- 11◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:01:20
今更どの面を下げてこんなスレを!!!と言われるのを覚悟で。二カ月ぶりです、こんばんは...。
他でスレ立ててセイアちゃん殴り合わせたりちびっこい生徒描いたりしてだいぶ煮詰まってたのが解れて来たので、遅ればせながら続きを書かせていただきたいと思います...。
もうはっきり言うと1レスにつき20レスぐらいつける勢いで感想書いてくれると嫌でも書きたくなるので是非お願いします...!あと前スレでちょこちょこ出てた風邪看病ネタとか、書きたい人いたら投げてくれてもいいのよ...!上がらなかったらエデン条約→甘い秘密と銃撃戦→ive-alive後に自分が書きます。不屈の意思を胸に。
あらすじ・オリジナル要素ありの登場人物紹介だけ貼ったら取り敢えず書き溜め分放出しますね。
前スレはこちら。今回こそはせめて途中で落ちる事だけ無いように気を付けます...。
【SS】ここだけトリニティ生で放課後スイーツ部所属の間宵シグレ Part2|あにまん掲示板色々あって予定が崩れて落としました.........書きたいものは色々あるので、立て直しです。Part2でよかったかな......?軽い人物紹介とあらすじだけ置いて、とりあえず続き書いていきます前スレ…bbs.animanch.com - 21◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:03:23
間宵シグレ
トリニティ総合学園二年生、放課後スイーツ部所属。一年生の頃はハナコに次ぐ“優等生”として、当代のティーパーティーからも一目置かれていた。天文部の副部長を務めていたが、ノドカの度重なる問題行為により廃部、本人は退学処分一歩手前。それを助けるべく駆け回っていた。二年生になり彼女を追って補習授業部に入ろうと意図的に成績を落とすも、偶然出会ったヨシミに誘われ勢いのままスイーツ部に。カズサに諭され、ノドカに着いて行く事よりも彼女の力になる事を心に決めて、歩みを進める。
天見ノドカ
トリニティ総合学園二年生、補習授業部所属。入学当初に天文部を設立し、偶然が重なり規模を拡大するも、本人の“覗き癖”により廃部に。その後、部員たちの煽りに押される形でティーパーティーに対し暴動を起こすも、正実に鎮圧される。問題行動から補習授業部へ強制転部を命じられて再び退学の危機に迫られ、仲間たちと共に特別試験を乗り越えた上に、ミカ率いるアリウス分校の侵攻を防ぐ活躍を見せる。
「桐藤さん」
シグレとノドカの育ての親。シグレは顔と下の名前、ノドカは苗字も覚えていない。レッドウィンター自治区の山奥の小屋で二人を育てていたが、ある時を境に、後に二人の愛銃となる二丁とトリニティ総合学園への「紹介状」を残し、姿を消す。二人との血縁関係の有無やナギサとの関係性、現在の所在・安否は不明。現時点で今後の登場予定は無し。
あらすじ
第三次学力試験から時は流れ、エデン条約の調印式当日。シグレは部室にてスイーツ部の4人と、ノドカはカフェで補習授業部の4人と、それぞれ忙しい日々を乗り越え、少々遅れての打ち上げを開催する。ゆるやかに流れる楽しい時間、突如として空を裂く炎が古聖堂に墜ち、終わったかと思われていた物語の歯車が、再び回り始める────。 - 31◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:08:00
「……ごめん、見失っちゃった…」
申し訳無さそうに望遠鏡から目を離すノドカ。アズサが店を飛び出していった直後、補習授業部の四人を襲った巨大な地響き。そして、街頭の巨大スクリーンで映し出されていた古聖堂の様子。四人は否が応でも直感的に、アズサを取り巻く何かが────まだ、終わっていなかったことを知る。
「……何が起きているのか、情報収集をしましょう」
神妙な表情のハナコの提案に、首を横に振る者は居なかった。強い困惑に怯えが少々混じったコハルの手を、アズサの駆けて行った人混みの方を心配そうに見つめながらヒフミが取る。
正面を向く他の三人と異なり、ノドカは胸が締め付けられる様な思いを抱き、服を握りしめていた。
「……あの、表情」
望遠鏡越しに見えた、悲痛の色が瞳に焼き付いて離れない。
アズサが、まるで────何か、大切な物を捨てる覚悟を決めたように。隠れ得ぬ悲しみを零しながら、その表情がゆっくりと凍り付いてゆくところを、ノドカは見た。
「────シグレ、ちゃ……」
はっ、と我に返る。今、何を言おうとした────…?
「ノドカちゃん?」
立ち上がったヒフミが、此方に振り向く。望遠鏡を仕舞わず物思いに耽っていた所を心配されたらしい。
「……なっ、なんでもない。ごめん、すぐ行く…!」
慌てて望遠鏡の脚を畳み、背負ったケースに仕舞いながら────ノドカは、反省する。
「……シグレちゃんに、頼りっきりじゃだめだ」
トリニティに来てから、もう、数え切れないくらいに迷惑をかけた。これ以上は────それも、自分の友達の事で、助けを乞う訳には行かない。ポケットへ伸ばしかけた手を引っ込め、肩紐を掴んで立ち上がる。そのまま四人は、連れ立って喧噪の中へ。
人々の声に搔き消され────ノドカの制服のポケットの中で震える携帯電話は、誰にも気付かれることは無く。 - 4二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 21:08:38
おぉ!復活したんすね!
