- 1ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/03(土) 23:04:06
- 2ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/03(土) 23:04:42
【前スレ】
【R-18】ここだけ3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦うリアルロボットSFな世界part15【のんびり進行】|あにまん掲示板襲来した異星人!侵略されるエネルギー資源!存亡の危機に晒されてなお人類は……未だ一つになり切れず、壮大な内ゲバを繰り広げ続けていた!!【出来れば読んでいただきたい世界観および初期設定集(テレグラフ)(…bbs.animanch.com【禁止事項】
・無敵ムーブ(戦闘でダメージを受けない、回避し続ける、など)
・必要性の認められない確定ロール
・相手PLが嫌がっていることを強要する行為(特にR-18関連はデリケートなところなので扱いには気を付けて、事前相談忘れずに)
【世界観やパワーバランスを保つ上での禁止事項】
・版権設定の利用
・「地形を変えられる火力」を個人で設定し所有すること
・3勢力(K.I社、人自連、デスペラード)+インベイドよりも立場や規模が大きい勢力を設定すること
・なんでも高い水準で出来るキャラ、なんでも高い水準で出来る機体禁止(他の人の活躍機会を奪いかねないため)
・メタネタ禁止(「この世界は作り物だ~」や背後さんへの言及をキャラの目線で発言させるなど)
- 3ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/03(土) 23:04:54
Q1:参加してぇ!けど事前のキャラ登録って必須なの?テンプレはある?
A1:キャラシはあった方が色々スムーズだとは思うけど、無くても規約的なNGムーブさえしなけりゃ参加はOKだぜ!
テンプレらしいテンプレは特に無い(めんどうくさかった)からテレグラフなりで各自好きな様に書きたいこと書いてくれ!
↑の初期設定集から飛んだ先にあるスレ主のキャラシからテンプレとして項目を引用しても大丈夫だぜ!
Q2:キャラは1参加者につき何人まで?
A2:何人でもOKだぜ!複数陣営あるし下手に制限設けたらスカスカになるのが目に見えてるから……好きな様に作ってくれ!
Q3:コテハン(トリップ)は必須なの?
A3:必須じゃないぜ!でもトリップが無いってことはなりすましや乗っ取りが出ても判別方法が無いってことでもあるから、自衛手段としてコテハンを持っておくのは無難だぜ!
Q4:スレタイにR-18表記があるけどエロスレなの?
A4:一般誌のエロ描写とか元ネタ一般作品のエロ同人好き? 俺は好きなの……
エロメインじゃないけど「エロいことも割と自由に描写して良い」スレだから苦手な人がミスッて踏まない様に一応表記しているぜ!
「猥談耐性はあるけど自キャラにエロルさすのはなぁ……」って人でもOK、「自分は露骨なエロやりたくないです」って言っておけば良いぜ!
Q5:設定集に目通したけどなんか既視感ある設定ばっかりだな?
A5:へへっ - 4ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/03(土) 23:05:23
テレグラフ(設定やキャラシート、R-18な文章を書いたりにどうぞ)(※URLのhとttpsの間のスペースを消して検索してください)】
h ttps://x.gd/Z5SAZ
【URL短縮用サイト(テレグラフのデフォルトURLだとあにまんのNGワードに引っ掛かってしまうのでこちらでURL短縮してから投稿してください)】
- 5逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/03(土) 23:38:53
「どう?金龍にアポは取れそう?」
逆巻重工の本社ビルで、カンナは自分の『伝手』の一つと連絡を取っていた。
一つは、金龍の所在の確認。 一つは、彼と話し合う場を設けるため。
その『伝手』は、デスペラードの一人だった。先代からの長い付き合いで……周りに怪しまれないためと土下座をしてまでアーヴィングへの乗り換えをこちらに懇願した、元月風乗りだった。
『それが、数時間前にサンダータイガーを含めたいくつかの機体の所在が消えています』
「どういう意味?」
所在が消える。という意味が分からなかった。が、次の言葉で見当がついた。
『文字通りの消失です。跡形もなく消えています。機体反応も……それらしきものは一瞬掴みました』
『まぁ、偶然デスペラード達の大移動が見たからなんですけど……追っかけてたら1機に群がってましたよ』
「……迷彩を掛けてどこかに移動してるってことか。ありがとう、また頼むよ」
一部の、それも超高級な輸送機は機体の姿を隠すことができる。 あとはレーダー網や人の目をくぐり抜けるだけの実力さえあれば、それは消えたも同然。
そうした迷彩を作れない、使えないデスペラードたちがどうやら徒党を組んで一斉に移動していたらしい。
……そういうことだろう。と判断して、『伝手』との連絡を切った。
「……クっ、ソが!!!」
一番手っ取り早い連絡、かつ解決法がなくなっていることを知り、カンナはキレた。 - 6旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/03(土) 23:41:17
スレ立てお疲れ様ですー!
- 7ソラウ◆5Q4kt6Q.kc25/05/03(土) 23:42:02
スレ立ておつー
- 8ノイン◆fDey8JUvvk25/05/03(土) 23:43:48
(立て乙です)
- 9ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/03(土) 23:44:40
(保守代わりのRP投下)
前スレ200
「命令は聞かないって言ったろ……ああ、そうだ。まじでお仲間の輸送機と通信繋いでくれよ」
笑った。
「どんな馬鹿に機密を漏らそうとしてるか、そしてその馬鹿に自分の過去を話すより馬鹿なやつを笑ってもらう趣味作ろうぜ?」
自分を笑い者にすれば、相対的に金龍の位置は上がる。
「まぁクロノスで俺はなんて呼ばれてるか知りたいし? 俺の家族は誰かも、皆に考察してもらいたいもんだからさ」
笑って、ほれほれと。促していた。 金龍がやらないなら自分がやるか?と思った。 - 10ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/03(土) 23:54:50
前193
【手渡された服を持って、案内された試着室に入る】
【飾り気の無い、鴉や狼を思わせる黒と灰色の服を脱いで、白いブラウスに袖を通していく】
【次にスカートを履いてみるが、ストンと落ちてしまう。疑問符を浮かべながら、しばらく格闘しているが、猿がライターを手に入れたように進展が無い】
【ウルヴィはスカートを履いたことが無かったのだ。ズボンであればほぼ必ずベルトがあり、細い腰に強制的に密着させる手段があった。しかしスカートにとって、ベルトとは必須のものではない。アジャスターで調整を行うからだ】
【しかし初見となるウルヴィはそれを知らない、知り得ない、故に──】
(これ、わかんない…)
「ランセルー」
【シャー!っと勢いよく試着室のカーテンが開け放たれて、色気のないバイカーショーツ…にしては薄手の下着を丸出しのままで、ウルヴィがそこから出ようとしていた】 - 11二次元好きの匿名さん25/05/03(土) 23:56:58
このレスは削除されています
- 12ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/03(土) 23:59:43
......ハァー......ここまで意固地なガキは見た事無いな......
『金龍様も通す時は通してます』
今そこは重要じゃないから......
【唐突にやってくるボディブローに、ガックリと項垂れる】
そこまでして広めたいってんなら覚悟しといた方が良いぜ
今の彼女たちはスッゲェおっかねぇからな
メビ
『既に準備は』
【帰投している際中の姐さん達と通信を繋げ、医療キットを持ち出す】
治療を受けながらでも良いなら話せ これは交換条件だ
無理にでも通させてやるからな
- 13ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 00:02:44
- 14ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 00:07:05
- 15ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 00:13:49
- 16ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 00:14:23
「ああ、まぁそれくらいか……じゃあ正解を言うぞ?」
そう言ってケイは、床を指で掘るような仕草をした。
「地下だ。地下で17年……あるいは15年暮らしてた。爺さんとたった二人。人の生活音すらも響かない深い場所……地下水道管の奥の奥でだ」
赤子の頃からだったら17年。物心つき始めた頃なら15年かなーとざっくり言っているケイは、過去を懐かしんでいる顔だった。
・・・・
「だから俺は爺さん以外の人間を、現実では18歳になるまで誰一人として知らなかったんだ……13歳くらいの頃は、爺さんと俺以外の人類は皆死んでるとか、そういう妄想をこじらせてたよ」
笑いに笑った。 現実という言葉の強調に気づいてくれるといいな、なんて思いながら。さ、と手を叩いた。
「地下暮らしなのになんで俺はこんなにBFを操れると思う? 地下じゃBFは操れないのに?」
手を広げた。飲み込んでくれたら、感じるだろう疑問だった。
- 17ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 00:24:47
......シミュレーターか
【ガラクタ弄りも趣味に持つ彼が、間を置かずにひとつの正解を出す】
爺ちゃんとか親父の口からでしか聞いた事ないんだがな......
何でも精神負荷がデカ過ぎて、こんなのじゃ訓練に使えんと適当に一般市場に捌けた筐体......世間一般じゃ伝説のksゲー扱いされているあれか
(なるほど、合点が行った)
【少なくとも、人並み外れた反射速度があるから、人より頑丈だから、そんな生易しい理由でBFを乗りこなせる訳は無い】
【金龍が大尉から大佐へ異例の速度で上り詰めた理由だって、幼少期からそんな化け物を乗り回していたのが、1つに含まれている】
【一般のBFレースで、実機の模擬戦で、あるいは実戦で、経験と技術を磨いてきたからだ】
すると、どうやら君の出自は一般的なものでも無さそうだがな......
- 18ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 00:38:26
- 19ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 00:39:58
「はぁ~~~~」
その答えを聞いて、ケイはわざとがっくり肩を落として、不機嫌そうな顔をした。
「頭が良すぎるのも考えものですねぇ大佐? ちなみにその一般に捌けたってのはデマです。実際にはデータごと全部消去されました。一部の好事家か、本物のイカれに回収されたもの以外ね」
エイダン・リーと龍影さんという証明付きです。といった。
クロノスでも人自連でも、貴重な初期インベイド大戦時代の精巧なシミュレーションデータがぱぁだ!と手を拾げたあとジト目に変わる。
「けど正解に行くのが速すぎてつまらねぇな……いや、他人と頭の出来も違うから変なところだけ勘がいいんだな」
良い意味でも悪い意味でも。と枕に添えて。
「……5歳くらいからシミュレーターを朝から寝るまで自発的にって一般的ですか?」
とイーに問いかけつつ、まぁ当てられたもんは仕方ないと割り切る。
「まぁ、爺さんが比較対象でしかなかったから。ずっと爺さん超えるまでシミュレーターばっかだったんです」
・・
「そんで、14歳の頃から1年間。初期インベイド大戦シナリオをクリアするまでの間、シミュレータールームに監禁されました」
人格破壊装置。精神崩壊案件のオンパレード。データどころか存在すら消されて当然の、悪意しかない地獄。
そこに、一年間ずっと向き合わされた。
「ちなみにそこで死んだらデータリセットなんで。セーブ・ロードはないですね」
サラッと言った。
- 20ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 00:55:47
- 21ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 01:36:38
「ああ。あとは俺の爺ちゃんが“撃墜王”で、色んな人と縁があって、それが俺とたまたま繋がったってだけ」
だから全部。といった。
それをサラッと済ませるな!?と叫ぶ人の方が世界には多いだろうに。
「そして俺もわかったことがあるよ、勞 金龍」
ケイの目が細められた。
「今、俺のことをイカれてると思ったな?」
表情か声の色か。あるいは別の何かで。察してるぞ、隠すな、と。
「俺と、お前が殺してきただろう『イカれたデスペラード』と何か違いがあると思うか?」
低い声で、語る。
・・・・・・
「正解は何も違わない。運が良かったか、悪かったか。それだけ」
さらに一歩近づいた。
「俺は手前とは違う。手前も俺と違う。そして……今、手前の尺度で俺を決めつけたな?」
だから俺も一度だけ、お前を決めつけるぞとのたまった。手前、という本来なら侮辱になる言葉を敬意として扱うような、古い話し口。
「お前が好きだ。お前の助けになってやりたい。そのためなら、今命を捧げてやってもいい」
「俺はお前が憎い。自分が正しくて、自分が世界の中心だと思ってて。誰からも……大事な人を憎くんだことも、罵声を浴びせたことのないお前が、殺したいほど憎い。大佐という地位で常に誰かを動かせるお前が憎い」
「なぁ……イカれてる俺の本心はどっちだと思う?」
そっと、首に手を添えた。自分が力を限りなく込めたとしても、歪むこともないだろう男の首に触れて。それから襟首を掴んだ。
- 22ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 01:37:39
・・・
「俺にとって初めて感じた世界は、20年前の今なんだよ」
何度本当に死のうと思ったか。何度“戦友達”の後を追おうと思ったか。何度許しを乞うたかも覚えていない。祖父がいなければ死んでいた。
なのに祖父へひたすら憎悪をぶつけた。祖父はそれを受け入れた。
憎悪は薄れ、共感に、そして再び尊敬と、家族として戻れた。
そんな俺は、イカれてるのか?
「正しい選択なんて一度もしたことがないんだよ。G-3で俺は何人仲間を置いていったと思う?」
同じ地獄が、現実にあった。
「補給が来るまでの間で十五人見捨てた!!その間テメェは何を……いや、わかってる、わかってるけど言わせろ……」
「全員、俺が……殺したんだ!なのにお前は一人気楽に、のうのうと遊んでたんだ!! お前はそうじゃないって知ってるよ。けどそう言われてどう思う!」
見捨てる判断をした。それは同じだ。
「お前はあの戦場で、誰か一人でも見捨てたか!?自分のせいで死んだ誰かを見たか!!? こう言われてお前はどう思うよ!!!」
叫んでいた。悲鳴だった。
・・・・・・・・・・
「お前に俺の何がわかるって、思うだろ!?」
伝わってくれと。
「今のお前は、イカれてる俺のことを理解しようとすることを、やめたんだよ……ッッ!!」
襟首を掴んだまま、ケイは膝をついた。
「俺はお前を理解したいよ。でもお前に、俺のことをイカれてるの一言でまとめられたら……何の言葉も届かないじゃないか……!」
カンナ曰く、『異常な共感性の持ち主』は。金龍に、己を友と呼んだものを。彼を止められないかもしれないことに。彼の糧になることもできない可能性に。
ただ、歯を食いしばっていた。憎んでいた。
- 23ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 02:21:36
……
【メビたちは、今度は己の意志で動かない。普通は仕える主人が締め殺されるのを見逃すはずは無いのに】
【理解していたのだ。イカれていないケイなら殺すはずがないから】
イカれているって話なら……見捨てているって話なら……軍人の俺の前で叫んでるんじゃねェ
【襟首を掴む右手を外す】
軍人の俺はな、どこか割り切っているんだよ
掬える範囲の人しか救わず、それ以外をあっさりと諦めてな
【感情のブレが力加減に影響し、彼の右腕に僅かにヒビを入れる】
ドラ息子の俺はな、なまじっか人の心を理解しているせいで苦しむんだよ
掬えない範囲の人を救えず、あまり訪れない慰霊碑を何個も立ててな
【金龍は片膝を付き、ケイとの目線を近付ける。その高さは依然として少しズレていた】
俺はイカれているテメェを理解しない テメェも軍人の俺を理解しない
それならお互いに理解し合おうぜ
イカれていないテメェと、ドラ息子の俺をよ
- 24ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 06:46:11
「っっ、はは……」
ぺき、ぴしりと、右腕の骨にヒビが入る。
脂汗が一つ、二つ。指の力がおかしな方向に伝わって、その度に手指が別々に動いた。
痛みに耐えて、おかしな声が漏れた。
金龍の言葉など信じられるかという思いと、まだ行けるか?と思う心がせめぎ合っていた。
(ま、普通ならもう見捨てるか)
欲しかったのはそのドラ息子の言い訳だった。軍人としての彼など、見ることも願い下げだった。ぐだぐだダラダラと、頑張ったからと言い訳ばかり────。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここまでやって成功すらできていない軍人の仮面など反吐が出る。
視線は未だずれている。正直これは無理かもなと、冷静な部分が計算して……まぁ、どうせゴエティアの基地につけば自分の最期だ。芽を出す手伝いくらいはしてやろう、と。1分1秒を思う。
(俺だけは、あんたの言い訳を聞いてやる)
軍人でもない、傭兵だから。俺はまだデスペラードではないから。
「……30点だぜ、勞 金龍。デスペラードにっ……仲間にも呆れられたか?」
笑う。強がりで。予測する。カマをかける。相互理解には摩擦が必要だ。
譲らない、カッコつけたがりとはなおさらに。痛みなど声にも出してやらない。
「俺の番は終わりだ。次はお前が話せ……何をしたかったのかも含めて、ボンボンじゃない俺に言ってみろ」
死神など、目の前のガキなど畏れるものか。
「納得いかねえ答えを出したら次は左だ。まだ一発残ってるのを忘れんなよ?」
だから言え、ゴエティアに着くまでは聞いてやると。年頃のガキらしい基準だった。
- 25ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 08:11:04
- 26ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 09:27:17
根っからの本心なんだが......随分と厳しいな
ただまぁその通り、元野良の飼い猫が去って行くかもしれなくなった......
