- 1◆xaazwm17IRZa25/05/06(火) 17:13:44
皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(9スレ目)です。(本編は1が書きます)
キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあります)ので、そこだけご了承いただけると幸いです。
詳細はこちらから
https://w.atwiki.jp/mahousyouzyobr/pages/1.html
- 2二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 17:17:57
お久しぶりです待ってました!!
- 3二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 17:32:33
建て乙
- 4◆xaazwm17IRZa25/05/06(火) 17:48:44
過去スレ
魔法少女を集めてバトロワするスレ1|あにまん掲示板様々な個性の魔法少女たちがデスゲームに参加することになった……という体でデスゲーム小説書くのでオリキャラ募集しますデスゲームの内容としてはバトロワベースで特殊ルールを幾つか設定する予定世界観や魔法少女…bbs.animanch.com魔法少女を集めてバトロワするスレ2|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレです。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあります)ので、…bbs.animanch.com魔法少女を集めてバトロワするスレ3|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(3スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com魔法少女を集めてバトロワするスレ4|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(3スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com魔法少女を集めてバトロワするスレ5|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(5スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com魔法少女を集めてバトロワするスレ6|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(6スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com魔法少女を集めてバトロワするスレ7|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(7スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com魔法少女を集めてバトロワするスレ8|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(8スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com - 5二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 17:49:28
おかえり!また続きが読める嬉しさ
- 6二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 17:56:23
乙乙
- 7二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 18:03:24
立て乙です
- 8二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 18:32:02
まさか再開するとは…
- 9二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 18:56:06
うおおおお!お帰りなさい!!
もう再開は無理なんじゃないかと諦めかけてました!ありがとう!! - 10二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 19:03:08
とりあえず10まで
- 11二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 19:17:28
ヒャッハー!再開だー!
- 12二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 20:15:17
タノシミジャ
- 13二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 20:54:25
久しぶりにwiki見たらゆっくりが出迎えてくれて吹いた
- 14二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 21:09:28
- 15二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 22:06:29
ヒャア待ってましたぁ!!乙です。
- 16二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 22:52:21
中心街編(?)とまで書かれてしまったハスキーロアやスピードランサーのコンビや、いま大変なことになってるウェンディゴといった二巡目で特に動きがなかったキャラは最終回を待ちに待っていたので再開して頂けるだけでも大変に感謝……!
どんなペースでも完結を待ち続けますので、どうかご自愛のほどを……! - 17二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 23:07:28
再開を祝してラストステージに相応しいネタを今まで練っていたマジックアイテムを超久々に投げさせていただきます。
できるだけ今までにスレ主さまが執筆してくださったストーリーや設定やテーマに則したものを抜粋したつもりですが、ご自由に改変して頂ければ幸いです……。
悪役としてとても魅力的なトート・アリアや『勇者』がインフレの極みに到達できることを祈って……。
【マジックアイテム】
竜の心臓
【効果】
トート・アリアが生み出した終生の傑作の一つ。他の探究者たちが目を向けなかったアリア独自の〝科学と魔法を融合させる〟実験の数々によって結実した。
最も長く共に活動していたパラサイトドールを含む冒涜の竜関係者たちに一切悟らせなかった秘中の秘。
『邪竜殺しの勇者シグルズ(ジークフリート)は討ち倒したファフニールの心臓を食べ、無限の魔力と智慧を得た』伝説に準えたマジックアイテム。
ハーゲンに搭載した魔力リアクターとは違い、掛け値なしの無限の魔力を生み出し、被験者の肉体と融合して破壊不可能となる特性を持つ。
だが、無限の水を汲み上げるためには無限の容量を持つ『器』が必要になるように、未だ完全稼働には至っていない。
完全稼働に至れば、生み出される魔力によって【天上】すら超えて際限なく存在の級位(ステージ)を上げ続けることができるだろう。 - 18二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 02:11:26
保守
- 19二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 07:44:50
このレスは削除されています
- 20二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 13:57:45
保守
- 21二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 19:15:45
このレスは削除されています
- 22◆xaazwm17IRZa25/05/07(水) 22:22:57
素敵なイラストありがとうございます!
渋くてダークな感じが最高ですねぇ~、暗闇の向こうに居るのはアカネちゃんでしょうか?
前作のイラストも描いていただけるのは大歓迎です、本当にありがとうございます!
- 23◆xaazwm17IRZa25/05/07(水) 22:31:20
めちゃくちゃ大雑把な話をすると、デフォルトで身体能力10倍なのもあって変身した魔法少女>前作生徒(異能・体育会系)>変身前の魔法少女くらいの戦力差ですが、茜音沢先生は普通に今作の参加者の上位陣と張り合えます。パパ黒みたいな挙動になると思う。
- 24二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 23:08:23
ち...父親って強いんだな
- 25二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 00:40:21
本当に化け物だな…あの先生は
確かに心臓を使った後なら大体の魔法少女の攻撃は効かなさそう - 26二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 02:17:36
Q.その茜音沢って人は具体的にどう強かったの?
A.パンチのついでに壁を砕き、鉄棒を振れば衝撃波が起き、10m以上ある大蛇の横っ面を蹴飛ばし、頸動脈を斬られてもその場で治して、戦車の砲弾を弾き返しただけの普通の人間だよ - 27二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 07:41:50
普通の人間とは一体…ウゴゴゴ
- 28二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 14:35:00
普通(自称)
- 29二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:26:04
世界観が違うのに上位陣とやりあえるのロマンがあり過ぎる
- 30二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 00:24:41
ホシュ
- 31二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 07:54:04
本当だ生首が二つ…!?
- 32二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 15:55:05
保守
- 33二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 00:01:52
保守させて頂きます…
- 34二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 00:24:01
次回作があるとしたら鬼、竜と来て満を持して神の心臓が出てきそうだな
- 35◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 01:04:50
PC壊れかけでコピペが上手くできないので、前スレまでにあった生存者のダイス一覧表は貼れません……申し訳ないです……
同様にwiki更新もしばらく出来ないです……(既に2か月更新できていませんが……) - 36◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 01:08:02
投下します
- 37◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 01:32:04
時間が欲しかった。三匹の怪物共に邪魔されない時間が。
あの時の続きを。為せなかった技を。
(違う。これは、私の思考じゃない)
ハスキーロアはブラックブレイドの最期を知らない。
ブラックブレイドが最期に何を為そうとしたのか、知る由も無い。
けれど、今なら分かる。
ブラックブレイドの記憶が、交じり合う。
(不思議だけど、嫌、じゃない)
浸蝕された、という感覚は無い。
むしろ力を貸してもらえている、そんな暖かい感覚。
ブラックブレイドだけではない、抜刀金も同様だ。
二人の意思が、ハスキーロアを支えている。そんな風に感じられる。
そして今、ハスキーロアはブラックブレイドが為そうとしたことを実行しようとしている。 - 38二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 08:11:53
更新まで保守
- 39◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:02:53
すいません、寝落ちしてました……
- 40二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 14:07:08
こっちは全然大丈夫ですよー
- 41◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:09:22
「このゲームを――斬る」
今もなお、魔法陣を破壊するために、殺し合いゲームを終わらせるために、仲間たちは頑張っている。
ハスキーロアがゲームを斬れば、全ては終わる。これ以上、殺し合いはしなくてよくなる。外から他の魔法少女だって助けに来れる。
意識を集中させる。
居合術の心得などまるでないが、抜刀金の記憶が、自動的かつ最適な動きを再現する。
「——ぶった斬る」
ハスキーロアは極光丸を抜刀した。
常人には目視不可能な速度で白刃が煌めく。
そして。
「…………え?」
刃が、止まった。
- 42◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:22:25
その時、ハスキーロアの脳内に溢れた、知らないはずの知識。
ブラックブレイドや抜刀金の記憶のように影から支え、包んでくれるようなものではなく。
どこまでも一方的に、一切こちらの事情を顧みない、一方的な道の知識。
【この儀式が正規の方法以外で破壊されたとき、儀式の贄は全員死亡する】
それは、ルール。
「会場内の魔法陣を破壊すれば呪いを解除できる」という運営にとって不利な制約を課すことで、「それ以外の方法で儀式を破壊すれば参加者は全員死ぬ」という理不尽なルールを強制できる。
ハスキーロアは、動けない。
理不尽だが、無理難題ではない。
自分の命と、仲間の命を諦めれば、ゲームは終わる。
運営幹部の思惑を挫くことができる(具体的にどんな思惑があるのか、実のところハスキーロアはまるで知らないが)。
ゲームを壊したい。これ以上殺し合いはしたくない。
けれど、死にたくない。
スピードランサーもウェンディゴもバルバロイも、一緒に戦おうと決めた仲間たちにも、死んでほしくない。
アリアの思惑や、グレンデルの野心を知っている者が居れば、その者が大人であったなら、少数の犠牲を呑み込んで実行していたかもしれない。
ハスキーロアには、9歳の少女には、出来ない。
「っ………………」
苦渋で胸を焦がしながら、ハスキーロアは納刀した。
- 43◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:35:27
◇
足場が崩れても、ハニーハント(今の彼女をそう呼ぶのが適切かは置いておくとして)は問題なかった。
背から生えた二枚の翼。竜を模し、羽根の一枚一枚が小さなチェーンソーとなっている異形器官。
それが無数の羽虫のような音を立てる。崩落していくグラウンドを顧みることなく、ハニーハントは浮上した。
残った敵はあの少女が一人。刀を振るう少女。
太陽を背に、ハスキーロアは居合の構えを取っている。
——ぞくり、と背筋が泡立った。
今からハスキーロアがやろうとしていることは■ィー■に危害を及ぼすことだ。ハニーハントの■王への大逆行為だ。
許さない、許さない、許さない……!
轟のような悲鳴と共に、ハニーハントの両腕のブレードが、ハスキーロアへと伸びた。 - 44◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:45:58
高速で伸びるブレード。進行方向にある物は、家屋だろうと車だろうと魔法少女だろうと切断できるであろう、致命の一撃。
ハスキーロアは、視界にブレードを捉えた。
納刀音が響き、二本のブレードは根本から切断される。
この程度の攻撃は、今のハスキーロアにとって何ら脅威ではない。
(ゲームはすぐには壊せない……だったら私が今やるべきことは……!
①魔法陣を壊して
②ウェンディゴさんを助けて
③ハニーハントを止めて
④悪い人をやっつける!)
気持ちを切り替え、攻撃を仕掛けてきたハニーハントへと顔を向ける。
自由落下に身を任せ、翼持たぬ身のハスキーロアは徐々にハニーハントへと距離を縮めていった。
(この人がどんな人なのか、私はよく知らない。
ウェンディゴさんを襲った、怖い人。
けど、この人も被害者なんだ。……殺したくない)
不殺の決意を固め、更なる技を繰り出すべく意識を集中させる。
ハニーハントのホッケーマスクが、不吉な音を立てて罅が入った。
- 45◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:46:23
一旦投下を中断します
- 46二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 15:27:03
なんでも切れる魔法と誰にも見えない剣技を、絶対に壊せない刀で操るという殺意高い戦い方でありながら不殺の覚悟はかっこいい
- 47二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:50:56
一旦乙
- 48◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 22:46:51
投下します
- 49二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:58:45
ハスキーロアは記憶を受け継いだことで強くなったけど、ハスキーロア自身も成長しないといつか裏目に出そうで怖いね
- 50二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 23:00:56
根っこがハスキーロアのままなのが強みであり弱点でもある?
- 51◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:01:45
儀式が始まる数か月前のこと。
何の変哲もないごく普通のマンションだった。
中からは夕食を囲む家族の、楽し気な声も聞こえてくる。
そのマンションを見上げる、一人のギャルが居た。
気怠げな雰囲気を漂わせながら、憂鬱げにギャルはマンションを見上げる。
「入らないのかい、パラサイトドール」
夜の闇に馴染むかのような、優雅な声。
ギャルは億劫そうに顔を向けた。
「アザトース……いや、今はアルセーヌ、だったね……」
「久しぶりだね。此処に来たのは、あの中に用があるからだろう?」
「そうだね……うん……」
「不思議だな。今までの君なら『竜から逃げた屑が、我の思惑を悟れると思うな』くらい言うのに。だいぶガワに引っ張られてない?」
「そうかもね……うん、どうでもいい……」
はぁ……とパラサイトドールは溜息をついた。 - 52◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:02:27
「儀式の前にさ……あーしも強くなれるだけ、強くなっておきたいんだよね……。そのためには、あのマンションの中にある、アザトースの肉体が欲しいんだけど……」
「頭脳の私は要らないのかい?」
「いらない」
アルセーヌは肩を竦めた。
「要るならとっくに取り込んでるし……それを分かってるから出て来たんでしょ……」
「まぁね。歴代の君の寄生先でも今回は最強だ。パラサイトドール史上最強の個体が君。一方私は、アザトース史上最弱の個体だからね」
その口ぶりには、弱くなったことへの焦りや悔しさ、そういった負の感情は籠っていなかった。以前のパラサイトドールならばそのことを詰り侮蔑したが、今のパラサイトドールはそういうの面倒くさいのでやらなかった。
「ほんと、面倒だなぁ……」
トホホ……といった表情でパラサイトドールはマンションを見上げる。
外観は普通のマンションだ。今のパラサイトドールならば、一撃で消し飛ばすことだって出来る。 - 53◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:19:50
あにまんマンションは、ただのマンションではない。無数の怪異が蠢く、魔法少女でも一度踏み込めば二度とまともな姿で出ることが出来ない魔窟だ。
聞こえてくる住民の声も、ダミーでしかない。
それを全て分かった上で、二人の人外はマンションを眺めている。
「元々同じ個体だったものとして忠告しておくけど——入らない方がいいよ」
「……やっぱり、そうだよね……」
パラサイトドールは、隔絶した武力を備えている。
それだけでなく、彼女は【天上】であり、格下のあらゆる魔法攻撃を無効にできる。
相性ゲームである魔法少女同士の戦いにおいて、パラサイトドールは一方的に他者を蹂躙できる権利を有している。
あにまんマンションがどれだけ初見殺しに満ちた超危険エリアだとしても、【天上】には届かない。
パラサイトドールは、まるで散歩をするかのように、マンション内を自由に闊歩できる。
そのはずなのだ。
にも関わらず、パラサイトドールの足は動かない。
「——魔法じゃないよ、これ」
アルセーヌの言葉に、パラサイトドールは忌々しそうに眉を歪めた。
「……意味わかんない。お前の肉体から発生してる現象なんでしょ、これ……?」
「活発化したのは私の肉体のせいかな……けど、マンションが怪奇スポットとして有名になったのはもっとずっと前から。何なら戦前ここに立ってたあにまん荘時代から怪奇現象は度々目撃されてたそうだしね」
「そういうの、あーしは信じてないんだけどな……幽霊とか宇宙人とかパワースポットとか、馬鹿馬鹿しい……」
令和の世を生きるドラゴンの言葉に、アルセーヌは失笑する。 - 54◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:29:22
「まぁ絶対に攻略不可能とまでは言うつもりもないよ。
無敵モードじゃ居られないってだけさ。一プレイヤーとして真摯にダンジョンに向き合えば、今の君のスペックなら攻略は可能かもしれない。
オススメはしないけどね」
パラサイトドールは思案し、
「……じゃあ、いいや。頭使うのも面倒だし……怪我とかすると嫌だし……」
「素直だねぇ。私の忠告に従うなんて、君らしくもない」
「……もしかして、わざと突っ込ませようとしてた? 性格悪いね……」
その時、マンションの入り口から複数の足音が響いた。
まったく同じ声色の、少女たちの声。
「ん? 今誰か立ってなかった?」
「誰も居ないよ?」
「調べよう、調べよう」
「勘違いしたのは私? それとも私以外の私?」
「調べよう、調べよう」
その場で増え始める少女たちは、しかし竜の成れ果てたちの痕跡を見つけることは出来なかった。
獺と竜は出会うことなく、儀式の幕は上ることとなる。 - 55◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:29:43
投下を終了します
- 56二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 23:33:17
そろそろ人外の存在だけじゃなくて魔法少女側も上位存在の助け無しの『天上』に、『始まりの魔法少女』と同等の存在に到達したところ、見てみたいね。ティターニアとブレイズドラゴンは「?」が付いてて露骨にぼかされてるし
ハスキーロアとスピードランサーは今までの描写で丁寧にフラグ立ってるし、世界を救うほんとの勇者になってほしいなぁ - 57二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 23:41:05
マンションは「冒涜の竜」のガワが核になったことで強化された存在
ハニーハントはそれを取り込んで強化されたけど、
グレンデルは元々「死の王」の血で適合改造されててその上で更にマンションの力を取り込んだ……ということは……? - 58二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 00:35:29
またスレ主さんの文章が読めることに感謝感謝です……!
- 59二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 08:34:29
保守
- 60二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 09:02:44
投下お疲れ様です
その気になればマンションは攻略出来るけどリスクと照らし合わせて割に合わないバランスなのが好き - 61二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 12:36:07
脅威というよりまさに「面倒くさい」だから下手に強い相手より手を出されにくかったわけか
- 62二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 19:58:40
保守
- 63◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 20:37:26
投下します
- 64◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 20:48:07
突如、ハニーハントのホッケーマスクが外側に弾き出された。
露わになった中身には「顔」と呼べる部位は無く――迫る大質量を前に、ハスキーロアの思考は停止した。
自動的に抜刀の構えを取りながら、意識が動作に追いつかないハスキーロアは困惑の声を上げた。
「……マンション?」
ハニーハントの頭部から【建物】が生えている。
物理法則を無視した、悪夢としか思えない光景だった。22世紀の猫型ロボットが、小さなポケットからどこでもドアを取り出すかのように、ハニーハントの小さな頭部から、高校を呑み込む程の巨大な建造物が生えているのだ。
ハスキーロアを圧し潰すかのように迫るマンションを前に、彼女は極光丸を振るった。
万物切断を前に、質量に大きな意味は無い。どこかに上限はあるにしても、この程度の大きさならば十分に範疇だ。
やはり物理法則を無視した斬撃によって、マンションは縦に両断され——そのまま勢いを殺さずにハスキーロアを呑み込んだ。 - 65◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 21:00:07
◇
校庭から防空壕に落下したグレンデルは、状況を打開する策を練っていた。
フィールドの変化は、ハイになっていたグレンデルの血気を冷ます効果があった。
(いい加減千日手だな……)
不死身が多すぎる。
そして未知も多い。
ハスキーロア、ハニーハント、謎の狼。いずれもその全貌は明らかになっておらず、どんな魔法をどこまで振るえるのか、査定できていない。
(全部喰っちまえばいいと思ったが……ちとリスクが大きいか?)
喰うことが破滅のトリガーを引くことは、自然界ではありふれている。
グレンデルには、このゲームに賭ける悲願は無い。儀式が失敗してもさっさと割り切る。最重要は自身の生存であり、その次に快楽を満たすことだ。
(残り時間であいつらの情報を丸裸にすることは難しいだろうな……ここは、逃げも考えとくか?)
この場からの逃げ、だけではない。
舞台からの逃亡。グレンデルは傭兵だ。負け戦には付き合わないし、勝ち戦だとしても自分の命が脅かされれば逃げを選ぶ。
もっとも肉体を改造してからはそんな局面が訪れたことなど無かったが。
(さーて、どうっすっかな……うん?)
空中で何か巨大なものが展開している。
黒贄を取り込み不死となったグレンデルは、もはや質量攻撃など何ら脅威ではないが、冷静に状況を見据える。
——マンションが降って来た。
- 66◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 21:14:47
死の王は屈辱に身を震わせていた。
王は、絶対なる存在であった。
遍く全ての命は、王の掌の上であるはずだった。後からのさばった竜など悠久を生きる王の時間感覚からすれば刹那の間に滅んだくそ雑魚生物であり、その後蔓延った魔法少女など指先一つで命を奪える羽虫のようなものだった。
にも関わらず、王は地上から地下に落とされ、死の権能も一部を切断され、殺意を向けた羽虫はのうのうと空を舞っている(実際は自由落下しているが)。
何と忌々しい。
王は唸った。
何よりも腹立たしいのは、刀を持った少女——ではない。
(ウェンディゴ……貴様……!)
死の王を一時的に封印した魔法少女。
その記憶を封じられ、偽りの記憶を植え付けられ、漏れ出す死の王の魔法で数多の命を奪った少女。
哀れな清原稞美。可哀そうな清原稞美。
絶望の中で意識を沈められ、死の王はこの地に顕現した。
だが、死の王は——未だ全力を出せていない。
本来なら、全世界を対象とした命の徴収は、一瞬で終わるはずだった。あんなにも時間がかかるのは、死の王の本意ではない。
内部に沈めた稞美……ウェンディゴによって、死の王は思うように死を振りまけない。
たかが羽虫が、王の権能を阻害している。
怒りの声を上げながら、死の王は地上に戻らんとして——落下するマンションにその身を圧し潰された。 - 67◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 21:28:23
◇
「わけがわからないお……」
千里眼で戦況を把握していたクレアボヤンスは、そうぼやくしかなかった。
四人の超人によるブッチギリ限界バトルを半ば他人事のように干渉していたクレアボヤンスだったが自身の通う高校が超巨大マンションによって押し潰されたという結果を前にして、ただ呆然とするしかなかった。
「これからクレアボヤンスはどこに登校すればいいんだお……」
なんて現実逃避の言葉さえ出てきてしまう。
そして、実感した。
やっぱり此処に居て正解だったと。ナイトメア★メリィのように、非戦闘員なのに戦場に出るのが馬鹿馬鹿しいのだ。
覗き見しか出来ないクレアボヤンスが、それを除けば低スぺ魔法少女でしかないクレアボヤンスが、出来ることなど無い。
自身の有用性を示すために、千里眼で状況を見ながら指示を出す、的なことを言ったりもしたが、普通に戦闘スピードが速すぎて口を挟むことは出来なかった。ボクシングのセコンドって凄いんだなぁ。
「クレアボヤンスは無能な魔法少女だお……陰ながら応援するお……」
クレアボヤンスは気づかない。
同じように「観測」していた第三帝国が、どんな惨状を迎えたのか。
死の王の出現からハスキーロアによる魔法殺しまで、その一部始終を目撃しながら、クレアボヤンスの心身に影響は無かった。
画面の向こうでどれだけ暴力や恐怖が吹き荒れようと、視聴者には他人事。
そんな常識(りふじん)を、クレアボヤンスは世界に叩きつける。
本人も無自覚なまま。 - 68◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 21:33:51
投下を終了します
四人の顛末は次のターンで。最終決戦内定です。
一旦、舞台を他の場所に移します。 - 69◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 22:04:21
dice1d2=1 (1)
1狂愛の木蔦部屋
2アニー・アーマーン邸
- 70◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 22:07:38
狂愛の木蔦部屋:挑戦者(メリィ、クィーン、ああああ) ボス(弓ヶ浜ヒカリ/ランドウ)
- 71◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 22:09:57
メリィの強化形態も最初に安価&ダイスで決めておきましょう、その方が展開を書きやすいので
先着3つからメリィの強化案をダイスで決めます……!
(内容によっては弾くかもしれません、ご了承ください) - 72二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:11:18
仮面ライダー見たいな特殊強化装甲メリィの魔法で武装を自由自在に扱える
- 73二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:17:48
極少量の『冒涜の竜』の魔力と融合し、「竜の角、尻尾、翼を生やしたドラゴン魔法少女(動きやすいが際どいレオタード水着風コス+ゴーグルが変化した目元だけを覆うアルセーヌ仮面)」に変身する。
「基礎スペックの大幅上昇」、「魔法陣から黒炎を放つ」、「竜の鉤爪を模したクロー」、「翼で空を飛ぶ」など、ごく基本的な竜の力を行使できるが、性能は全て常識的なレベルかつ、メリィの戦闘技術に依存している。
アルセーヌの気遣いで竜鱗を模した装甲の防御力だけは高め。
冒涜の竜の魔力と人の肉体が合体しているため、力を使う度に体力と精神力が激しく消耗して苦しんでしまう欠点がある。
元々はアルセーヌが緊急用の予備魔力を分割して後方支援のメリィに預けさせるためのアイテムだった。 - 74二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:18:08
ナイトメア⭐︎メリィ ソニック★フォーム
全ステータスが大幅上昇するほか、現実世界に存在したまま肉体を情報化できるようになり、あらゆる攻撃や障害物を無効化しながら高速移動できる。見た目はリリなのフェイトちゃん。
欠点は情報体状態では自分も干渉できず、メリィの体術では速度を全く制御できないこと。また、使用中は魔力が凄まじい勢いで消耗する。 - 75◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 22:37:19
- 76二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:45:27
地下アイドル格闘家で目の見えない妹もために戦う弓ヶ浜ちゃんじゃないか!
- 77二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:48:04
弓ヶ浜ちゃん、ダイスによれば運営幹部と繋がりがあるらしいし、『勇者』の技一覧にブレイズドラゴンの必殺技の絶招があった辺り、今までにコピーした武術のデータをアリアに渡したりしたんかな
- 78二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 23:17:28
キャイイイッ
- 79二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 23:29:21
- 80二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 23:37:39
味方化してくれてもいーのよヒカリちゃんチラッチラッ
- 81二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 07:44:29
良い立ち位置にいやがって…
- 82二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 14:19:13
保守
- 83二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 22:27:52
うーんハイリスクハイリターン、尖った強化フォームを貰ったなメリィちゃん
- 84二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 07:42:47
保守
- 85二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 13:53:49
保守
- 86二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:58:24
こっちのヒカリちゃんはワンチャンそうかもしれないだろ!
- 87二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 23:25:12
貴重な技のデータを安い金で売り払いそうか、と考えたら名前からしてする側なんだよな。ヒカリちゃん
- 88二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 07:38:26
このレスは削除されています
- 89二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 07:53:36
3対1か… 弓ヶ浜ヒカリは生存しそうな雰囲気があるが果たして…
- 90二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 16:18:28
保守
- 91二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 22:52:35
「ボクシングのセコンドって凄いんだなぁ」
んな事言っとる場合かーっ!…けどこうでもしないと正気を保てないのかなぁ - 92二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 07:47:06
ぼくさー、ボクサーになりたいんだ
- 93二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 07:47:09
保守
- 94二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:17:14
保守
- 95二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 20:34:40
チェァッ
- 96二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:01:58
ボス(弓ヶ浜ヒカリ/ランドウ)の地面がなんか面白いのズルい
- 97二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 07:53:42
保守
- 98二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 14:08:44
保守
- 99二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 22:36:41
保守
- 100125/05/16(金) 23:47:55
テスト
- 101125/05/16(金) 23:49:04
PCは規制されてるんですけど、同じWi-Fiでもスマホは書き込めるみたいですね…
- 102125/05/16(金) 23:49:52
投下します
- 103125/05/16(金) 23:59:57
我々には運命が味方している、とその男は思った。
男の名前はここでは語らない。
彼はこの物語においてモブに過ぎず、世界に大きな影響を与えることはない。
男には男の人生があり、かつては家族があり、波瀾万丈かつ紆余曲折の道程があり、今に至っている。
男は人生の過程で第三帝国の尖兵となり、更にはその身を機械化し魔法による恩恵を受け、令和の日本まで生き延びていた。
新生第三帝国の中でも幹部格に成り上がった優秀なる男は、モニターから送られてくる情報を受け、追い風を感じたのだ。
かつての戦争ではついぞ感じたことのないものだった。 - 104125/05/17(土) 00:12:39
ブレイズドラゴンが死んだ。
ティータニアも死んだ。
中国最強の魔法少女と日本最強の魔法少女が第三帝国とぶつかることなくこの世を去った、
神は言っているのだ、苦節80年、ようやく第三帝国が世界を征するときが来たのだと。
「ブレイズドラゴンも居ない、ティターニアも居ない、この戦争…我々の勝利だ!」
男の叫びが部屋の中に響き渡る。自信の言葉に自己陶酔する男の耳に、不快な音が届いた。
クックック…と、人を心底馬鹿にしたような嘲笑。
男は振り返る。
寝巻きのような黒いスウェットを着た美少女がソファにだらしなく体を預けている。
「何がおかしい、ランドウ」 - 105125/05/17(土) 00:24:29
「ブレイズドラゴン? ティターニア?」と、ランドウは強者の名前を呼んだ。
そしてわかってないなぁ…とでも言いたげな表情で首を横に振った。
「そいつら武道の大会で優勝経験なくない? じゃあカスでしょ。ヒカリはめっちゃ優勝してるんだけど」
ふん、と威張る弓ヶ浜ヒカリ(21)を前に男は呆れた顔を浮かべる。
「魔法少女なら優勝して当然だろう」
「は?ヒカリそんなズルいことしねーし。生身でボコったつーの」
ヒカリは天才なの、と少女は言う。全知全能さえ命を落とすこの殺し合いを目にしても、その自信に一切の翳りは無い。
「ヒカリに技を教えた師匠も言ってた。ヒカリは少し教えればあっという間に習得しちまうって。普通の奴はこんな短期間で技は習得できないんだって」 - 106125/05/17(土) 00:34:06
どこまでも傲慢で自信に満ちた言葉。
いくら元同盟国とはいえ、アーリア人ではないアジアの猿が天才であるはずがない。
だが、男の口からは否定の言葉は出なかった。
男は、ランドウの暴力性を既に何度も目にしている。
大口を叩くだけのことはある。
ランドウは、強い。
ティターニアやブレイズドラゴンに互角以上に戦えると豪語するが、その実力はあると男は認めていた。
「だが、最後に勝つのは我々第三帝国だ」
「モブには無理でしょ」
お前らは観客だよ、とランドウは言った。
「ヒカリがブレイズドラゴンやティターニアを上回る魔法少女であることを証明する場のね」 - 107125/05/17(土) 00:36:34
投下を終了します
スマホ投下はキーボードより時間がかかるので、明日には規制解除していただきたいです… - 108二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 01:18:23
ヒカリちゃん、試合で強かったタイプかぁ…
実戦はどうなのかな もう既にダメそうな感じしてるけど
あともし生前に出会ってたらブレイズドラゴンやティターニアがどんなこと思うか気になる - 109二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 01:19:10
投下お疲れ様ですー!
ヒカリちゃん…師匠に褒められた事を誇りに思ってて可愛いね… - 110二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 02:58:35
そういやハニーハントの頭からマンション、これ最近裏バイトで見たような気がするな…という気持ちになる お前に住む
- 111二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 08:03:16
能力的にFateの岡田以蔵みたいなもんかな?
