【SS】名とは自らの楔なり

  • 1二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:12:06

    キヴォトス、朝7時。
    イズナはベッドの上で目を覚ました。

    「んっ……んぅ……もう朝ですかぁ……?」

    身を起こして伸びをするイズナ。
    しかし、すぐにその動きが止まる。

    「身体が重い……?頭も……?なんか耳も変ですね……?」

    倦怠感とかそのような類ではなく、物理的に身体が重い。
    寝ぼけ眼で自らの身体に視線を落とす。そこにはよく知ったスレンダーな肢体はなく、代わりにボリューム感のある身体があった。

  • 2二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:12:37

    「やややっ!?!?」

    イズナは急いで立ち上がり、鏡を探す。
    しかし、そこは百鬼夜行の自室ではなく、まるで他人の部屋のような……

    「きゃんっ!?」

    側頭部に感じる謎の重みに、いつもとはバランス感覚の違うボディ。普段は姿勢制御に活用していたもふもふの尻尾もない。
    立ち上がったイズナはバランスを崩し、頭から転んでしまった。

    「痛い、です……」

    頭蓋骨を直接打ち付けたように響く痛み。恐る恐る手を伸ばすと、そこには立派な巻き角があった。

    イズナは勝手の分からない部屋で洗面所を探し、自らの姿を見る。

    「こっ、これは……!?」

    鏡に映ったのは百鬼夜行の久田イズナではなく、ゲヘナ美食研究会の獅子堂イズミだった。

    「…………ええっ、これ私ですかぁ!?」

  • 3二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:13:44

    イズミとはシャーレを介して何度か一緒に作戦に出たことがある。確か、忍者の携帯食に興味を示して分けてあげたことがあったような……

    しかし、現在の状況はそんなものとは訳が違う。
    イズミ本人になってしまうなんて想像もしなかった。

    「と、とにかく主殿に連絡を……」

    慣れない身体でふらふらしながらスマホを探す。
    いつもの俊敏な身のこなしはどこへやらといった感じだが、しかしフラつきながらも最初の一回以降はコケたりぶつけたりしていないのは天性の運動神経の賜物だろうか。

  • 4二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:14:17

    「あ、ありました!……あぅ、パスワードが分かりません……」

    スマホを手に取り、手癖でパスワードを入力するが弾かれてしまった。よく見たら自分のものとは機種もケースも壁紙も違う。ロック画面の壁紙は謎の紫色のオーラを放つ料理の写真だ。

    自分の見た目だけではなく、周囲の環境もイズミ殿になってしまったということでしょうか。
    いや、むしろイズナの精神がイズミ殿の身体に入っている?
    部長に昔勧めてもらった漫画に、他人と魂を入れ替える術を使う敵が出てきたことがあったのを思い出しますね……

  • 5二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:15:15

    あまりにも現実離れした状況に、イズナの意識は少しついていけなくなっていたが、唐突に手の中で震えだしたスマホが現実へと引き戻す。
    表示されたのは「先生」の文字。迷わず画面をスワイプして応答する。

    「あっ主ど……先生!」
    『"良かった!これイズミの携帯だと思うけど、そこにいるのはイズナだね?"』
    「えっ、あ、はい!イズナはイズナです!!起きたら何故かイズミ殿の身体になっていて、部屋とかスマホも……」
    『"うん、やっぱりそうか。今はイズミの部屋にいるんだね?"』
    「はい!」
    『"どうやらキヴォトスでは今、生徒どうしの精神の入れ替わりが発生しているみたいなんだ。その条件はまだ絞り込めていないけど、恐らくは「名前が一字違いであること」。だからイズミとイズナが入れ替わったんだと思う"』
    「なるほど……?」

  • 6二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:15:43

    『"とりあえず、イズナの身体に入ってるイズミの方にも連絡を取ってみるよ。身の安全が確認できたら念のためにシャーレまで来てほしいんだ……多分ゲヘナの地理には不慣れだと思うし、一度こっちからハッキングしてスマホのロックを解除するね。ごめん、地図アプリで頑張ってたどり着いて!"』
    「わかりました!身体は違えどイズナはイズナです!主殿のためにシャーレまで馳せ参じましょう!」
    『"うん、元気そうで安心した。それじゃ、気をつけてね!"』

    いつも以上に忙しそうな先生との会話が終わった。

    「……とりあえず、身支度をしましょうか!」

    こんなときでもイズナは前向きだ。

  • 7◆8kXeI1ONP625/05/13(火) 20:18:39
  • 8二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:20:52

    この書き出しのSSで前スレ立ててなかった?なんか読んだ覚えがある

  • 9◆8kXeI1ONP625/05/13(火) 20:24:15

    >>8

    すいません、その通りです

    一度見切り発車で建てたあとに「これ無理だ」ってなって消したんですが、一応あれから構想練ってある程度書き溜めしたのでリベンジで建てました……お恥ずかしい

  • 10◆8kXeI1ONP625/05/13(火) 20:25:22

    「えーと、これで良いですかね……ゲヘナの制服を着るのは初めてですね……あー、胸とお腹がちょっと苦しいような……」

    他人の私生活を覗いているような気がして少しむず痒い。
    覗いているどころか他人の私生活そのものを体験しているのだが。

    「あ、先生が言ってた通り、スマホが使えます。今がここで……?シャーレ最寄り駅へはハイランダー地下鉄で……」

    スマホで道順を確認した後、最低限の荷物(他人のものである以上いろいろと持っていくのは申し訳なかった)と、持ちなれないイズミのマシンガンを抱え、イズナは扉を開ける。

    キヴォトスの数奇な一日が、始まった。

  • 11二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 20:26:44

    >>9

    面白い発想だなーって印象に残ってた

    リベンジ頑張れ

  • 12二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 21:07:14

    >>9

    そこで萎えずに再チャレンジしてるのが良いことなんだ

  • 13二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 21:17:15

    良いっすね!辺りの雰囲気がします。

  • 14二次元好きの匿名さん25/05/13(火) 23:26:44

    続きに期待しておく

  • 15二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 00:34:09

    >>11

    >>12

    再建ては疎まれるかなとビクビクしてたけど受け入れてもらえてよかった……

    完走できるよう頑張ります

  • 16二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 06:42:42

    建てるタイミングミスるといいやつでも結構落ちちゃったりするからね。荒れたやつをほぼ同じ内容でもう1回建てるとかじゃなければ疎まれたりとかはないと思うよ。

  • 17二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 14:20:15

    一旦保守

  • 18二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 19:00:05

    ゲヘナの学生寮が立ち並ぶエリアの外れ。

    辺りにはイズナと同じように入れ替わり現象に巻き込まれたと思しき生徒がたくさんいた。

    「ここどこなの!?絶対山海経じゃないよ……」
    「起きたら誰かも知らないゲヘナの角付きになってるなんて最悪……!これは夢だよね!?ねぇ!?」

    イズナは混乱している彼女達を連れてシャーレに行こうとも考えたが、キヴォトス全域でこの現象が起きている以上、いちいち助けていたらいつになっても辿り着けないと考え、まずは単独でシャーレに向かって先生の指示を仰ぐのが正解だと判断した。

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 19:01:01

    「部長やツクヨ殿はご無事でしょうか……」

    忍術研究部の仲間を想いながら、イズナは脚を速める。
    元の身体での素早い忍者走り……とまではいかないが、慣れない身体なりに早く走れるコツは掴んできた。
    と、その時。

    「あっ、イズミ!良かった、会えた!」

    こちらに小走りで駆け寄ってくる赤毛の生徒。

    「なんか朝から変なの!ハルナもアカリも通話に出ないし、ニュースだと怪奇現象が起きてるっていうし……」
    「あ、えっと……」

    この子は見かけたことがある。確かゲヘナの……

  • 20二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 19:02:00

    「……ねぇ、もしかして貴女イズミじゃないの……?」
    「あ、そ、その通りです……!私は百鬼夜行連合学院の久田イズナです!えっと……確かあなたは美食研究会の……」
    「赤司ジュンコよ。……はぁ、入れ替わりに巻き込まれなかったのは私だけなのね……」

    大きくため息。

    「えー、イズミ……じゃない、イズナ、さん?これからどうする……んですか?うぅ、調子狂う……」
    「イズナのことはイズナで結構ですよ!そうですね、まずは主殿のところに来るようにと言われてますのでシャーレに行くつもりです!」
    「シャーレに?」
    「主殿は入れ替わりに巻き込まれた生徒さん達をシャーレに集めているようですので、ジュンコさんもシャーレに行けばお知り合いに会えるかもしれません」
    「……わかった、着いていくわ。と、いうか、むしろゲヘナからシャーレなら私の方が慣れてるから、私が案内したほうが早いかもよ?」

    それを聞いたイズナの顔が明るくなる。

    「心強いです!ありがとうございます!」

    そうして、2人は駅に向かって歩き出した。

  • 21二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 19:03:01

    道中、様々なことを話した。
    お互いの普段の生活や、学校のこと、自分の夢のこと。ゲヘナと百鬼夜行は元より良好な関係だったが、一人のゲヘナの生徒を相手にここまで詳しく話す機会はあまりなかったかもしれない。

    空には電光掲示板を積んだ飛行船が浮かび、始終入れ替わり現象についてのニュースを放送していた。
    映ってるのはクロノスの名物キャスター・川流シノンではなく、どこか別の学校の制服を着た生徒だったが、口調から察するにシノンも入れ替わりに巻き込まれたにも関わらず、今の身体でニュースに登場することを選んだのだろう。

    しかし、それ以外に変わったことはなく、飛行船の浮かぶ空はいつも通り青く澄んでいた。

  • 22二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 19:05:13

    駅に着くと、数人の生徒が揉めていた。

    「だから、そっちが先にぶつかってきたんでしょ!?」
    「それはそうかもしれないけど、だからって撃つことないでしょ!こっちは朝起きたらいきなり別人になってて、身体の感覚がまだ掴めてないから大目に見てよ!」
    「そんなの知ったこっちゃないわよ!」

    「なんか揉めてるわね……」
    「そ、そうですね……よく見たらあちこちで揉めてます……」

    朝から各地で続く混乱。そのストレスが各地で噴出していた。

    「お、お客様、手榴弾を投げないでください!!」
    「そこのハイランダー生!ちょっと鎮圧手伝って!」
    「え、私?ハイランダーの制服だけど中身トリニティなんで無理!ごめんね!」

    駅員の中でもハイランダーの制服を着た他校の生徒や、他校の制服を着たハイランダー生が入り交じってカオスなことになっている。

  • 23◆8kXeI1ONP625/05/14(水) 19:06:02

    「パヒャヒャッ、なんかすっごいぐちゃぐちゃじゃん!」
    「中身ハイランダー生、集合ー」

    そんな時、2人の生徒が駅員室から現れた。
    2人とも段ボールで作った大きな名札を首からかけている。そこには「ノゾミ」「ヒカリ」の名前があった。

    「ヒカリ」の名札をかけた方は、イズナも見た事がある姿をしていた。

    「ユカリ殿!」

    思わず駆け寄るイズナ。

    「んー?おー、そーりー、私はユカリじゃなくてヒカリー」
    「知り合いだったのかな?パヒャッ、残念だったねー。今は相手の見た目なんて全くアテにならないから気をつけた方がいいよ?私はたまたま入れ替わったのが知り合いだったから良かったけどさ!」

    そう言いながら、2人は利用客の整理や人員配置の指示をテキパキと出していく。

  • 24◆8kXeI1ONP625/05/14(水) 19:07:00

    「あ、そうだ、そこの子たちはシャーレ所属だよね?今なら先生からの要請でシャーレ行きの路線は無料になってるから改札通っていいよー」
    「特別パスを使いたまえー」

    ヒカリはポケットから2枚の切符を出してイズナとジュンコに手渡した。

    「良いのですか!?ありがとうございます!イズナ、このご恩は必ずお返しします!」
    「ありがとう!使わせて貰うわね」
    「パヒャッ、シャーレでノノミって子に会ったらよろしく言っといて!」

    切符を改札に通し、2人は駅のホームに降りた。

  • 25◆8kXeI1ONP625/05/14(水) 19:08:38

    本日の更新は一旦以上です!

