- 1ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:23:41
襲来した異星人!
侵略されるエネルギー資源!
存亡の危機に晒されてなお人類は……
未だ一つになり切れず、壮大な内ゲバを繰り広げ続けていた!!
【出来れば読んでいただきたい世界観および初期設定集(テレグラフ)(各種ページへのリンクあり)】
ここだけ3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦うリアルロボットSFな世界あらすじ(とりあえずこれだけ読んでくれたなら最低限大丈夫な筈の簡潔にまとめた世界観)その1:どういう世界なの?
特殊なエネルギー鉱石「コア鉱石」を動力源とする人型歩行兵器「バディフレーム(通称:BF)」が兵器として一般化した高度な機械文明が築かれている、地球に酷似した惑星が舞台だよ!
元々は人類同士で細かい諍いとかはありつつもそれなりに穏やかな世界だったんだけど、本編から20年くらい前に惑星外性生物「インベイド」が隕石に乗って地表に飛来、どうやら上述のエネルギー塊「コア鉱石」がインベイドにとっては食糧として美味しくてたまらないらしくて、人類に敵対行動を取り始めたんだ!
必死に抵抗したんだけど、現在では地表のおよそ3~4割程が完全にインベイドがうようよ闊歩している危険地帯になっちゃって、そこから時々インベイドが攻め寄せて来る油断できない状況なんだよ……。
その2:で、今どうなってるの?
インベイドとの緒戦により人命を多く失いながらも、結果として「クロノス・インダストリー(通称:K.I社)」が世界を主導、地表や地下に「コロニー」と呼ばれるいくつかの居住拠点を制定してそこを中心にインベイドに対抗する様になったんだ!…00m.in次スレは>>190踏んだ方が
- 2ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:24:48
【前スレ】
【R-18】ここだけ3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦うリアルロボットSFな世界part20【のんびり進行】|あにまん掲示板襲来した異星人!侵略されるエネルギー資源!存亡の危機に晒されてなお人類は……未だ一つになり切れず、壮大な内ゲバを繰り広げ続けていた!!【出来れば読んでいただきたい世界観および初期設定集(テレグラフ)(…bbs.animanch.com【禁止事項】
・無敵ムーブ(戦闘でダメージを受けない、回避し続ける、など)
・必要性の認められない確定ロール
・相手PLが嫌がっていることを強要する行為(特にR-18関連はデリケートなところなので扱いには気を付けて、事前相談忘れずに)
【世界観やパワーバランスを保つ上での禁止事項】
・版権設定の利用
・「地形を変えられる火力」を個人で設定し所有すること
・3勢力(K.I社、人自連、デスペラード)+インベイドよりも立場や規模が大きい勢力を設定すること
・なんでも高い水準で出来るキャラ、なんでも高い水準で出来る機体禁止(他の人の活躍機会を奪いかねないため)
・メタネタ禁止(「この世界は作り物だ~」や背後さんへの言及をキャラの目線で発言させるなど)
- 3ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:26:28
Q1:参加してぇ!けど事前のキャラ登録って必須なの?テンプレはある?
A1:キャラシはあった方が色々スムーズだとは思うけど、無くても規約的なNGムーブさえしなけりゃ参加はOKだぜ!
テンプレらしいテンプレは特に無い(めんどうくさかった)からテレグラフなりで各自好きな様に書きたいこと書いてくれ!
↑の初期設定集から飛んだ先にあるスレ主のキャラシからテンプレとして項目を引用しても大丈夫だぜ!
Q2:キャラは1参加者につき何人まで?
A2:何人でもOKだぜ!複数陣営あるし下手に制限設けたらスカスカになるのが目に見えてるから……好きな様に作ってくれ!
Q3:コテハン(トリップ)は必須なの?
A3:必須じゃないぜ!でもトリップが無いってことはなりすましや乗っ取りが出ても判別方法が無いってことでもあるから、自衛手段としてコテハンを持っておくのは無難だぜ!
Q4:スレタイにR-18表記があるけどエロスレなの?
A4:一般誌のエロ描写とか元ネタ一般作品のエロ同人好き? 俺は好きなの……
エロメインじゃないけど「エロいことも割と自由に描写して良い」スレだから苦手な人がミスッて踏まない様に一応表記しているぜ!
「猥談耐性はあるけど自キャラにエロルさすのはなぁ……」って人でもOK、「自分は露骨なエロやりたくないです」って言っておけば良いぜ!
Q5:設定集に目通したけどなんか既視感ある設定ばっかりだな?
A5:へへっ - 4ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:27:52
【テレグラフ(設定やキャラシート、R-18な文章を書いたりにどうぞ)(※URLのhとttpsの間のスペースを消して検索してください)】
h ttps://x.gd/Z5SAZ
【URL短縮用サイト(テレグラフのデフォルトURLだとあにまんのNGワードに引っ掛かってしまうのでこちらでURL短縮してから投稿してください)】
- 5ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:31:05
「ということで、ケイ・サヤギリです。今日の保守担当は俺ですね」
「今の時系列だとノインさん相手に限界超えに超えてますが、このままいくと多分俺もぷつんと逝っちゃいますね」 - 6ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:33:02
「ノインさんは左目が義眼で、右目が元の目。右目から血を流しているでしょ?」
「俺は左目から血を流してます。対比構造ってやつですね」 - 7ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:38:25
「ちなみに描写として分かってくれると思いますが、蒼風改は蒼月みたいなガチガチのインファイト機ではありません」
「むしろインファイトを躱して、カウンター気味に相手を撃破するタイプのコンセプトです」 - 8ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:39:05
「10mというBFとして上限な大きさだからこそのトルクパワーのおかげで、対BFの格闘戦時には色々な戦術ができますが……」
「それもコア粒子推進機関の恩恵あってこそ。あとは技量で無理やりやってるので、向いてる向いてないでいうと実は向いてないんです。脳死で動かしちゃいけない機体なんですよねぇ」 - 9ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:41:34
「これまでは圧倒的な機動力と運動性のおかげで優位な立場を取れていましたが、蒼月というほぼ同格の敵。そして技術もほぼ互角……いや、義体としての力も含めてそれ以上のノインさん」
「台さんがいなかったら、果たして“艦長”相手に消耗していた俺が勝負になったか……いや、勝負にしますけどね。はい」 - 10ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 21:44:53
「さて、そろそろ保守も終わり……え?不謹慎だけど、龍影が戦死したらどうするのかって?」
「皆がいない場所で、俺も静かに後を追います。誰にも止めさせません。俺はもう、そういう人間ですから」
「だから龍影……俺はずっと、君と一緒にいる」
「この世界が、どうなっても。最期まで」 - 11東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/15(木) 22:15:16
たておつ
- 12◆fDey8JUvvk25/05/15(木) 22:18:46
【撃墜王型生体CPU第9号 FA-i9 行動不能】
【生体CPU仕様月風カスタム機 Cv-K7-7『SOUGETSU(蒼月)』 行動不能】
【ヴァルキリーに回収され、戦線を離脱した】 - 13東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/15(木) 22:34:55
『あーやばい、ちょいガタが来だしたな...
すまんけどお前のBF牽引させて貰うで!』
力を使い果たしたケイを蒼風改ごと、
補給場所まで葉桜で引っ張っていく
スピードは遅いが間に合いはするだろう - 14ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 22:37:55
「はぁ、はぁ……ぅ、げほ……ご、げォ…」
《ケイ、鎮痛剤を飲んでください》
陸上戦艦の甲板の上から退避して、安全な位置で。
ケイは盛大に血を吐いていた。義体たるノインですら限界を超える戦いで、生身のケイが無事でいられるはずがない。
コックピット内に備え付けられている鎮痛剤を飲み込み、水を飲む。えづくのは気合で堪えた。
ゆっくり息を吐き、激痛を訴える身体の痛みを甘んじて受け入れる。
『サヤギリさん。サヤギリさんっ!聞こえますか!!簡易修理所をマークします!そっちに向かってください!』
「ユズハ……?」
痛みが遠ざかっていくのを感じると同時に意識が薄まっていく。
ここで戦線離脱かと思ったが、どうやらまだまだ動く必要があるようだ。
「スイ……頼む……」
《了解。いざとなったらパイロットスーツの保護機能に介入します》
マークされた箇所へのランディングまでを含めて先行入力させて、蒼風改は簡易修理所へと飛ぶ。
……今すぐでも事故りそうなフラフラとした飛び方だったものだから、着陸地点にたどり着いたら、緊急ネットを張られて引っかかったのも仕方のないことだろう。 - 15ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 22:39:54
- 16東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/15(木) 22:47:43
- 17ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/15(木) 22:57:44
- 18ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/05/15(木) 23:09:08
大地を引き裂いて、絶大なる破壊音を轟かせながら進む““陸上戦艦””の甲板に声が響いた。
『──────戦艦長の戦死を確認。現在時刻よりGN.8“バルバトス”が艦長代理として全体を統括すると宣言する』
““陸上戦艦””に乗艦する「ゴエティア戦団」は二人だけだ。
序列八位、バルバトス。
序列二十四位、ナベリウス。
戦艦全体に随伴しているバディフレームの数と比較すれば酷い小さな割合であり、しかし臨時で戦艦の戦術を策定する程度は容易く行える老兵である。
(二者択一だ。世界を救おうとすれば、拙者は自らに誓った約束を破らねばならない。だが拙者が約束を破らなければ、世界を滅ぼす手伝いをしなければならない)
奥歯を噛み締める。世界を救おうと総て尊厳を擲ち蹂躙された少女を、バルバトスは殺せない。本人が其れを望んでいたとしても、ずっと昔から誰よりも彼女を近くで見守ってきた。
だから、彼女を人質にした老いた獣に叛旗を翻す事は不可能だ。今、この時も、彼女の命運は彼らの手の内に握られているのだから。
───────だが、覆す手段はある。
・・・・・・・・・・・・・・
(彼らが我々よりも強ければ良い) - 19ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/05/15(木) 23:11:02
- 20二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:28:29
このレスは削除されています
- 21龍影◆9BZ6kXGcio25/05/15(木) 23:31:17
ボロボロになって帰ってきた蒼風改は主をここまで運んできた。最悪の予想が頭に浮かんだ。その瞬間、降り立った巨人に龍影は走り、器用に装甲の凹凸を足掛かりに緊急ハッチまで駆け上がる。手動解放用のハンドルを回してロックを外し、開ける。
「ケイ!」
龍影は自分が心から愛している事を再確認できた恋人の名を呼びながら中を覗き込む。
パイロットスーツの一部が赤く染まった姿を見て、まさか。と思ったが否定できた。呼吸をしているためである。
良かった、生きてる。
「馬鹿ぁ…」
コックピットに入り、ケイの上にまたがって背中に手をまわして包み込む。生きていることを確認するためであるが、安堵の涙を見せないためでもあった。
- 22ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/15(木) 23:36:11
- 23東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/15(木) 23:39:59
- 24エイダン◆Fd5AlHEdkk25/05/15(木) 23:43:33
前スレ155
「また難しい案件を持ってきたね……。ま、いいよ、この機体は中々面白そうだし」
【小さなディスプレイへ幕をかけるように羅列された文字と数字の刺繍をざっと眺めつつ、巧みにラーニングされた忠義からくる嘆願を受諾する】
【幼くして全高15m近くある大型機を駆る少年パイロット。しかも、機体データは製作当時に関係者が込めた鬼気迫る思いをひた隠すかのように、大部分が黒塗りされているときた】
【懐が広いと、その分抱える火種も多くなると言うのはよく聞く話だが……。まさか、実例をこの目で見るとは思ってなかったな】
【などと心中で独り言ちながら、口を開く】
「ただ、この案件は僕ら二人だけで抱えて良い代物じゃない。他……例えば、ユスラ大佐の意見も仰ぐことになるけど、構わないね?」 - 25アルパ◆YMCgTirJag25/05/15(木) 23:46:27
- 26バルバトス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 00:02:50
『────────拙者が抑える』
前に出ようとしたナベリウスを制止し、バルバトスが中型の炸裂推進機関によって加速する。
最高速度は『月風』系列には及ばないが、その一方で加速の燃費に優れた推進機関だ。コンスタントにクイックブーストを可能にする、という機能に特化した基本装備である。
(勇猛果敢。片腕である事を差し引いても脅威視すべき戦士──────機体のベースはSINONOMEか?だが最高速度と運動性能は『ヴィーナス』をも上回る。並大抵の企業の製品ではないな)
単にブレードで勝負するとなると、加速性能と運動性能で不意を突かれる可能性があると判断する。
大口径リニアキャノンの銃口を定めて引き金を引き弾頭を放つ。音速よりも疾い弾頭でブレードの軌道を逸らす狙いだ。
(────────空中戦ならば、隻腕によるバランスの乱れを最大限に突けるか?)
ギシリ、と大口径リニアキャノンを撃ち放つと同時にコア粒子炸裂機関が熱を帯びる。
急降下によって、敵機の下方から刺突によって腕を切断する狙いだ─────まだナベリウスも控えている。ブレードを受け止められたとしても、続く矢が存在する。迅速に、二機間の連携でバルバトスは目の前の機体を無力化しようとしていた。
───────或いは、見上げた先に。彼女は正に仰角を上げる““陸上戦艦””の砲門が見えるだろう。
かつて一撃で戦艦を破壊可能とされた艦載砲と同じ口径をした、怪物的主砲───────20門が建ち並び、鋼鉄の駆動音を響かせた。
- 27ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/16(金) 00:15:05
- 28ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/16(金) 00:21:52
【息苦しい。一息の度に喉と肺が焦げる。休息を欲して悲鳴を上げ、心臓は鼓動を乱している。骨も何本か折れているかもしれない】
【それでもウルヴィはBFの心臓でしかない。故に『問題ない』】
【眠い、痛い、苦しい。邪魔な感覚を戦意で、本能で塗り潰す】
【ブレードでリニアキャノンを受け流す。違う、受け流したのは相手だ。線に向けて点をぶつけて、逸した。まさしく曲芸とも言える絶技に、本能が沸き立つ】
【その間に敵機が下方へと降りていく。速度的には追えるが、相手は二機。此方の腕は一本で、相手は四本。連携に対して後手となれば押し負けるのは必定】
「関係ない」
【それでもウルヴィはバルバトスを追って、寧ろ自らをブレードを振るいに行く。迷う素振りも見せずに獣が下した判断は短絡的で暴力的】
・・・・・・・・・・・・・・・・
【連携するならそれごと喰らい尽くす】
【獣は相手を舐めているわけではない。では慢心か?それも違うだろう】
【死なばそれまで。希望も絶望も見ていない、ただ戦い、殺し、生きる以外の思考を持たないだけであった】
- 29マルタ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 00:30:14
『マルタ見習士官。“想定通リ”イヨイヨゴエティアガ動キマシタ』
【蒼月の回収を見届けて間もなく、その報せは来た】
見えてる。
【思いの丈を伝えたからか、それとも“直感”の抑制に成功した事が自信となったのか…平静を徹すマルタの腕が操縦桿を握り、“蒼風”と同等の推進機関を唸らせる】
さて…もうひと、がんばり!!!
【右手にビームサーベル、左手にビームライフルを構え──────ロスヴァイセが高速で背後からナベリウス機目掛けサーベルを振る】
(やはり補給線を狙ってくるか)
【シュヴェルトライテは、静かに戦況を観測していた】
(まだ対地ヘリは一機残っている。そして程なくして復旧した艦載砲とミサイルの飽和攻撃が始まる………2機のヴィーナス装備SF-R3は本命を兼ねた、囮)
《三番隊、配置完了しました》
《…疑ってるワケじゃないけど、これで本当に大丈夫なのよね?ユスティーナ的にはもうちょっと前線に…》
『アノ独立傭兵ガ気ニナルトシテモ堪エテクダサイ。死ンダラソレマデデスシ、実際隻腕デアリナガラ見事ナマニューバヲ見セテイマス(>>28)。アナタニハアナタノ役割ガアリマス、ユスティーナ見習士官』
《わぁかってるけどぉ…ぐぎーーーっ!決めた!このヤキモキは撃って撃って撃ちまくって晴らしてやるわ!!!》
【紫色のBFのセンサーアイは、絶えず光をたたえていた】
『老イタ獣ドモニ思イ知ラセマショウ。戦況ヲ動カスノハ、“ネームド”ノミノ特権デハナイト』
- 30東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/16(金) 00:35:26
『(さて...ここで闇雲に飛び回るんは
相手の想定通りになるっちゅうんは分かる
脳味噌を目一杯動かさなバッドエンドや!)』
怪物的な砲門たちを引きつけながら、
台はその狙いを考える。
この戦いを終わらせる為に何が必要なのか?
『(あの真空地帯は明らかに、艦内に入った
パイロットを待ち伏せしたトラップやった...
となると、"艦内に易々と侵入されるんは困る"
それが背景にあったんは間違い無い、と思う
そんで敵の狙いはこの艦をコロニーに当てて
クロノスに復讐する事やった...っちゅう事は、
あのメカたちはその援助に駆け付けたんか)』
砲門たちからの攻撃を艦を盾にしつつ避け
更に脳味噌をフル回転させて考えを深める
皆満身創痍だ、何とかしなくてはならない
- 31東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/16(金) 00:35:39
『(もし、あのメカたちでコロニーを
ボコせるんならとっくに行っとる筈や...けど
アイツらはこの艦をぶつけようとしかせん。
なら逆に考えると、この艦でしかコロニーを
破壊出来ないとも考えられるんちゃうか?
......ならあのメカたちは二の次にせんと、
弾除けにされてまう...けど放置もアカンし
逃げるのは出来ても今の葉桜じゃ空中戦闘は
はっきり言って無茶の部類に入る...仕方ない
装備はまだ殆ど使ってないのもあるけど、
ウチはネームド扱いされてへん!それなら...)』
『──"蜥蜴の尻尾"はウチが担う!』
目指すは船の機関部、動力源のある場所
この危険な場所への挑戦には一人の方が良い
そう判断し台は再び行動を開始した。 - 32ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 00:56:12
(1/2)
『───────判断が疾いな。得難い素質だ』
既にバルバトスとナベリウスは機体間相互視界共有を起動している。その連携に澱みはなく、急降下を行ったバルバトスに対してナベリウスが上空を突き進んでウルヴィの背後に辿り着く。
バルバトスの高周波ブレードとウルヴィのブレードが鍔迫り合う。互角、というよりもウルヴィの方が次第に押し込む形勢で数瞬が過ぎて───────真紅の輝き。
・・・
『三本だ。一機に付きな』
・・・・・・・・・・
内蔵式ビームサーベル。手首に仕込まれた高出力の粒子兵器は、鍔迫り合いをしながら粒子刀身の形成によって疑似的な超高速刺突を可能とする初見殺しの武装だ。
しかし、その真紅の輝きは極めて短い猶予しか与えないものの。相手の反応速度によっては対応可能であり、
・・・
四本目を準備する。内蔵式ビームサーベルは大口径リニアキャノンを握る腕にも仕込まれている。一本の輝きによって目を眩ませて、其れに紛れて次の腕を振るう準備をする。
見切ったと相手が思わせる事が、奇襲をより効果的に運用する方法なのだから。言葉による欺瞞すらも含めた奇襲戦術。
その背後ではナベリウス機が大口径リニアキャノンを構えている。狙いはウルヴィ機の頭部─────急反転。バルバトスの視界を利用して、死角からの攻撃を予測している。
- 33ゴエティア戦団◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 00:56:38
(2/2)
『───────ヴァルハラテック機。戦力の逐次投入の愚かさは理解している筈。そうでありながらも単騎投入という事は、何らかの目的に戦力を割く必要があると判断したのでしょうか?』
振るわれたビームサーベルを、機体を僅かに傾ける事で軌道から離脱する。
大口径リニアキャノンの引き金は既に引いている。目標はビームライフルの銃身。ビームサーベルでは刃を構えられるだけで銃弾が蒸発する可能性があるが、通常のビームライフルならばまだマシだ。
『““ゲヘナ””、役割を果たせ』
ナベリウスが離脱した事を鑑み、バルバトスは直ぐに指令を下している。
誘導ミサイルの雨が、バルバトスの『ヴィーナス』を諸共に巻き込む形で放たれる──────防御力は『ヴィーナス』の方が優秀だ。同じだけの攻撃を受けたとしても、ダメージレースでは勝てる。
或いは、ヴァルハラテック機が援護の為に誘導ミサイルを迎撃しようとするならば。それでも彼女達の火力リソースを僅かであっても使わせられる。
- 34アルパ◆YMCgTirJag25/05/16(金) 01:05:15
- 35東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/16(金) 01:13:26
- 36ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/16(金) 01:15:07
あぁ......別に......
