ウマ娘名作文学『テンペスト』

  • 1読み手25/05/19(月) 20:01:43

    四方八方に降り注ぐ雷の激しい音が轟く。

    ナポリの王 アロンゾーとミラノの大公 アントーニオら一行を乗せた船団は突然の嵐に襲われた。

    波はまるで生き物のように船に打ちつけ、水夫たちを次々と海の中へと飲み込んでいく。


    アントーニオ dice1d130=8 (8)

    アロンゾー dice1d130=73 (73)

  • 2二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:02:37

    嘘だろ読み手さん!くっそ久しぶり...

  • 3二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:02:55

    まさか貴方はあの?
    お久しぶりです!

  • 4二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:03:41

    これまた対照的な2人だな

  • 5読み手25/05/19(月) 20:08:04

    「オイオイオイ!王様ぁ!やばいぜコレ!船が沈んじまう!」

    「そうですか〜」

    「いや!のんびりしてる場合じゃねぇって!ほら!さっさと水をかき出すんだよ!!!」

    「は〜い」


    アロンゾーの息子 ファーディナンド王子は慌てふためく父の仲間と、慌てなさすぎる父を横目に、必死になって船にしがみついていた。

    しかし普段から贅沢な暮らしに慣れていた王子は健闘虚しく海の中へと引き摺り込まれていった。


    ファーディナンド dice1d130=1 (1)

  • 6読み手25/05/19(月) 20:10:48

    「はぁっ…!はぁっ…!お父ちゃん…皆さん…!」

    ファーディナンドが海面に上がってこれた頃には、目の前で自分たちの船が海中へ沈んでいくところであった。
    尚も吹き荒れる嵐のせいで潜って助けに行くことも出来ず、ファーディナンドはただひたすらに助かるために一心不乱に泳ぐのだった。

  • 7読み手25/05/19(月) 20:15:06

    「はぁ…はぁ…!あっ…島です…!」

    しばらく泳いだ先でファーディナンドはとある島を見つけた。
    誰かが居るかもしれない、助けてくれるかもしれないという思いで必死に島の方に向かって泳ぐ。

    「うえっ…?なんか…眠たくなって……きちゃいました………。」

    島に向かって泳いでる内に何故か急激な眠気に襲われたファーディナンドは、睡魔に勝てずにそのまま眠ってしまった。
    仰向けになったファーディナンドは島に向かってプカプカと流されていくのであった。

  • 8二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:17:22

    スペが誠実なファーディナンドか...結構あってる

  • 9読み手25/05/19(月) 20:17:42

    沈みゆくアロンゾーたちの船の様子を眺めていた2つの影があった。

    2つの影は、先ほどファーディナンドが見つけた島から、嵐の外側からその様子を眺めていたのだ。

    1人はこの島の主人 プロスペロー。

    そしてもう1人はプロスペローの娘であるミランダであった。


    プロスペロー dice1d130=126 (126)

    ミランダ dice1d130=70 (70)

  • 10二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:19:18

    関西弁母ちゃん……!

  • 11二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:20:42

    ファーディナンド
    なんか行方不明になってその後死んだのが判明しそうな名前なんだが

  • 12二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:22:02

    >>11

    まぁ向こうの名前だからね

  • 13二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:22:12

    テンペストなのにここまでザリオの影がスペくらい

  • 14読み手25/05/19(月) 20:24:30

    「あわわわわ…お、お父さん!あれは大丈夫なんでしょうか…!?」
    「そない気にせんでええよミランダ。せいぜい船が沈んだだけやないの。」
    「船が沈んでるのが問題なんですよ!?」
    「ミランダはここで生まれたからあんま知らんのやろけど、あれにはうちらと同じような人間が居てはる。でも心配せんでええ。あの人らは全員無事やで。」
    「ええええ?すっごく沈んでましたけれど…!?」
    「うちの魔法でチョチョイのチョイや。ミランダも知っとるやろ?うちの魔法。」

    プロスペローは凄腕の魔法使いでした。
    娘のミランダは魔法が使えませんでしたが、プロスペローの魔法を駆使して今までこの島で生活してきたのです。

  • 15二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:26:15

    スペとチヨ???
    危険な配合ですよ

  • 16二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:27:54

    >>15

    ブライトもいるし今日お誕生日の方の影がチラチラしてる

  • 17読み手25/05/19(月) 20:29:21

    「そうですね…お父さんの魔法があれば大丈夫ですね!」

    「そやろ?分かったら部屋戻り?嵐がこっちに来るやもしれんから。窓もキツう閉めとくんやで?」

    「はいっ!分かりました!」


    ミランダはプロスペローの言いつけ通り、自分の部屋に戻っていきました。


    「ふぅ…。もう出てきてええで。エアリアル。」


    ミランダが戻るのを確認したプロスペローがそう呼ぶと、風の精霊 エアリアルが風と共に現れました。


    エアリアル dice1d130=114 (114)

