こんなオペラオーが見たい

  • 1二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 21:56:08

    皐月賞から全く勝てなくて焦燥感に目を覆われ何も見えなく成って取り敢えず同期先輩後輩全てを「敵」として見なして一方的な虐殺めいた走りをするオペラオーが見たい。

  • 2二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 21:57:28

    史実要素ありだけど、唯一信頼できるトレーナーも取り上げられそうになっていよいよ追いつけられるのはあり?

  • 3二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 21:57:38

    多分一緒にレースしてるウマ娘からはそんな感じなんやろうなってシナリオ中のレースで完勝してるのにもっと強い勝ち方を…って高み目指してたし
    ただやっぱ他の子から見た濃い描写欲しいよね

  • 4122/03/27(日) 22:00:28

    そして有馬記念の包囲網を抜けてゴールしてようやく目を覚まして「覇王」としてしてしまった事態の大きさを知ってその場で周りに声をかけようとするけどトプロにさえ悲鳴をあげられてドトウだけしか会話出来なく成るオペラオー尊い。

  • 5二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 22:03:52

    ぶっちゃけ史実がそんな感じなんだよな

  • 6122/03/27(日) 22:05:05

    という訳で誰かその有馬記念か目を覆われているオペラオーのイラストかSSください。

  • 7二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 22:06:42

    焦燥感とかはともかく、アヤベさんの育成ストーリー見る限りウマ娘ってのは基本的に運命からは逃れられないのに、オペラオーだけは何故か逆らい続けてる
    だから「来るべきはずだった未来」としての史実ルートは見たい
    みんなの為なら勝ち負けすら笑って流せるオペラオーが勝ちだけを目指す姿を見たい

  • 8二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 22:07:03

    世間がヒール扱いするのでお望み通り勝った後にヒールのような笑みを浮かべるオペラオーを想像した

  • 9122/03/27(日) 22:09:59

    >>8

    そして有馬記念が終わった瞬間に元のテイエムオペラオーに戻るんだ



    そして全てフラッシュバックしてトプロに話かけるけど逃げられて事態の深刻さを知るんだ

  • 10二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 22:11:42

    そして引退後、そこにはオペラオーがいなくなりウキウキで走るトプロの姿が

  • 11二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 22:12:39

    最後の有馬を終えて人知れず震えて泣くんだね
    アヤベさんに見つかってほしいね

  • 12122/03/27(日) 22:12:42

    >>10

    ジャングルポケット(何だこいつ何で一人笑ってんだ...こわ...)

  • 13122/03/27(日) 22:13:20

    >>11

    でもそこにはドトウとキングが居るんだよね...

  • 14二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 22:22:44

    >>5

    ただ彼だけが


    勝ち続ける。絶対に負けない。

    それがどれほど困難なことか

    ただ彼だけが知る。


    重圧に耐え 剣戟を潜り抜け 包囲網を打ち砕いた

    その先にある未踏の地を


    ただ彼だけが知る。


    JRAがこういうくらいだしな

  • 15《世紀末覇王、開演》22/03/27(日) 22:36:30

    『我儘を通したいならば、それに見合う実力を証明しなさい』

     トレセン職員のあの瞳を、底冷えするような無慈悲な色を、テイエムオペラオーが忘れることは決してないだろう。
     理不尽なことを言っているのは自分の側である自覚はあった。だが、それを受け止められるかは別問題だ。──それでも、曲げられない意地がある。曲げたくない想いがある。
     ならば。

    (勝たなければ)

     覇道を示せ。
     誰も真似できないような強烈な爪痕を残せ。

    (勝てなければ)

     全てを踏み台にしろ。
     誰もがその姿に言葉を失うように。

    (ボクは)

     瞳に映る全てが敵だ。
     強く、速く、悍ましい。
     誰も並び立てない『覇王』に成れ。

    (君のためなら、なんだってできるんだよ)

