こそしていないが、配慮はしてくれたようで、それ以上は触れてこなかった
「そう…分かった!でも、いつか言えるようになったら教えてね。」
「はい。」
全てが解決したら。その時は明かしても良いかもしれない。そんな風に考えていると、少女はあっ!と思い出したように喋りだす。
「って、あなたにばっかり聞くのもダメだよね!私は聖園ミカ!ティーパーティーのパテル派のトップだよ。これからよろしくね!」
「よろしくお願いします。ミカさん」
「よろしく!えっと…名前聞いてもいい?」 - 30二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 00:43:39
「…ミドリです」
ちょっと迷った結果この少女、ミカさんには本名を伝える事にした
推測が正しければ、今この世界には才羽ミドリは2人いる。つまり、才羽ミドリとして動くと遅かれ速かれ厄介な事にはなる。
…偽名は決めないとね。
「ミドリちゃんだね!うん、改めてよろしくね、ミドリちゃん!」
「こちらこそ。…でも、ミカさん。できれば人前ではこの名前では呼ばないで頂けると嬉しいです。ちょっと事情があって。」
ミカさんはやっぱり困惑したようで、でもそこで聞いてこない所から彼女の優しさを感じる
「そうなんだ。分かった。じゃあなんて呼べばいい?ミドリちゃん」
ミドリは考え、周りを見回す。
急に考えても思いつかないからアイデアを出すために周囲においてある物から着想を得ようとする。ふと隣のベッドに飾られている花瓶に目か止まる。周りが一面の白なのもあって際立ってもいるのだろう。その紫色の花は美しく見えた。
…いつだったか花をモチーフにしたゲームを作ったがその時にみた花だ。これは確か、葡萄風信子だったっけ。ムスカリともいってたかも?確か…花言葉は悲嘆だったような。ある意味、今の私には合ってるかもね
「…ムスカリ」
「ムスカリ?…あ、その花からとったんだ。綺麗だし、花言葉も素敵だよね。」
彼女は間違いなく本心からそれを言っている。私にも知らない意味でもあるのだろうか。
ミドリは一瞬そんな疑問が頭に浮かぶが、そんな疑問はその後の会話で忘れてしまうのだった - 31二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 00:49:01
Tips:病室のムスカリ1
ミドリが運ばれた病室に飾られていた花
ミドリが考えたように花言葉は悲嘆ではある
しかし、ムスカリには他の意味もあり、ミネがその花言葉から病人たちのために飾った。 - 32二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 00:53:20
- 33二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 01:13:43
才羽アオ化したのかと思ったがそんなことはなかったぜ
- 34二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 06:59:18
セルフ保守
- 35二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 12:10:31
苗字は名乗る必要が無さそうですね
- 36二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 21:09:09
- 37二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 22:31:23
「ねえミドリちゃん。この後はどうするつもりなの?」
ミカさんと会話、と言ってもほぼミカさんからの質問攻めにあってた中、不意に核心を突く質問をされた。
どうしよう。過去のトリニティに飛ぶなんて想定できるはずもないから、本当に当てがない。
金も機能しない世界で、物資もヒマリ先輩から受け取った数少ない物を使っていたせいで、今の環境だと戸籍すらない私は数日間生き抜くのが限界だろう。
「その感じだと、あてが無さそうだね…」
バツの悪そうな顔をしていたのか、想定内だったのか分からないが、ミカさんは少し考えた後こちらに向きあう。
「ミドリちゃんが良ければだけど…私の家にくる?これでもティーパーティーのトップだからミドリちゃんが住める部屋くらいなら用意できるだろうし」
それは、今の私にとっては願ってもない最高の提案だった。
「…本当に良いんですか?私が言うのもあれだけど、あの、ついさっきあった仲ですし」
「確かにそうだね。…」
ミカは真剣な面持ちでミドリに言う
「きっとあなたには私にも言えない大事な使命があるんだと思う。けど、それが解決したとき、あなたの帰る場所が無ければそれは解決と言えるのかな?それに、もう一つはみんなが幸せに暮らせる学校にしたいっていう、私のエゴ」
だから…とにこやかに笑ってミカは言う
「気を使わなくていいんだよ。私もミドリちゃんと仲良くなりたいしね」
そうして差し伸べてくれた手を私は掴む
「よろしくお願いしますミカさん」
ボロボロだった物語に新しい一頁が綴られた - 38二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 23:46:58
その後、1週間の療養を経て私は退院した。
入院中もミカさんは毎日様子を見に来てくれ、たわいもない雑談をしてくれた。失った物の哀しみはそれを実感して増していくが、新しい友とこの平穏な生活がいやしてくれた。それを噛み締め苦しみに向き合い続ける。
ミカさんは私のあれこれを対応してくれてたみたいで、いつの間にかトリニティに学籍が置かれていた。アリスちゃんの時に私たちもやったが、何故こうも簡単に学籍を偽造するのか。
桃園ムスカリ
この虚の名前を掲げてこれからは生きていく
桃園と言う名字はミカさんが決めてくれた。園の字は本人曰くおそろいとのこと。…まさか姉を思わせる桃の字があるとは思わなかったけど。不思議な偶然もあるものだ
ーー
病院を出るとそこにはミカさんが待ちくたびれたかのように待っていた
「あっ来たね!それじゃあいこっか!」
「はい」
ミカはミドリを案内しようと歩き始めるが、忘れていたことを思い出したようで立ち止まる - 39二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 06:49:36
仲良し!
