【オリキャラ注意】先生は塞翁が馬という言葉を知っているかな? 外

  • 1二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 21:37:09
  • 2二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 21:37:49
  • 3二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 21:38:24

    少し見やすいように文を改良したと思います
    よろしくです

  • 4二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 21:38:43

    ホスト規制治ってよかった

  • 5ラストトーク25/04/23(水) 21:39:17

    ―――誰?
    言われた人については全く知らない、本当に誰……?

    「知らないのか?」
    「知らないっす」
    「そうか……」

    なんでイノリそんなに悲しそうなんだ

    「すごいっすねあの超人の連邦生徒会長が選ぶとか…まぁ連邦生徒会長とかニュースでしか見たことないっすけど」

    とてもすごい人なんだなぁとしか分からない、世間に疎いと言われたら否定はしないが…そんなニュースあったっけ?

    「説明するのはめんどくさいな……その人に会ったらまた聞けばいい」

    少ししょんぼりしながら切り替えるように喋るイノリ

    「そのうち会えるさ」

    ニヤリとまた笑っているような感じがする…今更だがこの蛇、感情豊かすぎる

  • 6ラストトーク25/04/23(水) 21:40:03

    「それで?ここからどうするんすか」

    ラストトークというのが気になるが、あの事態を放っておけない
    険しい顔をする私を見つめ

    「まぁこの会話もそろそろ終わりだな…言いたいことは言ったし、帰らせるか」
    「―――へ?」
    「なんだ、嬉しくないのか?久しぶりの『本物』を見れるんだぞ」

    本物…そうか、ずっと居て感覚がおかしくなってたが私がいつもここでみてたものは本物じゃない、私を絶望させるための……ただの偽物だ
    ―――いや思考を逸らすな、それよりも…だ

    「なんで、私を普通に帰らせようとするんすか……?」
    「ん?それはさっきも言ったが負けたからだよ」

    それが……よく分からない…分かる分かるけど分からない

    「負けたら…そんな、あっさりと」

    なんなんだろうかこの湧き上がるこの思いは
    「あぁ、負けたんだからな、潔く認めるよ」

    違和感があった
    それは多分『こっち側』の『私』の方の違和感だ

  • 7二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 21:40:14

    まってました!

  • 8ラストトーク25/04/23(水) 21:40:39

    「そ、そんな……そんな」

    寂しさがあった、でもそれは永く共に居た故の感傷だ
    じゃぁ最初は?最初は何を思ったんだ?
    ここまで走ったのは何が理由だ?

    「どうした?」

    無限と思えるほど永い…時間を、苦痛を与えて、はいそうですかとならない
    呆気なく、こんなにも呆気なく帰れたってこの思いは消えない

    「そんな!簡単に!帰れるって言われても納得しないっす!!」

    怒りが溢れる
    そうだ、私はこいつに怒りたかった、そうだったはずなんだ
    忘れてた、ここに慣れ過ぎて…か?
    最初の理不尽に晒された思いを忘れてた
    怒りがあったんだ、確かにそれはこの胸は『怒り』のカタチをしてた
    この蛇に…神に……怒りたかった

    「勝負してくださいっす」

    でも、思い出した…やっとだ
    でもこれでいいのかと言う思いもある
    それはイノリの話を聞いたというのもあるし、それは長い間居たというのもある
    だけど、それでも納得しきれない自分が居た

    「非効率だな、そんなに私が嫌いか?……まぁ嫌われることはしたと思ってるが」

    あいも変わらず軽々しい態度を崩さずヘラヘラと…ヘラヘラとしてるイノリがそこに居た

  • 9ラストトーク25/04/23(水) 21:41:46

    「そもそも、私に何を求める?正式な決闘か?こんな蛇に?」

    チロチロと舌を這わせ語る蛇

    「……人型には成れないんすか?」
    「成れないな、名を明かされて力もほとんど失った状態だ……無力な蛇である私自身本来の姿の状態をずっと晒してるのが証明になってると思うが」
    「た、確かに……それもそうっすね」