     運命が、テイエムオペラオーに噛み合った瞬間だった。

  • 16書いた人22/03/27(日) 22:36:49

    後は任せたよ

  • 17かわいそうなトプロはかわいい22/03/27(日) 23:33:33

    「やめて、ください…触らないで、いや、こっちに来ないで…っ」

    あのね、オペラオーちゃん

    私、許されてみたかったんです

    あなたの強さから。
    ライバルとしての責任から。
    私の心をぐしゃぐしゃに押し潰してしまいそうなまでの、この恐怖から。

    全部全部放り投げれば。
    向き合うのをやめれば。
    きっと苦しみは消えるって、思ってたんです。

    「……すまない」
    苦しそうに微笑んだあなたを見て、ただ、私は何も言わずに逃げることしか出来ませんでした。

    これでよかったんだって
    これでもう楽になれるんだって
    みっともなく言い聞かせて、納得しようとしました
    でも、ダメみたいで

    ___今は、ただ、ごめんなさいって

    私には、後悔する権利もないかもしれません

    でも、叶うことなら、もう一度
    今度は逃げずに、あなたに向き合って、もう一度勝負をしたいって

    今更になって、そう思うのです

  • 18二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 23:46:49

    >>1

    12月24日

    世の中が明日の聖誕祭に前日から沸き、トゥインクルシリーズのファンにとっては一年の集大成たるグランプリに沸く日。


    グランプリの花である出走者たちの雰囲気はけして祝福にあふれた華やかなものではなかった。

    まず感じるのは、そのほとんどから放たれる敵意…今から行われるのはレースーーエトワールの座を己が力で奪い取らなければならない戦いであるのでそれ自体はおかしなことではない。

    ただその質が異常なのだ。

    グランプリ有マ記念とは出走できるだけで名誉といわれる格式あるレースで、そこに集まるのは多くの重賞で名を挙げてきた優シュンたち。彼らは強い、故に自分が叩き潰す相手に相応しいという、ある種の敬意もこもった敵意が常に渦巻く。例年であれば。

    だが今この場にある敵意はじんわりと侵食してくるような、背中に汗が滲み出てしまいそうな、重く痛い泥のようなものだ。そして渦巻いてはいない。流れは一方通行に、たった一人に向けられている。

    そして次に感じるのが……その敵意の根源とも言うべき、恐怖だ。流れの先にあるものを明確に彼らは恐れている。ここに勇退したかつての優シュンたちがいれば間違いなくこう言い放つだろう。「それはすでに相手の勝ちを認めているようなものだ」と。恐怖とは、己よりも上である(あるいは上に行くかもしれない)相手にしか抱かない。

    その異常な空間でひと際異常なのが、その重苦しい感情を一身に浴びているのに凪いた表情で刻を待つ、小柄なウマ娘だった。重圧も、焦燥も、何も感じていない、そんな表情で、少しだけ口の端を上げたままターフを見つめている。

    まるで彼らの存在を認知していないようなその立ち振る舞いに、澱んだ敵意の重苦しさが増す。我々の存在など平然と踏みしめられる芝と同等なのか。気に留める価値すらないか。敵意の中に新たに滲みだした憎悪という感情が、ぐちゃぐちゃに混ぜられた絵の具のごとく空間を侵食する。

    だがそれを誰も口にできない。もし彼女のその言葉を投げつけたら、そして彼女から肯定の言葉が返ってきたら、二度とターフには立てなくなるだろう。

  • 19二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 23:47:12

    >>18

    それほどまでに今年の彼女の戦績は圧倒的なのだ。現状7戦7勝。すべて重賞、そのうち4つはGⅠである。

    ここまでの結果だけでも異常なのに、もしこの暮れのグランプに勝てばーーおそらくトゥインクルシリーズが終わるその日まで語り継がれる、偉大なウマ娘となるだろう。

    だがそれは、ヒーローとして祝福されるものではけしてなかった。観衆は舞台に「起承転結」を求める。彼女が出れば彼女が勝つ、なんて最初から結がわかっているものだ。ならばせめて起承転が華やかなものであればよいが、今の彼女は元来自身の役と決めていたその演技をかなぐり捨てている。

