- 1東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:12:13
- 2東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:13:18
前スレ
【R-18】ここだけ3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦うリアルロボットSFな世界part21【のんびり進行】|あにまん掲示板襲来した異星人!侵略されるエネルギー資源!存亡の危機に晒されてなお人類は……未だ一つになり切れず、壮大な内ゲバを繰り広げ続けていた!!【出来れば読んでいただきたい世界観および初期設定集(テレグラフ)(…bbs.animanch.com【禁止事項】
・無敵ムーブ(戦闘でダメージを受けない、回避し続ける、など)
・必要性の認められない確定ロール
・相手PLが嫌がっていることを強要する行為(特にR-18関連はデリケートなところなので扱いには気を付けて、事前相談忘れずに)
【世界観やパワーバランスを保つ上での禁止事項】
・版権設定の利用
・「地形を変えられる火力」を個人で設定し所有すること
・3勢力(K.I社、人自連、デスペラード)+インベイドよりも立場や規模が大きい勢力を設定すること
・なんでも高い水準で出来るキャラ、なんでも高い水準で出来る機体禁止(他の人の活躍機会を奪いかねないため)
・メタネタ禁止(「この世界は作り物だ~」や背後さんへの言及をキャラの目線で発言させるなど)
- 3東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:13:47
Q1:参加してぇ!けど事前のキャラ登録って必須なの?テンプレはある?
A1:キャラシはあった方が色々スムーズだとは思うけど、無くても規約的なNGムーブさえしなけりゃ参加はOKだぜ!
テンプレらしいテンプレは特に無い(めんどうくさかった)からテレグラフなりで各自好きな様に書きたいこと書いてくれ!
↑の初期設定集から飛んだ先にあるスレ主のキャラシからテンプレとして項目を引用しても大丈夫だぜ!
Q2:キャラは1参加者につき何人まで?
A2:何人でもOKだぜ!複数陣営あるし下手に制限設けたらスカスカになるのが目に見えてるから……好きな様に作ってくれ!
Q3:コテハン(トリップ)は必須なの?
A3:必須じゃないぜ!でもトリップが無いってことはなりすましや乗っ取りが出ても判別方法が無いってことでもあるから、自衛手段としてコテハンを持っておくのは無難だぜ!
Q4:スレタイにR-18表記があるけどエロスレなの?
A4:一般誌のエロ描写とか元ネタ一般作品のエロ同人好き? 俺は好きなの……
エロメインじゃないけど「エロいことも割と自由に描写して良い」スレだから苦手な人がミスッて踏まない様に一応表記しているぜ!
「猥談耐性はあるけど自キャラにエロルさすのはなぁ……」って人でもOK、「自分は露骨なエロやりたくないです」って言っておけば良いぜ!
Q5:設定集に目通したけどなんか既視感ある設定ばっかりだな?
A5:へへっ - 4東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:14:34
【テレグラフ(設定やキャラシート、
R-18な文章を書いたりにどうぞ)】
x.gd【URL短縮用サイト(テレグラフのデフォルトURLだとあにまんのNGワードに引っ掛かってしまうのでこちらでURL短縮してから投稿してください)】
- 5光太乃夫◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:17:51
おや?拙僧めが保守の役回りとは
これまた、数奇な事もあるものですなぁ... - 6光太乃夫◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:22:54
拙僧は法師の身ではありまするが、
我が主の下で経営顧問の職を賜りました。
何故か、と聞かれますと...そうですなぁ
BF乗りでは御座いませぬ故、でしょうか - 7光太乃夫◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:26:58
時にソラウ殿は拙僧の羽織を持ち出しては、
すぐに売り捌いて帰って来るのですが......
先日、アウトサイドの子供達の布団代わりに
使われているのを見かけまして御座います
評価を改めようと思った反面、それなら布団を
売り払って頂きたいと思って次第にて。ええ。 - 8光太乃夫◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:29:06
台殿には怪しまれる事が多いですが、
拙僧に突っ込みを入れる速度がお早い。
冗談だろうと駄洒落だろうと、瞬く間に
的確な突っ込みをかける返して下さいまする
いやはや、流石は列島国家の御出身... - 9光太乃夫◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:33:31
最後に、我が主にて!
年若いものの考え・策謀を巡らせる手腕、
勝ち目が有る時にしか戦いを挑まぬ周到さ
そして現在を見据え、世界を見送る精神力...
素晴らしい、と言わなければ足りませぬ - 10光太乃夫◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 19:34:14
ではいつか、皆々様に御拝謁願います故
その時まではおさらばにて... - 11東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 21:41:29
あげー
- 12ミカエラ◆KPwoT407kA25/05/19(月) 21:42:12
前スレ200
おっけ〜…んじゃ、再建手術と再強化施術の日程は追い追い伝えるね。その頃にはBFも仕上がってるだろうし
…これからよろしくね?ノインちゃん - 13ノイン◆fDey8JUvvk25/05/19(月) 21:44:40
「よろしくお願いします、ミカエラさん」
- 14龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 22:20:50
前196
「そっか、ケイと一緒で抱えすぎてたのか…」
龍影は理解して、笑った。
「じゃあ、頼っちゃようかな。」
やっと龍影は影法師を振り切れた気がした。 - 15ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/19(月) 22:22:52
前188
【しばらくそのままの時間が過ぎる。若干彼女の髪の匂いを嗅ぎはしたものの、一度抱擁を解く】
「……ふぅ、…ぇえと、だいぶ激戦だったようですね…身体の方は大丈──どのような状態ですか?」
【声は明らかに違うが、口調はランセルそのものである。本人自身はルフス時なことなど思考の片隅に追いやっており、ウルヴィへの心配が脳の大半を占めていた】
【彼女は気絶こそしていないものの、震える腕や躓いた事、血で汚れた髪など、どこをどう見ても大丈夫には見えなかった】 - 16東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 22:26:10
- 17ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/19(月) 22:37:44
- 18ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/19(月) 22:53:42
- 19龍影◆9BZ6kXGcio25/05/19(月) 22:55:56
- 20東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 23:12:20
『アレか...良し、ええよ
ただ、あれは数個の試作品と理論だけで
BFに積んだんも試験用だけの代物やし
リンの戦闘データもしっかり貰うで?』
専用機を作るにはそれくらいはな、と
技術者らしい鋭い目付きで願いに応える
『最高のエンジン作ったるわ。
...あ、食べ終わったら皿片付けんで』
- 21ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/19(月) 23:15:28
- 22ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/19(月) 23:28:28
- 23東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/19(月) 23:41:31
- 24ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/19(月) 23:43:50
- 25龍影◆9BZ6kXGcio25/05/20(火) 00:03:14
- 26東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/20(火) 00:08:13
- 27ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/20(火) 00:24:04
- 28ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/20(火) 00:35:08
- 29旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/20(火) 08:10:36
前スレ174 ラバーさん
「えぇ。また巡り合わせがあったら、その時は再びバディフレームの農業への転用についての意見をお伺いしても良いかもしれませんわね」
優雅にティーカップを傾けながら、旧愛卿は微笑みを浮かべた。
とは言っても、武装への著しい熱意を鑑みるに専門外そうな雰囲気はするが。しかしバッサリ切り捨ててしまうのも酷だろう。
「将来的にはUNBFを使った農業で、このような嗜好品も値段も下げられると良いのですが…………」 - 30龍影◆9BZ6kXGcio25/05/20(火) 16:40:52
- 31東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/20(火) 16:49:01
- 32龍影◆9BZ6kXGcio25/05/20(火) 17:06:14
- 33東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/20(火) 17:14:31
- 34龍影◆9BZ6kXGcio25/05/20(火) 17:33:02
- 35東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/20(火) 17:39:01
- 36ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/20(火) 17:45:24
- 37紅陽とアポロ◆OXAm1h6odk25/05/20(火) 18:16:48
“青天市街”には多くの企業の本社や支部が集中している、というのは周知の事実だろう。
辛くもインベイドの侵攻から逃れられた最も大規模な都市は、人類自由連盟の心臓部とも称しても過言ではない一大拠点である。
・・・・・・・・
───────必然、大企業の首脳会談をするにも都合が良い立地という事に他ならない。
賢工グループの解体作業が完全に終了したその一日後には、紅陽機関は既にアポロ・インダストリーの最高経営責任者との間の会談の場を設けている。
彼らには迅速な行動が必要であった。それこそが、今後の人類自由連盟内での政治的アドバンテージの構築に繋がるのだから。
「───────おや、遅れてしまいましたかな?コレは申し訳ない。レディを待たせてしまうとは」
「うふふ、約束の時間の五分も前にお越し頂いたのですからお気になさらず。お会い出来て光栄ですわ、アダムCEO」
アンティーク調のドアを静かに開き、穏やかな風貌の灰髪の老紳士はシルクハットを脱帽してステッキを片手に優雅に礼の姿勢を取った。
『アポロ・コーポレーション』───────人類自由連盟の「多頭の獣」の一柱であり、逆巻重工と比べれば落ちるが穏健派の称号を恣にする大企業である。
ミサイル分野で圧倒的なシェアを誇る企業にして、人類自由連盟の対インベイド戦線に数多くの精強なBF実働部隊も派遣している企業でもあるだろう。
一方で老紳士と向かい合うのは、革張りのソファに腰を下ろしながらピンッと背筋を伸ばした同じく老貴婦人である。
『紅陽機関』───────脚部カスタムパーツの傑作を数多く輩出する旧極東系企業であり、そしてその起源からして対インベイド戦争に積極的な企業である。
今回の陸上戦艦と賢工グループを取り巻く騒動の中で最も貪欲に賢工グループの遺産を喰らい、其れらをフル稼働させて人類自由連盟の最前線への支援を厚くしている企業でもある。
「いやはや、吾輩としても紅坂女史とお会いする事が出来て光栄というものです。貴社のパーツには我が社もお世話になっておりますよ」
「彼のアダムCEOにそう言って頂けるとは、我が社の技術者も大いに喜ぶでしょう───────それでは、予め通達した通り。我が社と貴社との間での『企業間同盟』についての会談をしましょうか」
酷く穏やかに、老人達の会談は始まった。 - 38旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/20(火) 18:29:22
- 39紅陽とアポロ◆OXAm1h6odk25/05/20(火) 18:56:15
・・・・
「論外です。純粋な企業利潤を追求する上では先ず呑み込めませんな。我々に旨味がない」
紅陽機関からの『企業間同盟』の提案は、アポロにとって到底受け入れ難いものである。緩やかな主従関係と言えども、立場に上下が生じるのだ。
・・・・・・
そもそも企業勢力としてはアポロが上だ。ミサイルの分野で多大な利益を叩き出し続けるアポロ・インダストリーの勢力規模は、賢工グループの遺産を数多く接収した紅陽機関すら上回る。
其れは両者の間で共有されている当然の前提であるからこそ、紅陽機関を支配する老貴婦人もまた鷹揚に頷いた。
アポロ・インダストリーを頷かせる為には、決め手が必要である。
──────その前座として、話を切り出した。
「今回の騒動における逆巻重工の動きは見事なものでした。多数の艦載砲を有する陸上戦艦への軌道上からの降下作戦。前例のない発想です」
「えぇ。吾輩も同意です。マスドライバーを強襲の為に運用する。通常の揚艦方法は凡そが対策されていたのでしょうが、その裏を突く戦術でした」
給仕が注いだ紅茶を優雅に嗜みながら、アダムは熱に浮かされたような瞳で天井を見上げた。
否。彼が見ているのはその“先”である。 - 40紅陽とアポロ◆OXAm1h6odk25/05/20(火) 19:07:48
・・・・・・・
「──────────────なんと羨ましい。我々のマスドライバーは錆び付く程の時間を無為に過ごしているというのに、彼らは宇宙に行けた」
・・・・・・・・・・・・
アポロ・インダストリー。その正式名称を、アポロ惑星開発産業企業体。
インベイド侵攻以前。誰よりも多くのロケットを宙に飛ばして、誰よりも多くの資金を宇宙開発に投入して、誰よりも熱心に他惑星のテラフォーミングの可能性について論じていた男こそが『彼』だ。
インベイド侵攻後はその優れた技術を誘導ミサイルの開発に生かして圧倒的業界シェアを獲得した傑物の本質とは、一人の夢追い人に過ぎない。
・・
その狂執を露わにして、老紳士は静かに老貴婦人の次の言葉を待った。
───────期待があった。そして、この期待を裏切る真似はしないだろうという確信も。
・・・
「桜空の天体科。我々には、ロストテクノロジーを提供する準備が整っておりますわ」
・・・・・・・
「同盟は締結です。要求は総て飲みましょう。社員達にとって、今日は最高の一日になるに違いありません」
・・・・・・・・・
アダムは直ぐに頷いた。あの宇宙に行くのだ。それ以上に優先すべき事など、何一つとして存在しないと確信している。
微笑みを浮かべる老紳士に、老貴婦人もまた微笑みを浮かべた。
「────────それでは、現実(いんぼう)の話を始めましょうか」 - 41ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/20(火) 19:35:46
「……チトセさん、まだ退院しちゃダメなんですか?」
「ダメよ、傷口が開くかもでしょ?」
心にもないことを言っているな、とチトセは自己嫌悪した。
彼の体はすでに治っている。ケイ自身の体力もだんだんと快調に近づいている。
だが、それ以外が戻っているかはまるで別なのだ。
G-3の時と同じ、ではない。
ケイは慣れているとチトセにはわかった。
『慣れてはいけないものに慣れている』と。
(『あの時、不可能だろうと、死んででも、友人として彼を殺して。止めるべきだった』なんて……)
自分と、短い時間で交代形式でカンナが、カウンセリングを行ってやっと吐き出してくれた胸の内に、どこまでの悔恨が渦巻いているかなど。
一医者のチトセはわからない。
だがどうやら、『何があったか』を知っているだろう逆巻カンナが……それを聞いた時に能面のように表情を『作っていた』ことだけは、確かだった。
「今日は龍影さん達が面会の日よ。無理だけはしないでね?」
「はい……大丈夫です」
ああ、またこの子は……ぎこちない笑みで、こちらを騙しにかかっていると、チトセはわかった。
- 42紅陽とアポロ◆OXAm1h6odk25/05/20(火) 20:51:56
