【微閲注・SS】アオバには幸せになってほしい

  • 1アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 01:14:27

    続きました。2スレ目です。


    〜これまでのあらすじ〜

    アオバは体調不良で倒れていたところを、先生・セリナとミネに救われる。

    先生に対する恋心を少しずつ募らせていくアオバは、それをセリナたちに告白。

    すると、セリナたちは大興奮。あの手この手でアオバと先生の距離を距離を近づけようとするのだった。


    前スレ

    【閲覧注意・SS】アオバって体調不良が似合うよね|あにまん掲示板部屋の照明はつけっぱなしだった。うっすら埃をかぶった書類の山を見下ろすように、アオバは布団の中で身を丸めていた。「……はぁ……っ……」いつもの鈍い痛みが、下腹の奥でじわじわと脈打っている。身体の芯が氷…bbs.animanch.com
  • 2アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 01:22:30

    なお、スレ画は前スレにて描いてくださったものです。ありがとうございます。

    では気を取り直して、投下を続けます。
    10レスまで行ったら打ち止めにします。

  • 3アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 01:26:52

    「好きなタイプ……そうですね……落ち着きがあって、大人で、頼りになる人、かな……」

    セリナがぽつりと呟くように言ったその瞬間──

    「「……先生?」」

    ミネとアオバが、まさかの同時反応。

    「なっ……!? ちがいますっっっ!!!」

    セリナが勢いよく椅子を引いて立ち上がる。

    「そ、そそそ、そういう意味じゃないですからっ!!先生がどうとかじゃなくて、一般的な!方向性の話であってっ!!」
    「ふふ……」

    アオバは唇に指を当てながら、楽しげに微笑む。

    「……もしそうなら、ライバルですね?」
    「だからちがうってば~~~~~~っっ!!!」

    セリナが机に突っ伏すのをよそに、ミネは手元の端末に淡々とメモを取っていた。

    『セリナ:好み→教員像類似
    アオバ:冗談めかした対抗宣言→関係性に余裕』

  • 4アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 01:27:12

    少し笑いが落ち着いたあとも、アオバはじっとセリナを見つめたままだった。

    「……でも、セリナさんって、ほんとに恋愛には奥手ですよね。まさか“タイプ”を聞くだけでそんなに動揺されるとは」
    「だってぇ……アオバさんが聞くからぁ……」
    「ん?何ですか?」
    「……アオバさんって、もしかして……ムッツリ?」
    「ぴゃ……っ!?」

    アオバの目が大きく見開かれた。

    「そ、そんなことないですっ!!……いやオープンでもないですけどっ!?」
    「ほらぁ~!動揺してるっ!」
    「ちがっ、そんなつもりで聞いたんじゃなくてっ!!」
    「でも私の“タイプ”聞いてニヤニヤしてたでしょ?してたでしょ??」
    「し、してません!!ちょっとワクワクしただけですっ!」
    「やっぱりムッツリ寄りですよ~~~っ!!」
    「うわあああ~~~~ん!!」

    顔から耳の先まで真っ赤に染めたアオバが、両手で顔を覆って机に伏せる。
    ミネは変わらず無表情のまま、淡々と一言。

    「“内に情熱を秘めるタイプ”と分析しておきましょう」
    「ミネさんまでやめてくださいぃぃ~~~!」

    そんなやり取りが飛び交う診療室には、検査項目では測れない、にぎやかなぬくもりがあふれていた。

  • 5アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 01:30:49

    ベッドの上。
    制服から着替えて、薄い部屋着にくるまりながら、アオバは日記を開いていた。
    小さな読書灯の光の下、ページの隅に書かれたメモに、自然と目がいく。

    『セリナさん曰く、私は“ムッツリ”』

    「……はぁぁぁ……」

    アオバは日記に顔を伏せながら、静かにため息をこぼした。

    (なんであんなこと言うんですか、あの人は……)
    (ムッツリって……そんな、そんなこと……)

    一瞬、反論しようとした脳裏に──

    “口付け事件”が、よみがえる。
    あのとき、先生に渡すカップに、自分の唇をそっと触れたあの瞬間。

    (……ちょっとでも、私が先生に近づける気がして……)
    (それが、うれしかった……)
    (──いや、だめだめだめっっ!!)

    アオバは頭を抱えて、枕に顔を押しつけた。

  • 6アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 01:31:03

    「ちがう……ムッツリとか、そういうのじゃ……!」

    (でも、わざと誰にも言えないことして……内緒にして、それで満足してたのって……)
    (やっぱり、ちょっと……ムッツリかも……?)

    「~~~~~っっ!!」

    今度は枕ごと顔を抱えて、ベッドの上で転がる。

    『私はムッツリなんでしょうか』
    『セリナさんに言われてから、否定できなくなってきた』
    『でも先生のことを考えると、止まらなくなる。ずっと前から』

    その一文を書きながら、ペン先が震える。

    「……でも、こんなに人を好きになったの、初めてだから……」

    ムッツリだろうがなんだろうが、関係ない。
    そう思いたい自分と、やっぱり恥ずかしい自分が心の中で喧嘩している。

    それでも、最後にアオバはそっとペンを走らせた。

    『好きって、難しい。でも、やっぱり嬉しいです』

    日記を閉じて、灯りを消す。
    静かな夜の中、胸の中だけが、まだほんのり熱かった。

  • 7アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 01:37:23

    診療の記録も終わり、機材の整頓もひと段落した頃。
    医務室には、アオバとミネが残っていた。
    窓の外にはオレンジ色の光が差し込み、柔らかい沈黙が流れている。
    そんな中、アオバが机の上の携帯に手を置いたまま、ぽつりとつぶやいた。

    「──ミネさんって、恋愛とか……どう思いますか?」

    ミネは手元の端末から視線を上げる。

    「一般論として、ですか?それとも、個人として?」
    「……たぶん、個人として、です」

    少し俯きながら言ったアオバの顔は、どこか悩みを抱えているようだった。

    「最近、自分でもわからなくなるんです。これが“好き”なのか、執着なのか、ただの勘違いなのか……」
    「……ふむ」

    ミネは椅子に静かに腰掛け直す。

    「自分の感情が確かかどうか、知りたいのですね」
    「はい……」

    アオバの声は、弱々しくもどこか切実だった。
    そしてミネは、少しだけ考えるそぶりを見せてから、静かに問いかけた。

    「アオバさん。では、“先生がいない世界”を、どう思いますか?」
    「──えっ……」

    言葉の意味を理解するまでに、一瞬の空白があった。

  • 8アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 01:37:51

    「……っ……それは……」

    心臓が、ずんと重くなる。
    想像しようとした瞬間、息が詰まった。
    (先生がいない……?)
    (そんなの……考えたことなかった。考えたくなかった)

    「……や、だ……それは……っ」

    唇が震える。目の奥が熱を帯びる。

    「……そばにいないとか、姿が見えないとか、話せないとか……そんなの、絶対に……」
    「……答えは、出ましたね」

    ミネは穏やかに言った。

    「あなたは、先生の存在を必要としている。そして、それが“好き”かどうかを区別するのは、案外重要ではありません」
    「……っ」

    アオバは目を伏せながら、袖でそっと目元を押さえた。

    「……私、先生がいなくなったら……きっと、明日への希望なんて持てないかも……」

    その呟きは、とても小さい。
    ミネは立ち上がり、閉め切っていた窓を開けた。

    「誰かがいることで、強く生きられる──それもまた、立派な感情です。……恋と呼ぶに、十分でしょう」

    アオバは、俯いたまま小さく頷いた。
    医務室には、夕暮れの光と、静かな肯定だけが、そっと染み渡っていた。

  • 9アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 01:38:47

    10レスまでは行ってませんが、キリがいいので今回はここまで。
    続きはまた明日投下していきます。

  • 10二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 01:42:36

    まだ前スレも読み切れてないけど甘酸っぱくて好き

  • 11二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 05:27:11

    甘酸っぱい恋に彩ろられた青春って良いよね

  • 12二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 07:56:43

    これこそ青春…!
    最高だな…

  • 13アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 09:52:26

    >>8

    お待たせしました。続きを投下します。

  • 14アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 09:52:53

    「えっ、そんなことがあったんですか?」

    セリナはカルテ整理の手を止め、ミネの報告を聞いたまま、ぽかんと口を開けていた。

    「『先生がいない世界なんて考えたくない』って……アオバさん、そこまで……」
    「はい。かなり強い拒絶反応でした。情緒的には、依存の域に近いかと」
    「ちょっと、重い……?」
    「ですが、否定できない“本心”でもあるようです。自分で口にして、自分で泣きそうになっていました」

    セリナはそれを聞きながら、眉を下げ、胸の前で手を組んだ。

    「うぅ~~~……そういうの、聞いたらなんか、すごくぐっと来ちゃうんですけど……」

    しばし目を閉じて、神妙な顔になったセリナだったが──
    ふいに、ぱっと目を開けて、思い出したようにニヤリと笑った。

    「……でも」
    「?」
    「アオバさん、前に言ってたじゃないですか。“もしそうなら、ライバルですね”って」
    「……確かに、そういう発言はありました」
    「それってつまり、“正妻の余裕”ってやつだったんじゃないですか?」

  • 15アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 09:53:10

    「はっ!!?」

    ちょうど検診に呼ばれて入ってきたアオバが、扉を閉めたその瞬間に聞こえたその言葉に、全身が硬直した。

    「ま、また変なこと言い出してぇっ!!誰が正妻ですか、誰が!!」
    「いやいやいや~、落ち着きがあって~、大人で~、頼りになる人がタイプ~……で、“先生”ってなってたときのあの余裕顔、ぜったいもう気づいてましたよね~~!?」
    「違いますっ!!あれは冗談っぽく返しただけですけどっ!!」
    「ほら、今も動揺してる~~~っ!」
    「動揺しますってばっ!!」

    アオバが両手で顔を覆って赤面している隣で、ミネはメモを取る手を止め、しばし見つめたあと、ぽつりと一言。

    「……“正妻の余裕”。実例としての記録価値は高いですね」
    「やめてくださいミネさんんんん~~~!!」

    医務室の静かな空間は、再び笑い声と赤面の熱気に包まれていた。

  • 16アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 10:12:00

    (よし、端末の更新完了……あとは未読メールの確認と……)

    淡々と、いつもの当番の仕事をこなすアオバ。
    制服の上着はきちんと着込んでいるが、今日の彼女はどこか落ち着きがなかった。
    理由は──

    「先生、トリニティのレイサさんから果たし状……?だそうです」
    "ん、すぐ確認するよ。……って、本人も一緒か"

    ドアの向こうから飛んでくる、明るく溌剌とした声。

    「先生~!その書き方で合ってますか?あ、あとお菓子も持ってきたんですよっ!!一緒に食べましょう!」

    (また……別の学校の子……)

    「こっちはアビドスの生徒さん……ですね。連携任務の報告書です"
    "了解、こちらで確認して──あ、ノノミも来てたんだ」
    「はい、ちょっと久しぶりなので顔を見に……ふふっ、先生、お元気そうでなによりです」

    楽しげな声。
    和やかな雰囲気。
    そして、先生の優しさは、誰にでも向けられるもの。
    アオバは、備品棚のコンテナのラベルを直すふりをしながら、静かに呼吸を整えた。

  • 17アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 10:12:19

    (……わかってたけど……私だけ、特別なわけじゃ、ないんだ)
    (先生は、みんなに優しくて、みんなを大事にして……)

    視界の端には、笑い合う先生と他校の生徒の姿が見える。
    その優しい声は、自分にも向けられたものと同じだった。

    (ああ……私って、やっぱり──ほかの人たちと同列なのかな)

    胸の奥が、ふっと冷たくなる感触。
    指先が、少しだけ震えた。
    感じていたあの嬉しさも、あの優しさも──きっと、誰にでも与えられるもの。
    そう思った瞬間、自分が勝手に抱いていた“特別”の期待が、どこかへ溶けていくようだった。

    "アオバ、在庫整理ありがとう。そっちはもう終わった?"
    「……はい。問題ありません」

    声は、なんとか普通を装った。
    でも、胸の奥で渦巻く感情は──

    (……“わたし”じゃなくても、よかったのかも)

    そうつぶやくように、静かに、彼女の心を曇らせていた。

  • 18アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 10:12:44

    一旦ここまで。続きはまた後ほど。

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 12:45:36

    日々元気になっていく患者、その患者との恋バナ、恋バナで盛り上がる後輩…ミネ団長、あまりにもいい空気吸ってらっしゃいますわね…

  • 20アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 18:21:48

    >>17

    お待たせしました。続けます。

  • 21アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 18:22:00

    「あの、──ちょっとだけ……聞いてもらって、いいですか」

    次の定期健診の日。
    体温計を返したあと、アオバは小さな声でそう切り出した。
    セリナとミネの動きが、自然と止まる。

    「はい、もちろん。どうしたんですか?」
    「……この前の、当番のときの話なんですけど……」

    アオバは、少し迷うように言葉を選びながら、ぽつぽつと話し始めた。
    先生が、他校の生徒たちと笑い合っていたこと。
    自分だけが特別だと思い込んでいたこと。
    そして、それがただの勘違いだったのかもしれないということ。

    「……なんだか、急に心が冷えていく気がして。ああ、わたしって……ほかの人たちと“同列”なんだなって」

    アオバの視線は、床の一点を見つめたまま動かない。
    医務室に、一瞬だけ静寂が落ちた。
    だが──

    「──そんなわけ、ないですっ!!」

    ばんっ! と机を叩いて立ち上がったのは、セリナだった。

    「アオバさんが“同列”なんて、そんなの、先生が聞いたら大慌てしますよっ!!」
    「で、でも……先生って、みんなに優しいし……」
    「そりゃそうですっ!先生は誰にでも優しい。でも、“気にかける深さ”は、絶対に違うと思うんです!!」