    当たり前に勝つ。派手さはない。大番狂わせなぞ起こさせない。圧倒的強者による、当然の勝利という蹂躙。

    彼女が相手に対して不満を述べたことなど一度もないが、かといって相手を気にした様子もない。誰に勝つかではなく、勝つこと自体が目的となってしまっている。

    普通なら相手を顧みないレースなどどこかで揚げ脚をとられるものだが、一度も負けずに彼女はここまで来た。

    その安定した強さは、担当トレーナーとして誇ってよいものなのだろう。しかし。


    今の彼女は、彼女の目指していた覇王なのだろうか。


    そうではない、と声を上げる資格は今の自分にはない。彼女を今の彼女たらしめたのは、他でもなく不甲斐ない自分のせいであると自覚しているがゆえに。

    そう、今年の初めに言われたあの言葉から。彼女の目から『観客』が消えたあの日から。

    自国にとっての英雄は、他国にとっては悪魔的な破壊者とみなされる。

    破壊者の彼女を止めることは、彼女を英雄とみてしまう自分には無理なのだ。

    ならばそれは、その資格があるのは…

  • 20二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 23:47:32

    このレスは削除されています

  • 21二次元好きの匿名さん22/03/27(日) 23:51:15

    >>19

    本バ場入場のメロディーが流れ始める。彼女が振り返り、自分を見据える。

    やはり相手は映っていない。その目の中にいるのは、なんとも情けない表情をした自分だけだ。


    「では勝ってくるよ。安心して見届けたまえ」


    そう穏やかに彼女は言った。うなずくしかできない己はひどく無力だった。

    そして彼女は十数の敵意を背に浴びながら、ターフに向かって消えていく。


    ふと、一人のウマ娘と目が合った。気弱な表情の彼女は、しかし目には自分にない強さを宿らせている。

    言葉なく、ただ一度、そのウマ娘は大きく頷いた。しかと己を見つめながら。

    大丈夫だと。

    きっと彼女の凍った心臓を貫くことができる勇者が現れるのだと。

    そう確信させる、瞳で。




    自国にとっての英雄は、他国にとっては悪魔的な破壊者とみなされる。

    その英雄が戦い続けるのであれば。

    その孤高の存在がただ一つ望むのが、こんな己の存在であるならば。

    赦される限り、傍にいよう。

    斃れた王の横で、その鬨を迎えるまで。

  • 22二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 00:03:08

    >>18

    >>19

    >>21


    続編はよ

  • 23二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 01:32:29

    包囲のあった有マが終わったあと、憑き物が落ちたようになるんだよね
    そしてそれまでの振る舞いを後悔するようになるといいな…

  • 24二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 03:11:19

    >>23

    敗者はすでにターフを去った。

    たった独り残った勝者である彼女に、客席からは惜しみない賞賛が送られている。

    そこから背を向け空を見上げている彼女の表情は、後ろにいる自分からは見えなかった。

    声をかけてやりたかった。勝利の祝福よりも、まずは労いを。

    それほど過酷なレースだった。集中してマークされた彼女の周りには『包囲網』と呼んで差し支えないほどウマ娘が密集した。その様は、彼女のレースをつまらないと揶揄していた観衆からも怒号と悲鳴が飛び交うほどだった。

