【ホラー注意】廃病院ぶっ壊しに行こうぜ!

  • 1スレ主25/05/19(月) 20:14:32

    ────目が覚めたら、そこは廃病院の入口だった。

    「行くか、アイツらを探しに」

    「待っててね、レオ。必ず助けるから」

    「取り込まれてバケモンになってんじゃねーだろうな」

    「可能性としては有り得るな。バケモンでもサッカー出来ればそれでいいか」

    「全然良くないんだよなー笑」

    時計の針が刻むのは、“時間”ではなく、“精神の崩壊”。…いや、この物語では“廃病院の崩壊”が正しいだろう。

    なぜなら、目に見えないものが、確かにこちらを見ていても、それを叩き潰すのが彼らの役割だからだ。

  • 2スレ主25/05/19(月) 20:15:35

    このスレは、ブルーロックの登場人物による探索型ホラーSSです。

    舞台は“廃病院”。以前ここにやってきた潔世一、烏旅人、御影玲王、二子一揮は、廃病院に取り込まれてしまいます。

    そこで4人を救出するためにやってきたのが千切豹馬、凪誠士郎、糸師凛、糸師冴。彼らの逆襲劇が始まります。

    ※「時計の針が進むたびに、俺たちは壊れていく」のifルートになります。こちらをお読みいただいた後の方が、より物語が楽しめると思います。

  • 3スレ主25/05/19(月) 20:16:11

    ※プレイヤーの選択(安価)、運命(ダイス)によって、ストーリーの進行・視点が変化します。

    ※選択肢次第で“発狂”“精神崩壊”“絆”に分岐するかもしれません。

    ※正気度(SAN値)管理あり。

  • 4スレ主25/05/19(月) 20:17:09

    過去のSS


    同じ世界線

    【ホラー注意】遊園地に行くだけのはずだった|あにまん掲示板それだけのはずだったのに――『――13号館、13:00開演です。』bbs.animanch.com
    【ホラー注意】時計の針が進むたびに、俺たちは壊れていく|あにまん掲示板――目が覚めたら、そこは廃病院だった。時計の針が刻むのは、“時間”ではなく、“精神の崩壊”。目に見えないものが、確かにこちらを見ている。bbs.animanch.com

    別の世界線

    【ホラー注意】ねえ、あの部屋ちょっと面白そうじゃない?|あにまん掲示板休日の買い物、ふと見つけた一室。軽い気持ちで入ったその先に、どこか現実とは違う空気があった。誰かが驚いて、誰かが叫んで、誰かが笑って、誰かがからかって…怖いけどそこには楽しい非日常が待っている。bbs.animanch.com
    【ホラー注意】おめでとうございます。あなたは、選ばれました。|あにまん掲示板──ピー……ガガッ……ジリ……ジリ……「……ピー ──これより、“本物”の選別を開始します」「各自、自身の“偽物”を── ガガッ 討伐してください」「── 生き残った者が、“真実”となります」どこかで…bbs.animanch.com

    現在進行中(別の世界線)

    【ホラー注意】ブルーロックスの日常|あにまん掲示板今日もブルーロックはいつも通り。ご飯を食べて、試合をする。特訓をした後は、ミーティングをする。お風呂に入って、部屋でゆっくりする。雑談をして笑いあったり、改善点を見つけたり。時には眠りの中で見た夢を語…bbs.animanch.com
  • 5スレ主25/05/19(月) 20:17:55

    ■キャラヘイトを目的とするものではありません

    ■キャラsage、腐発言、アンチコメはお控えください

    ■荒らしはスルーします

    ■ゆっくり進行ご容赦ください(平日は仕事の都合上、特に進行が遅くなります)

    ■感想、質問、イラスト等頂けるとスレ主が大変喜びます

    ■広域ホスト規制に巻き込まれがちです。保守して頂けると幸いです

  • 6スレ主25/05/19(月) 20:23:03

    【登場人物紹介】


    千切 豹馬(ちぎり ひょうま)/初期SAN値:22

    マイペースでよく笑い、よく叫ぶスピードスター。
    突飛な出来事に驚きつつも、誰よりも仲間を信じている。4人の奪還のために全力を尽くす、熱き疾風。

    「13:00遊園地ホラー」のクリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。精神に“ある記憶”が刻まれている。


    ■固有能力

    【光刃の脚】怪異の行動を先読みし、自動回避と自動反撃を行う(2回まで・回避ターンで攻撃可能)
    【絆の加速】戦闘時、追加攻撃し、+1のダメージを与える(2回まで)
    【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値減少イベントを1回自動回避できる
    【疾風の破片】遊園地ホラークリア特典。罠や影の追跡から仲間を救出できる(2回まで・味方1名の回避失敗を自動成功に変換する)


    ■初期装備

    ・かりんとう饅頭×4:SAN値+4回復

    「オーブンで焼いて食べたいけど、廃病院にはそんなもんないから我慢する」

  • 7スレ主25/05/19(月) 20:25:39

    凪 誠士郎(なぎ せいしろう)/初期SAN値:25

    マイペースでルーズ、何事にも「面倒くさい」が口癖。怪異にも無表情で動じず、声すらあげない超然プレイヤー。御影玲王を救うため、「頑張りまーす」と静かに決意を燃やす。

    「廃病院ホラー」にも登場。


    ■固有能力

    【夢境感知】見えない怪異の存在を探知し、戦闘開始前に怪異に先制攻撃を与える。その後、通常通り戦闘行動に参加可能(3回まで)
    【無意識の庇い】仲間の失敗を肩代わりし、かつ自身のSAN値減少を無効化することができる(3回まで・なにかに突き動かされた感覚だけが残る)


    ■初期装備

    ・レモンティー×4:SAN値+4回復

    「え、全部俺のだけど。まあ、どうしてもっていうならあげてもいいよ」

  • 8スレ主25/05/19(月) 20:28:33

    糸師 凛(いとし りん)/初期SAN値:24

    高圧的かつ超エゴイスト、口も態度もとにかく強気。ホラー好きで、廃病院の突入にも密かにワクワクしている。兄にはなぜか強く出られず、ちょっとだけ不器用。

    「13:00遊園地ホラー」のクリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。精神に“ある記憶”が刻まれている。


    ■固有能力

    【百鬼夜行】戦闘イベント時、怪異の行動を3ターン封じ、攻撃に専念することができる(持ち越し可能)
    【記憶の盾】自分と味方全員のSAN値減少を1回ずつ無効化できる(重複不可)
    【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値減少イベントを1回自動回避できる
    【記憶のページ】遊園地ホラークリア特典。“消されかけた記憶”や“不自然な空間”を感知し、1度だけ探索を自動成功にすることができる
    【記憶の継承者たち】 遊園地ホラーペア特典。1度だけ“忘れられた者”に対し、言葉だけで道を開くことができる(怪異の脅威を無効化し、部屋から自動脱出可能・A-7通路最終戦、地下最終戦を除く)


    ■初期装備

    ・鯛茶漬け×4:SAN値+4回復

    「お湯なら持ってきた。実際にホラーやりながら好物食える機会なんざ、そうそうねーだろ」

  • 9スレ主25/05/19(月) 20:31:31

    糸師 冴(いとし さえ)/初期SAN値:23

    冷静かつ天然、日本の至宝と呼ばれる実力者。口が悪いが的確に褒めるタイプで、弟の態度は「反抗期」で片付ける。驚いた時は小さく反応、目を見開くのが最大のリアクション。

    「13:00遊園地ホラー」のクリア経験者。
    「廃病院ホラー」にも登場。精神に“ある記憶”が刻まれている。


    ■固有能力

    【断罪の策略】戦闘において、+1ダメージを与え、且つ敵の攻撃を1回無効化できる(1ダメージは常に継続)
    【最適解】自分または味方1人の失敗判定を再試行できる(1部屋1回まで)
    【共鳴の記憶】遊園地ホラークリア特典。SAN値減少イベントを1回自動回避できる
    【白き空間の鍵】遊園地ホラークリア特典。他人の精神領域に1回だけ“干渉”して引き戻すことができる(精神異常発生時、精神を安定させることが可能)
    【記憶の継承者たち】 遊園地ホラーペア特典。1度だけ“忘れられた者”に対し、言葉だけで道を開くことができる(怪異の脅威を無効化し、部屋から自動脱出可能・A-7通路最終戦、地下最終戦を除く)


    ■初期装備

    ・塩こぶ茶×4:SAN値+4回復

    「お湯は凛が持ってきた。飲んでみろ、落ち着くぞ」

  • 10スレ主25/05/19(月) 20:38:15

    空気が違う。

    湿って、重く、肌にまとわりつくような感触が、四人の足元を舐めるように広がっていた。


    目の前にそびえるのは、朽ちたコンクリートの塊。

    かつて人を癒したはずの病院は、今や異形を孕む“何か”の胎内のように、禍々しく歪んで口を開けていた。

    ひび割れたガラス。捩れた鉄扉。
    崩れかけた外壁に絡みつく枯れた蔦。

    不気味な沈黙が、まるでこちらの様子を伺っているかのように広がっている。


    そんな中、一人の声がその静寂を切り裂いた。


    「さーて、無事に潜入できたことだし、いっちょかましてやるか!」

    千切豹馬が、笑いながらもやや緊張をにじませた声で気合を入れる。声は跳ね返らず、病院の入口に吸い込まれていった。


    「ゲームでしか見たことないけど、こんな場所あるんだね」

    凪誠士郎はまるで他人事のように、ゆるい口調で呟いた。だがその目は、ほんのわずかに玲王の姿を思って揺れている。

  • 11スレ主25/05/19(月) 20:40:44

    「………いくぞ」

    糸師凛は低く言い放つ。その声音にあるのは恐怖ではなく、明らかな高揚感。彼にとってこの空間は、期待を煽る“舞台”でしかない。


    「まずは『挨拶』からだ」

    糸師冴が淡々と口にする。その視線の奥で、わずかに瞳孔が開いている。“何か”の気配を、彼だけが確実に捉えていた。



    次の瞬間。



    ドカァン!!!


