アリス、冒険(短期留学)します!

  • 1二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:18:11
  • 2二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:19:04

    埋め

  • 3二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:19:13

    立て乙
    Part2は夜中に建てたものだから落ちた感じかね

  • 4二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:19:20

    うめ

  • 5二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:19:54

    建て乙

  • 6◆GKl/O7H4.E25/05/08(木) 22:21:46

    スレ確認してなかったけど、パート2のスレ誰かが建ててくれてたようで

  • 7二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:22:44

  • 8二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:24:28

    まぁしゃーないね。

    良く言えば自由、悪く言えば混沌としてるゲヘナでアリスは何を学んでいくのか…

  • 9二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:26:02

    保守を7まではやったから見逃してくれ

  • 10◆GKl/O7H4.E25/05/08(木) 22:27:49

    とりあえず笛にデータ移行して、手直し楽になったのと地の分を増やすと超見づらい問題が解決したので、文の書き方大幅に変えて全部手直ししてました。

    とりあえず最新話と同じように全部キャラ名から台詞の書き出しせず、地の文で書くように修正しました。


    アリス、冒険(短期留学)します! - ハーメルンあにまんに投稿していたSSの保管庫 手直し、加筆訂正はちょくちょくする予定。 各校交流の為に交換留学が行われることになりゲヘナへ、アリスが留学したというお題で書…syosetu.org
  • 11◆GKl/O7H4.E25/05/08(木) 22:30:38

    あと書きたい話をまとめてたらもうGWなんか余裕で過ぎ去ってしまったことをここに謝罪しておきます・・・

    今後も定期的に書き続けるのでご容赦ください

  • 12二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:47:15

    変な時間にスレたって落ちていたのはそういうわけか。
    盾乙。
    あんまり気負いすぎないでね。

  • 13二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 22:55:12

    SSもお疲れ様です
    キラキラ部と接触か

  • 14◆GKl/O7H4.E25/05/08(木) 23:13:44

    まぁこのスレ
    アリスの留学ネタが面白くて色々ネタが豊富で乗っ取りしたという独特の経緯があるので、今後も好き勝手はやるんですが……、ショートショートは挟めるので見たい組み合わせの希望があればスレに書いてくれればちょくちょく書いて行こうかと思ってます。

    ではでは

  • 15二次元好きの匿名さん25/05/08(木) 23:16:58

    >>14

    おもろいからどんどん続けてクレメンス

  • 16二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 07:34:06

  • 17二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 11:28:18

  • 18二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 17:52:49

    保持

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/09(金) 17:55:46

    >>14

    気にしてない気にしてない

    思う存分にお書きください

  • 20二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 00:20:35

    ギャルジョブをマスターしたアリスになるか

  • 21二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 09:14:04

  • 22二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 11:27:15

    是非とも便利屋と絡んで欲しい。最終的な爆発オチも含めて

  • 23二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 12:33:04

    >>22

    アルマッマ…

  • 24◆GKl/O7H4.E25/05/10(土) 15:03:33

    >>22

    ゲヘナの現在判明してるネームドキャラの部活単位での話は全部作る予定です。

    部活の関係性無視した絡みとか希望があればって感じですね

  • 25二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 18:31:31

    保持

  • 26二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:27:40

    保持

  • 27二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 00:07:45

  • 28二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 00:09:45

    >>24

    最終的にマコトと1対1は個人的に見て見たいですね

  • 29◆GKl/O7H4.E25/05/11(日) 05:54:19

    >>28

    設定的にそれなりに日数進んでからだと思いますがなんとかします

  • 30二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 11:51:03

    >>28

    どうせマコトがアフロになるオチだろうな

  • 31二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 12:15:32

    >>30

    画期的なマコトの使い方を教えてくれると聞いて

  • 32二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 17:44:58

    普通にヒナとユリユリして欲しい

  • 33◆GKl/O7H4.E25/05/11(日) 21:14:01
  • 34二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 21:15:35

  • 35二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 21:33:42

    お疲れ様です

  • 36二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 23:45:43

    投稿乙
    次も楽しみにしてるで

  • 37二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 05:16:57

  • 38二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 06:44:14

    なんか厄介そうなのが部活が増えたねw

  • 39二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 13:08:12

    ほしゆ

  • 40二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 17:51:00

    保持

  • 41◆GKl/O7H4.E25/05/12(月) 19:11:18
  • 42二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 19:17:49

  • 43二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 19:23:58

    AlphaZeroに勝てるは草

  • 44二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 23:03:14

    保持

  • 45二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 03:28:51

  • 46二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 06:35:01

    保守

  • 47二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 09:51:12

    かの人とのトレーニングはアリスもしていなかったっけ?

  • 48二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 12:47:13

    保守

  • 49◆GKl/O7H4.E25/05/13(火) 13:45:20

    >>47

    ありがとうございます。悪評は悪評として認識してるイメージだったので手直ししときます。


    他のSSスレ見た感じ、直接レスに張り付けてるぽいので、一回ep1終わったら書き溜め作る間保守代わりにep1から張り付けしてこうと思います。


    スレの運用慣れてなくて申し訳ありません

  • 50二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 18:17:26

    保守

  • 51◆GKl/O7H4.E25/05/13(火) 21:33:50

    ep1 "Alice in the Gehenna "①
    アリスが一晩中ゲームに熱中していると、カーテンの隙間から朝の光が差し込んできた。
    時計を見ると、時刻は午前6時を少し過ぎたところ。
    案内の書類には「7時30分に部屋に迎えに来る」とある。

    アリスはゲームを中断し、名残惜しげに電源を落とすと早めの身支度を始めた。
    備え付けのシャワーで熱いお湯を浴び、寝間着を洗濯かごに放り込み、髪を整える。
    ゆっくりと準備を進めていると、気づけば出発の時間だった。部屋の呼び鈴が鳴る。

    「はーい!」

    ドアを開けると、今日も気だるげな赤髪と、元気な悪魔っ娘が立っていた。

    「アリスせんぱーい、おはよー!」
    「ふぁ……おはようございます」
    「はい!二人ともおはようございます!」

    三人は軽く挨拶を交わすと、そのまま寮を後にした。
    食堂で朝食を済ませた後、イロハは二人を教室に連れて行くと、そのまま別れを告げた。
    学年が違うため、授業は別々だ。

    教室はまだざわついており、生徒たちは自由におしゃべりを楽しんでいる。
    そこへ転入生――昨日の主役――アリスが入ってくれば、当然注目の的だ。

  • 52◆GKl/O7H4.E25/05/13(火) 21:35:20

    昨日の大捕物とメイド姿の話題は、すでに教室中に広まっていた。
    イブキと話していたアリスに、早速何人かが話しかけてくる。

    「アリスちゃんも授業受けるんだ?昨日のあれ見てたよ!かっこよかった!」

    「うんうん!すごかったよ~!よろしくね!」

    「はい!よろしくお願いします!」

    アリスはゲヘナ生ににこやかに挨拶を返し、指定された席に着く。
    教室での生活にも、特に不安はなさそうだった。

    ――ただし、それはアリスが「敵意ある視線」にまだ気づいていなかったからに過ぎない。

    やがて教師が教室に入り、簡単な自己紹介の後に授業が始まった。
    ミレニアムと比べると授業の内容はかなり易しく、アリスは特に困ることもなく午前中を終える。

    昼休みも和やかに過ぎていき、放課後には教室で友人たちと談笑。
    初日としては申し分ない滑り出しだった。

    その放課後、再びイロハが様子を見に来る。
    アリスの机のまわりには生徒たちの輪ができていた。
    その中をかき分け、イロハが声をかける。

  • 53◆GKl/O7H4.E25/05/13(火) 21:36:42

    「お疲れ様です。……随分、人気ですね?アリスさん。一応、この後の予定を確認しておきたいのですが」

    「イロハ!お疲れ様です!もう少しみんなとお話してから帰ろうと思ってます。イロハはどうしますか?」

    「……万魔殿の仕事が残っているので、イブキと二人で帰ってほしいんですよね。なるべく寄り道せず、校舎からまっすぐ」

    「了解しました!……校舎でちょっとだけ遊んでから帰ります!」

    「遊んで……。まあ、構いませんけど。夕ご飯の時間には気をつけてくださいね?では、また明日」

    「はい!また明日です!」

    そう言って別れると、イロハはその豊かな髪を人波にまぎれさせるようにして去っていった。

    その後も小一時間ほど、アリスとイブキは教室で駄弁っていた。
    だが、その間に「敵意ある視線」は増していた。

    アリスの周囲にいた生徒たちも徐々に減り、気づけば残っていたのは2、3人。
    そのときだった。遠巻きにアリスを睨みつけるような生徒たちの集団が、じわじわと距離を詰めてきたのだった。

    横にいたイブキがその異変に気づき、アリスの袖をつかみながら守るように前へ出る。
    残っていた生徒も警戒し、手持ちの銃にそっと指をかけた。

    「なんですか? あなた達は……皆さんに危害を加えるなら、勇者は容赦しませんよ!」

    「ハン!いくら凄い銃があっても、こうやって囲んじまえば、全員守るなんてできねーよなぁ?」

  • 54◆GKl/O7H4.E25/05/13(火) 21:38:12

    アリスたちはその行動に沈黙のままついていく。
    銃を腰に突きつけられながら階段を上がり、部活棟の奥――暗く人気のない部屋の前に連れて行かれる。

    中へ入れられたのはアリス一人。
    部屋には5人ほどのゲヘナ生が待ち構えていた。
    皆、顔色が悪く目の下に隈を浮かべている。まるで、徹夜明けのミレニアム生のようだった。

    その中の一人がアリスを見据えると、苦悶の表情を浮かべながら話しかけてくる。
    その姿は酷く病的な雰囲気だ。

    「……いやぁ、はじめまして。さあ、勝負をしようじゃないか!」

    そう言うとゲヘナ生は懐から何かを取り出し、アリスの足元へと投げてよこした。
    それを目にしたアリスは、瞬時に表情が変わる。

    アリス「こっ……これはっ!」

    彼女はそれを拾い上げると、息を呑んで硬直するのだった。

  • 55◆GKl/O7H4.E25/05/13(火) 21:39:13

    ――一方その頃、アリスたちがいた教室では。

    イロハ「……まったく、まだ帰ってないんですか。イブキたちは一体どこに?」


    手が空いたイロハが、アリス達はどこにいるかと確認しに来ていた。置き去りにされたアリスの鞄を見て、イロハは探しに行くべきかと逡巡する。

    忘れ物かもしれないと念のためと思い教室に入ったその瞬間、鼻をついたのはかすかに残る硝煙の匂いだった。

    イロハ(これは……嫌な予感がしますね)

    直感が警鐘を鳴らす。イロハは駆け出し、アリスの席へと急いだ。
    周囲を探っていると、机の陰にわずかな銃痕を発見する。

    全身の毛穴が総立ちになった。
    これは、自責と恐怖のせいだった。

    イロハは咄嗟に廊下へ走り出す。
    廊下にいた生徒たちにアリスを見ていないか問いながら、同時に風紀委員への連絡も済ませた。

    イロハ(油断した……! 私のせいで……! アリス、イブキ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……)

