【閲覧注意】ここだけ、ナギサ様がひっそりと入水した後の話 3

  • 1125/04/23(水) 10:51:44

    私は「結果」だけは求めていない。「結果」だけを求めていると人は近道をしたがるものだから……やる気だって、次第に失せていく

    だから「納得」を全てに優先する!
    誰もが「納得」出来る未来への道を描く為に!!

    あと全然関係ないけど、第七部のアニメ化おめでとうじゃんね☆
    ルーシー・スティールの行動がお話を通して一番記憶に残ったなあ……

  • 2125/04/23(水) 10:53:12
  • 3二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 10:58:13

    うめるじゃんね⭐︎

  • 4二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 11:00:05

    入水するスレ、始まるじゃん?(高木渉)

  • 5二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 11:03:13

    10まで

  • 6二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 11:03:32

    うめ

  • 7二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 11:04:16

    このスレに光あれ

  • 8二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 11:05:01

    スレッド保守セイアですまない

  • 9二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 11:07:52

    埋めますね

  • 10二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 11:08:24

    ここだけ、ナギサ様がひっそりと入水した後の話、始まります。

  • 11二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 12:28:50

    バッドエンド確定のアフターストーリー…まさにゲームオーバーのその後ってやつだな楽しみ

  • 12125/04/23(水) 14:56:36

    今回は前語りも特にないし、前回のスレの192の続きから一気に書いてくよ~☆

  • 13125/04/23(水) 14:56:52

     仕事の確認をした翌朝。
     トリニティがやけに静かに感じた。

     ……否、別に登校する生徒たちが極端に減っただとか、別の学校に遊びに行って組織単位でトリニティを留守にしているだとか、そう言う事は起きていない。
     ただ、ぽっかりと開いてしまった私の心が何時もの学園の姿を受け入れることが出来ていないだけなのだ。

    「……全く、病人よりも先に奮起する場面じゃないのかい?」

     溜息を吐き、独りごちる。
     ティーパーティのテラスに広げられた書類は本日中に終わらせなければならない仕事だ。
     ミカにも仕事がある事は伝えてはいるが、まだ部屋から出てこれないようだった。

     とは言っても、ナギサが殆ど片付けてしまっている。
     私一人でも問題なく終わらせられると言えば終わらせられるのだが……。

    「……駄目だな。全く、他人事のように言うのは容易いが認めるのがこうも難しい物とはね……」

     処理の終わった書類を纏め、脳裏にハナコの姿が描かれる。
     彼女もこんな気持ちで私を手伝いに来ていたのだろう。
     ナギサが倒れるまで仕事をしたように、私も同じように倒れるまで仕事をすることを心配して手助けに来てくれていた。

     ああそうさ。私もミカが心配だ。
     高々数年での関わり合いでベットから起き上がることすら考えたく無い程の傷を負った。
     なら、もっと前から。幼馴染であったナギサを失ったミカの悲しみとやらは、どれ程のものだろうか?

     突発的な衝動に駆られないと、誰が言えるのだろうか?
     将又腑抜けに成ってしまい動けなくならない等と、誰が保証してくれるだろうか?

  • 14125/04/23(水) 14:57:08

    (――とはいえ、どうしたものか)

     それぞれの分派の執務室へと書類を届けるため、トリニティに足音を響かせる。
     BDで勉強する生徒も多い中、余り悪目立ちはしたくないがナギサが正式に休んでいることを広めるためにも必要なことだ。

    「あ、セイア…………様」
    「やあ、アズサ。そう畏まらなくてもいいよ。私と君の――いや、いいか。君はアリウスとトリニティとの懸け橋の一つに近い。それなのに此方がぞんざいな態度を取っていると受け取られてしまえば無用な謗りを受けかねないからね」
    「……えっと、つまり」
    「要するに、呼び捨てで構わないよ」
    「分かった」

     校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下で、アズサに声をかけられた。
     些か表情が分かりにくいが、怒った様子は無かった。
     ……昨日の、ハナコの件では無さそうだった。

     では何事かと、考えている内にアズサが唐突に頭を下げた。
     ……私の話、聞いていたのだろうか?

    「頼む、セイア。ナギサの居場所を教えて欲しい」
    「ほんとに唐突だね……用件なら伝えてあげられるが、居場所については駄目だ。休養にかこつけて何かしらの仕事の話をする横紙破りをする輩が現れる可能性があるからね。君がそうだとは思っていないけれど、何処に耳や目があるか分からないからね」
    「……分かった、ナギサの負担に成るかもしれないなら諦める。でも、代わりに伝えて欲しいんだ」

    「ナギサのおかげで、私の家族は許された。助けられた……――ありがとうって」

  • 15125/04/23(水) 14:57:50

     思わず、呼吸が止まった。
     苦境と困難に苛まれ続けた彼女たちからの、真摯な感謝。
     この言葉を誰に届けることも無く、ただただ虚空に溶かしてしまっていいのだろうか――そんな罪悪感から。

    「――ああ、確かに伝えておくよ」

     けれども、不自然なく笑えた。きっと昨日の中に涙を溢していなければ、涙腺が決壊していたのは間違いないだろう。
     だが、繕うことが出来た。

     私の返答に僅かにはにかむ彼女に、また胸が痛む。
     いっそ全てを曝け出せたのならばどれ程楽なのだろうか……。

     そんな他愛ない思考でもしなければ、受け流すことすら難しかった。

    「あっ、そうだ」

     用件は終わったかと思いきや、持っていた鞄を漁り二つの物を取り出して渡してきた。

    「これ、サオリからの贈り物だ。別に爆弾とか仕込まれてないから安心してほしい」
    「いやそんなことは思いもしないが……これは木彫りの人形?」

     狐と、鳥だろうか?
     ベテランの作品、そう言うにはまだまだ粗削りな部分が多いだろう。
     だが、丁寧に磨き上げられ創意工夫されたこの二作は、確かな温かみが存在していた。

    「ミサキが私たちが会える訳無いから先に渡した方がいいって言ったんだ。残念だけどその通りだったみたい」
    「別に君たちだから会える会えないが決まっている訳では無いと訂正して貰えるとありがたいが……結局今回会えないのだから間違いとは言えないだろうね……」
    「分かってるから……あ、それならもう一つだけ」

    「ナギサの体調が良くなったら、アツコが管理している花畑を見て欲しいんだ。そんなに立派な物じゃ無いけど……来てくれたら、嬉しいって」

  • 16125/04/23(水) 14:58:02

     表面上は穏やかで、けれども内心は焼け焦げそうな程にヒリついた会話は終わった。
     フィリウス派の執務室に勝手に物を置くことも出来ず、ナギサの分の木彫りの人形もサンクトゥス派の執務室へと持ってきてしまった。

    「どうしたものか……」

     天を仰ぎ空を見上げようとしても天井が陽光を遮るばかりで、届かない空を映してはくれない。
     言わば彼女たちは一端だ。
     ナギサの帰りを待つ者たちの、その一端。

     どれだけの時を重ねなければ、ナギサの記憶は薄れてくれるのだろう。
     どれだけの時を重ねることを、待つ者たちの堪忍袋は持ってくれるのだろうか。

    「……なあ、教えてくれよ」

     机に並べられた鳥の人形を人差し指で突く。
     くらくらと揺られるだけで、人形が答えるはず等なかった。

     もし仮に、死亡を教えるのだとしても今はまだ無理だろう。
     それを耐えられるほどの状態にティーパーティが成っていないし、各組織との連携も取れていない。

     それにまだ、二日しか経っていない。
     答えを出すのは早計と言えた。

     時は心の傷を癒してくれるとは言うが、それは一体何時完治するのだろうか。
     少なくとも、私たちが万全の状態になるまでトリニティは待ってくれないのは、確かだった。

  • 17125/04/23(水) 14:58:14

     と言う事で今回の更新はここまで!
     二人は鳥さんと狐さんの木彫りの人形かあ~。私は一足先に貰ったんだけど……何故かゴリラだったんだよ!? おかしくない!?
     聞いてみたらさ、力と賢さと何よりも優しさを兼ね備えた象徴的な存在だから~って……まあサオリに悪気が無いのは分かってるけどさあ~。ちょっと複雑じゃない?

     さて! 与太話は置いといてごめんね!!
     二時間切れると思ったら昼ご飯食べたら眠くなっちゃった☆
     くうくう寝てたらこんな時間だし、やっぱり追い詰めないと駄目だね……。

     あ、言っておくけどナギちゃんの木彫りの人形は別にヨシゴイじゃないからね?

  • 18二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 23:01:21

    アリウスも曇る…?

  • 19二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 02:43:47

    なんか元々死ぬつもりだったからめっちゃ仕事に打ち込めて結果的にエデン条約編だけは本編以上の結末になったのかなとか思ってみたり

  • 20二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 07:52:50

    待機

  • 21二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 17:31:53

    保守

  • 22125/04/24(木) 21:35:07

    >>16

     今日も一人、空席が目立つティーパーティのテラスで業務を熟していた。

     とはいえ、本当に独りっきりと言うわけでもない。


     テーブルの中央を陣取り、様々なお菓子に囲まれた二匹の動物。

     アズサたちから貰った二体の木彫りの人形が鎮座していた。


     本当ならばナギサの部屋にでも置いてやりたいのだが、勝手に部屋に入ることはフィリウス派の同輩たちが許さない。

     これはナギサの物でもあるから、手元に置いておくのも何だか憚られた。


     まあ単純に、私自身の寂しさを紛らわす為に置いただけかもしれないが。


    「……はあ」


     仕事は終わった。

     今日もミカは来ることは無かった。




     フィリウス、パテルに書類を届け、漸くサンクトゥスの執務室へ戻った時、部屋の中から焦ったような声が響いてきた。


    「――お願いです! セイア様に少しばかり来ていただくだけて十分なんです!!」

    「ですからねえ、救護騎士団の貴方もご存じの通り、セイア様の体調はまだ完全では無いのよ? お引き取りを願えるかしら?」


     この声は。すぐにピンとは来たが、何故そこまで焦って私のことを呼んでいるのかは理解出来なかった。

     彼女の懇願を私の体調を理由に拒絶する同輩を止めるべく、執務室の扉を開く。


     創造の通り、救護騎士団のセリナがそこには居た。

  • 23125/04/24(木) 21:35:19

    「――セイア様!!」

     彼女らしからぬ焦った声色で、私の姿を見るなり頭を下げて懇願した。

    「体調がまだ優れていないのは知っています! ですがお願いです……救護騎士団の部室に来てください!!」
    「貴方ねえ、そこまで分かっているならどうして――」
    「いや、いいよ。私に気を使ってくれるのはありがたいが、彼女たちには返し切れていない借りがあるんだ」

     渋顔を作る同輩に書類を押し付け、セリナの手を引いて廊下へと出る。
     セリナは短く礼を言い、私が追いかける事が出来る速度で救護騎士団の部室へと急いでいた。

     ……恐らくミネの事で何かしらの問題が起きたことは察することが出来た。
     何を仕出かしているのかは分からないが、立場的に対等な人物ならば止められると思ったのだろう。
     その判断は間違ってはいるものの、今回に限っていえば正解の行動だった。


     救護騎士団部室。
     山の天気の如く変動しやすい体質のせいで何度かお世話になったことのある部屋。
     何時もならばテキパキと救護騎士団員が駆けまわっている室内なのだが、何故か部屋全体の空気が淀んでおり、皆思い詰めた表情で動いていた。

     それでも足を止めることなく行動出来ていることに関心を覚えながらある一室に向かうと、一人の団員が目的の部屋を覗き込んでいるのが見えた。

    「ハナエちゃん、ミネ団長の様子はどう……?」
    「だ、ダメです~……ちっとも休んでくれないですし、差し入れも断られてしまって……」
    「……なるほど」

     話し合う二人を他所に、救護騎士団の執務室にあたる部屋を覗き込む。
     そこには、酷く窶れた顔をしたミネが居た。

  • 24125/04/24(木) 21:35:29

    「……医者の不養生とはこの事かい?」
    「いえ……普段の団長なら休息も仕事の中だと言ってきちんと休んでくれますし、ここまで頑ななのは初めてで……私たちも、どうしたらいいか……」
    「ふむ……つかぬ事を聞くが、一体何時からこんな状態になっているんだい?」
    「えっと……確か一日丸々団長が休んだ日からだから……二日くらいですね!」
    「二日でかい……?」

     あそこまで窶れるのに、二日しか経っていない事実に驚愕する。
     一体この短期間の間にどれだけの事をやっていたのか。
     ……どれだけ自分自身を責め立てたのか、考えるだけで嫌になってくる。

     だが、期間から絞って考えると案の定ナギサからの手紙を見たせいだろう。
     これはあの秘密を知っている人物で無いと、きっと彼女は止められないだろう。

     一つ、大きく息を吸って――吐き出す。

    「セリナ、それと……「ハナエです!」ハナエ。今からミネを説得しに行くが横槍を入れられると面倒だ。誰も部屋に入れないように立っていてくれないかい?」
    「分かりました」
    「誰も入れなければいいんですね、お任せください!」

     何処からか取り出したチェーンソーを唸らせながら元気よく答えるハナエ。
     ……些か人選ミスの気配を感じ取りながら、礼節を欠かないように執務室の扉を開ける。

     ――すぐさま、部屋中に立ち込める重苦しい空気と正面から刺される凄まじい圧力にたじろいでしまう。

    「――何用ですか」

  • 25125/04/24(木) 21:39:00

    とりあえず今日はここまで☆
    ミネ団長まで書き切ろうと思ったら日付変わりそうだったから早めの更新だよ

    あとあと、別にナギちゃんは最初から死のうと思っていた訳じゃないじゃんね☆
    ただの罪滅ぼしをしてたら、本当の穢れに気づいちゃったって訳
    まあその行動が無かったら先生が助けてくれたかもしれないけど、考えた所でしょうがないじゃんね

