- 1二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 17:19:36
- 2二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 17:20:41
とても良き概念です。
続きが気になります! - 3二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 17:21:33
新たなSS書きの誕生だ、先生、喝采の準備を
- 4二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 17:21:36
ウ゛レ゛シ゛ィ゛
ゆっくり書いていきます - 5二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 17:23:23
ならばスレを守り抜かねばならない
- 6二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 17:26:35
そうだね…先生がサクラコ様を信頼しているからこそ、ミネとのイチャイチャで時間が過ぎちゃって仕事が終わり切らなくてリンちゃん怒られちゃったとかで告解部屋に来て告解というの名の惚気話を聞いて更に胸が痛くなるサクラコ様とかいいと思う
- 7二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 17:34:17
1
『シャーレの先生が救護騎士団の隊長と付き合っている!』
その噂は瞬く間に広がった。その噂は波乱を呼んだ。シナシナになる生徒、歓喜する生徒、応援する生徒……。
それはシスターフッドの長、歌住サクラコも同じ。最初は動揺を隠せなかったが、ミネ団長が、先生が幸せならそれでよいのです、と、素直に喜べた。
いつしかその噂が真実であると認められるまで、サクラコはいい意味で、無関心でいられたのだ。
……はずだった。
「まったく。付き合っていることを卒業まで秘密にしたかったのに。……先生が私に頻繁に会いに来るものですから、噂も立ちます!」
「あはは……ごめんね、ミネ」
些細な説教。しかし、肩を寄せ合う、幸せそうな二人。サクラコは仲睦まじい二人の姿を見ていた。
「本当に仲良さそうですね、お二方」
マリーがサクラコに耳打ちした。
「……ええ。とても。」
しかし、サクラコは感じ取っていた。自分の中にある、なにかモヤモヤとした何か。胸の奥にある、重く心臓を締め付けるような痛みを。
「……が、先に……だったのに」
「サクラコ様?」
無意識に発した言葉に、マリーが首をかしげる。茫然としていたサクラコはハッと我に返った。
「え? ……あ、なんでもありません。さあ、今日も一日……すべての人々に、神の恩寵がありますように」
まだ続きます - 8二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 17:55:27
2(ここからサクラコ視点)
昼下がり……
「ミネ団長、こんにちは」
「……ああ、サクラコさん」
私はミネ団長とお会いしました。とはいえ、歩いているとたまたま、という程度ですが。
……私は彼女を見ると、心がズキズキと痛むのです。しかし……これがいったい何なのか、私は……知りません。
そのことを思うと、初めに発する話題を、すっかり忘れてしまい……動揺しました。
団長は美しい緑色の瞳で、こちらをじっと見つめておられます。その視線が、なんだか私には耐えがたいものでした。
「……噂、広がってしまいましたね」
普段の私なら、決してそんなことは言わない。そんな話の切り出し方をすることはありません。
団長は一瞬顔を赤らめ、こほんと咳ばらいを一つしました。
「……困ったものです。サクラコさんも知っていたとは……いえ、もう知られて当然なのかもしれません」
「ふふ。噂は風よりも早い、とはよく言いますね」
私が冗談を言うと、団長はバツが悪そうにしました。
「私は信じています!人の噂も75日、だと!」
「……ふふふ。噂ではなく、もう『事実』になってしまいましたが」
私とミネ団長は椅子に腰かけ、静謐な中庭を……やけに静かなキヴォトスの空を、見ていました。
「……あ、そうでした。祝うのが遅れましたね。……ミネ団長、おめでとうございます。お幸せに」
「サクラコさん……。ふふっ、ありがとうございます。……面と向かって祝われると、やはり慣れませんね」
「私はいつでもミネ団長と先生に『祝福』があらんことを、祈っていますよ」
するとミネ団長は怪訝そうな目でこちらを見てきました。
「……皮肉ですか?」
「ええっ!?いえ、そんなことは……(泣き顔)」
「ふふ、冗談です。ありがとうございます。お気持ちは素直にいただきますね。」
ほっと一息をつく。よく誤解されてしまうので……。もしミネ団長が誤解していたら、いつ『救護』がやってくるかわかりませんから……。 - 9二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 18:02:20
3
しばらくの沈黙の後、ミネ団長は口を開きました。
「しかし、私も悪いことをしたと思っています」
「えっ?」
「……トリニティでは……いえ、ここキヴォトスでは、シャーレの先生を慕っている方は大勢いらっしゃいます。先生はみんなの先生です。しかし……私は彼を……。私にとって、たった一つの特別なものにしてしまいました」
その顔は、どこか嬉しそうで、しかし後ろめたそうな……そんな複雑な感情が混ざっていたと思います。
「みんなの先生……。しかし、たった一つの大切な人でもあるのです。誰のものでもない、みんなのものだった彼が、今や私のそばに……それは私も同じことなのです」
「……」
──ズキッ。
私の胸の奥にある、なにか重い石のようなものが、ゆっくりと動き始めたのを、私は感じました。
人を信じられなくなるような、なにか心が痛むような……泣きたいような、そうではないような、複雑な気持ち。決して良い感情ではないと、頭ではわかっているのです。
私は彼女を、先生を祝福するといいました。それはシスターとして、友人として、生徒として。
しかし……「歌住サクラコ」として、彼らを祝うことができない……素直に喜べないと、私は感じてしまう。
私は卑怯です。こんな時も、先生を求めてしまう。
『サクラコと話してると、あっという間に時間が過ぎてしまうね』
『見てサクラコ。期間限定のスイーツだって。』
『秘密は、誰にでもあるものだよ』
『サクラコと一緒にいると、楽しいな』
先生、あの言葉は──嘘だったのですか? 私と一緒にいると、楽しくありませんか?
私と一緒にいるのがお辛いのですか?なぜ団長を選んでしまったのですか?
先生、私は……お邪魔でしょうか? - 10二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 18:02:51
飯食ってきます、ちょっと時間空きます!
- 11二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 18:20:33
感想・コメント、いつでもお待ちしてます!!
- 12二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 18:26:44
思っただけで感想書いてなかったわ
こういうのこういうの好きだよ - 13二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 18:59:25
再開します!