    滲む涙を拭いながら、イロハは必死に足取りを追うが、これと言った情報はすぐには出て来ず、焦燥感だけが増して行くのだ。 
    ――「アリス行方不明」その報せを受けたアコは、思わずため息をついた。

    アコ「誘拐事件……アリスとイブキがですか?」

    問題児の一斉摘発で今週はようやく静かに過ごせると思っていた矢先だった。
    しかも今回は、いつものようにフウカが誘拐されるのとは訳が違う。
    これはミレニアムとの外交問題、最悪の場合は戦争すら視野に入る。

  • 56◆GKl/O7H4.E25/05/13(火) 21:40:24

    そして生憎、この事態に肝心のヒナは外出中。
    ゲヘナ外で溜まった仕事の処理に当たっていた。

    アコは頭を抱えつつ、内々に収める道を模索していた。

    アコ「風紀委員各位、最優先でアリスとイブキの足取りを追跡してください。万魔殿や他の生徒には気取られぬよう、極秘で!!迅速に!!行動を」

    すぐさま風紀委員に指示を飛ばし、次いでイロハに連絡を入れる。

    アコ「人命最優先で動きます。絶対に、万魔殿への報告や生徒たちに誘拐の件が広まらないようお願いします」

    イロハ「……っ、す、すみません。万魔殿には報告していませんが、生徒にはすでに聞き込みを……」

    アコ「……そうですか(ふぅ、まだマコトには連絡がいっていないなら、なんとかなりますね)」

    これならまだもみ消せる。自分達の過失では無いものに痛くものない腹を探られるのは大変不愉快というのが半分、残りの半分は大々的に動かれては人質の安否が気にかかるというのが半分の指示だ。

  • 57◆GKl/O7H4.E25/05/13(火) 21:40:37

    イロハ「どうすれば……私は、どうしたら……」

    狼狽するイロハ。
    その様子にアコも、同情を禁じ得ない。

    アコ「大丈夫です。すでに報告が上がってきています。二人がまだ校内にいることは確認済みです。ここからは私たちに任せてください」

    実際アリスは部活棟への移動を確認していると、この数分で報告されている。解決は時間の問題だ。

    イロハ「で、でも……!」

    アコ「治安維持は私たち風紀委員の責任です。必ず、二人を無事に連れ戻します!」

    イロハ「ぐっ……」

    アコの力強い言葉に、イロハはそれ以上何も言えず、その場に項垂れるしかない。
    自分の力の無さにイロハは歯噛みするのだった。

  • 58◆GKl/O7H4.E25/05/13(火) 21:42:33

    という訳で少し書き溜めしつつ、保守代わりにep1貼っていきます。

  • 59二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 22:35:04

    乙です

  • 60二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 00:07:52

  • 61◆GKl/O7H4.E25/05/14(水) 07:46:09

    「この誘拐犯ども! 大人しくしろ! 抵抗するなら容赦しない!!」

    風紀委員のイオリが、怒声を発しながら誘拐犯達の拠点を鎮圧していく。
    風紀委員たちは秘密裏に情報を収集し、迅速に居場所を突き止めていた。どうやら、犯人は部活棟にいる文化部の生徒たちらしい。温泉開発部や美食研究会といった一部の問題児を除けば、基本的に彼らはゲヘナの中でも比較的おとなしい集団だ。

    要人誘拐などという大それた事をする集団とは思えない。
    基本的にやりたいことが出来るなら、誰かに迷惑を掛けたりだとかそういうことは起こさないとイオリは記憶している。

    しかし今回は、随分な人数が部活棟に集まり企てに参加しているようだ。無関係な者は部室に込もっているのだろう。
    やましい物がある生徒は、抵抗するか逃げていく。

    だが抵抗しようがしまいがに関わらず、突入から数分もしないうちに、イオリ率いる数十名の風紀委員の精鋭によって、犯人たちは一瞬にして瓦解していた。散り散りに逃げる連中を追いかけて捕まえる方がよっぽど手間なほどだ。

    もはや銃撃戦とも呼べない。逃げ惑う相手を背後から正確に撃ち抜いていく様は、まるで鴨撃ちか射撃訓練のようだった。やがて、上階の奥――行き止まりの場所に、約二十人ほどが勉強机で作ったバリケードの裏に立てこもっているのが確認された。

    イオリは部隊を率いて上階へ突入し、残敵をさらに奥へと追い詰める。
    行き止まりに追い込むと、再度投降を呼び掛けるのだった。

    「抵抗はやめろ! 痛い目を見たくなければ、今すぐ投降しろ!!」

    そう叫びながら、イオリは愛銃を天井に向けて数発発砲。その音に、バリケードの向こう側からびくりと震える気配が伝わってきた。恐怖に怯える視線が、バリケード越しにイオリを見据えている。

    (はあ……。なんでこいつらが、こんな突飛な真似を……あっ!)

    バリケードの隙間から奥を覗くと、銃撃戦に不安そうな顔をしたイブキの姿が見えた。イオリはその姿に安堵しつつ、優しく声をかける。

    「イブキ! 捕らわれてるのは何人だ~?」

    イブキは自分に声を掛けられたことで、安堵の表情を見せて答える。

  • 62◆GKl/O7H4.E25/05/14(水) 07:47:41

    「イブキを入れて、四人だよ~。アリス先輩も無事だと思う~!」

    「怪我はないか~?」

    「だいじょーぶ~! お菓子くれたり、お話してくれたりしたよ~?」

    その呑気な返答に、イオリは胸をなで下ろす。アコの緊迫した通報を受けて即座に動いたのは正解だった。最悪の事態にはなっていないようだ。

    「お前ら、何が目的だ!? 人質の解放条件はなんだ!」

    膠着状態を打破すべく、イオリは一歩踏み込んだ言葉を放つ。しかし、バリケードの向こう側から返ってきたのは、”沈黙”だった。ゲヘナの生徒たちは顔を見合わせるばかりで、誰も答えようとしないのである。

    ――どういうことだ?

    通常、人質事件というのは、金銭や仲間の解放など何らかの要求を交渉するために起こすものだ。だが、目の前の彼らからは、交渉の意思すら感じられない。

    その態度に、イオリは苛立ちを隠せず、ブーツの踵で床をカツカツと鳴らす。これまでのやり取りで人質に危害を加える気がないことは分かるが、彼らの目的がまったく見えてこないのだ。そして、横の教室にいるであろうアリスの安否も未確認のままだ。

    突撃すればすぐに制圧できるだろう。だが、人質が巻き込まれるリスクを考えると容易には踏み切れない。イオリは現場の指揮には長けているが、こうした交渉ごとは不得手なほうだ。
    一瞬、逡巡しここはアコに任せるのが賢明だと判断し、通信を繋いだ。

  • 63◆GKl/O7H4.E25/05/14(水) 07:49:10

    「アコちゃん? ごめん、相手との交渉、お願いできる?」

    アコは即座に映像を接続し、バリケード内のゲヘナ生徒たちへと話しかけた。

    「私たちは無傷での人質解放を望みます。この交渉に応じられる方はいらっしゃいますか?」

    顔を右往左往させていた生徒の一人が、ようやく口を開いた。

    「交渉できる部長は、今、中にいる。そして、中でやってることが終わるまでは、私たちは退けない!」

    「ふふ……随分と強気ですね? それは、私たち風紀委員が穏便に対処してくれると信頼したうえでの発言でしょうか?」

    「ひっ……脅すなら、こっちだって考えがあるぞ!」

    「ほう……それは、私たち風紀委員と万魔殿、さらにはミレニアムを敵に回してまでやりたいことなのですか?」

    「くそっ! うるさい! 私たちは本気だぞ!」

    そう言いながら、ゲヘナ生たちはイブキたちへ銃口を向ける。その様子に、アコは大きくため息をついた。

    「わかりました。中で何をしているかは知りませんが、少し待ちましょう。ただし、くれぐれも誰にも怪我をさせないように。ちなみに中には何人いるんです?」

    「5人だ。……わかった、怪我はさせない。約束する」

    (大丈夫なの? アコちゃん? あまり長引くと、万魔殿が嗅ぎつけてくるかもよ?)

    (暴発して被害者が出る方が問題です。ここは我慢です。幸い、イロハはこちら側ですから、何とかします)

    (……頼んだよ、アコちゃん!)

  • 64◆GKl/O7H4.E25/05/14(水) 07:49:49

    通信を切ると、バリケードを挟んでの睨み合いが続いた。そのまま大きな動きもなく時間は過ぎ、日が暮れて夜の帳が降りはじめた頃――ついに、奥の部屋で動きがあった。

    「なぜだあああ!!」という慟哭が響き、床を叩くような音とともに、涙で顔を濡らし、ぐしゃぐしゃになった5人のゲヘナ生が部屋から飛び出してきた。

    風紀委員はそのチャンスに即座に反応した。――飛び出してきたゲヘナ生徒を取り押さえ、人質の元へと駆け寄り、バリケードを破壊して一気に制圧する。
    あまりにも突然の展開に、ゲヘナ生達は誰一人まともに反応できなかった。

    イブキたち人質も無事救出され、後方で保護される。怪我一つなく、元気な様子である。

    イオリは廊下の確保を確認すると、警戒しながら奥の部屋へと入る。中にいたのはただ一人、モニターの前でコントローラーを握るアリスの姿だけだった。

    アリスは気配に気づいてドアの方を見ると、イオリを見つけて笑顔で挨拶する。

    「あれ? イオリ、こんばんは! こんなところでどうしましたか?」

    その無邪気な態度に、イオリは大きくため息をついた。

    「どうした?じゃないよ。まったく、……誘拐事件だって聞いて来てみたら、仲良くゲームしてたの?」

    「はい! アリスたちは仲良くゲームしてました!」

    すると、それを聞いていた部屋の外のゲヘナ生たちが、不満そうに叫ぶ。

    「違う! これは、我々ゲヘナeスポーツ部とゲーム開発部の因縁の一戦であーる! くそぅ……まさかUZQUEEN以外にもこんな強いやつがいるなんて! 絶対に、お前を倒してみせる!」

  • 65◆GKl/O7H4.E25/05/14(水) 07:50:31

    その言葉に、イオリはすかさず銃弾を取り押さえたゲヘナ生にお見舞いする。その一撃に、ゲヘナ生は力なく沈黙した。

    「うるさい! 黙ってろ!こんな騒ぎを起こした時点で、お前らは全員しょっぴいて反省室に送ってやるからな!」

    そしてイオリの言い種にアリスは、こてんと小首を傾げたあと沈黙するゲヘナ生に近づいて一言告げる。

    「対戦ありがとうございました! でも、ボタンが効きませんでしたよ?」

    その一言が止めとなり、ゲヘナ生たちは一斉に項垂れる。敗北の悔しさに肩を震わせ、声にならない嗚咽を漏らし始めたのだ。

    異様な光景に、イオリはまた大きくため息をつく。やれやれと思いつつも、隠れてるのがいないかと部屋の点検を始めるのだった。

    アリスには「イロハのもとへ送るから、少し待ってて」と伝えると、彼女は元気に頷いた。

    「わかりました! 今日はたくさん友達ができたって、イロハに伝えようと思います!」

    「それはよかった」と、呆れつつも返し、部屋に誰も隠れていないことを確認するイオリ。電源が入れっぱなしのモニターには「50連勝」と表示されていた。


    ――後に、涙ぐむイロハによってアリスとイブキは出迎えられる。何度も謝られるが、実際にしていたのはゲームだったこともあり、アリスは少しばつが悪そうだ。

    ちなみにイブキはお菓子の食べ過ぎであまり食欲がなく、どう誤魔化そうかと悩んでいた。

    そのまま三人で食堂へ向かうと、フウカがまだ残っていた。

    「何かあったのかと心配したわよ? とりあえず、ご飯できてるから、ちゃんと食べなさい」

    何も聞かず、ただ温かい料理を差し出してくれるフウカの優しさにアリスはまた少しだけ胸が痛む。しかし、ミレニアムの温かい人々を思い出し、嬉しさもこみ上げてくるのだった。

  • 66二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 14:01:20

  • 67二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 19:13:46

    保守

  • 68◆GKl/O7H4.E25/05/14(水) 22:45:39

    腰やっちゃいまして2、3日作業出来そうにないです。
    ご報告だけ

  • 69二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 22:56:37

    乙 お大事に…

  • 70二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 22:59:03

    腰痛めたら本当に大変ですからね
    相当痛くて何もする気が起きないとかね…

  • 71二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 00:17:12

    保持

  • 72二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 05:15:01

  • 73二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 09:37:37

    体お大事に…

  • 74二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 14:22:50

    保持

  • 75◆GKl/O7H4.E25/05/15(木) 17:46:35

    良かった腰じゃなくて背中吊っただけだった!