- 40二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 11:07:19
「忘れる所だった!はいこれ、退院祝いだよ!」
そう言いミカさんはバッグから取り出した物を渡してくる。
トリニティ総合学園の校章が書かれている学生証だった。私の偽名と年齢が書かれている。
所属がトリニティ総合学園になっている事には若干の寂しさを覚えつつもそれを大事にしまう
「これで多分生活に困ることはないはず。そしてもう一つ」 - 41二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 11:07:39
そう言うと今度は大きい物なのか、鞄に両手を入れてそれを取り出す
修理とデザインの変化で前とは見た目こそ僅かに違うけど
私のサブ武器であり、ユズちゃんの遺品であるグレネードランチャー、にゃん’sダッシュだった
「あなたが倒れていた場所に転がっていたから返すね。」
ちょっと壊れてた場所を勝手に修理しちゃったけどね。と付け加えてミカは言う
塗装が剥がれかけ、銃身に傷が入っていたそれは新品当然と言えるまでに修理されていた。
塗装は黒を基調としていた元々のデザインを崩さず、所々のラインが他の色に変わっていて、剥げ落ちてしまったけど、元々ミレニアムの校章が描かれていた部分にはトリニティの校章が入っていた。
「ありがとうございます!ミカさん」
ユズちゃんの…私の愛銃を抱きしめて精一杯お礼をつげる。
「わーお。ここまで喜んでくれると、私も嬉しくなっちゃうなぁ。」
ミカもつられて笑顔になる。
「よーしじゃあ、そろそろ行こうか」
そんなやりとりでまた少し仲が深まった2人は、ミカの住む屋敷に向かって歩いていった - 42二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 20:58:36
「ここって本当に家ですか?」
「そうだよ?」
ミドリは物語の中でしか見ないような建物を見て予期せぬ衝撃をうける。
ミカさんに連れられてついたのは豪華な屋敷。いや、宮殿という方が正しいかもしれない。それほどまでに広大な土地と城のような豪邸だった。
もしかしたら単純な広さだけでみたら私たちの部室棟よりも大きいかも。そんなことを考えているとミカさんがこちらに手招きをする。
「さぁ入ってミドリちゃん」
「えっとお邪魔します?」
どっちかって言うとただいまじゃないかな?そんなことを言うミカさんを見て、私が今日から暮らすのだと実感する。
正直、こんな建物は創作物でしか見なかったし、暮らすなんて雲の上の存在だと思っていた。…だから、いずれ慣れるだろうけど、正直今は落ち着かない。
「ってもう!そんなにかしこまらないで」
そんな私を見かねてか、ちょっとムスッとしたミカさんが私の手を引っ張って歩きだす。
ミカさんに引きずられながら屋敷を巡っていると、やはり私の知っている機械都市であるミレニアムや滅びかけた世界とは全然違う雰囲気を実感する。きっと昔の私やお姉ちゃんならインスピレーションが湧いた!といって部室にこもるだろうなぁ。そう不意に懐かしみながら、ウキウキと話すミカさんと屋敷の中を見て回った。 - 43二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 23:30:29
私に色々と教えてくれるミカさんの横顔はとても楽しそうだった。私も気になる事がたくさんあったから聞いて回る。ミカさんも、その質問に答えながら、更に色んな事を教えてくれた。そんなこんなで小一時間ほど屋敷を歩き回った末、私たちの小さな冒険は終着点にたどり着く。
ミカさんはとある扉の前に立ち止まりじゃーん!と言わんばかりのジェスチャーをする
「この部屋が今日からミドリちゃんが過ごす部屋だよ!」
そう言うその部屋は外の扉だけ見ても、他の部屋よりも大きく、特別な雰囲気を醸し出していた。
ミドリはゆっくりと扉を開くと思わずおぉと声が漏れる。
お姫さまが住む部屋みたい。この部屋に入って私は真っ先にその感想が頭に浮かぶ。ベッドも棚も…内装全てが高級感に溢れている。今までいった旅館やホテルよりもきっと凄い。
小物もミカさんが綺麗にしていたのだろう。きちんと並べられ飾られているそれらが部屋を彩っていた。
そして最後にテーブルに立て掛けられている2丁の銃に目が向く。私とお姉ちゃんの愛銃だった。じっくり見ると壊れているようだが、誰かが直そうと試行錯誤した様子が見られた。ミカさんが頑張って直そうとしたのだろう。
銃をじっくり見ている私に気づいたのかミカさんは様子を見ていた話かけてくる
「ごめんね。そっちの2丁は頑張ってはみたけど駄目だった…」
この人はどれだけ優しいのだろう。申し訳無さそうに言ったミカさんに私は焦って言う
「いや、そんなことないです!ミカさん…ありがとうございます」
それに、と私は続ける
今私がこうやって平穏な生活をおくれるのは間違いなくミカさんのお陰だ。
そんな思いと銃のせいで伝え損ねた部屋の感想を伝えると、ミカさんは恥ずかしそうに喜ぶ
「…ふふっ。恥ずかしいけど、ミドリちゃんがよろこんでくれてて良かったよ」
そう言うとミカさんの方も少し話しやすくなったのか、私が気づかなかったことを説明しながら、雑談をする。
ーーどれほど話したのだろうか。空が茜色に染まりはじめた頃にミカさんは1つ提案をしてくる
「ちょっと速いけど、一緒にディナーに行かない?」 - 44二次元好きの匿名さん25/04/12(土) 23:54:33
tips:フレッシュインスピレーション
ミドリが使ってきていたスナイパーライフル。彼女は愛銃の手入れ、メンテナンスは欠かさずに行っていたが、転移前のアトラハシースの主砲によって修理するのが難しい破損具合になった。
tips:ユニークアイディア
モモイの使っていたアサルトライフル。彼女の銃は本人がミドリより前線で戦っていたのもあり、損傷が激しかった。それを騙し騙し使ってきたため、最後の戦いで限界を迎えてしまった - 45二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 09:36:22
保守
- 46二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 09:38:27
tipsあるの凄い好きなんだよな
- 47二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 11:04:21
ミカさんに連れられてレストランに向かう。まだ夕食には早いのもあって中は空席もあるが賑わっているようだ。入店し、私たちは窓際の席に腰かける。人々が笑う声、世間話に花を咲かせている様子が目に、耳に入る。…いつぶりだろうか。こんなありきたりな日常は。過去を思い出して締め付けられる苦しみと、2度と来ないと思っていた普遍な、でも幸せな光景をまた味合う事の出来る喜び。2つの感情がぐちゃぐちゃに交じり合い、言葉ではとても言い表せない感情となる。
