- 1二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:06:52
- 2二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:07:47
控え室に備え付けられているスクリーンに映るのは、俺の担当アイドルである佑芽さんのライブ映像だ。聴いているこちらまで楽しくなってしまう様な歌声に、彼女の持つ可愛らしさが合わさった今出来うる限りの最高のパフォーマンス。NIAでの優勝を経た彼女はその実力をいかんなく発揮していた。
「──よし。今回も佑芽さんの勝利だ⋯⋯!」
今佑芽さんが出場しているのは夏のHIFに向けた最終セレクション。NIAを終えたばかりで少々酷かとも思ったが、どうやらただの杞憂だったらしい。そう思える程に、俺の担当アイドルは強く輝いていた。等と思案している内に、勢いよく控え室の扉が開かれた。見なくても分かる、佑芽さんだ。
「プロデューサーさん!ただいま戻りました!!」
「お疲れ様でした。備える時間も少なかったでしょうに、素晴らしいパフォーマンスでした」
「ありがとうございます!⋯⋯これであたしもHIFに出られるんですね!」
「えぇ。目指すは『一番星』、この学園のトップ。その為の切符を、貴方は手に入れた。改めて、おめでとうございます」
「ふっふっふ〜⋯⋯あたしの快進撃は誰にも止められません!!」
そう言って胸を張り誇らしげにする彼女に、俺の心はドキンと、小さくはあったが確かに躍動した。この感覚は一体⋯⋯?
「⋯⋯⋯さん?あの〜、プロデューサーさ〜ん?」
「⋯あぁ、すいません。何でもないので気にしないで下さい。さて、それでは早速ですがHIFに向けた作戦会議を始めましょうか」
「はい!」
しばらくして会議を終えた後、この日は各自解散した。眠りにつく直前、控え室で憶えたあの感覚の正体について考えを巡らせたが結局答えはわからぬまま時だけが過ぎ去り、一日が終わっていった。 - 3二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:13:52
「プロデューサー、これからは主の担当アイドルと共に暮らせ」
「⋯⋯⋯は?」
「じゃから、アイドルと同棲しろと言っておる」
「聞き間違いでは無さそうですね⋯⋯ちなみに、拒否権の程は?」
「あるわけなかろう。これはHIFに出場するアイドルとプロデューサーに課せられる掟の様なものじゃ。HIFでは今までとは段違いにアイドルとプロデューサーとの結束が試される。私生活を共にする事で、より一層絆を深める。実に合理的じゃろう?」
「しかし──」
「⋯⋯本当は反対なんじゃ、こんな事。主にわかるか?自分の孫が男と二人きりで暮らしているこの気持ちが。主にわかるのか?自分の孫が会う度に惚気話を聞かせてくるこの気持ちが⋯⋯!!」
返す言葉が何も見つからない⋯⋯というか、あの十王星南が彼女のプロデューサーとの惚気話を⋯⋯???それが本当なら、アイドルとして致命的所の騒ぎではない。
「でしたら、もう取り消してしまえばよろしいのでは?」
「それが出来たら主にこんな事を言っておらんわ。ただ実際、有用性は保証しよう⋯⋯この条件を認めないと言うなら、残念ながら主らはここで不戦敗じゃ」
「⋯⋯⋯わかりました。同棲の件、佑芽さんにも伝えておきます」
「よく言った。主らが共に暮らすのは初星が管理するホテルじゃ。トレーニング施設も完備してあるから好きに使ってくれて構わん。精進せい、プロデューサー!」
学園長室を後にし、事務所へ向かう。その道中、先程の話が脳裏をよぎる。あの十王星南が惚気話を⋯⋯つまり、彼女のプロデューサーと恋愛関係にまで発展しているという事だろう。
「⋯⋯⋯俺と佑芽さんが同棲を始めたら、彼女らの様になるのだろうか。アイドルとプロデューサーではない、ただの男女の関係に」
思い浮かべたもしもの未来は、俺の心を跳ねさせるには充分なものだった。
「⋯またか。一体なんなんだ、これは───まさか、俺は、佑芽さんの事が⋯⋯」
「あたしがどうかしたんですか?プロデューサーさん」
「⋯!い、いつの間に⋯⋯」
どうやら散々考えている間に俺は事務所に着いていたらしい。
扉の前にいるあたり、佑芽さんは俺の到着を待っていたのだろう。
「お待たせしていた様で申し訳ありません。今開けます⋯⋯⋯⋯あの、貴方に伝えなければならないことがあります」 - 4二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:15:39
「──俺と、同棲して下さい」
「⋯⋯え、え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛〜゛〜゛〜゛!?!?」
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「な、なるほど。そういう事だったんですね⋯⋯」
「まぁ、そういった反応をされるのも無理はない。俺だって学園長相手に似たような──」
「やった〜〜!!」
「⋯⋯へ?」
想像とは全く異なったリアクションをされるものだから、つい間抜けな声が飛び出してしまった。いや、どうだろう。文字におこすなら「ふぇ?」の方がより正確だったかもしれない⋯⋯って、そうじゃない!!