  • 76二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 22:44:46

  • 77二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 22:51:24

    背中吊るとはまた珍しい所と言うか

  • 78二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 00:25:19

    保守

  • 79二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 05:25:31

    ep1 "Alice in the Gehenna "③
    件名:ゲヘナ冒険の報告書2日目です!

     

    差出人:アリス

    宛先:ユウカ

    日付:××××年×月×日

     

    ユウカへ

     

    こんにちは!アリスです!

    今日はゲヘナの冒険、2日目でした!


    授業を受けたあとは、ゲヘナeスポーツ部の皆さんとゲーム対決をしました!
    たのしかったです!

    ――

    ユウカはその簡潔なメールに、楽しくやれていることを察して微笑んでいた。
    報告書としては、簡潔すぎるのだが元々そこまで気にしないつもりだ。
    簡潔に返信を済ませると、ユウカはセミナーを後にしたのだった。

  • 80◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 05:26:58

    そして次の日――

    件名:ゲヘナ冒険の報告書3日目です!

     

    差出人:アリス

    宛先:ユウカ

    日付:××××年×月×日

     

    ユウカへ

     

    こんにちは!アリスです!

    今日はゲヘナの冒険、3日目でした!


    授業を受けたあとは、他の部活のゲヘナカート部の皆さんとレースゲーム対決をしました!
    たのしかったです!

    ――

    どうやら、アリスは次の日も別のゲームで遊んでいたらしい。らしいと言えばらしいのだが……、せっかくなのだから、別のこともしてほしいと釘を指すメールをユウカは返信したのだった。

  • 81◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 05:28:50

    更に次の日――
    件名:ゲヘナ冒険の報告書4日目です!

    差出人:アリス

    宛先:ユウカ

    日付:××××年×月×日


    ユウカへ

     

    こんにちは!アリスです!
    今日はゲヘナの冒険、4日目でした!
    授業を受けたあとは、VRFPS部の皆さんとヴァーチャルサバイバル対決をしました!
    サバゲーならゲームじゃないですよね?
    たのしかったです!
    ――
    そのメールには添付ファイルもついており、室内でVRゴーグルをつけたアリス達がお菓子を食べながら座る姿が写されていた。
    ユウカはその画像を見て、衝動的にスマホを取り出すとアリスへ電話する。
    すぐにアリスは電話を取った。夜も21時を回っているというのに、周りには人の声が聞こえる。
    どうやらまだ何かしらゲームしているようだ。
    その状況に対しユウカは一言、

    「アリス!ゲーム禁止ね!」

    その無慈悲な一言にアリスは、「うわーん!なんでですかー!」と大きな悲鳴を上げるのであった。

  • 82◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 05:29:55

    ――次の日。

    朝早く。
    アリスの部屋には風紀委員が何人か集まっていた。
    どうやらセミナーから連絡が行き、ゲームの類いを没収。更には端末もゲームのインストール不能な業務用端末以外は没収されることになったのだ。

    更にはゲヘナのゲーム関連の部活は申請がなければアリスへの接触禁止措置まで取られるようだ。

    ユウカの本気が伺われた。
    流石に一週目のほとんどをゲームをして過ごしたアリスの自業自得であった。

    「うわーん! ユウカ、酷すぎます~!」

    まるで密輸入者の捜査かのように、荷物まで探られ電子機器はすべて没収される。帰りがけに端末一つを風紀委員は置いていった。
    その中身を確認すると連絡アプリ以外はすべてアクセス不能だった。念の入りようである。

    その状況にアリスがうちひしがれていると、イロハ達が迎えに来る時間になっていた。
    憔悴仕切った顔のアリスを見て、イブキは心配そうに声を掛ける。

    「アリス先輩、どうしたの~?」

    「アリスの大事な物達が、風紀委員に取られました~!」

    わんわん、と大泣きするアリス。
    その姿におろおろとしだすイブキ。
    イロハは状況が混沌し始めそうな雰囲気を感じとり、すぐにことの顛末をイブキに話す。

  • 83◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 05:30:08

    事前に万魔殿にもセミナーから通達があったのだ。
    ”アリスゲーム禁止令”この徹底を、だ。

    その話しを聞いて、イブキはアリスに一言。

    「アリス先輩、ゲームばっかりしちゃ駄目だよ?」

    と、至極まっとうな感想を送るのだった。

    ――その後、ここ数日通りに授業を受けあっという間に放課後になる。アリスは今日は何をしようかと悩んでいた。

    うんうん、と悩んでいるそこに風紀委員のアコとヒナが、教室を訪ねてきた。

  • 84◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 05:32:08

    「アリスちょっと、報告があるから時間いいかしら?」

    ヒナは教室ドアからアリスを呼び出す。
    暇をしていたアリスはすぐに彼女に駆け寄った。

    「はい!委員長!なんですか?」

    「相変わらず元気そうね? 何事もなく過ごせているようで安心したわ。さて……、早速本題なんだけど今日から長期で勾留していた子たちを牢から出すわ。 ちょっとだけ過激な子もいるから注意をお願いね?」

    「はい!了解しました! アリス気をつけます!」

    「後は、アコ? 作って貰った書類お願いね?」

    「はい。 委員長。アリス? これ、基本的に接触して問題のないちゃんとした部活の一覧です。ゲーム関係と、品行に問題がある部活は除外してます」

    そういうとアコは、一冊の冊子をアリスに手渡す。
    どうやらゲーム以外にアリスが交流出来る部活の一覧をわざわざ作ってくれたようだ。
    ここ数日、何度かアコとは顔をあわせて都度都度お小言はあったがアリスの為に色々と力になってはくれている。

    「ありがとうございます! やっぱりアコ先輩はツンデレなんですね!」

    「ん……、ばっ! 誰がツンデレですか!誰が!とりあえず! セミナーから苦情が入らないように、遊び呆けてないで両校の交流を図って下さいね!わかりましたか!?」

    顔を真っ赤にして反応する姿は、どうやら照れているようだ。
    その姿にヒナはため息をつき、「それじゃ」、といい二人は去っていた。
    自分の席で貰った冊子を、アリスはぼんやり眺めながらめくっていく。
    注意書きや簡単な紹介などなかなか手が込んでいる。
    こういった部分でも作り手の性格が出ているようだった。
    10分ほど眺めていると、イロハがイブキ以外を連れて訪ねてくる。イブキは今日は万魔殿に用事があると言っていた。

  • 85◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 05:32:49

    「へぇ……、あの行政官がわざわざ」

    アリスに冊子を見せられたイロハは興味無さげに呟いた。

    「はい! 見やすくてありがたいです! ところでそちらの二人は? 初めましてですよね? 天童アリスです!よろしくお願いします!」

    「あぁ、この二人は私と同じ二年生の――」

    「やっほー!キララだよー!」

    「旗見エリカです。よろしくー」


    派手な雰囲気のピンク髪の少女はキララ、白い髪のショートで少しクールな少女はエリカと言った。
    イロハの友人にしては珍しい雰囲気の少女達だなとアリスは感じた。

    「それで、お二人はどうしたんですか?」

    「何って? アリスっちと遊びにきたんだよ? 全然、出会えないからイロハちゃんに会わせてってお願いしたんだよねー!」

    「そうそう、ってこの冊子! 私らの部活のこと書いてないじゃんウケるー!」

    「え? エリカちゃんそれひどくなーい? 私らけっこー真面目にやってんのに!」

    イロハが見ていた冊子をエリカも盗み見ていたがどうやら彼女達の部活は、認識すらされていないのか一切記述がなかったようだ。そのことに、キララはむくれている。

  • 86◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 05:33:24

    だが、そんなことよりアリスへの興味が勝るのか次々とアリスに質問を始めるキララ。

    ちょくちょくエリカが止めるもキララのテンションにたじたじのアリスは質問の隙間になんとか、一言。二人に質問を返した。

    「あの! お二人の部活はなんなんですか?」

    「え? 何って? そりゃキララちゃんあれだよね?」

    「そうだよねエリカちゃん?」


    「「キラキラ部!」」

    そう二人が自信満々にハモると、アリスは小さく「キラキラ部?」と返したのだった。

    ――なお、アコの冊子にキラキラ部が乗っていなかったのは活動の実態が一切不明の謎の部活、というかそもそも部活としてカウントしていいか疑問が残るからであった。

  • 87◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 05:36:46

    >>77

    運動不足には気を付けましょうですね


    痛みも引いたし、有給貰ったのでぼちぼち書きだめ再開します。

  • 88二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 08:57:43

  • 89二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 12:07:27

  • 90二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 19:47:10

    保持

  • 91◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 20:11:59

    「ところで、アリスさん。 部活を覗きに行って見ますか?」

    キララの勢いに押されていたアリスに、イロハは頃合いかと助け船を出すことにしたようだ。
    けして悪い子ではないが、初対面だと少々面食らうくらいにはテンションが高いのだ。
    普段はストッパー役のエリカも、普段会わないミレニアムの客人にはテンションが上がり気味なのが見て取れた。

    「はい! アリスはいろんな部活見にいきたいです!」

    アリスも丁度そう考えていたのでいの一番で返事を返したのだった。そしてキラキラ部の二人もこれについていくつもりのようだ。

    「そういえば部活決める時、目についた部活色々見たけどまだまだいっぱいあったんだね?」

    「うんうん! エリカちゃん! 気になるから一緒に見に行ってみない? アリスっちもいいよね?」
    ep1 "Alice in the Gehenna "④~部活探訪1~

    「はい! キララ達も気になるなら一緒に行きましょう!」

    そういうと三人はハイタッチを交わす。
    質問攻めには困っていたが、案外テンション自体は三人共あっているようだ。
    どちらかというと、イロハ一人で引率役になる方が大変そうであった。放って置けば良かったかと、イロハは若干後悔したのであった。