「ムスカリちゃん」
そう呼ばれる。物思いにふける私にはそれが私を呼ぶ声だと気づくのに、十数秒かかった。
「…私の名前でしたね」
まだ慣れていない。…確かに今まで病室かミカさんの屋敷にいた私が人前に出るのはこれが初めてだった。
「どうしたの?そんな懐かしそうに周りを眺めて。」
至極全うな感性だ。新しい物を見る好機の目でもなく懐かしみを持った目で周りをみていたら私でも疑問に感じるだろう。
「…こんな光景を見るのが久しぶりで。私がいた場所では見れませんでしたから。」
目の前にいるミカさんはきょとんとしている
笑いあい、どうでも良いことを楽しみながら話す何気ない日常。みんなにとって当たり前で、そうであって欲しい日常。でも、何か1つの歯車が外れるとすぐに瓦解する脆くて繊細な幸せ。
願わくは、目の前にいるミカさんには、私のいた絶望ではなく、この日常が続いて欲しい。
そう願い、私は感情を切り替える。いつまでもしみじみとしているとミカさんを困らせてしまう。
「…1度この話はやめましょうか。それよりも今を楽しむ方が大事だと思うので」
ミカさんもちょっと戸惑うが、すぐに私に微笑む。
「そうだね。なんかはぐらかされた気もするけど…せっかくディナーに来たんだし、ムスカリちゃんも遠慮せずに頼んでね」
そう言うとミカさんはメニューを私に差し出す
私たちはメニューを決め注文し、料理を待つ。待っている間は、さっきよりも明るい話をする。どうやら明日は私のトリニティ編入に合わせて、色々と用意をするらしい。 - 48二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 11:07:30
神スレの予感
- 49二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 19:38:01
ミカミドという新しい扉を感じる
- 50二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 22:11:32
素晴らしいです
- 51二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 22:23:04
「ご注文の品でございます」
話に夢中になっていたからか、2-30分ほど経っていた時間がほんの数分に感じていた。私は手を合わせて、料理を口に入れる。深みのある味が口の中に広がり、とろける。
「これ、凄くおいしいです!」
「でしょー!ここのお店、ナギちゃんはあまり来たがらないけど、味がいいんだよね!」
文字通り、幸せを噛み締める。…ミレニアムの料理が効率重視なのもあってこの料理が相対的においしいと感じるのかもしれないが、それを抜きにしてもきっと上質な味だろう。あまりの美味しさに会話すら忘れるほど食事に集中してしまっていた。
皿が空になった後、ミカさんの提案で紅茶を飲みながら雑談する。やはり、トリニティと言えば紅茶とも言われるのは、伊達ではなく、香り、味共に逸品だった。
「どう?トリニティは」
ティーカップを置き、ミカさんは私にそう尋ねた。
「…正直不安でしたけど、ミカさんに連れられて軽く回った範囲だとこの先が楽しみに思えるくらい良い場所でした」
お世辞を抜きにここまでの本心を伝える
本当に数ヶ月ぶりに未来を楽しみに待てるようになれたのだ。
それを聞いて嬉しかったのだろうか。ミカさんはふふっと笑みをこぼして、私に向き直る
「そう言ってくれて嬉しいな。だったら、明日からも楽しむために、早く休まないとね」
そう言い紅茶を飲みきったミカさんは席を立つ。私もそれに着いていき会計を済ませて、店を出る。
いつの間にか外は暗くなり、街灯や家の灯りが街を照らしていた。今でた店も混雑してきたようで、辺りから喧騒の声すら聞こえる。
「すっかり暗くなっちゃったね…明日も早いし、今日はもう帰ろうか」
私はミカさんの背を追いかけて夜のトリニティを歩きだした。昼とはまた違う優雅さの溢れる街を抜けて私たちは帰路につく。
街灯が新しい冒険の始まりを祝福するかのように、2人を照らしていた - 52二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 23:35:51
目の前に狭くも暖かい空間が広がる
カーテンから漏れる光が部屋をうっすらと照らし、私の視界に入ったモニターを引き立てる。
モニターの画面がつき、軽快な音楽と共にドット絵が画面を覆う。ふと、周りに意識を向けるとそこには3人の少女が、ワイワイとゲームを遊んでいる様子が朧気に見える。
私はこの状況を知っている。この認識こそが前の夢との唯一にして、最大の違い。私は足下に落ちているコントローラーを持つ。
刹那、ディスプレイの16ビットで表されたドットがより繊細に、鮮明になり、画面の中の世界はこの世界を浸食しはじめる。
『花岡ユズ』
意識を手放す寸前に見たのは、私の大切な友達の名前が書かれたゲームディスクだった
ーー夢が覚める - 53二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 23:57:38
カーテンからうっすらと差し込む光でミドリは目を覚ます。
周りにはまだ見慣れていない部屋の景色が広がる。…ああそうだった。昨日からミカさんの屋敷で生活してるんだった
「…よいしょ」
寝ぼけた目を擦りながらそう考え、ベッドから立ち上がる。
顔を洗い、身だしなみを整える。
ミカさんにもらった服を着て、鏡で確認をする。少しオーバーサイズだったが、これくらいなら大丈夫。そう考え、外出の準備をする。
準備の中ふと頭に手をかけて、思い出した。
「…そういえば、もうないんだったね。」
ミドリが触った場所には元々ネコ耳のカチューシャがつけられており、手癖でつけようとしたのだ。
…やっぱないと落ち着かないなぁ。そう思いはするものの壊れてしまった物は仕方がない。私はそう割り切り他の準備をする
5分ほど慌ただしく準備をした後、バックに新しく受け取った学生証を入れ、出掛ける準備自体は終わる。
「さて、準備は終わったし最後に」
そう言うとミドリはグレネードランチャーを取り出す。それを手入れするのがミドリの数ヶ月前からのルーティンだ。
ここは布で…よしっ!新品当然に修理されたからか、いつもよりも短い時間でメンテナンスを終えられた。
時計を見る。6:20。そろそろミカさんも起きてるかも?そう思い私はキッチンへと向かうのだった - 54二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 06:49:54
セルフ保守
- 55二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 15:21:41
そういえば最終編以降の時系列と思ってたけどどうなんだろ
- 56二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 19:24:50
