ミドリマキバオー「どうすりゃいいんだ…」

  • 1二次元好きの匿名さん25/04/23(水) 22:18:29

    東北、盛岡競馬場で迎えた南部杯
    序盤に馬群に揉まれ、末脚も爆発を見せず惨敗だった
    スタンドに響くファンのため息、どこからか聞こえる「全盛期を棒に振るったな」の声
    無言で帰り始める陣営たち達の中、96年のダービー馬ミドリマキバオーは独り馬房で泣いていた
    有馬記念で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるライバル・・・
    それを2年経った今の競馬界で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
    「どうすりゃいいんだ・・・」マキバオーは悔し涙を流し続けた
    どれくらい経ったろうか、マキバオーははっと目覚めた
    どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいウンチの感覚が現実に引き戻した
    「んあー、帰ってトレーニングをしなきゃなのね」マキバオーは苦笑しながら呟いた
    立ち上がって伸びをした時、マキバオーはふと気付いた

    「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
    地下馬道から飛び出したマキバオーが目にしたのは、指定席まで埋めつくさんばかりの観客だった
    千切れそうなほどに競馬新聞が振られ、地鳴りのようにゲーハーどもの金返せコールが響いていた
    どういうことか分からずに呆然とするマキバオーの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
    「たれ蔵くん、本馬場入場だ、行くよ」声の方に振り返ったマキバオーは目を疑った
    「ブルータ・・・菅助くん?」 「なんだブタ、居眠りでもしてたのか?」
    「お・・・親分?」 「なんや、マキバオー、ワシに勝てんからって勝手に現実逃避しおって」
    「あ、キミはいらないのね」  マキバオーは半分パニックになりながら中山の掲示板を見上げた
    1番:ピーターツー 2番:ニトロニクス 3番:アマゴワクチン 4番:エルサレム 5番:アンカルジア 6番:内川 7番:トゥーカッター 8番:ブリッツ 9番:ミドリマキバオー 10番:スーパースナッズ 11番:カスケード 12番:スーパースナッズ 13番:プレミア 14番:ビーナスハリケーン 15番:サトミアマゾン
    暫時、唖然として漏らしたマキバオーだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
    「もう一度走れる・・・走れるんだ!」
    飯富調教師からゼッケンを受け取り、ターフへ全力疾走するマキバオー、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

    翌日、検量室で冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った

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