ひぃん! スレ落としちゃったよぉ……

  • 1二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:15:26

    でもせっかく書いたから何処かに投下しておきたいよぉ……
    そんな人の為のスレだよ……
    続き物なら最後に落としちゃったスレを張ってね……

    と言うか私自身の為のスレだよ……
    立て直すのは心が咎めるから、こんな形で消化するよ

  • 2二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:15:48
  • 3二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:16:02

     ……そんな当たり前が、今は永久の彼方に有ったかのように思える。
     視界一面に広がる、広大な砂漠。
     目も霞み、砂に足を取られて歩くことすら難しいと感じる。

    「……ぁ」

     何故コンパスを忘れてしまったんだろう。
     どうして一人で出てきてしまったのだろう。
     頭の中を埋め尽くしていた自分を責める心の声すら、もう聞こえやしない。

     砂に埋もれた何かに躓き、砂漠に全身を打ち付ける。
     どうにか、何とか立ち上がりたかったが、それすら、儘ならない。

    「……ひぃん」

     泣き声が、零れる。
     酷く掠れた声だったか、私の中で響き渡り、ひたすらに体力を、気力を奪っていった。

     もう、助からないのだろうか。
     ホシノちゃんに会いたい。
     一人で、こんな寂しい所で逝くなんて……嫌だ。

     けれども涙すら溢れることは無くて。
     ほんの一滴だけ、広大な砂漠を濡らした。

    「ひゅうーん」
    「……ぇ」

     誰にも拭われるはずの無い涙を舐め取られ、失われて行く気力に僅かな起伏が生まれた。
     あのフェネックさんが、そこに居た。

  • 4二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:16:19

    「フェネっ……さん?」
    「ひゅーん」

     私の言葉に反応するように、鳴くフェネックさん。
     それが何でか嬉しくて、切なくて――朦朧する頭の中はぐちゃぐちゃだった。

    「あの……ね、フェネックさん」
    「ひゅん」
    「私を……馬鹿な私を慕ってくれる、ホシノちゃん……って、後輩が、居るんだけどね」
    「ひゅーん」
    「知ってる……かな? 実はね……あの子と、喧嘩したまま……別れちゃったんだ……」
    「……」
    「まだ……仲直りも、できて、無いのに……このまま……だなんて、嫌なんだ……」

     フェネックは答えない。
     梔子ユメに撫でられるがまま、意味があるのかすら分からない言葉を投げかけられ続ける。

    「だから……なか、なおり……したくて、ね……」
    「ほしの、ちゃん……て、くれる、かなぁ……」
    「ちょっと……つかれ、た、から……かわりに、さ……」

    「ホシノ……ちゃんに、ごめんなさい、を……し、て……」

  • 5二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:16:33

    「ひゅうーん?」

     ユメの手がフェネックの体に沈み込む。
     その手に思いやりなど込められておらず、無愛想に撫で繰り回す人間のような不快な手だった。
     だがフェネックは、どうしてかその手をを振り落とす気になれず、ユメに向かって一度だけ鳴いた。

    「……」

     けれど、ユメは何も言葉を返してはくれない。
     その虚空を映し出すだけの瞳をじっと見て、フェネックは空に向かって泣いた。

    「ひぃーーーーん」

     そのフェネックの鳴き声は、群れのフェネックと違い変だった。
     違いから群れを追い出され、放浪していた時に出会ったのがユメだった。

     自分と似た鳴き声を持つ、唯一の同族。
     そんな独り善がりな仲間意識を持ち始めていた時だった。

     また一人ぼっちになってしまった。

    「……ひぃーん」

     既に彼女は息絶えていた。
     フェネックには分からないが、安らかな寝顔を浮かべている。
     だが畜生であるフェネックには到底理解出来るものでは無いのだ。

     出来る事なら、彼女を学校まで引っ張ってやりたいが、そんな力は持っていない。
     だからせめて、彼女の思い出の品を咥えていこうと、彼女の周りを歩き――そして。