最終編は通過せず、パヴァーヌ2章で分岐が起きてます。アロナがプラナである事以外には基本的に本編と同じルートをたどってきました。
ミドリが転移してきた今の世界は連邦生徒会長が失踪する前の本編世界ですね。
- 57二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 19:43:17
先生が来る前か。
元々いた世界がプラナちゃんってことはプレ先時空、先生がいなくなってから狂い始めたのかな - 58二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 21:52:55
ミカさんはまだ起きていないようで、キッチンの中は薄暗く、電気をつける。
…何か作ろうか。そう思い、冷蔵庫の中身を勝手に取り出し、料理を始める。そう行動した理由の半分は私の悪い癖だ。常に動き回っていたあの頃の癖が抜けず、何かをしていないと落ち着かない。もう半分はここまで色々と尽くしてくれたミカさんへの感謝のつもりだ。…まあ、勝手に中身を使ってるから恩返しになるかは怪しいけど。
野菜を切り、コンソメと共に水の入った鍋の中に入れる。それを煮込んでいる間にパンを取り出して焼く。数分待ち、具材がよく煮込めたら、ウインナーを入れ数分にこむ。
日も登り切ったようでもう灯りがなくとも、部屋は明るいだろう。電気を消し、カーテンを開けると朝日の優しさが私を包む。
「さて、そろそろかな?」
煮込んでいた鍋の火を止め、塩とこしょうで味をつける。そんな中、足音が聞こえた。音の方向に意識を向けているとガチャリと扉が開く。ミカさんが起きて来たらしい。
「おはよ~。早いね、ミドリちゃん」
ミカさんは、私に気付いたようで少し眠そうにしながらも挨拶してくれる
「おはようございますミカさん。」
カップにスープを盛りながら、私も挨拶を返す。
ミカさんも私の行動に気づいたみたいで、のぞき込んでくる。
「料理してるの?」
「はい。食材はちょっと拝借させてもらいましたけど…良ければ、ミカさんに食べてもらいたくて。あの、今までのお礼です。」
そう言うとミカさんは喜んで、さっそく食べよっ!と私をせかす。食材については何にも気にしていないようで、別にいいよーと言っていた。 - 59二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 21:53:16
私は焼いたパンにジャムを塗り、スープと一緒にミカさんに渡す。
「どうぞ、軽い物ですけど」
そして私の分も盛り付け、テーブルに運ぶ。
ミカさんと向かい合って食事を始める。
「うん!美味しいよ!」
今まで、もっと良い料理を食べてきただろうに、私にそう満面の笑顔で伝えてくる。その笑顔を見て私もホッとして嬉しくなる。…これじゃあお礼どころかまた救われちゃったかも。そんな事を考える。まあでも、とりあえずサプライズのお礼は成功かな?
「「ごちそうさまでした」」
手を合わせ食事を終えて、私は食器を洗う。
ミカさんは出掛ける準備をしてくるとの事だ。私はもう終わらせていたから、その時間でできるだけ家事を進めておく。
30分ほどたち、ミカさんは準備を終えたようで、玄関の方から私を呼ぶ声が聞こえる。
「おまたせー!準備できたよ!」 - 60二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 23:16:48
....あれ、確かエデン条約でミカ捕まってたよな。
魔女めってトリカス共に晒しあげられると一緒にいるプレ先時空ミドリまで巻き込まれる......? - 61二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 06:22:55
- 62二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 07:24:25
あっそうなんか、勘違いしてたわ。
それにしても案外ミドリ落ち着いてる....過去にいる可能性が高い(実際過去にいる)から未来を変えれるかも、って思っているからかな。
あとミカが眩しいぜ。 - 63二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 16:20:15
保守
- 64二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:04:42
仲むつまじい二人だ…
- 65二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:26:16
それに答え、私も玄関へと向かう
靴紐を結び直し、ミカさんの後を追って目的地へ歩き出した
向かった先はトリニティの郊外にあるショッピングモールだった。中に入り、1つの店の前でミカさんは立ち止まる。
「まずはここだね。」
「制服専門店?」
制服専門店。学園都市であるキヴォトスの中では需要が高い店である
ミカさんはちょっと待っててと私に告げると、店員さんに問い合わせ始める。
「ティーパーティーの聖園ミカです。一昨日注文した制服なんですけど…」
「あぁ、ティーパーティーの。いつも贔屓にありがとうね。今出してくるよ」
店員はそう言うと、店の裏から1着の制服を取り出してくる。
「はい。サイズはこれであってるかい?」
ミカさんはしっかりと確認してうなずく。
「ムスカリちゃんおいで!」
そう言うと、ミカさんは私にそれを渡してくる。なんとなく気づいてはいたけど私の制服のようだ。
「はい。トリニティの制服だよ!」
「わっ。ありがとうございます」
ウキウキしているミカさんから勢いよく渡され、ずっしりとした重さで思わず声が出てしまった。
「帰ったら着てみて」
ミカさんがそう言った所、その様子を見ていたのか、先程の店員が私たちの前にやってくる - 66二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:50:38
「その制服、お嬢さんのだったんだな。よければ、ここの試着室で着ていくかい?」
店員さんはそう提案してきた。私自身着てみたかったのと、ミカさんの期待の視線から、そのご厚意に答えて使わせてもらうことにした。
試着室の中に入り、新しい制服に袖を通す。
「なあ、このお嬢さんは転入生かい?」
「あー…うん、まあそんな感じかな」
着替えている最中、外では、この時期に制服を買うのは珍しいのか、私のことを聞いている店主と、それについて言葉を濁すミカさんの声が聞こえた。
そんな会話に耳を傾けながら、着替えを進める。
リボンを整えて、試着室のカーテンを開けた
「わぁ!凄く似合ってるよ!」
出て、間もなくミカさんがそう言ってくれる
私も少し恥ずかしくも、新しい服を見せる。
「今日はありがとうございました」
「おう。またご贔屓によろしくな。」
