- 1125/04/20(日) 21:47:06
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色とりどりのブロックが画面上から降ってくる。
横十列、縦二十列の空間にブロックを敷き詰め、一列揃うごとに消去していくゲームは昔から現在まで広い年代に愛されている。所謂落ち系パズルゲームという物は基本オンラインであれオフラインであれ対戦形式がメインで、山田は普段オンラインでデスマッチをしているのだが、今日は珍しく相手が横に居た。
画面には二つのゲーム面が表示されており、右側はマイクが、左側はその相手が弄っていた。
画面から目を離さず、山田は送られてきたおじゃまブロックに舌打ちをする。
「だぁれが「初心者だから手加減してくれ」ですか相澤く~ん? 奇麗に積みやがって」
「地形を意識して積めばどれだけ崩されても絶対に負けることはないって言ってたからな」
「誰がよ」
「動画配信 者の人」
「せめてそこ俺って言えよ」
「お前からこのゲームで教わったことはない」
「たし蟹」
「なあ今蟹っつったか?」
「気のせいじゃね」 - 7125/04/20(日) 21:53:49
言葉で動揺を誘おうとしたが相澤のプレイは一切ブレない。なんなら山田よりも早いペースでブロックを積み上げていき、限界ギリギリのラインでI字ブロックを隙間に落とし込んで一気に消去していく。大昔からの古式ゆかしい戦法だ。
このゲームでは消したブロックを相手に送ることができる。相澤から送られてきたおじゃまブロックは奇麗に積みあがっていた。
「お前やっぱ対戦は経験ねえんだなあ」
「あ゙?」
「怖いこわ~い」
だが奇麗に積みあがったそれは先ほどの相澤と同じようにI字ブロックを隙間に落とすだけで簡単に消せる。奇麗になっていく山田の画面を見て相澤が舌打ちをした。愉快だった。
「こういうのはよぉ、最初一、二段だけ送ってから別の消去ライン作ってまとめて送るのが良いんだって」
「それ対戦中に教えても良いのかよ」
「ハンデ」
「そうやって舐めプしてっからウチの生徒にやられるんじゃないですかね」
「いきなりの敬語やめて」
- 8125/04/20(日) 21:54:14
相澤がまた奇麗に消し、こちらもそれを相殺する。
お互いのブロックの置きミスを待つような展開になるとあとは集中力の勝負だった。次第に相澤のコントローラーを持つ手が荒くなっていく。
「……てかさあ、本当にびっくりしたんだけど」
「何が」
「お前からゲームやろって誘われたの」
その時、相澤の肩が初めて揺れた。
視線を動かすことは叶わなかったが、指先の反応に少しだけ遅れが出ていた。
「悪いか」
「悪くねえよ、嬉しかったし。新ハードも勢い余って買ったしな。意外だなって思っただけ」
「エリちゃん用に買っといたゲーム機が不要になっちまったから活用しねえと勿体ないと思っただけだ」
半分嘘だ。
山田はコントローラーを動かしつつ彼の小さな嘘に気付く。確かに、相澤が持って来たゲーム機は元々この雄英で預かっていたエリに贈るために買ったものが、居候先の家で既に用意されていた為に手元に残ってしまっただけだ。
だが、この相澤という男のことを良く知っている山田からすれば、たったそれだけの理由で彼がゲームをやるなど到底想像もつかなかった。
- 9125/04/20(日) 21:54:40
相澤は無駄を嫌う。
その言い方にも少しだけ語弊がある。相澤が嫌うのは無駄ではなく無駄な時間を一秒でも過ごす自分だ。
娯楽に耽る自分が嫌いで、何かを楽しんでいる自分が憎い。どこか自罰的なその姿を何度危ういと思ったかわからない。
だから、あの相澤が。
あの相澤が、深夜山田に電話をして「今からゲームやらねえ?」と言って来た時、心の底から驚いたものだ。
「ってか相澤なんでこのゲーム?」
「お前好きだろ」
「え……」
「そう言う意味じゃない」
わざと茶化してやれば不機嫌そうに返された。
本当はちょっとだけ本気で驚いたのは内緒だ。
「……昔、お前が好きって言ってたの思い出してな。俺はゲームなんてわからないし、何が好きか検討するラインにもいねえから。こういうシンプルなやつならお前も俺も楽しめると思ったんだよ」
「……」
「なんだ、なんか言え」
「あ、あ~、ソウネ、いやあ消ちゃんホント成長ってすごいわねって思って」
「なんか言えって言ったが意味わからねえこと言えとは言ってねえんだよ」
- 10125/04/20(日) 21:55:12
相澤は不機嫌そうに舌打ちをした。
山田は彼の顔がこちらを見ないことだけを祈っていた。顔が熱いのだ、それも良いわけのしようもできないくらいには。
彼は気づいているだろうか。
あの何にも頓着しない、本当に必要最低限のことしかしない彼が、「自分も、相手も楽しめるゲーム」を基準に選んでいることが、どれほど驚くことなのかを。
きっと指摘したら恥ずかしがって否定してくるだろうから言わないが。
「……香山さんに見せてえなあ」
「……あの人絶対「もっと面白いゲームやりましょ!」って言ってくるぞ」
「言いそう~」
ほんの少しだけ泣きそうになる。
鼻の奥がツンとして、鼻先に変な感覚が集まる。それをどうにか気合で押し込めていると、縦に置くはずだったS字ブロックが一マスずれた場所に落ちていた。
「あ」
「はっ、馬鹿が」
いつになく人を小ばかにした声音で吐き捨てて、相澤がここぞとばかりにおじゃまブロックを送り込んでくる。立て直そうとするが、あっという間に飲み込まれて山田の対戦画面には負けの文字がでかでかと表示された。
- 11125/04/20(日) 21:55:41
「あー……ちょっと油断したら」
「このゲーム結構集中力使うな」
「まあまあ疲れるんだよな」
山田は画面の「再戦」ボタンを見つめる。
押すべきか、やめるべきか。
もう時刻は深夜零時を回っていて、だいぶ眠気も降りている。ただでさえ先ほどの対戦で脳疲労もたまっていた。早く寝たほうが良い。
そう、思ってはいるのだが。
口が開かない。「もう遅いから寝ようぜ」という簡単な言葉を口が言いたがらない。何かつっかえ棒があるような、そんな奇妙な感覚だ。
「あ」
迷っていると、画面が勝手に再戦状態に切り替わった。
何か変なボタンを押してしまったかと焦っていると、相澤が「おい」と声をかけてくる。
「何ぼうっとしてんだ。もう始まるぞ」
「え」
「えってなんだ」
山田は再戦ボタンを押していない。
では誰が。そんなのは今隣に居る友人しかいなかった。心底二回戦目があるのが当たり前だと思っている顔に、山田は喉元まで出かかった「良いの?」という言葉を飲み込んだ。
「べっつに~? 次はボッコボコにしてやっからなあ、泣きべそかくなよ相澤クン」
「一々やかましいんだよお前は。初心者に二連敗して台パンすんなよ」
画面に「ready?」の文字が表示された。
- 12125/04/20(日) 21:58:08
ここまで!
相澤先生と山田で大戦後のあれこれ
相澤先生は今まで山田に心配かけちゃった自覚があるから少しでもそれを払しょくしたいと思ってたらいいなって
で山田も相澤のそういう不器用な愛情みたいなのをわかって言葉にせずに受け止めていてほしいなって
同期はお互いがお互いを支え合っててほしいんですよ
寝るぜ
- 13125/04/20(日) 22:04:38
暫くは短くて取り留めない話を書いてくつもりだよ~
原作キャラとのCP系は思想が出てしまうんで極力避けてるんだけどふとした時に飛び出るかもしれん
相澤先生に無駄な事をいっぱいさせたいぜ
それはそれとしてすけべも書きたい
体二つになんねえかなあ~ - 14二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 22:05:10
たて乙!これからもよろしくスレ主!
先生が大戦後ゆったりとした友達との時間を過ごしててなんか嬉しくなった
ヒーローが暇な社会ってこんな感じなんだろうなって本当ほっこりした
末永く仲良しでいてくれ同期 - 15二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 22:14:04
たて乙〜
スレ主の書くほのぼのSSやっぱり好きだわ
二人の距離感が絶妙でめちゃくちゃに可愛い
相澤先生のほうが夜更かし勧めちゃうの良いよね - 16二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 22:47:17
スレ主たて乙〜
この先生が山田にだけ見せる気安い距離感大好き
言葉にしなくても大体のことは伝わるけどやっぱ新鮮だし嬉しい山田もすごい微笑ましい - 17二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 07:34:36
とりとめもない短い話も大好き
スレ主の相澤先生、誰との絡みでもそれぞれ味があって好きだな - 18二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 07:58:55
先生が普通に誰かと友達やってるの見ると何故かすごい安心するし嬉しい
野良猫が家猫になってくれた時みたいな感動ある - 19二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 12:18:04
山田と先生の距離感大好きだから嬉しい…
大戦後は二人でちょっとだけ無駄な時間とか過ごして欲しいな - 20125/04/21(月) 19:57:01
現場として呼び出されたのは一番栄えている街から直線距離にして十キロ程度離れているが、実際歩こうとするとその整備されていない道のせいで二倍三倍の距離に感じる辺鄙な土地だった。
深夜に仕事が終わっても当然バスなど出ていない。警察車両に乗せてもらおうと思ったが、存外多く出た犯人護送の為席は余っていなかった。
深夜であるため、いくら人里離れているといってもサポートアイテムで移動するのは憚られる。というか、寧ろ人が滅多に通らないからこそ敵通報されかねなかった。
たまには夜空を見ながら歩いて帰るのも悪くないだろう、誰かがそう言って、男たちは歩き出した。
「まさか上鳴と現場被るとはな」
「な! 俺らって“個性”敵にもあんま被る感じじゃねえのにな」
「今回はジャミング要員だったっけ?」
「おうよ。すげースムーズに突入できたろ」
「スムーズな突入はオイラのトラップあってこそだろ」
「はいはい感謝してる」
峰田、上鳴、心操。
元A組の面子が三人も揃うのは珍しい。峰田は一人だけ歩幅が合わず、心操の肩に乗っていた。 - 21125/04/21(月) 19:57:26
「星がきれいだなあ」
「なんだいきなり」
「ンなこと言ってもモテねえぞ」
「るっせ」
「上鳴って耳郎と付き合ってんじゃないの?」
「それめっちゃ言われるけどそういうんじゃねえんだよなあ」
とりとめない会話をして歩くが目的地はまだ遠い。整備されていない道は少しぬかるんでいて、夜の森がざわついていた。
「あのさあ」
上鳴が思い出したように口を開く。
「怖い話しね?」
「このタイミングで?」
「今じゃねえだろ」
「いやもう雰囲気ばっちりすぎだろ。今しかねえって」
怖い物がそこまで得意じゃないくせに、どうして陽の者というのは時折怖い話に花を咲かせようとするのか。
