- 1一般通過弟25/04/16(水) 20:02:44
- 2二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 20:03:53
続き楽しみ
- 3一般通過弟25/04/16(水) 20:04:13
- 4一般通過弟25/04/16(水) 20:26:53
視点:手毬
「手毬さん……ご飯が出来ましたわ。今、行きますわね」
「うん、ありがとう」
付き合ってから、半年。美鈴と会ってから……あの日から、半年が経った。あれ以降私は、ずっと千奈に溺れていく一方だった。千奈がそばにいないと落ち着かない。精神がおかしくなりそう。吐きそう。泣きそう。発狂してしまいそう。
外に出るのが怖い。千奈意外信じられない。怖い。
千奈だけが、信じられる。千奈だけが、私の生きる光。
「そういえば……私達、今日で付き合って半年ですわね」
「うん、そうだね。……ありがとう、千奈。ずっと私のそばにいてくれて」
「お礼を言われるほどの事じゃありませんわ。私が、手毬さんのそばに居たい。だからそばに居る、ただそれだけの話ですもの」
「優しいんだね、千奈は」
「それはきっと、手毬さんだからですわ。きっと……いえ、絶対。手毬さん以外にこんな風にしたいなんて思えませんもの」
あぁ、好き。大好き。千奈のその優しさが、大好き。
私だけを見てほしい。私だけが見ていたい。私だけに優しくして欲しい。私以外、何も要らないって思って欲しい。
「千奈」
「……はい、どうしましたの? 」
「私以外、何もいらない? って聞いたら、千奈は私の事重い女って思う? 」
「いえ、思いませんわ。嬉しいですもの。手毬さんが、私を求めてくださっていることが」
「そっか。……私以外、何もいらない? 」
「……はい。私は、手毬さん以外何もいりませんわ」 - 5一般通過弟25/04/16(水) 20:28:35
今の2人の親愛度
手毬→千奈 dice1d50=25 (25)
千奈→手毬 dice1d50=49 (49)
依存補正+150
150~175 あなたの為なら死んでもいい。あなた以外何もいらない
176~ 殺したいほどに愛してる。あなたは私のモノ
- 6二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 20:31:00
あれこれスレ落ち2時間後になってないか?
- 7二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 20:34:36
- 8一般通過弟25/04/16(水) 20:52:35
「手毬さん。どうかずっと、これからもずっとずっとそばにいて下さいませ」
「……うん、もちろん。千奈も、これからも私のそばにいて。離れないで」
……この半月の間、ずっと私が酷く千奈を求めすぎてしまってた。だからか、千奈も私に沢山依存してくれた。嬉しい。何よりも、嬉しい。私は千奈以外何もいらなくて。千奈は私以外何もいらなくて。その関係が、幸福。
「あ、ごめん。余計な話しちゃった。……ご飯、食べよっか」
「はい、そうですわね。いただきます」
「いただきます。……ん、美味しいよ」
「そう言って貰えて嬉しいですわ! 手毬さんが私の料理をたっくさん気に入ってくださるので……たくさん、やる気が湧いてきますの」
「今まで食べたどんな料理よりも、千奈の料理が一番だよ。……ありがとう、いつもいつも」
部屋の外から出たくない私を気遣って、千奈が料理を始めるようになった。最初の頃はちょっとおぼつかなかったけど、私が段々と千奈がそばにいないとダメになってくにつれて千奈の料理の腕も上達していった。
千奈には、常に私のそばにいて欲しい。でも、料理してる時だけは耐えられる。だって、千奈のご飯は美味しいから。千奈の全てを感じられるから。千奈の愛情が、千奈の温もりが、千奈の血が……その全てが、感じられるから。
「……千奈。腕、大丈夫? 」
「なんにも問題はありませんわ! この程度、痛くなんてないですし……それに。手毬さんに、私の血を貰っていただけるんですもの。もっと、痛みなんて薄れますわ」
「そっか。ありがとう。……千奈、あーん、ってして」
「はい、わかりましたわ」 - 9二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 21:03:36
なんでこの2人も広燐と同じになってるの…しかも手毬の依存度が桁違いだし
- 10二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 21:09:40
しれっと千奈ちゃん、血を料理に混ぜてませんか!?!?
- 11二次元好きの匿名さん25/04/16(水) 21:13:40
なんかどっかで料理に血を混ぜて依存させるみたいなおとぎ話(?)を見た気がする
- 12一般通過弟25/04/16(水) 22:24:42
「手毬さん。あーん、ですわ」
「あーん……うん、美味しい」
「ふふっ、良かったですわ! 」
最初は、ただ千奈に溺れてたい、千奈に逃げてたい、そう思うだけだった。でも、たまに観鈴の夢を見るようになって。それから、日に日にどんどんと深く依存していって。今の私はもう、取り返しのつかないところまできていた。千奈に依存していることだけが、私の生きがいになっていた。
「私のご飯を食べる時の手毬さんの顔、ほんとに可愛くてもっと好きになっちゃいますわ」
「そんな急に言わないでよ……照れるじゃん」
「えへへ、そうやって照れてるところも可愛くて大好きですわ」
千奈は、私にだけ笑ってくれる。私にだけ笑顔を見せてくれる。私以外には、別人のように冷たい目なのに。私にだけ、ずっと変わらない千奈でいてくれてる。それが、なによりもうれしい。
「千奈。私の事、どれくらい好き?」
「どのくらい、ですか。そうですわね」
千奈が、元気にいつも通りに笑う。でも、前みたいな純粋な、太陽みたいな笑顔じゃなくて、例えるなら……金環日食。小さな光を覆い尽くすような大きい闇。まさに、そんな微笑みを私に見せて、千奈は言う。
「殺したいくらいに愛してますわ」 - 13一般通過弟25/04/16(水) 23:15:27
視点変更(重要)
dice1d2=1 (1)
1 広
2 燐羽
- 14二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 05:08:28
重要とわざわざ書く辺りいよいよどっちか或いは両方………
- 15一般通過弟25/04/17(木) 06:13:42
視点:広
……いつからだろう。いつから私は、自分のことがこんなにも分からなくなったんだろう。私は、何が好きだった? 誰といて、何をするのが好きだった?
「おはよう、燐羽……」
「おはよ、広。……あら? もしかして、また眠れなかったのかしら」
「ちょっと……ね」
夢を見た。言葉では表しきれない地獄のような、死んだ方がマシとさえ思えるような、そんな夢。
燐羽が、私の目の前で殺される夢。何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も私の目の前で殺される夢。
夢のはずなのに、燐羽の血の感触が今もずっと残ってる。正直、泣いてしまいそう。
「何か嫌な夢でも見たの? 」
「さすが燐羽。私の事よくわかってる、ね」
「当たり前じゃない。もうずっと一緒にいるのよ? 」
「もう……あれから、一年半も経つんだ」
「そうね……ほんと、あっという間だったわ」
……なんだろう。急に強烈な吐き気が、頭痛が、目眩が……全てが、私に襲いかかってくる。
「りん、は……」
「広! 」
あ、だめだ……これ。 - 16一般通過弟25/04/17(木) 06:29:49
……目を覚ましたら、何も無い真っ暗な世界にいて。そこに、まるで鏡で反射しているような、何もかもが同じのもう一人の私がいた。冷たい表情をして、ただじっとこちらを見つめている。
- 17二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 11:24:33
お、おう……如何なるんや…
- 18二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 14:37:31
この話どうやって閉じるんだろうか...
- 19一般通過弟25/04/17(木) 16:34:24
なんで、私が目の前に……いや、ここはどこ?
燐羽は? ……怖い。燐羽がそばにいない。不安でおかしくなりそう。
「……ね。ここは、どこ? 燐羽は? 」
「ここは、私の夢の中。燐羽は……今、倒れた私のそばにいる」
「あなたは? 」
「私は篠澤広。もう一人の、夢の中のあなた」
じっとこっちを見つめている……もう一人の私に、話しかける。これは、夢……私の夢。あぁ、思い出した。そうだ。私……倒れちゃったんだ。それで、燐羽がずっと私を見守ってくれてる、ってことなのか。
……それよりもなんでだろう。目の前にいる私を見ているだけで、無性に腹が立つ。イライラする。……なんで、だろう。なんでこんなに、嫌悪感がすごいんだろう。
「私。いっこ、質問してもいい? 」
「いいよ。……何? 」
「私は……いつまで、自分に嘘をつき続けてるの? 」
綺麗な琥珀色の瞳を醜く汚くどす黒く染めて、夢の中の私がそっと私に問い詰めてくる。 - 20一般通過弟25/04/17(木) 16:41:57
……私が、嘘をついている? 自分の、気持ちに? 違う。それは、無い。
「違う。それは、嘘。確かに私は何も分からなくなってきてる。でも、それでも燐羽の事を殺したいくらいに愛していて燐羽と堕ちていきたい。それは、ほんと。嘘偽りのない、ほんとの気持ち」
「……それが嘘なんだよ、私。あなたは苦しい気持ちに嘘をつき続けて、そう思い込んで忘れようとした。……逃げただけ。確かに、燐羽の事は大好き。きっと、重すぎるほどに大好き。でも、殺したいほど大好きなんて──」
「……うるさい」
気づいたら、私の手には血塗られたナイフが握られていた。私はそれを、思いっきり夢の中の私へと振りかぶる。
……うるさい。
「思っている訳じゃない。堕ちていきたいっていうのも嘘。そう思うことで──」
うるさい
「苦しみから逃げようとしているだけ。違う? 」
「……図星なんだよね。否定できないんだよね──」
だまって。
だまれ。
「燐羽の方は本気で私と堕ちてもいいって、殺したいほどに愛してるって思ってるのに」
黙れ。黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「そろそろ何か言ったらどう? 」
「……うるさい。早く消えて」
なんで……なんでっ!! なんで、なんで消えないの?
もう、百回は殺した。壊した。首を切った。心臓に突き刺した。真っ二つにした。なのになんで。 - 21一般通過弟25/04/17(木) 17:38:34
なんで、私は消えてくれないの? 何回も何回も殺して、血飛沫を浴びて。手も、足も、髪の毛も、何もかも。全部全部、血で真っ赤に染まっても真の意味で私が消えることは無かった。殺しても、何事も無かったかのようにまた現れる。
「……そろそろ時間みたいだから、お望み通り消えてあげるね」
少しため息をついて、夢の私がそういう。……やっと、やっとこの夢から解放される?
「最後に……」
──このまま、正気に戻っちゃおうよ
ただそれだけを言い残して、夢の中の私は砂のように崩れて消えた。……あれは、一体なんなんだろう。 - 22一般通過弟25/04/17(木) 19:02:04
「……あ、起きたのね、おはよう。何か嫌な夢でも見たのかしら? 叫んでたわよ」
「……すごい、嫌な夢見た。おはよ、燐羽」
……夢から覚める。声の方へ振り向くと、キッチンに立って料理をしている燐羽がいた。
「……無理、しないで頂戴ね」
「うん、してない。燐羽の方こそしないで、ね」
「当たり前よ。する訳ないじゃない。あなたとなら何をしても幸せだもの。例え人を殺したって、ね」
燐羽にそう言われた瞬間に、胸がざわめきだして痛みが走る。……もしかして、本当に……燐羽への気持ちが、薄れたの……? 嫌、それは嫌。それだけは、認めたくない。私はずっと燐羽さえいればいい。燐羽がそばに居てくれたなら、何もいらない。燐羽を殺したいくらいに愛してる。そう、私は……そう。
「……あら、こっちの方に来てもう大丈夫なの? 」
「……………………」
体が、言うことを聞かない。勝手に動き始めてる。足が勝手にキッチンへと進む。手が勝手に棚を開いて包丁を取り出す。……そっか。じゃあ、本当に、そうなんだ。私……燐羽への気持ちが、薄れてきてたんだ。ずっと、辛かったんだ。じゃあ……こんな私、いらない。早く、死んでしまえ。
「だめよ」
「りん、は……? 」
胸の辺りに包丁を持ってきた時、腕が燐羽に掴まれる。
「……私、死ぬならあなたとがいいっていうかあなたと以外嫌なのだけれど……今は、あなたと一緒に生きてたいわ」 - 23一般通過弟25/04/17(木) 19:51:13
「りん、は……」
あれ、なんで……どうして? 涙が、止まらない。
嬉しい。苦しい。痛い。幸せ。死にたい。生きてたい。……私が、わからない。
「何があったか聞かせてくれないかしら? 私、これでもあなたの恋人だもの」
「……うん」
恐怖心を抑えつけて、燐羽にゆっくりと、話す。夢の話。私の本心の話。燐羽が私を愛しているくらいに燐羽の事を愛せていない話。燐羽はそっと、そっと私を抱きしめて最後まで話を聞いてくれた。
「そ。……そんな事があったのね。……それくらいで見捨てるわけないじゃない。別に私は同じ量の愛情を求めてる訳では無いわ。それと……無理させちゃってたのはもうずっとわかってたわよ。あなた、なんにも言ってくれないもの」
「えっと……ごめん」
「……ね、広。明日、久しぶりにデートしない? 」
「うん、いいよ」 - 24一般通過弟25/04/17(木) 19:56:25
……燐羽は、優しいな。こんな私でもずっと受け入れてくれてる。……いいんだ、こんな私で。燐羽と同じであろうとしなくても、いいんだ。
「ありがとう、燐羽。……大好き」
「私もよ。愛してる」 - 25二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 19:57:32
このレスは削除されています
- 26一般通過弟25/04/17(木) 20:00:59
視点変更
dice1d14=2 (2)
- 27二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 20:02:24
スレ主は手毬に好かれてるのか?
- 28二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 20:54:15
「……手毬さん。その、たまには外でデートをしませんか? 」
いつも通りに過ごす日々の中。ふと、千奈が恐る恐る私に聞いてきた。……外でのデート、か。うん、たまには悪くないかもしれない。他の人の目に千奈が着くのは嫌だけど。
「いいよ、行こっか」
「……いいんですの? 」
「他の人に千奈が見られるのは死ぬほど嫌だけど。でも、千奈が私を見てくれるなら」
「もちろんですわ。もちろん、手毬さんだけを見てます」
……いつぶりだろう。千奈と一緒に外に出るのって。
ここ数日、私はずっと私の要望で倉本邸にいた。……というか現在進行形で倉本邸に住んでる。そしてそのまま、ずっと外に出ることはなかった。私も、千奈も、お互いに他の人間に見られるのが嫌だったから。
「久しぶりのお外ですわね、楽しんで参りましょう! 」
「うん、そうだね。……手、離さないでね」
「もちろんですわ。手毬さんも、強く離さないでくださいまし」 - 29一般通過弟25/04/17(木) 21:59:57
ぎゅっと強く、千奈の手を握る。ちっちゃくて可愛い手を。離さないように、死んでも離さないようにぎゅっと。
「……大丈夫? 千奈、痛くない? 」
「はい、全然痛くないですわ。ずっとこのままでいて下さいまし」
「うん、わかった」
「たまにはこうしてただ街を歩くだけ、というのも悪くないですわね」
「そうだね。ずっと千奈の部屋にいてばっかりだったし」
何をする、とかは特に決めてなく、デートと言ってもただの散歩。それでも、ただただ楽しくて幸せで、もっともっと千奈に溺れていく。こんな可愛い子の恋人でいること。それはきっと、生涯何があっても勝る事の無い幸せ。私だけを見てくれる。私だけのものでいてくれる。 - 30二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 22:16:31
ここだけ見ると平和だなぁ…
いやそうでもないか - 31一般通過弟25/04/17(木) 22:31:07
そして、手を繋いで歩いていること数分。
「あれ? 手毬ちゃんと千奈ちゃん? 」
「……姫崎先輩に、有村先輩? 」
「こんなとこで会うなんて奇遇だね」
後ろから、声をかけられる。声がした方を振り向くと、そこには有村先輩と姫崎先輩がいた。……二人なら、まぁ……大丈夫?