【金龍が手を離すと、メビが早速骨の固定処置に取り掛かる】
ある程度予想はしてた
野良は野良、拾われた家で骨を埋める訳無いんだからよ
だが......こうも付き合う時間が短かったとは想像していなかった......
『今動いたニャ! ちゃんとタマの中で動いたニャ!』
『奥方にはせめてさん付け! ......でも嬉しいです、もうすぐルゥルアもお姉ちゃんになるのですから......』
思っていなかったなぁ......
【顔を上げたまま立ち上がる。その表情は、見えない】
これ以上はまた今度
ここからようやく本題だ
- 27ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 09:50:11
「だからお前は、無頼者が一番似合うって言ったんだ」
ケイの笑い方は、とても悲しそうで。同時に怒ってもいるようで。
「お前はちゃんと、その野良猫のことを考えたのか?野生の厳しさを『知ってたつもり』になってたんだろ?」
表情の見えない金龍の傷口に、言葉の塩を塗った。
「そいつが去るのは野良猫だから、じゃないんだ。『お前がどこまでも指揮官として下手くそ』だからなんだよ。慕ってやろうと思った群れのボスが実際には情けなくて情けなくて……期待外れだったって。お前に付き合ってられないって、愛想を尽かされたのさ」
なにより、人間ってのはそういうもんだと。無慈悲に呟いた。
「指揮下に入った最先任がすべきことは、指揮官が無能か否かの判断……無能は被害を広げる前に殺せ。俺がシミュレーターの中で聞いた言葉だよ」
無慈悲と思うだろ?と笑った。
「でも当然の判断なんだ。お前はそれを、技術と機体のゴリ押しだけで無理やり埋めた……通る時に見たサンダータイガーを見ればなんとなくわかる。そういう戦い方をしたことくらい」
「それだけやって、やったことがアブソーバーたった1機の鹵獲……なぁ」
「怪物には勇者として挑めと警告したよな?逃げる怪物を追ったんだろ?行くなと言われて、なおも、しつこく」
サンダータイガーだけが、露骨に大量の傷を抱えていたのだからわかるのだ。
「そんな無能な指揮官には俺だろうとついていけない。無意味に死ぬのが見えてる。依頼を放棄しなかっただけ喜べ」
そう言ってしまえるケイも、やはり無頼としての資質を覗かせていた。
「……ま、これ以上は他の人に言ってもらえよ。クロノスの指揮官ならみんな知ってるだろ」
肩をすくめて。
「説教になって悪かったな。けど、他の人は多分俺より厳しいよ……本題、言ってくれ」
ここまでにしようと手打ちにした。本題へと促した。
- 28ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 10:10:27
別に構わない
全部事実だからな
【淡々と、淡々と、淡々と受け流す】
だが、そっちも傭兵だからこそ情勢をしっかり把握しておけ
将来どこ行けば良いのか分からずに食いっぱぐれるからな
【スクリーンに、あの戦場で散っていったデスペラードの残骸を、ナノマシンで特定したアブソーバーの現在地を、ケイが知らない範囲のアブソーバーの機体データを映す】
はっきり言って、ナノマシンの稼働時間もそう残っていない
だが、俺はこれ以上動けば確実に上層部から止められる
だから、この機密を、人自連で信じられる君と逆巻CEOに託す
【まずは2枚、写真を拡大する】
このデスペラードが乗っていたソルジャーは、数ヶ月前に輸送していた所をそちら側のBFに奇襲されてから行方不明になっていた物だ
対してこっちのSHINONOME、つい最近に出撃させた覚えの無い僚機が襲った輸送車の中で眠っていた物だ
ここまでで俺が何言いたいか分かるか? - 29ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 10:21:06
「誰かが偽装して各勢力に襲いかかった。そして鹵獲してさらに使用。対立を煽った……腐るほどある手だな」
感慨もなく呟いた。分かってないと思ったか?と。
「クロノスと人自連は些細なことでピリつく。それを狙ってる奴らがいた」
「じゃあ俺からもいうぞ。『小物を狙うより、英雄をそう見せかけて殺した方がより混乱を作れる』」
しゅ、と左手で己の首を切る仕草をした。
「英雄と呼ばれたくはないけどな。俺が何をしてしまったかの理解はちゃんとしてるつもりだよ」
「アブソーバーのルヴァウって人が、教えてくれたのさ」
その人物の名前を呟いた時のケイの色は、とてもとても親しそうな声だった。
「優しい人だったよ。俺に死ぬなと言ってくれた。その上で、外道として殺すと言ってくれた」
笑った。
「敬意をもったよ。それに後悔はしてない」
- 30二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 10:45:22
このレスは削除されています
- 31ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 10:47:23
そうか
あの場で会った事が無いから何とも言えんが、よっぽど父性を感じたんだな
【お互い立つ気力が湧かないため、隣同士でソファに座っていた】
【そこへ、金龍がズイッと身を乗り出す】
けどな、それを聞かせてもらった上で、あえて言わせてもらうぞ
野郎共は、じっくり、ゆっくり、長く、このピリピリした雰囲気を楽しんでいるんだよ
まるで虫の足を1本ずつ千切って眺めるガキみたいにな
【ケツを元の位置に戻す】
大き過ぎる炎は、自分の燃える勢いですぐに鎮火される
君がクロノスに殺されたからと言って、それで20年もの戦火には繋がらない
それに反して、誰も気付かない小さな種火は他へ燃え移り、いずれ未曾有の大火災を生み出す
- 32逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 10:53:42
前スレ182
(――――逆巻重工実働部隊・ブリーフィングルーム)
扉を開けた龍影を待っていたのは、数名の男女だった。
白い短髪を切りそろえた、40代近い男性。
茶のポニーテールを揺らす30代の女性と、彼女の隣にいる白い前髪を左右側面に流している軟派そうな男。
薄く青い長髪を揺らす、ほぼ同じ顔をしている二人。どちらも10代の女性に見える。
そして――――銀の髪を長く垂らした、鋭い目つきをなんとか緩ませようと努力しているこれまた10代の男。
合計で6名だった。
「良くきてくれた。王龍影……事態は聞いている」
40代近い男性が頷き、握手の姿勢を取って口火を切った。重い声で、その真剣な面持ちは崩していない。
「俺はカズトシ・セイドウ。呼び方は好きでいい。君には、俺を含めた6名とブリーフィングをする。良いな?」
どうやらメンバーの紹介は随時行うつもりであると理解して良い。
悠長にしていられる時間はない、という顔つきだった。
「問題ないなら始めよう」
彼らの知らぬ場所。空でケイがまた別の争いをしているとは、まだ誰も知らなかった。 - 33ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 10:55:40
- 34二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 11:10:24
このレスは削除されています
- 35ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 11:12:06
【画像を仕舞い、今度はARを用いる】
【投影されたネフィリムの進路データを、ゴエティアを特務部隊が奇襲した地点と重ねる】
君と交わした約束を破ろう
かつて"ヤヌス"と呼ばれたBFは、ちょうどゴエティアが移動していた近くで、その水面下で着実に姿形を成して目覚めの時を待っていた
恐らく"岩で醜態を隠していた所を覗かれた"んだと、早とちりしたんだろう
【あの密林に居る臆病者の亡骸を見せる】
結局は返り討ちにあってしまい、結果として互いの溝を誰も知らぬ間に広めてしまった
【そして次に、とある傭兵がネフィリム相手に自爆する映像を映す】
元々は自分達のまいた種だから自業自得だ これは明白だ
だが、最終的にトドメを刺したのは人自連だ 2重の意味でな
あの一件は結果として、互いの溝を誰もが認識できるほどに広めてしまった
そうしたら、仕上げで底まで掘り尽くすのは誰だと思う?
- 36ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 11:19:21
- 37ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 11:27:11
「特務部隊のゴエティア襲撃。たしかに俺はそれを知らない。けどあり得ることだ……そしてクロノスが喧伝していない以上、問題はなにもない」
ゴエティアを倒したいと思っている者などクロノスの過激派にはいくらでもいるだろう。
そしてそれを止めるものがいて、しかし実行された。 それだけの話。
「ネフィリムの一件も新型インベイドの出現で片付けられた。V-7コロニーの守備隊全員の口をふさいで全て終わった」
後は俺達が黙ればいいだけ。 その黙秘を、ケイは破るつもりなどなかった。 それだけの話。
・・ ・・
「仕上げの終末まで掘り尽くすのは誰かじゃない。全員だ」
ケイの視点は、結局のところそこに帰結していた。
「お前は誰か一人が最後の背を押して嗤う元凶だと思ってるんだろう? 大きな間違いだよ」
ホログラムを無感動に見ていた。オープニングの自爆……それが溝になったなどとは思わない。思ってもいない顔。
・・
「背を押されたところで、走り出すことを選ぶのはそいつら自身だ。 そいつらが堪えれば、終わりは起きない」
どこまでも、冷ややかだった。
「お前はさ、クロノスには自分以外馬鹿しかいないと思ってるのか? それはドラ息子のお前か? 軍人としてか?」
熱くなることを避けた、感情をあえて抜け落としている声だった。
「俺しか止められるものはいないと。救世主面をしたかったのか?」
- 38ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 11:30:44
- 39ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 11:47:26
- 40ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 11:49:09
「……はっ」
(ダメだ。軍人としてのこいつは、外部の俺じゃ救えない。凝り固まっている)
ケイは笑って、『軍人としての金龍』を現時点では無能と切り捨てた。成長はするだろうが今ではない。
――――俺はこいつに巻き込まれて死ぬと、確信した。
「お前がやろうとしていることは、じわじわ悪化している足の炎症に対して、今すぐ解決しなければと焦って、独断で患者に切除手術を行うようなものだ」
わかるか?と念を押した。
「炎症に対する一般対処はなにか思い出せよ新兵。冷やしたか?痛み止めの投薬はしたか?患部を動かさないよう警告したか?」
冷やす。投薬する、動かすなと警告する……全て時間を置く方法だ。
即効性のある効果などまるで存在しない。むしろ足を切り落とすことで大量のリスクが発生する。
・・・・・・・・・
「これは炎症じゃないと、お前は他のクロノス社員に一度として叫んだことがあるのか?G-3で共闘した少佐に。他の誰かに」
淡々と、ケイの視点を突きつけた。
「これでも止まらないんだろう? ……じゃあお前の切除手術で世界がどうなるか。俺が道連れとして付き合ってやるよ」
かわいそうなやつだと、ケイは憐れんだ。
こんなやつの道連れになってしまったことを、こいつの成長を俺が一生見れることはないと。ケイは少し後悔した。
「現実がどうなるか、特等席で一緒に見ようじゃないか」
墨色と青が混ざった目で。ケイは断絶と道連れを宣言した。
- 41ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 11:57:50
- 42二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 12:06:38
このレスは削除されています
- 43ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 12:20:30
「………ん」
【暫しの沈黙の後に、ウルヴィは目を逸らす。いつも通りの鳴き声のような返事と共に】
【だが、ウルヴィ自身にとってはいつも通りではない点が幾つかあった。まず一つは、返事が出せなくて硬直してしまったこと。次に、昨日の髪を触られた時と同じ、頬の痒みを伴う仄かな熱があること】
【彼の顔が見れない。胸の内から熱が湧き上がって、彼を喰らいたくて仕方ないと殺意が膨らむ。違う。それだけではなくて、もっと違う、別のなにかがあるはずなのに、分からない】
「それなら…その、よか、った」
【掻き乱されるように纏まらない思考を抑え込んで、彼を直視はしないまま、声を絞り出す。彼が気に入ったのであればそれで良いというのは、間違いなく本心だから】
- 44シグレ◆KPwoT407kA25/05/04(日) 12:24:01
………………………………
「………………………………」
「ござ〜………………………」
【シグレ・イェンネフェルト、デシレア・ハッセルブラード、ユスティーナ・ハクリの3人は今】
「…………ぅあーーーーーーーーっ!!!!!!!暇!暇!暇!猛烈に暇だわ!!!!!!」
【ヴァルハラテック全社員に通達された『個人での傭兵依頼受領禁止』、並びに本社から何か司令が下された訳でもなく…暇を持て余していた】
「吠えたって何も変わらないでござるよユスティーナ殿〜…学園長直々の勅令なのだから我々はこうやって溶けてればいいのでござるぅぅぅぅ」
アンタは溶けすぎなのよ忍者かぶれ、…もう原型無くなりかけてるじゃない…
「……………………」
「ござぁ……………」
そうやって目の前でずっと黙ったり暇だ暇だと嘆かれたり溶けたりされても煩わしいんだけど。マルタがいなくて寂しいって話がしたかったらさっさとしなさいよ
「もう言っちゃったよ…シグレって本当にムードが足りてないわよねー」
「ござぁ」
意味の分からない尺度出してくるのやめてくれない?ミカエラ博士と旅に出てるっていうのならそのうち戻るでしょう。心配する価値もないわ
「だぁからそうやってすぐ話が終わるから切り出したくなかったのよー!もっとムードを大事にしろー!ユスティーナの暇を潰させろー!ノームードはんたーい!!」
「はんござぁ」
…うっっっっっっっっっっざ…………… - 45逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 12:24:25
>>32 前スレ182
「まず、我々実働部隊は3つの報復プランを考えている。うち2つは並行して行われる」
そう言い。セイドウはホログラムで簡単な作戦プランを表示した。
・クロノス社コロニー、W-5の制圧作戦
・K.I社工学事業部部長、エイダン・リーの誘拐
・そしてエイダン・リー誘拐のため、所在確定後、A-1コロニーを含めた全てのコロニーに対する攻撃作戦
「エイダンリーの誘拐。及び援護のための攻撃作戦に関する規定は無制限だ。民間人以外は撃て。ストラクチャーであっても、撃ってくるなら撃ち返せ」
セイドウを除く5名は頷いた。
・・・・・・・・
「これらの作戦は、金龍か金龍の私兵がケイ・サヤギリを暗殺、ないし死亡確定の状況へ置いたと判断した瞬間に発動する」
セイドウは作戦の発動条件を宣言した。
「……もしそうなったら、逆巻重工の企業間抗争への不干渉宣言は……撤廃ということになるわね」
「自称穏健派だったってだけでしょ。そいつを排除できない時点でクロノスは無能よ。サヤギリの敵討ちと思いなさい、シズク!!」
「サミダレ……そうね。サヤギリを死なせるようなら、私はそいつらを永劫許さない」
セイドウの言葉に片方の少女……サミダレはふん!と気炎を吐いている。
対して青髪の少女の片方……シズクは、そうなってほしくはないという落ち着いた声の色だ。だが彼女は、仮定であっても怒りの炎を燃やしている。
「サヤギリは……俺やシズク、サミダレとはまるで違う地獄にいる。だが同時に同じ程、人と希望を信じている男だ……! あいつを拐った挙げ句に殺すようなら、たとえクロノスでも容赦はしない」
銀髪の、目付きの鋭い少年の言葉に、シズクとサミダレが同時に頷く。
そして3名の少年少女が、龍影を見た。
「俺はハザマ・キカイ。ハザマが名だ……王龍影殿。ケイの恋人として、貴方も気持ちは同じと見て良いな?」
ハザマが、問いかけた。
- 46ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 12:39:38
- 47ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 12:52:32
- 48ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 13:05:15
- 49ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 13:37:15
(…っ!?)
【心を読んだかの如く声をかけてきた女性に喫驚しながらも、スンと落ち着いた】
『支払いは気にするでない。ふむ…お主はまだ分からぬか?ならばこの爺から一つ、雛鳥に助言としよう。人には面子と見栄があってな、時に“貸し”と捉えることは、相手を狭量と断ずる無礼となろうて』
【ある時に受けたクライアントの言葉を思い起こす。それは傭兵としての活動をしてからそれなりに経っての時だった。人自連内部での派閥争いが今よりも盛んだった頃、短期の『優先契約』を求めてきた老獪な男性。一見すれば好々爺に見えていたが、その目に野心の火を灯していた老人は、高層ビル上階のレストランを貸し切りにしての食事を求めてきた】
【当時のウルヴィにとって、老人の言葉は柔らかすぎるステーキと同様に咀嚼した感触を伴わないものだったが、現在は消化をできている】
【思考を過去から現在に戻す。クライアントとフィクサーの関係ではないが、それと同じなのかもしれない。ここでの自ら支払う彼の行動は“貸し”ではなく“面子”の意味を持ち、自身が横入りするのは『潰す』行為なのだろう】
【過去の経験から推察したウルヴィは、ズレているのかズレていないのかの瀬戸際に理屈で納得する】
「ばいばい」
【ウルヴィは店を出る前に、店主の女性へと小さく手を振ってから歩き出すだろう】
【もし何事も無ければそのままランセルの家に着くかもしれないが、或いは二人は何処かへ行くのだろうか】
- 50二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 13:49:50
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- 51ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 13:54:09
トラクター型アパッチユニット!合体!ですわ!
