- 1二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:11:54
愛される存在でなくてはならない。
いつからだったか覚えてないけど、イブキにはそんな決意や信念にも似たものがあった。
だから日々“良い子”を演じて、精一杯可愛がってもらえる様に努力している。子どもらしい幼気な笑顔を振り撒いて、先輩たちに喜んでもらえることを考えて実践したりして。
その努力は報われて、今のイブキは万魔殿の愛される存在でいられている。たぶん。
だから、先生のことは一目見た時から嫌いだった。
まるで運命に約束された恋人へ一目惚れするみたいに……なんて言うのは少しおかしいかもしれないけど、イブキは初対面でビビーンと先生の事が嫌いになってしまったんだからしょうがないよね。
一応、理由はあるよ。
イブキが“良い子”を演じるみたいに、先生は“良い先生”を演じてる。イブキと先生は鏡合わせの存在みたいで、根底の動機がまるで同じだったの。
その姿を見せつけられると、そこに映る自分の姿が、まるで人形みたいに空っぽに見える。イブキがどれだけ“愛されるために”笑っているか、気づいてしまうから。
先生はイブキの醜さを練って固めて渡してくる。子どもが泥団子を作るみたいに、夢中になって、ひたむきに。
とても怖くて、恐ろしい存在。
先生を遠くへやりたいと思った。イブキの目に映らないくらい、遠くへ。でも、それは難しい。先生は特権を持っていて、どんな学園にも介入できる。その気軽さで言えば、キヴォトスの王様とも言える連邦生徒会長よりも強いものかもしれない。
イブキが一言「近付かないで」と口にすれば“良い先生”は……もちろん先輩たちもその様に動いてくれるだろうけど、それは“良い子”じゃない。
どうにかできないかと頭を悩ませてたら、ある事に気がついた。
先生はイブキと話す時、わずかに目を逸らす。ほんの少し、一瞬の癖。イブキ以外にはその癖の意味なんて見抜けないだろうもので、イブキは気がついた。
先生もイブキのことが嫌いなんだ。
分かるよ、だってイブキも同じ事してる。 - 2二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:12:47
!???!?!?!??!?!?!?!!!???!?!?
- 3二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:13:09
そこまで同じなんだ、という気持ち悪さと……それなら手がある、という喜びが混じった。
その後先生とモモトークの連絡先を交換して(先生は少し困惑してた。嫌い合ってる相手だと先生も気付いてたのかな?)、イブキのこれからの予定を送り始めた。
『明日はマコト先輩と一緒に図書館に行くんだ!』
『今日は万魔殿でお絵描きして、それからイロハ先輩と巡回!』
『マコト先輩が明日商店街を見て回るって言ってるから、イブキもついて行くよ!』
何気ない連絡。他の人が見ても、微笑ましいと思う様な、そんなメッセージ。
先生はその意図に気がついて、同じ様に予定を送り返してくれた。
『図書館、良いね。私はトリニティに行く予定だよ』
『巡回かぁ、頑張ってね。私はシャーレで書類作業かな』
『明日は……少し急用が入るかも』
目論見通り、お互いに予定を送り合う関係を作る事ができた。先生は機密保持の関係で教えられないこともあるだろうけど、それでも問題ない。
これからは暗黙の了解で、互いに出会うことのないように動く。イブキは“良い子”でいられるし、先生も“良い先生”でいられる。
不幸な出会いから始まった作戦にしては大成功も良いところ。
けどやっぱり、メッセージだけでも先生の事を見ると嫌な気持ちになる。
分かってるよ。
これはイブキが勝手に嫌いな先生のイメージを反芻してるだけ。大好きなプリンをよく味わって食べるみたいに、大嫌いな先生のイメージをよく味わって食べて「嫌いだー」って意識を強めてるだけ。何も悪いことなんてしてない先生を、イブキが勝手に嫌ってるだけ。
イブキはいつの間にか、そんな悪い子だった。 - 4二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:13:42
- 5二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:14:23
ネタスレだと思って開いたらなんかめちゃ湿度の高いSS始まってるー!?
- 6二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:14:47
いつものメッセージを確認して、今日はお出掛けする事に決めた。
マコト先輩とイロハ先輩はレッドウィンターへ外交に行って今はいないし、先生は事務仕事で出掛ける予定はない。急用があれば別だけど、そこまで考えると流石に動けなくなるので、あとは運頼み。
「イブキ、しゅっぱーつ! いってきまーす!」
サツキ先輩にはお買い物だと説明して、鼻歌混じりに歩き出す。向かう先はゲヘナの外れの方、ブラックマーケットの隣の隣くらいの場所。
お買い物の範疇で済む程度の場所まで足を運んで、テキトーなベンチに座り込み途中の本屋で買った『クリーム童話集』を開く。読み耽る振りをしつつ、行き交う人々を盗み見る。
(………いた)
少し不安そうにキョロキョロと周りを見ながら、けれど足取りは確かなゲヘナの生徒。
先日、マコト先輩から教わった情報部の技術でリストアップしていた“ブラックマーケットに行く事が不慣れな子”の一人だ。
目的はマスコットのグッズだったり、最近話題のコスメだったり、そこでしか食べられない物だったり、いろいろ。
重要なのは不慣れってところで、そこにイブキの目的もある。
(ん)
少ししてから、本を閉じる。
挙動不審なあの子が気になったから。なんて言えるだけの動機を背負って、あの子の後をついて行く。
裏道荒れ道細道通って行き着く先はやっぱりブラックマーケット。計画通りに進む事に気を良くしつつ、イブキはそのままスニーキングミッションだ。
「………うわっ!?」
「おあっ、……ご、ごめんなさい!」
「い、いや…私も前見てなかった。すまん」
「いえいえ私の方が……ごめんなさい。……では」
なんてしてたら、ゲヘナ生徒がスケバンの子とぶつかってしまった。幸いそこから喧嘩を売られる事はなくって、二人とも謝罪してそれでさよなら。行き交う通行人の群れに紛れて行く。 - 7二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:15:47
- 8二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:16:07
「それ、盗んだものでしょ?
返してあげてほしいな。あの子、悲しむと思うから」
「………は?」
「おっと相手を理解していない馬鹿を一人発見。そんな事言われて素直に返す盗人がいる訳ないだろ、マヌケ」
「というかコイツ、万魔殿の……記事に載ってたゲヘナの生徒じゃなかったか?」
「万魔殿? マジかよ、コイツ攫ったら身代金出るかな?」
スケバンの子たちはみんな、思った様に反応を返してくれる。イブキの事を妙な正義感で無謀にもやって来た、ただの“良い子”だと思っている。
「けけけ。今日はついてるな」
「オイお前! 妙な動きしたら撃つぞ!」
「つーか理解らせる為に何発か撃とうぜ。反抗されても面倒だしよ」
わいわい、がやがや。
スケバンの子達は盛り上がって、イブキを攫って万魔殿に身代金を要求する話が進んでいた。バカだなぁ、そんな事しても風紀委員会に制圧されるだけなのに。
取らぬタヌキの皮算用をして気をよくしながら、スケバンの子の一人がイブキを撃つ。荒い狙いの弾丸が肩に当たって、痛みが走った。
───じゃあ、“良い子”はやめよっか。
「あぁ? ぶっ殺されてぇか?」
楽しくって、満面の笑みが浮かぶ。
スケバンの子たちが口にする情報は信用されないし、矯正局行きにするから広まることもない。
仮にバレたとしても、イブキは『正義感から盗人を追って、正当防衛で戦った』“良い子”でしかない。
だから、何をしても許される!