    それでも彼女は勝った。

    残り310mという絶体絶命の中、僅かな突破口を抜け出して。

    この声援は勝った彼女へというよりも、あの包囲網から抜け出した彼女への賞賛のように思える。

    彼女は観衆の求める『起承転結』を示して魅せた。

    そんな彼女に、身体も、おそらくは心も疲弊している彼女に。

    自分はなんと声をかければいいのだろうか。


    そんな沈黙を破ったのは彼女からだった。


    「『雷帝』と呼ばれた男を知っているかい?」


    いっそ朗らかとも思える声だった。まるでオペラを歌うような。

    自分の返答を待たずに彼女は続ける。振り返ることなく。


    「幼くして父を亡くし後を継いだが、ほどなく母は毒殺され、周囲からは捨て置かれて孤独な幼年期を過ごした」


    手を大きく空に伸ばして。

    彼女が歌う。高らかに。


    「そのような境遇からか彼の性格は歪み、ようやく心を許せる妻ができ幸せに過ごすも、やがてその妻にも先立たれ」


    声のトーンが上がっていく。

    物語の終幕に近づくように。

  • 25二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 03:12:08

    >>24

    「やがて人を信じられなくなった彼は臣下を、後妻を、無辜の民を、愛した妻との子すらもその手にかけて、孤独の中でその生涯を閉じた」


    おしまい、とでも言うように両の手が降ろされる。

    彼女は振り返らない。


    「ボクは思うのさ」


    彼女が背を反らす。何故か目を反らそうとしてしまい、咄嗟に身構えてもいた。

    彼女を見ることをためらった。その顔を。その瞳を。


    「『雷帝』と呼ばれ恐れられた、残虐で凶暴で孤独な王のただ一つの望みは」

    「ただ、愛する人と穏やかに過ごしたかっただけなんじゃないかとね」


    彼女は笑っていた。

    笑いながら哭いていた。

    涙を一滴も流さずに。

  • 26二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 03:12:24

    >>25

    自分の方はといえば、もう目の前すら見えていない。

    ただ衝動的に、彼女を抱きしめていた。


    「はは、随分熱い抱擁じゃないか」


    彼女の小さな腕が自分の背に回される。あやす様に2,3度優しく叩かれる。

    その手がほんの僅かに震えているようにも思えた。

    いや、自分が嗚咽で震えているのかもしれない。

    ワッをひと際大きく会場が揺れた。

    観衆からは、大偉業を成したウマ娘と勝利を喜び合う大泣きのトレーナーに見えているのだろうか。

    それでもよかった。それでよかった。

    今だけは、彼女より高い己の身長に感謝した。

    彼女を観衆から隠せてよかった。

    彼女を、この歓声から守れてよかった。

    今にも倒れそうな彼女を、支えられてよかった。

    孤独な王が泣けない分、自分が泣こう。

    一年我慢した、その分まで。

  • 27二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 03:17:17

    なんであにまんにこんな名分を投げたんです…?夜中に腹痛に襲われて目覚めたかいがあった

  • 28二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 03:19:04

    >>27

    ロイヤルビタースレ閲覧で変にテンションが上がったんだ許せ

  • 29二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 03:28:27

    冷静に見てみると>>1の趣旨から外れているなスマン

    邪魔なら削除してくれ

  • 30二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 03:41:45

    素晴らしい…
    グランドスラムを達成したことでトレーナーとの契約破棄は免れるけど、そこから身体能力の衰えと新世代の台頭が重なり勝てなくなっていく中で、より曇るのか逆に晴れやかに走るのか、どちらもあり得るよね…

  • 31二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 03:55:42

    こんな所にも見る栄養剤の摂取をした人がいるとは

  • 32二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 04:04:29

    よい

  • 33二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 04:04:43

    素敵な文章ありがとう
    良すぎて何回も読んだ

  • 34二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 10:48:12

    よかった

  • 35二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 11:01:03

    覇王オペラオー最高だな………

  • 36二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 11:43:41

    最高の名文をありがとうSSニキネキ…こういうの好き…

  • 37二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 11:54:19

    有マのあと、一度包囲を抜けられたせいか妨害が増えたり、バ群嫌いになってたりするし、この世界線のオペラオーが可哀想(可愛い)すぎる…好き…

  • 38二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 12:08:26

    良いものを読ませていただきました・・・
    ありがとうございます・・・
    Dragon ashの『Lily』かけたくなる
    ありがとう

  • 3918&2422/03/28(月) 12:31:11

    深夜テンションとは恐ろしい、誤字いっぱいで恥ずかしいわ

    ちなみに雷帝はちゃんとヒトミミの元ネタがある



    また変なテンションになったら>>37のネタも書きたい

    他の人もどんどんあげていいのよ

  • 40二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 16:25:14

    みんなに希望を与える覇王になる!って言ったのに、真逆な感じの覇王になるし、周りを「敵」と見なしてたから周りからも「敵」と認識されてるし、メディアとか観客からもバッシングだとか食らうしとかでかなり精神的に参ってるオペラオーを、今度はトレーナーが引っ張って支えていく形になるんだよね
    とか考えたけど鬱展開にしかなりませんわ!!!
    でも読みたいですのでここから晴らす方法はぶん投げますわ

