トレーナーさん、ちょりーす

  • 1◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:32:38

    【深窓の令嬢は煌めきに焦がれる】

     日中温かい日も続き、心地良い陽気に眠気も誘われる昼下がり。
     授業が終わったのか、ガヤガヤと校舎から移動するトレセン学園の生徒たちはちょっとした時報代わりだ。
     そのままトレーニングへと向かう子や、あるいは街へと出掛ける子。それぞれの放課後を過ごすのだろうが、俺の担当ウマ娘は今日は後者だ。
     トレーニングに勤しむのもいいが本分は学生。今しか出来ない交友だって疎かにしてはいけないだろう。
     いいリフレッシュが出来ているといいな、と思いつつ。襲い来る睡魔と戦いながら、指を動かす。
     ……そうして1時間ほど経った頃だろうか。トレーナー室に控えめなノックの音が響く。

    「どうぞー?」
    「トレーナーさん、ちょりーす」

     入って来たのは担当ウマ娘であるメジロアルダン……なのだが。その出で立ちが普段とはかなり違う。
     いつもは下ろしている綺麗な空色の髪は後ろで一つに結ばれ、ゆったりとしたサイズのカーディガンから覗く細指にはネイルが施されており。
     スカートはミニ丈、日頃のトレーニングで鍛えられた靭やかな脚がよく映える。
     足元はルーズソックスで覆われ、いつもの楚々とした印象とは違った、崩した柔らかさが見受けられる。
     アルダンがする服装としてはかなり意外だが、これはこれで可愛らしい。
     ……が、それはそれとして制服からしてトレセン学園のものじゃないな。どこで調達してきたんだ。

    「すみません……いくら親しいトレーナーさん相手とはいえ、目上の方に対する態度としては馴れ馴れし過ぎでしたよね……?」

     反応がなかったため訝し気にされていると捉えられたのだろうか。服装に合わせた言葉遣いをした事を謝られた。

  • 2◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:32:50

    「いや、ごめん。そっちに驚いていたんじゃないよ。そういう服を着ているのが意外だと思ってね」
    「チヨノオーさんたちと若者ファッションを一緒にしましょう、という話になりまして」
    「まあ君たち若者だしね」
    「トレーナーさんも歳は私とあまり変わりませんし、十分若者だと思いますよ?」
    「いやまあそうだけど」

     実際世間的には俺もまだまだ若者と言われる年齢だろう。
     しかし学生の子たちを相手にしているとやはり自分は大人で、彼女らは未成年という線引きはどうしても出来てしまう。
     なので自分が若者というカテゴリーから外れる感覚も致し方ないだろう。

    「まあいいんだよ。年下の子が多いと年が上っていう自覚が強くなっちゃうだけだから。それで?」
    「はい。それでそういった流行に詳しいクラスの方たちに聞き込みをしまして、このような格好に」

     経緯はなんとなく理解した。年頃の女の子なら友達同士でよくあるような話だ。なんとなくファッションをお揃いにしたり。
     しかし若者ファッションというジャンルは間違ってはいないと思うが、俺の認識では微妙に古い。
     ……いや、お洒落は一周するなど聞いたりするし、実際には今現在流行っていたりするのだろうか。

    「マルゼンさん曰く、ナウでイケイケなヤングの間で流行ってるファッションだとか」
    「ああ〜……道理で……」

     今をときめく乙女というよりも妙に懐かしさを覚えるようなファッションなのはそのせいか。
     いやまあ、懐かしさと言ってもアルダンが今着ているようなファッションが流行った時代にはまだ俺は産まれていないし。
     テレビで見るようなこういうものが流行っていた~、といった趣旨の番組の受け売りだが。

  • 3◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:33:05

    「……流行ってはいないのですか?」
    「多分その服が流行ってたのは君達が産まれてきた頃より少し昔ぐらいだと思う……もしかしたらまた流行が来てるのかもしれないけど」
    「そうなのですか……」
    「でも別にいいんじゃない? 似合ってて可愛いよ」

