- 1二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 21:56:49
- 2二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 22:16:46
ですから彼女は実に、何でもない事に苦しんで、何でもない事に死んで行ったのです。
彼女を生かしたのは空想です。彼女を殺したのも空想です。
ただそれだけです。
「少女地獄」夢野久作 - 3二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 22:34:35
- 4二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 22:41:18
「あなたを憎めたらって思うわ、ボブ。あなたは骨の髄から人でなしだわ。でも、あなたを憎むのは、お天気を憎むのとおんなじ。何もいいことがないわ」
「すまない。こんなに楽しいときを過ごしたことは一度もなかった。最高の時間だった。特別のときだった。あともう少しここにいたら、二度と出て行くことができなくなってしまう」
「そんなことはないわ。それは嘘。あなたは出ていくわ。あなたみたいな人のことはわかってる。いつだって出ていってしまうのよ」
スティーヴン・ハンター『極大射程 上』 - 5二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 22:48:24
好きって絶望だよね
- 6二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:01:12
- 7二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:01:26
襟元にクリップになっている水色の薔薇のコサージュをつけ、鏡の中に完璧な「女の子」が完成すると、理瀬はなんとなく憂鬱になった。この格好を見たら、ヨハンは喜ぶだろう。彼は、理瀬を女の子らしい女の子として扱っている。女の子は作られるのだ。そのことが、時に彼女を傷つけ、時に虚しさを感じさせていることに彼は気付かない。ヨハンの視線に、憎しみを抱く時すらあるということが、彼には理解できないのだ。
麦の海に沈む果実/恩田陸
思春期の女子特有の複雑な心理的葛藤を瑞々しく描き出した名文だと思う
恩田陸は「少女」の心理描写が異様に上手い - 8二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:06:38
けれど、ここ以外の場所は静かだろうな、と思うと、すこし気持ちがやわらいだ。
伊藤計劃「虐殺器官」 - 9二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:13:37
すべては変わりゆく
だが恐れるな、友よ
何も失われていない
神林長平『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』 - 10二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:17:44
「“禁止されていない”ということは、“許されている”ということではないんだよ」
キノの旅 - 11二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:19:19
「サヨナラの挨拶をして、それから殺して下さるものよ。私もサヨナラの挨拶をして、胸を突き刺していただいたのに」
坂口安吾『夜長姫と耳男』 - 12二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:24:45
「正論は正しい、だが正論を武器にする奴は正しくない。お前が使っているのはどっちだ?」
『図書館戦争』有川浩
今もって自分自身が「正しさ」というものを考えるときの指針になっている言葉。SNSやらで簡単に人を傷つける言葉を書き込める現代こそ意識していきたいが、そういう人達にはこの言葉は届かない。 - 13二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:30:57
かくて、魏は、曹操以来五世、四十六年目で亡んだことになる。――それはまた実に、蜀の滅亡後、わずかに三年目のことだった。
魏蜀を併合して、晋一体となったこの国が、なお呉を余していたのは、呉に間隙がなかったによる。とき呉の孫権もすでに世を去り、次代の孫皓の悪政が、南方各地の暴動を醸すにいたるまでは、長江の嶮と、江東海南の地を占めるこの国の富強と、建業城中の善謀忠武の群臣は、なお多々健在であったといえる。
しかし、敗るるや、急激だった。四世五十二年にわたる呉の国業も、孫皓が半生の暴政によって一朝に滅んだ。――陸路を船路を、北から南へ北から南へと駸々と犯し来れるもののすべてそれは新しき国の名を持つ晋の旗であった。
三国は、晋一国となった。
吉川 英治『三国志』 - 14二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:34:47
「もうすぐ太陽が沈みます。お嬢さんは怖くないのですか?」
「もちろん、怖がったりしませんよ。あしたも太陽が昇ってくるのを知っていますから」
劉慈欣『三体』 - 15二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:39:04
「わたしの名の一つはね」彼女がいった。「ネメシスっていうの」
「ネメシス?それはどういう意味?」
「あなたはご存じのはず」ミス・マープルがいった。「あなたはたいへんりっぱな教育を受けられた婦人です。ネメシスは、たいへん遅れてくることもありますけど、しまいにはちゃんとやってくるものです」
「復讐の女神」アガサ・クリスティー
個人的にミステリで一番かっこいい「犯人はお前だ」発言。 - 16二次元好きの匿名さん25/04/15(火) 23:39:12
「部屋の中に花があり花びらが散ったら、その音まで聞こえそうな夜だった」
(夜の蝉/北村薫)
上記は静謐さの表現なんだけどこれに限らずとにかく北村さんの文章は日本語の美しさ、心の機微の切り取りと情景描写の巧みさが感じられて読んでて自然と背筋を伸ばされる - 17二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 00:22:04
言いかけて、女は呆気にとられたように、馬上の若者を見つめた。
その顔がみるみる薔薇色に染まった。
遠ざかる黒い若者の口元に刻まれた微笑が、自らの浮かばせたものだと、彼女は遂に気付かずに終わったが、幸せな気分は、それからかなり長い間、若者の姿となって、夜ごと夢の中に現れたのであった。
菊地 秀行『夢なりし"D"』
D好きにはお馴染みの微笑だけど、酒樽みたいな中年のオバサンを夢見る少女にしたこれは特に印象深い - 18二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 06:14:19
「小鳩くん、人を何だと思ってるの」
「ご、ごめん」
「そんなの、思ったに決まってるじゃない」
米澤穂信『冬季限定ボンボンショコラ事件』 - 19二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 10:43:02
縁先から吹き込む風は、若葉の匂いを運んでくる。
徳平は家の横で薪を割っているらしく、その音と時折くしゃみの音が聞こえた。
佳代の泣き声は号泣に変った。
さまざまな音を聞きながら、新之丞は茶を啜っている。
藤沢周平『盲目剣谺返し』
『武士の一分』のタイトルで映画化もされてる隠し剣シリーズ最終作となる短編のラストシーン
全てが終わって穏やかに自分の周りを構成する音、つまり盲目の自分にとっての世界を感じている新之丞
この読後感というか余韻がたまらない - 20二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 11:06:18
人が空を飛ぶことを嘘だと否定する口が、どうして空を飛ぶ機械の名前を知っているんだ。
そんな雑な言葉で、俺の夢の火を勝手に消そうとしないでくれ!
こんなに楽しい夢を消されてたまるものか!
『フシノカミ ~辺境から始める文明再生記~』
一度滅んだ文明を復活させるためにあれこれと頑張る話で、主人公の同志になる「飛行機の再現」を夢見る少年の独白 - 21二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 12:06:51
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
夏目漱石『草枕』
日本文学史上屈指の声に出して読みたい日本語 - 22二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 15:35:54
昔、狼というけだものがいたそうだ。でも狼は絶滅した。そういうことになっている
京極夏彦のルー・ガルー
京極作品の中では知名度は高くないけど、この最後の一文は素晴らしい - 23二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 22:25:24
来るってどこから?
想定外の外からだ。
「悪いね」僕は砂時計の最後の数粒が落下する直前、高杉に聞こえるような声をどうにか絞り出す。「俺の弟は、俺よりも結構、元気だよ」
伊坂幸太郎「フーガはユーガ」
たとえどんな瞬間でも決め台詞が決まるところは気持ち良い - 24二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 22:46:15
辻切りのように男遊びがしたいなと思った。ある朝突然に。
少女七竈と七人の可哀想な大人