- 1二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:45:34
夢のエネルギーをただのご飯にしちまう異星人!
ここぞとばかりに人類の覇権を握ろうとする大企業!
惑星(※地球じゃないよ)がヤベェ!!
……な「ここ3ロボSF」スレの裏スレ、設定スレです
次スレは>>190が建ててください
【出来れば読んでいただきたい世界観および初期設定集(テレグラフ)(各種ページへのリンクあり)】
ここだけ3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦うリアルロボットSFな世界あらすじ(とりあえずこれだけ読んでくれたなら最低限大丈夫な筈の簡潔にまとめた世界観)その1:どういう世界なの?
特殊なエネルギー鉱石「コア鉱石」を動力源とする人型歩行兵器「バディフレーム(通称:BF)」が兵器として一般化した高度な機械文明が築かれている、地球に酷似した惑星が舞台だよ!
元々は人類同士で細かい諍いとかはありつつもそれなりに穏やかな世界だったんだけど、本編から20年くらい前に惑星外性生物「インベイド」が隕石に乗って地表に飛来、どうやら上述のエネルギー塊「コア鉱石」がインベイドにとっては食糧として美味しくてたまらないらしくて、人類に敵対行動を取り始めたんだ!
必死に抵抗したんだけど、現在では地表のおよそ3~4割程が完全にインベイドがうようよ闊歩している危険地帯になっちゃって、そこから時々インベイドが攻め寄せて来る油断できない状況なんだよ……。
その2:で、今どうなってるの?
インベイドとの緒戦により人命を多く失いながらも、結果として「クロノス・インダストリー(通称:K.I社)」が世界を主導、地表や地下に「コロニー」と呼ばれるいくつかの居住拠点を制定してそこを中心にインベイドに対抗する様になったんだ!…00m.in - 2二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:46:43
前スレ
【R-18】ここだけ3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦うリアルロボットSFな世界part7【のんびり進行】|あにまん掲示板襲来した異星人!侵略されるエネルギー資源!存亡の危機に晒されてなお人類は……未だ一つになり切れず、壮大な内ゲバを繰り広げ続けていた!!【出来れば読んでいただきたい世界観および初期設定集(テレグラフ)(…bbs.animanch.com【禁止事項】
・無敵ムーブ(戦闘でダメージを受けない、回避し続ける、など)
・必要性の認められない確定ロール
・相手PLが嫌がっていることを強要する行為(特にR-18関連はデリケートなところなので扱いには気を付けて、事前相談忘れずに)
【世界観やパワーバランスを保つ上での禁止事項】
・版権設定の利用
・「地形を変えられる火力」を個人で設定し所有すること
・3勢力(K.I社、人自連、デスペラード)+インベイドよりも立場や規模が大きい勢力を設定すること
・なんでも高い水準で出来るキャラ、なんでも高い水準で出来る機体禁止(他の人の活躍機会を奪いかねないため)
・メタネタ禁止(「この世界は作り物だ~」や背後さんへの言及をキャラの目線で発言させるなど)
- 3二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:46:57
Q1:参加してぇ!けど事前のキャラ登録って必須なの?テンプレはある?
A1:キャラシはあった方が色々スムーズだとは思うけど、無くても規約的なNGムーブさえしなけりゃ参加はOKだぜ!
テンプレらしいテンプレは特に無い(めんどうくさかった)からテレグラフなりで各自好きな様に書きたいこと書いてくれ!
↑の初期設定集から飛んだ先にあるスレ主のキャラシからテンプレとして項目を引用しても大丈夫だぜ!
Q2:キャラは1参加者につき何人まで?
A2:何人でもOKだぜ!複数陣営あるし下手に制限設けたらスカスカになるのが目に見えてるから……好きな様に作ってくれ!
Q3:コテハン(トリップ)は必須なの?
A3:必須じゃないぜ!でもトリップが無いってことはなりすましや乗っ取りが出ても判別方法が無いってことでもあるから、自衛手段としてコテハンを持っておくのは無難だぜ!
Q4:スレタイにR-18表記があるけどエロスレなの?
A4:一般誌のエロ描写とか元ネタ一般作品のエロ同人好き? 俺は好きなの……
エロメインじゃないけど「エロいことも割と自由に描写して良い」スレだから苦手な人がミスッて踏まない様に一応表記しているぜ!
「猥談耐性はあるけど自キャラにエロルさすのはなぁ……」って人でもOK、「自分は露骨なエロやりたくないです」って言っておけば良いぜ!
Q5:設定集に目通したけどなんか既視感ある設定ばっかりだな?
A5:へへっ - 4二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:47:20
【テレグラフ(設定やキャラシート、R-18な文章を書いたりにどうぞ)】
h ttps://x.gd/mv4zw
【URL短縮用サイト(テレグラフのデフォルトURLだとあにまんのNGワードに引っ掛かってしまうのでこちらでURL短縮してから投稿してください)】
h ttps://x.gd/#google_vignette
- 5二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:48:52
この世にはまだ見ぬ強者が居る
- 6二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:49:31
それは光を浴びていようが闇に呑まれていようがどこでも同じ
- 7二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:51:15
そう、陰と陽である
一方に強者が現れると、それに呼応してまた一方も現れるのだ - 8二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:51:50
じゃがしかし、もう間もなく均衡が乱れようとしておるな……
- 9二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:53:28
であるならば、それを修正する者も現れるはずじゃ
これもまた、陰と陽
この世の絶対的道理じゃ - 10二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 18:56:40
さてと、ぐだぐだ言っておる内にこの“ホシュ”とやらも焼けたの
そしたらワシメシ、またどこかで逢おうぞ
この“3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦う世界”でな - 11リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/09(水) 19:42:24
前スレ198
【粗悪な紛い物を混ぜた商品棚には目もくれずに物色を続ける。ときどき、これか!と思って手を伸ばすが、ハズレ。肩を落としながら歩を進めるたびに、周囲の景色は複雑になっていく】
(何かワクワクするわねー。こういうダンジョンってコロニーには無いし。やっぱり冒険は大事だわ。脳が活性化する感じがするもの)
「これでBGMが流れ出したら最高なんだけど……ねぇ、そう思わない?」
【くるり、と身を翻して後ろに屯する荒くれ者たちへ気さくに尋ねる。リアルでのアクションは久しぶりだなぁと思いつつ、頭を回して、義体を操作する準備に入った】 - 12ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/09(水) 19:56:56
前197
うにゃあ…!
「おお…!」
【デスペラード時代には遠くから眺める他なかった「高い建物」、エレベーターに次ぐエレベーター…アサド一家の心は踊りっぱなしであった】 - 13ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/09(水) 20:12:08
- 14ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/09(水) 20:33:06
- 15ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/09(水) 20:49:30
- 16ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/09(水) 21:06:53
- 17二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 21:31:11
このレスは削除されています
- 18ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/09(水) 21:37:07
それじゃ俺は……
醤油ラーメン 大盛りでチャーシュー多め
小龍包を5つ
ご飯大盛りに東坡肉を
『私はご飯と青椒肉絲を』
【特別に用意してもらったチャイルドシートに座っているルゥルアは、隣のウェイトレスを興味深そうに見る】
そうだ、そこの“社長”には温めた牛乳を
それで以上だ
「承りました。それでは少々お待ちください」
高級中華料理店によく流れている曲 【中国語 曲】中国古典曲10選 リラックスBGM 精神集中BGM
「どうぞ、フカヒレと、小龍包5個と、拉麺、白御飯、東坡肉と青椒肉絲、そしてこちらの方には牛乳でございます。北京ダックにつきましては、もうしばらくでございますゆえご了承ください」
さささ、熱いうちに食べちゃってください
ついでに小龍包も好きなだけ取って取って
- 19二次元好きの匿名さん25/04/09(水) 21:42:36
このレスは削除されています
- 20ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/09(水) 21:42:54
- 21アリソン◆PPyRfvMZl625/04/09(水) 21:43:04
『勘が良いんだな、姉ちゃん』
【一人、二人、……七人、八人、と物陰から姿を見せる体格の良い男達、それは見るからに穏当な連中ではない】
【その上ただのチンピラという風情でも無く、隆々と盛り上がった骨格は過剰に暴力的、剥き出しの腕や肩、背中に彫られた弾頭の刺青は揃って場慣れした気配を漂わせており】
【戦い慣れ、襲い慣れた連中だ、例えばそれはデスペラードに通ずるものがある】
『勘が良いついで、言いたいことも分かるだろ?
金目の物を置いて行ってもらう、着てる服もだ、多少は動ける自信があるから煽ったんだろうが、この状況じゃ流石に分が悪いんじゃねぇか……』
「────────────だせェことやってンなぁ“バンカーズ”、最近表で見ねぇと思ったら、アングラ引っ込んでカツアゲかよ?」
【集団の真ん中に立ち、いかにもリーダー格と言った気配を放つ両手鉄指スキンヘッドの大男が、その鉛の関節を威圧的に軋ませながらリンゼイの方へと一歩歩み寄り、脅迫する────────────】
【それを遮ったのは、丁度男達の背後の空間、リンゼイが通って来た路を辿る様に姿を見せた】
【黒と、血の様に真っ赤な赤の混ざった髪、鋼の義肢を持つ女だった】
「あぁ、さてはBFの修理費用がとうとう底を尽きやがったな?馬鹿みたいに全員で突撃するしか芸が無いからだよ」
- 22ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/09(水) 21:44:35
- 23ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/09(水) 21:47:05
- 24ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/09(水) 21:58:50
- 25龍影25/04/09(水) 22:21:29
一つの依頼通知で龍影は目を覚ました。
隣で寝ている少年は今日は居ない。ベッドから降りて出撃支度を終え、家を出る。
「行ってきます。」
『作戦を説明する。雇主はオルスタイン。目標は、アイナナ軍港に駐留するK.IのBF部隊だ。
弾薬費は依頼主持ちになっている。
撤収命令があるまで、好きなように暴れてくれ。
敵部隊の損害が大きければ、それだけ報酬も多くなる。
未確認だが、軍港内で中規模のストラクチャーが調整されているとの情報もある、もし本当であれば、特別報酬の対象だ。
逃がすなよ。…こんなところか。
連絡を待っている。』
望月の中で再生したのを聞きながら心を落ち着かせる。 - 26ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/09(水) 22:58:13
- 27ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/09(水) 23:16:06
- 28龍影25/04/09(水) 23:44:17
- 29逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/09(水) 23:50:23
(時系列が幾つか前後して)(逆巻重工・本社)
『CEO、そろそろ記者会見の準備が終わりますよ』
「ん? ああ、おっけー……ちょっとまっててね」
逆巻重工の本社にて、記者会見の準備が進められていた。
既に記者グループは会見室に集っており……中には傭兵や、人自連企業の抱える御用記者なども数多く存在する……今か今かとその開始を待っていた。
対インベイド戦争初期から人自連に参加していた逆巻重工……だが彼らが人自連に求めたのはクロノスへの対抗というよりも、インベイドとの戦いへの団結のためである。
自主独立というものは大事だ。それを守るために集まったのなら、その力を抑止にするのも良い。
だが。その抑止のための戦力を持っていてなおインベイドを無視し、クロノスと戦うとなればそれは少し話が違うだろう。となるのが逆巻重工の感覚だった。
ここに、人自連が『多頭の獣』と呼ばれる所以がある。
結成初期に集った逆巻重工やその他企業達の間でもそうだが、そしてそれ以外でも温度差が極めて激しいのだ。
その中でも対インベイドに基準を割り振った企業が、記者会見を起こす。
注目されない理由など存在しなかった……クロノスですら、傭兵を介して情報を得ようとするだろう。
それで良い。とカンナは一人笑っていた。
「さ、それじゃあ始めようか……皆の度肝を抜かせてやろう」
記者会見が、始まろうとしていた。 - 30ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/09(水) 23:55:16
- 31ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/10(木) 01:10:29
ハッハッハ ここの飯が気に入ってもらえたようで何より
本当に遠慮せず食べちゃってください
(……明日から正念の見せ場がたくさん、それは数え切れないぐらいにあるからな)
【暖かい光に包まれ、温かい飯を囲み、肌寒さの残る夜は過ぎて行った】
【彼らにとって、穏やかで刺激的で怒涛で悠閑な2日間であった】
- 32リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/10(木) 07:44:17
(うわ、思ったより多い……。これはバトルじゃなくて、パルクールの方がいいかな)
【コロニーでは映画や漫画の中でしか見ないような輩の登場に、リンゼイは内心で冷や汗をかく】
【自分は義体操作にもハッキングと同じ比類なき才能を持つと自負しているが、戦闘訓練を積んだ回数はハッキングと比べると少ない】
【これは逃げたほうがいいなと、迫る大男の頭を踏みつけて飛ぼうとした瞬間─────】
(え、何?)
【先ほどまで歩いていた薄汚い道が、まるでレッドカーペットのように思えた。輩共の無駄に大きな威圧感が薄っぺらく感じられる】
【アクション映画の主人公 (ヒーロー) のような風格を引っ提げた女が、そこにいた】
- 33龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 07:59:04
[光学で確認!…オリジナルアーヴィング?!]
[拍子抜けじゃねぇか!相手はただの骨董品だ!進化の現実を叩きつけてやるぞ!]
敵は陣を崩して動き始めた。半円に組み直してマニュアル機のパイロットの処理を潰す為の複数弾種による時間差飽和攻撃。現在の対飛行型BFに用いられるフラットシザース(流動的に囲い込み、飛ばれないように頭を抑える陣形)の雛形ともなった古き良き対月風戦術である。
「あの動き方は…敵の過小評価は泣きを見るよ。」
刹那、望月は音を置いて姿を消した。レーダーには突然跳ねるように機影が移動しただろう。
[なんだ今のは!]
[報告にあった改造型か!]
[だがあんな機動だ!すぐに潰れる!]
半包囲陣形を一瞬で抜けられた敵は混乱している
龍影は左ハンガーにビームライフルを懸架してまだ立て直せていないBF部隊へ近づく。
[うっ…うぁぁぁぁ!]
一機のソルジャーカスタムが取り乱して掃射を始める
望月は踊るような機動で肉薄してサキガケで切り伏せる。
「次。」
ダガガガガッ!
放たれた弾丸は左腕のリフレクターフィールドで弾く。
[防護膜?!クソッタレ!]
望月を撃ったスレイガンのカスタム機…おそらくここの部隊長であろうソイツはマシンガンを捨ててビームサーベルを抜き放ち接近してくる。
「遅い…」
龍影はガッカリした。K.Iなら望月でもヒリついた戦いをしてくれるだろうと期待していた。だがこの程度。ちょっと小突いたら隊長機が近接を選択する。練度が低い。
ギャルン!
黒い月風は背中を蒼白く光らせて姿を消した…次の瞬間にはスレイガンの背中から一突きしている。
[あっ…あっ…うぁぁぁぁ!]
その動きを見た残りのソルジャーカスタムは恐怖して逃げようとした。
1つ、また1つと望月は不気味なブースト音を置き去りにしてBFを切り伏せる。
軍港から離れようとしている艦艇には左ハンガーのビームライフルを抜いて2発。
弾薬庫に誘爆させて破壊する。
ふわりと空に踊り出て艦艇を破壊していく。
海の水面が炎の白橙色と重油の気持ち悪い鈍色で染まる。
- 34龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 07:59:47
- 35龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 08:14:50
輸送機に速度を合わせて望月は収容される。
【冗談みてぇな戦果だな!チャオレンでもここまで出来ねぇぞ!】
格納ブロックに居た整備員達は化け物じみた戦果に鼻息を荒くする。
「最高の気分よ。私の身体みたいにこの子(望月)が動いてくれるもん。」
コックピットから出て、龍影は笑顔で語る。その姿は初期の月風乗りが着ていた加圧パイロットスーツである。義体とはいえ色々ガタの来ていたモノだ。いくら戦闘義体の龍影とはいえ流石にあんな化け物のような機動に耐えれるか不安だったため着ている。
「ブリーフィングで居るかもって話の中規模ストラクチャーは見なかった。そっちだと観測できた?」
戦況観測をしていた1人に聞いた。
「いえ、光学と熱源には。音響は姐さんが暴れ回ったせいでわかりません。」
…となると潜水できるのかもね…言葉には出さなかった。
- 36二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 10:04:39
このレスは削除されています
- 37逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 10:11:25
「さて皆。私達が突然記者会見を行うことを宣言して、驚かせてしまったことをまずは謝罪しようか」
記者会見の一声はそう記録、中継されていく。
その後続くのは社交辞令と、儀礼的なもの。 こういうのを怠った企業から『舐められる』のだ。
・・
「一部の『歴史ある方々』からすれば、誰かがまた私達の地雷を踏んだのか?と思うかもしれないが……」
「安心して欲しい。そのような侮辱を受ける事態は今のところ、受けていない。クロノスからもね」
その言葉に、何人かの御用記者が安堵の息を吐いたのをカンナは見逃さない。
・・・・・
彼女たちにとって、逆巻重工こそが新しい国家。
そして『建国神話』を侮辱、あるいは歴史なんだから知らなくても良い――――と宣った者たちへ逆巻が取った対応は苛烈極まる。
――――人自連内部規定に則り企業間抗争を宣言。その後3日という民間人避難期間を設け、当該企業本社都市への侵攻を宣言。
・・
――――当時の逆巻重工が保有する実働部隊、『月風』72機稼働全機……青天市街に駐留する教導部隊までも参加した!……と逆巻重工が雇った傭兵たちがあっという間に襲いかかり。
当該企業防衛部隊と傭兵を圧倒、制圧……謝罪の言葉を引き出すまで、BF生産に必要な工廠を破壊し始めたのだ。
謝罪の言葉を引き出した瞬間、彼らはぴたりと攻撃をやめ撤兵。 企業間抗争の終了を宣言。
『同じ人自連なのに、そこまでやるのか!?!』と誰もが慄く行為だったが、逆巻重工からすればそれは当然の行為である。
――――我々は国家なのだ。 国作りの神話を侮辱したものに対して、許しの言葉を引き出して許しただけ寛容と思え。
本当ならば根も葉も残さず焼き尽くすまで止まらぬつもりだったのだ。
当時の先代とカンナはまさに怒れる竜の暴威そのもので。
「だから、今回やることは企業間抗争の宣言じゃないよ」
その記憶を想起してしまった者たちを安心させるよう、優しい言葉を出す。
「さて、皆に質問をしてみよう――――君たちにとって、月風ってどんな機体だったかな?」
本命の言葉を、記者会見をホログラムや映像を通して見ている全員に問いかけていた。
- 38龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 10:20:20
- 39アリソン◆PPyRfvMZl625/04/10(木) 10:24:56
『……アリソォン、てめぇにゃ用はねぇんだ、引っ込んでろ』
【スキンヘッドの顔貌が、苦虫を嚙み潰したように歪む、それだって生半可な連中ならば縮み上がりそうな威圧的な表情だ】
【連れ合いの男達もいつの間にか、じりじりと女を囲う様に立ち位置を変えている】
【けれど、頭上から降り注ぐそうした視線にも赤黒髪の女は怯む気配一つ見せない、退屈そうな、白けた様な表情はこの状況にあって妙に印象的なもので】
「引っ込んでろ、って言ってもなぁ、アタシの道を妨げてンのはそっちの方だろ。
まぁ別に、それはどっちでも良いんだけど────────────」
【鼻先が掠める程に接近し、女の胸ぐらを……いや、その豊かに主張する乳房を無遠慮に掴む、スキンヘッドの部下である金髪のチンピラ】
【ぎゅむ、ぐむ、と、女はこうすれば大人しくなるだろうとばかりに揉みしだかれても】
【咥えた紙巻煙草が揺れる速度は、一定】
・・・・・
「────────────なぁ、気ィ付けろよ、踏んでるぞ」
『……あ?』
【とん、とん、女の右手指が金髪男の足元を指す、釣られて落ちた視線の先には、何も無────────────
────────────ガコォン!!!!!!!】
『ぶべぁっ!?!???!?!?』
【……眼下より、打ち上げられた左拳、ギラギラと輝く鋼の義肢は金髪男の顎を一撃で砕き割った】
・・・
「踏んでるぞ、虎の尾」
- 40龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 11:17:20
扉が閉まってロックがかかった。途端に膝から崩れ落ちて龍影は荒く咳き込む。
「ゲホッ!ゴホッゴホッ…」
びちゃびちゃと口から鮮血のような鮮やかな赤色の体内循環液が溢れる。
艶もなく、病的な喘ぐ声が仮眠室内の空調の音をかき消す。
視界がボヤける
声が聞こえる。聴こえる?この部屋はプライベートカットされているため内外両方の音は聞こえない。幻聴だ。
「在这样的时候CPS…感情…!」(こんな時に発作なんて…ご機嫌ね!)