  • 26◆8kXeI1ONP625/05/14(水) 22:40:48

    明日朝のための保守
    いつの間にか10時間で落ちるようになっちゃってやりづらいなぁ……

  • 27二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 23:06:45

    続き来てた

  • 28二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 06:50:34

    もしノノミinノゾミだったらスオウの胃が死ぬ

  • 29◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 11:19:17

    >>28

    そういや明言してなかった

    ノゾミ⇔ノノミです

    つまりスオウの胃は死んでいる

  • 30二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:13:58

    >>スオウ

    あー、うん。ご愁傷さまです。

  • 31二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:16:21

    誰がどう変わってるか楽しみだわ

  • 32二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:19:52

    リンちゃんとリオ会長が入れ替わったとしたら……

    まあどっちもしごできスーパーキャリアウーマンだから何とかなるだろ

  • 33二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:24:51

    ヒカリ⇔ヒヨリじゃなくて良かったな・・・お互い色々大変なことになってたぞ。

  • 34二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:26:17

    >>33

    ヒマリ⇔ヒヨリかもしれないぞ?

  • 35◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 17:28:37

    >>31

    是非後々の展開をお楽しみに……

  • 36二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:29:37

    >>34

    それは・・・だいぶアリだ・・・!

  • 37二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:32:35

    >>35

    ミ族が入れ替わり方次第でお労しさ激増する

  • 38◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:14:40

    【Side 便利屋】
    ゲヘナ自治区の雑居ビル、朝8時。

    「……起きて。社長、起きて」

    アコは誰かの声で起こされる。風紀委員会の誰か?いや、この声は……

    「カヨコさん!?何故貴方がここに!?」
    「やっと起きた……やっぱり、予想してたけどよりによって一番嫌な相手と入れ替わってるね……」

    周囲を見回すと、ゲヘナの問題児……便利屋68の面々に囲まれていた。

    「寝込みを襲うとは落ちぶれましたね……一体何をするつもりです?」
    「そんなこと言ってる場合じゃないよ、アコ。はい、鏡」

    差し出された手鏡には陸八魔アルの顔が映っていた。

  • 39◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:15:16

    「……は?」
    「あら、アルも起きたのね」
    「アルさん?アコさん?どちらでお呼びしましょうか?」
    「……多分二人とも自己紹介してもらった方が楽かな」
    「そう。それじゃ……私は見ての通りムツキの見た目だけど、京極サツキよ」
    「私はハルカさんの身体ではありますが美食研の黒舘ハルナですわ」

    「私は見た目通りの鬼方カヨコ。……先生からの連絡によると名前が一文字違いの生徒どうしで精神の入れ替わりが起きてるって話」

    となると、今の私は……

    「陸八魔アルの身体になってる……ということですか……!?」
    「そ。当然、アコの身体にはアル社長の魂が入ってる」

  • 40◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:16:06

    なんたる屈辱。
    アコは便利屋の事務所と思しき室内を見回して電話を探す。
    見栄っ張りなアルらしい、レトロな黒電話のダイヤルを回す。
    かける相手は勿論ヒナ委員長。
    どんな状況でも委員長がそう簡単にやられるとは思わないが、それでも無事を祈って呼び出し音を聞く。

    『もしもし、こちら──』
    「ヒナ委員長ですか!?ご無事でしょうか?そこにもし天雨アコがいましたら、彼女は偽物で──」
    『私は現在外見こそヒナ委員長ですが、中身は救急医学部の氷室セナです。その喋り方を見るにアコ行政官ですね?』

    そういえば確かにヒナとセナは1文字違いだ。当然入れ替わりの対象でもおかしくはない。ともあれ、セナもまたゲヘナの秩序側。下手な不良や学園外の人間と入れ替わるよりはよっぽどいい。

  • 41◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:17:18

    「……セナ部長でしたか。失礼しました。奇妙な現象が起きているようなのでセナ部長もお気をつけて」
    『ありがとうございます。それでは私はこれで。なんでも独房に入れていたカスミさんが正実の副部長を主張して暴れ出したとのことで面白……いえ珍しい患者が観察できそうなんです』

    そう言って通話は切れた。

    「……」
    「……」

    しばしの沈黙。
    埒が明かないと判断したカヨコが提案をした。

    「とりあえず、シャーレに行かない?先生がシャーレにみんなを集めてるらしいからさ」

    反対する者はいなかった。

  • 42◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:20:03

    【Side 美食】
    シャーレ、朝9時。
    未明頃からひっきりなしに鳴る電話やメールに追われる中、先生は面識のある全ての生徒の安否確認をしていた。

    "……うん、うん、ココナが無事でよかった。……え?シュンが怪談ばかり読み聞かせるようになって園児が怯えてる?あー……シュロか……山海経にいるなら悪さもしないだろうし見張っててくれるかな。山海経で入れ替わってない子には連絡しておくよ"
    "もしもしフウカ?今どこ?ミレニアムっぽいところ?数学書がいっぱい?そっか、じゃあ多分それはユウカの部屋だね。ニュースでも言ってるけど今かくかくしかじかで……"
    "ホシノ、アビドスの様子はどう?こっちではノノミとノゾミの入れ替わりを把握してるけど……アヤネとミレニアムのアカネ、セリカとトリニティのセリナ。シロコはテラーの方と?それは……はは、カオスだなぁ……"
    "レイは無事?目が覚めたら部屋が本まみれで体力がなくなってる?OK、それはウイだね。体力は仕方ないから無理しない程度にね。シャーレに来れそうかな?"

  • 43二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 18:21:24

    おおぅハスミぃ…よりにもよってゲヘナの牢で目覚めるとはそら暴れるわ…

  • 44◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:21:24

    「主殿!久田イズナがゲヘナから参上しましたよ!……っと、お電話中ですね、静かに……」

    イズナは勢いよく扉を開いてシャーレに入ったが、先生の様子を見て声を抑えた。

    「あ、見てイズナ。『入れ替わりに巻き込まれた子はシャーレ講義室で待機』だって」

    ジュンコは壁のホワイトボードにある連絡を指さす。

    「もしかしたらもう来てるかもしれないわよ、イズミの魂が入ったイズナのボディ!」
    「そうですね、では行きましょう!」

  • 45◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:22:11

    シャーレの講義室には既にかなりの人がいた。
    自分の元の身体を探してオロオロと辺りを見回す生徒や、早々に入れ替わり相手と対面しておしゃべりしている生徒、あるいは友達と一緒に来て冗談を飛ばし合っている生徒など、様々だ。

    「あら、あれはジュンコさんとイズミさんですね?こちらです、私は美食研のアカリです☆」
    「急にどうしたの……って美食研の友達が来たのね」

    教室中央近くの机から手を振る黒髪の少女。
    隣にはツリ目の金髪少女が座っている。

    「えっと……確かトリニティの」
    「うん、放課後スイーツ部だよ。ゲヘナとトリニティという関係性ではあるが、美食に国境はない。美味しいものを追うもの同士、仲良くしよう」
    「あら、素敵な言葉ですね~♦」

    ジュンコとナツが互いに挨拶をする。

  • 46◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:22:45

    「スイーツ部は私──ヨシミとナツだけは入れ替わりに巻き込まれなかったの」
    「アイリさんと私、鰐淵アカリが」
    「それで、杏山カズサと」
    「白洲アズサだ」
    「この2ペアが入れ替わってる。私はまあアズサのことくらいは知ってたし、同じトリニティだからさほど困りはしなかったんだけど、アイリがゲヘナで道に迷ってるらしくて」
    「なかなかいらっしゃらないのでスイーツ部の皆さんと軽いお菓子会などをしてました☆」
    「アンタ、私たちが持ってたお菓子の8割くらいを1人で食べるのが「軽い」お菓子会なわけ……?」
    「アカリは大食いだからね……身体が変わってもそこは変わらないのね……」

    ジュンコは呆れたようにため息をついた。

  • 47◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:23:33

    「そうだイズナ、どう?イズミはいる?」
    「いえ、いませんね……まだいらしてないのでしょうか……」

    そこまで言って、イズナは昨日の夜のことを思い出した。

    「あ、そういえば昨晩は確か忍びとして主殿の傍にいるべく確かシャーレの天井裏でスタンバイしていたような……それで、そのうち猛烈に眠くなってきて……」
    「早くそれを言ってよ!イズミはちょっとどんくさいとこあるし、もしかしたら天井裏から下りれなくなってるのかも!」
    「そ、そうなのですね!それでは不肖イズナ、イズミ殿を救出してまいります!しゅばばばば!」

    そういってイズナは講義室を出ていき、数分後に空腹でダウンしていたイズミを屋根裏から抱えて戻ってきたのだった。

  • 48◆8kXeI1ONP625/05/15(木) 18:24:04

    本日の更新は以上です!

  • 49二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 18:34:49

    操作方法が分からなくて描いたデータを間違って全消ししてるメグinメルがいそう

  • 50二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 19:12:01

    流石にコラボキャラは例外だろうけど
    ミクとミユ
    美琴とマコト
    操祈とミサキorキサキ
    が一応入れ替わることになるな

  • 51二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 19:29:47

    良かったじゃないかハスミ、背も小さくて体重も軽いロリボディやぞ※尚ゲヘナ

  • 52二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 19:34:37

    >>50

    なんならミネ、ミカ、ミナもおるぞ

  • 53二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 21:09:12

    A A
    (ᓀ‸ᓂ)
    こういう顔してそう

  • 54二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 21:39:50

    ミ族結構多いな!?

  • 55二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 01:05:44

    寝る前保守

  • 56二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 01:20:52

    凄い面白いから続き待ってます

  • 57◆8kXeI1ONP625/05/16(金) 07:01:21

    朝ほ


    >>56

    励みになります……!

