- 1二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:48:27
「────だから、今後はスタミナを重視したメニューを組んでいくつもりだよ」
トレーナー室にて。
テーブルに広げた資料を見ながら、俺は今後のトレーニングプランについての話を終えた。
距離延長も視野に入れた計画、勿論、彼女の意見も取り入れて修正を加えていくつもりである。
とりあえず、感情の反応を見るところから。
そう思っていたのだが、いくら待っても返事は一向に返って来ない。
どうしたのだろうと思い、俺はちらりと隣に座る彼女を様子を覗き見た。
美しい青毛のロングヘア、前髪には少し垂れた菱形の流星、右目には泣きボクロ。
ヴィルシーナは、心ここにあらずといった様子でぽーっと資料を眺めている。
「ヴィルシーナ?」
「…………あっ」
俺が声をかけると、しばらくの間を置いてヴィルシーナはハッとした顔になる。
慌てた様子できょろきょろと視線を彷徨わせると、申し訳なさそうな表情で小さくため息をついた。
「すみません、ちょっと頭が働かなくて、せっかく話してくださっているのに」
「気にしないで、あれだけの走りを見せた後だからね、少し気が抜けちゃうのも仕方ないよ」
「……はい」
「資料は持ち帰って良いから、時間のある時に読んでもらって、次のミーティングで調整していこう」
「ええ、ありがとうございます…………すぐに、読みますから」
そう言って、ヴィルシーナは資料を手に取って真剣な表情で目を通し始める。
……後で良い、って言ったんだけどなあ。
真面目な彼女らしい、と思いつつも心の中では一抹の不安を感じていた。
というのも、こうして読んでいる最中でも、いまいち集中し切れていないようだったから。 - 2二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:48:38
ヴィルシーナは何かをやり切った後に、こうしてぼーっとした状態になることがある。
元々が勤勉な頑張り屋である彼女は、大きな目標を達成すると燃え尽きたようになってしまうのだ。
とはいえ、何時もはしばらくすると調子を取り戻してくれるのだけれど、今回は長引いている。
それだけ前回のレースに力を注いでいたのだけれど、それはもう一週間前の話だ。
余韻に浸るだけならば良いが、そろそろトレーニングも本格的に再開していかなければならない時期。
集中力を欠いた状態で怪我でもしてしまったら、目も当てられない。
もう少し休みを伸ばすのも手だけれど────と思案しながら、俺はスマホを取り出した。
「…………試して、みるか」
ヴィルシーナのこの状態は、どうやら私生活でも継続しているらしい。
同室であるホッコータルマエ、そして妹であるシュヴァルグランとヴィブロスからも情報を貰っていた。
そして、ヴィブロスにはとある“提案”も。
LANEを起動させて、ヴィブロスとのトーク画面を開く。
……彼女には何かと呼び出される機会があるため、LANE交換をしていた。
…………ちなみにご家族のグループLANEにも入っている、固辞はしたのだけれど断り切れなかったである。
そして、昨夜に彼女が送ってくれたメッセージを改めて確認した。
────お姉ちゃんのやる気スイッチ、教えてあげるね?
ヴィブロス曰く、実家に居た頃から時々ああいう風になっていたらしい。
その都度、彼女達の母親によって、調子を取り戻してもらっていたとか何とか。
だったら一度実家に────とも考えたがすぐにその考えを打ち消した。
彼女にとって家族は何よりも大切な要素ではあるが、安易に頼るのは宜しくない。
切羽詰まった状況ならば話は別だが、まずは俺で出来ることをやってからにするべきだ。 - 3二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:48:56
「ふう」
深く息を吐きながら、ヴィルシーナへと視線を向けた。
先ほどから変わらず資料を呼んでくれているが、明らかに進みが遅い。
本人も眉間に皺を寄せていて、上手く内容が頭に入っていないように感じられた。
どうにかして、あげないと。
改めてそう決心をして、俺はヴィブロスからの教えを実践に移すことにした。
「……」
無言のまま静かに、俺はヴィルシーナの頭へ向けて手を伸ばす。
────お姉ちゃんはねー、耳と耳の後ろを撫でられるのが好きなんだー♡
そこを母親に触られると、ヴィルシーナは調子を取り戻していたらしい。
とはいえ、過ごした時間が彼女の家族とは天と地ほどの差がある俺が触れて大丈夫なのか。
そう問いかけた俺に対して、ヴィブロスは一言だけ告げた。
トレーナーさん“だから”大丈夫、と。
ヴィルシーナのことを、俺以上に良く知るであろう彼女の太鼓判。
そして何よりも、俺自身、いつもの彼女に戻してあげたかったから。
ドクンドクンと響く心臓の音を聞きながら、俺は彼女の右耳を指先でそっと摘まみ、すりすりと擦るように撫でた。
「ひゃ……あぁんっ!」
刹那────甲高く、艶っぽい声がトレーナー室へと響き渡った。
びくんと身体を震えさせて、ぴんと背筋をしならせて、ぴょんと耳を逆立てて。
やがて我に返ったヴィルシーナは、嬌声を上げた口を慌てて押さえると蹲るように身を丸める。
そしてみるみる内に顔を赤く染め上げながら、ジトっと恨めしそうな視線をこちらへと向けた。 - 4二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:49:09
「…………トレーナーさん、これは一体、どのようなおつもりなのでしょうか?」
その声色は、とても穏やかである。
まるで、嵐の前で、奇妙なほどに凪いだ海の如く。
俺は────ただただ、ヴィルシーナへ謝罪をし続ける他なかった。 - 5二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:49:26
「それで、ヴィブロスから教わったことを実践した、と?」
「……はい」
「…………昨日、ヴィブロスが頑張ってってメッセージを送ってきたのは、そういう」
「えっ?」
「こほん……心配かけたことは申し訳なく思いますし、心配してくださったことも有難く思います……しかし、女性の耳に無断で触るのはいかがなものでしょう?」
