魔法少女を集めてバトロワするスレ9

  • 1◆xaazwm17IRZa25/05/06(火) 17:13:44

    皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(9スレ目)です。(本編は1が書きます)


    キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあります)ので、そこだけご了承いただけると幸いです。


    詳細はこちらから


    https://w.atwiki.jp/mahousyouzyobr/pages/1.html

  • 2二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 17:17:57

    お久しぶりです待ってました!!

  • 3二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 17:32:33

    建て乙

  • 4◆xaazwm17IRZa25/05/06(火) 17:48:44

    過去スレ


    魔法少女を集めてバトロワするスレ1|あにまん掲示板様々な個性の魔法少女たちがデスゲームに参加することになった……という体でデスゲーム小説書くのでオリキャラ募集しますデスゲームの内容としてはバトロワベースで特殊ルールを幾つか設定する予定世界観や魔法少女…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ2|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレです。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあります)ので、…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ3|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(3スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ4|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(3スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ5|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(5スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ6|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(6スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ7|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(7スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com

    魔法少女を集めてバトロワするスレ8|あにまん掲示板皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレ(8スレ目)です。(本編は1が書きます)キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあり…bbs.animanch.com
  • 5二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 17:49:28

    おかえり!また続きが読める嬉しさ

  • 6二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 17:56:23

    乙乙

  • 7二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 18:03:24

    立て乙です

  • 8二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 18:32:02

    まさか再開するとは…

  • 9二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 18:56:06

    うおおおお!お帰りなさい!!
    もう再開は無理なんじゃないかと諦めかけてました!ありがとう!!

  • 10二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 19:03:08

    とりあえず10まで

  • 11二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 19:17:28

    ヒャッハー!再開だー!

  • 12二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 20:15:17

    タノシミジャ

  • 13二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 20:54:25

    久しぶりにwiki見たらゆっくりが出迎えてくれて吹いた

  • 14二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 21:09:28

    再開おめでとうございます!
    スレも復活しましたので、友人の描いた前作ラスボス・茜音沢先生を代わりに貼らせていただきます。
    今作のファンアートではないのでここに貼って良いか悩んだのですが…

  • 15二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 22:06:29

    ヒャア待ってましたぁ!!乙です。

  • 16二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 22:52:21

    中心街編(?)とまで書かれてしまったハスキーロアやスピードランサーのコンビや、いま大変なことになってるウェンディゴといった二巡目で特に動きがなかったキャラは最終回を待ちに待っていたので再開して頂けるだけでも大変に感謝……!

    どんなペースでも完結を待ち続けますので、どうかご自愛のほどを……!

  • 17二次元好きの匿名さん25/05/06(火) 23:07:28

    再開を祝してラストステージに相応しいネタを今まで練っていたマジックアイテムを超久々に投げさせていただきます。
    できるだけ今までにスレ主さまが執筆してくださったストーリーや設定やテーマに則したものを抜粋したつもりですが、ご自由に改変して頂ければ幸いです……。
    悪役としてとても魅力的なトート・アリアや『勇者』がインフレの極みに到達できることを祈って……。

    【マジックアイテム】
    竜の心臓
    【効果】
     トート・アリアが生み出した終生の傑作の一つ。他の探究者たちが目を向けなかったアリア独自の〝科学と魔法を融合させる〟実験の数々によって結実した。
     最も長く共に活動していたパラサイトドールを含む冒涜の竜関係者たちに一切悟らせなかった秘中の秘。

     『邪竜殺しの勇者シグルズ(ジークフリート)は討ち倒したファフニールの心臓を食べ、無限の魔力と智慧を得た』伝説に準えたマジックアイテム。
     ハーゲンに搭載した魔力リアクターとは違い、掛け値なしの無限の魔力を生み出し、被験者の肉体と融合して破壊不可能となる特性を持つ。

     だが、無限の水を汲み上げるためには無限の容量を持つ『器』が必要になるように、未だ完全稼働には至っていない。
     完全稼働に至れば、生み出される魔力によって【天上】すら超えて際限なく存在の級位(ステージ)を上げ続けることができるだろう。

  • 18二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 02:11:26

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 07:44:50

    このレスは削除されています

  • 20二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 13:57:45

    保守

  • 21二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 19:15:45

    このレスは削除されています

  • 22◆xaazwm17IRZa25/05/07(水) 22:22:57

    >>14

    素敵なイラストありがとうございます!

    渋くてダークな感じが最高ですねぇ~、暗闇の向こうに居るのはアカネちゃんでしょうか?


    前作のイラストも描いていただけるのは大歓迎です、本当にありがとうございます!

  • 23◆xaazwm17IRZa25/05/07(水) 22:31:20

    めちゃくちゃ大雑把な話をすると、デフォルトで身体能力10倍なのもあって変身した魔法少女>前作生徒(異能・体育会系)>変身前の魔法少女くらいの戦力差ですが、茜音沢先生は普通に今作の参加者の上位陣と張り合えます。パパ黒みたいな挙動になると思う。

  • 24二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 23:08:23

    ち...父親って強いんだな

  • 25二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 00:40:21

    本当に化け物だな…あの先生は
    確かに心臓を使った後なら大体の魔法少女の攻撃は効かなさそう

  • 26二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 02:17:36

    Q.その茜音沢って人は具体的にどう強かったの?
    A.パンチのついでに壁を砕き、鉄棒を振れば衝撃波が起き、10m以上ある大蛇の横っ面を蹴飛ばし、頸動脈を斬られてもその場で治して、戦車の砲弾を弾き返しただけの普通の人間だよ

  • 27二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 07:41:50

    普通の人間とは一体…ウゴゴゴ

  • 28二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 14:35:00

    普通(自称)

  • 29二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:26:04

    世界観が違うのに上位陣とやりあえるのロマンがあり過ぎる

  • 30二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 00:24:41

    ホシュ

  • 31二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 07:54:04

    >>13

    本当だ生首が二つ…!?

  • 32二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 15:55:05

    保守

  • 33二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 00:01:52

    保守させて頂きます…

  • 34二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 00:24:01

    >>17

    次回作があるとしたら鬼、竜と来て満を持して神の心臓が出てきそうだな

  • 35◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 01:04:50

    PC壊れかけでコピペが上手くできないので、前スレまでにあった生存者のダイス一覧表は貼れません……申し訳ないです……

    同様にwiki更新もしばらく出来ないです……(既に2か月更新できていませんが……)

  • 36◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 01:08:02

    投下します

  • 37◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 01:32:04

     時間が欲しかった。三匹の怪物共に邪魔されない時間が。
     あの時の続きを。為せなかった技を。

    (違う。これは、私の思考じゃない)

     ハスキーロアはブラックブレイドの最期を知らない。
     ブラックブレイドが最期に何を為そうとしたのか、知る由も無い。
     けれど、今なら分かる。
     ブラックブレイドの記憶が、交じり合う。

    (不思議だけど、嫌、じゃない)

     浸蝕された、という感覚は無い。
     むしろ力を貸してもらえている、そんな暖かい感覚。

     ブラックブレイドだけではない、抜刀金も同様だ。

     二人の意思が、ハスキーロアを支えている。そんな風に感じられる。

     そして今、ハスキーロアはブラックブレイドが為そうとしたことを実行しようとしている。

  • 38二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 08:11:53

    更新まで保守

  • 39◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:02:53

    すいません、寝落ちしてました……

  • 40二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 14:07:08

    こっちは全然大丈夫ですよー

  • 41◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:09:22

    「このゲームを――斬る」

     今もなお、魔法陣を破壊するために、殺し合いゲームを終わらせるために、仲間たちは頑張っている。

     ハスキーロアがゲームを斬れば、全ては終わる。これ以上、殺し合いはしなくてよくなる。外から他の魔法少女だって助けに来れる。

     意識を集中させる。
     居合術の心得などまるでないが、抜刀金の記憶が、自動的かつ最適な動きを再現する。

    「——ぶった斬る」

     ハスキーロアは極光丸を抜刀した。
     常人には目視不可能な速度で白刃が煌めく。
     そして。

    「…………え?」

     刃が、止まった。
     

  • 42◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:22:25

     その時、ハスキーロアの脳内に溢れた、知らないはずの知識。
     ブラックブレイドや抜刀金の記憶のように影から支え、包んでくれるようなものではなく。
     どこまでも一方的に、一切こちらの事情を顧みない、一方的な道の知識。

    【この儀式が正規の方法以外で破壊されたとき、儀式の贄は全員死亡する】

     それは、ルール。
    「会場内の魔法陣を破壊すれば呪いを解除できる」という運営にとって不利な制約を課すことで、「それ以外の方法で儀式を破壊すれば参加者は全員死ぬ」という理不尽なルールを強制できる。

     ハスキーロアは、動けない。

     理不尽だが、無理難題ではない。
     自分の命と、仲間の命を諦めれば、ゲームは終わる。
     
     運営幹部の思惑を挫くことができる(具体的にどんな思惑があるのか、実のところハスキーロアはまるで知らないが)。

     ゲームを壊したい。これ以上殺し合いはしたくない。
     けれど、死にたくない。
     スピードランサーもウェンディゴもバルバロイも、一緒に戦おうと決めた仲間たちにも、死んでほしくない。

     アリアの思惑や、グレンデルの野心を知っている者が居れば、その者が大人であったなら、少数の犠牲を呑み込んで実行していたかもしれない。

     ハスキーロアには、9歳の少女には、出来ない。

    「っ………………」

     苦渋で胸を焦がしながら、ハスキーロアは納刀した。

     

  • 43◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:35:27



     足場が崩れても、ハニーハント(今の彼女をそう呼ぶのが適切かは置いておくとして)は問題なかった。

     背から生えた二枚の翼。竜を模し、羽根の一枚一枚が小さなチェーンソーとなっている異形器官。

     それが無数の羽虫のような音を立てる。崩落していくグラウンドを顧みることなく、ハニーハントは浮上した。

     残った敵はあの少女が一人。刀を振るう少女。

     太陽を背に、ハスキーロアは居合の構えを取っている。

     ——ぞくり、と背筋が泡立った。
     今からハスキーロアがやろうとしていることは■ィー■に危害を及ぼすことだ。ハニーハントの■王への大逆行為だ。

     許さない、許さない、許さない……!

     轟のような悲鳴と共に、ハニーハントの両腕のブレードが、ハスキーロアへと伸びた。

  • 44◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:45:58

     高速で伸びるブレード。進行方向にある物は、家屋だろうと車だろうと魔法少女だろうと切断できるであろう、致命の一撃。

     ハスキーロアは、視界にブレードを捉えた。

     納刀音が響き、二本のブレードは根本から切断される。

     この程度の攻撃は、今のハスキーロアにとって何ら脅威ではない。
     
    (ゲームはすぐには壊せない……だったら私が今やるべきことは……!
     ①魔法陣を壊して
     ②ウェンディゴさんを助けて
     ③ハニーハントを止めて
     ④悪い人をやっつける!)

     気持ちを切り替え、攻撃を仕掛けてきたハニーハントへと顔を向ける。

     自由落下に身を任せ、翼持たぬ身のハスキーロアは徐々にハニーハントへと距離を縮めていった。

    (この人がどんな人なのか、私はよく知らない。
     ウェンディゴさんを襲った、怖い人。
     けど、この人も被害者なんだ。……殺したくない)

     不殺の決意を固め、更なる技を繰り出すべく意識を集中させる。

     ハニーハントのホッケーマスクが、不吉な音を立てて罅が入った。

     

  • 45◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 14:46:23

    一旦投下を中断します

  • 46二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 15:27:03

    なんでも切れる魔法と誰にも見えない剣技を、絶対に壊せない刀で操るという殺意高い戦い方でありながら不殺の覚悟はかっこいい

  • 47二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:50:56

    一旦乙

  • 48◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 22:46:51

    投下します

  • 49二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:58:45

    ハスキーロアは記憶を受け継いだことで強くなったけど、ハスキーロア自身も成長しないといつか裏目に出そうで怖いね

  • 50二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 23:00:56

    根っこがハスキーロアのままなのが強みであり弱点でもある?

  • 51◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:01:45

     儀式が始まる数か月前のこと。

     何の変哲もないごく普通のマンションだった。
     中からは夕食を囲む家族の、楽し気な声も聞こえてくる。
     
     そのマンションを見上げる、一人のギャルが居た。

     気怠げな雰囲気を漂わせながら、憂鬱げにギャルはマンションを見上げる。

    「入らないのかい、パラサイトドール」

     夜の闇に馴染むかのような、優雅な声。
     ギャルは億劫そうに顔を向けた。

    「アザトース……いや、今はアルセーヌ、だったね……」

    「久しぶりだね。此処に来たのは、あの中に用があるからだろう?」

    「そうだね……うん……」

    「不思議だな。今までの君なら『竜から逃げた屑が、我の思惑を悟れると思うな』くらい言うのに。だいぶガワに引っ張られてない?」

    「そうかもね……うん、どうでもいい……」

     はぁ……とパラサイトドールは溜息をついた。

  • 52◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:02:27

    「儀式の前にさ……あーしも強くなれるだけ、強くなっておきたいんだよね……。そのためには、あのマンションの中にある、アザトースの肉体が欲しいんだけど……」

    「頭脳の私は要らないのかい?」

    「いらない」

     アルセーヌは肩を竦めた。

    「要るならとっくに取り込んでるし……それを分かってるから出て来たんでしょ……」

    「まぁね。歴代の君の寄生先でも今回は最強だ。パラサイトドール史上最強の個体が君。一方私は、アザトース史上最弱の個体だからね」

     その口ぶりには、弱くなったことへの焦りや悔しさ、そういった負の感情は籠っていなかった。以前のパラサイトドールならばそのことを詰り侮蔑したが、今のパラサイトドールはそういうの面倒くさいのでやらなかった。

    「ほんと、面倒だなぁ……」

     トホホ……といった表情でパラサイトドールはマンションを見上げる。
     外観は普通のマンションだ。今のパラサイトドールならば、一撃で消し飛ばすことだって出来る。

  • 53◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:19:50

     あにまんマンションは、ただのマンションではない。無数の怪異が蠢く、魔法少女でも一度踏み込めば二度とまともな姿で出ることが出来ない魔窟だ。

     聞こえてくる住民の声も、ダミーでしかない。
     それを全て分かった上で、二人の人外はマンションを眺めている。

    「元々同じ個体だったものとして忠告しておくけど——入らない方がいいよ」

    「……やっぱり、そうだよね……」

     パラサイトドールは、隔絶した武力を備えている。
     それだけでなく、彼女は【天上】であり、格下のあらゆる魔法攻撃を無効にできる。
     相性ゲームである魔法少女同士の戦いにおいて、パラサイトドールは一方的に他者を蹂躙できる権利を有している。

     あにまんマンションがどれだけ初見殺しに満ちた超危険エリアだとしても、【天上】には届かない。
     パラサイトドールは、まるで散歩をするかのように、マンション内を自由に闊歩できる。

     そのはずなのだ。
     にも関わらず、パラサイトドールの足は動かない。

    「——魔法じゃないよ、これ」

     アルセーヌの言葉に、パラサイトドールは忌々しそうに眉を歪めた。

    「……意味わかんない。お前の肉体から発生してる現象なんでしょ、これ……?」

    「活発化したのは私の肉体のせいかな……けど、マンションが怪奇スポットとして有名になったのはもっとずっと前から。何なら戦前ここに立ってたあにまん荘時代から怪奇現象は度々目撃されてたそうだしね」

    「そういうの、あーしは信じてないんだけどな……幽霊とか宇宙人とかパワースポットとか、馬鹿馬鹿しい……」

     令和の世を生きるドラゴンの言葉に、アルセーヌは失笑する。

  • 54◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:29:22

    「まぁ絶対に攻略不可能とまでは言うつもりもないよ。
     無敵モードじゃ居られないってだけさ。一プレイヤーとして真摯にダンジョンに向き合えば、今の君のスペックなら攻略は可能かもしれない。
     オススメはしないけどね」

     パラサイトドールは思案し、

    「……じゃあ、いいや。頭使うのも面倒だし……怪我とかすると嫌だし……」

    「素直だねぇ。私の忠告に従うなんて、君らしくもない」

    「……もしかして、わざと突っ込ませようとしてた? 性格悪いね……」

     その時、マンションの入り口から複数の足音が響いた。
     まったく同じ声色の、少女たちの声。

    「ん? 今誰か立ってなかった?」
    「誰も居ないよ?」
    「調べよう、調べよう」
    「勘違いしたのは私? それとも私以外の私?」
    「調べよう、調べよう」

     その場で増え始める少女たちは、しかし竜の成れ果てたちの痕跡を見つけることは出来なかった。

     獺と竜は出会うことなく、儀式の幕は上ることとなる。

  • 55◆xaazwm17IRZa25/05/10(土) 23:29:43

    投下を終了します

  • 56二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 23:33:17

    そろそろ人外の存在だけじゃなくて魔法少女側も上位存在の助け無しの『天上』に、『始まりの魔法少女』と同等の存在に到達したところ、見てみたいね。ティターニアとブレイズドラゴンは「?」が付いてて露骨にぼかされてるし

    ハスキーロアとスピードランサーは今までの描写で丁寧にフラグ立ってるし、世界を救うほんとの勇者になってほしいなぁ

  • 57二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 23:41:05

    マンションは「冒涜の竜」のガワが核になったことで強化された存在

    ハニーハントはそれを取り込んで強化されたけど、
    グレンデルは元々「死の王」の血で適合改造されててその上で更にマンションの力を取り込んだ……ということは……?