4
ミネ団長は、そんな私を不思議に思うことなく、先生への思いを打ち明け始めました。
「……○○さんったら、ひどいんですよ。私の忠告も無視して、働き詰めで倒れてしまいますし、ちゃんとした食事も召し上がらないのです。でも私のことを、すごく理解しておられるのです。普段は恐れられているそうですが……○○さんは私の好きなもの、好きな場所、好きな服、好きな音楽……いろんなものを知ろうと、聞いてくださるんです。憎めないんです。そんなずるい人だからこそ、私はほだされてしまったのかも……しれませんね。」
──私だって、そのようなことを聞かれたことが、あります。
──○○さん、ですか。……そうですか……。
「私よりもずっともろくて、弱くて、情けなくて、儚くて、ダメダメで……でも、私よりも、ずっと優しくて。頼ってくれて……私のことを必要としてくれる。そんな方なのです。私は……○○さんが、好きなのです」
その瞬間、私の視界が一瞬ぐらりと揺れました。後頭部を殴打されたような衝撃が、全身に広がります。
これを「ショックを受けた」ということに気が付くまで、時間がかかりました。私のことなど気に留めないミネ団長は、ずっと愛しておられる殿方のことを話しています。
私だって、先生のことが……好きなのに。愛しているのに。
裏切られてしまったんでしょうか? 先生は私のことも知ろうとしてくださっていたのに。私の秘密も、そっとしておいてくれた。誤解されがちな私を、受け止めてくれた。
いまはその「誰にでも向けられる愛情」が、恨めしい……。 - 14二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 19:10:52
5
「しかし、そうはいってもやはり、皆様には申し訳ないと思うこともあるのですよ。」
「……そうなのですか?」
私はどういうことかと団長に視線を向けます。このもやもやした感情を彼女に向けることの無いよう、必死で自分を抑え込みながら、です……。
「先ほども申しあげたとおりです。誰のものでもない、みんなのものだった存在が、今や私のそばに。……きっと、ある種のタブーなのかもしれません。先生と生徒という関係ですし、なおさらに。」
「噂を広げないように、ばれないようにしていたのは、私たちが恥ずかしがっているということではありませんでした。むしろ、私たちはわかっていたのです。私たちが結んだそれが、周囲にどんな影響を及ぼすのか。……先生を慕っておられる方は、キヴォトスには星の数ほどいらっしゃいます。その一つ一つの小さな、大きな夢をかなえる機会を……私は、奪ってしまったのです」
その言葉は、私にとっては大きな苦痛でした。そして一つの言葉が、私の無意識から意識に飛び込んでくるのです。
「……私だって、先生のことが好きだった」
「私の方が、先生のことを愛しているのに」
しかし、口からその言葉をこぼしてしまうことはありませんでした。無慈悲にも私を痛めつける、無遠慮な彼女の言葉が、私の心臓をぐさぐさと刺してゆくのです。これほど耐え難い痛みはありません。
「ですから、時々後ろめたい気もします。」
「……自慢ですか」
私は、つぶやいてしまいました。はっとして、冷や汗をかきながら彼女の方へ向き直ると、彼女は素っ頓狂な顔をして私の顔を見ています。
「えっ?」
幸いにも、聞こえていないようでした。
「あ、いえ!なんでもありません!申し訳……ありません……」
「……ならいいのですが……」
その妙に引っかかる言葉が、また私の心を、一層苦しめるのでした。 - 15二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 19:29:17
6
その時です。少し変な空気になってしまった私たち二人の空間を、一人の声が打ち消しました。
「おーい、ミネ~!」
そこに現れたのは、まぎれもない、シャーレの先生。
「せんせ……」
私よりも先に、ミネ団長が勢いよく立ち上がりました。
「先生!」
ミネ団長は先生のもとに駆け寄ります。
「やあ。元気?」
「はい。先生はいかがですか?」
「うーん、まあぼちぼちかな。……あっ、やあ、サクラコ。こんにちは。」
先生はようやく……私のことを見てくれました。
「ええ、こんにちは。良いお天気ですね」
そんなありきたりな言葉を返す私。先生はにこりと笑った後、ミネ団長との話に花を咲かせていらっしゃいます。
ミネ団長……彼の両手に自分の手を絡ませて……幸せそうな横顔が、私を呪っているような気さえします。
私を放っておいて……楽しそう……。
……私は、なぜ彼女のことを……彼のことを、嫌いになりそうなのでしょうか。
この感情がいったい何なのか、私にはわかりません。しかしひとつわかっているのは、この感情は、絶対に悪いものであるのだと。人を貶めてしまうような、悪に染まってしまうような……歪で、禍々しいものであるとはわかっています。 - 16二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 19:37:02
7
「先生!このあと、お時間……あっ」
そのとき、ミネ団長のスマートフォンの音で、私ははっと我に返りました。
『団長!トリニティ郊外で要救護者が……!』
「……わかりました、すぐまいります! ……すみません先生、サクラコさん。行ってまいります!……救護が必要な場に、救護を!」
団長は目の色を変えて、全身に力を込めます。
深々と頭を下げ、私に会釈し、駆け足でその場を去ってゆくミネ団長。
「……あー……行っちゃったね、ミネ」
「はい……。」
相変わらず忙しそうだ、と笑う先生。私は……笑うことはできませんでした。
「サクラコは……忙しくないの? 聖堂の仕事とか。」
「いえ、今日は……いいんです」
私は……今は祈ることができるような気分では、ありません。
「そっか。……なんか今日、顔色悪いよ?大丈夫?」
「……いえ、大丈夫です。」
そっと、ゆっくりと彼の手を払います。私が無意識にしたそれが、気が付くと私の心をより激しく締め上げるのです。
……自分の呼吸が浅くなってきたのを感じます。きっと、もう限界なのでしょう。この黒い感情が、名状しがたいものが、もう……あふれてしまいそうなのです。
「……少し用事を思い出しました。……申し訳ありません、先生。」
「……主のご加護が……あらん……ことを……。」
私は、震え始めた声をぐっと抑えながら、その場を走り去ってしまいました。 - 17二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 20:09:32
風呂行ってきます~~
なんとか!!書き上げたい!!! - 18二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 20:52:46
8(ここから若干キャラ崩壊します……)
「うーーっ……ううう……!ぐすっ……うあぁ……!!」
私は自室の枕に顔をうずめて、長い間……泣きました。先生のもとを走り去ったあと、聖堂の仕事もほっぽり出して、寮に戻って泣きました。
初めて人を憎みました。憎みたくもない人を、大好きな人を。大切な友人を、憎んでしまったのです。恨んでしまったのです。
「どうして、どうして…どうしてどうしてどうしてどうして…!」
気づけばもう夜でした。みんな聖堂から帰ってしまったことでしょう。
私は……自身を呪いました。一瞬でも人を嫌ってしまった自分を。人を恨んでしまったことを。この胸の奥の重い石は、どんどんと膨れ上がっていきます。もう私が制御するには、あまりにも大きすぎて、汚れすぎている。
「いや……嫌嫌嫌……!」
自己嫌悪と他人への嫌悪のはざまで、私は苦しみ、涙がこぼれるたびに……
……その胸の奥の痛みが、『嫉妬』であることに……気づいたのです。 - 19二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 21:05:05
9
翌日。
私は泣き腫らし、乾燥する目元をこすりながら、聖堂の懺悔室へと足を運び入れました。
「今日は……ヒナタでしたか……?」
うまく頭が回らない……昨日は夜遅くまで起きていたからでしょうか、思考や記憶がすこしぼんやりとしています。
ガチャリ。懺悔室の扉を開けて、中に座ると……そこに、低く優しい声が響きました。
「ようこそ……こほん! さあ、迷える子羊よ、あなたの罪を懺悔してください。」
そこにいたのは、まぎれもなく、シャーレの先生でした。
(シスターヒナタ…ではない…?)