  • 41二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 16:28:55

    >>1 の思った感じになっているかわからないけれど、>>2 を参考に焦燥感に本格的に駆られ始めるまでのオペラオーさん需要ありますか…?

  • 42二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 16:29:27

    めっちゃある

  • 43122/03/28(月) 16:43:10

    なんか良SS上がっとる...感謝...圧倒的...感謝!!

    アフターストーリーとして負けまくる翌年だけどそっちの方が何故か楽しそうで理由をドトウに尋ねられたら「ようやくボクは普通のウマ娘に成れたから!」って喜んでいるとかは多分アリ。
    そして負ける事さえ楽しむオペラオーと罪悪感と『有馬記念』のオペラオーが常によぎってしまうトプロも追加で。

  • 44二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 16:47:24

    >>42

    ありがとう!とりあえず書けたところまでですが…

    >>41

     あの劇的な勝利以来、ボクは頂点を掴めずにいた。どれも三着以内につけてはいるものの、世間の評価は好走止まり。毎レースごとに君と綿密な打ち合わせを行い、出走メンバーに合わせたトレーニングをこなすものの、あと一歩が届かない。ボクの持つ夢のためには、もっと圧倒的な勝利をする必要があった。

     数度、レースをした頃に、世間からは厳しい声が聞こえるようになっていた。だが何よりも、あの日耳にした声が、どうしても頭から離れなかった。


    「実は、トレーナーさんの担当ウマ娘がなかなか勝利を挙げられていないことを問題視する声がありまして……。次に担当ウマ娘が勝利を上げないと、担当の担当契約が解除される可能性があります!」


     トレセン学園の理事長室にて、重々しく告げられる。――しんとした部屋の中、悔しそうに唇を噛む君に、何か声をかけるべきだったのかもしれない。「どうにか勝利を掴んでほしい」と告げる声が、遠いところで聞こえるばかりだった。


    『貴方を世紀末覇王にしてみせる!』

     あの時、君はそう高らかに言い放った。夕暮れの学園、人通りもまばらな時間帯。微かな風の音と鳥の囀りの中にいたボクに、君は手を伸ばしてくれた。

     

    『熱い志だね』

     雨の強い日、何が覇王たるかを語ったボクに、君は同意を示してくれた。雨の中でのトレーニングに反対されたことは些か不満を感じはしたが、それもボクのことを心配した上でのことで、何の問題はなかった。


     いつだって、ボクのことを思う言葉とともに、率直な意見をくれる。まっすぐな君の意見だからこそ、何よりも信じられた。

     君は、日ごとに明るさを無くしているようだった。最も、ボクに心配をかけさせないためだろう、日中はいたって普通に振る舞っている。……でも、トレーニングが終わった後のトレーナー室で、一人悩んでいることをボクは知っている。


    「大丈夫さ、トレーナー君。これから先、ボクは全てのレースで勝ってみせるよ。――ボクの走りが輝かしいことを、君の指導に間違いはないことを知らしめようではないか!」


     ――シニア級になり、京都記念で久しぶりの一着を掴み取った時、君は笑顔でボクを迎えてくれた。久しぶりに見た君の笑顔に、そして観客の声に、勝利をもたらすことは幸福に繋がるのだと、そう信じていた。信じて、いた。