     アルダンとしては今どきの格好がしたかったのかもしれない。
     しかし流行り廃りはともかく、よく似合っているのは事実だ。あまり気落ちして欲しくはない。

    「本当ですか?」
    「うん。正直普段のアルダンを見てるとイメージが全然湧かないけど、意外性があって。少し砕けた可愛いらしい印象もいいと思うよ」
    「まあ……ふふ、ありがとうございます。バイブスぶち上げ、ですね」

     それにアルダン一人ならともかく、恐らく友達も似たような格好をしているだろうし。
     周りから見ても友達同士で合わせているくらいの認識になるだろう。街中で浮くといった事もなさそうだ。
     ……いや待て? 友達と一緒にしているのならあまり引き留めるのは良くないのでは?

    「そういえば友達は大丈夫? 見せに来てくれたのは嬉しいけど、待たせてるんじゃ……」
    「えー……こほん」

     頭に1つの懸念が過り、友達を待たせているのなら気を使わなくてもいいと。そう促そうと思ったものの。

    「へい、トレぴ。今からタピらない?」

     アルダンの口から飛び出してきたのは……如何にも若者が使いそうな誘い文句だった。
     先程からちょこちょこと若者言葉を使っているが服装に合わせてだろうか。
     しかしながら単語の印象に対して声音が上品過ぎる。

  • 4◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:33:23

    「ど、どうでしょう?」

     あ、そこは普通に戻るんだ。
     ……まあ正直なところ、仕事の進捗は悪い。単純にお昼ごろから襲い来る睡魔のせいなのだが、暢気に出掛けてしまうと明日の自分の首を絞めることになるだろう。
     しかし、だ。きっと今日はこの後も睡魔に負けて、仕事はろくに進まないに違いない。
     いっそのこと明日の自分に全て任せてしまった方がいいのではないだろうか。
     例え少しばかり悲鳴を上げることになったとしても。
     それに担当ウマ娘と親睦を深める事だって立派な仕事だろう。

    「そうだね。俺の仕事もキリがいいし、いいよ。行こうか」

     無理やり自分に言い聞かせ、さらりと進捗を偽った。

    「本当ですか?」
    「嘘じゃないよ」

     タピるという点に関しては。

    「ふふっ、では早速参りましょう。以前ヘリオスさんと行ったことがあるお店がありますので」

     いつもなら仕事の進捗があまり良くない事を悟られそうなものだが、今日は出掛けたい気持ちが強いのだろう。
     逸る気持ちを抑えるのにいっぱいなようだ。

    「ちょっと待ってね〜……」

     ゆらゆらと揺れるふたつの尻尾を横目に、手短に準備を済ませるのだった。

  • 5◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:33:41

     タピらない? という誘いを受けたのだから当然タピオカの入ったドリンクを飲むの筋だ。
     しかしながら俺たちが今いる場所はタピオカ専門店ではなく喫茶店だ。
     ……流行している時はあらゆる場所で見かけたタピオカ専門店も今ではすっかり数を減らし、目にする機会も当然減っている。つまりは……。

    「閉店しておりましたね……」
    「まあ、ブーム自体は終わってるからね……世知辛い世の中だ」

     お店のあった場所には別のお店が入り、当初の目的は果たせなくなっていた、という訳だ。
     しかし折角街に出掛けに来たのだからそのまま帰るわけにもいかない。近場の喫茶店でティータイムと相成った。
     いわゆるウマスタ映えを意識したであろうパンケーキが、俺とアルダンの分テーブルに並ぶ。

    「予定とは違いますが、パンケーキも流行りと聞いたことがあります」
    「今はもう定番化して流行りって訳ではないかな」
    「そうですか……」

     ああ……今のは言わなくてよかったな……。というか今日のアルダンはやけに若者文化や流行りに執着している気がする。
     妙に頑固なところがある子だから、若者ファッションをしているのだからそれに殉ずるべき、くらいに思っていても不思議ではないが……。