  • 18読み手25/05/19(月) 20:36:33

    「ご主人!どうだったっすか?」
    「めっちゃよかったわ〜!乗組員には怪我一つさせてへんやろね?」
    「言いつけ通りっすよ!船だけ沈めて、乗ってる人は全員ここまで運んでくる!あたしにかかれば楽勝っす!」

    エアリアルはプロスペローの命令に忠実で、今回の嵐を起こしたのもエアリアルでした。

    「でも何であの船なんすか?船ぐらいだったらしょっちゅう通るのに…。」
    「あの船やないとアカンのや…。あの船やないとな。…エアリアル、次の用意しましょか。」
    「あー…歌を歌うやつっすよね。あたし歌はそんなに自信無くて…。」
    「ゴタゴタ言わんでええの。はよやるで。」
    「はーい。…なんか主従関係なのはそうなんっすけど、色々とモヤモヤするっす…。」

    エアリアルはプロスペローに従っていますが、こき使われることが不服なようで、頬を膨らませながら次の準備に取り掛かりました。

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:42:39

    オルフェの子供にこき使われてるバリちゃん草

  • 20読み手25/05/19(月) 20:42:41

    ファーディナンドが目を覚ますと、そこはどこかの砂浜でした。
    不思議と溺れた様子も、何なら水を飲んだような気持ちもしていません。

    「生きてる…。ここは…さっきのあの島でしょうか…?」
    「♪〜」

    ファーディナンドがゆっくりと立ち上がると、どこからともなく綺麗な歌声が聴こえてきました。

    「素敵な歌…。誰か居るんでしょうか…?」

    ファーディナンドは草木をかき分け、奥へと進みます。

  • 21読み手25/05/19(月) 20:48:00

    しばらく進むと歌声が止み、代わりにハミングのような声が聞こえてきました。

    「チ〜ヨチヨチヨチヨノオ〜♪チ〜ヨチヨチヨチヨノオ〜♪」

    ファーディナンドがその声の方に向かうと、岩屋の側で洗濯物を干しているミランダが居ました。
    絶望的な状況で出会った彼女はファーディナンドの目にはまるで女神のように見え、ファーディナンドは脇目も振らずにミランダの近くに寄りました。

    「女神様…!どうか助けて下さい……!」
    「うえええ!?め、女神ですか!?」

  • 22二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:48:53

    危険な配合です!

  • 23二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:51:59

    草この歌かよ

  • 24読み手25/05/19(月) 20:56:02

    「女神様じゃないんですか…?こんなにも綺麗なのに…。」

    「え、えへへ…そう言われると照れちゃいますよ…?そういうあなたもとってもカッコいいです!」


    ミランダはこの島で育ち、まともな人間を父のプロスペロー以外に知らないので、生まれて初めての若い男との遭遇にトキメキが止まりませんでした。


    「お名前…聞いてもいいですか?」

    「えっと…ミランダって言います。」

    「ミランダさん…!私、ファーディナンドって言います!」

    「うおお…長い名前…!覚えれるかなぁ…あっ、6文字以上の名前初めてなので、すみません…!」


    2人が喋っていると、奥の方から四本脚に人間の身体が付いた怪物がファーディナンドの方を見ながらのそのそと歩いて現れました。


    「ミ、ミランダさん…!この怪物は…!?」

    「この人はキャリバーンです。私とお父さんの身の回りのお世話をしてくれてるんですよ。」


    キャリバーン dice1d130=59 (59)

  • 25読み手25/05/19(月) 21:01:49

    「………アイツ、呼んでたから。」
    「あ、そうなんですね。今行きます。」
    「ん…。」

    キャリバーンはそれだけ言うと、ファーディナンドの方をまたチラッと見て奥へと帰って行きました。

    「…寡黙な方なんですね。」
    「あんまり心開いてもらえてないみたいで…。無愛想でごめんなさい。あっ!私、お父さんに呼ばれてるのでここで…!また会いましょうね!」

    ミランダはそう言うと、急いで奥の方へと消えていった。

    「ミランダさん…か…。」

    ファーディナンドはミランダの笑顔を思い出して元気を貰いながら、船に乗っていたみんなを探す事にしました。

  • 26読み手25/05/19(月) 21:05:17

    一方その頃、船から投げ出されていたアロンゾーの執事 ステファノーと、船の道化師 トリンキュローは2人とも同じ砂浜に打ち上げられていました。


    ステファノー dice1d130=55 (55)

    トリンキュロー dice1d130=106 (106)

  • 27二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 21:06:44

    帰ってきた…読み手さんが帰ってきたぞ…!