『構いません。元より、エイダン様に申した後にでもその御方に相談するつもりでしたので』
【発声が難しくなっている主人に変わり、召し使いは助け舟を出す】
『金龍様もつい数日前にようやく他の方々に頼り始めました次第、エイダン様からも喜んで手を差し伸べていただける事に深謝致します』
【面と向かい合い、出せる限りの意を乗せたお辞儀をすると、まだ下を見ている主人の方に向き直す】
【今でもなお泣き虫が続いたままの彼ではあったが、メビは決して見放す事はしなかった】
【それは産まれる時に持たされた絶対的本能ではなく、長年を共に過ごしてきた事で培った彼女自身の意志に因る物であった】
『では......金龍様が落ち着くまでもう暫く御傍に居らして頂いても宜しいでしょうか......』
- 37ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/16(金) 01:53:03
【鍔迫り合いを押し込む中で、背後…ではなく、正面に濃密な“死”の香りが充満する】
【直感とは、本能の域である。それは遺伝子的に組み込まれた数多の経験だという説もあれば、意識せずとも空気の振動や伝わる熱を肌が感じているという説もあるだろう】
【ウルヴィは自身の本能に全幅の信頼を置いている。彼女が他の〈エルガレイオン〉の強化人間達と違って唯一生き残れたのも、その本能に従って動いたからこそ】
【故にウルヴィは優勢な鍔迫り合いを取り止め、蹴りを放ちながらブースターを炸裂させる。キックを受け止めるにしろ、避けるにしろ、両者の距離は内蔵式ビームサーベルの刀身が伸び切る前に離れることになるだろう】
【仮に三本以上が出てきても、距離があれば関係は無い。最も獣がそこまで思考を回しているわけではないのだが】
《…よろしく》
【久しぶり、とすら言わずに。ロスヴァイセへの通信は短いものだったが、同時に信用も込められているかもしれない】
【挨拶は生きていればできるだろう、と】
【バルバトスと距離を離した直後、誘導ミサイルの雨がBESTIAに飛来する。漆黒の機体はミサイルの隙間を縫うように飛翔し、しかし一つが掠める。装甲を爆風が撫でて揺らし、被弾情報は激痛のフィードバックとなり、脳髄を突き刺す】
《BESTIA、もっと》
《もっと、寄越せ》
【脅迫するようなセリフが、少女の無感情な声で発せられる。それはこの場の誰に向けたものでもなく、しかし冷え切った殺意に浸されている】
【〈エルガレイオン〉による機体の完全掌握。格段に増加した処理情報は、脳を食い荒らして、神経を焼き焦がす。明滅する意識をより純化した殺意の衝動で保てば、飢餓感が本能を引き摺り出す】
【途端に黒の機体がブレる。超音速でのフェイントを重ねた機動が、BFのFCSすらも振り切らんとする】
【背後という安直は狙わず、左側面から漆黒の刃がバルバトスに迫る。三度の炸裂音は刃が振るわれた後になるだろう。反射速度か直感にも等しい予測の何方かがあれば、対応は可能かもしれない】
- 38二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 01:56:42
このレスは削除されています
- 39ミハエル◆j28rRKKOSY25/05/16(金) 02:07:34
- 40マルタ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 02:30:08
(1/2)
ごめん、あたし難しい単語よくわからん!!!
(こっちを向いた…あたしと同じ、いや違う!“もう片方の目”だ!)
【ライフルを構える左手をほんの少し捻ると、銃身に向かう筈のリニア弾が逸れていった。陽電子ランス機能が齎した副次効果であると共に、下方に座するバルバトス機への攻撃も兼ねている】
(この2機は“あたし達”と同じく、互いの目を共有して見ている…!)
【誘導ミサイル迎撃の様子はなく、またロスヴァイセがそれの回避を大仰に取る事もなかった。】
【“防御力はこちらが上”だからだ。ランスと同じ原理の電磁シールドが駆動しミサイルによる損傷を弾いていく】
こちらこ…はっや!?
【生返事を返す間もなく、動きの質を変えたBESTIAへの驚愕を交えながら…マルタの“直感”は、その攻撃が左側面から飛ぶ事を感じ取った】
【なら自分がそれを受ける立場であったならどうするか。それを封殺すればいいのでは無いか──────漆黒の刃に対する回避タイミングに合わせ、ライフル及びバルカンの偏差撃ちを実行しつつ、ミサイルの被害範囲から逃れたナベリウス機に対してはシールドワイヤーを2基飛ばして足を止めさせないように仕向ける】
- 41シグレ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 02:34:58
(2/2)
【────────それと同時に】
(座学弱者…)
(流石に戦略の鉄板くらいは覚えておくべきでござろう…今更ゴエティアを投入してきた向こうだって言えた口ではなかろうに。拙者はてっきり先程の防衛部隊と共に現れるとばかり思っていたぞ)
でもアイツら仲悪いんじゃなかったかしら。実質敵みたいな奴らに背中預けたくなくない?私も今めちゃくちゃ嫌な気分よ
「心を読むな。ついでに拙者を敵判定するな」
【“ロスヴァイセ撃滅の為に放たれた誘導ミサイル”を尻目に…ゲヘナへと迫る“桃と紺”、2機のワーグナーがいた。】
『今回ノゴエティア機ノ装備構成ハドチラモ近接主体、ツマリハ範囲攻撃ハアノ対地ヘリニ一任サレテイルトミテ問題ナイデショウ』
『“ジークルーネ・タルンカッペ”ト“ブリュンヒルデ・グラム”ハ、最優先デソレラノ破壊ニ務メテクダサイ。片方ガ迎撃ニ移ルコトガアレバ戦況ヲ分断、視界共有ノ優位性ヲ損ナウ期待ガ生ジマス』
【ブリュンヒルデが、その速度を急激に上昇させていく。通常のBF乗りでは音を上げるどころか死に至りかねない高負荷マニューバが、ヘリにこそ及ばないもののBFとしては規格外の大質量と陽電子の力場とミサイルコンテナから放たれる飽和攻撃を以て理不尽にヘリに肉薄し右翼機能を圧し潰さんとする】
「…先程のヘリ潰しに倣うならば、翼を崩せば良いのでござったか!?」
当たり前の事を私に聞くな!ムカつく!!
【そしてその反対側から、ロスヴァイセと同仕様のコア粒子推進機関へと換装されたジークルーネがトップスピードで接近、防御を電磁シールドに一任しつつ高圧粒子圧縮刀剣兵装にて左翼部を叩き斬らんとする】
- 42ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/16(金) 06:41:43
(戦場は拮抗状態)
【紅い機体が地を走る】
(重装ヘリとBF2機、そしてこの艦か)
【駆ける脚が地を離れ、陸上戦艦という怪物の体表を”走る”】
(この規模の敵増援。現状戦力で押し返せる)
【一部の砲門や迎撃機銃が体表を走り回る存在に気付き、砲火は放つ。だが、本来想定したいなのだろう。垂直と言える装甲面を走る者には脅威になり得ない】
(しかし、この状況であの規模。奴らの勝利条件はこの戦闘に勝つことではないのか)
【射角が足りず、砲身が窮屈に身じろぎ──上部からのBFによる踏み付けという過重不可により潰れ砕け爆散。その煙の中に紅いBFはいない】
【今作戦の回線にから匿名で一文が表示される】
[閃光注意。利用して]
【ブースター光も無く。BF程の熱も無く、レーダーロックの検知も無く、駆動音すら戦場に掻き消える】
【お守りとして受け取ったスタングレネード。それを"拳の中で握り締め"────一瞬、船上を白い閃光が塗り潰した】
「遊びに来たぜ。アンタらも勝つ為に」
【甲板を蹴り、白光の中でフェイントをかけることもなく、一直線かつ急加速。テスタロッサの重量が乗る拳。それがナベリウス機の頭部へ迫る】
- 43バルバトス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 07:51:42
『────────勘が良いな』
・・・・・・・・・・
迷う素振りもなく、バルバトスは前進した。
ジジジ、とウルヴィの蹴りが『ヴィーナス』の頭部装甲を掠めて表層を引き剥がす音がする。刃の軌道を見切るのと同様に、蹴りもまた一本の線の攻撃として処理して肉薄する。
そうしてビームサーベルを振り抜こうとして、再び機体間視界共有から情報を得る。
そしてそれよりも疾く、音を超えた速度で隻腕の獣が動いた。
・・・・・・・
『兼ね備えているよ、その程度は!』
本能に基づく魔獣めいた埒外の反応速度と、理性に基づく直感にも等しい予測。
────────跳ね返されたリニア弾を、下から掬い上げるようにして逸らす。相殺するだけのベクトルを瞬時に叩き出す余裕はない。だが横から刃を当てる程度は容易い。
・・・・・・・・・・
ライフルとバルカンの偏差撃ちが、リニア弾と相殺される。
それによって作り出された僅かな隙間に機体を潜り込ませると同時、大口径リニアキャノンで眼前の敵の『隻腕』の付け根に照準して引き金を引く。
『墜ちないだろう、この程度ではッ!』
それすらも、高周波ブレードによる急速接近斬撃の文字通りの片手間の作業だ。
- 44アルパ◆YMCgTirJag25/05/16(金) 08:00:29
- 45ミハエル◆j28rRKKOSY25/05/16(金) 08:05:53
- 46ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 08:12:55
─────────迫る攻撃に、““ゲヘナ””が選択したのは酷く単純な手であった。
・・・・
前進する。老いた獣が“スカッド・ソルジャー”殲滅を目標として組み上げた大型武装ヘリは決して固定砲台ではなく、その機動力は質量と合わせて眼前に立ち塞がる障害物を押し潰せる水準である。
先の戦いでは逃げ回っても無意味な単騎での戦闘であったが故に使用されなかったが、此度の戦場には「ゴエティア戦団」が存在する────────故に、自ら移動して僚機と合流する事が可能だ。
・・・
『───────好都合!』
そして、スタングレネードによって視界を潰されたナベリウスは笑いながら吼えた。
得意の近距離戦に持ち込んでくれた事に対してか、或いは逆巻重工に味方する戦力が増えた事に対してかは瑣末な問題だ。
事実として、彼女は上機嫌になった。
潰された視界で、直前までの風景を構築してから高周波ブレードを配置する。
頭部の前面。殴ろうとするならば刃がその拳を切り裂くだろう軌道上に縦に構えながら背部の推進機関を軋ませながら加速する。単純な運動エネルギーによる圧殺だけが目的ではない。右脚が回し蹴りを敵機に見舞おうと関節が駆動している。
──────時同じくして、““ゲヘナ””への攻撃を開始しようとした三機のワーグナーへと200発にも及ぶ物量の対空迎撃ミサイルが津波のように迫る。
““陸上戦艦””が奏でる、荘厳なる砲撃が始まろうとしていた。
- 47龍影◆9BZ6kXGcio25/05/16(金) 08:35:00
「内臓もやったね?」
頭を撫でられながらもケイの状態を確認した。
龍影は自分のパイロットスーツの腰に着いているポーチを漁り、注射器を取り出す。
パシュッ
ケイの首筋にそれを押し当てて中の薬品を流す。
「止血用のナノマシンよ。15分で出血はだいたい収まる。…無茶しないでって言葉は聞いてくれないもんね…」
抱擁を解き、ケイの頬を両手で包むように触れる。
そのまま口付けをした。
舌を入れ、サラサラとしていて鉄臭い液体を舐めとる。
唇を離した時に糸を引く唾液は、普段のようにキラキラとした透明ではなく、光を飲み込む赤色であった。
「でも今は休んで。まだ終わってないから。」
そう言って龍影は上部ハッチから出ていった。
適切な手順でそのハッチは閉じられる。ハンドルは後の整備班が付け直すだろう。
『サヤギリ操縦士の様子はぁ!』
「加速度症で内出血あり!応急処置で止血ナノマシンを投与した!もう少し頑張って貰うから治療は待って!」
『サヤギリ操縦士は戦闘終了後、速やかにオペ!』
待機していた医療班に伝える。正直に言うと今すぐ預けたい。でもそんなことをしたら無理にでも出撃してくるだろう。そうなるくらいならライフルマンとして自分の横に置いていた方が安全だと判断した為である。
『王!廉月はある程度調整したぞ!まだどうにかなるだろ!』
「ありがとう整備長!」
そう言って蒼風の胸部装甲から飛び降り、受身を取って着地する。
『馬鹿か!』
怒鳴られてしまった。
「ならタラップ出してよ!」
龍影は反論する。
『…あんまりは無茶すんなよ』
ヤマトは父親役として嫁入り前のお転婆娘を心配していた。
「わかってる!」
龍影は手をヒラヒラと振りながら予備の廉月へ向かう。
- 48工房の2人25/05/16(金) 09:09:52
前スレ177
「羨ましいですね、私は親とはうまく接せていなかったので関係はあまり良く無かったですよ…。
ノーディス先輩は、言うなれば『軽量機の猛者』ですかね。まだ元の企業にいた頃には既に機体の性能を殆ど損なわないまま重量を15%カットできたそうですから。…ですけど、私が見ている今の姿はどこか変わってしまった様に見えるんですよね…本人の前では言えませんけど。
で、あなたと気が合いそうな人の話ですが、会いたいなら中級輸送機が停められている場所のこの部分へ行けば会えますよ。大型のBFをメンテナンスしている最中なので多分簡単に見つかります。」 - 49ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/16(金) 10:17:49
>>43 ・・・
【やはり攻め手が足りない。BESTIA DREADの真価はラッシュ力と対応力だ。しかし現在はその何方も大きく損失し、疾さ以外の強味が殺されている】
・・・
【技の極地とも言える彼の逸らしは、超音速の中で寸分の狂いもなく弾丸を当てるという自負を持ち、ミスをしないのが前提として存在している】
【生半な…いや、そうでない攻撃すらもマトモには通らない。先の蹴りとて、掠りながらも斬れる可能性を見た直進の選択でしかない】
【肩口の付け根に銃口が向く。回避は、可能。しかし同時に迫るのはブレード。また距離を取るか?それでは殺しきれない、届かない】
【BESTIAは回る。バレルロールめいて、その場で地面と平行になるよう機体をきりもみ回転させ、バルバトスから見て点となるように、リニアキャノンとブレードを掠めさせながら回る】
【直後に警報、生憎と肉体の瞳を閉じても視神経に情報が流れ込んでくるので、意味は無い】
【だが同時に、その目が明順応で機能停止することもない。明るさへの補正すらも〈エルガレイオン〉に依存しているカメラアイと、視覚情報を直接神経に送り込まれるが故に。結果としてウルヴィの閃光への対処は、視神経の激痛を無視するのみに終止する】
《…いつか、私も……死ッ、ぬ》
《……げど、…いま、じゃない》
【そして回転の勢いのまま、高周波ブレードを振るう。更に切り返して、突き、払いに繋げようとする。獰猛な剣技に剣士らしい矜持や信念といった髄は無い。ただ殺しの為だけに研がれた爪牙のような鋭い剣だ】
【『墜ちないだろう』というのは彼の期待か、評価か。何方にせよ墜ちるまでは墜ちないし、そのつもりも無いとしか獣には返せない。人らしい希望も、祈りも、矜持も、信念も、獣には持ち合わせが無い。喉から溢れる血の中で、発声の度に絞り出される空気を弾けさせる音がする。それに対しても喋りづらい以上の感想は無い】
知りたく
【獣が彼に応えた理由は一つ、より殺したくなったから。命を喰らうとは、それを咀嚼し、余すところなく味わう行為である。彼は例えるならビンテージの高級品だ。積年の中で熟成された香り高さが、一呼吸の度に衝動へと涎を垂らさせる】
- 50鋼鉄の巨獣◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 10:25:59
- 51バルバトス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 11:47:23
『コード74J』
・・・・
誘導ミサイルに、時限信管が設定される。大型武装ヘリから吐き出された無数の誘導ミサイルが、今度は回避困難な面制圧として殺到する。
咄嗟に機体の視界を切ったが故にバルバトスの駆る機体はウルヴィの高周波ブレードに対して一瞬反応が遅れる。
・・・・
────構わない。後退する。実体ブレードの短所の一つとして有効射程が限られるという点がある。だからこそ、一度飛び退く。
ウルヴィの駆る機体の機動力が『ヴィーナス』を上回っている。其れは事実であり、しかしその猶予の間に視界を取り戻せる見込みだ。
・・・・・
『仕切り直しだ』
誘導ミサイルの爆風圏内にBESTIA DREADを束縛する為に、バルバトスは立ち塞がった。
──────インベイドを駆逐する為に技量を高めながらも、バルバトスは剣士としての矜持や信念を持ち合わせていない。
- 52ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/16(金) 12:05:38
「たぶん。でも生まれつき治りが早いから……いや、言い訳だね、んっ!?」
大丈夫と強がるか。ごめんと謝るかを考えるかを悩んだ少しの間に唇同士が合わせられる。ナノマシンがゆっくりと体の中に入っていくのも、受け入れて。
唾液に血が混じってしまったことが、とても申し訳なかった。
『でも今は休んで。まだ終わってないから』
「ん、っ……少しゆっくり休むよ」
龍影の言葉を、ケイは頷いて受け入れた。
ただし、『龍影も離脱するなら自分も離脱する』という言葉を言う前に彼女は蒼風改のハッチを開けて、予備機らしい廉月へと跳んでいくのを見る。怒られていた。
「ああもう……ははっ」
こっちもカッコつけるしかないじゃん、と笑って呟くに留めた。
『サヤギリさん!!戦闘終わったらすぐ内蔵含めて検査かけますからね!覚悟してくださいよ!』
「分かってる……15分休むから」
疲れ切っているケイは、機体の整備含めた15分という時間を動かない。
動く体力が、ない。
「みんなで俺たちのこと、守ってくれるって信じてるから」
だから、ケイはここに来てくれた仲間たちのことを信じることにした。
- 53ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/16(金) 12:19:07
【バルバトスの判断は正しいだろう。近接武器はその手に持つ限り、射程を制限されてしまうものなのだから】
【ブレードは一寸届かずに、ヴィーナスは後退する。視界が無い場面で斬り結びに付き合う必要など無いのは、正しい判断だ】
【そしてウルヴィは迷わず、愚かな選択を取る。ヴィーナスの飛び退きの動作と同時に、隻腕に携えたブレードを振るった勢いのままに投擲する】
【『仕切り直し』などこの場には無い。閃光が弾けようと、殺し合いに幕間など許されないのだ】
【空いた手に素早くハンガーからショットガンを装備し、面の弾丸で迫りくるミサイルを撃ち落とす。幾つかを誘爆させて出来た穴にBESTIAは加速して飛び込むと、背後で一斉にミサイルが起爆した】
【時限信管。疾さを殺しに掛かる面の攻撃。判断に迷えば、或いは判断を間違えれば、既にBESTIAは墜ちているだろう】
【秒にも満たぬ迷いすら許されない。一つの失敗すら死に繋がる。その死闘感がぞくぞくと、ウルヴィの背筋に狂熱の興奮を駆け巡らせる】
- 54バルバトス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 12:39:53
『─────────疾ィッ!』
機体の機動を伴った肉薄ではなくブレードの投擲に対して、バルバトスが即応する。
互いの間の距離を考えれば高周波ブレードは満足に振るえない。大口径リニアキャノンでブレードを上に弾くが、その代償として砲身が潰れる。
・・・・
武装の遠近が逆転する。長射程高衝撃力高威力の大口径リニアキャノンが喪われた『ヴィーナス』と、ブレードを喪ったBESTIA。
ブレードとショットガン。生身ならば勝負にもならないだろうが、生憎と空を進むのはバディフレームである。
『正に疾風怒濤!この刹那の内に駆け抜けるか!』
迎え撃つようにして、バルバトスもまた正面から剣を片手に推進により互いの距離を詰めて─────その頭上で、最初に弾かれたブレードが垂直にウルヴィの機体を貫くような軌道で落下しつつある。
・・・・・・・・・・・・
敵の剣をも十全に運用する。比喩なく、バルバトスは其れを可能にしていた。
何もかもが、一秒にも満たない刹那の出来事だ。
- 55ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/16(金) 12:52:20
- 56マルタ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 13:09:56
(1/2)
うおっ眩し…くない!
【マルタの判断は早かった。即座に対閃光防御を作動させた事で閃光弾の恩恵に最大限預かりながらヴィーナスの後方退避を阻害するようにシールドワイヤーを2発投射。ワイヤーを躱しても任意でオンオフが可能な見えない斥力がある。見かけ以上に有効範囲の広い妨害札だ】
こんくらい“視えてる”んだろうけども…!
