【閲覧注意】【SS】恋人同士の星南さんと学Pの終わりと始まり

  • 1◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:06:32

    P星南イチャラブSSです。
    新しいお話と、えっちな話を書き進めているので投下しながら書いていきます。
    読んで頂けたら嬉しい限り!
    ※閲覧注意なのは二つ目の話からです

  • 2◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:07:40
  • 3◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:10:53

    ひとつめ「恋人同士の星南さんと学Pの最後の日の話」です。
    渋に先にアップしてたので、読んで頂いた方もいるかもですが
    ↓↓↓以下、連投↓↓↓

  • 4◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:12:11

    静かな夜、俺は自分の部屋にいた。
    同じ建物なのに、星南さんの部屋とはずいぶん違って。殺風景で彩りのない部屋。
    俺がハーブティーを口にする音だけが、わずかに聞こえる空調の音に重なっていく。
    ――おいしい。
    けれど、だんだん冷めてきてしまった。少し冷房を弱めようか。
    青りんごのような香りが鼻を抜けていく。カモミールだったのだろうか。
    ぼーっとしたまま、適当に選んでしまって、何を飲んでいるのかハッキリと覚えていない。
    名前も効能も曖昧なまま、漫然と口へ運んでいく。なんだか、申し訳ないことをしたな、と心の中で反省した。

    今は、8月。
    梅雨も初夏も去った頃。刺すような日差しから身を隠し、夜になれば蒸し暑さから逃げ回るような、そんな頃。
    星南さんの最後のライブを前日に控えた俺は、空調の効いた自室で一人、その事実を噛み締めていた。

    明日からの三日間が、彼女のライブツアーの最後の日程。それで、十王星南は引退する。
    もちろん、完全に芸能界から消え去るということではない。引退後は正式に100プロ所属のプロデューサーとなる。
    だから、別に星南さんがファンの前から完全に姿を消すわけではない。
    ましてや星南さんが、俺の目の前から居なくなるなんてことは、全くない。

    彼女はアイドルとしての人生と引き換えに、俺というたった一人の人間が欲しいと言ってくれたからだ。
    彼女は、俺のすべて……なんてもののために、アイドルとしてのすべてをなげうつと言ってくれたからだ。
    ――幸せだ。とても幸せなことで、その約束だけでも、二人で一緒に大変な決断をしたというのに。
    それでもやはり、この日を迎えて。
    その決断の重さ、彼女がアイドルを引退するということの重さを、改めて感じていた。


    ―――

  • 5◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:12:37

    時計を見ると、もう22時を回っていた。
    星南さんは、明日からのライブに備えて、もう眠った頃だろうか。
    もう、ずいぶんぬるくなってしまったハーブティーを口に運ぶ。
    このお茶も、空調の効いた部屋も、様々な身の回りのものが、十王家に用意されたものだ。
    ただ居候しているわけでは無いのは自信をもって言えるし、この待遇こそが、星南さんをプロデュースすることの重みともいえるけれど。
    それだけの投資をされて、愛情と期待を込められて、大切に育てられてきた完全無欠のトップアイドルが、十王星南なのだ。
    そのプロデューサーとして、相応しい仕事を心がけてきた。……つもり、だけれど。
    彼女のプロデューサーではなくなった俺は、いったい、何者なのだろうか。

    ……わかってはいる。彼女がアイドルではなくなっても、彼女はプロデューサーとしての人生がスタートするように。
    俺も彼女のプロデューサーではなく、プロデューサーとして次のステップへと進む時が来たというだけだ。
    彼女との心の距離に不安なんて無いし、1年以上暮らしていれば屋敷の方々ともずいぶん親しくなった。
    それなのに、なぜ、自信が湧かないのだろうか?
    自信が無いくせに、"こんなもの"を用意して。
    自分の存在意義を問われることが、いまさら恐ろしいからって。
    言い訳のように用意した"こんなもの"を、星南さんに渡す資格があるのだろうか。

    「……星南さん、俺と……」
    それを、渡す瞬間を思い描き、ぼそぼそと口に出してみる。
    けれど、どこか空虚で。現実味のない言葉が星南さんの心に響く自信は、やっぱり湧かない。
    何故だろう。
    まだ、わからないけれど、諦めようとは思わない。
    あと二日しか猶予がないこの問題を、何としても解決して。
    俺は、胸を張って彼女に"これ"を渡すのだと、弱気な自分に言い聞かせた。

  • 6◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:12:56

    その時、部屋をノックする音が鳴り響く。
    まさかと思って、咄嗟に”それ”はキャビネットへと隠した。見られてしまっては、元も子もないから。
    どうぞ、と声を掛けてみると、ゆっくりと扉が開き、可愛らしい顔が覗き込んだ。
    俺の担当アイドルで、俺の大切な恋人の、星南さんだった。
    「……ごきげんよう、先輩」
    少しだけ、抑えた声で。しかしどこか喜びを含んだ声色でそう言いながら、彼女は部屋に入ってくる。
    夏になってからは寝るときにずいぶん薄着で。今の格好も、ショールを取ってしまったら彼女の素肌が見えすぎてしまう。
    人に見られる仕事をしている彼女だから、あまり忌避感が無いのかも知れないけれど。
    ……それにしても、ちょっと誘惑が強すぎて、毎晩のように困り果てている。

    星南さんが入ってきたことで、淀み停滞していた部屋に、彩りが蘇るような感覚を覚えた。
    彼女の顔を見る。不安げな様子をにじませながらも、部屋に入ってからは柔らかな笑顔が隠せていない。
    可愛いな、と思う。
    彼女は、ただそこに居るだけで世界を美しいものに変えてしまえるのだな、と。
    こらえきれない笑みをこぼす彼女に心を落ち着かせながら、そんなことを考えていた。


    ―――

  • 7◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:13:29

    先輩の部屋を訪れる、少し前。
    ライブ前日の夜。
    本当はもう寝ていないといけない時間に、私はベッドの中で、どうしても眠れないでいた。

    どれほど大きな意味を持つライブといえど、やるべきことは決まっている。
    何度も何度も練習した最高のパフォーマンスを、たくさんの仲間達と共に見せつけて。
    私の培ってきた、アイドルとしてのすべてをぶつけて、ファンのみんなに感動を与える。
    それがきっと、私というアイドルの物語を終わらせる、集大成のステージになるはずだから。

    それだけ。本当にそれだけなのだけれど。
    ……心は、まだ追いつかない。
    アイドルではなくなった私は、一体何なのだろう?
    未だ先輩に及ばない能力の私が、"元トップアイドル"という肩書でプロデューサーを名乗ることが、恐ろしい。
    何年も彼の仕事を傍で見続けてきたからこそ、分かる。プロデューサーという立場の重責。
    一つ一つの判断が、アイドル一人ひとりの人生を左右するということ。

    なれるのだろうか、彼のように。
    物心ついた頃から、自分の人生をみんな使って、ようやくトップアイドルになれたような凡人の私が。
    私の憧れるプロデューサーのように、本当になれるのだろうか。

    不安を拭い去るように、枕に顔をこすりつけた。
    明日のライブよりも、その後の自分のことを心配してしまうことが、なんとも情けない。
    だって、ずっと前から約束していたことなのに。
    私は、彼一人を選んだのだから。
    大勢のファンではなく、私を育ててきてくれた人達ではなく、彼一人が欲しいのだと。

    その決断に後悔は無い。
    でも、怖い。勇気がほしい。明日に踏み出す勇気が。

  • 8◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:13:49

    時計を見た。時間は、もう22時を回っている。
    先輩と、おやすみのキスをしてから、もう1時間以上経ってしまった。
    「……起きてるかな、先輩」
    誰に聞かせるでもない、小さな呟きを漏らしながら身を起こす。
    そうして声に出せば、体は自然と動き始めるから。
    彼に会って、勇気をもらうために動き始められるから。

    彼が眠っていたら、それはきっと運命だ。これはきっと、私一人で立ち上がらないといけないという運命。
    けれど、もし彼が起きていたとしたら。それもきっと運命だから。
    二人寄り添って、優しく手を握って。
    そして私だけが知っている、優しくあたたかい唇で、勇気をもらうの。

    まだ起きているか分からないのなら、少しでも早く動いたほうがいい。
    そう思い立って、さっとシーツを跳ね除けて枕元のショールを肩にかけた。
    そのままの格好……夏の薄着だと、ちょっと肌が出すぎて、はしたないから。
    そして、私はスリッパをぱたぱたと鳴らしながら駆け出した。
    彼の部屋を目指して、運命を掴み取るために。


    ―――

  • 9◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:14:23

    そして私は、彼の部屋に来た。
    眠っているかもしれなかった彼は、特にベッドにいる様子もなく起きていて。
    少しだけ慌てたような顔をしていたけれど、どうしたのだろうとは思ったけれど。
    テーブルについてお茶を飲んでいる程度には、夜を満喫している様子だった。

    ――起きていて、くれた。
    思わず、笑みがこぼれてしまう。だって、さっきも言ったでしょう?
    これってきっと、運命だものね。
    自分でも笑ってしまうくらい、にこにこした顔が抑えられないまま、彼に歩み寄る。
    先輩がくすっと笑ったのは、突然現れた私が、お間抜けな笑顔を崩さないでいるから?

    ふと、彼のそばへ行こうとした足を止めて、ベッドに向かう。
    今は彼と隣に座りたい気分だったから。
    こんな気分のときはベッドに座って。相手が座ったなら、何も聞かずに隣へ寄り添うって、秘密のルール。
    「こんな遅くに、ごめんなさいね。 明日はライブだと分かっているのだけれど……」
    私がベッドに腰掛けながら、そう話しかけていると、彼もすっと立ち上がってベッドへと歩み寄ってきた。
    一度は乗らないようにと言われたベッドだけど、"そういうこと"じゃなければ良いってことになって。
    今はもう、彼と一番心を近づけるための、とっておきの場所になっていた。

    「構いませんよ、俺もなんだか眠れませんでしたから」
    そう言いながら、彼はベッドを揺らして私の隣に腰掛けた。
    とても近くなった彼の存在感に、どきりとする。もう、恋人になって半年以上経つというのに。
    私は今も変わらず、ちょっとしたことで彼を近くに感じたくて。彼に対する、些細な気づきが魅力的で。
    いい大人なのに、子どもみたいに何度も胸を高鳴らせて。
    私は、なんて素敵な恋をしているのだろうって、毎晩のように思ってきた。

    ほのかに香る彼自身の香りが、私の胸のざわめきを少しだけ落ち着かせてくれる。
    私は、隣に座った彼の肩に頭を乗せた。ちょうどいい高さで、私専用って感じが、なんだか素敵。
    「あなたも不安?」

  • 10◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:14:42

    そう聞くと、はい、とだけ答えて私の手に触れた。
    彼の手は、決して震えてはいないけれど。冷たくて、寂しげで。
    彼の不安も、嘘偽りないものだと確信できるくらいには、弱々しい手だった。
    彼にも、伝わっているのかしら。私の不安と、怖い気持ち。

    「とても不安です。 自分が、何者でも無くなるかのようで」
    私に触れていた彼の手を、優しく握ってあげる。
    きっと、伝わっている。ここでは、隠し事は禁止だもの。
    「そう……あなたも、一緒なのね」

    彼も、同じ不安を抱えていた。
    このライブが終わったら、私がアイドルを引退したら。
    "自分たちは、何者なのか"。

    プロデューサーとしては、まるで気が合わないのに。
    こんなところは、本当によく似ていて。不意に、くすっと笑いが溢れてしまった。
    「ふふっ、ごめんなさい。じゃあ、ね――」
    彼から頭を離した。静かに振り向くと、彼も私を見ていて。
    おやすみなさいって、さっき言ったのにね?なんて、わざわざ口にはしないけれど。
    彼と目が合うだけで、私の大好きな人と再会できた幸せを感じられて……何度だって、恋をしてしまいそう。

    そんなことを考えていたからか、もう神妙な顔なんて、これっぽっちも出来なくて。
    なんだかちょっと、うっとりとしてしまいながら、彼に体を寄せた。
    「二人で、勇気を出すのはどう?」
    彼の手を、握ったり、さすったりして、弄びながら伝えた。
    きょとんとした顔の彼を見ていると、楽しくなってしまう。
    ごめんなさいね、私が先に言ってしまって♪
    「先に、言われてしまいましたね」

  • 11◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:15:09

    そう言ってはにかんだ先輩は、空いた手で私の手を優しく掴んだ。逃さぬように、とは違う。
    私が不安に揺れないように、と。私をここに、繋ぎ止めてくれるために。
    だから私も、きゅっと力を込めて、握り返した。
    その冷たい手に、私の温度を伝えるために。彼の心を温めてあげるために。

    彼とともに、少しずつ顔を近づけていく。
    今日は互いを慰める日でも、甘やかす日でもないから、二人で一緒に近づいていく。
    触れる直前まで、目を合わせたまま、少しずつ。

    彼の熱っぽい吐息が、私の唇を撫で回すような距離で、私たちは一度立ち止まった。
    彼の顔が近くて、ずっと見ていたいって思う。大好きな人の顔だから、見ているだけで幸せだもの。
    かっこいいな、先輩。その目、突き刺すように鋭い目もできるのに。私には、いつも優しい目をして。
    私に勇気、くれるの?なんて、甘えたことを思ってみたりして。
    キスのたびに、あなたと顔を近づけるたびに、こんなみっともないことを考えているなんて。
    あなたに知られてしまったら、大変ね?

    吐息が混ざり合い、互いの唇を湿らせるほどに焦らされた私たちは、ようやく目を閉じた。
    もう、焦らされすぎて。
    我慢なんてできなくなっていた私たちは、目を閉じた瞬間、食らいつくように距離を詰めて。
    彼と私の潤んだ唇は、何の抵抗もなく絡み合った。

    むき出しの心が、弱さが、彼と私の唇を通じて触れ合っているようだ。
    少しずつ位置を変えたり、滑らせたり。余すところなく、彼の唇を堪能する。
    「んっ……は、ぁ……」
    熱い吐息が漏れてしまう。
    ぬるぬるとした感触が、得も言えぬ いやらしさを感じさせて、背筋がぴりぴりと痺れ始めた。

  • 12◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:15:55

    彼の吐息が、熱い。
    私も顔が熱くて、目が潤んできてしまって、泣きそうになってしまう。
    どうしてこんなに幸せなの?
    どうしてこの人とのキスは、不安も、怖さも、時間すらも忘れさせてくれるの?
    そんなの、ずっとずっとキスして欲しいって思ってしまうじゃない。
    ずっとキスしていてくれたら、私……今すぐにでも、ぜんぶ捧げてあげてもいいくらい、幸せな気持ちになれるのに。

    「っはぁ……ん、む……」
    ばかみたいね、そんなことまで思い込んで。
    でもね、彼にはまだ、一度も言っていないけれど。あなたと、唇で噛むように絡ませているときって。
    あなたとの間に生まれた幸せを、二人で一緒に食べているのかな、とか。
    もっともっと、って。私の心を手繰り寄せたいっていう、あなたの可愛らしい独占欲なのかな、とか。
    色んなこと、考えているのよ?
    でも、言えないわよね。だってそんなこと言っちゃったら……あなたってすぐ、いけない気持ちになってしまうのだもの。

    幸せな時間だな、と思う。
    彼に求められることも、彼を求めていることも、ぜんぶぜんぶ幸せ。
    手を握り合っているから、彼を求めるには唇しかなくて。そんなもどかしさだってスパイスになって。
    それに、全然いやらしくなくて、とっても優しいキスをしてくれる彼が、たまらなく素敵。
    今にも割れてしまいそうな心を包み込むような、優しい優しいキス。

    何度も向きを変えては、吐息を混ぜ合い、また絡まり合う。
    ずっとそんなことをして、私たちは何度も愛し合う。
    独りよがりな愛情の捧げ合いではなくて。傷の舐め合いなんてものでも決してなくて。
    ぴりぴりとした背筋の感覚と共に、ただ幸せを感じ続けるような、そんなキスだった。

    ふと、不安も恐怖も、すっかり溶け出していっていることに気がついた。
    そうだ、何者でもないなんて、そんなわけがない。
    だって私は"それ"になるために、何もかもを手放す覚悟をして、手に入れたのだもの。
    だから、不安も後悔もいらないんだ。

  • 13◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:17:37

    私は、今までもこれからも。このライブの千秋楽を迎えて、トップアイドルではなくなったとしても。
    彼の、たった一人の恋人なのだから。

    ふと、彼の顔が見たくなって。私は唇を、そっと離した。
    ちゅっ、と弾けるような音がしたのは、きっと彼が欲張って私を欲しがったから、なんて言い訳を考えたりして。
    そんなことを考えながら、はぁ、と吐息が漏れた。いやらしいキスをしたわけでは無いけれど、熱くって、うっとりとした吐息。
    ぽーっとした頭で、ふわふわとした心地で、彼の顔を見た。
    いつもの名残惜しそうな顔と、けれどさっきまでの不安げな様子はない、あなたの顔。
    ほっとした。あなたも私もきっと、もう何も怖くないのね。

    「……ふふっ、キスを怖がっていたなんて、嘘みたい」
    怖い、なんて考えていると、不意にあのときを思い出して笑ってしまった。
    あのときは、キスが怖くて……どきどきし過ぎて、死んじゃうんじゃないかって、怖くって。
    でも、そんなのは杞憂で。私と彼は、もうキスなしじゃ居られないくらいに夢中になって。どうしてだろうって、何度も思うのだけれど。
    「あなたと唇を触れ合うだけで――私、こんなに幸せなのにね」
    きっと、それが只々幸せなことなのだと、知ってしまったから。その証拠に、あなたと離れたあとも、唇のやわらかな感触は残っていて。
    こんなにも、胸が温かいわ。

    自分でも驚くくらい、柔らかな笑みが溢れてしまう。
    握っていた彼の手を、撫でるように両手で愛でてあげた。
    ……もっと、欲しいな、あなたが。
    これ以上は別に、絶対必要なことではないから。本当はもう、寝ないといけないのに。
    でも、ちょっとだけ欲張りたい。
    もっともっとあなたに触れて、あたたかい気持ちになって。
    いっぱい幸せになってから、眠りたい。

    そんな気持ちが伝わったのか、彼は私の手を静かに離すと、その手を私の腰に回した。
    「まだ、足りないでしょう?」
    さっきまでの情けない顔はどこかに仕舞った彼が、すまし顔でそう言うから。
    私は、それがなんとも可愛らしく思って。何も言わずに、ぎゅっと抱きしめ合うことにした。

  • 14◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:17:54

    ―――


    抱きしめる直前、星南さんの顔を見た。
    とても穏やかで、柔らかで、優しい恋人の笑顔だった。
    星南さんは意外と勘がいいから、俺が物足りないって気持ちが ばれていたのかも知れない。

    ふわり、と彼女の香りに包まれる。
    彼女の肩からショールが落ち、むき出しの彼女の腕が首に回された。
    瑞々しい感触。腕だけではない、抱き締めた全身に彼女の感触がする。
    華奢なのに柔らかで、可憐なのにしなやかさがあって。
    シルクのように艷やかで柔らかな金髪が、優しく頬をくすぐっては、くしゃりと髪を絡ませて身を寄せ合う。
    服越しに伝わる彼女の鼓動が、温かな体温が、優しく俺の心を解きほぐしてくれる。

    なんて、幸せなんだろう。愛する人がいて、愛してくれる人がいて。
    たった一度のキスで、自分が何を不安に思っていたのかも、すっかり忘れてしまいそうなくらいで。
    その安らぎに、俺はようやく理解した。
    いや、むしろ当たり前のことだった。何も変わらないんだ、俺たちは。

    だって、俺は。
    俺が十王星南のプロデューサーでは無くなったとしても、彼女がアイドルを引退したとしても。
    彼女の、たった一人の恋人なのだから。


    ―――

  • 15◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:18:15

    先輩と抱きしめあっていると、彼は優しい声で囁いた。
    「星南さん、今日は一緒に寝ませんか?」
    そう言われて、えっ、と声を漏らして、咄嗟に体を離してしまった。
    あの、彼を甘やかした日以来は一度もしていなかったのだけれど。
    しなかった理由も、なんというか……彼のためでもあるような、私のためでもあるような。
    とにかくそういう、複雑な事情がある行為だ。

    「それは、ダメではないけれど……」
    具体的なことはよく分からないけれど……私、今日はこんな薄着で。
    そんな私を抱きしめて、同衾なんてしたら、悪いことをしてしまいそうにならないの?
    今日は、そんなつもりじゃないってこと、あなた本当に分かっているわよね?
    ……なんて、ちょっとだけいじけたような目で彼を見てしまう。
    そんな様子の私を見た彼は、ぷっと吹き出しながら、違いますよ、なんて言って。
    「最高のコンディションで、朝を迎えるためです」
    そんなことを言うものだから、私は呆気にとられてしまった。

    呆気にとられながらも、なんだか不思議と納得してしまう。
    だって、眠れないほどに追い込まれていた私たちは、この一時間ほどの逢瀬ですっかり心が軽くなっていて。
    それならば、明日から私の最後の大仕事が待っているのなら。
    このままずっと一緒にいて、十王星南として史上最高のベストコンディションにもっていけば、なんて。
    ばかみたいな理由を、私まで思いついてしまったから。

    つい、くすくすと笑ってしまった私は。
    それなら仕方ないわね、と彼に言いながら、ずり落ちたショールをベッドに放り投げた。
    「きっと、素敵な朝になるわ、先輩」

    立ち上がった彼よりも先に、ベッドに寝転んでしまう。
    薄着で、ちょっとだけはしたないけれど、今日くらいは構わないでしょう?
    だって、恋人と一緒に眠るだなんて、とっても素敵だもの♪
    あなたの温もりが楽しみで……ついでに、腕枕なんてしてもらおうかしら、なんて考えながら。

  • 16◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:18:36

    ふと、ベッドに手足を放りだした私の体を、ちらちらと見ている彼に気がつく。
    ……やっぱり、これだけはちゃんと言っておかないと。
    そう思って、彼の腕を掴んだ勢いでベッドに引き込んだ。
    隣に寝転ばせようと思ったのに少し失敗して、私に覆いかぶさる形になったけれど、まぁいい。
    ぐい、と彼の襟元を引っ張って、鼻がつきそうなくらいの距離で、彼に囁く。
    「少しくらい触っても、怒らないから」

    咄嗟になにかを言おうとした彼の唇を、私の唇で塞いであげた。
    ほんの一瞬のキスだけれど、彼の言葉を失わせるのと、困ったような顔をさせるのには十分だったみたいで。
    普段と何も変わらない、とっても愛しい彼の顔を見られた私は、はにかんでしまうのを抑えきれなかった。

    やれやれとでも言いたげな顔をする彼を、からかうように笑いかけながら。
    私は、隣に寝転ぶ彼の腕を枕にした。
    明日の自分はきっと大丈夫。そんな自信が湧いてくる。
    私をふわりと抱きながら眠ろうとする彼の、優しい体に包まれていれば、きっと。
    私は、最後まで駆け抜ける勇気が持てるから。

    そうして、私たちは眠りについた。
    穏やかに、愛しい恋人の体温と柔らかさを感じながら。
    最後の時を、迎えるために。


    ―――

  • 17◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:19:06

    ――そして、三日後。
    星南さんの引退ライブ、その千秋楽の当日。
    星南さんの最後のステージが行われている。

    先日の悩みなんて嘘だったかのように、完璧なステージだった。
    見るものすべてを圧倒し、魅了し。
    無遠慮に、無防備に、その美しさと可憐さを誰も彼もに振りまいて。
    鍛え上げられた体で、磨き上げられたダンスで、人々を釘付けにして。
    彼女の輝きの奔流のような歌声は、聴衆を虜にして。

    泣いているのは、ファンだけではない。共演者もスタッフも、皆涙を流している。
    最後の最後まで、その素晴らしいパフォーマンスは陰りを見せず。
    アイドルであることに何もかも捧げ、積み上げ続けた人生を感じて、人々の胸を打つ。

    間違いない。彼女こそが、世界一のアイドルだった。

    何年も傍で見続けてきた、何年も傍で憧れ続けてきた、俺にとっての夢であり、最高峰のアイドル。
    その、至高のアイドルのステージはもう、アンコールを終えて。
    最後のMCが行われていて。
    間もなく、終わりの時を迎える。

    最後まで、見届けないと。
    この舞台袖で、プロデューサーとして、その最後の瞬間まで。
    決して、目を離してはいけない。


    ―――

  • 18◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:20:17

    ――最後の、MCが終わった。
    涙を拭うこともできないまま、ファンのみんなに、お別れをして。
    一番星として切り拓いた、この道を。たくさんの後輩たちに、受け継いでもらって。
    私は、アイドルとしてやるべきことを……すべて、やりきった。

    舞台袖に捌けると、プロデューサーが待っていた。
    私は彼に手を引かれ、楽屋へと向かう。これはいつもの私たちの流れ。
    まだ、私はアイドルと私の狭間にいるから、彼とは話さない。
    だって、鳴り止まないファンの歓声が、共演してくれたみんなのかけてくれた言葉が。
    まだ耳から離れないし、まだ、放したくないから。

    楽屋までの、僅かな道ゆきも。
    絶えず誰かが私に声をかけてくれて。
    そのどれもが、とてもとても素敵なもので。
    私は、こんなにもたくさんの人達に支えられてきた、愛されてきたのだと。
    深く、深く心に染み渡っていく。

    彼らを置いていくことは、とっても苦しいのに。こんなにも胸が締め付けられるのに。
    こんなにも、涙が止まらないのに。寂しいけれど、悲しい気持ちなんてなくて。
    それはきっと、私がちゃんと最後の瞬間まで、アイドルで居られたからだ。
    アイドルとして生まれ、生きてきた私が、その最後を華々しく終わらせることができたから。
    だから私は、この涙を拭ってはいけない。
    私に関わってきたすべて人たちからの愛だから。最後の一滴まで、無駄にしてはいけない。

    早く、彼に伝えたい。
    この気持ちを、私の心から溢れてやまない愛を。
    だって、この中にはちゃんと、あなたの愛もたくさん詰まっていて。
    今までありがとうって、ちゃんと伝えないといけないから。
    そんな思いで、私は自分の楽屋に飛び込んだ。
    もう待ち切れない私が前に出て、彼の手を引いて。

  • 19◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:23:57

    「プロ、デューサー……」
    飛び込んですぐ、彼の方を振り向いた。
    いつものライブ終わりの楽屋と同じで、彼が居て、私が居る部屋。
    今日のことを振り返って、そして次の話をする場所。
    ――でも、もう。"次"の話は、無いのよね。

    幸せと、寂しさと、ぐちゃぐちゃになった感情が私の動きを止めてしまった。
    彼に言いたいことはたくさんあるのに、言葉が出てこなくて、嗚咽で声が出なくて。
    そんな私の、汗でぼさぼさの髪を、彼はその手で優しく撫でてくれた。
    「……あ……っ……うっ……」
    ありがとうって、言いたいのに、嗚咽で言葉は遮られてしまって。
    もどかしくて、でも、言ってしまったら、先に進んでしまう気がして。
    まだ、言いたくなくて、何度も何度も言えなくなってしまう。

    私を撫でてくれるのは、いつも私を支えてくれていた、あの手。
    優しくて、力強くて……ときどき、嫉妬深くて。
    でも、この手が私を手放さないでいてくれたことが、幸せだった。
    この人が、私のプロデューサーでいてくれたことが、本当に幸せだった。
    「星南さん……最高の、ステージでした」
    今にも泣き出しそうな顔のあなたを見て、心から思う。
    このライブが終わって、私を迎えてくれるプロデューサーが、あなたでよかった、と。

    「プロデューサー……ありがとう」
    いつものすまし顔なんか出来ないくらい、胸がいっぱいになっている姿の彼に。
    そんな愛おしい顔をした彼の胸に、私は勢いよく飛び込んだ。

    私を受け止めた彼は、よろめくこともなくて。
    まるで、私が飛び込むと分かっていたみたいに、しっかりと受け止めてくれた。
    そういう、お見通しみたいなことをするから。いつもなら、嫌いって言ってしまっていたけれど。
    今は、そんな子どもみたいなこと、これっぽっちも思わない。