    こ、こんなに言われるとそうだ……と納得しかける

    「で?そんな蛇に対して君はどう戦うんだね?それとも無力な弱者を痛めつける趣味が?」
    「そんなのはないっす!」

    はァ……とため息つく様子をして蛇は言う

    「ではどうするんだ?思考するのは君の気が済むまでしてもいいが、あんまりしすぎると帰る時間も無くなるぞ」

    ―――この蛇は本当に…イラつく!
    これじゃぁずっと負けっぱなしだ!そもそもここまでこいつに口論で勝ったことなんてなかった、だからこそ…絶対に「分かってるんだろう?」
    「……」

    ゆらゆらと首を振り

    「遅すぎる、その感情は…お前はもう私を嫌いきれない、ここで吹っ切れて私を殺せばまだよかったものの…その顔だとそんな発想も出来なさそうだな」
    「でも……納得いかないっすよ」

    そうだ、私は1回も神に勝ったようなことなんて……

    「そうか?私はもう証明しきっていると思うが」

  • 10ラストトーク25/04/23(水) 21:42:36

    ―――なにを言ってるんだこの蛇

    「私に勝ってるという証明だよ」

    は……?
    なに、言ってるんだこの蛇

    「そんな……そんな場面なんて!」
    「場面でしか物事を語れないのか?全体をみろ」

    ないと言おうとした言葉を蛇が押し込める
    そしてこんなことも気づけないのかと、ため息つく蛇は一言

    「エミコ、君はずっと諦めなかっただろう?その精神性だけは完敗さ」

  • 11ラストトーク25/04/23(水) 21:43:32

    「そん……そんなことあるすっか?」

    そんな私だけを納得させるような言葉をかけられても意味なんて……分からない
    急になんだ、本当になんなんだこの蛇は!

    「あるさ、少なくとも私の考える限りの嫌がらせをして折れずにこんなにも真っ向から立ち向かうのは神隠しにあった人の中で君1人だけだ」

    それでも

    「でも…そんなで勝ったとは」「言えるさ、私が同じことを受けたらすぐに廃人まっしぐらだね」

    あっさりと、そんなことをいうイノリ
    いや…こいつはそう言うやつだ、あっさりと淡々と普通じゃ言えないようなことを言う

    「それにそんなことをしてきたやつを嫌いになりきれないなんて、にわかには信じられないな」

    それに関しては、なんか色々まだ言いたい気もするけど……
    ヘナヘナと……気力が無くなっていく感覚がする、さっきまでの心の勢いが無くなって感情の爆発が湿気ってしまう

    「なんだ……もう勝ってたんすか」

    そうなると……もう納得するしかないじゃないか
    さっきまで熱くなってた私が馬鹿みたいだ
    急速に冷える感情、冷たくなった鼓動の中で呟いた

    「ずっと負けっぱなしだと思ってたんすけど…勝ちっぱなしだったらしいっすね」


    「あぁそうだ、凄いやつだよ、君は」

  • 12ラストトーク25/04/23(水) 21:43:51

    出来のいい生徒を褒めるわけでもなく、成功したものを賞賛者のように讃えるようでもなく

    ただ……本当にあっさりと淡々に

    「ずっと見てきたからな、凄さはもう分かってる」

    そうイノリは言い切ったのだった

  • 13ラストトーク25/04/23(水) 21:44:42

    ……
    …………!!

    「ああああああああぁぁぁもう!!いいっす!」

    そこまで言われるとこっちが恥ずかしい!!
    顔が熱くなりすぎて脳が熱暴走しそうだ!

