【閲覧注意】【SS】婚約した星南さんと学Pの初体験後の話

  • 1◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:44:02

    P星南イチャラブSSのストックと新しいやつを書いていきたいと思います。
    一つ目がちょっとえっちなやつなので閲覧注意つけてます。
    ※残り二つは全年齢な内容の予定
    読んで頂けたら嬉しい限り!

  • 2◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:46:42
  • 3◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:49:51

    とりま2話分は書けてるので、サクサク投下しつつ
    3話目をしこしこ書いていく感じです!
    前スレ分からの続きものなので、気になった人は是非前スレからでも読んで頂ければ!

    ひとつめ、星南さんと学Pの初体験翌日のお話
    ↓↓↓以下、連投↓↓↓

  • 4◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:51:11

    朝、露天風呂。
    一棟貸しの宿に備え付けられた温泉は、朝陽が差し込む最高のロケーションだった。
    少し熱いくらいの温泉は、寝起きのぼーっとした頭をじんわりと目覚めさせてくれる。
    落ち着いていて、素敵な空間だ。
    残暑の外気はあたたかく、湯気が少ないからか、意匠を凝らした小さな温泉の景色は澄んで見えるし。
    小さな岩場に突き出した樋から流れ出す湯が、ちゃぷちゃぷと心地よい音色を奏でている。

    気持ちいいな。
    全身が熱い湯に包まれ、体の芯から疲れを浄化していく感覚。
    お風呂というものの気持ちよさは、どれほどくたくたに疲れていたかが大きいと思う。
    どれほど汚れて、どれほど疲れ果てて、癒やしを渇望しているか、と。

    その点、昨晩の深夜まで体を重ねていた私と先輩には、うってつけだった。
    起きた瞬間から、すっかり全身くたくたで。体のあちこちが、ぎしぎしと悲鳴をあげていて。
    シャワーも浴びずに寝てしまったこともあって、二人ともべたべたの体だったから。
    最初の掛け湯の、なんて気持ちのよかったことか。

    昨晩のべたべたを すっかりきれいに洗い落として、残るはくたくたになった体を癒やすだけの私たちは。
    二人でゆったりと、温泉に浸かって癒やしを満喫している。
    「朝の温泉って、本当に気持ちがいいわね……」
    腕に湯を ぱしゃぱしゃと掛けながら、後ろにいる先輩に声を掛けた。
    洗いっ子して、一緒にすっきりした私たちは、二人一緒に湯船に居て。
    ちょっとはしたないけれど、湯船の中であぐらをかいた先輩の上にちょこんと座っている。
    混浴なんて、自宅では出来ないし。こうして二人でくっついて入浴するなんて、恋人らしいかなって憧れていたから。
    とはいえ彼の体に、ぺたり ともたれて身を預けていると、彼を座椅子にしているみたいで少しだけ申し訳ない気がした。

    まぁ、気がしただけで。
    さっきからずっと、私の胸をぷにぷにと触ったり、柔らかさを確かめるように揉んでいる彼のことを見れば。
    そんな罪悪感は、どこかへ飛んでいってしまうのだけれど。

  • 5◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:52:00

    ―――


    ふにふに、ぷにぷにと、後ろから伸びている手に胸が弄ばれている。
    下手に先の方までは来ないけれど、感触か重さか何かを確かめるように、その手は延々と胸を触り続けていて。
    温泉の流れ出る音とは別に、不規則な ちゃぷちゃぷという音が響いている。
    本当に、構わないといえば、まったく構わないのだけれど……。

    くるり、と顎を上げながら、少しだけ頭上の彼のほうを睨んであげた。
    顔はよく見えなかったけれど、咄嗟に私の頭のタオルに顔を埋めて誤魔化したのは、なんとなく見えた気がする。
    「悪戯っ子がいるみたいだけれど?」
    じっとりと上目遣いで、棘を含ませて彼に言葉を投げつける。
    彼にだけじゃない。さっきから私の腰や背中に押し付けられて、ぐいぐいと存在感をアピールしている"何か"にもだ。
    まったく、こんなに爽やかな朝なのに。私の体を洗うときから、どうも手つきがいやらしいと思っていたらこれなんだから。

    「……星南さんが」
    「魅力的だから仕方ない、なんて言えばいいとでも思っていないでしょうね?」
    彼が言おうとしたことを察して、呆れを滲ませた声で釘を差す。
    そのまま、私の胸に触れている手の甲を少しだけつねってあげると、彼は私の胸を触る手を離して ぎゅっと抱きしめた。
    彼の体が、私の背後にぴたりと密着する。その、かちかちになっているものは、押し付けたままで。
    ……なんだか、ちょっと誤魔化そうとしている気がする。

    「まったく…… 昨日、あれだけしたのに」
    まぁ、不躾に胸の先の方は触らないでいたのは、一応彼なりに我慢をしているのかしら、なんて考えてはみるものの。
    昨日も好き放題さわって……舐めて……吸ったり、して。まだ触り足りないのかしら、と不思議に思ってしまう。
    下半身の固いものも、その存在感のせいで、昨晩のことを強引に思い出させられてしまうから、調子が狂いっぱなし。
    この子だって、昨日あれだけ出してぐったりしていたじゃない。どうして寝て起きたら、かちかちになっているのよ。
    何に興奮したというの? 生理現象だとか言っていたけれど、あなたがえっちなこと考えすぎているだけではないの?

  • 6◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:53:11

    自分で彼の上に座っておいてなんだけれど、だんだん彼がずるい気がしてきた。
    思い返せばさっきだって、私は彼の体を洗うとき、こっそり体に触って どきどきしていたのに。
    あなたは私の体を洗うときから、どうも手つきがいやらしかったし。太ももとか、脇腹とか、妙に念入りに洗われたし。
    恥ずかしいから洗わなくていいって言っているのに、胸の下とか、足の付け根とか、太ももとか。
    もう、恥ずかしくて誤魔化されていたけれど、ぜんぶ彼のいやらしい願望じゃないの!

    「星南さんの体を一度知ってしまったからか、抑えが効かなくなってしまいまして」
    なんだか開き直ったみたいに、多少の気まずさを滲ませながらも、私の頭のタオルに顔を埋めたまま言ってきた。
    しまいには、むき出しの私の首筋に、キスまでし始めて。甘えたふりして私を籠絡しようだなんて、いい度胸じゃない。
    まぁ、キスは別に、してくれても構わないのだけれど……私からは出来ないのは寂しい、とか、思ってしまったりして。
    どうせするなら、首じゃなくて、頬でも唇でもいいのに、なんて思ったりもして。
    ――そうではなくて!
    もう、彼に甘えられると調子が狂ってしまう。私も私で、恋人だからってこんなに甘やかしてしまう人間だったかしら……。

    赤くなってしまった顔を誤魔化すために、彼の方を向くのを止めた。見られてしまったら、彼が調子に乗りそうだもの。
    「私の体を好きでいてくれるのは、とっても嬉しいのよ? けれど、こんな一方的に……」
    私を抱きしめている彼の腕を、私がゆっくりとさすりながら苦言を呈する。
    「向き合って胸を触るのは流石に、色々とあからさまで……あと、その、見せつけてしまうのも、どうかと思いまして……」
    彼が言い終わって、数秒の沈黙のあとに、見せつけるってこれのこと?と、腰を振って彼のそれをぐりぐりと圧してあげた。
    びくっとして固さを増したそれは、私の腰に刺さってしまいそうなくらい、かちかちになっている。

  • 7◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:53:58

    はい、そうです。なんて、苦しそうな声で言う彼は少しだけ可愛いけれど。私の体をぎゅっと抱きしめるのも、とっても可愛いのだけれど。
    彼の言葉と その様子に、昨晩の、彼とつながったときのことを思い出してしまって。少しだけむきになって、ふん、って鼻を鳴らしてしまった。
    そんなに押し付けたって、昨日みたいにはしてあげないんだから。
    昨日は、その、色々と盛り上がって、あんなことしてあげただけなんだから……。

    私の腰元で蠢く固いものは、さらに力を込めたようにぐぐっと私の体を押しのけようとする。
    手を使っていないのに、と思ってしまうけれど。昨日のあの跳ねる姿を見るに、きっと勝手に動くのだろう。
    "見せつけるのもどうか"も何も、あなたのそれはずっと、あからさまに私にアピールしてきているのだけれど?

    はぁ、と これ見よがしに溜め息をついてみる。
    別に、彼が私の体に夢中になってしまうという事自体は嬉しいというか。せっかく私と繋がりあったのだから、いっそう好きになってくれたのなら、本望というか。
    私だって、あなたの体が好きだし。あなたに抱かれてから、もっともっと好きになって、どきどきするようになったのは間違いないし。
    あなたばっかり触るのはずるいって、思っているだけで。
    怒った顔でもしていなければ、彼に触れられて嬉しい気持ちが、赤い顔が誤魔化せないから。
    むっとしているしか方法がない、というのが正直なところなのだけれど。 彼はそんなこと、気がついているのかしら。

    情に絆された、なんて言い方はちょっと違うかも知れないけれど、今朝から彼を可愛いと思う気持ちはなんだかおかしくて。
    一歩外に出れば一見クールでスマートで、それなりに色々な女性から好意的に見られがちな彼が。
    私にどのくらい、いやらしい気持ちを向けていいのか戸惑っている様子を見せたり。
    さっきから私の体を抱きしめるふりをして、腕で私の胸の下を触っている、おばかな彼になってしまっていたりするのが。
    ばかばかしいけれど、胸が苦しいくらい、可愛いなと思ってしまう。

  • 8◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:54:26

    もう、だめかも知れない。
    完全に、彼のことを甘やかしてあげたい気持ちが溢れてしまっている。
    その証拠に私は、無意識に私を抱きしめる彼の腕をほどいていて。
    入れ替わりに、彼の手を握ってあげた挙句、その手を私の胸にもってきてしまっていた。
    「……我慢は、別にしなくていいから」

    えっ、と、彼が驚いた声を上げる。私も、何を言ったのかと思った頃にはもう遅い。
    ぽーっとして迂闊なことを言った、数秒前の自分を叱りながら、なんとか取り繕うように彼に釘を刺す。
    「た、ただし! えっちな触り方は禁止!いいわね?」
    だって、私が完全に許したと思ったら、彼はぜったい調子に乗るのだもの。
    そうなってしまったら、もう何をされるか、分かったものじゃないから。
    こんな朝から、そんなこと……いくらなんでも、絶対にだめ!

    私が釘を刺すや否や、彼はぱっと私の手を逃れたかと思うと、すぐに私の胸を触り始めた。
    さっきまでの、しゅんとした様子はどこかへ行ってしまったみたいで呆れてしまう。
    「ありがとうございます。 いま、とても幸せです」
    溌剌とした声でそう言って、彼は私の胸を優しく揉みしだいていた。

    私は、彼と自分自身に対して……惚れた弱みのようなものに、特大の溜め息をついて。
    やれやれと言いながら、彼の、いやらしくて無邪気な手を、受け入れてあげることにした。


    ―――

  • 9◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:55:45

    ドライヤーの音が鳴り響く。
    俺は今、脱衣所で星南さんの髪を乾かしている。
    星南さんは、まだ暑いからか少しだけ着崩しているけれど、お互いにもう浴衣を着ていて。
    少しずつふわりと柔らかになっていく髪は、きらきらと美しい輝きを取り戻し始めていた。

    根元をブローしたあと、毛先にかけて指を通り抜けさせる感覚がとても心地よい。
    絹のように細やかで滑らかな髪。スタイリストでもない俺が触れていることの特別感に、胸が躍る。
    恋人の髪を乾かす、たったそれだけのことなのに。
    その人が、この世でたった一人だけの、心を交わした人で。俺にとって、この世で最も美しい人だから。
    いま、自分が世界で最も幸せであると感じられる。

    感じられるのだけれど、一つだけ気がかりと言うか、単純に舞い上がっていられない状況というか。
    その美しい恋人が少し……いや、それなりにお怒りである。
    原因は分かっているのだけれど、どうしたものかと悩んでしまう程度には、鏡を見るのが気まずい。
    「……あの、体の具合は、いかがですか?」
    恐る恐る、声を掛ける。昨晩の反動か、今朝から体じゅうが痛いと言っていたから、というのもある。
    ただ、明らかに会話の取っ掛かりを探る俺の素振りに、星南さんはむすっとした表情を崩さない。
    それはそれでとても可愛らしいのだけれど、見えている地雷原に飛び込むのは事態を悪化させるだけだ。
    まずは、遠巻きから距離を詰めて……。
    「あなたが一番分かっているのではないかしら、セクハラプロデューサーさん?」

    鏡越しの、じっとりとした視線と共に、棘まみれの言葉が胸に突き刺さる。
    セクハラ、とは、要するに。さっき星南さんの胸を勝手気ままに触らせて頂いた愚かな俺は。
    そろそろ終わりにして、と彼女が立ち上がったとき、目の前にお尻があったものだから。
    つい、すりすりと撫で回して、お尻に抱きついてしまったことを言っているのだ。

  • 10◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:56:32

    流石に、きちんと謝罪しようとドライヤーを止める。温風に吹き上げられた、彼女の柔らかな香りが最後に鼻先をくすぐった。
    「……申し訳ございませんでした」
    他に言葉も出ず、色々と付け加えたところで仕方がないと思って、素直な謝罪を言葉にする。
    これはなんというか、プロデューサーとして活動を始めて以降、最も恥ずかしい謝罪であることは間違いない。
    担当……元ではあるけれど、アイドルのお尻を触って叱られているなんて、退学もののみっともなさだと自分でも思う。
    「別に、あなたに体を触れられるのは、私にとっては嬉しいことなのだけれど」
    むすっとした表情を崩さないまま、呆れたような、少しだけ怒気を含んだような声色で。
    鏡越しに俺の目を突き刺す視線はそのままに、彼女は言葉を続ける。
    「ああいう不躾なのは、あなたらしくなくて、嫌」

    ごもっとも、というか、ごく当然のお叱りを受けてしまった。
    彼女の信頼に背いたことが最大の問題だ。こんなこと、アイドルとプロデューサーの関係であれば、絶対にしなかったと自信を持って言えるのに。
    "担当アイドルではなくなった、元トップアイドルの婚約者"なんて存在が現実のものになって、どう接するべきなのかが本当にわからなくなってしまっている。
    節度を守る、と言って距離を取ったりして、だいぶ揺らぎながらも結果的に適切な距離感で接し続けてきた相手が、ある種の"なんでもあり"になって。
    そんな最愛の恋人と、初めての二人きりの旅行に来ていて。
    つい昨晩、純潔まで捧げあったとなると、もう、プロデューサーらしい理性はぐずぐずに崩れ始めていた。

    彼女の、"あなたらしくない"という言葉が胸に突き刺さっている。
    俺らしくない、というのはつまり……簡単に言うと、"調子に乗っていた"ということだ。
    心の中で溜め息が出る。これは、いい薬になった。喜ぶのは良いけれど、調子に乗ってはいけない。
    「以後、厳重に注意します……ですので、汚名返上のチャンスを頂きたいのですが」
    そうと分かればと、両手を合わせて懇願する。
    彼女の恋人として、まずはこの状況を何とかしなければ!