  • 6二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:16:49

     一冊の手帳を見つけた。

    「ひぃん」

     一際存在感を感じるそれを持ち、フェネックは走った。
     それは決して、彼女の遺言を叶えるためでは無かった。
     何処までも独り善がりで、最も彼女に近しい物だったからこそ掠め取っていってしまったのだ。

     もうすぐ砂嵐が来る。
     怪我は癒えたとは言え、巨大な化け物と共に巻き上がる砂塵に耐えられるほど頑強な肉体は有していなかった。

    「……」

     手帳を咥えて彼女から急ぎ離れる。
     だが、鳴り続ける警鐘に反しフェネックは、足を止め振り返る。

     空すら飲み込むような、天井を突いた砂嵐がすぐそこに迫る。
     彼女はまだ、飲み込まれてはいない。

     荒れ狂う砂塵は、かつて栄えた文明の一部も飲み込みながら何処までも肥大化していく。
     彼女は、まだ、飲み込まれてはいない。

     砂嵐越しに歪な光が瞬いて、止めていた足を動かし駆け出す。
     彼女はきっと、まだ、飲み込まれてはいない。

     そう、きっと。

  • 7二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:17:01

     ただ願うだけの思いなど叶えられる筈もなく、砂嵐が止んだ後の砂漠に、彼女の姿は居なかった。
     その意味が分からないフェネックでは無かった。

    「ひいぃーーーーん」

     咥え運んでいた手帳を落とし、一つ、高らかに鳴いた。

     その声に答える者は、誰一人居ないと言うのに。

  • 8二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:18:18
  • 9二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:18:48

     何故あの敵がトリニティを攻撃しているのかは、未だ不明だった。
     そもそも、一番初めに攻撃された私でさえもよく分からないまま迎撃しているに過ぎない。
     万が一でも私を狙って来ているのであれば、トリニティ市街地で固まる判断は出来なかった。

     少しばかりの遠回りの後、正義実現委員会の部屋に辿り着き、応急処置を受けながら目の前に居るツルギと睨み合う。
     ……その視線は私の頭の上と若干往復されているのだが。

     部屋に入った時に気づいたのだが、今の私のヘイローは誰の目にも見えているらしい。
     部屋に居た正実の子達に「なにあのヘイロー……」と口々に言われれば嫌でも気が付くものだ。

    「……味方を犠牲に救出した事は承服しがたいとは思うが、ティーパーティの人間を守ることも我々の役目だ。ましてや、そこまでの負傷をしていてはな」
    「だからここに一旦幽閉されてろとでもいうつもり? あははっ! 貴方たちだけでアレをこ――倒すことは出来ないと思うんだけどなぁ?」

     突っ込まないんだ……なんて周囲からの軽口が押し黙る程の圧が自然と漏れ出てしまう。

     確かに不服だ。
     あのまま戦っていたら負けるのは私だったのは確かだろう。
     けれどもそれで他を犠牲にするのは見当違いだ。

     言葉の圧と、有無を言わさぬ視線。
     ツルギは少しばかり渋い顔を作って、赤裸々に答えた。

    「正直な所……我々のみでアレを止めるのは無理だ。攻撃を当てることや火力の面でアレの能力を越える者が一部に限られるせいでな」
    「……なるほど、それが本音って訳。なら、こっちも答えるけどさ。私はもうあんまりアレに有効打は与えられそうに無いかな……左手こんなんなちゃってるし」
    「いえ、本命はそちらではありませんよ?」

  • 10二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:19:03

     急に畏まった言い方に直し、ツルギは私の端末を渡してくる。
     拾っといてくれたんだ、何て。頓珍漢な思考をしながら受け取る。

    「今現在拘留中のフィリウス派の方々に命じて頂きます」
    「……そう言う事ね」

     手が足りない、火力が足りない。
     ならば増やせばいいのだ。手数も、火力も。

     その為にはパテル派元代表の力が必要になってくる。
     ……と言うよりも、連絡可能なトップが私くらいしか今は居ないのだ。

     近くに控えていた正実の子が持っていた地図が広げられる。
     既に崩落した建物であるパテル、フィリウス派の寮などにはバツ印が付けられており、トリニティ本校のグラウンドからの距離などが追記されていた。
     事前に決めていた作戦の青写真だろうか。
     これ以上被害を広げない為にも、既に倒壊した建物の上で奴を仕留める算段のようだ。