  • 58二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 12:47:56

    帰ったらもう一度一気見させていただきます。

  • 59二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 18:03:12

    【Side 便利屋】
    「アル様~~~~~~!!!!!!!!!!!!」

    シャーレに到着したアコを真っ先に出迎えたのは銀髪少女によるハグだった。

    「問題ありませんかお怪我はありませんかあっええと私です黒舘ハルナじゃなくて伊草ハルカですアル様はご無事でしたかああっすみません近すぎましたねお邪魔ですよね死んでお詫びを」

    ポケットから手榴弾を取り出した彼女を、元の身体の持ち主が全力で止めた。

    「他人の身体を勝手に殺さないでくださいますか!?」
    「あと私は陸八魔アルじゃなくて風紀委員会行政官の天雨アコですよ?」
    「え、アル様じゃ、ない……?」

    手榴弾が手から落ちる。
    その間、ハルカの思考はフル稼働していた。

  • 60二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 18:03:31

    (どう見てもアル様だけど中身はアル様を邪魔してる行政官で行政官がアル様の大事なお体に入っている許せない許せない許せない今すぐ始末しなきゃああダメだアル様に傷がついてしまうそれだけは絶対にどうしようどうしようどうし────)

    「……ハルカ、大丈夫?」
    「…………」
    「処理落ちしてるわね。この子、いつもこんな感じなの?」
    「自分がフリーズしてるのを客観的に見ながらの食事は……あまり美味しそうではありませんね」
    「……カヨコさん、色々と言いたいことはありますが……今はとにかく先生に会って指示を待ちましょう」

  • 61◆8kXeI1ONP625/05/16(金) 18:04:14

    便利屋一行もシャーレに入り講義室へ向かった。
    が、そこには既に万魔殿の幹部たちも揃っていた。

    「キキキッ、問題児の姿となって問題児と行動を共にする感想はどうだ、天雨アコ!」
    「なんでマコト先輩が誇らしげなんですか。黒幕でもあるまいし」
    「あっ、アルちゃん……じゃない、アコちゃんじゃん。元気~?」
    「え~、あれアコ先輩なの?アル先輩じゃなくて?あのね、イブキね、今ヴァルキューレのお巡りさんなんだよ!見て見て~!」
    「イブキちゃんかわいい~!次の週刊万魔殿のトップ記事はこれで決まりだね!」
    「いやそれ身体はイブキちゃんじゃなくて合歓垣フブキちゃんだからね、勝手に私の写真載せないでよ」
    「じゃあフブキちゃんがプリン食べてだらけてる写真でもいいよ」
    「よくないでしょ……」

    万魔殿と便利屋(と巻き込まれたフブキ)は思い思いに言葉を交わす。
    アコ……いやアルの額に青筋が浮かんだのをカヨコは見逃さなかった。 

  • 62◆8kXeI1ONP625/05/16(金) 18:06:01

    【Side トリニティ】
    トリニティ、朝9時半。
    ティーパーティーの3人に加え、サクラコとミネが集まって会議をしているように見える。

    「皆、よく来てくれたね。非常事態故に挨拶は省略するよ。何、今回の議題は言わずとも皆よく分かっているだろう?」
    「ナギサさん、こちらの音声は聞こえていますか?」
    『ええ、よく聞こえております。……ナグサさん、百花繚乱の部室に紅茶は置いてあったりしませんか?』
    「緑茶ならありますけど……」

    トリニティ上層部で入れ替わりの被害に遭ったのはミカとミネ、ナギサと百鬼夜行のナグサであった。
    ナギサの魂は今は百鬼夜行にあるため、彼女はオンラインで参加している。

    「ミカさんとミネ団長はお互いによく知っているでしょうし、ナギサさんと入れ替わったナグサさんも百鬼夜行という大きな学園を仕切る立場。政治的な空気には慣れていらっしゃるようで安心しました」
    (……これ皮肉なのかな……)

    サクラコは何の気無しに言うが、それを聞いたナグサは内心安らかではなかった。

  • 63◆8kXeI1ONP625/05/16(金) 18:06:55

    「さて、まずトリニティの一般生徒でこの件に巻き込まれた子たちには既にシャーレに向かうように指示してある。ただそれでも混乱はまだ続いているのは事実。ミネ、これについて何か言うべきことはないかな?」
    「あれは正当な救護です!鬼怒川カスミはハスミ部長の肉体を利用して正実を私的に動員しました。それを正すべくシールドバッシュによる「救護」をした結果として、ミカ様の怪力の影響で周囲が更地になりましたが、周辺の怪我人はその場で全て治療しました!」
    「……ミカ、君はもう少し筋肉を落とした方がいいんじゃないか?」
    「セイアちゃん酷い!私の細腕のどこをこれ以上落とせばいいのさ!」

    ミカは隣に座ってる自らの元の身体の腕を引き寄せてセイアに見せた。

  • 64◆8kXeI1ONP625/05/16(金) 18:07:34

    『コホン。……これまでのことは先生に報告してあるのでしょう?でしたら原因と対処がハッキリするまで、我々トリニティ上層部は現場で混乱に対処するしかないでしょう』

    画面の向こうからナギサが話しかける。

    「そうですね、今の我々にできるのは必要な場所に救護を届けること。正義実現委員会は現在ツルギ部長もハスミ副部長も学外の生徒と入れ替わっていて指揮系統が麻痺してしまっておりますが、それでも各派閥の人員を動員すればある程度の治安維持は可能でしょう」
    「既に自警団は各々で活動しているという情報も届いております。我々にできることを尽くしましょう」
    「方針はまとまったね。それでは私は先生に連絡するから先に失礼させてもらおう。今日の会合はこれにて解散だ」

    そういってセイアは席を立った。

  • 65◆8kXeI1ONP625/05/16(金) 18:08:25

    「ミカさん、今後に備えて医薬品の整理をするので同行をお願いします」
    「えっ私も!?」
    「ええ、今の私が一人でやっていたら、傍目にはミカさんが勝手に部室に入って勝手に物資を弄っているやうにしか見えないでしょうから」
    「……それもそっか」

    続いてミネとミカがその場を後にする。
    サクラコも挨拶をして部屋を出ていった。

    「…………賑やかな方々ですね」
    『ええ、お陰で退屈しない毎日ですよ』
    「この後、もうしばらく情報交換をしておきたいのですが、時間は大丈夫ですか?」
    『もちろん』

    ナギサとナグサはそれからしばらくお互いの学園についての情報を交わした。

  • 66◆8kXeI1ONP625/05/16(金) 18:09:30

    本日の更新は以上です!

    書き溜めてたストックに更新が追い付いてしまいそうなので明日以降ちょっとペース落とすかもです

  • 67二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 21:34:04

    わちゃわちゃしてんなぁwww

  • 68二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 22:51:58

    ツルギ…誰だ…?

  • 69二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 01:08:22

    朝用保守

  • 70二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 01:31:42

    ツムギか?

  • 71◆8kXeI1ONP625/05/17(土) 09:41:12

    【現状入れ替わりまとめ】
    イズナ⇔イズミ
    ヒカリ⇔ユカリ ノゾミ⇔ノノミ
    アコ⇔アル サツキ⇔ムツキ ハルナ⇔ハルカ
    アカリ⇔アイリ アズサ⇔カズサ イブキ⇔フブキ
    ミカ⇔ミネ ナギサ⇔ナグサ

    セナ⇔ヒナ カスミ⇔ハスミ ツルギ⇔???

    シュン⇔シュロ フウカ⇔ユウカ アヤネ⇔アカネ セリナ⇔セリカ シロコ⇔シロコ*テラー レイ⇔ウイ

    【影響なし(登場済キャラのみ)】
    ジュンコ カヨコ マコト イブキ チアキ ナツ ヨシミ セイア サクラコ 

  • 72二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 09:42:12

    ツルギはツムギだろうな……

  • 73二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 17:14:54

    【Side アリウス】
    キヴォトスどこかの裏路地、朝10時。

    「エイミ、聞こえますか?そちらに私……いえ、ヒヨリさんはいらっしゃいますか?」
    『いるよ。代わるね』
    『あっ、こ、こんにちは……えっと、槌永ヒヨリ、です……』
    「ふふふ、清楚系天才美少女ハッカーの身体を得た気分はどうですか?」
    『その……すっごく……!』

    一瞬だけ迷うような表情を見せた後。

    『身体は怠いし寒いし常にお腹の具合は微妙だし脚に力が入らなくて辛いです!!やっぱり人生は苦痛しかないんですね……』

  • 74二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 17:15:33

    アリウススクワッドの3人はヒヨリ⇔ヒマリ、ミサキ⇔キサキと入れ替わり、アツコだけが本人のままだった。
    今はヒヨリの荷物から使えそうな物資をフル活用し、ヒマリが簡易の基地局を設営し終えたところだ。

    「ミレニアムの技術力は卓越したものじゃの。伝統にとらわれぬ気風はいくらか見習いたいものじゃ」
    「山海経の門主様に言われると面映ゆいですね。私も山海経の伝統的な占いには大いに興味がありましたので、後ほど教えていただけますか?」

    『で、部長。こっちの機器の様子はそっちからモニターできてる?』
    「はい、ヒヨリさんのスマホから問題なく。……エイミ、エアコンをあと20度ほど上げてください。その温度は私の身体にはキツいんですよ?」
    『えー、暑いよ。ヒヨリも何も言ってないから良いんじゃないの?』
    「……多分緊張して言えないだけじゃないかな……」

    アツコがツッコミを入れた。

  • 75◆8kXeI1ONP625/05/17(土) 17:16:11

    路地裏に座り込んで今回の特異現象について情報収集をするヒマリたち。
    不意にスマホに着信があった。

    「はいもしもしこちら全知」
    『エイミだよ。先生から連絡があって、作戦会議の通話をつなぐって。そっちの回線に切り替えるね』

    しばしの雑音の後、画面は切り替わって先生が映った。いつもの執務室からタブレットで参加しているらしい。

    『"各学園幹部のみんな、集まってくれてありがとう。今回の件について分かったことがあるから今からそれを伝えるね"』

  • 76◆8kXeI1ONP625/05/17(土) 17:27:16

    かなり短いですが、本日の更新は以上です!

    やっと登場人物の総ざらいが終わったので、これから物語が更に動き始めて行く予定です!!

  • 77二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 21:13:39

    楽しみ、続きが気になる

  • 78二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 22:18:11

    ウイがスミレのトレーニングに耐えられるか…?

