タイシンおねショタ概念SS(+ウマ娘おねショタ概念スレ)

  • 1◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:18:10

    注意事項


    本作品は本編約10000文字(想定12レス分)+エピローグ約3600文字から成っています。直に書き込んいきますが、エピローグ部分はおねショタ分が薄いのもあってその部分だけは外部サイトを使っています。おねショタなのにショタ成長後エピ有りって人選びそうだし


    (件のエピローグ)

    タイシンとおねショタ(エピローグ約3600文字) | Writeningあれから何年経ったのだろう。俺もすっかり『ボク』が似合わない歳になった。……そう大人ぶった言い方するあたり、アンタにはまだまだ『ボク』がお似合いだ。未だにお姉ちゃんからにはそう揶揄われるけど。 中…writening.net

    『タイトレと出会わない世界線』か『単に出会う前なだけ』かは特に明確に決めてるわけでもないのでそこら辺ふわっといい感じに解釈していただけるとありがたいです


    個人的な趣味もあって年齢想定はショタは小学校低〜中学年、タイシンは中等部1〜2年くらいです。そこら辺ふわっと(以下略)


    ここまでで分かる通り人によっては地雷な内容だと思うので、そういう方はブラバして下さい。あと「この後脳を破壊されてトレーナーになったんだよね……」的なレスもお止めください。


    また万が一荒らしが湧いたとして、それに触れたり煽ったり誹謗するようなレスは絶対に止めてください。原則そういったレスは荒らしごと削除します。


    荒らしに見えるようなレスが放置されていたらそれは単に管理が追いついていないか、その時席を離れているか、あなたと私との許容範囲にズレがあるかのどれかです。なかなか管理されないからとそのようなレスに反応するのは止めてください


    レス削除の権限はあくまでスレ主にあり、その基準はどこまでいってもスレ主の感覚です。万が一貴方のレスが管理された時はそういうものと思って流して頂けると助かります。


    長々と書きましたが既に(合わないなこのスレ)となった方は迷わずブラバして下さい。なお、本編投下後はウマ娘ちゃんおねショタ概念スレとしてあにまん及びウマ娘の規約の範囲内で自由にお使いください。どうでも良い補足ですが本編について感想をいただけたらスレ主は非常に嬉しいので気が向いたら本編も読んでください。


    それでは本編投下していきます。

  • 2◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:18:40

    お家には帰りたくない。お母さんは出かけて帰ってこないし、お父さんはお酒ばかり飲んでいつも不機嫌だから。学校にも行きたくない。みんな、ぼくをいじめてくるから。だから、いつも学校が終わればすぐに飛び出して、この公園で遅くまで独りきり。何かをする元気もないから、ぼーっとベンチに座っている。

    「ちょっと、隣いい?」

    お姉ちゃんと出会ったのも、そんないつもの放課後だった。

    突然声をかけられてビックリした。今までそんな事はなかったし、誰かを見かけることもなかったし。それで焦ってあたふたしながら、どうにか『いいですよ』みたいな事を言うと、お姉さんがベンチの端っこの方に座った。

  • 3◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:18:55

    座ってからは静かだった。お姉さんは隣に、ちょっと離れた隣に座っているだけで話しかけてこない。バレないように隣を少しだけ見てみる。汗をかいていて、息もちょっと荒いから走っていたのかな?

    ……そんな荒い呼吸を聞いていると何故か胸が締め付けられるような感じがする。呼吸だけじゃない。とってもキレイな……ウマ娘のお姉さんだったから。それにしても誰なんだろう。こんなお姉さん、上級生にいたっけ?

    「アンタさ」

    ペットボトルのフタを開ける音がして、気になってまた隣を見る。飲み物を軽く飲んだお姉さんが、目を合わせることもなく聞いてきた。

    「ロードワークで通ると、いっつもここにいるけど……」

    『ろーどわーく』?確か、道路って英語でロードって言うけど……ワークシート……道路の勉強?