しかし姿や顔は全く見えません。しかしその声だけで……普段の私たちの雰囲気とセリフを真似する先生が、確かにそこにいました。
「……先生?」
「……あなたの罪を……」
「えっと……無理をなさらずとも……」
「いやいや!任されてるんだ。ここは大人として、精一杯やらなくちゃ」
「は、はぁ……」
私は大きく息を吸い、ゆっくりと吐きました。しかし……体が震え始めて、うまく深呼吸ができません。吸った息は途中で止まり、吐く息は震えていました。
言葉は発さずとも、きっと仕切りの奥の先生は、『いつものように』にっこりと笑っていらっしゃるのでしょうね……。
「……実は……っ」
その時、初めて、胸の奥から声がしました。何かを命令するように、欺いてしまえ、と……何者かの声がしたのです。
「……懺悔。というものでもなく、ただの『友人の相談』なのですが……」 - 20二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 21:35:50
10
「私の友人が……一人の殿方を慕っていたのですが、その殿方がつい先日、想い人と結ばれたんです」
「……ほう」
声色が、変わる。
……私は、友人の名を借りて……先生を、私自身を騙し始めました。
「しかし友人は、そのことを快く思いませんでした。心の奥にある黒くて暗くて、重くて……そんな感情に引っ張られてしまい……その友人は……想い人を、殿方を、憎んでいるんです。そして、自分でさえも」
私自身、下手な嘘だと思いました。当人が絶対に察することのできる程度の、稚拙で、安易な嘘です。
しかし、私の心が、この唇が、その言葉を勝手に繕ってしまうのです。
「私は、彼女になんて声をかければいいのですか?」
ああ……これは私のことなのに。団長のことを、先生のことを、自分自身を嫌いになりそうな私のことですのに。
先生は、優しく間をおいて話してくださいました。
「……まるで自分のことのように思うよ」と。
「正直、私も……そのようになってしまったら、どうしていいかわからなくなる時がある。でも大事なのは、一緒にいてあげることだと思うよ。そして、『時間が解決してくれる』って、言い聞かせるんだ。そばにいて…、
そして、その感情も自分なんだよって……言ってあげるかな。」
──時間が解決してくれる。 そのアドバイスはあまりにも私には……響かなかった。
「だからね、サ……こほん。君も、その子のそばにいて……ゆっくり傷を癒してあげてほしいな」
「……はい。ありがとうございます……。」
私はそのまま懺悔室を出ました。『時間が解決する』『その感情も自分』という言葉を何度も心の中で繰り返しながら……。
先生、良くも悪くも、あなたは先生……なのですね。 - 21二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 21:45:48
11(先生視点)
……まぎれもなく、あれはサクラコだった。そして、あの言葉がすぐに偽りのものだと気づいた。
きっと、あの『相談』は、サクラコなりの救難信号なんだと思う。
「……そうだよな、つらいよな」
私は本当にうかつなことをしてしまった、と頭を抱えた。
ミネは大切な生徒であり、サクラコもまた大切な生徒だ。絶対に変わらない事実のはずだった。しかし今、私はミネと付き合い始めている。恋仲なのだ。
私はミネを愛している。では……私はサクラコを、愛していないのだろうか?
そう考えると、今私が置かれている状況の複雑さを身に染みた。私はミネと付き合っていることを公に認めてしまった。噂を広めないようにしていたはずなのに、いつしか諦めて、ミネとの時間を優先してしまったのだ。
そしてそれが、間違いだったのかもしれない。
多くの生徒が傷ついた。ヒナも、ホシノも、ミカも……私は一人を選んでしまったために、ほかの数多の生徒を裏切ってしまった。
まるで今置かれているこの状況は、トロッコ問題になり替わってしまった。そして数が数であるために、その生徒たちを……『犠牲者』としてみていたのかもしれない。
「私は……とんでもないことをしてしまった」
ばっと立ち上がり、懺悔室を出る。必死に去ったはずのサクラコを追いかけるためにあたりを見渡し、走り回った。
「ヒナタ!」
「は、はいっ!?」
私は偶然通りかかったヒナタに声をかけた。
「サクラコを……見なかった?」
「いえ、見ていませんが……」
「そっか……ありがと」
そのまま走り去る。私はサクラコに言わなければならないことがある。面と向かって謝らなければならない。そう思っていた。
しかし……その考えは、甘かった。遅すぎた。 - 22二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 21:46:41
このレスは削除されています
- 23二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 21:47:51
- 24二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 22:42:07
12(ミネ視点)
「……自慢ですか」
あの時、サクラコさんがそういったのを、私ははっきりと聞こえた。聞こえないふりをして、聞き返した。
しかし表情は打って変わって、いつものような……なにを考えているのかわからない笑みを浮かべて、何でもないと言った。
「……自慢、なんかじゃ……。」
私は頬杖をついて、窓の外を眺めた。こんなにどんよりとした天気の中で、私は何もせず、ただぼーっとしていた。
「ミネ団長、お疲れ様です!不足していた包帯は補充しておきましたので!」
「セリナ……ええ、ありがとうございます。あとで確認しておきます」
「あれ~?団長、なんか元気ないですね??」
セリナとハナエは、普段と変わらずに私と関わってくれる。しかし……彼女たちも私を……。
──いいえ。疑うのはやめましょう。信じるのです、仲間を……自分を……。
今の私は、うまく笑えているのでしょうか。
「いいえ、何もありませんよ、ハナエ。さあ、作業を再開しましょうか」
「はいっ!」
きっとハナエは何も知らないだろう……もしかしたら気づいていないのかもしれない。しかし、それが暖かい。何も気にしてほしくない、普段通りでいたい私にとって、それはありがたかったのかもしれない。きっと私の憂い事は、きっと時間が解決してくれるだろう。
「あっ……」
その時、セリナが声を上げた。
「団長、雨が降ってきました……!」
次第にしとしとと降ってくる雨。
「大変です!早く干してたシーツを入れてしまいましょう!」
ハナエとセリナは一斉に慌てて飛び出していった。私も彼女たちを追い、外に干していたシーツを屋内に入れた。幸いにもそこまで濡れておらず、少し室内干しすれば問題ないだろう。
私は……まだ、大丈夫そうだ。 - 25二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 22:56:40
13(ミネ視点)
一週間前のある日……
「……私は悲しいです、先生!」
振りかざした拳。目の前にはしりもちをついた先生。
「ミ、ミネ……!ま、待って……話せばわかるから!」
「そう言って何度も何度も、お体を壊してきたではありませんか!もう我慢の限界です!!」
「ヒエッ……じょ、冗談っすよね……?」
「冗談なんかではありません!!……『救護』いたします!」
そして……執務室に鈍い音が響いた。
……
「……ん」
「目を覚ましましたか、先生」
ゆっくりと目を開ける先生。先生は私の膝に頭を乗せ、ずっと眠っていた。
胸の陰から、ゆっくりと顔を出す。
「うおっ、でっ……いや、ミネか……私は何時間くらい眠ってたの?」
私は時計を確認し、答えた。
「だいたい、5時間ほどです」
もうすっかり、日が沈んでしまっていた。
「やっば!!仕事終わってない!!」
先生は跳ね起き、執務室に向かおうとする。しかし私はそんな彼を許さず、がっしりと腕をつかんで、私の隣へ引き戻す。
「今日の仕事は、もうやっておきましたから」 - 26二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 23:13:39
14
「へ?もう終わったって……」
「……そのままの意味ですよ。今日のお仕事は終わったのです。」
「……やってくれたんだ、代わりに」
私はゆっくりと頷いた。先生はゆっくり体を起こし、『まいったな』と苦笑した。
「……本当に、お世話になってばかりだね、ミネ」
「いえ。シャーレには、何度も当番に来ているので」
「ああ……そうだったね」
すっかり暗くなったが、私はこうして先生が起きるのを待っていた。無防備に眠っているのが、守りたくなって……。
「先生、お体は大事になさってください。」
「でも、頑張らなきゃ、生徒の──」
しかし私は、先生が何というのか……もう知っていた。だから、遮った。
「生徒のため、と……おっしゃいますね」
「……」
胸の奥でぐつぐつと音を立ててあふれる感情。彼を想う、私の心。
「ですが……たった一つの命です。たった一つの体です。生徒のためを思うなら……私のことを、思ってください。先生に常に元気でいてほしいと願う、私のことを」
「ミネ……。」
言ってしまった。しかし……もう戻れない。まさかこうまでスッと出てくるとは思っていなかった。
「……やっぱり、ミネには敵わないね。……わかったよ、これからはそうする」
先生は、そっぽを向いて黙ってしまった。しかし彼の指は、何かをしようと絶え間なく力み、動いていた。
「……今日は、帰らないの?」
先生は私に尋ねた。私は首を縦に振る。ハナエやセリナには連絡済みだというと、彼は少し安堵しつつ……どこか、緊張しているような顔をした。 - 27二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 23:45:29
15(先生解釈違い注意です)
先生は数分ほど、黙った。私は彼を見つめたまま、何も言わずに彼が何を言い出すのかを……待っていた。
「ねえミネ。……少し君に、言いたいことがあるんだ。」
「……はいっ」
向き直って、どこか緊張した面持ちの先生に、私は少し面食らった。
先生は口をもごもごと動かし、言葉を詰まらせながらも、私に叫ぶように言った。
「……ミネ、私は君がいないと生きていけないんだ。」
「……先生。」
「私ね……君が好きなんだ。君が必要なんだ。……だから……。ずっと私のそばで、私を支えてくれないか?」
ずっと言おうと思っていた、言えるチャンスは今しかない。そう思い、振り絞った……。そんなことを、本人から、後から聞いた。
「……はい。この蒼森ミネ、謹んでお受けいたします。先生……いえ、○○さん」
嬉しくて、嬉しくて……。でも必死で声が裏返るのを抑えた。先生の手を受け取り、自分の胸へあてた。
……
そんなことを、今になって思い出す。あの後一日に一度先生が私のもとへやってきて、私と手をつなぐもので……
「蒼森ミネと先生は付き合っている」といううわさが流れるのも、無理はない。
ドゴッ!!