  • 20◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:24:16

    「プロデューサー、私ね、とっても幸せ」
    今までの人生を振り返って、今この瞬間が最も幸せだと。心からの言葉を伝える。
    物心ついたときから駆け抜けてきた、アイドルとしての終着点。
    大勢のファンと仲間、そして彼に支えられて昇りつめた、トップアイドルとしての最後が。
    こんなにもあたたかくて、素敵な景色であったことは、本当の本当に幸せだった。


    ―――


    「俺も……あなたをプロデュースできて、幸せでした」
    私を抱きしめる腕に、力が込められる。
    恋人としてではなく、アイドルとプロデューサーとしての、最初で最後の抱擁。
    彼のスーツを濡らしてもいい、好きなだけ汚してしまってもいい。
    今はただ、彼の腕に抱かれて。私は、この幸せなひとときを噛み締めていたい。

    ただ、静かに抱き締めあう時間が流れた。
    ずっと響いていた私の嗚咽も、少しずつ落ち着きを見せ始めて。
    その幸せな涙も、ようやく溢れることをやめた頃、彼はゆっくりと口を開いた。
    「俺は、不安でした。あなたのプロデューサーではなくなってしまった自分は、一体何者なのだろうかと」
    それは、三日前に彼と私が共有した不安。でもそれは、私と彼で共に乗り越えたもの。

    珍しい。もう解決したことの反芻なんて、あなたはそんなことしないじゃない?
    だからこれはきっと、なにかの儀式の始まりだ。彼が私のために用意してくれた、何か大切な儀式。
    「今は、違う?」
    彼の胸に顔を埋めたままで、そう返した。
    あなたは、こんなときはいつも素敵な思い出を、私にもたらしてくれるから。
    だから今日も、思惑に乗ってあげる。それはいったいどんなものかと、胸が躍るのを隠したまま。
    「はい、あなたが教えてくれました。俺は……」

  • 21◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:24:31

    私を抱く腕の力を、少しだけ緩めた彼は言葉を続ける。
    「例え何があろうとも、あなたの恋人です」
    彼が言葉にしたのは、あの時の私とまったく同じ答えだった。
    「この世にたった一人だけの、あなたの恋人なんです」
    嬉しくて、頬が緩む。同じ目標に向かって、同じ時間を過ごした大切な恋人が、私と同じ答えに辿り着いてくれるなんて。

    彼の言葉が、心地よく私の耳に響いていた。
    まるで彼と心が一つになったみたいな心地で。さっきまでの嗚咽が嘘のように穏やかだった。
    「……ええ、私も、そう思うわ。心からそう思う」
    ぽつり、ぽつりと、彼の言葉に応えていく。私も、あなたと同じ気持ちだからと。
    「はい、きっとあなたも同じ気持ちだと、信じていました」

    でも、彼の緩んだ腕は、不意に私を手放して。
    「ですから……今こそ、伝えないと」
    そう言って、彼は少しだけ距離を取った。


    ―――

  • 22◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:25:05

    星南さんを抱く腕を解いて、少しだけ後ろに下がる。
    戸惑う彼女の顔は、泣き腫らして、メイクも何も崩れていて。
    けれど、その姿こそ彼女が今まで幸せだったことの、何よりの証拠だと思った。
    ファンが、仲間が、プロデューサーとしての自分が支え続けてきた、あなたの幸せの証拠だと、確信できた。

    だからこそ、それらをなげうった彼女を、次に支えるのは。
    ただ一人の恋人のために全てをなげうった彼女を、支えられるのは。
    きっと俺にしか、出来ないことだから。

    「……たったいまアイドルではなくなった、あなたは」
    彼女の前に、片膝をつく。何度もイメージして練習した、あの言葉を伝えるために。
    怖いけれど、それは断られるかもしれないからじゃない。
    初めて想いを交わした日とは違う。想いが伝わらないかもなんて、まったく思わない。
    想いは必ず伝わる。それは、俺と星南さんの心が、それほどまでに繋っているからで。
    それを疑う余地なんて、俺たちの間にはまったく無い。

    「アイドルでもプロデューサーでもないあなたは、この世でたった一人の俺の恋人だから」
    だから、今怖いのは、上手にできるかどうかだけだ。
    俺の言葉が、仕草が、どうか星南さんの心の一番深いところに想いを伝えられるように、と。
    そんな、最高の瞬間を迎えられるかどうかだけが、俺の鼓動を速く、強くさせていた。
    だって、仕方ない。
    せっかくの、一生に一度の大切な瞬間なのだから。
    俺のとっておきの、格好いい瞬間にして……彼女にとって、最高の思い出になって欲しいから。

    「俺は、"俺と星南さん"の、新しい夢を示したい」
    あの夜は、まだ空虚な言葉だったけれど。
    その夜に気付かされた、俺だけの役割があるから。

    スーツのポケットから、"それ"を取り出す。

  • 23◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:25:19

    「星南さん」
    呆気に取られている彼女に、声をかけると、はっとした顔をした。
    けれど、開いた口が塞がらないままのようで。
    その可愛らしい姿を見て、何度目かも分からない胸の内の温かさを感じることができた。
    ああ、好きだな。
    ただ美しいだけじゃない、完璧なだけじゃないあなたが、本当に好きだ。
    だから……今度こそ、あなたを独り占めさせて下さい。

    「これからもずっと、あなたのそばに居たい」
    小箱を開けると、小さな輝きを放つ指輪が現れる。
    それは、あなたの大きな輝きには、敵わないかもしれないけれど。
    それでも、今度はその小さな輝きを、あなたの新たな道を照らす星として。
    あなたに、捧げます。

    彼女に向けて、一粒の宝石がきらめく美しい指輪を、差し出した。
    「それ、は」
    ようやく思考が追いついたであろう彼女が、口を開こうとするけれど。
    ダメですよ、と、人差し指を唇に添えて、制止した。
    俺が、最後まで言いたいんですから。

    続く言葉に思い至った彼女は、もう目尻に涙を溜めていて。
    その美しい姿を見た俺は、万感の思いを込めて。
    彼女に、すべてを捧げる約束を口にした。

    「俺と結婚してください、星南さん」


    ―――

  • 24◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:25:36

    突然、私から離れて。
    今度はどんなことを言って、驚かせてくれるのかと、思っていたら。
    そんな、こと、言うなんて。
    「――あ」
    返事をしたいのに。ずるいって言いたいのに、声が出なくて。
    声は出ないのに、視界が滲んで。流れ出た涙が頬をつたう感覚が、とてもあたたかい。

    彼の手元に光る、その指輪を理解した頃には、もう、胸がいっぱいになっていて。
    彼の伝えてくれた、その言葉を聞く前に、もう、答えなんて決まっていて。
    それなのに、何も考えられない。
    だって、そんなの。そんなのって、ずるい。
    そんなこと、私だって、あなたとずっといっしょに居たいって思っていたのに。
    "それ"はきっと、もっと先で。私が立派なプロデューサーになってからとか、そんなことだと思っていたのに。
    待ちきれなくなったら、私が言うつもりだったのに!
    あなただけ格好をつけて、そんな、素敵なことをして……本当に、ずるい。
    こんなに素敵なプロポーズ……嬉しくて、涙が止まらないじゃない。

    「――はい」
    私は、その答えと共に、左手を彼に差し出した。

    きちんと見ていたいのに、視界はぼやけてしまって。
    この素敵な光景を、一生に一度の聖なる瞬間を見届けたいのに。
    それでも涙をこらえきれなくて、顔をくしゃくしゃにしてしまう。

    そっと、彼が箱から指輪を取り出して、私の左手の薬指に嵌めた。
    素敵。とても、きらきらしていて。
    こんなに小さいのに、その輝きは、星の輝きにも負けないみたいで。
    それはきっと、私の進むべき道を指し示してくれている彼が生み出した輝きだと、そう思えた。

  • 25◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:26:07

    彼に添えられた手を、両手で握りしめる。
    片膝をつく彼に目線を合わせるように、私もしゃがみ込んだ。
    彼と目を合わせている今、この満たされる感覚は、一体何なのだろう。

    初めて、彼と想いを交わした日のことを思い出す。
    二人で涙を流しながら、すべてをなげうってあなたが欲しいと宣言した日のことを。

    初めて、彼とキスをした日のことを思い出す。
    弱さをさらけ出した私たちが、初めてのキスを捧げ合い、愛し合った日のことを。

    初めてのお忍びデートで手を繋いだ日も、初めて一緒のベッドで眠った日も。
    今までのぜんぶを、思い出していた。
    それはきっと、そのどれもが、彼と私が歩み続けてきた、一生に一度の大切な一歩だった。

    「私も、あなたと結婚したい」
    ぎゅっと握った彼の手に、涙をこぼしながら、思いを込めて返事をする。
    「だから、これからもよろしくね。……私の、婚約者さん」
    そして今日、このときも。
    私たちは、とても、とても大切な一歩を踏み出した。


    ―――



    ――それから。
    時間なんて存在しないかのように、私たちは愛をささやきあっていた。
    再び立ち上がって、彼に身を預けて。彼に、肩を抱かれて。
    私は、何度も何度も左手の薬指を眺めては、その根本に輝く光に見惚れていた。
    この世で私だけが貰える、たったひとつの婚約指輪。

  • 26◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:26:30

    「ねえ、プロデューサー?」
    彼の胸元で、そっと顔を見上げて語りかけると、彼は少しだけ困った顔をした。
    もう自分はプロデューサーじゃない、なんて言いたげなのは分かったけれど。
    今日が終わるまでは、まだ良いわよね。
    「あなたって、素敵ね」

    彼の首元に、息を吹きかけるようにそう言うと、彼はぷいっとあちらを向いてしまった。
    「ありがとうございます。勇気を出した甲斐がありました」
    ふふっ、可愛い人。そっぽを向いたって、あなたの鼓動は速くなっているのは丸聞こえで。
    耳が赤くなっているのも、お見通しなのよ?

    そうして、終わること無く彼と睦み合っていると、不意に楽屋の扉をノックする音が響いた。
    ――そういえば。どうして、誰も来なかったのだろう。
    自惚れているわけではないけれど、引退ライブ後の楽屋なんて、当たり前のように誰かが来るはずだもの。
    私だって、先輩アイドルの引退ライブのときは、すぐにでも声をかけたくて楽屋に走っていったもの。
    まさか、と思ってプロデューサーの顔を見上げると、彼はいつものすまし顔に戻っていた。

    「藤田さんたちですね。無理を言って待って頂いてましたから、入ってもらいましょう」
    普通の顔で、そんなことを言っているうちに、扉をノックする音の後ろでたくさんの声が聞こえ始めて。
    聞き慣れた、たくさんの可愛らしい声が聞こえてくる。
    どうにも色めき立っている様子なのは、扉を開けなくても分かった。
    「なら、そろそろ離れないと……ちょっと、プロデューサー!」
    こんな、うっとりして彼に密着しているところを見られてしまったら、十王星南としての威厳もなにも無くなってしまう。
    だから早く、彼から離れないといけないのに。
    どうして、そんなに強く肩を抱いているのよ!

  • 27◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:26:44

    「丁度いいじゃないですか、皆に見せつけてあげましょう。あなたの新しい道を」
    そう言った彼は、扉に向かって、どうぞ、と大きな声で言った。
    「何よ、それ……!んっ……!」
    咄嗟に、彼に唇を奪われる。
    ああ、ダメ、ダメよ!そんなことしたら、私。
    あなたから、離れられなくなってしまうのに!

    少しだけ強引な彼のキスで、私は抵抗できなくなって。
    彼の胸元を押していた手は、彼のシャツを握りしめるだけになった。
    彼のキスに身を委ねてしまった体より、あとに観念した私の気持ちは、恥ずかしいやら嬉しいやらで。
    誰が楽屋に入ってきたかなんて、もう気にしていられないくらいには、彼とのキスを喜んでしまっていた。

    なだれ込む騒音のあとには、黄色い歓声が聞こえてきた。
    悲鳴のような声も、驚くような声も。
    そのどれもが、私の思い出にたくさん刻まれてきた、よく知る声で。
    ああ、それはきっと、あの子と、あの子と……。
    みんなみんな、来てくれたのね。

    このキスが終わったら、みんなにたくさんお礼を言うから、待っていて。
    この指輪の話を、たくさんしてあげるから。
    だから、もう少しだけ。
    私の大切な、やきもち焼きの婚約者が、私を独り占めしたって安心するまで。
    もう少しだけ、このままで。

  • 28◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 12:28:35

    ↑↑↑以上↑↑↑
    ひとつめ、ようやくプロポーズするお話でした。
    次から婚約者編です!
    次話ストック途中までなので、途中から少しペース落ちますが最後まで書き切ります!

  • 29二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 12:31:20

    ありがてぇ
    砂糖を蜂蜜で塗り固めた物を急激に摂取した気分だぁ……

  • 30二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 12:41:15

    もう結婚し……してた!!!!!
    これ親愛度いくつで見れるんですか!!!!!!!!?ありがとう!!!!!

  • 31◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 13:34:02

    >>29

    >>30

    ありがとうございます!

    婚約したしアイドルもやり遂げたので、あとはもう何のしがらみもなくイチャイチャするだけで...

  • 32◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 13:35:39

    では、ふたつめ「結婚予定の星南さんと学Pの初めての日の話」です!
    ↓↓↓以下、書けたら順次投下していきます↓↓↓

  • 33◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 13:38:20

    静かな夜。
    先輩と二人きりの夜。
    窓の外に見える月が、ぼんやりと空を照らしている。
    私たちは、畳に敷かれた布団の上に座っていて。私は、傍らにいる彼の肩に頭を乗せていて。
    静かな時間の流れとともに、私たちは、窓の外に見える月を眺めていた。

    一棟貸し切りの温泉宿は、本当にこの一帯に私たちしかいないような錯覚を覚える。
    千奈に紹介してもらったとはいえ、こんな素敵なところに先輩と二人きりの旅行だなんて、と心躍る気持ちだ。
    9月のはじめというのも、丁度いい季節だった。まだ夏の名残が強く残り、人々が秋を待ち焦がれる季節だけれど。
    温泉に入っても湯冷めしないし、夜になれば少しだけ涼しくて、私はけっこう好きな季節。

    私の引退から、一週間ほどが経った。
    先輩……婚約者の彼と私が、ここ九州へ来ているのは、彼のご両親への挨拶と婚約の報告のため。
    現役時代に一度もお会いできていなかったというのもあって、満を持しての訪問で。
    彼そっくりのご両親に、ちょっとだけ笑いそうになってしまったけれど。
    ――でも、これで本当に決まった。
    私と彼が、お互いの家族みんなに認められて、結婚するということが。

    なんだか、不思議な気分。もう、結婚間近みたいな雰囲気で、みんなが私たちに結婚の話をするけれど。
    私としては、ようやく彼との交際を隠さなくてもよくなって、本当の恋人関係がスタートしたような気分だから、ちぐはぐで。
    まだまだ恋人としてやりたいこと、たくさんあるから。それをしてからじゃないと、きっと未練が残るもの。
    実際に結婚するのがいつになるのかは決めていないけれど、それまではまだ、恋人として満喫しないとね。

    それで、ご挨拶は初日に済ませたから、今日は二日目。
    ちょうどいいからと、私たちの慰労会も兼ねることにした旅行は、彼の実家ではなく倉本が所有している温泉宿に泊まることになった。
    今日はもう、お昼に温泉を満喫して、夕食をとったから。私たちは浴衣を着て、部屋でくつろいでいるところ。

  • 34◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 13:38:45

    そんな、くつろいでいるときに。私はさっきからずっと顔が熱い。
    そわそわして、落ち着かない。旅館の浴衣だから、いつもの彼の匂いもしなくて。
    いつもと違う場所に彼と二人きりでいるということが、妙に実感できる状況なのも拍車をかける。
    「……ねえ、先輩」
    先ほどから仏頂面で何かを誤魔化すように、私の手を撫でている彼も、どうやら冷静ではない。
    彼の手は、あたたかいというよりは熱い。汗ばんで、しっとりとしていて、何か言いたいことがあるのが丸わかり。
    ……分かってる、その理由も、彼の気持ちも。
    だって私も、たぶん同じことを考えてるから。

    鼓動が速くなる。
    私はもうアイドルじゃなくて、私たちはもう婚約していて。
    他の誰も来ない場所で、今まで我慢してきたことを、なにも我慢する必要がなくなってしまった。
    なくなってしまった、から。それはもう、誰も止めてはくれない、ということで。
    「……先輩? あとは、どうするの?」
    彼に撫でられている手を もじもじと動かしながら、上ずった声が出る。
    彼にしがみついて、どきどきする気持ちを打ち明けて、一緒に慌てふためけばいいものを。
    こればかりは自分から誘うのは恥ずかしいからと、そそのかすような言い方をしてしまったせいで、思い切りよくいけなくなった。

    いま抱きしめあったら、私の緊張の何もかもが彼に筒抜けになってしまう。
    ばか、私。 すまし顔なんてするから、今更あとに引けなくなったじゃない。
    本当は今すぐにでも、彼の腕に抱かれて、彼の鼓動を聴きたいのに。

    結局、一人で勝手に慌てふためきながら、部屋を眺めた。
    宿に戻った頃には、もう布団が敷かれてあって。私たちはもう、今日の予定は全部終わっていて。
    あとはこの部屋から繋がる、私と先輩だけが入れる温泉があるだけ。
    もう、選択肢は残されていない。 あとは、いつ始めるかと、誰が始めるか。
    ただの恋人でもなく、アイドルでもなくなった私と彼の、ずっと我慢してきた"それ"を、どうやって始めるのか。

  • 35◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 13:39:48

    今日、この二人きりの場所で、次の一歩を踏み出したいと思っているのはきっと、彼だけでも私だけでもない。
    なのに自分勝手な私は、なかなか返事がない彼をじれったく思って、肩に頭を乗せたまま彼のほうを向いた。
    責めたり媚びたりはしたくないから、できるだけ普段通りの声色で、彼を急かすために。
    「今日……する、の?」
    脇腹を ちょんと突いてみると、彼はぴくっと体を揺らした。
    ねえ、どっち?
    勇気、でた?
    私はね、もう、いつでも。

    そんなことを二度、三度と繰り返していると、錆びついたように固く首をひねりながら、彼が振り向いた。
    珍しく泳いでいる彼の目は、ちょっとだけ怖いような、いやらしい目つき、のような……。。
    「……決心がつきました」
    彼の、胸に響く低い声が聞こえて、どきっとしてしまう。
    えっ、と声が漏れて、彼の肩から頭を離した途端、彼に勢いよく肩を掴まれた。
    いつもの、私にやさしいキスをするときの掴み方とは違って、少し力が強くて。
    この、ぎゅっと力がこもっているのは、どうして?

    引退前に、私が無自覚に彼を誘惑してしまっていたときも、本当はこんな感じで私を捕まえたかったのかな。
    私の顔……唇をちらちらと見ている彼は、緊張しているみたいに見えるけれど、とても熱っぽい視線で私を見ていて。
    あの頃はそんな顔も隠して、私に対する欲求を我慢していたのかと思うと、少しだけ申し訳ない気持ちにもなってしまうけれど。
    今はその、食い入るような視線に射竦められている私は。
    自分も覚悟を決めるときがきた、と、本能で理解できた。
    「今日はもう、途中で終わりませんよ」

  • 36◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 13:40:09

    彼の言葉に、胸が高鳴った。
    今まで、あんなにも私を求めてくれていた彼に、ようやく捧げられるんだ。彼のすべてが、ようやく私のものになるんだ、と。
    「私も、今日なら……できる、と思う」
    言葉は弱気になってしまったけれど、ちがう。今日、するんだ、絶対。
    宿に戻ってきて、布団が敷かれていることに気がついてから、ずっとそんな、そわそわした気持ちだったから。
    期待と不安がアンバランスで、なかなか覚悟が決まらなかったけれど。
    あなたが先に言ってくれたから、私も勇気を出せる。

    表情が固くなっていたであろう私を見て、彼は少しだけ優しさを取り戻したように、微笑んだ。
    「怖くなったら、ちゃんと言って下さいね」
    彼の、その言葉を聞いて、少しだけほっとした。肩を掴む手は力強いけれど、彼は彼のままだと分かったから。
    だから、彼に何をされてもきっと受け止められる。
    もう、私だって覚悟を決めたのだもの。

    でも……ちょっとだけ、怖いから。
    これだけは、言ってもいい?
    「あの、ね、先輩」
    もじもじと、手元で指を絡ませる。伝えなければならないことを、彼に伝えるために。
    「私、こういうこと、本当になにも、知らなくって」
    ちらちらと、上目遣いになってしまいながらも、なんとか言葉を繋げていく。
    強がっても仕方ないのは、分かっているから。
    知ったふうな口を聞いて、痛い目を見るのは嫌だから。
    彼と一緒に、素敵な思い出にしたいから、素直にならないと。

    「男の人が、何をして欲しいかとか、全然分からないから」
    千奈に借りたコミックで、それらしい展開は見たことがあるのだけれど、肝心なところはなにも描かれていなかったし。
    彼以外の体なんて見たくないから、巷に溢れているえっちな本とか、えっちな動画とか、見る勇気は湧かなかったし。
    教科書で習った知識も、どこか他人事のようでまったくイメージは湧かないまま生きてきてしまったから。
    「……私に、教えて、ね……えっちなこと」
    だから、あなたが全部、私に教えてちょうだい。

  • 37◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 13:44:34

    そう言うと、一瞬、沈黙が走り。
    先輩が、私の肩を掴む手に力を込めたと思うと……私は布団の上に、押し倒されていた。
    「あぅっ!え……っと……?」
    ちょっと力が強くて、小さく悲鳴を上げてしまう。
    何が起きたか一瞬分からなかったけれど、前の前の光景を見て、すぐに状況は理解できた。
    余裕なんてどこにもない、私のことが欲しくてたまらないって顔の彼が、私を見下ろしていたから。

    彼は私の肩を押さえたまま、覆いかぶさるような体勢で、私を押さえつけていて。
    潤んだ目で息を荒くして、私を我が物にしようとしか考えていないような、そんな顔。
    「あなたはまた、そんなことを言って誘って……」
    その言葉と、強い欲望が覗く彼の顔に、私が何かを言おうとするけれど。
    「悪い女性ですね、本当に」
    そんな暇もないくらい唐突に、彼は私の頭と手首を優しく掴んできて。
    私は、強引に唇を奪われた。

    「んっ……む……っ……!」
    彼に押し倒されたまま、奪われた唇を必死に動かす。彼の熱に応えるために、彼の欲望を受け止めるために。
    でも、ちょっと待って、もう始まるの!?
    キスから始まるのかな、っていうのは、なんとなく思っていたけれど。いきなりこんな、力強く求められるなんて思っていなかったから。
    教えてって、ちゃんと言ったのに。 もしかしてこれは、体で覚えろということ?
    どうしよう、お昼に温泉に入ったけれど、あれからしばらく経っているし、汗も流していないし。
    変な匂い、しない?大丈夫?彼の汗の匂いは、大好きだから大丈夫。
    いえ、そういうことではなくて。私の体はいま、彼に抱かれる準備は、できているの……?
    突然押し倒されて、頭の中はこんがらがっていて。
    明らかに普段よりも熱のこもった口づけに、呼吸も乱れて、私は彼にされるがままだ。

    荒れた熱い吐息は彼とともに混ざり合い、浴びせ合い、お互いの唇を湿らせていた。
    ぴちゃ、ぴちゃ、と、湿った唇が絡み、弾けるようにいやらしい音を立て続ける。
    みっともなくて、いつものふんわりとした優しいキスなんて欠片も感じなくて。
    私たちの唇はもう、摩擦を失ってぬるぬると絡まり、吸い付き、余す所なく自分のものだと主張し合うだけだ。

  • 38二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 13:51:48

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  • 39◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 14:08:45

    押さえつけられた体は強張ることをやめ、抵抗なく彼を受け入れることができていた。
    頭を掴んでいる手も、彼の想いの強さだなんて思えて、愛おしいとまで思う。
    でも、そんなに押さえつけなくたって、逃げたりしないのに。
    そんなにまでして、私に離れて欲しくないの? 本当、その独占欲の強さは、困ったものね?
    手首だって、そんなにぎゅって握らなくても大丈夫。絶対にあなたを押し返したりしないわ。
    だから……その、そんなに、がっつかなくても……。
    なんだか、その……体が、むずむず、するから……。

    ちゅる、ちゅる、と、湿り気を帯びた音がキスのたびに鳴っている。
    こういうキスのときは、いつもそうだ。
    汗と、少しの唾液が潤滑油になって、私たちのキスがどんどんいやらしくなっていく。
    ぴちゃぴちゃと、吐息と唾液で濡れた唇が、私のリップクリームをぜんぶ流していって。
    私と彼の唾液がほんのわずかに混ざり合う、いやらしいキス。
    きっとこれ以上のキスなんて、存在しないものと思えるような。今までの私たちにとって、いちばん心に踏み込んだキス。

    私は、彼に身を任せていた。
    次に自分が何をすればいいかなんて、本当に分からなかったから。
    ふと、彼が唇の動きを止めた。それに気がついて、少し遅れて私も唇は離さないまま、動きを止める。
    どうしたの?キス、もう終わりなの?
    ……私は、もっとキス、しても良いのに……。
    唇を重ねたままだったから、名残惜しく思ってしまって、私だけもう一度彼の唇を愛で始める。
    まだ、もっとキスしましょう、って彼にせがむように。

  • 40◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 14:09:47

    すると、彼は突然、唇を重ねたまま。私の下唇を、ぺろりと舐めた。
    「…………っ!? 何、し……んぅっ!」
    声を上げようとするけれど、彼は私に喋らせまいと、再び強く唇を重ねてきた。
    「んん……!」
    つい、口を固く閉ざしてしまうのだけれど、彼の舌は止まらない。
    私の唇の先を、ちろちろと舌先でくすぐるように舐められていて。
    私はその、未知の感触にぞわぞわとした感覚を覚えてしまって。
    抵抗も虚しく、少しずつ口を開いてしまっていた。
    なんで、これって何!? 私の唇を舐めるなんて、それも必要なことなの!?

    目を開けると、彼は目を閉じて、必死な様子で。
    彼に唇を舐められたり、いつもより少し激しくキスをされるたびに、私も背中のぞわぞわとした感覚が強くなっていく。
    その感じで、なんとなく……分からないけれど、わかった。
    彼はいま、私を必死に求めていて。
    彼に求められていることに、私の身体は、喜んでいるんだ。

    だから私も、先輩のことを求めていい。
    今はきっと、求め合う時間、そういうことなのね?

    口を、緩やかに開ける。彼の舌も、その様子に気がついて、私の下唇の内側をちろちろと舐めるように動き始めた。
    くすぐったくて、そわそわする。頭がぴりぴり痺れる感じで、気持ち良い。
    私はそんな彼の舌を、私を必死に求める舌を受け止めてあげようと思って。
    私の舌先で、彼の舌に触れた。
    「――っ!」
    彼の、くぐもったうめき声が、唇越しに感じられる。
    私の舌に驚いたのか、彼の舌は一瞬動きを止めた。
    ふふっ、なあに?あなたから仕掛けてきたのに、驚いたの?