【同時に、バルカン砲を投擲されたブレードに発砲し弾くことでウルヴィの自滅を防ぐ】
──────────────
(粒子ビームのひとつでも飛ばせば“あっち”は方向転換させられたかもしれないのに、BFと違ってこっちの目測は拙いわね)
【ブリュンヒルデは止まらない。3基もの大出力陽電子リフレクターと逆巻重工から齎された装甲材が生み出す堅牢さは自らを上回る対地ヘリと衝突して尚機体パイロット共に耐え凌ぎ、敵側により大きな損害を及ぼす程の硬度と威力を担保されたBFサイズの弾丸である】
「忍法!…えーっと…なんだっけ…ドーンとしてバーンの術!!!」
【ヘリの表面装甲に機体を無理やり押し付けつつ、ガリガリとそれを削りながら尚も右翼を圧し折りにかかる】
「どんな忍法よ…」
【対してジークルーネも多少相対速度を緩めはしたもののこれも止まらず。ビームチャージソードを機体前方に構えて力の方向を逸らし、反作用でジークルーネの機動方向をヘリと同じ向きに切り替える。チャージソードが折れ、尚も前進するゲヘナに置き去りに─────】
【─────される前に、ビームチャージソードがヘリ装甲に突き立てられる。”2本目“だ。ついでに折れた刀身の残りは左翼部目掛けてその凝集された粒子を火砲として放出する】
【“この場にいる”ワーグナー全てが、数多の誘導ミサイルと砲弾を意に介する素振りを見せることはなかった】
- 57ソフィー◆KPwoT407kA25/05/16(金) 13:11:28
(2/2)
『1-01、3-07、3-09ノセンサー情報確認。敵誘導ミサイル並ビニ三式弾飛翔パターン選定及ビ確定…完了』
『“対応機”二データ送信。結晶弾頭スタンバイ』
【ワーグナー側の“機体間相互視界共有”によりシュヴェルトライテが得た最前線の情報により、演算は早期に完了した】
「…………………ファイア!」
【グリムゲルデが、偏向ビームスナイパーライフルに秘められた更なる機能───────“拡散圧縮結晶弾頭発射機構”を解禁する。発射された結晶体からワンテンポ遅れて放たれた光条が無数かつ正確に拡散し───────ウルヴィが垣間見た“一射二殺”などとは比べ物にならない“一射多殺”を実現する光の雨が、鉄の雨を喰らい尽くす】
【“ローン・ソルジャー”が得意とする多数のロングビームライフルによる飽和攻撃をたった一機で賄う規格外の面制圧力が、この装備には付与されている】
【─────────そして】
「トリル!ベアトリス!焦ってヘマらないようにね!」
【この装備はグリムゲルデのみの特権ではない。弾頭生成機構と偏向ビームライフル、そしてシュヴェルトライテさえあればヴァルキリーにも実現可能な戦術だ】
【実に8丁の“結晶弾頭対応ビームライフル”が、拡散ビームを戦場に絶え間なく散らす。200もの誘導ミサイルと三式弾に留まらず、敵の残存BFへの流れ弾すら計算されたヴァルハラの“秘策”は存分に威力を発揮した】
【──────陸上戦艦にここまでの火力が無ければ、その火砲がとうにBFや輸送艦、対地ヘリに向けられていた事は想像に難くないだろう】
- 58ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/16(金) 13:14:32
- 59アリソン◆PPyRfvMZl625/05/16(金) 13:29:02
【死戦の地表、無数の砲火が空を彩る、暗煙に翳んだ視界の淵で、一瞬、赤い星が瞬いて見えた】
【尾を引いて落下する明星、煌々と吐く火炎、それは飛び交う射線を擦り抜けながら飛来する】
────────────キィィィィィィィィィン────────────!!!!
【肉眼で、目視出来る程に接近して初めて、それが星では無いと分かった】
【バディフレームだ、長距離移動に於いて機体内部の粒子貯蔵タンクを温存する為の弾道機動用プロペラントタンクが、バキバキと弾け破片を飛び散らせながら燃えている】
【砲弾よりも、銃弾よりも早く飛ぶ飴玉(キャンディボール)の艶めき、地上から舞い上がる砂礫をガリガリと払い除けながら、最速の直線軌道】
「ゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウ────────────!!!!」
【尋常ではないGに身を潰されながら、桿を握り締めた雌獅子が吼えている】
・・・・
「────────────ポンコツがァ、もう佳境じゃねえか!!」
【本来想定されていない緊急機動を成し遂げて見せた愛機を口汚く称えながら、ケーブルで直結された大出力の粒子サーベルを閃かせ】
【ゴエティア戦団、二機の頸をその頭上を擦り抜け様に刈り取らんとする最高速度】
【熱狂の戦場へ、盛大に横槍を加えてみせた】
・・ ・・・
「聞こえてるか!ガキと手負いは無茶すンな!!」
- 60ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/16(金) 13:30:51
【これで二機の条件はイーブン…になった訳では無い。リニアキャノンを失っても、ヴィーナスは腕そのものを失ったわけではなく、故にビームサーベル発振機構を含めた三手を持つ。更に弾き上げたブレードが一時的に四手を担う】
・・・・
【対するBESTIAは一手…ではない。高威力中射程のショットガンの下部には、ワイヤーを備えた爪がある。故に二手を有するとも言えるだろう】
《速い、の゛は…ッ……あな、たも…》
【機体の速度という意味ではウルヴィに軍配が上がる中で、敵機も音を超えたゼロコンマの世界に喰い付いている。その鋭さはまさに迅雷。BESTIAには眼前と頭上から二つの刃が迫る中で、ショットガンをハンガーへと返すが──】
>>56 ・・
【頭上の回収が不要になった。本来なら喜ぶべき善意の援護は、予想外として獣の予定を狂わせる】
【狂った予定を修正し、BESTIAはヴィーナスの刃の側面を拳の甲で打って逸らす。苦し紛れの抵抗はその勢いを逸しきれず、頭部の装甲へと切傷が刻まれる】
【頬の削げる痛みが、意識を掻き乱そうとする。肉体が傷付いた訳では無い、焼け爛れる脳髄の痛みも、溶け落ちる眼球の熱も、肉体への物理的な外傷ではない】
【まだ、『大丈夫』だ】
【不完全な受け流しの最中、BESTIAは膝蹴りを放ってヴィーナスを穿たんとするだろう】
- 61龍影◆9BZ6kXGcio25/05/16(金) 13:44:24
キラキラと空の向こうが光った。
「遮蔽物へ!」
龍影は作業している後方人員へ叫んだ。
刹那、光った正体が雨のように降り注いだ。
滑走路、作業用重機、天幕、何もかもその礫が食い潰す。
どこかで爆発が起きた。望月が黒煙を吐きながら倒れ込む。
搭乗予定の廉月は至近弾により、立たせていたカーゴのキャットウォークを巻き込んで倒れていた。
カーゴの外は地獄が広がる。吹き飛んだ脚を必死に押さえて止血しようとするもの。飛んできた破片で裂かれた腹に溢れた臓器を戻そうとするもの。倒れてきた仮設建材の下敷きになり呻くもの。
「ヤマトさん!」
辺りを見渡す。
『大丈夫だ!』
『あ…姐さん…』
ヤマトの奥、廉月の影から声が聞こえる。
「マキト!」
龍影を姐と慕っている整備士は生きているのがやっとの姿であった。
運んでいた弾薬が誘爆したのだろう、重度の裂傷と火傷を負っていた。
『無事…だったん…「喋るな!医療班!医療班は居るか!治療『行って…ください…第2射を…とめ…』
そこで事切れた。
「おい…おい!マキト!おい!」
話さぬ骸となった整備士をそっと地面に置き、龍影はうつ伏せに倒れている廉月のコックピットに滑り込み、起動させる。
手を地面について身体を起こす。膝を付き、立ち上がる。
「ケイ!私は先に出る!」
『龍影!俺たちは気にするな!戦艦を止めてこい!』
「わかった…行ってくる!」
無事であったヤマト達は離陸前の廉月から離れた。青々としたバーニア炎はたった今見送った骸を燃やす。
戦闘機のジェットような逞しい重高音を鳴らして飛び立った。
慟哭にも似た飛翔音を奏でる廉月は大気の壁を叩き割るのには十分な速度であった。
- 62東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/16(金) 13:54:43
相手はネームドの集まりであり
そして装備も大して消耗していない状態
このままでは余りにも不利が過ぎる。
『───しゃーない、"葉桜"無茶すんで
もうボロボロやけど...少しはマシにならな』
操縦席の電源を最低限のものに落とすと、
椅子の下に仕舞ってあったバイザーを装着
不気味に薄暗い操縦席に甲高い駆動音が響く
【システム:リミッター解除、再制限勧告
ダメージの蓄積に身体が耐えられませ──
『五月蝿い。黙ってやれや』
葉桜の操縦システムの目的は、手術無しで
神経制御と同等のスペックに至る為のもの
言ってしまえば凡人が無茶をする為の機構だ。
凡人の100%は才有る者達の1%以下であり、
全力を出している故に絶望的な差が開く。
それならば、肉体の限界を機械の力で破り
・・・・・・・・・・・・・・・・
1000%以上の力を強引に引き出せるなら?
【リミッター解除、戦闘用AIシーケンス起動
機体とのリンク最大:内燃機関をフルブースト】
『命なら二束三文で売ったるけど、
タダで落とすんは我慢ならんからなァ...!』
跳び上がる姿はまさに獣のように、
>>46のヘリ近くへと一瞬で辿り着く
- 63アルパ◆YMCgTirJag25/05/16(金) 14:50:18
- 64二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 14:59:58
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- 65工房の2人25/05/16(金) 15:06:33
- 66ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 15:18:36
『───────コード34G』
両翼を叩き潰された““ゲヘナ””がロケット弾と誘導ミサイルを全開放してフルバーストする。
後先を考えない火力投射。超音速にも達する徹甲弾が火器管制システムによって次々と機体に放たれ、一方で時限信管によって誘導ミサイルが次々と爆裂して爆煙で視界を遮ろうとする。
それさえも、陽動に過ぎない。コア粒子推進機関が過剰放熱する。機体全体を自爆させる事で、地獄の名を冠する巨大兵器は一矢報いようとしていた。
(敵機体の運動性能は私の『ヴィーナス』を上回る──────先手を奪われた以上、後から対応するのは至難の業)
淡々と指令を下しながら、ナベリウスは取り戻した視界で敵機の動きを捉えた。
ブレードを捻って薙ぎ払う。関節部への負担が余りにも大きいし、それさえも避けられかねない。確実な有効打には繋がらない。
・・・・・・・・・・・
『空中は三次元自在ですわ!推進機関のない機体が空中戦を挑むのはオススメしませんわよ!』
・・・・・・・・
後ろ向きへの推進。最高速度よりもクールタイムを重視した中型コア粒子炸裂機関は、小回りという面で多大なる空中戦適正を持つ。
加えて『ヴィーナス』は追加特殊装甲パッケージである。その防御力も含めて、致命打にならない水準を見極め、命中するまでの時間を敵機の想定とズラして命中を受け容れようとする。
手首を向けた。真紅の輝き。蹴りが『ヴィーナス』に命中し、運動エネルギーが破壊に消費されて足を止めた瞬間にビームサーベルで刺突する為に。
それと並列して、最速の直線軌道を突き進む獅子の女に大口径リニアキャノンを向けて引き金を引く。軌道上に弾頭を配置する偏差射撃だ。牽制である。
『────────その加速装置!方向転換の難易度は如何程かしらね!』
- 67ミハエル◆j28rRKKOSY25/05/16(金) 15:27:00
- 68アルパ◆YMCgTirJag25/05/16(金) 15:35:34
「任された。」
メイツーは予定通過地点にサヨナキと呼ばれるBFが握り込める取っ手が着いた多角柱型構造体を置いた。
そのまま迫ってくる戦艦に向かい飛ぶ。冗談のような弾幕に襲われた為、大きく迂回しながらそのまま後方に回り込む。
途中、最低限の補給しかして居ないオリジナルアーヴィングが陽動に動いた。
だがアルパは「陸上戦艦の動きを止める」が最優先である為気にかける余裕はなかった。
まだ生きていた艦砲を撃ったらしい。
その瞬間、軌道修正ができないほど近づいたのを確認したアルパは起爆した。
白とも黄色とも思える閃光の後、衝撃波と熱波が襲ってきた。ほんの少し遅れ、音も届く。爆心地では大気を上に押し上げ、巻き上げた砂塵などを使い、キノコのような雲を作る。直後、艦はクレーター端に追いやられた大地だったものに乗り上げ、不快な音を立てながら動きを止めた。
- 69東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/16(金) 15:43:47
- 70バルバトス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 15:45:18
『─────────疾い、が!元々想定していた動きではないな?』
シールドワイヤーによって後方へのブーストが封じられた。故に攻撃を躱してから刃を叩き込む戦術は使えず、真っ向から獣と向き合う他にない。
不完全な受け流しだとしても高周波ブレードの引き戻しは間に合わない。片腕では膝蹴りを受け止めるのは困難だ。
──────────────ガチャンッッ!!!
・・・・・・・
バルバトスの膝と肘がウルヴィの膝蹴りを挟んだ。追加装甲が軋み、剥がれ落ちる。構わない。ココで使わなければ何処で役立てるのかという話だ。
強く、強く。BESTIAの四肢の一つを押し潰す程の勢いで圧迫する。動きを止める狙いだ。もう片方の腕に握った高周波ブレードと、手首から伸びようとするビームサーベルを腰の捻りでBESTIAへと叩き込もうとする────────反動でコア粒子炸裂機関がオーバーヒートして、数秒間は使えなくなるが。
だが、無理をしてでも。迅速に仕留めなければならないとバルバトスは判断していた。
間違いなく脅威だ。隻腕の身でバルバトスを相手に互角に渡り合うパイロットなぞ悪夢である。
『コード51A』
・・・・・・・・
艦載砲に、次弾が装填される。同口径の海洋戦艦の艦載砲は40秒で再砲撃が可能であったという。故に陸上戦艦も、同様にして迅速な再装填を行える。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一度しか砲撃出来ない要塞なぞ存在しない。三式弾が、再び後方補給所を狙う。今度は全く同時に放つ一斉掃射ではない。ローテンションを組んで、十門が交互に砲撃し続ける戦術だ。
絶大な積載量を有する陸上戦艦と、伸び続ける補給線を抱え込まざるを得ない攻撃側。溜め込んだ弾薬と資源の物量が違う──────────必ずしも必殺である必要はない。敵戦力を留めておけるだけでも戦略的な意義はある。
・・・・・・・・・・
「ヴァルハラテック」が保有する総てのコア粒子を枯渇させる為に、砲撃は継続されるだろう。
- 71ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/16(金) 16:07:46
《あぁああぁぁぁ亜゛ァ゛呀゛あ゛ッッ!!!!》
【BESTIAの装甲が、フレームが軋む。ヴィーナスの膝と肘から、BESTIAの脚から、互いの装甲が剥がれ落ちていく】
【しかしそれは、密着状態であるということ。そして密着状態であれば刃よりも腕の方が、小回りが効く】
【高周波ブレードを振るうバルバトスの腕を、ウルヴィが隻腕で握る。上半身を固定することで、身体を捻って手首からのサーベルを当てる事も抑制する】
【互いに相手を固定し、しかし互いに打つ手無し。軋む機体同士の耐久勝負かと思われた】
《不明なアクセスが確認されました》
・・・・・・・・
【だが、獣の右肩にソレが接続される】
【二連の鋸刃が展開する様は、獣の大顎が歯を剥き出しにするのにも似ている】
【響く回転音は、悲鳴か咆哮か】
《あぁあaAaaaァ∀@aaAAAAA!!!!》
【口が塞がらない。ウルヴィが灼けていく。殺意だけが鋸刃をバルバトスへと、喰らいつかせようとする】
【障害を発生させたプログラムの音声は、ノイズに塗れた絶叫だけを吐き出す】
- 72龍影◆9BZ6kXGcio25/05/16(金) 16:23:37
「邪魔だァァァァああ!!!!」
到底女の声帯から出たとは思えない慟哭はバルバトスに届いただろう。
青色の柄のサーベルを抜き放ち、音速近い速度で廉月は艦砲を切りつけ、装填機構を破壊する。
「1つ!」
ゴファ!
おおよそ廉月のような大人しい機体から聞こえない噴射音を鳴らしてクイックスラスターを吹かして砲身軸からズレながら55mm滑腔砲の燃焼弾を撃ち込む。
砲台下の弾薬庫に誘爆したのか爆炎を上げた。
「2つ!」
背中側が、いや、船首方向からの光によってホワイトアウトした。
直後、衝撃波に殴りつけられ、バランスを崩し、甲板へ着陸する。その後に轟音と熱波に叩かれる。装甲表面の塗膜が高温に晒されてモコモコと気泡ができる。
「SS-N…」
振り返った目線の先には旧時代の戦術核と同じキノコ雲を作り出していた。
戦艦は大きく揺れ、その破城槌は動きを止めた。
- 73マルタ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 16:41:40
(1/3)
(噛み合ってない!)
【今のBESTIAの動き、違和感があった。まるで頭上に迫るブレードは自力でどうにかできたような…】
この動き…機体同士で連携する事を考慮してない!
どうしたら合わせられる…!
《…タ!マルタ!》
【回線が開く!ユスティーナからだ】
なに!今は戦艦の第2射に注力…
《ウルヴィと合わせようなんて考えない方がいいわ!そいつは全部自分でどうにかしてくれる…
どっちも殺すつもりで動きなさい!!!》
…!!!
【つっかえていたものが、噛み合った気がした】
そっか…“気にしなくていい”って事か!!!
【ウルヴィが固定した、ヴィーナスの上半身目掛けて─────ワイヤーの牽引すらも利用し、陽電子ランスを起動したロスヴァイセが推進機関の限界を超えて唸らせながら迫る】
これがあたしの…れんっ、けいだぁ゛ぁぁぁ゛あ!!!!!!!
【生存本能を働かせた方が生き残る。生き残ったのがウルヴィでないなら諸共に殺す】
【それがマルタの答えだった】
- 74二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 16:44:40
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- 75シグレ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 16:48:43
(2/3)
「話が違うでござる!翼落としたのになんか逆に弾幕強まっておらぬか!?」
何をどう聞いてたのよアホ忍者!構造上張り付いていれば大半は無駄弾に…………いや
【ロスヴァイセとシュヴェルトライテから齎される視界共有により、仮に2機が爆風に包まれたとて視界そのものの確保は可能だが、そもそも下手に飛び出せば逆に落とされる可能性が高まる…普通ならそう考える。おそらくそれまでもが策略だ】
・・・・・・
それが本命か!デシレア!コンマ1止まれ!
「ござっ!?」
【落下するヘリに相対的に追随していた2機を一旦止め、“最短距離”を確保したジークルーネがコア粒子推進機関を全力で吹かしてブリュンヒルデ・グラムの牽引タラップを掴む】
そのまま後方に加速!陽電子リフレクター最大出力!!
「まさか拙者のブリュンヒルデを盾に…いやちょま…ござーーーーーっ!!!!!!!」
【已の所で、2機のワーグナーは陽動を掻い潜る道を選んだ。やがて煉獄の爆裂が止み────────】
「…陽電子リフレクター一基機能停止。スラスター総推力36%低下。誘爆回避の為にミサイルコンテナ喪失。シグレ殿…盾がわりにするなら一言」
こっちもそっちのバカ推力に付き合わされて駆動部が軋んでる感じがするからトントンよ。それにアンタの機体に何時までもフルスペ発揮されてたら運んでもらう弾みでバラバラになりかねないから丁度いいわ…!