技のびっくり箱で圧倒するタイプで全部見切られたら終わり - 112二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 11:00:42
ヒカルとランドウの組み合わせからもう溢れ出てる魅力に笑顔がいっぱい
- 113二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 12:21:33
ヒカリちゃんの一人称が「ヒカリ」なのあざとすぎて好き
- 114◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 18:36:30
投下します
- 115◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 18:47:48
王城 姫子/クィーンは白馬の王子様に憧れている。何しろ彼女が魔法少女になったきっかけは妄想小説を書いていたら色々メロって爆発したからだ。エネミーに殺されかけて覚醒したり太古の世から生きる邪悪な怪物を封印するために力に目覚めたり……そういったシリアスでヒロイックな背景が無い。
魔法少女になったきっかけを、クィーンは語らない。というか妄想小説書いてるとかの話を周囲に話したことはない。帰り道噂とかされると恥ずかしいし。女王には権威が必要なのだ。
学校では真面目で大人しい性格として通っている。魔法少女になってからは実は隠れドSだと噂を立てられているが、これはクィーンという魔法少女名や魔法に性格が引っ張られているのか、はたまた元々Sであり、魔法少女という第二の顔を得たことで、取り繕うのが徐々に雑になっているのか。
姫子には、クィーンには分からない。思春期の心は欧州情勢以上に複雑怪奇なのだ。 - 116◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 19:02:03
その日の夜、クィーンが見回りをしたのは偶然だった。
戦闘を忌避するほど臆病ではないが、エネミーとの戦闘を楽しむ戦闘狂でもないし、絶対的なヒーローへの憧憬も無い。
子供のとき(今も義務教育真っ最中の子どもだが)に迷子の自分を助けてくれた、魔法少女のお姉さんへの憧れ。
彼女への憧れは今もクィーンの心に残っているし、時々思い出したように女王はパトロールに出向く。
別にクィーンがこれをやる必要は無いのだ。あにまん市にはティターニアを始め、強い魔法少女がたくさんいる。
女王が10代の貴重な睡眠時間を削る必要はない。
それでも、その日クィーンは夜の街を歩いた。
市政を見守るのも女王の責務である。
とはいえ。街に異変は無かった。明日は英語の小テストがあるのに、無駄に時間を浪費してしまった。
女王は自らの失策を悟る。
だが、平和なのはいいことだ。戦争に巻き込まれたこともないし、事件の渦中に立ったこともないが、それくらいのことは分かる。
何やらいい気分になったし家に帰ろう。クィーンは踵を返した。
その時、彼女の耳に確かに聞こえたのだ。
まるで仮面の下から押し殺したような――少女の小さな悲鳴を。 - 117◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 19:14:08
◇
狂愛の木蔦部屋という名前を聞き、クィーンが連想したのは部屋いっぱいに推しの写真が貼ってある、ストーカーが住んでそうな部屋だった。
そこに踏み込むのは正直すっげー気が進まなかったが、クラスメイトで多少言葉は交わす縁であるナイトメア★メリィが心配なのもあり、彼に同行することにした。
女の子みたいに可愛い顔をしているとはいえ、男が魔法少女になっているのは驚きであり、クラスメイトの男子生徒が「さぁ攻略するのだ、へけっ」とハム太郎かずんだもんみたいな口癖で喋るのは色々キツイものがあったが、緊急事態なので我慢することにした。
「これが……狂愛の木蔦部屋……」
クィーンは息を飲む。
慣れ親しんだあにまん市駅には異界に繋がる秘密の入り口があった。
それを見つける際にメリィが小刻みに振動しながらその場で屈伸するというバグった挙動をした時は頭の心配をしたが、どうやら最短で狂愛の木蔦部屋に繋がる道を見つけるための儀式のようなものらしい。
他の道はエネミーが待ち構えていたり行き止まりだったりたどり着くのに三日かかったりするらしいでの、何もしなければ後数時間で死ぬクィーンたちからすればこの方法しか無かったのだろう。
余談だがメリィがそういう説明をしているとき、帽子を目深に被った魔法少女――ああああは本気で嫌そうな顔をしていた。
探索ゲームに嫌な思い出でもあるのだろうか。 - 118◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 19:24:24
とにもかくにも、クィーン一行は「狂愛の木蔦部屋」にたどり着いた。
クィーンは瞠目した。
生い茂るアイビー。
そしてその向こうに聳え立つのは。
「部屋っていうか――城ね」
広大な城が、アイビーの草原に鎮座している。
つくづく、魔法とはデタラメだ。
「……うふふ、けれどこの女王に相応しい舞台じゃないかしら。さぁ着いてきなさい臣下たち。征服するわよ」
「お前学校とキャラ全然違うのだ」
「あんたがそれ言う!?」
「……落ち着けガキンチョ共」
上擦った声をあげながら、ああああは二人に声をかける。
「当然といえば当然だが――門番がいるみたいだ」
城の重厚な鉄門の前に、一つの影が立っている。
鬼を象った鉢金と面頬を装備した侍風コスチューム。立っているだけで強いと、達人だと三人に理解させる風格を、その門番は宿していた。
門番は三人に視線を合わせると歓迎するように両腕を広げた。
「ようこそ。ヒカリの踏み台共♪」 - 119◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 19:24:43
投下を終了します
- 120二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 19:48:41
出た! 弓ヶ浜ちゃんの「俺の踏み台」ムーブだ!
- 121二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 19:50:13
このレスは削除されています
- 122二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 20:29:58
なぜか見覚えある両腕広げポーズ
いつキャイイイッするのか楽しみですね… - 123◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 20:48:33
投下します
- 124◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:09:41
「弓ヶ浜ヒカリ、魔法少女名はランドウ。好きなほうで呼びなよ」
「いきなり実名公開とは恐れ入ったのだ。それともネチケットとか知らない感じの人なのだ?」
「あ? 何を勘違いしてやがる。ここはお前らくそ雑魚インキャの棲息するインターネットじゃねぇし――ヒカリが本名を言ったのはお前らがここで死ぬからだぞ」
「メリィは死なないのだ。確かにお前は刀とか持ってて物騒だけど――ブレイズドラゴンに比べれば怖くないのだ」
それはハッタリではなく、メリィの本心だった。
確かにランドウは強い。バトルは素人のメリィでも何となくそれは感じ取れる。同じ学区内に住んでて欲しくないタイプの危険度だ。
だが、ブレイズドラゴンに感じた絶望感は格が違った。
同じ学区内どころか同じ星に住みたくない、そう思わせるほどの恐怖。
自分たちが必死に積み上げた技術が、魔法が、そして作戦が、悉く捻り潰される。
アレと比べれば、ランドウは怖くない。
首さえ落とせば普通に死にそうな気配がある。
「ブレイズドラゴン……最強の傭兵。ククク、ヒカリはブレイズドラゴンのライバルだ。
傭兵としての知名度では負けているが、実力は匹敵。いや、技量はヒカリの方が上かな。
何しろヒカリは、ブレイズドラゴンの拳法を全て使うことができるが、ブレイズドラゴンはヒカルの剣術をまるで真似できないからな」
- 125◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:09:54
そう言って、ヒカリはゆらりと体を動かす。
「いいだろう。お前ら雑魚は剣術は使わねえ。拳法だけで仕留めてやるよ」
見ろ、とラランドウは言った。
「この動きに見覚えはねぇか?」
もしこの場にハイエンドが居れば驚愕していただろう。
ランドウの足運び、目線の動かし方、姿勢。その全てがブレイズドラゴンに瓜二つだったからだ。
魔法少女ランドウ。決して口だけのチンピラではない。
一目見ただけで他者の流派や奥義を完璧に真似できる模倣の天才。
彼女もまた――天才である。 - 126◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:24:32
(そのブレイズドラゴンとやらを見たことが無いから分からないわ……)
(いや知らねぇよ。モニター越しだったしその後色々ありすぎて動きの細部とかもう覚えてねぇよ)
(確かにブレイズドラゴンそっくりなのだ……けどモノマネの精度がどれだけ高いのかは格闘技素人のメリィには分からないのだ)
ランドウにとって不幸だったのは彼女の天才的なセンスを正しく評価できる者がこの場に居ないことだった。
ランドウもそれに気づいたのか、ブレイズドラゴンの模倣を止める。
「チッ……インキャめ。とにかく魔法少女で武術齧ってない奴は死んだほうがいいぞ。自殺志願者なら仕方ないが」
「武術……ええ、確かに人間が積み上げた戦闘体系は素晴らしいものよ。けれど私は女王。
女王の役割とは――最強の騎士を目指すのでは無く、騎士に栄誉を与えることよ」
クィーンの言葉と同時に、彼女を守るように騎士の一団が出現する。
クィーンの魔法『百人の騎士を召喚するよ』。一人一人が魔法少女にこそ劣るが確かな強さを持つ騎士を100人召喚する魔法。個体によって様々な装備をしている騎士たちはランドウを取り囲んだ。 - 127◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:42:52
「命までは奪うつもりはない……けれど私たちに立ちふさがるというなら、それなりに覚悟はしてもらうわよ」
アリスのような無辜の民を尖兵として使う邪悪な存在ではない。言動からしてチンピラだとすぐに分かったが、敵対した小悪党いちいち始末するほど女王は狭量では無かった。
槍を構えた二人の騎士がランドウに向かって突撃する。
それに対してランドウは居合の構えを見せた。
やはり、見る者が見れば抜刀金に酷似していることに驚いただろう。
(あ、結局中国拳法は辞めるのだ)
抜刀金をよく知らないメリィは中国拳法じゃなくて居合なんだ、という感想しか持てなかったが。
その余裕は次の瞬間に崩れた。
ブン、と振るったランドウの手刀。そのあまりの速さに、メリィは驚愕する。
(ブレイズドラゴンより速いのだ……) - 128◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:43:07
居合の構えをしていたからこそ、辛うじて手刀を振るったのだと推測できる。
槍騎士の首が兜ごと宙を舞った。
(そんな、これほどの技量を持つ魔法少女が居るなんて……)
クィーンもまた、ランドウがアリスに匹敵、あるいは凌駕する難敵だと心を引き締めた。
今この場で敵と戦闘できる能力を持っているのは自分だけだ。アリス戦には居たジェイルフィッシュも、野生児(ノーブル=サヴェージ)も居ない。
「クックック……驚くのはまだ早いぞ踏み台共。ヒカリの持ってる奥義はこんなもんじゃないからな!」
これは戦いじゃない、一方的な蹂躙なんだぜ。
そう言って、ランドウは邪悪な笑い声をあげた。 - 129◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:46:10
投下を終了します
- 130◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:50:27
ちなみにティターニアとブレイズドラゴン大会優勝してない問題ですが
ティターニア:剣道の大会に参加していたのは中学まで。魔法少女との二束の草鞋であり半ば幽霊部員。結果は全国ベスト8。魔法少女にならず剣道一筋に打ち込んでいれば最高学年の時に全国制覇できるポテンシャルはある。
ブレイズドラゴン:一度裏格闘技の大会に出たが一回戦で相手を即死させてしまい出禁になった。観客が見たいのは裏の格闘大会であって公開処刑じゃないので……。 - 131◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:51:23
明日余裕があれば投下できるかもです。
明日投下できなければ次の投下は金曜夜になると思います… - 132二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 21:54:43
そう言えばスピードランサー姉貴って大会には出てるの?
- 133二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 22:21:59
岡田以蔵(Fate)の始末剣に、ワンピースにおけるヴェルゴの武装色応用やニンジャスレイヤーにおけるムテキ・アティチュードのような魔法を合わせるのは実際脅威!
惜しむらくは対人戦特化型なことか - 134二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 23:56:02
強いけど弱い感じがする
才能はあるがそれを活かす駆け引きが弱いので案外あっさり落ちてくれるかも…? - 135二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 08:38:47
age
- 136二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 13:13:01
井戸の中のヒカリちゃん大海を知らず
- 137二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 21:42:30
一度通用した技をずっと擦りそうな弓ヶ浜
- 138二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:12:09
- 139二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 01:16:50
ヒカリ
- 140二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 07:46:12
保守
- 141二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 13:35:07
設定的にバルバロイやハイエンドよりずっと格上だろうけどバルバロイから「戦ってもつまらん」って言われそうだし
ハイエンドに研鑽の足りなさを指摘されたあげくぶっ飛ばされそうな魅力のあるヒカリちゃん - 142二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 19:09:25
負けて生き残ってたとして、修行するかと言われると頭打ちでしなさそうなのもヒカリちゃんポイントが高い
- 143二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:06:34
ここぞとばかりにメリィのランドウへの評価が上がってるのが前振りに見えて仕方がない…
どう華麗に散るかが見せ場だぞ… - 144二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 02:19:45
なんというか今の所『付け焼き刃レベル100』って感じなのよね
大体の技はできるんだろうけれど、『できる』だけで自分のものにしていないイメージ
ティターニアのように1つの技を使いこなせるかと言ったら無理そうだし、ブレイズドラゴンのように狂気じみた行動ができるかって言ったらこれも無理そう - 145二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 07:51:32
技の性能だけ見て判断するスペック厨なのは間違いない
やっぱただのコレクターか… - 146二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 13:58:40
元ネタが強烈過ぎてそのイメージでしか語れない
- 147二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 20:32:43
元ネタまんま出してくるのは流石にないと思うし、どんなキャラになるか楽しみです
- 148二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 23:28:25
トレースが完璧だから戦闘スタイルはしっかりした堅実な立ち回りなんだろうなと思うと同時に
比較対象のようなイカれた強味は感じない、絶妙な塩梅 - 149二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:23:31
保守
- 150二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 23:17:38
なんだかんだライバル認定した相手にも一定のリスペクトがあって好きだよ
- 151二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 07:40:27
保守
- 152二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 14:59:14
保守
- 153二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 22:22:21
保守
- 154二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 03:00:14
手法
- 155二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 07:45:00
そろそろ続きじゃ
愉快な挑戦者達が勝つか…果たして - 156二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 13:27:23
保守
- 157二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 21:26:08
あげ
- 158二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 23:15:31
狂愛を冠してる以上、ガチの狂人の可能性も無きにしも非ず
ヒカリちゃんの本性が常人に収まるのか… - 159◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:26:50
投下します
- 160◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:38:34
楽して強くなりたい、という言葉を聞いたとき、ヒカリは首を傾げた。
楽して強くなるのは、当たり前のことだ。
ヒカリは、強くなることに苦労したことは一度も無い。
一目見ただけで他者の流派や奥義を完璧に模倣できる。魔法ではなく、技術でもなく、生来の才能として、ヒカリにはそういう異能が備わっている。
努力、稽古、修行。そういった泥臭いことに従事したことは一度も無い。
魔法少女に覚醒したときも、驚きは無かった。
むしろ納得した。
この世界には魔法少女という存在があり。人間は魔法少女に逆立ちしたって敵わない。
ならば、楽に強くなることを宿命づけられている自分が魔法少女になることは、極めて自然なことだと。
- 161◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:48:16
抜刀している鎧騎士に、手刀で立ち向かう。
人間世界なら無謀な突撃でしかないが、これは魔法少女戦。
そして鎧騎士の戦力は、弓ヶ浜ヒカリ――魔法少女名「ランドウ」にまるで及ばない。
宮本武蔵がたった独りで吉岡道場一門七十人と戦った伝説を再現するかのように、ランドウの暴力は騎士団を蹂躙していく。
鎧は裂かれ剥がされ潰される。剣は弾かれ折られ奪われる。馬は転がされ裂かれ殺される。
槍ヶ崎流槍術、陣内流剣術、抜刀流居合術、ブレイズドラゴンの拳法、その他空手柔道合気道テコンドームエタイカポエラボクシング剣道薙刀喧嘩殺法……多種多様な技術を駆使し、ランドウは無双する。
「ちょっとは気張れよ、ヒカリの評価がもっと上がるためにさぁ!」
ナチスへの信仰もなければ、叶えたい願いもない。
ただ、楽して強くなって評価されたい。
最強の魔法少女はランドウだと証明するために。 - 162◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:53:46
とてとてと、騎士団の間をすり抜けるように走る影があった。
「雑魚は立ち入り禁止だぜ」
VRゴーグルをつけたゴスロリ人形だ。ヒカリには一切縁が無い世界である。
だから、普段のように光は拳を振り下ろす。
ぐわん、とその腕が後方に弾かれた。
「はぁ?」
帽子を目深に被った魔法少女が、メリィを守るように立ち塞がる。
「何弾いてくれちゃってるわけ?」
後方から迫る騎士を回し蹴りで仕留めながら、ランドウは手刀による突きをああああに放つ。
ぐわん、と再びランドウの腕は弾かれた。
- 163◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:59:39
舌打ちと共に、ランドウは飛び蹴りをああああに浴びせた。
だが、ああああは微動だにすることなく、逆にランドウの肉体が弾かれて元居た場所に戻る。
「キャイッ!?」
何だこの魔法は? とランドウは訝しむ。
攻撃を全て反射する魔法か?
あるいは念力でも使えるのか。
見たところ、この帽子の魔法少女は雑魚だ。立ち方を見れば分かる。自分に自信が無い、雑魚の立ち方だ。きっと今までの人生ずっと奴隷として過ごしてきたに違いない。
(コロス……!)
そんな奴にこのランドウの攻撃が不発した。
あってはならない事態に、ランドウは瞬時に頭に血を昇らせる。 - 164◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 01:00:10
眠気が強いので本日はここまでとさせていただきます。保守や感想、ありがとうございました。
- 165二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 07:06:53
待ってたよー乙
元ネタに劣らぬ瞬間湯沸かし器 - 166二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 09:14:50
おつー
- 167二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 15:29:16
乙
- 168二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 21:41:47
保守
- 169二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 23:10:44
投下お疲れ様です!
ランドウの鳴き声が愛くるしくて… - 170◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:19:23
投下します
- 171◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:25:49
魔法少女は特別な、神に選ばれた存在である。
そんな風に宣う者がいれば、ああああは唾を吐くに違いない。
自分のことを特別だと勘違いできたのは、魔法少女に覚醒してからほんの一、二年だけだった。
裏社会に所属し、肉壁としてこき使われ、脱走した果てに辿り着いた「あにまんマンション」でこの世の地獄を味わった。
そこから救い出されたかと思えば超越者たちの宴に雑用として巻き込まれ、右往左往している内に超越者たちに挑む側に立たされている。
魔法少女にさえならなければ、普通の人生が送れたはずなのに。
魔法なんて、呪いみたいなものだ。 - 172◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:35:00
メリィとランドウの間に割り込んだのも、正義感ではなく、使命感でもなく、もちろん恋心でも友情からでもなく。
単純に、今メリィに死なれると自分が困るから、という酷く打算的な、されど切実な思いから来るものだった。
ランドウは、怖い。
かつて所属した裏社会で何度も見て来た、日常的に暴力を振るう者特有の気配。
一度や二度拒絶したところで、しつこく付き纏われ、ああああが屈服するまで暴力を行使し続ける異常暴力愛者。
きっと、碌な人生を送れないに違いない。
「キャイイイイイイッッ!」
ランドウの手刀が、ああああに振り下ろされる。
ランドウは、身体の一部を硬質化させることが出来る。これにより武器術を素手で再現するのが、ランドウの基本戦術だ。
剣道三倍段という言葉がある。
竹刀を持った初段の剣道経験者に勝つには、空手や柔道は三段クラスの実力が必要という意味だ。
ましてやランドウは剣道だけでなく、空手や柔道もマスターしている。
そんなランドウの三倍の実力を持った相手――そんな者は存在しないとランドウは確信していた。
「キャイイイイイイイイ!」
「拒絶ゥ!」 - 173◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:49:29
だが、魔法少女の戦いとは——相性である。
生身同士の戦いならああああが100人いてもランドウが勝つ。
この世に魔法少女など存在しなければ、ああああが格下でランドウが格上だ。
この世界に、魔法少女は実在する。
ランドウの殴打は、ああああに傷一つ与えない。
ランドウの隔絶した近接戦闘能力がまったく意味を成さない。
戦いの土俵に昇れない。
「雑魚がッ! 偶々魔法ガチャでレア引いたカスがッ! 真面目に鍛えてる人に謝れ!」
「知らねぇよ馬鹿アホ間抜け! 魔法使われるのが嫌なら魔法少女なんか辞めちまえ!」
「今ヒカリのこと馬鹿って言ったか!? ヒカリは馬鹿じゃない! みんなヒカリのこと天才って褒めてる!」
「じゃあ今まで言われなかったぶん、私が言ってやる! バーカバーカ! 本当に賢い奴はこんなヤバい儀式で門番なんかやってねぇよ!」
「また馬鹿って言ったな!?」 - 174◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:58:07
「キャイイイイイイイ……なーんてな♪」
怒りに満ちた声が、瞬時に嘲りへと変わった。
瞬間、ランドウはああああの背後に回り込んだ。
「噴ッ!」
掌底が、ああああの後頭部に放たれる。
どれだけ魔法性能が高くとも、使用者は魔法少女——殆どの場合、中身は少女である。
認識の外から攻撃すれば、魔法を発動する前に倒せる。
魔法少女戦のセオリーの一つ。
ランドウもまた、それに熟知している。
果たして、ランドウの掌底は——ぐわん、と弾かれる。
「はぁ!?」
「オートガードだ馬鹿女! いちいち見てから拒絶してたら――」
未だ、ああああは帽子さえ脱げていない。
マジカルストラッシュさえ弾いた魔法少女は、ランドウの方へ振り返る。
「あのマンションでやっていけねぇよ」 - 175◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:08:46
怖くない、とああああは思う。
かつてああああを恐怖で縛り、使役していた裏社会の者たち。ランドウはその典型で、かつああああが所属していた組織など単騎で皆殺しにできそうな実力を持っている。
恐るべき相手だ。
が、あにまんマンションには純粋暴力ではどうにもできない初見殺しかつ意味不明の罠が幾つもあった。
目的のためならあらゆる倫理を食い荒らし、合理的に探索する、増殖する狂気があった。
それから逃れた後も、パンデモニカという悪魔に肉壁にされ。
最強に直々に目を付けられ、このゲームの大ボスであった存在と魔法少女たちの戦いを間近で見ることになり。
最強を狂信するガンマンに銃口を向けられ続け。
ある意味、ああああは狂ってしまった。 - 176◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:18:15
なるほど、ランドウは怖い。強い。残虐だ。関わり合いになりたくない。
それでも、ここ数年、ああああが関わった人物の中で。
「お前が――ダントツで小物だよ」
「——もう絶対にコロス。ここまで雑魚に侮辱されたのは初めてだ」
濃密な殺意が膨れ上がる。
内心で怯えながらも、ああああは鼻で笑ってみせた。
命を奪う前にちゃんと宣告してくれるだけ、どこぞの獣共より幾分マシである。
それに。
時間稼ぎは出来た。 - 177◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:32:38
「あんまり強い言葉を使うなよ」
その声は、上から降って来た。
VRゴーグルをかけ、スク水のような露出度の高い衣装の魔法少女が、空中を浮遊している。
「弱く見えるぜ★」
魔法少女ナイトメア★メリィ。新衣装のお披露目である。
「お前……さっきの雑魚か?」
「僕が雑魚であることは否定しないのだ」
空中を浮遊しながら、メリィは腕を組み頷く。
「それはそれとしてちょっと疑問があるのだ。
お前はブレイズドラゴンの拳法をマスターしているのだ?」
「当たり前だろ。ヒカリはね、一度視ただけでどんな技術でも自分のものにできるの。みんなヒカリを天才だって言うんだよ」 - 178◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:32:52
「じゃあ、どうして【絶招】を使わないのだ?
ああああの魔法に効くかどうかは分からないけど、試してみる価値はあるのだ」
(何を言っているんだあいつ!?)
突然裏切られたああああは動揺した。否、これは裏切られたのか。何だか「AにBをぶつけるとどうなるか試してみよう」というオオカワウソ的な発想のような気もする。つまり最低最悪の発想だ。
ランドウは——沈黙した。
「あれ、使えないのだ? 見たら使えるはずなのに?
うむむ……これは二つのパターンが考えられるのだ。
①見たけどお前には難しくて使えない。
②雑魚すぎて見せる前に負けた。
どっちが正解なのだ? 僕のデータベースには答えが乗ってなかったのだ、へけっ」 - 179◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:46:30
ランドウは黙している。
そして、絞り出すような声で言った。
「……なぁ、もしかしてヒカリが近距離攻撃しか出来ないと思ってるのか?」
噴火直前の火山のような、激情が籠った声。
「ヒカリはさ、天才だからあらゆる戦闘術をマスターしている。
その中には——こんなのだってあるんだぜッ!」
一瞬の動きだった。
その場の誰も、ランドウの動きを目で追えなかった。
動作自体はシンプルだ。
足元にあった石を拾い、メリィに向かって投げつける。
投石術。人類最古の技術の一つ。それは決して、時代遅れを意味しない。
そもそも、魔法少女の膂力で放たれる投石は、銃弾を超える脅威だ。ましてやランドウの身体能力は魔法少女の平均を逸脱し、かつその動作には確かな技術が乗っている。
身体能力的には最底辺のメリィは、避けることも出来ずに脳を石が貫通して即死。
さっきまでのメリィなら、そうなっていた。
石は、メリィを貫通した。 - 180◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:46:45
「なっ!?」
「メリィは日夜アンチコメントと戦っているのだ。今更石を投げられたくらい、どうということはないのだ」
そして、とメリィは言う。
次の瞬間、ランドウの身体は宙を舞っていた。
生身で車に衝突したかのような衝撃がランドウの全身に響き——そのまま意識を刈り取った。
「メリィのレス速度は超高速なのだ。倒した敵(アンチ)の数なら、お前はメリィの足元にも及ばないのだ★」 - 181◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:47:09
投下を終了します
次の投下は明日の予定です - 182二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 00:50:10
ヒカリはバカじゃないもん! 天才なんだもん! みんなヒカリのこと天才って呼ぶもん!
- 183二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 00:52:48
実際ヒカリちゃんってどのくらい強いんです?
- 184二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 01:35:37
ヒカリちゃん可愛い!
- 185二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 08:59:21
メリィあげ
- 186二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 10:04:52
絶招は使用、再現不可か…このままヒカリちゃんのラーニングをどう攻略するかが楽しみだぁ
- 187二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 17:14:09
ほ
- 188◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 18:32:57
投下します
- 189◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 18:42:47
ナイトメア★メリィが【狂愛の木蔦部屋】を選択したのは、アルセーヌの入れ知恵があったからだ。
『そこに行けば、強化アイテムが手に入る』
信頼できず信用できない親愛なる部長の言葉に、メリィは動いた。
戦力は足りていない。
ブレイズドラゴンという規格外の暴力、そしてそれを蹂躙せしめたバーストハート(始まりの魔法少女)。
自分たちは弱いのだと、メリィは知ってしまった。
少し特殊な力が使える、ただの中学生に過ぎない。
だからこそ、この局面で魔法少女部及びクラスメイトが全員生きているのは奇跡なのだ。
自分たちより知恵のある者も、自分たちより強い者も、自分たちより悪辣な者も、悉く死んでいったのだから。 - 190◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 18:51:49
クィーンの騎士団がランドウと戦いを繰り広げる最中、メリィはその隙に入城を試みた。
ああああのサポートもあり、ランドウという暴力を掻い潜って城の内部に入り込んだメリィは、そのまま石畳を走り抜けた。
魔法陣は何処にあるのか、強化アイテムは何処にあるのか。そこまでは知らない。
部長は敢えて教えてくれなかったのか、それとも彼女も知らなかったのか。
とにかくメリィは走った。
余裕をかなぐり捨てて一心不乱に走った。
変身前でも変身後でも激しい運動なんて嫌いだが、構わず走った。
ランドウ以外にもう一人魔法陣の護衛者が居れば、自分は死ぬ。
クィーンやああああがランドウを倒して城の中に駆けつけることは出来ないだろう。
ランドウはまごうこと無き小物だが、その実力は確かだ。
ブレイズドラゴン程の絶望感は無いが、そんな感覚どこまでアテになるものか。
スカウターなど無い。
サーチすれば正確な実力を判断できるかもしれないが、その時間も惜しい。 - 191◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 19:04:09
「っていうか、マジで何処にあんだよ、くそっ」
誰も居ないので、素の口調が漏れる。
城の中は思ったより広い。魔法少女は人間の十倍の身体能力があるとはいえ、城の中をくまなく探すには時間が掛かる。
こうしている間にも、クィーンやああああが殺されているかもしれない。
焦りと共に、メリィは各部屋を駆けまわる。
三つ目、四つ目の部屋を探索し終えたメリィは、五つ目の部屋へと足を踏み込んだ。
其処は、寝室のようだった。
真紅の天蓋付きベッドに、蔵書がみっちり詰まった本棚。
薄いカーテンが備えられた窓からは、アイビーの緑が広がっている。
メリィは足を止めた。
寝室は無人ではなかった。
ベッドに腰を下ろし、微笑む少女が居た。
知った顔だった。魔法少女部のメンバーではない。クラスメイトでもない。
このゲームで知り合った者でもないし、テレビの有名人でもなかった。
もう二度と会えないはずの者だった。
「くる姉……?」
年上の幼馴染、柩枢(ひつぎくるる)が其処に居た。 - 192◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 19:04:30
投下を終了します
- 193二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 19:51:19
ん…死んだ人?それ関係なんかあったけな…
- 194二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 20:57:50
乙です、世間は狭い物スね
- 195二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 23:23:56
弱く見える立ち振る舞いが感覚を狂わせる…
実際、投石という予想外の攻撃までしてきたし何するか分からなくなってきた - 196二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 06:20:07
保守
- 197二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 07:53:59
何かあるねこの城…
- 198二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 15:37:17
保守
- 199二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 23:00:35
ほしゅ
- 200二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 01:41:35
ほ
- 201二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 07:45:13
くる姉(AIWOTD)とメリィくんって結局本編で顔合わせたことないんだっけ
- 202二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 07:46:17
ランドウ以外敵はいないはず。おそらくは罠ではないはずだが…
- 203二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 11:57:41
この市は通りすがりの怪異もいるから怖い
- 204二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 11:58:43
通りすがりの怪異…もしかしてこれ機骸の大怨霊?
- 205二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 17:43:06
ソレダ(オリバ画像略)
- 206二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 23:33:36
案外、ヒカリちゃんは冷静だと思ってたけど、怒り通り越して殺意で冷静になってた感じだったか
自身の感情も利用する狡猾さよ - 207二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 07:42:10
保守
- 208二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 14:20:31
保守
- 209二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 21:27:23
保守
- 210◆xaazwm17IRZa25/05/28(水) 22:36:03
一つお聞きしたいんですけど、週一に長めの更新、2、3日で短めの更新だと、どちらが良いんでしょう……?
- 211二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 23:05:57
私は大丈夫ですよ(週一)
- 212二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 23:06:52
個人的には〜スレ主が楽な方がいいかな
- 213◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:05:12
お二人とも、回答ありがとうございます。
他の方も自由にお好みを書いていただけると助かります。
私個人としては、書きやすさに有意な差は無いです。 - 214◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:05:28
投下します
- 215◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:06:11
柩枢(ひつぎくるる)。
ナイトメア★メリィ=逢魔愛裏の、年上の幼馴染。
故人。
「どうして、くる姉が生きてるんだよ……?」
メリィは、魔法少女に変身している時、「のだ」「へけっ」といった、キャラの立った口調で話す。わざとそうしている。
素の、地味な自分がコンプレックスだからだ。
逢魔愛裏は、地味な少年だ。愛裏はそう自認している。
愛裏がそう思い込んだ主因は、小学生の時につるんでいた。柩枢という少女が派手だったからだ。
自称魔法少女で、あらゆる物事に首を突っ込み、強引に物事を解結する。
愛裏は枢の異常な行動力に振り回された。
悪くない時間だったと、愛裏は後に思う。 - 216◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:06:57
中学生になって、自称ではない、本物の魔法少女とつるむようになったが、枢は本物魔法少女に勝るとも劣らないキャラクター性をしていた。
——生きていれば、本物の魔法少女になった。愛裏は確信している。
枢は、高校に上がってすぐに命を落とした。
異様な死に方だった。
○○高校大量中毒事件。
その日、給食を口にした生徒全員が中毒症状を起こし、誰一人助からなかった。
食品管理が杜撰だったのか、何者かが毒物を混入したのか。
奇妙なことに、警察がその日生徒たちが口にした料理の成分を調べても、毒物反応どころか、衛生すら万全に保たれていた。賞味期限も切れていなかった。
生徒と同じく口にした教師、味見をした調理員。いずれも無事であり、健康状態に何の異常も無かった。
魔法少女を自称し、特異なキャラクター性で、けれどどこまでいっても魔法少女ではなかった柩枢。
彼女は、魔法みたいな死に方をした。
愛裏は、インターネットで情報を漁った。 - 217◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:07:43
枢が死んだとき、愛裏はまだ小学生だった。
小学生でも出来る「犯人捜し」が、インターネットの検索だった。
けれど、ネットの海は広大で、真偽もあやふやだった。
電子の海を自在に泳ぎ、全てを調べ尽くすことが出来たら。
愛裏は、そんなことを願うようになった。魔法みたいな夢想を抱いた。
ベッドに腰かけ、枢はじっとメリィを見つめている。
何を考えているのか、表情からは伺い知れない。
「くる姉……」
と、メリィは枢に呼びかけた。
生きていた、そう思いたかった。
思いたいのに、理性が邪魔をする。
「幻覚……なのか?」
魔法は、何でもありだ。 - 218◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:08:47
CG、VR、そんな科学技術を超越した、本物と遜色ないリアリティある幻覚だって創り出せる。
(いや……けど……)
メリィは、繁華街の戦いを思い出す。
バーストハートも、ネコサンダーも、死んだはずなのに生き返った。
魔法は何でもあり。ならば、死者の蘇生さえも?
(駄目だ……冷静になれ、僕……。バーストハートも、ネコサンダーも、医者が死亡確認をしたわけじゃないし、死んでいたとしても、肉体はばっちり残ってた。
けど、くる姉は数年前に火葬されてる。蘇生の難しさは繁華街の二人と比べて段違いのはずだ。
だから、やっぱりこれは幻覚……。
けど、それって人間の、化学の基準に過ぎないわけで……。魔法なら、肉体が残ってる残ってないは誤差に過ぎないのかも……)
ああ、駄目だな。
と、メリィは思った。
(僕は、目の前のくる姉を、本物だって思いたがってる) - 219◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:09:35
それが、偽りざる本音。
(死んだって理解しているのに)
名簿に「柩枢」という名前が載っていても、メリィは同姓同名の別人だと判断した。
クィーン曰く、柩枢=魔法少女「」アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド」は、人間を支配し操る、凶悪な魔法少女だとか。
それは、メリィの知る「くる姉」とは似ても似つかないキャラクター性だ。
柩枢は死んだ。
故人だ。
そのはずなのに。
「何とか……言えよ!」
メリィは吠えた。ナイトメア★メリィとしての、魔法少女としてのキャラクターを維持できない程、彼は動揺している。
「ねぇ」
と、唐突に枢は口を開いた。
- 220◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:09:58
投下を終了します。
- 221二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 00:12:04
週2、3回くらいで短めの投下でも見れたら嬉しいですね
- 222二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 07:01:20
週何回かに分けてくれた方が嬉しいっすね
いくらカテが過疎る一方とはいえ、ただでさえ安価ダイスの頻度が低いうえに週一更新がデフォとなると流石にスレとしての体裁が危ういので - 223二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 07:50:45
話せる頻度が増えると嬉しい…
- 224二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 14:57:58
スレ主の投稿が長期間無いと自動的に過去ログ行きか削除される仕様っぽいし多少はね
- 225二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 15:14:51
一週間ぐらいスレ主の書き込みないと落ちるっぽいね
それはそれとしてやっぱり短くても更新が多い方がいいかな - 226二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 22:09:06
保守
- 227二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 22:48:31
この得体の知れない存在をどう暴いていくか、もう既に戦いは始まっている…
- 228二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 07:25:21
保守
- 229二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 07:43:28
ヒカリちゃんは今の話題と言い、割とタイムリーである
- 230二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 16:05:33
保守
- 231新入り希望25/05/30(金) 21:46:36
すいません、新入りしても大丈夫?