  • 41◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 14:12:12

    可愛い、と思って、ちろちろと彼の舌を舌先で弄ぶ。
    少しだけざらざらとした感触が舌先を刺激して、ひと舐めするたびに頭にびりびり電流が走ったみたいな刺激があって。
    私は、ほんのわずかな時間で、このキスに夢中になっていた。
    これ……とっても、素敵かも。
    いつものキスが一番、あなたとの深い触れ合いだと思っていたのに。
    こんな、あなたを直接感じるような……内側の、触れてはいけないところに触れているような感覚を味わえるなんて。
    知らなかった、こんな距離感。 こんなに気持ちいいことが、あったなんて。

    「はぁっ……ん、ん……」
    先輩と舌で触れ合って、唇を貪って、また舌先で触れ合って。
    ぐちゅ、ぐちゅ、と。今まで聞いたことのないキスの音が、私たちの間に響き渡る。
    私の口で溢れそうになっているのが私の唾液なのか、彼のものなのか、分からないくらいに粘膜が絡み合っていて。
    口からよだれをこぼすなんて、みっともないこと出来ないって思った私は、彼と隙間なく唇を合わせることにした。

    じゅぶ、じゅぶ、と、彼と噛み合わせた口の中で、いやらしい音を立てて唾液が混ざり合う。
    吐息なんて出せないくらいに口をくっつけては、一滴も逃さないように、彼と二人でかき集めるように口内を舐め回した。
    舌先は彼の口の中に完全に入り込んでいて、同じように私の口の中にいる彼の舌は、かき集めながらもぬるぬると絡みあう。
    頭、くらくらする。
    酸欠?わからない。でも、口の中、舌も、気持ちいい。
    それに、私が何をしたって、決して逃げられないもの。あなたに、頭も手首も掴まれて、押さえつけられているから。

    彼と、私の剥き出しの何かが、ぐじゅぐじゅと音を立てている。
    いやらしい音で、耳をつくたびに脳は痺れ、重ね続けてきた私の仮面がぼろぼろと崩れ始めている。
    じゅる、じゅる、と、卑猥な音がかき集めた唾液から鳴り響いていて。
    こんなに出たの?って、彼を問い詰めたい、変な気持ちになっていて。
    二人で一緒に、その音をことさら大きく鳴らしながら。
    私と彼は、口の中を満たしそうになる私たちの唾液を、じゅるる、と音を立てて一緒に飲み干していった。
    「んっ、……ごくっ!……ん……っはぁ……」

  • 42◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 14:14:17

    こんな、歪んだ欲望を曝け出すような行為が、欠片も嫌じゃないと思ってしまう。
    全然嫌じゃない。むしろ、背徳的な何かが私を染めていって、私の体はどんどん、ぞわぞわしていって。
    頭が痺れるような、腰に響くような、不思議な感覚を味わいながら。癖になってしまいそうな、悦楽を受け入れ始めていた。

    私の蕩けた顔を気に入ったのか、彼はまた、私の口の中を犯し始めた。
    私も、彼の慰み者のようになった舌を差し出しては、彼と絡ませあう。
    ぐちゅ、ぐちゅ、と、いやらしい音に聴覚はすべて支配されていて、他の音なんて何も聞こえない。
    こんな下品な音を立ててキスをするなんて、思わなかった。
    私はトップアイドルだったのに。キスどころか、彼と出会うまで男性と手を繋いで歩いたこともなかったのに。
    恋人と、みっともなく口を開けたままキスをして、舌とよだれを絡ませて。
    私って、えっちな子だったのかな?
    みっともない子だったのかな?先輩、嫌じゃない?こんな子でも、好きでいてくれる?

    飲み干しては、息継ぎをして、また舌を絡ませる。
    もう何度目かも分からないほど、そんなことを繰り返しているとき。
    彼は不意に、私に向かって舌を伸ばしたまま、私から唇を離した。
    私と彼の舌先に、糸を引いたよだれが一筋、いやらしく繋がっていて。私は、それを切りたくなくて、舌を伸ばし続けていた。
    「っはぁ……あっ、あっ……」
    寂しい。私の中から彼がいなくなって、置いていかれたような感覚に陥って、怖くなる。
    彼と、舌先だけでも触れていたくて、みっともなく舌をつんと伸ばして彼を求めるのに、彼はそこから動いてくれなくて。
    だめ、行かないで。もっと、私の舌に触れていてちょうだい。
    あなたの、優しい舌で、もっと私を弄んでほしいの。

    糸が切れないように、口を閉じられなくて、言葉が出せなくて。先輩に、どれだけ視線で懇願しても、近寄ってくれない。
    「あっ、まっへ、やらっ、やらぁっ」
    離れたところで、私を誘うように差し出された舌が、私の高さからはギリギリ届かないところで止まっていて。
    何度も何度も、がんばって舌を伸ばすのに、彼は意地悪なところで止まっているから、全然届かなくて。
    もどかしくて、早く彼に届きたいのに、泣きそうになって。どれだけ舌を伸ばしても、届かない。
    「やらっ、ぃひわるっ……!」

  • 43◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 14:30:41

    舌が攣りそうなくらい、必死に必死に彼に届くように伸ばしていると。
    彼は、その糸を切らないように、ゆっくりと私へと降りてきて……また、舌先で優しくキスをした。
    やっと届いた彼の舌に、私は涙を流して喜んで。頭が真っ白になるくらい嬉しくて。
    彼の舌先が、ちろちろと私の舌をくすぐって舐め回すのに呼応するように、私も彼の舌を絡め取っていく。

    唇が触れない距離で、舌だけを絡め合う。
    こんなキスが、あったなんて。私、なにも知らなかった。
    「あ、あ、あっ……!」
    伸ばした舌だけが、ひたすら彼に弄ばれて、喘ぐような声を出してしまう。
    そのまま舌だけに吸い付かれてしまったりして、気持ちよくて……腰をよじったり、体が変な反応をしてしまう。
    ぞわぞわが下半身を痺れさせるから、それを逃したくて、何度も何度も太ももをこすりあわせたりして。
    その度に、ぐじゅぐじゅとした感触は襲いかかってきて。
    快も不快も入り混じったような感触のそれは、小水でも経血でもない、何かで濡れた私の下着。
    これが”そう”だとは思っていなかったけれど、えっちな気持ちになったら出てくるものだというのは、もう分かってる。
    引退前から、彼と深く触れ合うたびに下着を濡らしていた原因。
    自分に"そういう感情"があると思っていなかったから、気がつかなかったそれ。

    いま私たちが、どのくらいえっちなことをしているのかなんて、分からないけれど。
    彼と舌を絡めるたびに、腰がぞわぞわして、ぐじゅぐじゅになった下着がまた、濡れそぼってしまうから。
    いま、きっと、かなりえっちなことをしている気がする。
    太ももをこすりつけて、ぞわぞわを逃がそうとしたときに、下着から、ぐじゅ、って音がするのが、恥ずかしい。
    彼に、聞かれてないわよね? こんなえっちな音、聞かれてしまったらと思うと、恥ずかしくってたまらない。
    これは、私のせいじゃないから!
    あなたがえっちなことばかりするから、勝手に出てるだけだから!

  • 44◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 14:32:18

    けれど、濡れた感触を気持ち悪いと思っている暇もないくらい、愛しい先輩に口と舌をいじめられていて。
    そんな不快感は、すぐに忘れてしまう。
    再び彼と重ね合わせた唇の奥で、彼から流れ込んだ唾液を絡ませて。
    私の唾液を彼の舌が舐め取って、そんなことをずっと繰り返していて。
    頭がぼーっとするまま、舌をちろちろってするのも、気持ちいいから、やめたくなくて。
    私の、大事なところがむずむずして。何度も太ももをこすり合わせて、ぐじゅってなるのが気持ち悪いって思って。
    外からやってくる刺激が多すぎるから、もう、わからない。

    足を大きく開くのはみっともないし、彼に気づかれたら恥ずかしいしで、私は何もできなくなってて。
    どうしたらいいの?って、彼を頼りたいのに、押さえつけられた私は何も出来ないから、ちょっとだけ怖くなってしまって。
    ぽろぽろと涙をこぼしながら、ただ彼にされるがまま、彼に舌を差し出し続けていた。

    ぐちゃぐちゃの時間が、どれだけ続いているのか分からない。
    口も下着も、ぐじゅぐじゅ、ぐちゃぐちゃ、只々みっともない音を垂れ流すようになっている。
    「ん、ぶ……ごくっ……っはぁ……ん、じゅる……!」
    彼に舌を吸われるたびに、ぎゅって内股になって。
    彼とじゅるじゅる舌を絡めるたびにむずむずして、また太ももをこすり合わせて。
    もう、むずむずを逃さないと耐えられないから、彼が見ていないと思って、みっともなく足を開いた。

    開いた途端、彼が片足を私の脚の間に差し込んできて。
    その、恥ずかしい体勢に驚いて彼を制止しようとしても、押さえられた体では何もできない。
    「んぶっ!…………っはぁ!ま、待っへ……!」
    私が口を離して彼を諌めようとしても、また彼に舌を捕まえられて、弄ばれてしまう。
    慌てて太ももを閉じても、彼の脚はもう、完全に私の脚の間に入っていて。器用に私の太ももを引き離したりして、私の脚を強引に開かせた。

  • 45◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 15:38:42

    濡れた下着が外気に晒され、ひんやりとした感触が、どのくらい濡れそぼっているのかを教えてくれた。
    こんなに、出ているの?私、変じゃない、わよね?
    「ま……っへ……」
    止めたいのに、あし、開かれるの、恥ずかしいから止めたいのに!
    口の中、気持ちよくて、逃げられない。ひんやりするのも、さっきとは違う感覚で、またぞわぞわする。
    私は、何度も彼の太ももを自分の太ももでぎゅっと挟んで、その動きを止めようとした。
    止めようとしたのに、汗だくになっていた太ももは、摩擦なんてなくて。
    下手に力が入った彼の太ももが、ずるずると、追い詰めるように。
    私の、大事なところに向かって、こすりつけるようにずり動いている。

    私の大事なところに、先輩の体が当たってしまう。そんなの、人生で一番ってくらい恥ずかしい。
    恥ずかしすぎるから、どきどきが怖くなって、彼の脚を挟む太ももに力をいれるのだけれど。
    ぞわぞわに弱らされた私の力ではどうにもならず、私の心の悲鳴も彼に届くことはなくて。

    無慈悲にも、彼の脚は私の大事なところにたどり着いてしまった。
    彼の脚が、めちゃくちゃに濡れそぼった下着と、その奥にある場所を一息に押し込んだと思うと。
    ぐじゅり、と音がした。

    「はあ、ん!――く、うぅっ!」
    そんな、気がした瞬間、私は頭に、快楽が突き刺さったような強い刺激を受けた。
    とてつもない、まったく知らない初めての快感に、体の反射を抑えることができなくて。
    舌を絡ませようと開けていた口から、今までで一番大きな喘ぎ声を出してしまった。

    体中に電気が走ったように、全身がこわばる。
    ばかになっちゃいそうな、すごい感覚で、歯を食いしばってしまった。
    体は押さえつけられているから、大きく跳ねることは出来なくて、逃げ場を失った衝動が私の体をぶるぶると震えさせてしまう。

  • 46◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 17:06:47

    なに、いまの?
    いまの声、私なの?
    ばくばくと心臓が鳴り響く。頭がきーんとして、呼吸もおぼつかない。
    幸いなのは、さっきから彼が動かないことで、それでも彼の体がいま、私の大事なところに触れていて。
    その、固く大きな太ももが私の下着を押し込んでいて、私の性器は少しだけ押し広げられるような姿をしている気がする。
    自分のものだけどまじまじと見たことなんて無いから、どうなっているのかはよくわからないけれど。
    下着越しにでも、私の性器に男性が触れたことは理解できていて。
    しかもそれは、溢れ出した自分の愛液で、ぐちゃぐちゃになっていて。
    彼の体が、ほんの数ミリでも私の膣口に侵入したという事実も想像して、私はまた、何かが漏れ出すような感覚を覚えた。

    呼吸だけは落ち着き始めるけれど、畳み掛けるような生まれて初めての恥ずかしさは、執拗に私の頭を麻痺させて処理することを諦めさせようとしている。
    彼といえば、私の痴態に夢中になっている荒い息を隠しもしないで、私の顔を、目を見つめたままだ。
    くちっ、と、私の下着から音が鳴った。
    私の性器に、下着越しに密着している彼の太ももに力が込められたから。
    ぞくぞくとした感覚が湧き上がる。恐怖のような、歓待のような、どちらともいえない背徳的な感覚。
    まだ、するの?
    言葉が出ない代わりに彼の目を見て、やめて、と。
    だめよ、と伝えるのだけれど、彼は聞く耳を持たなくて。
    それは私が十王星南でいられる最後の防壁にようにも思えたから、必死に彼を止めようとするのだけれど。
    たとえ何を言っても、私が彼に押さえつけられて、好きにされてしまうことに変わりはないから。
    私の体は、たらたらと何かを垂れ流していて。
    言葉とは裏腹に、もう彼の乱暴を待ちわびているようだった。

    ぐちゅり、と音がする。
    一度は止められていた彼の太ももが、私の性器をいっそう押し広げ、そしてこすり上げていく。
    ゆっくりとした動きに、息が荒くなる。
    彼の動きに、私の心も引きずり上げられていくような気がして、心臓が引っ張り出されるような緊張もして。
    ほんの少し動くだけで、私の体は彼の虜になっていく。愛液も、彼の太ももをずいぶん濡らしてしまっているだろう。
    こんな、みっともない。私は十王星南なのに、こんなけだものみたいに、えっちな刺激に腰を揺らして。

  • 47◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 17:08:21

    自分の、思いも寄らなかったみだらな性質に、驚きも戸惑いも隠せない。
    彼の太ももが、私の性器をぐち、ぐち、と鳴らしている間、私は無意識に腰を揺らしていて。
    "もっと気持ちいところ"を探して、彼の動きに合わせて、自分から彼に性器を押し付けている。
    「あ……ごめ、なさ……」
    不意に、彼に謝罪してしまう。みっともない自分でこめんなさい、と。あなたにこんなことして、ごめんなさい、と。

    しかし、私のそんな言葉を聞いた彼は。
    私の動き、痴態に気がついたであろう彼は、明らかに太ももの動きを激しくし始めた。
    ぐちゃぐちゃと先ほどまでの音が速度を増し、水が弾けるような音も同時に鳴り響き始める。
    まるで私の性器が、よだれを垂らして、彼に掻き回されるのを楽しんでいるかのように。
    「ふぅ゙っ……!はっ……はあ゙っ……!」

    自分でもまだ、きちんと触れたこともないのに。
    何度か自分で試そうとして、気持ちいいかどうかもよく分からなくて。
    この日が来るのも、ちゃんと出来るかなって、不安だったのに。
    それが、私。こんなに簡単に、ぐちゃぐちゃにされて。どうしてなの?私が破廉恥なの?
    それとも、彼が……私が思っていたよりもずっと、えっちな人だったの?

    私の混乱なんてお構い無しに動かれて、少しでも動かれたら、声が止められなくて。
    彼に怒ることもできないまま、私はただ、押し広げられた性器を大きなものにこすり上げられる快感に悶えていて。
    手も頭も押さえられた私は、何もかもが彼の意のままで。
    そうしている間にも、彼は私の口に舌を差し込んできて、私の舌をさらさらと撫で回していく。
    快楽に掻き乱された私の心は、そんな舌使いすら、私を癒すために撫でてくれているのだと錯覚するほどで。
    その優しさに応えたくて、夢中になって舌を動かしていた。

    先輩、こんないやらしい声を出してしまう私のこと、嫌いにならない?
    気持ちいい、みたいな感じも、ちょっと強くてこわいのだけれど。
    これも、えっちなことするのに、必要な手順なの? 私に教えるために、してくれているの?
    ……そんなはず、ないわよね。だってあなたの顔、とっても意地悪で、必死で。
    普段のクールな佇まいなんて嘘みたいに、私を荒々しく求めていて。私が喘ぐたびに、私の顔を見て、嬉しそうな表情をしているのだもの。

  • 48◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 17:09:12

    ぐちゅ、ぐちゅ、という音が、どこから鳴り響いているのかも分からなくなるくらい、ぐちゃぐちゃになっている頃。
    終わりの見えない快楽と少しの恐怖に、私が意識を手放すことを考慮しはじめた頃。
    不意に彼が、私と彼の間で混ざりあった唾液を丁寧に掻き集めたと思うと、きれいさっぱり舐め取っていく。
    そのまま、ようやく解放された唇から、ぐぽっと大きな音を鳴らせた彼は、私の性器に押し付けていた脚を離して。
    ほんとうに久しぶりに、私の頭と手首から、手を離した。

    息も絶え絶えな私は、手首のじんじんとした感覚で生を実感しながら、ぼーっとした頭のまま彼を見つめる。
    ぐい、と腕で口元を拭った彼は、そのまま私に覆いかぶさるように顔を近づけると、私の顔を横切って頬にキスをした。
    「あっ……」
    嬉しい、私に優しくしてくれるの?さっきまであんなに荒々しかったのに。
    一瞬、手のひらを返したように優しいことをする彼を、許してあげようなんて感情が沸き起こる。
    私も彼の髪を撫でて、互いを労い、この騒ぎを終わらせて次にいくのかと思っていた。
    思っていたのに、彼は突然、私の太ももを指で撫でた。

    小さく、あっ、と声が出てしまった。私の体はいま、どこもかしこも敏感になっている。
    内ももで指をすべらせるように、何かをこそぎ取った彼は、私にその指を見せつけてきた。
    てらてらと、いやらしく光る何かを指に絡めた彼は、ひどく悪いことを考えている顔をしている。
    「星南さん……これ、なんですか?」
    いやらしい目。さっきの優しさはどこへ行ったのか、私を獲物としか思っていなさそうな顔だ。
    怖い顔で私の顔を見ながら、さっきまで太ももで触れていた、私のぐじゅぐじゅした液体のことを問い詰めてくる。
    その顔が、私に真正面から向けられる欲望を丸出しにした顔が、私の心を射竦めていて。
    その顔を見ているだけで、私はまた、下着になにかを垂れ流した。

    うそ、もしかして。
    これはまだ、終わりじゃないの?

  • 49◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 18:06:12

    あの快楽が、またもたらされるという怖さに、私は絶望を隠せない。
    やっとの思いでかえってこれたのに。心がどこかへ行って、かえってこれないと思っていたのに。
    「それ、は……私の……あの……」
    ほとんど動いていないのに、くちゅ、とどこからか音がなった。
    私の体は心とは裏腹に、彼からの刺激を待ち侘びているようで。
    そうでなければ、私の性器がこんなにも濡れそぼっているわけがない。

    でも、ちがう!あなたが、私にえっちなことをするからこうなったのよ!
    私は、あなたのせいで、こんなことに……。

    先輩は私の目の前で、その液体を絡めた指を、くちくちと弄んでいる。
    私に見せつけるように、私の体を、もっともっと思い通りにえっちな体にしようとして。
    でも、彼は、その指を。
    そのまま口に入れて、"それ"を、舐め取った。

    その光景を見た私は、血の気が引くような感覚に陥って。慌てて、彼の手首を掴んだ。
    でも、彼は舐めることを止めなくて。私が掴んでいることなんて、意にも介さないくらい平然としている。
    「あっ、だっ、だめ! あなたっ! なにしてるのっ!」
    必死になって彼を止めるのだけれど、彼はずっと、私の愛液を舐め回していて。
    恥ずかしさだけで死んでしまえるなら、きっと今だと思うくらい、気が動転していた。

    ぱっと手を離すと、ひとしきり舐め取った彼は、口から指を出した。
    耳元に迫る彼の顔を見送った私は、一人恥ずかしさに耐え忍んでいる。
    どうして、そんなの舐めるの?だめよ、おなか、こわしちゃうかも……。
    そもそも、口に入れて大丈夫なものなの? わからない、それも必要な手順なの?

  • 50◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 19:15:04

    「いやらしい味がしましたよ」
    混乱している私の耳元で、ひどくいやらしい、低く脳を揺さぶる声で彼はそう言った。
    その刺激に、私がまた、全身を震わせてぱくぱくと口を動かしていると、彼の浴衣の袖が私の体を這っていく。
    今度は何を、と、回らない頭で必死に状況を理解しようとしていると、私の内ももに何かが押し当てられる感触があった。
    彼の、指だ。
    私の内ももに指を押し当てて、ずるずると少しずつ、私の下着に向かって動いていく。
    もう、何が起きるかは、瞬時に理解できたのに。
    それを止めたり、逃げる力はどこにも残っていなくて。
    私はただ、彼の指先が私に到達するまでの、ぞわぞわぐじゅぐじゅした感触が腰に響く感覚を、嫌と言うほど感じさせられていた。

    彼の指先が、私の脚の付け根に到達する。
    わざとらしく動きを止めた指は、一瞬、私の……性器の、周囲をなぞったかと思うと。
    「ここから、出ているんですよね?」
    耳元でささやき、私の下着の横から、指をすべり込ませた。

    覚悟を決める時間もなかった私は、ただ彼の肩を掴むことしか間に合わなくて。
    ぐちっ、という音がした瞬間、私は。
    初めて、むき出しの私に誰かが触れたことを感じて、目の前が真っ白になった。

    「あっ、あっ……は、あっ……」
    驚きと、快感と、恐怖と、羞恥が一斉に襲いかかって。言葉にならない声を上げたまま、口をぱくぱくと動かしていた。
    太ももでこすられるよりも、細く繊細なタッチなのに。シルクの布越しとは違う、あたたかく固い感触。
    私は、彼の指で性器に触れられているという事実を、追いつかない気持ちではなく、体で理解した。

    自分でもまだ、そういう目的で触れたことがないのに。あなたはまた、私の中に勝手に踏み込んできて。
    突拍子もないことをして、私を困らせて、あなたって本当に……わるいひと。
    私はもう、彼に膣口を触れられているから、指が入ってしまうかも知れなくて、怖くって。
    身動きがとれないのに、だらしなく脚は開いてしまっていて、恥ずかしくって。
    酸欠みたいに、乱れた呼吸が体を揺らして、その度に彼の指が私の膣口をくすぐって、怖くて。
    なのに、腰がびりびりして、苦しくて……もっと、触れて欲しいって、思ってしまっている。

  • 51二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:53:07

    保守age

  • 52◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 22:44:51

    私がまた、ぴくりとも動いていない先輩の指に、愛液を垂らしてしまったとき。
    彼はそれを、薄く伸ばすように、くちくちと音を立てて指を動かし始めた。
    「……ぅ゙っ!く、あっ……!」
    明らかに、下着越しとは異なる強い刺激が襲ってくる。
    彼は決して、膣口に指を入れるような動きをしなくて、その周囲のヒダやつるつるとした箇所を撫で回している。
    でも、そんなの、初めて男の人に触れられた私には、どの部分が触れられているかなんて、関係ない。
    愛する人の指が大切なところに触れるときは、もっとふわふわした温かい気持ちよさを勝手に想像していたのに。
    こんな、頭に突き刺さるような刺激と、腰砕けになるような痺れる感覚が同時に襲ってくるなんて、本当に知らなかった。

    先輩の指は、膣口をくちくちと音を立ててくすぐったかと思うと、ぬるっと動いてヒダの溝をなぞったり。
    ぴちゃぴちゃと、私の愛液を弾くように早くすべらせたり。ぱちゃぱちゃと、指で叩くように弄んだり。
    そのたびに私は、甲高い声を上げたり、強い刺激をこらえようとくぐもった声を出してしまったり、好き放題されていて。
    もう、どれほど愛液を漏らしているのかも分からないくらい、私はずっと、びちゃびちゃと下半身を濡らし続けている。

    何分経ったかも分からない、無限の快楽に身を任せていた頃。私の体に変化が訪れた。
    「はっ……! あっ、はっ……はあっ……! なん、か……!」
    彼の一存で不規則に押し寄せてくる未知の快楽に、得も言えぬ恐怖を覚えながらも、少しずつ心が馴染んできていたのに。
    お腹の底から何か、何かがこみ上げてくるような、腰がぞわぞわして、びりびりして、変な感じ。
    ふと、彼の指が私の膣口に、ほんの少しだけ入り込んだ感触があった。
    喉がひっくり返りそうな声を出してしまったけれど、彼はそれ以上深追いはせず。むしろ、慌てて指をどかしたような、そんな動きだった。

  • 53◆0CQ58f2SFMUP25/04/19(土) 22:58:39

    一瞬、動きを止めた先輩に、また私の膣口に、少しだけ入り込むように指を当てられた。
    けれど、彼は間違いなく、それ以上動かしていないはずなのに、彼の指は小刻みに、中へと送り込まれては戻されている。
    彼じゃない、私だ。
    私の膣口が彼の指先に、ちゅうちゅうと吸い付くように動いている気がする。
    はしたなくて、涙が出そうになった。気持ちに反して腰が浮いてしまうし、彼の指を求めて膣口がひくひくと動いているのも、自分の体だとは信じられない。
    彼は、私のその動きを見てか、わざとらしく音を立てて指を抜いた。
    ちゅぱっ、と鳴らして抜かれた指は、すぐさま私の膣口にもう一度触れて、先ほどまでとは違う動きをし始める。

    くちゃくちゃくちゃ、と少し速い一定のリズムで私の膣口を刺激してくる指使いに、私は反射的に腰をくねらせた。
    「なんか、おくっ……、へんな、感じ……あがってきて……!」
    くねらせて、浮かせて、腰のびりびりする何かを逃がそうとしているのに。
    彼は、私を執拗に追いかけては、くちゃくちゃと音を立てながら私の膣口を責め立て続ける。
    一定のリズムによる刺激は、私のこみ上げてくる何かを、腰に響く何かを、徐々に大きなものへと変化させていた。
    「やっ、ちょ、っと! なんで、なんでぇっ……!」
    必死に、腰を動かして逃げようとしているのに。
    何が起きるか分からなくて、でも間違いなく今までとは違う体の変化が起きようとしているのが怖くて。
    何度も何度も逃げようとしているのに、なんで続けるの?

    先輩の肩を掴む手が外れて、彼は私の正面に顔をもってきた。
    なにかにすがりついていないと不安になってしまうから、私はまた、彼の二の腕をがっしりと掴む。
    私のだいすきな顔が、私の顔を見つめている。きっと、自分が何をしていて、私に何が起きるのかを知っているから。
    その結果を、私がどんな痴態を晒すのかと、待ち構えている。
    「あっ、やめ、てっ! ねえ、こわいのっ、やめて、ちょうだっ……あ、うっ!」
    ひどい、そんなの、私は何もわからないのに。

  • 54二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 23:58:50

    保守

  • 55二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 07:56:46

    保守

  • 56二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 12:12:56

    保守age

  • 57◆0CQ58f2SFMUP25/04/20(日) 13:35:44

    ただあなたにされるがまま、腰が勝手に動くまま、こみ上げてくる波のようなものが、どんどん高くなってきていて。
    それをどう迎えればいいのか分からないのに、あなたは無遠慮にずっと、私のことをずっと、指でぐりぐりして。
    愛液が止まらないのは同じなのに、それどころではない何かが、明らかに近づいている。

    腰のびりびりした感覚はもう、足の先まで到達している。膣の中まで響くような、そんなびりびりとした感覚。
    私はもう、彼に見られているなんてことも忘れるくらい、その波の高さに恐怖していた。
    「もうっ、きらいっ……!きら、い゙っ……!あ、あっ、あっ」
    手を止めて欲しくて、どうすれば止めてくれるのかが分からないから、彼を突き放すようなことを言おうとするけれど。
    彼に対する罵倒も拒絶も、彼を喜ばせるだけなのは、指の動きを感じれば明らかで。
    他に手段を考えられるような状態ではない私は、もう、彼を喜ばせ続けるしかなかった。
    「あっ、あ、あっ、あっ、んあっ」
    もう、まともな声もでない。ひたすらに短く甲高い喘ぎ声を、彼の指にあわせて出すことしか出来ない。
    私はただ、小さな快感を刻まれ続け、押し寄せる快楽の波を待ち構えている。

    なにか出そう、という感覚が強くなっていく。
    おしっこが出そうな感覚に、少し似ている。でも、違うような、わからないけれど何かは出そうで。
    詳しいことは、考えてる暇もなくて。あっ、あっ、て声に私の思考も途切れ途切れで。
    押し寄せる快楽の波はもう、目の前に迫ってきている。

  • 58◆0CQ58f2SFMUP25/04/20(日) 13:41:18

    次第に、体がびくびくと痙攣し始めた。 
    ぶるぶると腰が、全身が震え、膣口の開閉が明らかに激しさを増す。
    怖くて、彼の腕を掴み直した。ぎゅっと握って、止めて欲しいのではなくて、私がどこかへ堕ちてしまわないように、と。
    彼の指は止まらない。一定のリズムは少しだけ速度を増して、ちゅくちゅくと私を責め立てる。
    早く見せろ、と。すべてを俺に見せろ、とでも言いたげな指使いは、ただひたすらに私を高みへと導いていって。
    私は、とうとう波にのまれた。

    「ふ、ぅ゙っ! くうぅ゙~っ……!」
    私は、頭が真っ白になって。
    とてつもない大声を出してしまいそうになるのをこらえて、今まで出したことがないようなうめき声を上げてしまう。
    体中の筋肉がぎゅうっと緊張して、彼の腕を掴んでいた手は、食い込むくらいに握りしめた。
    ばかになってしまいそうなくらいの刺激が脳を駆け巡って、目がちかちかする。
    胸もくるしくって、歯が割れそうなくらい食いしばってしまうほどに力を抜くことができない。

    跳ね上がった腰は彼の手を滑り上がって、びっちりと締め上げた太ももで彼の腕を挟み込んでいる。
    「〜〜っ!」
    下着を飛び越す勢いでなにかが出た。いや、まだ少し出てる。ただでさえびちゃびちゃの下着を染み出して、一体なに?
    お尻をつたって腰に垂れてくる感触と、お漏らししちゃったみたいな感じが断続的にきて。
    心が、どこかへ行きそうで、お腹の中、ぎゅうってなって、つらい。
    ねえ、どうしてあなたは、そんなにじっとしているの? 私のこと早く助けてくれないの?
    自分が彼の腕を、ばかみたいに力を込めて握っているから動けないなんて、そんなことも気付けない。
    真っ白になった頭と視界はちかちかと明滅したり、ぼやけたり、いつまでこの快楽の波が続くのかと心が震える思いだった。

    少し前までトップアイドルだったとは思えないような、くぐもったうめき声を一人で上げ続けていた私は。
    どの程度の時間かはわからないけれど、しばらく硬直していた全身の力が不意に、ふっと抜けて。
    持ち上げていた腰も、彼を掴んでいた手もぜんぶ、布団の上にばさりと落ちた。
    「は、あっ……はーっ……はぁ……」
    命があるかどうかも、分からなくなっていて、必死に、必死に酸素をかき集める。
    体は動かない。目がちかちかして、まだまだ彼の顔もはっきり見えないくらい、五感が途切れ途切れになっていた。

  • 59二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 18:56:04

    わっふるわっふる

  • 60二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 21:57:58

    保守

  • 61◆0CQ58f2SFMUP25/04/20(日) 23:27:42

    この状態がなんというのかも、正しいのか悪いのかも、なにも分からないけれど。
    何かが頂点に達したときの、全身を持っていかれるような強い快楽と、その解放の瞬間が、あまりにも刺激が強すぎて。
    私は、先ほどまでの自分の痴態と、いまの体たらくと。喉が潰れそうなくらいに喘ぎ声を上げたことを思い出して、涙が溢れてきてしまった。
    恥ずかしい、怖い、どうして止めてくれなかったの? 何度も何度も、いやって言ったのに。
    ぼーっとしたまま、彼が私に寄り添っていることは分かった。でも、それじゃ許してあげられない。
    「ばかぁっ……きらいっ……きらいよ……」
    ぽろぽろと涙を流してしまいながら、彼を何度も罵倒する私に、彼は優しくキスをしてくれた。
    頬に、温かい感触が訪れる。私を慰めたり、癒やしてくれようとするときの、とっても優しいキス。

    でも、そんなの足りない。もっともっとたくさん、優しくしてもらわないと、ぜんぜん釣り合わない!
    私の大事なところ、触っていいって言っていないのに勝手に触って、ぐちゃぐちゃにかき回して。
    指で、あんなにいやらしい音、わざと立てながら指で撫で回して、ちょっとだけ、中に入ってきたりして。
    こわかったのに、何度もやめてって言ったのに。いじわるな顔して、ずっと手を止めないから。
    とっても気持ちよくて、変な感じになっちゃって、死んじゃうかと思ったんだから!