  • 92◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 20:14:16

    ――部活一つ目。
    「えっとーなになに? 1ページ目は”爆発芸術部”だってー? 風紀委員の人が作った紹介冊子に乗るにしては名前が物騒だね?」

    キララが冊子を拡げて、呟いた。

    「あぁ、その部ですか? 活動実績も、メンバーの学業成績も、活動内容の健全性もゲヘナ文化部の中でもトップなんですよそこ」

    イロハが万魔殿で得た知識で説明する。
    どうやら字面に反して、健全な部活らしい。
    ゲヘナで爆破と言えば、温泉や美食と言ったテロリストの十八番といったイメージが強いのだ。
    それでもこの部活は問題ない活動をしているそうだ。

    アリスも爆発と言えば実験失敗などの、迷惑なイメージが強いと感じた。

    イロハが「ここに行きますか?」と聞いたので三人は行ってみることにしたのだった。

    校舎から離れ本格的な施設の必要な部活向けに建てられた、部活棟本館へ着くと四人は早速”爆発芸術部”の部室に向かった。

    部室自体はただの教室で、数人が集まって話あっているのが見えた。イロハが、コンコン、とノックする。
    すると、「はーいどうぞ~」と中から返事が帰ってきた。

    その声に従い、四人はぞろぞろと部室に入って行った。

    「えっとたしか、アリスくんと? それと誰だい? 君たち?」

    部長と思わしき生徒が、突然の来訪に対応する。
    アリスのことは交換留学生だと把握していたが、残りの三名とは面識がないようだ。
    その問いかけに三人は軽く自己紹介をしつつ、アリスが見学にきたことと、自分達は付き添いだと説明した。

    「まぁ、私たちは見学は歓迎するよ! 爆発という芸術の理解者が一人でも増えてくれるのは歓迎さ!」

  • 93◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 20:16:07

    そういうと、部長はアリスに握手を求める。
    その握手に答えると、

    「はい!よろしくお願いします! アリスも爆破スキルを覚えたいです!」

    「よーし任せてくれ! それじゃ早速外に行こうじゃないか!」

    こうして、”爆発芸術部”の体験入部が始まるのだった。
    ――ゲヘナ、裏手の校庭。
    ゲヘナにいくつかある校庭の一つに一行は向かった。人気のない場所で、移動には車を使った。
    その場所を見るとなんども爆破されたのか地面は焼け焦げている。更に建物の跡なのか、白い灰が筋を作っている。

    「寂しいところだねー? 爆発が好きっていうから、温泉開発部みたいににぎやかなところでやってるかと思ったよー!」

    キララが何の気なしに呟くと、爆発芸術部の面々の顔色がみるみる青くなる。
    「すまないが奴らのことは、我々の前では言わないでくれ。奴らのせいで、要らぬ迷惑を被っているのだ……」

    「あ……、うんごめん。 気をつけるね」

    「きららちゃんも悪気はなかったんだ。 ごめん。 結構苦労してるんだね爆発芸術部って」

    そういってエリカもフォローを入れるのだった。
    そういえばこの部長どことなく温泉開発部のカスミに似ている。白衣を着ていたり、小柄な体型だったりだが色々苦労があるのだろう。
    「彼ら爆発芸術部は、ちゃんと使用許可取ってやってるので本当にまっとうなんですよ。 はぁ……、こういうのばっかりだと私たちの苦労も減るんですがね。 まぁ、マコトセンパイノヤラカシヨリハマシデスガ」

    イロハも彼らの善良さを補足するが、途中嫌な事を思い出すことになったようだ。少し重い空気が流れた。

    「まぁすまない空気を悪くしてしまった!とにかくだ! 我々の爆発芸術をご覧いただこう!」

    部長は空気を変えるべく、わざとらしい動きで準備を始めるのだった。

  • 94二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 20:18:33

    このレスは削除されています

  • 95◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 20:22:17

    その間アリスは、「温泉開発部」という散々な言われような部活が気になったのだ。平和そうな名前だ。これが、――ゲヘナ最大のテロリストの名前とは露にも思わずにいた。準備を始める間、部長が爆発芸術についての説明を始める。

    「まず爆発芸術は審査性の競技でね? 大会も開かれているのだ。我々ゲヘナは強豪として名を馳せているのだよ?」

    「へぇー、すごいね! 熱い青春してるんだ!ちょっと興味出てきたかもー」

    「はい! すごいです! 爆発のプロ!なんですね!」

    アリスとキララの食い付きの良さに、部長は鼻腔を拡げ得意気に話を進める。

    「点数の基準は5項目、派手さ、美しさ、早さ、機能性、そして芸術性。この5項目各20点満点で審査する。ちなみに今現在のディフェンディングチャンピオンは実はミレニアムでね? 芸術性と派手さで彼らに大きく水を開けられているんだ。 何かしらないかいアリスくん?」

    「ふぇ? アリスがですか? そもそもミレニアムに爆発芸術部があるなんて知りませんでしたよ?」

    「あれ? そうなのかい? そういえば彼女たちは……、エンジニア部とか名乗ってたような?部費調達の為に、片手間で出て優勝して行ったのが我々としては堪らなくくやしいのだよ!」

    そういうと、爆発芸術部の面々は悲しそうな顔をしていた。
    アリスもエンジニア部となら浅からぬ縁がある。

    自分が力になれるなら――本気で打ち込んでいる爆発芸術部に、心を打たれ力になりたいとアリスは感じたのだった。
    少ししてなにやらライティングホルダーを渡される四人。
    紙に目線を落とすと、派手さ、美しさ、早さ、機能性、芸術性。先ほどの5項目が書かれていた。

    「今から私達の爆発を見せるから、その紙に評価をしてくれ」

    「え? いや私達なにもわかりませんが?」

    思わずつっこむイロハ。
    だが部長は、「なぁーに爆発は見れば心の中で価値がわかる」と、意味不明なことを言われて考えることをイロハは放棄した。
    イロハは残りの三人が「心、か……」となにやら感銘を受けている姿に一抹の不安を覚えるのだった。

  • 96◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 20:23:54

    やはり手慣れているのだろう、5倍速で見ているかのように目の前にビルを建てる爆発芸術部員達。
    完成すると、誇らしげに四人の前に並んでいた。

    10分ほどで組み上げられたとは思えない10階建てのビルは傷1つなく四方から見回してもひび割れ1つない脅威の建築技術を四人は目の当たりにした。

    早さと機能性に皆点数をつける。

    そして、部長が手をあげると皆ビルから離れる。
    いよいよ爆発が始まるようだ。

    そして「点火!」の合図と共に手を振り下ろす。
    刹那。爆発。閃光。それが二階毎に、断続的に繰り返される。
    下から順々に規則正しく爆発するさまは確かに美しく、芸術性があり、もうもうと立ち上がる煙は派手であった。

    その一連の作業に、四人は思い思いの点数をつけたようだ。

    「では、四人とも点数を見せてくれ一人一人みていくまずは、イロハくん」

    イロハ 派手さ:13美しさ:8早さ:20機能性:20芸術性10 合計:71点 総評:よくわかりません

    「この美しさに理解が及ばぬのは仕方ない。励んでくれたまえ」

    部長はイロハの辛口な点数は気にも止めないようだ。
    イロハは内心ムッとした。

  • 97◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 20:25:02

    キララ 派手さ:17美しさ:17早さ:20機能性:20芸術性15 合計:89点 総評:青春は爆発だよね☆キラキラだと思う!

    「ふむ、彼女は見る目があるようだ。ぜひわれわれと一緒にやってみようじゃないか!」

    「あっそれはいいや! ネイル剥げたりしそうだし」

    「あぁそう……」


    エリカ 派手さ:18美しさ:12早さ:20機能性:20芸術性12 合計:82点 総評:ビル解体? なんか凄かった

    「爆発芸術だ! 解体とはちがぁぁう!」

    「へぇー」

    「……」

    ――ここまでのいまいちな反応に部長は少し焦りが見える。最後のアリスに彼女はすべてを託すのだった。

    「まぁいい最後だ。アリスくん!君の評価を見せてくれ!」

    「はい! わかりました! どうぞ!」

    そこにまとめられた点数は――

  • 98◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 20:25:26

    アリス 派手さ:8美しさ:6早さ:20機能性:0芸術性9 合計:43点 総評:ミレニアムなら挨拶がわりにもなりません

    「なぜだぁぁぁぁぁぁぁ!」

    「ミレニアムならこの程度の爆発は日常茶飯事ですよ? マッサージチェアや園芸用ロボットでももっと派手に爆発します。それに爆破させるためにビルを建てるなんて機能性とは程遠いとアリスは思います!」

    「ぐはぁぁぁぁぁ!なにも言い返せないぃぃぃ!」

    「「ぶっぶちょー!」」

    アリスの評論に爆発芸術部、部長は倒れこむ。
    どうやら図星過ぎて気絶したようだ。
    他の部員達は急いで部長に駆け寄る。

    アリス達はその姿を哀れな表情で見つめると、ここにはもう用はないと立ち去るのだった。
    去り際に一言、イロハは呟く。

    「こんな部活がまともな方、うちの学校大丈夫なんでしょうか?」

    その呟きは誰に聞かれることもなく、風に流されて消えた。

    アリスの感想
    「爆発はもっと自由でロマンがないといけないってマイスターウタハが言ってました」

    ――後日談。
    アリスから言われた一言で、いつ爆発するかわからない発明品を作りすぎたことにより、ゲヘナのテロリストの名に爆発芸術部追加されることになったのはアリスがゲヘナを去ったあとのことだった。

  • 99◆GKl/O7H4.E25/05/16(金) 20:28:52

    本調子になるまで今しばらくお待ちください

  • 100二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 23:01:30

    保持

  • 101二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 23:05:13

    自分のペースで大丈夫ですよ

  • 102二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 07:12:11

    保守

  • 103二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 15:32:41

  • 104二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 18:50:47

    ep1 "Alice in the Gehenna "⑤~部活探訪2~
    ――ゲヘナ部室棟 本館前。
    “爆発芸術部”との交流は、ミレニアム――本場の爆発――との差に“爆発芸術部”が完敗し、幕を閉じた。アリス達は部室棟に戻り、次なる訪問先を模索していた。

    「アリスっち~! なんか見たいもんとか、見なきゃいけないもんとかないの~?」

    アコの冊子片手に、キララがアリスの希望を確認する。

    「そういえばユウカに、運動部を見てくるように言われてました! ミレニアムの運動不足を解消できる手軽なのを探してほしいと」

    「ふーん。手軽ねぇ~。じゃあ~これ!」

    そう言ってキララはページに指を置き、続けて部活名を告げる。

    「はい! チェスボクシング部!」

    「え? キララちゃん、なんて?」

    聞き慣れない単語に思わず聞き返すユリカ。その問いにキララはゆっくりと繰り返す。

    「ちぇす ぼ く し ん ぐ」

    「はい!きらら! なんですかそれ?」

    「よくわかんない! とりあえず行けばわかるっしょ!」

    そう言って、キララは笑いながら歩みを進める。アリスとエリカの二人も「それはそうか」と軽い気持ちでついていく。一方、チェスとボクシングを交互に行う過酷なスポーツであることを知るイロハは、巻き込まれないことを祈りつつついていった。