- 232二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 22:16:56
どうぞどうぞ〜
- 233新入り希望25/05/30(金) 22:20:13
最初に何からすればいいですか?最初のテンプレプロフィールを埋める?
- 234二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 23:48:31
(キャラクリエイトの話だったか…)
新規の募集は終わってたと思います - 235新入り希望25/05/31(土) 00:04:55
それは失礼しました、確認不足でした
- 236◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 01:59:09
皆さん回答ありがとうございます。
できるだけ2、3日のペースで投下していきます。
さっそく投下します。 - 237◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:01:05
枢の声色は、メリィの思い出の中の柩枢と瓜二つだった。
「もしかして、あなた、愛裏?」
随分見違えたわねぇ、と枢は目を細めた。
ナイトメア★メリィは、VRゴーグルをしたゴスロリ人形少女。
当然、中学生男子・逢魔愛裏とは全く違う姿をしている。
見違えるのも当然だ。変身しているのだから。
「くる姉は……そのまんまだな」
「そのままだったら良かったんだけどね……」
枢は、寂し気に笑った。
「私はね、失敗したの」
「失敗?」
「うん、私の人生は失敗だった」
何だそれ。
メリィは強く苛立ちを覚えた。
若くして死んだから? 魔法少女に成れなかったから?
だから失敗?
そう言いたいのだろうか。 - 238◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:01:23
そんなわけないだと、とメリィは声を荒げようとして。
「私は——死んだの」
枢の言葉に、怒りの声を呑み込んだ。
薄々分かっていたことだが、やはり枢は死んでいた。
分かっていたはずなのに、メリィの心を落胆が襲った。
「私は死んで――魔法少女になった」
「死んで……?」
死地に合って……とか。
瀕死になって……とか。
そういう話なのだろうか。
違う、とメリィは感じた。言葉の綾ではない。
「魔法少女って……人間が変身するものだろう?」 - 239◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:04:16
「必ずしもそうじゃないんだよ」
例えば、ヒートハウンド。
例えば、フライフィアー。
例えば、パペッタン。
このゲームには、人間以外の存在が複数参戦している。
「魔法少女『アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド』は——柩枢の死に際の無念から生まれた魔法少女だよ」
死ぬ前に覚醒したのではなく。
死に際の想念が魔法少女化したもの。
「だからね、私の人生は失敗だったの。
生前の私が助けた人の数より、死後の私が殺した数の方が、ずっと多いんだから」
私は、生まれてくるべきじゃなかった。
と、柩枢は断言した。 - 240◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:05:02
◇
時々、自分を見失う時がある。
逢魔愛裏という少年は、地味で目立たない存在だ。
魔法少女ナイトメア★メリィは派手派手で個性の立った魔法少女だ。
そのギャップに混乱する時がある。
キャラ作り。ナイトメア★メリィはわざと個性の強い口調で喋る。
あえて一人称を「メリィ」にすることもある。バカっぽいと我ながら思うが、その方が変人キャラ感を出せると思ったからだ。
その反動なのか「素」の自分が「僕」なのか「俺」なのか「私」なのか、分からなくなる時がある。
逢魔愛裏とはいったい何者だったのか、思い出せなくなるときもある。
ナイトメア★メリィが個性を主張する理由。
その根底には、くる姉への憧れがあった。
本人は絶対に認めようとはしないが。
「——間違えてないのだ」
と、魔法少女ナイトメア★メリィは断言した。
「くる姉の人生は間違えていない。メリィがそう断言するのだ★」 - 241◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:05:50
「いいえ、間違いよ。アリスの犠牲者は——夥しいわ。
誰だって、死にたくはなかったはずなのに」
「それは——否定しないのだ。
けれど、だから人生が失敗だったなんて決めつけるのは、早いのだ」
「私はもう、死んでいるのに?」
「まだ――メリィが残っているのだ」
と、力強く、メリィは宣言した。
「魔法少女柩枢の最初の弟子であるナイトメア★メリィが、このゲームをぶっ壊して、悪い奴らをみんな捕まえてやるのだ」
メリィの言葉に、枢は苦笑する。
「——それが、貴方の愛なんだね、ナイトメア★メリィ」
メリィは頷いた。
部屋が、メリィを祝福するかのように発光する。
そして。 - 242◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:06:40
◇
(結局、あれはくる姉だったのか?)
仮に幽霊だとして、どうして狂愛の木蔦部屋に居たのか。
メリィには、まるで分からない。
分かることは。
「動けないのだ」
地面に身体をめり込ませながら、メリィは唸った。
クィーンが心配そうに、ああああが呆れた様子でメリィを見下ろす。
「メリィ……あなた、自分の魔法をコントロール出来ないの?」
「今さっき習得した魔法を、そう簡単に使えるわけないのだ」
クィーンに差し伸べられた手を取り、メリィはゆっくりと起き上がる。
そして三人の視線は、大の字で倒れている、黒いスウェットの女に向けられた。
「殺した方がいいんじゃないのか?」
ああああの時に、二人の中学生は顔を顰める。
ああああの言葉は正論で、だからこそ二人は口を開けない。 - 243◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:06:52
投下を終了します
- 244二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 07:22:42
柩枢(ひつぎ くるる)/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド
【得意な魔法】
(中略)彼女の命令に一つだけ絶対厳守で活動する。
意識と自我を無くし最終的に死に絶えるが、屍になっても命令が完遂されない限り動き続ける。
この説明文、他ならぬ魔法少女AIWOTD自身にも当てはまるのがまた美しい - 245二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 10:53:27
ヒカリちゃんはこの先生きのこることができるのか
- 246二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 13:21:49
ヒカリちゃんもうやられてる…想像通りだったと言うか予定調和と言うか…
- 247二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 21:28:24
保守
- 248二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 23:45:41
気分屋だから生かしておいても変な事はしないと思うのよなランドゥ。さて、処遇は如何程に
- 249二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 08:46:31
このレスは削除されています
- 250二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 09:01:22
保守
- 251二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 15:43:56
保守
- 252二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 23:19:03
メリィの原点の振り返りと大幅強化、そして強敵(?)ランドゥの撃破
とりあえず順当に攻略出来てるみたいで、ヒカリちゃんには悪いけど特にトラブルも無く終わって良かった… - 253◆xaazwm17IRZa25/06/01(日) 23:43:44
投下します
- 254◆xaazwm17IRZa25/06/01(日) 23:48:06
人殺し。
覚悟してこなかったわけではない。
ブレイズドラゴンと戦っていたとき、メリィはブレイズドラゴンを生かすつもりは無かった。
そんな余裕は無かったし、気絶させて縛り上げた程度ではまるで安心できなかった。
例え四肢を切断できたとしても、怖くて仕方なかっただろう。
だから、今更殺しが嫌だと、言えない。
クィーンも同様だった。
彼女は——既に、魔法少女を一人殺している。
大量無差別殺戮犯だったとはいえ、殺しは殺しだ。
(もし手を汚すなら——それは私がやるべきだわ。
それが、女王の責務) - 255◆xaazwm17IRZa25/06/01(日) 23:52:01
ああああに至っては、ランドウを始末することに心理的葛藤は殆ど無かった。
善良な魔法少女ならともかく、ランドウはデスゲーム運営側の人間で、普通にこっちの命を奪うつもりで襲いかかって来た。
生かしておいて復讐されるのも面倒だし、気絶している間に、さっさと始末したほうがいいに決まっている。
(さっきは挑発と不意打ちで上手くいったが、総合的には私ら三人より絶対強いだろコイツ。いきなり正解ルートを引けたようなもんだ)
「殺した方がいいとは、僕も思うのだ」
「だろ?」
「けど、殺したくないのだ」 - 256二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 23:56:26
どこら辺が強くてブレイズドラゴン達と互角と言われているのか全く分からなかったネタキャラかませ犬のヒカリちゃん
元ネタを考えるとらしいのか? - 257◆xaazwm17IRZa25/06/01(日) 23:57:01
クィーンはどうなのだ? とメリィに訊かれ、クィーンも頷いた。
「私も――殺したくは無いわ。
死んでいい命なんて、本当はないはずだから」
(こいつら、甘すぎだろ……)
ああああは、呆然とした。
そして、運営魔法少女(雑用)として仕入れた知識を思い出す。
(二人とも、中学生か……)
これが、「普通の感性」なのだろう。ああああが遥か昔に失ったもの。
羨ましい、と思った。
どれだけ拒絶を重ねても、失ったものは回帰しない。
(こんなとき、オオカワウソなら……。
まず増やして、一人は殺してもう一人を……・
いや、もう絶滅した奴らのことなんか考えたって仕方ないか)
しかし、どうするべきなのだろう。
二人を説得してランドウをこの世から永久退場させるか。 - 258◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:09:15
何だかそれはしたくないな、とああああは思った。
(……そうだ。私はあくまで生存優先。脱出派、打倒運営派についていかないと生き残れないんだ。ここで無力化した運営側魔法少女でも駆除を主張したら『じゃあお前も元運営だし駆除するか』って流れになる。
これはあくまで合理的選択。それだけだ)
結局、気絶したランドウは、クィーンの創り出した鎖(正確には鎖を武器とした騎士の召喚)で雁字搦めにしたうえで、城の地下牢に放り込んでおくことにした。
ランドウがどれだけのスキル、あるいは膂力があるのかは計り知れないが、ゲーム終了時までに復帰してくることはないだろう。
呪いさえ解除できれば外部に助けを呼べる。
あにまん市以外の魔法少女に袋叩きにしてもらい、魔法国の監獄にでも放り込めばいいだろう。
「念のために、もしまた僕たちに逆らったらお前の銀行預金0にするぞ、とメモを残しておくのだ」
「えげつねぇな……」
かくして三人の魔法少女は、誰一人欠けることなく、衛兵を倒し、魔法陣の破壊に成功した。
全ては順調、そんな風にさえ思えた。
メリィとクィーンがミストアイの死を知って絶句し。
ああああが校舎から生えたあにまんマンションを見て気絶するのは、数分後のことであった。 - 259◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:09:32
投下を終了します
- 260◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:11:57
ちなみにランドウとブレイズドラゴンはケンガンオメガで例えると弓ヶ浜とアギトくらいの実力差です。
- 261二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:13:47
そーいえばブレイズドラゴンの必殺技が使えなかったのは単純にヒカリちゃんの技量不足ですかね?
- 262◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:20:05
模倣が魔法では無く自前の特技というビックリ人間なヒカリちゃんですが、
裏を返せば魔法では無いので、人間に不可能なこと、物理的に不可能なことは模倣できません。
魔法少女のことを一切知らずに裏格闘の世界で王者やってるのが本人は一番幸せだったと思います。
- 263◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:24:32
魔法陣攻略戦……次の舞台は
アニー・アーマン邸
挑戦者(汐沫 夏実/ジェイルフィッシュ、桐生 ヨシネ/バーストハート、槍ヶ崎 舞矢/スピードランサー)
ボス(姚 莉鈴/ハイエンド、???) - 264二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:33:04
ハイエンドちゃん、タイマンイベントでジャスティスファイアやバルバロイと互角の強さなのは明言されてるから、今まで描写された設定的に格上のクライオニクスクラスには勝ち目がほとんどないし、そこより更に格上のスピードランサー姉貴には相性的にももっと勝ち目がなさそうね
仮想敵の技量自体は並程度なティターニアと違って初見殺しにも引っかかりそうにないし
まぁ運営側もそんな事は分かり切ってるだろうから????がいるんだろうけど - 265二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:39:22
もう追加戦士も待機してるキャラ以外は使い切ったし???が誰なのか気になるー
- 266二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 01:11:37
ハイエンドはブラックブレイドとも地味に好感度ダイスで90あるし、バーストハートと三人で武術交換会の回想で仲良かったところ見せてくれたら嬉しい〜
- 267二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 01:43:37
お疲れ様でしたー
- 268二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 07:49:32
投下お疲れ様です!
ヒカリちゃん、銀行預金0が一番効きそうなのが何とも - 269二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 14:57:43
保守
- 270二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 21:08:21
保守
- 271二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 23:25:13
思っていたよりブレドラとの実力差が絶望的だった
自前の特技が貴重なだけにタクティカルアドバンテージがあまり無いのが残念だな - 272二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 05:31:20
保守
- 273二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 07:54:03
挑戦者側が万全なだけに「???」の存在が不穏…
- 274二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 14:51:24
ほるほしゅ
- 275二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 21:45:02
過去編でチーム戦の経験も作中トップクラスに長い事が判明したスピードランサー姉貴の頼もしいところに期待!
過去編で一緒に大暴れしてたらしいティターニア先生と違ってなぜか知名度が皆無なのが非常に気になるけど……幼馴染の先生と同じように真ラスボスぶっ倒すまで最強格らしい別格感をぜひ見せて欲しいです
バーストハートとハイエンドの因縁の戦いも熱いですね! 特にバーストハートはまだ自前の魔法を使ってないので……戦闘シーンがどうなるか予測できないのがワクワクします
タイマンイベントの戦闘力ランキングだとバーストハート→ハイエンドは非常に勝ち目が薄い気もしますが……頑張って欲しいですね
???の正体や、ジェイルフィッシュの魔法がどう勝負に影響を及ぼすかも見届けたいところです - 276二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 23:08:03
J保守
- 277125/06/04(水) 00:10:26
テスト
- 278125/06/04(水) 00:14:20
規制されました
- 279二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 00:17:02
Oh
- 280125/06/04(水) 00:31:40
三題噺
「島」「息」「家の中のトイレ」
魔法少女トリックスターは家の中のトイレに隠れ、息を殺していた。
家、といってもそれは人間界にある、彼女が育った家ではないし、魔法国で彼女が借りているアパートでもない。
その家は、小さな孤島に一軒だけ建っている。
木枠にレンガ、ヨーロッパに伝統的に見られる木組み構造。三世帯程度なら問題なく住める広さの、この島には似つかわしくない住宅。
島は、無人島である。 - 281125/06/04(水) 00:35:56
無人島なのに、家がある。
ならば無人島ではないのか。
(住んでいるのは魔法少女だ)
と、トリックスターは思う。
魔法少女は人間ではないから、魔法少女しか住んでいない島は無人島。
そんな特別意識を、トリックスターは持ち合わせていない。
答えはもっと単純だ。
この家には、魔法少女が住んでいる。
その魔法少女は--人間ではない。 - 282125/06/04(水) 00:41:40
軽快な声が、リビングから聞こえてくる。
楽しげな、少女の声。
トリックスターは気配を消したままトイレから出ると、そっと声の方に近づいた。
そして、やはり気配を消したままするりとリビングに忍び込む。
声の主は、絨毯に腰を下ろし、楽しげに言葉を発している。
手に持つのは、戦車、そのミニチュアである。
それらを両手で持ち、金髪の少女は高らかに言葉を紡ぐ。
「バンバンバン!ドカーン!ヒュルルル、デュクシッ!デュクシ!」 - 283125/06/04(水) 00:48:12
少女は箱に手を伸ばし、幾つもの黒い戦車を取り出す。
「ウラー!ウラー!」
その向かい側に並べた戦車を持ち上げ、ヒーンと言った。
「助けてー!助けてー!」
そして少女は箱の奥に入っていた、他の戦車と比べて遥かに大きな戦車を、ゆっくりと絨毯の上に安置した。
「もう大丈夫だ!私が来た!」
「来た!マウス来た!」
「これで勝てる!」
一人で何役も演じながら少女は大きな戦車を動かし、絶対に履帯が外れないと思わせる軽快な動きで黒い戦車部隊を弾き飛ばした。 - 284125/06/04(水) 00:50:48
いよいよテンションが上がったのか鼻歌でワルキューレの騎行を歌い出した少女を、トリックスターは冷めた目つきで見守る。
少女の名を、アインという。
人間ではない。
彼女は、戦車が変身した魔法少女である。 - 285125/06/04(水) 00:51:35
投下を終了します
スマホからは書き込めるみたいなので良かったです。 - 286二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 01:53:35
トリックスター……えっトリックスター!?
- 287二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 07:50:32
「これで勝つる!」
- 288二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 09:13:16
実戦では糞の役にも立たなかった戦車マウスが変身した魔法少女がこれを言うとアレな感じがするわね
- 289二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 16:24:33
保守
- 290二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 00:09:58
保守
- 291二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 07:20:34
保守
- 292二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 07:52:38
ブンドド中なのね
- 293二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 12:53:21
過去話かな?
- 294二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 21:24:32
保守
- 295二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 00:10:56
保守
- 296二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 07:54:23
こうして見るとアニー・アーマン邸の面子がガチすぎて逆に不安になるね…
- 297二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 15:23:14
このレスは削除されています
- 298二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 22:14:19
保守
- 299二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 00:17:47
アインちゃんのロールプレイ内容もしかしてブロントさ(ry
- 300二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 08:46:39
保守
- 301二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 14:41:49
保守
- 302◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 22:39:09
【名前】アイン
【変身前・変身後の外見】
変身前:なし
変身後:サイバーチックなボディスーツに機械装甲を装備した金髪ロリっ娘。
固有武装としてMG34マシンガンを手に持つほか、強力無比な12.8cm戦車砲や7.5cm副砲を自由に発現できる。
【年齢(製造年数)】80年以上
【趣味/魔法少女としての日課】
【好きなもの】戦争、第三帝国、トート・アリア
【嫌いなもの】弱卒
【性格】傲慢で幼稚
【得意な魔法】
『重力を操れるよ』
「自重で地面にめり込んで動けなくなる」という自身の致命的な欠陥を解決したいという思いから発現した魔法。
118トン近くもある自分の体重を軽くして活動しているほか、魔力消費が重くなる代わりに空中を飛行することもできる。
魔法としては凡庸の範疇だが、自身の戦車としての武装と組み合わせて戦闘を行う。
【魔法少女になったきっかけ】
トート・アリアによって終戦間際にナチスドイツの兵器庫から持ち出された試作型超重戦車『マウスhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/マウス_(戦車)」が魔法少女化した。
つまりフライフィアーやパペッタンの同類である。
【詳細】
アリアの配下の魔法少女。機械ゆえに支配を受けない特性から対パラサイトドールの戦力として温存されていたが、先んじて仮想敵が退場してしまったために持て余されている。
本人はまるで気づいていないが、現在は対参加者の捨て駒か、『勇者』の最終実戦テストの当て馬として生かされている状態である。
【備考】
超重量と重装甲に任せた格闘戦も得意。
同じ立場のハーゲンのことは心の中で小馬鹿にしまくっていた上に「自分は役目を失ったアイツとは違う」と考えている。
失敗作として打ち捨てられた自分に役目をくれたアリアのことが心の底から大好き。
- 303◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 22:41:09
【名前/魔法少女名】柏木 彩/デスグラシア
【変身前・変身後の外見】
変身前:薄緑色の髪をポニーテールにした陰のある美女 服装はブランド物の赤いスーツ
変身後:白銀のベネチアンマスクをつけた白いタキシード姿で両手にマチェットを持っている
【年齢】27
【趣味/魔法少女としての日課】ガーデニング/世の中の理不尽を正すこと
【好きなもの】人から優しくされること
【嫌いなもの】理不尽
【性格】自己顕示欲と自己愛が強いが臆病で引っ込み思案
【得意な魔法】
『怒りを魔力に変えるよ』
自分の怒りの感情を魔力に変換しブーストをかける
彼女は常に理不尽に対して怒りを感じておりその出力は凄まじい
あまりにも長時間かけ続ければ自分の肉体を傷つけるが一時的にであれば本来の魔力量以上にも変換できる
【魔法少女になったきっかけ】世の中の理不尽を正したいから
【詳細】
あにまん市ではかなりの力を持つ会社の社長令嬢
何不自由なく、少なくとも客観的には社会的にも経済的にも家庭的にも恵まれて育った
だが自己愛と他責思考と減点主義の権化であるため彼女は「もっといい家庭に生まれるはずだった」
「親の会社がもっと大きいはずだった」「もっと素晴らしい才能を持って生まれるはずだった」と思っている
そしてそれらは彼女にとって「世の中の理不尽」として変換され「理不尽な仕打ちを受けている可哀想な自分」に酔うための材料となる
結果としてこの年齢になっても一度も働いたこともなく好きに生きているのに自分を「世界一不幸な悲劇のヒロイン」だと心の底から信じているモンスターと化した
【備考】
才能は本物で単純な戦闘力ならあにまん市の魔法少女最上位層となんら遜色ない
しかし精神が未熟なため実際に戦えばよほど運に恵まれない限り勝利は不可能である
それを自覚しているが故に「自分より強いなんて理不尽」と最上位層に一方的な憎しみ、特にティターニアは親の仇のように憎んでいる
同様に自分より恵まれた環境で生まれ育ったミョルニルも同じぐらい憎んでいる - 304◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 22:41:33
投下します
- 305二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 22:43:01
フライフィアーが「もう少し経験を積めば四強に匹敵」って話だったから、アインもスペックノートを見れば四強級って感じでしょうか?
このあと規格外級であろう『勇者』の噛ませ犬になることも考えると…… - 306◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 22:47:53
透明化したまま、トリックスターはアインの様子を眺める。
金髪のロリっ子である。可愛い。
しかしその正体は人間ではなく——戦車。
(無機物の魔法少女化……。非常に珍しいけど、前例が無いわけじゃない。あにまん市のパペッタンやフライフィアーと同じタイプだ。
いや、彼女こそがプロトタイプと呼ぶべきか……)
トリックスターは情報通である。
諜報に適した魔法、そして魔法国役人という立場。
(魔法少女アイン……彼女もまた、近いうちに開かれる儀式の参加者候補の一人だ) - 307◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 23:41:20
人間が魔法少女に変身するだけで兵器として運用可能になる。
ならば兵器が魔法少女に成った場合、どうなるのか。
考えるだけで恐ろしい。きっとあにまん市は壊滅してしまうだろう。
(ますます、儀式から逃げなければならなくなった)
それがトリックスターの目標。情報を詳らかにし、自己の安全を図る。
今、アインを監視しているのもその一環。
トリックスターは振動を感知した。
巨大な物体が、この島に上陸した。
……この無人島に?
わざわざこんな島に来るならば、目的は一つ。
「アイン」に会いに来たに違いない。
ということは、島に来たのは。
(トート・アリアか)
トリックスターは、既にその名前を知っている。 - 308◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 23:46:53
◇
Uボートが砂浜に打ち上げられている。
ハッチが開き、二つの影が飛び出した。
どちらも少女のものだ。
魔法少女・ナイナイホテプ。
魔法少女・フロストハウンド。
トート・アリアの忠実な部下である二人の改造魔法少女は、華麗に砂浜に着地すると、赤絨毯を広げた。
やがて、潜水艦の中から白衣の魔法少女——トート・アリアが姿を現わす。
「グーテンモルゲン、アイン」
「ギャーッ! アリア様ッー!」
奇妙な歓声をあげながらアインはアリアの下へと駆け寄る。
アインの背後に控えている巨躯の女性――改造魔法少女ハーゲンは、呆れた様子でそれを眺めていた。 - 309◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 23:52:59
「随分と待たせたな。キャタピラもすっかり錆びついてしまっただろう。
アイン。貴様に任務だ」
「ギャー! 承ります、アリア様!」
「我々は人造勇者計画を進めてきた! だが——この勇者は出来損ないだ、使えないよ。
よって、アイン。今後の研究に生かすために、我が配下でもっとも優秀な兵器である貴様に、勇者の粛清を命じることにした。
存分にその性能を生かすがいい」
「ギャギャギャー! 任せてください、アリア様!」
誇らしそうに胸を張ったアインは、ハーゲンに視線を向け、フン、と鼻を鳴らした。
最も優秀な兵器と呼ばれた。ライバルであるハーゲンとは格付けが完了したと、そう示したのだ。
ハーゲンは鬱陶しそうにその視線を払った。
- 310◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 23:59:40
「それではアリア様。その失敗勇者は何処に居るんですか?」
「うむ。彼女は潜水艦の中で惰眠を……」
その時、その場に居た全員の鼓膜が、奇妙な音楽によって打ち据えられた。
全員が、そちらに視線を向ける。
沖合。
一隻の小型ボートから、その音楽は聞こえて来た。
『デ・デ・デ・DEATH~♪
デ・デ・デ・DEATH~♪』
「何だ、この間抜けな音楽は!? アメリカ製か?」
驚愕するアリアにフロストハウンドがすかさず望遠鏡を差し出す。
「要らん。吾輩の視力は20.0だ」
ボートには、一人の女が乗っていた。 - 311◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:05:31
奇妙な女である。
白銀のベネチアンマスク、白いタキシード。
そして腰に提げる、二本の山刀(マチェット)。
怪人は、拡声器をナチス一向に向けると、声を張り上げた。
「お前達、そこで何しているデース! とっとと出て行けデース!」
「ふむ。我々がどこに行くかは我々が決める。ここに残るかどうかも我々で決める」
「いやふざけんなデース。その島は、私の所有物デース」 - 312◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:10:49
不法侵入するなし、と怪人は毒づいた。
(あいつは……)
未だ透明化しているトリックスターは、女の正体に心当たりがあった。
(不味いな。直ちに離脱しないと巻き込まれる。
あの女は——ある意味、ナチスよりヤバい)
女の名前は柏木彩。魔法少女名、デスグラシア。
アインが戦車が魔法少女になった存在なら、デスグラシアは。
「とにかくナチスが私の島に住むことは許さないデース! ブランドに傷がつきます」
暗黒金持ちが魔法少女になった存在である。 - 313◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:20:57
◇
かつて、あにまん市はアウトロー魔法少女の聖地だった。
糧鮴を始め、数多の悪しき魔法少女が違法なビジネス及び無益な縄張り争いを繰り返しており、治安は悪化の一途を辿っていた。
そんな超無法都市あにまん市を、裏から支配していた者こそ柏木家である。
表向きは優良企業、裏では様々な犯罪に手を染めていた悪しき一族。
彩は、愛されて育った。
箱入り娘である。当然、犯罪とも無縁だった。
それでも彩は常に理不尽を抱えて生きて来た。
自分は不幸だと、定義していた。
確かに、自分の家は金持ちだ。だが、岸村家の方が金持ちだ。
確かに、自分は美貌だ。だが、もっと美しい者は世界に存在する。
確かに、自分は両親に愛されている。だが、この程度の愛ではまるで足りない。
足りない、足りない、足りない。
ああ、何て理不尽。
9歳のとき、彩は魔法少女デスグラシアに変身した。
そして、自分が求める愛を与えてくれなかった両親を撲殺した。
- 314◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:27:13
◇
敵だ、とアインは思った。
嬉しい、とも思った。
敵がいる限り、自己の勝ちを証明できる。役立たずではないと立証できる。
「アリア様。勇者の前に、まずアイツを殺しますかー? ギャギャギャー! 木っ端微塵にしてやるぜー!」
「ふむ……」
信頼すべき上官、アリアは顎に手を当て、思案している。
「些か、物足りないと思っていた」
「ギャギャ?」
「アインよ、新たな命令を下す。
そこの騒音女と『協力』して、勇者を粛清せよ」
「ギャーン!?」
何故? という疑問がアインの脳裏を駆け巡った。
勇者と騒音女、同時に相手したっていいのに。
どうして二人がかりで勇者に挑まなくてはならないのか。
だが、命令は絶対だ。下された命令を遂行できないなど、兵器失格だからだ。
ふと、ハーゲンと目があった。
その眼が、どこか同情を感じさせる目つきが、アインにはたまらなく不愉快だった。 - 315◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:27:29
投下を終了します
- 316二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 02:26:52
乙です、え?つまりこの三人が来るってコトですか...?恐ろしいね
そして積み上げられた爆薬が今までよく着火しなかったと思うあにまん市 - 317二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 09:24:00
このレスは削除されています
- 318二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 10:16:35
キャラが濃すぎる……!
- 319二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 11:09:55
戦車と暗黒金持ちと言う明らかな鉄砲玉要員
デスグラシアはヘイトの向け方が異常だけど品定め自体は割と当たってるのが何とも… - 320二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 12:22:21
勇者のスペック的に最上位クラスの魔法少女✖️2でも秒殺だろうと思って居たら、なるほど過去編か…
確かにバトロワ中ずっと雑魚狩りしてどんどん強くなっていったらしいし過去なら試合が成立するのか - 321二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 20:47:57
冒涜の竜関係やマンションの脅威はもう何度か見たので、勇者やアリアという新しいタイプの強敵は新鮮なのでめっちゃ嬉しい
始まりの魔法少女や冒涜の竜本体を上回るようなラスボスになってくれるといいねえ - 322◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 22:12:04
投下します
- 323◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 22:23:16
マチェットを構え、デスグラシアはボートから島へと飛び移った。
そして、ベネチアンマスク越しに不法侵入者たちを睨みつける。
(一、二、三、四、五……多いデース)
デスグラシアは10代のころ、ティターニアやスピードランサーと何度も激突した古強者である。最終的にあにまん市を追い出されることになったが、「怪人デスグラシア」の名は、今も都市伝説としてあにまん市に残っている。
(魔法少女は、相性バトル。故に、複数の魔法少女を相手にすることは危険デース!
だけど……)
この島は、柏木家が所有している土地である。
この魔法少女たちは、そこに不法侵入している。
更には、ナチスの恰好までしている。
(ナチスに好き勝手されるなんておかしいデース! 理不尽デース!
理不尽は、正さないと) - 324◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 22:35:46
デスグラシアは想像する。
きっとこの魔法少女たちは今まで何の不自由も無く育ってきたのだろう。幼い頃に親を無くした自分と違い、ぬくぬくと一日三食プリンでも食べていたに違いない。ナチスのコスプレだって親におねだりして買って貰ったに違いない。どうせナチスの歴史なんてものYouTubeのショート動画で学んだのだ。デスグラシアが学生の頃はそんな便利なものなくて、教科書を読むしか無かったのに。令和キッズマジで許せん。デスグラシアの島に侵入したのもきっと思い出作りに違いない。ウチらの友情永久不滅☆とかそんなノリだ。みんなでプロフィール帳とか回しているのだろうか? 自分が子どもの時は、あにまん市の民度がゴミなのもあって誰もデスグラシアと仲良くしてくれなかった。何も悪くないのに灰色の青春生活だった。喋りかけてきた有象無象は居たがブスが愚図しかいなかった。それなのにこの五人組は無人島に探検に行く青春を送っているのだ。みんなでナチスごっこをしながら。デスグラシアの方がこいつらよりよっぽど苦労してきたしずっと努力してきたし親が居ない逆境を乗り越えてきたし魔法少女として研鑽もしてきた。今も自分は正論しか言ってない。自分の所有する土地に勝手に入らないで欲しいなんてのは人類に与えられた固有の権利のはずだ。こいつらはそれを踏みにじった。デスグラシアの当たり前で真摯な願いを平気で蹂躙する、きっと己の快不快のみで行動する半グレみたいな価値観なのだ、switchの転売で小遣い稼ぎもしているのかもしれない。許せない、許せない、許せない、そんな理不尽があっていいだろうか。いつだって自分が正しいのに、こういう奴のせいで人生が狂ってしまったのだ。ずっと不幸な目に遭ってきたのだ。こいつらさえ生まれて来なければ、もっと幸福な人生を送れたのに。正されるべきだ、正すべきだ、その力をデスグラシアは持っている。 - 325二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 22:40:51
このレスは削除されています
- 326◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 22:51:45
「ギャー! アリア様の命令は聞こえていたか。マスクの魔法少女よ、お前は私と協力して、勇者を粛清するのだ!」
アリアの呼びかけに対して、デスグラシアは言葉を返した。
「——黙れ。お前たちはもう喋るな、デス。」
心の底からの憎悪を込めた重力さえ感じさせる言葉。
額に青筋を浮かべ、漆黒の瞳をデスグラシアはその場の全員に向けた。
「お前たちは、存在してはいけない生き物デス」
まるで家族の仇でも討つかのように、あるいは此処まで数多くの仲間が犠牲になったかのように。
今のデスグラシアは復讐者だった。
「んん? 何だ貴様? 吾輩、貴様の故郷の村燃やしたりしたか?