  • 28二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 21:07:51

    この世界線でも船橋愛を叫んでたら道化師も納得ですね…

  • 29読み手25/05/19(月) 21:14:00

    「私たち、助かったようですね…。」
    「アハッ☆そうみたいだね!間一髪でマーベラス☆★☆」
    「…どうしてアロンゾー様はあのテンションでこんなノリの執事を雇っているのでしょう…。」
    「なんか言ったー?」
    「いえ、何でも…。とにかく、皆さんを探しましょう!」
    「ピエロなのに真面目さんだね!とってもマーベラスだと思うよ☆」
    「今この状況で真面目じゃなかったらどうするんですか…!全く…ここが仁右衛門島ならすぐに帰れると思うんですけど…。」
    「うーん★やっぱりピエロだね!マーベラス☆★☆」

  • 30二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 21:14:23

    騒ぎそうな船だな

  • 31読み手25/05/19(月) 21:23:35

    ステファノーとトリンキュローがしばらく散策していると、薄暗い洞窟を見つけました。
    その奥には脚を折りたたんで何かを必死に描いているキャリバーンの姿がありました。

    「……何?」

    キャリバーンにギロッと睨まれる2人。
    キャリバーンが自分たちでも分かる言葉を発しているので、どうにか対話を図ろうとします。

    「あ、えっと…バード!バード!」
    「はぁ…?」
    「マーベラス☆」
    「………そ。あんまり邪魔しないでね。何かあったら言うから。」
    「ありがとう!」
    「……通じたんですか…?」
    「マーベラスだからね★」
    「私にはサッパリ…。」

    トリンキュローが困惑していると、キャリバーンが2人に薄い黒い紙を渡してきました。

    「あのさ、ここのトーン貼り出来る?」
    「任せて!」
    「………私には、サッパリ…。」

  • 32読み手25/05/19(月) 21:32:17

    2人がキャリバーンの手伝いをさせられている中で、ステファノーがキャリバーンに話しかけました。

    「キャリバーンはどうしてここにいるのー?」
    「…名前聞きましたっけ…?」
    「プロスペローってヤツに従ってるの。ずっと前はこの島はアタシのものだったんだけど、アイツに負けてからは身の回りのお世話とかしてる。まっ、何も無い時はこうして趣味を楽しんだりするけど…。あ、ここベタね。」
    「やっつけないのー?」
    「出来るんならしてるよ。でも相手は大魔法使い。次に歯向かったら何されるか分かんないし。今はこうしてるのが幸せ。消しゴムいい?」
    「それがキャリバーンのマーベラスなら仕方ないね☆」

    2人と1匹は他愛も無い話をしながら原稿を進めるのでした。

  • 33読み手25/05/19(月) 21:36:05

    その頃、アロンゾーの弟 セバスチャンは1人で島の中をトボトボと歩いていました。


    セバスチャン dice1d130=119 (119)

  • 34読み手25/05/19(月) 21:53:47

    「兄上…皆さん…ご無事だといいのだけど…。でも…こういうシチュエーション…。未知の怪物とか、原住民が襲ってくるのが定石よね…。フフッ…。おっと、また脳内シミュレーションが…。いけないわこんな状況なのに。真面目になさいセバスチャン。我はかのアロンゾー王の弟なる者ぞ。こう言う時にこそ冷静沈着…。」
    「…わぁっ!びっくりした!」
    「何っ!?敵襲か!?」

    セバスチャンがどこからともなく剣を取り出し、声の方に切先を向ける。

    「ウワーッ!セバスチャン!俺だって俺ー!」
    「す、すみませんアントーニオ様…!私としたことがつい…。」
    「ったく…兄弟揃って変だなぁオイ…。」
    「私は兎も角、兄上の悪口は聞き捨てなりませんよ!」
    「へいへい…ごめんって…。」

    たまたまアントーニオと合流したセバスチャンは2人でアロンゾーや他の乗組員を探す事になりました。

  • 35二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 22:04:54

    騙されやすいそうな弟だな

  • 36読み手25/05/19(月) 22:21:07

    「ところでよぉセバスチャン。」
    「何でしょうアントーニオ様。」
    「お前の兄貴さ、なんかホワホワしてて何考えてるか分かんねぇだろ?」
    「何を言いますかホワホワとは!兄上の超絶思考時間を!ホワホワと!?」
    「うぅ…スゲェ忠義…。どんな解釈でそうなるんだよ…。」
    「私と兄上は固い絆で結ばれているのです!例えば、私が剣技を編み出す度に兄上は私を褒めて下さるのですよ!ムフーッ!」
    「そりゃ何より…。」

    アントーニオは前からアロンゾーのゆったりとした性格をあまり気に入っておらず、弟のセバスチャンに王位を継いで欲しいと思っておりました。
    しかしセバスチャンの兄に対する忠義が厚すぎる為に、その企みも難しいようです。

  • 37読み手25/05/19(月) 22:43:19

    「アントーニオ…相変わらずけったいなこと考えてはるなぁ…。」

    その2人の様子を陰から見ていたのはプロスペローでした。
    実はプロスペローはアントーニオの兄であり、ミラノの国王でしたが、数年前にアントーニオの策略でこの島にミランダと共に流された過去があったのです。
    プロスペローがエアリアルにあの船を狙わせたのもこのアントーニオが乗っていたからで、弟に復讐をする為だったのです。