「嫌では、無いのですか?」
「はい!プロデューサーさんと一緒にご飯を食べて一緒にテレビを見て、一緒に眠って⋯⋯全部、やってみたかったんです!!」
「そ、そうですか⋯⋯」
言われて悪い気はしない所か若干の嬉しささえ感じてしまう。もっとも、今目の前でにこやかに笑っている彼女には伝わっていないだろう。そう思いたい。
「ではホテルの住所をお伝えしますので、明日は現地集合にしましょうか。生活必需品は備わっているらしいので荷造りは最低限で問題ありません」
「は〜い!それじゃあお先に失礼します!」
「えぇ、それではまた明日」
彼女が事務所から去り扉を閉めるのを見届けてから、適当な椅子へ腰掛ける。
「はぁ⋯⋯どうなることやら」
不安は尽きないが、プロデュースをする上でアイドルを常に管理できるのは大きなメリットで、学園長の合理的という言葉に頷け無くもない⋯⋯⋯だがその前に、俺達は年頃の男女であり、更に、俺は佑芽さんのことを⋯⋯
「しかしそれが前提として、あちらが俺をそういった意味で好いているかどうか⋯⋯」
全く、こんな事を考えてしまう時点で俺はプロデューサー失格だな。⋯⋯俺も荷物をまとめてぼちぼち帰るとしよう。 - 5二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:16:46
事務所の扉を閉めて、思わずその場に座り込む。さっきまでしていた会話を思い出すと、頭から湯気が出ているような気分になる。
『はい!プロデューサーさんと一緒にご飯を食べて一緒にテレビを見て、一緒に眠って⋯⋯全部、やってみたかったんです!!』
今思い返すとすごいことを言っちゃった気がして、それがとっても恥ずかしい⋯⋯//たしか前に千奈ちゃんと読んだ恋愛マンガに、さっきのと似たようなセリフがあったはずで、それはヒロインがする告白として使われていたものだ。
「⋯⋯好きって、言っちゃったようなものだよね」
あたしにはどうしたらいいのか全くわからない。わからない、けど。お姉ちゃんならきっと、こんな状況でも割り切って進んで行くんだろう。だから、あたしもそれに倣おう。⋯⋯よし!ひとまず寮に戻って明日の支度をするぞー!! - 6二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:20:06
「おぉー!!これがあたし達の新しいお家なんですね、プロデューサーさん!」
「正直、期待以上ですね。これなら二人で生活していても間違いなど起きないでしょうし、一安心といった所です」
俺達は学園長から指定されたホテルの一室に入った。そこは二人で暮らすには充分過ぎるくらいに広々としており、目立たない程度に初星の校章と十王家の家紋があしらわれている。並のホテルでは敵わない程度には快適に暮らせるだろう。⋯⋯ある問題を除いて。
「まさか、寝室が一つで、その上ベッドも一台しか無いとは⋯⋯まぁ、俺がソファや床で眠ればいいだけの話なので佑芽さんは気にしないで下さい」
「いやいやいや、気にしますよ!そんな所で寝たら体がバキバキになっちゃいますよ!!」
「ある程度は問題ありません、プロデューサーなので」
「えぇ⋯⋯」
「ですから心配不要です」
「じゃあ、ある程度って具体的にどれくらいなんですか?一週間?一ヶ月?」
「大体三ヶ月程でしょうか。夏のHIFまでなら問題ありません」
「なら冬はどうするんですか?」
「あっ⋯⋯失念していました。確かに、冬までずっとは流石にな⋯⋯」