    「そこまで言われるともう!帰ります!帰りたくなっちゃいますっす!!!」
    「はァ……その感覚はよく分からないな」

    なんだかその毒舌も……今は素直に反抗出来ない

    「いいっすから!もういいっすから!!」

    気を紛らわすように顔と手をブンブン振ってNOの意を伝えようとする私を見てイノリは

    「……色々と残念な子だな」

    と首を振って呟いたが、私には全く聞こえなかった

    「それじゃ、開けるぞ」

    そうイノリが呟いた




    その時
    『黒』がイノリを飲み込んだ

  • 14ラストトーク25/04/23(水) 21:46:07

    「いのーーーッ!!」
    「馬鹿が、とっととこの場から離れろ」

    言葉の引力に引き寄せられるように窓から黒が迫るこの教室から去る
    ―――それにしてもその声は

    「イノリ!?」
    「あぁ……そうだ」
    「これは…結構、厄介なことになったな」

    ど、どこから声がしてるんだ……?声だけは聞こえるが姿が全く見えない

    「ん?姿か?ここだよ、ここ」

    ぴょこと姿を胸ポケットから表す

    「な……なんすか!それ!!??」
    「緊急用に胸に忍ばせてあった私だよ、本体はあの黒の中だ」

    ぴょいぴょいと指を指すように顔を向けた方向には

    「―――は?」

    なんで緊急用があるんだとか、分身出来たのかよとか、本体が飲み込まれたってなんなんだよとか、そんな色々の疑問が全て吹っ飛ぶ
    そこには…蛇が居た、いや蛇は違う…だが蛇と言った方がいいだろう、それ以外にそいつを表す言葉なく、ただ蛇というには……

    「大きすぎる……す!!」
    「デカグラマトンとはな……厄介な記憶を読んでしまったよ……」

    ちっちゃな蛇は頭が痛くなったと言わんばかりに首を振った

  • 15ラストトーク25/04/23(水) 21:47:44

    蛇のようにうねる黒が間髪入れず迫る

    「―――ッ!!」

    黒が私達を飲み込むように
    それを、黒に飲み込まれていってる屋根を足場として飛び移り何とか凌ぐ

    「あの黒蛇を倒す方法は1つ、殴れ」
    「はァ!?」

    色々手一杯なのにこんな状況で何言って

    「―――ッ!」

    疑問を入れる余裕すらない、黒は私達を狙って次々とこちらに迫る
    ―――このままだと、足場がなくなってそのうち…黒に

    「飲み込まれるだろうな、そうなると君は帰れなくなるぞ」
    「そん……ッ!」

    言葉を放つ隙すらない状態、頭の中で終わりというサイレンが鳴る

    「だからこそだ、あのデカい蛇を殴れ」

    ―――そうはならないでしょ!!

  • 16ラストトーク25/04/23(水) 21:48:50

    「そうはならないと考えてるな?」

    ぐ……この蛇ちっちゃいのに考えを見透かして的確に突いてきやがる……!

    「まぁそう思うのは無理ない、簡潔にだが、説明するぞ」
    「まず、あの蛇は私を…神の力を取り込まうとしてる」

    疑問の言葉を挟む余裕などない、ただしっかりと言葉を聞かないとえらい目に合うだろう

    「さっきも言ったがアレは元の状態に戻ろうとする自浄作用のようなものだ」

    そこまで言ってないだろこいつとは言えない…睨む程度が精一杯だ
    そんな睨みも効かない蛇は淡々と喋る

    「だからこそ、神という力を持ってる私や君を狙おうとしてる…ここまではまだ分かるな?」

    ―――まぁいくらか疑問があるが分かる

    「それで君を帰すのには神の力が必要なのだが、その大部分の力を持ってる私本体が飲み込まれてしまった」
    「消化には時間がかかるだろうが恐らく、十数分で消化しきるぞ」
    「―――ッ!!」

  • 17ラストトーク25/04/23(水) 21:49:25

    それじゃ、帰れない!