どうせ打製石器しか使ってなかったような村なんだろうし、気にするな」
アリアの挑発なのか素なのか不明瞭な言葉にも、デスグラシアは敏感に反応した。
「だせいせっき……? お前、小学生のとき私がペンケースを可愛くないって言われて深く傷ついたことをどうして知っているのデスか? まさか、その時からずっと嫌がらせをしていたんデスね……? 許せねぇデス……今まで何を考えて私に粘着して来たんデスか……本当に気持ち悪いデス……人類史上、ここまで不幸な人間は私デス……」
「いや、吾輩そんなの知らんし」 - 327◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:00:48
「DEAーTH!!」
寄生を発し、デスグラシアはアリアへと飛び掛かった。
その俊敏さは、その場に居た五人の魔法少女を瞠目させるほどの速さだった。
並の魔法少女ではない。
仮にかつてハーゲンやアリアと同時代に生まれ、同じ戦場に立っていたとしても、確実に名前を遺したであろう逸材。
その速さに割り込む影が、一つ。
Uボートから飛び出した、小柄な影。
革ベルトに革靴。中世ヨーロッパ風のチュニックに白いマント。手に持つのは、重厚な黄金の大剣。
それは、日本国民の「勇者」のパブリックイメージを形にしたような存在だった。
白衣の少女に迫るマチェットの刃を、当然のように「勇者」は受け止めた。 - 328◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:37:46
斬ッと、勇者は大剣ごと縦に真っ二つにされた。
怒りを魔力に変えるのがデスグラシアの魔法。
通常の精神構造ならば、使いこなすことは難しい。例え戦闘を日常とする魔法少女でも、常に相手に激怒しているはずがない。むしろ戦闘慣れすればするほど、怒りは出にくくなる。
だが、デスグラシアはちょっとした不快感から家族の仇レベルまで怒ることが出来る、特異な精神構造をしている。
客観的に見ればこの戦いは何の因縁も無い遭遇戦に過ぎないが、既にデスグラシアの脳裏では物語の最終盤、因縁の相手との最終決戦くらいのテンションである。
二つに分かれた勇者に目も暮れず、デスグラシアはマチェットをアリアに振るう。
「速いが——動きは素人だな」
砂浜を蹴り、アリアはマチェットの振り下ろしを回避する。
振り下ろされたマチェットは——砂を天へと巻き上げ、斬撃は森林部にまで到達する。
異常な威力。
全ての攻撃が一撃必殺。怒りの化身、デスグラシア。
「ギャギャッー!」
——その程度の存在に、アインは臆さない。
アインの肩に、砲塔が出現する。
「Ziel erfasst(照準完了)」
「Laden(装填)」
「——Feuer(発射)」
轟音が、島全体を揺らした。 - 329◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:49:59
ビーチは消失している。
地形さえ変化させるアインの火力攻撃。
変身前と変身後で、身体能力は10倍程度変化する。
ならば巨大戦車が変身した魔法少女の火力とは、いったいどれ程のものになるのか。
両脇にナイナイホテプとフロストハウンドを抱え、ハーゲンは砂塵の中に立つアインを見ていた。
「さらばだ、戦友よ」
そう言って、ハーゲンはUボートの中に跳び戻る。
島に残されたのは、大破壊をもたらした魔法少女、アイン。
そして。
「私に向かって砲撃するなんて——人の心とか無いんデスか?」
全身から煙をあげながらも、更に怒り(魔力)を募らせていくデスグラシア。
そして——。 - 330◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:50:09
「まほう」
「『怪我の治りがすごく早いよ』」
五体満足で立つ勇者。
当然のことだが、改めアインとデスグラシアは認識した。
この島を出れるのは、たった一人。それは自分だと。
(まるで、バトル・ロワイアルだね)
と、森林に身を潜めながらトリックスターは思考した。
(いい加減、そろそろ迎えを寄越して欲しいなぁ、ミネルヴァ様) - 331◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:50:22
投下を終了します
- 332二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 00:34:53
お疲れ様です
全員キャラが濃すぎて凄い - 333二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 07:54:58
急な怪文書にビビった
冷静そうなのにイカれてやがる… - 334二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 07:55:05
こいつらがバトロワに居なくてよかった…
- 335二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 14:59:05
ああああに見せてオオカワウソとどっちがマシか聞いてみたい存在だなデスグラシア
- 336二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 22:22:52
保守
- 337二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 01:20:36
このレスは削除されています
- 338二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 07:51:30
この面子が参加してたらヤバかったな…
- 339二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 16:05:56
保守
- 340二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 19:53:48
根っこの誇り高い武人だった感じが隠せてないハーゲンちゃん好きよ
実はアインちゃんみたいにハーゲンちゃんも最終回時点だとスピードランサー姉貴以外だとほぼ誰も勝てないぐらい強かったのかしら - 341二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 23:10:30
言い方変えればデスグラシアはメンタルコントロールが恐ろしい程上手いね
出力方法がヤバいだけで - 342二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 07:45:19
このレスは削除されています
- 343二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 07:45:19
保守
- 344二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 14:53:38
保守
- 345◆xaazwm17IRZa25/06/11(水) 22:29:58
投下します
- 346◆xaazwm17IRZa25/06/11(水) 22:36:29
Uボートの内部。シートに腰を預けながら、トート・アリアはモニターを注視していた。
空中を飛び回るドローンが、三人の魔法少女の戦闘を、リアルタイムでアリアに届ける。
「でもアリア様、アインを切り捨てて良かったんですか? 確かパラサイトドールと戦うときの切り札にするって言ってませんでした?」
フロストハウンドの言葉に、アリアは微笑を浮かべた。
「兵器というのは型落ちする。一次大戦で猛威を振るった戦車を二次大戦に持ち込んでも、役には立たない。
より優れた兵器が生まれた段階で、旧式は用済みになる」
「こ、怖いのら。私は用済みにされたくないのら」
「恐れることは無い、ナイナイホテプ。常に進化を続ける限り、お前が廃棄されることはない」
アリアの言葉に安心したのか、ナイナイホテプは安堵の息を吐いた。
- 347二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 23:24:36
アイン、カワイソス…
- 348◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:32:14
「ギャギャギャー! 再生するタイプの魔法少女かー!」
アインは獰猛に笑った。
その程度、珍しくもないと言いたげに。
「再生……何それ? それって私の攻撃が無意味ってことデスかー?
つまり、私の人生を無意味だって侮辱したんデスね?
——吐き気を催す邪悪とはお前のことデース」
デスグラシアは不幸で脳を満たしながら、怒りの言葉を吐く。
勇者は、無機質な瞳で二体の敵モンスターを捉えていた。
- 349◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:38:59
魔法少女戦には幾つかのセオリーがある。
相手が魔法を発動する前に倒す、というセオリー。
同時に、相手の魔法を掴むまでは慎重に戦いを進める、というセオリーもある。
魔法の規模、対象、性質、付随効果。
十人十色、一人一人が世界観さえ違う魔法少女において、相手の魔法を決めつけるのは敗北に繋がる道だ。
しかし、上級者同士の戦いになれば、自身の魔法を誤認させるテクニックも交えだす。
デスグラシアもアインも、魔法少女のベテラン中のベテラン。
アインは蓄積された経験知から、デスグラシアも積もり積もった負の記憶から。
この場の最適解を導き出す。 - 350◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:48:05
——両者は、魔法少女戦のプロだった。
故に、気づけない。
この戦いは、ルールそのものが異なるのだと。
「まほう」
「『箒に乗って空を飛べるよ』」
次の瞬間、勇者は箒に跨り、上空へと昇っていた。
アインもデスグラシアも呆気に取られる。
再生能力を軸とした魔法少女だと、二人は分析していた。
剣を装備していることから、再生力を生かしたごり押し肉弾戦タイプ。
「まさかアリア様……一人の魔法少女に二つの魔法を備えたんですか……?」
ぎゃぎゃーん、とアインは唸った。
「何それ……? もう一人隠れているに決まっているデース。
お前たちはそうやっていつも大勢で一人の私を虐げようとする。多数決という愚者が創り出した発明を利用してこの世の不幸を生産し、私を不幸にしようと――」
呪詛を垂れ流し始めたデスグラシアは、同時に姿を隠した魔法少女が勇者のコスプレをした魔法少女をサポートしていると、名推理(ひがいもうそう)を展開していた。
- 351◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:50:39
みるみるうちに高度を上げた勇者は、二体を見下ろす。
——この戦いは、魔法少女戦ではない。
「まほう」
「『マジカル・ストラッシュ』」
空から熱線が降り注いだ。 - 352◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:52:27
投下を終了します
ちなみにデスグラシアに対する魔法少女の反応
ティターニア、スピードランサー、デッドマンズハンド
「「「うわでた」」」
ああああ(もし遭遇していたら)
「増えない分こっちのがマシ」 - 353二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 07:49:38
反応からして恐怖よりも面倒臭さが勝ってるじゃねぇーか!
- 354二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 09:16:25
まあ何言っても地雷踏む面倒臭いやつだし…
- 355二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 10:02:02
バトロワが始まる以前から目をつけてた魔法を使えるようにしていたのか
- 356二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 18:35:04
保守
- 357二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 20:30:54
魔法少女同士の戦いではなく処刑もとい実験
- 358二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 00:05:38
試運転とも言う…
- 359二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 07:48:55
型落ちではあるけど優秀な兵器だし次なる兵器の予行練習に使うのは
流石再利用大好きなアリアさんですな - 360二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 14:34:10
保守
- 361二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 21:51:22
保守
- 362二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 22:00:39
魔法少女と竜の戦いが全ての始まりの物語で、ラスボス候補の正体が魔法少女と竜のハイブリッド体っぽいのはかなーり面白いね(前作の『鬼の心臓』との対比的な意味でも
- 363二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 01:08:17
やっぱり
- 364二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 08:59:14
保守
- 365◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 10:38:15
投下します
- 366◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 10:45:25
空から降り注ぐ、マジカルストラッシュ。
普段のアイン、デスグラシアならば撃たせない様に立ち振る舞った。
だが、相手はティターニアとは似ても似つかない勇者風魔法少女。
マジカルストラッシュを撃ってくる、という発想が二人には無かった。
アインは、砲塔を天へ掲げた。
「ギャギャギャー! そんな攻撃、私の砲弾で消し飛ばしてやる!」
一方、デスグラシアは大地を強く蹴り、その場から離脱を選択した。
「ティターニア! 変装して私を騙したデース! 卑怯! 下劣! 最低!」
二人の魔法少女は、危機を前に取れる手段を選択する。
負ける、死ぬ、そんな発想は彼女たちには無い。
この後の戦闘プランを脳内で構築し、マジカルストラッシュを迎え撃つ。 - 367◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 10:52:29
アインの砲塔が傾いた。
デスグラシアの足がもつれた。
「「は?」」
二人の困惑の声が重なる。
絡みついているのは、糸である。
魔力で編まれた糸が、両者を拘束している。
「まほう」
「『糸を出せるよ』」
魔法少女は、得意な魔法を一つ習得し、それを磨く生態をしている。
勇者にとっては——魔法とは、多様な攻撃手段の一つに過ぎず、状況に応じて複数の魔法から一つを選択して発動するものである。
世界観が違う。戦闘システムが違う。
その事実に、ようやく二人は気づいた。
糸の拘束は二人が渾身の力を込めれば破ることが出来た。
だが、糸から脱出した二人に、マジカルストラッシュに対応できる時間は残っていなかった。
光の奔流が、二人を包んだ。 - 368◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 10:58:06
「あ……ああ……」
魔力を消し飛ばされ、鉄屑に還っていくアイン。
彼女の胸中を覆うのは、深い悲しみ。
勇者を粛清せよ、とアリアから任務を受けていた。
その任務を果たせず、アインはここで消える。
「アリア様……申し訳ありません……やっぱり私は……役立たずでした……」
そう言った瞬間、アインの身体は魔法少女から鉄錆だらけの戦車へと戻り——それもまた、光の中で溶けた。
【アイン 死亡】 - 369◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:02:55
デスグラシアもまた、光の中で自らの身体が溶けていくのを感じていた。
怒りは、湧かなかった。
「——ああ、そういうことデスか」
怪人デスグラシア。これまで何度も敗北しながらも、捕まることもなく、殺されることもなく生き残ってきたのは、敗北の危機に際し、怒りを増幅。危機を脱してきたからだ。
だが、今回は違った。
自らを殺そうとしている偽ティターニアに、怒りは湧いてこない。
「——可哀そうに」
デスグラシアは、勇者を哀れんだ。
それが、彼女の最後の思考だった。
【デスグラシア 死亡】 - 370◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:07:53
Uボートに帰還した勇者は、拍手で出迎えられた。
アリア、ナイナイホテプ、フロストハウンド。
凄い性能なのら、中々やるじゃないと称えられても、勇者の顔に変化は無い。
「ふむ、そろそろか」
と、アリアが言った瞬間――勇者は倒れた。
「え、死んだのら!?」
「魔力切れだよ……ふむ、燃費が今後の課題か……『本番』までに引き続きレベル上げが必要になってくるな」
勇者の状態をチェックしながらアリアは言う。
腕を組んだハーゲンは、勇者に冷たい視線を投げかけていた。
「それにしても不思議なのら? 魔法少女アインは、どうして重力を操る魔法を使わなかったのら? 使う暇が無かった?」 - 371◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:16:03
「使わないのではない――使えないのだ」
勇者のチェックを行いながら、アリアは言葉を続ける。
「魔法少女になった当初は、彼女は周囲の重力さえコントロールできた。だが、ここ数年程は、自分の身体を軽くすることしか出来なかった」
「ど、どうしてなのら?」
「老い、だよ」
アリアは淡々と言葉を紡ぐ。
「元々は無機物でありながら、彼女は——老いていた。軍人然とした人格は徐々に幼稚になり、奇怪な行動も増えていた。性能も徐々に劣化していたのだ」
「元々は、戦車なのに?」
「人間の姿になったことで、人間と同じような宿業を背負ったのか。あるいは、アインだけが突然変異の病だったのか。今となっては分からんな」
もう興味も無い、とアリアは宣言した。
そして、勇者の身体にワイヤーを突き立て、調整を開始する。 - 372◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:20:48
不思議だ、とハーゲンは思う。
アインの身に起きた不幸、ではなく。
アリアの言動に対して。
無機物発祥でありながら、老いていたアイン。
そんな興味深い存在を、トート・アリアが無視するはずがない。
勇者相手に使い潰さず、アインが摩耗しきるまで収容、観察を続けるはずだ。
任務を与えて、戦死させるなど、まるで。
(兵器として最後の役目を与えたみたいじゃないか……)
考え過ぎなのだろう、とハーゲンは頭を振った。
そして、獰猛な戦士として、来る儀式への戦意を高めるのだった。 - 373◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:29:43
「そうですか……逃げられたのなら何よりです。
転移魔法陣が遅い?
無理を言わないで。私だって、極秘に動いているのですから」
そう言って、美しい銀髪の老婦人は掌の魔法陣を消失させる。
彼女の名は、ミネルヴァ・ミストリル。
元魔法少女にして、今は魔法王の妃である。
「しかし、勇者ですか……。
かつて魔法国を救った者が、今度は私たちの敵に回るなんてねぇ」
これも因果かしら、とミネルヴァは肩を落とす。
ミネルヴァの魔法、『計算が得意だよ』。
これによりミネルヴァはある程度の未来予知を可能にしており、トート・アリア一派が魔法国に脅威をもたらすことを予測していた。
「きっと――私たちは負けるのでしょうね」
今の勇者程度なら、魔法国最強戦力、アグネアが容易く焼き尽くせるのだろう。
だが、脅威はアリアたちだけではない。
自分たちは負ける。そして凄惨な最期を遂げる、とミネルヴァは予測していた。
それを回避する手段は、無い。
ミネルヴァには、計算できない。
- 374◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:35:54
「けれど――視ましたね、『ビリーバー』」
と、ミネルヴァは一人の魔法少女の名を呼んだ。
今の自分より過去に居る魔法少女に向けて。一度も会ったことのない彼女に向けて。
「後は、あなたの好きにやりなさい。期待していますよ」
返答は無い。一方通行の言葉。
ミネルヴァは届いたと確信していた。
数日後、魔法国の中枢はパラサイトドールに乗っ取られることとなる。
そして——バトル・ロワイアルが始まる。 - 375◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:36:08
投下を終了します
- 376二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 14:38:59
お疲れ様です
今まで皆目分からなかったアリアちゃんの内面とか目的がちょっとずつ分かってきたような…? - 377二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 16:55:08
ひょっとして単純に自分含めて幕を下ろしたいのか全方向ヘイトナチス
- 378二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 18:15:57
もしかしてアグネアってバトロワ参加者の四強より遥かに強かったりするんですか…?
- 379二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 22:17:06
トリックスターに与えられた任務は単純にアリア達というか魔法国に仇なす輩の偵察、でいいのかな?
- 380二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 01:07:19
元が無機物の魔法少女は通常の老いとは正反対の劣化(幼稚化)が起きる…?
- 381二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 08:08:35
ベホマ、クモノ、ギガデインを習得している勇者
技術と魔法の両方が揃ってないとただの一発芸になっちゃうブレイズドラゴンの必殺技も使えるあたり技量も最強クラスか - 382二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 13:08:58
通常の魔法少女と違って最初から性能が完成しているのは強い
それからは劣化する一方なのは兵器であり、物としての宿命か… - 383◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 16:33:17
投下します
- 384二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 16:41:18
マジカルストラッシュって魔力回収効果なかったっけ?
それでも一発撃っただけで魔力尽きちゃうんだ - 385◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 16:46:47
傷は、回復している。
体内に意識を巡らし、スピードランサーはそう結論づける。
マジックアイテム『回復促進剤』を服用したのが効いているのだろう。
それに伴い、魔力も僅かながら回復し始めている。
(しかし、アニー・アーマン邸……幽霊屋敷ねぇ)
人は死ぬとどうなるのか。スピードランサーは知らない。
幽霊のような性質を持つエネミーは何度も倒したことはあるが、それらが本物の幽霊だとは思っていない。
今からスピードランサーが向かうのは幽霊屋敷として有名なアーマン邸だ。
——死んでいった者が、化けて出たりするのだろうか。
(なんて——都合が良すぎるだろう)
それは、甘えだ。
人殺しという事実を軽くするために生み出した方便だ。
幽霊として会いに来るかも、なんて考えるのは、卑怯な殺人者である自分を甘やかすための思考に過ぎない。 - 386◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:00:07
「何をぼっーとしてるの?」
と、前を歩いていた水着の魔法少女——ジェイルフィッシュに声をかけられる。
「時間が押しているの」
「ん、ああ、悪いな」
ジェイルフィッシュは不満そうに鼻を鳴らした。
苛立っている。殺し合いという渦中に居るのだから無理もない。
発狂していないだけマシだろう。
(どいつもこいつも、大したもんだぜ)
無言を貫く魔法少女、バーストハートもまた、スピードランサーに視線を向ける。
彼女が何を考えているのか、スピードランサーには察することが出来ない。 - 387◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:00:20
元々、人の感情の機微に敏いわけではない。
今この場に居るということは、優勝狙いではなく、脱出狙いだと仮定できるくらいだ。
このメンバーで一番強いのは、自分だ。
驕りや慢心ではなく、事実としてスピードランサーは認識する。
アーマン邸で待ち受けている刺客の相手も、自分がやる。
その後の魔法王ないし運営陣との戦いも、自分がやる。
——皆殺しにする。
それが、大人としての責務なのだろう。
生き残ってしまったスピードランサーの責任なのだろう。
だから。
――ぞくり、とスピードランサーの背筋が泡立った。
- 388◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:03:12
勇者は、落下していた。
意志を感じさせない無機質な瞳で地上を見下ろし、重力に従ってアーマン邸に向けて落ちていく。
その手には黄金の大剣が握られていた。
勇者は大剣を振り上げた。光が収束する。
「まほう」
「『マジカル・ストラッシュ』」
天から地へ、光が発射され、アーマン邸とその周囲一帯を呑み込んだ。 - 389◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:09:16
何が起ったのか、ジェイルフィッシュは分からなかった。
突如、自分が恐ろしい力で引っ張られていることに気づいた。
それも恐ろしい速度で。
そのパワーと速度に、ジェイルフィッシュは成す術が無い。
解決策を発見する前に、ジェイルフィッシュは大地に転がされていた。
痛みはそれほど無い。叩きつけられたというより、移動させられたという感覚が近かった。
振り返ると、赤い槍が粒子化していく途中だった。
(アレで私を移動させた? ということは)
スピードランサーの魔法によるもの。
その目的は、自分たちの避難。
ジェイルフィッシュはそこまで推察する。 - 390◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:57:22
投下を中断します
- 391二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 18:00:41
本当に勝ち目ない敵が出てきちゃった…
勇者の仮想敵はアリアの設定的にほぼ確でバトロワの維持をやめて本気出した天上パラサイトドールだろうし…
本気パラサイトドール(天上無し)は「ティターニアを腕を適当に振り払っただけで肉塊に変えた」とか書いてあるし、スピードランサー居ても適当に秒殺されちゃうぞ - 392二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 18:02:04
スピードランサーちゃんずーーーっと自分を卑怯者扱いしててライナーみたくなってきたな
- 393二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 19:01:03
もしかして魔法陣ごと消滅してる?
なんか防衛に当ててる人員も適当なのしか居ないし本命は別にあったり? - 394二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 19:32:29
天上には天上の攻撃しか通じないから逃げるしかないんじゃ?
- 395二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 21:42:18
あのライナーかて報われたし、スピードランサーの姉貴もエンディングで盛大に救われてるの見たいですな
親友も幼馴染も助けられず、洗脳状態で幼馴染の弟子と罪のない魔法少女殺しちゃった姉貴が十字架背負いすぎてる
- 396二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 23:52:37
「『マジカル・ストラッシュ』」の所
何となく機械音声っぽさがある - 397二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 06:33:43
保守
- 398二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 07:43:34
保守
- 399二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 12:53:21
スピードランサーさん、ティターニアさん相手にビームを全部避けてしまうからほぼ意味をなさないのでほぼ勝ち確らしいし相性は良いな
足手纏いがいるからどうなるか分かんないけど - 400二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 16:39:49
ブレイズドラゴンの必殺技が使えるということは他にも『気を読む』魔法で攻撃先読みとか気配探知も色々できちゃうのか
- 401二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 17:54:07
ブレイズドラゴンの『絶招』は必殺技の中では別にそこまでな性能だし(マジカルストラッシュが使えるなら尚更)、ピンポイントじゃなくて『気を使えるよ』の全部を習得してるだろうね
ブレイズドラゴンが自分の魔法の情報をあちこちにばら撒いてる設定らしいし再現は容易だろうな
- 402二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 23:14:38
保守
- 403二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 23:37:31
マジカルストラッシュみたいな魔力補充だったりビームだったりじゃないぶんまだ有情なんだけど、溜めとか予備動作してる描写が無いのが一番厄介ポイントなのかも
- 404二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 06:34:10
保守
- 405二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 07:44:33
保守
- 406二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 15:00:50
保守
- 407二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 15:23:12
ある程度の知名度や有用性のある魔法少女の魔法を習得させているのかな?
ということは、ティターニアと完全に互角の実力者で一緒に暴れ回ってたらしいのに何故か知名度皆無のスピードランサーや、魔法少女になって日が浅いブラックブレイドみたいなタイプの魔法は習得できてなさそうなのが盲点か
でも逆にスピードランサーが苦手なクライオニクスや、アグネアの魔法を洗脳されてない状態で使えそうなのが怖い(特にアグネアはアリアが直接脳味噌弄ってるんだから理由が無ければ勇者に習得させてないってことはまずあり得ない - 408二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 16:56:50
そういえばドミナートルで既に他の魔法少女の固有魔法を使わせる技術が出てきてるし伏線として違和感ないね。アリアちゃんの技術力がやたら高いの、往年のファンタジー系アニメに登場する異端科学者キャラみたいで好きなので嬉しい
マヒャドモチーフでクライオニクスの氷魔法使うかな? - 409二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 23:32:49
保守
- 410二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 23:33:48
コピー&ペーストで使っている感じがするよね
- 411二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 06:40:50
保守
- 412二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 07:49:13
保守
- 413二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 13:07:01
このレスは削除されています
- 414二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 13:58:16
>天から地へ、光が発射され、アーマン邸とその周囲一帯を呑み込んだ。
地形を丸ごと消滅させる規模の攻撃でも弱パンチ程度の攻撃っぽいのが恐ろしい
核ミサイルの威力なスーパーマジカルストラッシュより威力が上らしいパトリシアの自爆攻撃でも、イクナグンニススズの皮膚を焦がす程度なのはしっかり描写されているから、勇者の攻撃も必然的にそれ以上の威力は攻撃範囲になってくるんだよね製造目的を鑑みるに
- 415二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 16:28:22
勇者が本当に『始まりの魔法少女』と同質の存在ならパラサイトドールの比じゃないレベルでヤバいんだよな
パラサイトドールですら冒涜の竜の成れの果て扱いだし、『始まりの魔法少女』は単独でその本体を倒したんだし…戦略兵器級の攻撃をポンポン撃ってきそう
未完成だとしても最終局面だからパラサイトドール倒せるレベルには成長してるだろうし - 416二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 21:42:08
保守
- 417◆xaazwm17IRZa25/06/18(水) 22:25:19
ダイス次第ではそのまま最終決戦行くかも……
勇者の現在のレベルdice1d100=76 (76)
レベル80以上:天上
レベル100:『始まりの勇者』
- 418◆xaazwm17IRZa25/06/18(水) 22:26:29
投下します
- 419二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 22:31:51
このレスは削除されています
- 420二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 22:33:32
なんか…めちゃくちゃ悠長? アリアにとって勇者は本命じゃなかったり?
デスグラシアにさえ心底憐れまれるあたり - 421◆xaazwm17IRZa25/06/18(水) 22:38:33
さっきまで自分たちが居た場所を、ジェイルフィッシュは見た。
崖の上に建てられた幽霊屋敷、アーマン邸。
其れは——消失している。
屋敷が消失した――のではない。
『崖』そのものが、消失している。
その事実に気づき、ようやくジェイルフィッシュは現実を認識した。
「何なの……それ……」
破壊規模が、魔法少女の其れではない。
戦車の砲撃、戦闘機の空爆。それでも、地形を消し飛ばすなんて芸当は不可能だ。
世界観が違う。
リアルロボットの世界にスーパーロボットが乗り込んできたかのような理不尽さ。
もし、スピードランサーが槍で自分を移動させなかったら、即死していた。
存在の痕跡すら残せなかっただろう。 - 422◆xaazwm17IRZa25/06/18(水) 22:45:51
バーストハートもまた、自分の隣で空を見上げている。
攻撃は、空からやって来た。
それはつまり、敵は『飛行』していることを意味する。
バーストハートもジェイルフィッシュも、飛行手段を持ち合わせていない。
一撃で地形を消し飛ばす存在が、自分たちが攻撃できない場所に居る。
敵。
箒に跨った、ゲームの主人公のような恰好の少女。首から上は——無い。
「え?」
異形なのかと、ジェイルフィッシュは錯覚した。
神童として魔法少女の英才教育を受ける彼女は、魔法少女の変身態が必ずしも人型になるとは限らないと知っている。
「箒に跨った首無し勇者」というのも些かコンセプトが迷子な気こそすれど、決して魔法少女の常識を逸脱はしていない。 - 423◆xaazwm17IRZa25/06/18(水) 23:45:59
チッ、と舌打ちの音が聞こえた。
ジェイルフィッシュは振り返る。赤い女――魔法少女・スピードランサー。
彼女もまた、忌々しそうに空の異形の少女を見上げている。
「防御の素振りも無いから分かっちゃいたが——そういうタイプか」
首無し少女の姿が、蜃気楼のように揺らめく。
(——そういうことなの)
ジェイルフィッシュは、現状を正しく理解した。
突如空中に現れた勇者風魔法少女が、自分たちに大規模破壊攻撃を仕掛けた。
それを察知したスピードランサーは槍を使って自分たちを移動させ。
——同時に、敵へ攻撃を仕掛けていた。
射出した槍で首から上を吹き飛ばすという、シンプルかつ効果的な戦術を。
一切の容赦なく。 - 424125/06/19(木) 00:15:29
日付変わったら規制されたのでスマホから
投下を終了します〜 - 425二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 00:21:16
お疲れ様です〜
攻撃が通じるなら普通に勝てそうな気がする - 426二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 07:48:26
投下お疲れ様です…
しかしほぼほぼ天上に近い存在…こういう場面で速効性のある攻撃は心強いね - 427二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 12:28:26
おつしたー
- 428二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 15:35:40
勇者ははたして「傷の治りが凄く早いよ」のままなのか「絶対に損なわれないよ」の域まで達しているのか
- 429二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 18:58:20
頭吹っ飛ばされても死なないあたり覚醒してそうだね
覚醒前は脳か心臓破壊されたら死ぬらしいし
ハーゲンの無尽蔵に近しい魔力リアクターの技術を経て開発しただろうに魔力切れになるというのはどういうことだろう? まだ完全じゃないとかか? - 430125/06/19(木) 22:26:57
スマホから投下します〜
- 431125/06/19(木) 22:34:51
首から上を破壊した。
例え魔法少女が人間の十倍の頑強さを誇ろうと、首から上が無くなれば死ぬ。
それが理。
だが。
ゆらり、と勇者の体が揺らめく。
ジェイルフィッシュは気づく。
この勇者風魔法少女の身体は。
「炎、か」
スピードランサーは呟いた。
どれだけ槍の穂先を尖らせても、どれだけ早く突いても、水や空気、そして炎を倒すことはできない。どれだけ貫いたところで、意味はないからだ。 - 432125/06/19(木) 22:47:00
(炎なら、私の泡で無力化できるの…。けど…)
そもそも、あの高度まで泡を飛ばすだけで一苦労だ。
そして、勇者には大規模破壊攻撃がある。
最大戦力のスピードランサーの槍も無力化された今、ジェイルフィッシュ、バーストハート、スピードランサーに勇者への対抗策は無い。
詰み。
「此処はアタシが食い止めるから、お前らはメリィに連絡をとって魔法陣を探せ」
びしっ、とスピードランサーは二人を指さした。
「自分らで設置した魔法陣を自分らで消し飛ばすほど、あいつらも馬鹿じゃねえだろ。
魔法陣は、別の場所にある。
それを探し出して、ぶっ壊せ」
「…スピードランサー一人で勝てる相手じゃないの」
「三人なら勝てんのか?」
ジェイルフィッシュは、口を閉じた。
「むしろお前ら邪魔なんだよ。
遅い奴に合わせる余裕なんか無ぇ。
ガキは大人しくしてろよ」
傲慢な、大人の言葉。 - 433125/06/19(木) 22:52:34
小学生のジェイルフィッシュにだって分かる。
スピードランサーがわざと強い言葉を使い、自分たちを遠ざけようとしていると。
そのために、勝ち目のない戦いに挑もうとしていると。
「分かったの…ありがとう、スピードランサー『さん』」
尊敬できる大人だと思った。
彼女の覚悟を無駄にしないためにも、ジェイルフィッシュは一目散に森の方へ駆け出した。
バーストハートも後を追いかける。
その背中を見届けると、スピードランサーは空を見上げた。
「悪ぃな、待たせちまって」 - 434125/06/19(木) 23:00:23
勇者は黙している。
相変わらず身体を炎に変えたまま、下界を見下ろしている。
『貴重な機会だ、ある程度は待つさ』
声が響く。
幼く、されど強烈な自意識に満ちた声。
『勇者初めてのボス戦。相手は四天王最弱のスピードランサー。もっともこの勇者はラスボス一歩手前のレベルなのだがね』 - 435125/06/19(木) 23:01:51
投下を終了します
- 436二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 23:08:38
連日お疲れ様です
スピードランサーって最弱だったのね。あれでも最強言われまくってたティターニアと互角みたいな話じゃなかったっけ? - 437二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 23:14:54
その程度では天上持ってない弱体化したパラサイトドールにすら全く勝ち目ないと思いますよヘイトナチスさん
- 438二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 23:25:17
ヒートハウンドの魔法も使えるのね
それはそれとしてデスグラシアに一刀両断された時も再生出来てたからミョルニルの魔法も覚醒してそうだけど - 439二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 01:24:36
乙です、その人は泥臭く生き残ってるんだから油断なりませんよ総統
(一応最弱云々については煽りじゃない?どう見ても…) - 440二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 01:48:38
そういえば、
ティターニアVSスピードランサーは総合的に互角かつ相性有利でスピードランサーの完勝
ティターニアVSブレイズドラゴンは互いに決定打が無いので引き分け
というような感じでしたが、ブレイズドラゴンVSスピードランサーはどんな感じになるのか教えていただけたら嬉しいです! - 441二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 07:42:43
おそらくはマイクパフォーマンスの一種かと…
- 442二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 10:27:01
おつしたー
- 443二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 17:55:35
おつ
- 444二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 22:40:05
スピードランサーちゃん不器用すぎ!自己犠牲すぎ!