  • 105二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 18:51:45

    ――あのキララですら、及び腰だ。

    「軽さはないですね。ねぇ、アリスさん! 帰りましょう? 帰りますよね? ね?」

    イロハは今すぐにでもここから逃げたかった。しかし、こういう時に限って邪魔が入る。今度はエリカだ。

    「なんか面白そうかも! 少しだけやってみたい!」

    エリカの前向きな反応に、チェスボクシング部の部長が嬉しそうに近づいてくる。

    「やぁ、はじめまして! 体験入部かな?」

    「いえ! ただの見学です!」

    イロハは食い気味に見学――体験する気はないとばっさり否定した。しかし、エリカはやる気満々の様子で、体操服に着替え始める。

    「まぁ、私、少しボクササイズやってるし、チェスもわかるよ!」

    「それは素晴らしい! ならば、一戦やってみますか?」

    部長はそう言い、シャドーをしていた部員を呼んで軽くスパーをするように指示を出した。部員も快く応じてくれた。

    二人がリングで準備をしている間、他の部員は「どうする?」と部長が聞いてくる。キララとイロハは青い顔をして首を横に振った。アリスはというと、

    「アリスもやってみたいですが……、チェスのルールがわかりません!」

    「なら、これチェスの教本ね? 読んでみて」

  • 106二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 18:53:43

    部長は一冊の本を渡す。アリスはそれを受け取ると、「了解しました」とビシッと敬礼をするのだった。

    「エリカちゃん、頑張ってー!」

    「怪我しないでくださいねー!」

    二人の応援に、エリカは手を上げて答える。対戦相手は笑顔で話しかける。

    「初心者にいきなり殴りかかるわけにもいかないんで、そちらからどうぞっす!」

    別に舐めているわけではない。それはエリカにもわかっている。しかし、少し驚かせてやろうという気持ちが湧いてきた。

    「今回は3ラウンドの略式マッチだ! エリカちゃんだっけ? 無理なときはギブアップしてね?」

    部長のルール説明の後、ゴングを用意し、すぐに「レディ?――ファイ!」の掛け声と共にゴングが鳴った。

    ボクシンググローブを合わせ、試合が始まる。その瞬間――エリカの腰が沈んだ。左右に首を振り、がら空きのボディに左フックを捻り込む。そこから右ストレートを放つが、パンチは空を切る。

    対戦相手の顔には驚きの表情が一瞬浮かぶが、すぐに真面目な顔に変わった。どうやら、エリカを本気で対戦相手として認めたようだ。

    リング上の二人はニヤリと笑い、試合は拮抗するかと思われた。しかし、ここからはエリカは防戦一方だった。さすがに対戦相手には一日の長があった。2ラウンド目のチェスで精神的に揺さぶられ、3ラウンド目には完全に精細を欠いてしまう。最後は判定負けとなったが、エリカは「いい汗、かいた」と満足そうにリングを降りた。

    エリカの健闘に部長は早速スカウトするが、「私、キラキラ部だからさ!ごめん!」と瞬殺だった。
    その間、チェスの教本を読んでいたアリスが、

    「はい! アリス! チェス覚えました! 今ならAlphaZeroにも勝てます! さぁ試合しましょう!」

    とやる気満々で立ち上がった。

    部長は苦笑いしながら、頭を掻いた。どう見ても、地面に垂れるほどの長髪は運動が得意な者とは思えない。どうしようかと考えていると、イロハが耳打ちしてきた。

  • 107◆GKl/O7H4.E25/05/17(土) 18:57:08

    「怪我しない程度でいいので試合してあげてください。それなりに動けると思うので」

    「ホントに?」と疑いの目を向ける部長。イロハも確信はないが、いきなり大怪我することはないだろうと頷いた。

    ――早速髪を結び、リングに上がるアリス。対戦相手は少し困った表情を浮かべている。アリスのシャドーのような動きは、まさに素人のものだった。これは相当接待が必要かとため息をついた。

    ゴングが鳴る。再び、無防備なまま、アリスのパンチを対戦相手は喰らってあげた。

    そう、喰らって「あげた」のだ――これが不味かった。アリスは勇者であり、女王であり、”魔王”だ。体育祭で大球を場外に運ぶ規格外の膂力を持つアリスの一撃が、対戦相手を直撃した。

    張られたロープを引きちぎり、壁をぶち破って、アリスのパンチを受けた生徒は隣の部屋の壁に埋まっていた。

    唖然とする一同。誰もが突然の出来事に閉口した。

    「うわーん、やりすぎましたー!ごめんなさーい!」

    その後、救急医療部に運ばれていく生徒たちと共に四人はその場を離れた。チェスボクシング部長は気にするなと言っていたが、額には青筋が走り、「早く出ていけ」という文字が顔に浮かんでいた。

    アリスの感想

    「はい! ミレニアムで流行る可能性はないですね!」

    そう言って、一言で断じた。
    ミレニアムのもやしっ娘には厳しい運動すぎるのだった。

  • 108◆GKl/O7H4.E25/05/17(土) 18:58:11

    ――3つ目。

    「もう1つスポーツ系行ってみる? 格闘技は危ないからやめるとして、ク◯ィッチってのはどう?」

    エリカが次の部活を提案する。今度は、某作品で人気のある欠陥スポーツの名前だった。

    「ク◯ィッチですか? アリス、知ってます! あの魔法使いのやつですよね? アリス魔法使いにジョブチェンジできるんですか?」

    そう言って、目をキラキラさせるアリス。その期待の眼差しに、エリカは口ごもった。一度彼らの試合を遠目で見たことがあるが、およそ魔法とは関係のない姿だったのを覚えていた。

    エリカは真実を話すのを躊躇したが、イロハも見たことがあるのか、指でばってんを作って「なかったことにしよう」と提案する。しかし、そんな二人の目論見は泡となって消え失せた。

    「アリスっちもあの映画見たのー? 空飛んだりー魔法とかー変な生き物とかー最高だよねー? キラキラしてそうだし!あたしも見に行きたーい☆」

    「あのちょ……キララちゃん? ね? やめ?」

    「はい! キララ! 行きましょう! キラキラ神殿でジョブチェンジです!」

    そう言って二人は駆け出し、練習中の校庭に向かうのだった。後を追うエリカとイロハの顔は終始暗い表情だった。

    ――ゲヘナにいくつかある校庭の1つ。

    そこでは、ク◯ィッチに青春の汗を流すゲヘナ生たちがいた。ちょうど試合中で、皆真剣に取り組んでおり、敵味方入り乱れる熱い攻防を繰り広げていた。

    正式名称「マグルク◯ィッチ」のルールは、まず各チーム7人で構成される。チェイサー(得点役)、ビーター(妨害役)、キーパー、シーカー(スニッチ獲得役)といった役割が与えられ、それぞれの仕事をこなす。

    使用するボールは3種類。得点用のクアッフル、妨害用のブラッジャー、そしてゲーム終了の合図となるスニッチがある。試合はスニッチが登場するまで進行し、選手たちは「常にほうき代わりの棒をまたいだまま”走って”」プレイするのが特徴だ。

    得点は、クアッフルをゴールに入れることで10点獲得でき、ブラッジャーは相手に投げつけて当たると、その選手はゴールラインまで下がらなければならない。ゲーム開始から20分ほど経過すると、テニスボールをつけた第三者のボール(スニッチ)が登場し、それを捕まえることで30点が加算され、ゲーム終了となる。最終的に、合計得点が高いチームが勝利する。

  • 109二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 18:58:40

    このレスは削除されています

  • 110◆GKl/O7H4.E25/05/17(土) 19:01:41

    映画よりは比較的まともなルールだが、タックルありで、中々危険なスポーツとなっている。正直、泥臭い魔法とは無縁のスポーツだったりする。

    「アリスちゃん? キララちゃん? どうやってみる?」

    エリカは恐る恐る二人に聞いてみた。しかし、答えを聞くまでもなく、二人はエリカに渋い顔を向けるのだった。
    アリスの感想

    「こんなの魔法じゃないです」

    ――その後もいくつか運動系部活のリストを見ていた四人。 サボテンラグビー部、ヨガ乗馬部、鳥人間コンテスト部など、胡乱な単語がひたすら並んでおり、全員が頭を抱え始めていた。

    「いくら自由な校風とはいえ、自由すぎやしませんかね?」

    イロハは素直な疑問を口にする。 だが冊子をめくり続けると、疑問が氷解した。そこにはアコの注釈が入っていた。
    ――なお運動部に関しては練習に忙しい部活はこちらで外しておりますので悪しからず。

    四人はこれを見つけると「あぁ……だからか……」と納得したのだった。しかし、このままではなにも成果がない。

    「うわーん!このままじゃユウカにまた怒られてしまいますー!」

    アリスがとうとう泣き言を口にすると、エリカが「これはどうかな?」と冊子を指さしたのだった。
    そこは文化部の欄にあった。

    その名称は”フィットネス落語部”とどうやら確かにこれならユウカの求める軽い運動の気配を感じる。
    これは行く価値があるかもという気分になる。

    しかしトレーニングという単語と近しい言葉にアリスにとっては友人ではあるものの、悪名高きあの部活の名前を想起させ少々嫌な気配を感じるのはミレニアム生なら仕方ないことであった。

  • 111二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 22:58:34

    保持

  • 112二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 00:34:23

    微妙な時間だから補習

  • 113二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 08:14:07

    保守

  • 114二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 13:34:10

    ハーバーボッシュ

  • 115二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 20:29:55

    保持

  • 116◆GKl/O7H4.E25/05/18(日) 23:52:28

    ep1 "Alice in the Gehenna "⑥~部活探訪 終~

    ――四つ目。

    ”フィットネス落語部”の部室には、大量のフィットネスマシーンが並んでいた。
    その数は、ミレニアムのトレーニング部の部室にもひけを取らないラインナップである。
    ここがただの《《文化系》》の部室だとは誰も思わないだろう。

    さてさてまたしても見学に来た四人であったが、部室の充実ぐあいにただただ圧倒されていた。
    イロハは確かここは、以前百鬼夜行に修学旅行に行ったあとに新設された部活だと記憶していたが、どうやら思った以上に人気なようであちらこちらから呪文のような掛け声が聞こえ己の身体を鍛えあげる姿が映る。
    キョロキョロと見渡す四人の姿に気付いたのか、またしてもフィットネス落語部の部長が声を掛けてきた。

    「やぁ? 見学に来てくれたんだ? ようこそフィットネス落語部へ」

    爽やかな笑顔に、引き締まった筋肉はギリシャの彫刻のようである。その姿に四人は圧倒されていく。だが今までと違いそこまでヤバい雰囲気はなかった。
    先ずはトレーニングウェアを貸出してくれるというので、四人はすぐに着替えた。イロハは相変わらずだだを捏ねるお約束はあったものの、お腹のぷにぷにをアリスにつままれたことであっさりと了承した。女子としてはぷにぷに死すべし許すまじである。

    四人が着替えて集まると先ずはと簡単な”フィットネス落語”の説明が行われた。
    元々はやはり、百鬼夜行発祥であり、その楽しさとトレーニング効果の高さからゲヘナでもプチブームとなっていたようだ。
    この機会にミレニアムにも流行らせたいという思いがあるという。