その後、2人は店主と少し会話をし、次の店へと向かった - 67二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 00:31:37
Tips:にゃん’s ダッシュ
ユズの使っていたグレネードランチャー。彼女の愛銃であり、今のミドリのメインウェポン。
名もなき神々の王女との2回目の戦いで、死ぬ間際ユズがミドリに託した。
ウタハによる改造、ミドリの毎日のメンテナンスによって、この銃の本来以上のスペックを引き出している
- 68二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 07:36:57
保守ついでに…
軽くミドリのいた世界の時系列を
パヴァーヌ1章
↓
エデン1&2章
↓
エデン3章
↓
エデン4章
↓
パヴァーヌ2章
(ここで本編とは違い、名もなき神々の王女が復活)
↓
vs名もなき神々の王女 in 要塞都市エリドゥ
(ネル、トキ、リオを中心とした短期決戦)
↓
ミレニアム防衛戦
(ヒマリ、セミナー、先生の指揮の元行う、ネルを除くC&C、エイミを主力に据えたミレニアムの総力戦にして、防衛戦)
↓
vs名もなき神々の王女 inヒノム火山
(王女の対策としてミレニアムとゲヘナが臨時の協定を結び、空崎ヒナ、羽沼マコトを中心とした作戦。)
↓
名もなき神々の王女 in トリニティ
(各地での壊滅報告を受けた事から、対策を練ったナギサ、ハナコの指揮を中心に、正義実現委員会、ミカ、アズサ。及び素性を隠して参戦したアリウススクワッドによる戦闘。)
↓
小規模な神々の王女との戦闘
↓
名もなき神々の王女破壊作戦 in 通功の古聖堂 - 69二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 07:40:48
順番に、着実に消えていったと思うと……
ウ゛ッ… - 70二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 17:29:55
このレスは削除されています
- 71二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 17:39:08
次に私たちが入った店は書店。教科書、及び戦術BDを買うためだ。
私は背伸びをして最上段にある教科書を取り出す。…これ、ミレニアムでも使ってたやつだ。
基本的な資料は学校が変わっても大差ないらしい。戦術BDの方は逆に違いが顕著で、兵器や遮蔽、情報戦を中心とした戦術のミレニアムに対して、トリニティの物は、近接戦闘、銃撃戦など、アナログ的な戦いかたをメインに解説しているようだ。近接はまたもし“あれ”と戦う事があれば役に立つかも…そう思い、それをしっかりとかごにいれる。教科書を詰め切った後、文房具やノートも探しながら、書店を歩き回った
あらかた集めただろうか。そう思い、かごの中の教材を確認する
「よし。これで全部」
ちゃんと確認をして、買い漏れはないことが分かった。
私がそう言ったのが聞こえたらしく、ミカさんは読んでいた雑誌をぱたりと閉じ、棚に戻して私の方を向く。
「うん。これで教材も大丈夫だね。それじゃ私はこれ買ってくるよ」
そう言い、私の持っているかごをひょいと持ち上げて、レジに並んだ。
ここにいるのも邪魔になるかもと考え、私は店の入り口まで、先に出ようとする。
これで書店での予定は終わる…はずだった。
店の外に出ようと歩いている途中、不意に視界に入った雑誌が私の注意を引いた - 72二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 21:36:12
『特集 今年最もクソだったゲーム』
その文字と見覚えのある作品が大々と載っている。
『テイルズ・サガ・クロニクル
制作:ミレニアムサイエンススクール ゲーム開 発部』
私は思わず、雑誌を勢いよく取り、特集のページを開く
「…うーん。やっぱりこうやって大々と書かれると心にくるものがあるなぁ…」
特集のページには今年の最もクソだったゲームがランキング形式で載っていた。
そのランキングで堂々の1位を獲得していたのは、私たちが作った作品。テイルズ・サガ・クロニクルだった。
そういえば、作ったのはこの時期だったなと思いながら記事を読み進める。
『私がこれまでプレイした中でダントツで絶望的なゲーム。シナリオとかじゃなくて、ゲームの完成度が』
『このゲームに何が足りないか、数え出したらキリがないけど…一番足りないのは正気だろうね』
一部のレビューが抜粋されている
…ユズちゃんは大丈夫だろうか。Beta版の頃から酷評と付き合い続けてきたから。まあ、こっちのお姉ちゃんが何とかしてくれるかな。 - 73二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 22:26:49
更に読み進めると選考した人だろうか…総評が書かれていた。
『理不尽の塊であり、分かりやすく酷い作品である。他の受賞作品は「無」を武器とする作品であったが、この作品はそれらに比べて明らかに完成度が高く、愛を感じることができる。そもそもこの賞を決定つけるのは、プレーヤーの心の叫びであり、決して無を表すものではない
よってただのクソの塊より、僅かな美点の中にあるクソの塊であるこの作品こそ、受賞すべきであり、私たちは開発者であるゲーム開発部に敬意をもってこの作品をKOTY1位とする』
「褒めてるのか貶してるのかよく分からないってこれじゃあ。」
そんなツッコミが漏れるが、ただ罵倒するレビューよりは暖かいそれを見て、思い出に浸りながら、テイルズサガクロニクルの紹介ページを読む
チュートリアルの理不尽ギミックや、お姉ちゃんの謎言語、私たちがこっそり仕込んだ小ネタ達が色々と触れられていた。思わず笑みがこぼれてしまいそうになるも、私はそれを抑えて読む。
「おまたせ。ムスカリちゃん。ってあれ?」
懐かしさを感じ、時に心に刺さるそれを読み続けていると、ミカさんが私のことを呼ぶ。
「何読んでるの?」
そう言うと共に、ミカさんが雑誌を覗き込んでくる。私は何でもないと言いら慌ててそれを閉じる。ミカさんは不思議そうにしつつ
「…うーん。私も見たかったけど…見られたくないならしょうがないね。」
そう言うと、ミカさんは私に買った教材を渡して、自分のスマホを確認する。
「えっと?大事な物は…」
スマホをスワイプしする。恐らく、必要な物のリストを見ているのだろう。
「これは私の余ってるものを使えばいいし、…うん!これで転入に必要な物は揃ったかな。」
いったん家に帰ろうか。と、ミカさんが言うが、その少し後、どこからかお腹のなる音が聞こえる。
「…やっぱり、カフェに寄ろっか。」
「そうですね」
音の正体はミカさんだったらしい。私たちはモール内のカフェに入った - 74二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 07:26:55
どっちか分からないの…褒められてるな!