「──提案なんですけど、一緒に寝ませんか?⋯⋯ちょっとえっちだな〜とは思いますけど⋯そうするしか無いですよね?」
「⋯⋯⋯わかりました。貴方の方に振り返りはしませんから、安心して眠って下さい。それでいいですか?」
「はい!」
何だかとんでもない事が決まってしまった気がしたが、俺が耐え抜けば一線を越える様な間違いは起こらない。そうだ、それだけだ。何の問題もない。
「それでは、これからよろしくお願いします」
「お願いします、プロデューサーさん!」
「はい⋯⋯さて、HIFに向けてですが───」
始まってしまったものは仕方がない。受け入れて先に進もう。そして必ず彼女を『一番星』にしてみせる、それが俺の使命なんだ⋯⋯! - 7二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:21:23
「⋯⋯おや、もうこんな時間ですか。今日はもう寝てしまいましょうか」
「はぁ〜い⋯⋯」
最初はどうなることかと不安でならなかったが、いざ始まってみると一瞬で時間は過ぎ去り、いつの間にか空は漆黒に染まっていた。初日ということもあり、佑芽さんもさぞや疲れたことだろう。今の眠そうな返事がいい証拠だ。
「佑芽さんが先にベッドに入って下さい。俺は電気を消してから入るので先に眠ってしまって構いませんよ」
「わかりましたぁ〜⋯⋯こ、こっち⋯向かないで下さいね?」
「心得ています」
そんな会話を済ませた後、全ての部屋の電気を消し俺もベッドの中へ。背中越しでも彼女特有の甘い香りが漂ってくる。これは⋯⋯眠れるかわからないな。なんてことに頭を回していると不意に、俺の背中が柔らかな感触を感じた。───え?
「⋯う、佑芽さん⋯⋯?!な、何を──」
「ごめんなさい、プロデューサーさんには振り返らないでって言っておいて、あたしはこうしちゃって⋯⋯⋯あたしは今までずっと、お姉ちゃんと寝てました。毎日隣で眠ってたんです。でも、NIAが終わってからお姉ちゃんは実家に帰っちゃって、それからあたしは一人ぼっちで。もちろん、広ちゃんや千奈ちゃんみたいなお友達やプロデューサーさんがいるから完全に一人ぼっちって訳じゃないけど⋯⋯あたし以外に誰もいない部屋が寂しくて。夜、一人で眠るのがだんだん怖くなっちゃったんです」
「佑芽さん⋯⋯」
「ご、ごめんなさい!こんな事しちゃって。迷惑でしたよね、すぐに──」
「このままで構いませんよ」
「え⋯?」
「ですから、このままで大丈夫です」
「で、でも⋯⋯」
「全く、抱き着いてきたのは貴方でしょうに、何を今更言っているんですか。これ以上何か言うなら、振り向いてしまいますよ?」
「⋯あ、ありがとうございます⋯⋯!」
「どういたしまして。それではお休みなさい、佑芽さん」
「お休みなさい、プロデューサーさん⋯⋯」
直後、彼女がスースーと寝息を立て始めたのを確認し胸を撫で下ろした。彼女の感じていた不安を少しでも背負えているならいいのだが。なんて考えている内に俺も睡魔に蝕まれ始め、ゆっくりと意識が薄れていった。 - 8二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:22:55
「ん〜〜、よく寝た〜。ん?プロデューサーさんの⋯⋯背中?」
そこまで言って慌てて飛び起きる。そうだ、あたし昨日プロデューサーさんに抱き着きながら寝ちゃったんだ⋯⋯!!
「ッッ〜〜〜///」
昨日は眠かったし、今まで感じてた寂しさもあってついやっちゃった⋯//こ、こんなのえっち過ぎるよ〜〜//これからどうやってプロデューサーさんと過ごせばいいの〜!?