    セリナは真剣な顔で、アオバの目をじっと見つめる。

  • 22アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 18:22:20

    「だって、アオバさんといるときの先生って──わたしが見てても、優しさに、あたたかさが混じってるんです。ちょっと照れてたり、気づいてないふりしてたり……!」
    「──っ」
    「ですから、落ち込んでる場合じゃないんですよ!!ここから一歩、進むんです!!次は“明確に好きって伝わる何か”を!!たとえばっ、気持ちがこもったプレゼントとかっ!」

    ミネがその言葉に静かに相槌を打つ。

    「……“行動で伝える好意”。プレゼントなら物として残りますし、言葉よりも揺るがない証明になりますね」
    「そ、そんなの……わたしに、できるでしょうか……」
    「できますっ!」

    セリナが即答し、笑顔で指を差す。

    「アオバさんは、先生に“届いてほしい”って思って、ミストだって選んだし、マグカップだって悩んで選んだじゃないですか!」
    「そ、それは……」
    「もう十分、気持ちは動いてます。あとは、“勇気”だけっ!」

    アオバはしばし沈黙したあと、ほんのわずかに口元を緩めた。

    「……はい。……ちょっと、考えてみます」
    「よしっ!! じゃあ次の作戦名は――“アオバ大奮発・本命の証作戦”ですっ!!」
    「なにその名前っ!?」

    ミネが小さく咳払いを一つ。

    「……命名は改善の余地がありますが、方向性としては有効です」

    笑い声が、医務室に静かに広がる。
    アオバの胸の奥にも、ふたたび、柔らかな火が灯りはじめていた。

  • 23アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 18:27:30

    小さな包みを胸に抱え、アオバはゆっくりと先生のもとへと歩いていた。
    今日は、思い切って選んだ“とっておきのプレゼント”を渡す日。

    (だいじょうぶ、ちゃんと選んだ。……ちゃんと、伝えたいって思って選んだ……!)

    先生はシャーレ中庭のベンチに腰かけ、資料に目を通していた。

    「せ、先生……あのっ、これ……っ!」

    差し出した手のひらに乗る、小さな箱。

    "どうしたの、アオバ。これは……?"
    「えっと、その……感謝というか……いえ、いつも、お世話になってるので……っ」
    "……ありがとう。すごく、うれしいよ"

    先生が微笑んだその瞬間──

    ~~~~~~

    「きたきたきたきたあぁぁ~~~~っっっ!!!」

    時を同じくして、中庭・植え込みの陰。
    セリナが双眼鏡を片手に、ひくっと震える声でささやいた。

    「いま!いま!表情っ!アオバさんの表情見ました!?あれ!!明らかに“女”の顔してましたっっ!!」
    「観察完了。頬の赤み、視線の揺れ、指先の動き……どれも“意識下の好意表出”ですね」
    「ですよねっ!?あの顔は恋してる人の顔ですよぉぉ~~~っっ!!!」

  • 24アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 18:27:47

    数日後、シャーレの医務室にて。

    「というわけで!!」

    セリナは診療机の上に手をばん!とついて、アオバの目の前に身を乗り出した。

    「アオバさん、“女”の顔してましたっっ!!」
    「は、はぁぁっ!?!?な、なんですかそれっ!?!?!?どういう意味ですかっ!!?」
    「言われなきゃわかんないんですか~~~!?あの柔らか~い笑顔っ、目元がとろ~んってしてたやつ!!」
    「そんな顔してませんけどっ!!ていうかまた見てたんですかっ!?」
    「してましたっ!!ミネ団長、証拠は!?ありますよねっ!?」

    ミネが無表情のまま、記録用の端末をそっと掲げる。

    「静止画で3枚、録画で7秒。任意でリプレイ可能です」
    「やめてくださいぃぃぃっっ!!!」

    真っ赤になって机に伏せるアオバの背中を、セリナがやんやと叩く。

    「いや~~、ついにここまで来ましたね!これはもう、次の段階は“思いを言葉にする”しかないですねっ!!」
    「……だからっ、からかわないでくださいってば~~~っ!!」

    顔を覆ったアオバの声は震えていたが──
    その唇は、どこか、ほんのり笑っていた。

  • 25アオバには幸せになってほしい25/05/08(木) 18:28:19

    今回はいったんここまで。続きは夜に投下予定です。

  • 26二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 21:53:51

    続きだぁぁあああ!!やったぁぁぁあああ!!

  • 27二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:14:01

    みんなの先生だもんな。でも、だからこそ踏み出して行ってほしい。頑張れアオバ、お前には頼もしくて騒がしい守護天使が2人いるぞ。

  • 28二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:17:47

    >>2

    スレチだがこの前pixivでアオバの絵の人だ!他の絵はどんなのを……と思ったらたほとんどが悪ふざけの極致みたいな絵とミリタリー描写がバチバチのガンダムの小説とか言う闇鍋具合の温度差で風邪ひいた。セリナ、バファリン出して...。

  • 29二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 23:30:46

    スレタイが変わったのに合わせて >>1 のコテハンも変わってるのいいな

    確かにアオバに体調不良は似合うけどそれはそれとしてちゃんと幸せになってほしい

  • 30アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 00:23:59

    >>24

    お待たせしました。続きを投下します。

  • 31アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 00:24:10

    当番中、書類の整理を終えたアオバがふと視線を上げた先。
    先生の指先が、見慣れない深い群青色の万年筆を走らせていた。

    (あ……)

    それは──アオバが、思い切って贈った万年筆。
    悩んで、選んで、緊張で手汗をかきながら渡した、あの一本。

    (使って、くれてる……)

    胸の奥が、ふわりと熱を帯びた。
    無意識に、声が出ていた。

    「──ちゃんと、使ってくれてるんですね。そのペンも……カップも……」

    ペン先が止まり、先生が穏やかに顔を上げる。

    "うん。もちろんだよ。他でもない、アオバからのプレゼントだからね"
    「────」
    "どっちも、とても使いやすいし、見てるだけで気持ちが落ち着くんだ。……後でちゃんと、お返しするよ"
    「っ……あ……っ」

    先生の声は、柔らかくて、優しくて。
    アオバには、それがあまりにもまっすぐすぎた。
    頬が、みるみる真っ赤に染まっていく。

  • 32アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 00:24:25

    (だめっ、これ以上聞いたら、ほんとに爆発する……!!)

    それでも、言葉がこぼれる。

    「……お返しなんて……っ、ずっと……もらいっぱなしなんですけど……!!」

    先生が小さく笑う。

    "そっか。でも、だからこそ、ちゃんと返さなきゃって思ってるんだよ"
    「~~~~~~~~っっ!!」

    顔を覆いたくなる衝動を必死に堪えながら、アオバは足早に席へ戻った。

    (ああもうっ……どうしてあんなこと……!)

    でも、胸の中の“嬉しさ”が、恥ずかしさを溶かしていくような気がした。
    “使ってくれている”こと。
    “覚えてくれている”こと。
    そして──“返したいと思ってくれている”こと。

    それはきっと、“同列”なんかじゃない。
    自分だけの、確かな“線”だと思えた。

  • 33アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 00:30:42

    「……で、で、でっ……!」

    アオバは診療ベッドに腰掛けたまま、手のひらで頬を押さえながら言葉を詰まらせていた。

    「お、おちついて!深呼吸っ!はい、いっせーのーで!!」

    セリナが手をぐるぐる振りながら、もう完全に前のめりで身を乗り出してくる。

    「はいっ!では改めてどうぞ!!例のプレゼント、どうなりましたかっ!?」
    「……つ、使ってくれてました、万年筆……!机の上で……それで……」
    「うんうんうんうん……?」
    「“アオバからのプレゼントだから、ちゃんと使ってる”って……言ってくれて……」
    「ひぃ~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!」

    セリナ、床にひっくり返る。

    「それもうっ、それもうっ、“大切にしてます”ってことじゃないですか~~~~っっ!!」

  • 34アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 00:30:56

    「ま、まだあります……」
    「あるの!?!?」
    「“ちゃんとお返しするよ”って……!」
    「ア゛ア゛ア゛ア゛~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

    セリナ、そのまま床で転げ回る。

    「なにそれ~~っ!!お返し!?え!?先生の口から“お返し”って!?!?それ、もはやバレンタインのお返し構文ですよ!?!? 何返ってくるの!?なんなの!?いつ!?今!?すぐ!?!?」
    「な、なに言ってるんですかセリナさんっ、落ち着いてくださ……っ!」
    「落ち着いてられないです~~~っっ!! それもう“交際前提のやり取り”じゃないですか~~~~っっ!!!」

    ミネが横で端末にさらさらとメモを取っていた。

    「……“返報性の原理”の発動確認。関係の深化予兆と捉えられます。“お返し”という言葉が示す意志の表明は、行動を伴う告白の前段とも取れますね」
    「ミネさんまでっ!?!?」

    アオバは顔を真っ赤にして両手で耳まで覆いながら、椅子の上でうずくまった。

    「も、もう……言うんじゃなかった……!!」
    「言ってくれてありがとうアオバさん~~~~っ!!尊い命ありがとう~~っ!!」
    「どんなテンションなんですかぁぁ~~~っ!!」

    医務室には今日も、笑い声と騒ぎと、そして恋の熱が渦巻いていた。

  • 35アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 00:39:07

    「っ、うわっ……急に来ましたね……!」
    "予報じゃ降らないって言ってたんだけどな……こっち、入って"

    買い出し帰りの道すがら、突如として空が掻き曇り、ぱらぱらという音も束の間に、強い雨が地面を叩き始めた。
    先生が傘を広げ、何の迷いもなくアオバの肩を引き寄せる。

    "とりあえず、急ぎ足でうちまで。タオルと乾燥機くらいはあるから"
    「は、はいっ……!」

    (ち、近い……!)

    先生と肩が触れるくらいの距離。
    相合傘という現実に、心臓の鼓動が漏れ響くような気がした。

    ~~~~~~

    "とりあえずこれを。上着だけでも脱いで乾かしてて。私は飲み物準備してるから"

    先生の自宅、洗面所にて。
    そう言って渡されたのは、先生のジャケット。
    アオバは躊躇いながらも、おずおずと袖を通す。

    「……わ……」

    ぶかぶかで、指先まですっぽり隠れるほど。
    体温を感じる重さと、微かに香る先生の匂い──ほんのりとした柔らかい石鹸と、どこか懐かしい紙の匂い。

    (……せ、先生の匂い……)

  • 36アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 00:39:26

    (うわ、だめっ、これ……!おちついてっ……)

    首元に少しだけ顔を寄せれば、それだけで胸が高鳴る。

    (ぬくもりとか、香りとか、サイズとか──なんでこんなに、いちいち……)
    (ああもう……!)

    「……わたし、やっぱり……ムッツリかも……」

    自分の思考に顔を覆いたくなって、アオバはそっと背中を丸めた。

    "ん?何か言った?"

    先生がキッチンから振り返る。

    「な、な、なんでもないですっ!!あの、ありがとうございますっ、ほんとに……っ」
    "気にしなくていいよ、すぐ乾くし。飲み物、温かいものでいい?"
    「~~~~っ!!はい、ありがとうございます……!」

    (落ち着け、アオバ。顔、真っ赤になってないから……なってるけど!!)

    ぶかぶかの袖で顔を隠しながら、アオバは内心で絶賛パニック中だった。
    しかしその横顔には、ほんの少しの幸せが、確かに滲んでいた。

  • 37アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 00:42:33

    今回の更新はここまでにします。続きはまた明日。


    >>27

    アオバには頼れる友達が必要だと思うんです。細かい依存先を増やして健やかに生きてほしい……。


    >>29

    分かります。アオバみたいな「諦め」がある子の世界に光を射して、世界に希望を持ってもらうのが生きがいです。

  • 38二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 02:09:55

    >>35 >>36

    ロビーのボイスでアオバが匂いフェチっぽいからね、そりゃ上着なんてもらっちゃったら嗅いじゃうよね

  • 39二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 06:31:55

    朝ほ

  • 40二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 08:31:55

    このレスは削除されています

  • 41アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 08:32:34

    >>36

    お待たせしました。続きを投下します。

  • 42アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 08:32:50

    「……で、そのあと、先生の家で……上着を、ちょっと借りて……」
    「……」
    「……」

    沈黙。
    セリナとミネが固まっている。
    アオバは椅子の上で、制服の裾をぎゅっと掴んでいた。

    (やっぱり、言うんじゃなかったかも……!)