「手毬、まぁそう警戒しないでよ。大丈夫、千奈を取ったりするわけじゃないから。ほら」
「それは……手錠、ですの? 」
……私、いつの間にか有村先輩の事睨んでたみたい。
誤解を解くように、有村先輩はその姫崎先輩と手錠で繋がれた腕を見せる。
「うん。もう二度と麻央がどこにも行かないように、私以外の誰かに取られないように、ね」
安心した。なんだ、姫崎先輩も私と同じでもう取り返しのつかないくらい依存しちゃってるんだ。なら、姫崎先輩と有村先輩は安心して話せるな。
「折角こうして会えたのも何かの縁なんだ。ダブルデート……と行かないかい? 折角なら。話しておきたいこともあるしね」
「私は……大丈夫です。千奈は? 」
「私も構いませんわ」 - 32二次元好きの匿名さん25/04/17(木) 23:16:32
なんでこの世界は共依存ばかりなの…?しかも恋人以外は信用できない物凄い束縛だし…
- 33二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 06:01:05
- 34一般通過弟25/04/18(金) 06:16:31
好感度
麻央→莉波
恋人補正70
dice1d50=35 (35)
70~100 普通に愛してる。前回心配させてしまったので否定はせず求められてる分には応えたい
100~ そばにいて、ずっと愛して欲しい
莉波→麻央
dice1d50
補正+150
150~175 あなたは私だけのもの。もう二度と離したりなんてしない
176~ 死ぬなら心中したい
- 35二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 06:16:59
このレスは削除されています
- 36一般通過弟25/04/18(金) 06:17:25
dice1d50=6 (6)
- 37二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 09:09:51
ほ
- 38一般通過弟25/04/18(金) 09:59:38
「そう言ってくれてうれしいよ。ありがとう、千奈ちゃん、手毬ちゃん」
まぁこのまま千奈と二人きりで散歩してるだけでも悪くはなかったんだけど。でも、千奈が一緒でもいいって言うなら、いっか。
「そういえば二人とも、この後の予定は? 」
「えっと……特には考えていませんでしたわ。ただ私たちはお散歩するだけの予定でしたもの」
「だったらさ、カフェにでも行かない? この近くに私がよく行くおすすめのところがあるんだ。そこだったらきっと、話しやすいと思うんだ」
「いいですわね。私は行ってみたいですわ! 手毬さんは、どうでしょう」
「うん、いいよ。千奈が行きたいって言うなら」
「ふふ、それじゃあ決まりだね」
そして私たちは、姫崎先輩おすすめのカフェに向かった。
……途中で話してたんだけど姫崎先輩は以前に有村先輩が死にかけたことがあって、それ以降同じようなことになるのが怖くて有村先輩と自分の腕に手錠をかけて生活しているらしい。有村先輩は特に縛りたいとかはないみたいだけど、その例の話で心配させてしまったから、という理由で手錠をつけることを自分から望んだ、って。
「あ、着いたよ、ここ」
「まぁ。綺麗ですわね」 - 39一般通過弟25/04/18(金) 10:16:09
「……」
「……」
お腹が空いていたので席に着いてすぐに、サンドイッチを頼んだ。そしてそれを食べてるんだけど……
味が、しない。食感も味も匂いも、何もしないし何も感じない。
いつからか千奈が作ってくれるもの以外全部、何も感じなくなった。味も匂いも食感も何もかも全部、千奈が作ってくれるもの以外わからない。これ、美味しいのかな。
ふと前を見たら、姫崎先輩も無言で冷たい目をして、食べていた。もしかして……姫崎先輩も、味覚が?
「もしかして、莉波お姉さまも味を感じないのですか? 」
「……え、千奈ちゃんわかるの? 」
「えっと……私がそうなので。私は、千奈が作ってくれるもの以外何も感じれなくて」
「やっぱりか。莉波も手毬も食べているときの目がそっくりだとおもったけど……」
「私は、手毬ちゃんとは違って完全に味覚がなくなっちゃった」 - 40一般通過弟25/04/18(金) 11:08:11
「麻央が作ってくれたご飯でも、ずっと大好きだったお寿司屋やうどんでも、味がしなくなっちゃったんだ。これも……」
姫崎先輩の表情が、恨みや憎悪に染まる。
「これも全部、広ちゃんと燐羽ちゃんのせい。全部全部全部全部、あの二人のせい。あの二人のせいで、私はっ!! 」
「莉波、落ち着いて。……待たせたね、本題に移ろう。二人に、話さないといけないことがある」
「話さないといけないこと? 」
声を荒げる姫崎先輩を、そっと有村先輩がなだめる。
……私たちに、話さないといけないこと?
「だいぶ前の話になるけど。二人は、もう美鈴にはあったかい? 」
……聞かれたくなかったこと。思い出したくなかったこと。頭に、またあの言葉が聞こえてくる。
「もういいです」
今でもたまに思い出してしまう。言葉にしがたいほど鋭く、凍てついたあの低い声を。
あの時の気持ちがよみがえってくる。呼吸が、乱れる。うまくできない。
「……大丈夫ですわ。手毬さん、落ち着いてくださいませ」
「う、ん。ありがとう、千奈」
「トラウマを掘り返してしまったようだね、すまない」
「手毬ちゃん、大丈夫……? 」 - 41二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 13:37:44
ほしゅ
- 42一般通過弟25/04/18(金) 17:57:32
「……うん、落ち着いた。もう大丈夫。有村先輩、続けてください」
「話を戻そう。美鈴があんな風になったのは」
有村先輩は知ってるんだ、美鈴が何でああなったのか。そういえば……美鈴、ちょっと気になることを言ってたな。確か、
「私が治り次第殺そうとするんでしょう? 」
──りんちゃんの、ように……
「広と、燐羽が原因だ」
「……篠澤さんと賀陽さんが……? 」
「美鈴は、あの二人に階段から突き落とされて……それで、そのせいで重度の人間不信を患ってしまったみたいなんだ。……それから、ボクのこれも」
「あっ、有村先輩!? そ、そんな破廉恥ですわ!! って……な、なんですの、これは」
有村先輩がすっと服をめくって、お腹……いや、背中を見せる。その背中には、見るからに痛々しい刺傷があった。
「この傷は莉波がこうなった事とも関連していてね。これは、燐羽に刺されて出来たものなんだ。おかげで半年近く眠りっぱになっちゃって……だから、莉波は今こんな風になってるんだ」
……え? 燐羽が? じゃ、じゃあ……この一年近く起こってる殺人事件や大きな騒ぎって……全部全部、広と燐羽の仕業……なの?
「……では。星南お姉様を殺したのも、あさり先生を殺したのも、莉波お姉様を自殺未遂まで追い込んだのも、何もかも……全部、篠澤さんと賀陽さんの仕業なんですの……? 」
じゃあ……あの時、リーリヤにあんな酷い脅しをしたのも全部広と燐羽が……? な、なんでそんな事……
「……うん、そうだね。ぜんぶぜんぶぜーーーーーーんぶ、二人のせい。燐羽ちゃんも広ちゃんのせい。……絶対に、許さない」
外を見ていた姫崎先輩が話し始める。……じゃあ前に美鈴と話を聞いた時は、もう既に脅されてたんだ。やっぱりあの時助けてって聞こえたのは間違いじゃなかったんだ。 - 43一般通過弟25/04/18(金) 18:03:09
「あ……ごめん、千奈。千奈以外のことばかり考えちゃって」
「全然大丈夫ですわ。それから、私も、ごめんなさい。手毬さんがいるのに……篠澤さんを、初恋の人の事を考えてしまいましたわ」
……考えてる事は同じ、なんだね。
「踏み込んだことをお聞きしますけれど。……お姉様は、おふたりを恨んでいますか? ……その、どうしたいのですか? 」
もう何度も見た真っ黒な瞳で千奈が姫崎先輩に語り掛ける。それに、姫崎先輩も同じ目で、淡々と無感情で答える。
「……恨んでるよ、かなり。きっとあれで麻央が死んでたら私も殺してたと思う。それで……どうしたい、だったよね」
dice1d3=2 (2)
1 自首させたい
2 目的を知りたい
3 殺したい
- 44一般通過弟25/04/18(金) 18:12:25
「目的を知りたい、かな。……なんであの時会長を殺して埋めて……それから続くように沢山傷つけたのか、それを知りたいかな。今は、それ以外は考えてない」
「……私も、知りたい。燐羽は絶対にそんなことをするような人じゃなかった。……きっと、何かがあって歪んじゃったんだと思う」
……良かった、のかもしれない。まだ完璧に、完全に千奈に溺れてるわけじゃなかった。姫崎先輩の話を聞いて、知りたいって思えた。大丈夫、これからも千奈は死んでも離さないしきっとまたいつものように二人だけの生活に戻るんだ。
「答えによっては……殺す、かな。さっきも言ったけど、私だいぶ恨んでるから」
「今更だけど……二人は思ったより傷ついてないんだね」
「……千奈がいるので。千奈が私を支えてくれる。千奈がそばにいて手を握ってくれる。だから、私はこうしていられるんです」
「私も、手毬さんと同じ理由ですわ。手毬さんが、そばに居てくれる。ただそれだけで、幸せですもの」 - 45二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 19:02:27
莉波は🎲の影響で会長が自殺で、広燐羽が殺した訳では無いの知らないのよな
- 46二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 19:18:28
説得しても無駄だったろうけど、見て見ぬふりした時点で殺したに等しいからな
- 47一般通過弟25/04/18(金) 20:15:25
「そっか。……強いんだね、二人は」
「ただそう見せてるだけかもしれませんわよ? 実際、私としてはだいぶ複雑な気持ちですもの。……まさか、初恋の人が全ての犯人だった、なんて」
「私は……逃げてる、から。燐羽も、美鈴も、私を突き放した。だからそれを千奈で埋めてるだけ。強くなんて、無いですよ」
美鈴と会ったあの日から、ずっとずっと、胸に穴が空いたような気分だった。空虚さを感じていた。一日ずつ、ぐんぐんぐんぐんと広がっていく。空虚さが大きくなっていく。
……逃げたかった。逃げるしかなかった。きっと、そうでもしないと私も直ぐに自分から死んでしまうから。だから、千奈に依存してしまった。こんなにも深く深く依存してしまった。ただ、穴を埋めたくて。
空虚さを満たしたくて。
「ボクはそんなに強くないからさ、羨ましいよ。……今でもずっと、胸が痛い。忘れられないし、信じられない、信じたくない」
「私ね、有村先輩も十分に強いと思いますわ。……信じてた人に裏切られたら、殺されかけたら、そうなるのはきっと当然だと思いますもの。きっと、下手したら愛する人でさえ信じれなくなるかもしれませんわ。でも、お姉様を愛して……もう二度と心配させないようにこうして手錠までしてそばにいる。……それは、強いと思いますわ」 - 48一般通過弟25/04/18(金) 20:27:31
「……そっか。ありがとう、千奈」
……その後はまたいつも通りに戻って、味のしないパンにコーヒーにそれからデザートを食べて、解散した。
「手毬、千奈。なるべく、気をつけて」
「ありがとうございます、有村先輩」
最後に、有村先輩は優しく笑いかけてくれた。ちょっとだけ……姫崎先輩の目が怖くなってたけど、まぁ大丈夫だとは思う。 - 49一般通過弟25/04/18(金) 20:36:48
「千奈……」
それから、また倉本邸の千奈の部屋に戻ってきた。
千奈に、全部話さないとな。私が千奈に逃げてること。千奈で、無理やり心の穴を埋めようとしていること。
「ごめん」
「……き、急にどうしましたの? 」
「ずっと、言いたくても怖くて言えなかったけど……やっぱり言わないといけない気がする」
「よくわかりませんけれど……私は、あなたに何を言われても嫌いになるなんてことはありませんわ。絶対、離したりしないって決めましたもの。……私、一度決めたらなかなか折れないんですのよ? 」
「さっきも言ったけど。私は……ずっと、あなたに逃げてた。ただ、二人が消えた傷をあなたで埋めたかった。弱い自分から、目を逸らしていたかった」
……どうして、この子はこんなに優しいんだろう。こんな私を受け入れてくれるんだろう。
「ずっとずっとずっとずっと、胸に穴が空いてるような感覚がして……苦しかった。そしてそこに、千奈がいた。千奈が彼女になった。……あなたしかいないと思った。あなたじゃないと、私のこの傷は、この穴は、埋められないと思った。……だから私は、純粋にあなたを愛すことが出来ていなかった。……本当に、ごめんなさい」
「手毬さん。顔を、あげてくださいまし。……一人で、ずっと耐え続けてきたんですのね。誰よりも側にいて、でも何も気づけなくて、ごめんなさい。……彼女として、恥ずかしい限りですわ。それから……ありがとうございます」 - 50二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 21:23:02
なんだろう…間違いを犯してない分てまちなが健全に見えてくる
サラダも、正当に裁いた後ならこうなったのかなぁ - 51一般通過弟25/04/18(金) 21:52:24
「私に、話してくれて。私を、手毬さんの役に立たせてくれて。私、言ったでしょう? 何があっても離れませんわ、って。……純粋に愛されたい、だなんて思ってませんわ。それが、汚くても、歪んでいても……大好きなあなたから愛されている。その事実だけでも、罰が当たりそうなくらいに嬉しいですもの」
千奈が、強く私を抱きしめる。私の胸に、自分の顔を埋めて。暖かいな。……いや、ちょっと冷たい。あれ、ちょっと服が濡れてる。もしかして、千奈……泣いてるの?
あ、いや。違う。泣いているのは、私だ。
「ち、な……」
「私、約束してもいいですわ。何があっても手毬さんを愛し続けて、突き放さないって。もし、破るようなことがあれば……私の全てを、手毬さんに差し上げたって構いませんわ。この目も、この口も、耳も、鼻も、胸も、手も、足も……それから、命も」
「なんで……そこまで、優しいの? なんでそこまで、千奈は……暖かいの? 」
「簡単な理由ですわ。私が手毬さんに依存している。ただそれだけの理由です。それから、彼女として彼氏が苦しんでいるところを黙って見逃したくないですもの」
「ねえ、千奈……泣かせて? 」
「はい、わかりましたわ。……どうぞ、この胸をいくらでも濡らしてくださいまし。この胸は、あなただけのものですもの」 - 52一般通過弟25/04/18(金) 22:12:54
そっと千奈が手を離す。そして今度は私が千奈を強く抱き寄せて、その胸に顔を埋める。……もう、止まらない。涙が、どうしても。
「千奈、大好きっ……ほんとに、ほんとに大好きっ……」
「はい、私も大好きですわ。愛しておりますわ」
「ずっと、ずっとずっと怖かった……千奈が純粋に私を愛してくれる度に、胸が痛かった! 何度も思った。私このままでいいのかなって。でも、千奈が離れたらって考えると怖くて怖くて、なかなか言い出せなくて……それで、ずっとずっと、逃げてるだけだった」
千奈が、暖かい手で優しく頭を撫でてくれる。それはまるで、あの日見た夢の……お日様のような、ぽかぽかとした、心癒される暖かさだった。
「そんなの、気にしないでいいですのに。私は、対等な愛を求めてる訳ではありませんもの。さっきも言いましたけれど、私が求めてるのは対等な愛ではなくてあなたからの愛ですから。例え、逃げてたって、心を埋めるための道具に過ぎなくたって、構いませんわ。だって……こうして、私を愛してくれてるじゃないですか」
……改めて思った。私には、あなたしかいないって。こんなに弱い私を見せたいって思えるのも、受け止めてくれるのも、その暖かさが嬉しいのも、全部全部千奈だけ。千奈が好き。その優しさが、暖かさが、元気が、笑顔が、所作が……その全てが、だいすき。
「ありがとう、千奈。……これからもずっと、愛してる」
「私もずっとずっといつまでも、愛していますわ」
もう、何回目かも分からない千奈とのキス。でも、一回一回幸せが溢れて、頭がとろけてしまいそうになる。……大好き。愛してる。
……気づいた時にはもう、私の涙は止まっていて。窓に映った私は、とても幸せそうに笑っていた。 - 53一般通過弟25/04/18(金) 22:13:57
視点変更
dice1d14=3 (3)
- 54二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 22:19:10
もうてまちなとことさきを書けってダイス神が言ってるなこれ
- 55一般通過弟25/04/18(金) 22:29:46
スレ主です、恐らく次りんひろのどちらかが来たら限りなく終わり近くになるか終わりまで持ってきます
- 56一般通過弟25/04/18(金) 22:30:06
裏を返せばりんひろ来ない限りエンドレスで続きます
- 57二次元好きの匿名さん25/04/18(金) 22:45:09
頼んだダイス神!
- 58二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 05:46:04
ほ
- 59一般通過弟25/04/19(土) 09:41:00
視点:ことね
「ことね。明日って空いてるわよね」
「おう、ちょうどライブ後でなかったはずだぞ~……どしたん? 」
「その……デート、しましょう? 」
あーもうなんなんだ!! なんでこんなに可愛いんだこいつぅ! そんな顔赤らめて上目遣いされたら断れないじゃん! 断るつもりないけど!!