上鳴が爛々とした目でこちらをみてくるせいで、心操もそして肩の上に居る峰田も嫌そうな顔つきになってしまう。
「上鳴はなんかあるの? 怖い話」
- 22125/04/21(月) 19:57:51
「俺? あるある! こないだ国交省に提出する用の書類作ってたらコピー機動かなくなってコンセントの抜き差ししたんだけど……」
「あ、落ち読めた。間違えてPCのコンセントぬいたんでしょ」
「ぶっぶー違いますぅ。コンセントぬいたのはコピー機だったけど手が帯電しててコピー機は勿論同じハブに刺さってたPCも他の電化製品も全滅したんですぅ」
「それは怖いな」
電気系“個性”あるあるな怖い話に心操は特に表情筋を動かさずに相槌を打った。
そして、少しだけ沈黙をあけてから「じゃあ、俺から」と手を挙げる。
「え、心操あんの?」
「怖い……かはわかんないけど」
「なんだよ勿体つけんなよ」
心操は歩幅をそのままにして歩き続ける。肩の上にいる峰田は捕縛布を尻に敷いて体を安定させていた。
低く落ち着いた声が、音のない夜に良く響いた。
「これはちょうど一年くらい前……K県に任務で行ったときの話。依頼された場所がかなり山奥に位置していたんだけど、そこにたどり着くためには事故が多発する急カーブのある山を越えないといけなかったんだ」
- 23125/04/21(月) 19:58:30
心操の語り口に二人は息をのむ。
彼の指先はヘアピンのようなくいっとした曲線を空中に描いた。恐らくはカーブの角度を描いたのだろう。
「俺は免許取って日が浅かったから、相澤先生が運転してくれた。時刻はちょうどいまくらいの真夜中で、俺たちは二人ともくたくただった。会話は無くて、車内にはテレビの音声と時々自動案内の声だけが響いていた」
さわさわと風が木々を揺らしている。
まるでこの辺り一帯すべてが三人を見張って噂話をしているような、そんな気味悪さがあった。
三人が歩く道には街灯がまばらにしかない。誰も薄暗い中、足元に気をつけつつ耳を澄ました。
「カ、カーブで出たのか……?」
「おいネタバレさせんなって」
「先に言っておくとカーブでは何事もなかったよ」
「言っていいのかよ」
ジジ、と。
三人の頭上で切れかかった街灯の電気が音を立てていた。心操は「ああ」と短く抑揚をつけないで返事をする。
「たしかに事故が多そうな場所だったけど。きちんと運転すれば問題なかったよ。先生の運転が上手かったからかもね……問題は山の中に入ってからだったんだ」
「え」
- 24125/04/21(月) 19:58:57
一瞬、ぱつん、と音がした。
それは電気が消えた音だったのだが、接触が戻ったのだろう、また点いて三人を照らす。一度街灯を通り過ぎると、次の街灯まではだいぶ距離があって三人の姿が暗闇に溶ける。
特に、心操は全身黒づくめだからなおさらだ。峰田はそこに心操がいることを確認するようにして肩を掴んだ。
「自動音声が「この先道なりです」って案内をしてから十分後くらい……いきなりポンって音がした。案内の音だったと思う」
心操の声は低くて小さいのに、良く聞こえた。
上鳴が固唾を飲み込む。
「なんだろう、まだ目的地まではかかりますよね。って俺が先生に言ったんだ。先生がそうだな、って返事をしたのに被せるようにして案内が聞こえた。「そこを右に曲がってください」って音声案内が」
二人の背中を怖気が這い上がる。
一瞬息をのんだ二人を気にせず、心操は続けた。
「俺は右を見た。先生はまっすぐ前を見ていたけど気になったから。でも、右側を見てもそこは森が続いてるばっかりで何も見えなかった。ナビの故障かなって思って紙製の地図を広げたよ、そこは圏外だったから」
- 25125/04/21(月) 19:59:34
心操は捕縛布に顔を半分埋める。表情が見えなくなった。「そうしたら」続いた言葉に、二人は悲鳴を飲み込んだ。
「右にまっすぐ行くと、崖だったんだ」
案内はそのあとも続いた、と心操は話す。何度も、何度も、何度も「そこを右に曲がってください」と言い続けるナビに、流石の心操も耳を塞いだ。
「段々音割れしてきて、耳障りなノイズが混じってきて、俺は怖くなった。それでも止まらなくて、でも森は続いていく。そんな時、先生がいきなり車を停車したんだ」
狭い山道でブレーキをいきなり踏んだらしい。
まさか先生がおかしくなってしまったのか。二人は問いかけた。心操は緩く首をふる。
「先生は……」
「先生は……?」
勿体つけるように間を取ってから、心操はふ、と息を吐く
- 26125/04/21(月) 20:00:23
- 27二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 20:31:49
うわああ!
続き気になる!!!
それはそれとしておやすみスレ主 - 28二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 21:19:58
めっちゃ良いところで引いてる〜!
暑くなり始めたからひんやりする話嬉しい - 29二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 22:09:41
不意打ちのホラーで泣きながら歯磨いてる
やっぱスレ主のホラー桁違いに怖いな
でもオチが気になってしょうがない
先生がどうしたっていうんだ…… - 30二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 07:11:07
めっちゃいい所で切られてる〜!!
そして語り口が怖い!! - 31二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 07:54:19
心操の淡々とした口調で語られるホラーめちゃくちゃ怖いな
情景描写も相まって怖さ100倍だ - 32二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 12:18:23
スレ主しっかりホラーの王道抑えてくんの好き
山中でナビがバグる系の話めちゃくちゃ怖いよね… - 33二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 20:59:47
怪談振られたとはいえ田舎の夜道でこの話出してくる心操くんなかなかいい性格してるな
- 34125/04/22(火) 21:32:21
勿体つけるようにふ、と息を吐く。
森をざわめかせていた風がほんの僅かやみ、静寂が三人の間を少し足早に通り過ぎて行った。
その静けさに合わせるように、心操は口を開く。
「いきなり車を出て行ったと思ったら……」
「思ったら……?」
峰田が心操の頭に掴まった。
少し遅れて、びゅう、と大きな風が三人の頭の上を通っていった。
「敵を三人捕まえて戻ってきて……」
「そうか、敵を三人……え?」
心操から出て来た予想外の言葉に、街灯の光に照らされた上鳴の顔が間抜けに光る。
「そう、敵を捕まえてきて。先生は「カーブで出ねえと思ったらこっちだったか」って」
「ちょっと待ってちょっと待ってついてけない。何?」
「なあオイラたち怖い話聞いてたんだよな?」
「山中でナビバグるのは怖いだろ」
「オチで台無しだよ!」
心操は変わらない表情で淡々と話すが、二人からは避難が溢れるほどに飛び出た。
駅が近いのか、街灯の感覚が少しずつ狭くなっていく。
「なんか電気系“個性”を悪用した悪戯が森の中ではやってるみたいで。近く寄るなら見てきてくださいってヒーロー協会から先生が頼まれてたみたいなんだよね」
- 35125/04/22(火) 21:33:13
「もしかして今日の任務で思い出した?」
「うん。上鳴の“個性”でちょうど」
「へえ」
「はー、急にどうでもよくなったな」
歩く歩幅がどんどん大きくなる。会話に興味が無くなって、急ぎかえりたい欲求が強くなったせいだろう。暫く相澤と心操の任務の話をしていたが、その話が終わる前に駅に到着した。
深夜で人もおらず、当然のように時刻表は明日まで真っ白だった。
「どうする? もうちょい歩けば街だけどあそこ宿とかねえんだよな」
近くの街の情報を探していた峰田がため息をついた。マップ上に表示されている情報には宿は一つも載っていなかった。
上鳴が「ちょい待って」と言って電話を掛けると、幾つかの返事をして通話を切り二人に向き直る。
「駅前に居たら耳郎が車出してここまで来てくれるってよ」
「マジか」
「助かるぜお前の嫁」
「だからそう言うんじゃねえって」
三人は駅の前で柱に寄りかかった。耳郎はだいたい一時間くらいで到着するようだ。少し遅いが、それでも野宿よりはだいぶマシだ。
- 36125/04/22(火) 21:33:40
話すこともなくなって暫く自分の携帯を弄る時間が続いていた頃、心操が口を開く。
「実はさっきの話続きがあって」
「またそれ?」
「先生が後部座席に縛り上げておいた敵共が騒ぐから未開封の缶コーヒーノールックでぶつけてダウンさせたところまでは聞いてるからな」
「実は元々あそこ、怪談が有名な場所だったんだ」
心操は携帯を弄りながら話す。
二人は彼の顔を見るが、その表情はいつもと変わらなかった。
「え……?」
「二ヵ月くらい前かな。ヘアピンカーブに差し掛かるあたりでさ、助けてって女の声が聞こえて、事故が多発してたらしい。でも最近その声が聞こえなくなったんだって」
「へ、へえ」
そう言えば先ほど心操の回想で相澤が「カーブで出ねえと思ったらこっちだったか」と言っていた。上鳴たちは鳥肌の立った腕を押さえつける。
「でも今回はいなかったんだろ?」
「カーブにはね」
「ナビがバグったのは敵のせいだって……」
- 37125/04/22(火) 21:34:09
心操は動きを止め、二人を見た。
「え、何……」
「なんだよこええよ」
「山を一つ越えた先にある豪邸に、一人の女が閉じ込められていたんだ」
「心操……?」
心操の様子がおかしい。
二人が一歩後ずさる。駅の僅かな明かりが彼を背後から照らして、表情が読めない。
「彼女はテレパシーの“個性”を持っていた。直線距離ではそこまで遠くない山の向こう、ちょうどカーブに差し掛かるあたりに彼女は念を飛ばし続けた」
「そ、そうなんだ。それが、ど、うしたって」
「待てども暮らせども、助けは来なかった。ある日女は閉じ込められている地下から逃げ出して一度だけネットを使って助けを呼んだんだ」
彼は今誰の話をしている?
峰田は逃げるように上鳴の肩に乗った。
「二人の男は目的地のはずの豪邸を見て首をかしげていた。確かにここから依頼が来たんですよね? ああそうだそのはずだ。そう言って二人は豪邸の中を歩き始めた」
「な、なあやめろって心操」
「そういうの趣味悪いぜ」
けれど男の口は止まらない。
- 38125/04/22(火) 21:34:40
「紫色の髪の男が見つけたのは、地下へと続く階段だった。男は階段を降り、要救助者がいるかもしれないと錠前を壊して扉を開いた」
上鳴の視線が、下に落ちる。
心操の影が、低い。
彼の身長は百八十に迫るほどにはあったはずだが、光の位置を考えると影の長さは三十センチ程足りなかった。まるで、女性のような。
そう言えば、今日心操はどんな仕事をした?
上鳴は通信妨害のジャミングを行った。
峰田は敵を足止めするためのトラップを用意した。
では彼は? 彼は何をしにここに?