    明日の朝更新できるように頑張るじゃんね
    それじゃあ、皆が心地よく眠れるように――祈るね

  • 26二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 21:41:21

    >>25

    なんだそのクトゥルフでありそうな妙なホラーテキストは…

  • 27二次元好きの匿名さん25/04/24(木) 21:50:40

    次の湖(スレ)が出来てたのか
    気付かなかった

  • 28二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 00:19:33

    そういえばセクシーフォックスからミカに戻ってるじゃんね

  • 29二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 09:07:04

    地獄を楽しもう

  • 30二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 11:28:03

    ナギちゃんの死を知っちゃったハナコのこれからの地獄を早く見たいじゃんね

  • 31二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 12:58:08

    >>30

    あははっ☆

    流石にそこまで浦和ハナコに尺割けないじゃんね☆

    もし仮に書くことになるんだとしたら、多分本当に救いのない結末しか用意できないから……誰も救われることが無くなっちゃう


    残念だけど補習授業部自体の見せ場を用意するつもりが無いじゃんね

    彼女たちは都合の良い希望を振り回すのには適してるけど、否定することの出来ない絶望を前にしても動けるとは到底思えないしね


    ああ、白洲アズサは別だよ

    冷徹に動くことは出来るだろうね


    まあ全ては風の前の塵に同じ、皆均しく滅んで貰うよ

  • 32二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 14:40:24

    魔王みたいな言い回しで深くにも笑った
    せめて魔女であれ

  • 33二次元好きの匿名さん25/04/25(金) 21:57:23

    ほしゅ

  • 34125/04/25(金) 23:36:18

    ちょっとガンマ蔓延るランクマ潜ってたらまた書けなかったじゃんね……☆

    明日の午後には更新致しますので暫しお待ちくださると幸いです
    おやすみ、またね

  • 35二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 07:58:47

    待つね☆

  • 36二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 16:42:58

    たいき

  • 37125/04/26(土) 23:32:52

    >>24

     普段は整えられている身形が乱れ、結ばれていた三つ編みも手入されることなく解れたままだった。

     顔はそこらで寝込む病人以上に酷く窶れ、けれども視線はいつも以上に鋭くなっていた。

     それが妙に悲しくて、私は敢えて芝居がかった様に溜息を吐いて見せた。


    「……私にあれだけ口酸っぱく言っていた君がこの有様かい? 後輩たちが怯えていたよ、何時もの君の姿では無い、とね」

    「セイア様……お引き取りを。今の貴方も相当無理な立場に居られるでしょう? こんな私に構わずに自派閥の……ティーパーティの建て直しを行っては?」

    「その為にも監視役である救護騎士団がしっかりして貰わないと困るんだ。それにそんな無理をしても誰も喜ばない……それどころか――」

    「少し、失礼します」


     ミネを休ませる為に言葉を回し、追撃を加えようとした所で端末が鳴る。

     タイミングが悪いと思わず歯噛みしてしまうが、そんな思いすら捨てさせる様にミネは立ち上がった、


    「――申し訳ありません、現場からの救援です」

    「……いや、待ちたまえ。もしかして行くつもりかい? 病人も真っ青なその顔でかい?」

    「救護が必要な場に救護を、ですから。失礼致します」

    「――やれやれだ」


     足を止める気は一切無いと、私の横を素通りする彼女に心の底から溜息が出た。

     袖裏に隠した拳銃を握り、一切の躊躇なくミネの方に引き金を引いた。

     ……ミネに当たらぬよう頭の横を狙って撃ったが、扉に跳弾して照明が破損してしまったが、ガラス片も彼女に当たっていないし許して欲しい。


    「セイア様?」

    「止まりたまえよ、ミネ団長。今の私が引き金を引かねば成らない事態だという事をしっかりと理解した上で」


    「――セイア様!? 今の音は!?」

  • 38125/04/26(土) 23:33:02

     銃声が響き、流石に黙って待って居られなかったのか、セリナが扉を開ける。
     未だに此方を睨み続けるミネの視線に苛立ちの気配を感じ取り、この部屋に入ってから何度目かの溜息を溢す。

    「セリナ、先程救護騎士団の救援要請が来ていた見たいだが……既に人員は派遣しているかい?」
    「あ、はい。待機している救急隊員が居ますので……それより、どうして救援の事を? 救急隊員に任命された方しか分からないはずなんですが……」
    「…………」

     ミネを挟んでセリナに聞くと、そんな話が飛んできた。
     全く持って呆れ返ってしまう。
     つまりミネは、組織で定めたルールすらも捻じ曲げて現場に身を投じようとしていたのだ。

     余りにも彼女らしくない。
     さっきの視線だってそうだ。平時のミネならば憎々し気に此方を睨むなんて真似せずに、まずセリナに意識を向けていた筈だ。

     ミネは自分がいつも通りでは無いことを流石に察しているのか、やりきれない表情のまま、虚空に視線を彷徨わせることしか出来なかった。

    「それで、うん。先程の音か。すまない、私の袖に入れていた銃が暴発してしまってね」
    「そ、袖に、ですか?」
    「ああそうさ、これが一番スマートに銃を取り出せると思ったんだが……理想と現実は乖離する物だね。まさか腕を振るっただけで暴発するとは」

     そんな適当を並べ、偶然撃ち抜かれた照明を見上げる。
     セリナも私に釣られて割れた照明を見て、漸く納得してくれたようだった。

    「後で弁償しよう……さて、ミネ。紅茶の用意は要らないから会議を続けようか。長居するとそれだけで救護騎士団に迷惑がかかりそうだからね」
    「……分かりました」

     まだまだ燻っていた負の感情を抑えるように、ミネは目を閉じた。

  • 39125/04/26(土) 23:33:13

     セリナ達には再び人払いの為、部屋の外に立って貰い、再びミネと二人っきりになる。

    「さて……では、一つずつ聞かせて貰おうか」
    「……何故真実をお話にならなかったのですか?」
    「まず私から聞きたかったのだが……まあいいさ、簡単な話だからね」

     執務室に備え付けられた給湯室でミルクティーを作りながら、ミネに質問された。
     全く、質問を質問で返すなってね。

    「今から君に聞く話を、第三者には聞かれたくは無いんだ。相応に怪しまれはしただろうが……必要な犠牲だったと言っておこうか」
    「……それは」
    「ヨハネ派のトップである君に向かっての発砲だなんて知られたらどうなるか……考えたくもない話だね」
    「止めてください……」

     ここにきて頭が回り始めたのか、私の軽率な行動に血の気が引いているミネ。
     ……コイツは重症だと目を背けたくなる現実を直視しながら、甘い甘いミルクティーをミネの前に差し出す。

     ――ほんの僅かに顰められた表情は、自身に用意された席に向かっていたせいで気づくことは無かった。

    「まあ未然に防がれた事態だ。これ以上話しても不毛なだけだろう。私の質問にも答えてもらうよ、ミネ団長」
    「わかり、ました……」

     らしくなく祈る様に、懺悔をする罪人の様に、ミルクティーに表情を映す様に俯いて答えた。
     その姿を眺めながら、自分で入れたミルクティーを傾けて――顔を顰める。

     流石にちょっと甘すぎた。
     まあでも、これから話す苦い話にはちょうどいいかもしれないが。

  • 40125/04/26(土) 23:33:23

    「単刀直入に行こう――ナギサの件だろう?」
    「……………………はい」

     長く長く続いた沈黙の後に、蚊の鳴くような声で彼女は答えた。
     しかし、まだ予想できた話だ。
     問題はどうしてそれで自身をここまで追い詰めているのかだ。

    「そんなに酷い言葉が羅列されていたのかい? 彼女はそう言った語彙に富んでいるのは知って」
    「――違います!! ……断じて、違います」
    「しかし、だ。君自身も周囲も大切にしない様はそう言った誤解を広めることになる。詳しく、訳を教えてくれないかい?」

    「……気づけなかったのです、一切」

     ミルクティーに手を付けぬまま、より一層表情を険しくして彼女は語り始めた。

  • 41125/04/26(土) 23:33:33

    「私は、医療従事者です」

    「体の傷は元より、心の傷に関しても一応の知識は蓄えています」

    「目に見えない傷だからこそ、より一層丁重に、慎重に救護に当たることが重要であると、知ってはいました」

    「ナギサ様は、自身を責務も果たせぬ愚か者だと断じておりましたが」

    「――それなら、私は」

    「色眼鏡で見つめ、患者に鞭打ち、本当に加護が必要だった人に対し罵声を与えた私は――」

    「どうして未だに団長などと言う立場で居られるのでしょうか」

    「だから、そう……これは何処までもエゴなのです」

    「私が私を救護騎士団団長である事を許す為に、エゴ」

    「そんなエゴで……現場を混乱させ、周囲に迷惑をかけて……」

    「ええ……分かってはいます」

    「セリナに、ハナエに……同輩処かセイア様にまで迷惑をかけている自覚はあります……」

    「ですが……私の心が、何処までも叫ぶのです」

    「お前のせいだ――なんて」

  • 42125/04/26(土) 23:33:48

    「ミネ……」

     酷く憔悴しきった彼女に、かける言葉が見つからなかった。
     少し前――否。今も尚私の心にも巣食っている、罪悪感と言う名の毒虫。

     残念ながら、その毒虫を心から引きはがす薬など持ってはいなかった。

    「――ならば、答えは単純だな」
    「……えっ?」

     だから私が全て背負ってやる。

    「ミネ、ティーパーティの指示の下動くんだ」
    「それは」
    「どうせ休め、なんて言っても守る気はサラサラないのだろう? ならば、君を上手くコントロールする人物が必要になる。私が、全責任を取ろう」

     戸惑ったような、訝しむような。
     当惑し切ったミネの表情に、私はワザとらしく笑みを浮かべた。

    「なあに、安心したまえよ。別にティーパーティ直下組織として作り変えるつもりも、トリニティに混乱を齎すような考えも無いよ。君がどうしたら良いのか分からなくなったら、私に連絡をしてくれ。そこで出した指示を最優先に熟して、物事の優先順位のリセットをしてみるんだ」
    「……なるほど」
    「試しに……そうだね。書類の整理を優先的に熟そうか。山積みにされて処理されていない書類が多いと聞いたことが有るからね」
    「わかり……ました」

     渋々、本当に渋々とだが、ミネに約束を取り付けることが出来た。
     それから、立場が逆転したようなカウンセリングは続き、気が付けば日が傾いていた。

     最後までミネは、ミルクティーに手は付けなかった。

  • 43125/04/26(土) 23:34:04

    「行って、しまいましたか……」

     何処か浮ついていた気持ちが急落したように不安感に苛まれる。
     そんな折、折角入れて貰ったミルクティーが目に入る。

     これならば、もしや。
     そう思い、気持ちを落ち着かせる意味でもティーカップを傾けた。

    「――んっグッ!! ごはっ……」

     甘く、甘く。何処までも甘く。
     罪の意識を感じさせる程の甘ったるさが舌を襲う。
     無情にも、注がれたミルクティーは胃液と混じりながらエチケット袋の中に吸い込まれて行く。

     ナギサ様から宛てられた遺書を読み――気が付いてしまった、自身の罪。
     吐き出すことすら恐ろしく、セイア様には終ぞ溢すことすらなかった、本当の罪。

    「はぁ……はぁ……」

     胃に何も残ってなかったおかげか短く済んだ吐き戻しに、けれども確かに体力を持っていかれ頭が朦朧としていた。

    (落ち着いて……こういう時はまず――)

    「しょるい、しごと……」

     ゆるゆるグラグラと、混乱する頭で書類の整理が行われる。

  • 44125/04/26(土) 23:34:22

     蒼森ミネは壊れかけていた。
     だが、それでも尚、職務を遂行するバイタリティと回復力を備えていた。

     それは果たして幸か不幸か。

     ミネは幸福だった。
     職務に没頭している間は、自身の心と向き合うことなく他者を救うだけで満足できるのだから、間違いなく幸福だった。

     周囲は不幸だった。
     一向に改善されない顔色のまま、現場に向かう彼女を止める事が出来ずに見送ることしかできないのだから、間違いなく不幸だった。

     歪みゆくトリニティに、彼女と対話し改善に持っていける人物は居なかった。
     それは確かに、不幸だった。

  • 45125/04/26(土) 23:36:42

    本日はここまで!
    いやあ……ミネ団長こんなに弱くないじゃんね? と心の中で救護の化け物だと叫んでいるけど、死体撃ち二回もしてたらこれくらい崩壊しそうじゃんね

    よかった今日更新できて……お布団の誘惑に負けない私偉いでしょ☆
    でももう限界、おやすみまたね

  • 46二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:38:55

    救護が必要なところに救護を、それをモットーにしていたはずなのに
    それができなかった結果がこれだ、ひどい状態にもなる

  • 47二次元好きの匿名さん25/04/26(土) 23:41:57

    セイアが死んだ(生きてたけど)ら皆ガッタガタになってたからね、当事者になれば団長もキツいでしょ。

  • 48二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 00:15:29

    しかも今度は本当に死んでるしな・・・

  • 49二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 00:27:32

    各々の理由でまともな対話すらしない状況が継続すればこうもなる
    原作でのエデン条約周りの問題は良くも悪くもコミュニケーションを誘発していたんだよな

  • 50二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 08:28:34

    トラップ過ぎるだろ

  • 51二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 08:31:35

    身体が丈夫でもメンタルがやられてたらそのうち持たなくなるぞ

  • 52二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 09:06:30

    ナギサ様外面取り繕うの上手いからな…
    セリナ、ハナエ…君たちが頼りだ

  • 53二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 15:27:54

    二人が団長を支えてくれると信じてる

  • 54二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 23:34:13

    ナギちゃんも団長も頑張れてしまったばっかりに…

  • 55125/04/27(日) 23:50:28

    >>44

     日課のようにティーパーティのテラスに足を運ぶと、いつもと違った光景が広がっていた。


     一つのティーセットに、二つのティーカップ。

     片方は既に飲み干され、もう片方はとうの昔に冷めきってしまっている。


     他にケーキなどのお菓子が並べられていない事、残されたサンクトゥス派の書類と共に並べられた、一枚の計画書。


    「……なるほどな」


     二つ折りにされた計画書を開き、納得がいく。

     これはあの時見た夢の続きで、彼女は来るかも分からない私の為に紅茶を入れてくれていたようだった。


    「全く……君に無茶をされるよりも一報入れてくれる方が大切なんだが……それもまあ、言わねば伝わらないものか」


     急ぎ、スマホでミカに仕事を片付けてくれた感謝と、一言でも連絡が欲しいと簡潔に伝える。

     まどろっこしい性分だ。長々と言葉を伝えるのは対面で行った方がいいだろう。


     少なくとも、ミカの反応を見ながら言葉は選ばないといけない。

     私たちの言葉と言う名の銃弾は、文字通り人を殺す程の威力を持つのだから。

  • 56125/04/27(日) 23:50:53

    「……」

     昨日のミネの言葉。
     彼女は己に罪が有ると思いながら私に心の底に溜まった汚泥を見せてくれた。
     そのおかげで、ナギサの死に関する因果について少しばかり分かることが出来た。