  • 79二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 07:10:11

    あさほ

  • 80二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 09:33:52

    ミネinミカはだいぶ『渡しちゃいけない人間に渡しちゃいけない身体が渡った』感じだけど、そっかー更地かー

  • 81◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 17:31:07

    【Side 先生】
    時刻は少し遡り、シャーレ、9時半。

    "とりあえず全員の安否確認できた……"
    『お疲れ様です、先生!』
    『報告。電話の音声データから今回の現状をリストにまとめました。また、各学区の人的、物的被害の状況についても別ファイルで整理完了』
    "ありがとう、アロナ、プラナ"

    先生は深く深呼吸をし、心と身体を落ち着ける。

    『あれ、まだ未整理のメールが……?』

    アロナが何かに気づいたように呟く。
    軽いウイルスチェックをした後、メールを確認すると。

    『せ、先生!ゲマトリアの黒服さんからメールが届いています!』

    その報告を聞き、場の空気が一気に張り詰める。
    黒服。
    神秘についての「研究」のためならどんな手段も厭わない怪人物。
    かつてホシノを利用し、何度も敵対した彼がこの件に関わっているのか。

    そう思いながら先生はメールを開いた。

  • 82◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 17:31:43

    先生

    久方ぶりですね。
    ゲマトリアの黒服と呼ばれる者です。

    事態が事態ですので単刀直入に申し上げます。

    此度の我々の実験は残念ながら失敗に終わりました。
    その結果が朝から盛んに報じられている生徒同士の魂の入れ替わりなのです。
    つきましては先生に事態の収集に協力して頂きたく思います。

    詳しくはD.U. 第32地区東端の廃ビルにお越しいただければお話いたしましょう。

    黒服

  • 83◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 17:32:06

    メールを読み終えた先生は何も言わずに最低限の荷物を持ってシャーレを出ていった。

  • 84◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 17:33:52

    先生が指定された場所に着くと、黒服はいつもの不気味に笑うようなヒビだらけの顔で出迎えた。

    「よくお越しくださいました、先生」
    "挨拶はいい。今度は何をした?"

    先生の声色には明らかに怒りが籠もっていた。

    「今回の件は恥ずかしながら全て私の不手際によるものでしてね」

    黒服は淡々と話しだした。

  • 85◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 17:39:09

    (通信環境が不安定っぽい?ので一旦ここまでにします。生放送の後に環境が安定してそうなら続きを投げるかもしれません)

  • 86◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 21:40:52

    名前というものについて、どう考えますか?
    ただ個体や概念を区切るだけでなく、「それが何であるか」を表象する記号だと私は考えています。

    悲劇を描いた素晴らしい脚本があったとしましょう。
    それを「悲劇」と名付けて演じれば、世界一の名作になるようなホンです。
    もし、そのホンに「喜劇」という題をつけて演じれば、笑わずに悲しく幕を閉じるその物語は世界一の愚作として扱われることでしょう。
    内容は一切変わらないのに、です。

    名前とは、自らを定義し世界に結びつける楔の役割なのですよ。

  • 87◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 21:41:26

    今回の試みは名前から神秘に干渉し、この世界のテクスチャに接触することを目的としていました。
    ですが、その過程に用いた素材がいけなかった。
    利用したのですよ、名もなき神々の力を。

    かの力は物事が持つ「情報」に干渉してそれを書き換える力。それが物理的なものであれ、概念的なものであれ、情報であれば干渉できる。
    それを使って、まずキヴォトスという舞台において最も力を持つ概念──生徒全体への干渉を試みました。

  • 88◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 21:42:27

    詳細は省きますが、この過程で致命的な不具合が生じました。
    キヴォトス全土から抽出した「名前」というラベルが混ざりあってしまったのです。
    名前とは本質を定めるものですから、生徒たちの本質たる「神秘」が宙ぶらりんの状態になっていたのです。
    私は焦りましたが、それがさらに事態を悪化させました。

    部屋いっぱいにCDとそのケースが散らばっている様子を想像してください。
    それをできるだけ早く元に戻せと言われたらどうしますか?
    片っ端から同じタイトルのものを探して急いで戻すと思いませんか?

    ……もちろん私が手作業で名前と身体を戻していったわけじゃありません。概念的に「近い」中身とケースを組み合わせる操作を施しただけです。
    ただ「近い」ものを結びつけるだけなので、精度には限界があります。例えば、アビドスの死の神とその反転が混ざったり、語感が似た名前を取り違えたり。
    ですが焦った私はその精度にまで気を配ることが出来なかった。
    そうして生まれたのがこの現状です。

  • 89◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 21:43:21

    さて、経緯をお話したところで、本題は今回の解決に協力してほしい、ということです。

    解決法は至って簡単。
    数時間の後にキヴォトスに顕現するであろう、4体の「ユガミ」を打ち倒すのです。
    要するに虚妄のサンクトゥム的なアレです。

    「ユガミ」とはその名の通り「歪み」です。魂と器の不一致が時間と共に肥大化し、そのズレが次元的位相を伴って表出したものです。

    これに挑むにはただ火力を揃えれば良いというものではありません。
    何せ相手は名前から零れ落ちた情報の塊。物理は基本的に通用しません。
    こちらで観測したデータを元に開発した、対処するための技術をお伝えしましょう。こちらの詳細は後でメールでお送りします。

    ですが、その準備のために、用意しなくてはいけないものがあります……神名文字の欠片が大量に必要なのです。

  • 90◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 21:44:12

    神名文字とは書いて字のごとく「神の名の文字」です。生徒たちが内包する神秘の名前を記すための文字であり、その名前を取り戻すことはすなわち神秘の強度が上がり、強くなる。先生の普段やっていることはそういった原理だったのですよ。(※スレ主の解釈です)

    銃器に神名文字を加工して作った特殊なコーティングを施さないとユガミには殆ど攻撃は通じません。
    そのコーティングを効果最大限にまで施すには生徒一人あたり520個の神名文字が必要になります。
    もちろんこちらでも神名文字の欠片を最大限用意しますが、先生にも調達を手伝ってもらいたいのです。
    もしも足りなければ……そうですね、ユガミは攻撃を受ける度にダメージが神名文字として変換されるはずなので、対峙したその場で落としたものを集めて加工することも理論上は可能です。

    ええ、こちらも物資に乏しいもので報酬といえる程のものはお渡しできませんが、ユガミ討伐で獲得した戦利品は神名文字を含め全て先生にお譲りいたします。
    些かこちらに都合の良い話ではありますが、どうかお手伝いをお願いできますか?

  • 91◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 21:45:04

    先生は黒服が都合の良いことばかりを言っていると思った。
    しかし、先生として、生徒たちを教え導く者として、この混乱を長引かせる訳にはいかないとも思っていた。

    "分かった。受けよう。ただし"

    黒服に鋭い視線を向ける。

    "私の生徒達に二度と手を出さないでくれるかな"

    契約は成立した。

  • 92◆8kXeI1ONP625/05/18(日) 21:45:46

    本日の更新は以上です!

  • 93二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 00:10:44

    良き

  • 94二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 05:36:55

    今回割と運が良かったっぽいなぁ・・・
    下手したら『定義』を失った生徒達が即座に暴走してキヴォトス終焉ルートまっしぐらでも可笑しくない実験だったわ・・・

  • 95二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 13:35:30

  • 96二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 14:02:47

    器と中身の定義が狂うだけで致命的な結果になるよね
    ゲヘナ生筆頭に外に出してはいけないものばかり

  • 97二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 14:16:56

    「ユガミ」がどの様な変異かにも寄るけど…
    割と危険どころがいるのが…

  • 98二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 14:57:18

    空崎ヒナと空井サキっていう苗字とフルネーム、かつ1字多いレベルのズレは対応して無さそうか
    .....いやそれでも多いわ!

  • 99二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 15:24:22

    >>98

    サキは…あのネズミと代わってるか…?

  • 100二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 15:28:38

    自分がハスミになってる事の不安より先にそれ利用した悪事に走るカスミはほんま…

  • 101二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 16:25:19

    今頃百鬼夜行ではクーデターが起こってたりするのだろうか

  • 102二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 17:56:57

    【Side みんな】
    "……というのが今回の異変の解決方法らしい。もう必要な物資はミレニアムに送って加工を始めてもらってる"

    各学園の有力者を集めた先生は、黒服から聞いたことを掻い摘んで伝える。

    "ここまで、何か質問はないかな?"

    皆、するべきことは理解できたようだ。

    "OK、じゃあこれから役割分担をしよう。まず、ユガミが現れると予想されるのは4箇所。1つ目がゲヘナ万魔殿前の広場"

    画面に映したキヴォトスの地図をズームさせて指で指した。

    "次にトリニティ大聖堂。3つ目にアリウス地下のカタコンベ。最後にD.U.アオバ区。トリニティとゲヘナの間に位置する区だね"

  • 103二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 17:57:27

    "情報によると、ユガミは巻き込まれた生徒が多いエリアで成長するらしい。だから必然人口の多いトリニティとゲヘナが中心になっている"
    "今回の作戦に必要なのはユガミを攻略する戦術チームと、その戦いに巻き込まれないように他の市民や生徒を避難させる誘導役。今からこれらをそれぞれ振り分けるから、それに従って動いてくれるかな?"

    それから先生の指示のもとでチームを組むのに、そう時間はかからなかった。

  • 104◆8kXeI1ONP625/05/19(月) 17:59:19

    チーム分けは以下の通り。

    チームゲヘナ(ゲヘナ万魔殿前)10人
    ・アル/アコ ・ムツキ/サツキ ・ハルカ/ハルナ ・イブキ/フブキ ・イロハ ・カヨコ

    チームトリニティ(トリニティ大聖堂)11人
    ・ミカ/ミネ  ・ハスミ/カスミ ・ナギサ/ナグサ ・ツルギ/ツムギ ・セイア ・サクラコ ・イチカ

    チームアリウス(カタコンベ)8人
    ・イオリ/サオリ ・キサキ/ミサキ ・ヒマリ/ヒヨリ ・アツコ ・エイミ
    ※ミサキ、ヒヨリ、エイミは通信で参加

    チーム美食スイーツ(DUアオバ区)9人
    ・アズサ/カズサ ・アカリ/アイリ ・イズミ/イズナ ・ジュンコ ・ヨシミ ・ナツ

  • 105◆8kXeI1ONP625/05/19(月) 18:00:29

    【Side アリウス】

    「自分の脚で歩くなんて何年ぶりでしょうか」
    「妾も前線に立つのは久方ぶりじゃの」
    「……カタコンベを通るのはアリウスを出るとき以来だな」
    (ゲマトリアから現在の出入口と構造を教えてもらえたからね)

    先生からの要請で合流したサオリの言葉に、アツコが手話で返す。

    『サオリは元気だった?夏に海岸で会って以来だけど……』
    「ああ、問題ない。あれ以降は比較的合法な依頼が増えてな。少しは前を向けるようになってきた」
    『サオリ姉さんの顔とイオリさんのどっちを向いて話すべきか混乱しますね……えへへ……』

    感動の再会……というにはやや淡々とした会話が続く。
    クールに振る舞っているが、サオリも嬉しいのかイオリの尻尾が軽く揺れている。

  • 106◆8kXeI1ONP625/05/19(月) 18:01:03

    『あ、そろそろ出現予想地点だよ。どう?異変はない?』

    ミレニアムからモニターしていたエイミが声をかける。
    周辺には生物の気配はなく、ただひんやりと湿った空気が漂っている。
    しかし、その空気は独特の緊張感を含んでいた。

    「……『何か』がいる気配はある。警戒を絶やすな」
    「なんだこの空気……ミメシスや虚妄のサンクトゥムとも違う……何とも言えない……」

    先頭を歩くサオリと殿役のイオリはどちらも何かを感じているようだ。

    「それもそうでしょう……何せこれから挑むのは名前の不一致によって生まれた情報の断片の集合体です。名前未満のものの寄せ集めには名前のつけようがありません」

    「ですが」

    ヒマリは余裕たっぷりに微笑む。

  • 107◆8kXeI1ONP625/05/19(月) 18:01:35

    「今は名前こそが存在を定義するという法則(ルール)がこの場を支配しています。名前さえ付ければ『それ』はその通りに定義されます」

    一呼吸置いたのち。

    「皆さん、準備はよろしいですか?」

    皆が頷いたのを見て、ヒマリは声を張り上げた。

    「現在より対象を《歪曲(ディストーション)・ヒエロニムス》と定義・呼称し、これを討伐する作戦を開始いたします!」

    [────────!!!!!]