- 9二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:16:45
───
─────
────────
(………いた)
『横乳のひみつ』と書かれた雑誌を手に取り、レジに並ぶゲヘナ生徒を見つける。
今の今まで財布を盗られた事に気が付かなかったのだろう。慌てて鞄の中身を探していて、それを店員さんが白けた目で見ている。よくある事なんだろう、ブラックマーケットだし。
「………無くしたんだろ。もういいか?」
「い、いや、ちょっと待って! み、見つかるはずだから……」
「お姉さん、これ落としたよ!」
にこにこと笑顔を浮かべて、財布を差し出す。厚みのある財布は、確かにあの子の財布だった様で、頭を下げて感謝していた。
「あ、ありがとうございます! この恩は忘れません!」
「いいよ忘れて。じゃーねー!」
イブキはくるりと背を向けて駆け出した。こんなので素直に感謝されても困る。
打算だらけ、保身だらけ。ストレス発散がてらした善行なんだから。
「……帰ったらプリン食ーべよ」
溜息を吐きそうになる気持ちを抑えつつ、イブキは帰る。前にイロハ先輩と出掛けた時に買ったプリンを楽しみにしながら。
- 10二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:17:49
- 11二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:18:08
この後めちゃくちゃマコト先輩にプリン食べられてた。
イブキは泣いた - 12二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:19:06
打算と保身から湧き出る善行は妙味
- 13二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:19:22
- 14二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 20:19:23
性根は実はそんなに良くないけど、周りから「良い子」「良い人」に見えるように振る舞うイブキと先生か…ふむ、続けて?
- 15125/05/10(土) 20:42:58
- 16二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 01:05:48
保守
- 17二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 09:55:12
暴に躊躇いのないイブキ好き
- 18二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 10:03:50
なるほど……つまり拡散されるはずが無いと思っていたイブキの暴が、
スケバンたちの話もちゃんと聞く【良い先生】の耳に入っちゃったりするわけか
と言うかこれあのスレで追加提案してきた君が書いた奴かい?
私が考えていた物とは違っていて……スッキリとした味わいがあるね……
ありがとう……これ以上の言葉を送れない私を許してくれ…… - 19お前も書け♡25/05/11(日) 10:19:51
- 20草25/05/11(日) 10:23:26
- 21二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 11:09:36
このイブキ仮面を外すと中身ネルだから戦闘力最強格クラスなのかもしれない⋯⋯
- 22二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 12:56:13
このイブキは実年齢が11歳のようだ
年齢詐称していないようで良かった - 23二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:00:01
暗黙の了解と、不自然ではない程度のすれ違いを交わす生活にも慣れてきた今日この頃。
……万魔殿の皆から先生の話が出る時もあって、ほんの少しだけ苦しくなってきたけど。
珍しい事に、先生の方から連絡が来た。
何時もならば私から連絡して、先生がそれに合わせて返信してくると言うのに。
『ごめんね、今日少しだけシャーレに来てくれないかな?』
『少しだけ、聞きたいことが有ってね』
『誰にも聞かれないよう、今日だけ他の生徒は出入り禁止になっているから』
ぞくりと、背筋に悪寒が走った。
わなわなと震え、握ったスマホを取り落としそうになるが、流石に不味い。
口を一文字に結び、頭を振って状況を整理する。
まず、十中八九私にとって嫌な話だ。
むしろ、先生にとっても嫌な話である筈なのに、どうして連絡してきたのだろうかと頭が痛む。
きっと良い先生を演じる為に必要な話なのだろう。
拒絶する選択肢が無かったからこそ、こうして私に連絡を寄こしたのだ。
「イブキ……? 蹲ってどうしたんです?」
イロハ先輩の声。
ズキズキと痛む頭が、ここが万魔殿だった事を思い出させる。
「――えへへっ! 今日先生にシャーレにお呼ばれされたんだ! イブキと全然話せてなかったから、イブキの事いっぱい聞きたいって!」
「今日……ですか? マズイですね……今日の巡回は私が付いていないと駄目なんですが……」
「ありがとうイロハ先輩。でも大丈夫! イブキ一人でもシャーレに行けるし、私も先生とお話したかったから!」
「イブキは“良い子”ですね……行き帰りの送迎だけはしてあげますよ」 - 24二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:00:17
心にもない言葉を吐いて、イロハ先輩からの手を受け入れる。
優しく撫でつけられる手と、この後に訪れる展開に感情がシェイクされて気分が悪くなってくる。
でもここで青い顔なんて到底見せられるわけもない。
だから、私は、必死に良い子の笑顔で受け入れた。 - 25二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:00:31
シャーレ。
自分の意思で足を踏み入れる事など無いと思っていた建物の前で、私は立ち尽くす。
背後から遠ざかっていく寅丸のエンジン音を聞き流しながら、行くしか無いと覚悟を決めて先生の下へと向かった。
足音が嫌に響き、本当に人っ子一人入れていなかったのだと気づく。
先輩たちが先生のお手伝いに行くと、耳が痛くなるほど騒がしいのだと聞いていたから。
知識と現実のギャップ。
先生から吐き気がする程の配慮は、同族だと感じ取っていたからこそ嫌悪感しか湧かなかった。
まるで処刑台に登る罪人の様に歩を進めながら、けれども確かに近づいて。
あっけなく、シャーレの部室に辿り着いてしまった。
「……こんにちは! 先生!」
「……こんにちは、イブキ」
ノックもせずに無遠慮に、さりとて無邪気さも忘れないような挨拶をする。
ほんの僅かに垣間見せた嫌悪感は、次の瞬間には笑顔の鉄仮面の裏に隠されて挨拶を返す。
表面上は笑顔飛び交う微笑ましい出会いで、内心は何処までも同族嫌悪に濡れて。
そんな空気を換えるべく、先生は先に動いた。
「こんな所で話すのも何だから、ちょっと奥の部屋に行こうか」
「……ねえねえ先生。その部屋にプリンって用意されてるかな?」
「うん、まあ……イブキの好きそうな物は揃えてあるよ」
――せめて少しでも不快さを和らげる為に。
そんな続きそうな言葉を勝手に付け足しながら、先生の後を追う。 - 26二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:00:46
「着いたよ」
「……えっ?」
案内されたのは、酷く簡素な部屋だった。
小さなテーブル二つに、合わせるように椅子が二つ。
冷蔵庫が部屋の隅に置いてあって、他には何も物が置かれていない部屋。
「……先生?」
「この部屋なら誰にも話を聞かれることが無いから」
私の疑念に答えながら、先生は取り繕った笑顔を外して白けた眼差しを此方に向けて来ていた。
その既視感を感じる瞳に、嫌悪感と蕁麻疹を覚える。
毎朝鏡で見つめるその目に、幼くも私は敵疑心で返す事しか出来なかった。
「それで、本題なんだけどさ。ブラックマーケットで暴れたって聞いたんだけど……本当?」
「……どうやってそれを知ったの」
「ああ、マジなんだ……ストレス溜まるのも分からなくないけどさ、もうちょっと上手くやってくれない?」
先生は、いとも容易く私の秘密を突いてきた。
私は既に覚悟をしていたから受け止めきれたけれど、先生は信じたくないように胡乱気な目を此方に向ける。
その程度の覚悟も、確証も無いままで私を態々呼びつけたのだろうかと、僅かばかりに憤慨して
それを打ち壊す映像を、先生は見せつけてきた。
『おらおらおらおらぁっ!! 戦う相手を間違えたなぁっ!!』
「――」
「楽しそうに潰して、壊して、甚振ってるよね? 正直君がどうなろうが構わないのが本音なんだけどさ」
「“先生”として、一つ苦言を言わせて貰おうと思ってね」 - 27二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:01:02
先生がプリンを私のテーブルに置きながら、瞳でせせら笑う。
私はそれに何も返せない。
「君が今度はこのキャラクターを表に出そうという気概があるなら、こんなことはしなかったんだけどさ」
「そんなつもりは無かったんだよね?」
「ただ愛される立場に居続けたいなら、こんな危ない真似はしちゃあ駄目だよ」
こんこんと、言い聞かせるように先生は言う。
何処までも投げっぱなしで、思いやりなど欠片も無い言葉だったが、確かに忠告だった。
けれども、言われっ放しは腹が立つ。
苦し紛れの、だけど確かに痛いと思われる腹を突く。
「でも……それ確かスケバンのスマホだったよね? 先生も勝手にスマホなんか持って来てさ……いいの?」
「ああうん、確かにヴァルキューレが押収した証拠品だったけどさ……生徒の秘密を守る為ならいいんじゃない?」
表情を変えることなく答える先生に、逆に此方の表情を歪まされてしまう。
上手くやれ。
先ほど言われた言葉が頭の中に木霊する。
結果を咎めている訳ではなく、すぐさま暴力に訴えるキャラクターについて咎められているのだ。
確かに、【万魔殿で愛されるイブキ】が暴力で全て捻じ伏せるのは印象として繋がりを感じられない。
だが、【生徒に慕われる先生】が生徒の為に不正を行うのは……キャラクターとして一貫性がある。
私の為を思って、嫌いだろう私の不注意を咎めて。
その後、先生は何も言わなかった。
出されたプリンは、この前イロハ先輩と買ったプリンと偶然にも同じものだった。
最悪の気分だ。 - 28二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:01:18
イロハ先輩の巡回が終わる時間帯を狙って、迎えの連絡を入れる。
少し急いで駆け付けてくれた寅丸に乗り込んで、万魔殿へと帰っていく。
「イブキ、先生とのお話はどうでしたか?」
「……う~んとね」
どう、どうだったか。
楽しかった。そんな言葉で取り繕うのは容易だが、気に入ったなどと勘違いされても困りもので。
ぐるぐると渦巻く消化しきれない不快感を隠すように、無邪気に答えてみせる。
「内緒! 先生との秘密だから!」
「……何か一つでも教えてくれると嬉しいんですが」
「えっへへ~♪ 秘密だから、ないしょ~」
イロハ先輩に抱きついて、表情を見せないように努力する。
頑張らないと、きっとイブキは悪い子になってしまうから。
(……イブキの急な呼び出し、そして秘密……ですか)
イロハは抱きついてきたイブキを抱きしめ返しながら先生へと思いを馳せる。
(――まさか?)