───────ミュール・コーポレーションCEOの演説をホンルゥ惑星通信社が同時多発的に発信したその翌日に、紅陽機関とアポロ・インダストリーは合同声明を大々的に発表した。
その内容は、以下の通りである。
『ミュール・コーポレーションの言い分には確かに一理あるが、その一方で我々は致命的な問題を指摘しなくてはならない』
・・・・・・・・・・・・・・・・・
『彼らは未然に連盟法違反を咎められなかった、という事実である』
『より賢工グループに近しい立場であった筈の企業であるミュール・コーポレーションさえ、逆巻重工の宣戦布告なしには連盟法違反に気付けなかった。コレは一つの結論を導くに値するであろう』
・・・・
『我々には、監査機関が必要である。大企業同士の相互監視は、結局賢工グループの蛮行を未然に予防する事は不可能であった。今回の逆巻重工の功績は称賛に値する働きだが、しかし対処療法である』
・・
『暴走を予防する第三者委員会。我々は、我々自身の不断の努力によって自由を維持する必要がある。同じ人類自由連盟に属する同志として一派閥の専横による暴走のリスクは見過ごしてはならない』
・・・・・・・・・・・
『巨大な勢力を咎めているのではない。しかし人は間違いをするのだ。単なる信頼ではなく、確固たる制度と構造として誤りを抑止しなければならない』
・・・・・・・
『フェイルセーフ。多くの人命を双肩に背負う我々は、些細な過ち一つで多くの人の命を奪う。だからこそ、過ちが起こってからでは遅いのだ』
『以上の提言を以って、本声明を締めさせて頂く』 - 43逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/20(火) 21:28:46
「…………やばい、頭がおかしくなりそうだ」
「し、心中お察しします……」
本社のCEO室で、逆巻カンナは机に突っ伏して寝込む姿勢になっていた。
ユズハはこれを、『自分が動くより先に、他のより動くのが早い人々』によって先手先手を打たれ続けているストレスだと理解した。
「ミュール・コーポレーション、だったね。あそこは今、自分の支持者を増やそうとしてる」
「ですね。それも賢工グループ解体後という、誰もが一息つきたいだろう時期を利用して」
「「私たち(逆巻重工)の行動を利用して」」
グランセン解放戦線、全くもって動きが早い、と。カンナは顔を上げたまま苦笑いをした。突っ伏した姿勢は変わらないが……。
もはや体裁をなす意味などユズハの前にはないという割り切りでもあった。
「予防機関、だったか。その存在の意義は私も認めよう」
首切り、介錯人を幾度か務めたことの女は笑った。事実、賢工グループは暴走した。誰もそれを止められなかった。自分たちですら事後対処だ。
だからこそ確信している。
「だが予防措置などやろうとするだけ無駄だ。初めは良いが、いつかそれは暴君の刃に変わる」
「権力とはいずれ腐敗する。それが絶対的権力を持てば持つほどに」
カンナとユズハの声は揃って。今度はお互いに力なく息を吐いた。
「「誰が見張りを見張るのか。その見張りの主張が正気であると、誰が保証すべきなのかは一生明らかにならない」」
介錯人としての経験であった。予防措置など、やればやるほど信頼は目減りする。
疑われていると思うほど、頑なになる。
・・・・・・・・
「警察を気取るなら尚更。手遅れになった後に、動かなくてはならないんだよ」
力のない、カンナの笑みだった。 - 44逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/20(火) 21:52:02
「……では、先の合同声明(>>42)について懸念を表明するということで?」
「いや、流石にそこまではしないさ。何もしなくて良い。ただ私の心労が増すだけで済む」
(それは済むではないのですCEO……)
カンナが穏やかに首を振っている中、ユズハは『この人もケイと似てるんだよなぁ』と現実逃避した。
自分たちの利益のため他者を利用する時、己の内側に責任を背負いこむことなど、特に。
「まぁ、グランセン解放戦線側の動きもわかる。そして同時に状況は緩慢だ……この時期に巨人が動けばよりおかしなことになるよ」
支持者稼ぎは良いことだが、露骨にすぎれば……この緩慢な微睡みのなかで疲れて眠りたいと思う者達の機嫌も損ねることになるだろう。
そして逆巻重工も古参。迂闊に動けば、また周りが騒ぐ。
「待ちすぎるのも良くないが、さてそうだね……私達はどうすべきか」
どう思う?とユズハに問いかけた。
「……袂を分かった古い友人が、今この状況をどう思っているか。聞くべきときではないでしょうか?」
「……ま、そうなるよね」
はぁ、と深い息を吐いた。大きな立場になるほど相手はこちらを慮る。対等な立ち位置が少なくなるというのは……若さもあるが、気が滅入るのだ。
「賢人会議と連絡を取ってくれ……数日か数週間の間にお互い、腸(はらわた)を見せ合おうか。と」
「かしこまりました」
ゆっくりと動こう。すでに未来は動いている。カンナは首を天井に上げた。
この戦いでまたも傷ついているケイと、そして裏で激動がまたも始まっている事実にため息をついた。
「恨むぞ、勞 金龍……」
自分たちに安息が遠いのだから。愚痴の一つは許されるべきだという思いだった。
- 45グリーン◆fDey8JUvvk25/05/20(火) 22:08:53
『────────────人類を檻で囲おうとする独占的な企業支配に抗い、真の自由を勝ち取る為に戦う、人類自由連盟を構成する遍く文化文明的同志諸君の為に』
『巨大な勢力を咎めているのではない。しかし人は間違いをするのだ』
【ミュール・コーポレーションCEOの演説。紅陽機関とアポロ・インダストリーの合同声明】
【その放送はクロノスインダストリー少将の元にも確りと届いていた】
「……貴方方、そんなに仲が良かったですかな?」
・・・・・・ ・・・
【呆れ半分に口にする。どうせ一般的な善良且つ良識的な企業が偶々考えることが一致した、というだけの話だろう】
「まあ、理由などどうでもよろしい。万一、万一あの多頭の獣の頭が纏まるようなことがあれば……我々とて腕の1,2本は食いちぎられかねません。」
【クロノスは世界最強の企業だ。それを疑うものが少将まで辿り着けるはずもない】
【だからこそ、些事は些事とする。その程度でこの大船は沈まないと確信している】
【だからこそ、最悪のシナリオだけは阻止せねばならないということもまた、確信している】
「……逆巻か?アズマか?グランセンや桜空の生き残りか?いや一周回って賢人か?」
【顔を顰める。人差し指が細かく机を叩く】
「どこかで道が繋がっているとすれば……ああ、全く。なぜ人間同士でこう心配せねばならんのです。」
【立ち上がり、茶を淹れる。NA産のティーパックから染み出す茶葉の香りが心を落ち着けてくれる】
「ふぅ……。」
「……!」
【男は何かに気付き立ち上がった】
「はは。これは、まさに美味しい話かもしれませんな。……いかんいかん。一晩寝かせて考えましょう。」
【照準は、North Argleton LTD】 - 46ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/20(火) 22:10:23
- 47ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/20(火) 22:24:30
- 48ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/20(火) 22:55:04
- 49ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/20(火) 23:14:15
- 50レオン・ミュール◆OXAm1h6odk25/05/20(火) 23:36:25
「此処で降ろせ」
──────青天市街を走る一台の高級車が、人類自由連盟最大の総合病院の前で停車した。
時刻は既に夜半を過ぎている。賢工グループの失脚後、ミュール・コーポレーションの若きCEOを青天市街を駆けずり回る事を余儀なくされていた。
陸上戦艦の撃破に参加した企業が一息を吐く中で、対クロノス強硬派の企業は酷く忙しなく動き回っている─────────理由は簡単だ。
・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・
賢工グループは対クロノス強硬派の中でも巨大派閥を構築していたからだ。
少なくとも陸上戦艦をクロノスに向けて出撃させるまでは、頼りになる後ろ盾だと信じ込んでいた企業も多い。
ミュール・コーポレーションは同じ対クロノス強硬派として同一視される事もあるが、順序が違う。
先ずはインベイドを片付けなければならないと理解して動いていた────────其れは“支援者”の意向だったが、彼自身もまた同意見である。
・・・
だからこそ、比較的マシな損害で済んだ。ホンルゥ惑星通信社にイメージ戦略への協力を要請して政治宣伝を行なったのもあり、ミュール社のダメージは許容範囲に留まった。
・・・・・・
だが、流れに乗れなかった対クロノス強硬派企業は悲惨だ。彼らは新たな後ろ盾、或いは今度こそ失敗しない協力者を求めて騒がしくしている。
緩慢な微睡みに身を任せて眠りたい巨人すら起こしかねなかった。其れは望む所ではない。
・・・
だからこそ、会食や会談を重ねて事態を鎮静化する必要があった。
根気強く説得し、時には鹵獲した航空打撃群のような手札で黙らせ、逆巻重工への報復を唱える企業を宥めた。
・
(────────対クロノス強硬派全体が悪だと思われては困るのだ。我々は潔白を主張しなければならない)
人類自由連盟は「多頭の獣」と比喩されるが、その場合の「細胞」が中小企業の役割だ。
数を減らしてしまねば、最終的に困るのは人自連である。 - 51ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/20(火) 23:41:10
- 52レオン・ミュール◆OXAm1h6odk25/05/20(火) 23:52:48
・・
「……………チッ。面倒な事をしてくれたな、老害共め。跡を濁し過ぎだ。一体誰が掃除すると思っている」
お陰様で、日夜オーバーワークを行わされている。
その中でも彼が休まずこの総合病院を訪れるのは、肉体の休息よりもずっと重要な事があるからだ。
───────歩き慣れた階段を登って、馴染みの部屋番号の前に立ち、いつもと変わらずにドアを横にスライドさせて開く。
・・・
そうして、彼は病床に伏せる婚約者に逢えた。
「──────今週のレコードは円舞曲(ワルツ)なのですね。とっても綺麗な音で、思わずリズムを刻んでしまいました」
「私にとっては悲しい知らせだな。リズムを刻む君はどんな旋律よりも美しかっただろうに、其れを見逃してしまうとは」
白い髪を肩口で切り揃え、儚くも明るく微笑む彼女にレオンは直ぐに言葉を返した。
普段の怜悧な表情を努めて柔らかくして───彼女には不機嫌そうな顔も可愛いと言われているが───ベッドの隣の椅子に腰を下ろす。
ミュール・コーポレーションが貸し切りにしてから一体何年が経ったのだろうか?病室はアンティーク調の木製のインテリアで揃えられ、棚には欠かさずレオンがプレゼントしたレコードがズラリと並んでいた。
ベッドから起き上がらずとも触れられる位置にグランドピアノまで置かれた病室は、病院の中ではなく邸宅の一室を思わせる。
─────実際、そうなのだ。下半身不随の彼女が何一つ不自由なく過ごせるように、レオンは常に手を尽くしてきた。
・・・・・・・・
理由は単純である。愛しているからだ。彼女を、他の誰よりも、他の何よりも。 - 53ラバー◆m3XwMsEekQ25/05/20(火) 23:58:22
- 54ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/20(火) 23:59:48
- 55レオン・ミュール◆OXAm1h6odk25/05/21(水) 00:14:24
彼女は──────カルロッタは、レオンの言葉にコロコロと笑みを溢した。
「言い過ぎですよ、レオン。素晴らしい音楽を前にしては、私なぞ到底及びも付かないでしょう」
「……………やめてくれ、カルロッタ。絶対に肯定したくないのに、否定しても私への好感度が下がりそうだから。最近中々会いに行けなかったのは謝るから……………」
「レオンが最近忙しい事は知っていますよ。だからこそ、無理して私に逢いに来なくても良いのに」
「あぁ、なるほど────────私に少し意地悪をして、もっと他の場所で休ませたいのか。言っておくが、君と話す以上の癒やしは私には存在しないよ」
「もう、レオンったら。情熱的なのは私達の特徴の筈なのに………………」
カルロッタが苦笑して、話題を逸らすように鍵盤を弾いた。特注の病室は防音室にもなっており、楽譜を奏でてても誰の迷惑にもならない。
美しく、また心を愉快にさせるような旋律が静けさの中に響き渡る。今朝にレオンが渡したレコードと同じ旋律だ。
──────幼少期に、音楽文化に熱心な父と母に連れられてグランセン人のピアノの巨匠を訪れた時が最初の出逢いだった。その時彼女は祖父とピアノの修行をしていた頃だったのだ。
同い年であったから、互いの保護者が何やら熱心に語り合うのを横目に一緒に城下町を遊び回った事を覚えている。
音楽に情熱を燃やす彼女の姿を、美しいと思った。
きっと一目惚れだったのだろうと、今になって思い返せる。 - 56アントニオ◆5Q4kt6Q.kc25/05/21(水) 00:18:27
『────ふぅ。作物を育てるのに、
ここまで苦労を費やす事が必要だとは...
分かった気になっていたのを痛感したね......』
ザグッ、ザグッ、と鎌を手前に引き動かし、
畑に迫り来る雑草達をふごへ処分していく
どんなに機械が発展しても、作業の何処かに
人の手はどうやっても必要になるらしい。
『...でも結構悪くない、のかな?』
麦わら帽子とタオル、そして作業着という
機械文明とは真反対な格好をしながらも、
人間らしい暮らしをしているという事実が
アントニオの脳に高揚感を齎してくれる
『とはいえ───少しお暇を頂かないと。
今回は真剣に取り組まないといけない...』
農産物たちに防除用の寒冷紗をかけ、
オルトラン粒剤をその根元に撒いておく
これで、収穫まで害虫が来る心配は薄い。
『"アカデメイア"......本当に残念だ。
歴史ある舞台を穢す事になるのはね。』
その手でアントニオは休暇届を書き上げ、
雇い主の下へ足早に急いで行った。 - 57レオン・ミュール◆OXAm1h6odk25/05/21(水) 00:30:37
・・・・・
「────────いつか、世界ツアーをしよう」
静かに身を伏せる彼女に、レオンは思わずそう口にしていた。
幼い頃に彼女が語っていた夢だった。レオン自身、それが可能なだけの才能と技量がカルロッタにあると確信している。
ミュール・コーポレーションとしても可能な限りの援助は惜しまないつもりだった。
でも、やはり、彼女はとても悲しそうな表情で首を横に振るのだ。
「レオン。アナタは、アナタが本当にやりたい事をやって良いのよ?私に縛られる必要はないわ」
・・・・・・・・
「君が俺の夢なんだ。縛られてるんじゃない。そうしたいだけなんだよ」
項垂れながら、レオンは拳を握り締めた。
ずっと覚えているのだ。輝かしい未来があると、無邪気に信じていたのだ。子供の頃の彼は余りに無知で、愚かで、浅はかだった。
──────どうしてそのように信じていたのか、過去の自分を罵りたくて堪らない。殺してすらやりたかった。無能めが。どうして、どうして何もかも無視して動かなかったのか。
そんなレオンを気遣うように、カルロッタは微笑みを浮かべて再び病床に身を沈めた。
「ごめんなさい。眠くなってしまったわ。レオンも疲れているでしょうから、早めに寝てね─────おやすみなさい、レオン」
「…………………あぁ、おやすみ。カルロッタ」 - 58二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 00:53:01
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- 59ミカエラ◆KPwoT407kA25/05/21(水) 00:55:13
ふんふんふふ〜ん………♪
「ミカエラー、こないだの1-03オートクチュールについて……って、なになになに、ニヤけ面で写真なんか眺めて」
あ、分かっちゃう?昔の威光に思いを馳せていたのだよん
【話しかけてきた同僚にミカエラが写真を見せる。そこに写っていたのは眼前の女史を2回りほど若くした童女が、世界中の名だたる権威達に紛れて表彰状を持っていた写真であった】
「………これ『アカデメイア』!?アンタこんなちっこい頃から研究三昧だったって事…??」
ふふん!なんせ私ってば天・才ですから!……まぁこの時は審査員特別賞くらいしか取れなかったんだけど。結局NAで使われてる反応式伸縮樹脂帯に取って代わられちったんだけども。まぁ10年前の思いつきだから前座よ前座!こっちでは優秀賞取ったし!私自慢のワーグナーモデルで!!
【新たな写真を見せる。先程の写真から一回り成長した女性がちょっと豪華になった表彰状を握っている】
「結局、最優秀賞は取り逃したってワケね」
シャラァァァァァァァップ!!!!!!!スタートが速いって事は最優秀賞狙うチャンスだってまだまだ多いってのがおわかり!?次こそ最・優・秀・賞・間・違・い・な・し!いやー!まぁだ私23歳なのになぁ〜っ!!
「…あぁそっか。勝利を確信してニヤけてたってワケね…………で。写真なんて眺めてる余裕「あるよ。なんせ私、天才ですから?今頃ない頭を無理くりひり出してる凡人とは頭の作りが違うのですよつ・く・り・が!
「………………まぁそういう奴よね、アンタは」
へっへーん!せめて褒めろよーぅ!