  • 11◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:57:29

    そんなことをぐるぐると考えて、俺が両手を合わせていると。彼女は不意に、むすっとした可愛らしい顔を止めて表情を綻ばせた。
    小さな溜め息のあと、くすくすと堪えきれないように笑い始める。
    「あなたって本当に……プロデュース以外はからっきしね?」
    だんだんと、笑いが止まらない様子になっていく彼女は、なんとも楽しげで。
    どうやら、慌てふためいているのが顔に出ていたらしく。彼女にはそれが、どうにも面白いらしい。
    ……少し、ずるいな、と思ってしまう。毎度のことだけれど、こんなに可愛らしくからかわれてしまっては打つ手がない。

    「もう、いいわ。 あなたの私にだけ見せる子供っぽいところ、好きだもの」
    そう言って、彼女は立ち上がって、俺と向き合った。
    動揺が丸見えの俺を見て、悪戯な顔をしたと思うと。彼女は俺の目を見ながら、頬をつねってきた。
    「ただし、私にも恥ずかしいことはあるの。 わかったかしら?」
    頬が伸ばされて、気の抜けた返事しかできなかったけれど。ひゃい、と軽く頷いた。
    そんな俺の様子に気を良くしたのか、もう彼女の表情に怒りは見えなくなっている。

    俺の頬をつねる手を離した彼女は、その手で俺の頬をさすってくれた。
    肌を滑るさらさらとした手のひらは、とても柔らかくて、優しくて。引っ張られて熱くなった頬が急速に癒やされていく。
    ただでさえ美しい人なのに、そんな優しさまで見せられては……抱きしめてしまいたくなる。
    いや、待て。調子に乗ってはいけない。つい数分前に決意したことなのに、もう揺らいでいていけない。

    俺が、そんなことで次の行動を決めあぐねていると、彼女は俺の頬にぐっと顔を近づけて。
    赤くなっているであろう頬に、優しくキスをした。
    「ごめんなさい、痛かったでしょう?」
    彼女の、甘く優しい声が耳元に吹き掛けられる。やっぱり、星南さんは優しすぎる。
    そんなに優しくされては、俺という人間はまた調子に……いや、いけない。今キスをお返しするのはたぶんダメだ。

  • 12◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:57:49

    ただ、無意識に彼女の腰を抱いてしまっていて。それはもう、慌てて離すわけにもいかず。
    俺のそんな手つきを見て、彼女はまた、くすっと笑った。
    「それはね、好き」
    そう言いながら、俺の首元にすりすりと顔を擦り付ける彼女がなんとも可愛らしくて。
    結局、俺も彼女の乾きたてのふわふわした髪に顔を埋めて、その香りに包まれることにした。
    もう、なんて言って笑った彼女は、俺の浴衣の衿に少しだけ手を滑り込ませると、肌を堪能するように撫で回す。
    自省して手が出せない俺をからかうような手つきで、さらさらと触れている彼女は、俺の首元で甘く囁いた。
    「お詫びとして、今日一日は私の言う事を聞きなさい」

    「あ、もちろんえっちなことはだめよ?」


    ―――

  • 13◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 22:59:06

    ――夜。
    迂闊なことをすることなく迎えた、今日の夜。

    要望は、実に多種多様だった。
    どれもこれも、俺を誘っては理性を試すようなものばかり、よく考えつくものだと思う。
    体が痛いからと全身のマッサージを頼まれたと思えば、少しずつ着崩れていく浴衣を整えることもせず。
    柔らかくも引き締まった体に翻弄されながらも、なんとかプロデューサー科で学んだマッサージを完遂することができた。

    昼食は本館で摂ったものの、お土産選びもそこそこに部屋へ戻って膝枕からのお昼寝だった。
    少し固いと苦情を受けながらも、無防備にすやすやと眠る姿に見とれてしまって。
    時折ぐりぐりと顔をお腹に押し付けてきたりしては、大きくなるものを誤魔化すのが大変だった。

    夕方になれば、着崩れる浴衣が目の毒だったが卓球をしたり、カップル用の岩盤浴で汗を流したり。
    いかにも温泉旅行らしい遊びを、これでもかと堪能できた。本館の温泉に入ったあとのフルーツ牛乳も、当然ごちそうした。

    部屋に戻ってからのポッキーゲームと愛してるゲームは、唐突に始まって何がなんやら分からなかった。
    どうもこの辺りは、藤田さんから聞かされていたらしい憧れのカップル用ゲームとやらを実行してみたらしいけれど。
    それでもなんとか、星南さんの言う事を聞く、というミッションを完遂できた。
    そのおかげか、部屋での夕食まで一度も、彼女の機嫌を損ねることはなかった。我ながら完璧な対応だったと思える。

    ……思えるが、ここに来て非常にまずい。
    夕食で、いつになくお酒を堪能した星南さんは、食事が下げられたあとはずっと俺の隣に座って、しなだれていて。
    首元に顔をすりすりしたり、首筋に一方的にキスを繰り返したり、甘えたい放題だ。
    水みたい、なんて言いながら珍しく日本酒を飲んでいたが、それにしてもかなり酔っ払っていると言っていい。

    「星南さん、少し飲み過ぎでは……」
    俺の膝をさすっている彼女に、襲いかかりそうになる自分を必死に抑え込んで話しかける。
    いやらしいことをしてはいけないというルールを守らねば、彼女の信頼をまた裏切ってしまう。
    裏切ってしまう気がするのだけれど、若干、疑わしい気がしてきているが、これはどうなのだろうか。

  • 14◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:00:02

    何度もしなだれては、ずりずりと体を動かすものだから、彼女の浴衣が着崩れなんてものじゃない状態になっていて。
    真珠のような肌と、それを飾り付けるワインレッドの下着がくっきりと、それなりにガッツリと見えてしまっている。
    少しでも、ほんの少しでも油断すれば、すぐさま手を出してしまいそうな、恐ろしい魅力が溢れ出していた。
    「あのね、今日もたのしかったの……」
    ふわふわとした様子で、いつもの気品も控えめになった緩んだ口調で、彼女はずっと喋っている。
    「あなたがね、ちゃんとがまんしてね、えらいなって……」
    よしよし、なんて言いながら頭を撫でられる。緩みきった袖から覗く素肌が妙な色気を醸し出していて、非常に目の毒だ。
    緩慢に、かつ大げさに動くせいで、綺麗な下着に包まれた彼女の胸が、視界の端でゆさゆさと揺れる。
    これは最後の試練なのだろうか。これを耐えきれば、なにか素晴らしい表彰でも受けられそうな気がしてきた。
    しかし、そんな弱々しい理性なんて、彼女の一挙手一投足で容易く破壊されてしまうだろう。

    星南さんが、ぐっと体重を乗せてくる。座った姿勢で受け止めきれなかった俺は、彼女を抱えるようにゆっくりと床に倒れ込んだ。
    俺の胸元に、星南さんの顔がある。表情は見えないけれど、衿を広げられている感覚は容易に感じ取れた。
    本当にこの人は、酔ったら止まらない人だ!
    普段すら落ち着いた佇まいの中に、少女のようなあどけなさと無邪気さを覗かせる、強烈な魅力の持ち主だというのに。
    酔った星南さんは、その美しい容姿をほんのりと赤らめさせて、少女のような姿を無防備に晒し続ける魔性を見せるようになってしまう。
    本人には一切自覚がないのも怖いところだ。"酔って醜態をさらした"とは本人もよく言うが、それが相手の劣情を思い切り刺激しているとまではわかっていなかった。
    今までは、手を出すわけにはいかないと、我慢できていた部分もあるのに。
    一度手を出してしまった俺には、この誘惑はあまりにも……。

    かろうじて残った理性をフルに稼働して、俺に寝そべっている彼女の肩を掴む。
    「星南さん、これ以上は約束通りの我慢ができません……!」

  • 15◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:02:22

    あなたの信頼を裏切りたくない、という一心で彼女に語りかける。酔ってはいても、基本的には記憶があるタイプだから覚えているはずだ。
    俺の、懇願するような声を聞いてか聞かずか、彼女はずっと俺の胸元をすりすりと手で触ることを止めない。
    「どうして、がまんするの? わたしのこときらい?」

    脳が溶けそうなくらい、甘い声で俺に問い返す彼女は、そのまま俺の胸元にキスをし始めた。
    「ん……ちゅ……ねえ、きらい?そんなの、かなしいわ……ちゅっ……」
    彼女の唇が俺の肌に吸い付くたびに、ぞくぞくとした感覚が背筋に走る。
    こ、こんなもの、耐えられるはずがない。というか、もう今朝の約束なんて忘れているんじゃないだろうか?
    今すぐにでも彼女の体すべてをまさぐって、毒牙にかけたいと思ってしまう。
    消えかけの理性では、こんなにも蠱惑的な彼女を引き剥がすことなんて絶対にできない。

    「もうっ、さっきはあんなに愛してるって、たくさん言ってくれたじゃない!」
    ずい、と体を上にすべらせて、俺の目の前に彼女の顔が現れた。
    綺麗だ。それにとても可愛い。赤く火照っていて、少々じっとりとした目をしている。
    ただ、それにしても近い。もう鼻と鼻がくっつくような距離で、彼女は俺の返事が遅いことを怒っている。
    「愛してるゲームですか? 確かに、たくさん言いましたね……」
    照れたほうが負け、ということだったが、星南さんがとにかく弱いから何度も何度も繰り返して遊んでしまったことを思い出す。
    無論、嘘でもなんでもないけれど、会話の流れとしては結構支離滅裂ではなかろうか。
    「ゲーム? わたしのこと、あそびだったというの?」

    男を刺激する甘い匂いとお酒の匂いを撒き散らしながら、拗ねた顔をしたかと思うと。
    彼女は唐突に、俺の唇を奪った。
    「ん、む……っはぁ……ちゅ……」
    彼女の熱い吐息が漏れ出すキスは、普段のキスよりもずいぶん情熱的で。
    はむはむと唇を甘咬みするような動きが、俺の理性を速やかに解体していく。
    これは、星南さんが一番好きなキスだ。余す所なく俺の唇を堪能して、まるで相手を蹂躙するようなキス。
    いつも星南さんは最後には腰砕けになって、俺のことをずるいなんて言うけれど。
    俺としても、一瞬の気の緩みで彼女に骨抜きにされかねない刺激に、必死に耐えているのだから、おあいこだ。

  • 16◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:02:59

    まるで、昨晩のように……性行為が始まっているかのような、ねっとりとしたキスが続く。
    時折、息継ぎのように唇を離したと思うと、何度も何度も俺の目を見て、何かを確認してからまたキスをし始めていた。
    「んっ……は、あ……っ! あそびなんて、ひどいわ……えっちなことしたら、もう飽きてしまったの……?」
    幾度目かの息継ぎで、そんなことを言われる。一体、何の話になってしまっているのか……。
    何やら勝手な想像で、俺をろくでもない男に設定したかと思うと、再び彼女は俺にキスをする。
    反論の隙がない。そもそも彼女とのキスは、思考も理性も飛んでしまうくらい魅力的なのに。
    こんな、熱っぽいキスをしたまま、彼女を説き伏せるなんて不可能だ!