龍影は震える手で自己注射を握り頸静脈に打つ。
ボヤけた視界は徐々に戻ってきて、震えは止まる。耳鳴りにも似た幻聴も止む。
荒い息遣いで床に花開いた自らの吐瀉物を見る。それはヘモグロビン由来の赤色では無いためこの艶やかな赤は黒ずむことは無い。
「そろそろ…更新かしらね…この体も…」
G-3での戦闘による過度なストレスに由来するのか、望月側の神経接続は完璧だが義体の方でエラーを吐くのか理由は分からなかった
- 41逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 11:28:02
誰かが、手を挙げた。 逆巻カンナは記憶をたどり、彼女が所属する企業を脳内でたどる。
確か……対インベイド戦争とBF開発史を書籍として販売している企業だったか。 可能な限りの公平さが特徴だ。
どうぞ。とカンナは手のひらを向けて許可した。
『初期インベイド戦争時代の名機、マニュアル偏重のエース仕様……でしょうか』
「ふふ、忌憚なく言ってくれ。 君なら構わない」
カンナは穏やかに笑った。
『では……パイロットへの要求技量が極めて高い、問題児でもあったかと』
『今となっては、カビの生えた旧式機や、その……アーヴィングフレームのオリジナル。とも認識が広がっています』
「あはは。産んだ覚えのない忌み子の原型って言われてもこっちは困るんだけどね」
その言葉に、カンナは何度も頷いた。 全て正しい。全てだ。
良い評価も悪い評価も、そして腸が煮えくり返るような怒りも屈辱も全て正しい。
素晴らしい記者だ。 カンナはそう確信した。
『そして ”青い月風乗り”……”撃墜王”の戦場伝説!! 彼についても、他のインベイド殺しの月風乗り達についても!聞きたいことがたくさんありますが……っ。抑えます』
「ありがとう。さて、皆もこの認識で間違いはないね?」
ぐるりと見渡して、異論なしを確認する。 会見の外側で意見が渦巻いていてほしいな、という願望はあった。
カンナは己の質問に一気に答えてくれた記者の評価をさらに一段階引き上げた。
後で彼女の企業が作る書籍も買おう、と決断した。
「ではそんな、"カビの生えた旧式にして欠陥機"をいつまでも作る企業から――――新型機が出るよ」
カンナが手を背後のモニターへと向ける。
「これが私達の送り出す新型……『Cv-A8 RENGETHU(廉月)』だ。仕様については手元の資料をどうぞ?」
画面に、その機体映像が流れていく。
- 42二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 11:38:19
このレスは削除されています
- 43◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 11:38:21
「姐さんの乗ってたやつはこれのカスタムモデルだったのか。」
「てっきり姐さんの要望に合わせた近代改修版の月風だと…」
テレビ会見を食い入るように観ている、龍影を"姐さん"と慕う整備員達は呟きのような感想を口々に言った。
「コレがあるならアーヴィング隊を更新できるかもな。」
「やめてくれよ、誰が整備するんだそんなピカピカ隊」
冗談も飛び交い、和気あいあいと話していた。
- 44マルタ◆KPwoT407kA25/04/10(木) 12:02:51
わーすげー!どっちのBFも見た事ねー!!
「流石に物覚えが悪すぎるわよ…初期インベイド戦争のカリキュラム習ってるなら月風の名前くらい嫌という程目にするでしょう」
…………そうだったっけ?
「座学弱者…」
【アスガルド・アカデミー内食堂。そこに併設されているモニターには今日は珍しく他企業の様子が映し出されており、マルタとシグレの2名は相席でそれを眺めていた】
「ま、機体概要を聞かされた所で私達とは縁遠い話なのは確かよ。それでも見せようと上が判断したのは…将来的に敵になるかもしれない機体の敵情視察をできるようになれ、って事かしら?」
「…まったくシグレ殿は自分から敵を作る事ばかり得意なのは相変わらずでござるな」
【その会話に第三者の声が混じる】
デッシー!?
「デシレア・ハッセルブラード…!」
「やあやあやあ、どちらも健勝で何よりだ問題児共」
「そちらこそそのおかしな言葉遣いはご健在のようで。座学で操縦スコアのパッとしなさを補ってる劣等生さん」
「ござァ…?!」
「なによ」
あの〜…喧嘩なら何時でもやれるんですから今はこれ見るのに集中しません2人とも?
【会見そっちのけで一触即発の雰囲気となる中、それをマルタが制止した】
「…………然り、もとよりそれが目的でおぬし達に声をかけたのだ。あ、隣いいでござるかマルタ殿?」
いいよ〜
「なら一々第一声から喧嘩腰でやってこないでよ、煩わしい…」
シグレさ〜〜〜ん???
「…なんでもないわ」
- 45逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 12:10:57
『何だ、これは……!?!』
『推力が、月風を超えている!? ……コックピットシートの耐G機構も更新されてるのか!』
あちこちから聞こえる困惑、驚愕。
それらを聞きながら、カンナは己の声を発することにした。
「資料を見て分かるとおりなんだけど。本機の特徴は機体操縦系の既存機体と同じく、自動化を進めていることだ」
「つまり、理論上。 誰でも月風を操れるようになる。既存機からの機種転換も容易だ」
『そ、そんな馬鹿な話が……』
あるか。と誰かが呻いた。祈るような声だった。
『い、いやちょっと待てよこれ……機体各所に小型のコア粒子推進機関……?! どれだけ運動性に拘って……』
『部品点数も削って……コストダウン……?』
『左肩へのハンガー増設は……まぁ常識的な判断、か』
『月風と同じ構造のシールド外縁に、展開型電磁振動カッター……?』
いいね。とカンナは頷いた。
ちゃんと仕様を見てくれる者たちはどうやら、自動化された月風を操縦できるという前提の上で、さらに廉月そのものを見てくれている。
- 46エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/10(木) 12:56:03
前スレ191
「えぇ。先ほど申し上げたように、私の目的は貴方との会談ですから」
【今も恒例の予算争奪戦に良く補佐役として伴わされ、新機体の製造過程で使い倒された経験から、エイダンは彼の凝り性を良く理解している】
【『BESTIA』の改修にスレイガン・フレームが最適と判断した以上、彼は必ず解析に取り掛かり、それを完了させる】
【リニアキャノンについても同じだ。物理に偏った兵装はパイロットの意向だろうが、故に彼はそれを最大限叶えるために力を尽くす。我が子を活躍させてくれる人間が、フルパフォーマンスを発揮できるよう、環境を整えるのが開発者というものだ】
【どうせ遅かれ早かれ暴かれるなら、先んじて明かして知見を伺い、後に活かした方が良い。それがエイダンの考えだった】 - 47逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 13:21:35
『これは……まさか。SHINSEIやスレイガンを仮想敵に……?!』
『んなわけあるか!! 滑空砲や高速速射砲とかあるの見ろよ!!どう考えても対インベイド用だ!』
『最新の機械工学と、自動化された操縦機構の合わせ技……逆巻CEO。質問が』
「どうぞ」
手を挙げたのは、この会見にあたって参加を要請したヴァルハラテックの技師。 仕込みだ。
『自動化と一口に言っても、それは様々です。 特に現代のそれは、動作や照準パターンなどの複合と言えるでしょう。
――――単刀直入にお聞きします。
廉月へのモーションパターンは……月風では流用しきれないのではないでしょうか?』
そう。そこが課題だった。 『廉価な月風』などと口々に言いながら、逆巻重工は本気を出していた。
その結果、新型の背部コア粒子推進機関や機体各所のコア粒子推進機関、左肩へのハンガー増設対応などには、廉月を試作した上で新たなモーションデータが必要だった。
――――本来ならば。
「――――その答えは、君たちならもう何度も見たことがある機体だよ」
カンナは笑い。 新しい機体映像を映し出すと、会場がどよめく。
「Cv-k7改『蒼風』……この機体のデータは、廉月に流用可能だと判明したのさ」
G-3コロニー攻略戦。そしてソドム奪還作戦の折に、最前線で孤立した三勢力を団結させ、希望を見せ、常に先頭を走り続けた月風のカスタム機。
表の大舞台への露出はこれが始めてだからこその、インパクトだった。
「あの機体には、廉月と同じ新型の背部コア粒子推進機関が搭載されている――――それも、リミッターが外されたものだ」
「彼の機体のモーションデータすべてを、廉月にパッケージすることが可能になった」
――――そんな馬鹿な!?! という悲鳴が上がったのを見て。カンナはしてやったりと笑った。
まだ、爆弾はあるのだと。
- 48デュラハン◆xZJxX8ZGsA25/04/10(木) 13:22:14
【挑発的とすら言っていいデュラハンの態度に対しても、ただ真っ直ぐに答えたエイダン。それに何を感じたのか、デュラハンは沈黙し──】
《いいと思うよ?》
【エイダンの後ろから、目の前に居るはずの人物の音声がした】
・・・
《どうせ彼はもう僕たちのやりたいことを知ってる。それに今、僕たちには時間が無い》
《クロノスに巻き込まれる可能性を考慮しても?》
《いやいやいや、まさか。彼は最初から、菓子折りを持って個人的な会談に来ているんだ。玄関で止め続けるのは、客人に失礼じゃないか》
【新たに現れたデュラハンが、エイダンの事を迎えていたデュラハンを諭す。その喋り方は変わらないものの、これまでのピリついた空気は霧散していた】
【デュラハンは既に過去を捨てたが、しかし在り方は変わらない。寧ろその在り方に純化するために、自らさえも捨てたのだ。もし捨てた過去が捕まえようとしてきたのであれば切り捨てるつもりだったが、眼前の彼はデュラハンの在り方を理解していると、行動で示している】
・・・・
《というわけで改めて。僕として歓迎するよ、エイダン》
【ならばそれを、新たな出会いとして受け入れることになんの不満があろうか。デュラハンはその右手を差し出すことにした】
- 49デュラハン◆xZJxX8ZGsA25/04/10(木) 13:38:03
【デュラハン・ファクトリーの地下、現在客人を二名迎えている店内からは離れた裏側で、デュラハン二名が並んで液晶画面を見ている】
《どうかな?感想は》
《意外だね、物理武装を増やすとは》
《僕としては月風の方が面白かったけどね》
《いやいや、あれは素体だよ》
《月風に可能性を与えた、と?》
【液晶に映るのは逆巻重工の会見。そこで発表された機体を品定めするように、彼らは話し合う】
《目的は粗悪品(アーヴィング)の駆逐…と言ったところかな?》
《月風に匹敵するシェアを再確立できれば、椅子取りゲームでも有利になる。そのための一歩とも言えるはずだよ》
《そこの僕たち?客人をこっちで迎えることになるから、よろしく》
【液晶を見ていた二名の元に、三人目が現れて伝える。予定より早く終わった休憩に文句をつけながら、デュラハン達は立ち上がった】
- 50逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 16:02:58
『月風を本気で超えやがった』
誰かがそう呻いた。 G-3コロニー攻略戦に於ける蒼風はまさに、こうあれればの体現と言ったところか。
必要な機材に、モーション。そしてパイロットの全てを自社で賄えるという、古参企業への嫉妬か。
(まぁ、どちらでもいいさ。私達には話すこともある)
そう思って、口を開こうとした時に。控えめにドアを開けた逆巻重工のものが、カンナの耳へ情報を入れる
「CEO。――――」(情報の内容:>>33 >>34 >>35)
「――――なるほど。ありがとう」
(龍影さん。やったのか……義体をちゃんとしたのに変えてからやってほしかったんだけどなぁ)
単機による初戦果にしては極めて上等な結果がカンナの耳に手に入って。頷きながらの笑みを維持するしかなかった。
「さて、皆。そろそろ廉月の強さに関しては納得できたと思うけど……パイロットの問題があるよね?あとはそう、拡張性とか、カスタマイズ性とか……気になるだろうから、今後の展開を教えるよ」
そう指折りをして、カンナは己に意識を向けさせる。
「私達は、ヴァルハラテックの協力もあり……桜空の陽電子リフレクター技術、並びに神経接続型半思考制御技術を復刻させることに成功した。未だ高コストなので、量産配備には遠いが……知見は既に得られた。 続報を待って欲しい」
つまり、今後の逆巻重工機なら、それらのカスタマイズの恩恵が得られるということ。
「そして、これらのこともあり。初期ブロック以降の廉月にはヴァルハラテックの神経接続型操縦とも互換性をもたせる予定だ――――ぜひ彼女らの機体と合わせて、廉月の今後にご注目ください」
笑って、言い切った。 『……は?』という、誰かの顎が外れた声に、してやったりと思いながら。
- 51マルタ◆KPwoT407kA25/04/10(木) 16:30:24
「「え」」
【2人の素っ頓狂な声が食堂に響く】
最近見ないと思ってたら博士そんな事してたんだ?
「この会見をここで映したのもそういう仕込みか…それにしても何を考えてるのかしらミカエラ博士は!ヴァルハラの技術アドバンテージをわざわざ投げ捨てようだなんて…」
「彼らなら信用しても良い、そういう判断からの技術供与だろう。現にこの会見、廉月のついでに我々のせーるすまでこなしている」
【困惑する問題児コンビに対し、うむうむとどこか納得したように唸るデシレア。シグレがその様子に噛みつかない訳もなく】
「…まさかこうなる事を予想出来たみたいな口ぶりね、劣等生さん」
「これでも拙者、おぬし達と同じく試作機の運用を任命された故。その機体のぶぅすたぁと、先程の青いえーす機の構造に共通点が見られた。当に繋がりが出来ていた他ならぬ証拠だ」
「…貴方が試作ワーグナーを?」
デッシーも今後一緒の作戦に出られるって事!?嬉しいような身内ばっかりで気が締まらないような…
「うむ。まあそれはそれとしてだ…奴ら、本気で人自連の勢力図を塗り替えるつもりでござろうな」
「ミカエラ博士もヴァルキリー完成にかまけてはいられなくなりそうね…データ取りと称して、私達を駆り出す機会も増えるかも」
【マルタだけが事態を把握しきれず、頭に疑問符ばかり浮かべている状況下で、2人の生徒は神妙な面持ちで見入っていた】
- 52逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 16:44:43
「さ。記者会見としてはこれがラストの情報ね。 私達は既に試作機の開発段階を終えて……廉月の初期ロット三十機を自社の実働部隊に配備し始めているよ」
「これからはパイロットの適性なども見つつ、月風と廉月の二機種運用になるかな」
最後にカンナは、『分かるものなら分かる』という暗喩を仕込んだ。 月風と廉月の二機種運用、という点だった。
「様々な傭兵たちがいらっしゃると思いますが、廉月は自慢の機体に仕上がりました。 月風には手が出ない……という方々にもお求めやすいはず。 アーヴィングフレームのうち、戦闘用の『ヤモリ』に乗っている方々はぜひ、乗り換えを検討してください」
「それじゃあ、皆さん。最後の質疑応答の時間です。 有意義に使いましょう」
その後、幾つかの質疑応答の中に僅かな悲鳴などが上がるなどもあったが。廉月の生産配備開始という重要情報を話しきったカンナの表情に満足感が満ちている。
(ただの繋ぎ、程度に思ってたんだけどね)
(さ。これを終えたら、龍影のところに義体を渡しにいかなくちゃ――――)
きっと喜んでくれるだろう。 そう思いながら、彼女は記者会見をつつがなく終えた。
その外側に、大きな大きな渦を巻き起こして。
――――これは、"三勢力が入り乱れ惑星外生物と戦う世界"の物語である。
- 53リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/10(木) 17:01:39
【砕け散った骨と歯の白い欠片が入り混じった血反吐を撒き散らして、金髪男が倒れ伏す】
【ドサリ─────それが開戦の合図になった】
『ゴルドーッ!!』
『こンのクソアマがぁっ!!』
【こんな連中にも仲間意識があるのか、チンピラたちは一様に怒りで顔を赤くしながら女に飛びかかる。しかし、リーダー格であろうスキンヘッドは動かない】
『てめぇ、この女がどうなっても─── ッ』
【なるほど、人質を取るつもりのようだ。放たれた銃弾の如き五本指がリンゼイの肩を掴もうと迫り……
「残念♪」
『っな!?』
空ぶった】
【四肢に巡る体内循環液を沸騰させるつもりで駆け、前につんのめった大男の小さな丘ほどはあろうかと思える両肩へ足を乗せる。柔らかそうな見た目からは想像もつかない硬質な感触から義体であると察する前に、その禿頭へ銃口が突きつけられる】
「最初は踏み台にしようと思ったけど、やめた!!こういうのは派手にやるのがセオリーでしょ?」
【日の光を受けて黄金色に輝く銃身、側面に『GORGE』と刻まれたリボルバー。これだけなら、若気の至りで買った玩具だと揶揄できるだろう】
【その玩具が、全長300mmを超す巨大でなければ。だが】
『まっ』
「BANGG!!!」
【この星とよく似た世界で S&W M500 と呼ばれた巨大拳銃が、撃鉄を起こした】
- 54陸上戦艦の甲板にて◆OXAm1h6odk25/04/10(木) 17:03:04
「────────────────────ウチのCEOは今頃大慌てしている頃か?」
「違いない。元から逆巻重工をクロノス側を考えているんだ。今回の発表でその逆巻重工の勢力が拡大しかねないってなると、そりゃあ大慌てだろ」
・・・・・・・・・・・・・・
「ハッ。折角の対インベイド用ストラクチャーを、企業間戦争にまで持ち出さなきゃ良いんだがねェ……………………俺達からすりゃあ、強い味方が増える分には歓迎なんだがなァ。“月風”だろ?ガキの頃に助けられた事がある」
「“砲門一つ当たり”の火力は、ストラクチャーには及ばない。厳密には対インベイド用ストラクチャーではないと屁理屈を付けるかもしれんぞ」
「そン時はどうしようもねェな、出来る限り可能な範囲でサボタージュをするしかねェだろうよ」
【『ARATAME』を操縦するパイロットは、巧みに機体を動かして肩を竦める動作をした。神経接続式でもない機体を自在に動かせるには技量の証左でもあったが、冗句の為だけに使うのは技量の無駄遣いであろう】
【対クロノス強硬派人自連企業の実働部隊だ。彼らは今、陸上を駆動する鋼鉄の巨獣の看板の上で記者会見の内容を聞きながら哨戒を行っていた】
【────────────────────投射機級のプラズマ弾が放たれて、艦船の装甲によって止められる。直ぐに放たれた艦載砲の反撃の砲撃がインベイドの群れに穴を開けた】
【矮小な突撃兵級や射撃兵級が巨獣の前進を前に、尽くが踏み躙られる。バディフレームを並べて漸く埋まるであろう大きさの戦艦の轍が大地に深い傷跡を残して、艦載砲が続々とインベイドの群れに砲撃を行って勢力を削る】
【陸上戦艦に備え付けられた艦載砲の一門一門には対インベイド用ストラクチャー程の火力はないが、無数に建ち並ぶ姿を見れば其れらの巨大兵器類とは然して変わりはないと理解できるだろう】
【山も、川も、陸上戦艦の進撃を止められない】
【規格外の暴力こそが権力と権威を保証するのだ】 - 55龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 17:08:16
アウトサイドへ帰投した龍影は疲労感に襲われた。頭はスッキリとしているのに体が重たい。義体が重たいのはそうなのだが、精神的な物なのか、普段の疲労感とは質が全く違った。
「姐さん、月ものっすか?」
整備員の茶化す言葉に反応できる元気もない。
「…姐さん、緩和剤投与は?」
異変に気づいた整備員は龍影に確認した。
「76分前、機内の仮眠室で…症状は視界異常と吐血、それと幻聴。投与直後に症状は緩和…無理なんてするものじゃないわね…」
龍影は少しふらつくも、立て直し、答えた。
「…肩貸しますよ。」
「そうさせて貰うわ。」
龍影は整備員の肩を借りて自宅へ戻る。
(今の姿をケイが見たらなんて思うかしら…)
そんなことを考えながらゆっくりと歩く。 - 56ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 17:21:33
- 57金龍◆ncKvmqq0Bs25/04/10(木) 17:42:07
- 58龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 17:46:58
「わぁお…」
必要な物は揃えてやる。と言われたので義体のあれこれの為に自宅の時限式インスタントキーを渡したのだが…プレゼントが一点物の義体とは…
テーブルの上に置かれていた艶のある黒いインストールキーの保護ケースには赤銀色でamakusaの文字。
最高品質のオーダーメイド義体製作を専門に扱うメーカー。「リピートは無い。なぜならそれより求める事がないから。」がキャッチコピーの一流企業…
このキーパスをアマクサの工場へ持っていくと私は新しい義体になる。使用していた義体の下取りもしてくれる。
型式はFw-226/S。聞いた事の無いものだった。たまにカタログを読む程度じゃわからないのか?