    「そうだ、だからこそあの黒蛇に私を吐き出して貰う必要がある」

    話が見えてきた……つまり

    「そのためにエミコ、君のその力であいつをぶん殴れ、君の力があれば吐き出させること位はできるはずだ」

    なんでさ!?と心の中で吐き捨てる

    「簡単な理屈だよ、あの黒蛇がやってることは要は食事だ、君は殴って消化されそうになってる私の本体を吐き出させればいい」

    ぐ…そう…なのか?疑問が収まらない気がするが、思考を切り替える

    「それはいい作戦だと思うっす、だけど…」

    動くと体力は消耗する、これはあらゆるものに通じることである
    そしてこの体は知ってる…黒蛇までは届かないと、届かず力尽きるのが関の山だと

    「でも……そんなのは分かってるんすよね?」

  • 18ラストトーク25/04/23(水) 21:50:16

    語りかける
    蛇は答えない

    「何か私の知らない作戦や切り札があるならさっさと教えてくださいっす!」

    姿はみてないのにそのユラユラと首を揺らす蛇の姿だけはわかった

    「―――覚悟はあるか?」
    「ある」

    即答、こんなの考える必要も、意味もない
    何を思って覚悟の所作を問いただしたのかは知らないが、もう覚悟なんてとっくの昔から出来てる
    蛇はただ

    「これだから君は好きじゃないんだ」

    と笑いながら話した
    友人に語りかけるようなフランクな語りで

  • 19ラストトーク25/04/23(水) 21:51:12

    「5秒、休息をしろ、勝ちを作る」
    「ガッテン承知っす!」

    一切の疑問を考えを捨て、5秒の休憩を模索する
    こんな屋根ばっかり移動しても意味は無い
    ならばどうするか?
    答えは単純、建物に潜る
    迫る黒を尻目に地面を……屋根を叩いた
    ベキベキッ!と悲鳴を上げ崩れる、とまではいかずとも建物は壊れる
    完全に飲み込まれる前に1番時間を作れそうな部屋に潜り
    5秒間……ここで休息をとる、完全に体を放置し、心を落ち着かせる
    1秒、イノリに動きがあった蛇が胸ポケットから出た感触がする
    2秒、ニュルニュルと胸から首にかけてイノリが移動する
    黒が部屋に侵食する
    それを知りながらも3秒、体は最大限休ませるように動かさない
    4秒、精神を落ち着かせる…決めた覚悟を確認した
    5秒、勝機に移動した蛇は耳にイヤホンのようにへばつく
    ―――何かが接続された感覚