仲良くショッピングしてらぁ - 75二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 15:22:36
先生は何月頃に来るんだろ
- 76二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 20:49:10
ミカさんはパフェと紅茶を、私はショートケーキと紅茶を注文し、席に座る。
両手に抱えていた荷物を置いて、私は紅茶を飲む。トリニティの味であるそれにも大分慣れてきたようで、飲むと落ち着きを覚えるようになっていた。
一方でミカさんは、届いたパフェを食べて幸福そうな顔をしていた。
私に見つめられていることに気づいたミカさんはスプーンでパフェを一口分すくう
「このパフェ本当に美味しいよ!食べてみない?」
「ミカさんのですから、わた…」
「えいっ!」
私はちょっと遠慮して、そう答えようとしたところ、ミカさんのスプーンが私の口にぶち込まれる。
聞いた意味はあったのだろうか。ただ、確かに美味しい。絶品。…びっくりしたけど、これなら確かに食べさせたくなる味と言われても納得かも。
「確かにすごく美味しいです!」
「ね~!」
「ただ…ちょっとびっくりしました」
そう言うと、ミカさんははっとしたような顔をして謝った
「あ…、ご、ごめん」
やり過ぎたと思ったのか、ミカさんはちょっぴりおろおろとしている。
ミカさんって意外に繊細だったり?
そう感じる。今まで、ずっとにこやかに明るく接してくれる姿を見続けてきた私にとって少し意外だった。そんなミカさんにわたしは大丈夫ですよ。とフォローをする。
ちょっとして、ミカさんも調子を取り戻したようで、次に行く場所の話をする
ティーパーティのトップが会議を行うテラス。トリニティの中心を一望できるそこに行くらしい。
私のような転入生は、事例こそあれども少なく、それ故にもう1人のトップである桐藤ナギサが1度合っておいたい…とのことらしい。 - 77二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 22:52:47
まあそりゃ気になるかぁ…
- 78二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 07:55:32
良いフォローだ
- 79二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 08:24:39
…桐藤ナギサ
ミカさんが言うには、幼なじみらしい。ミカさんとは仲は良いらしいけど、話を聞く感じ、比較的感情的に行動するミカさんに対して、理性で動く人のように思えた。そういえば…未来のトリニティでの戦闘では司令塔だったとはヒマリ先輩から聞いたことがある。
警戒深く、頭の切れる人物であるのは間違いないから、うっかり素性をもらすのと、怪しまれるような発言だけは注意しておこうと気を引き締める。
カフェを出て、トリニティの中心部へと向かう。流石に歩くと時間が掛かるということで、タクシーを待つことにした。
数分後、やってきたタクシーに乗り込み、私達はティーパーティーのテラスへと向かった。仲では、緊張してる私に対して、
「ナギちゃんは用心深いけど、私が話は通してあるから大丈夫だよ」
と励ましてくれる。…流石幼なじみ。
そんなこんなで考え事をしていると、いつの間にかタクシーは目的地たどり着く。
台賃を払い、私達はその建物の前に降りる。
建物の中に入り、最上階まであがって豪華な扉に手をかける。
「…失礼します」
扉をあけるとそこは荘厳な雰囲気を醸しだしていて、私はより一層緊張した。こんな時、お姉ちゃんだったらずかずかと入るんだろうな。そう、羨みつつも、自分の緊張に向き合い、一歩ずつ歩んで行った。
私の入室に気づいた少女はティーカップを机に置いて、私の方を向いた
「お待ちしておりました。桃園ムスカリさん」 - 80二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 16:58:01
アツヤバそう…
- 81二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 18:19:03
ちっとやそっとじゃなぁなぁに済ませてはくれないだろうしな……
どう出るかな? - 82二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 20:18:11
その少女は軽く私へと会釈し、口を開く
「わざわざと足を運んでいただいたこと、お礼を申しあげさせてもらいます。」
少女…恐らく桐藤ナギサだろう人に促され、私は席につく。今できる最大限の礼儀作法をしつつ、少女の話に耳を傾ける。
「ミカさんから伺っているかもしれませんが、ティーパーティー、フィリウス派のトップ、桐藤ナギサです。本日はよろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、お願いします。」
ナギサはにこやかにそう言うと、さっそく本題と言わんばかりに言葉を紡ぐ
「ムスカリさん、おおかたの事情はミカさんから伺っております。トリニティへの編入希望とのことで…」
穏やかな顔をしながらナギサはミドリに確認をとっていく。ミドリも話を聞きながら、ナギサの顔を伺いながら、時々反応をする
「…書類上は『基本』問題なさそうですね」
注視して観察してみたところ、恐らくナギサさんは興味1割警戒9割といった所だろうか。口元は笑みを浮かべているけど、目が笑っていない。その様子は笑顔で私達やコユキさんを理詰めで対応してるときのノア先輩に近いものを感じる。
表面上こそ笑ってはいるが、身から溢れている圧や視線を見るに、私のことは信じることはできないのだろう。
やっぱり、部外者であり、身元すら不明であるわたしはそうそう都合よくはトリニティに編入するのは厳しいのかもしれない。 - 83二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 20:20:01
そう覚悟を決めたのと、ほぼ同時にナギサさんもまるで、今までの会話が形式だけのものであったかのように、核心をつく
「ムスカリさん。あなたの出身は何処でしょうか」
「っ!」
…その質問は本当にまずい。
1番聞かれてはならない質問が、私につきささる。正直に答えたところで、ミレニアムにこっちの私の学籍はない。却って、疑念を深めるだけだ。つまるところ、私にできる選択はただ一つ。
「………」
「沈黙…ですか。」
最悪の手段であり、1番の妥協案である沈黙を貫き通す。もちろん、そんなに上手く行くわけがない。ナギサさんは別の切り口から私を問う