    「うう……っく……ひぅ……」
    未知の快感に襲われ続けた記憶が湧き上がり、また怖くなってきて、子どもみたいに泣きじゃくって。
    そんな私を、彼はキスをしながら、優しく頭を撫でてくれていた。
    「すみません、星南さんが可愛くて、つい……」
    本当に、少しだけ心から申し訳無さそうな声で謝罪する彼の言葉に、ちっとも許してあげる気になれないのに。
    でも、可愛いって言ってもらえて、嬉しいなんて思ってるばかな私が、いつもより目立つところにいる。
    どうして?あんなことされたのに、いつもより彼のことを簡単に許してしまいそう。

  • 62◆0CQ58f2SFMUP25/04/20(日) 23:28:53

    彼に撫でられている頭が、ほわほわと温かい気持ちになってきて、私の心は少しずつ落ち着きを取り戻し始めている。
    「大丈夫、気持ちよかっただけなんです、怖くないですよ」
    そう言って、私の髪や頬を撫でながら、寝転んだままの私をぎゅっと抱きしめたりしてくれる彼のことが、愛しくて、恋しくて。
    力の入らない体を、だらしなく布団に投げ出したまま、私はもう、彼を許してしまいそうになっていた。


    ―――


    彼に撫でられながら、穏やかなひとときを過ごした。
    ようやく止まった涙と嗚咽に、添い寝してくれている彼も安心したみたい。
    私も少しだけ手が動くようになって、彼の体に手を添えていた。なんだか、これってとっても幸せな時間なのではないかしら。
    あんなに心が持っていかれそうになる快感のあとで、本当に怖かった快楽のあとで、本当に元通りになれるのかって不安だったのに。
    こうして彼に触れているだけで、とっても安心できるもの。
    「あのね、先輩。お願いがあって……」
    体の火照りはとれないままだから、上ずった変な声が出そうになるけれど、必死に抑えて話しかける。
    なんですか?って、いつもより少し優しい声で囁いてくれるあなたが、とっても大好き。
    でもその声の吐息で、また体がぴくっと反応してしまって。
    いま敏感だからだめ、なんて絶対に言えないから、私は何も言わずに彼の腕を少しだけつねるようにつまんだ。

    そんな私のささやかな反抗に、彼は顔をほころばせて穏やかに笑っている。
    私の額の髪をよけてくれたり、私の頬をつついたりして、いたずらなふりをして私にたくさん触れてくれる彼が、とても愛おしい。
    普段はあまり、彼に甘えすぎないようにしているから。こうやって甘いスキンシップをしてくれると、また胸がきゅってしてしまうの。
    ……でも、まずはこのぐしゃぐしゃの体を、なんとかしたい。
    「お風呂で……一度、きれいにしたいわ」
    もう体中が、汗といろいろな液体で、びしゃびしゃになってるのだもの。
    さっきの、何かが頂点に達したような瞬間に、全身から汗が吹き出してしまったし。
    いやらしいキスをしすぎて、結局首までよだれが垂れてしまったし、下半身なんてもってのほか。

  • 63◆0CQ58f2SFMUP25/04/21(月) 00:57:14

    最後になにか、びしゃっと漏らしたような、軽く吹き出したような、変な感じがしたのは何だったのかしら。
    彼の腕に阻まれたおかげか、明らかにお漏らしのような惨状にはなっていない様子だった。
    浴衣と下着はもう、見るも無惨な姿になってしまっているけれど……。
    「はい、一度さっぱりしてから、続きをしましょう」
    見ていないけれど、腕に思い切り浴びせられた彼が、素直にそう言って受け入れてくれたから。
    そのことはひとまず、自分のためにも忘れることにした。

    体をゆっくりと起こすと、予想通りの惨状が目に入ってくる。
    すっかりはだけてしまった浴衣は、上も下も下着が丸見えになっていて、はしたないなんてものじゃない。
    あまり彼に見せるのはみっともないけれど、浴衣で隠しながら、ずれたブラジャーのストラップだけを簡単に整えた。
    下は、もう濡れそぼってくたくたになっていたから、どうにもできなくて。彼の指が入り込んだであろうことは、よれたクロッチを見れば一目瞭然だ。
    自分の下半身だけど、見ていられなくて、さっと浴衣の裾で隠した。冷たい感触が太ももに被さって、少しだけ気持ち悪い。

    見ていない間は、あんなにびちゃびちゃで、ぬるぬるしていた太ももは、なんだか少しぺたぺたしている。
    その感覚が、お尻の方まで広がっているあたり、私の愛液が少しずつ乾いてきているのかもしれない。
    「こんなに、出ていたの……?」
    座り込んでいたお尻をずらして布団を見ると、おねしょのような丸いシミが出来上がっていた。
    当然、といえば当然、なのだけれど。流石に少し、恥ずかしすぎて、彼から顔を逸らしてしまう。
    私、こんなことで今日を乗り越えられるのかしら?
    だって、まだ私は彼の……男性器を、見ても触れてもいない。行為の詳細は知らないけれど、大筋は理解していて、今が序の口だというのもなんとなく分かっている。

  • 64◆0CQ58f2SFMUP25/04/21(月) 00:58:28

    先に起き上がった彼が、立ち上がりたくても膝が笑っている私に、手を差し伸べてくれている様子を見ながら。
    この先がどんなことになるのか、私の知らないどんなことをされてしまうのか、なんて、ちょっとだけ期待してしまっている。
    なんというか、とっても恥ずかしくて、大きな快楽の波にのまれる感覚は、少しだけ怖かったけれど。
    でも、きっとそれが、"気持ちよかった"ということなのかも知れない。
    だから、私はまだ、彼に気持ちよくしてもらっただけだから。彼のことも、私が気持ちよくしてあげたい。
    そう思えば、私の心は怖さよりも、愛しい気持ちのほうが大きく強くなっていくのがよくわかった。

    起き上がるときに、まだぐしゃぐしゃの下着がこすれる感触が気持ち悪くて、うう、と声が漏れてしまって。
    顔が赤くなっているかも、と気にして頬に手を当てていると、彼が笑うものだから。なによ、と問い詰めると。
    「先ほどたくさん漏らしたときから、体じゅう可愛らしく赤らんでいますよ」
    なんて、卑猥なことを言ってくる。
    「もう、デリカシーがないわね、あなたっ!」
    もう嫌い、なんて不貞腐れながら、彼の腕にしがみついて立ち上がっている私は、ちっとも様にならないままだ。
    どうしてこの人、最後までスマートにしないのかしら、絶対できるのに。照れ隠し?だったら、少しは可愛いところがあるのかも知れないけれど。

    腕にしがみついている私の姿を、じろじろと見ている彼に気がついた。
    はだけた浴衣からは、私の胸は結局丸出しで、下着をつけているけれど彼の腕に谷間を押し付ける形になっている。
    もう、ここまできてと思うし、一人で立っていられない私は気にしている場合ではないから、そのままにするのだけれど。
    経験上、私の胸が気になっているのは明らかな彼は、今とばかりに見てしまっているのだと思う。
    はだけた浴衣に下着を見せるって、衣装でも昔撮った水着撮影でも見せたことがないような、いやらしい格好かも知れない。

  • 65二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 07:20:30

    保守

  • 66◆0CQ58f2SFMUP25/04/21(月) 12:12:37

    私の体をまじまじと見ている彼が、ごくりと喉を鳴らす。もう、何を期待しているの?
    そんないやらしい視線をこそこそ隠さなくたって、あなたが好きにしていい体なのよ?
    痴態や裸を見られるのは恥ずかしいけれど、彼に体を見られるのは、ぜんぜん嫌じゃないし。
    むしろ、努力して磨き上げた体型なのだから。彼が見て、もっと私に夢中になって貰えるなら、嬉しいとさえ思う。

    彼が私に釘付けなのを見て、私はたまらず笑ってしまった。
    私の体をじろじろ見て、怒られないのはあなただけよ?
    たぶん今日、見せることになると思って、きれいなのを着てきたのだけれど。
    きっとあなたはもう、下着の中のことばかり気になって、仕方がないのでしょうね。
    そう思って、少しだけ彼の目をじろりと見つめると、彼は咄嗟に目を逸らした。
    ほらね、そんなの顔を見れば一目瞭然なんだから。
    本当、わかりやすくて、可愛い先輩。

    「ちゃんと、あとでぜんぶ見せてあげるわね」
    そう言うと、彼は軽く咳払いをして誤魔化して。
    私の浴衣を少しだけ整えてくれると、体を支えてお風呂まで連れて行ってくれた。


    ―――


    脱衣所で、ぐちゃぐちゃになった下着を脱いでいる。
    彼はもう、そそくさと脱いでしまって、先に浴室へと向かってしまった。
    浴衣は、とてもではないけれど、もう一度着ることは難しいくらいびちゃびちゃになっていて。
    寝るときは予備の浴衣を出さないと、なんて考えていた。

  • 67◆0CQ58f2SFMUP25/04/21(月) 12:13:33

    ぐちゃぐちゃに濡れた下着を見て、今までを思い出す。こんなにぐちゃぐちゃになったのは、本当に初めて。
    先輩と恋人になって、部屋で愛し合ったあとで部屋に戻る頃には、よく濡れていて困っていた。
    彼に匂いを嗅がれたり、キスをしたり、あとは、いろいろ……彼と、触れ合ったとき。
    そういうときは大抵、お腹の下の辺りがきゅってなって。腰のあたりが、むずむずしていた。
    今思えば、今日のえっちな感覚とほとんど同じだ。それが自分の性的興奮からくるものだと知ったのは少し前の話だから、自分がいかに無知だったのかを思い知らされる。

    そういえば、彼はどうなのだろう。
    涼しい顔ではないけれど、ひたすらに私の体を弄んで、えっちなことをして。けれど、彼にそういったことはしてあげていない。
    彼に一度教わった、一人で……その、発散する方法を考えると、彼のそれに何かをしてあげるものだと推測できる。
    彼が私に、自分の性器で何かをした形跡はなかったし、もしかすると彼は只々我慢をさせられていたのだろうか?
    私が一人でよがって、気持ちよくしてもらうばかりで。本当は、私からも一緒に何かをして欲しいと思って、待っていたのかしら?
    そうかも知れないと思うと、申し訳ない気持ちが湧いてくる。

    でも、どうすればいいのかは……さっぱり分からない。
    本物の男性器なんて、ちゃんと見たことないし。彼に教わった一人での方法も、肝心なところは教えてくれなかったから。
    ――それなら、やっぱり。いまこれから、お風呂に先に入った彼に、きちんと見せてもらって。
    私はきっと彼のように、気持ちいいところを察してあげることは難しいでしょうから。彼に教わりながら、習得すればいいのよ。

    そうと決まればと、改めて下着をすべて脱ぎ、裸になった。
    お風呂で体をきれいにして、彼の背中も流してあげたりして、たくさん触れ合って。
    そうして、彼の、男性器を、気持ちよく……。

    そこまで考えて、また急激に恥ずかしさが増した。鏡に映る裸の自分が、彼にえっちなことをしている姿を想像してしまったから。
    具体的な方法は分からないのに。さっき自分がされたことを、勝手に置き換えたりしてしまって。
    よがる彼を押さえつけて、何かをして、彼が痙攣するまで気持ちよくさせる自分を。

  • 68◆0CQ58f2SFMUP25/04/21(月) 12:14:15

    それに、その先も。 今日、最後までするはずだから。
    彼の男性器を、私の体に受け入れて。
    子どもを作るための行為を、ただ、愛を伝え合うためにする、あれを。

    ふと、太ももになにか冷たいものが一筋、伝う感覚を覚えた。
    なに?と思って下半身を見ると、私の性器がまた、下着を脱いだときよりもぬるぬるしていて。
    そこから溢れ出た愛液が、私の太ももを垂れているみたいだった。

    「――あっ、うそ」
    下着を濡らしたそれは、性的興奮によって分泌されるもの、だから。
    私は、彼とのえっちな行為を想像をしただけで、彼とえっちをするための準備が整ってしまって。
    それほどに体が期待している、ということなの?
    そんなことを考えると、余計になんだか、変な気持ちになって。
    そんないやらしい体の私が嫌われないかって怖さと、こんな破廉恥な体になってしまった自分の背徳感で、腰がぞわぞわする。

    太ももを濡らしてしまうのを止められずにいるまま、かぶりをふって、みだらな妄想を振り払った。
    「……っだめだめ!体、きれいにしないと!」
    こんなことをしていたら、いつまで経ってもお風呂に入れない。

    きっと私に背中を流してもらうのを待っているであろう彼のために、私は意を決してバスタオルを体に添えて。
    彼が待つ、小さな温泉へと向かった。


    ―――

  • 69二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 16:18:03

    保守

  • 70◆0CQ58f2SFMUP25/04/21(月) 18:57:42

    小さな浴場に入ると、彼はもう体を洗い始めていた。
    部屋付きの温泉だけれど、くつろぐには十分な広さがあって、二人で入ることもできそう。
    こんなタイミングでなければ、ゆっくりと浸かるのも良いのかもしれないけれど。今はまだ、そんな場合ではなくて。
    洗い場で体を洗っている最中の彼のそばに行って、私はそそくさと彼の後ろにバスチェアを置いた。
    すれ違いざまに彼の体をちらりと見たけれど、腰元にタオルをかけていたから、彼の全容は はっきりとは見えなかった。

    ……なに、しているのかしら、私。盗み見して、痴漢みたいなこと。
    さっきの妄想から、変に意識してしまっている自分に気がついて、恥ずかしくなる。
    別に、彼もいま私の体をちらっと見ていたのだし、おあいこなのだけれど。
    そもそも彼だって、そんなちらちら見ないではっきり、私の体が見たいと言ってくれればいいのに。

    そんなことをぶつくさと考えながら、彼の後ろで手に泡をたくさん立てていた。
    彼の体を洗ってあげると、さっき脱衣所で約束したからだ。
    タオルで洗うつもりだったけれど、こうして彼の背中を目の当たりにすると、少し。
    ……少し、彼の体にしっかり触れたいな、と思ってしまったから。
    「背中、流してあげるわね」
    彼の背中に、泡まみれの手で優しく触れた。泡のせいで、ぴったりと張り付くような感触は得られないけれど、彼のごつごつとした背中の感触は明確に伝わってくる。
    少しだけ身をかがめたまま、大人しく私に洗われている彼は、さっきまで私の体を好き勝手に弄んだ人と同じとは思えない。
    どうしたのかしら、と思いながらも、いざ体を洗うとなると案外大きい彼の体に四苦八苦する。
    特に、彼の胸元を洗うとなると、しっかりくっついてしまわないと上手に洗えない。
    ぺちぺちと、私の胸が当たってしまうけれど。ちょっと、はしたないかしら? いえ、でも先輩はたぶん、悪い気はしないと思うから。
    あとで、その……触らせてあげても、いいかもしれない。少しくらい私から仕掛けて、彼を動揺させたいのも、いつもの願望だ。

  • 71◆0CQ58f2SFMUP25/04/21(月) 18:57:57

    そういえば、と、白くて意外とごつごつしている、たくましい背中を眺める。
    だいぶ前に引っ掻いてしまったところは綺麗に治っていて、ほっとした。傷跡なんて残っていたら、きっと後悔が止まなかったと思うから。
    引退前の、あの日に見た彼の背中よりも、温泉の照明が明るいから見えるところが多くて、まじまじと見ながら撫で回してしまう。
    こことか、こことかも筋肉で。引き締まっていて、格好いいなと思う。
    あの日は見れなかった、ここも。指が少しだけ沈むような感覚なのに、跳ね返されるような弾力があって。
    やっぱり私、先輩の体、好きだな。普段はスーツ越しに見ているこの背中は、いつも私の前に立って守ってくれていたのよね。

    手をすべらせるようにして、彼の腕を洗う。この腕は私の体を抱きしめたり、腕枕をしてくれる優しい場所なの。
    彼とお付き合いしてからは、私のとっても大切な居場所のひとつになっている、私だけの秘密の場所。
    その、秘密の場所に……二の腕のところに、点々と赤く充血した箇所がいくつかあることに気がついた。
    「先輩、どうしたのかしら、これ? 刺さったような跡だけれど……」
    気になってそう尋ねると、彼は振り向かないまま、その場所をすりすりと撫で回す。
    「さっき星南さんに、ぐっと掴んでもらったときについたんです」

    声色は、とても穏やかで、どこか自慢げで。
    笑って言ってはいるのだけれど、私はまた自分が彼の体を傷つけてしまったと知って、うろたえてしまう。
    だって、爪が食い込んだような跡はとっても痛々しくて。血は出ていないみたいだけれど、赤くなっているじゃない。
    本当に大丈夫なの? あなたの肌、とてもきれいなのに、またこんなことしてしまって……。
    「ご、ごめんなさい……体に、ぎゅうって力が入る感覚があって、それで……」
    言い訳にしかならないけれど、彼に謝罪する。
    あの瞬間の、全身が強く緊張して、体の力を抜くことができなくなる感覚は、本当に凄くて。
    快楽に抗えないということがどういうことか、この身に沁みて理解することができた。
    「いいんです、勲章みたいなものですよ」
    傷つけてしまった私が自分を責めないために、微笑んでくれる彼の優しさが、私の胸に響く。
    よかった、彼が私の婚約者で。こんなに優しい人、きっと他のどこにもいないもの。

  • 72二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 22:40:33

    朝まで保守

  • 73二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 22:40:43

    保守age

  • 74◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 01:54:38

    泣きそうになってしまうのをぐっとこらえて、また彼にぴったりとくっついて、洗い始めた。
    見られていなければ、もう緊張もほとんどしていない。
    「……それにしても、あなた本当につるつるなのね?」
    先ほどから彼の体を触っていて思う。他の人の体なんて知らないけれど、男の人って腕や足を見るだけでも毛深い人が多いものだから。
    普段から腕や脛がつるつるなのは知っていたけれど、脇も胸元も全く生えていないみたいだった。
    本当に全身脱毛しているとは思わなかった。プロデューサーには清潔感も大切ですから、なんて言っていそうな姿が目に浮かぶ。
    私はずいぶん昔から、なにもない状態に保っているけれど。彼は一体いつ、そんな時間を確保して通っていたのだろう?
    そんなことに興味が湧いてしまったから、余計なことに思い至って。それってつまり、その……下半身も、たぶんそうよね。

    また、勝手に彼の男性器を想像して、勝手に恥ずかしくなってしまった。
    毛深いのもつるつるなのも見たことがないから、どっちでも良いのだけれど。
    でも、無い方がいいかもしれない。そのほうが、少し可愛いと思えるかも知れないし。
    などと、また勝手につるつるの可愛らしい何かを想像して、それでまた耳の先まで顔を赤くしてしまって。
    我ながら何をしているのやらと、内心呆れてしまう。

    そんなばかみたいなことを考えながら、彼の胸元の同じところをぐるぐると洗ってしまっているとき。
    柔らかくて弾力のある彼の胸元に、少しだけ固いような、感触の違う場所を見つけた。
    「……星南さん、あの……っ」
    私は手を滑らせながら、その、こりこりとした場所を探し出しては、往復したり指先で確かめるように何度も触った。
    なにかしら、これ?ほくろ?
    点のような固い箇所は、突起しているようにも感じて。ちょっとつまんでみたりもしていると、彼が何やら体をぴくぴくさせている。

    私が、呑気にそんなことを考えていると、彼は私の手首を優しく掴んで制止した。
    「星南さん、そこは俺の乳首なので……あまり……」
    とても言いづらいことを言うような声色に、私は一瞬何を言っているのかと思ってしまったけれど。
    直後、自分がとんでもないことをしていることに気がついてしまった。
    「あっ……ち、ちが、そういうつもりじゃ……!」
    慌てて手を離す。彼の乳首を、何度も指先でこりこりと弄んでしまった。

  • 75◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 01:55:20

    慌ててしまったのと、自分が恥ずかしいのを隠したくて、私は咄嗟に彼のお腹の辺りに手を伸ばした。
    彼のお腹に滑り込んだ手は、でこぼことした彼の腹筋にたどり着く。
    アスリートのようにくっきりとした凹凸ではないけれど、贅肉はなくて締まった体。
    男の人に守ってもらいたいなんて願望はほとんど無いのに、彼の体の男らしさを感じたときだけは、少女のようにときめいてしまう。
    男の人の体なんて、よく分からなくて怖いと思うことしか無かったのに。
    大切な人の体だというだけで、どうしてこんなにも愛おしいのだろう。
    「……先輩、あなたの体は、もう私のモノなのだから」
    私を優しく抱き締めてくれる体だから。私を守ってくれて、支えてくれて、共に歩いてくれる、あなたの体だから。
    あなたが今まで生きてきたすべてが、その体をつくっているから。
    だから、あなたのことが好きになればなるほど、あなたの体に夢中になってしまって。絶対に手放したくないと思ってしまう。
    「絶対に、他のひとに触れさせてはだめよ?」

    少しふわふわした感覚のまま、彼のお腹を撫で回しているとき。不意に、手の甲で何かを弾いたような感触がした。
    なにかしら?と思い、体から手を離して探ってみる。タオルにしては肌触りが違ったし、シャワーホースにしては重いような。
    「なに、いまの?」
    彼に問いかけても、ええと、なんて歯切れの悪い返事だけが返ってくる。
    彼がそんな様子だから、何を隠しているのかしら、と余計に興味が湧いてしまって。
    もう一度私の手にぶるっと衝突した何かを、両手で捕まえるように、ぎゅっと掴んでしまった。

    「っ!せ、星南さ……!」
    何を掴んだのか、自分でも分からなかった。
    いざ掴んでみると、それは結構な大きさで、芯のある弾力を感じる。それに、とっても熱い。
    まるで体の一部のような鼓動も感じて、少し引っ張ったりしても取れそうにない。
    彼が何か呻いているけれど、私がこれを握っているから?
    私がこの、指が回らないくらい太くて、指が沈まないくらい固くて、両手でちょうどくらいの長さのものを、握っているから?

  • 76◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 01:56:31

    そこまで考えて、ばかな私はようやく理解した。
    自分が、思い切り……彼の男性器を、握っていることを。

    動揺して、ぐにぐにと感触を確かめてしまう。
    「あ、こ、これ……あなたの……」
    初めて、触ってしまった。彼の……その、えっと……。
    彼の、本物だと思うと、頭の中でも急にしどろもどろになって、はっきり考えられなくなる。
    だってこんなに、こんなに大きい……本物?本当に?ぜんぜん可愛くない気がする。
    火傷しそうなくらい熱いし、どくどくいってるのは血流?
    確か教科書によると、こうして大きくなっているのは血液流による海綿体の膨張だから、血管の感触で間違いないはず。
    熱いのも血液?こんなに熱いもの、私は、その……受け入れて、本当に大丈夫なの?
    さっき少しだけ彼の指が侵入しかけたとき、けっこう怖かったのに。何がどうなれば、受け入れることが可能になるの?

    恥ずかしさよりも戸惑いが勝り、どうでもいい観察と疑問に終始してしまう。
    錯乱しているからか、とにかく情報を集めようと親指で上の方を押してみたりして。
    握っている棒状のところより、ぶにぶにと少し柔らかいな、なんて感想を抱いたりしている。
    「星南さん!その手つきはちょっと……!」
    動悸が激しくなるにつれ、彼の声なんて聞こえなくなってきて。私は、感触を確かめ続けた。
    握ったまま、ぶにぶにの下側を人差し指で触ると、ぼこぼこしていてちょっと生々しい構造をしている感じがした。
    どのくらい力を込めていいのか分からないから、握るのを緩めて指先を這わせてみたり、少し下の方までなぞってみたりしてみた。
    できるだけ優しく指を這わせて、指先でちょんちょんと押してみたりして。
    「こんな形、なのね……」
    目がぐるぐると回っている感覚に陥りながら、何一つ冷静ではないのに適当な言葉を吐きながら下の方まで指を滑らせていく。
    下の方は、途中で何か……皮膚が伸びたような様子を感じて、その先まで指を這わせていると、カーブを描くのが分かった。
    これ、って多分。その、もう男性器の付け根で。彼の精子を、つくるところ?こんなに無防備に、ここに?