  • 38読み手25/05/19(月) 22:59:39

    「セバスチャンさんには悪いけど、アントーニオを懲らしめたる為にはしゃーない。ちょいとだけ怖がってもらうで。」

    プロスペローはエアリアルを呼び寄せると、エアリアルはおどろおどろしい歌声を辺りに響かせました。

    「な、何だ!?」
    「やはり敵襲…!これですよこういうの!」
    「何燃えてんだよ!」

    セバスチャンが剣を構えるのを見て一旦躊躇するものの、変わらず怖い歌を聴かせ続けるエアリアル。
    そして2人の前に恐ろしい怪物の姿となって現れたのでした。

    「ばあっ!…っす!」
    「ウワーーーッ!」
    「ぜ、絶技!敵前逃亡ーっ!」

    2人は冷や汗をかいて一目散に逃げていきました。

    「フフッ、ええ気味やね。」
    「やっぱりセバスチャンさん巻き込んだのは悪かったっすね。」
    「後で謝っとこか。」

  • 39二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 23:28:16

    なんか戸崎さんいなかった??
    そのうちベリーベリーとか言わない?
    大丈夫?

  • 40二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 23:39:35

    久々に復活しても規制に悩まされてる感じ…?

  • 41二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:17:18

    保守

  • 42二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 05:49:47

    保守

  • 43読み手25/05/20(火) 07:22:00

    さてアロンゾーはと言うと、船に乗っていた老執事 ゴンザーローと共に浜に打ち上がっておりました。

    その様子を見ていたプロスペローは驚きます。


    「あら、ゴンザーローさんも居てはったの。なんや申し訳ないなぁ。」

    「ご主人、あのお爺さんがどうかしたんすか?」

    「ああエアリアル。あの人はアントーニオの策略で島流しにあった時、何も無いうちの船に食糧や水、そしてうちの大切な本たちをコッソリと載せてくれた人なんや。いつかお礼はしたいと思うとったけど、あの船に乗ってはったんやね。」


    ゴンザーロー dice1d130=119 (119)

  • 44読み手25/05/20(火) 07:22:50

    デュランダルが被ったので振り直しです。

    あとまたホスト規制でした…。


    ゴンザーロー dice1d130=102 (102)

  • 45二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 07:24:18

    ウワーッ!
    ある意味本家の主役!

  • 46二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 07:26:49

    ホスト規制はしゃーない・・・

  • 47読み手25/05/20(火) 07:32:55

    「アロンゾー様、大丈夫ですか?」
    「はい〜大丈夫ですわ〜。」
    「相変わらずで何よりです。それにしても不思議な体験です…。先ほどまで私たちは嵐に襲われ、海の中に落ちたと言うのに私たちの身体は海水で濡れるどころかクリーニングをかけたようにピカピカになっている。」
    「不思議ですわね〜。」
    「一刻も早く、皆さんを見つけましょう。私は沈みゆく船から見たのです。嵐の中、力強くどこかへ泳いでいくご子息ファーディナンド様の勇姿を!」
    「元気でいるといいですわね〜。」
    「思えばあの船出の日も嵐だったことを思い返します。あぁこんな時に冷静沈着で博識のプロスペロー様がご健在であればなんと心強かったでしょう。」

  • 48読み手25/05/20(火) 07:39:04

    「やっぱりゴンザーローさんは見る目があるなぁ。アントーニオとは大違いやわ。」
    「ご主人、喜びすぎです…。そういえば、この2人には何をするんっすか?」
    「悪い事以外なら何でもええよ。そうやなぁ、風で導いてあげるんはどうやろか。うちらの岩屋に案内したげて。」
    「わかったっす!」

    エアリアルはアロンゾーとゴンザーローの背中を押すように風をフゥと吹きかけた。

    「風が…。アロンゾー様、行きましょう。風が私たちを呼んでいるような気がするのです。」
    「かしこまりましたわ〜。」

    2人は風に導かれ、プロスペローの岩屋へと向かうのでした。

  • 49読み手25/05/20(火) 07:58:27

    アロンゾーとゴンザーローが風に導かれている途中、大急ぎで走ってくる2つの影が草むらの奥からやってきました。

    「何やつ!」
    「いや、そちらこそ何やつ!」

    その2つの影は先ほどエアリアルに驚かされたセバスチャンとアントーニオでした。

    「あ!兄上!よくぞご無事で…!セバスチャンはここにおります!」
    「会いたかったですわ〜。」
    「こんな時にもそのテンションかよ…。」
    「アントーニオ様、ご無事なようで何よりです。」
    「ゴンザーローもな!」

    4人が再会に喜んでいるのを見て、側で様子を見ていたエアリアルは慌てました。
    プロスペローから丁重に扱うように言われたゴンザーロー(とアロンゾー)に、怖がらせるよう言われていたアントーニオ(とセバスチャン)が一緒になってしまったからです。
    このままではゴンザーローを怖がらせてしまうし、かと言ってこのまま行けば何事も無くアントーニオがプロスペローの岩屋へ着いてしまう。
    どうしようかと考えた末に、エアリアルは眠りの歌を歌ってゴンザーローとアロンゾーだけを眠らせました。