好きなスレだったから嬉しいです! - 51◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:12:26
駆ける。駆ける。疾く駆ける。その場に居た、誰よりも速く。その場に、全てを置いて。
人混みでごった返す交差点。小柄な体を滑り込ませるように、人の合間を掻き分ける様に。
抜けた先の路地裏。水を打ったように静かな、人気のない暗い道。陽の当たる賑やかな場所を抜け、影のかかった暗く寂しい場所へ。
構わず、駆ける。今やその名残すらも残さず瓦礫の山と化した、古聖堂へ。曲がり。進み。飛び越え。破り。進んだ先に、見えた光景。
発砲。地に伏せる、白い髪の────ゲヘナ生。救急車から手を伸ばす、もう一人のゲヘナ生。
そして、手を引かれるまま、救急車に転がり込むのは、腹部から血を流した────。
────仮面に隠れて、その表情は伺えない。
「……ここでお前が出て来るのか」
耳によく馴染んだ、低い声。
「まさか姿を現すとはね……そのまま逃げだしても良かったのに」
ひどく冷たい、視線。
「えへへ、お久しぶりですね……」
虚無の諦観を植え込まれた、四人の“家族”が────そこに、立っている。
「────どうして、先生を……!」
「……全ては無駄だ。それなのに、どうして足掻くんだ」
「……白洲アズサ」
「サオリいぃぃぃぃっ!!!!」
向き合う、銃口。撃ち初めは、僅かにズレて────。 - 61◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:15:36
「……ダメだ、繋がんない。ちょっと行って来る」
「いやいや、行かない行かない。ちょっと待ちなさいよ」
シグレの明らかな動揺に、スイーツ部の四人の間にも重い空気が立ち込める。
空から降って来た何かに、正体不明の大爆発。その着弾点と見られる古聖堂は、ノドカ達補習授業部の打ち上げ会場であるカフェからもそう遠くない場所に位置している。
遠目では当然、爆発の規模感や被害状況は掴めない。遅れて点けたクロノスのニュースを見ても、たかだか事件発生から数分では、有益な情報は見込めない。
安否の確認を、と掛けた電話にノドカは出ず、焦りから部屋を飛び出そうとするシグレのコートの裾を、咄嗟に立ち上がったヨシミが握り締めて制止した。
「自分の力をどんだけ高く見積もってるか知らないけど、あんたが行っても何にもならないでしょ。闇雲に突っ込んでも危ないだけじゃない!」
「でも、ノドカが…!」
止めるヨシミ。進むシグレ。
その後方で、カズサが声を上げる。
「……なにこれ。ちょっと見て」
横持ちにしたスマホを机に置き、他の四人がカズサの後ろから覗き込む形。クロノスのニュース。その画面には、瓦礫の山と煙の中に佇む、青白い光を纏った人影。
どこかで見たような黒いヴェールに、ガスマスク。手に持つ銃はARだろうか。
一人や、二人ではない。
「…………これ、……あの時より……」
絶句する。逃げ惑うカメラマン。ブレる画面が、あらん方向を映し出し────その画面のどの瞬間を切り出しても、青白い人影が複数人映っている。
このカメラマンが、やけに囲まれている────という線は、カメラが拾う音に否定される。
銃声が。アリウスの侵攻の、あの時のそれより、格段に多い。遠近問わず、瓦礫と硝煙に紛れて飛び交う、命無き銃弾。 - 71◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:17:36
「っ、……やっぱり、行かないと…!」
「落ち着きなよ、シグレ。……正実が動くし、きっとゲヘナの治安維持組織も居る。君が行っても、火に油かもしれない」
いつになく真剣な様子のナツに、言葉を飲み込みかける。だが────正実だけなら、連絡は取れる。その為に────恩を売った、と。今なら、言い切るだろう。
「だったら、ナギサにでも掛け合って────!」
忙しかろうが何だろうが関係無い。お咎めなしで済ませたのだから、このくらいは聞いてもらう。ただ、私の顔と名前を正義実現委員会に共有して、それで。一度事件も起こした身だから、簡単なハズ。
その淡い望みを打ち砕く、アイリの善意が。震える言葉で、紡がれる。
「……ナギサ様って、今……古聖堂に、居たんじゃない……かな……」
言い終わると、同時。
「「「「「!!!」」」」」
爆発音、再び。五人の耳をつんざくような轟音。
────でかでかと、「万魔殿」の三文字の刻まれた、巨大な飛行船が、炎と煙の尾を引きながら墜落してゆく様が、スマートフォンに映し出されて。 - 8二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 21:17:39
ちびこいシグレスレでこのスレの事を連想したけど同じ人だったとは
- 9二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 21:18:42
スレ落ちにめげず書き続けているのはえらい、こっちこそ保守できなくてごめんなあ!!
同じく落としちゃったが百物語シグレといい、シグレSSが増えるのはとてもいい - 101◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:20:07
────事態は、混乱を極めてゆく。
先生。爆発と、古聖堂の崩落から永らえたのは奇跡以外の何でもない。だが、幸運はそこまで。憎悪に満ちた凶弾は腹部を射抜き、命は赤く滴り落ちてゆく。
懸命に処置を行う、ゲヘナの救急医療部部長の生徒。その腕は確かなようだが、果たして、どうなるか。
白洲アズサ。どれだけ逃げても、自身の過去が追い縋る。……時間の前後という差異はあれど、その姿に僅かな親近感を感じざるを得ない。それを断ち切ろうと懸命に足掻き、自身に根付いた教えに背き、守りたい物の為に自らを犠牲とする。私には出来ないことなのは確かだが。
浦和ハナコ。賢明な彼女の事だ、盤面に散りばめられて錯綜する情報を適切に繋ぎ合わせ、物語の真相への道筋が頭の中に出来上がっている事だろう。だが────「理解る」だけでは、どうにもならないのだ。私も、君も。
下江コハル。混乱の渦中に放り込まれ、何の力も持たない彼女。意地を張る場面でない事だけは理解しているのか────ほんの少しの勇気と、混じり気の無い善性を持つだけに、気の毒でならない。
阿慈谷ヒフミ。友の葛藤。苦渋の決断。彼女もまた前を向き、諦める事を知らず走り続ける。その努力が報われない苦しみを、あの天真爛漫な笑顔が曇る瞬間を────見たいとは、到底思えない。
アズサからの暗号。合流地点へ向かう彼女は、その先に待つであろう決別を前に────何を思うのか。
天見、ノドカ。────変わらない。君が、どれだけ足掻いたって。
何も変わらない。この物語は、何も。道筋を違う事も無く、ただ────悲痛と苦しみの果てに在るエンドロールに、名前がふたつ増えるだけの事。
そう。君が来たところで────何も変わらないんだよ、間宵シグレ。 - 111◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:27:19
- 12二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 21:29:08
お帰りスレ主!!
続きが読めるなんて!
かんしゃあ~ - 13二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 21:36:34
この時を待っていたんだ
戻ってこなくても仕方ないなと思ってたから純粋に嬉しい - 14二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 21:43:21
前スレ落ちたときの絶望感と言ったら……
お帰りなさい - 151◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:57:02
ただ、綺麗な物が見たいだけ。この世のどんなものもこの目に映して、忘れられない思い出を残したいだけ。
何年振りか、或いは生まれて始めて雪の止んだあの夜に。凍えて、震えて、悴んでいた事を二人してすっかり忘れてしまう位綺麗な、あの空を見てから────抱いたその思いだけは、ずっとずっと、変わらない。
覗き見なんて、良くない。そんな事、いまさら言われたってどうしようもない。だって私は見たくて、私になら見られるのだから。
正義実現委員会のコハルちゃん。シスターフッドに協力するハナコちゃん。二人が頑張る間、二人と違って元居た部活も立場も無い私に出来るのは、覗いて、見つめ続ける事だけだ。だから────ヒフミちゃんに頼み込んで、アズサちゃんに会うその現場を「覗かせてもらう」事にした。
アズサちゃんは、とても賢い。私がどこから見ているのか分かってしまえば、人混みを遮蔽代わりに難なく私の目を逃れてしまう。だから私は、遠く、廃ビルの上に陣取り、望遠鏡を構えて様子を伺う。これならバレようがない。そもそも「遠」くを「望」む「鏡」なのだ。正規の使い方とも言えるだろう。 - 161◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 21:57:12
橋の上。二人が、話しているのが見える。
何を会話しているのかはわからないし、ガスマスクを着けたアズサちゃんは勿論、此方に背を向ける形のヒフミちゃんも同様に、表情が伺えない……ただ。少し話してから、俯瞰していても分かるくらい、驚くべきスピードで駆け出すアズサちゃんを追おうとして、躓いてしまうヒフミちゃんを見れば────何が起きたのかは、容易に想像がつく。
辛い事だ。けど、────カフェを出て行ったアズサちゃんの表情を見ていた私には、想像がついていた。それに、私の目的はここからなんだ。
全力で、アズサちゃんの姿を追う。場所さえわかれば、ハナコちゃんに連絡して、どうにか人手を集められる。アズサちゃんは本意じゃないかもしれないけど、それでも、私に出来る事を────。
「────?」
……あれ。なんだろう。
アズサちゃん、こっちに向かってきている様な。
え?バレたのかな。いやいや、そんなまさか。何百メートルも離れてるし、一応設置も工夫したから物陰から望遠鏡くらいしか見えていない筈。光の反射で、とか言われたらどうしようも無いけどこっちを見たような素振りも無かったし。ヒフミちゃんだって、わざわざ私の存在をバラすようなことは無いと思う。
というかそもそも私の位置が分かっているなら、向かって来るんじゃなくて視界から隠れようとするはずだ。そうしないで、真っ直ぐ私の居る廃ビルに向かって来るのは、一体どういう領分で────。
「……………」
……気のせいかな。下の階から、声が聞こえてきた気がする。
足音を立てないように、そ~っと階段を下る。二個下の階まで下って、恐る恐る顔を覗かせ────。
「────あれが、例の戦術兵器か。ただの化け物だな」
見知らぬ四人組が、何か怪しげな会話をしている所を、目撃してしまう。 - 171◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 22:20:40
ごっつい武器。ロケットランチャーなんて、生まれて初めて見たかもしれない。黒いマスクを着けたボブカットの女の人は、此方に背を向けている。
同じく大きな箱みたいなケースと、下手すれば身体よりも大きそうな荷物を背負っている人。あれは、スナイパーライフルだろうか。その荷物のお陰で、二人の更に奥で此方側を向いているもう二人から、視界を切れているらしい。
帽子を被り、アサルトライフルを握った人が一人と、白いフードを被り、仮面で顔全体を隠す人が一人。その姿を軽く一望した時、視界の端に────ドクロを模った校章が目に入り、翻すように身を隠す事を選ぶ。
(………アリウス分校!!)