  • 45二次元好きの匿名さん22/03/28(月) 22:17:12

    保守

  • 46二次元好きの匿名さん22/03/29(火) 05:23:54

    ほしゅ

  • 471522/03/29(火) 12:27:13

    いつの間にか素晴らしい文章が生まれていてアシストをした私も鼻が高いよ…

  • 48二次元好きの匿名さん22/03/29(火) 12:37:41

    あ゛……いいですね……
    勝たないと相棒の側にいられないからなりふり構わず確実に勝つレースをした結果つまらないと称されて
    周りの子達の事なんて眼中にないとでもいうかのような走りをするのにそれでも勝つから怒りと恐怖を覚えられる
    勝つのは当然、美しく勝つ!をモットーにしてるオペとは真逆と言ってもいいけど信条を捻じ曲げてでも勝ちを取って無理を通す覇王はすごく格好いいですね、とてもすごいです

  • 49深夜テンション22/03/29(火) 13:57:44

    革命家が真にその手腕を試されるのは革命を起こした後らしい。
    革命とは現体制の打開、あるいは時の為政者への反感、不信、あるいは憎悪といった敵意がトリガーになる。つまり、違う思想や価値観を持っていても倒すべき敵がいれば手を組めるのだ。
    その敵がいなくなったのであれば、お互いを繋ぐものは新たに模索していかなければならない。でないとあっという間に統制の取れていない危険な集団と化す。その末路は、中世ヨーロッパのギロチンの歴史を見れば明らかだろう。

    つまり、共通の敵をもった集団とはそれだけ暴力性を秘めた…強大な力を持つということだ。どんな権力者も断頭台の上に引きずり出すことができる、下手をすれば次は自分たちになるかもしれない、諸刃の剣。

    一方、断頭台に立つ権力者や聖職者たちはひたすら静かだったという。運命を受け入れるように。あるいは

    ようやく訪れた解放を、待ちわびるように。

  • 50深夜テンション22/03/29(火) 13:58:08

    みたいな文章を構成中

  • 51二次元好きの匿名さん22/03/29(火) 20:25:28

    うーん最高

  • 52二次元好きの匿名さん22/03/30(水) 02:46:27

    完成するまで保守る

  • 53二次元好きの匿名さん22/03/30(水) 12:33:11

    ほしゅ

  • 54二次元好きの匿名さん22/03/30(水) 22:02:12

    どっか上げたら見に行くから教えてクレメンス

  • 55二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 01:04:33

    このレスは削除されています

  • 56深夜テンション22/03/31(木) 04:12:59

    >>49


    あの日はこの季節の特徴に違わず雨が降っていた。まるで貴女を祝福するように。

    重くはならなかったけれど、雨降るバ場は貴女の舞台。カけ上がる貴女を前にして、私たちはただ沈む。

    ターフの上で貴女に初めてまみえた日なのだから、今でも鮮明に思い出せる。貴女は近いようでひどく遠く、そして何より眩しかった。

    私は当時ようやく晴れの舞台に立てたばかりの新参者で、早くからスポットライトを浴びて輝いていた貴女とは天地の隔たりがあった。憧れの貴女。その走りを陰ながら目で追ってきて、ようやくまみえた貴女。

    そんな私だからこそ、貴女の光の裏にある歪みに気づけたのかもしれない。

    あの日の貴女の輝きはとても眩しく、とても不安定だった。まるで陽炎のように揺らいでいて、けれどもあまりに眩しくて、その中心にいる貴女のことが見えない。貴女は今どんな顔をしているのだろう。貴女の先に行けない私にはわからない。