    それに応えるように咆哮が響き、空中から滲み出るかの如く、ヒエロニムスの姿が顕現した。

  • 108◆8kXeI1ONP625/05/19(月) 18:02:17

    本日の更新は以上です!

  • 109◆8kXeI1ONP625/05/19(月) 18:05:07

    (半スレいって軌道に乗って感想等いただいているので、一度この場でお礼を申し上げておきます。下手に返信すると今後のプロットのネタバレしそうな気がしてて返信できてないだけで、感想や保守は本当にありがたく思っています。ありがとうございます!)

  • 110二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 21:45:38

    今後が楽しみなスレ、ぜひ頑張ってくださいね!

  • 111二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:22:55

    >>107

    いいなこれ名前によって存在が定義されるの

  • 112二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:38:43

    面白いスレに出会えた!応援してます!

  • 113二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 08:48:41

    あさほ

  • 114二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 14:52:58

    昼保守

  • 115二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 17:25:39

    【Side ゲヘナ】
    「それでは最終確認のための簡易ブリーフィングを始めます」

    アコが愛用のタブレットを携えて前に出る。

    (やっぱり私の立ち姿はカッコよく決まってるわね)
    (社長、今そこじゃない……)
    (事務仕事するアルちゃんならメガネかけて欲しいなぁ)

    「基本配置は先ほど皆さんの端末にお送りした通り。陸八魔アルを除く便利屋とイブキさん、ハルナさんは前衛を。マコト議長、サツキさん、イロハさん、フブキさん、私は後衛として支援します。そして」

    アコは事務的に資料を読み上げたのち、アルの方を向き直った。

    「アルさんには本作戦の要である「神名文字弾」を撃ち込む役目を担っていただきます」

  • 116◆8kXeI1ONP625/05/20(火) 17:26:15

    神名文字弾。
    どの生徒のものでもない、無記名の神名文字の欠片を精錬して作った特殊弾。
    黒服によると名前の断片を吸着して生徒の神名文字に変える効果があるという、まさに対ユガミ用の「銀の弾丸」とでも言うべき代物。
    ユガミ討伐作戦は弱体化したユガミに神名文字弾を撃ち込むことでトドメとする計画なのだ。

    「意外ね。てっきりプライドの高い行政官のことだから私みたいなアウトローに任せるなんてしないと思っていたのだけど?」
    「あら、心外ですね。これでも貴女の能力は買っているつもりなんですよ?ゲヘナ風紀委員会として、貴女達問題児の実力はこの目でよく見ておりますから」

    場の空気が僅かにヒリつく。

    「フッ、依頼は成立ね」

    精一杯カッコつけようと不敵に笑うアルに、アコは小さく溜息を零した。

    「それではブリーフィングは終了です。皆さん、持ち場に付いてください!」

  • 117◆8kXeI1ONP625/05/20(火) 17:28:52

    他の皆が場に付いたのを確認してから、アルは1人、万魔殿議事堂の狙撃ポイントに腰を据え、無線越しに宣言した。

    「今回のターゲットのコードネームは《歪曲(ディストーション)・ゲブラ》。目標はターゲットの抹殺。用意はいいかしら?さあ、仕事の時間よ!」

    アルは指を鳴らした。
    作戦開始だ。

  • 118◆8kXeI1ONP625/05/20(火) 17:30:14

    【Side トリニティ】

    「神聖なる大聖堂を根城とするとは何とも不敬なものですね……」

    ぽつりとサクラコが呟く。

    「だからこそ我々で取り戻すんじゃないか。この世界も原初はある言葉(ロゴス)から生まれたというし、名前を持たない混沌(カオス)はやがて光が照らすものだろう?」
    「ええ、彼の者にも祝福がありますよう……」

    「あれ?そういえば正義実現委員会のみんなは?イチカちゃんがツルギちゃんとハスミちゃんを連れてくるって話だよね?」
    「そういえば確かに……」

    ミカとナギサが辺りを見回しながら話していると。

    「ヴォ゛ェ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!」

    大爆音の雄叫びが聞こえてきた。

    「えっ何!?敵!?」
    「ぶ゛っ゛倒゛し゛て゛や゛る゛ぜ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛!!!!!!!!!」

    現れたのはいつも通りの剣先ツルギだった。

  • 119◆8kXeI1ONP625/05/20(火) 17:30:52

    「……あれ?ツルギちゃんって他校の生徒と入れ替わってたんじゃないっけ?もう戻ったの?でも私たちはまだだよね?」

    ヘイローの辺りに疑問符を浮かばせながらミカが尋ねた。
    その返事代わりとでもいうように、柱の影からもう一人、深緑の髪の生徒が恥ずかしそうに顔を見せる。

    「あの……ツムギさん……!わ、私、こんな可愛い姿になるの初めてで……!」
    「ええ、私も同じですよ、ツルギさん?」

    ツルギの身体の表情がスッと真顔に戻る。

    「では、こうしましょう。私がいつもライブの時にしているメイクを施してあげます。ビジュアル系のメイクなら叫んでいても問題はないでしょう?」

    ツルギの身体を動かしている彼女はどこからかフェイスペイントの塗料を取り出して、自分の元の顔に塗りたくった。

    「……はい、できました!ほら、どこから見てもビジュアル系バンドのメンバーです!」
    「これが……クク……キハハ……キェハハハハハハハハ!!!!!!」

    手鏡を見たツルギはいつも通りの奇声を上げた。

    「良い感じですね、ツルギさん!じゃあ一緒に叫びましょう!せーの!」

    「「ギェハハハハハハハハハハァ!!!!!!!!」」

  • 120◆8kXeI1ONP625/05/20(火) 17:31:18

    「ツルギちゃんの雄叫びを完コピできる子が他にもいるなんて……!」
    「……おや、失礼。ティーパーティーの皆様にお会いするのに名乗っていませんでしたね。私は椎名ツムギ。ワイルドハントの生徒です。これも何かの御縁ですので、ツルギさんと一緒に助太刀致しましょう!」

    ツムギはペコリと頭を下げる。

    「謝肉祭で見かけたことがあると思っていたけれど、そうか、ツルギは君と……」
    「セイアさんにまで知られているとは光栄ですね。しばしの間ですが、よろしくお願いしますね」

  • 121◆8kXeI1ONP625/05/20(火) 17:32:17

    「鬼怒川カスミ。少しでも変な動きを見せたら即座に捕縛しますからね」
    「おお怖い。だが私を縛り上げてもこの件が解決すれば縄でグルグル巻きにされているのは君になってしまうぞ?」
    「くっ……」

    ツルギ達が話している場所から少し離れた場所で、カスミとハスミは小競り合いをしていた。
    その後ろからこっそり近づく者がいた。

    「カスミさん、お久しぶりっす。……私のことは 覚 え て る っ す よ ね ?」
    「!?……そうか、そりゃあ正実には当然君もいるか、イチカ嬢……まあいい、こんな重い身体じゃ逃げにくいし、解決までは大人しく協力するとしようじゃあないか!!」
    「!!……他人の身体についてデリカシーのない……!!やっぱり許せません!!イチカ!私共々、鬼怒川カスミを縄でキツく縛っておいてください!!」
    「今は喧嘩してる場合じゃないと思うっすけど……」

  • 122二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 17:32:20

    やっぱりそこと入れ替わってたのか

  • 123◆8kXeI1ONP625/05/20(火) 17:35:05

    「……皆。そろそろ作戦開始時間だけど」

    ナグサが徐ろに口を開く。
    ナギサの声を借りた雪のように静かな口調は場の空気を真面目なものへと変えた。

    「じゃあ号令しよっか。今回は相手の「定義」が必要なんでしょ?ミネ団長、よろしくね」
    「分かりました。不肖ミネ、今回の作戦の号令をさせていただきます」

    一拍ののち、ミネは息を吸い込み。

    「健全な精神は健全な肉体に宿り、健全な肉体には健全な精神が育まれます!今、肉体と精神は合一のものではなくなり、心体の健康が損なわれる危機にあります!よって、此度の根源である病巣を《歪曲(ディストーション)・グレゴリオ》と診断し、その切除を開始します!いざ、救護が必要な場所に、救護を!!」

  • 124◆8kXeI1ONP625/05/20(火) 17:35:42

    本日の更新は以上です!

  • 125二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:47:02

    >>123

    凄い、手書きイラスト⁉︎

  • 126二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:51:16

    団長がミナあたりと入れ替わってなくてよかったよ本当w

  • 127二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:56:06

    >>125

    手描きです。

    SSスレにスチル的なのがあったら驚くかなと……


    >>126

    今のところ出番の予定はないですが、プロット組む段階では「ミネ/ミカ ミユ/ミナ」で組み合わせてましたね

    ミユミナの想像ができない……

  • 128二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 23:01:00

    ヘイローは精神に準拠してるの良いね!