    「勿論、前線にも出て貰います。こちらも、既に戦力がカツカツでして」
    「あははっ☆ 中々に人使い荒いじゃんね? ……いいよ、上等。それぐらいはしないと、折角助けて貰ったんだからね」

     作戦での犠牲。勝利を目指す為の糧。
     ならば納得しよう。
     上辺のみの建前を通す為だけにやった行いでは無くて、やらざるを得なかった事ならば、否定する道理が無いのだから。

     端末に電源を入れて、私の知りうるフィリウス派の子に連絡を取る。
     ここからが、反撃だ。

  • 11二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:19:18

     既に話自体は通っていたのか、後はフィリウス派の子達の判断のみが重要だった。
     私が話をするとあっさりと了承して、現場の正実の子たちと一緒に榴弾砲の準備に取り掛かっているらしい。
     彼女たちも熟練の付き人だ。そう時間はかからないだろう。

     問題は、奴を抑える現場の方だった。

    「――それで、向こうは誰が指揮してるの?」
    「イチカ……二年の隊長だ。部隊を分隊に分解して一撃離脱の作戦で時間を稼いでいるみたいだが……」
    「それは……突破されるのは時間の問題、かな?」

     アレは被弾を抑えるように動くし、一塊にならなければ一掃されることも無い。
     四方八方から撃てばその都度足を止めるし、一撃のみに専念すれば分隊が削られるリスクもかなり低くなる。
     合理的に考えられた良い作戦ではあるのだが……殴り合ったり撃ち合った私達なら分かる。

     奴が理性無きバケモノでは無いことに。

    【――ちょっ! 銃撃止め!! 撤退! 撤退するっすよ!!】
    「……始まったか」
    「急がないとね……って、ツルギ。プロテクターとかつけなくていいの?」
    「いらん。動きの邪魔になる」
    「……こっちも大概じゃんね」

     通信機から流れる叫びに耳を傾けながら、手早く装備を身につけていく。
     左手の指はまだ万全とは程遠い。
     代わりにメリケンサックを付け、殴り合いに備える。

    「……治りが遅くなるぞ」
    「そんな先の事どうでもいいかな? 今できる事全部やっておきたいからさ」
    「人の事言えないだろ」

  • 12二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:19:34

     溜息と共に零れる苦言を聞き流しながら、漸く準備が完了する。
     全力で駆け出すが、ちょっと過積載になり過ぎたせいかツルギに置いて行かれる。
     横目で遅れていることを確認したツルギが少し速度を落とし、現場について話し始めた。

     ……少しムカつくじゃんね。

    「恐らくだが、アレは銃弾を喰らって各分隊が何処に潜んでいるのか探り始めたんだろう。凡その位置を知れたから行動に移した」
    「もう悲鳴しか聞こえないもんねえ。立ち止まって、一つの分隊に気持ちよく銃を撃たせたんじゃないかな?」

     奴は狡猾だ。
     一度は効果があると相手に見せかけてから、全てを踏み潰す。
     相手が見せたほんの僅かな油断に噛みつき、最大限の成果を出す。

     ……やけに組織相手の立ち回りに長けている。
     本当に、何者なんだろうか。

    「だが、最低限の被害で済んだようだ」
    「フィリウスの寮全壊しちゃったみたいだけど……まあ、人命には代えられないか」
    【負傷者は引きずってでも撤退! 残った分隊は小隊に再編成して同作戦を続行! 撃破されたら連絡を寄こすこと! 付近の小隊と一緒に離脱するっす! ツルギ委員長がもうすぐで到着するんで、それまでの辛抱っすよ! ――ここが最後の防波堤っす。みんな、気合入れて踏ん張るっすよ!!】