  • 77二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 08:45:06

    保守

  • 78◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 11:40:22

    見たい。もう、我慢できない。
    怖いもの見たさからか、好奇心が加速してしまって早く見たくなってきてしまっている。
    むしろこれから相手をする、彼のとっても大事な箇所なのだから、しっかりと見て覚悟を決めておきたい。
    振り返って、彼に肌を見られても構わないからと、その気持ちを彼に伝えることにした。
    「あの……先輩? あなたの……見てみたい、のだけれど……」
    彼の男性器から手を離して、彼の背中に胸を押し付けながら腕を回して、抱きしめる。

    けれど、私がそう言っても、彼は振り返らなかった。
    彼の体がぴくりと反応したけれど、私の手を優しく引き剥がして、体を離れさせられてしまう。
    彼はそのままでシャワーをつけると、体の泡を流し始めてしまった。
    「……お風呂を出て、仕切り直してから、です」
    堪えるような声色で、一度も私を振り返らないままで。彼は体の泡を流し続けていた。
    どうして?私が不躾に握ったりしたから、怒らせてしまったのかしら?
    でも、怒っているというよりは、何か努めて落ち着こうとしているようにも見えるし、彼の意図が見えない。
    「あの、勝手に触れたこと、怒っていない?」
    不安になって、背中越しに問いかける。背中から感じていた彼の鼓動は強く響いていたから、きっと怒ってはいないのだけれど。
    「いえ、触れて頂いたのは、けっこう興奮しました。 むしろ、危ないところでして……」

    興奮、していたのね。彼の回答に、体がまた熱くなるのが分かった。
    私が彼を、この手で興奮させられたんだ。なんというかそれって、ちょっと気分がいいかもしれない。
    けれど、後半の不思議な回答には首を傾げた。危ないところって、どういうこと?
    私また何か、彼に怪我をさせそうになっていたのかしら?もしそうだとしたら、私はどこまで繊細なものを扱えない性質なのだろう。
    しょげそうになるけれど、彼の頭を……耳をよく見ると、真っ赤になっていることに気がつく。
    もしかして、危ないところというのは、彼のことではなくて……。
    ぐるぐると、そう考えていると、彼は泡を流し終えて腰にタオルを巻いて立ち上がる。
    「いま、あなたを見たら、ここで"最後"までしてしまいそうですので……部屋で、お待ちしています」
    爆弾を一つ投下して去っていく彼を、私は黙って見送っていた。
    最後にちらりと、彼の腰のタオルの影になにかの存在を感じながら。

  • 79◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 11:40:50

    一人、洗い場に取り残されてしまった。
    けれど寂しさというよりは、むしろ呆然としてしまっていて。彼の最後の言葉を、何度も反芻していた。
    "いま、あなたを見たら、ここで"最後"までしてしまいそう"。
    それはつまり、私が彼の男性器を弄んで、興奮させてしまったせいで、彼はもう我慢の限界で。
    このあと お布団に戻ってしまったら、もう私は本当に彼に組み伏せられて、この身をすべて暴かれて。
    彼によって、純潔を散らされる、ということ、よね。

    また少し、何かが垂れそうになる感覚がした。
    洗わないといけないのに、洗う前からまた濡れ始めて。どうして、こんなことになってしまうのか。
    私はとにかく、さっき彼によってぐちゃぐちゃにされた体を清め、"次"に備えることにした。
    まだかまだかと、彼を受け入れる準備を始めてしまった私の体を落ち着かせるように。
    彼に私の体の隅々まで弄ばれてもいいように、髪以外のすべてを丁寧に、丁寧に洗うことにした。


    ―――

  • 80◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 17:07:22

    体を拭いた、髪を梳いた、浴衣を着直して、念の為に歯も磨いた。
    乾かすのが大変だから、洗わずにおいた髪も少しだけしっとりしていて。軽くオイルを馴染ませて、彼の好きな艷やかな感じにできた。
    彼の歯ブラシも濡れていたから、彼も歯を磨いたことが分かる。彼も、私とのキスの準備をしていたのね、と、少しどきどきしてしまう。
    いえ、キスだけじゃない。
    脱衣所から戻れば、彼はきっと布団を整えて待っていて。
    私と彼の、本当の本当に、本格的な……性行為の準備を、している、はず。

    二十年、誰にも許さなかった私の体は。今日、大切な恋人に、婚約者に捧げる。
    そしてそれは彼も同じ。 彼も、交際経験は無いと言っていたから、きっと初めてだと思う。
    だから、私と彼は今日、初めてお互いの体を許しあって、お互いの初めてを捧げあって。
    とてもとても大きな……特大の一歩を、踏み出す、のよね……?

    恰好をつけた言葉に置き換えて、なんとか冷静に飲み込もうとするけれど、することがすることだから動揺が隠せない。
    だって、だってそうじゃない! さっきも、とんでもないことをしたけれど、今からするのは、それの比じゃないことで。
    その、行為自体を見たことは無いけれど。彼のあれが、私に……入ってくるのだから、それはかなり、怖いというか。
    ふと、両手を握ってこぶしをくっつけてみる。手は少しゆるめて、何かを掴むイメージで。

    その手を、なんとなくお腹に添えてみたりすると、だいたいおへその辺りまであることが分かった。
    これくらい、だったと思う。平均なんてものは分からないけれど、単純に大きい気がする。
    本当に、人体の造りとして間違っていないかしら? そもそもの部分が間違っているのでは、と疑ってしまう。
    「……痛くないわけ、ないわよね……」
    クリニックで……医療行為としてのそれでも痛いときは痛いのに。
    推定でもこんな大きさで、本当に最後までできるのかしら……。

    だんだん不安になってきた自分の頬を、ぺちぺちと叩いて気合を入れる。
    こんなことで弱気になっていて、どうするのよ! 私は元"一番星"で、元トップアイドルの十王星南なのだから。
    愛した男性一人、受け入れられないわけがないじゃない!

    そして気合を入れなおした私は、不安を振り払うように勢いに任せて、のしのしと部屋に向かった。

  • 81二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 18:52:01

    保守

  • 82二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 22:21:04

  • 83◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 23:03:35

    ―――


    部屋に戻ると、少しだけ照明が落とされていて、薄暗くなった部屋に先輩が佇んでいた。
    さっき私が悶えて乱した布団は、きれいに整えられている。私がやればいいというわけでは無いけれど、それはそれで恥ずかしい。
    布団の脇には、彼の鞄が寄せられていて、何かの準備をしていたことは明らかだった。

    彼は、いる。当たり前だけれど、布団の上に座って、いえ今立ち上がって。
    浴衣をきちんと着直している彼が、そこに立って私を待っている!
    薄暗い部屋、布団脇の鞄、下着をつけていない私、さっきの彼の感触。
    急激に現実味を増していく性行為の場に、私はどうでもいい不安なんて吹き飛んでしまっていた。
    「電気、ありがとう……明るいと、恥ずかしい、から……」
    彼の気遣いに素直に感謝を示しつつも、心臓はばくばくと激しい音を鳴らしていて、体中が熱い。
    脱衣所を出たときの勢いはどこへ行ったのやら、緊張してしまって、じりじりと彼に歩み寄っていく。

    先輩も、緊張しているだろうか。顔を見ると、どちらかというと固い顔だ。
    こと彼に至っては、固い顔が普段通りなのか緊張しているのかはわかりにくいけれど、私と同じように緊張していると信じたい。
    だって、私だけいやに緊張しているなんて、みっともないし。
    私だって、彼に色々期待していて欲しいから。色々想像してもいいから、緊張していてくれたら嬉しい。

    そんなことを思っていると、私はとうとう彼の目の前にたどり着く。
    彼は一言、私の名を呼ぶと、私の肩に手を添えて。私も、彼の腰に手を回した。
    「先輩……ん、ぁ……」
    優しいキスをする。彼と唇を触れ合わせるだけの、とっても優しいキス。
    私たちは、いつも二人で新たな一歩を踏み出してきたから。これはその、二人で一緒に勇気を出すための、大切な儀式。
    小さく震えている唇は、どちらのものかは分からないけれど。それでも、あなたの唇から伝わる心が、私に勇気を吹き込んでくれているから。
    だから、私たちは今、これから。
    純潔を、捧げ合うの。

  • 84◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 23:04:50

    すっと唇が離れた。一瞬、目を合わせたまま、彼との名残惜しさを交わす。
    けれど彼は、ふたたびキスをすることはなく、私の手を引いて布団へと誘導した。
    「星南さん、どうぞ」
    彼に促されるままに、布団に腰掛ける。
    何から始まるのか、どきどきする。彼が誘導してくれているから、私もできる限りのことはしてあげたいから。
    私を座らせた彼は、自分は膝立ちのまま、浴衣の帯を解いた。
    はだける浴衣の奥に、彼の肉体が見える。下着は履いているみたいだけれど、どこか歪に見えた。
    薄暗くてはっきりと見えない彼の肉体は、さっき私が洗い撫で回したあの肉体だ。
    電気を暗くしてもらったのを、少しだけ後悔している。彼の体なら、明るいところでしっかり見てみたいと思うから。
    例えどんなものが飛び出してきても、彼の体ならば、真正面から受け止めてあげたいと思うもの。

    はだけた姿の彼は、そのまま前のめりになると、私の浴衣に手をかけた。私も、脱げばいいの?
    帯は、自分で解いた。彼がしたいように、脱がせられるように。
    その様子を見た彼は、ごくり、と喉を鳴らした。私が自ら、その体を差し出すような行動に、興奮しているのかも知れない。
    するすると、緩んだ浴衣が肩から下ろされていく。

    そして、浴衣が完全に、私の体を隠すことをやめたとき。
    私の体は、そのすべてを、彼に見せつけた。

    彼が、私の体を凝視している。
    下着をつけていないとは、思っていなかったのかもしれない。
    「……とても、きれいです」
    私の体から目を離さないまま、うっとりとした声色で、彼はそう言った。
    スタイルは自信が持てる状態を維持していたし、努力して作り上げた体だから、褒めてもらえてとても嬉しいのだけれど。
    その、こういう状況で言われてしまうと、なんだかとっても恥ずかしい。
    彼の目線が胸から下に、下から胸にと何度も動く様子は、視線で私を舐め回しているような、いやらしい感じがする。
    レッスン着でほとんどスタイルが出ている恰好を見せていたのに、そんなに夢中になるものなの?

  • 85◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 23:05:41

    「触っても、いいのよ?」
    私がそう言うと、彼の手が私の胸におずおずと伸びてきた。
    指先が、ふわっと胸の側面に触れる。彼はとても繊細なものを扱うように、ふよふよと優しく優しく力を込めている。
    可愛いけれど、じれったい。でも、なんだか……彼に、体を許しているという状況が、いまはっきりと分かる状態になっていて、少し興奮してしまう。
    だって私、男の人に初めて、胸を触らせてあげていて。こんなに嬉しそうに触ってもらえるのなら、今まで身体づくりをしてきた甲斐があったとも思える。
    男の人がどういう気持ちで胸に興奮しているのかは分からないけれど……。
    こうして何かを確かめるように触るのがそんなに楽しいのなら、もっと触らせてあげようかしら?

    「ほら、手を貸して」
    未だ私の胸をぷにぷにと突いていた彼の手を取って、私は手のひらを胸に乗せるように導いてあげた。
    彼の大きな手が、私の胸を掴むように覆いかぶさる。
    一瞬だけ緊張した彼の手は、ぴくりと動いて硬直したかと思うと、少しずつ指先で私の胸の感触を確かめ始めた。
    彼らしく、優しい手つきのままで。乱暴じゃなくて、決して痛くない。
    「やわらかいですね……」
    そう言っている彼の顔は、見るからに私の胸に夢中になっていて、なんだか可愛い。
    こんなことで、こんなに夢中になってしまうなんて。

    むにむにと私の胸を優しく揉んでいる彼は、普段の様子からは考えられないくらい子供っぽい顔をしていて。
    持ち方を変えて、下から持ち上げるようにしては、また柔らかさを確かめ始めて。
    何やら持ち上げて、重さを確かめてみては、手に乗る感触を堪能するようにし始めて。
    その、別に、痛くなければ好きにして構わないのだけれど。
    どうして、私の胸に、少しずつ顔が近づいてきているの?

  • 86◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 23:06:33

    私の胸にほとんど顔がつきそうな位置まできた彼は、不意に胸から手を離し、私の肩を掴んだ。
    最初の時とは違う、優しい力を込めて押し倒してきた。私は彼に導かれるように、ゆるやかに布団に倒れ込む。
    解放されていて、倒れた拍子に上下左右に揺れた胸を見て彼は、おお、と声を上げた。
    なに?わざとそんなリアクションをしているの?それとも本気?
    「そ、そんなに感動するほどかしら? それなりに大きい方では、あると思うけれど……」
    彼の大げさな反応が、なんだか少しずつ恥ずかしくなってきて、顔を逸らしてしまう。
    それに、布団に倒れ込んだ状態でこれでは、ほとんど性行為が始まっているような感じがして、かなりどきどきする。
    「初めて、女性の胸を触りましたので、まったく未知の感触に興奮してしまっています」
    息を荒くして、少し早口になった彼は、意気揚々と私の胸を弄び続けている。
    ぷるぷると揺らしてみたり、左右から集めてはぷにぷにと指先で揉んでみたり。
    「……ずっと触っていてもいいですか?」
    真顔でそんなことを言うくらいには、心の底から私の胸を楽しんでいるようだった。


    ―――

  • 87◆0CQ58f2SFMUP25/04/22(火) 23:44:02

    しばらく私の胸を堪能していた先輩は、胸に手を添えたまま、寝そべる私に覆いかぶさるような体勢になった。
    胸を晒しながら彼に組み伏せられるような姿は、いかにもといった雰囲気でかなり恥ずかしい。
    浴衣、ぜんぶ脱いでいないけれど、大丈夫かしら?
    谷間のところも、汗ばんでいてちょっと恥ずかしい。彼は、そういうの、ちょっと好きかもしれないけれど。
    このあと、何をされるのかしら。胸を触って、押し倒されて、もうそろそろ始まる?
    彼、まだ、下着を履いているから、これから脱ぐ?それはちょっと、見てしまってもいいものかしら?
    たぶん見てしまうけれど、というより一度はちゃんと見てみないと怖いから、見ておきたいのだけれど。

    具体的なイメージが無いまま臨んでいるから、ぐるぐると頭の中で状況を整理しようとしているとき。
    彼は私の首元にぐっと顔を近づけて、汗ばんだ肌にキスをした。
    唇で撫でるように堪能する彼のキスは、徐々に肩にかけ、鎖骨の辺りを這っていく。
    くすぐったい感覚に、私の体がいやらしい反応をしてしまって。彼の唇が軽く吸い付くたびに、私は小さな嬌声を上げてしまったり、体がぴくんと反応してしまったり、彼の思うがままで。
    彼はそんな反応が気に入っているのか、私がぴくりと反応する場所を見つけては、何度も唇で弄んだ。

    お風呂の前とは違う心地よい快感に、私が身を委ねていると。
    ふっ、と彼の息が私の胸の先に浴びせられ、うっ、と小さく喘ぎ声を出してしまう。
    なに、いまの? さっきは、たくさん触れられても、特段気持ちよくはならなかったのに。
    「星南さんの、ここ……こんなに尖らせて、いやらしい体ですね」
    表情の見えない彼が、私の胸元でそんなことを呟いたあと。
    突然、私の……乳首が、ぬるぬるしたものに包まれる感覚に襲われた。

    「な、あっ!なに、して……っ!」
    慌てて、彼の頭に手を回すけれど、押さえつけるわけにもいかず彼を止められない。
    どうして?なぜ舐めるの? そんな、赤ちゃんみたいなことしてもいいの?
    その、ちろちろって舌先で転がすの、腰に響いて……! もう、えっちだから、やめなさい!
    それに、それに、えっと、えっと……!

  • 88二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 06:55:05

    ほしゅ

  • 89二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 09:51:15

    朝保守

  • 90◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 12:55:45

    彼の予想外の行動に混乱して、思考がまとまらない。触られる覚悟はしていたけれど、舐められるなんて思っていなかった。
    彼のざらざらした舌が、私の乳首を大きく撫でるような感触。舌先で転がされる感触。
    どれも味わったことのない不思議な感覚で、断続的に訪れる強めの刺激に、私は腰がぞわぞわとし始めている。
    「どうしてこんなに、固くしていたんですか?」
    少しだけ吸うような動きをする彼の愛撫に、私は身をよじって悶えるしかなくて。何を言われても、返事をする余裕がない。
    なに、固くしているって、何を?
    「あ、んっ!……なんの、こと……ひぅっ!」
    吸われたり、舐められたり、私の乳首が彼の口に弄ばれて中断される思考は、一向にまとまらない。
    揉まれても、特に大きな刺激はなかったから油断していた。彼は最初から知っていたのね?
    「んっ……! 吸うの、やめ、なさっ……!」
    ずっとじろじろ見ていたのは、私の胸を触りたいだけじゃなかった。こんなえっちなことまで、したいと思っていたんだ。

    彼の頭を押さえることもできなくて、私の胸に吸い付く彼の髪を撫でるようになってしまう。
    それはまるで、私の、おっぱいを吸う彼をとても甘やかしているような、変な気分になってしまって。
    こんなの、おかしいのに。庇護欲と、えっちな気持ちが同時に沸き立つのが分かる。

    私が翻弄されていると、彼は私の胸に吸い付いたまま、ゆっくりと反対の胸に指を這わせた。
    吸われ、舐められ、ぴくぴくとみっともなく反応してしまいながらも、反対側を這う彼の指にも意識を引っ張られてしまって。
    私の胸の、さっきとは全然違って妙にぞわぞわする気持ちいいところをなぞって、彼の指は私の胸の先へと進んでいく。
    「"これ"が、こんなに固い理由を聞いているんですよ」
    彼の指が私の乳首に到達したとき、彼は私の乳首を、爪先で小さく引っ掻くように刺激した。

  • 91二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 12:56:42

    このレスは削除されています

  • 92二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 12:57:24

    このレスは削除されています

  • 93◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 13:00:02

    「ん、くぅっ……!ちょっと、なに、それ……っ!」
    突然の強い刺激に、思考が中断されてしまう。
    しかも彼は、それを一度で終わらせることはなくて。私の乳首や、その周囲を、何度も何度もカリカリと小さく引っ掻き続けたりして。
    その、舐められている側とは全く違う、ぴりぴりした強烈な刺激に煽られて腰が浮いてしまって。
    時折優しく、皮膚をなぞるような刺激も織り交ぜたその愛撫は、私の体にさらなる快感をもたらし続けている。

    ここ、こんなに気持ちいい場所だなんて、知らなかった。
    でも私の乳首って、そんなに咥えたり引っ掻くほど、大きくないはずなのに、どうして?
    どうしてそんなに……痛いくらいに、ぎゅうぎゅうと尖っているの?
    寒いときに、固くなったりは分かるけれど、こんなになることなんて無かったし……。
    そんなに固く尖って、彼に見せつけてしまうから、えっちなこと、されてしまうじゃないの!

    彼の舌と指は、入れ代わり立ち代わり、私の胸を執拗に愛撫し続ける。
    自分の乳首が、彼にえっちなことをされて興奮して、勝手にかちかちに固くなっている事実に気がついて。
    私の体はまた、彼を受け入れる準備を始めて。その流れ出るものが、少しだけ布団を濡らした。
    「だめ、どっちもなんて! ……あっ!く、ぅ……!」
    胸の形に沿って、指をゆっくりと這わせるようにしたり、乳首の周りをすりすりと爪先でくすぐったり。
    もどかしく思うと、またかりかりと引っ掻いて、私を悶えさせては、嬉しそうに吸い付いてくる。
    「ぺろぺろしながら、んっ、ちくび、かりかりって、やっ、一緒にするの、だめっ!」
    左右の、緩急も感触も違う刺激に、私の上半身は完全に翻弄されていて。
    彼の頭を掴んで引き剥がすはずの手は、彼の頭を抱え込み、自分の胸を愛撫してもらうことを期待しているようだった

  • 94◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 13:00:22

    私はもう、抵抗なんてできなくなっていて。性器から愛液を垂らすことしかできない、えっちな体に仕上げられていた。
    お風呂の前みたいに、下を、触って欲しいのに。彼は明らかに、意図的に胸以外を刺激しないでいる。
    どれだけ腰をひねったり、脚を開いたりしても、腰から快感を逃がせなくて。
    直接触られていないのに、とってもえっちな気持ちになって。どこか遠慮がちな快感がもどかしくて、せつなくなってしまう。
    「ねえ、下、せつないのっ! それっ、あっ、 お腹、きゅうって、するから……んっ!」
    気持ちよくて、言葉も途切れ途切れになりながら、彼に懇願する。
    前ほどじゃないけれど、何か波が、来る気がして。小さな波が、じわじわと迫っている気がして。
    だから触ってほしくて、腰を浮かせたりしているのに、彼が焦らすから。私は愛液を垂らしては、お尻に伝う感覚がひんやりとして、またそれでむずむずしてしまって。

    そうしているうちに、目の前に迫っていた小さな波が、私の体を優しく飲み込んだ。
    「ひうぅ゙ぅ……!――あ、っく、出て……っ!」
    下着もなく晒された私の性器から、ぴちゃっ、と小さく音を立てて、何かが漏れ出してしまう。
    浮いた腰が浴衣と布団に落ち、その冷たい感触に身を震わせる。また、たくさん濡らしてしまった。
    「っ!はーっ……!はーっ……はーっ……」
    喉が細くなったみたいに、呼吸が苦しくなって、必死に酸素をかき集める。
    この、波のあとは、やっぱり苦しい。
    それに、これは。最後まで直接触っていないから、むずむずする感じは、全然すっきりしていない。
    どうして、こんなにせつないの?
    私のえっちなの、出したあとなのに、まだもじもじと腰を動かしてしまう。
    動かして何かにこすりつけたいような気がして。こうしていれば彼を誘って、触ってもらえるのかな、なんて気持ちかも知れない。
    彼の見えないところで一生懸命、腰を振ってるのに、彼はぜんぜん気がついてくれなくて。
    私の胸を、ぷるぷる揺らして遊んだりしている彼の手に、私は震える自分の手を重ねた。
    「胸、ばっかり、いや……下も触って、ほしいの……」

  • 95◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 13:01:20

    波のあとの蕩けた頭だからか、媚びたような言葉遣いをしてしまう。
    そんな私の様子を見た彼は、私の胸を弄ぶ手を止めて、頬や唇に小さなキスをたくさんしてくれた。
    「もう、私……えっちな体に、なってしまってるかも……」
    彼の頬に手を添えて、私からも唇をついばむようにキスをして言った。
    いま、現役時代でも出来なかったくらいに、甘い目をして喋っている気がする。
    彼も、私の甘えた声を気に入っているみたいで、意地悪なのにうっとりした顔を見せてくれている。

    不意に、彼が私の手を取った。
    どこかに誘導される私の手は、彼の下腹部へと伸びていき。
    とても熱い、下着越しの彼の性器を、触れさせられた。
    「俺も、なってますよ」
    彼の、その言葉は、私の腰のうねりを少しだけ止めたけれど。お腹のきゅうっとした感じは、むしろ強まりを見せて。
    私が好きだから、こんなに熱くしてしまっているのだと思うと、とっても愛おしくなって。
    その姿を確かめたくて、立ち上がる彼に続くように、私は体を起こした。


    ―――

  • 96二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 17:16:30

    保守

  • 97二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 20:16:29

    夜保守

  • 98◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 22:26:43

    「浴衣、ぜんぶ脱ぎますね」
    そう言って、先輩は肩にかけていた浴衣を、完全に脱ぎ捨てた。
    残ったのは、私の目の前に存在している彼の下着だけ。無意識に前のめりになってしまって、視界いっぱいに彼の下半身がある。
    妙に盛り上がった黒のボクサーパンツは、その内側に存在する何かを、むしろ強調するような状態になっていて。
    うねるように横を向いている……ように見える彼の男性器は、時折下着を押し上げるように動いている。
    この、下着の中に、先輩の男性器がある。
    身も心も待ち侘びた、愛しい人の男性器が。

    いつ下着が下ろされるのかと、鼻先がつきそうな距離で待ってしまう。
    こんなに釘付けになるなんて、みっともないけれど。腰のむずむずする感覚に襲われっぱなしの私は、これが欲しくてたまらない。
    「そんなに食い入るように見られると、少し照れますね……」
    照れ隠しに頬を掻きながら、彼はそんなことを言うけれど。私は彼の羞恥心なんて考えている場合ではなくて。
    触れていないのに、その熱が下着越しに伝わってきているようで、のぼせそうに体温が上がっていくのが分かった。
    いやな匂いはしないけれど、下着の柔軟剤の香りの奥に、少しだけ汗の香りが滲み出ていて。
    はしたない私は、今か今かと犬みたいに待ち焦がれてしまっている。

    どうして、まだ脱がないの?
    早く、その下着を下ろして。私に、見せてちょうだい?
    私が、懇願するような目で彼に訴えかけていると、彼は徐々に意地悪な顔をし始めた。
    今日、散々見た顔だ。何も知らない私に、えっちなことをさせようとしている意地悪な顔。
    今、その顔をしたということは、きっと彼の言いたいことは……。
    「わ、私が、脱がせばいいのね……?」

    静かに頷いた彼を見て、私はもう一度、彼の下着に向き合った。
    そこに、ある。私がお風呂で不躾に掴んでしまった、あれが。私に解放されるのを待っている。
    恐る恐る、彼の下着のゴムに指を掛ける。男性の下着を脱がせる……というより、他人の下着を脱がせること自体が初めてで。
    慌てて下ろして、爪を引っ掛けたりしないように、注意深く脱がせていく。
    指の背が彼の恥骨辺りに触れて、汗ばんだ肌を這うように指で下着を押し下げる。
    こんなの、ぜったい普通じゃないことをしている。

  • 99◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 22:27:48

    だって、どの教科書や女性誌を見たって、彼の下着を脱がせてあげるなんて書いていなかったもの!
    だからこれは、ぜったいに彼が私にやらせたいだけの、彼のえっちな願望なのよ。

    ……まぁ、でも。彼の願望なら、少しくらい叶えてあげたいと思えるし。急にお披露目されるよりは、自分のペースで見たい。
    だからこれは仕方なくしていることで、私は彼に請われて変態的なことを……。
    そんなことを考えて、ぐるぐると思考が迷子になっていると、下着が素直に降りないところまできてしまった。
    彼の、お尻と、男性器に引っかかっているみたいで。
    ひとまずお尻の所を、ぐっと後ろに引っ張って、外してあげたのだけれど。
    問題は、最後の引っかかり、よね。

    軽く、何回かぐいっと引っ張ってみるけれど、まったく外れる気配はなくて。
    むしろ下着が強く引き戻される感覚が、彼の男性器の力強さを感じさせてきて、また少し動悸を速くする。
    これ、思い切り下げていったら、中のものも下を向いてしまうけれど。それって、大丈夫なの?
    だってこんなに、上に向かって反発してるのに。下に向けたら痛くないかしら?どうして何も言ってくれないの?
    男性器の扱いなんて分からないのだから、お願いだから教えてちょうだい!
    だって、早くあなたのを見てみたいのに。これではじれったくて、おかしくなってしまいそう……。

    何度も下げては、引き戻されて。ときどき彼の男性器が、下着の中でびくっと動くときもあって、指を離してしまいそうになったりして。
    意を決して、ぐぐっと下まで下げていくと、今度は外からでは分からなかった独特の香りが、下着の中から湧き上がってくる。
    汗のような、でも石鹸?かもしれない。くさい、とかでは決してなくて、ムスクのような不思議な香りがしていて。
    まだ全貌なんてまるで見えていないのに、私はどんどん息が荒くなってしまっている。

    ぐぐ、っとさらに下に下げていく。もう、下着は動いていなくて、この下着が伸びのるに任せて、引っ掛かりが外れるのを待つだけ。
    ほら、根本が見えてきた。もっと、もっと下げないと。
    やっぱり、脱毛しているのね? きっと男性でも、ある人はこのあたりまで生えているわよね?

  • 100◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 22:28:10

    ずりずりとその姿が露わになるにつれ、その長さが想像を超えていることは容易に予測できた。
    それに、太さも。握っただけでは分からなかった生々しい姿が、根本から少しずつ見えるようになっていく。
    まだなの?まだ、下げないと出てこないの?
    それにこれって、このまま下げていったら、最後の引っ掛かりが外れたら……。

    下着は残り、彼の男性器の、先端の引っ掛かりが取れたら終わりのところまで来ている。
    来ているけれど、それどころではない。いま、少し下向きにその全容の半分ほどが見えているけれど、こんなの聞いていない。
    女性誌だと、もっとマスコット的なデフォルメがされていたから、可愛らしさを少しだけ期待していたのに。
    可愛いなんてものではなくて、なんというか威圧的で、すでに恐怖を感じ始めている。
    さっき触ったときは、この棒の部分はけっこうかちかちに固くて。先端は、ぶにぶにしていて固くはなさそうだった。
    ぶにぶにしていたけれど、つるつるしていたし、本当に可愛い感じかもしれない。なんて淡い希望を抱いてしまう。

    私が、最後の引っ掛かりを外せないまま、いつまでも彼の下半身を睨みつけていると。彼は優しく私の頭を撫でた。
    「これ以上は、怖いですか?」
    その優しい声色は、いつもであれば飛びつくくらいの、とっても優しい声で。
    本当に私の恐怖心を気遣って、彼がかけてくれた優しい言葉なのに。
    いまの私にその言葉は、物知らぬ箱入り娘がこの程度のこともできないのか、と、言われたように感じてしまって。
    そんなはずがない。私はあなたの婚約者で、十王星南なのだから、と。されてもいない挑発に乗った私は。
    彼の言葉を無視して、最後の一息に力を込めた。


    ―――

  • 101◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 23:00:09

    引き下ろした下着のゴムに弾き出された彼の男性器が、暴れるように飛び出した。
    一度顔をかすめて振り上がったそれは、瞬間的に私の目線を横切って。
    私の頭を撫でていた彼に引き寄せられた、私の顔に、ぺちっと音を立てて乗ることになった。

    驚いて少し上を向いてしまったから、私の片目を隠すように、彼の男性器がぺとりと乗っかっている。
    まったく状況が飲み込めないまま、数秒、硬直してしまって。
    その熱さと、時折びくぴくと動くその存在感に、私は大変なことになったと理解した。
    か、顔に当たってるところ、熱すぎて火傷しそう。
    えと、い、陰茎、っていうのかしら、たしか、正しい名前は。
    "これ"が、あなたの、なの? この、重くて、固くて、脈打っているものが?

