(SS)街角スマイル｜あにまん掲示板

1◆l7elE92Qk0.U25/04/22(火) 22:29:52

夜が来る。ぼくたちの時間！　子の刻、異界と現の境界線。
今日も今日とてあの子を見る。硝子の瞳を通してあの子を見る。

ぼくが笑顔を向けたって、あの子は何も答えちゃくれない。
ぼくが笑顔を向けたって、あの子は笑いかけてなんてくれない。

ぼくが手を振ったって、あの子は何も答えちゃくれない。
ぼくが手を振ったって、あの子は振り返してくれない。

けれども、ぼくは止めない。なぜかって？　それがぼくのさだめだから！
あの子を見たとき、あの子の事を知ったとき、それがぼくのさだめになったから！

さあ、笑おう。口角ニッカリ持ち上げて。
さあ、笑おう。白い歯むき出しニッコリ笑って。

さあ、笑おう。あの子のために。
さあ、笑おう。あの子に見えるように。

ぼくはどうしてここにいるんだっけ。まあいいか、もう忘れちゃった。
とにかく今は笑おう。さあ笑おう！

笑おう。
笑おう。
笑おう。
笑え。

さあ、笑おう。口角ニッカリ持ち上げ白い歯むき出しニッコリ笑って。
あの子に向かって笑って振ろう、手を振ろう。

あの子に見えるように。

2◆l7elE92Qk0.U25/04/22(火) 22:30:12

……またあいつがいる。
まるで、こちらを認識してるかのように手を振っている。満面の笑みで。
初めて見たとき、私は言い様の無い恐怖を感じた。

私の手には負えない。

──通報しよう。

そう考え、スマートフォンを手に取ったが"そいつ"のある点が気になった。
時刻は午前0時。人はまばらだが幾人かはそいつのすぐそばを歩いている。

普通は何かしら反応するだろう。だが、それもない。
まるで何も居ないかのように、皆通り過ぎていく。

それを知った時、背中に冷たい汗が伝う。

私は何も見なかった。

"そいつ"と出会ってしまった日は、早々に床に就く。
"そいつ"が何者かは、何もわからない。
だが、一つ言えることがある。

関わってはいけない。私の本能がそう訴えかける。
……ゴルシさんなら、何か知っているだろうか？

いや、聞くのはよそう。

今の私に出来ることは、明日に備えて眠るだけ。

3◆l7elE92Qk0.U25/04/22(火) 22:30:29

消えちゃった、消えちゃった。あの子の気配、消えちゃった。
悲しいな、悲しいな。今日もあの子に袖にされ。

ぼくはなんでここにいるんだっけ？　思い出した、思い出した。
ぼくはここで死んだんだ。置き去り食らって死んだんだ。足を折られて置き去りに。
思い出した、思い出した。なんでここにいるか思い出した。

憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる。

ああ憎らしや、憎らしや。彼奴等の面が憎らしや。
ああ憎らしや、憎らしや。今際の景色が憎らしや。

ああいけない、いけない。
いい子にしなきゃ、いい子にしなきゃ。

あの子に見て貰えるように。
あの子に迎えに来てもらえるように。

とにかく今は笑おう。さあ笑おう！

笑おう。
笑おう。
笑おう。
笑え。

さあ、笑おう。口角ニッカリ持ち上げ白い歯むき出しニッコリ笑って。
あの子に向かって笑って振ろう、手を振ろう。

あの子に見えるように。