ふと考えついてしまった、一つの想像。
イブキが先生と度々連絡を取っているのは万魔殿の周知の事実ではあるのだが、まさか一組のカップルとして成立しそうなのではと、そんな妄想。
イロハはそんな妄想を抱えるだけで、イブキに聞くことは出来なかった。
真偽は誰にもわからない。 - 29二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:02:29
ちょっと眠たくて展開や文章が変カモしれないが許せサスケ……次はお前が書け……
- 30二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:13:16
うお好き
- 31二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:26:07
良いね…好きだ…
めちゃくちゃ嫌な奴って感じのある先生だけど、実際「危ない遊びにハマる生徒を咎める先生」だから真っ当な人だし、絶妙にリアリティある質感だ
本質的にイブキと同類な感じが見えつつ、“良い先生”のロールを上手くやってる
あとイロハが勘違いしてるシュールさも好き
私もあのスレが発想元だけど「イブキを嫌う先生」っていう少し毒のあるキャラを上手く書けなかったから、こうやって書いてくれたのホント助かる……
ありがとう……今はただ君に感謝を…… - 32二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 15:28:28
そんなイブキの隠したい姿を万魔殿の皆にこっそり見せてあげたい
- 33次はお前だ♡25/05/11(日) 15:28:54
- 34見たいシチュがあるなら書け♡25/05/11(日) 15:37:24
- 35二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 17:35:06
『おらおらおらおらぁっ!! 戦う相手を間違えたなぁっ!!』
会議室に響き渡る、幼い声音には似つかわしくない、狂暴で、好戦的な叫び。それに伴う行動から生じる破砕音と、耳を劈く敵対者の悲鳴や許しを求める哀願。
映像に映っている当人以外の万魔殿メンバーは揃っているのに、何一つ言えずにいる。
寧ろ彼女達からすれば、音を発するよりも消し去ってしまいたいだろう。
我々万魔殿の誇る、愛し子の醜聞など。
「貴様、何だ、これは、こんな」
羽沼議長の問いに、はい、先にお伝えした通り、ブラックマーケットに屯するクソ共の手で危うく暴露されてしまいかねなかった丹花さんの機密情報です、と答えた。
ブラックマーケットでスケバン共を相手に、獰猛でありながら華麗な大立ち回りを演じていた丹花さんの姿を収めた映像。記録でだけ見た事のある、ミレニアムのコールサイン00を想起させる戦いぶり。本来の、いや、我々の前で猫を被った彼女からは想像もできない姿。
本当に運良く、万魔殿を脅せるネタが手に入った云々とほざいていた輩を見つけたが故に水際で確保できたが、後少し遅ければこれをネタに強請られたり、その末にネット上に放流されてもおかしくなかった。
議長に睨み付けられたが、私も悲しみを籠めて見つめ返し。ややあって議長の方が目を逸らし、嘘だ、と一言漏らし、俯いた。
「あ、はは、い、イブキは、演技が、巧いですね、将来はきっと、キヴォトス一の、大女優になれますねぇ」
棗戦車長が虚ろな声で呟き、光の無い瞳から涙を滂沱にさせている。
「これは……ちょっと……週間万魔殿には……載せられないなぁ……」
元宮書記も顔を青ざめさせ、その場にへたり込んでしまっている。
「しっかりしてちょうだい皆、私達よりもイブキちゃんの事よ。きっとイブキちゃんも、私達にこんな姿、知られたくない筈」
身体の痛みには頗る弱いが心の痛みには強い京極情報部長に檄を飛ばされ、やがて議長は顔を上げて、指示を下した。
「気付いていないふりをするんだ。イブキの……本性が、これであっても。イブキは……私達の、イブキなんだ」
陰鬱に黙り込む議長達と、それでも独り虚ろに笑い続ける戦車長。映像の中で、元気に哄笑を上げて暴れ続ける丹花さん。
よほどのショックだったらしく、翌日戦車長は一日寝込んだ末、この映像についての記憶をすっかり失っていたらしかった。 - 36二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 17:44:22
うおっ……これは良い曇らせ……
👍 - 37二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 18:04:03
イブキと先生が初めて会った日は分かれた後にトイレに直行して吐く二人
- 38二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 20:21:06
発想元のスレって何さ!ねぇ!
恐縮ながら教えてくださいませんでしょうか…… - 39二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 20:30:22
- 40二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 21:45:03
- 41駄文投下失礼します25/05/12(月) 02:29:11
今日の万魔殿は、微かに異様な雰囲気が流れていた。
マコト先輩はいつも通りイブキと遊んでくれるし、チアキ先輩はいつも通りイブキの写真を撮っているし、サツキ先輩はいつも通り優しく微笑んでいる。それでも、音程が僅かに歪んだピアノの音が、耳をついて離れない。
――イロハ先輩がいないから?
でも、イロハ先輩がいないだけでこうなるのかな?