「ぐおっ……、ミ、ミネさん?お、落ち着いて……」
「落ち着いていられるわけがないでしょう!!私たちの関係は身分不相応なのですから、隠しておこうとあの後言ったではありませんか!!」
「えぇ、えぇ…?」
「えぇ、ではありません!私は今日ハナエに付き合っているのかと聞かれて恥ずかしかったのですよ!」
ぼかぼかと先生の胸をたたくミネ。その拳はどこか幸せそうだが……思ったより強かった。
「すいません、すいません……!でも、私はミネに会いたくって……!」
「呼ばれたら行くといったではありませんか!!我慢してください、○○さん!!」
その日、再び大きな音がシャーレに響き渡った……。 - 28二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 23:46:32
お待たせしました!!
ここから本格的にサクラコパートに入っていきます!!わっぴ~! - 29二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 23:47:01
わっぴ~!!
- 30二次元好きの匿名さん25/05/01(木) 23:54:00
16(サクラコ視点)
プルルルル……
「……はい、歌住サクラコです」
私はスマートフォンをとり、耳にあてがいました。
「あっ、サクラコ様!ヒナタです!」
「シスターヒナタ……。」
「サクラコ様、さっき先生がサクラコ様のことを探しておいででしたよ?先ほど大聖堂までいらっしゃいましたが……何か急いでいるようで……」
「ええ……大丈夫ですから……それでは」
私はヒナタの返事を待たずに、一方的に通話を切りました。今は陽気に話せるほど、気分が良くなかったのです。
そのまま、トリニティの大聖堂を背に、歩き始めました。先生が私を探している……普段の私なら、きっと先生に会いに向かっていたでしょう。しかし今は……彼に合わせる顔がありません。
……会いたくないのです。誰にも。 - 31二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 00:07:37
17
また家に戻ってきた私は、枕に顔をうずめました。
しかし……あの時涙はもう枯れてしまったのか、一滴も流れませんでした。
……胸の奥の……この黒い重たいものの名前……それは嫉妬であると知りました。今までの私にはなかった、激しく妬む気持ち。
この感情がミネ団長だろうと先生だろうと……これが私なのです。醜い醜い、私なのです。
爪を噛む。
──ガリッ。ガリガリガリガリ……
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして……?」
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして……」
「どうして……私ではないんですか」
私は先生を愛している。ずっと先生を愛しています。お慕いしています。ずっと、ずっと。あなたが私に声をかけてくれた、あの日から。
「変わらないもの」であると伝えたあの日も……。
秘密を伝えることが出来なくても、秘密があると知ってほしいと伝えた、あの日も。ずっとずっと、彼のことを愛したのに。
「どうして……ミネ団長、なのですか……!」
私は……先生の趣味、先生の好きなもの、先生の好きな場所、先生の好きな服、先生の好きな食べ物、先生の好きな……なんでもかんでも、知っている。なんでも知りたい……先生のことなら、先生のためなら、なんでも知りたい、なんでもして差し上げたい、なんでも捧げたいのに…………!!
──今や、その機会さえ失われてしまいました。
蒼森ミネ、ただ一人によって。 - 32二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 00:13:01
書いてて思ったけど、キャラ崩壊とか大丈夫なんかこれ
おもろいんか……これ……(賢者タイム) - 33二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 00:20:58
18(先生視点)
雨は夜も降り続いていた。あの後トリニティ中を探し回ったが、誰もサクラコの行方を知らない。
「……まいったな」
私は意を決して、電話をかける。それはサクラコではなく、ミネにだ。
プルルル……
『はい、もしもし』
「私だよ。……ミネ、すこし話したいことがあるんだ。いいかな?」
『……その口調だと、真剣な話なのですね』
「だったら、助かるよ。」
……私は一通り、今日サクラコと懺悔室で話したことについて、ミネに共有した。
『なるほど、そうでしたか』
「……うん。きっとサクラコは、悩んでるんだ。……私のせいで」
『しかし、あのサクラコさんが嘘をついているとは……いえ、少し思い当たる節があります』
「え?」
『先日サクラコさんとお話をしていたんです。昨日、○○さんがトリニティに来ましたよね』
「ああ、あのときか。」
覚えている。あの時、ミネとサクラコは一緒にいた。きっとその日の、私がやってくる前の話だ。
『私があなたとのことについてお話ししたんです、惚気話……の、ようなものを』
「は、はぁ」
『その時、サクラコさんは確かに言ったのです。【自慢ですか】と。』 - 34二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 00:27:28
19
「……聞き間違い、とかじゃないんだよね」
『なっ……失礼ですね。聞き間違いではありませんよ』
「サクラコのことなんだし、純粋に『おっ、それ自慢ですか』って聞いてきたんじゃないの?純粋に」
『……最初はそう思ったので、流したんです。……でも、やっぱり引っかかったんです。口調が』
ミネはその時のサクラコのことを話した。
全体的に元気がなさそうだったこと……その言葉を発した時、誰かを呪うような、恨めしそうな……起こっているような、悲しんでいるような、そんな声色をしていたのだと。
正直ミネの被害妄想ではないかとツっこみたくはなった。しかし、私が今日体験したことやミネが真剣に話していること、サクラコと連絡がつかないことを考えると、ミネの言うことは正しいと思うしかない。疑う余地はない、ということだ。
『……きっと私たちのことを、よく思っていないんでしょう……。』
悲しそうな声で、ミネはつぶやいた。私はその言葉に、なんと言葉を返したらいいのかわからなかった。
「大丈夫だよ」……そんな言葉を言えばよかったのだろう。しかしまったく声が出てこなかった。こんな安易な言葉を投げかけるべきではないのはそうなのだが、そこで私は思い出してしまったのだ。
サクラコに、安易なことを言ってしまったことを。あの時私は……サクラコが苦しんでいるのを、知っていても。 - 35二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 00:35:36
20
「今度、私が直接聞いてみるよ。そしてもう一度相談に乗ってあげたいんだ」
私がそういうと、ミネはすぐに「はい」と言わなかった。
「……ミネ?」
私が聞き返すと、ミネは少し涙ぐんだ声で、私に語り掛けてきた。
『私は……どうすればいいのですか?』
「ミネ……。」
私はミネの心を痛みを察した。
『サクラコさんを傷つけてしまったことが本当のことだとして……きっと○○さんは、あの人を助けに行くでしょう。でも私は……どうなるのですか? 指をくわえてみているだけなのでしょうか』
私は……何も答えられない。ただ歯がゆく、つらいと思った。情けないと思った。
『私は少し思っていました。すべての人を愛するということは、すべての人を愛していないのと同じことではないのか、と。だからあなたの優しさが……私以外に注がれてしまうのは、正直、辛いのですよ』
「ごめん……ごめんね……。」
私は、誤ることしかできなかった。私よりも年下の、まだ子供の少女にこんなことを言わせてしまう自分を呪った。
『でも私は耐えるしかありません。たとえ絶望的な状況だったとしても、あなたは幸せを、やさしさを振りまくのです。だって、それが大人の義務だから……っ』
「……。」
『聞かせてください。先生は……私のことを、愛していらっしゃるのですか……?』 - 36二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 00:44:00
21
相手はまだ17歳の女の子だ。先生と生徒なんて……今に始まったことじゃないじゃないか。
私よりも、ミネはずっと大人だった。無償の愛は、かえって人を傷つけることにもなりかねないと知った。それは彼女が一番の犠牲者であり、当事者だったからだ。私のわがままもじっと耐えてくれた人なのだ。
でも私は知っていた。ミネは……私のことを、まっすぐに愛してくれたのだ。
「当たり前じゃないか!」
『……っ』
私は強く言い放った。
「私は…いや、僕はね、君がいないと生きていけないんだ!君が支えてくれた命なんだ!君が僕を愛してくれたから、僕も君のことを好きになれたんだよ!」
『○○さん……』
「だからね、愛してるよ、ミネ。命に代えても君を守るよ。君を不安にさせるものは、僕ができる限り取り払ってあげたいんだ。だから、一人の男として、一個人として、君のことを愛しているよ。僕は……君だけのものだ」
『うん……うん……』
そして、と付け加える。これから向き合わなければならないことに、目を向ける。
「だから……今は、先生としての責務を、果たさせてくれないかな。私のお姫様」
『……ふふっ。そうでした。あなたって、そういう人ですよね』
ふっと明るくなったミネの声。ため息をひとつ数える。そして、いつものような元気な声で、私に行ってくれた。
『ええ、いってらっしゃい。お体には、お気をつけて』 - 37二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 00:47:12
今日はこれくらいでいったん寝ます!明日からまたサクラコ視点を書いていきます!!!