そう考えながら義体工場にセクサロイド体を積んだ車両で向かった。
- 59龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 17:58:49
理由はすぐにわかった。一般的なボディに、軍規格の中でもハイエンドの改良モデルが惜しげも無く詰め込まれていた。それでいて今の義体と比べても、身長と体型には一切の破綻が無い。
幾らしたのかと一瞬だけ頭をよぎるが、脊椎に使われているインプラント1つで望月のビームライフルと同じ値段であった為、考えたくない。
「お願いします…」
ほんの少し上ずった声で施術担当にインストールキーを渡す。
優しい表情で担当はキーを受け取り寝台へ龍影を案内する。
専用の寝台に横になり目を閉じる。
目が覚めたら新しいボディになっていた。
「凄い…」
これ以上の語彙を龍影は発音出来なかった。何もかもが体に馴染む。インプラントのコリジョンも起きない。最高の気分であった。
セクサロイドユニットも付いていた。
「CEOには頭上がんないや…」
そう零すしか無かった。
- 60ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/10(木) 18:01:54
- 61龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 18:14:08
- 62逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 18:32:23
- 63龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 18:38:37
- 64ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 18:47:28
―――― 一方 その頃 ――――
《敵、十三機が接近。 デスペラードです。うち九機がこちらに分散して移動中》
「えぇ……??」
(なんでこっちに8機も来るかな?!?)とケイは思わず混乱していた。 V-12コロニーへのコア鉱石輸送車両護衛……定期便的に存在するそれに襲いかかってくるにしては、敵の戦力分散はあまりにも過剰にすぎる。
「コア鉱石って、売れるの?」
《データにはありませんので、なんとも》
『コロニー市民の生活、ノルマに直結するんだ。頼むがそっちは任せた!』
スカッド・ソルジャーとローン・ソルジャーを中心とした護衛部隊は動かず。蒼風が遊撃。
その流れで行く予定だったものだから、まさか迎撃に動いたこっちを無視してこないのは驚きなのだ。
レーダーを見れば敵は横一列に並び、大ジャンプでこちらの上を取ろうとしている。
「対月風戦術かぁ……シミュレーター時点でそれ、組まれてたやつでしょ!!」
飽きるほど見てきたそれに対して蒼風は減速し、滑空砲を構える。 射程に誘い込むつもりなら、射程外で撃てば良いのだ。 その難易度はともかくとして、ケイはその砲弾を放った。
SHINONOMEを強引に改造したのだろう、左端の機体が被弾で落っこち、陣形が乱れるのが見えた。
いわんこっちゃない。ケイは呟いた。
―――― - 65逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 18:55:30
- 66アリソン◆PPyRfvMZl625/04/10(木) 18:59:07
【人間の頭骨は硬い、最も重要な機能である、脳を守る為には当然のこと】
【けれど、鋼鉄の弾頭が銃孔内で加速され撃ち出される威力には敵わない、それはともすれば鉄板すらも貫き、穿つ】
【女の細腕には余る大口径、無論、そんなものを至近距離で放てば】
【弾け飛ぶ赤、脳漿のグロテスク────────────跳ね返るそれを化粧にするには趣味が悪い】
「あーーーーー……、オイ、一応ここ街中なんだぞ、分かってるか?」
【呆れた様に肩を竦めながら、鉄腕は男の鳩尾へと叩き込まれる、パイプを振りかぶって襲う背後の男には、振り向き様に回し蹴り】
【鉄板が仕込まれた厚底のスニーカー、振り上げた拍子に覗き見える素足は、左腕と同じ、鋼】
・・・・・・・・・
「派手にやるのは良いがやり過ぎんじゃねぇよ、ただでさえアングラ(ここ)の連中は、毎日肩身が狭い思いしてんだ、これ以上狭くなるのは御免だろう。
オーライ?じゃぁ……さっさと片付けて退散するぞ、アンラッキーレディ」
- 67龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 19:06:18
- 68ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 19:17:54
『か、かか、滑腔砲ォ!?』
『ビームじゃねぇのかよ!? 相手は馬鹿なのか!?』
「よし、陣形が崩れた」
一手目にしては望外にすぎる成果だ。と己の射撃精度を評価する。 射程も精度も既存ライフルより圧倒的に劣るそれを、あえて狙撃に使う。子供の頃からずっとやってきたことだ。
警戒すべき射線の一つが消えたことで、蒼風は一気に上昇へ機動を変えて――――。
【高密度コア粒子警報】【高密度コア粒子警報】【高密度コア粒子警報】【高密度コア粒子警報】
「まずっ!?!」
瞬間コックピットインターフェースが地上に脅威を確認して、ケイは先行入力を全て破棄。 敵の鶴翼陣のさらに左へ飛ぶ。
青いビーム光が蒼風の直前位置を射抜いていた。
「ビーム兵器!!!」
《機体照合、デスペラードですが、先の集団である『ガルーラズ』とは別です。傭兵かと》
『おいおい、あれを躱すのか……!!』
それを見咎めながら、蒼風はカメラを望遠させて機体を拡大する。 背中にコア粒子貯蔵庫を背負ったSHINSEIが、狙撃用のビームライフルを構えていたのだ。
- 69エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/10(木) 19:42:30
「……光栄です、Mr.デュラハン」
【差し出された手に自らの手を重ね、新たに紡ぎ直された縁の感触を万感の思いで握る】
【デュラハンが複数体いることへの驚きは、この会談で得られるであろう知識や技術、それらに繋がる閃きへの期待に追いやられていた】
【これを上層部が知ったら泡を吹いてひっくり返るだろうが、自分は漏らす気など毛頭ないので無問題だ。情報戦に巧みな友人の協力もある、彼らの精神の安寧は永久に守られるであろう】
ーーーー 秘密会談から数ヶ月後 ーーーー
【プロペラの回る大きな音と強風をもたらしながら着陸したヘリの中から、一人の男が降りてくる】
「すまない、待たせたね。テスト記録は見させてもらったよ。素晴らしかった。あとは実戦データを取っていくだけだ」
【サイバーゴーグルの奥で楽しげに目を輝かせながら、整えられた茶髪が乱れることも気にせずに、白衣をご機嫌に翻して二人に駆け寄る小柄な男】
【彼こそがK.I社が誇る工学事業部 部長にして、各方面の頭を悩ませる優秀な問題児。エイダン・リー、その人である】
「初めまして、Ms.アル・アサド。君のような素晴らしいパイロットが乗る機体を手がけられたこと、光栄に思うよ」
「そして、久しぶりだね、Mr. 勞。これは約束のオレンジジュースだ。濃縮還元、果汁100%、どちらも入ってる。楽しんでくれ」
【先ずは新たな我が子を生み出す契機となったパイロットに頭を下げる。そして、腕に下げていた大きな袋を勞へ渡した。中身はNA社が提供しているオレンジの中でも最高品質のものを使った高級ジュースだ】
- 70龍影◆9BZ6kXGcio25/04/10(木) 19:46:05
帰宅していつものように義体を換装…しなくていいんだった。
「習慣って凄いわね…早く今のに慣れないと…」
そのままベッドに入る。
今までなら戦闘義体で睡眠が取れなかったから新鮮な気分だ。
「あ、寝る前にシャワー浴びなきゃ…」
義体特有の少し塩っぽい匂い。スキンを被せる過程で生理塩水の水槽をくぐるからかだ。1部の人間はこの香りのするセクサロイドを「ヴァージンボディ」と言うらしいが、関わりたくないものだ。
服を脱ぎ、シャワーを浴びる。
肌を流れる感覚、留まる水滴、ボディソープのノビ。恐ろしいくらい人の肌そのままである。
またこの体の値段について思考が動きかけるが脊椎にビームライフルが入っているイメージが浮かび、そこで止める。
シャワールームから出て、タオルで体を拭く。遠い昔に無くした「人の肌」の感覚を思い出しながら体を触る。
ケイにはとても見せれないような顔をしていたのを洗面台の鏡に映っていたのを見て顔を赤らめる。
一通り触った感想が「懐かしいのだろうが分からない」であった。それにたどり着いた龍影は途端にバカバカしくなってベッドに横になった。
瞼を閉じる。
いつぶりだろうか、人らしく寝れたのは。
- 71ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/10(木) 19:54:48
- 72ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/10(木) 19:58:56
- 73リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/10(木) 20:21:47
「ごめーん、OK!……まぁ、出禁になっても困るしね」
【久方ぶりのガンアクションの機会が失われたことを名残惜しみつつ、銃口から立ち昇る白煙を振り払って元鞘に仕舞う】
【頭を失ったために崩れ落ちる巨体を下敷きに足元へ広がる血溜まりを回避し、頬に飛び散った脳漿を指先で拭い落とす】
『ッざけんな、化け物女ども!!』
「はぁ?」
【軽いノリで自分たちが蹂躙されてるという事実に怒る下っ端が、ナイフを片手に突貫する。刃先をいなし、突き出された腕を掴んで背負い投げた】
『『ギャッ!?』』
「誰が化け物よ。どこからどう見ても素敵なレディーズでしょうが」
【投げられた先で立ちすくんでいたチンピラとぶつかり、そのまま気を失ったナイフ野郎に舌を突き出す】
【義体差別なんて今どき流行らないわよ。なんてズレた文句を心の中で浮かべながら、リンゼイは ''素敵なレディーズ'' の片割れの隣に並んだ】
- 74ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/10(木) 20:40:14
──デュラハンとエイダンの会談後──
(…居てよかったのかな)
【片やクロノス・インダストリーの工学事業部部長、片やデスペラードの変態企業代表。二名の会談に挟まれていたウルヴィの耳には、聞いていいのか分からない単語が幾つか聞こえていた気がする。だが、疲労感の原因はそれだけではないだろう】
『菓子折りを受け取るからには、お茶が必要。当然じゃないか』
【要するに受け取った分の対価を出すと言ったデュラハンがエイダンへと提供したデータの数々は、この企業に愛機を任せてよかったのか不安になるものばかりだったのだ】
【スパナメイスと呼ばれる巨大鈍器は、まるでパイプカッターの様に顎の部分に円形のカッターがついていた。しかも回転するレーザーブレードの発振器となっており、加えた相手をそのまま切り裂くらしい】
【ワイヤークローと呼ばれた兵器は、それ自体はマトモに見えたものの、《有機的な構造を参考に、新たなアプローチの金属を作成。帯電させることで粘性を持ち──》とか言い出した辺りで耳を塞ぎたくなった。人工筋肉とも違う、肉を模した金属とはどういう了見なのやら】
【極めつけは…二足歩行から四足形態へ変形するBFフレームの設計。但し設計案しか出来ておらず、対応するOSや変形後の操作系統に関しての部分はまっさらだと語っていた。《BESTIAで試したかったけど、多分彼女が許さないからさ》と笑う金属頭野郎に対し、ハンドガンの引鉄を引いてしまったウルヴィだったが、微塵も悪いとは思っていない。当てては無いのだし】
【そして、変態的な発想の産物を喜々として受け取るエイダンもエイダンだ。まさかクロノス・インダストリーの技術の一角を担う者が、変態に並ぶ奇人だと誰が予測できようか?それともウルヴィの知らないだけで、技術屋とはこうなのだろうか】
【ともかく会談は無事(?)に終了し、取次を行ったウルヴィにはエイダンからの報酬が支払われた。BESTIAの改修でかなり寂しくなったはずの懐が、突っ立っているだけに等しい依頼ですっかり暖かくなったのは…まぁ、嬉しいことと言えるだろう】
「…酒」
【帰宅後、徹底して秘匿された会談のある意味唯一の被害者となった彼女が酒に溺れることを選んだのは、また別の話だった】
- 75ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 20:51:33
「ヤツを落とす!!スイ!」
《了解、戦況判断はお任せを》
コア粒子推進機関の高響音を響かせながら、地上のSHINSEIへ負けて加速。 左右と上下、回転機動を交えて射線を振り回す動きを蒼風に取らせる。
ケイは望遠で映る敵を再確認する……腕がローン・ソルジャーだ。
あれがどうやらSHINSEIに高出力のビーム砲を撃たせる鍵らしいと推測。
先ほどのは腕部からコア粒子伝達を許容量以上に早め、警告より早くビームを撃つ技だろう……当然、コア粒子を溜め過ぎれば銃身どころか腕が吹っ飛ぶはずだ。
「次も躱す……!!」
⚫︎
『やっちまえセンセイ!』
『俺たちはこっちから追い込みますんで!!』
『(それは追い込んでるんじゃなくて、ただ追っかけてるだけだろ……)』
受ける依頼を間違えた。とSHINSEI乗りの傭兵は愚痴る。 ARATAMEに飛行用のブースターをポン付けしているのは良いが、速度差が敵とは歴然。
おまけにあの機体は狙撃されたあと、姿勢を崩すことなく即座にこちらに向かってきている。 逃げるのは無理だ。
『次は当たるかねぇ……』
マニュアルで照準を合わせるべく集中しながら、傭兵は蒼風を名乗る敵機を見る。
自分が神経を注ぐこれをほぼ全ての動作でやってのけている……紛れもなく現実に存在する化け物を。
『(撃墜王ってやつが昔いたってのも、あながち嘘じゃねぇのかもな)』
こんなのが今もいるなら、先輩傭兵の語る伝説の実在も、彼は信じられた。 - 76エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/10(木) 20:59:06
「もちろん、構わないさ。むしろ、碌なアポも取らず押しかけたのに、歓待してくれるなんてありがたい限りだよ」
【わずかに申し訳なさそうな表情を浮かべる。最後まで取っておいた苺大福の苺と並ぶほど楽しみにしていたことへ取り掛かれる嬉しさでハイになっていたのだ】
「存じているよ、Ms.。件の合成級とかいう巫山戯た悪魔を、Mr. 勞と叩き潰してくれたんだろう?」
【長らく日の目を見れていなかった ''ソロネ'' と、そんな我が子に活躍の機会を与えてくれた ''オルフェリア・ソローネ'' 】
【BFを開発する者として深く敬愛し、同僚として親しみを覚えていた彼女らを深く貶めるような造形の合成級を資料で目撃したとき、エイダンは掛けているサイバーゴーグルの画面が真っ赤になったように錯覚するほどの強い怒りを覚えた】
「そのことを知った時から、ずっと言いたかったんだ。……本当に、ありがとう」
【それと同時に、合成級を地に伏せさせた二人への強い感謝も。だから、こうして直接伝えたかったのだ】
- 77二次元好きの匿名さん25/04/10(木) 21:04:52
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- 78ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/10(木) 21:06:15
- 79マルタ◆KPwoT407kA25/04/10(木) 21:10:18
《Nerv Network Accept.
塩基配列照合…マルタ・アーネル承認。正規ユーザーです》
【神経接続のウォームアップを終え、視界に戦場が広がる………但し、今マルタが居るのはアスガルド・アカデミー内併設のシミュレーションブースである】
【神経接続を介して視神経に働きかけ、本物と見紛うバーチャル空間の投影…これによって大掛かりな機材を用いずとも容易な模擬戦闘と慣熟訓練を行うことが出来る…ちなみに、自地区内のゲーセンにも同様の装置があり、リアルタイムで対戦も可能という一種の娯楽装置も兼ねている】
…ん?ちょっと変わった?
【仮想空間にて出力されたロスヴァイセの武装を確認していると、前に乗った時と色々と変更が加えられていた事にマルタが気付くと、通信回線を介して声が響く】
《そうなんだよそうなんだよマルタちゃん、ロスヴァイセは試験機だからそりゃあ日々進歩し続けてあたぼーよ》
…博士か。もしかして私がVR起動するのずっとスタンバってました?
《ノーコメントー。とりあえず変更点ザッと解説いくよ…まず操縦系のダメージフィードバックだけど、バックファイアは旧式比30%カット。機体の腕痛めたからって身体にも響く事はよっぽどじゃない限りなくせた筈だよ》
《次にブースター。より燃費のいいものに取り替えたからまたそっち仕様に慣れてもらうと助かるー…ちなみに加速減速どっちも0-100だから下手したらミンチなんでそのつもりで》
安全性増やしてまた別の危険性産み出されてるんですが
《しょーがないじゃーん私ゃネコ型ロボットじゃないんだぞーそう全部都合良くいきましぇーん。あ、それと余ってた左手のハードポイントにはシールドも付けといたから。先端部は鉤爪状にしてあるから困ったらそれで守ったり殴ったりしてー、それと腰には…》
(早く動かしたいんだけど説明終わんないかな…)
【操縦桿を握る手をうずうずさせながら途中から話半分に説明を聞いていたマルタは、ソロモードを起動して仮想の愛機のブースターを吹かし始めていった】 - 80ハニヤ◆KPwoT407kA25/04/10(木) 21:30:56
- 81ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 21:33:17
「――――!!!」
『こい、オリジナルアーヴィング……!!』
【高濃度コア粒子反応!!!】
近づくことで検知機能が強化された蒼風からの警報を確認したケイは、即座に右腕の有針徹甲弾を放つ。 右へ飛んだあとの動きとして、放った反動が機体を回転させ、左へと高度を落としていく。
青いビーム光がまたも蒼風を掠め、空へと消え。
ガスン!と音と共に飛来した……蒼風の腕半分ほどの長さを持つ杭が、SHINSEIのすぐ近くの地面に突き刺さった。
『やべっ』
突き刺さった直後に、大きな爆発。有針徹甲弾内部に仕込まれたコア粒子と火薬の混合が驚異的な温度とともにSHINSEIを埋め尽くそうとして。
その炎の中から、SHINSEIは有翼のブースターを展開して飛び出してきた。 コア粒子貯蔵庫は投棄されている。
『インベイド用だろうがよそれはぁ!』
「便利だから使ってるんだよ!!」
蒼風とSHINSEIが共に高速で接近、ビームサーベルをかち合わせる。
蒼風がコア粒子推進機関を全開にして押し合おうとするのを察し、SHINSEI乗りは自身のブースターを横へ稼働させ、流れるように蒼風を受け流し……。
『じゃあな!! もうテメェとはやりあいたくねぇ!!』
「そうかい!!」
背中を向けて、空を飛んで逃げ出した。 蒼風はそれを高速速射砲で撃つ。本当に逃げていくことを確認するためのものは、しかしSHINSEI乗りの巧みな操縦で躱された。
《ガルーラズ、接近してきます》
「……あいつのほうが怖かった。スイ、援護を頼む」
《了解》
蒼風は強敵との戦いを切り抜けた余韻もまたず、アテにしていた傭兵の依頼放棄で戦意が崩れたデスペラードの一団に突っ込んでいく。
『ひ、ぃぃぃぃ?!!』
「逃げれば殺さない!!逃げないなら落ちてもらう!!」
空中を飛べるだけが取り柄だったデスペラード集団は、蒼風の舞踏によってきりきり舞いとなり、尽くが地面に叩き落された――――。
- 82アリソン◆PPyRfvMZl625/04/10(木) 22:04:03
【それは人の形をした嵐であった、闘争と流血の魁、吹き荒べば塵芥が舞い上がり】
【────────────そうして、暫く、二人を囲んでいたあれ程の男達はいつしかすっかり消え去っていた】
【伏せて血のあぶくに沈むのが数名、這う這うの体で逃げた者がまた数名】
【女は頬に返り血をこびり付かせたまま、短くなった煙草を吐き捨てると、爪先で火を擦り消した】
「ここらは余所モンが入り浸る様な場所じゃねぇ、それがンな目立つ格好してりゃあ、カモが来たと思って寄って来る」
【左腕、錆びの原因になりかねない赤を拭い取りながら、睨み付ける様な視線でリンゼイを捉える】
・・・・・・・
「アングラの流儀を知らねぇってコトは、デスペラードじゃねぇな。
────────────クロノスか?」
- 83ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/10(木) 23:14:28
『ご苦労だった、蒼風のパイロット。おかげでコア鉱石を無事に届けられたよ』
「こちらこそ、被害がなくて何よりです」
コロニー近辺でコア鉱石の受け渡しを確認しながら、ケイは帰り支度をコックピット内で始めて。
『……ああ、そうか。わかった。蒼風のパイロット。少し良いか?』
「なんです?」
『明日の夜には帰るんだろう? それまでコックピットの中で長時間飛行というのもあれだ
……途中まではうちのヘリで空輸できる。 しばらくV-12コロニーの中で休むと良い。コロニー内の入る許可はもらっている。』