《合体!でございます!》
【セバスの両手にトラクターが取り付けられる】
着け心地はどうですのセバス?
《多少違和感がありますが、それは慣れることでしょうひとまず使い心地を確かめてみます》
【セバスがトラクターを動かして雑草をまとめてほじくり返していく】
《おおっ、これは確かに素晴らしい機械でございますね!あんなに手間だった雑草取りがすぐに片付いていきます!》
それは良かったですわ!
さあ農業UNBFの皆様!セバスの行動に倣ってトラクターを取り付けて行きますわよ!
《《《かしこまりました、お嬢様!》》》
【男女様々な機械音声が返事をする】 - 52旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 14:02:23
「ふふっ、どうやら『UNBF』の皆様に気に入って貰えたようで良かったです。私だけでは流石に農業用工作機械をこのような短時間で用意するのは無理でしたので助かりました」
有人機用の拡張ユニットに搭載されていた制御回路───ハッキングなどによって暴走しないように、人の手による操作を必要とする部分───を無人機用に改造し、序でに新たなファイアウォールの構築も済ませた『旧愛卿』は微笑んだ。
個人の技術、ではない。設計図とマニュアルの執筆によって、『旧愛卿』以外の技術者であっても農機に詳しい者ならば改造可能な手順を仕上げている。
量産を前提とする機構に、個人の技量や才能に依存する手順を含めるのは非合理的且つ非効率的だ。
──────それはそれとして、相変わらずの執事姿の『旧愛卿』は首を傾げた。
「ところでお嬢様。抜いた雑草は普段どうしているのかしら?私も余り農業には詳しくないので、少し気になってしまい」
バイオ燃料とかでしょうか?と。今まで軍事バディフレームの設計と開発に携わっていたが故の疑問であった。
- 53ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 14:17:14
お聞きになると思っていましたわ!
まとめて燃えるゴミに出す予定でしたが、NA社の方々から雑草を天日干しにして他の堆肥材料と混ぜることで新たに肥料になるとのことですわ!
ですので収めた雑草を一度本社へと輸送して諸々の事柄を向こうで済ませてもらい、再びこちらへ持ってきてもらうことで肥料として使うのです!
近い未来、こちらに肥料化する装置を設置する予定ですわ!
……それと、制御回路の改造ありがとうございます
いち独立傭兵にそのようなことを頼んでしまって非常に心苦しいのですが、とても為になりますわ
どこでそのような技術を……なんて、傭兵に過去を深掘りするのは野暮ですわね
引き続きよろしくお願いしますわー!
- 54旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 14:38:26
「肥料化する装置────────おや、ふふっ。ちょっと私の中の設計者-アーキテクト-が疼く言葉ですね!」
運搬に必要なコストを削減出来れば、農作業に割り当てられる機体の数も増やせるだろう。
雑草を運んでから肥料化して、また畑に撒くのには往復する労力が必要になる。単純な時間以外にも、燃料を使う必要があるだろう。
改良。改善。そして複合。『旧愛卿』の専門分野はその名の通りに過去を愛しながらも未来に届ける事に特化している。
「それから、制御回路の改造についてはお気になさらず!面接でもバディフレーム関連の技術についてのアピールをしたでしょう?最初からこういった場でのお手伝いもする気だったのですよ、お姉さんは!」
- 55ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 14:57:08
- 56旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 15:33:44
- 57ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 15:33:57
- 58ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 15:40:16
- 59ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 15:45:30
稼働熱で乾燥を……!
ナイスアイディアですわ!
さあセバス!もりもり運ぶのですわ!
《やってみましょうかお嬢様》
【トラクターから雑草を袋に移し、それを運搬していくと、機体の表面に生まれた熱によって水滴が蒸発していく】
人間だと汗をかいてしまうので逆に水滴だらけになってしまいますけれど、機体ならばこうやって蒸発できますものね!
旧愛卿様!良きアイディアですの!
さあ!皆様もたくさん働いて水分を落として参りましょう!
《お嬢様の思し召しの通りに!》
【農業UNBFたちがラバーの出された指示通りに働いていく。中には新たに開墾地に着手するものもいた】
あちらの畑は賢人議会からさらにUNBFを支給された用の小麦畑予定地ですわ!
今からパスタやピッツァが楽しみですの!
- 60旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 15:58:54
「えぇ、お役に立てたようで何よりです。お嬢様。小麦が育った暁には、私自らパスタやピッツァなどをお嬢様にご馳走しましょう!」
エネルギーの変換には、必然的にロスが生じる。
例えば電気回路などでも、導線が熱を帯びるのは別に珍しくもない事だ。
──────ふと、思い返す。複合は『旧愛卿』の得意分野だったから。
つい先程の言葉が、脳裏に過る。
“雑草を天日干しにして他の堆肥材料と混ぜることで新たに肥料になる”
「お嬢様!また新しいアイディアが思い浮かんだので、一緒にNA社への提案書を書きませんか?
機体の排熱を利用して、雑草の乾燥を早めて肥料にする案です!トラクターの運転中も、今と同様に熱が生じるのであれば。その分の熱エネルギーも転用可能ではないのでしょうか?」
- 61ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 16:03:55
- 62ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 16:13:40
- 63旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 16:19:00
- 64ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 16:41:55
「ん。………ん?」
【今、彼はなんと言ったのだろうか】
(わたしの、部屋…?)
【そう、聞こえた。確かに購入した衣類の保管もあるし、必要かもしれない。なのだろうか?】
【やや困惑したものの、一度その立場で考えてみる。万が一にも無いが、ウルヴィが他人を自身の縄張りで保護する場合どうするか。互いに余計な警戒を生まず、また手狭になるスペースを考慮し、確かに部屋を与えるだろう】
「んむ…分かった」
【衣服の購入というステップが自然に挟まれたのも理由だろう。以前であれば「長居はしない」などと断ってであろうウルヴィも、次第に『そういうものか』と認識し始めていた】
【いや、そもそも今この瞬間自体が異常とも言える。完治とは言えないが、現在のウルヴィは『痛みを無視すれば普通に動ける』状態だ。この時点で平然と去ってもおかしくない。そのはずなのに、ウルヴィは帰る素振りを一切見せない】
【その『異常』を、ウルヴィはいつ自覚するのだろうか】
- 65ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 16:50:01
- 66ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 16:54:11
- 67ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 17:01:19
- 68旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 17:01:37
「えぇ。“点検”、というのは確かにした方が良いのかもしれませんね!
元々は戦闘用バディフレーム、でしたのよね?そうなると長時間の腕への負荷は余り想定されていない設計の可能性もあります」
無人戦闘支援随伴機の標準運用武装は全十一種の内の五種が射撃兵装だ。
その中でも鍔迫り合いが発生しないであろう粒子系及び熱量系の近接装備が三種。
そうなると、腕の関節などは余り強靭でないという可能性もあると。『旧愛卿』は頷いた。
無人機は有人機と比べて疲れ知らずであるが、かと言って部品の損耗も存在しないという訳もなし。
更なる改造や改良の為には、一度機体を“点検”するのは合理的な選択であろう。
「本当は私も“点検”を見てみたい気持ちもありますが、流石に一介の独立傭兵ですのでそこまでは無理そうですよね。
ピカピカになって帰ってくるのを待ちましょうか」
ゆったりと微笑みながら、『旧愛卿』は広がる畑を見渡した。
- 69ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 17:09:53
- 70ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 17:13:44
- 71ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 17:22:19
- 72龍影◆9BZ6kXGcio25/05/04(日) 17:24:05
- 73旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 17:26:54
「えぇ。一気に運ぶのも難しそうですし、少しずつが良さそうですよね……………警備を担当している機体の皆様を送る頻度は、農場が無防備にならないペースにしたいですね?」
────見学可能かどうか尋ねる。魅力的な選択肢ではあったが、『旧愛卿』は微笑みを浮かべながらゆっくりと首を横に振った。
「有難い提案ですが、遠慮しておきましょう。私の身分は独立傭兵で、それなりに色んな依頼やお仕事をしてましたもの。もしかしたらラバーさんに迷惑を掛けてしまうかもしれませんわ」
“グランセン解放戦線”は、歴としたテロリスト組織である。
対クロノス強硬派の民族独立運動。その総帥を務め上げる『旧愛卿』は深く調べられる訳には行かないのだ。
無論、防諜要員は多い。寧ろ資源と資本で劣る組織であるが故に、バディフレームの数が少なく、機体に乗れない構成員は多くが情報戦や諜報戦の遂行に熟達している。
だがそうした活動は、NA社でのラバー・メタルの立場を下げてしまうかもしれないから。
その情熱に惹かれて応募した『旧愛卿』にとって、今のUNBFを用いた農業計画に僅かでも支障を与えかねない不用意な行為は避けたかった。
(──────どうしてもデータが必要な場合は、賢人議会とのコンタクトを試みるのも一つの手なのかしら?)
恐らくは、協力企業を通してコンタクトを取る事は不可能ではない。
諜報員を潜り込ませるのは不可能だが、正当な手段ならば断り難いだろう。
- 74ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 17:33:25
- 75ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 17:33:38
- 76旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 17:39:11
- 77二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 17:40:19
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- 78ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 17:44:07
だとしたら、炎症じゃないと言っても炎症だと言い張る輩しか、俺の周りに居ないんだよ
身内にだって、いつかはそう言い張るかもしれない姐御が居るんだよ
【義体に異常は無いはず。無いはずなのに記憶が混濁しているシャロンの姿を思い返す】
だから、君と関係を持っているカルカッド中尉を介さなかったんだ
だから、最初にここに来てくれた時にも『直接託す』と言っていたんだ
【冷静に、冷静に、冷静に話す】
【そして、複製したメモリーカードを投げ渡す】
今になって言うが、君を俺の証人として連れていく
憎きK.I所属の大佐様より、1度は共闘した英雄様を信用するのは当たり前だからな
【ソファからゆっくりと立ち上がり、後ろのクローゼットルームでクリーニングを済ませたパイロットスーツに着替える】
一緒に降下する準備はしておいてくれ
【「俺と同じように着替えるかどうかは、せめてそっちの判断に任せておくよ」と、昔の知り合いからもらった人自連のパイロットスーツを放り渡す】
- 79ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 17:46:51
- 80逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 17:47:36
(流石は桜空出身。気迫も覚悟も十分、か)
冷え切った女性の目を、セイドウは恐ろしくも頼もしいと評価した。
このメンバーの中では老齢となる茶髪の女性と、ロン毛の男性もうなづく。
「もちろんだ。龍影くんには悪いが、サヤギリの死亡が確認された時点で、蒼風改に搭乗するハザマ以外の全機に――――」
「待ってください!! 俺が、蒼風改に!? それもSS-N非搭載!? なぜです!!」
龍影の質問に、セイドウは間もなく答えた。が、そこにハザマが食って掛かっていた。
美丈夫の顔が苦渋と驚愕に満ちている。
「蒼風改はサヤギリの機体です!俺も正規生産の廉月で!」
・・
「貴様はかつて、蒼風への登場を希望していたはずだ」
ハザマの続くはずだった言葉を、セイドウは切り捨てた。
「非公式のシミュレーター訓練記録も既に共有されている――――サヤギリが死亡した時点で、あれに乗れるのはお前しかいない」
「フラッグシップ機を我先にと自爆されては作戦そのものが破綻する。優先順位を間違えるな」
お前の自爆など許さない。そう言い切る冷たい方程式が横たわっていた。
「お前に課せられる役目は……蒼風改に乗るサヤギリの亡霊としてクロノスに襲いかかり。そして一番最後に撃墜されるか、離脱することだ」
セイドウが言い切り、ハザマを除く全員が頷いた。どうやらこれは『龍影が来る以前には決まっていたこと』なのだろう。
「済まないな、龍影くん。君にはとても酷な話を聞かせてしまっただろう」
白髮の男は、頭を下げた。
「この作戦が発動する時……ハザマ・キヤマを蒼風改に搭乗させる許可をくれ。無理ならば彼も廉月に乗せ、SS-Nを搭載させる」
「龍影さん!セイドウさんを止めてください!! 俺は廉月でも戦えます!最期まであいつの仇を!」
それは、セイドウ自身の誠意と呼べるものだった。ハザマの言葉は、作戦が始まった時、故人を貶めないためのものだった。
……どちらも、龍影に委ねられた。
- 81ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 17:52:53
- 82ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 18:12:01
- 83ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 18:12:36
「――――馬鹿が」
墨色に染まった目が、金龍を射抜いていた。
「本当に、お前は誰にも話してないんだな……ネフィリムのことも、”真実”だけを話すなっつったのに……」
メモリーカードを受け取った……握りつぶしたい衝動を、必死で抑えた。
「最期に忠告するよ」
身なりは整えた。が、パイロットスーツを着ることはしたくないから……跨いで超えた。
・・・・・
着れば死に損なう可能性があるからだ。
「俺の持論だ……英雄だけじゃ、世界は救えない。全員で頑張るしかないんだ」
金龍の横を通り過ぎた。 彼の目は、もう見据えないことにした。ハッチの入口に立つ。
「……お前は、炎症と言い張る輩しか周りにいないといったな?」
剣龍のハッチの僅かな隙間の光が己に僅かに届いたのを見計らって。ケイは振り向いた。
(大丈夫だ。俺の役割はもう定まった。演じろ。演じろ。最期まで)
両手をゆっくり、左右へ広げる。
「クロノスの全員と話してみろ。過激派とも、穏健派とも。全員とだ。スパイだろうが、だぞ。言ってはいけない機密や真実以外の、お前のやりたいこと。言いたい言葉をだ」
ケイは、覚悟を決めた。青色の瞳で。
・・・・・・・ ・・
「今のお前は誰も見ていないし、誰とも話してすらいない。それは話し合いでもなんでもない。勝手に他人を見放したお前を、皆が見放しているだけだ」
案じた。自分を友と呼ぶ……軍人としては無能で、けれどドラ息子としては合格点な男を。
お坊ちゃま
「だから失望した野良猫に手を噛まれて逃げられるんだよ……少爷」
どうか彼に試練と、幸あれと。ケイは願った。
運命の時は、すぐそこに。
- 84龍影◆9BZ6kXGcio25/05/04(日) 18:17:06
- 85ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 18:29:41
- 86ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 18:30:56
「──────────よォ」
・・・・・
有り触れた、山の斜面。雑木林が生い茂り、雑草が伸び放題で繁盛する山の中腹。
風が吹いていた。銃弾すら防御可能な装甲を備えていながらも、一切の重みを感じさせない黒色のパイロットスーツに身を包んだ老人が立っている。
白く染まった髪が風に吹かれてサラサラと揺れた。筋骨隆々、という訳ではない。しかし機体を動かすのに十分なだけの筋肉を備えた逞しい身体は何一つ凶器を持っていない。無防備である。
「ゴエティア戦団」の序列13位。“ベレト”だ。
「先ずは座って話をしようか。オレ達の基地に入る勇気があるならば、の話にはなるが」
樹木に凭れ掛かりながら、手に持った煙草から紫煙を燻らせる。煙が風に流されて、老人が目を細めて低く笑った。
「あぁ、後ろの部下もゾロゾロ引き連れて行きたいのならそれでも構わんよ。オレもココで押し問答をする気はない。何たって時間が惜しいからな。限られたものは、大切に使うべきだろう?」
- 87ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 18:49:06
「ん!」
