- 1二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 16:52:54
- 2二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 16:54:14
- 3二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 16:58:36
- 4125/05/14(水) 17:19:29
- 5二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 17:29:15
恐らくこの先生は顔がいい、ハルナを知っている生徒なら血繋がってるかな? と思うぐらいには顔の良さが似ている
- 6二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 17:30:04
兄様派です。かかってこいお兄ちゃんども
- 7二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 17:39:16
無意識のうちに兄との食事は掲げる美食とはまた別の、特別な存在として認識しているハルナはいる
- 8二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 17:42:35
人前では先生呼びなのにふとした時にお兄様が出てしまい、ジュンコにからかわれるハルナはいる
- 9二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 17:43:59
多分この先生は食べ方とか上品なんだろうな
- 10二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 17:57:47
- 11二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 18:42:51
ご相伴にあずかる美食研メンバーもいそうだな
- 12二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 19:32:43
ハルナと兄先生は好物の系統は似ているのか、正反対なのか…
- 13二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 19:51:33
- 14二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 19:59:31
ハルナに攫われた後は毎回兄さんが謝罪しに来るから内心役得と思っているフウカは居ますか?
- 15二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 20:01:37
2人だと昔みたいに「お兄ちゃん…///」って呼んでくれるんだよね
- 16二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 21:31:13
- 17二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 22:25:21
兄の手料理でハルナが好きなのは昔、風邪を引いた時に兄が作ってくれたおじや…とかはあると思う
- 18二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 22:37:05
このレスは削除されています
- 19二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 22:45:33
戦闘終了後とかに先生に頭を撫でられる時は表情には出さないが、代わりに尻尾がブンブン振りまくってて喜びを感じまくってそう
- 20二次元好きの匿名さん25/05/14(水) 23:36:50
まあ…ハルナみたいに顔のいい先生が調理場に立っている所を見たいと言われると見たいよ、誰だって見たいよ
- 21二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 08:18:01
羽根もぴょこぴょこ動いていそう、身体は正直
- 22二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 08:18:31
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- 23二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 08:27:31
少食であるが故に体型に変化なし、体重増加もなさそうに見えるハルナだが兄には見通される…横っ腹掴んで「〝食べ過ぎじゃない?〟」と言われて、耳真っ赤になるハルナはいてもいいと個人的に思う
- 24二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 10:21:35
もっと幼かった頃は「にいに」とか言っていたんだろうか、それが時が経つにつれて兄様になったと
- 25二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 13:19:59
今回の復刻イベントでも妹が迷惑をおかけしたので、お祭り運営委員会に先生として、兄としても謝りに行っているんだろうな…
- 26二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 17:13:20
恐れを知らぬ美食研の会長といえど、兄に咎められるのは堪えるので目の届く範囲では爆破はしなさそうな、逆に兄の事なぞ気にせずに爆破しそうな…どちらも有り得そう
- 27二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 18:50:15
兄に諭されている最中に近くの店が爆破されて、必死に自分じゃないと首を横に振る事がある妹ハルナはいるかもしれない…
- 28二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 19:23:43
- 29二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 20:04:27
ここは兄と妹で折半するようにしよう
- 30二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 20:42:32
- 31二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 20:48:40
- 32二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 22:46:40
兄は兄で幼ハルナに「大きくなったら、おにーちゃんとけっこんするのー」って言われた事を思い出してそう
- 33二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 22:48:27
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- 34二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:01:08
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- 35二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:05:55
幼ハルナ「おにーたま!おにーたま!」(後ろをちょろちょろついてきて食べているものに何でも興味を示す)
小ハルナ「おにいさま、おにいさま」(聞き慣れない食べ物の名前に片っ端から興味を示す)
ハルナ「ご無沙汰しておりますわ、お兄様」(先生が家を出た後令嬢教育の反動からハジケて現ハルナ化。でもやっぱり何か食べていると興味を示す)
こういうのはどうだい - 36二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:35:29
これは目に入れても痛くない可愛い妹ですね、本当に幼い頃は兄から食べさせて貰わないとよく泣いてそう
- 37二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:39:54
ちっちゃい頃にふたりでたい焼き食べた思い出があるんだろうな…
- 38二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 07:08:25
- 39二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 07:10:06
髪と目の色含めてかなり似てるんだよね
- 40二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 14:56:44
先生の手料理を毎日食べようと(=結婚)するには、まず妹の舌と胃袋を掴まないといけなさそうだな
フウカはいけるとして他はルミかミモリか…? - 41二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 17:46:41
ここは全員で料理対決してもらおうか、審査員は妹と兄で
- 42二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 17:51:02
ハルナそっくりの女先生の可能性はありませんか!?
- 43二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 19:17:14
- 44二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 20:03:22
- 45二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 23:07:19
- 46二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 03:31:37
血の繋がってない兄妹とかはスレチ?
- 47二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 05:07:03
- 48二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 05:54:25
- 49二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 10:06:51
なら結婚できるな!
- 50二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 17:42:06
茶室で一緒にカプ麺食べるんだろうな…
- 51二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 20:53:09
兄(血が繋がってる)って勘違いしたまま成長して後々実は、って分かった時に捕食者になるんだよね…
- 52二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 22:05:36
- 53二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 22:22:58
- 54二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 23:15:03
振り向かせるんなら捕食者になる必要はないのでは…アクセル全開すぎでは…?
