【閲覧注意】ここだけ、黒見セリカ(プレ先世界出身)最強概念のお話

  • 1二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:12:31
    【閲覧注意】黒見セリカ(プレ先世界出身)最強概念|あにまん掲示板bbs.animanch.com

    このスレで語られてた概念なんですけど、続きが見たかったので書きました

    生徒死んじゃうから嫌な人はブラウザバックしてね

  • 2二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:12:43

     キヴォトスは滅んだ。

     アビドス砂漠で遭難し、私を助けてくれたスケバンたちの手助けをしながら、私はただ滅びを見ている事しか出来なかった。
     ブラックマーケットを転々とし、かつて三大校と呼ばれていた学校を抜け、掛け替えのない犠牲を払い、私はアビドス校舎へと帰ることが出来た。
     けれど、そこにはもう何も無かった――。



    「……あっ」

     昔々の、夢だった。
     まだ希望を抱けていた、まだ絶望していなかっただけの、酷く懐かしい夢だった。
     止めどなく溢れる涙を拭い、記憶に蓋をする。

     心は折れた。
     ――されど、今確かに生きている。
     希望など望めない。
     ――されど、目的こそはある。
     果て無き道のり道のりだ。
     ――けれど、終わりとは隣り合わせだ。

  • 3二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:13:00

    「ふうー……」

     顔を洗い、エナジーバーを齧り、武器を準備する。
     マガジンをチェストリグにしまい、防弾アーマーを身につける。
     四肢にプロテクターを取り付け、可能な限り全身が覆えるように保護する。
     取り回しに問題ないことを確認し、サブアームである拳銃をレッグホルスターにセットする。
     最後に消耗品であるフラッシュバンやインパクトグレネードを補充すれば完了だ。

    「……」

     割れた姿見で自身の姿を確認し、再度問題が無いか点検を行う。
     一瞬の油断が命取りなのだ。そんなヘマを、もう二度としない為に。

    「行ってきます……」

     返ってくることの無い言葉を溢しながら、セリカは空を見上げた。
     雲一つない灰色の晴天だ。

     空に浮かぶ光輪は砕け散り、まるで空を彩る星々のようになっていたが、セリカには見えない。
     ただどこまでも色の無い空だけがセリカを見下ろしているのだった。

  • 4二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:13:15

     元、ブラックマーケット。
     三大校が元の形を失い、連邦生徒会管轄のDU地区が消失したキヴォトスに置いて、かつての平和が有った場所など、今は何処にも存在していなかった。
     ブラックマーケットも変異した生徒たちによって半壊し、元の形など当に失われてはいた。
     しかし、生きている人間が交流するためのコミュニティが完全に潰えた訳では無かった。

    「カヨコさん、居る?」
    「……んぁあ、セリカ」

     とある廃墟のとある地下。
     入り組んだ迷路のような道を抜けた先で、タバコを咥えた女性が待っていた。
     カヨコが煙を吐き出すと、セリカは耳と鼻をぴくぴくと震わせて手で鼻を覆った。

    「あのさぁ……事前に連絡したわよねえ? なんで吸ってる訳? 私、苦手だって言ってるでしょ?」
    「いいでしょ、別に……丁度、これが最後の一本だったの」
    「私が来るたびにそう言ってるじゃない……!」
    「それで? 用件は?」

     くぐもった声で睨みつけるセリカを受け流すようにカヨコは問う。
     こうなったカヨコに幾ら言っても無駄なことを知っているセリカは不快感を滲ませながら用件を言った。