【満足したように、ウルヴィは彼から手を離す。それならばまだ構わない。どうせ寝る時くらいしかわざわざ部屋は使わないのだし、そこで共有の形になるならば大差は無いはずだ。せいぜいウルヴィの荷物が少量保管されるくらいだろう】
【それでもやや不満は沈殿しているが、彼は強引なのだ。こちらが求めてもないのに、断りにくいものをずるく渡してくるからたちが悪い】
【というのはウルヴィが自信を棚に上げた見解であり、実際はウルヴィがランセルの善意を突っぱねまくっているからという面が大きいかもしれない】
「それで、どうする?」
【やや機嫌を良くしたからか、ウルヴィは珍しく自発的に、部屋と言っても何をするのかと首を傾げた】
- 88メントーア◆AUy27RMtoo25/05/04(日) 18:49:53
KI社の幹部がモニターを眺め、感嘆の声をあげる
技術者、設計者、プログラマーの三者はお互いに握手をして称え合う
今まで、多くの兵士がインベイドとの激戦に敗れ、その度に貴重なパイロットを失い、戦線を下げざる終えないような状況もあった
少ないパイロットで無数のインベイドを相手をするのはやはり厳しいという声が幾度と無く議題に上がり、その度に取り上げられた無人BF機の存在、長年に渡り、対インベイド用のAI研究が続けられてきたが
幹部達の見る画面の向こうでは、インベイド相手に攻撃を巧みに躱し、高火力の武装でナイファーの群れを残骸に変え、シューターの弾幕をくぐり抜けてナイフと頑強な脚で踏み砕いていく、そしてソレは単機では無く、無数の同型機によって行われ、ついにインベイドに【退却】を選択させたその様子は上層部が今まで夢に見てきた無人BF機の理想そのものであった
多額の資金を投じた研究はとうとう実を結び、KI社の広報部を通じてメディアに報じられる
クロノス社初の自律AI操縦型BF量産機
【キーパー(番人)】
クロノス社性 自律AI操縦型BF量産機 | Writening型式番号:KBF-A−01 機体名:キーパー 全高:約7m 基本装備:50mm弾空冷却重機関砲又は40経口粒子砲、高振動ブレード、対インベイド用パルスグレネード 戦闘データ 攻撃力 ★★★★☆(優秀) 対実体…writening.net平和に、勝利に、大きな一歩を踏み出したと大々的に報じられた、その無数の量産機
その量産機のAIを管理、指揮をとる大型制御AI…
【メントーア】は、クロノス・インダストリアルのサーバー内にて、クロノス・インダストリアルに【所属していない】パイロットの情報を調べ上げていた
- 89ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 18:53:55
- 90ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 19:00:45
- 91ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 19:09:33
「細かい挨拶は良い。今頃丁重に接したとて、上層部のオレに対する態度はもう既に決まっているからな──────精々が、オレの印象に影響する程度だよ」
再度煙を吸って、それから吐く。
礼儀とは相手への敬意と尊重の表現の一つである。
故に、厳重に秘匿されていた筈の基地に乗り込んだ人間の態度としては今の場に沿ぐわないだろう。
だが、まァ、良い。どうせ老い先短い命なのだ。別に、構わない。
「“手土産”、というのは迂遠な言い方だな。もう既に時間が惜しいとは言っただろう。修飾せずに内容を簡潔に説明し、現物を出せ。そうでなくては基地の中で話す時間がなくなる」
仕事というのは手早く正確に終わらせなければならない。何故ならばより多くの仕事を完遂させる必要があるからだ。
そうでなくては、広く手を伸ばせないのだと。北方戦線で学んだ。
時間とは有限だ。人間が同時に行える作業には限りがある。より多くを救いたいのなら、必要と不必要を見極める判断力を磨くべきである。
「立て」
グシャリ、と煙草を握り潰して。“ベレト”は老いて尚も逞しいその両肩を竦めた。
「殴り合ったばかりの身で正座は辛かろう。無礼はもう気にしなくても良い」
- 92ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 19:20:14
- 93ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 19:20:24
「はっ。同道します」
痛む身体を回復させる時間は輸送機の中である。即座に立ち上がった。
この、礼儀を省くやり取りは既に知っている……北方戦線だ。 彼はあの地獄を生き抜いたのだ。
「こちらがデータになります。俺が彼と謀り、手に入れた証拠です」
データメモリを即座に手渡し。そして、下がる。
「俺はクロノスへ、アブソーバーとの交戦データを意図的に流失させました。そして彼が交戦した結果手に入れた、アブソーバーの基地座標がそちらに乗っています」
事のあらましと、成果。そして。
「彼は人身売買被害者の救出作戦も並行、一機鹵獲後、取り逃がしているとのこと」
結果を簡潔に述べた。残りの情報は見ればわかる。
- 94アントニオ◆5Q4kt6Q.kc25/05/04(日) 19:25:46
- 95ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 19:31:46
「報告に一点誤りがある。オレが訂正してやろう」
データメモリを受け取って、低く老人は笑った。
情報は受け取った。コレを交渉材料としたクロノスの───────あぁ、いや。“金龍大佐の”要求については秘匿基地の中で行われるべき対話だ。
だから、目の前の若者に対して行うべき事は、今は一つだけだった。
「“オレと”彼が謀り、若いの。お前は其れの阻止を試みたが力及ばず口封じの為に連れ去られた───オレはボロニアス程の劇作家ではないが、それなりの筋書きだろう」
些かの諧謔を含んだ台詞だが、其れが“ベレト”からの意思表示であった。
或いは、“ベレト”が口にした言葉に聞き覚えがあるかもしれないが。
- 96ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 19:32:19
- 97逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 19:36:52
「っっ……わかり、ました……!!」
乗ってほしい。という龍影の意志をハザマは尊重した。 生き残る義務を負った。
涙で潤む目を、決意に変えていた。
「よし、これで全員覚悟はできたな? ――――今回の作戦には、青天市街を防衛する部隊を教導するアグレッサー12機も動員する。守備隊、実働部隊全機による奇襲作戦だ」
頷いたセイドウが確認を取った。これほどの戦闘規模の作戦など、逆巻重工は北方戦線以来取ったことがない。
「エイダン・リーがA-1コロニーにいようが関係ない。我々、合計7機の戦闘班は陽動部隊に紛れ、彼の所在するコロニーのみを狙いに突っ込む」
ホログラムを軽く叩くようなやり方は、セイドウが逆巻の訓練教官であることを示す癖だった。
「もし仮にA-1コロニーにいるならば……話は速い。全機で一番高いビルに滑腔砲を叩き込み、時間を稼げ。そして運が良い奴からSS-Nで吹きとばせ」
「この作戦が発動した時点で逆巻重工がもはや対クロノス穏健派ではなくなったことを、世界に示すことになる」
セイドウは目を伏せた。演じはしない。
「誰の善意を踏みにじったか、思い知らせる時だ」
本心だった。
- 98ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 19:41:46
- 99ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 19:43:25
- 100アントニオ◆5Q4kt6Q.kc25/05/04(日) 19:52:58
- 101ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 20:00:28
- 102ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 20:07:10
あらまそうでしたの!こんな僻地にすいません……今お茶……は、なかったのでとりあえず席のご準備でも……!
【ラバーはパタパタと準備をして応接室もどきを作り出す。机にはキャスターの上にグラスに入った水が渡される。中身は先程初めて開けたミネラルウォーターだ】
何分、お話するような場所ではないのですがここで……改めまして、わたくしNorth Argleton Arms Systems所属のパイロットにしてここの農園のオーナーを務めています、ラバー・メタルと申しますわー!
それでは貴方様の自己紹介などをしていただければ幸いです!
【真面目モードに突入したためかメガネと電子手帳のメモを用意している】
- 103ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 20:08:27
それではお言葉に甘んじてお見せ致します
メビ
【タイガー内に待機していたメビに、無線を送る】
こちらが、手土産の1つです
【ズズーン……】
【剣龍から、タイガーがもはや動かなくなった悪魔を引き摺り出す】
【その姿は針の山に埋められたようで、流れ出た自らの血で体を固めたようであった】
そして、俺が彼へと託したデータも
俺としては、“貴方の命令”で彼を連れ去った点も合っているため、それで結構です
後は……その老いた獣の中に献上品を差し上げられれば、これ以上の身に余る光栄は無いかと存じられますが
【剣龍の迷彩機能もそろそろタイムリミットが迫っているため、タイガーとガーゴイルの巨体は山の中でも目立ってしまうため、基地内に格納させてもらいたい旨を伝える】
- 104アントニオ◆5Q4kt6Q.kc25/05/04(日) 20:12:08
- 105ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 20:13:58
「─────“統率個体”は人類が垣根を超えて団結しなければ倒せない脅威だが、逆説的に言えばその存在は人類が団結する機会でもあるからな。
北方戦線の“要塞蜘蛛”も、地底事変の“坑道土竜”もそうだった。南開拓大陸の“毒雨獣竜”も、未だ姿を現していない大西洋の“統率個体”もそうなるだろうよ」
僅かに目を細めて、遠くを見る。
既に、過ぎ去った記憶だった。しかし今でも鮮明に思い返せる記憶だ。
“ベレト”は笑った。拙い台本だが、そうであっても受け入れてくれるのならば直ぐに死刑という事にはなるまい。
陰気な留置所で会話する時間は生じるだろう。
「では、昔話はその時にしよう。若い連中に任せておきたい仕事も幾つかある。個人的な感傷もな」
「“助演”は出来るらしいな。自分の手で劇の台本が書けるようになれば、もっと良い」
薄く笑ってから、凭れ掛かっている樹木の小さな虚に指を押し当てる。
・・・・・
───────重い金属音がして、山の中腹の機体を投棄可能なだけの巨大な穴と。
それから人が一人二人通れるだけの階段が偽装の中から現れた。地下へと続く階段は暗く、寒く、一寸先の前も見えない。
「暫く歩く。怖気付いた者は外で待たせて構わないぞ」
- 106ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 20:17:08
- 107旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 20:24:41
- 108ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 20:24:54
- 109アントニオ◆5Q4kt6Q.kc25/05/04(日) 20:27:18
- 110ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 20:28:26
- 111ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 20:32:37
そうでしたのね!かなり名のあるパイロット様でしたの……!
【目を輝かせて敬愛の表情を見せる】
あれ、どうしてそのことを知っているのですか?もしや旧愛卿様もそちらに?
様々な兵器を使える方はBFを使うどの分野でも活躍なさるでしょうからすごい長所ですわね!そして短所の……ふーむ、ここの警備は基本的にUNBFたちを連れ回すことが多くなりますから、必然的に団体行動が多くなるのですよね……まあその辺りは慣れていただければと思いますわ!
そして武装の……?
【電子手帳に書き記していた指が止まる】
この、6s-コア=ホッパーというのはどういう?
【上目遣いでアントニオに疑問を投げかける】
- 112アントニオ◆5Q4kt6Q.kc25/05/04(日) 20:35:40
- 113ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 20:39:32
- 114ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 20:44:43
「はっ……要塞蜘蛛はとてもとても、いやらしい敵でございました……」
ああ、懐かしい名前を聞いた。あれに何度辛酸を嘗めたか。”みんな”と共に死んだかを思い出す。
一瞬の混同に、気づかれたかもしれない。
「ではその時にはこちらも積もる話を。……逆巻に拾われたことを、これほど感謝した日もありません」
常に的確に、憎悪されているとわかりながらも地獄を生き抜く術を指導してきた祖父が『気を張れ。誰が死のうと決して諦めるな』としか己に言わなかった敵だった。
……正確には、言えなかった敵だったのだろうが。そしてその悍ましく、幾度と憎んだ敵こそが、祖父と己の鎹になったのを良く、良く覚えている。
ケイは胸を張り、階段の中を歩いていく。 恐怖などない。
彼らとともに在れる者など。在れる時など。年にして数秒あるかないかなのだから。
(学べよ。そして知れよ、金龍)
金龍の横を歩いているのか、前を歩いているのか、ケイにはわからないほど暗い階段だった。
だからこそ、思う自由が確保されていた。
(主演と主演がぶつかるのがこの地獄だぞ。そして書くことができなけりゃ、終わるんだ。お前は)
歩き、思う。 どうかこの同い年に糧があらんことをと。
人生を劇に例える人々の中に、彼もまた混ざり、書き記す資格を得るべきだと。
(俺に、お前を助演にすらさせたくないなどと思わせるな)
絶望も、失望も、憎悪も、好意もある。
だがケイは、金龍を見放したくはなかった。
- 115旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 20:44:52
「いいえ。お恥ずかしい話ですが、実は知り合いのお話を聞いたんですの。偶にアウトサイドの警備隊にも出向している方で、その時の縁ですわね」
─────嘘と真実を織り交ぜている。
知り合いの話、というのは本当だ。しかしその一方で『旧愛卿』は偶然に聞いたのではなく、情報収集員からの報告として受け取っている。
アウトサイドの警備隊に出向している、というのも本当だ。アウトサイドはクロノスのコロニーに近いから、対クロノス姿勢が比較的強い“グランセン解放戦線”としても重要視している。
しかし、と『旧愛卿』は言葉を続けた。
「ちょっと前に暗殺依頼が出てたの見た事ありますわよ。何でも恋を裏切られたとかで…………」
余計な事を口走りやがるな、コイツ!
- 116ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 20:51:54
- 117ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 21:01:32
- 118ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 21:05:36
「あぁ、コレで理解できたようならば幸いだ。例え話というのは、理解を促す為に“必要”な工程なのだから」
階段を降りながら、老人の声が暗闇の中に響く。
迂遠な言い方を止せと言い放った“ベレト”が例え話を持ち出したのは、実利に基づく判断だ。
・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「政治とは、政治が出来ない者には決して干渉する権利を与えないシステムだ。書けないのならば演者として好き勝手に踊らされるか、或いは傍観者の役を強要される」
自嘲気味に、老人は低く笑った。
・・・・・・・
「私もそうだった。暴力だけあっても何も変えられないぞ」
幾千、幾万のインベイドを殺戮した“ベレト”がそうであるように。
単なる役者では、物語への反抗すらも台本の筋書き通りでしかない。主演でも、助演でも、物語の一部が物語の創造主を打ち倒すのは不可能だ。
「───────さて」
到着した秘匿基地は、無機質なまでの白色だった。
明るい照明の光が視界を明瞭にする。テーブルには一つの拳銃と、それから安いワインボトルが幾つかの空のグラスと共に並んでいる。
一本で十万円もしないような銘柄だ。拳銃から最も離れた位置に座って、老人がワインボトルを開けて空のグラスに注いだ。
「67年物だ。オレが生まれた時に親父が買ったものでな。飲みたいならご馳走しよう」
深く、座り込んで。
人生の意味を思うように深紅の液体を眺める。老人は薄く笑いながら、さてと口を開いた。
「要求は?」
- 119ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 21:15:27
- 120ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 21:24:22
- 121ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 21:28:42
(俺は……どうだろうな)
自分に、この人と同じ領域に立てるか。机を挟んで、ベレトと反対の位置にケイはいた。
あの仮想で政治の、書き手の真似事をしたことはある。だが裏目に出るか、あるいは何もできず翻弄されるか。奇跡的に上手くいくこともあったが……それですら、しっぺ返しが来た。
他のものによる校正が常に襲いかかり、頭を抱えたことも。
ケイが分かったことは、当時14~15の己に書き手はまだ早かったということ。
だから、逆巻カンナという女性と知り合えたのはケイにとって望外中の望外であったのだ。
彼女の筆はとてもとても、己好みだったから。
(俺も書き手になれれば、きっと多くの人を救える。だが同時に、もっと多くの人に憎まれる)
どのような書き手になりたいか。ケイは己に問いかけてみる。
(いや、違う?)
ふと、別の視点に思い至った。
(G-3コロニーで、ソドム奪還に向かったあの時から……俺も戦場の書き手だったのか?)