    そして次の瞬間──

    「こっこここ、この前の手繋ぎの次がっ!?!?!?相合傘っ!?!?!?!?」

    セリナ、跳ね上がる。

    「しかもそのままっ、おうち避難っ!?!?!?おうちデートっ!?!?!?!?彼シャツぅぅ~~~っ!?!?!?!?」
    「ちょっ、セリナさんっっ!!?」

    アオバ、顔真っ赤。

    「なんですかその言い方っ!?!?!?“彼シャツ”ってっ!?!?」

  • 43アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 08:33:05

    「えっ!?だって、“家の中”で“二人きり”、“先生の上着”を着てたんですよねっ!?それもう、世間では“彼シャツ”って呼ばれてるやつですよっ!!!」
    「呼ばれてないですっっ!!そんな決まりないですからっっ!!」

    ミネが淡々と口を挟む。

    「衣類のサイズ差による印象的情緒の強調──“彼シャツ”は表現として妥当かと。なお、相合傘・自宅・衣類貸与の流れは、恋愛ドラマにおける王道パターンです」
    「ミネさんまで冷静に加勢しないでください~~っ!!」

    アオバは椅子に沈み込み、顔を両手で覆う。

    「はぁ……わたし……なんで言っちゃったんだろう……」
    「それはっ!アオバさんが、もう“恋の流れ”に乗ってる証拠ですっっ!!」
    「いや、もう、流れというか……流されてるんですけど……っ」

    セリナは机の上でばんばん手を叩きながら言った。

    「よーし、次は“自然におうちに長居する流れ”を研究ですねっ!!」
    「言い方ってもんがあると思うんですけどっっ!!!」

  • 44アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 08:39:22

    アオバは棚に資料を戻すふりをしながら、ちらりと先生のデスクを見た。

    (……また、使ってくれてる)

    先生の右手には、あの万年筆。
    その傍らには、前に渡したカップが置かれ──さらにメモ帳やクリップボードにも、自分が以前差し入れた文具が混じっているのを見つけた。

    (カップも、ペンも、文房具も……ひとつずつ、わたしの選んだものに……)
    (……少しずつ、少しずつ……)

    何かを“塗り替えていく”ような感覚。
    誰にも気づかれず、先生の空間の一部を“侵食”しているような。

    (……っ、やば……)

    アオバは、自分の頬がほんのり熱を帯びていることに気づいた。

    (これ……ちょっと、ぞくってするの……なに?)

    ~~~~~~

    「──それで気づいたら、結構な割合で……先生の身の回りに、わたしがあげたものが、増えてきてて……」
    「ふむ……?」
    「それがなんか、こう、ちょっと、嬉しくて……じわじわ、っていうか……」
    「……じわじわ?」
    「気づかれないまま、先生の生活の中に入り込んでいく感じっていうか……」
    「……」

  • 45アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 08:39:40

    アオバの語りが終わった直後。
    セリナが、がたっと椅子から立ち上がった。

    「これが……」

    手がわなわなと震えている。

    「これが……独占欲……!!」
    「っっ!!?ちが、ちがいますっ!!なんか言い方怖いんですけどっ!!」
    「やだもう!アオバさんの内面が恋愛モンスターに進化してる~~~っ!!」
    「してませんっ!!ただちょっとだけ“嬉しいな”って思っただけで……!」
    「“嬉しいな”の顔じゃなかったですっ!!ちょっとぞくってしてたでしょ!!してた顔ですっ、背徳感の顔!!」
    「ミネさんっ!?ミネさんはどう思いますかっ!?」

    ミネは記録端末を見ながら、静かにひと言。

    「静かな侵食。……感情の方向性としては、恋愛における執着の初期症状と判断可能です」
    「やめてくださいっっ!!!」

    顔を真っ赤にして机に突っ伏すアオバに、セリナがにやにやと近づく。

    「このままいけば、シャーレがアオバさんグッズで埋まりますねっ!」
    「埋まりません~~~っ!!!」

    でも、胸の奥のどこかで──
    “少しだけなら、それでもいい”と思ってしまったのは、アオバだけの秘密だった。

  • 46アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 08:40:01

    今回はここまで。続きはお昼に投下します。

  • 47アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 16:02:22

    >>45

    遅くなりました、続きを投下します。

  • 48アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 16:02:32

    ある日のこと。
    先生は、ふと書類を書きながら手元の万年筆を見つめていた。
    少しだけ微笑みを浮かべながら、アオバに声をかける。

    "……最近、ふと思うんだけどさ"
    「は、はい……?」

    アオバは少し緊張気味に顔を上げた。

    "私の机の上──なんだかんだで、アオバからもらった物ばっかりになってきてるんだよね"
    「っっ……!!?」

    指先がびくっと跳ね、抱えていた書類がずり落ちそうになる。

    "この万年筆も、カップも、メモ帳も──ああ、あとクリップボードまで。どれも使いやすくて気に入ってるけど……"

    先生は、少しだけいたずらっぽく笑った。

    "気づいたら、全部“アオバからの贈り物”だったなって。……ちょっと驚いたよ"
    「──っ!?」

    (ぜ、全部把握されてたっ……!!?)

  • 49アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 16:02:49

    「そ、そそ、そんなことないですっ!た、たまたまだと思うんですけど……!偶然が重なっただけというかっ……そのっ……!」
    "ふーん……?じゃあ……偶然にしては、アオバの選び方がよすぎたってことかな"
    「い、い、今の褒めてますか!?からかってますかっ!?どう受け取れば……!?」
    "あはは、どっちでもいいけど。私は気に入ってるってだけだから"

    あくまでさりげなく、あくまで自然に。
    しかし、先生にはすべて筒抜けになっているような気がして。
    アオバは、もう顔を隠すしかなかった。

    「わ、わたし、なにしてるんでしょうね……ほんとに……っ!」

    でも、真っ赤な顔の下で──
    胸の奥は、静かに嬉しさでいっぱいになっていた。

    (覚えててくれてた……先生、ちゃんと、気づいてくれてたんだ……)

    たったそれだけのことが、
    世界が一歩近づいたような気がして、アオバは小さく深呼吸をした。

  • 50アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 16:16:22

    「それで……先生が、全部……私からの物だって、ちゃんと、気づいてくれてて……!」

    アオバが顔を真っ赤にしながら語ると、診療机を挟んだセリナの目がギラリと光った。

    「っっ!!バレてた!?いや、認識されてたんですか!?!?先生公認のアオバさんグッズってことですかっ!?!?!?」
    「な、なんでグッズ扱いなんですかっ!?!?!?」
    「だって、だって、“気づいたら全部アオバの物だった”って、それもう愛の巣作り始まってるってことでしょ!?!?」
    「愛の巣ってなんですか!なんか引っかかるんですけどっ!?」

    ミネは端末を見ながら静かに補足。

    「“空間の共有と浸透”による関係の深化。心理的にも視覚的にも、相手の存在を日常に取り込むフェーズですね」

    セリナは身を乗り出して叫ぶ。

    「ここまできたら、次っ!!直接的に好意を伝えるフェーズに突入ですよっ!!」
    「……っ、で、でも、何をすればいいのか……」

  • 51アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 16:16:37

    セリナがホワイトボードを引っ張り出す。
    いつの間にやら、医務室はすでに“対先生恋愛作戦室”の様相を呈していた。

    「はいっ!テーマは“想いを伝えるにはどうするか!”ですっ!」
    「ま、また急にハードルがっ……」
    「ステップアップしなきゃっ!!アオバさん、ここまで来たら、あとちょっとの勇気ですよっ!」

    ミネが淡々と進行を補う。

    「行動によるアプローチは、これまでで十分効果を上げています。次の段階は、言葉または触れ合いによる関係の再確認でしょう」
    「そ、そそそ、そんな直接的なの無理ですってっ!!」
    「じゃあっ!まずは“ちょっと特別な贈り物”とかどうですかっ!?たとえば、ペアグッズ!!」
    「なんでペアにするんですか!?バレますっ!絶対バレると思うんですけど!!」
    「バレるのがポイントなんですっ!“あ、これってもしかしてペア?”って気づいたときの先生の反応~~っ!」
    「関係の進展より先生の反応重視……!?ミネさん的にはどうなんですかっ!」
    「……私はペアマグ案に一票です。実用性と示唆性を両立できます。以前先生に渡したものと、同じものを使うのはいかがでしょう」
    「ここでもマグカップぅ~~~っ!!」

    セリナたちのテンションは、すでに止められそうにない。
    顔を抱えるアオバの背後では、ホワイトボードに『恋愛進展フェーズ3:一歩踏み出す勇気』の文字が大きく書き込まれていった。

    アオバの恋は着々と、そしてにぎやかに前進している──少なくとも、周囲のテンションだけは確実に。

  • 52アオバには幸せになってほしい25/05/09(金) 16:17:26

    今回はここまで。続きは夜に更新します。

  • 53二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 17:33:57

    独占欲発揮してるアオバかわいいね♡
    ところで1人大暴走してる恋愛列車セリナ号なんですが

  • 54二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 22:19:01

    この空間でミネ団長って1番役得だよなぁ

  • 55二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 22:59:40

    先生も距離近い!距離近いよ!いけアオバ押せ!悶えながらでも!

  • 56アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 00:18:02

    >>51

    お待たせしました。続きを投下していきます。

  • 57アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 00:18:21

    「……これ、使ってくれるかな……いや、こっちのほうが落ち着いた色……?」

    ベッドに座り込み、数日後の買い出しに向けて通販カタログとにらめっこしていたアオバの手が止まった。
    指先でそっと触れていたのは、シンプルだけれど質の良いレザーのカードケースの欄。
    日常的に使えて、目立たず、それでいて長く持ち歩けるもの。

    (……これも、先生の生活の一部になるんだよね)

    そう思った瞬間、背筋にぞわりと小さな電流が走った。

    (カップ、万年筆、クリップボードにメモ帳……そして、カードケース)
    (少しずつ、少しずつ……先生の“日常”が、私で満たされていく──)

    「……っ、やば……なに考えてるの私……!」

    思わず頬を押さえる。
    でも胸の奥は、例えようのない熱でいっぱいだった。

    (でも……止まれない……。もっと近づきたい、私で埋めてしまいたい……!)

    スマートフォンを手に取る。
    カレンダーには、先生との買い出し予定が大きくマークされていた。

  • 58アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 00:18:38

    「……よし。忘れ物、なし。プレゼントも、ちゃんと包んだし……」

    鏡に映る自分を確認して、小さく深呼吸。
    普段の制服に少しだけ髪の手入れをして、ナチュラルに“気合い”を仕込んだ。

    「これは、ただの買い出し……“ただの”……!」

    (でも、プレゼントを渡すなら──ちゃんと……この日しかないって、思ったし……)

    バッグの中で、丁寧にラッピングされた小箱が、かすかに揺れた。

    (受け取ってくれるかな……喜んでくれるかな……)

    ドキドキと不安と期待が交差するなかで、アオバはそっと靴を履き、外へ出た。

    扉の先、外の世界で──
    先生と一緒に歩く“いつもより少し特別な日常”が、待っている。

  • 59アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 00:26:34

    "これで今日の買い物は大体終わったかな"

    先生が紙袋を軽く持ち上げ、アオバの方を振り返る。

    「は、はいっ。おつかれさまでした……!」

    (……いま?いまだよね?でも、歩きながらってちょっと変かも……)

    アオバはバッグの中の小さな箱に目を落としながら、タイミングを見計らっていた。

    先生と並んで歩いている“今”という状況。
    やるべきことも終わり、気持ちも少し緩んできたこの空気。

    (言える……言えるはず……っ)

    しかし。

    「……そ、そういえば、次の予定って──」

    ~~~~~~

    「うわ~~~~んっ、話題ふらないでぇぇぇアオバさんっ!!!」

    双眼鏡を握りしめ、セリナは植え込みの影から身を乗り出している。
    まるで当然のことかのように、セリナとミネはアオバたちの買い出しを尾行していた。

    「い、いまっ、いま渡せば自然なタイミングだったのに~~~~~っ!!」
    「会話の流れで逸らしましたね。緊張のピークに耐え切れなかったようです」

  • 60アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 00:26:51

    「ううぅっ、アオバさん頑張って~~っ!!先生、今なら──いや今じゃなくてもぜったい受け取ってくれますって~~~!!」

    ミネが端末に記録をつけながら、ぼそっと一言。

    「……渡せる雰囲気は、完全に整っている。問題は、アオバさんの勇気だけですね」
    「この一歩がっ!!この一歩が恋の進展なんですってば~~~っ!!」

    セリナは拳を握りしめた。

    「くっ……アオバさん、あともう少しなんですよ……!あと一言で未来が変わるのに……!」

    ~~~~~~

    "……アオバ?"
    「えっ!?は、はいっ!?」
    "さっきからちょっとそわそわしてるけど──荷物、重かった?"
    「い、いえっ!!そのっ……あのっ……」

    (今度こそ……!今度こそ言う……っ!)

    鞄の中の小包みに指をかける。
    アオバには聞こえていないが──セリナたちの願いが、風のように背を押してくれたような気がした。

  • 61アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 00:35:36

    「……あのっ、先生……!」

    アオバは、ぐっと意を決して足を止めた。先生が振り返る。

    "ん、どうしたの?"

    アオバは鞄から、小さなリボンのついた小包みを取り出した。

    「これ……今日の──いや、日ごろのお礼というか……その、前から渡したいなって、思ってたもので……っ」
    "……プレゼント?"

    先生が包みを受け取り、リボンをほどく。
    包みの中、開けた箱に並んでいたのは──群青を基調としたシックな色合いの、同じデザインのカードケースが2つ。

    "……2つ?"

    先生が少し首をかしげると、アオバは箱から片方をそっと取り出して、胸元に抱えた。

    「えへへ……1つは、わたしのなので……」
    "……?"

    「これで──お揃い、ですねっ」

    花開くように笑ったその顔は、普段の硬さが抜けていて──それでいて、ほんのりと赤い。

    "──……っ"

    先生は一瞬だけ目を見開いて、ふっと笑った。

    "……ありがとう。すごく、うれしいよ"

  • 62アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 00:36:02

    「っっっっ!!!」

    アオバが先生にカードケースを渡したその後方。
    セリナは、派手に転がっていた。

    「大胆っっ!!お、お、お揃いって、えっ!?えっ!?えええ~~~~っっっ!!!!」
    「渡し方、表情、言葉の選び方──すべて計算されたわけではないにしろ、とても直球でしたね」
    「アオバさん~~~っ!!もう、それっ、マジで告る5秒前ですってば~~~っ!!」

    双眼鏡を握りしめながら、セリナはその場で地団駄を踏む。

    「“これでお揃いですねっ”って、言える!?普通の恋する女の子、そんなキラーワード言えます!?!?」
    「アオバさん、感情表出における制御が外れてきている……良い傾向です」
    「うっ……尊い……好き……アオバさんの恋、全力で応援しますぅ~~~!!」

    本人のあずかり知らぬところで、アオバのオタクが生まれようとしていた。

  • 63アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 00:37:13

    今回はここまで。続きはまた明日、更新予定です。

  • 64二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 02:07:32

    セリナたちのおかげでアオバがどんどん恋愛強者になっていく…

  • 65二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 02:12:13

    セリナさん?
    派手に転がったり地団駄踏んだりしてますけど…貴女たち尾行してるんですよね?
    盛り上がりすぎでは?
    このままのテンションだとバレますよ…?