    四人の足が同時に入口の朽ちた扉を蹴り破った。

    重く軋んだ鉄扉が吹き飛び、古びた闇の中へと彼らの姿が吸い込まれていく。




    ──廃病院奪還作戦、開始。

  • 12二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 20:46:15

    スレたってるの気づいてなかった。今回も楽しみにしてます。

  • 13スレ主25/05/19(月) 20:49:32

    >>12 つい30分ほど前にサクッと立てました。

    ありがとうございます!頑張って参ります!

  • 14スレ主25/05/19(月) 20:54:23

    【受付エリア】


    ①カウンター内(受付台の裏)
    引き出しや棚が並ぶ/書類やメモがありそう

    ②壁際の掲示板
    何か貼り紙が残っている/古びたポスターも

    ③番号札置き場
    番号札、使用済み札、不自然に空白のスペース

    ④待合スペースのソファ付近
    荷物置き、落とし物、座席裏など

  • 15スレ主25/05/19(月) 20:57:11

    【探索進行】0:00


    沈黙が支配する受付に、わずかな足音だけが響く。

    割れた天井の隙間から差し込む光は鈍く、何もかもが影の中で歪んで見えた。


    白いカウンター。壁際の掲示板。
    散らばった番号札の置き場。
    そして、ソファが並ぶ待合スペース。


    それぞれが異なる異様さを放っているのを、全員が無意識に感じ取っていた。


    冴「分担して調べるぞ。手早く、慎重にな」

    冴が淡々と指示を出すと、千切が真っ先に手を挙げた。

    千切「じゃあ俺、ソファんとこ行く! なんか落とし物とかあるかもだしな!」

    そう言って笑いながらも、目はどこか警戒している。千切は④の待合スペースへと向かった。

  • 16スレ主25/05/19(月) 20:59:48

    凪「俺、カウンター。引き出しとか漁るの、ちょっと面白そう」

    凪は①の受付台の裏へと向かう。面倒そうな動きだが、足取りは案外しっかりしていた。


    凛「俺はあそこだ」

    凛は②の掲示板を指差し、足早に向かう。その目は、異常を恐れるよりも、興味に満ちていた。


    冴「じゃあ俺が番号札だな。……数が合ってりゃいいけど」

    冴は③の番号札置き場へと歩を進めた。微かな皮肉を混ぜた言葉を残しながらも、目は真剣そのものだった。


    四人はそれぞれの持ち場へ散らばり、静かに探索を始める。


    ……その瞬間、ロビーの空気がまた一段階、重く沈んだ気がした。

  • 17スレ主25/05/19(月) 21:15:21

    【受付探索:①カウンター内・凪誠士郎】


    【探索開始】0:00



    凪は無言でカウンターへと入り、足元に散らばる紙片を軽く避けた。


    棚には古びた書類が乱雑に突っ込まれ、湿気とカビの匂いが漂っている。


    引き出しの取っ手には、黒く指紋がこびりついており、不自然に使用された痕跡があった。



    凪「うわ、ホコリすご……」


    ぽつりと呟くが、声に驚きや焦りはない。ただの観察だった。


    棚の奥にメモ用紙が見えるが、手を伸ばすには少し書類をかき分ける必要がある。


    凪は一瞬めんどくさそうな顔をした後、引き出しに目をやった。


    凪「……レオのために、面倒くさがらずに頑張ろ」


    静かに、引き出しへと手を伸ばす。



    dice1d2=2 (2)

    1:成功 2:失敗

  • 18スレ主25/05/19(月) 21:25:50

    【探索失敗】0:00


    乱雑に積まれた紙をぐいっとかき分けた瞬間、指先に、ぬるりとした嫌な感触が絡みついた。乾いた紙の中にあって、それは異質すぎた。


    凪「……うぇ」

    小さく呟き、凪は紙の束から手を引く。が、その下に、白い封筒が覗いていた。

    封筒は破れかけており、中には四つのデジタル腕時計が並んでいる。

    それぞれの表面には、手書きの名前があった。

    【Chigiri Hyoma】

    【Nagi Seishiro】

    【Itoshi Rin】

    【Itoshi Sae】

    何かに触れたわけでもないのに、不快な感触が、指先からではなくじわじわと心の奥へ染み込んでくる。

    凪はしばらく無言のまま封筒を見下ろした後、無言で懐に収めた。

  • 19スレ主25/05/19(月) 21:30:26

    【探索進行】0:00


    まだそれぞれの探索が続いている中、いち早くカウンターから戻ってきた凪は、封筒を手にロビーの中央へ歩いてきた。

    そして無言のまま、封筒を開けて中身を取り出す。


    四つのデジタル腕時計。その画面には、0:00の数字が静かに灯っていた。

    凪は自分の腕に一つ巻くと、残りを順に掲げて見せる。


    凪 「……これ。見つけた。全員の名前入り」


    千切がそれを受け取り、目を見開いた。

    千切「これ、潔達が付けてたやつと同じだ!」

  • 20スレ主25/05/19(月) 21:31:55

    凛は腕に巻きながら、画面をちらと見ただけで呟いた。

    凛「戦術支援デバイスも付いてるから、焦る必要はねえな」


    冴も時計を受け取り、少し肩の力を抜いたように口元を緩める。

    冴「じゃあ、ゆっくり茶でも飲みながら探してやるか」

    千切「いや冴、廃病院でお茶って…どこで!?」


    思わず千切が突っ込むと、凛がふっ、と笑ったような顔を一瞬だけ見せる。


    不気味な空気の中に、ほんの一瞬だけ人間らしい温度が灯ったが──


    腕時計の0:00が、じわじわと胸の奥を締め付けるように不穏な気配を漂わせていた。

  • 21スレ主25/05/19(月) 21:53:45

    【受付探索:②壁際の掲示板・糸師凛】


    【探索開始】0:00



    ロビーの壁際。


    そこには、退色した大きな掲示板が取り残されたように佇んでいた。


    凛は無言でその前に立つと、鋭い視線で掲示物を一瞥する。



    掲示板の半分には、破れかけた医療ポスター。


    残り半分には、色あせた紙が無造作に重ね貼りされている。


    中には斜めにめくれかけたものもあり、どれもかなり古びているのが一目で分かる。



    凛「……いかにも何か隠れてそうな感じだな」


    凛は小さく呟くと、一枚目の紙の端に指をかけた。



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 22スレ主25/05/19(月) 22:07:37

    【探索成功】0:00


    紙を一枚、また一枚と丁寧に剥がしていく凛。

    十枚目に触れた瞬間、その裏に、小さな隙間があった。

    指先を差し入れ、ぐいっとめくると──掲示板の裏に、小さなガーゼの包みが貼りつけられていた。


    凛「……やっぱあったな」

    凛がつぶやきながらガーゼを開く。


    中には、脈打つようにかすかに光る蛍光グリーンの宝石。

    それは人工物とも天然石ともつかない、異様な輝きを放っていた。

    ただの飾りには見えない。


    ──これは“道具”だ。そう直感で理解できるほど、そこには重い気配があった。


    凛は口元をわずかに吊り上げると、宝石を無言でポケットに滑り込ませた。

  • 23二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 22:12:17

    面子のSANが高いのと初期から回復品が多いのが安心材料だけど、それだけないとやばいかもしれないってことだと思うと怖いな

  • 24二次元好きの匿名さん25/05/19(月) 22:18:38

    廃病院でバッドエンドだった場合の裏ルートだし危険度は高いだろうね
    でも頼もしいメンバーだし余程のことがない限り大丈夫なはず!