「褒めてんだわ」 - 60レオン・ミュール◆OXAm1h6odk25/05/21(水) 00:56:45
“バーハリヴァ”王がクロノスによって暗殺された後に、グランセン王国軍は直ぐに王立軍の編成を完了した。
王立陸軍、王立海軍、王立航空騎兵隊、そして防衛の要として国家最精鋭部隊としてグランセン王国が独自開発したハイエンド機を駆る『山岳猟兵』すら動員された。
・・・・・
九十個師団。北方戦線からの帰還兵のみならず国内で新たに徴兵されつつあった百八十万人に及ぶ兵士達がクロノス・インダストリーに報復する為に立ち上がったのだ。
その後の二週間は“サルデーニャの虐殺”と呼ばれている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
クロノス軍は立ち塞がる総てを粉砕した。百八十万の兵士は皆殺しにされた。少なくとも統計ではそのようにされている。
生存した敗残兵の中で、グランセン解放戦線に合流したのは僅か百人程度に過ぎない。それ以外の兵士は多くが戦場で散っていった。
・・
───────その余波で、カルロッタはコア粒子による汚染で夢を断たれた。
輝かしい未来は、一条の極光によって呆気なく摘まれてしまった。
(───────────首を洗って待っていろ。必ず報復してやる。インベイド戦争が終わったら次は貴様らだ)
・・・・・・
「『シンフォニー』の開発は進んでいるか?………そうか、ならば良い。次世代機『オーケストラ』の設計にもデータを生かせるだろう。機体自体に組み込めるのが望ましい」
協奏曲の名を冠する武装。其れは正に企業の違いを超えて共同開発中の武装に他ならない。
新たな武装。新たな機体。そして新たな戦術。敵を駆逐するには、今の人類自由連盟では足りない。
だからこそ、進化する必要がある。飛躍する必要がある。そして革新させる必要がある。
・・・
(────────この憎悪を、決して間違いとは言わせない。対クロノス強硬派閥は維持する必要がある。そうでなければ、我々が人類自由連盟に加盟した意味がない) - 61東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/21(水) 20:48:38
- 62旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/21(水) 20:49:30
- 63ラルト◆C01O2YJoxg25/05/21(水) 20:53:55
「企業の皆様も色々大変なんだな」
自室で報道を見ながらそう呟く。
これまで難しい事は考えてこず、言われた事だけをやっているだけに過ぎなかったのだが最近は報道もちゃんと見るようになった。
「まぁ俺は頭悪いからそういう事が出来る人達は尊敬だわ」
感想を呟きながら冷蔵庫にある冷えたジュースを取り出し飲む。
「うーん、これから何か大変な事でも起きるのかね」
ソファに座り予定帳と顔を見合わせる。
そこには休日の前の仕事として温泉旅館での掃除が記してある。
「温泉旅館での仕事終わったら旅館を根城に色々出掛けるかー」
予定帳に休日での行動を記して閉じて胸ポケットにしまいそのままソファに横になり寝始める。 - 64ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/21(水) 21:43:20
- 65ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/21(水) 21:57:35
- 66マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/21(水) 22:05:35
【オリーブグリーンの長髪、すらりとした身体に品の良いブレザー、人の良さそうな笑み。一言で言えば小綺麗にまとまっている】
【ここが移動娼艦でもなければ上等な学生で通るだろう】
「ふふっ。ここは移動娼艦の、それもバーなんだけどね。」
【本人はその組み合わせを面白そうに呟き、また笑う】
「ああ、ごめん。スクリュー・ドライバー。それと、ストローあるかな。」
【折角来たのに何も頼まないのも無粋だよねー、と1杯注文してカウンターにかける】
【暫くして出されたオレンジフレーバーのカクテルにストローを差し、薄ピンクのマニキュアに彩られた指で摘まむと静かに啜り、一口。】
「ん……。」
【口を離し、グラスを置く。人差し指でストローをくるくると弄んでいる】 - 67ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/21(水) 22:50:13
- 68二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 23:06:07
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- 69龍影◆9BZ6kXGcio25/05/21(水) 23:07:08
- 70シェディ◆PPyRfvMZl625/05/21(水) 23:08:30
【ケデシャーにとっての波止場は歓楽の都市、金と欲望の渦巻く波打ち際、彼方の尾根に翳み往く夕焼けの空】
【愛を、情を、飲み込んで、乾して、街から街へ荒野を渡る、出会いは一期一会が常なるかな】
【客入りの増え始める頃合い、“予約”がある訳でも無く、退屈な時を紛らわす手段は娼婦にもある、例えば客を取るべくフロントに踏み入る男達をその話術や手管で以て誘惑をしてみるとか】
【シェディ・キッスはそうした模範的な娼婦の振舞いとはかけ離れた存在だった、退屈ならば、それはそれで良い、営業エリアに繋がったパブには馴染みの席がある】
・・・・・
【────────────カウンターの左端から数えて4番目、馴染みの席には、見慣れぬ先客がひとつ】
「おやぁ、子供……それも女のコのお客様?」
・・・・・・
【コツ、コツ、と革靴が絨毯敷きの床を叩く、背後から覗き込む声色と同時に数えて5番目の椅子に腰を下ろす】
【大人びている様な、未成熟な様な、変わった気配を身に纏う、子供、女、どちらか一方だけならば珍しいものではないが、何しろこの場の目的が目的だ】
・・・・・・
「誰かの付き添い?それとも、連れ込まれたコ?」
- 71ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/21(水) 23:39:55
- 72東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/21(水) 23:49:47
- 73ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/22(木) 00:12:49
「温泉旅行……??」
《精神的休養を兼ねた旅行です。人自連の人気温泉と旅館によるプランですね》
「は、はぁ……」
カンナさんも随分と太っ腹だなぁ……とケイは思う。こちらは迷惑をかけ通しなのに、頑張ったからとは。
……あるいは、働きに対する報酬として考えているのかもしれないが。
「まぁ、行っていいなら行こうか……」
「ちなみに傭兵御用達だからってことでBFシミュレーターもあるけど、ケイくんは使っちゃダメだからね」
「なんで!?!」
扉から顔だけだしたチトセに文句をいうが……その顔は当たり前でしょ?と言っていた。
「色んな意味でサヤギリ操縦士、いえ、ケイは休養が必要なの。頭空っぽにさせてきなさい……一応私やカンナさんも同行するから」
良いわね?とチトセが言ったあと。台と龍影に自然に視線を向けた。
お願いね、という言葉を向けていた。
- 74龍影◆9BZ6kXGcio25/05/22(木) 00:24:12
- 75逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/22(木) 00:26:02
『─────ローガン工機所属の、マルガリータ・ペペロンチーノと申します』
その言葉が端末に届いたのは、さて書類を片付けきった。と伸びをしたところだったか。
飛んできた名前は、ケイがカンナに伝えた『旧愛卿』を名乗る何者かの偽名。
どのように、どうやって? 疑問は浮かぶ。だが同時に、疑問にすぐさま答えてくれる相手でもないだろうともなんとなく予測した。
謎は謎のままで良い。カンナは思考を回して、此方からの通話のモードに切り替えた。
「やぁ、逆巻カンナだ。まずは補佐のユズハから話を通してくれるとありがたいんだが……ま、今回は抜きにしよう。要件は何かな?」
ただあるいは、謎の一つが分かるかもしれないと思った。
警告とそして間接的であるがケイの命の恩人だ。
グランセン解放戦線と繋がるかもしれない糸を切るつもりは、カンナには存在しなかった。
- 76ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/22(木) 00:39:07
- 77二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 00:45:20
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- 78マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/22(木) 07:25:23
「こんにちは。」
【隣の椅子に腰掛けた薫香を僅かに見上げ、にこやかに応える。ありきたりな、しかしこの場には似合わない挨拶だった】
「とと。自称17歳、秘密で美しくならない方で、ここには1人で来ました……おしゃべりするためです。」
【要するに子供ではなく、女性でもなく、そして自分の意志で1人ここに来た、と応える】
「そういう貴女は一体?随分美しいことと、靴の趣味も良いことくらいしか、まだ分かりません。……なんて。」
【冗談めいた素直なリスペクトを向ける。途中から歯の浮いたような自分の言葉に耐えられないのか苦笑いして】
「えっと……なにか飲まれます?」
【よければまず一杯奢りますよ、と照れたまま問いかける】
せっかくですからこの出会いは大切にしたいなぁ、と。それに……興味を持ってもらえたのは嬉しいですし……」
【一度、目が泳ぎ、改めて見直した。どれもこれも本心である。隠すことはしない】
【こういった純粋な感性こそ自分の一番の武器だとは、熟知していたが】
- 79旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/22(木) 08:23:51
・・・・
「技術提供についての会談をしたく思いまして」
情報端末越しに微笑みを浮かべて、旧愛卿は本題を切り出した。
逆巻重工への粒子ビーム拡散装甲の提供は彼女の中で既に決定事項だ。
賢工グループを企業間抗争によって排除した直後の今、逆巻重工の立ち位置は“英雄”にも等しい。
・・・ ・・・
だからこそ。その肩書きと影響力を借りて、計画を次の段階に進めたいと旧愛卿は思考していた。
・・
「とは言え、我々に関する情報を秘匿し続けるのも誠実な信頼関係を構築できないでしょう。先に我々が欲して対価をお伝えしますわ」
少しだけ言葉を切って、逆巻重工が思考する時間を用意してから旧愛卿は言葉を続けた。
・ ・・・・・・・・・・・・・・
「インベイド戦争後に、「アズマ工業」からグランセン王国の経済復興支援に得る為のテーブルの用意─────要はより大きな企業と交渉する為の窓口として使いたい、というのが本音です」
一つ。グランセン解放戦線はインベイド戦争の終結を前提としており、インベイド戦争に対しては協力的な姿勢であるという事。
二つ。グランセン解放戦線の最終目的はクロノスに対する復讐ではなく、その先の祖国回復運動であるという事。
そして三つ。グランセン解放戦線は逆巻重工と敵対する意図はないという事。
─────其れらの情報を開示しながら、旧愛卿は嫋やかに笑った。
「今から其方に向かっても大丈夫でしょうか?」
- 80シャロン◆8meUu6AaJY25/05/22(木) 09:24:17
アブソーバーとの戦闘後、作戦の立案者である金龍不在の中でデブリーフィングは行われた。なんでも『ちょっと野暮用で。』との事らしい。
「機体の戦闘性能は充分。問題は」
[主兵装の火力不足。軽、中量機は兎も角、多脚や重装相手には致命になり得ない。]
[元々はその辺にも効果的って触れ込みの強装弾である57mmと86mmなんですよね?]
「いつかにCUBEってとこが検証してたポジトロンウェポンについてもしかしたら大佐が何か知ってるか資料くらいは手元に置いてそうね。」
[そういえば人自連の逆巻が新型のオリジナルアーヴィングに装備させてるのが件のポジトロンウェポンらしいですよ。アイナナで撃破された機体の切り口から対消滅と思しき痕跡があったとかで。]
「逆巻か…デスペラードの今なら取引くらいはさせて貰えそうね。」
[ハーディマンにですか?!今以上に息切れ早くなりますよ?]
「増槽でもつける?」
[重量増加で今度は速度が落ちますよ?] - 81シャロン◆8meUu6AaJY25/05/22(木) 09:38:25
「話が逸れたわね。タイガーの使用したあのジャミング装備、戦況予報の子曰く、『お姉様達のお使いになるコクーンや光学迷彩の方が質が高い。』との事よ。」
[金かかって自信満々の割には…って感じですか。]
「何の何を参考にしてるのかは分からないけどクロノスで予算組んだ方が質のいい煙幕以上になりそうね。」
[そして件のタイガー。整備班曰く装甲よりも内部機構が酷いようですね。]
[おそらくは装甲が高すぎるせいで衝撃が反響、中に届いてしまったのかと。]
「砲戦機体の癖して前に出たがる…戦術について色々釘を刺さないとね…」
重装が盾になって挟む戦術はある。だが今回の場合は単独で浸透し、孤立した。機体が尖りすぎていて率いている部隊と足並みが揃わないからか単騎でどうにかしようとする戦法をとる。まずはそこの矯正だろう。
- 82シェディ◆PPyRfvMZl625/05/22(木) 10:16:14
【シトラスの香には仄かな鋼の匂いが混じる、それはこの娼艦に勤める女たちが必ずBFパイロットを兼ねていることも手伝ってか、しかし彼女の纏うものはそれ以上に】
【少女、少年、……はて、そのどちらでも無いとすればどう呼んだものか、チリン、と耳元で飾りが揺れたのは、シェディが微かに首を傾げた故だった】
・・・・・・
「お喋り、こんなところに?ふぅん……変わってる」
【頬に鼻先を近づけて、スン、と彼の匂いを嗅ぐ、寝癖のついたグリーンの髪が微かに肌を擽った】
【成程、確かに男性的な汗の香りだ、小さく笑みを浮かべて】
「この艦(ふね)はお喋りをする為だけの場所じゃないよ、それだけなら、街のパブでも事足りる。
君は“その先”を期待しているんじゃないかな、そして相手の方から誘ってくれるのを待ってる……酔わせたいのかな?」
【いつもの席では無いけれど、頼むものはいつも通り】
【バーテンダーに目配せをすれば、顔馴染みの雇われスタッフは幾つかのボトルを手に取る、黄金色のウイスキーに、ラム酒、レモンジュース……それから甘い甘いシュガーシロップ】
・・・
「悪い子だぁ」
【シェイカーのリズムを傍らに、カウンターテーブルへ頬杖を突く、くす、くす、と、からかって笑う】
- 83ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/22(木) 10:28:48
姐御、1つ訂正させてもらうよ
タイガーの衝撃吸収機構は、重装甲だからこそしっかりしている
酷いってのはそういう意味じゃない。エンジンだとかがそれ相応の精密度で製作されているってだけだ
【没影たちが淡々と話を進める事で時間を歯車が動かしているような雰囲気に、コートを羽織ったスーツ姿が、スライドドアを開けて入り込む】
ナノマシンについては、全くもってその通り
100%性能を引き出せなかったのもあるが、暫くは生産を中止する事が決まりましたよ
【姐御と慕う彼女たちに声を掛け、その反応を見ながらも、彼はいつもの口調とは合わない表情で近付く】
ただ、一旦はこいつらを置いておくとして、遅れたのは悪かったですね
どこまで進めたのか、聞いてても構いません?
- 84シャロン◆8meUu6AaJY25/05/22(木) 11:46:08
「愚痴られる程には内部フレームにダメージがいってるみたいですよ?前に出るのもいいですが動けなくなるとそれは棺桶になると覚えておいてください。」
珍しくスーツを着ている上司に下からの苦情を伝える。
「それと私たちなりに再度検証しましたが、アブソーバーは大佐が個人で運用できる、我々を含めた10機では、壊滅出来るものではありません。」
戦闘記録から再現した3Dマップをブリーフィングルーム中央の投影機埋め込み型の机に表示する。
「これが降下直前の敵の配置です。」
11の点が赤く表示された。その中でも群を抜いて1つが遠く離れている。
「そして降下直後」
すぐに陣を整え、既に3機が空を抑えに飛んでいる。
「この時点で運動性の高い釣りが2機、直線加速に秀でた強襲が1機の3機が先行して行動しています。」
[この3機が動いているのはタイガーが着陸して煙幕の中で第2射を放とうとしている時で、我々没影の9機は配置にすら着けてません。]
10個の青い点が表示された。内9個の点は四角く囲ってある地点に向かって矢印を伸ばしている。
「この時点において状況を飲み込む早さ、すぐさま迎撃姿勢がとれる練度の高さ、そして戦況に対して流動的に対処出来る柔軟性。の全てにおいて我々よりも水準が高いと表現しても差し支えないでしょう。」
勝ちは拾えない。コレが暗部として7年以上人を相手に戦っていた天女の答えであった。
- 85シャロン◆8meUu6AaJY25/05/22(木) 11:56:34
「そして1番の問題は先程言った通り、大佐のBFが突出して孤立寸前になった点です。」
兵士としてシャロンは静かに怒っていた。
「確かに貴方のタイガーは頑強さに運動性、瞬間火力。非の付け所がないマシンです。しかしそれでは部隊運用する指揮官としてふさわしくはありません。」
その言葉は続く。
「機体性能のムラは部隊の生存性に直結する大切な事でまあります。前に出れてしまうから。では話になりません。何のために演算と管制をするメビを乗せているのです。それに敵の陽動に引っかかりにいく程には戦況が見れてません。以降我々を運用する際はサポーター(お荷物)ではなくレギオン(消費資源)として扱って下さい。指揮官は生きて帰って責任を取る役職ですし、何より珠さんに大佐の死亡報告などしたくありませんので。」
生存性を上げたのならそれを活かして後方に居ろ。シャロンは友人の大切な人である自らの上司にそう伝えた。
- 86ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/22(木) 12:21:29
それについては今度は没名没影全てを、俺の持つ全兵力を投入したら──
【シャロンの幾年と積み重ねた経験による適当な分析に、金龍は"負け惜しみ"を言い掛けた】
【しかし、今まで話して来た人達の言葉が、言葉が必要だという言葉が、彼の脳裏を過ぎた】
──いや、今更言ったって遅いな……
【3Dマップから足元へ、目線が下がる】
こいつは、全て俺が1人で強行した結果だ……
姐御たちに任せっきりで口に出さず、耳も貸さなかったのも……
独り善がりだったのが悪かった……
【思い出す。誰からも1度は止められた事を】
【振り返る。誰かれも1度は無理に納得させた事を】
やっぱり……言葉足らずは治すべきですね……
【未だ中途半端なままの彼は、後頭部を掻きながら自嘲する】
- 87マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/22(木) 12:27:08
【頬に鼻先が近づけられる。軽く息を吸う音が聞こえる】
【畏まって、されるがままに】
「あっ、あはは……」
【こんなところに、と言われて返す言葉がもうない。緊張。清潔な石鹸の香りに混ざる少しの汗は確かに男性の雰囲気であった】
『この艦(ふね)はお喋りをする為だけの場所じゃないよ、それだけなら、街のパブでも事足りる。
君は“その先”を期待しているんじゃないかな、そして相手の方から誘ってくれるのを待ってる……酔わせたいのかな?』
「……ぐぅ。」
【左手で頭を押さえ、右手でストローを弄る。図星だった】
「顔色一つ変えなさそうなのに、よく言いますよ……。」
【揶揄われ、手玉に取られているのが解る。浅はかな考えは全て見通し、こっちのペースには乗らず、謎を謎のまま笑いかけてくる女性には苦笑いのままそう言い返すことしかできない】
・・・
『悪い子だぁ』
「………」
【背中を冷たい人差し指でなぞられたかのようだ】
【長袖で見えないが、肌はそばだっていたかもしれない】
「そんなに私を弄んで楽しい……?」
【開き直ったのか敬語を辞め、少し潤んだ目で問いかける】
「…………いや、ごめん。カマトトぶらないと、余裕がなくなっちゃいそうでさ……!」
【取り繕うのは辞めた、と。もう好きにいじってくれという敗北宣言にも近い】
「……あ、あと今のうちに聞いておきたいんだけど……それは……インペリアル・フィズ?」
【一応の確認、とばかりに問いかける】
- 88ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/22(木) 12:42:57
- 89シャロン◆8meUu6AaJY25/05/22(木) 13:12:28
「投入した場合勝利は出来ます。しかしそれと同時にクロノス本社の精鋭にすり潰されるでしょうね。」
負け惜しみへも適当に答えた。ソレは『秘匿されていた個人戦力の露呈』による危険分子の排除がされてしまうからだ。
「大佐、貴方はお若い。間違えた分だけ学べた。そう考えて下さいよ?ですが、今回は些か授業料が高くついたみたいですが。」
シャロンは微笑みこそはしないが優しい声でまとめた。
[失礼します。ローズ隊長。]
ブリーフィングルームに一体の諜報用義体が入ってきた。
すぐさま頚椎から伸ばしたケーブルをシャロンに繋げる。
《直接回線?しかも急ぎで。》
《人類自由連盟でクーデターが発生。元を辿ると大佐に繋がるとかで。》
《封鎖とカバーストーリーは?》
《封鎖とカバーストーリーの流布は既にアチラ側の軍事戦略部門の方が行ったそうで。》
《仕事が早い。相手からは?》
《要求は無し。クロノスとの関係を維持するためかと。》
《大佐への報告はしない方が良さそうね。》
《メビさんにもクロノス側に流れてくる情報へのカバーに協力して頂いてるのでその経由で発覚は無いかと。》
「把握したわ。アン、ご苦労さま。」
ケーブルを外してシャロンはアンの頭を撫でた。
[ありがとうございます。自分はコレで。]
アンは1礼をして部屋から出て行った。
- 90◆KPwoT407kA25/05/22(木) 14:07:15
(1/2)
思ったより行動が早かったですね。いや…初めから“こうなること”を見据えていたからこそでしょうか?
【ミュールの声明に紅陽とアポロの合同声明の報を、ヴァルハラテックCEOカミラ・ユグドラシルと技術者ミカエラ・オルソンは本社社長室にて静かに眺めていた】
「陸上戦艦制圧戦でも気持ち悪いくらいCEOのシナリオ通りに事が運びましたからねぇ…これってやっぱり」
貴方とマルタさんが旅行先で接触した、グランセンの残党と思しき勢力の息が掛かった企業…そう捉えて差し支えないでしょう。
・・・・・・・・・
…実に都合がいいです。此度の戦いでもし我々が賢工に代わる強硬派最大勢力として祀り挙げられてしまうと後々面倒なことになりそうですし、もうしばらく『対インベイド推進派企業』の看板を全面に押し出す一助となる素晴らしい動きでした。
【一般的にヴァルハラテックが対クロノス過激派政策を支持する立場にある事はあまり公にはなっていない。逆巻も先日の対談でようやく“強硬派側”であることを悟ったのであれば他の中小企業からも似たような認識だろう。故にヴァルハラテックは今回の動きに静観の体勢を取ることにした】
「そりゃまぁ社長的にはそうでしょうけども…カンナさん的はどうでしょうねこれ、動き早すぎて頭抱えてるんじゃないです?」
…寧ろ私は“頭の柔らかい強硬派ならこう動く”と親切にアドバイスしてあげた立場ですよ?賢工を潰した先の展望を執れなかったのは一重に彼女達の過失。………あぁ、過激派の台頭を抑えられない意外にも“穏健派”としての悩みの種がもう一つあったのでしたっけ?
- 91◆KPwoT407kA25/05/22(木) 14:31:30
(2/2)
【───────そもそも、どうしてここまで事態が拗れる原因となったか。逆巻から一部始終を直接聞いていたカミラはその仔細を既に把握している】
──────────今、どんな気持ちなのでしょうね?勢力融和を目論み、『アブソーバー』を打倒しようとした結果…寧ろ両者の溝を広げる結果に終わったクロノスの無能大佐殿は
【カミラの口角が大きく歪む。逆巻が“穏健派”に立ち返ったとはいえ、今回のケイの不当逮捕に繋がる導線を最初に用意したのはクロノスの道化が無理やり彼を拉致したことに起因する。義理人情を重んじる逆巻の事だから暫くクロノスと積極的なコンタクトを取ることは渋るであろうし、賢工というサンドバッグを失った“事情に通じる”企業群が次の矛先とするのは当然クロノスだ。人自連全体に打倒クロノスの気風が強まるのは最早自明の理であろう】
混乱を加速させた『アブソーバー』に膿を吐き出した人自連、そして道化が政敵たり得ないと知れたクロノス…結果的に見れば今回の騒動、どの勢力も“得”をしたと言うのであれば…素晴らしいハッピーエンドだと思いませんか?ミカエラさん
「さすがにそれは悪意マシマシだとは思いますけど…ま、こんな些細なことで世界が良い方に進むんだったら…ワーグナーなんて作らなくたって、とっくにインベイドを地球から叩き出せてた訳ですし。
ほんっと…バカばっかりだ、この世界」
【ここは、3勢力入り乱れ惑星外性生物と戦う世界である】
- 92◆KPwoT407kA25/05/22(木) 14:45:04
(3/2)
…では、こんな世界でも賢く堅実な働きを見せている企業と手を結ぶのはどうでしょうか?
「…ん?うちや逆巻以上に賢いとこなんて…………あー」
【ミカエラが頭に思い浮かべたのは、人自連最大の異端。ある意味逆巻以上にクロノスに友好的たり得る飽くなき食の求道者】
先日のインベイド討伐でシュヴェルトライテが持ち帰った戦闘ログに興味深い機能が見られた事はミカエラさんにとっても既知でしょうが。私の生徒達への労いも兼ねて──────────────
【故に、強硬派の旗印など御免蒙りたかったのだ。クロノスも人類に於けるかの企業の重要さを正しく理解出来ている者が少なからず居る訳なのだから】
────────畑を、耕しに行きましょう
【名を、North Argleton LTD】
- 93シェディ◆PPyRfvMZl625/05/22(木) 14:49:46
「ヤだなぁ、ボクだって人間だよ?」
【酒を帯びれば顔色だって変わる、さらさらとした手触りの色薄い肌が、桜色に染まる時はいずれ来る】
【それは人より少しばかり、遅いかもしれないが】
【裾の広いワイドシルエットのパンツスタイル、足元が交差して、爪の先は小気味良く床を打ち鳴らした】
「おやぁ、弄んでいるつもりは無いんだけど、ここに来る人達はそれぞれ色んな事情を抱えているからね。
だから少しだけ、人を見る目っていう部分では鍛えられているところがあるかも、それでも、キミが男のコだってコトは一目じゃ分からなかったけど……」
【世渡り、と言えば良いだろう、こちらの手の内は明かさずに相手だけを見透かす、彼女はケデシャーの“万屋”である】
【シェイカーの中身をグラスに空けて、しゅわしゅわと泡立つ炭酸水を注ぎ入れるカクテルドリンク、明察の通り、それは“インペリアル・フィズ”と呼ばれる一種だ】
【口を付けて、傾けて、飲み口に移った紅の跡を指先で拭いながら】
・・・・・
「たーのしいっ」
【楽しいかと問われれば、楽しいと哂う、まったく愉快と言わざるを得ない】
「名前を教えてくれるかな、いつまでもキミ、だと退屈で不都合だから。
ボクはシェディ、シェディ・キッス」
- 94ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/22(木) 16:17:08
- 95龍影◆9BZ6kXGcio25/05/22(木) 17:26:33
ケイの赤くなった顔を愛おしく眺めている時にふと気が付く。
コックピットインテリアにぶつけた時に出来る傷は内出血も含む為、1週間は痣として残るという事に。だが、彼の額にはあの戦艦の上で通信した時に着いていた傷が綺麗さっぱり無くなっていた。
龍影はその傷があった箇所を撫でる。指先にはハリのある若い肌の滑らかなかな感触しかなく、応急治療時の凹凸といった物が無かった。
「なんで…」
不思議でならなかった。今までは比較的に軽傷であった為、「よく食べてよく寝る。若さを使った治癒能力ヤベェな」位の認識であったが、今回はナノマシンを入れているとはいえ内臓にもダメージの入っている重傷であったからだ。
龍影の中で考えたくもない単語が導かれた。
「まさか…FD…?」
人の形をしたBFを動かすための生体CPU。それが言葉として紡がれている事に龍影は気づいていなかった。
- 96マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/22(木) 17:55:54
「貴女方と同じくらいには、身体には気を使ってるからね」
【口を付けて、傾けるところは見ない。見られていたら飲みにくいだろうし……】
【けれど飲み口に移った紅の跡、それを拭う指先は目で追ってしまう】
「はははぁーっ……じゃあこう言おうか?」
【ため息交じりの笑い。オリーブの髪をくるくると触る。そして今の会話を楽しいと哂う女性に精いっぱいの自尊心と機知を込めてこう返す】
・・
「良い性格してるよ……!」
【分かりやすく取り繕った笑顔が、皮肉交じりに最大限褒めていることを雄弁に語った】
「……て、ええ……!?」
【名乗りには目をパチクリとさせる】
「貴女から名乗るのかい!?い、いや……ありがとう……。それはもちろん嬉しいよ。」
【お礼はちゃんと言える良い子であった。それにしたって名前も告げずに揶揄われて終わりなパターンも考えていたので驚くしか無かったのだが】
「私はマニッシュ。出張家政夫とかやってるよ。BFにも一応乗れるね。」
「多分貴女たちの誰にも勝てないだろうけどさぁ……。」
【複雑な顔をして、ストローの先端をカリ、カリと親指で弄る】
「こんなに分からされたのは3ヶ月ぶりだよ……」
【トホホという擬音が似合うように視線を落とした】
- 97ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/22(木) 18:52:18
『とは言え、我々に関する情報を秘匿し続けるのも誠実な信頼関係を構築できないでしょう。先に我々が欲して対価をお伝えしますわ』
・ ・・・・・・・・・・・・・・
『インベイド戦争後に、「アズマ工業」からグランセン王国の経済復興支援に得る為のテーブルの用意─────要はより大きな企業と交渉する為の窓口として使いたい、というのが本音です』
「……なるほど。そういうことか」
技術提供、という言葉を符牒とし。カンナは旧愛卿を名乗る少女の本題を聞く。
思考を回した。
一つ。インベイド戦争には協力的、これは恐らく真だ。あれらと戦わないと考える奴らは少ない。
二つ。グランセン解放戦線の最終目的はクロノスに対する復讐ではなく、その先の祖国回復運動であるという事。
――――必要条件ではあるが、十分条件ではない。というところだろうか。
祖国回復運動に必要であれば。彼らはクロノスに一矢どころか、喉元を刃を突き刺すことも厭わないだろう。
最も、それはこちら(逆巻重工)も変わらない。団結はすべきだが、逆巻重工がクロノスの傘下となっていない理由は、己等の自主独立のためだ。
……いや。ケイ・サヤギリが死んだ時、犠牲に報いるためとしてA-1コロニーへ軌道降下を試みたこちらのほうが、より過激派の視点に近いのかもしれない。
そして、最後。グランセン解放戦線は逆巻重工と敵対する意図はない。
(……クロノスに、彼らの粒子ビーム拡散装甲を流さない限りは。かな)
もちろん、逆巻重工側としても彼らの誠意の証である技術を他者へ渡す道理などない。
復興させた桜空の陽電子技術もそうだ。技術は子ども同然。それを勝手に他者に流す行為は、作ったものにしか許されない。
それは逆巻の心情であった。
『今から其方に向かっても大丈夫でしょうか?』
「もちろん。今すぐ来てくれ」
独自に思考を回しながらも、カンナは微笑んだ。この出会いが、自分たちをも動かす大きな風になってくれることを祈って。
- 98ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/22(木) 19:03:59
「それと会談の件だが……是非ともと、言わせてもらうよ。それどころか復興支援を含め……うちも参加しよう」
考え込みすぎた結果、飛ばしてしまった言葉を微笑み言った。
断る理由としては様々な理由が思いついた――――ミュール・コーポレーションの強硬派叫号などは最たるものだ――――だが。
・・・・・・・・・・・・
逆巻重工はそれ以上の恩を貰っている。
――――ケイ・サヤギリが持っていた、どの技術体系にも掛かっていない通信妨害装置。あれがなければ、様々なピースが崩れ最悪の結果を招いたに違いない。
そして渡したのが旧愛卿であるならば、危険要素を含めても逆巻重工として、協力するのは規定事項である。
「ところで。うちの少年が持っていたものはそちらの忘れ物だよね?」
貰ったものは、返さなくてはならない。
「ぜひ君たちに返させてくれ。我々には過ぎたものだ」
恩には恩を。そして、できることなら受け取った以上の恩を相手に与える。
彼らの存在意義を守らせてくれた恩に勝るものなど、存在しないのだから。
(一生かけても返してやりたいね……クロノスとの戦争以外で)
彼女らは、返しきれないと思っているのだ。返しきれない恩は、値段をつけることすら難しいとも。
- 99旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/22(木) 19:12:43
「では、直ぐに到着しますね」
微笑みながら、ショッピングモール前の煩雑な道路を行き交う自動車の内の一台に乗り込んだ。
計画とは何個かの場合に分けて直ぐに実行可能な形で用意しておく事だ。関連組織への根回し、機器の準備、或いは計画の実行が与えるだろう影響を吟味してから実行するのが当然であり────────ローガン工機名義の自動車の運転手。グランセン人の男性は既にナビに示されていた逆巻重工本社へのルートを進み始めた。
『粒子ビーム拡散装甲』についての資料は自動車の中で揃えている。原理と構造の詳細なデータを迂闊に外で持ち歩く様な真似はしないが、しかし揃っていなければ誠意を表せないから。
「──────────あら、お気遣いありがとうございます。思っていたよりもずっと律儀なのですね、あなた方(逆巻重工)は」
旧愛卿は、あくまでも逆巻重工への助力を企業的な取引と投資だと考えていた。
彼ら彼女らの奮闘によって、グランセン解放戦線は出資の対価としての勝利の“配当”を既に手に入れているのだから。
それでも恩を返そうとするのは、純粋な効率のみを考えるならば無駄であり。
・・・・・ ・・
「良いですね、それ。とってもグランセル〜ン!」
だからこそ、非合理と感情の極みたる“情熱”を至上とする旧愛卿という個人にとっては好ましい性質であった。
- 100旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/22(木) 19:19:14
───────丈の短いハイヒールを履き、蒼色に染めた髪を靡かせながら一人の少女が逆巻重工本社ビルの前に佇んだ。
惜しげもなくか細い肩を曝け出したオフショルダーブラウスに、風に揺れるフレアスカート。
綺麗、或いは美しいという形容詞を体現したかの様な美貌を携えて。
自由に広い青空を飛び回る鳥の如く軽やかな雰囲気を仄かに漂わせる端麗なる陰謀家は口を開いた。
「ローガン工機のマルガリータ・ペペロンチーノと申しますわ」
誇らしいとばかりにトンチキな偽名を名乗る不審者がよ………………… - 101シェディ◆PPyRfvMZl625/05/22(木) 20:29:33
「おやぁ、そんなに褒めてくれるなんて、お酒が美味しいなぁ」
【グラス一杯分の皮肉に返すにこやかさは、まったく堪えていない様子、含みのある言い回しをわざと額縁通りに受け取って鼻唄混じり】
【マニッシュ、成程、男性の様に心身を繕う女性のことをそう呼称することがある、そうと名乗りながらも逆に、女性の様に振舞う彼の姿は洒落が利いていて、茶目っ気があった】
【────────────容姿や性別など、結局、人間を構成するいち要素に過ぎないのだ】
「それでも、自分の身を守れるくらいには強いんだろう?十分さ、必要以上の強さなんて面倒事にしかならない」
【珍しいことでは無い、いつ何時、命を狙われるかも分からない世界だ、子供だって武器を取る、望む望まないに係わらず】
【ケデシャーの娼婦はその全員がバディフレームのパイロットだ、娼婦という稼業でさえも、武装を済ませている】
【男を誑かす女の性と鋼鉄の鎧を身に纏う戦士の性、二面性は、大前提】
・・・・
「危ないなと思ったら、なんなら雇ってくれても良い、ボクは傭兵稼業もやっているから。
最も、副業みたいなものだけど」
【────────────グラスを吊った指先は、人を殺める指先で、ほっそりとして男を悦ばせる為の指先でも、ある】
- 102マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/22(木) 21:11:09
「んん”……」
【言うとおりだ。必要以上の強さなんて面倒事にしかならないことはよく見てきた。そういう奴は大体早死にする】
【異常な強さがあれば、面倒事なんて無視して突っ走れるのだが、そういう手合いは避けてきたのがこの男だった】
【ちょっと賢い一般デスペラードの生き方だろう】
【ストローに吸い付き、カクテルを飲み切る。少しだけ最後にズコッと音がした。子供か?】
「っと、ごめん。……言うとおりなんだけどさぁ……どこまで私の心を見通してくれるのかな……私、そんなに分かりやすい?」
【音を立ててしまったことを謝りつつ、それにしたってここまではっきり理解されてしまうと、たじたじである】
「いや、貴女の眼が良すぎるのかな」
【自問自答。】
「……危ないな、と思ったらか。商売上手だねー……。いや、プライドすら感じさせるよその言葉。……カッコいい。」
【語彙力ももうだいぶ雑になっている。そもそもここで使う誉め言葉としてどうなんだそれは】
【吊られたグラスを眺める】
「その綺麗な指で相手を天国にも地獄にも連れて行くんだね。」
【顔はほんのり赤い。酒にではないかもしれないが、もう酔っている】
「……がっついてごめん、なんだけど。」
【一度目を逸らし、もう一度見つめる。何故か真剣な顔になった】
「この後、空いてるかな……?もし良ければ貴女の本業みたいなもの……依頼をしたい。」
【カッコつけているが】
【要は客として相手して欲しいな!ということであった。デリカシーはどうした】
- 103デュラハン◆xZJxX8ZGsA25/05/22(木) 21:13:11
「もう少し安くできねぇのか?」
《値切るつもりかい?僕は見合う物を作ったはずだ。要らないなら、こっちで処分しておくよ》
「…チッ。わぁったよ!!クソッ!」
【そして地上。客との商談を終えたデュラハンは、その背中に礼の一つも言わずにさっさとシャッターを閉める。あとは店としての最低限の佇まいを整えるように、雑多に展示された商品とデュラハンのみ】
【偏頗な場所に店を構え、人自連にもクロノスにも与さず、ドーザーとして闇市に顔を出すわけでもない。それは闇雲に客を呼びたいわけではないという意味だが、儲けが無くては知的好奇心も満たせないし、クライアントの要求を満たすのにもコストがかかる】
【そもそも命を預ける武器を値切るのは、自らの命を値切るのと等しい。それを理解出来ない者ばかりだ、蟻からやり直せ。無知なだけ犬の方が愛らしい】
【溜息をつくように肩を竦ませて、店番のデュラハンは作成と消去を繰り返す数十の図面を眺める。一重にBF及びそのパーツを作成すると言っても、一つの武器でさえ数多の技術と検証が行われた試行錯誤の結晶となる。戦闘に耐えうる強度は勿論、重量バランスまで加味して内装は設計を行う必要があり、素材の目付けとその加工だって最適を目指すには数多の試行錯誤が必要だ。その癖、常にクライアントというのは我儘かつ大雑把だ。インベイドに効く武器が欲しい?何に対応したいのかで異なるに決まっている。量産を視野に入れつつもより良くかつエースも凡夫も満足できるバランスの取れた高性能?馬鹿を言うな、要求の矛盾にも気が付くことができないならば膿み腐ったコロニーごと焼けてしまえ。技研にそうしたように】