  • 50読み手25/05/20(火) 08:07:08

    「ほわ〜。」
    「き、急に眠気が…。ムニャムニャ…。」

    2人はその場で眠りこけると、突然強風が吹き荒れて眠っている2人だけをフワフワと運んでいってしまいました。

    「ややっ!さっきまで兄上と再会を喜んでいたはずなのですが…。」
    「やっぱりだ…。いいやセバスチャン、もうアロンゾーは死んでんだよ。」
    「冗談はやめて下さいアントーニオ様。」
    「いや、アンタも見ただろ?会えたと思ったら風に乗って消えちまったアンタの兄貴を!あれはきっと幻覚だったんだ。死んだ肉親が窮地に陥った時に目の前に現れて安心する。そういうの、冒険譚だと定番だろ?」
    「そんな…。兄上が…まさか…。」
    「もう他のみんなも難しそうだ。2人だけでもこの島を脱出しよう。浜に行って木を集めて、船を作ろうぜ。」
    「…決めました。このセバスチャン、アントーニオ様の剣となりましょう。」
    「何かよくわかんねぇけど、ラッキーな展開だぜ!」

    喜ぶアントーニオを尻目に、ゴンザーローたちを風で運び終えたエアリアルがもう一度怪物の姿となって2人を追いかけました。

  • 51読み手25/05/20(火) 08:11:12

    今から用事があるので続きは今夜とさせていただきます。
    それと書き込めない間の保守ありがとうございました。

  • 52二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 08:33:32

    登場人物結構多いなぁ…

  • 53二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 13:47:02

    なんかお牝馬多くない?

  • 54二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 15:27:34

    面白いので他のシリーズも知りたいと思って「名作文学」で検索かけたらいろいろあるので読んでみるわ

  • 55二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 17:16:40

    保守

  • 56読み手25/05/20(火) 19:08:08

    ファーディナンドが島を彷徨っていると空を楽しそうに駆けるエアリアルを見つけました。
    偶然合流したゴンザーローたちとアントーニオたちを引き離してやったことをプロスペローに報告する為です。
    エアリアルはプロスペローに忠実ではありますが、最初からそうだった訳ではありません。
    風を吹いてキャリバーンの原稿をめちゃくちゃにするイタズラをしたエアリアルは、当時島の支配者だったキャリバーンによってしばらく木の幹の間に封印されていました。
    そしてそれを助けてあげたのがプロスペローだったのです。
    プロスペローはエアリアルが言うことを聞けば聞くほどエアリアルの封印を解いてやり、いよいよ完全復活間近というところまで来たのです。
    完全に復活出来ればこんな島からはすぐに離れ、リンゴの美味しいところに行ってのんびり暮らすのが夢でした。
    その夢がもうすぐ叶うというのですから、エアリアルもノリノリで成果を報告しに行くのです。

    「この島には女神様のような女性もいれば、恐ろしいバケモノもいるんですね…。」

    エアリアルが飛んで行った方向に向かうファーディナンドは先ほどとは別の岩屋を見つけ、意を決して中に入りました。

  • 57読み手25/05/20(火) 19:54:01

    「ここ、暗いですね…。」
    「あらお兄ちゃん。灯り要りはる?」
    「あ、ありがとうございますご親切に…って、わあっ!?」

    ファーディナンドが灯りの方を見ると、そこにはプロスペローがニヤニヤしながら立っていました。

    「あんた、ファーディナンドさんやっけ。アロンゾーさんの息子の。」
    「お、お父ちゃんを知ってるんですか!?」
    「…あんた王子やのに父親のことそんな呼び方しとるん?まぁ、ええわ。知っとるも何もさっき会うたんやもん。」
    「会ったんですね!ということは生きてる…!良かった…!」
    「でも、侵入は侵入。あんたはしばらくここに居てもらいます。なんやキャリバーンの姿が全然見えんから、人手がちょうど欲しかったところなんよ。」
    「困りごとがあるならお手伝いはしますけど…終わったらお父ちゃんのところに案内して下さいね!」
    「あら、条件付けはるん?王子やのに分かってはるなぁ。ほんなら、あそこの薪を綺麗に割って一カ所に固めといてもらえる?」
    「わ、分かりました…!」

    ファーディナンドはプロスペローの言いつけ通りに乱雑に積み重ねられた太い薪を割り、小さくして綺麗に並べ始めました。

  • 58読み手25/05/20(火) 20:30:13

    ファーディナンドがしばらく作業を続けていると、物陰からミランダがファーディナンドのことをまじまじと見ているのに気付きました。

    「あっ!ミランダさん!」
    「こんにちはファーディナンドさん。また会えましたね。えっと…名前、本当にこれで良かったですっけ?ちょっと自信無いや…。」
    「大丈夫です!合ってます!あと、嬉しいです!お名前覚えていただけて。」
    「作業、辛くないかなぁ…と思いまして…しばらく眺めてました。大丈夫ですか?」
    「王宮住みで鈍ってますけど、男に生まれたからにはこれしき何てことはありませんよ…!」