  • 58二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 00:35:29

    またスレ主さんの文章が読めることに感謝感謝です……!

  • 59二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 08:34:29

    保守

  • 60二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 09:02:44

    投下お疲れ様です
    その気になればマンションは攻略出来るけどリスクと照らし合わせて割に合わないバランスなのが好き

  • 61二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 12:36:07

    脅威というよりまさに「面倒くさい」だから下手に強い相手より手を出されにくかったわけか

  • 62二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 19:58:40

    保守

  • 63◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 20:37:26

    投下します

  • 64◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 20:48:07

     突如、ハニーハントのホッケーマスクが外側に弾き出された。

     露わになった中身には「顔」と呼べる部位は無く――迫る大質量を前に、ハスキーロアの思考は停止した。

     自動的に抜刀の構えを取りながら、意識が動作に追いつかないハスキーロアは困惑の声を上げた。

    「……マンション?」

     ハニーハントの頭部から【建物】が生えている。
     物理法則を無視した、悪夢としか思えない光景だった。22世紀の猫型ロボットが、小さなポケットからどこでもドアを取り出すかのように、ハニーハントの小さな頭部から、高校を呑み込む程の巨大な建造物が生えているのだ。

     ハスキーロアを圧し潰すかのように迫るマンションを前に、彼女は極光丸を振るった。
     万物切断を前に、質量に大きな意味は無い。どこかに上限はあるにしても、この程度の大きさならば十分に範疇だ。
     
     やはり物理法則を無視した斬撃によって、マンションは縦に両断され——そのまま勢いを殺さずにハスキーロアを呑み込んだ。

  • 65◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 21:00:07



     校庭から防空壕に落下したグレンデルは、状況を打開する策を練っていた。
     フィールドの変化は、ハイになっていたグレンデルの血気を冷ます効果があった。

    (いい加減千日手だな……)

     不死身が多すぎる。
     そして未知も多い。
     ハスキーロア、ハニーハント、謎の狼。いずれもその全貌は明らかになっておらず、どんな魔法をどこまで振るえるのか、査定できていない。

    (全部喰っちまえばいいと思ったが……ちとリスクが大きいか?)

     喰うことが破滅のトリガーを引くことは、自然界ではありふれている。
     グレンデルには、このゲームに賭ける悲願は無い。儀式が失敗してもさっさと割り切る。最重要は自身の生存であり、その次に快楽を満たすことだ。

    (残り時間であいつらの情報を丸裸にすることは難しいだろうな……ここは、逃げも考えとくか?)

     この場からの逃げ、だけではない。
     舞台からの逃亡。グレンデルは傭兵だ。負け戦には付き合わないし、勝ち戦だとしても自分の命が脅かされれば逃げを選ぶ。

     もっとも肉体を改造してからはそんな局面が訪れたことなど無かったが。

    (さーて、どうっすっかな……うん?)

     空中で何か巨大なものが展開している。
     黒贄を取り込み不死となったグレンデルは、もはや質量攻撃など何ら脅威ではないが、冷静に状況を見据える。

     ——マンションが降って来た。
     

  • 66◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 21:14:47

     死の王は屈辱に身を震わせていた。

     王は、絶対なる存在であった。
     遍く全ての命は、王の掌の上であるはずだった。後からのさばった竜など悠久を生きる王の時間感覚からすれば刹那の間に滅んだくそ雑魚生物であり、その後蔓延った魔法少女など指先一つで命を奪える羽虫のようなものだった。

     にも関わらず、王は地上から地下に落とされ、死の権能も一部を切断され、殺意を向けた羽虫はのうのうと空を舞っている(実際は自由落下しているが)。


     何と忌々しい。
     王は唸った。
     何よりも腹立たしいのは、刀を持った少女——ではない。

    (ウェンディゴ……貴様……!)

     死の王を一時的に封印した魔法少女。
     その記憶を封じられ、偽りの記憶を植え付けられ、漏れ出す死の王の魔法で数多の命を奪った少女。
     哀れな清原稞美。可哀そうな清原稞美。

     絶望の中で意識を沈められ、死の王はこの地に顕現した。

     だが、死の王は——未だ全力を出せていない。
     本来なら、全世界を対象とした命の徴収は、一瞬で終わるはずだった。あんなにも時間がかかるのは、死の王の本意ではない。

     内部に沈めた稞美……ウェンディゴによって、死の王は思うように死を振りまけない。
     たかが羽虫が、王の権能を阻害している。

     怒りの声を上げながら、死の王は地上に戻らんとして——落下するマンションにその身を圧し潰された。

  • 67◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 21:28:23



    「わけがわからないお……」

     千里眼で戦況を把握していたクレアボヤンスは、そうぼやくしかなかった。
     四人の超人によるブッチギリ限界バトルを半ば他人事のように干渉していたクレアボヤンスだったが自身の通う高校が超巨大マンションによって押し潰されたという結果を前にして、ただ呆然とするしかなかった。

    「これからクレアボヤンスはどこに登校すればいいんだお……」

     なんて現実逃避の言葉さえ出てきてしまう。
     そして、実感した。
     やっぱり此処に居て正解だったと。ナイトメア★メリィのように、非戦闘員なのに戦場に出るのが馬鹿馬鹿しいのだ。

     覗き見しか出来ないクレアボヤンスが、それを除けば低スぺ魔法少女でしかないクレアボヤンスが、出来ることなど無い。
     自身の有用性を示すために、千里眼で状況を見ながら指示を出す、的なことを言ったりもしたが、普通に戦闘スピードが速すぎて口を挟むことは出来なかった。ボクシングのセコンドって凄いんだなぁ。

    「クレアボヤンスは無能な魔法少女だお……陰ながら応援するお……」

     クレアボヤンスは気づかない。
     同じように「観測」していた第三帝国が、どんな惨状を迎えたのか。
     死の王の出現からハスキーロアによる魔法殺しまで、その一部始終を目撃しながら、クレアボヤンスの心身に影響は無かった。

     画面の向こうでどれだけ暴力や恐怖が吹き荒れようと、視聴者には他人事。
     そんな常識(りふじん)を、クレアボヤンスは世界に叩きつける。
     本人も無自覚なまま。

  • 68◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 21:33:51

    投下を終了します

    四人の顛末は次のターンで。最終決戦内定です。

    一旦、舞台を他の場所に移します。

  • 69◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 22:04:21

    dice1d2=1 (1)


    1狂愛の木蔦部屋


    2アニー・アーマーン邸

  • 70◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 22:07:38

    狂愛の木蔦部屋:挑戦者(メリィ、クィーン、ああああ) ボス(弓ヶ浜ヒカリ/ランドウ)

  • 71◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 22:09:57

    メリィの強化形態も最初に安価&ダイスで決めておきましょう、その方が展開を書きやすいので

    先着3つからメリィの強化案をダイスで決めます……!
    (内容によっては弾くかもしれません、ご了承ください)

  • 72二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:11:18

    仮面ライダー見たいな特殊強化装甲メリィの魔法で武装を自由自在に扱える

  • 73二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:17:48

     極少量の『冒涜の竜』の魔力と融合し、「竜の角、尻尾、翼を生やしたドラゴン魔法少女(動きやすいが際どいレオタード水着風コス+ゴーグルが変化した目元だけを覆うアルセーヌ仮面)」に変身する。
     「基礎スペックの大幅上昇」、「魔法陣から黒炎を放つ」、「竜の鉤爪を模したクロー」、「翼で空を飛ぶ」など、ごく基本的な竜の力を行使できるが、性能は全て常識的なレベルかつ、メリィの戦闘技術に依存している。
     アルセーヌの気遣いで竜鱗を模した装甲の防御力だけは高め。
     冒涜の竜の魔力と人の肉体が合体しているため、力を使う度に体力と精神力が激しく消耗して苦しんでしまう欠点がある。
     元々はアルセーヌが緊急用の予備魔力を分割して後方支援のメリィに預けさせるためのアイテムだった。

  • 74二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:18:08

    ナイトメア⭐︎メリィ ソニック★フォーム
     全ステータスが大幅上昇するほか、現実世界に存在したまま肉体を情報化できるようになり、あらゆる攻撃や障害物を無効化しながら高速移動できる。見た目はリリなのフェイトちゃん。
     欠点は情報体状態では自分も干渉できず、メリィの体術では速度を全く制御できないこと。また、使用中は魔力が凄まじい勢いで消耗する。

  • 75◆xaazwm17IRZa25/05/11(日) 22:37:19

    アイデアありがとうございます……!


    「これが僕の強化フォームなのだ★」


    dice1d3=3 (3)


    1>>72

    2>>73

    3>>74

  • 76二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:45:27

    地下アイドル格闘家で目の見えない妹もために戦う弓ヶ浜ちゃんじゃないか!

  • 77二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:48:04

    弓ヶ浜ちゃん、ダイスによれば運営幹部と繋がりがあるらしいし、『勇者』の技一覧にブレイズドラゴンの必殺技の絶招があった辺り、今までにコピーした武術のデータをアリアに渡したりしたんかな

  • 78二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 23:17:28

    キャイイイッ

  • 79二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 23:29:21

    >>78

    続けろよ、弓ヶ浜

  • 80二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 23:37:39

    味方化してくれてもいーのよヒカリちゃんチラッチラッ

  • 81二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 07:44:29

    良い立ち位置にいやがって…

  • 82二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 14:19:13

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 22:27:52

    うーんハイリスクハイリターン、尖った強化フォームを貰ったなメリィちゃん

  • 84二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 07:42:47

    保守

  • 85二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 13:53:49

    保守

  • 86二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:58:24

    >>76

    こっちのヒカリちゃんはワンチャンそうかもしれないだろ!

  • 87二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 23:25:12

    >>77

    貴重な技のデータを安い金で売り払いそうか、と考えたら名前からしてする側なんだよな。ヒカリちゃん

  • 88二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 07:38:26

    このレスは削除されています

  • 89二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 07:53:36

    3対1か… 弓ヶ浜ヒカリは生存しそうな雰囲気があるが果たして…

  • 90二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 16:18:28

    保守

  • 91二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 22:52:35

    「ボクシングのセコンドって凄いんだなぁ」
    んな事言っとる場合かーっ!…けどこうでもしないと正気を保てないのかなぁ

  • 92二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 07:47:06

    ぼくさー、ボクサーになりたいんだ

  • 93二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 07:47:09

    保守

  • 94二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:17:14

    保守

  • 95二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 20:34:40

    >>79

    チェァッ

  • 96二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:01:58

    ボス(弓ヶ浜ヒカリ/ランドウ)の地面がなんか面白いのズルい

  • 97二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 07:53:42

    保守

  • 98二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 14:08:44

    保守

  • 99二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 22:36:41

    保守

  • 100125/05/16(金) 23:47:55

    テスト

  • 101125/05/16(金) 23:49:04

    PCは規制されてるんですけど、同じWi-Fiでもスマホは書き込めるみたいですね…

  • 102125/05/16(金) 23:49:52

    投下します

  • 103125/05/16(金) 23:59:57

    我々には運命が味方している、とその男は思った。
    男の名前はここでは語らない。
    彼はこの物語においてモブに過ぎず、世界に大きな影響を与えることはない。
    男には男の人生があり、かつては家族があり、波瀾万丈かつ紆余曲折の道程があり、今に至っている。

    男は人生の過程で第三帝国の尖兵となり、更にはその身を機械化し魔法による恩恵を受け、令和の日本まで生き延びていた。

    新生第三帝国の中でも幹部格に成り上がった優秀なる男は、モニターから送られてくる情報を受け、追い風を感じたのだ。

    かつての戦争ではついぞ感じたことのないものだった。

  • 104125/05/17(土) 00:12:39

    ブレイズドラゴンが死んだ。
    ティータニアも死んだ。

    中国最強の魔法少女と日本最強の魔法少女が第三帝国とぶつかることなくこの世を去った、

    神は言っているのだ、苦節80年、ようやく第三帝国が世界を征するときが来たのだと。

    「ブレイズドラゴンも居ない、ティターニアも居ない、この戦争…我々の勝利だ!」

    男の叫びが部屋の中に響き渡る。自信の言葉に自己陶酔する男の耳に、不快な音が届いた。

    クックック…と、人を心底馬鹿にしたような嘲笑。
    男は振り返る。
    寝巻きのような黒いスウェットを着た美少女がソファにだらしなく体を預けている。

    「何がおかしい、ランドウ」

  • 105125/05/17(土) 00:24:29

     「ブレイズドラゴン? ティターニア?」と、ランドウは強者の名前を呼んだ。

    そしてわかってないなぁ…とでも言いたげな表情で首を横に振った。

    「そいつら武道の大会で優勝経験なくない? じゃあカスでしょ。ヒカリはめっちゃ優勝してるんだけど」

    ふん、と威張る弓ヶ浜ヒカリ(21)を前に男は呆れた顔を浮かべる。

    「魔法少女なら優勝して当然だろう」

    「は?ヒカリそんなズルいことしねーし。生身でボコったつーの」

    ヒカリは天才なの、と少女は言う。全知全能さえ命を落とすこの殺し合いを目にしても、その自信に一切の翳りは無い。

    「ヒカリに技を教えた師匠も言ってた。ヒカリは少し教えればあっという間に習得しちまうって。普通の奴はこんな短期間で技は習得できないんだって」

  • 106125/05/17(土) 00:34:06

    どこまでも傲慢で自信に満ちた言葉。

    いくら元同盟国とはいえ、アーリア人ではないアジアの猿が天才であるはずがない。

    だが、男の口からは否定の言葉は出なかった。

    男は、ランドウの暴力性を既に何度も目にしている。

    大口を叩くだけのことはある。
    ランドウは、強い。

    ティターニアやブレイズドラゴンに互角以上に戦えると豪語するが、その実力はあると男は認めていた。

    「だが、最後に勝つのは我々第三帝国だ」

    「モブには無理でしょ」

    お前らは観客だよ、とランドウは言った。

    「ヒカリがブレイズドラゴンやティターニアを上回る魔法少女であることを証明する場のね」

  • 107125/05/17(土) 00:36:34

    投下を終了します
    スマホ投下はキーボードより時間がかかるので、明日には規制解除していただきたいです…

  • 108二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 01:18:23

    ヒカリちゃん、試合で強かったタイプかぁ…
    実戦はどうなのかな もう既にダメそうな感じしてるけど

    あともし生前に出会ってたらブレイズドラゴンやティターニアがどんなこと思うか気になる

  • 109二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 01:19:10

    投下お疲れ様ですー!
    ヒカリちゃん…師匠に褒められた事を誇りに思ってて可愛いね…

  • 110二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 02:58:35

    そういやハニーハントの頭からマンション、これ最近裏バイトで見たような気がするな…という気持ちになる お前に住む

  • 111二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 08:03:16

    能力的にFateの岡田以蔵みたいなもんかな?
    技のびっくり箱で圧倒するタイプで全部見切られたら終わり

  • 112二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 11:00:42

    ヒカルとランドウの組み合わせからもう溢れ出てる魅力に笑顔がいっぱい

  • 113二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 12:21:33

    ヒカリちゃんの一人称が「ヒカリ」なのあざとすぎて好き

  • 114◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 18:36:30

    投下します

  • 115◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 18:47:48

     王城 姫子/クィーンは白馬の王子様に憧れている。何しろ彼女が魔法少女になったきっかけは妄想小説を書いていたら色々メロって爆発したからだ。エネミーに殺されかけて覚醒したり太古の世から生きる邪悪な怪物を封印するために力に目覚めたり……そういったシリアスでヒロイックな背景が無い。