  • 6二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:33:55

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  • 7◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:33:58

    「流行の移ろいは激しいのですね」
    「まあ俺も全然ついていけてないよ。それよりも写真はいいの?」
    「写真、ですか?」
    「そう。若い子は皆写真を撮ってウマスタにアップしてるから」
    「ウマスタ……そういえば皆さんに勧められて登録して以来、更新した事がありませんでした」

     一応アルダンが使っているSNSは把握しているが確かに全然更新しない。
     家族や友達とやり取りする分にはLANEで十分なのだろう。
     パシャリと一枚写真を撮って。タタタッと軽く一言添えて投稿したようだ。

    「この後はどうしよう。時間的には夕食の時間までかなり余裕があるけど」

     まだパンケーキすら食べ終わっていないし、気が早いのかもしれないが。
     今はタピれなかった代替案としてこうして喫茶店にいる。
     しかしタピオカドリンクを飲んでそのまま解散、という予定をアルダンが立てていたとは思い辛い。
     ある程度こちらでエスコート出来るように探りは入れておこう。
     俺がこの後も街をぶらつく想定でいたのが予想外だったのだろうか。少し安堵したような表情ではにかみながら提案してきた。

    「あの。でしたら行ってみたい場所があります」

     だと思った。

    「うん、聞かせて?」

     パンケーキを食べながら、この後の予定を立てていった。

  • 8二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:34:05

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  • 9◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:34:16

     パンケーキを食べ終えて少しゆっくりした後。次に訪れたのは……。

    「ゲーセンかぁ。何かやりたいゲームがあるの? UFOキャッチャーとか」

     アルダンが行きたい場所として希望してきたのはゲームセンター。
     様々なゲームから響く、騒がしいとすら言える音がどこか心を高揚させる。

    「そういう訳ではないのですけれど……若者の遊ぶ場所の定番と。小耳に挟んだ事がありましたので」

     なるほど。確かに若者の遊び場と言えばカラオケ、ゲーセン、ショッピングモールくらいなものだ。
     以前ぱかプチを取る為にUFOキャッチャーに挑戦した事があり、その際はアルダンも一緒だった。
     だからゲームセンターに2人で来る事自体は初めてじゃない。
     しかしその時はぱかプチを取っただけで、本格的にゲームセンターで遊んではいなかった。
     パッと見渡しただけでも太鼓を使ったリズムゲームやレースゲーム、銃を模したコントローラーを扱うシューティングゲームなど。
     全部で5階あるうちの1階部分だけでもバリエーション豊かだ。

    「興味があるゲームとかは?」
    「すみません、あまり馴染みがありませんので……エスコートしてくださいますか?」
    「任せておいて」

     当然アルダンにとってはあまり馴染みのない場所だろうし不慣れだろう。色々なものが新鮮に映るだろうし、1階から順番に巡っていく事にした。

    「気になるゲームがあったら言ってね?」
    「それでしたらそちらの……」

     アルダンの興味の赴くままに、様々なゲームを触っていく。
     財布の中身が少しばかり軽くなっていくが、いつもより幼いアルダンの横顔を見ると安い出費だと思える。
     ──楽しい時間というのはあっという間だ。じっくり回ったつもりだったのに、気づけば次の階が最上階だ。
     エレベーターで登る間に感じる違和感。それまでの階とは明らかに雰囲気が違う。
     それもそのはず。置いてあったのはゲームではなくプリントシール機、若者の間でプリ機と呼ばれるものだった。

  • 10二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:34:28

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  • 11二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:34:38

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  • 12二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:34:49

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  • 13二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:35:00

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  • 14二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:35:10

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  • 15◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:35:17