  • 117◆GKl/O7H4.E25/05/18(日) 23:56:22

    「はい! ミレニアムは皆虚弱のデバフが掛かってるので、簡単なのから教えて欲しいです!」

    アリスはミレニアム生の虚弱さに配慮をお願いする。

    「解ったよ! じゃあヨガと落語を合体させたゲヘナ発のフィットネスを教えてあげる!」

    そしてイロハはヨガと聞いて、そこまできつくなさそうと安堵したのだった。

    「じゃあまずは四つん這いになって、片足を真っ直ぐ伸ばしてから、上体を出来るだけ反らしてー!そーうそう! はいイロハちゃんはもっと頑張ってーはーいじゃあその状態でキープそしてこう言うの」

    「くっこれはなかなか……」

    「あはっ☆効いてるかんじー」

    四人は辛そうな声をあげふらふらしながらもキープしている。だがここまでは余裕がまだあった。
    しかし、ここに追い討ちが懸かる。

  • 118◆GKl/O7H4.E25/05/18(日) 23:56:48

    「寿限無 寿限無 五劫のすり切れ 海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末 食う寝るところに住むところ やぶらこうじのぶらこうじ パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」

    「「へ?」」

    「寿限無 寿限無 五劫のすり切れ 海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末 食う寝るところに住むところ やぶらこうじのぶらこうじ パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助 だよ?」

    部長は何事もないように諳じるが、四人は全然覚え切れない。
    しかも長いこと同じ姿勢で疲労してくる。
    足先が皆ぷるぷるしている。

    「じゅげむじゅげむごこーのすりきれかいじゃりすいぎゅのすいぎょーまつうんらいまーつふうらいまーつくうねるところにすむところーぱいぱいぽ」

    「ちがーう!飛ばしすぎやりなおーし!」

    「うわーん!全然終わりませーん!」

    そうして全員が終わる頃には、汗だくで皆大の字で床に転がったのだった。

    「ははは! どうだい? 終わってみたら気持ちいいだろう?」

    部長は上機嫌に笑みをこぼしトレーニングの体験について聞いてくるが、イロハは辟易しこれは”新手の拷問”なのでは?と思いはじめていた。
    次にわりと余裕のあるキラキラ部の二人はマシーンを使い始める。

    それぞれの身体の悩みについて聞き、アドバイスが行われる。

  • 119◆GKl/O7H4.E25/05/18(日) 23:59:20

    ――キララの場合。

    「やっぱり肩こりかなぁー?どうすればいい?」

    「それなら懸垂がいいね」

    「懸垂? 何回ぐらいやればいいの?」

    「10回ぐらいでいいよ!それを3セットやるだけ、フォームは気をつけてね?」
    「はーい!頑張りまーす!」
    そうしてパイプに捕まり姿勢を矯正されていくキララ。
    ゆっくりと身体を上げていく。それと同時に立派な胸部も激しく上下する。その動きに、大の字で休んでいたイロハは「ケッ」と悪態をつくのだった。

    キララは順調に数を重ねていく。5、6、7、8と部長は数を数えていく。そして9に差し掛かった時だった。部長がキララに声を掛ける。
    「《《今、何時だい》》?」
    キララはぎりぎりの状態で、時計を見る。時間は丁度午後の5時だった。
    「えぇとぉ5時~!」

    「5、6、7、8さて、《《今、何時だい》》?」

    「だから5時~!」

    「5、6、7、8、《《今、何時だい》》?」

    「もう無理だから!流石に気づくよ!」

    「ははは!ごめん!ごめん!」

    キララは鉄棒の下にへたり込み息があがっていた。
    限界までやりきった表情は心なしか清々しい表情が満ちていた。

  • 120◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 00:00:28

    ――エリカの場合。
    「うーん最近走れる距離が減ったなぁってルームランナーかな私は」

    「なら走りながら、落語を1つ聞いてみたらどうかな? 楽しさで時間なんか忘れてしまうよ? これなんかどう?」
    そういって部長は音声データをエリカに手渡した。
    そこには”子別れ 上 中 下 2時間30分”とラベルがしてあった。

    エリカはその長さにぎょっと目を丸くする。早いペースならフルマラソンぐらいの時間である。

    「いやぁ流石に長すぎるかな……」

    「ならこれは? 芝浜」

    部長がもう一枚出して来たのは”芝浜 50分”と書かれている。
    エリカは少し考えた後アリスにどのくらいここに居るのか聞いて見る。

    「アリスちゃん! ここにいつまでいるつもり?」

    「はい! アリスはそうですねぇ……? 今日はここを最後にするつもりなので、1時間ぐらいでしょうか?」

    「オッケー! わかったよ! 部長じゃあこれ聞いて見るね!」

    アリスの反応で”芝浜”を聞きながら、ルームランナーを走り始める。エリカは落語にいままで触れたことはない。
    走りに最初は集中し、没頭していく。深く、深く、音を聞いていた。――、小気味のいい音の粒を、ただ最初は聞き流す。
    ――どうやら、魚屋の|棒手振り《ぼてふり》。水桶に生きた魚を入れて、街で売り歩く男とその嫁”お浜”の話らしい。
    その男は酒に弱く、仕事中にも嗜むとんだ飲んべえらしい。
    そして酒が原因で仕事がなくなり、家に金がなくなるところから話が始まる。
    エリカはその熊吉という主人公に最初は嫌悪感を抱く。

    (最低だな。こいつ)

  • 121◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 00:01:12

    更に話が進み。なけなしの金で魚を仕入れに行った熊吉はなんと大金を拾う。それを喜び家に帰ると熊吉はご近所を呼んで酒盛りを始めたのだった。大宴会は夜明けまで続くそして――、ここで夢が覚める。

    嫁曰く、大金を拾ったのは夢だという。だが、宴会を始めたのは本当のようだ。
    嫁は旦那の面子を守るために、黙ってしたがったのだという。
    残ったのは大量の借金。その場で熊吉は崩れ落ちるのだった。

    だが話はここで終わらない。熊吉はここで一念発起することができたのだ。嫁さんがしっかり支えたのである。

    そこから熊吉は持ち直し、お酒を絶った数年後のある日。
    やっと借金を完済した熊吉と嫁さんは、膝を付き合わせ喜びを分かち合う。しかし、嫁さんの様子がどうにもおかしい。
    何かを打ち明けようと膝をもじもじさせている。
    熊吉はどうしたのかと聞いて見る。すると、嫁さんはおずおずと、あの宴会の日の”真実”を話始めたのだ。

    その真実とは、――財布を拾ったのが夢というのは≪嘘≫だったのだ。本当は借金なんかなく、ずっと熊吉を反省させるために騙していたようだ。
    嫁さんは騙して居たことを謝ると、熊吉は逆に心配掛けたことを謝り二人は寄り深い絆で結ばれた。
    そして、それを祝う為に嫁は熊吉にお酒を差し出す。それを喜び熊吉はお酒を口にしようとするが、口許まで寄せてから思い直して一言。

    「~よそう。また夢になるといけねぇ」

    そういって話は終わるのだった。

  • 122◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 00:01:36

    ――夢中で聞き入って居たエリカは気付くと、汗の他に涙の跡が走っていたのに気付く。
    ありがちな話ではあるが夫婦の絆や、熊吉の成長に自然と涙が流れたのだった。

    (ずびっ……いい話だった。落語いいかも……)

    外を向いたエリカなその涙にだれも気付くことはなかったが、満足そうな様子に部長はうんうん、と頷くのだった。

  • 123◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 00:02:07

    ――アリス、イロハの場合。
    キラキラ部の二人から少し遅れて部長のアドバイスを受ける二人

    「さてアリスさん? イロハさん? 何か希望はありますか?」

    「はい! やっぱり継続して出来るのがいいです!」

    「私もきつくないやつならなんでも」

    部長は少し考え込む。あまり普段運動しない人向けとなると
    先ほどの寿限無耐久ヨガは少しつらいものがあるかもしれない。
    2、3分考えてから、座って出来る運動があったこと思い出した。

    「これから教えるのは座って出来る落語エクササイズです。
    まずは座布団と扇子、湯飲みと蓋、ハンカチを用意してください」

    そういうとてきぱきと用意する部長。すぐに高座のような、状態が作られる。

    すると先ずは、座布団に座りお尻を上げ下げさせる運動。
    尻を下げてから腰をひねり湯飲みを左右に置く運動。
    扇子を持って円を作る運動などなど、落語の咄家のような動きをしていく。
    それを何度か続けるとイロハとアリスは軽く汗ばんでいた。
    どうやら意外にハードらしい。

    「これは中々きつい……ですね?」

    「そうですか?アリスは気持ちいいです!イロハは少し運動不足かも知れません! もっと続けましょう!」

    イロハはもういっぱいいっぱいだ。
    少し恨めしい顔をしてアリスを見つめるのだった。

  • 124◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 00:02:44

    そうして、少し休んだあと四人は合流する。
    特に念入りに追い込まれていたキララは少し曇った顔で「一回、二回、……七回、八回、九回……一回足りな~い!」とぶつぶつ呟いていた。

    しかし概ね、四人は満足したらしく。
    笑顔で”フィットネス落語部”を去って行く。
    その後ろを見送る部長。四人が扉を閉めた瞬間一言。

    「(脂肪が)ほらぁ消えた」バタン――。

  • 125◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 00:03:11

    ――5つ目。汗を掻いた四人は大浴場に集まり、汗を流していた。

    時間は6時を大きくすぎて、夕飯時に差し掛かる。
    風呂場にて反省会をしてから食堂に行く予定と相成った。

    「ねぇねぇアリスっちはどこが良かった?」

    キララはテンション高めにアリスに近寄り聞いてくる。

    「アリスはですねぇ……やはり、チェスボクシングでしょうか?新たなゲームのアイデアになりました!モモイ達に相談します!キララはどうでしたか?」

    「うーん。私は全部良かったよ?ク◯ィッチは残念だったけど」

    「全部ですか?」

    「そう! 全部! 皆さ、青春に打ち込んでるのは本当なんだよ! 私達が理解できなくてもさ、皆が楽しんでるのを見るのが楽しい! わくわくしてこない?」

    水が滴る髪の毛をかき揚げ、とびきりの笑顔をアリスに向けるキララ。その笑顔には一切の嫌みがなく、心からの言葉だとアリスは感じる。
    確かに自分達”ゲーム開発部”もちょくちょくユウカから突き上げを食らうが、青春に打ち込んでいるのは変わらない。
    何か、キララの言葉はアリスの心を打つものがあった。

    放課後付き合ってくれた”キラキラ部”、その青春のキラキラを探す部活?の活動は何事も楽しむという単純で解りやすい姿。
    その姿が、アリスが一番学ぶべき物として心に残ったのであった。

  • 126◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 00:08:41
    ep1 "Alice in the Gehenna "⑥~部活探訪 終~ - アリス、冒険(短期留学)します! - ハーメルン2025/5/16 腰やったので数日お休み中 20日ぐらいまでは更新ないです多分 ※注意※ 原作でやられ役やひどい目にあうキャラはそのままひどい目に合います。 …syosetu.org

    色々ルビとか振ってるので、読みづらい方はこちらよりどおぞ。

    今回は5000字こえちゃいました・・・。

    今回は落語ネタがひたすら多く、解らない方にはちんぷんかんぷんかも知れません。ごめんなさい。


    一応今の章のまとめ(メール部分)を明日19時ぐらいに投下したあとは、しっかり書き溜めします。ではではお休みなさい

  • 127二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 02:43:25

  • 128二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 08:45:28

    お疲れ様です

  • 129二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 11:30:18

    投稿おつ

  • 130◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 18:31:12

    件名:ゲヘナのクラン別報告書
     

    差出人:アリス

    宛先:ユウカ

    日付:××××年×月×日

     

    ユウカへ
     

  • 131◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 18:31:34

    こんにちは!アリスです!