  • 66二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 09:49:27

    セリナ限界オタクで草。好きなものに夢中になれるのもまた青春やな。

  • 67アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 11:53:12

    >>62

    お待たせしました。続けます。

  • 68アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 11:53:36

    「これ、報告書のまとめです。夕方までに提出って仰ってたので……」
    "……ああ、ありがとう。ほんと、助かるよ。アオバはよく気がつくね"
    「い、いえっ……当然のことをしているだけです」

    それだけの、いつも通りのやり取り。
    その中で、先生はふと──アオバの笑顔に視線を止めていた。

    さりげない気配り、的確な作業、そして時折見せる、少し不器用な頑張り。
    “生徒”として見ていたはずの彼女は──いつしか、自分の“そば”にいることが自然になっていた。

    (……なんでこんなに、気になるんだろう)

    視線を外し、無意識に手元のカードケースへと触れる。
    落ち着いた色の革──アオバからの贈り物。

    (それでも……私は“先生”で、アオバは“生徒”だ)
    (好意を向けられているのは、たぶん分かってる。気づかないふりも、限界かもしれない)

    でも、だからこそ。

    「恋仲」──その二文字を、選んではいけない。

    関係が壊れるのが怖いわけじゃない。
    ただ、それを選ぶことで、彼女の未来を狭めてしまうのではないか。

    そんな思いが、いつもその先の言葉を呑み込ませた。

  • 69アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 11:53:54

    (……今日も、先生は優しかったな)
    (私のこと、頼りにしてくれてるのかな……)

    買い出しのついでに買った、先生の好きな紅茶を袋に入れながら、アオバは頬を緩める。

    先生の机に、自分の選んだものが増えていく。
    仕事中、言葉を交わす前に動きが揃う瞬間がある。

    それが、何より嬉しかった。

    (これって……なんだろう)

    胸の奥で問いかける言葉に、答えはまだ出ない。
    しかし──

    (でも……きっと、あともう少し。もっと、近づけたら……)

    そう信じて歩いている彼女に、先生の迷いは、まだ届かない。

    すれ違っているわけじゃない。
    どこかで止まっている足と、進もうとする心が、まだ交わらずにいる──そんな“いま”が、2人のあいだに静かに流れていた。

  • 70アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 11:58:06

    ある日のトリニティ・救護騎士団の談話室。

    「──以上の観察結果より、先生はアオバさんに対して一定以上の好意と信頼を抱いていると判断できます」

    端末を操作しながら、ミネが淡々と述べた。

    「やっぱり……っ、ですよねっ! 私もそう思ってましたっ!」

    セリナが身を乗り出し、思いっきり頷く。

    「お揃いのカードケースもちゃんと使ってくれてるみたいですし、会話の空気感も付き合ってるレベルなんですよぉっ!!」
    「ですが」

    ミネが小さく指を立てて、セリナの勢いを制す。

    「距離が縮まっているのは間違いありません。しかし……なにかが、決定的に足りない」
    「……なにかが?」
    「はい。先生の態度は、明らかに意識している人のそれと酷似しています。が、それを“恋愛的関係”に変換するための一歩が、存在していない」
    「たしかに……思わせぶりってわけじゃないけど……あの人、踏み込まないんですよね」
    「好意の反応はあれど、明確なものではない。そこに、おそらく──自制があります」
    「……“先生”って立場、かぁ」

    セリナが少し真面目な顔をした。

    「その立場のせいで、“好き”って気持ちにブレーキかけてる……?」
    「可能性としては高いですね。いまは、“脈アリ”かつ“静止状態”です」
    「ならっ!なら、やっぱりアオバさんから踏み込ませるしかっ……!!」

  • 71アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 12:03:11

    「アオバさんっ」

    定期健診が終わったタイミングで、セリナがすぐさま椅子を引き寄せてくる。
    隣ではミネが静かに端末を開いていた。

    「あのですね! この前、ミネ団長と一緒に、先生の行動について検証したんですっ!」
    「け、検証って……」
    「結論から言うと──脈は、めちゃくちゃありますっ!!」
    「みゃ……っ!?!?」
    「ただし!!」

    セリナの言葉を引き継ぐように、ミネが静かに補足を入れる。

    「“何か”が、まだ足りない。こちらの好意を受け止めつつも、それを“関係”に繋げるだけの決定打が、存在しない」
    「……決定打……」
    「先生は、アオバさんの好意に“気づいていないふり”をしている可能性があります。それは、おそらく“職務上の配慮”です」

    アオバは目を伏せ、そっと手を握りしめた。

    「……じゃあ、わたしから、踏み出さないと……?」
    「そういうことになりますね」
    「もうこれは、“自覚を引き出す作戦”ですっ!先生に“これって恋じゃない?”って、思わせるアプローチを!!」
    「難しいかもしれませんが──生徒との恋愛関係を、彼の選択肢の中に戻す必要がありますね」

    アオバの胸に、ほんの少し震えるような火が灯った。

    (……わたしから、変えていく……)
    (先生が、心から“わたしを好きだ”って思えるように……)

  • 72アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 12:03:46

    今回の更新はここまで。続きはまた後ほど。

  • 73アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 15:54:02

    >>71

    お待たせしました。続きを投下します。

  • 74アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 15:55:59

    「……先生って、その──恋人……とか、いたことあるんですか?」
    "――え?"

    思わず万年筆の動きが止まる。
    書類をめくっていた先生が顔を上げると、アオバは机の端でそっと首をかしげていた。
    問いかけた本人は、あくまで“何気ない話題”のように微笑んでいる。が──

    (い、言った……言っちゃった……!!)

    内心では心臓がドラムのように鳴っていた。

    "んー……いたことは、あるよ。学生時代、ちょっとだけ"
    「あ、そうなんですね……」
    "でも、だいぶ昔の話だね。いまは……仕事が忙しくて、そんな余裕はあまりないかも"

    (“あまり”……可能性はゼロじゃない、ってことですよね)

    ほんの少しだけ、先生の視線が揺れたように見えて、アオバはこっそりと胸の奥で小さく拳を握った。

    ~~~~~~

    「先生、最近寝不足だったりしませんか?」
    "え? まあ、多少は……"
    「やっぱり~っ、ちゃんと寝てくれないとダメですよぉっ!恋人さんに心配されちゃいますよっ!?」
    "あの……私、恋人いないけどね?"
    「でも、もしいたら──私なら、めっちゃ心配しますよ!?仕事ばっかりで全然甘えてくれないなぁ~って!」

    先生は少し苦笑いをしつつも、何か言いかけてやめた。

    (ふふふっ……ちょっとだけ、“恋人像”を意識させる作戦、大成功ですっ!)

  • 75アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 15:57:06

    「先生」
    "ん?"
    「先日、紅茶の補充をしておきました。茶葉が変わったそうですが……贈り物として選ばれたものが、日常になるのは悪くないことですから」
    "言われてみれば、香りが前までと変わったような……?"
    「慣れましたか?」
    "うん。むしろ、こっちのほうが落ち着くかも"

    ミネは小さく頷きながら、少しだけ含みのある声で言った。

    「……“誰かを想う味”は、記憶に残ります。恋愛感情の端緒は、“思い出の積み重ね”にありますから」
    "……ミネ、それは……"
    「独り言です。では、各種申請書の確認に戻ります」

    (心理的な刷り込みと、五感と記憶の連動──恋愛の意識を、促進することはできたでしょうか)

    ~~~~~~

    「どうでした!?わたしの“彼女心配してる風”セリフ作戦!!」
    「効果はあったと見てよいかと。“恋人”という単語に過敏に反応していました」
    「アオバさんは!?」
    「……それっぽく言ってはみましたけど……やっぱり、ちょっとドキドキしちゃって……でも、ちゃんと答えてくれて……」
    「ってことは!!もう、先生の中に“恋愛”が戻ってきてるってことなんじゃ!?」

    ミネが冷静にまとめる。

    「──“意識のタネ”は植えられました。あとは、“気づき”を引き出す瞬間です」

    (私が……そのきっかけになれたら──)

    ほんの少しだけ、自分の足で踏み出す勇気が、芽吹き始めていた。

  • 76アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 16:05:33

    生塩ノアは整然とした机上を見渡し、ふと視線を止めた。
    万年筆。カードケース。クリップボードにマグカップ。
    それらはどれも、控えめで落ち着いた色調で統一されており、無機質な執務空間のなかで、異質な“温度”を感じさせた。

    「先生、最近使われている雑貨類……色味が、統一されていますね」

    先生は少し驚いたようにペンを止め、顔を上げた。

    "ああ……うん。確かにそうだね"
    「……もしかして、どなたかからの贈り物だったりしますか?」

    ごく自然な問いかけ。探るつもりはなかった。ただ、その“温度”の理由を知りたかった。
    先生はわずかに目を細め、そして微笑んだ。

    "うん。生徒からもらってね。使いやすいし、気に入ってるんだ。ずっと使わせてもらってるよ"

    さらりとした言い回し。だが──

    その声の奥に、どこか“感情の揺れ”を感じ取ったノアは、目を伏せながら小さく頷いた。

    ~~~~~~

    【先生の観察記録】
    17:12 先生の私物に共通した色調と雰囲気あり
    17:14 本人曰く「生徒からの贈り物」
    17:15 受け答えに明らかな“感情の温度差”を確認

    (……おそらく、私の知らない誰かに、先生は惹かれている)
    (その“誰か”の存在が、先生の感情に影響を与えているのだとしたら──)

  • 77アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 16:05:54

    帰り支度を終えたノアは、立ち上がり際にふと告げた。

    「先生──もし、心が引かれている相手がいらっしゃるのなら」
    "……?"
    「きっと、それは悪いことではないと思います。たとえ、まだご自身でも気づいていないとしても──」

    先生は、その言葉の意味を図るように眉をひそめたが、すぐに柔らかく笑った。

    "……そうかもしれないね"

    その笑顔が、“答え合わせ”にすら感じられて、ノアは静かに会釈して部屋を後にした。
    記録と観察の先に、“誰かの想い”が静かに滲んでいく。

    それはノアにとって、「名も知らぬ誰か」のこと──
    だが、確かに“先生の心に存在している誰か”だと、彼女には分かっていた。

  • 78アオバには幸せになってほしい25/05/10(土) 16:06:48

    今回はここまで。続きは夜に投下します。

  • 79二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 19:19:32

    ここに来てノアが出てくるのか
    ノアもアオバ×先生のオタクになるのかな?

  • 80二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 00:16:25

    待機してるぜ…!!

  • 81アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 03:13:08

    >>77

    お待たせしました。思ったよりも遅い時間になってしまったので、更新はちょっとだけにします。

  • 82アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 03:13:18

    「ふー……今日もお当番、頑張るぞー!」

    セリナは袖をまくって給湯室へ。
    手早くポットの水を替え、マグカップの位置を整えていたとき──

    (……ん?)

    ふと、ポットの隣に置かれた小さな紙包みに気づく。
    中身は、個包装された小さなクッキーとハーブティーのティーバッグ数種。
    そして、その上には小さなメモ紙。淡い紫の便箋に、流れるような丁寧な文字だった。

    『顔も知らない誰かさんへ  応援しています♪』

    差出人の名はない。
    だがその文面は、やわらかくて、どこか静かな思いやりに満ちていた。

  • 83アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 03:13:35

    「……!?」

    セリナは思わず、その場で固まった。

    (なにこれ……こ、これはもしかして──)

    「えっ……えっ、えっ、えっ!?!? ちょっと待って!?!?」

    (“顔も知らない誰かさん”って、もしかして、もしかして……っっ)
    (恋の、応援メッセージぃ~~~~~っ!?!?)

    「う、うわああああっ、これは事件です~~~っ!!しかも、“応援しています♪”って、えっ、どっち側!?アオバさん!?先生!?!?」

    あわあわとメモ紙を持ったまま、その場でセリナはくるくる回り出した。
    そのまま、脳内で当番のシフト表を思い出す。

    (でも……これって──昨日の当番だとしたら……ノアさん……!?)
    (まさか、“見守り勢”が増えてるってこと……!?)