    ファーディナンドは太い薪を2つ抱えてみせたものの、額にはじんわりと脂汗が噴き出ていた。

    「あんまり無理はなさらず…!雨垂れ蹄鉄を穿つとも言いますので、コツコツとお父さんからの試練、頑張っていきましょう!」
    「あの人はミランダさんのお父ちゃんなんですね。」
    「ええ、そうなんです。私が生まれてからずーっとお父さんと2人きりで生活してきました。ですので、お父さん以外の男性を見るのもファーディナンドさんが初めてで…。ちょっと、どういう対応をすればいいのか、目を見て話した方がいいのかとか、まだ掴めてなくて…。」

    ミランダが恥ずかしそうにそう言うと、ファーディナンドはミランダの顔を覗き込んで言います。

    「私、ミランダさんともっとお話ししたいです!ミランダさんの綺麗なお顔を見ながら!」
    「お、男の人ってみんなこうなんでしょうか…!?ぴゃー……。」

    ミランダは、より一層顔を赤くしてしまいました。

  • 59二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 20:33:29

    >>54

    ウマ娘昔ばなしでも色々あるぞー

  • 60読み手25/05/20(火) 20:42:13

    ミランダとファーディナンドはしばらくの間、作業も忘れて2人で話し込んでいました。

    ミランダはこの島のことを話しました。
    父プロスペローは大魔法使いであること、風の精霊エアリアルはリンゴが好きなこと、四本脚の怪物キャリバーンは絵を描くのが好きなこと…。

    ファーディナンドは王宮の話をしました。
    父アロンゾーはのんびり屋さんなこと、叔父であるセバスチャンは冒険小説が好きなこと、執事のステファノーはマーベラスなこと…。

    2人はお互いの話をする度に、本当に幸せな気持ちになりました。もっとこの時間が続けば良いのにとも思いました。
    ファーディナンドが口を開きます。

    「ミランダさん!あの…私の、奥さんになって下さい!」
    「あのー…奥さんって何ですか?」
    「そ、そこからですか……。えっと…あなたと結婚したいってことです…。あ、結婚は分かります…?」

    ミランダの顔が真っ赤になりました。

    「あ、はい。こんな私で良ければ……。」
    「私はミランダさんを奥さんにして、国に帰りたいんです。私は王子なので、ミランダさんは王妃様ということになりますね。」
    「王妃様…なんだか良い響きですね!なんだかこう…麗しい感じで…!あっ、でも島から出るにはお父さんに許可を得ないと…。」
    「2人で行きましょう。作業をほったらかしにしちゃったのも謝らないとですし…。」
    「そ、そうですね…!」

    2人は手を取り合って、プロスペローの元へと向かいました。

  • 61二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 20:44:06

    危険な配合です!

  • 62読み手25/05/20(火) 20:55:43

    「お父さん!」
    「結婚やろ?ええよ。」
    「早っ!!!」
    「ミランダが決めたことなんやろ?それならうちが口出すこと無いやないの。…せやけど、ミランダが王妃なぁ…。ホンマは島流しが無ければもっと早うになるはずやったけど…まぁええ、昔の話や。…ファーディナンドさん?」
    「は、はい!」
    「ミランダ、幸せにしたってや?」
    「はいっ!」
    「やっぱり元気ええねぇ。作業ほっぽってお喋りしてるのはいただかれへんけど…。」
    「そ、それはすみません…。」
    「お父さん、それで…私たち、この島から出ようと思うんです。」
    「…まぁ気持ちはよう分かる。その時はうちもこの島を出るわ。でもな、うちにはまだやらなあかん事があるんよ。それまでもうちょっとばかし待っといてくれへん?」
    「やらなきゃいけないことって…?」
    「うーん…砕いて言えば復讐?」
    「復讐…!?」
    「多分悪い言葉…?」
    「ミランダには教えてへんかったね、堪忍な。ファーディナンドさん、色々娘に教えたってや。うち意地悪やから…教えてないこと結構あるんよ。際も甘いも、な?」
    「わ、分かりました!えっと…でも、復讐…残酷なことだけは…!どうかご勘弁を…!」
    「………相手次第、やなぁ…。」

    プロスペローはため息をつきながら部屋から出て行きました。

  • 63読み手25/05/20(火) 21:01:32

    「エアリアル。」
    「ここっす!呼んだっすか?」
    「キャリバーンって今どこ居てはる?」
    「自分のほら穴っす。」
    「何してはるん?」
    「知らない人たちと漫画描いてるっす。」
    「ホンマ好きやなぁ…。知らん人らっていうのも多分あの船の人やろ。…じゃあ、うちとエアリアルだけで行くで。」
    「…どこへ?」
    「うーん…決戦?」
    「けっ…決戦…!?」

  • 64二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 21:03:31

    こんなところでも漫画書いてるのか、草

  • 65読み手25/05/20(火) 21:12:54

    「……出来た!」
    「マーベラス☆☆☆☆☆」
    「良かったです…!」
    「2人とも手伝ってくれてありがとう。これ、お礼の漫画。出来たてホヤホヤだよ。帰る時、読んで。」
    「とってもマーベラスだね!」
    「えっと…!ベリーベリーブック!」
    「それ言うんならコミックね。」
    「あっ…勉強しときます…異国語…。」
    「サボりすぎちゃった。プロスペロー怒ってないといいけど、いや…怒ってるだろうな…。」