     魔法少女になったきっかけを、クィーンは語らない。というか妄想小説書いてるとかの話を周囲に話したことはない。帰り道噂とかされると恥ずかしいし。女王には権威が必要なのだ。

     学校では真面目で大人しい性格として通っている。魔法少女になってからは実は隠れドSだと噂を立てられているが、これはクィーンという魔法少女名や魔法に性格が引っ張られているのか、はたまた元々Sであり、魔法少女という第二の顔を得たことで、取り繕うのが徐々に雑になっているのか。
     姫子には、クィーンには分からない。思春期の心は欧州情勢以上に複雑怪奇なのだ。

  • 116◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 19:02:03

     その日の夜、クィーンが見回りをしたのは偶然だった。

     戦闘を忌避するほど臆病ではないが、エネミーとの戦闘を楽しむ戦闘狂でもないし、絶対的なヒーローへの憧憬も無い。

     子供のとき(今も義務教育真っ最中の子どもだが)に迷子の自分を助けてくれた、魔法少女のお姉さんへの憧れ。

     彼女への憧れは今もクィーンの心に残っているし、時々思い出したように女王はパトロールに出向く。

     別にクィーンがこれをやる必要は無いのだ。あにまん市にはティターニアを始め、強い魔法少女がたくさんいる。

     女王が10代の貴重な睡眠時間を削る必要はない。

     それでも、その日クィーンは夜の街を歩いた。

     市政を見守るのも女王の責務である。

     とはいえ。街に異変は無かった。明日は英語の小テストがあるのに、無駄に時間を浪費してしまった。

     女王は自らの失策を悟る。

     だが、平和なのはいいことだ。戦争に巻き込まれたこともないし、事件の渦中に立ったこともないが、それくらいのことは分かる。

     何やらいい気分になったし家に帰ろう。クィーンは踵を返した。

     その時、彼女の耳に確かに聞こえたのだ。

     まるで仮面の下から押し殺したような――少女の小さな悲鳴を。

  • 117◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 19:14:08



     狂愛の木蔦部屋という名前を聞き、クィーンが連想したのは部屋いっぱいに推しの写真が貼ってある、ストーカーが住んでそうな部屋だった。
     そこに踏み込むのは正直すっげー気が進まなかったが、クラスメイトで多少言葉は交わす縁であるナイトメア★メリィが心配なのもあり、彼に同行することにした。

     女の子みたいに可愛い顔をしているとはいえ、男が魔法少女になっているのは驚きであり、クラスメイトの男子生徒が「さぁ攻略するのだ、へけっ」とハム太郎かずんだもんみたいな口癖で喋るのは色々キツイものがあったが、緊急事態なので我慢することにした。

    「これが……狂愛の木蔦部屋……」

     クィーンは息を飲む。
     慣れ親しんだあにまん市駅には異界に繋がる秘密の入り口があった。
     
     それを見つける際にメリィが小刻みに振動しながらその場で屈伸するというバグった挙動をした時は頭の心配をしたが、どうやら最短で狂愛の木蔦部屋に繋がる道を見つけるための儀式のようなものらしい。

     他の道はエネミーが待ち構えていたり行き止まりだったりたどり着くのに三日かかったりするらしいでの、何もしなければ後数時間で死ぬクィーンたちからすればこの方法しか無かったのだろう。

     余談だがメリィがそういう説明をしているとき、帽子を目深に被った魔法少女――ああああは本気で嫌そうな顔をしていた。
     探索ゲームに嫌な思い出でもあるのだろうか。

  • 118◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 19:24:24

     とにもかくにも、クィーン一行は「狂愛の木蔦部屋」にたどり着いた。

     クィーンは瞠目した。
     生い茂るアイビー。
     そしてその向こうに聳え立つのは。

    「部屋っていうか――城ね」

     広大な城が、アイビーの草原に鎮座している。
     つくづく、魔法とはデタラメだ。

    「……うふふ、けれどこの女王に相応しい舞台じゃないかしら。さぁ着いてきなさい臣下たち。征服するわよ」

    「お前学校とキャラ全然違うのだ」

    「あんたがそれ言う!?」

    「……落ち着けガキンチョ共」

     上擦った声をあげながら、ああああは二人に声をかける。

    「当然といえば当然だが――門番がいるみたいだ」

     城の重厚な鉄門の前に、一つの影が立っている。
     鬼を象った鉢金と面頬を装備した侍風コスチューム。立っているだけで強いと、達人だと三人に理解させる風格を、その門番は宿していた。

     門番は三人に視線を合わせると歓迎するように両腕を広げた。

    「ようこそ。ヒカリの踏み台共♪」

  • 119◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 19:24:43

    投下を終了します

  • 120二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 19:48:41

    出た! 弓ヶ浜ちゃんの「俺の踏み台」ムーブだ!

  • 121二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 19:50:13

    このレスは削除されています

  • 122二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 20:29:58

    なぜか見覚えある両腕広げポーズ
    いつキャイイイッするのか楽しみですね…

  • 123◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 20:48:33

    投下します

  • 124◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:09:41

    「弓ヶ浜ヒカリ、魔法少女名はランドウ。好きなほうで呼びなよ」

    「いきなり実名公開とは恐れ入ったのだ。それともネチケットとか知らない感じの人なのだ?」

    「あ? 何を勘違いしてやがる。ここはお前らくそ雑魚インキャの棲息するインターネットじゃねぇし――ヒカリが本名を言ったのはお前らがここで死ぬからだぞ」

    「メリィは死なないのだ。確かにお前は刀とか持ってて物騒だけど――ブレイズドラゴンに比べれば怖くないのだ」

     それはハッタリではなく、メリィの本心だった。
     確かにランドウは強い。バトルは素人のメリィでも何となくそれは感じ取れる。同じ学区内に住んでて欲しくないタイプの危険度だ。

     だが、ブレイズドラゴンに感じた絶望感は格が違った。
     同じ学区内どころか同じ星に住みたくない、そう思わせるほどの恐怖。

     自分たちが必死に積み上げた技術が、魔法が、そして作戦が、悉く捻り潰される。
     アレと比べれば、ランドウは怖くない。
     首さえ落とせば普通に死にそうな気配がある。

    「ブレイズドラゴン……最強の傭兵。ククク、ヒカリはブレイズドラゴンのライバルだ。
     傭兵としての知名度では負けているが、実力は匹敵。いや、技量はヒカリの方が上かな。
     何しろヒカリは、ブレイズドラゴンの拳法を全て使うことができるが、ブレイズドラゴンはヒカルの剣術をまるで真似できないからな」

     

  • 125◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:09:54

    そう言って、ヒカリはゆらりと体を動かす。

    「いいだろう。お前ら雑魚は剣術は使わねえ。拳法だけで仕留めてやるよ」

     見ろ、とラランドウは言った。

    「この動きに見覚えはねぇか?」

     もしこの場にハイエンドが居れば驚愕していただろう。
     ランドウの足運び、目線の動かし方、姿勢。その全てがブレイズドラゴンに瓜二つだったからだ。

     魔法少女ランドウ。決して口だけのチンピラではない。
     一目見ただけで他者の流派や奥義を完璧に真似できる模倣の天才。
     彼女もまた――天才である。

  • 126◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:24:32

    (そのブレイズドラゴンとやらを見たことが無いから分からないわ……)

    (いや知らねぇよ。モニター越しだったしその後色々ありすぎて動きの細部とかもう覚えてねぇよ)

    (確かにブレイズドラゴンそっくりなのだ……けどモノマネの精度がどれだけ高いのかは格闘技素人のメリィには分からないのだ)

     ランドウにとって不幸だったのは彼女の天才的なセンスを正しく評価できる者がこの場に居ないことだった。

     ランドウもそれに気づいたのか、ブレイズドラゴンの模倣を止める。

    「チッ……インキャめ。とにかく魔法少女で武術齧ってない奴は死んだほうがいいぞ。自殺志願者なら仕方ないが」

    「武術……ええ、確かに人間が積み上げた戦闘体系は素晴らしいものよ。けれど私は女王。
     女王の役割とは――最強の騎士を目指すのでは無く、騎士に栄誉を与えることよ」

     クィーンの言葉と同時に、彼女を守るように騎士の一団が出現する。
     クィーンの魔法『百人の騎士を召喚するよ』。一人一人が魔法少女にこそ劣るが確かな強さを持つ騎士を100人召喚する魔法。個体によって様々な装備をしている騎士たちはランドウを取り囲んだ。

  • 127◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:42:52

    「命までは奪うつもりはない……けれど私たちに立ちふさがるというなら、それなりに覚悟はしてもらうわよ」

     アリスのような無辜の民を尖兵として使う邪悪な存在ではない。言動からしてチンピラだとすぐに分かったが、敵対した小悪党いちいち始末するほど女王は狭量では無かった。

     槍を構えた二人の騎士がランドウに向かって突撃する。
     それに対してランドウは居合の構えを見せた。

     やはり、見る者が見れば抜刀金に酷似していることに驚いただろう。

    (あ、結局中国拳法は辞めるのだ)

     抜刀金をよく知らないメリィは中国拳法じゃなくて居合なんだ、という感想しか持てなかったが。

     その余裕は次の瞬間に崩れた。

     ブン、と振るったランドウの手刀。そのあまりの速さに、メリィは驚愕する。

    (ブレイズドラゴンより速いのだ……)

  • 128◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:43:07

     居合の構えをしていたからこそ、辛うじて手刀を振るったのだと推測できる。
     槍騎士の首が兜ごと宙を舞った。

    (そんな、これほどの技量を持つ魔法少女が居るなんて……)

     クィーンもまた、ランドウがアリスに匹敵、あるいは凌駕する難敵だと心を引き締めた。
     今この場で敵と戦闘できる能力を持っているのは自分だけだ。アリス戦には居たジェイルフィッシュも、野生児(ノーブル=サヴェージ)も居ない。

    「クックック……驚くのはまだ早いぞ踏み台共。ヒカリの持ってる奥義はこんなもんじゃないからな!」

     これは戦いじゃない、一方的な蹂躙なんだぜ。

     そう言って、ランドウは邪悪な笑い声をあげた。

  • 129◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:46:10

    投下を終了します

  • 130◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:50:27

    ちなみにティターニアとブレイズドラゴン大会優勝してない問題ですが

    ティターニア:剣道の大会に参加していたのは中学まで。魔法少女との二束の草鞋であり半ば幽霊部員。結果は全国ベスト8。魔法少女にならず剣道一筋に打ち込んでいれば最高学年の時に全国制覇できるポテンシャルはある。

    ブレイズドラゴン:一度裏格闘技の大会に出たが一回戦で相手を即死させてしまい出禁になった。観客が見たいのは裏の格闘大会であって公開処刑じゃないので……。

  • 131◆xaazwm17IRZa25/05/17(土) 21:51:23

    明日余裕があれば投下できるかもです。
    明日投下できなければ次の投下は金曜夜になると思います…

  • 132二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 21:54:43

    そう言えばスピードランサー姉貴って大会には出てるの?

  • 133二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 22:21:59

    岡田以蔵(Fate)の始末剣に、ワンピースにおけるヴェルゴの武装色応用やニンジャスレイヤーにおけるムテキ・アティチュードのような魔法を合わせるのは実際脅威!

    惜しむらくは対人戦特化型なことか

  • 134二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 23:56:02

    強いけど弱い感じがする
    才能はあるがそれを活かす駆け引きが弱いので案外あっさり落ちてくれるかも…?

  • 135二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 08:38:47

    age

  • 136二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 13:13:01

    井戸の中のヒカリちゃん大海を知らず

  • 137二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 21:42:30

    一度通用した技をずっと擦りそうな弓ヶ浜

  • 138二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:12:09

    >>137

    大会的には嬉しい人材なんだよね。派手な感じで魅せプが人気ありそう

    実用性は…伸ばしたりそこから進化させれば強いとは思う

  • 139二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 01:16:50

    ヒカリ

  • 140二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 07:46:12

    保守

  • 141二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 13:35:07

    設定的にバルバロイやハイエンドよりずっと格上だろうけどバルバロイから「戦ってもつまらん」って言われそうだし
    ハイエンドに研鑽の足りなさを指摘されたあげくぶっ飛ばされそうな魅力のあるヒカリちゃん

  • 142二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 19:09:25

    >>141

    負けて生き残ってたとして、修行するかと言われると頭打ちでしなさそうなのもヒカリちゃんポイントが高い

  • 143二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:06:34

    ここぞとばかりにメリィのランドウへの評価が上がってるのが前振りに見えて仕方がない…
    どう華麗に散るかが見せ場だぞ…

  • 144二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 02:19:45

    なんというか今の所『付け焼き刃レベル100』って感じなのよね
    大体の技はできるんだろうけれど、『できる』だけで自分のものにしていないイメージ
    ティターニアのように1つの技を使いこなせるかと言ったら無理そうだし、ブレイズドラゴンのように狂気じみた行動ができるかって言ったらこれも無理そう

  • 145二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 07:51:32

    技の性能だけ見て判断するスペック厨なのは間違いない
    やっぱただのコレクターか…

  • 146二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 13:58:40

    元ネタが強烈過ぎてそのイメージでしか語れない

  • 147二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 20:32:43

    元ネタまんま出してくるのは流石にないと思うし、どんなキャラになるか楽しみです

  • 148二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 23:28:25

    トレースが完璧だから戦闘スタイルはしっかりした堅実な立ち回りなんだろうなと思うと同時に
    比較対象のようなイカれた強味は感じない、絶妙な塩梅

  • 149二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:23:31

    保守

  • 150二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 23:17:38

    なんだかんだライバル認定した相手にも一定のリスペクトがあって好きだよ

  • 151二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 07:40:27

    保守

  • 152二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 14:59:14

    保守

  • 153二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 22:22:21

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 03:00:14

    手法

  • 155二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 07:45:00

    そろそろ続きじゃ
    愉快な挑戦者達が勝つか…果たして

  • 156二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 13:27:23

    保守

  • 157二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 21:26:08

    あげ

  • 158二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 23:15:31

    狂愛を冠してる以上、ガチの狂人の可能性も無きにしも非ず
    ヒカリちゃんの本性が常人に収まるのか…

  • 159◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:26:50

    投下します

  • 160◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:38:34

     楽して強くなりたい、という言葉を聞いたとき、ヒカリは首を傾げた。

     楽して強くなるのは、当たり前のことだ。

     ヒカリは、強くなることに苦労したことは一度も無い。
     一目見ただけで他者の流派や奥義を完璧に模倣できる。魔法ではなく、技術でもなく、生来の才能として、ヒカリにはそういう異能が備わっている。

     努力、稽古、修行。そういった泥臭いことに従事したことは一度も無い。

     魔法少女に覚醒したときも、驚きは無かった。

     むしろ納得した。
     この世界には魔法少女という存在があり。人間は魔法少女に逆立ちしたって敵わない。
     ならば、楽に強くなることを宿命づけられている自分が魔法少女になることは、極めて自然なことだと。

     

  • 161◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:48:16

     抜刀している鎧騎士に、手刀で立ち向かう。

     人間世界なら無謀な突撃でしかないが、これは魔法少女戦。
     そして鎧騎士の戦力は、弓ヶ浜ヒカリ――魔法少女名「ランドウ」にまるで及ばない。

     宮本武蔵がたった独りで吉岡道場一門七十人と戦った伝説を再現するかのように、ランドウの暴力は騎士団を蹂躙していく。

     鎧は裂かれ剥がされ潰される。剣は弾かれ折られ奪われる。馬は転がされ裂かれ殺される。

     槍ヶ崎流槍術、陣内流剣術、抜刀流居合術、ブレイズドラゴンの拳法、その他空手柔道合気道テコンドームエタイカポエラボクシング剣道薙刀喧嘩殺法……多種多様な技術を駆使し、ランドウは無双する。

    「ちょっとは気張れよ、ヒカリの評価がもっと上がるためにさぁ!」

     ナチスへの信仰もなければ、叶えたい願いもない。
     ただ、楽して強くなって評価されたい。
     最強の魔法少女はランドウだと証明するために。

  • 162◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:53:46

     とてとてと、騎士団の間をすり抜けるように走る影があった。

    「雑魚は立ち入り禁止だぜ」

     VRゴーグルをつけたゴスロリ人形だ。ヒカリには一切縁が無い世界である。
     だから、普段のように光は拳を振り下ろす。

     ぐわん、とその腕が後方に弾かれた。

    「はぁ?」

     帽子を目深に被った魔法少女が、メリィを守るように立ち塞がる。

    「何弾いてくれちゃってるわけ?」

     後方から迫る騎士を回し蹴りで仕留めながら、ランドウは手刀による突きをああああに放つ。

     ぐわん、と再びランドウの腕は弾かれた。

     

  • 163◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 00:59:39

     舌打ちと共に、ランドウは飛び蹴りをああああに浴びせた。
     だが、ああああは微動だにすることなく、逆にランドウの肉体が弾かれて元居た場所に戻る。

    「キャイッ!?」

     何だこの魔法は? とランドウは訝しむ。
     攻撃を全て反射する魔法か?