「────?」
会話が途切れる。音を立てた自覚はあった。
「……リーダー、どうかした?」
「………いや。何でもない。瓦礫の破片が落ちただけだ」
……危ない。ゆっくりと、会話に足音を紛れさせながら、可能な限りの忍び足で、ゆっくり階段を上る。その道中で、話に聞き耳を立てるのも忘れずに。
「『太古の教義』を基に作り出された失敗作と、『最高傑作の模造品』が……何?」
「……仕事をするなら何でも構わない。どのみち、奴らが狙いに気付いたところで────もう、手遅れだ」
「待機中の舞台に連絡を。────これより、トリニティへの進撃を開始する」
…聞き捨てならない言葉に、足が止まる。 - 181◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 22:24:10
- 19二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 22:28:52
お久しぶりです復活やったー!
と思ったらちびしぐれやちびみそのスレあなただったんか!そっちも見てました! - 201◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 22:34:11
どうしよう。今、ここで止めないと、大変なことになる。
飛び出して、撃つ?────だめだ。相手は四人。一人やれたところでどうにもならないし、そもそも私じゃ一人倒す所まで行けるかすら怪しい。
ハナコちゃんに、連絡?────だめだ。きっと忙しくて、直ぐに対応できる状況じゃない。それくらいは分かる。
なら、どうすれば。そう思った瞬間。
「ひっ!?」
声が出てしまった。しかし、見つかる事を危惧する必要は無い。後方。先程様子を伺った下の階から響く爆音に、悲鳴を掻き消されたから。
どん、どん、どん。と、続けて爆音が響く。廃ビルが明らかに揺れ、天井からぱらぱらと砂埃が降って来る。一体、何が。その答えは、怒りを孕んだ叫び声によって明かされる。
「────白洲アズサ!!」
恐らくは、この爆撃を受けている張本人であろう、あの四人の誰か。そして、この爆撃を行っているであろう────アズサちゃんの、戦い。
とにかく、逃げる支度を整えなくては。もはやこちらに気を遣る余裕も無いだろうと高をくくって、爆音に紛れて階段を全速で駆け上がる。すぐに息は上がり、汗が流れ、足が重くなる。
屋上に居ても、揺れが届く。響き渡る銃声と爆音を聞いていると、今にもこの建物が崩れ落ちてしまいそうな不安に駆られる。急いで望遠鏡を担ぎ直して、それからようやく、ある事に気付いた。
「………どうやって出よう!?」
下ではアズサちゃんとアリウス分校の人が戦っている。崩れていない、使える階段はひとつだけ。爆音や銃撃を聞くに相当派手に戦っているみたいだし、アズサちゃんは罠を張るのが得意だ。あれに気付かず引っかかってはひとたまりも無い。
「────っ!?」
などと、一人で大慌てをしていた所。下の階から、一際大きな轟音が響く。爆弾の一つや二つじゃ起きないような振動。連鎖的に、沢山の爆弾を炸裂させたかのような音。
再び階段を降りる間、尚も銃声が響く。見ると────屋上から、一つ下の階。その床が、丸ごと抜け落ちていた。
そして、その下。少し前までこの階の床だった、瓦礫の上で────。
帽子を被ったアリウス生が、口から血の雫を零すアズサちゃんの頭部に、銃口を向けていて。 - 211◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 22:45:23
ダメだ。それはダメ。
懐にある愛銃に、手をかける。狙いに自信は無いけれど、なんとか気を逸らして、アズサちゃんが逃げる隙を────と、銃口を向けようと試みた、その時。
アズサちゃんと、目が合う。
驚きは一瞬で搔き消えて。彼女は小さく、首を振った。
『やめてくれ』
そう言った様に聞こえて。銃を握る手が、ブレる。
「虚しいな」
遅れた、一瞬。その時は訪れて。
「虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい」
狂ったように、そう呟きながら。
女は、引き金を引き続ける。 - 221◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 23:25:58
見て居られなくて、目を背けた。本人がそうするなと言っても、止めるべきだったのかもしれないと、強い後悔に苛まれながら。弾切れを起こして、銃が空撃ちする軽い音が響くまで、ずっとずっと、執拗な銃撃は続いた。
「……虚しいな、アズサ」
「友情、か。ならばその無駄で虚しい物から壊してやろう。…たしか、────ヒフミ、だったか?」
その言葉の意図するところを理解した時。もう何度目か、引き金を引こうと思ったのは。
それでも、何故か。アズサちゃんが、まっすぐこちらを見つめて。どこか、淋しそうな。どこか、嬉しそうな。そんな表情で、『必要ない』と、語り掛けて来るから。
流れる涙。声を殺して泣いてしまう、私。力無く倒れるアズサちゃんが目に映る。
仮面を着けた白いフードの人が、帽子の人の傍に寄った。声を出さず、手や指を独特に動かす────内容は分からないが、手話という物だろう。声が出ないのだろうか。
「……心配しなくても、手加減はしている。こいつのことなら、よく分かって────」
意図を理解しているかのように言葉を返す帽子の人が、言葉を返す。アズサちゃんから目を背けた瞬間────手足をバネの様に、アズサちゃんが飛び退くのが見えた。
「────また逃げるのか、アズサ!!」
何度目か。耳が麻痺したのか慣れてきたのか、突然襲ってきたとしてももうあまり驚かなくなってしまった、爆発音。先程までアズサちゃんが居た所を中心に、灰色の煙が立ち込めている。
「……まぁいい。どうせあいつはまたやって来る。────この大事な、友情の証とやらを落としていってしまったからな」
そう言いながら、帽子の彼女が拾い上げたのは────ヒフミがアズサちゃんに上げていた、ペロロ博士のぬいぐるみ。乱雑に、握って潰す様に持つその姿を見た時────ついに、堪忍袋の緒が切れる音がした。 - 231◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 23:26:39
「う、わああああぁあああ!!!!!」
「ッ!?」
叫び声をあげながら。抑えていた嗚咽が一気に溢れ出し、大粒の涙と激昂を乗せて、サブマシンガンを乱射する。
当然の様に、仮面の人を抱くようにして飛び退く帽子の人。退かれては分が悪いと、足場の悪い下の階層へ飛び降り、我ながら不格好に走りながら発砲する。
「お前は、アズサの────!」
思わぬ伏兵にも、冷静。慣れた手つきでの素早いリロードを終え、弾を避けながら銃口をこちらに向けた瞬間────帽子の人の脇腹に、仮面の人が飛びつく。
「────ッ、姫────!?」
バランスを崩し、倒れる人。仲間割れかと少し頭が冷え、自分の心臓の音がうるさく聞こえて来た所で。
視界の端。仮面の人が立っていた位置に落ちていた、ペロロ博士のぬいぐるみが────
... ... ...。 - 241◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 23:27:41
キィ────────────……ン………。
……耳鳴りが、酷い。
ここ、は。廃ビル。たぶん、あの人たちのアジトだった場所。
アズサちゃんの大事な物を、ぞんざいに扱って。どんな気持ちでそれを持ち歩いていたのか考えないあの人に、一発喰らわせてやりたくて。
それで、突然────アズサちゃんの人形が爆ぜて。気づいたら、廊下の端にいる。口の中を切ったみたいで、血の味でいっぱいで。
倒れ伏せている白いフードの人。その隣で、僅かにうごめく帽子の人。見た所────前者の方が、深手を負っている様で。
頭が冷えて、自分がどんな無謀に足を突っ込んだのかに気付いて。弱っていても、きっと私なんかひとひねりのあの人に、背を向けて────崩れかけた階段から、意を決して飛び降りて。
「────姫ッ…!姫!!しっかりしろ!!」
後方から、声が聞こえて。悲痛な声。あんな人でも────大事な人は、いて。
今は、逃げる。きっと、アズサちゃんが守ってくれたんだ。
あんなに大切にしていた贈り物のぬいぐるみを使って。これを意図していたかまでは、わからないけれど。
ビルを出て、人気のない夜道をふらふらと走る。連絡、しなきゃ。ハナコちゃんに。
覚束ない手で、手に入れた情報の全てを、出来る限り取り零さないように。
無我夢中で、走り続けて。意識がもうろうとして、その先で────。
「────ノドカ、ちゃん────っ!?」
誰かに、抱き留められた。
あたたかい。あたたかくて、安心して────そのまま。私の意識は、静かに沈んでいった。 - 251◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 23:46:57
キャラが勝手に頭の中で動き出す感覚がしてます...多少拙い所もあると思いますが...