    「水と食料、後新しく武器が眠ってそうな場所の情報」
    「OK、糧食は何時もの場所に置いといてもらうから。それと武器庫か……」

  • 5二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:13:30

     ちょっと待ってと、タバコを灰皿の上に置いた後近くのファイルを漁り出した。
     数枚の紙を捲った後、その中の一枚をファイルから千切り取り、セリカに渡した。

    「はい、旧ミレニアムの地下にロボ製造が止まった施設があるみたいだから。多分、使えるはずだよ」
    「……あ、ありがと」

     嫌がらせか何なのか、タバコを拾い上げ立ち上る紫煙で紙を燻すようにしながら渡してくる。
     自然と眉が歪んで行くが、そっと飲み込んで紙を受け取った。

    「それじゃ、今日からゲヘナの方行くから、漁るんだったらトリニティ市街地にしてちょうだい」
    「了解、気を付けてね」
    「あんた達もね」

     ニヒルな笑顔をセリカに向け、カヨコは見送る。
     その姿、その気配、その足音が完全にこの場から消えたことを確認してから、深く、深く溜息を吐く。

    「……やっぱり、難しいよ。社長……」

     その呟きは誰にも聞かれていないし、聞かれてはならない。
     おおよそ善行と呼ばれる行いをしている彼女に聞かせてしまえば、きっと、もう壊れてしまうから。

     セリカの嫌がらせの為、外から見えない自傷行為の為のタバコはただ灰皿の中で燃え尽きていた。

  • 6二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:13:48

     元ゲヘナ自治区。
     かつては不良が気兼ねなしに爆破し、そこら辺りで銃撃の喧嘩が絶えず、風紀委員の部隊の足音が各地を走り回るよく言えば賑やかな、悪く言えば治安が最悪だった場所。

     今は人っ子一人の気配も無く、嫌な静寂だけが辺りを包んでいた。

    「あの時以来ね……」

     脳裏に苦い記憶が走りながら、セリカは周囲を探索していく。
     目に入った店舗の中に入ってみると、色の抜けたケーキが並んでいたりしていた。
     時が止まったかのように形を保つそれは確かに不気味だが、大切な食料には変わりなかった。

    「ケーキ、か……」

     甘い、とはどういうものだったっけ。
     朧気ながら数年前の記憶を遡っている途中で、セリカは床を蹴った。

     直後、セリカの居た場所に銃弾が通り抜ける。
     割れるガラスケース、飛び散るケーキらしきもの。
     セリカは近くにあった机をバリケードにし、物陰から銃声の方を見つめる。

     近づいて来る気配は無く、音も感じられない。
     十秒、二十秒と経過するが、次の銃声が響くことは無い。
     不審に思ったセリカだが、粘ついた何かが這いまわる音を聞き逃しはしなかった。

  • 7二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:14:05

    (――上ッ)

     銃口の先には、どす黒い粘液を纏わりつかせ触手を携えた円形の化け物がセリカを狙っていた。
     漏れ出そうになる悲鳴を噛み殺し、引き金を引く。
     が、全て滑っているのか有効打を与えた感触が無い。

    「ならっ!」

     こちらを絡め捕ってこようとする触手を避け、秘蔵のインパクトグレネードのピンを抜く。
     そして、円形の化け物と一気に距離を詰めた。

    (内部からぶっ壊せば!)

     見たところ、本体自体は柔らかそうな見た目をしている。
     謎の液体に腕を突っ込みたくはないが、長期戦に陥る方が不味そうだと悟る。
     そんなセリカの即断は――

     陰から響いた銃撃が許さなかった。

    「があっ!?」

     逃げ出そうとする円形の化け物と拳一つ分の距離まで詰めたところで、再びガラスケースの向かい側から銃弾が飛ぶ。
     今度は的確にセリカの手元――インパクトグレネードを狙い、炸裂する。
     円形の化け物にも幾らか破片が突き刺さったが、這いまわる様にしてセリカから距離を取る。
     セリカは右手がしばらく使い物にならないと悟り、頬に出来た傷を拭った。

     這いまわる円形の化け物は、ガラスケースを飛び越え銃声の下へと姿を暗ます。
     その姿が見えなくなった頃、代わりに一つの足音が此方に近づいてくるのが分かった。