  • 129二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:17:22

    保守

  • 130◆8kXeI1ONP625/05/21(水) 20:30:43

    【Side 美食&スイーツ】

    D.U.アオバ区のビル街。チーム美食スイーツは複数の班に分かれてそれぞれビルの屋上に陣地を構えていた。

    「さて……」

    「名前は世界と私を切り離すものであるが、同時に2つを繋ぎ止めるものでもある。名前がなければ「私」と世界の境が消え、我々は紅茶に入れた角砂糖のように世界の中に溶けてしまうことだろうよ……しかし、角砂糖に後から名前を付けたからといって紅茶からその角砂糖が抽出できるわけではない。それは結局は「角砂糖入り紅茶」の言い換えでしかなく、元の「角砂糖」と「紅茶」は既に不可分な概念として結びついており……」
    「いいからさっさと始めるわよ!」

    長々と話すナツの脇をヨシミが肘で小突いた。【Side 美食&スイーツ】

    D.U.アオバ区のビル街。チーム美食スイーツは複数の班に分かれてそれぞれビルの屋上に陣地を構えていた。

    「さて……」

    「名前は世界と私を切り離すものであるが、同時に2つを繋ぎ止めるものでもある。名前がなければ「私」と世界の境が消え、我々は紅茶に入れた角砂糖のように世界の中に溶けてしまうことだろうよ……しかし、角砂糖に後から名前を付けたからといって紅茶からその角砂糖が抽出できるわけではない。それは結局は「角砂糖入り紅茶」の言い換えでしかなく、元の「角砂糖」と「紅茶」は既に不可分な概念として結びついており……」
    「いいからさっさと始めるわよ!」

    長々と話すナツの脇をヨシミが肘で小突いた。

  • 131◆8kXeI1ONP625/05/21(水) 20:31:23

    「本当は名前と世界の関係について皆とみっちり語り合いたいところだが…………」

    「仕方ないか……無念」

    ナツは盾を構えなおして叫ぶ。

    「名前と肉体の歪みから生まれし者よ、君は誰かと聞かれたらこう答えるといい。《歪曲(ディストーション)・ペロロジラ》と!その名を告げることは二度とないだろうが、その時は我々が君を覚えていよう」

  • 132◆8kXeI1ONP625/05/21(水) 20:31:45

    かくして、キヴォトスの命運を賭けた奇妙な戦いが始まった。

  • 133◆8kXeI1ONP625/05/21(水) 20:33:23

    【幕間:避難誘導チーム】

    「おら、早く逃げろ!!巻き込まれても知らねえぞ!おい、そこのコーギーの兄ちゃん、そっちは通行止めだ!あぁ?忘れ物?……ったく、場所とモノは?避難所で待ってろ、取ってくる!」

    D.U.市街の市民や生徒をアオバ区から遠ざけるように誘導しているのは、レッドウィンターのメルと入れ替わったC&Cの美甘ネルだ。
    慣れない身体でも市民を守るため、弾丸のように飛び出して行く。

    「だぁーっ!もう!チビなのは変わってねえどころか元の身体より背ェ低いし、体力ねぇし、メガネが鬱陶しい!!何より胸がデカくて走り辛ェ!アスナとかアカネとかいつもこんなんぶら下げてよく走ってんな……」
    「何かおっしゃいましたか、ネル先輩?」
    「うおビビったァ!……ンだよ、アカネかよ。そっちの様子は?」

    いつの間にか、アヤネの身体に入ったアカネがネルの横を並走していた。

    「こちらは誘導終わりました。……私は今アビドスの方の身体を借りておりますが、確かに普段より肩が軽くて楽ですね♪」
    「チッ……」

    ネルは苦々しそうに舌打ちをし、そのまま脚を速めた。

  • 134◆8kXeI1ONP625/05/21(水) 20:34:14

    「チェリノさん、こちらです!本官が現場までご案内します!」
    「……同志カムラッドからの依頼でマコト議長に助太刀するべくゲヘナに来たは良いが……キリノだかセリノだか知らんがこの偉大なるチェリノ様は本来警官の真似事などやってられる器ではない!」
    「ええっ!?何を仰るんですか!?」

    ゲヘナにやってきたチェリノは、開口一番にそう言った。キリノの姿でも愛用の付け髭を忘れないのは少しユーモラスだ。

    「……が、しかしだ!危機において同志を見捨てるような人物が為政者として相応しいと思うか!?」
    「いいえ、本官はそう思いません!」
    「ああ、その通り!偉大なるレッドウィンターの指導者、連河チェリノ様がここで弱きを助けないほど小さい器の持ち主だと思うなよ!おいらのカリスマがあれば市民を導くことなど造作もないわ!」
    「本官もお手伝いいたします!市民の誘導なら慣れておりますから!」

    チェリノとキリノは駆け出した。

  • 135◆8kXeI1ONP625/05/21(水) 20:35:46

    本日の更新は以上です!

  • 136二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 22:59:12

    チェリノそこと入れ替わってたかー
    珍しい名前の生徒でも意外な一字違いさんが居るもんだ

  • 137二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 23:08:28

    >>134

    カラーリングが同じだから、付け髭キリノが意外と想像つくの面白いな

  • 138二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 07:22:34

  • 139二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 15:27:32

    昼保守
    人がいる時間帯に投げようと思うと二回保守しないと落ちるのキツい……

  • 140◆8kXeI1ONP625/05/22(木) 17:38:07

    【Side アリウス】

    石造りの地下通路に無数の銃声が響く。

    「ユガミってこんな硬いのか!?先生から聞いてた話よりも硬くない!?」
    「まあ、ゲマトリア側もこのような事態は未確認でしたし、理論上の可能性でしか話せませんから。それと、相手の名前は『歪曲・ヒエロニムス』ですよ?名前が相手を定義するのですから、正しい名前で呼ばないとどうなるか分かりません」
    「それは……そうだけど!」

    イオリは遮蔽物に身を隠しながらも必死に攻撃する。
    一方で、ヒマリは扱い慣れない対物ライフルでの攻撃を早々に諦めたのか、テキパキと周囲の分析を行っている。

    「姫、回復ドローン起動できるか!?」
    「分かった。これで、役に立てるのなら」

    サオリの呼びかけに応えてアツコは花のような形のドローンを呼び、周囲を光が照らしていく。

  • 141◆8kXeI1ONP625/05/22(木) 17:38:39

    『部長、即席シールドのデータを送るね。そっちにある材料で作れるよね?』
    「ええ、これで耐久面はしばらく保ちそうです。キサキ門主、そちらの様子は如何ですか?」
    「ほうじゃのう、こちらでも周辺の状況は見ておるが、下手に攻撃するとカタコンベ全体が崩壊して我々ごと自滅しかねんな」

    キサキは別働隊として、ヒエロニムスを効率よく攻撃できるポイントを探していた。
    それは部隊の消耗を抑えるためでもあり、神名文字弾を撃ち込むポイントを探すためでもあった。

    「やはりそうでしたか。仕方ありませんね、プランAは廃棄し、プランB[正面から削り切る]の作戦に切り替えます!」
    「このペースだと削り切る前にこっちが弾切れしそうなんだけど!?」

  • 142◆8kXeI1ONP625/05/22(木) 17:39:05

    『うぅ……サオリ姉さんも姫ちゃんも頑張ってください……!』
    『……信じてるから、勝って』

    ヒマリとキサキの肉体は作戦現場に出ることに向いていないため、実質的にヒヨリとミサキは祈ることしかできない。

    「……ヒヨリ。お前ならこの状況で狙撃手としてどう動く?」

    サオリは無線機越しにヒヨリに問うた。

    『えっ……?あ、えと……そうですね……今回の敵は移動しないですし、有視界で交戦中です。広範囲に攻撃してくるのがかなり痛いので、いったん戦場から離脱したと見せかけ、私の武器の長射程を活かしてすごく遠くの位置からピンポイントで狙います……合ってますか?』
    「正解だ。教えた戦術をまだ覚えているようだな」

    サオリはそう返すや否や、ヒエロニムスに背を向けて走り出した。

  • 143◆8kXeI1ONP625/05/22(木) 17:39:43

    「あっ、ちょ、サオリ!?私とアツコでここを凌げってのはキツいよ!!」

    風のように地下通路を駆け抜けるサオリは、ヒマリの横を通り過ぎるときにヒヨリの愛銃も抱えて走っていく。

    「なるほど、そういうことですか。キサキ門主、こちらでも援護しますよ!」
    「……疾く終わらせよ」

    火力が足りなくて弾切れするなら、一発の火力を大幅に底上げすればいい。とてもシンプルな回答だ。

  • 144◆8kXeI1ONP625/05/22(木) 17:40:30

    サオリはカタコンベ奥の突き当たりにたどり着いた。
    辺りは暗く、遠くに微かに光が見える程度。

    『サオリさん、聞こえますか?こちらでも私とキサキさんで援護いたしますから、サオリさんは狙撃をよろしくお願いします』

    通信機からヒマリの声が聞こえる。

    (私は、アリウスの皆を守ってみせる)

    アツコ、サオリ、ヒヨリ、アズサ。スクワッドの皆のことを思い出すと、身体に力が湧いてくるような気持ちがした。

    『こちらのサポートは15秒程度。その間に決めてください』
    『これからはそなたの時間じゃ。詔令:格物致知!』
    『天才美少女ハッカーの真髄、その実力をお見せしましょう』

    「Vanitas…… vanitatum!」

    サオリは微かに見える光を狙って引き金を引く。
    一瞬の閃光と轟音と共に、大口径の弾丸が飛んでいった。

  • 145◆8kXeI1ONP625/05/22(木) 17:41:25

    イオリは焦っていた。アツコの回復とエイミのシールドで耐久面の不安は薄かったが、慣れない身体で思うように動けないことと、自分の弾はどうもヒエロニムスには通りにくいことで苦戦を強いられていたからだ。

    「っ……このっ……ゲヘナ風紀委員会のスナイパーを舐めるなよ……!」

    高火力の弾丸を3連射。戦場を飛び回りながら発射される攻撃は相手にとっても避けにくく、迎撃しにくい……はずが。

    「うわぁっ!?」

    力加減を間違えて跳んだ先には大きな石柱。勢い余ったイオリは盛大にぶつかり、銃も落としてしまった。

    「痛ぁ…………げっ!?」

    打ち付けた場所をさすりながら上を見上げると、ヒエロニムスの大きな手が自分を潰そうと迫っていた。
    咄嗟に地面を転がって身をかわす。
    しかし、それによって取り落とした愛銃との間の差が広がり、銃と自らを隔てるように巨大な手が鎮座している。

    「ヤバっ……!」

    丸腰になってしまったイオリに対し、ヒエロニムスは次の攻撃動作に移行する。
    避けるのは間に合わないと悟ったイオリは、衝撃に備えて頭を抱えた。

  • 146◆8kXeI1ONP625/05/22(木) 17:42:11

    瞬間。

    [ーーーーーーーーーー!?!?]