【誰もがBFとは、武器とは、どう開発されるかを理解していない。そして技術者さえもが、開発する為の意義を見失い、金儲けだのと逸れた事を宣う】
【兵器を創るとは、持ち手の生き方を、道具として結晶化させることだ】
【反応速度を磨き、高速戦に挑む者。眼と集中力を鍛え、一射に全霊を注ぐ者。或いはただひたすらに耐え、生き残らんとする者】
【彼らの生き方を、見合うだけの殺しの道具として作り上げる。それが兵器だ。それを値切る?それを妥協する?どちらも有り得ない】
【要求を満たす素材が無ければ新たに作れ、理論が無いならばゼロからでも構築しろ】
【時間と手が有限ならば、己を複製すればいい】
【彼は、狂っていた】 - 104シェディ◆PPyRfvMZl625/05/22(木) 21:39:06
「プライドなんてカッコイイものじゃないよ、傭兵(そっち)は半分自営業だから、自分でしっかり宣伝しないと」
【性に対する距離感が誰の肌にでも触れる程近付いた世界、娼婦という仕事も、大手を振って渡れるようになって】
【けれどもシェディという女は彼女も自覚しているが、この艦ではそこまで売れ筋という訳では無い、媚びを売る様な振舞いは少ないし客を引くのも消極的────────────男性客と同じだけ、女性客を相手にすることがある程だ】
【傭兵としての仕事の方が、むしろ、多い】
・・
「……そう、お金」
【くるりと回るカウンターチェア、向かい合ったマニッシュの口元に、手にしたグラスが不意に近づく】
【避けようとしなければ、そのフチを彩る薄紅の痕跡がつんと彼の唇へと触れるのだ、黄金色の水面は揺れて】
【胡乱な女は、やはり煙に巻く様に】
・・・
「────────────ちゃあんと、払えるかい、お客様?」
- 105ラルト◆C01O2YJoxg25/05/22(木) 21:42:59
「やっぱりここは綺麗だな、俺の育った所とは段違いだ」
今周りをキョロキョロしながら歩いているこの場所は青天市街、人白連の勢力圏にある大都市。
ここには買い物や散歩の為に来る事が多く、今回は冷蔵庫の中が空になる前に大量に物を買う為に来ている。
「よし、さっさと買うか!」
目的の店に着き、品を見ているが、好みの物が見当たらなく溜息をつきながら店員に聞く事にした。
「あのー」
《はい、どうかなさいましたか?》
店員に声をかけたら笑顔で応対され、少し驚きながらも品の在処を聞き出す。
「コレはどこですかね?」
《それはこちらですねー》
「ありがとうございます」
店員も慣れているのか笑顔で目的の品がある所まで案内してくれて、分からない事があればまた!と言い元の位置に戻って行った。
そして目的の品(アルコール入りのジュース)を五個と食材なども入れて会計に進み支払いを済ませ退店する。
「さて…この後の予定は今の所何もないんだよな、久しぶりに来たんだし散歩するか!」
ジュースを一個開けて飲み、未知なる物を見つける為に歩き出す。 - 106二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 21:44:50
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- 107マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/22(木) 22:09:17
- 108ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/22(木) 22:16:29
愛おしく己の額を撫でてくれる龍影に身を任せながら……違和感に気づく。
自分を見てくれる人の目が不可解そうに、自分の体を見ている。
『なんで…』
「? どうしたの、龍影。傷はもう大丈夫……」
龍影の目を、ケイは見た。なにかおかしいと思う彼女へ、大丈夫だと元気づけようと、彼女の顔に手を当てる。
『まさか……FD……?』
「龍影……?」
・・・・・・・・・
墨と青が混ざった瞳の中で――――青が揺らめいている。
「それは……? 龍影、俺は違うよ。ちゃんとアヤメ・サヤギリの子だよ。爺ちゃんの孫だよ」
知らない言葉を紡がれたケイは疑問と同時。ただひたすらに、彼女を傷つけまいと言う優しい声を出した。
- 109二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 02:52:21
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- 110龍影◆9BZ6kXGcio25/05/23(金) 07:49:21
- 111東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/23(金) 09:21:12
- 112シェディ◆PPyRfvMZl625/05/23(金) 10:22:06
「……うん、それなら、ボクのお客様だね」
【手を取って、エスコート────────────なんて、果たしてどちらが男役なのだか】
【カウンターチェアはくるりと回って、降り立つ瞬間、浮いた踵が床を叩いた、残されたグラスをカウンター向かいのバーテンへと差し出して】
「お酒代は後で支払いに来るよ、ありがとう」
【パブの表は、客を惹こうとする女達や少しでも見栄を張ろうとする男達の織り成す喧噪で満ち満ちている、囁く様な声色は、果たして伝わったか、掻き消されたか】
【どちらにせよ、場を後にする二人の背中を止める者はいなかった】
────────────────────────
────────────
悪い子と、悪いコトR-18(G)パート⚠️注意事項⚠️
・ベッドシーン(または過激なゴアシーン)が苦手な方は閲覧しないでください!
・本文章はエロ(グロ)を多分に含み、場合によってはキャラ崩壊が起きます。
・行為のシーンは必ずしも閲覧者の望み通りに行かない場合があります。
ーーー
【豪奢に飾り立てられたホテルの様な廊下だった、カーペット敷きの足元で、とつ、とつと二つの足音が規則的に渡っている】
【途中、何組かの男女と擦れ違うことがある、最早半裸に近いボディラインの浮き出た衣装を纏った情婦は、隣り合う客の腕へと絡みながら、談笑と共にマニッシュの横を通り過ぎて行く】
【それは正しく娼艦の日常で、けれども子供と見紛う容姿の彼を連れたシェディのことは気になるのか、時折首を傾げながらこちらを見遣る人の姿もあった】
【ピ────────────と、小さな電子音が響いた、ドアロックにカードキーを挿し込んで、廊下に並んだ一室へ】
「外から来たなら、先、シャワーを浴びようか……一緒に入る?」
【暖かい薄明かりに満ちた部屋、丁寧にメイクの施されたベッドが一つと、その向こうの窓辺からは停泊した街の灯りが見て取れた】
【衣擦れの音、羽織…00m.in - 113マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/23(金) 11:13:01
「あっ……」
【手を取ってくれたことに浮かれ、声が漏れる】
【そのままつられて席を立ち、バーテンに会釈しながらシェディの半歩後ろを手を引かれて歩いていく】
【喧噪は気にならなかった。囁くような声だけが聞こえていた】
【せめて姿勢は良く、胸を張って歩く。歩調を速めて隣に追いつく。こんなところで、隣を歩く女性の品格を下げまいとした】
【それでも時折通りすがる相手に首を傾げられたが。】
芯の一歩前まではR-18(G)パート⚠️注意事項⚠️
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ーーー
【小さな電子音が響いた、ドアロックにカードキーを挿し込んで、廊下に並んだ一室の中へ】
【薄明りが見えた。丁寧に整えられたベッド。停泊した街の明かりも】
【ブレザーを脱ぎハンガーにかける。赤のネクタイも外し、首元のボタンを1つ外す】
「ううん……」
【白のワイシャツ。華奢だが肩幅は確かに少年のそれだ】
【緊張してたし、すこし男くさいかな、と苦笑いして】
『外から来たなら、先、シャワーを浴びようか』
「あ、うん。汗──」
『……一緒に入る?』
「……あっ、いや、そうだね……」
【悩んでいるうちに衣擦れの音。目の前、生地の薄い白いインナーの陰には、胸元を覆う黒々とした肌着のシルエットが微かに透けていた】
「い、インナー白なんだ……貴女は割と腹黒い気がするんだけど……よく似合ってるよ……!」
【じっくり見ながらの結論は紅潮しながらのよく分からない賞賛であった】…00m.in - 114龍影◆9BZ6kXGcio25/05/23(金) 11:14:42
- 115二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 11:22:11
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- 116二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 11:23:04
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- 117ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/23(金) 11:37:02
最後、言われずとも嫌ってほど理解していますよ……
本当に、どうして今なんだ、ようやく今になってか、って思う程にな……
【哀切と奮起が混ざった目を、本当の姉のように接してくれる彼女へ向ける】
だから、姐御からもそう言ってくれるなら、俺は1で10を学ぶよ……
【アンが部屋に入って来ては、1秒足らずで"会話"を終わらせて去って行く様を、金龍は「お疲れ様」と労いを掛けながら見送った】
さて、どうやらお開きになりそうですね
だとすれば1つだけ、帰る前に言わせてください
姐御は、自分たちの事をいつ何度でも補充できる資源と考えていますが、俺にとっては代替の効かない家族の一員です……
【シャロンの左手を握り、手の甲を自分の額にゆっくりと押し当てる】
だから、これ以上俺の前から消えないでくれ……
俺だって珠さんに訃報を伝えたくねぇ……俺よりも先に死ぬような口振りは止めてくれ……
お願いだ…… - 118シャロン◆8meUu6AaJY25/05/23(金) 11:43:26
- 119ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/23(金) 12:21:10
- 120シャロン◆8meUu6AaJY25/05/23(金) 12:37:05
- 121ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/23(金) 12:58:13
そう言って貰えるのなら、助かります……
【すっかりと後ろを向いて去って行く彼女たちにも「では、さようなら。良い夜を」と、返される事も無い手を振って見送った】
【そうして後に残されたのは、少し傷心しているドラ息子と、完全に破損してしまった戦術机のみ】
(さてと、こいつは新調するか……)
- 122シンカイ◆9BZ6kXGcio25/05/23(金) 14:07:43
朝を知らせる教会の鐘の音を聴きながら、普段通りに敬虔な青年は礼拝堂に入った。並べられた長椅子の中列にある1つに座ると、筆箱程の箱からロザリオ(宗教的な装飾がされた首飾り。礼拝などの場で使う以外は破損を避ける為、この様に仕舞う事が多い)を取り出し、両手で包むように持つ。
「天にまします我らの父よ、ねがわくはみ名をあがめさせたまえ、み国を来らせたまえ、みこころの天になるごとく地にもなさせたまえ。
我らに罪をおかす者を 我らがゆるすごとく、我らの罪をもゆるしたまえ。
我らをこころみにあわせず、悪より救い出したまえ。
国とちからと栄えとは 限りなくなんじのものなればなり。アーメン。」
礼拝堂正面の偶像とロザリオの偶像に宛てて、目を瞑ったとしてもスラスラと暗唱出来るほど身体に染み付いた祈りの言葉を紡ぐ。ステンドグラスからの光は朝の礼拝堂と青年を幻想的に照らしていた。 - 123グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/23(金) 14:29:55
- 124シェディ◆PPyRfvMZl625/05/23(金) 14:54:21
- 125シンカイ◆9BZ6kXGcio25/05/23(金) 14:58:35
- 126グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/23(金) 15:24:58
- 127シンカイ◆9BZ6kXGcio25/05/23(金) 16:27:14
- 128グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/23(金) 16:56:29
- 129ラルト◆C01O2YJoxg25/05/23(金) 16:58:25
未知なるものに心躍らせながら散歩していたが未知のものは見つからなかった。
だが、気分転換にはちょうど良かったようで背伸びして荷物を持ち直す。
「んんん〜〜!!やっぱり散歩は良いな!!」
ふぅ…と息をつき帰路につく。
―――
自室に帰ってきて買ってきたものを冷蔵庫の中に無造作に入れていく。
冷蔵庫に入れ終わり、ながしを見ると洗い物も軽く溜まってきている為、洗い始める。
「また行きてぇな青天市街、あそこは心地良い」
先程までいた場所を思い出して感想を呟きながら洗い物を淡々とこなしていく。
日常的に使った物はすぐ洗うようにしてるからか溜まってるとは言っても少なかった。
そして洗い物も終わりソファに座る。
「はぁー疲れたー、…ムリアンの奴とか色々買うの忘れてね?」
ソファに座ったのも束の間、買い忘れを思い出しすぐに立ち上がりもう一度出かける準備をし初め財布の中身を見て金があるのを見てから頷き、我々デスペラードの為の市場の1つ“スーク”に向かい始める。 - 130シンカイ◆9BZ6kXGcio25/05/23(金) 17:23:30
案内された場所は恐らく自室であろう。
そこは1人で楽しむつもりだったのだろうか、ティーポットと小ぶりな菓子パン、付け合せのジャムの小瓶もあった。しかし歓迎されているのだ、遠慮してしまっては失礼だろう。
「失礼します。」
シンカイは断ってから席についた。
「わざわざありがとうございます、カラシニコフ大尉。」
注がれた紅茶をゆっくりと啜る。
『驚いたかな、"大尉ともあろうものが
何故ここで神父をしているのだろう?"と』
神父としての言葉であろう。その穏やかな瞳ではあるが、深くまでは見れない。
「はい。小官は勝手ながら『従軍神父での大尉相当なのだろう』と邪推しておりました。しかしながら大尉のお手を見る限り、そういう訳では無いと理解しました。」
実機で最低でも90時間は戦闘出撃をしていないとつかないBFパイロットの誇りある手をしていた。
- 131グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/23(金) 17:54:36
『察する通り、私は長くここにいる
16から二等兵として入社し、13年経った
君のようなエリートには叶わないがね。』
こちらも紅茶を一口飲み、口を開く
『大尉となるまでに...多くの友人を得た。
そして、その幾人かはもうこの世に居ない
大尉となって、多くの部下を得た...しかし、
祝福した者よりも冥福を祈った者の方が多い
私は、苦悩した。地位を得て、部下に労られ
その家族たちに感謝の意を示されたとしても...
結局の所、私は人を殺して生き残ったのだ。
それならば犠牲になってしまった者たちを悼み
また無邪気に喜び、楽しむ人々を祝福する...
それが私のするべき事だろう、と思った』
目付きは不安そうでも自暴自棄な訳でもなく
ただ己の罪をあるがままに背負う、という
聖職者らしい潔白な目付きをしていた。
『故に、私は神父としての資格を拝領した
それがどちらも可能なのは神父だけだろう?
...少し重い話になってしまったか。うむ
蜂蜜も使いなさい、入れると美味いからな』
- 132シンカイ◆9BZ6kXGcio25/05/23(金) 18:19:42
- 133グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/23(金) 18:34:57
『ふふ、痛い所を突いてくるな...
確かにそうだ。祈るだけならそうすべきだ
しかし私もそう割り切れない輩でね』
再び紅茶を飲み、スーシュカを齧り
そしてまた目を若い軍人に向ける
『ここまで積み重ねた経験と地位で、
私の部下たちや市民を守ってやる事と
それを捨ててただ祈り、喪に服す事...
そのどちらが正しいかを己に問うた時
私は前者を選んだ。血塗れの地位であれ、
それは人々を守るのに使える物ではある。
祈るだけでは、戦場で手を伸ばせない...
だから私は神父であり大尉である事を選んだ
...矛盾しているかもしれないが、それも
私個人は一つの正義であると思ったのだ』
あくまで私の結論だが、と話を締め括り
若く敬虔な軍人を再び見遣る
『納得してもしなくても構わない。
この問いの正解は、きっとある物ではない』
- 134シンカイ◆9BZ6kXGcio25/05/23(金) 19:20:10
- 135二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 19:27:35
このレスは削除されています
- 136二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 19:40:46
このレスは削除されています
- 137グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/23(金) 19:42:35
『謝らずとも構わない。これは、
あくまで私自身の結論に過ぎないものだ
...昨今、上層部の若い将校が単独行動で
大きな火種を作ったのは聞いているね?