槍の修行をする理由が「強くなりたいから」しか独白で語ってないけど、「なぜ強くなりたいのか」を自覚しないと更に次のステージに行けない感
現状、魔法少女(天上?)として、そしてアイデンティティの槍術で武術家(金やバルバロイが見せた無我・明鏡止水の境地)としての両方で覚醒できそうな唯一のキャラなので、どうにか自分なりの答えに辿り着いて欲しいところ - 445二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 02:22:58
おつ
- 446二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 08:52:28
保守
- 447二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 14:33:24
保守
- 448二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 18:17:30
こんなんでパラサイトドール達と戦うつもりだったのならとってもお粗末だよね。相性有利でスピードランサーに勝ってるだけでティターニア先生が相手なら普通に負けそう
まだ成長途中にせよ、最終盤のこの段階で天上にもなってないのは流石に悠長すぎるし
まぁ流石に何か考えがあってのことかもしれないが…
- 449二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 23:02:22
そもそも一日目の午後が最終盤になるって予想できてたのかな
- 450二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 01:52:24
待機
- 451二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 08:52:46
保守
- 452◆xaazwm17IRZa25/06/22(日) 10:59:22
投下します
- 453◆xaazwm17IRZa25/06/22(日) 11:13:06
最弱、と罵られてもスピードランサーの心は凪いでいた。
彼女はじっと、勇者の一挙手一投足を観察している。
(——無、だな)
勇者からは、武術を学んだ気配は感じ取れなかった。
否、ありとあらゆる生の気配が見つからない。
今までどういう人生を送って来たのか、まるで分からない。
データだけの存在であるかのような、無機質な感覚。
「まほう」
「『マジカル・ストラッ――』」
「遅ぇよ」
勇者の持つ大剣が宙を舞った。
スピードランサーが射出した槍が、大剣の柄に当たり、弾き飛ばしたのだ。
同時に、勇者の背後から射出された槍が、勇者の心臓部を刺し貫く。
その身を炎に変化させた勇者は、スピードランサーの一撃をやり過ごす。
- 454二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 11:13:44
スピードランサーさん初っ端に天上の洗礼を受けて格上ルールで何も出来ないまま洗脳されちゃった人なので最終回では作中最強格くらいに覚醒してカタルシスして欲しい感はある
- 455◆xaazwm17IRZa25/06/22(日) 11:38:40
宙を舞った大剣は瞬時に粒子へと変換され、勇者の手には新たな大剣が握られる。
「まほう」
「『マジカル・ス――』」
再び、大剣は弾き飛ばされる。
「同じことを二回もやってんじゃねぇ――ポンコツか?」
スピードランサーの言葉は、勇者に向けて放たれたものではない。
彼女はとっくに、勇者が操り人形に過ぎないと看破していた。
コントローラーを握っている者を、スピードランサーは鼻で笑う。
「この殺し合いで色んな奴と戦ったが——お前が一番弱いわ(笑)」
最弱と言われたこともしっかり根に持っていた。 - 456◆xaazwm17IRZa25/06/22(日) 11:48:43
「……………………」
勇者は黙している。
心なき者に、スピードランサーの言葉は届かない。
『所詮猿の戯言💢。吾輩の心には響かない😡』
アリアもまた煽りを平然と受け流す。
勇者は三度目となる大剣を召喚し、構えた。
「まほう」
「『雷ネコに変身できるよ』」
雷鳴のような音を伴い、勇者は一瞬でスピードランサーまで距離を詰めた。
「『マジカル・スト――」
「まだ遅い」
- 457◆xaazwm17IRZa25/06/22(日) 11:49:03
スピードランサーの手に握られた槍が、勇者の剣を弾き飛ばす。
「まほう」
「『ありとあらゆるものを増やせるよ』」
——唐突に、勇者の隣にもう一人の勇者が出現した。
彼女は一人目の勇者と同様に、大剣を構えており。
「まほう」
「『マジカル・ストラッシュ』」
光が、地上を駆け巡った。 - 458◆xaazwm17IRZa25/06/22(日) 11:49:47
投下を中断します
- 459二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 11:54:57
スピードランサーちゃんマジで最速なのね…
ただ速いだけじゃなくて宝蔵院胤舜的な先の先ってやつ? - 460二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 12:03:49
乙です
もしかして劇中の魔法だったら全部使える? - 461二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 18:23:35
ボノレノフ?
- 462二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 22:02:52
スピードランサーちゃんがティターニア先生と一緒で子供っぽいところあるの可愛くて好き
- 463125/06/22(日) 23:23:01
PC規制されました
- 464125/06/22(日) 23:25:39
投下します
- 465125/06/22(日) 23:30:45
スピードランサーと別れたジェイルフィッシュ、バーストハートは森の中を駆けていた。
魔法陣の場所が違った。
メリィという魔法少女に騙されたのか、あるいはメリィが偽情報を摑まされたのか。
ナイトメア⭐︎メリィをよく知らないジェイルフィッシュは、どちらもあり得ると考えるしかない。
今、彼女がやらなければならないことは、メリィを疑うことでも、信じることでもない。
この場から離れることだ。
勇者とスピードランサーと怪物同士のバトルから少しでも距離を取る。
それが、ジェイルフィッシュの最優先事項。 - 466125/06/22(日) 23:37:56
すっ、とバーストハートの右腕が蛇のように動いた。
生じるのは、風。
バーストハートの動きに合わせて突風が発生し、ジェイルフィッシュは思わず足を止めた。
「何を……!?」
カカッ、と木の幹に手裏剣が突き刺さった。
「攻撃なの!?」
どこからか投げつけられた手裏剣を、バーストハートが察知し、拳の風圧で弾いた。
ジェイルフィッシュはそう判断する。 - 467125/06/22(日) 23:41:59
手裏剣が突き刺さった幹からは煙が生じている。
ただの手裏剣ではない。恐らく、何らかの毒物が塗られている。
仮にジェイルフィッシュが気づき、触手で弾いていれば、刺突以上のダメージを負っていただろう。
バーストハートは、草むらをじっと睨む。
それに応じるように、音もなく少女が姿を現した。 - 468125/06/22(日) 23:54:51
中華風コスチュームの魔法少女。
ジェイルフィッシュはクィーンからその名を聞いていた。
魔法少女・ハイエンド。
メリィからも情報があった。
恐らく優勝狙いの、職業殺し屋の魔法少女。
「中々いい拳を持っているネ」
ハイエンドは賞賛するように掌を打ち合わせた。
「私の名はハイエンド。拳士として高みを目指すためにお前たちには死んでもら--ったヨ……アイヤー?」
ハイエンドは首を傾げた。
死んでもらっ、まで言ったところでハイエンドは青龍刀をジェイルフィッシュ目掛けて投擲していた。
それをバーストハートは何なく弾いた。
「だったらこれヨ、死ぬヨロシ」
そう言って、ハイエンドは鎖鎌を取り出す。
「あらゆる武器を使いこなす。だから私の名前は『ハイエンド』ネ」
そう言って、ハイエンドは鎖鎌を曲芸のように振り回して、ジェイルフィッシュとバーストハートに襲いかかった。 - 469125/06/22(日) 23:55:12
投下を中断します
- 470125/06/23(月) 00:33:41
投下を再開します
- 471125/06/23(月) 00:43:09
(こいつ……!)
ジェイルフィッシュは戦慄していた。
ハイエンドの振り回す鎖分銅は確かに鋭いが、ジェイルフィッシュの触手なら互角に打ち合える。
だが、初手の毒付き手裏剣によって、ジェイルフィッシュの心に迷いが生じていた。
もし、鎖に毒が付着していたら…?
(そう思わせるための毒手裏剣……。これで私は常に毒の存在を意識せざるを得ないの)
世界観が違うと思わせた勇者。
チート魔法の使い手だったドレッドノート。
邪悪な魔法少女、アリス。
彼女たちと比べて、次々と武器を繰り出す程度のハイエンドの魔法はチートとまでは呼べない。
だが、戦闘の組み立て方、思考の誘導の仕方が、常軌を逸している。
クィーン曰く、ハイエンドは拷問に手馴れた様子を見せていた。
メリィ曰く、ハイエンドはデスゲーム開始前から殺しを日常としている危険人物らしい。
納得する。
この女は、プロだ。
魔法少女殺しの、プロ。 - 472125/06/23(月) 00:44:10
本日はここまでとさせていただきます。
いつも感想ありがとうございます、規制解除された時にコメント返しもさせていただきます - 473二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 00:47:29
お疲れ様です
規制しんどいですよね…投稿してくださってありがとうございます - 474二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 07:47:17
普通(?)の範疇で最強クラスの魔法少女…勝てるか…?
- 475二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 12:21:16
このレスは削除されています
- 476二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 19:20:29
ブレイズドラゴンと比べたら天と地ほどの差があるし何とかなりそう
- 477◆xaazwm17IRZa25/06/23(月) 21:30:22
- 478二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 21:45:21
ハイエンドの師匠のブレイズドラゴンVSいま頑張ってるスピードランサー見てみたかったわね
四強同士で戦うことがなかったから余計に - 479二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 21:54:04
同じ身体能力強化魔法で技量組のハイエンドVSバルバロイは『掴むことが出来ればバルバロイが勝つけど触れるすらできない』みたいな事になりそう
タイマンイベントでは同じランク帯だったと思うけど戦闘スタイルや思想の違いかしら - 480◆xaazwm17IRZa25/06/23(月) 22:11:54
- 481◆xaazwm17IRZa25/06/23(月) 22:24:20
- 482◆xaazwm17IRZa25/06/23(月) 22:24:31
投下します
- 483◆xaazwm17IRZa25/06/23(月) 22:31:57
不規則な動きを見せながら、分銅がジェイルフィッシュに迫る。
辛うじて目で追いながらも、毒という可能性を考えてしまったジェイルフィッシュはその対応に遅れが生じる。
選んだのは泡による防御。
一度だけ外界からの干渉を無効化する、ジェイルフィッシュの新技。
泡によって、鎖分銅は弾かれる。
鎖鎌が、竜のように空中を泳ぎ、ジェイルフィッシュを取り囲んだ。
「っ……!」
自分の周囲に干渉無効化の泡を張る。
不味い、とは分かっている。
外界干渉無効の泡は強力だが、相応に魔力を消費する。
これでごり押しすることは出来ない。
- 484◆xaazwm17IRZa25/06/23(月) 22:41:53
泡で防げるのは一度だけ。
ハイエンドの鎖鎌は一度攻撃をした程度で消えはしない。
直ちに次の手を考えねばならない。
神童・ジェイルフィッシュは瞬時に頭を高速回転させ。
——ハイエンドは、滑るようにジェイルフィッシュとの距離を詰めた。
中国拳法の極意は全身武器化。即ち、全ての攻撃が一撃必殺。
今までの戦闘の流れは、全てジェイルフィッシュとバーストハートに「ハイエンドは暗器使い」という認識を植え付けるため。
ハイエンドが最も得意とするのは、暗殺拳。
拳が届く距離こそが、彼女の絶殺領域。
「しまっ――」
泡を展開する余裕などない。
ジェイルフィッシュは触手を防御に回しながら、襲い来る死の予感に震え。
しゃあっ、と風が動いた。
バーストハートの拳が、ハイエンドの拳をいなす。
ハイエンドは予定調和のようにそこから蹴りへと動きを展開した。拳の一撃などフェイントに過ぎないとでも言うように。
その展開を知っているかのように、バーストハートもまた蹴りを合わせる。
二人は独楽のように回転し、互いに手刀を繰り出し、互いの攻撃を弾きあった。
そして、二人の少女は弾かれたように距離をとる。 - 485◆xaazwm17IRZa25/06/24(火) 00:05:29
「お前……」
ハイエンドの顔は動揺で歪んでいた。冷徹な殺し屋の仮面は剥がれ、彼女もまた魔法『少女』なのだとジェイルフィッシュに実感させる。
「ヨシネか……」
一度変身してしまえば、変身前と知己であっても容易には気づけない。
バーストハート=桐生ヨシネは名簿から知ることが出来ても。目の前の魔法少女がバーストハートであるかどうかなど、ハイエンドには分からないのだ。
拳を重ねない限り。
幼馴染二人は、殺し合いの渦中で互いを認識した。 - 486◆xaazwm17IRZa25/06/24(火) 00:06:49
本日の投下はここまでとさせていただきます……!
感想・ご質問ありがとうございました~
明日は帰宅後用事があるので、水曜日の投下になるかと思います(規制されてなければ) - 487二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 07:27:27
バーストハートはブレイズドラゴンに手も足も出てなかったしすぐに地力の差が出てくるだろうな
- 488二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 12:28:07
保守
- 489二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 18:15:40
ブラックブレイドだけ武術交流会組で強さの方向性が違うんですね
一人だけ武術に傾倒してない魔法なのは一度挫折したからですかね? - 490二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 22:24:36
保守
- 491二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 03:26:36
保守
- 492二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 07:52:59
バーストハート的にハイエンドは短期決戦で落としたい相手だね…
- 493二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 09:32:39
スピードランサーの全盛期が大人になった今でもまだ訪れてないの、逆に言えば肉体的にも武術家的にも最高潮の状態で同時に魔法少女としても全盛期に至れるのか
勇者=始まりの魔法少女っぽいのに、ハーゲンの「スピードランサーはこの時代の『勇者』」評もなんとなくドデカい伏線っぽくて楽しみ
是非とも天上のボスキャラにリベンジしてぶっ倒してほしいところ - 494二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 13:55:08
バーストハートは覚醒済みで心臓パワーなくなっちゃったのが痛いね
- 495二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 20:48:57
- 496二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 21:21:23
そんな「ぼくのかんがえたいちりゅうのころしや」を披露されても…
- 497二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 21:47:50
Vガンダムでもあったな
戦場で「知らない顔の敵」なら躊躇なく撃てるけど、「知ってる顔」は撃てないのかと
『魔法少女』としてはそれで正解なんだけど『凶手』としてはね…
お師匠のブレイズドラゴン? あれは思考回路が違うから…
- 498二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:10:03
- 499◆xaazwm17IRZa25/06/25(水) 23:10:42
本日も始めさせていただきます……!
投下します - 500◆xaazwm17IRZa25/06/25(水) 23:19:28
ハイエンド……姚莉鈴とバーストハート……桐生ヨシネは、深い関係にある。
部外者であるジェイルフィッシュでも一目でそう判断する程、ハイエンドは狼狽していた。
「……無理ヨ。私、トモダチ、殺せない……」
そこに居たのは、葛藤し思い悩む一人の少女だった。
ジェイルフィッシュは、クィーンの言葉を思い出した。
怪物じみた狂気の魔法少女、アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド。
彼女の中に、微かな人間みを感じたと。
死に際の最期の攻防の中で、クィーンはそれを感じ取ったのだという。
テンガイにも、ジャックにも、ドレッドノートにも。
そういう一面があるのだろうか。
どれだけ超越的な力を得ようが、どれだけ悪逆非道な行為に及ぼうが。
魔法少女である限り。
「ヨシネ、私は……」 - 501◆xaazwm17IRZa25/06/25(水) 23:34:02
「——とっくに、覚悟は完了してるネ」
踏み込み。
ハイエンドは俊敏だが、決して最速の魔法少女ではない。
にも関わらず、ジェイルフィッシュはハイエンドがワープをしたと錯覚した。
苦悩しもがく、ゆっくりとした動き。
そこから一気にトップギアまで加速することで、敵はハイエンドを見失う。
貫手が、バーストハートの心臓に向けて放たれる。
ハイエンドの四肢は、魔法少女にとって凶器である。
突きで、蹴りで、貫手で、あるいは髪の毛や息でさえも。
一撃で相手の命を奪う殺人技術を、ハイエンドは備えている。
バーストハートは——ハイエンドの必殺を辛うじて躱した。
退くのではなく、前に出ることによって。
心臓を抉り取るはずの貫手は、脇腹の肉を削ぐだけで留まる。
前で出たバーストハートは、痛みで顔を歪めながらもハイエンドの鳩尾へと蹴りを放った。
だが、バーストハートの足裏は、ハイエンドの足裏によって押し留められる。
ふわり、とハイエンドは宙を舞った。
その顔には、一切の感情は乗っていなかった。
奇襲が失敗したことすら、どうとも感じていないかのような。
- 502◆xaazwm17IRZa25/06/25(水) 23:47:10
「今なの!」
ハイエンドが宙を舞った瞬間、ジェイルフィッシュは泡でハイエンドを包もうとした。
どれだけハイエンドの格闘性能が高かろうと、様々な武器を召喚しようと。
空中で取れる手段は非常に少ない。
そして、一度泡で包んでしまえば、もはやジェイルフィッシュの掌の上だ。
内側から破ることが不可能な泡。
「無敵」のようなチート魔法を持っていない限り、後は魔法を封じられた状態でジェイルフィッシュの触手の一撃を喰らうしかない。
ハイエンドが「無敵」でないことは、今までの攻防で推察できる。
泡はハイエンドを包み。
ハイエンドの口から、炎が放たれた。 - 503◆xaazwm17IRZa25/06/25(水) 23:47:22
「嘘!?」
ジェイルフィッシュの泡は、ハイエンドを完全に包む前に、高温によって割れてしまう。
「お前、二つも魔法を使えるの!?」
「何を勘違いしてるカ? この技は師匠に教わった、れっきとした武術ヨ」
ブレイズドラゴンは武術家である。
ハイエンドの魔法は『ありとあらゆる武術を操るよ』である。
武術家のブレイズドラゴンが使う技は、全て武術である。ハイエンドはそう認識している。
だから——ブレイズドラゴンが出来ることは、ハイエンドにだって出来る。 - 504◆xaazwm17IRZa25/06/25(水) 23:47:40
投下を中断します
- 505二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:55:58
【絶招】使えたのもそういう?
でも本家と比べて明らか威力がカスカスだったし限度がありそう - 506二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 07:48:37
概念系だったか〜っっ
ブレドラがベースになってると思うと想像以上にヤバそう… - 507二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 14:12:59
このレスは削除されています
- 508二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 21:43:20
武術交流会組がすでに居なくなってしまった二人の記憶と魔法を受け継いだハスキーロアと話す機会があったらいいのう
- 509二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:44:34
今日は昨日中断した続きあるかなぁ?
- 510二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 03:14:20
きたい
- 511二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 07:34:16
ほしゅ
- 512二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 07:48:44
保守
- 513二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 10:28:52
このレスは削除されています
- 514二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 18:17:28
このレスは削除されています
- 515二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 23:33:59
ブレイズドラゴンの武術をハイエンドのスペックで可能な限り再現する感じか…
- 516二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 03:11:52
このレスは削除されています
- 517二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 10:30:37
なぜブレイズドラゴンの必殺技使わなかったのか
貫手のタイミングで使えば一撃で仕留められたのに - 518二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 11:04:05
絶招の事も踏まえると色々制約があるっぽい?ここから魔法の全貌が明かされると予想
- 519二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 11:33:44
口ではどれだけ覚悟完了といっても身体は正直だな
- 520◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:18:03
本日も始めさせていただきます……!
投下します - 521◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:19:12
汐沫夏実は、自他共に認める「マイペース」な少女である。
目は常に半目開きで何処となく眠たげな表情をしている。
自称「褒めて伸びるタイプ」であり、説教をされても目をとろんとしながら頷いているのか眠りの世界に入っているのか不明瞭な態度を取る。
何事も気楽にこなす。——こなせてしまう。
マイペースを貫けるのは、人より優秀だからだ。
魔法少女になったのも、友人に誘われたからである。
その友人は一年も経たずに辞めてしまった。街をパトロールしながらエネミーと戦う、ジェイルフィッシュが気楽に、当たり前にこなせることが、その友人には出来なかった。
怖い、と言った。
戦うのは、怖い。エネミーは、怖い。
何より——そんな非日常でも、マイペースを崩さないジェイルフィッシュが、怖い。
そんな感情をぶつけられても、ジェイルフィッシュは眠たげに「そうなんだー、教室では仲良くしてねー」と言葉を返した。 - 522◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:20:11
魔法少女ジェイルフィッシュは、神童であるらしい。
他の魔法少女にそう言われても、ジェイルフィッシュはわーい~とクラゲのような動きをして、それ以上の反応を示さなかった。
小学校と魔法少女のアカデミー、学び舎を二つ掛け持ちしても、ジェイルフィッシュはまったく苦に感じなかった。
気楽に。
それが、ジェイルフィッシュのモットー。他者が四苦八苦する難事も、ジェイルフィッシュには容易く処理できるのだから。
「よっ、夏実。紹介するよ、俺の新しい家族、ミア」
「こ、こんにちは、夏実ちゃん……」
「——は?」
もう少し大きくなったら恋愛対象にしようと決めていた幼馴染、宮島祐樹の家に妙齢の女が上りこんだ時、ジェイルフィッシュの呼吸は一時的に停止した。 - 523◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:22:05
男子とそう体つきの変わらない自分と違い、ミアの肉体は豊満だった。気弱そうな雰囲気でありながら、奇妙な色気を醸し出していた。
まだ祐樹はガキだから気づいていない。
だが、後、二、三年すれば。
——喰われる。
「ミアはな、凄いんだぜー!」
「祐樹くん、そのことは秘密で……」
「あ、そうだった。へへへ、とにかくミアは凄いんだぜー!」
「そんな私なんて……えっと、よろしくね、夏実ちゃん」
おずおずとさし伸ばされた手。
——毒婦め。 - 524二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 14:22:26
このレスは削除されています
- 525◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:23:17
「知らねーの! 祐樹のアホ! エロ! ムッツリスケベ!」
「はぁ!? 全然エロじゃねーし! エロって言う方がエロだし! 夏実のエロ!」
あらゆることを気楽にこなせる。マイペースを崩さすに処理できる。
勉強も、スポーツも、教室での立ち回りも。
エネミーとの戦闘も、魔法の訓練も、他の魔法少女との交流も。
けれど、恋愛だけは例外だった。 - 526◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:24:09
◇
魔法少女ハイエンドとバーストハートの攻防。
アカデミーで基礎的な訓練は受けているが、ジェイルフィッシュは武術にはとんと縁が無い。せいぜいオリンピックの柔道か、相撲くらいだし、それもさほど熱心には見ていない。
それでも、二人の攻防が異常にハイレベルなことは理解できる。
ジャック、ドレッドノート、クィーン、アリス、野生児。
彼女らと違い、二人の動きには明確な術理がある。その術理を叶えるための修練の跡が見える。
——そこまで見えている時点で、ジェイルフィッシュの才能も非凡なものだが、さすがに見ただけで再現できるほど、彼女は天才ではない。
凄い、と思うだけである。 - 527◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:25:21
まるでダンスのようだった。
お互いに次に相手が何をするのか理解しているかのように、攻防が目まぐるしく切り替わる。
四肢を複雑に動かし、拳や足を重ねていく。
(介入する隙が中々無いの……)
バーストハートごとハイエンドをシャボン玉に閉じ込め、上手くハイエンドだけ触手を当てることは出来るかもしれない。
出来る、と断言できないのは、ジェイルフィッシュから見ても、ハイエンドは俊敏であり、勘が鋭く、そして恐らく対魔法少女戦を自分の何倍もこなしているからだ。
呑まれている、と自覚する。
(スピードランサーが稼いでいる時間は無駄にできないの。
私たちが欲しいのは、ハイエンドの命じゃなくて、魔法陣。
きっとハイエンドはこの魔法陣の門番のはず。
どこかに隠し持ってる?)
あるいは、それこそハイエンドの背後にあるのか。 - 528◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:26:19
(ハイエンドの相手はバーストハートに任せて、私は魔法陣探しに専念するのも……)
近接で互角に打ち合う二人の間に強引に割って入るより、役割分担をした方が……。
ジェイルフィッシュがそう考えた時。
衝撃が、彼女の全身を打ち据えていた。
(…………っ!? 何……?)
浮遊感。
引き裂かれるような痛みと共に、ジェイルフィッシュは宙を加速する。
第二の衝撃は、背中から来た。
自分の身体が何か硬いものをへし折ったと、感触で理解する。
落下したジェイルフィッシュは、自分が攻撃されたのだと察し、敵を見定めようと顔を上げた。 - 529◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:28:13
(…………バイク?)
軽トラック程の大きさの、漆黒のモンスターバイク。
森には不釣り合いだと、そんな疑問を頭に浮かべ。
——再び、ジェイルフィッシュの身体は宙に舞った。
バイクに、撥ね飛ばされた。
違う、と激痛の中でジェイルフィッシュは思考する。
バイクから、鋼鉄の腕が生えている。
その腕で殴られたのだ。
(ぼ、防御……)
自らの周囲に泡を展開する――その前に、「バイクの飛び蹴り」が、ジェイルフィッシュの身体に炸裂した。
- 530◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:28:25
突如現れたエネミーにジェイルフィッシュが吹き飛ばされ、バーストハートの顔に驚愕が浮かぶ。
それを感じ取った瞬間、ハイエンドは解き放たれたように加速した。
「『絶招』」
気を込めた直拳による打ち込みによって相手の気を狂わせ、相手の物理攻撃に対する耐性を無効化する。
ブレイズドラゴンの必殺技である。 - 531◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:29:13
ジェイルフィッシュに攻撃を仕掛けたエネミー『ツィヴィリザツィオーン』は、バイクから人型へと変形し、瀕死の魔法少女を見下ろしていた。
文明の名を冠するこの機械兵器は、内部に魔法少女を組み込むことで戦力を向上させていく。
そして取り込む魔法少女は、生きている方が望ましい。
だからこそ、ツィヴィリザツィオーンは、ジェイルフィッシュにトドメを刺さず、血を吐いて蹲る彼女をじっと観察している。
ジェイルフィッシュは、今年で十歳になる。
どんなことも、気楽に、マイペースにこなしてきた。
神童と呼ばれたこともあったし、才能の原石と呼ばれたこともあった。
エネミーとの戦闘を、怖いと思ったことも無かった。 - 532◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:30:47
魔王ドレッドノートやアリスに対しても、危機感は抱いても恐怖心は持っていなかった。
何故なら、ジェイルフィッシュは神童だから。既に精神が完成されているから。
——そうではない、としたら。
未だに祖父も祖母も健在であり、大きな怪我や病を得たこともなく。
ジェイルフィッシュの経験値はどれだけ濃くても十年だ。
ジェイルフィッシュが生まれた頃には、既にハイエンドとバーストハートはブラックブレイドと共に道場で交流していたし、ティターニアやスピードランサーはデッドマンズ事変でブレイズドラゴンやヴェンデッタと壮絶な殺し合いを繰り広げていた。
幼子は高所を怖がらない。落ちたら大怪我をする、あるいは死ぬ、といった現実を知らないからだ。
ジェイルフィッシュは——知らなかった。
痛みは限度を超えると吐き気になるのだと。
こらえきれずに吐けば、折れた歯と血が溢れた。
肋骨が折れ、肺に刺さったのかもしれない。
こんなに痛いのなら、さっさと意識を手放したい。 - 533◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:32:20
けれど、未だ聡明な頭脳が、今この場で意識を手放せば死ぬと告げてしまう。
——大怪我をしたのは、生まれて始めてだった。
一方的な暴力に蹂躙されることも、初めてだった。
痛い、痛い、痛い、痛い。
怖い、怖い、怖い、怖い。
戦うなんて、もう嫌だ。
「う、うううううう……」
頭を抑え、ジェイルフィッシュは身体を丸めた。
両目から涙が零れた。
物心ついて以来泣いたことなどなかったと、ジェイルフィッシュは気づいた。
戦意を喪失した、とツィヴィリザツィオーンは判断した。
文明の名を冠する兵器は、緩慢な動きでジェイルフィッシュに近づく。
取り込む対象物を絶対に逃がさないよう、モノアイを向け続けながら。
恐怖と痛みで蹲り、しくしくと泣く十歳の少女。
ツィヴィリザツィオーンには同情や憐憫といった機能は無い。 - 534◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:57:20
故に、ジェイルフィッシュが短く息を吐いたとき、このエネミーが動きを止めたのは、少女の逃走を万全に防ぐためだった。
ジェイルフィッシュは顔を上げた。
脂汗を浮かべ、呼吸は荒い。
目元は涙で赤らみ、口元は血で汚れている。
気楽でマイペースな少女の面影は、其処には無かった。
「よくも――やってくれたの」
ジェイルフィッシュの周囲に――無数のシャボン玉が出現する。
突如、ツィヴィリザツィオーンの背から機関銃じみたギミックが出現した。
弾幕。ツィヴィリザツィオーンは油断しない。少女の戦意が未だに折れていないと判断し、駄目押しの追撃を行ったのだ。
- 535◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:57:37
弾丸はシャボン玉に打ち込まれ、容易く泡の中に侵入し——そこから破ることも突き抜けることもなく、静止した。
そして、泡の中で静止した弾丸は、徐々に輪郭を失い、溶けていく。
それに比例するかのように、ジェイルフィッシュはゆっくりと立ち上がった。
瞳に込められたものは——怒り。
「——ぶっ壊してやる」
——仮に、糧鮴を支配していたガンマンがもし生きていたとしたら。
そして、この場に居合わせたのだとしたら。
きっと彼女は驚愕し、怒り狂い、それでも認めざるを得なかっただろう。
今のジェイルフィッシュの眼は——かつてのティターニアと酷似していると。 - 536◆xaazwm17IRZa25/06/28(土) 14:57:50
投下を終了します
- 537二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 18:11:06
エネミーだしサクッと倒されそう
- 538二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 19:05:20
ジェイルフィッシュ、脳が破壊されておる
- 539二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 20:32:52
乙です、痛みから生まれた恐怖を乗り越える姿は老若男女問わずとても美しいですね〜
- 540二次元好きの匿名さん25/06/28(土) 23:32:07
極度の恐怖は憤怒に変わる…エネミー故の手加減の出来なさが仇になった
- 541◆xaazwm17IRZa25/06/29(日) 01:10:38
ツィヴィリザツィオーンの中の人
dice1d3=1 (1)
1 中に誰も居ませんよ
2 中には死体が……
3 生きた魔法少女が閉じ込められているぞ!
- 542二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 08:25:07
保守
- 543二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 11:04:33
1は特になにもなく進行するんだろうけど2、3になってたらどうなってたのか気になる
- 544二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 11:43:11
中の人などいない…
- 545二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 18:25:06
死体の場合リタイアした魔法少女だったのだろうか
- 546二次元好きの匿名さん25/06/29(日) 23:19:18
保守
- 547二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 02:14:42
このレスは削除されています
- 548二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 07:48:31
保守
- 549二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 15:54:49
保守
- 550二次元好きの匿名さん25/06/30(月) 23:02:12
そういえばこっち基準の時間で一周忌迎えた子たち今何人いるんだろう...
- 551二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 07:50:38
保守
- 552二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 12:33:25
このレスは削除されています
- 553二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 19:06:08
- 554二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 20:32:31
あの激戦から1年経過してたのかよ…嘘だろ
- 555二次元好きの匿名さん25/07/01(火) 23:23:24
保守
- 556二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 07:40:22
保守
- 557二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 16:48:04
ほしゅ
- 558二次元好きの匿名さん25/07/02(水) 23:18:50
保守
- 559二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 07:48:26
ツィヴィリザツィオーンに中の人がいた場合、トランスフォームでバキバキになりそうだし消耗品扱いかね。処刑道具っぽくもある?
- 560二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 14:00:44
もうちょっと掛かりそう?
- 561◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:03:58
お疲れ様です、本日も始めさせていただきます~
- 562二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 21:04:43
待ってた!