「⋯⋯ん。おはようございます、佑芽さん。今朝は良く眠れましたか?」
「⋯は、はい!!あたし、顔洗ってきます!!!」
「あぁ、ちょっ───行ってしまった。⋯⋯嫌だったんだろうか、やっぱり。俺はプロデューサー失格だな。アイドルの心身の変化にさえ気づけず、あまつさえ寄り添う事も満足に出来やしないなんて⋯⋯⋯」 - 9二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:26:39
そうして幕を開けた同棲生活二日目。今朝からずっと佑芽さんは俺と顔を合わせようとしてくれないままだった。俺がどうにかしてなくてはいけない。そうはわかっているのだが、結局答えは見つからず、ただただ時間だけが過ぎていった。俺と佑芽さんの間には気まずい空気しか流れておらず、プロデュースの事以外では話さなくなってしまっていた。眠る時なんかは特にその気まずさを感じた。手を伸ばせば届く距離に居るはずなのに、どこまでも遠くに居る様な感覚だった。
- 10二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:28:19
そのまま時は流れ、気づけばHIFの決勝前日になってしまっていた。打ち合わせやレッスン等は変わらず行っていた為、ここまで何とか並み居る強豪を薙ぎ倒してきたが、明日の相手は佑芽さんを倒すためだけに猛特訓を積んだあの咲季さんだ。もちろん、勝てると信じている。信じてはいるが⋯⋯直近の俺達の関係が明日にどんな影響をもたらすか不安でならない。俺は一体どうすれば⋯⋯⋯
「大丈夫ですか?プロデューサー君」
「あさり先生⋯⋯」
「明日は待ちに待った夏のHIF、その決勝戦。だと言うのに、ここ最近のプロデューサー君は悩んでばかり。それはきっと、明日の事もあるんでしょう。けど、今最もプロデューサー君が悩んでいるのは別の事なんでしょう?先生に、相談してみて下さい」
「⋯⋯実は───」 - 11二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:29:05
「佑芽佑芽、最近ずっと上の空。何か、あった?」
「花海さん、わたくし達が相談にのりますわ!何でもおっしゃって下さい!」
「広ちゃん、千奈ちゃん⋯⋯。あのね、あたし最近───」 - 12二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:30:47
「なるほど。つまり、花海さんが仕事以外でプロデューサー君と関わることに消極的になったから、もしや嫌われてしまったのではないか気がかりである、と」
「えぇ、そんな所です。第一、俺は佑芽さんの精神状態さえまともにケア出来ておらず、彼女の抱える不安に気づく事さえ出来なかった。⋯⋯プロデューサー失格です、俺は」
「本当に、そうでしょうか?」
「え?」
「だって、そう思っていても花海さんの隣で眠ってあげているんですよね?」
「それは、佑芽さんにこれ以上寂しい思いをさせない為の当然の行動で──」
「HIFのここまでのオーディションだって、アイドルとプロデューサーとの信頼関係の強さが如実に表れる。本当に嫌われているのなら、決勝戦に駒を進めるなんてことは不可能です。──花海さんは貴方の事を嫌ってなんていません。ただ少し、すれ違いが起こってしまっただけですよ」
「──先生、俺⋯⋯!」
「覚悟は、出来たようですね。行ってらっしゃい、プロデューサー君。先生、応援していますよ!」
「はい⋯!!」 - 13二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:32:36
「──大体わかった。佑芽は佑芽のプロデューサーと一悶着あって、最初はただの恥ずかしさからのバツの悪さだったのが時間が経つに連れて本格的に気まずくなりだした。原因は自分にあるから自分から動かなきゃいけないけど、どうしたらいいかわからない、か。千奈はどう思う?」
「大事なのはきっと、花海さんの意思だと思いますわ!花海さんは、どうされたいんですの?」
「あたしは⋯⋯⋯プロデューサーさんと今まで通りに、ううん。今まで以上に仲良くなって、たくさんお話して、ず〜〜〜っと、一緒にいたいな。この学園を卒業した後も、おじいちゃんとおばあちゃんになっても、ず〜〜〜〜っと」