- 55二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 06:18:50
一緒に妹とディナー食べに行っているのをクロノスに激写されて、『シャーレの先生、生徒と密会!?』みたいな報道される先生がいるかもしれない
そして事態を収拾する為に兄妹である関係を大っぴらにする展開が…の前に、クロノスの社屋が爆破されるのが早い気がする、個人的には - 56二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 07:02:42
- 57二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 12:18:58
- 583525/05/18(日) 17:15:39
「先生って、意外と家庭的なんですね」
当番の子と夜食をとっているとき出た一言。
"まあ、一人暮らしも長いからね。ちょっと凝ったりしたくなるんだよ"
「おいしいです」
着々と減っていく二人分の夜食、作るのにも慣れた品と深夜の時間が、先生の過日の記憶を呼び起こす。
『おにいさま!おにいさま!』
彼を呼びながら、とてとて後をついてきた妹。思えば先生の料理に対する想いは、この頃が始まりだったような気がする。
『おにいさま、何をたべているのですか?わたくしにもひとくち……』
『しょっぱい……でも、おいしい!』
『おにいさま、このお料理はどういうお味なのでしょう?』
自分もまだ高校生だった、世間を知らない子供とそれ以上に無垢な幼子。けれど産まれた瞬間から見てきた妹のきらきらした目は雄弁に食べてみたいと主張していて、それを無下にできるほど軽い愛情ではなかった。
料理本を買ったり、厨房に足を運んだり、料理長に頭を下げたり。最初に自分の手で完成させた料理は、そう。
『ん~!!すごいです!おいしいです、おにいさま!』
少し作りすぎて二人半ほどの量になったそれの実に半分以上は妹の小さな胃の中に消え、満足して微睡む彼女の横顔を写真に収めた。
遠い日の思い出。両親と仲違いをし、教員を目指して家を飛び出すより前の、それでも彼らとの溝は深かった、大人と子供の境目で悩んでいたなかの、暖かな思い出だった。 - 59二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 18:02:50
ッスー(尊みで消えゆく音)
- 60二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 18:45:57
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- 613525/05/18(日) 19:51:56
らいぶを見ながら続きを書くぞ俺は……
- 623525/05/18(日) 20:32:32
"だから、聞いたときは本当に驚いたんだよ?"
冷たい石造りの地下。鉄格子で隔てられた向こうの少女に話しかけながら、先生は眉尻を下げた。ひんやりして少し湿った空気の中、話しかけられた少女は銀の髪を揺らしてガーネット色の瞳を細める。
「そうですわね。私も驚きましたわ。こちらにいらっしゃるとは――夢にも思いませんでしたから」
少女、黒舘ハルナは、視線に驚異と歓喜を交えて数年ぶりに会う家族を見つめた。
「ご無沙汰しております。お兄様」
牢番の風紀委員が驚きに声を漏らす。そちらへ視線を移すと、先生は牢の扉から一歩下がった。
"私を中に入れてもらえる?ヒナに話はつけてあるから"
「はっ……はい!」
きしんだ音を立てて扉が開き、そして閉まる。しかしいざ距離が縮まるとハルナはたじろいだように一歩下がり、自分より一段高い目線の先生と視線を合わせたり、外したりとせわしない。
そっと手が伸びてくると肩を跳ねさせたが、先生の表情が優しいままであることに気づくと激しく揺らめいていた背の翼が静かに垂れ、腕を伸ばして抱擁に応じた。
"……大きくなったね。それに、綺麗になった"
「お兄様は、少し穏やかになられましたか?」
"年を取った、って言ってもいいんだよ"
「いいえ、とんでもないことです。穏やかなのはお顔ですわ。お心が安らいでいるようで、安心しました」
"そうだね。楽しくやってるよ。……でもね、ハルナ"
先生は抱擁を解くと妹の面影のある整った眉を寄せ、厳しい表情になった。
"ゲヘナ屈指のテロリスト、牢屋常連の問題児……私の可愛い妹は、どうしてそんなところの首魁なのかな?"
「っ……お、お兄様」
"先生として、兄として、しっかり話を聞かせてもらうからね" - 633525/05/18(日) 20:54:03
「黒舘兄妹と過日の晩餐」って感じでもうちょっとだけ続くんじゃよ。ただし次は明日
- 64二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 23:01:31
- 65二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 07:29:32
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- 66二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 08:37:30
最終編で美食が付いてきたのも「高高度で食べるご飯の味が知りたい」は建前で「お兄様が心配」と言うハルナの本音を美食のみんなが汲み取って…だったら美味しいですね
- 673525/05/19(月) 15:53:17
兄先生の外見、好きに盛っていいと思う?
- 68125/05/19(月) 16:32:04
- 693525/05/19(月) 16:35:23
大丈夫、銀髪ポニーテール先生(男性)になるだけだから。そんなに盛らないよ!
- 70二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 22:04:39
- 713525/05/19(月) 22:56:25
数日後。美食研究会のメンバーは釈放されることになったが、いつも早々に何か食べに行こうかと始まる議論がこの日はなかった。
それもそのはず、首魁たるハルナが神妙な顔でどこかへ歩を進めているからである。ジュンコが視線でついていく?と問い、アカリがにっこり笑って肯定した。イズミもわくわくした表情を隠さず、四人は塊のまま歩いていく。
電車に乗り、D.U.地区まで足を運んで、そのまま郊外へ。天空までそびえる白いビルの入口へ着いたとき、ついにハルナは足を止めた。
待つこと数分、エントランスのオートドアが開き、スーツ姿の男性が歩み出てくる。銀の長髪を後ろでまとめ紐で括った、背の高い男性だ。彼はハルナの前で止まり、両手を広げた。
「お兄様っ!」
一瞬もためらわずその腕の中へ飛び込んでいったハルナの声に、二人を除いた全員から驚きの声が上がる。しかし幾日か前にほぼ同じ会話をした二人はつられて驚くようなことはなく、小さく頷きあって一同へ向き直った。
「皆さんにもご紹介しますわね。こちら、私の兄です」
"シャーレの先生です。ハルナの兄でもあるよ"
にわかには信じがたいと思ってしまうが、並ぶ二人を見比べると違和感はない。ハルナと同じ色の髪、顔立ちにも血縁を感じさせるものがあり、そして何よりも浮かぶ微笑があまりにもハルナに酷似していた。否、それは年齢的に、兄から妹が学んだ表情、であるのだろう。