「し、んそう、だよな?」
上鳴が否定を求めて発した言葉を聞いて、心操の顔をしたその人物は彼とは思えない笑顔を見せた。
「助けは間に合わなかった」
ぱちり、と。
駅の蛍光灯が消えた。
- 39125/04/22(火) 21:35:12
‡
××財閥血の相続事件
××財閥頭取が亡くなったのち、遺産受取人として指名されていた一人娘が親族によって軟禁される事件が起きる。
少女は自宅地下で発見された。発見者はイレイザーヘッドとナイトハイド。彼女からの救難信号と思しきものをキャッチし、現場で死亡の確認をした。
当時十五歳だった少女は衰弱死と判定された。また、直接の死因ではないが衰弱し始める前に大きな怪我を負っていることも確認され、親族を調べている。
特に親族の中で最も軟禁に関与してると思われるのが電気系“個性”の保持者と網を張るタイプのトラップ系“個性”の保持者の二名。暴行の痕も、この二人が大きく関与していると思われる。
「またその報告書ですか?」
「……心操」
相澤は上から降ってきた声に気怠く答える。手に持っていた報告書を見て心操がため息を吐いた。
「あれは……残念でしたけど。でも、あの部屋を見つけられただけでも良かったって俺は思ってますよ」
「……そうだな」
- 40125/04/22(火) 21:35:46
もう少し自分たちが早ければ、彼女は助かったかもしれない。そんなたらればは彼女の死亡時期が約一週間前であったことからも、あり得ない話だったが。
「あの扉を開けた時、たしかに聞こえたんです。ありがとうって。もしかしたら、幽霊になった彼女がお礼を言ってくれたのかも」
「んな非科学的な」
「良いでしょそんくらい」
二人が和やかに会話をしていると、心操の携帯が揺れる。着信を見ると耳郎からだった。「めずらしいな」相澤に許可を取って着信に出る。
「もしもし俺。……うん、……うん? いや俺今日オフだけど……上鳴と峰田? ええ、会ってないよ。本当だって、ここに先生居るし、俺今東京の事務所だよ。……あーもうわかったから、ちょっと待って」
「どうした」
「なんか耳郎が……上鳴と峰田が居ないって」
それがどうしてここに繋がることになるのか。
相澤は首をかしげて電話に出た。その際、窓の向こう側がほんの少しうるさくなったような、そんな気がした。
- 41125/04/22(火) 21:36:41
- 42二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 21:37:47
怖すぎ
暑いから涼しく寝れそうです… - 43二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 21:40:24
敵3人捕まえてきた先生で笑って「あ〜今回はギャグオチか〜良かった〜」って思ったら全然そんなことなかった
- 44二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 21:43:28
緩急がすごい
最初敵3人で安心してたのに最後急にきた
上鳴と峰田……無事だといいな……… - 45二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 21:46:32
たしかに心操くんどう考えても突入向き個性じゃないのに最初の会話で裏方の話してない…
- 46二次元好きの匿名さん25/04/22(火) 23:38:30
後味悪いホラー好きすぎるからめっちゃ刺さった
この心操くんは本物なのか2人はどうなったのかとか考え出したら止まらないやつ - 47二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 07:56:28
前のも今回のも尾を引く感じのホラーでマジで怖い
でもなぜか全部読んじゃう - 48二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 12:21:05
理不尽な幽霊の話好きだから嬉しい
師弟が引き金引いてることに気づいてないのも好き - 49125/04/23(水) 20:00:06
ただいま
ごめん今日書こうと思ってたけど今書くと新ハード祈願のため大急ぎで徳を積もうとする相澤先生しか書けなさそうだから明日また書きにくるぜ - 50二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 20:14:35
なんのことかと思ったらスイッチ2の当選か
スレ主も応募したんかな 当たってるとええな - 51二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 20:17:21
大急ぎで徳を積む先生ちょっと見たいな
校内にお掃除ロボットいるのに「今日は俺が払う」とか言い始めんのかな - 52二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 20:18:42
おかえりスレ主
新ハード当選祈願する先生エリちゃんのために当てようとしててもいいし完全に自分のために必死に徳積んでるのもいいな - 53125/04/23(水) 21:26:22
夜九時にもなると雄英高校は静まり返る。
当然職員の中にはまだ働いている者も多いが、その多くは教員寮の自室にいた。
オールマイトもまたそのうちの一人だった。
新学期を迎え、教職をやめたオールマイトは寮を引き払う時間もないまま世界を飛び回ることになった。大戦直後と比べれば世界の情勢も落ち着いたので寮に置いた荷物を引き取りに来たところだ。
私物をほとんど持たないオールマイトだが、この寮では教職についての理解を深めるためがむしゃらに色々な物を購入した形跡がある。
我ながらなんとも不格好だと思って荷物を詰めていたら、こんな時間になってしまった。
まだ荷物は半分以上あった。荷物を纏めて動かしての上下運動をしていたせいでだいぶ腰が痛い。トントン、と腰を拳で叩くと、扉の方から同じ音が聞こえた。
「ん? 誰だい?」
ノックの音だと気付いて声をかける。
扉の向こうからは控えめな声が届いた。
「……相澤です」
「相澤くん!?」 - 54125/04/23(水) 21:26:46
オールマイトは立ち上がり大急ぎで扉を開ける。そこには片目だけをきょろりと動かして自分を見上げる先輩の男がいた。
「ど、どうしたんだいこんな遅くに」
「……今、困ってませんか?」
「え?」
相澤が手を動かして見せるので見下ろすと、彼の両腕には段ボールやガムテープがあった。ついでに、荷物を括る紐も見受けられる。
「荷造り、捗っていないと思ったので」
「て、手伝ってくれるのかい?」
「手伝わせてほしいなと、ぜひ」
「ぜ、ぜひ!? どうしたんだい相澤くん」
オールマイトは目を白黒させる。
相澤と言う男は、情に厚いが過度に人を甘やかすような人ではない。丸一日あって部屋の荷物一つ片づけられないような大人を手伝いに来るのはあまりにもイメージと違っていた。
何か裏があるのでは、と思うも相澤がオールマイトにすり寄って得をするようなことは何一つない。本当にオールマイトが助かるだけ、純粋な人助けだ。
- 55125/04/23(水) 21:27:24
- 56125/04/23(水) 21:27:48
「今度、大戦終結記念に大手ゲームメーカーが最新ハードを出すのはご存じですか」
「あ、ああ。なんか聞いたな。私にはあまりなじみがないから詳しくは知らないけど」
「そのゲーム機を雄英を去る予定のエリちゃんにあげようって教員で話し合って、抽選予約に応募したんです。抽選の結果が出るのは明日なんですが……どうやら倍率がかなり高いらしく」
「そんなにかい?」
「単純計算で日本人口の二パーセントが応募しているそうで」
「そんなに」
驚くオールマイトに「不純とは思いますが、少しでも徳を積んでおきたくて……」と相澤は小さな声で答えた。
「君が神頼みをするとは……」
「俺にできることって今はそれくらいしかないんで」
そこに驚いているのではなかった。
オールマイトは口を噤む。驚いたのは相澤が神頼みと言う手段を取ったこと、そしてその相手に自分を選んだことだった。
- 57125/04/23(水) 21:28:28
彼にはあまり好かれていない自覚がある。ヒーローとして尊敬はされていただろうが、教職では迷惑をかけてばかりだった。
それでも、こういう一見ふざけた行為をしても怒られないだろうという相手に選ばれたことは、自分としてはここ最近で一番うれしいエピソードと言っても過言ではない。
「……実は全然荷物纏まらなくて困ってたところなんだ。助かるぜ」
「本当ですか」
「ああ。悪いんだけど荷物をジャンル別に分けてくれるかい。私はちょっと腰が痛くて重い物が持ちづらくて」
「任せてください」
相澤が片足のハンデを感じさせずに部屋の中へと入っていく。
その背中を見送って、彼が明日笑っていますようにと小さな願を掛けた。
- 58125/04/23(水) 21:29:21
- 59二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 22:05:02
新作きてた!
先生も切実だろうがこれ書いてるスレ主の方が切実そうで笑ってしまう
オルマイのところに徳積みに行く先生可愛い - 60二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 22:51:58
徳積み先生かわいいな
オールマイトの気配と徳積みチャンスを察知していそいそと手伝いにくるのも可愛い
スレ主も先生も新ハード当たりますように - 61二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 07:03:37
みんな徳積に願いをかけてる……
スレ主当たりますように - 62二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 08:06:04
根本にエリちゃんのためにって思いがあるだけでかなり徳積んでるよ先生
素直に言い出せないから遠回しにオールマイトの様子伺ってる先生愛おしい - 63二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 12:16:03
オルマイのところにせっせと徳積みに行ってるの可愛いがすぎる
スレ主の書くオルマイ器デカくてめちゃくちゃ好き… - 64二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 20:23:39
スレ主の書くオールマイトと相澤先生の距離感がすごい好き
慣れないなりにオールマイトに絡みに行く先生と懐かれて喜ぶオールマイト良すぎる - 65125/04/24(木) 20:57:57
感想たくさんありがとう
あとごめん当落気になりすぎて気持ち悪くなってきたから今日はもう寝るね…
当落の結果によっては明日の先生が八つ当たりの対象になります - 66二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 21:14:16
スレ主にSwitch2当たって欲しいけど
それはそれとしてスレ主に八つ当たりされてる相澤先生も見たい(強欲) - 67二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 22:37:30
スレ主の当たって欲しいのに八つ当たりされてる先生はみたい…
俺たちはどうしたらいいんだ…… - 68二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 07:32:28
倍率見てると八つ当たりになりそう……
- 69二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 07:54:28
八つ当たりになるのはそれはそれで嬉しい
ただスレ主に当たって欲しいって気持ちも本当なんや…… - 70二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 10:34:46
スレ主switchy2どうだった?
- 71125/04/25(金) 18:49:49
前回までのあらすじ!!!
上位存在によって侵略された地球!
強個性もなすすべなく蹂躙されていく!だがそんな時侵略をやめることを条件にある男が欲しいと上位存在から交渉が!
なんと指名されたのは相澤先生!どうやらなんやかんやあって上位存在の双子王子様王女様のお眼鏡にかないお嫁さんになることに!
地球のためと快諾した先生とスライム上位存在とのどろぐちゃ快楽拷問セッライフが今始まる…!
今日は早く帰れたけど疲れたから寝るぜ
明日は上のやつを書くね - 72二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 18:52:08
落選したのか…
- 73二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 19:15:25
すごい八つ当たりだ…
- 74二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 19:18:23
スレ主どんまい
それはそれとして八つ当たりエロは読んでで滾る - 75二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 20:15:21
スレ主どんまいや……
ただこの流れちょっと面白い - 76二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 22:42:51
わーい!スレでも時々出る上位存在×相澤先生だ!
八つ当たりが前回のあらすじになっててボーボボみを感じる - 77二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 07:22:26
上位存在と先生の話気になってたから嬉しい!
どろぐちゃ快楽拷問セッライフ…一体何されるんだ…… - 78125/04/26(土) 10:18:11
今日は夜まで来れないんだけど
ある異世界に転生させられた相澤♀先生
その世界では女しか存在しておらず全ての女性はふたなりだった!
ちんこを持って生まれない女に人権は無くふたなり女性たちの性玩具として生きる必要がある
♀澤先生は竿なし女としては珍しく背が高くガタイが良いため多くの女性から求められることに
昼も夜もなく幼女からお姉様まで幅広い女性たちに求められる先生の平穏やいかに
なおこの世界ではクリを持って生まれること自体が罰則対象なのでクリ全体を覆う機会が取り付けられる
その機械からは体内に1ナノメートルの線が伸び体内にあるクリの足までしっかり絡め取られ女性たちに反抗した場合は電流が流される
なおこれは快楽を与えるための装置でもあるため体内にあるクリを振動させたり微弱な電流で快楽をもたらすことが可能
この世界でのクリは罰を与えるための器官であると同時にアクメ装置でもある
そういうエロ漫画的世界に放り込まれる♀先生も良いよね
♀先生はたくさんモブレされててほしい
でも痛い思いはしないで欲しい
気持ちいいまま尊厳を失って欲しい - 79二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 12:49:32
また最高の世界がスレ主から生まれてる
同じ女性に玩具にされる先生絶対えっちだよ
♀先生が気持ち良さで尊厳失って欲しいのわかる
無様イきとか見てみたい - 80125/04/26(土) 19:06:51
すまん四度寝したらこんな時間だわ
今日無理そうやで
明日なんか持ってくるね - 81二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 20:02:05
おはようスレ主
八つ当たりss楽しみに待ってるで - 82二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 20:47:27
スレ主大丈夫か〜
四度寝ってそれもう体限界なんやないか
ゆっくり休んでくれ… - 83二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 22:31:46
平日の負債がデカそうだなスレ主…
思う存分休んでくれ…
アホエロで出てくるエロのためだけに存在する装置大好き
先生機械に無茶苦茶にされて泣き叫ぶの似合いそう - 84二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 07:37:04
スレ主本当に大丈夫か…?