  • 8二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:14:20

    「……チッ」
    「……」

     荒々しく伸びた二本の角。
     深紅の髪が毛先にかけて黒く染まっているロングヘア―。
     そして何より、後頭部で煌めく粉々の光。

     ヘイロー。
     よくよく観察せねばその違いを理解するのが難しい光輪。
     しかし、彼女の後頭部で光るそれは輪にすらなっておらず、まるで星空のように散り散りになっているのが一目でわかった。

     セリカはサッと周囲を見渡す。
     建物越しでも居るかどうかくらいなら、集中すれば判別がつく。
     凪払うように撃たれる銃弾を躱しバリケードに隠れながら、周囲に他のテラーが居ないことを察する。

    「……ふーっ」
    「……」

     右手を軽く振るが、まだ使えない。
     ならば左手で持ったARで戦えばいい。

  • 9二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:14:36

     テラー。
     恐怖や動揺。
     本当はゾンビとでも呼称しようかと思っていたが、腐っても居なければあちらから積極的に襲ってくるわけでもない。
     ただ死んでいない生徒を見つけると、仲間になるか見失うまで攻撃してくる……やっぱり、ゾンビみたいな行動をとる。

    「ごめんなさい」
    「……」

     でも、決して彼女らは仲間を作れない。
     殺すか、見逃すか……それしか、彼女たちは選べない。

    「そんな体になってまで、動かして、生き永らえさせて……ごめんなさい」
    「……」

     では、何故彼女たちは生まれたのか。

    「私を、シロコ先輩を、幾ら恨んでもいい……」

     かつて、生きていた者たちの証言が、証拠が、一つの残酷な真実へと導いた。
     砂狼シロコが殺した生徒たちが生き返り、キヴォトスを崩壊させたのだと。

    「だから……」

     セリカはバリケードから飛び出し、銃口をテラーに向ける。

    「もう、眠って頂戴」
    「……」

  • 10二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:15:10

     テラーは何も喋らない。
     彼女たちが返すのは銃弾の雨霰だ。
     その場から飛びあがり銃弾を躱し、回転しながらテラーの顔面目掛けて引き金を引く。
     だが円形の化け物が死守するかのようにテラーの顔面に張り付く。

     けれども、あれでは此方の動きは分からないだろう。
     数瞬気を抜いたセリカは化け物によって視界が塞がれている筈のテラーと目が合ったような気がした。

     すぐさま天井を蹴り物陰に隠れる。
     机をなぎ倒しながら、へこんだプロテクター越しに震える右腕を睨みながら臍噛む。

    (右手で守んなきゃ、目を潰されてたわね……)

     戦闘不能ではないが致命傷だ。
     しかし後悔ばかりしていられない。

     こちらに近づくテラー目掛けフラッシュバンを転がし、すぐさま動けるよう体制を低くする。
     目が見えているのであれば効くはずだし、その間に音を消して背後に回れば封殺も可能だ。

     地形に意識を回し、スタートピストル代わりのフラッシュが焚かれる。
     四つん這いの形で壁面に飛び、テラーの背後にまわっ――
    「がはっ!?」

     全身に衝撃が走る。
     体に当たった銃弾は防弾アーマーで止められたが、プロテクターの付けられていない腕の肉が抉られている。
     衝撃のまま店外まで転がされると、未だ顔面に化け物を張り付けたままのテラーが銃を構えながら歩み寄る。

     痛みで怯みそうになる体を奮い立たせ、一気に距離を詰める。

    (長期戦は無理! なら!)