    「……あった」
    「え?」
    「いえ、なんでもありません」

     アルダンの零した言葉がなんだったのかは分からないが、少なくとも興味がプリ機にあるのは誰であろうと分かる。
     視線が完全に釘付けにされていた。なんでもない訳がないだろう。

    「したいの? プリ」
    「少しだけ……以前ヘリオスさんに誘われた際に撮った事がありまして」

     アルダンの交友関係を考えると確かにプリを好んでするような子は少なそうだ。
     メジロの子たちでもわざわざ集まってやりそうにないし。
     そもそも集合して写真を撮るならちゃんとした写真家の方に依頼するような家だろう。
     ……折角最上階まで上がってきて、何もせずに下っていくのは無粋か。

    「じゃあ撮ってみようか」
    「良いのですか?」
    「俺もあんまり撮った事ないけどね。学生の時にクラスの子に巻き込まれる形で、くらいだし。ああ〜……どの機種がいいんだろ」

     1フロア全てがプリ機ということもあって種類自体は色々ある。
     しかし機種ごとの特徴など俺に分かるはずもなく。アルダンの方は……。

    「アルダン、前にヘリオスと撮ったっていう機種は……」
    「すみません、あまり覚えてなくて……」

  • 16二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:35:21

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  • 17二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:35:31

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  • 18二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:35:42

    運が悪かったなスレ主
    動画認定荒らしが湧いてる
    消して報告してくれ

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:35:47

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  • 20二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:36:14

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  • 21◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:36:14

     頼みの綱だったアルダンも前回撮影した時の事は忘れてしまったみたいだが、こればかりは仕方ない。
     筐体やブースの中を隠すように掛けられたシートに女の子が写っているのだが、プリ機に詳しい子じゃないと見分けが難しそうだ。
     さらっと眺める程度に見比べて、なんとなくグループ向けっぽいものを選んだ。
     しかし提案したのはいいものの、操作や撮影の流れに関してはあまり自信がない。
     男だけだと利用出来ない店舗は多いし、女の子と違ってそもそもプリクラを撮ろうともならないし。
     取り敢えず案内に従っておけばなんとかなるか。お金を入れた後、筐体の横についているモニターを操作していく。

    「人数は2人……ポーズとかあるよ。どれにする?」

     幸いにも事前にポーズを決めてから撮影するタイプの機種だったようだ。
     お互い初心者な為、いざ撮影となってどんなポーズを取ればいいか慌てる可能性もあったので助かった。

    「そうですね……あ、ではこちらに」
     
     以前撮った時はヘリオスに任せていたと言っていたし、モニターを見るアルダンの眼差しは真剣だ。
     1つ目のページには撮りたいポーズがなかったのか、指でスワイプさせて次のページへと移動する。
     しかしページを移動した瞬間、先ほどまで悩んでいたのが嘘かのように、迷う素振りすらなくカップル同士でするような……お互いの手でハートを作るポーズが選択された。
     ……アルダン!?

    「……ダメ、でしたか?」
    「いや、驚いただけだよ」

     まあ……若い男女がするポーズなら確かにこれか……。今日のアルダンとしてはとにかく若者らしい事がやりたいのだろう。
     それにカップルがするようなポーズ以外は女の子同士でするような、キャピキャピした感じのものだ。
     アルダンはともかく、俺がそんなポーズをしたって仕方がないだろう。
     消去法的にこのポーズくらいしかなかったんだと、必死に言い聞かせる。
     ……なんだかんだ自分の要求を通してくるのが上手いあたり、やっぱり妹なんだなぁ、と実感する。
     基本的にメジロの子を相手にしている時は年上の立場で振る舞っているし、普段はその印象が薄い分余計に。
     姉のラモーヌと一緒にいる時は分かりやすいのだが。

  • 22二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:36:27

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  • 23◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:36:46