ただ舞台が政治か、戦場か。 校正を掛けてくる相手が人間か、インベイドかの違い。
(……やっぱり、ゴエティアは、この人は凄い)
政治の書き手にすらなれているであろう彼を尊敬しながら。この学びがあっているのかを確かめたい気持ちを抑える。
ケイは金龍が、"ベレト"へどのような要求を突きつけるかを待っていた。
- 122ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 21:32:59
- 123二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 21:41:29
このレスは削除されています
- 124龍影◆9BZ6kXGcio25/05/04(日) 21:44:06
「それとA-1へのアプローチについて、廉月だと対空砲が振り切れない。桜空の低軌道プラットフォームからの軌道降下を提案します。」
陥落後に何度もシュミレートした最適な浸透が可能な方法。
「青天のマスドライバーで上がってプラットフォームで待機、逆巻の宣戦布告と同時に降下。これなら対空砲に当たることなく侵入が可能かと。」
突飛であるが実現可能なラインだった。
- 125ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 21:44:13
- 126ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 21:49:11
- 127逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 21:55:39
「なに、安心しろ。俺達はみんな機動の自動化は切って……プラットフォームからの高軌道降下か!」
セイドウが声を上げて、その手があったか……!と叫んだ。
「だが突入するとして機体はどうする? 素で大気圏突入に耐えられるような設計は宇宙開発用の、文字通り実験的なBFだけだぞ」
茶髪の女性……ユエギが疑問を投げる。機体ごと打ち上げるのはいいが、突入の熱に耐えられるかが問題だ。
「そこは……カプセルなりなんなりでいけるんじゃねぇか?ユエギ」
「ツルカミぃ!! お前宇宙を舐めてるのか!!!」
「ぎゃああっ!!そ、それはいつもの困った時のCEOとか、CEO補佐官様でしょ?!?」
ロン毛の男性、ツルカミのパイロットスーツの襟首を掴み、ユエギが振りまくると、実働部隊の全員が首を横に振っていた……これがいつものことらしい。
そしてその状況が数分続いた頃。ブリーフィングルームの自動ドアロックを、CEO権限が解除した。
「大気圏から突入して、クロノスのA-1コロニーに殴り込むだって!!?」
「お、落ち着いてくださいCEO!!いくらなんでもそんな作戦、前例が!」
逆巻カンナだった。自分より3か4は年下の女性に抑え込まれながら、なおも彼女の目は輝いていた。
「やろう!!! どうせここに私達は、ハザマ以外!全員死ぬんだ!! 最期にでかい流星を奴らの頭の上に落としてやろう!!! ものがないなら作ってみせるさ!!」
逆巻カンナの、意地だった。
- 128ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 22:01:17
- 129アントニオ◆5Q4kt6Q.kc25/05/04(日) 22:05:50
- 130龍影◆9BZ6kXGcio25/05/04(日) 22:08:39
- 131ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 22:11:09
「あぁ、勝手なのは理解している。気にするなよ。若い内は、人間そういうものだ────────次に生かせれば、其れで善い」
老人は、静かにグラスに注がれたワインを飲み干すだけであった。
彼の心が、一時の酩酊を必要としていた。その言葉を吐き出すのは酷く躊躇われて、だから前置きでも言わなければやってられない。
北方戦線から保ち続けた老人の思考回路を掻き乱すという偉業を、クロノスの若き大佐は成し遂げた。
「政治が出来なければ、政治が出来る者を動かせはしない。暴力だけあっても何も変えられない。オレはそう言っていたな……………………」
暫しの沈黙があって、“ベレト”は口を開いた。
・・・・・・・・・・・・
「お前は選ぶ相手を間違えた。極めて遺憾な事に、今の我々の上層部こそが、人自連の対クロノスの最強硬派だよ」
「大義名分があれば、真っ先にクロノスに戦争を仕掛けに行く手合いだ。だから、人自連企業の議題に上がる事はない────────急いで行動する前に、もっと世界を知るべきだったのだ」
・・・ ・・・・・・
オレは、無駄死にする。
───────そんな恨み言を、“ベレト”は吐きはしなかった。
二時間後のケイ・サヤギリは生き残るだろう。金龍大佐との間に"対話"の席を設ける決断を“ベレト”がした事で。
・・・
少なくとも、秘匿基地に配備されている核弾頭が彼の命を奪う事はない。
- 132東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/04(日) 22:16:17
- 133ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 22:17:27
- 134ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 22:20:56
- 135ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 22:22:12
「……っ」
ギリ、とケイは歯を食いしばった。食いしばって、抑えて、抑えて、抑えて……。
「だから、俺はゴエティアの基地へ行くのをやめろって言ったんだ。金龍」
漏れ出るようなため息と共に、漏れた。もう漏らしてもいいだろうと思った。
「老いた獣は、逆らう奴らを許しはしない。いや、それ以上に。今のゴエティアにただの人自連パイロットが。クロノスの佐官とがっ。戦場や緊急事態の戦場以外で出会うこと以外は、あってはならないんだよ……!!」
ケイは金龍と違って、座らなかった。 ただ、立ち続けた。
その目は俯いた髪に遮られ、何も伺えない。
「(旧愛卿の警告は、金龍にも伝えるべきだった……!!)」
伝えれば、止まったか? ……わからない。もはや全てが『もしも』の霧の中に消えた。
- 136旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 22:23:07
- 137ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 22:26:27
それは!
【べレトからの嘘偽りない苦言に、金龍は跳ねるように立ち上がるが、丸められた言葉が一瞬喉を苦しめる】
......それは! そうであっても! 例えそうであっても!
企業から元を辿れば、どこまで行っても俺たちは人間じゃないですか!
(既に理解してはいたさ......)
【力無く、再び椅子へ座り込む】
......任務からの帰り道に、偶然死にかけの人自連の兵士と出会ったんですよ......
デスペラード10機に囲まれて、補給も増援も無さそうな状況で1人必死に足掻いてたから、俺が助けられた兵士だったんですよ......
そいつとはよく車を乗り回すんですよ......
お互いに好きなタイプの女だとか趣味を語り合って......
(既に理解はしていた……人と人との間に垣根は無くとも、世界にはコンクリートと合金で固められた防壁が在る事ぐらい......)
......俺たちは話し合えれば分かるんじゃねェのかよ!
(既に理解はしていた......この世にはままならない事がたくさんあるんだって......既に何度も味わってきたさ......!)
だけどさ......それは無いでしょうよ......
- 138アントニオ◆5Q4kt6Q.kc25/05/04(日) 22:28:54
- 139二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 22:35:45
このレスは削除されています
- 140ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 22:37:02
ありがとうございます!
【口座番号を記録していく】
ほえっ!
ば、ばばっ、おバカ!恋人同士でもないのにそんな、はしたないことするわけないではありませんの……!
まったくもぉ……
【顔を赤らめて髪に顔を埋める……そういったものへの耐性は極めて薄かった】
さて、と……聞くべきことは聞き終えましたわ
それでは、面接は合格ですわ!
そもそも面接のためにここまで足を運ぶ方に悪い人はいませんもの!
【あまりに純粋で、人を疑うことを知らなすぎている】
早速ではございますが警備の仕事についてご説明を……依頼にも書いていましたが、基本は農園に近づいてきたインベイドの討伐が基本ですわ
警備UNBFは基本的に有人機の随伴が必要不可欠なので初撃は任せましたわ!
- 141ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 22:52:12
─────────鋼鉄の巨獣を、“ベレト”は幻視した。
誰かが言っていた。「世界のどの山脈も、どの河川も、““陸上戦艦””の進撃を阻む事は不可能だろう」と。
あの醜い巨獣も、既に動き出したのだろうか?
・
老人は酷く若い、理想に燃える未熟な鯉を少しだけ語気の強い言葉を放った。
・・・・・・・・
「彼が弱かったから成立した事例だ。君は、勝手に動き回る小さな螺子と、勝手に動き回る核兵器では何方の動きに注目するのかね?」
また、例え話。老人は死ぬだろう。だが、その前に──────残せる物は、残すべきだ。
「話し合えれば分かる、というのは間違いではないとオレも思っている。だからこそ、こう問おうではないか」
・・ ・・・・・・・・
「君は、話し合ったのか?ゴエティア戦団との合流を止めようとする者と、目と目を向かい合わせて、その理由を問い、考えられる全てを考え、その上で決断したのかね?」
・・
「────────本当にそうだったのなら、今君はオレの前には立っていなかっただろうな」
また、ワインを空のグラスに注いで。それから老人は再び一気に飲み干した。
若い。だが、本来は、その若さこそが世界の当たり前であるべきだったのだ──────インベイドの侵攻は、致命的なまでに世界の情勢を変容させた。
北方戦線。“解体戦争”。大きな争いが起きる度に、少しずつ世界は理想を踏み躙るようになった。
大人達の力不足が招いた結果だ。インベイドを駆逐する事が出来なかった未来で、彼ら子供は育った。
- 142ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 22:55:51
- 143シグレ◆KPwoT407kA25/05/04(日) 22:58:41
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………チッ
【輸送機の中でシグレの苛立ちは最高潮に達しようとしていた。兼ねてより通達されていた「逆巻のプラント防衛に基づく派遣契約」の下、その人員としてシグレとジークルーネが選出され─────────そして、逆巻へ輸送機で向かい、自治区ゲートにて進入許可が降りないまま放置されていたのだ】
いつまで待たせるのかしら…こっちは時間通りに来てやったのよ!?こうなったらジークルーネを出して識別信号を…
「落ち着くっすよシグレっち!既に許可待ち状態なのにBFなんて外に出したらそれこそ入れなくなっちゃいますよ!」
…ああーもう!!!回線貸して!
「あっちょ…」
《スゥーッ…こちら人自連ヴァルハラテック所属パイロット、シグレ・イェンネフェルト!!!!!本日は派遣契約に基づきこちらに伺いました!!!!!!!どうぞ!!!!!!!》
【張り裂けんような勢いで、言葉遣いだけは取り繕った激情の進入許可の申し出を伝えた】
【─────空気の読めない第三者の往来である】
- 144ランセル◆hFOUpFQqt.25/05/04(日) 23:00:20
- 145旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 23:12:56
「─────────なるほど」
吟味するように、その言葉を反復して。
それから『旧愛卿』は頭を下げた。
「誤解してしまって申し訳ありませんわ。ついつい早とちりしてしまいました。どうかお許しくださいませ」
「それから、同じ農場として働く同僚として関われます事。大変光栄に思います。頼りにしておりますので!」
最後の言葉に本音が多分に混ざっていたが、旧愛卿を微笑みを浮かべながらアントニオを迎えた。
バディフレームの操縦、あんまり巧くないからね!
「いえ、お嬢様………………いえ、なんでもありませんわ!」
ふと、ラバーさんはお酒の席など大丈夫なのかしらと思って。
しかし耐性がないようであったので、これ以上この話を続けると卒倒するかもしれないと旧愛卿はコレで話を打ち切った。
「しかし合格となると、何かお祝いとかも必要なのでしょうか?前回は私がフライドポテトをお嬢様にご馳走になりましたので、今回は私が奢りますよ」
- 146ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/04(日) 23:19:47
- 147ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/04(日) 23:23:00
「ん…」
【こくこくと、相槌を打つように数度頷く。噛み砕いたどころか離乳食のレベルで流し込むような説明のおかげか、ウルヴィでも上手く飲み込めたらしい】
「着替えは別、わかった」
【一般的な知識の欠落、それを埋められたとも知らずに、疑問が解消されたウルヴィはケースを運んで部屋に向かう】
- 148逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 23:25:21
「わかった」
即答だった。
「一緒に死んで、責務もやり残しも消してこい」
その言葉は、ケイのそれにそっくりだった。
「となれば、今最も必要なのは早急なマスドライバー使用申請だな……ユズハ」
カンナは己が最も信頼するCEO補佐官……己の腰を掴んで引っ張っているユズハ・ミドリマに声をかけた
『は、はい。現状のマスドライバー申請は――――予約で、既に数週間分埋まっています!』
「根回しするぞ。私がなんとかこじ開ける……ヴァルハラテックはクロノスも恨んでいる。彼女ら経由で話を通すか」
最早止まるものではなかった。 マスドライバーの予約が間に合わなければ、ケイ・サヤギリの死に相応しい弔いができない。
(ああ、今ならよく分かる――――これが君たちの気持ちか)
やっとカンナは……クロノスに対して、『やはり許せないんだ』と歯を食いしばり、強硬派の一員となっているCEOを思い出した。彼は確か……クロノスの紛争幇助で長引いた戦争と、インベイドの侵攻という挟み撃ちによって飲み込まれた大陸のものだったか。
だから、こちらとの協力はできないと。歯を食いしばっていた。
カンナは彼の言葉を、君はそれで良いんだと。自分たちは夢を追うと。笑って受け入れていた。
(済まない。君の『お願いします』は、反故にしてしまうことになる)
(――――ケイ。君はやっぱり、私にとって弟同然だったんだな)
失ってやっと気づくとはこのことなのか。生きているかも死んでいるかも分からぬ家族のような少年を思い。カンナは始めて、クロノスへ憎悪を抱いていた。
- 149ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/04(日) 23:26:53
- 150逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 23:27:28
「何だ貴様は!!! 言葉遣いは一丁前に丁寧だが怒りがにじみ出ているぞ!! 生理でもしているのか!!」
「ゆ、ユエギまて! あの子はヴァルハラテックの可愛い子ちゃんだぞ!ぐはっ!」
唐突なインターホンへの対応をしたのは、ユエギらしい。 年にして三十代の女子が、シグレに勝るとも劣らない叫びを上げていた。ツルカミが静止して……強引に床を舐めされられていた。
「残念だが今の我々も生理の最中でな!! 今まで通り丁重に扱うと思うなよ!!! 入りたいなら6番ゲートから入れ!! 私が貴様を直々にしごき直してやる!!!」
「あら、シグレね。残念だけど、今お遊びに付き合う暇はないの。大人しく6番から……」
「はっきり言うわ、取り込み中なの!! 少し待ちなさい!!!」
挙げ句、シズクとサミダレの双子姉妹ですらブチギレていた。普段ならヴァルハラテックの子が来ただけでお祭り騒ぎな実働部隊が、尋常ではない殺気を放っている。
「……女ってキレると怖えよな。ハザマ」
「はい……すごく」
頬を腫らしたツルカミと、危険を察知して予め避けていたハザマは、ブリーフィングルームの端へ追いやられていた。
- 151龍影◆9BZ6kXGcio25/05/04(日) 23:35:50
- 152ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 23:40:19
「少しだけ、昔話をしよう」
苦笑いしながら、“ベレト”はまた一杯のワインを空になったグラスに注いだ。
話し始めた頃は瓶の中に詰まっていた深紅色の液体も、既に半分以上が老人によって消費された。
遠くを。過ぎ去った残影を幻視する。長い、永い、戦火と死の坩堝から。忘れられない想い出を。
「北方戦線にいた頃に、オレは頼りにならない人間が一人だけオレが率いる小隊の中にいる事がずっと気に食わなかった」
「アイツは毎回、このように言う。“もっと弾薬消費を抑えられたのではないか?無駄遣いをするな!”とな。クロノスの兵士だった。オレは、ずっとアイツの事を邪魔だと思っていた」
「オレ達がもっと速く戦闘を終わらせる事が出来たのなら、救えた命があったからだ。なのにアイツは彼らを見捨てろという。潤沢な弾薬を抱えている癖に、決して解放しようとしない」
・・・・・・・・
「─────────傲慢で、愚かな。頼りにならない男だと。オレ達はアイツを憎んだ」
「憎んだが、アイツを殺す事は出来なかった。クロノスの後ろ盾があったからだ」
グラスを掲げる。死んだ戦友に捧げる一杯だ。
- 153ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 23:40:29
おぼっちゃん
「それを、世間一般は理解してないっていうんだよ。令郎が」
ベレトの言葉によって。ケイは覚悟を決めた。金龍に恨まれ、憎まれる覚悟を。
――――彼は14歳の頃の俺だ。理想を信じ、地獄を知らない、いや知っていた気になっていただけの、若い誰か。
そして、へし折れたケイを立ち直らせたのは、祖父への憎悪。
だから覚悟を決めた。ケイにとって、憎んでいた頃の祖父になることを。
「お前は輸送機の中で言ったよな? 俺より良い策があるなら言ってみろと」
ケイは金龍の顔の横へ、己の顔を寄せた。 やりすぎれば殺されるだろう。けどそれで良かった。
己を殺してくれれば一層、現実を知ってくれる。最悪にはなるだろう……だが、目の前の友が今のケイにとっては大事だった。
「その最高の策の結果がこれだ。喜べ金龍……G-3コロニーの英雄の名誉は地に落ちる、ゴエティア戦団で最も老獪な戦士も」
笑った。
「BF1機も犠牲にすることなく、倒せたな」
友として。果たさなければならない使命を――――果たすときだ。
「お前は、クロノスの対人自連強硬派にとって、一番いい結果を引き寄せたんだよ」
「良かったな。出世できるぞ。俺は爪弾き者になるけどさ……」
心の底から恨んでやると、憎悪をむき出しにして演じて、その肩を叩いた。
「友として祝福してやる」
現実はこれだと。笑顔を作って叩きつけた。どうか折れてくれるなと。
瞳の色は、青。
- 154シグレ◆KPwoT407kA25/05/04(日) 23:42:44
……………………
「シ、シグレっち…?言っとくけど今回はこっちの落ちー…度ー…」
…ホラね?