  • 25スレ主25/05/19(月) 22:26:05

    >>23 ダイスの出目が悪いと終わるので、念には念をということ(あと出目が良くても無双できればいっかというスレ主の雑念)で色々盛り込んでおります。


    >>24 地下がかなり危険なので、彼らがどう進むのか、ダイスの女神が味方をしてくれるのかにかかってます…。

  • 26スレ主25/05/19(月) 22:34:22

    【受付探索:③番号札置き場・糸師冴】

    【探索開始】0:00


    壁際の棚に向かった冴は、ふと立ち止まり、目を細める。

    そこには、薄く埃をかぶったプラスチック製の番号札がずらりと並べられていた。

    1番、2番、3番、4番──……

    最初は整然と順に並べられているように見えた。

    だが。


    冴「……歯抜けになってるな」

    冴の視線が、棚をなぞるように動く。

    番号は確かに連番だが、ところどころ抜け落ちている。
    まるで“あるはずのもの”だけが故意に消されたように。

  • 27スレ主25/05/19(月) 22:36:18

    抜けた番号の隙間には、何かがあった痕跡だけがかすかに残っている。


    埃の少ない場所、そこにだけ指紋のような曇り。



    冴「取られたか……それとも、最初から“ない”扱いだったか」


    冴はしゃがみ込み、棚の下段にも目をやる。


    番号札だけでなく、その配置、埃の付着、わずかな傷──

    すべてを無言で論理的に観察していく。


    その動きに焦りはない。

    あくまで冷静に、いつものように。


    ただ一つ、背筋に小さなざわめきを感じながら──



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 28スレ主25/05/19(月) 22:44:15

    探索順調でなによりです。
    少し早いですが、スレ主は明日も仕事なので寝ます。明日はバタバタする予定ですが、空き時間でゆっくり物語を紡いでいけたらと思います。
    それではおやすみなさいませ。

  • 29二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 02:02:50

    今日もお疲れ様でした!
    推し達がどう活躍してくれるのか楽しみにしてます
    この後もダイスの女神が味方してくれますように…

  • 30スレ主25/05/20(火) 08:16:18

    >>29 ありがとうございます!推し達のかっこいい姿を見せることができるように、スレ主も頑張ります!


    おはようございます。本日もよろしくお願いします。ゆっくり更新していきます。

  • 31スレ主25/05/20(火) 09:14:12

    【探索成功】0:00


    冴は棚の下段、隙間に指を滑り込ませると──
    コツ、と何か硬いものに当たった感触があった。

    慎重に手を差し入れ、それを引き出す。

    それは、ガラス製の小瓶だった。
    掌にすっぽり収まるほどのサイズで、ラベルは擦れてほとんど読めない。

    中には、うっすらと灰緑がかった液体が入っていた。
    光にかざすと、ほんのわずかにとろみがあるのが分かる。


    冴は瓶の口を開けて香りを確かめる。

    微かな柑橘と薬草のような香りが鼻をくすぐり、不思議と神経が落ち着く感覚が広がった。

  • 32スレ主25/05/20(火) 09:14:49

    冴「……不気味なほどに、安心できる香りだな」

    冴は一口だけ含むと、その場に立ったまま目を閉じた。

    冷静さが一段階深まり、胸の奥のざわつきがすっと引いていく。


    ──これはただの飲み物ではない。

    この異常な空間の中において、“精神を繋ぎ止める”ために遺された、何者かの意志のように思えた。

    冴は瓶を静かに蓋し、内ポケットへとしまい込む。


    ■入手アイテム
    ・《沈静ノ滴》×1:SAN値+1回復

  • 33スレ主25/05/20(火) 10:15:37

    【受付探索:④待合スペースのソファ付近・千切豹馬】


    【探索開始】0:00



    待合スペースに並ぶ、年季の入ったソファ。


    その隙間には、落とし物のような影や、丸まった紙切れがいくつも突っ込まれている。



    千切「よーし、俺のターンだな」


    千切は気合を入れるように息を吐き、片膝をついてソファの隙間に手を差し込んだ。



    薄暗く、何があるかもわからない場所に手を突っ込むのは、どこかくすぐったい緊張感がある。



    千切「うわっ……なんかホコリすげえ。てかこれ、本当に物あるのか?」


    それでも慎重に指先を動かし、奥へ奥へと手を滑らせていく。



    ──指先に、乾いた紙の感触。



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 34二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 11:45:43

    みんな良い感じ!

  • 35スレ主25/05/20(火) 11:52:08

    >>34 みんな探索頑張ってますね!

  • 36スレ主25/05/20(火) 11:53:27

    【探索成功】0:00


    千切はゆっくりと、ソファの隙間からそれを引っ張り出した。

    シワだらけになった一枚のプリント。


    千切「……これは──“地図”か?」

    それは、この施設の『避難経路図』だった。

    インクが所々にじみ、かすれているが、受付・診察室・検査室・手術室・入院病棟──そして、地下へ続く非常階段の存在まではっきりと記されている。


    千切「おおっ! やった! こりゃあデカい!」

    誰にともなく声をあげた千切は、嬉しそうにプリントを掲げて笑った。

    彼の手には、これからの探索の鍵となる情報がしっかりと握られていた。

  • 37スレ主25/05/20(火) 12:16:31

    4人は受付奥の休憩スペースに集まり、各自の探索で見つけたものを順にテーブルへ置いていった。


    千切「これ、ソファの隙間から出てきた。見てこれ!」

    千切が誇らしげに広げたのは、くしゃくしゃの避難経路図。

    その地図には、受付や診察室、入院病棟、手術室──そして地下への非常階段まではっきりと記されている。


    凛「……この病院、やっぱ地下があるんだな」

    凛が図の一点を指し、目を細める。

    冴「少なくとも、迷わず回れるようにはなったな。よくやった」

    冴が軽く顎を引いて肯定すると、千切は「へへっ」と鼻をこすった。


    続いて、凛が懐から小さな物を取り出す。

    蛍光グリーンの宝石。それは、かすかに脈打つように光っている。

  • 38スレ主25/05/20(火) 12:20:45

    凛「掲示板の裏から拾った。……ただの石じゃねぇ。見てりゃわかる」

    千切「すご……なんか、生きてるみたいだな」

    凪「レオがいたら絶対テンション上がってた」

    凪が軽く笑う。


    そして、冴が最後にポケットから小さな小瓶を取り出した。中には淡い灰緑の液体。

    冴「これは《沈静ノ滴》。精神安定剤か何かだろ。さっき一口飲んだが、問題ないぞ」

    凪「それ絶対腐ってるじゃん」

    凪がすぐにツッコミを入れる。

    冴「成分的には問題なかった。味も特に変じゃねえ」

    凪「ええ……いやもう感覚バグってんでしょ……」

    千切がくすくすと笑い、凛も珍しく口元をわずかに緩めた。


    それぞれが拾ったものは違っても、その中にある“気配”だけは共通していた。


    この病院はただの廃墟じゃない──

    何かが、まだ動いている。

  • 39スレ主25/05/20(火) 12:27:45

    情報共有がひと段落し、4人の間に静かな間が流れる。


    その空気を切り裂くように、冴が口を開いた。



    冴「……凪誠士郎。もう一回、探してこい」


    唐突な指名に、凪が眉をひそめた。



    凪「えー? カウンターの裏、もう何もなかったよ。デジタル時計以外、ガチで空っぽ」


    冴「“なかった”じゃない。見落とした可能性がある」


    冴の声に、少しだけ圧がこもる。その目は、確信というより“計算”に近い冷静な光を宿していた。



    冴「……もしかしたら、まだ何かあるかもしれないだろ」


    凪「……面倒くさ……」


    凪はあからさまに気乗りしない表情を浮かべるも、結局は立ち上がってカウンターの裏へ向かっていく。


    凪「……まあでも、レオのためだしね」



    ──冴の固有能力【最適解】発動。


    dice1d2=2 (2)

    1:成功 2:失敗

  • 40スレ主25/05/20(火) 14:04:08

    【探索再試行:失敗】0:00


    カウンター裏に戻った凪は、しぶしぶと再び棚や引き出しに手を伸ばしていく。


    凪「まったく……もう1回って、何が出てくるってんだよ……」

    書類の山を崩さないように、丁寧にめくってみる。
    引き出しの奥まで指を入れて探る。
    埃まみれのメモ帳やホチキスの針、壊れかけたペン。

    ……それでも、特にめぼしいものはない。

    凪は軽く肩をすくめ、立ち上がった。


    凪「ねー、やっぱり何もないんだけど」

    少し遠くから冴の声が返ってきた。

    冴「……そうか」


    その一言だけで、もうそれ以上何も言わない。

    凪は「ほんとにないってば」とぶつぶつ言いながら、再び仲間のもとへ戻っていった。

  • 41スレ主25/05/20(火) 14:07:10

    全員が受付での探索を終え、次にどの部屋へ向かうかを決めかねたまま、重たい扉を開けて、廊下へ足を踏み出したその瞬間──


    「……あ」

    誰ともなく漏れた声に、全員の視線が足元に集まる。


    廊下のど真ん中に、一匹の猫がこちらを見上げて座っていた。

    漆黒の毛並み。
    薄暗い廃病院の中で、その瞳だけが鮮烈な青を放っていた。


    千切「うっ……わあああああああああああ!!! かわいすぎるーーッ!!!」

    千切が、あまりのテンションにその場で小躍りする勢いでしゃがみ込む。

    千切「おいでっおいでっ! 君なんでこんなとこに!? てか君、生きてんの!? いや生きてる! 動いてる~!」

    猫は警戒する様子もなく、じっと千切を見つめている。


    青い瞳が、どこか人間じみた感情を宿しているようで──その雰囲気に、凛がぽつりと呟いた。

  • 42二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 15:06:59

    前シリーズ全部読んできてやっと追いついた!
    奪還編もめちゃくちゃ楽しみ!