    「あ、もう一つ選ぶんだね。アルダンもう1つ──」

     どうやらポーズは2つ選ぶらしい。もう片方もアルダンに選んで貰おう。

    「私は1つ選ばせて貰いましたので、もう1つはトレーナーさんが」
    「え? ああ、じゃあ……」

     ……そう言われてしまっては断れない。
     俺がやってもマシそうなポーズは……指ハートは……キザ過ぎないか? いやでもこれくらいしかないか……。
     消極的ではあるがポーズを選び終え、背景はミントグリーンのものを選んだ。
     モニターの画面が切り替わり、撮影ブースに移動するよう促される。
     撮影ブースは広々とは言えないものの、2人だけなら窮屈しないくらいの広さだ。
     普段は入れない場所だから色々と興味は湧くが、ブース内のモニターは既に案内を始めている。
     あまり観察に割く時間はなさそうだ。モニターをタップして、撮影を開始する。

    「では、トレーナーさん」

     案内音声からポーズを取るよう促され、そう言ってハートの片側を構えるアルダンの表情は心なしか硬い。
     証明写真ならぴったりな表情かもしれないが……。

    「アルダン、表情硬くなってる」
    「は、はい」
    「もうちょっと寄った方がいいかも」

     俺から寄って解決するのならそうしたいところだが、カメラ位置は固定されている為そうもいかない。
     アルダンがこちらに寄ってくれないと中心がズレてしまう。
     しかも立ち位置の調整が終わる前に撮影のカウントダウンまで始まってしまった。
     ……仕方ない。咄嗟にアルダンの肩に腕を回し、こちらに抱き寄せる。

  • 24二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:36:54

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  • 25◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:37:09

    「あ、あのっ」
    「ごめん、ちょっと我慢して」

     撮影されていく写真を見ながら若干不安になる。
     大丈夫だろうかこれは。誤解を招かないか? 少し恥ずかしそうな、初々しい感じのアルダンとぎこちなさのある俺の表情。
     いや、仕方ないだろう。俺だってほとんど触れる機会がないんだから。
     なんとか1つ目の撮影を終え、次のポーズ撮影もこなしていく。
     指ハートに関してはそこまで密着する必要がないし、最初の2人でハートを作るポーズよりかは気楽だった。

    「どれが良さそう? やっぱり三枚目?」
    「そうですね……三枚目が一番自然な感じかも……」

     何枚か撮ったうち、一番写りが良かったものを選んで。
     無事に撮影も終わったので、案内に従って隣の落書きブースへと移動した。

    「以前は不慣れゆえ、時間内に上手く描けなかったんです」
    「じゃあ今日はリベンジだ」

     落書き用のペンは2つあったので、それぞれが選んだポーズの写真に落書きをしていく。
     ……しかしテンポよく撮影が進んでいったり、落書きには時間制限があったり。
     ゲームセンターに置かれているだけあって、ゲーム性はこの部分だったりするのだろうか。

    「ほら、目も大きくできるみたいですよ」
    「え? うわっ、俺の目気持ち悪っ」

     目の大きさを変える、プリ機の定番ではある。アルダンは元々の顔が整っている分、違和感自体はあるものの十分可愛い。
     しかし、だ。横に立っている俺に関しては気持ち悪い。自分自身の顔というのもあるかもしれないが、もはやこれは誰なんだ。

  • 26二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:37:13

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  • 27二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:37:24

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  • 28二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:37:35

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  • 29二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:37:46

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  • 30◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:37:46

    「アルダンは目を大きくしたりしなくても元が十分可愛いんだから、そのままでいいんじゃない?」

     それ以上に俺の目が大きくなる事に耐えられない。折角のプリが俺の存在で台無しになること間違いなしだ。

    「そ、そうですか? では、このままにいたしますね」

     横目で目のサイズを戻したのを確認してホッと安堵する。良かった、最悪の事態だけは回避出来た……。

    「トレーナーさんの方はどのような感じで?」
    「あんまり遊び心がないかもしれないけど。こういう時落書きじゃなくてもスタンプがあるのはいいね。アルダンの方は?」
    「私も落書きは得意ではなくて……」
    「え、十分上手いけど……」