書き終わったらもう一回しっかり校正しなおして笛で投稿しようと思ってるので、なにとぞ...
もうちょっと書いて、出来たら書き溜めも作ってから今日は寝ます - 26二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 23:48:07
いつまでも待ちますよ
- 27二次元好きの匿名さん25/04/13(日) 23:51:15
他のスレでも思ったけど筆が早い……
楽しみに待ちますし無理のない範囲で頑張ってください - 281◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 23:58:46
────先生が、目を覚ました。私には、目を背けるなと提言を残して。
ミカと、コハル。ハナコと、マリー。
皆が皆、出来る事に手を尽くし、少しずつ、手を取り合う。
ゲヘナ風紀委員長。アビドス廃校対策委員会。
次々に、先生の指揮の下へ。縁と縁で繋がれた、遠く離れた生徒たちが、一同に介する。
そして────ハナコに情報を託し、ヒフミの腕の中で意識を失った、ノドカもまた。
彼女の、偶然から生まれたその行動が────離れた地で、誰かの足を動かす。
バタフライエフェクト。たった一羽の蝶の翅が産んだ空気の流れが、遠い地の果て、時の果てに滅びの大災害となり“得る“可能性を語る仮説。
……破滅に向かう、後味の悪い、バッドエンドへの一本道かと思われた物語は、徐々にその舵取りの方向を変えていく。
このままなら、或いは。走り出した一匹の、雪山から来たる一匹の獣の姿を見て────私もまた、その存在すら信じていなかった、淡い希望を抱き始めている事に気がついた────。 - 291◆ifPRYIRKeo25/04/13(日) 23:59:42
- 301◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 00:13:10
後ろから、何か聞こえてくるが、聞かないふり。カズサとヨシミの怒声。なんなら銃まで持ち出して、本気で止める気だ。
ハナコから来た連絡。ノドカの無事を仄めかす内容と、相変わらず遠回しな「要請」。
反省しているとか言っていた割にやり口が一緒なのが癪だが────こんなものを見て、動かないわけには行かない。と言っても素面では厳しい事だから、思い切って懐に隠したスキットルを一杯、喉に流し込んだ後だ。
曲がり角をあっちこっち走り抜けながら古聖堂までの鬼ごっこをするうちに、いつの間にか彼女たちの事は撒いたようで。
「さ、ってと…!」
となれば次は、お目当ての人物を探す。右見て、左見て、それだけでちょっぴりくらっとする頭。良い感じにお酒が回って来て、顔が熱い。
片手を傍の壁面に着いたところで、視界の端に────特徴的な、青と白のカラーの制服を着た、生徒が見える。
名前は、知らない。いや、どこかで聞いた覚えはあるけど、あんまり覚えていない。
「ではここで、現場の状況を────お、わぁっ!??なっ、何ですかあなた、ちょっと!マイクを返し────ぎゃん!」
「ん゛っ、んー。あー、あー。マイクテス、テス。……うん。大丈夫そうだねぇ?」
蹴っ飛ばしちゃった。ごめん。後で謝る。悪いけど、今あんまり構ってられないんだ。
呆然と硬直するカメラの端に手を添え、こっちを向かせて。すぅ、と大きく息を吸う。
この状況を覆す、盤外からの逆転の一手。それを、呼び集める為に。 - 311◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 00:18:56
「────目が、覚めましたか?」
柔らかい感触が頬に触れる。ちょっとおもい。私の身体を支えているのは、ハナコちゃんだ。
「────…それじゃあ、一緒に、聞きましょうか。私達の────部長のお言葉を」
ふざけるでもなく、穏やかな微笑みを浮かべたまま。ゆっくり起き上がった私に、ハナコちゃんは静かに肩を貸してくれる。
目の前には瓦礫の山。その頂上に上り、私達に背を向ける、────意識が落ちる前の、記憶の最後にも見た、明るいブロンドの髪。
「────アズサちゃんが人殺しになるのは嫌です……」
震える声が、冷たい空気を震わせる。手前で、此方に背を向けるアズサちゃんが、ぎゅっと手を握ったのが見えた。
「そんな暗くて憂鬱なお話、私は嫌なんです」
語気は少しだけ、強くなる。より、はきはきと。しっかり、それを伝えたい誰かに、伝わる様に。
「それが真実だって、この世界の本質だって言われても、私は好きじゃないんです!」
「私には、好きな物があります!」
知っている。みんな、知っている。
いつも、楽しそうにその事を語る彼女を、傍でずっと見ていたから。
「平凡で、大した個性も無い私ですが……自分が好きな物については、絶対に譲れません!」
知っている、私も、知っている。
好きな物に賭ける彼女の情熱を。それが無ければ、この出会いも無かったという事を。 - 321◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 00:21:14
「友情で苦難を乗り越え、努力がきちんと報われて、辛い事は慰めて、お友達と慰め合って……っ!」
目を閉じて、思い出す。友情と、努力に満ちた、あの時間を。
「苦しい事があっても……誰もが最後は、笑顔になれるような!」
瞼越しに、淡い光が差す。薄暗かった空が、ゆっくりと。東の空から差し込む青い光に、鮮やかに彩られて。
「そんなハッピーエンドが、私は好きなんです!!」
精一杯、張られた声。明け方、姿を見せた太陽に照らされるその背は、何より大きく見えて。
「誰が何と言おうとも、何度だって言い続けてみせます!私達の描くお話は、私達が決めるんです!!」
空は青く澄み渡り、透き通る様な純粋な叫びが木霊する。
「終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!!私達の物語────」
Blue Archive
「私達の、青春の物語を!!」
高々と突き上げた指の一本が、雲を退かす。
それは紛れも無く、平凡な彼女の思いが起こした、青春の奇跡で────。
“ここに宣言する。”
ETO
“私達が、新しいエデン条約機構。”
それに次いで────ズルい大人の勝利宣言が、青春の祝福を締めくくった。 - 33二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 00:27:25
セイアちゃん殴り合いがこれで、
セイア「殴り合いだ。歯を食いしばりたまえ、ミカ」|あにまん掲示板「…は?」 ミカの表情が、疑問に曇る。当然だ。私だって、今しがたその言葉を発した自分自身がなんとも滑稽でならない。少なくとも、年ごろベッドの上で咳き込んでいるだけの虚弱な女が放つ言葉にしては、あまりに…bbs.animanch.comセイア「君が望むのなら、殴り合うとしよう、ナギサ」|あにまん掲示板「っ……!」 自分から売った喧嘩でありながら、私の握り拳は震えている。その私よりも一回り以上も小さいセイアさんは、何故か覚悟の決まった表情で、真っ直ぐに此方を見据えているというのに。 拳を交えての喧嘩…bbs.animanch.comちびっこいのがこれ?