     病んでいたのだ、心が。
     私の偽りの死と、トリニティに潜む裏切者と、ティーパーティの重圧と、己が振るった権力の犠牲者と。
     平静を装い続けた彼女の心が罅割れ、砕かれ、欠けていった事実に、誰も気づくことは無かった。

     気づこうとも、しなかったのだ。

    「……はあ」

     駄目だ。ミネの分すら背負うと決めた手前で、こんな思考をしていては。
     肝心のミネに関してだが、今の所SOSの連絡は来ていない。
     救護騎士団の方からも連絡が無い当たり問題行動を起こしている様子も無いようだ。
     ミネにとって私は寄り掛かる事が出来る存在であると、認められては居るのだろう。

     そうであると、嬉しいのだが。

  • 57125/04/27(日) 23:51:11

     コツリコツリと、トリニティを進む。
     以前と変わらぬ騒がしさがあり、だがそれを素直に受け入れられない心があり。

     そう、思っていたのだが。

    (……何だろうか、この空気は)

     フィリウス派が固まる教室の空気に、違和感を覚えた。
     別に他の派閥や部活動と同じように、息抜きの為に休日の計画を練って騒いでいるだけなのだが。

     何処か、違和感があった。
     少しだけ騒めく心を感じながらも、聞こえてくる内容に物騒なワードやそれらしい単語は混ざっていなかった。

    (――馬鹿だな、私は)

     疑心暗鬼に陥りかけて、ふと気づく。簡単な話だ。
     単に私たちが隠している事実があると言うのに、その後ろめたさからこんな事を感じているに過ぎなかった。

     僅かに重くなった足取りを、必死に奮い立たせサンクトゥスの執務室へと戻る。
     フィリウス派の同輩たちから、白んだ目で見られるような感覚を背負いながら。

  • 58125/04/27(日) 23:51:25

    「――しかし、どうするか」

     今後の展望ではない。
     考えるべきことなのだが、脳が思考を先送りにしたくて堪らないし、何よりも体調が不安定な状態で考えるとろくな結論を出さなさそうで怖かった。

    「――し、失礼します!」

     ミカが仕事をしてくれたおかげで生まれた時間を如何するべきか、そんな直近の事を悩む前に初々しい来客が扉をノックした。
     聞き覚えの無い声、誰だろうか。

     疑問が脳裏を掠めながら、入室の許可を出す。

    「失礼します! ほ、放課後スイーツ部部長の、栗村アイリです!」
    「放課後……? ああ、あの部活か。特にアポイントメントは無いようだが……何か急用かい?」
    「え、えっと! この前の親睦会の時にナギサ様のお手伝いをしたのですが……その時に、一回だけ力になってくれると約束して貰ったんです!」
    「そ、それはまた……」

     わたわたと話す彼女に一切の邪気は無く、よっぽど無理な注文は付けないだろうと思うし、確か一年生で構成されていた部活だ。
     色々と礼儀の抜けた部分があるのは仕方がないし、目くじらを立てるつもりもない。

     ただ、少しばかり複雑になったのだ。
     自分が果たすことの出来ない約束をした、彼女に。

    「え、えっと……やっぱり駄目でしょうか?」
    「いや、少しばかりナギサの計画性の無さについて心底呆れていただけだ。君は気にしなくてもいいよ」
    「は、はあ……」
    「そんなことよりも本題に入ろうか。君がティーパーティに願うことは何だい?」

    「――とある、新作スイーツの確保です」

  • 59125/04/27(日) 23:51:40

     真剣な眼差しで、ティーパーティにスイーツの調達を依頼する。
     そんな何処か滑稽で、何とも心温まる権力の使い方に思わず頬が綻んだ。

    「良いだろう、ティーパーティの威信にかけて、全力で確保しようじゃないか」
    「あ、ありがとうございます!」
    「それで何て言うスイーツなんだい? ……流石にミラクル5000ともなると数か月は待って欲しいのだが」
    「えっと、表通りにあるケーキ屋さんで最近出た新商品なんです」

     そう言われ、適当に調べるとすぐに検索に出てきた。
     その名前がティーパーティで仕入れている店名にあるか探し、あっさりと見つけ出すことが出来た。

    「ふむ……この濃厚ミルクチーズケーキティラミスと言う奴かい? 確か新しいスイーツを仕入れたと言っていたな」
    「それじゃあ!」
    「うん、此方で既に仕入れてあるかもしれない。少し待ちたまえ、すぐ受け取れるように一筆書こう」

     ざっくりとした手形を書きながら、アイリにふと気になった疑問を聞いてみる。

    「そういえば、どうしてここまでの事をしようと思ったんだい?」
    「えっ?」
    「確かにナギサから約束はされていたんだろう。だが、数週間もすれば手に入りそうな品物を態々こんな所にまで来て頼みに来たんだ。何かしらの理由があるんだろう?」
    「えっとカズ……部員の一人が、初めて私たちに声をかけてくれた記念日なんです」

     思い出に浸りながら語ってくれたアイリの姿は、とても眩しかった。
     ……直視するのが、少し辛いくらいには。

  • 60125/04/27(日) 23:51:52

    「当時は同好会だったんですけど、その子が来てくれたおかげで部活動として認められましたし」

    「色々と問題もありましたけど……どれも楽しい思い出で」

    「そんな感謝の気持ちを伝えたいんです」

    「もう一人の部員の提案でサプライズにしようってなったんですけど……」

    「……なるほど、仲睦まじいのは良きことだ。君たちのサプライズが、上手くいくことを願っておくよ」
    「あ、ありがとうございます!」

     粗雑に書かれた手形を恭しく受け取り、丁寧な所作で部屋を後にした。
     そんな彼女を見送って、私は窓からトリニティを見下ろした。

     何処までも平和で、何事も無い、そんな日常だけが広がっていた。

    「はは……」

     誰もがこれからも続くと信じている幸せばかりの今日を夢見ている。
     それを一瞬で砕くことが出来る情報を握っていることがどれ程の苦痛か、恐怖か。今改めて思い知らされる。

     縋る様に、腰が抜けた様に椅子に座る。
     ナギサもきっと、こんな気持ちだったのだろう。

     平穏を引き裂いて、平穏を守って。
     全体を守る為に心を裂いて、自身が目をかけていた同輩すら疑って。

     ――ああいや、エデン条約もあったんだっけか。

  • 61125/04/27(日) 23:52:07

    「何が絶望だと言うんだい……同じ立場に立たねばその気持ちにすら気づかない愚か者の癖してね……」

     そっと息吐き、重荷を減らす。

     ナギサは立ち向かえた。
     その事実が何よりも苦しかった。

     だからこそ、ナギサは病んでしまった。
     その事実が何処までも辛かった。

    「折れて堪るものか……ナギサの残した物は幾らでも残っているのだから……」

     鼓舞するように、吐き捨てるように、私は一人、呟いた。



     未だ、ナギサの残した遺書は開けなかった。

     ミネすらも罪悪感と言う名の毒虫に食われたそれを見てしまえば、私は次いつ立ち上がれるか分からなかったからだ。

     ……今もきっと、衣装箪笥の中で開かれるのを待って居るそれを。
     私はそっと、無視をした。

  • 62125/04/27(日) 23:55:04

    本日はここまで!
    あースイーツ部よくわかんねえじゃんねえ?
    ナツちゃんの誕生日プレゼントにしてやろうかと思ったら時期的に合わないからマジ困ったじゃんね☆

    そして相変わらずプロットが崩壊するじゃんね
    眠気に任せたタイミングだと細かい所でボロが出るから恥ずかしいじゃんね(*ノωノ)
    ほんと、ボロボロじゃんね

    また明日も更新できますように
    明日の平穏を――祈るね

  • 63二次元好きの匿名さん25/04/27(日) 23:58:44

    これから闇を歩き続ける者にとっては眩しすぎる光だな…

  • 64二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 00:01:43

    大丈夫!後で皆同じになるから!
    ここが地獄だよ

  • 65二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 09:21:00

    光が強ければ強いほど、影は濃くなる

  • 66二次元好きの匿名さん25/04/28(月) 18:47:18

    光が強いほど、その後の闇もより映えるというものよ

  • 67125/04/28(月) 21:42:49

    >>62

    あはははっ☆

    嘲る真似すら真面に打てないならさっさと布団被ってれば良いのに無理して馬鹿じゃんね?


    タイピングがタイミングって……そりゃあ本文もふわふわもこもこの腑抜けたものになるわけだよ

    これ以上本文が適当にならない為に今日は更新できないかな……ごめんね?


    代わりに明日は最後の日まで行けると良いな

    それじゃあおやすみ、またね

  • 68二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 01:49:00

    おやすみ。
    ゆっくり待ってるから、ゆっくり休んでからきてね

  • 69二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 07:58:52

    最後の日ってなんなんですかねぇ!?

  • 70二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 08:17:01

    >>69

    ドゥームズデイ…?

  • 71二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 08:47:05

    審判の日あるいは火の七日間になってしまうのか

  • 72125/04/29(火) 16:33:07

    >>61

    「……間に合わなかったか」


     今日もまた、テラス席に座る者とは出会えなかった。

     昨日と変わらず、空のティーカップと冷めた紅茶を並べているのは何の意趣返しなのだろうかと、考えてしまう自分が嫌になる。


     遺書を見つけたあの日から、私は予知夢が見れなくなっていた。

     正確には何処を見渡しても真っ暗闇に覆われた空間で目覚め、彷徨っている間に目が覚める。

     それが理由かは不明だが、どれだけ早く起きようと努力しても夢から覚めることは無い。


     折角ミカが早く起きて仕事を熟していると分かったと言うのに、会うことすら叶わない。


    「ミカ……」


     積み上げられた書類を撫でながら、失った痛みを知る友の名を呼ぶ。

     あれからミカからの返信は来ないし、今日だって私を待って居てはくれなかった。


     彼女の入れてくれた紅茶を捨てるのが忍びなく、ほんの僅かに口を付けた。

     やっぱり、最後まで飲み干すことは出来なかった。

  • 73125/04/29(火) 16:33:21

     心に積もった心配と言う名の感情を晴らす為、私は校舎から抜け出した。
     一般生徒に見えるように制服を着替え、ミカの行きそうな場所を探して自治区内を駆けまわる。
     正常だった時のミネに見られれば、すぐさま取り押さえられそうだ、何てことを思っていたのが悪かったのだろうか。

     少しばかり珍しい存在に絡まれてしまった。

    「おいおいおい、こんな大通りを一人で歩くたぁ肝が据わってるじゃねえか」
    「……いや大通りだからこそ一人でも問題無いと思っているのだが」
    「喧しい! 恨むんならテメェの日頃の行いを恨みな」
    「いやその理屈はおかしいだろう?」

     厳ついバイクに跨る不良グループに、気が付けば包囲されていた。
     他のトリニティ生が絡まれなくて良かったと安堵するべきか、このままではミカを探しに行けやしないと嘆くべきなのか。
     ともかく自然と溜息は漏れた。それが気に食わなかったみたいだが。

     何故か持っている誘導灯を此方に差し向けて、彼女は叫んだ。

    「おいっ! どーして囲まれてるのに余裕綽々にしてるんだぁ! まさか私たち全員をぶっ倒せるとでも思ってるのかぁ!?」
    「リーダーがお前を狙ったのはやけに手入されてる髪や制服の綺麗さ、動きの洗練さを見抜いてなんだぞ! 大人しく捕まって身代金を出してもらうからな!」
    「そうだそうだ! リーダーはお前くらいのちんちくりんなら捕まえられるか? って心配になる程の臆病者だけどやる時はやるんだぞ!!」
    「大通りで騒ぎとか、すぐに正実の奴らが来そうなのに一度思い込んだら猪突猛進のスタイルがリーダーの魅力なんだぞ!!」
    「おいおいおいお前らぁ!? 敬ってんのか貶してんのかどっちなんだよ!! あと猪突猛進で悪かったなぁ!」
    「……楽しそうだね、君たち」

    「――閃光弾、投擲!!」

  • 74125/04/29(火) 16:33:39

     囲んでいる不良グループの外側から投げられた数個の異物。
     反射的に両腕で目を隠し耳を伏せたが、それでも尚頭を揺らす程の音と光に怯んでしまった。

     だが、私を囲んでいた不良たちはそんな咄嗟の対応すら出来ていなかった。
     嫌に響く殴打する音が周囲から発せられる。

     また一つ生々しい音が響くが、続く様に殴打音が発せられることなく音が止んだ。
     恐る恐る視界を戻すと、不良のグループのリーダーの誘導灯に拳が止められた白銀の髪を靡かせた少女が居た。

    「ぐうぅ……あ、相変わらず苛烈なこって……」
    「そう言う貴方たちこそ、こういった騒ぎは起こさないで欲しいのですが」
    「おいおいおい……自ら囲まれに来たにしてはやけに強気だなぁ? こうして足止めしてるだけで、後はお前が蜂の巣になって終わりだって気づかないのかぁ!?」

     やけに自信満々に叫ぶリーダー。
     周囲に視線を回すと殆どの不良は気絶しており、既に包囲はボロボロなのだが。
     意識の有る不良は気絶した不良の乗ったバイクを自身のバイクに繋げて逃げようとしている。
     悲しいことにリーダーは完全に囮として扱われており、如何に犠牲を出さないようにして逃げるか。そんな思考にシフトしているようだった。

     完全に見捨てられているリーダーは、今も尚白銀の少女と格闘を続けているが、一向に支援射撃が来ないことに漸く気付いたみたいだった。

    「はっ……はっ……っておいおいおいぃ!? どうしてお前ら逃げてんだぁ!? なんで私が殿勤めてんだぁ!? 普通こういうのって私を逃がす為に頑張る奴じゃねぇのかよぉ!!」
    「仲間想いのリーダーが私たちを逃がす為に必死に戦ってるんだ! 私たちも急いで逃げないとな!」
    「ここに居てもリーダーの足を引っ張るみたいだぜ……すまないリーダー!!」
    「だぁかぁらぁ! 走る閃光弾に撃てって言ってんだよぉ! あっこら逃げんなぁ!!」