    「言っても分かんないか。あー、うん。ようはレースの練習のこと」

    レースの練習。っていう事は、このお姉さんはトレセン学園の人だったんだ。

    「とにかく。いっつもいるけど、大丈夫なの?アンタ。お父さんとお母さんが心配したりとか……」

    その言葉にまた胸が締め付けられる。今度はお姉さんが綺麗だからじゃない。お家の事は誰にも知られたくないから。何も答えられず俯いてると、お姉さんの方から困っているような空気が伝わってきた。

    「……まあ、そういうもんだよね」

    ちょっとすると困り終えたようで、今度は何か決心したみたいに、こう言った。

    「息整うまで休んでるけど、構わない?」

    ボクにはお姉さんの息がもう整っているように見えた。

  • 4◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:19:15

    その日、お姉さんは何もせずにただ隣で座っていた。……座っていてくれた。何か話しかけてくるとか、元気付けようとしてくれるとか、そういうのはなかった。けど、それがボクにはとても嬉しかった。

    誰かと話すのは苦手。話しかけられるのも苦手。それでも、隣に誰かがいてくれると心強いというか、安心するから。

    その日からお姉ちゃんは毎日……とまではいかないけど、よく隣に座って、ただそこに居てくれた。ほんの10分とか20分くらいだけど、そんな時間が1日の何よりも好きだった。そのほんのちょっぴりの時間だけは気持ちが楽で、幸せとか嬉しいとか、そんな気持ちを思い出せた。

    けど、そんな日が続いているうちにちょっとだけ慣れたというか……どっちが先に話し始めたかは分からないけど、お姉さんと話すようにもなった。

    「ここ、神社の割に誰も来ないんだ」
    「うん、お母さんが居た時は違ったみたいなんだけどね……」

    公園の隣にある神社……というよりは、神社の中に公園があるのかな?階段のせいか、ここで遊ぶ人はいなくて、一人になりたいボクにとってはちょうど良い場所だった。

    お母さんが居た時はまだそんなことなくて、お父さんとも一緒にみんなでお祭りに来たこともある。始めて逃げ出した日にここに来たのは、たぶん楽しい思い出がいっぱい詰まっているところだったから。ここに来れば辛いことがなくなって、みんな元通りになるんじゃないかなって。

    だから久しぶりにここに来て悲しくなった。記憶の中では沢山の人が居たのに、誰もいなかったから。白い着物?姿の、ボクの頭を撫でて「強い子になれ」って笑っていたおじいちゃんもいなかったから。

    初めのうちは、思い出と反対な寂しい光景に胸が苦しくなって、泣いたりもした。けど、そんな悲しい場所以外に頼れるところもなくて、結局いつもここに来ていた。……気づいた時には泣くこともなくなってた。きっと、ここはもう温かい場所じゃないと分かったから。それで悲しい場所になっちゃったとも思わなくなったから、涙も出なくなったのかな?

    「なんて顔してんのさ」

    だから、今こんな顔をしているのは悲しいからだけど悲しいことじゃないんだと思う。ここをまた楽しい場所って思えるようになって、そのせいで悲しいって思い出しちゃったって事だから。

    頭をポンポンとしてくれるお姉ちゃんの手は、とても温かった……。

  • 5◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:19:41

    「眠そうにしてどうしたの?」

    今日のお姉ちゃんは、レースの練習は休みみたい。走ってきたわけじゃないからか、何度もあくびをしたり目を擦ったり。……お姉ちゃんにこう思うのっておかしいんだろうけど、可愛なって。いつもはもっと大人っぽいとか、カッコいいとか。そんな姿ばかり見ていたから、とても驚いた。

    「チケットが……あー、うん。面倒いから友達でいいや……が、うるさくってさ。昼寝が……」

    そう言ってお姉ちゃんが、とびきり大きなあくびをした。

    「ごめん、ちょっと寝る……」

    言い終わるのと同じくらいに、お姉ちゃんがゆっくりと倒れて——ボクの肩に頭をのせ眠ってしまった!