「少しは悪びれろでござる…!?」
【手負いのワーグナーが、一気に押し潰さんと未だ衰え知らずの大推力でナベリウス機へ迫る】
【小回りを利かせて回避するのであれば、その回避方向を反射で読んだジークルーネが追撃として“3本目”のビームチャージソードを抜刀する】
- 76アリソン◆PPyRfvMZl625/05/16(金) 16:52:49
【焔が弾ける、キャンディボールの搭載した外付けのプロペラントタンクは、空中で分解し燃え墜ちて往く】
【そうして素体となる機影が露わになった、深紅のバディフレームには、その四肢毎に姿勢制御用スラスターの増設改修が行われている】
【搭載した純然たるエンジン出力と、駆動の妨げとなる装甲を排除し極限までの軽量化を施した、“戦団”の駆る機体と比べてそのコンセプトは甚くシンプルだ】
「────────────ッッッッッッ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・
【つまり、当たらないくらい速ければ良い、結論もまた、馬鹿々々しい程にシンプル】
【レールに乗せて放たれた電磁加速弾を眼前にして、キャンディボールは一切速度を緩めることなく】
【両脚に搭載されたミサイル弾を、戦艦に搭載された砲台群の幾許かを沈黙させんと拡散射出し────────────】
【────────────その射撃反動が足を後方へ僅かに浮かせるのに合わせて、爪先に搭載された推進機構は空中を蹴り跳ねた】
【サマーソルト、宙返り、空中前転、即ち曲芸軌道】
「ごぅげぇぇッッ……べ、ェッ!!」
【身体が前後から強烈な“圧”に潰される感覚がして、胃の腑から競り上がって来た酸を足元に吐き捨てる、これがあるから今日は食事を抜いてきた、お陰で吐瀉物で操縦系が滑ることも無く、どうやらその決断は正解だったらしい】
【獣が唸る、問題無い、体力ならば今この場の誰よりも有り余っている自信がある】
【まあ、ここまで空を飛んできたのだから……アドレナリンの齎す気のせいかも、しれないが】
・・・・・・・・・・・・
「なぁ、最近よォ……!どこでも子供が頑張り過ぎだよなぁ!?」
【笑いながら、前転の速度ままに粒子サーベルをナベリウスの頭上より振り下ろす、明々とした光線が黒煙を裂いて散った】
「立つ瀬がねぇよアタシみたいな大人はさァ!こういう時くらい、碌な理由なんざ無くたって!!意地の一つも張りたくなるんだよなァ!!」
- 77ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/16(金) 17:01:13
(1/2)
『遮蔽物へ!』
『ヘマするんじゃないわよ!』
「す、ご……ぅっ!?!」
砲弾を、拡散するコア粒子達が迎撃する。
数百に及ぶ火の花に僅かに心奪われながらも、ケイはコックピットの中で耐ショック姿勢を取った……衝撃が襲いかかる。
ゴスン、という重い音。ぁ!と声が出た瞬間にケイの視界が落ちた。
……戻る。視界も頭も揺れていた。なんとか補正する。
「ぅ……この揺れ……着弾した!?ユズハ!」
気絶していたことを、ケイは理解できていない。機体が倒れていることだけは分かった。
『二発よ!三式弾が1、分裂型ミサイルが1抜けたの!!整備班!サヤギリ操縦士は意識復帰しました!作業速度上げて!』
《左腕のパーツは廉月で十分です。操縦系さえ変わっていなければ……》
そんな、と漏れた自分の声はケイにとって人ごとのようで。モニターを立ち上げれば、横倒しで燃え上がる光景が。
(あそこは確か……龍影と整備班のみんながいた場所)
「誰か!機体のロックを外してくれ!救助をやらなきゃ!」
『ケイ、貴方は意識を失ってたの!……既に救助活動は終わっているわ。戦場は優位よ、だから落ち着いて』
「補給所では死傷者が出ているんだろ!?」
『……ええ』
暗いユズハの声に感情が間欠泉のように噴き上がってくるのを、なんとか抑えた。機体のロックが外されない以上、ケイは何もできない。
誰が死んだのかも、見送りも、救助もできない。
けれど、ケイは幸運だった。
《整備完了。気絶含めて17分と39秒です》
まだ身体も心も、機体も戦えるのだから。
- 78ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/16(金) 17:01:51
(2/2)
「出る」
『待ってケイ!!ニュートラル状態の機体転倒で意識を失うほど疲労してるパイロットを前線に出すわけには!』
一言だけ出す。
ガコンという音と共に、廉月の左腕が突貫工事で取り付けられたのを理解したから。
確認。腕の装備は高速速射砲、シールド、内蔵サーベルは望月から受け継いだ初期型だ。
補給所にあった予備のサーベルは右腕の盾に収まっている。
「頼む、行かせてくれユズハ」
『相手は……!! っ、分かったわ。けど無茶は、だめ。検査で体を切り開く羽目にならないようにして』
ユズハの念押しに、ケイは無言で頷いた。腕が取れた廉月が蒼風改を立ち上がらせてくれた。整備班達が離れて、ロックが外れた。
[無茶だけはしないでくれよ。こいつは気絶しても目覚めたら出るだろうって、あんたのために整備のみんなが我を通したんだ]
「……わかってる!」
額から血を流す名も知らない廉月乗りへ答える。補給所を守ってくれていたのだろう。
ケイは操縦桿を握り、ペダルを踏む。コア粒子推進機関を高音で鳴らす。吠えるように蒼風改が陸上戦艦へ向けて飛び立った。
僅かに火で焦げた、接がれた緑色の左腕。その肩に、血糊の如き赤のラインを添えて。
- 79ソフィー◆KPwoT407kA25/05/16(金) 17:28:44
(3/3)
(──────被害を完全に防ぎきれなかったか!二者択一…無い方と選択した可能性がまさかCv-K7改/A近辺…元より戦えるかどうかも危うい状態。全体の損傷こそ軽微ではあるが…)
【シュヴェルトライテは被害状況を整理しつつ、即座に“第2射”への対策を構築していた】
(王龍影が既に砲門潰しに出撃。そして恐らくこちらの消耗狙いでローテーション撃ち切り替えてくるだろう。1射目程の圧力は無い)
(そして…クールタイムは40秒程か。演算結果算出は先に作れる…とすれば)
(いけるか)
【拡散ライフル部隊が、再び射撃体勢に移る】
『“対応機”二データ送信。結晶弾頭スタンバイ』
「……………ファイア!!!」
【光の雨が再び鉄の雨を覆う─────ローテーション読みと解っている為2丁分待機しているものの、10の三式弾に対して過剰とも思える程の光条が】
【狙いは砲身そのものだ。相手の土俵に馬鹿正直に付き合う必要はない。その弾薬を死蔵させ、再び休眠させ得る“狙撃”を実行可能な程の柔軟性が、本兵装には秘められているのだ】
- 80バルバトス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 17:47:24
・・・・・・・・
「其れは想定済みだ!設計段階からな!」
手首の内蔵式ビームサーベルは追加特殊装甲に内蔵される形で装備されており────────当然、ロックを解除されたビームサーベルは慣性の法則に則ってBESTIAの隻腕を溶断しようとする。
そして粒子バッテリー諸共剥がれ落ちた真紅の輝きが突き進むよりも疾く、特務執行機『ヴィーナス』はその頭突きを繰り出している。
装甲が違い、質量が違う。上半身が固定されていてもこの至近距離からならば頭突き程度は行えるだけの運動性能を、「アズマ工業」謹製の最新鋭量産機は有している。
メインカメラの破壊を成し遂げられれば戦闘不能。そうでなくても視界情報を占有すれば密かに斬撃の軌道を描くビームサーベルが腕を切り裂く。
そしてビームサーベルを迎撃しようと手を離せば、その瞬間には高周波ブレードがBESTIAを斬り殺す必殺の戦術を叩き付けて────────
・・・・ ・・・・・・
(────────コイツは、拙者を殺せる)
バルバトスには確信が在った。突如として現れた、異形極まる装備を前にして、冷静にその武装の形と様子を分析する。
展開された二連の鋸刃を目の当たりにして、そして迫る陽電子ランスを認識する。
・・・・・・・・・・・・
「其れに付き合う義理はない!」
澱みなく必殺の戦術を行使しながら、バルバトスは静かに中型コア粒子炸裂機関の再点火の時間稼ぎをする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
埒外の武装、脅威の結晶だ。ならば燃え尽きるまで逃げ回れば良い。
勝利条件は迅速な敵戦力の殲滅ではなく、時間稼ぎだ。戦術的撤退によって稼働時間の優位を生かす事に躊躇いはない。
─────────慟哭が聴こえた。バルバトスは歯が砕けそうな程に食い縛った。
彼らは今、人類を滅ぼす愚行の片棒を担いでいるのだと改めて理解したから。
- 81ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/16(金) 17:55:48
(ビームサーベル?粒子など喰らってやる)
【テスタロッサの大腿部に粒子の刃が突き刺さり脚を切り落と────否、表面装甲を焼き飛ばした熱が第二の装甲、粒子流動体にて飛散する】
【勿論その場凌ぎだ。あと数秒、もしくは再度は容易くフレームを焼き溶かすだろう】
(何度刺されてもいい…何度焼かれてもいい…!)
【視界に一瞬映した黒いBF】
「空中に足場があればさァ!」
【蹴ったという事は、接地したという事】
【蹴りの全てで突き刺さず、そのまま"足首のみ"での跳躍に繋げる】
【機体負荷は──軽微。この程度は反応樹脂靱帯に備わる伸縮で直ぐに戻る。つまり】
「まだ跳べんだよ…!こっち向けェ!!!」
【跳躍から前転。後方へ進む『ヴィーナス』が加速し切る前に頭部裏へ、破壊せんと踵を振り落とす】
- 82龍影◆9BZ6kXGcio25/05/16(金) 17:59:26
- 83ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/16(金) 18:02:22
- 84マルタ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 18:09:23
- 85ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/16(金) 18:17:39
「スイ」
《試作電磁弾体加速砲、速射モード……コア粒子の充填率に注意》
蒼風改は音を超えて飛んでいた。高度を上げて、砲台を見下ろせる位置で。
複数の目標位置を強調表示してくれるモニターを睨み、照準に集中する。
「行くぞ」
そのまま、複数回の射撃を連続で敢行する。電磁加速した弾は砲台を貫通し爆発させる。
ネームドに相応しき者達を邪魔しようとする名もなき陸上戦艦所属のBFのコックピットをぶち抜いて、自爆すらさせぬままに沈黙させて。
「――――!!」
そのまま、試作電磁弾体加速砲の三発を数秒のうちに死角から放つ。
ゴエティアの視界共有から外れた位置から、援護、敵の牽制、本命を混ぜて。ナベリウスの視界と射線から外しにかかり。
「2発、いくぞ!」
短く言う。そのまま蒼風改がフライパスを取りつつ転回。バルバトスへ砲身を向けた。
ウルヴィなら避ける。龍影であれば牽制と本命意図を通してくれると察する。他の味方であれば合わせると決めて。
針の穴を通すように二発、バルバトスの後方への回避先をさらに塞ぐように射撃する。
- 86ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 18:19:39
(1/3)
「厭になる程、合理的な選択をしてくれるものですわね……………ッ!」
ギリッ、とナベリウスが奥歯を噛み締める。彼女の技量は未だ僚機であるバルバトスに及んでいない。若さ故の経験値不足であるが、だがその其れの責任を他者に押し付けたくはない。
だからこそ、“弱い方”であるナベリウスを多数の力で押し切ろうとする動きも当然の成り行きであると考えていた。
戦場に卑怯なんて言葉は存在しない。必要性だけが厳選として存在するだけだ。
・・・・・・・・・・・・・・
「逃げ道を作るのは私ではないッ!」
・・・・・・・・・・
テスタロッサの跳躍を抵抗せずに受け入れる。その跳躍の反作用で炸裂加速を使わずに機体を後方へと飛び退かせ、五連撃を躱す。近距離武装である限りは有効射程が存在する。タイミングを見極めれば、紙一重で避け切るのも可能だ。
温存した中型のコア粒子炸裂機関によって急降下を果たす。振り下ろされる粒子ビームサーベルと蹴りを空振らせて、大口径リニアキャノンでサーベルの持ち手を砕こうとする。
───────同時。高周波ブレードとサーベルを持ち替え、迫る戦乙女と鍔迫り合いに持ち込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
『どこでも子供が頑張り過ぎだよなぁ!?』
- 87ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 18:20:00
- 88二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 18:23:47
このレスは削除されています
- 89ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 18:33:07
(3/3)
上層部の判断は極めて迅速であった。否、その内実を鑑みるのなら“周到”であったと言い換えても良いだろう。
・・・・
「『任務続行』だと?この状況でどうしろと…………………」
総て、余す事なく伝えた筈だ。
陸上戦艦の機関部が少なくない損害を受けている事も、後方砲門の壊滅によって直にヴァルハラテックの光の雨が甲板にも降り注ぐであろう事も、そして数々の“ネームド”達によって「ゴエティア戦団」が対応可能な領域を疾うに逸脱している事も。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
老いた獣は本任務の撤退要請を許可していない。
だから、彼らの“戦団長”の命を保障する為には。声が本物であろう贋物であろうと、バルバトスとナベリウスには戦闘の継続が要求される。
「コード40N」
ギシリと、青筋を浮かべて。しかしその場で行える任務達成の為の最適解を打ち続けるしかない。
陸上戦艦に乗艦しているメカニックとエンジニアが機関部の修理の為に艦体を降りてゆく。ゴエティアはその時間稼ぎをする必要がある。
「────────良いでしょう。来なさい、全員撃墜して差し上げますわ」
バイザーに煮え滾るような怒りと殺意を覗かせて、ナベリウスは機体を駆動させた。 - 90シグレ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 18:40:17
愚策。
【ビームチャージソードの切っ先が、鍔迫り合いに持ち込むことすら許さずに高周波ブレードにバターを切る時のような軽い感触で切り裂いていく。そして溶断し切り、ヴィーナス本体を次の獲物と見定め───────ようとしたタイミングで、固形化されていた粒子が爆ぜ、回避のタイミングを見誤らせ得る一閃と化す】
(リニアを向けるか、それとも)
【これで殺しきれないのなら。脚部のスラスターを吹かし逆上がりの要領でリニアライフルの砲身に蹴り込みを入れ、射線を取らせないように試みる。そして───────】
…お前達(おとな)の尺度で、子供(わたし)を語るんじゃないわよ
【“4本目”。軽斬馬刀に偽装された最後のビームチャージソード。天地逆転体制のまま、抜刀所作と同時に推進機関からコックピット目掛けて実体粒子太刀が振るわれる】
【炸裂機関を吹かせば、二度と空を飛ぼうなどと思い上がらないように】
- 91東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/16(金) 18:47:27
- 92ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/16(金) 18:56:19
- 93バルバトス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 19:02:12
・・・・・・
「─────────縋るべき依代だと?」
バルバトスは、漸くオーバーヒートから抜け出したコア粒子炸裂機関を駆動させた。
後方には、回避しない。放たれたバルカンを首だけで避ける。だが視界が遮られた。目視ではなく、獣めいた直感にしか頼れない───────────だが、其れは魔獣の直感である。
・・・・・・・
機体が、前に突き進んだ。規格外にして埒外の武装が瞬時に高周波ブレードを装備した『ヴィーナス』の片腕を切り落とした。
電磁装甲すら意に介さない脅威の攻撃力。千切れた片腕の高周波ブレードを『廉月』のビームサーベルが切り落とした段になって、バルバトスは敵の増援が到着したと認識が追い付いた。
・・・
「我々が、アレらの同類だと?」
『ヴィーナス』は、肉薄した『廉月』とBESTIAの背後へと離脱している。余裕なんて何処にもなく、バルバトスもまた“命を捨てた”。
弾かれたビームサーベルを前進と同時に掴み取り、片腕で振るう。神速の斬撃。振り向き様に機体頭部を蒸発させ、戦闘能力を喪失させようとする攻撃である。
・・・・・ ・・
「──────────良いだろう。ならば、そのように殺せ」
“余分”を斬り捨てて、“悪魔”がその本性を剥き出しにした。この戦争には“決着”が必要だ。願わくば、其れが子供達の未来に繋がる結末でありますように。
- 94賢人会議◆YMCgTirJag25/05/16(金) 19:10:18
- 95ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/16(金) 19:10:25
- 96マルタ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 19:25:06
(────────違う)
【陽電子ランスの突貫は、損傷上等の前方回避にて失策に終わった…いや、まだ終わらない。左側のワイヤーをサーベルで強制排除して推力を無理やりヴィーナスに更に回り込ませるよう強制転換させる】
頭を取る(そのていど)で……っ゛、それ(BESTIA)が止まるとでも思ったの…?……………………甘いよ
【その神速の斬撃に、気迫はあれど殺意は感じられなかった…………この人は、こんな戦いで尚、お人好しであろうとしているのか】
【こんなものが“悪魔”なら、あの処刑場を仕立てあげた外道はどう形容すればいいのか?】
あなたは人間だよ、あたし(ばけもの)と、違って
【その軌道の途中で、ランスを一旦切る。銃口を内側ら引き金に親指がかかるように持ち替えて…脇越しから背面目掛けて再始動させる】
【──────ヴィーナスがこの戦いで幾度となく見せた無動作からの高速の刺突。その再現だった】
- 97龍影◆9BZ6kXGcio25/05/16(金) 19:25:32
- 98ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/16(金) 19:34:01
「俺、は……」
ゴホ、と、止血しきれていなかった血をこぼし。急旋回。
遠距離で狙うのをやめる。接近する。
一秒を百に切り分けて。目前の”敵”を焼き付ける。
・
「俺が罪を背負うから」
ケイ自身は油断せず。しかし”ヴィーナス”が振り向く一瞬の視界の中に、蒼風改がいて。
・
「いつか俺が罰を受けるから」
何もかも止められなかった、己の未熟こそがこの事態を招いたのだから。
BESTIAが頭部をゆっくりと切断されていく状況を見ながら。
彼女が振るう丸鋸でも、そして味方達でもなお仕留めきれない可能性を視野に入れて、狙いをつけ続ける。
誰の邪魔にもならないよう、狙い続けながら接近する。
――――それは見つめ続けることと同じで。
「あなた達は、彼らの同類じゃない。
――――俺の命を以てそれを証明し続けると誓う。」
己が最も愛する人がいる限り、贖罪を。その言葉は内心で添えた。
試作電磁弾体加速砲を構え、龍影の廉月から一呼吸遅れて。真上に動く。
「――――。」
最後に何を言ったかは自分でもわからないまま。祈るようにトリガーを引いた。
- 99ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/16(金) 19:34:17
- 100アリソン◆PPyRfvMZl625/05/16(金) 20:46:34
【錐揉み回転、サーベルは縦への振り下ろしから横薙ぎへの軌道変更、飛来する砲弾を真っ二つに斬り裂いて】
【キャンディボールは空中で幾度も跳ねる、急加速、急旋回、己の肉体への負荷さえ無視すれば】
【咳き込むと反射的に涙が滲む視界を頭を振って掃う】
・・・・・
「理由があるよなァ、お前らにも!政治くせェ理由でガキ一人の命引き換えにして、終末戦争おっ始めようなんて老害共が騒いでやがる、それを万歳三唱で受け入れる奴ばかりって訳がねェ!むかっ腹立って“スッ飛んで来た”アタシみたいな連中だっている筈だ!」
【分かっている、ナベリウスの声色が激憤に彩られていることを、その所以までは推察出来ずとも】
【自分だって、似た感情は知っている、度合いは異なれど政争を繰り返す企業に使われる側の人間という共通点】
・・・・
「お前らにも、今ここで命擦り減らしてるアイツらにも理由があって────────────納得してようが無かろうが退けねぇってンなら、殺し合いにもなる!」
【同じ陣営に属し、本来であれば共闘出来た筈の相手、共にインベイドと戦い続けられた筈の相手、戦わなくて良いのなら、誰もここで戦いたくなんて無い、それが至極当然の事実であって】
【だが戦わなければならないのが、この場に於ける現実であって】
「────────────乗り掛かった戦艦(ふね)は、どうやらとんだ泥船だったみてェだな?」
・・・・・・ ・・・
【恨むのならば、運命を】
【独楽の様に回転しながら光線が描く、ナベリウスの眼前へ、手始めは愚直な墳進を】
「言い遺してぇコトはキッチリデータにしておけよ、その方が、ガキ共にもサルベージしやすいだろうからな!」
- 101ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 21:44:28
「────────あら、気分を害してしまったのかしら?だとしたらごめんなさいね」
粒子が爆ぜる直前に握っていた粒子ビームサーベルを手放して、急降下する。振り抜かれた腕が真紅の刀身を投擲した。狙いは頭部。防ぐ為には大振りの防御が必要となり、避けるとしても一瞬の視界の隙を作れる可能性のある位置。
・・・・ ・・・・・・・・・
天を翔ぶのではなく地に降りようとする機動。抜刀されたランスが胸部装甲を瞬時に蒸発させて、黒色の長髪を靡かせたナベリウスの姿が露わになる。
大口径リニアキャノンが奪われる。構わない。まだ武器は残存しているのだから。粒子ビームサーベルと高周波ブレードの二刀流────────急加速が総身を軋ませようとする。慣れ親しんだ感覚だ。今更、止まりはしない。
「生憎と、遺言の類いはパイロットになった時から決めてありますの!今頃急いで残すようなデータもありませんわッ!」
軽口を叩く。或いは、虚勢を張る。
────────────刺突、薙ぎ払い。一対の牙による一連の動作が最速で入力され、キャンディボールを文字通り噛み砕こうと音を超えた。
- 102東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/16(金) 22:07:58
- 103バルバトス◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 22:14:54
・・・ ・・・・・
「───────コレが、通した我だ!」
・・・・・・ ・・・・・
バルバトスは自らで決断し、人を殺した。
だからこそ、“一緒にするな”とは言わない。
犯した罪はどう足掻いても罪でしかないのだから。その責任に他者を介在させるべきではないのだ。
その結果として評価されたのなら、其れは甘んじて受け入れるべきである。評価とは自己がどう思っているのかではなく、他者にどう思われているかなのだから。
・・
─────────それに、其れは死者への冒涜である。
彼らにとって、彼らの未来と想いを踏み躙ったのは間違いなくバルバトスだから。
だからこそ、彼にはその罪に正面から向き合う責任がある。『本当は嫌だったが、仕方がなかった』だなんて。死者と、其の仲間の前で言えるものか。
ふと、声がした。振り下ろされる命を絶つ刃。彼の総てを喰らい尽くす獣の顎門。
・・・
『───────貴女にも、良き夜明けがありますように』
鋸刃が“悪魔”を切り裂く。
真紅の粒子が、鮮血のように噴き出した。
- 104ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/16(金) 22:23:53
【周囲を俯瞰する。今一度考える】
(この敵の目的は”負けること”)
(命を奪う必要はない)
【だが、既に殺意の牙は彼等・彼女等に迫っている。それを残酷だと誰が言えようか。それを罪だと誰が言えようか。今、敵を屠らんとする人達も皆"戦っている"殺し殺されたではない。陸上戦艦の停止が勝利であって彼等・彼女等の生死は必要なく、殺すことが最短かつ最適なのだ】
「だからと言って───!!」
【奪い取ったリニアキャノンを】
「見過ごせるかァ!!!」
【ナベリウスではなく、彼女を狙う"仕事仲間"に向けて放つ】
【元より仕事仲間であって味方ではない。この状況下でこの行為は作戦の成否には既に関わりはしない。名目上裏切りではない】
【キャンディボールとヴィーナスを結んだ線上に紅い機体が降り立つ。そしてナベリウスへとリニアキャノンの砲口を向け】
『此方の作戦は成功した。オレ達と"アンタ達の"勝利だ。違うか?』
【持ち替え、リニアキャノンの持ち手側を突き付けた。>>103煌めく真紅の粒子を背景に】
- 105シグレ◆KPwoT407kA25/05/16(金) 22:36:44
ええ、害されっぱなしよ…貴方にも、この船にもね!!