    「上出来だ、突き進むぞ」

    足に黒がかかった瞬間

    合図が出た

  • 20ラストトーク25/04/23(水) 21:53:32

    爆音が響く、それが決してものが爆発したとかでなくただ人がジャンプした音と言われてもいくらこの世界の人とは言え信じられないだろう
    音を響かせた少女は

    「うぇ!?なんすか!!!?」

    ただ自身の力を驚愕してた
    その力にイノリは

    「リミッターを少し解除した、多少動き易くなっただろうが使いすぎると体が先に力に耐えきれず死ぬぞ」

    淡々と恐ろしいことを言うが、いつもの事だ

    「制御と指示はこちらで、操作は任せた」

    応答は必要ない黒蛇まで残り500m
    そこまで進む覚悟だけが必要だ

  • 21ラストトーク25/04/23(水) 21:53:51

    「東85°にある建物を掴み、飛ばせ」

    上空落下、浮遊感を味わいながら手短にあった建物を掴み、上空へと飛ばす
    ―――腕の線がちぎれ、痛みが走る

    「耐えろ、次斜め54度落下地点」

    考えることは破棄しろ、指示に従順に従えなければあるのは黒に飲み込まれる死だけだ
    落下起動を少しずらし、落下地点へ落ちる

    「次南168°飛び移り西258°の建物を掴み飛ばせ」

    思考を停止した体は本能に従うように体をしなせる
    脳はイノリの言葉を反響し、私に体を動かし方を突き刺す

    「ーーーッ!!」

    勢いよく投げる、腕の線がちぎれ、痛みがまた走るが無視だ
    この瞬間に感情は意味が無い、機械のように脳を捨て指示を扇ぐ

    「足場は完了だ、『乗れ』」

  • 22ラストトーク25/04/23(水) 21:55:08

    機械のように研ぎ澄まされた脳は言葉の解を瞬時に導く
    落下していく足場に乗る

    「壊して進め、それが次の足場だ」

    1歩進める事に足を踏み込ませ足場を壊す
    バラバラに壊された足場は次なる足場として上空に飛ぶ
    その足場というには不安定な足場を繋ぎ目にし

    「―――ハッ!!」

    1呼吸吐き、足場を次々と乗り移る
    壊す、進む、壊す、進む
    この単純なレールを進む作業が身体を断裂させ焼き焦がす
    時間がスローになる感覚が体を襲う、それは死が近いことを悟った故の覚醒か?知りたくもない、興味もない
    今はただ足場の跳躍は素早く、瞬間的に、遠くへ行くこと以外の思考を捨てろ

    「残り150mだ」

    最終地点へのルートを告げる声がした

  • 23ラストトーク25/04/23(水) 21:56:29

    脳が入れ替わる、人から機械へ
    黄エミコという人のカタチを捨てて
    ひっくり返るというものでは無い、反転するようなものでもない
    ただ入れ替わった

    「ーーッ!!」

    動きが変わっていく、変化していく、最適に、最適に、最速で、最短に

    「北東43°」

    見えなくなる道を導くように声が聞こえる
    思考破棄した人のカタチをした機械

    「北343°」

    足場を突き進む程、体が作り変わってるようだ
    感覚が無意識に埋もれてく、目がモノクロになる
    必要な情報以外捨てる

    「残り50m」
    痛みという信号は赤から青に見える
    突き進むしか生存の道はないならばそれ以外の道を捨てるしかない

    「目標地点到着」

  • 24ラストトーク25/04/23(水) 21:57:10

    上空、黒蛇の真上に来る
    ―――この最後の1つの足場で全てが終わる

    「リミッター100%解除」

    エンドロールを知らせる合図が聞こえる
    引き金を引くようにイノリの声が聞こえた

    「撃て」

    私という銃弾が上空から最後の足場を引き金として落下する
    まるで銃撃のように、ただ直線を突き通す
    黒蛇はただ、天体を観測するように上空を見上げ…星を喰らうように口を開いた
    恐怖で停止してしまいそうになる右手に全運動エネルギーを捧げ
    恐怖を焼き切れるように叫び、突っ込む

    「ああああああああぁぁぁ!!!」

    大砲のように投げつけられた弾丸の『私』を

  • 25ラストトーク25/04/23(水) 21:57:41

    ―――黒蛇は受け止めきった
    所詮ちっぽけな人間風情、結局のところ頑張ってもここで打ち止め、残念賞として死が待ってる運命

    「ぐ…ぅぅぅぅうう」

    ―――でも、諦めきれない心があった
    機械の出番は終わりだ、ここからは諦めきれない諦めの悪いちっぽけな人間の出番しかない
    手が熱い、脳が、全身が焼き切れてもう全てがなんだか分からなくなってごちゃごちゃになる
    無理だ、不可能だ、失敗だ、終わりだ
    死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
    そう分かりきってるはずなのに体は必死に目の前の死から逃げるように体を前身させるように突き進む

    「ぅうあああああああああ」

    全ては死に絶え、全て黒に沈もうとしても、 諦めきれない、諦めきってしまいたくない
    それは執念かもしれないし、本能かもしれない
    ―――ただこれしか進む道がなかったのかもしれない