    彼女の頭を、痛くならないように掴んで、キスを中断させた。
    ぷはっ、と息継ぎをした彼女は、ものすごく不機嫌な顔をしている。キスを中断させられたことを怒っているようだ。
    しかし、今のうちに言うべきことを言わなければ、もうこのままなし崩し的に始まってしまう。
    「愛しています! ただその、不躾に触ることは避けようかと思っただけです!」
    俺の言葉が聞こえているのかいないのか、不機嫌な顔をした彼女は特に様子が変わる気配もなく。
    俺に掴まれた頭をなんとか押し込んで、俺にキスをしようと何度か唇を尖らせた。
    本当に、そういう可愛いことをされては、身が持たない。

    「うそよ! だってキスもやめちゃったじゃない!」
    俺に届かないとみると、彼女は声を荒げて俺を非難した。少しずつ涙目になっている彼女は、爆発寸前といった感じだ。
    もうこうなってくると、元の事情も何もない状態だけれど、ひとまずこの場を収めなければどうしようもない。
    「嘘じゃありません、信じてください」
    彼女の目を見て、まっすぐに言う。伝わっているかは、正直分からないけれど。

    俺の言葉が伝わったのか、彼女はむくり、と身を起こして、俺に寝そべることを止めた。
    良かった、と思ったのもつかの間。彼女は押し入れの方へとふらふら歩いていったと思うと。
    不意に振り返り、後ろ手に押し入れをガっと開いた。
    「じゃあ、お布団しいてちょうだい!」


    ―――

  • 17◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:03:39

    勢いに負け、テーブルをどけて布団を敷いた。
    彼女はもう、はだけた浴衣をそのままに、布団へ寝転がっている。
    "信じてほしい"と言っただけなのに、なぜ布団を敷くことになったのだろうか。

    極めて低い可能性としては、このまま寝てしまって俺が手を出さないかどうかを試しているというのも考えられるけれど。
    ……まぁ、今更それはない。どう見てもこちらをチラチラと見ているし、突っ立っている俺のことをじっとりと睨んでいるようにも見える。
    「ええと、どうすればいいですか?」
    とはいえ何を欲しているかがハッキリと分からないので、星南さんの意思を確認する。
    これで見当違いだったら、それこそ大変なことになる。少なくとも同意のもとでなければ……。
    そう考えていると、星南さんは寝転んだまま両腕をがばっと天井に向けて伸ばし、大きな声で言った。
    「ぎゅーってしなさい、いますぐに!」

    もはや当初の話なんて誰も覚えていないような状況に、小さく溜め息が出てしまう。
    が、もうそれでいい気がしてきた。さっきからもう、星南さんに体のあちこちを触られて、押しつけられて、キスまでされて。
    トップアイドルの元プロデューサーなんて仮面は、砂と散っている。

    黙ったまま星南さんに近寄ると、覆いかぶさるように抱きしめた。
    星南さんの顔が、世界で一番きれいな人の顔が、また近くなる。
    ぎゅっとして欲しいと言っていたから、まずは星南さんの体に手を回して、重くならないように抱きしめた。
    彼女の手も俺の背中に回されて、ぴたりとくっついた体は互いの呼吸や鼓動を、つまびらかに伝え合い始める。
    この高鳴る鼓動は、酔っているからか、恋人との接触に胸を高鳴らせているからか、どちらなのだろう。

    それにしても星南さん、体が熱い。耳にかかる吐息も、さっきより温度が増していて。
    それに呼応するように、自分の下腹部も、もはや抑えようもなくがちがちに固まってしまっている。
    どう考えてもこのあと始まる何かを予想して、存在をアピールしてきているのは誤魔化しようがない。
    でも、まだ、同意は得ていない。しかし、これはもう同意ではないか?
    我ながら、わけのわからない悩みをぐるぐると巡らせながら、体は我慢できず彼女のお腹へと押し付け続けている。

  • 18◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:04:13

    本当は、今日も欲しい。彼女の体が、彼女のすべてが。
    そんな、はだけた浴衣で素肌を晒して。下着を着けてるからって、婚約者だからって丸出しにして誘惑してはいけない。
    たまらず、彼女の肩にキスをした。そのまま流れるように、鎖骨、首筋と唇を這わしていく。
    こんな、こんな美しくいやらしい体をして。俺がいったいどれほど待ち望んでいたと思っているのだろうか。
    昨日たった一度の性行為程度で、あなたと出会ってからずっと溜め込んできた俺の渇望が、満たされるわけがない。

    黒い感情が込み上げてきた頭で、彼女の背中に回していた手を引き戻す。
    もう、我慢なんて出来ない。というより、もう我慢しなくても良いだろう、きっと。
    彼女の浴衣の衿に、手を差し込む。彼女の体を押し上げるように手を滑り込ませて、ブラジャーのホックを外した。
    一連の動きに、誘い込むように少しだけ上半身を反らした彼女は、大きな抵抗をしないままだ。
    緩んだ肩紐をずらし、腕を抜いてもらうか。いや、待てない、上にずらしてすぐにでも……。

    不意に、彼女はぼーっとした様子で自ら腕を抜いて、ブラジャーを脱ぎ捨てた。
    酔って赤い顔のまま、俺の顔をも見えているのかいないのか、なんとも言えない状態だ。
    脱ぎ捨てた勢いで、彼女の胸が露わになる。真っ白な肌は酒酔いで赤らんでいて、昨日とはまた違った色気を放っていた。
    ゆさゆさと揺れながら、左右に少しだけ逃げ惑った乳房に、視線が釘付けになってしまう。
    「酔わせて、おそうなんて、へんたい……」
    そんな俺を見てか、彼女は両腕でぎゅっと身を隠すような素振りをした。

    「……星南さんが、そんな無防備に誘うから――」
    変態、と心外な言葉をかけられて、咄嗟に言い訳を探してしまう。
    しかし、実際自分もそれなりに暴走しているのは確かで。この勢いを止めたくないという気持ちが優先されてしまう。
    もう、やってしまえと、彼女のパンツに手を伸ばした。

  • 19◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:04:44

    触れた瞬間、ぐちゅ、と音がした。
    何事かと思い、何度か指で、その布切れを弄ぶと。
    昨日と同じ、彼女の愛液で濡れそぼった下着が、卑猥な水音を出していた。
    「……これ、なんですか? 誰が変態ですって?」
    彼女の目を見たまま、片手で下着をぐりぐりと押し付けるように刺激する。
    その指の動きに呼応するように、彼女は嬌声を上げては、逃げるように顔を隠した。
    「言わなくていいわよ、ばか!へんたい!」

    それなら、と、彼女の顔を眺めるのをやめて、乳房に顔を埋めた。
    谷間は汗ばんでいて、ほんのりとしょっぱい味を感じながら、乳房全体にキスをする。
    逃げるように柔らかくこぼれる乳房を支えるように、手で持ち上げては指先で柔らかさを堪能した。
    その間にも、彼女の下着を横にずらしては、膣口をぐちぐちと指で刺激し続ける。
    逃げるように腰をよじる彼女は、それでも俺を押しのけるようなことはせず。
    まるでこの状況を期待していたかのように、星南さんの性器は愛液が溢れ出していた。
    「あっ、あっ、だめ、あっ……!」

    彼女の、固く尖った乳首に吸い付き、舌で転がすように愛撫する。
    乳輪を這うように舐めると、彼女は大きく喘ぎ、その度に乳房はふるふると波打った。
    甘咬みは身を強張らせ、彼女に少しだけ挿し込んだ指を、膣口がきゅっと締め付ける。
    もう、俺の手の内にある。あの星南さんが、俺に良いようにされている。
    その事実が、目に飛び込む彼女の痴態が、耳をつんざく彼女の嬌声が、汗と愛液の匂いが。
    俺の中の黒い感情を、根こそぎ引っ張り上げて、理性を溶かしていく。

    彼女の乳房を優しく掴みながら、乳首を執拗に愛撫していると、観念したように俺の浴衣をぐっと掴むようになった。
    受け入れた。そう感じた俺は彼女に聞こえるように、乳首に吸い付く音や膣口を愛撫する音を大きく響かせる。
    星南さんは、おそらく……こうして背徳的な行為に晒されている状況が、特に好きなはずだから。
    「おと、たてないでっ! らんぼうなの、きらい……!」

  • 20◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:05:07

    愛液でぐちゃぐちゃになっている膣口を指先で優しく引っ掻き回しては、少しだけ指を挿れて浅いところを刺激する。
    何度も何度も、激しい水音を鳴らしながら、時にそれをかき消すように喘ぎ声を上げて。
    完全に夢中になっている俺は、彼女がどこを触れて欲しいのかを探るように、あらゆる場所に指を這わせていた。
    彼女の中に侵入した指が熱い。ちゅうちゅうと吸い付くように、俺の指を離そうとしない。

    そろそろだ。
    昨日とは比べ物にならないほど、ひどく本能的で、獣のような行為だけれど。
    昨日の神聖な空気とは比べ物にならない、むせ返るような淫気の中で。
    俺たちはもう、止まれない。
    「星南さん、そろそろ……」

    ぐちゅ、と指を抜いた瞬間、ひときわ高い声で喘いだ彼女は。
    胸を揺らし、荒い息を整えることもしないまま、俺の鼻先を、つんと突いた。
    呆気にとられる俺の目を、今まで見たこともないような妖艶な表情で見つめていて。
    ちがう、と口にした。

    何がですか?と聞く俺に、ふふっ、と汗まみれの顔で優しく微笑んだ彼女は。
    声には出さないままで。せ、な、と大げさに口を動かした。
    ――そうか、そうだった。

    「ね、プロデューサー……?」
    そう言って、彼女は俺の首に手をかける。
    顔と顔をぐっと引き寄せるように、俺を逃さないと言っているように。

    俺を誘い込むように差し出した舌は、もう、俺の心を引き付けて離さない。
    俺の手の内にあるんじゃない。俺が、彼女に夢中にさせられていた。
    どれだけ関係を深めても、どれだけ淫らに体を弄んでも。彼女のほうが、ずっと一枚上手だ。


    ―――

  • 21◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:05:29

    そうしてまた、俺と星南さんは重なり合った。
    浴衣を濡らし、布団に染みを作り、時間を忘れて。
    互いの唾液と愛液でべたべたになった体を、汗で洗い流すように絡み合って。
    ただひたすらに、快楽を求めて。互いの体を貪った。

    ようやく終わったのは、二つ目の避妊具を外した頃。
    段々と酔いが覚めて恥ずかしくなった星南さんが、枕で顔を隠したことで。
    なんとなく、終わりを告げられた気がした。

    「……酔わせて襲うなんて、変態プロデューサー……」
    そう、酔っているときと似たような罵倒を受けながらも、体を晒して顔を隠す彼女がなんとも可愛らしくて。
    俺は彼女の枕を奪い取った。

    顔を真っ赤にして怒る彼女の唇をキスで塞ぎながら、手探りで次の避妊具を手繰り寄せる。
    酔っている星南さんと、快楽を貪りあったのなら。次は、いつもの彼女と、お互いを感じ合おう。
    まだ出せるかはわからないけれど、それはもう重要じゃない。
    少なくとも、ドロドロに乱れた彼女の体を見て、俺のそれはまた元気になっているから。
    あとはただ、つながりを求めて体を重ねる。

    ただ、明日はきっと、"また体が痛い"と彼女に叱られるだろうな、と。
    そんな幸せな心配だけをして。
    俺と星南さんはまた、一つになっていった。

  • 22◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:06:24

    ↑↑↑以上↑↑↑
    ひとつめ、初体験の翌日にまたえっちなことしてるP星南のお話でした。

  • 23◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:09:26

    とりまストックある分はガンガンいこうぜなので
    ふたつめ、えっちなことできない日のお話も投下していきます!

    ↓↓↓以下、連投↓↓↓

  • 24◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:10:03

    「あなた、ここ数日はどうしていたの?」
    夜、俺の部屋。旅行から帰宅して数日。
    すぐ隣に佇む美しい婚約者が突然、そんなことを口走った。

    肩に頭を預けながら、俺の左手の指輪を弄んでいた彼女の突然の言葉に、呆気に取られてしまう。
    本当に、何となく気がついたような、深刻そうではない声色だけれど。
    理解が追いつかず、えっ、と声を漏らしてしまった。

    二人でソファに沈み込むように座って、互いの左手に輝く小さな星を うっとりと眺めていたのに。
    今日の終わりが近づくことを、また離れ離れになってしまうことを恐れて、身を寄せ合っていたのに。
    どうしていた、とは一体、何の話をしているのだろう?

    旅行が終わってから今までは、確かに慌ただしかった。
    プロデューサーとして正式に配属されることになる星南さんと共に奔走し、挨拶回りや彼女の担当アイドルたちとの今後についての会議の連続。
    忙しいだけではなく、同僚のプロデューサーたちから妙に生暖かい目で見られては、羨望の眼差しを向けられることもあり。
    次に俺が担当する予定のアイドル達と面談をしたときも、何度も話が逸れて大変だった。

    婚約に関しても、まだまだやるべきことは尽きず。
    社長や星南さんのお母さんに対する、ライフプランの提示、ダメ出し、再提出、ダメ出し。
    ひとまず、しばらくは婚約者として交際を続けて、結婚式だなんだというのは少し先ということにはなったけれど。
    早々に入籍だけでも済ませるように、ということで今度役所に伺うことが決まったり。
    客間ではなく、正式に俺の部屋が用意されることになる、というのが決まっていたり。
    十王星南と婚約したということが、どれほど大きな出来事なのかを実感していた。

  • 25◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:10:19

    そんなことで、ばたばたとした数日を過ごした俺達は。ようやく日常を取り戻しつつあって。
    今日は久しぶりに、ゆっくりと部屋で恋人との時間を過ごしている。
    まぁ久しぶりと言っても、毎日のように……たとえ10分でも1分でも互いの部屋へ赴き、唇を交わしていたのけれど。
    こうして星南さんの体温をじっくりと感じながら、溶けるようなキスをして肩を寄せ合うのは、実に数日ぶりだ。
    待ち侘びたその時間に、俺も星南さんも夢中になってしまって。
    もう、唇がふやけそうなくらいには、互いを味わい尽くした後だったのに。
    唐突の質問の真意が理解らず、言葉が出てこない。

    彼女とは日中ずっと一緒に過ごしていたし、夜も互いの部屋を訪れている。
    彼女の知らない俺の時間なんてほとんど無いはずだ。

    俺が答えに困っていると、星南さんは手を離さないまま静かに頭を起こして、俺の顔を見上げた。
    「その、旅行から帰ってからは、一度も……していないじゃない?」


    ―――

  • 26◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:11:31

    彼女の一言に、ああ、と声が漏れた。
    旅行中に毎日していて、帰ってから一度もしていないことなんて、一つだけだ。
    というよりは、彼女がそんな勿体ぶって質問してくることなんて、きっと"そういう"話だ。
    彼女と肌を重ねる神聖な行為。
    愛する人との、最上級の愛情表現。
    恥ずかしげに俺の顔を覗き込む彼女の顔を見ると、あの夜を思い出してしまう。

    いや、あの夜だけじゃない。結局、旅館に泊まった数日間は毎日した。
    時間の許す限り、体が動く限り、毎日、何度も何度も。
    それを思えば、帰ってから一度もしていないのは確かに、異常事態と思ってしまったのも無理はない……かもしれない。
    「あなた、前に……一人で処理していたって、言っていたじゃない……?」
    星南さんは俺の左手の指輪を、くりくりと弄りながら目を逸らしている。
    時折、驚くほど大胆なのに。直接それを口にすることは恥ずかしくて、こうして言葉を選びながら頬を染めるのは、彼女の面白くて可愛らしいところで。
    たまらず頭を撫でてしまうくらいには、俺はその姿が大好きだった。

    もう、と不満を漏らしながら、彼女は俺に撫でられることを受け入れると。
    じい、と俺の目を見て、言葉を続ける。
    「私は別に、毎日ではなくても大丈夫だけれど……あなたは、我慢できないのでしょう?」
    だから、ここ数日も?と、段々と尻すぼみになる声で言った。
    普段の凛とした姿からは想像もつかないほどに弱々しくて、乙女のようで。今なお女学生のようなあどけなさも覗かせて、魔性の魅力を放っている。
    こんな姿、自分にしか見せないとは思うけれど。もしどこかでこんな星南さんが露呈してしまったら、きっと良からぬ者達が星南さんに群がってしまうだろう。
    彼女と肉体的な繋がりを得てからは、どうもそういった不安が押し寄せるようになってしまっていた。

    それはともかく、どう答えたものか、と悩んでしまう。これはもう、観念して答えるしかないのか。
    「…………まぁ…………昨日は、しましたね…………」
    隠すようなことでは無いから正直に答えるつもりだけれど、言葉を選ぶほどの語彙も無く。
    端的に答えることにしたが、これがことのほか、恥ずかしい開示だった。

  • 27◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:12:12

    肺から絞り出すように言葉にした。なぜ俺は、直近の自慰を恋人に報告しているのだろうか。
    俺の答えに、彼女は曇った表情を隠せない。初めて彼女に"そういう事情"を告白したときは、かなり動揺していたのを覚えている。
    やはり彼女としては、そういったことはみっともないというか、良い印象が無いのだろうか。

    そう、と顔を伏せたまま呟いた彼女は、俺の手をぎゅっと握りしめた。
    「……誰を、想像して……その、したの?」
    怒りとも悲しみとも取れない声色は、少しだけ震えていて。どことなく、悔しさというか、そういった感覚が伝わってくる。
    誰をと言われると、当然、星南さんなのだけれど。そもそも十王家にそのような物品を持ち込むような倫理観は持ち合わせていない。

    そこまで考えて、思い出した。旅行の最初に俺の実家へ行った時のことだ。
    当時のまま残されていた俺の部屋を探索していた星南さんは、俺が引越し前に全て処分していたと思っていた中高生の頃の物品を見つけてしまったのだ。
    よりにもよって、研究のために買い込んでいたアイドル関係書籍の奥に隠してしまっていたものだから、それはそれは恐ろしい形相で詰め寄られた。
    "ずいぶんよこしまな魂胆でプロデューサーを目指したのね?"と、笑っているのに笑っていない彼女の顔は、思い返すだけでも肝が冷える。

    が、もしそのことで、今も俺が妙な物品で性欲を解消していると思ってしまっているのなら、それは違う。
    「こないだ俺の実家で見つけたようなものを仰っているのなら、星南さんと出会ってからは一度も所持したことはありませんよ」
    十王家に持ち込むことが非常識だから、というだけではない。
    プロデューサー科に入ってすぐ星南さんを担当することになったこともあって、最初はアイドルにそんな目を向けてはいけないと、自慰行為自体を封印しようとしていたのは事実だ。
    しかし星南さんとの関係が深まるにつれ、彼女との物理的な距離が近寄るにつれ、徐々に我慢も難しくなって。
    星南さんが卒業する頃にはもう、星南さん以外にそんな欲求も湧かなくなっていた。
    交際に至ってからは、言わずもがなだ。彼女に欲求をぶつけたいという欲望だけが占めていたから、余計な情報なんていらなかった。

  • 28◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:12:32

    星南さんは、そうなの? と、ホッとしたような、疑っているような上目遣いで俺を見ている。
    もう、本当はそれだけで抱きしめたいほどに可愛い。話の流れさえ気にしなければ、という条件付きだけれど。
    もじもじと、可愛らしく指先を動かしては、ちらちらと目を逸らす。
    安心してくれただろうか。まだ疑っているのなら、どんなことを伝えれば安心してくれるだろうか。
    そんなことを考えながら、彼女の答えを待っていると。
    「じゃあ、私の写真とか、動画とか、使っているということ……?」
    一度気になったことに、この程度の回答で彼女が満足するはずもなく。
    恥ずかしい開示がまだまだ続くことを理解して、俺は遠くを見つめた。


    ―――

  • 29◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:13:10

    顔が熱い。
    また、先輩に変なこと、暴露させてしまった。
    彼が一人で、自分以外の誰かでえっちなことを想像して処理しているのかと思ったから、モヤモヤしてしまって。
    モヤモヤを抱えたままではいられないから、せめてハッキリさせておこうと思ったのだけれど。
    それが、こんなことになってしまうとは、考えが及んでいなかった。

    彼が私をプロデュースし始めて間もなくは、一人ですることも我慢していて。
    次第に、私が無自覚に行っていたスキンシップや、不意に触れてしまった瞬間のことなんかを、思い出したりして。
    体のラインは確かに出ているけれど、私のレッスン着姿を思い出したりして、我慢できなくなっていった……らしい。
    挙げ句は匂いだとか、そんなことまで言い出して。そんなの、いやらしいことことばかり考えすぎではないかしら。
    ……なんて、思いながらも、どこか自分の心は満足していることにも気付いている。

    昔はそういう、誰かにいやらしい目で見られるというのは、よく分からないし嫌だったけれど。
    彼に、そういう目を向けられていることを告げられてからは、ずっと思うようになっていた。
    彼が夢中になってくれるなら、私の体でもなんでも、いくらでも見てくれて良い、って。
    私のあらゆるものに夢中になって、ずっと釘付けになっていて欲しい。それはきっと、彼が私だけのモノだという、一つの証拠だから。
    だから、彼にそんな目で見られることは、心の底では嬉しくってたまらない。

    でも、呑気に喜んでいる場合じゃない。
    だって今日、たくさんキスしたし、彼はきっと……。
    「もしかして、今日……私が部屋に戻ったら……一人で、するの?」
    仏頂面の奥で、心の中では とんでもなくえっちな彼は、今日は絶対に我慢できないはずだから。
    このまま放っておいたら、きっと一人でどうにかして、どこかに捨ててしまうかも知れない。
    その証拠に、ほら。さっきからあなた、目を逸らして何も言わないじゃない。

    どう見ても暗黙の肯定をしている彼の服の袖を、ぎゅっと掴む。
    どうして彼に一人でして欲しくないのだろう、と。まだハッキリと答えは出ないのに。
    徐々に強まるモヤモヤを払拭するように、彼に感情をぶつけてしまう。
    「あ、あのっ……ダメ、よ……一人でなんて……」

  • 30◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:13:48

    こんなこと、言っていて情けなくなってくる。
    彼だってきっと、私に四六時中そういう欲求をぶつけることが私の負担だからって、考えてくれているのかも知れないのに。
    束縛しているみたいな我が儘ばかり、本当にみっともない。
    でも、だって。それがどうしても、私にとっては。
    「……それ……とっても、寂しくて……」
    せっかく、あなたと想いを向けあっていて、あなたの特別な欲求が私にだけ向いているのに。
    せっかく、あなたと繋がって、あなたのあらゆる欲望を受け止めてあげられるようになったのに。
    それが、"私自身ではないどこか"へ向けられて、消化されてしまう。それが、寂しくってたまらない。

    私がそう言うと、彼は少しだけ困った顔をした。
    分かっている、私だって。こんなことはただの我が儘だということくらい。
    「…………なるほど、星南さんを想ってでもダメですか」
    顎に指を添えて、珍しく悩むような素振りで、言葉を絞り出していく。
    それでも、私は嫌。私があなたの恋人で、婚約者なのだから。目の前の私だけを見て欲しい。
    私の体を見て、触れて、私だけにぶつけて欲しい。あなたの記憶にいるだけの、"私みたいな誰か"になんて、向けないで欲しい。

    そんな私の我が儘を、押し付けるように彼に伝えると。しばらく悩んだあと、わかりました、と一言告げた。
    「もともと毎日するようなことでもありませんから、大丈夫ですよ」
    悩んでいた様子の後とは思えないくらい普通の顔で、彼は肯定してくれた。
    穏やかな顔をしているが、本当だろうか? 本音では、こんな束縛女だったのかと落胆されていないだろうか?
    これが原因で、明日から彼がよそよそしくなったり、しないだろうか?
    「あの、ごめんなさい、こんな我儘ばかり」
    せっかく彼が肯定してくれたのに、私はちっとも安心できなくて。嬉しいのに、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
    彼の服も、私が握りしめているせいでしわくちゃになってしまっていて。
    どうしてこんなに、彼にモヤモヤをぶつけてしまっているのか、まったく分からない。

  • 31◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:14:24

    「ぜんぜん問題ありませんとも。 こういうことはむしろ、正直に打ち明けあっていきましょう」
    そう言って私の頭を優しく撫でてくれる彼が、とっても優しくて温かくて。こんなことで涙が零れそうになる。
    どうして?どうしてこんなに情緒が不安定なんだろう。でも、優しい彼はとっても好き。
    「ありがとう、先輩……その、ごめんなさい」
    彼の胸元に顔を埋めるように、ぐりぐりと押し付けながらしがみつく。
    ぽんぽんと背中を叩いてくれる彼に甘えて、私はどんどん、彼の深みへとはまっていって。
    優しさに溺れていく感覚に酔いしれてしまっていた。

    でも、これじゃ私と先輩がフェアじゃない。先輩ばかり我慢して、私は我が儘を言っただけ。
    「……あの、ね? もしあなたが、どうしても我慢できないっていうのなら、ね?」
    彼の胸に抱かれたまま、恥ずかしいから顔を見ないようにして、私にできるせめてもの提案をする。
    彼がただ我慢するようなことにはならないように、精一杯の提案。
    「あなたがしたいときに、いつでも私の部屋に来て、いいから」
    少しくらい一方的でも、私は、受け入れてみせるから。
    だから、私の我が儘、許してちょうだい?

    こっそりと、先輩の顔を見上げる。
    とびきり難しい顔をして、はにかむのを堪らえようとしているようにも見える。
    大丈夫かしら、お返しになっている? そんなの要らないなんて言われたら、きっと立ち直れない。
    勝手に不安になって、彼に黙ってしがみついていると、彼はようやく重い口を開いた。
    「…………はい、ありがとうございます」

    感情は読みにくいけれど、嫌そうではなくて。良かった、受け入れて貰えたと、喜んで顔を上げると。
    「では星南さん、もう時間も遅いですから……」
    彼が、そんなことを言ってこの場を終わらせようとするものだから。
    だめ!と叫んだ私は、慌てて彼の体をぎゅっと抱きしめ直して、離すまいとした。

  • 32◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:14:48

    「あなた、今日は一人でする気だったのでしょう? それなら……」
    気がつけば、なんだか少し私も……その、"したくなって"いる。
    おかしい、きっとあなたのせいよ。あなたがずっと、自分で性欲を発散する方法なんて教えてくるから。
    あなたがずっと、私の体をどう見ていたかなんて、赤裸々に語るから。私は誘惑されてしまったに違いない。
    彼の首に抱きついたまま、むすっとしてしまう。今日、やけに私が我が儘なのも、いやらしい気分になってしまっているのも、全部あなたが悪いのよ。
    そんなこと言うのは情けないから、絶対に言わないけれど。

    でも、流石に今日はもう、深夜の0時を回っているから。今から最後まですると、明日に響いてしまう。
    「その、今から最後までするのは、難しいから」
    私だって色々したいけれど、それはもう我慢しないといけない日だと思うから。
    せめてあなただけでも気持ち良くなって、今日はそれで終わりにしよう。
    私は、先輩とは違って、きちんと我慢ができるのだもの。
    「今日は、口だけで我慢、してくれる?」


    ―――

  • 33◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:15:37

    朝。私の部屋。
    朝陽に照らされて、目が覚める。目覚まし時計より少しだけ早く起きる、いつもの朝。
    違いといえば、ベッドできちんと寝たのにも関わらず、体が軋むくらい痛いこと。
    まるで寝る直前に激しい運動をしたような、そんな痛みが体中にあること。
    それに、ふらふらして、頭がぼーっとする。

    私は、いつも想定が甘い。大抵はもう後の祭りで、そんなこと思い出しても遅いのだけれど。
    結局、口でするだけで彼が満足するなんて、そんな甘いことがある筈なくて。
    彼さえ満足させれば、私は一日くらい我慢できるなんて、あの悶々とした状態で出来るわけがなくて。
    そんなえっちなこと、始めてしまったら、当然そのまま彼も私もスイッチが入るに決まっていて。
    組み伏せられて、組み伏せて、夜遅くまで彼と繋がっていてしまった。

    乱れたルームウェアを、とりあえず整えながら、昨晩を思い出してしまう。
    顔が熱くなるとともに、呆れて溜め息がでた。呆れたのは、彼にも自分にも、だ。
    どのくらい声が響くのかも分からないからと、必死に声を押し殺していたのに。それを面白がった彼は、私の体を執拗に弄くり回して。
    繋がったまま、耳元であんな、卑猥なことを言うなんて……本当に変態なのかしら、彼。
    まぁ、それでむきになって、はしたなく彼に馬乗りになった私も、文句を言える立場では無いのだけれど。

    おかげで膝が笑って、腰に力も入らなくなってしまって。彼の肩を借りて、こっそり自室に戻ってくることだけは出来た。
    シャワーを浴びる余力もなくて、朝浴びようと何もかも諦めて、そのまま寝てしまったのだ。
    昨日、強く抱かれ過ぎたのか、下腹部も何だか痛いというか重い。それに、汚れたままの下着も気になる――。

    違う、ちょっとまって。昨日のじゃない。
    そんなにずっと、べたべたになっているのはおかしい。
    「あっ……うそ」
    久しぶりにやってしまった感覚に、私は慌てて布団を上げた。
    案の定、そこには赤黒い染みができてしまっていて。
    想定外で何もつけていなかった下着とルームウェアも、完全に汚してしまっていた。

  • 34◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:16:13

    どうして? 少し早い。予定ではもう少し先だし、普段よりは出血も少ない気もするし、かといってもう色々と手遅れだし。
    ものすごく、何もかも面倒な気分になっていくのが分かる。もうこうなってしまったら諦めるほかない。
    いつもの子に伝えて、あれもこれも洗濯してもらわないと……ほんと申し訳ないわね。
    そんなことを考えて、はぁ、とまた溜め息が漏れた。

    もしかすると昨日のモヤモヤと情緒不安定は、それが原因だったのかも知れない。
    やけに悶々としていたのも、彼との行為を自分自身で我慢できなくなったのも、生理の前だったから?