ちょっと聞いてみようかな、いない人を気遣うのは"良い子"だし。
「マコト先輩、イロハ先輩は?」
いつもの調子でマコト先輩に話しかける。
「イロハは……。そう、風邪をひいたようだ。」
歯切れの悪い返答。普段の雄弁さはどこに行ったのだろうか。
「それなら、イロハ先輩のお見舞いに行ってくる~!」
3人が目を丸くしてイブキを見つめる。
ピアノが止まってしまった。
「だ、だ、ダメですよ、イブキちゃん!」
いたたまれない空気をなんとか打ち破ろうと、チアキ先輩が声を上げる。
「え、なんで行っちゃダメなの?」
咄嗟に聞き返してしまった。
チアキ先輩が、普段イブキには見せない困惑の表情を浮かべている。何かを話そうとして、声を出ずに口をパクパクしている。
――胸がズキズキする。少し吐き気が出てきたかも。
その様子を見て、サツキ先輩が口を開いた。
「イブキちゃんに風邪が移っちゃうでしょ? 明日になればイロハは元気になるから、一緒に待っていましょ?」
ここまで反対されると、わがままを言うのは"良い子"じゃない。イロハ先輩の体調が気になるけど、今は諦めないと。
「は~い。」
気の抜けた返事をし、スケッチブックとクレヨンを取り出す。
「それじゃイブキ、ここでお絵描きするね!」
ピアノが再び流れ出した。
マコト先輩はイブキの絵を褒めてくれるし、チアキ先輩はイブキの記事を書いてくれるし、チアキ先輩はイブキに優しい言葉をかけてくれる。
でもその全てがどこか大袈裟だった。「何か」から必死に目を背けるように。 - 42駄文投下失礼します25/05/12(月) 02:30:37
翌日、イロハ先輩が万魔殿に来た。
「イロハ先輩、風邪は治ったの?」
「風邪……?」
イロハ先輩が考えごとをしている。
ちらりとマコト先輩の方を見た後、
「……ええ、すっかり良くなりましたよ。ご心配をおかけしましたね。」
何かを察したようにそう返事をする。
「さて、今日は巡回の日ですよ。一緒に行きましょう。」
良かった、いつものイロハ先輩だ。
「わーい!イロハ先輩とパトロール!」
ピアノは安らぐ音色で、街を彩っていた。
――昨日のことは、ただの気のせいだよね? - 43二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 06:29:07
何かがズレてしまった、て感覚がじわじわ来て良いねェ〜
- 44二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 09:51:47
演技が巧いってどちらの意味にも捉えられるな
- 45二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 09:57:25
ここがヴァルハラか…空気は地獄だけど
- 46二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 11:57:45
イロハに暴れるイブキの姿を夢で見てうなされてほしい
- 47二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:03:13
精神年齢が11歳だと中身が悪魔的になるな
- 48二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:19:42
「トリニティ、ゲヘナよ。これまでの長きに渡る我らの憎悪、その負債を払ってもらう時だ。
我々アリウスが楽園の下に……貴様らを審判してやろう」
錠前サオリは呟く。計略に嵌めて爆破し、墜落を始めた飛空船を眺めて。
ゲヘナ学園のトップ、万魔殿/パンデモニウム・ソサエティーは全く都合の良い存在だった。アリウスが憎悪を向ける対象である事にさえ気が付かず、自らの為に利用しようと策略を巡らせる様は滑稽だとしか言い表せない。
今頃、飛空船の乗員達は皆昏倒している事だろう。
仕込んでいた大量の爆薬ではヘイローを破壊するには至らぬ、気絶させるのが限界。だが問題はない。直に現れるミメシスの群勢で擦り潰せば、それで事足りる。
(さて)
切り替え、チームⅢの下へ向かうべく足を動かす。クレーンから飛び降り、路地に紛れて……そこで、小さな影を見つけた。
「お姉さん、お姉さん。ここで、何をしてるの?」
「……………貴様」
丹花、イブキ。
あの飛空船に乗り、諸共爆破された筈の万魔殿の一人。他の者達と共に飛空船へと乗り込む姿は確かに中継に映されていたし、隠して取り付けていた機器で直前まで乗っていた事は確認していた。
その生徒が何故、今ここにいる?
「ねーえー、聞こえてるー?」
「………まあ、良い」
虚しい、相手にする価値もない。自ら手を下さずとも、ミメシスに任せれば良い。
幼い見た目に気を許した訳ではない。このアリウスに対して無防備無警戒に姿を現す間抜けを嘲笑したのだ。
「ねえってばー」
錠前サオリはコートを翻し、丹花イブキに背を向ける。チームⅢが交戦している空崎ヒナはゲヘナ最強、万が一の危険性を含む相手だ。念入りに下準備をし戦況を整えたとは言え、警戒を怠るべきではない。
先程まで眼前にいた少女の存在を意識の外に置き、サオリは駆け出そうとして。 - 49二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:20:27
「あぁ、ぶっ殺されてぇのか」
小さな、納得。
そんな声を聞いた。
「ッ!?」
咄嗟に身を屈め、撃ち放たれた弾丸を回避する。続けての乱射に上空へと跳躍する事で射線外に身を置き、跳んだ勢いのまま繰り出す飛び蹴りで下手人を蹴飛ばした。
勢いよく吹き飛んだ少女を、冷たい眼差しが追う。
(不意の殺気には驚かされたが、しかし所詮この程度)
先程下した評価は修正する、だが誤差の範疇だ。
喰らわせた蹴りの痛みが響くだろうに、健気にも立ち上がろうとする少女へ。サオリはアリウス製アサルトライフルの銃口を向ける。放たれた四発の弾丸が、少女を撃ち抜いた。
「Vanitas vanitatum, et omnia vanitas.」
万魔殿の仇討ちにでも来たのだろうが、虚しいものだ。結局彼女は何もできず、今は銃撃により宙を舞っている。風に乗る木の葉みたいに、あまりにも“軽く”。
錠前サオリは、地に落ちる少女から目を背けようとして。
違和感。
目を向ければ、少女は二本の足で確かに立っていた。満面の笑みを浮かべ、ぶかぶかの軍服を靡かせて。
確かに蹴り飛ばし、銃撃を浴びせた少女が、平然と。
「丹花イブキ………貴様、何者だ」
「答える義理がねぇよ。錠前サオリ」
この時初めて、錠前サオリは丹花イブキを“敵”として認識した。
- 50蛇目 琴音25/05/13(火) 01:43:01
- 51二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 01:46:36
- 52二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 11:15:17
中身もマコト達の事が好きだろうからな
理論的理屈的に好きなのかもしれないけど - 53二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 19:54:24
保守
- 54二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 21:22:28
みんなが思い描くような"良い子"では決してないんだけど
それでも間違いなく良い子なイブキ良いよね… - 55二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 06:27:18
このレスは削除されています
- 56二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 08:16:29
え?!最初は打算ありの「好き」だったのにいつのまにか心から「好き」と思うようになったイブキだって!?
- 57二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 17:35:52
どちらかが、舌打ちをして。
イブキとサオリは同時に地を蹴った。イブキは周囲を旋回するように絶え間なく弾丸を浴びせ、サオリは僅かな動きで銃撃を躱しつつアサルトライフルで狙いをつける。
イブキの狙いは荒い。何せ身の丈に合わない軍服の袖に覆われた掌で銃を握り、小柄な体は射撃の反動に耐えられていない。しかしあえて反動に身を任せ、独楽の様に回転しながら疾走するという曲芸が如き荒技で予測困難な高速戦闘スタイルを成立させている。サオリからしても、よくもまあ器用に戦うものだと感心させられる。
評価を再訂する。
サオリは不可解な敵に対して困惑する感情を持ちながらも、何よりも冷静だ。アリウスでは出会った事のないタイプの未知なる相手に対しても、常と変わらぬ戦闘能力を発揮する。
イブキの小柄な体を活かした高速移動と、予測困難な乱射は厄介だ。だが、対処できないものではない。