    ヒエロニムスの咆哮が響き、その巨体が地面に伏した。

    「サオリさんの狙撃成功を確認。イオリさんはグロッキーのうちに例の神名弾でトドメを!」
    「え?あ、ああ!」

    イオリは愛銃に駆け寄り、先生から預かった特殊弾を込める。

    「よしっ、リロード完了!覚悟しろ!」

    イオリは跳び上がり、空中でライフルを構え──。

    「これでっ……トドメだ!」

    弾丸はヒエロニムスの無貌の顔面を捉え、その中心を貫いた。

  • 147◆8kXeI1ONP625/05/22(木) 17:42:58

    声にならない叫びがカタコンベを満たし、そして消えていく。ヒエロニムスは現れた時と同じように、空中に溶けていった。

    「……ふぅ……なんとか倒せた……」
    『みんなお疲れ様。こっちでも反応消失を確認してるよ』
    「……イオリ、途中でいきなり前線を任せて済まなかった。怪我はないか?」

    狙撃ポイントから戻ってきたサオリが頭を下げた。

    「ああ、いや、頭上げてくれ!……その、アンタがあの時狙撃してなけりゃジリ貧なのは目に見えてたからさ」
    「そ、そうか……ならいいが……」

    「ユガミは倒したと言うのに、身体が戻る気配が無いのう」
    『……4箇所全部を倒さないとダメなのかもね』
    『なら、ほ、他のところにもお手伝いに行った方がいいんでしょうか……!?』
    「まあ、他のポジションのチームも精鋭揃いですし、ちょっと休憩をしてからでもよろしいでしょう。先生からはユガミが落とした神名文字の回収もお願いされてますから」
    「賛成。ドローンの連続起動は疲れた……」

    そして、皆は神名文字の欠片を拾い集めつつ、カタコンベの地下でしばしの休憩をとった。

  • 148◆8kXeI1ONP625/05/22(木) 17:43:20

    本日の更新は以上です!

  • 149二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 17:45:32

    生徒じゃないけどゴズとユズが入れ替わったら面白い事になりそう(まぁ生徒同士って前提だからあり得ないけどね)
    あと、今日の更新乙です。

  • 150二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 23:46:28

    アザミとアケミも入れ替わってるんだろうか?

    それはそうと、更新乙でした!

  • 151二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 07:06:53

    あさほ

  • 152二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 13:38:29

    ひるほだぜっ!

  • 153◆8kXeI1ONP625/05/23(金) 19:03:55

    【Side ゲヘナ】

    「うぅ……寒いけど暑い……」
    「我慢してください、イブ……フブキさん。これでも虎丸の中に居られるだけマシですよ」
    「だとしてもなんで水着なのさ!」
    「仕方ないでしょう、フブキさんの放水がゲブラには有効らしいので」
    「イブキちゃんが風邪引いちゃうよ……」

    歪曲・ゲブラの出現により、周囲の気温は真冬並まで下がっていた。
    にも関わらず、戦術(スキル)の関係でフブキ……を宿したイブキのボディは水着を着させられていた。一応、イブキを案じた戦車長の判断でガンガンに暖房を焚いているが、温度調整に難航している。

    「改めて考えると暖房マックスで暑い密室でイブキちゃんを水着にしてるのって事案すぎない?当事者じゃなかったら流石に職質してるよ」
    「…………とりあえずさっさと終わらせますよ」
    (逃げたなコイツ……)

  • 154◆8kXeI1ONP625/05/23(金) 19:04:23

    「イロハさん!フブキさん!戦闘に集中してください!全部聞こえてますよ!」

    虎丸の外で戦闘サポートに回っていたアコが叱責する。

    「天雨アコ!もし偉大なる万魔殿の議事堂に傷でもつけたら……分かっているな?」
    「百も承知です!カヨコさんは建物側に回り込んでゲブラの牽制を!ムツキさんもそれに合わせて爆弾の設置をお願いします!」
    「わかった。ムツキ、いける?」
    「もっちろん!」

    カヨコとムツキは指示された位置へと向かった。

  • 155◆8kXeI1ONP625/05/23(金) 19:05:00

    (話には聞いていましたが、やはり氷の柱が厄介ですわね……)

    ハルナは悩んでいた。
    氷の柱は都度破壊しているが、その生成ペースが速い。動き続けないと凍ってしまうような寒さでは、攻撃を避けようにも動きが鈍くなる。それくらいにとにかく寒い。寒い。

    (さっさと倒して何か温かいものを食べたいです……そういえば去年の冬に百鬼夜行の北まで行って食べた鍋はとても美味でしたね……優しい出汁に野菜の旨味とカニの滋味が溶け出して……ゲブラが本来活動するような極地近海でよく採れるといってましたが…………カニ?)

    そこまで考えてふと気がついた。
    堅牢な外骨格とトゲトゲしい見た目。そしてやや不安定そうな長い脚。ゲブラって甲殻類っぽくありませんか?
    ということは、弱点も似ているのでは?つまり、カニ脚を剥くように関節の裏の一点を狙えば動きを止めることも可能なのでは?

    「試してみる価値はありそうですね」

  • 156◆8kXeI1ONP625/05/23(金) 19:05:36

    ハルナはスコープを覗き、逆関節であるゲブラの膝の裏にあたる箇所に狙いを定める。ハルカの身体では少々身長が低い分、ライフルが身体に合っていない気もするが、仕方ない。そのまま引き金を引いた。

    ガンッ。

    鈍い金属音と共に鉛弾が着弾する。ゲブラは僅かに身を傾かせるが、何もなかったかのように身体を立て直した。

    いける。
    ハルナはそう確信した。一気に畳み掛ければ、相手の脚を封じられる。

    「ハルカさん!ゲブラの膝の部分を狙えますか?」
    「は、はいっ!?あ、わ、分かりました!!」

    「射程は少し足りないので……この位置からなら……!う、うわぁぁぁあ!!!」

    ハルカは攻撃を掻い潜りながらゲブラに接近し、ショットガンを乱射する。拡散する弾丸はゲブラの関節部全体に当たり、金属を凹ませていく。

  • 157◆8kXeI1ONP625/05/23(金) 19:06:21

    [ーーーーーーーーーーーー!!]

    金属が軋む音と共に、ゲブラは片膝を地面に付けた。

    「あ……や、やりました!」
    [ーーーーーーー!!!]

    脚を折られた報復か、ゲブラは嬉しそうに報告するハルカ目掛けて近くにあった自動車をワイヤーで投げつけた。

    「ハルカさん!」

    ハルナは走っていた。全速力でハルカに駆け寄り、タックルするかのように彼女を突き飛ばした。
    投げられた自動車はそのまま空を切り、遠くで地面に激突して爆発した。

    「え……あ……?」

    呆気に取られたように瞬きをするハルカ。

    「……お互い、怪我がなくて良かったですわ」

    ハルナは起き上がり、手で砂利を払う。

    「た、助けてくださり……あ、ありがとうございます……でも、なんで……?」
    「救急医学部の病院食はあまり美味しくありませんからね。それに、ハルカさんも痛いのは嫌でしょう?」

  • 158◆8kXeI1ONP625/05/23(金) 19:06:46

    「ゲブラの左脚破損を確認しました!このまま一気に決めます!総員、最大火力で攻撃!アルさん、そろそろ神名弾の用意を!」
    『ええ、聞いているわ。よくやったわね、ハルカ』
    「あ、アルさまぁ……光栄ですぅ……!」

    アコの指示でその場の全員が一斉に攻撃を始める。

    「みんな、聞いていたかしら?万魔殿、総攻撃よ!」
    「ガンガン撃っちゃって〜♪」
    「主砲発射!」
    「めんどくさいけど……まぁ、別にこれでいいよね……?」

    爆炎。爆風。轟音。閃光。周囲の氷を全て溶かしきるほどの熱量。
    それを一身に浴びたゲブラはたまらず、脚を引きずってでも逃げ出そうとした。

    「っ……!この機を活かす!」

    しかし正面に回り込んだカヨコの迫力に気圧され、ゲブラの脚が一瞬止まった。

    「社長、今だよ!」

  • 159◆8kXeI1ONP625/05/23(金) 19:07:57

    「ナイスよ、カヨコ!ぶちのめすわ!」

    いつも通りに照準を定め、いつも通りに指先に力を入れる。
    身体が違っていても、その感覚は魂が覚えている。

    赤紫の鉄塊から放たれた、淡いピンク色に輝く弾丸はゲブラの装甲を抉り、深々と機械の身体に突き刺さる。
    一瞬の静寂と、爆発。

    爆散したゲブラの破片は、地に着くことなくかき消えていった。

  • 160◆8kXeI1ONP625/05/23(金) 19:08:55

    「対象消滅。皆さん、お疲れ様でした」

    アコは少し緊張の解けたような声で報告した。
    気温はいつも通りに戻っていた。

  • 161◆8kXeI1ONP625/05/23(金) 19:10:53

    本日の更新は以上です!

    (このペースだと2スレ目突入するかしないかくらいで完結しそうで、ちょっと今後の分量に迷ってますが、あと1週間くらいで完結する予定です)

  • 162二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 01:17:55

    今の所は順調に討伐が進んでるけどどうなるか・・・

  • 163二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 07:30:26

    あさほ

  • 164二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 13:02:51

    昼ほ

  • 165◆8kXeI1ONP625/05/24(土) 17:54:52

    【Side トリニティ】

    [♪ーーーーーーーー!!]

    荘厳な音楽が圧力を持って押し潰すような感覚。うるさい訳では無いが、音自体が殴りかかってくるような不気味さに背筋が冷える。爆発の衝撃には慣れているキヴォトス人にとってもこの感覚は慣れないようだ。

    「うーん、本来こういう場所では静かにするものだよ?趣味悪いね☆」
    「うっ……不気味な歌っすけど……!聖歌隊は正実の皆でなんとかするっすよ!一斉射撃っす!」
    「フィリウス分派砲兵部隊、前進してください」

    何処からか降り注ぐ隕石。
    イチカ率いる正実部隊の弾幕。
    ナギサの砲兵部隊。

    いずれも決定打にはなっていないものの、着実にグレゴリオの戦力を削ってはいるようだ。

  • 166◆8kXeI1ONP625/05/24(土) 17:55:53

    「暴れる患者を沈静化します!」
    「わーっ!待って待って!ミネ団長、前に出過ぎ!」

    いつものように「救護」をしようと跳び上がるミネを、ミカが制止する。

    「何をなさるのですミカさん!」
    「盾持ってても前線に出すぎると私の身体に傷がついちゃうよ!」
    「ミカさんの耐久ならその辺の弾丸程度では傷つかないでしょう!?それに怪我をした場合は私が責任を持って治療いたしますのでご安心ください!」
    「もーっ!そこじゃないって!ミネ団長そういうところだよ!?」

    「全く……なんというか、むしろミカと入れ替わったのがミネ団長で良かったのかもしれないな……お似合いだよあの2人は」

    セイアが呆れたように呟く。

    「気心の知れた仲ですからね。私はそれよりもハスミさんとカスミさんを案じておりますが……」

  • 167◆8kXeI1ONP625/05/24(土) 17:56:51

    「さあ掘削!掘削だ!私のカンによればトリニティの貴重な建築物の下にこそ未知の秘湯が眠っている!このドサクサに紛れて地質調査を……グエッ!?」

    正実に扮した温泉開発部のメンバーに指揮をするカスミを、ハスミのライフル弾が撃ち抜く。

    「変な動きをしたら容赦しないと言いましたよね?何か申し開きはありますか?」
    「あー……これはアレだよ、地下から敵の裏に回り込んで死角から攻撃する作戦だ!決して温泉をこっそり開発しようだとかそういう意図ではなくてだな」
    「この地下に源泉はありません。地下資源の調査は既にトリニティが終えております。そもそも地下に水脈が流れているなら地盤の関係でこんな建物が何百年も残っていないでしょう」
    「むむむ……自分の姿をした他人に叱られるのは何とも言い難いむず痒さがあるな……」