【大仰な防御も、ましてや回避の必要もない攻撃だ。胸部のレーザーバルカンがビームサーベルの切っ先に命中し、間もなくデバイス部分を穿った】
(…コックピットを掠った!気密性が損なわれた以上、全く同じ機動という訳にも行かない筈!)
【入力速度とそのレスポンス、という点に於いてはジークルーネも一過言ある。天地逆転のまま、コア粒子推進機関を吹かしてヴィーナスの前方を抑える】
・・・・・・・・・・・
(正面を取れば殺しきれる!)
【このまま振り返り、未だ輝きを放つ4本目のチャージソードを振りかぶる───────が、それはプラフ。本命は腕パーツで射線を隠したレーザーバルカンで自身の腕ごと射撃し、中のコックピットを焼き尽くす事が狙いだ】
【大きな威力は必要ない。小さい一撃でも当てられれば───────────】
……………………は?
【リニアライフルの弾体はシールドワイヤーによって防がれた。だがそれが問題ではない。前方を抑えた先の行動を実行する前に介入者が現れたのだ】
デスペラードの分際で…!
【問題ない。BFの残骸が1つ増えるだけだ】
けどよく足止めしてくれたわ!一緒に死───────
《待たれよ!シグレ殿!》
【デシレアの回線が、紺色の死神の動きを止める】
デシレア…このイカれデスペラードの肩持つつもり!?
さっきから意味の分からない理屈をベチャクチャと…!このまま自爆されるくらいならとっとと仕留めるべきよ!
こいつの偽善で結果的に死人が増えたらたまったもんじゃ…
《その点には同意するでござる。この者が気狂いであることも…が》
《なら拙者達は関わらなければいい。死人が増えても、こいつの責任でござろう》
《…マルタ殿と合流して機関部へ向かおう。この戦艦の完全沈黙を以て、状況を終わらせるでござるよ》
…クソがクソがクソがクソがクソが!!!!!ほんっっっっと…今日はずっと禄でもない目にしか合わないわ!ムカつく…!!!
【ジークルーネが構えを解く。シグレの怒りを投影するかのように推進機関は獰猛なアイドリング音を唸らせていた】
- 106エイダン◆Fd5AlHEdkk25/05/16(金) 22:57:17
「もちろん。……アイスティー、一つ。あと、プリンを」
【影を被った顔の下からそよ風にのって、引き攣った嗚咽が耳朶を掠める】
【穏やかな午後の風景に合わぬ異様な席の様子に、店員はつとめて素知らぬ振りをしながら、注文された品を置いた】
「はい」
【浮き出る水滴で指先を濡らしつつ、ゆっくりと背中を押すようにグラスを前に押しやる】【薄荷のような、または甘い花のような香りが青年の詰まった鼻腔をくすぐった】
「落ち着いたら飲みな。これは奢りだから、払わなくていいよ」
【机上を覆った振動の煽りを受けてもなお、全く揺れる気配を見せない真っ黄色な小山の頂を匙の先で抉る】
【空いたばかりの口内へぱくりと誘い込めば、色と同じくらい濃厚な卵黄のコクが、カラメルソースのヴェールを被って舌と踊った】
【これは、なかなか良い店だ】
- 107旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/16(金) 23:04:13
「──────あら、美味しかったのですか?それは良かったですわ!」
にこにこと柔らかに微笑んで、旧愛卿は口元を綺麗に拭った。
故郷の料理が褒められると気分が良い、というのはある意味では普遍的な感情だろう。
「想定している運用法についてはその通りですわ。そもそも、近距離武装自体が基本的には銃火器よりも難易度が高いというのもありますので」
引き金を引くだけで銃弾が出て、有効射程も長い銃火器は正に『初心者』向けだ。
火砲の普及が騎士階級を駆逐したように、その本質は『簡単に扱える』点にあるのだから。
・・・・・
──────加えて言えば、パイルバンカーでなければ倒せない敵は極めて重装甲の特殊な個体が想定されるというのもある。
誘導ミサイルやロケット弾では倒せない敵を倒す為の武装として考えるなら、精鋭が扱う想定になってしまうものだ。
「あっ、デザートについてはコチラのジェラートが気になりますわね。グランセルンスイーツまで取り扱っているだなんて、少々今後も贔屓にしたくなりそうですわ」
- 108ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/16(金) 23:16:26
【鮮血のように噴き出す粒子を浴びて、漆黒に朱が彩られる。獣の頭部は瞼を閉じて悼むようにカメラアイを細めて、そのまま焼き切られた断面のみを残し、重力に従って落ちていく】
「よあ、け…?」
【暗闇の中で、微かに、確かな声がした。何も見えない夜闇に、仄かな導きが見えたように思えた】
【その意味の全てを理解したとは、ウルヴィには言えない。なぜ彼の未来を踏み躙り、その命を簒奪した自身に対して、それを遺してくれたのかも分からない】
【けれども、その真意を問うことはもうできない。死者は祈らず、呪わず、静寂の中で眠るのみ】
【血の悦びと飢餓が膨らむ。獣として命を貪り喰らわなかった事への不満と、積年の中で熟成された命の甘美への歓喜。それが何処までもウルヴィは獣なのだと自覚させる】
【それでも、殺した事に後悔はない】
・・・・・・・
【してはいけない】
【それが命を奪った者の、狩人としての敬意だ】
【命を糧とした事を後悔するのは、命に対する冒涜に他ならないのだから】
【故に眠ることもまた、許されない。命を喰らった者は、その最期の時まで喰らった命を無駄にする生き方をしてはならない】
「でも………」
「…わ、た……し」
「………眠い、よ…………」
【迷子の獣は、悪魔の遺した導きを手に、闇を見上げる】
【夜明けはきっと、まだ遠いのだろう。】
【ならば『痛み』を感じるままに、夜へ吠えよう。きっといつか、明ける時が来ると祈って】
- 109◆KPwoT407kA25/05/16(金) 23:46:23
(終わった)
(向こうと違って…こっちは、殺して止めた)
【きっとこの人も望んでいたのだろう。だから陸上戦艦やヘリを全力で動かして、その上でこちらが上回った、この人の目論見通りに】
《マルタ!アンタは大丈夫だとしてウルヴィは!?なんかとんでもない様子になってるのが見えたんだけど!?ホントにだ────────》
【ユスティーナからの回線をミュートにする。そして…BESTIAに向けて通信を送る】
…ウルヴィさん、寝るのはまだ早いよ
【“夜明け“というのはきっと言葉通りの意味ではないのだろう。マルタはそれを、綺麗、で幸せな未来──】
あたしは夜明けが見たい。ウルヴィさんはどう?
【──────つまり、ゴエティアが本当の意味で望んだ、“インベイドの居ない世界”だと解釈した】
【程なくして、2機のヴァルキリーが現れる。頭部を喪失したBESTIAを補給ラインまで誘導する為に】
- 110東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/16(金) 23:58:11
- 111ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/17(土) 00:02:50
《…さがし、たい》
【ロスヴァイセからの通信に応答するウルヴィは、まだ迷ったままで。問いかけたマルタと違い、ウルヴィには“夜明け”のイメージができない。何が“夜明け”なのか想像がつかない】
《私も、いつか…みつけ、る》
【それを探すところが、ウルヴィのスタートだ。その果てにいつか、“夜明け”を得ると信じて】
【やって来た二機のヴァルキリーに従って、頭部を欠損したBESTIAは補給ラインまで後退する。最中に何度かバランスを崩しかけながらも、前線から離れていっただろう】
- 112ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/17(土) 00:54:27
(1/2)
「――――」
悪魔がまた一人眠って。一人の悪魔が、拘束されている。
(……どうする)
思考する。テスタロッサの行動は一歩間違えればここで仲間割れになる行動。
・・・・・・・・・
けど、ここでゴエティアを殺す必要は本来ない。止めるべきは陸上戦艦。
赤い粒子を背に、蒼風改はテスタロッサの近くへ降り立った。左腕が、血糊のように赤い線を引かれている。
「……っていうか。こうしてアンタの目の前に無防備に立ってる俺が生きている時点でおかしいよな」
ああ、思えば皆皆……ノインですら自分の我を通しまくってたのに。叫びまくってるのに。
(なんで俺とノインさんばっかり託されて背負って。なんで、なんで、ゴエティアが2人も死ななきゃいけないんだ)
(ノインさんだけ満足そうに帰って……ああ畜生、なんでだよ本当に)
「なんで俺だけ我慢しなきゃいけないんだろうな……?」
あのバカの尻拭いを、俺がずっとどうしてしなきゃいけないんだろうな?
呟いて、息を吸って。
- 113ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/17(土) 00:55:27
「ゴエティア戦団機へ――――降伏を」
吐き出した。
ヤケクソだった。自分が死んだら目の前のゴエティアも死ぬだろう。そうなればどうせ終わりだ。
自分たちは陸上戦艦を止めれば良い。もう分読みなのだ。なぜ殺さなくてはならない。
あの艦長がそうだったように。
自分の命以上に大事なものがあるから止まれないのなら。
……脚本を描くしかない。言い訳のしようもなく負けたから、生き残ってしまったのだという理由を。
「抵抗しないなら、パイロットには危害は加えない――――これは人自連内部規程の抗争で認められる権利だ」
「どうする」
試作電磁弾体加速砲を構えて。問いかけた。
同時、テスタロッサへスイを通して回光信号を送る。
《戦団機が降伏を受け入れるなら拘束、ないしパイロットの回収をお願いします。断った場合は機体の四肢を破壊……または自爆する前にパイロットを回収してください》
《依頼主からの追加依頼です。受諾は任せます》
内容はそれだけ。
……そのまま、ケイは血液のえづきを堪えて待った。
- 114ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/17(土) 01:04:36
- 115アリソン◆PPyRfvMZl625/05/17(土) 08:13:04
【────────────互いに機動性に利を持つ機体同士、決着は、交錯の数瞬に】
【敵機の胸間に、女の姿が見えた、声から推察してはいたが、案の定自分より一回りも若い】
【反吐が競り上がって来て、胸灼けするみたいな気分だった、だから人と戦うのは嫌いだ、インベイドとだけ、戦っていられればそれが良い】
【だが、己の命に指を掛けられている今は、躊躇をすれば死ぬのは自分】
「ぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおッッッ!!!」
【雌獅子が吼える、キャンディボールは時代遅れの素体であるが故に、パイロットの安全性を捨て置いた急転を可能とする、四肢のスラスターが稲妻の如く斜線の軌道を描き、刺突を繰り出そうとするナベリウスの背後へと回ろうと────────────】
「────────────、ッ!?あぶ……ッッッ!!」
【突如として、割り込んできた別の機体が視界を妨げれば、慌てて操縦桿を倒す、急ブレーキ】
【当然それには胃が丸ごと引っ繰り返る様な圧力がかかる、ごほ、と咳き込めば、びしゃ、びちゃ、と床に血を吐き散らしながら】
「ッぶねェな、オイ!轢いちまうところ……!」
【怒声を浴びせようとして 止まる】
【生半可な妨害なら、強引に引き剥がして……けれど、あまりにもその声色が真に迫ったものだったから】
- 116不沈鋼鉄機械化帝国◆OXAm1h6odk25/05/17(土) 17:34:45
(1/?)
「──────────────────どうしたもんかねぇ、コレは」
紫煙を燻らせながら、独立傭兵“モザイク”は天井を見上げた。
クロノス領侵攻を控えた賢工グループからの依頼で植民大陸の非コア粒子系の生産プラント残骸を捜索して軍需素材を回収しに航空機に乗ったのが四日前で、大規模なインベイドの移動に巻き込まれて彼を除く部隊全員が壊滅したのが三日前。
弾薬が尽きて、突撃兵級に囲まれながら重装兵級の粒子ビームの輝きに絶望したら突如として現れた別の勢力によって救われて、そのまま回収されたのが二日前だ。
───────問題は、彼を救った勢力である。
『お客様、気分が優れませんか?もし必要でしたらお飲み物などをお待ちしますが…………』
「あぁ、いや。ちょっと黄昏ていただけだ。そんな手厚くして貰っても返せるものはない。気にしないでくれ」
美しいソプラノボイス。耳に優しく、落ち着く声。
だがその声の主は、彼を上回る鋼鉄の体躯を有する機械鎧のような自称“機械人”なのである。
金属光沢が艶やかなボディに、野獣めいたしなやかな構造の脚。指先は人類と然して変わらぬ五本の指が生え揃っているが、其れも艶やかな金属の輝きを堪えている。
加えて言えば、この屋敷───仮称だ。実際の屋敷は小さな歯車やネジを誇らしげに絵画のように飾りはしないし、庭園だって無数の砲ではなく美しい花が咲いているだろう───の住人達は皆、二足歩行ではなく四足歩行をしていた。
未知の世界に迷い込んでしまった様な感覚だ。此処では彼が積み重ねた常識の数々が否定されている。
冷たい鋼鉄の貌から吐き出される優しげな言葉は、しかし何処か恐ろしさも彼に与えていた。 - 117不沈鋼鉄機械化帝国◆OXAm1h6odk25/05/17(土) 17:35:14
(2/?)
『─────もう直ぐに、ザクセンベルク公爵閣下がご帰還なされます。長らくティルガー伯爵家陥落の後処理に追われていましたが、しかしつい先日に掃討が完了しましたので。
その頃には、この都市周辺の野蛮なる惑星外来種の動きも落ち着くでしょう。直ぐに帰還が行えるよう取り計らいます』
「それは……………助かるな。ありがたい話だ」
ただで補給と修理までしてくれて、オマケに人自連が有している飛行場の近くまで返してくれるという提案に“モザイク”は目を丸くした。
余りにも好条件。何が裏があるのではないか、と。
『それから、公爵閣下が面会を希望です』
ほら、こんな風に。 - 118ラルト◆C01O2YJoxg25/05/17(土) 19:03:44
「はぁ…疲れる…」
掃除屋として呼び出されマスクをつけ部屋の掃除をしている。
テキパキと部屋中を換気し袋にゴミを積めている。
今片付けている部屋は住人が引っ越すからとそのままにしていた部屋らしい。
(自分でもう少し綺麗にしときなよ…)
口には出さずにそのまま掃除を続ける。 - 119不沈鋼鉄機械化帝国◆OXAm1h6odk25/05/17(土) 20:00:41
(3/?)
『あぁ、君が“人類自由連盟”の傭兵だね?この度は誠に残念だった。君の同僚を助けられず……………本当に申し訳ない事をしたと思っているよ』
「い、いや。寧ろ命を救って貰っただけでも感謝の極みです。そう畏まらず………………」
ザクセンベルク公爵。その姿は、或る意味では予想通りでありながらも、予想を逸脱していた。
・・・・・
鋼鉄の人狼。今までの“機械人”達はまだ人としてのシルエットを保っていたが、ザクセンベルク公爵の姿は狼の手脚と頭を人に移植したかのような不気味な躯体である。
しかしその恐ろしげな容貌に見合わず、物腰柔らかに接してくるものだから。“モザイク”は思わず貌を引き攣らせてしまった。
『改めて自己紹介を。私は“人狼公”アルフレッド、偉大にして永遠なる帝国皇帝カール様よりこのザクセンベルクの統治を任された者だ────もし良ければ、君がこの植民大陸を訪れた理由について少しお聞きしたい。我々は日頃、あの有機生命体に悩まされているせいで余り外の情報を得られなくてね』
アルフレッドに促されるままに着席して、恐らくは合成食料と思われる味気のないレーションを食べながら“モザイク”は洗いざらい情報を吐いた。
──────総てだ。賢工グループの策謀と侵攻の計画に、人類自由連盟内の反応。
“モザイク”が語り終える頃、アルフレッドは驚きもせずに深く頷いていた。
『クロノスか…………………懐かしい名だ。生身であった頃は憎んだ事もあったが、今となっては寧ろ気の毒にも思える。彼らの大多数は何も知らぬ労働者なのだからね』
「……………“生身であった頃”?」
『あぁ、言い忘れてしまっていたかね?我々は皆、義体化しているのだ。元々は君達と同じ身体だったのだよ』
肉の檻を捨てた事に、アルフレッドは誇らしげに胸を張った。 - 120不沈鋼鉄機械化帝国◆OXAm1h6odk25/05/17(土) 21:20:44
(4/4)
『──────────────さて、実に有意義な出会いであった。外の世界の情報を知れた事も、君のあの惚れ惚れするような洗練されたフォルムのバディフレームに出会えた事もね』
「………………分からないな。アンタの反応を見るに、機械を崇拝しているのは分かる。だからこそ、何故あんな骨董品紛いのバディフレームしか使っていないんだ?」
『必要性の問題だよ。我々とて、もっと素晴らしい機構を作り上げたくはあるが────あの忌々しい害虫共に邪魔をされて、リソースを削られているのが実際の所だ』
憂いるようにため息を吐いてから、アルフレッドは朗らかに“モザイク”に言い放った。
『今日はもう休み給え。君は我々“機械人”と違って脆弱な肉体しか持たないのだ。後の事は優越種たる我々に任せて、体力の回復に努めなさい』
───────────────────────
広陵とした荒野。インベイドが蹂躙し、均した環境を無数の『人狼』が四足で駆け抜ける。
体躯は大きくはないが、鋼の身体でありながら驚くべき柔軟性によって並大抵のバディフレームよりもずっと軽快に彼らは地を踏み締めていた。
小規模のインベイドの群れが、突如として強襲を仕掛けた『人狼』の群勢を排除するべく総攻撃を開始する。
突撃兵級が前衛となり、背後から射撃兵級が弾幕を浴びせようとする──────────一切に飛び跳ねて『人狼』が散開して、突撃兵級の壁へと接触する。
機体側面に吊り下げられていた大剣を振るって突撃兵級を叩き潰し、切り裂く。跳躍した機体が上から突撃兵級の頭を踏み砕いた。中には開いた鋼鉄の牙で突撃兵級の喉笛を引き裂く機体も。
旧時代で言う『騎兵』の如き打撃力と機動力を実現した機械化帝国の先鋒は、静かにインベイドを排除していった。 - 121賢人会議◆YMCgTirJag25/05/17(土) 22:12:46
《掌握した、議長。頼みます。》
〈わかった。〉
深呼吸して無線に繋げる。できるだけ多くの者を止めるために。
〈私は人類自由連盟軍事戦略部門のG.Wだ。賢工の独占していた統括サーバーは我々の一時管理となる。同時に現在人類自由連盟の理事も兼任している賢工理事会は退陣、後継は追って伝える。〉
〈...そして今回の事件に参加した諸君、処罰は不問とする。即刻、武装解除せよ。BF(相棒)の握るそれ(武器)は隣にいる友のために、家で待つ家族の為に、、、そして、未来ある子供たちをインベイドから守るためのものだろう?これ以上、同胞の血で染めないでくれ。、、、戦闘を停止せよ。繰り返す戦闘を停止せよ。〉
その言葉は各地で戦う仲間に届いただろう。
- 122ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/17(土) 22:15:32
【停戦勧告が行われる陸上戦艦の頭上より後方。留置所との間に位置する補給ラインで、漆黒の機体は駐機状態となっている。その胸部の上にあるべき頭部は失われており、細身の脚部も拉げて歪んで、先の戦闘を目にしてなくとも、このBFが激戦を繰り広げた事が伺えるだろう】
【そしてBFが死闘を行ったともなれば、当然にパイロットも疲弊する。それが高機動戦ならば尚更に。ならばこの機体の主は休息を取るべく、コックピットから降りているのだろうか】
【───否。二機のヴァルキリーに誘導されたBESTIA DREADから、何分経ってもパイロットが降機する様子は未だにない】
【その理由は極めて単純】
「ァ……があ……ッ………ゥ…」
【降りる力すら、彼女には既に無いのだ】
(苦しい苦しい苦しい苦シイ苦シイ苦死苦死苦死苦死苦死!!!)