「皆さん、私はこれから先生と少し込み入ったお話がありますので失礼いたしますわ」
"気が早いよ。みんな、少し休んでいく?せっかく来てくれたんだから"
そう、二人は兄妹で腹を割って話し合うつもりだったのだ。誤算があったとすれば美食という目的のために集った同志たちは、立派に噂話が大好きな少女であり、そんな彼女たちはこのキヴォトスをひっくり返しても二つは見つからないとびきりの話題に、興味津々だったということである。
シャーレ居住区。応接室として設えられた部屋でお茶を囲みながら、ハルナは落ち着かなさそうにアカリ達を視線で一巡し、先生に縋るような目を向けた。
とはいえ先生もハルナがあまり辛いなら遠慮してもらおうか、とワンクッション置いたうえでのこの状況であるので、今から如何ともしがたい、と小さく肩をすくめた。
それで諦めがついたのか、ハルナは深呼吸を一つして口を開いた。 - 723525/05/19(月) 23:17:48
この後ちょっと親に関する辛いシーンがあります。苦手な人は気を付けて
- 73二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:48:47
- 743525/05/20(火) 01:28:23
「……私がどうしてお父様やお母様との関りを避け、このように暮らしているか、ですわね。少々長いお話ですが、よろしくて?」
"今日は終日、時間をとってある。全部聞くよ"
「では、お話しいたしましょう。……と、いっても」
ハルナはわずかに目を伏せ、それなりに付き合いの長い美食研究会のメンバーでさえ誰も見たことのない寂しげな表情で告げた。
「全ての始まりは、あなたですわ。お兄様」
それは、先生が大学へ進む年のこと。黒舘家には壮絶な口論が飛び交っていた。
"だから言っているでしょう。僕は家業に身を捧げたりしない、自分のやりたいようにしますって"
「そんな我儘が許されると思っているのか?お前にどれだけ期待をかけているか。今までずっと応えてきただろう」
"ええ、ずっとそう教えられてきましたから。家を守れ、家を育てろ、家の名を貶めるな。そればっかりで、僕は僕のしたいことに無頓着だった"
青年期に差し掛かった、後に先生と呼ばれることになる彼は両親に初めての反旗を翻しながら、冷え切った拒絶を口にする。
"進路を決めろ、そう言いましたね、父さん。だから決めました。僕は教員を目指します"
「……お前が次男であれば、そうさせてやりたかった。だがな、お前はこの家で一人しかいない男児――」
"もう、決めましたから。そんなに後継ぎが欲しいなら、後を継ぎたい養子でも迎えたらどうです?"
それが先生と両親の最後の会話だった。資産家としてそれなりに長い黒舘の名、その権益を守り続けよと育てられた少年にとって、初めて抱いた『将来の夢』はあまりにも煌めいていて、それを目指すだけの道筋をつける目が彼にはあった。
それらが全て今まさに投げ捨てようとしている家から与えられたものだと言われても、彼の胸には冷たい軽蔑ばかりが残っていた。
――何が家だ、何が親だ。誕生日をろくに祝いもせず、息子の話より成績から『報告』を受け、幼い妹にすら構ってやらない。彼らにとって大切なのはただ血が繋がることだけだ。
そう思い、使用人たちを言いくるめて家を飛び出した彼は、結局は子供で狭い考えであったのだ。跡継ぎの息子が言うことを聞かず、まだいたいけな娘が手元にいたとき、彼が軽蔑した両親が何をするか。
それこそが、先生の記憶とハルナの現状をつなげるミッシングリンクだったのである。 - 753525/05/20(火) 02:03:43
兄が出奔してから、ハルナの暮らしは大きく変わった。まず、関わりの薄かった両親はハルナへ話しかけるようになった。使用人を介しての言伝ではなく直にいろいろと話すのは兄が突然いなくなった寂しさで気落ちしていたハルナにとって、大きな慰めであった。
しかしそれも長くは続かない。ひとしきり兄は期待を裏切った、恥ずべきであると刷り込んだのち、まだ小学校にも上がらぬハルナを令嬢として徹底的に教育させたのである。マナー、社交、教養と分別もまだ危うい童女に考える暇を与えまいと片端から教え込んでいく。
そんな日々に大好きな兄がいないことで傷心のハルナが耐えられるわけもなく、ある日とうとう両親の前でわっと泣き出した。
「おにいさまはどこですか?わたし、おにいさまのおやつがたべたいです」
反応は激烈だった。食事の質が一段上がり、マナー教育も一段上がり、食事と儀礼の境目があいまいになっていく。綺麗に、スマートに、手を動かして、口を動かして、喉を動かして、時折控えめに笑って見せて。
そうして全てが色褪せていった12歳のある日、ハルナは突然、口に入る食事の味がわからなくなった。
好みに合わない味でも表情に出してはならない。味がわからなくとも。令嬢たるもの、社交の弱みを作ってはならない。常に微笑みを浮かべ、余裕を保っていなくてはならない。たとえずっと息が苦しくとも。黒舘家たるもの、完璧な令嬢であらねばならない。
それが、ハルナの教えられた全ての根幹だった。
15歳のある日。もはや無邪気ではいられず上流階級の集う中学校に通い、家と変わらぬ息苦しさに辟易していた、そんな頃。休日にせめて少しでも気を休めようと出歩いていたとき、街角で甘い匂いに鼻をくすぐられた。
懐かしい匂いだった。今ではすっかり遠くなってしまった大切な兄との思い出が、現実と瞬時にリンクする。この香ばしく甘い匂いを、決して見失ってはならない。
そうして購入したのが、一袋のたい焼きだった。何の変哲もない、数尾のそれ。片手で食べられるおやつは、甘かった。ハルナにとっては本当に久しぶりの、食欲が望んで口にする食べ物だった。
甘美な時間を過ごし、夕食が入りきらず久しぶりに叱られた夜、ハルナはベッドで一人考えた。
――おいしいとは、何なのでしょう。 - 763525/05/20(火) 02:23:28
ハルナは慎重に事を運んだ。駄々をこねても黙殺されるだけだった機械じみたサイクルの家は、しかし行動を起こせばサイクルなんてたやすく崩すことができると知った。
キヴォトスにおける学生の立場について調べた。銃の撃ち方を身に着けた。時々、こっそり買い食いするたい焼きが、兄の応援のように背を押していた。
目を向けずに過ごしていた世間の端々に触れるたび、単調な色合いの日常が壊れていく。ベッドで記憶を呼び起こすたび、兄の優しい微笑を真似した。かじりついて眺めていた火を使う彼の手元を、作ってくれたちょっと不格好で、それでいて美味しい料理を、焦がれるほど夢に見た。
そうして、生まれた。黒舘ハルナという、高校を決めようとしている一人の少女の胸の中で、誰にも消せない情熱が。
EAT or DIE――死んだように食べるくらいなら、いっそ食べずにいたほうがいい。食べるなら、明日死んだっていいくらいに、美味しいものを。
そう固く己に誓ったハルナは、どの高校へ進むかを指示しようとする両親ににっこりと模範的な笑顔を浮かべて、一つの包みを差し出した。
プラスチック爆弾。高らかに、ためらいなく、起爆スイッチを押し込んだ。
閃光、爆音、くらくらするほどの衝撃と、己の意思を貫く妙なる喜び。ひっくり返って目を回している両親を一瞥して、兄の幻影を追うように家を飛び出した。
もちろん、総入れ替えされて以来両親に機械的に従っていた使用人たちにも、一つずつ餞別にプラスチック爆弾を置いてきた。