    「し、静かにしていられるわけがないですよぉ~~~っっっ!!!」

  • 84アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 03:15:48

    一旦これだけ投下しておきます。続きはまた後ほど。

    また時間が遅くなるかもしれないので、良ければ保守がてら感想いただけると嬉しいです。


    >>79

    この後の展開に乞うご期待、ということでここはひとつ……。

  • 85二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 11:12:08

    昼保守がてら感想投げるわ
    みんなが自分の恋の応援してくれるの、アオバからしたらすごく心強いんだろうなー 本人は恥ずかしがってるけど本当は満更でもなくなっててほしい

  • 86アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 13:37:23

    >>83

    保守ありがとうございます。続きを投下します。

  • 87アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 13:37:35

    「──と、いうわけでっ!!これがそのメモです!!」

    セリナが診療机の上に、丁寧に保管された便箋を広げた。
    アオバとミネが、その文字を見つめる。

    『顔も知らない誰かさんへ  応援しています♪』

    アオバは瞬きしながら、静かに読み上げた。

    「……差出人は、ないんですね?」
    「はいっ。でもっ、内容的にただの“差し入れ”じゃないんです!これは明らかに“誰かの気持ちを応援してる”ニュアンスです!!」

    ミネは指でメモ紙をそっと押さえながら、分析的に目を細めた。

    「筆跡と文調、そして日付的に──このメモを置いたのは、“発見前日の当番者”。それで、生塩ノアさんの可能性が高い、と」
    「そうなんですっ!で、でっ!わたし、思ったんです!!」

    セリナは椅子から立ち上がり、拳を握りしめた。

    「先生にも、なにか“感情の変化”があったんじゃないかって!!」
    「せ、先生に……?」
    「うんっ! もしかしたら、ノアさんは先生の“心の揺れ”を察知して、こんなメモを残したのかもっ!!」

    アオバの目がわずかに揺れる。

    (先生に……変化が……?)

  • 88アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 13:37:49

    ミネが静かに口を開いた。

    「……それを確認するには、“直接的な問い”ではなく──“行動の観察”が有効です」

    セリナは即座に頷いた。

    「というわけでっ!! 次の作戦は、“先生尾行大作戦”ですっっ!!」
    「っ……尾行、ですかっ!?!?」
    「自然に距離を取って、さりげな~く、先生がどんな様子か観察するんですっ!」

    ミネが端末を開きながら、冷静に補足。

    「私たち3人で行動範囲と時間帯を分担すれば、過度な接近なしに全体像を把握できます」
    「ば、バレませんか……!?先生、わりと気づくタイプですよね……!?」
    「バレたらそのときですっ!!“健康観察の一環”って言い訳しましょう!!」
    「強引すぎると思うんですけどっ!?」

    とはいえ──アオバの胸の奥にも、小さな火が灯っていた。

    (先生の、知らなかった一面。……見てみたい、かも)

    こうして、“観察者のまなざし”を引き継ぐように。
    三人の静かな尾行作戦が、幕を開けようとしていた。

  • 89アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 13:41:26

    【時間:09:00~10:30  地点:シャーレ周辺、購買部エリア】

    ミネはシャーレ正門前のベンチに腰を下ろし、端末を開いたまま、先生の動きを観察していた。

    (購買部に向かった……定期備品の補充か。歩行速度、やや速め)

    シャーレから出た先生は、手にメモを持ちつつ、購買部方面へ。
    だが──

    (……そのメモ。表に“走り書き”のような字……)

    ミネは遠目に目を細めた。

    (ハーブティーの銘柄が……アオバさんの好み──差し入れとしてよく渡すものと一致)

    即座に、記録に書き込む。

    【観察記録No.67】
    行動:先生、自発的にアオバさんと同銘柄の茶葉を購入
    推測:アオバさんの嗜好が日常に組み込まれ始めている可能性

    だが。

    (……“偶然”という可能性も、否定できない)

    冷静に自分の思考を整えながら、ミネは静かに立ち上がった。

  • 90アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 13:44:23

    【時間:11:00~12:00  地点:カフェテラス周辺】

    セリナは街角のオープンカフェにて、メニューを開いたまま双眼鏡で先生を視界に収めていた。

    (よーし、カフェに入る先生確認っ!あそこって……デートスポットに使われる率高い店じゃんっ!?)

    先生は落ち着いた様子で、店内の片隅──二人掛けのテーブルに座っている。

    (えっ……誰か来るの!?もしや……デ、デ、デー──っ!?)

    しばらくして、ウエイターが静かに紅茶とスコーンを運んできた。

    (うん?一人用セット……?)

    しかも、鞄から取り出したのは──アオバとお揃いのカードケース。
    セリナ、震える。

    (先生……これ、“アオバさんとのお茶時間”をイメージしてる可能性、あるのではっ!?!?)

    【セリナの観察ログ!】
    状況:先生、ひとりカフェでアオバさんグッズ展開
    評価:妄想補正あり/でも尊い~~~っ!!

    「ふぅぅぅ~~~っっ、早くふたりきりで飲みに行ってぇぇぇ~~~っっ!!」

    セリナは空想の中で、カフェのテーブルに並べられるカップを“ふたり分”に増やしていた。

  • 91アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 13:49:21

    【時間:16:00~17:00  地点:シャーレの資料室裏手・物資倉庫付近】

    アオバは、制服のポケットに忍ばせた手帳を握りしめながら、倉庫裏の小道に佇んでいた。

    (先生は……確か今は、物品整理の時間帯のはず。人通り少ないけど、静かで落ち着ける場所……)

    そして──その瞬間。物陰から、うっすらと人の声が聞こえた。

    "ふ~……さすがにちょっと疲れたかも……"

    そっと覗くと、先生が、倉庫の裏側の簡易ベンチに腰かけていた。
    作業用の上着を脱ぎ、首元のボタンもゆるめている。

    (……こんなに、無防備な……)

    ポケットから取り出したのは──アオバの選んだハンカチ。それで額の汗を軽く拭う。

    "……暑いな……"

    先生の声は、誰にも聞かれないと思っているような、ちょっとだけ気の抜けた声。
    アオバの鼓動が、強く跳ねた。

    (──……っ)
    (せ、先生って、あんな顔もするんだ……)

    見てはいけないものを見てしまったような感覚。
    でも、それ以上に──
    ……もっと、見ていたい。

    そう思ってしまった自分がいて、アオバは静かに顔を覆った。

  • 92アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 13:49:46

    今回はここまで。続きはまた夜に投下します。

  • 93二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 22:48:12

    かわいい…ニヤニヤ(not教授)が止まらない
    もっと見ちゃえ

  • 94アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 23:04:29

    >>91

    お待たせしました。続けます。

  • 95アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 23:04:51

    「じゃあ……尾行報告会、はじめましょうかっ!!」

    セリナが机を挟んで両手をばしっと置いた。
    ミネは静かに端末を開き、アオバは緊張気味に膝の上で手を握る。

    「じゃあ、まずは……ミネ団長から?」
    「はい。先生は午前中、購買部にて“アオバさんがよく好む茶葉”と一致する商品を購入していました。記録、写真あり」
    「なっ……!?」
    「完全に一致しているわけではありませんが、傾向的にかなり近い銘柄です。無意識的に嗜好を共有している可能性が高いかと」

    アオバは小さく顔を伏せた。
    心臓が跳ねるのが、自分でもわかる。

    「で、で、でっ!!次は私ですねっっ!!」

    セリナが勢いよく身を乗り出す。

  • 96アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 23:05:15

    「先生、カフェでっ!!アオバさんとお揃いのカードケースをテーブルに出して、おひとり様ティータイムしてました!!しかもっ、アオバさん好みのやつ!!」
    「えぇぇ~~~~~~っっっっ!?」
    「絶対アオバさんとのお茶の時間を想像してましたよっ!あ、私の妄想じゃないですよ!?たぶんっ!!」
    「セリナさん……落ち着いて……っ」
    「先生の“選び方”と“使い方”には、一貫して“共有者の存在”を想起させる要素が見られますね」
    「じゃあ……つ、次、わたしです……」

    アオバは緊張で声を震わせながら語った。

    「倉庫裏で……先生が……すごく、無防備な感じで座ってて……」
    「無防備っ!?何があったんですかっ!!?」
    「物を運んでたみたいで──その……ハンカチ、私の……選んだやつ、使ってて……それだけで、なんか……」

    (胸の奥が、ぎゅっとして……)

    アオバは言葉を飲み込んだが、ふたりには十分伝わっていた。

    「ふっふっふ……これはもう、確定的に恋人未満って状態ですねぇ……」
    「つまり、“あと一押し”という段階です」

  • 97アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 23:09:09

    「そういえば……今日も差し入れ、ありましたよね?」

    アオバがふと思い出し、セリナが給湯室の台の上に置かれていた箱を持って戻ってくる。

    そこには、小さな箱に入ったマドレーヌとともに──淡い紫の便箋に書かれた、新たなメッセージが添えられていた。

    『“誰か”の心が少しでも前に進みますように  ささやかな甘さとともに、そっと応援をこめて』

    今回も、差出人の名はなかった。

    「これって……」
    「また、ノアさん……?」

    ミネはそっと指先で文字をなぞる。

    「文体と紙質、そして書字の角度が一致していますね。差出人は前回と同一人物と見て間違いありません」

    セリナがマドレーヌを手に取り、感極まった声で言った。

    「……こんな……こんなに優しいメモありますっ!?!?」
    「“顔も知らない誰か”に向けて応援を送る……それが“生塩ノア”という方なんですね……」

    アオバはそう言いながら、胸を撫でおろすように、そっと笑った。

    (もしかしたら、先生のこと──私のことも、少しだけ見てくれてたのかも)

  • 98アオバには幸せになってほしい25/05/11(日) 23:13:03

    今回の更新は一旦ここまで。続きはまた後ほど投下します。

  • 99アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 01:51:49

    >>97

    お待たせしました。余裕があったのでちょっとだけ更新します。

  • 100アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 01:52:19

    「ふーっ、今日もお疲れさまでした~っ!」

    セリナが荷物を片付けつつ、柔らかく伸びをする。
    アオバもミネも、それぞれの作業を終えて椅子に腰を下ろした。
    「……でも、なんだかんだ言って……先生って、結構かっこいいですよね~」

    セリナが唐突に口を開く。

    「えっ!?」

    アオバがすぐに反応し、顔を赤くした。

    「え、ええっ!?な、なに言ってるんですか急にっ……!!」
    「いやいや、ほら、ちゃんとしてるのにちょっと抜けてるところとか~、あと手がきれいだし、眼鏡越しの視線とか~……かっこいいっていうか、可愛いっていうか」
    「観察が細かいですね……」

    ミネが腕を組みながら、どこか納得したように頷く。

    「確かに、先生は造形的には整っていると思います。あとは人当たりのバランス。落ち着いた印象を与えつつ、時折見せる笑みの角度が好印象」
    「み、ミネさんまで……!」
    「でもでもっ、いちばんギャップ萌えするのは、アオバさんへの態度じゃないですか!?」
    「ぴゃっ!?急にこっちまで刺さないでほしいんですけどっ!?」

    アオバが顔を覆いながら、机に突っ伏したその瞬間──

    "……お疲れさま"
    「「「っっっっっ!?」」」

    扉が静かに開き、先生がひょっこりと顔を出していた。

  • 101アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 01:52:33

    "健診お疲れ様、今日もありがとね。何か忘れ物とかないか、様子を見に来ただけだから。ゆっくり休んでね"
    「は、は、は、はいっっ!!」
    「ありがとうございますっっ!!」
    「ご丁寧に、恐縮です」

    3人は全員、違う方向を向いて、背筋をぴんと張った。
    先生は軽く手を挙げ、穏やかな笑みを浮かべながら扉を閉めて出て行った。
    ──とん。と静かな閉扉音。

    「……………………」
    「……せ、先生が来るなんて……」
    「まさか、聞かれてました……?」
    「入室のタイミング的に、かなりの確率で会話終盤は聞こえていた可能性が高いですね」
    「ひゃ~~~~っっっ!!やっちゃった~~~!!どこまで!?“眼鏡の角度”!?“ギャップ萌え”!?アオバさんの話っっ!?」
    「あぁ~……っ、し、しぬかも……っ……!」

    アオバは真っ赤な顔を抱えて、足元で小さく丸くなる。

    「……それに、先生の顔──なんかちょっと、笑ってたような……」

    セリナがぽつりとつぶやいたその言葉が、3人の顔をさらに熱く染め上げた。

  • 102アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 01:54:12

    一旦ここまで。続きはまた明日に投下する予定です。

  • 103二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 08:08:27

    >>102

    ありがとう!

    続きも待ってるぜ…!

  • 104二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 10:35:47

    3人とも可愛いんだが、滅多に見られない乙女な団長を接種しにきてる感ある……!かわいい……!

  • 105アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 14:38:08

    >>101

    お待たせしました。続きを投下します。

  • 106アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 14:38:19

    アオバの健診を終え、いつもどおりの報告とやり取りが一段落したそのとき──

    "……ああ、そういえば"

    様子を見に来た先生が診察器具を片付けながら、ふとつぶやくように口を開いた。

    "この前の健診のあとさ。ちょっと様子見に来たときなんだけど……医務室の外から、少しだけ会話、聞こえてたよ"
    「「――――え」」

    空気が凍る。

    「「えええええええええええええええっっっっ!?!?!?」」
    「わわわっっ!? せ、せ、せんせいっ、あの、その、ど、ど、どこからですかっ!?!?」
    「なっ、なんの話のことですかっ!?き、聞き間違いとかって、ありますよね!?!?」

    アオバとセリナが揃って悲鳴を上げ、ミネは目元をそっと押さえてうつむいた。

    「ちょ、ちょっと待って!?“かっこいい”って……あのくだり……!?あれのときですか!?!?」

  • 107アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 14:38:32

    「い、いやっ、アレはちがっ……言葉の流れっていうか、その場の勢いで……!」

    詰め寄るアオバたち。先生は一歩下がり、苦笑しながら両手をひらひらと振った。

    "落ち着いて。別に怒ってるわけじゃないし、そんなに取り乱されると逆に困る……"

    「む、むりです~~~~~っっっ!!」
    "……いい歳しながらアレなんだけどさ"

    先生が言葉を選びながら、静かに笑った。

    "『かっこいい』とかどうとか──そういうことを言われると、ちょっと……恥ずかしいね"

    その顔には、微かな照れと、どこかくすぐったそうな笑み。

    ((……それが……それが、いちばん効くんですってば~~~っっ!!))