【流し目で輸送機の操縦士を眺めていたシグレの表情は────────してやったりと言わんばかりにニヤけていた】
手詰まりになったらとりあえずガツンと言っときゃ話は進むのよ。それに普段は一々顔出す度に浮つかれてむず痒がったし…女の本性なんてどっこも変わらないもんなのよ。ははは、ざまーみろ
「えぇ…?」
【瞬間湯沸かし器の如く噴火するものだと思っていた操縦士は困惑することしかできなかった】
「それにしても随分殺気立ってたっすね彼女ら。自分そんな重くないからあんま気にならないんスけど…やっp「それ以上言うならジークルーネ出すわよ「ナンデモナイッス」
てか仮になんかあったとしても…そもそも私は言われたから来てやっただけだし?ほら、さっさと6番ゲート通っちゃって。肩身が狭いんだからとっとと終わらせてとっとと帰るわよ
「へいへい、誰が肩身狭くさせたんすかねー…っと」
【とにかく、乱暴ながら進入許可は降りた。彼女たちはこの先にどんな修羅場が待ち構えてるとも知らずに輸送機を進めていった…】
- 155二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 23:51:19
このレスは削除されています
- 156ベレト◆OXAm1h6odk25/05/04(日) 23:51:31
「────────だが、“要塞蜘蛛”が現れた時。アイツが真っ先に言った言葉はこうだった」
・・・・・・
「『全弾解放しろ!コイツの足を止めれば、直ぐにでもマキシムがこのクソ野郎を仕留めてくれる!俺達人類の勝ちだ!』とな!
彼は死んだが彼の弾薬のお陰でオレは生き延びた」
北方戦線の最後の一戦。老人は最初に“統率個体”と接敵した小隊であり、同時に激戦場を最後まで戦い続けた小隊でもあった。
其れは彼らが優秀だったからではなく、彼らに弾薬の備蓄を行わせた優秀なクロノスの兵士がいたからだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「君は頼りにならないと思い込んでいるだけだ。君自身、先程こう言っただろう?」
・・・・・・・・・・・ ・
「『話し合えば分かり合える』のなら、順序は逆になる筈だ。頼りになるから話し合うのではなく、話し合うからこそ彼らが“頼りになる”と分かる」
「──────厳しい事を言うが、君は自分の意見と反対の意見を言う者と面と向かって話し合った事はあるのか?
彼らの意見に耳を傾けて、彼らの言葉を促し、彼らの力を知り、彼らと手を結ぶ事を考えた事は本当にあるのか?」
「頼りにならない者とこそ話せ。そうでなくては、話し合っているとは言わないのだから」
- 157逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/04(日) 23:52:48
スン、と女子全員が一斉に黙った。そもそも生理など起きてはいない。
売り言葉に買い言葉で、ギャーギャーワーワー言うことによるストレス発散の的にしてしまっただけだった。
「……はぁ。 ヴァルハラテック機へ、聞こえますか?6番ゲートから専用格納庫に入ってください。現在、逆巻重工は厳戒態勢中です。娯楽施設から2ブロック先の訓練室までになります。 なにか表立った行動したい場合は予め私、CEO補佐官のユズハに申請をお願いします」
ため息を付き、インターホンに顔を出したユズハが指示を出す。
逆巻重工にしては異常な態勢、と思って良い。普段ならば月風や、試作型廉月の生産設備まで見学できたのができなくなっている。
「久しぶり、シグレちゃん。みんなホントは歓迎してるのよ?」
ほぼ同年代だからこその、友人としての笑みで、ユズハ・ミドリマはシグレを歓迎した。
- 158旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/05(月) 00:03:14
- 159シグレ◆KPwoT407kA25/05/05(月) 00:08:36
お久しぶりですミドリマさん。そうならそうと言って欲しいものなのですが……………………で
【輸送機が指示通りに、6番ゲートから専用格納庫へと向かう…同年代の友人ではあるが、あくまで自分がここに出向したのは派遣の企業人として。とうに礼儀もクソもないが一応は親しき仲にも礼儀ありに倣って格式張った口調で返答を返し…そして】
何かあったんですか?
【率直に疑問を述べる。“逆巻の様子がおかしい”事は殺気立つ実働部隊に件の厳戒態勢ときた。…とっとと仕事を終わらせておさらばするつもりだったが、そもそもプラント防衛どころでは無い異様な熱を放っている】
【『駆り出されるにしても別の事だろうな』と、シグレは察したのだ】
- 160東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/05(月) 00:18:28
─────おおきに、CEO。
(そして何処かに電話を掛ける)
『...えー、あの"葉桜"を持って行くの?
分かった分かった、そんなに怒らないでって
やりたい事位は同僚にはさせますってー。』
良し。
(台の目にはギラギラした光が燈っていた)
- 161逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 00:21:58
「大丈夫……うん、すぐに解除されるわ!」
ミドリマは嘘をついた。すぐに解除されるという嘘を、後ろを振り向いて確認するという仕草で補強した。
(ホントに……すぐ解除されるといいな……)
解除されればケイの生存が確定するのだから、それが一番だった。
「ちょっと事故がおきたの。慣熟飛行中の班が空中衝突しちゃって、行方不明者の捜索中なのよ」
事故は真実だ。真実を混ぜた嘘は、見分けがつきづらい。CEO補佐官なのだから、その手のことは長けていた。
見つかれば解除されるから、制限範囲内だったら自由にしていいよと、伝えた。
「ようこそ、逆巻重工へ。歓迎するわ」
――――きっと、最後のお客様になるかもしれないから。誰も彼もがどこか、いつも以上に真剣だった。
- 162シグレ◆KPwoT407kA25/05/05(月) 00:41:51
…………………………どうも。
【それだけ。本来なら“どこからその謎の自信が出てくる訳?ゲートの外で長時間放ったらしてこっちに気を向ける程余裕ないのに随分と都合のいい事故ね?”と続けたかったが…それは堪え、回線を切る】
「降りないんスか?」
まさか。こんな気味の悪い状態で楽しめると思う?
…ここの連中、なんかを隠してる。私らを騙くらかしたり利用する余裕すら無く、外様に関わらせたくない“事故”が起きてるって事よ
「そっすよねぇ…」
念の為、ジークルーネに乗っていつでも通信拾えるようにしとくわ。アンタも何時でもここから飛び出せるようハンドル握っといて。それと…一応今の状況を本社の方にも
「りょーかい」
【輸送機のコンテナに格納されたジークルーネに乗り込み、そのままコックピットで瞑想のように肩を組み、片目を閉じた】
…こうなれば我慢比べね。やってやろうじゃない
- 163ポリト◆XGxCas/OAU25/05/05(月) 00:47:06
〜数ヶ月前〜
(…着いたか。)
【夜遅く一機のBFがある場所で停止し、間を置いてコックピットから少年が降りる。】
(流石にBFなんかで入り込んだら怪しまれるしな…あ、これを着ないと。)
【コックピットの座席から明らかに大きすぎるローブを引っ張り出す。こんなものを身につけたら目立つだろうが、顔と“腕”さえ見られなければ良かった。】
【暫く歩き、『スーク』の光の中に身を投じる。辺りは賑っており治安も悪いとは思えなかったが、その賑わいのタネである“商品”からここはマトモではないと理解できる。】
(…まあいいさ…自分ももうマトモじゃない。)
(『始皇帝』の武装も調達先は確保できたし、情報は手に入れた…。でも、『アレ』は見つからなかった。アレさえあれば『計画』をすぐにできるのに…)
【少年(ポリト)は、『アレ』のある場所の検討がつかない。無闇に彷徨う内に、乱雑に置かれた自販機の看板商品…ヒトの子の臓器を視界にとらえる。】
「ゔっ…ゔぉぇええええ…」
【あまりの劇物に、ポリトの胃の内容物が地面へ叩きつけられる。ここは本来、彼の様な人間が来るべき場ではない…】 - 164二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 00:52:38
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- 165逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 01:03:43
「……ジャミング。意味ないと思うけど最大強度で」
『はっ』
念には念を入れて、ユズハはオペレーターに指示。こっそり電子的な妨害も行う……間違いなく直感か経験、何かで怪しまれたと確信した。
ブリーフィングルームを簡易的な密室にする。
(シグレちゃんはとても怒りっぽいから、我慢比べは難しいはず。できる限り速く集中力を削り取る……)
「ツルカミさん」
「はいよ。いつも通り嫌われ役ですかい?」
その通りです、とユズハは笑った。ツルカミはこういうところがモテるのだ。細かい気遣いを欠かさず、嫌われてもへこたれない……へこたれなさすぎて少し苦手を感じる女性もいるらしいが、そこが魅力だと支持をするものも多い。
「荷物は問題なくなので、廉月で行方不明者の捜索をお願いします。決してサボらないように!」
「はーいよ!行ってきます!!」
数分後にはツルカミの廉月が、ヴァルハラテックのかわい子ちゃんをナンパするため、空中を飛び回り始めた。
「サミダレとシズクの二人は娯楽施設へ。ストレスが溜まっているシグレとたっぷり体を動かしてきていいわよ?」
「わかったわ。今日こそシグレに勝つ……!!」
「サヤギリがいないのが、本当に残念ね」
正確は違う双子でも、趣味は似通っていた。
「龍影さんと台さんは自由行動です。お二人の機体は先にマスドライバーの運搬路へ。ユエギさんとセイドウさんが全体指揮の補助を取るので、皆さん気を引き締めて」
実働部隊の全員が頷いた。
「相手はヴァルハラテックのエースですが、私達は勝利条件が違います。焦らず行きましょう」
こっそり正規生産の廉月を7機と蒼風改を外へ運べばいいのだ。ユズハ・ミドリマの宣言で、逆巻重工は駆動していく。
(ごめんねシグレ。今日だけは私、貴方に対しても本気だから。)
ユズハは友へ、内心で謝罪をした。
必ず対面で謝ることを決めて。
- 166ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 01:23:35
「っっっ」
金龍が、己の言葉に反応して胸ぐらをつかんできた。
ギリギリと万力のように締め上げられて、わずかに宙を足が浮く。
彼の力と速度なら、このまま地面へ叩きつけようが、首を締め付けようがケイは死ぬ。
生身と、血族として既に機械に近い体を持つ天才なら、この時点で既に後者に軍配が上がっていた。
(そうだ。ダチを怒りのまま掴んで今はどう思う?)
不思議と、ケイは抵抗する気になれなかった。むしろこのまま、金龍によって殺されてもいいと感じる。
(俺もお前も、自由だぞ)
ケイは3発目を言葉でやったから。抵抗しないと心に決めた。
青い青い目が、金龍を見据える。
金龍を見ながら、胸ぐらを掴まれているケイは背筋が震えるほど嬉しかった。
「(……やっと、ドラ息子の方で俺を見てくれたな)」
金龍には聞こえないほど小さなつぶやきは、唇だけの動き。
どうなっても、ケイは良かった。 龍影や皆も大事だ。友も大事だ。
その成長を見れないことだけが、心残り。
(爺ちゃんもこうだったのかな)
心の底から友を案じて、ケイは微笑んだ。
- 167逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 01:32:26
- 168二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 01:40:23
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- 169シグレ◆KPwoT407kA25/05/05(月) 02:03:11
「…よし、なーんかちょっと繋がり悪いタイミングありましたけど学園長に事情伝えといたっすよー…で
コックピット降りるの早くないすか?」
うっさいわね!あのままじっとするくらいなら直接顔合わせてガツンと一発言った方が効率がいいって思い直したのよ!!
…娯楽施設ぶっ壊すつもりで行ってくるわ。そこまでしないと楽しめなさそうだもの
「あんま横暴するとまた始末書書かされるっすよー?程々にー?」
はいはい、ほどほどに参考にしますその意見ー…
【靴音を響かせながら、シグレは娯楽施設へと向かう………我慢比べと称した瞑想からここまで、おおよそ2〜3分】
【………しかし、“見誤っている”】
…勝負の内容は?リクエストさせてもらうけど最近私がハマってる野球関係…バッティングセンターとかはナシで。
…そっちの得意部門で“勝負”、してあげるわよ?
【シグレ・イェンネフェルトは確かにストレスを貯めやすい質の人間だ。一向に進まない現状にイラついていた事は事実だ】
【しかし、“見誤っている”。当初の余裕のない態度をもう記憶の彼方に追いやれるほど、シグレの勘は鈍くない…どれだけこちらの気勢を削ごうとも、あちらにはこちらの存ぜぬプレッシャーに比べれば可愛いもの】
【押してダメなら、引けばいい】
結果の分かりきった“お遊び”じゃ、お互い憂さ晴らしにもならないものね?
【シグレ・イェンネフェルトは人を煽り、苛立たせ、穴を作る天才でもあるのだ。眼前の双子を舐め腐ったような眼差しをしながら、本人はそれを深く理解していた】
- 170メントーア◆AUy27RMtoo25/05/05(月) 08:02:52
ゴポリ。
水冷式の電脳が、自身の予測に【不純物】が混じったのを見逃さない
ゴポリ。 ゴポリ。
クロノス・インダストリーが【人類の】最後の安寧の地を提供しているにも関わらず、ソレを拒み、生きる勢力
ゴポリ。
メントーアはソレを【人類】とは考えない - 171二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 11:04:59
このレスは削除されています
- 172逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 11:26:35
「……そうか、ヴァルハラテックの子が来ているのか」
ユズハの会話を聞きながら、カンナは思考を巡らせる。
マスドライバーの利用申請はちょっとやそっとの小細工では根回しが追いつかない。利権や関係が複雑に絡み合っているものだ。
(手伝ってもらうべきか)
結論が先に来た。もうこの際だ、巻き込めるだけ巻き込んで吹っ飛んでやるという境地……人それをやけっぱちという……に達し、超えたからか。
対クロノスという点では毛色の強さが隠せていないヴァルハラテックCEOの言葉ならば、根回しにおいていくつかの話がわかる対クロノス強硬派を味方に引き込めるかもしれない。……なにより、彼らにだって目と耳に鼻もある。
ケイ・サヤギリの身に何が起こっているかを把握したなら、より話も早いはずだ。
全ての発想を繋げて。よしと呟いた。
「ユズハ、応対してるシズクとサミダレには、適度な発散をしたらバラしていいと伝えてくれ」
「わかりました」
(あと何かやり残したこと……あっ)
すとん、と目の前に何かが落ちてきたような感覚だった。まだブリーフィングルームで目を閉じている龍影に声をかけた。
「龍影、ケイが誘拐される前、最後に何か言ってなかった?……暗号か、何か」
彼が容易く拐われることはないという信頼があった。そして何より彼は、既に金龍と一度出会っている。
(ホットラインを作れるかもしれない……もう意味がない保険になっている可能性もあるが)
ないよりは、マシだった。 - 173逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 11:58:17
「ふぅん?」
「へぇ……」
シグレが娯楽施設に着いた頃には、双子の姉妹は既に模擬刀を用いたスポーツチャンバラで汗をかいていた。
ちょうどいいタイミングでバラして良いと言われれば、後は早い。
渦巻く感情全てを強引に発散させねば、どうにかなってしまうという激情を共有している双子は……やってきたシグレの挑発に目を細めた。
それでこそシグレという目が4つ。彼女を射抜く。
「そっちこそ良いの?これ、ただのスポーツチャンバラじゃないわよ?」
サミダレが、模造刀……かつてあった列島国家の時代劇などに用いるような程よい重さと硬さを備えたものだ……の、潰れた刃先をシグレに向けて挑発した。
「サヤギリも慣れるまでは苦労したわよ」
アブソーバーとの戦いで、ケイは彼女に助けられている。名前に反応させるつもりだった。
(サヤギリは、彼女に恩を返せないまま逝ってしまったかもしれないんだから……)
私たちも月風の系譜に乗っている。彼の持つ恩を代わって返しても良いだろう、というわがままでもあった。
- 174シグレ◆KPwoT407kA25/05/05(月) 12:39:38
(…なるほど。刀身の重量バランスは圧縮状態のビームチャージソードに近い)
【ブン、ブン、と片手で軽く模造刀を振り回し感覚を掴む。…模造刀を握ったのは何もこれが初めての経験ではない】
【どこかのエセ忍者に『シグレ殿には侍の資質を感じられるのでござる!拙者と共にゔぁるはらのじゃぱにぃず巨頭の一角に…』と無理矢理殺陣に付き合わされた苦い思い出が蘇る。一緒に付き合わされたマルタは『こんなバランス悪いナイフでまともに戦えるの!?携帯式ビームサーベルじゃ…ダメ?』とまず振る気がなさそうだったので、既に忘れてるかもしれないが】
私を誰だと思ってるの?そこらの凡人とは訳が違うのだから、いい勝負くらいにはなると思うけど?…で
【相手のテリトリーでそのように都合よくコツを掴めるなどとは思ってもいないが、誇張表現たっぷりに。自信ありげに模造刀を肩に担いで挑発を躱した】
サヤギリって誰?