【胸の奥から溺れ沈むような苦痛が広がる。心臓を握り潰すような圧迫感が鼓動の度に強まって、心臓の活動を停止させようとしている。意識がスパークするように何度も何度も明滅して、酸素を求めて開いた口すら呼吸の仕方を忘れたように、喉を詰まらせて唾液が垂れていく】
【『眠るにはまだ早いよ』その通りだとウルヴィも思うからこそ、『痛み』に抗う。ロックを解除したハッチに向けて、感覚を失った右手を伸ばそうとして】
【がしゃん。糸が切れたように落ちた腕と頭が、コンソール等の機器にぶつかって、虚しい衝突音を闇の中に木霊させる】
「……ッッ…!………ッ…………………」
【無機質な紅い瞳に、しかし確かにあった灯が、風に吹かれるように揺れていた】 - 123龍影◆9BZ6kXGcio25/05/17(土) 23:16:07
〈私は人類自由連盟軍事戦略部門のG.Wだ。賢工の独占していた統括サーバーは我々の一時管理となる。同時に現在人類自由連盟の理事も兼任している賢工理事会は退陣、後継は追って伝える。〉
〈...そして今回の事件に参加した諸君、処罰は不問とする。即刻、武装解除せよ。BF(相棒)の握るそれ(武器)は隣にいる友のために、家で待つ家族の為に、、、そして、未来ある子供たちをインベイドから守るためのものだろう?これ以上、同胞の血で染めないでくれ。、、、戦闘を停止せよ。繰り返す戦闘を停止せよ。〉
人自連の広域通信で流れたその声は子を想う父親のものだった。
「了解…」
55mm滑降砲、ビームサーベル、ビームライフルを捨てる。撃たれない。停戦指示を破るものはその場にいなかった。
焼けて一部塗装が剝がれた廉月は空から戦艦を見下ろす。手を挙げて降伏する兵士たちがいる。
「終わった…」
長いように感じた戦いが終わった。余りにも大きな犠牲を払って。
- 124ユスティーナ◆KPwoT407kA25/05/17(土) 23:22:41
- 125東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/17(土) 23:38:48
- 126ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/17(土) 23:39:43
〈私は人類自由連盟軍事戦略部門のG.Wだ。賢工の独占していた統括サーバーは我々の一時管理となる。同時に現在人類自由連盟の理事も兼任している賢工理事会は退陣、後継は追って伝える。〉
〈……そして今回の事件に参加した諸君、処罰は不問とする。即刻、武装解除せよ。BF(相棒)の握るそれ(武器)は隣にいる友のために、家で待つ家族の為に……そして、未来ある子供たちをインベイドから守るためのものだろう?これ以上、同胞の血で染めないでくれ。……戦闘を停止せよ。繰り返す戦闘を停止せよ。〉
「……ナベリウスさん」
電磁加速砲をゆっくりと下ろして。ケイはテスタロッサに向けて頷く。
エゴとして、依頼を受けないと言ったルフスにも同じように視線を向けて。
「もう終わった。もう……殺し合わなくて良い」
しかしどんどん、そこ顔は白ずんで。
「もう……死ぬ人は……いなくて……いいん……です」
コックピットシートに背をもたれて。細く長く、息を吐いた。
たまりきった肉体の疲労が、心に巣食った残響が。気を抜いたケイをゆっくりと闇に引きずり込もうとする。
「だから……お願いします――――降伏を」
堪えなくはならない。G-3のように倒れてはならない。
その一念で。頭を下げた。
- 127ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/17(土) 23:47:55
【暗闇に光が射す。ハッチが開放されたことで、コックピット内の血生臭い空気を外の空気が追い出していく】
【現代には伝えられていないはずの旧式、人体を機体のデバイスと見做した完全接続が、知っているような適切な手順で接続を解除されていく。ヴァルハラテックの神経接続技術だからこそ可能であり、それは機体動作から神経接続を見抜いた彼女が技師を連れてきた事で成されたのだろう】
【こびり付いた返り血が固まっている少女のような顔は、エンブレムともよく似ている】
「…ァ………っう…」
【聞き覚えのある声が聞こえた。まだ生きてる、『大丈夫』と伝えようとするも、発声は声になってくれない】
【それでも彼女と顔を合わせようと首に力を入れて、でも動かない。せめて視線だけはと、明暗と色彩が逆転するような視界の瞳、光の方へと動かす】
- 128ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/17(土) 23:50:40
>>102>>104>>105>>110>>112>>113>>114>>115>>121>>125>>126
「─────────あら、では戦闘を終了しなければなりませんわね。降伏しますわ、降伏」
ナベリウスの『ヴィーナス』が地に叩き付けられてから、拉げた腕部が握り締めていたビームサーベルと高周波ブレードを手放した。
・・・・
彼女が老いた獣に従わなければならない理由は、既に消滅したのだから。
後はもう、好きなようにやるだけだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「陸上戦艦の医務室に案内しましょう。またバディフレームで動き回って補給所まで下がるのは負担が大きそうですもの。医術の心得がある方は?」
コクピットから降りて、ナベリウスは指先を解して微笑んだ。
高速戦闘の疲労はあるが、しかし耐えられない程度ではない。それだけの訓練は幼少期から積んでいるし、それ以外の技術についても習得している。
「──────因みに、私はコレでも医師免許持ちですけど」
フフンと胸を張って、ナベリウスは陸上戦艦医務室に備蓄してある医薬品のリストを機体間通信で公開した。
数万単位の兵士を運用する事が想定されていた機動要塞だ。品質も量も桁違いである。
- 129ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/18(日) 00:06:29
「よ、か……った……」
降伏する、という言葉が聞けてやっと、力が抜けた。
残りの言葉がぼやけて上手く聞こえない。
「もう誰も死ななくて良い……俺のせいで……死ぬなんてことは……もう……」
疲れでコックピットハッチを開けることもできないまま。虚ろ虚ろに言葉を返して。
目を瞑る。気絶ではない……ただ疲労で、視界を閉じたいだけだ。
ゆっくり、ゆっくりと息を吐く。
「ベレトさん――――俺のワガママを一つだけ、通しましたよ」
尊敬すべき男から受け継いだ脚本に、自分は一筆加えることができただろうかと思いながら。
「龍影……どの医薬品が一番いいか教えて……あと逆巻の人呼んで……」
自分の状況判断がもう限界に達したと思った少年は、素直に愛する人を頼った。
――――賢工の敷いた後方防衛線を戦闘で抜けたか、あるいは降伏勧告を通してこちらへ通れるようになったのか。
逆巻重工を含めたいくつかのBF部隊が陸上戦艦の上をフライパスして、何機かが降伏兵の受け入れを引き継いだ。
- 130ユスティーナ◆KPwoT407kA25/05/18(日) 00:10:10
「…しかし驚いたな。試作機乗り達から聞いた情報からもしやとは思っていたがまさか本当に“エルガレイオン”とは」
「まずは治療。ハチャメチャに疲弊してるみたいだし……………ハチャメチャな額出したら機体とかデバイス触らしてく」
外野はシャラップ!!!!!!!!
「「ハイ」」
【接続ロックを解除。それでも尚動けない様子のウルヴィの細い身体を、ユスティーナが鉄から引きずりだした】
こうやって顔を合わせるのは初めてかしらね!こないだ一緒にプラント守ったユスティーナ・ハクリよ!!
───────だいぶ人に見せられない顔になってるけど!
喋れる気力も無いみたいだし医務室に運ぶわ!構わないならその眼を一瞬上に動かして!
【その顔は、鼻から下を鮮血に染めていた。その類まれなる視力を酷使した時に起こす、反動の証左だ】
【体力の尽き果てたウルヴィを医務室へ運んでいく】
- 131ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/18(日) 00:13:39
- 132ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/18(日) 00:21:46
【くぐもったような耳の中の不協和音を、気高い声が貫く。聴覚の障害を物ともせず、その言葉がハッキリとウルヴィに届く】
【自分も名乗りを返したい。顔は…お互い様だと思った。彼女が自らの血で赤く染められているように、此方も凝固した血で赤黒に染められているのだから】
【なんとか向けた視線を承諾と判断したらしいユスティーナの手で、ウルヴィの身体が運ばれる。彼女の詳細な年齢までは分からないが年下のはずで、成長の余地があるだろうに、現在でもウルヴィより一回り大きい】
【別にそれが何かと言われてもなんでもないのだが、僅かな敗北感のような感覚があった。…名乗れなかったのも含めれば連敗かもしれない】
- 133シグレ◆KPwoT407kA25/05/18(日) 00:26:25
「…機関部に攻め入る必要は無くなったでござるな」
フン、ストレス解消に何人か踏み潰してやろうと思ってたのに。それもご破算だわ
「けど、これで良かったんだと思う」
【桃と紺の談話に、白い機体の回線が混じる】
「なんであれ、あの人はこっちを助けてくれるみたいだし。悪い人じゃあないんだと思う…こんな戦い、長引かせちゃいけないよ。あたし達の本当の敵はインベイドなんだからさ」
「マルタ殿…!」
マルタ…あんたねぇ、そのスランプ脱却の為に私がどれだけウザ絡みされたか、ついでにアンタとは関係ないけどどんな辱めをっ………………まぁ、いいわ。
無事で良かった。
「シグレさん…!?」
「シグレ殿…ストレスと月ものとペペロンチーノでいよいよ頭が…」
ぶちのめすわよアンタら!?
【────────出立前に逆巻で交わした約束、やっぱり“私の分”をもう一発増やしておこう。そう心に決めたシグレであった】
- 134ミハエル◆j28rRKKOSY25/05/18(日) 00:28:45
- 135ポリト◆XGxCas/OAU25/05/18(日) 00:32:50
「やっぱり難易度だよねぇ、使われにくい原因は。それこそBF自体を改造しなければならない程には…」
「私もこんないい店は初めて来ましたよ。また余裕があれば来たいです。さて、私も何か…」
【発言を遮るかのように、女性の方の胸ポケットに入っていた無線機が鳴る。】
「えっこんな時に?…アイツからですか、じゃあいいや。」
【画面に表示されている番号は、あの『火力狂い』の無線からのメッセージである事を指していた。プツリと切られる】
【間を置かずに男性の方の無線が鳴った。】
「…よっぽど僕達に伝えたい用件があるみたいだし、ここで話すと他の人にから一度出るよ。」
「別に良くないですか?どうせ私達にまた色々と、ウザい事を言いたいだけですよ。前なんか面と向かって30分ぐらいガミガミと…。」
【そう言っているうちに既にノザワ(男性の方)は店の外に出ていた。】
「…あーあ、あの調子なら10分はかかりますね。まあ私はこれを頼みますか。気になってたんですよね、メロンクリームソーダ。」
- 136ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/18(日) 00:34:18
「今返されても邪推とかされそうで怖いんですけれども………………………いや、全然疑われても何もないから不都合はありませんが……………」
リニアライフルに視線を向けてから、ナベリウスは微妙な顔をした。
明らかにバディフレーム戦用の射撃兵装だ。平和とは無縁そうな面をしてやがる。拾い上げたら今度はキチンと殺されそうな気がする。
───────それから続く言葉に、ナベリウスは更に困惑を強めた。
「えっ、今の流れって完全に私に任せる台詞でしたわよね?医薬品については使っても構いませんし、手が増えるのは助かりますが………………」
間違いなく助かるのだが、その一方で絶妙に小さな理不尽を感してナベリウスを口を尖らせた。
同じ医師免許持ちのバディフレームパイロットで、しかもナベリウスは敗北した。もしかして私の上位互換じゃないか?と疑念が湧く。
「まァ、良いですわ。高速戦闘の後遺症、内臓への負荷を軽減する用の医薬品については医務室の奥側の倉庫にありますので。先ずは其方を引っ張り出さなければ」
艦載BFの中で、高機動機は「ゴエティア戦団」だけであった。その「ゴエティア戦団」も高速戦闘訓練で十分な耐性を有している以上、必然的に使用頻度は少なくなると見込まれていたのだ。
- 137ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/18(日) 00:46:27
「了解したわ。陸上戦艦内の後方支援要員は、戦艦内部で暴れられてないから恐らく─────えぇ、確認が取れたわ。臨時医療中隊を向かわせるわね」
対クロノス最強硬派は既に多くが戦死している。
殺戮猟兵師団二万人の全滅によって、ナベリウスが指揮系統のトップとして停戦の為に動いても背中を斧で切られる事はなくなった。
故に、大手を振って救護班を編成出来る。
「所で逆巻重工側の後方補給所の医薬品の状況が今どうなっているかって分かるかしら?必要なら陸上戦艦から医薬品を輸送する手筈を整えるわ」
具体的には、艦長の『ケルベロス』が運用していた攻撃ドローンを輸送ドローンに転用する事であると全体への通信で流す。
コレで再び開戦するつもりだと勘違いされては堪らないのだ。誤解は前もって解いておくべきである。
- 138旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/18(日) 00:58:31
- 139ユスティーナ◆KPwoT407kA25/05/18(日) 01:01:41
…医務室についたわ!
それじゃあユスティーナは他の怪我人を…
「いいえ、貴方もベッドで大人しくしてくださいユスティーナ・ハクリ。脳疲労が許容値を突破しています。これ以上のBF搭乗及び救助活動は厳禁。抑制剤及び輸血処置を取って横になってください」
…………………えぇー…………
【…緊急の療養は、どうやら騒がしくなりそうだ】
- 140逆巻重工・実働部隊◆ECPjTIh3Iw25/05/18(日) 01:10:56
『こちら逆巻重工実働部隊。CEO補佐官、兼作戦司令官のユズハ・ミドリマです』
通信ウインドウに暗い緑髪が特徴の少女が現れた。
『ゴエティア戦団のナベリウスですね。お会いできて光栄、という言葉は後にしましょう』
『端的に言えば医療班は無事です……が医薬品が足りるかどうかが境目ですね。こちらも降伏兵を受け入れる手筈を整えていますので、消耗が激しくなる可能性があります』
ゴエティア戦団への敬意は敵となった後でも尽きることはなく。そしてその上で素直に状況を伝えていく。
ナベリウスの提案を聞いた後、どこかへとユズハが連絡を取った。
『医薬品の輸送に陸上戦艦のドローンを……はい。よし、こちらで許可します。いざとなれば私が責任を取りますので』
誰にも文句は言わせない。とユズハがナベリウスへ伝えた。最低限かつ最大の伝達である。空を飛ぶ廉月の一機が良いぞ!と手を振った。
『それと、サヤギリ操縦士についてはこちらで主治医が到着しました。そちらに向かわせても良いですが、時間を稼ぐためにも誰かそちらで抑制措置をお願いします』
逆巻重工の実働部隊の身体状況を示すマーカーの中にある『ケイ・サヤギリ』の欄はイエロー。余談を許さぬ状態であったからこその言葉であった。
逆巻の者のみで治療環境を作るか、陸上戦艦という多数の目がある環境を借りるか。悩みどころであった。
- 141龍影◆9BZ6kXGcio25/05/18(日) 09:13:10
「動かすのがやっとな子に応急処置は無理。甲板に着陸して待機。そのまま医療班に引継ぎさせるわ。…それと、お疲れ様。」
大好きな青年をいたわりながらも、連絡する。
「ユズハ補佐。王です。k…サヤギリ操縦士は甲板にて待機させました。必要であれば蒼風改は私が回収します。」
死んだ家族(整備士)で泣きたいが、ぐっとこらえた。まずは治療が先だ。
『王、ヤマトだ。被害集計が終わった。死者は8名、重体だったやつも逝っちまった。負傷者は12名。2週間後には復帰できるそうだ。…逆巻が喪失分を補填するそうだ「整備長。『どうした?「マキトがどんな奴だったか覚えてます?『確か…お前の下着を盗んでいたとかで自警団に捕まってたんだっけか?「そう。セクサロイドの衣服は中古でも高く買い取ってもらえるからって。8年前よ。『そんなに経つのか…「あの時から必死に整備の技術学んでさ、整備長の右腕だったもんね。『…あんなジャリガキが…「泣いてるの?『当たり前だ。子供に死なれて泣かねえ親がいるかよ...「葬式…桜空式でやりたい。『わかった。「墓も建ててあげたい『わかった。「それから…それから...『泣いていいんだぞ、龍影。』
通信で龍影は、すすり泣いた後水門が開いたのか、ワンワン泣く声しか出さなかった。
- 142アリソン◆PPyRfvMZl625/05/18(日) 09:20:55
【深紅のキャンディボールは終戦の時勢に、暫し空中で静止した後、甲板へと降り立つ】
【ケーブル接続の荒々しく流動していた粒子ビームサーベルはゆっくりとその光を散らし、コックピット内では、アリソンが静かに溜息を吐いた】
「……なンだよ、余計な世話だったか?」
【誰に聞かせるものでもなく、それは独り言である】
【べっとりと口元に付着した血液を拭い────────────これ以上の長居は不要、後は、十全にこの戦場で活躍した傭兵達こそが讃えられる時間だ、と】
【再度静かに機体を浮遊させる、誰に止められもしない】
「さて、まだ飛べるなキャンディボール……次の仕事に行くぞ」
【一筋、赤い光は空へと消えて往く】 - 143ナベリウス◆OXAm1h6odk25/05/18(日) 10:20:35
「えぇ、協力に感謝します。医薬品については直ぐにでも送りましょう────────────それから、ケイ・サヤギリについてですが」
ナベリウスは思考する。降伏勧告を受けても、憎悪は必ずしも堰き止められないものだ。あの艦長の様に、過ちを理解しながら凶行に走るものもいる。
最も警戒するべきは、降伏兵に紛れた伏兵だ。可能性の話でしかないが、しかし可能性を警戒しない訳にも行かない。
「逆巻重工での治療を推奨しますわ。送る降伏兵に関しても、コチラで乗員リストと照合してなるべくリスクが少ないであろう者を送りましょう」
ナベリウスは敗戦処理を淡々と進めた。こういった場合を想定して、バルバトスと共に計画については既に構築してある。
陸上戦艦に乗艦している人物の素性から、弾薬回収の手順まで。余計な砂粒が紛れ込んでしまわぬように、総て。
「…………………あの、治療受けなくて大丈夫なんですかー?今なら特別に私が手ずから治療して差し上げますけれど………………」
止められないと理解しながら、ナベリウスは獅子を引き止める声を上げた。
少なくとも、機体の挙動から考えて決して軽い負担ではないだろう。だからこそ治療しておきたかったが、しかしバディフレームに生身で追い付ける訳もなし。
残念そうに肩を竦めてから、ナベリウスはひらひらと手を振って獅子を見送った。
其れが彼女の決断ならば、尊重するべきだろう。
- 144ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/18(日) 10:54:29
「りょう、かい……待機、するから……」
『こちらユエギです。お二人の申請を受理します……蒼風改はそちらで回収してください。応急処置や、降伏兵を含めた輸送手順など、些細は任せます』
長く、長く息を吐く。気絶するように眠りたいがまだだ。まだダメだ。
この事態をそもそも招くきっかけになった己に眠る資格はまだない。
全てがつつがなく、もうこれ以上の犠牲を出すことなく会えるのを見届けなくてはならないのだ。
けど、だけれども。
「(ああ、やっぱり俺は……いつも、いつも……遅すぎて)」
家族とも言える人の死に泣き腫らす、愛する人の声が奥へ奥へ突き刺さる。
ケイは己に全てを吐き出す資格など、ないと分かっているから。なんとか気絶を堪えていた。
- 145東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/18(日) 11:35:00
- 146ミハエル◆j28rRKKOSY25/05/18(日) 11:38:51
「あの機体って……」
【何処かの空へと飛び去って行く真紅の機体、細部を見る暇は無かったが機体に描かれたエンブレムや全体の形状には見覚えがあった、かつて共闘した機体だ】
「そういえばまだ飯奢って無かったなぁ」
- 147ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/18(日) 12:27:04
「東雲、さん……でも、俺……」
分かる、分かっている。自分のために掛けてくれた命だと、分かっていても。
自分が至らしめた結果なのだから。
自分が選択したことは、選択した責任は。受け入れなければならないのだから。
「……はい。すみ、ません」
吸って、吐いて。全てを胸のうちに収めて。
生きていられる今をどうにか、受け入れようとして。
「……っ」
雫が一つ、頬から零れ落ちる。
『東雲博士も重症ですね? 今すぐ救護しますので、お待ちを』
逆巻の医療部隊が到着し、治療としてケイを緊急開放させたハッチから連れ出して。台へも医療の手が届く。
無理やりヘリに乗せられて全てを見届けた後。ようやく彼は意識を落とした。
- 148ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/18(日) 13:28:42
「オレは借りたモン返したいだけだし〜」
【医療行為の邪魔になりそうなバイザーなどをテスタロッサのシートに投げ置く】
「奥の方にあんのね、薬。んじゃ、またね〜」
【医薬品の在処を聞き、ナベリウスを一瞥。手をヒラヒラと振りながら医務室へ向かって行く】
【この後、自分ができる治療を終えたのち、再度彼女を乗せたテスタロッサは陸上戦艦から駆け足で飛び降りて行った】
- 149東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/18(日) 14:45:18
- 150ミハエル◆j28rRKKOSY25/05/18(日) 23:13:21
【陸上戦艦からの物資・人員輸送を終えた後、ウィルヘルミナへの補給の為にミハエルは後方拠点に戻っていた】
「それじゃあ報酬はさっき言った口座に送金して、それと飛行場のある近場の自治区の場所を……」
【作戦担当官に必要な伝言を伝え、ウィルヘルミナを起動させる、機器の明かりで照らされたコックピットの中で一息吐くとウィルヘルミナを拠点の外へと走らせていった】 - 151龍影◆9BZ6kXGcio25/05/18(日) 23:28:14
ケイを見送った後、龍影は大陸鉄道で[望月、廉月、蒼風改]の三機を輸送していた。
車窓の外は雪がふぶいていた。
『雪か、ずいぶん久しぶりに見たな。』
「インベイドと人間のせいで天候が変わっちゃったのよね。」
『極東と北部戦線の重金属雲だったか?』
「あれのせいで雪雲ができるほど空が冷たくなくなったからっていうのがもっぱらね。」
『だが実際は…「クロノスの大規模採掘による環境負荷。『だがあの生産性あってこその「ABFドクトリン(BFによる兵科の統一)ができた...それはそうだけど〈切符を拝見しても?〉
会話が遮られた。
龍影は躊躇なく拳銃を抜いて、確認にきた車掌の頭を吹き飛ばす。
「デスペラードね。」
『人類自由連盟軍事戦略部門様名義の貸し切りに来るだなんて馬鹿もいいところだな。どうする?』
「途中停車されると凍えちゃう。」
『ごもっともで。』
「ライフルは?」
『20年...いや、もっとか?』
「じゃあ後ろに。」
『任したぞ、ポイントマン。』
- 152ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/18(日) 23:42:27
【戦闘は終わった。無実の罪から青年を救い、老いた鋼鉄の巨獣とを倒し、戦闘は終わった】
【無論、事後処理や負傷者の回復…それらを考えれば終わったとは言い切れないが、自分の役目は終ったとは言えるだろう】
「……疲れた」
【自宅の戸を開け、まず玄関に寝転ぶ】
【久々の身体変化。テスタロッサでの高機動。手練れとの戦闘。だがそれら以上に精神側が摩耗した】
【同じ人事連。確かに一枚岩ではない。ないのだが一部の人間によって人が死に過ぎた】
「ヴァァーーー……」
【寝転んだまま蒸れた靴を脱ぎ去り、這うように廊下を進む。途中、人感センサーがだらけ切った家主を見かねた様に照明が点く】
「眩しっ…」
【足元を照らす筈の光が顔を照らす。渋々起き上がり、肩を壁に擦り歩く】
【体力はあるのに気力がない】
「んっ。っんん~~ーー」
【リビングの扉を閉めぬまま、上着を脱ぎ去り、ドサッとソファへと飛び込んだ】
【微妙に高い程度の質でも、身が沈み肌の熱が逃げていく。それが心地よい】
【そのまま、髪留めも外し髪の先まで脱力】
【赤のバイザーを取り、見やる。映り込むのは女の顔】
「………ぁ、はぁ」
【それを見て、バイザーを持つ手も怠くなって…重力に捉まりだらんと落ちた】 - 153逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/19(月) 00:17:27
(1/?)
【逆巻重工・本社】
「――――ケイの治療はどう?、チトセ」
陸上戦艦との戦いの後。カンナは細く短い時間を使い、彼を治療している主治医と対面をしていた。
チトセと呼ばれた女性は、おかっぱ風に切りそろえた髪と顔を揺らしてカンナとのホログラム通信に応じてくれたのである。
彼女は逆巻重工でも選りすぐりの名医であり……。
『現地で応急処置としての投薬を終えて、オペ室に運んだけど……』
そこまでいって、チトセは声を潜めた。良からぬことかと、カンナは覚悟した。
・・ ・・
『彼の身体に刻まれているはずの内出血、及び内臓への損傷は回復しているわ。機材を使った身体スキャン結果から、外科的手術を行う必要もないわ』
「……なんだって?」
複数回近い吐血、加速度症状。ケイに外科的止血を行うことも覚悟していた予測が、外れたのだ。
「損傷が……回復?損傷していないのではなく?」
『ええ。間違いなく彼の内臓を含めた身体には内出血や、高重力加速度による負荷が掛かっているわ。形跡があるの』
出された状況に記されている最高瞬間加速度単位は……生身の人間であればもはや動けず、死を待つ他ない数値。
「――――どういうことか、一から頼む。」
『ええ。彼ほどの耐G体質持ちは少ないけれど、いなくはないわ……蒼風改の操縦士保護機能を含めて、彼と同じ負荷が掛かっても耐える人はいる。分かるわよね。』
メジャーな学説ではないが、バディフレームに乗るために産まれたと言うべき者達が近年いるという声はある。
その殆どに共通することは……常人離れした戦闘判断力、または高重力加速環境への、肉体的な耐性。
しかしその原因については未だ分からないのだ。 - 154龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 00:22:01
〈話が違うぞ!負傷兵しかいないんじゃ無かったのか!〉
「なら銃を下して。」
〈できるかよクソ女ぁ!ああああ??!!?〉
ハイジャックしたと思われる男の肘を外方向に104°回した。
「あんたのリーダーは?」
〈オレオレ!!逆巻の新型載せてたから襲うって話になって!〉
「無線貸して」
龍影は関節を外した男の腕を引っ張る。
〈あっ…がっ…〉
「出せ。」
引っ張る腕からミチミチと肉が骨から剝がれる音が聞こえる。
〈右胸!そこにある!〉
「先に渡せ。」
男の腕を離して無線機をむしり取る。
「人類自由連盟の龍影だ。出て行け。40秒で貴様らの首を引っこ抜ける。〈お前ら!この姉ちゃんは本物だ!アウトサイダーのスマッシャーだ!ずらがれ!《でも兄貴…〈逃げろ!〉
通信が切れ、後部車両が揺れた。とりついたBFが離れたのだろう。
「あんたは?」
〈アウトサイドで雇ってくれるかい?〉
「定員オーバーよ。」
〈そっかよ…あぁ…うまくいかねえなぁ…〉
銃声が車内に響く。
「死体は後部車両からだっけ?」
『投げるときは横だぞ。』
「りょーかい。」
- 155逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/19(月) 00:22:54
(2/?)
・・・・・・・・
故に彼ら、彼女らは義体化せずとも、彼らと渡り合うことのできる『統計学上の外れ値』と呼ばれる。
その一人がケイであり。
彼と同等値ならば、いなくもなく。
また安全性を強化した蒼風改だからこそ命を拾った……という前提を共有したうえで。
『でもこの負荷で起きた負傷を、訓練はいいとして、気合と根性で耐える……? 無理よ。人間の体はそこまで便利じゃないわ』
それが医学的に、あるいは科学者的な見知であった。
ノインとの戦いを終えた時点で、ケイ・サヤギリの肉体は命数を燃やし尽くしてもおかしくなかった。
だが、生きている。
『だから調べたの……カンナCEO、一人は怖い?』
「怖くないさ。慣れている」
符牒であった。情報を全て遮断している、という合図。
チトセ医師は数回深呼吸をした後、カンナへ伝えた。
・・・
『彼の体内……肉体と内臓からコア粒子が検出されたわ。新生児から2歳児なら間違いなく致死量よ』
「……今回の戦闘で自爆の時に受けた、被爆では」
ないわ、とチトセは切り捨てた。
・・
『人体の主要臓器、及び眼球、脳髄……そこに微細なコア粒子が、癒着……いえ、循環していたの』
「……いつから」
『癒着の度合いからして新生児から、2歳児の段階……もう分かるわよね』
思わず込み上げたものを抑えるために。カンナは口を抑えた。
・・・・・・・
『原理は不明。理論もないわ……でも、十数年前か、18年前に彼を蝕んだコア粒子が。今も彼を死なせていないの』
生かしている、ではない事の意味など。カンナは理解していた。 - 156ラルト◆C01O2YJoxg25/05/19(月) 00:35:46
欠伸をしながら街の中を歩いている。
掃除屋としての報酬を持っているが周りを警戒していない。
「やっぱり掃除ってやりたくない人の方が多いのかね」
初めはお金欲しさで始めた仕事で今もそうであるが依頼の方が多い為心配になる程である。
たまに無償で掃除させようとする舐めた奴もいるがその場合は二度と依頼を受けない。
だがお金を大事にし過ぎるあまり報酬の大半を貯金している為、普段使う量は少ないのである。
「たまにはパァーっと使う?それとも貯める?それは明日の自分にお任せだな」
そして今日もまた掃除屋として呼び出され部屋を綺麗にする掃除屋の姿があった。 - 157デュラハン◆xZJxX8ZGsA25/05/19(月) 00:35:53
《North Argletonの管理自治区とはね。珍しいじゃないか、君もようやく食に目覚めたのかい?それとも、ひょっとして首輪付きになるのかな?》
【階段に腰掛けるウルヴィの膝の上、冷たい光沢を持った金属の球体からその音声は発せられた】
【その球体こそ、この大型輸送航空機の所有者にしてBESTIA DREADの設計者であるデュラハン…の頭部だ。現在ウルヴィの座る階段は輸送機の円筒形カーゴユニット内であり、それはBFガレージも兼用している】
「ん」
【ウルヴィは左右に首を振って否定する。彼女の気質は企業所属には向いていない。分かりきっていた回答だ】
【だからこそ廃墟群に住み着く彼女が、何故人自連加盟企業の自治区に向かう理由は謎となるのだが、生憎デュラハンに根掘り葉掘りするほどの興味はない】
《BESTIAについては確認が終わったら連絡するからそのつもりで》
「ん」
【ウルヴィから自身の頭を投げ返されたデュラハンはそれだけ告げると、NA社の自治区近辺から自らの本社へと輸送機を飛ばす】
【首無しになった漆黒の獣を、首無しが連れ帰っていった】 - 158ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/19(月) 00:37:50
- 159逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/19(月) 00:44:46
(3/3)
「摘出は……」
『再結晶化の可能性はほぼゼロだけど……』
最悪の事態はない、とだけ伝えてくれた。
『血中ならともかく体内、臓器内部を対流してるコア粒子だけを取り除くのは無理よ。それこそ全身を義体化させないと』
そしてそんなことはさせられない。カンナは無言で応えた。
もう一つにすがる。
「時間経過で排出される可能性は?」
『こちらも同じ……ほぼゼロよ。排出されようとした瞬間、新しい細胞に移って出されるのを防止してわ』
カンナは息を吸って、吐いた。
「つまりケイは……コア粒子に寄生されていると?」
『でも悪いことではないわ。理由は不明だけど、コア粒子達は彼という宿主を活かすために何かを提供している』
「その何かが、ケイの回復力の正体だと」
逆巻重工が最も信頼する医師が頷いた。
「……君を含めた医療チームを、ケイ・サヤギリの専門とする。異存はないな?」
『分かりました。今回は問題ないとはいえ、外科手術の必要が起きる可能性はゼロではないですからね』
秘密を抱え込む決断である。
『医療データはバックアップを作らず全て削除します。よろしいですね?』
「頼む。彼に余計な火種をこれ以上作らせるわけにはいかない」
……最後に、術後としてケイが目覚める予定の日数をカンナは聞いた。
そう遅くはない。とチトセは答え……やはり、両者からため息が漏れた。 - 160◆KPwoT407kA25/05/19(月) 01:36:57
──────コアチルドレン理論。
【ヴァルハラテック本社オフィス。カミラ・ユグドラシルは一冊の本を読んでいた】
インベイドの飛来が無ければバディフレームに淘汰されていたであろう、人類コア粒子順応へ向けた直接的なアプローチ…………皮肉ですね。人類の進化の扉を開く最後の鍵が存亡の危機だった、というのも。
今回の戦いで尤もその身体を酷使したのは何を隠そう“彼”自身。彼女たちと同質の、偉大な祖先の先に征ける資格を持った祝福を賜った呪い子。
───流石に、気付いた頃ですかね?
【本を閉じる。自分は既に“聞いていた”。その優越感からか…口角を狂喜に歪ませながら】 - 161ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/19(月) 06:46:39
- 162老いた獣の後始末◆OXAm1h6odk25/05/19(月) 08:04:23
(1/3)
賢工グループと逆巻重工の間で勃発した企業間抗争に乗じて利益を掠め取ろうとする企業は多かった。
屈指の生産力と物量を有する賢工グループに対してのインベイド侵攻初期から『月風』系列機によってエース級の戦力を抱える逆巻重工。
単純な戦力差を鑑みれば賢工グループに助力しようとする企業の方が多い筈だが、クロノスへの無謀な侵攻計画が彼らに賢工グループと敵対する企業方針を取らせた。
しかし、その一方で。多大なる成果を得られた企業はそう多くはない。
テレマ製鉄。アストロ・ダイナミクス。鳩村工房。中小企業の中には資金を投じながらも明確な成果を得られず、赤字となってしまった企業も多い。
賢工グループの死肉を貪ろうとするハイエナ同士の抗争の結果、獲物である筈の賢工グループによって実働部隊に壊滅的な被害を受けた企業すらある。
しかしその熾烈な“競争”を勝ち抜き、新たに勢力を拡大した企業も存在している。
紅陽機関。主要な生産施設・研究機関をインベイドの初期侵攻によって喪失した旧極東系企業の一つである彼らは、今回の騒動によって賢工グループ第一工廠の“接収”に成功した。
陸上戦艦を産み落とした屈指の工業都市を掌握した彼らは、“競争”に敗れたミサイル兵器を主要製品とする大企業アポロ・インダストリーと企業間同盟を締結。
賢工グループから得た生産施設の何割かを貸し付けする代わりに、緩やかな主従関係を構築した。
公式声明として
『近年の高機動機傾向はインベイドの撃滅には非常に効率的である一方、奪還地域の防衛と維持には不向きである可能性を指摘したい。
我々は戦線を押し上げるのではなく、戦線を盤石な物とする機体の可能性を追求したいと思っている』
と発表。対インベイド姿勢の明確化を表明した一方で、従来の高機動機用脚部パーツも引き続き販売を行う予定である。
“元”賢工グループ系列企業の技術や生産力を背景に対インベイド用ストラクチャー産業への参入や支援も仄めかしており、旧極東地域奪還への意気込みを強調した。 - 163龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 08:06:03
2時間だろうか。雪が止んでしばらく走っていた時だ。突然、急ブレーキをかけて列車が停止した。
「今度は何よ?」
つんのめり、座席の机に頭を打ち付けた龍影は手元にある内線で運転手に理由を聞いた。
【進路上にBFが3機いるため緊急停車しました。大変ご迷惑をおかけしております。】
外にはどうやらBFが居るらしい。
扉を開け、外に出る。サクサクと新雪を踏む感覚が伝わってくる。16年振りの感触であった。
〔我々はアブソーバー!貴様らの輸送しているBFを差し出せば通してやる!〕
騒がしい20代後半の声が聞こえた。アーヴィングにシンセイ、ヤモリ。知っているアブソーバー機は一機も居なかった。
「愉快犯ね。『出来の悪い連中だな。「どうする?【ちょうど良かった。王操縦士。レールに損害が無いように駆除をお願いしても?「輸送費まけてよ?【わかりました。撃退料として減額しておきます。】
外に出てきた運転手からその場で警護任務を受けた。
〔何コソコソしてる!〕
瞬間、車列後方から飛んで来た廉月の膝がシンセイの胴体を捉える。致命では無い。
バランスを崩してよろめく。
〔オリジナルアーヴィング?!〕
ヤモリが叫ぶ。
〔逆巻の新型だ!〕
踏ん張って建て直したシンセイが訂正した。
〔まさか…逆巻の列車だったのか?!マズイって!〕
アーヴィングが逃げようと走った。
「アブソーバー名乗って逃げれると思うな。」
ゴパァ!
BFの推進器から出たとは思えない噴射音を奏でた。
ビームサーベルを抜いてシンセイの上面胸部装甲から刺し込む。
ボスボスと金属を溶かす音が聞こえた。倒れそうになるシンセイを支え、線路の外へ投げる。
糸の切れた人形のように投げられたシンセイはゴロゴロと雪の上を転がった。
〔ま、待ってくれ!降参だ!降参!〕
ヤモリは武器を捨ててコックピットから出てきたパイロットが白のインナーをライフルの銃身に括りつけて白旗のように振っていた。
「なら道を開けて。」
廉月から冷ややかな声が聞こえる。
- 164龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 08:24:24
〔わ、わかった!わかったから!〕
そのヤモリはパイロットを入れた後、脇に避けるとき、線路の枕木につま先を引っ掛けようとした。
直後、廉月がそのヤモリのボックスコックピットを殴りつけた。線路に触れない位置によろめく。
〔逃がすって行ったじゃないか!話が「線路を壊すなら話は別。」
ビームサーベルを発振してヤモリの脚を切る。
地面に落ちそうになる胴体を蹴って線路脇に飛ばす。
ヤモリはキュルキュルと嫌な音を立てて腕を動かし、落ちていたマシンガンを拾おうとしていたため、シンセイが落とした槍を拾い上げ、投げつける。
ヤモリの胴に深々と刺さり、だらりと腕が止まった。
「最後は…」
アーヴィングはその脚を活かして既に遠くの方に逃げていた。
「終わったわ。」
龍影は涼しい声で伝える。
『違和感はあるか?』
ヤマトは廉月の状態を聞いた。
「ダメ、さっき投げたときに腕のフィールドモーターがイカれたみたい。次またあんなの来たらタックルと頭部ガトリングだけよ?」
『そうか、ゴエティアとやりあったのもあって中がもうダメか…』
【防衛、ありがとうございます。列車は点検後発車致します。車内でお待ちください。】
「了解。」
龍影は整備士達の誘導に従って格納していた車両に廉月を納める。
車両の座席に戻った龍影はそのまま机に伏せ、気を失ったように寝た。
- 165老いた獣の後始末◆OXAm1h6odk25/05/19(月) 08:30:39
(2/3)
同調する動きを示したのが、同じく賢工グループの生産施設の“接収”に成功したローガン工機である。
均一な品質によって、目新しくはないものの堅実で信頼性の高い弾薬類や銃器を製造していたローガン工機はその企業方針を変えずに活動を開始した。
新たに獲得した技術によって実現したより効率的な生産ラインは人類自由連盟に低価格高品質の弾薬と銃器を数多く供給し、今も苛烈な攻防戦が繰り広げられるインベイド最前線を支援するであろう。
一方で、対クロノス強硬姿勢を崩さない企業も存在していた。エネルギー兵器を専門とする企業であるミュール・コーポレーションだ。
同じ対クロノス強硬派である賢工グループを背中から刺す形で多くのコア鉱石採掘プラントを“接収”し勢力を拡大したミュール・コーポレーションは以下の様な公式声明を発表した。
『我々人類自由連盟の起源とは、クロノスへの反抗に他ならない!無謀な蛮勇、戦力差を弁えない侵攻を図った賢工グループを排除したからと言って我々はクロノスに与えられた傷を忘れてはならないのである!』
ミュール・コーポレーションは対クロノス強硬姿勢を保ちながらも、新たに獲得した技術によってより先進的な技術開発を行っている。
一方でアトリエ“バーテックス”、及びテスタメントは以前と変わらない中立派企業として振舞った。
今回の騒動で“接収”した資源や技術は有効活用するが、政治的なパワーゲームには参加せずに技術開発を追求する方針だ。
特にテスタメントは“接収”についての公式声明よりも先に新しい近接兵装『“アンチェイン”』の発表を優先しており、近接兵装に関する著しい情熱を露わにしている。 - 166ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/19(月) 08:31:11
- 167老いた獣の後始末◆OXAm1h6odk25/05/19(月) 08:33:33
(3/3)
───────その水面下で、グランセン解放戦線は各企業を統率し『新型』の開発を進めていた。 - 168賢人会議◆YMCgTirJag25/05/19(月) 08:52:42
- 169龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 12:10:34
『起きろ、移し替えだ。』
1週間だろうか、長い長い鉄道旅行の最後の駅の奥に広がるだだっ広い大地には逆巻の大型輸送機が待機していた。なんでも6機まで輸送できるとかで。
「移したらどうするんだっけ?」
『馬鹿言うな。青天の外縁だぞ?そのまま家に帰るんだ。』
驚いた。こんな荒野があの青天の集積場所だったのか。
「こんなになんにも無いのか…」
確かに奥には複数の企業ビルが見えた。
『見栄えだけのうっすい連中って事さ。それにこっち側はインベイドが来ないから警備を厚くする必要が無いらしいしな。』
「なるほど。」
そんな会話をしながら輸送機に3機のオリジナルアーヴィングを載せ替えていく。
《ありがとうございます。サヤギリ操縦士》
変なことを言われた。
「サヤギリ?ケイはココに居ないけど…」
《…なるほど、わかりました。王操縦士。》
勝手に納得された。一礼した後、スタスタと職員は輸送機へ戻っていく。
「しかしサヤギリだなんて…」
『お前、逆巻で戸籍作るって話だったよな。』
「そうよ?」
『そん時に嫁入りって形で婚姻書類を書いてたよな?』
「あー」
『自覚くらいしとけ。』
「まさかこんなにすぐ反映されるとは思ってないよ!」
『アソコは好きな事に対して異常な速度で計画を進めるからな。良かったじゃねぇか。逆巻の嬢にとってお気に入りらしいぞ。』
「嬉しい…けど…なんかな…」
- 170ニライニスト25/05/19(月) 12:46:15
【静寂を打ち破る様に、また無線から声が出る。】
「…またですか。今度はノザワさんから?何があったんだろ。」
【そう言いながら彼女は耳に無線機を押し付けた。】
『スワローちゃん!急いで輸送機の所まで来て!!アカデメイアの開催される日が1日ずれてた!すぐ出ないと間に合わない!!』
「はぁ!?…すみません予定が狂ったので私は去らせていただきますそれでは!!」
【辺りに置いていたカバン等をかき集め、彼女は慌ただしく喫茶店のドアから出て行った…かと思えばすぐに戻って来て、机に上に2枚のお札を置く。】
「デザートの分の代金は私が払うと言ったので!お釣りは返さなくていいです!!」
【そして再びドアから飛び出し、今度は戻ってこなかった。】
- 171旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/19(月) 13:40:57
- 172ラルト◆C01O2YJoxg25/05/19(月) 14:40:00
「やっぱり顔馴染みの酒場だよな」
今日分の依頼を済ませ報酬を受け取り顔見知りの人が集まる酒場にいる。
ここでは酒場とついているが酒とか関係なく各々好きな物を飲めるのだ、勿論低品質な場合が多いが。
「最近は働き詰めだからたまには休みたいな…!」
少しアルコールが入ったジュースを飲み背伸びして次の予定を思い出す。
そう、自分が設けている休日を予定と見合わせてどのくらいの時期になるかシミュレーションしている。
「………あと少し働いてどこかに休みと合わせて行くか」
休日の過ごし方と今後の予定を完全に決め、コップに入ったジュースを全部飲みきって代金をおく。
この後は予定もなく街を散歩してみるのも悪くない、そう思いながら酒場から出る。 - 173龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 14:45:11
- 174ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/19(月) 15:05:29
なんだか変わった方達でしたわね……技術者らしき人だったのでもしかしたら今回の企画へのアドバイスがもらえるかもと思っていたのですけれど……また会えればいいですわね!