どうにかしっかり休めるといいんだが、そこまで来るとただ休んでも変わらなかったりするかなあ…
そして先生理不尽えっち最高 - 85二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 14:30:52
なんか去年の年末あたりからずっとデスマ続いてそうスレ主
ゆっくり休んでくれ
クリに装置つけられて管理される♀先生エッチにも程がある - 86125/04/27(日) 15:26:12
ごめんなんか書きたくなっちゃったから今日は性教育シリーズの続き書くね 八つ当たりを期待してたら申し訳ねえ
夜に持ってくるよ - 87二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 16:00:00
謝らんでええんやで
スレ主が好きな時に好きなもん書くのが一番や
また有罪澤の罪が重くなると思うとワクワクするぞ - 88125/04/27(日) 19:18:04
暖かな湯が張られた浴槽に浸かり相澤は天井を見上げる。すっかり賢者タイムを迎えた頭には後悔と罪悪感が渦巻いていた。湿気を含んだ空気が肺を重くする。
相澤の膝の間に座る一回り以上小さな体が身じろいだのを感じ、ため息を吐きかけていた息を飲み込む。
出来るだけその体に触れないよう、両腕を湯船の縁に置いた。
「その……あー……耳郎、本当にいいのか?」
「何が?」
「何がって……」
足の間に座っていたのは耳郎だった。
骨格からして細く小さい彼女だが、やはり他の女子たちと同じように成人していることもあり八年前と比べると比べるまでもないくらいには肉感的になっている。
八百万で一度、蛙水で一度果てて幾分冷静な思考を取り戻した相澤ではあるが、その分理性のねじは外れていて、自分がいつ彼女に手を出すかわからない不安が胸中に蔓延った。
この風呂は耳郎が相澤に強請ったものだ。蛙水との行為後シャワーから戻ってきた相澤は、これから一緒に風呂に貼ってほしいと言われて彼女の正気を疑った。 - 89125/04/27(日) 19:18:38
「……その、蛙水達のは見てただろう? 俺で本当にいいのか?」
二回果てたにも関わらず年頃の女を前にして自分の半身は硬さを取り戻しかけている。どうにか自分が欲望に素直になる前に耳郎を正気に戻しておきたい。
問いかけられた彼女は、湯船の中で膝を抱えた。俯く頭に、教師の精神が顔を出す。
「……事情があるのか?」
彼女の頭は上下に揺れた。
相澤は姿勢を正す。顔を片手で覆って耳郎に気付かれないよう大きく深呼吸をした。脳をクリアにし、欲望をいったん外に置く。
「俺に、話せるか?」
「……っていうか、先生じゃないと、話せないかも」
顔の見えない耳郎は自嘲するような声音で呟いた。躊躇いを纏わせた後頭部は緩く揺れて、細い肩に力が入る。
「ウチのお願い、覚えてる?」
「セック スに対する恐怖の緩和だったか?」
「即答じゃん」
「そりゃね」
正直、耳郎の要望が一番よくわからなかったので印象に残っていたのもある。セック ス自体に悪感情があるのであれば、それこそ恋人と解決していくことで相澤のような第三者が出る幕ではないからだ。口には出すことはないが、相澤の疑問を肌で感じたのか耳郎の肩につく程度の黒い髪が湿気を含んで重たげに揺れた。
「……これ、みんなには言わないでほしいんだけど」
- 90125/04/27(日) 19:19:03
前置きが羞恥を含んで語尾が頼りなくなる。相澤は「もちろん」と間髪入れずに応えた。安心したのか、次の言葉の滑り出しは流暢だった。
「ウチさ、元カレがちょっと酷いやつで」
所々力みつつ彼女は喋った。
話を聞くに、元カレというのが初めての彼氏で、耳郎にとっての初体験の相手だった。耳郎は性行為に対しあまり良い感情を持っていなかったが、彼氏の要望に応えて行為を了承した、らしい。
「麗日とか芦戸とかから、あんまり気持ち良いわけじゃないってことは聞いてたから、覚悟はしてたんだけど……気持ちよくないって言うか、痛くて」
耳郎の足が閉じる。
心を守るように背が丸まり、水面につかない程度に膝に顔を埋めた。
「何度やめてって言っても止まってくれなくて。指でかき回されてアソコから……血も出てきて。痛いって言ったら「処女だからしょうがないよ」って言われて……相手一般人だから、変に抵抗すると怪我させちゃうし、我慢して、でもやっぱりすごく痛くて」
- 91125/04/27(日) 19:19:30
相澤が黙ったままなので耳郎がうかがうように一度呼吸を入れると「大丈夫、聞いてる」と出来るだけ優しい声を出した。耳郎は、泣き叫ぶような声を抑えるがその反動が肩に震えとして出てしまっていた。
「そのあとも何回かしたんだけど、やっぱり痛いまんまで。濡れるとかもなくって、結局わかれちゃった。他のみんなもえっちにはなんかいろんな問題を抱えてたけど、ウチだけちょっと……そもそもの種類が違うって言うか、相談しにくくて」
耳郎の声に涙が滲む。鼻を啜る音が聞こえ始めた。
「な、なんかさあ、ウチ、自分が被害者なんじゃ? みたいな、そんなことばっか思うようになっちゃって。変だよね、ちゃんと合意でしたのに。相手にばっかり、責任を求めて、自分のこと守ろうとして。なんか、なんか、ヒーローなのに、弱い女みたいな、こんな……」
自虐を含んだ声に、相澤の腕が動く。
耳郎よりもよほど太い腕が、彼女の体をぐい、と自分の方へと引き寄せて腕の中へと閉じ込めた。
「せ、せんせい……?」
「耳郎、耳郎は俺に何を教わりたい?」
震える彼女を宥めるように頭を撫でる。
一緒に風呂に入りたいと言った時点で生理的嫌悪のハードルはクリアしているものと考えたうえでの行動だった。
- 92125/04/27(日) 19:20:02
耳郎は相澤の腕の中で少し身じろいだが、それをすぐに諦めて体をゆったりと預けた。
「……愛のあるえっちっていうのが、この世に本当にあるのか、教えてほしいんだ」
耳郎の手が相澤の腕を掴んだ。それは引き離すための動作ではなく、まるで縋るような動きだった。
「さっきの梅雨ちゃん、凄く幸せそうだった。先生は恋人でもないのに。……だからさ、ウチも……ああいう風に、幸せなえっちっていうのがこの世にあるって信じても良いのかなって思ったんだ」
「そうか」
相澤は腕を掴んだ指を解かせ、掌を握る。指を絡めれば相澤の指の太さに開かされた耳郎の手が少しだけ窮屈そうだった。
掌を合わせるようにして擦ると、彼女の体が少しだけ緊張する。
「ほ、んとうは。触られても怖くないか、確かめるだけで良かったんだけど! でも、その、ウチも……あの」
「良いんだよ耳郎」
- 93125/04/27(日) 19:20:25
彼女の体を反転させ、正面から抱きしめる。
ヒーローらしく鍛えているが、それでも余裕をもって腕の中に閉じ込めてしまえた。ちゃぷりと湯が波を立てた。
「教えてくれてありがとう。俺を頼ってくれて嬉しいよ」
「ほ、ほんと? 面倒じゃない?」
「そんなわけないだろ」
体を離して額にキスをる。髪は既に湯気で湿っていた。暖かな湯で血行が良くなったせいか汗もかいて彼女の額に前髪が張り付いていた。
「そんなクソ彼氏のこと、二度と思い出さないくらい徹底的に幸せにしてやる」
「先生……」
「だから耳郎、俺を信じろ」
力強く言えば、彼女は「先生っぽいなあ」と照れ臭そうに笑った。そして、相澤の言葉に応えるように腕を首に回して抱きつく。
湯で湿った体がお互いの距離をゼロにして、彼女は柔らかな体と運命を差し出した。
- 94125/04/27(日) 19:24:34
一旦ここまで!
スケベパートは今日持ってこれたら持ってくるね
持ってこれなかったらしんだと思って
女子六名の中で一番男運悪いのは耳郎ちゃんだと思ってる人間
女の子らしいことの相談自体が恥ずかしいから誰にも言えなくて抱え込んで結局別れちゃうみたいなことが多そう
なんていうか女子としての自信が六人の中で一番ないからそこに付け込まれそうというか
今回はメンタルケアのため元生徒相手にいちゃらぶド甘々セッをする有罪澤が見られるよ!
お楽しみに!
- 95二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 19:40:48
>メンタルケアのため
ううん…ほなしゃーないか
>元生徒相手にいちゃらぶド甘々セッ
それはトラウマ持ちの子相手には劇薬なのでは?
- 96二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 21:12:38
ガシマンしてくるうえ血がでたら処女だからで言い訳する元カレ最悪すぎて耳郎ちゃんが可哀想で先生に幸せックス教えてもらいな…って気持ちになるけど本当にその男でええんか?の気持ちもあって不安になる
- 97二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 22:09:30
耳郎ちゃんの元彼はもちろんクズだけど頼ろうとしてるその男も別種の酷い男だぞ?大丈夫か?
絶対気持ち良くはしてくれるだろうけど予後不安しかない
トラウマ解消イチャラブセッはめちゃくちゃ見たい
ありがとうございます - 98二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 22:57:10
これまでの行いのせいでスレ民が有罪澤に厳しくなってるの笑う
耳郎ちゃん引き寄せたあたりで完全に奉仕のスイッチ入ってそうでなんかえっちだ - 99125/04/27(日) 23:18:21
‡
シャワーで浴室を温めながら、壁に凭れ掛かってキスをされる。三十センチ近く離れた身長のせいで強制的に上を向くことになり、更に背伸びをしてもまだ足りない。
相澤は耳郎が目いっぱい頑張ってギリギリ届く位置におり、息苦しさで耳郎の頭はくらくらした。息が上がってくると次第に相澤の体が耳郎の手が届きやすいところまで降りてきて、その首に縋る。
太い腕が腰を抱き、体を密着させた。ムダ毛処理のされていない太腿が耳郎の股を割って足を閉じさせないようにする。
自分よりもずっと太い体、濃い体毛、時折漏れる低い声。今まで担任に覚えていなかった強い男性性を感じてしまう。
「響香」
呼ばれたことのないファーストネームで呼びかけられて体がびくつく。「はい」小さく返事をして相澤の表情を見ると、見たことないくらい甘くて優しい表情をしていた。
- 100125/04/27(日) 23:18:44
ああ、これだ。と。
咄嗟に思ってしまった。きっとみんな『これ』にやられたのだ。自分だけをこの世で一番大切に想ってくれるような優しい残酷な男の顔に、傷ついた心を動かされてしまったのだ。
耳郎はこんな愛おし気に男に見てもらったことなど一度もない。そういえば彼氏とは性行為中ほとんど視線が合わなかったと思う。名前を呼ばれるよりも、卑猥な言葉を掛けられる回数の方が多かった。
「響香はどこ触られるのが好き?」
「え……っと、わからない……」
「そっか、じゃあ一緒に探そうね」
こんな甘ったるく声を掛けられたことなんてない。優しく優しく肌を撫でられたこともない。頭の中で厳しくも優しい過去の担任とこの男が一致しない。
相澤の指先が耳郎の体を撫でる。首筋から途中乳首を引っ掻きながら下へと降りていく。その触り方がやらしくて、混乱するくらい興奮した。
「響香も俺のこと触って?」
「え、さ、さわ」
「ほら」
手を取られ、相澤の首筋に置かれる。体の中に筋肉がぎっしりと詰まっている感触がした。そういえば元カレの体もまともに触った覚えがなく、耳郎は初めてとも思える男性の体にぺたりと手を付ける。
- 101125/04/27(日) 23:19:29
まるで珍しい物を触るような手つきをしていると、耳郎の頭上で相澤が噴き出した。
「あっ、え、ごめん、なさい」
「いいよ。俺の体面白い?」
「なんか、全然ウチと違って……」
「そうだろ? 男と女って体が全然違うもんなんだよ」
だからもっと触って楽しんで?