「……あたしが咲季の誘いを断るわけないじゃん。んで、どこ行きたい? 」
「ひひっ、ありがとうことね! どこ行くかならもう決めてるわ、水族館よ!! 」
「水族館な、りょーかい。んじゃ準備するわ」
水族館か……久しぶりだなぁ。最後に行ったのっていつだっけ。確か、家族全員で行ったきりだから六年ぶりとかか。嬉しいな、咲季と行けるの。 - 60一般通過弟25/04/19(土) 10:23:16
「よし、準備オーケー。ことねちゃんいつでも行けるぞ~」
「えっと……その、ことね」
十分ほどして準備が終わり、さあ行こうとなった時。
咲季がまた顔を赤らめて、恥ずかしそうにもじもじしだした。……あ、咲季がこうなる時って大抵あたしも死ぬやつだ。……何要求されんだろ、今度は
「き、……キス、しましょう? したく、なっちゃったから」
「……咲季。ずるすぎるっての」
「むぐっ……」
なーんでデート前にこんなこと言うんだこいつぅ……しかも多分これ今までで一番恥ずかしそうにしてるし! あれだけあっさり告白OKした癖に可愛すぎるだろ!!
「ぷはっ……ちょ、ちょっと」
あーだめだこれ止まれない……ほんっとあたしもダメだな、咲季の前だとすぐに理性が飛ぶんだから。
「咲季が悪いんだからな……そんな可愛い表情で誘ってきて」
「ここまでするとは思ってなかったもの」
「でも、満足なんだろ? 」
「……ええ、そうね。大満足よ。それじゃあ改めて出発しましょうか! 」 - 61一般通過弟25/04/19(土) 10:53:27
……やばい。朝からドキドキしすぎて水族館来るまで話してたことなーんも覚えてない。ちょっとあたしってば……咲季の事好きすぎるでしょ
「ことね、さっきからずっと顔赤いわよ? 」
「……ずっと、咲季の事考えてたからな」
「ことねって、私の事好きすぎるわよね」
「な、なら咲季だってあたしのこと好きすぎるだろ! 」
「ええそうよ、大好き」
くっこの……普段凄い恥ずかしがり屋で照れ屋で可愛いのにあたしがそうなってる時ばっかり強気になってきやがってぇ!! そういうとこ大好きだよ!!!!
「なんでそーいう事どストレートに言えるかな……恥ずかしくないの? あたし、咲季に何か言う時いつも恥ずかしいけど」
「恥ずかしくなかったらさっきみたいな事になってないわよ……ばか」
「んじゃ、お互い様だな。良かった良かった、あたしだけじゃなくて。……あ、咲季。あたしクラゲ見に行きたい」
「いいわね。早速、行きましょうか」 - 62一般通過弟25/04/19(土) 13:26:42
「……綺麗だな、咲季」
「ええ、そうね。……とっても、綺麗」
綺麗な空色に輝いてぷかぷかと漂っているそれを、咲季と一緒に見つめる。……久しぶりに見たけど、部屋の明るさもあってやっぱクラゲって綺麗なんだよな。
……ていうか、クラゲに見惚れている咲季が可愛すぎる。
「咲季は好きなの?クラゲとか」
「幼い頃にね、佑芽と見たことがあるのよ。それがとても綺麗で……つい、思い出したの。ことねは? 」
「あたしもそんな感じだよ。お父さんが、まだ家に居た時。水族館に連れて行ってくれてさ。ちびどもと一緒に、お月様みたいだとか、私もあんなふうに綺麗になりたいだとか話してた」
「不思議ね。佑芽と見たあの時よりも、ずっと綺麗に見えるわ。まるで、宝石みたい。綺麗で、神秘的で……何よりも美しい。これはきっと、ことねがいてくれるからね」
大好きな咲季がそばに居てくれるから、違って……より綺麗に見える。なんて、恋愛漫画かっての。なんて、前までなら思ってたろうな。
「あたしも。咲季が、こうしてそばに居てくれるから……ちびどもと見た時よりもずっとずっと、百倍も千倍も綺麗に見える。きっと、一生忘れないだろうな。今日の、この輝きは」
「……死んでも、忘れたりなんてしない。一これだけじゃないわ。あなたとの思い出は、どれもこれも全部覚えてる。どれだけ増えても、絶対に何ひとつとして埋もれたりなんてしないもの」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん。あたしも、ちゃんと全部覚えてるよ。……さ、次はどこ行こっか」
「それじゃあ少しゆっくり回ってみないかしら」
「そーするかぁ。……咲季、手を離すなよ」
「当たり前じゃない。嫌と言っても離さないわ」
「嫌なんて言うわけないだろ、このあたしが」 - 63一般通過弟25/04/19(土) 14:48:56
「あっ、午後からイルカショーがあるみたいね! 見に行きましょう! 」
「はいよ、イルカショーね」
咲季、だいぶテンション上がってるな。……色々見て回ってるけど、沢山驚いて、興奮して……なんだか、子供みたいで可愛い。咲季っていつもの頼れるイメージしかないから、尚更だな。
「ことね、楽しい? 」
「もちろん。咲季と一緒ならどこに行ったってつまらないことなんてないよ。冗談抜きでナ」
「ふふっ、なら良かったわ。私も、沢山楽しんでいるわよ! ねぇ、ちょっとはしゃぎすぎちゃってないかしら? 私」
「そんな言うほどはしゃいではないよ。むしろ今の咲季は、初めて来た子供みたいで可愛い」
「……そう。ことねだって、我慢ばっかりしてなくてはしゃいでもいいのよ? 」
「あたしはいいかな~、世界一可愛い咲季ちゃんの姿をしっかりこの目に焼きつけることに必死なんでぇ~」
あたしも大概人のこと言えないけど、咲季ってすぐに顔に出るから分かりやすくて可愛いんだよなぁ。今も、ぷくっと頬を膨らませて照れてるし。……あーもうほんっと可愛いな。 - 64一般通過弟25/04/19(土) 16:05:46
あっという間にイルカショーの時間になり、あたし達は屋外のステージに来た。んだけど……
「ねえ、ことね。これって、あなたの曲よね」
「……そう、だな。『yellow big bang!』だな……」
ショーで流れてる音楽が、まさかのあたしの曲だった。……もどかしいとか思ってたけど大事なんだな、変装って。きっとお忍びデートじゃなかったら今頃イルカショーどころの騒ぎじゃなくなってるだろうなぁ。自画自賛になるけど……最近割とあたし達の人気すごいしー?
「それじゃあショーのお手伝いしてくれるお友達~? はーい! 」
「ことね、行ってみてもいいかしら? 」
「……ま、たまにはいいか」
「ひひっ、ありがと! 」
「じゃあそこの……赤髪のお姉さん! 」
いやいやまさか……なんでピンポイントで咲季当てるんだよ!! もしやあのお姉さん、あたし達の事に気づいてるんじゃねーだろうな!?
「行ってくるわ、ことね」
「お名前を教えてください! 」
「……いいかしらー!! 」
「はぁ……好きにしろー!! 」
「許可が降りたわ! 私は……花海咲季! 未来の、トップアイドルよ! 」
まぁ案の定会場内は大騒ぎ。……もうこうなりゃやけだと思って許可したけど。あれこれ、あたしもバレるんじゃ!?
「さ、咲季ちゃん!? ってことはそっちにいるお姉さんは……」
「ど、ども~……藤田ことねちゃんでーっす」
会場が、まるで油が注がれた火のようによりいっそうと盛り上がる。……いや、まぁ……そうなるよね。
なんだかんだ言ってあたし達、名の知れたカップルアイドルだし。こういうとこ来る時は絶対咲季とあたしは一緒だし。 - 65二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:07:00
ほ
- 66二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:43:13
平和だなあ…(いろんなものから目を逸らしつつ)
- 67一般通過弟25/04/19(土) 21:49:49
「ねえあなた、折角ならことねも呼んでもいいかしら? 」
「え? は、はい」
「そーいう訳だからことね、こっちにいらっしゃい! 」
「ぜっっっったいそうなると思ったよ!! ちくしょー!! 」
でも……ちっさい頃、イルカショーのアシスタントって憧れてたんだよな。人生で一回は経験したいと思ってた。それが、まさか咲季と一緒に経験できるなんて。大好きな、咲季と一緒に。
「あっ! きらまる君もやる気満々見たいですよ! それでは早速……」
イルカにはきらまるくんとほしまるちゃんって名前がつけられているらしい。きらまるくんが高々と鳴き、ものすごい速度で泳ぎ回る。……まさかあたし達に反応して、なのか。
「この輪っかを、空に投げていただけますか? 」
「ええ、わかったわ! 」
「咲季……やりすぎるなよ? これは砲丸投げじゃねーんだから」
「わかってるわ。それじゃきらまる、ほしまる……行くわよ! 」 - 68一般通過弟25/04/19(土) 22:37:50
「すぅぅぅぅぅ……」
投げる寸前に、咲季の目付きが変わる。若干鋭くなって……誰が見てもわかる、まさしく真剣な表情になる。
「そこよっ!! 」
……すごい、かっこいい。今の咲季の顔が、凄いかっこよかった。思い切り高く投げる咲季がかっこよかった。……ってぇ!
「ちょっと強く投げすぎだおバカぁ! 」
「えっうそ、だいぶ手を抜いたつもりなのだけど」
手を抜いた上であんな遥か高く投げれんのかよ……えぇ、世界一愛してる我が彼氏ながらバケモンじゃん。
「え」
輪っかが降りてくる直前、爆速で二匹揃って走り出し、きらまるくんがほしまるちゃんを尻尾で叩いて飛んで加えた。……え、イルカってこんなこと出来るの? - 69二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 05:36:48
ほ
- 70一般通過弟25/04/20(日) 09:24:09
「え、ぇぇぇぇぇぇ!? な、なんと二人が力を合わせて、キャッチしちゃいました~!! 」
「へえ……なかなかやるじゃない! きらまる、ほしまる、気に入ったわ! 」
「協力してくれた咲季お姉さんと、コンビネーションで無事キャッチしたきらまるくんほしまるちゃんに大きな拍手~!! 」
今までに聞いたことない量の大きな拍手が咲季に向けてあびせられる。……やっぱすごいな、咲季は。あたしの、世界一大好きでかっこいい彼氏で、あたしの……憧れ。
「折角ですし……ことねちゃんも投げてみます? 」
「じゃあ……折角なので、やらせてもらってもいいですかね」
「はい! ぜひぜひ! 」
「あら、ことねもやるのね。ふふ、勝負しましょ! 」
「ぜっったいやだ! 勝てるかっての!! 」
相変わらずの戦闘狂だなぁ。とりあえず、やれるだけやってみるかぁ。
「そいじゃ……とってこーーーーい!!!! 」
力を込めて思いっきり投げる。そしたら咲季までとはいかなくても、だいぶ飛んでくれた。……けど。
「うわっわっ……ちょちょ!? 」
「ことね!? 」
「えっ咲季ちゃん!? 」
バランスを崩して、水槽の方に落ちてしまった。うわ……冷た~~。ただでさえ今冬に成り代わろうとしてんのにまーじ最悪なんですけど!! てかどうしよう、あたし泳げないんだけど!!
「……大丈夫かしら、ことね」
「咲季……? 」 - 71一般通過弟25/04/20(日) 10:05:04
あたふたしていた次の瞬間には、もう咲季に抱き抱えられていた。……えっ、この数秒であたしのとこ来たの? ……咲季もすごい濡れちゃってるじゃん。
「……はぁ、負けだよ。あたしの負け」
「何が負けなの? 勝負なんてしてないはずだけど」
「いや、あれはあたしなりに咲季の勝負に乗ったつもりだったんだよ」
「あらそう。じゃあ、私の勝ちね! 」
「……という訳で! まさかまさかの咲季ちゃんとことねちゃんがお手伝いしてくれました! 二人にもう一回盛大な拍手~~!! 」
だ、ダメだ。……いつもだけど咲季がかっこよすぎて死んじゃいそう……くぅ! あたしだってもっとドキドキさせたいのに!
「ことね。……これ、着なさい」
ショーも終わってまた中の方に戻ってきたら、すぐに咲季が自分が来てたジャケットをあたしの方に渡してきた。
「え? いやいや、咲季も濡れてるっしょ」
「私が、着て欲しいのよ。その……今のことね、可愛すぎるから……私だけ見ていたいもの」
「ひひ~っ、そっかそっかぁ。それじゃあ有難く着させてもらおうかなぁ? 」
……とかウッキウキで咲季の事をおちょくっている反面、今にもドキドキしすぎて死んでしまいそう。え、大丈夫だよな……これ、あたしの心臓の鼓動咲季に聞こえてないよな!? 聞こえてたら恥ずかしくて死んじゃうんだけど??
「……あら、似合ってるじゃない」
「そ、そか? ……ありがと。じゃあ今度……同じの買うよ」
「ほんと!? お揃いコーデってやつよね! 一度やってみたかったの! 」
「……奇遇だな。あたしも、ちょうどやってみたかった」
「それじゃあ明日にでも買いに行く? 」
「早すぎる気がするけど……まいっか。いいよ、行こ」
やった。明日も、また咲季とデートができるんだ。
そういえば咲季は、どれくらい幸せなんだろう。あたしは、どれくらい幸せにできてるんだろう。……や、ちょっと流石に重いか? ……まいっか。聞いてみよ。 - 72一般通過弟25/04/20(日) 10:05:42
視点変更
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※咲季、ことねは+1
- 73二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 10:44:25
手毬好きだな…
- 74二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 10:45:44
ダイススレでここまで手毬引き当てる人初めて見たかもしれん
- 75一般通過弟25/04/20(日) 12:02:21
視点:手毬
……夢を見た。絶え間なく続く、苦痛のような夢を。
「あれ。ここどこ? ……はっ、千奈は!? 千奈はどこ!? 」
目が覚めたら何も無い真っ暗な世界にいて。……辺りを見渡しても、千奈がいなくて。どうしよう、どうしよう……千奈がいない!!
「……あら手毬。どうしたの? そんなに声を荒らげて」
「りん、は……っ、よくもぬけぬけと顔を出すことができるよね、人を殺しておきながら……私から沢山奪っておきながら」
立ち尽くしていたら、こつ、こつ……と足音が聞こえて、そこに燐羽が現れた。……なんで、ここに燐羽が……。じゃなくて、それよりも……なんで、私の前に現れた?
「そう睨まないでちょうだい。せっかくの再開なのよ? ……それに、私もあなたと同じ。広がいないと生きていけないの。だから、私にとっては広のすることが全部正解」
「わざわざその為に何人も命を奪って、自殺未遂まで追い込んで、笑顔も味覚も何もかも奪ったっていうの? 」
「じゃあ手毬……あなたは、もし千奈が人を殺したらどうする? 隠蔽する?付き添う? 」
そうなった場合の私の答えは決まってる。ずっと前から。私の、望んでること。千奈を殺して、千奈と死ぬ。それか、千奈に殺されて千奈と死ぬ。
「私はそうなったら、心中するよ。誰にも迷惑をかけなくていいから」
「そう。でも残念ね、手毬。もうそれは出来ないわ」
「は? 何言って……」
え
……え?
「燐羽……その手に持ってるものは何」 - 76一般通過弟25/04/20(日) 12:56:58
「何って……言わなくてもわかるでしょう? あなたがだぁぁぁぁい好きな、千奈の首よ」
「千奈を、殺したの……? 」
「えぇ。あの子にも、気づかれてしまったもの」
……燐羽が手に持っているのは、千奈の首。その顔は血だらけになって、白目を向いている、紛れもない千奈の顔。……ふざ、けるな
「ふざけないで!!!! 千奈を、千奈を返して!! 」
「無理な話ね。私は神ではないもの。死んだ人間を生き返らせるなんてことはできないわ」
……あれ、私いつの間にナイフなんて持ってたんだろ。まぁ……いいや。
「じゃあここで死んで」
「てま……」
燐羽が何か言いかけた途中で、燐羽を切り裂く。そしたら燐羽は砂のようにさらさらと地面に落ちていった。 - 77一般通過弟25/04/20(日) 14:13:27
燐羽は消えて、ただ目の前には千奈の首が転がっている状態だった。……怖い、気持ち悪い、苦しい、痛い……。
「…………」
「ち、な……? 嘘、だよね。笑って……また、前みたいに優しい笑顔を、私に見せて……」
どれだけ喋りかけても、目の前の千奈は笑わないし喋りもしない。ただ、白目を向いてこちらを見つめているだけ。……胸が痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
胸を、ナイフで、槍で抉られているような気分。どんどんどんどん深く深く奥に刺さっていく。
……お願い、誰か。これを、夢だと言って。これを、悪夢だと言って。夢なら覚めて!