ゲヘナ学園。『自由と混沌』を是とする校風のそこは、がんじがらめで生きていたハルナにとってはまさに新天地。己の意思こそが生きる明日を決めるのだと信じて、ハルナはその門をくぐったのである。
以来、何度家から連絡が来ようと黙殺し、実力行使には倍する報復をもって数か月を過ごしたハルナは、世情に浸かるにつれて理解する。悪名を馳せれば、知る人ぞ知る名家など押し流してしまえるのでは?と。
そうして高く掲げた目標に、美味を愛する同志たちが集い。
『究極の美食』を探求するゲヘナ屈指のテロリスト、美食研究会は成り立ったのであった。 - 773525/05/20(火) 02:24:17
今夜はここまで。おやすみ……
- 78二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 08:48:54
- 79二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 15:36:55
ふむ……続けたまえ
- 80二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 16:14:15
- 81二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 20:09:47
ヒナ委員長も似たようなこと、考えてそう
- 82二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 21:27:58
プレ先を見て(あれはお兄様ではありません。別人ですわ)と意を決して銃を構えるけど指先が震えて撃てないハルナ
それを見た先生が震えるハルナの指に手を重ねて「大丈夫、ハルナのお兄さんはここにいるよ」と勇気付けてくれるワンシーンは感動的でしたね… - 83二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 21:57:32
- 843525/05/20(火) 21:59:57
話が終わると、室内にはなんとも言えない空気が漂った。アカリは底の知れない笑顔になり、ジュンコは悲しげに顔をくしゃくしゃにし、イズミはいまいち感情が同期できていないのか先生とハルナを見比べては眉を八の字にしている。
一方の先生はといえば前半は微かな怒りを、中盤には顔色を悪くし、後半を聞き終わるころには表情だけでなく雰囲気そのものが落ち込んでいた。
"……つらい思いを、させてしまったね。ハルナ"
「辛くはなかった、と言えば嘘になりますが……お兄様を恨んではおりません。私もまた、お兄様と同じようにやりたいことを見つけたのですから」
"む……それなんだけどね"
先生が難しい顔をして、慎重に言葉を選びながら返す。
"兄としても、先生としても、ハルナのやりたいことは応援したい。でも、さすがに店舗爆破とかは応援できないな"
今日の第二の話題はそれだった。ハルナの、ひいては美食研究会の不法行為を、根本から改善せねばならない。それはシャーレの先生としての義務であり、だがそれ以上に家族としての願いだった。
「お兄様。私はお兄様の教員になるという夢を応援こそすれども、共感することはついぞありませんでした。ですから、私の理想をよしとしないのも、お兄様を責めるべくはありません。私の行いを咎めるのであれば、どうかお立場を、シャーレの先生として……」
「ハルナァッ!」
ばんっ!と勢いよく机を叩いて立ち上がったジュンコが、ハルナの胸倉を掴まんばかりの勢いで詰め寄った。
「あんた、何言ってんの!?そんな顔で先生がはいそうですかって言うと思ってるわけ!?」
「じゅ、ジュンコさん?顔、とは……」
ハルナが頬に手をやると、指先を何かが濡らした。熱いそれは照明をきらりと照り返し、透明だった。
「……思いっきり、泣いてるじゃない」
やるせなくなったのか手を放したジュンコに代わって、先生がハルナの目元へハンカチを当てる。
"擦ったらだめだよ。……ハルナ、私は確かに違法行為を止めなくちゃいけない。だけど、ハルナの兄であるのも諦めるつもりはない"
「で、ですが、お兄様」
"私は隠さないよ。ハルナが妹であることに、噓をついたりなんてしない。聞かれたら、正直に答える" - 853525/05/20(火) 22:00:35
- 86二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:02:37
へっへっへっ、ありがてぇ……
- 87二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:10:40
- 883525/05/20(火) 22:43:46
"ハルナ。私は何かするのを止めはしない。ハルナはちゃんと落ち着いて考えられる子だから。だから、今から言うことをよく覚えていてね。私はハルナの兄として、ハルナの行動の責任を持ちます。だから、その行いを咎められたとき、私に自信をもって間違ったことはしていない、と納得させられるかどうか。それを覚えて、思い出してほしい"
「お兄、様……」
"……ずいぶん話し込んじゃったね。今日はそろそろ日も落ちるし、皆思うところもあるだろうから解散にしようか"
ゲヘナへの電車内で、会話は少なかった。ハルナはずっと考え込んでいるし、ジュンコは声を荒げたのが気まずいのか無口で、アカリの店探しにイズミが口を挟む。そんな空気がしばらく続いた後、ぎゅうっと二人の肩を寄せさせたアカリがスマホの画面を見せた。
「今日はこのお店にしませんか?」
「……へぇ、新しくできたんだ。口コミは悪くないね」
「そう……ですわね」
「ハルナ」
張りのある声に名を呼ばれ、気もそぞろだったハルナは視線を上げる。
「先生は食べるな、だなんて言いませんでしたよ。一緒に責任を持つって言っただけです☆」
「アカリさん……」
「考え事はおなか一杯のときにしたほうがいいんですよ~?行きましょう☆」
いつも通りのアカリだった。それがちょっと腹立たしく、それ以上にありがたくて、ハルナは差し出された手を握った。
美食研究会は宵の口の雑踏へ踏み込んでいく。今夜も新たなる美食を求めて。
また数日が経った。この日シャーレに招待された一同は前回とは違い一晩の招待であることに首を傾げつつも、それぞれの手に一泊分の荷物を持って先生のもとへ到着した。
"やあ、いらっしゃい。用件をぼかしたのに乗ってくれてありがとう"
「ハルナさんの鶴の一声でしたね☆」
「あ、アカリさん!?……言われてしまっては誤魔化しもききませんわね。はい、私が賛成しました」
"ハルナはきっと来てくれると思ってたよ。でも、他の皆も一緒に来てくれたのが嬉しいんだ"
「と……おっしゃいますと?」
"ふふふ、ハルナ。兄の……いや、お兄ちゃんの復活をとくと見てもらうよ!今日は私の作った晩ご飯を食べてもらいます!" - 893525/05/20(火) 22:45:11
過去編、完っ!でももうちょっとだけ続くんじゃよ
- 903525/05/20(火) 22:50:57
……続くけど、続くけど今日はここまで!明日にご期待ください!心が自傷ダメージ受けたとかじゃないよ、ホントダヨ
- 91二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 23:41:20
- 92二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:14:17
なんか言えよ!
- 933525/05/21(水) 20:31:15
ロールバックがあったようでヒヤッとしましたが私は元気です。
今夜分一つはできてるので今夜も投稿しますよ - 94二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 21:10:37
このレスは削除されています
- 95二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 22:29:38
クロコの元を訪れて「宜しければ一緒にお食事でもいかがかしら?私が知らない向こう側のお兄様の事を教えて頂きたいのです」とプレ先から頼まれたクロコを自分なりに気にかけるハルナ
- 96二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 22:36:15
- 973525/05/21(水) 22:37:31
晩ご飯。そのワードを聞いた瞬間に四人は色めきたった。特に反応が大きかったのはハルナ、次いでジュンコである。イズミも期待に顔を輝かせ、アカリは予想外に楽しくなりそうだと笑った。
"それじゃあ作ってくるから、待っててね"
「お兄様、手伝いをいたしますわ」
"……うん、それじゃあお願いしようかな"
背も近くなり、微笑ましい幼子から美しい少女へ成長しても、幼いころの反応がそのまま出てきたことが嬉しかった。心をすり減らすほどの苦境に立った妹が、それでも昔の純粋さをまだ保っていることが、嬉しかったのだ。
厨房で鍋に油を満たしながら、先生は冷蔵庫の食材に手を伸ばすハルナを見やった。
"懐かしいね。実家でもこうやって、手伝ってくれた"
「結局、刃物も火も扱わせてはくださいませんでしたけれど」
"五歳の妹なんて高校生一人で見きれるもんじゃないよ。怪我をしてほしくなかったんだ"
「ええ、わかっております。ですから駄々はこねなかったでしょう?」
"そうだね。思えばあのころから、ずっと頭のいい子だった"
先生が褒めたのは、ただ従順であるとか、素直であるという意味ではなかった。聞き入れ、理解し、その先がどうなるかを考え、判断する。そうした包括的な理知において、ハルナは頭一つとびぬけていた。
「お兄様も、そのときの使用人の皆様も、私にたくさんお話をしてくださったからですわ。お兄様だって、お勉強をしながらでもちゃんと聞いてくださったでしょう?」
"ただの兄馬鹿だよ。妹がかわいくて仕方なかったんだ"
「卵済みましたわ……衣ですわね?……お父様もお母様も、お兄様がいなくなってからは話しかけてくださいましたけれど。思い返せば、あの息苦しさは言いつけられるだけの会話だったから、かもしれませんわね」
"息苦しい、か。ハルナはゲヘナが性に合ってるんだね……そろそろキャベツ出そうか"
「そちらは私がいたしますわ。……ええ、とても楽しく過ごしております」
"よかった。楽しいって思えるのが一番だから"
熱されてぷくぷくと気泡をたてている油はよい温度、衣をつけ終わった豚肉が静かに投入される。
じゅわぁっ、と軽やかな音があがった。 - 983525/05/21(水) 22:42:51
更新開始!ごはんだよ!