    今日の放課後は|部活《クラン》の調査報告です!
     
    まず、一つ目は爆発芸術部です。

    爆発の美しさを競う部活でした! ミレニアムに比べればまだまだでした!

    二つ目は、チェスボクシング部です。

    頭脳と力のぶつかりは熱いものを感じました。
    ぜひミレニアムにも作ってほしいです!

    三つ目は、ク◯ィッチ部でした。

    魔法はありませんでした。

    四つ目は、フィットネス落語部です。

    ユウカが言っていた軽めの運動にはいいと思います。
    詳細はデータで送ります!
    いい運動ができました!

    五つ目は、キラキラ部!
    青春を探したり、一緒に楽しんだり笑いあったりとってもとっても素敵な部活でした!
    皆の写真も送りますね!


    P.S今日は頑張りました。なので、ゲーム返してください!
    ――

  • 132◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 18:32:03

    アリスのメールを開きながら、ユウカはため息をついて「まだだーめ」とごちる。
    やはり、ゲーム禁止は正解だったようだ。元来好奇心が強い子だ。ゲームの時間を減らせば、いろいろな経験をしてくれるだろうと踏んだが予想通りだったようだ。

    続けて添付の写真を開いて見るユウカ。
    その写真にはキララ達と写った楽しそうな写真が何枚かある。
    そして最後には、キララが施したのであろうキメキメの盛りメイクのアリスの姿があった。
    ユウカはそれを見て椅子から転げ落ちた。キララと並んでハートマークを作る姿に新しいアリスの可愛さを目の当たりにしたからだ。

    (これはこれでありね)

    そう心の中で呟くと、セミナーの端末からその写真をコピーし私用の端末に保存したあと返信を返す。


    ――

  • 133◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 18:32:50

    件名:Re:ゲヘナのクラン別報告書
     

    差出人:ユウカ

    宛先:アリス

    日付:××××年×月×日

    確認しました。
    少しは反省したようですがゲームは返しません。

    ずいぶん派手な女の子と仲良くなったようですが、悪い娘じゃなさそうなので良かったです。
    明日はお休みだと思います。
    今日は早めに休んで、ゲヘナの街をみてきて貰えるかしら?

    もちろん怪我しないように!!

    じゃあ引き続き楽しんで来て下さい。

    ――

    その返信にアリスは頭を抱えて、大人しく今日は眠りにつくことにする。


    「明日はイロハ達は付き合ってくれるでしょうか?」


    ゲヘナでの休日に、アリスは期待半分、不安半分といった気持ちのまま眠りに着いた。

  • 134◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 18:33:32

    ――ユウカは週末ということもあり、セミナーの仕事を残業で片付けていた。
    アリスに返信を返してから二時間ほどたったころ。

    コーヒーを取りにユウカはフロアを歩く。その時だった。――ぐちゅり。何か嫌な感触。
    足の裏をユウカは恐る恐る見る。
    節電で暗い部屋では判然としないが、何か踏んだらしい。

    ユウカは、大きなため息の後コーヒーを飲見ながら清掃ドローンを呼ぶ。しかし、すぐには現れない。どうした物かと考えていると……ユウカは強烈な睡魔に襲われたのだった。

  • 135◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 18:37:31

    用事がありまして早めに投下しました。

    また数日は書き溜めに戻ります~

  • 136二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 19:39:59

    ゲヘナのがさ入れか?

  • 137◆GKl/O7H4.E25/05/19(月) 23:07:30
  • 138二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 01:31:16

    保守

  • 139二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 07:11:31

    保守

  • 140二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 11:29:15

    >>137

    投稿乙

  • 141二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 18:10:50

    保持

  • 142二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 23:02:17

    保持

  • 143二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:10:12

    え?なにこれ?ロールバックでもしたの?

  • 144二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:11:02

    ロールバックしたとトップで出てましたね…

  • 145二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:14:51
  • 146二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 23:45:20

    とりま保守です

  • 147二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 00:04:59

    保守

  • 148二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 05:29:02

    んぁぁぁ!

  • 149二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 11:36:38

  • 150◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 18:49:38

    ep2 ”ロストメモリーズ” machinery express①

    ――課長の後悔。

     

    何がいけなかったか?

    珍しく立て込んだ依頼?

    社長が調子のって、散財するのを止められなかったこと?

    ムツキが楽しそうに笑いトラブルを楽しみ始めた時?

    ハルカが暴発せずに依頼をこなしていることを不思議に思わなかったこと?

    普段は近寄らないゲヘナへ無警戒で近寄ったこと?

    たまたま交換留学の期間だったこと?

    恐らく”全部”だ。

  • 151◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 18:50:24

    私達――便利屋68――は、悲しいかなトラブルとは仲良しこよし。この忙しくも平和な日常が長く続く筈もないのだ。平穏から抜け出し社長に惹かれ、悪事を働き(社長の自称)依頼(猫探しのような平和な)をこなす。

    依頼がなければ野宿も辞さず、貧乏暮らしもなんのその。

    社長が目指す生き様アウトローについて行く。

    そんなはみ出し者アウトローの私達の非日常レギュラー。

    その非日常と彼女の日常が交わったのは、数奇な奇跡が重なった結果だったのだろう。

     

    私、鬼方カヨコはあの日に至るまでの全てを反省していた。

    私たちの情けなくも楽しい非日常レギュラーに巻き込んでしまったあの少女のことを、だ。

    まぁどうせうちの社長が懲りることなどありわしないのだろうけど、私達のミスで巻き込むようなのは社長も望まないだろう。

    少なくとも今後の目標が「一日一惡」の他にもう1つ出来た。


    「一日一業」である。

  • 152◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 18:50:58

    ――

    その週は珍しく便利屋68は依頼がひっきりなしに舞い込むという便利屋稼業にて初めてと言える繁忙期を迎えていた。

    月曜日から一日に依頼が二つ、三つと立て続けに入っており、社長以下四名はそれぞれ手分けをしてぎりぎりで仕事を回していた。社長好みの荒事や、運び屋の真似事、護衛などの業務が続きモチベーションと実入りは良いものそろそろ限界を感じる頃合いであった。

     

    金曜日。夕方に差し掛かる16時頃。カヨコはやっとこの日の仕事を終え、事務所兼寝床に帰宅する。既に社長は帰宅しており、デスクに座りいつの間に買ったのかローストのコーヒーマシンの香りを燻くゆらせていた。カヨコはそれを見咎め、苦言を呈する。

     

    「社長……。また、無駄な物買って……」

     

    「あら課長! お帰りなさい。別に無駄じゃないわよ! 忙しい社員を労う福利厚生の一環よ? それにコーヒーとか嗜好品にこだわるのってアウトローっぽくない?」

     

  • 153◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 18:52:03

    そういって屈託なく笑う姿はどんなに悪い言葉で形容しても、悪ガキがせいぜいである。こうやって調子に乗るのは社長―陸八魔アル―の悪癖であり、愉快な部分でもある。

    悪を標榜する癖に隠しきれぬ善性が彼女の魅力の一つだった。カヨコは言っても無駄かと諦めて自分の席につく。

    あとで別の部分を締めればこの好景気ならなんとかなるだろうと、カヨコも楽観的に考える。どうやら社長の思考にカヨコも引っ張られているようだ。

    なんだかんだ野宿でもアル達と一緒なら楽しく生活出来るため、アルの欠点にはカヨコも見通しが甘くなる。まずここで強く止めなかった。これがよくなかった。 

    ――数十分後、勢いよく事務所のドアを開けムツキとハルカが帰ってくる。少々土埃で汚れているが怪我などはなさそうだ。

    「アルちゃん!たっだいま~お仕事終わったよ~!あ~疲れた~!」

     

    「アル様ぁ!私も終わりました!」

     

    カヨコは今後のスケジュールを確認していたが、ドアに目線を移すとその細い人差し指を口に当て小さく「シー」と制した。

    アルは依頼の電話中だ。それに気づいた二人は身をすくめ静かに部屋に入ってくる。

     

    カヨコの横までくるとひそひそ声で、アルの方を指差しムツキが「依頼?」と聞いてくると、カヨコは「そうみたい。日曜日って話だけど、今週休みないかも……」と少しげんなりした顔で返すのだった。

    カヨコはアルの電話を横で聞きながら、スケジュール表の日曜日の欄に内容を記載していく。

    場所はゲヘナ。ホテルの襲撃。家具や調度品にはなるべく傷をつけずある組織同士の取引の妨害。取引品の確保後、速やかな破棄。依頼人はそのホテルのオーナーらしい。

  • 154◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 18:54:13

    カヨコはオーナーという単語に引っ掛かりを覚える。

    机をトントンと叩き、アルへ合図を送り「もう少し詳しく経緯を聞いて」と一枚のメモ紙を差し出した。
    アルはその紙を見て、目付きを変えると早速話を切り出した。
    こういう時カヨコの疑問は無視しない方がいい。思わぬ落とし穴が潜んでいる可能性があるのだ。

    「オーナーさん? どんな依頼もこなすのが私達のモットーだけど、ちょっと腑に落ちないのだけれど? なんでご自分のホテルの客に襲撃をかけるのかしら?あなたに何・の・得・があるのかしら?」
     
    こういう時のアルの交渉術ハッタリは馬鹿に出来ない。

    こう堂々とまっすぐに切り込まれると相手は素直に答えがちなのだ。アルは電話をスピーカーにしてその答を待つ。

    数秒の後、オーナーは観念したように話しはじめた。

    「これはオフレコで頼む。 地下の宴会場を定期的に借りたいという客が居てね。ゲヘナだからね。周りの騒音を気にしないように地下に宴会場を作ったんだよ。そしたら、温泉開発部。あいつらのせいで生き埋めが怖いと地下の宴会場の利用者が全然いなかったんだ。そんな折に、今借りてる客、マフィアがね借りたいと申し出て来たんだ。まぁ素性は知らなかったんだけどね。これは渡りに船と貸し出しては見たものの結果は、何か違法な物の取引に使われているんだ」

     

    「それで? その取引をやめさせたいって訳ね? 貸し出しをやめれば解決するのではなくて?」

     

    「報復が怖いのさ。奴らは間違いなく報復してくる。しかも近々、風紀委員が嗅ぎ付けてきそうなんだ。やつらが、介入してきたらホテルは破産だ! 君たちが襲って”ここは安全じゃない”と早めに出て行ってもらわないと困るんだ!」

    と言って泣きそうな声を出すのだ。 
    アルはその哀れな声に少し同情を見せ、カヨコに一応目線を送る。カヨコはその目線に力強く頷いた。

    依頼を受ける。そうここに決まったのだった。

  • 155◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 18:55:40

    「わかった。依頼を受けるわ。今週日曜日15時でいいのね? え?違う?予定が代わった?ふむふむ?へえ?わかったわ任せて!」

     

    そういうと電話を切るアル。

    それと同時に机に脚を掛け―カヨコははしたないとぼやく―、

    社員に大口の仕事が入ったことを

     

    「明日、土曜日15時にゲヘナのプリンセスホテルで襲撃依頼よ!今日は早く休んでがんばるわよー」

     

    と暢気に宣言する。

    しかしカヨコから、「はぁ?!」と大きな声で水を指されるのである。

    「社長。 スケジュール見た? 土曜日」

    そういうとカヨコはデスクのPCをアルに見せた。スケジュール表の土曜日の欄には既に二つの仕事が入っている。しかも、どれもが襲撃依頼である。時間はぎりぎり被っておらず、全てゲヘナという時間的にはなんとかならなくもないといった状況。

    トリプルブッキング。スケジュール管理のミスである。
    かなり無理のあるハードスケジュールにアルの顔はみるみる血の気がひいて行く。顔面は固まっていた。そしてそのストレスが最大値を迎えると爆発した。

    「なななな、なっなんですってぇーーーー!!」

    いつも通りの絶叫が事務所内をこだましたのだった。

  • 156◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 18:56:20

    はい。ここまでがロールバック分です。

  • 157◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 18:57:46

    ――アリスの知らない1日。

    正直アリスはその日の事を覚えていません。
    朝に起きて、食堂でフウカに買い物クエストを頼まれてから、気付けばゲヘナの街中、陥没した爆心地の真ん中にいました。
    アリスはやはり魔王だったなのでしょうか?
    ゲヘナの闇の力で大暴れ。そんなことになっていたら大変です。
    ヒナ委員長はアリスは悪くないから気にしなくていいと言ってました。でもなにも覚えてないのはもやもやします。まるで記憶喪失の勇者が自分の出自に悩んでるみたいです。あの日、アリスはなにをしていたのでしょうか?疑問は深まり焦燥感がアリスのメモリを覆い尽くします。

    だれに聞いてもアリスは悪くないとしか言いません。
    マコト議長ですらも忘れろ。ミレニアムにはなんも言うなと言います。少しでも思い出せるようにアリスは……。アリスは……、そう思うと何故か涙が頬を伝って来ます。これはまるであの時のように、アリスの知らないセーブデータがある感覚に似ています。でもあの時程の不安はありません。むしろこれは、寂しさ?
    多分そうです。これは、そうただただ思い出せないことが”寂しい”んです。何を忘れてしまったのでしょうか?アリスは思い出さないといけない。いえ、絶対に《《思い出します》》。
    先ずは朝からの事を整理しましょう。
    それはゲヘナでの初めてのおやすみの日でした。


    ――土曜日、朝8:00。

    アリスは珍しく2日続けての睡眠を満喫していた。
    本来睡眠自体はアリスには必要性が薄い。しかし好きなゲームが取り上げられてしまえば、大人しく眠るくらいしかないのだ。日課のゲームのログインボーナスもこれでは受けとることも出来ない。

    「ふぁ……、おはよ……うございま……、ってここはミレニアムじゃありません。ユズもモモイもミドリも居ないんでした。……、起きますか」

    暇をしているとどうにも心にぽっかりと穴が空いたようにアリスは感じた。ゲヘナの毎日は楽しい。楽しいが、ゲーム開発部とは違う。こんなに、ミレニアムから離れたのは初めての経験だ。
    アトラハーシスの一件でも、モモイ達は着いてきてくれた。

    (心細い……、アリス覚えました。”先生”ならこういう時どうするんでしょうか? モモトークで聞いてみましょう!)

  • 158◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 18:58:17

    アリスは早速、端末を起動する。幸い連絡手段だけは禁止されていない。ゲーム開発部やミレニアムの友人からのトークの返信を返しつつ、先生へと相談してみる。
    返事はすぐに帰って来た。

    「残念だけどその寂しさって言うのは、アリスが成長するために慣れていくしかないものだよ。ただ、寂しさを紛らわす方法はあるよ。 私もそうだけど目についたことをやってみる。いつもアリスがミレニアムでやってることだね。 ゲヘナにいるからって気負う必要はないんだ。アリスはやりたいことを続ければいいんだよ。どう? 少しは参考になるかな?」

    慣れるしかない。でも、いつも通りに過ごすことで《《ある程度》》は緩和される。
    アリスは先生の実感が籠った返信に少し気を引き締めると同時に、”いつも通り”という言葉を噛み締めていた。
    アリスは「解りました! いつも通りの冒険をアリスはしてみます!」と返すと、「頑張って」と先生からの返信。それを確認するとアリスはすぐに寮を出たのだった。

    「アリス。クエストスタートです!」

  • 159◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 19:00:07

    ――ゲヘナ食堂。

    休日であったが、結構な数のゲヘナ生がすでに食堂で食事をしていた。その中には異様な雰囲気の四人組も見える。
    その四名は涙を流しながら、「フウカさん……、また腕をおあげになって」「じゃんじゃん食べましょー!久しぶりにお腹いっぱい食べますよー!」「どうしよう。なんも足さない方が美味しいよ!これ!フウカすごい!」「あー私のにっころがしー」、……異常に騒がしい。

    アリスはその生徒達を横目で見ながらフウカの元に向かった。
    休日ということで、少し余裕のあるフウカはアリスに雑談を持ちかける。

    「あらアリス? どう? ゲヘナには慣れた?」

    「はい! 毎日楽しくやってます! ところであの人達どうしたんですか?あんなに泣いていて、悲しいことでもあったんですか? 」

    「あぁ|美食研究部《あいつら》? ほっといて良いわよ? なんでも一週間ぐらい、反省室送りになってたらしくてね。久しぶりに食堂に現れたかと思ったらあんな感じなのよ」

    「それは可哀想? ですね?」

    「ただの自業自得よ……。はぁ。 あとアリスも、あんま関わっちゃ駄目よ? 気のいいやつらだけど、ゲヘナの関わっちゃいけないテロリストの一つだから」

    そういうフウカの顔には、実感が籠っておりどうやらあまり評判は良くない集団だと言うのは察することが出来た。

    「解りました! ところでフウカ? 何かお手伝いすることはありませんか?」

    「お手伝い? また急にどうしたの?」

    「アリス、実は今日は予定がないんです。 先ほど外出の許可は取ったのですがイブキもイロハも仕事があるらしくて、なにも決まってないのです」

    「せっかくのおやすみなら、何か遊びに……って言っても土地勘もないかぁ。じゃあ、お散歩ついで、お使いしてきて貰おうかしら? たまたま素材が手に入らなかったのがあってね?明日使う予定だから急ぎじゃないから丁度いいでしょ」

    そういうとフウカはメモ紙をアリスに手渡す。
    どうやらお店の場所も色々書いており、何ヵ所か回る必要がありそうだ。アリスはそのメモを確認すると、敬礼のポーズで了承する。

  • 160◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 19:02:32

    「はい! 勇者アリス、お使いクエスト受注しました! 早めにこなして追加報酬も頂きです!」

    そのかわいらしい勇者のおねだりに、フウカは吹き出す。

    「急がなくてもいいわよ? まぁクエスト?の報酬は期待していいわよ? ご飯になるけど、いつも以上の物を用意しとくわ!」

    「はい! 期待します!」

    「まぁ先ずはご飯食べちゃいなさいよ。はい! しっかり食べるのよ」

    そういっておぼんを渡すフウカ。
    今日の朝食はブレックファースト。スクランブルエッグに、ベーコン。ビーンズとトースト、ワッフルという朝食にしては中々の重さである。
    アリスはその重めの朝食を平らげるとゲヘナの学舎を後にするのだった。

  • 161◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 19:03:20

    ――ゲヘナの街。

    フウカからのクエストを頼まれたアリスは、ゆっくり街を散歩していた。

    「うぷっ。 ちょっと食べ過ぎました……」

    アリスは丸くなったお腹を擦り、メモを片手に歩いて行く。
    どうやら量が必要らしく直接配達を頼む必要があるようだ。
    腹ごなしにはちょうどよく一軒、二軒と歩く頃には、お腹の調子は戻っていた。
    ゲヘナの地図を端末で確認してみると、結構裏道や路地、通り道。細道がミレニアムに比べ多くあるようだ。
    ミレニアムは同じような四角いビルばかりで迷いそうになるが、区画整理がしっかりしており案外案内板に頼れば目的地に着くのは難しくない。
    ゲヘナは小道に入ったが最後、迷うこと必至だろう。
    フウカにも口を酸っぱく「小道には入るな」と念入りに言い含められていた。

    ここまで順調にクエストを進めるアリスだが、次の店に行く途中、とうとうゲヘナの日常に遭遇する。
    向かう道の方向から逃げ惑う人々の波が訪れたのだ。

    人波の悲鳴は「温泉開発部だー!」「逃げろー!」と、先日の部活探訪で聞いた名前。
    アリスは好奇心が沸き上がるが、クエスト中なのを思いだし辺りを見回し、地図へ目線を落とす。

    「このまま進むより……、裏道を進んだ方が良さそうですね。アリス、進路変更です!」

    アリスは細い裏路地を抜ける選択をした。
    路地裏は空き缶や紙くずが散乱している。弾痕もそこかしこに散見され荒れに荒れていた。日差しも入ってこず、道を見通すことも出来ない。
    アリスは地図を頼りに奥へ奥へと進むと、表通りにいる人々とは身なりが違う擦れた服装の者達が道沿いにたむろしているのにアリスは気づいた。どうやらフウカの言葉は素直に聴くべきだったようだ。アリスに気付くと、彼女達はニヤニヤとアリスに近づこうとしてくる。アリスは嫌な予感に身体は硬直する――しかし、それはすぐに杞憂に終わった。横から「温泉開発部だ!逃げろ!巻き込まれるぞ!」と叫び声が響いたのだ。
    その叫びに路地裏の住民達は蜘蛛の子を散らすように散開したのだった。取り残されるような格好になるアリス。

    アリスは長居は不味いと感じ足早に路地裏を抜けようと広い道へと出る。すると川沿いの工事現場横の道に出た。日差しを感じるとアリスは少し安心した。

    「もう裏道を行くのはやめましょう! 随分物騒です」

  • 162◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 19:04:16

    そう再認識すると、また地図を端末で確認する。
    夢中で外に出たため少し道順がずれたようだ。再ルートを検索してみる。この道をしばらく真っ直ぐ進むしかないようだ。ちょっと遠回りになるが仕方ない。
    改めて心機一転、アリスが進もうとすると川を挟んで発砲音と同時に巨大な爆発音。そして遅れて二度目の発砲音も小さく響く。まだ爆発音の最中にもう一発放たれたようだ。爆発音に身を屈め、銃声の出所を確認しようと地図から目を離したアリスが最後に見た光景は自分に迫る銃弾が目の前広がる瞬間だった。

  • 163◆GKl/O7H4.E25/05/22(木) 19:08:18
  • 164二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 23:15:13

    寝る息子

  • 165二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 02:50:25

    保守

スレッドは5/23 12:50頃に落ちます

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