ちびみそのが、あらわれた!|あにまん掲示板どうする?>>5bbs.animanch.com百物語はこれ
227号の怪談噺|あにまん掲示板 瓦礫や放置された荷物に加え、破れた窓から所々に雪すら積もる始末。当然のように電気は通っておらず、割れた蛍光灯の破片が散らばっている。 廃れ果てた校舎の廊下も、見慣れてしまえばなんて事の無い物で。だか…bbs.animanch.com読んでないスレもあるから読むぜ読むぜ
- 341◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 00:35:03
────そこへ。
希望と、青春の青さに満ちた空間に。
「申し訳ないな、先生」
耳障りな音が、響き渡る。 - 351◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 00:37:38
「本来であれば、この様な事にはならないはずだった」
軋む様な音が。若者の声を遮る、絶望に染まった大人の声が。
“お前は……?”
「知性と品格、礼儀と信念、培ってきた経験と知恵……やはりそなたは、そなたという大人の本質は────何があっても揺るぐ事が無いらしい」
不可解な言葉。その意図を理解できる者は、この場に一人としていない。
「それ故に。このような、忌むべき『模造品』如きでそなたの物語を終えてしまう事を────ここに詫びよう」
地響き。
「だが。傲慢な望みだとは重々承知の上で、敢えて言おう」
既に見る影も無い古聖堂の地面が、ゆっくりと崩れ落ちる。
COMMUNIO SUNCTORUM
「『 聖 徒 の 交 わ り 』。……『太古の教義』を基に、不完全ながら顕現した聖人の行く末と────『ここではない別の私が、その経験を経て生み出した最高傑作』の、────あり得べからぬ『共演』だ」
神聖文字を詠む 荘厳なる聖歌隊
「名を────────『HIERONIMUS GREGORIUS』」
「………願わくば、どうか────喝采の、準備を」 - 36二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 00:40:15
なんでそんな張り切ってるんだマエストロ
- 37二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 00:46:51
こーれ、>>10 の謎の独白といい、なにか変化してきている感じですねえ
グレゴリオはエデン条約四章でも完成していないはずなのに
- 381◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 00:48:19
かなり駆け足でしたが今日はここまでにします。公式リスペクトの引き方という事でここはひとつ。
最初の頃に思いついてからずーっと描きたかったところが目の前に見えてきてかなり感激。これ書き終わったらようやく宇沢を出せるのも感激。
ありがとうございますぅ~~...ちびっこいのはシグレのも立ててますので、良ければ是非是非。しばらくはこのトリシグレ書くつもりなのでアレですが、暇が出来たらまた別生徒でも立てたいなーって思ってます。その時はまた、なにとぞ。
ちびしぐれがあらわれた|あにまん掲示板どうする?bbs.animanch.com - 39二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 06:58:41
朝の保守
- 40二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 12:21:28
昼の保守
- 41二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 12:42:49
ノドカが堪えるところめちゃめちゃ好き
- 421◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 17:59:40
「みんな、気を付けて!!」
足場が、崩れる。古聖堂の地下の空間に雪崩込む様に、地面が吸い込まれてゆく。その予兆を捉えたアズサが、皆に注意を促す、も────
「っ、...!」
ノドカを抱くハナコは、身軽には動けない。そうでなくても、基よりアズサほど身軽でない彼女は、崩落から逃れられない。
"ハナコ、ノドカ────!"
先生が声を上げ、手を伸ばしても二人には届かない。だが。
「落ちる時は、みんな揃って一緒にです......!!」
「わ、...ひ、ヒフミッ...!?」
コハルを抱き抱えるように体を寄せたヒフミが、跳ぶ。それを見たアズサはすぐさま先生を庇いに走り、六人は揃って古聖堂の地下だった広間に。
「────無事ですか、皆さん!!」
先に着地したハナコがノドカと目を合わせた後、周囲を見回しながら四人の無事を確認。幸いにも、怪我をしている人は居ないらしい。
安心も束の間。皆の目は、真正面の怪物に集中する。
青空の下。残った天井に光を遮られた影の下で、グレゴリウス・ヒエロニムス────そう名付けられた巨大な人型は、音もなくゆっくりと起き上がる。
三つに別れた人影。指揮棒を携え、頭部が青白い灯火の様に揺らいでいるもの。────指揮者。
赤黒いフードを深く被り、異様に細長い指を持つ手を四本持つもの。────聖人。
後方、人が弾くには大きすぎる程のパイプオルガンに向かう様にその手を伸ばすもの。────演奏者。
【────Intro】 - 431◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 18:08:34
演奏者の指が鍵盤に沈み込み、音を奏でる。
荘厳で、底知れず。空気を揺らす深い音。
戦術兵器────と。そう呼ぶにしては、余りにも美しすぎるくらいで。
どこか不気味な雰囲気を纏った演奏会の始まりを告げるように────パイプオルガンの周囲を囲う、蝋燭の青白い灯火が立ち上がる。
「……何、を……」
静かにイントロが奏でられ、指揮者も緩やかに指揮棒を振るう。中央に静かに鎮座する聖人は、ピクリとも動かない。まるで、オルガンの音に聞き入っているかの様に俯いたまま。
要領を得ない化け物の行動に、初手を決めあぐねた────その一瞬の致命を、直後に先生は後悔することになる。
【────1 Verse】
「「「「「"…………!!!"」」」」」
一振り。一際大きく、素早く、力強く。
それを合図に、伴奏は急速に勢いを増す。空気がビリビリと震え、素肌を貫通して脳内を縦横無尽に弾み回るような、音の暴力。
それらはただの雑音として埋もれることは無く、ひとつの曲として成立している事実を────音楽への知見の有無を問わず、聞くもの全てに理解させる、圧倒的な技量。
「────ノド────ちゃ────!!」
「────何────聞こえ────」
「────うる────さ────!!」
皆が耳を塞ぎ、音楽の暴力に耐える中────一人、誰よりも深刻な表情を浮かべた先生が、額に汗を滲ませる。
"(────やられた)"
"(────指示が、出せない……!!)