  • 43スレ主25/05/20(火) 16:35:50

    >>42 過去SS、お読み下さりありがとうございました!奪還編、まだまだ続きます!引き続きよろしくお願いします。

  • 44スレ主25/05/20(火) 16:39:45

    凛「……あの目。なんか潔に似てんな」

    千切「え、わかる!? わかるよな!? わかってくれるよな!?」

    千切は感激したように凛に詰め寄り、再び猫を見下ろすと、手をそっと差し出す。


    千切「ヨイチ。君の名前、ヨイチね。今日からよろしく!」

    猫はその場を動かず、目を細めてじっと千切の手を見つめていた。

    まるで──“名前を受け入れた”かのように。


    凪がぽそっと口を開く。

    凪「……名前つけちゃった。完全に仲間入りだね」

    冴「次は“ヨイチが人間に化けて出てくるイベント”だな」


    廃病院の空気は依然として重たいはずなのに──

    ほんのひととき、空間に柔らかな温度が生まれていた。

  • 45スレ主25/05/20(火) 16:55:08

    ひとときの猫との触れ合いを終え、再び廊下の空気が張り詰める。


    4人が次に進むべき方向を決めかねて立ち止まったその時──

    黒猫・ヨイチが、音もなくするりと立ち上がり、静かに廊下を歩き出した。


    冴「……あいつ、こっち見てんぞ」

    冴が目を細めてつぶやく。

    千切「もしかして、ついて来いってやつ?」

    千切が猫のあとを追う。


    ヨイチはときおり後ろを振り返るようにして、確かに4人の存在を確認している。

    その歩みに導かれるように、誰も言葉にせず歩き出していた。

  • 46スレ主25/05/20(火) 16:56:25

    薄暗い廊下の突き当たり、どこか湿った空気が漂うその扉の前で──

    猫はぴたりと足を止め、鋭くも静かな声で、「にゃあ」と一声だけ鳴いた。


    凛「……診察室、か」

    凛が扉の上のプレートを睨むように見つめる。


    その瞬間、扉の隙間から──まるで冷たい視線が、内側から這い出してくるような気配がした。


    凪「妙な部屋が始まりそうだね」

    凪が静かに呟く。

    千切が小さく深呼吸をして、前を向く。


    千切「いいぜ、“ヨイチ”。次はここってわけだな」

    猫は何も言わず、じっと扉の前に座っていた。


    まるで、「ここで、お前たちを待っている」とでも言うように──

  • 47スレ主25/05/20(火) 17:34:57

    【探索進行】0:00


    重い扉を軋ませて開けた瞬間、空気が変わった。


    診察室の中は、薄暗い。

    天井の蛍光灯は半分しか生きておらず、チッ……チッ……と周期的に鳴る音が、かえって静けさを際立たせている。

    光が届かない隅々には、かすかな影が滲み、何かがこちらを見ているような錯覚すら与えた。


    千切「……ここ、空気違うな」

    千切が一歩踏み出して、小さくつぶやく。


    一番奥には、シーツのかかった診察台。
    壁際には、書類のはみ出たカルテ棚と、薬瓶が無造作に並べられた薬品棚。
    その手前には、ほこりまみれのデスクと、脚が錆びついた椅子が置かれている。

  • 48スレ主25/05/20(火) 17:35:46

    凛「病院の中でも、“ここ”は別格っぽいな」

    凛が低く呟き、視線を中央へと向ける。


    ──そこに、“それ”はいた。


    部屋の中心に、真っ白な検査用マネキンが、ぽつんと立っている。

    人間のようで人間でなく、物のようで物でない存在感。


    凪「……なんでこんなとこにマネキン置くの……」

    凪が小さく顔をしかめ、千切はじっとそれを見つめている。

    千切「動かねぇよな? これ……」


    マネキンは何も答えない。

    だが、今にも首だけ動かしそうな静寂が、室内を支配していた。

  • 49スレ主25/05/20(火) 17:40:01

    【診察室エリア】


    ①診察台周辺
    ベッド、下の収納、汚れた白衣など

    ②デスク&引き出し
    医師の私物か、何か書き物があるかも

    ③カルテ棚
    患者データ、破損したファイル

    ④薬品棚
    使用期限の切れた薬瓶、不自然な空きスペース

  • 50スレ主25/05/20(火) 18:42:52

    部屋の空気は重く、時間だけが止まっていたようだった。

    無言のまま部屋を見渡す4人の中で、最初に動いたのは凛だった。


    凛「俺は、あのデスクを見てみる。書類か、何か残ってるかもな」

    そう言って向かったのは、②古びたデスクと引き出し。医師が座っていたであろう椅子は錆びつき、引き出しの隙間から紙がはみ出していた。


    冴「じゃあ、俺はこの棚」

    冴は手に取った懐中ライトで壁際を照らしながら、③カルテ棚へと向かう。

    その口調はあくまで淡々としていたが、視線は鋭く一点を捉えていた。

  • 51スレ主25/05/20(火) 18:51:10

    千切「じゃあ俺は、そっちの薬棚いってみるか!」

    千切はやや腰を引きながらも、④薬品棚へと足を運ぶ。埃をかぶったガラス戸の向こうには、色褪せたラベルの薬瓶がずらりと並んでいた。


    凪はやや出遅れたように皆を見回し、
    「あー……じゃあ、診察台のほう行くね」と、
    のそのそ歩き出す。

    ①診察台の周辺には、引き出し付きのベッド、落ちかけた白衣、汚れた備品などが無造作に置かれている。


    凪はふと、マネキンと目が合った気がして小さく首を傾げた。

    凪「……この部屋、絶対なんかあるでしょ」


    呟いたその声が、薄暗い診察室に染み込んでいった。

  • 52スレ主25/05/20(火) 18:55:51

    【診察室探索:①診察台周辺・凪誠士郎】

    【探索開始】0:00


    凪は診察台の横にしゃがみ込み、薄くかけられたシーツを指先でめくった。

    白だったはずの布は、ところどころが黄ばんでおり、中には赤黒いシミが染み込んでいる部分もある。


    凪「うぇ……なにこれ。ほんとの出血跡……?」

    声のトーンは変わらないが、明らかに表情が曇る。

    冗談で済ませられるような雰囲気ではなかった。

  • 53スレ主25/05/20(火) 18:56:37

    診察台の足元、引き出しのようになった収納の隙間から、数枚の紙片が無造作に挟まっているのが目に入る。


    凪は片手でそれを引き抜き、軽く目を通した。



    凪「……英語と、これスペイン語?」


    紙には、びっしりと文字が書かれている。

    英語の部分はすぐに読み取れたが、スペイン語の箇所はまるで暗号のようだった。



    凪「レオがいれば分かったのに……語学、得意だったよね」


    小さくため息をつきながら、凪は紙を折らず、そっと保管するようにポーチにしまう。


    その指先が、シーツの下にもう一つ何かの気配を感じた──



    dice1d2=2 (2)

    1:成功 2:失敗

  • 54二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 19:08:13

    今回のダイス運終わってる枠は凪か?
    というかスペイン語なら兄ちゃいけるんじゃね?

  • 55スレ主25/05/20(火) 19:51:18

    >>54 白宝は仲良しですね(というよりスレ主のダイスが白宝に集中攻撃してるんですよね…)。診察室の探索が終わったら兄ちゃに見せてみましょう!

  • 56スレ主25/05/20(火) 19:58:16

    【探索失敗】0:00

    【SAN値-1:25→24】


    凪は慎重に布をめくりながら、診察台の隙間に手を差し入れた。

    しかし、指先に触れたのは乾いた紙くずと、薄いホコリの層だけだった。

    “何かがありそうで、何もない空虚さ”が、じわじわと神経に染みる。


    凪「んー、やっぱりメモだけか。あとは、なし」


    英語の箇所は読み取れたが、スペイン語の意味がつかめず、要点も掴みきれない。

    妙に焦るような気持ちが胸に残った。

  • 57スレ主25/05/20(火) 20:23:38

    凪は体を起こし、診察台から離れようとしたが──

    その場を離れてもしばらく、背後でシーツが“まだ何かを隠している”ような、妙な感覚が尾を引いた。


    凪「……なんか、気持ち悪いだけだったな……」


    深くは考えず、凪はその場を後にしたが──

    心の奥に、小さなざわつきが残る。


    それは、静かに心を削る一手だった。

  • 58スレ主25/05/20(火) 20:27:22

    【診察室探索:②デスク&引き出し・糸師凛】


    【探索進行】0:00



    凛は迷いなく、診察室の隅にある古びた木製のデスクへと歩み寄った。


    医師がかつて座っていたのだろう、机の表面はところどころニスが剥がれ、薄い傷跡が交差している。



    凛「……だいぶ使い込まれてるな」


    低く呟きながら、デスクの引き出しへ視線を移す。



    数段に分かれた引き出しには、それぞれ銀色の取っ手が付いていたが、そこにも長い年月の埃がうっすらと積もっていた。



    凛は一本指でその埃をなぞり、視線を細める。


    凛「この手の古い家具、仕掛けがあるパターンも多いんだよな」


    慎重に、上段の引き出しに手をかける。


    中に何かあるのか、それとも“何もない”のか──



    dice1d2=2 (2)