- 563◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:05:43
- 564二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 21:06:33
待ってました
- 565◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:07:18
- 566◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:07:43
投下します
- 567◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:11:43
ツィヴィリザツィオーン。内部に魔法少女を組み込むことで、力を増す機能を持つ。
今現在、このエネミーの体内には誰も組み込まれていない。
それは即ち、力が増していない状態で、ジェイルフィッシュを圧倒する実力を持つということ。
通常のエネミーなら気楽に倒せるジェイルフィッシュを、一方的に痛めつける機械兵。
ジェイルフィッシュは、それでも立ち上がった。——立てるようになった。
機関銃によう掃射攻撃を無効化されたツィヴィリザツィオーンは、機械的に次の動作を選択する。
バイクに変形して、突進。
シンプルだが速度威力共に一級品。ジェイルフィッシュは先ほど、この攻撃に翻弄され、為すすべなく撥ね飛ばされた。
その悲劇を再演するためにツィヴィリザツィオーンは発進し——シャボン玉の群れに突っ込んだ。
ツィヴィリザツィオーンの演算回路に混乱が生じる。 - 568◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:12:47
いつの間にこれほど大量のシャボン玉が出現したのか。
視界を封じられながらも、ツィヴィリザツィオーンは演算し、恐らく発生させたのはジェイルフィッシュだと結論づける。
大量のシャボン玉の壁を突破し、ツィヴィリザツィオーンはバイク形態のままUターンし——更なる異変に気付く。
体積が、減っている。
ツィヴィリザツィオーンを構成する鋼鉄。その装甲が、薄くなっている。
混乱。困惑。
だが、ツィヴィリザツィオーンは恐怖しない。そんな回路は組み込まれていない。
新たなる情報だとエネミーは認識し、ジェイルフィッシュを索敵する。
——瞬間、鉄の巨人を囲むように、シャボン玉が出現する。
泡の形成速度が異様に速くなっている。
「捕まえたの」
もはやツィヴィリザツィオーンは自力で脱出できない。 - 569◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:14:14
今までのジェイルフィッシュならば、触手の一撃を泡の中に居る敵に炸裂させ、大ダメージを狙っていた。
——今の彼女に、そんなことをする必要は無い。
ツィヴィリザツィオーンの躯体が、溶けていく。
水に喰われていくかのように、徐々にその体積を減らしていく。
生物ならば、断末魔をあげていただろう。
ツィヴィリザツィオーンにそういった機能は無い。
ただ静かに、鋼鉄のエネミーは泡へと消えた。
ふぅ、とジェイルフィッシュは息を吐く。
ツィヴィリザツィオーンから受けた傷は、回復している。
シャボン玉で敵を喰らい、喰らえた分だけ肉体・魔力を回復させる魔法。
『捕食者』として覚醒したジェイルフィッシュは、憂鬱げに顔を歪めた。
だが、すぐに表情を切り替え、走り出す。
バーストハートはまだ戦っている。スピードランサーだってそうだろう。
呆けている時間は無い。
自身の魔法の殺傷性能が上ったことを、憂う時間など無いのだ。 - 570◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:15:13
◇
運命、という言葉を耳にする度に、ヨシネの心にはじんわりとした不快感が残る。
運命。全ては、最初から定められていた。
桐生家はかつて、天外道士という大陸から渡って来た術士から「武術」を学び、一子相伝で受け継いできた。
この武術は、鍛錬により呼吸や心拍を自由自在に操り、人間離れした身体能力を発揮して戦うものだ。
ヨシネは、桐生家に生まれ、歴代最高の才能を持つと両親から祝福された。
呑み込みが早い、というのは少し違った。
まるで、それを最初から知っていたかのように、ヨシネは自在に桐生の武術を操ることが出来た。 - 571◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:16:04
実際、他の空手や柔道、中国拳法などには、一定以上の素養はあっても、未成年の内に完璧に習得する程の才は無かったのだ。
桐生の武術にのみ、ヨシネは高い適正を見せた。
ヨシネこそが桐生家の悲願であり、次期当主になるという運命、だったのだろう。
——なんて、不自由。
最初から将来を定められているかのような息苦しさを、ヨシネはずっと感じていた。
姉が羨ましい。
そうも思った。
姉は、生まれる前から才能が無いと分かり切っていたらしい。
身体も弱く、桐生家に代々伝わる占星術(眉唾ものだとヨシネは思っているが)でも、凡庸としか示されなかった。
名前も、ヨシネやヨシネの父、あるいはヨシネの祖父と比べ、極めて平凡なものであり、両親から半ば無視して育っていた。
凡庸な姉と、天才の妹。 - 572◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:17:38
傍から見れば、嫉妬するのは姉の方で、妹はそれを歯牙にもかけない。そんな関係に見えたのだろうか。
だが、羨んでいたのは天才の妹で、凡庸な姉はあらゆるしがらみから自由に見えた。
どうして自分は拳を握るのだろう。
幼少のヨシネは何度も自問した。その答えは明瞭だった。ヨシネがヨシネとして生まれてきたからだ。
全ては運命のレールに沿って進んでいく。
きっと桐生ヨシネは一族の悲願を叶えるのだろう。
そのために生まれてきた。
——なんて、つまらない。 - 573◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:17:54
桐生家の内実はカルトそのものだった。が、外面は古式の武術を継承している、伝統的名家だった。
陣内道場が主催した武術交流会に、ヨシネの両親は高名な武人として招かれた。
ヨシネもまた、天才児として招待された。
そこにヨシネの意思は無く、諾々と両親の指示に従ったに過ぎない。
武術交流会には、子供も参加していた。
陣内道場の跡継ぎにして、天才少女剣士、陣内葉月。
伝説の武術家・龍王明の弟子にして、天才少女拳士、姚莉鈴。
道場に足を踏み入れてすぐに、ヨシネは二人に声をかけられた。
「あの、私、葉月って言うの。ここ、子供全然居なくてさ。あっちでちょっとお話しない?」
「井戸端会議ネ。一緒に親の悪口大会開くヨ」
ヨシネは、面食らった。
どうしていいか分からず、親の方を見た。しかし、ヨシネを連れて来た父は、陣内道場の道場主と話し込んでおり、ヨシネの視線に気づいてない。
——自由に決めていいのだろうか。
二人を無視して黙々と稽古に励んでも。
小学校でやっているように、適当に受け流しても。 - 574◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:19:11
それとも。
「……いいわね。クソ親エピソードなら、私、負けるつもりないから」
「上等ネ。人でなしに育てられた鬱憤、ここでぶつけるヨ」
「私のお父さんは、立派な人だよ……?
ちょ、何で二人とも目逸らすの!?」
その日ヨシネは、稽古前のほんの十分程の時間だが、普通の少女のように陰口と悪口を話し合い、同情しあい、笑いあい、罵りあった。
交流会が終わってすぐに、ヨシネは天才として父に進言した。
あの交流会は桐生家にとって実に有益なものである。
悲願を叶えるために、更なる高みに昇るために、私にはあの繋がりが必要だと。
ヨシネは初めて自由に選んだ。 - 575◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:20:15
◇
撃ち込まれた「絶招」。
本家本物と比すれば威力は下がるが、その効果は据え置きである。
当たれば、バーストハートは死ぬ。
だからバーストハートは、撃ち込まれた絶招を、手刀でいなした。
拳の先に触れるのではなく、相手の二の腕に掌底を撃ち込み、軌道を逸らした。
奥義でも何でもない。拳法家、武術家の、基本の動作である。
ハイエンドは眼を見開いた。
「ヨシネ、この技を知っているカ!?」
バーストハートは頷く。
ハイエンドの知る限り、この技を使えるのは自分ともう一人だけ。 - 576◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:20:25
師匠、ブレイズドラゴン。
バーストハートは、ブレイズドラゴンと戦ったのだ。そして、ブレイズドラゴンは死に、バーストハートは今ここに生きている。
「まさか、師匠を殺したのはヨシネ!?」
バーストハートは、曖昧な顔つきをした。
始まりの魔法少女が憑依したとき、ヨシネの意識は無かった。
伝聞でしか、あらましを知らない。
当の本人がその調子なのだ。ハイエンドも、真相には辿り着けない。 - 577◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:21:24
桐生の伝承者に、同じ技は通用しない。
ましてや、ハイエンドはバーストハートが絶招を知らないと仮定して撃ったのだ。
それだけの条件が揃えば、防ぐことは出来る。
ハイエンドの四肢が、重たくなる。
鬱陶しそうに、拳法少女は眉を歪めた。
それでも殺意は萎えることなく、ヨシネを貫く。
「冥途の土産に教えてあげるヨ。私は——殺し屋ネ。
今更人の命を奪う、何とも思わない」
ハイエンドの告白に、バーストハートは無表情を崩した。
驚愕でも、怒りでも、絶望でもなかった。
苦笑。
バーストハートの意外な反応に、ハイエンドは怪訝そうに首を捻る。
人殺し、とバーストハートは心中で呟いた。
——自分と同じだ。
何て奇妙な巡り合わせなのだろう。 - 578◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:21:58
桐生ヨシネもまた、殺人者だ。
意識喪失時に起きていたブレイズドラゴン討伐のことではない。
魔法少女になる前の出来事。
桐生家を出奔し、葉月や莉鈴の前から姿を消すことになった、ターニングポイント。
——姉殺し。
- 579◆xaazwm17IRZa25/07/03(木) 21:22:24
投下を終します
いつも感想や保守、ありがとうございます……! - 580二次元好きの匿名さん25/07/03(木) 23:25:01
投下お疲れ様です〜
絶招もピーキーな性能だね
拳先に全てを集中してるから横からの攻撃に弱い - 581二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 01:05:32
今まで規格外の戦いばっかりだったから見てて落ち着く戦いだ
- 582二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 03:34:00
乙です
やっぱどんな体勢からでも100%の絶招打ってくる師匠がおかしいだけだって! - 583二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 07:52:11
結構ツィヴィリザツィオーンデカかったのね
- 584二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 14:55:51
姉殺しかぁ
- 585二次元好きの匿名さん25/07/04(金) 21:33:59
なるほどタイマンイベントの強さランキングで見た通り強いは強いが師匠やその他四強の参加者に勝ち目がないくらいの強さ
- 586二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 00:29:52
トップクラスのようなイカれた強さは無いし越えれない壁がある
ただ普通の範疇で強いので工夫次第で喰らいつける - 587二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 08:23:32
このレスは削除されています
- 588二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 09:26:39
普通の範疇で最上位って感じだよね
- 589二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 17:31:38
このレスは削除されています
- 590二次元好きの匿名さん25/07/05(土) 23:13:28
ブレイクブレイドのアッサムの星を思い出す
- 591二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 06:44:00
保守
- 592二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 10:42:58
このレスは削除されています
- 593二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 16:45:45
保守
- 594二次元好きの匿名さん25/07/06(日) 23:24:16
保守
- 595二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 07:18:18
保守
- 596二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 07:54:41
改めて振り返っても、人外にも程があるな師匠…
- 597二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 14:22:13
つよい
- 598二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 21:48:01
保守
- 599二次元好きの匿名さん25/07/07(月) 23:08:47
保守
- 600◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:18:33
投下します
- 601◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:19:38
姉は、崖の上に立っていた。
気配を殺して、ヨシネはゆっくりと姉に近づく。
妬ましい。
平凡で凡庸で、運命から自由な姉が、羨ましくて仕方ない。
先日、ヨシネは父親に呼び出された。
そこで、桐生家の悲願について聞いた。
悪しき竜を滅ぼす、忌竜の一族。ヨシネはそのために生まれたのだと。
ヨシネの心臓は、特別なものらしい。桐生ヨシネという竜特効の英雄を創り出すことこそが、天外道士の命令であり、桐生家の宿願だった。
その話を聞き、ヨシネは、心底どうでもいいと思った。
桐生の武術には、意味があった。葉月、莉鈴という友人と引き合わせてくれたからだ。
だが、竜殺しだの、天外道士だの、そんな荒唐無稽な話は、まるで興味を持てない。
第一、竜などこの世には居ない。 - 602◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:20:38
架空の生き物を退治することに特化するなど、無意味でしかない。
まだ熊殺しに特化する方が世の為人の為になるだろう。
葉月や莉鈴への愚痴(わらいばなし)が一つ増えたな、とヨシネは父親の言葉をそんな風に捉えた。
当然、代償もある。
と、父は切り出した。
奇跡の心臓に対して、ヨシネの肉体は逸脱していない。
恐らく、二十歳になるまでには、心臓の負荷に耐え切れず、ヨシネの肉体は滅びる。
頭が、真っ白になった。
大人になる前に、死ぬ。
お前を誇りに思う、と泣きながら父はヨシネにしがみつき。
ヨシネは父の頬を殴り、その場から逃げ出した。
全ては、運命だ。 - 603◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:21:49
ヨシネが天才なのも、生まれた家が武術を伝承していることも、ヨシネが桐生家の悲願を叶える存在なのも、その代償として後数年の命なのも。
そこにヨシネの意思は無く、全ては最初から決まっていたことだ。
そもそも、桐生ヨシネの本体は心臓であり、ヨシネの手足も、顔も、脳も、心も、心臓の付随物に過ぎないのだ。
悲鳴をあげながら、ヨシネは駆けた。
一心不乱に、辿り着く場所を定めず。
ただ、己の運命を呪いながら。
ふざけるな、と心中で毒づく。
ぼけが、と父を、桐生の家を、そしてこの世界の神を罵る。
そして、逃走の末に。ヨシネは、崖へ辿り着いたのだ。
姉は、崖の際に立ち、海面を静かに見下ろしていた。
平凡な姉。凡庸な姉。
運命から逃れた姉。
人並の生を謳歌できる姉。 - 604◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:22:49
どうして? とヨシネは問うた。
どうして私なの?
何一つ望んで得たものではないのに。
穏やかな表情で海を見下ろす姉が――妬ましい。
これはもはや、憎悪だ。
同じ親から産まれたはずなのに、姉は幸福を謳歌し、妹は使い潰されて死んでいく。
全ては、運命が決めたこと。
気づけば、ヨシネは姉に掴みかかっていた。
姉妹喧嘩などしたことは無かった。二人は完全に違う道を歩んでいたのだから。
激情で意識を真っ赤に染め上げながら、ヨシネは姉の肩を強く抱き、叫び――。 - 605◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:24:17
「…………え?」
意識が明瞭になったとき、姉は居なかった。
波の音が、崖の上まで届いた。
海面を見下ろす。居ない。
崖の上を見回す。居ない。
掴みかかったところまでは覚えている。
だが、そこから先は曖昧だ。
八つ当たりの罵詈雑言をぶつけたのだろうか。
- 606◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:24:33
溜め込んだ泣き言を零したのだろうか。
掴みかかり、そのまま地面に叩きつけたのだろうか。
鍛え上げた拳で殴打したのだろうか。
——崖から墜としたのだろうか。
そう考えた瞬間、ヨシネは海に飛び込んでいた。
手足が痺れるまで捜索し——姉を見つけることは出来なかった。
その日の夜、警察に姉の捜索願が出された。
姉が姿を消して一週間後、ヨシネは桐生家を出奔した。 - 607◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:25:25
◇
中国拳法の真髄とは、「身体・精神の調和」にある。
気によって精神を統一し、武器と化した五体で敵を撃つ。
いついかなる時も冷静沈着であり、四千年の歴史が生んだ数多の技で状況に対応する。
ハイエンドは、中国拳法をマスターしている。本来、ハイエンドのごとく幼年では、一拳法、一流派すら、修めることは出来ない。
だが、魔法は常識を踏みつぶす。
『ありとあらゆる武術を操るよ』により、ハイエンドはそれが武術であるならば、実戦レベルで行使が出来る。
真に中国拳法を愛する者がこの場に居れば、ハイエンドを詰っただろう。
卑怯者。邪道。生涯に渡る修行を魔法でショートカットした、拳法家の風上にも置けないクズ。
それらの侮蔑を受ければ、ハイエンドはこう応じるだろう。
「私にとって、拳法、魔法と同じヨ」 - 608◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:27:32
そのこころは、中国拳法に対する憧憬や賞賛ではなく。
「こんなもの――殺しの道具に過ぎないネ」
ハイエンドの右腕が、蛇のようにしなった。
象形拳。万物を武術に組み込む中国拳法は、当然動物もその範疇だ。
有名なのは蟷螂拳だが、鳥獣の数だけ、拳は存在する。
軌道の読めないハイエンドの手刀を、しかしバーストハートはバックステップで回避する。
同時に、バーストハートは回し蹴りを放っていた。
靴先が、ハイエンドの前髪に触れる。
それは、バーストハートの攻撃の鋭さを意味すると同時に――センチ単位で攻撃を見切ったハイエンドの技量を示すものだった。
ハイエンドは魔法で拳法を行使するが、魔法が無ければ無力な少女——であるはずがない。
参加者でもトップクラスの、対魔法少女の殺傷経験。
その中には、その時のハイエンドの力量を超える者も含まれていた。
地獄を潜り抜けたがゆえに、ハイエンドは魔法を抜きにしても、異様な観察眼と戦闘センスを誇る。
- 609◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:27:46
たった二度の戦闘で魔王ドレッドノートの弱点を看破したのも、この経験に裏打ちされた観察眼ゆえである。
(だからこそ、強者との戦闘経験を持ち合わせていないにもかかわrず、同程度の観察眼を持っていたジャックは、正しく天性の殺人者であった)
バーストハートの攻撃を超近距離で回避したハイエンドは、隙を晒したバーストハートに八極拳の基礎にして奥義――鉄山靠を放った。
肩・背中・腰を使った体当たり。
「哈!」
ハイエンドの吠えと同時に、バーストハートは吹き飛ぶ。
その口から血が零れ、それでも彼女はハイエンドを見据えた。
「……いい加減にするネ」
ハイエンドは苛立ちの声をあげる。
「これが、ヨシネの魔法カ……!」 - 610◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:28:48
焦燥を溢れさせながら、ハイエンドはバーストハートに向かう。
息の根を止めるために。
家族へ捧げる供物として。
バーストハートは無言でハイエンドを見据える。
◇
姉を殺した後、ヨシネは自由の身になった。
家族から逃げ、友から逃げ、武からも逃げ、全てのしがらみを捨てたのだ。
どう生きるのか、全て自分で選べる。運命など存在しない生活。
——桐生ヨシネは、流されるように生きた。
まるでマネキンのように表情を変えず、繁華街や裏路地を練り歩き、ムカつく者をシバキ上げ、小銭を稼ぐ。
こんな生活を望んでいたのか。そんな自問を、ヨシネは自らに許さなかった。
ただ、自分は人殺しである、という意識があった。
風の噂で、両親が謎の怪死を遂げたと聞いた。
魔法少女に覚醒したのはその頃だ。 - 611◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:29:57
殺し合いを強いられたときも、ヨシネは自由に振る舞おうと決めていた。
どうでもいい。
けれど――葉月の名が呼ばれ、名簿に莉鈴の名前が浮かんだとき、ヨシネは思ったのだ。
会いたい。
今更、だ。
人殺しが、どのツラを下げて会おうというのか。
迷惑でしかないだろう。
けれど、会いたい。会って今までのことを話したい。
自分の罪を、自分の本心を、友達に伝えたい。
——ヨシネは、桐生の悲願を歪んだ形で果たした。友達の師匠であり、育ての親を奪うという形で。
その代償にヨシネは声を失った。
桐生ヨシネの言葉は、誰にも伝わることは無くなった。
そして今、ヨシネと莉鈴は、殺し合っている。 - 612◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:31:47
「私にその感情を流すのは、辞めるネ!」
バーストハートの目から――涙が零れていた。
久方ぶりの、焦がれた友との再会。
そして、友との殺し合い。
そんなもの――悲しいに、決まっている。
バーストハートは悲しみの海に沈んでいた。
そして、バーストハートの魔法は「ドキドキを共有するよ」。心臓の鼓動を同調させるこの魔法の真髄は——感情の伝播。
ハイエンドは覚悟を決めていた。家族のために修羅となる覚悟を。友達の命を奪う覚悟を。
決意が、揺らぐ。
あらゆる理屈や合理を無視し、感情がダイレクトに同調される。
桐生ヨシネ。魔法少女名――バーストハート。
「炸裂する想い」が、ハイエンドを襲っていた。 - 613◆xaazwm17IRZa25/07/08(火) 01:32:11
投下を終了します
長期間、感想と保守、ありがとうございます - 614二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 06:49:24
今のままだと逆立ちしても勝てないからなぁ
- 615二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 07:39:41
天性ではなく努力で鍛え上げてきたハイエンドにこの上なく効果的面の魔法だぁ…
- 616二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 10:46:51
このレスは削除されています
- 617二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 18:52:49
バーストハートの名前の解釈がいいね
- 618二次元好きの匿名さん25/07/08(火) 23:29:21
タイイチじゃ文句無しに強いハイエンド
観察眼と合わせて概念系にも強い - 619二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 07:36:39
保守
- 620二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 07:46:48
勝てない相手にはデバフを積む、格上殺しの基本やね
- 621二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 13:54:18
やっぱり最終決戦でブラックブレイドの記憶を受け継いだハスキーロアと出会ってほしいなぁ
失望したから離れていったんじゃないって伝えてあげてほしいよー - 622二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 20:58:52
早めに
- 623二次元好きの匿名さん25/07/09(水) 23:38:11
本来長い時間を掛けて築く武術を大胆にシーケンスブレイク出来るのは分かりやすい強みと思った
まぁ結局は使い手と相手との相性次第かな…バーストハートの魔法とか相手にし辛いだろう - 624二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 07:52:00
保守
- 625二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 15:02:32
保守
- 626二次元好きの匿名さん25/07/10(木) 22:38:56
ほす
- 627二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 01:39:57
オ
ツロワ - 628二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 07:51:45
保守
- 629二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 16:04:12
保守
- 630二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 19:07:18
武術交流会組が互いのことをどんな感じに思ってるのかとか知りたいので、今度よければそれぞれのキャラの一言コメントとか頂けたら嬉しいです!
- 631二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 19:56:47
時期尚早じゃない?
そういうのは決着がつくか全員退場して回想のしようがなくなった後に補足する形でいいと思う - 632二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 22:51:56
ハスキーロアがどうしてああなったのかとか、刀はどこから出てきたのかとか全く何も分からないし、それ関連で同じ武術交流組の葉月や金のガッツリした掘り下げや描写にも期待できるしね! 凄く楽しみ!
- 633二次元好きの匿名さん25/07/11(金) 23:39:05
確かにブラックブレイドの掘り下げは欲しいかもねー
正直、同じ話で亡くなってるナサリーブラウンともどもあんまりにもあんまりな死に方だったし - 634二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 00:00:14
自分はブラックブレイドの退場シーンも好きだよ
当時は今ほどインフレしてない上に謎も多かったかったから『あの主催者が焦るほどの事態なんだ!』ってワクワクしたし
ナサリーはその……運が無かったねとしか - 635二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 06:24:06
早めの保守
- 636二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 10:35:41
ひるボン
- 637◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:32:37
実際ナサリーブラウンはめちゃめちゃ不運
目の前の子供を見捨てて回避に専念すれば、その後メンシュ・パンツァーに勝てた程度には人類最強です
終盤まで生きていれば大人として対運営チームをまとめたり、傭兵の知見を活かして戦術面でアドバイスしていたでしょう - 638◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:32:50
投下します
- 639◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:34:44
本来、ハイエンドとバーストハートの間には、実力差がある。
交流していた頃は、両者に差は無かった。むしろ、総合ルールならヨシネの方がやや勝ち越してさえいた。
ヨシネの方が莉鈴より発育が良かった、という面も大きいが。
桐生の武術は特殊な呼吸術により、常人の二、三倍の身体能力を引き出す。
身体能力そのものは同年代の少女の最高峰程度でしかなかった莉鈴は、地力の差でヨシネに苦戦したのだ。
だが——桐生ヨシネは武を捨てた。
罪から逃れるため、自由になるため、ヨシネは家から、師から、武術から逃げた。
独学で拳を磨いたことはあれど、どうしたって成長には限界がある。
一方、莉鈴は——逃げることが出来なかった。
師――王龍明と常に行動し、英才教育を叩き込まれた。
そもそもモチベーションが違うのだ。
チンピラをシバキ上げる程度にしか武を使わなかったヨシネと違い。
莉鈴には、常に死の恐怖が纏わりついていた。 - 640◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:36:20
ブレイズドラゴンがハイエンドを鍛え上げたのは、自分を楽しませる強者を創り出すためである。
つまりハイエンドは、師を超えなければ死ぬのだ。
それだけではない。きっと愛犬――麦も殺されてしまうだろう。
ハイエンドを強くするために、ヒートハウンドの命を奪う。
二人を赤子の頃から育て上げながらも、ブレイズドラゴンはそれが出来てしまう。
人でなし。
ハイエンドの不幸は——親が人の心を持っていなかったことにある。
故に、ハイエンドは強い。
同年代の魔法少女とは、育った環境が違う。
復讐に生きた魔王も、快楽に生きた殺人鬼も、ハイエンドほど濃密な地獄は潜り抜けていない。
——にも関わらず、ハイエンドとバーストハートは互角の戦いを繰り広げていた。
ハイエンドの動きに、キレは無い。
一挙一動作にラグが生じる。 - 641◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:37:19
呼吸は、荒い。
甲高い叫び声と同時に繰り出した貫手は、空を切る。
バーストハートが強くなったのではない。
ブレイズドラゴンを圧倒した奇跡は、もう二度と起こらない。
「ぐ、ぐううううううう……」
ハイエンドは唸った。
催眠、幻覚、精神攻撃。
そういった相手とも、戦ったことがある。
ハイエンドは特殊な訓練によって、ある程度のそういった攻撃はシャットアウトできる。
だが——これは違う。
感情とは——人体機能の一つである。脳を損傷すると感情の発露が極端になる場合や、逆に抑制される場合がある。
そこにオカルトやスピリチュアルは介在しない。
バーストハートの魔法は、外からの働きによるものではない。内部からの働き。
刺激に反応して感情が発露するのではない。 - 642◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:39:34
他者の心臓の鼓動に干渉し、強制的に自分と同じ感情を発生させる。
一方的に鼓動を止めるといった殺傷能力こそ無いが、それ故に防ぐ手段は非常に限られている。
ハイエンドがどれだけ訓練していようと、どれだけ覚悟を固めようと、無意味である。
雑念(悲しみ)が、ハイエンドを縛り付ける。
その隙をバーストハートが巧みに突け――るはずが無かった。
ハイエンドを苦しめている悲しみは、バーストハートが発したものである。
勝利のために偽りの感情を流し込む――これは、そんな器用で狡猾な魔法ではない。
仮に、バーストハートがハイエンドを弱体化させるために悲しみの感情をぶつけていれば――ハイエンドは問題なく動けただろう。そこには、相手に弱体化して欲しい、という強い目的意識が介在するからだ。
今のバーストハートに、それは無い。
桐生ヨシネは、心底悲しんでいた。 - 643◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:40:59
涙を流しながら、バーストハートは拳を握り、振るう。
「どうして何も言わないネ!」
大振りの攻撃を避けながら、ハイエンドは叫んだ。
「言いたいことあるならはっきり言え!」
悲しみに胸まで漬かりながら、ハイエンドはもがく。
悲しい。
ヨシネと殺し合うことが、悲しくないわけがない。
目的のためなら家族や親友、幼馴染だろうと問題なく殺せる。
そんな特異な精神構造を、ハイエンドは備えていない。人でなしの師匠とは違う。
だが、だが、だが——優勝しなければ、麦は帰ってこないのだ。
二人の攻防は、更に精彩を欠けていく。
目尻に涙を浮かべ、頬を上気させながら、二人は組み合った。
「ヨシネ、お前には——死んでもらうヨ!」
「………………」
「だから——どうして黙っている!」 - 644◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:41:46
悲しみが、濃くなる。
ハイエンドが押し倒したのか、あるいはバーストハートが引きずり込んだのか。
二人は地面に倒れた。
そのまま攻守を入れ替えながら、転げまわる。
子供の喧嘩だった。
どちらも必死な顔をしながら、相手の服を掴み、髪を千切り、手あたり次第に殴る。
より高度な技を、より洗練された技を、より危険な技を、二人とも知っているはずなのに。
息さえ出来ない程悲しみの海に沈みながら、ハイエンドはバーストハートを睨んだ。
バーストハートの身体が跳ね上がる。
ハイエンドの蹴りがバーストハートの腹部を蹴り上げ、空へと打ち上げたのだ。
着地したバーストハートは、ハイエンドに向き合う。
その双眸からは涙が滴り落ちている。 - 645◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:42:44
だが、顔には決意が籠っていた。
いったい、いかなることを考えているのか。
感情は伝わっても、思考までは分からない。
ハイエンドは、ゆっくりと息を吐きだした。
呼吸を整えたところで、感情からは逃れられない。
悲しみに浸ったまま、決着をつけなければならない。
「悲しいネ」
と、ハイエンドは呟いた。
「葉月も、ヨシネも、どうして魔法少女になったカ?
——魔法少女にさえならなければ、こんなことにはならなかったのに」
両者が地を蹴ったのは同時だった。
感情は、永続しない。
悲しみは一つの意思へと変化していく。
二人の魔法少女は互いの目的を叶えるべく、彼我の距離を縮め。
「変身、解除」
- 646◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:43:32
ハイエンドは、その姿を莉鈴のものへと変えた。
バーストハートは顔を強張らせた。
魔法少女と少女には絶対的な力の差が存在する。どれだけ莉鈴が拳法の天才でも、変身したバーストハートの本気の一撃を浴びれば、問答無用で即死する。
「………………っ」
バーストハートもまた、変身を解除した。魔法少女から少女へと。
幼馴染の命を奪う、という未来を回避するために。
生身の少女たちは、勢いを殺さないまま肉薄し、互いに渾身の一撃を相手に放った。
打撃音は、響かない。グローブも防具もない、素手で肉体を打ったところで、大きな音など出るはずもない。
布と皮と肉と骨を打つ音が、微かに漏れただけだ。
「ヨシネ」
莉鈴の喉から、苦悶の声が漏れた。
その拳は、桐生ヨシネの胸部に当たっている。 - 647◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:44:06
そして、桐生ヨシネの拳もまた、莉鈴の脳天に向かって伸び。
——触れる寸前で、止まっていた。
打撃系の武術、その稽古で使われる、基礎的な練習法であった。
当たれば相手は怪我をする、稽古相手に向けるのは敵意ではなく感謝なのだから。
「お前、馬鹿ヨ」
既に、莉鈴の言葉は、ヨシネには聞こえていない。
彼女の心臓は——莉鈴の一撃で、停止していた。
【桐生ヨシネ/バーストハート 死亡】
【残り 15人】 - 648二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 15:44:58
このレスは削除されています
- 649◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:45:34
莉鈴は理解していた。
桐生ヨシネは自分の命を奪えないと。
口ではどれだけ無頼に振る舞おうと、心優しい、普通の少女であると、自分も、きっと葉月も知っている。
だから、罠を張った。
変身を解除すれば、ヨシネの攻撃その全てが、莉鈴の命を奪う凶器になる。
冷静であれば、魔法少女と少女の間に生じた絶対なる実力差から怪我をさせずに制圧できただろうが、感情の嵐に翻弄されながらの近接戦では、咄嗟にそこまで思考が及ばない。
莉鈴を殺さないために、バーストハートも半ば反射的に変身を解除してしまうだろう。 - 650◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:46:11
そうなれば、残るのは殺し屋とアウトロー。
ハイエンドは悲しみの海から浮かび上がり、ヨシネを殺せる。
莉鈴は、ヨシネの優しさを信じていた。信じ、それを利用した。
正しく殺し屋に相応しい、悪辣な手口であった。
倒れかかるヨシネを、莉鈴は優しく抱き留めた。
「天国で、葉月と仲良くするネ。
私は——きっとそこ行くの無理」
そう寂し気に囁くと、莉鈴はそっとヨシネの遺体を木陰に安置した。
「拜拜(バイバイ)」
そう言って、莉鈴はハイエンドに再び変身し、音も無く姿を消したのだった。 - 651◆xaazwm17IRZa25/07/12(土) 15:47:25
投下を終了します
- 652二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 16:12:54
バーストハート二度目の覚醒展開?
天丼になっちゃうし流石に無いかな? - 653二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 16:34:36
勇者の方はオオカワウソの分裂魔法が使える時点でここで倒してもなんの意味もないからなぁ
今までの描写的に個体間で状態を共有するわけじゃないからここにいる勇者をどうこうしても他の個体には何の影響もないし、予備の個体を残しておかないってのも流石にないだろうし - 654二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 17:32:17
そもそもスピードランサーとは遊んでるだけだろうしね描写的に。今までの戦闘を全部見れるんだからどの魔法使えばいいかはっきりわかるだろうから
外したら魔力消費ヤバいですって言われてるマジカルストラッシュを漫然とバカスカ撃ちまくってるあたり魔力がどうこうは関係ないし
- 655二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 17:43:35
ハニーハントに魔法奪われた時だけかなオオカワウソ全体に影響があったのは。
魔力の消費も個体それぞれで失われるだけだから(総体に影響がない)、多重マジカルストラッシュとか出来ちゃうのかなぁ。めっちゃ見てえ! - 656二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 18:13:34
能力たくさん使える系は色んな組み合わせが想像できて夢が広がるね
- 657二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 20:00:14
手を差し伸べられてるのに自分で振り払っちゃってるせいでハイエンドは師匠と同じで碌な死に方出来なさそうで怖い
- 658二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 23:00:45
ちゅーか増やした勇者同士で殺し合わせれば勝手に経験値ガンガン増えていくような気がするけど無理なん?