初SSなのでものすごく変でわかりづらい、キャラ崩壊とかいっぱいあると思います!ごめんなさい!
完結まで頑張るので、よかったら感想お待ちしてます!!! - 38二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 01:06:17
お疲れ様です!!
- 39二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 01:09:22
ブレーキをかけようとする理性あるの善性があふれ出してる
- 40二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 01:46:05
ヤンデレもので大事なのはどうキャラが壊れていくかの過程だからむしろ今のまま書いていけ
- 41二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 09:43:13
22(サクラコ視点)
連日降りしきる雨。私はは泣いて泣いて…泣き続けました。
長い時間をかけて、私は恋をしていたことを知ったのです。しかしそれは届くことの無い恋……。そして、報われることの無い想いだったのです。
私は先生とミネ団長を一時でも呪ってしまいました。シスターとして、生徒として、友人として有るまじき行為だと……わかっています。
「でも……こんなの耐えられる……わけ……。」
私はどうすればいいのでしょう。どうすれば良かったのでしょう?
私も先生が好きなのです。愛しているのです。誰にも奪われたくない、私だけの先生でいて欲しい……。
「……思えば、簡単なことでしたね」
「なーんだ……そうでしたね。私、逃げてばっかで何もしなかったじゃないですか」
私は、ひとつの計画を思いつきました。
先生と、『お話』をすれば良いのです。 - 42二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 09:51:02
23
次の日。
『先生、お話したいことがあるのです。明日大聖堂に来ていただけますか』
昨日、あの後モモトークで送信した言葉。先生は『わかったよ』と、快く返事をしてくださいました。
先生はしっかりとお約束を守ってくださいました。コツコツという革靴の足音が、この大聖堂に響き始めます。
「……。」
私はずっと目を閉じて祈っていました。しかしこれは……純粋な主への感謝では、ありませんでした。
『私はこれから、多くの罪を行うでしょう』
『お許しください、お許しください……』
私はひたすら、許しを乞うていたのです。それが絶対に許されるべきものではないと、私は知っていたのですが。
「サクラコ、来たよ」
そして、先生の声がこの聖堂に響き渡ります。
「……今日は誰もいないんだね」
私は何も返すことはありません。私は彼に背を向けたまま、ただ祈っていました。
……ただその時も、心の中の黒い感情は、ゆっくりと胎動を重ねていました。 - 43二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 09:53:31
嫉妬のために普段の行動が取れないサクラコさん……
美しいですね - 44二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 09:56:33
24
……本当にズキズキと痛むのです。やっと正体が掴めてきたこの心。決して時間が解決するなどというものではありません。
届かない恋をしているということは、本当に人を嫌いになりそうなほど辛いことなのです。
「……先生」
私は先生への挨拶を忘れて、重い口をゆっくりと開きます。
「先生は……ミネ団長を、愛しておられるのですか」
……怖い。彼の顔を見るのが、怖い。
ゆっくりと、彼の方へと向き直ります。先生は意外にも……いや、やはりと言うべきか、にっこりと笑っていました。
「……うん、そうだよ」
「そう…ですか」
今にも泣きそうになりました。その言葉だけで、私が選ばれなかったことを、変わることの無い事実と知らしめられたような気がしたのです。
「……本当にごめんね、サクラコ。みんなの先生だと言いつつ、こんなことをしでかしてしまった」 - 45二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 10:07:25
25
「ミネにもすごく怒られたし、泣いた。一時の感情で、僕らは突き進んでしまった。でもだからといって、彼女を愛していないのかと聞かれれば…そうじゃないんだ。だから僕は彼女を好きで居続ける。……そうしなければならない。……そうしたいんだ。」
「大切な人だから、ですか」
「…うん。」
……ああ、もう、消えてしまいたい。
でも、消えてしまうのなら、いっその事……この黒い重く苦しいものを、吐き出してしまいたい。
「先生、お許しください」
私は作り笑顔で、先生に精一杯微笑みました。一瞬、先生の顔が驚愕の表情へと崩れていくのが分かります。
そして私は……笑うのをやめて、先生を睨みました。
「……どうしてですか」
「え?」
「……どうして、私じゃないんですか」
「サクラコ……!?」
1度吐いた言葉は止まることはありません。坂道を丸石が転がり続けるように、谷へ真っ逆さまに落ちるように。
「私は…私だって先生のことを……愛しているのに。」
「私は先生に愛されるためなら、なんだって捧げられます!先生のものなら何でも知りたいのです、愛したいのです、捧げたいのです……私のこの身も、全て……」
「私は愛されたかった……私だって、先生にとって特別な存在で、いたかった……」
先生は悲しそうな表情で、ぐっと胸を抑えます。
私の目頭がぐっと熱く、そして声が次第に震え始めました。
「ミネ団長と私は、一体何が違うのですか?あなたを守れる強さですか?真っ直ぐな心?あなたを満足させられる体ですか?」
私だって、満足させてあげられるのに。変わらないはずなのに、と……私の怒声に近い怨嗟が、この聖堂内に響いていきます。
ほかのシスターたちはおらず、私と先生だけの空間。本来は特別な、幸せな空間のはずなのに、私はその神聖さを……自ら穢してしまいました。 - 46二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 10:08:34
やっぱり嫉妬でおかしくなるサクラコさんは最高ですね
- 47二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 10:27:05
26
「ミネはね、私にとって……絶対に必要な人なんだ」
先生は、やっと口を開きました。
「っ……」
「でも必要だから好きなったんじゃないよ。愛しているから必要な人になったんだ。遊び半分で好きになったんじゃない。」
「違いなんて……そんな話じゃないんだ。みんな持ってる優しさ、愛、人間らしいもの……それが、私にピッタリ当てはまったんだ」
先生は、ミネ団長を好きになった理由を話しました。
「自分のことを想って、叱ってくれるところ。甘やかしてくれるところ。可愛いものが大好きで、本当に女の子らしくて、素敵なんだ。ミネはね、私の事とミネ自身のことを、しっかりと分けて考えることができるんだ。当たり前のようで、当たり前じゃない。でもそれは、愛がなければならないんだ。……人として尊敬してる。そして私は、彼女を愛しているよ。だから差なんてものは、正直……どうでもいいんだ」 - 48二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 10:32:07
27
先生の言葉は、無慈悲にもまだ続きます。
「サクラコは……私を守れる強さといったね。」
「それは言い換えれば、私は無力だと言うことだ」
「そ、それは…!」
1歩踏みよる私に、先生は手のひらを見せて制止します。そして『それは事実だよ』と笑ってくださいました。
「実際、私がしてあげられることって、あまり無いんだ」
「……」
「だって私、強くないし。キヴォトスの外から来た人間だから、みんな銃でバンバンやっちゃってる世界なんて、あまりも私には危険だ。そして銃弾一発で、命が終わる。……そんな私が彼女にしてあげられることって、なんだと思う?」
先生は私に問いかけました。