    1:成功 2:失敗

  • 59スレ主25/05/20(火) 20:46:24

    【探索失敗】0:00

    【SAN値-1:24→23】


    引き出しは軋む音を立てながら、ゆっくりと開いた。

    中には、ぐしゃぐしゃに折り畳まれた紙が数枚と、芯が潰れかけた黒ずんだボールペン。

    どちらも長く放置されていたようで、紙は端が破れ、ボールペンには細かいサビが浮いていた。


    凛「……ゴミか、これ」

    凛は紙を広げてみたが、字はかすれ、インクが滲んでいて判読は困難だった。

    内容も断片的で意味を成さず、何かのリストか、ただのメモかすらわからない。

    何度か目を凝らして見直してみたが、そこに“使える情報”は一つもなかった。


    静かな苛立ちが、心の奥で小さく燻る。


    凛「時間の無駄だったな……」

    凛は紙を無造作に戻し、ペンには触れず引き出しを閉めた。


    ただ、その胸に生まれた微細な焦燥感だけが、じわりと彼の精神力を削っていく。

  • 60スレ主25/05/20(火) 20:50:38

    【診察室探索:③カルテ棚・糸師冴】

    【探索開始】0:00


    冴は、壁際に設置されたカルテ棚の前に立った。

    木製の棚はところどころ軋み、手を触れればすぐに崩れそうなほど古びている。

    表面には厚く埃が積もり、誰にも触れられないまま時間だけが過ぎてきたことを物語っていた。


    冴「順番……バラバラだな」


    引き出されたファイルは、ラベルが破れ、分類も無秩序だった。

    アルファベットも数字も混在し、一見して意味のある並びではない。

  • 61スレ主25/05/20(火) 20:51:43

    冴は埃を払うこともせず、迷いのない手つきで一冊ずつファイルをめくっていく。



    数冊目をめくった時──


    ページの間から、赤黒いシミがにじんだ紙片がひらりと顔を覗かせた。


    それは古いインクか、

    あるいは別の“液体”の痕跡か──


    冴の指先が、ほんのわずかに止まる。



    冴「……さて、これは“記録”か、“証拠”か」



    冴はそのまま、目的の手がかりを冷静に探り続ける。


    この病院が“何を隠していたのか”を、明らかにするために。



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 62二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 20:53:03

    お!にいちゃ成功!

  • 63スレ主25/05/20(火) 21:07:21

    >>62 兄ちゃは探索上手ですね!

  • 64スレ主25/05/20(火) 21:16:19

    【探索成功】0:00


    崩れかけたカルテの山をかき分けるうちに、冴の指先が一枚の封筒に触れた。

    黄ばんだ紙製の封筒。
    表には何の記載もなく、無地のままだ。


    冴「……隠す気はないが」


    そう呟きながら、冴は封を慎重に切り開いた。
    すると、数枚の紙がふわりと滑り落ち、棚の下に舞い落ちる。


    しゃがみ込んで拾い上げると、それは医師の手書きによるメモだった。

    乱雑な筆跡。だが、読み取りは可能。


    ──ページの一部には、赤茶けたシミが広がっていた。


    冴は黙って目を走らせる。

  • 65スレ主25/05/20(火) 21:18:45

    【メモ内容(抜粋)】

    『被験体の精神崩壊が進行。隔離後、さらに悪化の兆候。』
    『管理室への移送準備中。地下区画は……(文面途切れ)』
    『看護師にも異常発生。職員休憩室を閉鎖。』


    冴「……“被験体”?この病院、やっぱりただの医療施設じゃないな」

    冴の目が鋭さを増す。


    封筒の中に他の書類はなく、メモはこれで全てのようだったが、情報量は十分だった。

    封筒ごとファイルの間から抜き取り、丁寧に畳んでポーチへ収める。


    地下区画、職員休憩室、そして“管理室”──

    この病院の全貌が、ゆっくりと不気味な輪郭を帯び始めていた。

  • 66スレ主25/05/20(火) 21:26:52

    【診察室探索:④薬品棚・千切豹馬】

    【探索開始】0:00


    棚には、使い古された薬瓶が雑然と並んでいた。

    ラベルはにじみ、手書きの文字はほとんど判読できない。

    キャップが落ちかけたものも多く、ガラス瓶の縁には薄くヒビが入っていた。


    千切「うわ……見るからに期限切れてるな、これ」

    千切は顔をしかめながらも、慎重に手を伸ばす。

  • 67スレ主25/05/20(火) 21:27:37

    薬瓶のいくつかはすでに空、他は中の液体が変色してどす黒く沈んでおり、どれもこれも、朽ち果てた命の残骸のように見えた。



    だが、それだけでは終わらない。


    薬棚の並びに、不自然な“空き”があることに気づく。



    千切「……ここ、だけ空いてる」


    まるで、誰かが“ある薬だけを持ち出した”ような、あるいは“そこにあってはならない何かが混ざっていた”ような── そんな、微かな異質さ。


    “ここには置かれてはいけないもの”が混ざっていた気配がする。



    千切は息をひとつのみ、さらに棚の奥を探り始めた。



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 68スレ主25/05/20(火) 21:44:14

    【探索成功】0:00


    薬瓶の隙間を探るうちに、千切の指先が固い金属の感触に触れた。

    薬とは明らかに違う──
    平たく、冷たい、それは鍵だった。


    千切「……あれ? こんなとこに……?」

    ガラス瓶の奥、倒れかけた薬品の裏側に小さな鍵が隠れるように置かれていた。

    タグもなく、どこの扉を開けるのかも分からない。
    だが、それは明らかに“後から置かれた”ものだ。


    千切「誰かが、わざとここに……?」

    千切は鍵を拾い上げ、光にかざしてみる。
    錆びついてはいるが、使えそうな状態を保っていた。

    千切「よくわかんねーけど……とりあえず、ラッキーってことで!」

    そう言ってポーチに鍵をしまいながら、棚の“空いていたスペース”にもう一度目をやる。

    ──そこにあったはずの“何か”と、この鍵は関係があるのだろうか。

    まだ答えは出ない。
    だが、確実に一歩、何かに近づいた気がした。

  • 69スレ主25/05/20(火) 21:50:46

    診察室の探索を終え、4人は再び中央に集まった。

    薄暗い部屋の中で、わずかに光る蛍光灯の下、冴が一枚の紙束を無言で広げた。


    冴「カルテ棚から拾った。医師のメモらしい。内容は……これだ」

    冴の指先が、書かれた文字をなぞる。


    千切「……“被験体”? ここって、病院だよな」

    千切が声をひそめて問う。

    凪「もう“病院だった”って言った方が正しいかもね」

    凪がぼそっと返すが、顔に緊張はなかった。

    凛「地下区画、職員休憩室、管理室……。動くなら、そのどれかからだな」

    凛が淡々と分析する。


    その流れで、千切がポーチから小さな鍵を取り出した。

    千切「あと、これ見つけた。薬棚の奥に落ちててさ。タグとかはなし。どこの鍵かはわかんねえ」

    冴がちらりと鍵に視線を送り、小さくうなずく。

    冴「その形状だと……管理室か、休憩室の可能性は高いな。断言はできないが」

  • 70スレ主25/05/20(火) 21:52:50

    凪「じゃあ、そのへん探して合いそうなとこに突っ込んでみるしかないね」

    凪が軽い口調でまとめようとするが、次の言葉は続かなかった。


    ふと沈黙が落ちる。

    凛がポケットに手を突っ込んだまま、口を開く。


    凛「こっちは収穫なし。メモの破片と潰れたペンだけだった。読む価値もねえ」

    凪「俺もメモっぽいの拾ったけど、半分スペイン語でさっぱり。なんか意味深だったけど、よくわかんなかった」


    凪と凛の報告を聞いて、冴が一言だけつぶやく。

    冴「……“情報がない”という事実も、一つの収穫だ」

    その言葉に、全員が無言でうなずいた。


    今のところ、“鍵”も“地下”も、
    行き先はまだ不明確。

    だが、この診察室の探索を経て、確実に“何かが進行している”気配だけは、全員が感じ取っていた。

  • 71スレ主25/05/20(火) 21:59:30

    情報共有の場が一段落しかけた頃、冴がふと凪の方に視線を向けた。



    冴「……さっき、お前。スペイン語混じりのメモを拾ったと言ってたな」


    凪は「うん?」と軽く顔を上げ、ポーチから折らずにしまっていた紙片を取り出す。



    凪「あー、これ。なんかビッシリ書かれてるけど、読めたの英語だけ」


    冴は無言で手を差し出す。


    凪は小さく肩をすくめながら、メモを手渡した。


    凪「……読めんの?」


    冴の視線が紙面をなぞる。

    彼の目は、一文字も取りこぼさない速度で、冷静に情報を読み取っていく。



    ──冴の固有能力【最適解】発動。

    凪誠士郎の“情報解読不能”の状態を、読み取り可能な形に再試行。



    冴の表情がわずかに変わる。

    その瞬間、紙の意味が静かに浮かび上がり始めた。



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 72二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:08:49

    兄ちゃないすぅ

  • 73二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:08:49

    にいちゃ探索上手い!
    次はどこに行くかな

  • 74スレ主25/05/20(火) 22:11:32

    >>72 >>73 兄ちゃキレッキレですね!行き先は黒猫ヨイチにお任せしましょう!