    『ちょっとお姉ちゃん!?』そんな言葉が出かかったけど、何とか我慢する。起こしちゃったら悪いし……お姉ちゃんはそんなことしないと思うけど、お父さんを間違って起こしちゃった時は酷いことをされたから。

    耳元ですぅ、すぅ、ってお姉ちゃんが息をしている。動いて起こしちゃったり、お姉ちゃんが落ちちゃったりしないよう気をつけてちらりと見ると、お姉ちゃんの寝顔がとても近いところにあった。

    肩にのるお姉ちゃんの頭はちょっと重い。けど同じ『重い』でも、みんなからランドセルを押し付けられた時みたいな『重い』じゃなくて、嫌な感じがしない。

    お姉ちゃんとくっついているところがじんわりと温かい。なんだかいい匂いもする。気持ちよさそうに眠るお姉ちゃんを見てたら、このまま一緒に寝ちゃおうかな?そう思った。

    けど、眠れない。不思議だった。お姉ちゃんの隣はとても落ち着くし、お姉ちゃんが一緒に居てくれると安心する。なのに眠れないんだもん。

    よく分からないけど、胸が痛い。ドキドキして、心臓が飛び出しそう。お姉ちゃんといる時感じる、いつものホッとするような温かさじゃない。顔の辺りがかーっと熱くなって、どうしようもなかった。お姉ちゃんが優しい寝顔をしている間中、そんなよく分からない気持ちにボクはなっていて、結局眠れなかった。

    今日は、お姉ちゃんにちゃんとさようならを言えなかった。なにか言葉になってない言葉を早口に言って、いつも学校から逃げ出す時みたいに帰ってしまった。お姉ちゃんは起きたばかりだから、あまり気にしてなかったけど、明日からちゃんとお姉ちゃんといつもみたいに仲良くできるかな?

  • 6◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:20:04

    ボクの心配の通りだった。お姉ちゃんから逃げ出した日から、お姉ちゃんを前にすると胸が痛くて痛くて辛かった。上手く仲良くできなくなった。

    上手に話しかけられない。話しかけられてもアワアワしちゃって、上手く答えられない。そんな恥ずかしい所を見られるたびに、お姉ちゃんの方を見れなくなる。

    苦しい。けど、嫌じゃない。そんな変な感じ。お姉ちゃんと会うのが辛いのに、会いたい。上手く話ができなくたっていいから、話したい。そんな気持ちになる。でも、同時に恥ずかしいところを見られたくない……かっこいいと思って欲しい。

    そんな毎日が続いたある日。

    「たまにはさ、場所変えない?」

    急にお姉ちゃんがそう言って、指を指した。そこにあったのはひっくり返ったお椀みたいな、中に入れる遊具。雨の日のボクの避難場所。中は地面が無いから座れると思う。ちょっと汚いけど、寝っ転がったりも出来るハズ。

    ハズだけど、雨も降ってないのに入る必要あるかな?ベンチでいいんじゃないかなと思うけど、断る理由もないし、一緒に中へ入ることにした。

    道路から遠くて人もボクとお姉ちゃんしかいない公園だから、元々音はあまり聞こえない。だけど、お椀の中に入ると、余計に静かな感じがした。

    天井?は高くて立っていられるけど、横はちょっと狭い。入口は一つしかないから当たり前だけど薄暗い。けど落ち着く。そんな事を考えている時だった。……急に抱きしめられたのは。

    「……っ!お姉ちゃん!?」

    なんで?どうして、いきなり?って驚いた。けれど、隣でお姉ちゃんが眠ったあの日より、その日から今日までのどんな時よりドキドキしてるのは、驚いたからだけじゃないと思う。

    「驚かせてごめん。だけどさ、最近のアンタは見てらんなかったから……つい」

    そう言うと、お姉ちゃんの抱きしめる力が強くなった。……最初は驚いたけど、お姉ちゃんがなにも言わずギュッとしてくれていると、段々落ち着いてくるから不思議だ。

    静かな世界。二人きりの時間。力強いけど優しい、お姉ちゃんの腕の感触。背中に伝わる温かさ。胸のドキドキは完全には静かにならないけど、少し落ち着いた。お姉ちゃんがまた話始めた。

  • 7◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:20:28

    「アンタが色々大変だってのはなんとなく分かるし、わざわざ聞く気はない。それが辛いことだってのは、アタシにも分かるから」

    言いながら、ちょっとだけ力が緩んだと思うと、向きを変えられた。つまり、その……お姉ちゃんの胸に顔があたるような体勢に。

    「だからさ、アタシがして欲しかった……いや、素直になれなくて突っぱねてたことを勝手にしてる」

    誰かに抱きしめられて、優しく頭を撫でられるなんて久しぶりだった。こんな風にされるのは……お母さんみたいに撫でられるのはいつ以来だろう。お母さんが何処かに行っちゃった時以来かな。