     あるいは念力でも使えるのか。

     見たところ、この帽子の魔法少女は雑魚だ。立ち方を見れば分かる。自分に自信が無い、雑魚の立ち方だ。きっと今までの人生ずっと奴隷として過ごしてきたに違いない。

    (コロス……!)

     そんな奴にこのランドウの攻撃が不発した。

     あってはならない事態に、ランドウは瞬時に頭に血を昇らせる。

  • 164◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 01:00:10

    眠気が強いので本日はここまでとさせていただきます。保守や感想、ありがとうございました。

  • 165二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 07:06:53

    待ってたよー乙
    元ネタに劣らぬ瞬間湯沸かし器

  • 166二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 09:14:50

    おつー

  • 167二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 15:29:16

  • 168二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 21:41:47

    保守

  • 169二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 23:10:44

    投下お疲れ様です!
    ランドウの鳴き声が愛くるしくて…

  • 170◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:19:23

    投下します

  • 171◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:25:49

     魔法少女は特別な、神に選ばれた存在である。

     そんな風に宣う者がいれば、ああああは唾を吐くに違いない。

     自分のことを特別だと勘違いできたのは、魔法少女に覚醒してからほんの一、二年だけだった。

     裏社会に所属し、肉壁としてこき使われ、脱走した果てに辿り着いた「あにまんマンション」でこの世の地獄を味わった。
     そこから救い出されたかと思えば超越者たちの宴に雑用として巻き込まれ、右往左往している内に超越者たちに挑む側に立たされている。

     魔法少女にさえならなければ、普通の人生が送れたはずなのに。

     魔法なんて、呪いみたいなものだ。

  • 172◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:35:00

     メリィとランドウの間に割り込んだのも、正義感ではなく、使命感でもなく、もちろん恋心でも友情からでもなく。

     単純に、今メリィに死なれると自分が困るから、という酷く打算的な、されど切実な思いから来るものだった。

     ランドウは、怖い。
     かつて所属した裏社会で何度も見て来た、日常的に暴力を振るう者特有の気配。
     
     一度や二度拒絶したところで、しつこく付き纏われ、ああああが屈服するまで暴力を行使し続ける異常暴力愛者。

     きっと、碌な人生を送れないに違いない。
     
    「キャイイイイイイッッ!」

     ランドウの手刀が、ああああに振り下ろされる。
     ランドウは、身体の一部を硬質化させることが出来る。これにより武器術を素手で再現するのが、ランドウの基本戦術だ。

     剣道三倍段という言葉がある。
     竹刀を持った初段の剣道経験者に勝つには、空手や柔道は三段クラスの実力が必要という意味だ。

     ましてやランドウは剣道だけでなく、空手や柔道もマスターしている。
     そんなランドウの三倍の実力を持った相手――そんな者は存在しないとランドウは確信していた。

    「キャイイイイイイイイ!」

    「拒絶ゥ!」

  • 173◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:49:29

     だが、魔法少女の戦いとは——相性である。
     生身同士の戦いならああああが100人いてもランドウが勝つ。
     この世に魔法少女など存在しなければ、ああああが格下でランドウが格上だ。

     この世界に、魔法少女は実在する。

     ランドウの殴打は、ああああに傷一つ与えない。
     ランドウの隔絶した近接戦闘能力がまったく意味を成さない。
     戦いの土俵に昇れない。

    「雑魚がッ! 偶々魔法ガチャでレア引いたカスがッ! 真面目に鍛えてる人に謝れ!」

    「知らねぇよ馬鹿アホ間抜け! 魔法使われるのが嫌なら魔法少女なんか辞めちまえ!」

    「今ヒカリのこと馬鹿って言ったか!? ヒカリは馬鹿じゃない! みんなヒカリのこと天才って褒めてる!」

    「じゃあ今まで言われなかったぶん、私が言ってやる! バーカバーカ! 本当に賢い奴はこんなヤバい儀式で門番なんかやってねぇよ!」

    「また馬鹿って言ったな!?」

  • 174◆xaazwm17IRZa25/05/24(土) 23:58:07

    「キャイイイイイイイ……なーんてな♪」

     怒りに満ちた声が、瞬時に嘲りへと変わった。

     瞬間、ランドウはああああの背後に回り込んだ。

    「噴ッ!」

     掌底が、ああああの後頭部に放たれる。
     どれだけ魔法性能が高くとも、使用者は魔法少女——殆どの場合、中身は少女である。

     認識の外から攻撃すれば、魔法を発動する前に倒せる。
     魔法少女戦のセオリーの一つ。
     ランドウもまた、それに熟知している。

     果たして、ランドウの掌底は——ぐわん、と弾かれる。

    「はぁ!?」

    「オートガードだ馬鹿女! いちいち見てから拒絶してたら――」

     未だ、ああああは帽子さえ脱げていない。
     マジカルストラッシュさえ弾いた魔法少女は、ランドウの方へ振り返る。

    「あのマンションでやっていけねぇよ」

  • 175◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:08:46

     怖くない、とああああは思う。

     かつてああああを恐怖で縛り、使役していた裏社会の者たち。ランドウはその典型で、かつああああが所属していた組織など単騎で皆殺しにできそうな実力を持っている。
     恐るべき相手だ。

     が、あにまんマンションには純粋暴力ではどうにもできない初見殺しかつ意味不明の罠が幾つもあった。
     目的のためならあらゆる倫理を食い荒らし、合理的に探索する、増殖する狂気があった。

     それから逃れた後も、パンデモニカという悪魔に肉壁にされ。

     最強に直々に目を付けられ、このゲームの大ボスであった存在と魔法少女たちの戦いを間近で見ることになり。

     最強を狂信するガンマンに銃口を向けられ続け。

     ある意味、ああああは狂ってしまった。

  • 176◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:18:15

     なるほど、ランドウは怖い。強い。残虐だ。関わり合いになりたくない。

     それでも、ここ数年、ああああが関わった人物の中で。

    「お前が――ダントツで小物だよ」

    「——もう絶対にコロス。ここまで雑魚に侮辱されたのは初めてだ」

     濃密な殺意が膨れ上がる。
     内心で怯えながらも、ああああは鼻で笑ってみせた。

     命を奪う前にちゃんと宣告してくれるだけ、どこぞの獣共より幾分マシである。

     それに。
     時間稼ぎは出来た。

  • 177◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:32:38

    「あんまり強い言葉を使うなよ」

     その声は、上から降って来た。

     VRゴーグルをかけ、スク水のような露出度の高い衣装の魔法少女が、空中を浮遊している。

    「弱く見えるぜ★」

     魔法少女ナイトメア★メリィ。新衣装のお披露目である。

    「お前……さっきの雑魚か?」

    「僕が雑魚であることは否定しないのだ」

     空中を浮遊しながら、メリィは腕を組み頷く。

    「それはそれとしてちょっと疑問があるのだ。
     お前はブレイズドラゴンの拳法をマスターしているのだ?」

    「当たり前だろ。ヒカリはね、一度視ただけでどんな技術でも自分のものにできるの。みんなヒカリを天才だって言うんだよ」

  • 178◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:32:52

    「じゃあ、どうして【絶招】を使わないのだ?
     ああああの魔法に効くかどうかは分からないけど、試してみる価値はあるのだ」

    (何を言っているんだあいつ!?)

     突然裏切られたああああは動揺した。否、これは裏切られたのか。何だか「AにBをぶつけるとどうなるか試してみよう」というオオカワウソ的な発想のような気もする。つまり最低最悪の発想だ。

     ランドウは——沈黙した。

    「あれ、使えないのだ? 見たら使えるはずなのに?
     うむむ……これは二つのパターンが考えられるのだ。
     ①見たけどお前には難しくて使えない。
     ②雑魚すぎて見せる前に負けた。
     どっちが正解なのだ? 僕のデータベースには答えが乗ってなかったのだ、へけっ」

  • 179◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:46:30

     ランドウは黙している。
     そして、絞り出すような声で言った。

    「……なぁ、もしかしてヒカリが近距離攻撃しか出来ないと思ってるのか?」

     噴火直前の火山のような、激情が籠った声。

    「ヒカリはさ、天才だからあらゆる戦闘術をマスターしている。
     その中には——こんなのだってあるんだぜッ!」

     一瞬の動きだった。
     その場の誰も、ランドウの動きを目で追えなかった。
     動作自体はシンプルだ。
     足元にあった石を拾い、メリィに向かって投げつける。
     投石術。人類最古の技術の一つ。それは決して、時代遅れを意味しない。
     そもそも、魔法少女の膂力で放たれる投石は、銃弾を超える脅威だ。ましてやランドウの身体能力は魔法少女の平均を逸脱し、かつその動作には確かな技術が乗っている。

     身体能力的には最底辺のメリィは、避けることも出来ずに脳を石が貫通して即死。

     さっきまでのメリィなら、そうなっていた。

     石は、メリィを貫通した。

  • 180◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:46:45

    「なっ!?」

    「メリィは日夜アンチコメントと戦っているのだ。今更石を投げられたくらい、どうということはないのだ」

     そして、とメリィは言う。

     次の瞬間、ランドウの身体は宙を舞っていた。
     生身で車に衝突したかのような衝撃がランドウの全身に響き——そのまま意識を刈り取った。

    「メリィのレス速度は超高速なのだ。倒した敵(アンチ)の数なら、お前はメリィの足元にも及ばないのだ★」

  • 181◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 00:47:09

    投下を終了します

    次の投下は明日の予定です

  • 182二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 00:50:10

    ヒカリはバカじゃないもん! 天才なんだもん! みんなヒカリのこと天才って呼ぶもん!

  • 183二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 00:52:48

    実際ヒカリちゃんってどのくらい強いんです?

  • 184二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 01:35:37

    ヒカリちゃん可愛い!

  • 185二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 08:59:21

    メリィあげ

  • 186二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 10:04:52

    絶招は使用、再現不可か…このままヒカリちゃんのラーニングをどう攻略するかが楽しみだぁ

  • 187二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 17:14:09

  • 188◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 18:32:57

    投下します

  • 189◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 18:42:47

     ナイトメア★メリィが【狂愛の木蔦部屋】を選択したのは、アルセーヌの入れ知恵があったからだ。

    『そこに行けば、強化アイテムが手に入る』

     信頼できず信用できない親愛なる部長の言葉に、メリィは動いた。

     戦力は足りていない。
     ブレイズドラゴンという規格外の暴力、そしてそれを蹂躙せしめたバーストハート(始まりの魔法少女)。

     自分たちは弱いのだと、メリィは知ってしまった。
     少し特殊な力が使える、ただの中学生に過ぎない。

     だからこそ、この局面で魔法少女部及びクラスメイトが全員生きているのは奇跡なのだ。
     自分たちより知恵のある者も、自分たちより強い者も、自分たちより悪辣な者も、悉く死んでいったのだから。

  • 190◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 18:51:49

     クィーンの騎士団がランドウと戦いを繰り広げる最中、メリィはその隙に入城を試みた。
     ああああのサポートもあり、ランドウという暴力を掻い潜って城の内部に入り込んだメリィは、そのまま石畳を走り抜けた。

     魔法陣は何処にあるのか、強化アイテムは何処にあるのか。そこまでは知らない。
     部長は敢えて教えてくれなかったのか、それとも彼女も知らなかったのか。

     とにかくメリィは走った。
     余裕をかなぐり捨てて一心不乱に走った。
     変身前でも変身後でも激しい運動なんて嫌いだが、構わず走った。

     ランドウ以外にもう一人魔法陣の護衛者が居れば、自分は死ぬ。
     クィーンやああああがランドウを倒して城の中に駆けつけることは出来ないだろう。

     ランドウはまごうこと無き小物だが、その実力は確かだ。
     ブレイズドラゴン程の絶望感は無いが、そんな感覚どこまでアテになるものか。
     スカウターなど無い。
     サーチすれば正確な実力を判断できるかもしれないが、その時間も惜しい。

  • 191◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 19:04:09

    「っていうか、マジで何処にあんだよ、くそっ」

     誰も居ないので、素の口調が漏れる。
     城の中は思ったより広い。魔法少女は人間の十倍の身体能力があるとはいえ、城の中をくまなく探すには時間が掛かる。

     こうしている間にも、クィーンやああああが殺されているかもしれない。
     焦りと共に、メリィは各部屋を駆けまわる。
     三つ目、四つ目の部屋を探索し終えたメリィは、五つ目の部屋へと足を踏み込んだ。

     其処は、寝室のようだった。
     真紅の天蓋付きベッドに、蔵書がみっちり詰まった本棚。
     薄いカーテンが備えられた窓からは、アイビーの緑が広がっている。

     メリィは足を止めた。
     寝室は無人ではなかった。
     ベッドに腰を下ろし、微笑む少女が居た。

     知った顔だった。魔法少女部のメンバーではない。クラスメイトでもない。
     このゲームで知り合った者でもないし、テレビの有名人でもなかった。

     もう二度と会えないはずの者だった。

    「くる姉……?」

     年上の幼馴染、柩枢(ひつぎくるる)が其処に居た。

  • 192◆xaazwm17IRZa25/05/25(日) 19:04:30

    投下を終了します

  • 193二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 19:51:19

    ん…死んだ人?それ関係なんかあったけな…

  • 194二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 20:57:50

    乙です、世間は狭い物スね

  • 195二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 23:23:56

    弱く見える立ち振る舞いが感覚を狂わせる…
    実際、投石という予想外の攻撃までしてきたし何するか分からなくなってきた

  • 196二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 06:20:07

    保守

  • 197二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 07:53:59

    何かあるねこの城…

  • 198二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 15:37:17

    保守

  • 199二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 23:00:35

    ほしゅ

  • 200二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 01:41:35

  • 201二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 07:45:13

    くる姉(AIWOTD)とメリィくんって結局本編で顔合わせたことないんだっけ

  • 202二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 07:46:17

    ランドウ以外敵はいないはず。おそらくは罠ではないはずだが…

  • 203二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 11:57:41

    この市は通りすがりの怪異もいるから怖い

  • 204二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 11:58:43

    通りすがりの怪異…もしかしてこれ機骸の大怨霊?

  • 205二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 17:43:06

    ソレダ(オリバ画像略)

  • 206二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 23:33:36

    案外、ヒカリちゃんは冷静だと思ってたけど、怒り通り越して殺意で冷静になってた感じだったか
    自身の感情も利用する狡猾さよ

  • 207二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 07:42:10

    保守

  • 208二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 14:20:31

    保守

  • 209二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 21:27:23

    保守

  • 210◆xaazwm17IRZa25/05/28(水) 22:36:03

    一つお聞きしたいんですけど、週一に長めの更新、2、3日で短めの更新だと、どちらが良いんでしょう……?