     落書きもなんとか終えて、ブース内でやる作業は終わり。外の受け取り口からシールが排出された。

    「では、こちらはトレーナーさんに」
    「ありがとう」

     ちょうどいい事に出て来た枚数は2枚。写真だけではなく枠のデザインも凝っており、シール自体が可愛らしい。
     なるほど、世の女の子達に人気である理由がよく分かる。

  • 31二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:37:57

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  • 32◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:37:58

    「携帯にもダウンロード出来るんだって」
    「まあ。早速してみますね」

     写真のデータをダウンロードし終えたのか、アルダンが何かを悩み始めた。
     ウマスタやウマッターにアップする女の子も多いみたいだし、アルダンもアップするべきか悩んでいるのだろうか。

    「待ち受け、変えるべきでしょうか……」

     全然違った。

    「いやいやいや! 荷が重い! 流石にばあやさんからは取って代われないよ!」

     確かに俺とアルダンは濃密な数年を過ごしているかもしれない。だが相手はばあやさんだ。
     アルダンが産まれてから現在に至るまで、ずっと一緒にいるのだ。
     そんな相手とのツーショットを押し退けてまで待ち受けになりたくない。

    「少し安心しました……私も、ばあやとの写真から変えるのは忍びないと思っておりましたので……」

     俺も俺で今の待ち受け……アルダンが初めて重賞を勝った時の記念写真からは変えたくない。

  • 33◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:38:09

    「しかし困りましたね……折角撮ったのに、どうするべきでしょう……」
    「シールとして使うのは勿体ないしね……よく携帯のカバー裏に挟んでる子もいるけど?」
    「いえ、あまり見せびらかすのも良くないと思いますので」

     それはその通りだ。言ったはいいものの、実際にカバー裏に挟まれてもアルダンの友達に俺とのプリが周知されてしまう。
     少々距離感が近過ぎな部分もあるし、そうされると俺も困る。

    「フォトフレームに入れたりすればいいんじゃないかな。データとしてはいつでも見られるし。シールの方は記念に保存する形で」
    「はい、そうさせていただきます」

     なにはともあれ、アルダンが満足そうなのは良かった。
     時間的にも帰るのにいい頃合いだし、俺自身も中々に満喫出来た。……明日の仕事が少し怖いが。

    「トレーナーさん、今日はありがとうございました」
    「いやいや、俺も楽しかったよ。……そういえば口調は普通に戻ったんだね」
    「え? あっ……あ、あざまる水産、です」

     見た目は砕けた印象だが品の良さは隠しきれないアルダンに、思わず笑みが溢れた。

  • 34二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:38:15

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  • 35◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:38:23

    〜Epilogue〜

     トレーナーさんと二人だけで写った写真はいくらかあります。
     けれどどれも記念撮影のようなもので、今回のようなプライベートなものは初めてで……。
     可愛らしいデザインのシールは使うには勿体なくて。
     携帯のカバーに挟む子が多いと聞いたけれど、周りにひけらかしたい訳じゃない。
     私とトレーナーさんしか知らない、ふたりだけの秘密のままにしておきたい。
     トレーナーさんに言われた通り、フォトフレームで保存するのが良さそうです。今度購入してこないと──。

    「アルダンさん、さっきから何を見てるんですか?」
    「ち、チヨノオーさん?」

     浸ってしまっていたけれど、ここは寮の部屋。当然チヨノオーさんだっている訳で。すぐにシールを隠さないと──。

    「本を読んでるのかなぁ〜、って声を掛けづらかったんですけ……ど……」

     すみません、トレーナーさん。ふたりだけの秘密ではなくなってしまいました。
     シールは……隠し通せました。けれど携帯の画面は今日撮ったデータを表示していて。
     その存在に気づいた瞬間、チヨノオーさんの表情が喜色に染まる。
     ええ……それはそうでしょうね……。
     年頃の女の子からすればウマ娘とトレーナーの色恋沙汰など大の好物、世の物語にはごまんと溢れていますから。
     私にだって分かります。