私のような青二才はどうも心配になるんだ、
"若いエリートは皆こうなってしまうのか?"
どうもそう思ってしまう、だからこそ
真っ当な若い人材はいるのだろうか?と、
この目で確かめたかった...本当にすまない』
謝意を口にし、少し冷めた紅茶を飲む
やはり、健全な将校はいるものだ。
『我々クロノスはあくまで人々のため、
人間社会を守るために地位を得ている。
他者との火種をこれ以上意図的に増やすなど
以ての他である事を心得てくれ。きっと、
今の君ならそれを忘れる事は無いだろうが』
若きエリートパイロットの真摯な眼を、
叩き上げ軍人は眩しく、そして喜ばしく
また嬉しそうに満足げな笑顔を見せた。
『君に、主の祝福が有らん事を。』
- 138マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/23(金) 19:57:35
- 139シンカイ◆9BZ6kXGcio25/05/23(金) 20:06:36
教会から出る時、神父様から警句として言われた。『火種を意図的に増やすな』と。
今のクロノスの状態はかなり不均衡になっている。だからこそA-1からアルテミスが派兵してそのパワーバランスを保っているのだ。流血の無い抑止。
「本日は貴重な時間を本当ににありがとうございました。」
シンカイは深く礼をした。
神父様は心地の良い笑顔であった。
「ではまた。」
シンカイは礼拝堂から歩道に続く小階段を降り始めた。
『君に、主の祝福が有らん事を。』
背中でその祝辞を受け取る。青年は熱意と忠義をより強くしていた。
- 140シェディ◆PPyRfvMZl625/05/23(金) 20:56:46
- 141逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/23(金) 21:32:14
「分かった。それじゃあ、待っているよ」
通信はそのまま。ユズハに指示を出す。
「(クロノスのユスラ大佐とエイダン・リー部長に、ケイは生きてることを伝えておいてくれ。ただし、勞 金龍大佐にはカバーストーリー以外のことは話さないように、と)」
「(かしこまりました。こちらの草を利用して、デスペラード経由で伝えます)」
状況は上手くいったが、カバーストーリー以上のことも知りたがっているはずだ。
彼女と彼二人には知ってほしいという気遣いを入れながら、カンナは旧愛卿がやってくるのを待つ。
『──────────あら、お気遣いありがとうございます。思っていたよりもずっと律儀なのですね、あなた方(逆巻重工)は』
「律儀にやるからこそ、信用してもらえるのさ。感情だけ、ごめんなさいだけでは済まないことは世の中ごまんとある」
だからこその取引なのだ。律儀にやらねば、いつか不義理の報いを受けることになるし……不義理には常に、恨みを抱える側面が逆巻重工にはあった。
ある意味、彼女らの性質なのだろう。
無駄がなければ生存できない。そしてその無駄に救われたからこそ、取引は決して無碍にしないのだ。
『良いですね、それ。とってもグランセル〜ン!』
「そう言ってくれると、嬉しいね」
その性質を好ましく思った少女を待つべく、カンナは本社ビルの入口に立つ。
本社ビルの入口で、銀髪少女の護衛を伴いながらカンナは車がやって来て……降りてきた少女に、ほぅ、と息を吐いた。
オフフォルダーブラウスを来た青髪の少女。美しい肌をのぞかせながらも、しかし自由と軽やかな空気がある。
カンナは素直に、好ましいと思った。
『ローガン工機のマルガリータ・ペペロンチーノと申しますわ』
「逆巻重工・6代目CEO、逆巻カンナだ。ようこそ、逆巻重工へ……詳しい話は中でしましょう。耳目は少ないほうが良い」
たとえトンチキ偽名を誇らしげに名乗ったとしても、それは彼女の強さ、その一つなのだから。
- 142ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/23(金) 21:58:39
「それで、シャロンお姉様に投げられたと言うわけですか?」
【筋骨隆々なのにどことなく小さく見えて来た旦那から事のあらましを聞き、ここ最近の経過が良好であった珠は苦笑いする】
あの人は過去に色々あってな……いつでも死んだって構わないような考えを持っているからよ……
あそこで1度しっかりと掴んでなければ、すぐにでも消えてしまいそうに思えてきてしまって、話していく内についうっかりと……
【金龍から『かつて、本社から汚れ仕事をあるだけ押し付けられていた』なんて事が言える訳が無く、珠にはシャロンの事をただの仕事仲間だとしか伝えていない】
【それ故に、根っから思っている事を口に出すのに、彼は言葉を“色々”と選んでいた】
「折角帰って来てくださったのだから、この子の名前を決められるかと思っていたのに……相変わらず仕様が無い方ですね。私の方からももう少し詳しく話はしておきますが、もう1度謝っておいて下さいね?」
【そうして珠は金龍に「指切りげんまんですよ」と、かつての国で伝わっていた契りを再び交わそうと促す】
……はい、約束を破ったら針千本飲んでやりますとも
「それと今度は、楽しい土産話もお待ちしていますから」
……了解です - 143海の怪異◆KPwoT407kA25/05/23(金) 22:04:32
「…クソッ!雑魚ばかりだが数が厄介だな!!」
【人自連管轄地区。インベイドの出現が確認された某所にて3機のARATAMEが多数のインベイド相手に苦戦を強いられていた】
「ヴァルハラが寄越すって言った援軍はまだなのか!?」
「まさかヤツら怖気付いたんじゃ…!いや!BF識別信号を確認!ヴァルハラテック機……で…」
【待ち望んだ救援と『R/W2-05』の型式番号に部下が喜びの声をあげようとしたその時だった。『R/W2-06』の型式番号を視認した部下の顔が蒼白に染まる】
「れ…連中っ!よりにもよって“海の怪異”を寄越してきたみたいです………!」
「何ィ!?“海の怪異”だと!?」
【───────それは最近目撃されるようになった浅葱色のワーグナーモデル。老いた獣に夢を見、後ろ盾を失った残党が逆恨みでヴァルハラ本社に襲撃を掛けた際に1人残らずその機体と思考を害してしまったとされる都市伝説………通称、“海の怪異”】
「総員あの機体と絶対に回線を繋ぐなよ…頭を破壊されるぞ!戦線も下げろ!!」
「け…けど!インベイドをこれ以上つけ上がらせる訳には」
「いいから指示に従え!下手にヤツの間合いに入れば俺たちもバラバラにされるぞ!!」
「「りょ…了解!」」
【3機のARATAMEが下がり、入れ替わるように浅葱色がインベイドの前に立ち─────────刹那、一度に複数の突撃兵級が硬糸に“両断”された】
こちら人自連所属ヘルムヴィーゲ、救援に参りました。戦線から離脱してDHAを…あれ、回線が繋がらないであります
『サウンドミュートスル間モアリマセンデシタネ。彼ラハコチラデ正式二撤退指示ヲ下シマス。ヴィオラ見習士官ハ思ヴ存分暴レテクダサイ』
了解であります。…折角だから魚の素晴らしさを彼らにも聞かせたかったのに…
【───────なぜ彼女とそのBFが“海の怪異”という異名で呼ばれるようになったかについてだが。それは残党の生き残りが未だにうわ言のように「さかな」としか発言しなくなったこと、ボイスレコーダーにこれでもかというくらい海の蘊蓄が残っていた事に起因する…らしい】 - 144旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/23(金) 22:06:13
「えぇ、同意です。私としても、クロノスの諜報員には警戒したいですから───────ほら、最近もクロノスの方が来ておりましたし?」
優雅に微笑みながら、旧愛卿はサラリと告げた。
─────── 勞 金龍の手の者によるケイ・サヤギリの拉致。其れらの事実について、“多少の”知識は有しているという事を。
隠し立てする様な情報網でもない。情報の均衡性を保つという観点で、グランセン解放戦線はある程度逆巻重工の現状を理解している事を示す為のギフトだ。
カツ、カツとハイヒールを鳴らして本社ビルの中に足を踏み入れる。
高峰に佇む華の如き微笑みを崩さずに、悠然な所作で旧愛卿は案内された一室の適当に椅子に座った。
・・
「───────────────さて、早速本題に入りましょうか。コチラが我々が保有する『粒子ビーム拡散装甲』の構造と基礎理論及び原理と製造方法についての情報です」
懐から取り出したメモリをテーブルの上に置いて、旧愛卿は特段迷いもせずに言葉を続けた。
秘匿してアドバンテージを保持するという選択肢もあったが、しかし状況を鑑みるなら一組織が持っておくよりもある程度は「共有」した方が更なるアドバンテージを得られると判断した。
「デメリットとしては製造コストが著しく高いのでエース機やハイエンドモデルにしか搭載できないという点に加えて、あくまでも『拡散』ですので周囲の機体にも被害を与える可能性がある点ですわね─────────何か質問はあるでしょうか?」
・・・・
コレは、一つ目の『プレゼント』だ。
今回、旧愛卿は三つの『プレゼント』を持ち込んでいる。それだけ逆巻重工との交渉を成功させる為に準備を整えていた。
──────いや、まァ。三つ目に関してはあってないような物なのだが。
- 145逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/23(金) 22:52:21
『えぇ、同意です。私としても、クロノスの諜報員には警戒したいですから───────ほら、最近もクロノスの方が来ておりましたし?』
「……はは、耳が痛いね。我々は完敗したようなものだ。」
カンナは言葉で胸襟を開いた。相手が“ある程度の事情”を知っていると言うならば、ことさらに隠すものではない。符牒とも呼ぶべきもので状況理解を圧縮するやり方は、簡潔かつ手短に伝えるゴエティア式とはまた違う強みがある。
そのままカンナも椅子に座り、旧愛卿がメモリをテーブルの上に置いたのを見た。
・・
『───────────────さて、早速本題に入りましょうか。コチラが我々が保有する『粒子ビーム拡散装甲』の構造と基礎理論及び原理と製造方法についての情報です』
「ふむ」
旧愛卿の切り出した言葉に、まずは見に回った。
『デメリットとしては製造コストが著しく高いのでエース機やハイエンドモデルにしか搭載できないという点に加えて、あくまでも『拡散』ですので周囲の機体にも被害を与える可能性がある点ですわね─────────何か質問はあるでしょうか?』
「……そうだな。拡散、ということは。味方の攻撃をわざと受けて敵に返すこともできるね?」
まず、話すのは技術的見知。蒼風改のデータの中にあった神業……それを人為的に可能という素材である点でも着目して。
「しかし、実物と製造方法だけでなく構造や……基礎理論と原理まで提供してくれるとはね」
こちらに対して払い過ぎではないか?という心配でもあった。誓約は交わしているし、逆巻としても破るつもりはない。だからこその心配でもあった。
貰われる側になることは、ここ最近ということも含めて……逆巻重工の困惑もあるだろう。
・・・・
「それと、こちらを返そう。コア粒子被爆があったそうだから、少しだけ動作確認をさせてもらった……事後承諾ですまないが、これは人自連として預かるには中々重たい代物だ」
だからこその恩返し、というつもりなのか。ケイに旧愛卿が託した通信妨害機を、メモリの隣に動かす。
原理や技術を含め、実用化は難しいが……どういう性質のものかはある程度の把握ができた、という旨を伝えた。
- 146ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/23(金) 23:09:59
『ケイは何か食べたいモンとかあるか?折角ならひとっ走り買ってきたるで?』
「……じゃあ、ゼリー飲料でお願いします!」
病院食はしっかり食べているから、固形物というよりも喉を潤したいという欲求が先に出ながら、龍影を手で挟んでいることに自分は気づく。
『そうね、ごめんなさい』
「……大丈夫だよ。俺もたまに気になるから」
す、と手を離して。自分も治りの速さに疑念があることは伝える。柔らかい頬を撫でた感触を、少し満足そうに受け止めながらだが。
普通ではないことは知っていた。けれど、慣れすぎてもいけないのだと、今感じた。
彼女が疑念を止めたなら、ケイも止める。
「……。」
じっ、と自分の手を見る。手を見ることで、身体も見れるかもしれないと。
――――自分も自分で、やはりどこか、人と違うのだろうなと思えたから。
「さ、それじゃあ三人とも……NA社のプラントにある温泉旅館に行く準備しましょ!!」
(龍影さんと東雲さんの疑念にも、ちゃんと答えてあげなきゃね)
と、チトセが手を叩く。
「はい。といっても俺の持ち物は……身体とスイしかないですけどね」
《私はモノですか、そうですか》
不服を、スイが訴えていたが、スルーした。だって実際、モノだし。仲間でもあったが。
- 147マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/23(金) 23:35:59
- 148旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/23(金) 23:36:48
「慧眼ですわね。勿論、其れも可能ですわ。我々の方でも戦術として確立しております」
粒子ビームの偏向や拡散も可能であるのか?という言葉に対して旧愛卿はアッサリと頷いた。
事実として、グランセン解放戦線はそのようにして兵士の数で勝る賢工グループの飛行場を二機だけで制圧している。
────────優雅に脚を組み、旧愛卿はクスリと可愛らしく笑みを零した。
心配の言葉とは、流石に彼ら彼女ら(逆巻重工)を利用しようと目論む“悪いお姉さん”に掛ける類いの言葉ではあるまい。無論、その律儀さは個人的には大いに好感が持てるのだが。
「気にしないでくださいませ。粒子ビーム拡散装甲については、より生産力に優れる「アズマ工業」にも引き渡して外部委託が可能にする予定ですし」
少しだけ間を置き、細い人差し指をそっと桜色の唇に添えながら旧愛卿はミステリアスに微笑んだ。
・・・・・・・・・・
「発展型は既に開発済みです。通信妨害装置もお気になさらず。返してくれるのは有り難いのですけれどもね?」
通信妨害装置を懐に仕舞いながら、「あら」とわざとらしく旧愛卿は声を上げた。
ひらひらと首に提げた『ローガン工機』の社員証を摘み上げて、嫋やかに微笑む。
「忘れておりました。今回はローガン工機の社員としても来ておりましたので──────もう一つ、プレゼントしたいものが」
取り出した用紙には、弾薬の量と価格について記載されている。何の変哲もないカタログだ─────一般的な価格と比べて、八割近く低価格である以外は。
・・・・
「ローガン工機の正規価格です。市場との兼ね合いで標準販売価格にするのは難しいですが、貴社だけを取引相手に追加するのなら他の企業も文句は言わないでしょう─────如何ですかしら?」
- 149デュラハン◆xZJxX8ZGsA25/05/24(土) 00:20:04
(1/3)
【金属皿を集めて叩きつけたような耳障りな音が、地下倉庫に木霊する。その中央にあるのは、頭を失い、隻腕となった鋼鉄の巨人】
【そこに十人の、十機と呼ぶべきかもしれないが、デュラハンたちが接続している。彼らは稼働ログをそれぞれに分析し、電子上の図面を作成しては削除してを繰り返していた】
【デュラハンは短くない期間、彼女の戦いを見てきた。武器を通して、兵器を通して、激戦を覗き見てきた】
【まだ少女であった当時の彼女をクライアントとして認めてやったのは、最初はその特異性目当てからだ】
【有機デバイスシステム〈エルガレイオン〉。まさか実物が今も有るとは思わなかった、インベイド飛来以前の遺物。それに知的好奇心、つまりは興味を引かれた】
【だが今は、そんなものはどうでもいいと思っている】
【最初の頃は悲惨だった。武器の破損や全壊は当たり前、手ずから改造したスカッド・ソルジャーも毎回のようにボロボロ。独立傭兵には無茶な依頼が舞い込む事は少なくないが、彼女程に装備を摩耗させる者はそういないだろう】
【その理由はシンプルだ。例え単身でも強大な敵に、大量の群れに挑み、その中で安全策を放棄して苛烈に攻める死闘を行うからだ。武器は連続攻撃の中で摩耗し、本来意図しないガードなどで耐久力の限度を、限界を超えるまで常に酷使されている】
【手に持つのがライフルでも、彼女は構わずに刺突を放つ。手に持つのがブレードでも、彼女は迷わずに投擲を選択できる。機体と自身への負荷など目もくれず、運動性能の限界まで機動を加速させる】
【BFパイロットを生業とする者には、大なり小なり命知らずな面がある。強襲型に真っ向から挑んだロスヴァイセ等は良い例だろう】
【しかし生に執着しない者は限られる。大半は生きるために戦っており、命を使う時は常に理由があり、命を大事にするという価値観が根底に備わっている】
- 150デュラハン◆xZJxX8ZGsA25/05/24(土) 00:20:51
(2/3)
【ウルヴィも犠牲を減らす事を、その有用性含めて『戦術』としては理解しているだろう。しかし彼女は真の意味で、命を大切にするということを理解できていない】
【彼女は自分の命に対して、異質な程に無頓着だ。死を受け入れているわけでもなく、何らかの信念に殉じているわけでもなく、生き残ると信じているわけでもない】
【最初から命を、重いとも軽いとも思っていない。価値が無いと言う以前に値札をつけず、命にそれ以上の区別を与えていない】
【それは凡そ社会秩序の中で人間が培ってきた倫理観からかけ離れた生命観。しかし軍隊的な、命を管理・運用する価値観とも異なる】
【だからこそ彼女は、人殺しにも躊躇を持たない。自らの命も、他人の命も、動物やインベイドでさえ、同じ命だと認識しているのだろう】
【それはまさしく、『人』ならざる『獣』の見方だ】
【デュラハンは確信している。ウルヴィは間違いなく、文字通りに死ぬ時まで戦い続けると。己と道具を擦り減らし、限界まで殺しを求めると。それが彼女にとって生き残る事なのだから】
【まさにその結果が、現在のBESTIA DREADだろう。ゴエティア戦団の特務執行機を殺し切る為に酷使された機体は、見るも無惨な姿になっている】
【それでも勝利した…などと、デュラハンは思わない】
【そもそもあの悪魔どもの真価は連携だ。そして稼働ログの限り、当初のウルヴィは二機を視認した後に、一切のタイムラグ無く戦闘へと移行した】
【つまりあの場で他の戦力が駆けつけなかった場合、彼女は単身で二機と戦うつもりだったのである】
【ではその場合、彼女は生き残っただろうか。いや、違う】
【BESTIA DREADは、最後まで戦えただろうか?】
【否だ。隻腕であった事は言い訳に過ぎない。彼女は頭部を失っても、戦う事を厭わないのだ。そこを論じる必要はない】
【即ち──】 - 151デュラハン◆xZJxX8ZGsA25/05/24(土) 00:21:08
(3/3)
《見合わないねぇ》
【店番を終え、地下へとやってきたデュラハンがBESTIAの前に立つ】