「あ……そっか。最初から、そうすればよかったんだ」
これが……これが夢なら、きっと私が死んだら覚めるはずだよね。
私はそっとナイフを手に取り、自分の首に持っていき……思い切り、腕を横に振った - 78一般通過弟25/04/20(日) 14:57:52
「っ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「手毬さん!! 落ち着いてくださいませ!!!! 」
「っえ、ち……な……? 」
「手毬さん、随分と魘されてるようでしたけど……もしかして、悪夢でも見られてましたの? 」
「…………うん。酷い、悪夢を見たよ。ごめん、トイレ行ってくる」
千奈が、強く私を抱きしめて、それで目が覚める。……良かった、夢だったんだ。
……凄い、吐きたい。ただ一言喋っただけでも吐いてしまいそうなくらいの、強烈な吐き気が襲ってきた。
……良かった。本当に、夢でよかった。
「……手毬さん、もう大丈夫ですの? 」
「うん、ごめん。もう、大丈夫だよ」
「なら、良かったですわ。……どんな夢を見たか、聞いてもよろしいでしょうか」
「いいよ。……まず、目覚めたら私は知らないところにいて」
それから、千奈に沢山話した。あの夢の話を。吐きそうになる気持ちをこらえて。何故か、話したいって思えたから。
「そう、でしたのね。……そんな、夢を」
「そんな顔、しないでよ。もう終わった夢の話なんだから」
「……大丈夫ですわ、手毬さん。私、何があってもあなたを残して先に死んだりなんてしません。何度も言っておりますように……死ぬ時は、一緒ですわ」
「ありがとう、千奈。私も……死ぬ時は一緒がいい」 - 79一般通過弟25/04/20(日) 14:58:57
どうせまたすぐ来るだろうから視点変更
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- 80一般通過弟25/04/20(日) 15:23:01
「おはよ、リーリヤ」
「おはよう、清夏ちゃん」
あの日から、一年近くが経った。あれから何故か脅しが急に止まって……おかげで、前までよりかは安心して平和に過ごせてる。そして清夏ちゃんとも一緒にいれる。だけど……私は、笑えなくなった。どれだけ笑ってみようとしてもダメで、作り笑いすら上手くできない。そんな状況だった。
「今日は何しよっか、リーリヤ」
「清夏ちゃんのしたいことでいいよ」
「おっけー。……それにしてもあれからもう一年半くらいかぁ」
「そうだね、あっという間だね」
「あ、ごめんね。思い出させちゃった? 」
「ううん、全然だよ」
遡って一年前。あの脅しを受けてから、ずっと私は清夏ちゃんを避けてきた。 - 81一般通過弟25/04/20(日) 16:13:33
避けて、避けて、避けて、避けて……ずっと避け続けて、それから半年近く経った時。清夏ちゃんに、呼び出された。
「リーリヤ……なんで、あたしのこと避けるの? あたし、何かしちゃった? 」
「ううん、清夏ちゃんは何でもしてないよ。……それから、嫌いになった訳でもない」
「じゃあ、なんで」
「……ごめん。それは、言えない。清夏ちゃんを、守る為にも」
「あたしを、守る為……」
「清夏ちゃん……離してよ」
「ごめんけど、リーリヤが話してくれるまではあたし、絶対に離さないから。なんで、リーリヤがあたしの事を避けるのか」
……初めて、こんな本気になってる清夏ちゃんを見た。話したい、って思った。でも、尚更話したくないって思った。怖いから。きっと、話したら清夏ちゃんが狙われちゃうから。
「……あたしの目を見て、リーリヤ。あたし、本気だよ」
「っ……」
「信じて、あたしを。あたしは、何があってもリーリヤから離れたりなんてしない。だから……リーリヤも、教えてよ。あたしから、離れないで」
「怖いよ……怖い、よぉ……」
清夏ちゃんの目をじっと見つめる。吸い込まれるようで……それで、今まで作ってきた自分が一気に壊れて本心をさらけ出してしまった。涙が、溢れ出てくる。怖いけど……言わないと。
「脅されてたから……話しちゃったら、清夏ちゃんが殺されちゃうから……」
「脅され……誰に? もしかしてだけど……ここ数日起こってる騒ぎの犯人? 」
ゆっくり小さく、頷く。
「……へぇ。誰かに正体をばらしたらあたしを殺すって脅されてたんだ。……いいよ、あたし」
「え? 」
「それで、リーリヤが苦しむくらいなら別にあたし殺されたっていい」 - 82一般通過弟25/04/20(日) 23:03:46
「違う、違うよ清夏ちゃん! わたしは、清夏ちゃんが殺されたくないから……危険な目にあって欲しくないから避けてたの! 」
「でもね、リーリヤ。ここ最近……あたしを避け始めてからのリーリヤ、とっても苦しそうだよ。ずっと、自分の心に嘘をついて……まるで、前までのあたしと同じみたい」
……そうなんだ。私、隠せてなかったんだ。辛い、本当はこんなことしたくない、って。
「だったら……いつ殺されてもいいから、あたしはリーリヤのそばに居たい。きっと、ほんの数日かもしれない。明日殺されるかもしれない。……でも、それでもあたしはリーリヤのそばに居たい」
「清夏ちゃんが死ぬほうがずっとずっと苦しいよ……だから、これでいいんだよ……これで、いいん、だよ……」
「正直に言うね、リーリヤ。……あたしは、死ぬつもりも殺されるつもりもない。だから、リーリヤのそばに居たい。絶対死なない。絶対いなくならない。だから、あたしはリーリヤのそばに居たい。避けて欲しくなんて、無い」
そっと、あたしを抱きしめて清夏ちゃんが震えた声で言う。……清夏ちゃんも、泣きそうなの?
……なんで。なんで、こんなに清夏ちゃんの言葉は安心感があるんだろう。言いたい。一緒にいて、って。これからもずっと一緒だよ、って言いたい。でも……やっぱり、怖い。
「だからお願い。あたしの、そばにいて。あたしを、そばにいさせて。もう、そんな辛い顔なんてしないで」
「清夏、ちゃん……うん、うんっ! 私も、ずっとずっとそばにいたい! 」
辛い顔なんてしないで。その一言で、我慢してきた全てが決壊して、気持ちが溢れだしてくる。もっと、涙が止まらなくなって。清夏ちゃんに思いっきり泣きついていた。清夏ちゃんはずっと頭を撫でてくれて。話を聞いてくれて。私が、泣き止むまでそばにいてくれた。
「じゃあ決まりっしょ。これからまた二人だね」
「うん! ごめんね、避けるようなことしちゃって」
「いいのいいの。今こうして、一緒に入れるんだから。呼び止めちゃってごめんね。さ、寮戻ろー」 - 83一般通過弟25/04/21(月) 00:01:33
そして今。繰り返すけどあれから脅しは止まって、こうして清夏ちゃんも無事に生きててくれて、安心して過ごせてる。……笑えないけど。
「じゃそうだなぁ。リーリヤ、ゲーセン行こ! 」
「ゲームセンターだね、わかった。今、準備するね」
「うん! 待ってるね」
なんで、笑えなくなったのかは分からない。ある日突然に、ありとあらゆる全部に笑えなくなった。大好きなアニメでも、漫才でも、清夏ちゃんと一緒に遊んでる時でも。
「さ、行こっか。……服選んでくれてありがと、清夏ちゃん」
「全然だよ。やっぱりあたしのチョイスに間違いはなかったね、可愛いよリーリヤ」
「もう……清夏ちゃん? 」
こうして照れたり怒ったりなら出来るんだけど……なんでなんだろう。 - 84二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 05:59:30
ほ
- 85一般通過弟25/04/21(月) 06:19:59
「着いた着いた~、さ、まずは何から遊びたい? リーリヤ! 」
「じゃあ……まずはシルヴェスタからやりたいな」
「相変わらず初手で格ゲー……よーし、今日こそは負けないよ! 」
やっぱまずこれだよね。折角清夏ちゃんが私のしたいものをしようって言ってくれてるんだから。……結果はまたいつも通りの圧勝だった。
「負けっぱっていうのも悔しいし、リーリヤ! あたしとダンス勝負しよ! 」
「ダンス勝負……うん、いいよ」
清夏ちゃんのスイッチが入ったのか、次に清夏ちゃんは清夏ちゃんが一番得意とするダンスで勝負を挑んできた。……言い訳のしようがないくらいの完敗だった。
「あれ? リーリヤ、あれってつむじちゃんじゃない? 」
「え? …………あっ!!!!!!」
色々と歩いていたら、突然清夏ちゃんがそう言って指を指す。指の先を見ると、まだ私もゲット出来てなかったつむじちゃんの限定フィギュアがあった。
「なんでこんな所に!? 通販とかアニメのお店でも基本売ってないのに!! 」
「おっ、急にテンション上がるねえ」 - 86二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 11:21:04
平和だなぁ…(所々の発言を気にしない)
- 87二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 11:21:20
ほ
- 88二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 14:48:51
ほ
- 89一般通過弟25/04/21(月) 18:14:13
「ねえ清夏ちゃん、あれやってもいいかな!? 」
「うん、いいよ。てか、少しでもリーリヤに楽しんでもらうためのデートだしね~」
「ありがとう、清夏ちゃん!! 早くしないと取られちゃう! 」
……きっと、こんなふうな会話でも私は笑えてないんだろうな。人の顔は鏡じゃない。だから、自分がどんな顔をしているのか分からない。……けど、わかる。今の私は、全く笑えてない。ただ元気に振る舞っているだけで、笑顔なんて微塵もない。
「あっ、またダメだった。それじゃ……」
「ね、リーリヤ。あたしにもやらせてくんない? 一発で取るからさ」
「え? うん……」
「リーリヤがいい調整してくれたおかげだね。ほら、ここをこうして……取れた」
「わぁ……ありがとう、清夏ちゃん! 」
「……うん! 喜んでもらえて何よりだよ」
……前からずっと。私が、喜んでる風に振る舞うと清夏ちゃんの表情が少しだけ曇る。なんとも言えない表情になる。でも、わかるのは苦しそうだということ。
「清夏ちゃん、どうしたの? 」
「えーっと……こういうこと言ったら、リーリヤに失礼なんだけど。どうしても、頭に前の笑顔のリーリヤがチラついちゃって」
「そっ、か……ごめんね、清夏ちゃん。私のためにいっぱいしてくれてるのに」
「あーいや、いいんだって! そうすぐ治るものじゃないって言うのもわかってるし。それにさっきも言ったけど、リーリヤだって治そうとしてくれてるんでしょ? だったら、謝らなくていーの」
清夏ちゃんが慌てて慰めてくれる。……優しいな、清夏ちゃんは。それから、安心できる。清夏ちゃんなら絶対に、私のそばにいてくれるんだって。……好き、だなぁ。 - 90一般通過弟25/04/21(月) 20:31:43
「見てこのリーリヤ! ちょー盛れたくない!? 」
「ちょ、ちょっと派手すぎないかな……」
「いいのいいの! 結局リーリヤは可愛いんだし! 」
「それ、理由になってなくない……? 」
あの後、最後にプリクラを撮って……それで、今は帰り道。なんでだろう。ずっと、胸が暖かい。笑えないはずなのに、まるで満面の笑みでいるかのような気分。
「……今日はありがとね、清夏ちゃん。たくさん、楽しめた」
「楽しんでくれて何よりだよ。また、行こ。何回でも」
「うん! 」
ゆっくり、寮に向けて足を進める……途中で、清夏ちゃんが足を止めて、私の方をじっと見つめる。あの時みたいな、真剣な顔で。
「なぁんて。今日のデートはただの口実作りだったりしてね。ね、リーリヤ。どうしても、伝えたいことがあるんだ」
「……? どうしたの? 清夏ちゃん」
「好きだよ、リーリヤ。大好き」 - 91一般通過弟25/04/21(月) 20:32:25
「えっ」
時間が止まったように感じた。。鳥の鳴き声、歩く人々の声、信号の音、風の吹く音……全てが、聞こえなくなって。風だけが、私の髪をそっと吹いていた。
清夏ちゃんが、私の事を……
「だから……あたしを、彼氏にしてくださいっ! 」
そっと、清夏ちゃんが私に手を差し出す。
「は……」
はい、喜んで。そう、言おうとした時。その清夏ちゃんの差し出した手が、私の口をそっと抑える。
「約束ね、リーリヤ。あたし、別に何年でも何十年でも待つよ。だから……YesでもNoでも、この返事は"笑って"答えてよ。もちろん心からの笑顔で、ね? 」
夕陽に染まるその顔が、にこっと私に優しく笑いかける。……待ってて、くれるんだね、清夏ちゃん。私がまた笑えるようになるまで、ずっとそばに居てくれるんだ。……そういうとこ、私大好きだよ。
「……はい、喜んで」
「約束だよ? さ、それじゃ戻ろっか」
「うん、そうだね」 - 92一般通過弟25/04/21(月) 20:34:38
視点変更
dice1d14=1 (1)
- 93二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 20:49:32
この人手毬と咲季に好かれすぎてるでしょ。
名前的に莉波Pだろうけど死体発見以外で出てきてねぇぞ - 94二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 20:52:33
このレスは削除されています
- 95二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 21:05:37
スレ主の推し=お姉ちゃん
ダイス神の推し=てまちなとことさき - 96一般通過弟(?)25/04/21(月) 21:44:50
「ん、んん……まぶ、し……」
「……ほんとおまえ可愛いな。一生、あたしが死ぬまでずっと……愛してるよ、咲季。あたしを選んでくれて、ありがと」
「こ、とね……?」
「うわぁ!?!?!? 」
……あら、私とした事が寝すぎてしまったみたいね。
朝日に包まれて目を覚ます。そして目の前には目を大きく開けて驚くことねがいた。……じゃあ。あの、さっきことねが言ってたことって……夢じゃ、ないの!?
「お、おはよぉ……咲季」
「……おはよう、ことね」
「なぁ……もしかしてだけどさっきのって、聞いた……? 」
こくりと、ことねに顔を見られないように俯いて頷く。……わ、私って今どんな顔してるのかしら?
「そ、そか……」
「そ、それよりも! 今日は温泉に行くんでしょう? なら早く行くわよ」
「ん、そだな。つっても咲季待ちだけど」
「悪かったわね……早く準備するから、待ってなさい」 - 97一般通過弟(?)25/04/21(月) 23:00:28
「と、ここだな。……おー、めちゃ広いじゃん」
「確か倉本家保有の温泉なのよね、前に佑芽が教えてくれたわ」
「確かこの山自体も倉本の別荘だったよな……改めて千奈ちゃんの財力やっばぁ……」
「この初星温泉、割と前からできてたのだけれど何気に来たことは無かったものね」
この前ことねと疲れが溜まりすぎてる、という話をしていたのでたまたま存在を認知していた初星温泉に行くことにした。……確か温泉に和菓子にマッサージもあったのよね。
「……あれ、咲季にことね? 」
「あら、手毬に千奈じゃない! 」
「おっすー、二人は今上がってきたとこ? 」
「はい、そうですわ! とーっても、スッキリしましたわぁ」
早速受け付けをしようとロビーに行く。そこで、手毬から声をかけられた。……そういえばそうね。ここは倉本家運営だもの。千奈と手毬が二人で入っていても何ら変わりはないわね
「……手毬、変わったな。前よりもあたし達を見る目が優しくなってる」
「まぁ、その……色々あったから。あの時は、ごめん、ほんとに」
「いいのよ、気にしてないし」
一時期の手毬はほんっとに酷かった。横を通り過ぎるや否や親の仇かと言うくらいに鋭い目つきで睨みつけてくる、なんてことが毎日のように続いていた。……けど、それが突然柔らかくなったんだから……千奈のおかげってことね。
「お二人は本日はデート、ですの? 」
「うん、そんな感じ。名前だけ聞いてたけどまだ一回も来たこと無かったからさ」
「まぁ、そうですのね! でしたら、思い切りおもてなしさせていただきますわ! 」 - 98二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 00:12:19
てまちなことさきがペア同士で会ってるの初かな?
- 99二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 06:10:13
ほ
- 100一般通過弟(?)25/04/22(火) 06:24:47
そして受け付けを済ませて更衣室に来た、訳なのだけど。すごい、ことねからの視線を感じるわ……胸に。
腹筋ならともかく、私胸ならそんなないわよ?
「な、なによ……胸ばっかり見て」
「いやー……大きいなって思って」
「ことね……あなた、いつから変態になったのかしら」
「言われると思ったよ! だってしょーがないだろぉ! 気になるんだもん! 咲季と一緒に着替えるの初めてだしぃ! 」
……恥ずかしい、けれど。どこか、嬉しいと思ってしまってる自分がいる。へえ……
「もう……」
dice1d3=2 (2)
1 恥ずかしいじゃない、ばか
2 なら触ってみる?