そう言われて、耳郎は恐る恐る相澤の体に触れる。自分にしてくれたようにフェザータッチをしてみたり、大きな筋肉を撫でてみたり。
その間も、相澤の指先は耳郎の体を触り、堪能している。時折思い出したようにキスが降ってきて、体がより密着した。
「ん……」
勝手に鼻から抜ける声が気持ち悪い。
彼氏には「なんかカマっぽいな」と揶揄われた思い出がある。でも、きっと相澤はそんなことを言わないとわかるから安心してしまう。
生来の性格から、女らしい振る舞いをするのはらしくないと思う節があった。彼氏の前でも素直になれず、悪態をついてしまっていた。
- 102125/04/27(日) 23:19:58
でも相澤に抱きしめられ、キスをされ、沢山話しかけられると何故だかもっと彼に甘えたくなって、体を擦りつけると歓迎するように抱きしめられた。
全部肯定されてしまう。自分が悪だと思ったものが全部。ドロドロの沼に自分から沈みに行っているようで、これ以上はいけないとわかっているのに縋るのをやめられない。
「しょ、ぅた、さん」
「名前呼んでくれるの? 嬉しい」
たまらず名前を呼べばそれも喜ばれる。胸の奥がきゅんとなって、彼の背に腕を回して抱きつき、キスをせがんだ。
望むままにキスが降ってきて、唇を啄まれ、舌の先だけを絡められる。彼の唾液が落ちてきて、喉の奥に流れると体は喜んで飲み干した。
「可愛い」
恥ずかしい。
頼んで抱いてもらっているだけなのに、こんなお姫様みたいに扱われて、恥ずかしくてしょうがない。それなのに、それ以上に嬉しくて、もっと際限なく甘やかしてほしくてたまらなかった。
「もっと、言ってほしい……」
言ってから後悔する。
口から出た願望に慌てて訂正を入れようとするが、相澤がその口をキスでふさいだ。
- 103125/04/27(日) 23:20:29
「可愛い、響香」
「っ、ぁ、やめ」
「なんで? 可愛いよ。もっとたくさん言わせてよ」
「だ、だってウチ、可愛くなんて」
「可愛いよ。世界一可愛い、大好きだよ」
ダメだ。
ダメ、ダメだこんなの。
脳髄が溶かされる。甘ったるい声に体がダメになっていく。今まで恋人に言って欲しかった言葉を全部貰えて浅ましいくらい体が喜んでる。
抱かれている時痛くても良かった、名前を呼んでほしかった、好きだって言ってほしかった。もっと大切に扱ってほしかった。言えなかった願いが全部叶えられていく。
「う、ウチも、好き」
「本当? 嬉しいな。響香に好きって言ってもらえるなんて」
「しょうた、さんも、好き?」
「大好きだよ。愛してる」
- 104125/04/27(日) 23:21:34
ずっと、他の女子がどうして大好きと言われてあんなに反応するのかわからなかった。でも、言われてみればわかる。これだけ真剣な声で好きと言われて、求められて、嬉しくないわけがないのだ。
頭がこの男が良いと言っている。
濡れたことのないそこが、この男を迎えたいと泣き始めた。子宮が疼き始め、呼吸が荒くなる。
「消太さん、ウチ、あの」
「んー? なあに?」
水あめみたいに甘ったるい声が耳郎の思考を絡めとる。何でも許されることが快感で、もっと気持ちよくなりたいと歯止めが利かない。
「さ、最後まで、シたい」
控えめにおねだりをすると、目の前の男は本当に幸せそうに耳郎と目を合わせて笑ってくれる。
「じゃあベッド行こうか」
またキスをされ、近くに置いてあったバスタオルで耳郎は包まれて抱きあげられる。顔がさっきよりも近い位置にあって、なんだかたまらない気持ちになってしまい、首筋にキスをした。
「痕つけていいよ」
思いもよらない許可に興奮してデコルテや首筋に夢中で噛みついたり吸い付く。こんなところにつけたら明日大変じゃないだろうかと思ったが、止まることはできない。
首筋に吸い付くのに夢中になっていると部屋についたようで、丁寧にマットレスに降ろされた。巻いていたバスタオルを剥ぎ取られるとそのまま抱きしめられ、絡み合うようにマットレスに二人横になる。
足を絡ませられて、濡れた自分のはしたない秘所を彼の太腿に擦りつけた。
- 105125/04/27(日) 23:22:58
- 106二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 23:27:08
本気で彼女にする気なんてさらさら無いのにこんな甘々な対応できるのガチ悪い男で腹立つけど沼すぎて最高
この勉強会終わったらスパッと担任の距離に戻してくるくせに本当酷い男だよ - 107二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 23:31:14
俺の耳郎ちゃんをたぶらかすなー!という気持ちと激毒男クソえっちすぎる…の気持ちが喧嘩してる
女子側から持ちかけたことではあるけどもうすでに責任とって欲しいよ俺は - 108二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 08:01:25
耳郎ちゃんがチョロそうなのなんか分かる
全肯定で欲しい言葉くれる先生にめちゃくちゃ甘え倒してる耳郎ちゃん可愛すぎる
劇毒男相澤消太メンタル弱ってる人間からしたら最高の男に感じるけど一番引っかかっちゃダメな男なの本当最悪で最高 - 109二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 08:21:46
激毒男相澤消太マジでメンタル病んでる時にそばにいたらダメな男すぎる
最悪なのにめちゃくちゃ好き…♡になっちゃう - 110二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 12:14:50
彼氏とのいちゃ甘セッだったら可愛い〜って見ることできたのにこれがただ一晩の関係って思ってみるとめちゃくちゃ複雑
こうやってたくさん女を泣かせてきたんだろうなこの激毒有罪男… - 111二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 21:12:15
首周りに痕付けまくるの子猫みたいでかわいい
本当ちゃんと恋人関係なら微笑ましく見れるのに色々思い出して般若の形相になる - 112二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 21:28:34
>抱かれている時痛くても良かった、名前を呼んでほしかった、好きだって言ってほしかった。もっと大切に扱ってほしかった。言えなかった願いが全部叶えられていく。
ここ耳郎ちゃん可愛い…と切ない…とクソ彼氏が…の気持ちがごちゃごちゃになる
一見善行に見えるけど既に食われた5人がこれ見てんだよなと思うと
- 113二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 01:02:48
耳郎ちゃんが心開きかけてるのはすごい嬉しいけど終わった後虚しくならないか心配になってきた
多分この劇毒男はすっと距離取るぞ - 114二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 06:02:56
激毒有罪澤本当に沼すぎて好き
こっちを好きになってくれることなんて生涯ないんだろうなってところも含めて - 115二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 15:33:47
くっそ、劇毒有罪澤が本当に劇毒
- 116125/04/29(火) 20:20:15
ただいま〜
保守とか感想とか色々ありがとやで!
次に更新できるの土曜になりそう〜その時には完結する予定だから待っててくれ - 117二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 22:28:26
えっちぃ、えっちいよぉ!!先生ィ!!!!
- 118二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 22:54:05
スレ主おかえり
了解やで〜土曜まで楽しみに待ってる - 119二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 23:12:47
おかえりスレ主
有罪澤完結するのか!
どう落ち着くのかめちゃくちゃ気になる!
土曜が楽しみだ
なんか連投判定か性描写かでホスト規制されたかもしれないss主いたからスレ主も当分気をつけた方がいいかも?
ここも規制で消されちゃったら一生引きずる自信ある - 120二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 23:52:11
このスレなくなったらマジ本当に辛すぎて泣く
作品ページはあるけどそうじゃないんだ…そうじゃないんだ… - 121二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 07:59:28
有罪澤が最後どうなるのかはまじで気になる
有罪のまま進むのかちょっと報復受けるのか
どっちにしろ土曜までワクワクだ! - 122二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 12:29:01
有罪澤完結マジか!
合理性の名のもとに特になんの反省もせず女を沼らせてる男に報いがあったら嬉しいけどなくても美味しい - 123二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 19:33:40
このレスは削除されています
- 124125/04/30(水) 20:39:19
banかあ
まあすけべをここで書き始めた時からいつか消えることは受け入れてるから
消されたら作品も全部消してまたどっかで転生するからその時は見つけてくれよな - 125二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 21:29:28
> 消されたら作品も全部消してまたどっかで転生するからその時は見つけてくれよな
まってくれ…
- 126二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 23:33:37
急に悲しい話出てきて泣いちゃった
国語的な感性乏しい方だけどもしそうなっちゃった時は頑張ってスレ主のこと見つけるぞ! - 127二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 07:04:36
あにまんでこのスレ立ててくれてほんまにありがとうやでスレ主
- 128二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 12:27:58
とりまこのスレが落ちないように俺たちは保守を続けるぜ
- 129125/05/01(木) 20:08:43
はあ…はあ…
相澤先生…ファンブック3ページももらえたんだね…相澤先生…良かったね…綺麗だよ…
名だたるキャラクターの中で先生に3ページさきましょうって言ってくれた担当者の方ありがとうございます
あと2ページくらいグラビアつけてくれると嬉しいです - 130125/05/01(木) 20:31:33
目次発表されただけでこれだから中身見たら絶対そのネタでなんか書くので土曜日はもしかしたら有罪澤書かんかもしれん先に言っとくぜ
- 131二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 21:09:53
スレ主のテンションがモブおじみたいになっちゃった……
全然ええんやで
なんなら自分達もファンブックで正気を失うと思うから全力で楽しむで - 132二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 00:25:52
スレ主もうファンブック見れたのかな
土曜有罪澤がきてもファンブックssがきてもどっちでも嬉しいよ - 133二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 08:17:11
スレ主に早くファンブック見て欲しい
いや多分もう見てるだろうが - 134二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 12:39:25
スレ主ファンブックネタでなんか書くんかな
今から楽しみだぜ - 135125/05/02(金) 19:14:03
書きたいやつ
・先生からナイフを貰って浮かれてる心操
・クラストの功績を残すため不慣れなメディアに出る相澤先生
・髪伸ばしてたら「先生の真似っこ?」と聞かれ「リスペクト」と真顔で返す心操
・A組のせいで伝説の教師になってしまいヒーローチャートの2桁くらいにいつもいるようになる相澤先生
・四年に一度の散髪屋さんプレマイ
・海外での潜入任務が多かった時期もあるので多言語ペラペラだが現地の訛りが強い相澤先生(心操に教えたりする)
・自分に教頭は務まらないと相澤に愚痴るオルマイ。先生にその知名度使いやすい立場で良かったじゃないですかといわれる。8年経って十分「先生」になりましたよって褒めてもらえる
・弟子が海外からの協力要請が多いということで今までの自分の伝手を教えてくれる先生
先生の海外慣れはヴィジの回想中に「これどう見ても海外やろな」って場所が映ってたので - 136125/05/02(金) 19:15:52
あのクソ硬布千切るためのナイフがあるなら絶対弟子に贈ってただろうという確信と髪型が正式に師匠リスペクトだったところからあの弟子はそんないい物貰ったら絶対密かに自慢するという願望
- 137125/05/02(金) 19:33:24
あとさあ
実はナイフだけはサポート会社に頼んでもあんまり納得のいくものが出来上がらなくて困ってた先生がサポート会社の伝手でとある鍛冶屋さんに繋いでもらって作ってもらってたらいいなあと思う
部屋にあるどの刃物よりもよっぽど切れる目をしていたら先生を危うく思った親方が「決して自分を傷つけるな」という約束で渡したナイフ
先生は言いつけを破って足を切り落とすことにナイフを使ってしまい親方から二度とお前のナイフは研いでやらんと言われる
でも先生は二年後また親方の元に訪れてナイフを造って欲しいと頼み込む
最初は取りつく島もなかった親方だが「…弟子を取った。同じ武器を使っていて、ここのナイフを使わせてやりたい」と吐露する先生を見てあああの頃の危ういお前はもういないんだなと納得して作ってくれる
親方は心操を呼び出してナイフを作ってやるんだけど「アイツにも言っといてくれ。錆びたナイフ使うくらいならたまには研ぎに来いってな」と言伝を頼む
二人が仲直りして心操は師匠から武器をもらえて全方位happy end… - 138125/05/02(金) 19:44:38
めっちゃ書きたい
伝説の教師イレイザーヘッドになってしまった相澤先生めっちゃ書きたい
新入生が「この人があのレジェンドたちを輩出した伝説の教師…!」みたいな目で見てくるから「俺は何もしてない」って毎回言うのに「相澤先生にはうちの代は本当にミリも頭が上がらないくらいお世話になってね…」も歴史の授業のたびに話すクソナードのせいで毎日振り出しに戻る先生 - 139125/05/02(金) 19:47:58
ぶっちゃけ相澤先生特筆して生徒たちにやってあげたことってあんまないんだけど
あの代に限っては職務放棄せずあんだけイレギュラーなこと起こりまくってさらに奔放な活動する二十人全員を五体満足で卒業させただけでノーベル平和賞あげた方がいい - 140二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 20:43:52
やっぱスレ主の解釈は疲れた身体に効くわぁ…
- 141125/05/02(金) 20:55:24
ヴィジとかも見るとさあマジで個性って簡単に人の命を奪えるしヒーローは志望者含めてめっちゃ死人出てるんだろうなって思うのよ
でも同時にそう言う状況って大した実力もないのに「私がなんとかしなきゃ」みたいな無茶をやる人を沢山作ってしまうこともあると思うのね
コーイチや初期のデクが良い例
ヒロアカは高校生とか言う超多感な子供たちが主役で先生が言うように「自己犠牲と命を捨てることが同義」と考える子も少なくない
だからこそ相澤先生みたいな身近な人の死を経験してる人が嫌われ役を買ってでも厳しく教えないといけない
で ただでさえそんなヤバい世界で死亡率高そうな職業の専門を教えてるのにデクの代は更にとんでもないイレギュラーばんぼこ起こって世間からもバッシングされて本当によく先生をやり通したよ…という気持ちになる
ごめんなんの話してたっけ? - 142二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 21:00:14
相澤先生凄い大好きって話じゃなかったかな?
- 143二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 21:01:04
スレ主が楽しそうだと嬉しい
- 144125/05/02(金) 21:46:25
明日はファンブックネタでなんか書くね
あと心操くんがなんか考えてるよりもずっと相澤先生のこと尊敬しててそれ本当に尊敬だけですか?的な腐女子フィルターかかっちゃったから心相もなんか書くかもしんない
あと8年後消太が普通にメロすぎるから夢も書くかもしれない
来れるのは普通に夜だからそれまでに決めておくぜ
寝るぜ - 145二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 23:47:42
スレ主の怒涛の解釈と書きたいネタ達が見れてにっこり
心操のデカ感情にビビったの分かる
読みながらリスペクトだけでそこまで行くんか?普通?って困惑だらけだった - 146二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 08:25:51
8年後先生メロいの分かる
「はい、こんにちは」が大好きすぎて何回も読み返したし穏やかな顔で笑ってるコマ見ていい年の取り方したなって思った - 147二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 15:41:58
漫画の方のヴィジランテで先生の地元に相澤って名前の武器屋がチョロっと背景にあったような気がしたんだけど自信ない
当時見た時なんか先生と関係のかなって思った店があったんだよな
ナイフの情報見て思い出した - 148125/05/03(土) 19:07:00
十二月。もうすぐ二年生も終わろうかと言う時期だ。復興も随分と進み、治安も安定してきている今緑谷たちは本業である勉学に勤しんでいた。来年になればインターン活動はもっと活発になり、学んでいる時間もとることはできないかもしれない。誰が言い出したかは忘れたが、週末に勉強会を行うのは最早恒例行事となっていた。
共有スペースでクラスメイト達が問題集にかじりついていた時、瀬呂が思い出したように向かいに座る心操に話しかける。
「心操のそれってさあ、イメチェン?」
それ。
瀬呂のジェスチャーは自分の耳下から襟足にかけてを手でなぞる。心操同じ部分には、紫色の彼の髪の毛があった。明らかに普通の男子生徒よりも長い髪の毛は降ろされていて、心操が俯くたびにさらりと揺れた。
「……変?」
「いや、そういうンじゃなくって。一年の時はいつもバチバチにセットしてたからさあ。趣味変わったんかなって」
心操は少し不服そうに「今でもしっかりセットしてるけど」と言った。オイルとワックスで動きをつけたそれは長髪だが清潔感があり、艶もある。 - 149125/05/03(土) 19:07:20
だが瀬呂は少し気まずそうに言葉を詰まらせていた。その様子に紫の頭が訝しげに揺れると、少し離れたテーブルで切島に教えていた爆豪が口を挟む。
「先生のモノマネしてんじゃねェかって話だろ」
「か、かっちゃ~ん。そんな直接」
「るっせェかっちゃん言うな」
「モノマネ……」
心操があまり理解していなさそうな声で呟くので、爆豪がつまらなそうに頬杖をついた。
「テメー完全にシルエットが相澤先生だろが。狙ってやっててもやってなくても引くわ」
「瀬呂そうなの?」
「ん~~~~~、ま、まあそう言う感じィ。いやファッションは人それぞれだけどなんで先生? って思っちまって……」
気が付くと、共有スペースにいた人々の視線が心操に集まっていた。
心操は自分の髪の毛をつまんでいる。それをひやひやとした様子で瀬呂は見守っていた。
A組に編入してきた当初の心操は髪を逆立てるタイプのセットをしていた。それでも普通の男子よりは長い髪だったが、切島と同程度で特に気になるものではなかった。
- 150125/05/03(土) 19:07:41
それが月日が経つにつれ、次第に降ろした形にセットされるようになり、最近はセミロングの長さを降ろした状態が固定になっていた。
別に今日日男が髪を長くしようがなんだろうが誰も文句を言わないが、この状態の彼が装備を身に付けると完全に我らが担任とほぼ同じシルエットになってしまう。
「なんでそういう髪型してんだろって思ったら気になっちゃってさあ。触れられんのヤだった?」
「いや、別に。……でもそうか、モノマネねえ」
担任と心操は装備品も殆ど一緒だった。黒いスーツに捕縛布、違う装備と言えば心操のペルソナコードくらいだ。だがそれは二人が師弟関係で同じ武器の継承と心操の戦闘スタイルを考えれば特に不思議な事ではない。
だが髪型。
髪型まで似せる必要はない、はずだ。
担任である相澤消太は髪が長い。変な臭いはしないが小汚く、はっきりいって清潔『感』は皆無だ。
それを毎朝ばっちり髪型を決めるお洒落男子である心操が真似をしてるとなると、クラスメイトは心配にもなってしまうのだ。
というか、担任ですら最近は引いている。
- 151125/05/03(土) 19:08:10
「別にモノマネなんかじゃないよ」
「そ、そうなんだ」
じゃあなんだよ。
「これはリスペクトだから」
それもどうなんだ。
クラスメイト達は言葉を飲み込んだ。
「出力結果が一緒じゃねえか」
「いや違うんだって。モノマネだったら俺はボディーソープ一本で全身洗わないといけなくなるだろ」
「待ってそれ相澤先生の個人情報じゃね? 言って良いやつ?」
「ダメとは言われなかったし……」
ボディーソープで全身洗っているのかあの人。だからいつも髪がギシギシなのだろう。知らなくていい情報を聞かされてクラスメイトは少しだけ混乱した。というかそんな情報を知っているということは心操が自発的に効いたのだろう、それもどうなんだ。
「尊敬してるんだ、相澤先生もイレイザーヘッドのことも」
「尊敬して髪型寄せるかあ?」
「俺は形から入るタイプなんだよ」
リスペクト、と言われてもいまいちピンとこなかったのか微妙な顔をする一堂に心操はため息を吐いた。
- 152125/05/03(土) 19:08:36
「イレイザーヘッドそのものになりたいわけじゃないけど、でもあの人に近づきたいっていう思いはあるわけで。それが形から寄せるっていう出力になっただけ。なんか変なことある?」
「変なこと……」
「は、ないが……」
「なんていうか……」
皆歯に物が挟まったように口ごもる。
誰か突っ込め、と言いたげだがあの爆豪ですら話を進めるのは難しいらしく変な沈黙が場に落ちる。それを終わらせたのは、問題集を前にペンを止めていた緑谷の声だった。
「……つまり、心操くんは相澤先生のファンってこと?」
ファン。
緑谷に言われて瀬呂たちは担任の男を思い浮かべる。厳しいが優しく自分たちを見守ってくれるが見た目は浮浪者でいつも寝袋に入りゼリー飲料を飲んでいるあの男を。
そして少しだけ考え「心操に失礼では?」という感情が芽生えた。
「そうだね、合ってる」
「あってんの!?」
- 153125/05/03(土) 19:08:59
「何……別に普通だろ、イレイザーヘッドも相澤先生も格好良いじゃん」
「おま……大丈夫か!? 確かに格好いいけど! でもさ、それってファンになる感じじゃ無くね!? よく考えろって! 先生とツーショチェキ撮ったりサイン入れて貰ったりしたいか!?」
「写真は隠し撮りしようとしたらブレて撮れなかったしサインはお願いしたら「俺サインとかないから」って断られた」
「もう既に……!?」
瀬呂は思わず絶句する。
別に担任が悪いと言っているわけではない。だがなんとなく、ファン的な意味で心操が担任を推していると言われると、なんか、なんか嫌だった。
だが緑谷は一人首を縦に振る。
「わかる……イレイザーヘッドは格好いいよね」
「一年から受け持ちされてるお前らが羨ましい」
「でも心操くんは
- 154125/05/03(土) 19:09:51
すまねえ……オチを見つけられなくて勢いで書き始めて結局終わらせられなかった
ただ教師としては尊敬されてるけど人間としては終わってると思われてる相澤消太とそう言うところ含めて全部尊敬してるファンボーイ心操を書きたかっただけです
あとでまたちょろっと書くかも
- 155二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 19:26:07
なんかオシャレボーイの心操が相澤先生の重めのファンやっててえっ……ってなるクラスメイトの気持ちもめっちゃ分かる
重度のオールマイトファンのデクは理解示してるのもめっちゃ良い - 156二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 20:03:03
新鮮な情報から出されるスレ主の新鮮なss嬉しい
いまいち理解されないファンボーイ心操笑ったけど本人は至極真面目に推し活やってるの微笑ましい
そういう話降るのが瀬呂なのも想像つくわ - 157125/05/03(土) 22:25:58
全然違う話
朝起きて、髪をかき上げる。
指に引っかかる癖毛が鬱陶しい。立ち上がって鏡の前に立つと、浮浪者にしか見えない己がそこにはいた。
「……そろそろ切るか」
自分に言い聞かせるように呟いて、相澤は携帯を操作する。たしかお互い今日はオフのはずのそいつに連絡を入れて、大して整えるわけでもない身支度を開始した。
‡
新任時代緑谷は自宅から通っていたが、家に帰る時間がもったいないと気付き今は寮暮らしをしている。今日もヒーローとしての仕事を的確にこなし、幼馴染と軽い口げんかをしてから帰ってきた。
「あー……髪爆破で縮れてる……」
元々だいぶ癖毛だったが、熱が加わるとアフロのようになってしまう。加減をしつつ加減をしない幼馴染の爆破を思い出して苦笑する。別に放っておいても良いと思ったが、週末の予定を思い出して焦げた部分だけでも切ってしまおうと教員寮への道を急いだ。
すると、教員寮の横に付いている庭から何やら人の声が聞こえてくる。 - 158125/05/03(土) 22:26:25
「……先生、とプレゼント・マイク?」
珍しい組み合わせだ。
いや、組み合わせ自体は珍しくはない。三年間世話になった恩師である相澤と同僚であるプレゼント・マイクは高校時代からの腐れ縁でよく一緒に居るところを見かける。
だがその二人が庭に居るのは珍しい。相澤は鍛錬と用事以外で外に出ないし、マイクもどちらかと言えば室内での作業を好む傾向があった。
「どうしたんだろう」
髪を切ることを忘れ、庭の方へと近寄っていく。
植え込みを抜けた先に広がっていた光景を見て、緑谷は思わず口を抑えた。
「え゙っ」
「おお、緑谷」
「お? 今日の活動終わったのか?」
「は、はい。あの、お二人……」
緑谷は思わず手に持ったアーマーを落としそうになり、それを抱え直した。動揺が表に出すぎてしまったのがわかったのか、相澤が「ああ」と言って首に巻かれたケープをつまんだ。
「髪を切ってる」
- 159125/05/03(土) 22:26:47
「カミヲキッテル」
「こいつ何年かに一回髪切んのよ。一々メンテ寸の面倒だからって」
「マイクは……」
「俺専属の美容師」
「手先が器用だからって理由でここ十年くらいずっと俺が切ってる」
「大体四年に一回だからまだ二回しか切らせてねえだろ」
「今回で三回目ですう」
いつものトサカを降ろし、後ろでお団子にしたマイクは悪態をつきながら相澤の髪を梳く。高級そうな櫛が痛んだ髪を通り過ぎるたびに悲鳴を上げているのが緑谷からも良く見えた。
まだ二回しかやっていない割には随分となれた手つきだなと感心していると、相澤の視線がこちらにうつる。
「……緑谷の髪、それどうした?」
「あ、かっちゃんに」
「また爆豪か。よくやるねお前らも」
学生の時と変わらない口調で呆れられて思わず笑ってしまう。相澤がマイクに目配せをすると「オッケー」と小さく頷いて手招きをされた。
「え」
- 160125/05/03(土) 22:27:11
「こいつ他の奴の髪も切ったりするからそこら辺の美容師より上手いぞ」
「い、良いんですか?」
「オフコ~ス。プレマイ美容院へようこそお客様」
「煩そうな店だな。変な洋楽かかってそう」
「イヤホンで耳塞いでやろうか?」
二人の掛け合いを無視して「じゃあお言葉に甘えて……」と緑谷は椅子を持ってきて隣に座る。近くによると、相澤はケープではなくて穴の開いたゴミ袋を被っていた。同じものを被せられ、顔を出す。
青空がやけにきれいだ。
「いつも切る時は外なんですか?」
「ン~? まあね。最初は俺の家のベランダだったっけ」
「俺がナイフで切り落そうとしたらすごい悲鳴を上げられてなあ。家に連れ込まれた」
「言い方」
相澤の髪を櫛でとかし、いつもよりもつややかになったそれに躊躇なく鋏を入れていく。ジョキジョキと軽快な音を立てて切り落とされた髪がゴミ袋に受け止められ、時には相澤の顔についていた。
痛んだ毛は縮れていて、清潔感はない。水分が足りていないのか毛先が膨れてセミロングだった時よりもよっぽど顔が大きく見える。
- 161125/05/03(土) 22:27:38
それでも何の躊躇もなく切り落としていくものだから少し怖くなって思わず二人に見入ってしまった。
だが、長さを落としてから切り込みを入れ始めると次第に髪が落ち着いてくる。本当に技術があるのだなと緑谷は感心してしまった。暫く見つめているとマイクが「おし」と何か納得したような声を出す。
「じゃあとりあえず相澤洗って来て。ほいこれトリートメント。絶対つけろよ」
「へいへい」
「返事はいっか~い」
「豆知識。プレゼント・マイクは先月婚約していた彼女に振られて意気消沈中である」
「なあなんで今それバラした?!」
「ちなみに今食べたいのは高級な肉らしい」
「おい! お前本当ふざけんなよ!」
謎の豆知識を残して相澤は寮へと入っていく。背中にマイクの罵倒を受けても特に気にした様子はなかった。
「……だ、大丈夫ですか」
「あ~、気にすんな。あとでアイツに高い肉奢らせっから。緑谷もくるか?」
「いえ、やることあるので……」
「おっ、じゃあこっちもすぐやんねえとな。待たせちまってわりィな」
- 162125/05/03(土) 22:28:07
「いえいえ! 美容院行くの面倒だなあって思ってたので有難いです!」
「それ拗らせっとマジ相澤みたいになるから気をつけろよ」
「……肝に銘じます」
恩師のことは嫌いではないが、あの世間体の気にしなさは反面教師にしなければならないと学生時代からクラスの共通事項であった。マイクの脅しに似た言葉に自身を顧みない最近の自分の活動を見直すことを決めた。
マイクが癖毛に櫛を入れる。相澤ほどではないがそれなりに痛んでいる髪は所々引っ掛かった。
「どうする? 少し量減らすか?」
「良いんですか? じゃあ……格好良くお願いします」
「ぶはっ、らしくねえな!」
緑谷は弁明をするように身振り手振りを大きくした。
「あ、ええと! ええと! じ、実は週末に予定が入ってまして」
「何? デート?」
「えっ…………と」
「えマジ?」
マイクが真剣な顔で問いかけてくるので思わず深く頷いた。週末は麗日と初めてのデートだ。彼女もヒーローなので髪が爆破で縮れていることくらいは気にしないだろうが、やはり格好良くありたい。
- 163125/05/03(土) 22:28:32
沈黙していると、マイクが携帯を操作して幾つかの画像を見せて来た。それはヘアカタログのようで、どれもお洒落に見える。
「どういう風になりたい?」
「あ、え、えと」
「ガキの初デートなんだからキメキメで行っていいんだよ! プレゼント・マイクに任せとけ」
「あ、あの、じゃあ、あの、セットが簡単な奴で……」
「任せろ」
マイクが画像を見せて幾つかの説明をしてくるのでそれに頷いたり首を振ったりした。ワックスは以前使おうとして失敗したことや、癖毛がどうにもならないこと、縮毛矯正も少しは興味があるが恥ずかしくてできないことを話すと「オーケーオーケー」と彼は笑った。
「いきなりセット必須の髪型にすっと事故るからブローでどうにかなる感じにすっか!」
「ブロー……」
「たぶん格闘技のこと考えてっと思うけど、ドライヤーでセットすることな」
仕上がりのイメージを携帯で見せられて、勢いよく「お願いします!」と頭を下げた。すぐに鋏が髪に入り始め、軽快な音が聞こえる。
- 164二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 22:32:28
同期のやりとりが小気味いいな
- 165125/05/03(土) 22:32:51
「……あ、あの」
「ん~?」
何か話さなければ。
美容院と言うと何か話さなければいけない気がする。緑谷は幾つか会話の選択肢を考えて、慌てて一つの物を選んだ。
「婚約者に振られたって言うのは……」
「バリカン持ってくるわ」
「待ってください! すみません! ちょっと会話の選択ミスりました!」
思わず平謝りすると反応が面白かったのか「いや冗談」と笑われる。本当に冗談かは判別がつかない。
「いやねえ、婚約者はさあ」
「あ、言ってくれるんですね」
「アイツなんかいきなり相澤と縁切ってほしいって言い始めてよ」
「……?」
「だよな、そうなるよな」
言葉の意味が分からず首をひねると「俺も意味わかんなくてよ~」とマイクが困ったように笑っている。鏡はないが、眉を八の字にした独特な顔が浮かんだ。
- 166125/05/03(土) 22:37:40
「えっと、どういう……?」
「いやなんだろうな。マジで意味わかんなくって。付き合って三年経つし俺も歳だしそろそろプロポーズすっかなあ~、どのタイミングでしようかな~って考えてたらいきなり向こうから「結婚しましょう」って言われてよ」
「おお……!」
「その直後に「相澤さんと縁を切ってくれるなら」って続いて」
「おお……?」
本当に意味が分からない。首を傾げようとするが「事故りたくなかったら顔は前向いてろ」と言われて背筋を正す。
「恋人の方と相澤先生って仲悪いんですか?」
「あ~、なんか彼女の方が相澤のこと嫌いっぽいってのは薄々」
「ええ……」
「ただ理由分かんなくってな。ちゃんと言えって言ってんのに。わかんないなら良いってそればっか」
マイクはどこか寂しそうに言う。自分が分かってやれなかったことがそんなに悔しいのか、それとも友人と縁を切れと言われたことが嫌だったのか。緑谷はまだ恋愛をしたばかりだから詳しいことは分からない。
- 167二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 22:43:10
彼女が言いたいことは分かるしマイクが理解できないのもめちゃわかる
- 168125/05/03(土) 22:44:16
「先生は何か嫌われるようなことを?」
「いや? あーでもアイツ俺の家の合鍵持ってっから仕事終わりとか時々来るんだけど、そんくらいかなあ」
「そうですか……でも同性の友人が家に来るのってそんな珍しくないですよね。特にヒーロー稼業ですし」
そこまで言って、緑谷は「あれ?」疑問に行きつく。
「お二人って寮暮らしじゃ……」
「ん? ああ、そうだけど任務で外出ることあるだろ? そん時アイツマジなんもない家に帰ろうとすっから俺の家の鍵渡してんの。前に彼女がウチに遊びに来た時ばったり会っちまったことあったみたいで、それが嫌だったんかなあ」
彼氏の家に行ったら彼氏の友人が家に居た。まあ確かに嫌がるかもしれない。緑谷はその当たりに非常に疎い自覚があった。色々と考えを巡らせていると、緑谷ははっとする。
「そういえば、麗日さんと付き合いだしたときかっちゃんから「家に行っても良いって事前にわかってる日以外はいかねえから」ってなんか意味わかんないメッセージ貰ったことあります」
「え、マジ!?」
- 169二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 22:46:55
お前らほんまそういうとこやぞすぎる
- 170二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 22:48:46
>意味わかんないメッセージ
本当にこれ意味わかってなかったんやろな
- 171125/05/03(土) 22:52:20
気遣いは出来るが傍若無人という矛盾要素を持った爆豪からそう言われた時は「別に気にしなくて良いよ! 僕の家にある資料が必要になる時もあるだろうし」と答えて既読スルーされたのだが、もしやそういうことだろうか。
「あ、あと今まで借りパクされてたシャツとか小物も返ってきました……「これ俺の家にあったらアイツ嫌だろ」って言ってて「何が?」って答えてぶん殴られました」
「Oh……」
「ちなみにマイクは先生にそういう物を貸したりとか……」
「Tシャツ類は俺の私物ほぼ借りパクして返してねえな……俺も気にしないけど……」
緑谷と爆豪は高校を卒業した後は暫く実家から仕事場に行っていた。その際、情報共有等をするため夜中までお互いの家に居たり時には泊まることもしばしばあり、体格が似ているという理由で勝手に寝間着に相手の私服を借りることもあった。爆豪は返さなかったが。
それが麗日と付き合ってから丸まる全部返ってきたのだ。意味が分からなくて何度も聞いたがやはり平手が返ってきた。
- 172125/05/03(土) 22:57:50
「……まさか……これか……?」
「いや、でも同性ですよ」
「そう、だよな。男友達に服貸したり小物貸したりすんだろ」
「あ」
「なんだまだあんのか」
器用にも髪を切る手を止めずに、マイクは少々怯えた声を出した。緑谷は今までの記憶を手繰り寄せると、幾つかの奇妙な爆豪の言動を思い出す。
「家に起きっぱにしていた服とかも全部回収していきました」
「え!?」
家に置いていた着替えや歯ブラシ、洗顔などを全て回収していったのだ。そして、同時に爆豪の家に置いてある緑谷の私物も返品された。ご丁寧に着払いで。
あの時は普通にまたいじめか? と思ったが、爆豪が「いつか分かる時が来る」と遠い目をして言われた。おまけのように爆破はされた。
「先生は……マイクの家に私物とか……」
「あいつ私物がないから」
「ああそっか」
「でも捕縛布のスペアとかヒーロースーツの替えとかは全部家にあるな……」
- 173125/05/03(土) 23:02:07
それは私物というのではないか。
緑谷もマイクも混乱していた。同性の私物が家にあるからと言ってなんだというのだ、という感情が根底にあるわけだが、どうやらそれが恋人にはものすごく嫌に映るのではないだろうか。
鋏が髪を切る音だけが響いて、暫く。マイクは「いや、まあ」歯切れ悪く続けた。
「聞かなかったことにするわ」
「あ、直さないんですね」
「いやもう別れちまったし。もし今の生活崩すなら俺相澤用に家借りねえといけないじゃん? そこまですんのはなあ」
「え」
「え?」
そこは相澤を家に入れないようにするのが良いのではないだろうか。どうして新しく家を借りる方向に行くのか、緑谷は喉から出かかった声を押し戻して「それもそうですね」ありきたりな言葉を出す。
すると最後の鋏が入れられて手鏡を渡された。あのやり取りの中ここまでちゃんと髪を切って貰っているとは思わず、出来上がりに驚きの声を上げる。
- 174二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 23:07:42
致命的な認識のズレ
- 175二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 23:08:12
のマイク草
- 176125/05/03(土) 23:13:01
「わあ!」
「あとでブローの仕方教えっから風呂入る時教えろよ」
「有難うございます!」
鏡に映った自分は別人……とまではいかないが、すっきりとしていて大人びて見える。これならばデート用にと買った新しい服にも合うだろう。
ケープを外して切った髪を別のごみ袋に入れていると、髪を濡らした相澤が戻ってきた。タオルドライをしているようだが、使っているタオルはどうみても彼の私物ではない。マイクがこのあいだコラボをした高級品だった。
先ほどの会話を受けて、マイクも思うところがあるだろうか。恐る恐る彼を横目で見る。
「おい相澤~。タオルドライはそんなガシガシすんなって言ってんダロ!?」
「でもこっちのが早く乾く」
「あ~も~髪切って貰ってんのにうるせえナ~。今からブローして形整えっから座れ座れ」
あまりにも通常運転のマイクに拍子抜けをしてしまう。
会話が頭から抜けているのか、それとも本当に気にしてないのか。
「? どうした緑谷」
「え、ああ、いいえ。マイク、有難うございました」
「気にすんなって! また何かあったらプレマイ美容院をご利用下さ~い」
- 177二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 23:13:03
ここまで分かった上で相澤のために自分が行動するって選択肢になるのはもう筋金入りすぎて無理だな
- 178125/05/03(土) 23:13:40
なんだか見てはいけない物を見てしまった感覚がして緑谷は足早にそこから離れる。「何話してたんだ?」「緑谷と麗日の初デート♡について」「やっとくっついたんかあいつ等」なんだか聞こえてくる会話が凄い気になるが気にしないことにした。
ちらりと振り返ると、視線も合わないのに楽しそうに会話をする二人が見えて、緑谷は何となく、なんとなくだがマイクが彼女に振られた理由が分かった気がした。
携帯を操作して、爆豪に「色々ありがとう」と送り先ほどまでした会話を頭から捨て去る。
どうせ後でブローの仕方を教えて貰わなければいけないのだから、それまでに記憶を消さなければ。
「今日の焼き肉は消ちゃんの奢りな~」
「まあ失恋の慰めに少しくらいは良い肉食えよ」
「マジ!? 遠慮なく食っちゃお」
聞こえてくる楽し気な会話は本当に仲のいい友人そのものだったが、緑谷に振り返る勇気はなかった。
- 179125/05/03(土) 23:16:49
以上です!
