- 1二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:49:33
「やっほー、トレーナーさん!」
「スカイ、お疲れ様」
トレーナー室に元気よく飛び込んできたのは、担当ウマ娘のセイウンスカイ。お昼寝おサボりウマ娘な彼女だが、今日は素直にやって来てくれたみたいだ。
そして、普段よりもウキウキしているような……?こういう時の彼女は、大体何か考えが──主にサボる口実とか、そういったことを思いついている。それにいつも振り回されるばかりだ。
そして予想通り、驚くような言葉が、彼女の口から飛び出した。
「トレーナーさんって、お付き合いされてる方とかいらっしゃいます?」
「え、いないけど」
「うん、ですよね」
酷い。まあ事実としていないからね……。
しかし、トレーナーの恋愛事情何て聞いてどうするつもりなのだろう。
「私もですね、今フリーなんですよ」
「だろうなあ」
「酷くない?まあ、今日ってエイプリルフールじゃないですか」
「あ、ホントだ」
「と言う訳で……ずっと貴方が好きでした、付き合ってください」 - 2二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:50:15
そうきたか、なるほど。エイプリルフールなので、嘘ということで──恋人ごっこでもしようということだろうか。
正直面白そうだ。スカイの考えに乗ることになるが、実は何だかんだでちゃんとトレーニングはするし、振り回されるのは結構楽しかったりする。
なので……
「こちらこそ、よろしくね」
「やったー!ではでは、さっそくお買い物デートに行きましょっか!」
「そうだね、トレーニングデート、しよっか」
「ええ〜っ!何それ、甘くなくてただただ酸っぱいだけじゃないですか〜!」
これが目的か、このおサボり娘!油断できないなあ。
練習はもちろんしてもらう。ただ、せっかくなのでそれっぽいことをしてみたい気持ちもある。
「終わったら、一緒にご飯──うん、ディナーに行こうか」
「おお〜。それじゃあ、エスコートしてくださいね?」
まだ中学生の子に、こんなキザな台詞を言うのは何というか……ものすごくアウトだろう。ただ、この子に言うと考えると、あまり躊躇いは無かった。 - 3二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:52:38
トレーニングを終え、ディナーという名の直訳晩御飯を済まし、寮への帰路に就く。夜景を楽しむドライブデートは流石にできない。
「着いたよ。起きて、スカイ」
「ふぁ〜い」
寮に着いたので、肩に寄りかかって寝ているスカイに呼びかける。
外出すると伝えてあるし、そこまで遅い時間ではないが、早く戻った方がいい。
「それじゃあここでお別れなので──エイプリルフールも、終わりですかね」
「そうだね」
文化を元にでっち上げたこの関係は、もちろん明日には何も残らない。酔狂なだけの遊び、夢のようなもの。ただ──
「この質問は、もちろんしておかないとね。トレーナーさん、恋人セイちゃんとの1日、楽しかったですか?」
「うん、最高に楽しかった」 - 4二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:53:29
──楽しかった。本当に。街にうごめく奴らと同じになってみて初めてわかる。傍から見るより幸せだって。
「恋人が欲しくなっちゃうぐらい楽しかった。何処かに良い人いないかなあ」
「案外、身近にいたりして?」
「トレーナー同士とか?」
「学園中が大騒ぎになりますよ、にゃははっ」
トレーナー、出会いの少ない職業なのか。それともモテないだけなのか。
そもそも、恋愛に必要なのは出会いを掴みに行く努力かもしれない。考えてみればトレーナーなんてまさにそれ。ウマ娘のスカウトを──あ、スカイに無理矢理専属トレーナーにさせられたんだった。トレーナー業の今後が不安である。何時までスカイと一緒じゃないし。
「さて、それじゃあ最後に──ちょっとお耳を貸してくださ〜い」
「ん?はいはい」
何だろう、サプライズ?今日の全てをひっくり返すとんでもないオチでもつけるのだろうか?