    私の頭を撫でていたはずの彼の手は、知らぬ間に、私が逃げることを許さないような力が込められていて。
    まったく痛くはないのだけれど。彼の欲望が垣間見えるその手つきのせいで、私は彼の陰茎に釘付けにされている。
    これ、どうしたら、いいのかしら?
    このあとはどうするの?先輩は……意地悪だから、教えてくれなさそう、よね。
    ……なら、やってみよう、かしら。

    荒くなっていく熱い息を、彼の陰茎の根本に吹きかけてしまう。
    どのくらいの力で触れていいのかも分からないから、咄嗟には動けなくて。
    けれど、ついに私の番が来たと思えて、挑戦してみたい気持ちがどんどん膨らんでいくのも確かだった。

    彼はようやく手の力を緩めると、また私の頭を、優しく撫で始めた。
    優しいのかえっちなのか分からないその行動に、彼も私と同じで戸惑いながら臨んでいるのだと伝わってきて。
    二人で一緒に、という気持ちを取り戻せた私は、少しだけ冷静になれた気がした。
    「怖くないですか?」
    太い陰茎で隠されてしまって、顔はほとんど見えないけれど。声色から、私を心配してくれているのは分かる。
    彼は、少しだけ後ろに下がると、その先端を私の目の前に持ってきた。
    先端……確か、これは、亀頭……だったはず。
    少しだけ、裏側が見える。血管?よく分からないけれど、繊細そうな形状をしていて、少しだけグロテスクかも。

  • 102◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 23:04:45

    それでも目が離せなくて。さっき私がお風呂で洗ってあげた"それ"を、正面からまじまじと見つめてしまう。
    私の曖昧な想像を吹き飛ばすくらい、太くて、長くて、ごつごつとしていて。
    亀頭の裏の筋が生々しく、浮かび上がっている血管は、それ全体が彼の肉体の一部なのだと実感する。
    亀頭は、はち切れそうなほどの膨らみを見せていて、よく見ると湿り気を帯びていた。
    性的興奮で膨張するって、書いていたから。これはきっと、とんでもなく興奮している……と、思っていいのよね?

    私に向けられている彼の欲望の強さに、不思議な安心感を抱きながらも、私は彼の陰茎を観察し続ける。
    その造形を、寸分違わず脳裏に刻み込もうとしてしまうくらい、私はそれに夢中になってしまっていた。
    さっき、脱がせている途中でしていた、不思議な香りがする。
    ムスクって言ったけれど、もっとなんていうか、こもった匂いというか。
    お風呂で洗っていたから、嫌な匂いはまったくしなくて、むしろクセになりそうな匂いがする。

    不意に、亀頭に指を伸ばした。
    この、つるつるした先端にある、穴から……その、精液が、出るのよね……。
    おしっこが出る穴と同じだと書いていたから、不思議だけれど……ど、どういう造りになっているのかしら……。

    赤く腫れ上がった亀頭が、てかてかと光沢を放っていることが気になって、指で触れてみた。
    ぬるり、とした感触の直後、彼の陰茎がびくっと大きく跳ね上がって。私は、小さく悲鳴を上げてしまう。
    さっき下着越しに感じていた強い力が完全に開放されていると、こうも大きく動くの?
    彼を見ると、明らかに先ほどまでより息が荒くなっていて。ぴくぴくと陰茎が動く頻度も上がっている。
    「……急に触って、ごめんなさい……」
    でも……そう、ここ、敏感なのね。
    それって、つまり。私に触られて、気持ちよくてびっくりした、ということ?

    まじまじと眺めながら、今度は息を吹きかけてみると、またびくっと大きく跳ねたりして。
    私が与えた刺激に健気に反応しているさまに、じわじわと愛着が湧いてくる。
    あんなに怖そうで、野蛮な見た目をしていたのに、案外反応は素直で可愛い。
    つんつんと突いては、反応を確かめたり。少しだけつまんでみては、ぎゅっと固くなる感触が怖くて放してしまったりして。

  • 103◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 23:05:17

    そんなことをしている内に、なんだかそれが可愛く思えてきて。
    私は、彼のそれに顔を近づけて、亀頭に小さくキスをしてみると。
    彼の、驚いたようなうめき声と同時に、"この子"もびくっと大きく跳ね上がった。
    「くっ、う……!星南さん、それは……」
    彼の言葉を聞かずに、私は唇についた液体を、少しだけ舐め取った。
    ちょっと、しょっぱい気がする。これ、なんの味だろう?
    変わった味だけれど、ぜんぜん嫌な感じはしないから。私は、たくさんキスしてあげることにした。

    何度も、亀頭から側面にかけて、彼の陰茎のあちこちにキスをしてあげる。
    そのたびに跳ねるこの子は、私の顔に打ちつけられたり、私の頬を撫でたりして、甘えるみたいに可愛らしく動いていた。
    私はそれを顔に何度もくっつけて堪能しては、匂いを嗅いでみたりして。
    すんすんと鼻を鳴らしている私を見て、彼は少しだけ恥ずかしそうにしている。
    「匂い、気になりませんか……?」
    私に下着を脱がせて愉しんでいたくせに、そんなことは気になるの?
    もう、そんなところだけデリケートなのだから。気になっていたら、こんなことしないわ。
    「ぜんぜん平気よ。この子、可愛いもの……」
    そう答えてあげると、ほんの少し安心した顔で、そうですか、なんて答えた。

    けれど彼は、私が亀頭にキスをするたびに、ずっともどかしそうで、つらそうで。
    気持ちよさそうな声を小さく何度も出しては、赤い顔をして腰を震わせていた。
    ふと、精液が出るところを見ると、透明の液体みたいなものが、ぷくりと浮き上がっている。
    ときどき亀頭がぬるぬるになっていたのは、これが原因かしら?

    出ている様子をまじまじと見ていると、私の頭に刺さるような視線で、彼が私を熱く見つめているのが分かった。
    何かを期待しているような、懇願するような、そんな視線。
    ……もしかして、あなた。
    舐めて、ほしいの?

  • 104◆0CQ58f2SFMUP25/04/23(水) 23:06:31

    先端に、熱い吐息を吐きかけながら、上目遣いで彼を見た。
    赤い顔で、息を荒くしていて、苦しそうな顔。きっとそれは、自分の性器にキスをする恋人を見て、ひどく興奮している顔だ。
    小さく、舌先を出してみた。彼に見せつけるように出した舌は、ぎりぎりのところで彼の性器には触れていない。
    ここ、舐めて、ほしいの?
    言葉にせず、目線で問いかけた。彼のことだから、遠慮して私に言えないかもしれないと思ったから。
    あなた、自分が私に何かをするのは積極的だけれど。私に何かおねだりするのは、昔から奥手だものね?

    遠慮がちに小さく頷いた彼を見て、私は決心がついた。
    ほかでもない、愛するあなたが望むことなら、と。それに、あなたも私の体をたくさん、気持ちよくしてくれたから。
    きっと、相手の体を舐めるのは、性行為においてとても一般的なコミュニケーションなのでしょう?
    ばかにしないで、それくらいは私も推察できているわ。
    もう一度、彼の陰茎をまじまじと見た。ぷっくりとにじみ出ていた液体は、彼の先端部分に自然と広がって、ぬるぬると光沢をもたらしている。
    ごくり、と喉が鳴ってしまった。私、今から彼の性器を舐める……のね。

    舌先を亀頭に向けて伸ばす。ここで受け止めると、彼に示すように。
    はしたないけれど、少し口が開いてしまっているから、彼の先端に熱い吐息をかけてしまう。
    ぴくぴくと動いている彼の性器は、大きく跳ねることを必死に我慢しているみたいで。少し可哀想で、とっても可愛い。
    私がちゃんと、気持ちよくしてあげるからね。
    だから、ちゃんとそこで待っていてね。
    震えて素直になれない彼の陰茎を見ていると、庇護欲が掻き立てられてしまった私は。
    ぐっと顔を寄せて、舌先に乗せるように、亀頭を受け止めた。

    うっ、と、ひときわ大きな彼のうめき声が聞こえた。
    陰茎は大きく跳ねて、亀頭は私の舌に何かを塗りつけるように逃げていく。
    腰が引けたのか、揺れ戻ってきた彼の陰茎は、私の舌にぶつかることはなかった。
    「んん……やっぱり、しょっぱい、わね……」

  • 105二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 07:01:15

    ほしゅ

  • 106二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 12:30:54

    保守

  • 107◆0CQ58f2SFMUP25/04/24(木) 16:12:35

    腰を引いてしまった彼が落ち着くまでの間に、私は口の中でさっき舐め取ったものを味わう。
    最初に、彼の性器にキスをしたときについていたのと、やっぱり同じだと思う。
    しょっぱくて、匂いはなくて、どちらかというと、さらさらで。
    おしっこ、では無いのよね? 私から出ていたぬるぬるも、似たようなものなのかしら?
    彼が出すのは精液だけだと思っていたけれど、白濁していると書いていたし、これは違うわよね?

    少し下品だけれど、くちくちと音を鳴らして味を確かめていると、彼の亀頭からまた液体が垂れそうになっていることに気がついた。
    彼の陰茎は、先ほどまでより明らかにかちかちに膨張していて。ぱんぱんに腫れた亀頭は、私にキスをせがんでいるようにも見える。
    ……さっきの、気持ちよかったのかな。
    いたずらな心が湧き上がる。
    彼を翻弄する側に立てているという、珍しくて大好きな状況に、心躍っていることも自覚していた。
    私、なんにもえっちなことなんて分かっていなかったのに。
    そんな私でも彼のこと、気持ちよくしてあげられるかも知れないなんて、とっても素敵。

    そう思った私は、引け腰の彼の陰茎に、ぐっと顔を近づけた。
    彼のふとももに手を添えて、これ以上逃げないようにしてあげると、彼は私の頭にまた手を添えた。
    優しく私の頭を撫で始めてくれる彼の手は熱くて、心地よくて。欲望のままではなくて、私をいたわるような手つきだ。
    その手つきで、彼も期待しているのだと確信した。
    自分の力でやらせるのではなくて、私が自ら彼を気持ちよくさせることを。

    亀頭からは、明らかにさっきよりもたくさん、透明の液体が溢れ出してきている。
    私に舐めて欲しいって、言っているみたいに。
    もう、この子が愛おしくて仕方ない。
    だって、この子は彼の体の一部で、私だけがえっちなことをしても良くて。私にえっちなことをして欲しがっていて。
    よだれを垂らすみたいに、私の舌を待っているのに。放って置くなんて意地悪なこと、できないわ。

  • 108◆0CQ58f2SFMUP25/04/24(木) 16:14:09

    「……んぁ……」
    舐め取る前に、精一杯伸ばして、彼に見えるように舌を出した。
    今からこの舌で、舐め取ってあげるからって。あなたのしょっぱいの、きれいにしてあげるって、見せつけるように。
    もう、それだけで、彼の先端から次々と液体がにじみ出しているのがわかる。
    ひくひくと震える彼の陰茎も、腰も、快楽を待ち焦がれているかのよう。
    もしかすると、彼は私が味わっていた、腰のぞわぞわと似たようなものを感じていて。
    私にえっちなことされたくて、うずうずしていて。私にえっちなことしてもらわないと、せつないんだ。

    それが分かれば、もう、なんのためらいも要らない。
    一気に距離を詰めると、私の口元で、ぐちゅり、と音がした。
    私が、舌の真ん中で、彼の亀頭を迎え入れた音。
    彼のしょっぱいのと、よだれを絡ませて、私の舌で混ざり合わさった、えっちな音だ。
    「っ……!星南さん、そんな……!」
    まだ、舐めてあげない。舌を押し付けて、ぐりぐりと押し付けて、ちゅくちゅくと音を立てるだけ。
    開けたままの口からあふれ出す熱い吐息が、彼の先端に追い打ちをかけるように刺激する。
    びくびくと痙攣するような彼の性器は、また跳ね上がりそうになっているのを感じて、私は片手で上側を押さえてあげた。
    これで、逃げられないでしょう?

    動きが拘束されたことに興奮したのか、しょっぱいのがたくさん漏れ出してきた。
    せっかく舌で受け止めているのに、何度も何度も出てくるから、そのたびに私の舌にぐりぐりと押し付けて。
    もっと出るのかしら?と思った私は、少し舌を動かして、舌の真ん中ではなく舌先を出口のところに押し付けてみた。
    彼は、大きく悶えるようなうめき声をあげて、私の頭を撫でる手が、少しだけ頭を掴むような形になった。
    ちゅろちゅろと、まっすぐに押し付けられなくて、何度も舌先で上下左右に往復してしまう。

  • 109二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 18:11:32

    夕保守

  • 110二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 18:35:43

    保守

  • 111◆0CQ58f2SFMUP25/04/24(木) 22:53:44

    それが一層気持ちいいのか、しょっぱいのはさらに溢れ出してきて。私は調子に乗って何度も舌先で刺激してあげた。
    刺激するたびに、彼の腰がわずかに揺れ動いていて、もっと、もっとってせがんできている。
    私の舌先を越えて、舌の上を滑ろうとしたり。舌先に押し付けるように、くいくいと動いたり。
    その、隠れて必死な様子に、胸がきゅうっとなってしまう。
    可愛い。愛おしい。私にえっちなことをして欲しくて、どんどん無防備になっていくあなたが大好き。
    せつないの?きもちいいの?もっと、ぺろぺろしてほしいの?
    それとも、もしかして。
    もっと、ぐちゅぐちゅにして欲しいの?

    せつなそうに苦しむ彼のために、私は大きく舌を動かして、べとべとに濡れた亀頭をべろりと舐めた。
    彼の、悶えるような声が漏れた。普段絶対に聞くことが出来ない声に、私の嗜虐心が刺激されていく。
    「んぁ……れろ……ちゅ………」
    舐め上げるたびに、彼はうめき声とともに小さな喘ぎ声を出しては、私を諌めるように頭を軽く掴んで押さえようとする。
    けれど、その手はぜんぜん力が入っていなくて。形だけの抵抗で、本当は私にもっと舐めてもらいたいのが丸わかりで。
    そんな彼に追い打ちをかけるように、私は何度も亀頭を舐め上げる。
    「れろ……ん、ふふっ……きもちいい?」
    舐めながら上目遣いでそう言うと、彼は苦しそうに、はい、とだけ答えた。
    舐め上げるたびに、しょっぱいのはたくさんでてきて、ぜんぜん止まらなくて。
    それを何度も舐め取っては、先端にキスをして、また舐め回して。ずっとそれの繰り返し。
    先輩の、そんな顔が見られるなら。こんなの、いつまでだって舐めてあげられそう。

    ふと、彼のしょっぱいのの味が変わってくる感覚が分かった。
    苦い……?のかしら、また雰囲気の違う、変な味。 どうしてだろう?
    一瞬の味だったけれど、舌に残るその感覚は、明らかにいままでの液体とは異なるものが混じっていると理解した。
    「ん、ちゅ……れろ……」
    ぴちゃぴちゃと音を立てながら、その味の出どころを探し求めて、また舐め回していく。
    でも、答えは明白だった。やっぱり彼の先端からにじみ出ていて、しょっぱいのに紛れていたんだ。
    「ふふ、変な味……ちゅ、ちゅる……れろ……」

  • 112◆0CQ58f2SFMUP25/04/24(木) 22:54:09

    もしかすると、精液、かも知れない。
    さっきの自分に照らし合わせると、気持ちいいときの漏れそうな感覚では、おしっこは出なかったもの。

    息を荒くした彼が私の頭を掴む手に、少しだけ力が入るのが分かった。
    なに?動かないで欲しいの?
    それとも……。
    私は、彼に掴まれるまま頭を動かさないようにして、舌を少しだけ引っ込めて口を大きく開けた。
    こんな顔、はしたないけれど。でも、彼がしたいことなのだから仕方ない。
    そうでしょう?だって、あなた……私の口に、これを押し込みたいのよね?

    私が口を開けて待っていることを察したのか、彼の手に、さらに力が込められる。
    少しだけ躊躇うように、それでも我慢ができないって、欲望に突き動かされるように。
    じりじりと頭を動かされ、彼自身も少しずつ亀頭を私の口に近寄せて。
    少し出た舌と、私の唇に亀頭が触れた瞬間。彼は小さく呻きながら、最後の力を込めた。

    ずるり、と、私の舌を滑り、彼の亀頭が押し込まれる。
    「んっ!…………ん、ぉ……!」
    彼の亀頭で口いっぱいになってしまって、歯が当たらないようにするのが精一杯だ。
    慌てて鼻で呼吸を始めたけれど、こんなに大きなもの、咥えたことがないから大変。
    苦しさと、彼を受け入れることができた小さな喜びで、こんな状態なのに私は胸があたたかくなった。

    待ち望んだ場所にたどり着いた感想は、どう?って。上目遣いで彼の顔を見てみると、明らかに余裕のない表情をしている。
    敏感なところが、私のぬるぬるした口の中に押し込まれているから、ずっと刺激が伝わっているのかも知れない。
    息を荒くしたまま、私の頭を掴んでいる手を撫でるように動かしたり、必死に優しくしようとしてくれているのも伝わってくる。
    なんだか、嬉しいな。あなたのそういうところ、好きよ。って、言ってあげたい。
    やろうと思えば、もっと乱暴できるのに。あなたは絶対にそんなこと、しなくて。
    精一杯、私にぶつけている欲望も、こんなにも遠慮がちで。
    私に甘えたいなら我慢してはだめって、何度も言っているのに。本当に、仕方のない人。

  • 113◆0CQ58f2SFMUP25/04/24(木) 22:55:26

    愛しさと庇護欲が掻き立てられ、彼をもっと気持ちよくしてあげようという気持ちが湧き上がってくる。
    私の口の中でも跳ねようとしている陰茎は、きっと私の口の中にあるだけで気持ちよくて、逃げ惑っているのね。
    それなら、と、私は口いっぱいに頬張っている亀頭に舌を絡めて。
    そのまま、舐め回してあげることにした。
    「ん、んぅ……じゅっ……んろ……」
    口の中が彼の存在で、しょっぱい味とほのかに苦い味でいっぱいになる。

    勢いで始めてみたけれど、これ、すごいことしているわよね。
    彼の一番無防備なところが、私の口の中にあって。それを、食べ物を味わうための舌で、ずりずりと舐め回していて。
    たくさん私のよだれが出てしまうのを、ぐじゅぐじゅと絡めながら、彼のしょっぱいのとか苦いのと、混ぜ合わせたりして。
    飲み込む瞬間なんて、とんでもなく背徳的で。それだけで私の膣口から何かが垂れそうになるのを感じてしまう。
    これ、本当に大丈夫? 本当はもっと、とってもとってもえっちなことで。はじめからこんなことして、彼、幻滅したりしない?

    不安になって上目遣いをすると、私の口に翻弄されて気持ちよさそうに顔を歪める彼が目に入ってくる。
    なんだ、大丈夫そう。そんなに気持ちいいなら、もっともっと、ぐじゅぐじゅに舐めてあげるわね。
    「あ、うっ……!星南さん、どこで、こんなこと……!」
    彼の言葉も聞こえないくらい、じゅるじゅる、ずぶずぶと、大きな音が立つようになってくる。
    飲み込むために、ときどき吸ったり、すすったりするのが、また気持ちいいみたいで。
    そのたびに、彼が気持ちよさそうにうめくのが、なんだか楽しくなってくる。
    彼の亀頭から滲みでたものを舐め取ってあげると、またしょっぱいのと苦いのが、じわじわと漏れ出てきて。
    気持ちよくなってくれて嬉しい、って気持ちを込めて、何度も何度も彼の亀頭を、ぐじゅぐじゅに甘やかしてあげた。


    ―――

  • 114◆0CQ58f2SFMUP25/04/25(金) 02:18:02

    数分くらい、経ったかも知れない。
    彼のことを口でたくさん甘やかし続けて、だんだんと漏れ出る何かが多くなってきていた頃。
    彼と二人きりの聖なる行為として、大きな音を立てることに私の恥じらいが薄くなってきていた頃。
    彼の様子には、少しずつ変化が表れた。

    そわそわとした腰の動きが、徐々にせわしなく、時折大胆に動くようになってきている。
    「……んっ……ん、えっ……!ぐ、ぷ……」
    彼の動きとタイミングが合わなくて、不意に口の奥まで入ってきてしまって、えづいてしまう。
    下品な声を出してしまって、とっても恥ずかしいけれど。よだれがたくさん出てしまうから、それをいっぱい絡めてあげると、彼も喜んでくれたりして。
    涙目になってしまっても、彼が私を気遣って、優しく頭を撫でてくれるから苦にならない。
    「んぶっ……じゅ、ずっ……んっ……ごくっ……!」
    何度も何度も、喉を鳴らして飲み込んでいるのに、彼の愛しいものは、まだまだ何かを垂れ流している。
    「ん、じゅろ……ん、お…」
    そんなとき、私の頭を掴んでいる彼の手に、ぐっと力が入って。
    私の口から、亀頭を引き抜いた。
    「っ! じゅ、じゅるるっ!」
    溜まっていた唾液を全部吸い込みながら、よだれをこぼさないように必死に吸い付く。
    ちゅぱっ、と、私の唇が最後に吸い付く音がしたあと、彼の亀頭は久しぶりに外気を浴びることになった。

    久しぶりに自由になった自分の口にも、得も言えぬ解放感を覚える。
    「んっ、ぷはっ……はぁ……っ!はぁ……っ!」
    息が、出来るようになったと自覚すると、慌てて口で酸素を取り込もうとする。
    ちょっとだけ、酸欠みたいになってて。実は結構、苦しかったのかも知れない。
    でも、どうしたのかしら。どうして、抜いちゃうの?きもちよくなかった?
    口を閉じられないまま、ぼーっとして彼の、かちかちの陰茎を見てみると。
    彼の、痛々しく腫れ上がった亀頭が、私の口を名残惜しそうに見つめていて。
    小刻みに震える彼の体が、なにかの限界を物語っていた。
    あぁ、わかったわ。あなた、逃げてしまったのね?
    だめよ、逃げては。
    "その波"、とっても気持ちがいいのだから。

  • 115二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 08:58:55

    保守

  • 116二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 15:26:15

    昼保守

  • 117二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 18:49:12

    保守

  • 118◆0CQ58f2SFMUP25/04/25(金) 23:02:51

    懸命に、こみ上げるぞわぞわを逃がそうとしている彼の腰を、逃げられないようにしっかり掴んであげた。
    彼は一瞬、何事かと思ったみたいに硬直したけれど。何をされるのかを理解したのか、また私の頭を掴もうとする。
    でも、私の咄嗟の動きには反応できなくて。
    私は、大きく口を開けて、彼の亀頭をまた、ぐじゅぐじゅの口で包みこんであげた。

    ぐちゅり、と口の中いっぱいに亀頭を包みこんであげると、彼の悲鳴のような喘ぎ声が響く。
    ふふっ、そんなに気持ちよかった? ね、気持ちいい?気持ちいいでしょう?
    だったら、最後までしてあげるから。だから逃げないでね、先輩。

    さっきの、私の口から陰茎が引き抜かれた瞬間を思い出す。
    あのとき、じゅるじゅるになった口からよだれが溢れないように、思い切りすすり上げたのだけれど。
    その瞬間がいちばん、私の頭を掴む彼の手に力が入った気がする。
    だから、きっといちばん気持ちいいのは、こうして……。
    「――んぶっ!ん、じゅぶっ!」
    彼の、いちばん気持ちよさそうな動きを想像しながら、頭を降り始める。
    たくさん下品な音がして、口の中をよだれでいっぱいにして、みっともない顔で男性器に吸い付いて。
    こんなの、十王星南としては、ありえない姿だと分かっているけれど。今はただ、彼の恋人である私だから。
    私をあんなに気持ちよくしてくれた彼に、私もたくさん気持ちいいこと、してあげたいものね。

    「んっ、んっ、じゅぶっ!」
    速く動こうとすると、歯を当てないようにするのがもっと大変になる。
    けっこう難しくて、必死になってしまって。彼の反応も、声は聞こえないから、陰茎の動きで推し量るしかない。
    「んっ、ずっ……! ず、じゅ、ちゅっ……!」
    私の、吸い上げたり舐め取ったりする動きに揺さぶられて、びくびくと反応しているかは分からないけれど。
    口の中が彼の味でいっぱいになっていて、たくさんしょっぱいのと苦いのが出ているのがよく分かる。
    私の頭を掴む手も、次第に離れていって。私が口を離さないように、後ろで待ち構えているだけみたいだった。
    「星南さん、そんなに、吸い付いたらっ……!」
    彼の声がかすかに聞こえる。少しだけ必死そうな、悶えるような声。
    なら、大丈夫。きっと気持ちいいって、言っているから。

  • 119◆0CQ58f2SFMUP25/04/25(金) 23:03:14

    小さな前後の動きだけれど、彼の体はとても喜んでくれているみたいで。
    じゅるじゅる、ずるずる、吸い上げていると、また口の中が彼の味でいっぱいになって。
    口から溢れそうになったそれを、ごくっ、と音を立てて飲み込んだあと、また彼の亀頭に舌を絡める。
    そして、もう一度彼の亀頭を舐めあげて、ずずっ、と吸い上げようとしたとき。
    彼の亀頭……陰茎全体が、ぐっと膨張したのを口で感じた。

    咄嗟に大きくなった彼の亀頭は、口から出すには歯が当たりそうで危なくて。
    きっと彼の体に、大きな波が来ているのだと本能で理解した私は、止まりかけた動きを再開させた。
    最後の最後まで、彼を気持ちよくさせてあげたい。その一心で、私は必死に彼の亀頭をじゅるじゅると舐め回す。
    だって。本当に知らないから、わからないけれど。きっとこれって、彼は――。

    そして、次にひときわ膨張した彼の陰茎を吸い上げた瞬間。私の頭を、がっと強く掴んで固定した彼は。
    その陰茎から、どろどろした何かを、私の口の中に大量に吐き出した。


    ―――

  • 120◆0CQ58f2SFMUP25/04/25(金) 23:06:00

    私の、口の中が、彼の吐き出したものでいっぱいになっていく。
    びくっ、びくっ、と、彼の陰茎が痙攣し、そのたびに何かを吐き出しては、私の口の中を埋め尽くしていく。
    くさい、とは思わないけれど、すごい匂いで。どろどろしていて、何度か勢いよく飛び出したものは、口の奥にへばりついている。
    脳に直接かかったのかと思うくらい、鼻腔はそれの香りで埋め尽くされていて。
    色んなことを考えていた私の頭は、いま、濃厚な雄の匂いにかき消されてしまった。
    ――すごい、なにこれ。
    私は、人生で初めての男性の精液を、射精を受け止めた。
    手でもなく、子どもを作るための器官、膣や子宮でもない、ものを食べるための場所で。
    その姿も見えないままに、白濁しているという噂の、彼の精液を受け止めている。