【彼女ならデュラハンの機体でなくても、武装でなくとも、戦うことはできるだろう。しかし今も尚ウルヴィがデュラハンの作品を扱うのは、誰よりも彼の武器を信用と信頼をしているからだ。彼ならばオーダーに応えてくれるという信用があるからこそ、彼を頼り続ける顧客となっている】
《認めない》
【怒気にも似た熱を込めた音声が、重なる金属音にも負けずに主張する】
【デュラハンの製品に釣り合わない者は数多に居た。火力が欲しいと言うから望み通りにすれば扱い辛いだの、速さが欲しいと言うから答えれば身体が持たないだの、じゃあそのフィードバックを得て合わせてやれば整備性やコストに対して文句を付け出す連中だ】
【そういった連中にも、最終的にはデュラハンが妥協して合わせてやることはできた】
【しかしデュラハンが、オリジナルであるイサク・カーライルが、釣り合わない事は無かった】
《僕には、彼女に見合う兵器を作る。その権利と義務がある》
【故に認めない。彼女と釣り合わないなど、認めてはならない。その人生が血濡れのバケモノであるならば、全てを焼き尽くす暴力であるならば、その最期まで命を賭して喰らいつける牙を】
【より能く敵を殺せる鋭い爪を。命を厭わず速さを求めるなら、それに応える推力を。それに耐える機体を】
【工房を埋め尽くす金属音は、その狂気に共鳴するように、高らかに響いていた】 - 152ラルト◆C01O2YJoxg25/05/24(土) 00:29:11
“スーク”に来て燃料などの買い物を済ませ、帰路についている。
ムリアンの燃料を買う時などしか行かない為話題もクソもないから買ってさっさと帰っているのである。
「誰か知人でも入れば話は別なのかねぇ」
闇市場において燃料しか買わない為情報が手に入らないし興味もない。
そのため他のデスペラードが知っている事すら知らない事が多いのだが、警戒の方が勝っており自分の情報も不必要に出さないようにしている。
「人と関わるの怖いのか俺?」
自分の新たな一面を知り驚きつつも笑いながら燃料タンクを持ちムリアンの元に向かっている。
この後めちゃくちゃ補給した。 - 153シェディ◆PPyRfvMZl625/05/24(土) 09:26:01
- 154ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/24(土) 09:45:38
- 155ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/24(土) 11:59:45
- 156二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 12:10:50
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- 157二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 12:11:13
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- 158最前線の日常◆OXAm1h6odk25/05/24(土) 12:24:32
(1/3)
──────────インベイドの脅威は常に存在しており、絶え間なく人類が積み上げた歴史の文明を押し流そうとする潮騒である。
一人の特務大佐が両陣営の間に火種を灯した時も、陸上戦艦がクロノス勢力圏への進攻航路を定めた時も、逆巻重工が陸上戦艦を打ち破った時も、或いは数々の政治的工作が交錯する時も。
・・・・・・・・・・・・・
クロノス軍は常に戦っている。人類の存続の為に、人類の保護の為に、最前線で“防波堤”となる兵士達に安息の日はない。
「マイク。T-17ポイントに重装兵級を観測した。Qラインに到着する前に仕留めてくれ」
「了解した。粒子ビームを乱射されて防衛ラインを後退させられては困るからな」
同社機体間に於ける相互通信システムによる戦況のリアルタイム把握。環境を選ばない高い走破性能による迅速な戦力移動。
スカッド・ソルジャー時代から変わらないクロノス量産機の強みであり、戦場を縦と横の区画に分けて整理する戦術と合わせて誤解なくスムーズに対処を行える秘訣だ。
一機のスカッド・ソルジャーがアサルトライフルを手に戦場を駆け抜ける。大型インベイドに先駆けて防衛線に浸透し始めていた小型インベイドに対して後方に控える機体がロケット弾を撃ち込んで露払いをする。
撃ち漏らしを震動ナイフで切り払い、蹴り飛ばして射線を確保する。
(────────薙ぎ払いか)
粒子ビームの軌道を予測する。射角が僅かに横へと動いていた。瞬時に機体を跳躍させて、足元を切り裂く粒子の奔流を回避する。
射出孔の角度が変動している。射角の真正面に立たねば射撃兵装では弱点を狙えないから、粒子ビームを追い駆ける────────奔流が止まる。直ぐに投射を再開するだろう。だがその十数秒で重装兵級を仕留めるには十分だ。
連射モードに切り替えたアサルトライフルで一斉に弾丸を弱点に叩き込む。粒子ビームの再放射を待たずにインベイドは沈黙した。
周囲を見渡してインベイドの軍勢を観測する。相互通信システムを励起させた。
「騎兵級の縦一列突撃だ。後方の投射機級が装填手級と合流するまでの時間稼ぎだろう。現在位置はXライン───────狙撃を要請する」
「了解した。狙撃支援を行う。貴官は引き続き掃討任務に従事しろ」 - 159逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/24(土) 12:57:40
(1/3)
「わかった。では我々も“企業”として話そう……アズマ重工には委託のみ、我々は基礎理論を含めた技術を受け取れる……という認識でいいのかな?」
クロノスへ技術を流出させないという盟約がある限り。という言葉を添えつつ、確認を取る。
「もちろん、アズマ達にも理論が渡るとしても文句は言わない。流すのはそちらの決断だからね……これを見て心躍らない技術者はいないだろう」
有用な技術を得られるのは良いことだ。だからこそ……自分たちとしてもそれを独自に発展させていきたいという思いもカンナは口にする。
「承った。通信妨害についてそちらに発展系があるならば……遠慮なく大元として使わせてもらおう。現物返却については誠意として、ね」
それは通信妨害技術を含めて、だ。
互いに微笑みながら、ひらひらと社員証を摘む旧愛卿を、カンナは見る。
『忘れておりました。今回はローガン工機の社員としても来ておりましたので──────もう一つ、プレゼントしたいものが』
「ローガン工機といえば……んん??」
弾丸、およびそれを付随する技術に優れた企業。という記憶を引き出して。
カタログが机の上に置かれた。
……試算であろうが、逆巻重工が製造している弾薬類も込みで――――通常の2割に近い値段が記されている。
(うそ、マジ???)
逆巻カンナの思考が止まった。あれ?ローガン工機ってクロノス並みの大企業だっけ?と変な方向に意識が飛んだ。
- 160逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/24(土) 12:59:11
(2/3)
・・・・
『ローガン工機の正規価格です。市場との兼ね合いで標準販売価格にするのは難しいですが、貴社だけを取引相手に追加するのなら他の企業も文句は言わないでしょう─────如何ですかしら?』
(安すぎだ馬鹿!!?採算取れてんのか!?!ぶっ殺されるぞ!?)
叫びたくなる衝動を必死で抑えるのが精一杯だった。弾薬類の市場破壊、いや市場殲滅を狙っているのではないか?と疑うほどの安値である。
仮に月風系の主装備にもなる滑腔砲弾の値段を1000とすれば、ローガン工機の手にかかれば200になってしまうのだ。
品質で勝負したとしても、もはや絶望的な値段格差である。
一瞬湧いてしまった殺意をなんとか抑える。抑え込めと椅子に深く座る。
(……いや、うち限定と言うならむしろ良いことだ。良いことなんだけど、これに慣れたら破滅する!!全部のラインを委ねたらホントに終わる!)
「…………すぅぅぅ……そうか……。では我々の方で製造している弾薬類のデータを提供しよう……製造方法は前提として、理論などはいるかな?」
なんとか呼吸を整えて提案を受け取る。逆巻重工としても、製造する弾薬類の一部を別企業に委託できるのはとても好ましい。取引相手としても上々だろう。ぶっ殺したくなるがそれはそれだ。
(インベイド殲滅のために自社弾薬が流通されるなら血の涙だって流す覚悟だ……!)
故に対価を出す。時代の流れによって過剰火力だ、過貫通力だの言われている弾薬類もあるが……要するに高いが、それだけの威力もあるということだ。
問いかけながら、話を回していく。
- 161逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/24(土) 12:59:50
(3/3)
「こちらとしては今後、ミュール・コーポレーションなどを含めた強硬派とも歩み寄りをしたい気分でね……彼らの言う予防機関。あれは単一政府機関としては成立するだろう」
独り言だ。
・・・
「だが、人自連は複数企業で構成された連合体……発言権が強い企業が複数談合し予防機関の実権を握れば、恣意的な運用すらも可能になってしまう」
ただの、危機的未来が何となく予測できてしまうからこその。
「もし仮に“賢工の二の舞”を防ぐための相互監視、牽制を行いたいというのが目的なら……そうだな。予防というよりかは、調査だね。暴走しているという『動かぬ証拠』を抑えた後に合同で動く枠組み作り……が理想かな」
もちろん、それを作るのは並大抵のことではない。何よりこの方法でも証拠を捏造するという形で暴走が起きる可能性はある。
「これでもいくつか頭を切り落としたことがあるからね。ある程度は軍事的にも、政治的にも『気持ちのいいやり方』で首を落とすアドバイスはできるよ?」
ゆえにカンナは介錯人としての逆巻重工の側面を、ひやりとする笑みで教えた。
- 162最前線の日常◆OXAm1h6odk25/05/24(土) 12:59:59
(2/3)
騎兵級が突撃する。多重装甲によって高い正面防御力を有するインベイドだ。真正面からでは碌に歯が立たない騎兵級が、側面からの回り込みを警戒して縦一列に並んでの突撃を敢行して──────だが無意味だ。
・・・・・・・
「地雷を起爆しろ」
彼らの足元。既に敷かれていた地雷が縦一列に一斉起爆して騎兵級を壊滅させる。
必ずしもBFだけでインベイドを始末する必要はないのだ。兵器とは使い分けが肝要だ。適切な場面で、適切な兵器を運用する───────クロノスの最前線部隊にBF信仰は存在しない。
戦場なのだ。兵器とは須くが道具に過ぎない。その道具を過信し過ぎた者が、この地獄で生き永らえる術はない。
騎兵級を排除した後、背後で装填手級と合流しようとしていた投射機級の姿が顕になる。
既に一、二匹の装填手級と合流している。プラズマ弾の砲撃準備は整っていて、直ぐにでも前線に降り注ぐであろう──────関係ない。ローン・ソルジャーがロングビームライフルで狙撃する。
・・・・・・・・・
───────粒子ビームがプラズマを貫通した。
クロノス・インダストリー。其れは世界最大の企業にして、粒子ビーム技術を発展させ続けた企業の名である。
インベイドの抹殺で『必要最低限』となる火力なぞ疾うの昔に研究し終えている。
そして、その『必要最低限』の火力を有する兵器の大量生産体制の構築もまた既に過ぎ去った過程だ。
守りを失った重装兵級と投射機級に、次々とビームの雨が降り注ぐ。風に影響されず、また優れた弾速を誇る粒子ビームの狙撃は簡単だ。一定の狙撃訓練を積んだ兵士で事足りる。
「頃合いだな」
BF部隊が対空攻撃が可能なインベイドを殲滅したのを見計らって、最前線部隊は支援要請を行なった。
・・・・・・・
─────────世界最強の空軍。クロノス空軍による空爆だ。 - 163東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/24(土) 13:15:24
- 164最前線の日常◆OXAm1h6odk25/05/24(土) 13:19:27
(3/3)
───────────成層圏を超音速で航空する爆撃機が、次々と爆弾を投下した。
『貫通クラスター爆弾』と銘打たれた其れらは空中で多数の子弾を拡散し、その上で更なる加速を果たして地上へと降り注ぐ。
・・・・・・・
真上から子弾を受けた騎兵級が、一撃で爆散した。射撃兵級と突撃兵級が巻き起こる爆発に呑み込まれ次々と蒸発する。虎視眈々と隙を狙っていた強襲級が超音速で離脱しようとして、しかし余りにも広い攻撃範囲から逃れられずに無数の子弾を受けて砕け散る。
『地下シェルターまで貫通するクラスター爆弾』という設計思想をインベイド戦争以前に実用化した、当時最大の航空機メーカーの製品だ。
装甲技術の発展によってより高い火力が必要になると見込んだ彼らは、多くの航空爆弾を製造していた──────────そしてインベイド戦争開始に伴い、クロノス・インダストリーの傘下企業に加盟した。
焔の華が咲き誇る。次々と火球が前線を呑み込み、インベイドが掃討される。
辛うじて生き延びた小型インベイドも空爆圏内から出た瞬間にスカッド・ソルジャーによって蜂の巣にされる。逃げ場はない。
万にも及ぶ歩兵が一台の爆撃機によって虐殺される様に、BF部隊によって制空権を奪われたインベイドにクロノス空軍に対抗する術はなかった。
─────────クロノス・インダストリー。
其れは世界最大規模の物量と、世界最大規模の質を併せ持つ。正しく人類世界の守護者である。 - 165ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/24(土) 13:21:06
- 166マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/24(土) 13:32:24
- 167旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/24(土) 13:51:05
(1/2)
「えぇ。「アズマ工業」は極めて巨大な勢力ですが、しかし企業傾向としては寧ろ量産機志向だと私は考えておりますので」
高コストの粒子ビーム拡散装甲についても、積極的に研究する事はないだろう。
確かに強力ではあるが、味方との連携に多少の難が生じる上にコストの都合で量産機には向かない装甲だ。ならばエース機の建造を行う逆巻重工に渡した方が有効活用してくれるだろう、という主観的判断である。
「─────────とは言え、求められた場合は基礎理論も渡す心積もりですわ。祖国復興の為にも復興支援は何としても得たいので」
優雅に微笑み、お茶菓子に楽しそうに味わいながら旧愛卿は補足した。
本命が祖国復興の為の経済支援である以上、その為なら手札を尽くすコトも厭わないと明らかにして。
「あぁ、採算については気にせず。あくまでも正規価格ですので利益は得られる値段となっておりますわ─────────理論については、有難いお話ですが辞退させて頂きますわね。他の企業に睨まれそうですので」
何でこうなったのか、実の所は私も分かってないのですわよね。凄く不思議です、と─────苦笑しながら付け加えて、旧愛卿は紅茶で唇を潤した。
独り言に耳を傾けて、ひやりとする物言いについても思索を巡らせる。
真剣な表情で沈黙してから、柔らかな微笑みを取り戻して旧愛卿は両手を上げるジェスチャーをして後にとある連絡先について記載した紙をテーブルの上に置いた。
・・・
「………………流石に浅知恵でしたわね。ミュールと紅陽が敵対に近い関係性であると誤認させる為の工作の一環でしたが、ノウハウが足りませんでした──────コチラは紅陽機関の代表取締役、紅坂女史の連絡先となっておりますわ。お好きに使ってくださいませ」
意見は最大限に取り入れて、人類自由連盟の健全化に尽力したい─────────そのような意図を告げてから、旧愛卿はウィンクをした。
- 168旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/24(土) 13:53:49
- 169ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/24(土) 13:59:05
「…ん……ない」
【ウルヴィの受けた称賛は、その力を認めたものばかりだった。そしてそれすらも、いずれは畏れられ、或いは最初から蔑まれた】
【それは武器にも似ているのだろう。斬れ味を求められ、認められるがままに裂き、しかし鋭さを慄れられる。人斬り包丁は凶器として忌み嫌われるのだ】
【しかし武器とは時に、その外観を好む者がいる。刃物は特に顕著であり、美術品としての価値を認められる物も少なくない】
「私より…も、ランセルの…ほうが……」
【血錆のへばり付いた刃の、曇りなき真の姿。それを見る事叶うのは、手入れを行う者のみの特権なのだろう。故にそれを知ったのはきっと、世界でまだ彼のみだ】
【しかし磨かれた刃とは、鏡面にも似て、人を映す】
「きれい、だよ」
【冷たい鋼は、そこに映る者の方がより美しいと。そう主張していた】
- 170ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/24(土) 14:17:45
「…オレがですか?」
【泡を伸ばし終わり、またシャワーによって泡を流す】
【乾いたタオルで水気を取りながら、返ってきた褒め言葉を聞く】
「そんなこと無いと思いますよ。オレよりもウルヴィさんの方が断然綺麗です!」
【彼女の体を拭きながら、目線を動かし風呂場の鏡に映る自分を見る】
【確かに身嗜みには多少気を遣っているが、彼女に勝る筈はない】
【水滴で曇っていた鏡面も今は晴れ、澄んだ刀の少女とそれを拭く男が────】
「…………あれぇ?」
【映っていたのは自分である。確かに自分ではあるが自分ではない】
(そいえば、今のオレって…)
【拍子の抜けた自分の声で自覚する。彼女を迎えていた事で忘れていた。そして今ウルヴィは自分のことを"ランセル"と言った】
(やってしまった)
【鏡に映る女の顔は、綺麗とは言えない程に引き攣っていた】
- 171ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/24(土) 14:32:47
- 172ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/24(土) 14:49:46
【ルフスとは企業の枠外で動く為の姿であり、ランセルでは不可能と言えることを可能とする姿であり、ストレス発散用の姿である】
【秘匿性の為、ランセル=ルフスと認識できる人間はエウロラやNA社の一部に限られていた】
【限られて"いた"のだ】
(バレてしまった…よりにもよってウルヴィさんに…)
【ウルヴィは独立傭兵である以上何処にも組みしていない。ランセル=ルフスという情報は何処へバラされてもおかしくない】
【この姿では、陸上戦艦戦といいそこそこな場面で活動してきた。ルフスの情報を探っている人物もいないとは限らない】
【…と、合理的らしい理屈を並べるが1番の理由は】
(恥ずかしい………!!)