  • 211二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 23:05:57

    私は大丈夫ですよ(週一)

  • 212二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 23:06:52

    個人的には〜スレ主が楽な方がいいかな

  • 213◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:05:12

    お二人とも、回答ありがとうございます。

    他の方も自由にお好みを書いていただけると助かります。

    私個人としては、書きやすさに有意な差は無いです。

  • 214◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:05:28

    投下します

  • 215◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:06:11

     柩枢(ひつぎくるる)。
     ナイトメア★メリィ=逢魔愛裏の、年上の幼馴染。
     故人。

    「どうして、くる姉が生きてるんだよ……?」

     メリィは、魔法少女に変身している時、「のだ」「へけっ」といった、キャラの立った口調で話す。わざとそうしている。

     素の、地味な自分がコンプレックスだからだ。

     逢魔愛裏は、地味な少年だ。愛裏はそう自認している。

     愛裏がそう思い込んだ主因は、小学生の時につるんでいた。柩枢という少女が派手だったからだ。

     自称魔法少女で、あらゆる物事に首を突っ込み、強引に物事を解結する。

     愛裏は枢の異常な行動力に振り回された。
     悪くない時間だったと、愛裏は後に思う。

  • 216◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:06:57

     中学生になって、自称ではない、本物の魔法少女とつるむようになったが、枢は本物魔法少女に勝るとも劣らないキャラクター性をしていた。

     ——生きていれば、本物の魔法少女になった。愛裏は確信している。
     枢は、高校に上がってすぐに命を落とした。

     異様な死に方だった。
     ○○高校大量中毒事件。
     その日、給食を口にした生徒全員が中毒症状を起こし、誰一人助からなかった。
     食品管理が杜撰だったのか、何者かが毒物を混入したのか。
     奇妙なことに、警察がその日生徒たちが口にした料理の成分を調べても、毒物反応どころか、衛生すら万全に保たれていた。賞味期限も切れていなかった。

     生徒と同じく口にした教師、味見をした調理員。いずれも無事であり、健康状態に何の異常も無かった。
     魔法少女を自称し、特異なキャラクター性で、けれどどこまでいっても魔法少女ではなかった柩枢。
     彼女は、魔法みたいな死に方をした。
     愛裏は、インターネットで情報を漁った。

  • 217◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:07:43

     枢が死んだとき、愛裏はまだ小学生だった。

     小学生でも出来る「犯人捜し」が、インターネットの検索だった。
     けれど、ネットの海は広大で、真偽もあやふやだった。
     電子の海を自在に泳ぎ、全てを調べ尽くすことが出来たら。
     愛裏は、そんなことを願うようになった。魔法みたいな夢想を抱いた。

     ベッドに腰かけ、枢はじっとメリィを見つめている。

     何を考えているのか、表情からは伺い知れない。
    「くる姉……」
     と、メリィは枢に呼びかけた。

     生きていた、そう思いたかった。

     思いたいのに、理性が邪魔をする。

    「幻覚……なのか?」

     魔法は、何でもありだ。

  • 218◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:08:47

     CG、VR、そんな科学技術を超越した、本物と遜色ないリアリティある幻覚だって創り出せる。

    (いや……けど……)

     メリィは、繁華街の戦いを思い出す。
     バーストハートも、ネコサンダーも、死んだはずなのに生き返った。

     魔法は何でもあり。ならば、死者の蘇生さえも?

    (駄目だ……冷静になれ、僕……。バーストハートも、ネコサンダーも、医者が死亡確認をしたわけじゃないし、死んでいたとしても、肉体はばっちり残ってた。
     けど、くる姉は数年前に火葬されてる。蘇生の難しさは繁華街の二人と比べて段違いのはずだ。
     だから、やっぱりこれは幻覚……。
     けど、それって人間の、化学の基準に過ぎないわけで……。魔法なら、肉体が残ってる残ってないは誤差に過ぎないのかも……)

     ああ、駄目だな。
     と、メリィは思った。

    (僕は、目の前のくる姉を、本物だって思いたがってる)

  • 219◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:09:35

     それが、偽りざる本音。

    (死んだって理解しているのに)

     名簿に「柩枢」という名前が載っていても、メリィは同姓同名の別人だと判断した。
     クィーン曰く、柩枢=魔法少女「」アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド」は、人間を支配し操る、凶悪な魔法少女だとか。

     それは、メリィの知る「くる姉」とは似ても似つかないキャラクター性だ。
     柩枢は死んだ。
     故人だ。
     そのはずなのに。

    「何とか……言えよ!」

     メリィは吠えた。ナイトメア★メリィとしての、魔法少女としてのキャラクターを維持できない程、彼は動揺している。

    「ねぇ」

     と、唐突に枢は口を開いた。
     

  • 220◆xaazwm17IRZa25/05/29(木) 00:09:58

    投下を終了します。

  • 221二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 00:12:04

    週2、3回くらいで短めの投下でも見れたら嬉しいですね

  • 222二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 07:01:20

    週何回かに分けてくれた方が嬉しいっすね
    いくらカテが過疎る一方とはいえ、ただでさえ安価ダイスの頻度が低いうえに週一更新がデフォとなると流石にスレとしての体裁が危ういので

  • 223二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 07:50:45

    話せる頻度が増えると嬉しい…

  • 224二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 14:57:58

    スレ主の投稿が長期間無いと自動的に過去ログ行きか削除される仕様っぽいし多少はね

  • 225二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 15:14:51

    一週間ぐらいスレ主の書き込みないと落ちるっぽいね
    それはそれとしてやっぱり短くても更新が多い方がいいかな

  • 226二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 22:09:06

    保守

  • 227二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 22:48:31

    この得体の知れない存在をどう暴いていくか、もう既に戦いは始まっている…

  • 228二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 07:25:21

    保守

  • 229二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 07:43:28

    ヒカリちゃんは今の話題と言い、割とタイムリーである

  • 230二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 16:05:33

    保守

  • 231新入り希望25/05/30(金) 21:46:36

    すいません、新入りしても大丈夫?

  • 232二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 22:16:56

    どうぞどうぞ〜

  • 233新入り希望25/05/30(金) 22:20:13

    >>232

    最初に何からすればいいですか?最初のテンプレプロフィールを埋める?

  • 234二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 23:48:31

    (キャラクリエイトの話だったか…)
    新規の募集は終わってたと思います

  • 235新入り希望25/05/31(土) 00:04:55

    >>234

    それは失礼しました、確認不足でした

  • 236◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 01:59:09

    皆さん回答ありがとうございます。

    できるだけ2、3日のペースで投下していきます。

    さっそく投下します。

  • 237◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:01:05

     枢の声色は、メリィの思い出の中の柩枢と瓜二つだった。

    「もしかして、あなた、愛裏?」

     随分見違えたわねぇ、と枢は目を細めた。

     ナイトメア★メリィは、VRゴーグルをしたゴスロリ人形少女。
     当然、中学生男子・逢魔愛裏とは全く違う姿をしている。
     見違えるのも当然だ。変身しているのだから。

    「くる姉は……そのまんまだな」

    「そのままだったら良かったんだけどね……」

     枢は、寂し気に笑った。

    「私はね、失敗したの」

    「失敗?」

    「うん、私の人生は失敗だった」

     何だそれ。
     メリィは強く苛立ちを覚えた。

     若くして死んだから? 魔法少女に成れなかったから?
     だから失敗?
     そう言いたいのだろうか。

  • 238◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:01:23

     そんなわけないだと、とメリィは声を荒げようとして。

    「私は——死んだの」

     枢の言葉に、怒りの声を呑み込んだ。
     薄々分かっていたことだが、やはり枢は死んでいた。
     分かっていたはずなのに、メリィの心を落胆が襲った。

    「私は死んで――魔法少女になった」

    「死んで……?」

     死地に合って……とか。
     瀕死になって……とか。
     そういう話なのだろうか。
     違う、とメリィは感じた。言葉の綾ではない。

    「魔法少女って……人間が変身するものだろう?」

  • 239◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:04:16

    「必ずしもそうじゃないんだよ」

     例えば、ヒートハウンド。
     例えば、フライフィアー。
     例えば、パペッタン。

     このゲームには、人間以外の存在が複数参戦している。

    「魔法少女『アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド』は——柩枢の死に際の無念から生まれた魔法少女だよ」

     死ぬ前に覚醒したのではなく。
     死に際の想念が魔法少女化したもの。

    「だからね、私の人生は失敗だったの。
     生前の私が助けた人の数より、死後の私が殺した数の方が、ずっと多いんだから」

     私は、生まれてくるべきじゃなかった。
     と、柩枢は断言した。

  • 240◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:05:02



     時々、自分を見失う時がある。

     逢魔愛裏という少年は、地味で目立たない存在だ。

     魔法少女ナイトメア★メリィは派手派手で個性の立った魔法少女だ。

     そのギャップに混乱する時がある。

     キャラ作り。ナイトメア★メリィはわざと個性の強い口調で喋る。
     あえて一人称を「メリィ」にすることもある。バカっぽいと我ながら思うが、その方が変人キャラ感を出せると思ったからだ。

     その反動なのか「素」の自分が「僕」なのか「俺」なのか「私」なのか、分からなくなる時がある。
     逢魔愛裏とはいったい何者だったのか、思い出せなくなるときもある。
     ナイトメア★メリィが個性を主張する理由。

     その根底には、くる姉への憧れがあった。
     本人は絶対に認めようとはしないが。

    「——間違えてないのだ」

     と、魔法少女ナイトメア★メリィは断言した。

    「くる姉の人生は間違えていない。メリィがそう断言するのだ★」

  • 241◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:05:50

    「いいえ、間違いよ。アリスの犠牲者は——夥しいわ。
     誰だって、死にたくはなかったはずなのに」

    「それは——否定しないのだ。
     けれど、だから人生が失敗だったなんて決めつけるのは、早いのだ」

    「私はもう、死んでいるのに?」

    「まだ――メリィが残っているのだ」

     と、力強く、メリィは宣言した。

    「魔法少女柩枢の最初の弟子であるナイトメア★メリィが、このゲームをぶっ壊して、悪い奴らをみんな捕まえてやるのだ」

     メリィの言葉に、枢は苦笑する。

    「——それが、貴方の愛なんだね、ナイトメア★メリィ」

     メリィは頷いた。

     部屋が、メリィを祝福するかのように発光する。

     そして。

  • 242◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:06:40



     (結局、あれはくる姉だったのか?)

     仮に幽霊だとして、どうして狂愛の木蔦部屋に居たのか。
     メリィには、まるで分からない。

     分かることは。

    「動けないのだ」

     地面に身体をめり込ませながら、メリィは唸った。
     クィーンが心配そうに、ああああが呆れた様子でメリィを見下ろす。

    「メリィ……あなた、自分の魔法をコントロール出来ないの?」

    「今さっき習得した魔法を、そう簡単に使えるわけないのだ」

     クィーンに差し伸べられた手を取り、メリィはゆっくりと起き上がる。
     そして三人の視線は、大の字で倒れている、黒いスウェットの女に向けられた。

    「殺した方がいいんじゃないのか?」

     ああああの時に、二人の中学生は顔を顰める。
     ああああの言葉は正論で、だからこそ二人は口を開けない。

  • 243◆xaazwm17IRZa25/05/31(土) 02:06:52

    投下を終了します

  • 244二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 07:22:42

    柩枢(ひつぎ くるる)/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド
    【得意な魔法】
    (中略)彼女の命令に一つだけ絶対厳守で活動する。
    意識と自我を無くし最終的に死に絶えるが、屍になっても命令が完遂されない限り動き続ける。

    この説明文、他ならぬ魔法少女AIWOTD自身にも当てはまるのがまた美しい

  • 245二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 10:53:27

    ヒカリちゃんはこの先生きのこることができるのか

  • 246二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 13:21:49

    ヒカリちゃんもうやられてる…想像通りだったと言うか予定調和と言うか…

  • 247二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 21:28:24

    保守

  • 248二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 23:45:41

    気分屋だから生かしておいても変な事はしないと思うのよなランドゥ。さて、処遇は如何程に

  • 249二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 08:46:31

    このレスは削除されています

  • 250二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 09:01:22

    保守

  • 251二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 15:43:56

    保守

  • 252二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 23:19:03

    メリィの原点の振り返りと大幅強化、そして強敵(?)ランドゥの撃破
    とりあえず順当に攻略出来てるみたいで、ヒカリちゃんには悪いけど特にトラブルも無く終わって良かった…

  • 253◆xaazwm17IRZa25/06/01(日) 23:43:44

    投下します

  • 254◆xaazwm17IRZa25/06/01(日) 23:48:06

     人殺し。
     覚悟してこなかったわけではない。
     ブレイズドラゴンと戦っていたとき、メリィはブレイズドラゴンを生かすつもりは無かった。
     そんな余裕は無かったし、気絶させて縛り上げた程度ではまるで安心できなかった。
     例え四肢を切断できたとしても、怖くて仕方なかっただろう。

     だから、今更殺しが嫌だと、言えない。

     クィーンも同様だった。
     彼女は——既に、魔法少女を一人殺している。
     大量無差別殺戮犯だったとはいえ、殺しは殺しだ。

    (もし手を汚すなら——それは私がやるべきだわ。
     それが、女王の責務)

  • 255◆xaazwm17IRZa25/06/01(日) 23:52:01

     ああああに至っては、ランドウを始末することに心理的葛藤は殆ど無かった。
     善良な魔法少女ならともかく、ランドウはデスゲーム運営側の人間で、普通にこっちの命を奪うつもりで襲いかかって来た。

     生かしておいて復讐されるのも面倒だし、気絶している間に、さっさと始末したほうがいいに決まっている。

    (さっきは挑発と不意打ちで上手くいったが、総合的には私ら三人より絶対強いだろコイツ。いきなり正解ルートを引けたようなもんだ)

    「殺した方がいいとは、僕も思うのだ」

    「だろ?」

    「けど、殺したくないのだ」

  • 256二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 23:56:26

    どこら辺が強くてブレイズドラゴン達と互角と言われているのか全く分からなかったネタキャラかませ犬のヒカリちゃん
    元ネタを考えるとらしいのか?

  • 257◆xaazwm17IRZa25/06/01(日) 23:57:01

     クィーンはどうなのだ? とメリィに訊かれ、クィーンも頷いた。

    「私も――殺したくは無いわ。
     死んでいい命なんて、本当はないはずだから」

    (こいつら、甘すぎだろ……)

     ああああは、呆然とした。

     そして、運営魔法少女(雑用)として仕入れた知識を思い出す。

    (二人とも、中学生か……)

     これが、「普通の感性」なのだろう。ああああが遥か昔に失ったもの。

     羨ましい、と思った。
     どれだけ拒絶を重ねても、失ったものは回帰しない。

    (こんなとき、オオカワウソなら……。
     まず増やして、一人は殺してもう一人を……・
     いや、もう絶滅した奴らのことなんか考えたって仕方ないか)

     しかし、どうするべきなのだろう。
     二人を説得してランドウをこの世から永久退場させるか。

  • 258◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:09:15

     何だかそれはしたくないな、とああああは思った。

    (……そうだ。私はあくまで生存優先。脱出派、打倒運営派についていかないと生き残れないんだ。ここで無力化した運営側魔法少女でも駆除を主張したら『じゃあお前も元運営だし駆除するか』って流れになる。
     これはあくまで合理的選択。それだけだ)

     結局、気絶したランドウは、クィーンの創り出した鎖(正確には鎖を武器とした騎士の召喚)で雁字搦めにしたうえで、城の地下牢に放り込んでおくことにした。

     ランドウがどれだけのスキル、あるいは膂力があるのかは計り知れないが、ゲーム終了時までに復帰してくることはないだろう。
     呪いさえ解除できれば外部に助けを呼べる。
     あにまん市以外の魔法少女に袋叩きにしてもらい、魔法国の監獄にでも放り込めばいいだろう。

    「念のために、もしまた僕たちに逆らったらお前の銀行預金0にするぞ、とメモを残しておくのだ」

    「えげつねぇな……」

     かくして三人の魔法少女は、誰一人欠けることなく、衛兵を倒し、魔法陣の破壊に成功した。
     全ては順調、そんな風にさえ思えた。

     メリィとクィーンがミストアイの死を知って絶句し。
     ああああが校舎から生えたあにまんマンションを見て気絶するのは、数分後のことであった。

  • 259◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:09:32

    投下を終了します

  • 260◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:11:57

    ちなみにランドウとブレイズドラゴンはケンガンオメガで例えると弓ヶ浜とアギトくらいの実力差です。

  • 261二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:13:47

    そーいえばブレイズドラゴンの必殺技が使えなかったのは単純にヒカリちゃんの技量不足ですかね?