  • 75二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:13:04

    冴と千切が成功率高めで頼もしいね
    このまま成功続いてくれるといいな

  • 76二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 22:13:24

    兄ちゃの【最適解】クソつよスキルだね
    情報取り逃さないのはマジ助かる

  • 77スレ主25/05/20(火) 22:19:08

    【最適解による探索成功】0:00


    紙は古く、端が少し焼け焦げているように見える。

    だが、文字はまだ読み取れる。
    英語とスペイン語が、無造作に交互に書き連ねられていた。


    凪「このへん、英語だけど──“被験体37において──”……って書いてある」

    凪が指先でなぞりながら、ゆっくり読み上げる。

    冴「その次、スペイン語。“Estado mental en deterioro constante…”」

    冴がすかさず続けて訳す。

    冴「“精神状態の悪化が継続的に進行している”──って意味だな」


    千切「うわ、それ完全にヤバいやつ……」

    千切が肩をすくめる。

    凛も、黙ったままマネキンの方へちらりと視線を送った。

  • 78スレ主25/05/20(火) 22:21:12

    凪「その次、“Isolated for safety protocols…”、“隔離措置を講じたが、反応は悪化”──って続いてる」

    2人の声が、まるで呼吸を合わせるように交互にメモを読み解いていく。

    冴「続き……“Movimiento irregular durante las horas muertas…”、“深夜帯に不規則な動作を確認。人影と錯覚される報告も複数。”」


    千切が息をのむ。

    千切「おい、それ絶対──」

    言葉を飲み込むように、視線をマネキンへ向ける。


    部屋の中央、無言で佇む検査用マネキン。
    だが今、その“無言”が、静かにこちらを試しているようにすら見えた。


    冴「“体組織は人造。だが精神への刺激には反応する”──とある」

    冴が訳を締めくくるように言い、メモをそっと伏せた。


    それはもう、ただの記録ではなかった。
    ──この部屋に“今も存在する何か”の予告のようなものだった。


    凪「被験体37……いるんだよね、ここに」

    凪がぼそりとつぶやくと、マネキンの影が、わずかに長くなった気がした。

  • 79スレ主25/05/20(火) 22:45:23

    >>75 ここでの積み重ねが後々影響してきますので、これからの彼らの活躍に期待ですね!

    >>76 失敗をなかったことには出来ませんが、アイテムや情報を得られるのは大きいですよね。兄ちゃは最強キャラのはずなので、固有能力も盛りました。


    さて、お察しの通り、次は戦闘です。奪還編なので難易度上げてます(戦闘成功値は調整しますが)。

    とてもいいところですが、スレ主は明日も仕事なので寝ます。戦闘がどうなるのか楽しみですね。また明日もよろしくお願いします。

  • 80二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 02:50:11

    今日も更新お疲れ様でした
    1週目のメンバーは力でゴリ押していくタイプだったけど奪還組はどうなるんだろう?
    明日も楽しみにしてますね!

  • 81スレ主25/05/21(水) 20:11:54

    テスト

  • 82スレ主25/05/21(水) 20:12:48

    鯖落ち直りましたかね…?

  • 83スレ主25/05/21(水) 20:41:01

    大丈夫っぽいので、とりあえず消えた部分から投稿し直します。全部メモしてるので復元可能です(メモしておいてよかった)。

  • 84二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 20:42:56

    ほんとだ消えちゃってる!
    スレ主さんメモありがとう

  • 85スレ主25/05/21(水) 20:47:15

    >>84 いえいえ。こちらこそお読みいただきありがとうございます!

  • 86スレ主25/05/21(水) 20:53:37

    診察室の空気がピタリと止まった。

    そのときだった──


    ゴキッ。

    乾いた、明らかに“骨の折れるような”音が部屋に響く。

    四人の視線が、音の発生源──マネキンに集中した。


    マネキンの首が、不自然な角度で回っていた。

    人間ではありえない可動範囲。ゆっくりと、カクカクと、まるで何かに操られるように。


    凛「……嘘だろ」

    凛が低くつぶやく。


    続けて、マネキンの右足が一歩、音もなく前へ滑る。

    次いで左足も──ゆっくりと、確かに歩き出した。


    千切「うっわ、キモい!!!」

    千切が思わず叫び、凪の背後に隠れるように飛び下がる。

  • 87スレ主25/05/21(水) 20:54:47

    凪「え、なんで俺?」


    凪が振り返るが、いつものマイペースな声にも微かに緊張がにじむ。



    冴「……来るぞ」


    冴が静かに言い、構えようとする。


    凛はすでに、動き出すタイミングを計っていた。

    彼の目に映るのは、対象ではなく、すでに“ターゲット”。



    診察室の蛍光灯が、一瞬だけ、チカッ……チカ……と点滅する。


    その間にも、マネキンは無言のまま、首をぶら下げた姿勢で、じり……じり……と距離を詰めてくる。



    【診察室】《被験体37:マネキン》

    (4人攻撃成功で討伐完了/20以上で攻撃成功)

    千切:dice1d100=84 (84)

    凪:dice1d100=8 (8)

    凛:dice1d100=7 (7)

    冴:dice1d100=49 (49)

    ※被験体37の情報入手:+5

  • 88スレ主25/05/21(水) 20:59:44

    【戦闘開始】0:00

    【冴の固有能力:断罪の策略──発動】


    マネキンがこちらへと歩みを進める。
    その動きはぎこちなく、それでいて不気味なほど迷いがない。


    冴「仕留める。──行くぞ」

    冴が真っ先に前へ出る。

    足元にあった金属製のトレーを滑らかに蹴り上げ、反動で勢いを乗せてマネキンの肩関節に一撃を叩き込む。

    ゴッ……!という重い音と共に、マネキンの右肩が一瞬、不自然に傾いた。


    冴の目がさらに冷たく光る。

    その瞬間、冴は、マネキンの動きの読みを逆手に取り、今度は側頭部に正確な打撃を追加した。


    千切「おおおおおっ! よっしゃ、任せろッ!!」

    千切が気合を入れて突進し、マネキンの足元へ回り込むように動く。

    速度を活かし、低い姿勢から膝裏を蹴り上げるような一撃。

    カシンッ!と金属音が鳴り、マネキンのバランスが一瞬崩れた。

  • 89スレ主25/05/21(水) 21:02:05

    凛「……ふーん……けっこうおもしろい動きするんだな」

    凛はじっとマネキンを見つめていた。


    冴「凛、集中しろ。見物してる暇はねえ」

    冴の声が飛ぶが、その瞬間はすでに遅かった。

    凛が構えをとったときには、マネキンの姿勢が変化し、隙が消えていた。


    凪「ぐえ……」

    凪は診察台の端に足を引っかけてあっさりと転倒。

    背中を打ち付けて「あ〜……最悪〜……」と地面に寝転がる。


    千切「おま、何やってんだよ!今のタイミングで!?」

    千切が笑いながら突っ込むが、緊張感の裏にほんの少し余裕が戻った。

  • 90スレ主25/05/21(水) 21:17:21

    マネキンは歪んだ姿勢のまま、ガクガクと震えるように立ち尽くす。


    ──そう思った時。



    ガッ、ガッ、ガキィン!


    マネキンの関節が悲鳴のような音を立てながら反転動作を開始する。


    片腕を、振り子のように大きく持ち上げ──まるで打ち下ろす斧のような動きで、4人に向かって突進してくる。



    冴「来るぞ!」


    冴の短い警告が飛ぶ。



    攻撃の軌道は予測不能。

    マネキンの動きは重く見えて、どこか“生理的に合わない”奇妙さがある。


    その動きに対し、4人は一斉に身構えた。



    【診察室】《被験体37:マネキン》

    (1人攻撃成功で討伐完了/20以上で回避成功)

    千切:dice1d100=78 (78)

    凪:dice1d100=75 (75)

    凛:dice1d100=25 (25)

    冴:dice1d100=85 (85)