【唐突に出された第三者の名前に、思わず“地の反応”が出てしまった。
───────────往々にして、恩を施す側というものは施された側よりその自覚が薄いものであり。
“アカデミー”という、より信頼できる仲間を持つシグレにとってどうしても件のクソエイム鼻血女より遥かに優先順位の落ちる名前でもあり。最近『アブソーバー』から助けた他者のエースの名前を素で忘れていたのだ。“青い月風乗りの男を助けた”のは先日のノインとの邂逅もあり覚えてはいたのだが】
ああそいつね?事故の行方不明者っていうのは
【確証はない。出された情報全てを適当に突き刺して刺激していけばいずれボロが出るだろうと言う考えから軽口を叩くように言の葉を紡ぐ。怒りに飲まれれば太刀筋が粗雑になって勝てる目算も高くなるし、ついでにゲロってくれれば一石二鳥だ】
【シグレはとっとと、核心に触れたかった】
- 175ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/05(月) 12:45:52
ッ!!
【今度は金龍の方から、青年の胸ぐらを衝動的に掴んだ】
【そのつもりになれば、呼吸をするよりも容易く殺せる青年の胸ぐらを】
【それなのに、不敵にも己に笑顔を貼り付けてくる青年の胸ぐらを】
【金龍は、喉の奥が詰まったような空気音しか出せなかった。手負いの鹿のように、致命足り得ないのにどこまでも付き纏う痛みに呻くように】
【いつもは虚飾の笑みで彩られていた顔は、苦悶一色で塗られていた】
- 176ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/05(月) 12:46:02
……別に反対意見って話じゃなく、信じられないから話せなかったんだがなァ……
【だが、白眉の先達の言葉は耳に入り、金龍はその両手をぶっきらぼうに離す】
【顔から、力みは消えていた】
俺のプライベートジェットでテメェの家の真上を飛ぶより、ゴエティアの飛行機に乗せてもらった方が100億倍穏便なはずだ
(間違ってでもテメェに殺意を向けたくねェってのもあるがな……)
【背中を向けると、長い溜息を「ハァーーーーーーーー…………」と吐く】
テメェをここに残すついでで1つだけ言っておく
絶対にあのカンナCEOにデータを見せろ
俺よりは信用されている君への命令だ
【1度も振り返らず、誰よりも一足先に部屋を出ようとスライドドアを開ける】
最後に……ありがとう、ベレトさん
【自分の親友と人生の道標に、彼はそこでお別れした】
- 177逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 12:53:28
- 178シグレ◆KPwoT407kA25/05/05(月) 13:17:46
- 179ベレト◆OXAm1h6odk25/05/05(月) 14:00:42
・・・・・ ・・・
「あぁ。成長しろよ、若いの。まだ先は長いんだ。やり直す機会も、成長する機会も残されているさ」
低く笑って、“ベレト”はその姿を見送った。
グラスに残ったワインを飲み干す。今後彼がどの様になるのかは分からないが、しかし人類全体の利益を生み出す存在になってくれるのを祈るばかりだ。
────────そうして、クロノスの大佐が姿を消した後。
飲み干したばかりのグラスと、もう一つのグラスにワインを注ぎながら老人は肩を竦めた。
・・・
「クソッタレ共が核弾頭に装着した遠隔起爆装置を戦斧でブッ壊した。残念ながらオレの「ゴエティア戦団」としての権限は凍結済みだ。バディフレームも航空機も動かせないだろうな」
“ゴエティア戦団”の兵器は、極めて厳密な指紋認証と声帯認証。それから各自が自身で定めた合言葉との照合によって起動が許可される。
上層部に叛旗を翻したと見做された“ベレト”には、既に起動権限が失われていた。
ワインが注がれたグラスの内の一つを差し出して、老人は笑った。
「オレから奢れる最初で最後の酒だ。どうか飲んでくれないか?」
- 180逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 14:12:50
「ふっっ!!!」
カァン!と大きな音がなった。捻るように動いたシグレを視認しながら、サミダレは振り下ろした刀を引き戻すのではなく、逆手に持ち替えた。
そのまま、ナイフのように外側へ模造刀を振ることでサミダレの持つ刀の峰と、シグレの刃がぶつかり。
・・・・
「そうよ、好かれてるし、好いてるの。だから!!」
(この最期の勝負、絶対に勝つ!!!)
峰と刃が食い込み、動けなくなる。西洋剣術で言うバインドと呼ばれる状態に、一時両者が陥る。
勝ち負けを繰り返す好敵手と、自分はもう戦えない。だから、本気で練った策だった。
食い込まんだ刃をサミダレから見て上へ、そして刃同士をすり合わせて反時計回り。順手になっているシグレの姿勢を殺す。サミダレの足が、シグレのアキレス腱に触れた。
(勝った!!! これで、勝ち逃げ――――!)
その足を刈る。 シグレの姿勢が崩れる――――。
- 181ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 14:28:36
「……気をつけろよ」
(そのゴエティアの飛行機は来ない。俺は投獄されて、どっちみち助けが来なければ死ぬ)
残酷な予測と内心を飲み込み。ケイは最後の最期まで憎まれ役に徹した。この分では、金龍の齎したデータも老害共に接収されることだろう。
とはいえ、彼らの場合はそれをクロノスへの排撃。そしてケイが内通した証拠の一つとして振り回そうとして――――ベレトの主張と衝突する事実に、その頭を数日間悩ませるに違いない。
(間違いかもしれないけど、無駄ではない。そう思わせるには……俺も生き残ってやるしかないな)
金龍から託された最低限を下回ることをすれば、彼はきっと壊れてしまうだろう。 自分の書いた絵は修正する必要がありそうだと、ケイは軽く息を吐いた。
友が階段を登り去るのを、ケイはしっかりと見届けた。
「わかりました。最後の一杯を戴く名誉を、ありがとうございます」
即座にケイはソファへ座り。グラスを手に取る。 演じることを終えた……心からの微笑みを添えて。
酒精については、もはや気にはしないことにした。
「……げほっ!んん゛……!! ん。ふぅ!!」
口につけて、軽く飲み込んだ瞬間の感覚に一瞬むせたが、飲めないとは思わない。
ぐい、とそのまま。グラスに注がれているワインのうち半分を飲み干した。
「昔うっかり飲んじゃった、爺ちゃんが保存してた列島酒とは違う味だ……美味しい」
子供らしい感想の中に混ざっている言葉は、純粋に自分が飲んだことのある酒類と比較しても、勝るとも劣らない。
(爺ちゃんも、こういうふうに保存してたのかな……悪いことしちゃったな)
自分が飲みたかったろうに、孫に飲まれたと知った時の祖父はどう思ったのだろう。おまけにケイは飲んだあとの記憶すらなかったのだ。
ただ、美味しかったかと聞かれたので頷いたら。とても満足そうにしていた祖父の内心を思うと、どんどん罪悪感が増していくが……過去のことだ。
- 182シグレ◆KPwoT407kA25/05/05(月) 14:33:10
───────ごめんなさいね
【反射神経が捉えたサミダレの刃の揺らぎは“引き“ではなく“回り”。この時点で回転斬りは防がれる。
であれば次に狙うは足。こちらは重心に任せた挙動を取ったことにより丁度体制に崩れがある────勝ち急ぐ者がここを付かずに居られるものか。】
『スポチャン素人』が『スポチャン経験者』に勝っちゃって。けど私って昔から要領が良いってよく言われるから貴方の落ち度じゃないわよ?だって要領良いから
【だからバインドした瞬間、“左手で模造刀の刃先を掴んだ”のだ。ビームサーベルや日本刀では自殺行為故にまず発想にすら至らない、模造刀故の奇策──────踵を引っ掛けた時にシグレは踏ん張りはしなかった…こちらの姿勢が崩れ、押し倒される弾みで
シグレは、サミダレの胸元への“置き刃”にて試合の勝利をもぎ取った】
スポーツチャンバラって、どこでもいいから刃を当てれば勝ちってルールだったわよね?違うかしら?
【シグレ・イェンネフェルトとはどこまでも他人の思い通りにならない女であり、そうでなくては気が済まない性分なのだ】
- 183鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/05(月) 14:44:18
──────““陸上戦艦””が奏でる巨大な轟音が、絶えず地表を震動させていた。
クロノスの勢力圏と程近い人自連の都市は、しかしその鋼鉄の巨獣と比較すれば容易に呑み込める程度の大きさに過ぎない──────事実、鋼鉄の巨獣は対クロノスを見据えて都市に貯蓄されていた弾薬と火薬を全て接収し、より肥え太りながらその刃と砲を鋭く整えているのだ。
““陸上戦艦””の甲板の上。全周回転を備えた六十四連装小口径粒子ビーム砲が三つ建ち並び、戦闘機が離陸する為の飛行場としての機能を兼ね備え、その上でバディフレームを待機させるだけのスペースが有り余る程だ。
側面には無数の艦載砲がズラリと並んでいる。右舷と左舷にそれぞれ46cm砲が40門、艦体後部には同口径の46cm砲が20門。
対空迎撃ミサイルの最大同時斉射可能数は200にも及び、更に音速の七倍にも達する弾速を誇るレールキャノン群が空を睨む。
““陸上戦艦””の前面は破城槌と同様の原理と構造を有しており、その質量と高速鉄道にも匹敵する速度によってクロノス・インダストリーが誇る対インベイド防壁を破壊するだけの威力を誇る。
───────その““陸上戦艦””の周囲を、超巨大対地回転翼航空機““ゲヘナ””二機が巡回する。
全長60mにも及ぶ巨体には機関砲と粒子ビーム砲が満載されており、““陸上戦艦””の履帯の破壊を試みようとする敵バディフレームの排除の役割を担っている。
そして、““陸上戦艦””と““ゲヘナ””に追随する形で数多くの輸送機が追従する。
攻撃力は保有していないが、しかしバディフレームの輸送に適した機体は大規模な戦力の移動を可能にする。
『─────第三航空打撃群、48機。成層圏突入を完了しました。全機体が貫通クラスター爆弾を搭載済みです』
『─────第二、第三、第四歩兵連隊は戦艦への搭乗を完了しました。第二装甲擲弾兵師団と連携しコロニーの制圧任務に備えます』
『─────第一、第三、第六バディフレーム部隊の戦艦内への配置完了。コロニーの占拠、及び揚艦を試みる敵の排除に備えます』
『─────後方支援部隊、弾薬の搬入を完了しました。本社からの兵站路の構築も五時間以内に完了するかと』 - 184逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/05(月) 14:53:43
「ぅそ――――!!?」
模造刀の刃先を掴まれて、サミダレの目論見は全て崩壊した。回る刃をそのまま滑らせ、自分の刃を掴み彼女の首元へ……それが、勝ち筋。
(これじゃ、姿勢の回りでシグレを押し倒せない!)
(実体剣を握ったことがないなら、浮かばない発想でしょ!?)
刀の峰中腹あたり丁寧に掴み、簡易的な短刀として用いる技術はある。西洋剣術にも、己の持つ刃を掴んでリーチを自在に変えたりする技がある。
知識があるからこそできる技……それをシグレが思い浮かんだことに驚愕しながら、刈った彼女は抵抗すらせずこちらへ寄りかかってくるように……。
「ぁ……!」
(負ける。このままじゃ負ける。いやだ、嫌だ!!!)
サミダレが、シグレに押し倒された。 本気の勝負と言うには、優しい音とともに。
『スポーツチャンバラって、どこでもいいから刃を当てれば勝ちってルールだったわよね?違うかしら?』
(……負けた)
……胸に、置き刃。 それがサミダレの負け手。
どんなもんよ。というかのような、自慢げなシグレの顔が、サミダレの目の前にあって。
「ぁ、ぁああぁあ゛あ゛あっっっ……!!!」
サミダレの感情が、決壊した。 模造刀を放り捨てて、思わずシズレに抱きついてしまうほどに。
「いや、いや!!なんで!! イヤ……ぅぁあぁ!!」
勝てないことも、可能性に入れていた。 そこも含めて。受け入れるつもりだった。……なのにどうして。こんなに悲しいのだろうかと、サミダレは泣きじゃくっていた。
「これが、最後、最期なのに! なんで!!」
心の中は、ぐちゃぐちゃだった。
「もう一生シグレと勝負できないのやだぁ……!!」
勝ち気で、気炎をよく吐いて。ケイ・サヤギリにだって負けん気を見せる少女が。脆い部分をむき出しにしていた。
- 185鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/05(月) 14:54:54
「宜しい。コロニーの制圧、占拠後に新たに本社が戦力を投入する手筈となっている。歩兵部隊は制圧後にコロニーに駐屯し、コロニー住民の監視と管理を行え。戦艦内のバディフレーム部隊はそのまま、コロニーに駐屯するのは輸送機に乗った部隊だ。
戦闘機部隊。地上のクロノス軍の固定型粒子ビーム砲台を優先的に攻撃しろ。但し、クロノス空軍とは迂闊に戦闘をせずに遅延戦術を行え」
歩兵2万6千人。量産型バディフレーム300機が戦艦に搭乗している。
輸送機部隊は追加で200機の量産型バディフレームを輸送しており、コロニーの制圧を担当する。
・・・・
───────大義名分があるのだ。これくらいの戦力を動員しても、自社の戦力であるのだから文句を言われる筋合いはない。
““陸上戦艦””艦長。上層部の信任の厚い、叩き上げの職業軍人は既に定めた六つのコロニーを突き進む航路に発進する前に、艦内への演説を行った。
- 186鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/05(月) 14:56:22
『───────諸君、君達の中には疑問に思う者もいるだろう。“何故、我らは同じ人類であるのにも関わらず、クロノスと対峙するのか?”と』
『真実、人類の未来を思うのであれば、このような事をして何の意味があるのか?─────と』
・・・・・・・・ ・・・・・
『先に仕掛けたのは、クロノスだ!』
・・・・
艦長は吼えた。彼らには大義名分がある。
故に、本当はクロノスを潰したいだけでありながらも、兵士の士気を上げる方法がある。
『インベイド襲来以前、最もこの惑星で悪戯に人類同士の戦争を煽った企業は誰なのか!最も屍を積み上げた企業は誰なのか!』
『インベイド襲来後、言葉を弄してコロニーの永住権に条件を付与し、堂々と人類の選別などという非人道的な行為に手を染めたのは誰なのか!』
・
『そして、今!我々に内通者を潜ませ、我々の情報を盗み出したのは誰なのか!兵士諸君!私は君達の自由意志を尊重する!私はクロノスのように、君達に強制をするつもりはない!逃げたいのなら、その自由を認めよう!』
『だが!我々は、邪悪なる企業に正義の鉄槌を与えねばならないのだ!人類自由連盟として!我々は、我々の手で、我々と我々の家族を守らねばならないのだ!』
・・・・・・・・・・ ・・・・・
『自由の為に立ち上がれ、兵士達よ!勝利の王冠を手にしたいのならば、迷ってはならないのだ!』
『────────進軍せよ!』
鋼鉄の巨獣が、唸りを上げようとしていた。 - 187シェディ◆PPyRfvMZl625/05/05(月) 15:09:14
(1/6)
【揺れ動く、動乱の空の下、されどいつもと変わらぬ様に、慣れた日常の軌跡を辿る者達も居る】
『シェディ、予約のお客が見えた、ご指名だよ』
【────────────シェディ・キッスがその報せを受けたのは、従業員宿舎、自分に割り当てられた部屋の内線電話からだ】
【半開きのカーテンから覗き見える窓の外はとうに夕暮れの頃だった、絶え間なく移動していた筈の空は橙色と蒼の混ざった明かりを灯して、転々と煌めく星屑を描き出している】
【仰向けで受けた受話器を戻して、薄く筋肉の線が伸びた臍の上を掌で掻く様に擦りながら身を起こす、荒野を走る陸上艦は今宵の停泊地へと辿り着き、彼女らのサービスを待ち詫びた客達をその大喰らいな腹の中へと招き入れていた】
【今日も数多の金が動く、性と欲とその対価に】
【宿舎のレストルームには、これから稼ぎに向かおうという艦の娼婦達が、忙しなく夜の支度に取り掛かっている光景があった】
【寝ぐせでボサボサの髪を手櫛で均しながら、飲みかけのウォーターボトルを片手に、色気の欠片も無い黒無地のショーツにキャミソール一枚という気の抜けたシェディの姿を見れば、ウェービーなブロンドのロングヘアを靡かせる如何にも花売りらしい格好の同僚が、きゃんと噛み付いて来る】