「⋯⋯ふふ。佑芽、大胆」
「でも、花海さんらしいですわ〜!」
「広ちゃん、千奈ちゃん⋯⋯!」
「あとは簡単。その気持ちを佑芽のプロデューサーに伝えるだけだ、よ」
「花海さんなら必ず出来ますわ!わたくし達、応援致します!」
「⋯⋯!!ありがとう、二人とも。あたし、行ってくるね!!」
「うん、いってら────もう行っちゃった。相変わらず、速い」
「それだけ、花海さんがプロデューサーさんの事を想っているという事なのでしょう。なんだかとってもイイ感じ〜、ですわ!」 - 14二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:35:58
「⋯⋯⋯⋯」
今日は明日に向けて事務所でミーティングの予定だったので、ひとまずここへ向かったが佑芽さんはまだ到着していない様だった。⋯⋯彼女の到着をただ待つだけというのがこんなにもどかしい物だなんてな。覚悟は出来たがソワソワしてならない。早く来てほしいと思うし、少しばかり遅れて来てほしいとも思える、何とも言えない気持ちだ。そんな静寂も長くは続かず、遂に待ちかねた来訪者との対面の時がやって来た。
「お、おじゃまします⋯⋯!」ガチャ
「⋯ど、どうぞおかけになって下さい⋯⋯」
「え、え〜と⋯⋯明日に向けての作戦会議、ですよね?」
「はい。ですが、その前に───佑芽さん、今まで本当にすみませんでした⋯⋯!!」
「⋯えぇ!?」
「俺は貴方の不安に気づけず、あまつさえ貴方の生活を不快な物にしてしまった。本当に、すみません」
「いやいやいや、謝るのはあたしの方です!」
「⋯え?」
「あたしはただ恥ずかしくて、たったそれだけでプロデューサーさんの顔も見れない様になっちゃって⋯⋯それで今までプロデューサーさんに気を使わせ続けちゃって、──ごめんなさい、プロデューサーさん!!」
「いえ、それはプロデューサーとして当然の事。佑芽さんが謝る事じゃない。それよりも俺が──!」
「いやいや、あたしが──!」
「いいや、俺が──!」
「「むむむむむむむ⋯⋯⋯⋯⋯!」」
「⋯⋯ふふ」「⋯⋯あはは!」
「──前から思ってましたけど、あたし達って結構似てますよね?」
「えぇ、同感です。自分で言うのはなんですが、変な意地を張る子供の様な所なんか、特に」
「こうなるんだったら最初から悩まず、普通にしていればよかったかな〜⋯⋯」
「──案外、そうでもないかもしれませんよ?」
「え?それって、どういう──」 - 15二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:38:26
「佑芽さん、明日のHIF決勝を終えたら、話したい事があります。──俺達の、今後について」
「そそそそ、それって⋯//」
「もちろん、貴方が優勝したら、という条件付きですが」
「⋯!ス゛ル゛い゛て゛す゛よ゛〜゛〜゛〜゛!゛!゛」
「けれど、良い起爆剤になったでしょう?」
「はい!⋯⋯⋯あの、プロデューサーさん」
「何でしょうか?」
「あたしにも、あるんです。プロデューサーさんにお話したいこと」
「⋯⋯ほう。ちなみに、どんな内容ですか?」
「教えてあげませーん!!明日の決勝が終わるまでナイショで〜っす!!」
「⋯ふふ。まったく、意地が悪いですね。一体誰に似たのやら」
「えへへ〜、誰でしょ〜〜か!」
「はぁ⋯⋯やれやれ。今のあなたに細かい作戦を伝える必要は無さそうですね。であれば、俺からは一つだけ。──全力で、咲季さんを叩き潰しましょう⋯⋯!!」
「はいっ!!」 - 16二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:41:13
「まだ夜は更けていませんが、早めに就寝しましょう。明日への備えは万全にしておきたい」
「わかりました、プロデューサーさん!花海佑芽、全身全霊で集中して眠ります!!」
「そうしたら余計に眠れませんよ。⋯⋯今日も、隣り合って寝るので構いませんか?」
「もちろんです!それと⋯⋯⋯今日は、お互いに向き合って寝ませんか?」
「いいんですか?」
「⋯⋯正直、とっても恥ずかしいです。けれども!今は、そうしたいんです」
「そうですか⋯⋯では、遠慮なく」ギュッ
「プロデューサーさん!?なな、何して⋯⋯//」
「この距離で佑芽さんを見つめ続けては俺が眠れないので。こうすれば問題解決です」