マイクと相澤はね どの世界線でも「ただくっついてないだけ」だと思ってるんですよ私は
どっちかが意識したらその瞬間にくっつくが意識しない限りはずっと友人でい続ける関係みたいな
マイクも相澤も自分にとって相手がどれだけ唯一の存在かわかっててこの手を離したくないと思ってる
離さずにいることができるなら付き合うという形をとっても良いなと思っているがあまりお互いそういう発想には至らない
気付かなければ最期までお互いの心の柱である友人でいられる
そういう二人が好きです
マイクに髪を切ってほしかっただけの話
- 180二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 23:22:10
めっちゃ好きなタイプの同期だった
彼女に言われて緑谷と解析して原因に思い至っても尚相澤のために行動するが一番に出てくるのは筋金入りすぎて太刀打ちできない
この2人最後までお互いがいるなら結婚とかできなくても楽しく過ごしてそう - 181二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 23:29:32
この同期めっちゃ好き…
前に言ってた女体化先生の同期でこの仲の良さだとマジで二人とも一生恋人出来なさそう - 182125/05/03(土) 23:49:54
そういえばドル澤なんだけどヴィジ読み直したらクロウラーが最終回後ザ・スカイクロウラーになってたなに今更気づいたから直してきたぜ
名前変わってたの普通に今まで気づかんかった
ごめんなコーイチ ナルハタの破壊神 - 183二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 07:44:40
これ言われて読んだら本当にそうだった
自分も全然気づかなかった
くっついてないだけの同期本当好き
彼女からしたらそりゃ勘付くし嫉妬もする
お互いに恋人からしたらタチ悪い危険な存在になってる2人が大好き
- 184二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 13:14:32
山田と先生の会話のテンポめっちゃ好き
恋人からするとめっちゃ邪魔って思う感じの友達だ… - 185125/05/04(日) 15:58:00
春の天皇賞負けました
今日は夜に海外遠征する心操くんと色々教えてあげる相澤先生の話を書くつもりだよ
それかクラストについてインタビューに答える先生 - 186二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 16:49:28
- 187二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 17:17:00
このスレ主また競馬負けてる…
- 188二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 20:16:19
ss楽しみに待ってる!
スレ主……次は競馬勝てるといいな…… - 189二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 22:56:21
俺も天皇賞負けたよスレ主
どっちのssも読みたい……!
この無念を先生にぶつけてスッキリしたい - 190125/05/04(日) 23:20:39
ヒーローネーム『ナイトハイド』
メディア露出をほぼしていないためチャートは常に圏外だが、唯一無二性の強い“個性”とその実力を評価され国内外の犯罪対策機関から厚い信頼を寄せられている。
闇夜にたなびく灰色の捕縛布と紫色の髪は彼のトレードマークであり、強い敵であるほど彼の存在を恐れていることは有名な話だ。
そんな彼が、机に突っ伏して唸っている。
「こればかりはどうにもできませんものね……」
「悪いな八百万……オフの日にこんなこと手伝ってもらっちまって……」
「いいえ、頼ってくださって嬉しかったですわ。私もお力に慣れなくて申し訳ないのですけれど……」
ナイトハイド……心操は机に伏せていた顔を上げてため息を吐く。机に置いたスマホからは聞きなれない音声が流れているので画面を操作して止めた。
「アラビア語は流石に守備範囲でして……」
「いや守備範囲な方がおかしいよな。ごめん、話を聞いてくれただけでも助かったよ」
急な要請にもかかわらず家にまであげてくれた八百万に感謝をするが、彼女の表情は浮かない。学生時代から人の役に立てない時いつも顔が曇ってしまう女性だった。 - 191125/05/04(日) 23:28:31
もう一度気にしないでほしいという言葉を重ねようとしたとき、八百万の部屋を小さくノックする音が響く。
「はい」
「百さん? お茶のお替りをお持ちしましたわ」
「お母さま有難うございます。いただいて宜しいですか?」
「い、いや俺は……」
これ以上ここに居ても迷惑をかけるだけだと焦るが、八百万は嫋やかな笑みを浮かべて席を立とうとする心操を手で制する。
「焦っていても始まりませんわ。一度落ち着かれてみては?」
「う……」
「それに基本的なアクセントの仕方や発音についてはわたくしもわかるところがあるかもしれませんし」
「まあ、一人でやるよりは効率的だけど……」
「あらあらお勉強?」
八百万の母がこちらの手元を覗き込む。
頷いて「アラビア語の学習を少し」と言うと、彼女は少し驚いた顔をした。
「お母さま?」
「いえ……それでしたら、百さんではなくお二人の担任の先生にお願いする方が良いんじゃなくて?」
- 192125/05/04(日) 23:34:49
「相澤先生?」
出てくると思っていなかった名前に驚く。
八百万の母は頷いて続けた。
「わたくし、百さんが入学した時あまりにも無名のヒーローの方だったので不安で経歴を調べさせていただいたんですの」
「お、お母さま……」
「だって心配でしたのよ。授業参観でご本人を拝見しましたけれどヒーローと言うには少々無理があるお方でしたもの」
「ふっ、ま、まあそうですよね」
「心操さんまで!」
あんまりな良いように少し心操は笑ってしまった。だが確かに、心操の師匠でもあり二人の担任でもある相澤消太は、関わってみればまともであることがわかるが傍から見ると小汚いおっさんにしか見えない。娘を預けるご両親から見れば少々不安なところもあるだろう。
「それで」心操は話しを戻す。
「調べた経歴に何かあったんですか?」
「ええ、ええ。ございましたのよ。あの先生、敵を追うためならば国外にも沢山通われていらっしゃったみたいで……」
- 193125/05/04(日) 23:40:31
彼女の齎す情報に心操たちは目を大きく見開き、顔を見合わせる。聞いたことのない話は二人を驚かせるには十分だった。
‡
いきなり弟子から「今日そっち泊まって良いですか」と連絡が来たと思ったら、その五分後に本人が来た。
「あのな、事前連絡を寄越せって言ってんだろ」
「したじゃないですか」
「五分前の連絡は事前とは言わん」
明日はオフだしやることも既に終わらせている。別に断る理由がないから追い返しもしなかった。学校の入り口で特別入校証を貰った心操を教員寮へと案内すると彼は迷う様子なく指定の場所に靴を仕舞った。
そのまま相澤の部屋へと案内される途中出くわした緑谷と挨拶をすると「あ、来たんだ」と声を掛けられていた。部屋に入るとすぐにコートを脱いで殺風景な部屋に設置されている水道へと直進し、二人分のコーヒーを淹れる。まさしく勝手知ったる他人の家だ。
「で、今日は何の用?」
- 194125/05/04(日) 23:46:10
心操が淹れたコーヒーをベッドに腰かけて飲みつつ尋ねる。どうせこの男が来るということは敵絡みだろうが、今や引く手あまたの彼が最早戦闘能力を持たない相澤に聞くことがあるとは思えない。
床に座った心操は至極真面目な表情をしていた。
「あの、お願いがありまして」
「簡潔にな」
「アラビア語教えてもらえませんか」
アラビア語。
相澤は目を丸くした。どこからその情報を聞いたのだと問えば「八百万のお母さんから」と言われて余計に混乱する。そういえば彼らの代を預かっている時やけに身辺を嗅ぎまわる輩が居たと思ったが、それだろうか。
心操はしっかりとこちらを見つめる。
「俺、有難いことに国外からも要請を受けることがあるんですけど」
「お前の“個性”は替えが利かねえからな」
「はい。ただ今度の任務地がY国なんですが、公用語がアラビア語っぽくて。……俺の“個性”は相手に喋らせないといけないから、俺が喋れないと話にならないんです」
「なるほど」
- 195125/05/04(日) 23:51:28
心操の“個性”は問いかけに答えさせる必要がある。任務内容を詳しく聞くことはできないが、場所がY国だと言うならば恐らくは現地の組織が標的だろう。
「……別に構わないが、俺も完璧にわかるわけじゃないぞ」
「それでも発音とかそこらへん教えてくれるだけで良いんです……あと三日しか無くて」
「売れっ子はスケジュールもタイトだな」
必要最低限喋れるようにならないといけないという心操の焦りもわからなくはない。相澤の“個性”も彼と同じように替えの利かないレアなもので、同じような理由で海外に呼びつけられることはままあった。
少しだけ考えて相澤は息をつく。別に断る理由はなかった。
「緑谷使って在籍確認までしてわざわざ来た弟子追い返すほど俺は酷くないよ」
「先生……!」
「ただスパルタではあるから気をつけろよ」
「望むところです!」
元気よく返事をされると、あの頃を思い出してしまう。もうとっくに彼の方がヒーローとして大成しているのに、まだ自分にできることがあると思うと少しだけ嬉しくなるのだ。
- 196125/05/04(日) 23:52:28
- 197125/05/04(日) 23:57:09
- 198二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 23:58:46
うめ
- 199二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 23:59:11
埋め
- 200二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 23:59:27
スレ主が今後競馬勝てますように