    不意に、あっ、と声が漏れた。そうだ、旅行中に飲んだ薬。
    出血したら、避妊は出来たということだと言われていた。タイミング的には、普段と同じ時に出血するでしょうと言われたけれど。
    昨日だけでなく連日、体をずいぶん刺激してしまったから……ホルモンバランスも何も乱れて、早まったのかも知れない。
    自制心の無さが招いた想定外の連鎖反応を思って、あまりの自業自得に頭を抱えてしまう。

    彼を責めるのはお門違い……いや、もうどうして早くなったかなんて、この際どうだって良い。
    あれだけ偉そうに、したくなったら来て、なんて言っておいて。
    翌日にこれでは、来られたって何もしてあげられないことに、ようやく気がついたのも情けなさに拍車をかけている。

    彼になんと伝えよう、とか。ちゃんと避妊ができたことの報告を早めにしたほうが良いのかな、とか。
    とりあえず、今日を無事に過ごして。
    夜になってから、ちゃんと伝えよう。

    あれもこれも頭を悩ませるままに、ひとまず、この滅茶苦茶な状況を早く片付けることにして。
    カーペットに色々と落とさないように気をつけながら、私は大きめのガウンを羽織って、シャワーへと向かった。


    ―――

  • 35◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:16:52

    夜。
    俺は星南さんに招かれて、彼女の部屋を訪れていた。
    あいも変わらずソファに二人で、肩を並べて沈み込んでいる。

    普段と違う"そういう日"用の恰好をしている星南さんは、今日一日ずっとそうだったように、気だるげだ。
    しかし、少し早い気がする。もしかすると、薬の影響でタイミングがズレてしまったのかもしれない。
    「どうぞ、ハーブティーが入りましたよ」
    少しでもリラックスできるようにと、ローテーブルで温かいハーブティーを彼女のカップに注いだ。
    目の前で注がれて、湯気を立てるハーブティーを、彼女はゆっくりと持ち上げた。
    「ありがとう、相変わらず気が利くわね」

    そう言って微笑んだ彼女は、少しだけ儚げで。外では見せなかったけれど、貧血と疲労でふらふらだった。
    「はぁ……それに引き換え、私ときたら……」
    憂鬱そうに、そうこぼす彼女は、ハーブティーを一口飲んでテーブルへと戻した。
    俺の肩に頭を乗せて、腕を撫で回すように触れているのが、なんとも弱々しく映る。

    プロデューサーをしていたこともあり、彼女の月経については当然把握していたものの、ここまでぐったりしているのは珍しい。
    アイドルとプロデューサーというビジネスの関係上、今まであまりそういう面は見せないようにしていたのかも知れないけれど。
    とはいえ普段とは色々と事情が異なる今回のパターンにおいては、体の調子も何かと違うのだろう。
    知識では理解しているものの、やはり自分では経験することが出来ない以上、軽率な言葉をかけるのはいけない。
    そう思い、彼女の頭をゆっくりと誘導し、俺の太ももに寝転ばせた。

    膝枕の姿勢になって、彼女は抵抗するでもなく、収まりのいい場所を探すようにもぞもぞと動いた。
    腰をさすって額に手を当てると、彼女は少しだけ落ち着いたように、溜め息を吐いた。
    「痛みますか?」
    そう言って、ただ彼女の体をひたすらに労り続ける。今できることといえば、それくらいだろうから。
    さすったところで、物理的な痛みには大した効果がないかも知れないけれど。ほんの少し穏やかな顔をしている彼女を見れば、やらないという選択肢は無い。
    「ありがとう、少しだけね。 けれど、貧血みたいで……」
    そう言っている彼女の顔色は、確かに少し青白い。

  • 36◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:17:15

    どうしたものかと途方に暮れそうになるけれど、ただゆったりと頭を撫で、腰やお腹を撫で続ける。

    体調を崩している彼女には申し訳ないのだけれど、こういう時間は嫌いではない。
    激しい感情のない、ただ淡々と二人きりの時間が流れていく感覚。
    彼女と繋がっているときの、あの満たされた感覚も素晴らしいけれど、こういう静かな時間も、とても素敵だと思う。
    静かな部屋で二人きり、穏やかな時間を過ごすことが、今の俺と星南さんにとって最上級のデートだ。
    「あなたの手、あったかくて心地良いわ」
    彼女の安心しきった声が聞こえてくる。とても満たされた気持ちになって、自分でも驚くくらいに優しい声が出てしまう。
    あなたが安らげているのなら、それ以上のことなんて無いですよ、と。
    「して欲しいことがあったら、なんでも言って下さいね。 出来ることなら何でもやりますから」

    膝の上で、あちらを向いてしまっていて表情は見えないけれど。俺の膝を撫でる彼女の手つきが穏やかだから、きっと大丈夫だろう。
    ありがとう、と一言だけこぼした彼女は時折、俺の太もものちょうどいい場所を探そうとして、もぞもぞと動いていた。

    彼女と過ごす瞬間、瞬間が、俺という存在を強く肯定してくれる。
    これはきっと"幸せ"だ。
    彼女の拠り所になれているという、俺だけの特権を味わえているのだから。


    ―――

  • 37◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:17:50

    「あの、先輩?」
    眠ってしまったかと思うくらいに静かだった彼女が、俺の顔を見ないままに、ぽつりと漏らした。
    咄嗟に、はい? と答えると、彼女は数秒だけ悩んだような時間を空けて、言葉を続けた。
    「昨日言っていた……その……いつでも、部屋に来ていいって」

    ああ、と声が漏れた。確かに言っていた、有り体に言えば夜這いの許可のようなものを。
    相変わらず、勢いで積極的になっては、とんでもないことを言う人だなとは思ったけれど。
    あなたほどの女性が体を安売りするようなことは……なんて、格好をつけたことも言えず。
    内心の嬉しさに押し切られて、彼女を止めなかったのは俺の責任だ。
    「はい、仰っていましたね」
    それに昨晩、俺の部屋で彼女と致してしまったから。声さえ気をつければ、夜の逢瀬で繋がれそうだと分かったのだし。
    彼女の寝込みを襲いに行くようなことは、あまり考えられない……と、思う。

    「ごめんなさい、言ったそばから こんなで……あなたに、我慢だけさせて……」
    とても申し訳無さそうな声色で、彼女は俺に謝罪した。俺に一人ですることを我慢させたのに、相手が出来なくて、と。
    本当に、まったく気にして貰わなくて大丈夫なのだけれど、いつにも増して不安が湧き上がってきてしまうらしく。
    今日はとにかく弱気な星南さんで、なんとも労しく思ってしまって、ひたすらに彼女の体をさすっている。
    「本当に大丈夫ですから。 あなたに負担をかけてまで解消したいとは思いませんよ」

    俺の言葉を聞いた星南さんは、がばっと体を回して、俺を見上げる姿勢になった。
    十数分ぶりに見た彼女の顔は、もともと白い肌なのに、さらに血の気を失っていて。少し怖いくらいに透き通っている。
    さらさらと美しい金髪を振りまく姿は、まるで彼女が金糸の繭から生まれ出たような錯覚に陥りそうだ。
    「本当?本当に本当? 他の娘に目移りしてしまわない?」

  • 38◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:18:13

    彼女の言葉に、ほんの少しだけ驚いてしまう。目移り?俺が?
    あなたより素敵な女性なんて、この世に存在しないというのに。
    たかだが自慰が出来ないくらいで、俺が他の女性に心惹かれてしまうと。
    思わず、少し吹き出してしまう。ありえない、という気持ちと、そんなことを心配する彼女の可愛らしさに。
    「絶対にしませんとも」
    安心して下さい、と、出来る限り力強く、彼女を安心させるように伝える。
    浮気も目移りも、絶対にありえない、と。俺のすべてはあなたに捧げたのだから、あなた以外にあらゆる執着を向けはしない、と。

    それを聞いた彼女は、ようやく表情を緩ませて、微笑んだ。
    「なら、よかった」
    美しい表情に、目を奪われる。相変わらず、一つ一つの所作が魅力的で素敵な人だ。
    そんなことで、それほど穏やかな顔で喜んで貰えるのなら。
    あなたが今日を幸せに終わらせられるように、もう少しお手伝いをしましょうか。

    そして俺は、寝転ぶ星南さんを、そのまま抱きかかえて。
    お姫様抱っこで、ベッドまで運んで差し上げることにした。


    ―――

  • 39◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:18:35

    「さあ、これで眠ってしまっても大丈夫ですね」
    そう言って、彼は私をベッドに下ろした。真っ白なシーツにふわりと包まれて、ひんやりとした感触が気持ちいい。
    いきなりお姫様抱っこをされて、驚いて……一瞬、身を縮めてしまったけれど。
    こんな王子様気取りのことをして、本当に格好をつけるのが好きな人ね?
    驚かされた腹いせに、彼の首に手を回した。逃さないように、どきどきの仕返しをするために。
    「もう、あなたに悪戯されるのかと思ってしまったじゃない」

    頬を膨らませて、怒ったふりをする。子どもみたいなからかい方で、少しだけ恥ずかしいけれど。
    彼と二人きりなら、どんな甘えたことだって出来る気がする。
    どんなことをしたって、彼はいつも私が望むことをしてくれて。私が望む彼のすべてを、私に注いでくれる。
    それが、たまらなく幸せ。
    私に相応しくないからと、普段は絶対に表には出さない、背徳感と優越感。
    そのどちらも、彼がこれでもかと満たしてくれるの。

    私の、わざとらしい様子を見た彼が、ふふっと笑った。もう、そんな可愛い笑顔、他の娘に見せてはダメよ?
    あなたは自分が思っているよりもずっと、格好よくて……素敵な人なのだから。
    あなたが微笑みかけるだけで、トップアイドルだって魅了してみせてしまうのだから。
    そんな顔、私にだけ見せて?

    彼の首に回した手を外して、彼の頬を指で伝うように撫でる。私だけのものだと、彼に何度も忠告するように。
    そんなことを考えているうちに、膨らませた頬はとっくにしぼんでいて。
    彼の笑顔に見とれて緩んだ顔のまま、ぽーっとしながら彼の顔を眺めていた。
    「しませんよ、あなたの体が一番大切ですから」
    私のためにだけ出してくれる、甘い声でそんなことを言いながら。彼は、私の頭を優しく撫でてくれる。
    ああ、またそうやって、私を甘やかして。
    そんなことをされてしまったら、私。もっと、あなたに甘えたくなってしまう。

  • 40◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:18:52

    「……ねえ、キス、待ち遠しい」
    彼の唇を、指先でちょんちょんと突っついた。
    さっきからずっと私の唇を狙っているこの子は、あなたみたいに我慢ができない子でしょう?
    だから、いいのよ、って。唇を少しだけ尖らせて、誘ってあげる。
    そうすると彼は、笑顔の奥に少しのいやらしさと、ほんの少しの黒い気持ちを浮かばせて。
    待ち遠しかったのは、あなただけじゃないです、なんて言いながら。
    私の唇に、抱きつくように飛びついてきた。

    彼の唇の柔らかさが、記憶から現実のものに置き換わっていく。
    どれだけ鮮明に覚えていても、この瞬間、この時間に感じる柔らかでしっとりとした感触には代えられない。
    「んっ……ちゅ……」
    最近覚えた、えっちなキスとは違う。あれはとってもえっちで、体がいやらしい気持ちになって、止められなくなってしまうから。
    今日は、それはだめ。その代わりと言ってはなんだけれど。
    まるであなたと、裸で抱き合っているような。そんな安らぎを、このキスで共有したい。

    そうして私は、覆いかぶさるように私のベッドにやってきた彼を迎え入れて。
    気だるい体のことなんて忘れさせてもらうために、彼と一つになっていった。


    ―――

  • 41◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:19:08

    どのくらい、経っただろうか。
    もう、意識がぽやぽやとしていて、色々と気付かないうちに、先輩の腕に抱かれている。
    キス、もうできないかな。目の前には、先輩の胸元しか見えないし。
    「きょう、いっしょにねるの?」
    かろうじて出せる、ふわふわとした言葉で、彼に声を掛けた。
    そうすると、ほら。彼は私の頭を、優しく撫でながら、穏やかな声で私を包んでくれる。
    ぜひ一緒に寝ましょう、なんて、きっと得意のすまし顔で言っているのかしらね。
    「でも……よごして、しまうかも……」
    ちゃんとつけてるから、大丈夫だと思うけれど。ときどき、あふれちゃうの、大丈夫かしら。

    聞きながらも、もういつでも寝てしまえそうなくらい、ほわほわの頭で。
    洗濯すれば良いだけです、なんて答えた彼の声を聞いて、安心した。
    優しいな、やっぱり。今帰っちゃったら、私、とっても寂しい思いをしてしまうもの。

    彼の服を、ぎゅっと掴んだ。いい夢が見れますように、って、思いながら。
    彼の腕が、私の体をぐっと抱き込むのを、体温で感じた私は、ゆっくりと目を閉じる。

    朝目覚めたら、きっと目の前にあなたがいるって、本当に素敵。
    あの日からずっと、ずっとずっとそれが好きなの。
    だから、ね。明日も、私のそばに居てね、プロデューサー。

  • 42◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:21:08

    ↑↑↑以上↑↑↑

    刺激しすぎて早く来ちゃったからできない日になっちゃった星南さんと学Pのお話でした。

    ちょっとぽやぽやして弱った星南ちゃんです。学P大事にしろよ。


    レス形式で読みにくい方は渋でもぜひ!