    「ここならアタシしか見てないから甘えたって、泣いたって構わない。恥ずかしくなんかないからさ、いつまでも付き合ってあげる」

    その言葉が嬉しかった。弱いとかカッコ悪いと思われてもいい。このまま泣こうかなと思った。

    「ありがとう。お姉ちゃん。けど、違うんだ」

  • 8◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:20:53

    今ボクの胸が苦しいのは辛いからじゃない。どうしてこんな気持ちになったのか、これがどういう気持ちなのか、ようやく分かった。

    「違う?」お姉ちゃんがちょっと驚いたような声を上げて、抱きしめる力が弱まった。顔を上に向けて、目を見る。恥ずかしくてそらしたいのを我慢して、勇気を出すために一呼吸。

    「最近ずっと苦しかったのは、お姉ちゃんを大好きになっちゃったから、なんだと……思う」

    話すたびせっかく貯めた勇気が萎んでいった。声は弱っちくて小さくなって、それでも最後まで目だけは見つめて……。そのおかげかお姉ちゃんには伝わったみたい。

    お姉ちゃんが困ったように、どこか恥ずかしがってるみたいに話そうとしては止めてを繰り返している。ちょっとの間そうしてたと思うと、

    「わぷっ!?」

    また思いっきり抱きしめられて、変な声がでちゃった。さっきまでよりも強くて、乱暴でちょっとだけ痛い。

    「違うんなら違うって早く言え、バカ。恥ずかしいこと言わせて」

    怒ったような口調。けど、本当に怒っていて、こんなに乱暴にされてるわけじゃないのは分かる。なんとなくだけど。お父さんとかクラスの子からそうされる時と、全然違うから。

    「……バカ」

    じゃあなんで乱暴になったのかは、自信がない。ないけど、だったらいいなって理由はあった。

  • 9◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:21:18

    告白、って言っていいとは思うんだけど、なんとなく自信を待てない……というか、言いたくない。もっとこう、バッチリ決めて、お姉ちゃんにカッコいいって言ってもらえる。そんな感じにできなかったし。

    そんななんとも言えない日から、またボク達の関係は変わった。悪くなった、わけじゃない。良くなった……というのもちょっと違う気がする。でも変わってないってわけでもない……なんか、そういう感じに。

    あの日からちょっとの間は、ボクもお姉ちゃんもぎこちなくなった。お姉ちゃんは初めて会った時みたいにベンチの端っこに座るようになっちゃったし、ボクはボクでもう片方の端っこに座るようになっちゃった。

    目を見ることなんてとてもできない。恥ずかしくてずっと地面ばかり見ていた……でも、お姉ちゃんの顔を見たくてチラチラ目だけを向けてみたり。だから本当にそうかは分からないけど、お姉ちゃんも同じように下を向いてたと思う。

    そういう空気が耐えられなくて勇気を振り絞って話しかけると、不思議といつもお姉ちゃんと被って結局話せない。そんな風に何日か過ぎたある日、またあのお椀の中に行こうって誘われた。

    『アンタに甘えられる相手が居た方がいいってのは変わらないし』

    そう言って、また抱きしめてくれたお姉ちゃんに『そんな事ない!もうへっちゃらだ』って返せたらよかった……のだけど、できなかった。

    大好きなお姉ちゃんに甘えられる。抱きしめてもらえる。お……おっぱいに触れられるからとかそんなフジュンな理由じゃない。それは神様にもお日さまにも胸を張って言える。勿論お姉ちゃんにも。

    ただ……お姉ちゃんと出会ってまた毎日が楽しいって思えるようになった。一日にほんの少しの間、隣にお姉ちゃんが居てくれると思うだけで、話せたりすると思うだけで心が楽になった。それでも……カッコ悪いことだけど、やっぱりまだちょっとだけ毎日が苦しかったから、甘えてしまった。

    それからは、ベンチで過ごす日よりお椀の中で過ごす日の方が多くなった。抱きしめて貰って、撫でてて貰って、褒めて貰って。『大丈夫』『今日も頑張った』そう言われたのっていつ以来だろう。

    ボクより少しだけ大きな手のひらを重ねられながらぼーっとしたり、お話ししたりするだけの日もあったし、気持ち良くて、嬉しくて、安心して……抱きしめられながら眠っちゃった日もあった。

  • 10◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:21:43

    辛いけど穏やか。そんなヘンテコな日が続いていた。その間ずっと、心のどこかで考えていた。『本当にこのままでいいのかな』って。

    ボクはお姉ちゃんに沢山のものを貰っている。それと関係なく、お姉ちゃんは大好きな人。それなのに、ボクはお姉ちゃんに何かしてあげたことがあったかな?してあげられることは無いのかな?