- 993525/05/21(水) 22:54:23
ハルナと先生が厨房へ向かって、待つことしばらく。かつおだしのよい匂いがして、話し合っていた三人は顔を見合わせた。
"お待たせ、みんな"
「お夕飯ですわよ!」
待ってました、と声が重なる。先生はおたまの入った鍋を、ハルナは手で支えた金属トレーの蓋の上に炊飯器を丸ごと載せて、反対の手には人数分の食器を重ね先生の後から入ってきた。
素早くハルナの手からどんぶりを取り、思い思いの量で米を盛る。ほかほかと湯気を上げる白米はそのわずかな匂いでさえ食欲をそそるが、先生はにやりと笑ってトレーの蓋を取り払った。
中から出てきたのは、トンカツである。油切りをされて鍋からあげたときの油の音こそ消えているが、包丁が入るとそんなことは何の支障でもないといわんばかりにザクリと小気味よい音を響かせ、赤みの残らない柔らかな肉質をのぞかせる。
大判なそれを米に乗せればあとは食らうばかり――かと思いきや、先生は鍋の中を軽く混ぜた。そこで三人は、ソースの類がないことに気づく。
「さあ、皆様いただきましょう。これぞお兄様の特製、つゆかつ丼ですわ!」
"あ、それは私のせりふだよ!……うん、先に言われちゃったけど、これをかけたら完成"
おたまになみなみとすくって注がれたそれは、卵と玉ねぎ、そして醤油色のつゆ。それぞれの好みで刻み葱と、辛子、または唐辛子をふりかければ――完成。
部屋にかつおだしの匂いが満ち、五人口々に「いただきます」を言った後、一口目に挑み……先生を除いた全員が固まった。
「な……何これ」
イズミの箸先が震えている。目を見開き、じわっと涙が浮いたかと思えば、
「「美味しいぃ~!!」」
ジュンコとイズミが同時に快哉を叫んだ。
「……わあ、本当。先生、これはお醤油じゃありませんね?」
大きな声を上げないながらも、満面に笑みを浮かべたアカリが問う。先生がいかにもとうなずく。 - 1003525/05/21(水) 23:20:14
"これは、めんつゆだね。醬油ベースではあるけど、かつお系の濃縮だしだよ"
「このお味……お兄様、さらに揚げ具合がお上手になられましたわね」
"家を出て長いからね、慣れだよ。でも……うん、今日は会心の出来だ"
「しょっぱさと共存するほのかな甘み、かつおの旨味……玉ねぎの歯ごたえもたまりませんわね」
「玉ねぎはあんまり火を通していないんですね?」
"あまりしなしなにしちゃうとむしろ食感が気になるからね。先にちょっとチンして、卵と一緒に軽くくらいで十分"
良家の坊ちゃん育ちとは思えないセリフが次々と出てくるが、その坊ちゃんとて甘やかされていたわけでもない。食材はいいものを使っても、市販品でよいものは積極的に取り入れる。抑えられるコストは抑えてやったほうが不意のことにも対応しやすい、とは若かりし先生の師たる料理長の教えだった。
そして、アカリが一杯目をぺろりと平らげたことでその教えは証明された。
"おかわり、あるよ。ハルナからいっぱい食べるって聞いてたからね"
「……ハルナ、言い方がひどくありませんか?」
「私は健啖家とお伝えしただけですわ!?お兄様!」
"ごめんごめん、でも作る側はたくさん食べてもらえると嬉しいんだよ。さ、どうぞ"
二杯目を差し出されては抗えない。アカリは唐辛子を少しだけ振ると、再び幸せそうに箸を動かし始めた。
"ふふ、楽しそうに食べるね。……いい友達をもったね、ハルナ"
「もちろんですわ。私と志を同じくする、美食探求の同胞ですもの。……お友達」
そこでハルナは一瞬考え込むようなそぶりを見せ、先生が聞く前に口を開いた。
「お兄様、こんどまたゲヘナへいらしてくださいませ。私のもう一人の大切な友人をご紹介しますわ」
"それはとても楽しみだ。どんな子か……は、自分の目で確かめようかな"
にぎやかな夕食はすぎていく。アカリは結局そのあと五杯おかわりしてかなり大きな炊飯器を空っぽにし、先生を驚かせた。
そして予告通りにシャーレに一泊して、翌朝。あれだけの量を食べて朝食も苦も無く食べた女子高生たちの食欲に驚くやらあきれるやらしつつ、先生はまた静かになったシャーレで大きく伸びをした。
"ハルナが楽しそうなのは、いいことだ。……いいことだ、うん" - 1013525/05/21(水) 23:22:25
折り返し到達したところで今夜はここまでです。かつ丼はおばあちゃんが作ってくれた内容を参考にしています。そばつゆは優秀なのだ
- 102二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 23:25:04
深夜に飯テロとは…お主も悪よのう…
- 103二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 08:20:00
飯を食ったなら次は甘味でも食べるのかな?
- 104二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 14:15:55
やっとお昼休憩…天ぷらいいな…天丼てんや行こうかな
- 105二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 16:34:12
銃は銃で使った事はあるけど、クレー射撃とかの遊戯としての銃しか使ったことがなさそうな先生をSSから妄想した
- 106二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 19:44:40
- 1073525/05/22(木) 21:07:43
- 108二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 21:24:22
- 109二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 22:47:21
シロコ・テラーみたいにでっかくなっているんだろうけど、その姿を見てみたい気持ちとそれに至るまでに起きた悲劇を思うと見たくない気持ちがある…
- 110二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 06:16:07
ええんやで
- 111二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 12:17:20
きんつばに白玉、たい焼きもありそうだな…
- 112二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 15:09:31
- 113二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 22:15:45
- 1143525/05/23(金) 22:27:17
今夜もネタ切れ……と思っただろう?(狭間の地)
ありがとうハルナ*テラーとか考えた人の心がない人たち。今夜はそれが話のタネだよ - 115二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 22:37:46
兄からの遺言がハルナ・テラーを縛っていて、生きているけど半ば死んでいるような生き方をしているんだろうな…
- 1163525/05/23(金) 22:39:09
ネタを練るので今夜はなしです。待っててね~
- 1173525/05/24(土) 00:48:59
規制テスト……かからなければやっぱり投稿する
- 1183525/05/24(土) 00:49:15
空は赤く、視界も赤く、髪も、手のひらも、シャツまでもが赤い。赤いものが地面に広がっていて、赤いものは散らばっていて、それらの赤はすべて、違う色で。