それは、なにか意図があるのかもしれないと訝しみつつ。断ればそれはそれで面倒な事態が見えていた。
輸送部隊を指揮していたらしい、スカッドソルジャー乗りの小隊長が『頼むから断らないでくれ』と言いたげだったのだ。
「……わかりました。では、喜んで」
誘いとも言えるものを受け入れ、ケイはクロノス社のコロニーという環境の生活をほんの少しだが知り。
『……本日慰安の担当となりました。輸送護衛依頼を発行した、中尉の、コールサイン:カルアッドです。その、よろしくお願いします』
「――――ああ、そういう」
眼の前にある光景でなんとなく、ファルマの価値観が『ああいうもの』だった理由が、分かった気がしてきた。
「強制? それとも志願?」
ケイの言葉にカルアッドという女性は曖昧に首を振る。 断れば誰も幸せになれないだろうな。という確信があった。
「辛いならしたふりでもいい。 添い寝くらいでも、なんでも……だから」
「俺のことは、人形だと思っていいから」
そう言って。ケイは女性に背を向けて寝ることにした。 どうするかは、彼女に任せて。
次の日の朝には、蒼風を載せたヘリが離陸して……カルアッドが、見送りに来ていた。
- 84NG◆MKae.Eo0FU25/04/11(金) 07:53:38
「ローズ中佐が復帰するのにキルケーは解散?!ちょっと待ってくださいよ!どういう事ですか支部長閣下殿!」
NG(ノングット)は混乱した。部隊長と歩兵部隊と後方人員が残っているのに解散だなんて
「キルケーはG-3で降下しました!私はローズ中佐がラペリングをする時の符牒を言っていたのを覚えています!シェルターのボイスログにも確「それがイカンのだ、中尉。君のキルケーはスマトロンリップ、そして7機のニュクスが離反してG-3でBF合同部隊へ奇襲した。挙句の果てにはインベイドに侵され、奴らの真似事をする始末。リー君の手で跡形もなくなったのが幸いだよ。」
訳が分からない。確かにG-3ではインベイド達のジャマーによりキルケーと連絡が取れなかったがそんなことが起きていたなんて…
中で戦闘があり、激戦の末にシャロンが瀕死になるも生還。私は確かにそう情報局から聞いた。なのに…なんで… - 85NG◆MKae.Eo0FU25/04/11(金) 08:06:34
ぐらついた。身体…いや、この場合は心だろう。ソレが揺らぐ。
跡形も無く。エイダンリーの手で。ローズ中佐。離反。インベイド。瀕死ではあるが救出。
連続した情報は支離滅裂に、一つ一つ区切られていく。
「悪いが君達キルケーには処遇の通知があるまでは休暇となる…まぁアレだ、ゆっくり休んでくれ。以上だ。」
足が地面についていない。いや、確かに踏みしめているが感覚が無い。
「…っ…失礼します…」
NGは何が何だかわからない状態のまま支部長室を後にした。
扉を開け、廊下に出る。
「ノージー、キルケーはどうなるの?!」
廊下で待っていたキルケー隊のうち、仲の良い整備士が聞いてくる。ワルキューレの人達は査問会に出頭したとか。
「休暇だってさ。…中佐のお見舞いにでも行く?みんなでいけば、あの人もすぐに復帰できるよ!」
ケロッとした表情で伝えた。
それに皆は安堵する。
だがエイダンリーへの恨みはフツフツと沸いていた。
- 86龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 08:20:30
心地のよい目覚めだ。
行為をした時のような甘さのあるスッキリとしたものではないが、望月を飛ばした後の疲労感は嘘のように消えた。
「あれ…?」
龍影は違和感を感じた。
ベッドの沈み込みが浅い。
この義体…前のボディより軽いのか…
ますます恐ろしくなる。
軍用インプラントは総じて重量がかさむものだ。だが、わざわざそれの機能を落とす事無く軽量化している。
「私、逆巻の部隊に入ろうかしら…」
龍影は望月での神経接続式半思考制御のデータ提供。それだけでは到底足りない恩をカンナに感じていた。
「でも整備長は先代と折り合い悪いからなぁ…カンナちゃんと仲良くなるかねぇ…」
ぐるぐると思考が回る
「でもそうなったらそうなったで、ここ(アウトサイド)が火薬庫になるか…」
- 87◆PPyRfvMZl625/04/11(金) 10:58:41
(1/4)
【人類の殆どが、クロノス・インダストリーと人類自由連盟という二つの共同体の中で生きる様になったのは、このたった20年の間の出来事だ】
【突如として宇宙から飛来した外星体、インベイドの脅威によって、世界の有様はあまりにも急激に変化した】
【その速度は、哀れな人々を振り落とすには十分】
【コロニーも、人自連の庇護も受けられなかった半端な者達は、そのどちらにも属さない外の世界で暮らしている、その代表例の一つが、嘗ての都市痕に無数のバラックを築くことによって構成された、“難民都市”である】
【鉄屑と瓦礫に覆われた煤けた空、崩落した高速道路を屋根代わりにして、灰色の掘っ立て小屋が犇めき合う街は、まるで屍の様に静まり返っていた】
【難民都市の一つだ、噎せ返りそうな程の真新しい硝煙の香り、点々と散らばる、惨劇を象徴するかの様な赤い血痕】
【その周囲には、場違いな複数のBFが膝を折り停泊している、クロノスのスカッド・ソルジャー、アズマ工業のSHINONOME、或いはその前身である作業BFのKOGURE、薄汚れた機影に陣営の統一感は無い、しかしそのどれもが、真新しい機械油と火薬の臭いに包まれている】
【────────────キィィィン、とエンジン音が響いた、二枚の尾翼を持つ飛行ユニットに吊り下がった一機のSHINONOMEが高速道路下に降り立つ】
【ゆっくりと膝を折れば、コックピットからは精悍な体躯をした30代も半ばの男が身を乗り出して、機体の掌や膝を飛び移りながら地上へと】
【その男もまた、汗と一緒に鉄臭さを身に纏っている、修羅場を潜り抜けて来た傭兵の風情】
【肌寒い夕暮れの気温にぶるると小さく肩を震わせながら、小走りで向かう先は都市の中心に近い仮設小屋(バラック)だった】
『隊長、観ましたか人自連の記者発表────────────あぁ、なんだ、お楽しみ中でしたかい』 - 88◆PPyRfvMZl625/04/11(金) 11:01:29
(2/4)
【元々建付けの悪かった扉は取り外されており、外からでも、内部の様子を覗き見ることが出来た】
【男が隊長と呼んだその巨漢は、男よりも更に一回り威圧的な筋骨隆々とした体格を誇り、黒と白の混ざった長髪と、野性的な印象を与える顎髭、黒々と焼けた肌色が目を惹いた】
【かなり歳を取っているにも関わらず、青く爛々と輝く瞳からは隠し切れぬ覇気が滲んでいる、例えるなら“鬼”だろう】
【加えてバラックにはもう一つの人影があった、齢20ほどの難民都市で暮らしていた女性だが、それは鬼の姿と比べればあまりにも貧しく、弱々しく、そして哀れな姿で】
【生気の失せた白い肌が、鬼の“腰下”で呻き声と共に小刻みに揺れている、肉を鈍器が打ち付ける様な鈍い音が響いていた】
「────────────んん?おう、見たぜ、坂巻の嬢ちゃんも随分立派になったモンだ」
【鬼が口を開く、ぶわ、と、口腔内に閉じ込められていた煙草の煙が一気に吐き出されて】
【入口の男を一瞥すると、にたり嗤う、それは旧い知人に想いを馳せる老爺の様でいて、しかし余りに凶悪な笑顔】
「対インベイド強硬派の逆巻重工がこのまま人自連内で勢力を強めれば、クロノスとの対立は次第に融和路線に向かっていくだろう。
それが人自連がクロノスの傘下に降るという形になるにしろ、両陣営の停戦、講和、って形になるにしろ……順調に共同戦線は確立、『異星人を惑星から追い出せ万歳!!』てな話だな?」
『どうすんです、ドミニク隊長、まだ先の話にゃなるだろうが、もしインベイドが大人しくなっちまったら……』
・・・・
【眉を顰める傭兵男の前で、ドミニクと呼ばれた鬼はぶら下げていた哀れな女性を床に放り出した、不快な異臭がバラックを覆う】
【どぷん、どぷん、……机に置かれた酒瓶を引っ繰り返し肌の汚れを洗い流すと、ずり下げていた下衣を履き直しどっかりと傍らの椅子に腰を落とした】
【着座してもなお、その威容はまるで衰えていない】
「ふぅっ……嗚呼、つまらねぇ、つまらねぇ、流れが出来過ぎてる、それじゃあ全くカオスじゃねぇ。
商売も上がったりだ、退屈極まりねぇなぁ」
【酒瓶の残りを今度は己の口元で傾けながら、ドミニクは暫し顎に手を置いて思案する】
・・・ ・・ ・・・・・・・・・・・
「どうだ、少し、引っ掻き回してやろうか」 - 89◆PPyRfvMZl625/04/11(金) 11:02:16
(3/4)
【────────────クロノスのコロニー間に存在する、物資輸送路は、襲撃を受けていた】
【人自連との協定により完全中立、交戦禁止と規定されている区域だ、当然、警護に付けられたBFもそう多くは無く】
【救難信号は突如として輸送路上に散布された“通信妨害(チャフ)”によって阻害され、後方拠点に連絡を取ることも出来なかった】
・・・
『クソッ!クソォッ!人自連のクソ野郎共が!!協定破りなんてしやがって!!』
『おかしいだろ!たかが旧式のSHINONOMEが、なんでこんな練度してんだよォ!!??』
【半狂乱に陥ったソルジャーパイロットの悲痛な叫びが響く、とうに前線から姿を消した筈の人自連、アズマ工業のインベイド侵攻初期に開発した機体】
【クロノスが誇る汎用量産機スカッド・ソルジャーからすれば、数で勝られていても対処出来る筈の性能差があった】
【それなのに、捉えられない、銃口を向けられれば敵機はすぐに射線から逃れ、スモークを焚いて視界を妨ぐ】
【追いかけようとすれば背後からの射撃が襲った、前も、後ろも】
『離脱しろ、エドヴァンス!お前の機体が一番損傷が少ない!』
『し、しかし伍長!』『増援を呼ぶんだ!チャフが撒かれている以上誰かが────────────行けぇっ!!』
【この場の誰よりも若い新兵の駆る機体を弾き飛ばし、身代わりとなって銃弾を受けたソルジャーが重々しい音と共に倒れる】
【泣き叫びながら不明瞭なスモークの中を、アサルトライフルを四方に乱射しながら突破する機影の背後を】
【脅す様に、グレネードが炸裂した】 - 90◆PPyRfvMZl625/04/11(金) 11:03:27
(4/4)
・・・・
『────────────予定通り、一機逃がしやした、人自連から襲撃を受けたと報告してくれるでしょうね』
「ンハハハハハ!上出来、上出来だお前らァ、よォし、早く盗るモン盗って戻るぞ、まだ使えるソルジャーも回収しろ。
同じコトを人自連の連中にもしてやらなきゃならねぇんだ!」
【輸送路を見下ろす崖の上で、観測手は交戦終了を伝える光信号に応える】
【徐々に晴れ行くスモークの中、ソルジャーのコックピット部に直に突き立てたライフルを手放しながら、SHINONOMEに搭乗したドミニクが愉悦に笑い声を上げた】
【襲撃者は人自連という化けの皮を剥いで、無法者の顔貌を露わに】
『クロノスには人自連の機体で、人自連にはクロノスの機体で、それぞれ向こうが協定破りをしたと思うでしょう。
……とは言ったものの隊長、奴さん方、こんな単純な手に引っ掛かりますかね?』
【すぐ傍で死体漁りと輸送物資の収奪を繰り広げる部下達の前で、コックピットハッチを開き、外気を取り入れながら煙草に火を灯す】
【それは仕事を終えた満足感と共にチリチリと燃えて、傍らの傭兵が疑問を呈せば、ドミニクはニタリと牙を向いた】
「良いんだよ引っ掛からなくても、少しでも疑念を植えつけられれば十分だ、人間、敵対してる連中とそう簡単には信頼し合えねぇ。
ましてや権力者ってのはいつ寝首を掻かれるかハラハラしてる、小さな疑念でも晴れるまでは……奴らは手を結ばねぇ」
【G-3コロニー戦に端を発した世の流れを、彼らは快く思っていなかった、それは死肉を食らうハイエナの本性だ】
【そしてそれは、獣が持ち得ぬ知性で以て戦場を掻き乱す、無法の傭兵部隊だ】
「……人生一度きりだ、全部予定通りに進んじゃつまらねぇだろ、予定外(ハプニング)も愉しもうぜ、ンハハハハハハハハ……!!」
【────────────悪鬼は嗤う、人身売買組織『アブソーバー』の頭領、旧い時代の敗残兵、その名はドミニク・ガーラインと言う】 - 91ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 11:05:36
『−−−−サヤギリ、さん』
「ん……」
ヘリに乗り込む前、カルラッドというコールサインを持つ少女は、ケイに強く強く抱きついていた。 離れることがわかっていてもなお、離れ難いというかのように。
ケイはそれに対して、優しく腕を回すことで応えた。
『−−−−ずるい。ずるいです。あんなに、優しく……激しくなんて……』
あんなの覚えちゃったら、こっちが大変なんですよ?と、カルラッドは甘い声でケイの胸板に、自分の頭をぐりぐりとしていた。彼女の指が、爪が。背中に何かを刻むように食い込んでいたけれど。ケイはそれを受け入れた。
「大丈夫。夢みたいなものだから……忘れて良いよ」
『……忘れられるわけないじゃないですか……!!』
あんなに!あんなに!!と言いながら、カルラッドはぽかぽかとケイに力のない殴打をする。ポカポカという音が聞こえるようだった。
素っ気なく、人形と思って良いと言ったケイを無理やり己の方に向かせて。その上に乗って、後悔させてやる!といったのはカルラッドだったのだが。
『あんなにめちゃくちゃに、優しくて……もう一生忘れませんから……ッ!』
覚悟してくださいよ!と、いうカルラッドがいて。
「……犬に噛まれたと思って、ね?」
と、ケイは微笑んだ。
飛び立つヘリに対して、カルラッドが叫んでいた。
絶対忘れるもんか!!!牧羊犬の皮被った狼ぃ!!絶対次も、依頼するから!!……と。
『……一回で落とすなんて相当だな?』
「まさか。演技でしょ」
《鏡を見ろと言っておきます》
ヘリの中で、操縦士と寸劇をしながら。ケイは途中まで送ってもらって。降ろしてもらった後は龍影が待ってくれるだろう家に向かい、彼女が寝ていることを確認して。シャワーを浴びた。
「爪で、引っ掻かれてたなこれ」
軽い腫れが、ケイの肌にできていた。
- 92シャロン◆8meUu6AaJY25/04/11(金) 11:15:08
「ー久しぶりね。みんな」
病室のベッドで体を起こし、本を読んでいるとゾロゾロとキルケーの子達が来た。
「ノージー、支部長はなんて?」
優しく微笑む。しかし、彼女達の知っているシャロンはそこに居なかった。
空虚で、虚ろで、優しく、張り付くようなおぞましさを持っているが、皆の知っているシャロンの姿でる。
「キルケーは解散になるらしいわ。BFパイロットが回せないとかで。正式な通達は後日。それまでは休暇よ、みんな。解散!」
哀と愛が混じった空気が流れる。
「何?…なるほど、そういう事ね。ほら、ハグしてあげるわ!皆こっちに来て!」
微笑み、手を広げる。
寂しさに似た暗黒がその胸に広がっていた。
- 93龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 11:30:03
シャワーの音が聞こえる。
枕元に隠してある45口径拳銃を構える。
「あ、ケイか。」
ついさっき帰ってきたのだろう。
安心して45口径拳銃のマガジンを外して排莢、そしてその弾をマガジンに入れ直して枕元に置き直す。
新しいボディを自慢しようという気持ちが湧いて来たので着ていた下着を脱ぎ、足音を立てずにシャワー室の前まで移動してゆっくりとその扉を開ける。シャワーを浴びているケイの背中があった。程よくひきしまった背筋、少し見ない間に逞しく…龍影の思考が止まった。
ケイの背中と臀部にほんのり赤い引っ掻いたような傷。
何があったのかを龍影は納得しようとした。その辺についてはこのご時世だからと。だがほんの少し嫉妬の感情が湧き、ケイの背中に抱きついた。彼の胸板へ両手を回して、右手人差し指と中指で胸筋から引き締まった腹筋へシームレスに撫でる。
「おかえり、ケイ」
シャワーの水音で消えないように、それでいて柔らかく囁いた。
- 94リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/11(金) 11:42:06
「入り浸るつもりで入ったわけじゃないのよ?物珍しくはあるけど、周回したいほど魅力的には映らないし。宝探しが終わったら、すぐに帰るつもり」
【辺りを漂う血と硝煙と煙草の残り香に、鼻の下をくすぐられながら辺りを眺める】
【節々が錆びたパイプが絡み合う壁、チープな文字が踊る看板。最初は目にショッキングな色でペイントされたのだろう、風雨で掠れた落書き】
【画面越しから眺めるそれらはノスタルジックな魅力に満ちているのに、現実は何とも味気なくて、薄汚れているように思えた】
「もしかしたら、何処かの企業に囲われている箱入り娘かも。……まあ、その企業がクロノスなんだけどね。正解よ、レディさん」
【茶化すように答えながら、浴びせられる剣呑な眼差しに向かってハンカチを差し出す】
「どうぞ。助けてくれたお礼、とするには安いかもしれないけど。使って」
【ほつれの見えない上質な絹でできた、高級な布。もし売ったら、合成品ではない本物の肉をお腹いっぱい食べることができるだろう】
- 95ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 11:43:06
「ああ、ただいま、龍影……!?!」
帰宅の挨拶はまだ想定内だった。だがシャワールームに入ってきて、体まで密着されてはその心も崩れようもので。
「え、えっと、その……」
龍影の肌が、温かい。しかも柔らかさを含めた全ての質が、以前とまるで違うことにケイは気付いた。熱くなる感覚とともに。義体を変えたのか、という思考が浮かび、その後に、少しだけ顔を青くした。
体についている腫れを間違いなく見られている。
――――殺されてもおかしくない!!!と直感した。
「ごめん……」
謝罪は、柔らかい指で己の腹筋を撫でられている間で。しかしその後すぐに顔が赤く戻った。
男子なのだ。そういうもの……いや。綺麗で好きな女子に抱きつかれて、羞恥や嬉しさがでないようなら死んでも良い。とすら思うのだ。
- 96二次元好きの匿名さん25/04/11(金) 11:58:22
このレスは削除されています
- 97龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 12:00:02
- 98ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 12:07:03
- 99ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/11(金) 12:08:10
《独立傭兵ウルヴィ。これは当社からの秘密裏な依頼となります》
《ミッション内容は、アズマ工業の第二工廠に展開する守備部隊の排除です》
《先日、当社と人類自由連盟の協定により交戦禁止協定が結ばれた輸送路が、小隊規模のSHINONOMEにより襲撃される事件が起こりました》
《ご存知の通り、我々は平和的な話し合いを求めていますが、我々による寛大な譲歩すら無碍にしようともなれば、一度その力量差を理解して頂く必要があると言えるでしょう》
《しかし我々にとっても、必要以上に彼らを脅かすのは不本意なこと。そこで貴方に、人類の融和の架け橋となって頂くため、ご依頼をお願いしたいのです》
《良いお返事を期待しています》
─────────────────────────
【人自連の中でも最大のシェア、そして発言力を持つアズマ工業の第二工廠では、本日も活気に溢れた作業員達が主力商品となるBF、及びその武装を作り上げている】
【周囲にはその威光を示すように、最新鋭量産機のSHINSEIや、戦闘用に作られ今なお売れ筋のARATAMEが展開している。時に惑星外生物が、時に無法者どもが。略奪のために襲いかかることがあっても、勤務する従業員たちが安心して働けるのは、一重に彼らの存在あってこそだ】
【その内の一人としてSHINSEIに乗るマックスもまた、自分達が居ればこの場所は安全なのだと信じ切っている。同じSHINSEIを任せられた者は勿論、ARATAMEの操縦者たちだって引けを取らない優秀なパイロット達なのだ。それは慢心ではなく、自負とも呼べるものだろう】
【故にその瞬間も、彼らは取り乱すことは無かった】
【太陽が照らす世界に、ぽっかりと浮かんだ黒い影。それが高速で接近していたとしても】 - 100龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 12:18:32
- 101ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 12:28:53
- 102アズマ工業第二工廠警◆xZJxX8ZGsA25/04/11(金) 12:47:11
《ぐああ!?》
《よくもっ!!ぉおおお───ザザッブツン────》
《陣形を立て直せ!アーヴィングなら対月かz───》
《あんな機体がアーヴィングなわけあるか!!》
《来るな来るな来るな来るなぁあ!!!》
【通信回線に響き渡るのは、混乱。それは伝播し、この場に居た全員を、瞬く間に包み込んだ。ただ一人、呆然と立ち尽くすマックスだけを除いて】
【警備部隊を任される彼らに、油断は無かった。いつも通りに陣形を整え、責務を全うせんと一斉射撃を行った。しかし影はそれを嘲るように消えて、彼らが気がつく頃には既に一機のBFが沈黙していたのだ】
《ありえない…》
【女性パイロットが震える声で呟く。それと共に、また一つ反応が途絶する】
(あれは、なんだ?オレ達が、何をした?)
【荒れ狂う暴風に、割れる大地に、人間は逆らえない。強大な暴力を前に、必定の死を待つしかない。それまでにできるのは精々、降り掛かった理不尽を呪うくらいのものだ】
《あ────》
【影の頭部、線のようなスリットの中の光。それが流動するように自身を見つめた事に気がついて、オレの番が来たんだな、と他人事のように実感する。走馬灯なんて優しいものは存在しなかったらしい、ただ実体剣の刃先が振り下ろされるのを眺め──】
《え?》
【強い衝撃に、吹き飛ばされた】
- 103ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/04/11(金) 13:28:54
【SHINSEIを蹴飛ばして、バックステップの形でブースト。するとウルヴィが先程まで居た位置を弾丸が通過する】
【射手を確認する必要は無かった。何故ならそれは既に、加速無しの0-100のトップスピードで斬りかかってきていたからだ】
《また模造品が増えたのか?ったく、月に焦がれんのは分かっけど、そんな真っ黒じゃ誰も見ちゃくれねぇだろうに》
【月風。アンティークと揶揄されることもあるが、初期インベイド戦争にて人類を庇護した英雄的機体。銀色に塗られたそれは、鋭角的なシルエットも相まって騎士を彷彿とさせる。その右腕から放たれる蒼の一閃を身を躱して避けながら、BESTIAはショットガンの引鉄を引いた】
《おっっっっも!!!!バカじゃねぇのか!?バカだろ!!!てめぇそれ人に向けッッ》
【左腕のシールドで受け止めた月風が、大きく後退する。踏ん張らない事で衝撃を逃したようだが、想定以上の重みだったようだ。そこへ先程のお返しのように、逆袈裟のブレードを振るうが、右腕のシールドで受け止められる】
《なんか喋れっての!!おい!》
【月風の突き出した左腕の内蔵ブレードを避け、ブレードを切り返す。月風は引き戻した左腕のシールドで上手く流した。そうして互いに神経を研ぎ澄ます、肉薄した距離での攻防となる】
《ハッ…6手の俺ちゃんに挑むたぁ……あ?あ?あれ?おい待て待て速い速い速い!!ズルい!!》
【不敵な笑いを垂れ流す月風乗り。互角に切り結んで居た二機だが、今は月風が両腕のシールドをフルに防御に回してなんとか凌ぐ状態となる。しかも受け流せているのは半分ほどで、表面に細い傷が刻まれていた】
《チィ…ッ!》
【月風がガードから放った反撃の頭突きを食らいながら、BESTIAは距離を取る。避けきれなかったそれは、月風乗りが先行入力…読みも何もなく、がむしゃらに入れ込みで行った行動だ】
《クッソ、マジでお前、なんでこんなことしてんだよ…》
【息を切らした月風乗りの問いかけに、BESTIAは沈黙…しているが、動き出す気配はない】
- 104月風の傭兵◆xZJxX8ZGsA25/04/11(金) 13:44:58
《…仕事》
《は…………?》
【今更になって応答があるとは思わなかったこと、そして声が少女を思わせるものだったことに、月風乗り困惑していたが、飛来する弾丸に意識を戻して横にブースト。しかしその間に──】
【黒い機体の、鋭い刃のようなライフルが、SHINSEIを貫いていた】
《お前、それは!》
《ばいばい、やかましい人》
【月風乗りがそれに激昂する間もなく、それは飛び立つ。飛べんのかよ、あれ。どうすんだよ、これ。右手で両の瞼を覆いながら、月風乗りの傭兵は天を仰いだ】
《見逃された、よなぁ……》
【追う気にならなかったのは、単独では7割負けると分かってしまったからだろうか。入れ込みを使わないと手番戦に追いつけず、そもそも機体の動かし方の精度が違った。もしあれで手を抜いてたなら…とは考えたくないが、過ぎたことだ。救出依頼の失敗をどう報告したものかと途方に暮れながら、傭兵は帰投したのだった】
- 105龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 13:48:30
ケイを茶化してからシャワー室を出た龍影は自身の端末に通知の来ていた事に気づく。
「ケイ、呼ばれたから私は行ってくるね?大丈夫、夜に帰ってくるから。」
枕元に置いていた拳銃をホルスターに入れて、家を出る。
格納庫に着いた龍影はすぐさま
「依頼が来たからちょっとみんなで確認しましょう。最悪蹴っても良いから。」
『王龍影、アンタの腕を見込んでの依頼だ。
ターゲットはアブソーバーのBF、アバドン。
重装の二脚型だ…
あのクソッタレは俺の妹を連れ去って散々遊んだ後に殺して捨てやがった…見つかった妹にはなんにも入ってなかった…目も…腹も…なんにも…(すすり泣く音)だが俺はBFに乗れねぇ…仇が取れないんだ!だから俺が輸送車両で、アイツをV-9コロニーの非戦闘地域ギリギリまで誘導する。それをアンタが確認次第、撃破してくれ…
万が一のためにアンタの僚機になってくれるってやつが有志できてくれたんだ。仇討ちの為に…必要であればソイツも連れてってくれ…
報酬が高く出来なくてすまねぇ…だが…仇を…っ!頼む…』
- 106ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 13:53:51
- 107アリソン◆PPyRfvMZl625/04/11(金) 14:03:45
「……チッ、要らねぇよ、ンな金に困っちゃいねぇしな、てめぇらのそういう態度は癪に障るんだ」
【不機嫌にハンカチを払い除ける、アリソン・キャラドールは人自連に属する傭兵だ、一応、企業の後ろ盾というものもある】
【生活に苦労するまで、金に困ってはいない、この路地裏に屯する貧しく哀れな人々とは天と地ほどの差があった】
【けれど、この騒動を近くで見ていた薄汚れた老人が、怯えた目でこちらを見つめる姿を見返す姿には】
【嘲りではなく、何処か同情的な気配が漂っている】
「で、宝探しってのは何の話だ、ここにはクロノスの金持ち連中が好む様なモンは置いてないぞ。
表通りの……もっと真っ当な店ならどうか分からないが」
【ジャケットの胸ポケットを弄り、新しい煙草を口に咥える、流れる様に火を灯す仕草はあまりに手慣れていた】
【ヘビースモーカーだ】
- 108龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 14:06:13
「…メッセージは以上よ。」
重々しく龍影は口を開いた。
呪詛にも近い色々とこもった個人からの依頼。
「…罠っすよ…これ」
1人が呟いた。
「確かに、わざわざV-9外縁なんて…あんな入り組んだ地形…望月の機動力が活かせない。」
「でも…ドーザー連中も手を焼いてる…」
「アウトサイドの間接的な脅威ではあるから…」
どんよりとクソッタレのような依頼を受けるのか懐疑的な空気が生まれる。
「行くわ。整備長。望月の準備。」
「…わかったわ。依頼主に連絡、〈僚機の提案に感謝する。しかし敵戦力を鑑み、こちらで用意すると決定した。報酬金は増額無しで受ける。〉と。」
すぐさま返信を送るのを横目に龍影は
「ケイ、今回の敵は対人のプロよ。人質なんかも簡単にとる。でも依頼はアバドンの撃破のみ。途中で死亡する人質は勘定に含まない。絶対よ。」
強く言い聞かせた。
「追加で蒼風を乗せて!V-9周辺のマップデータを出して!輸送機の中で頭に叩き込むよ!出来る?」
龍影はケイと自分を奮い立たせるために声を張って指示を出した。たとえ罠だとしても。
- 109ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 14:11:28
- 110龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 14:29:51
- 111ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 14:41:37
- 112リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/11(金) 15:29:40
「じゃあ、ボランティアで助けてくれたの?……本当にヒーローみたいね、レディさん」
【相手のぶっきらぼうな態度を受けても、リンゼイに気分を害した様子はない。むしろ、その見返りを求めない姿勢に感心したのか、星形にデザインされたハイライトを輝かせて女を見つめる】
【建物のに隠れて恐る恐るこちらを伺う人々のことは眼中に入っていない。否、入ってはいるのだが、風景として処理されている】
【彼女にとって、今日一日の出来事は全てゲームなのだ】
「まあ、そうね。私も普段なら、買い物はネットかコロニーで済ませるんだけど……」
【最新好きな者達が運営する場所に、骨董品を置く余地はない。''ドラクラクエスト'' に関する情報を集める中で、強く実感したことだ】
「今どき、厚さ3mm以上のゲームソフトは扱ってないんですって。顧客満足度100%を謳うなら、扱ってて欲しかったわ」
【副流煙を退けるようにハンカチを口元へおきながらぼやく。紫煙を吸った布が、わずかに黄ばんだ】
- 113ルクノレア◆OXAm1h6odk25/04/11(金) 16:08:35
「───────────────────人自連側の違反によって交戦禁止協定の結ばれた輸送路が襲撃を受けた、だと?」
【未だ年若いであろう金髪の女性が、報告を受けてため息を吐いた。その端麗な美貌が苛立ちを帯びて青筋が浮かび、噛み締められた歯がギリギリと鋭い音を鳴らす───────その上で、天女のように美しい女であった】
【対インベイド超過激派であり、その延長として対人自連強硬派でもある女性だ】
「馬鹿め。人自連の機体なぞ安さが売りだ。我々は制式機体の“正規品”は滅多にしか合法的なルートで流さないが、奴らは別だ──────生還者はまだ新兵だったな。BFの機動力は“特例”でもない限りは銃火器には及ばん。その中でベテランではなく新兵が生き残ったのなら意図的に見逃されたと考えろ」
「理由だと?私が知った事か。そもそも奴は一枚岩ではないのだ。人自連全体は別にしてもトチ狂った企業がいても可笑しくはない。デスペラードとて今の戦乱の方が傭兵稼業が儲かる奴とているだろう」
「理事会向けの案を作成しろ!“脅し”だ!お偉方にはそっちの方が“受け”が良い!人自連側に今回我々が受けた被害を伝えた上で、“実行犯”の名前を差し出させろ─────────」
【ルクノレア・ノーザレムは、常に苛立っている。それは例えば戦乱を利用して財を掠め取る無法者に対してであり、愚かにもクロノスを受け入れず現在にまで続くの対立構造を生み出した人自連に対してであり、そして諸悪の根源たるインベイドに対してである】
【怒り。怒り。怒り。怒り。感情を爆発させながらも、権力者ではなく“戦士”でありながらも、両陣営が納得できる落とし所を考えられる理性がある】
【“スケープゴート”だ。それが本物であれば尚良いだろう。クロノスに下らなかった企業に対して怒りはあるが、しかし怒りを感情のままに発散させては取り返しの付かない事態になる事は理解している】
「血の海で、大火となる前に種火を消し止めろ」 - 114龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 17:09:48
- 115エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/11(金) 18:11:05
- 116ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 18:24:25
- 117龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 18:35:43
- 118ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 19:02:14
- 119龍影◆9BZ6kXGcio25/04/11(金) 19:53:26
タッチダウン。素晴らしい着陸であった。
「とりあえずは依頼主に話を合わせて途中までついて行く。渓谷手前で加速、0.3秒で上昇。2秒後に反転してトーチカと思しき箇所に砲撃。OK?」
機体をカーゴから出して、輸送機をカモフラージュしている間に最後の確認をした。
「その後に上がって来るであろう伏兵を一機ずつ2機で対処。分散して単独での戦闘は無し。囲まれておじゃんになるから。」
そうケイに伝え、龍影は望月に乗る。機体にはポンチョを被せていた。武装の露呈を防ぐのと、ブースターを使っての移動による粒子消費を抑えるためだ。これは依頼開始まで外さない事を同じ偽装をさせているケイにも共有した。
- 120ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/11(金) 20:10:07
「了解。手前加速、上昇で互いにトーチカを砲撃――――カモフラージュがあれば、相手のカメラ解析は防げるか……?」
《機体のカメラアイも隠すようなものです。よほど高性能でなければ、初撃でこちらの機体名が露呈することはないでしょう》
段取りを確認しつつ同様の装備を施された蒼風に乗り込み、ケイはそうあって欲しいと祈るような声で機体を立ち上げる。偽装を外さないよう、予め機体の動作パターンを組み替えて起動シーケンスを取った。
――――――――――――――――――――――――――――
――――コア粒子機関始動。
――――機能確認、開始。
――――酸素供給システム・作動
――――排気温度調整機構・作動
――――機体位置測定機能・作動
――――コア粒子伝達流路調整機能・作動
――――操縦士保護機能・作動
――――自己診断システム全て正常。
――――蒼風、起動開始。
――――――――――――――――――――――――――――
「よし、こっちは出れます!!」
ケイは龍影に呼びかけた。
- 121ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/11(金) 20:17:26
- 122アリソン◆PPyRfvMZl625/04/11(金) 20:47:38
「オイオイ頭お花畑かハッピーレディ?ヒーローがンなナリしてっかよ」
【紫煙燻らせ晴れ空に嗤う、路地から覗く蒼は、この街の何処から見るよりも窮屈だ】
【空を恨めしく思い始めたのはいつからだったか、あの青色の果てに、世界を滅茶苦茶にしてしまったインベイドの根源があるとするならば】
【自由なんて何処にもありはしない────────────せめて、この街だけはそうであってほしいものだ】
【安全安心を謳うコロニーから来た余所者の目当ては、どうやら今となっては骨董品のゲームソフトらしい】
【成程、表で取り扱いは無い筈だ】
「……はァ、こっち来い、アングラにももう少し真っ当なジャンク屋はある、扱ってる保障はしねぇけどな。
無計画にうろつかれるよりかはよっぽどマシだ」
【後頭部をガリガリと掻き毟りながら、先導する様に路地を歩き出す】
【付いてこないなら、それまで、リンゼイのことを待ちまではしないだろう】
- 123リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/11(金) 21:41:25
「昨今のヒーロは多種多様だもの。いたって可笑しくないわ」
【むしろ、今は彼女のような捻くれたキャラクー性を持つヒーローの方が主流な気さえする】
【20年前よりも理不尽な生と死に晒される人々が増えてから、直球に善良なヒーローは娯楽の中から急速に姿を消していった】
【自分たちと同じく世の中を恨み、斜めに見ながらも、善き行いをする。信念を貫く】
【そういう者が今は眩しいとされ、好まれているのだ。程よく親しみを感じられるし、憧れられるから】
「ふふっ……ありがとう、レディさん。喜んでついていかせてもらうわね」
【リンゼイは鈴を転がすように無邪気な笑いを奏でながら、跳ねるようにして女の後へついていく】
【興味深いダンジョン探索、楽しいアクション、素敵なNPCとの交流】
【レビューをつけるなら星3以上は固いなと。そんなことを考えながら】
- 124アリソン◆PPyRfvMZl625/04/12(土) 00:46:28
【入り組んだ裏路地、アンダーグラウンド、通りすがる人々は時折リンゼイを腫物を見る様に一瞥するも】
【先を歩くアリソンの姿を見ればそそくさと離れて行く、どうやら、有名人らしい】
「そのレディさんってのやめろ、アリソンだ、アリソン・キャラドール。
人自連で傭兵やってる……てめぇらの兵隊も、クソ程殺してるよ」
【煙の織り成す白線が、誘導灯の役割を果たしている】
【やがて辿り着いたのは、古く、脆く、外壁の崩れかけた3階建ての雑居ビル、旧時代の名残りと察するには余りある】
【階段を昇って、怪しげな木製の扉を押し開けば、かび臭い部屋の空気が一気に鼻を突いた】
「オイおっさん、客だ、客連れて来てやったぞ……ンだよまた奥に引っ込んでんのか?」
【慣れた様子でずかずかと踏み込んだその部屋は、どうやら確かに、ジャンクパーツや古い機械部品を扱うジャンク屋の様相だった】
【うず高く積み上がったPC部品の山、何に使うかも分からない謎めいたガジェット類、奥から響いて来る微かな金属音】
「……まぁ、勝手に見ろよ、アタシはおっさん呼んで来るわ。
オーイおっさーん……」
- 125◆PPyRfvMZl625/04/12(土) 00:47:03
『……ああ、良かった、来てくれたんだな!もう諦めかけてたところなんだ……!』
【BFの眼下に一台の走行車両が停まっている、運転席から身を乗り出した青年は、心底安堵した様な表情で二人に手を振っている】
【ノイズの量と言った差異はあるが、それは依頼となる通信の声と同じ、つまり、彼こそが今回の依頼主なのだろう】
『とりあえず、予定通りの地点に“アバドン”の誘引は終えてる、途中で何人か、仲間がやられちまったけど……ここからは予定通り、俺がアンタ達を作戦開始地点まで案内する!』
【声色には嘘らしいものは無い、作業帽を目深に被って、運転席へと】
『機体の音は抑えてくれ、折角の奇襲作戦なのに、音でバレたら台無しだからな。
エンジンの稼働は最小限に、頼むぞ、さぁ、付いて来てくれ!』
- 126龍影25/04/12(土) 06:09:24
- 127ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 08:11:38
- 128◆PPyRfvMZl625/04/12(土) 10:36:47
【V-9コロニー外縁は、インベイドの侵攻を妨ぐ防壁として幾重もの渓谷が迷路の様に入り組んだ荒野であった】
【先導する装甲車両はその渓谷内へとゆっくりと歩み入る、時折ちら、ちらと、サイドミラー越しに背後の二機が付いて来ているか、慎重に確認を取りながら】
『ああ、もうすぐだ、もうすぐ』
【戦いの痕を残す谷底を進む、見れば周囲には、破壊されたBFの残骸や、インベイドの屍と思しき金属塊等が転がっている】
【それは、まるで】
【墓標の様で】
・・・・・・
『────────────作戦開始でさぁ、ドミニク隊長』
【────────────ケイと龍影の遥か後方で、爆発音が響いた、輸送機を待機させておいた筈の場所である】
- 129アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/12(土) 10:37:41
【渓谷のマッピングを起こしたレーダー内に、14の熱源が突如として出現する、それは探知を防ぐ遮断シートによって今の今まで機体を隠し通していたデスペラード達だ】
『……着、弾……炎上、を、確、認』
『チッ、狙いより20cm左に逸れた、風の観測が甘いぞジョナサン』
『責任転嫁するんじゃねぇよぅ、お前の腕が落ちたんじゃぁねぇのか、“死線の狩人(ラインハンター)”さんよぅ?』
【それは、渓谷の縁に陣取った重装のタンク型BFであり、機体の全高よりも長い長銃を携えたローン・ソルジャーであり、脚部にホバリングユニットを接続するカスタムを施した人自連のSHINONOMEであり】
『ナカトウ、煽ってんじゃねぇ!今は喧嘩してる余裕は無いんだ!企業のクソ犬共が眼の前まで来てるんだぞ!』
・・・・・・
『ヒュゥゥ~~~ッ、ああ、そうだな、俺達が呼んだんだけどな』
『放っておきな、フザけてる内にケツに火が点きゃ、イヤでも真面目になるだろうさ────────────そっちはどうだいルヴァウ!?』
【それは、口径の大きな無反動砲を携えたシールド持ちのスカッド・ソルジャーであり、長刃のソニックサーベルを装備した近頃見慣れぬモノアイのBF『ガーゴイル』であり、それが追加装甲分膨れ上がったシルエットにカスタムされたまた別のガーゴイルであり】
『問題は無い、概ね想定通りに渓谷へ誘い込まれてくれた様だ、……デントナ、まだ待機だぞ』
『あぁあぁ~クッソ、分かっちゃいるがこういうのは性に合わんぜ、いつもならもうとっくに斬り込んでるってのに!』
『それデいっつモ派手に怪我しテ帰って来ルんだロ?世話ないヨ、たまにハ待てモ大事なことヨ?』
【それは、側頭部から長い通信用アンテナを伸ばした指揮官級のガーゴイルであり、空戦ユニットを背負った巨大なシルエットが特異なスカッド・ソルジャーであり、左腕に滑空砲を備えた火力支援仕様のガーゴイルであり】
- 130アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/12(土) 10:38:43
「よォし、全員揃ってるな!分かってるとは思うが敵は速い、相当だ、フリー・ボーイのイチモツが暴発するよりも速い!!」
『た、隊長!?こんなところで、やめてくださいよ!?』
「ンハハハハハ!!とにかく、点で狙おうとはするなよ、そんな芸当が出来るのはビルくらいのモンだ、徹底的に面で攻撃!!
物量じゃ俺達が勝ってる、地の利もな、まずは飽和火力でじっくりと炙ってやる!!」
【それは、巨大な盾と火砲を携えた異形の大型BF『アバドン』であり、その傍にまるで側近の様に控えるガーゴイルであり】
『ジェミニⅠ、いつでも『行けるぜ、ジェミニⅡ!』!』
『全機、位置に着きましたドミニク様、号令を!』
【それは、節くれ立った奇妙な関節形状を持つ二機の多脚BFであり、両腕のアサルトライフルと背負ったミサイルポッドが火力偏重な印象を与えるガーゴイルであり】
「連れて来てやったぜお前ら────────────さぁ、戦争だ!!」
【────────────それぞれが手にした砲が一斉に火を噴く、幾つもの死地を乗り越えた悪鬼羅刹の無法者達】
【『アブソーバー』、14名の実働部隊であった】
- 131ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/04/12(土) 14:23:35
【識別番号を有さない無名の基地、というのは企業間戦争が苛烈となったインベイド初期侵攻以降増加し続けていた──────才能か経験かを問わず、エース級のBFパイロットというのは少数で無数の敵を撃破可能だからだ。隠匿可能なスペースが少なくとも、一個小隊を沈められるパイロットを保有するのは可能である】
【ゴエティア(Goetia)の名を冠する人自連の戦団に所属するパイロット達もまた、そういった類いのエースである】
「───────“ストラス”さん、何を聞いてるんですか?コクピットから漏れてコッチまで聞こえてきますが」
「タイトルには“大地讃頌歌”と書いてあった。今のご時世、食を愉しむよりも僅かなコア鉱石で流せる音楽データの方がメンタルを安定させる上での費用対効果に優れているぞ。“アンドレアルフス”」
「例えそうだとしても、そんな大音量でも流してると耳が壊れちゃいますよ。遂に義体化する決心でもしたんですか?」
「義体化する気はない。ウチの技術部が義体対策として電子戦装備を開発していると聞いてからは益々厭になった…………………時々、仲間割れをしないインベイドが羨ましくなる時がある。親愛なる我らが同族の方々が互いに銃を向けて牙を研いでいるのを見るとな」
【老兵の嘆きに、青年から戦い続けて壮年になってしまった兵士は肩を竦めた。人類が団結していれば今頃は隠居生活を満喫していたかも、なんてもう既に何回考えたかも分からない】
【基本装備を除外した二機の『SHINSEI』と、予備を含めた三機の大型航空輸送機。そして無数の特殊装備だけが静かに佇んでいる】
【業務の多くは自動化され、機密保護によってクロノスを牽制する為だけにゴエティア戦団は分割され人自連上層部の手駒と化している。戦力の浪費だと思うが、しかし歴戦ではあっても一介のパイロット如きには現状を変えられない】
【壮年の兵士の心を見透かしたのか、老兵が空気をリセットするべくデータを送信して笑った】
「メンタルケアが必要か?先日“逆巻重工”が新規機を発表したらしいぞ。懐かしい名前だ、まさか再び機体を出すとはな」
「ハッ!………………ありがとうございます、“ストラス”さん」
「気にするな。だが機体データは覚えておけ。救援任務で役立つ事もあるだろう」 - 132リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/12(土) 16:44:18
「インベイドもいっぱい殺してちょうだいね?……あ、私はリンゼイっていうの。よろしくね、アリソンさん」
【威嚇か、脅しか】
【そんな含みを透かせた物騒な自己紹介にも臆することなく、リンゼイは明るい笑顔を返す】
【アリソンのK.I社に対する反感を隠しもしない言動の数々を見た今となっては、大して驚く内容でもなかったからだ】
(リアルで残ってたのね、こう言う場所……)
【コロニー内ではフィクションの中でしか見ないような、旧時代そのままの様相を呈しているビルに感動を覚えつつ、中に入る】
【そして窓から差し込む光に照らされた埃混じりの空気を吸わないよう、持ってきたマスクを身につけてから、室内の物色を始めた】
- 133ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 18:43:19
《射撃音、後方の輸送機へ》
――――そう来たか。
次の瞬間来るかもしれないだましうちに対し備え続けたケイの思考が……スイの言葉と同時に12に分割される。
狙撃はBFではなく、輸送機へ。 狙いはおそらくエンジン。撤退を塞がれた。
着陸している状態でアレは避けられない。 パイロットの無事は……。
《被弾箇所はエンジン。人的被害は少の可能性大》
《続き、BF十五機が偽装を解除》
スイがいうならばケイは信じた。 そしてレーダーに視線だけを向ける。 渓谷の縁に沿って各BFが配置されている。
上を取り、左右から火力を叩き込む陣形と考える……普通に考えれば『詰み』だ。 よく練ったのだろう。
裏をかこうとしたつもりが、相手が地形を利用した。 偽装はまだ生きていると仮定する。
一手目を考えた。
「龍影、どうする? 予定道理にやる?」
ケイは笑って。横にいる相棒にして恋人に問うた。 プラン道理にやるか、破棄するか。
《面制圧、来ます》
火力がなだれ込んでくる前兆。 彼女に合わせて動くと、ケイは決めた。
- 134アリソン◆PPyRfvMZl625/04/12(土) 18:52:24
「おっさん、オイおっさ……」
『じゃかぁしぃ!!そんな大声出さんでも聞こえとる!!』
【物で埋もれたカウンターから、奥の扉を無遠慮に開いて声を掛ければ】
【アリソンよりも一層不機嫌そうな皺枯れた男性の怒鳴り声が轟いた】
「じゃあさっさと出て来いよ、折角の客だぞ、金づる欲しがってただろうが」
【明け透けな態度で身を翻すその向こう、如何にも頑固そうな印象を与える作業着姿の老人が、腰元をトントンと叩きながらリンゼイを睨み付ける】
「ゲームソフトを探してるんだと、そういうのはアンタの領分だろ」
『……フン、どうせ碌に遊んでもやらねぇただの蒐集家(マニア)だろうが、オイ小娘、ごちゃごちゃ引っ繰り返すんじゃねぇぞ』
- 135リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/12(土) 20:56:50
「どこも崩してないわよ、マスター!」
【部品の山やガジェットで築かれた壁を撮影していた手を止めて振り返る】
【マスク越しでも一切の曇りがない、クリアな音声が店内に響いた】
「それから、私はマニアじゃなくてプレイヤーよ。飾るためにハードを拵えてもらうほど酔狂じゃないわ」
【遺憾の意を全身で表現しながら、スマホの画面を見せつけるように突き出す】
【そこでは白と臙脂色のツートンカラーが配色され、前面に ''Familia Computer'' との文字が光る、古めかしいゲームハードが清潔な床の上に置かれていた】
「こう見えても、データ化されてるクラクエシリーズはトロコンするまでやり込んだんですからね。……おしゃれマスターになる道は険しかったけど、ファッション好きとしては逃せない称号だったのよ。カミィありがとう……!」
【スクロールし、ポリゴンで構成された鳥が羽ばたいた様を模した金と青の紋章を見せる。撮影時はよほど興奮していたのだろう、ところどころブレている】
【この紋章を得るまでのことを思い出したのか、後半の言葉は噛み締めるようにして発された。もしリンゼイが今も生身のままなら、目尻には涙が溜まっていたに違いない】
- 136手番自信ニキ◆xZJxX8ZGsA25/04/12(土) 21:14:15
【逆巻重工は特異な企業だ。自社製品──特に月風を駆り対インベイドを重視して動く者であれば、それが社外の傭兵であれ惜しみない協力を行う。更に接触に関しても積極的で、連絡を取れば一介のパイロットですら簡単にアポイントメントを取り計らってくれるほどだ】
「…」
【コン、コン。扉の前に立ち、二回のノックをして入室の許可を待つ男性もまた、人類を守ることを最たる至上とし、外来生物を討つために月風を駆る者の一人だった】 - 137逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 21:22:10
- 138手番自信ニキ◆xZJxX8ZGsA25/04/12(土) 21:37:43
「失礼します」
【電子音と共にロックが解除された扉から入室し、翡翠の瞳と視線を合わせる。やや軽薄そう…というか悪く言えばチャラそうな男性も、この時ばかりは真面目だった。何せ眼前に居るのは、この逆巻重工を取り仕切る六代目、人自連の頭の一つの、逆巻カンナだ】
「はい…ありがとうございます。逆巻さん。つっても、大体はさっき送ったログ通りっていうか…自分は依頼受けて秒でかっ飛びました。なのに着いた時には、既に常駐してた守備部隊はほぼ壊滅。そんで…残ってた一機も……あの黒いのに、やられました」
【やや落ち込んだような様子で、男は語った。着いた時に見た、スクラップと化したアズマ工業の機体たち。獲物の前で舌なめずりするように、スリットの中で光を流動させる黒い所属不明機体。そして、守れなかった命】
「あれが何なのか、逆巻さんには心当たりありませんか?」
【憑き物を振り払うかのように首を降ってから、男は僅かな希望を滲ませながら、彼女へ問いかけた。外装だけは月風のアトモスフィアがあるが、明らかに別物の、謎の機体についての手がかりが無いかと】
- 139逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 21:51:52
「ふむ……心当たりか……」
受け取ったログを確認しつつ、ふと様々な情報の中にある癖を読み取る。 コンストラクターとしての職業病のようなものだった。
「……これ、神経接続式だね。機体入力が現在進行形で進んでるうちに、大量のキャンセルログが見える動きをしてるよ」
よくやるねこういうの。とカンナは呟いた。この手のキャンセル行動は機体の安全行動すら省略するものが多く、必然関節やブースター系への負荷も高いのだ。 やろうと思えば同様のことは月風でもできるが、それは機動や安全を切り詰める行為に等しい。
「OSがハングアップしてないのが奇跡……いや、最悪の場合はパイロット自体もOSに……?」
顎に手を乗せ考え込むのは、カンナの癖だった。
(……G-3コロニー攻略戦の彼女、か?)
思いついて、しかしかぶりを振る。 憶測だけで断定はできない。 貴重なパイロットが減りかねないからだ。
- 140手番自信ニキ◆xZJxX8ZGsA25/04/12(土) 22:06:03
- 141龍影25/04/12(土) 22:12:31
- 142逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 22:20:06
「ありえない話ではないよ。既にヴァルハラテックは実用化しているし……危険性を抜きにすれば、やれる可能性はより上がる。そもそもこの手の技術自体がねぇ。君たちみたいな月風乗りの技量を安定して再現するため。というフシもあるんだ」
卵が先か鶏が先か。という話になるけども。という前置きをしつつ、この手の方式の利点は"進行形で機体に介入、同時に先行入力をこなしてキャンセルも可能"というものだ。
そもそもこれと同等以上の戦闘を行えるマニュアル操縦者が変。というのがカンナの意見だが、そもそも彼女自身が月風の強さを知っているため、まぁそう思うのもおかしくない。
(女性……ほぼ確定だな)
カンナは確信した。ケイにオルフェリアの死亡を伝えたという少女なら、可能だろう。ここまで当たりをつけた上で、カンナは誤魔化すことを決断した。
「すまないが、現在はクロノスも人自連も『所属不明機』による輸送ルートへの襲撃が相次いでいてね……この件もクロノスが人自連側への疑いを持ったことによる報復行動の疑いがある」
いつものことだ。ちょっとしたことで、お互いが攻撃の理由をつけたがるのは。
ただし、どちらも今回は『彼らがやった』としてどうにも疑いを拭い去れていない。 対クロノス過激派も"老害共"も、そしてクロノス内の対人自連過激派もなにやら動きがあるようだ。
「とはいえ――――流れとしてはあまりにも作為がある。輸送隊の襲われ方が平等すぎる、といえば良いのかな」
交戦した部隊はどちらもほぼ壊滅にありながら、状況判断が拙い新兵ばかりが逃されているのだ。
その癖から考えるに、彼女はシロ。 一連の流れには関わっていないだろう。
「私の方でも探るから、君は月風を補修している間ゆっくり休め。いいね?」
月風乗りたちは自分の体を二の次にしがちだ。 だから自分が念を押さねばならない。
- 143ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 22:25:17
- 144龍影25/04/12(土) 22:44:19
- 145ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 22:51:34
(龍影は間違いなく無理をしている)
分割された思考が、状況を把握する。 ヘリの被弾部位はこちらからは見えない。
(スイは問題ないと言ったが……!)
トーチカに直接対インベイド貫通弾を叩き込んだのち、サーベルで突き刺して。その後に地面を蹴って望月とポジションを入れ替える。
(本音を言えば狙撃型と砲撃型をやりたい……けどこの状況では他の機体の動きも未知数!!)
敵は面制圧でこちらの動きを止めようとしてきている。ポンチョによる偽装もその頃には剥がれてしまうかもしれない。
(出たとこ勝負をするしかない!!)
近接戦になれば、少なくとも射線の『被り』が起きる。ケイはそこも狙っていた。
- 146手番自信ニキ◆xZJxX8ZGsA25/04/12(土) 22:54:14
「そうなんすね…意外です」
【神経接続技術の実用化、それ自体は耳に入っていなかったわけでは無いが、ここまでとは思っていなかった。だがカンナの言葉に、通りで…と納得している部分もある】
「…悲しいすね、人間同士で争い続けるって。ああでも、仕返し…ってんならちょっと納得っす。あの黒いの、自分のことはアウトオブ眼中でアズマ工業に元々居たBF倒して帰りましたし、工場内にも危害を加えてなかった…みたいなんで」
【顎に手を当てながら、ようやく男はその機体の意図の輪郭に触れる。最も一介のパイロットに過ぎない彼にはカンナの視点で見えている裏など片鱗すらも見えていないので、平等に襲われているというのも…ただ仕返し合戦なんじゃないか?程度にしか考えられていないのだが】
「ありがとうございます。ああ、月風…そう、一番気になってたことを忘れるとこだったんすけど…」
【黒い機体は月風に似た機動戦重視のもので、かつブーストの瞬間的な加速も近しいものがある。最後にSHINSEIを沈黙させた剣のようなライフルも、機体との統一感を求めたような形状だが、素人目の話に過ぎない】
【それでも機体と直接打ち合った男は、違和感を感じている。月風を模したというよりもまるで何かに月風が混ざったような感覚。欲しいところを、欲しい形で吸ったような気持ち悪さ】
月風モドキ
「こいつ…アーヴィング、すか?」
【だから聞きたかった。誰よりも月風を知るであろう人物に、その答えを】
- 147ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/04/12(土) 23:08:28
『───コード11Eを受諾───』
『───繰り返す。コード11E、非合法組織による偽装依頼及び人自連所属パイロットの生命財産侵害未遂に関する救難信号を受諾した───』
【冷徹な機械音声が、人自連の通信コードを通じてケイと龍影の両名に情報共有を行っている】
【表示されているロゴマークは「ゴエティア戦団」のロゴである。人自連の謂わば“機動部隊”と言える数々の緊急性の高い任務に従事する純粋な武力闘争組織だ】
『───GN.36“ストラス”。GN.65“アンドレアルフス”の30分以内の現着───』
『───GN.14“レラジェ”。GN.44“シャックス”。GN.39“ハルファス”。GN.70“セーレ”の2時間以内の現着───』
『───我々「ゴエティア戦団」は、以上の増援を保障します───』
【つまり、最長でも30分は二機だけで耐え凌がねばならないと。無機質なシステムはそう告げている】
『───補足:特務執行機の降下時に、“空爆”を行います。攻撃座標を入力してください───』
【無論、それは“本気”の増援だが】
- 148逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 23:14:19
「その仕返し合戦が不自然、ということだ。襲って襲われてが平等じゃんけんすぎる」
「だいたいね。この手の戦闘で『やった側』の損害がゼロなんて……おかしいと思わないかい?」
資料を見せる。こちらが『クロノス側に襲われた証拠』として出されたデータは、相手がスカッドソルジャー系の改造機中心でありながら……人自連側は新人以外ほぼ全滅。敵へ与えた損害は一方でほぼゼロ。
そんなもの、コロニーの中でも特に腕の良い部隊でなければありえないのだ。
逆巻重工の実働部隊が襲いかかっているようなものといえる。
そのうえで。彼の疑念に対しては。
「違うね。これはアーヴィングなんていうフレームを真似ただけの異形じゃない……これが真似しているの、あくまでうちの装甲形状だ」
断言した。
「機動力、運動性に必要なナニカとして有用だと思ったのかな……内部フレームはもっと違うだろう」
SHINSEI、スレイガン、あるいは他のなにかも利用したキメラ機……という表現が適切になる。とカンナは考察を締めくくる。
材料が少なすぎるのだ。完全な特定は難しい……搭乗者の特定が済んだのは良いことなのか悪いことなのか、カンナには悩ましいところだった。
- 149エイダン◆Fd5AlHEdkk25/04/12(土) 23:22:38
- 150ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 23:28:58
- 151手番自信ニキ◆xZJxX8ZGsA25/04/12(土) 23:41:46
「あっ!そういうことっすか!確かにこれは…出来過ぎてる…すね」
【資料を見ながら彼女の説明を受けた男は、なるほどと手を打った。どうやらようやく理解に至ったらしい】
【作為的に不和を起こす為、そういった行動をしている暇が人類にあるかと言いたいが、インベイドに与する狂人すら世界に居るのだから、きっと自身には理解できないのだろうと諦める】
「…流石すね。そうなるとこれは…ドーザーすかねぇ」
【これだけの情報でフレームの部分まで推測する彼女に尊敬の念を抱きながら、うーんと唸る男の思考は一般的だ。こういう改造を施したデスペラードらしい機体は大体がドーザー製のもので、継ぎ接ぎのキメラ機だってさして珍しくないだろう。まるで新たなフレームから作られたような機体に見えたのも、無駄を全く感じなかったのも、自分が素人なだけかとため息をついて】
「ちょっとピリ辛に味付けされた程度に遅れを取るんじゃ、俺ちゃんもまだまだかぁ」
【あーあ、と天を仰いだ。自嘲的に濁った目は曇っているのか、CEOの前というのをやや忘れている】
- 152逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/12(土) 23:54:17
「どうだろうな……この手の緻密な設計はドーザーやデスペラードにはないものだ。装備系にも彼らにありがちな派手さがない……機体が主。装備が従。 ドーザー製は時折どちらかが逆転している」
目の前の若い男に分かる程度に、眉間にシワが寄っていた。……なにか、似ているのだ。何に、とまでは言えないが。
設計の癖、あるいはミームと呼ばれるようなものが……誰かに似ているような気がした。
「どちらにしろ、君が甘かったというより、敵が上手だっただけだ。卑下しているようなら……修理中の間だけ無料でうちの実働部隊に叩き込んでやるぞ?」
せいぜい揉まれてこい。という笑みをしながら、資料を渡す。 新型機、『Cv-A8 廉月』の資料だ。
「ま、月風に限界を感じるようなら。ぜひ廉月もテストしてみると良い。 今ならテスター募集中だ」
言い切って、笑った。
- 153手番自信ニキ◆xZJxX8ZGsA25/04/13(日) 00:14:14
「でも企業が…キメラなんか作るすかね……」
【悩んでいても端正な顔立ちであれば映えるもので、理知的な女性であれば尚似合う。無い物を絞り出すような、必死だが間抜けさの残る男とは対照的だ】
「えっ!?いいんすか!!!!!!」
【食い入るように廉月の資料を見つめる。逆巻重工の実働部隊、それは腕前を認められた月風乗り達に他ならず、そこへ自らの技を研げるのであれば断る理由などない。更に先日発表されたばかりの新機体、廉月のテスターというのも望んでなれるものでないことは明白だ】
【カンナの笑みを見れば、それが冗談ではないことが分かる】
「お願いしますッッ!!!!!!」
【熱を込めた声と共に、男は頭を下げた。その勢いにも声量と負けないほどの喧しさがある】
- 154ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/04/13(日) 00:16:10
『追加特殊装甲パッケージは“マーキュリー”と“ヴィーナス”だ。大型多重硬殻通信構造物は既に全機への搬入が記録されている。予備機を間違えて引っ張り出すんじゃないぞ』
『了解しました、“ストラス”さん!』
【軍事用のバディフレームだとしても、戦闘にしか使えないという訳ではない。鋼鉄の巨人は文字通りの意味で百人力だ。訓練を積み重ねた「ゴエティア戦団」の構成員ならば装備の換装程度は容易に済ませられる】
【“アンドレアルフス”が装備換装準備を迅速に行うのと同時に、“ストラス”もまたバディフレームと比較してさえ大型である輸送機の貨物室の前に進んでいる】
【冷徹な機械音声が響いた】
『───識別番号。及び設定したパスワードを音声で入力してください───』
『GN.36“ストラス”だ。パスワードは“拷問塔に埋葬された翡翠と椿の葉”』
『───識別番号と設定されたパスワード及び声帯認証が一致。運用許可を確認。大型輸送機の使用を許可します───』
【パスワードと身体データ、そして戦団からの運用許可があって漸く輸送機を使える。どれか一つでも欠けていればその瞬間に空調システムが基地内部を真空状態に移行させる様になっている】
【“アンドレアルフス”が準備した追加特殊装甲パッケージを装着してから、“ストラス”は大型輸送機に搭乗した】
『オートパイロット、起動』
【────────────────────ジジジジジシジッッッッッ!!!!!】
【空気を裂く鋭い音が鳴って、二基の大型コア粒子推進機構が駆動し始める。超音速で目的地まで一切の減速を挟まずに突撃するべくオートパイロットが進路を設定した】
【救援信号から遅れる事56秒、“ストラス”と“アンドレアルフス”は空の旅に出発した】 - 155逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 00:19:20
- 156龍影25/04/13(日) 07:29:21
- 157ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 09:06:35
- 158アリソン◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 09:56:47
『……ほう、小娘、意外と話せるクチか?
・・・・・・・・・・・
少なくともチリチリ赤毛のアリソンよりは“礼儀”を知ってそうだな』
「ハッ、放っとけ、ゲームなんかにのめり込んでいられる程こちとら時間に余裕はねぇんだよ」
【ギーク同士の会話には割り込めない、退屈そうにカウンター裏の椅子へとどっかりと腰を降ろしたなら、アリソンは我関せずと傍らの小冊子を手に取った】
【古い時代の連載漫画誌だ、巻頭の色褪せたカラーページは、今となってはもう完結の見込みは無いかつての大作のタイトル】
【このジャンク屋には、そうした古い時間が流れている、遠い過去に置き去られた、残影が】
『ソフトならこっちの棚だ、インベイドに滅ぼされた街、避難を余儀なくされ、放棄された街……。
そういう瓦礫の中から無事なモンを拾って売ってる、中身のデータもな、経年劣化で接続が悪くなってるモンもあるが』
「なぁおっさん、灰皿何処やったんだ?アタシが前に持ってきてやった奴……」
『小娘は“クラクエ”派か、俺がガキん頃は専ら“ラスファン”ひと筋でな、特にナンバリングの6と7が……』
【全く、こちらの話など聞いていない】
「……チェッ、ギーク共が」
- 159アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 09:57:51
『ヒュゥ~~~ッッ!この状況でキッチリこっちを狙ってくんのかよ!やるじゃないのG-3の英雄!』
・・・・・・・
【口笛が聞こえる、それは二人にもしっかりと、オープン回線だ】
【燃え盛るトーチカを直上に飛び出したモノアイの機影、既に壊滅したBF開発企業『アンセム』の傑作機は、増設したスラスターが齎す機動力にて貫通弾頭とサーベルの追撃を躱す宙返りを見せた】
【追撃、望月の放つ一閃が機体左腕を斬り抜いたのを、一切の動揺も無く受け入れれば】
【火砲の間を縫う軌道、頭部バルカンの速射を叩き込みながら後退する】
『ヒュゥッ!死線の感覚はどうだったよ小僧っ子、それとも娘っ子かい?
さぞかし楽しかっただろう!俺達も居合わせたかったぜ、ヒュゥゥゥ~~~ッッ!!』
【────────────エドワード・スコア、悪魔が吹く、笛の音が響き渡る】
【ガーゴイルが放つ頭部バルカンとサブマシンガンの射線、身を翻して更に奥の塹壕へと跳び退りながら】
『デントナァッ!悪いが今日の一番槍は俺みたいだぜぇっ!ハハハハハッ!!』
- 160アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 09:58:24
『エドワード……が、衝突……向、かって、来る……機影、見え、ない……火、線、突っ、切ら、れ、るぞ』
「らしくねぇ弱音を吐くんじゃねえよジョナサン、砲戦のスペシャリストが、お前の取柄は目の良さだけじゃねえだろう!
