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色とりどりのブロックが画面上から降ってくる。
横十列、縦二十列の空間にブロックを敷き詰め、一列揃うごとに消去していくゲームは昔から現在まで広い年代に愛されている。所謂落ち系パズルゲームという物は基本オンラインであれオフラインであれ対戦形式がメインで、山田は普段オンラインでデスマッチをしているのだが、今日は珍しく相手が横に居た。
画面には二つのゲーム面が表示されており、右側はマイクが、左側はその相手が弄っていた。
画面から目を離さず、山田は送られてきたおじゃまブロックに舌打ちをする。
「だぁれが「初心者だから手加減してくれ」ですか相澤く~ん? 奇麗に積みやがって」
「地形を意識して積めばどれだけ崩されても絶対に負けることはないって言ってたからな」
「誰がよ」
「動画配信 者の人」
「せめてそこ俺って言えよ」
「お前からこのゲームで教わったことはない」
「たし蟹」
「なあ今蟹っつったか?」
「気のせいじゃね」 - 7125/04/20(日) 21:53:49
言葉で動揺を誘おうとしたが相澤のプレイは一切ブレない。なんなら山田よりも早いペースでブロックを積み上げていき、限界ギリギリのラインでI字ブロックを隙間に落とし込んで一気に消去していく。大昔からの古式ゆかしい戦法だ。
このゲームでは消したブロックを相手に送ることができる。相澤から送られてきたおじゃまブロックは奇麗に積みあがっていた。
「お前やっぱ対戦は経験ねえんだなあ」
「あ゙?」
「怖いこわ~い」
だが奇麗に積みあがったそれは先ほどの相澤と同じようにI字ブロックを隙間に落とすだけで簡単に消せる。奇麗になっていく山田の画面を見て相澤が舌打ちをした。愉快だった。
「こういうのはよぉ、最初一、二段だけ送ってから別の消去ライン作ってまとめて送るのが良いんだって」
「それ対戦中に教えても良いのかよ」
「ハンデ」
「そうやって舐めプしてっからウチの生徒にやられるんじゃないですかね」
「いきなりの敬語やめて」
- 8125/04/20(日) 21:54:14
相澤がまた奇麗に消し、こちらもそれを相殺する。
お互いのブロックの置きミスを待つような展開になるとあとは集中力の勝負だった。次第に相澤のコントローラーを持つ手が荒くなっていく。
「……てかさあ、本当にびっくりしたんだけど」
「何が」
「お前からゲームやろって誘われたの」
その時、相澤の肩が初めて揺れた。
視線を動かすことは叶わなかったが、指先の反応に少しだけ遅れが出ていた。
「悪いか」
「悪くねえよ、嬉しかったし。新ハードも勢い余って買ったしな。意外だなって思っただけ」
「エリちゃん用に買っといたゲーム機が不要になっちまったから活用しねえと勿体ないと思っただけだ」
半分嘘だ。
山田はコントローラーを動かしつつ彼の小さな嘘に気付く。確かに、相澤が持って来たゲーム機は元々この雄英で預かっていたエリに贈るために買ったものが、居候先の家で既に用意されていた為に手元に残ってしまっただけだ。
だが、この相澤という男のことを良く知っている山田からすれば、たったそれだけの理由で彼がゲームをやるなど到底想像もつかなかった。
- 9125/04/20(日) 21:54:40
相澤は無駄を嫌う。
その言い方にも少しだけ語弊がある。相澤が嫌うのは無駄ではなく無駄な時間を一秒でも過ごす自分だ。
娯楽に耽る自分が嫌いで、何かを楽しんでいる自分が憎い。どこか自罰的なその姿を何度危ういと思ったかわからない。
だから、あの相澤が。
あの相澤が、深夜山田に電話をして「今からゲームやらねえ?」と言って来た時、心の底から驚いたものだ。
「ってか相澤なんでこのゲーム?」
「お前好きだろ」
「え……」
「そう言う意味じゃない」
わざと茶化してやれば不機嫌そうに返された。
本当はちょっとだけ本気で驚いたのは内緒だ。
「……昔、お前が好きって言ってたの思い出してな。俺はゲームなんてわからないし、何が好きか検討するラインにもいねえから。こういうシンプルなやつならお前も俺も楽しめると思ったんだよ」
「……」
「なんだ、なんか言え」
「あ、あ~、ソウネ、いやあ消ちゃんホント成長ってすごいわねって思って」
「なんか言えって言ったが意味わからねえこと言えとは言ってねえんだよ」
- 10125/04/20(日) 21:55:12
相澤は不機嫌そうに舌打ちをした。
山田は彼の顔がこちらを見ないことだけを祈っていた。顔が熱いのだ、それも良いわけのしようもできないくらいには。
彼は気づいているだろうか。