【風呂場の湿気もあるだろうが、体表に水滴が増える】
【どうにか打開しなくては。どうにか誤魔化さなくては】
「…………あの、"オレ実はランセルの姉なんです"と言ったら信じてくれますか?」
【これしか浮かばなかった】
- 173ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/24(土) 15:29:40
「…」
【小さく首を横に振る。それはちょっと無理があるだろう、と】
【その上でウルヴィは思案する。その提言の意図を、『傭兵』が導き出していく】
【そういう設定、或いは建前。つまりランセルではない必要があり、知られるのは都合が悪いのだろう。表立ってはNA社の手出しできない事案、ウェットワークか、個人的な私用か】
「口止め料は、足りてる」
【人間的な機微には疎く、少女のような姿から世間知らずにも見えるかもしれないウルヴィだが、伊達に傭兵のみで食い繋いできたわけではなく、そちらの話であれば敏い。また恩を仇で返す行為を是とはせず、解答は決まっていた】
【しかしそれでも────】
・・
「……消す?」
【隠滅を優先するのであれば、黙ってそれを受け入れはしない。切先のように、深紅の瞳が光を反射する】
【それはランセルではなく、唯一つの『命』を映すようで。しかし零度にも思えるほど冷たい刃の奥底では、幽かに静かな寂しさも、あるのかもしれない】
- 174ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/24(土) 15:50:12
「……できれば口外しないで貰えると助かります…」
【出した答えは、命令や依頼ではない】
【ましてや、彼女に危害を加える事でもない】
【"言わないで貰えると助かる"というだけ】
【元よりこの失態は自分の過失にある。彼女はただ知っただけであり、自分にそれを咎める権利は無い】
【身体を拭き終わった事を示すようにタオルを丸め、風呂場の戸を開く】
【紅い視線を認識にしていない訳ではない。その冷たい刃が自身へ向いた事に気付いていない訳ではない】
・・・・・
【だからこそ】
「口止め料、本当に足りてるか不安なので…今日の食事、食べたい物があれば言ってください!美味しく作れる様頑張りますので…!!」
【また苦味の湛えた笑顔で要望を尋ねる。もはや笑顔というより苦笑だが】
(こんな個人的な事情で彼女を消す?馬鹿を言うな。消してたまるか、消させてたまるか)
【そんな思いが苦味となっていた】
- 175ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/24(土) 16:08:26
「わかった」
【まるで幻だったかのように、戸を開けば重い冷え切った空気は、浴室の湯気の残滓と共に何処かへ流れていく】
「…じゃ、あ……」
【無理やり作ったような彼の『笑顔』に、息が詰まる。いつの間にか、彼と戦うことを、殺し合う事を考えていた。流石にウルヴィとて、殺意をぶつけるのが失礼なくらいは分かる。だというのに、なぜ彼は笑おうとするのか。隠しきれない苦さを誤魔化すかのように】
【けれどそれを指摘するのは、もっと良くない気がして。それでも彼が食事を作ってくれると言うのは、殺し合うのと同じくらいに楽しみで───】
「っ…肉、なら…なんでも。くわしく、ない……から」
【ランセルから目を逸らすように、ウルヴィは着替えを手に取る。彼の買ってくれた服、人らしい装飾的な衣装。それがやはり、どうしても自分には釣り合わない気がしていた】
- 176シェディ◆PPyRfvMZl625/05/24(土) 16:31:25
- 177ルフス(ランセル)◆hFOUpFQqt.25/05/24(土) 17:12:33
- 178ウルヴィ◆xZJxX8ZGsA25/05/24(土) 18:09:23
【脱衣所を出る彼女を見送って、鏡と向き合う】
【飾りすぎない、しかし幼くも女性であることを示すような黒の下着。白い肌を際立たせ、そこに伸ばしっぱなしの鈍い灰色の髪が纏わりつく】
『ウルヴィさんって綺麗ですよね』
【彼の言葉を思い出し、水銀のような髪を掬う。少し前、洗うでもなく互いの髪に触れたことを想起すると、胸の内から血が通うような温かさを感じる】
【ランセルがウルヴィを消そうとしたなら、自分はきっと殺し合えてしまう。あまつさえそれに、甘美な血の悦びすら覚えるだろう】
【鏡に映るのは、血液のように濁った暗い瞳。それはウルヴィの本質を暴くようで】
・・
「違う」
【けれども否定する。もっと一緒に居たい。もっとご飯を作って欲しい。もっと『私』に触れてほしい。子供じみたわがままだが、それもまたウルヴィの本心だ】
【着替えを終えれば、鏡に映るのはアンティークな装いに身を包んだ人だ。たとえそれが真似事だとしても、本質を隠す包み紙だとしても、そうありたいとウルヴィは望む】
【そうして少し遅れて、リビングへと歩き出す。彼と共にする食卓を、彼の作る料理を心待ちにしながら、戸を開けるだろう】
- 179マニッシュ◆fDey8JUvvk25/05/24(土) 19:35:30
- 180ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/24(土) 21:39:46
【あの時から変わらないスーツ姿の青年は、教会の窓にて、陽光が鮮やかに描く神を見ていた】
……メビ、何か新しい情報は?
『残念ながら、私の方からは何も……』
……そうか
【メビは嘘をついていると、僅かな心の揺らぎで察した】
【だが、金龍はその選択を信じた。長年を共に笑い合えるように過ごした彼女の選択を、如何なる時にも傍で支えてきてくれた彼女の選択を】
……だったら、こんな話をするのは初めてなはずだ。どうせなら代わりに聞かせてくれ
メビは、神を信じるか?
【背もたれに腕を掛けて座る彼は、隣で方正に座る従者に問うた】
『私の中には、そう言った概念は有りません。ですので、金龍様が見聞すれば、私はそれに連なるつもりです』
……つまり、信じていないって事ね
【彼らが座る長椅子には、影が差し込んでいた】 - 181グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/24(土) 22:00:49
- 182ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/24(土) 22:18:15
- 183グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/24(土) 22:28:13
- 184龍影◆9BZ6kXGcio25/05/24(土) 22:32:57
- 185ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/24(土) 22:38:03
『スポドリ味でええ?』
「天然水でも良かったよ……凄い助かるっ」
そのまま、ケイはぐびぃっとドリンクを飲んで、水分を流し込んでいく。
思わず手元に飲み物があれば、一緒に飲みたくなるような飲みっぷりだ。
「はあ……美味しい」
「温泉旅行については、列車を使って移動するわ。NA社の旅館だから、食べ物は絶品よ!」
はぁ、と息をつくケイと。チトセが場をつなぐように移動方法を説明する。
「皆が良ければ、今日中に……というのが予定だけど。どうかしら?」
と説明しきった。
『えっ?!もう!?』
「ん?」
あれ?とケイが思う頃にはもう遅く。
『そしてケイ!スイ以外にも持ってくのはあるでしょ!チトセさん!ケイの退院届出お願いします!私の家に置いてあるあなたの着替え取りに戻るよ!』
「嘘でしょ!?!」
「OKよ~~」
「ちょっとぉ!?!」
とてつもないテンポで、温泉旅行への道筋が開かれていた。
- 186ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/24(土) 22:39:15
- 187グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/24(土) 22:43:44
- 188東雲 台◆5Q4kt6Q.kc25/05/24(土) 22:46:17
- 189ゴルドラ◆ncKvmqq0Bs25/05/24(土) 22:51:25
- 190ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/24(土) 23:01:43
『─────────とは言え、求められた場合は基礎理論も渡す心積もりですわ。祖国復興の為にも復興支援は何としても得たいので』
「分かった。それでは、短いかもしれないアドバンテージを活かす機会は大事だね」
朗らかにカンナは笑い、旧愛卿の告白を受け入れた。手段を選ぶ強さも、選ばない強さを知っている。
だからこそ人は、『選択を行う責任』があるとカンナは思い……奇しくもそれは、“撃墜王”と似た哲学であることを、彼女は知らない。
『……流石に浅知恵でしたわね。ミュールと紅陽が敵対に近い関係性であると誤認させる為の工作の一環でしたが、ノウハウが足りませんでした────コチラは紅陽機関の代表取締役、紅坂女史の連絡先となっておりますわ。お好きに使ってくださいませ』
「浅知恵だろうと知恵には変わりないさ。もしかすると、ここで議論していたおかげで……ということもあり得るからね」
カンナは笑った。議論とはつまり交渉であり、前提の共有なのだ。お互いが勝利者になれるラインを探る……それができるのが人類の強みであるという持論だ。
「紅坂女史の連絡先はありがたい。ユズハに話し合いの調整をさせておくよ」
ウインクをしてくれた旧愛卿の言葉と姿勢からは、人自連には良き仲間……あるいは支援者であって欲しい……という願いが伺えた。であれば、彼女らの願いを叶えることも強さの証明になると、カンナは頷く。
『アズマ工業との会談の場では、今の名義は恐らく使えないでしょう──────そうですわね。クロノス側の諜報員にバレないよう、秘密裏にでも』
一拍が置かれて。
・・・・ ・・・・・
「『アリシア・グランセン』の名前を通して下さると嬉しいですわ」
「――――承りました。グランセン王国王女、アリシア・グランセン王女殿下。御身のお手を煩わせることのなく、そして誰にも悟らせることなく場を作ることを誓います」
カンナは一度席を立ち、そのままアリシア・グランセンへ跪き礼を取る。企業が国家に、元国家に礼を尽くす姿はともすれば異様。
だが、礼を尽くさねば逆に非礼となるなる場面などいくらでもある。カンナにとって、そして逆巻重工にとって。
グランセン王国の名を継ぐ彼女に礼を尽くさない理由など、存在せず……非礼を行うものには、彼女ら自身が刃を振るいかねない、抜き身の敬意が現れていた。
- 191二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 23:03:42
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- 192シェディ◆PPyRfvMZl625/05/24(土) 23:05:41
- 193グリゴリー◆5Q4kt6Q.kc25/05/24(土) 23:07:41
『無論だ。』
若く敬虔な信仰心と、老成し
研ぎ澄まされた戦闘経験が眼に光る
だが、その目付きは意外な程優しい
『私は神父...名を与え、名を誦んずる者が
自失で傷付いた人間の名を忘れるものか』
中には目覚めぬ眠りについた物もいる
故に、わざわざ口には基本出さないが...と
至極当然といった様子で問いに答える
- 194旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/24(土) 23:22:38
一瞬、沈黙が降りて。しかし旧愛卿は苦笑した。
「ふふっ、そんなに畏まらずとも良いのですよ?私も物心付いた時には既に亡国の王女でしたもの、別に名前に誇りなども持っておりませんわ」
────────何せ、父親の顔も知らないのだ。
幼少期を宮廷で過ごし、受け継ぐ筈の王国も自らの目で見て回る前にクロノスの手に渡り、彼女の世界と人生の中で“本物の”グランセン王国が占める割合は酷く小さい。
・・・・・・・・・・・・・・
グランセン解放戦線で、唯一クロノスを憎悪しない人間。
其れが当の総帥であるというのは何とも皮肉なものである。
苦笑しながら席を立ち上がった旧愛卿は、立ち去る前にもう一つの『プレゼント』を手に逆巻カンナの前に立った。
・・・・・・・・・
「『自動温泉卵殻剥き機』です。スキャンした温泉卵の状態に合わせて最適な圧力を常に維持しながら全自動で殻を剥きますので、温泉卵を作った時などに使えますかと」
其れは政治とは一切関係なく私的な贈り物であったが、同時に明らかに技術の無駄遣いであった。
何してるんだろうね、コイツ。
- 195ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/24(土) 23:28:30
- 196逆巻カンナ◆ECPjTIh3Iw25/05/24(土) 23:40:43
『ふふっ、そんなに畏まらずとも良いのですよ?私も物心付いた時には既に亡国の王女でしたもの、別に名前に誇りなども持っておりませんわ』
「おや、では態度を改めようか……アリシア、いや旧愛卿と呼ぶべきか?いやはや……名前と肩書に誇りを持てない世界は終わっていると私は思うわけだが、ふふふ」
――――同い年の友人ができたような気分でとても爽快だよと、カンナは笑った。
「どうか君が君らしく、誇りを持てるような世界を共に作れるようにしなくてはね」
と、静かに誓うカンナの前に、立ち去る前の旧愛卿から差し出されるは――――小さく、しかし精巧なナニカで。
・・・・・・・・・
「『自動温泉卵殻剥き機』です。スキャンした温泉卵の状態に合わせて最適な圧力を常に維持しながら全自動で殻を剥きますので、温泉卵を作った時などに使えますかと」
「――――はは、あっははっははは!!!なんだ!!無用な心配だったか!!あははは!!」
笑って笑って……笑った。
ああ、目の前の少女はきっと大丈夫だと。カンナはなんとなく分かった。
彼女が誇るものは、もう既にあるのだ。
「ふふふ……!ありがとう。大切に使わせてもらうよ」
技術を愛するものだからこそ。技術を愛するものに、敬意を。
あるいは……自分と同じか少し下の少女に、どこまでも幸あらんことを、と。
- 197旧愛卿◆OXAm1h6odk25/05/25(日) 00:06:16
「えぇ。此方こそ、今回この会談の場を設けて頂きありがとうございましたわ。貴女方の理想が実る事を、私からも祈らせて頂きます」
にっこりと微笑んで、今度こそ旧愛卿は立ち去ろうとして────────美しい声で言葉を紡いだを
「では、さようなら。賢人会議の皆様にも、どうか宜しくお願いしますね?」
人類にとって、インベイドの駆逐は必須条件だ。
少なくとも、インベイドを惑星から駆逐するまでは全力で人類自由連盟を支援すると語って。旧愛卿は逆巻重工を立ち去った。
───────紅陽機関とアポロ・インダストリーが新型のカスタムパーツを発表する為の記者会見の日時を公開したのは、その数日後の事である。
- 198ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/25(日) 00:13:10
「ちょ、台、さん……!? ああ……」
行ってしまった、とベッドの上で伸ばした手が空を切った。
ぷしゅぅという扉が閉まる音だけが響く。残るはケイと龍影、そして主治医のチトセのみ。
「えっと……俺、旅行とか初めてだからさ……」
恐る恐る、ケイは龍影に視線を向けて。
「色々、見繕ってくれないかな?」
いろいろな意味で、覚悟を決めた。主に着せ替え人形だったりになる覚悟を。
……ケイの羞恥を犠牲に、温泉旅行は始まりを告げることになるだろう。
- 199龍影◆9BZ6kXGcio25/05/25(日) 00:13:23
- 200ケイ◆ECPjTIh3Iw25/05/25(日) 00:19:07
「?????」
いつの間にやら、自分は抱きかかえられて。いつの間にやらバイクに乗せられていた。
ほぼ反射で投げてきたヘルメットを被って、とりあえずの覚悟を決める。
「た、楽しみだね!!温泉も、旅館も!!」
自分を他所に展開される事態に、ケイはしかし。楽しみであるという正方向の期待を抱いていた。
大好きな人と、そして大好きな人の親友と一緒に行ける温泉……嬉しくないわけが、ないのだ。
なぜならケイ・サヤギリの……18年にわたる人生初めての、旅行なのだから。