  • 262◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:20:05

    >>261

    模倣が魔法では無く自前の特技というビックリ人間なヒカリちゃんですが、

    裏を返せば魔法では無いので、人間に不可能なこと、物理的に不可能なことは模倣できません。



    魔法少女のことを一切知らずに裏格闘の世界で王者やってるのが本人は一番幸せだったと思います。

  • 263◆xaazwm17IRZa25/06/02(月) 00:24:32

    魔法陣攻略戦……次の舞台は

    アニー・アーマン邸
    挑戦者(汐沫 夏実/ジェイルフィッシュ、桐生 ヨシネ/バーストハート、槍ヶ崎 舞矢/スピードランサー)
    ボス(姚 莉鈴/ハイエンド、???)

  • 264二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:33:04

    ハイエンドちゃん、タイマンイベントでジャスティスファイアやバルバロイと互角の強さなのは明言されてるから、今まで描写された設定的に格上のクライオニクスクラスには勝ち目がほとんどないし、そこより更に格上のスピードランサー姉貴には相性的にももっと勝ち目がなさそうね
    仮想敵の技量自体は並程度なティターニアと違って初見殺しにも引っかかりそうにないし

    まぁ運営側もそんな事は分かり切ってるだろうから????がいるんだろうけど

  • 265二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:39:22

    もう追加戦士も待機してるキャラ以外は使い切ったし???が誰なのか気になるー

  • 266二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 01:11:37

    ハイエンドはブラックブレイドとも地味に好感度ダイスで90あるし、バーストハートと三人で武術交換会の回想で仲良かったところ見せてくれたら嬉しい〜

  • 267二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 01:43:37

    お疲れ様でしたー

  • 268二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 07:49:32

    投下お疲れ様です!
    ヒカリちゃん、銀行預金0が一番効きそうなのが何とも

  • 269二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 14:57:43

    保守

  • 270二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 21:08:21

    保守

  • 271二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 23:25:13

    思っていたよりブレドラとの実力差が絶望的だった
    自前の特技が貴重なだけにタクティカルアドバンテージがあまり無いのが残念だな

  • 272二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 05:31:20

    保守

  • 273二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 07:54:03

    挑戦者側が万全なだけに「???」の存在が不穏…

  • 274二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 14:51:24

    ほるほしゅ

  • 275二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 21:45:02

     過去編でチーム戦の経験も作中トップクラスに長い事が判明したスピードランサー姉貴の頼もしいところに期待!
     過去編で一緒に大暴れしてたらしいティターニア先生と違ってなぜか知名度が皆無なのが非常に気になるけど……幼馴染の先生と同じように真ラスボスぶっ倒すまで最強格らしい別格感をぜひ見せて欲しいです

     バーストハートとハイエンドの因縁の戦いも熱いですね! 特にバーストハートはまだ自前の魔法を使ってないので……戦闘シーンがどうなるか予測できないのがワクワクします
     タイマンイベントの戦闘力ランキングだとバーストハート→ハイエンドは非常に勝ち目が薄い気もしますが……頑張って欲しいですね

     ???の正体や、ジェイルフィッシュの魔法がどう勝負に影響を及ぼすかも見届けたいところです

  • 276二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 23:08:03

    J保守

  • 277125/06/04(水) 00:10:26

    テスト

  • 278125/06/04(水) 00:14:20

    規制されました

  • 279二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 00:17:02

    Oh

  • 280125/06/04(水) 00:31:40

    三題噺

    「島」「息」「家の中のトイレ」

    魔法少女トリックスターは家の中のトイレに隠れ、息を殺していた。

    家、といってもそれは人間界にある、彼女が育った家ではないし、魔法国で彼女が借りているアパートでもない。

    その家は、小さな孤島に一軒だけ建っている。

    木枠にレンガ、ヨーロッパに伝統的に見られる木組み構造。三世帯程度なら問題なく住める広さの、この島には似つかわしくない住宅。

    島は、無人島である。

  • 281125/06/04(水) 00:35:56

    無人島なのに、家がある。
    ならば無人島ではないのか。

    (住んでいるのは魔法少女だ)
    と、トリックスターは思う。

    魔法少女は人間ではないから、魔法少女しか住んでいない島は無人島。

    そんな特別意識を、トリックスターは持ち合わせていない。

    答えはもっと単純だ。

    この家には、魔法少女が住んでいる。
    その魔法少女は--人間ではない。

  • 282125/06/04(水) 00:41:40

    軽快な声が、リビングから聞こえてくる。
    楽しげな、少女の声。

    トリックスターは気配を消したままトイレから出ると、そっと声の方に近づいた。

    そして、やはり気配を消したままするりとリビングに忍び込む。

    声の主は、絨毯に腰を下ろし、楽しげに言葉を発している。

    手に持つのは、戦車、そのミニチュアである。

    それらを両手で持ち、金髪の少女は高らかに言葉を紡ぐ。

    「バンバンバン!ドカーン!ヒュルルル、デュクシッ!デュクシ!」

  • 283125/06/04(水) 00:48:12

    少女は箱に手を伸ばし、幾つもの黒い戦車を取り出す。
    「ウラー!ウラー!」

    その向かい側に並べた戦車を持ち上げ、ヒーンと言った。

    「助けてー!助けてー!」

    そして少女は箱の奥に入っていた、他の戦車と比べて遥かに大きな戦車を、ゆっくりと絨毯の上に安置した。

    「もう大丈夫だ!私が来た!」
    「来た!マウス来た!」
    「これで勝てる!」

    一人で何役も演じながら少女は大きな戦車を動かし、絶対に履帯が外れないと思わせる軽快な動きで黒い戦車部隊を弾き飛ばした。

  • 284125/06/04(水) 00:50:48

    いよいよテンションが上がったのか鼻歌でワルキューレの騎行を歌い出した少女を、トリックスターは冷めた目つきで見守る。

    少女の名を、アインという。
    人間ではない。
    彼女は、戦車が変身した魔法少女である。

  • 285125/06/04(水) 00:51:35

    投下を終了します

    スマホからは書き込めるみたいなので良かったです。

  • 286二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 01:53:35

    トリックスター……えっトリックスター!?

  • 287二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 07:50:32

    「これで勝つる!」

  • 288二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 09:13:16

    実戦では糞の役にも立たなかった戦車マウスが変身した魔法少女がこれを言うとアレな感じがするわね

  • 289二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 16:24:33

    保守

  • 290二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 00:09:58

    保守

  • 291二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 07:20:34

    保守

  • 292二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 07:52:38

    ブンドド中なのね

  • 293二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 12:53:21

    過去話かな?

  • 294二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 21:24:32

    保守

  • 295二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 00:10:56

    保守

  • 296二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 07:54:23

    こうして見るとアニー・アーマン邸の面子がガチすぎて逆に不安になるね…

  • 297二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 15:23:14

    このレスは削除されています

  • 298二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 22:14:19

    保守

  • 299二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 00:17:47

    アインちゃんのロールプレイ内容もしかしてブロントさ(ry

  • 300二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 08:46:39

    保守

  • 301二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 14:41:49

    保守

  • 302◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 22:39:09

    【名前】アイン

    【変身前・変身後の外見】

    変身前:なし

    変身後:サイバーチックなボディスーツに機械装甲を装備した金髪ロリっ娘。

     固有武装としてMG34マシンガンを手に持つほか、強力無比な12.8cm戦車砲や7.5cm副砲を自由に発現できる。

    【年齢(製造年数)】80年以上

    【趣味/魔法少女としての日課】

    【好きなもの】戦争、第三帝国、トート・アリア

    【嫌いなもの】弱卒

    【性格】傲慢で幼稚

    【得意な魔法】

    『重力を操れるよ』

    「自重で地面にめり込んで動けなくなる」という自身の致命的な欠陥を解決したいという思いから発現した魔法。

     118トン近くもある自分の体重を軽くして活動しているほか、魔力消費が重くなる代わりに空中を飛行することもできる。

     魔法としては凡庸の範疇だが、自身の戦車としての武装と組み合わせて戦闘を行う。

    【魔法少女になったきっかけ】

     トート・アリアによって終戦間際にナチスドイツの兵器庫から持ち出された試作型超重戦車『マウスhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/マウス_(戦車)」が魔法少女化した。

     つまりフライフィアーやパペッタンの同類である。

    【詳細】

     アリアの配下の魔法少女。機械ゆえに支配を受けない特性から対パラサイトドールの戦力として温存されていたが、先んじて仮想敵が退場してしまったために持て余されている。

     本人はまるで気づいていないが、現在は対参加者の捨て駒か、『勇者』の最終実戦テストの当て馬として生かされている状態である。

    【備考】

     超重量と重装甲に任せた格闘戦も得意。

     同じ立場のハーゲンのことは心の中で小馬鹿にしまくっていた上に「自分は役目を失ったアイツとは違う」と考えている。

     失敗作として打ち捨てられた自分に役目をくれたアリアのことが心の底から大好き。

  • 303◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 22:41:09

    【名前/魔法少女名】柏木 彩/デスグラシア
    【変身前・変身後の外見】
    変身前:薄緑色の髪をポニーテールにした陰のある美女 服装はブランド物の赤いスーツ
    変身後:白銀のベネチアンマスクをつけた白いタキシード姿で両手にマチェットを持っている
    【年齢】27
    【趣味/魔法少女としての日課】ガーデニング/世の中の理不尽を正すこと
    【好きなもの】人から優しくされること
    【嫌いなもの】理不尽
    【性格】自己顕示欲と自己愛が強いが臆病で引っ込み思案
    【得意な魔法】
    『怒りを魔力に変えるよ』
    自分の怒りの感情を魔力に変換しブーストをかける
    彼女は常に理不尽に対して怒りを感じておりその出力は凄まじい
    あまりにも長時間かけ続ければ自分の肉体を傷つけるが一時的にであれば本来の魔力量以上にも変換できる
    【魔法少女になったきっかけ】世の中の理不尽を正したいから
    【詳細】
    あにまん市ではかなりの力を持つ会社の社長令嬢
    何不自由なく、少なくとも客観的には社会的にも経済的にも家庭的にも恵まれて育った
    だが自己愛と他責思考と減点主義の権化であるため彼女は「もっといい家庭に生まれるはずだった」
    「親の会社がもっと大きいはずだった」「もっと素晴らしい才能を持って生まれるはずだった」と思っている
    そしてそれらは彼女にとって「世の中の理不尽」として変換され「理不尽な仕打ちを受けている可哀想な自分」に酔うための材料となる
    結果としてこの年齢になっても一度も働いたこともなく好きに生きているのに自分を「世界一不幸な悲劇のヒロイン」だと心の底から信じているモンスターと化した
    【備考】
    才能は本物で単純な戦闘力ならあにまん市の魔法少女最上位層となんら遜色ない
    しかし精神が未熟なため実際に戦えばよほど運に恵まれない限り勝利は不可能である
    それを自覚しているが故に「自分より強いなんて理不尽」と最上位層に一方的な憎しみ、特にティターニアは親の仇のように憎んでいる
    同様に自分より恵まれた環境で生まれ育ったミョルニルも同じぐらい憎んでいる

  • 304◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 22:41:33

    投下します

  • 305二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 22:43:01

    フライフィアーが「もう少し経験を積めば四強に匹敵」って話だったから、アインもスペックノートを見れば四強級って感じでしょうか?

    このあと規格外級であろう『勇者』の噛ませ犬になることも考えると……

  • 306◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 22:47:53

     透明化したまま、トリックスターはアインの様子を眺める。

     金髪のロリっ子である。可愛い。
     しかしその正体は人間ではなく——戦車。

    (無機物の魔法少女化……。非常に珍しいけど、前例が無いわけじゃない。あにまん市のパペッタンやフライフィアーと同じタイプだ。
     いや、彼女こそがプロトタイプと呼ぶべきか……)

     トリックスターは情報通である。
     諜報に適した魔法、そして魔法国役人という立場。

    (魔法少女アイン……彼女もまた、近いうちに開かれる儀式の参加者候補の一人だ)

  • 307◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 23:41:20

     人間が魔法少女に変身するだけで兵器として運用可能になる。
     ならば兵器が魔法少女に成った場合、どうなるのか。

     考えるだけで恐ろしい。きっとあにまん市は壊滅してしまうだろう。

    (ますます、儀式から逃げなければならなくなった)

     それがトリックスターの目標。情報を詳らかにし、自己の安全を図る。
     今、アインを監視しているのもその一環。

     トリックスターは振動を感知した。
     巨大な物体が、この島に上陸した。
     ……この無人島に?
     
     わざわざこんな島に来るならば、目的は一つ。
     「アイン」に会いに来たに違いない。

     ということは、島に来たのは。

    (トート・アリアか)

     トリックスターは、既にその名前を知っている。

  • 308◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 23:46:53



     Uボートが砂浜に打ち上げられている。
     ハッチが開き、二つの影が飛び出した。
     どちらも少女のものだ。

     魔法少女・ナイナイホテプ。
     魔法少女・フロストハウンド。

     トート・アリアの忠実な部下である二人の改造魔法少女は、華麗に砂浜に着地すると、赤絨毯を広げた。

     やがて、潜水艦の中から白衣の魔法少女——トート・アリアが姿を現わす。

    「グーテンモルゲン、アイン」

    「ギャーッ! アリア様ッー!」

     奇妙な歓声をあげながらアインはアリアの下へと駆け寄る。
     アインの背後に控えている巨躯の女性――改造魔法少女ハーゲンは、呆れた様子でそれを眺めていた。

  • 309◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 23:52:59

    「随分と待たせたな。キャタピラもすっかり錆びついてしまっただろう。
     アイン。貴様に任務だ」

    「ギャー! 承ります、アリア様!」

    「我々は人造勇者計画を進めてきた! だが——この勇者は出来損ないだ、使えないよ。
     よって、アイン。今後の研究に生かすために、我が配下でもっとも優秀な兵器である貴様に、勇者の粛清を命じることにした。
     存分にその性能を生かすがいい」

    「ギャギャギャー! 任せてください、アリア様!」

     誇らしそうに胸を張ったアインは、ハーゲンに視線を向け、フン、と鼻を鳴らした。
     最も優秀な兵器と呼ばれた。ライバルであるハーゲンとは格付けが完了したと、そう示したのだ。

     ハーゲンは鬱陶しそうにその視線を払った。
     

  • 310◆xaazwm17IRZa25/06/07(土) 23:59:40

    「それではアリア様。その失敗勇者は何処に居るんですか?」

    「うむ。彼女は潜水艦の中で惰眠を……」

     その時、その場に居た全員の鼓膜が、奇妙な音楽によって打ち据えられた。
     全員が、そちらに視線を向ける。

     沖合。
     一隻の小型ボートから、その音楽は聞こえて来た。

    『デ・デ・デ・DEATH~♪
     デ・デ・デ・DEATH~♪』

    「何だ、この間抜けな音楽は!? アメリカ製か?」

     驚愕するアリアにフロストハウンドがすかさず望遠鏡を差し出す。

    「要らん。吾輩の視力は20.0だ」

     ボートには、一人の女が乗っていた。

  • 311◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:05:31

     奇妙な女である。
     白銀のベネチアンマスク、白いタキシード。
     そして腰に提げる、二本の山刀(マチェット)。

     怪人は、拡声器をナチス一向に向けると、声を張り上げた。

    「お前達、そこで何しているデース! とっとと出て行けデース!」

    「ふむ。我々がどこに行くかは我々が決める。ここに残るかどうかも我々で決める」

    「いやふざけんなデース。その島は、私の所有物デース」

  • 312◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:10:49

     不法侵入するなし、と怪人は毒づいた。

    (あいつは……)

     未だ透明化しているトリックスターは、女の正体に心当たりがあった。

    (不味いな。直ちに離脱しないと巻き込まれる。
     あの女は——ある意味、ナチスよりヤバい)

     女の名前は柏木彩。魔法少女名、デスグラシア。

     アインが戦車が魔法少女になった存在なら、デスグラシアは。

    「とにかくナチスが私の島に住むことは許さないデース! ブランドに傷がつきます」

     暗黒金持ちが魔法少女になった存在である。

  • 313◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:20:57



     かつて、あにまん市はアウトロー魔法少女の聖地だった。
     糧鮴を始め、数多の悪しき魔法少女が違法なビジネス及び無益な縄張り争いを繰り返しており、治安は悪化の一途を辿っていた。

     そんな超無法都市あにまん市を、裏から支配していた者こそ柏木家である。
     表向きは優良企業、裏では様々な犯罪に手を染めていた悪しき一族。
     
     彩は、愛されて育った。
     箱入り娘である。当然、犯罪とも無縁だった。

     それでも彩は常に理不尽を抱えて生きて来た。
     自分は不幸だと、定義していた。
     
     確かに、自分の家は金持ちだ。だが、岸村家の方が金持ちだ。
     確かに、自分は美貌だ。だが、もっと美しい者は世界に存在する。
     確かに、自分は両親に愛されている。だが、この程度の愛ではまるで足りない。

     足りない、足りない、足りない。
     ああ、何て理不尽。
     9歳のとき、彩は魔法少女デスグラシアに変身した。
     そして、自分が求める愛を与えてくれなかった両親を撲殺した。

     

  • 314◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:27:13



     敵だ、とアインは思った。
     嬉しい、とも思った。
     敵がいる限り、自己の勝ちを証明できる。役立たずではないと立証できる。

    「アリア様。勇者の前に、まずアイツを殺しますかー? ギャギャギャー! 木っ端微塵にしてやるぜー!」

    「ふむ……」

     信頼すべき上官、アリアは顎に手を当て、思案している。

    「些か、物足りないと思っていた」

    「ギャギャ?」

    「アインよ、新たな命令を下す。
     そこの騒音女と『協力』して、勇者を粛清せよ」

    「ギャーン!?」

     何故? という疑問がアインの脳裏を駆け巡った。
     勇者と騒音女、同時に相手したっていいのに。
     どうして二人がかりで勇者に挑まなくてはならないのか。

     だが、命令は絶対だ。下された命令を遂行できないなど、兵器失格だからだ。

     ふと、ハーゲンと目があった。
     その眼が、どこか同情を感じさせる目つきが、アインにはたまらなく不愉快だった。

  • 315◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 00:27:29

    投下を終了します

  • 316二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 02:26:52

    乙です、え?つまりこの三人が来るってコトですか...?恐ろしいね
    そして積み上げられた爆薬が今までよく着火しなかったと思うあにまん市

  • 317二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 09:24:00

    このレスは削除されています

  • 318二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 10:16:35

    キャラが濃すぎる……!