    「……ん」

    お姉ちゃんが手を広げて、その中にボクが入る。そしていつものようにお姉ちゃんの温かさに包まれる。……悩むだけで、答えも出せない。それなのに結局甘えてしまう自分が情けないな。

    そんな事を考えていると、変な感じがした。何かおかしい、何か違う。だけど、気づかないといけない気がする。そんな感じが。

    「お姉ちゃん、もしかして今日何かあった?」

    どうしてそう思ったのか、そんなことを聞いたのかは、自分でしたことなのによくわからかった。けど、そう言ってからやっと気づいたら。

    お姉ちゃんの手がほんの少しだけ震えていた。

    「……アンタが気にすることじゃないよ」

    普段のお姉ちゃんからは考えられない冷たい声。初めて聞いたけど、ボクはこの声を知っている。お姉ちゃんと出会う前の自分の声。助けて欲しいのに、助けてって言えない。そういう声だ。そうだ。お姉ちゃんがこうしてくれているのは、これが「お姉ちゃんのして欲しかったこと」だからだ。

    お姉ちゃんはボクとまったく違うと思っていた。強くて、優しくて、カッコよくて、大人で、誰かに助けて貰ったり甘えたりしなくてもへっちゃらな凄い人って。けど違うんだ。……いや、優しくてカッコいいのは変わらないんだけど。とにかく違う。お姉ちゃんとボクは同じだった。ただ、お姉ちゃんは一人で戦っているだけで。

    ……ようやく、ボクがお姉ちゃんにしてあげられることが分かった。しなくちゃいけない事がわかった。お姉ちゃんがいつもそうしてくれるように、ギュッとお姉ちゃんを抱きしめる。 

    「アンタ……」

    甘えてばかりで、頼りないボクだから、お姉ちゃんのようにはできない。それでも、億兆万分の一でいい。お姉ちゃんのマネができれば……。

  • 11◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:22:07

    たぶん、お姉ちゃんはボクと同じような目に遭ってる。遭っていた、かもしれない。細かいことはいい。本当はどうなのかもどうでもいい。だって、お姉ちゃんはボクのことをあれこれ聞いたりしないでいてくれてるから。

    ただ、ただ抱きしめる。それで伝えるんだ。一人じゃない。ボクが一緒にいる。大丈夫。怖くない。そんな色々なことを

    「……生意気だっての」

    お姉ちゃんが少しだけ笑った。生意気、か……いけないことしちゃったかな?余計なこと、しちゃったかな……?

    「これじゃ、甘えてるだけにしか見えないし」

    そう言われてはっとした。お姉ちゃんがしてくれたことをしたからって、お姉ちゃんになれるわけじゃない。抱きしめてくれてるお姉ちゃんに甘えて、抱きついているようにしか見えないんだ。……牛乳、もっと飲まなきゃ。

    しなくちゃいけないことが分かった。してあげたいことが分かった。してあげられることが分かった。なのに、ボクにはまだそれができない。それをできるような立派な大人の男の子じゃないから。……こんなに自分が情けないと思ったことはない。

    そんなことを考えてると、ちょっとだけ苦しくなった。

    「……お姉ちゃん?」

    お姉ちゃんがボクを抱きしめる力が強まったんだ。いつも力強くギュッとしてくれる。だけれど、お姉ちゃんはいつだって、ボクが苦しくならないよう加減してくれていた。こんな事は初めてだった。

    「……ありがと」

    それはたぶん聞かれたくなかったんだと思う。小さくて、聞き取りにくい声。だから、しっかりと聞こえていたけど、とてもとても嬉しくて踊り出したいくらいだったけど、聞こえなかったふりをした。

