- 1ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 16:52:20
襲来した異星人!
侵略されるエネルギー資源!
存亡の危機に晒されてなお人類は……
未だ一つになり切れず、壮大な内ゲバを繰り広げ続けていた!!
【出来れば読んでいただきたい世界観および初期設定集(テレグラフ)(各種ページへのリンクあり)】
ここだけ3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦うリアルロボットSFな世界あらすじ(とりあえずこれだけ読んでくれたなら最低限大丈夫な筈の簡潔にまとめた世界観)その1:どういう世界なの?
特殊なエネルギー鉱石「コア鉱石」を動力源とする人型歩行兵器「バディフレーム(通称:BF)」が兵器として一般化した高度な機械文明が築かれている、地球に酷似した惑星が舞台だよ!
元々は人類同士で細かい諍いとかはありつつもそれなりに穏やかな世界だったんだけど、本編から20年くらい前に惑星外性生物「インベイド」が隕石に乗って地表に飛来、どうやら上述のエネルギー塊「コア鉱石」がインベイドにとっては食糧として美味しくてたまらないらしくて、人類に敵対行動を取り始めたんだ!
必死に抵抗したんだけど、現在では地表のおよそ3~4割程が完全にインベイドがうようよ闊歩している危険地帯になっちゃって、そこから時々インベイドが攻め寄せて来る油断できない状況なんだよ……。
その2:で、今どうなってるの?
インベイドとの緒戦により人命を多く失いながらも、結果として「クロノス・インダストリー(通称:K.I社)」が世界を主導、地表や地下に「コロニー」と呼ばれるいくつかの居住拠点を制定してそこを中心にインベイドに対抗する様になったんだ!…00m.in次スレは>>190踏んだ人で!
- 2ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 16:53:02
【前スレ】
【R-18】ここだけ3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦うリアルロボットSFな世界part18【のんびり進行】|あにまん掲示板襲来した異星人!侵略されるエネルギー資源!存亡の危機に晒されてなお人類は……未だ一つになり切れず、壮大な内ゲバを繰り広げ続けていた!!【出来れば読んでいただきたい世界観および初期設定集(テレグラフ)(…bbs.animanch.com【禁止事項】
・無敵ムーブ(戦闘でダメージを受けない、回避し続ける、など)
・必要性の認められない確定ロール
・相手PLが嫌がっていることを強要する行為(特にR-18関連はデリケートなところなので扱いには気を付けて、事前相談忘れずに)
【世界観やパワーバランスを保つ上での禁止事項】
・版権設定の利用
・「地形を変えられる火力」を個人で設定し所有すること
・3勢力(K.I社、人自連、デスペラード)+インベイドよりも立場や規模が大きい勢力を設定すること
・なんでも高い水準で出来るキャラ、なんでも高い水準で出来る機体禁止(他の人の活躍機会を奪いかねないため)
・メタネタ禁止(「この世界は作り物だ~」や背後さんへの言及をキャラの目線で発言させるなど)
- 3ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 16:53:17
Q1:参加してぇ!けど事前のキャラ登録って必須なの?テンプレはある?
A1:キャラシはあった方が色々スムーズだとは思うけど、無くても規約的なNGムーブさえしなけりゃ参加はOKだぜ!
テンプレらしいテンプレは特に無い(めんどうくさかった)からテレグラフなりで各自好きな様に書きたいこと書いてくれ!
↑の初期設定集から飛んだ先にあるスレ主のキャラシからテンプレとして項目を引用しても大丈夫だぜ!
Q2:キャラは1参加者につき何人まで?
A2:何人でもOKだぜ!複数陣営あるし下手に制限設けたらスカスカになるのが目に見えてるから……好きな様に作ってくれ!
Q3:コテハン(トリップ)は必須なの?
A3:必須じゃないぜ!でもトリップが無いってことはなりすましや乗っ取りが出ても判別方法が無いってことでもあるから、自衛手段としてコテハンを持っておくのは無難だぜ!
Q4:スレタイにR-18表記があるけどエロスレなの?
A4:一般誌のエロ描写とか元ネタ一般作品のエロ同人好き? 俺は好きなの……
エロメインじゃないけど「エロいことも割と自由に描写して良い」スレだから苦手な人がミスッて踏まない様に一応表記しているぜ!
「猥談耐性はあるけど自キャラにエロルさすのはなぁ……」って人でもOK、「自分は露骨なエロやりたくないです」って言っておけば良いぜ!
Q5:設定集に目通したけどなんか既視感ある設定ばっかりだな?
A5:へへっ - 4ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 16:53:41
【テレグラフ(設定やキャラシート、R-18な文章を書いたりにどうぞ)(※URLのhとttpsの間のスペースを消して検索してください)】
h ttps://x.gd/Z5SAZ
【URL短縮用サイト(テレグラフのデフォルトURLだとあにまんのNGワードに引っ掛かってしまうのでこちらでURL短縮してから投稿してください)】
- 5ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 16:55:18
【??? ???】
……良い天気だな……
『そうでございますね』 - 6ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 16:57:04
……この景色を見ると、実に平和そのものだな
映像でしか見た事の無い、20年以上前の緑豊かな土地となんら変わりはしない
『そうでございますね』 - 7ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 17:06:48
……そう言えば、エイダン殿や少佐殿は?
・・・
『最近何やら忙しいようですね』
……そうだった。それならハニヤの姐さんの方はどうなっている?
『もうしばらくすれば去って行かれるかと』
【……フゥー……】
やっぱり……何度聞いても覚悟を決めても辛いな……
『またいつか、生きていればいつか会える。この世のどこかで誰かがいつも仰る言葉です。そう信じましょう』
……ありがとうよ - 8ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 17:10:15
さてと……メビと組手をするのも良いが、シャロンの姐御たちも体が鈍っているだろうし、そっちの方にアポ取ってみるか
『一たちは?』
彼らにはしばらくのバカンスに行かせた
ユスラの姐ちゃんから「頼りなさい」って言われたからな
『そうでございましたか』 - 9ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 17:13:35
『ところで金龍様』
どうした?
『シャロン様たちにアポを取れるのは取れますが、断られる可能性が高いかと』
……だよねぇ
『ですから伺います』 - 10ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/10(土) 17:28:01
『ぶっちゃけ彼女たちに会いたいだけですよね?』違うよ?
『そしたら最初にシャロン様たちを勧誘した時、誰も気づいてませんでしたが、彼女がボタンを外していた様を背中のインプラントでまじまじと見てましたよね?』誤解だよ?
そんなつもりなかったのにいきなり脱がれるんだから、驚いて反射で起動しちゃっただけだよ?
脳のキャパが限界で、ちょっとフリーズしちゃっただけだよ?
・・
『でも、あの時ちょっと反応しましたよね? 実際にそこの所はどうなのか言ってみてください』
生理現象は意識して防げるものじゃないし、あれは防ぎようがなかったからね!?
『ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん……』
ねぇその目やめて! 仕方ないじゃん! 軍属の大佐だとか結婚したとかだとか言っても、年頃の男なら誰だってそうなっちゃうじゃん! 不可抗力じゃん! だからそんな冷たい目で見ないで!
『別に珠様から許可は降りているのですから、取り繕わなくても大丈夫ですよ』
【屈託のない笑顔による全力サムズアップ】
ちょっと待って!? 距離取ろうとしないで!? 離れないで!? 帰らないで!? ねぇ!? ちょっと!?
頼むから俺を置いてけぼりにしないでくれーーーー!!!! - 11東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/10(土) 20:12:22
...そろそろやな
- 12留置所・警備部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/10(土) 21:21:39
- 13◆KPwoT407kA25/05/10(土) 21:29:01
- 14旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/10(土) 21:46:13
「ふふ、ラバーさんも可愛らしいですわね」
雇用主の燥ぎぶりを、微笑まし気な雰囲気で旧愛卿は眺めていた。
彼女にとって重要なグランセルンの概念に含まれる『情熱』を自身の美に対して発揮する姿は、素直に言ってしまえば──────非常に好感が持てた、という他ない。
しかし手鏡を手渡され、旧愛卿はヘアサロンで新たに生まれ変わった自らの姿を覗き込んで自信満々に豪語した。
「星空のような蒼と黒の混ざった色のツインテールは深い静謐を堪えた海のようにも見える素晴らしい仕上がりですわね!極北よりも冷たく、神殿よりも静かで、そして山脈をも呑み込む程に深い!私的なグランセルン・インテリジェンスの具現のようですわ!」
グランセルン・インテリジェンスって何だ??? - 15留置所・警備部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/10(土) 21:54:55
- 16揚陸部隊◆OXAm1h6odk25/05/10(土) 22:11:59
前スレ199
・・・・・・・
「────────作戦は失敗だな」
酷く無機質に、百機のバディフレームを率いる隊長機は呟いた。
クロノス海軍と接敵しない事を前提条件とした作戦であった。である以上、紛れもなくクロノス海軍の艦船が巡回している現状は失敗であろう。
何処から情報が漏洩したのか調べる必要はあるが、確実なのは直ぐに撤退しなければ百機に及ぶバディフレームが全滅する恐れがあるという事だ。
「撤退するぞ」
「た、隊長…………………隊長は良いんですか!?例え犠牲を払うとしても、アレさえ突破すれば揚陸は可能な筈です!」
・・・・・・・・・・
「作戦を再確認させるな。事前に述べた通り、今回の作戦は接敵しないのが前提だ。貴重な戦力を浪費すれば今後に支障が出る────────クロノスの新兵器の情報を持ち帰れるだけでも大きな貢献になる。敵を倒す事だけが貢献ではない」
バディフレーム部隊が、続々と撤退する。その殿を務めながら、隊長機は静かに白鳥の如き艦船を睥睨していた。
「……………お互いに、命拾いしたな」
人類滅亡を回避する為の『牽制』は、役割を忠実に遂行した。 - 17◆KPwoT407kA25/05/10(土) 22:12:48
- 18ミハエル◆j28rRKKOSY25/05/10(土) 22:16:32
- 19留置所・警備部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/10(土) 22:33:25
『狙撃警戒!急所だけは避けろ!!』
『できりゃあ苦労は……! くそ、足を!!』
近接型のうち1機が足を破壊され、要となる機動力を奪われる。無事なもう片方はショットガンシェルの回避がため迂闊には動けない。
『まず』
足を破壊された機体へ迫るビームサーベルを防ぐ技術など持ち得ない。姿勢制御だけで精一杯であったのだ。
当然のごとくコックピットを貫かれ、そのまま膝をついた姿勢で擱座する。
『てめぇ、は!! ふざけ!!』
もう一機もまた近接武器どうしがぶつかりあった瞬間に、胸部から現れた隠し武器に対処できるはずもなく。
咄嗟に機体をよじって致命傷を避けながらも……無慈悲な追撃によって、徹底的に胴体に熱痕が穿たれた。
ふざけた音声に対する苛立ちの声は、もうない。
『フレア……反撃来るぞ、気をつけろ!!』
砲戦装備の二機はミサイルを肩からパージし、キャノン砲を構えながらビーム兵器を回避しようとする。
だが予測射撃かそれとも技量か。一機が捉えられ、爆発する。
『畜生ォ!!!』
苦し紛れに放ったキャノン砲が、もう一機が爆散するまでの最後の一発で。
それはどこまでも、一線級以上との違いを示していた。
- 20ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/10(土) 22:36:58
「……ふっ!!」
『こ、の!!!』
ビームサーベル同士がぶつかり合う。空戦装備のARATAMEの橙色と、蒼風改の青色がぶつかり、火花と光を放つ。
空中で両機がもつれ合い、そしてわずかに離れ、互いの機動を伺うように動く。
だがその動きの精彩度、鋭さは明らかに――――。
「はぁァ!!!」
蒼風改が上であった。高い推力、そしてそれを過不足なく利用し切る運動性能のままに上から強襲。空中で静止した隊長機の胴体部を掠めて……唐突にそのまま減速した。
背後を、晒したのだ。
『(体力切れ!今しかない!!)』
千載一遇のチャンスであると、隊長機は判断した。
長時間の拷問により疲弊した体力と精神力が、とうとう限界を迎えたと。
『落ちろォ!!英雄ゥァ!!』
部下の仇を取らんと、隊長機が刃を振り下ろした瞬間に。ビームサーベルが、ぶぉんと空を切った。
『な――――』
どこに行ったという言葉は、警報で黙らされた。
真上だ。隊長機の真上に、弧を描くような姿勢で蒼風改は飛んでいる。
そのまま上下反転した状態で真後ろに占位した蒼風改に、ケイは左腕のビームサーベルを展開させる。
『ブラフだったか……!!』
その言葉を最後に、隊長機もまた上下に両断された。蒼風改は重力に従いながら加速し、姿勢を安定させて着地した。
近くには、補給用のコンテナ。
「……少し、休もう」
息を吐きながら、ケイは機体内部に備え付けられていた水筒に一瞬だけ口をつける。
この場における味方の優位が、確定した。 - 21龍影◆9BZ6kXGcio25/05/10(土) 22:47:56
- 22アルパ◆YMCgTirJag25/05/10(土) 23:04:50
- 23ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/10(土) 23:09:20
- 24東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/10(土) 23:15:21
- 25龍影◆9BZ6kXGcio25/05/10(土) 23:31:58
- 26逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/10(土) 23:38:12
『流石は桜空の技術ね……速度、マッハ15を維持』
逆巻重工の実働部隊も自分たちの状態を確認し、感嘆しながらも……シズクは手順を進めた。
機体の揺れを感じつつ、インターフェースで拡大、確認しても各機で軌道のズレを起こしているものは一人もいない。
全機共に問題なしだった。
(これは確かに、龍影君が悪い学習を警戒するわけだ)
全機の降下が予定通りの進捗で進んでいることを確認しながら、セイドウは確かにレーダーを含めた感度の確認を取る。
こちらも全て問題なし。他の者達からの共有も終わった。
『部外者のウチがコレ言うんも
違うと思うけど...気合い入れてけや!』
「全員冷静で良くやった。だが本番はここからだ!東雲博士の言うように、後は気力と技術が物をいう!」
台の言葉に同意を取りながら、セイドウは実働部隊の後輩たちへ檄を飛ばし、士気と意志を固める。
「作戦遂行と生存が最高条件だ……敵は陸上戦艦!心して掛かれよ!」
『了解!!』
6機の廉月が望月と葉桜、メイツーを中心に編隊を組む。
芸術的な練度のそれは、おそらく世界最速の重騎兵であった。
- 27東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/10(土) 23:43:53
- 28逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/10(土) 23:51:28
『シールド投棄』
「シールド投棄!!全機大気の壁を恐れるなよ!!」
六機の廉月たちも耐熱シールドを捨てた。
耐熱シールドは投棄した瞬間。先程までの速度をそのままに運動エネルギーを維持し、過熱と大気とのぶつかり合いで色鮮やかに燃えて向かっていく。
予測軌道は陸上戦艦。
『うお、これはっっ!』
『はは……普通の加速姿勢や方法だったら空中分解していたかもな!!』
ユエギとツルカミのベテランは軽く笑い、今まで体験したことのない速度に興奮している。
『『いっけぇ!!!』』
双子は心から獰猛な笑みを浮かべ、自分たちの手放した物言わぬ耐熱シールドへ言葉を掛けていた。
マッハ15の速度を持つ質量弾など使ったことがないからこその興奮だった。
『サヤギリ……先に待っているぞ!!』
ハザマは笑い、地上で補給をしているだろうケイに向けて独り言を。
きっと彼もここに混じりたかったに違いないと、友として確信した。
すべてが夢のようで、しかし現実として。9機の機体とそれが持っていた盾。
計18個の流星が、空を駆け抜けていた。
- 29旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 00:21:51
「ショッピング……………“最初”を選ぶというのは中々難しそうですわね。順に巡るとしても、最初はやはり特別感があると思いますし」
むむむ、と旧愛卿は可愛らしく悩んだ。
お洋服、お帽子、お靴。魅力的な選択肢は多いが、その中で最も楽しめるものは何だろうか?と。
─────旧愛卿が、ではなく。ラバーが最も楽しめる店とは何かと。
何せ旧愛卿自身はお洒落初級者なのである。基本的には総て侍女や侍従武官が整えてくれていたから、こういったショッピングの経験は少ない。
────────バディフレームの設計士として、様々なパーツを買い集め比較するような豪快な買い物はそれなりの頻度でしていたが。
「そうですわね。ラバーさんの淡い恋心を思わせる素晴らしい髪の色を際立たせる為にも、先ずは帽子屋で何が似合うか試してみるのはどうでしょう?」
- 30ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/11(日) 06:19:01
前197
(1人で……伝書鳩か)
【一機が戦域から離れるのみて、陸上戦艦を思い出す。通信が妨害されている以上、妥当な判断と言えるだろう】
「まぁいいさ。救えない訳じゃない」
【離脱したということは、変に命を捨てる可能性は多少減る。救える命の量が増えそうなのだ。喜ばしいことである。では次は──】
「目の前の人命救助。始めようか!」
【電磁ナックルをぶつけ合わせ、弾けたあと稲妻が機体を照らす。これなら事故は起こりにくいだろう】
「優しく寝かしつけてやんよォ!!!」
【腰を落とし、足を引き、拳を構え…駆けた】
【ミサイルはタンク機から放たれたフレアに任せ、近接型を相手する】
【機体の脚部、反応樹脂靭帯に雷光が迸り、破裂音の様な物と共に地面を離れる】
【ブースター光を一切伴わない加速。ただの"駆け出し"により距離を詰め、コックピットよりやや下に電磁ナックルを叩き込む】
【もう一機。片方に電磁ナックルを叩き込んだ直後に超低姿勢へと身を落とす。一般的なBFではここまで可動しないだろうという程に脚を広げ、回し蹴りで崩す】
- 31逆巻重工への通信◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 09:49:14
────────実働部隊が動き出す頃に、不明な回線から一通の双方向同時通信の要請が逆巻重工に届いた。
俗に言う“電話”であるが、奇妙なのはその通信相手の名義である。
“旧愛卿”代理、独立傭兵マルガリータ・ペペロンチーノという名であった。 - 32ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 10:56:06
伝書鳩となった新人が、無慈悲な狙撃によって撃墜された頃。
『来るぞ!あいつもネームドだ!!』
『接近に注意────クソ、早い!撃て!?!』
あまりにも有機的な動きで突っ込んでくるテスタロッサに対して、2機のARATAMEは牽制射を放つ。
ブースターによる推進ではなく、脚にて踏み込むにしては余りにも優れた速度は反応のみで放たれる牽制射撃を寄せ付けない。
『ちくしょう!?』
『ぐぁ!?!』
間合いに踏み込まれた、という焦りを機体へ反映させようとしたその瞬間に電磁ナックルがコックピット下を抉る。
回避する間もない拳が叩き込まれたARATAMEが崩れ落ちて、同時に回し蹴りが背後を取ろうとしたもう一機に襲いかかる。
『……っ、ブースターもなしにこれかよ……!!なんて可動範囲して……』
左腕を犠牲に無力化を生き残ったARATAMEが下がりながらナイフを構え、間合いを測る。敵機の脅威を測る時間すら惜しかった。
『ぉおおお!!』
最後の一機が突貫した瞬間の空では、蒼風改が無力化した三機目の煙が上がった。それに果たして気づいたものはいただろうか。
- 33ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 13:05:28
なるほど……まずは頭から順番に決めていくというのは一説にありますわよね!
それではまずはお帽子から決めに参りますわよー!
イドウチュウ
ここがわたくし行きつけの帽子屋さんですわ!
シックなものからポップなものまでいろいろ取り揃えておりますの!
今被ってる可愛いベレー帽もここで選んだものですのよ!
お帽子は頭を日差しから守る機能性はもちろん、お顔や髪を引き立たせるグッドアイテムでもございますわー!
もちろん、引き算の美学で被らないという選択肢もございますことよ!
さあどれにいたしましょうか……スポーティにキャップスタイルもよろしいですわねぇ
それとも少し季節感はズレてますけれど麦わら帽子……は、ちょっと被るには歳をとりすぎましたわね
- 34ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/11(日) 13:26:59
「拳に対して刃物たぁ…フェアじゃないね!」
【ナイフを構えた隻腕のARATAMEに対し、ワイヤーガンで残った右腕を封じた】
「ちょっと痛いかも?ま、男なら我慢できるでしょ!!」
【ワイヤーを巻き上げ、引き寄せたコックピットをアッパーカットで殴り上げる】
【先の低姿勢からの立ち上がりと同時のインパクト。加速距離を使った拳はBF1機は軽く浮く衝撃となって突き刺さる】
「女だったら…頑張って耐えな!!」
【そして間髪入れず、電磁ナックルが自壊する程の電流をBFの頭部に目掛けて打ち込んだ】
【パイロットへの攻撃ではない。センサー機器を焼き潰し、次いでシステム系統を破壊する為の電流。それらを極短時間。十数秒程度で完遂した】
- 35旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 14:01:26
- 36ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 14:16:35
- 37旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 14:35:45
「ええ、私はとっても綺麗だと思いますわよ!それに、ファッションとは総ての要素を複合した結果として雰囲気を作り出す、謂わばバディフレームにも近しい概念──────服装なども、上手くマッチする形にすれば清楚で凛々しい雰囲気も出せるかと思いますわ」
リボンの付けられた麦わら帽子を被ったラバーの姿を見て、旧愛卿はきゃあと微笑みながら率直な感想を口にした。
ファッションをあたかもバディフレームのパーツのように例えている点は普段の思考の割合を伺わせてしまうが、しかしそう的外れでもないだろう。
「寒色系のハットと、伊達眼鏡──────えぇ、確かに知的な感じがしますわね?黒のシルクハットに、モノクルなども付けてしまおうかしら!」
お前は何を目指しているんだ?インテリジェンスは何処に行った???
- 38ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 14:42:34
あらあらまあまあ!きゃーですわー!
お仕事でよく使っている執事服と相性抜群ですわねシルクハットにモノクル!
それならわたくしは差し詰めおてんばお嬢様ですかね?
ならばシンプルに白のハット……小さな帽子にして可愛く仕上げようかしら?
【白色の小さなハットを手に取り、麦わら帽子の代わりにこてんと頭に被せてみる。全てを覆うことはなく、頭の片側を覆うので精一杯の帽子に愛らしさを覚えるだろう】
シルクハットですと……これなんかがよさそうですわね
【縦幅が頭の半分ほどある黒白の市松模様のシルクハットを手に取って渡していく】
ツインテールの可愛らしさとは相反するかもですけれど、それはそれでギャップ萌えですわー!
- 39旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 14:57:06
「あら、確かにとっても可愛らしいですわね!私も思わず抱擁を求めたくなる可愛さですわ!子犬ですとか子猫ですとかひよこですとかヘラジカのような可愛さがありますね」
ふふっ、と微笑みながら旧愛卿は声を弾ませた。
愛らしさにきゅんきゅんと胸を弾ませながら、モノクルを軽く試着してみて感触を理解する。特に違和感もなく、普段使いしても問題なさそうな程だ。
技術の進歩の一つ、と言うべきだろう。
インベイドの侵攻以来、肉体を欠損した帰還兵は数多い。彼らの為に作成された義肢などの新素材が他の分野にも応用された結果だ。
「ふむ────────では、ラバーさんが薦めてくださったコチラのシルクハットにしようかしら?コレで私の外観知的度は鰻登り、或いは満天の星空の如く輝く事でしょう!」
“可愛らしい紳士風少女”でも言うべき装束を着熟しながら、旧愛卿は笑った。
- 40二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:02:51
とってもお似合いですわー!
【腕をぶんぶん振って興奮を身体に表す】
ではわたくしはこちらを購入しましょうか……いえ、こちらの大きさや形が同じの麦わら帽子も捨て難いですわね……うーむ…………こういう時は両方買うのがお嬢様ですわー!
とりあえず今つけるのはこちらの白いハットにしてと
それでは次にお洋服を見に行きましょうか!
ソレカラドシタノ
やはり頼れるのは大手!いつもの服屋さんですわー!
アウター、トップス、ボトムス……お洋服には無限の可能性がありますの!
BFの武装とおんなじですわ!遠距離戦を得意とするのかオールラウンダーにするのか……考えるだけで夢のような時間が過ごせますの!
さて、白いハットに合わせるとするとお清楚なお洋服がよろしいかしら?
アウターを軽く羽織れるものにして……セーターもいいですわねぇ
【様々な洋服を巡りながらあれでもないこれでもないと頭を幸せに悩ませている】
- 41旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 15:34:43
「個人的には機能を詰め込めるだけ詰め込んだ機体が好きですが────ファッション、となると取捨選択が重要そうですわね?」
ゲテモノ可変機の生産者-マイスター-は興味深げに無数に並ぶ洋服に目を遣った。
普段のスリピースや、ワンピースとは別の────家臣団が余り着せてくれないような服装にも、少し興味があった。
「夏も近いですから、私はちょっと涼しげな服装にしましょうかしら?シルクハットとモノクルが違和感にならない服装で、涼しい服装………………」
軽く散策しながら、旧愛卿は困ったように笑った。
「………………流石に、どうしても露出度が大きくなってしまいますわよね?デザインではなく素材を先に考えるべきなのかしら……………」
- 42二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:40:57
このレスは削除されています
- 43ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 15:43:32
- 44旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 16:06:02
「あら、そうでしょうか?ラバーさんにお褒め頂けるのでしたら、少し自信が湧きますわね!」
ふと、自らの身体を見下ろしてみる。
それなりの起伏を伴った体型は“調和”という言葉が最も相応しく思える姿だ。過不足なく、整った均衡が特徴的な──────それこそ絵画のような芸術品に近い美の形。
旧愛卿はクリーム色をしたオフショルダーブラウスのハンガーを手に取って軽く重ね合わせ、それから苦笑した。
「…………………序でにキャミソールも買っておきましょうか」
コレだけ着て出歩くのは少々気恥ずかしかった。
もう一枚、追加で間に着た方が安心出来るだろう。
「アドバイス、ありがとうございますね。お時間と集中を削いでしまって申し訳ありませんわ。お先に会計してますので、ラバーさんのチョイスを楽しみに待っておきますね!」
- 45留置所・警備部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 16:19:33
「な、しまった?!あああぁ!?!」
ワイヤーで引き寄せられた後の痛打、そして浮き上がった瞬間の頭部への打撃。
綺麗に繋がった連撃が最後の一機に叩き込まれる。
頭部への電流を交えた攻撃はそのまま敵機体の電装系を破壊し尽くし、機体を沈黙させる。
――――留置所所属の警備部隊は、これによって完全に壊滅した。
- 46逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 16:46:44
「……双方向同時通信の要請?」
それ自体はまだめずらしくない。お互いの意思疎通を図るうえでの通信手段としては一般的。
ただし、逆巻重工は現在進行系で老害たちへの欺瞞、奪還作戦を含めた同時並行的な作戦を行っている状態にある。
救出作戦も佳境に達した以上、現在は宣戦布告の草稿を確認している段階だ。断ってもいい状態だった、が。
『相手は旧愛卿代理、独立傭兵マルガリータ・ペペロンチーノとのことですが……』
「ねぇその名前さ。ケイの奪還依頼に今参加してるやつだよね????」
カンナは困惑した。よりにもよってそんな珍妙な異名が被ることが……。
(万が一にならあるかもしれない……)
大きくため息を吐く。何より相手が旧愛卿を語る相手の代理ともなれば、無下にする理由もない。
――――彼女はケイを含めた複数人に対して老害達、ひいては賢工グループの脅威を伝えてくれた側だ。
分かった、とカンナは答えた。
「要請を受諾、使い捨ての回線でお互いに開くよう相手にも伝えて」
一回きりの通信であれば内容の破棄をお互いにしやすい。密談に最適な環境と言えるだろう。
カンナ達側も準備を整えた。
- 47逆巻重工への通信◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 17:09:15
要求は極めて迅速に受諾された。
使い捨ての回線が直ぐに用意され、声が響く───柔らかな印象であった旧愛卿とは似ても似つかない堅い声音だ。
『─────お忙しい中、失礼する。我々は“グランセン解放戦線”だ。此度の作戦について、貴社と協議したい事柄が存在する』
淡々と、職務に忠実そうな若い女性の声が響いた。
“グランセン解放戦線”。反クロノスを掲げる組織であり、その母体は旧グランセン王国軍である。
─────その情報網は、過去の国家体制を基盤として酷く広範に渡る。
・・・・・・・・・・・・・・
『我々は追加の勝算を提供可能だ。““陸上戦艦””に随伴する第三航空打撃群、未だ“クオリタ”に駐屯中の第二航空打撃群、それから艦体に備え付けられた対空迎撃ミサイルとレールガン群の多重防御網』
遥か成層圏から精緻極まりない絨毯爆撃を地表へと行える航空隊は、現在““陸上戦艦””への強襲を警戒してその上空に展開中である。
未だ空に飛び立っていないもう一つの航空隊でも、宣戦布告が行われれば直ぐにでも動き出すだろう。それこそ、逆巻重工の司令部を狙いに。
加えて、““陸上戦艦””にはバディフレームには積めない規模を誇るセンサーも搭載されている。正直に上から攻めるとして、クロノス空軍を仮想敵とする対空迎撃網が立ち塞がる。
・・
だが、
・・・・・・・・・
『いつでも壊滅できる。必要ならば実行しよう』
大して勿体振りもせずに、やはり淡々と通信の相手は“事実”を述べた。
- 48逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 17:31:49
「やはり"グランセン王国"が母体だったか……非公式とはいえ君たちとの会談ははじめましてだね。協議を始めよう」
かの王国の強さは現在でも、カンナだって知っている。
そして”国家としても強すぎた”がために、陰謀によって強さの核を失われた。だがその末端や中心近くの存在は生き残っていたのだろう。
敬意は常に持つべき。ゆえにカンナは彼らを呼ぶ際に、”旧”とはつけなかった。
「しかし、我々が表返ることも既に把握済み、か。流石だね」
素直な称賛だった。賢工グループは出し抜けたから良いとしても……様々な企業に情報網を持つと噂されている”グランセン解放戦線”からすれば、逆巻重工の策謀はやはり力技な部分が多かったのだろう。
・・・・・・・
「ケイ・サヤギリの奪還は成功裏に進んでいる。此方はこれから……人自連内部規程に則った、内部企業間抗争を行う予定だ」
相手が事実を述べてくれているならば、カンナも偽る理由はない。
これはクロノス相手ではなく、人自連同士の……いわばルールを守り行う、”身内との戦争”だ。
逆巻重工が行っている不干渉とは、『クロノスとの企業間抗争』であり……内部での争いに干渉しない、起こさないとは一言も言っていない。
まさに抜け穴を利用した首切りを、今再び行うつもりなのだ。数年前と同じように。
ただし今回は、嘗てのように圧勝できるとは思っていなかった。
「こちらが発する賢工グループへの宣戦布告と同時に行ってほしい。用意してくれた追加の勝算、ありがたい」
だからこそ、彼らの協力が今後の戦争における出血を最小限に抑えられるはずだ。そしてできるという言葉をカンナは信じた。
- 49二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 17:39:31
- 50ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 17:50:14
(コテハン忘れですわー!)
- 51逆巻重工への通信◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 17:51:29
・
『我々もクロノスは憎いですが、少なくとも今ではありませんので──────インベイドとの戦線が未だ絶妙な均衡で何とか保たれている情勢下で、大規模な人類の内戦は破滅を意味します』
彼らの総帥は、誰もが坐して破滅を受け入れるとは考えていなかった。
とは言え、留置所で行われた奪還作戦で“グランセン解放戦線”の通信妨害装置が使われるまでは彼らからしても確証がなかったが。
そして逆巻重工からの受諾を得て、密かに通信していた侍従武官は安堵の息を吐いた。
第一段階はコレでクリアだ。この内部企業間抗争に影響を与える事が、彼らの今後の進退に大きく関連する事象であったから。
『────────とは言え、我々としてもリスクを冒す形になります』
協力企業によって老いた獣を貪るという魂胆を隠しながら、侍従武官は言葉を紡いだ。
取引はフェアなものであると思わせなければ条件を提示出来ない。その点、“グランセン解放戦線”が既に利益を得られる事については秘匿しなければ次の条件を提示できなかった。
・・・・・・ ・・・・・・
『抗争の終了後、我々から貴社に一つの技術を売り込みたいと考えております。その会談の場を報酬にして頂きたい』
成功報酬として、侍従武官は総帥の台本通りにその条件を提示した。
──────逆巻重工にとって、何のリスクも与えない提案を。
取引とはフェアなものであると思われねばならないのだ。
相手の弱みに付け込む。或いは暴力で解決しようとするような取引は、関係性を悪化させるだけだ。
- 52旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 18:08:16
「あら、ふふっ。ラバーさんの可愛らしくて綺麗な姿を見せて貰いましたからには、私の方も見せねば不作法というものですわね!」
現れたラバーの姿に感嘆しつつ、旧愛卿もまた自らの服装を露わにした。
──────クリーム色のオフショルダーブラウスに、丈の短い紺色のフレアスカート。
細く優美な肩を露わにして、適度な膨らみを備えた胸元を開放的に開きながら、きめ細やかな白い肌が光を緩やかに照り返している。
傷一つない膝を覗かせて、歩く度にひらひらと波のようにスカートが揺れる姿は、ショッピング始めの令嬢を思わせる姿とは打って変わって華やかな美を帯びていた。
まァシルクハットとモノクルという風体が雰囲気を台無しにしているみたいなトコあるけど。
洋服だけなら綺麗なお姉さんなのにシルクハットとモノクルで一気にエキセントリックな変質者みたいになるよね。いやまあ中身に合っているのは変質者の方だけども。
- 53逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 18:35:08
(1/2)
「……耳に痛く、そして早いな。さてはうちのお人よしがまた縁を拾ってしまったか」
「実を言えば今回の件、老いた獣が首謀でなかったらクロノスへの報復も視野に入れていてな……お互いに運が良かったことを、今再び感謝しているよ」
苦笑いするしかない。きっと彼のことだ……意図せずして解放戦線に関わる何かを受け取っていたのだろうと考えて。彼の命がクロノスの手で潰えた可能性を静かに彼らへと明かした。
許せないことが起きた時に、クロノスへ牙を剥くことを考えていたと。僅かなれども憎しみを共有できる立場に、己らも一度は立ったのだと告白する。
だからこその会談が生まれたのだから、ケイのことは許すことにした。
『抗争の終了後、我々から貴社に一つの技術を売り込みたいと考えております。その会談の場を報酬にして頂きたい』
「なるほど」
(彼らも強かだ。グランセン解放戦線……既に利益を得るための準備をしているだろうね)
こちらに明かさずとも進めているだろう何かを含めてカンナは受け入れた。この手の取引はフェアであると同時に、利益を受け取り合う関係でなければならないからだ。
例え逆巻重工側にフェアであれど不釣り合いな結果になったとしても、構わない。
そうなったとして、逆巻重工が得るのは彼らからの信頼なのだから。
「勿論、そちらにとっても今回の行動にリスクがあることは百も承知……その上で君たちが戦後に得る配当についてだけれども」
指を一本立てた。
「我々逆巻重工は、賢工グループとその傘下がどのような形で吸収されたり、あるいは攻撃、殲滅されたとしても」
・・・・・・・
「一切関知しないことを宣言しよう」
他に怒られない程度に上手くやるなら構わない、と黙認した。
「そしてその上で、君たちの求める会談のセッティング要求を受け入れる。これが二つ目」
二つ目の指を立てる。そして。
- 54逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 18:37:51
(2/2)
「君たちの売り込んでくれる技術については、会談相手となる企業以外には社外秘とする」
「特にクロノスなどへは、グランセン解放戦線の許可がない限り、どのような形でも理論と原理の提供はしないと約束しよう」
おそらく彼らが最も恐れている事態に対するケアを行う。談合による形での技術流出もしない、という形の契約を行い、同時にオペレーターへ何かを指示する。
「ただ流石に交戦による被撃墜や破損が原因になる流出が起きた場合はこちらとしても勘弁してもらいたいところだ……あっちにはエイダン・リーという天才がいるからね」
苦笑いをしたが、同時に懇願でもある。あの天才に装甲が渡ってしまった場合、どうなるかは全く予想ができないのだ。
「ただしこちらとしても対クロノス戦は徹底的に避ける予定だ。もしこちらが故意、または我々自身に責任がある過失で情報を流出させてしまった場合、君たちから我々への報復を行うといい」
私を狙っていいよ、と宣言した上で回線にデータを送る。
ここまでの会談データをまとめた契約書だ。姑息なものなど一切含まずに例外事項を含めて丁寧に記載されている。
「これで三つ……君たちから不安なことはあるかな?」
魔女の契約など、この世界においては不幸の元だからね。とカンナは笑った。
- 55二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 18:43:32
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- 56ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 18:44:47
- 57逆巻重工への通信◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 18:59:02
・・
『貴方達の英雄が死なずに済んだ事、祝福します。我々のように手遅れになって漸く気付いた、という事態になっていれば止まれなくなるでしょうから』
・・・・・・・・・・
彼らは止まれなかった。だからこそ、逆巻重工が足を踏み入れなかった事を総帥の指示とは別に彼女は心から祝福した。
地獄のような苦しみが、今も彼らを焼き続けているから。変えられない過去は苦痛として刻印されて、土壌となって憎悪を育んだ。それは決して心地良いものではないと理解している。
『なっ、』
僅かな動揺。“グランセン解放戦線”が秘匿していた作戦を見透かしたような言葉に、彼らの総帥程には陰謀と策略に慣れていない侍従武官が小さな驚きの声を漏らす。
咄嗟に総帥から渡されたメモを確認する。それから平静を取り戻し、侍従武官は続く逆巻カンナの言葉に耳を傾けた。
・・・・
『……………………感謝します。先王陛下が遺して下さった技術を憎きクロノスに渡す羽目にならずに済むのは、我々にとっても喜ばしい事ですので』
考え得る限り、最高の条件だろう。“独立闘士”達も喜びに違いない。隠し切れない安堵と喜びを声音に滲ませながら、そうして侍従武官はメモ書きの最後の頁を読み上げた。
『契約について不安な点はありませんが─────総帥から伝言が、一つだけあります。“鋼鉄の巨獣の艦長には気を付けろ”、と。我々からは以上です』
- 58旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 19:05:00
- 59ノイン◆fDey8JUvvk25/05/11(日) 19:45:27
【パイロット・ブーツの足音を控え目に響かせながら。撃墜王の似非は無機質な通路を歩く】
【通りすがる兵士たちには会釈、通りすがる上官には敬礼を捧げながら、いくつかの区域を抜け】
【今はこうして司令室へ向かっていた】
【エースパイロットである前に1兵士である以上、召集があれば速やかに伺うのは当然のことである】
【司令室の扉の傍。センサの前に直立し声を上げる】
『ノインです。入ります!』 - 60二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 20:04:07
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- 61ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 20:05:00
- 62鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 20:14:11
「─────入り給え、“撃墜王の再来”よ」
威厳の塊のような荒々しさに、そして理知性を兼ね備えた声が入室を許可すると同時に扉が開く。
“叩き上げの軍人”という言葉を具現化したような、左眼から右頬にかけて惨い傷跡が残る白髪の老将がエースパイロットを迎え入れた。
「上層部は第三航空打撃群で牽制には足りるだろうと皮算用しているが、『人類滅亡の危機』となれば我々を背中から刺す企業も当然現れるだろう」
不機嫌そうに鼻を鳴らして、老将は言葉を零した。
彼らはこの作戦行動と戦争の行く末が人類の存続に多大なる悪影響を与えるだろうと冷静に導けるだけの理性があって、その上で確実に遂行しようとする狂気があった。
子供ですら追い詰められれば人を殺すのだ。企業は尚更抵抗するだろう。そう確信している。
「後方には輸送機が控えている。バディフレームが200機も待機しているのだ。其れを突破しての揚艦は時間的に厳しいだろう」
「左右についても砲台が絶えず見張っている。海洋戦艦最大級の主砲を贅沢に40門ずつ。衝撃波だけで大抵の目標は粉砕可能である」
「正面については言うまでもないな。対インベイド防壁を突破するだけの質量と速度だ。前に立つのは自殺行為に他ならない」
その上で、と艦長は続けた。
・・・・・・・・・
「逆巻重工は何をする?率直な意見が欲しい。この戦艦に籠っていた私などよりも、何回か接触した事がある貴官の方が詳しいだろう」
- 63旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 20:17:06
- 64二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 20:19:52
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- 65逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 20:25:05
「君はおそらく、君の長にとってみれば……私にとってのミドリマだろう」
「言い過ぎかもしれないが、少しずつ慣れると良い」
思わず漏れただろう侍従武官の驚愕に対して、カンナは笑みを浮かべた。陰謀に塗れ過ぎれば後はないが、耐性をつけるには経験するしかない。
そしてカンナにとってのユズハ・ミドリマとは己の最も信頼する腹心。あまり喧伝することでもないが、ユズハは作戦指揮に関して言えば己以上の才と、盲目であっても策謀に対して最善策を取れる頭を持つと信じていた。
最上級の評価を、侍従武官に与えたことに果たして気づいてくれるだろうか。
「祝福も感謝も受け取ろう……君たちの期待を裏切らないように私も動く」
憎きクロノス、という言葉にも密かに頷き、安堵と喜びの声を受け取る。
絶滅戦争を防ぐため、仮想敵に対する牙は多くて損はない。たとえ彼らが人自連内部にいようと、外側にいようと……最終的に人類へ利する決断を取ってくれる彼らの理性を裏切ることだけは避けねばならない。
裏切られ続けたものは、いつか誰も信じなくなるのだから。
『“鋼鉄の巨獣の艦長には気を付けろ”、と。我々からは以上です』
「……何もかも予測不能ということか。承った……全力で彼らに当たろう……良い会談だった。互いに幸運があらんことを」
警告を受け取る。警戒も何もかも、注意に値する情報はすべて探るつもりだった。
ゆえにカンナは、最後に互いへの幸運を祈る。
会談が終われば、使い捨ての回線がしっかりと消去されたことを確認したうえで、ユズハへ通信を繋ぐ。
「私だ……人自連の全ての回線へ、緊急放送を行う。同時に実働部隊を降下させろ。宣戦布告だ……依頼の公示は秘密裏に」
穏やかな口調は鳴りを潜めた。相手が狂気へ奔るならば止めるという決意が灯る。
――――その通信からしばらくして、ケイ・サヤギリの留置所への襲撃が成功した直後。逆巻重工は人自連の内部規程に則り、賢工グループとの内部企業間抗争を宣言。
表返った彼らは、介錯人としての刃を抜き放ったのである。
- 66二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 20:31:21
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- 67ノイン◆fDey8JUvvk25/05/11(日) 20:38:20
【理知性、そしてその裏に滾る執念に弾かれるようにしてノインは速やかに入室し、話を伺う】
『逆巻重工は何をする?』
【その質問に対し、想起、思考すること0.5秒】
「弾道ミサイルあるいはそれに類する高速飛翔体に機体を括り付け、高空から曲芸じみた少数精鋭での奇襲かと存じます。」
【先ずは率直な結論】
「彼ら、彼女らは、人類皆が手を取り合い、平和の為に立ち上がれると信じている夢想家です。」
「心の底からそれを信じ、それを実現するために手段を選ばず」
「そして、その手段を実行できるだけの備えがあるでしょう。」
【次に私見】
「逆巻重工製BF──月風のコンセプトからして、『高性能高機動、的確な武装選択と熟練パイロットの組み合わせでインベイドとの戦闘を優位に進める』という、『それが出来れば苦労はしない』というものですが」
「それができたパイロットが存在することも事実です。……あるいは、今も抱えているのでしょう。」
【BF乗りからの視点も加えて】
「逆巻は常識外れかつ困難な手段を通してくると愚考いたします。以上です。」
【それは信頼であり、敬意であり、嫉妬であった】
【あるいは目の前の老将に対して、取り繕う言葉が思いつかなかったノインの脆さであった】
- 68鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 20:49:09
「──────────成程。理解した、“撃墜王の再来”よ。情報提供に感謝しよう」
老将は真正面から若きエースと向かい合って、感謝の言葉を述べてから、速やかに彼が管理する部隊に号令に下した。
「第三航空打撃群は引き続き戦艦周囲の哨戒を続行せよ、但し上空からの飛翔物にも警戒をすると共に逆巻重工の本社ビルへの航路も用意しておけ」
・・・・・・・・・・・・
戦争には大義名分が必要だ。だから、同じ人自連に所属する企業である逆巻重工に先制攻撃は行えないと理解している。
しかし『攻撃の準備をする』分には文句を言われる筋合いはない。
「対空迎撃ミサイル群、レールガン群も厳戒体制を整えろ。どれだけ早くてもバディフレームだ。飛翔速度を維持しながら揚艦をすれば壊れる。着艦時の減速を狙う事を意識しろ」
超音速ミサイルの速度で““陸上戦艦””という鋼鉄の巨獣に叩き付けられれば、間違いなくミンチだ。
だからこそ何らかの手段によって落下速度を落とすと予測して、正確な軌道予測が困難な段階ではなく容易な段階で迎撃するように事前に体制を整える。
「『パンデモニウム・システム』と『ケルベロス』の用意もしておけ。場合によっては私も出撃する、それから──────」
艦全体を司るエンジニアの総責任者に対して、老将は一つ命令をした。
・・・・・・
「換気システムを起動しろ。機関部付近のエリアを封鎖し、無酸素状態にするのだ」
ストラクチャーによる““陸上戦艦””の一撃破壊が不可能ならば、狙われるのは巡航を統括する機関部であろう。
だから、艦長は一つの罠を仕掛ける事にした。
つまりは、『真空層』を用意する事で迂闊に侵入を試みた者を窒息死させるという罠を。
- 69ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 20:55:25
- 70二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 20:57:34
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- 71ノイン◆fDey8JUvvk25/05/11(日) 21:00:45
「!」
【自らの意見が速やかかつ最大限に適用されていく様を見て、1mm墨色の目を見開く】
【対空迎撃ミサイル群、レールガン群。それは向こうも想定内だろうが】
【極限状況の中、『真空層』の罠にどれだけ気付けるだろうか。ノインはあまりにもこの場に似合わない心配すらしていた】
【おまけにこちらの陸戦部隊は全身義体である。『真空層』など大したことではない】
【……当然口にも態度にも出さない】
【というより、この場で何と答えたらいいのか分からず。……まさか上官に自分の案が受け入れられたことに感謝でもするのか?いや、これはお互いが自分のなすべきことをしただけだ、と】
【よくできたエースパイロットは次の指示を待っていた】
- 72旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 21:05:29
- 73鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 21:12:48
- 74ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 21:16:04
- 75ノイン◆fDey8JUvvk25/05/11(日) 21:27:27
『好きに動き、自らの価値を証明しろ。』
【その命令が、自身への信用か。あるいは最後の念押しか。……どちらもだろうと想像はしたが】
「はっ!!」
【どちらにせよ、歪みない敬礼をノインは選択した】
「失礼いたします!!」
【凛とした声を指令室に響かせ、速やかにその場を去っていく】
「(………艦長。逆巻。ヴァルハラ。撃墜王。)」
「(あなた方に恥じないよう。見せてやるさ。私の選択を。私の飛び方を……。)」
- 76旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 21:28:14
「ふふっ、人の価値観はそれぞれ違いますもの。私にとっては、それだけ感謝したいというだけですわ」
微笑みながら顔を上げて、それから旧愛卿は一時的に考え込んだ。
ショッピング、というのは彼女にとって遠い概念であったから。他に何を買えるのかについて詳しくはなく───────否。一つ、例外がある。
バディフレームのパーツだ。アレならば何度も何度も買いに行った事がある。
その度に変態機構を備えた武装やら機体の図案やらが増えるので、家臣には随分と止められるが。
(…………でも、お洒落とは関係ありませんものね)
「お恥ずかしながら、全く思い浮かびませんのよね。ラバーさんが行きたい時に着いて行きたいですわね!」
- 77鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 21:51:12
────────計18個の流星が空を駆け抜ける姿を、『亡霊部隊』隊長にして““陸上戦艦””の艦長も務める老将は見上げていた。
「総員、対空迎撃ミサイルの発射を────」
・・・・・・・・・・・・・・
その瞬間。十数の弾薬庫が一斉に弾け飛ぶ。
弾薬庫の誘爆によって““陸上戦艦””の各箇所で巻き起こったパニックは、優秀な下士官によって数分で沈静化するだろう。
・・・・・・・・・・・
だがその数分が命取りだ。音速の十五倍に及ぶ速度で落下する質量弾を防げない。構わない。多重構造の““陸上戦艦””を機関部まで貫通する火力は質量弾にはないからだ。
しかし、熟練のバディフレーム部隊は間違いなく彼らにとって最悪の脅威であった。
チッ、と中世の騎士甲冑を思わせる重装甲のバディフレーム『ケルベロス』を駆る艦長が舌打ちする。
それから、降下した部隊の姿を確認してからその声を響かせた。
・・・・・・・・・・・・・・
『─────何故我々を止めようとするのか、その理由を尋ねようか。桜空の残党、貴官らもまたクロノスの手で癒えぬ傷を与えられた身だろうに』
- 78ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 21:57:50
- 79ノイン◆fDey8JUvvk25/05/11(日) 22:06:13
【ほぼ予想通り。18の流星の対処は対空迎撃ミサイルに任せていた】
【英雄は『大義名分』に縛られるものだから】
【弾薬庫の爆発など知らぬとばかりに】
【『蒼月』。これ見よがしに全身を青に包み。月風より2回りは太い四肢を備えた──】
【見れば見るほど月風とは決定的に異なるBFは、陸上戦艦の甲板上から、降下した部隊の返答に耳を傾けている】
- 80龍影◆9BZ6kXGcio25/05/11(日) 22:14:19
- 81グランセン解放戦線◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 22:14:21
─────速やかに逆巻重工本社ビルを爆撃せよ。宣戦布告と同時に艦長によって命令された第三航空打撃群は、貫通クラスター爆弾を装填したまま航路を反転させた。
地下シェルターすら貫通可能な高い攻撃力と、無数の子爆弾による広い加害半径を兼ね備えた虐殺の為の兵器だ。
““陸上戦艦””の艦長も、賢工グループの長老達も、躊躇いなく同じ人類自由連盟の同胞である逆巻重工にその兵器を投下する事を合意した。
─────────────超音速。コア粒子推進機関を搭載していない航空機でありながら、人類が積み重ねた戦争の歴史を体現したかのような兵器が牙を剥こうとして。
「待て、未確認飛翔物発見!」
・・・
同じく超音速で第三航空打撃群の上空を横切った二機の機影が吐き出した大口径粒子ビーム砲が、一瞬にして縦に並んで飛翔していた戦闘機を切り裂いて爆散させた。
終わらない。航空と同時に30mm電磁加速機関砲が埒外の連射速度で機体低空を薙ぎ払った。同口径の火薬式よりも疾い銃弾が淡々と第三航空打撃群機を撃墜する。
「─────有り得ない!?逆巻重工が航空機部隊を編成していたのか!?!?情報部は何をしていたァッ!!!!!」
高度なステルス機能を有した航空機。一方的に上空から貫通クラスター爆弾を叩き付ける予定であった第三航空打撃群は十分な量の空戦用の兵装を有していなかったから──────双発の八連装ミサイルが横切る機体の影に見えた。フレアを撒こうとするが、もう間に合わない。
「待っ、」
32発に及ぶ拡散誘導ミサイルが残存機体を吹き飛ばし、第三航空打撃群は二機の〈ガサル・ドゥーラ〉の電撃的奇襲によって一瞬で壊滅した。
『─────第一段階、状況終了。第二段階を開始する』
『目標を賢工グループ第三生産プラントへと移行。航路再設定。“接収”作戦へ移る』 - 82旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 22:18:30
- 83逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 22:22:09
(1/2)
「……この放送が、きっと全世界に聞こえていることを願う」
緊急放送が始まった。
「始まりは善意だった。無知こそ罪であるが、知りすぎれば罰にもなる……」
ゆっくりと、語る。なぜこの放送が始まったのかを、知らしめるように。
「とあるクロノスの士官が、己の善意のもとで。人自連のとある精鋭部隊に所属するパイロットと接触した」
それはきっと彼自身の思う融和のためだったのだろう。
彼自身が思う何かを防ぐためだったのだろう。
「だが、接触の過程で人自連のとあるパイロットは、善意からクロノス士官へと情報を提供した。してしまった」
それが一線を踏み越えてしまうことなのだと。彼は知っていただろうか。
「彼の上は、最強硬派……賢工グループだった。彼の情報提供は命を捨てる行為だったのだ。その罰として、とあるパイロットは処刑された」
それを知っていれば、なにか変わっていたのだろうかと、カンナは思った。
……きっと、変わらなかったのかもしれない。もうその未来は存在しないのだから。
「そしてその行動が一線を越えると判断した誰かが、それを止めようとした。それがケイ・サヤギリだ」
映像が映る。誰かを拳で、言葉で止めようとした英雄が。語らなければ分からないなら、それでも分からないなら。痛みを与え合えて教えるしかないと。苦しさを隠した彼の姿に、カンナは目を閉じた。
「だが彼は失敗し……捕らえられた。そして賢工グループの社内法によって死刑判決を下された。連盟法ではない。なぜか?」
目を開けた。
「――――邪魔だからだ!! “撃墜王”を彷彿とさせる、彼の行動が!!彼の主張が!!」
声を張り上げた。G-3コロニーで、人類のために3つの勢力が自発的に協力した戦い。
その中で、最も厳しい地獄の一つで……先導した蒼風の姿が映る。
「だから一線を越えさせまいとした彼を共に陥れることで、最後の架橋を吹き飛ばそうとしたのだ!」
蒼風が映像の中で砕け散る。それが最悪の未来の暗示だったと気づくものは、いるだろうか。 - 84逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 22:24:24
(2/2)
「私達は間違える生き物だ。愚かで、無力かもしれない生き物だ」
声を静めて、その後を強く意識させる。
「だが、頼るということは。託すということは!誰かに裏切られるかもしれないと思いながらも祈りを与えることだ!!」
それを否定してはいけないと、カンナは思った。間違いを怒ることは良い。だが、すぎればそれは憎悪となり、取り返しのつかないものとなるから。
「私達は自主独立のため、クロノスとは別の道を歩いている!それが混ざることは、まだない!!」
逆巻重工の思う現実だった。誰もが思う現実だった。アイツラと協力なんてできない、いけ好かないと誰もが思う現実。
「だがインベイド殲滅のため!互いの道を僅かに交わらせ、協力し合うことを封じることは!どの法も禁じてはいない!!」
しかしそれもまた現実であった。気に入らないが、協力してやろうと思うことも。死なれては困るのだと、手を取り合うことも。
お互いの思うことが合致した時に、固く握手することを厭うようでは、人はインベイドと同じになってしまう。
「ゆえに私は、逆巻カンナは、逆巻重工のCEOとしてここに宣言する!!無実の罪を被せ、ケイ・サヤギリを社内法にて処刑せんとした賢工グループに対して!」
「人自連内部規程に則り!企業間抗争を行う!!この戦いは、どちらに正義と自由があるかではない!!」
すぅ、はぁと。一呼吸を置く。
「――――我々が大事と思ったものを彼らがクロノス憎しの余りに踏みにじり続けたことによる。私的な報復だ」
お前たちがクロノスを憎むあまりに踏みにじったものの、対価を払ってもらうという言葉だった。
人自連ではない。我々逆巻の大事なものを踏みにじったのだという、怒りだった。
「この言葉を以て。我々逆巻重工は賢工グループに……宣戦を布告する。我らに付くというものは依頼を受けてくれ。子どもたちの未来のため。バカみたいな夢を見ようじゃないか」
獰猛に笑って。刃が抜かれた。
- 85東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/11(日) 22:32:15
- 86鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 22:32:19
「─────随分な挨拶だな、お転婆娘。もう少し声を抑えろ。老人には聴き取り辛い」
・・
通常、粒子ビームとは最強の矛である。
実体兵装を蒸発させられる熱量は弾幕による相殺は剰え、防御装備であるタワーシールドでさえも貫通されかねない火力だ。
だからこそ、粒子ビームの最先端に立つクロノスは強い。
彼らは最強の矛を数多く揃え、より鋭く改良し、誰よりも其の力を実証してきたからだ。
・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
だからこそ、クロノスを憎む老将には効かない。
「それとも、この技を見せてやった記憶も忘れる程に色ボケたか?嘆かわしい事だ。お前こそが、私の後継者になるやもと思っていた時期もあったというのに」
・・・
ビームランスの穂先で粒子ビームを逸らす。
同じコア粒子を利用した武装である以上、最強の矛と最強の矛でそのような芸当も行える。
- 87逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 22:37:52
- 88ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 22:41:29
- 89ノイン◆fDey8JUvvk25/05/11(日) 22:52:28
- 90龍影◆9BZ6kXGcio25/05/11(日) 22:55:53
- 91鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 22:59:54
(1/2)
・・・・・・・・・・・
──────大型多重硬殻通信構造物が、甲板上に一斉に現れる。一つに付き三つもの攻撃ドローンが付着しているのが見えるだろう。
インベイドに対抗する為に、「ゴエティア戦団」が開発した技術を賢工グループは吸収していた。
無線制御式飛行攻撃端末。『ケルベロス』の代名詞とも言える武装だ。
二機の攻撃ドローンが、中型のコア粒子推進機関によって一気に飛び上がる。シズクとサミダレ。双子パイロットが放った二条の粒子ビームを同様に粒子ビームで相殺する。
─────その攻撃軌道がマニュアル操作の賜物であると、果たして誰が信じられようか?
ビームランスで、僅かにでもズレれば直撃するような曲芸を披露しながら。同時並列で正確無比な狙いで攻撃ドローンを動かしている、と。
・・・
「犠牲者で語るのならば、我々とて情報漏洩により数多く将兵が危機に晒される所であったのだ。否、それ以前にも多くの兵士がクロノスの手で殺されている───────────ならば、何故。一人のエースを理由に我々を止めようとするのだ?」
ガシャリ、と『ケルベロス』がその右肩部に備えたグレネードランチャーから煙幕弾を吐き出して甲板全体を霧に包もうとする。
連携によって崩されるのを防ぐ為だ。少なくとも、単騎での戦闘能力において老将は突入部隊の誰にも負けるつもりはなく────────そして最新鋭のセンサーを備えた『ケルベロス』と『亡霊部隊』にとって、煙幕は完全に有利な環境だ。
- 92東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/11(日) 23:06:19
- 93鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 23:06:40
(2/2)
・・・・・
「──────当然だろう?クロノスを殺す為だ。鍛錬を怠りはしない……………」
ランスが捉えられる。問題ではない。左肩部に備え付けられた誘導ミサイルが一斉に火を噴いて、付近まで接近した『望月』を迎撃しようとする。
『ケルベロス』の装甲は誘導ミサイルを間近で炸裂させたとしても大した損傷は負わない。だが同時にコレを致命打にするつもりもない。衝撃で敵の姿勢を崩す為の牽制だ。
「それとも、私が口先だけの愚か者だとでも思っていたのか?」
電磁減速式タワーシールド。接触と同時に高電圧を敵機に流し込むだけでなく、『ケルベロス』を覆い隠せるだけの純粋質量はバディフレームを押し潰すに足るだろう。それを振るいながら、一機目の攻撃ドローンを反転させて背後からビームによる狙撃を試みる。
──────続々と、『亡霊部隊』と装甲擲弾兵が甲板上に姿を現しつつあった。
- 94ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 23:08:27
「――――!!!」
9、いや更に二倍へ数が増えた流星たちを見送り。ケイは蒼風改の補給を終えて機体を飛ばした。
陸上戦艦の侵攻を阻止するためだ。
そのために……蒼風改の高度を高く、高く、高く上げて、上げ続けて――――。
「スイ、行くぞ!!!」
《了解。降下最適角度を入力……どうぞ》
一気に最高速度まで引き上げた。推進機関のリミッターだけは解除している。
落ちるように、速度がどんどんと上がり。Gがかかっていく。音は超えただろうままに、速度だけが上がっていく。
パイロットスーツは既に着込んでいる、問題はない……本当に?
スイが入力してくれた角度をズレれば、すぐさま空中分解もあり得る速度であった。
「すぅぅぅ……!!!ッッッ!!」
留置所はすでに陸上戦艦の予想進路に入っている。接敵しようと思えば、機動力によるがすぐだ。
特に……高高度から、斜め下へと落下するように動くバカならば……留置所への襲撃組では一番乗りとなるだろう。
……その方法自体が、既に狂気の沙汰であることを除いて。
- 95アルパ◆YMCgTirJag25/05/11(日) 23:11:02
- 96旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 23:14:01
- 97ノイン◆fDey8JUvvk25/05/11(日) 23:17:48
- 98マルタ◆KPwoT407kA25/05/11(日) 23:18:06
…ムカつき、ますね
【小山の上で、マルタは笑いながら答えた】
あたし、なにも知らなかった…正直、いまもなんにも分かってないんだと思う。けど…
この世界は、外にだって綺麗なもので満ち溢れてるんだって。少なくともそれは知れた
だからあたし、戦うよ。ミカエラさん
あたしの…本当の敵と
【憂いは、その瞳にはなかった】
【ミカエラはそれを満足気に見つめ、指を弾く】
「…CEOの反対を押し切って着いてった甲斐があったよ。その眼ができりゃ戦士として十分だ…けど忘れないでね?あなたに与えられた環境は、あなたを“生徒”にするためにCEOが汗水垂らしてと用意したもの。くれぐれも戦士にだけはなり過ぎないように、ね?…で」
【“それ”は、唐突にマルタ達の眼前に現れた。深緑の景観と不釣合いな白銀の光沢を携えて】
早速だけど、キミの力を必要としている人達がいる
─────────どうする?マルタ・アーネル
【もはや、答えは不要だった】 - 99逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 23:20:49
『シズクとサミダレはバックアップ!!セイドウは全体指揮に専念!!』
通信を通して、ユズハの声が響く。
『増援はすぐに来るわ!! 撃破にこだわらず、それでいて全力で当たって!』
「作戦指揮官様は無茶を言う……!」
だがそれでこそだと、セイドウは笑った。
・・
「ハザマは龍影君の援護だ!!ヤツは強いぞ!!」
「了解ッ!」
廉月の中でも特に鋭い動きを取る一機が、望月とケルベロスの交戦距離に入る。
「それはさせん!!」
滑腔砲による狙撃が、ケルベロスのドローンへと向かい。
「”撃墜王の再来”、ねぇ?」
「ならばサヤギリ以上と証明してみせろ!!」
ユエギが蒼月の発振したビームサーベルを受け止めんと、シールド外縁のカッターを展開し斬りかかる。
更にその横からツルカミがビームライフルを構えていた。
- 100鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 23:21:06
───────だが、““陸上戦艦””とは分かり易い防衛拠点ではない。
全周回転を可能とする六十四連装小口径粒子ビーム砲が対空砲を破壊し始めた機体に振り向いて、その面制圧能力を如何なく発揮しようとする。
「各員、対処を開始するぞ。持ち場を離れず遠距離からの攻撃に徹しろ。機関部を破壊されない限り、時間が経つ度に我々はコロニーに接近している」
『亡霊部隊』に所属する兵士が、三人。
六十四連装小口径粒子ビーム砲が回避される事を見越した上で対応を考える。アサルトライフルによる近距離への牽制を一機が担当し、誘導ミサイルでの追い込みを一機が担当し、そして最後にスナイパーライフルを携えた機体がトドメを担当する。
ビーム砲が放たれ次第、熟練の兵士による三位一体のフォーメンションが牙を剥くだろう。
- 101龍影◆9BZ6kXGcio25/05/11(日) 23:25:39
- 102マルタ◆KPwoT407kA25/05/11(日) 23:28:15
- 103アルパ◆YMCgTirJag25/05/11(日) 23:32:27
- 104ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/11(日) 23:33:57
- 105ハザマ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 23:34:00
- 106鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 23:34:59
・・ ・・・・
「───────あぁ。『月風』乗りならその程度はするだろうな。私はお前達を過小評価などしないとも。全力で叩き潰し、根絶しなければならない敵だ」
・・・
攻撃ドローンが、墜ちる。狙撃によってではない。コア粒子推進機関を急停止された為にだ。ビームを撃ち終えた直後、攻撃ドローンは『ケルベロス』の操作から外れている。
・・・・・・・・・・・・・
次の攻撃ドローンが起動する。「ゴエティア戦団」由来の無線制御技術は瞬時に操作する攻撃ドローンを切り替える事すら可能だ。
つまり、
・・・・・
「二機を操る─────────のではなく。同時に二機まで操れるという事だよ。少し意味が違う」
・・・
鋭い動きの廉月。その真後ろから新たに起動された攻撃ドローンがコア粒子推進機関を生かした高機動で距離を詰めながら廉月に粒子ビームを浴びせようとする。
止まらない。横軸での攻撃を回避しようとすれば、その途端に真下の攻撃ドローンが起動されて今度は縦軸から粒子ビームの雨を降らせる。
──────無数の攻撃ドローンは単なる予備ではなく、使い分けの対象だ。
拠点防衛用バディフレーム『ケルベロス』は、その性能を十全に発揮していた。
「議論の続きと行こうではないか。何故、貴官らは我々がクロノスに攻撃するのを止めようとするのかね?」
・・・ ・・
そして、『ケルベロス』の顎門は三つだ。
- 107ノイン◆fDey8JUvvk25/05/11(日) 23:38:55
【腕を固定したままさらに蒼月はフィギュアスケーターめいて横回転を続け、結果的にビームサーベルを薙ぎ払う形となる】
【腕全体の動きではなく機体全体の推力を利用した薙ぎ払い。だがサーベルとカッター触れ合えば斥力が生じ、少なくとも蒼月は弾かれたようにして間合いを離すだろう】
【決して足は止めない……ように意識しているが、弾かれる前の一瞬にはどうしても動きが静止する。撃つならばそこかもしれない】
【もちろん明らかに罠。】
- 108東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/11(日) 23:39:45
- 109ノイン◆fDey8JUvvk25/05/11(日) 23:50:02
- 110ハザマ◆ECPjTIh3Iw25/05/11(日) 23:51:38
「――――っっ!!」
縦、そして横から襲い来るビームを寸で回避しながら、殺意の包囲網からハザマの廉月が抜け出る。
明らかに動きが違うそれは、マニュアル式によるもの。ここに選ばれた実働部隊員達は皆、機動の自動化を切っている。それが既に当たり前であったからだ。
「すぅ、ふぅ……くっ!!」
だがそれでも、多方向からの同時攻撃には一部対処が遅れる。敵は重装兵級インベイド……ではない。
こちらの動きを予測し、対処すらも行う人間なのだから。
「それを問うならばなぜ!ケイ・サヤギリを社内法で処刑することを前提に侵攻を仕掛けた!!」
互いの逆鱗が違うということを前提に、ハザマも問いかける。ドローンの雨を抜ける。
「情報漏洩罪の無実で、人自連内部からも反発されることなど分かりきっていたはずだ!」
滑腔砲弾をケルベロスに放ちながら、彼らの行動の中にある狂気を悟る。
- 111鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 23:52:23
「──────狙ってきた。中身は熟練か?」
「無駄口を叩くな。そうでもなければ、あのように多大なコストを払ってまで強襲させまい」
「防衛任務だ。無理に追おうとするなよ」
追い込み役を担っていた一機が誘導ミサイルを全弾撃ち放ち、空になったミサイルポットを軽量化の為に投げ捨てて刺突剣を抜き放つ。
─────前衛が増えた。『亡霊部隊』にとっても既知の反応である。オールマイティな技量が肝要であり、そして彼らはその条件を満たしている。
アサルトライフルによる牽制役を担っていた機体が銃剣の如くアサルトライフルの下部からブレードを展開する。射撃兵装と近接兵装を兼ね備える銃剣は今でも実用に耐え得た。
スナイパーライフルを担ぐ機体はシールドの破壊の為に後衛に構えた。クイックブーストによって回避される恐れが高い今は、まだ撃たない。
前衛がチャンスを作り出すのを淡々と待っている。
- 112龍影◆9BZ6kXGcio25/05/11(日) 23:55:15
- 113旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/11(日) 23:59:44
- 114ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/12(月) 00:02:19
- 115実働部隊・そしてケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 00:10:03
「ち、やはり腕がいい!!」
「ひゃぁ……アレ完全に誘いだったぜ。東雲の嬢ちゃんも強くて助かった」
カッターで拘束しながらの狙撃……を誘われたうえで葉桜による鋸でやっと退避した蒼月。
ユエギは騙りにしても伊達ではないと舌をうち、ツルカミは誘われていることへの我慢と圧力を軽く外へ漏らしていく。
「サヤギリを相手にすると想定してもなお、かもな……」
「何よりアイツとは戦い方が違うぜ。通じるかどうか!」
だが恐れてはいない。敵手である以上、戦うだけだ。
だからこそ。
『高高度から落下、いえ加速してくる物体……蒼風改!?!何やってるんですサヤギリさん!!』
「「はぁ!?!」」
陸上戦艦に向けて落ちてくるバカが、ノエルとケルベロスに向けて電磁弾体加速砲弾を放った。
- 116マルタ◆KPwoT407kA25/05/12(月) 00:10:54
(1/2)
【迂闊に放たれた雑兵の攻撃こそが、分水領だった】
「マルタ殿!待ちくたびれたでござるよ!」
デッシー!
【桃色の流れ星が、暴風と電磁の壁を伴い雑兵を蹴散らさんと飛び回り始めた】
「シグレばっかりいい思いして気が気じゃなかったんだから!今度ユスティーナの任務手伝ってくれるんならチャラにしてあげなくもないけど!」
ユスティーナ!
【深紅の狙撃手が、敵対機とその予想進路のみを的確に穿つ“途中で拡散するビーム砲”を甲板目掛け放つ】
「………ぅ…………あの…………よか、った」
ソフィーちゃん!
【紫の指揮棒の号令で、獲物を狩る時を今か今かと待ち構えていた無数のR/W-N01が狩りを始めた】
「シグレもその内合流するって!」
「ここが正念場でござるよ!」
「っ…………!」
………………やっぱり…!
あたしはみんなが、大好きだ!!!
【敵対勢力への幾多の絶望を携え、戦乙女の戦いが始まる】
【白銀のワーグナーのビームライフルが、偽物の撃墜王へと向けられた】
- 117鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 00:18:17
(1/2)
─────薙刀に切り伏せられた攻撃ドローンが、自動化された自爆シークエンスを実行してコア粒子の熱量と衝撃を撒き散らす。
グレネードランチャーから曲射された榴弾が、滑腔砲弾の真上から地面に叩き落として爆裂させる。先読み。それも武装の性能を熟知した上での攻撃だ。
「ふむ、生憎と私は上層部でも経営陣でもない。だから詳しい事実は分からないが、多少の推測は可能だ」
酷く理知的な──────そう思わせる程に、クロノスへの憎悪と殺意が自然体となっている声が一つ前置きした。
彼はあくまでも前線の兵士に過ぎないからだ。得られる情報には限りがあり、大局的な方針に口出しをする権利はない。
ドローンの雨を抜けられる。構わない。その背後を狙って、無数に切り替えられる攻撃ドローンが次々と位置を変えながら詰将棋の如く粒子ビームで誘導を試みる。
一歩間違えれば『ケルベロス』自身が被弾する位置関係だが、しかし自滅弾は一つも存在していない。
・・・・・・・・・・
「侵攻の邪魔だったからではないかね?我々はクロノス側が我々にとって重要な戦略情報を奪取したという『筋書き』を大義名分にしている。ならば、彼が『大した情報ではなかった』と証言すれば我々の大義名分は失われてしまう─────というのが、私の推測だ」
「人自連からの反発も、侵攻に足る大義名分の喪失と比べればまだマシだと結論したのだろう。実際、状況証拠を鑑みれば誤魔化せそうな点もあったからな」
淡々と、客観的に、自らの狂気を分析する。
そのような真似が可能であった。彼は余りに長く、その狂気と半生を歩んできたから。
「お転婆娘。その件に関する私の認識と理解を一つ明らかにしておこうか。上層部は知らないが、私は確かにクロノスには勝てないと理解しているとも」
- 118鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 00:27:45
(──────戦線に復帰したか。厄介だな、コレは)
電磁弾体加速砲弾に誘導ミサイルを直撃させて減速させ、その隙に攻撃ドローンによる一斉射撃で砲弾を蒸発させる。
物理法則に則った運動しかしないのならば、容易く屠れる範疇に過ぎない。尤も、その間は『廉月』が自由になる事に留意する必要はあるが。
・・・・・・・・・・・・・
「で?それがどうしたのかね?」
賢工グループはクロノス・インダストリーには勝てない。その上で、戦争が始まればインベイドが戦線を食い破る。
そのように理解するだけの知性があって、しかし彼は疑問を唱えた。
・・・・・・・・・・・
「私は、世界が滅亡するとしてもクロノスを傷付けたいのだ。君達の懸念は理解している。だが、何故世界を守る必要があるのかね?その理由は何だ?」
・・・ ・・・・・
老将は、狂っていた。
世界を存続させる利益よりも、クロノスに少しでも傷を与える事で得られる利益の方が大きいと。自らの価値観に基づいて、判断を下して、極めて冷静に彼は戦争を始めようとしていた。
「私に教えてくれないか?世界を存続させる事が、何故必要なのかを」
- 119◆KPwoT407kA25/05/12(月) 00:29:06
(2/2)
『実地演習申請は申し入れた筈ですが』
【素知らぬ顔で、ヴァルハラテックCEOが嗤う。人自連軍事部門─────賢人会議がこちらの味方だというのなら老害どもにとってこの報は初耳、寝耳に水であったことだろう】
『まぁ、とうに些細な条約違反でしたね。賢工グループの狼藉は最早目に余るものであると、優秀な“穏健派”が実証してしまいましたから』
『我々は逆巻ほど夢見がちな理想を掲げてはいません。貴方達を排除したところでクロノスと人自連が手を取り合うなど、夢物語でしょう…ただ……そうですね、私と貴方々と違いを端的に述べましょうか』
・・・
『憎しみです。我々はクロノスに痛い目を見てもらいたいのではなく…インベイドも、クロノスも完膚なきまでに滅ぼしていい思いをしたいからこそ、負け戦に邁進する強硬派にすらならない知能なき猿へ、いま刃を突きつけるのです。人間なのですから、我々だって最良へ向けて欲張りに欲張りますよ?』
『知能ある賢者が今に証明なさるでしょう。人間の意地を。それまで…その首をお大事になさることですね、“お猿”さん』
【“強硬派”としての大義名分を得た魔女は、それを宣戦布告として思想を異とする同胞の助太刀を宣言した】 - 120アルパ◆YMCgTirJag25/05/12(月) 00:38:32
- 121二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 00:59:45
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- 122ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 01:08:55
・・・・・・
「っっ……それは「――――託されたからだ!!」
弾丸のように落下する軌道をとりながら、蒼風改が落ちてくる。
大気の壁を纏い、ツインアイの残光を光らせながら。
ハザマは常軌を逸した狂気に反論しきれない。だから、ケイが来た。
「ベレトさんから!!そして、沢山の人から!!この世界で生きてくれと言われた!頼むって言われた!」
更に加速して、落ちてくる。ドン、と音を放つ雷鳴のように、キィンと鳴るつむじ風のように。
ケイは叫ぶ。世界を滅ぼしてはいけない理由を。
だがこれも所詮、大義だ。男は納得させられないはずだ。
「ウルヴィからも、逆巻の皆からも!!まだ死ぬなと言われたから!!」
これもまた個人的理由。言葉にされたか否かなどどうでもいい。そう己が思われたという事実が、ケイを突き動かしていた。
叫ぶ。己がまだ生きている理由を。いや、いや、これすらも極論、枝葉に過ぎない。
ケイにとって、世界が存続すべき理由はただ一つ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「――――俺はまだ!!!龍影からもらった指輪を嵌めていないから!二人で、一生!老衰で死ぬまで幸せになっていないから!!」
それはきっと、『ケルベロス』に乗る彼と同じか、それ以上に個人的な理由で。蒼風改が、急減速とともになおも異常な速度で望月のそばに落ちてきた。
・・・・・・
「世界を存続させる理由なんて……それくらいで十分だろ!!アンタと同じだ!!」
男が、クロノスを滅ぼすため。世界を守ることに意味を見出していないなら。
少年は己と愛する人の幸せのために世界を守る。
それはともすれば一瞬で裏返る狂気だからこそ。同じとケイは評した。
「残りはノインさんに言ってやる……!アンタには、これくらいの暴論が分かりやすいだろ……!」
竜が、翼を広げる。生きる理由に戦う理由などごまんとある。
その中の一つが極めて個人的なものなのだと。復讐者に向けて吠え立てていた。
- 123ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 06:57:12
- 124龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 07:31:55
「それだけ?」
龍影はその揺らぎない闘志を疑った。
「理由はそれだけなの?」
自分も同じ思想を持っていたから理解出来た。だから尚更理解に苦しんだ。A-1を襲って麻痺させる訳でもなく、ただ出血を強いる。
「そんな事しか言えないほど天望が小さくなったのか?」
人自連が発足してすぐ、難民キャンプでもBFが使えるように計らってくれた、あの男は。アブソーバーの代わりとなる守備隊発足案を認めてくれたあの男は。手合わせをしてくれて初期守備隊の教導をしてくれた男は。もう既に憎しみと過去に囚われて、その憎悪を濃縮していた。
「ならアナタは…その憎しみを何故A-1襲撃なんかではなくこんな辺境のために使う!言ってくれれば桜空の技術の一つや二つ!」
龍影は師とも呼べる程敬愛した男を哀れみ、蔑んだ。
- 125東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 07:43:39
- 126鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 07:44:06
・・・・・・
「─────────確かに、私と同じ理由のようだな」
・・・・・・・・・・・
託されたのは彼も同じだ。
憎悪を。怒りを。悲嘆を。そして殺意を─────彼は託された。少年兵時代の戦友に。採掘施設の老整備士に。バディフレームの操縦法を教えてくれた上官に。何よりもクロノスによって虐殺された者達に。
・・・
戦争が始まればクロノスは滅ぶ。序でに人類が絶滅するだけだ。
老将は、インベイドによる滅亡に絶望していない。彼らは戦争を煽り、利潤を吸い上げ、同族同士での殺し合いを助長するような『悪意』はないからだ。
純粋な生存競争で破れるのなら、まだ救いはある。
少なくとも、顔も見知らぬ安全圏の誰かの為に殺し合いを続けさせられた故郷よりはずっと。
・・・・・
「良いだろう。それもまた理由の一つだ。私自身が個人の信念と想念に依って立つ以上、認めなければならない」
辛い記憶だけだった。苦しいだけの人生だった。
『世界を存続させても良い』と思えるような出来事は彼の身には起こり得ず、だが『世界を存続させても良い』と思える出逢いが“彼”の身にはあった。
「────────ならば、後は殺し合いだけだ。私と貴官では相容れない。故に決着は暴力で決める他なかろうて」
憎悪に狂った三頭犬が、天上の竜を喰い破るべく牙を剥く。
───────クロノスを想起させるようなビームの嵐が、陸上戦艦の甲板に吹き荒れた。
- 127龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 07:46:37
- 128鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 08:01:33
・・・・・・・・・
「最重要コロニーを攻撃してもクロノスは滅ばないからだ───────憎悪で彼我の戦力差の判断を鈍らせるな。感情はあくまでも燃料に過ぎないのだから、正しく進む方向を定めなければ自滅するだけだぞ。お転婆娘」
かつて、彼が期待した少女に。老将は半ば自嘲してその言葉を吐き出した。
長い人生の中で一度もその作戦行動を考えなかった訳ではない。だが結局、老将は侵攻に従った。
クロノスの首脳部が集まっているから、陥落すればクロノスが滅ぶのか?
否。違う。老将はクロノスという超企業の実力を、誰よりも実感している──────““陸上戦艦””ですら、あの超企業の喉笛を食い破るには余りに不足しているのだ。
事実として、““陸上戦艦””とすら比較にならない数と練度の兵が揃っている。軌道降下を試みようとも千を超える対空ミサイルと粒子ビームの嵐が天空を薙ぎ払うだけだろう、と。
或いは、自爆ならば被害を与えるのも可能だろう。だがクロノス程の超企業ならば再起するのに然して時間を要さない。他のコロニーが稼働している限りは、絶えず流れ込む生産力の結晶と分散された人材が総てを立て直す。
・・・・・・・・・ ・・・・・・
恐るべき不死の怪物。人類最大企業。
─────正しく理解しているからこそ、世界総てを巻き添えにしてクロノスを滅ぼす策を選んだ。
「──────薙刀。個人的にはやはりランスの方をお薦めしたいのだがね。刺突のキレが違う」
主要通路の前に立ち塞がる三頭犬は、その機体名に彼女の新たな出逢いを読み取りながら──────しかし確実に始末する前にビームランスとシールドを構えた。
- 129鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 08:22:30
- 130龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 08:37:28
事実である。大木は幹を斬ろうが次の春には萌枝を生やしてまた息を吹き返す。だがその大木としての形を崩しさえすれば、その切り株に辺りの環境(デスペラードやクロノスの軍閥)が勝手に火を放つ為、簡単に燃え上がり、根まで灰へ変えれる。クロノスとしての大規模な樹は無くなるが、クロノスの育てた森までは消えない。足並みが揃わなくてもインベイドの脅威に晒されれば否応も無く団結する。
だから龍影は大木であるA-1の破壊が最善と考えていた。
望月の薙刀がタワーシールドに当たるが、電磁層に受け止められ、反発して刃先が跳ね、胴がガラ空きになる。しかしその姿勢のままクイックブーストでタワーシールド側に滑り込み、刺突を躱す。
すぐさま跳ねるように上方へと飛び、右腕のサキガケのリフレクターを刃へと変えて切りつける。通常よりも長い刀身が装甲に滑り込むが、分厚つ素体をを覆い隠すそれのせいで中には当たらない。
「これでまだかすり傷か!」
手合わせでは出来なかった命中判定。すぐさま飛んで来る刺突を左腕のサキガケで受けたが、ピンポイントで展開装置を貫かれる。精製されるも行き場を失った陽電子がビームランスを構成する加粒子と反応し、激しく瞬いた。
ビームは形を維持できずに散らされる。
- 131マルタ◆KPwoT407kA25/05/12(月) 08:50:19
- 132ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 08:56:05
「ふ、っ!!」
クイックブーストを真似るように細かく左右へ機体を揺らし、ビームの雨の中を稲妻のように抜けていく。
ケルベロスと望月の接近戦闘は異能、あるいは芸術の域だ。何より自分は既に理由を語り終えている……。
「龍影に、俺が合わせる……!」
できるかできないか、ではない。やらねばならないことと己を鼓舞して。
コア粒子推進機関を低く鳴らし、ケルベロスの上空へ行く。
「はぁぁ!!!」
《敵の攻撃ドローンに注意》
飛び退いた望月をカバーするように上から腕部動作でビームサーベルを振るう。過剰出力の青を纏う刃を、三日月のように描かせる。
(破壊された左のリフレクター分は、俺が補う!)
- 133アルパ◆YMCgTirJag25/05/12(月) 09:01:11
前蹴りの姿勢のまま推進器で加速し、狙撃手へ突進する。
銃弾が飛んでくるが、まだ形を保っている前衛が盾となりメイツーを守る。
〈ふ、ふざけるn〉
直後、盾となった前衛はコックピットブロックから2分され、その奥から刀を持った黒い悪魔が姿を現す。
その刀は的確にコックピットブロックを切り裂いた。
「良いデータが取れた。感謝する。」
アルパはそういうと狙撃手が使っていたライフルを広い上げ、攻撃をしようと踏み込んでいたもう1機に素早く向け、引き金を引く。
放たれたライフル弾はコックピットブロックの真ん中。パイロットの上半身がある箇所に吸い込まれ、貫通する。
メイツーはまた砲台の破壊へと戻った。
- 134ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 09:50:28
「応えろ!」
【背後からのグレネードに対しノインの脳内にアラート音が響き渡った】
【不意打ちだ。振り向く余裕はない】
【だからそのままの姿勢で背部のコア推進機関を一瞬危険域まで吹かせる】
【炸裂にも似た音と共に蒼きコア粒子の翼が瞬き、グレネードを巻き込んで速爆させつつ爆風を帆のように受け更に加速し鋸の間合いから離れていく】
【そして移動方向に放たれたビームは蒼月への直撃軌道。】
【回避はせず月風譲りの高出力ビームサーベルを翳し、合わせ】
『反射角を意識だったかな……!』
【あろうことかバッティング・センターの体験を元に】
【ツルギの元へと受け流した】
【当然回避しなかった以上シールド・ワイヤーの斜線には入らない】
- 135逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 10:11:02
「まじかよっ!?!」
ツルカミは自分の元へ反射されたビームを咄嗟に耐ビームコーティングを施された腕部シールドで防ぐ。
だが姿勢が崩れた……ところをユエギの廉月がカバーに入る。
「ツルカミ、無事か!!」
「すまんユエギ!!」
ユエギの廉月が蒼月を囲い込むような機動の中で高速速射砲を中レートで連射。対インベイド甲殻貫通弾とコア粒子榴弾を含めた大量の弾丸が蒼月へ襲いかかる。
「シグレ嬢ちゃんのシールドワイヤーのカバー範囲からは外れないようにしないとな……これで三手目だ!!」
ツルカミが吠える。姿勢を立て直し、滑腔砲弾を空中炸裂モードで放つ。
両者の攻撃は蒼月の移動方向をより制限させにかかった。
- 136鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 10:22:01
「───────腕を上げたな。だが、やはり一人では私に勝てまい」
『ケルベロス』の装甲には、タワーシールドと同様の電磁減速機能が備え付けられている──────その『斥力』を、攻撃に転用する。
二段階に及ぶ高速刺突。粒子が散らされたとしても実体部分は無事だ。突き刺さった穂先を更に奥へと突き刺そうとする。
ギロリ、と上空の『蒼風』を睨む。攻撃ドローンと『ケルベロス』は視界を共有している。ゴエティアの機体間相互視界共有技術の応用だ。
尤も、同時処理可能な数は減るものの総ての視界と攻撃をマニュアルで操作するのが『ケルベロス』がゴエティアとは異なる点だが。
「感情に任せて突っ走る癖は、止めておけ………」
攻撃ドローンがその軌道を変える。粒子ビーム砲台としての運用だけではなく、中型コア粒子推進機関を利用した質量兵器としてもビームを絶えず狙撃しながら『蒼風』へと急速に迫る。
グレネードランチャーが時限信管によって空中で煙を撒き散らす。攻撃ドローンに備え付けられた最新鋭のセンサーは『ケルベロス』による視界の欺瞞も見透かして砲撃と突撃を続行する。
──────意図的に、ハザマの『廉月』への攻撃を減らして防御を薄くしている。
攻撃に転じた瞬間に、秘匿していた第三のドローンで仕留める為に。
- 137東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 10:41:03
- 138龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 10:43:06
- 139ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/12(月) 10:50:42
- 140ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 10:59:10
『!! サヤギリ、左だ!!』
「ッッ!?」
『蒼風改』の横腹へと突っ込むように動くドローンの動きに気づいたのは……意図的に薄くされている攻撃によるものか……グレネードの爆炎の外側から戦場を俯瞰できるハザマだった。
ケイが視線を向ければ、距離を一気に縮めてくるドローン。動きに迷いがない。
(ゴエティアと同じ視界共有技術か!!)
「ぐ、ぅ!!」
サーベルの展開をキャンセル、狙撃へ対応……胴体前の小型コア粒子推進機関で減速し落下速度を軽減させ、ビームを回避しながら左腕の高速速射砲をばら撒く。
グレネードランチャーの爆炎に隠れて見えないなりに、回避機動を予測。
散布界を広げた実弾がドローンへ襲いかかる。そのまま地面に足をつけて右から左へと切り返しの滑走。
「ハザマ! 2カウントで滑腔砲!!援護は任意!」
『任せろっ!』
『廉月』が望月と『ケルベロス』を覆う煙を晴らすために滑腔砲弾を放つ。空中炸裂モードで爆発し、一時的に煙を晴らす。
「――――ハァァァ!!!」
《予測位置を表示……攻撃を》
ハザマの『廉月』が上に回り、高速速射砲にてケルベロスの槍の持ち手を破壊しにかかる。自身の処理能力に余裕を持った援護だ。
同時に蒼風改が色を残して突撃する。距離を消し飛ばすような加速で接近し、ビームサーベルをこれみよがしに展開して、二発目の突きを放つ直前の『ケルベロス』へ斬りかかる。
- 141ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 11:07:43
- 142鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 11:31:01
・・・
─────三機目の攻撃ドローンが起動される。
『廉月』が滑腔砲弾を放つと同時、真後ろから粒子ビームが今の今まで沈黙していた攻撃ドローンから放たれて高速速射砲を撃つ『廉月』を追尾する。
二機の攻撃ドローンが目標を変更して同じくハザマを一層増した攻撃密度で攻め立てる。近接へと持ち込まれた以上は粒子ビームの狙撃は自らの機動すら制限しかねないからだ。
「何の運動性能だと思っている……………ッ!」
『ケルベロス』は武装の過搭載によって著しく機動力が制限されたバディフレームであるが、その一方で運動性能については並大抵のバディフレームでは及ばない自由度を誇る。
脚部が駆動する。スラスターの出力を捨てた代わりに機体出力を著しく上げたカスタムパーツが、装甲に短刀を突き立てるバディフレームを巻き込み姿勢を急転換する────────『望月』が『蒼風』と『ケルベロス』の間に配置される軌道だ。
・・
「バディフレームは武装だけが脅威ではないと再び教えてやろう─────それから、仕切り直しだ」
・・・
頭突き。重装甲の質量を十全に発揮する攻撃が即座に放たれて、同時に誘導ミサイルが一斉掃射されて機体前面を薙ぎ払おうとする。
- 143ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 11:48:38
『くそ!!』
三基目のドローンによる攻勢圧の前に、ハザマは機体をランダムに機動させることで速射砲による援護を中断せざるを得なくなった。
『サヤギリ!!今だ!』
だがそれは同時、接近戦において最も危険な攻撃が『蒼風改』へ向いていないことを意味する。
ハザマはこの瞬間こそを待っていたがゆえ、回避へ専念。シールドで一発を受けながらケイへ叫ぶ
「っっっ!?!舐めるなぁ!!!」
《敵砲口を表示》
『ケルベロス』の姿勢の急転換、『望月』そのものを盾にする?
――――だからどうしたとケイは叫び、蒼風改は『望月』が頭突きによって此方に飛ばされる可能性を視野に入れて上に飛ぶ。
『ケルベロス』をハードルに見立てた、推進機関による短跳躍だ。ケイは『ケルベロス』の真上で蒼風改の姿勢を変更させ、高速速射砲を腕だけで構える。
誘導ミサイルの一斉掃射が始まる瞬間に、最高レートで残弾全てをばら撒きウイングバインダーを稼働。
推力を弧を描く機動から直線にベクトルを変えながら右腕のサーベルで斬りかかる。それを防ぐなら、速度を利用した蹴り飛ばしだ。
- 144ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 12:07:39
『なんだそのレートは!』
【ツルカミをユエギが庇い、2機がどうしても直列にならざるを得ないうちに蒼月は距離を離していく】
・・・・
【最短最速で囲みにかかれば蒼月は捉えられるだろう】
【余裕を一切なくした機動をすれば蒼月を囲めるということだ】
【直線速度は落とさずバレル・ロールを繰り返し貫通弾のみを避け、榴弾への回避は最小限、装甲が少々焦げ付いていく】
【そんな蒼月に光の刃が迫る】
『な、何だ!?』
【初見の兵器には前方宙返りで大仰な回避を余儀無くされた】
【頓狂な声を上げつつ宙返りで反転し、追われる形から向き合い直す形と成りながら】
【シールドを翳して空中炸裂する滑腔砲弾の破片を防ぎつつ】
【シールドを失ったツルカミへと撃ち返す】
- 145龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 12:07:53
振り落とされた。すぐさま後上方へ飛び姿勢を整え、リフレクターでミサイルを受け止める。
その爆煙を払うように加粒子が突き抜ける。
受け流されても構わない釣りの一手。
「まだまだァァァ!」
バルカンを撃ちながら望月は肉薄して切込みを入れた箇所に薙刀を叩きつけた。刃は砕けるが装甲も崩れ落ちる。
外気に触れた内部フレームに陽電子ブレードを当てる。小気味よい音を立てて切り落とせた。ようやく左腕を破壊した。
その直後、背後のビットから放たれたビームに被弾して増設した推進器が爆発する。バランスが取れなくなったのでもう片方の増設した推進器も捨てる。
「クソがぁ!」
刃が無くなり棍棒となった扇景で殴って破壊する。爆発した。
機体が煤けようが気にしない。
戦闘のアドレナリン分泌と接続深度を上げたことによる好戦傾倒していく中で、チラチラと視界の端に映る鬱陶しい存在に苛立ちを覚える。
「邪魔!」
怒鳴った先はケイである事をまだ龍影は気づいていない。
- 146東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 12:16:59
- 147ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 12:36:09
- 148鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 12:42:47
・・・・
「─────私が『月風』乗りを過小評価した事はない。覚えておけ、熟練兵の前で油断と慢心は期待しない方が良いと」
・・・・・・・・・・
グレネードランチャー。今まで煙幕弾による補助に徹していた射撃武装が火を噴く。
曲射された時限信管付きの榴弾が高速速射砲の弾幕を蹴散らして、一部の誘導ミサイル群が方向を反転させて背後からビームサーベルを手に迫る『蒼風』に殺到する。
ビームサーベルで切り払う、或いは速射砲によって迎撃する。いずれにせよ誘爆して衝撃と熱が瞬時に撒き散らされるだろう。
─────そして、例え想定外の対処をしたとしても。攻撃ドローンとの視界共有によって、ハザマの『廉月』を攻撃しながら背後を十全に観測可能だ。
違う方角。殺意を込めた粒子ビームを逸らす。
「お転婆娘、頭に血が上がると周りが見えなくなるのは変わらないな。僚機との連携をもっと意識し、タイミングを合わせろ───────そうでなくては、効果的な攻撃にはならない」
切り落とされた左腕から零れ落ちたタワーシールドの縁を『ケルベロス』が思い切り踏み込む。
────────瞬時、一方に絶大な重量と速度が掛けられたタワーシールドが電撃を纏いながら高く『望月』を攻撃範囲に含める形で“跳ね上がった”。
・・・・・・
「脚とて凶器だ。カスタムパーツを選ぶなら、一般関節の二脚の利点として『生身と同じ感覚で武器として扱える』というよも入れておけ」
- 149逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 12:48:38
「くそ、アレを捉えきるのは無理だな」
「ああ。動きの余裕がまるで違う、ぜ!!」
ツルカミはビームライフルの応射を躱しつつ、丁寧に反撃のビームライフルを差し込んでいく。
ユエギがツルカミのフォローに回り、円環機動で追いかける。余裕を削り取りきった果てにあるものを月風乗り達はよく知っているからこそ二人は深く付き合わない。
「セイドウ!そちらはどうだ!!」
『亡霊部隊を相手にしている!しばらくはそっちで抑え込んでくれ……今だシズク、やれ!』
ユエギの声にセイドウが応えた。
見れば3機の廉月は連携と機動力を武器に、亡霊部隊へ変幻自在はスイッチングを繰り返して攻撃を仕掛けていく。
一機が滑腔砲で盾役を止め、一機が飛び込み、一機がさらに気を逸らして撃破という役割を秒単位で切り替えていく姿が見える。
「再来と戦えるだろうハザマは向こうだ……ツルカミ!しばらくはこらえるぞ!」
「応よ。だが龍影の嬢ちゃん……ありゃケイが見えてねぇぞ!」
ユエギの声に、ツルカミが別戦場を気遣った。この男もまた視野が広い。が……
どこまでも好戦的な望月が、自身の僚機が蒼風改であることに気づいているか否か。ツルカミは把握しかねていた。
(俺達も再来を台ちゃんに任せていくべきか?)
「自分を見てなかろうが、サヤギリが僚機を見捨てると思うか?」
「……それもそうだ!!」
きっと大事な場面を見逃す彼ではない。ユエギの言葉に、ツルカミは逡巡を切り捨てた。
「嬢ちゃん、相手を上手く動かしてくれ!こっちでもかき回すからよ!!」
再来を抑え込むことのできるパイロットを援護すべく、二機の廉月が爆炎の中を睨む。
ツルカミが叫んだ。
- 150旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 13:01:40
- 151龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 13:04:11
痛々しい音を立ててシールドが望月の頭部に衝突し、バイザーが割れる。中からは蒼風と同じデュアルアイが覗く。
コックピットモニターに頭をぶつけた時、カチリと興奮が引いていき、すぐさま状況を確認した。蒼風が浮いている。まだビットは放たれてない。
ならば今しかない。
「ケイ!」
僚機のパイロットを叫ぶ。
望月の瞳(め)は桃色に輝いている。
夜桜から回収していたビームサーベルを取り付けていたサイドスカートから取り外して発振させる。その色は最初期の粒子濃縮が安定していない赤黒い刀身である。
濃縮にムラがある為切り口がグチャグチャと荒れる為、結果的に破壊性能が上がった。その赤黒い刀身は龍影の殺意を全て吸い取った様に揺れ動く。
- 152ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/12(月) 13:14:11
- 153ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 13:16:05
《後方からミサイル》
「カウンターメジャー!!最低限振り切って……落とす!!」
ビームサーベルの発振を止め、フレアとチャフが混合した誘導欺瞞材がばら撒かれる。
いくつかのミサイルが誘導から外れあらぬ方向へ飛び散る。欺瞞しきれないものは速射砲……だけではない。
「頭部バルカン、コア粒子開放……ぐ、ぅ!!」
牽制用のバルカンを迎撃に。そして頭部に搭載されているコア粒子砲をも使って、爆炎と破片を喰らいながらも捌き切って。
「っっ!!!」
息を呑んだ。タワーシールドの一撃を望月はモロに食らっている!
『ケイ!』
「――――龍影!!」
爆炎の中から蒼風改を飛び出させる。己の名を呼んでくれた女性に、ケイは合わせた行動を取ることを決意した。
上から『ケルベロス』へ襲いかかる角度を維持。だがよく見ればすぐに高度を変化させられるようバインダーが稼働している。
割れたバイザーから覗く望月の桃色とは正反対に、蒼風改の睨み目……バイザーアイが青く輝く。
・・・
「任せる!!」
3つのリミッターを全て解除し、そのまま加速する。馬鹿の一つ覚え……であるわけがない。
そのまま有針徹甲弾を2発、ケルベロスに向けて放ち。一発を中途で自爆させる。蒼風改の動きが煙に隠れた。
- 154ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/12(月) 13:23:24
【機体のハッチを開き視界を広げ、伸びをする】
【テスタロッサの背後には、拘束された多数のBF。次なる戦闘が起こる以上、無力化した敵機の保護は必須だった。折角拾ってやった命だ。雑に潰したくはない】
「起きてる奴は飯を食っとけ。腹減ってるだろ」
【先程、コックピットハッチをこじ開けお茶とおにぎりをぶち込んでおいた。生死の境は嫌でも腹が減る】
「………」
【様々な錯綜する意志を乗せた船。陸上戦艦は多少離れた所でも圧倒的な存在を放っていた】
【同じ自人連。各企業の複合体である以上こういったケースは避けられず、必然として起こる。だからと言って命の損失は見過ごせなかった。だから動いた】
【だがこれ以上の手出しはできない。あの人達は道理以上に、理屈以上に、各々の持つ"武器"で戦っている】
「…眩しいな」
【あの船上は輝いていた】 - 155鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 13:50:21
・・・・・・
「敵の動きは覚えておくべきだ、特に搦め手はな」
・・・
─────『ケルベロス』は煙幕弾を使っていた。だから、彼の機体には“当然”煙幕を見透かすだけのセンサーが備えられている。
片腕の機体に直ぐに適応する。重心の偏りによってビームランスをより迅速に振り回して、有針徹甲弾を回転によって逸らしながら『望月』に向けて薙ぎ払う軌道───────攻撃ドローンが追加で起動される。
・・・・
自動操作だ。マニュアル程の自由度はなく、直ぐにでも撃墜されるだろう。だが九機にも及ぶドローンが一時的にでも『廉月』を足止めすれば、その間に三機の無線制御式攻撃ドローンを『ケルベロス』の援護に回せる。
・・・
(──────隠し札を切らされたか)
二度も使える戦術ではない。そう理解しながらも、使わざるを得ない状況になっている。
- 156二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 13:50:31
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- 157龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 13:57:09
- 158ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 14:16:53
「ハザマ!!!」
『俺ができることだ……お前ならより上手くできると教えてやれ!!』
9基のドローンによる攻撃を、先程以上の鋭い動きで『ハザマの廉月』が回避してケルベロスを囲む。コア粒子推進機関のリミッターとコア粒子伝達流路の調整機能を解除した、初見の動き。それはどこかの誰かがかつて呟いた”月風を超えた”と呼ぶに相応しい機動で。
『行け!サヤギリィ!!』
ハザマ機が有針徹甲弾を三発と高速速射砲にて、更に一基を破壊。
『今だぁ!』
「ッアアアアア!!!」
・・・
蒼風改は望月の真後ろにいた。ケルベロスのビームランスを破壊すべく望月が動き、龍影が叫んだ瞬間に影から飛び上がった。
白兵戦距離に持ち込む。リミッターを解除された『蒼風改』が、左腕のシールドに内蔵されたビームサーベルをケルベロスへ突き出すと同時。リロードを終えた高速速射砲でカメラを狙う。
ケイは右手の試作電磁弾体加速砲と、最後の有針徹甲弾をも先行入力にいれる。機体制御用のコア粒子推進機関全てをいつでも解放できるよう備えて。
(どう持っていくかはアドリブ……!!これで!!詰ませる!!)
現在持ちうる全ての推力と集中を、注ぎ込んだ。
- 159東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 14:31:58
- 160二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 14:57:02
このレスは削除されています
- 161賢人会議◆YMCgTirJag25/05/12(月) 15:01:26
ある施設に向けてヘリが飛んでいる。
〈ーそろそろか。〉
ヘリに乗っている30~40代程の男女6人は皆装甲服を着て7.56mmパラベラム弾の装填された自動小銃と45口径炸裂弾が込められた拳銃を装備する。
目的地に着くと速やかにラペリングを始める。
この場にいるものは皆、北部で壊れた上司の補佐を担当していた、ある程度の場数を踏んでいる精鋭と呼べる人員である。降り立った場所は老害が管理している賢工グループ関連施設の中でも心臓とも呼べる機能を持ったビルである。光学迷彩で姿を消した6人は屋上の出入口へ向かう。ロックはカードパスであるが、これは既に複製したマスターキーで解錠し、侵入する。足音は吸音ブーツのおかげでほとんどしない。
老害達は逆巻の謀反を話し合うために全員ここのビルに来ている。そこを叩くのがここにいる目的だ。トップダウン式の命令系の中でもかなり発言力のある彼らが居なくなれば混乱は必至だろう。そうなれば現在アップデートされたUNBFのみで警備のBFを完封出来る。
非常階段を降りていき、目的の階層に着くと蝶番をピカティニーレールに付けたマスターキーで吹き飛ばしてドアを蹴破る。廊下では資料を持ち、歩いていたオフィスレディがそのイレギュラーを認識するも、声を上げることなくしゃがみ、拳銃を抜く。撃たれるよりも前にそのOLの頭蓋骨が吹き飛ぶ。白銀の人工血液が鮮血の代わりに溢れ、どさりと倒れ込む。
【クリア。】
廊下には他に誰もいない。
〈Move.〉
姿見えぬ6人は老いも理解出来ぬ獣を狩りに歩みを進める。 - 162鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 15:08:18
───────既に両腕を壊された。グレネードと誘導ミサイルによる牽制は、陽電子リフレクターによって無効化されるだろう。有効打ではない。
未だ近距離に配置していない攻撃ドローンが、高速で微細に揺れ動きながら粒子ビームを放つ。直線的な攻撃は間違いなく回避されるだろう。
だが、『蒼風改』の動きは見えていた。センサーと攻撃ドローンの視界の賜物だ。その位置と、その次の動きを予測している。
「ハッ─────────」
思わず笑みを零した。かつて稽古してやった少女の成長に対してではない。
───────砕け散ったビームランスの加粒子の破片に、攻撃ドローンの粒子ビームが直撃する。
コア粒子同士の反発によって粒子ビームを逸らす技は、彼が自ら作り上げたクロノス機を打倒する為の技巧であった。
だが、今。追い詰められた彼は─────
・・・・・・・・・・・・・・・・
「私にまだ成長の余地があったとはな」
粒子ビームが、折れたビームランスの加粒子を反射板として『偏向』する。
『ケルベロス』の足元を介して甲板から天空に立ち上がり、カメラへと向かう高速速射砲の弾頭を蒸発させてからビームサーベルを握る左腕部のシールドを切り裂こうとする。
残存するもう二機の攻撃ドローンが、『微調整』を重ねながら三機のバディフレームの上空でその粒子ビームを激突させる。
拡散。意思の介在しない予測不可能な軌道を無数の細い粒子ビームが描いて、流れ星のように甲板へと突き刺さってゆく。
「───────我が憎悪、絶たせはせん」
酷く落ち着いた声音で、狂った三頭犬は最後の交錯に躊躇なく身を投じた。
- 163二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 15:36:52
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- 164ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 15:50:34
(1/2)
「────!!!」
ビームが偏向され、無数に放たれた高速速射砲弾を切り裂き。蒼風改のシールド外縁部……カッターを収容するがためにコーティングが施されていない唯一の弱点を……狙い撃ちで破壊していく様を、ケイは1秒を何十と切り分ける瞬間で確認した。
咄嗟に機体の姿勢を崩さなければ、メインカメラをも焼かれただろう致死の一撃。
(偶然、じゃない!!これは狙ったものだ!!)
上からはコア粒子の雨。ドローン3機による、ビームを激突させ合うことによって生まれる人工の散弾……。発生するまであと数秒か、10秒か。
『───────我が憎悪、絶たせはせん』
では詰みか?……いや。
「まだ、だァ!!!」
【シールド内蔵ビームサーベル・射出】
ケイは叫んだ。
蒼風改のインターフェース内に搭載された機構によってビームサーベルが上側に排出される。一時的に発振が止まり、コア粒子による干渉爆発が起きぬよう僅かに上へと、それが弾き飛ばされて。
ケルベロスの神技によるビームが通り過ぎた後に、左手でサーベルを逆手に掴む。破壊された耐ビームコーティングの盾の破片を意に介さず。
背部コア粒子推進機関と、機体各所の小型のものを一気に吹かす。崩れた姿勢が常識外の速度で立ち戻る。
「あんたの憎悪は、ここに全部置いて逝けェ!!」
ケイは瞬間的なGに血を吐きながら、青い過剰出力の刃を再展開。三頭の獣の下側に潜り、そしてケイから見て左側へサーベルをぶつかるように突き刺した。刃の先端が『ケルベロス』の背中側へと飛び出す。
(まだ致命傷じゃない!!)
「俺は!!」
(確実に!!何があっても!)
同時に、右手袖下に装備している試作電磁弾体加速砲をコックピットの予測位置に叩きつけるように押し付けて。
「俺の未来のために!あんたを殺さなきゃいけないんだ!!」
接射した。何度も何度もトリガーを引きながら、ケルベロスの装甲に穴を開けて。
- 165ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 15:51:52
(2/2)
「っっっ、ぁ!!」
即座に再びコア粒子推進機関を最大出力に持っていき、倒れ込んできた三頭の獣の真下へと蒼風改を潜り込ませた。
ビームの雨が、すぐにでも機体に当たり熱となる。
ケルベロスを盾にする方法でもあった。
「っっっ、ぅ、ぐぅぁぁぁ!!」
────蒼風改は、月風の頃から耐ビームコーティング装甲を受け継いでいる。
ケイはそれを信じる。
『龍影さん!っ、くそ!!』
ハザマ機が龍影を守るように両手の小さいシールドを掲げて、望月の上に浮く。ビームの雨に対する傘となった。
(これで足りるか!?)
ハザマはケルベロスが撃破できたかわからなかった。もしもがあればこれは不足だった。
- 166マルタ◆KPwoT407kA25/05/12(月) 16:10:54
【試作のワーグナーモデル群の中で、ロスヴァイセに与えられたコンセプトは“高機動前線指揮”である。マルタ本人は感覚派故、ミスマッチに思える構想かもしれないが】
…っらぁぁぁぁっ!!!!!
【戦況を広い視野で把握し、足りない手駒を即時に自らの足で埋めるにはもってこいの加速性能が、ロスヴァイセには付与されている】
【左手のワイヤーが飛び、電磁シールドが天面からのビームを弾いていく。不規則に飛ぶなら全部凌ぎきればいいだけの話であり、3機を守る盾となる】
(………やば、めいっぱい伸ばしすぎて、“1本”だけだとあたし自身をカバーしきれない!)
【“直感”を過信しすぎたかと、マルタが次の手を打とうとした寸前に、ロスヴァイセの背後から“新たなるドローン”が飛ぶ。複雑な性能を与えられず、ただひたすら守り、弾く事を目的としたそれが、白銀を守るように 2つ。結果的に直感は正しかったのだ】
…リフレクターオービット!ユスティーナ!
《真上にいる“余り”はユスティーナが処理するわ!》
よし…!
【程なくして、主を喪失した敵性ドローンを穿つように粒子の放物線が描かれた】
- 167賢人会議◆YMCgTirJag25/05/12(月) 16:39:10
オフィスで働いている人員は働いているフリをしているだけだった。無意味なデスクワーク。必要のない資料印刷。そして話題だけはある休憩。
〈全てサーバーで管理しているのだから必要が無いな。〉
【表向きでも機能しているようにして事実をカバーするためでしょうね】
《殺すか?》
〔無理だろう。全て義体だ。既に気づいていて尚放置している。〕
{見逃されているなら突破すべきでは?}
[同意。]
働いている全員の動作が全て止まった。
〈火器使用自由。頭を吹きとばせ。〉
『了解。』
オフィスエリアは戦場になった。
すぐさま光学迷彩のポンチョを脱ぎ捨て、熱光学迷彩へ変える。すると発煙筒を何本も投げられた。
射撃の為に1人の賢人が耐弾性のデスクから頭をあげた時、発煙筒の赤い光と煙を反射して揺らぎが映る。
[しまった。]
直後、下顎を残して頭が吹きとんだ。鮮血を噴水のように撒き散らす。
光学迷彩の優位を保つためにポンチョを被ったりデスクの下に潜り、血の雨が止むのを待つ。
血溜まりには凝固剤を投げて固める。靴底に血がつかないのを確認してから後退する。
- 168龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 17:04:29
- 169ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 17:27:24
「ぅ、っっ……!!」
耐ビームコーティングを含めた装甲が蒸発し、ゆっくりと破損していく。
ケルベロスを盾にしていようと、脚部や背部推進機関までは守りきれない。
(このままじゃ致命傷に……!!)
それを覚悟したと同時に、雨が止んだ。
「あれは……!!」
《ヴァルハラテック機です。機体名、ロスヴァイゼ……ジークルーネと同様の系譜にある機体です》
「あの時来てくれたパイロットの仲間……ありがとう!助かった!!」
ケイにとってはアブソーバー戦を含め、二度命を救われる形となる。感謝は当然だ。
「は、ぁ……ふぅ」
安堵と同時に疲労が吹き出てくる。だが、まだ終わってはいない。
……いや、むしろ今からが始まりかもしれない。
「龍影、無事?」
通信を繋ぎ、望月を見る。互いの命の確認もそうだが、機体損傷の度合いを探る意味もあった。
蒼風改は左腕のシールドが完全に破損。腕に装備している高速速射砲も破損している。
よく見れば左肩の僅かに上向きに尖っている装甲もビームで融解していた。
- 170賢人会議◆YMCgTirJag25/05/12(月) 17:29:15
- 171ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 17:49:19
(1/2)
「(やはり、全員で生きて帰る気だな。その余裕は!)」
【人自連の最大派閥。その切り札に仕掛けておきながら一つの犠牲も出さない勝利を信じてやまない姿勢にもはや失笑しながら】
【ノインの神経から蒼月に3つの命令が伝達される】
《─コア粒子推進装置リミッター上限変更》
《─関節駆動条件上書》
《─コア粒子伝達流路定格解除》
【蒼月の高音が響き渡る。最大まで引き上げられる出力による奏鳴】
【左のサーベルでビームの火線を叩き往なしながら】
【背の大型コア粒子機関が。ウイングスラスタと脹脛の中型コア粒子推進機関が蒼色の炎を噴き】
・・・・
【蒼月は180度その推進ベクトルを変えた】
- 172ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 17:50:00
(2/2)
『しかしいい武器だ』
【そちらに空を踏み込みながらまず斬撃波にライフルを投げつける。ライフルは容易く両断され、同時にライフル内の残存粒子が爆発。斬撃波と共にバラバラとなる】
【サーベルの発振をOFF。あえて干渉させず長物の内側に飛び込もうとする】
『白刃取りが出来ないからなぁ!!』
【ノインは本気で賞賛していた】
【殴打を狙いつつ相手が下がるならサーベルを発振、丸鋸を押し当てに来るならそれを蹴飛ばし、射撃するなら切り払い、もう一度斬撃波が飛ぶならその前にサーベル2本で押し返そうとする】
【『蒼月』】
【月風由来の武装の殆どを廃し、代わりにフレーム……つまりはフィジカルの強化にリソースをつぎ込み】
【強化された人間の搭乗を前提とした半神経制御と、それに追従できるだけの過敏さを持ったこの機体は決して『的確な武装選択』を是とする万能機ではない】
【その本質は──クロスレンジの白兵戦に特化した大型格闘機である】
- 173東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 18:15:49
- 174龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 18:21:11
- 175ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 18:35:58
- 176ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 18:36:16
- 177東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 19:06:15
- 178ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 19:35:42
- 179賢人会議◆YMCgTirJag25/05/12(月) 19:37:45
〈待て。〉
ピタリと止まる。
【見えた。アレね。】
〔アレは…対BF用の歩兵兵装のスローネ?!…条約で運用と生産が禁止されてるやつじゃないですか!〕
{老人はなりふり構ってはいられないようだな。}
《軍用の簡易モデルとは言っても殴られたら一発でおじゃんですよ。あれ。》
【もう一度使います?】
〈装甲が厚すぎる。効果は薄いだろうな。〉
《なら肉弾戦を。》
〈待て、A.M。〉
《義体を活かすチャンスなんです。さっさと老人をとっ捕まえましょう。》
そういうと熱光学迷彩を解きながら折りたたみ式のバトルブレードを抜き放ちスローネの視界に躍り出る。
《条約違反だぞ。君、降りたまえ。まだ不問にしてやる。》
スローネは走り出して男を殴りつけた。
男はその拳を受け止め、投げた。
宙に舞ったスローネをバトルブレードで切り、右腕を落とす。分厚いアクリルガラスの向こうで目を見開く歩兵と目が合う。
《これも君の選択だ。反省会は向こうで。》
アクリルガラスを叩き割り、奥にいる歩兵の頭蓋骨を殴り潰ぶしてそのまま脊椎を引き抜いた。こうでもしないとスローネは動きを止めないからだ。
《どかしたぞ。行こうか。》
〈Move.〉
老人まで後少し
- 180東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 20:13:36
- 181ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 20:44:36
- 182東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 21:03:05
- 183ノイン◆fDey8JUvvk25/05/12(月) 21:23:00
【機体を引き起こし、上昇に転じながら爆撃の合間を縫って幾たび目か飛び上がる】
【左腕は曲がったままだ。フレームの歪みが真面な動作を阻害していた】
【プログラムを書き換えれば動かせないことはないが、できて1,2回だろう】
『(左腕は瀕死、シールド、ビームライフルは破壊。それに。)』
【爆風で、罅が入っていたバイザーが砕け飛ぶ】
『(頭にいいのをもらった、か……)』
【メインモニタはチラついている。レーダー類も今一つ反応が雑だ】
『つまり、条件は凡そイーブンかな。』
【バイザーの下。青いデュアルアイが爆風を抜け、眼下を見据えた】
- 184ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 22:12:09
- 185マルタ◆KPwoT407kA25/05/12(月) 22:16:55
- 186旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 22:36:50
「個人的にはラバーさんの機体とはミスマッチな気もしますのよね…………用途としては恐らく弾幕の相殺が主なので、そう考えると基礎防御力が高そうなタンク機とはコンセプトが被ってしまいそうで」
小口径の機関銃や破片を撒き散らす榴弾とは相性が良いと思うが、しかし重装甲の機体にとってはそのような武装は脅威にはならないだろう。
寧ろ危険視するべきは粒子ビームやスナイパーライフルによる単体火力が高い武装である事を考慮すると、アセンに組み込むには費用対効果が見合わない可能性がある。
──────“汚物は消毒だ!”出来る、というのは一つのロマンではあろうが。
- 187龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 22:38:58
- 188ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 22:41:25
- 189ミハエル◆j28rRKKOSY25/05/12(月) 22:46:38
【補給物資をコンテナに積みサブアームにもコンテナを掴ませた状態で陸上戦艦への道中を走る】
「前線部隊ー!聞こえるかー!補給物資が必要なら通信か信号弾で場所知らせろー!」
【通信機の回路を開いて呼びかける、進路の先に陸上戦艦の巨体が姿を見せている】 - 190龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 22:59:18
- 191東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 23:00:12
- 192鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 23:04:06
(1/2)
・・・・
「───────何故だ?」
五十年間にも渡り戦い続けてきた老将は、試作電磁弾体加速砲をコクピットに突き付けられて、初めて重い疲れを滲ませた声音を吐いた。
───────誰も聴いた事のない本音だった。
長く、戦争と死。苦痛と喪失に塗れた人生だった。
彼の戦争は終わっていない。あの日からずっと、彼の魂は地獄の底だ。
・・・・・・・・・・・
「私の、幸せの全てを奪った者が」
家族がいた。寡黙で厳しいが頼りになる父親と、常に微笑みを絶やさぬ優しく賢い母親と、育ち盛りで毎日のように彼の分の食糧まで強請る妹が。
戦争が始まった日、全員が殺された。
戦友がいた。同じ少年兵でありながらも夢を語る男だった。戦争が終わったら花屋になって、穏やかに生きていきたいと言っていた。
クロノスが性能試験として投入した新兵器の誤射によって背後から撃たれ、黒焦げになった骸の山から彼の死体を判別する事すら出来なかった。
・・・・・・・・・・
「幸せそうに笑っているのを許さなくてはならないのだ?」
戦禍だけが、彼の人生の総てだった。
世界が奪うのはいつだって彼ではない誰かで、世界が与えるのはいつだって苦痛だけだった。
歳を重ねた。寿命を恐れた。だって、まだ!まだ!彼から全てを奪った者は自らの罪を罪とも認識していないのだ!彼の憎悪を、怒りを、悲嘆を、そして怨嗟を!何一つとして知らず、忘却して、のうのうと生きているのに!
- 193ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/12(月) 23:04:56
「葉が落ちた」
【眺めていた船上から、一枚の葉が落ちていく。あの形状は確か"葉桜"と言った筈。見た所、爆散も炎上もしていない。ならば】
「間に合う…間に合わせる!」
【声が喉を出るより早く、コックピット内に滑り込む。ハッチは開放したまま。戦闘する訳ではない。ただの救命活動に装甲は要らない】
【紅い装甲が再び内に熱を秘め、陸上戦艦へと駆け出した。どう助けるか?簡単だ。跳躍して捕まえる。それだけだ】
「相対速度は…まぁ大丈夫か!」
【陸上戦艦にワイヤーガンを撃ち込み、巻き上げると同時に最大出力跳躍。ブースター並みの速度でブースターを使わず上昇】
「届けェ!!」
【腕部を可動限界域ギリギリまで伸ばし、空中で落ちゆく葉桜を掴もうとする】
- 194鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 23:04:57
(2/2)
─────────その狂気も終わりだ。老将は、目を閉じた。
・・
「指環。世界を存続させたいと思える理由は、何故私には与えられなかったのだ?」
・・・・・・・・・・
運命に出逢えなかった地獄の三頭犬は、子供のように酷く羨ましげな声を響かせて沈黙した。 - 195ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/12(月) 23:14:45
- 196東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/12(月) 23:16:53
- 197ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/12(月) 23:32:19
【伸ばしあった手と手が繋がり、接触回線に切り替える】
『チューニングしてもらって悪いけど、こっちのが早いかな!』
【元気のありそうな搭乗者の声に安心しつつ、所謂ハスキーボイスに該当する声が返事をする】
【掴んだ手を引き寄せ、"葉桜"抱き抱えるように、着地姿勢へと入る。だがBF2機分。通常よりも加速が早い】
『舌噛むから注──って今更言う必要も無いかな!』
【陸上戦艦の外壁を一瞬蹴り、少しではあるが減速を成し遂げつつ、着地した】
『下の敵はあらかた片付けてある!楽にしていて良いぞ!』
- 198龍影◆9BZ6kXGcio25/05/12(月) 23:39:40
「ありがと。」
これでケイの戦いに水を差す馬鹿を切り伏せれる。
ケイがコックピットに戻ったのを確認してからビームサーベルを地面に置く。
「ケイ、初期型の欠陥は連続発振してるとたまに不整流でビームが跳ねる事があるから、ここぞってタイミングで使うようにして。」
忠告をするその声は心から心配しているものであった。
- 199ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/12(月) 23:44:20
【ざあ、ざあ。水溜りに粒が叩きつけられて、その度に小さな波が生まれる】
【焼け焦げ、爛れ、煤けた身体に、雨水が染みていく。その冷たさが心地よく、微睡みに誘われる】
【このまま僅かな残り火も消えるまで横になっていれば、きっと深く眠れるのだろう】
【それでも灰は、ゆっくりと起き上がった】
「……まだ」
「仕事が、残ってる」
【誘惑を振り切って、手を伸ばして、炎を掴む】
【雨の世界は割れて、炎の海が広がっていく──】
〘エルガレイオンシステム、生体反応を確認〙
〘パイロットデータの認証をクリア〙
〘システムプログラム、戦闘モード 再起動〙
【横一文字のスリットにも似たカメラアイが瞬きするように明滅して、光を灯す。待ちくたびれたと言うように、ジェネレータが唸る】
「ん…」
「おはよう」
【目覚めの挨拶を返すように、BESTIA DREADのブースターが咆えれば】
【戦艦へ向けて、漆黒が閃いた】 - 200復讐するは我に在り◆OXAm1h6odk25/05/12(月) 23:45:29
─────前提の再確認をしよう。
““陸上戦艦””は、随伴戦力としてバディフレームを200機も輸送機によって後方に伴っていた。
其れらはコロニーの制圧のみならず、着艦した敵機の排除も役割の一つとして遂行する義務がある。
では、何故彼らは未だ降下していないのか。
『──────容易い』
・・・・・・・・・・
虐殺されているからだ。
輸送機というのは、バディフレームと比較した場合は比較的に装甲で劣る。クロノス空軍が運用する、特殊回転翼機『イーグル』は逆に並みの重装バディフレームよりも頑健な装甲で機体全面を覆っているが、其れは世界最大企業であるクロノスだからこそ可能な所業だ。
──────その輸送機が、黒鴉を思わせる異形の機体によって襲撃されていた。
ビームライフルが次々と輸送機のエンジンを穿ち、鋼鉄の棺桶を作り上げる。迎撃に放たれたロケット弾が拡散ミサイルによってパリィされて、次の瞬間には爆炎の向こう側からレールガンが回転翼をへし折る。
攻撃ヘリでもない一般の輸送機に、空を自由に翔ぶ鳥は墜とせない─────────否。そうでなくとも、“空の変革者”は不沈だ。
徹底した空力学設計によって、原型である『月風』以上の速度と無に等しい装甲を両立した機体が蒼色の線を刻み付けながら空を舞う。
『アウタースカイ』を撃ち落とそうとする弾幕を前にして背部の双発の大型コア粒子推進機関が怪物の絶叫を思わせるエンジン音を響かせて機体を逆向きに急降下する。背後の輸送機に命中して自滅する。
逆さの姿勢で瞬時に肩部のレールガンと手に掴んだビールライフルで二機を撃墜する。榴弾による制圧爆撃。拡散ミサイルで相殺して突き進んでサーベルで真っ二つにへし折る。
“空の変革者”が、復讐で空を染め上げる。
『……………邪魔だよ』
全長60mに及ぶ対地攻撃ヘリを前にして、復讐者は吐き捨てた。