しかし今の私には、その答えは分かりません。なぜなら、それは今の私こそ、何も出来ないからです。わかっている、だからこそわからない。……そんな状況のなかで、私の精神や良心が、音を立てて軋んでゆくのを感じました。 - 49二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 10:42:50
28
「ぐすっ……ぐすっ……」
私は、もう限界でした。
嫌になってしまったのです。何もかも。
今は大好きな人の言葉を聞くことすら、私には大きな苦痛でした。
「サクラコ?大丈夫?」
大粒の涙は、床を濡らします。そしてそのまま残る水滴が、私が泣いているという事実を、まざまざと、痛いほど知らしめて来るのです。
「……私は、どう頑張っても先生のものにはなれないのですか」
「えっ……」
「私は、もう先生を想うことが……出来ないのですか?」
「私には、先生が必要なのに……!」
私の涙は、私の視界をどんどん奪ってゆきました。私の足から、どんどんと力が抜けていきます。
「……ごめんね、サクラコ」
先生は申し訳なさそうに、呟きました。しかしもう…いえ、最初から、彼に謝って欲しくはなかったのです。
「私はあなたにとって、特別な何かになれないのですね……私は…私は何だったのでしょう。何のために秘密を……私自身のことを打ち明けたんでしょう」
「あは、あははは……」
もう体に力が入りません。なぜ立っているのかも分からない……。
涙は顔をぐしゃぐしゃに崩し、乾いた笑いが聖堂にひびきます。
いつしか抑えきれなくなって溢れた黒く重い何か。それは…嫉妬、などという生ぬるい言葉では定義できない、もっと複雑なものでした。
「先生、私は先生を愛しています」
「……サクラコっ」
「でも、今は……先生のことが、ミネ団長のことが……憎いのです」
それは、愛憎でした。 - 50二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 11:00:36
29
「それは……私が君を選ばなかったから、かな?」
先生は私の顔色を伺っています。しかし、私はそんな安易なことで人を嫌いになることなどないと、首を振って答えました。
「……私はあなたの事が好きです。愛してます。あなたが幸せなら、私も幸せ……でも、私はあなたのことを幸せにできない。私はあなたの特別になれない。その手段が、機会が……永遠に失われたのです。だから……憎いのですよ」
好きな人を睨みつけたことは、生まれて初めてです。そんな事、1度だってないと思います。
「大好き……大好きですよ、先生。」
私は彼の胸に飛び込み、彼の輪郭をなぞります。
「大好き……大好き。愛しています、先生…」
顔も、胸も、背中も、腕も……はあ、全部私だけに振りまいてくださったら……よかったなぁ。
もうこの身体も、想いも、言葉も、笑みも祈りも……もうあなたの特別には、ならないのですね。
「でも……大嫌いです、先生」
「サクラコっ…!?」
私は今までにないほど強く先生のことを睨み、突き放します。
そして背中に構えていた銃を……引き抜きます。 - 51二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 11:05:58
30
「や、やめてサクラコ!!」
先生を狙う銃口。引き金に指をかける。しかし震えた指は、しっかりと引き金を引けません。
「私の話を聞いてくれ、サクラコ!!」
「……もう全部嫌なんです、先生。先生も、ミネ団長も、私自身も…もう嫌い…嫌い…」
私は力無く呟きます。目もぐるぐるして……きっと今の私は、きっとおかしく見えているものでしょう。
「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い……」
「ですから、ここで全部……終わりにいたしましょう」
引き金を……引こうとしたその瞬間。
「おやめなさい、サクラコさんっっ!!」
「ミネ…」
「ミネ団長…」
あの大きな銃を私に向けて、制止を促します。
「やめてください、サクラコさん!!先生を……私の好きな人に、なんてこと…!!」 - 52二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 11:14:31
31
「2人とも、落ち着いて!!」
「下がってください、先生。……会話は……ほとんど聞いていましたから」
ミネ団長は先生を庇い、守ります。その銃口を私に向け、強く強く、私を睨んでいます。
「……どうして、あなたが先生を守るのですか。どうして……そこにいるのが私では無いのですか」
ミネ団長の姿を認めた途端、私の体は大きく震え始めます。足がガクガクと揺れ、まともに立っていられません。腕も、何もかも力が上手く入らず……銃を落としてしまいます。
「ああっ……ああああああっ……」
「……サクラコさん…!?」
「ああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!ああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!」
私はうずくまり、その場で大きな声で……泣きました。
その時、ぐちゃぐちゃになった心で……悪魔に売ってしまった魂で……もう、私はなにも出来ないことを悟りました。
「なぜ……どうして……」
「どうして私から、全部全部奪ってしまうのですか、あなたはぁぁぁ!!!」
「私が……私の方が先生のことを愛していたのに……!!」 - 53二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 11:23:00
32(先生視点)
「うううっ……ううううう……!!」
泣きじゃくり、うずくまり、床を拳で叩くサクラコ。その様子を……私たち二人は、ただ黙って見ているしかなかった。
こんなサクラコを……初めて見た。
「……嫉妬に、狂わされてしまったのですね」
ミネは彼女に聞こえぬように、私に言った。
「……きっと、彼女は心の底から先生を愛していらっしゃるのでしょう。……しかし現実は、それすらもう許され無くなりました。私たちは、その機会を奪ってしまったのです」
私はミネを見ることは出来なかった。どんな顔をしているのか、知りたくなかった。しかしミネは、私の方を向きながら話した。……きっと、彼女にも思うことはあるのだろう。
「……私たちが……か。…うん、そうだね。」
私はサクラコに申し訳ないことをした。……いや、サクラコだけじゃない。この一件で傷いたのは、何も彼女だけじゃない。大勢の人がいる中で、たった1人……心を病んでしまった人がいたんだ。
「先生、嫉妬というものは……何もその人の心の弱さではありません。想いが強すぎて、自分と相手の境界線が崩れたとき……人は嫉妬に狂わされてしまうのです。」 - 54二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 11:32:48
33
嫉妬。それは誰にでもある感情だと、ミネはいう。想いが強すぎたが故に、裏切られたと錯覚してしまう。そして……果てには、自分や他人のことを嫌悪してしまう。自分自身も、何もかもが信用できなくなる、と。
「恋は盲目……その意味は、本当に重いのですよ、先生……。」
「ああ……十分、もう十分わかったよ……。」
私はミネの肩に手を置いた。
……生徒一人を。たった一人を救済することも出来ない。
私は、本当に無力だ。彼女の気持ちをわかってあげられなかった。見てあげられなかった。
でも残酷にも……もう取り返せないのは事実だ。私にとっても、彼女にとっても。
ミネはサクラコに近寄る。そして手を差し伸べた。
「サクラコさん、今日はもうおやすみなさい……いつかその心の傷は……」
……瞬間、サクラコはその手を振り払った。
「……触らないでください!!近づかないで!!」
ミネは突然の出来事に…今まで見たこともなかったサクラコの姿に驚き、固まった。
「サクラコ、さん……」
「どうして……どうしてどうしてどうして……」
「サクラコっ……!!」
わしゃわしゃと頭を掻きむしり、押さえつけるサクラコ。ミネも一歩下がって、その異様な光景を見ていた。
「……帰って」
「……えっ」 - 55二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 11:40:30
34
聞き返した直後、ミネの肩を、サクラコがぐっと掴み……そのまま壁に突き放した。
「ぐっ…!」
「ミ、ミネ!! ……やめてサクラコ!!」
しかし、私の言葉は彼女にはもう届かない。
「帰って……帰って帰って帰って……帰りなさい……出ていきなさい……消えなさい、蒼森ミネ……!!」