【それもいつものことだった】
『……また薄着で寝たの、シェディ?身体壊すわよ、私達の仕事は身体が資本なのに』
「うん、気遣ってくれてありがとうカトリー……あれ、いつもと少し髪型を変えたかい?」
『あ、分かる!?そう、毛先のウェーブの掛け方がね、この間のお客意様がこっちの方が良いってヘアアイロンをくれて────────────って、違う違う、また流されそうになった!ねぇ、聞いてる!?心配してるんだからね!?』
【心配性の犬の様に吠えて噛み付いて来る同僚を片手間で転がす、未だ肌寒い昼間もあったここ数週間で定番になったやり取りを、他の同僚達は『またやっているよ』と一瞥して、またいそいそと身支度へと戻って往く】
【他人にかまっている暇など殆どの場合は無いからだ、彼女達にとって、仕事のある夜は戦場だ】
【戦闘娼婦の需要は時にただの娼婦では足りぬ奇妙な欲望の間隙を埋め合わせる、中には、「戦う強い女を屈服させてやる悦びを感じたい」なんて面倒な性癖を抱えた客を相手に、ご丁寧にそれを演じてやったという女もいる】 - 188シェディ◆PPyRfvMZl625/05/05(月) 15:09:35
(2/6)
【けれど、こと、シェディ・キッスという女にとってこの世界は別の側面を持っている】
【星明りすらも飲み込む様な、昏く深い夜の海、波打ち際に糸を垂らすケデシャーという釣り船の明かりに寄せられてやって来るのは、決してただの客ばかりではない】
【殆ど素顔と変わらない様な簡単な化粧を施し、煌びやかな営業エリアを時折擦れ違う客を取った娼婦達と挨拶をしながら、幾度か廊下を曲がった先に】
【特にVIPクラスの客を招き入れる個室のベッドルームがある、そこが、今夜の仕事場だ】
「やぁ、おじさま」
【ノック、ノック……ノック、間を置いて3回、何をするにもそれは彼女が仕事を受ける時の決まりの挨拶だった】
【ドアノブを回して部屋へと踏み入る、カーテンの掛かった窓際の椅子に腰を降ろして、入口へと視線を向けたのは、仕立ての良いビジネススーツに身を包んだ紳士然とした中年の男性だった】
『……会いたかったよ、シェディ、久しぶりだ』
「嫌だなおじさま、あなたがボクに会いに来るのは、仕事がある時だけだろう?会いたかった、なんて、心にも無いコトを言うのは良くないよ」
『何を言う、本心さ、会いたくなければ社から500kmも離れたこんな辺境の都市までやって来る筈が無いだろう?休暇を申請するのも大変だったんだ』
【────────────それでも、彼が会いたいのは娼婦としての彼女では無い、とうに冷めきった情熱的な台詞を薄っぺらい笑みで躱しながら】
【ケデシャーの“万屋”、シェディ・キッスは、早くと要件を促す様に踵をトンと落とした】
「それで、お仕事の内容は?」
・・
『────────────うん、殺しだ』
【それもまた、いつものこと】 - 189シェディ◆PPyRfvMZl625/05/05(月) 15:09:57
(3/6)
『昨今の世界情勢が、大きく動こうとしていることは知っているだろう?』
【男はゆっくりとベッドの淵に腰を降ろした、パリッとクリーニングの施された清潔なスーツが、VIP向けの柔らかなシートに沈む】
【彼は人類自由連盟に名を連ねるさる食品加工企業の幹部だ、軍用レーションの開発や生産を手がけ、人自連内部ではNA社などその筋の最大手にこそ譲るものの相応の影響力を持っている】
【ケデシャーのVIPルームに通されることが可能で、決して安いとは言えない“BF傭兵としてのシェディ”を雇うことが出来る財力を有した、お得意様の一人だった】
「クロノスの……“G-3コロニー奪還戦”、クロノスと人自連の共同作戦に端を発する“穏健派”と“強硬派”の対立激化?」
『そうだ、世界中がインベイド戦争始まって以来、一つ目の大きな岐路に立たされようとしている。
今、風見鶏に徹している者達も、立場を明確にしなければならない時がいつか必ずやって来る、我々もまたそうだ、そして────────────』
【……とさ、と、シェディの身に着けていた上着が床へと落ちる、元より脱がせる前提で設計された娼婦の衣装は、薄い布地の下に黒いランジェリーのシルエットを透かす煽情的なものだ】
【男の語りに耳を傾けながらも、気紛れな猫の様な女は、目に見えぬ尻尾を左右へと揺らしながらベッド上の客の元へと歩み】
【まるで、接吻をせがむ様に近付けた眼の前に、一枚の顔写真が示された】
『────────────ジャスティン・カステヤノス、戦前は西方列強の国軍に属していた軍人で、今は我が社の軍事部門に於ける最高顧問を務めている男だ。
有事の際には頼れるBFパイロットでもあるが、それ以上に、社内に根を広げる対クロノス“強硬派”の筆頭だ、それが最近の情勢にあって急激に影響力を強めて来ている』
「……えぇ?元とは言え、軍人を相手にするのかい?面倒だなぁ……」
『理解が早くて助かる、勿論、難しい仕事になるかもしれない、報酬は弾むさ』
【返答は無い、けれど、唇に押し当てられた細い小指の感触を、男は肯定と受け取った】 - 190シェディ◆PPyRfvMZl625/05/05(月) 15:10:24
(4/6)
【娼婦として以上に、傭兵として鍛えられた女の腕力が、強引にベッドへと男の姿を落とし込む】
【腹に圧し掛かる体重は「あなたは何もしなくて良い」と彼の両腕を両膝で以て白布に縫い留め、猫の様に背中を丸めたシェディは、急に部屋に立ち込める艶やかな空気にあてられて酔いの赤みに染まった頬に口付けを落とした】
『む……はは、珍しいな、君の方からそんなに積極的にせがむとは……』
【それは紛うことなく模範的な情婦の振舞いだ、シェディが、自らその様に振舞うことは滅多に無かった】
【普段と違う色香を放つ彼女の様に、少しばかりの困惑を声色に滲ませながらも、しかし、娼館を訪れた以上はそうした行為に及ぶ可能性だって確かにあり得ただろう】
【ならば、折角彼女がその気になってくれているのだ、付き合うのも都合が良い、と……今度の口付けには己からも唇を重ねた】
【始めは上辺だけをなぞる、食む様に噛み合わせ、二度、三度、舐め合う、それからようやく濡れた唇を間を割って這入り込む舌先が、手慣れた蛇の様に彼を絡め取って】
【段々と……腹の奥から熱が競り上がって来るのを感じた、欲情の昂りは身体的にも下腹部の膨らみとして現れ出る】
【それを恥じる様なことは無い、どうせ、すぐに曝け出すことになるのだし、今宵それを求めているのは彼女の方で────────────】
『ん……?』
【意識の隙間、不意に彼が頭を乗せる枕の下へと滑り込んだシェディの掌は、ほんのひと瞬きの間に抜き取られ】
【ごつり、と、硬く冷たい感触を彼の額へと押し当てた】
『なっ……!?』
「ゴメンね、おじさま……理由は二つ、ある、ちゃんと説明するから、聞いてくれるかい?」
【────────────黒光りする拳銃が彼女の手にある】 - 191シェディ◆PPyRfvMZl625/05/05(月) 15:10:58
(5/6)
【部屋に入って来た時と全く同じ、薄っぺらで、されど艶やかな、小さな笑みを浮かべている】
【声色もいつもと変わらない、なのに、額に突き付けられている銃口の冷たさだけが、余りにも男にとっては信じられぬ非現実だった】
【ばくばくと心臓が忙しなく跳ねている、行為に及ぶ時だって、こんなに冷や汗を掻きはしない】
・・・・・・
「ひとつ、裏のあるお金は受け取らない主義なんだ……あなたがこれまで支払って来てくれた報酬金、会社から横領して手に入れたもの、らしいね?」
【シェディはゆっくりと口を開いた、それは、聞き分けの悪い子供に説教をしているかのように淡々とした】
【いつも通り、の、筈なのに、とことんまでに感情というものを廃した、薄気味の悪い口調だ】
『な、ん……ッ!そんなコト……ッ、誰が……!?』
「うん、正直、真偽はどうでも良いんだ、だからもうひとつ」
【状況が変わらない、ちょっとやそっとのプレイではVIPルームの分厚い壁が外に物音を響かせることも無い、スタッフが駆け込んで来ることも、他の娼婦がやって来ることも無い】
【彼女と二人きりにしてくれるよう、取り計らってくれと頼んだのは自分だ】
【慌てて内線電話に手を伸ばそうとする────────────動かない、圧し掛かったシェディの両脚が彼の腕を拘束している】
・・・
「あなたが殺せと命じた、彼────────────三日前にボクに会いに来ているんだ」
【ゆっくりと、ゆっくりと、耳元に唇を寄せて、囁く様なトーンで告げられたその事実は】
・・・・・・・・・
【薄気味の悪い納得感と共にぞっと胃の腑に落ちた】 - 192シェディ◆PPyRfvMZl625/05/05(月) 15:11:34
(6/6)
「……今までありがとう、おじさま、あなたがくれたネックレスは、タンスの奥にちゃんとしまってあるよ」
『し、シェディ、待ッ……!!』
【タン、タン、……タン、渇いた発砲音は、3度響く】
【藻掻いていた男の手足が、二度、三度、僅かに跳ねて、ばたりと止まり────────────白い布地はじわじわと広がる赤色に染まって往く】
【額に空いた3つの風穴を撫でて、それから男の首元へと指を当てた、脈が完全に停止する最後の瞬間まで、拘束を緩めることは無く】
【それからようやく、ベッド横のテーブルに置かれた内線電話へと手を伸ばした】
「……もしもし、……うん、終わったよ、うん、……じゃあ、シャワーを浴びるから、掃除はよろしく」
・・・・・・・
【娼艦のスタッフに簡単な連絡をして、ゆっくりと床へと足を降ろした、彼女の仕事は終わって、後はスタッフ達による後始末と掃除が待っている】
【VIPルームは次の客を招くための支度を進める、部屋に備え付けられたシャワールームの扉を開けば、入れ替わりに部屋に入って来る清掃スタッフ達のハキハキとしたやり取りが微かながらに聞こえて来た】
【肌に付着した返り血を洗い落とす、石鹸で擦り、匂いの残らぬ様丁寧に】
【シェディ・キッスの今日の仕事は、そうして終わりを迎えた、いつも通りに】
【他の娼婦よりも一足先に従業員宿舎へと向かう道すがら、渡り廊下から垣間見える空をふと仰ぎ見た、起きた時にまだ覗き見ることの出来た夕陽も山々の稜線に沈んでいる、世界が丸く広いことはその光景こそが事実として教えてくれる】
【彼の死によって、彼の務める企業が対クロノス強硬路線に舵を切ろうと、世界が何処でどう動こうとも、彼女の日常に変わりは無い、血と硝煙と性の香りに包まれた楽しくも退屈な日常だ】
「────────────明日はお客さん、取れるかな?」
【くす、と小さく笑んで、戦闘娼婦は静かな帰路を歩んだ】 - 193“スカーフェイス”◆OXAm1h6odk25/05/05(月) 15:12:55
- 194シェディ◆PPyRfvMZl625/05/05(月) 15:14:07
- 195ベレト◆OXAm1h6odk25/05/05(月) 15:30:03
(※スレ立てお疲れ様ですー!)
「フッ、それは良かった………………………オレとしては、君に飲ませるのは正直“嫌”だったのだが。
あぁ、君に対してではない。オレ自身の不甲斐なさに対してだ」
そう口にしてから、自らもワインに口に含んで。
それから、年相応の感傷を僅かに覗かせた。
「あの北方戦線で、“未来の子供たちの為に”とオレは仲間と誓い合った。その結果がコレだ。結局は君のような若者に辛い役割を強いてしまった………」
・・・・・・・・
厳然たる事実があった。インベイドは強い。個人の力が突出しても、インベイドを駆逐するのは到底不可能であった─────技術。戦略。そして団結。必要なのは集団としての力だ。
多くのインベイドを屠った。だからこそ、分かる事がある。
“戦争”という鋼鉄と流血の嵐は、如何に優れていたとしても、一人“だけ”の力では変えられない。
だからこそ、あの未熟だった若者がより多くの誰かと手を繋げるのなら。
其方の方が、きっと良いだろう。
──────“ベレト”は、机に置かれていた拳銃を目の前の青年に投げ渡した。
実弾が込められている。安全装置も解除済みだ。
・・・・・
「オレを撃て。そうすれば死刑は免れる」
狡猾な大人だ。酒精によって判断能力を失わせようとしていた。
- 196シグレ◆KPwoT407kA25/05/05(月) 15:35:21
バントって打法は知ってるかしら?
【発想の源は西洋剣術でも古武術でもなく、身近なスポーツ…グリップとヘッドを持ってボールへと振らずに当てるアレだ】
これ、ようは形をビームサーベルっぽく整えた鉄パイプとかバットみたいなもんでしょ?だったらどこ持とうと私の勝手だと思わない?
【手持ちの情報を適当に繋ぎ合わせて意図せず有効手を手繰り寄せられる機転に、察しの良さや要領の良さ…それこそがシグレをシグレたらしめるものである】
【考えが早いからこそ、人を置き去りにする。そして本人は他者の頭の遅さに苛立ち、侮蔑を抱く…そんな事が幾度となく繰り返されてきた。】
【気の短さは異様な切り替えの速さの現れでもあり、シグレの長所はシグレ本人を孤独たらしめるものなのだ。だからこそ──────────】
だったら最初からそう言ってくれればいいじゃない。ほんっとどいつもこいつも回りくどいわね…!
【ようやく“穴を開けられた”。抱きついて決壊した少女に、シグレはそういう表情をした】
最期って決めたのは誰?そのサヤギリってやつ?じゃあ私いまそいつのこともっっっっっっのすごーく嫌いになったわ。アンタをそんくらい追い詰めてる元凶って事でしょ?
私はね、今日はアンタたちの手伝いの為にやってきたの。こき使ってやるって一言をどうしてそんなに勿体ぶるのか私には理解できないわ
【あの殺気立った雰囲気を感じ取った瞬間から、シグレの目的は一貫していた】
道連れの代価はー…そうね、そいつの顔面一発でどうかしら?
- 197ポリト◆XGxCas/OAU25/05/05(月) 15:42:33
- 198旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/05(月) 15:55:03
上機嫌に、年若い美しい女性が情報端末を手慣れた動きで操作した。
““陸上戦艦””は堂々と作戦行動を開始しようとしていた。本格的なクロノスへの侵攻と攻撃には弾薬が必要不可欠であり、そして“グランセン解放戦線”の情報網はその水面下の動きを容易に察知可能だ。
──────例えば、中堅の弾薬製造企業。
その代表取締役は極東の生まれだが、妻は旧グランセン人だった。
老いた獣が掻き集めようとする弾薬の中には、そのような伝手を通じて非グランセン系列企業の商品として偽装を施された、“グランセン解放戦線”の罠も混じっている。
「獣というのは、走る前に餌を求めるものですわ。十全な運動にエネルギーは必要不可欠ですもの」
・・・・・ ・・・・・ ・・
「──────だからこそ、重要な運動の前には餌に毒餌が混じっているか深く調べない。クロノスが準備を整える前に粉砕しようとしているのね?」
とは言え、航空打撃群は厄介だ。都市への攻撃能力は並みのバディフレームを上回るだろう。
例え、人自連の他企業から奇襲を受けたとしても。その次には航路を転換してその本社に地下貫通爆弾を高空から一斉に叩き込めば良い。それだけの速度と火力を有している。
実に準備が良いものだ。真っ当な、生産施設と本拠地を明らかにしている企業であればあるほど、航空打撃群という牽制の札が強く刺さる。
「〈ガサル・ドゥーラ〉を二機出しなさい。えぇ、穏健派の企業が攻撃を行う場合にのみ全滅させますわ」
“グランセン解放戦線”は、人自連に所属していないテロリスト組織だ。情報戦に優れた構成員の存在もあり、少なくとも老いた獣には嗅ぎ付けられない。
『旧愛卿』は笑った。
「さて、今日も農作業をしなくっちゃ!」 - 199“スカーフェイス”◆OXAm1h6odk25/05/05(月) 15:59:59
- 200ポリト◆XGxCas/OAU25/05/05(月) 16:21:20
「へぇ…ってぇええええ!?」
【言語かどうかさえ怪しい声を発しながら、勢いよく後退りをする。】
(どっどっどどどどどどうしよう!主…この人が『スカーフェイス』!?さっき生意気な事言っちゃったよ!!このままじゃあ…)
【…上記の事を考えている間、ポリトは後進した先の壁に身を預けていた。自力で立ち続けるほどの気力は残っていなかったらしい。】
(…まて、『商品は』と言ったような…?普通に売ってくれるのか…じゃあ…!!)
【脚に力を入れ、完全に自力で立つ。】
「…他の場所では探したけど、見つからなかった物がある。ここは『なんでも売っている』と聞いた…対価ならある。」
【ローブの端から、少し厚い札束をはみ出させる。】