- 175レオン・ミュール◆OXAm1h6odk25/05/19(月) 15:19:24
(1/2)
『私は“ミュール・コーポレーション”代表取締役兼経営最高責任者、レオン・ミュールだ』
濃紺色の高級スーツと純白のシャツに身を包んだ年若い男性が、カメラの前で脚を不遜に組みながら口を開いた。
細部まで澱みなく整えられた黒髪に、傲慢さの垣間見えるアメジスト色の瞳。容姿端麗ながらも怜悧な面立ちは、隠し切れない傲慢さを滲ませている。
・・
『先ず諸君にお伝えしたい事実として、我々は今後も企業方針を変える予定は一切存在しない。我々は依然変わらず現在の方針を貫くつもりだ─────そして、次に。我々が賢工グループに叛旗を翻した理由についてご説明したい』
対クロノス強硬姿勢は決して崩さないと強調して、レオン・ミュールは目を閉じた。
哀悼の意を表する礼である。死者への敬意を表してから、彼は口を開いた。
・・・・・・・・・
『桜空失陥。グランセン国王暗殺。ガイア山脈領有問題。インベイド戦争の最中、クロノスは既に多くの道徳的に到底受け入れ難い行為をクロノスの法を大義名分に実行してきた─────痛ましい犠牲の内の一部は正にクロノスによって生み出されたのである』
『だからこそ、我々“人類自由連盟”はクロノスから自らの身を護り、またお互いを思い遣りの心で助け合う為に設立された──────其れは素晴らしい理念である。人類自由連盟創設に携わった総ての人に尊敬の念を禁じ得ない。我々は正に倫理と道徳に基づいた組織であるのだ』 - 176レオン・ミュール◆OXAm1h6odk25/05/19(月) 15:20:00
(2/2)
・・ ・・・・・・・・・・・・
『だが、その素晴らしい人類自由連盟法を無視して賢工グループは社内法による死刑を判決を下したのである。我々も逆巻重工による宣戦布告まで、その事実には気付く事が出来なかった………………誠に申し訳なく思っている』
沈痛な面持ちで、レオン・ミュールはカメラの前で迷いなく頭を下げて陳謝した。
自らの否を求める姿勢は、しかし意図的にクロノスとの協力を厭わない逆巻重工の宣言を省いている。
・・・・・
『彼らは全体の秩序を軽視し、自らの法を優先した行動を取った───────恥ずべき欺瞞である。クロノスを憎む余り、クロノスと同じく善良な市民を踏み躙ったのだ!』
コレもまた、意図的な言葉選びだ。全体の秩序への軽視こそが問題点であるのだと大袈裟に指摘する事で、賢人会議や逆巻重工が対クロノス強硬派の意見を感情的な理由『だけ』で蔑ろにした場合には大義名分として使える論理を打ち出している。
『我々“ミュール・コーポレーション”が企業間抗争を賢工グループに宣言したのは、贖罪であると同時に人類自由連盟の理念の有名無実化を防ごうとする努力の一環であったのだ────────以上で私からの声明は終わりとなる。どうか忘れないで頂きたい。我々は皆、何かしらの理由を伴ってクロノスの傘下企業となる事を拒絶したのだと』
・・
『選択の理由を、どうかほんの少しでも思い出して頂きたい』 - 177龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 15:21:01
- 178東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 16:07:00
- 179龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 16:19:13
- 180東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 16:30:34
- 181龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 16:55:42
「いらっしゃい。それと天かす…揚げ玉か?は冷凍庫に入れてあるからそれ使ってねー。」
冷蔵庫から缶ビールを2本出して片方をうてなの近くに置く。
パシュッ!
プルタブは心地いい音を出して開いた。
「風呂上がりに飲むのはダメだって話だけど義体はそんなのお構いなしだからねー。」
ごくごくとそのアルコール炭酸飲料を流し込んだ。
空になったそれを放り、ゴミ箱に入れる。
入ったのを見届けた後、脱衣所に戻り、ブラを着け、シャツとスポーツウェアズボンを履いて台所に戻る。
エプロンを通して台の横に立つ。
「ソースって持ってきてる?ここには置いてないからさ。」
傍から見ると親子で台所に立つ微笑ましい光景であろう。
だが2人の年は1つしか離れていないのである。
- 182東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 17:04:25
- 183ホンルゥ惑星通信◆PPyRfvMZl625/05/19(月) 17:21:51
・・
【────────────それはすぐさま大々的に報じられた】
【人伝いに情報が漏れ出るよりも迅速に、じわりじわりと空気が広まるよりも誇大的に】
【人類自由連盟が管轄とするあらゆる都市で、青天の街頭モニターで、ホログラフィック映像を映し出す飛行船で、ミュール・コーポレーションの若き鋭才はひいてはその容貌だけで】
・・・・・・・・・・
【誰もが足を止める理由になる、惑星に根を広げ、誇大な政治宣伝に長けた“ホンルゥ惑星通信社”の持つあらゆる媒体による同時多発的情報発信だ】
【荘厳な管楽器の音と共に、青年が座するインタビュールームの無地の背景に、勇ましく荒野を走る人類自由連盟のバディフレームがスカッド・ソルジャーを蹴散らして往く姿が合成された、それは“K.I社が彼らにとっての怨敵であるという前提”を大衆に向けて強調する】
【糾弾する言葉には合わせて、連盟法の内、彼らがどの法に反した行動を取ったのかを示す文面を同時に浮かび上がらせる、大義が今回賢工グループを淘汰するに至った企業群にあることの証左とする様に、或いは、彼らがあくまでも“法を犯したが故に罰せられた“ことを示す様に】
【これは連盟内の浄化機能の働きであると、賢工グループを構成する企業ロゴを砕き割る楔のCGには、最初に打ち込まれたミュール・コーポレーションの名を始めとして様々な企業名が刻みこまれている】
『────────────人類を檻で囲おうとする独占的な企業支配に抗い、真の自由を勝ち取る為に戦う、人類自由連盟を構成する遍く文化文明的同志諸君の為に』
【映像の最後には、必ず、ホンルゥ(かれら)の決まり文句が謳われた】
- 184龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 17:24:02
- 185東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 17:32:53
- 186ルフス◆hFOUpFQqt.25/05/19(月) 17:52:45
- 187龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 18:40:08
「頂きます。」
大皿に四角く1口サイズに切り分け、盛り付けられたそれを取り皿に移してから口に運ぶ。
「細切れ肉でも入れてもう1枚焼く?」
懐かしい味だがどこか物足りない。決して不味い訳では無いが…
「キャベツケチった?」
天下のNAを持ってしても生野菜はどうしても高騰する。仕方ないことだが、これがあの頃と違う所だ。
とろみのあるソースとマヨネーズの混ざったそのペーストは、その物足りなさを誤魔化すのには充分なポテンシャルを持っている。
「ところで、旧友の家でお好み焼きを焼くだけって訳じゃないでしょ?要件は?」
龍影の眼はキリキリとピントを合わせ、台を見る。
それはとてもヒンヤリとした無機質なものである。
- 188ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/19(月) 18:50:25
【倒れかけた身体が、包み込まれる。凍ったように冷たく、痛み以外の感覚を失っていた全身が、伝わる体温に融けていく】
【顔を上げれば、月明かりと…金の瞳と一瞬目があって、それは微笑みに変わった】
【帰るべきか、なんて迷いはもう無い】
「……ただいま」
【帰る場所は、ここにあったから】
【震える腕で遠慮がちに、それでも求めるように抱き返した】
- 189東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:06:21
『キャベツ高いねんな...』
しっかり見破られたのを痛感しながら、
こちらもモグモグとお好み焼きを頬張る
『んー...まぁ、はっきり言うんは恥ずいけど
お前を励ますんも、背中を押すのも、笑うのも
今のウチじゃあ...その立ち位置にはなれへんし
出来る限りの美味い飯作ったるくらいしか...
ウチから出来るんは、それぐらいしか無い』
龍影と再び出逢えた時、直感していた。
"自分は既に龍影の過去の1ページでしかない"
ただそれでも、色褪せた過去の追憶であっても
ほんの少しでも旧友として振る舞えたのなら。
あの頃と同じく、龍影と笑い合えたのなら...
この胸に広がる嫉妬混じりの寂寥感と、
少しくらいは別れられそうな気がしたのだ。
『お前が元気なのか心配だっただけや』
────嘘。本当は...心の底では。
父親同然の人間にも、愛する伴侶にも
まだ見せていない弱い顔を少しくらいは
旧友である自分に見せて欲しかった。
そして。それが叶わないのも当然知っている
だからこそ自分と言葉に嘘をついたのだ。
"自分はこれ以上、龍影には手を伸ばせないし
龍影からこれ以上、手を伸ばされる事はない"
そんな真実から目を背け続けるために。 - 190東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:09:19
(次スレ立ててきます)
- 191東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:29:50
- 192◆fDey8JUvvk25/05/19(月) 19:51:44
【蒼月と、そのパーツに自爆の機能はついていなかった】
【高コスト・高性能を地でいくモノを使い捨てるようなことは老いさらばえた害虫とてしようとしなかったのか】
【あるいは傑作に対する傲慢な信頼か】
【あるいは自爆せずとも、ほおっておけば緩やかに壊れていくからわざわざ余分な機能を持たせなかったのかは、今となっては分からない】
「……。」
【だから、両目が開いた。それは再起動する】
「…………ここは、どこかな。」
【かつてノインと名乗ったモノは、ふと問いかけてみた】 - 193龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 20:02:43
「嘘つき。もっと言いたい事、あるんでしょ?」
滑らかに磨き上げられた義眼のレンズは台を映す。
その時だけは2人とも年相応の姿になる。
「本当は怖い。私だっていつも嬉々として殴りに出る訳じゃないのよ。逃げたい時だってある。でもね、逃げちゃダメなのよ。背負うものが…護るものが増えすぎちゃってさ…」
お好み焼きを口に運びながら話した。
「アウトサイドに入って18年。色んな人と関わった。色んな人を殺したし死に際に立ち会った。敵として殺した弟分だっている。」
龍影は続ける。
「だからこそ怖がっちゃダメなのよ。現実逃避なんてしたくても出来ないの。それから目を背けた途端、殺した人に呑まれるから。」
カタカタと細かく震えていた。
「《ノブリスオブリージュ》。力持つ者は力持たぬ者を護るべし。覚えてる?王博士、私のお父さんがよく言ってたの。私はその力を持つ側。ノブリスなのよ。だから逃げるなんて出来ない。」
世界をより良くしようと研究漬けの生活を送っていたコア粒子研究の権威である父は死ぬ直前までそれを貫いた。
ならばせめて私も。そう考えていたのだ。
- 194ミカエラ◆KPwoT407kA25/05/19(月) 20:06:45
ヴァルハラテックの医療施設でぇ〜す…
あ、私ミカエラ・オルソン。主治医みてぇな感じで声掛けてるけど専門はBFだからただの話相手ね。んで…
早速だけど、キミを取り巻く環境について。賢工は無くなったよ。今のキミは賢人会議の持ち物で、私達は一時的に預かってる立場──────だった。
【過去形。つまり賢人の沙汰は眠っている間に下されていたということだ】
“強引な施術で強化された欠陥品は不要”だってさ。キミの意識が復活し次第再建手術して自由にしろっつーのがお偉いさんの意向。言っとくけどキミに“再建”に関する拒否権は無いよ?うちも回収したメンツってものがあるし、早速足並み踏み外して賢工の二の舞ってのもゴメンだ
その上で問いたい。キミは…それでも“英雄”になりたかったりする?それとも賢工のいいなりで戦ってきたからもう戦いたくないかな?
【ノインの両目を見据えて、問いかける】
どちらを選んでも、私達ヴァルハラはその選択を尊重することを約束するよ
- 195ノイン◆fDey8JUvvk25/05/19(月) 20:27:32
「ヴァルハラの、ミカエラさん。」
【そしてミカエラの続く言葉、正確には"“強引な施術で強化された欠陥品は不要”という言葉には少し哀しそうな顔をする】
「"再建"の拒否権がないことは承知しました。……その上で、聞いてくださるのであれば」
【代わり映えのない墨と蒼のオッドアイが、ミカエラの見据えてくれる目を見返す】
「私はそれでも"英雄"になります。」
「私は、言いなりになって戦ってきました。ですが、言いなりになって戦うことを選んだのは私です。そして、私の戦いは、まだ終わっていません。」
【目覚めたばかりなのに饒舌に語る。今は容体も安定していた】
「この世からインベイドと、悪しき。少なくとも、紛争を煽って死人を増やすような……悪しき者たちが居なくなるまで、私は戦い続けたい。」
「世界を滅ぼすつもりで復讐を成し遂げようとした方々の、憎しみの炎は隣でそれなりに見てきました。」
「世界を滅ぼすつもりは、私にはありませんが。彼らの憎しみは絶やしたくないのです。」
「はは。」
【乾いた笑いを漏らす】
「……それくらいのアイデンティティは、私にも欲しい。」
【何もかも抹消され、それくらいしか残っていない、と自嘲気味に】
・・・・・・・・・・・・
【だからこそそれに殉じたい、と。エゴを主張した】
- 196東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 20:30:41
『そうやな。"ノブレス・オブリージュ"
その考えはそら正しいとしか言えへんわ
でも、それって一つ大事な事が抜けとんな
ウチみたいな庶民や凡人は、完璧な奴よりも
多少欠点のある人間が隣に居て欲しいんや』
完璧な人間に人は従えど、
その後を追おうとはしない
それは怖いからだ。人間味一つ無く、
ただ人々に求められるがまま手を伸ばす
それは確かに憧れの象徴にはなっても、
親しみや友愛といった念をどうも持てない
"自分と隔絶した場所にいる素晴らしい人"
凡人にはそうラベルを貼るしかないのだから
『王も英雄も蓋を開ければ1人の人間、
人並みに逃げる事も、癒される事も
投げ出して逃避する事も許されとる。
"〜しなきゃ"はそのうち潰れんで、リン』
責務や業を背負うべき義務とする法は無い
が、1人の人間である事は法が、人間が
そうである事を許し、認めてくれている。
『背負うモンが重いんなら背負わせてくれ。
リンの感じる痛みを分かち合えるんなら、
お前の旧友としてこれ以上の喜びは無いわ』
- 197ミカエラ◆KPwoT407kA25/05/19(月) 20:49:49
…そっか
【“これだけ高潔な人間ならそっちの道を選ぶだろうな”、とどこか納得したような表情を見せ】
でもさ〜?再建したら真人間に逆戻りでしょ?そんな状態で今までと遜色ない活躍できるんですか〜?………いや、させたいけどさ?私のヴァルキリーはそれだけ優秀なBFであると豪語したいけどそれは置いておいて
そんなお困りの貴方に、はいドン!
【タブレットを見せる。そこには“再強化施術案”と書かれていた】
“再建”後にキミをどうこうしろだなんてのは指定されちゃないからね!ウチのもうひとつの側面である人体強化研究機関が火を吹くってワケさ!
で、悲しいことに基礎能力は今と据え置き。そうしないと施術の反動を許容値まで抑える事が出来なかったんだよねー…
【“予想発現バックファイア”と書かれた項目には、“長期間のメンテナンス未処置に伴うパフォーマンスの低減現象”及び多岐にわたる対処法がある旨を示していた───どれを取っても、“ノインをヴァルハラに縛り付ける”ような重い反動ではない】
まぁ大体こんな仕上がりに出来ますよっと。ここまででなにか質問あったりする?
- 198ノイン◆fDey8JUvvk25/05/19(月) 21:10:34
「……そうだよ。」
【ミカエラのどこか納得した顔には静かに返す】
『でもさ〜?再建したら真人間に逆戻りでしょ?そんな状態で今までと遜色ない活躍できるんですか〜?』
「………。」
【黙らざるを得なかった。たとえ目の前のヴァルハラテックが優秀なBFを用意、いや量産しているとしても】
【遜色ない活躍ができる、と言い切れるほど考えなしならとっくに死んでいる】
『そんなお困りの貴方に、はいドン!』
「え?あ、はい。」
【思わずきょとん、としてタブレットを覗き込む】
「再強化施術案……!!と、すみません。少し読ませてください。」
【読み進めていくうちに真顔になり、少し汗ばみ、そして小さく震える。禁断症状ではない】
「……………受けます。させてください。社長の、あなたの気が変わらないうちに。」
【驚きと焦りと喜びと興奮だ。この身体は便利だがそれ以上に煩わしい。それが少しでも解消されるならぜひやって欲しい、と】
【ノインはどちらかといえば高潔だが、流石にあの苦しみに怯えたままで生きていく、とまでは望んでいなかった】
『まぁ大体こんな仕上がりに出来ますよっと。ここまででなにか質問あったりする?』
「あ……。」
【ふと気づいたように】
「再建手術が終わった後、ここに残るのも自由ですか?」
- 199ミカエラ◆KPwoT407kA25/05/19(月) 21:22:16
- 200ノイン◆fDey8JUvvk25/05/19(月) 21:33:15
「ありがとうございます。」
【拒絶する様な意志が感じられない笑みにこちらも自然と笑い返す】
「ああ、シグレさん。彼女とは確かに操縦パターンについて似ている部分はありそうですからね。彼女も反射神経が凄くて……バッティングも上手でした。」
【ついこの前の思い出を感慨深く語る】
「蒼月はあくまで仕上がりがシンプルなだけで、フレーム・駆動系にはそれなりの工夫があったとは聞いています。」
「いい子でしたよ。素直で。殴る蹴るまでさせましたが、最後までついて来てくれた。」
【1回りほど声音が高くなったことに目を細めつつ、自分も蒼月の思い出話を語る】
【ノインは自身が部品であることを察していたが故に、器物に対しても親近感を持っていたのだろう】
「と。質問は以上です。」
【もう大丈夫、と頷いた】