    [R-18] #15 結婚予定の星南さんと学Pの初体験の翌日の話 | 星南さんと学Pのお砂糖話 - ごはんですの小説シ - pixiv15話目です。初エッチ後の、今までとは微妙に変わった空気感に困惑する学Pのお話でした。

    R-18になるかは当初不明でしたが、R-18になりました。酔った星南さんには勝てなかったよ……。

    我慢する必要がなくなったけど、かといって何でもして良いわけではない。そういうお互いの距離のはかり合いみたいなのって学Pちょっと苦手そうですが、頑張ってほしいです。

    まぁ、酔った星南さんには勝てないけど……。
    www.pixiv.net
    #16 結婚予定の星南さんと学Pができない日の話 | 星南さんと学Pのお砂糖話 - ごはんですの小説シリ - pixiv「あなた、ここ数日はどうしていたの?」 夜、俺の部屋。旅行から帰宅して数日。 すぐ隣に佇む美しい婚約者が突然、そんなことを口走った。 肩に頭を預けながら、俺の左手の指輪を弄んでいた彼女の突然の言葉に、呆気に取られてしまう。 本当に、何となく気がついたような、深刻そうではない声色だ...www.pixiv.net
  • 43◆0CQ58f2SFMUP25/05/15(木) 23:23:39

    次話からはしこしこ書きつつ投下していきます!
    テーマは「結婚予定の星南さんと学Pが事務所でイチャイチャして怒られる話」でいこうと思います。

  • 44二次元好きの匿名さん25/05/15(木) 23:31:33

    良い良い良い良い

  • 45◆0CQ58f2SFMUP25/05/16(金) 00:46:28

    「ダイヤ、一個だけなんですね」
    会議机を挟んだあたしの前で、資料をまとめていた星南先輩の左手を見て、声をかけた。
    ぴたりと手が止まり、ちょっと呆気にとられた顔であたしを見つめてくる星南先輩は、あたしのプロデューサーだ。

    じわじわと笑みがこぼれてくる星南先輩は、めちゃくちゃ可愛い。
    もうアイドルじゃないなんて、ホントに信じられないけど。今でも変わらない、あたしのスターだ。
    星南先輩は、まとめていた資料なんて脇にどけて、にこにこしながら左手の指輪を触り始めている。
    「たくさんあるのも、とっても素敵だと思うけれど、ね」
    星南先輩の、めっちゃキレイな婚約指輪。調べるのもこえーから知んないけど、たぶんめっちゃすごいやつ。
    婚約相手は、自分の元プロデューサーだってんだから、ホント好き勝手やってるよ、この人。

    「これはね、あの人が、一番星じゃなくなった私の代わりに、って」
    そう言いながら、星南先輩は一粒だけのダイヤを、何度も何度も大事そうに指先で撫でて。
    「私たちの道を照らしてくれる、新しい星なんですって」
    うっとりしながら、そんな甘ったるいこと言うもんだから、あたしが小っ恥ずかしくなって困る。
    ほんと、プロデューサーってのも良いご身分だよね。あたしのスターを独り占めしようなんてサ。

    今年は星南先輩の引退ライブツアーがあったから、けっこうプロデューサーさんに対応してもらうことが多くて。
    この秋から、久しぶりにがっつり星南先輩に見てもらえるようになって、それはめっちゃ嬉しいんだけど。
    引退後の慰安旅行から帰ってきたと思えば、ずーっとプロデューサーさんを目で追って、追いかけ回して。
    一人の時は、ずーっと指輪を見てはうっとりして。ときどき唇をちょろっと触ってうっとりして。
    ライブの後、控室に入ったらめちゃくちゃ熱いキスしてたときも腰抜かしそうになったけど。
    あれからひと月もしないうちに、またまた距離感縮んじゃってるじゃん、ほんとご馳走様です。

    「新しい星かぁ、なかなかキメてきますねぇ……」
    肘をついて、ちょっとだけ呆れた感じを出しておく。羨ましいと思われたら、制御不能な惚気が始まっちゃうから。
    でも、そういう気障なセリフを言っちゃうところが、星南先輩にはお似合いな人だなと思う。

  • 46二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 07:20:27

    保守

  • 47◆0CQ58f2SFMUP25/05/16(金) 11:20:26

    ―――


    「――でね、独占欲の強い人だから、みんなが入ってくるって言ってもキスを止めなかったの」
    これで計10回目くらい、プロポーズの一連の流れを聞き終わった。聞いた話だけで再現ドラマくらいは撮れそうだ。
    そんなことよりあたしは、星南先輩に聞いておきたいことがあった。

    そういえばぁ、と言いながらテーブルに前のめりになると、星南先輩はちょっとだけあたしを警戒して身を引いた。
    いけないいけない、婚約前にプロデューサーさんにくっついたりしてからかったの、けっこう根に持ってるな。
    まぁでも構わないや、だってあたし、星南先輩が恥ずかしがったりヤキモチ焼いてるの、めっちゃ可愛くて好きだし♪
    「あたしが教えといたカップル遊び、どれくらいやれたんです?」

    そう言うと、星南先輩は顔を真っ赤にした。思い出しただけで? そんなえっちなやつは教えてないんだけど?
    「あれは、その……ちゃんと全部したわ」
    横髪で口元を隠しながら、明後日の方を見て星南先輩は言った。
    「どれが一番好きな感じでした〜?」
    色々教えたけど、キホンは二人で甘酸っぱい感じになるやつとキスとかしちゃうやつだ。
    ポッキーゲームに愛してるゲームとかベタなやつ。あたしもしたことないけど、SNSでバカップルがやってるの見たし、丁度いいかナ〜って感じで教えた。
    「ポッキーゲームは……だめよ、普段の彼なら抑えが効かなくなってしまうわ」
    そう言って、星南先輩は指先で唇をそっと触った。
    ああもう、そんなんされたらあの日見たキスシーンをガッツリ思い出しちゃうじゃんか!

    「へ、ヘェ~っ。 あのプロデューサーさんが、そんなケダモノみたいになるんですネっ」
    動揺して、ついワケわかんない返事をしてしまう。
    あたしの言葉を聞いた星南先輩は、それがね、なんて言いつつまた目を逸らした。
    ますい、と思った時にはもう遅い。
    これはたぶんヤブヘビで、どんな顔で聞きゃ良いのか分からないエピソードを聞かされてしまう。

  • 48◆0CQ58f2SFMUP25/05/16(金) 13:57:02

    あたしの動揺に気づいていない星南先輩は、左手の指輪のダイヤをくりくりと弄りながら話し始めた。
    「旅館で彼にね、お仕置きで、えっちなことしちゃ駄目って言っていたのよ」
    「お仕置き!?」
    想定通りに想定外の言葉が飛び出してきて、反射で聞き返してしまう。
    なんだよお仕置きって、もうそんなヤバいプレイしてんの?あたしの星南先輩に何してんのプロデューサーさん?
    「お仕置きっていうのはね、彼が温泉で私のお尻を急に触ってきたから、その日一日はえっちなことしては駄目ということにしたの」
    ぷんすか、みたいな可愛い顔してワケわかんないこと言ってる星南先輩に内心おののく。
    マジで何してんだよプロデューサーさん!アホらしさで想像越えてくんじゃねーよ!
    過去最速で目がぐるぐるしてくるのが分かる。今まではどんだけ掘り下げてもキスまでしかなかったけど。
    旅行で、おそらく本当に"した"星南先輩からは、どんな話が飛び出すか予想がつかない!

    「へ、ヘェ~っ! プロデューサーさんも、男の人なんすね〜!」
    精一杯の、当たり障りのない返事をする。出来るだけ話を広げないように、核心だけ話させて終わらせられるように。
    「本当よ、彼ったら温泉でも私の胸ばかり触って。あれって楽しいのかしら」
    でも、そんな甘い目論見は瞬時に破壊された。ダメだこれ、そーとー爛れた旅行だったんだわ。
    勇気が出なくて、とか言ってせいぜい最後の日にバタバタしながら、みたいな勝手なイメージしてたけど、絶対違うわ。
    この二人、毎日してるわ、絶対。

    そう、それで、なんて気を取り直したように説明を再開する星南先輩に参りながらも、幸せそうな顔を見て安心する。
    星南先輩、アイドル辞めるの、ホントはぜったい辛かっただろうし。
    そりゃあ、夢より大事な人ができちゃったなら仕方ないとは思うけど、それでも星南先輩にとってアイドルは人生だっただろうし。
    もし旅行から帰ってきて、ちょっとでも星南先輩が落ち込んだ顔してたら、プロデューサーさんのことぶっ飛ばしてやらないとって思ってた。
    「あまり誘惑しては可哀想だと思って、その日は体も痛かったし、旅館で出来る遊びを満喫したのだけれど――」
    でも、大丈夫そう。めっちゃ幸せじゃん、可愛い。
    ニヤけそうになるから、肘ついて興味ねーみたいな顔して聞いてるけど、ほんとによかった。

  • 49◆0CQ58f2SFMUP25/05/16(金) 15:50:09

    「そんな状態だったから、ポッキーゲームでキスをしたときの彼ときたら……優しいキスなのに、私の肩を掴む手が強くって」
    ただ、本当によかったんだけど、人がいい感じの話に頭を整理しようとしてるのにエピソードはどんどん深みにハマっていく。
    へ、ヘェ~、なんてさっきから同じ相槌を打ちまくっているのに、星南先輩は全然気にしないで話を続けていて。
    もじもじして可愛いし、照れ照れして可愛いのに、エピソードはバカップルのイチャイチャ体験談で砂糖を吐きそうになる。
    「まぁ、でも。 彼はそういう時、絶対に約束を守ってくれるって信頼していたから」
    だからそのまましばらくキスしていた、と言ってのける星南先輩は相変わらずだ。
    相変わらず、プロデューサーさんを誘って煽って、ほんとは後でやり返されたいんじゃねーの?
    段々と、ついている肘も力が抜けてきて、半分頭を抱えるような姿勢になってしまう。
    どーすんだ、聞いていいのかな、これ。
    次あの人に会ったら、ふつーに会話できんのかな、あたし。

    「それで、その時は彼を信じてたくさんキスをしたのだけれど」
    そう言った星南先輩は、ちょっとだけ表情が曇った。どうしたんだろう、つられてあたしもちょっと不安になる。
    プロデューサーさん怒っちゃったんじゃね? いや、あの人が怒るとこあんま想像つかないか。
    「その、結局夜には、彼が我慢できなくなってしまって」
    そこまで言った星南先輩は、黙りこくってしまって。
    まさか、約束破って無理やり?と聞くと、星南先輩はうつむいて、目を逸らした。
    なんだそれ、本当だったらマジで許せん。
    もしそうならと、怒りがめらめら燃え始めた。アホらしい話でもあたしのスターを傷つけたら許さない。
    そんな義憤を燃やしたあたしの耳に飛び込んできたのは。
    「私が、お酒を飲み過ぎて……」
    あたしの怒りなんて燃やすだけ損した気になるくらい。
    「約束のことを忘れて、自分から誘ってしまったの……」
    考えうる中で、いちばんアホらしい顛末だった。


    ―――

  • 50◆0CQ58f2SFMUP25/05/16(金) 22:36:33

    糖尿病になりそうな話を聞き終わったのは、それから三十分くらい後だった。
    星南先輩は、ぐったりしたあたしを知ってか知らずか、いつもの自信満々な顔をしている。
    「ともあれ、あらゆる実体験を得た私は、名実ともにことねの人生の先輩ね!」
    胸に手を当てて、人生設計すらプロデュースしてみせるわ、なんて声高に叫ぶ星南先輩を見て溜め息が漏れてしまう。
    「んじゃ、あたしも星南先輩のプロデューサーみたいなステキな彼氏ほしーですケド、どうしたらいいですかぁ?」
    こんだけノロケられたら、あたしだってそんな彼氏が欲しくなる。
    あたしの言葉に、なっ、と言って絶句した星南先輩は、めちゃくちゃ目が泳ぎ始めた。

    「ことねはまだアイドルだから……あ、でも私もそうだったわね……けれど、彼は私のプロデューサーだったから……」
    一人でぶつぶつ悩んで、ああでもないこうでもないって言ってる星南先輩が見れてちょっとだけ満足した気になる。
    なんでも真剣に考えてくれるのは好きなんだけど、からかっただけって何で気づかないんだろ?
    「ことねに恋人だなんて、そんなの私が許さないわ……いえ、私と先輩の二人で面接して、私たちが認めた人でないと」
    だんだん話が不穏な方向に進んでいくのが分かって、呆れながら机越しに星南先輩の目の前で手を振った。
    なんであたしの彼氏があんたたちの面接突破しないといけないんだよ!親か!

    あたしが遮るのにも気づかないで、星南先輩は急にハッと顔を上げた。
    「ことね、悪いけれど……あなたに先輩は渡せないわ」
    きりっ、とした顔であたしを見つめる。まるで目の前に宿命のライバルが居たような、鋭い目つきで。
    「いりませんよ! なんであたしが人の彼氏横取りするよーなヤツになってんですか!」
    机を両手でバンと叩いて反論してしまう。さっきの話からの繋がりが全然見えないのはなんで?
    星南先輩は、机に叩きつけたあたしの手をぎゅっと掴むと、あたしの目の前に顔を近づけてきた。
    「だって、ことね……私の話を聞いて、羨ましくなってしまったのでしょう?」

    がっくし、と肩を落としてしまう。違う、そうじゃない。
    あたしは星南先輩みたいな、めっちゃラブラブなカップルになれるのが羨ましいと思っただけで。
    星南先輩の彼氏そのものを寄越せとは欠片も思ってねーから!

  • 51◆0CQ58f2SFMUP25/05/17(土) 00:55:16

    「ほしいのは星南先輩の彼氏じゃなくて、星南先輩の彼氏さん"みたいなステキな人"なんですケド」
    ひとの恋人狙うワケねーだろ、ってな目線を星南先輩にぶつけながら、ゆっくりと訂正した。
    それで納得するかと思ったら、それはそれでまた考え始めたみたいで。一体今度は何があるって言うんだろう。
    数秒、顎に指を添えて考え込んだかと思うと。改めてあたしの目を見て、星南先輩は淡々と言った。
    「彼ほど素敵な男性は、きっと他にいないわ。 だからそれは結果的に、彼自身を欲しているということなのよ」

    腰を抜かしそうになる謎理論に、これはもう地獄にしか道が通っていないと本能で察して。
    「あ、アハハ~!じゃあ、一旦諦めます!ハイ、この話は無かったことにしましょう!」
    これ以上はきっとヤバいことになる。もともと星南先輩はプロデューサーさんに独占欲全開なのに。
    あたしの返事にひとまず納得したのか、星南先輩は、そう?なんて言いながらいつもの表情に戻った。
    よかった、助かった。もし本気で狙ってると勘違いされたら、あたしはきっと二度と家に帰れなくなる気がするから。

    気が抜けて、椅子にどかっと座り込む。なんだか、どっと疲れた。
    普通の顔で、きりっとして立ってる星南先輩は、こんなにカッコいいのに。もちろんぽんこつなのも可愛いんだけど。
    ほんと、恋愛についてはからっきしだったのにナ。手繋いだとかデートしたとかできゃあきゃあ言ってたのに。
    今となっちゃ、いや元々ホントはそうなんだけど、マジで人生の先輩なんだなぁ。
    めっちゃ美人で、まぁあたしもいい勝負できてるけどさ、可愛くてトップアイドルで。
    彼氏は一流の若手プロデューサーで、アイドルとして立ち直らせてくれた恩人で?
    毎日毎日、イチャイチャイチャイチャ、あっちでラブラブ、こっちでちゅっちゅ。
    考えただけで羨ましくてちょっとむかつく。
    むかつくし。これからのこと、考えたら。もしかするとまた、あたしのプロデューサーを離れるかも知れないし。
    それはなんか、聞いとこうかな。

    「……星南先輩、子どもとか、考えてます?」
    不意に、ガチっぽい声が出てしまった。もっと冗談っぽく聞こうと思ってたのに。
    それは、なんて言って、ちょっとだけ考え込んだ星南先輩を見ると、ちょっとだけ胸が苦しい。

  • 52◆0CQ58f2SFMUP25/05/17(土) 00:56:52

    いっつもそうだ、星南先輩の幸せは大歓迎なのに。心の底のどこかで、ずるいって思ってる。
    あたしのほうが、ずっと昔から好きで、憧れだったのに。なんで独り占めしちゃうの?って。

    次に顔を上げた星南先輩は、優しい顔で笑ってた。たぶんあたしの、そういう気持ちはちょっと察してくれたのかも。
    「しばらくは彼と二人きりを楽しみたいわ、子どもはそれからね……そもそも、まだ結婚はしていないのだし」
    あたしを安心させるような、そんな感じの声色なのは分かる。
    そデスか、なんて普通を装って返事をしてみたけど、不安なのバレてたかな。ちょっと申し訳ないな。
    でも、よかった。あたしのスターは、あたしの世界一可愛いプロデューサーちゃんは、まだまだあたしの傍に居てくれる。
    「んじゃ、ちゃんと避妊しないとダメですねぇ?」
    ちょっと重いカンジを誤魔化したくて、咄嗟にからかおうとしてしまう。
    当たり前でしょ、なんて怒られるかな、とか思って星南先輩の顔を見ると、何故か真っ赤になってうつむいていた。

    「……星南先輩?」
    まさか、と思ってじっとりと見つめる。ちょっとまってよ、話変わってくるじゃん。
    「ち、違うのよ! 最初以外はきちんとつけているから!」
    勝手に余計なことを暴露するのはいつになっても変わらない、星南先輩の特技だった。
    なんかさっき安心させるようなこと言ってたけど、ほんとか?ほんとに大丈夫か?
    「…………アフピルって百パーセントじゃないですからね」
    ぎくっ、って音が聞こえてきそうなくらいデカいリアクションをした星南先輩を見て、思わず溜め息が出た。

    溜め息が出て、そんで笑っちゃった。
    重くなってたのが馬鹿みたいじゃん、ほんと。幸せにしてやってよね、あたしのスターをさ。
    そんであたしは、腹くくっとかないとナ~。


    ―――

  • 53二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 07:32:08

    保守

  • 54二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 11:43:11

    ほしゅ

  • 55二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 17:45:46

  • 56◆0CQ58f2SFMUP25/05/17(土) 21:13:40

    ことねとのミーティングも終わって解散になり、今日の業務は一旦おしまい。
    彼と合流して、今日の振り返りをして……そうしたら、一緒に帰れる。
    ここのところずっと、少しだけうきうきした心持ちだ。アイドルの頃とは違い、会社員としての立場にちょっとした面白さを感じる。
    彼と同じように、スーツを着ているのも気合が入る。これが、これからの私の衣装だ、と心から思えるから。

    事務所の、カーペット張りの廊下を歩いていると、色々な人とすれ違う。
    昔から私を知っているベテランプロデューサー、私の先輩アイドルだった方々、うちのプロデューサーに連れられた若手アイドルたち。
    その誰も彼もが、この事務所とアイドルのため、夢を叶えるために働いていて。
    私も、この場所でアイドルを支え、夢へ導くために働けていることを、とても誇らしく思う。

    「……あら」
    そんなことを考えながら歩いていると、向かいの角からよく知る顔が現れた。
    私の、大切な婚約者。私の大好きな人。

    彼も私に気付いたのか、後ろに連れていた新しい担当アイドル達に何かを言って、解散させた。
    私の方をちらりと見ていたアイドル達は、この春に入所したばかりの新人アイドル達だ。
    みんな、いい潜在能力を持っているのが分かる。彼が選んだと聞いていたけれど、流石の見立てと言ったところね。
    でも少しだけ、羨ましいな、と嫉妬してしまう。彼にプロデュースしてもらえるなんて、これ以上無いほどの贅沢なのよ?
    そんなことを告げるほど、みっともない人間ではないけれど……でも、あの娘達はきっと、立派なアイドルになれるわね。
    だって、私だけのトッププロデューサーだった人に、プロデュースしてもらえるのだもの。

  • 57◆0CQ58f2SFMUP25/05/17(土) 21:13:59

    「星南さん、そちらも終わりましたか」
    そう言いながら、彼は早足に私のところで近寄ってきた。その様子が、私に早く会いたかったと言っているみたいで、なんとも愛おしくなる。
    「ええ、迎えまではまだ時間があるけれど……って」
    目の前まで来た彼に話しかけると、なんだか少しだけ違和感があった。
    彼の視線が熱いというか、私を求めているというか。
    ……そう、寂しかったのね? もう、いい大人なのに、困った人。
    そんなことを思いながらも、満更ではない私が居て。少し恥ずかしくて、顔が熱くなる。
    夜になって涼しいけれど、仕事で少し汗ばんでしまった髪をかき上げると、彼はきょろきょろを周りを見渡した。

    不意に、私たちが立っている場所の隣に目をやる。そこには、今は使われていない空き会議室があって。
    おそらく思惑が一致している私と彼は、目を合わせた。
    「……少し、休憩してから帰りましょうか」
    そう言って、彼は私の両肩を優しく掴んだ。やっと捕まえた、そう言いたげに。
    「ここ、事務所よ?」
    口ではそう、言い訳程度に抵抗を示してみるけれど、彼にはそんなことはお見通しで。
    私は彼に肩を抱かれながら、導かれるのを全く抵抗もしないで。
    そそくさと、二人一緒に会議室に入っていった。


    ―――

  • 58◆0CQ58f2SFMUP25/05/17(土) 21:31:26

    壁際に立たされる。あまり広くはない、多くて四人程度の小さな会議室だ。
    けれど、彼にはもっと狭く見えているのかも知れない。だって私、いま壁にぴったり背中をつけるくらいに押し込められているもの。
    空調の効いていない部屋は、秋とはいえ人間二人が密着すると暑さを増してしまって。
    彼と私の首元に、汗が滲むのが分かった。

    彼に追い詰められた私は、けれど何一つ怯えることなく、私の心は彼を受け入れている。
    だってこれは、彼が私に甘えたいだけだもの。他の誰かから見れば、きっと強引な彼に私が困らせられていると思うのでしょうね。
    あんなに寂しい顔をして、私を見つけた途端、ぱあっと目を輝かせて。そんな愛おしい彼のこと、怖がる必要なんてまるでない。
    「お化粧、つかないように気をつけてね」
    私の髪に触れて、ふわふわと頭を撫でている彼に声を掛ける。
    まだ、この時間が終わっても、事務所を二人で歩くのだから。彼のスーツにお化粧がついていたら、変な勘違いをされてしまうものね?

    私の話を聞いているのかいないのか、はい、なんて答えながらも私の首元の髪をよけてくれている彼は、ぽーっとしているみたいで。
    汗ばんだ私に見惚れながら、彼のモノになってしまっている私の体を、いやらしい目で見つめていた。
    「星南さん……」
    彼が、私の名前を呼びながらジャケットをどかせるように手を滑らせて。私の腰を、ブラウス越しに触り始める。
    いやらしいというよりは、渇望のような手つきで。私の体を求めてやまない、彼の欲望をぶつけるように。
    彼の体を求める私を、私の中からおびき出すように。

    くすぐったくて、いやらしくて、体がぴくんと反応して、少しだけ身をよじってしまう。
    「や、あっ……だめ、ここ事務所よ……」
    びりびりと、頭が痺れるような感覚に襲われているから、体はまったく抵抗できなくって。
    言葉だけで、本能に抗うように彼を制止する。
    そんなことでは止まらないことを、心の何処かで期待しながら。

  • 59◆0CQ58f2SFMUP25/05/17(土) 23:33:26

    「抵抗しても、構いませんよ」
    そう言って、彼は首元の開いたブラウスから覗く、私の鎖骨の辺りに顔をぐっと寄せて。
    そこに滲む汗を、ぺろりと舐め取った。
    「ひ、うっ……!」
    体に彼の粘膜が触れる感触が走って、全身を痺れさせる。がくがくと、脚が震えてしまって、高いヒールを履いていなくてよかった。
    こんなときに履いていたら、きっと倒れてしまって……そのまま、この会議室で彼に組み伏せられていたかも知れないもの。
    でも、この刺激では立っているのもやっとで。彼のスーツの袖をぎゅっと掴みながら、倒れまいと必死に堪えた。

    ああ、でも。この感覚、絶対に一線を越えてはいけないという強い意識が、かえって私たちを夢中にさせる感覚。
    これは本当に、私たちを二人だけの世界に連れて行ってくれる、少しだけ危ないものかも知れない。
    「あなたの、男らしい匂い、好きよ……」
    掴んでいた手を離し、彼の胸元に手を触れた。少しだけよれたシャツをくしゃくしゃと崩しながら、彼の体を堪能する。
    その奥にある彼自身に触れるように、彼自身の体温と、汗と、肉体をこの手に感じたくて。
    「そんないやらしい顔をして、いけない人ですね」
    彼の、とっても低く響く声が私の脳を揺らして、私の理性は少しずつ崩されていく。
    そんな素敵な声で揺らされてしまったら、頭の中、あなたでいっぱいになってしまうじゃない。

    「あなただって……そんな、怖い顔、して……」
    熱く火照った息を吐きながら、彼の頬に手を添える。
    私の指が触れた途端に、その熱い視線はうっとりと穏やかな様子を見せて。
    その指を、彼の耳の裏までゆっくりと這わせていくと、ぴくんと体が反応した。

  • 60◆0CQ58f2SFMUP25/05/17(土) 23:36:41

    一瞬、身を縮めた彼は、次に顔を上げると赤い顔で私を見つめていて。
    その顔を見た私は、彼よりも先に、我慢ができなくなってしまった。

    「星南さ……っ!」
    彼が姿勢を直し切る前に、私は彼のネクタイを掴んで、ぐいと引っ張った。
    私の目の前で、ぴたりと止まった彼の目は、とっても綺麗な漆黒で。一度魅入られては、二度と這い上がれない。
    なぜって、私がその一人だから。

    私と彼の唇が、残りわずかな距離をゆっくりと詰めていく。
    ああ、ここがどこだって構わない。
    この唇に、私の心を持ち去って欲しい。初めて愛を交わした、あの日のように。

    そして、私たちの唇は、距離を失って。
    キスを……――。

    「くおらぁーっ! んなトコで何してんじゃあーっ!」
    そんな私たちの逢瀬は。
    世界一可愛らしい怒り声の乱入で、ぽっきりと中断されてしまった。

    ―――

  • 61二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 00:14:05

    保守

  • 62◆0CQ58f2SFMUP25/05/18(日) 00:52:18

    あたしの知らない空き会議室、狭っ苦しい空間。
    そんな中あたしは、目の前にいる……なんとも言えない表情で立ち並んでるバカップル二人を、じろりと睨んでる。
    よりによって担当アイドルに見つかってしまって恥ずかしいのか、星南先輩は赤い顔でうつむいてるし。
    元担当アイドルの担当アイドルに見つかって気まずいのか、プロデューサーさんは眼鏡を触りながら明後日の方向を向いてる。
    「で、どっちなんです? こんなトコでおっぱじめようとしたのは」

    あたしがそう聞くと、二人は一瞬、目を見合わせて。似たようなキリッとした表情であたしの方を同時に向いた。
    「俺です」
    「私よ」
    ほぼ同時に、自分のせいだと言ってくる。そんなとこそっくりじゃなくていーから、ほんと。
    あたしが見つけたから良いものを、こんなトコほかの誰かに見られてたらと思うとゾッとする。
    雨夜先輩とかだったら、めちゃくちゃ怒られるだけで終わるだろうケド、二人をやっかんでるヤツとかに見られたら最悪だ。
    まぁ、この時間こんなとこ通る人少ないし、あたしは星南先輩探してたからキョロキョロしてて見つけられただけだから、そこまで心配し過ぎてもしょうがないんだろーけどさ……。

    あたしが、そんなことでぐるぐる考え込んでいると、二人は何でか分からないけど口論を始めた。
    「いえ、星南さん。 俺が星南さんの誘惑に負けたのがいけないんです」
    星南先輩の方を向いてドヤ顔で言い放つプロデューサーさんは、なんとなく星南先輩そっくりだ。
    ってか誘惑って何?なんか二人とも汗っぽいのなんで?
    「なっ! ゆ、誘惑なんてしていないわよ! あなたが寂しそうな目で見つめてくるから、つい甘やかしたくなって……」
    星南先輩も、負けじと頬ぺた赤く染めて反論してる。なんかこれ、ろくでもない話を聞いて損した気分になりそうな予感がする。
    星南先輩に聞き忘れてたことがあって探しに来たら、なんか会議室で絡み合ってる背中が見えて、よく見たらプロデューサーさんだったから呆れて止めに入っただけなのに。
    「そんな目はしていません。 それに甘えたそうにしていたのは星南さんです」

  • 63◆0CQ58f2SFMUP25/05/18(日) 00:55:41

    ぐぬぬ、と睨み合った二人がマジくだらない論争をしている。どっちが誘ったかなんて聞いた自分が本当に馬鹿だった。
    こいつらはとっとと叱って、とっとと迎えの車に押し込んで、帰らせないといけなかったんだ。
    もうあたしが先に帰ろうかな、なんて現実逃避をしながら自分のおさげを整える。今日の晩ごはん、冷蔵庫のアレとアレがそろそろ限界だから食べないとナ~。
    「あなたでしょう! あんな顔で歩いていて、あなたを狙っている娘がいたらつけこまれてしまうわ!」
    珍しくでっかい声を出してる星南先輩を横目に、現実逃避を続ける。プロデューサーさん狙ってる娘って、まぁ上昇志向強い娘だったら狙われそう。

    「星南さんだって、あんな無防備に可愛らしく愛嬌を振りまいては、ろくでもない男に言い寄られますよ」
    そう言われてはプロデューサーさんも負けてない。星南先輩の肩まで掴んで独占欲丸出しだ。
    この人、こんなに星南先輩に独占欲発揮するんだ。さっき言ってたのって本当だったんだナ……。
    なんかでも、変に星南先輩のこと受け流すオトナっぽいイメージよりは好感度高いかなって思う。あたしには関係ねーけど。
    「あら、それは私が節操なしに媚びを売る女と言いたいの?」
    売り言葉に買い言葉、ってこういうのだっけか、もうわからん。喧嘩してるみたいな顔してどんどん二人の距離はまた縮まっていってる。
    これ、あたしの目の前でキスしたりしねーだろーな。

    「いいえ、あなたは立っているだけで世界一の魅力がこぼれ落ちているんです」
    そう思ってると、案の定流れが変わってきた。大真面目な顔で、黙ってりゃけっこーイケメンなのに、星南先輩にこれだもんな。
    「あなただってそうよ、あなたに支えられたアイドルはきっと魅了されてしまうわ?」
    星南先輩といえば、困ったような顔でプロデューサーさんに反論してる。マジで心配してる感じでちょっと呆れた。
    こんな星南先輩占用物件ですってなオーラでまくってる人、マトモなやつは言い寄らねーって。
    「おーい……」

  • 64◆0CQ58f2SFMUP25/05/18(日) 01:02:59

    もう髪も服も直す箇所が無くなっちゃって、手持ち無沙汰になっちゃったあたしは恐る恐る二人に口を挟んでみるんだけど。
    まるで聞いてない二人は、お互い肩に手を添えちゃって、キス寸前みたいな距離に顔を近づけ始めてる。
    明日、レッスンのあとどっか行こーかな……久しぶりに咲季と手毬とか誘って……あ、手毬はなんか仕事だったっけなぁ……。

    現実逃避を加速させるあたしの目の前で、現実を二人の空間に塗り替えている二人がどんどん加熱していく。
    「こんなデリカシーのない男を心から愛してくれる方は、きっとあなたくらいのものですよ」
    やれやれ、みたいなムカつくすまし顔をキメたプロデューサーさんを見て、星南先輩はむっとした顔をする。
    なんだよもう、なんでコイツらは堂々と少女漫画みてーな会話してんだっての。羨ましい通り越して怖いわ、もう。
    「それを言うなら。 十王星南の愛を正面から受け止められる人なんて、きっとあなただけよ、先輩」
    星南先輩は、ついにプロデューサーさんの顎に指を添えた。めちゃキリッとした感じで、うっとりした目で見つめながら。
    流石にあたしも段々恥ずかしくなってきて、顔が熱くなってきた。推しのキスシーンとか人生で何度も見たらヤバい、精神が保たない気がする。

    「そんなに可愛らしいことを仰っても、何も出てきません」
    プロデューサーさんも、負けじと星南先輩の頬に手を添えた。これはもう決まりだ。
    「そう? あなたがにやけ顔を隠そうとしている姿が見られたわ」
    明らかに数段しっとりとした声で、二人の世界を拡げ始める。あたしは完全に巻き込まれている。
    マジですんのか?ここで?こんなところで?あんたらスキャンダル一番気をつけないといけない奴らなんだけど?
    「俺にとって一番可愛い人が、可愛らしいことを言うからです」
    エロい声でなんか言ってるけど、アンタあたしのスターにこんなとこで手ぇだすとこあたしに見せんなっての!
    あーダメダメ目ぇ合わせんな!顔近寄るなー!

    咄嗟に、会議机に両手を思い切り叩きつけた。
    「帰ってからやれぇーっ!」


    ―――

  • 65二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 04:14:53

    ことねを解放せよ

  • 66二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 07:37:13

    ほしゅ

  • 67二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 11:26:58

    ことねの糖分摂取量が大変なことに

  • 68二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 17:19:46

    保守

  • 69二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 21:08:15

    ほしゅ

  • 70二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 00:07:31

    夜保守

  • 71◆0CQ58f2SFMUP25/05/19(月) 00:12:26

    「……ことねに、叱られてしまったわ」
    夜、帰りの車の中。
    私と先輩は後部座席に座って、普段とは違って各々が窓にもたれかかっていた。
    いつもなら、彼の肩に身を預けて、安らぎのひと時を得るこの時間に。
    先ほどの件があって、私は子どもみたいにむすっとして。彼は彼で、窓際に肘をかけて頬杖をついている。

    「あなたのせいよっ」
    私の言葉を聞いた彼が、何を言っているんだと言いたげに、私のほうを振り向いた。
    何よ、そんな顔。やれやれみたいな顔をしているけれど、あなただって叱られたのよ?
    まったくもう、よりにもよってことねに見られてしまうなんて……あんなところ見られたら、威厳も何もあったものではないわ。
    そんな、こっそり私の手を握ってきたって、私を誘い込んだことは許してあげないから。

    不貞腐れた私の手を優しく握って、まるでなだめるように手の甲を指で撫でる彼は、なんだか手慣れた様子で。
    そんな彼に、少しだけ拗ねたような気持ちになってしまう私は、ふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
    あちらを向いてしまった私を見て彼は、吹き出したように小さく笑ったと思うと、とびきり意地悪な声で。
    「星南さんのせいでもあります」
    なんて、生意気なことを言い始めた。
    振り向くと、いつもの意地悪な顔で微笑んでいる彼が居て。
    くだらない責任を押し付け合っている自分たちの滑稽さに、私も吹き出してしまった。

    「ばかね、私たち♪」
    そう言って、私は彼に握られた手をほどいて、指を絡めた。
    握られていただけでは分からなかった、彼の体温をこの手で感じられる。
    ええ、本当に、なんて言いながら、彼も私の手を抱きしめるように指を動かして。
    私たちはいま、仲直りの小さなハグをした。

  • 72◆0CQ58f2SFMUP25/05/19(月) 00:12:52

    シートベルトをしているから、限界があるけれど。少しだけお尻を動かして、彼との距離を詰めた。
    私が動くのを見た彼も、私との距離を縮めて。互いにもたれかかって、肩と肩で支え合った。
    「人のせいにした罰として、帰ったら私の言うことをたくさん聞いてちょうだいね、先輩」
    たったいま思いついた、彼へのとっておきの罰を伝えると、彼はなんだか嬉しそうな顔をした。
    もう、あなたへの罰なのだから、そんな生意気な顔をしてはいけないのに。
    今日、私の心に火をつけておいて、迂闊にも中断されてしまったあなたは。
    眠ってしまうその瞬間まで、絶対に許してあげないから。

    私が彼に、勝ち誇った顔で罰を宣言したあと。彼は、数秒だけ悩んだような素振りをして、口を開いた。
    「なら、俺のせいにした星南さんは……帰ったら、たくさん甘やかしてください」
    彼も彼で、私に対する罰を思いついたみたいだった。もう、まだ私のせいだって言いたいの?仕方のない人。
    それに、そんな罰……罰にならないわ。だって、あなたを甘やかすだなんて、それは。
    それは、婚約者である私にだけ許された、あなたへ最上級の愛を伝える方法なのだから。

    私に甘えたいだけの、とびきり素敵な婚約者の頬に、ちゅっとキスをする。
    一瞬、驚いたような顔をした彼は、自分の頬に手を添えた。私の唇が触れた感触を、確かめているようだった。
    頬についた私のリップが、彼の指が撫でることで大部分が消えてなくなり。
    それでもわずかに残った赤色が、私の優越感をほんの少しだけくすぐってくれる。
    「……まだ、何も言われていませんよ」
    ちらちらと、運転手の方を見ながら私にそう言う彼は、少しだけ気まずいみたいだけれど。
    いつものことで慣れている運転手の若い娘は、呆れた様子で聞こえないような溜め息をつく。
    ごめんなさいね、だって。本当は、毎秒だって彼に愛を伝えていたいのだもの。

  • 73◆0CQ58f2SFMUP25/05/19(月) 00:14:47

    「これはね、仲直りのキスよ」
    結局、私たちは家に着くまで、何度も何度もキスをした。
    今日、事務所でできなかった分を取り戻すように。

    ことねには悪いけれど、今日は中断されて良かったのかも知れない。
    だって私、とっても楽しみだもの。
    今晩彼の部屋を訪れたら、どんな我儘を言ってあげようか、なんてことや。
    彼はどんな甘えたことを言って、私を口説いてくるのだろうか、なんてことが。

    私たちの、新たな立場での生活はまだまだ始まったばかりだけれど、きっと大丈夫。
    こうして日々、甘い愛を与え合える彼は、私の人生を導いてくれた人で。
    とっても格好良くて甘えん坊で頼りになる、私の旦那様なのだから。

  • 74◆0CQ58f2SFMUP25/05/19(月) 00:17:33

    ↑↑↑以上↑↑↑

    事務所で惚気たりイチャつき見つかって気まずかったり叱られたりするお話でした。
    運転手は、後部座席で二人がイチャつくのは日常茶飯事なのでもう気にしていません。

  • 75二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 07:01:43

    乙乙超乙

  • 76二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 08:09:28


    P星南なんてイチャついてなんぼですね

  • 77二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 08:41:06

    おつでした
    ところで僕のブラックコーヒーがいつの間にか砂糖まみれなんだが?

  • 78二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 08:42:20

    乙乙
    なんですかこの動く製糖工場は……

  • 79◆0CQ58f2SFMUP25/05/19(月) 09:02:51

    >>76

    >>77

    >>78

    ありがとうございます!!

    もう婚約したからね…あとは死ぬまでイチャイチャするだけからね…

  • 80二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 14:27:35

    >>50

    顔無しと化した星南すき

  • 81二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 17:45:05

    このレスは削除されています

  • 82◆0CQ58f2SFMUP25/05/19(月) 20:45:58

    一旦また砂糖切れにつきここまでとします!
    また砂糖がチャージできたら次話以降もえっちなやつとか書いていきたいと思います!
    読んで頂いてありがとうございます!

オススメ

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