アロナのサポートがあったとしても、指示自体が届かなければ意味は無い。見ての通り、叫び声すら掻き消す大音量を間近に受け、此方はコミュニケーションすらままならない状態だ。
眉間に皺を寄せ、目を細めた次の瞬間。指揮者の動きが変わる。下から、上に────特徴的な指揮棒の振り方に続くように────。 - 441◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 18:11:09
"ッ────みんな、伏せ────"
「あ゛ぐ、っ!!」
耳を抑え、うずくまっているノドカを庇う形で飛び込むアズサの腹部に、不可視の音波の打撃が打ち付けられる。
何時の間にやら湧いていた、概ね等身大の怪物の群れ────聖書や喇叭を携えた、聖歌隊とでも言うべき物が放った物だろう。
「……ッ、ぐぅ…!」
"アズサ...!"
後方でうずくまって呻くアズサに先生が駆け寄ると、打撃を受けた部分を中心に、赤黒い炎のような何かが、その身体を蝕もうとしているのが見て取れた。
「これ、は......呪い────?」
見れば、聖人の頭部に当たる部分から、アズサの身体を蝕むそれと似た色の炎が立ち昇っている。
音波に乗せられた、呪い。指示を妨害する、演奏。それに加え────狙いが定まっていないのか、未だ此方に被害を及ぼしてはいないが。天から降り注ぐ光が、着弾点に爆発を起こす攻撃。これも恐らく、"聖人"の行動に起因するものだろう
"────できれば、使いたくは無かったけど"
もう、そんな事は言っていられない。
呟いたハナコの言葉から名を借りて、仮に呪いと呼称する能力は────先生自身の取捨選択と指揮次第だが、突破口はある。
指示は、"それ"であれば心配いらない。声を介さずとも、アロナを通して思い描いた動きが指示できる────手足の様に、と表現するのは非常に不快な物だが。
問題なのは、自身の身体にどれだけの負担を強いる事になるか。この身朽ちるまでに、果たしてあの化け物を仕留める事ができるのだろうか。
切り札を、懐から取り出す動きを取る。
"大人のカードを、────" - 451◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 18:12:16
────取り出す、寸前。
「その切り札、待ったをかけるよ────先生」
頭上から、何故か────その生徒の声だけが、やけに鮮明に聞こえた気がして。
そして、────
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーっ!!!!!!」」」」」」」
目の前の怪物が発する音楽すら掻き消す様な凄まじい雄叫びが、上方から響き渡った。 - 461◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 18:27:41
時は、ノドカがアリウススクワッドのアジトから逃れ、ヒフミと合流した直後に遡る。
ノドカからハナコに届いたメッセージは、「アズサちゃんとアリウス、たたかってる」「こせいどうのちか、せんじゅつへいき」「トリニティしんこう」の三つ。
続けてヒフミから、怪我をしたノドカと合流した報告を受け────ハナコはすぐさま、シグレに連絡を飛ばす。
……またもいやらしい伝え方になってしまったと、送信を終えてハナコは自省する。彼女を動かすにはこれが一番効くと知っているからこそ、どうか必死さの表れとして受け取って欲しいと願いを込めながら。
メッセージは程なくしてシグレのモモトークに届き、────勝手な行動をしないよう、スイーツ部の四人がかりで四方を固められていたシグレの目に、その文章が入った。
『ノドカさんの為に、可能な限りの戦力を集めて、古聖堂の跡地まで急いで来てください』
「カバディカバディカバディ…」
「ナツ、それやめて。鬱陶しい」
「シグレちゃん?連絡……ノドカちゃんから?」
ふざけた調子で反復横跳びを繰り返すナツとそれを咎めるカズサを他所に、スマホを覗き込む私に気を遣った一言を掛けるアイリ。
ハナコが何を思ってこの文章を送ったのかまでは分からないし、彼女が"そのこと"を知っているのかも分からない。
けれど、"ノドカの為に"という狙いの透けた一文と────内容を見て真っ先に思い浮かんだ、一案。そこまで織り込み済みだと言われても、やもすれば信じてしまうかもしれない。
「アイリ」
「?」
「ごめんね」
懐から取り出した、水色のスキットル。指の摩擦で勢いよくキャップを外し、アイリの開いた口にその飲み口を突っ込んだ。 - 471◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 18:31:16
「は!?」
「ちょ、ちょっとあんた、何して…!?」
「おぉ」
三者三様の反応。その動揺と脇の下を潜り抜け、全速で駆け出す。扉を蹴り開いて、走る、走る。
あのスキットルの中身はただの飲み水。さすがにアイリの善意につけこんで、だまくらかして呑ませるのは気が引けたから、囮になって貰う事にだけ謝っておいた。
本命はこっち…と、彼女の代わりに、喉を灼く様な喉越しの"万能の液体"を流し込む。
怒声は聞こえたし銃撃もされたけど、追っては来なかった。アイリの方を優先したんだろう。
走りながらだったから、少し噎せた。思い返すと勿体なかったな、アレ。
「────ん゛っ、んー。あー、あー。マイクテス、テス。……うん。大丈夫そうだねぇ?」
クロノススクールの生徒からカメラとマイクを奪い取り、中継をジャック。ナギサが居ない今、思いついた事を実現する最良の手段がそれだったから。
「急にごめんねぇ、ちょーっとだけ時間、貰うよ。トリニティ生のみんなー、ご機嫌よう?なーんて、この状況で挨拶とかちょっと変か」
酔いが回ってる自覚がある。けらけら笑いながら、さっき蹴飛ばしたクロノス生がマイクを取り返そうとしてくるのをいなしつつ、さっさと要件を伝える。
「────"天文部"からの、お知らせです」
いつぶりかな。こうやって名乗るのは。
「天文部部員は武器を持って、至急古聖堂跡地の周辺に集合。────これは、ノドカ部長からの指令と同義だよ。公式の、最後の部活動だ」
あれだけ後始末に苦労させられたかわいい暴徒達に助けを乞うのも、中々乙な物だ。
「────去年、暴れ足りなかったーって子も、居るでしょ。こぞって、おいで!」 - 481◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 18:35:20
…うん、ホントに酔ってるな。レンズに反射した自分の顔が、信じられないくらい真っ赤だ。ノドカの名前を勝手に使って、これだけ焚きつけるような事言ったら、さすがに…うん。後のことは、考えるのやーめた。
「……以上!お相手は元天文部副部長、間宵シグレでしたっ。チャンネルはそのままー、続いてはお天気のコーナーでーすっ」
適当に、無責任な次への繋ぎを放り投げてパスし、そのまま走り出す。言ってから思ったけど、テレビか。ラジオ感覚だったかも。
ずーっと走りっぱで、忙しい。…のに、その忙しいのすら懐かしくって、感慨が深まる。
「違いますけど!!?まだ中継の途中…あっちょっと!マイク返してー!!」
なんか言ってるけど、ごめん。
これから久々に、部活なんだ。
────初めに此方を振り向いたのは、ハナコ。彼女の驚いた顔なんて、初めて見たから新鮮で、少し鼻を明かしてやった気分。
どう?『要請』通り、連れてきてあげたよ。ありったけの戦力を掻き集めて、さ。
声を張るのが得意かと言われればそうでもない。なのに、ここに来てからずーっと声を張りっぱなしな気がする。けど、ただでさえ遅れてやってきたんだ。これ以上の遅れをとるわけにはいかない。私一人の声じゃ、先生に届くかは分からないけれど……、『5000人』もいれば、話は別だろう。
「その切り札、待ったをかけるよ────先生」
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーっ!!!!!!」」」」」」」
私の合図に応じた部員達の、物凄い歓声。雄叫びみたいな声の群れが、さっきからじゃんじゃかうるさいデカブツの演奏を掻き消す勢いで。それでようやく、ハナコ以外のみんなもこっちに気づいたみたい。
「シ────」
「シグレ、ちゃん……!?」
あは。びっくりしてる。こっちの驚いた顔は今までに何度も見てるけど、どれだけ見たって飽きない。飽きる訳が無い。
「天文部一同、助けに来たよ────ノドカ"部長"!!」 - 491◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 18:51:08
昨日の夜と今日の朝書いた分ここまで、続きは夜に書けたら。ヒエロとグレゴ逆で書いちった最悪!!!