「…………はい、それは本当に、そう思います」
ぐうの音が出ないほどの正論であった。
理由はあったものの、何も言わずに女性の身体に触れるなど言語道断。
普通に考えたら、通報されたって何の言い訳も出来ないほどの愚行であった。
……どうにも、自分で思っていた以上に冷静な思考を失っていたようである。
微かに頬へ赤みを残しているヴィルシーナは顔を逸らして、髪の毛先を指先でいじりながら話を続けた。
「その、私の耳に触れても良いのは、家族や、家族と同じくらい大切な人、だけなんです」
「……ああ」
「そこまで心を許すのは、本当に、ごく一部の人、だけなんですから……だから、わかります、よね?」
ヴィルシーナは、ちらちらと俺の方を見て、耳をぴくぴくと震わせながら問いかける。
きっと、また俺が、同じような蛮行をしないかどうかが不安なのだろう。
今まで積み上げてきた信頼をふいにするような行為、その心配も当然のこと。
むしろ、それでも許そうとしてくれているのは、温情に満ち溢れた対応といえた。
二度と、間違いは犯さない。
そう心に決めて、俺は彼女と向き直り、はっきりと伝える。 - 6二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:49:40
「ああ、わかってるよ────もう絶対に、キミの耳には指一本触れないから」
「………………は?」
「……あれ?」
何かすごい低い声が返って来た。
予想だにしていなかった反応に、俺は思わず、ぽかんと言葉を失ってしまう。
ヴィルシーナはジトっとした目でこちらを見つめて、やがて、呆れたように大きなため息をつく。
そして────左耳の黒いカバーと青色のゴブハットを、おもむろに外した。
晒された生耳が、くるくると動く。
頬を再び赤く染めながら、少し怒ったような表情でこちらを見上げて、彼女は言葉を紡いだ。
「……違いますから」
「違うって、何が?」
「…………貴方だから、触っても許してあげます、と言っているんです」
「……へ?」
「トレーナーさんは、家族と同じくらいに大切な人だから、私の耳に触っても良いんです」
「いや、でも、それは」
「私の調子を戻したいのでしょう、だったら」
ヴィルシーナは身を寄せて、顔を近づける。
そしてその両耳を、まるで誘うかのようにぴこぴこと動き回らせた。
向けられる上目遣いの、甘えるような瞳。
彼女が淡いピンク色の唇で、小さく言葉 - 7二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:49:57
「────さわって?」
それは乙女の懇願であり、女王の命令でもあった。
俺に、従う以外の選択肢なんて、欠片も残されていない。
ごくりと息を呑んでから、再び鳴り響く心音を胸の内をかき乱されつつ、両手を上げる。
そしてヴィルシーナの両耳の根元を、優しく摘まんだ。
「あ……ん……っ」
ぴくんと、耳が震える。
指先に伝わる、少ししっとりとした毛並みとポカポカと暖かな温もり。
そして俺は先ほどと同じように、指先ですりすりと、根本から先端までを撫で回していく。
「んあ……あっ…………ふっ……もうちょっと、強くても…………良いですよ」
「こっ、こう?」
「んん……っ! はぁ……力加減が、お上手で…………後は……少し…………揉んで……」
「……わかった」
触れていく度に、少しずつ汗ばんでいき、熱を増して、柔らかくなるヴィルシーナの耳。
俺は彼女の言葉を通りに、その耳を指の腹でくにくにと揉み解していく。
「ふああ……っ!」
すると、ヴィルシーナから一際大きな甘い声が漏れ出した。
どうやら、相当効くらしい。
気が付けば、彼女の目はとろんと熱っぽく蕩けて、口を小さく開きっぱなし。
乱れた熱い息を吐きながら、気持ち良さげに身体を小さくくねらせて、その両手を俺の服ときゅっと掴んでいた。
妖艶さと可愛らしさを混ぜ込んだような姿に、俺はついつい、じっと見つめてしまう。
やがて、俺の視線に気づいた彼女は目を大きく見開くと────外した帽子で、俺を視線を遮って来た。 - 8二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:50:12
「…………顔は、見ちゃダメ、です」
「……わかった」
────その帽子では小さすぎて、視線を完全に覆うことは出来ていないけど。
俺はそのことを伝えないまま頷いて、両耳に触れ続ける。
必死に声を抑えようと恥ずかしげな表情で悶え続ける、ヴィルシーナの姿を眺めながら。 - 9二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 22:50:38
お わ り
あの帽子のサイズ感がわからない - 10二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 23:12:50
耳、いいよね…
- 11二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 23:21:28
この後二人でこうするのがクセになっちゃうんだよね……
- 12二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 23:24:46
こいつらみみぴょいしたんだ!
- 13二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 23:30:07
あーえっちだことやってるーいけないんだー
家族以外に許さないことをトレーナーに許すの良いですよね、そしてその快楽に溺れるお姉ちゃんよ - 14二次元好きの匿名さん25/05/18(日) 23:30:39
実馬が耳の間が弱かったんだっけ(確か大きい音が苦手みたいな話もあったはずだからそもそも耳への刺激全般に敏感だったのかもしれないけど)
それはそれとしてとても色っぽいシーナで良き…… - 15125/05/19(月) 09:12:15
- 16二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 17:24:35
シーナ、ちょっとよだれ出ちゃったのを隠してたりして
- 17125/05/19(月) 21:54:34
普段気を張ってる女の子がトロトロになるのは健康に良い