    カスミは顔をしかめる。

    「自分が情けない顔をしてるのを見ながら叱るのもかなりメンタルに来るものがありますよ」

    しばしの睨み合いをしたあと。

    「「……フンッ!」」

    互いに顔を背けた。

  • 168◆8kXeI1ONP625/05/24(土) 17:57:42

    「せめて、今くらいは仲良くしてほしかったのですが……」

    サクラコは少し悲しそうな顔をする。

    「仕方ないさ、名前が似ているというだけで互いに相容れない立場を押し付けられたんだ。その鬱憤もあるのだろう……せめてそれはグレゴリオに向けてほしいものだが」

    [♪ーーーーーーーーー!!]
    「おっと……流石に我々も戦闘に集中しないとね。ミカ、支援は要るかい?」
    「ん?あ、セイアちゃんお願い!」
    「承知した。何、語らうことに異存はないとも」
    「さんきゅ!うん、動きやすくなったかも!」

  • 169◆8kXeI1ONP625/05/24(土) 17:58:56

    「主よ、この弾丸に祝福を!」
    「サクラコさん、合わせます。砲手、支援を」
    「参ります!戦場に、救護の手を!」
    「面白そうじゃあないか!行くぞ行くぞ!とーぅ!」

    サクラコの声に合わせ、一同はグレゴリオ本体に総攻撃を始めた。
    息の合った一斉攻撃に怯んだのか、聖堂内を支配していた圧力が少し緩む。

    「ナギ……じゃない、ナグサちゃん、だっけ?一緒に決めよう!」
    「……うん。大きな敵相手なら、少し得意だから……」

    「それじゃ、あなたたちのために……祈るね」
    「これが、私にできる最善……!」

    群青に塗られた2丁の銃から、銃弾が発射される。
    見た目こそ蒼森ミネと桐藤ナギサだが、その魂は愛する学校を守ろうと足掻いた聖園ミカと御陵ナグサだ。
    逆境でこそ強くなる2人の弾丸はグレゴリオの力をみるみると削いでいく。

    [ーーーーーーーーーーーーー!!!!]

    「トドメ、お願い!」
    「わかった。皆を、守れるのなら……!!」

    百蓮の銃口から少し桃色がかった火花が散る。それはまるで蓮の花のようで。

    [ーーー!ーー、ーーーー……♪]

    グレゴリオの演奏は、最後の旋律を弾き終えることなく幕を閉じた。

  • 170◆8kXeI1ONP625/05/24(土) 18:00:28

    「……終わったかな」
    「わ、私、勝てたんだ……」
    「お疲れ様です、ナグサさん。紅茶は如何ですか?」
    「怪我をされた方は手を挙げてください!直ちに治療に移ります!」

    口々に喜びと労いの言葉をかけあう。

    「ハーッハッハッ!これで一件落着のようだね!それでは余計なことが起きる前に私は退散しよう!」

    その中に紛れ、高笑いして逃げ出すカスミ。
    と、それを追うハスミ。

    「このっ……待ちなさい!せめて私の身体を返してからにしなさい!!」
    「うわっ、翼の抵抗が大きくて走りづらいな!?」
    「……手伝ってくるか」
    「あら、ツルギさんも鬼ごっこに参戦ですか?頑張ってくださいね」
    「何やってるんすか先輩方……」

    グレゴリオを倒した安心感からか、どこか和やかな雰囲気に包まれていた。

  • 171◆8kXeI1ONP625/05/24(土) 18:00:46

    「あ、ミネ団長!お怪我はありませんか?」

    一息ついて戦場の片付けを始めようという頃、救護騎士団の2人と補習授業部のハナコ、そしてアビドスの制服を着た生徒が入ってきた。

    「げっ、浦和ハナコ……ミネ団長はあっちだよ」
    「いえ、違います!私は朝顔ハナエです!そうか、団長はミカ様と入れ替わってたんでしたっけ?」
    「あら?ミカさんが今、げっ、と仰ったような……?」
    「あちゃー、本人もいたんだ……聞こえてた?」
    「ええ、ばっちりと」
    「あ、ハナコさん!こちらの方で治療のお手伝いをしていただけますか?」
    「はい、只今。それではミカさん、また今度♡」

    「セリカさん!その包帯の巻き方だと血流が滞ってしまいますよ」
    「え?あ、ごめん!セリナ、もう一回お手本見せてくれない?」
    「はい、勿論!アビドスでも治療できる人は多いほうが良いでしょうし、この機会にぜひ覚えて帰ってくださいね」

  • 172◆8kXeI1ONP625/05/24(土) 18:01:23

    『……というのがチームトリニティの顛末だ。総じて、無事にグレゴリオを倒すことができたと言えよう』
    "なるほど、歪曲・グレゴリオは無事倒せたんだね。よかった、ありがとう"

    "……後はD.U.のユガミだけだけど……大丈夫かな"

    先生はタブレットから入る通信を聞いて、シャーレで一人、そう呟いた。

  • 173◆8kXeI1ONP625/05/24(土) 18:03:32

    本日の更新は以上です!

  • 174二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 18:41:58

    乙乙
    D.U.というとペロロジラか…。カオスの予感

  • 175二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 00:38:06

    夜ほ

  • 176二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 07:45:40

  • 177◆8kXeI1ONP625/05/25(日) 15:13:24

    保守

    書き溜めのストックを昨日で吐ききったので本日ちょっと遅れるかもです

  • 178◆8kXeI1ONP625/05/25(日) 17:59:24

    【Side 美食&スイーツ】

    『"ヨシミ、そっちはどう?"』
    「だいぶキツい……!戦線崩壊はしてないけど、このペースだといつまでかかるか……!」

    ペロロジラと交戦中の美食研とスイーツ部の連合軍。
    その合間に、ヨシミは先生からの通信に応じる。
    正午頃から始まった戦闘は膠着状態に陥り、既に日が傾き始めていた。
    D.U.アオバ区を担当している生徒はサポート寄りの戦術が得意な生徒の方が多く、前線維持には向くものの戦況をひっくり返す力は弱めであった。

  • 179◆8kXeI1ONP625/05/25(日) 18:00:04

    「カズサ、下がりたまえ!ビームが来る!」

    ペロロジラの目から放たれる白い熱線。
    それをナツは盾で受けとめる。
    しかしその盾すらも、長引く戦闘の影響で綻びかけている。

    (あと3回……いや、2回も受ければ盾が壊れそうだ……!)
    「無茶しないで、ナツちゃん!」
    「緊急回避です!」

    アイリの叫びに応じるように、イズナがナツを連れて後ろに下がる。

    [-----!!]

    熱線を防がれたペロロジラは怒り、ペロロミニオンを4体生み出した。

    「増援か……厄介だな」
    「おかわりはうれしいですが、こちらのおかわりは嫌ですね~☆」

  • 180◆8kXeI1ONP625/05/25(日) 18:00:48

    「う~ん、これっ!」

    イズミがイズナの服の中から手裏剣を取り出してミニオンに投げつける。
    手裏剣はペロロミニオンめがけて飛んでいき──。

    むにょんっ。

    「え、ええっ!?なんか跳ね返されたぁ!?」
    「なっ……!?」

    ペロロジラの着ぐるみのような表皮の弾力に手裏剣は刺さらず、あらぬ方向へと飛んで行った。
    その様子を見たアズサが僅かに狼狽える。

    (あの感じじゃ神名文字弾が当たっても跳ね返されるかもしれない……)

    そんなことを考え、僅かに攻撃の手が緩む。
    その隙をペロロジラは見逃さず。

    [-----------!!!!]

    ヒト1人分ほどの直径の水球をアズサに投げつけた。

    「うわっぷ!?」

    反応が遅れたアズサは水球攻撃をもろに受け、吹き飛ばされてしまった。

  • 181◆8kXeI1ONP625/05/25(日) 18:01:41

    「情けないですね杏山カズサァ!!!!!!!!!」

    どこからか威勢のいい声が聞こえてきた。
    音の方を向くと、近くのビルの屋上で、朱色のチーパオに身を包んだ少女が仁王立ちをしていた。

    「……は?」
    「とうとうライバルの顔も忘れましたか!!!!!」
    「……あの、レイサさん。確かその……カズサさんとアズサさんが入れ替わっているんだったと思うので、今吹き飛ばされたのはアズサさんかと思います……」

    後ろから、呆れたような困り顔で水色と薄紫の髪の少女が現れた。

    「えっ、レイジョさん、そうでしたっけ!?えーと……とにかく!」

  • 182◆8kXeI1ONP625/05/25(日) 18:02:09

    「私の知っている杏山カズサも白洲アズサも!!どんな状況でも強く立ち上がりました!!!!ですから、その……頑張ってください!!!!!!!!」

    僅かに照れたような顔を見せつつ、その声には2人を信じる気持ちがこもっていた。

    「因縁のライバルが激励する展開……なんという浪漫……これはトリニティを恐怖で包んだ怪猫キャスパリーグ復活の兆しと言って過言ではムググ」
    「ナツうるさい!」

    カズサはナツの口を手でふさぐ。

    「ありがと、宇沢!!」
    「あぁ、応援には応えるものだ。虚しくとも全力を尽くしてみせよう」

    2人の返事を聞き、レイサは大きく手を振った。

    [------???]
    「あっ……まずいです……完全にこっち向いちゃいました……!!レイジョさんどうしましょう!?」
    「大声の出しすぎですね……とりあえず一旦こっちでできるだけ耐えましょう!」

    レイサの大声に気づいたペロロジラが、彼女たちのいるビルの方を向く。
    既に時刻は夕方。ペロロジラの背中にキラリと夕日が反射した。

    「皆、聞いてくれ。ひとつ作戦を思いついた」

  • 183◆8kXeI1ONP625/05/25(日) 18:03:35

    本日の更新は以上です!

  • 184二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 23:42:14

    更新お疲れ様です!

  • 185二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 07:20:08

    朝保守

    レス数が残り少ないので、今日の更新時に次スレ立てますね

  • 186二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 13:35:24

    建てる前に落ちそうなんで保守

  • 187二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 20:53:06

    一応保守

  • 188◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:05:59
  • 189二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 21:17:31

    >>188

    たておつです

  • 190二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 23:44:00

    おつうめ

  • 191二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 23:45:15

  • 192二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 23:50:27

    梅ソース

  • 193二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 00:07:41

    埋めるべ

  • 194二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 08:26:24

    埋めます

  • 195二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 08:26:49

    梅干し

  • 196二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 18:07:19

    ウメッシュ

  • 197二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 18:24:06

    梅のパンナコッタ

  • 198二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 18:32:24

    うめ

  • 199二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 18:33:45

    梅田埋めた牢

  • 200二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 18:34:14

    このスレはおしまい

オススメ

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