  • 11二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:15:24

     銃口に従い回避し、ドロップキックで店内に押し返す。
     ガラスケースにぶち当たり、仰け反った反動で化け物が顔から剥がれ落ちる。

    「てっりゃあああ!」

     その隙を逃さず、ARの銃身で叩き飛ばす。
     テラーからの反撃を警戒したが、テラーは化け物の方に気を取られているようだった。

    「終わりよ」

     銃口を額に向け、フルマガジンを一回で叩き込む。
     どれだけ強靭なテラーも全くの無傷とはいかない一斉射。
     ほんの数分気絶させれば、こちらの勝ちなのだ。

     かくして、想定通りにテラーを気絶させることに成功した。
     後はこれを始末するだけ――。

    「おっと」

     死角から飛び掛かってきた円形の化け物を左手で迎撃する。
     案の定、ぬめりとした嫌な感覚が手に伝わるが、ここで逃がす訳にもいかない。

    「ばいばい……」

     化け物の中にグレネードを残してピンと共に手を抜く。
     空中で錐揉みする化け物は内部から爆発し、その黒い粘液を店内へぶちまけた。

    「……甘い」

  • 12二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:15:38

     僅かに口に入ってしまった粘液に、セリカはそう言葉を漏らす。
     だが、意味に反して、セリカの顔は苦渋に染まっていた。

  • 13二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:15:54

     店が、燃えている。
     多くの生徒を幸せにしたであろうその店は、まだ壊れたくないと泣くように崩れながら燃えていた。

     あの中心に、テラーは居る。
     四肢関節に刃物を突き刺され、目覚めたとて身動き一つ取れぬまま燃えつきるのだ。

    「……」

     セリカはただその光景を眺めていた。

     燃える家屋の中で僅かに悶えるその陰を。
     己が責任であるかのように、決して感情が表に出ぬように。

     ただ、死んでいく生徒を見ていたのだ。

  • 14二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:16:10

    「……帰ろ」

     酷く心が疲弊した。
     いつもであれば、何人かのテラーを薙ぎ払い。
     銃殺し、殴殺し、刺殺し、爆殺していたというのに。

     恐らく、戦闘では無かったからだろう。
     なぶり殺すのと、目の前でただ死を待つのではかなりの落差がある。

     きっと、それに耐えられなかったのだ。

    「……何を悲しんでいるのよ、殺人者の癖して」

     そう吐き捨て、気持ちを無理矢理切り替えようとした。
     その時だった。

    「――えっ?」

     不意に、空中に落とされた。
     景色が一瞬にして暗くなり、浮遊感から落ちているのだと察した。

    「こんなも、なっ!?」

     左手で速度を落とそうと壁を殴りつけるが、ビクともしない。
     否、届いていないのだ。拳と壁に見えない薄い板があるかのように手前で停止している。

    「なに、がっ……」

     浮遊感に包まれながら、セリカの意識はそこで落ちた。
     するりと、世界から零れ落ちたまま。

  • 15二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:16:24

     命からがらアビドスに戻った私を待ってくれる人は、誰一人いなかった。
     ただ無情な記録だけが、遅きに失した私を攻め立てていた。

     攫われ、行方不明になった私のせいで、ノノミ先輩が取り返しがつかないことになったこと。
     アヤネちゃんがアビドスの荷物にならない為に自ら命を絶ったこと。
     一人ぼっちになってしまったシロコ先輩が絶望し、何らかの力を得て、キヴォトスを滅ぼしたこと。

     ……最後の行だけ新しく書かれていた。
     ならば、きっと再びアビドスに戻ってきてくれるはずだ。

     シロコ先輩に会ったら、どうしようか。
     まずは、行方不明になっていたことを謝らないと。
     その後、シロコ先輩の行いを反省させないといけない。

     もう謝るべき人たちは居なくなってしまったのかも知れない。
     それでも、その行いが正しくないことをキチンと知って貰わないと駄目なんだ。
     いくらでも、最後まで付き合う。
     だって、私とシロコ先輩が最後の――。