    顔が熱く……たぶん赤くもなっているのとか、心臓のドキドキとかまでは抑えられなかったけど、それは仕方ない……って許してくれたらいいなあ。

    応えるようにボクも抱きしめる腕に力を込めた。ずっと全力だったから気持ちだけだけど。それで、二人して太陽が沈むまでずっとそうしていた。

    お姉ちゃんの手の震えは、いつの間にか止まっていたと思う。

  • 12◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:22:36

    「——んじゃ、じゃんけん」

    そんなお姉ちゃんの提案に提案にのってじゃんけんをする。……負けた。どうしてボクはあの瞬間、考え直さなかったんだろう。グーを出せばよかった。

    足を伸ばすと、そこにお姉ちゃんが頭をのせる。ちょっとだけ重いけど、嫌じゃない。……痺れたり疲れたりするのはともかく。

    一緒に抱きしめ合った日から、ボクとお姉ちゃんの関係はまた変わった。キノオケナイ……置ける、だっけ?ともかく、そんな関係に。

    一方的に甘えるでも、甘やかされるでもない。ただなんとなくそうしたいからお話をして手を繋いで、肩とか膝を枕にして、見つめ合って、抱きしめて、抱きしめられて、お休みの日はお昼寝とかお出かけなんかもして。どっちかにか、どっちにもかに辛いことがあった日はまた別だけど。

    ……そう言えばこれって、恋人とか付き合ってるとかって言っていいのかな?

    もし言っていいなら、嬉しい。けど、どうせならもう少しカッコよくて大人っぽく……せめて、お姉ちゃんよりも大きくなってからこう、凄く凄いいい感じに告白してから……なんて贅沢を言いっちゃいたくなる。

    心のどこかで(こんなこと考えてるからいつまで経ってもカッコよくなれないんじゃ?)と思いながら読みかけの本を広げる。

    正直な話、お姉ちゃんの前で見栄を張るために買ったものだから何書いてあるのかビックリするくらいよく分からない。片手で持って、眠くなった顔を隠してみたりしてるけど、百円ちょっとの値札シールのせいで全部台無しな気がする。それでも、ちょっとでも良いところを見せたくて分かっているテイで読み進める。

    「そういやアンタってさ」

    お姉ちゃんが話しかけてきた。

    「キスって、したことあんの?」

  • 13◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:22:59

    考えていたことも、最初から入ってきていない本の内容も全て吹っ飛んだ。お姉ちゃんが寝転がっていなかったら思いっきり立ち上がって、お椀の天井に頭をぶつけてたと思う。全力で冷静なフリをする。

    「な、何言ってるの?いや、まあ……うん、ないけど」

    冷静なフリが出来ているのかもよく分からない。こういう時こそ本で顔を隠せばいいのだろうけど、今それをやるとロコツ過ぎる気がする。お姉ちゃんがなんでそんなことを聞くのかも分からない。キス?チューのことでしょ?もしかしたら赤ん坊の時お母さんにしてもらったことくらいあるかもだけど、そういうことじゃ無いだろうし。そういう事したいって思える相手なんて……

    てんやわんやしているのを誤魔化すためにはそらしちゃいけない。だけど、思わず目をそらしてしまった。

    「なら、してあげよっか?」
    「……………………へっ?」

    間の抜けた声が出た。する?しちゃう?してくれる?できちゃう?お姉ちゃんと?

    顔の赤らみはきっとこれ以上ないくらいだと思う。全身が暑くて、いっそ服を脱ぎたいくらいだった。雪山で遭難した人の気持ちが、分かった気がする。

  • 14◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:23:22

    メタンハイドレートだっけ。氷なのに燃えるってやつ。今のボクはまさしくそんな感じだ。火が出そうなくらい恥ずかしいのに、身体は氷みたいにカチコチ。声なんて出しようもなかった。

    そんなボクをお姉ちゃんはじっと見上げている。目をそらしちゃったけど、それは横目に見てわかった。お姉ちゃんは何も言わない。きっと、ボクが何か答えるのを待っているんだ。何か言わないことには時間が進まないんだ。