3 早く行くわよ
- 101二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 12:02:23
佑芽だけが平和だなぁ。(現在のお姉ちゃんの行為を知らないから)
- 102一般通過弟(?)25/04/22(火) 17:02:27
「な、なら……触ってみる? ほら……」
「なっ!? 何して! 」
折角ことねが私の体に興味を持ってくれてるんだもの。日々の仕返しも込めて軽いイタズラで、ことねの手を掴んでタオル越しに私の胸に当てる。
「ふふ……ど、どうかしら」
「あの、その……えっと。こんなとこで、やらないでくれないかな。……あたしが独り占めしたい、から」
だいぶ予想外だったのか、ことねが今まで見た事ないくらいに顔を赤らめてたじたじになってる。……なに、このことね……本当に、あなたってずるいわね。
「……少し、からかっただけよ。ごめんなさい。……さ、それじゃ入りましょ」
「……うん」
……もう、やらないようにしなくちゃね。ことねからああも言われてしまったし、それに……お互いにダメージが大きいもの。せめて、やるならやっぱり二人きりの時よね。
「咲季、背中流してやるよ」
「あら、ほんと?ならお願いしてもいいかしら」
「ことねちゃんにおまかせあれ」
それからシャワーを浴びて。
「さて、それじゃあお待ちかねの湯船よ!! 」
「……あれ? 咲季にことねじゃないか! 奇遇だね」
「あ、莉波先輩と麻央寮長。奇遇ですね」
「もしかして、二人も今から入るところ? 」
ドアを思い切り開けたら、湯船に浸かってのほほんとしている姫崎先輩と有村先輩がいた。……あら、こんなところで会うなんて。そういえば、姫崎先輩は温泉が好きとか言ってたわね。 - 103一般通過弟(?)25/04/22(火) 17:48:38
「あ、暖かい……」
「でしょ? 生徒会で前にここを使ってイベントやってたんだけどね。そのお試しで、私も入ることになったんだけど……なかなか気持ちよくてね」
ゆっくりと、湯船に入っていく。……うん、暖かいわ。とっても気持ちいい。寮の大浴場もなかなかに気持ちいいのだけれど、やっぱり温泉となるとまた別よね。
……そういえば。姫崎先輩からもどこか、前の手毬と似たものを感じる。私達には向けられてないみたいだけれど……強すぎる独占欲、とでも言うべきなのかしら?
「そういえば咲季ちゃん、ニュース見たよ。凄かったね、この前の水族館」
「ことねからもいいよとは言われてたので。結果、より賑わったみたいですし」
「こいつ、ステージに立って名前を聞かれた時に堂々と『花海咲季、未来のトップアイドルよ!! 』とか言い出すんですもん。……いやまぁたしかに許可したのはあたしですけども。その後すぐにあたしも呼んできましたし」
「仲睦まじいようで何よりだよ。カップルアイドル、というのも悪くは無いみたいだね」
「そういえば……有村先輩。その腕についてる跡って一体? 」
さっきから気になっていたのだけれど、有村先輩と姫崎先輩の腕に輪っかのような、腕を掴まれたようなそんな跡がある。……手錠でも、つけてたのかしら? ……いや、私の考えすぎね。
「これは……そうだな、内緒ってことで」
「みなさま! 卵を持ってまいりましたわ! 」
「あっ千奈ちゃん! ありがと~! 」
ゆっくり沢山話しながら満喫していると、ガララとドアが開き卵をお盆に乗せて千奈がやってきた。そういえば、そういうもてなしもあるんだったわね、ここ。
……温泉卵かぁ、初めて食べるわね。
「莉波お姉様も、どうぞ。……すいません」
「大丈夫だよ、千奈ちゃん。嬉しいよ。……いっこ、貰うね」
「ありがとう、千奈。有難く貰うよ」
「はい! それではまた、ですわ! 」 - 104一般通過弟(?)25/04/22(火) 18:05:15
……千奈と姫崎先輩、何か話しているようだけど……まぁ、気にしなくていいわね。
「咲季。あ~ん」
「……それってもっと他のでやるものじゃないの? 」
「あたしが今したくなったんだよ。ほら、あーん」
ことねがこっちの方によってきて、卵を私に差し出してくる。……温泉卵で、あーん?
「そう。それじゃ……あーん。うん、美味しいわ」
「咲季ってなんだかんだ言っても結局は食ってくれるよナ」
「彼女から出されたものを食べない彼氏なんて、いるかしら? 」
「……そういうとこ、大好きだよ」
「不意打ちなんて、ずるいじゃない……もう」
「二人は、ほんっとーにお互いの事が大好きなんだね」
いつものやり取りをすると、姫崎先輩がふふっと笑ってにこにこしながらそう言ってきた。
「そうですね。あたしは咲季のこと、だーーーーーーい好きです。あたしが辛かった時、いつも寄り添っててくれたから。一緒にいると、安心できるから。……お二人は、どうなんです? 」
「私も、麻央の事は大好きだよ。ただちょっと二人を見てると私は間違ってたんだな、って」
「間違ってた? 」
「うん。私ね、今の今までずっと麻央の事を縛ってたんだ」 - 105一般通過弟(?)25/04/22(火) 18:27:58
……姫崎先輩が、有村先輩を縛ってた?
「莉波、なんで……」
「言いたくなっちゃった。ごめんね、麻央。隠してた方が良かったかな」
「……いや、莉波がそうしたいのならボクは何も言わないよ」
「それで、話を戻すけど……私は、酷く麻央に依存しちゃってた。一分一秒でも、麻央がそばにいないと落ち着かなくて、死んじゃいそうってくらいだった。……だから、麻央にお願いして手錠をつけてたんだ」
「じゃあその腕の赤いのって、手錠の跡ってことですか? 」
「うん、そういうこと」
全く、知らなかったわ。姫崎先輩と有村先輩が付き合ってたことも、姫崎先輩が縛っていたことも。……まぁ、束縛を悪いこととは思わないのだけれど。私もどちらかと言えばそっち側だしね。
「ずっと、私だけを見てほしい。私だけを見て、私だけと話して、麻央の人生の全てを私だけにして欲しい。そう、思ってたんだけどね。二人を見て、つい羨ましいなって思っちゃった。お互いに素直に愛し合えて、信じてて、明るくて。……二人と比べると、私の愛し方は間違っていたのかなって」
「間違ってなんて無いと思いますよ、莉波先輩。私だけ見てほしい、私だけと話して欲しい……それは、あたしだってそうですし。何より……今、それで麻央先輩が幸せなら……きっとそれは、正解なんだ、ってあたしは思います」
真剣に話を聞いていたことねが口を開く。その言葉は凄く優しくて、言われている訳でもないのに心が暖まってくる。……かっこいい。さすが、ことねね。
「ことねの言う通りだよ、莉波。ボクは……莉波とずっと一緒にいて、付き合うことになって。縛られて……。でも、どれもこれも凄い幸せだった」
「麻央……」 - 106一般通過弟(?)25/04/22(火) 19:49:40
「……おや、誰か来たみたいだ。それに頃合もちょうどいい、あとは上がって話さないかい? 」
「私は構いませんよ。ことねは? 」
「あたしも構いませんよ」
「それじゃ決まりだね。……さ、上がった上がった」
……なんか、ことねの気持ちがわかった気がするわ。
確かに、見てしまうわね。姫崎先輩も、有村先輩も、だいぶ胸が大きいものだから。
「……そんじゃま、あたし達も上がるぞ」
「ええ、わかったわ」
先輩達に続いて、私達も湯船を後にした。 - 107一般通過弟(?)25/04/22(火) 20:46:30
視点変更:莉波
あの二人を見た時、胸が突然ざわざわしだした。苦しかった。……嬉しかった。自分の気持ちに気づいたのはすぐの事だった。私は、羨ましいと思っていたんだ。信頼していて、それで何一つ曇りのない純粋な愛情で愛しあっているから。
それと同時に気づいた。自分の愛し方が間違っていたことに。
「ふぅ……さっぱりしたね、麻央」
「うん、そうだね莉波。久しぶりに温泉に入るとだいぶ気持ちがいいね」
「あれ、そういえば咲季ちゃんとことねちゃんは? 」
「きっと、気をつかってくれたんだろうね」
「……そっか」
浴槽を出て、誰もいない受け付けのソファに座りながら麻央と話す。……ちょっと、落ち着くな。やっぱり、麻央と話してると落ち着く。
「それで、だけど。さっきも言ったようにボクは縛られてたことについて、不満にも苦痛にも感じてなかったよ。全部、幸せだった」
「……うん」
「だから、間違ってたなんてことは無いよ。莉波はちゃんと、ボクの事を愛してくれてる。そこを気にする必要なんてないと思う。……けど、これからボクの事をどう愛してくれるのかは莉波が決めてくれればいいさ。どの選択をしたって、ボクは変わらずそばにいるからね」
……ちょっと、のぼせちゃったのかな。胸がずっと、暖かいや。それに……髪から、まだ水が垂れてきてる。あれ、おかしいな。私、ちゃんと髪拭いたはずなのに。
「ま、お……まおぉ! 」
「ほんとに優しいね、キミは。優しいし……強い」
気づいたら、私は麻央に思い切り抱きついていた。それを麻央は、避けもせずそっと受け止めてくれる。
「ごめんね……私ずっと、麻央の事縛っちゃって……あの時も、沢山わがまま言ってごめんね……」
「莉波。縛られに行ったのはボクの方だよ。それに、あの時はボクの方が悪かったよ。莉波のトラウマを知ってる上で、だったからね」
「私、ね。これからはあの二人みたいに、縛らないで、麻央のことを信じて愛していたい」
「ん、そうか。わかったよ」 - 108一般通過弟(?)25/04/22(火) 21:00:09
「なら、ボクも今以上に莉波の事を信じて、愛そう。それじゃあまずは……」
「……麻央? 」
「これ、だね」
私が話している時も麻央はずっと、にこにこと優しく微笑んで私の方を見ていてくれた。そして、だいぶ泣き止んだ時……そっと、抱きついていた私の唇を奪う。
「これは、ボクの誓いとでも思って欲しい。……これからも、これまでも。ずっとそばにいて、ずっと愛し続ける。その、誓い」
「ふふ、何それ。……ありがと、麻央。ねぇ麻央……今の、私のファーストキスなんだけど……麻央はどう? 」
「ふぇっ!? あっ、えっと……う、うん。ボクも……莉波が初めて、だよ」
ふふっ、もう麻央ったら。どれだけカッコつけても結局すぐ可愛くなっちゃうんだから。ほんと、可愛いなぁ。……もう、覚悟を決めたからなのかな。凄い心がぴょんぴょんしてる。今までずっと麻央が誰かに取られないか、私から離れないか、それだけしか考えてなかったからね。
「ねえ麻央」
「なんだい? 莉波」
「私の恋人が麻央で良かったよ。だいすき」
「うん。ボクも、ボクの恋人が莉波でよかったよ。……愛してる。とまぁ、それはさておき」
また私に向けてにこっと笑った後、少し怒り気味な表情を湯船に続くドアの方に向ける。
「気をつかってくれた、と思ってたけど。盗み聞きとは感心しないな」
「……えっ? 」
「あはは……やっぱバレてたかぁ」
「さすがは有村先輩ね」
「もう……凄い恥ずかしかったんだから誰にも見られたくなかったのに」
麻央がぷいっといじける。……子供みたいで可愛いな。あ、そういえばそうだ。
「咲季ちゃん、ことねちゃん……ありがとう」
「……どういたしまして、ですよ。私もことねも、これからも先輩のこと、応援してます」 - 109一般通過弟(?)25/04/22(火) 21:02:40
「ありがとう、咲季ちゃん、ことねちゃん。私も、二人のこと応援してるからね」
「あたし達がぜーったい次の一番星になるんでぇ~……見逃さないでくださいネッ♪」
「ボクも、応援してるよ。頑張ってね、咲季、ことね」
……そういえば。まだ、伝えてなかったよね。私を変えてくれた人へのお礼なんだから、ちゃんと伝えなきゃ、ね。
「麻央、ありがとう。本当に本当に、ありがとう」
これからもずっとずっと、大好きだよ - 110一般通過弟(?)25/04/22(火) 21:05:03
- 111一般通過弟(?)25/04/22(火) 22:08:50
視点:広
「りんはりんは」
「あら、どうしたの? 」
「でーと、しよ」
「いいわよ。……どこ行くの? 」
あれ以降、苦しいと思うことが減った。それで最近はただただ燐羽に溺れ続ける毎日だった。
「ちょっと、遠くまで」
「遠くまでって……どのくらい? 」
「んー……電車でどこか行きたい」
「なら、そうね……アキバでも行きましょうか」
「うん、いいね。行こ」
……今思えば、とても腹立たしい。何回も何回も殺してやりたいくらい、自分が憎い。
自分のせいで、そんな毎日が壊れるなんて知らずにのほほんと笑ってる自分が、誰よりも何よりも憎い。嫌い。 - 112一般通過弟(?)25/04/22(火) 22:13:10
消えろ。お前なんて、いなくなってしまえ。早く、そう早く。
- 113一般通過弟(?)25/04/22(火) 23:06:43
「ねえ広。今日は私にいっぱいエスコートさせてくれないかしら」
「……いいの? 」
「ええ。たまにはちゃんと、彼氏らしいことしたいじゃない」
「じゃあ、お願いする、ね」
今更な気がするけど。燐羽のワンピース姿、凄い可愛い。……見ててドキドキする。もっと、惚れちゃう。
「どうせ広の事だし、階段降りて疲れるでしょ」
「うん。よくわかってるね、燐羽」
「恋人の事だもの。当然、理解してるに決まってるじゃない。……なら、着いたら起こしてあげるから少し電車で寝たらどうかしら」
「それ、燐羽が私の寝顔見たいだけじゃ? 」
「流石ね、よくわかってるじゃない。あなたの寝顔、とっても可愛いもの」
こうやって、ただ他愛ない会話をして笑ってる。ただそれだけでも、物凄く幸せになれる。そういえば……
「ねえ燐羽」
「何かしら? 」
「結婚って考えてるの? 」
「ぷっ……き、急に何? 一応考えてはいる……というか、どうせあなたももう結婚するつもりなんでしょう? 」
「うん、もちろん」 - 114二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 06:00:45
ほ
- 115一般通過弟(?)25/04/23(水) 09:49:45
「じゃあ、するしかないじゃない」
「ふふ……その時が来たら、ちゃんとプロポーズしてね」
「……私から? 」
「うん。私は恥ずかしくてできないから」
「私だって恥ずかしいわよ」
「でも私はプロポーズされたい」
「はぁ……しょうがないわね、まったく……あ、来たわよ」
やっぱ燐羽と話していると時間の流れが圧倒的に早く感じる。来るまでに20分かかる電車も、気づいた時にはきてたんだから。ほんと、不思議だね。……でも、その不思議がだいすき。 - 116一般通過弟(?)25/04/23(水) 10:42:54
「燐羽、肩貸して」
「……寝るの? 」
「うん。眠たい」
「そ。……ほら」
ふふ。燐羽は可愛い。そっけない風に見えるけど、うれしさを隠しきれてない。そんな見たいんだ、私の寝顔。
……そういえば前、私の写真すごい飾ってたっけな。ちょっと……照れる。
「着いたら起こして、ね」
「もちろんよ。……おやすみ」
「うん、おやすみ」
燐羽の肩に頭を預ける。暖かくて、心地いい。ここなら、久しぶりにいい夢を見られそう。そんな予感がする。
「燐羽……だいすき」
「ふふっ。私も、大好きよ」 - 117一般通過弟(?)25/04/23(水) 11:38:46
…………
「起きなさい、広。そろそろ着くわよ」
「ん……ありがとう、燐羽」
燐羽に何回か肩を優しくとんとんされて起きる。……予想通り、幸せな夢を見れた。見たのは、未来の夢。寮を出て……大人になった私と燐羽で同棲していて。一緒に、お酒を飲んだりして。とても、暖かい夢だった。
「随分と幸せそうに寝てたわね。いい夢でも見れたのかしら? 」
「うん。世界で一番幸せな、燐羽との夢」
「……そ。なら後で、教えて頂戴。私が実現させてあげるから」
「ふふ……かっこいい」
そうこう話しているうちに、秋葉原についた。手を強くぎゅっと握って、歩いていく。
わ、さすが。咲季に、ことねに、手毬に……みんなの広告が、掲載されている。
もちろん、星南も。
「……」 - 118二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 18:51:58
今更だけど名前が一般通過弟から一般通過弟(?)になってやがる。
ダイス神に屈したか - 119一般通過弟(?)25/04/23(水) 18:54:42
……胸が、痛くなる。なんで……なんで、今になって罪悪感が襲ってくるんだろう。そんなもの、私はとうに受け入れたはずなのに。
「……奇遇ね、広。私も、同じよ」
「わかるの? 何も言わなくても」
「えぇ。もう二年が経とうとしてるけれど……未だに私も苦しいと思ってしまうもの」
「そっ、か。……うん、そう。苦しい」
「なら、早く移動しましょ」
ただ突っ立って星南の広告を見つめている私の手をそっと燐羽がとって、引っ張ってくれる。……何度目だろう。燐羽を優しい、って思うの。こんなにも、大好きでたまらないって思うの。
「まずは……これね、広。あなたの髪留め。ふふ、売り切れてなくてよかったわ」
「……え、私の? 買ってくれるの? 」
「当たり前じゃない。その代わり……あなたも、私の髪留めを買ってちょうだい。二人で一緒につけたいのよ」
「……うん、わかった。すぐ買う」
燐羽に連れられてそのままアイドルの店に来た。そして、燐羽が真っ先に目をつけたのは……フクロウが大きく描かれている、髪留め。そう、私が前に出したグッズ。そういえば、最後に新しいのだしたのいつだっけな。
そして、私も同様に紫の蝶がデザインされた、燐羽のヘアピンを買う。すごいな、ここ。私も燐羽も全盛期はグッズなんて即完売だったのに。 - 120一般通過弟(?)25/04/23(水) 19:13:59
「どうかしら……似合ってる? 」
「うん、似合ってる、よ。……私も、似合ってる? 」
「もちろん、似合ってるに決まってるじゃない。……ふふ、嬉しいわ。こうしてあなたに私のグッズを持っていて貰えるの」
「私も、嬉しい。……いっしょだね」
燐羽との一緒は、言葉にできないくらいに嬉しい。どんな些細なことでもいい。でも、一緒だと嬉しい。本当に本当に、今は大好きだって思えるから。流石に、殺したいほど……とまでは行かないけどそれでも燐羽の為なら死んでもいいくらいには大好きだから。
「ふふ、満足のいく買い物が出来たわね。……と。お腹がすいたわ、お昼にしましょうか。……広は何食べたい? 」
「燐羽の食べたいのがいい」
「ん、わかったわ。それじゃあ……適当にファミレスでも行きましょうか」
燐羽は凄い。私のことをちゃんと見ててくれる。私がお腹空いたのも察してお昼に誘ってくれた。……優しい。
そして、私は燐羽と一緒にファミレスに来た。休日の昼にしてはだいぶ空いてるな。ま、いいや。
「広、何食べたい? 」
「ん……そうだな。じゃあ、はんばーぐとぽてと」
「ハンバーグとポテトね、わかったわ。じゃあ、私もそれで行こうかしら」 - 121一般通過弟(?)25/04/23(水) 19:36:33
「りんはりんは」
「どうしたの? 」
「はい、あーん」
「ん……ふふ、美味しいわね」
「そう? 良かった」
「じゃ、私もお返しよ。はい、あーん」
いつもやってる事だけど。……でも、何回もしたくなる。不思議なことに、これをするだけで何よりも美味しくなるから。……ふふ、幸せ。
「美味しいね、燐羽」
「そうね、美味しいわね」
「次は……どうする? 」
「それじゃあちょっと、ゲームセンターにって……雨降ってきてない? 」
「わ、ほんとだ。しかもかなり強いやつ」
「じゃあ……また今度ゆっくり遊ぶとして、今日は早く帰らない? 」
「うん、わかった。そうしよう」
もぐもぐとハンバーグを食べていると、外からざーっと音がする。……燐羽に言われて、音のする方に目を向ける。すると、大粒の雨が凄い勢いで降ってきていた。
「ここから駅は、ちょうど近いわね」
「うん」
「それじゃあ、広が食べ終わったら出発しましょうか」
「ごめんね、待たせ──」
ドクン、と強く心臓が跳ねる。そしてきゅぅぅっと締め付けられるような苦しさに襲われる。頭にノイズが走る。ザーッと、この雨をかき消すような大きなノイズが。……ノイズから、声が聞こえる。
『もうちょっとで、何も隠さなくてよくなる』
これは、私の声? …………何を、言ってるの? - 122一般通過弟(?)25/04/23(水) 20:00:28
「……広? どうしたの? 急に」
「え? あ……ごめん、なんでもない。大丈夫」
「そう。なら、良かったわ」
「うん。……ごちそうさま」
今のは、なんだったんだろう。まさか、あの時の……私? いや、でもなんで……あれは夢で、私が殺したはずじゃ……
「さ、それじゃお会計しましょうか。……私の奢り、ね」
「燐羽、いいの? 」
「言ったでしょう? 今日は私がエスコートするって」
「……そっか。じゃあ、お願い」
……ノイズは消えた。声も消えた。ただ、変わらず心臓をきゅぅぅぅっと掴まれてるくらいの痛みだけは残ってる。痛い。怖い。……怖い?