  • 319二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 11:09:55

    戦車と暗黒金持ちと言う明らかな鉄砲玉要員
    デスグラシアはヘイトの向け方が異常だけど品定め自体は割と当たってるのが何とも…

  • 320二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 12:22:21

    勇者のスペック的に最上位クラスの魔法少女✖️2でも秒殺だろうと思って居たら、なるほど過去編か…
    確かにバトロワ中ずっと雑魚狩りしてどんどん強くなっていったらしいし過去なら試合が成立するのか

  • 321二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 20:47:57

    冒涜の竜関係やマンションの脅威はもう何度か見たので、勇者やアリアという新しいタイプの強敵は新鮮なのでめっちゃ嬉しい
    始まりの魔法少女や冒涜の竜本体を上回るようなラスボスになってくれるといいねえ

  • 322◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 22:12:04

    投下します

  • 323◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 22:23:16

     マチェットを構え、デスグラシアはボートから島へと飛び移った。

     そして、ベネチアンマスク越しに不法侵入者たちを睨みつける。

    (一、二、三、四、五……多いデース)

     デスグラシアは10代のころ、ティターニアやスピードランサーと何度も激突した古強者である。最終的にあにまん市を追い出されることになったが、「怪人デスグラシア」の名は、今も都市伝説としてあにまん市に残っている。

    (魔法少女は、相性バトル。故に、複数の魔法少女を相手にすることは危険デース!
     だけど……)

     この島は、柏木家が所有している土地である。
     この魔法少女たちは、そこに不法侵入している。
     更には、ナチスの恰好までしている。

    (ナチスに好き勝手されるなんておかしいデース! 理不尽デース!
     理不尽は、正さないと)

  • 324◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 22:35:46

     デスグラシアは想像する。
     きっとこの魔法少女たちは今まで何の不自由も無く育ってきたのだろう。幼い頃に親を無くした自分と違い、ぬくぬくと一日三食プリンでも食べていたに違いない。ナチスのコスプレだって親におねだりして買って貰ったに違いない。どうせナチスの歴史なんてものYouTubeのショート動画で学んだのだ。デスグラシアが学生の頃はそんな便利なものなくて、教科書を読むしか無かったのに。令和キッズマジで許せん。デスグラシアの島に侵入したのもきっと思い出作りに違いない。ウチらの友情永久不滅☆とかそんなノリだ。みんなでプロフィール帳とか回しているのだろうか? 自分が子どもの時は、あにまん市の民度がゴミなのもあって誰もデスグラシアと仲良くしてくれなかった。何も悪くないのに灰色の青春生活だった。喋りかけてきた有象無象は居たがブスが愚図しかいなかった。それなのにこの五人組は無人島に探検に行く青春を送っているのだ。みんなでナチスごっこをしながら。デスグラシアの方がこいつらよりよっぽど苦労してきたしずっと努力してきたし親が居ない逆境を乗り越えてきたし魔法少女として研鑽もしてきた。今も自分は正論しか言ってない。自分の所有する土地に勝手に入らないで欲しいなんてのは人類に与えられた固有の権利のはずだ。こいつらはそれを踏みにじった。デスグラシアの当たり前で真摯な願いを平気で蹂躙する、きっと己の快不快のみで行動する半グレみたいな価値観なのだ、switchの転売で小遣い稼ぎもしているのかもしれない。許せない、許せない、許せない、そんな理不尽があっていいだろうか。いつだって自分が正しいのに、こういう奴のせいで人生が狂ってしまったのだ。ずっと不幸な目に遭ってきたのだ。こいつらさえ生まれて来なければ、もっと幸福な人生を送れたのに。正されるべきだ、正すべきだ、その力をデスグラシアは持っている。

  • 325二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 22:40:51

    このレスは削除されています

  • 326◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 22:51:45

    「ギャー! アリア様の命令は聞こえていたか。マスクの魔法少女よ、お前は私と協力して、勇者を粛清するのだ!」

     アリアの呼びかけに対して、デスグラシアは言葉を返した。

    「——黙れ。お前たちはもう喋るな、デス。」

     心の底からの憎悪を込めた重力さえ感じさせる言葉。
     額に青筋を浮かべ、漆黒の瞳をデスグラシアはその場の全員に向けた。

    「お前たちは、存在してはいけない生き物デス」

     まるで家族の仇でも討つかのように、あるいは此処まで数多くの仲間が犠牲になったかのように。
     今のデスグラシアは復讐者だった。

    「んん? 何だ貴様? 吾輩、貴様の故郷の村燃やしたりしたか?
     どうせ打製石器しか使ってなかったような村なんだろうし、気にするな」

     アリアの挑発なのか素なのか不明瞭な言葉にも、デスグラシアは敏感に反応した。

    「だせいせっき……? お前、小学生のとき私がペンケースを可愛くないって言われて深く傷ついたことをどうして知っているのデスか? まさか、その時からずっと嫌がらせをしていたんデスね……? 許せねぇデス……今まで何を考えて私に粘着して来たんデスか……本当に気持ち悪いデス……人類史上、ここまで不幸な人間は私デス……」

    「いや、吾輩そんなの知らんし」

  • 327◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:00:48

    「DEAーTH!!」

     寄生を発し、デスグラシアはアリアへと飛び掛かった。
     その俊敏さは、その場に居た五人の魔法少女を瞠目させるほどの速さだった。

     並の魔法少女ではない。
     仮にかつてハーゲンやアリアと同時代に生まれ、同じ戦場に立っていたとしても、確実に名前を遺したであろう逸材。

     その速さに割り込む影が、一つ。
     Uボートから飛び出した、小柄な影。
     革ベルトに革靴。中世ヨーロッパ風のチュニックに白いマント。手に持つのは、重厚な黄金の大剣。
     それは、日本国民の「勇者」のパブリックイメージを形にしたような存在だった。

     白衣の少女に迫るマチェットの刃を、当然のように「勇者」は受け止めた。

  • 328◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:37:46

     斬ッと、勇者は大剣ごと縦に真っ二つにされた。

     怒りを魔力に変えるのがデスグラシアの魔法。
     通常の精神構造ならば、使いこなすことは難しい。例え戦闘を日常とする魔法少女でも、常に相手に激怒しているはずがない。むしろ戦闘慣れすればするほど、怒りは出にくくなる。

     だが、デスグラシアはちょっとした不快感から家族の仇レベルまで怒ることが出来る、特異な精神構造をしている。

     客観的に見ればこの戦いは何の因縁も無い遭遇戦に過ぎないが、既にデスグラシアの脳裏では物語の最終盤、因縁の相手との最終決戦くらいのテンションである。

     二つに分かれた勇者に目も暮れず、デスグラシアはマチェットをアリアに振るう。

    「速いが——動きは素人だな」

     砂浜を蹴り、アリアはマチェットの振り下ろしを回避する。
     振り下ろされたマチェットは——砂を天へと巻き上げ、斬撃は森林部にまで到達する。
     異常な威力。
     全ての攻撃が一撃必殺。怒りの化身、デスグラシア。

    「ギャギャッー!」

     ——その程度の存在に、アインは臆さない。
     アインの肩に、砲塔が出現する。
     
    「Ziel erfasst(照準完了)」

    「Laden(装填)」

    「——Feuer(発射)」

     轟音が、島全体を揺らした。

  • 329◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:49:59

     ビーチは消失している。
     地形さえ変化させるアインの火力攻撃。
     変身前と変身後で、身体能力は10倍程度変化する。
     ならば巨大戦車が変身した魔法少女の火力とは、いったいどれ程のものになるのか。
     
     両脇にナイナイホテプとフロストハウンドを抱え、ハーゲンは砂塵の中に立つアインを見ていた。

    「さらばだ、戦友よ」

     そう言って、ハーゲンはUボートの中に跳び戻る。

     島に残されたのは、大破壊をもたらした魔法少女、アイン。
     そして。

    「私に向かって砲撃するなんて——人の心とか無いんデスか?」

     全身から煙をあげながらも、更に怒り(魔力)を募らせていくデスグラシア。

     そして——。

  • 330◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:50:09

    「まほう」

    「『怪我の治りがすごく早いよ』」

     五体満足で立つ勇者。

     当然のことだが、改めアインとデスグラシアは認識した。

     この島を出れるのは、たった一人。それは自分だと。

    (まるで、バトル・ロワイアルだね)

     と、森林に身を潜めながらトリックスターは思考した。

    (いい加減、そろそろ迎えを寄越して欲しいなぁ、ミネルヴァ様)

  • 331◆xaazwm17IRZa25/06/08(日) 23:50:22

    投下を終了します

  • 332二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 00:34:53

    お疲れ様です
    全員キャラが濃すぎて凄い

  • 333二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 07:54:58

    急な怪文書にビビった
    冷静そうなのにイカれてやがる…

  • 334二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 07:55:05

    こいつらがバトロワに居なくてよかった…

  • 335二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 14:59:05

    ああああに見せてオオカワウソとどっちがマシか聞いてみたい存在だなデスグラシア

  • 336二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 22:22:52

    保守

  • 337二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 01:20:36

    このレスは削除されています

  • 338二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 07:51:30

    この面子が参加してたらヤバかったな…

  • 339二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 16:05:56

    保守

  • 340二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 19:53:48

    根っこの誇り高い武人だった感じが隠せてないハーゲンちゃん好きよ

    実はアインちゃんみたいにハーゲンちゃんも最終回時点だとスピードランサー姉貴以外だとほぼ誰も勝てないぐらい強かったのかしら

  • 341二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 23:10:30

    言い方変えればデスグラシアはメンタルコントロールが恐ろしい程上手いね
    出力方法がヤバいだけで

  • 342二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 07:45:19

    このレスは削除されています

  • 343二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 07:45:19

    保守

  • 344二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 14:53:38

    保守

  • 345◆xaazwm17IRZa25/06/11(水) 22:29:58

    投下します

  • 346◆xaazwm17IRZa25/06/11(水) 22:36:29

     Uボートの内部。シートに腰を預けながら、トート・アリアはモニターを注視していた。
     空中を飛び回るドローンが、三人の魔法少女の戦闘を、リアルタイムでアリアに届ける。

    「でもアリア様、アインを切り捨てて良かったんですか? 確かパラサイトドールと戦うときの切り札にするって言ってませんでした?」

     フロストハウンドの言葉に、アリアは微笑を浮かべた。

    「兵器というのは型落ちする。一次大戦で猛威を振るった戦車を二次大戦に持ち込んでも、役には立たない。
     より優れた兵器が生まれた段階で、旧式は用済みになる」

    「こ、怖いのら。私は用済みにされたくないのら」

    「恐れることは無い、ナイナイホテプ。常に進化を続ける限り、お前が廃棄されることはない」

     アリアの言葉に安心したのか、ナイナイホテプは安堵の息を吐いた。

     

  • 347二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 23:24:36

    アイン、カワイソス…

  • 348◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:32:14

    「ギャギャギャー! 再生するタイプの魔法少女かー!」

     アインは獰猛に笑った。
     その程度、珍しくもないと言いたげに。

    「再生……何それ? それって私の攻撃が無意味ってことデスかー?
     つまり、私の人生を無意味だって侮辱したんデスね?
     ——吐き気を催す邪悪とはお前のことデース」

     デスグラシアは不幸で脳を満たしながら、怒りの言葉を吐く。

     勇者は、無機質な瞳で二体の敵モンスターを捉えていた。

     

  • 349◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:38:59

     魔法少女戦には幾つかのセオリーがある。
     相手が魔法を発動する前に倒す、というセオリー。
     同時に、相手の魔法を掴むまでは慎重に戦いを進める、というセオリーもある。

     魔法の規模、対象、性質、付随効果。
     
     十人十色、一人一人が世界観さえ違う魔法少女において、相手の魔法を決めつけるのは敗北に繋がる道だ。
     しかし、上級者同士の戦いになれば、自身の魔法を誤認させるテクニックも交えだす。

     デスグラシアもアインも、魔法少女のベテラン中のベテラン。
     アインは蓄積された経験知から、デスグラシアも積もり積もった負の記憶から。
     この場の最適解を導き出す。

  • 350◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:48:05

     ——両者は、魔法少女戦のプロだった。
     故に、気づけない。
     
     この戦いは、ルールそのものが異なるのだと。

    「まほう」

    「『箒に乗って空を飛べるよ』」

     次の瞬間、勇者は箒に跨り、上空へと昇っていた。
     アインもデスグラシアも呆気に取られる。

     再生能力を軸とした魔法少女だと、二人は分析していた。
     剣を装備していることから、再生力を生かしたごり押し肉弾戦タイプ。

    「まさかアリア様……一人の魔法少女に二つの魔法を備えたんですか……?」

     ぎゃぎゃーん、とアインは唸った。

    「何それ……? もう一人隠れているに決まっているデース。
     お前たちはそうやっていつも大勢で一人の私を虐げようとする。多数決という愚者が創り出した発明を利用してこの世の不幸を生産し、私を不幸にしようと――」

     呪詛を垂れ流し始めたデスグラシアは、同時に姿を隠した魔法少女が勇者のコスプレをした魔法少女をサポートしていると、名推理(ひがいもうそう)を展開していた。

     

  • 351◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:50:39

     みるみるうちに高度を上げた勇者は、二体を見下ろす。

     ——この戦いは、魔法少女戦ではない。

    「まほう」

    「『マジカル・ストラッシュ』」

     空から熱線が降り注いだ。

  • 352◆xaazwm17IRZa25/06/12(木) 00:52:27

    投下を終了します

    ちなみにデスグラシアに対する魔法少女の反応

    ティターニア、スピードランサー、デッドマンズハンド
    「「「うわでた」」」

    ああああ(もし遭遇していたら)
    「増えない分こっちのがマシ」

  • 353二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 07:49:38

    反応からして恐怖よりも面倒臭さが勝ってるじゃねぇーか!