    ※被検体37の情報入手:+5補正

  • 91スレ主25/05/21(水) 21:19:31

    【回避開始】0:00


    振り下ろされたマネキンの腕は、鉄の杭のような威圧を帯びていた。

    その動きは異様に滑らかで、どこか人間の模倣のようでいて──やはり"人間ではない"何かだった。


    千切「うわっ、来た来た来たッ!!」

    千切が叫びながら、背を低くして側転気味に距離を取る。

    スピードに任せた回避は一瞬の風のようだ。


    凪はギリギリまで動かず、滑るように後方へステップ。

    その反応は計算というより、本能に近い。


    凛は一歩踏み込みかけた足を素早く引き、腕の軌道の外へ滑り込むように避けた。

    冷静なその目は、もはや“面白がっている”ようですらあった。


    冴はマネキンの腕の軌道を完璧に読み切り、無駄のない一歩で真横に抜ける。

    彼の動きは、機械のように正確だった。

  • 92スレ主25/05/21(水) 21:22:37

    マネキンの腕は宙を切り、後方の金属棚を破壊する。


    その衝撃音が部屋に響く中、4人は同時に体勢を整えた。



    冴「……今ので分かった。コイツ、決して鈍くない」


    冴が低く言う。


    凪「俺たちの動き、見てるっぽいよね」


    凪が軽く息を吐く。


    千切「だったら、見せてやるよ! 俺たちの“スピード”をな!!」


    千切が再び勢いよく踏み込む。


    凛「終わらせるぞ」


    凛が短く言い、次の一手に備える。



    【診察室】《被験体37:マネキン》

    (1人攻撃成功で討伐完了/20以上で攻撃成功)

    千切:dice1d100=79 (79)

    凪:dice1d100=60 (60)

    凛:dice1d100=41 (41)

    冴:dice1d100=47 (47)

    ※被験体37の情報入手:+5補正

  • 93スレ主25/05/21(水) 21:26:26

    歪んだ体勢を整えきれないマネキンに対し、4人は間髪入れず動いた。


    凛「──終わりだ」

    最初に動いたのは凛。

    滑るように間合いを詰め、傾いたマネキンの首に向かって一撃を叩き込む。

    拳ではない──棚の金属片を即興の武器として握っていた。

    ガキンッ!と、マネキンの首が大きく跳ね、バランスを崩す。


    その隙に、冴が背後から踏み込む。

    拾い上げた金属製のプレートを盾のように使い、肩関節を強引に叩き潰す。

    冴「──動きを止める。これで終わりにする」

    バキッ!という破砕音とともに、マネキンの右腕がぶらりと垂れ下がった。

  • 94スレ主25/05/21(水) 21:27:23

    続けざまに凪が回り込む。

    無表情のまま、凛が放った金属片を足元から拾い上げ、胸部に向けて渾身の振り抜き。

    凪「面倒だけど、ここで終わらせたほうが後が楽」

    金属片が胴体の合わせ目に突き刺さり、マネキンの動きが一瞬停止する。


    そして──

    千切「おっしゃあああああああッ!!!」

    千切が全力で跳び蹴りを叩き込む。

    目にも留まらぬ速度でマネキンの頭部を正面から蹴り抜くと、首が反転し、胴体ごと後方へ吹き飛んだ。


    ガッシャアアアアン──!!


    マネキンは診察台に激突し、そのまま崩れ落ちるように沈黙した。

  • 95スレ主25/05/21(水) 21:41:59

    【戦闘終了】0:00

    【撃破報酬/オーバーキル報酬:取得】


    四人が距離をとって見守る中、
    崩れたマネキンの身体から──
    淡い緑色の光が、ふわりと浮かび上がった。

    それは2つのガラス小瓶。
    中には、光を宿した液体が揺れていた。


    凪「……ドロップアイテム?」

    凪がぼそりと呟く。


    冴が瓶を拾い上げ、ラベルに残った手書きの文字を読む。

    冴「《静心の記録(せいしんのきろく)》、そして《帰神の雫(きしんのしずく)》……どっちも、精神安定用の補助剤らしい」

    凛「ネーミングセンスが謎だな」

    凛が無表情で小瓶を覗き込む。

  • 96スレ主25/05/21(水) 21:43:45

    ここまでが消えた部分です。
    ダイスは消える前の情報を参照しました。
    それでは引き続きよろしくお願いします。

  • 97スレ主25/05/21(水) 21:44:45

    千切「キモかったけど、なんか報われた気がする!!!」

    千切がへたり込みながら、笑い混じりに大きく息を吐いた。


    戦闘は終わった。

    だが、敵はまだ“ここ”にいる。


    それを、誰もがなんとなく理解していた。


    ■入手アイテム
    ・《静心の記録》×1:SAN値+1回復
    ・《帰神の雫》×1:SAN値+1回復

  • 98スレ主25/05/21(水) 21:48:08

    診察室の扉を再び開くと、ひんやりとした外気が廊下へ流れ込んだ。

    そこに──黒猫・ヨイチの姿があった。


    千切「あっ……!ヨイチ!」

    千切が駆け寄り、しゃがみ込んで嬉しそうに撫でる。

    ヨイチは逃げることもなく、ただじっとしている。


    千切「よしよし、お前のおかげで助かったぞ〜……!」

    「うみゃ……」

    ヨイチは少し怪訝そうに鳴いたが、爪を立てることはなかった。


    そのまま、ふいと踵を返し、廊下を進みはじめる。


    冴「……誘導、再開か」

    冴がつぶやき、4人は無言のまま後を追う。

  • 99スレ主25/05/21(水) 21:59:34

    やがて、行き着いたのは廊下の突き当たり──古びた木の扉。
    ハンドルには、しっかりと鍵穴が刻まれており、そのすぐ上には、小さな銘板が取り付けられていた。

    ──【医師休憩室】


    千切「よーし、開けるぞー!」

    千切が勢いよくノブを回す──が、ガチャリと空振りの音。

    千切「……鍵かかってる」


    凪「さっきの鍵、試してみたら?」

    凪が、千切の手持ちのポーチから、薬棚で拾った小さな鍵を取り出す。


    カチリ、と軽快な音が響いた。

    鍵はぴったりとハマった。


    千切「おおっ、マジで当たり!」

    千切が押し開け、4人はゆっくりと中へ踏み込む。


    ──その背後で、ヨイチは扉の前に座り込み、無言で彼らを見送っていた。

  • 100スレ主25/05/21(水) 22:04:38

    【探索進行】0:00


    ドアを開けた瞬間、空気が変わった。
    中からは、ひんやりとした冷気がゆるやかに流れ出す。

    鼻をつくのは、埃と薬品の混じった古い匂い。
    だが、不快というほどではない。

    部屋の中は、一見して整然としているように見えた。

    奥には簡易ベッドがいくつか並び、
    その傍らには小さなロッカー。
    壁際には、くすんだ色の書棚。

    中央には、テーブルと椅子がきちんと整列していた。



    だが──

    どこか、言葉にできない違和感が、背筋をゆっくりとなぞる。


    無人の空間のはずなのに、何かが“こちらを見ている”ような、静かな緊張が満ちていた。

  • 101スレ主25/05/21(水) 22:07:21

    【医師休憩室エリア】


    ①ベッド周辺
    寝具、床下、枕元など

    ② ロッカー
    施錠されていない個人ロッカー群

    ③ 書棚
    古びた医学書、雑誌、書類束など

    ④ テーブル&引き出し
    小物、メモ、生活用品など

  • 102スレ主25/05/21(水) 22:12:33

    部屋の中は静かだったが、整然とした空間ほど、何かを“隠している”ようにも見える。


    千切「……じゃあ、俺はベッドのほう見る!」

    千切が一番に声を上げ、①奥の簡易ベッドへ駆け寄る。

    きれいに整えられたシーツの下、枕元、床下──
    使われていないはずなのに、誰かが“最近までいた”ような微かな気配が残っている。


    凛「じゃ、ロッカー見てくる」

    凛は淡々と呟き、②壁際のロッカー群へ向かう。

    一つひとつは施錠されていない。

    だが、どこか生活の痕跡が残っており、誰かの“日常”が確かに存在していた。


    凪「んじゃ、書棚行きまーす」

    凪は気だるげに話しながら、③くすんだ色の書棚を眺める。

    医学書、分厚い雑誌、乱雑に詰め込まれた書類の束。タイトルもまばらで、年代もバラバラ。
    その中に、何か違和感のある本や隙間があるかもしれない──

  • 103二次元好きの匿名さん25/05/21(水) 22:18:03

    今回のメンバーも戦闘強いね
    合間に出てくる黒猫ヨイチも可愛くて癒し

  • 104スレ主25/05/21(水) 22:28:31

    冴は無言で、④中央のテーブルと引き出しへと歩き出した。

    テーブルには、整然と置かれたカップと皿。
    引き出しの中には、何かがあるのか──生活感と無機質さが混在する空間に、冴の視線が静かに走る。


    それぞれが、目的地に着いた。

    誰も言わないだけで──部屋のどこかに、明らかな“異質さ”が漂っていることを、全員がうすうす感じていた。

  • 105スレ主25/05/21(水) 22:36:30

    >>103 千切と冴が安定、凪と凛はやる時はしっかり決めてくれるという感じですね!奪還編ということもあり、癒しを入れてみました。スレ主猫大好きなので。


    ということで、スレ主は寝ます。

    明日は千切の探索からスタートです!探索頑張ってアイテム集めておいて欲しいですね。奪還編はまだまだ続きますので、引き続きよろしくお願いします。

    それでは、おやすみなさいませ。

  • 106二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 05:54:48

    いつもお疲れ様です!
    奪還編、楽しく読ませていただいてます
    頼もしい奪還組と癒し枠の猫ちゃんのお話、続きが楽しみです!