    ああ、貴女の顔が見たい。



    沈みかけた意識が浮上した。重苦しい曇天の記憶を塗りつぶすように、蒼々とした晴天が広がる。

    イメージとの相違からかチカチカと視界が瞬く。あれほど鼻を擽っていた濡れたターフの匂いもしない。風が心地よい初夏の空気を運ぶ。

    それから。それから。


    貴女が前にいない。

    あれほど遠かった背中が。

  • 57深夜テンション22/03/31(木) 04:15:05

    >>56


    振り向くと彼女がいることはわかる。彼女の前に沈んでいった数多の存在のように、勝利者の頂に立てなかった彼女が。

    そして、自分が本来彼女のいるべき場所にいることも。

    「彼女に勝った」という歓喜がわかない。「彼女が敗けた」ということに足元がぐらついた。

    彼女は囲まれた。まるであのグランプリーーいやそれよりも過酷な包囲網だった。それでも彼女ならそれを突破してくれるだろうという思いのまま、無我夢中で自分も走った。

    残りわずか。彼女が追い上げてくる。自分もそれを振り切るために最後の脚を使う。あと少しで彼女に抜かれてしまうという恐怖の最中、それでもゴール板を超えるのは自分の方が早かった。

    でもそれは彼女より自分の方が強いという証明にはなりえないと思えた。あの包囲網がなくとも自分が勝てていたなんて、口に出すことすらも憚られた。

    憧れの貴女の背を、こんな形で超えたくはなかった。それでもこの結果は残るのだ。一つのレースの確かな結果として。

    口の端から少しだけ鉄の味がする。振り向くことが酷く怖い。あれだけ見たかった貴女の顔を見てしまうことが。


    「ドトウ」


    彼女の声がした。跳ねる自分の背に投げられたその声はとても穏やかだった。


    「おめでとう。今日は君がエトワールだ。胸を張りたまえ」


    否定の言葉を出そうとする口を必死で抑えた。今の自分の言葉がどれだけ彼女に響くのだろうか。


    「ウイニングライブだ」


    それはある種の命令であるかのようだった。

    長く彼女が君臨したその座を、他ならぬ彼女から明け渡される。

    そこに座るものの使命を投げ出すことなど許さないという意志を示すかのような、強い言葉だった。

    竦む足を無理やり動かす。振り向いて彼女に応えるために。きちんと顔をみて、応えるために。



    その時の彼女の顔は。

    運命を受け入れるような。あるいは、

    ようやく訪れた解放を、待ちわびるような。

  • 58深夜テンション22/03/31(木) 04:16:26

    >>57

    去年の彼女はまるで陽炎のように不安定で、それでもなお眩しかった。太陽そのものだった。

    そうで在らなければ守れないものがあったのだと思う。そしてそれができてしまう人だった。

    けして堕ちまいと孤高の王座を守り抜いて、昇って昇って。

    あとはもう、沈むだけだと悟ったのだろうか。

    革命の波にのまれて断頭台の露と消えた者たちのように。


    「オペラオーさん…私は…」


    震えていない声を出せたことがただ嬉しかった。


    「私も、一緒にいきますから…」


    意表を突かれたかのように美しい瞳が見開かれる。

    数秒後、くすりと可笑しそうに彼女が笑った。ひどく久しぶりに見た気がした、愉快そうに笑う顔。

    やっぱり眩しくて、あまりよく見えなかったけれど。


    「当たり前だとも。共に踊るのだからね」


    まずはその顔を綺麗にするところからだよ。

    そう言ってきれいなハンカチを渡されて、ようやく自分が泣いているのだと気づいた。



    革命の音が聞こえる。

    勇者の足音が、若武者の咆哮が、幕引きの黒い帳が、東から昇ってくる音が。

    貴女が鳴らす靴音が。

    貴女が断頭台へ昇る音が。

    私の昇る音が。


    新しい時代の来る音が、確かに聞こえた夏の日だった。

  • 59深夜テンション22/03/31(木) 04:27:50

    地の文が一人称なのに固いのはドトウを持ってないんで話し方の解像度が低いからです()
    おやすみ

  • 60二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 04:34:12

    良すぎる………書いてくれてありがとう

  • 61二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 05:06:40

    >>58

    最後「革命の音が聞こえる。」からの表現めっちゃ好き…

  • 62二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 10:29:41

    良すぎる…最高じゃ…

  • 63二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 11:38:19

    素晴らしい

    涙が溢れてくるよ何故か

  • 64二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 12:13:28