「絶対もっと方法ありましたよね!?」
「⋯⋯嫌、ですか?」
「嫌では、無いです⋯⋯無いんですけど⋯⋯⋯もう、プロデューサーさんのえっち⋯」
「それは心外な評価ですね。先程はおどけてみせましたが実のところ、貴方の抱える寂しさを少しでも和らげたいというのが本音です。どうです?まだ一人ぼっちだと感じますか?」
「⋯⋯!いいえ、感じません。──今感じてるのは、プロデューサーさんの温もりだけです。とっても心地良くて、暖かくて、いつまでもこうしていたいなって思います⋯⋯もっと早くからこうするべきだったのかな〜⋯」
「それなら、これからは毎日こうして眠れば良いだけの話です。そうでしょう?」
「ですね!それじゃあ、お休みなさいプロデューサーさん」
「お休みなさい、佑芽さん」 - 17二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:45:20
───HIF決勝、当日─────
「そろそろ、貴方の出番ですね。どうです?体調の程は」
「ふっふっふ〜⋯⋯花海佑芽、超絶、絶好調です!!!!」
「それは良かった。俺もここのモニターからですが、貴方のライブを観ています。思う存分に暴れてきて下さい」
「もちろんです!お姉ちゃんをもう一回ぶっ飛ばして来ます!!⋯⋯⋯それで、その後は──」
「えぇ。互いに、秘めた想いを明かすとしましょう。それでは、行ってらっしゃい」
「いってきます!!」
佑芽さんの前に咲季さんが魅せたパフォーマンスは、NIAの時から格段に成長しているもので、どんな研鑽を積んだのか想像もつかない程だった。だが、俺の担当アイドルは必ずそれに打ち勝つ。そう思えるだけの確信が俺にはある。それはきっと、佑芽さんも同じだろう。何と言っても、俺達は似た者同士で、アイドルとプロデューサーなのだから。 - 18二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:47:42
「〜〜〜〜〜♪」
さっきのお姉ちゃんのライブ、正直言うと息を呑むくらい凄かった。あたしより遥か先にまたいっちゃったんじゃないかって、思えるくらいに。──それでも。あたしは負けるなんてちっとも思ってない。自分でも不思議だけど、それはきっと、プロデューサーさんがいるからなんだろう。あの人が観ていてくれるって、そばにいてくれるって考えるだけで力が溢れてくる。だから、この想いも全部、パフォーマンスにのせるんだ⋯⋯!!
「〜〜〜〜〜〜!!」
あたしの全力、全身全霊で届けてみせる⋯⋯いや、届ける!!!!
「〜♪〜♪〜〜〜〜!!!!」 - 19二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:49:58
「───勝った」
「佑芽さんの、勝利だ⋯⋯⋯!!」
スクリーンに映る俺の担当アイドルは、姉であり最強のライバルである花海咲季よりも⋯⋯⋯いや、『一番星』である十王星南よりも強い、圧倒的な輝きを放っている様に見えた。それが何よりも嬉しい。俺の目頭から熱いものが溢れているのは必然だ。しかし、彼女が控え室に戻って来る前に拭き取らなくては格好がつかない。さっさと拭うとしよう。そうこうして待っていると遂に、控え室の扉がいつにも増して勢い良く開かれた。
「佑芽さん、おつか⋯⋯ッッ───!!」
俺が振り返って労いの言葉をかけ終えるより先に、彼女は俺に飛びついてきた。
「プロデューサーさん!あたし、勝ちました⋯⋯ちゃんと、勝ちました⋯⋯⋯!!」
「⋯⋯よく頑張りましたね、佑芽さん。偉いですよ」
「はいっ⋯⋯!プロデューサーさんへの想いを全部込めて、一生懸命歌いました⋯!そしたら、あたし⋯⋯あたし⋯⋯!!」
「本当に、お疲れ様でした。このままの状態で構いません。ゆっくり、深呼吸をして下さい。そうして落ち着いたら、話をしましょう」
「⋯はいっ!」 - 20二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 18:52:46
「ふぅ〜〜、ようやく落ち着きました」
「それは何より。では、貴方からどうぞ。レディーファーストという奴です」
「えぇ〜〜!!あたしからですか〜!?⋯⋯もうっ、プロデューサーさんのイジワル」
「⋯⋯⋯⋯」
「え、え〜っとですね。その〜⋯⋯」
