【SS】誕生日の夜に通話するダンポケ

  • 1◆WLsRZdbfdTE925/04/19(土) 21:43:54

    「おいしかったなぁ……」

     えへ~、と幸せそうに笑ったダンツフレームが、自室のベッドの上に転がっている。
     日課のストレッチを終え、あとは寝るだけという時間帯。ダンツはスマホを片手にくつろいでいた。画面には、今日の誕生日パーティーで撮った写真が表示されている。

    「メチャデカチョモランマバケツプリン……」

     アルバムをスクロールすると、ジャングルポケットが「ダンツの誕生日のお祝いに」と用意してくれたそれの写真も出てきた。
     ダンツが過去に「ホントにあったらな~」と言っていたのをポッケが覚えており、タキオンに頼んで再現してもらったらしい。名に恥じぬ大きさで、想像以上の食べ応えだった。

    「さすがにちょっと、キャパかったけど……」

     でもせっかく用意してもらったのだから、とダンツはポッケの「独り占めしていいぜ」の言葉に従い、ひとりで食べきった。マンハッタンカフェの淹れてくれたコーヒーをお供に。

    「……えへっ」

     旧理科準備室でのみんなの表情を思い出すダンツ。一枚一枚写真を見返しながら、最高の誕生日になったなぁ、と幸せをかみしめる。おいしかったのもそうだが、日常のなんの気ない一言を覚えていてくれたことがなによりうれしかった。

    「わっ!?」

     その時、スマホから急に着信音が鳴り響いた。画面に出ている着信名は「ポッケちゃん」だ。
     隣のベッドで同じようにくつろいでいたヒシミラクルに視線を送ると、ミラ子は「気にしないで出ちゃっていいよ~」とばかりに手をヒラヒラ振った。
     ミラ子に感謝しつつ、ダンツはベッドのふちに座りなおしてから通話ボタンを押す。

    『よぉ、ダンツ! 今平気か?』
    「うん、大丈夫。どうしたの?」

     ハンズフリー通話だが、時間が時間なのでカメラは互いにオフだ。

  • 2◆WLsRZdbfdTE925/04/19(土) 21:44:09

    『いやぁ、その……お腹ぁ、だいじょぶか?』
    「え?」
    『無理して食わせちまったんじゃねぇかなぁ、って』

     いまさらだけど、とポッケが電話の向こうで気まずそうにしているのが伝わってくる。

    「……それで心配になって電話?」
    『おう……俺もタキオンも、調子乗ってデカくしすぎた気がしてよ』
    「そんなことないよ~。プリンの中に味変用のカラフルなゼリーが入ってたりして、食べ飽きなかったし」
    『あっそうだ! アレ何ともなかったのか!? 俺が知らない間にタキオンが勝手に入れやがって……』
    「『タキオンさんも、流石に他人の誕生日にだまし討ちはしないでしょう』ってカフェちゃんが言ってた。普通においしかったよ」

     話題を上手に誘導し、量の問題から味の問題にすり替えることができた。ポッケが罪悪感を感じないようにするダンツなりの気づかいだったが……。

    『でもよ……後半はちょっと、ダンツの顔がキツそうに見えて……』
    「……そうかな?」

     バレていた。カメラがオフでよかった、ダンツの目線が泳いでしまっている。

    『そうだぞ。ギリギリ食べきれなくはねぇけどカロリーやべぇかも、みてぇな顔してた』
    「……そこまでバレちゃってたかぁ」

     降参です、実は今もちょっとお腹きついです。とダンツが仕方なく認めると、ポッケがやっぱりな~と息を吐く。同時に、ベッドに倒れこんだような音も聞こえた。

    「よくわかったね、ポッケちゃん」
    『そりゃそうだ。いつもダンツのこと見てっからよ』
    「っ!」

     本当にカメラがオフでよかった。突然の爆弾発言に、ダンツの顔が沸騰する。しかし息を呑む音がマイクに拾われていたらしい。それでポッケが自分の言葉の意味に気づいた。

  • 3◆WLsRZdbfdTE925/04/19(土) 21:44:24

    『っ……ダンツがいつもウマそうにメシ食ってっとこ見てっからさ! だから後半苦しそうなのが分かったっつうか!』

     ベッドから跳ね起きる音とともに、ポッケが言い訳を始める。

    「わ、わかってる! わかってるから!」
    『楽しそうにいっぱい食うダンツが好きだから、つい張り切っちまったっつうか!』
    「ポッケちゃんっ!」

     言い訳の最中に新たな爆弾をぶっこまれ、ダンツが思わず大声をあげてしまった。

     二人そろってわざとらしく大きな咳払いをし、会話の流れをリセットする。

    「んんっ! ……それじゃあポッケちゃん。明日、併走に付き合ってくれる?」
    『ごほんっ! ……ああ、何本でも付き合うぜ』

     ダンツの腹がひっこむまでな、とポッケがおちょくると、ダンツは「もう!」と返した。

    「……ポッケちゃん」
    『ん?』
    「5月7日……空けといてね?」
    『……オッケー、楽しみにしてる』

     ポッケがそう返事をしたのを最後に、お互い「おやすみ」と言ってから通話を切る。

  • 4◆WLsRZdbfdTE925/04/19(土) 21:44:39

    「ふふっ……ん?」

     ログ画面の着信履歴と通話時間を眺めていると、ダンツの目の前からシャッター音が聞こえた。

    「あ、バレた」
    「み、ミラ子先輩? なにを……?」
    「あ~気にしないで~、写真をトップロードちゃんに送るだけだから」
    「それって今撮った写真のことですよね!? 何撮ったんですか!?」

     ベッドから跳ねるように立ち上がり、ミラ子のスマホを奪おうと腕を伸ばす。ミラ子が逃げ、ダンツが追い、ベッドの上で軽く取っ組み合いになる。

    「あ、トップロードちゃんから写真きた……あーあー、もう、なんていうか……お幸せに」
    「どういう意味ですか!? ちょ、見せてくださいミラ子先輩!」

     ミラ子のスマホのカメラロールに、二枚の写真が加わった。

     ──離れていても通じ合い、同じように真っ赤な顔で、幸せそうな笑みを浮かべている……ダンツとポッケの写真が、一枚ずつ。

  • 5◆WLsRZdbfdTE925/04/19(土) 21:44:50
  • 6◆WLsRZdbfdTE925/04/19(土) 21:45:05
  • 7◆WLsRZdbfdTE925/04/19(土) 21:45:17

    以上です。
    改めて、お誕生日おめでとう、ダンツフレーム!

  • 8二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 21:55:50

    エエヤン
    ところでメチャデカチョモランマバケツプリンってなんなんだろうなほんと

  • 9二次元好きの匿名さん25/04/19(土) 22:55:50

    ミラ子がラブコメの波動にあてられている

  • 10二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 03:07:28

    こういう思いあってる雰囲気大好き

  • 11二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 06:21:36

    >>6

    あっ君かぁ!

    やることやったやつ好きだった

スレッドは4/20 16:21頃に落ちます

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