「今日はありがと、広」
「私の方こそ、ありがとう。急に無鉄砲に誘ったのに」
「いいのよ。私も恋人らしいことあまりできてなかったし」
「燐羽。燐羽は燐羽が思ってるよりもしっかりと彼氏してくれてる、よ」
「……そ」
燐羽は照れると髪をくるくるといじる癖がある。……とっても、可愛い。あんなにクールで冷徹なのに、私の前だけとても可愛いくて……私に、溺れてくれてる。
『まもなく、○番線に──』
列車のアナウンスが入った時だった。
また、頭にさっきの……いや、さっき以上のノイズが走る。 - 123二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 20:15:20
燐羽の悪夢の再現とか言わないよね……?
- 124一般通過弟(?)25/04/23(水) 20:17:50
『もう、楽になろう』
その声が頭の中に響いて、体の自由が聞かなくなる。体が、勝手に動き出す。……線路の方へと、ゆっくりと足を進めていく。……え、なんで? 待って、止まって!!
「止まっ……止まって!! 」
「広! 」
後一歩で線路に落ちるところまで来た。そこで、ノイズが消えて、体の自由が効くようになった。……急いで、慌てて、燐羽の方に走ろうとした時。
「えっ……」
「待って、広!! 」
「りん、は……? 」
……私に、思い切り強く押された。夢の中で見た、あの私に。……笑っていた。ものすごく、気味の悪い笑顔で、ずっとこっちの方を見つめていた。
……状況を飲み込めてない私を、そっと優しく誰かが抱きしめる。……誰が抱きしめたか、なんてとっくのとうにわかっていた。……燐羽だ。
「約束、したでしょ」
「……うん」
笑って、抱きしめ合う。……これが、最後のハグ。これが、最後のキス。これが、最後の会話。
……ねえ、燐羽。ありがとう、こんな私と出会ってくれて。あの時、味方をしてくれて。恋人になってくれて、命を預けてくれて。……本当に、本当に本当に大好きだよ。
また、生まれ変わるなら……こんなのとは違って、ただ好きって気持ちでいっぱいの、恋愛漫画のような、甘く蕩けるような恋がしたい、な。
「ばいばい」
眩しい光に視界が奪われる。……次の瞬間には、もう既に私たちは飛ばされていた。朦朧とした、今にも消えてしまいそうな意識ではっきりわかったのは。 - 125一般通過弟(?)25/04/23(水) 20:18:50
ぽたぽたと垂れてくる血と、残す所なく血で染まりきった真紅のフクロウだった。
- 126一般通過弟(?)25/04/23(水) 20:22:13
- 127一般通過弟(?)25/04/23(水) 20:32:58
- 128一般通過弟(?)25/04/23(水) 20:45:35
- 129一般通過弟(?)25/04/23(水) 21:52:33
『やっほう。さっきぶり、だね』
……は? え? な、なんで……私が、いるの?
私は確かに死んだ、はず。
『死んだと思うなら、試してみればいいんじゃない? 例えば……目を開く、とか。声を出してみる、とか』
「ふざけないで……え? 」
な、んで……なんで、声が出せるの?
ぁ……
目が、開く。病院の明かりが、目に入ってくる。
私は……生きてるの? なんっ………………なんで!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
っ、そうだ燐羽は!? - 130二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 02:11:53
燐羽だけダイスの数そのものが多かったのってそういうことか
- 131一般通過弟(?)25/04/24(木) 06:04:36
「……起きたんだね」
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- 132一般通過弟(?)25/04/24(木) 06:10:06
「起きたんだね、広」
「麻央……なんでここに」
「誰が通報したと思ってるんだい? ボクだってたまたまあの場所に居合わせてたんだよ、二人が気づいていなかっただけで」
焦っていると、ドアが開く。そして……麻央が入ってきた。麻央が……通報してくれた?
「っそうだ、燐羽は!?!?!? 」
「燐羽は……死んだよ」
「……え」
時が止まる。世界から色が消えていく。何もかもが灰色になっていく。……燐羽が、死ん……だ?
私だけ生きて……私だけ生きて?????
なん、で……なんで!! なんで、なんで私が生きてるの
私が死んでしまえばよかったのに。二人で死んでしまえたら良かったのに。なんで私を生かしたの? なんで燐羽を殺したの?? - 133二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 14:02:25
ほ
- 134一般通過弟(?)25/04/24(木) 16:29:06
頭の中でノイズがする。どの時よりも強く激しく。
異常なまでの吐き気が襲いかかる。痛い。痛い痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
……痛い。
『言ったでしょ? 楽になれるって。もう、燐羽に溺れなくて、苦しい思いをしなくてもいいんだよ』
「ふざ、けないで……燐羽がいたから私は!! 」
『なんでそんなこと考えるの? 余計辛くなっちゃうだけなのに。……燐羽はもう、いないんだよ? わたしが、殺したんだよ? 』
……
『ねえ、なんとか言ったらどう? 折角生きてるんだから喋らないと』
「……まれ」
「広……? 」
「黙れッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 消えろ、消えろ消えろ消えろ消えろ!!!! 」
うるさい。うるさい。ただ、うるさくて……不愉快だった。その気持ち悪い笑顔が、声が、姿が……全部全部、不愉快で、心底腹が立つ。
「……そっか。もう、とことん堕ちたんだね。ボクはもう行くよ。もう二度と、その顔を見たくないから」
「…………」
ノイズが納まって、私も消えた。……やった。やってしまった。……どこまで最低なんだろう、私は。
沢山殺した。こんな私を受け止めて、輝かせてくれた人も、先生も、それから……愛してる人さえも。挙句の果てに、幻に囚われて自分を助けてくれた人さえも傷つけて、嫌われて……痛い、痛い……
「あぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
……視界が、切断したテレビのようにぷつん、と切れる。 - 135一般通過弟(?)25/04/24(木) 16:29:50
「広ちゃん、大丈夫!? 」
「篠澤さん!! どうされましたの!? 」 - 136一般通過弟(?)25/04/24(木) 20:51:55
「え……千奈? 佑芽? なんで……」
「なんで、って……広ちゃんが急にお熱出して倒れたから千奈ちゃん家まで運んできたんだよ」
「ずっとずーっとうなされてましたけど……嫌な夢でも見たんですの? 」
……目が覚めたら、あわあわとしている千奈と佑芽がいた。……なんで、ここに? 佑芽と千奈が……じゃあ、あれは夢だったってこと?
「千奈千奈。確認したいことがある」
「はい、なんですの? 」
「私達って今何歳? 」
「……もしかして広ちゃん、寝ぼけてる? あたしが15で広ちゃんと千奈ちゃんが16だけど」
「ふふ……そっか。良かった」
……うん。どうやら、夢だったぽい。にしてはちょっと、長すぎるけど。……良かった、あれが夢で。あんな苦しい世界、嫌だもん。……あぁ、そうだ。もう一個確認しておこう。
「ねぇねぇ、二人は賀陽燐羽って知ってる? 」
「えと……お名前だけなら聞いたことありますわ。確か、秦谷さんと月村さんが組んでたユニットのもう一人のメンバー、でしたわよね。確か今は、極月にいると先生から」
「燐羽ちゃん……あたしあの子の事大っっっっっっキライ! 」
燐羽、極月学園に行ってたんだ。知らなかった。……二人に話してみようかな、夢のこと。 - 137二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 21:53:07
多分、燐羽も似たような感じなんだろうな…広に会って安心して泣き出す姿が想像できる
- 138一般通過弟(?)25/04/24(木) 22:53:48
「千奈、佑芽。……夢の話、聞いてくれる? 一年にわたる、長い長い、苦しい苦しい夢の話」
「ええ。……ええ、もちろんですわ。是非篠澤さんの見た夢を、私と花海さんに教えてくださいませ」
「うん。教えて欲しいな、広ちゃんが見た夢の話。……あ、別に苦しかったらいいんだよ? ていうかむしろその時は言わないで欲しいかも」
「大丈夫……だと思う」
そしてゆっくり話し始める。星南の自殺を見捨てたこと、埋めたこと……沢山脅して、殺して……燐羽に溺れていたこと。千奈は手毬に溺れていたこと。そして
あのノイズに、燐羽と一緒に轢かれて私だけ生き残ったこと。
「ひっ、うっ……じのざわざん……凄い、最悪な悪夢でしたのね……」
「ねーねー広ちゃん」
「なに? 」
「あたしは? 」
「え」
「え? あたしは? 」
「佑芽は……一度も出てこなかった」
「なんでぇ!?!?!? 」
……泣きすぎて顔がぐっちゃぐちゃになっている千奈と、自分がいないことに不服そうにする佑芽。……懐かしい気がするな。こんな風に、三人で過ごす平和な日々も。
「お嬢様、花海様、篠澤様。お夕飯が出来上がりましたよ」
「あら、もうそんな時間ですの。香名江、いつもありがとうございます」
「お嬢様に仕えることが私めの職務であり至福。それを、こなしているだけですよ。……ありがとうございます、お嬢様。身に余る光栄にございます」
「篠澤さん……御夕飯を持っでまいりますわ。そのまま、安静にして待っていてくださいませ……」
「千奈ちゃんずぅーっと泣いてるね」
「ちょっと刺激が強すぎた、かも。佑芽は平気なの? 」
「お姉ちゃんとことねちゃんが付き合ってることとか、あたしだけ出てきてないこととかすーっごい不服~~!! 」 - 139二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 03:18:27
広は実際に燐羽に会いに行ってほしい
- 140二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 06:51:46
胡蝶の夢展開かな
- 141二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 06:52:48
言われてみれば佑芽は一回も出てきてなかったな
ひとつ嫌な予感するけど
これ(補習組の会話)自体が夢で現実はアッチ的な展開だったらヤバくない…? - 142一般通過弟(?)25/04/25(金) 09:48:58
「條澤さん、ご飯を持ってまいりましたわ」
「広ちゃん、ご飯の前に一回お熱計ろうよ」
「うん、ありがと」
しばらくして、どたばたと音を立てながら千奈と佑芽がうどんと体温計を持ってきた。
……まぁ、そっか。風の時ほど嫌な夢を見やすいっていうもんね
「んー……八度九分かぁ。もうちょっとゆっくりした方がよさそうだね」
「そういえば……私、千奈の家にいるけど麻央から許可は」
「安心してくださいませ! この倉本千奈、宿泊許可はきっちりと取っておりますわ! 」
「おー、頼もしい。……食べさせて」
「わかった! ふー、ふー……はい、あーん」
「ん……美味しい。さすが倉本のシェフ」
「そう言ってもらえて私も鼻が高いですわ!」
やっぱり、千奈と佑芽と話すのは楽しい。あの夢のこともすぐに忘れられそうな気がする。
「千奈、佑芽。だいすき」
「ふぇっ!? き、急に何をおっしゃいますの!? 」
「あたしも広ちゃんのこと大好き~! 」 - 143二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 16:17:42
どっちの世界でも怖いよ…
- 144二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 16:21:14
これ発狂して幻覚見てたりしない?大丈夫?
- 145二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 17:12:47
うわぁ私もシリアスダイススレしたくなってきた
- 146一般通過弟(?)25/04/25(金) 21:05:46
「ところで篠澤さん、お風呂は入れそうですの? 」
「……熱、計ってみる」
それから二時間ほど経って……今は二十時。だいぶ頭痛とか吐き気とかだるさも消えてきて、熱下がったと思うんだけど……
「7度1部、だね。……ふっかつ」
「おー、だいぶ下がってる! 」
「でしたら入りません? 私、久しぶりに三人で入りたいですわ! 」
「いいね、賛成」
「うん! 入ろ!! 」
あの夢で、燐羽に恋をしてた気持ちも幸せだったけど……やっぱり、友達として二人を大好きな気持ちが一番。私の大好きで大切な大切な友達。奇跡。
「あっ、広ちゃんちょっと太ってる! 」
「……言わないで、恥ずかしいから」
「何を恥ずかしがっているんですの? これは、誇ってもいい事ですわ! 逆に、篠澤さんは細すぎるんですの! もっと太るべきだと思いますわ」
「佑芽は……また、胸が大きくなった? 」
「な゛っ! 広ちゃんのえっち!! 」 - 147一般通過弟(?)25/04/25(金) 22:27:35
「篠澤さん、お背中失礼しますわね」
「うん、ありがとう千奈。助かる」
「別に……あたしが背中流してあげてもいいんだよ? 」
「その場合は背中の皮膚という皮膚が消えてしまいますわ……」
今は……先に佑芽が洗って湯船に浸かっていて、私と千奈が洗いっこしてる。ほんとに、佑芽に背中を洗われたら背中が消えちゃうかもしれない。
「千奈ちゃんひっどぉ~~い!! お姉ちゃんは気持ちいいって言ってくれるのに! 」
「それは咲季お姉様の体はとても仕上がっているからであって! 私達は咲季お姉様ほど強くないのですわ!! 」
そういえば……燐羽とはまだ一度も一緒にお風呂に入ったこと無かったっけ。あれ。なんで私、燐羽の事ばかり考えちゃうんだろう。……ま、いっか。どうせすぐ忘れるし。今は、この楽しい時間を……夢を消すくらい、頭に焼き付けないと。
「ふにゃあ!? 」
「……千奈? 」
急に千奈が吹き飛ばされる。そして、鏡で軽く頭を打つ。……え?
「は、花海さぁん! 急にはやめてくださいまし!! 」
「ふーんだ。あたしは化け物ですよーだ」
「そ、そこまでは言っておりませんわ!! 」
「千奈……大丈夫? 」
「軽く頭を打っただけなのでまぁ、何とか……」
あぁなんだ。佑芽が千奈に向けて思いっきり水鉄砲を背中にぶつけただけか。……別に、これといって千奈に怪我も無いようだし……
「佑芽。やりすぎは、だめ」
「むぅ、ごめんなさぁい……」 - 148一般通過弟(?)25/04/25(金) 22:40:32
そして、お風呂を出て、着替える。
「はぁ……酷い目に会いましたわ」
「まさか……香名江ちゃんが乱入してくるなんて思ってなかったよ」
「香名江、強かった……」
あの後もお湯を掛け合って遊んでた。そしたら、たまたま様子を見に来た香名江にかかって……そのまま香名江も交えて大乱闘。佑芽と香名江がずっとやりあってて、私と千奈はその流れ弾でぼろぼろ。
「お嬢様、花海様、篠澤様。先程は、私とした事が少し羽目を外してしまいました。申し訳ございませんでした」
「……香名江。たまにはあれくらい羽目を外してもいいと思いますの。香名江は、真面目すぎますもの。少しくらいリラックスしても罰は当たりませんわ」
「香名江ちゃんすーっごい強いね!! 次はあたしも負けないよっ!! 」
「千奈の言う通り。香名江、頑張りすぎはよくない」
「……ではまた、いつかの機会に本気でお相手させてもらいますね。……牛乳の準備が出来ております」
更衣室で着替えていると、タオルを髪に巻いた香名江が入ってきた。……すごい、可愛い。
「ありがとうございますわ、香名江」
「わっ、ありがとう!! 」
「それでは、私はこれで。おやすみなさいませ」
「ええ、おやすみなさいませ」
「おやすみなさーい! 」
「……ん? 」
それだけ伝えて香名江は直ぐに去っていった。そして、順番に私達も更衣室を後にするんだけど。
鏡に映った私の手に、小さなヒビが入っている。……鏡から目を離すと、そのヒビは見えなくなる。
きっと、なにかの見間違い、かな。 - 149二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 02:09:41
ほしゅ
- 150二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 08:07:29
やっぱりこちらが夢の世界か…?
- 151二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 08:50:22
広はもう助けられないかも…?
- 152一般通過弟(?)25/04/26(土) 10:09:15
そしてまた時間が過ぎて、十時。……私はなかなか眠れずにいた。
「むにゃむにゃ……ですわぁ」
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉ……うごぉぉぉぉぉぉぉ」
「……ふふ。二人とも、可愛い。……ちょっと、外にでも行こうかな」
千奈も佑芽も、全力で爆睡してて可愛い。ちょっと今日は二人ともはしゃぎすぎたみたいだし……それに、ずっと私の看病をしてくれてたみたいだったし。
「……篠澤様? 」
「香名江。起きてたんだ」
「私とした事が珍しく、なかなか眠れそうにありませんので外の空気でも吸いに行こうかと」
「奇遇だね。私も、一緒。……一緒に、いい? 」
「ええ、構いませんよ」
いつもの服に着替えて、靴を履き替える。……途中で、香名江に声をかけられる。香名江も眠れないんだ、珍しい。
「ふふ……気持ちいい」
「ですね。昨夜は満月のようでしたし、尚更」
……少し、香名江にも聞いてみようかな。例え話だけど。 - 153一般通過弟(?)25/04/26(土) 13:35:01
「ね、香名江」
「はい、篠澤様。どうなさいましたか? 」
「例えばの話だけど……もし、香名江は千奈が誰か殺したとしたら、どうする? 明らかに間違っている道を、間違ってるとわかった上で進もうとしていたら、どうする? 」
「また、随分と特殊な想定ですね。……昼頃に篠澤様がうなされていた悪夢の話ですか? 」
「え、わかるの? 」
「多少聞こえておりましたから」
「……そっか。それで? 」
「でしたら私は……お嬢様の、味方をします」
意外だった。てっきり、警察に飛ばしたりするのかと思ってた。
「それは、どうして? 」
「……お嬢様に忠誠を誓ったのは、一度でもお嬢様に付き従うと決めたのは、私の揺るぎない意思。したらばお嬢様の行く道が間違っていても、正解だったとしても。最後の最後まで付き添い、行く末を見守る。それが、私のメイドとしての矜恃だからです」
「じゃあ……途中で、千奈が死んじゃったら? 千奈が死んで、香名江だけ生きたら? 」
「その時は……そうですね。自首でもしましょうか」
「後を、追わないの? 」
「お嬢様の事です。会いたい気持ちはあれど、直ぐに後を追うのは望まれないでしょう。……ですから、お嬢様の分まで私が罪を清算して、生き続けます」
「すごいね、香名江。……すごい強くて、かっこいい。同い年とは思えないくらい」
「お褒めいただき光栄です。……それにしても篠澤様、とてもお辛い夢を見られていたのですね」
「まぁ……うん」
……一年半にわたる長い長い夢。その毎日が幸せで、苦しくて、幸福で、痛かった。けど、香名江と話して思った。後を追おうとするのは間違いなんだってことに。
「ありがとう、今なら眠れそうな気がする」
「でしたら何よりです。では、戻りましょうか」
「うん、そうだね」 - 154一般通過弟(?)25/04/26(土) 13:42:38
……あれ。なんで間違いだなんて思うんだろう。ただの夢に。
- 155一般通過弟(?)25/04/26(土) 16:15:58
まぁ、いっか。今は気にしなくていい。と、思う
- 156二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 21:02:53
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- 157二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 21:03:38
これ少しずつ気づいてきてない?分かりやすく現実では起こりえないことも起きてきてるし
- 158一般通過弟25/04/26(土) 23:37:31
「んぅ……篠澤さん? 」
「おはよう、千奈」
「……な、なななななな、なんで篠澤さんが私の抱き枕に!? 」
「覚えてないんだ」
「ふぇっ!? わ、私何かしましたの!? 」
結局あの後帰ってきて、寝ようとしたら……私の寝てたとこに千奈が来て。気にしないで寝ようとしたら、抱き枕にされた。おかげで結局あまり眠れなかった。
……けど、千奈がすごい可愛かったからいいや。
「あれ、ところで花海さんは……」
「そこ」
「そこ……? 」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……はっ!? どこここ!! 暗い! 千奈ちゃん!? 広ちゃん!? 」
佑芽は……何があったのかわかんないけど何故か帰ってきた時にはもうベッドの下で爆睡していた。胸がつっかえて顔だけベッドの下に入ってる状態。
「し、篠澤さん! 助けますわよ! 」
千奈と一緒にベッドをおりて、佑芽の足を引っ張る。
……ただ足を引っ張るだけでも凄い死にそうになった……
「えへへぇ……あたしとした事が、まさかベッドの下で寝ちゃってたなんて」
「佑芽のいびき、凄かった……なんか、ライオンみたい」
「え゛っ゛!? そうだったの!? ってか言わないでよ! 恥ずかしーじゃん」
「『うごごごごぉ……』って言っておりましたわね……」
「あーもう千奈ちゃんまでぇ! 」
「お嬢様、お送りの用意が整いました」
……あ、そういえば今日って体育祭なんだっけ。 - 159二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 01:48:43
ほ
- 160二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 08:59:30
大丈夫とは思うけど、この世界でリーリヤや莉波に出会ったらどんな反応するのだろうか
- 161一般通過弟(?)25/04/27(日) 11:01:41
「あ、おはよう! 三人とも! 」
「あっ! おはようございます莉波先輩っ! 」
「莉波お姉様、おはようございますわ! 」
「り、なみ……」
莉波を見た時、胸が物凄くざわついた。……やっぱりだ。やっぱりずっとあの夢に引っ張られてる。
「そういえば莉波先輩が挨拶担当なんでしたっけ」
「うん、私が門に立って、入ってくる生徒と保護者の方々に挨拶するんだ。三人とも、今日はめいっぱい楽しんでね」
「……うん、ありがとう」
大丈夫。あの夢とは無関係。莉波も、麻央も、リーリヤも、星南も……みんなみんな、無関係だから。だから、冷静さを欠くことはない。
「席は大丈夫? 」
「ええ、もちろん頭に入れておりますわ! 」
「ふふっ、そっか。それじゃあ……頑張ってね! 」
莉波と話し終えて、席の方まで行く。……あの夢が、頭から離れない。どうして、なんで、どうして……。今まで、こんなことなんてなかった。どんな夢だって一日経たずして消えたのに。
「佑芽さん、千奈さん、篠澤さん……おはようございます」
「あっ美鈴ちゃん! おっはよー! 」
「今日は、頑張りましょうね」
「はい! 是非みんなで力を合わせましょう!」
「頑張る、よ」 - 162一般通過弟(?)25/04/27(日) 15:23:41
「あ、あー……マイクチェック。よし、聞こえますね」
暫くゆっくりしてると、校内のスピーカーから優の声が響き渡る。……優なの?
「な、何故真城先輩が? 真城先輩は普通科でお休みのはずでは……」
「そういえば星南会長が真城先輩に頼んでいましたね」
「それではまもなく、開会式を執り行います。今席をお立ちになられてる皆さん、席を離れられている皆さんは自分の座席に着席してください」
「……いたわ! 佑芽!! 」
「あっお姉ちゃん!! 」
優が校内全体に呼びかける。……そしてそれをお構い無しに咲季が走ってくる。
「ぜーったい、負けないわよ! 」
「あたしだって絶対に負けないからね! 」
「……アイドル以外で勝負するのは初めてですね、まりちゃん」
「そうだね。美鈴、悪いけど私達が勝たせてもらうから」
「あーもーこんなとこにいたぁ! ほらお前ら! 早く戻るぞ! つか咲季は応援団長なんだからあんまし離れるなぁ! 」
同様に手毬と美鈴も話し始めて、お互いに火花を散らした時。後ろからまた更にことねが走ってきて、手毬と咲季を連れていった。
「元気ですわね」
「うん、すごい元気。それに向こうもだいぶ仲良くなってきてる」
「ふっふー、大丈夫だよ広ちゃん! あたし達四人の絆だって負けてないから! 」
「そうですね。むしろ、勝ってますから……全力で、叩き潰してあげましょう」 - 163一般通過弟(?)25/04/27(日) 20:32:42
それからすぐに体育祭は始まり、最初に星南のスピーチだとか、応援合戦だとかがあった。そしてそれらも終わり、まず最初に私達の種目。
「よし、頑張ろ……っ!? 」
「ひ、広ちゃん!? どしたのいきなり!! 」
「篠澤さん!? 大丈夫ですの!? 顔が……青くなっておりますわよ! 」
よし、頑張ろう。そう言いかけた時だった。ふと視界に入った掌が、さっきまで普通だった掌が、一面ヒビだらけになっていた。なに、これ……なに、このヒビは……?
「……大丈夫、落ち着いた」
「ほんと? ……良かったぁ。あんまり無理はしないでね」
「そうですわ! 無理はダメ、ですわ! 」
……視界から離して、もう一度手を見てみる。すると、さっきまでのヒビは消えており、何も無いいつも通りの私の手だった。本当に、なんなんだろうあのヒビは。……大きくなってる?
「ありがと。でも、大丈夫。やれる、よ。改めて、頑張ろう」
「おー! 」
「おー!ですわ! 」
『それでは最初の種目……一年生による綱引きを行います』
そういえば……アイドル養成校なのに体育祭は普通と変わらないんだな。 - 164二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 20:33:47
次スレにいきそう
- 165一般通過弟(?)25/04/27(日) 21:31:30
行きます(断言)
- 166一般通過弟(?)25/04/27(日) 23:45:46
「ん……しょ。ふふ、もう無理そう」
「はやっ!? 」
「縄が思ってたより重いですわぁ……」
「ではここは、私と佑芽さんに任せてください」
すぐに指定された位置について、縄を持つ。……けど、縄が思ってたよりも重くて全く上がらない。千奈も同じで、苦戦してるみたい。……なんとか、佑芽と美鈴のおかげで持つことは出来た。
『両クラス用意が整ったようですね。それでは、用意……』
そういえば今更だけど、綱引きのみ三組は不参加になってるみたい。その代わりに三組には先んじてポイントが入れられてるんだとか。
『始め! 』
「わっ」
「し、篠澤さぁぁぁぁぁぁん!?!? 」
「千奈ちゃん!? 広ちゃん!? 」
合図と同時、綱が強く引っ張られて……私と千奈が秒で転んだ。
「佑芽、美鈴……任せた、よ」
「任せましたわ……」
「うん、二人とも任せて! お姉ちゃん諸共薙ぎ倒してやるー!! 」 - 167二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 06:26:16
保守
- 168二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 12:30:56
広が見る最期の景色が浮かぶ気がする。…燐羽とは会えると思う
- 169二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 19:08:13
保守
- 170一般通過弟(?)25/04/28(月) 20:49:26
「ありがとう美鈴ちゃん! おかげで勝つことが出来たよ! 」
「いえいえ。佑芽さんが頑張ってくれたおかげですよ」
綱引きはなんとか勝つことが出来た。ほとんど佑芽と美鈴のおかげ。……凄かった。佑芽、足を地面にめり込ませてた。
「……どう? お姉ちゃん! 最初はあたしたちの勝ちだよ! 」
「クラスでならまだいいわ! でも次の徒競走はぜっっっったいに負けないから! 」
「お姉ちゃんと陸上競技で戦うなんて、いつぶりだろうね。……負けないよ! 」
「上等よ! 」 - 171一般通過弟(?)25/04/28(月) 21:28:56
『続いては、二年生の……』
他の種目は何故か気づいた時にはもう終わっていた。……どうしてだろう。全く、記憶が無い。こんな、早いものだっけ。体育祭って。
「広ちゃん、どうしたの? ぼーっとして」
「……あ、ごめん。大丈夫、だよ」
「なんか最近の広ちゃん凄い変だよ。……まだ、夢が忘れられないの? 」
「多分……そう、なんだと思う。色々考えすぎちゃってる」
「そういう時はリラックスだよリラックス! 」
「あ、こんな所に! もう、おふたりとも、探したんですのよ? 」
木陰でぼーっとしていたら、いつの間にか佑芽が私の隣にいた。……どんどんと、わからなくなってくる。これは……現実? それとも、夢? ああ……わからない。わからない、わからない、わからない……!!
また、だ。また、苦しくなってきた。また、また……また? - 172一般通過弟(?)25/04/28(月) 21:54:48
『それでは一度、お昼休憩を挟みます。休憩が終わりまして次のプログラム、一年生によるクラス対抗全員リレーになりますので一年生は時間になり次第速やかに指定位置に着いてください』
「大丈夫? 広ちゃん」
「……うん、大丈夫」
「あら、皆さんここにいたんですね……篠澤さん? 」
「実は……さっきからずっと、篠澤さんの様子が変なんですの」
「変? 」
そうこう話してるうちにお昼休憩になって、それから少しして美鈴が来て、四人でお弁当を食べることになった。……さっきからずっと、おかしい。なに、なんなの……?
「うん。ずっと、なにかに怯えてるっていうか……なんか苦しそうなの」
「もしかしたら、まだお熱があるのかもしれませんわ」
「……いい、大丈夫」
「それに、ずっと大丈夫の一点張りでさ」
「とりあえず……お昼でも食べながら、話しませんか? 」 - 173二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 23:04:12
寝ても覚めても地獄とか……えぇ?