あの何にも頓着しない、本当に必要最低限のことしかしない彼が、「自分も、相手も楽しめるゲーム」を基準に選んでいることが、どれほど驚くことなのかを。
きっと指摘したら恥ずかしがって否定してくるだろうから言わないが。
「……香山さんに見せてえなあ」
「……あの人絶対「もっと面白いゲームやりましょ!」って言ってくるぞ」
「言いそう~」
ほんの少しだけ泣きそうになる。
鼻の奥がツンとして、鼻先に変な感覚が集まる。それをどうにか気合で押し込めていると、縦に置くはずだったS字ブロックが一マスずれた場所に落ちていた。
「あ」
「はっ、馬鹿が」
いつになく人を小ばかにした声音で吐き捨てて、相澤がここぞとばかりにおじゃまブロックを送り込んでくる。立て直そうとするが、あっという間に飲み込まれて山田の対戦画面には負けの文字がでかでかと表示された。
- 11125/04/20(日) 21:55:41
「あー……ちょっと油断したら」
「このゲーム結構集中力使うな」
「まあまあ疲れるんだよな」
山田は画面の「再戦」ボタンを見つめる。
押すべきか、やめるべきか。
もう時刻は深夜零時を回っていて、だいぶ眠気も降りている。ただでさえ先ほどの対戦で脳疲労もたまっていた。早く寝たほうが良い。
そう、思ってはいるのだが。
口が開かない。「もう遅いから寝ようぜ」という簡単な言葉を口が言いたがらない。何かつっかえ棒があるような、そんな奇妙な感覚だ。
「あ」
迷っていると、画面が勝手に再戦状態に切り替わった。
何か変なボタンを押してしまったかと焦っていると、相澤が「おい」と声をかけてくる。
「何ぼうっとしてんだ。もう始まるぞ」
「え」
「えってなんだ」
山田は再戦ボタンを押していない。
では誰が。そんなのは今隣に居る友人しかいなかった。心底二回戦目があるのが当たり前だと思っている顔に、山田は喉元まで出かかった「良いの?」という言葉を飲み込んだ。
「べっつに~? 次はボッコボコにしてやっからなあ、泣きべそかくなよ相澤クン」
「一々やかましいんだよお前は。初心者に二連敗して台パンすんなよ」
画面に「ready?」の文字が表示された。
- 12125/04/20(日) 21:58:08
ここまで!
相澤先生と山田で大戦後のあれこれ
相澤先生は今まで山田に心配かけちゃった自覚があるから少しでもそれを払しょくしたいと思ってたらいいなって
で山田も相澤のそういう不器用な愛情みたいなのをわかって言葉にせずに受け止めていてほしいなって
同期はお互いがお互いを支え合っててほしいんですよ
寝るぜ
- 13125/04/20(日) 22:04:38
暫くは短くて取り留めない話を書いてくつもりだよ~
原作キャラとのCP系は思想が出てしまうんで極力避けてるんだけどふとした時に飛び出るかもしれん
相澤先生に無駄な事をいっぱいさせたいぜ
それはそれとしてすけべも書きたい
体二つになんねえかなあ~ - 14二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 22:05:10
たて乙!これからもよろしくスレ主!
先生が大戦後ゆったりとした友達との時間を過ごしててなんか嬉しくなった
ヒーローが暇な社会ってこんな感じなんだろうなって本当ほっこりした
末永く仲良しでいてくれ同期 - 15二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 22:14:04
たて乙〜
スレ主の書くほのぼのSSやっぱり好きだわ
二人の距離感が絶妙でめちゃくちゃに可愛い
相澤先生のほうが夜更かし勧めちゃうの良いよね - 16二次元好きの匿名さん25/04/20(日) 22:47:17
スレ主たて乙〜
この先生が山田にだけ見せる気安い距離感大好き
言葉にしなくても大体のことは伝わるけどやっぱ新鮮だし嬉しい山田もすごい微笑ましい - 17二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 07:34:36
とりとめもない短い話も大好き
スレ主の相澤先生、誰との絡みでもそれぞれ味があって好きだな - 18二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 07:58:55
先生が普通に誰かと友達やってるの見ると何故かすごい安心するし嬉しい
野良猫が家猫になってくれた時みたいな感動ある - 19二次元好きの匿名さん25/04/21(月) 12:18:04
山田と先生の距離感大好きだから嬉しい…
大戦後は二人でちょっとだけ無駄な時間とか過ごして欲しいな