- 659二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 00:13:23
このレスは削除されています
- 660二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 00:28:33
- 661二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 08:48:23
同レベル同能力でやることになるから相討ちの可能性がなあ
- 662二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 11:44:24
あぁー刺し違える可能性があるのか…ミラーやっても経験値が入らなそうだし悪手か
- 663二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 11:52:03
まぁ操作するのは結局アリアだからそこらへん全く問題ないけどね
- 664二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 11:53:08
描写的に雑魚敵なぎ倒すだけで経験値入るから、極論棒立ちの増幅勇者を撫で斬りにするだけで経験値はいるんだよね
- 665二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 19:55:28
保守
- 666二次元好きの匿名さん25/07/13(日) 23:13:25
ハイエンドは人間味があって優しさに対する未練があるから尚更、師匠より惨い事になりそう
- 667二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 03:16:06
さげ
- 668二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 07:44:46
保守
- 669二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 15:11:55
親友の手すら振り払った今、ここまで自分で破滅に突き進んでるあたりハイエンドの真の絶望を見てみたいもの
きっと良い顔してくれるだろう - 670二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 21:07:43
そういやこれでハイエンドの知人関係全滅なんやなって……
- 671◆xaazwm17IRZa25/07/14(月) 22:14:14
- 672二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 22:16:37
そういえばバーストハートはハイエンドより技量低いんだね
技術を磨き続けたハイエンドと金が互角くらいで、武から逃げたバーストハートとブラックブレイドは格下って感じかな? - 673◆xaazwm17IRZa25/07/14(月) 22:16:57
どうもオオカワウソの魔法で増やして経験値稼ぎするとバグるみたいです。
やり過ぎるとセーブデータが破壊されてしまうのかもしれません
そんな感じで今夜も少しずつ投下いたします - 674二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 22:18:29
レベル76の勇者ってどれくらい強いんです?
天上補正無くなった竜の首と同じくらい? - 675二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 22:22:18
頼みの綱のスピードランサーちゃんには幼馴染設定の最強のティターニア先生と互角ってことで同じくらい頼もしいところ見せて頂きたいです…お願い…!
- 676◆xaazwm17IRZa25/07/14(月) 22:26:56
「格下」ってほど技量差開いているわけではないですけど、技量スキルでいくと
金>ハイエンド>ブラックブレイド>バーストハートですね
ただ、バーストハートは条件満たすと一回限りで「始まりの魔法少女召喚」
ブラックブレイドは本人の死後も大暴れしている「万物切断」持ち
ハイエンドは殺し屋経験&メンタルが含まれるので
強さの最大出力を比較すると上の順位はそのまま逆になるかも……
まぁ諸々含めるとだいたい同格で、勝敗はその時の状況次第だと思います
- 677◆xaazwm17IRZa25/07/14(月) 22:31:40
- 678二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 22:41:17
始まりの魔法少女スペック+最強技量+大人の経験値の全部乗せパーフェクトスタイルを割とマジで見てみたいからスピードランサーにはメチャクチャ期待してる
今までずっとバトロワデバフ以外でも何かのデバフ持ちで戦ってきたし(一巡目に至っては洗脳状態だし)、最終回でも万全ですらないみたいだし、全力バリバリで戦うスピードランサー見れる機会がもう覚醒後くらいしかないんだよなぁ〜 - 679◆xaazwm17IRZa25/07/14(月) 23:26:35
とんでもないやつだな、とスピードランサーは思った。
自分が今戦っている、勇者風の恰好をした魔法少女に対してだ。
マジカルストラッシュだけではない。この敵は、あらゆる魔法を使用する。
魔法少女の魔法は概ね一つ、という原則を無視する存在。
(そういう奴が居るって知らなけりゃ、あっという間に負けてたかもな)
ティターニアから聞いたことがある。全知全能を名乗り、あらゆる魔法を行使する存在と戦闘になり、痛み分けに終わったと。
(全知全能、ねぇ。アタシの魔法とは性能が段違いだ)
自分も、万全ではない。
足止めが精一杯で、勝利は難しい、かもしれない。
と、弱気なことを考えながら、スピードランサーは持っていた大剣を手放した。
- 680◆xaazwm17IRZa25/07/14(月) 23:31:09
槍、ではない。
今しがた、勇者から『奪った』大剣である。
雷の如く速度で接近され、更には不意を突くかのような増殖体によって放たれた「マジカル・ストラッシュ」。
スピードランサーは、マジカル・ストラッシュが撃たれる前に、増殖体から武器を素早く奪い取り——そのまま勇者目掛けてマジカル・ストラッシュを放っていた。
白刃取りは何も、剣術家だけの技ではない。
武者修行の中で、スピードランサーはその技術を収めている。相手も一流の武術家ならばともかく、素人ならば、咄嗟に武器を奪うことは可能だ。
(これで終わり――な、わけがないか) - 681二次元好きの匿名さん25/07/14(月) 23:32:01
そういえば幼馴染の魔法を使ってくる敵なのにノーリアクションなんだね
そういうコピー魔法使いの相手も何度もしてるのかな? - 682◆xaazwm17IRZa25/07/14(月) 23:36:15
マジカル・ストラッシュは直撃しなかった。
まるで『拒絶』されたかのように、勇者の眼前で斜めに折れ曲がり、明後日の方向に進んでいった。
幸運だったのは、スピードランサーに「マジカル・ストラッシュ」の反動がほとんど無かったことだ。
実際に魔力を溜めたのは勇者側であるため、負担も勇者持ちとなったのだろう。
(まぁ、あんだけ馬鹿みたいにビームを撃っているんだ。魔力切れを狙う、って戦略は無いな。ハーゲンみたいなパターンか? つっても、あの時みたいに千槍撃っても、全部弾かれちまうか、すり抜けちまうだろうなぁ)
相性が悪い。
スピードランサーは溜息をつく。
バトルは嫌いではない。が、この殺し合いで気持ちの良い戦いなど、スピードランサーは経験していなかった。
当たり前か、とも思う。
殺し合いなど、楽しいはずがない。
果し合いならともかく、呪いによって強制されたデスゲームなど。 - 683◆xaazwm17IRZa25/07/14(月) 23:41:05
「フハ―――ナチ―――貴様――」
何やらハイテンションの女が実況しているが、スピードランサーの耳には届いていない。雑音に気を取られず集中するなど、初歩中の初歩だ。
「まほう」
「マジカル・ストラッシュ」
「馬鹿の一つ覚えか?
それとも、動揺でも誘ってるつもりか?
どちらにせよ――テメェじゃ、その魔法は使いこなせねぇよ」 - 684二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 00:50:06
このレスは削除されています
- 685125/07/15(火) 01:13:03
投下を終了します
明日は規制が解除されていれば本編を
解除されていなければ質問への回答や小ネタを投下します - 686二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 07:40:41
投下お疲れ様ですー
- 687二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 09:15:51
華麗にスルーされるアリアちゃん好き
- 688二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 12:20:40
雑音扱いされるアリアちゃん…
- 689二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 18:14:03
スーパーマジカルストラッシュもダブルマジカルストラッシュも魔力を気にしなければ何の問題もなく連射できるな。それこそ分裂して畳み掛けるのも
反動ダメージって言っても一発一発は数日休めば普通に回復する程度みたいだし、撃ち端から再生できるし - 690二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 18:58:57
ストラッシュって発射前なら剣ごとパクれたんだ……っていうのと
その弱点をスピードランサーがもう知ってるのがエモpoint - 691二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 19:50:08
ティターニア先生、裏を返せばマジカルストラッシュを投擲することもできたんだな…と思ったらメンダシウム戦で既に剣の投擲はやってたわね
- 692二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 19:56:02
あーちゃんの拒絶魔法をぶち抜ける魔法少女知りたい
- 693二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 20:01:57
デッドマンズハンドの必中弾丸が相手だと普通に死ぬし実際脅されて従わされてたね
ブラックブレイドの万物切断もどっちかのメンタルや状況次第で破られるらしいね - 694二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 20:04:49
飛んでる上に物理攻撃が無効の相手にこれだからティターニアがスピードランサー相手に卑怯な手段を使わない限り勝ち目が一切無いのも頷ける
スピードランサーに勝ちたいって思ってたティターニアがそのことについてどう思ってたか知りたいところ - 695二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 21:46:27
スピードランサー姉貴カッコいい! ちょうだいちょうだい そういうのもっとちょうだい(画像略)
幼馴染で相棒だったティターニア先生が地の文でも他の人の評価でも最強扱いだったみたいに、最強の片割れとしてスピードランサー姉貴が最速なとこもっと見せてくれーっ! - 696二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 21:57:41
このレスは削除されています
- 697二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 21:58:25
ちなみにティターニアとスピードランサーがブイブイ言わしてた若い頃は五条と夏油みたいな「問題児二人 ただし最強」みたいな感じだったんですかね? それを蟹が後ろから後方腕組みしてたみたいな?
- 698二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 22:00:34
洗脳されてない素の状態のアグネアどんだけ強かったの…魔法の威力もメチャクチャ落ちてたらしいし
もしかして四強よりも強い? - 699二次元好きの匿名さん25/07/15(火) 22:58:38
スピードランサーのセリフにも出てきてるハーゲンも強かったねー
弱点抜き・ほぼ無限再生ハーゲンはスピードランサーに重傷負わせてるあたり、メンダシウムやパンデモニカクラス程度には強かったのかな?
他の四強が相対してたらどうなってたのかも気になる - 700125/07/16(水) 01:11:12
諸々あって帰宅が遅くなったので本日投下はございません…
ちょっとだけコメ返しを
デッドマンズ・ハンド
覚醒ブラックブレイド
覚醒ミストアイ
魔剣アロンダイト
覚醒ドレッドノート
ジェイル・フィッシュの泡
バーストハートの感情伝播
テンガイ
今、パッと思いつくのはこの辺ですね…
拒絶効果と上記の効果のどちらが優先されるかはお互いのメンタルや魔力量で決まります
魔法は自己解釈の世界なので…
明確な弱点として、ああああは攻撃手段や逃走手段に乏しいので、三日三晩攻撃し続ける体力or組織力があれば攻略可能です
- 701125/07/16(水) 02:32:09
三人で組んで大暴れしてたのは小学生の頃で、糧鮴のアウトロー系魔法少女と戦ってました
中学からは
ティターニア→剣道部入部&戦う対象を非魔法少女の悪党にまで拡大
蟹→ティターニアこそ絶対的な主人公だと頻繁に口走るようになる
槍→ティターニアの方針や蟹の依存っぷりに違和感
という感じで、3人揃わない日も増えていきました
- 702125/07/16(水) 02:39:42
四強より強いです
ブレイズドラゴンがデッドマンズ事変に参加したのも当初の目的はアグネアと戦うためでした
ティターニア、スピードランサーもアグネアのことは偉大なる大先輩、自分より格上の魔法少女と認めています
テンガイは血筋も含めてめちゃくちゃ嫌ってます
- 703125/07/16(水) 02:40:46
明日は早く帰れてかつ規制が解除されていたら本編の続きを少しずつ投下しようと思います
- 704二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 07:42:15
夜遅くお疲れ様です…
あの3人の中ではスピードランサーがバランサーとして機能してたんだね - 705二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 15:15:35
スピードランサーさんって実は常識人?
- 706二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 18:21:02
他がぶっ飛びすぎてて相対的にね……
- 707二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 18:33:25
というかそもそも「危なっかしくて見てられないから」でわざわざ明らかヤバい方向に行ってる他の二人に着いてきてくれるあたりメチャクチャお人好しなんだよなぁ…
- 708二次元好きの匿名さん25/07/16(水) 22:35:17
凄く不器用だけど、お人好しで義理堅い人が洗脳されて何の罪もない魔法少女二人を殺しちゃってそれ以降ずっと自分を卑怯者扱いして責め続けてるって辛すぎ
- 709125/07/17(木) 00:30:31
規制解除されておらず、本日も本編投下は出来ません…
「達人同士の決闘なら殺されても殺しても気にしない」という性格なので一種の異常者ではあるのですが、それはそれとして常識的な感性も持ち、無自覚ですが仲間思いです
- 710125/07/17(木) 00:39:01
本企画の魔法少女は年齢や経歴もバラバラなので、殺人に対する忌避感もそれぞれです
「相手が悪人だろうと殺したくない」
ハスキーロア、七海真美など
「悪人ならば致し方ない」
ティターニア、抜刀金など
「互いに殺し合いに同意してるなら問題ない」
スピードランサー、ナサリーブラウンなど
「目的のためなら善悪問わず」
テンガイ、ドレッドノートなど
「殺しそのものが目的」
ジャック、グレンデルなど - 711125/07/17(木) 00:59:23
ティターニア→マジカルストラッシュが効果的ではないので不利。
ブレイズドラゴン→魔力を狂わせて回復阻害が出来るかどうか?どういう判定になるからはダイスで決めるかも
テンガイ→回復のメカニズムさえ掴めばそれをメタる魔法を使うかも。槍術と槍レーザーの対処しながらそれが可能かはその時の状況次第。
- 712125/07/17(木) 01:03:41
一切無いわけではないんですけど、概ねスピードランサーが勝ちます
ティターニア相手だと剣を奪うことは難しいです
昔模擬戦でそれをやられてティターニアも本気で対策したので
スピードランサーに勝てないことを本人がどう思っていたかはおいおい本編で書くと思います
(書かなかった場合は今回のような形で明かしたいと思います)
- 713125/07/17(木) 01:06:18
本日はここまでとさせていただきます
明日も早めに帰れて規制が解除されていれば本編少しだけ投下します - 714二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 07:45:23
スピードランサー対ティターニアは互いに対策積んでる状態になりそうだから読めないねぇ…
- 715二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 08:56:53
ティターニアはスピードランサーに対して勝ち筋が機動力を活かせない閉所で不意打ちマジカルストラッシュするくらいしかないから「最強とはなんだったのか」状態になるって言われてるね
- 716二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 14:48:43
保守
- 717二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 17:52:25
一巡目の洗脳状態のスピードランサーはどれくらい弱体化してたのか知りたい
テクテク歩きながら攻撃してたっぽいから相当だと思うけど - 718二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 21:27:36
ブレイズドラゴンは掴んだ状態からでも技出せるだろうから無理そうだけど
バルバロイに掴まれたらスピードランサーもティターニア同様逃げられないんだろうか - 719二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 21:43:34
このレスは削除されています
- 720◆xaazwm17IRZa25/07/17(木) 23:11:52
規制が解除されたので少しだけ本編投下します
- 721二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 23:13:51
そういえばティターニアって幼馴染設定の割にはスピードランサーになぜかほとんど言及しなかったねぇ
最終回では互いに生き残ってたし会話ぐらいするかなと思ってたけど… - 722二次元好きの匿名さん25/07/17(木) 23:15:23
やったー! 忙しいだろうにありがとう
どうでもいいけど結局スピードランサーが一緒に暴れ回ってたティターニアと違って知名度が皆無だったのは表舞台から姿を消したからなのかな? その割には魔法国直々に重大任務とか任されてるっぽいけど - 723◆xaazwm17IRZa25/07/17(木) 23:24:48
白服にガスマスクの集団が、モニターの前に整列している。
彼等こそ新生第三帝国の幹部にして、大総統トート・アリアの腹心。
モニターに映し出されているのは、完璧で究極の魔法少女『勇者』。
対峙するは、四強最後の一人、スピードランサー。
「ふん、腐っても四強の一人か。中々やる」
「だが、マジカルストラッシュに対応できる程度では、勇者には勝てんのだ」
「アリア様、ここはマジカルストラッシュではなく、ヒートハウンドの魔法を行使しましょう。犬畜生の魔法一つで、あの槍使いは勝ち筋を失います」
幹部たちの言葉に、理知的で穏やか且つ非常に仲間想いのアリアは頷いた。
「採用」
「光栄であります!」 - 724◆xaazwm17IRZa25/07/17(木) 23:33:40
放たれた槍が、勇者の身体をすり抜ける。
勇者は、その肉体を炎へと変化させていた。
弱点を探すかのように、全方位から槍が放たれるが、全て勇者の身体をすり抜ける。
スピードランサーの槍には、相手の魔力を吹き飛ばしたり、変身を解除したり、そういった特殊な効果は無い。
ただ、速く、鋭く、深く貫くのみ。
炎と化した勇者に、ダメージを与える術は無い。
「『星火(xīnghuǒ)』」
勇者の口から紡がれたのは、大陸の言葉だった。
昨夜、フライフィアーの命を奪ったヒートハウンドの奥義。
広範囲、高威力の、超高温火炎魔法。
周囲を炎の嵐が呑み込む。
マジカル・ストラッシュと違い、剣ではなく、炎となった肉体から発せられたこの魔法を、スピードランサーは発動前に潰せない。
炎の渦が、全てを呑み込んだ。 - 725◆xaazwm17IRZa25/07/18(金) 00:21:36
呆気ない、とモニターの前で白服たちは思う。
少し本気を出せば、こんなにも簡単に終わってしまう。
それほど、勇者は完成された魔法少女なのだ。
参加者に全知全能を自称する者が居た。
だが、あれはただの誇大広告。この勇者こそは、真の全知全能である。即ち、それを創り出した第三帝国こそ、神の帝国であり、その一員である自分たちは神だ。
「これが神の炎だ!」
興奮のあまり、一人の白服は叫んだ。
他の白服も同様の気持ちだっただろう。
じっとモニターを眺める大総統アリアもきっと同じ気分に違いない。
「あ、あれはっ!」
モニターに、一つの影が映る。
「まさか……!」 - 726◆xaazwm17IRZa25/07/18(金) 00:27:50
炎が放たれた瞬間、スピードランサーは加速していた。
高速で射出される槍を掴むことで可能とする、高速軌道。
逃れるのは、横軸ではなく縦軸。
炎の届かない上空、勇者より更に高みへ、スピードランサーは移動していた。
その装束に、焦げ跡一つ無い。
勇者が、スピードランサーの方へ顔を向けた。
「『星―(xīng―)』
攻撃を回避されたところで、問題ない。
もう一度放てばいい。
勇者自身は思考しないが、操縦者はそう考えた。
勇者の視界が、消失する。
その身は炎と化している。その中で眼を形作っていた部分を、槍が通過し——その風圧で炎を吹き飛ばしていた。 - 727◆xaazwm17IRZa25/07/18(金) 00:34:20
無論、どれだけ吹き飛ばしたところで、再生に支障は無い。
螺旋状の回転を加えながら放たれた槍は、風によって次々と炎を蹴散らしていくが、まったく問題は無い。
ただ、元に戻るのに僅かに時間がかかるだけだ。
「『星―(xīng―)』
再び、視界を構成する部分を散らされる。
構わず、撃つ。
モニターで観測している。勇者の視界を封じられたところで、操縦者がコマンドだけでなく直接勇者を操作し、スピードランサーに当てればいいのだ。
火炎の範囲は広大。当たれば無敵魔法も拒絶魔法も持ち合わせないスピードランサーは一撃で消し炭になるだろう。
爆炎が放たれる。
その時には、着弾地点とまるで反対の方角に、スピードランサーは移動している。
再び、勇者の身体が槍によって生じる風によって散り散りになる。
問題ない。これで敗北はありえない。
スピードランサーの攻撃は勇者にまるでダメージを与えず、勇者の攻撃はスピードランサーに致命傷を与える。
一度でも当てさえすれば勝利だ。
一度でも当てさえすれば……。 - 728◆xaazwm17IRZa25/07/18(金) 00:34:53
短いですが、投下を終了します~
- 729二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 07:48:22
規制解除やったね。そして投下お疲れ様です〜
アリアちゃんと愉快な白服達… - 730二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 12:35:17
アリアちゃんやっぱりいつものナチスムーブは演技入ってるでしょ
- 731二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 17:17:48
このレスは削除されています
- 732二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 20:15:05
ハイテンションなんだか冷めてるんだか分からんねアリアちゃん
冷めてる方が素なんだろうけど - 733二次元好きの匿名さん25/07/18(金) 21:30:23
そういえば蟹が「クリックベイトを殺したのはテンガイ」とか適当ぶっこいてたのはスピードランサーにテンガイを殺させるため?
二人が相対してたらどうなってた? - 734二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 00:55:35
「一度でも当てさえすれば」
果てしなく遠く感じる目標… - 735125/07/19(土) 03:45:18
また規制されたのでご質問に答えられる範囲でお答えします
- 736125/07/19(土) 03:49:04
- 737125/07/19(土) 03:53:02
- 738125/07/19(土) 04:03:02
シンプルに言及する機会が無かったのと、デッドマンズ事変以降はちょっと微妙な関係だったので…
互いに普段つるむ相手も変わりましたし…
後は単純に、めちゃんこ強いと知ってるのであんまり心配してなかったんだと思います
- 739二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 09:25:15
保守
- 740二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 09:55:51
なんだかんだスピードランサーは無事でいてくれる感じはするよね
悪運が強いと言うか - 741二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 13:04:17
悪運というか…普通に生存能力は最速なことも含めてぶっちぎりトップだよね
- 742二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 16:43:28
むしろスピードランサーに運が強い印象が一切無い。正しく幸運:Eだよね
強敵との戦いは毎回ほぼ単騎で戦ってるし、その全てに実力で勝ち残ってるし - 743二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 20:01:59
(悪)運が良いって話だったらティターニアの方がそれっぽいかな
数の暴力だったり、デカブツだったり、毎度毎度マッチアップというか戦う敵キャラの相性が明確に良いみたいだし、その中の何割かはたくさんの仲間と一緒に戦ってるし
そう考えるとほとんど一人っきりで戦ってる(ヴェンデッタ戦ではハスキーロアに助けてもらったけど)上に相性悪い(再生能力持ちや物理攻撃無効系)スピードランサーとはまるっきり正反対なんだねえ - 744二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 20:24:41
ティターニア先生、格下〜同格には相性負けすることも多いけど、魔力や固有魔法に物を言わせてくるタイプの格上には無敗なんだよね
マジカルストラッシュや魔法少女としての基礎スペックもあるけど、やっぱり中身が妃咲希だから強かったんだろう - 745二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 20:35:43
改めて思うけどスピードランサーの姉貴、Aタワーでの第一印象からこんなにも読者に愛されるキャラになるなんてやっぱり凄いよな…
これだからバトロワはやめられない - 746二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 20:52:51
ティターニアが明確に格上と呼べる敵と戦ったのはパラサイトドール戦だけで、それこそ皆んなの力が無いと確実に負けてたしね……。アグネアパワー+千郷の全力がないと弱体化に弱体化を重ねても削り切れてないし
メンダシウム戦も四強と同格って明言されてるから、見た目は物量戦だけどパワーバランス的には相性抜群✖︎2+裏切り者かと思ったら逆に裏切られたジキルで手酷いリンチなんだよね…
- 747◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 22:40:22
規制解除されたので、続きを投下します
- 748◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 22:44:09
「埒が明かんな」
と、アリアは言った。
炎と槍が飛び交う、地獄のような戦場。
モニターの向こうからそれを眺めるトート・アリアと白服たち。
炎も槍も、モニターの向こうにまでは届かない。
だが、白服たちの中には、先ほどまでは微塵も無かった「焦り」が、徐々に顔を出していた。
炎と化した勇者に、スピードランサーの槍は刺さらない。
スピードランサーは勇者の炎が直撃すれば死ぬ。
ならば勝つのは勇者である。
魔法少女の戦いとは相性の戦い。
あらゆる魔法を備える勇者は、あらゆる魔法少女に相性で有利に立つ。
それが必然。それが理。 - 749二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 22:45:24
書き込み規制しんどいよね…お仕事、忙しいだろうにいつもありがとうございます。ご自愛くださいね
- 750◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 22:53:03
にも関わらず、勇者とスピードランサーの戦いに決着は着いていなかった。
スピードランサーの槍は勇者に刺さらず。
勇者の炎はスピードランサーを捉えない。
互角、である。
「ぐぬぅ、スピードランサー。すばしこい奴め」
「決着のついている戦いを長引かせるとは……」
そうだ、と白服たちは頷きあう。
もはやスピードランサーに勝ち筋は無い。
先に魔力が尽きるのもスピードランサーのはずだ。
今の現状は、スピードランサーから自身の敗北から逃げ回っているだけに過ぎない。
その筈なのだ。
互角に見えるなど、気のせいだ。
白服たちの目測では、スピードランサーは四強で最弱の存在である。
絡め手に弱く、他の三強のような伝説も無く、影響力も無い。
四強で一番最初に、それもアレヰ・スタアとパペッタンという、『大して強くも無い魔法少女』に敗北した存在だ。
白服たちはそう認識している。 - 751◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:01:25
ハーゲンに勝利したのこそ見事だが、旧式勇者のハーゲンと、2024年製造の勇者では、強さの桁が違う。
ハーゲンと互角だったスピードランサーと勇者が互角。
そんなことはあり得ないのだ。
もしそうなら、百年間の研鑽が無意味になってしまう。
「たかがJAPに時間をかけるのも惜しいですな。ふん、所詮速いだけ。
ならば、あの魔法を使いましょう。
この街の一部を支配していた、道化じみた銃使いの魔法を……!」
「採用」
「よしっ、これでスピードランサーも終わりだ!」
- 752二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 23:01:58
思えばスピードランサーがクリックベイトと釣りしたりカメラマンやってるとか以外で魔法少女として何やってるのか全然知らんかったわ
- 753◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:05:55
勇者の手元に、剣では無く銃が出現する。
スピードランサー、ティターニアと肩を並べ、袂を分かった魔法少女。
スピードランサーに殺された、恐るべきガンマン。
デッドマンズ・ハンド。『魔法のピストルを操るよ』。
そのリボルバーは、どれか一発は「必中」する。
どれだけ速くとも必中の弾丸から逃れることは出来ず。
どれだけ槍で弾丸を弾いたところで必中の運命からは逃げられない。
マジカルストラッシュを弾く、ああああの『拒絶』ですら逃れられない、必殺の魔弾。
かくして引き金は引かれ——。 - 754◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:10:57
「アホかお前」
引き金が引かれる前に、スピードランサーの槍がリボルバーを弾き、粉々にしていた。
すかさず勇者は二つ目のリボルバーを召喚するが、やはり引き金を引く前にスピードランサーの槍が銃身ごと砕く。
それは、再演だった。
マジカルストラッシュを放とうとし、剣を弾かれる。
何度も繰り返された攻防が、剣が銃に代わって再演される。
引き金を引く。ただそれだけの動作が、あまりに遠い。 - 755二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 23:13:16
- 756◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:14:25
「どうして勇者はあんなに遅いんだ!
早撃ちのはずでは!?」
デッドマンズ・ハンドの魔法を進言した白服が叫んだ。
勇者はあらゆる魔法を備えている。
そしてスピードランサーは確かに最速だが、ぶっちぎりで速いわけではない。
早撃ちのデッドマンズ・ハンド。
神速の抜刀術、抜刀金。
あるいは戦闘機の付喪神、フライフィアー。
別ベクトル、別ジャンルならば、スピードランサーの最速に並ぶ、あるいは超える魔法少女は存在する。
完璧にして究極の勇者ならば、それらの再現も……。 - 757二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 23:20:39
個人的に魔法もチートなブレイズドラゴンと比べて槍術が完全なアイデンティティだし魔法も強くないスピードランサーは技量最強であってほしいぜ!
- 758◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:21:00
「ん、ああ、それは勇者は使えないぞ」
高みから見下ろすアリアは、白服の一人に声を掛ける。
「使えない……?」
「勇者はおよそあらゆる魔法を行使できるが。
デッドマンズ・ハンドの早撃ちも。抜刀金の抜刀術も。
魔法では無く技術だからな。
無論、身体能力強化の恩恵あっての話であり、生身では普通人の範疇に収まるだろうがな。
フライフィアーにしたところで、奴の速さは『戦闘機の付喪神』という特性故。
再現できるのは『糸を出す』方だけだ」
勇者の欠点を、まるで他人事かのようにアリアは語る。
「で、では必中の弾丸だけではスピードランサーに勝てない……?」
「さてな」 - 759◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:25:57
「ふぅむ、どうも皆さんは固定観念に縛られているみたいですねぇ」
白服の一人が腕を組み、ククク……と笑い声をあげた。
「魔法少女の魔法は原則一つ。
勇者という別規格の存在をその手に収めても、未だ思考が旧式に囚われている」
「何だと!?」
「我々アーリア人を愚弄するのか!?」
「いえ、愚弄しているのはあなた方だけです。
まだ分かりませんか。勇者はあらゆる魔法を使うことが出来る。
魔法を組み合わせることだって出来るのですよ。
アリア様、進言致します。
『拒絶』+『必中』。
これで詰みです」
「採用」
「やったー!」 - 760◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:44:12
勇者の眼前に『拒絶』の幕が下りる。透明ゆえに、スピードランサーには視認できない。
勇者はデッドマンズ・ハンドのリボルバーを召喚する。
砕くべく槍が発射され、『拒絶』されて弾かれる。
今度こそ引き金が引かれ——る前に後方から放たれた槍が、リボルバーを砕いていた。
スピードランサーの槍は、魔法陣から放たれる。
そしてその魔法陣は、一定の距離に、任意で発動できる。
すなわち、全方位から槍を放てるのだ。
「ぬぅ! ならば拒絶を全方位で囲めばいいだけのこと!」
コマンドが入力され、勇者を包むように『拒絶』の幕が下りる――前に、無数の槍が勇者を串刺しにしていた。
- 761◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:45:55
「くっ、傷を治すのだ、勇者よ」
勇者の身体が再生していく。
だが、再生しきる前に、再び無数の槍がその身を貫いていた。
「くっ、傷を治すのだ、勇者よ」
勇者の身体が再生していく。
だが、再生しきる前に、再び無数の槍がその身を貫いていた。
「くっ、傷を治すのだ、勇者よ」
勇者の身体が再生していく。
だが、再生しきる前に、再び無数の槍がその身を貫いていた。 - 762二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 23:47:10
ラスボス陣営の癖に本当に楽しそうな職場だなナチスたち
- 763◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:50:04
アリアは鼻を鳴らした。
白服には、大総統の心を知ることは出来ない。
だが、彼女の不興を買っていることだけは分かった。
「拒絶……駄目だ、再生中だと魔法の発動が更に遅くなる!」
何度も何度も串刺しにされる勇者がモニターに映し出され、白服たちは唸った。
「くだらん」
と、アリアは言った。
無数の槍で串刺しにされた勇者は、再生しなかった。
その眼は静かに閉じられる。
ここに、勇者は絶命した。
「まほう」
「クロノス」 - 764二次元好きの匿名さん25/07/19(土) 23:52:22
アリアちゃんなんだか楽しそうな時とつまんなさそうな時のテンションの差が激しいね
- 765◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:57:28
時は巻き戻される。
串刺しにされ、勇者は絶命する。
「まほう」
「クロノス」
スピードランサーの眉が、僅かに動いた。
二度の時間逆行に、スピードランサーは違和感を覚えたのだ。
槍は放たれず、勇者はようやく串刺し地獄から解放される。
「『どんな場所にも旅行に行けるよ』」
空中で、閃光と熱が迸った。
爆発と共にワープする、ハートプリンセスの魔法。
逃走、ではない。
必要なのは距離。
スピードランサーから距離をとった場所に出現した勇者は、その全身を『拒絶』で覆った。
「『魔法のピストルを操るよ』」
放たれたのは、必中の弾丸。
追いついた槍は全て『拒絶』され、最速での逃れようのない必中が空を切り裂いた。 - 766◆xaazwm17IRZa25/07/19(土) 23:59:05
投下を終了します
暖かい言葉や感想、いつもありがとうございます
明日は漫喫に泊まるので、Wi-Fi環境によっては顔出せないかもです… - 767二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 00:07:28
本日もお疲れ様でした〜!
白服たちの妙にコミカルなやりとりが前作の暗黒金持ちを思い出させる… - 768二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 05:53:43
アットホームで楽しい職場です
- 769二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 07:14:59
行動が適当なのはコマンド選択を部下に丸投げだからなのか…
アリアちゃんマジで何がしたいの… - 770二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 07:47:55
幼馴染の魔法使われまくってるしそろそろスピードランサーの姉貴ブチキレる?
- 771二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 13:15:12
白服のレパートリーが多過ぎる
- 772二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 15:08:44
完全オート拒絶バリアのあーちゃん比べて勇者はいちいちコマンド打たないと発動しないんだな
- 773二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 17:08:08
魔法の同時併用はできない感じ?