    「――戦いの最中によそ見とは、余裕ですね」

  • 75125/04/29(火) 16:33:52

     結局、捕らえる事が出来たのはリーダーただ一人だった。

    「へへっ……だが仲間は確かに逃し切ったぜぇ……つまりこれって私の勝ちって言っても文句ねぇよなぁ?」
    「さっき言ってたこととまるで違うんだが」
    「こちらもパトロールヘッドホンにそこまでの在庫がありませんでしたから、好都合ですね」
    「いや正実に引き渡さないのかい?」
    「まあまあまあ、何度か聞いてたおかげでちょっと気に入ってきたんだよなぁその曲。なんつったけ? バストン・バービーのベイベーだったっけかぁ?」
    「凄いな、一つも正解が無いぞ」
    「……それでは音割れする勢いで聞いていて貰いましょうか。もっと心に刻み込めれるように」
    「君もどうして他の手法を取らないんだい? 絶対効果薄いと思うよ」
    「てっ……テメェ! 音楽に対する敬意ってもんがねぇのか!?」
    「君が言えた義理かい」


     電灯に縛られ、ここからでも普通に聞こえるレベルの音漏れを起こしながら音楽を流し込まれているリーダー。
     白目を剥きながら痙攣している彼女に少しばかりの憐憫さを感じながらも、白銀の少女に感謝を告げる。

    「すまない、助かった。余裕綽々の雰囲気を出してはいたが、どう抜け出すか困っていたんだ」
    「いえ、無事でしたら何よりです。それでは、私はこれで――」
    「ああいや、待ちたまえよ。少しばかりお礼がしたいんだ。そこのカフェで一杯ご馳走させてくれないかい? 予定があるなら構わないんだが」
    「……そうですね、お言葉に甘えさせていただきましょう」

     幸いにも、私がティーパーティのホストだという事はバレていないようだった。

     走る閃光弾――その名は正実で聞き覚えがある名前だった。
     度々正実と衝突することもある、トリニティの自警団。
     正実を動かす立場の人間を前に、彼女たちが牙を剥くとは思わないが、それでも気まずくはあるだろう。

  • 76125/04/29(火) 16:34:02

     ケーキを選ぶ際に聞いたのだが、彼女の名はスズミと言うらしい。
     その際に名乗る機会が生まれたので、適当にマナと答えておいた。

     彼女はこの店の新作であるミルクチーズケーキティラミスと紅茶を、私はアイリがお勧めしていたスイーツと飲み物を選んだのだが……。

    「あの……普段からそれを?」
    「……いや、昨日会った知り合いからのおすすめ何だが」

     チョコミントアイスケーキとチョコミントミルクセーキ。
     頼んだことを僅かばかりに後悔しそうな発色の良さを感じつつも、勇気を持って一口食べる。

    「……どうでしょうか」
    「やはり独特な風味があるな。私は嫌いではないが苦手な人も居るだろうね……食べてみるかい?」
    「あ、いえ……先にこちらから食べようかと。最初にチョコミントの物を食べると少し舌の感覚が鈍くなるので」
    「それもそうだ、折角のミルクチーズケーキ何だからね。一口目はそれがいいだろう」
    「ええ、そうですね」

     美味しそうにケーキを味わう彼女からは、先程までの苛烈な攻撃性は見られない。
     心の差異が見出した好奇心から何となく彼女の行動の原理が気になった。

    「そういえば、何時もあのような治安維持活動をしているのかい?」
    「そうですね……定期的に活動してはいますが毎日している訳では無いですね」
    「なるほど、正義実現委員会に任せようとか、其方で活動しようとは思わなかったのかい?」
    「……確かに、組織に属せばその分楽に活動できるでしょう。ですが、それでは取り逃される事件を助ける事が出来ない。私はそう言った問題に手を伸ばしたいのです」
    「……そうかい、少しばかりデリカシーの無い質問だったね。その上でありがとう。君の活動のおかげで助けられたのだからね」

    「少し、こそばゆいですね……」

  • 77125/04/29(火) 16:34:23

     恥ずかしそうに微笑んだ彼女は、何故か憂いを帯びた視線をトリニティ校舎へと向けた。

    「……実は最近、自警団活動の頻度がかなり減っているんです」
    「ふむ」
    「つまらない愚痴になってしまうかもしれませんが……少しばかり聞いていただけますか?」

     校舎に向けていた物とは違う色の混じった眼差しを此方に向ける。
     その眼差しの意図は、果たして。
     少しばかり溶け出したアイスケーキを見下ろして、私はフォークを置いてスズミの方を見た。

    「構わないさ、ただどうしても聞くだけになってしまうがね」
    「ありがとうございます」

     何処か安心したように、ティラミスにスプーンを入れながら、彼女は語り始めた。

    「正義実現委員会の他、ETOがトリニティ内で活動し始めた為、トリニティで問題を起こそうとする不良たちの数も減少傾向にあるんです」
    「それは……喜ばしい事だね?」
    「ええはい、私も好きで自警団をしている訳でありませんので、そこは良いのですが……」

    「セ――マナさんは不良たちが屯する場所の雰囲気はご存じでしょうか?」

     ……必死に作り上げた空気が今一瞬崩れかけたような気がしたが、突かなければ恙無く進んで行くだろう。
     私は清涼感を求めてチョコミントミルクセーキを一吸いして答える。

    「いやあ、分からないね。あまりそう言った場所には近寄らないようにしているから」
    「そうですよね……簡潔に纏めると、どんよりとした風通しの悪い雰囲気が漂っているんです」
    「風通しの……それが一体、どうしたんだい」

    「その雰囲気を、ここ最近ティーパーティから感じているのです」

  • 78125/04/29(火) 16:34:42

     思わずむせ返りそうになったが、幸いにも飲料からは口を話していたおかげでそんな失態を晒さずには済んだ。
     だが、彼女のその言葉……。

     背筋に嫌な汗が伝う。
     感覚で暴かれるなど冗談ではないが、私自身インチキとも呼べる力でこの地位まで上って来たのだ。
     盛者必衰の理を――なんて、そうでは無くて。

    (風通しか……確かに伝えるべく情報を塞き止めティーパーティに淀みを生んでいるのかもしれない……だが今目の前の彼女にそれを伝えてどうなる? いや、そもそもの話だ)

     話の流れを思い返し、組み上げ、経路を生み出す。
     着地点を見出し、顎に添えた手を放す。

    「……なるほど、ティーパーティで、か。具体的な場所……どの校舎だとかはわかるかい?」
    「そう、ですね……東の校舎からかと」
    「そうかい、分かった。それなら余り近寄らない方がいいみたいだね。忠告をありがとう」
    「ええ、お願いします」

     案の定、フィリウス派からだったようだ。
     普通に考えれば妥当な話でもある。
     トップの人間が不在で、同輩たちの統率が取れていない状態ともとれる。

     きっと彼女の伝えたかった所はそこなのだろうと、そうであってほしいと願いつつも再びフォークを手に取った。
     だが、冷え固まって居たアイスケーキは既に溶け、皿の上で水色の水溜まりを作り出していた。

     手遅れだ。
     ほんの僅かでも掬おうとケーキ本体をフォークで割り、スポンジに吸わせようと思ったが、全てが粉々になってしまい、台無しになった。

     綺麗に食べ切ることは、出来なかった。

  • 79125/04/29(火) 16:34:56

     その後スズミと別れ、再びミカを探したが出会うことは出来なかった。
     ミネからのSOSも来ることは無く、ある意味平穏な一日は終わった。

     今日も、衣装箪笥に眠る遺書を手に取ることは出来なかった。
     このまま一生――なんて、馬鹿な真似はきっとミカが止めてくれるだろう。

     だから、そうだ。
     早く彼女と話し合わねばなるまい。

     手を合わせてトリニティを存続していくことが出来ると証明しなければならない。
     ナギサが出来ると思ったのだ、ならば。

     僅かに混じった強迫観念に押されながらも、私は静かに眠りについた。



     ――そして終わりは、唐突に訪れるのだった。

  • 80125/04/29(火) 16:39:11

    とういう訳で今回はここまで!
    いやあ……誰じゃんねこのキャラが立ちまくった不良は……プロットに一ミリも存在していないのにコイツ書いてる時が一番楽しかったじゃんね……

    スズミのキャラ的に可愛い部分もあるけど、有能なムーブをしたいせいでなんかズレてないか心配じゃんね
    まあこの時空ではこの通りだという事で一つじゃんね

    いよいよ最後の日を書いてこの本題からズレまくったお話の完結に持っていけそうじゃんね!!
    こっからテラーとの戦闘とか書かないといけないの正直馬鹿なんじゃないかなって思う私だけど、スレが落ちない限りは頑張るね☆

    それじゃあ、皆の平穏と幸福を――祈るね

  • 81二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 00:26:27

    テラーとの戦闘ってそれ...
    楽しみ

  • 82二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 09:51:08

    審 判 の 刻

  • 83二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 10:01:47

    テラー候補が2人ぐらいいるんスけど…

  • 84125/04/30(水) 11:30:04

    >>79

     床に就いて、僅か。

     微睡に落ちかけた意識を叩き起こす様に、私の部屋が開け放たれた。


    「――セイア様っ! 大変です!!」

    「……こんな夜更けに、なんだい?」


     悪態を吐くことも、取り繕うことも出来ずに思わず素のまま応対してしまう。

     だが、そんな私に疑問を呈する余裕も無いのか、何処かと繋がったスマホの映像を見せながら叫んだ。


     ――その燃え盛る赤に、嫌な予感と共に私の意識は覚醒した。


    「アリウス特区が、放火されています!!」


     アリウス特別収容臨時区画。

     通称アリウス特区呼ばれるその場所は、ナギサが主導しシスターフッドと連携して受け入れたアリウス生たちを一時的に押し込める為に生まれた場所だ。

     酷く劣悪な環境でも無ければ、異常なまでに狭い範囲に押し込められている訳でもない。

     一般的なトリニティ生と同じような扱いをしているその場所が。

     今、その全てに火の手が上がっている。


    「……火の不始末何て騒ぎじゃあなさそうだね。原因は判明しているのかい?」

    「っ……」


     軽く服装を整え、現場に向かいながら部屋に入ってきた同輩に尋ねるが、どうしてか苦々しく顔を背けていた。

     ……嫌な想像が脳裏を過る。


     そして、現実は想像を遥かに飛び越えていってしまった。


    「…………把握できる限り、フィリウス派のほぼ全員が放火に参加。放火に至った経緯は……ナギサ様を暗殺した嫌疑だそうです」

  • 85125/04/30(水) 11:30:17

     駆け足で向かっていたその足が、思わず止まる。
     何故、どうしてそれがフィリウス派に漏れている?

     一瞬、先生経由でヒフミから漏れたのかと思ったが、あの日以来先生からの連絡はない。
     ならば、先生はヒフミに遺書の件を話してはいないはずだ。
     それなら、どうして。

    「……セイア様?」
    「……いや、すまない。どうしてそんな荒唐無稽な話でここまでの大事を起こしたのか、分からなくてね」
    「そう、ですか……」

     立ち止まった足を動かし始め、すぐさまミネに――いや、ツルギに電話をかけることにした。
     ワンコールも鳴り終わる前にツルギとの通話が繋がった。
     ……後ろから人々の混乱する声が響くが、気にしていては仕方ないだろう。

    『はい、ツルギです』
    「状況は?」
    『……酷く、現場は混乱しています。夜間での放火活動、フィリウス派の計画的と思われる行動で些か此方が後手に回っています。私の判断で撃ってでも捕縛しておりますので、フィリウス派からの抗議が来た際はそのようにして頂けると』
    「……ありがとう、私もすぐ其方に向かう。君が責任を負う必要は無いよ、私の命令で出したことにしよう」
    『了解しました』

    (……困ったな)

     ツルギとの会話を終えて、向こうの状況がある程度知れた。
     恐らく、夢で見たフィリウス暴走シナリオに近い状況が起こっている。

     だが問題はそこではない。

  • 86125/04/30(水) 11:30:29

     フィリウスの暴走と、その発言の意図。
     これはナギサの死を衆目の下に晒し上げ、どの組織が行ったのか判別つけようとしているのだ。
     元々ヘイトを集める存在であったアリウスに物理的に衝突しただけであって、多分本心ではどの組織に攻撃したっておかしくない状態なのだろう。

     くらくらとして来る頭に、不味い事実ばかりが圧し掛かる。

     フィリウスは、トリニティがどうなっても構わないようだ。
     何処までも真摯に、狂気に、ただナギサの仇討ちの為に動いているに過ぎないのだ。
     そうでなければ、フィリウスが組織立って動いて尚且つ正実に手を焼かせるなんて真似出来るはずがない。

    (全く……被弾した勢いで眠らないでくれよ)

     酷く朦朧とする意識を根性で奮い立たせ、重苦しい足取りでアリウス特区へ急ぐ。

     今日は始まったばかりだった。

  • 87125/04/30(水) 11:32:36

    短いけど今回はここまで!
    さあさあ、トリニティ崩壊RTA始まるじゃんね☆

    今の所ばら撒いた伏線はちゃんと回収出来そうだけど、ライブ感で全部吹っ飛ぶ恐怖があるのかなりアホじゃんね
    後テラー化のする人はもう決まってるから安心して欲しいな☆
    ちゃんと一人だけじゃんね

  • 88二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 11:38:50

    この話ももう少しで終わりってことですか……
    寂しいですねぇ…最後まで見守りましょう

  • 89二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 11:42:58

    ナギサは読み間違えたってことかあるいはそれすらも精度を欠くほど精神が摩耗していたのか

  • 90二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 12:24:39

    全員の未来なんだから全員で背負うべきだった
    ので、もう皆でお手手繋いで飛ぶしかないんだよ

  • 91二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 12:39:54

    >>90

    皆であの世に行くっすよ……

  • 92二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 15:33:24

    ああ・・・ナギちゃんの喪失による崩壊…たまんねえ…

  • 93二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 22:04:18

    光は何処?