    "じゃ、今日もありがとう。無理せず、ゆっくり休んで"

    先生は手を振って、医務室を後にした。

  • 108アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 14:42:36

    「…………」
    「…………」
    「………………」
    「「…………ひゃあああっっっ!!!」」
    「うわああああっ、むりむりむりむりぃ~~~~~っ!!!」
    「い、い、今の顔……無理なんですけど……あんなのずるいです……っ……!」
    「恋する乙女にアレは劇薬すぎる……先生、罪な男……」

    床にへたりこみ、遠い目をしながら呟くセリナ。
    アオバは顔を真っ赤にして、呆然と立ち尽くす。
    ミネはというと、冷静そうな──しかし、手はわずかに震えている──様子でメモを取っていた。

    【本日の記録】
    先生、好意を自覚している可能性あり
    先日のやり取りに対し、恥じらいをもって反応
    被害者:セリナ、アオバさん(精神的損傷・中)

    結果として、この日──3人は改めて認識することになった。
    先生は、思っていたよりずっと、『破壊力がある』と。

  • 109アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 14:43:37

    お昼の更新はここまで。続きは夜あたりに投下する予定です。

  • 110アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 22:28:20

    >>108

    お待たせしました。続きを投下します。

  • 111アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 22:29:10

    「じゃあ今日はっ、先生の魅力を徹底的に言語化してみましょうっ!」
    「えっ、い、いきなりなんですかっ!?!?」

    アオバは目を丸くして狼狽える。
    ミネは既に端末を構え、分析モードに突入していた。

    「まず“低音で落ち着いた声”。あれは、親和性と安心感を同時に与える」
    「あとあと、“笑うときに目尻が下がる”んですよねっ!あれズルいっ!!」
    「“眼鏡の奥で目を細める癖”もポイントです。“見守ってる感”が強調される」
    「い、い、い、言わないでください~っっ!!なんか恥ずかしいんですけど……!」

    アオバは耳まで真っ赤にして、机に顔を伏せる。
    さらに畳みかけるように、セリナは語る。

    「だってっ!先生、ただいるだけで空気が穏やかになるしっ、“頼れるけど完璧すぎない”のがいいんですって!!」
    「無防備なときとの差が大きいのも特徴。ギャップが破壊力を増加させます」
    「だぁぁぁっ!!もうやめてくださいっっ!!わたしっ……死んじゃいますっ……!!」

    そのときだった。

    "……アオバ、ちょっといい?"
    「「「っっっっ!!??」」」

    背後から、いつも通りの穏やかな声。

    "今度の当番の日、ちょっと付き合ってほしいんだよね"

    それだけ言って──先生は、さも“用件だけ伝えた”という様子で、『じゃ、そういうことで』とだけ言い残し、静かに医務室を去っていった。

  • 112アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 22:29:51

    「…………」
    「…………」
    「………………」
    「……つつつついにぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ!?!?!?!?」

    セリナが椅子から滑り落ちそうになりながら大絶叫。

    「こ、こ、これって、これってこれってこれって──っっ!?デートのお誘いですか!?進展イベントですか!?!?!いつの間にそこまでっ!?」
    「せ、セリナさん、落ち着いてっっ……わ、わたしも、意味わかってないですっっ……!」

    ミネは静かに腕を組んでうなずく。

    「“付き合ってほしい”の意味の解釈は多義的ですが──タイミング的に、“私的な依頼”の可能性が濃厚です。いや、しかし……」
    「ミネ団長、作戦っ!作戦を!!」
    「……すでに脳内でシミュレーション済みです。まずは服装。次に話題の構成。最終的に、“先生の主目的”を逆算します」

    アオバは真っ赤な顔でうつむきながらも、ミネの隣に座り直した。

    「……やるしか、ないんですね……」
    「ええ。これは戦いです。“本気の当番”の始まりです」

    こうして、シャーレの医務室では、
    恋と作戦と想像の熱が、静かに、そして爆発的に渦を巻き始めていた──。

  • 113二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 23:34:31

    初めてあにまんでお気に入りのスレ見つけましたわ。先生に悶々とするアオバちゃんかわいい!!

  • 114アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 23:42:47

    トリニティの一角・セリナの自室にて。
    セリナたっての希望──もちろんミネも大賛成のうえ──で、アオバはこれから、着せ替え人形にされようとしていた。

    「さあアオバさん、覚悟はできてますねっ!?今日は、全力オシャレ作戦ですっ!!」
    「え、ええええ……っ、こ、こんなに色んな服が……!?」
    「当然ですっ!“先生とふたりきりの時間”ですよ!運命が変わるかもしれない1日──それに向けた大切な作戦会議なんですよ!?!?」
    「落ち着いてください、セリナ。アオバさんが混乱しています」

    ミネは横で冷静に数種類のトップスを並べながら、目を細めた。

    「……しかし、確かにセリナの言う通り、今日はデート当日に向けた“戦略的演出”が必要な日です。“さりげなく、でも明らかに特別”であることが重要です」
    「も、もう……全部、任せます……」

    アオバは観念したように椅子に座った。

    「言いましたね!?じゃあいっきまーすっっ!!」

  • 115アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 23:43:14

    「まずはこれっ、淡いグレージュのニットに、フレアスカートっ!」
    「うーん、可愛いけど“お出かけ感”がちょっと強すぎるんじゃ……!」
    「では、こちら。ハイネックの白ブラウスにライトグレーのジャケット。上品だけど柔らかい印象です」
    「ミネ団長、流石ですっっ!!ちょっと巻き髪入れてみましょう!」
    「え、え、ええええ~~っっっっっ!!」

    アオバは慌てながらも鏡の前に座らされ、ポーチで仕上げのリップをのせられる。

    「は、はずかしっ……こ、これ、普段の制服より落ち着かないんですけど……!」
    「でもね、でもね……すっごく、可愛い……!」

    セリナが、じっと鏡越しのアオバを見て、ぽつりと本音を漏らす。

    「……同感です。“気合いを入れた自分”に慣れていないだけで、間違いなく好印象です」

    アオバは頬を赤く染めながら、鏡の中の自分をちらりと見た。
    制服姿のときより、少しだけ“女の子”らしい自分。
    恥ずかしいのに、なぜか嬉しくて──胸が、ぎゅっとした。

    「……へ、変じゃないですか……?」
    「変なわけないですっ!!“本気のアオバさん”、めっちゃかわいいですよ!!」
    「アオバさん、当日の一言目で先生を黙らせられますね」
    「そ、そんなの無理です~~~~っっ!!」

    けれど、誰よりも自信なさげな彼女が、鏡の前でそっと微笑んだその瞬間。
    “少しだけ、自分に期待してもいいかもしれない”と思えたのだった。

  • 116アオバには幸せになってほしい25/05/12(月) 23:54:56

    今回はここまで。続きはまた明日投下します。

  • 117二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 02:47:47

    >>104

    ちょっとわかる。極端な救護が絡まない団長ってめちゃくちゃかわいいよね…。

  • 118アオバには幸せになってほしい25/05/13(火) 07:32:46

    おはようございます。
    今日は昼と夜に更新予定でしたが、身内が危篤のため更新できなさそうです。
    感想・保守等いただけると助かります……。

  • 119二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 10:20:05

    何……だと……

  • 120二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 12:02:35

    >>118

    それは大変ですね……。留守の間はここの保守はお任せ下さい!

  • 121二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 18:42:58

    保シュバッ!

  • 122二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 00:42:00

    保守保守

  • 123二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 01:21:35

    このレスは削除されています

  • 124アオバには幸せになってほしい25/05/14(水) 01:22:02

    >>115

    保守ありがとうございます……!!

    ちょっと落ち着いて時間が取れたので、少しだけにはなりますが続きを投下します。

  • 125二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 01:28:20

    このレスは削除されています

  • 126アオバには幸せになってほしい25/05/14(水) 01:29:42

    「……じゃ、これでいきましょう。文句なしですっ!」

    アオバと先生の“デート”当日。着替えたアオバを上から下まで眺めたあと、セリナは満足げに頷いた。
    柔らかいラベンダーグレーのカーディガンに、白のフレアスカート。
    まとめた髪にふわりと揺れるピン付きのリボン──まさに、“清楚の極み”といった風貌だった。

    「いちばん……かわいいです。今のアオバさん」

    ミネがストレートに褒めると、アオバは耳まで真っ赤になりながら小さくうなずいた。

    「ぇへ……じゃ、行ってきます……!」
    「頑張ってっっ!!観察──こほんっ、実況は任せてくださいっ!!」
    「それ言い直した意味あります……?」

    ~~~~~~

    「っきたきたきたきたっ!!先生っ!!時間ぴったり!!待ち合わせバッチリですっ!!」

    アオバと先生の合流地点から少し離れた物陰に、2人は隠れていた。
    セリナが双眼鏡で先生の登場を確認。ミネはセリナの双眼鏡を覗かせてもらいながら、隣でスコアシートのようなものを広げている。

    「アオバさん、ちょっと足元を気にしています。緊張度・中。表情は……やや硬いけど、頑張って笑顔作ってる……っ!」
    「先生、止まった……!えっ、見た!一瞬止まって、視線が……!」
    「“あれ? いつもと違う”って顔ですね……これは、明確に“見惚れてる”反応……!」
    「やばっ!やばっ!視線外さないまま喋ってる~~っ!!」

    セリナが状況を伝えるたびに、ミネはかなりの勢いでペン先を走らせる。
    先生がアオバに何か言うと、アオバが慌てて頭を下げたあと、微笑んで──そのまま、2人は並んで歩き出した。

  • 127アオバには幸せになってほしい25/05/14(水) 01:30:20

    「横並びで自然に歩いてる……っ!!距離感、最初から近っ!!」
    「……先生、会話のときにアオバさんの顔をチラ見しています。アオバさんにかなり意識が持っていかれていることが、表情に出ています」
    「デートっぽいですっ……!あれはもう完全に正真正銘のデート……!!」

    ~~~~~~

    「場所は……雑貨屋さん!?!?先生、アオバさんと一緒に選びたいんですかっ!?!?」
    「それとも“誰かへの贈り物”か……いや、“本人に渡すこと”も踏まえてアオバさんを呼んだ可能性……!」
    「やばい~~っ!柄とか色を選びながら顔が近づいてる~~っっ!!」
    「先生、無自覚かもしれませんが──距離が近いです。アオバさん固まってる……けど、明らかに頬が緩んでます」


    【アオバさん&先生のデート観察記録  記録者:蒼森ミネ】
    先生:明らかに“特別視”している行動複数
    アオバさん:挙動硬直→緩和、明確な笑顔を確認
    状況:私的行動の共有。信頼+好意の範囲内で進行中


    「~~~~~っっっ!!なにあれ!もう!!あれ絶対、お互いの心の中では“デート”って呼んでるやつですっ!!」
    「……先生、罪な男」
    「ミネ団長、それ私のセリフ~~っ!!」

  • 128アオバには幸せになってほしい25/05/14(水) 01:31:20

    今回はここまでにします。
    次回の更新もいつ投下できるか分からないので、感想・保守等いただけると助かります。

  • 129二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 08:01:06

    更新ありがてぇ…!

  • 130二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 09:17:59

    あぁ^〜脳が回復するんじゃぁ^〜

  • 131二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 16:05:49

    ほ、保守……でふっ!

  • 132アオバには幸せになってほしい25/05/14(水) 22:54:37

    保守ありがとうございます。
    ある程度余裕ができたので続きを投下したかったのですが、まさかの保存していたデータが消失してしまい……。
    また書き溜めてから投下します。すみません。

  • 133二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 23:21:03

    >>132

    了解です!それまで待機しておきます!

  • 134アオバには幸せになってほしい25/05/15(木) 00:09:42

    続きの投下ですが、明日になりそうです。
    ちょっとお待ちいただきます、すみません……!!

  • 135二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 02:18:14

    念のため保守。
    色々大変だと思うけど、楽しみに待ってます!!

  • 136二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 08:02:43

    朝保守!
    続き待機!

  • 137二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:57:08

    ほしゅ

  • 138二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 18:15:40

    このレスは削除されています

  • 139アオバには幸せになってほしい25/05/15(木) 18:16:13

    >>127

    保守ありがとうございます。どうにか続きができたので投下します。

  • 140アオバには幸せになってほしい25/05/15(木) 18:16:28

    "……ここ、静かで落ち着くんだ。前に一度来て、気に入ってね"

    雑貨屋を出たあと、先生が自然な足取りで案内したのは、こぢんまりとした雰囲気の良いカフェだった。
    以前、セリナが“単独行動中の先生”を尾行していたあの店と同じ場所──それに気づいて、アオバは少しだけ胸が高鳴った。

    (あのとき、先生……ひとりで来てたんだっけ……)

    木製のテーブル、柔らかな照明、窓際の席。そこに向かい合って腰を下ろすと、まるで“慣れた空間に馴染む恋人”のようだった。

    "……これ、季節限定かな。ちょっと気になる"

    先生がメニューのページをめくりながら指差したのは、写真映えする鮮やかなパフェ。

    『Sweet Together ~春の苺とショコラのタワーパフェ~』

    苺にホイップ・ビターチョコソース。プレートチョコには「Sweet Together」の文字。

    "じゃあ、これをひとつ。ドリンクはミルクティーで"

    そう先生が注文を済ませたその数分後。
    やけに笑顔な店員がテーブルに運んできたのは、トレーに乗せられた、明らかに巨大サイズのパフェと、ペアで色違いのティーカップだった。

  • 141アオバには幸せになってほしい25/05/15(木) 18:16:47

    「お待たせしましたー。カップル用サイズになりますので、どうぞごゆっくり〜♪」
    "──え?" 「ええっっ!?!?」

    アオバと先生の声が、完全にシンクロした。

    「か、かか、カップル用って!?せ、先生、これ……」
    "い、いや、そこまでちゃんと見てなかった……えっ、カップルサイズって……今言ったよね……?"