アリウスで軍隊として育てられた錠前サオリならば、移動しながらの射撃であってもアリウス製アサルトライフルから放たれる弾丸は的を正確に射抜ける。
相手が張る弾幕も経験とセンスを活かした回避で対処できる。イブキと比べればサオリの身体は40センチ程大きいが、その軽さと速さは決して劣るものではない。緩急をつけ、狙いの定まらせない細やかな動きは戦士として完成されている。
「問題なのは」
二発、弾丸がイブキに中る。
銃撃を浴びた少女は盛大に吹っ飛び、しかし何事もなかったかの様に復帰する。狭い路地を弾丸で埋め尽くす様な乱射を再開して、サオリがそれを避ける様相に逆戻りだ。
無敵。そう評すべき性能。幾らヘイローを持つ者が頑丈であるにしても、錠前サオリの攻撃を何度も受けて何ら応える様子がないのは異常としか言い様がない。
防御装甲は見受けられない。神秘の類でもないだろう。万魔殿に属し、露出の多い彼女がソレを持っているならマダムが何かしらの情報を掴む筈だ。
故に、種があるとすれば。 - 58二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 17:36:30
「ジロジロ見てんじゃねぇよ!」
イブキが吐き捨て、上から下へと縦に掃射。横に避けたサオリの進行方向には既に三発の弾丸が置かれている。跳躍で回避を選択。壁を蹴って斜線を跳び抜け、しかし更に追って放たれる弾丸は避けられない。僅かな身動ぎでダメージの低い箇所に被弾を抑えて、多少強引にでも接近する事を優先する。
イブキとサオリの間合いは縮められ。
そのまま、上体を勢いよく振り抜ける。銃を握っていない左手がイブキに迫り、肌に触れる寸前で服の襟を掴んで地面に叩きつける。黒い羽根が激しく振動しながら、イブキはまるでスーパーボールのように大きく跳ねた。
「それが、手品の種だな」
サオリは跳ねるタイミングを見計らい、イブキの右肩を踏み付けた。
銃を持ち上げられないよう念入りに踏み躙り、抜け出される事のないよう万力の如く強く地面に固定する。そうすれば、初めてイブキの顔が苦痛に歪んだ。
「ぐ、うぅ……! あぁっ!」
「スリッピングアウェー。相手のパンチが伸びる方向に合わせて体を背けて、衝撃を軽減させて受け流す。………ボクシングの技の一つだ。貴様がやっているのは、それの応用だな」
苦痛に喘ぐイブキの顔へ、銃口を向ける。
「ぎ……ぃっ! ぁ!」
「本来の技と異なるのは、その羽根。吹き飛ばされる振りをして、毎度丁寧に羽撃き飛んでいた。だから“軽い”。
飛空船の爆破から逃れたのもそれか? だとすれば驚異的な技巧だ。通常兵器では傷一つ付けられないと見える」
こうやって地面に固定し、衝撃を逃す余裕を与えなければ別だが。 - 59二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:30:06
「教えろ。その技術は誰から教わった。
他の万魔殿のメンバーや、空崎ヒナも使えるのか? それとも貴様一人の独学か?」
大して期待を込めず、サオリは問うた。
これまで全く耳に入ってこなかった以上、使える者は少ないと見て良い。だが、確実に計画の障害になり得る要素。誰が使え、誰が使えないのか。サオリはそれを知らねばならない。
「さっきも言ったろ。答える義理がねぇ」
ぺっ、と吐かれた唾がサオリの頬に付いた。
苦痛に顔を歪ませながら、イブキは口角を吊り上げ笑う。サオリはそれに反応を返さない。淡々と、無感情に引き金を下そうとして。
───鋭い痛みが奔る。
イブキが尻尾を鞭の様にしならせ、サオリの足を打ったのだ。
皮膚に痛みを与える事のみを目的とした鞭打の一撃。いくら兵士として育てられたアリウス生徒、その精鋭と言えど───否。“躾け”を施されているアリウス生徒だからこそ、鞭打ちの痛みには耐えられない。
「〜〜〜ッ!?」
僅かに緩んだ足から抜け出し、距離を取るイブキ。
「なんだ、可愛いとこもあるじゃねーか」
足を止めた少女が、軍服に手を掛け小さく呟く。
サオリは銃口を向けるが、ただ撃つだけではまた受け流されるだけだろう。銃撃が有効になり得るのは、飛膜くらいか。
息を吐き、鞭打の痛みに揺れる心を落ち着かせる。ただ、先の再演をするだけで良い。次は問答を挟まずにトドメを刺す。それで終わる話だ。 - 60二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:31:04
「勘違いしてるみてぇだな。今見せたのが本気だとでも思ったのか?」
「なに?」
怪訝そうな目でイブキを見遣る。そんなものがあるのならば、今まで出さなかった理由はなんだ、と。
視線から言いたい事を察したのか、イブキは頭を掻きながら少し目を逸らして。
「あんま汚すと言い訳すんのが面倒なんだよ。
マコト先輩はともかく、イロハ先輩はそういうとこ直ぐ見つけるし……」
まるで泥遊びをする子どもの様な言葉。
幼いイブキの見た目からすれば真っ当な筈のそれは、状況に対してあまりにもチグハグで。
「何を、言っている」
「だから、ちゃんとマジになって戦ってやるって話」
クマのぬいぐるみの様な鞄を置き、羽織っていた軍服を脱ぎ捨て、黄色の長靴から足を出す。銃を片手に握ったまま、空いている手で靴下を脱ぎ取る。
子どもが服を脱いでいる。たったそれだけの行為を前に、サオリは怖気すら感じていた。
「先に言っとくが」
素手と素足を晒して、それこそまるでこれから泥遊びをするかの様な格好。
小さな指をトリガーに差し込み、残りの指でグリップを握り直す。柔らかそうな白い素足を舗装された地面の上に乗せて、イブキはサオリを睨み据えた。
体勢を大きく落とす。
低く、低く、低く。構えた姿はクラウチングスタートのそれ。
「こうなったイブキは100倍強ぇ」 - 61二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:32:30
いかにも接近が狙いだと言わんばかりの姿勢。
だがこれまでの戦闘からして、イブキを近付けさせないだけなら乱射するだけで良い。銃撃を防御する為に“衝撃を受け流す”という技の特性上、弾幕を張られればイブキは近付けない。
幾ら速く走れようとも、それは変わらない。
(だというのに…!)
錠前サオリは、あの姿が恐ろしい。
「─────ッ!」
イブキが一歩、踏み出して。
その瞬間にサオリのアサルトライフルから夥しい数の弾丸が掃射された。
例え錠前サオリ自身であっても突破は困難な弾幕の壁。もし己が対処するなら跳躍し大きく回避する手を取るが、走り出し始めた今この瞬間のイブキにその選択は不可能だ。
跳躍するための姿勢も、回避するための加速も、今のイブキは持ち得ない。イブキが有する衝撃の受け流しは自ら行動する場合には機能しない。あれは流水の如く勢いに身を任せて威力を無視する技であって、衝撃に対して真っ向から抗い突破する事はできない。
できるのは、僅かな身動ぎだけ。
(─────まさか、“それ”だけで?)
イブキが僅かに姿勢を傾ける。
向けられた銃口から弾丸の軌道を予測し、弾と弾の小さな隙間に体を滑り込ませる。錠前サオリではなく、丹花イブキだから出来る挙動で疾駆する。
だがそれでも全弾回避は不能だ。経験から推測して、三発は被弾する。
一発、太腿に突き刺さる。耐えられる。許容範囲内だ。
一発、左の上腕を掠める。文字通りの擦り傷。無視できる。
一発、頭部に突き刺さる。……ヒナ先輩が羨ましくなる。あの人は狙撃されてもノーダメだから。
“頭部のツノに弾かれなければ”、イブキとて唯では済まなかっただろう。 - 62二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:35:22
「戦う相手を間違えたなぁっ!!」
譏笑。遂に少女は己の間合いにサオリの姿を捉えた。目と鼻の先に相手がいるこの距離では、サオリの持つアサルトライフルが意味を持たない。
超速の疾走。その勢いのままに銃口が向けられる。加速を乗せて振るわれるソレは槍の穂先が如くサオリの胴を穿ち、めり込ませた。
最早身体の内側からと言えるほどの距離で速射する。フルオートで放たれる弾丸の雨霰がサオリへと浴びせられる。雑多な不良であれば一発で昏倒する威力の弾丸を、何発も、何発も、何発も。
一つの戦いを終わらせる絶死の乱射に、サオリは意識を手放し、
「──────ッッッ!!?!??!!!?」
続けて振るわれる鞭打の嵐に叩き起こされる。
先も放たれた尻尾の一撃と同じ技。だがその威力は桁が違う。たった一度のみであった先程と異なり、此度は数十数百と放たれるのだから。
「おらおらおらおらぁっ!! さっきまでの威勢はどうしたぁっ!!」
次いで拳が振るわれた。
弾切れになった銃は投げ捨てられ、腹に打ち据えられる一撃に胃液が逆流する。倒れ伏しそうになるサオリを打ち上げ、丁寧に振るわれる拳の連撃が崩れ落ちる事を許さない。
その合間にも尻尾は振るわれ、痛みに慣れる事さえもない。鞭打のトラウマだけではない、イブキはハートの形をした尾の先端を横向きにして切り付ける事で小さな切り傷を与えている。
皮膚の表面を叩く鞭打。鋭く奔る切り傷。重く打ち据える拳撃。異なる痛みが絶え間なく押し寄せてくる。
苦痛。辛苦。激痛。