    したいか、したくないか。そんなの決まっている。『したい』だ。だからそう答えればいい。恥ずかしいなら首を縦に振るだけでいい。それでいいのだけど……

    「…………………しない。格好、つかないし」

    結局絞り出した答えはこれだった。ボクだって男だ。そういうのはイマドキ古いっていうけど、そんなのは知らない。お姉ちゃんから見ればどうしようもない子供だけど、そんなのにだってプライドとか意地とかいうものはある。だからこういうことは自分から…….は無理かもしれないけど、せめて取り乱さなくなってからがいい。

    なんて強がってはみたけど、実を言うと既に後悔している。けど、タンカを切った以上もう後戻りできない。そんなボクをお姉ちゃんは少しだけキョトンとした目で見て、すぐに楽しそうに微笑んだ。

    「冗談に決まってるじゃん」
    「酷いっ!人のジュンジョーを弄んで!」

    その言葉に余計笑い出す。そんなお姉ちゃんも可愛いのだけど、今日ばかりはその顔に胸が高鳴ることはなかった。

    ひとしきり笑い終えたらしい。お姉ちゃんが楽しさのピークを過ぎたのなら、ボクは今恥ずかしさのピークにいるのだと思う。さっきまでの……自分で言うのもなんだけれど、たぶん甘酸っぱいってヤツなものじゃない。普通の恥ずかしさのピークだ。

    熱さの最高潮を迎えたボクのほっぺが、突然ひんやりとする。気づいたらお姉ちゃんの手のひらが、そっと添えられていた。

    「……はやく格好良くなりなよ」

    前言撤回。その一言に、その優しい笑顔に、やっぱり今日もボクの胸は高鳴ってしまった。

  • 15◆YAwwG7l.v.dv25/05/05(月) 10:24:50

    お終い……というか1に貼ったエピローグへつづく

    タイシンのぶっきらぼうなんだけどなんやかや包容力が高いところいいよね……

  • 16二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 10:37:27

    さしものタイシンも傷ついた少年相手には素直になるか

    こういうの好きよ

  • 17二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 10:44:31

    ショタの生活環境クソすぎない…?

  • 18二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 11:00:03

    エピローグ、手を絡めて逃げられないようにするタイシンがかーっ見んねチケット・ハヤヒデ

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 11:03:25

    二人だけの秘密の時間って感じがいいね

  • 20二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 11:25:17

    冗談でキスしてあげようか?は魔性がすぎるよタイシン…

  • 21二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 12:13:59

    ふと気になったんだが中学生×小学生はインピオに入るのだろうか

  • 22二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 15:00:34

    いいとこ見せようと読めもしない本を読んでみたりするの健気だねぇ

  • 23二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 17:36:41

    年齢的に見たらギリタイシンが事案だけど見た目だけでいえば(元)ショタがドナドナされそう

  • 24二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 17:54:27

    これ別に他のウマショタ妄想を書き込んでもいいんだよな?

    一緒に遊んでくれる近所の気のいい兄ちゃんでしかなかったウオッカをふとした瞬間に年上の異性として見てしまうショタとそれ以来ぎこちなくなったショタのそんな心境も知らずいつもの距離感で肩組んだり胸元とか隙だらけだったりウオッカで一つですね……

  • 25二次元好きの匿名さん25/05/05(月) 19:32:42

    タイシンの姉力とママ力はかなりのものだからなおね適正はSよ

  • 26二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 02:33:15

    たまにはウマショタというのも有りだね

  • 27二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 09:45:23

    これはよい…

  • 28二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 18:59:58

    >>21

    義務教育期間だし入るんじゃない?

  • 29二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 19:54:08

    >>28

    タイシンのインピオ!?俄然盛り上がってきたな…この作品はそんな感じじゃないけど

  • 30二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 05:48:43

    このスレのタイシンは「格好良くなるまで」手を出さなそうだよね

  • 31二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 12:24:09

    >>23

    いつ頃身長抜かれたんだろう

    初対面の時点で既にかもしれないけど

  • 32二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 12:38:54

    >>31

    人は恋をすると成長するというからタイシンを意識して背伸びし始めてから暫くしてじゃない?少なくともタイシンに抱きしめられてる時とかの描写的に初対面の頃は頭一つ分くらいの差がありそう

  • 33二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 20:42:33

    タイシンのデビューあたりではもう差がついてそう

  • 34二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 20:48:33

    ほう歳の割にちっこいタイシンをお姉さんに据えた互いの心の傷を癒し合うおねショタですか 大したものですね

オススメ

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