     ガラッと、唐突に対策委員会の扉が開かれる。
     すぐにそちらを見つめたセリカだったが、その先に立っていたのは見知った、見知らぬ先輩だった。

    「――ノノミ、せん、ぱい?」

  • 16二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:16:39

     酷い倦怠感と、暑さで目が覚める。
     全身に走る鋭い痛みに困惑しながら、辺りを見渡す。

    「……嘘」

     青い、青い空が広がっていた。
     何処までも続きそうな砂漠に、雲一つない太陽だけが輝く。
     到底あり得ない事態に混乱しつつも、立ち上がり日を睨みつける。

     暑い。
     からりと渇いた熱風に体が撫ぜられ、奇妙な痛みを覚える。
     眩しい。
     一枚の絵のように、どこか偽物みたいだった太陽と違い瞼を細める。

     明らかに違う。
     数年前の世界に似た、懐かしい世界。
     恋焦がれながらも、記憶から薄れていっていた筈の、もう戻れなかった筈の世界。

    「――いかなきゃ」

     久しく抱いていなかった期待が、希望が、セリカの胸を突き自然と言葉が漏れる。
     今この場所がどこだかは分からない。分からないが、目的地だけはハッキリと定まっていた。

     アビドス対策委員会室、アビドス高校だ。

  • 17二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:16:49

     歩き、歩き、歩き続けて――。
     セリカは砂漠のど真ん中で立ち尽くしていた。

    「……どこなのよ、ここ」

     既にどっぷりと日は暮れ、太陽は空から姿を隠していた。
     数週間程度ならまだ問題なく動けるだろう。
     しかし、このままでは文字通り砂漠で力尽きてしまう。

    「はぁ……ちょっと懐かしいわね」

     セリカがアビドス砂漠で遭難した時もこんな心境だった。
     今とは違い食料も飲み物も何も持っていなかったが、焦燥感だけは同じだった。
     けれど、物資以上に潜り抜けてきた修羅場の数が違う。
     どこから楽天的に今夜の寝床になりそうな廃墟を探していた。

    「まあ、なんとか――」

     そんな折、セリカは目を見開きある一点を見つめた。

     居る、ここに。
     まだ壊れてはいないこの世界の中に、テラーが。

     髪の毛が逆立ち、自然と目が吊り上がっていく。
     殺さなければ、壊される前に。

     数年で培われた殺意は、一瞬の躊躇も無くARを強く握らせた。
     嫌な予感を、片隅に感じながら。

  • 18二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:17:04

     気配の感じる場所へたどり着くと、そこにはカオスが広がっていた。
     見知った対策委員会の面々、テラーの気配を携えたシロコ先輩、ノノミ先輩みたいな変貌を遂げているホシノ先輩、見覚えのない電撃を降らす正体不明の化け物。
     猛りまくったセリカの殺意は揺らぎ、砂山に隠れながら状況を俯瞰していた。

    (あれは、みんな……! でも……)

     険しい表情をしている面々を見ながらも、セリカは歓喜の感情が溢れそうになっていた。
     このまま駆け出し全員を抱きしめることが出来たら、どれだけ嬉しいだろう。
     再会を喜び合うことが出来れば、どれほどの嬉しいのだろう。

     しかし、セリカの瞳はしっかりとある人物を捉えていた。

    (あれは……私……)

     黒見セリカ。
     アビドス高校一年生で、皆と一緒に居る生徒の一人。
     生徒を殺めたことも無く、先輩たちと青春の日々を謳歌しているであろう、|もう一人の私《訪れなかった未来》。

     何処にも所属しない、制服すら着ていない黒見セリカではない。
     全身に傷があり、消えない切り傷や銃創塗れの黒見セリカではない。
     決して両手が血に染まった、黒見セリカではない。