サオリの脳裏に過ぎるのはアリウスでの日々。支配者である大人──ベアトリーチェによる刑罰。希望を、幸福を望む事を許されぬ地獄。
苦痛に喘ぐ声など、涙など、出る筈がない。そんなものはとっくの昔に枯れ果てている。 - 63二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:36:13
「ぅ゙───あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!」
腕を振るう。
サオリはまるで駄々を捏ねる子どもみたいに、がむしゃらに腕を振るう。
その姿に、先程までの威勢など何も残っていなかった。
「ハ」
笑みが溢れる。
“活きが良い”。それはイブキにとって喜ばしい事だ。その方が嬲り甲斐がある。
跳躍。サオリの真上に陣取り、繰り出すのは素足による連続ストンピング。羽根を使い落ちる事なく蹴り続ける空中殺法。
サオリも無我夢中に腕を振り上げるが、届かない。当たらない。
自分の真上の相手への攻撃手段というのは驚くほど少ない。精々が拳を突き出し、振るう程度。そして、技のない今のサオリの攻撃など当たる訳がない。
結果として、サオリはひたすらに顔面を蹴られ続けられるしかなかった。
イブキが悪辣に嗤い、右足を大きく振り被る。
振るわれた足がサオリの顔面に叩き込まれ───加えて、親指を目の中に突っ込んで───蹴り飛ばされた。 - 64二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:38:12
「………ふぅ〜〜〜〜〜」
吹き飛んでいったサオリを見て、イブキは息を吐く。
今回の戦闘はイブキにとって待ち侘びたものだった。マコト先輩にアリウスの存在を聞いてから(マコト先輩自身はイブキに知られたくない様子だったが)ずっと、遠慮なく嬲れる相手だと確信していたのだ。
万魔殿は飛空船に乗るのだと聞いた時は、こっそり抜け出せる機会も無さそうで少し諦めかけていたが………錠前サオリ自らの手でその制約を取り払ってくれた。尤も、その為に親しい先輩方が巻き込まれたのは不愉快ではある。ではあるがしかし、マコト先輩に関しては自業自得なので心情的には微妙なところだ。
「よし」
ともあれ、今は思いの外勢いよくぶっ飛んだサオリの対処をせねばならない。
あれだけ痛め付けたのだから、あとは拘束するだけで良いだろう。風紀委員会か正義実現委員会辺りが回収してくれることを期待しつつ、あまり長居も出来ないので放置するが。
その後脱ぎ捨てた服を回収して、他の皆と合流する。この戦場だ。多少の傷や汚れは不自然に思われまい。太腿の銃弾についてはちょっと……心配をかけるだろうけど。
そんな風に思考を巡らせつつも足を運び、イブキは蹴飛ばしたサオリを見つける。
その光景に、顔を歪ませて。
「………あいつ……っ!」
─────
───
─ - 65二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:39:17
「ぃっ、ぐ……あ」
路地から街道に蹴飛ばされたサオリは、その場に蹲っていた。
痛い、痛い、痛い。泣き出してしまいたくなる程に、体に刻み込まれた痛みは熾烈なものだ。イブキの苛烈で凶悪な攻撃は、どうしようもなくサオリに“躾け”を思い起こさせる。
「は……ぁ゛ー、……ぅう」
だが、それでも、サオリはその場で蹲る事はしなかった。
震える手で地面を叩き、何とか立ちあがろうともがく。
丹花イブキから逃げたい、だけではない。錠前サオリには、他のアリウス生徒よりも先に倒れてはならない義務がある。唯一の家族を想う信念がある。
ボロボロの体では不可能。だとしても、諦めてはならないものが、サオリにはある。
全ては虚しいものなのだと教え込まれ、しかしそれでも手放さなかった、ちっぽけなものが。
その想いが、功を成したのか。
「だ、大丈夫ですかっ!?」
サオリの下に、1人の見知らぬ生徒が駆け込んで来た。
彼女は錠前サオリがアリウスの生徒である事を知らないのか、ただ純粋に怪我したサオリを心配している様子。
制服を見れば、何の因果か万魔殿の汎用的なもの。……徐々に冷えてきた頭で推測する。恐らく彼女は、飛空船に乗っていなかった万魔殿メンバーの1人。飛空船が爆破された様子を見て、居ても立っても居られず1人駆け出し、錠前サオリを見つけた……そんな所だろうか。
「ちか、っづくな」
「えっ……!?」
息を切らし、痛む体に鞭打ってサオリは立ち上がる。
何にせよ、アリウスにとってゲヘナは憎悪すべき相手に変わらないのだ。その手を取るという選択肢はあり得ない。
揺れる眼差しで睨み付け、ゆっくりと歩き出す。少しでも速く、この場から離れようと。 - 66二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:40:34
「そっ、そんな体で動いたら危ないですよ! 救急医学部の方を呼びますから……」
(……………?)
疑問。何故、未だに追撃がないのか。
そう思い振り返って、目に映るイブキの姿。その顔に込められた感情に、サオリの目が揺らぐ。
視線に気付き、直ぐに物陰の奥へと隠れてしまったから一瞬しか見ていない。だが、あの顔を錠前サオリが見間違える訳がない。
あれはアリウスで何度も見ているもの。『何かに怯えながらも、仲間を心配する表情』だった。
(一体なぜ、そんな顔をする必要がある…?)
意味が理解できず、サオリは硬直する。
イブキが心配している相手は、今サオリの下に駆け寄ってきた彼女だろう。同じ万魔殿の仲間が敵の近くにいるのだ。それは理解できる。
だが、怯える理由がない。
今のサオリはイブキ自身の手によって瀕死の状態だ。多少の休憩を挟めばともかく、今現時点では銃弾一発喰らうだけでも倒れかねない。
先の暴れようからは考え難いが、力を使い果たしてもう戦えないのだとしても。サオリに向けてただ弾を一発放つか、近くにいる彼女に一言「あいつは敵だ」と声をかけるだけでいい。
─────あんま汚すと言い訳すんのが面倒なんだよ。
(まさか、“それ”だけで?)
大人に怯える訳でなく、己よりもずっと大きな力を恐れる訳でなく。
ただ、自分の秘密がバレる事に怯えている。 - 67二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:42:05
「ッ!! ……ぎ、ぃ……っ!」
「わ、……わっ!」
痛みが響き、倒れかけたサオリを咄嗟に万魔殿の生徒が支えた。
吐き気がする。地獄の日々を知らぬ者が、そんな私情で同じ顔をしているなど。
だが、そんな心情とは裏腹に、サオリは隠れて見ているだろうイブキへ言葉を紡ぐ。
「手を引け。互いに、これ以上深入りして傷を負いたくはないだろう」
「え……?」
万魔殿の生徒が首を傾げた。錯乱しているのか、と少し見当違いな心配をする。こんな事なら医学について学んどけば良かった、なんて泣き言も漏らしていた。
「…………私は、一人で行ける。貴様は、他へ行け」
「そんな体で何言って………きゃっ!?」
己の体を支える彼女を突き飛ばし、サオリは駆け出した。
全身に奔る激痛を怒りをもって無視し、持ち前の走力で追ってくる万魔殿の生徒を振り払う。
丹花イブキは考慮しなくて良い。
奴はこの戦闘でこれ以上深入りできない。身内に秘密を知られる危険があるから、もうサオリに仕掛けてくる事はない。
奴はこの戦争にこれから関わることもない。あれはゲヘナの駒になり得ない。己とその周囲が関わる範囲でのみ動くアウトサイダーだから、誰かの指揮に入る事はない。
怒りに身を震わせながら、しかしサオリは冷静に他のアリウス生徒の下へと向かう。
丹花イブキが戦局を変える事はない。錠前サオリが行動を変える事はない。応急処置をして、それから再び戦線に復帰する。チームⅢに合流し、空崎ヒナを仕留める。予定は狂わない。
だから、
「次は、私が勝つ…!」
“次”は、全ての戦いが終わってからだ。 - 68二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 00:43:16
イブキちゃんつっよ...本性バレたくないのかわいいね...
- 69二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 06:34:56
この後サオリは本編通りアズサをボコした
タフって言葉はサオリの為にある - 70二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 13:33:51
緻密な戦闘描写が美しい…
- 71二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 18:44:47
悪辣な本性を必死に隠して“良い子”であろうとするイブキはかわいいね…
- 72二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 20:14:14
粗暴な一面もあるけれど間違いなく万魔殿のみんなは好きだし、失望されたくないし、心配かけたくないの存外に可愛い子だなこのイブキ?