    あわててメニューを見返す先生。その下に、小さな注意書き。
    『※おふたり用メニューです。カップルでのご注文限定となります。』

    "ま、まあ……量的に一人では無理そうだし、ふたりならちょうどいいかも。ね?"
    「ふつうに恥ずかしいんですけど……!」

    先生は思わず咳払いをひとつ。
    一方のアオバは、顔から耳まで真っ赤になりながら、カップにミルクティーを注ごうとしてスプーンを落としそうになっていた。

  • 142アオバには幸せになってほしい25/05/15(木) 18:22:04

    「えっ──」

    カフェの様子がよく見える植え込みの中。
    セリナが双眼鏡を握りしめたまま、声を漏らした。

    「えっ、えっ、えっ!?!?!?!?!?!?!?!?」
    「……確認完了。予想以上のサイズです。形状、トッピング、プレート──明らかに2人用のパフェですね」

    ミネが端末を開きながら、静かに記録を始めていた。

    「……あれ、見た目で分かるタイプのカップル向けメニューですよね……!?」
    「はい。ネットで調べましたが、あのパフェの名前は“Sweet Together”。明確な恋人向けネーミング。加えてトッピングにはハート型ビスケット、色違いのペアカップ……視覚的にも逃げ道はありません」
    「せ、せ、先生!?あれ、自覚なかったやつですか!?!?あっちの会話は聞こえませんけど、アオバさんの肩がっ……肩が震えてますぅ~~っ!!」

    ミネは頷きながら、双眼鏡を借りてズームした。

    「……アオバさん、スプーンを握ったまま静止しています。顔が赤い。あれは“動揺”ですね」
    「せ、先生の様子は!?先生の表情っっ!!」
    「……真顔です。が、口元にうっすら笑み。おそらく“やってしまった”という自覚あり」

    セリナがひとりで地団駄を踏む。

    「こ、これ完全に恋愛イベントですよ~~~っっ!!本人たちが知らずにカップル用頼んじゃったやつ!!お約束なのに、破壊力が強すぎる~~っっ!!!」

    ミネは、パフェを挟んで少しずつ言葉を交わし始めたふたりの様子を記録に残しながら、小さく呟いた。

    「これは……“恋の交通事故”ですね」

  • 143アオバには幸せになってほしい25/05/15(木) 18:30:03

    (はぁ……びっくりした……)

    店を出たあと、ほんのり甘い余韻が残る中、アオバはそっと口元に手を当てていた。
    心臓がまだ落ち着かない。カップルサイズのパフェ。向かい合ってスプーンを動かす距離。笑顔の先生。落ち着いた声に、少し照れたような表情──そのすべてが、今日だけの“特別”のようだった。
    その横で、先生がふと立ち止まる。

    "……このあと、ちょっとだけ寄りたいところがあるんだけど。いいかな?"
    「えっ……?あ、はいっ!」

    先生は、街の端に向かって歩き出す。
    夕陽がビルの隙間から差し込む中、その向かう先には──小高い丘の上に、公園があった。

    ~~~~~~

    「……せ、先生が……!?公園……っ!?」

    カフェの出口を曲がった先、ふたりが目にしたのは──先生とアオバが、並んで坂道をのぼっていく姿。

    「行き先はおそらく、この先の丘の上にある展望公園──見晴らしのいいスポットとしても知られています。夕暮れ時に訪れるカップルも多いと聞きます。……極めて危険な──むしろ、歓迎すべきシチュエーションです」
    「やばい、やばいっ、これは、これは……“何か来る”やつっ!!恋のターニングポイントがっ!!」

    セリナは双眼鏡を覗き込み、ミネは端末を強めに握りしめる。

    「先生の動きが、普段と違います。やや早足。……目的地が明確に定まっている動き──ですが、少し緊張しているようです」
    「なになになに!?!?何か言う気!?!?告白!?!?“あの時のパフェ、実は……”みたいなやつ来ちゃう!?」
    「セリナ、焦らないでください。現時点ではあくまで“前兆”です。ですが、この時間帯の選択と場所の意図──」

    ミネの声が、わずかに熱を帯びる。

    「……極めて“何か言葉を交わす覚悟”を帯びている」

  • 144アオバには幸せになってほしい25/05/15(木) 18:30:19

    夕陽が街並みに長い影を落とす中──
    先生とアオバの歩幅は自然に揃っていた。

    風がふわりと吹いて、アオバの髪がなびく。
    先生は、その横顔を一瞬だけ見た。何も言わずに。

    (……なんだろう、この感じ……)

    アオバの心が、静かに騒いでいた。
    カフェのときと違う空気。穏やかだけど、どこか張り詰めていて。
    まるで──この先に、“何か”が待っているみたいで。

    丘の上に近づくにつれて、空が金色から赤へと変わっていく。
    その一歩一歩が、ふたりの関係の境界線を、静かに揺らしていた。

  • 145アオバには幸せになってほしい25/05/15(木) 18:31:03

    今回はここまでにします。続きはまた後ほど。

  • 146二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:27:35

    一応ほしゅ

  • 147二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:38:08

    本当に素晴らしい

  • 148アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 01:10:52

    >>144

    お待たせしました。続きを投下していきます。

  • 149アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 01:11:05

    丘の上の公園には、夕陽が静かに降りていた。
    長く伸びたふたりの影が、ベンチの足元に重なって揺れている。
    風が通り抜ける。遠くで鳥の声がして、街のざわめきも次第に薄れていった。

    「……気持ち、いいですね。風が」

    アオバがふと漏らした言葉に、先生は少しだけ笑みを見せる。
    そして、空の色を見上げながら、ゆっくりと語り出した。

    "……そういえば、アオバと初めて会ったのって……“あの事件”のときだったね"
    「……ハイランダーの……」

    アオバは少し驚いたように、でもどこか懐かしそうに頷いた。

    "あの事件のあとも、何回かアオバの仕事を手伝ったり、コーヒーマシンを直してもらったりもしてさ"

    先生の目が細められる。
    優しい声に、ほんのわずか、過去を振り返るような寂しさが混じっていた。

    "……だけど、今みたいにちゃんと“接するようになった”って言えるのは、やっぱり──アオバを医務室に連れていったとき、かな"
    「──あ」

    アオバの肩が、ぴくりと動く。
    その日のことは、忘れようにも忘れられなかった。──忘れるはずがなかった。
    なぜなら、それはアオバにとって、いまもなお燻り続ける大切な感情を得られるきっかけになったものだからだ。
    先生は、静かに言葉を続けた。

    "あのときからかな。なんとなくだけど、目が離せないような気がして……ミネたちに頼んで定期健診の場を設けてもらったり、当番の回数もちょっとだけ増やしたりして"

  • 150アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 01:11:24

    アオバは、そっと視線を伏せた。
    あの夜のことを、思い出していた。
    “最悪”としか形容できない不調。そのさなか差した、『先生』という光。
    先生の腕の中はあたたかくて、怖くなくて、ずっと覚えている温度だった。

    "それからは、少しずつだったけど……報告や当番や、差し入れや。会う機会が増えていって"

    先生はそっと、ベンチの背もたれに体を預けた。

    "……気づいたら、いつのまにか、アオバがそばにいるのが“当たり前”になってた"

    その言葉に、アオバの胸がきゅっとなる。
    嬉しくて、切なくて、でも──信じられないほど、あたたかくて。

    "真面目で、よく気がついて、責任感があって──でもどこか無理してしまう。そんなアオバを見ていると……気がつけば、目で追っていた。そばにいると、安心するって思ってた"
    「先生……」
    "──でも、私は先生で、君は生徒だから。距離のとり方が、ずっと分からなくてね"

    言葉の終わりが、ほんの少しだけ遠ざかるような響きだった。

    "それでも……今日は、こうして一緒に来られて、よかったと思ってる。ここに来て、改めてそう思ったよ"

    夕陽が沈みかけ、空はゆっくりと藍に染まっていく。
    アオバは、少し唇を噛んで、それからそっと頷いた。

    「……私も、です。先生と一緒にいられて、すごく、うれしくて……」

    声は小さかったが、先生には、ちゃんと届いていた。
    風が止んで、しばしふたりだけの静寂が流れる。その沈黙には──言葉よりも深い、確かな想いが満ちていた。
    『その時』が、確かに近づいていた。

  • 151アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 01:12:03

    今回はここまで。続きはまた明日投下予定です。

  • 152二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 08:02:50

    ありがとう!
    また待機させてもらうぜぇ!!

  • 153二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 16:29:45

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 17:28:41

    クライマックスの予感がする……一体、どうなっちゃうんだ!?

  • 155アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 21:35:38

    >>150

    お待たせしました。続きを投下します。

  • 156アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 21:35:50

    風がやみ、木々の葉擦れも静まったように感じられた。
    沈みゆく夕陽の中、ふたりの間に流れる空気は、まるでどこにも逃げ場がないほどに張り詰めていて。

    アオバは、両手をそっと膝の上に置いていた。
    自分でも分かるほど、指先が震えている。

    (なんで……こんなに……一緒にいられて嬉しいはずなのに、苦しい……)

    そのときだった。
    ふいに、先生の右手が静かに差し出され──

    アオバの手の上に、そっと重ねられた。

    「──っ……!!」

    反射的に体がびくりと跳ねる。
    けれど、拒むことはできなかった。拒みたくなかった。

    先生の手は、少しひんやりしていて、でも確かに優しかった。
    まるで、言葉にできなかった思いを、そっと包むように。

    "……アオバ"

    名前だけを呼ばれて、顔を上げる勇気が出なかった。
    息を呑んだまま、アオバはじっと、重なった手を見つめていた。

  • 157アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 21:42:29

    「…………」
    「……せ、セリナ、表情が……」
    「し、ししししし──」
    「……セリナ?」
    「しんじゃう……尊死しそうです……!!!」

    公園の外周の植え込みに伏せながら、双眼鏡を握りしめていたセリナ。
    ちらりと横目で見ると、叫び声を押し殺しながら地面を転がった。

    「今……今っっっ!!手がっ!!手がっ!!乗ったっ!!乗りました今っ!!この目で見ました~~~~っ!!」
    「静かに。発声を抑えてください。ですが──」

    ミネは端末を手に、しっかりとその一部始終を見ていた。

    「先生の動作は自然。ですが、意図的なものですね。アオバさんの反応は、完全に静止。明確に“恋愛関係未満の最高到達点”を超えています」
    「指、動いてないです~~っっ!!あれは触れた瞬間、“感情フリーズ”してますっ!!」
    「……今の手の重ね方。明らかに“覚悟”をもったもの。下手に言葉を添えれば壊れてしまいますが、黙っていれば、何も変わらない──その狭間の動作です」

    セリナは双眼鏡を握ったまま、遠くのベンチを見つめて小さく震えた。

    「先生……やるときはやる男だったんだ……!」
    「記録更新。関係性のフェーズ移行を確認。ここから先は、感情の交差を避けられません」

    2人が息を呑んで見つめる先では、先生がまさに口を開こうとしていた。

  • 158アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 21:48:44

    先生の手が、アオバの手の上に重なっていた。
    その温もりに包まれて、アオバはひとつ、深く呼吸をする。
    言葉は何もなかった。
    先生は、ほんの少しうつむきながら、低く、ゆっくりと口を開いた。

    "……アオバ"

    その声には、いつもと違う“震え”が混じっていた。

    "君が、そばにいてくれること……本当にありがたくて、嬉しくて。毎日が少しずつ変わっていくのを感じてた"

    アオバは動けなかった。
    ただ、手の感触を通して、先生の言葉をひとつひとつ受け止めていた。

    "……どんな言葉が正しいのか、どんな関係が許されるのか、ずっと迷ってた。君を“生徒”としてだけ見ていれば、簡単だったのに──"

    夕焼けが、先生の表情を橙に染めている。

    "……もう、嘘はつけない。──アオバ。……これからも、そばにいてほしい"
    「────」

    その言葉が落ちてきた瞬間、アオバの胸が、音を立てて揺れた。
    呼吸が詰まり、視界が滲む。
    言葉が出ない。
    言いたいことは、山ほどあるのに。
    “うれしい”も、“信じられない”も、“怖い”も──全部が胸の奥で渦を巻いて、うまく口から出てこなかった。

  • 159アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 21:48:59

    「……わ、わたし、は……っ」

    しぼり出すように、声がこぼれる。

    「──ずっと……先生のこと、ずっと……目で追ってて、でも……“それ”だけじゃだめだって、役に立たなきゃって、自分に言い聞かせてて……っ」

    重なる手に、力が入る。
    声は震えていたけれど、言葉は確かだった。

    「でも……でも、やっぱり……わたし……先生の隣が、いちばん落ち着くって……今日、改めて、思ったんです……っ」
    "…………"
    「先生のそばにいられるなら……それだけで、いいって……そう思えたんです……」

    顔を上げたとき、目の奥に涙が溜まっていた。
    しかしアオバの表情は穏やかで、その笑顔は、これまでのどれよりもまっすぐで、あたたかかった。

    先生は何も言わず、ただ静かに頷いた。
    手は、離れなかった。
    沈む陽が、ふたりの影を重ねていく。

    言葉では言い尽くせない想いが、ようやく交差したその瞬間──
    アオバの心は、初めて“救われた”気がしていた。

  • 160アオバには幸せになってほしい25/05/16(金) 21:50:31

    更新は一旦ここまで。続きはまた後ほど投下する予定です。

  • 161二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 00:50:50

    待機!