    「ああああああああぁぁぁ!!!」

    これが最後だと言わんばかりに力を込め……

    べキッと嫌な音がした

  • 26ラストトーク25/04/23(水) 21:58:32

    折れた、と直感的に感じる
    死という文字が見えた、痛みを感じる暇すらなく、ただ呆気ない自身の死を悟った
    生きたいと思う執念も、死にたくないと思う本能も、もう意味は無い
    口を開け今か今かと待ちわびるように私を飲み込もうとする黒蛇が今は私の死を捉えた死神に見える

    あぁ…やっぱり死ぬなんて嫌だな

    ここにくる前に最初にこんな風に願ったな、なんて考えても意味がないことを知りながら ただ走馬灯のように揺らめく景色を見て
    散々嫌った神様頼りを最後にした
    ―――ポッキリと折れた骨と一緒に心も折れた気がした
    流した涙に意味は無く、絶望がただ脳裏を侵食して焦がして……






    「祈ったな?」

    ―――声が聞こえた

  • 27ラストトーク25/04/23(水) 22:00:20

    飲み込まれる直前、黒蛇が縦に裂かれた
    いや、それは厳密には違う、炸裂したの方が正しいだろう
    『それ』を拒むように黒は飛び散る…その中心点に『それ』は居た
    そしてそれと対照的に何かが切れる感触ともに耳についてた蛇が『それ』の元へ戻っていく

    「この…声は?」

    そんな奇怪すぎる目の前の現象にも私に疑問を挟む余裕は無い、ただあの声は

    「よくやったな、疲れただろう?座るか?」

    いつも通りにフランクに…いっそ嫌なほどにヘラヘラしてる顔をしてる『神』が居た
    ただいつものその姿に違和感を覚えるとしたら

    「髪が!白じゃなくて黒っす!!」
    「人型になったことよりそこに疑問を思うのがつくづく君という人を表してるようだね」

    うるさい!いやそんなことよりも今は
    「いやいや落ちる落ちる落ちるっすぅうううう!!??」

    うぎゃあああああああああああと情けない叫びをしながら上空から落下する
    デカい黒蛇がクッションになって危機一髪展開もなく虚しく黒に突撃して死ぬのが人生のオチだ
    そしてなにより受け身という脳への信号を肉体が受け付けない
    何故か浮いてる神を睨みながら落下していく
    キラキラと最後の涙を流しながら落ちる私……全てにありがとう、さよなら…
    ガシッと足を強く掴まれる感触をした感触……宙吊り状態から何とか上をみると……

    「手がかかる子だ」

    といやいや呟くイノリが居たのだった

  • 28ラストトーク25/04/23(水) 22:00:54

    デカい黒蛇の亡骸(デカグラマトンというらしいが)の上に座りながら

    「いやなんで普通に人型になってるんすか、力はもうないんじゃなかったんすか」

    と一緒に苦難を乗り越えた戦友にグチグチ呟く、それを尻目に

    「最後にエミコが『私』に祈ったからな、それで何とかパワーアップしたんだよ」
    「いやいや納得出来ないっすよ!それ出来るなら最初から私に祈ってーって言えばいいじゃないっすか!」

    体が痛すぎてもうこの鬼畜畜生イノリを殴る程の気力がないが最後の抵抗として言葉で殴ってやるという気力だけで言葉のマシンガンの引き金を引きまくる

    「そんな言葉を吐ける体力があるなら上等だな、もっと死にかけてるもんだと思ってたよ」

    くッ…私のマシンガンが全く相手にされない!

    「そもそも願いには絶望が必要なんだよ、あとそんな祈る気持ちがちっともない祈りじゃ、ここまでのパワーは出ないね」
    「なんすか…それじゃ私が最後に絶望してイノリ美味しいところ持っていかれるのは全部作戦通りってことっすか!?」
    「そうだが?」

    ―――よし殴ろう、体が悲鳴でもう泣きそうだがこいつは殴らなくてはいけない!!

