- 1二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 18:40:23
かつて、キヴォトスは平和だった。
連邦生徒会とシャーレの先生の下で、罪を犯した生徒に対して然るべき罰が与えられ、絶対に正しい選択が成されてきた。
アビドスとSRTの生徒たちは別の学園へ転校し、横領していたセミナーの生徒会長とトリニティの転覆を目論んだアリウスの戦士、そしてそれに加担したティーパーティーのホストは矯正局に送られた。シャーレの先生はそれを正しいことだと信じた。
だからこそ、私たちのキヴォトスは滅んだ。企業の非常識な野望と悪い大人の理不尽な謀略、そして『外』から現れた不可解な敵によって。
長い時が流れ、私は大人となった。先生と共に失われたと思われた『箱』も手に入れた。私はその旅路の果てで、新しいキヴォトスに辿り着いた。
かつて私たちの犯した過ちは繰り返さない。そのために私は『シャーレの先生』としてここに立つ。
それが私、かつてのバカな一人の生徒だった『下江コハル』の取れる唯一の贖罪だから。
ここだけ、コハルが『シャーレの先生』となる世界線。 - 2二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 18:41:48
- 3二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 18:45:16
おかえり
リメイクってことはまた最初から? - 4二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 18:51:09
- 5二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 19:05:12
「シャーレ・オフィスの奪還、お疲れ様でした」
薄暗い部屋の中で、連邦生徒会の行政官はそう話しかけてくる。それに対して私―清瀬ヒカルは答える。
「当然よ。まさか仕事場が見知らぬ奴に奪われているとは思わなかったけどね。まぁ、私の力を証明する機会になったわ。そうでしょ、アサミ?」
その問いに対し、私の傍に立つ制服姿の少女、アサミは答える。
「はい。ともあれこれから忙しくなりますが」
アサミと言葉を交わしたところで、行政官は私にタブレット端末を手渡す。それを受け取り、私は小さく呟いた。
「…ようやく、私は貴方と同じ位置に立てた」
「…『我々は望む、七つの嘆きを。我々は覚えている、ジェリコの古則を』」 - 6二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 19:23:25
シャーレ・オフィスをワカモから奪還して数日。私とアサミは順調に仕事を進めていた。
「おはようございます、先生!書類整理は終わりましたか?」
この日は当番としてやって来た早瀬ユウカから問われ、私は答える。
「ええ、そこにまとめてあるわよ。アサミも弾薬費を経費で落とすために色々と作ってるんでしょ?」
「はい、先生。ついでに先生のレシートとかもこちらにまとめておきました」
その言葉に、思わず私の顔が引き攣る。ましてやユウカなら。
「先生ー!なんですかこの無駄遣いは!酒とタバコに4千円なんて、使いすぎです!あと本も買いすぎ!」
「そこはいいでしょ、私の趣味なんだから」
「流石に不健全過ぎます!身体を壊しますよ!」
「ユウカさん、それここに来る前から何度も注意しているのですが、一向に改善しようとしてくれません」
「その話、本当ですか!?」
二人と、急に現れた救護騎士団の子の会話に、私は思わず天を仰ぐ。どうやらこの職場で、私の趣味に理解を示してくれる人はいない様だった。 - 7二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 19:42:30
ユウカに小言を言われつつ仕事を進め、ようやくその日の業務が終わる。そして夜、私は酒で満たしたグラスを片手に夜空を眺めていた。
「…大変ね、本当に…貴方もそうでしょ、アサミ」
私の言葉に対し、アサミはホットミルクの入ったカップを持ちながら頷く。
「ええ…あの人が倒れ、行方を晦ましてしまった後の私を拾ってくれなければ、私はあのまま消えていた事でしょう。しかし…」
「…『シッテムの箱』のOS、アロナ…この世界の貴方は、全く姿が違うわね。『友人』の言う通り、この世界は私たちの元いた世界とかなり異なっているみたい」
私はそう言いつつ、グラスを呷る。そして夜空を見上げながら、アサミに向けて言った。
「明日は、アビドスの方へ向かうわよ。それまでに色々と準備を進めましょう」
「分かりました、先生」
- 8二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 19:44:13
期待
- 9二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 20:44:24
清瀬ヒカル
連邦生徒会特別捜査部『シャーレ』に着任した、先生を務める大人の女性。
その正体は大人となったコハルであり、身長は20センチ以上伸びている(148→168)。
周囲には『かつてはトリニティの卒業生だった』と申し出ており、シャーレ奪還時にはワカモと激しい撃ち合いを演じた。
趣味は嗜む程度の飲酒と喫煙、そして成人向け雑誌の収集であり、棚にはウィスキーの瓶やタバコの銘柄ごとの箱が並べられている。 - 10二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 20:54:46
アサミ
ヒカルが助手として連れてきた少女。
その正体は『シッテムの箱』のOS『A.R.O.N.A』であり、いわゆるコハルのいた世界線のプラナ。
背丈はプラナより伸びており、服装も黒いセーラー服からブレザータイプの制服(セリカが着ているものに近い)となっている。
普段からヒカルの公私を支えており、ユウカやセリナとよく意気投合している。
- 11二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 22:07:10
【SS・イツワリのユメ】
私があの人たちと出会ったのは、四月の風が心地よい日のことだった。
不良生徒に囲まれて危うかったところを助けられ、私はアビドスの人たちの仲間となった。
それから一年が経ち、私は何時もの様に防弾チョッキを羽織り、アサルトライフルを背負い、自転車を漕いで学校に通う。それが私の日常だった。
「ん、おはよう」
途中で同級生と出会い、私は共に砂まみれの通学路を駆ける。と、目の前に二人の女性が倒れているのが見えた。
「み、水…」
「だから、言ったではありませんか…砂漠で遭難する可能性は熟慮しようと…」
「…ん、助ける?」
それが、シャーレの先生たちと、私、四月一日ウツツの初めての出会いだった。 - 12二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 22:56:23
【深夜の大人たち】
深夜 アビドス高校
ヒカル「スキットル1本分のウィスキーに一箱分のタバコ、今はこれだけで済ませるか…」
アサミ「…ちゃんと水を確保してない癖に、炎天下の砂漠の下で飲む様なものを持ち込まないで下さい」
ヒカル「次からはちゃんと普通の水も用意するから…ん?」
ヒカル「はい、ヒカルよ」
???『こんばんは、ヒカルさん。アビドスに着きましたか?』
ヒカル「あら、エリじゃない。そちらも無事に着いたみたいね」
エリ『DUに万屋の事務所を開きましたので、その報告をしにきました。どうですか、アビドスの方は?』
ヒカル「早速見たことない生徒に出迎えられて、カタカタヘルメット団の連中とバトったわよ。詳しい情報はアサミに送らせるわ」 - 13二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 22:59:51
エリ『…確かに受け取りました。えっと…四月一日ウツツ…確かに、見たことのない人ですね。アサミさんの知るキヴォトスとは大分異なってきてる様ですので、十分にご注意下さい』
ヒカル「そんなの、シャーレ取り戻しに向かった時点で大分知ってるわよ。そっちも手頃な情報得られたら、私かアサミへ連絡頼むわよ」
エリ『分かっていますとも。では、いい夜を』
???「ん…遂に『彼女たち』が動き出した。どうするの、キングゥ?」
キングゥ「決まってるじゃないか、オジマンディアス。ここはゲマトリアと、カイザーのお調子者どもに踊ってもらうだけさ」
- 14二次元好きの匿名さん25/05/16(金) 23:10:49
シロコにサイクリング仲間が!
- 15二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 09:03:13
保守
- 16二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 09:30:29
ヒカル「ふーっ、これで対策委員会の経費辺りは何とかなるかな…後は連邦生徒会に正式に承認してもらうだけだけど…」
アサミ「お疲れ様です、先生。カタカタヘルメット団の襲撃にセリカの拉致未遂と、頭の痛くなる様な出来事が連続して大変でしたね」
ヒカル「ええ…あの人も同じ様な経験をしたのかと思うと、どれだけ大変だったのか…『外』で色々と学んで鍛えてないと、本当に詰んでいたわ」
アサミ「その貪欲な努力、15年前に成していれば補習授業部に入らずに済んだかもしれませんね」
ヒカル「痛いところ突いてくるわね…それと、トリニティの方から貴方宛に依頼が来ているわ。この後頼んだわよ」 - 17二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 10:59:34
- 18二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 12:27:59
- 19二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 13:10:09
- 20二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 15:07:29
プレイアブル実装されたら、各学園のBDと教科書のみか、貴重なオーパーツのみでスキル上げになりそう
- 21二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 15:15:00
ブラックマーケット内部
ウツツ「ところでエリさん、先生とは知り合いみたいですけど、出身校はどちらで?」
エリ「私?普通にゲヘナですよ。それがどうかしましたか?」
ウツツ「ゲヘナ、ですか…先生は見たところトリニティっぽいですよね?余り仲が良さそうなイメージがなくて…」
エリ「いえいえ、それこそ偏見というものですよ。互いに自身のいた場所で肩身の狭い想いを抱えていましたので、そういう点で交流を重ねる様になった…という感じでしょうかね」
ウツツ「へぇ…ん?」
???「たたた、助けて下さーい!」
ヒカル「…成程、どうしてなのかを大体理解したわ。シロコ、手を貸してちょうだい」
シロコ「ん、任された」
- 22二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 17:45:44
ヒフミ「先程はすみません…モモフレンズのレアなグッズを買いに行っていたら、こんなところで巻き込まれるなんて…」
ウツツ「まぁ、大事にならなかっただけマシだよ。しかし、随分と広いところだね」
エリ「キヴォトスの裏に流れている資金の多くが、ここに集まっていますからね。犯罪者との金のやり取りや違法行為で稼いだ金がこの地を豊かにしているんです」
セリカ「アビドスからかなり近いところなのに栄えてる理由ってそういうことなんだ…」
ヒカル「些細な喧嘩ですら銃を使う様なもんだから、武器弾薬は幾らでも売れるからね。ましてや犯罪組織なんて必ず武装してるでしょうし」
ヒフミ「だからこそ、レアなグッズとかも高値で取引されてる場所なんです。それを買いに来たところだったのですが…」
ヒカル「…全く、貴方という人は…」
- 23二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 21:18:26
カイザーローン付近 喫煙所
エリ「はい、ヒカルさん。一本どうぞ」
ヒカル「ん、サンキュ。しかし…面倒な事になってきたわね」
エリ「大まかな流れそのものはアサミさんから聞いていますが、カイザーが不良集団と結託して、利息の一部を悪用しているとは…」
ヒカル「ええ…かつて、『先生』は彼女たちを大人の悪意から遠ざけるために他校への転校を促したけど、それが却ってカイザー・グループを調子づかせた。余りにも幼稚な野望が、彼女たちをさらに苦しませてしまった」
エリ「…だからこそ、今彼女たちがやろうとしている悪事を見逃すと?正義実現委員会で卑猥なものを持ってた人に対して『死刑』連呼してた人らしくないですね」
ヒカル「エリ、今必要なのは『過去の経験』ではなく『現在の選択』よ。一見間違った選択に見えることが、結果として良き未来を得るのだから」
エリ「…全く、意地悪なものですね。おっ…」
ヒカル「おっ始めたわね。それじゃ、私たちは尻拭いの準備としますか」
- 24二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 23:58:29
待機
- 25二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 06:22:49
ヒカル達の時もアビドスとヒフミの間に繋がりがあったんだね。
- 26二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 10:22:37
ブラックマーケット カイザーローン近郊
オジマンディアス「…こちらオジマンディアス、覆面水着団が出てきた。見てる?」
キングゥ『バッチリ見てるよ。『アイツ』なら絶対にやらせないことだろうが、どうやらこの世界線の先生が唆した様だ』
オジマンディアス「確か、『あの人』の世界線にいた者たちは対策委員会がトリニティの生徒を巻き込んで銀行強盗に出たことを知らない筈だよね。それにあの先生の正体も考えれば、起こり得ない事態の様に思えるけど?」
キングゥ『私たちがこうして組織を作っている様に、あの先生にも活動を支援している組織がある、ということだ。さて、どうする?』
オジマンディアス「ん、見逃す。どのみち真相を知れたところで彼女たちは直ぐに手を打てる訳がないもの」
キングゥ『君も、遊ぶ癖が身についてきた様だねぇ』
この後、二人はアルが覆面水着団に対して崇敬の念を示してきた場面を見て笑った。
- 27二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 16:02:25
【アサミとトリニティの騎士たち】
対策委員会がブラックマーケットに来ていた頃 トリニティ自治区
ティーパーティー行政官「これより、シャーレの先生代行であるアサミさんに説明を致します。今回は反ティーパーティーの武装勢力のアジト摘発です」
アサミ「アジト摘発…こういう仕事は正義実現委員会の仕事じゃないのですか?」
ティーパーティー行政官「いえ、こういう任務は正義実現委員会の手では余ります。特殊任務の類はこれまではSRTに依頼していましたが、今回は我々ティーパーティー主導で行います」
ティーパーティー行政官「今回の作戦には、ティーパーティーよりホスト警護隊の所属隊員が参加します。どうぞ、こちらへ」
???「君がアサミか。あのシャーレの先生の助手だそうだな」
アサミ「…!?」
???「私は錠前サオリ。これから宜しく頼むよ」 - 28二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 18:59:56
トリニティ自治区内 反ティーパーティー勢力アジト
サオリ「…緊張するか?」
アサミ「いえ…しかし、まさかティーパーティーの警護の方が直接参加するとは…」
サオリ「上も必死なのさ。正義実現委員会は確かに『トリニティ全体の平和』のために頑張ってるが、『ティーパーティーの安定』のために忠誠を誓い続けてくれるかどうかは別だ。それにトリニティの敷地内で大手を振って悪事を働いてるとなれば、正義実現委員会の一部が腐っているなんて可能性だって疑う」
アサミ「成程、だから私に依頼を出したと…」
???「…そういうこと、応援に呼んだとは言え正実の人の前で言うの?」
サオリ「ミサキ、こういう愚痴を他人に漏らさないことを信用してる上で連れてきたんだ。デカい一発を頼んだ」
- 29二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 20:30:16
待機
- 30二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 01:15:42
待機
- 31二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 01:52:55
四月一日…ウツツ……
まさか、あのクローンスレもスレ主が…? - 32二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 07:48:25
怒られてる……
- 33二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 07:57:01
アジト内にて、十数人の少女たちが集う。
「諸君、我々は間もなく決起する!このトリニティの惰弱な政権を打破し、真の秩序を打ち立てるのだ!」
黒いセーラー服をまとった少女が語り、その同志たちは静かに見つめる。
「現在、ティーパーティーと正義実現委員会は汚らわしいゲヘナの連中との講和を進めている!それを阻止し、真に素晴らしき世界をキヴォトスにもたらすのが我々の目指すべき理想である!」
そう語る少女の背後には、数両の主力戦車と巨大な軍用ドローン、そして数百体のオートマタがあった。
「我々には、十分な戦力がある!さぁ今こそ、トリニティの栄光のために—」
その時だった。爆発音と共にアジトの屋根を炎が突き破る。そしてそこから数発のロケット弾が降り注ぎ、彼女たちの周囲に着弾した。 - 34二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 08:31:42
- 35二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 10:44:22
- 36二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 12:54:29
とその時、アサミのスマートフォンが鳴り、彼女は直ぐに応じる。相手は先生だった。
「はい、アサミです。どうしましたか、先生?」
『アサミ、ちょっといいかしら?そっちは依頼が終わった?』
「はい、ちょうど完了したところです」
『そう…なら、一つ頼み事いいかしら?アビドスの方でトリニティの生徒を保護したのだけれど、彼女をトリニティの方へ送り届けたいの』
「トリニティの生徒、ですか?であれば、一人連れて来たい人がいるのですがいいでしょうか?」
アサミの言葉に、先生は暫し無言となる。だが直ぐに返事を返した。
『…分かったわ。アビドス高校の前で待ってるわよ』
「はい。それでは…サオリさん、少し野暮用に付き合ってもらってもよろしいでしょうか?」
「フッ…シャーレの先生からの頼みとなら、しょうがないな」
- 37二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 13:20:58
アビドス高校
アサミ「お待たせしました。まさかヘリを貸して頂けるなんて…」
ヒカル「アサミ、お疲れ様。で、彼女は…」
サオリ「ティーパーティー警護隊所属、錠前サオリだ。貴方がシャーレの清瀬ヒカル先生ですね?」
ヒカル「わざわざフルネームどうも。ああ、例のトリニティの生徒はこちらに」
ヒフミ「あっ、サオリさん!お久しぶりです!」
サオリ「…また、ブラックマーケットに来ていたな?全く…モモフレンズのグッズに関する事となると周りが見えなくなるのは相変わらずだな」
ウツツ「ティーパーティー…って、トリニティの生徒会の!?凄い偉い人じゃん!」
サオリ「そうでもないさ。私はあくまでも、ホストの小間使いに過ぎないよ」
ホシノ「うへー、随分と豪華なお出迎えだこと。もしかしてヒフミちゃんって実は凄い?」
ヒフミ「あはは…私はただ、ナギサ様と顔見知りなだけで…」
ヒカル「(その顔見知りってだけで、十分に凄いのよ貴方は…)」
- 38二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 13:57:43
その夜 アビドス高校
ヒカル「…はい、ヒカルです」
リン『夜遅く失礼します、先生。本日、アビドスでのお仕事は順調でしょうか?』
ヒカル「それなりにはね。あと、こちらから送った資料は見てくれた?」
リン『はい。ですが、この要求を通すには時間がかかりますが…』
ヒカル「対策委員会をアビドス生徒会の後継として認める…そう難しくない話だと思うのだけれどね。それとも、何かしら不都合なことでもあるのかしら?」
リン『いえ…ですが、彼女たちに他校へ転校することを勧めるのかと思っていましたので…』
ヒカル「私はあくまでも、彼女たちのこの学校でどうしていたいのか、その考えを尊重するだけよ。それに、ここアビドス以外に居場所がない子たちもいるからね」
リン『そうですか…分かりました、出来る限り先生の望む形にするとお約束致しましょう』
ヒカル「それじゃリンちゃん、いい夜を」
- 39二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 14:09:59
ヒカル「…さて…アロナ、この電話番号に繋げてくれるかしら?」
アロナ「こちらの電話番号に、ですか?分かりました!少しお待ち下さい!」
???『一体いつぶりかしら、コハル?いや、こっちではヒカルだったかしらね?』
ヒカル「…久し振りね、エルベ。万魔殿で相談役を始めたとエリから聞いたけど」
エルベ『マコトはともかく、ヒナは大切にしてやらんといつ壊れるか分からないからね。トリニティの方でもマーリンの奴が正義実現委員会と自警団に手を貸しているし、一先ずはお前の危惧した状況にはならないでしょう』
ヒカル「そう…他に何かあるかしら?」
エルベ『そうね…ああ、アコの奴がティーパーティーの動きとアンタの動向を嗅ぎ始めたわ。駄犬にしては随分と動きが速い。そろそろ便利屋の摘発を口実に手を出して来るわよ』
ヒカル「了解したわ。明日、アサミがそちらの依頼を受けてゲヘナに来るから、いざという時は頼むわね」
エルベ「ええ…貴方の助手、ゲヘナの流儀で迎え入れてやるわ」
- 40二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 14:56:01
待機
- 41二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 16:50:54
【ゲヘナの秩序を守る者たち】
ゲヘナ自治区郊外
エルベ「よくぞ来たわね、アサミ!ヒカルから話は聞いているかしら?」
アサミ「はい、大まかには」
ヒナ「こうして貴方と顔を合わせるのは初めてね。私はゲヘナ風紀委員会委員長の空崎ヒナ、よろしく」
エルベ「では、改めて話すわよ。一言一句聞き漏らさない様に!今回の依頼は郊外に潜伏するテロリスト連中の掃討。ただ市街地を爆破するしか能がない連中に泣いて詫びる損害を与えるのが目的よ」
エルベ「風紀委員会の主力は現在、別の自治区に逃走しているとみられる指名手配犯の捜索に駆り出される。よって今回の作戦は私とヒナ、そしてお前の三名で行うこととなった」
アサミ「…大体事情は把握しました。いつでも行けますよ」
エルベ「それならいいわ。では行きましょう、愉快な遠足の始まりよ!」 - 42二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 18:19:44
ゲヘナの広大な敷地内、その一角にあるスラム街に、激しい銃声が鳴り響く。
「逃げろ、ミス・エルベと空崎ヒナだ!」
「もうバレるなんて、聞いてねーぞ!」
不良の生徒たちが騒ぎ立てる中、逃走経路の一つにアサミが立ち塞がる。そしてコートの裏から幾つもの手榴弾を取り出し、投げ込んだ。
「ぐはっ!」
「やべ、逃げ道塞がれ—ギャッ!」
「やるわね、アサミ!手榴弾の投擲術はしっかりヒカルから教え込まれた様ね!」
エルベはそう褒めながら、アサルトライフルとハンドガン二丁持ちの戦闘スタイルで複数人を薙ぎ倒していく。ヒナもマシンガンによる弾幕で一掃し、数で勝っていた筈の武装勢力を蹴散らしていく。
無論、果敢に立ち向かう者もいた。しかしアサミは手榴弾からライフルに持ち替え、時には近接格闘で組み伏せて無力化していった。
戦闘開始から五分。その場に立つ者はエルベとヒナ、そしてアサミの三人だけだった。
- 43二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 18:45:18
「おや、もう終わりましたか。流石ですね」
不意に声がかけられ、一同は振り向く。そこにはエリと、数人の武装した少女の姿があった。
「とあるマフィアから対立候補の『お掃除』を依頼されて来たのですが、案の定エルベさんがお先に来てましたか。まぁこれはこれで、『依頼は失敗しました』と向こうに伝えるだけですけどね」
「エリ、いつの間にこっちに来たのね。アビドスでヒカルの手伝いでもしてるんじゃなかったのかしら?」
「万屋はキヴォトスのいたるところにお客さんを抱えてますからね。御用とあれば即座に参るのも何でも屋の仕事ですよ。ああ、それとヒナさん…」
エリはスーツのポケットからタブレット端末を取り出し、画面をヒナへ見せる。それはドローンによる空撮映像だった。
「風紀委員会の連中…正確に言えばアコさんがアビドスへ勝手にカチコミ仕掛けました。理由としては便利屋の逮捕ですが、本命としてはヒカルさんの身柄を確保するつもりでしょうね」
「アコ…私の見ぬ間に余計な真似を…」
「全く…ヒナ、さっさと行ってやりなさい。ここは私たちが片づけるわ」
「感謝するわ。エルベさん。アサミもありがとうね」
ヒナはアサミに感謝の念を述べ、そしてその場から足早に去っていった。
- 44二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 19:03:48
エリ「さて…お疲れ様です、エルベさん…しかし、貴方も見違える様に変わりましたね。かつての万魔殿のマスコットだった頃から大違いです」
エルベ「人は変わらなきゃ何も出来ないものよ。貴方の方こそ、便利屋の平社員から万屋の社長だなんて、出世してるじゃない」
エリ「そればかりはお互い様、といったところですね…そうそう、DU市内にてコーヒーとよく合うプディングを見つけましたので、今夜そちらで飲みましょうか」
エルベ「それはいいわね。アビドスの方の問題が一段落したら、ヒカルも誘うとしましょう」
- 45二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 19:10:24
草野エリ
『万屋伊草』の社長を務める大人の女性。
その正体は大人になったハルカであり、ヒカルと同じ世界線の出身。
元いた世界線のキヴォトスから旅立つ際、彼女は社長のコートと課長のオーディオプレーヤー、係長のカバンを手に便利屋の仕事を引き継いだ。それ以来ヒカルとは同じ戦場で戦う同士であり、同じ酒とタバコを嗜む級友である。 - 46二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 19:15:08
彼女は大人として『草野エリ』の偽名を背負って新たなキヴォトスに降り立つ際、その姿を変えた。
社長に倣って髪を伸ばし、それを係長の用いていた髪飾りで束ねた。課長の用心深さも参考に、常にコートの裏には暗器を仕込む様になった。そして彼女自身の頑健な肉体は、戦闘で得られた経験を着実に蓄積させるのに役立った。
戦闘スタイルとしてはショットガンを基本に、乱戦ではマシンガンと手榴弾、近距離ではハンドガン、遠距離の狙撃ではスナイパーと、かつての仲間たちの用いていた武器を巧みに使い分ける形を好む。
- 47二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 19:21:30
エルベ(戸籍名・河嶋ボタン)
万魔殿の顧問としてゲヘナに現れた、大人の女性。
その正体は大人になったイブキであり、かつての幼さは何処にもない。
彼女は『シャーレの先生が対策委員会を正しく導いた世界線』の出身であり、ヒカルとエリの知らない『対策委員会の戦いとエデン条約での出来事』を知る立場にある。
プリンよりもタバコを口にし、ジュースよりも酒を飲む様になった今もなお、趣味の絵描きはクレヨンから絵筆に持ち替え、ひっそりと続けている。
戦闘スタイルとしてはエリと同様、万魔殿の者たちが用いていたものを使い分ける形を用いる。 - 48二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:05:07
待機
- 49二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:35:49
【水族館にて】
ゲヘナ風紀委員会の襲撃から翌日 アビドス高校
アサミ「皆さん、水族館に行きましょう」
ヒカル「急にどうしたの、アサミ?」
アサミ「流石に砂漠は見飽きました。というか砂が目に入りすぎてキツイです。なので今度は水がたくさんあるところに行きましょう」
ヒカル「それもそうね…対策委員会の皆も連れて行きますか」
DU市内 水族館
ノノミ「皆さん、見て下さい!ゴールデンマグロですって!」
ヒカル「…これはこれは、見事に金ピカね…」
セリカ「先生、先生!こっちの水槽には沢山のチンアナゴがいるわよ!」
ヒカル「…!」
セリカ「ど、どうしたの先生!?顔が怖いわよ!?」
ヒカル「…何でもないわよ、セリカ」
アサミ「…危なかったですね、先生。危うく『チンアナゴ?エッチなものは駄目!死刑!』って言いそうになりましたね」
ヒカル「こんなしょうもないことでボロ出したくないわよホント…」 - 50二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:43:25
シロコ「ん、貝合わせコーナーだって。同じ貝殻を合わせて遊ぶんだって」
ノノミ「こちらは、アワビの水槽だそうです。何故か涎が出てきちゃいますね♡」
ホシノ「見て、イルカの親子だよ。海中でお乳を与えて育てるなんて、器用だね」
ヒカル「…何これ、拷問か何かなの?」
アサミ「直ぐに卑猥な意味に結びつける先生の思考ルーティンが一番駄目な理由だと思うのですが」
ヒカル「いやー、沢山歩いたわね。シロコたちもお土産沢山買えたみたいだし、来て正解だったわ」
???「あら、先生ではありませんか」
ヒカル「ん?あら、ユウカじゃない。珍しいわね、ここに来るなんて」
ユウカ「丁度DUの方に用事がありましたので。まさかこちらでお会い出来るなんて…」
???「ユウカ先輩、こちらが噂のシャーレの先生ですか?」
ヒカル「ん?貴方は…」
???「どうも初めまして!セミナーにて書記を務めています、生塩アリスと言います!ユウカ先輩がお世話になっています!」
- 51二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:50:17
ヒカル「アリス、アリス…ねぇ…」
アリス「…?どうか致しましたか?」
ヒカル「いえ…知り合いに貴方と同じ名前の人がいたのを思い出したのよ」
シロコ「ん、先生その人たちは誰?」
アサミ「シャーレ・オフィスを七囚人から奪還する際に助けて頂いた人です」
ユウカ「ミレニアム二年、セミナー会計の早瀬ユウカよ。それと…ウツツちゃん、久し振りね」
ウツツ「…お久しぶり、です。ミレニアムではお元気でやっておりますか?」
ユウカ「ええ。それと、私の父さんが貴方に話があるって。後で顔を会わせて来たらどうかしら」
ウツツ「…そう、ですか」
ヒカル「…?」
アリス「そうだ、皆さん記念撮影を撮りませんか?私がカメラで撮りますので!」
シロコ「ん、それはいいね。思い出はしっかり残すべき」
アサミ「…ふふ」
ホシノ「おっと、アサミちゃんが笑うの、おじさん初めて見たよ」
- 52二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 22:12:53
その夜 ブラックマーケット某所
黒服「…久し振りだな。ミレニアムでは上手くやれているか?」
ユウカ「ええ、お陰様で。父さんもお疲れ様。さっき、ウツツさんが来たでしょ」
黒服「ああ、彼女もアビドスで上手く過ごせている様だよ。まぁそれが私にとって一番の成果でもあるのだがね。コーヒーでも飲むか?」
ユウカ「ええ、頂くわ」
ユウカ「…父さん、まだ悪巧みを続けているの?今日、水族館でシャーレの先生とアビドスの皆と出会ったわよ」
黒服「そのことも、ウツツから聞いたよ。まぁ、カイザーと手を組んでいるとはいえ、彼女と敵対するつもりは殊更ない。何せ彼女はゲマトリアよりも大きな組織を有している。機嫌を損ねる様なことはしたくないのが正直なところだ」
ユウカ「本当に…?」
黒服「実の娘の前で、実にもならない嘘で誤魔化す様な父親だと思うかい?ともあれ、私にとっては非常に興味深い存在だ。いつかは、真正面から会ってみたいものだよ」
- 53二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 22:13:30
待機
- 54二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 22:32:15
【星空の下で】
アビドス高校屋上
ヒカル「…おや、ホシノじゃないの。ちゃんと寝ないと」
ホシノ「うへ、先生?そっちこそどうなの?」
ヒカル「私はただ一服しに来ただけよ。しかし、星空は凄い綺麗ね…これの観光ツアーで大分稼げるんじゃないかしら?」
ホシノ「うへー、そんなのは考えたこともなかったなぁ…おじさんにとっては余りにも見慣れた光景だからさ…」
ヒカル「その見慣れた光景も、アビドスの外から来た人にとっては新鮮なものなのよ。どうしたらこの砂漠に魅力あるものをもたらすのか、考えていかないとね」
ホシノ「…もしかして、砂祭りの話を聞いて思いついた?」
ヒカル「まぁ、ね。この砂漠だらけの地でどう楽しく過ごすか、それを見出すのも借金を返済して、かつてあった賑わいを取り戻すヒントになるかなってね」
ホシノ「うへ、ポジティブだねぇ」 - 55二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 22:37:40
ヒカル「…そういえば、先輩について色々と話してくれたわよね」
ホシノ「そうだね。先輩は確かにドジでおじさんがいないと何にも出来なかった人だったけどさ、問題解決に対しては凄い真剣な人だったよ」
ヒカル「そう…私のトリニティにいた先輩も、似たような人だったわ」
ホシノ「うへ、そうなの?」
ヒカル「ええ…文武両道をモットーとして生きていた人で、それでもよく体重を気にしていて、ダイエットも三日坊主だったけど…それでも頼りになる先輩だったわ」
ホシノ「へぇ、そうなんだ…意外だねぇ」
ヒカル「…こうしてわざわざ腹の中を見せて話したんだから、そっちも話すこと話してくれると嬉しいのだけど。どうかしら?」
ホシノ「…」
- 56二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 22:46:09
- 57二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 07:32:40
ホシノが立ち去った後
ヒカル「…アサミ、いるかしら?」
アサミ「はい、こちらに」
ヒカル「…キヴォトスの『外』にいたときのこと、覚えてる?」
アサミ「ええ…『外』では銃を扱った喧嘩は厳しく禁じられ、さらにキヴォトスでは当たり前に行われている犯罪行為も確実に取り締まられていました。『あの人』にとって理想の世界でした」
ヒカル「そう…だからこそ『あの人』は自身の経験と理想を元に、対策委員会の皆を他の学校へと転校させたし、罪を犯した者を厳しく裁いた…それが結果として過ちになるだなんて、理不尽よね」
アサミ「はい…だからこそ、その理不尽に抗って得た奇跡は、余りにも眩しい。先生はそれを手にするべく、こうして彼女たちと共に理不尽に抗っている」
ヒカル「ええ…何としてでも、カイザーの野望を阻止するわよ」
- 58二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 07:52:40
カイザーPMC基地内部
オジマンディアス「…ゲマトリア、いや、黒服はここに来て及び腰となった。『まがい物』で満足しているなど、研究者らしくない」
キングゥ「そう言うな、オジマンディアス。我々は手を組む際、彼が最も欲していたものを見せてやったんだ。結果さえ分かれば、後は好きにさせる…放任主義って奴さ」
オジマンディアス「だから、対策委員会がカイザーPMC基地を訪れる前、貴方はホシノに接触したと?」
キングゥ「カイザーPMCが上手く煽ってくれて助かったよ。これで彼女はやれる事が一つに絞られていく。そして我々の下に来なかったとしても…今の我々なら勝てるよ」
オジマンディアス「…悪どい脚本を書いたものだね、キングゥ。これも、貴方のシナリオ通りって訳ね」
キングゥ「…さて、対策委員会。君たちは明日、この理不尽に対してどう立ち向かうかな?」
- 59二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 08:24:37
【大人たちの戦い】
翌朝 アビドス高校
アヤネ「先生、大変です!部室にこんなものが!」
ヒカル「これは…退学届!?それに、手紙…?」
アサミ「いつの間に、こんなものが…取り敢えず、見てみましょう」
ヒカル「…ホシノ…やっばりまだ、何か隠してたわね…」
アサミ「先生、彼女の居場所をサーチしますか?」
ヒカル「…いや、私たちはすでに先手を打たれているわ。エリに連絡入れて、そろそろカイザーが調子に乗ってくるわよ」
シロコ「カイザーが…!?」
ヒカル「手紙の内容が本当なら、カイザーはホシノのいないアビドス高校を破壊しに来るわよ。アヤネ、そちらはどうかしら?」
アヤネ「お待ち下さい…今、確認しました!相当な規模の武装集団が侵攻中です!」
ヒカル「ドンピシャリね。皆、行くわよ」 - 60二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 08:40:48
「者ども、進め!今こそこのアビドス全土をこの手に収めるとき!」
カイザーPMC理事の号令に合わせ、数百のオートマタと戦車部隊が列をなして進む。その上空には数機の攻撃ヘリコプターも展開し、アビドス市街地を我が物顔で練り歩いていく。
「暁のホルスを欠いたアビドスの対策委員会など恐れるに足らず!この圧倒的な戦力で蹂躙するのだ!」
装甲車から発破をかける理事は、満足げに椅子に座る。そうして軍勢の先陣が市街地を抜けようとしたその時だった。
突如として、廃墟の中からミサイルが飛び出し、オートマタの隊列に降り注ぐ。一度に十数体のオートマタが吹き飛ばされる中、理事の乗る装甲車の周囲に多数の砲弾が降り注いだ。
「な、何事だ!?」
「…まさか、このままアビドス高校へ進軍できるとでも思ったのかしら?ここから先は行かせないわよ」
- 61二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 12:58:59
「なっ、貴様は…!?」
「シャーレの先生…我らと対立する気か!?」
目の前に現れた女性に対し、理事たちは驚く。一度はカイザーPMC基地を訪れ、恫喝と理不尽で以て黙らせた筈の者がどうしてここに。
「なに、私はあくまでもアビドスの対策委員会の味方だからね。それに—私だけを黙らせればいいなんて甘いわよ」
その直後、空中を飛んでいた攻撃ヘリが爆発。墜落していく。そしてビルの屋上から声が響く。
「私たちもいますよ、カイザーPMC」
「なっ…貴様は、DUの万屋!」
「理事、便利屋もいます!」
兵士たちが辺りを見回し、いつの間にか対策委員会や便利屋に囲まれていることに一同は気付く。ヒカルは胸元のポケットから一枚のクレジットカードを取り出し、笑みを浮かべる。
「私、こう見えて大金持ちなんでね。それに彼女たちとの間には仁義もある。貴方たちが素直に私たちを門前払いしてくれたお陰で、依頼を出す暇が出来たわ」
そう言ってヒカルは、ライフル銃を取り出す。そしてロングコートの隙間から黒く大きな翼を広げた。
「では—始めましょう。大人の戦いというものを」
- 62二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 13:13:31
「皆、行こう」
シロコの合図に合わせ、対策委員会と便利屋68の面々は攻撃を開始する。
「お仕置きの時間ですよー!」
「ハルカ、行くわよ!」
「は、はい!」
ノノミはオートマタの列をガトリング砲の掃射で薙ぎ払い、それに合わせてセリカとハルカが前進。立て直す暇も与えずに押し込んでいく。
「アルさん、確実に指揮官級を狙っていきましょう。残りは地上に任せましょう」
「ええ。どんどん撃ちましょう」
エリとアルはビルの屋上から指揮官へ狙撃を仕掛け、指揮統率を崩していく。そこへシロコたちが攻勢を仕掛ける。
「爆弾投下はお任せ下さい!」
「それじゃ、派手に行くよー!」
アヤネはドローンで爆弾をばらまき、それに合わせてムツキが起爆。ドローンを扱うアヤネを狙う者もいたが、そこにムツキのマシンガンが牙を剥いた。
「カヨコさん、援護します!」
「ありがとう、ウツツ。少しずつ削っていこう」
後方にはウツツとカヨコが回り、ブービートラップと手榴弾の投擲で相手を撹乱していく。気付けばカイザーPMCの軍勢は三方を敵に抑えられ、前へと進むしかなかった。
- 63二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 13:26:31
そしてその前方。
「くそっ、ウロチョロ動き回り—ガッ!」
「上から来るぞ、気をつけ—グハッ!」
手榴弾の雨が降り注ぎ、火柱が兵士たちを吹き飛ばす中、地面を白い影が駆け、空を黒い羽根が舞う。
シロコはホシノが使っていた盾を片手に攻め、時には盾で相手を殴り飛ばす。ヒカルはビルの合間を飛んで上方から狙撃し、あるいは手榴弾を複数投擲。下がることの出来ない敵を削り落とす様に倒していく。
「わ、我が方の兵力、三割がやられました!さらに小隊長や中隊長の被害が大きく、混乱も—」
報告を上げる兵士が殴り飛ばされる。理事は遥か前方で暴れ回る二人を睨み、そして後方のトレーラーへと視線を向けた。
「おのれ…かくなる上は、虎の子で全員踏み潰してくれるわ!」
理事はそう言い、トレーラーに向けて駆け出した。
- 64二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 13:55:04
「よし、カイザーは崩れた。あと一押し…」
シロコはそう呟き、さらに駆ける。とその時、気配が彼女の危機感を駆り立てる。反射的に盾を構え、直後に赤い光の奔流が道路を抉り取る様に迸った。
「な、何…!?」
「皆、奥を見て!」
セリカの言葉に、一同はトレーラーの方へ顔を向ける。そこには一機の大きなパワーローダーがあった。
「許さんぞ、貴様ら!この最新型パワーローダー『ゴリアテ』で、一人残らず叩き潰してくれるわ!」
カイザーPMC理事はコックピットから叫び、両腕のガトリング砲でPMC兵士もろとも道路を粉砕する。さらにミサイルを発射し、それらがビルの屋上にいたエリたちへ降り注ぐ。
「み、味方もろとも撃ってきたわよ!」
「無差別攻撃で、まとめて蹴散らすつもりですか…!」
エリとアルが急ぎ逃げる中、シロコは『ゴリアテ』を睨みつける。
「よくも我々をコケにしてくれたな、対策委員会…!アビドスを制圧した暁には、貴様らまとめてブラックマーケットの風俗街へ売り捌いてくれるわ!無様に娼婦の身に堕ちるがいい!」
「ん…!」
シロコは銃を構え直す。とその時、彼女の肩をヒカルが優しく叩いた。
「…シロコ。それ、貸してくれるかしら?」
- 65二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 17:05:31
「ふははは、どうした!この『ゴリアテ』の前に手も足も出ぬか!」
道路を踏みしめる音が響く中、理事は自信に満ちた様子で言う。戦車部隊もヒカルの『爆撃』から逃れたものは前進を再開させる。そんな中、ヒカルはシロコから盾を借り受けると、それを前面に立てて駆け出した。
「愚かな、馬鹿正直に突っ込んできおって!」
理事は怒鳴り、そして真正面へ弾幕を張る。がその時、ヒカルは懐から発煙筒を取り出してばらまき、煙で姿を晦ます。
「猪口才な、そんな小細工でこの『ゴリアテ』を倒せるとでも―」
とその時、足元にいくつもの反応が浮かび、『ゴリアテ』は即座に飛び上がる。それと同時に周囲にいた戦車が火柱に呑まれ、黒煙がビルの合間を埋め尽くす。
「地雷…いや、ドローンか!?」
「生憎、この手の小細工をしてこないと生き残れない世界に長くいたのでね」
その直後、理事の顔面を四角い物体が捉える。ヒカルが急接近してシールドで殴ったと気づいた者はここにはおらず、一同が『ゴリアテ』を視界に捉えた時にはその巨体は道路に倒れていた。
- 66二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 17:15:29
「…知ってるかしら?遥か昔、さる若者は小石一つを投げて、巨大な巨人を討ち取ったそうよ」
『ゴリアテ』の長大な砲身の前で、ヒカルは空中に浮かびながら言う。そして懐から、一つの手榴弾を取り出した。
「そしてこの怪物を倒すのに、特別な武器などいらないわ」
そう言って、手榴弾を砲口へと放り込む。そして道路に降り、スタスタと離れていった数秒後。『ゴリアテ』の巨体は爆炎に呑まれた。
「り、理事!」
「急ぎ、救出しろ!HQまで撤退だ!」
壊滅したカイザーPMCが撤退を開始する中、ヒカルはシロコへ歩み寄り、シールドを返す。そして深く息を吐いた。
「ふぅー…これから忙しくなるわよ、皆。でもその前に、ちゃんと休みなさい」
「―恐ろしい。あの聖戦を生き残って藻掻き続ける者がここまでやるか」
「―枢機卿ペトロとアンデレ、アヌビスとフェンリルは一体何をしているのか。あの様な脅威は即座に排除しなければならぬ」
「―すでにホルスの神秘を手中に収め、『使徒』の人造も開始されているとはいえ、このままでは我らの目的が阻止されてしまう。急ぎ対策を取らねば」
「―然り。全ては『名もなき神々』のために」
- 67二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 17:23:08
【大人の責任】
ブラックマーケット某所
???「…どうぞ、お入り下さい」
ヒカル「…友人に頼んで、カイザー・グループとよく連絡とか行っている企業や組織、これまでホシノに接触してきた人を調べて、ようやく辿り着いたわ」
???「まさか、そうして私のところに足を運んで下さるとは…感激の至り。では改めまして自己紹介を。私はここでは『黒服』と呼ばれております。私たちは『ゲマトリア』、ここキヴォトスにて研究を営んでいる組織です」
ヒカル「研究、ね…そのために生徒を危険な目に遭わせることも厭わないと?」
黒服「クックックッ…私はあくまでも同意を求め、契約で承認を得ておりました。まさかそれに首を突っ込む気ですか?」
ヒカル「生憎、彼女の出した退学書類には大人の代表である私のサインはない。契約を重んじる貴方ならば、無効となる条件もご存知の筈では?」
黒服「ほう…あくまでも、彼女を取り戻すためにここに来たと…ですが、それでカイザー・グループはアビドスから去りますかね?」
ヒカル「そう、ね…」
ヒカル「…私はかつて、世の中など何一つ分かってない馬鹿だった。それだけに大人になって、多くの苦労をしてきた。だからこそ私は彼女を助けに来た」
ヒカル「それに、私だって全くの無策じゃないわ。すでにヴァルキューレの方にいくつか情報を流して、法的措置でカイザーに対抗出来る様にもしている…私は彼女たちを助けるためなら何だってするわよ」
黒服「成程…それが、貴方の覚悟というわけですか」 - 68二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 19:56:58
ヒカル「あと…貴方のところにウツツも通っていたとも聞いているわ。彼女…一体何者なの?」
黒服「それを気にするとは…まぁいいでしょう。どのみち、私は貴方に協力しなければなりませんから」
ヒカル「協力…?」
黒服「…二年前、このアビドスには一人の生徒がいました。その名は梔子ユメ。彼女はアビドス生徒会最後の生徒会長でした。そしてその副委員長は…」
ヒカル「…ホシノね。でも、どうしてその二人を…」
黒服「私は、このキヴォトスに住まう者たちを研究しております。その一環で私は、梔子ユメの亡骸と小鳥遊ホシノの僅かな遺伝子から人造人間を作り出し、キヴォトスの生徒を構成する『神秘』を観測することと致しました」
ヒカル「…まさか」
黒服「ええ、お察しの通りです。が、私は敢えて作り、その後は好きに行動させるのみに徹しております。あくまで私は、『神秘は人の手で作れるのかどうか』を知りたかっただけですので」
ヒカル「…」
黒服「…制作の際、私はカイザー・グループに対して資金を求めました。カイザーにとってはオートマタに代わる新たな兵器を作る機会だったのでしょうが…生命はそう容易く量産出来るものではない。私はある程度のデータを提供して以降の制作をやめておりますが、カイザーは諦めていない模様です」
黒服「…アビドス砂漠のカイザーPMC基地に、ホシノさんは囚われています。彼女さえあれば彼らはクローンなり何なり、理想の兵士を生産しようと試みるでしょう。ですがそれは私の研究理念と相反する愚行です」
- 69二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 20:03:18
ヒカル「…つまりは、貴方の研究によって始まったカイザーの下らない野望を潰し、自身の好奇心の後始末をしてほしいと?」
黒服「…極論としてはそうです。どのみち、カイザーはアビドスを持て余すこととなります。研究の先で破滅の可能性を見た以上、我々は大人しく引き下がるのみです」
ヒカル「…外道には外道なりの義理がある、か」
黒服「せめてもの償いとして、貴方にはカイザーPMC基地の地図と詳細な資料を提供しましょう。どのみち彼らを糾弾するのです、その武器は多ければいいものでしょう?」
ヒカル「…全く、食えない男ね。家族から嫌われるわよ。最も—家族と呼べるものがあるのかどうかすら、分からないけどね」
黒服「…食えないのはお互い様でしょう?清瀬ヒカル先生…」
- 70二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 20:58:24
【生徒のためならば】
トリニティ学園
サオリ「やぁ戦友、久し振りだな」
ヒフミ「お久しぶりです、アサミさん!それに対策委員会の皆さん!」
アサミ「久し振りですね、二人とも。生徒会の皆さんに話を通したいのですが…」
???「あれ、珍しいお客さんだね。ティーパーティーに用事?」
サオリ「ミカ様…また勝手に出歩いて…」
アサミ「サオリさん、この方は?」
ミカ「やっほ、私はトリニティの生徒会『ティーパーティー』で首長の一人を務めている聖園ミカだよ。貴方たちは一体何の用事でここに来たの?」
ヒフミ「…という訳なんです。先生の方からも色々と資料が提出されています、どうか手伝って下さいませんか?」
ナギサ「成程…エデン条約の締結前、大きく動くことは出来ませんが…ヒフミさんにサオリさん、やり方は貴方たちにお任せします」
サオリ「分かりました、ナギサ様」
サオリ「という訳で、ここトリニティの顔見知りに声をかけてみるよ。戦友も頑張ってくれ」
アサミ「はい。次はゲヘナですが、先生は無事にやれているでしょうか…」 - 71二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:04:59
ゲヘナ学園 万魔殿
エルベ「マコト、砲兵部隊を借りるわよ。今度風紀委員会の連中と愉快な遠足をする事となったのでね」
マコト「ど、どういう事でしょうか…それに、一体どちらに…?」
エルベ「なーに、悪い様にはしないわ。アンタにとっても、風紀委員会にとってもね」
イブキ「マコト先輩、エルベおねーちゃんに対して凄い腰が引けてるね?どうしてなの?」
イロハ「初めて出会った時に色々とありましてね…」
サツキ「詳しい事は知らない方がいいわよ」
チアキ「そういえば、シャーレの先生は風紀委員会の方に訪れていると聞きましたが、どうしていますかね?」
エルベ「どうにか話は通したが…よくイオリの足を舐めてやったわね。そういう事に対して真っ先に『死刑』言うタイプでしょうに?」
ヒカル「あの時の発言はボイスレコーダーでしっかり言質取ってるし、それにいちいち反応してる暇は無いわよ。後は、便利屋の方だけど…」
エルベ「それならエリの奴に任せましょう。なに、便利屋の平社員だった頃とは違って口はたつ様になってるしね」
- 72二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:23:09
復帰したはいいけども不安なので一応待機
- 73二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 22:55:52
待機
- 74二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 06:46:22
保守
- 75二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 07:42:46
まさかアザミという非常によく似た名前の生徒が登場するとはな
- 76二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 07:43:14
私も目から鱗でした…
- 77二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 07:54:16
ヒカル「よし…皆、準備は出来た?」
シロコ「ん、ドローンも整備したよ」
ノノミ「弾薬もバッチリです!」
セリカ「いつでも行けるわよ!」
アヤネ「移動には自動車を使いましょう。すでに整備済みです!」
ウツツ「後は、トリニティやゲヘナが手を貸してくれるかどうかだけど…」
アサミ「一応、エリさんと共に最悪の場合も想定していますが…シロコさん、ホシノさんの盾は持ちましたか?」
シロコ「ん、ここに」
ヒカル「…それじゃあ、ホシノを連れ帰るとしましょう」
- 78二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 08:54:44
【砂漠に鴉と狼は踊る】
アビドス砂漠の中にある、巨大な要塞。その近くに対策委員会とヒカル、そしてアサミの七人はいた。
「待たせたな、先生。それに戦友」
「お待たせしました、皆さん」
とそこに、エリとサオリ、そしてサオリの率いる三人の少女たちが現れる。それを見たシロコたちは目を見開く。
「サオリさん!それにエリさんも…」
「エルベも砲兵部隊をちゃんと連れてきましたよ。あとシロコさん、ファウストより伝言です。『ティーパーティーは砲兵を貸し出した』とのことです」
エリの話を聞き、ヒカルは小さく頷く。そして砂丘の向こうにある要塞を睨み、コートの裏から一丁のアサルトライフルを取り出した。
「砲兵隊の『演習』を合図に、突撃するわよ。カイザーのお調子者たちにはご退場願いましょう」 - 79二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 11:50:37
太陽が空の頂点に差し掛かったとき、広大な砂漠に砲声が轟く。
「なんだ…!?」
「砲撃だ!外から撃たれてるぞ!」
カイザーPMC基地の長大な防壁に砲弾の雨が降り注ぎ、業火が鉄筋コンクリート製の壁を貫く。それは彼女たちにとって合図でもあった。
「皆、行こう」
ヒカルの合図に従い、対策委員会は外壁が破損した箇所に向けて走り始める。その後にはエリとサオリたち四人の少女たちが続き、一行は基地防壁の砲台が砂丘の向こうからの砲撃で破壊されていく中を駆ける。
「敵襲ー!敵襲だ!」
「対策委員会め、性懲りも無く来やがって!」
カイザーPMCの兵士たちや装甲車両が動き出す中、その真上から対戦車ミサイルやロケット弾が降り注ぐ。その攻撃の正体は二機のヘリコプターによるものだった。
「対策委員会はすでに基地内部へ入り込んだわ。私たちは空から支援するわよ」
「チナツ、貴方とアコはヘリによる支援攻撃に徹しなさい。私とイオリはこのまま突入する」
ヒナはイオリと共にヘリコプターから飛び降り、カイザーPMC兵士に向けて弾幕を叩きつける。イオリも外壁の屋上から狙撃を仕掛け、対策委員会へ攻撃を目論む敵を撃ち倒していった。
- 80二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 13:09:23
「理事、敵は複数方向より攻めてきています!シャーレの先生や対策委員会のみならず、ティーパーティー警護隊の砲兵隊に万魔殿親衛隊の砲兵隊、ゲヘナ風紀委員会に便利屋までもが…!」
カイザーPMC基地の司令室で、オペレーターは顔を真っ青にして報告する。理事は机に拳を打ち付け、怒鳴る様に命じる。
「ゴリアテ部隊とデカグラマトン対策部隊も投入しろ!遠慮するな、全力で叩き潰せ!」
理事はそこで席を立ち、入り口に向かいながら言う。
「私は『試作兵器』を起動してくる!我々を侮ったツケ、この場で支払ってもらうぞ!」
「おやおや、理事は大分お怒りの様だね。さて、そろそろこの場を去るとするか」
「ん—カイザーとの繋がりとかはアヌビスに頼んで消しておこう。どのみち私たちは彼らを捨てる予定だったし」
- 81二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 14:53:22
「もうすぐ、ホシノさんが囚われている施設の入り口に辿り着きます!後は—」
アヤネが走りながらナビゲートしていたその時、ヒカルとシロコが前に立ち、盾を構える。その直後、赤い光の奔流が盾に叩きつけられた。
「な、何なの一体!?」
「今のは、『ゴリアテ』の…!?」
セリカとノノミが狼狽える中、目前に巨大な影が現れる。それを見たサオリやヒナは言葉を失った。
それは、四脚の巨大なロボット兵器だった。巨大なビーム砲と二門の大砲、そして六門のガトリング砲を備えたそれは、『ゴリアテ』よりも遥かに大きかった。
「なんだ、この化け物は…」
「カイザーPMC…こんなものを開発してたというの…!?」
『ふははは、驚いたか!これこそ我がカイザーPMCの決戦兵器!デカグラマトンや『無名の司祭』の技術を反映させて開発した『ザーリオン』である!』
操縦者であろうカイザーPMC理事の声が響き、エリとエルベは顔を歪ませる。
「カイザーPMC…これはとんでもないものを開発してた様ですね…」
「成程、ヒカルが随分と警戒してた訳だ」
- 82二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 21:11:00
突如として現れた、未知の兵器に対し、ヒナやサオリたちは警戒を強める。その最中、ヒカルは『ザーリオン』を睨みつつ、アサミへ視線を向けた。
「…アサミ。シロコたちと共に先に向かって。私はコイツを相手にするから」
「…分かりました。ですが、この兵器は施設入り口付近に位置取る形にいます。出来れば隙を作る形でお願いします」
短い会話の後に、ヒカルは指を鳴らす。とその直後、幾つものヘリコプターが現れ、大型のロボットを降ろし始めた。
「何なの、このロボット軍団は…!?」
「これは…デカグラマトン用に開発したっていう…!」
アルやエルベが驚きを顕にする中、ヒカルは笑みを浮かべながら言う。
「元々、対策委員会のみで相手しなければならない時に備えて用意していたものだけど…使い惜しみをしないのが大人のやり方よ」
そう言い、背中の翼を広げる。そして『ザーリオン』に向けて羽ばたいた。
- 83二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 22:32:32
ヒカルが空に羽ばたくのと同時に、シロコたちが駆ける。それを踏み潰そうと『ザーリオン』が足を上げるが、直後に周囲に展開した大型ロボットが銛を投射。
金属音を響かせながら足に突き刺さったのを確認しつつ、ロボットはワイヤーを引っ張り始める。
ヒカルはガトリング砲の一基に迫り、手榴弾を投擲。根本で炸裂し、振り返る間もなくキャノピーへ迫る。
『おのれ、ちょこまかと!』
理事は残る足を動かしてヒカルを踏み潰そうとするが、側面に銃撃が叩きつけられる。サオリとヒナが援護射撃を仕掛け、理事はガトリング砲で迎え撃つ。
「座標送りました!お願いします!」
が、そこにヒフミが送り込んだ座標データに向けて、ティーパーティー警護隊と万魔殿親衛隊の砲兵隊が発砲。大量の砲弾が『ザーリオン』の背部へ叩きつけられる。その砲火が降り注ぐ中をヒカルは飛び回り、手榴弾を仕掛けながら翻弄していく。
無論、ヒカルを狙って支援攻撃を目論むPMC兵士もいた。だがそこにサオリやアルの狙撃が襲い掛かり、ヒカルに対して何も出来ずに倒されていった。
- 84二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 04:05:58
- 85二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 07:23:09
『こちらアサミ、施設内に侵入!ホシノさんがいるであろうポイントに向けて移動中です!』
アサミがインカムで報告し、ヒカルは小さく頷く。そして大型ロボットに対して合図を送る。
大型ロボットは複数方向より銛を放ち、『ザーリオン』を拘束していく。そしてヒカルはその巨体を駆け上がり、懐に忍ばせていたスイッチを押した。
その瞬間、各所で爆発が起きる。堅牢であった筈の装甲が引き裂かれ、動きが鈍くなる。
『き、貴様…!』
それでも理事は、ガトリング砲を動かしてヒカルを狙おうとしたが、そこへ駄目押しとばかりに砲撃が降り注ぐ。全身が炎に包まれ、武装の大半が潰される。そしてヒカルはキャノピーの前に降り立ち、それを引き剥がした。
「シャーレ…貴様はどうして、我々をそこまで敵視する…!こんな貧乏な小娘どもに肩入れしても、貴様に何の徳も無いだろう!」
理事が怒鳴るのに対し、ヒカルは無言でアサルトライフルの銃口を向ける。そして理事に向けて言った。
「私は、キヴォトスで困っている生徒たちの味方だからよ。それに市街地で、貴方は対策委員会の皆を風俗街に売り飛ばすと言ったわよね?私はそんな破廉恥な輩にはこう言う事としてるのよ」
彼女は、嗤った。
「—『エッチなのは駄目、死刑』…ってね」
銃声が、廃虚と化しつつある要塞に響いた。
- 86二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 08:37:47
基地の施設内を、シロコたちは駆ける。盾を持つシロコを前に、アサミが手榴弾を投擲して敵兵士を吹き飛ばし、前へ前へと進んでいく。
「間もなく、ホシノさんが囚われていると思しき施設に辿り着きます。後は急ぎ脱出するだけ―」
アサミはそう言いながら、目前の扉を開ける。そして中に入ったとき、彼女の視界に『それ』が飛び込んできた。
「…!?」
「なに、ここ…!?」
遅れて入って来たセリカも、言葉を失う。そこにはいくつものカプセルが並んでおり、その中には少女が収められていた。
「カイザーは、ここで一体なにをしていたんですか…?」
「…」
一同が声を失う中、ウツツはコンソールの一つに近寄り、タッチパネルを見つめる。それから十秒後、操作をし始めた。
「ちょ、ウツツ先輩!?」
セリカが戸惑いの声を上げたその時、空気が抜ける様な音とともに、カプセルの中を満たしていた液体が抜かれていく。そしてカプセル自体が横倒しとなり、開けられていった。それを見つつウツツはブレザーを脱ぎ始める。
「…皆、この子たちも助けよう。先生やホシノ先輩も、きっと同じ決断をする筈だから」
「…ん、そうだね」
ウツツの言葉に、シロコも続いてブレザーを脱ぎ始めた。
- 87二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 10:00:30
目覚めた時、ホシノの視界に入ってきたのは見慣れたアビドスの青空だった。
「…全く、心配したわよ」
声をかけられ、ホシノは視線を変える。ヒカルは彼女の頭を膝に乗せつつ、頬を優しく撫でる。
「先生…」
「ホシノ。例えどんなに話しづらい事があったとしても、ちゃんと私や対策委員会の皆に相談して。一人だけでは解決出来ない事なんて沢山あるのだから。私たちも私たちなりに、貴方の問題に向き合ってあげるから」
ヒカルは諭す様に語り、しかし優しい笑顔で言った。
「それと…おかえりなさい」
「…ただいま」
ホシノの照れる様な声が、小さく聞こえた。
その後、カイザー・グループのアビドス自治区における不法行為が報道され、市街地地域を賠償としてアビドス高校に返還する事が決定された。また、アビドス廃校対策委員会も生徒会の後継組織として認められ、アビドス自治区の復興は再開したのだった。
- 88二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 10:29:07
【砂上の自警団】
アビドス自治区 市街地
ヒカル「シャーレでの仕事が一段落して再び来たけど、復興は進んでいるみたいね」
アサミ「カイザー・グループが砂漠という環境を利用して違法な兵器を開発してたのが相当問題視されましたからね…ついでに風力発電所の建設も開始されたので、電気の販売で利息も多く返せる様になってきたそうです」
ヒカル「それは良いことね。あら…」
ウツツ「あっ、先生!」
???「ん、先生久し振りだね」
ヒカル「あら、ウツツにシロノ、久し振り。自警団は順調?」
ウツツ「はい、お陰様で。シロノたちもここに慣れてきました」
シロノ「シロコ先輩たちも、他の仕事やアルバイトに時間かけられる様になったって喜んでくれてるよ」
ヒカル「それは良かったわ。これからも頑張ってね」 - 89二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 10:39:52
アビドス高校
アヤネ「お久しぶりです、先生。そちらのお仕事は順調ですか?」
ヒカル「ええ。百鬼夜行での仕事が終わったところだから顔を出しに来たけど…人も増えてきたわね」
アヤネ「はい。最近は砂漠の上でのキャンプ体験とかも始めまして、観光客も少し増えてきたんです」
ヒカル「以前ホシノに言った事が実行されてる…行動が早いわね」
シロコ「あと、ウツツが立ち上げた自警団も沢山活躍してくれてるよ。お陰で私たちも仕事がやりやすくなった」
ヒカル「あの施設で拾った子たちがここまで活躍してくれるなんてね…でも、彼女たちに余り無茶をさせない様にね」
シロコ「ん、分かってる。後輩をちゃんと助けるのが先輩の仕事だから」
- 90二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 10:48:01
元カイザーPMC基地
???「…」
オジマンディアス「…まさか、『試作品』をそのまま生かして彼女たちに預けるなんて。情でも沸いたの、アヌビス?」
アヌビス「ん—私は『私たちとカイザー・グループとの繋がり』は確実に抹消した。でも、彼女たちは違う。それに彼女たちはそんな事知らないから」
オジマンディアス「対策委員会の者たちの遺伝子を組み合わせて開発した人造人間…アレらを放置したことに対して、無名の司祭は大分不満を抱えているわよ」
アヌビス「彼女たちの存在程度で狂うほど、計画は杜撰なものじゃない…キングゥはそう言ってくれた。それにゲマトリアを牽制する役割としても使えるよ」
オジマンディアス「ん…キングゥがそう言ってたなら仕方ない。なら私たちは見守りましょう…夢の如く現れた、偽りの神秘たちを」
- 91二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 11:01:39
オリジナル生徒紹介
・四月一日ウツツ
所属・アビドス高校廃校対策委員会→アビドス自警団
誕生日・7月7日
武器・アサルトライフル
アビドス高校に所属する2年生の生徒。
元々はゲマトリアの黒服がキヴォトスの神秘を研究するために、特殊な経路で入手したユメとホシノの遺伝子から作り出した人造人間であり、見た目とヘイローもユメと過去ホシノを足して2で割った様なものになっている。
対策委員会編2章後、カイザーPMC基地で保護した人造人間たちと共にアビドス自警団を立ち上げ、アビドス自治区における風紀委員会の役割を担っている。
彼女は大人の手で偽りの夢想として作られた。しかしアビドスと対策委員会を思う気持ちは偽りではなく、それこそ現(うつつ)の理想であった。 - 92二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 11:13:22
・満月シロノ
所属・アビドス自警団
誕生日・5月16日
武器・スナイパーライフル
アビドス高校に所属する1年生の生徒。
ゲマトリアと手を組んでいたカイザー・グループが、強力な傭兵を作るために開発した人造人間で、ウツツ同様特殊な経路で入手したシロコとノノミの遺伝子を組み合わせて作られている。
アビドス編入後、シロコを先輩として慕いながら、トレーニングやサイクリングを趣味としている。
カイザーPMC基地を制圧した対策委員会は、そこで複数人の作られた命を見つけた。戦うことだけを目的に作られたその命に、対策委員会は生きることを新たな目的として与えた。
- 93二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 11:56:31
【SS・むかしばなし】
むかし、ある学校に四人の仲良しなパーティーがありました。
勇者と詩人、絵描きに戦士からなるその四人は、学校で仲良く楽しく暮らしていました。
しかし勇者は、その中に邪悪な魔王を封じ込めており、女王から恐れられていました。
そんなある時、戦争がありました。女王や勇者の仲間たちは恐ろしい敵の前に倒れ、勇者も激しい戦いの前に力尽きてしまいました。
全てが終わった後、魔王は深く悲しみました。それから暫くして、魔王は三人の妖精を作り、魔法使いとなって別の世界へ旅立ちました。
「…シャーレでの調子はどうだい、コハル?いや…今はヒカルか」
「お陰で順調よ、ミウミ。いや…そっちでは『ミス・モルガン』なんて大層な名前で楽しくやっているみたいね」
「まぁね、ミレニアムは毎日楽しいことばかりさ。まぁそろそろ、『お姫様』を探しに来た方がいい。丁度そっちに依頼が来たところだろう?」
「ええ。でも、懸念はあるわ。何せセミナーの書記が彼女だったのだから。特に一番驚いていたのは貴方なんだし」
「だが、善は急げとも言うだろ?ミレニアムで待ってるよ、先生さん?」 - 94二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 14:36:46
【ミレニアムの魔法使い】
ミレニアム自治区 とある工房
アリス「モルガンさん、いますかー?」
???『あれ、アリスちゃん?マスターに何の用なの?』
アリス「はい、この前頼んでいたセミナーの備品の修理が終わった頃かと思いまして…」
???「おや、アリスじゃないか。待たせたね…MI、持ってきてくれるかい?」
???『はい、マスター。只今持ってきます』
アリス「モルガンさん、聞きましたか?シャーレの先生がここミレニアムに来るそうです。セミナーでは噂で持ちきりですよ」
モルガン「おっ、ヒカルの奴が遂に来たのか。丁度いい、こっちもアイツに用事があったしね。MO、ここの留守番は任せたよ!」
MO『了解、マスター!』
MI『アリスさん、例の備品のパソコンを持ってきました。こちらをどうぞ』
アリス「ありがとうございます。では、私はこれで!」
モルガン「気を付けて帰りな。さて…こっちもそろそろ出かけますかね」 - 95二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 16:45:57
ゲーム開発部部室
モルガン「…で、どうしてこうなったんだい?」
ヒカル「…」頭に大きなタンコブ
アサミ「…開発部の部室に向かっている途中、窓の外からゲーム機が飛んできまして…それが先生の頭に当たりました」
モモイ「本当に来てくれるのかどうか、ミドリと言い合いをしてて、その際プライステーションを投げたら窓の外に飛んでいっちゃって…」
モルガン「成る程、概ね分かったよ。で、ヒカル…こんな仕打ちをされた上で手伝うのかい?」
ヒカル「…生徒から助けを求められた以上は手を貸すわよ。それにこんなことでいちいち目くじらを立てていたら、キヴォトスでやっていけないわよ」
モルガン「アンタらしいねぇ、そういう生真面目なところは…」
モルガン「で、モモイ。いいゲームを作る算段は立っているのかい?」
モモイ「もっちろんだよ、モルガンさん!廃墟の中にあるとされる『G.Bible』さえ手に入れば、今度のミレニアムプライスは優勝間違いなしだよ!」
モルガン「そうかい。んじゃ、私も手伝おうかね…」
ミドリ「えっ、モルガンさんも!?」
モルガン「アイツ(ヒカル)が首を突っ込んできてるんだ、面白いことになるのは間違いないだろうさ」
- 96二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 18:03:17
モルガン「さて、お宝を探しに行く前に…出てきな」コンコン
???「ひゃっ…!」
ヒカル「…あら、やっぱりロッカーの中にいたのね。彼女も連れていくの?」
モルガン「ヒカルや私がいるからといって、モモイとミドリにばかり負担かかってしまっては不平等だろう?それにユズ、自分の作ったゲームを褒めてくれた二人のために頑張りたいと相談してきたんだろ?だったら一緒に行くよ」
アサミ「…だ、そうです。ずっと引きこもってばかりでは何も進みませんよ?」
ユズ「は、はい…」
モルガン「てなわけで、三人にはそれぞれお供をつけよう。MO!MI!YZ!」
ヒカル「おお、これが噂の、貴方がお供として開発したドローンね」
MO『はいはーい、お待たせー!』
MI『マスター、ご指示をお願いします』
YZ『あの、一応ウタハさんのお手伝いは終わりましたが…これから何を…?』
モルガン「なーに、冒険って奴さ!んじゃ、ぱぱっとお宝探しに行きますかね!」
ヒカル「一応、私が先導するんだけどね…」
- 97二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 18:11:21
セミナー サロン
セミナー所属生「そういえばユウカさん、工房を構えているモルガンさんって人いますよね?あの人は誰なんですか?何かアリスさんを大人っぽくした感じですけど、本当にアリスさんとは関係ないんですか?」
ユウカ「ああ、そういえばそのことを話していなかったわね。彼女はシャーレの先生が活躍し始めた頃にやってきた人で、エンジニア部やヴェリタスによくアドバイスしてるのよ。まぁ、アリスにそっくりな人だけど親族とかの関係じゃないのは確かね」
セミナー所属生「そうでしたか…そういえば、見慣れないドローンを三機引き連れていますね。アレは彼女の発明品ですか?」
ユウカ「そうよ。アレらはモルガンさんの助手でかなり優秀なAIを搭載してるの。まぁ声がゲーム開発部の三人にそっくりなのは気になるけどね」
アリス「そういえば以前、そのことについてモルガンさんにお尋ねしたことがあります。その時はうまく質問をはぐらかされてしまいましたが…」
ユウカ「『知り合いを参考にしている』って言ってたけれど…キヴォトスの『外』にあんなお騒がせな子がいたというのかしら…?」
- 98二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 18:46:19
【出会い】
ミレニアム自治区の郊外に広がる、緑に包まれたビル群。その地域は住民から単に『廃墟』と呼ばれていた。
その廃墟に二人の大人と四人の少女、そして三機のドローンの姿があった。
『マスター、オートマタの排除を確認したよ。にしても随分と多いね…』
先頭を進むドローン、コードMOが一同へ報告を上げる中、ヒカルは廃墟の中心にあるビルを見上げる。
「モルガン、貴方の用意した地図によればここは何らかの研究所だったそうね。本当?」
「MOとかに色々と探ってもらった上で得た情報だ。ヒマリからのお墨付きもあるよ、確認するかい?」
「いえ…全知のお墨付きとなれば、安心よ」
「とりあえず、入ってみよう!」
モモイの言葉に従い、一行は目前のビルへ足を踏み入れていった。 - 99二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 22:17:04
「そういえばモルガンさん、こんな高性能なロボットを持ってるなんて本当に凄いね」
廊下を歩く中、モモイは言う。モルガンはふっと笑いつつ答える。
「まぁね、この子たちは私の自作だからね。AIもお手製の完全なハンドメイドさ」
「そういえば、YZってウタハ先輩の手伝いに行ってたって言ってたね。何のお手伝いだったの?」
『わ、私ですか?エンジニア部の新しいメカの開発とかをお手伝いしてました…』
『YZは新型ロボットのテスターとして優秀なんだよ。私やMIよりもずっと凄いんだから!』
コードMOが褒め称え、コードYZは思わずモルガンの後ろに隠れる。ヒカルはその様子を見つつやれやれとばかりに肩をすくめる。
そうして進むこと十分。一行は少し開けた場所に辿り着いた。
- 100二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 07:02:22
待機
- 101二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 08:35:43
- 102二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 08:39:10
「皆、大丈夫かい!?」
モルガンは目前で転がり落ちていった皆へ駆けつける。彼女の目前には地下へと続く入口が現れ、その先ではドミノ倒しになっている先生たちの姿があった。
『お、落ちただけで大丈夫だよ…』
「とりあえず皆、私を座布団代わりにしてるのはいいけど、そろそろどいてくれるかしら?」
「み、皆…向こうにまで続いているみたい。行ってみよう」
モモイたちは何とか立ち上がり、辺りを見回す。と光が差す場所をユズが見つけ、一同はそっちへと歩き始める。
「結構広いね…廃墟にこんな場所があったなんて…」
「こういうところは前々から連邦生徒会長や歴代セミナー会長が封鎖していたからねぇ。知らないのも当然だよ。だがいきなり床が開いて隠し通路が現れるとは…まさにダンジョンみたいだねぇ」
『マスター、前方50メートルに反応あり!誰かいるみたいだよ』
「む…行ってみましょう」
コードMOの報告を聞き、一行は足早に進む。そして光が照らす広大な空間に辿り着いたとき、一同は瞠目した。
「先生、アレ…!」
『生体反応、確認されません。ですが、アレは…』
モモイたちが驚きを露わにする中、ヒカルとモルガンはそろって目を細める。
「…まさか、こんなところにいたとはね。いわゆる『修正力』…ってものかしら?」
「同感だよ、ヒカル。だが…これで辻褄はあったね」
彼女たちのその視線の先。そこには、静かに椅子に座る一人の白髪の少女の姿があった。
- 103二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 08:51:09
「へんじがない。ただのしかばねのようだ」
「いきなり縁起でもないことを言わないで、お姉ちゃん!?」
モモイの言葉にミドリが突っ込む中、コードMOとコードMIがスキャン。その結果をヒカルとモルガンに伝える。
『マスター、これはどうやら人工物みたい。それもかなり精巧なアンドロイドの様だよ』
『身長161センチ、重量は凡そ50キログラム…スリーサイズはヒカル先生以上マスター未満でしょうか』
「…MI、余計な情報が多い」
ヒカルが突っ込む中、モルガンはタブレットを取り出す。
「それはそうとして、このまま素っ裸なのもアレだね。着るモンでも用意すんかね。マテリアルクラフターを持ってくるとしよう」
「モルガン、貴方は本当に用意周到ね」
- 104二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 11:04:54
数分後、マテリアルクラフターを載せたドローンが到着し、衣服を作り始める。その間、モモイたちは少女の座っていた椅子とその周りを調べ始める。
「だけど、なんでこんなところに…一体何なんだろ…」
「見て、椅子に何か書かれてる。文字みたい」
ミドリはそう言いながら、モモイとヒカルに文字の場所を教える。確かに手すりの部分にアルファベットらしきものが書かれているのが確認できた。
「えっと…N、O、A…ノア、かな?」
「お姉ちゃん、これ多分O(オー)じゃなくて0(ゼロ)じゃないかな?それにNと0の間にハイフンもあるし」
「…モモイは後で英語の授業が必要ね。英語分からないとシナリオを書くのも苦労する事となるわよ」
「『外』で日本語以外の文字で書かれた備品使う時でも苦労する事となるからねぇ」
大人二人の言葉にモモイが苦々しい表情を浮かべる中、アサミとユズはマテリアルクラフターが作り出した衣服を少女へと着せていく。その最中、アサミは小声で呟いた。
「…彼女は一体、どれだけの長い間、ここにいたのでしょうか。とても寂しかったでしょうに…」
- 105二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 18:47:58
「さて、一通り着せてはみたが…随分と珍しいモノがあったものだ」
アサミとユズが服を着せた少女を見下ろしつつ、モルガンは呟く。ヒカルは静かに少女へ歩み寄り、その頬を優しく撫でる。とその時だった。
『…!マスター、目前の物体より信号を検知!起動します!』
「…状態の変化、及び接触許可対象を感知。全プログラム、チェック終了。システム起動開始」
声が聞こえ、一同は視線を向ける。そして少女は目を開き、ゆっくりと起き上がった。
「うわっ!う、動き始めた…!?」
「…!」
モモイたちは驚きを露わにし、ヒカルは無言で少女を見つめる。
「…起動完了。周辺の状況確認を開始。周囲に異常は確認されず」
「うわ…まるで精巧なアンドロイドみたい…」
ミドリが皆の思ったことを口にし、ユズは不安そうな表情を浮かべる。まるで、触れてはならないものを目の当たりにしてしまった様な―。
「…私たち、かなりヤバイものを見つけてしまったんじゃ…」
『…どうするの、マスター?それに先生…』
コードMOが話しかけ、モルガンはヒカルへと目を向けた。
「…出会った、か。正攻法とは全くかけ離れたものとなるが…ここはひとつ、遊んでやるとするか」
- 106二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 18:54:40
【私は〇〇です】
ゲーム開発部 部室
???「…?」
ミドリ「…取り敢えず彼女をここに連れて来ちゃったけど…これからどうするの?」
モモイ「そりゃミドリ、決まってるでしょ?まず部活を維持するための手段は分かってるよね?」
ミドリ「それは、『新しい部員に入ってきてもらう』ことだけど…ってお姉ちゃん、もしかして…!?」
モモイ「先ずは名前だね。あの椅子に書いてあった文字から取って、『ノア』はどうかな?」
???「認証。本機の名称を『ノア』とします」
モモイ「というわけだからモルガンさん、手伝って欲しいことがあるんだけど…」
モルガン「学生証だろう?任せな、ヴェリタスやヒマリの奴にも話を通しておく」
アサミ「割と強引ですね…まぁ、現時点で取れる手段となると、それしかありませんが」
ヒカル「…さて、これからどうしようか。ノア、貴方は今どうしていたい?」
ノア「回答。現時点で私の行える機能はありません。指示をお願いします」
先生「…この調子だし、ミドリはどうする?」
ユズ「そうだなぁ…取り敢えずゲームを一つやらせてみましょう。会話がメインのRPGなら、それで基本的な話し方を覚えてくれるかもしれません」 - 107二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 19:09:39
- 108二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 19:21:47
翌朝 ゲーム開発部部室
モモイ「皆、お待たせー!」
ヒカル「んう…お帰り…」
モルガン「おや、皆大丈夫かい?あとヒカル、眠そうだけど大丈夫か?」
ミドリ「あっ、モルガンさん…私とユズがかわりばんこで相手して、先生もゲームの感想回でお話をしてあげてました」
モルガン「おや、そうかい…で、ノアは?」
ノア「はい、呼びましたか?」
モモイ「あっ、来た!取り敢えずこれを渡しておくね」
ノア「…?ノアはふしぎなカードを手に入れた!」
モルガン「…話し方はもう少し改善の余地ありかな?」
モモイ「ノア、それは学生証と言って、ここミレニアムで生徒として活動するためのものだよ。その他の学生書類もモルガンさんが作ってくれたから安心して!」
ノア「パンパカパーン!ノアは新たなジョブ『ミレニアムサイエンススクールの生徒』となりました!」
ヒカル「…モモイたちより大きな子が無邪気にはしゃいでるのを見ると、何だか不思議なものね…」
- 109二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 21:34:05
- 110二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 05:46:27
待機
- 111二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 08:28:01
エンジニア部 工房
ウタハ「…成程ね。そこの彼女の武器を拵えて欲しいと」
モルガン「カネなら私がある程度出すよ。その分ゲーム開発部の面々には手伝ってもらうからさ」
ノア「お、お願いします!」
ヒビキ「部長、それならこの拳銃はどうかな?Bluetooth搭載だからキャッシュレス決済の時とか色んな場面で使えるよ」
コトリ「私はこの人工知能搭載アサルトライフルをお勧めします!このアサルトライフルは照準支援は勿論のこと、日常に於いても様々なサポートをしてくれます!具体的には…」
ウタハ「まぁ待て、先ずは彼女に選ばせてあげよう。具体的にどういう武器が欲しいのか彼女に教えてもらってから、それに適したものを用意しよう。盛り込むのはそれからだ」
ヒカル「…貴方たち、もしかして『シンプルイズベスト』って言葉は嫌いかしら?」
- 112二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 16:52:02
ヒカル「…そういえばモルガン、エンジニア部の面々と手を組んで新しい乗り物を開発していると聞いたわよ。空飛ぶ船だそうね」
モルガン「おっ、もう耳にしてたかい。前々からオデュッセイアや連邦生徒会交通室の連中から、新たな輸送手段の開発を頼まれていてね。一先ず形にはなりつつあるよ」
モルガン「それに…これはアンタが一番必要としている奴だろう?そろそろカイザーの連中が見つけ出すだろうが、手はいくらあってもいい。違うかい?」
ヒカル「…そうね。さて…ノアは何を選ぶかしら?」
ノア「ウタハ先輩、これは何ですか?」
ウタハ「ん?ああ、これは私たちエンジニア部が独自に開発している宇宙戦艦用レールガンさ。とはいってもあくまでも技術実証用の試作品だけどね」
- 113二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 16:56:07
セミナー
アリス「ユウカ先輩、お疲れ様です!書類の整理とコユキの行った犯罪行為の処理は完了しました!」
囧「うああー、なんでー!!!」ギチギチギチ
ユウカ「…関節技をかけてる理由はさておき、お疲れ様。取り敢えず休憩に入りましょう」
アリス「そういえば、聞きましたか?ゲーム開発部に新たに部員が入ったそうです。しかもエンジニア部で試作兵器を受け取ったみたいで、モルガンさんや先生の姿もありました」
ユウカ「新しい部員?それは気になるわね…顔を出しておくとしましょう」
囧「うああーアリス早く離して下さいー!本当に関節が外れるぅぅぅぅぅ!!!」
ノア「見て下さい先生!ノアは新たな武器を手に入れました!」
ヒカル「エンジニア部謹製・宇宙戦艦用レールガン…随分とデカいモノを拵えたものね…」
モルガン「念のためにサブウェポンとして、普通のハンドガンも用意してあげたけど、随分と様になってるねぇ」
モモイ「それじゃ改めて…ノア、ゲーム開発部へようこそ!これからよろしくね!」
この後、部室の下にユウカがやって来て、ノアは彼女に対して完璧な自己紹介をする。そしてミレニアムの生徒として認められる一方で、新たな問題が出てくることとなるが、それは別の話。
- 114二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 17:11:43
ミレニアム自治区 某所
キングゥ「ふむ…さすがにハッキングに関する対策は練り上げてるか。伊達にあの戦いを生き残ったわけではなさそうだ」
???「それなら、私たちが直接仕掛けようか?相手の手駒は多機能ドローンが三機ほどしかない。十分に叩き潰せる筈だ」
キングゥ「クロムウェル。君のその戦意の高さは称賛するが、現時点では蛮勇にしかならない。助手が別の自治区に赴いているとはいえ、シャーレの先生は高い戦闘技術を有している。まだ我々が目立つ時ではないよ」
クロムウェル「そうか…一応アヌビスとフェンリルをミレニアムに送り込んでいるが、本当に放置でいいのか?」
キングゥ「あの二人の出番はまだ先となるよ。だがこのまま放置も面白くない…今回は『ミメシス』を差し向けるよ。それも、『デカグラマトン』のね」
- 115二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 17:41:22
待機
- 116二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 18:32:25
【再び廃墟へ】
翌日、ゲーム開発部の四人とヒカルは再び廃墟を訪れていた。理由は昨日の出来事だった。
「ノアはちゃんと新しい生徒として認めてもらえたけれど、ミレニアムプライスで優秀な成績を出さないと今度こそ廃部になっちゃう!急いで『G.Bible』を見つけないと!」
「部長会議にちゃんと出て、ミレニアム全体の動きを把握しなかった自身の愚かさを反省しなさい…とはいえ、確かに時間が足りないわね」
ヒカルが呆れ混じりに呟く中、モルガンは懐からタブレット端末を取り出す。そして空を見上げながら呟いた。
「後悔してる暇はないよ。今回作るのは『テイルズ・サガ・クロニクル』の続編なんだろう?下書きはユズが作っているが、それをより洗練させるためには『G.Bible』のデータも必要。となれば移動しながらある程度制作を進める必要がある」
「い、移動しながら!?大変じゃないんですか?」
ミドリが驚きを露わにする中、モルガンは一丁のアサルトライフルを背負いつつ言う。
「私とヒカルは、常に面倒ごと抱えながら仕事してきて今があるんだ。無茶の一つや二つこなしながら行かないと、この先キツいよ!」
「モルガン、過去のデスマーチを思い出させようとしないで」 - 117二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 20:06:23
『マスター、目前より複数のオートマタ及び軍用ドローンの接近を確認!』
廃墟を進んでいく中でコードMOの報告を聞き、一行は警戒を強める。その中でノアは両腕でレールガンを構える。
「敵とエンカウントしました!これより戦闘を開始します!」
ノアは真っ先に前に出て、目前のオートマタ軍団へ狙いを定める。そして引き金を引いた。
「光よ!」
大口径弾がスパークを迸らせながら飛翔し、複数の敵を吹き飛ばす。その後ろでは二人の大人が包囲を試みる敵を迎撃していた。
「MI、YZ、左右から来る敵には気をつけな!モモイたちはノアの支援に専念!」
「背中は私たちが守るから、皆はとにかく前へ進んで!」
モルガンはアサルトライフルでオートマタを一機ずつ撃破し、同時に空中に複数のドローンを展開。複数方向からレーザーを浴びせかけて敵ドローンを撃墜していく。ヒカルも複数方向に手榴弾をばら撒きながら狙撃を行い、圧倒的な数の敵を倒していく。
「二人とも、とても強いんだね…」
「さすがは大人…」
モモイとミドリが関心の声を上げる中、機関銃を展開して支援していたコードYZが報告を上げた。
『マスター、目前より巨大な物体が接近中!まもなく接敵します!』
- 118二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 22:15:32
その時、目前に巨大な兵器が現れる。それは四脚の軍用ドローンで、背部にガトリング砲を背負っていた。さらにその周辺に複数のドローンも展開し、圧倒的な物量を見せてきていた。
「な、何なのこれ!?」
モモイが驚きを露わにするなか、どんな時でも飄々とした様子を崩さなかったモルガンが珍しく冷や汗を垂らす。
「こりゃまずいね…面倒なものに絡まれたよ」
「ええ…皆、煙幕を焚くわ!その間に走って!」
ヒカルはそう言い、即座に空中に発煙弾を放り投げる。瞬く間に煙が一同の姿を覆い隠し、ゲーム開発部はコードMOに先導されて走り始める。
それを追いかけようと兵器は動き始めるが、空中で複数のドローンが爆散。ヒカルも手榴弾を投げつけて爆破し、その数を減らしにかかる。
「まさか、ここで『ケテル』とかち合うなんてね!」
「さすがにゲーム開発部に相手させられる様な奴じゃない!だからこそここで、私たちが食い止めるわよ!」
ヒカルは即座に空に舞い上がり、上空からケテルの武装へ狙撃。ケテルはガトリング砲を撃ちまくって応対し、廃墟に銃声と爆発音が響き渡る。
- 119二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 07:16:05
「流石に硬いわね…モルガン!撃破よりもモモイたちが逃げる時間を稼ぐことを優先して!」
「分かってるよ!ん…?」
二人は駆け回りながら撃ち、果敢にケテルへ攻撃を加える。がその時、モモイたちと共に逃げていた筈のノアが現れ、射撃態勢に入っていた。
「今…!」
砲声が轟き、ケテルの武装を吹き飛ばす。損傷を負ったケテルはそこで足を止め、撤退を開始した。ヒカルとモルガンはノアの方へ駆け寄る。
「ノア!なんで逃げなかったの…」
「すみません…でも、ノアは二人を見捨てて逃げられませんでした…」
「おいおい、私たちを過小評価しないでもらいたいね。この程度の化け物から逃げるのは慣れてるんだからさ…」
モルガンも呆れ声を上げる中、モモイたちが駆け付けてくる。そして一行は再び移動を開始した。
- 120二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 10:08:02
「な、何とか『G.Bible』らしきデータを手に入れられたね…」
廃墟の外で、ユズは額の汗を拭いながら言う。その近くには思わずへたり込んでいるモモイたちの姿があった。
「まぁ、近くに適当なハードが無かったから、お姉ちゃんのゲーム機を使う羽目になったけど…」
「うわぁぁぁん…ゲームのセーブデータが…」
「それを悲しむのなら、前以てノートパソコンとかちゃんとまともなハードを用意しておきなさいね…」
ヒカルが苦々しい表情でモモイの不首尾を突っ込む中、モルガンはタブレット端末を操作しつつ一同に話しかける。
「さて…私はこれから用事がある。ここから先は余り手伝いをする事が出来ないから、後はヴェリタスかエンジニア部を頼ってくれ」
「いや、ここまで付き合ってくれて感謝するわよ。随分と大変でしたでしょう?」
「はい!モルガンさんは凄く頼りになりました!ありがとうございます!」
ノアは満面の笑顔で言い、モルガンは肩をすくめながら微笑んだ。
- 121二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 10:35:20
待機
- 122二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 10:44:54
【『鏡』を求めて】
トリニティ自治区
アサミ「先生、そちらの状況はどうでしょうか?」
ヒカル『何とか、データ自体は手に入れられたわ。でも、『G.Bible』のデータを読むためにはまだ工夫が必要なみたいね』
アサミ「そうですか。私もお手伝いしたいところですが…」
ヒカル『貴方は貴方で、トリニティからの依頼で大変でしょう?こっちはこっちで何とかするわ』
アサミ「了解しました。お気をつけて」
サオリ「大丈夫か、戦友?先生の手伝いをしたいんじゃないのか?」
アサミ「…いえ、私はただトリニティから依頼された仕事をこなすだけです。とはいえ、人手は本当に欲しいですね…」
サオリ「その気持ちは分かるよ。連邦生徒会長が失踪した後、テロリストの摘発といった面倒ごとを対処する役目にあったSRTが閉校してしまったからな…」
アサミ「だからこそ、私たちシャーレが設立されたのですがね…さて、仕事に戻りましょう」 - 123二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 18:13:48
- 124二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 21:28:50
ヒカル「…で、このデータをモルガン抜きで解析しなければならない訳だけど…コタマ、手段はあるの?」
コタマ「そうですね…ヒマリ先輩が開発したツールの『鏡』を使えば…」
マキ「でも、セミナーに没収されてしまって…これを取り戻したいのは山々なんだけど…」
ハレ「そのセミナーはセキュリティが高い上に、今回はメイド部に警護を依頼してるの」
ヒカル「メイド部…C&Cね。厄介ね…特にコールサイン03が一番厄介よ」
モモイ「03ってアカネ先輩のことだよね?どうしてそんなに警戒してるの?」
ヒカル「…実はモルガンから、彼女の素性について聞いていてね…」
- 125二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 03:55:16
待機
- 126二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 07:57:42
【SS・ミレニアムに奉仕する者たち】
ミレニアム自治区内・とあるビル
???「リーダー、コールサイン03及びコールサイン02、ただいま戻りました。任務は恙無く遂行いたしました」
???「ただいま、リーダー。今回の任務は簡単だったよ」
???「おう、アカネにカリンお疲れ。帰って来たばかりで悪いが、セミナーの方から新たな依頼だ。詳しいことはこっちに書いてあるけどよ、いつもの様に暴れていいとさ」
カリン「セミナーから…珍しいね。どういう風の吹き回しなんだろうか」
???「ああそれと、アタシはちと用事があるからこの依頼には出られない。その分アスナやセミナーと協力して上手くやれよ」
アカネ「承知致しました。しかし…もう、二年は経つのですね。リーダーやアスナ先輩、カリンと共に始めましたこの部活、私にとっては素晴らしい場所です」
???「…それは、アイツに仕込まれたプログラムか?それとも、テメエ自身での感想か?」
アカネ「無論、後者ですよネル先輩。聞けば、ミス・モルガンは何やら、自身をモデルとした高性能アンドロイドを開発し、私たちC&Cに供与して下さるらしいですね。生みの親は違うとはいえ、妹が出来る様な気分です」
ネル「妹、ねぇ…まぁ、人手はナンボあってもいいからな。ただその分、きっちり面倒見ろよ」
アカネ「承知しておりますとも、リーダー。それが私…コールサイン03・室笠アカネの、先代セミナー会長から与えられた勤めですので」 - 127二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 08:00:37
【『鏡』の奪い合いの裏で】
ミレニアム自治区 某所
モルガン「やぁやぁ皆さん、お揃いで。やはり今回の対決カード、気になるかい?」
ヒマリ「気にならない訳がないでしょう、ミス・モルガン?ゲーム開発部が廃墟から見つけ出したというあの少女…天童ノアに関しては特に」
リオ「ええ。元々あの廃墟は『無名の司祭』と呼ばれる存在が有していた施設の一つであり、今のキヴォトスでは再現すら困難な技術で多くの兵器を開発していた。そこで見つかった以上は詳しく調べさせてもらうわ」
モルガン「だろうね。まぁ技術者として純粋に彼女の力は見てみたいところだ、しっかりと観察させてもらおう」
モルガン「さて…セミナーはヒマリが発明したツール『鏡』を守る側だ。そしてその兵力としてC&Cを雇った訳だが…」
ヒマリ「…やはり、気になりますか?C&Cの四番手、コールサイン03が」
モルガン「ああ…室笠アカネ。二年前、ゲヘナで雷帝が様々な兵器を開発していたのを警戒していたセミナーの先代会長は、それらに対抗するための軍団を作ろうとした」
モルガン「結局のところ、雷帝の失脚により量産化はされず、試作品一機のみが作られた訳だが…その試作品がメイドやっているとはね」
リオ「元々、C&Cもエデン条約に対抗するために組織されたものだから。数相手ならドローンやオートマタで事足りるだろうけど、ヒナやツルギといった実力者相手には優秀な個人で対抗するしかないわ。もちろん、ネルもね」
モルガン「疑い深いねぇ…」 - 128二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 08:09:03
ヒマリ「…おや、始まった様ですね。先ずはノアちゃんが仕掛けた模様です」
ノア『これよりダンジョン攻略を開始します!』
アカネ『おや、貴方が…では見せてもらいましょうか。ゲーム開発部の新人、その能力とやらを』
エイミ「アレが、例のエンジニア部謹製のレールガンか。瞬く間に防犯システムを破壊したね」
アカネ『ほう、レールガンですか…大層素晴らしい火力ですね。ですが…』
ヒマリ「日ごろから戦車相手に戦うことも珍しくないアカネにとっては些細な事ですね」
アカネ『当たらなければどうということはありません!』
エイミ「あっ、複数個所に仕掛けたクレイモアと手榴弾で行動を制限しつつ、間合いを詰めた。あれじゃレールガンは使えないよ」
ノア『ひ、ヒーラーによる回復を…』
モルガン「…そしてネル仕込みの近接格闘で無力化。瞬く間にKOか。流石だねぇ」
リオ「彼女を仲間に迎え入れて以降、ネルは彼女をよく可愛がってあげてたからね。そこにアンドロイドとしての性能も含めれば、文句無しよ」
アカネ『それにしても、強くて可愛い子ですね。私たちの六人目のメイドにしてあげたいぐらいです!』
トキ「これは私に手強い後輩が出来るということですね?面白そうです」
モルガン「…アンタ、一体何処から出てきたんだい?」
ヒマリ「さて、ノアちゃんは捕まり、セミナーは急いで警備システムの再建を開始…次は夜に動き出す訳となりますが…」
トキ「よければ、お飲み物とお食事でも用意いたしましょうか?」
ヒマリ「では私はクラムチャウダーとレモンティーを」
リオ「焼き鳥弁当とコーラを頼むわ」
エイミ「アイス沢山ちょうだい」
モルガン「私は自前でファストフードとビールを買ってくるかね…酒は他人に買ってもらう訳にはいかないだろ?」
トキ「提案した私が言うのもあれですが、モルガン様はサッカーとかの試合を鑑賞する気分で検証しようとしていませんか?」
- 129二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 08:15:57
ヒマリ「さて夜となりましたが…エンジニア部とヴェリタスが動き出しましたね」
アカネ『モモイちゃんとミドリちゃん、じゃない…!?監視カメラの映像では確かに…!』
モルガン「…アンドロイドにしては、この手の技術を使った搦め手に対して弱いのは相変わらずだねぇ。しかもハッキングの一部、ありゃヒカルの奴も手を貸してるな?」
リオ「あら、シャーレの先生もハッカーなの?」
モルガン「アマチュアだけどね。アイツ、未成年お断りのコンテンツ視聴のためにインターネットの年齢制限の裏をかく技術を磨いていてね…それに『外』ではインターネットを使った犯罪にも詳しくないとキツいことも多々あった。この程度は楽勝だろうよ」
ヒカル『二人とも、伏せて!』
モモイ『うわっ!?』
ミドリ『窓が…しかもこの威力は、まさか…!』
トキ「アレは、角館カリン先輩の狙撃ですね。アレは一発でも食らったら動けなくなりますよ」
モルガン「だが、それに対して動きもあった。まさかウタハがの奴が直々に出てくるとはね」
リオ「…ユウカにアリスも何とか対応しようとしてるわね。でも、ヴェリタスの本職相手に余りにも分が悪いわ」
ヒマリ「加えてペーパーカンパニー経由で仕込んだ、エンジニア部謹製のセキュリティシステムもあります。これはセミナーにとってピンチですね」
モルガン「ふむ…」カシュッ
トキ「…モルガン様、もうビール三杯目ですよ。あとウィスキーの瓶とかも用意していますが、どんだけ飲む気なんですか」
エイミ「さすがに酒臭くなってきたね…」
- 130二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 08:18:19
アカネ『やはりこの手に限りますね。ユウカさん、離れてください。壁を破ります』
コトリ『む、無茶苦茶だ…』
モルガン「おいおい…無理やり隔壁をこじ開けたよ。特殊合金製なのだろう?」
リオ「彼女は破壊に関して相当なスペシャリストよ。その上ナノマシンによる急速修復能力で無理も言わせられるわ」
ヒマリ「にしては、乱暴に過ぎませんかね…?」
モルガン「…以前、ヒカルから聞いたことがあるんだが。トリニティには素手で壁を破れる生徒が複数人いるらしい。複数人いるってだけで背筋が寒くなるよ」グビグビ
エイミ「複数、人…?お嬢様学校のトリニティに…?」
トキ「…酔いの生み出した狂言だと、捉えておきます」
アカネ『アスナ先輩、お待たせしました!』
アスナ『あははっ、待ってたよアカネ!今ものすごい面白いところだから!』
カリン『ユウカ、アリス、相手の位置情報を教えてくれ。こっちはエンジニア部部長を押さえた。狙撃用の椅子とするには丁度いい』
ヒマリ「おや、ここからC&Cとセミナーが逆転し始めましたね。伊達に戦闘のプロではありませんか」
リオ「加えて先生に対しては、圧倒的な数のドローンとオートマタを仕向けて包囲し、カリンの狙撃もあってモモイ及びミドリと分断…これは勝ったわね」
モルガン「おやおや…流石にこれは彼女たちにとって分が悪いかね…」カラン
- 131二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 08:23:25
ノア『先生!モモイ、ミドリ!助けに来ました!』
ユウカ『お、オートマタ軍団とアスナが吹き飛ばされた…!?』
アリス『は、破天荒すぎる…』
コユキ『ひぃぃぃぃぃ!!!』
アカネ『ぐっ…掠めただけでこの威力ですか…!』
モルガン「おっと、ここでノアが参戦か。しかも上手い具合に当ててきたね」
エイミ「アスナ先輩は一時的に無力化され、ドローンも大半が破壊…数的不利を強引に打ち破って来たね」
リオ「…」
ヒカル『オートマタを幾つか、制御権を奪ったわ!今のうちに急ぐわよ!』
ヒマリ「ん?先生、あの短時間でオートマタを幾つか掌握しましたよ?どうやらあのタブレット端末によるものらしいですが…」
リオ「…ミス・モルガン。彼女は貴方の知人だとお聞きしましたが、一体何処でこの技術を?」
モルガン「さて、ね?こればかりはアイツに聞かないと分からないだろうさ」
ユズ『こ、怖かった…皆、大丈夫…?』
モモイ『な、何とか!』
ミドリ『まさか、ネル先輩がもう来てるなんて…』
ノア『見つかるかと思いました…』
ヒカル『私も、危うく生徒に手を上げかけたわ…多分返り討ちにされてるかもしれないけど…』
リオ「…そろそろ、指示を出しましょう。検証は終了したわ」
ヒマリ「ええ。貴重なデータを得られましたし、これで良いでしょう」
モルガン「…リオ、アカネは私んとこに回しておきな。ナノマシンがあるとはいえ、あそこまで壊れちまえば本格的なメンテが必要だろう?」
トキ「では、私は後始末に回ってきます」
エイミ「私も手伝うよ」
モルガン「さて…私もそろそろゲーム開発部とヴェリタスの手伝いに向かうとしますかね」
- 132二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 09:39:34
ミレニアム自治区某所
キングゥ「…」
オジマンディアス「ん…結果はどうなったの?」
キングゥ「こちらの大負けだ。セミナーが押収してたドローンにケセドの作った奴を仕込ませてたが、殆ど『王女』に破壊された。まぁ戦闘データを採取できただけでも良しとしよう」
オジマンディアス「でも、シャーレの方には『王女』のみならず『従者』までもが手中にある。それにモルガンの動向も考えれば、そろそろこの辺りで直接干渉するべきじゃないの?」
キングゥ「それは無理だ。今こちらはマダムからの注文でこっちに割けるリソースがない。他にも『狐』や『花鳥風月』など、キヴォトスをめちゃくちゃにしたがる連中に手を貸し続けてるから、干渉する暇はないよ」
オジマンディアス「そう…その割には楽しそうだね」
キングゥ「せっかく勝負のしがいがある奴と出会えたんだ。楽しめるならとことん遊んでやるさ」
- 133二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 12:43:52
待機
- 134二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 19:52:05
待機
- 135二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 22:07:03
待機
- 136二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 07:40:14
待機
- 137二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 08:40:24
【好きなものなればこそ】
翌日 ゲーム開発部部室
マキ「皆、解析終わったよー!」
先生「マキ、お疲れ様。これで『G.Bible』を見ることが出来るね」
モルガン「製作中のゲームもある程度組み上がって来てるし、その『G.Bible』の中にあるデータでブラッシュアップ出来れば万々歳だろうね」
モモイ「やったぁ!これでミレニアム・プライス優勝間違いなし!」
ユズ「ま、先ずはその内容を読まないと…!」
モルガン「ああ、そうだ…モモイ、そのゲーム機借りるよ。こちらでも色々と探りたいものがあるんでね」
モモイ「へっ?どういうこと?」
モルガン「後で教えてやるさ。それとアサミ、トリニティから戻って来たばかりで悪いが、手伝ってくれるかい?」
アサミ「分かりました。では先生、モルガンさんを手伝ってまいります」
ヒカル「気を付けてね、アサミ」 - 138二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 09:00:57
一同「…」
ヒカル「…『ゲームを愛する心を持つ』、ね…まぁ、そう簡単に一瞬で素晴らしい作品を作れるのなら、世の中のクリエイターは苦労してないわよ」
ミドリ「先生、パソコンを取り出して一体何を…?」
ヒカル「廃墟を探索している合間に、簡単なプログラムを作ってみたのよ。『外』では様々な仕事をしてきたから、この程度の作業は楽にできるわ」
モモイ「す、すごい…私やユズが作ったものよりも明らかに精巧な出来だ…」
ヒカル「著作権とかの問題もあるから、直接貴方たちに使わせることは出来ないわ。でも、ゲームエンジンの形にしてフリーのソフトウェアとして公開すれば…」
ユズ「…!すぐにダウンロードします!」
ヒカル「ついでに、ノアを見つけた時とかセミナーでの出来事もストーリーに上手く組み込んでみたらどうかしら?モモイ、貴方が書きたいシナリオはどんなものだったのか思い出してみて」
モモイ「わ、分かった…!」
ノア「ノアも手伝います!」
ヒカル「ふぅ…とりあえず、あの子たちには進むべき道を見せられたわ。後は、無事に作れるかどうかね…」
- 139二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 09:14:55
【王女に仕えし者】
その日、ミレニアム自治区の中にある工房に、ヒカルとモルガン、アサミにゲーム開発部の面々がいた。
「ミレニアム・プライス特別賞受賞、おめでとさん。無事に完成して結果も残せて、良かったね」
工房の一室で、モルガンはコーラ瓶を片手に彼女たちの快挙を祝う。対するゲーム開発部の面々は嬉しそうな様子だった。
「うん!でも制作は本当に大変だった…先生がゲームエンジンを用意してくれたり、アドバイスとかもしてくれたおかげで何とかなったけどさ…」
「しかも体験版を配信し始めた直後にネル先輩に襲撃されましたし…本当に肝が冷えましたよ…」
モモイとミドリの言葉に、ヒカルは苦笑する。モルガンも察し、肩をすくめた。
体験版を配信開始し、打ち上げのために外に出たところ、ゲーム開発部は突如としてC&Cの襲撃を受けた。その際ネルがノアに対して勝負を仕掛け、ノアはレールガン『光の剣』を振り回しつつ、ハンドガンによる牽制射撃で対応した。その後、一同は何とか逃れることができたが、あの時程に肝を冷やしたことはないだろう。
「ま、今は大変だったことを忘れようじゃないか。楽しむ時は楽しむ!それが私たちのモットーの一つさ」
モルガンはそう言い、モモイにコーラを手渡した。 - 140二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 09:44:05
パーティーがよりにぎやかさを増す中、モルガンはヒカルたちに声をかける。
「ヒカル、それにノアとモモイ、ちょっといいかい?」
「あら…どうしたの、モルガン?」
「『G.Bible』のデータを解析する際、モモイのゲーム機を借りただろ?その際別のデータも入っていてね。アサミの協力もあって解析が終わったところなんだ。こっちに特殊なVR装置があるから、その『中身』を見てもらおうと思ったのさ」
「別の、データですか?」
モルガンの言葉に、ヒカルやノアは驚きを露わにする。するとモモイが尋ねて来た。
「にしても、どうしてVRなの?それに先生ならともかく、私とノアにだけ話すなんて…」
その問いに対し、モルガンは珍しく無言を返す。そしていつもの笑みを消し、真顔で言い始めた。
「モモイ。これはアンタに直接知ってもらうためだ。私がどうしてここミレニアムに来て、ヒカルとは別に行動しているのか…その理由をね」
- 141二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 10:37:07
VR装置に入り、起動してから目を開いた時、彼女たちの目の前には広大な空間が広がっていた。それもモモイたちにとっては見覚えのある場所だった。
「ここは…廃墟?しかも、ノアと出会った場所だ…」
「おっ、成功したみたいだね。ここはモモイたちがノアと出会った場所を再現した仮想空間だ。ゲーム機に『G.Bible』と共にインストールされてたデータが面白いモンだったからね」
いつの間にか背後に立っていたモルガンはそう言いながら、隣に立つノアの頭を撫でる。その言葉にノアやモモイが首を傾げたその時。
「…成程。王女を利用して誘い出したというわけですか。悪趣味です」
背後より、声が聞こえる。振り向くとそこには、一人の少女の姿があった。
その少女は、ノアの髪を黒くしたかの様な姿をしており、黒いドレスを身に纏っていた。その姿にモモイは目を丸くする。
「えっ…!?ノアが、もう一人…?」
「…!」
「…正確には、ノアの姿を真似て出てきたといった方が正しいね。恐らくはノアが作られた理由の一つだ」
モルガンが一同にそう語る中、その少女は近付く。そしてモモイたちに向けて名乗った。
「…私の名はKey。我が『名も無き神々の王女N‐0A』に仕え、アトラ・ハシースの方舟と共に忘れられた神々に裁きを下す者。我らが名もなき王女を玉座に導く鍵」
- 142二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 10:41:32
「Key…!?もしかして、『G.Bible』のデータがあったコンピューターで私たちと会話をしていたのって…」
モモイが過去の探索の時を思い出し、モルガンは頷く。
「…言うなれば附属品、といったところだ。何せ長らく連邦生徒会長が封鎖していた廃墟の中にあったんだ、相当なブツが仕込まれてるだろうと思い、敢えてノアと接続する様に仕込んでみたんだ。まぁ大当たりだったね」
モルガンが呑気そうに言う中、Keyは静かにノアへと近寄る。ノアは身体をビクリと震わせ、ヒカルの後ろに隠れる。
「王女よ、貴方には名前は不要です。貴方は名を捨て、このキヴォトスに採決を下す存在なのです。今こそ与えられた使命を果たすとき―」
とその時だった。突如としてKeyの周りに半透明の壁が現れ、彼女を閉じ込める。そして周囲を複数のドローンが囲む。
「これは…!まさか、謀りましたね…!」
Keyお言葉に、モルガンはニヤリと笑いつつ、隣に立つアサミに目配せをする。
「…そう動くと思ったよ。アサミ、ナイスタイミング」
「ええ…ノアさんへの干渉を想定して、システム起動に合わせて作動するプログラムを仕込んでおいて正解でした」
二人の会話を聞き、ヒカルは頷いた。
「成程…アサミに手伝いを求めた理由はこれね。確かにこの手の細工をするには、アサミの手を借りる必要があるわね」
- 143二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 10:47:32
「さて、と…そろそろアンタは私が別に用意したタブレット端末に封じ込めさせてもらおう。アンタを野放しにしてしまうと、文句を言う奴が複数人いるからね。それでいいだろ、ヒカル?」
「…ええ。お願い」
ヒカルの許可を確認したモルガンは手元のタブレットを操作し、ついにKeyの姿が消える。そうしてその場には、モルガンとヒカル、モモイにノアの四人だけが残った。
衝撃の出来事から数十秒が経ち、彼女たちの意識は現実へと戻っていた。
カプセルから出てきて、モルガンはその傍にあるタブレット端末へと目を向ける。おそらくその端末の中にKeyを閉じ込めたのだろう。
「…さて、この『問題児』は何処に預けるかい?こればかりは信頼出来る奴に任せないと危ないだろう?」
「一先ずは私のところで預かっておくわ。ただ、ヴァルキューレで信頼出来る子が一人いるから、その子に連絡ツールの代わりで預けておきましょう」
ヒカルがそう語る中、ようやくアサミがカプセルから出てきた。何やら重労働をさせられたかの様に、その顔には疲労の色が見えた。
「ふーっ…久々に骨が折れました。移送されるその途中まで抵抗していましたので、押さえつけるのに手こずりました」
「お疲れ、アサミ…ん?」
労いの言葉をかける中、ヒカルはその隣のカプセルの中で、ノアがうずくまっているのに気付く。そこへモモイが話しかける。
「…ノア、大丈夫?気持ち悪くなっちゃった?」
問いかけに対し、ノアは無言を返す。するとモルガンが近寄り、彼女の頭に手を置く。そして優しく微笑みながら言った。
「…大丈夫。アンタを邪悪な魔王に変えようとした『悪い子』は私が封印した。大丈夫、私が保証する。なんてったって、私は魔法使いだからね」
「…モルガン、さん…」
泣きそうになっている彼女の頭を優しく撫でるモルガンの後ろ姿を、先生とアサミ、そしてモモイは無言で見つめた。
- 144二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 13:22:47
このスレの先生(とその仲間たち)、百花繚乱編では花鳥風月部に対して全面的に勝てるのでは?全員偽りの仮面を被っていることを自覚した上でキヴォトスの問題に向き合っているし
- 145二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 18:46:51
待機
- 146二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 19:29:15
【先生と魔法使い】
深夜 DU市内のバー
モルガン「ヒカル、お待たせ。こうして二人で駄弁るのは久し振りだねぇ。しかも個室とは…」
ヒカル「この形の方が、色々と話しやすいでしょう?今はシラフで飲むわよ」
モルガン「シラフで、ねぇ…エリとエルベの奴は?」
ヒカル「今は便利屋の手伝いや万魔殿のごたごたに対処で忙しいわ。何飲む?」
モルガン「スコッチにしとくよ。つまみも用意してるんだろ?」
ヒカル「勿論よ。さて、彼女たちゲーム開発部のこれからを祈りつつ、乾杯しましょう」 - 147二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 19:33:42
モルガン「しかし、いい酒を出すねここは。これなら酔ってうっかり素を出しそうだ」
ヒカル「元からそのつもりで、この店を選んだのよ。今夜の私は好きにするわ。『清瀬ヒカル』じゃなくて『下江コハル』としてね」
モルガン「…!」
コハル「…しかし、当然と言えば当然だけど、随分とノアに肩入れしてるわね、モルガン…いや、ケイ」
ケイ「…それは当然でしょう。この世界の王女がセミナーの書記となってて、逆に本来セミナーの書記である筈の人物が王女となっているのです。絶対に私の知る形ではありません」
ケイ「その上、アビドスの時の様に、カイザーやゲマトリアと共謀し、或いは利用して悪巧みを目論む存在もいる。となれば出来る限り先んじて対策を取るのがいい。それが彼女と、彼女の従者のためになります」
コハル「…それはそうね。あの時、ゲーム開発部の三人は倒れ、四人目の仲間とも呼ばれていた先生は行方不明となり、果てにはアリスは戦闘の中で身体だけを残して消えた…二度とあんなことにならないために、私たちはここに来てるのだから」
コハル「…しかし、MOにMI、YZと、いいAIを作ったわね。アリスを模したモノは敢えて作らなかったの?」
ケイ「…仕えるべき王女を守れなかった、役立たずの従者にその資格があると?どのみち私は『この世界の王女』を守らねばなりません。それが今の私に出来る、唯一の贖罪ですから」
コハル「…贖罪、か…お互い、嫌な大人のなり方をしてしまったわね」
- 148二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 22:45:21
あっちの世界のアリスはケイを残して逝ってしまったんだな…。
ケイの力を借りずに名もなき神々の王女の力を使ったのかな。 - 149二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 08:01:22
モルガン(戸籍名 石川ミウミ)
ミレニアム自治区に現れた、謎のエンジニア。
様々な発明品を作る高い技術力を持ち、サポートAIを搭載したドローンを助手に従えている。
セミナーやエンジニア部、ヴェリタスからも一目置かれており、魔法の様な技術も多数有していることから『魔法使い』の二つ名を持つ。
その正体はヒカルと同じ世界線出身のケイであり、しかし外見はアリスを大人にしたかの様な姿となっている。
かつて、その世界線のミレニアムにはゲームをこよなく愛する部活があった。
空が赤く染まり、ビッグシスターを欠いたミレニアムが不可解な軍団に攻め滅ぼされたとき、その部活は一人の勇者の身体だけが残った。
その勇者を世界を滅ぼす魔王にする筈だった従者は存在意義を失い、深い失望の中で一人の少女と出会った。
戦闘で『光の剣』を失い、勇者の魂もが消滅した後、彼女は残されていた数少ない『資源』でその身体を修復し、偽りの名を背負って旅立った。その『資源』が何なのかは、シャーレの先生とゲヘナの万屋以外に知る者はいない。 - 150二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 08:02:27
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- 151二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 08:03:04
天童ノア
ミレニアム自治区郊外の廃墟で発見された、謎の少女。
ゲーム開発部の下で名前と居場所を与えられた後、四人目の部員として活動している。
武器はエンジニア部の開発したレールガン『光の剣』で、サブウェポンとしてハンドガン『スイッチブレード』(見た目はP220)を装備している。
見た目は原作アリスの服装を着たノアで、誕生日は3月25日。身長は原作ノアと同一。
- 152二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 08:03:52
生塩アリス
セミナーに新たに入った書記。
学年は一年生でコユキと同期。
武器は原作ノアの用いているハンドガン『書記の採決』。
見た目は原作ノアの衣装を着たアリスで、誕生日は4月13日。身長は原作アリスと同一。
- 153二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 08:10:28
【SS・正義を欲する者】
トリニティ総合学園。そこは淑女の学び舎であり、多くの令嬢が通う場所。
しかしその輝かしい舞台の裏には、どす黒い策謀がうごめき、息苦しい日常が多くの少女を蝕んでいる。
その中で正義を成すために、私は黒色の制服に袖を通した。その中で私は多くの謀略と陰湿な政治闘争を目の当たりにしてきた。
それでも私は、この学園の平和を守るために銃を手に、戦い続けてきた。それこそが私のあるべき姿だとして。
「先輩、失礼するっす。起きてるっすか?」
トリニティ学生寮の一室で仲正イチカはそう言いながら、部屋の中に入っていく。と洗面所から人気を感じ、その先へ覗くと、一人の桃色の髪の少女が、服を着たまま湯を満たしたバスタブに浸かっていた。
「…先輩、何やってるんすか?服着たまま風呂に浸かってたら風邪引くっすよ」
「…着衣浴は案外いいわよ、イチカ。頭の痛くなるようなことをしばし忘れていられる」
「そう現実逃避している暇はないっすよ、副会長。ツルギ先輩からもさっさと連れてきてって言われてますから」
「…分かったわ。そろそろ出ましょうか」
うんざりした様子でそう答えてバスタブから出てくると、テーブルの上に置いたスマートフォンが鳴り始める。バスタオルで水気を拭いた少女は、スマートフォンを手に取り、応じた。
「正義実現委員会副会長、下江コハルです。何用でしょうか、ナギサ様?」 - 154二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 08:38:53
【補習授業部】
トリニティ自治区
ヒカル「さて、そろそろ出迎えが来るはずだけど…」
アサミ「あっ、来ました」
???「待たせましたね、ヒカル。それにアサミ」
ヒカル「久し振りね、マーリン。ティーパーティー警護隊の強化は進んでいる様ね」
マーリン「ええ、順調ですよ。それとアサミ、こっちのサオリが何度も世話になりましたね」
アサミ「はい。しかし、マーリンさんが私たちを出迎えて来るとは…」
マーリン「今、サオリは忙しいところですから。では、ティーパーティーの方に参りましょう」
ミカ「あら、アサミちゃん久し振り!元気でやってた?」
ナギサ「ミカさん、はしたないですよ。コホン…清瀬ヒカル先生、こうしてお会いするのは初めてですね」
ヒカル「ええ、ウチのアサミがティーパーティー警護隊に大分お世話になりました」
ナギサ「では改めまして…私はティーパーティーにてホストを務めております、桐藤ナギサと申します。此度先生に来てもらいましたのは、他でもない貴方にしか相談出来ないことがあるからです」 - 155二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 10:22:51
ヒカル「補習授業部、ね…」
ナギサ「我が校において、生徒は文武両道を心掛ける様にしております。が、その中で成績が振るわずに落第の危機にある方たちがおられます。彼女たちを三回行われる学力試験のどれかで合格させることが先生の役割となります」
ヒカル「分かったわ。久々に先生らしい仕事が出来るわね。彼女たちは私が預かったわ」
ミカ「頑張ってね、先生!」
ヒカル「…ついに、ここまで来たわね…しかし、昔は余り気にしていなかったけど、意識すればする程、このトリニティという場所は息苦しく感じるわね」
アサミ「ええ…あの時の先生は全く意識しておりませんでしたね。ですが、それは無知による無自覚というものです。そしてこの空気が、『あの人』を狂わせてしまった…」
ヒカル「…私も、十分に注意しなければね」
- 156二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 10:31:09
- 157二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 16:43:30
???「おや、ヒカル先生ではありませんか」
ミサキ「こんにちは、先生。それにアサミとヒフミ」
ヒカル「あっ…久し振りね、コハル。シャーレ・オフィスをワカモから取り返す時以来かしら?」
コハル「そうですね。見たところ、他の補習授業部の方々をお迎えに向かうところですか?」
アサミ「そんなものですよ、コハルさん」
ミサキ「そういえば会うのはアビドスの時以来だね、先生。アサミ、サオリ姉さんと仲良くしてくれてありがとう」
アサミ「いえ、こちらこそ。お二人はこれからどちらに?」
コハル「校内で弾薬庫に立て籠もっているテロリストを逮捕しに向かうところです。では、急いでいるので」
ミサキ「ヒフミたちも頑張ってね。それじゃ」
ヒフミ「頑張って下さい!…でも、テロリストが校内に…?怖いですね…」
ヒカル「対策委員会の悪乗りに乗せられて銀行強盗した人のセリフじゃないわよ…」
アサミ「あんなことを経験した上で、よく気楽に言えますね」
- 158二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 16:47:18
正義実現委員会本部
ヒフミ「先ずは、こちらですね。確かここにいる筈です」
ヒカル「失礼します。誰かいませんか?」
???「あっ、ど、どうもこんにちは…すみません、少し散らかってて…」
ヒカル「別にいいわよ。楽しんでいたところにいきなり来て悪かったわね」
ヒフミ「す、凄い量のお菓子…」
???「うふふ、ハスミちゃんは本当に食いしん坊さんですね。この前も回転寿司店でゲヘナの生徒さんと大食い勝負してたって聞きましたよ?」
ヒカル「…そしてその隣で、平常運転な人が一人か」
アサミ「…大量のお菓子の空き箱を積み上げてる正義実現委員会の人と、水着姿で紅茶を嗜んでいる様子のおかしい人と、情報量が多過ぎます」
ヒフミ「えっと…そこの水着の人が補習授業部の二人目です。名は…浦和ハナコさんです」
ヒカル「…どうも始めまして。私は清瀬ヒカル、シャーレの先生よ」
ハナコ「あら、貴方が噂の…確かに、コハルさんにそっくりですね」
ヒカル「ええ、たまに言われるわ」
ハスミ「えっ…もしかして、貴方が噂のヒカル先生ですか!?た、確かにコハル先輩にそっくりです…」
- 159二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 16:50:09
コハル「ハスミさん、お待たせ。大人しく待ってましたか?」
ミサキ「というかハナコ、いつの間に脱獄してるんじゃないわよ!何優雅に水着姿で茶をしばいてるのよ!」
ハスミ「あっ、コハル先輩にミサキ先輩!すみません、只今この変態を牢屋へ送りますので!」
先生「ああ、そこの変態は私が引き取るわよ。彼女も補習授業部に入ることになるから」
コハル「ああ、成程。これで手間が省けましたよ」
???「…シュコー」
ヒフミ「あ、あの…その子は?ガスマスクを被っている様ですが…」
ミサキ「ああ、例の弾薬庫を占拠していたテロリストよ。名は確か…」
???「…錠前シズカ。それ以外に答えることはない」
ヒフミ「錠前シズカ…こ、この人も補習授業部です!」
ヒカル「…奇遇ね。まさか補習授業部に選ばれた人がこの場に一堂に会するなんて」
ハスミ「こ、これは…先生も大変ですね、こんな変わり者に囲まれることとなるなんて。御愁傷様です」
ヒカル「…」
アサミ「…」
コハル「…はぁ…」
ヒフミ「…あの、大変言いにくいことなのですが…補習授業部に選ばれた人はさらにいまして…羽川ハスミさん、貴方です」
ハスミ「…へ?」
サオリ「阿慈谷ヒフミ、浦和ハナコ、羽川ハスミ…そして…錠前シズカ。これは珍しい顔触れだ」
ナギサ「ええ。そして、シズカの義理の姉を務めていらっしゃる貴方には悪いですが…彼女たちが退学になることで、このトリニティの平和は保たれます。全ては、エデン条約を達成するために」
サオリ「…」
- 160二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 16:51:56
ハスミ「なんで…どうして…!?勉強はちゃんとしてるし、テストの成績もそこそこだし…」
アサミ「…手元の資料によりますと、理由としては『ちょくちょく巡回中に買い食いしているところが目撃されており、態度に問題が見られるため』というのが一つ。あと成績も特定の教科に偏りが見られるため、だそうです」
シズカ「…それで、私たちは何をすれば良い?」
ヒカル「何、簡単なことよ。3回行われる学力試験のうち、どれか1回でも全員基準点を満たしたら合格。満たせなかった場合は考えずに、真面目にやるわよ」
ヒフミ「というわけで、補習授業部の部長を務めます阿慈谷ヒフミです!これからよろしくお願いします!」
ヒカル「問題で分からないことがあったら、私やアサミに聞いて。大丈夫、普通に勉強して普通に試験を受けて、普通に合格すればいいだけの事だから」
シズカ「成程、分かりやすい任務だ。これからよろしく頼む」
ヒカル「ああそうそう、今回外から頼れる助っ人を呼んでいるから安心してね」
ハナコ「助っ人、ですか?」
ティーパーティー
エリ「はいどうも、ナギサさん。メロンです。それと依頼の請求書です」
ナギサ「感謝します、エリさん。報酬はいつも通り、口座の方に振り込ませてもらいます」
エリ「いえいえ…ゲヘナ出身の何でも屋をご贔屓にしてくれてるのです。感謝すべきは私の方ですよ」
ナギサ「だからこそ、ですよ。同じトリニティでも、情報を武器に私を引きずり降ろそうと目論む者は多い。ですが貴方にはその野心も、動機もない」
エリ「成程…それはどうも…では、私はご友人の方に向かいますので、お元気で」
- 161二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 16:53:48
エリ「お待たせしました、ヒカルさん。手伝いに来ましたよ。で、これはどういう状況ですか?」
ヒカル「来たわね、エリ…見ての通り、『惨敗』よ」
ヒフミ「せ、先生!お気を確かに!!!」←合格
シズカ「ちっ、詰めが甘かったな…」←不合格
ハスミ「嘘…嘘よ…こんな…」←不合格
ハナコ「うふふ、皆さんこれから仲良くしましょう?」←不合格
アサミ「…ヒフミさん以外全員不合格です。予習も軽く行った結果でこの様です」
エリ「…大体察しましたよ。で、何をして欲しいんですか?」
ヒカル「取り敢えず強化合宿でいろいろ手伝いを頼みたいわ。私とアサミだけじゃ、こんな面々どうしようも出来ないわよ」
エリ「やれやれ…今夜、一杯奢ってもらいますよ」
- 162二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 17:18:53
- 163二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 17:23:45
二日後 トリニティ自治区内のレストラン
エリ「ヒカルさん、お疲れ様です。しかし、補習授業部ですか…」
エルベ「随分とひどい貧乏くじを引かされたものね。まぁ『あの人』がしていたことそのままだけどね」
モルガン「ゲーム開発部に比べればまだマシだが、随分と癖の強い連中だねぇ。授業の手伝いとか必要かい?」
ヒカル「今のところは、直ぐに皆の手を借りる様な状態じゃないわ。まぁ、学力を伸ばす点に関してはアサミの方が詳しいし…二人には別のことをしてもらいたいから」
エリ「…『トリニティの裏切り者』と『アリウスの動向』ですね?」
モルガン「確かに、こっちを探る余裕は今のヒカルには無いね。いいよ、受けてやる」
エルベ「私も、情報部に少し手伝わせてみるよ。かつての『あの人』に足りてなかった分は私たちが埋めてやる」
ヒカル「…皆、感謝するわ」
エリ「いいんですよ、貴方がここトリニティでやろうとしていることを手伝うのが、私たちの役目ですから」
- 164二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 17:40:55
???「おや、お久しぶりですね先生」
ヒカル「あら…まさかこんなところで会うとはね。それに…」
ユウカ「せ、先生…!?それにモルガンさんまで、どうしてここに…」
モルガン「…わざわざ取り繕わなくてもいいよ、ユウカ。アンタの親父さんがカイザーと色々あったって話はすでに聞いてるから」
黒服「クックックッ…皆様は随分と仲のよさそうなことで。では、私たち親子はこれにて失礼いたします」
ユウカ「あっ、父さん!…せ、先生頑張って下さい!」
ヒカル「…親子、ねぇ…」
エリ「…このキヴォトスに来て知った情報の中で、一番の驚きではありませんか?」
エルベ「…こっちの情報漏れてないといいけど…モルガン、その辺りはどうなの?」
モルガン「一応策は打ってるけど…念を入れておくかね…」
- 165二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 19:23:49
待機
- 166二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 19:41:24
【トリニティの歪み】
補習授業部 合宿所
マリー「けほっ、けほっ…お水まで出して下さり、感謝します」
アツコ「シズカの事だから、ブービートラップとか仕掛けてあるだろうなと想定して進んでいたけど、見事に裏をかかれたなぁ…」
ヒカル「いいのよ、迷惑かけた分はこうしてもてなしてやらないと」
ヒフミ「ですが、どうしてシスターフッドがこちらに?」
マリー「はい、実はシズカさんにお礼を言いたい人が私たちのところに来まして…」
ハナコ「お礼、ですか…?」
先生「…いじめから守ってくれた人たちがシズカに逆恨みをして正義実現委員会に虚偽の通報をして、で弾薬庫立て籠もりに至ったと」
ハナコ「生徒同士のいじめとか嫌がらせは、本当に酷いですからね…元々は様々な派閥の寄合所帯ですから、ここは…」
シズカ「私はあくまでも、正当防衛をしたまでだ。それにいじめから守ることは、一人の生徒としてやるべき事だから」
ハスミ「そ、そうなんだ…でも、いじめなんて…正実なのにそういうこと知らなかったなぁ…」
ヒカル「…この学校のそういうところは、本当に変わっていないのね」
アサミ「…」 - 167二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 19:43:36
マリーたちが訪れ、模擬試験が行われたその日の夜。先生は合宿所の一室で一人、オフィスから持ち込んでいたウィスキーを開けながら、レポートを書いていた。
「お疲れ様です、先生。それと深酒は遠慮した方がいいですよ」
「大丈夫よ、一瓶丸ごとは飲まないから…ん?」
アサミに注意されつつもロックアイスを入れたグラスを手にしていると、そこにヒフミがやって来た。
「先生、少し相談よろしいでしょうか?」
「良いわよ。と言っても、大体予想はつくけどね…『裏切り者探し』でしょう?」
先生の言葉に、ヒフミの顔がやや引きつる。そして先生はウィスキーを一口飲みつつ、廊下の方へ顔を出した。
「…盗み聞きとは感心しないわよ。ハナコ、貴方もこっちに来なさい」
「…!」
そう呼ばれ、ハナコも先生の部屋へ連れてこられる。そして先生は電気ケトルで湯を沸かし、ホットココアを作りながら話し始めた。
「…ヒフミ。貴方はナギサから『エデン条約の締結を妨害しようとしてくる裏切り者を探して来なさい』と頼まれたのでしょう?で、同じ補習授業部の面々を疑う事など出来ないから、相談しに来たと」
「…はい。ナギサ様はアビドスでの風紀委員会の動向も大分気にしておられました。そしてトリニティの平和のために、問題は早期に解決しなければとも…」
「…やはりね。実は皆が模擬試験をしていた時に、ミカがこっそり訪れて来てたの。そして色々と話してくれたわ」
「えっ…!?」
「ミカさんが…?」
その言葉に、ヒフミだけでなくハナコの表情も変わる。しかし問い質す前に二人の前に、熱々のホットココアが差し出された。
「でも、今は勉強に集中して。そういう面倒なことは私の様な大人が解決するべきことなのだから」
- 168二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 19:47:11
翌朝 トリニティ自治区郊外
シミコ「あっ、アサミさん!サオリさん!お待ちしておりました!」
アサミ「ここが、トリニティの旧アリウス分校跡か…もはや廃墟ですね」
シミコ「ええ…今回は遺跡調査のアルバイトとその監督となります!よろしくお願いします!」
サオリ「ところで戦友、トリニティがどうやって出来たのかは知ってるか?」
アサミ「先生から幾分かは話を聞きました。かつて、一つの学園にまとまる事に反対していたアリウスは、迫害を受けて姿を消したと…」
サオリ「ああ…だが実際には、別の場所で活動を続けているという。補習授業部に錠前シズカがいるだろう?彼女はそのアリウスから転校してきた生徒だ」
アサミ「…義理の妹という割には、サオリに大分そっくりでしたけど、本当に血の繋がった妹ではないんですね」
サオリ「驚きだろう、戦友?全く…ミカ様も一体何処から見つけ出して来たのやら…」
アサミ「よし…ある程度の遺物は拾えたかな。後はウイさんに任せましょう」
ウイ「うぇぇ…どうして私が外で、こんな仕事を…」
シミコ「予算申請のために、ちゃんと活動を見せるためでしょう?頑張りましょう!」
サオリ「ああ、それと…夕方から大雨になるそうだ。あの合宿所はかなり古いからな、雨漏りとかには気をつけておいてくれ、戦友」
- 169二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 20:31:55
待機
- 170二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 22:51:44
待機
- 171二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 06:59:46
ウイを引っ張ってくのはヒナタのイメージが強いけど、元々シミコが色々と世話してたんだよな。
(ロード画面のあれとか) - 172二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 09:31:38
【深夜のから騒ぎ】
トリニティ自治区 補習授業部合宿所
アサミ「先生、モルガンさんに連絡を入れました。あと10分で修理しに来るとのことです」
ヒカル「分かったわ。しかし…まさか大雨の中で落雷、そして配電盤とかがやられて止まっちゃうなんてね…」
シズカ「合宿所はかなり古い建物だと聞いてはいたが、ここまでとは…」
ヒフミ「あ、あはは…」
ハナコ「でもまぁ、水着パーティーがやれてるのですからそれで良いではありませんか」
ハスミ「全然良くありませんよ!」
ヒカル「まぁまぁ…とりあえず、知人が修理しに来てくれるまで、大人しく会話しましょう?」
ヒカル「…それはそうとしてアサミ、ハナコは元よりハスミもあんなに大きかったっけ?」
アサミ「この世界のコハルさんとハスミさんの立場が入れ替わりになった様に、体型も入れ替わりになったのかと思いましたが…身長と体型は二人の数値を足して2で割った感じですね」
ヒカル「…何故だろう、すごい複雑な気分」 - 173二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 09:38:49
モルガン「待たせたね、ヒカル。にしても随分と賑やかそうじゃないか。しかもほぼ全員水着姿とは、眼福じゃないか」
ヒカル「茶化す前に、先ずは配電盤とか直してくれるとありがたいのだけど…」
モルガン「悪い悪い、ちょっと待っててな。MO、検査どうなってる?」
MO『マスター、検査終わったよ!洗濯機そのものに落雷の影響はないみたい!』
MI『あったかいスープとかレトルト食品も用意しました!皆さんどうぞ!』
YZ『しゅ、修理なら私たちに任せてね…』
ハナコ「あら、これはこれは…ミレニアムの魔術師さんが使役しているという精霊さんたちですか」
モルガン「おや、噂はトリニティの方にまで流れていたとは驚きだねぇ」
ヒカル「その耳の速さには、素直に感心するしかないわ…」
ハスミ「や、やっと着替えることが出来る…くしゅんっ!」
アサミ「鼻水垂れてますよ、ハスミさん。はいティッシュ」
- 174二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 09:51:12
トリニティ自治区 市街地
先生「さて、取り敢えず合宿所の設備が直るまで、こうして市街地でブラブラ歩く事となったけど…皆は何がしたい?」
ヒフミ「でしたら、文房具とかを買いに書店に行きましょう!そろそろ補習の勉強でノートを使い切りそうですし…」
シズカ「そうだな。銃撃戦で筆箱が文字通り吹き飛ぶことなんてよくあることだし」
先生「それもそうね。アサミ、この近くに書店があった筈よね?そこに行きましょう」
ハナコ「おや、この近くの書店をご存じなんですね?ここはトリニティ以外の人がよく迷うところで有名なのですが…」
アサミ「先生は『トリニティの卒業生』ですし、シャーレという役目の関係上、地理はある程度抑えていますから」
ヒカル「それに、砂漠に呑まれかけてどこも同じ様に見えてしまうアビドスに比べたら庭みたいなものよ」
ヒカル「さて、いい文具はあるかしら…ん?」
???「えっ!?せ、先生…!?」
ハスミ「こ、コハル先輩…!?」
ハナコ「あらあら、まさか正義実現委員会の副委員長もそういうものに興味を持たれていたとは…」
シズカ「…成年向け雑誌コーナーからコハルが出てきた…」
アサミ「(…そういう趣味の部分も、先生と同じでしたか…)」
ヒカル「…」
- 175二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 10:53:27
トリニティ自治区内 とあるカフェ
ヒカル「…私は基本的に、生徒の趣味に対して干渉する気は無いのよ。でもまさか、あんなところでコソコソと買ってたなんてね」
コハル「ううっ…」
アサミ「まぁ、先生もたまに色々と本と酒とタバコを沢山買って、ユウカさんにどやされてることも多いですから、一方的に責めることの出来る立場ではありませんしね」
シズカ「酒にタバコ…?先生、それで身体を悪くしたりしてないか?」
ヒフミ「そういえば、たまに屋上の方に向かってることがありましたけど…もしかして…」
ヒカル「…たまにアサミや、何処からともなく現れてくるセリナに小言を言われる程度には、ね…」
アサミ「本当にご自愛下さい、先生。下手に体調崩して面倒を見切れない事態になったら、補習授業部の皆さんが大分お困りになるんですから」
ヒフミ「あはは…先生も大変ですね…」
- 176二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 10:59:28
ヒカル「しかし、いくら後輩たちに見せたくないからといって、こそこそと本屋へ歩きに行っていたらむしろ怪しまれるわよ?」
コハル「それは、そうですが…ん?イチカから電話ですね。もしもし」
イチカ『あー、もしもし?やっとつながったっすね』
コハル「あら、イチカじゃない。どうしたの?」
イチカ『コハル先輩、今何処にいるっすか?今市街地の水族館でゲヘナの生徒が暴れてまして…』
コハル「ゲヘナが?まさか万魔殿か風紀委員会が嫌がらせを…!?」
イチカ『いや、どうやら美食研究会の連中みたいっす。なんか水族館の魚を目当てに奪いに来たみたいっす。今巡回部隊が対応してるんすけど、応援に来れますか?』
ヒカル「…よりによって美食研ね…コハル、私たちも手伝うわ。その代わり、お互いに今夜のことは…」
コハル「…はぁ、貴方は本当にずるいお方です。分かりました、共に行きましょう」
ヒフミ「せ、せっかくお茶してるところなのに…!」
ハスミ「私なんてパフェ頼もうとしてたところよ!」
ヒカル「まぁまぁ、後で沢山食べさせてあげるから…」
アサミ「一応、頼んだものはテイクアウトの形で確保しておきます。今は水族館で迷惑を振りまいてる食いしん坊さんたちを叩きのめしましょう」
ハナコ「アサミさん、そういうところは抜かりがありませんね」
- 177二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 11:04:27
水族館近く
サオリ「やぁ戦友、忙しそうだな」
アサミ「こんばんは、サオリ。ところでこの近くでゲヘナの美食研を見かけませんでしたか?」
サオリ「美食研の、か?そうだな…市街地の方へ走って逃げて行ったな」
アサミ「非番のところ感謝します。ではハスミさん、さっさと捕まえましょう」
ハスミ「え、ええ…!」
ハルナ「あらあら、全員捕まってしまいましたわね?」
ジュンコ「はぁー、正義実現委員会怖かった…」
アカリ「ところで、この有り得ない方向に折れ曲がった腕どうしましょうか?」
イズミ「せっかく、ゴールデンマグロのお刺身を食べる機会が…!」
ヒカル「…貴方たち本当に食べることしか考えてないのね…フウカも大丈夫?」
フウカ「な、何とか…申し訳ありません、先生…」
コハル「では、この人たちの引き渡しは先生にお任せ致します。エデン条約前なので先生が身柄移送を担ってくれるのであれば幸いです」
ヒカル「分かったわ。全く…このまま好き勝手に暴れ続けてたら、この先一生トリニティのグルメを味わう機会が来なくなるわよ貴方たち」
ハルナ「うぐっ…!」
アカリ「見事に痛いところを突いて来ましたね☆」
アサミ「『痛くなければ覚えない』とはよく言いますが、相手がどんなことで痛みを知るのか考えて説教するのは有効的ですね」
- 178二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 11:06:47
トリニティ・ゲヘナ自治区境界線
セナ「お待たせしました。新鮮な死体がこちらにあると聞いて」
ヒカル「ああ…腹ペコ共ならこのトラックの中よ」
セナ「承知しました。この様な夜遅くまでお疲れ様です」
ヒナ「本当に先生って忙しいのね。補習授業部の面倒からトリニティで暴れたゲヘナ生の捕縛、そして私たちへの引き渡しまで…」
ヒカル「なに、頼まれたことにちゃんと応えるのが、大人の仕事だから。ヒナもこの時間までお疲れ様ね」
セナ「それでは、全員引き取りました。おやすみなさい、先生」
ヒナ「先生も、身体には気を付けてね」
ヒカル「ええ、ヒナたちもおやすみなさい。それじゃ…補習授業部の皆の下に戻りますか」
- 179二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 17:20:14
【第二次学力試験】
トリニティ自治区 補習授業部合宿所
アサミ「先生、エリさんから情報と、依頼料の請求書です」
ヒカル「ありがとう、アサミ。アリウスのアジトの幾つかは正義実現委員会への通報で潰して、面倒ごとを起こすだろう温泉開発部の面々もアサミと風紀委員会のお陰でしばし行動不能。後は、第二次学力試験を無事に終えるだけ…」
アサミ「はい…しかし、もどかしいですね。私たちも何とか先んじて手を打ってはいますが、相手が私たちよりさらに先に一手を打ってくるために、これまで先生が経験してきた展開となっている…」
ヒカル「だからこそ、私たちは最善最良の選択を欲しているのよ。でも、その選択が本当は間違いだった…なんて可能性もあるのが怖いのよ」
アサミ「…確かに、先生は直接、『選択の誤りがもたらしたもの』を目の当たりにしていますからね」
ヒフミ「先生、大変です!第二次学力試験の日程とか試験範囲が変更されています!」
ヒカル「…早速ね。皆を教室に集めて、さっさと試験の準備に取り掛かるわよ」
トリニティ自治区郊外 ゲヘナ自治区との境界線付近
ハルナ「皆さん、お待たせしました」
ハスミ「えっ、美食研究会!?どうしてここに?」
先生「ゲヘナ自治区を通る関係上、道案内が出来る人を雇っておいたの。いわゆる司法取引よ」
アカリ「しかもわざわざ車をレンタルしておいてくれて、感謝します☆」
ヒフミ「ですが、どうしてゲヘナ自治区の中に試験会場が…」
シズカ「それぐらいに、私たちを退学させたいということか…」
アサミ「皆さん、ここで考えてる暇はありませんよ。さっさと向かいましょう」
キングゥ「まさか、温泉開発部と風紀委員会の双方に対して手を打っているとは驚いたよ。ミレニアムの時といい、あの先生はかなりのやり手だ」
???「ええ…だからこそ、私たちも同様に手を打っておきましょう。どのみち、ここでアリウスと裏切り者の行動を止めることは出来ないのだから」 - 180二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 17:23:09
1時間後
ヒフミ「なんとか、試験開始時刻にまで間に合いましたね…」
ヒカル「美食研の皆も、無事に逃げおおせたみたいだから、後は試験を受けるだけだけど…」
シズカ「皆、こっちを見て。砲弾がある。これはティーパーティー警護隊の砲兵隊が使っているL118榴弾砲のものだ」
ハナコ「中身は…紙の束ですね。それに通信機もあります」
アサミ「成程…事前に用意してたというわけですか。ともかく、急いで試験を終えてトリニティに帰りましょう」
???「こちら『レイヴン』、配置に就いた。仕込みも万全だ」
キングゥ「ナイスだ、レイヴン。タイミングは君に任せるよ」
レイヴン「だけど…本当に爆破だけでいいのか?例の『爆弾』を使ってもいいのだろう?」
キングゥ「始末だけなら、ここまで回りくどい方法は取らないよ。まぁ、今はこの茶番劇を続ける方に力を入れようじゃないか」
ハスミ「…どうして、こうなるんですか!?」
シズカ「色々と、吹き飛ばされてしまったな…」
ハナコ「まさか、ここまで徹底的に邪魔をするとは…」
ヒフミ「せ、先生、大丈夫ですか…!?」
ヒカル「…相手も一手先を見ている、という訳ね…」
- 181二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 17:25:34
【今はただ努力あるのみ】
トリニティ自治区 補習授業部合宿所
アサミ「先生、模擬試験の結果が出ました」
ヒカル「ありがとう。しかし…こうも補習授業部の活動を邪魔されていくとなると、本当に頭が痛いわ…」
アサミ「…『あの人』も同じ事をよく仰られていました。でもそれでも、出来ることを一つずつ進めていって、何とか補習授業部の皆さんを合格させる事に成功しました」
ヒカル「…とにかく、今はただやれることをしていこう。ヒフミたちはあんなに頑張っているのだから、さらに力を入れないと」
アサミ「ええ…それと、エリさんとモルガンさんから連絡です。内容はこちらの手紙にあります」
ヒカル「アナログも時には便利なものね。さて…補習授業部を全員合格させる。そしてエデン条約を邪魔する要因も解決する。両方やらなくちゃならないのが、大人の辛いところね」
ヒカル「皆、準備できてる?」
ヒフミ「あっ、先生!実はシズカちゃんが話したいことがあるって…」
シズカ「ああ…皆には正直に話しておきたいことがあるんだ」
ヒカル「…シズカは実はアリウスから送り込まれた間諜で、アリウスに対してトリニティの情報を流していた…」
アサミ「でもその裏ではアリウスを裏切り、エデン条約を締結するために奔走していた、と…」
シズカ「ああ…私はエデン条約によってもたらされる筈の平和のために戦うことを選んだ。アリウスがトリニティと和解し、正式にキヴォトスに復帰する機会はエデン条約以外にない」
ハナコ「シズカちゃん…貴方って人は…」
シズカ「このトリニティでヒフミたちと出会い、補習授業部で過ごした日々は本当に楽しかった。この日常を守るためなら、私は何だってやる」
ヒカル「…シズカ。何か悩んでいることがあったのを私に話してくれてありがとう」
シズカ「怒らない、のか…?」
ヒカル「怒っているわよ。でも、それは自身の悩みを打ち明けなかったことに対して。そういう難しい問題を解決するのは、私たち大人のやるべきことなのだから」 - 182二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 17:29:10
【第3回学力試験】
その夜 補習授業部合宿所
ヒカル「…そろそろ時間ね。アサミ、シズカとハナコは?」
アサミ『現在、私たちはナギサさんの方へ向かっています。先生もお気をつけて』
エリ「お待たせしました。随分と派手に動こうとしていますね」
モルガン「エリはともかく、私までも引っ張り出してくるなんて…相当面倒なことが起きそうだねぇ」
ヒカル「あくまでも学力試験がメインだから、戦闘は私たちメインで進めていくわよ。それに…話も色々と手紙で通してあるから」
エリ「手紙…?」
???「お待たせ、呼んだ?」
???「ん、ファウストからの指示でここに来た」
???「覆面水着団、トリニティに参上です♡」
???「随分と派手に仕掛けたものだな、先生。戦友から話は聞いているよ」
モルガン「…成程、これは確かにスマホで呼び出せる状況じゃないね」
アサミ『先生、セーフハウスに到着しました。皆さんに音声流します』
ヒカル「分かったわ。にしてもサオリ、よく手を貸してくれたわね」
サオリ「先生には多くの恩があるからな。それに応じるのはトリニティとして当然だ」
ヒヨリ「強化合宿でシズカちゃんの成績が上がってきているって話を聞いて一番喜んでいましたからね、サオリ姉さん」
シロコ「それに、アビドスでは結構助けてくれたし。困っているときはお互い様」
ハナコ『では、私たちのリーダーから伝言です。『あはは、えっと…それなりに楽しかったですよ、ナギサ様とのお友達ごっこ』』
ヒカル「…」無言で頭を抱える
サオリ「これはひどい」
セリカ「うわぁ…」
ミサキ「…後でお見舞いに行こうか」 - 183二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 17:42:24
深夜の校舎内に、銃声と爆発音が響く。
「くそ、スパイが裏切った!」
「しかもティーパーティーの護衛や正実の奴もいる!謀ったな!」
アリウス分校の武装集団はナギサの身柄を目当てに進むが、それをシズカとアサミの仕掛けたブービートラップが阻む。
「よし、これである程度時間は稼げている…あとは、正義実現委員会の人たちが来るまで耐え忍べば…」
「ですが、このまま籠城するのも厳しいです。試験会場に移動しつつ対応しましょう」
アサミはナギサを背負いながら言い、シズカにハナコと共に走る。とその目の前にヒカルたちが現れる。
「皆お待たせ!ナギサはそこにいるわね!?」
「随分と軽かったので余裕で運べました!先生頼みます!」
「ええ、任された!」
ヒカルは即座にナギサを抱き抱え、モルガンは口笛を吹く。
「おや、お姫様抱っことはやるねぇ」
「とりあえずシズカさんが仕掛けたもの以外にもブービートラップを仕掛けたので、直ぐには追い付けない筈です!」
「ん、私も手伝った」
エリとシロコが報告を上げ、一同は走り始める。その中でミサキは呟く。
「しかし、まさかアリウスがここまで忍び込んでくるとは思ってもみなかったな…警備は一体どうしていたのよ…」
「それを考えるのは後だ。とにかく今は、先へ進むぞ」
ナギサを抱えて走る一同を、一人の女性が見つめる。その背後には、白い衣服をまとった白仮面の男。
「おや、アリウス部隊はすっかり手玉に取られているねぇ。だがここからは『彼女』が引っ搔き回してくれる筈だ」
「―理解できぬ。枢機卿ペトロ、貴様は一体何を企んでいる?」
「なーに、トリニティそのものを揺るがすだけですよ、無名の司祭どの。さて…上手くやりなよ、お姫様」
- 184二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 17:48:54
「よし、やっと試験会場の近くにまで…」
一同の先陣を切るハスミはそう言いながら、先へ進んでいこうとする。がその時、エリが彼女の首根っこを掴んで引き戻した。
「っ、待って下さい!」
遅れて言葉が出た直後、モルガンの連れているドローンが警告を発する。そしてアサルトライフルがその正体を炙り出した。
『この先に、クレイモアが仕掛けられてるよ!それに、周辺にアリウス生徒の反応を多数検出!』
「先回りされた…!?」
シズカが珍しく瞠目の表情を見せる中、そこでようやくナギサが目を覚ます。そして彼女を抱えるヒカルが立ち止まった時、二人の耳に声が聞こえてきた。
「まさか、ここまで頑張るとはね。流石はシャーレの先生と補習授業部に選ばれた裏切り者の候補たちだね」
「その、声は…!?」
ナギサの声が震える。振り向いたハナコは、ヒカルの表情を見て息を飲む。それはまるで、悪夢を目の当たりにしたかの様に。
「やっ、久し振りだね先生。どうしたの、そんな顔して?まるで―裏切り者でもいたみたいなさ」
その言葉に、最初に口を開いたのはヒカルではなく―この中で最も必死に頑張ってきた、ヒフミだった。
「どう、して…どうしてなんですか…ミカ様…!?」
ナギサを含む一同は凍り付く。その目前には、何人ものアリウス生徒を率いる聖園ミカの姿があった。
「ナギちゃん、先生にお姫様抱っこされてて羨ましいね。まさか、先生たちがここまで動くのは信じられなかったよ」
「…ミカ。やはり貴方がアリウスと手を組んでいたのね」
ヒカルの問いかけに対し、ミカは表情を崩すことなく答える。
「そうだよ。元々パテル分派とアリウスは、反ゲヘナという点が共通してたから。それに、パテル分派内部やエデン条約に元々反対してた人たちは、ナギちゃんをホストの席から引きずり降ろして私をホストの座に就ける計画を立ててた。その上でアリウスを同盟相手としてゲヘナを攻め滅ぼすことも」
その話に、多くの者たちが息を飲む。考えつく限りで最も最悪な計画に、ナギサさえも唖然となる。
「そう…ゲヘナをこの世から消し去って、疑わしき敵全てを倒して、本当の楽園をキヴォトスに築き上げる。それがパテルとアリウスの立てた計画。ナギちゃんには悪いけど、大人しくしてもらえると嬉しいな」
- 185二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 17:52:18
ミカの言葉に、ナギサの顔が引き攣る。とその時、ヒカルは口を開いた。
「…その計画、本当に貴方が望むことなの?」
その問いかけに、今度はミカの顔が引き攣る。そしてヒカルは彼女を真正面から見据えながら言った。
「私はあの時言った。『私は、全ての生徒の味方』だと。でも、誰も幸せになれない様なことには断固反対するわよ。私は…学校や立場の区別なく全ての生徒を守るためにシャーレに来たのだから」
その時だった。真横より多数の砲弾が降り注ぎ、アリウス生徒たちの周辺に着弾する。砲弾が飛んできた方向へ目を向けると、そこには十数人のシスター姿の少女たちがあった。
「先生、それに皆さん、お待たせしました!」
「ナイスタイミングでしたよ、サクラコさん!」
「アレは、シスターフッド…!?」
歌住サクラコ率いるシスターフッドの出現に、ミカも瞠目を露わにする。ヒカルはハナコへ目を移しつつ、ニヤリと笑う。
「こちらは元々妨害を受ける前提で策を練っていたからね。ここから先は私たちのターンよ」
直後、シスターフッドが銃撃を開始。補習授業部の面々も攻撃を仕掛け始め、アリウス生徒部隊は複数方向からの銃撃に押され始める。ミカもその中で激しく抵抗するが、自身の戦力が一人、また一人と倒れていく中、不利に陥っていく。
「ミカ様!これ以上の戦闘は無益です!降伏を!」
「相変わらず優しいんだね、ヒフミちゃんは。よくそれでアビドスの皆と銀行強盗が出来たものだね」
急に信じ難い発言を流しつつ、ミカは短機関銃一丁でシスターフッドの生徒を一人ずつ倒していく。その戦闘技術は余りにも高く、ハナコたちはそれに驚くばかりだった。
「でも、私はもう止まれないの。何せ、パテルはそれを望んでいるから。セイアちゃんがああなった以上、私は…!」
その時、彼女の目前に先生が踊りかかる。ミカは咄嗟に左手を振り、しかし彼女の拳を先生の身体が受け止めた。
「せ…先生!?」
「ヒカル!?」
「ヒカルさん…!?」
突然の行動に、ハナコでさえも驚愕を露わにする。が、ヒカルは食いしばる様に立ち、そして言う。
「…大丈夫。大丈夫だから、ミカ。それに、セイアのこともね」
- 186二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 18:03:22
「セイアちゃんの、ことも…!?」
ミカが驚いた様子で呟き、とそこに一人の女性が現れる。
「セイアさんのことなら心配なく。彼女は今、ミネさんの下でトリニティとは別のところで治療を受けています」
「マーリンさん!」
ナギサたちはマーリンの方に目を向ける。彼女の背後をよく見れば、そこには何人ものアリウス生徒が倒れていた。
「聖園ミカ、貴方を祭り上げて政権転覆を目論んでいた者たちは全員拘束しました。もう、道化を演じる必要はありません」
「…相も変わらず仕事が早いわね、マーリン」
やがて、正義実現委員会の面々が駆けつけてきて、ミカはその場にへたり込む。そして手に持っていた銃を置いた。
「…本当に凄いな、大人って」
戦闘が終わり、ハスミはヒカルの方へ駆け寄る。気づけばヒカルは口から血反吐を吐いており、どう見ても重傷を負っていた。
「せ、先生…!」
「…私を気にしなくても大丈夫よ。早く試験会場に行きなさい。それに…」
ヒカルはミカの方へ目を向ける。彼女はこれから連行されていくところだった。
「…彼女のことを恨まないであげて。昔の私の様に色々と知らなかった、ただの子供なんだから。今は自分のやるべきことをしてきて」
「…はい!」
ハスミは頷き、そしてヒフミたちの下へ駆け寄った。ヒカルはそれを見届け、ゆっくりと目を閉じた。
その日行われた、三回目の学力試験。補習授業部は全員合格を果たした。
その翌日、シャーレの先生はトリニティ市内の病院に入院した。
- 187二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 18:30:55
夢の中で、一人の少女が語りかける。
「…それにしても、君は随分と無茶をしたね。あのミカの攻撃を文字通り受け止めるなんて」
少女の言葉に対し、ヒカルは苦笑を浮かべる。その姿はかつての少女だった頃の姿そのものだった。
「あれぐらい身体を張らないと、全て解決しないからね。これから待ち受けるだろう悲劇を解決するためなら、文字通りこの身体が駄目になる覚悟で頑張るわ」
「…君は、エデン条約を随分と期待しているみたいだけど、本当にトリニティとゲヘナの間に平和が訪れると思っているのかい?」
少女の問いに対し、ヒカルはふっと笑う。
「ただ思うんじゃないの。信じるのよ。楽園はきっとあると思う様にね。それに、知り合いに随分と下世話な話が好きな人がいてね。今身に付けているものが下着と言えば下着だし、水着だと言えば水着だ、とね。最初から疑うだけでは、何も進まないわ」
ヒカルは席から立ち、そして踵を返しながら言う。
「今度は、現実世界でちゃんと会いましょう。百合園セイア」
「漸く目覚めましたか、ヒカルさん」
病室で、マーリンはヒカルをそう言って迎える。ヒカルは尋ねる。
「…ミカの方はどうなってる?」
「危惧してた通りの状況にはなってますが、極端なまでの激化は防いでいます。取り敢えず今は、へこんだ胸と砕けた肋骨を治してからにしましょう」
「…余計なお世話よ」
- 188二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 18:37:08
スレ立て主です。ようやくエデン条約編2章までの部分のSSとかを書き切れた…
パート2も準備中です。 - 189二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 18:49:04
生徒紹介
羽川ハスミ(一年生)
正義実現委員会の一年生。
素行不良と成績を理由に補習授業部に送られた。
甘い物好きは相変わらずであり、誕生日も原作ハスミと同じ。
下江コハル(三年生)
正義実現委員会の副委員長であり、『この世界』におけるコハル。
体型や身長は見違える程になったが、誕生日と趣味は相変わらずである。
二人の身長は原作のハスミが179、コハルが148だったのに対し、この世界線ではハスミは164、コハルは163となっている。 - 190二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 18:53:20
- 191二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 19:23:57
- 192二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 20:17:29
槌永ヒヨリ(救護騎士団)
救護騎士団に属する二年生。
学年こそ二年生ではあるが、下級生のセリナに対して全く頭が上がらない関係にある。
お腹のたるみを見られる度に、ミネにこってり絞られている。
秤アツコ(シスターフッド)
シスターフッドに属する一年生。
名家の出で、マリーとは同期である。
サオリによく大切にされており、ミサキやヒヨリとも仲がいい。
- 193二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 21:59:45