    ひとしきり出し終わったのか、口から彼の陰茎が引き抜かれた。
    一瞬、口からそれが溢れだしそうになってしまったのを、慌てて口を固く閉じて防いだ。
    私の唇から彼の亀頭に、一筋の糸が伸びている。なんだか少し冷静になってしまっていて、とっても恥ずかしい。
    それにこれは、変な味がする!
    苦い!本当に苦い!
    射精される直前に口の中の唾液を飲み込んでしまっていたから、そのまま精液が舌に乗っかっている。
    いまさら口から吐き出すなんて、みっともなくて出来ないし。いつまでもここに溜めておくと、おかしくなりそう。

    放心していた彼が、私が苦しんでいる様子を見て慌て始めた。
    そんなに気持ちよかったのなら、それは本当に良かったのだけれど。
    こんなに大量に出てきて、こんな味がするなら、先に教えてちょうだい!
    「ちょっと待っててください、ティッシュ取りますから!」
    ばたばたと、テーブルに置いてあったティッシュを取ろうとしている。
    あ、でも、これ……あなたが出した、精液で。
    私が初めて、あなたを気持ちよくさせてあげられた証明で。
    本当は私と……子どもを、つくるためにって、あなたの体が、がんばって作ったものだから。
    吐き出して、捨ててしまうなんて。そんなのは、可哀想……だと、思う。

  • 121◆0CQ58f2SFMUP25/04/25(金) 23:06:36

    咄嗟に、差し出されたティッシュを受け取ったけれど。
    私はそれを握りしめたまま、少しだけ唾液を増やそうと、ぐちゅっ、と口の中をかき回した。
    「ん゙ん……んっ、ぷ……」
    濃ゆい匂いと、凄まじい味が口いっぱいに広がって、頭がおかしくなりそうになるけれど。
    彼の、大切な精液、こぼしたくないもの。
    「……ごくっ!…… んっ!げほっ!」
    ぐっとこらえて、私は、彼が私に吐き出してくれた精液を飲み込んだ。

    一回では飲み込みきれなくて、何度かに分けて飲み込んでいく。
    どろどろして、少しだけねばねばしてて、本当に飲み込みにくい。
    「……けほっ! ……やだ、喉に……引っかかって……!」
    なんとか飲み干したものの、口の中に残る後味と、喉に引っかかる感じが拭えない。
    口の中に何も無いのに、ずっと彼の精液の匂いがする辺り、凄まじい濃さであったことを感じさせる。
    「あ、う……後味、消えない……」
    ふらり、と倒れるように手を伸ばし、テーブルに置いてあったペットボトルの水を手に取った。
    なんでもいい、早くこの喉の不快感から解放されたい。
    勢いよく、蓋を落とすのも構わずに開けて、洗い流すように水を口に含んだ。

    ちょっとはしたないけれど、うがいみたいにして飲み込んで。
    何度か繰り返していると、ようやくひと心地つくことができた。
    ほんの少しだけ、舌に後味が残っているけれど、ひとまず大丈夫そう。
    ふう、と一息ついて、貰ったティッシュで口の周りを拭いている私を見て、少し疲れた顔をした彼が心配そうにしている。
    「星南さん、飲んで大丈夫でしたか? その、味とか……俺も口にしたことはないので、よく知りませんが……」
    珍しくおたおたとしていて、ティッシュ箱を持って右往左往する彼を見ると、少しだけ笑ってしまった。
    もう、どうしてあなたが慌てているのよ。なんて言いながら、もうティッシュは不要と見ると、私の頬に手を当ててくれて。
    きもちよかったの?って聞いてあげたりすると、少しだけ赤い顔で目を逸らして、はい、って。
    そんな可愛い顔をした彼を見れただけで、がんばって舐めてあげて良かったと思えた。

  • 122◆0CQ58f2SFMUP25/04/25(金) 23:08:13

    布団に座り込んだ彼の、あたたかい手に触れながら、私はにっこりと笑ってあげることにした。
    「ふふっ、飲んじゃった……あなたの精液♪」
    彼の罪悪感を吹き飛ばしてあげるために、とっても明るく。
    彼はなんとも言えない表情をしているけれど、きっと心配性の彼は一言で安心なんでしないのでしょうね。
    そんなことを思って、ついさっきまで私がたくさん気持ちよくしてあげた陰茎を見てみると。
    まだ、少しだけ白い液体がにじみ出ていることに気がついた。

    私は、咄嗟に彼の手を放して彼の足元にかがみ込む。
    私の唾液もまだついていて、ちょっとみっともないし。まだ残っているなら、もったいないもの。
    「……少し、綺麗にしてあげるわね、先輩」
    陰茎の中間を指で少しだけ支えて、軽く、私の口元の高さに合わせると。一息で、また亀頭を口に含んだ。
    私の口の中で、複雑な味が広がる。やっぱり苦いのが一番強くて、さっきの精液がついていたり、中に残っていたみたい。
    「せっ、うぅ……! それは、刺激が……!」
    何やら悶えている彼が、私の頭を掴んでいる。さっきより少し、引き剥がそうとする力は強い。
    でも、ひと舐めしたら簡単に力が抜けて、何度繰り返しても彼は私を引き剥がすことができないままだ。
    「ほうひて? じゅる……さっひ、らひたほこれしょう?」
    悶える彼に返事をしながら、彼の残った精液と、どろどろだった亀頭を舌できれいに舐め取っていく。
    亀頭の下にある、段差やでこぼこの部分もしっかりと舌を這わせてこそぎとっていくと、彼は大きく声をあげた。
    可愛い♪ 出したあとって、気持ちいいのね?
    「じゅるっ、ん……ごくっ! ……らひたあほって、ひもひいぃの?」
    彼の亀頭に舌を這わせたままだから、少し間抜けな喋り方になってしまうけれど。これはこれで、彼がなんだか気持ちよさそう。
    「咥えたまま喋るの禁止です! くぅ……!」
    どうして? そんなに気持ちいいのなら、もっとたくさん舐めてあげたいのに。
    こんなことして大丈夫かなと思ったけれど、こんなに彼が気持ちよさそうにしてくれるのなら、毎回してあげようかな。

  • 123◆0CQ58f2SFMUP25/04/25(金) 23:08:47

    彼の精液の残りを吸い出そうと、少しの間すすり続けていた。
    お尻を突き出して、彼の股の間に頭を突っ込んで。この体勢、けっこうはしたないかも知れない。
    「ぐじゅ、ぐぷっ……ごくっ! ん、じゅる……」
    自分の口にあふれ出すよだれを、彼が痛くならないように沢山絡ませてあげていると、奥から苦いのが少しだけ出てきた。
    ふふっ、ほらね、まだあったじゃないの。 ちゃんとぜんぶ出してあげるからね。
    「ん、じゅ、ずるっ! ちゅぅ…………っぷは!」
    彼の奥に残った精液を吸い出すように、根こそぎ吸い上げるように、ずるずると音を立てて吸い取った。
    口を離した瞬間、ちゅぱっ、と大きな音がする。最後の一滴まで残さないために。
    彼は、歯をくいしばって悶えながらも、座り込んでいて逃げられない腰を、懸命に私に委ねていた。
    「はぁっ……はぁ……まだ、あったわね……♪」
    射精ではない快楽の、断続的な刺激に、さすがの彼も悶え苦しんでいたようだ。

    達成感に包まれた私は、もう一度、水を飲んで口をすっきりさせる。
    最後に絞り出したのは、そんなに苦くはなかった。たぶん、薄かったのか、少なかったからか。
    そうして、ひとしきり悶えて倒れ込んだ彼を横目に、ひと心地ついていながら、彼の股の間を見た。
    流石に少し、くたりとしていて。あの、かちかちに固くなった陰茎と比べれば、少し柔らかそう。
    でも、柔らかそうで、かえって生々しい。
    なんだか生物的で、張りがなくて、充血がやんで小さくなっているはずなのに、まだけっこう大きくて。
    自分の体がまだ、それを求めていると、下腹部がぎゅうっとなる感覚で確信した。

    ふと、自分の性器の近くを触れてみると。
    そこには、おびただしい量の愛液が、溢れかえっていて。
    お尻や太ももを、ぬるぬると濡らしてしまっている。

    ――欲しい。
    私だけのモノにしたい。彼の男性器、彼の精液、どれもこれも。
    私の中に、彼の男性器を受け入れたい。
    私を、あなただけのモノに、して欲しい。

  • 124二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 06:55:06

  • 125◆0CQ58f2SFMUP25/04/26(土) 09:43:15

    ―――


    どきどき、心臓が破裂しそうなくらい緊張する。
    彼に、えっちなこと、いっぱいされても。
    彼に、えっちなこと、いっぱいしてあげても。
    最後の、それをしようって誘うのは、とっても恥ずかしいもの。

    私のせいだけれど、悶えて布団に倒れ込んだ先輩の隣に、ずりずりと膝で座ったまま近寄った。
    私は浴衣をぜんぶ脱がなかったからか、彼よりも汗をいっぱいかいてしまっている。
    未だ、じんじんと痺れるように固くなった乳首も、浴衣の衿でちょっとだけ隠せるのもちょうどよかった。
    「あ、あのっ……あのね、先輩」
    上ずった声で、彼に声をかけた。倒れ込んでいる先輩も顔を赤くしていて、少し息が上がっているみたい。
    彼の、布団に投げ出された手をじっと見つめる。
    この、いたずらばっかりする悪い手に、今日は散々弄ばれてしまったのに。
    私のここが、こんなにぬるぬるになっているのに、休んでいるなんて……そんなの、だめよ。

    彼の手の、指を掴んだ。いやに力の抜けた手は、私が何をしたいのか気がついているみたいに意地悪だ。
    どうせまた、お見通しなのかも知れない。でも、だからってやめておくなんてこと、できないから。
    「私、ね。その……いま、こんなに、なっていて……」
    彼の人差し指を、自分のぐちゅぐちゅの性器に押し当てる。
    こんなこと、いくらなんでもえっちすぎるけれど。彼に、一番私の体の状態が伝わるだろうし。
    あれだけ私の大事なところを、調子に乗ってくちゅくちゅ触っていたのだから、本当は触りたいだろうし。
    「あ、あなたと、その。 最後まで、したいなって」
    だから、そんなところで、倒れていないで。
    私の、ここ。こんなぐちゃぐちゃになって、準備、できてると思うから。

    不意に、彼の指が動き始めた。少しだけ投げやりな指使いに、私は小さく喘ぎ声を上げてしまう。
    「あ、うっ……そ、そう……そこが……もう……」
    彼の指が私の膣口を優しく撫で回したり、ヒダのところをぴちゃぴちゃと弾いてみたり。

  • 126二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 11:02:36

    保守

  • 127◆0CQ58f2SFMUP25/04/26(土) 18:46:37

    私の性器の形を確かめるような、私の愛液をかき集めるような、卑猥な動きをしている。
    「本当に、わかりやすい方ですね」
    寝転んだまま、そんなことを言う彼に翻弄されそうになってしまって。
    彼の指にされるがまま、私は愛液を溢れ出させていて、彼の指を濡らしていく。

    でも、視界の端で。彼の指を私の性器に押し当てた瞬間から、彼の陰茎がぐぐっと大きくなっていくのを見てしまった。
    「わかりやすいのは、あなたでしょう? "ここ"、こんなにして」
    彼の指による快楽を、腰をひねってなんとか逃がしながら。彼の、大きくなった陰茎をつんつんと突いてあげる。
    くすくす、と、照れ隠しのように笑う彼を見て、構えていた心も解けていった。
    「この子、あなたと違ってとっても素直ね。 よっぽど好感が持てるのだけれど?」
    軽口を叩いてあげると、彼はまたくすくすと笑って。それを見て、私も思わず吹き出してしまった。
    こんなくだらない話、なんのためにしてるのかしらって思いもするけれど。
    そんなくだらない会話をする時間の中で、意外なほど心は軽くなっていた。
    もう、緊張していた私がばかみたい。

    彼の指が、私をくちゅくちゅと弄ぶように蠢くと、私もまた小さな嬌声を上げてしまうのだけれど。
    今までみたいに、息が止まりそうな緊張はなくて。ただ、彼とのつながりを楽しみにできる自分がいる。
    私も負けじと、彼の陰茎に指を這わせたりして、優しく刺激してあげたりした。
    力尽きていたはずの彼のそれは、さらにむくむくと膨らみを増していく。
    「まだ、出るの?」
    興味と、期待と不安を込めて、ゆっくりを身を起こそうとしている彼に聞いてみた。
    普通の量を知らないけれど、私の口の中にあんなに出してしまって、もう出なくなっていたらどうしよう。
    その、きれいにしてあげる、とか言って追い打ちをかけたのも私なのだけれど。
    「まだいけますよ、二回か三回は出せると思います」
    起き上がり、上半身の筋肉を際立たせる彼にどきりとしながら、その言葉に胸を躍らせた。
    まだ、出るんだ。
    じゃあ、彼はちゃんと、私の中で出すことができるということなのね。

  • 128二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 18:49:06

    夕保守

  • 129二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 00:14:11

    ほしゅ

  • 130◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 00:51:29

    ふと、自分が用意してきた避妊具のことを思い出す。
    あれがないと妊娠の確率が段違いだから、望まないタイミングでは必ず使うべきと、あらゆる書籍に書かれていた。
    昔は、不思議な感覚だった。子どもを作るための行為なのに、ただ気持ちいいからという理由で、本来の目的を阻害する道具が必要になるなんて。
    でも、今なら分かる。
    私たちがしているこれは、命をつなぐための、聖なる行為ではないけれど。
    心から愛し合う二人だけに許された、最大級の愛情表現。
    快楽を共にし、分かち合い。身も心も溶け合って一つになるための、唯一無二の行為なのね。

    彼の鞄の脇に置いていた私のポーチから、箱から小分けにしていた避妊具をひとつ取り出した。
    私一人では練習もできなかったけれど、イメージトレーニングはしてきた。女性誌に、つけてあげる方法なんかは載っていたから。
    ふと、ポーチの中にある"もうひとつの手段"が、手に触れる。
    これは、と、心がざわめく感覚に襲われそうになった瞬間。
    彼が私の手元を覗き込んできて、私は小さく悲鳴をあげてしまった。

    「星南さんも、ご用意頂いてたんですか?」
    何も気づいていない様子で、彼はそう言うと、私の手にある避妊具を見ていた。
    「え、ええ。旅行の前にクリニックに行って、その時に……」
    ポーチの中の、もうひとつの手段を隠すように押し込んで、彼に避妊具を見せる。
    何も恥じることはない、私たちには必要なものだから。それに、"星南さんも"ということは、きっと彼も用意していたのね。
    私の手にある避妊具を見た彼は、何か言いたげに口を開いては、口ごもっているみたいだった。
    どうしたの?って聞いてみると、彼は言いづらそうに私の手に持った避妊具を指さして、サイズが……と呟いた。

  • 131◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 00:51:49

    サイズって、これにサイズ違いなんてあるの?
    そう言って、彼にどんなものかと聞いてみると、これです、なんて言って鞄から箱を取り出した。
    箱の見た目は変わらないけれど、確かにLサイズ……と、書いてある。そんなもの、あったのね。
    「色々試しましたが、これなら問題なく装着できましたから」
    慣れたように、当然のように、すでに開封済みの箱から一つの小袋を取り出している。
    彼は当たり前みたいに言うけれど、色々試しましたが、って。
    私と性行為をするために、練習していたの? 自分に合うサイズも探して?

    その姿を想像した私は、得も言えぬ愛おしさに、彼をきゅっと抱きしめた。
    だって、そんなの、可愛すぎる。それに、とっても真摯で、彼らしくって。
    呆気にとられる彼も、よくわからないけれど、といった風に私を抱きしめ返してくれた。
    彼はこんなに、私の体のことを考えてくれていて。二人のこれからのことも考えてくれていて。
    いちばん安全な方法を、自分で練習して来てくれたというのに。
    私は、自分勝手な願望で、"着けなくても良い"方法を準備していた。


    ―――

  • 132◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 00:52:17

    気を取り直して、これは一番匂いが少ないとか、アレルギーだとか、先輩が色々と説明してくれている中。
    私が、ポーチからもう一つ小箱を取り出すと、彼は目を丸くした。
    やっぱり、彼もこれが何かは知っているみたい。
    これはアイドルのプロデュースには関係ないものだから。そういうものは、知らないと思っていたのだけれど。
    今回ばかりは、あれもこれも調べてくれていたのね。
    「星南さん、その……体への負担を考えると、避妊具のほうが」
    やっぱり、どういうものかも知っている。私が、何をしたいのかも。

    これは、本当に私の身勝手な願望。
    リスクも何も調べ尽くして、お医者様とも相談して、自分で選んだことだから。
    「止める理由が、それだけなら……」
    私の体を気遣ってのことであれば、私はもう、承知の上だし。
    避妊具より数%の可能性があるのは、覚悟の上だから。
    「私は、せめて今日だけは、あなたを直接感じたいの」

    私の言葉を聞いて彼は、今日においては久しぶりに、難しい顔をした。
    こんな我が儘で悩ませてしまって、ごめんなさい。
    もちろん、彼がそれでも、いけませんと言うのであれば、もうこれで引き下がるつもりだし。
    そんなことで私の、彼への愛が揺らぐことは無いけれど。
    ただ、私の……黙って諦めるには、きっと悔いが残る願望だったから。
    私のもってきた避妊具は、あわや使い物にならないところだったけれど。彼がきちんとしたものをもってきてくれたのだし。
    もし彼がダメだと言っても、それはそれで避妊具を使えばいい話だから。
    だから私は、彼の答えを待つことにした。

  • 133◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 00:52:37

    ほんのわずかな時間かも知れないけれど、彼の熟考を待っていると。
    ゆっくりと顔を上げた彼が、私の両肩に手を置いた。
    「……わかりました、俺も覚悟を決めましょう」
    その言葉に、ほんの少しの申し訳なさと、それを覆い隠すほどの喜びが込み上げる。
    やった!って、飛び上がってしまいそうにもなるけれど、ぐっとこらえた。
    本当に、本当に嬉しいから。
    "星南さんが言うなら"って言わなかった彼のことも、とっても嬉しかったから。
    私のリスクを考えて悩んでくれた彼の前なのに、顔が綻んでしまう。

    だったらもう。あとは一つだけ。
    私とあなたの初めてを捧げ合う、最後の儀式。
    その瞬間が、刻一刻と迫っていた。


    ―――

  • 134◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 03:29:11

    胡座を崩して座る彼に、膝をついてまたがるようにして、私は彼に覆いかぶさった。
    私のペースで、ゆっくりと受け入れられるようにと思っての、私が上になる体勢。
    これは、私の計画通り。自分でペースを握る方が絶対に安心できるもの。
    誤算は、彼の陰茎が大きくて、ただ膝立ちでまたがっていると、私の膣口よりも上に亀頭が来てしまうということ。
    もっと腰を上げるか、位置をずらして押し込まないと入らない。

    私は、気持ちを高めて緊張を和らげるために、彼の陰茎に手を添えて自分の性器に擦りつけてみたりしていた。
    くちくちと鳴らしながら、自分から垂れている愛液を彼の陰茎に塗りつけるように滑らせる。
    これはこれで、自分の膣口のあたりが刺激されて、また気持ちよくなってきてしまう。
    彼も、私のペースを崩さないために腰を動かさないでいてくれているものの、この甘い刺激に何度も、体を震わせていた。

    もう、体の準備は十分にできている。
    股の間に手を伸ばして、彼の陰茎を支えた。
    「……っ」
    前から滑らせるように、彼の亀頭を私の膣口に当てた。ぐちっ、と音が鳴るくらいには、滑りも良くなっているみたいで。
    少しだけ、逡巡した私は。彼の肩を掴む手に力を入れながら。
    ゆっくりと、腰を下ろし始めた。

    「あ゙っ……!か、はっ……」
    滑らなくて痛いということはまったくなくて、摩擦は気にならない。
    ほんの少しだけ入ったような感覚があるけれど、膣の押し上げられる痛みが強くて、どんな状態になっているのか検討もつかない。
    ただ分かるのは、私が彼の亀頭を押し込むようにを動かすたび、彼はうめき声を上げていて。
    私のような苦悶の滲む声とは違って、歓喜のこもった戸惑いのような声を上げているということだ。
    人を妬むなんて、みっともなくて普段はしないけれど。今だけは、彼が羨ましくて仕方がない。
    もう、呑気に気持ちよさそうな顔をして!

  • 135二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 11:08:46

    保守

  • 136二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 15:12:41

    昼保守

  • 137◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 16:46:09

    でも、浅いところだけでも分かる。痛みに紛れているけれど、彼の陰性の熱さが。
    本当は、何度か戻ったりして、膣を慣らしていったほうが良いのかもしれない。
    「ぐ、うぅ……! っふ、う……!」
    そんなことを思ってみるのだけれど、今が痛くて、それどころではない。
    戻って、また痛いだけだったら?
    その可能性を捨てきれない以上、私はもう、進むしか無いんだ。

    腰を下ろす力を、さらに込めたとき。
    途端、ずりゅ、と音がしたと思うと、一気に何かが膣に滑り込んだ感覚を覚えた。
    「はっ! ……あっ……!」
    お腹が、急激に苦しくなっていく。侵入した異物に対する圧迫を強める膣は、私の意思に反して全く制御ができなくて。
    一瞬の出来事なのに、内臓が押し上げられるような感覚が襲ってきて、呼吸をすることも忘れてしまった。
    いま、思い切り入った。
    明らかに、ずるりと膣の奥にぶつかるような感触もあったし、これ以上進まないであろう気がしている。
    彼の肩をぎゅうぎゅうと掴みながら、必死に痛みと苦しさを逃がしては、涙目になった視線で彼に訴えかける。
    もう、はいったの、よね?
    幾度目か、私の訴えに気がついた彼が、首を横に振った。
    「また、先端だけ、です……!」

    彼の言葉に、絶望感が押し寄せてくる。
    うそ、でしょう? だって、こんなに苦しくて。もう、絶対ここで私の膣はおしまいなのに
    探り探り、手を伸ばして彼の陰茎に触れると、確かにまだまだ先がある。
    片手では足りないくらいの長い道のり。まだ本当に、亀頭しか入っていない。
    「星南さん、痛ければ、今日は無理せずに……!」
    ぎゅうぎゅうと締め付けられる感覚に悶えているのか、彼も言葉を途切れさせながら私を気遣ってくれる。
    どこまでも優しい彼は、今日はここで終わってしまっても構わないと言ってくれる。
    でも、私はこんなところで終わることなんてできない。
    だって、無理を言って避妊具もつけないで、最初で最後の初めての日なのだから。

  • 138◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 17:12:07

    すでに息も絶え絶えな私は、彼の首に手を回して、ぎゅっと彼にしがみついた。
    裸で抱きしめ合うことで得られる肌の密着感は、いまとにかく勇気と安心が欲しい私にとっては命綱みたいだ。
    「血、でてる……?」
    泣きそうな声で、彼に問いかける。彼にいまの私の状態を、確認してもらいたかったから。
    どのくらい入れば良いのかはわからないけれど、処女膜輪……というものが裂けると、いわゆる血が出るものと書いていた。
    何かが裂けるには十分な状態だと思う。
    「いえ、でてなさそう、です。 痛いですか?」

    結合部を指で触れて確認した彼の答えが意外で、ほんの少し痛みを忘れて驚いてしまった。
    裂けてないんだ。処女膜輪が伸びやすい体質だったのかもしれない。
    「痛いけど、なんていうか、体が、びっくりしてて」
    私の痛みは、今までにないくらい膣を拡げられたことで筋肉が驚いてしまっているんだ、と理解した。
    だったら、もう。彼の大きな陰茎でも裂けないなら、いっそ。
    彼にもっと、えっちなことをしてもらって。
    もっとぬるぬるにしたら、体が油断した瞬間に、ずるりと最後まで挿れてしまえるのでは?

    「あの、先輩……このまま、えっちなこと、して?」
    あっているのかどうか分からない閃きを実践するために、抱きついた彼の耳元で懇願する。
    「痛いの、忘れて……ずるって、入ると、思うから」
    こんな密着して、彼が身動きできるのかも分からないのに無理を言って。
    けれど彼は、分かりました、って。私が彼を頼ったときの、いつものような頼もしい声で言ってくれた。
    もぞもぞと、密着していた下腹部を少しだけ離すと、彼の手が私との結合部に触れる。
    何か、ほぐしてくれるのかしら。と思っていたら、不意に彼が私の性器の何かを、指で探り始めた。
    それだけでも、ぐちぐちと音が立つくらいにはいやらしい手つきで。私は身をよじってしまう。
    「あっ、あっ………!なに、さがしてっ……!」

  • 139◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 17:12:57

    ありました、と彼が小さく呟いた。
    なにが?と、聞く間もなく。何かを見つけた彼は。私のそれを、ぐりぐりと指で撫で回した。
    「あ゙っ!ひ、あっ!あっ!なに、それっ!」
    今日、いちばんの強烈な快感が脳を直撃する。
    私の性器の、上のほう? なにか、固いところ、なに?
    「ここが、いわゆるクリトリスです」
    呼吸は少しだけ興奮気味の彼は、意識してか淡々と私の耳元で囁く。
    クリトリスって、確か陰核、って名前で。
    神経が、どうとか、色々書いてて、もう、分からない。
    「あ゙うっ!く、うっ!それ、ん゙っ!」
    彼の、指の柔らかいとこでぐりぐりと刺激されるその感覚が、私の思考も何も寸断してしまう。
    「あっ、あっ、あっ! ひ、うっ! きもち、いいの、つよすぎっ……!」
    自分が今、彼の陰茎を挿入しようとしている途中だということも、一瞬忘れそうな強い刺激。
    これ、いけるかもしれない。
    ぐちゅぐちゅが、また多くなってきてる気がするし。
    いま、痛いって気持ち、忘れそうで。
    いま、挿れよう!

    強烈な刺激に反射で動いてしまう腰をそのまま利用して、じわじわと挿入を再開する。
    ぐじゅ、ぐちゅ、と音を鳴らしながら、彼の陰茎は確かに私の膣を進み始めた。
    「あ゙っ!ふ、うっ……!」
    また、呼吸が苦しくなる。お腹が圧迫されて、内臓が少しずつ押し上げられる感覚。
    でも、彼がまだ、私のクリトリスをいじめてくれてるから。苦しさも寸断されて、どんどん奥まで挿れ進めていける。
    それにしても、長い。
    ずる、ずる、と、少しずつ着実に入っているのに、まだ終わらないの?
    こんなの、ぜんぶ入ってしまったら、私。
    彼の陰茎を抜いたあとの膣が、ぽっかり開いて閉じなくなってしまわないかしら?

  • 140◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 17:13:27

    わけのわからない心配事がよぎりながらも、じわじわと挿入は深まっていく。
    ずりゅ、ぐちゅ、と音を立てながら、彼の愛撫に喘ぎ声を上げながら。
    そして、緊張による圧迫ではない明らかな"行き止まり"を感じたとき、彼は私への刺激を止めた。
    「っはぁ!はぁ……はぁっ……!」
    入った。たぶんいま、膣の奥にぴったりとくっついている。
    正直、感触としてはよく分からないけれど。子宮の近くが圧迫されている感覚はある。

    結合部に手を伸ばして、彼の陰茎を探した。
    すべて入っているのかを確かめてみると、まだ、いくらか入り切らずに外で待たされている陰茎がいた。
    「もう、いちばん奥まで、届いているのだけれど……まだ、こんなにあるの?」
    息も絶え絶えの私の頭を、彼は抱きついたまま撫でてくれた。
    「これ以上は、星南さんの負担が、大きいですから……!」
    私の膣に、陰茎全体がぎゅうぎゅうに締め上げられている彼も、息を荒くしている。
    抱きついていて、見えないけれど。せつなそうな顔をしているのは、なんとなく分かった。

    でも、これでは足りない。
    こんな半端な状態で、彼に顔を見られるのは私も不本意だ。
    私は、彼にとって唯一の恋人で、えっちなことができるたった一人のパートナーなのに。
    彼のすべてを飲み込めなければ、彼のすべてを手に入れた意味がない。
    「最後まで、ぜんぶ受け入れて、あげるから……っ!」
    意を決してそう言うと、私はまた、挿入を再開した。
    もう、膣は開ききっているから、クリトリスの刺激もなくて構わない。
    あとは、私の内臓を押し上げながら、子宮を押しつぶしながら。
    彼の陰茎を、私の中に、余す所なく迎え入れるだけ!

  • 141◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 17:14:39

    ついていた膝を立てて、彼の陰茎にスクワットのような姿勢に変えた。
    これならもう、入るところまで入るしか、止まらないはずだから。
    「ふぅ゙っ!ぐぅ……っ!」
    膣の伸びる感覚と、子宮が押される感覚に声が漏れてしまう。
    彼の、陰茎の根元に、私の膣口が、くっつくくらい。そこを目指して、ぐぐっと押し込んでいく。
    「星南さん、大丈夫ですか……?」
    彼の、心配そうな声が耳を癒してくれる。
    そうして囁いてくれていれば、きっとどんな苦しさも押しのけて、私は前に進める気がする。
    「だ、いじょう、ぶ……っ!く、くるしい、だけ……!」
    痛みは、先ほどのように、強くはない。
    「おく、まで入り、すぎて……子宮まで、はいってそう……!」
    腟内がどうなっているのか、さっぱり分からないくらいには、彼の陰茎が何もかも埋め尽くしていて。
    子宮だって潰れているのか、亀頭がねじ込まれているのかも分からない。
    とにかく、彼の陰茎に内臓が押し上げられている。

    私が、そんなことを言っていると、彼の陰茎が少しだけ大きくなった感覚が伝わってきた。
    「ちょっ、先輩、なんでまだ、おっきくして……っ!」
    もう、こんなタイミングで、サプライズなんて、いらないのにっ!
    途轍もない圧迫感に襲われながらも、私は最後の力を振り絞って、一気に腰を落とす。
    溢れんばかりの愛液に負けじと膨らむ彼の陰茎は、ずぐっ、と鈍く湿った音と共に滑り込んでいき。
    根本まで完全に、私の体を貫いた。


    ―――

  • 142◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 17:15:09

    衝撃に、思わず叫ぶような声を出してしまった。
    体がのけぞってしまって、彼の首に手をかけたままぶらさがるようになってしまう。
    「星南さん、ぜんぶ、入りました……!」
    顔が離れたことで、久しぶりに彼の表情が見えた。
    私と同じで、息を荒くして余裕がなくて。
    でも私と違って、ときどき快楽に悶えている。
    よかった。私の中、気持ちいいのね?

    ふぅ、ふぅ、と呼吸を整えながら、痛みを逃す。
    お腹の中は思い切り押し上げられたまま、内臓はどこへ集められたのか分からないほど圧迫されていて。
    膣は彼の陰茎の形に拡げられていて、未だ異物と感じている体は、彼の陰茎を押し出すために力を込めてしまっている。
    その力が、結局彼の陰茎をぎゅうぎゅうと締め付けるだけになってしまっているけれど。
    「や、やった……あなたのこと、受け止めて、あげられた……」
    やっと、本当に受け止められた。
    恋人になって、何度も彼の欲望をそそのかしては、受け止めるわけにもいかず。
    もどかしい思いをさせて、もどかしく思うこともあって。
    そんな私と彼 のもどかしい思いは、いま終わった。
    私たちは、ひとつになったんだ。

    ぐちゃぐちゃになった感情がこみ上げてくる。
    お腹の中はぱんぱんになってて、苦しくて。
    目の前はちかちかして、呼吸も荒れっぱなし。
    勝手なイメージだけれど、もっときらきらして、色々なことを思い出したり。
    ふわふわと幸せな気持ちに包まれるのかなって、思っていたのに。
    想像よりもずっと過酷で、ぜんぜんスマートに出来なかった。
    なのにいま、こんなにも涙が溢れ出してくるのはきっと。
    そんなイメージよりもずっと、現実で感じるお腹の苦しさの方がずっと、ずっとずっと大きな幸せを感じられるから。

  • 143◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 20:06:11

    彼の首から片手を離して、彼でいっぱいになっているお腹をさすると、それだけで胸があたたかくなる。
    見たところ変化はないのに、この中には彼が存在していて。
    私に抱きしめられているのが嬉しいのか、ぴくぴくって跳ねようとしているみたいだった。
    「あなたと、つながれた……ぜんぶ、ほんとにぜんぶ」
    ずきずきと、なかなか収まらない痛みに時折顔を歪ませながらも、彼に微笑みかける。
    涙が止まらなくても構わない。私が涙を流す理由なんて一つだけで、彼はその理由を、一番よく知っているのだもの。
    「光栄です、あなたの、初めてになれて……」
    指先で私の涙を拭いながら、彼も微笑みを浮かべていた。
    涼しい顔をしたがっているけれど、頬を染めて、額には汗をにじませていて。
    私と愛を伝え合うときはいつも、得意のすまし顔も崩れっぱなしで。なのに頑なにそうしようとするのは、彼の愛嬌かしらね。
    「私もよ……、あなたの初めてのひとになれて、とっても嬉しい」
    そんな彼の、一生に一度の特別な経験を共にできるなんて、こんなに幸せなことはない。
    私と彼はずっと一緒に歩んできて、恋人になってもずっと一緒に歩んできたけれど。
    今日の、この一歩は。言葉通り、体に刻み込まれるような、大きな一歩だ。

    何も言わずとも、互いの視線は重なり。
    次第に距離を詰め、私たちは唇を重ねた。
    心も体もつながった私たちは、粘膜の快楽で、心の境界を溶かしていく。
    私たちは、ひとつになっていく。

    私たちを遮るものは何もなくなった。
    伝え合うのは、ただ純粋な愛情だけ。
    永久にも感じられるこの時間、私たちはずっと、ひとつになっていた。


    ―――

  • 144◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 21:57:57

    どれくらい、そうしていただろう。
    言葉もなく、ただひたすらに唇を重ね、舌を絡ませ続けて。
    唇がふやけそうなくらい、ずっとずっとそうしていた頃。
    下腹部の、じんじんとした痛みはとっくに和らぎ、彼との密着感が際立ち始めていた。
    感動が落ち着き見せ始めては、気恥ずかしさからキスの音は激しさを増していて。
    至福の時間を下支えていた快楽は次第に存在感を増していく。

    ぷは、と声を漏らしながら、唇を離す。こんなときは私たちでも息ぴったりのようで、同じことを考えているのは顔を見れば分かった。
    ひとしきり、感動も愛情表現もできた。初めてを捧げあって、より深い心身のつながりを得たことも刻んだ。
    だから、ここからは。このあとは、もう。
    最後までしよう。 ただ心地よく、気持ちいい行為を、気が済むまで。

    ねえ、そろそろ。って彼に囁いたとき、彼は静かに頷いて、私を抱きかかえた。
    つながったまま、体をゆっくりと布団に寝転ばされる。腰に枕を差し込まれたけれど、どうしてかしら?
    私は彼にしがみついたまま、されるがままで。彼の陰茎にぴったりと張り付いている膣に、妙な親近感を覚えた。
    「先輩、あの、ゆっくり……お願いね」
    私の言葉を聞いてか聞かずか、彼の腰にぐっと力が入った。
    少しだけ引っ張られる感覚がやってくるけれど、彼の陰茎が動く気配は少なかった。
    きっとお腹の中が、彼の形に馴染んでいるから。ぴったりと密着してしまって、身動きがとれないのかも知れない。

    ぐっ、と、さらに力が入って、彼の陰茎は私の膣を抜け出し始めた。
    彼の形になっていた私の膣が、その存在感を失う事態に驚いたのか、彼の陰茎を追うように妙な吸着感を覚える。
    おなかが、めくれそうだ。
    彼の陰茎にぴちぴちに張り付いているから、膣ごと持っていかれそうで。
    このままではお腹がひっくり返って、外に飛び出してしまうんじゃないかというくらい、私の性器は彼という存在を追い求めていた。
    私の膣が彼の陰茎を締め付けるたび、彼はうめき声を漏らしながら腰に力を入れていく。

  • 145◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 21:58:44

    徐々に外に抜け出していき、ほとんど亀頭だけが膣に残っているようなところまで来た。
    寸前で、腰にぞわぞわとした感覚があった。この、膣口から浅いところがこすれるとき、一番気持ちいいかも知れない。
    「痛かったら、言ってください」
    苦しそうにそう言った彼は、私の手を取って恋人繋ぎをしてくれた。
    胸がきゅっとなって、意外なロマンチックさにときめいたのだけれど。
    もしかすると、そんなふりをして、私を押さえつけることが目的なの?って思ってしまって。
    私はまた、お腹をきゅっと締めるような反応をしてしまった。

    触発された彼が、ぐぐっと力を込めたまま、その大きな陰茎で私の膣をごりごりとこすり始めた。
    「あ、あぁあっ、あっ!」
    その長いストロークは、押すも引くも大きな快楽をもたらし、私は声を抑えることも忘れて大きな喘ぎ声をあげてしまう。
    これ、こんなに、ぞくぞくして。
    腰が浮くなんて、ものじゃない。
    浅いところもなにも、押し込まれては容易に私の子宮に達し、膣奥の妙な気持ちよさを揺さぶられる。
    引き抜くときは亀頭の段差が私の膣をずりずりと引っ掻き回し、膣口へ近づくにつれてくっきりとした快感が私の脳を襲う。

    あんなに痛い思いをして受け止めた彼の陰茎が、こんなにもするすると動いて、ほとんど痛くなくて。
    ぐちゅぐちゅになっている私の膣を貫き、子宮を叩き、私の愛液を外に掻き出していく。
    緩急のある複数の快感は私に構えることを許さなくて、彼の動く速度が少しでも変われば、もう翻弄されて。
    掻き出された愛液を継ぎ足すようににじみ出しては、また彼の亀頭に根こそぎ持っていかれることを繰り返す。
    「は、あっ……! おなか、ひっくりかえる……あっ!」

    ゆっくりとした抜き差しが続き、彼の形を余す所なく覚えられそうなくらいに膣が絡みつく。
    全身から汗が吹き出しては、彼の体との摩擦を失っていく。
    ぐちゃ、ぬちゃ、と淫猥な音が互いの性器から鳴り響き、五感すべてが私に快楽を押し付けてきて。
    あの波が、また違った形で訪れつつあることを、本能で察した。
    呼吸を整えることを諦めて、彼の手をぎゅっと握る。
    この快楽の波にのまれて、どこかへ行ってしまわないように。
    この幸せな時間から、意識を手放してしまわないように、と。

  • 146◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 21:59:10

    握り返してくれた彼の手に安心した私は、その波を抑えることなく迎え入れた。
    彼が捕まえていてくれるなら怖くない。彼が気持ちよくし続けてくれるなら、それを止めたくないのだもの。
    私の膣の奥のほうが、少しだけ密着を忘れたような感触になると、彼はことさらペースを一定に保とうとする。
    その動きは、初めて波にのまれたときと同じで。
    私が"こうなる"ためにして欲しいことなんて、お見通しだと言わんばかりだ。
    「ふぅ゙っ、く、うぅぅ゙~っ!」
    波が来ても、彼の抜き差しは止まらない。
    膣内で何かが溢れ、彼の陰茎が抜き出される瞬間に合わせて、隙間から何かがぴゅっと噴き出してしまう。
    漏らしてしまうような感覚は、まだ恥ずかしいけれど。
    私が何かを漏らしていても止まらない彼の動きに、私はこの波が一度では終わらないと確信した。

    息を荒くして、腰を振り続ける彼に、私は舌を差し出す。
    「ね、キス、して……」
    きっと彼は意地悪だから。このまま私を休ませることなく、腰を打ち付けるつもりだから。
    彼が私の中に果てるまで、きっと私は幾度もこの波にのまれることになると、覚悟しないといけないから。
    差し出した舌が彼に絡め取られたとき、私は彼にしがみつくような気持ちで、舌を絡ませ返した。
    これで、堕ちないで済む。どこにも流されなくて済む。
    安心して、快楽に身を任せることができる。


    ―――

  • 147◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 22:34:07

    ばちゅ、ばちゅ、と、肉体がぶつかり合い、水が弾けるような音が激しく響き渡る。
    互いの唇に塞がれた私たちは、なんの言葉を発することもなく。
    ただひたすらに、舌と性器を絡み合わせて、一心不乱にぶつけ合っている。
    「ん゙っ!うぅ゙……!ん、むぅ……!」
    また、波が押し寄せて、達した感覚に陥る。何度目かは、もう分からない。
    腰砕けになるような、激しい波は来ない代わりに、何度も何度も甘い波が訪れている。
    彼とつながって、愛し合っているだけで、私はもう何度も何度も愛液を噴き出してしまって。
    彼と唾液を交換するたびに、脳は幸福に溺れていく。
    私はもう、ただひたすらに、彼との行為が幸せだった。

    生殖という神聖な行為は、避妊によって快楽の追求へと成り代わり。
    自ら気づきを得た、心を溶かし合う愛情表現ということも、本当にその通りだった。
    かつてないほどに爛れた頭は、体は、彼を求めて止まない。
    普段の彼からは、私の唇を奪おうと襲いかかっていた彼からも想像できないほどに、彼は夢中で私の体を貪っていた。
    「っはぁ……、はぁっ……! もっと、もっとして……っ!」
    腰を打ち付ける速度は増していき、ばちん、ばちんと私の腰を揺さぶり続けている。
    打ち付ける瞬間の苦しさに、私はうめき声を上げて。
    陰茎を抜き出す長い道のりの果てに、私は激しい嬌声を上げる。
    私の声に昂揚する彼は、さらなる激しさとうねりを加えて私を波へと誘っていく。

    彼の汗が、私たちの頬を伝い、唇の隙間から流れ込む。激しい動きで飛ばされた汗は、私たちの体をぬるぬると滑らせている。
    「せんぱい、すきっ……すき、すきっ……!」
    体をいっぱい動かしている彼に代わって、あふれる気持ちを伝えながら、舌をいっぱい絡めて彼を元気づけてあげる。
    ときどき、舌をちゅっと吸ってあげると、彼は私の中でほんの少し大きくなったりして、素直な可愛らしさに私の胸はずっと締め付けられるような思いだった。

  • 148◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 22:34:29

    彼を受け入れるために大きく開いた脚が力を失い始め、苦しさを誤魔化すために彼の背中を挟み込むように抱え込んだ。
    握ることもおぼつかなくなってきた手はだらりと垂らして、腕を彼の首にひっかけた
    「あっ、ん゙っ……!んっ、ふっ……ふ、ぅ゙っ……!」
    こんな格好、はしたないなんてものじゃないけれど。振り落とされないようにしがみつくような格好は、いっそうの密着感をもたらしている。

    でも、もう限界が近い。
    ぎゅうぎゅうと締め付けていた膣はもう、ぐずぐずに爛れていて。
    彼の陰茎を、柔らかく包み込むような感覚になっているのを、自分でも感じていた。
    彼も、一定のペースを保っていた動きは徐々に乱れてきて、不規則な刺激が私の体を翻弄している。
    彼は、気持ちよくなれているだろうか。
    私ばかり、気持ちよくしてもらってないだろうか。
    気がかりなのは、それだけで。
    彼が私の中で果てるのを、甘く抱いたお腹で受け止めるだけだ。

    ふと、彼の動きが変わった気がした。
    私の中を掻き回すような動きが、私の奥をずんずんと押し込むような動きになってきた、と思う。
    何も知らない私でも、なんとなく理解した。彼が、そろそろ……出そう、なのかな。
    彼の首に回した手と、挟み込んでいる脚に力を込める。
    受け止めるために。彼にいちばん気持ちいいところで果ててもらうために。
    「あ、あっ、出し、てっ……!なか、でっ……!」
    彼の、荒々しい動きに言葉を途切れさせながらも、彼の射精を促していく。
    激しく打ち付ける腰が私の体を揺さぶり、私も振り落とされまいと彼にしがみつく。
    ばちっ、ばちっ、と水気を帯びた、ひどく淫猥な音が鳴り響く中、彼は明らかに速度を増していた。

  • 149◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 22:35:44

    欲しい、欲しい。彼に私の中で、何もかもぶち撒けて欲しい。
    だって、そのための行為、そのための場所だから。
    ぐちゃぐちゃに濡れた膣口も、ずぶずぶと優しく陰茎をしごいている膣も、ずんずんと押し込まれている子宮も、今はただ、快楽に溺れるためだけの場所だから。
    「だし、てっ……プロデューサー、中に、出してぇっ……!」

    咄嗟に、彼をそう呼んでしまったとき。彼の亀頭が、ぐっと膨らんだと思うと。
    信じられないくらい奥まで、その陰茎全体を押し込んできた。
    「あ゙っ!ぐ、うぅ゙っ……!」
    雄叫びのような声を出してしまう。
    内臓を丸ごと押しつぶされたような感覚に、肺に入っていた空気がすべて押し出されたようなうめき声だった。
    彼の体も硬直し、ぶるぶると震え始める。
    びくっ、びくっ、と、陰茎の震えが胎内に伝わってきた。

    射精、している。彼が、私の中で。
    ぐっと押し込まれた陰茎に肺ごと圧迫されて、声が出ない。
    呼吸もままならない。こんなの、何がどうあっても、彼が出し終わるまでは絶対に身動きがとれない。
    それでも、私だって彼の吐き出したものを取りこぼしたくなんてない。
    最後の一滴まで逃さないために、私は彼の射精が終わるまで、ずっと手も足も離さなかった。

    不思議な感覚だった。胎内に何かが流れ込む感触は無いのに、びくびくと震えた彼の陰茎からは、私の奥底で吐精していることがありありと伝わってくる。
    彼も私の奥底に、避妊という手段を用意しながらも、本能のままに本来の目的を果たそうとしているみたいで。
    少なくとも彼の体は、なんの躊躇いもなく、私を妊娠させようとしていた。

    嬉しい。本当に本当に嬉しい。私で、気持ちよくなってくれて。
    私に、あなたの大切な精液を、一滴残らず差し出してくれて。
    彼が私に溶け込んでいる、と、そんな気がして。私はとても幸せだった。

    捧げられる純潔はすべて捧げて、受け取れる純潔はすべて受け取った私たちは。
    いま、ただの恋人ではなくなり。
    家族になるための一歩を踏み出した。

  • 150二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 22:47:31

    保守

  • 151◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 23:09:43

    彼の射精から、しばらく経った。
    彼にしがみついた腕は力を失って、だらしなく布団に投げ出されているのに。
    彼の射精を逃がすまいと挟み込んだ脚は、彼の体を離していなかった。
    「星南さん、そろそろ、離して頂けると……」
    彼の、精根尽き果てたといわんばかりの、絞り出した声が聞こえてくる。
    せっかくキスしたままだったのに、わざわざ口を離して……もう。
    でも、いいわ。だって、あなたの精液はぜんぶ貰っちゃったもの。

    「……はなれるの、ちょっと、さみしいな……」
    肺も喉も力を失っていて、細い声しか出ない。喘ぎ声とうめき声に、何もかも持っていかれていた。
    そしてそれは、私に限った話でもないみたいで。
    「俺もですが、体がきつくて……このままだと、星南さんを押し潰してしまいます……」
    ぐったりと項垂れる彼も、私が下にいるからか完全に脱力できないでいる。
    本当は、ずっとくっついて居たかったのだけれど……彼も体がもう、くたくたみたいだから、仕方ない。
    別に、あなたに押し潰されたのと同じくらい、何度もぱんぱんって体を叩きつけられていたのだけれどね?
    そんなこと言ったら、また彼を焚きつけてしまって、大変な目にあってしまいそう。

    少しずつ柔らかくなっていた彼の陰茎が、ずるっ、と音を立てて私の膣から抜け落ちた。
    名残惜しい気持ちが、あっ、と声に出てしまう。あんなに私と一緒にいたのに、あっさり出ていってしまうだなんて、薄情者。
    私との拘束が完全になくなった彼は、ゆっくりと体を横に転がして、私を抱きかかえるように隣へ寝転んだ。
    「あのね、せんぱい……きもちよかった?」
    ぐったりしながら、呼吸を整えている彼に、気になっていたことを聞いてみた。
    もちろん、あれだけ私に何度も抜き差しして、私を何度も気持ちよくさせて、最後にたっぷり……量は知らないけれど、射精していたのだから。
    客観的には、そうだったと思うのだけれど。それはそれとして、こういうの、初めてだから。
    「気持ちよかったなんてものじゃないです、夢中になってしまいましたよ」
    そう、とっても嬉しいことを言ってくれる彼は、私の前髪をよけてくれながら、額にキスをした。
    よかった、きもちよかったんだ。それはそうよね、あんなにたくさん射精して、妊娠させようとしているみたいだったし。

  • 152◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 23:20:09

    ふと、膣口から何かが垂れる感覚があった。
    普段ならば、おりものかと思うところだけれど、このタイミングでそれはない。
    この熱いのは、彼の精液だ。
    体が思うように動かないから、咄嗟に手で抑えることもできなくて、垂れ流しにするしかない。
    「あっ、たれてきちゃった……あなたの、もったいない……」
    一滴たりとも無駄にしたくなかった私は、本当に悲しい顔をしてしまっていたようで。
    それを見た彼は、ぷっと吹き出した。
    「もう、笑わないでちょうだい! こうして本当に受け止められるのは、これから出来ないのだし……」

    残念がる私の頭を撫でながら、彼は何度も私の額や頬にキスをする。
    「まだ、妊娠しては大変ですから……ライフプランは何度も打ち合わせしたでしょう?」
    そう言って、私よりもずいぶん大人ぶって落ち着き払う彼に、少しだけむっとしてしまう。
    なによ、あんなに気持ちよくなって、私にさんざん腰を打ち付けて。
    腹が立った私は、少しだけやり返すことにした。
    「……プロデューサーって呼んだとき、なかでおっきくしたくせに……」

    私の言葉を聞いて、彼は咳き込んだ。
    やっぱり、興奮したんだ。それはそうよね、だって。
    あなたはずっと、トップアイドルだった私に、憧れてくれていたのだもの。
    「ふふっ、えっちのときは、プロデューサーって呼んであげる♪」
    彼の胸元を、くりくりと指先でいじくりながら、彼に素敵な提案をしてあげた。
    普段はもう、呼ぶことはない彼への呼称だから。こんなときになら、たくさん呼んであげよう。
    だから、あなたも。私のこと、特別な呼び方をしてほしいな。
    「あなたは、えっちのとき、わたしのこと……せな、って呼んでちょうだい」

    わかりました、って、分かってない返事をした彼に少しだけ笑ってしまいそうになったけれど。
    私たちの特別な時間は、これからもずっと続くのだから。とっておきの時間を二人で作りたい。
    そんなことを考えながら、あたたかい彼の体に抱かれ、うとうとし始める私だったけれど。
    彼は、私を揺り起こして……とても大事なことを忘れていた私に、水と小箱を差し出した。
    「星南さん、これはすぐに飲んでおきましょう……」

  • 153◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 23:20:51

    ―――


    ぐび、と水で錠剤を飲んだあと、また私は布団に倒れ込んだ。
    彼の腕にもぞもぞと侵入しながら、べたべたになった体をどうしようかと考えたけれど。
    もう、今日はだめだ。何もする気が起きない。
    「ね、せんぱい……このまま、寝ちゃおうかな……って、思うのだけれど……」
    彼の腕枕で、寝心地の良いところをぐりぐりと探しながら、寝ぼけた声で伝えてみる。
    彼も、もう限界が近いのか。普段ならばシャワーをと言いそうなものを、ほとんど動く気配がない。
    「そうしましょう…… 片付けは、朝で良いです……」

    一緒に布団をかぶって、裸のまま彼と身を寄せ合う。
    あんなにえっちなこと、たくさんしたのに。いまは、えっちな気分より、しあわせな気分ばっかりだ。
    彼の色白な体も、汗や色々な体液でべとべとの体も、えっちなものじゃなくて、不快とも思わない。
    こんなに野性的なのに、安心感を覚えられるなんて、私と彼だけの特権なのかもしれないわね。

    せんぱい、と語りかける。まだ、眠るのが惜しいように。
    なんですか?って、ちょっとだけ甘い声で、返事をしてくれるから。
    また、しましょうねって。言ってあげた。
    ぜひ、なんて返す彼は、やっぱり生意気だけれど。
    彼も楽しみにしてくれてるなら、うれしいな。

    ぼうっとしながらも、まだ眠りたくなくって。
    プロデューサー、って呼んであげた。
    なんですか?って、 やさしい声で言ってくれるから。
    愛してる、って、言ってあげた。
    俺もです、なんて、月並みな返事だったけれど。
    私の背中を撫でてくれたから、許してあげる。

  • 154◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 23:21:28

    それでもまだ、大切なことを伝え忘れていたから。
    また、プロデューサー、って呼んであげた。
    あなたのこと、大好きよ、って、言ってあげたかったから。
    負けませんよ、なんて。へんな返事をする彼に、くすくすって笑ってしまったけれど。
    しあわせだな、って。それは言葉にしないまま、心の中でつぶやいた。

    あとは、おやすみなさい、って言いたかったのだけれど。
    それは、言葉にできたかどうか、わからなくて。
    あったかい彼の体に沈み込むみたいに、私はゆっくりと、意識を手放し始めた。

    私たちの初めては、とっても素敵な思い出になってくれた。
    知らないことばかりで、彼に翻弄されっぱなしで、大変だったけれど。
    二人で一緒に気持ちよくなって、ほんとうの意味で、二人で一つになって。

    私たちは世界一幸せになったって思っているのは、きっと彼も同じだから。
    私たちは、明日からもまた、二人で一緒に、たくさん幸せになっていける。

    だから、まずは。
    この、結局私よりも先に眠ってしまった、愛しい彼の腕の中で。
    私たちの新しい一日を、迎えることにする。

    おやすみなさい、せんぱい。
    愛しているわ。

  • 155◆0CQ58f2SFMUP25/04/27(日) 23:24:51

    ↑↑↑以上↑↑↑

    学Pと星南さんの初えっちのお話でした!
    読んで頂いた方と保守して頂いた方、ありがとうございました!!

    SSと呼ぶかは怪しい長さになりましたが、せっかくの初えっちなのでじっくり全部書きました。
    本当に書ききれるか不安だったので、なんとか締められてホッとしております……。

  • 156二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 00:35:16

    乙乙超乙

  • 157二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 00:41:40

    超大作乙でした
    心情描写が丁寧なのが素晴らしいです

  • 158二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 00:54:43

    >>157

    ありがとうございます!!

    プロットでは当初もっと叡智なセリフ言いまくってたんですが、エロ同人過ぎたのでほとんど心の声に変更しました!

  • 159◆0CQ58f2SFMUP25/04/28(月) 00:55:12

    >>158 トリップ忘れ

  • 160◆0CQ58f2SFMUP25/04/28(月) 01:39:50
  • 161二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 01:44:19

    乙でした...!
    ちゃんとエッチなのに読み物としてもすごくすごい良くて凄かったです!

  • 162二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 02:25:29

    ブラボー
    ブラボー

  • 163二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 07:59:21

    素晴らしい…

  • 164◆0CQ58f2SFMUP25/04/28(月) 08:06:04

    >>161

    ありがとうございます!

    ちゃんとエッチになるか不安だったのでよかったです

  • 165◆0CQ58f2SFMUP25/04/28(月) 08:12:09

    ちなみに七万字超えたので、だいたい普段の4〜5話分えっちなことしてました…

  • 166二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 08:28:49

    お疲れ様です、大変素晴らしいものをありがとうございます!!
    質問なのですが、スレ主さんはSS1話書き切るのに時間はどれ位かけているのでしょうか?
    あと書き始めた当初と今とで書く速度は変わったのでしょうか?

  • 167◆0CQ58f2SFMUP25/04/28(月) 09:06:08

    >>166

    ありがとうございます!

    だいたいひとつの話を1万~1万5千字で、1週間くらいで書いてます。

    3~4日たらたら書きたいシチュとやりとりを考えながら書き出してみて

    イメージ固まってノってきたら、3日くらいでガーッと書いていくのが多いです!


    初期はスレの妄想ストックがあったのと勢いで1週間未満でも書けてたんですが

    最近むしろ読まれ方が気になるようになったので、最速で1週間はかかる感じになってます!

  • 168二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 14:27:56

    これが噂の劇場版か

  • 169◆0CQ58f2SFMUP25/04/28(月) 16:03:57

    次話は翌朝一緒にお風呂入るところから始まったらいいなとか考えてますが
    流石に砂糖を出し切ったので、また溜まってきたら次スレ立てて投下しようと思います!

  • 170二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 18:24:44

    めっちゃ良かったです!すごくえっちでした!!

  • 171◆0CQ58f2SFMUP25/04/28(月) 19:58:12

    >>170

    ありがとうございます!フ◯ラシーンが自信作です!

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