作劇的な都合を言うと、ヒエロニムス単体じゃこの展開をやるとちょっと絵面がいじめ現場すぎるかなって思って......。
5000人で寄ってたかってボコボコにされたら難易度ルナティックでも瞬殺されそうだし、かといって、ゼロから新ボスを作れるほどのセンスはないので折衷案としてフュージョンさせました。ちゃんとした理由付けは後から...。
最初に天文部の設定考えた時からやりたかった展開なので、竜頭蛇尾にならないように気合い入れて書きま~~す。 - 50二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 19:43:12
兼部してたとしても部一つで5000人???
一つの学園作れるやん、そら解散命令も出ますわ - 51二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 23:10:00
1スレ冒頭を見返してきたけど、「正実所属生徒の四割が動員」「副部長時点(解散前?)でのシグレの認識で数百~千超の部員」「顔の広いシグレ目当てや急拡大した話題で兼部」などを踏まえると、
数百~千超で活動
↓
ノドカがやらかして廃部
↓
元の部員以外に話題等々で人が集まり、逆に集団として膨張
↓
その全体像を把握していなかったノドカが赤冬魂を発揮した結果、暴徒化
みたいな流れかな……このパターンだと下手したら前年よりも人増えてる可能性すらありそう - 521◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 23:15:03
よ、っと軽い声を上げて飛び降りるシグレ。転がり受け身を取って軽々着地し、口をぱくぱくと開け閉めしているノドカの隣に駆け寄って、その肩をぽんと叩く。
「────さ。いこっか、ノドカ」
「え、……い、行くって、わっ、ちょっ、シグレちゃんっ…!?お、お酒臭っ!」
状況が呑み込めず呆然としているノドカの肩に腕を回し、頬をくっつけて視界を共有。そのまま、自分たちの居る大穴の縁を取り囲むように集まった、元天文部員のみんなをぐるりと一望する。
「……みんな、ノドカの為に集まってくれたんだよ」
それは、あの夜に、夜空に瞬く星々の美しさを教えてくれたノドカのそれと、同じような姿勢のままで。
「みんな、ノドカの情熱に惹かれて。ノドカの純粋な気持ちに惹かれて。ノドカに惹きつけられて────ノドカの名前を聞いただけで、こんなに集まってくれたんだ」
ノドカという恒星を廻る衛星として。君が呼び寄せた、青空に騒がしく瞬く5000の星たちを一緒に見たかったから。
「行こう、部長。あのデカブツを、ぶっ飛ばすんでしょ?……お供するよ。大丈夫、今までと何も変わらない。一緒なら、きっと楽しいよ」
手に握らせた、16年来の彼女の愛銃。私と同じだけ傍に居る、今やその顔も朧げな育ての親が、最後に残してくれたサブマシンガン、『サジタリウスナイト』。
「────」
息を吞むノドカ。ゆっくり持ち上げた銃口を、忌まわしい怪物に向ける。大きく息を吸って、あらん限り、高らかに。
「────天文部の、みんなぁっ!」
「私に────────」「ノドカに────────」
「「続けぇーーーーーーーーーっ!!!!!」」
“総力戦”の、開幕を告げる音頭に続いて────熱狂する5000の星々が、一層煌めいて。 - 53二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 23:25:16
うーんこの勢いのままにバカ騒ぎで突っ込む感じ、成田良悟作品的なハチャメチャを感じる
5000人にシスフとか救護騎士団とか自警団が混ざっていたりするとなおいいと思うんだ - 54二次元好きの匿名さん25/04/14(月) 23:55:54
このレスは削除されています
- 551◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 23:58:14
啞然とする補習授業部の四人と先生。何にというと、その攻撃の熾烈さだ。
キヴォトスに流通するあらゆる銃器という銃器。アサルトライフル、スナイパーライフル、ハンドガン。サブマシンガンにマシンガン、グレネードランチャーやロケットランチャー。挙句には、届きもしない火炎放射器に痺れを切らして、それその物を放り投げる者もいる。
手榴弾や爆弾、閃光弾といった投擲物も多く見受けられる。穴の縁に居る者以外銃撃は出来ないのだから、当然と言えば当然だろうか。
……そう考えてよく見ると、先頭に立っている人々は弾切れを起こすたびに後方の人と入れ替わり立ち替わり、攻撃が途切れない工夫を凝らしている。指揮もろくに機能していないように見えるのに、無駄に統率が取れている事が逆に混沌を助長している。
とかなんとか考えていたら、今度は茶器が降って来た。白いティーポットやカップ、ソーサーが無造作に放られ、ヒエロニムス・グレゴリウスの頭部に落下して割れる。他にも白い丸机や椅子、本の詰まった本棚やベッドが弾丸と共に雨の様に降り注ぐ。さっき落ちてきたあの箱は茶箱のようで、茶葉の粉塵が舞い散っている。
「……あ、あんなの何処から持ってきたんでしょう……」
……根元からへし折られた街頭や見覚えのある緑のベンチ。外が巡航ミサイルやアリウスの被害で荒れ果てている事を考慮すればギリギリ「瓦礫を利用した」と説明がつきそうなものだが、戦闘と呼ぶにも異質な物体がところどころに見受けられるようになり、ヒフミが口を開く。
ひとつひとつは、怪物からしてみれば豆鉄砲にも等しい微細な攻撃に過ぎないと言えるだろう。だが、塵も積もれば山となる。目に見えるダメージとなり、怪物は彼女達の援護射撃を脅威と認めたらしい。
【────Chorus】 - 561◆ifPRYIRKeo25/04/14(月) 23:58:32
叫び声に掻き消されかかっていた音楽は負けじと勢いを増し、ヒエロニムス・グレゴリウスの左右に浮かび上がる紫の光の人型がコーラスを謳い始める。聖歌隊は更に数を増やし、一斉に穴の外へ飛び上がって────天文部の生徒たちへ襲い掛かる。
「……!?あれは、……」
だが、その異変は────聖歌隊の突撃が始まる、寸前に訪れた。
空高く、ヒエロニムス・グレゴリウスの全身を覆う様に投影される────トリニティの略式校章。見た覚えのある攻撃の予兆に、ハナコが声を上げる。
雨の様に、広範囲に渡って降り注ぐ榴弾。『L118 牽引式榴弾砲』────トリニティ総合学園、ティーパーティー公式の武装。
直撃と、爆裂。広範囲に渡る絨毯掃射は、一度に舞い上がった聖歌隊の群れの半数以上を撃ち落とし、更に怪物本体にすらダメージを加える密度だ。
「ティーパーティーの、砲撃支援……!?ですが、ナギサさんは……!」
砲撃部隊の指揮権を持つティーパーティー・ホストの桐藤ナギサは、巡航ミサイルの一撃を受けて意識不明の重体。同じく意識を取り戻さない百合園セイアは勿論、アリウスを先導しクーデターを引き起こした聖園ミカもまた、その権利は持ち得ない筈。
「────驚いちゃって、まぁ。あの事件から1年経って、ティーパーティーの砲手になった部員が居てもおかしくないでしょ、この規模だよ?」
飄々とそう言い切るシグレの姿を見て、浦和ハナコは初めて背筋を凍らせる。
天見ノドカと間宵シグレ────仮にこの二人が、本気でトリニティの転覆を目論んでいたとしたら。そんな悪夢が頭を過ぎってしまったから。 - 571◆ifPRYIRKeo25/04/15(火) 00:02:22
- 58二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 00:06:43
うせやろ……全派閥にシンパがいる勢いでわらた
そらナギちゃんも補修授業部でノドカとシグレを引き離すわ、なんも間違ってないもん(なおその行為自体が地雷だったという) - 59二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 00:17:19
一応気を使って、天文部兼部集団にティーパーティーと正実は入れずにレスしたのに、逆パターンで実現されて草
このノリで成り立つ天文部、ちゃんと部員届け出していない非正規部員が遥かに多いだろ……!