「言えない事情があるのでしょう。ならば、もう一つ。あなたはミカさん曰くボロボロの状態で古聖堂にいたそうですが一体何をしていたのですか?」
表面上の笑みすら消え、冷たい眼差しが私の全身を突き刺す。感じるのは、圧。それだけだった。
「私のやるべきこと。それを成していただけです。」
「はぁ…」
回避不可能な絶望的な質問に、冷や汗をかきながら私も、淡々とそう答える。
あちらのペースに乗ってはまずい。そう、直感が告げる。
「通功の古聖堂。連邦生徒会長の元締結されるトリニティとゲヘナの和平協定、エデン条約。その締結の場として利用される古聖堂。そのような場にあなたはなぜいたのでしょうか。」
追い打ちのようにナギサはそう言う。
「この条約は深い因縁のある二つの学校の条約であり、私としましては締結したいものなのです。しかし…因縁ゆえに双方共に快く思わない人々も多いでしょう。2校だけでなく、ミレニアム、百鬼夜行のような学校としてもその影響は甚大なものでしょうか。それ故、締結の不都合になる行動をする人々もいるでしょう。もちろんトリニティ内部にも」
ナギサさんはそう言うと、冷たい視線で私に一つの問いを投げる。
「桃園ムスカリさん、あなたは一体何者ですか」 - 84二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 23:57:25
あぁこれは…詰みかな。
逃げる要素も、誤魔化す方法も潰され、核心をつく質問を続け、ミドリは諦めかける
辺りが静寂に満ちた
実際には数分も経っていないのだろう。それなのに、この静寂が数刻のように感じるのは、私の焦りだろうか
「ナギサ、疑うことは決して悪いことではないが、それでは物事の本質を見ることはできないのではないかい?それに、触れられて、崩れる話もあるだろう?無闇矢鱈聞き出すのも、一つの手だが正解とは限らないよ」
静寂を破ったのはその静な、それでいて強い意志のこもった声だった
「セイアさん…」
ナギサさんがそう呼ぶ先、扉の前にはシマエナガを腕に乗せた狐耳の少女が立っていた。後ろにはミカさんもいる
「まったく…その様子を見るに、疑心暗鬼となってしまっていたのだろう。疑いは物を照らし広く見せるが、時に目の前の物事すら眩ましてしまうのだよ。だからこそ私達は共に信じ、歩み合うべきではないかい?」
そうセイアと呼ばれた少女はナギサさんを諭す。
ナギサさんも一理あったのか、頷き、賛同するが、まだ不安が勝っているらしい
「しかし、セイアさん。エデン条約を控えている以上、不確定要素を増やし、リスクを高める行動は控えるべきではないでしょうか」
「そうかもしれないね。だが、安心するといいさ。この少女がトリニティを陥れることはない。この私が保障するよ。」 - 85二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 23:58:19
そう言うと少女は私を見てにっこりと笑う。
「…と言うことは視たのですか?セイアさん」
「ああ…。だから間違いないよ。」
「そう…ですか」
視たとはどういうことだろうか。
そんな疑問を感じつつも、目の前の話の方が今は大事だと思い、意識をそちらに向ける
「それに、私達3人で決めた結論があるだろう?」
「そうですね。ムスカリさん。先ほどは大変失礼致しました」
ナギサさんはセイアさんに諭されたからか、今度は少し落ち着いている。この微笑みは本物な気がした
「では、君の処遇を発表するとしよう。3人の折衷案だから、満足は行かないかもしれないがね。」
そう前置きをして少女は私にこう告げる
「ティーパーティー聖園ミカの監視の元、君のトリニティ編入を許可する。ティーパーティーホスト、百合園セイアがここに承認しよう。」 - 86二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 08:53:48
怖すぎるなぁ…
- 87二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 09:06:11
サンキューセイア
- 88二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 18:03:06
どうなる
- 89二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 19:47:47
直近?の懸念点はやっぱ魔女関連だよなぁ…
- 90二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:34:05
そうして私は、ちょっとした?トラブルの後、正式にトリニティに編入できることが決定した。
「ムスカリちゃん!おめでとう!」
ミカさんは今まで我慢していた分か、中に入ってきて飛びついてくる。
「わっ。ミカさん?」
「良かったよ、何とか転入できて。」
そうホッとしたように言うと、少し怒気を込めてナギサさんのほうを向いた。
「ナ~ギ~ちゃん?どういうことかなこれは?」
ミカさんは笑いながら怒っている。正直ちょっと怖いかも。
「この前の会議で決めていたよね?ムスカリちゃんはトリニティに編入させるって」
「え、ええ。」
「1度話しておきたいって言ってたから連れてきたけどさ、この有様は何かな?」
「それは…」
ナギサさんはしどろもどろとしてしまった。先ほどまでとは逆転してナギサさんが追い詰められる。
「どうして、あんな対応…してたのかな?」
満面の笑みでミカさんはナギサさんに詰め寄る。
怖い。全然ちょっぴりじゃなかった。
私が詰められている訳ではないのに恐怖を感じる。それほどだった。
「どのような方か、判別し、…もし、トリニティを陥れようとしていると疑いがある場合ここで判断し、その証拠を掴み、編入を拒否しようと…」 - 91二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:35:11
その回答を聞くと、ミカさんは大きくため息をつく。
「…ナギちゃんはすぐに人を疑いすぎ!」
「今回に限ってはミカに同意だ。件の条約もあり、心労も貯まっているのだろう。今回のような事案に慎重になるのも理解はできる。しかし、たまには信じて見るのはどうだろうか。彼女を信じるのが無理なら、私の夢でも良い。」
ミカさんがナギサさんを詰めた後、セイアもそう言うと、ナギサさんはじっくりと熟考する。
「…そう、ですね。ひとまずは、信じて見ることにしましょう。」
そう言うと、それを聞いたセイアさんは。ふむ。と言わんばかりに頷く。
「では、決まりだね。改めて、君をトリニティへ歓迎しよう」 - 92二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 23:04:08