強く強く…肩を揺さぶり、ミネを壁にうちつける。
「っ……!?」
その時、ミネの顔が引きつった。
「はっ…はっっ……はあっ……!?」
動悸。ミネの胸がズキズキと痛む。
……今のサクラコは、もういつもの彼女ではなく、もっと別のものになっていたのだろう。
「……ここから……消え───!!」
「もうやめるんだ、サクラコ!!」
私は彼女に向かって叫んだ。サクラコは1度私の方を向き直ったあと、うなだれ……ミネを手放した。 - 56二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 11:50:05
35
……その後。しばらく放心状態になったミネを引っ張りながら、私たちは聖堂から出た。
「もう行くね、サクラコ」
サクラコはただ……その場に座り込んで、泣いていた。
ミネは我に返ったあと、事の重大さを……そして彼女の悲しい心を理解して、泣いた。幸せな人の下には、常に報われない人がいるのだと……私は今になって思う。
ミネを手放しなどしない。これからも愛し続ける。しかしその言葉がどれほど重く、どれほど辛いものなのか……私は、今まで知らなかった。
それから3日。私とミネはいつもの元気を取り戻した。彼女はいつも通り忙しなく、キヴォトス中を走り回っている。
ところどころで聞こえる銃声。きっとまもなく爆発音が……
『ドゴーーーン!!』
ほらきた。……そんな日々だ。
しかし私は、ひとつの事を心配していた。無論、サクラコのことだ。
きっとまだ、傷ついているだろう。私がミネを愛していなかったら……いや、これは考えるのをよそう。
事実は事実だ。しかし……耐えられないものも、きっとあるだろう。 - 57二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 12:04:35
36
プルルル……
「はい、シャーレの️○○です」
『あっ先生……こんにちは』
電話をかけてきたのは、伊落マリーだった。
「やあマリー、元気?何かあったの?」
『は、はい!!それが……サクラコ様のことで』
「……続けて。」
思わず低い声になってしまう。マリーも少し同様していたが、続けて話してくれた。
『ここのところ、トリニティにいらっしゃっていないようでして……聖堂にもいらっしゃらず……先生なら、力になっていただけるのかでは、と思いまして……すいません。』
「いや、いいんだマリー。教えてくれてありがとう。すぐに向かうよ。」
そう言って電話を切る。
サクラコはあの日以来、学校に来ていないとの事。
「……よし。」
私はアロナを起こす。
「んえ……?あ、先生!!こんにちは!」
「アロナ、頼みたいことがある。ミネ、マリー、ヒナタ……この3人に、サクラコを探すのを手伝ってくれって連絡して欲しい!!」
「はい、アロナにお任せ下さい!」
「ちなみにサクラコの居場所って……わかったりする?」
その時、眠っていたプラナが顔を出した。
「検索……歌住サクラコさんの位置情報ですが、検索することができませんでした。携帯電話の電源が切れています。」
「家に居る可能性は?」
「曖昧。ある、とも言えますし、ない、とも言えます。」
「とりあえず、向かってみるよ。ありがとね、アロナ、プラナ。」
「はい、先生!また何時でもアロナとプラナちゃんを頼ってください!」 - 58二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 12:05:55
書いてて思った
ちゃんと曇ってるかな?でもちゃんとサクラコは狂わせれた……ような気がします! - 59二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 15:51:06
37(ミネ視点)
先生からの要請を受け、私はサクラコさんの捜索を始めました。幸いにも今日は要救護者が少ない日。創作に専念できることは行幸でした。
私はあの日──。サクラコさんが私につかみかかった日のことを、ずっと忘れられずにいました。普段温厚で、そんなことはしないである彼女とは違う、凶暴で……そして、悲しそうな顔。きっと私を恨んでいることでしょう。
『ミネ団長、自室にはいらっしゃいませんでした。しかし、最近生活していた痕跡もしっかりあります。外出中のようです』
『マリーさん……ありがとうございます。』
幸いにも、彼女はまだ生きている。そして……今はどこかをほっつき歩いていることだろう。
総遠くまで入っていないはず。しかし誰にも見られたくないのだろう。私はひっそりと、木影の道を歩いた。
「……しかし、寒いですね」
先日の雨はやんだが、分厚い雲が落ちてきそうなほど、天気は芳しくない。
きっともうじき、雪が降るだろう……。
「早く見つけなくては……」
私は曇り空の中を、走っていた。
サクラコさんが行きそうな場所。普段口喧嘩ばかりの私たち。案外彼女のことを、何も知らないという事実を痛感した。
彼女を探す今になって、彼女の抱えていたもの……それが途方もなく大きかったことを、今になって知る。
「……サクラコさん」
彼女は……川のほとりにある公園で、たたずんでいた。 - 60二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 16:00:52
38
「ミネ団長……」
サクラコさんの目は赤くはれていた。きっと……ずっと泣いていたのでしょう。
「天気が悪くなりそうですよ、サクラコさん。……みんな待っておいでです。さっ、帰りましょう」
私は彼女に手を差し出すが、彼女はその手をじっと見つめて、横を向いてしまった。
「……私は……もう辛いのです。苦しいのです」
サクラコさんは、ゆっくりと話し始めた。それはあの日以来みせなかった彼女の深い後悔だった。
「本当はだれも傷つけたくなかったのです。先生もミネ団長も……みんなも。こんなことをするはずでは、なかったのです……。」
「……。」
「この胸の暗い気持ちが、私にそうさせろと命令するのです。……でも、きっとこれも言い訳ですよね」
サクラコさんは、一度自分の思いを、醜い部分をさらけ出した後、強い自己嫌悪に陥っていた。
普段の私なら、あの時……そして今この瞬間、強い救護を行うだろう。しかし……できない。
私は彼女の気持ちがわかるような気がしていた。実際に幸せになったのは私ですが……何にせよ、同じ人を好きになってしまったのです。だからこそ、わかるものがあるのかも……しれない。
「私は……もう先生に祈ることもできません。会うこともできません。私は、それだけのことをしたのです。そして団長。あなたにも……」
「恋って、愛って……辛いのですね。……こんなにも辛く苦しいものなんで。報われないなんて。主は……いったい何を……」
自らの信念さえ消え去ろうとしてしまうサクラコさん。
「すみません……。」
私は、謝っていました。 - 61二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 16:19:22
39
「サクラコさん。あなたが悪いのではないのですよ。……一人の方しか選べない、選ばれない……そんな事実が、残酷なだけなのです。ですから……何も気に留める必要はありません」
私は、そんなことをサクラコさんに言った。慰めるように、ゆっくり静かに。
この公園には私たち二人しかいない。その静寂がなんだか、心をゆっくりと締め付けていく。
「……私では、ダメだったのです」
サクラコさんは、ゆっくりと口を開きました。
「会った回数、時間。交わした言葉の数。……信頼。それは……私には絶対に超えることのできない壁なんです。何もかも……あなたより、少なかった」
「そして私は気づいてしまったのです。……私は先生に頼りっぱなしで。シャーレに行くときも、当番以外にはあまりなくて。頻繁にあの人を気にかけ続けるあなたには……私は、及びません。でも気づいたのです。人の心は、決してコントロールできないものなのだと」
それは大きなあきらめの言葉だった。今になって自分の『負け』を認めるという……残酷で、切ない諦め……。
「私は先生のことが好きです。でも好きだという感情に気づくのが……あまりにも遅かったのかも、しれません」
──ましてやあんなひどいことをしてしまった。私はシスターとして、友人として、一人の生徒として、失格です。
そう言って、サクラコさんは向き直った。その笑顔はどこか切なくて、空虚で……見え透いた悲しみが、確かにそこにあった。