  • 94二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 22:20:57

    >>93

    皆を苦痛や苦悩から解放するマゼンタ色に輝く光がすぐ来るよ

  • 95125/04/30(水) 23:09:38

    >>86

     30分と時間をかけずにアリウス特区へと辿り着くことは出来た。

     だが、十数分は確かにフィリウス派の計画通りに事を運ばれたとも言えた。


     ――トリニティが、燃えていた。


    「周辺民家への被害も考慮しないのですか!」

    「……ツルギは何処だい」


     目や耳から伝わる情報から伝播され、怒りに燃えるように私を呼びに来てくれた同輩はフィリウス派へと突撃して行ってしまった。

     気持ちは痛い程理解できるが、私が我を失う訳にはいかない。


     必死に冷静に努めるようにツルギを探す。

     他よりも悲鳴が大きそうな場所を探していると、必然とも呼べる出会いが訪れた。


    「……セイア様?」

    「き、君は……」


     彼女は、ナギサから私への引継ぎを手伝ってくれた――。


     銃声。銃声。銃声。


    「っ!? 一体何を!」

    「……何を、ですか?」


     一切の躊躇い無く放たれた銃弾は乱れ撃ちだったおかげか、直撃こそは避けたものの警戒心を引き上げるのに十分な出来事だった。

     銃弾を撃ち尽くし、甲高い音を立ててクリップが排出されるが、彼女はすぐに次弾を込めて、今度こそ当てると言わんばかりに私の頭目掛けて照準を合わせた。

  • 96125/04/30(水) 23:09:56

    「それは此方のセリフですよ……セイア様」
    「……どういう意味だい」

     充血し、瞳孔が開いた眼差しを此方に向けながら彼女は答える。

    「何故ナギサ様の死を無関係なあの女には知らせて、我々にはお伝えなさらなかったのですか?」
    「…………盗み聞きとは、感心しないね」
    「いえいえ、偶然、聞き及んでしまった物で」

     彼女の反応に、思わず歯噛みする。
     無意識の失態がここまでの大事に発展する物かと。

     自責の念で潰れる刹那、まさか補習授業部にまで手を伸ばしているのではないかと言葉が漏れた。

    「ハナコは……」
    「ああ、はい。彼女も随分と苦労したみたいですよ? セイア様の世迷いごとだったと断定する為に色々と調べたそうです。――まあ無駄だった訳ですが」
    「……なるほどね」

     断定した理由、恐慌の原因。
     それは間違いなく私が原因と言えるだろう。だが、ハナコたちが責められる未来はどうやら訪れないらしい。

    (到底、安心は出来ないのだけどね……)
    「セイア様……我々は考えたのですよ……あの時、どうしてあの女にだけ情報を漏らしたのかを。どうして迂遠に死を確定付けさせるような真似をしたのかと……」

     まるで幽鬼のような冷たい気配を発しながら、彼女は遂に引き金に指を添えた。

  • 97125/04/30(水) 23:10:10

    「まずは貴方を疑いました、セイア様」

     彼女が引き金を引く、銃弾は頬に当たる。

    「ですが、それは余りにも合理性に欠けます」

     彼女が引き金を引く、銃弾は肩を撃ち抜いた。

    「何故セイア様があの女に言わなければならなかったのか? 何故セイア様があの女を使ってナギサ様の死を流布させるような真似をしたのか?」

     彼女が引き金を引く、銃弾は脛に当たり転ばされるように前のめりで倒れてしまう。

    「何故疑心が広まる真似をしたのか。何故敵が誰かを分からぬようにしたのか。何故突き放す様に分断を図ったのか――」

     彼女が引き金を引く、銃弾は初速を維持したまま私の背を執拗に叩く。

    「何故、何故、何故、何故何故何故――」

     彼女が引き金を引く、銃弾はもう出てこなかった。

    「どうして――」
    「そこまでだ」

  • 98125/04/30(水) 23:10:25

     飛びかけていた意識は背中に当てられていた銃口が離れたことで、何とか持ち直すことが出来た。
     ふらふらと立ち上がると、先程まで私を撃っていた彼女が空から落ちてきた。

    「ご無事でしょうか?」
    「あ、ああ……すまない。助かった」

     少し焦げ臭さを漂わせたツルギは先程の問答を問い直すわけでもなく、ただ一言そう言った。
     言葉に出来ない感謝の思いを抱くも、それは行動で示さねばと思い直す。

     軽く周囲を見たところ、相当数の正実の子達の援軍がやって来たのか、徐々に騒ぎが収束して行っているようだった。
     ツルギも、同様の景色が見えたのだろう。

    「セイア様、これがクーデターだと思われない為にも少しばかり神輿として動いていただきますが」
    「構わないよ……その為にここに来たのだからね」

     フィリウス派の行動を正義実現委員会が妨害……字面だけ見ればクーデターの気配だろう。
     実情は暴走したフィリウス派を止めるべく動いていたに過ぎない。
     だが、紙面的に見ればこれはクーデターなのだ。

     そうでは無いと、断定する為にも私は来た。
     ……とはいえ、今のフィリウス派に正実を貶めるべく行動する冷静さは無いとは思われるが。

  • 99125/04/30(水) 23:10:37

     罵声、銃声、破裂音に火炎放射の轟音は徐々に納まっていった。
     燃え盛る火の手を止めるべく、手榴弾やグレネードで建物が破壊され全てが瓦礫と化した。

     ……炎を止めようにも、事前に消防設備は破壊されており被害を抑えるにはこれしか方法は無かった。

    「酷い物だね」
    「そうですね……」

     積み上げた和平の象徴だった場所は砕け散り、今尚炎は燻り続けている。
     ナギサがやってきた行いが、何処までも否定されているようで胸が締め付けられる思いだった。

    「……そう言えば、アリウス生たちは無事なのかい?」

     今でこそやって来た救護騎士団に先導されて治療のために移動しているが、逃げられなかった生徒はいなかったのだろうか?
     そう尋ねてみると、ツルギは何処か苦い顔をしながら答えてくれた。

    「既に、全員救助されています」
    「全員かい……?」

     それは……どうやって判明したのだろうか?
     正実はフィリウス派鎮圧のため動員されていた。
     救護騎士団も救助活動はしていたが全員を助けるなど到底時間が足りないだろう。

     抱いた疑問を打ち壊すべく、ツルギは答えてくれた。

    「ミネ団長が、炎の中に突っ込んで全員助けたのです」

     ――彼女が苦々しい表情を浮かべる意味も教えながら。

  • 100125/04/30(水) 23:10:54

    「っ!!」
    「セイア様!? どこへ――」

    「ミネの! 所だ!!」

     既にこの現場には居ない。
     非常に嫌な予感だけが体中を駆けまわっていた。

    (やはり! やはりか! 私では、私ではナギサの代わりにはなれやしないのか……!!)

     ミネは結局私を頼ることは無かった。
     何処までも自身が許されるべき存在では無いと定義しているからこそ、彼女が他者に対して縋る行為を端から捨てていたのだ。
     それに気が付くことすら出来なかった私は……。

    (アリウス生全員を救っただと? どれだけ体を痛めつければそんなことが出来るんだ! 銃弾爆弾飛び交い炎が辺りを燃やす災害現場で、どれだけ体を痛めつけたんだ!!)

     彼女の自裁の気持ちは、あの時ありありと感じ取ってしまった。
     それならば、ボロボロな今の彼女を一人にするのは酷くマズイ。

    (しかし、何処に――)


     そんな折、視界を遮る様に暗黒が周囲を覆った。

  • 101125/04/30(水) 23:11:08

    「――っ!?」

     一寸先すら見通せなくなる、闇。
     幾ら夜中とはいえ、夜目が利き始めた今になってこんな事態に見舞われるのかと、疑問。

    「……あの、光は」

     改めて周囲を見渡すと、たった一点にのみ眩くぼやけた光が見えた。
     それはまるで、目指すべき場所がそこであると示しているようで――。

     私は一目散に走り出した。

     確証はない。
     だが何故か確信めいたものを感じていた。

     気が付けば闇は晴れており、一点のみ光っていた光点も見えなくなっていた。
     だが、方角は既に分かっている。

    「待っていろ、ミネ……!」

     その光が潰える前に。
     私は全力で駆け出した。

  • 102125/04/30(水) 23:14:40

    今日はここ迄!

    アリウス生たちへ罵倒するフィリウス派の場面入れようかと思ったけどちょっと手綱握れなくなりそうだったから断念じゃんね


    >>94

    あはははっ☆

    物は言いようってまさにこのことだよね☆

    苦悩も苦痛も何も感じないんだもの、破壊の権化の襲来だもの


    如何せん無理矢理話を進めたせいで今回の更新は話が歪だと思う……ごめんね?

    でも漸く私が書きたかったワンシーンの一つに辿り着きそうだからちょっと嬉しいじゃんね


    明日もきっと更新できることを――祈るね

  • 103二次元好きの匿名さん25/04/30(水) 23:15:50

    これもお前のせいだ、百合園セイア(カス発言)

  • 104125/04/30(水) 23:19:48

    >>103

    わかるわかる~

    と言うか、第二部始まった時点で全部セイアちゃんのせいだって自分から言ってるからね?

    そんなセイアちゃんの最初で最後の抵抗と鎮魂歌なんだよ


    だから若干の設定に齟齬が生じるけど、戦闘パートは書かないとね☆

    あ、剣先ツルギはコミュ選ばれなかったから腕がねじ切られないパターンに入ったことをお知らせしておくね☆

  • 105二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 06:35:17

    過去の精算をする時だ、セイア

  • 106二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 06:38:38

    このレスは削除されています

  • 107二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 13:57:00

    ねじ切られる可能性があったのか……
    ツルギならそのうち再生しそうだけど……

  • 108二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 20:47:03

    燃えてしまう…ナギサ様が築き上げたものが…

  • 109二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 00:21:41

    うわー気になる

  • 110二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 02:15:35

    続き期待してます!

  • 111二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 08:29:57

    あぁ…

  • 112二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 09:34:49

    悲しいことにナギサが病むほど愛したトリニティはナギサを愛してはいなかった

  • 113二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 15:50:50

    凶行に及ぶくらいフィリウス派は愛してたんじゃないかな……

  • 114二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 15:54:00

    >>108

    ナギサはトリニティに押し潰されたようなものなんだから、それに対する仇討ちともなれば灰も残さず焼き尽くすしかないんだ…

  • 115二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 15:54:59

    こうなるから3人でティーパーティーのトップをやる必要があったんですね

  • 116125/05/02(金) 20:43:13

    ……わーお☆
    スレ生き残ってるとは嬉しい限りじゃんね
    感想もいっぱいで活力が湧いて来るってもんじゃんね

    そしてごめんね? 昨日ちょっと急病にかかって寝てたから更新できなくて……
    でも明日は休み! 区切りの良い所まで書き切って、出来たら今日更新するじゃんね☆
    皆の健康を――祈るね

  • 117二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 20:55:14

    健康であれ

  • 118二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 20:57:50

    一般JK的感性と貴族主義的感性を並存させてるのがトリニティ生の面倒臭いところ
    スイーツが好きで人気の生徒に黄色い声援送ったりするのに選民思想持ってるの怖い

  • 119二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 00:39:03

    精神構造がめんどくさすぎる

  • 120二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 03:19:39

    他責にできないならできないで団長みたいに自己犠牲に走っちゃうのがなんとも救えない......

  • 121二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 09:38:10

    このレスは削除されています

  • 122二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 15:25:52

    うーんこの

  • 123125/05/03(土) 15:35:37

    >>101

     ――走る、走る、走る。

     今は見えぬ光点のみを頼りにして、走り続ける。

     崩れた瓦礫を踏み越えて、現場から離れる生徒の流れに逆らうように走る。


     今ミネの身を案じ、行動することが出来るのは私しか居ない。

     同輩である救護騎士団は怪我を負ったアリウス生の治療に駆り出され、鎮圧行動を終えた正実はミネの状態を把握していない。

     つまり誰もミネの心配をして、行動することが出来る者が居ない。


     ――私以外は。


    『はっ……はっ……はっ……!』


     火事場の馬鹿力、むしろ窮鼠猫を嚙むと言うべきか。

     アドレナリンの放出によってやけに軽くなった身体で目的地へと駆けていく。

     人波が途切れ、ただ一人孤独にトリニティを走るのは少しばかり心細くなってしまう。


     アリウス特区から東に道なりで進んでいると、今は殆ど使われていない旧校舎の一つにぶつかる。

     確か取り壊しの草案が出ていたと脳裏を掠め、ちらと施錠されている筈の出入り口を見る。


     鍵が、壊されていた。

     銃床か、銃撃か、どう壊されたのかは不明だが、入り口を縛っていたチェーンが地面に散らばっていた。


     普通に考えれば、トリニティを荒らし回っている不良の可能性の方が高い。

     事実、昨日だってよく分からない不良に囲まれたものだ。


     だが、私の直感がここだと叫んでいた。

  • 124125/05/03(土) 15:35:49

     吉と出るか凶と出るか。
     仮に大凶だとしたらミネを救うチャンスはもう二度と訪れる事は無いだろう。

     錆びたドアノブを握り、捻らずとも僅かに開いた隙間を広げるように動かす。
     手入れされていない扉は鈍い悲鳴を上げながら、私の来訪を知らせる。

     熱烈な歓迎は、受けなかった。
     ……どうやら大凶ではなさそうだ。

     外よりも一層薄暗い校舎内は私が侵入することを拒んでいるようで。
     だが、意を決して校舎の中へと足を踏み入れた。

     他に音が無いせいだろう。
     私の歩く足音だけがやけに響く。
     ふと校舎から窓の方に視線を投げれば、煙を上げるアリウス特区が鮮明に見えた。

     煙がトリニティ本校すら焦がす様に天に渦巻き、消し切れずに燃え残った火種は地に蔓延っていた。
     既に火蓋は落とされて、ミネたちの救援など何の成果も挙げずに燃え尽きるのだと言うように。
     これは序章に過ぎぬと、煽られているようで。

    『――ミネ?』

     嫌な妄想を止め、頭を振って意識を戻すと、何処からか銃声が響いてきた。
     しかし……様子がおかしい。
     何かを狙っているような音ではなく、断続的に籠った音が鳴っている。

     音に誘われるように、導かれるように音の出処へと辿り着いた。
     扉が僅かに開かれ、そこから微かな光が漏れている。

     顔を上げて部屋の名前を確認すると、ここはどうやら保健室のようだった。

  • 125125/05/03(土) 15:36:02

     バスン、と。
     くぐもった銃声が再度響く。

     嫌な予感を胸いっぱいに詰めながら、私は開きかけの扉に手をかけた。

    『――』
    「……」

     自らのショットガンを咥えたミネ団長が居た。

     その目は虚ろで、私が部屋に入ってきたことすらも気が付いていないようで。
     涙は乾き切り、代わりに頬の内側から貫通した傷から血を流し。
     それでも尚、ミネはショットガンの引き金を引き続けていたのだ。

    『ミネ!!」
    「……」

     銃座代わりに立てられたシールドを蹴り飛ばすが、ミネの腕に包帯で巻かれたショットガンは手から離れることは無い。
      何が起こったのか理解していない風に、ミネは再び銃に手を伸ばすが、遮る様にミネの手を握った。