    キャリバーンがそう言いながらほら穴を出ると、空を駆けるプロスペローとエアリアルの姿が見えました。

    「飛んでるー☆」
    「あっ…バード!バード!」
    「いや、鳥じゃないでしょどう見ても…。アタシはさっきの奴らの様子見てくるけど…2人もついてくる?」
    「あ、えっと…そろそろ他の人も探さないとですし私たちは……」
    「うんうん!ついてくよ!マーベラスだね!」
    「決まりだね。」
    「………はい。」

    キャリバーンは背中にステファノーとトリンキュローを乗せ、プロスペローとエアリアルが向かった方に走り出しました。

    「はやーーーい!☆」
    「京成本線みたいです…!」

  • 66二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 21:15:04

    上の人もブックとコミック間違えそうだけどさ

  • 67読み手25/05/20(火) 22:22:23

    アントーニオはセバスチャンと共に木を切って自作の船を作っているところでした。

    「アントーニオ様。」
    「何だ?」
    「えっと…船にマフラーは要らないと思うのですけれど。」
    「はぁっ!?何言ってんだセバスチャン!自カスタムでマフラー改造しないのは漢じゃないぜ!?」
    「それバイクの話ですわよね?」

    2人がああでもないこうでもないと言いながら船を組み立てていると、突然強風が吹き荒れて2人の身体が宙に浮きました。

    「な、なにごとだ!?」
    「た、助けてくれー!」

    そして2人の周りにたくさんのプロスペローの顔が浮かび上がりました。
    プロスペローは怒りのあまり悪魔のような顔をしており、2人を震え上がらせるには十分なほどでした。

    「あ、兄貴…!?そうか…!さっきの怪物も色々起きた不思議なことも、全部兄貴のしたことなのか…!?」
    「せやでアントーニオ…!あぁ恨めしい…!国を追い出されたこの恨み、晴らさでおくべきか…!」
    「ご主人それ言いたいだけっすよね?」
    「バレた?」
    「アントーニオ様!アントーニオ様が何をしたのかは分かりませんけれど、この状況を打破する手段を思い付きましたよ!」
    「セバスチャン!教えてくれ!」
    「謝罪です!!!心からの!!!」
    「そんなので許してくれるわけないだろ兄貴が…!」
    「分かりませんよ!でもまずは謝罪をするのが社会の常識です!社会出たことありませんけど私。」
    「うぅ…ごめんよ!兄貴!全部謝るから!許してくれー!」

    アントーニオがそう言うと嵐は止み、2人は砂浜にドサっと落ちました。
    そして空からプロスペローがふわふわと浮かびながら2人の前に立つのでした。

  • 68読み手25/05/20(火) 22:43:18

    「その言葉を待ってたでアントーニオ。」
    「本当に許してくれた…!」
    「嘘…ホントに?」
    「お前だけは驚くなよ。…兄貴、この通りだ…!」
    「…うちもちょっと懲らしめよか思ったけど、もうあの日からかなり時間も経ったし、うちらも子供じゃないんやからスッキリさせよ思てな。アントーニオを試したんや。」

    アントーニオを許したプロスペローでしたが、アントーニオは反省せずにセバスチャンを置き去りにして隙を見て逃げようとしていました。

    「セバスチャン!紹介するぜ!俺の兄貴のプロスペローだ!」
    「初めまして!私、アントーニオ様の剣をさせてもらっています。セバスチャンと申します。以後、お見知り置きを。」
    「あんた喋る剣買うたん?」
    「言葉のあやだよ兄貴…。そうだ、2人でしばらく喋ってろよ。俺は船の組み立て再開させとくからよ。」

    セバスチャンとプロスペローが2人で喋っている間に、アントーニオは船の組み立てをするフリをして草むらの中に入り逃げようとしました。

    「よっしゃ…!もっと遠くに行ってそれから…。」
    「マーーーベラーーース!!!☆☆☆」
    「ウワーーーーーーッ!!!」

    アントーニオが走った先には猛スピードで駆けつけてきたキャリバーンたちがおり、アントーニオはキャリバーンに撥ね飛ばされてしまいました。
    撥ね飛ばされたアントーニオをエアリアルが捕まえます。

    「何か轢いちゃった?まぁいいや。プロスペロー、こんなとこでどうしたの?」
    「…いや、お手柄やでキャリバーン。あの反省せぇへん愚弟にお灸据えれたと思うわ。」
    「はぁ…。」

    状況が飲み込めないまま、キャリバーンは褒められたことに対して少しだけ嬉しく思うのでした。

  • 69二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:55:37

    これは、大変なことに・・・

  • 70読み手25/05/20(火) 22:56:55

    気絶したアントーニオをエアリアルが担ぎ、皆がキャリバーンに乗って岩屋に戻ってくると、そこにはアロンゾーとゴンザーローもやって来ていました。あのまま風に乗って運ばれて来たようです。