- 73それは私も見たい♡25/05/15(木) 21:23:49
- 74二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 05:16:24
なおも取り繕うのかイブキ…
- 75二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 12:50:34
――――――――――――
――――――――
イロハは薄暗い路地裏に独りで立っていた。
前方にはスケバンが数十人。そのうち一人はイロハの財布をあさり、別の一人は戦車の鍵を投げては掴みを繰り返している。
いつの間に盗られたかは定かではないが、取り返さなければ万魔殿に帰れないことは確かだ。
「私の財布と鍵を返してください。面倒なことになる前に。」
スケバンにそう呼びかけるも、返ってくるのは嘲笑ばかりだ。
「返せと言われて素直に返すわけがないだろ。」「天下の戦車長様も、戦車を動かせなきゃただの一般人だな。」
すぐに取り返したかったが、多勢に無勢で、頼みの戦車も動かせない。
次の行動に悩んでいると、後ろから愛くるしい声が聞こえた。
「イロハ先輩、助けに来たよ~!悪い子は……」
天真爛漫な笑顔はやがて、般若の形相を帯びていく。
「……"ゴミ"は掃除しねぇとなぁ!!」
イブキはアサルトライフルでスケバン数人を狙撃した後、銃を持ったまま間合いを詰める。
スケバンは慌ててイブキを銃撃するものの、イブキはいとも容易く銃弾を回避する。
小さな体格を活かした軽快な身のこなしで、着実に距離を詰めていく。
そしてスケバンの目の前まで迫ると、普段の姿からは想像もつかぬ重い拳の雨をお見舞いする。
有利な状況をひっくり返されたスケバン達は、統率を失い混乱に陥った。
「戦う相手を間違えたなぁ!!」
反撃するものには鉄拳を。逃げ出すものには射撃を。
蹂躙としか形容しがたい光景にイロハは言葉が出ず、ただ眺めるしかなかった。
数分が経ち、血で汚れた財布と鍵を手に持ったイブキがイロハに駆け寄る。
「イロハ先輩のもの、取り戻してきたよ!ほめてほめて~!」
先程までの荒々しい口調が嘘のようだ。
意識はそこで途切れた。
――――――――
―――――――――――― - 76二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 12:51:45
はっと目が覚める。
周囲を見渡せば、夜の闇に沈む自室だと分かった。
――なんだ、ただの夢なのですね。
安堵のため息をついた後、イロハを襲ったのは焦燥だった。
――ここ数日、同じような夢ばかり見ている。
街道で、広場で、山道で。
不良に、アリウスに、妖怪に。
イロハは必ず苦境に陥り、イブキが駆けつける。
そして、イブキが暴れ回る姿を特等席で見せつけられるのだ。
これが彼女の本質だと言わんばかりに。
私には信じられなかった。いや、信じたくなかった。
イブキの愛くるしさは私達に取り入るための、ただの演技だなんて。
イブキの純心は破壊衝動を隠すための、ただの虚言だなんて。
「……はあ、校舎のパトロールにでも行きますか。」
そうつぶやきながら、制服に着替えてパトロールの準備をする。
当番でもないのに、深夜にパトロールする意味はない。
それどころか、日中の業務に支障が出る。
それでも私は夢から逃げ出したかった。
日常の崩壊を目に焼き付けされる、おぞましい悪夢から逃れたかった。
空は黒い雲に覆われて、星は1つも見えなかった。 - 77二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 13:22:09
美しい……これ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう
先輩を好いてるのは嘘ではない筈なのに、“良い子”としての演技自体はしてるのが否定を難しくしていて……相手を必要以上に痛ぶる暴力性や悪辣さがインパクトとして強すぎるから他の目を曇らせてしまう……好きだ…… - 78二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 14:35:37
先輩達を困らせない為に"良い子"を頑張って演じてるのにその"良い子"なせいで先輩が怖がってしまうのあまりに皮肉で美しいよね…
本当に素顔を知られたと気づいた時には「お前らに取り入るのも飽きた」とかそれらしい理由の書き置き残して1人ゲヘナやキヴォトスを去りそうだよね… - 79二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 23:30:07
戦車じゃなくて救急車に乗る羽目になりかねんぞ…
- 80二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 08:54:58
保守
- 81二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 18:33:39
このレスは削除されています
- 82二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 20:43:26
好きなのは本当なのに…
悲しいなあ - 83蛇目 琴音25/05/17(土) 22:17:31
- 84二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 02:26:47
- 85二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 09:08:43
ほし
- 86二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 17:42:56
保守
- 87二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 00:51:47
- 88二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 00:55:17
語気が強いのにちゃんとバレるのには怯えててかわいい
- 89二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 08:12:24
このイブキちゃんが正直に話せる日はくるのか・・・
- 90二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 09:45:18
なんだろうこのイブキとネルを会わせたいと思うのは自分だけだろうか?
例えばミレニアムexpoにゲヘナが招待されて…
イブキがヘルメット団をつけていったらネルにあっちゃった…でもネルに惹かれていく…みたいなのを
妄想した
だーれかかーいてクレメンス - 91二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 15:45:35
>>78本当は寂しいし悲しいし辛くてたまらないのにね
- 92二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 19:32:02
不忍イベの時は内心ノリノリだったんだろうか…?
ところで、そこに演技や隠し事への嗅覚が鋭い部長がいますね? - 93二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 19:50:17
そもそものスレ画がネルのセリフをイブキが言ってるみたいにしたものなのでさもありなん
- 94二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 02:19:15
イブキは本性を知られた事をいつ気がつくのか
- 95二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 02:22:05
この概念めっちゃいいな
- 96二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 08:34:42
>>94気が付かれて取り乱すもヨシ、静かに語り始めるもヨシ、どう転んでもとても美味しい
- 97二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 17:22:35
保守
- 98二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 21:41:04
しっかり病まれておられる
- 99二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 00:30:59
いい子なのは変わらないって気付いたイロハがイブキちゃんを抱きしめる幻覚が見えた
- 100二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:23:38
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- 101二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:24:06
でも命の危機に瀕したイロハを守るために彼女の目の前でも気にせず暴力を振るって敵を追い払うとか良いよね…
- 102二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 22:21:57
気付かれたらイブキは何処に消えるのか
- 103二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 07:46:27
保守
- 104二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 08:19:46
- 105二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 10:45:44
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- 106二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 10:49:44
- 107二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 20:05:52
ボロボロのイロハの姿を見てすぐに駆け寄って心配するんだけど
イロハを横に寝かせて楽な姿勢にしてあげたらそのまま踵を返して銃を手にまっすぐ敵の方に向かっていって
イロハは止めようとするけど体が動かせなくてイブキの背中に手を伸ばす事しか出来ないんだよね… - 108二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 02:59:48
色々解決した後イブキ経由で先生もそういう部分ある事察する事になるかもね、先生に会う回数が少なすぎるとかで。
- 109二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 05:52:23
再会したときにイロハがイブキをビンタして「もっと自分を大切にしなさい!」って怒るんだよね
- 110二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 06:03:00
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- 111二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 11:57:38
とてもいい…。
- 112二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 19:26:03
あぁ〜↑イロハの情緒が壊れる音〜↑。
- 113二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 22:52:19
- 114二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 07:40:49
>>113覚悟ガンギマリイブキ?!
- 115二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 07:53:28
もうssはない感じかな?
- 116二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 13:29:33
某最悪のトゲ〇ーみたいなとてもいい笑顔で戦うんだろうか、このイブキ…
- 117二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 17:14:25
- 118二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 17:21:14
- 119二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 17:53:52
- 120二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 22:52:06
イロハにとって考えたくも無い恐怖の光景なのは間違いないんだろうけど「どうして夢の中でイブキはイロハの危機に必ず現れるのか」「どうしてイブキはイロハを助けてくれるのか」とか細かく突き詰めていくともの凄い味が出てきそう
- 121二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 22:53:37
それは厳しいだろ
- 122二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 23:59:02
またスレ立てるみたいに言ってなかったっけ?
- 123二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 09:09:39
本編のナグサとはまた違った良さがあるよね
- 124二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 18:59:27
- 125二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 19:57:47
やあ、私スレ主
それは“有り”だ。このスレは無限の可能性を許容するよ
さておきミカを病院送りとかヤベェわねこのイブキ
私としてはツルギの電車轢き逃げノーダメみたいな最強格が有する異常な耐久性を特殊な技巧で再現してる(が、サオリがやった様に対処法もある)ので、強さの枠としては「明確にトップクラスだが、最強格よりは下」くらいなイメージでしたのよね
二次創作オリキャラ特有の原作最強には一歩下回る事で良い感じにバランス取ってる感を出す調整ですわ
ただサオリvsミカvsイブキの乱戦とかミメシス戦での乱入とか他の要因がある場合には勝てる可能性も十分ありますので、やはりそのシチュは“有り”ですの
純粋な実力勝負としても、十回やって二回しか勝てないくらいの実力差がある上で「この戦闘ではその二回を勝ち取った」でも良いですものね
ふふふ……改めてこのイブキ概念をここまで盛り上げて下さった皆様方に感謝ですわ〜!!