と言っても闇雲にやってもしょうがねえな、作戦変更!CからD飛んでE!ナパーム装弾!!」
【二機の周辺に降り注いでいた火砲の嵐がほんの一瞬だけ降り止む、それは、決して弾切れの隙では無い、狙いを変えたのだ】
【次瞬、曲線を描く弾道にてグレネード弾が飛来する、ケイ達の移動する先、渓谷の斜め前方に聳える岩壁に衝突したのは4発の焼夷榴弾、着弾と同時に機体を焼き焦がさんとばかりの爆炎が滝の様に襲い掛かる】
【機影を覆い隠す布切れを、燃やし尽くしてしまおうという算段だ】
・・・・ ・・・・ ・・・・
「崖を崩せ!奴らが移動できる場所を絞り込む、フランク!ベンソン!頭上から牽制砲撃、飛び出す隙を与えるな!」
『エドワードが接敵している、過剰な火力は使えない、つまりはお前の出番だ、敵機が停まりさえすれば狙えるなコークショット?』
『つまらない確認をするなルヴァウ、俺に狙えないものがあると思うのか』
【アバドンと、アンテナ持ちのガーゴイルが指揮の要だ、その上で遥か後方にて対BFロングライフルが狙いを定めている】
【爆撃の向かう先は二人ではなく、二人が進もうとする先の岩盤へと切り替わった、打ち崩された瓦礫がガラガラと降り注ぎ往く手を阻む】
『速いんだってぇ!?』『空を飛ぶんだってぇ!?』『飛んでみろよ!』『跳ねてみろ!』『『空が誰の領域か教えてやるぜ!!』』
【異端の多脚BFが跳ねる、兄弟パイロットはケイ達の遥か頭上の空中で静止(ホバリング)すると、手にしたマシンガンを連射し始めた】
- 161ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 10:41:58
「――――ッッ!!!」
自身の真後ろへ宙返りで飛ぶ敵機の放つ頭部バルカンの牽制、そしてサブマシンガンの射撃。
ケイは蒼風に上昇機動を命じてそれ躱し、上空で機体を真横に寝かせるような姿勢のまま高速速射砲を牽制で撃ちながら。
――――……まずいな、と思った。 渓谷の中にある塹壕は様々な攻撃から身を守る盾になるだろう。
「そっちこそ、この状況でさっさと逃げるのか? 随分とお仲間思いだな!!」
テメェが釘付けにできりゃあ、俺程度は落とせただろうよ!! と挑発しながら。滑腔砲を一発だけ塹壕に放った後。さらに上昇する。
速度を高度に変換するための動きだ。そこに、外套ごと焼き尽くそうとする炎の滝が。
「……!!」
これで焼かれるには速い。そう判断したケイは急減速をかけて静止。炎の滝を完全に見据える。
ガラガラという何かの崩れる音がした。 突っ込んだら危なかったな、とケイの中の肝が冷えた。 崩落に巻き込まれかけた経験が己を救ってくれたことに安堵する。
《敵機直上、ホバリング》
「――――それが望みなら踊ってやるよ!!」
異形型のBFが二機。遙か上空からマシンガンを打ち下ろしてくるのを確認して右に飛ぶ。崖を足場に跳躍。更に加速して宙に踊る。
火線を右の盾で防ぎつつ。左腕盾に内蔵した高速速射砲を中レートに調整して、相手にばらまき始めた。
- 162二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 10:44:19
このレスは削除されています
- 163龍影◆9BZ6kXGcio25/04/13(日) 10:48:46
- 164ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 10:55:22
直後、最も大事にしている女性の怒号がより大きく響く。響いた。
「――――悪い。あんたらの相手は今度な」
そのまま滑腔砲を放つ。 時限信管。コンマ数秒に設定したそれが蒼風と二機の逆脚BFの間に一度爆炎の壁をつくる。
「龍影!!」
多脚に向けてビームを放つ彼女の機体に、わざと蒼風の左手をぶつけて接触回線。落ち着かせなければならないが、どう言葉をかければいいか、悩んだ。だが時間はない。
「今は俺がいる!! ……一緒にやろう!!」
蒼風が高く響くような推進音を鳴らしながら望月と触れて、ケイの言葉は短い。 過去は否定しない。だが、今を蔑ろにされるとこっちが嫉妬するのだ。
- 165ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/04/13(日) 11:08:39
『────現在、「ゴエティア戦団」より勧告しております。“空爆”の攻撃座標を入力してください。我々は適切な火力支援を実行します───』
【無機質な機械音声が人自連の回線に響く。事前に30分以内の現着と保障したが、しかし未だ10分も経過していない時刻である】
【“以内”という事は、それよりも疾く現着する可能性も充分に存在するという事だ】
『───再度、勧告します。攻撃座標を入力しない場合は、敵軍の推定統制機体を自動的に攻撃座標と定めます───』
『───現在の巡航速度は約912km/h。救難信号を受信した地点まで加速を維持します───』
- 166龍影◆9BZ6kXGcio25/04/13(日) 11:26:23
- 167ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 11:49:23
- 168アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 13:40:02
・・・・・・・
『……ドミニク、ポイント3の観測手から報告だ、空から何か来る』
「敵の増援だろう、通信妨害なんざしてねぇからな、救難信号はいくらでも……フリー・ボーイ!エリアスが弾薬補充で下がる、代わって上がれ!!」
『良いのか、このままだと折角構築した陣地も、数的有利も台無しになりかねないぞ』
【『アブソーバー』は今回の作戦に、実働部隊の他、それを補佐する十数名の末端人員を用意していた、始めにケイ、龍影達を誘導した装甲車の青年もそうだ】
【渓谷の各所に配置した観測点から跳び込んできた報告を受けて、ドミニクに意見を求める、それが出来るのは彼に心酔しながらもある種の理知を保つ、副隊長であるルヴァウだけだった】
【即ち、ここで退くか、別動隊を組織して増援を妨げるか────────────】
「つまらねぇ事言うなよ、パーティーを盛り上げてくれるって言うんだぜ、寧ろ諸手を挙げて大歓迎だ」
【────────────ドミニクは嗤った、死地が彼らを待っているのではない、彼らが死地を待っているのだ】
・・・・・・・
「ここは厳密にはクロノスの領地だ、人自連から増援を飛ばすにゃあそれなりに時間がかかる、纏まった数なんて用意出来る訳がねぇ。
フットワークの軽い精鋭が2、3機程度でも寄越せりゃ上出来だ、数的有利は揺るがねえよ」
【インベイド侵攻開始から、20年、そしてその遥か以前から傭兵であった男の経験則は、すぐさま来ても不思議では無い増援の可能性について結論を導き出す】
【アバドンは上空に掲げたグレネードランチャーより、曲射、今日の獲物達が釘付けにされている渓谷へと榴弾を撃ち込みながら】
「警戒すべきは中身(にんげん)を用意する必要がねぇ遠隔攻撃、弾道ミサイル、無人機特攻、定点爆撃……。
てめぇら!頭の上に気を付けとけよ!丸ハゲになりたくなけりゃあな!!」
- 169アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 13:40:25
『空!?』『空だって!?』『丸ハゲだってよベンソン!』『冗談じゃないぜフランク!』『だったらもっと『もっと上に上がるだけよォ!』!』
【異形の4脚は腰から下をヘリのローターの如く回転させる、交差軌道、互いの位置を入れ替えながらホバリング地点より更に上空へと飛翔する】
【吹き上がる爆炎、発生する上昇気流を受け止めて、飛び出す滑空砲が先程まで彼らが漂っていた宙を貫いた】
【そこに既に、敵はいない、攪乱と連携】
【────────────二機一対の兄弟傭兵、フランクリン・ユース&ベンソン・ユース、機体名、“ジェミニ”】
『おぉ、なんだ、どっかで会ったことあるかい?ヒュゥ~ッ!いつ会ったかなぁ、悪いが声だけで思い出せる程記憶力に自信は無いんだわ!
ヒュゥゥ~ッ!恨まれる覚えなら死ぬほどあるしなぁ!そういう稼業だから!ヒュゥゥッ!ヒュゥ~~~ッッ!!』
【口笛の悪魔は、砲の撃ち込まれる塹壕から姿を表すと、けたたましい音波震動を繰り返してブレる長刃をこれ見よがしに構える】
『戦場でぇ!!慰め合ってるヒマがあんのかいお二人さん!?
・・・・・・・
キスもSEXもおウチでやりなァ!最も、生きて帰れたらの話だけどよ!ヒュゥッ!!』
【墳進、スラスターが燃える、隻腕となったガーゴイルは地面を這う軌道で以てケイ達に接近し────────────】
- 170アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 13:41:21
【────────────次の瞬間、飛び退いた】
『────────────オ、レ、よ、り、さ、き、にィ……!!』
【空に膨れ上がる爆炎と、望月、蒼風の居る丁度間の、空間】
【直線軌道で裂いた機影は、二枚の尾翼を背負ったスカッド・ソルジャーのカスタム、接触回線による通信を試みていた二機の間を、粒子ビームサーベルが通過する】
『始めてんじゃあねぇぞエドワード!コロすぞォ!!』
『ヒュゥッ!しょうがねえ野郎だな、折角お楽しみだったってのによ!?』
【アブソーバーには、多様な経験を持った傭兵が在籍している、彼は元々BFのパイロットでは無い】
【BFが本格的に空へと進出し始める以前、空は彼らの領域だった】
『斬り込むのは俺の役目なんだよボケがァ!それになユース・ブラザーズ!空はてめぇらのステージでもねぇ……!』
【元戦闘機乗り────────────デントナ・F・ラインベック】
『 俺 の 方 が 速 く 飛 べ る ! 』
- 171ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 14:02:43
「……!!!」
龍影に接触回線を繋いで要件を伝えた一瞬あとに、ビームサーベルが蒼風を覆うポンチョの一部を焼く。肩の装甲が露出した。
「速いな」
そう、とても早い。モニターに映るそれを見据える。おそらくかき回し役……危険な相手だ。
「そろそろキツくなってくるな……!!」
ケイの未来予測は、警鐘を鳴らし続ける。
《敵部隊の通信量が増加……やはり増援に備える動きのようです》
「わかった……!!」
一気に高度を下げて速度を稼ぎ。襲いかかる榴弾の雨の中をかい潜るように飛ぶ蒼風。ポンチョの偽装はまだ剥がれない。
だが……
(けどこれが一番厄介だ!!)
この爆炎こそが、最も集団の脅威度を引き上げているとケイは察した。 このままでは絡め取られる。
再度上昇、二機の四脚と盛大に撃ち合いながら、ケイはオープン回線でがなり立てる男に自ら繋いだ。
そろそろこっちもフラストレーションが溜まってるんだ。
「慰め合いと思ってるなら今すぐ俺を殺してみろよ。テメェは所詮、自分が強くなきゃ、有利じゃなきゃと他人と関係を気付けないんだろ?」
他人と深く繋がって生きていけない。次の瞬間に自分を殺すだろう相手と関係を築けない卑怯者。龍影をここまで怒らせているやつを、ケイは許せなかった。
「自分が強くなきゃ!女一人も優しく抱けない腰抜けが!! 今更しゃしゃり出てくるんじゃねぇ!!」
「そこで一生っ……お山の子分でいろよ!!」
高周波刀を持って迫る敵から。龍影の過去も未来も、自分が守ると宣言するように高速速射砲の雨を回り込んで撃ち込む。
彼より高く、蒼風は飛び。敵手となっている兄弟よりも鋭く飛び。今しがた乱入してきた敵とも、蒼風が踊る!
ドミニクの放つ榴弾が、蒼風のポンチョのうち、頭部だけを剥ぎ取った。
- 172龍影◆9BZ6kXGcio25/04/13(日) 14:05:17
- 173ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/04/13(日) 14:17:40
【───────────────────空が、燃えている】
【ジェネレーターが啼いている。深蒼の軌跡を刻みながら鋼鉄の羽獣が自滅への加速を繰り返しているのだ】
【超音速で航空する特殊作戦用大型輸送機は、今や燃え盛る鋼の怪物であった】
『───“大型多重硬殻通信構造物”及び救援物資の撃出を完了しました───』
・・・・・・
【二本の巨大な金属柱が現在進行形で超音速で渓谷に接近しつつある大型輸送機から投下されている。バディフレームと同規模の大きさのコンテナ型の物と、極めて厳重に密閉された宇宙事業にも使われていた特殊合金製の“柱”だ】
【超音速で巡航する航空機から投げ出され、重力の縛りを受けて地面に突き刺さっても傷一つない表面は艦載砲レベルの粒子ビームでもなければ破壊困難な材質であろう。その密度故に、バディフレームの装甲材には間違いなく適していないが】
『───“空爆”を実行します───』
【榴弾の雨を降らせる"鬼"を攻撃目標として、大型輸送航空機がジェネレーターとコア粒子推進機構の自壊を厭わずに駆動した】
【────────────────────大気が拉ぐ音がする。対空砲を真っ向から弾き返す装甲で覆い尽くされたコア粒子爆弾が、超音速で崖上に突っ込んだ】
・・
【そして、その直前に貨物室から現れた機影が二つ存在する】
- 174ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 14:28:02
「任せた!」
自分ごと壁に激突するような動きを取った龍影に対して一切の静止をせず、ケイは蒼風をガーゴイルに向けて加速。
そのまま右腕に展開したビームサーベルと高周波刀を一気にかち合わせる。 そのまま弾かれる衝撃で距離と取る瞬間、ポンチョの隙間から左腕を敵の胸部に向ける。
「っっ」
引き金を引く。高速速射砲内部の対インベイド貫通弾と、コア粒子榴弾が混ざりあった数十の弾丸がほぼゼロ距離から放たれる。 喰らえば大きなダメージになるはずだ。
- 175ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/04/13(日) 14:41:06
『GN.36“ストラス”、GN.65“アンドレアルフス”。現着した』
【「ゴエティア戦団」の特務執行機である】
【一機。鎧騎士を思わせる重厚な装甲と、酷く物騒な両肩に備え付けられた焼夷砲。左腕下部には粒子ビームライフルが固定されており、右腕に構えるは身の丈よりも巨大な盾だ。輸送機からの離脱に使用した推進機構がゆっくりと装甲の奥に収納されて、モノアイの蒼色の光が無機質に周囲を見渡した】
【一機。戦闘機を思わせる流線形の装甲と、背部に堂々と覗く無数のブースターが特徴的な機体。右腕にはバディフレームを寸断するのに十分な刃渡りを有する大型実体剣を持ち、左腕には蒼色の光を灯すリニアキャノンを構えている】
【渓谷側を加勢するには機体間の距離が近い。故に「ゴエティア戦団」は“茶々入れ”を封じる為に崖上に強襲を仕掛けた】
『大型多重硬殻通信構造物の設置完了。バトルログのリアルタイム通信を開始───────現在時刻より強制排除を執行する』
『クロノスの若い衆よりも叩き潰し甲斐がありそうな犯罪者共ですね、“ストラス”さん』
『無駄口は命取りだぞ、ナンバー69。敵もベテランだ…………………シュミレーターの教材には適しているだろう』
【城壁が如きバディフレームに向けて、爆煙越しに重装騎士は的確に粒子ビームを撃ち放った】 - 176ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 16:58:13
- 177リンゼイ◆Fd5AlHEdkk25/04/13(日) 17:18:05
「ありがとう、マスター。クラクエをクリアしたら、次はラスファンを買いにくるわね!」
【祖父を慕う孫のように無邪気な笑顔を老人へ向けつつ、深く皺が刻まれた手のひらから、セピア色に染まった紙袋を丁寧に受け取る】
【彼と話している間、リンゼイの脳はハンドキャノンの引き金を引いた時よりも沸騰していた。これまで浅いところしか語れないような相手にも恵まれなかったがために、溜められていたフラストレーションが盛大に噴出したのだ】
「ねぇ、ここはとても良いお店ね!まるで隠しダンジョンの宝物庫みたいだわ。連れてきてくれてありがとう、アリソンさん!」
【袋の中の小さな世界を大事に抱えながら、リンゼイは仏頂面で冊子を眺めているアリソンの側へ舞い戻る】
【マスク越しでもわかる満面の笑顔に、外でチンピラの頭を吹き飛ばした時のような毒気は無く、ただ新しい宝物を手に入れることができたことへの歓喜だけが浮かんでいた】
- 178アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 20:42:20
【捻り込む様なバレルロール、機体の縦軸をそのままに側転する空戦仕様スカッド・ソルジャーの軌道は、直線的な突進を衝突の勢いごと利用して躱しきる】
【衝突の瞬間、鳴り響いたアラートを即座に叩き止め、デントナは望月の背面を追った】
【その突撃の先には、エドワードのガーゴイルが居る】
『ヒュゥッ!若っちょろいな小僧っ子!殺しも略奪も戦場の常だ、レイプされたか?家族が死んだか!?
・・・・・・・ ・・・・・・・・・・
んでもってその元凶が俺か!?ハハハッ!その程度の不運や不幸、この世じゃ珍しくも何ともねぇんだよ!お前がただ!知らんだけでなぁぁぁぁぁぁあああああ!!』
【────────────エドワードは、意図的に煽っていた、怒りに身を任せた単調な攻撃程いなしやすい物も無い】
【粒子結束を揺らがす音波震動、ソニックサーベルとビームサーベルの打ち合いは前者に軍配が上がる、蒼風を弾くと同時に距離を取り】
【速射砲の至近射撃を機体を左右に振りながらの軌道で回避して行く、問題は無い、この程度ならば】
【機体左側面から突撃してくる望月の機影が視界に入れば、これもまたいつも通りに対処しようとする】
【腰のラックに懸架したサブマシンガンを、左腕で取って────────────】
『……ヒュゥゥッ!そういや斬られてたな、左腕……ッ!』
- 179アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 20:42:47
【────────────ガギャァァンッ!!】
【派手な接触音、肘から先が存在せず、空を切った左腕の様子にエドワードが表情を歪めた瞬間、望月がガーゴイルへと衝突する】
【咄嗟の判断でスラスターの出力を最大に、火を噴く粒子は望月の速度を幾分か緩めたが、それでも崖際へと押し込まれる状況には変わりない】
『ヒュゥ~ッ!流石に馬力は最新鋭機か……ッ!デントナァッ!!』
『指図するんじゃねぇ!コロすぞォ!!』
【ならば挟み撃ち、龍影の始めの狙いは、エドワード機と望月の間でデントナのスカッド・ソルジャーを挟み、サンドイッチにしてやろうというものだっただろうが】
【デントナがその後背へと回避した今、形は逆になる、崖に向かって地面を削りながら後退するガーゴイルは】
【ソニックサーベルの切っ先を立て、リフレクターフィールドに突き付ける……望月がそのままの速度で突進を続ければ、より深く食い込む形だ】
『ユース・ブラザーズ!!小僧っ子の蒼っ白い方停めとけ!!』
【円を描く二機一対、弟のベンソンが駆るジェミニⅡは、蒼風が望月の元へと接近出来ぬ様、二機の間の地表へ区切りを打つ様にマシンガンをばら撒き】
【兄のフランクリンが駆るジェミニⅠは、蒼風自体にマシンガンを掃射、その弾道は、エドワードらと反対の崖際に追い立てる様なものだった】
『────────────ヒュゥッ、停めりゃぁ、こっちには“ラインハンター”が居る』
【追い立てた先に撃ち込まれるのは、遥か後方、スコープを覗くローン・ソルジャーの対BFロングライフルだ】
【インベイド侵攻初期を戦ったその狙撃手の名は、都市伝説じみた異名と共に戦史に刻まれている────────────“死線の狩人(ラインハンター)”、ビル・コークショット】
- 180アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 20:43:35
・・・・・
「────────────ゴエティアか、極上だな!」
【遥か上空に揺らめいた鋼鉄塊の正体を、ドミニクは煙草をコックピットの灰皿に押し付けながら、嗤って捉えた】
【鬼の重量4脚が重々しく火を噴く、ゴゥン、と浮いた巨体が後退する速度は、想像もつかぬほど機敏であり】
【降り注いだ合金の柱が地面を穿つと同時に吹き上がる衝撃波を、幾重もの緩衝機構を内蔵する多層装甲は軋んだ音と共に受け止める】
『ドミニク隊長!』
「フリー・ボーイ、血相変えて跳び込んで来る様な場面じゃねぇ、落ち着け!
ジョナサン!ディザスターの火力が必要だ、今の内に弾薬補充しとけ!エリアス!合図を送ったら────────────」
【ストラスの放つ粒子ビームを、機体前面に構えた大型シールドが受ける、ジワリ、ジワリと焼き焦がされる様な熱は、しかしシールドのコーティングを剥がすまでには至らない】
【アバドン、“奈落”を意味するその異形の機影は、堅牢な防御網で以て突如飛来した敵対者の初撃をいなし】
「────────────撃て!!」
『仰せのままに、我が主ィ!!』
【ドミニクの狂信徒、エリアス・ジーベンハイアーの駆るガーゴイルは、アバドンの後方より機体に背負った巨大な弾頭を宙に放つ】
【ロケット推進によってゴエティア戦団二機の頭上へと飛来したそれは、空中で膨れ上がる様に、幾十、幾百もの小型弾頭に分裂して雨となって降り注いだ】
- 181アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 20:44:12
「初弾、噴煙弾(スモーク)!!次弾装填、焼夷弾(ナパーム)!!」
【その着弾を待たず、アバドンが有するグレネードランチャーが続け様に火を噴く、眼前に撃ち込まれたのは視界を妨ぐ煙幕だ】
【二機のランチャーにそれぞれ別種の弾頭を用いることが可能である、煙幕の内で暴れ狂う榴弾の火炎もまた、同じ】
・・・・
「コイツらをここに釘付けにするぞ!その間に……ルヴァウ!“崖下”の指揮を取ってやれ、俺は暫く動けねぇ!」
『……分かった、ドミニク、武運を祈る』
『ルヴァウを行かせるなら私もだ、良いかい隊長!』
「おう好きにしろシンドリー、乳くせぇガキに本物の夫婦連携ってモンを見せてやるのも良いだろう!」
【戦局は大きく動いた、二正面作戦を展開するのに必要なものは、一方面軍を託せる優秀な指揮官である】
【この場に於いてはルヴァウがそうと言えた、煙と炎を撒いたのは、ゴエティアの二機がルヴァウ達の移動を妨げるのを防ぐ為】
【それと同時に、渓谷の各地に散り、崖下への支援砲火を加えていた他のメンバー達が崖上へと集い始める】
『ゴエティア戦団……執行人気取りの企業のクソ犬が!』
『俺達の戦果に花ぁ添えに来てくれたんだろう、粋な心遣いじゃねぇかよぅ、んん?』
『油断するなヨ!一機、速そウなのガいたネ、煙幕がドコまで効いテるのカも不明瞭なのヨ!』
【────────────“見捨てられた戦士”、企業を嫌悪するヒルマー・クレイズ、BFこそを己の肉体と信ずる下半身不随のサムライ、アキル・ナカトウ】
【並び立つスカッド・ソルジャーとSHINONOME、奇しくも、それは敵対する筈の2つの陣営の機体だ】
【そして、実働部隊3番手の古株、ボー・ワンチェンは左利きのガーゴイル、左腕に装備した滑空砲を構えて煙幕を睨み付けた】
- 182アリソン◆PPyRfvMZl625/04/13(日) 20:44:56
【さて、一体どれくらいの時間が過ぎただろうか、使われていなさそうな酒の空き缶を灰皿代わりにして、二本目の煙草を吸い終わる頃】
【リンゼイの声にパタンと冊子を閉じると、まるで少女の様に嬉々とした彼女の様子に、やや呆れ気味の死線を向けて】
「目当てのモンが見つかったかよ、良かったな……オイ、また来る気なのか」
『良いじゃねぇか、道順は覚えたんだろ、何も問題はあるめぇ?金払いも良いしな』
「おっさんはコイツとアタシが会った状況を知らねぇからそういうコト言えるんだよ。
アタシがいなかったらコイツ、今頃街中で切った張ったの大暴れして檻ン中だぞ?」
【……まぁ、コレが大人しく檻の中に入る様なタマだとも思えなかったが】
- 183ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/04/13(日) 21:16:11
『対象の脅威評価を6から7に修正。戦術は変更不要だ。時間は我々の味方である────ナンバー69、逸るなよ』
『了解です。システムに申請、バトルログから敵機についての情報を再入手します──────完了。記憶との間に相違はありません』
【指向性誘導兵器妨害装置を励起する。瞬時に発生したレーダー波を妨害する電磁波が小型弾頭の狙いを撹乱し、同時に放たれた猛獣の如き火焔流が空を舐めて弾頭を爆散させる】
【“アンドレアルフス”が煙幕以前に垣間見た敵機の姿についての記憶とバトルログを一致させる。滑空砲、無反動砲とシールド、ホバリングユニット】
【遠中距離からの火力支援に優れた武装と、煙幕と焼夷弾による分断。徹底的に射程と数の有利を活用する戦術だろうか?】
【────────────────────叩き潰すのに違いはない】
『私が前進します』
『支援する』
【“ヴィーナス”が重低音を響かせて高く跳躍して、煙幕と焼夷弾によって分断された線の上に立つ。大口径リニアキャノンがスカッド・ソルジャーのカスタム機を向き、この距離であれば射撃と同時に到達するに等しい速度の特殊合金弾を放つ──────シールドに対してだ。統制機体も含めて、現在対峙している敵機の中で最も機動力に劣るであろう機体の防御力を削ぐ為に】
【火器管制システムの補助も受けずに正確無比なる射撃しながら突撃している。高周波大型実体剣なら並みの装甲は容易に裂断可能だ。前衛を務められる機体を撃墜するべく、やはりスカッド・ソルジャーのカスタム機に狙いを定めて───────】
- 184ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 21:28:42
「!!! ――――?」
相手がオープン回線で煽ってくるうちに、頭は冷えた。 この手の『当たり前』を説く相手に論理は通じない。
だから速射砲を左右の振りで躱す敵に対して、ケイはより殺意を込めるべきかと滑腔砲を構えようとしたところに、兄弟による射撃が襲いかかる。だが――――。
(……?弾幕が緩い――――)
ケイの予測よりも、それの厚さや込められている行動に熱意がない。 勢いが増したケイならば苦もない。このまま龍影の望月のもとにいけるだろう。
なにか、狙われている。――――何を?