     崩壊した作戦を建て直し、けれども限界は弁えた指揮だった。
     内心で舌を巻きながら、自身の失態を故に痛感する。

    「……ごめんね、無駄に突っ走っちゃって」
    「構わない、けれども」

    「自身の限界を超えて戦うのは止めろ」

  • 13二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:19:46

    「……あはは、そうだね」

     強く強く、釘を刺す様に彼女は睨んだ。
     自覚はあった。けど、次も同じことをしない確証は何処にもなかった。

     だから曖昧に笑って、私達は並んで走った。
     目的は、もうすぐそこで。

  • 14二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:20:47

    ……正直、時間帯が悪かったのでしょうけど落ちたものは仕方ありませんからね
    これで心残りも無くなりましたし、後はどうぞお好きにご使用ください

  • 15二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:22:12

    おつつ SS供養ナムナム

  • 16二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:23:07

    >>8

    うっそお!?何てこった!!すまねぇ!全く気づけなかった!本当にすまねぇ!

  • 17二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:26:14

    良いSSやんけ〜と思う反面、この力量ならハーメルンでも良さげだなって思うから多分需要の違い?

  • 18二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:27:03

    うー…がー……
    もし、もしまだ続きがあり、書くモチベがあるなら、いつか書いてください……。
    敬 具

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:34:24

    というかスレ主の印象が強いから忘れがちだが、ここって普通にスレの供養場所?

  • 20二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:36:29

    >>18

    そんなあなたに絶望的なお知らせをしてあげる☆

    実は私、既にハーメルンに続きを投稿するって言ってた作品まだ全然書けて無いんだ☆


    あははっ! 締め切りが無いとホントどこまでもサボっちゃうから救えないよね!

    ……でも、期待されたら応えたい乙女心じゃんね?

    貴方がどっちのSSに対して言ったのかは分からないけど、ナギちゃんの方は書きあがったらハーメルンの方でお知らせするじゃんね☆


    >>19

    ひぃん……ごめんね一気に文量で殴ったせいで本題が伝わりにくくて……

    その通り、供養したいと思ったSSをじゃかじゃか投げて貰ってね!

  • 21二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:36:37

    >>19

    読んだ限りそうじゃないかな


    それはそれとして続きみたい

  • 22二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:39:23

    >>20

    わしゃあ>>2も読みたいので待機させてもらいます!

  • 23二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:40:05

    >>20

    どちらも、というより全てですよ、気づかなかったり保守できなかったりがよくありましてね、気になるスレすら落とすことがよくあるんです。()

    ハーメルンのもナチュラルにお気に入り保存してますよ、あと続きの気になる話置き場を作ってそこにもおいてありますよ。()

  • 24二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 21:49:45

    ナギサ様の方は最初のスレからずっと見てたよ。
    ちなみにハーメルンの方はどうやって辿り着けばいいのかな?
    アカウントurlを直接貼るのが難しければ、探し方だけでも教えてくれると助かる。

  • 25二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 22:17:26

    ナギちゃん入水の続き見たかったんだ感謝
    平日昼間で保守できなかったのが心残りだったんだよね

  • 26二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 22:31:44

    >>24

    入水ナギサシリーズのどっかに貼ってあるはず……

    でないと私が見つけれてないだろうから……

  • 27二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 22:33:56

    >>24

    桐の花は凛とさけ - ハーメルン ――かくして、エデン条約は破綻しティーパーティは瓦解の危機に瀕した。syosetu.org

    んノ


    ナギサの続きが思ったよりも長くなったせいで構想が三割くらい脳内から消えて結構困ってる

    これ結構温めてた内容だったのに綺麗さっぱり思い出せなくなるのは割とショック……

    みんなも、メモは取ろうね

    ばかシロコからの遺言だよ、ぐふぅ……

  • 28二次元好きの匿名さん25/05/12(月) 22:52:15

    >>27

    ん、ありがとう。

    私もSS書く時はメモ取るように気をつける。

  • 29二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 08:14:21

    保守

オススメ

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