  • 162二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 01:01:16

    乙です
    とりあえず明日への扉流しておきますね

  • 163二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 02:58:57

    >>162

    久々に聴いてきた やっぱいい曲だわ

  • 164二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 07:40:05

    保守だぜ!

  • 165二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 16:55:58

    おお

  • 166アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 18:14:58

    >>159

    お待たせしました。続きを投下していきます。

  • 167アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 18:15:10

    夕陽がゆっくりと沈みかけていた。
    風が止み、世界がふたりだけを残したような静寂の中。
    まだ手を重ねたまま、アオバは深く息を吸い込んだ。

    (今なら……言える。言わなきゃ……)

    先生の目を、まっすぐ見つめる。
    そして──

    「──先生のことが……好きです」

    はっきりとした声だった。
    言葉にしてしまえば、逃げられない。だから伝える。

    「わたし……先生の、恋人になりたいです」

    ふいに、先生の目がわずかに見開かれる。
    そして──

  • 168アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 18:15:39

    "……そっか"

    微笑むように、息を吐いたあと。
    先生は、ほんの少しだけ、耳まで赤くしながら、目を細めて言った。

    "──さっきの、“そばにいてほしい”っていうの……『そういう意味』だったんだけどな"
    「……っ」
    "ちょっと……遠回しすぎたかな。ごめん"

    その笑顔が、どこまでもやさしくて、どこまでも照れくさそうで。
    でも、心の底からうれしそうだった。

    アオバは、その顔を見たまま動けずにいる。
    でも──自然と、目元が潤んで、口元がゆるんでしまった。

    「……ずるいです……先生ばっかり、そういう……」

    そのまま、ふたりは何も言わずに笑い合う。
    ベンチの影が長く、静かに伸びていた。

  • 169アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 18:20:02

    永遠にも感じられた間。
    アオバの胸に、どっと熱が押し寄せた。心臓の音がうるさい。

    (言っちゃった……言っちゃった……っ!)
    (でも……先生が……そんなふうに……)

    堪えきれず、ぶわっと涙があふれた。

    「っ……うぅ、あ、あれっ……ち、ちが……こんなつもりじゃ……っ」

    ぱたぱたと手で目元を覆うも、止まらない。

    "──わっ……アオバ!?だ、大丈夫……?あの、そんな、泣かなくても……!"

    先生は驚いて立ち上がりかけ、どうしていいかわからずアオバの前で右往左往。
    普段は落ち着いている彼が、今は完全に“狼狽している大人”だった。

    「ちがうんです……うれしくて……でも、はずかしくて……っ、なんかもう、全部いっぺんに来て……っ!」

    先生は、そっと彼女の背に手を置いて言った。

    "うん……そっか。……うん、大丈夫。泣いていいから。……ここにいるから"

    アオバはぐしぐしと目元を拭きながら、小さく頷いた。

  • 170アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 18:24:19

    「──っっっ!!」
    「でっ、出たぁぁああああああああ~~~~~~~っっっ!!!」

    セリナは双眼鏡を床に落としそうになりながら、しゃがみこんだまま暴れていた。

    「言ったっ!言ったうえで泣いたっ!!尊さで息ができないんですけど~~っ!!せ、先生!?先生なにやってるの!?焦ってるの!?うろたえてるの!?!?もう全部最高じゃないですかぁぁっ!!」

    その隣で、ミネも──めずらしく口元に手を当て、目を見開いていた。

    「感情が……溢れすぎて……“泣いた”……!?“泣いた”んですか今……!?先生がフォロー……あああ……っ」
    「尊さで理性が溶けるってこういうことだったんですね……っ」

    セリナはとうとう地面に突っ伏し、
    ミネは口を押さえながら、目に涙を浮かべていた。

    「わたしっ、いまっ、“心の中”だけじゃ祝福が足りないんですけどぉぉぉっ!!!」
    「……叫びたい。けど、ばれたくない。──この世界の理不尽」

    少し離れたベンチ。
    夕焼けのなか、先生とアオバが、泣き笑いのまま笑い合っていた。

    その姿は、まるでこの日のすべてに祝福されているかのようで──
    ふたりの想いが、確かに繋がったことを、誰よりも強く、誰よりも嬉しく見届けたふたりが、そこにはいた。

  • 171アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 18:26:45

    今回はここまで。次回はまた夜に投下する予定です。

  • 172アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 18:28:46

    なお、次回が最終の更新になる予定です。お楽しみに。

  • 173二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 20:10:48

    よかったなアオバ……。

  • 174二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 22:13:09

    ウォォォォォォ!!

  • 175アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 23:24:10

    >>170

    お待たせしました。続きを投下します。

  • 176アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 23:24:24

    いつもの医務室。変わらない診療机。
    いつも通りの定期健診の空気──の、はずだった。
    だが。

    「……あのっ、ひとつ、伝えておきたいことがあって……」

    アオバがそっと顔を上げて言った瞬間、
    セリナとミネの手が、まるで合図されたかのように同時に止まる。

    「「…………」」

    アオバは、制服の裾をそっと握りながら、小さく笑った。

    「その……先生と……正式に、お付き合いすることになりました」
    「…………っっっ!!!!!」

    セリナ、爆発。

    「きたあああっっ!!!正式報告入りましたああ~~っ!!尊いっっっ!!オフィシャルになりましたっ!!これはもう祝うしかないやつ~~~っ!!」

    ミネも、感情を抑えきれない口元を手で隠しながら、それでも冷静に一言。

    「公式な報告として、今ここに恋人関係の成立を確認しました。……おめでとうございます、アオバさん」
    「え、えっと、その、ありがとうございます……っ!」

    アオバは顔を真っ赤にしながらも、きゅっと背筋を伸ばす。

  • 177アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 23:24:37

    「……本当は、まだ夢みたいで……ちゃんと言葉にするの、すごく緊張したんですけど……」

    それでも──ちゃんと、伝えたかった。

    「……わたし、セリナさんとミネさんのおかげで、ここまで来られたんです」
    「えっ!?」
    「……私たち、ですか?」
    「はい。……背中を押してくれて、服も一緒に選んでくれて……いちばんそばで、応援してくれて……」

    アオバは、静かに深呼吸してから、ふたりの顔を順に見た。

    「……本当に、ありがとうございます。……おふたりがいてくれて、よかったです」

    セリナは、すでに目元をぬぐいながら叫んだ。

    「泣くやつ~~っっ!!それもう、泣くやつじゃないですかぁ~~~っっっ!!!」
    「本当に……よかったですね、アオバさん」

    ミネの声も、ほんの少しだけ震えていた。
    アオバは小さく笑った。心の奥から、ふわっと灯るような笑顔だった。

    「これからも、がんばります。ちゃんと、向き合っていけるように……」

    それは“恋人として”だけじゃなく、“自分自身”としての決意だった。
    医務室の空気は、静かで、あたたかくて──やさしい幸福に満ちていた。

  • 178アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 23:29:10

    夕方の給湯室。
    ミネは水を替えるためにポットを持ち上げようとし──その棚の隅で、ひとつの小箱に気づいた。
    焼き菓子と数種類のハーブティーの詰め合わせ。
    ラベンダー色の包装紙に、そっと差し込まれていたのは──1枚の便箋。
    静かに指先で広げたそのメモには、流れるような筆跡で、こう綴られていた。

    『あなたの想いが、静かに、優しく実ったこと。
    顔も名前も知らないけれど──心からお祝いします。
    これで最後にします。どうか、あなたが穏やかな日々を過ごせますように』

    ミネはしばらく無言のまま、便箋を見つめていた。
    手紙の文体、文字の傾き、便箋の色合い──それは間違いなく、“生塩ノア”のものだった。
    ノアは“アオバ”という名前を知らない。先生と彼女の関係も、詳細には知らないはずだ。

    ノアは、観察を通して見つめていたのだ。
    声に出されることのない気持ち。誰かを見つめるまなざし。
    そして、それが静かに重なっていった時間の、色の変化。

    (……最後にします、か)

    ミネはそっと便箋を畳み、箱に戻した。
    “見守るだけ”という距離を貫いたノアなりの、けじめ。
    干渉ではなく、静かな祈りだけを残して、幕を引いた──その意思が、そこに確かにあった。

    「……あなたの祝福、確かに届きましたよ」

    小さく、声にはならない呟きを置いて。
    ミネは給湯室をあとにした。
    その背には、ラベンダーの香りがほんのりと残っていた。

  • 179アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 23:35:58

    いつもの健診が終わった帰り際、ミネはそっと、手元の便箋を二人に見せた。
    淡い紫色の紙に、柔らかく流れる文字。

    『あなたの想いが、静かに、優しく実ったこと。
    顔も名前も知らないけれど──心からお祝いします。
    これで最後にします。どうか、あなたが穏やかな日々を過ごせますように』

    「……これは?」

    アオバが思わず声を漏らす。
    セリナも便箋を覗き込み、眉を上げた。

    「これは……あのときの、差し入れの……」

    ミネはうなずく。

    「給湯室に残されていました。文面、紙質、筆跡……いずれも、以前から匿名で手紙を残していた人物と一致しています」
    「生塩ノアさん、ですか?」

  • 180アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 23:36:19

    「……はい。彼女はあなたの名前も、先生との関係も、きっと何も知らない。それでも、静かに……誰かの──おそらく、先生の感情の行方を見届けていたのでしょう」

    アオバは、便箋をそっと両手で持ったまま、しばらく何も言わなかった。
    やがて──

    「……知らない人、なのに。私のことなんて、何ひとつ知らないはずなのに……」

    目を伏せ、優しく笑った。

    「なんで、こんなにあったかいんでしょうね……」

    隣でセリナが、少しだけ鼻をすすりながら、ぽつりと呟いた。

    「……名前も知らない誰かに、ここまで祝ってもらえるなんて……こんなの、もう……泣くしかないじゃないですかぁ……」

    ミネは黙って立ち上がり、給湯室のポットに新しい水を注ぎながら、静かに言った。

    「感情というものは、直接でなくても伝播するものです。彼女のような在り方も……立派な“支え”です」
    「……はい」

    アオバは便箋を胸元にそっと抱きしめた。

    「……ちゃんと、大事にします。……この人の気持ちも……」

    誰にも届かないかもしれない祝福が、確かに心に届いていた。
    それを知ることで、また少しだけ、世界が優しくなる。
    医務室の窓の外、日が傾き、淡い光が部屋を染めていた。

  • 181アオバには幸せになってほしい25/05/17(土) 23:37:20

    これで投下用に用意したぶんは終了です。みなさん感想・保守ありがとうございました。

  • 182二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 01:50:25

    お疲れ様でした!!みんな可愛くて最高だった

  • 183二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 08:13:43

    良かった…
    すごく良かった…!

  • 184二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 10:38:52

    ぐねぐねと曲がっていたけれど、それでも一本道な、アオバらしい恋の話だったね。ある意味それは平行線だと思ってたけど、ずっと一緒だったんだ。

  • 185二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 14:49:56

    すげぇいい物語をありがとう……

  • 186二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 19:10:29

    アオバはもちろんだけど、救護騎士団の2人もめちゃくちゃかわいかった〜
    やっぱ団長ってかわいいな……(再確認)

  • 187二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 20:23:50

    >>186

    言動テンションぶっ壊れ続きなおたんこナースセリナと真面目な顔と仕草ながらノリノリな団長の対比?いいよね

  • 188二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 23:15:32

    1人で体調ぶっ壊してたアオバが、同級生の友達と優しい先輩と焦がれてた恋人ができるの本当にいい。この3人はこのまま定期的に会ってお茶会して女子トークしてて欲しいね。

  • 189二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 23:41:35

    次回作にも期待……(ボソッ)

  • 190アオバには幸せになってほしい25/05/19(月) 00:13:31

    感想ありがとうございます。
    続きの話などは今のところ考えておらず、アオバと先生、セリナたちのお話はこれでおしまいの予定です。
    もし別のお話があれば、またそのときにスレ建てします。
    残り10レスぐらいなので、感想で埋めていただけると嬉しいです。
    ではまた。

  • 191二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 10:13:10

    おもしろかったよ

  • 192二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 10:44:52

    あんた、サイコーだったぜ

  • 193二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 17:06:54

    面白かった〜
    みんな(というか世界?)がアオバに優しくて、それでアオバも少しは世界のことが好きになれたのかなって思う
    まあそれはそれとしてハイランダーの労働環境は終わってるんだけど

  • 194二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:06:19

    3人と1人の友情と青春に幸あれ!!素敵なSSをありがとう!!

  • 195二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 21:34:10

    >>194

    描いたな貴様!!ありがとう!!!!

    みんなポーズにノリノリだし隅っこにちゃんとノアがいるのも可愛い

  • 196二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 23:22:57

    >>194

    これナナオアカリの「恋愛脳」と「チューリングラブ」のPVパロディなのか。おたんこナースと恋愛暴走特急とサイレントパッション団長にピッタリだw

  • 197二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 23:25:35

    >>193

    このアオバなら跳ね返さなくても乗り越えていけそうな希望があるのがいいよね。折れそうになっても、頼れる友達も先輩も恋人もいるし。

  • 198二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 08:00:06

    >>194

    うおおお!!

    素晴らしい絵だ…!

  • 199アオバには幸せになってほしい25/05/20(火) 10:43:12

    >>194

    素晴らしいイラストありがとうございます!!

    みんなかわいい……ノアもちゃんと拾っていただけて嬉しいです…!!!

  • 200二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 19:59:05

    200ならアオバは幸せになれる

オススメ

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