ボン土産【トレウマSS・オリ注意】

  • 1二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 00:15:50

    ブルボンが帰ってくること聞いたのは3月の下旬、URAファイナルズでブルボンが優勝した後のことだった。いつもの定期連絡かと思ったが、だいぶ急な話だったので少し驚いたのを覚えている。

    『4月9日土曜日にマスターと一緒に帰省します。お土産は特選にんじんパンです。到着予定時刻は12時30分、当日出発前にまた連絡します』

    ブルボンらしいシンプルなメールだった。以前の通話で話した特選にんじんパンも持ってきてくれるらしい。
    だが一番気になるのは娘からマスターと呼ばれているトレーナーのことだ。
    娘が送ってくれる写真やテレビ通話で面識はあるが直接会ったことはなく、今回の帰省が初めての対面になる。
    娘を育ててくれた恩人であり、元トレーナーの自分にとってはある意味後輩にあたる彼とは一度話がしてみたいと思っていたが、ついにその日がやってきたという訳だ。

  • 2二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 00:17:24

    娘が帰ってくる当日、待っている間なんとなく玄関の外でウロウロしてしまっていた。

    「……トレーナーくんは道が分からなくなったりしないだろうか」
    「ブルボンも一緒なんだから、大丈夫よ」

    こんなに気持ちが落ち着かないのは娘がトレセンに行った日以来だろうか。そんな私とは対照的に、妻はなんだか楽しそうに家事をしていた。
    そうこうしてるうちに、遠くから二人の人影がこちらへ歩いてくるのが見えた。

    「ただいま帰りました、お父さん。こちら、マスターです」
    「は、はじめまして!」

    相変わらず表情の変わらない娘が、緊張を隠せていない男を連れて帰ってきた。彼がマスターくん、つまりブルボンのトレーナーだろう。彼の緊張具合を見て、失礼だが少し安心してしまった。

    「おかえり、ブルボン。そしてはじめまして、トレーナーさん」
    「こちら、お土産の特選にんじんパンです」
    「おぉ⋯⋯これが噂の⋯⋯」

    ブルボンからお土産を受け取る。特選にんじんパンについては、パンそのものよりも『娘が話題に出したもの』ということで気になっていた。巾着袋のような包装の中に、ビニールに入ったにんじん色のパンが見える。後で食べることにしよう。

  • 3二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 00:19:05

    ブルボン達を居間にあげて、お茶の準備をするために厨房へ向かう。二人とも居間の棚に飾っているブルボンの思い出の品々を見ているようだ。

    ───この日本ダービーの当日チケットは?
    ───データログに該当なし。以前はありませんでした。

    二人の声を聞きながら、そういえばブルボンに初めてダービーを見せてあげた時のチケットが出したままなのを思い出した。親バカではあるが、話の種になるだろう……。

    ───⏱️───

    「……そうだったんですね、これがブルボンの憧れの……」
    「ご存知でしょうが、あれがしたいこれがしたいと言うようなタイプではないので───」

    「───そこから二人でトレーニングを始めたんです」
    「……お話は伺っております。その積み重ねが、どれだけブルボンの支えになってくれたことか……!」
    「いえいえ、私は大したことは何も。それよりも……あなたです。あなたにはずっと礼が言いたかった」

    「この子にとっての『レース』を、三冠達成をなし得る以上のものにしてくれた……娘を育ててくれて、ありがとうございます。トレーナーさん」

  • 4二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 00:20:25

    それからブルボンのこと、マスターくんのこと、私達家族のことなどいろんなことを話し込んだ。
    途中、お土産の特選にんじんパンを食べた。特選というだけある、フワフワと柔らかいパンににんじんの甘みが丁度よく合わさった逸品だった。学園の生徒ならいくらでも食べてしまえるのだろう、そんな風に思えた。

    ───⏱️───

    まだまだ話したいことはあったが、いつの間にか帰りの時間がやってきてしまった。

    「せっかくだし、このまま泊まっていっても良かったのにねぇ」

    妻の言葉に対して、助けを求めるように私に目を向けるマスターくんと、隣のブルボンが無表情ながらマスターくんに何かを訴えるような目をしていたのが印象的だった。

    「いえいえ!明日からまたトレーニングがありますし⋯⋯それに、まだまだ一緒にレースで走っていきたいので」

    そう言うマスターくんは困ったような、そして何かを決意するような顔をしていた。私の現役時代に見た、担当ウマ娘と共に学園を去っていった、何人もの同業者と同じ表情だった。

  • 5二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 00:22:07

    ブルボンたちの背が見えなくなるまで家から見送った。次に会えるのがいつになるかは、まだ分からない。

    「次にあの子たちと会う時は私達、おじいちゃんとおばあちゃんになってたりして」

    妻の気ぶる気持ちも分かるが、それよりも私はやりたいことがあった。

    「……いいや、今度は私らが会いに行くんだ。ブルボン達の走るレース場にね」

    レース場へ行くのは何年ぶりだろうか。お土産は何を持っていこうか。そんな事を考えながら、特選にんじんパンの入っていた巾着袋を丁寧に棚へ飾った。

    娘とマスターくんに喜んでもらえるように、今から考えるのが楽しくて仕方がなかった。

  • 6二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 00:23:29

    おしまい
    パパボン視点の絵が見たかった

    お目汚し、失礼しました

  • 7二次元好きの匿名さん25/05/04(日) 07:58:47

    お疲れ様です

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