    新しい時代を作る勇者達の凱旋が見えますね

  • 65深夜テンション22/03/31(木) 22:57:13

    >>61>>64

    こだわったところなんで反応があると嬉しいありがとう

    たぶんドトウは変わってしまったとしてもオペに殉ずると思うんで、勝っても革命側ではないイメージ。

    あとオペの2001年は>>43なイメージ。

  • 66二次元好きの匿名さん22/03/31(木) 23:00:56

    デジたんジャンポケカフェを勇者若武者黒い帳と表現したの凄くいい

  • 67二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 11:01:49

    めちゃくちゃいい…めちゃくちゃいい…
    追い詰められてるオペいいよねくらいの気持ちで開いたら最高すぎるSSが並んでたわ

  • 68二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:54:45

    >>39

    露西亜のツァーリ、イヴァン四世だな

    敬虔な信徒と暴虐な暴君の二面性を持っていて、ある時ぶちギレて息子を殴り殺したあと後悔の念に襲われたりしたとか

  • 69深夜テンション22/04/01(金) 22:52:17

    >>68

    そうそれ!

    でもあれは幼少期の環境も悪い

    最初の妻が長生きしてたら名君になれたと思う



    …ということで、才能ある者から理解者を取り上げるとどうなるかという例としては最良の題材だった

  • 70二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 00:37:22

    デジたんで駄文失礼

    ───勝った。
    勝ってしまった。
    正直なところ実感なんて全くなく、ただ前でおふたりの勇姿をこの目で見たかっただけだった。
    「おめでとう、勇者デジタル」
    半分放心していた身体に意識が戻ってくる。
    そこにはターフの覇王たる姿はなく。
    大衆を湧かせる歌劇王でもなく。
    ただの「ウマ娘」としてのオペラオーさんがいた。
    「はうぅ、凄かったですぅ!!!」
    ドトウさんもこんなあたしを賞賛してくれている。
    光栄過ぎて昇天しそうになるけど、我慢我慢。
    ふと、オペラオーさんが手を差し出し、近づいてくる。
    レース終了直後で脳に酸素が足りてない今のあたしでも、オタクの矜恃として服の裾で手を吹いて握手に応じるだけの思考は出来た。
    すると、不意にオペラオーさんがバランスを崩す。
    「っとと、済まないね。わざとじゃないんだ」
    オペラオーさんがあたしの靴を軽く踏んでしまう。あたしは気にしなくていいと言おうとしたけど、
    「ああ、君の靴を汚さなくて良かった。」
    その瞬間、ほんの一瞬だけ、オペラオーさんがまるで何処かにいってしまうような気がして。
    気づけばオペラオーさんの手を握っていました。
    「──────また、勝負しましょう。絶対。必ずです。」
    「───ああ、次は負けないとも。」
    そうして、あたしの天皇賞・秋は幕を閉じました。

  • 71二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 00:44:59

    >>70

    普段王の風格バリバリなオペラオーが王としての態度じゃなくてただの一市民になるの良いよね・・・

    因みに靴を踏んだのには元ネタがあります

  • 72二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 01:13:08

    >>71

    処刑台に上がる時のマリー・アントワネットか。どうやら革命はなされたっぽいね

  • 73二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 01:19:32

    >>72

    そうです、>>58の革命って単語聞いてぱっと思いつきました

    テイエムオペラオー号の引退後のことを考えるとあまり宜しくはないとはわかっているのですがね・・・

  • 74二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 01:33:55

    知識から編み出される文才
    好き

  • 75深夜テンション22/04/02(土) 01:52:22

    >>73

    あああひたすら感謝しかない!深夜テンション野郎の文を昇華してくれてありがとう!!

    彼女も最後まで王妃の誇りをもって断頭台に上がった1人だった…落日の王者に相応しいエピだよね…

  • 76二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 13:12:20

    ほしゅ

  • 77二次元好きの匿名さん22/04/03(日) 01:01:56

    もしまだ他のSSあげてくれるのなら見てみたい
    保守

オススメ

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