「──あたしは、プロデューサーさんの事が大好きです!!たま〜に悪だくみしちゃってイジワルな時もあるけど、いつも優しくてあたしの為を思ってくれて。一緒にいるとすっごく楽しくて、落ち着いて。そんなプロデューサーさんの事が大好きです!!あたしと、付き合って下さい!!!」
「なるほど、わかりました。──しかしどうやら、俺と貴女では考えが違うらしい」
「⋯⋯え?それって⋯⋯ウソ⋯⋯⋯⋯」 - 21二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 19:01:07
「では、俺の番ですね。───佑芽さん、左手を出していただけますか?」
「え、あ⋯⋯はい⋯⋯⋯⋯え、これ───!!」
「──指輪です。キツくありませんか?」
「凄い、あたしの薬指にピッタリ⋯⋯!!でも、なんで⋯⋯」
「毎日あれだけ近くにいるんですよ?貴女の指のサイズを測るなど造作もない」
「そ、そうだったのか〜⋯!じゃなくて!指輪って付き合ってる人達が、結婚する為につける物ですよね?プロデューサーさんはついさっき、あたしの⋯⋯⋯告白を⋯」
「⋯⋯?言ったじゃありませんか、『わかりました』と。その時点で俺達の間には交際関係が生まれたのですから、何ら不思議な事はないでしょう?」
「⋯⋯じゃあ、プロデューサーさんの言いたいことって──」 - 22二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 19:05:47
「──俺と、結婚して下さい」
「────!!!」
「⋯⋯と言っても、俺達は互いに学生で、アイドルとプロデューサーです。貴女は『一番星』さえも超えたその先で必ず、世界一のトップアイドルになれます。先のライブで、俺は貴女からその煌めき、その断片を垣間見ました。ですからこれは──予約です。貴女はもう俺だけのものだ。咲季さんにだって譲るつもりはありません」
「プロデューサーさん⋯⋯」
「冬のHIFで『一番星』になり、その後世界一のトップアイドルとなる。そうして貴女がアイドルを引退した時、俺は貴女と結婚する。⋯⋯それでもよろしいですか?」
「はい⋯⋯⋯はいっ⋯⋯!!」
「──それでは、帰りましょうか。俺達の家に」
「はいっ!!!!」
─────完────── - 23二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 19:17:32
以上でこのSSは終了となります。作品自体は既に書き終えていたのですが、投稿前に軽く手直ししたり、行数制限に怯えたりしていて、何だかんだ時間が掛かりました。このSSを皮切りに、と言うと中々おこがましいですが、P佑芽の作品がこの掲示板に少しでも増えてくれたらな、と思います。というか見せて下さいお願いします。貴方のP佑芽SSで助かる命がここにあります⋯!
- 24二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 19:19:31
乙です!!
P佑芽の甘酸っぱいのはなんぼあってもいいですね…… - 25二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 19:19:59
次回作の予定は未定ですが、文章自体はたくさん書き溜めていますので、そこで使えそうなシチュエーションを完成させたらまた投稿するかもしれません。その時は再び、暖かく見守って頂けると嬉しいです。それでは、またどこかで!
- 26二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 19:22:04
- 27二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 19:55:04
P佑芽のイチャラブだと!?
こんなの僕のデータにないからもっと……もっとください…… - 28二次元好きの匿名さん25/04/29(火) 20:53:54
P佑芽って『信頼し合う相棒』みたいなイメージが根幹にある気がするので、それが原因で恋愛系のお話が他の子よりも作り辛いんでしょうね。実際自分も、これより前に5つはボツにしたお話があります。ただ、自分も書いていて楽しかったし、何よりもっとP佑芽で砂糖吐きたいのでGW中にこの話の後日談でも書いてみましょうかね