「アカリ、さん……イズミさん?」
首を動かそうとするだけで億劫だけれど、それでも声のしなくなった友人たちの無事を確かめたくて。湿った手のひら、べったりとへばりついた赤黒い液体は、きっと自分から出たものだと信じたくて。
だから、座り込んでいた壁から崩れ落ちても、友人たちの姿を見られれば、それでよかった。
見たかったものは、そんなものではなかった。潔癖な友人の、土と埃と、瓦礫と血にまみれた姿ではなかった。明るい笑顔の友人の、ぎゅっと目を瞑り愛銃を抱きしめた姿ではなかった。気の強い友人の、涙の跡がくっきり浮かんだままの姿ではなかった。そして何より、自分が庇おうとして、なぜか逆に庇われた、濡羽色の髪の友人の、奥歯を噛み砕いた姿などでは、なかった。
「ふうか、さん……」
ひとりぼっちになってしまった。もうそのまま何もしたくはなかったけれど、スマホの通知が来ていたのが振動でわかる。
――先生が。たった一人、血のつながりを喜べる相手だった人が。事故で大けがをして、そのまま入院していたはずの、あの人が。失踪した、と。
その行方はもう知っていた。黒衣の、白髪の、昏い瞳の襲撃者の後ろに立っていた、白い、見上げるほどの大きさの、仮面をつけたあの姿が。わずかに見えた、己と同じ色の髪が。幽鬼のように立っていたあれが、きっと。
「おにいさま……」
呟くたびに、力が抜けて。理解するごとに、胸が痛んだ。
「どうして……わたくしだけ、生きていますの……」
「……は、るな?」
「っ……フウカさん、お怪我は」
「……痛すぎて、あんまり痛くない。ねえ、ハルナ。あの、白い服の人。あれ、先生よね……?」
「ええ……おそらくは」
「……行って。先生の、ところ。お兄さん、なんでしょ」
「ですが……」
「いいから。私は、いい……」
弱々しかったヘイローが消えた。力なく肩にもたれるフウカのもう聞こえない息遣いを必死に願いながら、ハルナは痛みをこらえて、地を掻いた。 - 1193525/05/24(土) 01:24:31
なぜ、と問うても答えは返らず。見えるものを探っても、真実は見えず。手を伸ばしても、一寸先の足元すら確かめられず。そんな暗くて静かな絶望を抱えて、ハルナは人気のない街路を歩いていた。
歩く、といっても足取りはおぼつかない。こんな状態になっても手放さなかった銃を抱えて、時折壁にもたれかかりながらよろよろと。それが精いっぱいだった。
軽々と持っていた銃が、いまはこんなにも重い。いっそ投げ捨ててしまいたいが、愛着もある銃であったし、あの襲撃者と再会したときに何もできない状態でいるのは、避けたかった。
ずっ、と何かがずれる感覚がした。それにつられて、視線を上げる。赤い、雲までもうっすら赤い空に、黒い穴が一つ。それはとても遠いようで、目の前にあるようで、小さく見えるのに、とてつもなく大きく、そこには何もないのに、何かが見えた。
ハルナの脳裏に、火花が散る。
胸の奥でずっと燃えていた情熱。それに、『それ』は話しかけていた。
なぜ、と問うても答えは返らず。――答えは、己にて探すものなり。
見えるものを探っても、真実は見えず。――真実は、道の果てに辿り着くものなり。
手を伸ばしても、一寸先の足元すら確かめられず。――足元ばかりが、道にあらず。
ハルナは膝から崩れ落ちた。それは答えであり、答えではなかった。道を尋ねられてひたすら北を示す方位磁針のように、ハルナの胸の内にあるものを反響する啓示だった。
意思にかかわらず、意識が途切れる。ひときわ眩く輝いたハルナのヘイローが、その形を変えた。
次に目を覚ましたとき、それは己を認識しなかった。「目を覚ます」という行為が、無限の虚無と同義の無限の有から「個」を切り離す。それは切り離されたことで無限ではなくなり、有限となったことで己の境界を認識し、己の構成を知る。それは、肉の体をもったものであった。それは、生きて考える魂を持ったものであった。それは、一人の若い少女であった。
それは、黒舘ハルナであった。
ハルナが己を知ったことで、世界は観測され定義される。そこは記憶の限りでは、キヴォトスの、路上であったはずだった。
「――色彩。神性。私は……」
片方だけだった背の翼は大きな猛禽の双翼へと変化し、似た意匠の二対の紋様がヘイローに加わる。呼び起こされた神格が、ハルナという外殻を変えていた。
ガーネットの色の瞳には、ただ答えを求める炎があった。 - 1203525/05/24(土) 02:15:25
アトラ・ハシースの箱舟最奥部、ナラム・シンの玉座。先生とシロコ、プレナパテスと「シロコ」が対峙する、その瞬間。
多次元解釈が先生の妨害によって致命的に揺らいだ瞬間――空間が割れた。
「っ――誰!?」
答えはなく、一条の尾を引く光がシロコ*テラーの長い髪を掠めて焼いた。
「あら、避けられてしまいましたわね。さすがに同じものの影響を受けた方――というところでしょうか?」
かつん、と高いヒールの靴音が響く。いびつに割れた空間の混沌とした向こうから、一人の女性が現れた。
白いボタンシャツ、黒いスカート、すらりと長い脚を包むタイツ。肩口辺りで短く揃えられた銀の髪、ゆったりと空気を揺らす背の双翼、そして何より、先生と目線を同じくするほどの長身。
現れ出でたるその姿と、わずかに変われども聞き慣れて忘れることのない、その声は。
"ハルナ……?"
「……ああ、とても懐かしい感覚を手繰ってきましたら。あなたがいらしたのですね……お兄様」
ふっと表情を緩めた別世界のハルナが、シロコ*テラーに銃を向ける。
「さて――そちらの、いえ、こちらの、と言うべきですわね。あなたに面識はありませんが……同じ『色彩』に触れたもの同士。多くを語る必要も、ありませんわね?」
「……生き残りが、いたんだね」
「正確には、生かされた、と言うべきですわね。私をここまで届けてくれた友人達に、あなたへの返礼をもって墓標といたしましょう」
もはや、先まで対峙していたシロコはそっちのけである。冷静な口調でありながら、その瞳には強い敵意と、憎悪と、悲哀と、憤怒と、希望が宿っている。
先生が口を開いた瞬間、「ハルナ」は翼をはためかせてまっすぐに上昇した。
シロコ*テラーの銃口がそちらを追い、両者のマズルフラッシュが同時に瞬く。シロコ*テラーの銃撃は正確に空中のハルナをなぞるが、ハルナは急激に加速し、静止し、木の葉のように不規則に揺れながら落下することでその全てを回避し、動作の区切りごとに光の帯が空気を裂いた。
シロコに告げたように、戦闘技術ならばシロコ*テラーのほうが上であろう。しかし銃弾一発ごとの重さは、ハルナのほうがはるかに上であった。
それは情念であり、開き切られた神秘の奔流である。冷静に回避していたシロコ*テラーが避けきれない一発を腕で受け、あまりの威力にわずかに顔をしかめた。
"――ハルナ!!" - 1213525/05/24(土) 03:10:26
重たい殺意が交差した瞬間、先生の声がそれを散らした。その場にいる全員の視線が先生に注がれる。
"ハルナ。少しだけ、待ってほしい"
「……よろしくてよ。お兄様」
長時間、極限の緊張状態にさらされていながら、先生は理知の思考を保ち続けていた。有と無の狭間、誰にも認知されない確率論の領域を、感覚があいまいになるほどの体感時間を経てこの場へ辿り着いたハルナは、渇望というただ一点で保たれていた気力が急速に薄れるのを感じつつも兄の言葉を聞き入れる。
なぜなら、それは兄だから。いつでも大好きと思える兄で、いつでも大好きでいてくれる兄で、誰よりもよくお互いを知っている、家族だから。
その兄が待ってくれというのならば、それはきっと、聞く価値のある言葉だ。ハルナは銃を構えたままで先生の隣へ降り、シロコ*テラーがすでに戦闘続行が難しい状態であったことに気付くと銃口も下げた。
そして、先生は問う。
"一体、「何」があったの?"
――シロコ*テラーから全てが語られた。凄絶と評するには余りある、世界を丸ごと一つ滅ぼすまでの全てが。
皆が光とともに地上へ帰還する中、「ハルナ」は黙して動かぬままであった。プレナパテスが倒れ、シロコ*テラーが地上へ送り返されて、彼の仮面が床で砕けた、そのあとで。
「……お兄様」
"っ、ハルナ――しまった、ハルナのぶんが!"
「お兄様ったら。飛び入り参加の分まで用意を、だなんて申しませんわ」
"でも、ハルナは……プレナパテスを……私を追って、来たんでしょ"
「ええ。最後のわがままを、叶えようと思いまして。……他にできることもございませんし」
慌てる先生を、ハルナは正面から抱きしめる。匂い、温もり、鼓動、声、感触まで、全てを記憶に焼き付ける。
「もう一度でいいので、こうしたかったのです」
"……ハルナ。お願いだから、諦めないで。私にできることなら、なんだってするから"
「お兄様。そういうお約束は愛する方にするものでは?」
"妹を愛して何が悪いの!私はお兄ちゃんだぞ!!"
ひゅっ、とハルナの喉が鳴った。真剣な表情で、取り繕う余裕もなく、まっすぐに、ただ愛していると。 - 1223525/05/24(土) 03:35:50
頬が熱くなるのを感じながら、ハルナはもう一度兄を強く抱きしめた。たった一度でいい、聞いてみたかった言葉を、言ってほしかった人から聞けた。
それだけで十分だと、思ったのに。
爆発。上空75,000メートルへ放り出されてもなお、先生は生きていた。それがシッテムの箱、アロナの必死の努力によるものであることはわからなくとも、ハルナは彼の鼓動を感じ取れた。
肺があっという間に凍る温度。人の生存圏からかけ離れた環境にあっても、まだ生きているのなら。
希望を捨てるには、早いのかもしれない。
ハルナは大きく息を吸い込んだ。ぎしりと痛みが走るが、無視する。先生の唇に自分のそれを押し当てて、吐息を吹き込んだ。
「お兄様。参りましょう」
包むように動かされた翼と言葉に、先生はしっかりと頷いた。
加速する。加速する。ただ、加速する。重力に引かれて、地上へまっすぐ。ハルナの翼が風から守ってくれる。わずかに熱を帯びたシッテムの箱が、断熱圧縮から守ってくれているのだと先生だけが理解した。
大気の温度が上がってくる。呼吸できる温度に達すると、ハルナから哄笑があがった。
「――お兄様!今度は、この高度で食べ物を冷やしてみませんか!?」
"ひ、冷えたら結果は同じだと思うな――わあああああっ!?"
落ちていく。飛んでいく。地上へ、帰る場所へ、一直線に、真っ逆さまに。
急速に拡大されていく地表を目にしてハルナは翼を広げて急減速。慣性など知らぬとばかりに対地速度をほぼゼロにまで落とし、軽やかな足取りで着地して見せた。
「短い空の旅でしたが、楽しかったですわね」
"肝が冷えたよ……でもありがとうね、ハルナ"
淡く笑ったハルナに安堵した先生はまだ気が付いていない。この後迎えに来る、こちらの世界のハルナについて。
「お兄様?そちらの私によく似たお方は、どこのどなたでしょうか?」
黒い微笑みを浮かべたハルナに質問されて――「ハルナ」は、冷や汗を垂らした。 - 1233525/05/24(土) 03:49:06
今夜はここまで!ハルナ*テラー概念から生まれたけどずいぶん違うものになったな……
語ろうと思ったら司祭かゲマトリア連れてこないといけないので補足説明。分類上*テラー属になりますが、このハルナは「恐怖への反転」ではなく「神秘の開放」という方面で色彩の影響を受けた、ハルナ*ミシック(mythic)とでもいうべきものとして書いています。
外見的変化としては肉体年齢の成長、翼の変化、ヘイローの変化です。なぜ翼が変化するのかといえば、ハルナの神格はニスロクという神格と推測されているそうですが、この神格が「偉大な鷲」として描かれていた説があったそうなので神格の開放としてわかりやすく出しました。テラーとは別方面のため、表出した性質も変わりハルナよりさらに食への探求心が強くなっています。
ハルナの「美食研究」という飽くなき目標と神格の「食に対する探究者」という部分で「渇望する探究者」の要素を強く出した結果ですね。
おやすみなさい! - 124二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 08:37:02
よかった…二人の妹を前に全裸を晒す兄様はいなかったんだね…
- 125二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 13:47:44
兄にコートを貸す妹を見たかった気持ちもあったり…
- 126二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 21:57:43
ハルナが増えた。それも戦闘力マシマシだ。つまりどうなる?
- 127二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 07:19:44
フウカの悩みの種が増える…それは確実だ
- 128二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 10:13:15
ヒナが疲れる