     頭の中で嫉妬や怨嗟の言葉が渦巻く。
     後ろ暗い感情が零れそうになり、止まらなくなる。

    ――黙れ人殺し。

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:17:18

     そんな不毛な感情を断ち切る様に、内心に吐き捨てる。
     心の中で渦巻く濁流を止め、落ち着いて現状の最善を探す。

     この世界を壊させるのはごめんだ。
     例え自分の居場所など無くとも、それだけは本心だった。

     どうやら対策委員会の皆とテラーの雰囲気を纏ったシロコ先輩は、おかしくなったホシノ先輩を止めるために動いているらしい。
     生きている――先生も居る。

     ならば向こうは任せていいだろう。
     それに、私のような奴はもっと血生臭い方が合っている。

    「邪魔は、させないわよ」
    「――」

     ワンマガジン。雷撃を躱しながら、一点を集中して叩き込む。
     皆がホシノ先輩にかかりきりになっているからか、こちらを脅威と見なして雷の手を伸ばされる。
     砂の大地を蹴り上げ、化け物の力が集中している電撃球の中に銃身を突っ込む。

    「ぐうううっ!」

     全身に電撃が走り、思わず意識が飛びそうになる。
     しかし、相手もただでは済んでいない。

     無作為に降り注いでいた稲妻が止み、明確な脅威であると定めたのかこちらだけを見下ろしていた。
     体の中心に当たる電撃球は若干円形が崩れ、どこか不安定な形なりながら。
     よく見ると、電撃球内にある物体がどこか欠けたように破片が渦巻いていた。

  • 20二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:17:28

    「効果あり……ってとこね」

     打ち切ったマガジンを交換しながら、不敵に笑う。
     攻撃を与えればこちらもダメージを喰らう。
     残弾にも限りがあり、倒し切れるか分からない。

     恐らくだが、今まで戦ってきたテラーと比べても格段に強い。
     単純に耐久力があり、単純に攻撃力があり、単純な反撃機能を有している。

    「だからどうした、って話よ!」

     セリカは砂漠を蹴り飛ばす。
     振り被った雷撃の拳を躱し、腕輪に着地する。
     すぐさま背後に伸びる雷がセリカ目掛けて突き刺そうとするが、化け物の体の上を踊る様に避けていく。

    「ッ二回目ェ!!」

     僅かに生まれた隙を突き、再び中心目掛けて銃身を突っ込む。
     痺れながらも引いた引き金は、確かに化け物のコアを破壊しているようだった。

    「――ッ」
    「ぐうっ……!」

  • 21二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:17:41

     声にならない悲鳴か、化け物はセリカを振り落とし、今度は遥か上空へと飛んでセリカを見下ろした。
     逃げるのかと思った刹那、セリカは化け物からの明確な殺意を感じた。

    「……チイッ」

     檻のように雷撃をセリカの周囲に刺し、ジリジリと中心へと移動していく。
     それどころか、化け物は体の中心で電撃を溜め始めた。
     確実にセリカをここで仕留めるために。

    「……」

     セリカに焦りなど無かった。
     周囲から迫る雷撃、チャージされる雷砲の予感。

     だからなんだという話だ。

     セリカの耳は周囲から此方の逃げ道を潰す雷撃の中で、幾つかの雷撃の威力が違うことに気が付いていた。
     直上の雷砲を避けるために、強引に突破すればそのまま命を落としてしまうかもしれない。
     しかして、発射までにはまだまだ時間がかかりそうではあった。

    「――遅いわよ」

  • 22二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:18:26

    終わり
    結末が思いつかなかったから投げ捨てるね
    ばいばい

  • 23二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:18:48

    ここでかよ……!?

  • 24二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:37:17

    ん、読んでくれてありがとう
    ハーメルンに投げようと思ったんだけど、どうお話を畳もうか悩んで……ビックリするぐらい思いつかなかった

    あれでもテラコと一緒にこの世界を歩む的な締めで良いじゃないの? って今思った

  • 25二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:42:15

    >>24

    締めはそれでいいと思う。というかそれしか無い

    行方不明の真実を語られて泣いちゃったシロコがテラーのセリカに抱き着いて、色々あったって話したりとかの顛末が想像に難くないし……

  • 26二次元好きの匿名さん25/05/07(水) 00:49:01

    よかったよ!

オススメ

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