- 174二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 06:05:06
ほ、
- 175一般通貨弟(?))25/04/29(火) 09:56:10
「……そんな事が、あったんですね」
「その夢見てた時はね、広ちゃん40度のお熱あったからそれかなーって思ってるんだけど」
「特に体がだるいとかはない、よ」
「確かに、体の不調で急に青ざめたり、息が荒くなったりなんて事はあまりありませんものね」
お昼を食べながら、アレについて美鈴に話す。……なんでだろう。さっきはあれだけ苦しかったのに、今は全然そんな気持ちがなくて楽だ。逆にもっと千奈達と話していたい、そんな気持ちだけが湧いてくる。
「篠澤さん、今は大丈夫なんですか? 」
「うん、大丈夫。今は平気だよ。ぴーす」
「あっいつもの広ちゃん!! 」
「ちょ、ちょっと花海さん!? 食べ過ぎですわぁ! 」
「だ、だって美鈴ちゃんのお弁当美味しすぎるんだもん!! 」
さっきから話してる途中で、ずっと佑芽が美鈴のおっきなお弁当をバクバク食べてた。……千奈はあわあわしていて、逆に美鈴はいつも通りあらあらと笑っている。
……幸せだ。こんな何気ない光景が、私にとっては何にも変え難い幸せ。これが、いつまでもいつまでも……続いたら──
「っ、燐羽!! 」 - 176一般通貨弟(?)25/04/29(火) 11:23:16
ご飯を食べながら、遠くを見つめていた。これに、何の意味があるのかはわからない。ただ、見つめていたかった。……そしたら、見えた。紫髪に蝶の髪飾り、そして真っ黒な制服を来た女の子……燐羽が。
佑芽達をほかって、体が勝手に走り出していた。……わかってる、燐羽に話しかけたところで向こうは私の事を知らない、って。でも、走っていた。走るしか、なかった。
「広ちゃん!? 」
「花海さん、追いかけましょう! 」
「……ここは、私が行って来ます。おかわりも用意してきてますので、おふたりはゆっくり食べていてください」
息が、できない。口の中が血の味で溢れてる。……でも、ようやく追いつけた。
「思ったより早くまた会えたわね。嬉しいわ。愛しい愛しい、私の……広」
「りん、は……」
「あら、何をそんなに泣いてるのかしら」
「会いたかった……ずっと、会いたかった! 」
「ふふ、可愛いわね。こんなに沢山泣いちゃって……」
予想外だった。……燐羽が私の事を笑顔で迎えてくれて、抱きしめてくれた。ふふ、嬉しい。大好き。愛してる。……でも、不思議とどこか痛い。確かに燐羽は死んだはず、じゃ……燐羽が、死んだ? いや違う。それはきっと、あの夢の話。……夢?
夢って、どれのこと? これのこと? あれのこと?
わからない。なんて言うんだっけ、こういうの。
あぁ、そうだ。胡蝶の夢って言うんだっけ。
何が夢? 何が現実? 何が幻? 何が本当? 何が嘘? 何が真実? - 177一般通貨弟(?)25/04/29(火) 11:23:47
全部、全部全部全部全部わからなくなってきた。
- 178一般通貨弟(?)25/04/29(火) 14:50:09
「……! どうして、りんちゃんが……」
「あら美鈴……久しぶりね。なぁに、ちょっと広に会いに来ただけよ」
「どうして、篠澤さんに? 」
「私が、広の事を愛しているから。広がそばにいないと落ち着かないから。ただそれだけよ」
頭では色々深く考えてても、やってることは変わらずに燐羽の胸でずっと泣いているだけ。涙が、止まらない。でもこの涙は、嬉しいからなのか苦しいからなのか、わからない。
「……篠澤さんを、返してください。もうすぐ体育祭が再開するので」
「はぁ、そうね。……ま、いいわ。広、応援してるわ、頑張りなさい」
「うん……頑張ってくる、よ」
そっと燐羽が私から手を離す。……寂しい。けど、これでいい、と思う。応援だってして貰えたし……深く考えるのはあとにしよう。今はただ、この体育祭を。精一杯、楽しもう。 - 179一般通貨弟(?)25/04/29(火) 16:28:24
『それでは時間になりましたので、只今より一年生クラス対抗全員リレーを行いたいと思います』
「あっ広ちゃん! 美鈴ちゃん! 丁度いいとこで! 」
「丁度今から始まるところですわ! ……篠澤さん、大丈夫ですの? 」
「さっきは勝手に走ってってごめん。……うん、今は大丈夫」
「はい。篠澤さんはもう大丈夫ですよ。さぁ、それでは……勝ちに行きましょう」
あの後美鈴と走っていって、なんとかギリギリ開始には間に合った。……もうこの時点で無理、死にそう。 - 180二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 21:53:43
美鈴は広と燐羽が愛し合っていることに違和感を持つだろうな。絶対に会ったことがないはずなのに
- 181一般通貨弟(?)25/04/29(火) 22:32:04
『それでは第一走者位置について……用意、ドン! 』
パァンと高々と空にピストルの音が響き渡る。そして、最初の三人が一斉に走り始めた。……やっぱり一組のアンカーは咲季、か。まぁ、こっちのアンカーだって佑芽だし……姉妹対決、だね。
「へへっ、案外すんなり行けるもんだねー。はい、リーリヤ! 」
「受け取ったよ、清夏ちゃん! 」
一組の最初は清夏で、圧倒的な差をつけてリーリヤにパスをした。……これは、清夏だけじゃなくてみんな共通する事だけど……日々レッスンしてるアイドルなだけあって、全員とてつもなく早い。当たり前に50メートル7秒台はあるくらいに早い。
私は確か10走目だから……あと少しか。それで、千奈にバトンを渡す。よし、行ける。
「見てて、りん──っ!? 」
少しずつ、少しずつ、レーンに向けて歩いていく。そして、次の走者が走ったら私もレーンに並ぶ、そうなった時だった。……どこからか、メキメキと言った音が聞こえてくる。音のする方に目を向ける。
「足が……」
すると、私の足がヒビで覆い尽くされて……ぽろぽろと、崩れ落ちていっていた。……え、何これ。わかんない。ダメだ、今はそんなこと考えてちゃダメだ……ダメ、なのに! 苦しい。胸が張り裂けそう。痛い。
「ひろちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!!!! 」
「……佑芽」 - 182一般通貨弟(?)25/04/30(水) 00:47:10
「大丈夫ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!」
……佑芽が、私の名前を叫んでくれた。大丈夫って、力強く叫んでくれた。
「篠澤さん!! 大丈夫ですわ!! 私に任せてくださいませ!! 」
千奈が、任せてって叫んでくれた。……できる。大丈夫、これは……幻。ほら、足を動かせる。歩ける、走れる。……大丈夫、私ならやれる。
「はい! 篠澤さん! 」
「うん、貰った……よ」
私の前の生徒から、確かにバトンを受け取った。そして……私は、走る。 - 183二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 09:38:04
ほ
- 184二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 11:21:15
広篠澤大丈夫かよ
- 185一般通貨弟(?)25/04/30(水) 17:34:17
「はっ、はっ……」
私の前の子がなんとか少し差を付けてくれたおかげで、私でもまだ三位は保ててる。けど、そろそろ体力がきつい……
「篠澤さん! あと少しですわ! 頑張ってくださいまし! 」
「千奈、パ」
言いかけた途端、今度はバトンを握っている腕が砂のようにさらさらと崩れ落ちていく。
……………………
「っ、けど今は関係ない! 千奈! 」
「確かに受け取りましたわ! 篠澤さん!! 」
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
走り終える。走った際の疲れか、精神的なものか、はたまたその両方か。過呼吸になって上手く息ができない。……視界が、ぼやけてくる。
「……」
「す、清夏ちゃん! 広ちゃんが! 」
「えっ嘘広っち!? リーリヤ! あたし保健室まで運んでくるから、千奈っち達に伝えといて! 」
「うっうんわかった! 」 - 186一般通貨弟(?)25/04/30(水) 21:25:25
──ちゃん、ろちゃん……広ちゃん!
「……佑芽? 」
「あっ良かった、目覚めた! 千奈ちゃん! 目覚めたよ! 」
「まぁ、ほんとですの!? 良かったですわ……もう、心配したんですのよ? 」
「ごめん。……体育祭、どうなった? 」
佑芽に強く呼びかけられて目を覚ます。……目に入ってきたのは、橙と黒に包まれた保健室、それから佑芽と千奈。……私、どのくらい寝てたんだろう。
「あたし達の、勝ち。勝ったよ、お姉ちゃんに」
「あの時の花海さんは凄かったですわ! 途中、転んでしまいましたのですけれど……まさかのそこから地面に手を着いてバク転でゴール! 咲季お姉様とかなりギリギリな勝負でしたわ」
「ふふ……そっか」
「この後みんなで打ち上げ行こーって話になってるんだけど、広ちゃんは来る? 」
「……私はいい。ちょっと、したいことがある」
……私が眠ってる間、ようやく頭の整理が着いて……確信を持った。
「したいこと、ですの? 」
「うん」
「わかりましたわ! 」
これは、夢なんだと。 - 187二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 21:42:17
気づかないほうが幸せだったかもね...
- 188一般通貨弟(?)25/04/30(水) 21:48:04
あの後佑芽と千奈が寮まで一緒に来てくれて、その後に二人は打ち上げに行った。……私が打ち上げを断った理由。私が今、したいこと。それは……
「さ、それじゃ……」
──死のうか。
いつまでもいつまでも、こんな夢を見ていたくなんてない。だから早く、死んでしまおう。死んで、こんな夢から覚めてしまおう。
「……うん、やっぱり」
包丁を握ってまたぽろぽろと崩れかけていた私の腕を切り落とす。……痛みはなく、ただ目の前に私の腕が転がっているだけ。……うん、やっぱりこれは夢だ。紛れもなく、夢だ。
「夢だけど……ちょっと怖い、かも」
残った片方の腕がぷるぷるとずっと震えている。……その気持ちをグッと堪えて、私は自分の胸に包丁を突き刺して……抜く。……戻りたくないな。あの現実に。燐羽がいない現実に。
──戻りたくないな、人殺しの私に。 - 189一般通貨弟(?)25/04/30(水) 23:15:24
「……覚めちゃった」
しばらくして、視界が真っ暗になる。そしてゆっくりと、私の目に明かりが入ってくる。……カーテン越しの、薄暗い水色の明かりが。
「あ、れ……? 」
腕が、冷たい。布団も濡れてる。少し目が痛い。……私、寝ながら泣いてた? っていうか今何時なんだろ。
「……やっと、起きたね。千奈」
「麻央……なんで」
少しそんなことを考えていると、どこからか聞きなれた声に呼びかけられる。声のするほうを向くと、ソファに座ってる麻央と、麻央の膝でゆっくり寝てる千奈がいた。……なんで、麻央が? もう来ないって言ってたのに。
「もう二度と顔を見たくないって」
「ちょっと待って。ボク、そんなことは言ってないよ? あの時ボクは、『また落ち着いた頃に来るよ。その方が話しやすいだろ? 』って言ったはずなんだけど」
「……そっか」
……私の聞き間違い、か。あの時は息もできないくらいに燐羽の死が信じられなくて……そのせいか全部全部自分を悪く言うように勝手に変換されちゃってたのか。
「今何時? 」
「今は五時だよ」
「私、どれくらい寝てた? 」
「一応ボクは毎日来てたわけじゃないから明確ってわけじゃないけど……大体一ヶ月くらいかな」
「千奈は? 」
「毎日来てたみたいだよ。手毬と一緒に。時々ボクも一緒することがあった感じ」
「そっか。……麻央、莉波は大丈夫? 」
「……あぁ。咲季達のおかげで莉波も戻ったみたいでね。多少心配はしていたけど、前ほどひどくはなってないよ」 - 190一般通貨弟(?)25/05/01(木) 00:51:26
「ね、麻央」
「どうしたんだい? 広」
少し、話していて気になったことがある。それは……
「私の事、恨んでる? 」
「……さぁ、どうだろうね。キミの回答次第かな。今は……そこまで恨んでないよ」
「千奈が起きたら、全部話す」
「自分から話してくれるのかい? 」
「うん。……一ヶ月、私も色々あったから」
全くと言っていいほど、麻央から敵意を感じてないこと。それどころか、むしろ私に優しさを向けてくれている。……不思議と、話したいと思ってしまった。
「そうかい。……それじゃあ、千奈が起きるまでゆっくり待とうじゃないか」
「うん、そうだね」 - 191二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 06:16:56
ほ
- 192二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 09:44:03
保守
- 193一般通過弟(?)25/05/01(木) 16:17:35
「……んぅ、おはようございますわ」
「起きたみたいだね。おはよう、千奈」
「おはよ……千奈」
それから二時間ほどして七時頃。千奈がそっと起きた。どうしよう、気まずい。……あの日以降一度もちゃんと喋ったこと無かったし……
「しの、さわ……さん? 」
「二時間前にようやく起きた感じだよ」
「千奈……毎日来てくれて、ありがと」
「お礼を言うのであれば、手毬さんに言うべきだと思いますわ」
「あれ……目覚めてる」
「噂をすればなんとやら、だね」
ドアががらりと音を立てて開けられる。そこからこっちにやって来たのは。
「手毬……」
「久しぶりだね、広」
手毬だった。……そういえば麻央が手毬も毎日来てるって言ってたっけ。
「充分に揃ったことだし……そうだね、話してもらおう、と行きたいところだけどその前に。千奈、何か言いたそうだね」 - 194一般通過弟(?)25/05/01(木) 16:27:26
「……大丈夫ですわ、麻央お姉様。篠澤さんの口から、全てをお話ししていただくことが本題なのでしょう? 」
「ん、そうだね。……という訳で広。話してくれないかい? 大丈夫だよ。誰もキミを責めたてるつもりはない。ただ、全部を教えて欲しいだけだから」
「うん……わかった。それじゃあ……話す、ね。まずは……星南の事、だけど。星南は、本当は私達が殺した訳じゃない。自殺だった。……私と燐羽も、止めようとした。けど、止まってくれなかった」
恐る恐る、記憶を昔に戻していく。そして、話していく。まず、私達の始まりから。あの日、いつも通り燐羽に歌の稽古をつけてもらっていた。そしたら帰りに首を吊ろうとしている星南がいた。私と燐羽はやめるよう呼びかけた。……でも、それは無意味だった。
うっすらと、わかっていた。わかってしまった。星南の気持ちが。その私達の呼び掛けが無意味だったわけが。 - 195二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 21:15:19
実は燐羽も生きているんだよね?そうだよね?(懇願)
- 196一般通過弟(?)25/05/01(木) 23:08:13
頭の中で声が響く。あの時の星南の、酷く冷えきった声が。
『逆に聞くけれど……それを何故あなたたちに教えないといけないのかしら。教えたとして、私に何の得があるのかしら? それを知ったとして、あなた達には何の得があるのかしら』
「あの時からきっと、こうなるのはわかっていた。誰に話しても救われることなんてない。話した所で誰にも得なんてない。……だからなのか、強く止めることが出来なかった。理由だけ聞いて、そのまま見殺しにした」
「……あの時。燐羽が青ざめてたのは」
「うん。あの時の燐羽には刺激が強すぎたからだった。麻央から逃げるように走ってったのもそういうこと」
「それで……その後は? 」
「埋めた。すぐパニックになるのを避けるために。……燐羽程では無いけど私も死体を見るのは初めてで、正気を失いそうなくらいに精神が乱れていた。……まともな判断ができなかった。だから……通報でもなく、星南が死んだ理由を暴こうとした。そうしてしまった。だから私は、道を踏み外した」 - 197一般通過弟(?)25/05/01(木) 23:31:46
「……篠澤さん、大丈夫ですの? 」
「うん、大丈夫。このままでいい……このままがいい」
声が震える。涙が零れ落ちてくる。……でも、これでいい。これがいい。この涙は、拭いたくない。これは、私の懺悔だから。 - 198二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 06:20:15
保守
- 199一般通過弟(?)25/05/02(金) 14:49:46
「……続けるね。埋め終わった時、それを莉波に見られていた」
「莉波は、そんな早くから……」
「私は焦って、何も出来なかった。そしたら……燐羽が莉波を脅し始めた」
あの時。私が、落ち着いて行動できていたら。それかあの時もう既に捕まっていれば。こんなことには、なってなかったのかもしれない。
「麻央、訂正する。燐羽があの時青ざめていたのは……死体を見たから、だけじゃない。莉波を脅したから。脅してしまったから」
「確かに、納得がいくね。あの日から、莉波はずっと様子が変だったから」
「……それから燐羽と約束を結んだ。『星南の事が解決したら、一緒に自首をする』って。最初は、ただそれだけだった」 - 200一般通過弟(?)25/05/02(金) 15:16:27
「でももう、そこから後には引けなくなった。引くことなんて、できなくなった」