  • 29ラストトーク25/04/23(水) 22:01:46

    「考えてる事は分かるだから言うがやめとけ、戻る時にさらに痛むだけだ」
    「ぐぅううう」
    「そんな獣みたいな顔をしてもダメなものはダメだ、それぐらい理解しろ」
    「ひいいいいいいんん!!」
    「そんなバレバレの嘘泣きしてもダメだ私を出し抜くならもっと考えろ」
    「おーいおいおいおーいおいおい」
    「君の泣き落としの種類って残念すぎないか?だな、下手すぎるしダメだ」
    「くそぉ…!!」

    全くダメだった、ちくしょうさっきからめっちゃ頑張って考えたのに!

    「ダメだこいつ……」

    完全にイノリに呆れられてるが、さっきまでと別の悔しさの涙が出てる私は全く気づかないのだった

  • 30ラストトーク25/04/23(水) 22:03:04

    「それじゃ、そろそろ帰らせるぞ」

    手をパンパンと叩き帰る準備をしてるイノリにそういえばと疑問が湧く

    「他の神隠しにあった人とかどうなったんすか?」
    「もう帰した、お前が最後だよエミコ」
    「薄々分かってましたっすけどこうハッキリ最後って言われると悲しいっすよ!!」

    私の必死の抗議ははいはいと適当にあしらわれた、なんてやつだ…面倒臭い絡みするのにこういう時はテキトーなのか
    私の体をガシッと掴み肩を貸されるような体勢になる

    「あの光の穴が見えるか?あそこが帰り道だ」

    肩を貸すようになってしまったが…ようやく帰れるのか

    「くぅ……次会ったら絶対許さないっすからね!」

    イノリとの会話もこれで終わりと思うと寂しさが過ぎるがそれを振り切るように話す

    「―――あぁ、そうだな」

    それに対してイノリは、ただ笑って応えた
    何かを嘲笑うような、嗤いではなく
    ただ普通に嬉しそうな…笑い方で
    それがなんだかとっても幸せそうだった
    ―――その笑顔が忘れてはいけないもののように見えた、でもそれを言うのは私にとっては恥ずかしく

    「うぅ…とにかく!早く帰りましょうっす!」

    首をブンブン振りながら話す私にあぁそうだなと答えるイノリが隣に居た

  • 31ラストトーク25/04/23(水) 22:03:41

    帰り道、黒が渦巻く凄惨な道なのに隣に肩を貸してるイノリが居るからなのだろうか?全く怖くない

    「私はここまでだ、最後はもう行けるだろ」

    光まで着いて最後に一言言おうとしたけど言葉が詰まった
    なんでなんだろうか、その言葉の意味を話したら今が瓦解するようで怖かった
    隣に居る今のイノリの顔を見て
    まるで死人みたいだ
    なんて言えるはずなかった

    「もうここからは先は自分でも行けるだろ?」
    「…ありがとうっす」

    もう一度確認するように話すイノリに曖昧な返事しか出来ない
    肩を外し、背中を向けるイノリ
    手をゆらゆら振り、神であり、蛇であった生きたいだけの何かはただ最後に何かに気づいたように光の中に居るこちらに振り返って

    「そういえば、メンチカツ美味しかったよ」

    光に包まれていく、イノリの姿が霞んで見えなくなっていく

    「!!イノ」

    最後にやっぱり何か素直に話さないと気持ちが喉を突き刺す
    まずい、まずい、このまま…最後に言った言葉がそれでいいのか、本当はもっと…

    一緒に居たかった

    声は届かず
    全身を完全に光に包み込まれ、私は『消えた』

  • 32ラストトーク25/04/23(水) 22:05:05

    「行ったな」

    最後にエミコが喋ろうとした言葉はおおよそ分かる…分かってしまう

    「ほんと、人がいいって言葉で片付けられない程の馬鹿な人間だな」

    そう呟いた…瞬間
    ゴロッとものが崩れる音ともに腕が取れる
    全く痛みを感じないが、元々死ぬ運命の死人だからそういうものなのだろうか、死をもう受け入れたから死に耐性がある