というかボカさず例えるけど、ダラーズなんだよその在り方は!! - 60二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 00:23:16
うーん実に赤冬精神を感じるノリ
なんだろう、日刊クーデターをしない工務部?(その分動くとどこからとも所属関係なしに集まる) - 611◆ifPRYIRKeo25/04/15(火) 00:41:51
嵐の様な攻撃は、なおも一点に降り注がれる。荘厳な雰囲気を醸し出していた怪物の装束は穴だらけで、目に見える大きな傷も複数見受けられる。指揮棒を振るう指揮者の動きも明確に鈍り始めた。
「このまま、行けば…!」
スナイパーライフルで僅かばかりの援護射撃を加えながら、差し込んだ光明にコハルが希望の言葉を漏らすと同時。
────彼女を、すっぽり覆う大きな影が、落ちる。
「────……へ、」
気の無い声が漏れた。視界に映ったのは、真っ直ぐに振り下ろされる金色の細腕。動きが良いとは言えないコハルを狙ったのか、或いは追い詰められて自棄になっての行動か。いずれにしても────聖人の選択は、的確で。
“コハル!!!”
「────させ、ないっ!」
その攻撃を妨げるのは、今まで温めていたグレネードランチャーを引っ張り出したシグレ。
攻撃に割り込む形で駆け込む。ポン、と軽快な音の直後、襲い来る腕に榴弾が直撃。
続けざまに、ポン、ポン、ポン、と、装填されている榴弾の全てを撃ち放ち────ヒビの入った細腕が勢いよく吹き飛び、転がった。
「あっ…あ、ありがと…!」
「もうひと踏ん張りだよ、頑張って!!」
士気は最高潮。シグレも声を張りながら、リロードをし直している、その時だった。
【────Finale】
戦場にいる誰もが知覚する。その予兆を。説明の付かない恐怖を。
全身にヒビが入り、青白い光の漏れる傷を意にも介さず、力強く演奏を続ける演奏者。
その音が、迫りくる聖歌の終わりを物語る。 - 621◆ifPRYIRKeo25/04/15(火) 00:53:40
怪物の焦りが滲む様な、終着へ全速力で駆け抜ける様な演奏。技巧だけはそのままに、まるで何か「終わらせる事」それ自体に何かがあると察しがついてしまう。嫌な予感が、拭えない。
“シグレ、コハル!!
“ありったけの榴弾を!!”
威力の高い爆発物を持つ二人に、先生が即座に指揮を飛ばす。同じ事を考えていたらしいシグレは、『スプリングパンチ』片手に真っ直ぐ駆け出す。同様に、手榴弾のストックがあるコハルもハッとした様子で、シグレに続いて走り出した。
演奏はより激しく、過激に。強く人々の心に響き渡る様に。
救いを語る聖人の歌。その終着に待ち受けるは、歪曲し拡大し、その解釈を捻じ曲げられた救いの形。
すなわち────『死』という、万人悉くに通ずる救恤。
爆発。銃撃。爆発。銃撃。
ヒフミも、アズサの応急処置を終えたハナコも、持ちうる弾薬を片っ端から叩き込む。
シグレも、コハルも、それぞれ指揮者と演奏者を狙って榴弾を放り続ける。
だが、足りない。聖歌は終わりを迎え、万人の救恤は青白い炎の形で立ち昇り、その準備が整ったことを伝える。 - 631◆ifPRYIRKeo25/04/15(火) 00:53:54
あと、五音。
既に六発の榴弾は撃ち切った。それでも、傷だらけの演奏者は手を止めない。リロードが、間に合うか。
あと、四音。
聖水の混じった手榴弾は、威力が多少落ちる。残弾はあるが、倒し切れる程ではないし、時間が足りない。
あと、三音。
痛みは治まった。だが、動けない。腹部をじくじくと蝕む呪いのせいか、脚への力の伝達が叶わない。
あと、二音。
なんとか────しなくては。
あと、一「シグレちゃん、援護して!!」 - 641◆ifPRYIRKeo25/04/15(火) 00:56:51
駆け出したノドカは、人の身程もある愛用の望遠鏡を、バットの様に握り締めていた。
「ノド、カ────!?」
シグレの顔に、動揺が浮かぶ。だって、どう考えても無謀であるとしか言えない。
しようとしている事は理解できる。だがそれは、愚策も愚策だ。第一、“それ“はノドカの大切な────
「いいから、早く!!」
………葛藤は、静かに崩れ去り。鋭く、真っ直ぐな瞳に射抜かれたシグレは、余計な言葉を発するのを止めて、援護に入る。
あと、一音。振り上げた演奏者の腕を目掛けて、装填できただけの榴弾を放ち────傍に浮いている邪魔な聖歌隊を蹴飛ばして、道を作った。
「────や、ぁあぁぁああああああ」
これが無ければ、私は私の見たい物が見れない。
けど────見たい物そのものが無くなってしまうかもしれないのに、そんな甘えた事を言っていられるか。
思い切り跳び上がり、パイプオルガンの上に乗った。真っ直ぐ、白い鍵盤の上を駆け抜ける。耳障りに楽器を鳴り響かせながら、演奏者の真正面へ。
「あああぁあぁあああぁああぁあぁあぁあああぁあああああ」
そして。不気味な頭部を目の当たりに、腹の底から声を響かせながら。鍵盤の跳ね返りを、バネの様に利用して────高く、演奏者の頭部目掛けて。
あと、一音。
その顔面に────大きな望遠鏡の、フルスイングが突き刺さる。 - 651◆ifPRYIRKeo25/04/15(火) 01:07:16
今日はここで寝ます。明日でエデン3章終わらせて、宇沢イベントの導入ぐらいまで行けたらいいなと。4章は補習授業部とスイーツ部が介入する隙間が無さそうだし、考えてる展開に破綻が無ければ多分書かないかも...。
一応、暴動時点で書類上は解散した事になっている部活なのと、天文部全員が暴動に参加した訳じゃないのも理由の一つですかね...成田小説は友人から借りたBLEACHのスピンオフの奴しか読んだこと無いです。デュラララ未履修。
- 66二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 01:08:02
ペロロ人形をトラップに消費してでも友人のために戦ったアズサ
望遠鏡をフルスイングしてでも友人のために戦うノドカ
いっしょ - 671◆ifPRYIRKeo25/04/15(火) 07:04:41
あさです。