「今日はお付き合いいただき、ありがとうございました」
ああ、スカイの感想聞いてなかった。こういうところがモテないのかも──
「──楽しかったよ、またよろしくね」
「──」
「ふふふ、最後の恋人セイちゃんでした!それじゃ、お疲れ様でーす!」
「おつかれさま」
──…… - 5二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:54:11
『何処かに良い人いないかなあ』
『トレーナー同士とか?』
やっぱり、眼中に無いよね。知ってるよ、仕方ないよ、私はまだ子供だから。
でもね、私はもう、貴方しか見れないから。
だから、貴方を振り向かせるため努力する。
『こちらこそ、よろしくね』
『終わったら、一緒にご飯──うん、ディナーに行こうか』
狙い通りの展開だった。貴方なら、この遊びに付き合ってくれるって確信してた。一切の他意はなく、遊びとして。
『最高に楽しかった』
『恋人が欲しくなっちゃうぐらい楽しかった』
でも、私は本気だった。だから嬉しかった。心から楽しんで貰えただろう。
トレーナーさんを釣り上げる。リールを少しづつ巻いていく。
『──』
手応えは、多分イイ感じ。
……なんだけどなあ。
うーん、もっと責めるべきだったのかな。あの囁き以外効いてなさそうなんだよねえ。 - 6二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:55:46
「……」
視覚の情報に従い、車を操縦する。何も考えられない。
『楽しかったよ』
一度頭を働かせれば、彼女の言葉が思い浮かびこだまし続ける。運転に集中出来やしない。
「あんな声、出せたんだ……」
呟く。外に吐き出し冷静なる。
とりあえず、家に帰ろう。
「ただい……」
誰もいない自分の家。何時もの口癖が出きらない。誰もいないのに言ってどうするの、なんて脳裏によぎったから。
何でだろう、誰もいないのは当たり前なのに、今まで気にならなかったのに。誰もいないことが気に触ったのか?──誰かにいて欲しいのか。
それは不特定か、それとも個人指定なのか。
「……はあ」
お酒美味しい。今日のことは全てアルコールのせいにして流してしまおう。それがいい、エイプリルフールなんだから、今日で終わらなくちゃ。 - 7二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:56:50
「……」
身支度して、布団に入る。いい感じに眠たくなっている。すぐにでもぐっすり寝れそうだ。
さて、明日も頑張ろう。
……明日も、スカイのトレーニング。
『またよろしくね』
「ダメだよ、スカイ」
そんなこと言ったら、本気に見えるでしょ。
今日の小芝居の告白が。
後ろから抱きつかれ、ビックリさせられたことが。
手を繋いで歩いたことが。
食べさせあいっこしたことが。
顔を近づけてツーショット撮ったことが。
別れ際の会話が。
今日だけじゃない。
今までの、思い出までもが、塗り替えられる。
いや、今まで、元々おかしかったか。
ウマ娘とその担当トレーナー。
そんな関係なのに、エイプリルフールに、恋人ごっこなんてするのか?それを受け入れるのか?躊躇いもなくキザな台詞でデートに誘うのか?
頭がおかしくなりそうだ。ええい、仕方ない。
エイプリルフールのセイウンスカイは、そういうことをする。そんな子と仲良しなんだからそういうことしちゃっても仕方ない。
という結論づけで納得しよう。うん、仕方なかったってやつだ。
よし、明日からはいつも通りだ!
終わり。 - 8二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:57:23
セイちゃんトレーナー、だいぶ限界化してる説。どう考えてもセイちゃんのこと好きすぎるでしょ。
新衣装セイちゃんの耳元で囁くような育成完了ボイス『楽しかったよ♡』に破壊されたので勢いで書いちゃった。
他にもあ~ん要求してきたり、自分に寄っかかって欲しいなんて言ってきたり、僕っ子になったり、夢の中で一緒に踊ってあげるとかさあ…… - 9二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 18:58:58
巻けー!!!もっとリールを巻き上げろー!!!!間に合わなくなっても知らんぞー!!!!!!
- 10二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 19:03:50
な〜にが怪文書だ、ただの良質な甘々セイトレSSじゃあないか!!
こーゆーのはあるだけあったほうがいいからできる範囲でまた上げてくれると助かるよ!! - 11二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 19:54:35
あげ
- 12二次元好きの匿名さん22/04/01(金) 20:20:03
最高でした
もっとデートしろ - 13二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 07:12:45
これがいい
素晴らしい - 14二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 07:17:32
セイトレはカウンターが上手いイメージだけど実際は超ギリギリも良いところで薄氷の上で返してると思ってるのでこういうの大好きです
ありがとう‥‥‥