  • 36二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:38:26

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  • 37◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:38:35

    「アルダンさん、用事ってこの事だったんですね~」

     出掛ける前にトレーナーさんに心配された通り、本来ならチヨノオーさん達とそのまま出掛ける筈だった。
     けれど着替えた時にふと脳裏に過ったのが、最近読んだ物語での一幕。主人公の明るい女の子が、年上の男性を強引に誘って街へと繰り出す。
     今日私がしたかったのは、そんな物語の一幕をなぞること。
     何故こんなにも焦がれてしまったのかは……分からないけれど。
     トレーナーさんと出掛ける為だけに、今日の格好をしていたら何か思惑があるのではと勘繰られてしまう。
     私が普段する格好ではありませんから。
     けれど今日であれば、チヨノオーさん達と一緒に合わせたという建前がある。
     だからこそこの格好でトレーナーさんと出掛ける目的を果たすのなら、今が最善。
     そう考えた私は用事を思い出したからと、抜け出す形でトレーナーさんの元へと向かったのですが……。

    「あの、チヨノオーさん……この事はどうか、ご内密に」
    「いえ〜、いいんですよ〜。で、どうだったんですか?」

     チヨノオーさん達には少し失礼だとは分かっていたんです。けれどどうしても譲れなくて。
     きっとこの格好でトレーナーさんと出掛ける事が出来るのは、今日だけだと思ったから。
     いえ、しようと思えば出来るのでしょうけれど。

    「どう、とは?」
    「トレーナーさんと。距離は縮まったんですか!? ウマスタも見ましたからね!」

     言い逃れは、出来ないでしょう。

    「……はい」
    「ひゃ〜……! 詳しく教えてくださいよぅ!」

     寮の明かりが消えるまで続いた恋語り。どうか夢でも、思い出せますように。

  • 38◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:38:59

    みたいな話が読みたいので誰か書いてください。

  • 39◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 22:39:32

    ごめんなさい、一応投下用メモには何レス目になるか書いてるんだけどもしかしたらズレてるかも!

  • 40二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:39:38

    >>38

    お客様……もう出来上がっておりまする………

  • 41二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:39:51

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  • 42二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:39:56

    このレスは削除されています

  • 43二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:40:03

    このレスは削除されています

  • 44二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:40:30

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  • 45二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:40:40

    このレスは削除されています

  • 46二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:40:50

    >>44

    どうみてもSSスレ

  • 47二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:41:06

    このレスは削除されています

  • 48二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:41:53

    力作乙

  • 49二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:42:06

    掲示板の大体が馴れ合いみたいなもんなのに何言ってんだこいつ

  • 50二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:42:09

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  • 51二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:42:13

    スレ主、次からやる時はスレタイにSSを付けておいてくれ
    アホが出てくる

  • 52二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:42:33

    このレスは削除されています

  • 53二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:42:56

    スレ主可哀想やな
    あげるタイミングが悪かったな

  • 54二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:44:11

    SSというにはそれはあまりにも長く、丁寧すぎた


    ただ>>5だけちょいと気になったかな

    >殉ずる

    そんなことで死ぬな、準じてつかあさい

  • 55二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:44:25

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  • 56二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:46:10

    スレ主管理頼むよ

    アルダンのようなお嬢様がギャルみたいな感じに振る舞うのってギャップがあっていいよね……

  • 57二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 22:47:04

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  • 58◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 23:30:09