    このまま1分もしないうちに私は崩れて、崩れさって消え失せるだろう

    「ひとりぼっち…ま、私にはお似合いだな」

    最初から1人だったのだ、最後も1人で消えるだろう
    ―――1番初めに願ったのは消えて死にかけてる私の『生きたい』という願い
    その願いは別の誰かの『助けて』という悲劇に便乗するように叶った、叶ってしまった
    そこから友を願い、時間を願っていって…
    誰かの悲劇に便乗するように、自身の願いを叶えていった

    「救えようのない奴だな」
    ―――でも悪くはなかった、むしろ
    「楽しかったなぁ」

    足が崩れる、立つこともままならず、ぐしゃりと無様に倒れ込む
    あの時、最初の暗闇で忘れられて死んでいくだけだった私に光をみせたくれた『願い』が眩しかった

    「生きろよ、願うのは生者の特権だ」

    死人はただ死んでいくだけだ、生きるのも願うのも全部生者の特権、それを無粋にも勝ち取ろうとした死人の終わりが近づく

  • 33ラストトーク25/04/23(水) 22:06:30

    黒が体を段々飲み込んでゆく
    体がグズグズに崩れてゆく
    ―――最後に思ったのは

    「ありがとう」
    こんな私が言うのもなんだけど

  • 34ラストトーク25/04/23(水) 22:06:54

    そして全ては黒に染まった、全て元に戻った
    生者の求めた夢は醒め
    死者は夢に消える
    死人が死に生者は存在しない虚空に戻った

  • 35ラストトーク25/04/23(水) 22:09:37

    ―――光を感じる
    ツンっと刺すような夏の光が目をこじ開けた

    「……え?」

    知っている天井、確かここは保健室だったはず…
    久しぶりと感じるのは何故なのだろうか?
    心のスキマを埋めるように身体を動かそうとした…が

    「いたっ」

    ビリッと痺れるような、感電したような感覚が全身を襲う……特に右腕が痛む

    「な、なんで…」

    仕方なく隣をみると
    知ってる…知っている顔が居た
    随分と私に引っ付いてたんだろう、目にはクマがあって髪はボサボサだ
    でも、分かる……みんなのことを
    それを理解した時、不意に涙が出た

    「―――」

    なぜか分からない涙が出て止まらない、心臓が痛いほど何かを訴えようとしてるけど全くそれが分からない
    ―――ただその涙と一緒に

    「イノリ……」

    知らないはずの誰かの名前を零した
    ―――焼き付くような笑顔と一緒を浮かべて

  • 36ラストトーク25/04/23(水) 22:10:04

    「うぅ……ぅ」

    涙が止まらない、その理由を知ってるはずなのに浮かび上がらない
    ただ理由も分からず、泣いて、泣いて、泣いて…泣き疲れて寝てしまった
    薄れゆく意識の中、もっと一緒に居たかった、そう願って
    ―――願いを叶えてくれる誰かはもう居ないことを知りながら

  • 37ラストトーク25/04/23(水) 22:10:46

    ―――これは無くした誰かの話
    寂しやがり屋で、面倒臭くさくて、いじわるで、どうしようもなかったけど…どうにかしてあげたかった誰かとの

    ラストトーク

  • 38125/04/23(水) 22:12:33

    この話を最後まで読んでくれてありがとうございました
    時系列は先生が泣き疲れたエミコを起こすその前です

  • 39二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 22:14:14

    楽しく見させていただきましたよ!!!

  • 4025/04/23(水) 22:43:45

    あと一つだけ話がありますがまだ書いてないのでまた遅れます

  • 41二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 22:49:06

    ならせめてそこまでは守り抜かなくては…

スレッドは4/24 08:49頃に落ちます

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