    「兄上!…いや、これはやはり幻覚…!?でも2回目はお約束じゃありませんよ…!?」
    「ちゃんとここにおりますわよ〜。」
    「久しぶりやねゴンザーローさん。」
    「プ、プロスペロー様…!」

    ゴンザーローは膝を付いて、こうべを垂れました。

    「そ、そないかしこまらんでええよ…!」
    「いえ…この10数年、プロスペロー様のご無事を思わなかったことは無かったですから…。ご健在なのが嬉しくて…。あぁ…謎のこんにゃくのようなものまで生えて…。」
    「…それはただのアクセサリーやで?」

  • 71読み手25/05/20(火) 23:12:46

    プロスペローに呼ばれ、ミランダとファーディナンドも皆の前にやって来ました。

    「お父ちゃん…!」
    「ほわ〜…ファーディナンド…。」

    親子は再会の熱い抱擁を交わすのでした。

    「さて、皆で帰ろか。」
    「しかし…船は沈んでしまったのです…。」
    「大丈夫や。うちの魔法で…ほいっ。」

    プロスペローがそう言いながら指をなぞると、岩屋の奥の岬の海底からファーディナンドたちが乗って来た船が浮かんできたのでした。

    「すごい!奇跡です!」
    「マーベラス☆ 洗ったみたいにピッカピカだね!」
    「この船を使ってみんなで帰りましょ。アントーニオにもホンマに反省してもらうまで、キツめに色々言うとかんとあかんしね。」

  • 72読み手25/05/20(火) 23:15:55

    皆が船に乗り込み始めると、プロスペローの側にキャリバーンがやって来ました。

    「あのさ、プロスペロー…。私もあの船に乗ってもいいかな?」
    「どうしたん?あの執事とピエロの2人、気に入ったんか?」
    「…そんなとこかな。」
    「…そうやなぁ。あんた、趣味があるんやっけ?」
    「漫画描くの好きだよ。」
    「向こうでそれ、し?あんたは確かに足が四つもあるバケモンやけど、その趣味を極めるんやったら立派に生きていける。」
    「………ありがと。」

    船に乗り込むキャリバーンを見て、エアリアルもプロスペローの側にやって来ました。

    「ご主人…!」
    「もう言いたいこと分かっとるよ。」
    「それなら…!」
    「あぁ。封印全部解いたげるわ。今までよう頑張ったな?」
    「やったーやったー!これであたしは自由っすー!!!プロスペロー万歳!プロスペロー万歳!」

    エアリアルが大きく喜ぶととても強く、しかし優しい風が辺りに吹きすさび、空を覆っていた雲が晴れて綺麗な夕陽が見えました。

  • 73読み手25/05/20(火) 23:26:08

    「皆さん!この船旅はこのエアリアルにお任せ下さいっす!あたしの風が、皆さんをナポリへ導きますよ〜!」

    そう言うと、エアリアルが風を起こして船を動かしてくれました。
    船はどんどんナポリの方へ進んでいき、あの島は小さくなっていきました。

    「…これも、もう要らんね。」

    プロスペローはそう言うと、自分の魔法の源である本を海に投げ捨てました。

    「良いんですかお父さん?あれ、捨てちゃっても。」
    「大魔法使いプロスペローは店終い。今日からは、またただの人間や。」

    プロスペローがニコリと笑うと、気絶していたアントーニオが目を覚ましました。

    「ウワーーーッ!兄貴ーーー!今度は本当の本当に謝るからーーー!許してーーー!!!」
    「次その謝罪破ったら船からほかすで?」
    「ウワーーーッ!!!」

    夕陽に照らされて鼻血を出しながら大泣きするアントーニオを見ながら、船の船員たちはナポリに、いや…明るい未来へと向かうのでした。

    おしまい

  • 74二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 23:30:02

    やはり大団円はいいな

  • 75読み手25/05/20(火) 23:37:20

    お疲れ様でした。あと、皆さんお久しぶりです。覚えていますでしょうか?見返したら去年の10月ぶりでした。
    今回は前回のスレのリクエストでいただいたシェイクスピアの喜劇『テンペスト』をお送りしました。
    最近ですとガンダム作品で題材となったことが話題になっていたのが記憶に新しいかと思います。
    名作を多数生み出したシェイクスピアが単独で執筆した作品はこれが最後だったということもあり、彼の執筆した作品の中では珍しくハッピーエンド大団円に終わる作品です。
    元は劇用のお話ですので地の文は基本的に無いのが辛い部分でしたが、なんとか2日かけて書き切ることが出来ました。
    また時間も余裕が生まれて来ましたので、定期的に顔を出していきたいと思っております。今度ともよろしくお願いします。
    では、最後にこれで締めさせていただきます。

    プロスペローを島にとどめるのもナポリに帰すのも観客の気持ち次第。
    どうか拍手によっていましめを解き、自由にして下さるよう…。

  • 76読み手25/05/20(火) 23:39:04
  • 77二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 23:39:18

    お疲れ様です!
    次回期待してます!

  • 78二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 23:43:34

    👏

  • 79二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 23:43:49

    はー、コレシェイクスピアだったんだ
    丸く収まって良かった良かった

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています