- 1◆l7elE92Qk0.U25/05/17(土) 00:44:47
今際の景色は一面の青。貴女の髪と同じ青。私の翼と同じ青。
止まり木ははるかに遠く、力尽きてただただ墜ちて行く。隊列ははるか遠く。
僅かに残った力を翼に込めて、羽ばたいても墜ちて行く。羽ばたいても羽ばたいても墜ちて行く。
隊列に向けて叫んでみても、誰も答えてくれない。父も母も兄弟も。誰も答えてくれない。
私は墜ちて行く。母なる海へ墜ちて行く。貴女の色と同じ色、青の海へ墜ちて行く。
目覚めれば真っ暗、真っ暗で窮屈な場所。
ただやみくもに、やみくもにくちばしを突き出し壁をぶち破る。
壁の向こうは柔らかな感触と、かつて感じた母の温もり。懐かしやこの温み、この感触。
暗闇の中、ただ母の温もりを感じ、口に運ばれる糧を貪る。
ただ繰り返される日常が過ぎて行く。
7日目の朝、私は朝焼けに包まれる。長い長い旅路の果てに、朝日をこの目で見る。
誰かが私に問いかける。やさしい声音で私に問いかける。
ああ、やっと会えた。海へ還ったあの日から、ずっと恋焦がれた貴女に会えた。
私はでたらめに紡ぐ。まだ上手く歌えぬこの身ででたらめに紡ぐ。
私は帰ってきました。貴女の下に帰ってきました。
我らが女神、ヴィルシーナ。
見ていてください。今世では命を紡いで見せます。
ああ、早く飛びたい。己の翼で自由に飛びたい。
貴女の髪と同じ色。同じ色のこの翼。
この翼で、自由に飛びたい。 - 2◆l7elE92Qk0.U25/05/17(土) 00:45:03
微睡みの中、鳥のさえずりが聞こえる。スズメとは違う、鳥のさえずり。
「みんな、おはよう」
窓から身を乗り出し、すぐそばで営巣しているツバメに挨拶する。
この時期の朝だけの習慣。言葉が通じるわけでは無いけれど、彼らはかわいらしいさえずりで返答してくれる。
「今朝は少し寒いわね。今日も頑張りましょうね、ツバメのみなさん」
私は懸命に生きるツバメたちに、元気を貰う。
南国から飛来し、この極東で育まれる鳥たちの営み。
朝日を浴びて、ふーっと深呼吸。
さあ、朝のトレーニングに行かないと。
「それじゃあね、ツバメのみなさん」
また声をかけ、身支度を始める。もうすぐオークス。今度こそ決着を付ける時。
今日もまた、小さな旅人たちから元気を貰って一日を始める。
さあ、私も頑張らないと。 - 3◆l7elE92Qk0.U25/05/17(土) 00:45:13
以上
近所にツバメが飛来してきたのとシーナの勝負服イベントで自身を海に例えていたので書きました - 4◆l7elE92Qk0.U25/05/17(土) 00:45:24
- 5二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 01:05:39
乙
こういう雰囲気の話もいいね - 6◆l7elE92Qk0.U25/05/17(土) 01:08:15
- 7二次元好きの匿名さん25/05/17(土) 01:45:31
毎度素晴らしいSS感謝
やっとヴィルシーナ実装してスレ主良かったね… - 8◆l7elE92Qk0.U25/05/17(土) 01:48:45
- 9◆l7elE92Qk0.U25/05/17(土) 02:10:22
よくよく考えたら怪文書書いても徳は積めんな業背負ってるだけだな
はーねぇねの業も背負って地獄行きたい