- 126二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 02:28:17
保守
- 127二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 11:39:32
保守
- 128二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 11:46:23
保守ばっかしてどうすんだ?
語ることなければ落としていいだろ - 129二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 20:38:17
保守
- 130二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 20:51:48
このレスは削除されています
- 131二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 06:50:25
- 132気にしなくていいよ♡25/05/27(火) 07:01:40
- 133二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 15:42:03
かけ離れていても別にいいと思います
- 134忘れててごめんなさい25/05/28(水) 00:41:32
エデン条約4章if展開冒頭部分(独自解釈ギガ盛り且つご都合主義注意)
アリウスによるエデン条約調印式中の襲撃から先生が現地の生徒達による懸命な逃避行によって死地を脱した頃、本来なら他の万魔殿議員共々病室のベットに居る筈のイブキは、既に抜け出して自宅にいたのだった。
サオリとの交戦で彼女が負った怪我は既に完治した。彼女にとって高所から落ちた程度では怪我のうちにも入らず、仮に首を手折られたとしても何事もなく元に戻せてしまうからである。もっともイブキ自身からすればその身体的特性が役に立つことはほとんどなく、周りから過剰に怖がられたり、捕縛されて甚振られたり、持ち前の残虐性に『刺激』が入ったり、そもそも自分がこのキヴォトスに永きに渡って『閉じ込められている』自覚がある以上忌み嫌っていた節すらあるのだが。
ともあれイブキは悔やんでいた。たった一人のアリウスに遅れを取ったことを。彼女とて油断したわけではないが此れまで相手してきた不良と大差ないと侮ってしまったのも大きい。
マコト議長を始めとした先輩達共々飛空船ごと爆破された報復の建前もあるにはあるが、それ以上に生来からあらゆる全てが容易い程の天賦の才と身に余る残虐性に少なからず振り回されたイブキにとっていつの日か心置きなく全力で暴力的に振るう事が出来る相手を常に求めるようになっていた。彼女にとって最早ヘルメット団やチンピラ程度では満足できず何処かの学校一つを自分自身の手で踏み躙る邪な欲求が強まっていたことに僻事していたのだった。
だからこそエデン条約調印式を襲撃したアリウスの存在は、正に格好の相手であるはずだったのである。
イブキからすれば本来ならば今頃古聖堂はアリウスの血で朱く染まる筈だったのであり、たった一人に遅れを取ったその事実は重く深く深海の水底に沈むようにのしかかってしまったのだった。
いずれにしても、イブキにとっては数少ないあまりにも屈辱的な失敗となってしまった。 - 135二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 00:44:31
しかしながら失敗してしまったからといってそのまま病室のベットで大人しくする選択肢などイブキには無い。何せ古聖堂を襲撃した相手は間違いなくそこらの不良生徒とは比較にならないほどの強大なテロ組織であり、いくら不意を突かれたとはいえ、あの風紀委員会の委員長ヒナでさえも敗走したという俄に信じ難い情報が入る程の恐るべき相手なのである。
今はまだ現地の治安維持担当の委員会が辛うじて対応できているが、ここから引き下がる事態に発展すれば先の交戦で脅威と見なされた自分自身も危うい事になるのも明らかだったのである。
更に言えば確認が取れているユスティナ聖徒会の亡霊以外にもアリウスが更なる隠し玉を所有している可能性も十二分にあり、その様な意味においても半ば機能不全気味の万魔殿にヒナを除けば烏合の衆同然のゲヘナは勿論トリニティに事態の収拾を任せることなど、イブキには出来なかった。
無論、それらはあくまでアリウスに交戦する為の建前に過ぎないのだが。
とは言え、交戦したメンバー1人相手にすら遅れを取った上に襲撃したアリウスの拠点すら分かっていない現状、イブキからすれば万魔殿から支給された豆鉄砲どころか議員に就任するまで良く使っていた愛銃であっても無策に手出しすることは流石のイブキと言えど無謀なのは明らかであり、最悪捕縛された挙句人質にされて隠し事が露見してしまえば漸く得た居場所を失うのは必然であった。
故にイブキは手持ちの装備を『とっておき』の物に変えるべく一度帰宅したのだった。 - 136二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 00:48:22
イブキはアリウスを確実に殲滅するべく自宅に眠らせていた『とっておき』の武器と戦闘用の礼装を久方ぶりに持ち出すことにしたのである。それらは二年前に注文を受けた饒舌な天才技術者の主導で製作された当時の技術の粋がふんだんに使われた代物だった。
その武器は方や白一色に方や黒一色に染まった二丁拳銃であり、それぞれに筆記体の一文が刻まれていた。因みにイブキはその気になればサブマシンガンをふらつくことも無く取り扱えるが、流石に周囲に怖がられると困るのと牽制目的もあるため、敢えてその様に振る舞っていた。なのでイブキは二挺拳銃で銃撃戦をすることぐらい造作も無いのだ。
礼装は黒一色の首から両手足を隈無く覆ういわゆるパワードスーツに暗い赤をベースにしたフード付きのロングコート(オーダーメイドなのでサイズが合っている)を羽織り暗い赤をベースにした中折れ帽と赤いラメが入った目元隠しのゴーグルを身に着けた。これらは身体機能の向上や手榴弾等の小物類の携帯は勿論防弾や爆破、そして神秘攻撃や干渉にも対応した優れものである。また、その威圧的な風貌からイブキであると判断することは、よほど親しい仲の人物でもない限り判別はされないだろう。
本来ならばこれらはとっくの昔に処分されるべき負の遺産群の一つであり、もし露見すれば確実に風紀委員長のヒナが血眼になって追いかけ回される事は必至であったのだが、それでも彼女は今日まで巧妙に隠し持っていたのだった。
ちなみに愛銃は議員に就任するまで常用していたそれなりに性能の良い銃でしかなく、対アリウスの戦いにはついて来れそうにない為、結局置いていくことになった。 - 137二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 00:59:38
イブキが武器の動作チェックや携帯する小道具の吟味を行っているとき、ふと過去に言われたことを思い出していた。
その言葉はかつて『懇意』にされていた“生徒会長”の遺したある種の忘れ形見であった。曰く───いずれ来る『もしも』の時に備えなければならない。今のままでは天から恐ろしい“モノ”が降りてきてゲヘナは滅びる。そしてゲヘナの滅びはキヴォトスそのものの破滅の幕開けとなりかねない。だがその事を愚かで愚蒙なるゲヘナは知ろうとも見向きもしない。その事を今一度知らしめなければならない───そう云われたような気がする。
というのもそのように言い遺した“生徒会長”の強引な試みによる数々の問題行動が原因で結局その時を待たずに『失敗』に終わったからである。自業自得だったとはいえ、その時に至るまでの一連の出来事は半ば蚊帳の外だった彼女としてもあまり気分が良いものではなく、故に思い返したことは殆どない。
だがイブキは“生徒会長”が遺したこの言いつけを何故かぼんやりと覚えていたのだった。それはきっと、“生徒会長”の凋落に何か思うことがあったのかも知れないし、あるいは見失いかけていた自分の意味を思い出す契機だったからかも知れない。
いずれにしてもイブキはそれらを大切に隠し持っていた事実に変わりはない。何れくるかどうかも分からない『もしも』の為に。もっともアリウスの襲撃は『もしも』の始まりなのかどうかは、イブキでさえも分からない。
ともあれ、準備は整った。あとは実行するだけである。かつて無いほどの得体のしれない強大な敵に不安はあるが、同時に高揚感もあった。
イブキは、自宅を後にすると、さながら矢のように飛び出していったのだった。
かくして、イブキによるアリウス狩りが開幕を告げるのだった───
─────────
申し訳ありませんが冒頭で力尽きました。せめて戦闘シーンまで描きたかった…。
続くかどうかは気分です。期待しないでください。 - 138二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 01:00:17
ありがとう…ありがとう…
- 139二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 07:47:17
良いね…良いね…
イブキがどんどん変わっていく……面影すら感じられない程に……素晴らしい……
この解釈もまた好きだ…