    「ふざけるなよミネ! 君にとって私は、私たちは! 手助けされることすら迷惑な存在だとでも言うつもりなのかい!?」
    「……セイア、さま?」

     ミネの瞳に、僅かばかりの光が戻る。
     まだ間に合う、彼女はまだ救えるのだ。

     硝煙と焦げ臭さを纏った彼女の手の温かさを逃さぬように、決して放さぬように、強く強く両手で握りしめた。

  • 126125/05/03(土) 15:36:23

    「いいかい? よく聞くんだ。君がそんな傍迷惑な事をしたって喜ぶ者は誰一人だって居ないんだ。むしろこれはもっと大勢に人たちに不幸を振り撒く行いだというのは理解出来るはずだ」
    「……」

    「罪の意識……ミカも抱えていたが、己を処断した所でナギサは帰って来ない。君は君の自己満足のためにトリニティに、救護騎士団に災いを持ち込もうとするのかい?」
    「……ぁ」

    「過ぎたことは……何て、言っても到底流せる話では無いのは承知している。だから」
    「じゃあ、どうすれば良かったのですか……」

     握っていた掌が、強く強く握り返される。

    「私のせいでナギサ様は亡くなって、それでも尚のうのうと生き続けろとでも言うのですか……」
    「違うよ、違う。ナギサが亡くなったのはミネのせいじゃないさ。強いて言うならばナギサの変化に気づけなかった私たちと、伝えるべき労力を惜しんだナギサの――トリニティが抱えるべき罪だ」

     ミネの焦点が定まっていない瞳と目を合わせながら、説き伏せる様に答える。
     返答に何を感じたのか、突如気絶したかのように顔を下に伏せる。

    「……あの時に、言えなかった事があります」

     そうして、ミネの独白が始まった。

  • 127125/05/03(土) 15:36:38

    「ナギサ様が命を賭して成立させたETOの事です」

    「有ろう事か、私は……眼前で否定してしまったのです」

    「ゲヘナとの融和など不可能であると――無意味であると、無価値であると、私は……私は……!!」

    「ナギサ様の命を! 間接的にも軽んじたのです!!」

    「あの一言が無ければ、余計な言葉の交わりが存在しなければ! きっと!!」

    「ナギサ様は生きていた筈だったのです!!」

    「きっかけを生み出した私が、どうして!」


    「処断もされずに生きていられるのでしょうか!?」


    「……ナギサ様の死によってトリニティに問題が波及し始めています」

    「私は、責任を取らなければなりません……」

    「それが、トリニティにとって――」
    「――言いたいことはそれだけかい?」

  • 128125/05/03(土) 15:37:00

     気が付けば大粒の涙を流し続けていたミネは私の言葉に呼応するように顔を上げた。
     何て酷い顔をしているのだろうか。
     血と涙に濡れてぐちゃぐちゃになっている。

    「そうかい、ミネ。君にとって自死とは責任を取る為の手段の一つに過ぎないと言うわけか」
    「……ええ」

     至極当然の行いだと言わんばかりに頷く彼女に、顔を思い切り近づける。
     恋人であるのであれば接吻でも交わす距離だろうが、そんな甘酸っぱい関係ではない。
     漸く私の目に焦点が合ったミネに吐き捨てるように答えた。

    「罪すら放り捨てて逃げるつもりかい、君は」
    「――えっ?」

     握られていた手を解き、彼女の胸倉を掴む。
     想定外の言葉をかけられたように呆然とする彼女を畳み掛ける様に言葉は止まらなかった。

    「自死が責任の清算だと? 冗句だとしても詰まらないし想像力に欠けていると言わざるを得ないね」
    「わ、私は!」
    「黙りたまえよ。人に手を借りる真似が出来ない今の君では何を言った所で独り善がりで、空虚だよ……大体、気が付かないのかい?」
    「……何を、ですか」

    「君のその行いは、ナギサのした事を肯定するのと同じだという事にだよ」
    「そ、れは……」

     少しばかり、正気を取り戻したのだろうか。
     ぐらぐらと揺れる瞳に、呼応するように体が震え始める。

     彼女の腕と包帯で繋がれたショットガンが、漸く床に落ちた。

  • 129125/05/03(土) 15:37:16

    「……ナギサが亡くなって、苦しかったんだろう? 辛かったんだろう? それを、君の後輩に味わわせるような真似は止めたまえよ。それは君の本意では無いだろう?」
    「なら、わたしは……どうしたら……」

     既に自裁する気は削ぎ落すことは出来たのだろう。
     だが、迷子の子供の様にミネは此方に縋りついて来る。

     ……無理もない、彼女の抱いていた信念を自らの手で打ち砕いたような物なのだ。
     もう一度、以前の彼女のような姿を見る事は叶わないかもしれないが、再び歩き出す為の手助けならば出せる。
     私は彼女の抱きしめ返して答えた。

    「ここから、トリニティは更なる混乱が巻き起こるだろう。その時に私やミカだけの力では到底足りやしないんだ。ミネ、ナギサが守りたかった――いいや、ナギサが守ったトリニティを助けてくれないかい?」

     これはとっても、甘い毒だ。
     ミネの心に潜む毒虫が好む、甘い毒。

     ナギサが成し得た、成し得なかったという言葉を並べるだけで、罪悪感に溢れたミネに断る術は無い。
     それを分かっていて、私はミネに囁いた。

    「――わかり、ました」

     ぐっと、ミネの体重が此方にかかる。
     思わず倒れてしまうと思ったが、既に抱きしめていたおかげか受け止める事が出来た。
     漸く、これで漸く、一人を支える事が出来たのだ。

    (ナギサ……君は余りにも遠い所に居たんだね……人の重みを、信頼を……支えるまでがここ迄大変だとは思いもしなかったよ……)

     けれども、確かな一歩を新たに踏み出す事が出来たのだ。
     ミネに強く強く抱きしめ返されながら

  • 130125/05/03(土) 15:37:35

     ――私は目を覚ました。

  • 131125/05/03(土) 15:37:49

    「………………」

     見慣れた、何時もの天井が私を出迎える。
     揺れる脳が、震える頭が、目覚めた知性が今までの現象を一瞬で読み明かし、真実だと伝える。
     酷く重い身体を起こそうとすると、近くから声が聞こえた。

    「――セイア様、お体の具合は?」
    「つ、ツルギ……? わ、私は一体――」

    「一体何時から眠っていた……?」

     鈍く痛みが走る体を無理矢理に動かし、ツルギに縋る様に問いかける。
     ツルギは慣れないながらも受け止めつつ、簡潔に答えてくれた。

    「走り出して間もなく……と言った所でしょうか。あそこまで撃たれていたのですからあまり無理は――」
    「ああ、そうかい」

     ツルギの小言が右から左へと流れていく。
     全身から力が抜け、力なくへたり込んでしまう。

     あれは、予知夢だった。

     地続きになっていると錯覚する程度には近い未来を見ていた。
     私が干渉していたからこそ、今から僅か数瞬先のミネは生きていたのだ。

     ならば、今から伝令して届くのか――。

  • 132125/05/03(土) 15:38:06

    「せ、セイア様! 大変です!!」

     諦めるのはと、奮起しようと己を奮い立たせようとした所で、同輩が扉もノックせずに飛び込んできた。
     どうしようもない程の不吉な気配を感じるが、己が耳を塞ぐ前に、同輩の口を塞ぐ前に、その言葉は耳に飛び込んできた。

    「救護騎士団団長、蒼森ミネ様が……! な、亡くなられました……!!」
    「何……?」

     訝しむツルギに怯える同輩。
     それを私は止める事も出来ずに、天を仰いで息を吐いた。

     事実だろう。
     言葉が詰まった理由も、相応に理由が付く。
     自身の銃で自決するなど、その訳も経緯も想像がつかないのだから。

     助けられた筈の存在が、助けた筈の人物が、今し方亡くなった。
     言葉に表せない程の無力感が胸を抉り、自然と涙が零れていた。

     私の異様な様子からか、同輩に詰問していたツルギが静かに此方を見ていた。
     それが何よりの証拠だと、言わんばかりに。

     静寂が部屋を占める中、再び騒動が訪れる。

     険しい表情のまま思考を巡らせていたツルギの端末から連絡が届いたのだ。

    【――き、緊急連絡! パテル派、ミカ様の一室が何者かによってはか、ってうわああっ!?】

  • 133125/05/03(土) 15:38:22

     直後、轟音。
     ノイズを部屋に響かせた後にツルギは通信を切った。

    「……私は行く、セイア様を頼んだ」
    「えっ、あ、はい」

     しどろもどろに答える同輩を置き去りに、ツルギは窓から飛び立ち通信下へと急いだ。
     月に向かって飛ぶような彼女を見て、零れた涙を拭う。

     そうだ、まだ救える人は居るのだ。
     動かないで公開するのだけはごめんなのだと、今再び思い知らされたのだ。

    「私たちも行くよ」
    「えっ、ちょ、セイア様!?」

     止める様に動く彼女を無視しながら、ミカの部屋へと向かう。
     今日はまだ終わらない。

  • 134125/05/03(土) 15:38:38

     本日はここまで!
     いやあ……自分で書いててバレバレ過ぎてちょっとどうかと思ったけれど、伏線部分を日にちを跨いだおかげで書きたかった落差を体験出来て良かったじゃんね

     でも惜しいなあ……途中で思いついたから仕方ないんだけど予知夢の書き方周りをもっと秀逸にしてたら、もっと良い仄暗い絶望を味わわせることが出来たのに、残念☆
     体調も戻り始めてきたし健康はホント大切だね
     みんなが休日を楽しく過ごせるよう――祈る

  • 135二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 15:44:39

    セイアの見てる夢は本当に予知夢なのかなぁ…

  • 136二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 15:48:32

    夢なのか夢じゃないのか…最後にスーツケースから紅い眼鏡が出てくるような話になってしまうのだろうか…

  • 137二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 15:53:44

    救護と付き合い深そうな正実のツルギハスミもかなり曇りそうだなこれ…

  • 138二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 15:57:34

    寝ても覚めても悪夢は続く

  • 139二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 17:42:40

    これもお前のせいだな!!百合園セイア!!
    お前が判断をミスしたからこうなった!!!お前がもっと早く動いていればこうはならなかったかもしれないのに!!(追い打ちをかけ続ける邪悪)

  • 140125/05/03(土) 19:24:18

    >>139

    あはっあはははははっ☆

    それ以上セイアちゃんを愚弄するのは許さないよ?

    既に力はセイアちゃんの制御を超えて、それでも尚全てを救おうと努力した結果が予知夢の中でのミネ団長の救済だと言うのにさあ……


    セイアちゃんは頑張ったよ、強いて悪者を上げるなら私かな?

    だから次は、私が頑張る番じゃんね☆

  • 141二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 19:58:44

    助けられたと思ったら夢だったとか…こんなんセイアちゃん発狂しても不思議じゃないじゃんね

  • 142二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 23:33:14

    何を頑張るんですかねぇ!?

  • 143二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 23:49:44

    嗚呼、素晴らしい友情だ、喝采の準備をしようか

  • 144二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 08:44:43

    その頑張りがどう転ぶかだねぇ

  • 145125/05/04(日) 09:41:08

    >>133

     ミネの死亡――恐らく、救護騎士団員が気を利かせて此方に情報を流してくれたのだろう。

     ……多分、セリナでは無いだろうか。


     このキヴォトスに置いて、死と言うのは酷く縁遠いものだ。

     トリニティのトップであるティーパーティのホストと言う役職柄、紙面上で死亡事件に関して存在していることは知っているが、周囲の人間が亡くなる事など相当稀だ。

     だから、と言うより案の定と言うべきだろう。


     ミネの死を易々と受け入れた私に、連絡を寄こした彼女は少しばかり疑いの目を向けられていた。

     ……と言うよりは、ナギサの死も事実なのではと言う疑念だろうか?


     全くとんだ置き土産だと内心で溜息を吐き、視線に答える様に質問した。


    「少し、いいかい……ミネの死は、何かしらの証拠があっての、連絡なのだろうね?」

    「……ええ、証拠の写真もございますが……見ます?」

    「いや……止めておくよ。第一、走りながらでは、下手すると、戻してしまうかもしれないしね」


     重い身体を動かして、必死にミカへと近づいていく。

     如何せん、私の体はまだまだ万全とは言えない。

     時間がかかるのは止む無しと言えるだろう。


     それはそうと、ミネの件はやはり証拠付きだという。

     だからこそフィリウス派の世迷いごと(事実ではあるのだが)を信じて、此方を疑っているのだろう。


     本当にナギサは死んでいて、それを隠しているのだと。

     殆ど早歩き程度の速度で息を整えながら、誤魔化す為に呟いた。


    「少しばかり、信じられないんだ……ミネが死んだという事が……先程悪質なデマを聞いたせいかもしれないけれどね」

    「そうですか……」

  • 146125/05/04(日) 09:41:27

     こう言われてしまえば、向こうからは何も言ってこないだろう。
     所詮は疑惑であり、明確な証拠がある訳でもない。

     ……ハナコ辺りを連れてこられたら色々と不味いのだが、彼女も態々顔を出す理由が無い。

     少しばかり居心地の悪い沈黙が続いたが、静寂を裂く様に遠方から何やら破壊音が響き渡って来た。
     それどころか建物自体が少し揺れていないかい?

    「これって……」
    「全く、ミカを狙うとは中々肝が据わっているとは思うが……些か考え無しが過ぎるんじゃないかな? ああ見えて彼女は結構喧嘩っ早いんだからね」
    「ああ見えてって言うか態度そのまんまと言いますか……」

     進行方向から轟く戦闘音に思わず悪態を吐いていると、その音が徐々に大きくなっている事に気が付くことが出来た。
     またツルギが校舎を壊しているのかと考えていると、思った通りにツルギが校舎の壁を壊しながら現れた。

     だが、様子がおかしい。
     力無く崩れた瓦礫に寄りかかり、すぐに起き上がる気配も無い。
     更に普段は二丁持っている筈のショットガンを一丁しか握っていなかった。

     明らかに、誰かにやられている。

    「えっちょっと……ツルギさん、やられてないです……?」
    「――ツルギ!!」

     それは反射に近しい行動だった。
     脳裏に焼き付いた血溜まりに沈むツルギの姿が、瓦礫に沈む彼女の姿に重なって見えてしまった。

    「っ――セイア様!!」

  • 147125/05/04(日) 09:41:42

     即座に意識を取り戻したツルギからの忠告も遅く、ツルギが飛ばされてきた方向から闇夜を切り裂くマゼンタ色の光が視界を彩る。
     彼女はツルギのもう一丁のショットガンをまるで自分の物と言わんばかりに左手に構え、幽鬼の様にゆらゆらと此方に近づいて来ていた。

     脳裏を過るのは予知夢で見た仄暗く輝く鮮やかなマゼンタの光。
     全身が影の様に暗く、瞳と胸部だけが不自然に光り輝く。

     人の形をしていたことに驚きを隠せずに居ると

     彼女は、此方を見た。

    「アァ――」

     声が聞こえた時には、もう遅かったと言えよう。
     目の前の彼女の姿がブレたかと思うと、次の瞬間には眼前に迫っているように見えた。

     言い表せないほどの、命の危機。
     それだけを感じ取ることは出来たが、私に出来る事は反射的に瞼を降ろし僅かに身を守る事だけだった。

    「――……?」

     身を抱く様に体を守った腕に、想定していた衝撃は訪れなかった。
     どういうことなのかと、恐る恐る目を開けると――

     彼女は冷や汗を流しながら、笑っていた。

  • 148125/05/04(日) 09:41:52

    「まーったく、間一髪って所だよ? セイアちゃんに喧嘩なんて出来るわけ無いんだからさ、大人しく引っ込んどきなよ」
    「――ミカ」

     私に向けられていたショットガンを掴んで逸らし、彼女は格好付けながら答えてみせた。

  • 149125/05/04(日) 09:42:07

     僅かに拮抗した力比べだが見知らぬ彼女の方が優勢だが、ミカは逸らしたショットガンから手を放した。
     自由になったショットガンの銃身でミカを薙ぎ払おうとするが、予測していたのか屈んで躱し、ガラ空きになった胴体目掛けて思いっきりぶっ飛ばした。

    「……相変わらず、似合わない馬鹿力だね、全く」
    「あんなの余裕……って、言えたら良かったんだけどね……セイアちゃん今すぐ逃げて」

     一歩か二歩、ミカの方が上回っていると安心したのは束の間、ミカ本人からそんな弱気な言葉が聞こえた。

    「君の方が優勢に思えるのだが……」
    「全然……むしろさっきまで一方的に蹂躙されてたんだから……今のだって衝撃を逃がす為に自分から後ろに跳んでるんだよ? あり得なくない?」
    「それは……」

     言われて、気が付いた。
     そうだ、ミカがこの場に現れる前にツルギが文字通り吹き飛ばされてきたんだ。
     それなのに余裕などと……視野の狭さに嫌気が差した。

    「ちょっとトリニティ自治区全体を戦場にする訳にも行かないんだけどさ……最低でも校舎近辺からは皆を退避させてほしいんだよね。周囲の被害とか、考える余裕とか無いから」
    「……分かった、そこは任せてくれ」

     僅かな後悔に溺れる前に、ミカは私に役割を投げる。
     到底、彼女たちの戦闘に混ざれる気も無い。
     私は私の役割を――そんな風に思った時だった。

     校舎全体が、揺れ始めていた。

    「――ちょ、嘘でしょ!?」
    「えっ、えっ! い、一体何が起こってるんですか!?」
    「君!!」

  • 150125/05/04(日) 09:42:19

     ミカは大丈夫だと判断を下し、私の命令で連れてきてしまった同輩の腕を引く。
     ほんの些細な加護で、何も変わらないかもしれないが、咄嗟に体がそう動いてしまった。

     少しでも校舎の外に近づこうと動くが、あと一歩の所で天井が崩れるのが分かった。
     同輩の少女を守る様に床に引き倒し瓦礫から庇うように覆いかぶさる。

    「――がッ……!!」

     だが、不幸な事に一際大きな瓦礫がまず頭部に直撃し、私の意識を刈り取った。
     大きく目を見開く少女の顔を最後に目の当たりにしながら、情けなくも気絶してしまった。



     私が目を覚ました頃には、もう全てが終わっていた。
     だからこれからの話は何処までも又聞きで、伝え聞くお話に過ぎない。

     何処かで描写が盛られているかもしれないが……まあ、気にしないで聞いてくれよ。

  • 151125/05/04(日) 09:44:55

    と言うわけで今回はここまで!
    ミカがテラー化なんてする筈ないじゃんね☆
    それは似た状況が浦和ハナコにも予測できる事象だから……誰にも予測できない第三者からの介入でトリニティを崩壊させるね☆

    次からは私視点で物語は進行していくよ~!
    あ、最後にセイアちゃんが言ってるのはフレーバー的な意味しかないから気にしないで良いじゃんね
    みんなの勝利を――祈るね

  • 152二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 09:48:58

    てっきりミカかセイアがテラー化するのかと……
    疑ってすいませんでした

  • 153二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 13:43:36

    上と同じく、ミカかセイアが急に様々なもの失って狂うかと思ってた()
    すまねぇ

  • 154二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 13:46:54

    完全にミカ*テラーだと思ってましたごめんなさい

  • 155二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 13:48:53

    じゃあ誰なんだ…?
    ………まさかナギサ様が蘇生した?

  • 156125/05/04(日) 15:21:55

    >>150

     ほんの些細な油断……仕方ない事だったかも? でも、やっぱり油断。

     すぐさまこっちに攻撃を加えるんじゃなくて、姿を隠していた意味を察するべきだった。


    「――セイアちゃん!!?」


     降り注いできた校舎だった物を撥ね退けて、巻き込まれてしまった友達の名前を叫ぶ。

     その言葉に反応するように、少し遠くの瓦礫が動き、セイアちゃんを抱えたサンクトゥス派の子が這い出てきた。

     セイアちゃんの意識が無い姿を見て、ケープを繋ぐリボンを毟り取ってその子に投げ渡す。


    「セイアちゃんの代わりに、トリニティ校舎内から皆を避難させてくれる? パテル派の子達ならこれで動いてくれるし、セイアちゃんを神輿代わりにすれば他の組織も手を貸してくれるでしょ」

    「で、ですが――」

    「二度も言ってる時間、無いんだけど? 早く行ってくれない?」


     遠方から飛んできた瓦礫の軌道を変えて、セイアちゃんに当たらないようにする。

     投擲方向に向かって射撃はするものの、まるで手応えは無い。


     ようやっと事態を理解したのか、青い顔をしながらセイアちゃんを担いでこの場を離れるサンクトゥス派の子。

     零れそうになる溜息を飲み込み、急いで投擲元へと駆け付ける。

     既に激しい銃撃戦が繰り広げられ、ツルギが一人で抑えようとしていた。


     今ならば当てられるかと、横から乱射してみる。

     が、どう見えているのか驚くほどに銃弾が当たらない。

     躱されている。そう考えるしか無かった。


    「セイアちゃんみたいにチビなんだし、そろそろ息切れしても良くない?」

    「――余計な希望を抱くのは止めた方がいい」

    「……結構重い一撃喰らってたと思うんだけど、大丈夫なの? 急に倒れられたりしたら流石に不味いんだけど」

    「凡そは治った……だが」

  • 157125/05/04(日) 15:22:12

     手榴弾を至近距離で爆破し、土煙が上がっている内にツルギがコチラに引いて来る。
     撃ち尽くしてしまったのかリロードをしているが、その動きからも怪我に因るような淀みは見られない。

     奪われていた筈のショットガンも取り返し、再び戦線に復帰してるのは流石正実の委員長だと言わざるを得ないが、その表情は暗い。
     それもその筈、硬くて強い人は幾らでも見てきたが、不要な攻撃には回避するよう動き回る敵はこのキヴォトスでは滅多に見られない。

     銃弾の当たる先を見定める空間把握能力、それに対応した動体視力、避けようのない攻撃に対しての反射神経……どれを取っても異常な物だ。

     土煙が晴れる寸前、背筋に悪寒が走る。
     ツルギに声をかける余裕などなく、その場から離れるよう咄嗟に横に跳んだ。

     次の瞬間、マゼンタ色の光を纏った銃弾が瓦礫を抉りながら先程居た場所を消し飛ばしていた。

    「……あんなの喰らって良く無事だったね、ツルギ」
    「流石に何発も喰らえば戦線復帰が遅くなる……次来るぞ!」

     土煙が晴れる頃には銃口を上に掲げ、マゼンタ色の光を収束させていた。
     ロケットランチャーの様に撃ってくるかと思いきや、一瞬にして光が銃口に集まり一点の輝きへと変貌していく。

     ――そして、目が合った。

    「――ッッッ!!」

     咄嗟に銃を盾の様に縦に構え、衝撃に備えた。
     レーザーの様に繰り出された攻撃は私の羽を焼き、銃身にもかなりのダメージを与えた。

  • 158125/05/04(日) 15:22:28

    「――あははははっ☆ 危うく丸焦げになる所だったな!!」
    「キィヒャハハハハハハハハッ!!」

     確かに痛い。思わず膝を折ってしまいそうな程に。

     だが、その程度だ。

     その程度の強さでトリニティを壊そうなどと、片腹痛いと言うものだ。
     私に攻撃が集中すれば、その分ツルギがフリーになる。
     奇声を上げながら突撃するツルギに、相手も完全に捌くことは出来ていない。

    (……けど、確かに不味いね)

     確かにこれを続けることが出来れば、相手を倒すことも出来るだろう。
     けれど、それは私とツルギ、どちらも倒れないことが大前提としてある。

    (正直……他の子達じゃあの攻撃、受け止めきれないよね……? 最悪、ヘイローが――命を落とす危険性だってある)

     脳裏に過るのは、数日前から依然として頭から離れることの無い、ナギちゃんの姿。
     そんな遺体を量産する可能性は、ナギちゃんはきっと認めない。
     自身が頑張れば全てを救える可能性があるなら、それに賭ける。

     ――賭けてしまったからこその、あの姿なのだ。

     だから、私は。

  • 159125/05/04(日) 15:22:38

    「――ハスミちゃん、聞こえる?」

     全てを賭してでもナギちゃんが守りたかったものを守って見せる。
     だから、ごめんね?

    「正実全部隊、戦闘態勢でパテル派寮の西側に展開して貰える?」

     貴方達の命、ちょっと借りるね?

     私の命も、しっかり賭けるから。

     インファイトを仕掛け、再び吹き飛ばされたツルギに追撃しようとする敵の顔面に銃撃をお見舞いする。
     すぐに対応されるが、ツルギへの追撃は失敗し、こっちにターゲットが移行した。
     まだ通話中の端末を飛んで行ったツルギの方に適当に投げ、銃を構えなおす。

    「貴方が、何処の誰だか知らないけどさ――」

     足元の瓦礫を一部蹴り飛ばし、その隙間を縫うように銃撃を繰り出す。
     僅かに逡巡した隙に距離を詰め、銃弾瓦礫から避けようとしてガラ空きになった脇腹に向かってミドルキックを叩き込んだ。

    「あんまりトリニティを、舐めないでよ」

     吹き飛んだ先ですぐさま態勢を整える敵から、先程よりも強烈な敵意を感じるようになる。

     丑三つ時は過ぎたが、まだ朝焼けには遠い。
     戦いはまだ始まったばかりだった。

  • 160125/05/04(日) 15:25:05

    と言うわけで今回はここまで!!
    いやあ……公式がやってる技もう全部使い切っちゃったじゃんね……こっから戦闘方法を確立するとか正気じゃんね……?

    と言うかマゼンタなんだからセイアちゃんの可能性は最初から排除されてないかな……?
    あとナギちゃんの蘇生は余りにも人の心が無さ過ぎじゃんね
    そうなったらトリニティ滅ぶじゃんね

    こっからどうやって勝かは私も分からないから……祈っとくね☆

  • 161二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 15:28:59

    まさかホシノ*テラー?

  • 162二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 15:32:48

    身長低くて機動性高くてショットガンを使い慣れてるってなんかホシノ*テラーっぽいけど…それならなぜトリニティ襲撃してるんだ?
    黒服がなんかやったんだろうか

  • 163二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 15:33:31

    テラー化は未だに謎が多いからね
    髪色が変わるのか、そもそも見た目はどれ程変わるのか、なにも分からないからどの可能性も捨てきれないんだよ()
    セイアくらいのちっちゃい子……さて、誰かしら

  • 164二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 15:46:40

    セイアと同じくらい…ナツ?

  • 165二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 16:41:42

    小柄でマゼンタはトリニティ外なら思い当たるが…

  • 166125/05/04(日) 17:07:56

    なんか思いのほか深読みされてるから明言するけどホシノ*テラーじゃんね
    作中内で名前出るか怪しいから先に言っとくじゃんね、敵が誰とか正直本筋にかすりもしてないし

    ちょこっと裏話だけど、マエストロが地下生活者に対して崇高を見たと散々自慢話されて自分も見てみたらこんなもん崇高なんかじゃねえとブチ切れてホルス反転に動いたのがざっくりとした経緯じゃんね
    だから先生はトリニティに来れないんだね
    ホシノ*テラーがトリニティに来てるのは地下生活者とナギちゃんのせいじゃんね
    ナギちゃんに関して言えば事故みたいなもんだいから許して欲しいじゃんね……

    ざっくりとそんなところで、大切なのは現状だとホシノ*テラーを止める術が無いって所と、トリニティ側は殺してでも止める気でいるって所じゃんね
    既にテクスチャが剥がれかけて、テキストは僅かに書き換わっているから何が起きても大丈夫じゃんね、知らんけど

  • 167二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 17:10:25

    話は聞かせてもらった!
    キヴォトスは滅亡する!