(やっべ。やらかした。セイア襲撃って2年の時か…。今回の物語では3年になってから起きたとします。ごめんなさい)
- 93二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 23:57:39
分かりずらいからしかたないね
- 94二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 07:43:16
セルフ保守
- 95二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 16:22:31
詰められナギちゃん
- 96二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 00:59:02
その後、セイアさんの元で私は編入の手続きを行う事になった。
ミカさんとナギサさんは1度退出して、二人きりの状況となる。
「さて…では、手続きを済ませてしまおうか」
そう言うとセイアさんはテキパキと書類を処理していく。
途中、ふと思いだしたのか、セイアさんが語りかけてくる。
「そういえば、まだきちんとした自己紹介ができていなかったね。私は百合園セイア。ティーパーティのサンクトゥス派のトップであり、ティーパーティの現ホストだ。これから、沢山の苦楽が待ち受けているだろうがよろしく頼むよ。」
セイアさんは、これから編入するわたしへの言葉か、はたまた、先を見ているかのような言葉をかけてくる。
本人はあまり意識してないのか、思い出したように付け加えの内容を私に伝えてきた。
「すでに知っているかもしれないが、トリニティでは生徒会ティーパーティは3つの派閥のトップが集まり、議論することを特徴とした生徒会だ。リーダーの中でも、一時的に大きい権限を持つのが、今の私のようなホストだ。」
気にしていなかったが、ティーパーティの仕組みは、崩壊した世界ではナギサさんが1人で動かしていたらしいため、今日初めて知った。一般的な学校とは違い、3人で結論を出す。だからこそ、各リーダー1人では解決できない問題や、1人が独断で動いた時に生じる問題を解決できるのだろう。
…もしかしたら、会長も対等に話せる人間。ヒマリ先輩のような人が、隣にいたら、あんな結末は迎えなかったのかもしれない。そう考え、胸が苦しくなる。
そう考えている私の顔をセイアさんはのぞき込んでいた。
「…気づいたか。何か思う事があったみたいだね。しかし…その様子を見るに知らなかったようだね?」
全く…とセイアさんはため息をつく。 - 97二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 09:17:12
セイアに言われんの怖いな
- 98二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 17:38:06
二時間早いけど保守
- 99二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 17:55:21
「ミカから説明はなかったのか…。すまないね。ミカはこういう所は適当なんだ。何か不明な点があれば私に聞いてくれ。答えられる範囲であれば答えよう。」
そう言われるが、現状では特に聞かねばならない話はなかったので、その旨を伝える。
「…そうか。では、話を戻すとしよう。先ほど、ホストは他の2人よりも権限が強いと伝えただろう?君の編入については、ミカとナギサがずっと口論になっていてね。ミカは君を保護している身であるが故、必ず編入させようとしていた。ナギサも、先程の対話で察したとは思うが、彼女はだいぶ慎重でね。リスクの大きさを懸念していたのだよ。」
「…そうなると、平行線ですね」
そう言うとセイアさんは頷く
「全くだ。あの2人の言い争いはいつもの事ではあるが…この件が続くと、他の内容にも影響が出るだろう。そこで、議論の後、私が君の編入をホスト権限で取り決めた。」
そんな経緯があったのかと納得するものの、私の頭には1つの疑問が新たに浮かぶ。
「あの…セイアさんはなぜ私の編入に好意的だったのですか?」
そう聞くと、セイアさんは笑い、話しだす。
「ああ。確かに、トリニティにいなければ知らなくてもおかしくはないか。私はね、未来が見えるんだ。」
未来が見える?そんな事ってあり得るの、と半信半疑でその話を聞く。
「信じられないという顔をしているね。」
見透かされた。でも、セイアさんはさも当然と言わんばかりの表情をしている
「…無理はない。現状の科学では、説明のつかない話さ。」
まあ、推定ではあるけど、私が過去に飛んでいるんだもんね。そうなると…あり得なくはないのかもしれない。
「そんな摩訶不思議な話ではあるが、私の見た未来では、君はこの場所を守るために動いていたのさ。私はそれを信じているにすぎない。」 - 100二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 23:06:57
「だが…1つ気になる事があるとするならば。私の夢に君はつい最近までいなかった。それが1週間前、ミカが君を見つけた日。その日を境に君が予知夢に現れるようになったのさ。」
盲点だった。未来を見れる人間という時点で、この世界に元々いなかった存在、その差異に気づかれてしまう。
私は本来、この世界には存在しないはず、いわばバグのような存在なのだ。
これは詮索されてもおかしくはないなと、内心諦めかける。
「…やはりそう簡単には話せない内容かい?安心してくれたまえ。無理にはきかないよ。
君がトリニティの利になることが分かっている以上、度を超えた詮索は互いの不利益を生みかねないからね」
良かった。流石に未来からきたという事を知られるのはまずいから。
セイアさんの気遣いのおかげで何とか命拾いし、ホッと胸をなで下ろす。
「さて、そんな話をしているうちに編入の手続きが完了したよ。
歓迎しよう。ムスカリ、トリニティ総合学園へようこそ。これから共に進む仲間としてよろしく頼むよ。」
そう言い、セイアさんは用意した書類を手渡してくる。
「さて、ミカも君を待っているだろう。ここで1度お開きとしようか。」
セイアさんに案内され、出口へと向かう。
ドアを開ける直前、セイアさんが言い残していた事を伝えてくる。
「…恐らく、君は世の理を超え、新しい道を歩んでいるのだろう。苦しい道だろうが歩み続けてくれ。もし、それが辛くなった時は私に相談してくれ。世の理を超えた者同士、何か伝えられることがあるかもしれないからね。」
背中を押す言葉を受け、私は未来へと足を踏み出した - 101二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 07:41:39
頼れる人が増えたね!