いつのまにか最初に出した分身が消えてるし - 774二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 19:35:05
>「やったー!」
白服幹部可愛い
- 775二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 19:36:52
まるで上司が部下にゲームの操作を丸投げするかのような
- 776二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 20:57:28
素でオールレンジ攻撃できる魔法少女は意外にも居なかったしゲートオブバビロンばりの全方位槍投げ攻撃もっとやってくれ
- 777二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 21:47:32
スピードランサーちゃん質問なんですが、スピードランサーちゃんはカメラマンとしては儲かってますか?
てかちゃんと家とかに住んでるんですか? 山とかで野宿してても驚かないですけど - 778二次元好きの匿名さん25/07/20(日) 23:25:12
- 779125/07/20(日) 23:54:09
素敵なイラストありがとうございます!
右のドヤ顔可愛い!
左の見下した表情も解釈一致です!
衣装や髪の質感も丁寧で、「魔法使い」感とそこはかとなく神様、天使のような雰囲気もあるのがテンガイらしさを表してると思います
肩の梟も可愛いですね、意外と使い魔は大事にするタイプなので話し相手になってたかもしれません
「天蓋」のデザインも秀逸で、立ち絵だと見下しているのですが、ここだと下から見上げてるんですよね
テンガイの立ち位置を表したデザインだと思います
素敵なイラストありがとうございました!
ドヤ顔可愛い!
- 780125/07/20(日) 23:58:14
今までイラストを投下してくださった方にも改めて感謝を申し上げたいです
私はまったく絵が描けない、デザインができない人間なので、素敵なイラストを描いてくださると、とても励みになります
ありがとうございます!
感想をくださる方も、保守で繋いでくださる方も、アイデアをくださる方も、皆さんのおかげでこの企画は続けられています!
いつも本当にありがとうございます! - 781125/07/21(月) 00:07:58
この時間にキーボード叩いてると他のブースからクレーム来そうなので、本日本編投下は無しで、スマホでコメント返しさせていただきます
カメラマンとして活動はしてると思います
どれくらい稼いでいるかはわからないので、ダイスで決めます
dice1d100=68 (68)
1〜20 無名
21〜40 食べてはいける
41〜60 若手にしてはよくやってる
61〜80 売れっ子
81〜99 国内でもトップレベル、個展開催や写真集発売も
100 「世界のヤリガサキ」
- 782125/07/21(月) 00:09:12
カメラマンとして売れっ子みたいです
やったぜ - 783二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 00:10:05
四強のおねーさん達におパンツ見せてってお願いした時の反応が知りたいです!!!!111!!!11!!!
- 784125/07/21(月) 00:15:35
スピードランサーは武者修行で山に籠ったことはありますが、普段は実家で暮らしています
ダイスの結果カメラマンとして売れっ子になったので、かなり稼げてそうですね〜 - 785二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 00:17:46
特に変身とかしてないのに危険な山岳地帯とかにひょいひょい入り込んで写真撮ってそう
- 786125/07/21(月) 00:19:20
- 787二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 00:21:21
神〜!!!?
- 788125/07/21(月) 00:26:50
- 789二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 00:30:07
蟹と槍と剣でUSJとか行ってるらしいけど、ティターニアが一番ノリノリでエ⚪︎モのカチューシャとか買っちゃったりしてて、
スピードランサーはそっけない感じを醸し出そうとしてるけど喜んでるのが隠せてなくて、
蟹はそんな二人を見て後方腕組み師匠面してて欲しいぜ - 790二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 00:31:38
本編中だと書かれるかどうか分かんないので一応質問させて頂きたいんですが、蟹の家庭の事情にはのぞみと舞矢は首を突っ込まなかった感じ?
幼いのぞみちゃんだったら止めても殴り込みに行きそうな雰囲気あるけど - 791125/07/21(月) 00:33:11
- 792125/07/21(月) 00:43:40
借金取りをしばいたところで借金が無くなるわけでもなければ蟹の貧困が解決するわけでもないので…
もしかしたら脅して帰らせるくらいはしてるかもしれないですし、そこから借金取りのケツモチの組の用心棒してる魔法少女とバトったこともあるかもです
ただ、蟹の問題に必要なのは魔法少女ではなく、法律に強い大人と貧困家庭を支援する行政のセーフティネットで
蟹が子供のころはあにまん市は糧鮴全盛期でくっそ治安悪い街だったのでそういうのは期待できず…
- 793125/07/21(月) 00:51:44
ティターニアとスピードランサーの活躍もあって、
・嫌がらせはしない
・返済は大人になるまで待つ(ぶっちゃけ返済義務は無いのですが、小学生の蟹本人が支払う覚悟あり)
みたいな落とし所になったんだと思います
借金自体は『デッドマンズ事変』後に蟹が裏社会ビジネスであっという間に返済しました
その頃には、返済元の組は末端に至るまで顔ぶれが変わっており、旧メンバーは未だに発見されていません - 794二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 00:54:56
スピードランサーがカメラマンになったの無くしちゃったもの、手放してしまったものを少しでも写真に残したかったからかしら……
本当に欲しかったものはもう二度とレンズに映らないのに - 795125/07/21(月) 00:56:46
作中技量最高峰は抜刀金として
テンガイは魔法でサポートしないと近接戦闘スキル無し
ティターニアは純粋な剣道の腕前は山田浅利の方が上
ブレイズドラゴンも「中国拳法」の練度は魔法抜きでもハイエンドの方が上
スピードランサーは抜刀金に近いレベルにいますね
ティターニアやブレイズドラゴンと比較しても、今もなお技量は成長中です
- 796125/07/21(月) 00:58:49
街のパトロールやエネミー退治、あるいは魔法国の依頼なんかをこなしてたみたいですね
- 797二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 01:00:43
どうしてスピードランサーがティターニアと真反対の道を行くことになったのか、本編中でやるみたいだし楽しみだぜ
- 798二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 09:04:49
保守
- 799二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 14:16:29
うぉおおおおお神絵師だぁああああ
- 800二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 15:01:01
このバトロワ参加面子で一番バルバロイが望む喧嘩を出来る相手って誰だったんだろ
要するに命のやり取りでなく一方的にブン殴るでもなくお互い全身全霊全技術出しきろうぜ!っていうスポーツの精神よね? - 801二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 19:46:25
スピードランサーはそろそろ感情爆発させて泣いてもいいのよ…
素っ気ない態度だけど内面は荒れ狂ってるみたいだし - 802二次元好きの匿名さん25/07/21(月) 23:19:15
休める時が来るといいね…
- 803◆xaazwm17IRZa25/07/22(火) 01:25:46
バルバロイ本人は相手が自分の命を狙っていてもあんまり気にしません。相手の命を奪うつもりはないだけなので。
なので割と参加者の誰とでも「楽しい喧嘩(本人目線)」は出来ます。
その上で「互いにスポーツ感覚」で戦ってくれる相手を挙げると
殺し合い中でないなら(殺し合い中は「そんなことしてる場合じゃないでしょ」と断る)
ティターニア、スピードランサー、抜刀金
殺し合い中だと
ブレイズドラゴン(気分次第
だと思います。
戦闘スタイルが一番噛み合うのは参加者中ならハイエンド、非参加者も含めるとライドウです。
- 804二次元好きの匿名さん25/07/22(火) 07:49:04
1番噛み合うのねヒカリちゃん…
- 805二次元好きの匿名さん25/07/22(火) 12:00:32
保守
- 806二次元好きの匿名さん25/07/22(火) 12:52:56
ヒカリちゃんは色んな技出したがるし組まれても多分組技の切り札があるから全部使える
バルバロイはそれ食らうなり防ぐなりしながら組むまでも楽しいし組んでから技競うのも楽しい - 807二次元好きの匿名さん25/07/22(火) 18:17:18
ちなみにヒカリちゃん/ランドウがブレイズドラゴンに瞬殺されるのはおおよそ目に浮かびますが、弟子のハイエンドや、他の武術会交流組と戦ったらどんな感じになりますか? やはり秒殺されちゃいますか?
ヒカリちゃん、なんとなくそういう武術交流会とか見下してそうな勝手なイメージありますが分からせられちゃいます? - 808二次元好きの匿名さん25/07/22(火) 19:39:36
ヒカリちゃんの一番の幸せは魔法少女にならずに裏の格闘大会で満足してること…っていうスレ主さんお墨付きの悲しさ
- 809二次元好きの匿名さん25/07/22(火) 23:56:23
ランドウ本人はスポーツのつもりじゃないけどバルバロイからは試合の範疇と思われるのが見える見える…
- 810二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 07:02:08
ほしゅ
- 811二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 07:49:45
裏のまま居続けても良かったのに新天地に向かう姿勢は良し。戦いが終わったらここから一皮剥けると良いなぁ…
- 812二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 15:11:48
はやめのあげ
- 813二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 22:57:09
保守
- 814二次元好きの匿名さん25/07/23(水) 22:58:25
- 815二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 03:33:54
再開楽しみです
- 816二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 07:43:13
保守
- 817二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 14:00:19
ほっしゅ
- 818二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 20:30:26
あげ
- 819二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 20:58:30
スピードランサーの一番の長所は最速なことではなく成長性だったり?
- 820二次元好きの匿名さん25/07/24(木) 23:05:46
戦闘中に進化出来るってのも十分長所よね
- 821二次元好きの匿名さん25/07/25(金) 07:36:55
このレスは削除されています
- 822二次元好きの匿名さん25/07/25(金) 12:24:13
このレスは削除されています
- 823二次元好きの匿名さん25/07/25(金) 20:28:23
保守
今夜はあるかな - 824二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 00:03:58
保守
- 825二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 09:09:20
このレスは削除されています
- 826二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 09:09:58
未完の大器って感じね…今回はむしろ勇者がスピードランサーの経験値になっている…?
- 827二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 15:00:15
- 828二次元好きの匿名さん25/07/26(土) 23:08:23
裏ワザ的な感じかな。既に試してそうだが確かに挙動が気になるね…
- 829二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 05:38:51
このレスは削除されています
- 830二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 10:40:01
このレスは削除されています
- 831二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 18:40:37
このレスは削除されています
- 832二次元好きの匿名さん25/07/27(日) 22:31:21
保守
- 833125/07/28(月) 01:00:49
生存報告します
今週は顔出さず申し訳ありません…
投下できないまでもコメ返しなどはしようと思ったのですが、帰ると色々やる前に寝てしまうことが多く、中々時間が取れませんでした… - 834125/07/28(月) 01:08:07
本編で書くか分からないのでここで設定だけ書くと
「勇者ないし勇者操作者が『拳法』だと心底考えているもの」なら使うことが出来ます
なのでハイエンドより使える幅は狭いです
もっと言うと「剣道三倍段」という言葉があるように、スピードランサーの槍術に拳法で抵抗するには、彼女の三倍の技量が必要です
- 835125/07/28(月) 01:13:02
魔法少女という超人界隈があることが気に入らなかったんでしょうね…
「弓ヶ浜って裏格闘最強気取ってるけど所詮人間だし魔法少女からしたら雑魚だよな」とか言われたくないし…魔法少女でも最強だし!みたいなテンションかと
- 836hikari-saikyo25/07/28(月) 01:23:20
いえ、弓ヶ浜はブレイズドラゴンと互角ですね!
確かに魔法少女としての経験、傭兵としてのスキルは脅威ですが、格闘スキルは弓ヶ浜が圧倒しています
更には弓ヶ浜は相手の技をコピーできるので、ブレイズドラゴンは徐々に押されていきます
最初は互角の攻防を繰り広げますが、徐々に弓ヶ浜が有利になり、最後は圧倒します
なのでそれより格下の魔法少女は一方的に叩き潰され魔法少女になったことを後悔すると思います - 837二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 01:25:42
ヒ、ヒカリちゃん! あにまんで自演しないで!
- 838二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 01:26:55
お疲れ様です。IP規制もあるし、しんどいよねぇ
いつも素敵なお話を書いてくれてありがとー - 839-25/07/28(月) 01:28:00
- 840二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 01:28:00
お疲れ様です…どうかお身体にはお気をつけて……!!
- 841二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 01:29:43
スピードランサーちゃんっていうか舞矢ちゃんは武術交流会には行かんかったんだねぇ
興味が無いのか、招待されんかったんかどっちなんだろ? - 842125/07/28(月) 01:30:00
暖かいお言葉ありがとうございます、次の投下までしばしお待ちいただけると幸いです…
それでは、本日もありがとうございました〜 - 843二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 01:30:09
ヒカリちゃんの預金残高がゼロにされてまう
- 844二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 07:45:38
効果は抜群だ!
- 845二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 16:03:24
保守
- 846二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 22:47:47
凄い…ヒカリちゃんの言っていることに信憑性が全く感じられない…!
- 847◆xaazwm17IRZa25/07/28(月) 23:13:12
久しぶりに投下します~
- 848二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 23:20:01
待ってたで〜
- 849二次元好きの匿名さん25/07/28(月) 23:22:14
スピードランサーさんはなんていうか参加者の中でも一番武人メンタルなとこあるのかな? 武芸者やブレイズドラゴンとはまた違う印象
互いに合意ありなら死ぬのもヨシ!だけど根っこのところが善人で仲間想いなとこがそれっぽい - 850◆xaazwm17IRZa25/07/28(月) 23:29:12
銃声が響く。
100m先に掲げられた的の中央に、小さな、けれど正確な穴が開く。
「大したもんだな」
と、槍ヶ崎舞矢は言った。
「ど真ん中、ドンピシャじゃねぇか」
「見えてるの? 舞矢ちゃん眼がいいねぇ~」
デッドマンズ・ハンドはけらけらと笑った。
「おいちゃんは舞矢ちゃんみたいな、魔法少女になる前から強いタイプじゃないからね~。銃の撃ち方とかも独学だし、全然上手くならない。
やっぱりおいちゃん喧嘩弱いね~」
「喧嘩のつもりで銃撃つなよ」
「槍で刺しても駄目でしょ~」
それもそうだ、と舞矢は笑った。
一応、加減はしている。
相手がどれだけ悪い奴でも、それこそ裁判にかけたら無期懲役とか死刑になりそうな悪い奴でも、刺し殺したりはしない。
柄で殴って制圧するし、あるいは穂先で薄皮を抉る程度だ。
刺すにしても、脳や心臓、大事な臓器は避ける。
- 851◆xaazwm17IRZa25/07/28(月) 23:30:26
何となく、そうしている。
(アタシが、まだガキだからかねぇ)
と、舞矢は思う。
魔法少女になって、もうすぐ一年が経つ。
色々な魔法少女と戦った。
その全てに勝利したが、命を奪ったことはない。
中学に上がれば、高校生になれば、大人になれば、いずれ自分は人を殺せるようになってしまうのだろうか?
(今でも別に、絶対殺したくないってわけじゃねぇしなぁ)
異常者、なのだろう。
父親に洗脳されたとか、幼少期のトラウマとか、そういうものではない。
何となく、そういう風に生まれついた。
(なんて、案外ただの中二病って可能性もあるか)
小学生で中二病というのは恥ずべきことなのか、誇ることなのか。
舞矢は微かに首を捻り、まぁどうでもいいか、と結論をつける。
- 852◆xaazwm17IRZa25/07/28(月) 23:47:06
「おいちゃんもさ、色々考えたのよ~。
やっぱりお姉さんとしてさ、のぞみちゃんや舞矢ちゃんに頼り切りはよくないと思ってさ~。
けどねぇ、銃って難しいねぇ。
舞矢ちゃんみたいに物心ついたときからやってれば良かったんだけどね~」
「ん? でも、さっき当てたじゃん」
「あれは、魔法。必中魔法。今のおいちゃんだと、一発撃つのでもう限界。あ、眩暈が~」
きゅう、と呻きながらデッドマンズ・ハンドは変身を解除し、倒れる。
その華奢で小柄な体が地面につくまえに、舞矢は素早く回り込み、ひょい、と身体を支えた。
「あ、サンキュー舞矢ちゃん」
「頭とか打つと危ないしな。にしても、魔法で必中で、なんかズルくない?」
「あはは、ズルしないとおいちゃんは勝てないからねぇ。
おいちゃん、喧嘩弱いし」
「確かに蟹は弱いな」
銃使いの魔法少女だが、銃の威力も大したことはないし、命中精度も悪い。
狙いを定めて撃つ速さも、まるで遅い。
さすがに生身だとしんどいが、変身してれば素手で楽勝に勝てる。 - 853◆xaazwm17IRZa25/07/28(月) 23:47:19
「アタシの仲間なんだから、もっと強くなれよ」
「ひぃ、舞矢ちゃんスパルタ~。よよよ~」
魔法で必中なんてかっこ悪いぜ、と小学生の舞矢は思った。
そんなことをしなくても、毎朝二時間の鍛錬を三年ほどやれば、それなりの命中精度になるだろうに。
それまでの期間は、自分やティターニアが蟹を守ればいい。
同時に、必中の弾丸についても考えた。
今のデッドマンズ・ハンドの弾丸は、大して威力も無いから、必中でもまるで怖くない。
けれど、威力が上り、人間が撃たれた時と同等のダメージを、敵に与えるようになったら?
舞矢がどれだけ速く動いても、必中ならば逃げられない。
もしそうなったら、自分は蟹に勝てなくなるのだろうか。
そうだろうか、と舞矢は思い、違うな、と思い直す。
そうなったら、撃たれる前にやっつければいい。
小学生の舞矢は、そんな風に考えた。自分ならばそれが出来ると、疑うことなく信じきっていた。 - 854◆xaazwm17IRZa25/07/28(月) 23:53:45
◇
爆発ワープ→全方位拒絶→必中の弾丸。
勇者の風体とは不釣り合いなリボルバーから放たれた弾丸は、真っ直ぐにスピードランサーへと向かっていった。
すぐさま槍が迎撃する。
人間が使うリボルバーの弾丸、その十倍の速さで進む魔弾に、しかしスピードランサーの槍は追いつく。
その程度の速度では、スピードランサーの攻撃速度は超えられない。
——超える必要も、無いのだ。
弾丸は、必中である。
弾丸は加速し、ジグザグに進む。
今この瞬間、デッドマンズ・ハンドの弾丸は、スピードランサーの速度を超える。
ああああのように、あるいは勇者のように、全方位拒絶が出来れば、命中を引き延ばすことが出来るだろう。
だが、スピードランサーはただ速く、ただ強い。それだけの、それしか能が無い魔法少女だ。
必中から逃れる術は無く、着弾を引き延ばすことも出来ない。
- 855◆xaazwm17IRZa25/07/29(火) 00:02:48
予定調和のように、必中の弾丸は、スピードランサーの額に命中する。
デッドマンズ・ハントの弾丸の威力は、肉体を強化した魔法少女でも容易く貫く。
必中の弾丸は、スピードランサーの、脳と頭蓋骨をかき混ぜながら、血の花火と共に後頭部から排出される。
その未来が、確定する。
スピードランサーの身体が後方にのけぞった。糸の切れた人形のように、彼女は空中で体勢を崩し、脳天を下に向ける。
遅れるように、血の軌跡が生じる。
スピードランサーの頭部から噴き出した鮮血が、空にアーチを描く。
- 856◆xaazwm17IRZa25/07/29(火) 00:10:08
勇者は、何の感慨も無く、自身の生み出した光景を眺めていた。
勇者もまた、誰かに操作される道具に過ぎない。意思無き者が意思無き道具を操る。
人形のような、ガラス製で、どこまでも透明な瞳。
その視界を――鋭利な穂先が覆った。
勇者に次の命令が行使される前に、操作者の意識が反応する前に。
勇者の首から上は、吹き飛んでいた。
それは、デッドマンズ・ハンドの死の、焼き直しのようでもあった。
「——その魔法じゃ、アタシは殺せねぇよ」
魔法陣から、槍が顔を覗かせる。
その穂先に立つスピードランサーは、額から流れる血を、乱暴に拭った。
「蟹ならともかく、お前らには無理だ」 - 857◆xaazwm17IRZa25/07/29(火) 00:20:10
「な、何が起った……!?」
モニターの前で白服たちは口々にざわめく。
いくつもの手順を踏んだ末に、必中の弾丸は放たれた。
スピードランサーは必死に撃たれないように立ち振る舞っていた。
裏を返せば、一たび必中が放たれれば負けると、分かっていたから。
そのはずなのに。
「Scheiße!(くそっ) 弾丸の威力が弱すぎます!」
「所詮はJAP魔法、劣等だとはっきり分かったな」
今は亡き裏切り者のガンマンへの呪詛を零す白服を、アリアは冷ややかに見下ろしていた。
「本来なら、スピードランサーは死んでいた。
あれは、そういう魔法だ」
「しかし、現にスピードランサーは生きています!
あの女には、物理攻撃を無効化する手段など持っていなかったはず……!」
とん、とアリアは自身のこめかみを指で叩いた。
「……なるほど。そういうカラクリか」
「アリア様、分かったのですか?」
「ふん、単純な話だ。ユーゲントでも理解できる」
- 858◆xaazwm17IRZa25/07/29(火) 00:26:40
確かに、必中は成立していた。
弾丸は、勇者ないしその操作者の狙い通りに、スピードランサーの頭部に命中したのだ。
右手や左手で弾丸に触れることで「スピードランサーに当たった」という事実を成立させる。
そんな生ぬるい対処は不可能だった。
必中の対象は、スピードランサーの頭部、その額なのだから。
必中の名が示す通り、勇者の放った弾丸は、スピードランサーの額に着弾し、その皮を、肉を、抉っていき――。
弾丸が頭蓋骨に到達するより速く、スピードランサーは加速した。
既に、必中は成立している。
着弾前の弾丸はどれだけ速くとも逃げられないが、着弾後なら話は別である。
額に当たった弾丸が脳に届くより速く、スピードランサーは弾丸を超える速度で動き、空中で縦に回転することで弾丸の軌道から自身の脳髄を避難させた。
ただ、それだけの話である。 - 859◆xaazwm17IRZa25/07/29(火) 00:33:24
「その魔法は——目視した物しか狙えない」
と、スピードランサーは断言した。
よって、心臓や脳髄といった、身体の内側にある物を直接必中の対象には出来ない。
「蟹なら避けてる間に持ち前の技術で致命傷を狙ってくるが——付け焼刃じゃ無理だし、させねぇよ」
再生を開始する勇者を見下ろし、スピードランサーは不敵に笑う。
「そら、次はどうするんだ?
あんまりアタシに時間かけてるとよ――アタシの仲間に、魔法陣、全部壊されちまうぞ?」
- 860◆xaazwm17IRZa25/07/29(火) 00:34:20
投下を終了します~
- 861二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 05:36:40
今でも蟹のこと、大切に思ってるんだね…
- 862二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 07:47:36
投下お疲れ様です!
- 863二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 09:09:54
こんなに穏やかな時間があったんだ
悲しいね - 864二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 16:38:12
このレスは削除されています
- 865二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 18:18:05
スピードランサーちゃん、部分的には劣ってるところもあるみたいだけど本当に最速なんだね…
素の回避能力は本当に最高峰なのかな? 能力無しで当てるの無理そう - 866二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 21:09:16
四強最弱がただの煽りなら、アリアちゃんのスピードランサーに対する内心の評価を聞いてみたいね〜
- 867二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 23:38:16
このレスは削除されています
- 868二次元好きの匿名さん25/07/29(火) 23:38:44
魔法以上の性能を発揮できないのが難点ね勇者
- 869125/07/30(水) 00:18:53
スピードランサーと武術交流会
興味は
dice1d2=2 (2)
1あった
2なかった
招待は
dice1d2=1 (1)
1された
2されてない
- 870125/07/30(水) 00:22:13
シンプルに招待されてたけど興味なかったから行かなかったみたいです
たぶん行ってれば三人組は割と懐いてたんじゃないでしょうか
本編開始前にスピードランサーvsブレイズドラゴンが始まってた可能性もありますが… - 871125/07/30(水) 00:28:31
ちなみにヒカリちゃんは葉月父とヨシネ父なら変身しなくても一方的にボコれるくらい強いです
保護者の実力は
王龍明>抜刀父>ヨシネ父>葉月父です
葉月祖父はヨシネ父と同レベルくらいですね
- 872125/07/30(水) 00:41:27
ニマンア族の戦士はヨシネ父〜抜刀父の間くらい
歴代ニマンア族トップ3とかのレベルになると王龍明クラスも居たと思います
作中最強の生身の人間はナサリーブラウンです - 873125/07/30(水) 00:51:12
なんだか葉月父がかなり弱い人みたいに書いてしまいましたが、彼もまた一角の剣士
生身のティターニアと「試合形式」で戦えばまず負けません
ガチバトルならたぶん勝てませんが、それはヨシネ父も同じなので… - 874125/07/30(水) 00:53:22
という感じで大人組というかおじさんたちの強さを明らかにしたところで今夜はここまでとさせていただきます。
- 875二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 07:19:15
保守
- 876二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 07:49:07
おじさん達中々強いな…
- 877二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 10:52:14
スピードランサー/舞矢ちゃんの生身の強さは生身のブレイズドラゴンよりも上かな?
技量だけで言えばブレイズドラゴンを上回ってるみたいだし、槍のリーチもあるし - 878二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 15:13:23
スピードランサーが「アタシの仲間に」って言うのなんか良いね…
- 879二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 19:46:31
きっちり共闘したのってAタワーの雑魚狩りくらいで今までずっと孤軍奮闘してたからね…ハスキーロアのアシストがなければ危なかった場面もあるが
死に際のサンファングとの約束もあるし、何かの縁だしで最終決戦ではハスキーロアと最後まで一緒に戦ってくれたらいいな…大切な人を失い続けた最後だけはどうか間に合ってくれ(絡めるキャラが全く居ないというのもある
- 880二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 20:35:24
Wikiの方でちょっとお話を読み返してみたけど、一番弱くて性格もクソカスって、なんにも取り柄が無くて本当に救いようがないっすね葉月父…娘への愛情とかカケラも無い感じかな?描写的に
まぁ娘の方もコテンパンに惨敗したうえに特にフォローなかったあたり、武術の才能はあんまし無さそうだけど…代わりに武術組の中じゃ魔法少女としての才能が一番ぶっちぎってたあたり皮肉なのかな? - 881二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 22:48:08
ナチス風に言えば、スピードランサーはジークフリート(勇者)に対する勇者の介添人である槍の乙女(ワルキューレ)の立ち位置になるのよね
まぁアリアが勇者をジークフリートに喩えてたことから連想したただのこじつけだけど
- 882◆xaazwm17IRZa25/07/30(水) 22:49:21
投下します
- 883二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 22:54:06
やったー嬉しい! お仕事も投下もお疲れ様です!
- 884◆xaazwm17IRZa25/07/30(水) 22:57:13
それから、無数の攻防があった。
勇者はあらゆる魔法を再現できる。
多少の制約はあるが、複数の魔法を同時に使うことも出来る。
『全能』とさえ形容できる手数の多さ。どんな魔法少女の弱点も突ける、究極の魔法少女。
白服たちは口々に新たな案を提案した。
勇者は諾々とそのコマンドに従い、魔法を行使する。
相手の性能はシンプルであり、故に相性次第では格下にも完封負けする。
白服たちは敵をそう定義していた。
事実上、勇者はどんな相性でも再現できる。故に負けない。負けるはずが無い。 - 885◆xaazwm17IRZa25/07/30(水) 23:03:43
数多の「必勝法」が試された。
その全てが覆された。
全方位を拒絶で防御+『どんなものでも透けて見えるよ』で透視+必中の弾丸。
そんな理不尽極まる攻撃でさえも――通用しない。
拒絶を全方位に展開する前に、勇者の身体は槍で削られ、回復に専念しなければ細かい肉片になってしまう。
クライオニクスの氷結も、ファイフィアーの拘束も、10人以上増殖して放った全方位マジカルストラッシュでさえ、陣形が完成する前に速度で突破されてしまう。
速い。
口々にアイデアを言い合っていた白服は、一人、また一人と沈黙した。
モニターの前は、重苦しい、陥落前のベルリンのような空気が漂い始める。 - 886◆xaazwm17IRZa25/07/30(水) 23:07:38
(あれ? こいつ、どうやったら勝てるんだ?)
白服の脳裏に、そんな疑問が浮かんだ。
理論上は、いくらでも穴がある。
何しろ速度と小手先の技術以外は、魔力量も魔法数も、単純な身体能力でさえも、勇者は圧倒しているのだ。
スピードランサーがいくら槍で刺そうと意味は無い。スピードランサーに勝ち筋は無い。
が、勇者の攻撃も、未だ命中したのは最初に放った必中魔法だけである。次回、次々回は撃つ隙さえ与えてくれなかった。
勝つ手段はいくらでもあるはずなのに。いざ試せば悉く失敗する。 - 887二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 23:38:16
クライオニクスの魔法はスピードが半減するから相性良いはずだけど、常時展開してるのとコマンド打たないと発動してくれないのとでは遅すぎて対処されちゃうのかな?
- 888二次元好きの匿名さん25/07/30(水) 23:43:36
陥落前のベルリンで草
白服たち、もはや何もせず沈黙してるだけで面白いのずるいな - 889◆xaazwm17IRZa25/07/31(木) 00:13:09
勇者が新生第三帝国の一幹部に過ぎないのであれば、白服たちはここまで動揺しなかった。
勇者は、最大戦力である。
スペックだけならば四強全員を相手取っても、参加者を一度に相手しても、パラサイトドールにだって勝てるはずなのだ。
トップクラスとはいえ、一参加者にここまで粘られるなど、あってはならない。
道理が、崩れている。
「……そうか、相性だ……!」
白服の一人が叫んだ。
「勇者唯一の弱点。それは、遅いことだったんだ……!」
「なるほど。スピードランサーは勇者の天敵だったんだな」
「くそっ、JAPめ。卑劣な真似を……!」
答えを導き出した白服たちに、喜びが伝播していく。
戦争には、こういうこともある。
格下にも関わらず、偶々相性で負けてしまう。
スピードランサーは勇者より格下だが、偶々、偶然にも、勇者に対して相性抜群だった。
- 890◆xaazwm17IRZa25/07/31(木) 00:21:33
魔法少女は相性バトル。
相性が悪ければ、つまらぬ苦戦もあり得るのだろう。
スピードランサーはアレヰ・スタアとパペッタンに敗北した、四強でも最も倒しやすい魔法少女なのだ。
本来の実力差なら、勇者が瞬殺している。
が、相性が悪いので、一時的に拮抗状態……のように見えているだけだ。
「しかし、どうする?」
「このまま戦えば、そのうちスピードランサーは魔力が尽きて死ぬ。焦ることはない」
「そんな悠長な勝ち方、我々には相応しくない。ふむ、あのグレンデルとかいう傭兵を向かわせるべきだ。グレンデルとスピードランサーが戦っている間に、勇者は他の生き残りを皆殺しにする」
「馬鹿な、勇者がスピードランサーを倒すことを諦めるというのか!?」
「そうは言ってない。俺はただ、効率を最優先して」
「パラサイトドールの魔法を使えばいいのでは?」
と、白服の一人が挙手し、発現した。
「スピードランサーはこの魔法に為すすべなく敗北しています。
まだ試していないのなら、使ってみるべきでは?」
事実、数多の魔法を使えど、パラサイトドールの支配魔法だけは一度も使用していなかった。
一度はこのゲームを、この街を、この世界そのものを支配してみせた魔法。
スピードランサーを竜の手先に貶めた魔法。 - 891◆xaazwm17IRZa25/07/31(木) 00:26:40
「——いいんだな?」
アリアの声が、白服たちに降り注ぐ。
その声色には、微かな嘲りが混じっていた。
「パラサイトドールの支配魔法は、生物全てを対象とする。
——当然、吾輩も、貴様らも、支配対象に含まれるが?」
「あ……」
もし勇者が支配魔法を使えば。
僅かな可能性であるが、起こりうる。
ナチスと勇者、主従逆転。
「申し訳ありません。……いささかリスクが」
「いや、面白い。採用」
「へ?」
ククク、とアリアは眼を細めて笑った。
ぞわり、と勇者の影が、竜のように蠢いた。
- 892◆xaazwm17IRZa25/07/31(木) 00:27:07
投下を終了します
- 893二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 00:31:03
アリアちゃんずーっとつまんなさそうにしてたけどようやく笑ったねぇ
そういえば凄く長い間パラサイトドールと一緒に居たんだっけねぇ… - 894二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 01:11:55
どうなっちゃうんだ…
これまで勇者はあくまで最強の敵、実質的なラスボスはトート・アリアだと考えてきたけど、これで黒竜in勇者がラスボスの可能性が一気に高まってきたなぁ… - 895二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 07:47:41
白服も焦りからかアリアへ疑心の目を…
- 896二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 08:17:35
もうここまま支配の末に敵も何もかも取り込んだNeo勇者として大きくなって欲しい
- 897二次元好きの匿名さん25/07/31(木) 13:55:23
アリアちゃんが仲間想いっていうのはたぶん本当なんだろうねぇ
白服や雑兵や勇者はただの駒だから何も思わないだけで