  • 168二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 17:14:56

    「おれたち(キヴォトス人)は……何もかも…… 何もかも遅すぎたんだ……」

  • 169二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 17:21:07

    あっ、つまり先生と他のアビトスの生徒たちはセトの対応に追われててそっち行けないのね
    時系列的にクロコもいないからホシノ*テラーがフリーになって何らかの理由でトリニティに来ちゃったと

  • 170二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 00:09:21

    そっか前提として最終編が無くなって下手したらシッテムの箱はプラナかもしれないのか

  • 171二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 08:06:37

    保守

  • 172二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 10:07:06

    本当に関係ないところからぶん殴られるなんて予想できなかったじゃんね

  • 173125/05/05(月) 11:00:04

    >>159

     右、左、右、左と。

     まるで円舞曲でも踊るかの如く絶え間なく攻撃が続く。

     厄介な事に易々と引き金を引くことは無く、銃身を含んだ格闘でこっちの明確な隙を生み出してから止めを刺すつもりなのだろうと容易に想像できた。


     こんな持久力任せの戦い方、到底息切れは狙えそうも無かった。

     むしろこっちが先に倒れちゃうだろうと、そう考えて。


     脇腹を差し出す様に隙を晒した。


    「――オグッ!?」


     私が放ったミドルキックの焼き直しみたいに、彼女の蹴りが深々と私に突き刺さる。

     威力そのままに後方に逃げ、目的地のポイントまで急ぐ。


     きっと奴は私を見失うことは無い。

     答える様に、表す様に、背後から嫌な破壊音が響き渡るのは、出来ればもう少し後が良かったかな……☆


    「ハスミちゃん! 準備どう!?」

    「ミカさん……!? まだ展開は半分程度しか完了して――」


    「ほんとごめん! もう連れてきちゃった!!」


     ランデブーポイントである広場を中心に、まだ崩れていない建物や狙撃地点に部隊を配置している途中で目標対象を連れてきてしまった。

     少しばかり堪え性が無かったかと、反省する。


     ――刹那、視界の端にマゼンタ色の光が瞬き全身に悪寒が走った。

  • 174125/05/05(月) 11:00:20

    「全員斉射!!」

     ここ迄かと思った直後、私の背後目掛けて銃弾が飛び交う。
     ハスミちゃんの号令のおかげだろうが、少なくとも事前に標的に対して銃口を向けていたのは事実のようだった。

    「グゥ――」
    「漸く、手応えありって所かな……?」

     確実にこっちを仕留めにかかっていたせいか、大きな隙を晒していたのだろう。
     少しばかり怯みながら物陰に隠れてしまった。
     その間にハスミちゃんが居た方向に向かって走り、急いで合流を果たす。

    「あっははは! あのバケモノにちゃんと効いてたよ! 流石正義実現委員会!」
    「ミカさん……怪我の方は大丈夫でしょうか?」
    「うん、まあ、ちょっと折れてるかもしれないけど……他に前出れるのってツルギくらいでしょ?」
    「それは……」

    【は、ハスミ先輩!! た、助け――】

     そんな僅かな掛け合いの最中、ハスミが持っていた端末から悲鳴と呼べる叫び声が聞こえてきた。
     即座に表情を切り替え端末から送信元を確認すると、物陰から姿を晒して其方を見た。
     それに習うように私も顔だけ出して周囲を見渡す。

     何時の間にか建物内でマゼンタ色の光が瞬き、悲鳴と銃声がほんの少しだけこっち迄届いていた。

    「――全隊、建物内から離脱を! 狙撃班は当てなくても構いません、少しでも意識を外に向けさせなさい!!」

     すぐに命令を下し、答える様に光に向かって弾丸が突き刺さるが、仄暗く闇を照らすマゼンタは止まることなく皆々を飲み込んでいく。
     呆然とする頭に、あの日ナギちゃんの姿が思い起こされた。

  • 175125/05/05(月) 11:00:34

    『――たかだかミサイル程度の妨害で、私が折れていい筈が無いんですよ』

     それは、反省部屋に閉じ込められていた私を呼び出して最初に見たナギちゃんの姿で。
     動揺するアリウスの子達を惑わす精一杯の強がりで。
     とっても大きな背中だった。

    「ごめん、ハスミちゃん」
    「えっ?」

     ランデブーポイントの予定地に足を運び、今尚駆け回る暗い光に向かって足を曲げる。

    「時間、稼ぐから。みんな連れて、逃げて」
    「――っ、待っ」

     続く言葉を聞き入れず、私の体は弾丸の様に建物に侵入する。
     割れた窓ガラスの音に反応し、目の前の正実の子たちから目を離すバケモノ。

     狭い廊下だ。
     ここで撃たれたら一溜りも無いだろう。
     奴もそれを把握しているのか、一切の躊躇なくこっちに向かってショットガンを構えた。

     だから、どうした。

    「ぐうぅっ、りゃああああっ!!」
    「ガアッ!?」

     突撃に合わせて連続して発射される散弾を両腕で受け切り、懐に潜り込み全力のアッパーを鳩尾に叩き込む。
     天井にめり込んだ奴の姿を見て、すぐに正実の子達に叫ぶ。

    「ここは私が食い止めるから!! だから、逃げて!!」

  • 176125/05/05(月) 11:00:49

     私の作戦ミスで、潰れそうになったのだ。
     ならば、私が身を粉にしてカバーする他ないだろう。
     わたわたと逃げてくれた子達を横目に、私から距離を取るバケモノ。

     やはりそうだ。
     奴は不死身ではない。
     倒すことは――殺すことは出来るのだ。

    「あはっ☆ もうまどろっこしいのは抜きにしてさ――殺し合おうよ、全力で」
    「――ウゥ」

     唸り声を上げるバケモノに銃弾をばら撒きながら接近する。
     全て屈んで躱されるが、その位置ならば蹴りが入ると足を刺すが、こっちと入違うように躱され、ついでと言わんばかりに銃身で殴られる。

     痛みは僅かだが、少し嫌な予感を感じる。
     先程喰らったミドルキック、その位置と逆側を銃身で殴られたが、感覚的にシンメトリーに近しい位置を殴られている。

     ……唸り声しか上げてはいないが、もしやすると下手に理性が残っているのかもしれない。
     もしくは本能で動いても常に同じ部位を攻撃するように迄訓練した成果か。
     どちらにしても、碌でもない話だ。

    (長期戦は無理そうだね……なら!!)

     隙を作りだし、一気呵成の猛攻で一息に押し切る。
     その為には如何にかして隙を生み出さなければならないし、銃弾も無駄遣いは到底出来やしない。

     腕力でも負けているのだ。
     マウントを取って殴り殺すというのは余りにも非現実的と言えるだろう。

  • 177125/05/05(月) 11:01:01

     私は構えを解いた。

     無防備な姿で奴に一歩一歩距離を縮めていくが、何処か不気味に映ったのかバケモノは自ら距離を離していく。
     やはり理性は残っているのではと勘繰りながらも、歩調を変えずに距離を詰めていく。

    「ガアアッ――!!」

     間に合うと踏んだのだろう。
     ショットガンを空に掲げ、マゼンタ色の輝きを銃口に集めていく。
     一度見た攻撃、レーザーの様な一線を描き全てを焼き壊す摩訶不思議な大技。

     ――私は変わらず、ただ一歩一歩距離を縮めるだけだった。



     一点に収縮した光は直線を描きながら建物ごと破壊していく。
     崩れ行く天井をショットガンで吹き飛ばし、建物の崩壊を待つ。
     砂塵舞う周囲からは、生き物の気配は感じられない。

     ――本当にそうだろうか?

     あの女ならばまだ息の根がある筈だ。
     瓦礫からすぐにでも這い出るはずだ。
     そんな思いから奴が居た地面を眺めるが。

    「――シッ!!」
    「ガッ!?」

     空から降って来た天使に気が付くのは、既に一撃入れられた後だった。

  • 178125/05/05(月) 11:03:44

    一旦、ここまでじゃんね
    ブルアカの戦闘描写って難しいじゃんね?
    個人的に隕石を唐突に降らすのは解釈違いだから自ずと格闘戦メインになっちゃうじゃんね、ナニコレじゃんね

    実際、私がテラー化する場合は、トリニティを再び裏切る展開を予想で切れば似たような流れになるから浦和ハナコでも読める可能性が生まれるじゃんね
    だから小鳥遊ホシノに出張って来てもらうじゃんね

  • 179二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 11:21:06

    殴り合いはなんやかんや一番映える

  • 180二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 11:25:40

    ミカ、まさか死ぬ気じゃないだろうな?

  • 181二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 20:39:26

    保守

  • 182二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 00:06:05

    上にいたのはツルギ、でほんとにいいんだろうか

  • 183125/05/06(火) 00:14:58

    >>177

     顔面、とりわけ脳天に向かってサッカーボールキックを放つ。

     これならば確実に頭は揺れるはずだ。

     大の字になって倒れ行く奴の両腕を抑える様に乗り、顔に向かって全弾発射する。


     だがすぐに残弾が尽きる。

     思わず舌打ちしてしまうが、まごついている暇はない。

     的確にリロードを行いながら執拗に右腕を蹴り潰すが、奴がショットガンを手放す気配が無い。


    「……――ガアッ!!」

    「うわっ!?」


     リロードが完了する前に奴が叫ぶ。

     呼応するように謎の爆風が起きて、折角得たマウントポジションから剥がされてしまう。

     ……けれど、ダメージは確かに稼いだ。


     これならば――


    「うっ……」


     先程直撃した攻撃が痛み、呻き声が漏れる。

     防御を一切捨て、振り上げられたレーザーと爆風をその身で受け、自然と舞い上がった体を同じように飛んできた足場を踏み台にしながら空からの奇襲を仕掛ける。

     成果は確かに出た。けれども、これは……。


    「……あはははっ。折角の隙だったのに、如何して襲ってこなかったのかなあ?」

    「……」


     頭の中で叫ぶ生存本能を叩き殺し、煽る様に笑って見せる。

  • 184125/05/06(火) 00:15:11

     先なんてどうでもいい。
     今の私に課せられた使命は――。




     目の前の奴を殺す事だけだ。

  • 185125/05/06(火) 00:15:30

     ほんの僅かに腕が動くのを見て、即座に距離を詰める。
     軌道的に銃のリロードだ。
     だが目の前の奴は理性の有るバケモノ。

     今まで一度も見せていなかった速攻だと言うのに、奴はそれすら対応してきた。
     恐らく銃弾を握っていた左手を握りしめ、燃え盛る炎のような光を拳に纏う。

     リーチ、体格差、コンマ数秒の差ではあるが、確かに結果に明確な差を生み出す。
     本能的に同じように左拳を握り、奴に向かって振りかぶった。

     奴の思惑は計り知れないが、私に答えるように奴の左拳は私の左拳目掛けて振られていた。
     破壊力を考えれば、私の行いは何処までも愚かな行為だろう。

     上等だ。賢しく勝てるなんて、一片たりとも考えちゃいない。

     拳が衝突した直後、左側が腕ごと吹き飛んだような錯覚を起こした。

     否――千切れてはいない。
     私よりも小さな拳が私の拳を推し進め、指が変な方向に曲がって腕の骨や腱がズタズタになっているような気はするが――折れていない。

    「――あっはははははははああっ!!!」

     奴は全力でこっちにぶつかって来てくれた。
     明確に生まれた隙なのだ。

     無理に空けた右腕を動かし、フルマガジンの銃口を奴の顔に向ける。
     漸く気付いた奴だが、もう遅い。
     ぐちゃぐちゃになった左腕で奴の握り拳を掴み、一瞬でもこの場に縛り付ける。

     舐めるなバケモノ。貴様は人の手により討ち取られるのがお似合いだ。

  • 186125/05/06(火) 00:15:44

     全弾叩き込み、奴の左拳の勢いも失せて来る。
     溶け合いそうな左手と拳を切り離す様に銃身で奴の左腕を叩き上げる。
     当然、両者共崩れ落ちそうになるが、まだ行ける!

     左腕を瓦礫に突き刺し、生み出した軸に合わせて足を振るう。
     奴の僅かに浮いた足を刈り取り、転倒させる。

     更に追撃を――そう息巻く前に奴は俊敏な動きで体制を立て直し警戒するようにこっちを睨む。
     その口元には、マゼンタ色に輝く――紅い紅い血が流れていた。

    「……っぷ、あはははははっ!! バケモノと言えど、同じ血が流れてるんだね――確信が持てて嬉しいかな☆」

     ヤれる。ヤれる。ヤれる!
     左腕を支えにしながら、何とかリロードを終えて素直に笑う。

     少しばかり、殺せる確信が無かった。
     実は超常的な存在なのではと、ほんの少しだけ臆病になりかけた。

     だが、違った。

     私たちと同じで血を流し、私たちと同じで限界があり、私たちと同じで終わりがある。
     その事実だけで何処までも戦えそうだ。

     相手とは比較にならない程の出血をしている自覚はある。
     けど、負けやしない。
     このまま戦えば先に倒れるのがどちらかなぞ明白だ。
     けど、負けやしない。
     気力、体力、精神力、全て燃え尽きてしまうのは、何方が早いだろうか。

     だけど、負けやしないのだ。

  • 187125/05/06(火) 00:15:56

    【――分隊、突撃!!】

     しかし、私の決意は明後日の方向から聞こえてきた声によって挫かれてしまった。

    「「「突撃ーーっ!!」」」
    「えっ、ちょっと貴方たちって――」

     まるで空気が入れ替わる様に、三者三葉のタイミングで奴に突っ込んでいく正実の子達。
     その中には先程私が声をかけた子もいた。

     案の定、奴に軽くあしらわれ、ついでと言わんばかりにショットガンを喰らったり殴られたりと、再起不能の状態に陥っているが、それを助けようと動く前にもう一人の正実の子に手を引かれていた。

    「ご、ご無事でしょうか! ミカ様!!」
    「いや私よりもあの子たちを――」
    「そんな怪我してるのに後回しになんか出来るわけ無いじゃないですか!? 大人しく引いてください!! ツルギ委員長の命令でもありますから!」
    「……ツルギの?」

     ちらと後ろを振り返ると、人海戦術で奴の足止めを続けていた。
     ならば、これは私を救う為の犠牲なのだ。

     ……少し不服だけども、助かったことには間違いない。
     後ろ髪を引かれる思いをしながら、その場を去る。

     もしもここに鏡があれば、ミカは自身のヘイローから急速に光が失われて行くのを目の当たりにすることになっていた。
     ナギサがあの時に見せた強く強く光り輝やく瞬きを、失う様を。

  • 188125/05/06(火) 00:19:16

    という事で! このスレはここ迄じゃんね!
    あと10スレ程度あるけど、更新が微妙になりそうだから我慢じゃんね

    いやあ……どうして私はこうもバチバチの殴り合い描写してるじゃんね?
    というかプロットに無い負傷を生やすのは止めるじゃんね、整合性合わなくなったらどうしてくれるじゃんね

    さてそんなことより、次回のスレ画はみんなで並んで映ってるよ!
    最後になると……最後になると良いじゃんね……?
    筆が乗りまくって適当に書きまくらないことを――祈るね?

    いや自重しろって話じゃんね、祈るな――!!

  • 189二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 00:21:36

    このスレの更新は終わりか、なんやかんや早かったな
    まだまだ楽しみは続くがね!!

  • 190二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 07:08:05

    ハッピーエンドは無理でもせめて何か救いがありますように

  • 191二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 14:28:28

    保守

  • 192二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 22:17:24

    一応保守

オススメ

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