――――既視感。まるで、自分自身を『こうすれば軽々と避けられる』と誘導されているような……
――――確信に変わった。
「(――――キルケー部隊の動きだ!!!)」
頭の中で、ギアが更に一段上へ引き上がった音がした。
慣れ始めた動きを自力で外して先行入力を全て破棄。 一瞬で新たな入力を手打ちで叩き込む。
ケイの蒼風がだらん、と糸の切れた人形のように宙を流れた直後、弾かれたように動き始めた。
コア粒子推進機関が一気に推力を増して兄弟の弾幕をシールドで防ぎながら、左、と見せかけて上昇。さらに吹かされて右へ。望月の方向へ向かい。
「間に合えッ!!!」 ・・・・・・・
ポンチョを投げる。前に。自機の動きが一番よく見える方角へ。
死神の弾丸が、僅かに左に吹かして、機体の振れた蒼風の掲げた左腕の盾に食い込み。弾くようにその弾丸をそらす。
「ッッッッ!!!」
その後の追撃がないのが奇跡だと思いながら、被弾の衝撃に耐えながらコア粒子推進機関で乱れた姿勢をマニュアル制御――――と同時に幾つかのボタンを押す。
『コア粒子推進装置リミッター・解除』 /蒼風が姿勢を立て直す。
『関節駆動出力条件上書(オーバーライド)』/足裏のアンカーを展開し、地面に食い込むように着地する。
『コア粒子伝達流路流入制限解除』 /蒼風の腹部、そして関節部から一気に熱反応が増して、排気が漏れる。
- 185ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 21:29:50
- 186龍影◆9BZ6kXGcio25/04/13(日) 22:29:41
- 187ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/13(日) 22:54:04
(>>185の一瞬前)
《了解。遮光を行います》
「……!!!」
一瞬の間に望月が落としたものから放たれた光。モニターをスイが先んじて減光した。
良いアシストだ。と褒めることすらできない。
「――――!!!」
一瞬だった。相当な速度で動き回れるはずのスカッド・ソルジャーの背後が、もう目の前。感覚が矢のように飛んでいく。
――――こいつを、斬れば良い。右腕のビームサーベルをケイは展開する。
シートに押し付けられるGで時間を要する操作は難しい。だから、回避した場合も予測する。ケイ一人で完結する殺し間を……用意する。 用意した。
・・・・・
自分が他者からどう見られているかなど、今のケイは気にすることもない。 どう倒すかだけだ。
- 188ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/04/14(月) 00:39:45
うん? あぁいやいや違う違う違う違う......チャウチャウ
彼女、ハニヤの娘たちだ
1人はムニーラ、もう1人はルゥルア、全員可愛くてな〜早くエイダン殿にも会わしてみたいよ〜
【もはや気前の良いお兄さんポジションを陣取った金龍、彼のその顔は弛みに弛んでいた】
【それはもう文字通り顔の骨を抜かれたように】
- 189アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/14(月) 13:01:00
『ヒュゥッ、ああ……こりゃアレだ、手詰まりだな』
【寒々しい口笛がコックピット内に響く、機体が悲鳴を上げている、20年間、苦楽を共にした相棒が】
【刃が迫って来ている、まるで己の罪を裁く断頭台の様に、昔々に街角で聴いた得意のメロディーラインは鳴り止まぬアラートに掻き消された】
【終ぞ、逃れ得ぬ死が来たる】
『……あんまし泣き言は言いたくねぇが、機体の性能差ってのは如何ともし難いなぁ相棒よ、お互いに歳取った……。
が、タダで死ぬのも俺らしくない、最期の花火だ、せめて盛大に打ち上げようぜ』
【コンソールを叩く、それはガーゴイルに元来搭載された、機密保持の為の『自爆機能』である】
【望月に突き立てたサーベルがより深く食い込む様、残された右腕が最後に捻じり込む、ともすればその行動こそが龍影にエドワードの足掻きを悟らせるかもしれない】
【それと同時に開く通信は、この死地へと連れて来てくれた、忠誠を誓う隊長の元へと繋がった】
『ドミニク隊長!すんません、ちょいとお先に失礼しやす!』
・・・・・・・
「────────────おうエドワード、楽しかったかよ!?」
【通信の向こうからは爆音が轟く、ノイズ混じり、砲火の音色、いつも通り、悲嘆や哀れみや同情なんて一切無い、心の底から愉しそうなドミニクの声色】
【エドワードは、とうとうコックピットへと侵入し自身の腹を抉り始める刃の熱を直に感じ取りながら、それでも応える様に、嗤った】
『そりゃあもう、とびきりに────────────!』
- 190アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/14(月) 13:01:21
【刃が機体を真二つに断ち切るより早く、ガーゴイルはその自爆機能を発動させる、望月の眼前で急激に膨れ上がる熱源はただ機体が崩壊する際に発生する物ではない】
【BF一機分、搭載した火薬や粒子を丸々燃焼させて、爆炎と共に弾け飛ぶものだ】
『────────────エドワードッ!』
『シンドリィィィィィィーーーーーーッッッ!!寄るんじゃねェッッッ!!!』
【丁度崖下に到達したシンドリー・クレマティスの駆るガーゴイルが、爆発するエドワード機へと近付こうとした鼻先を、突風が吹き荒れた】
【デントナ・F・ラインベックのスカッド・ソルジャー、『アブソーバー』が誇る、空戦のスペシャリスト】
【先程のスタン攻撃をも、攻撃の性質を即座に理解し、カメラアイが直に食らうよりも先に機体を捻り僅かながらも幾つかの分割モニターに無事な画面を確保するという離れ業をやってのけた歴戦の傭兵】
『クソがッ!クソがクソがクソがッ!!俺より速く飛んでんじゃねェッ、コロすぞォッ!!』
【────────────そんな彼が、蒼風に食らいつくのが精一杯であった、唾と罵声を飛ばしながら操縦桿を忙しなく動かす、ギアはとっくに最高速】
【時折、バチィッ!とサーベル同士が火花を散らす爆音を轟かせながら、生身の視界では既に捉えきれぬ蒼風の加速を、卓越した空間認識能力と経験則で以てどうにか予測し攻撃を受け流し続けている】
『何だ、あの運動性能は……!パイロットは子供なんだろう、如何して耐えられる……!?』
【ルヴァウは唖然としてその光景を受け止めた、なまじ耐ショック機能が十全に設計されていたとしても、生身の人間が無事で居られる速度では無い筈だ】
【或いは、もしや、パイロットが前身を義体に換装しているならばまだしも、だ】
『……ッ、聞こえるか青白い機体の少年兵!それ以上の加速は人間が耐えられて良いものじゃない、君自身が壊れてしまうぞ!!』
『ルヴァウ!エドワードを殺した奴らに気遣いなんて要らないだろう!!デントナが止めてくれてるんだ、今の内にもう一方を……!!』
【理知が吼える、されど一方で妻であるシンドリーはその背後に立ち、エドワード機が爆散した崖際を睨み付けている、先程の自爆によって望月が破壊されていれば重畳だが────────────】
- 191アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/14(月) 13:01:54
【エドワードが死んだ、ドミニクはその最期の通信を受け取って、画面の彼方で響く爆音と共に口笛の悪魔の笑みが消えるのを見つめていた】
【楽しかったと言っていた、とびきりに、と、ならば良い、これこそが敗残兵に相応しい死地だ】
【眼の前の噴煙から上空へと跳び上がるゴエティアの機影を嗤いながら見上げた────────────実に良い、この戦況こそがカオスだ】
・・・・・・
「ヒルマー!狙われてるぞ!」
【重砲の口が狙う先を即座に認識し警鐘を鳴らす、ヒルマーのスカッド・ソルジャー・カスタムが咄嗟にシールドを構えるのと砲火が吠えるのはほぼ同時】
【無論、それこそが“ヴィーナス”の狙いである、リニアキャノンから撃ち出された弾頭は構えられた表面にぶつかると、その衝撃の中心部を大きく歪ませた】
『……クソ、しくじった!』
「俺が前に上がる、盾にしろ!アキル!ボー!止められるな!」
【盾を剥がされかけたスカッド・ソルジャーが、それでもと構えた無反動砲を空中のヴィーナスへと発射する、それと共にアバドンが動いた】
【機体そのものを壁とする形、その上で、ランチャーに装弾されるものはこれまで用いていた榴弾とは異なり高速で飛翔する徹甲弾(APFSDS)】
・・・・・・・
【砲門は二つ、狙いも二つ、一方は敵影へと直接の照準、よりもやや左腹部寄り、そして一方は、回避方向へと射出する】
「エリアス!フリー・ボーイ!ジョナサン!弾薬の補充が完了次第火力支援!」
- 192アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/14(月) 13:02:17
『────────────ィィィィィイイイイヤッッッッ!!!』
【“アンドレアルフス”の突撃を遮る機影があった、ホバリングユニットを装着した人自連のSHINONOME、それが両手に構える鉄柱と思しき金属塊】
【ガギィィィィン!!と、実体剣との間に衝突音が響く、止めた】
『……SHINONOMEの利点はよぅ、その運用コストの安価さだよ、複雑な操縦系統も無く武装構成もシンプルだ、どんなポンコツでもコイツに乗ってりゃ最低限戦える。
例えばそう、下半身不随のポンコツでもなぁ、だから侵攻初期、インベイドと戦える貴重な戦力の大量生産に成功したんだ……!!』
【オープン回線で響き渡る、それは心の底から誇らしげで、例えば好きなものについて語るギークの様な】
【無骨な金属柱を携えた旧式のBFは、最新鋭のアンドレアルフスを押し返す様にホバリングユニットを推進させる】
【嘗てそのパイロットは、同機体を前線で運用するテストパイロットとして有名を馳せていた】
『今じゃあ型落ちだ旧式だ言われて久しいが、それなら闇雲に粒子兵器乗っけて火力を補填するか?わざわざ運用コストを上げて?
……ははっ、それじゃコイツに乗ってる意味がねぇのよぅ、そこでコレだ!』
・・ ・・
【最新と最古が衝突する】
『質量!加速して、ブン殴る!こういうので良いんだよぅ、SHINONOMEのカスタムは!!』
- 193アブソーバー◆PPyRfvMZl625/04/14(月) 13:08:07
- 194龍影◆9BZ6kXGcio25/04/14(月) 14:06:02
- 195ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/14(月) 14:34:44
《敵機、自爆。龍影機の状況不明》
「し、って、る!!」
隅でモニターに写った爆炎に頓着する余裕は、今のケイにはなかった。誰かが死んだ。敵が死んだ。もしかしたら……けど今の自分がすべきことは別だ。
多数の操作を同時並行で当て込み、流れる視界と崩れる平衡感覚を、強靭な精神とコックピットインターフェースだけで補正する。
「オ、ォあああア!!!」
わざとギアを下げ、蒼風両腕のビームサーベルを展開。数合ほど目の前のスカッド・ソルジャーとわざと斬りぶつけ合い、滑走しながら機体の姿勢を落として突きを躱す。ギアを最高速に変更。すれ違うように右のサーベルで胴体を斬ろうとしたが掠めて終わる。上昇加速。ツインアイの残光が光って残る。音はもう消えている。
崖が目の前。狭い、狭い。ここは狭い!! 上に行け!!!
「ぅ、ぐぅうァッッッッ!!!」
機体を崖と垂直にする。姿勢を変え、両足裏を近づける。その瞬間のみアンカーを展開、推力を調整してコマのように機体を縦回し。追いかけてきた正面に敵(デントナ)を捉える。
高速速射砲をばらまく。 銃身が先の被弾でぶれ、牽制程度だがそれでいい。 残弾は残り30%。
今度は自分から加速して突っ込み、一撃離脱で右のサーベルを振る。 速度差でかち合った相手のサーベルが押し負け、僅かに姿勢が崩れた……のを見て目の前には地面。
「ぐっ!!!はぁ、はぁ、ゴホっ!!」
機体を強引に上向けさせクラッシュを回避、右旋回。 レーダーに映る二機連携のガーゴイルの射線からは常に外れて撃たせない。 狙撃警戒は緩めないが、あれを躱すには敵機の援護が邪魔だ。 崖がちょうどよく左にあった。 足場にして反対へ跳びながら敵(デントナ)へサーベルを振る。
ケイは咳き込んだ。鉄の味。敵(デントナ)が来る。
(速い敵が、こっちの予測を上回っている)
こんなにも速いのに、自分より速い敵に対処する方法を知っている。 こちらの接敵の瞬間を予測して動いている。 シミュレーターでやり続けた十数年以上の訓練を、相手は同じくらい濃厚な実戦経験で上回ってきている。 加速、サーベルをぶつける……一度下がって有針徹甲弾。機体を振られて躱される。崖に突き刺さった爆炎が敵を彩る。
(ああ、こいつ――――綺麗だ)
前に出て斬撃を躱し、交差。デントナ機の背中をすれ違いながら見る。
- 196ケイ◆ECPjTIh3Iw25/04/14(月) 14:40:40
(もっと知りたい。こいつの動きを!強さを!!)
(――――俺はオルフェリアを見れなかった。だから、こいつを知って。もっと速く!!!)
龍影の言葉を思い出す。 彼に勝つには奇抜で、堅実な手が必要だ。
(俺のポケットには何がある?)
『……ッ、聞こえるか青白い機体の少年兵!』
誰かの声。男の声。青年、いやもっと年老いた声が、ケイの耳に入る。混線だ。女の声が気遣うなと吠えている。
『それ以上の加速は人間が耐えられて良いものじゃない、君自身が壊れてしまうぞ!!』
――――それは警告。ケイに、これ以上踏み込むのはやめろと、敵が敵に対して思わずかけてしまう気遣い。人は怪物には、なれない。
【――――大陸一の月風乗りは、君になるだろう】
凛とした声が、柔らかな手のひらになって背中を押してくれた。コア粒子を推進機関へ過剰供給。ブースターが、高音と低音で鳴く。
「……ッッ、俺は!!!!」
追いかけてくるデントナ機が後ろにいる。俺より速く飛ぶなと叫んでいる幻聴が聞こえる。右へ飛び、再度崖への衝突直前で上昇――――左脚でアンカーを展開。触れるように、接地。
ぐるんと、視界が横に回る、回り切る。正面に敵。手にはサーベル。鳴き続けるブースターが今にも臨界に達して。
「大陸一の月風乗りだアアアア!!!!」
全てを開放した。 全ての推力が前進のみに注がれ、左の盾を斜めにしてスカッドソルジャーと衝突。そのまま地面へと流星のように落ちる直前、蒼風は右腕のサーベルを、目の前のコックピットへ突き出した。
- 197ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/04/14(月) 15:16:56
『支援する』
【回避を先読みして置かれた無反動砲と徹甲弾が、特務執行機“ヴィーナス”に迫り───────二筋の閃光。連射速度と火力を両立したビームライフルの攻撃が二種の砲弾を寸分違わずに撃墜する】
【煙幕を突っ切った“マーキュリー”の迎撃だ。特務執行機は巧みな“連携”こそを武器とするカスタム機であり、“ストラス”自身の腕前もあって“アンドレアルフス”に向かう攻撃を堰き止められる】
『……………声紋の照合一致を確認。アズマ重工の元テストパイロットか』
【最新鋭機である“ヴィーナス”が、押されている。機体のパワーで負けているのだと理解した。高周波大型実体剣では押し切れない───────悪魔の戦団が、後退りをした】
『確かに予算に制限が必要とされるデスペラードであれば、SHINONOMEの強みを削って弱点を埋めるよりも余程適したカスタムだな』
【ギシリ、と関節が軋む。逆に押し込まれるようにして“ヴィーナス”の手首が曲がり、後ろへ後ろへと押し込まれてゆく】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【────────────────────無言で両腕下部固定瞬間式ビームサーベルを起動した】
【押し込まれた手首の向く先、肉薄した敵機のコクピットを狙って瞬時にビームサーベルの刀身が形成される。装甲諸共パイロットを焼き尽くすのに余りある熱量だ】
【もう片方の腕からもビームサーベルの刀身が長く伸びている。初撃を回避したとしても、回避方向に置かれたもう一本の焔刃が逃亡者を咎めるだろう】
【“ヴィーナス”とは近距離専門の追加特殊装甲パッケージだ────────人自連の機体では不可能な筈のギミックすら、“後付け”出来る】
- 198シグレ◆KPwoT407kA25/04/14(月) 15:29:45
発進が許可できないとはどういう事ですか、艦長
【コックピットの中で言外に不満をもらす。シグレは今、インベイド出現予測地点哨戒部隊の1人としてヴァルハラテックの強行偵察艇に乗り込んでいた…任務自体は驚くほどあっさりと終わったが、たまたまV-9外縁に比較的近い区域だったのでこうして救援信号のあった箇所に近づきつつあったという訳だ】
【シグレが上官に食ってかかったのは進路変更から程なくしての事だった】
《言葉の通りだシグレ見習士官。今ジークルーネを出撃させる訳にはいかない。それにゴエティア船団にも先を越された。我々が考えるべきことは最悪の状況の回避と救助後の2機のバックアップだ》
【望月と蒼月のみならいざ知らず、無駄にこちらの手札を晒す事も無いだろう、とシグレを諌める】
《【シュヴェルトライテ】の粒子紋予測だと敵機の予想値は約14…今更新が入った。約13。いくらワーグナーだろうと今から出張った所で間に合わん》
そいつらがどうなろうと知った事ではありません。私がそのデスペラード共を1人残らず殺せばいいだけです
《それこそ無理だな。奴らも確実に勝てると踏んでこの圧倒的物量差で仕掛けて来ているのさ…『アブソーバー』は臆病者の集まり。この戦力差が少しでも揺らけば確実に撤退を選ぶ。ジークルーネの投入は費用対効果に見合わん》
《実際1機減ってるんだ。逆巻とゴエディアだけでこの状況は覆せる…余計な命令違反をしでかす前にとっとと神経接続を解け。【シュヴェルトライテ】の観測のノイズになる》
…チッ。了解しました
【渋々ながらコックピットから降りるシグレ。彼女の胸中の不満が晴れたわけではないが、この場は弁えることにした】 - 199龍影◆9BZ6kXGcio25/04/14(月) 15:43:44
- 200ハヤテ◆.4YTxDiDm.25/04/14(月) 18:05:40
「いい朝だ…」
カーテンを開けて日光を浴びる。
カスミハヤテという数えで17の少年は、傭兵になってやっと人並みの生活を手に入れた。そうでもしなければストリートチルドレンは人並みの生活が出来ない事を知った。企業のコロニー管理体制に不満を持って袂を分けた人自連。
しかし、結局は生活困窮者か高機能社会不適合者、後暗い経歴持ちの集まり。治安が悪いのは当然だろう。
と、言っても暴行や強盗、殺人といったアレなものはこの"内側"にいる場合は殆どない。なんでかって?ストリートチルドレンなんて今のご時世で産めよ増やせよで産むだけ産んで、要らないと捨てられた者で、臓器や奴隷になるからとすぐに攫われたり、むしゃくしゃしたからと殺されたり、風俗に行く金がないからと犯されたりで簡単に居なくなるからだ。"市民"への犯罪は無い。最高だね。
「僕もその市民の1人か…羨ましかったものの筈なのに呆気ないんだな…」
少し寂しそうに壁を見る。