    禁足地と新大陸から帰ってまいりました、覚えている方はお久しぶりです。
    そうでない方ははじめまして。

    という訳で突如供給されたポニテギャルアルダンネタでした。
    アルダンで書く時結構真面目な事が多いので久しぶりに軽めなお話を書けた気がします。
    正直ウマ娘ストーリー準拠だととんでもない勢いで距離を縮めちゃうのでその辺もある程度無視しちゃってる感じはあるかも。
    特に育成のこのあたり~、とか考えていないのでどのくらいの時期のお話かはご想像にお任せします。

    ここまで読んでいただきありがとうございました。

  • 59◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 23:30:39
  • 60二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 23:31:51

    昨日といい今日と言い、クソデカボイスで生きとったんかワレ!!!!って叫びたい人が現れて歓喜してる
    自分は語彙力が残念なので今回も素晴らしかったですとしか送れない

  • 61二次元好きの匿名さん25/05/10(土) 23:32:38

    荒らされて可哀想

  • 62◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 23:33:59

    >>51

    これまで荒らされたことなかったので多分問題の本質はそこじゃないと思いますね……

    普通に荒らす人間があんぽんたんなだけだと思ってます



    >>54

    ホンマやん

    渋に上げる時直しときます、ありがとうねぇ!



    >>56

    いいですよね……

    いくらギャルっぽくしても隠し切れない上品さ……

  • 63◆y6O8WzjYAE25/05/10(土) 23:34:58

    >>60

    禁足地の調査が忙しくて……

  • 64◆y6O8WzjYAE25/05/11(日) 00:04:29

    渋にも放り投げてきたので読み辛かったらそちらでどうぞ~

    別に荒らされようが一定の文章力はある事は自負してるので気にならないですけど明確にここでしか読まない方の邪魔になってるのは腹ただしいですわね

  • 65二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 00:12:01

    ギャルダンはガンに効く(真顔)

  • 66二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 00:13:15

    パーマーでどうみても育ちがいい子が不馴れなギャルをやっている状況の魅力を実感していたはずなのに
    なぜ俺はこれを思い付かなかったのか

  • 67二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 03:23:22

    >>62

    あんぽんたんにはアルダンのおっ◯いぷるーんぷるん!!って言ってやれ

  • 68二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 04:52:03

    SSの投稿に対して「動画用?」は草

  • 69二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 05:22:50

    >>68

    まあたまにssも上がってたりするから…

  • 70二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 05:28:28

    このレスは削除されています

  • 71二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 09:17:31

    このレスは削除されています

  • 72二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 09:22:38

    このレスは削除されています

  • 73◆y6O8WzjYAE25/05/11(日) 12:19:41

    あげあーげ

  • 74二次元好きの匿名さん25/05/11(日) 21:12:43

    今更読んだがとても良かった(語彙力トプロ)

  • 75◆y6O8WzjYAE25/05/11(日) 23:29:41

    最後にもっかいあげあ~げでうぇうぇ~い

  • 76◆y6O8WzjYAE25/05/11(日) 23:32:23

    >>66

    パマちんは所作の随所に隠しきれてないお嬢様が出てるのがいい感じですけどアルダンはお嬢様がギャルの真似事をしてる別ジャンルの可愛さありますよね



    >>74

    ありがと~ん

  • 77◆y6O8WzjYAE25/05/11(日) 23:33:51

    >>67

    私アルダンはスティルとかみたいな儚げで線の細い文脈のキャラだと思ってるので申し訳ないんですけど巨乳キャラ扱いは無理です……

  • 78二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 08:44:13

    重戦車と儚げが同居するタイプのキャラですね

  • 79二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 16:31:44

    >>77

    ケイちゃんタイプね

  • 80二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 16:38:02

    >>68

    仮にSS作者がスレ立てて書いて動画にして収益得てたとしてさ、それってただ作者が書いた文章でお金稼いでるだけなんだから別にいいんじゃないのと言う気持ちしか湧かない

  • 81二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 23:47:15

    >>80

    実際それやってる人いるな

  • 82二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 09:36:56

    いるんだ…

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