  • 354二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 09:16:25

    まあ何言っても地雷踏む面倒臭いやつだし…

  • 355二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 10:02:02

    バトロワが始まる以前から目をつけてた魔法を使えるようにしていたのか

  • 356二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 18:35:04

    保守

  • 357二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 20:30:54

    魔法少女同士の戦いではなく処刑もとい実験

  • 358二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 00:05:38

    試運転とも言う…

  • 359二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 07:48:55

    型落ちではあるけど優秀な兵器だし次なる兵器の予行練習に使うのは
    流石再利用大好きなアリアさんですな

  • 360二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 14:34:10

    保守

  • 361二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 21:51:22

    保守

  • 362二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 22:00:39

    魔法少女と竜の戦いが全ての始まりの物語で、ラスボス候補の正体が魔法少女と竜のハイブリッド体っぽいのはかなーり面白いね(前作の『鬼の心臓』との対比的な意味でも

  • 363二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 01:08:17

    やっぱり

  • 364二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 08:59:14

    保守

  • 365◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 10:38:15

    投下します

  • 366◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 10:45:25

     空から降り注ぐ、マジカルストラッシュ。

     普段のアイン、デスグラシアならば撃たせない様に立ち振る舞った。
     だが、相手はティターニアとは似ても似つかない勇者風魔法少女。
     マジカルストラッシュを撃ってくる、という発想が二人には無かった。

     アインは、砲塔を天へ掲げた。

    「ギャギャギャー! そんな攻撃、私の砲弾で消し飛ばしてやる!」

     一方、デスグラシアは大地を強く蹴り、その場から離脱を選択した。

    「ティターニア! 変装して私を騙したデース! 卑怯! 下劣! 最低!」

     二人の魔法少女は、危機を前に取れる手段を選択する。
     負ける、死ぬ、そんな発想は彼女たちには無い。
     この後の戦闘プランを脳内で構築し、マジカルストラッシュを迎え撃つ。

  • 367◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 10:52:29

     アインの砲塔が傾いた。

     デスグラシアの足がもつれた。

    「「は?」」

     二人の困惑の声が重なる。

     絡みついているのは、糸である。
     魔力で編まれた糸が、両者を拘束している。

    「まほう」
    「『糸を出せるよ』」

     魔法少女は、得意な魔法を一つ習得し、それを磨く生態をしている。
     勇者にとっては——魔法とは、多様な攻撃手段の一つに過ぎず、状況に応じて複数の魔法から一つを選択して発動するものである。

     世界観が違う。戦闘システムが違う。
     その事実に、ようやく二人は気づいた。

     糸の拘束は二人が渾身の力を込めれば破ることが出来た。
     だが、糸から脱出した二人に、マジカルストラッシュに対応できる時間は残っていなかった。

     光の奔流が、二人を包んだ。

  • 368◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 10:58:06

    「あ……ああ……」

     魔力を消し飛ばされ、鉄屑に還っていくアイン。
     彼女の胸中を覆うのは、深い悲しみ。

     勇者を粛清せよ、とアリアから任務を受けていた。
     その任務を果たせず、アインはここで消える。

    「アリア様……申し訳ありません……やっぱり私は……役立たずでした……」

     そう言った瞬間、アインの身体は魔法少女から鉄錆だらけの戦車へと戻り——それもまた、光の中で溶けた。

    【アイン 死亡】

  • 369◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:02:55

     デスグラシアもまた、光の中で自らの身体が溶けていくのを感じていた。

     怒りは、湧かなかった。

    「——ああ、そういうことデスか」

     怪人デスグラシア。これまで何度も敗北しながらも、捕まることもなく、殺されることもなく生き残ってきたのは、敗北の危機に際し、怒りを増幅。危機を脱してきたからだ。

     だが、今回は違った。
     自らを殺そうとしている偽ティターニアに、怒りは湧いてこない。

    「——可哀そうに」

     デスグラシアは、勇者を哀れんだ。
     それが、彼女の最後の思考だった。

    【デスグラシア 死亡】

  • 370◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:07:53

     Uボートに帰還した勇者は、拍手で出迎えられた。

     アリア、ナイナイホテプ、フロストハウンド。
     凄い性能なのら、中々やるじゃないと称えられても、勇者の顔に変化は無い。

    「ふむ、そろそろか」

     と、アリアが言った瞬間――勇者は倒れた。

    「え、死んだのら!?」

    「魔力切れだよ……ふむ、燃費が今後の課題か……『本番』までに引き続きレベル上げが必要になってくるな」

     勇者の状態をチェックしながらアリアは言う。

     腕を組んだハーゲンは、勇者に冷たい視線を投げかけていた。

    「それにしても不思議なのら? 魔法少女アインは、どうして重力を操る魔法を使わなかったのら? 使う暇が無かった?」

  • 371◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:16:03

    「使わないのではない――使えないのだ」

     勇者のチェックを行いながら、アリアは言葉を続ける。

    「魔法少女になった当初は、彼女は周囲の重力さえコントロールできた。だが、ここ数年程は、自分の身体を軽くすることしか出来なかった」

    「ど、どうしてなのら?」

    「老い、だよ」

     アリアは淡々と言葉を紡ぐ。
     
    「元々は無機物でありながら、彼女は——老いていた。軍人然とした人格は徐々に幼稚になり、奇怪な行動も増えていた。性能も徐々に劣化していたのだ」

    「元々は、戦車なのに?」

    「人間の姿になったことで、人間と同じような宿業を背負ったのか。あるいは、アインだけが突然変異の病だったのか。今となっては分からんな」

     もう興味も無い、とアリアは宣言した。

     そして、勇者の身体にワイヤーを突き立て、調整を開始する。

  • 372◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:20:48

     不思議だ、とハーゲンは思う。
     アインの身に起きた不幸、ではなく。
     アリアの言動に対して。

     無機物発祥でありながら、老いていたアイン。
     そんな興味深い存在を、トート・アリアが無視するはずがない。
     勇者相手に使い潰さず、アインが摩耗しきるまで収容、観察を続けるはずだ。

     任務を与えて、戦死させるなど、まるで。

    (兵器として最後の役目を与えたみたいじゃないか……)

     考え過ぎなのだろう、とハーゲンは頭を振った。
     そして、獰猛な戦士として、来る儀式への戦意を高めるのだった。

  • 373◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:29:43

    「そうですか……逃げられたのなら何よりです。
     転移魔法陣が遅い?
     無理を言わないで。私だって、極秘に動いているのですから」

     そう言って、美しい銀髪の老婦人は掌の魔法陣を消失させる。

     彼女の名は、ミネルヴァ・ミストリル。
     元魔法少女にして、今は魔法王の妃である。

    「しかし、勇者ですか……。
     かつて魔法国を救った者が、今度は私たちの敵に回るなんてねぇ」

     これも因果かしら、とミネルヴァは肩を落とす。

     ミネルヴァの魔法、『計算が得意だよ』。
     これによりミネルヴァはある程度の未来予知を可能にしており、トート・アリア一派が魔法国に脅威をもたらすことを予測していた。

    「きっと――私たちは負けるのでしょうね」

     今の勇者程度なら、魔法国最強戦力、アグネアが容易く焼き尽くせるのだろう。
     だが、脅威はアリアたちだけではない。
     自分たちは負ける。そして凄惨な最期を遂げる、とミネルヴァは予測していた。

     それを回避する手段は、無い。
     ミネルヴァには、計算できない。
     

  • 374◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:35:54

    「けれど――視ましたね、『ビリーバー』」

     と、ミネルヴァは一人の魔法少女の名を呼んだ。

     今の自分より過去に居る魔法少女に向けて。一度も会ったことのない彼女に向けて。

    「後は、あなたの好きにやりなさい。期待していますよ」

     返答は無い。一方通行の言葉。
     ミネルヴァは届いたと確信していた。

     数日後、魔法国の中枢はパラサイトドールに乗っ取られることとなる。
     そして——バトル・ロワイアルが始まる。

  • 375◆xaazwm17IRZa25/06/14(土) 11:36:08

    投下を終了します

  • 376二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 14:38:59

    お疲れ様です
    今まで皆目分からなかったアリアちゃんの内面とか目的がちょっとずつ分かってきたような…?

  • 377二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 16:55:08

    ひょっとして単純に自分含めて幕を下ろしたいのか全方向ヘイトナチス

  • 378二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 18:15:57

    もしかしてアグネアってバトロワ参加者の四強より遥かに強かったりするんですか…?

  • 379二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 22:17:06

    トリックスターに与えられた任務は単純にアリア達というか魔法国に仇なす輩の偵察、でいいのかな?

  • 380二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 01:07:19

    元が無機物の魔法少女は通常の老いとは正反対の劣化(幼稚化)が起きる…?

  • 381二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 08:08:35

    ベホマ、クモノ、ギガデインを習得している勇者
    技術と魔法の両方が揃ってないとただの一発芸になっちゃうブレイズドラゴンの必殺技も使えるあたり技量も最強クラスか

  • 382二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 13:08:58

    通常の魔法少女と違って最初から性能が完成しているのは強い
    それからは劣化する一方なのは兵器であり、物としての宿命か…

  • 383◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 16:33:17

     投下します

  • 384二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 16:41:18

    マジカルストラッシュって魔力回収効果なかったっけ?
    それでも一発撃っただけで魔力尽きちゃうんだ

  • 385◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 16:46:47

     傷は、回復している。
     体内に意識を巡らし、スピードランサーはそう結論づける。
     マジックアイテム『回復促進剤』を服用したのが効いているのだろう。
     それに伴い、魔力も僅かながら回復し始めている。
     
    (しかし、アニー・アーマン邸……幽霊屋敷ねぇ)

     人は死ぬとどうなるのか。スピードランサーは知らない。
     幽霊のような性質を持つエネミーは何度も倒したことはあるが、それらが本物の幽霊だとは思っていない。

     今からスピードランサーが向かうのは幽霊屋敷として有名なアーマン邸だ。
     ——死んでいった者が、化けて出たりするのだろうか。

    (なんて——都合が良すぎるだろう)

     それは、甘えだ。
     人殺しという事実を軽くするために生み出した方便だ。

     幽霊として会いに来るかも、なんて考えるのは、卑怯な殺人者である自分を甘やかすための思考に過ぎない。

  • 386◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:00:07

    「何をぼっーとしてるの?」

     と、前を歩いていた水着の魔法少女——ジェイルフィッシュに声をかけられる。

    「時間が押しているの」

    「ん、ああ、悪いな」

     ジェイルフィッシュは不満そうに鼻を鳴らした。
     苛立っている。殺し合いという渦中に居るのだから無理もない。
     発狂していないだけマシだろう。

    (どいつもこいつも、大したもんだぜ)

     無言を貫く魔法少女、バーストハートもまた、スピードランサーに視線を向ける。
     彼女が何を考えているのか、スピードランサーには察することが出来ない。

  • 387◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:00:20

     元々、人の感情の機微に敏いわけではない。
     今この場に居るということは、優勝狙いではなく、脱出狙いだと仮定できるくらいだ。

     このメンバーで一番強いのは、自分だ。
     驕りや慢心ではなく、事実としてスピードランサーは認識する。
     
     アーマン邸で待ち受けている刺客の相手も、自分がやる。
     その後の魔法王ないし運営陣との戦いも、自分がやる。

     ——皆殺しにする。
     それが、大人としての責務なのだろう。
     生き残ってしまったスピードランサーの責任なのだろう。

     だから。

     ――ぞくり、とスピードランサーの背筋が泡立った。
     

  • 388◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:03:12

     勇者は、落下していた。
     意志を感じさせない無機質な瞳で地上を見下ろし、重力に従ってアーマン邸に向けて落ちていく。

     その手には黄金の大剣が握られていた。
     勇者は大剣を振り上げた。光が収束する。

    「まほう」
    「『マジカル・ストラッシュ』」

     天から地へ、光が発射され、アーマン邸とその周囲一帯を呑み込んだ。

  • 389◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:09:16

     何が起ったのか、ジェイルフィッシュは分からなかった。
     突如、自分が恐ろしい力で引っ張られていることに気づいた。
     それも恐ろしい速度で。

     そのパワーと速度に、ジェイルフィッシュは成す術が無い。
     解決策を発見する前に、ジェイルフィッシュは大地に転がされていた。

     痛みはそれほど無い。叩きつけられたというより、移動させられたという感覚が近かった。
     振り返ると、赤い槍が粒子化していく途中だった。

    (アレで私を移動させた? ということは)

     スピードランサーの魔法によるもの。
     その目的は、自分たちの避難。
     ジェイルフィッシュはそこまで推察する。

  • 390◆xaazwm17IRZa25/06/15(日) 17:57:22

    投下を中断します

  • 391二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 18:00:41

    本当に勝ち目ない敵が出てきちゃった…
    勇者の仮想敵はアリアの設定的にほぼ確でバトロワの維持をやめて本気出した天上パラサイトドールだろうし…

    本気パラサイトドール(天上無し)は「ティターニアを腕を適当に振り払っただけで肉塊に変えた」とか書いてあるし、スピードランサー居ても適当に秒殺されちゃうぞ

  • 392二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 18:02:04

    スピードランサーちゃんずーーーっと自分を卑怯者扱いしててライナーみたくなってきたな

  • 393二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 19:01:03

    もしかして魔法陣ごと消滅してる?
    なんか防衛に当ててる人員も適当なのしか居ないし本命は別にあったり?

  • 394二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 19:32:29

    天上には天上の攻撃しか通じないから逃げるしかないんじゃ?

  • 395二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 21:42:18

    >>392

    あのライナーかて報われたし、スピードランサーの姉貴もエンディングで盛大に救われてるの見たいですな

    親友も幼馴染も助けられず、洗脳状態で幼馴染の弟子と罪のない魔法少女殺しちゃった姉貴が十字架背負いすぎてる

  • 396二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 23:52:37

    「『マジカル・ストラッシュ』」の所
    何となく機械音声っぽさがある

  • 397二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 06:33:43

    保守

  • 398二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 07:43:34

    保守

  • 399二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 12:53:21

    スピードランサーさん、ティターニアさん相手にビームを全部避けてしまうからほぼ意味をなさないのでほぼ勝ち確らしいし相性は良いな
    足手纏いがいるからどうなるか分かんないけど

  • 400二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 16:39:49

    ブレイズドラゴンの必殺技が使えるということは他にも『気を読む』魔法で攻撃先読みとか気配探知も色々できちゃうのか

  • 401二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 17:54:07

    >>400

    ブレイズドラゴンの『絶招』は必殺技の中では別にそこまでな性能だし(マジカルストラッシュが使えるなら尚更)、ピンポイントじゃなくて『気を使えるよ』の全部を習得してるだろうね

    ブレイズドラゴンが自分の魔法の情報をあちこちにばら撒いてる設定らしいし再現は容易だろうな

  • 402二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 23:14:38

    保守

  • 403二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 23:37:31

    マジカルストラッシュみたいな魔力補充だったりビームだったりじゃないぶんまだ有情なんだけど、溜めとか予備動作してる描写が無いのが一番厄介ポイントなのかも

  • 404二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 06:34:10

    保守

  • 405二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 07:44:33

    保守

  • 406二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 15:00:50

    保守

  • 407二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 15:23:12

    ある程度の知名度や有用性のある魔法少女の魔法を習得させているのかな?
    ということは、ティターニアと完全に互角の実力者で一緒に暴れ回ってたらしいのに何故か知名度皆無のスピードランサーや、魔法少女になって日が浅いブラックブレイドみたいなタイプの魔法は習得できてなさそうなのが盲点か

    でも逆にスピードランサーが苦手なクライオニクスや、アグネアの魔法を洗脳されてない状態で使えそうなのが怖い(特にアグネアはアリアが直接脳味噌弄ってるんだから理由が無ければ勇者に習得させてないってことはまずあり得ない

  • 408二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 16:56:50

    そういえばドミナートルで既に他の魔法少女の固有魔法を使わせる技術が出てきてるし伏線として違和感ないね。アリアちゃんの技術力がやたら高いの、往年のファンタジー系アニメに登場する異端科学者キャラみたいで好きなので嬉しい

    マヒャドモチーフでクライオニクスの氷魔法使うかな?

  • 409二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 23:32:49

    保守

  • 410二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 23:33:48

    >>403

    コピー&ペーストで使っている感じがするよね

  • 411二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 06:40:50

    保守

  • 412二次元好きの匿名さん25/06/18(水) 07:49:13

    保守

スレッドは6/18 17:49頃に落ちます

オススメ

レス投稿

1.アンカーはレス番号をクリックで自動入力できます。
2.誹謗中傷・暴言・煽り・スレッドと無関係な投稿は削除・規制対象です。
 他サイト・特定個人への中傷・暴言は禁止です。
※規約違反は各レスの『報告』からお知らせください。削除依頼は『お問い合わせ』からお願いします。
3.二次創作画像は、作者本人でない場合は必ずURLで貼ってください。サムネとリンク先が表示されます。
4.巻き添え規制を受けている方や荒らしを反省した方はお問い合わせから連絡をください。