「私は……自分が許せないのです。だから選ばれるのは……いえ。最初から、私じゃ……なかったのです」 - 62二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 16:34:23
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- 63二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 16:36:09
40(誤字りました)
私はサクラコさんに詰め寄った。
そして……大きな腕と翼で、彼女をめいっぱい抱きしめました。それが私にできる……彼女に対しての『救護』でした。
「サクラコさん、あなたは立派でしたよ……。よく今まで我慢してきました。よく今まで耐えてきました。よく……打ち明けてくださいましたね」
「うっ……うううっ……ミネ団長……っ!」
驚いていたサクラコさんは……じわりじわりと涙を浮かべた。そして私の胸の中で、泣きました。
「私はずるいです……。こ……こんなにつらいのなら……恋なんてしなければよかったです……!」
「でも、それでもあなたは彼を好きでいるでしょう? 私には、わかります……。」
私は知っている。サクラコさんは、本当は自分と同じくらい、先生のことが好きなのだと。そうでなければ、私を揺さぶったりなんてしない。先生に銃口を向けたりなんてしない。
そうでなければ……あんなに泣かない。
「私は……あなたを跳ねのけて、自分の思い通りにしようとしていたのです。ずるいです……そして、卑怯です」
私はサクラコさんを見つめた。泣きじゃくりながら、愛憎をむき出しにする彼女を、じっと見つめていた。
「私は、彼を愛していたい……それだけだったのです」
「……ごめんなさい、サクラコさん」
私はつぶやくように謝罪する。するとサクラコさんは胸の中で静かに微笑み、私に言いました。
「いいのです。だって……あの人があなたを選んだのです。そしてあなたが先生を選んだのです。私は……私は……祈るだけで、精一杯です。ミネさんが……あの人を、幸せにしてあげてください……!」
「サクラコさん……本当にお強い方です、あなたは」
私も気づけば涙を流していた。なぜ声を震わせて泣いているのか、わからない。しかし、二人抱き合う腕の力は、ぎゅっと強くなっていた。
「最後にひとつだけ……わがままを言っても、いいですか?」
サクラコさんは、ぐしゃぐしゃになった声で、ぐしゃぐしゃになった顔で、私に懇願した。
「祈るだけでいいのです。だから……彼を好きなままで、いさせてください……」 - 64二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 16:36:26
このあとエピローグに入ります!!
- 65二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 18:08:25
41(エピローグ・サクラコ視点)
あの日、私はすべてをあきらめ、しかし先生のことをずっと好きでいる、と言いました。
きっと卑怯で、わがままなお願いなのでしょう。しかしミネ団長は
「それでもいいんです」
と言ってくださいました。ミネさんと先生は付き合っている。しかし、私にとって、それは祝福するべきものであり、そして対抗するべきものなのです。
私はいつも通りの日々を取り戻しました。もう心が痛まないといえば嘘になりますが、それでも私は自然体でいることができました。
嫉妬も愛憎も、すべて私自身。それをすべて吐き出せたのは、すごくよかったことだと思います。
あの後、先生が私を一度だけ抱きしめてくださいました。私は彼に声が枯れるまで、疲れるまで「好きです」と言い続けました。今度は脅しの言葉なんかでなく、純粋に……。しかし、それが最後です。
そのあとは、先生と生徒のまま。それ以上は、特に何もありませんでした。
ミネ団長とは、引き続き円満な関係を築いているそうです。二人がこっそりキスをしているところを見ると、なんだか複雑な気分ですが。
「しかし……いい日ですね」
今日は何もない日。私はいつものように、愛する人々や、すべての人々、そして私の主に祈りを捧げるのです。 - 66二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 18:21:38
42
「サクラコさん!!一体どういうことですか!!」
バン、と大きな音を立てて聖堂の一室の扉が開きます。
私は飲んでいた紅茶をこぼし、むせてしまいました。
「げほっげほっ……!い、いったい何のことですか……?」
「とぼけないでください!!トリニティ生徒から『シスターフッドが献金と装って生徒から金品を巻き上げている』という報告を受けました!!説明してください!!シスターフッドは正義や慈愛という言葉を盾に悪行を施す集団なのですか!?ゆ、ゆるせません……!!」
私はミネ団長をなだめようとします。しかし、こうなってしまったミネ団長は止まることを知りません。
「ミネ団長、と、止まってくださいぃ……!」
「お、お気を確かに!」
マリーとヒナタが頑張って止めてくださっていますが、『止めないでください!!』と……。私は覚悟しました。
「救護いたします!!」
~~~
「しかし、まあ……やってくれたね、ミネ」
「も、申し訳ありません……」
先生はミネさんの手を引き、私に微笑みます。
「前々から噂とか、不確かな情報に踊らされるのは、ミネの悪い癖だよ」
「ぐっ……うう」
私は苦笑します。……でも、実感しています。これもいつもの光景ですから。
「先生は、どうしてトリニティに?」
「ああ、ちょっとティーパーティーに用があってね。そのついでに、みんなに顔を出そうと思って。」
「なるほど。……わざわざご足労いただきありがとうございます」
私はにっこりと笑う。そして、先生も屈託のない笑みを浮かべてくれた。 - 67二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 18:25:33
43(ラスト)
そういうと、先生は私の頭を優しく、ゆっくり撫でてくださいました。
「……元気そうでよかったよ、サクラコ」
「はいっ、おかげさまで」
私も、嬉しくて微笑んでしまいます。しかし、これが幸せなのです。きっと生徒として見つめているのでしょう。しかし、それでもいいのです。多くは望みませんから……。
「じゃあ、私は良くね。みんなにもよろしく」
「はい……。」
行ってしまう。背を向け、歩き始めた先生を、私は呼び止めた。
「先生」
「ん……?」
私は……指を組んで、祈ります。
「先生、あなたに今日も一日祝福があらんことを。そして……愛しています、○○先生」
おわり - 68二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 18:27:49
おわったおわった!おわりました!!!!!!!
初SSなので本当に稚拙な文章だったと思いますが、自分なりに最後までかけたので本当に良かったです!!
サクラコ大好き!!サクラコかわいい!!わっぴ~~~!!!反応集にのってほしいなぁ~~~コレ!
皆様の感想もお待ちしてます!!!!!改めて、ここまで読んでくださりありがとうございました! - 69二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 18:35:24
よかった、そして最後はハッピーエンドだね
- 70二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 19:38:43
- 71二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 19:41:20
- 72二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 19:48:25
よろしいこのSSを多くの人の目に留まるようにpixivへ投稿してはいかがかな
- 73二次元好きの匿名さん25/05/02(金) 20:27:48
曇らせたままでいい生徒がいるユメねぇ…
- 74二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 00:04:56
あ待って誤字ってるわ
- 75二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 00:07:41