  • 107スレ主25/05/22(木) 07:35:06

    >>106 ありがとうございます!続き、頑張って更新して行きますので、どうか引き続き見守ってくださいね。


    おはようございます。本日も仕事の合間に更新できるタイミングで更新しますので、よろしくお願いします。

  • 108スレ主25/05/22(木) 08:35:45

    【医師休憩室探索:①ベッド周辺・千切豹馬】

    【探索開始】0:00


    整然と並べられた簡易ベッド。
    どれも同じ型、同じ白いシーツ、同じ形の枕。

    千切はその均一さを見て、一瞬だけ違和感を覚えた。

    ──整いすぎている。整えられすぎている。


    千切「全部同じに見えるけど……、ん?」

    歩きながら視線を走らせる中、ふと足が止まる。

    最も奥のベッドだけが、ほんのわずかに異なる。
    シーツに刻まれた皺が、不自然な向きで残っていた。

    他のベッドにはない、
    まるで誰かがごく最近そこに手をついたか、
    座ったかのような──生々しい跡。

  • 109スレ主25/05/22(木) 08:36:46

    千切「……誰か、いた……?」


    千切は警戒しつつ、ゆっくりとそのベッドに近づいた。

    気配はない。

    けれど、空気の温度だけがわずかに違って感じる。


    彼は慎重にシーツをめくり、その下に何かが隠れていないかを確かめはじめる。



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 110スレ主25/05/22(木) 09:59:00

    【探索成功】0:00


    シーツをそっとめくったその下──
    パサッという軽い音とともに、何かが滑り出した。

    千切「……ファイル?」

    千切が拾い上げたそれは、薄く古びた小さなファイルだった。
    角は少し折れ、端の留め具も緩んでいたが、まだ中身は読める状態。

    表紙には、明確にこう記されていた。


    ──【医師用内部資料】


    千切「うわ、なんか……ガチなやつ出た……」

    ファイルを開くと、中には数枚の手書きの報告用紙。
    そこには、病院の表向きの記録には載せられない、
    内部処理に関するメモが綴られていた。


    『精神安定措置に失敗した職員について、看護師休憩室を一時封鎖。』

    『対象者の"追跡"を禁止。必要な記録は、管理室へ移送済み。』

  • 111スレ主25/05/22(木) 10:46:43

    千切「……封鎖、追跡の禁止……って」

    千切の声が少しだけ低くなる。

    それは、“行方不明者がいた”という意味ではなく、“いたけれど、それ以上探すな”という暗黙の指示だった。


    千切「……やべーって、この病院」

    彼はファイルを大事にポーチへとしまいながら、視線だけをそっと部屋の奥へ向けた。

    誰もいないはずなのに、
    そこに“気配”だけが残っているような、妙な静寂があった。

  • 112スレ主25/05/22(木) 11:37:28

    【医師休憩室探索:②ロッカー・糸師凛】

    【探索開始】0:00


    鉄製のロッカーが、壁際に沿っていくつも並んでいた。
    グレーに塗られたその表面はところどころ塗装が剥がれ、金属の地肌が鈍く光っている。

    凛はひとつずつ手をかけ、無言で扉を開いていった。
    どれも、施錠はされていない。


    だが──

    この空間全体が、妙に無機質すぎた。
    人の生活があったはずの場所なのに、そこには感情や記憶の気配が一切ない。

    ただ“物”だけが並び、意味だけを失った寒々しさが残っていた。

  • 113スレ主25/05/22(木) 11:39:06

    凛「……ここ、空っぽなわけじゃねぇ。けど、“生”がない」


    開けたロッカーの中には、黄ばんだ白衣、破れた靴、薄汚れたメモ。

    どれも長く放置されたまま、無言で時を過ごしていた。



    そんな中──


    ひとつだけ、わずかに違和感のあるロッカーを見つけた。


    扉の角度、床の擦り傷、配置のバランス。

    ほんの僅かに“他と違う”。


    凛「……このロッカーだけ、“誰かが最近触った”形跡がある」


    凛は扉に手をかけ、警戒を怠らずに中を覗き込んだ。



    dice1d2=2 (2)

    1:成功 2:失敗

  • 114スレ主25/05/22(木) 11:59:56

    【探索失敗】0:00

    【SAN値-1:23→22】


    わずかな違和感を頼りに開けたロッカー。


    その中には──やはり何も“特別なもの”はなかった。

    黄ばんだ制服、片方だけの靴、湿気を含んだ書きかけのメモ。
    そのすべてが、“何かを伝えるようでいて、何も言わない”。
    曖昧で、意味のない断片の羅列。


    凛は黙ってメモを広げてみたが、インクは滲み、読み取れる文字はごくわずか。
    文章の流れも不自然で、情報らしいものは得られなかった。


    凛「……チッ」

    舌打ちしながらロッカーを閉める。
    だが、ロッカーが閉まる“カチャ”という音が、やけに大きく耳に響いた。


    何も得られなかった──
    それだけの事実が、妙に苛立ちと焦燥感を呼び起こした。

  • 115スレ主25/05/22(木) 12:55:26

    【医師休憩室探索:③書棚・凪誠士郎】


    【探索開始】0:00



    壁際にずらりと並んだ書棚。

    棚の奥には、医学書、専門誌、そして綴じられたファイルがぎっしりと詰め込まれていた。


    凪は軽く肩をすくめながら、棚の前にしゃがみ込む。



    凪「わー……カビくさ……」


    指で本の背表紙をなぞると、細かい埃が舞い、鼻をつく湿った紙とカビの臭いがふわりと立ち込めた。


    どれもこれも、長く誰にも触れられていなかったのが明らかだった。



    凪「……誰かの知識の塊、って感じだよね。俺は別に読みたくないけど」


    ぽそっと独り言のように呟きながら、凪は雑誌とファイルの隙間に指を差し込む。

    そのまま、何か挟まれていないか、棚板の奥に変な凹みがないかを探りはじめた。


    薄暗く、どこか息苦しいような静けさ。

    だが凪の表情は変わらないまま、淡々と探索を続ける。


    dice1d2=2 (2)

    1:成功 2:失敗

  • 116スレ主25/05/22(木) 13:32:16

    【探索失敗】1:00

    【SAN値-1:24→23】


    書棚の奥まで手を伸ばし、何冊かのファイルを引き抜いてはページをめくる。

    だが、そのどれもが──意味のない専門用語の羅列、あるいは劣化した資料の断片だった。


    凪「ふーん……こっちも外れか」

    凪は小さくあくびを噛み殺すように言いながら、ファイルを棚に戻す。
    だがその指先には、うっすらと黒ずんだ紙の染みが残っていた。

    部屋の空気は変わらず重く、
    そして、本をめくるたびに立ち昇るカビの臭いが、じわじわと意識を鈍らせていく。


    ──“この空間そのもの”が、精神を削ってくるような感覚。

    明確な恐怖はない。だが、心が確実にすり減っていく。


    凪「……こういうのが一番イヤなんだよね」

    凪の目がわずかに伏せられた。

  • 117二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 13:34:49

    凪やっぱり相方の探索ダイス運引き継いでるだろ

  • 118スレ主25/05/22(木) 14:17:47

    >>117 2人とも探索は苦手なんですかね…


    折角なのでここまでのダイス成功確率です。


    ●ダイス成功確率(探索)


    ・千切豹馬:3/3

    ・凪誠士郎:0/3(最適解:0/1)

    ・糸師凛:1/3

    ・糸師冴:2/2(最適解:1/1)


    ●ダイス成功確率(戦闘・回避)


    ・千切豹馬:3/3

    ・凪誠士郎:2/3

    ・糸師凛:2/3

    ・糸師冴:3/3

  • 119スレ主25/05/22(木) 15:04:42

    【医師休憩室探索:④テーブル&引き出し・糸師冴】


    【探索開始】1:00



    中央に据えられた古びた木製のテーブル。

    使い込まれた天板には、細かな小傷が無数に走り、ところどころにうっすらと何かの染みがこびりついていた。


    冴は椅子を引くこともなく、テーブルの横に立ったまま、引き出しに手をかける。



    ──ギィ……。


    金属のレールが軽く軋む音を立て、引き出しがゆっくりと開く。


    中には、乱雑に放り込まれたメモ帳、錆びたボールペン、そして書きかけのカルテ。


    だが、冴の目はその配置にただならぬ違和感を覚えた。


    紙の並び、ペンの位置、埃の溜まり方──

    それらが、“無造作”のふりをした“意図的な乱雑”のように感じられる。



    冴「……動きの痕跡だな。最近、誰かが触った」


    冴は余計な物音を立てないよう、慎重に紙の束を持ち上げる。



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 120二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 17:33:18

    千切と冴の赤髪組の安心感がすごい
    探索も戦闘もここまで全部成功してるね
    探索苦手組も戦闘得意そうだし、これから本領発揮してくれると期待してる

  • 121スレ主25/05/22(木) 18:26:00

    >>120 とっても頼もしいですよね。凪と凛は是非、次戦でいいダイス値を出して欲しいです!

  • 122スレ主25/05/22(木) 18:50:53

    【探索成功】1:00


    引き出しの中──
    乱雑に見えた紙束の下に、ほんのわずかに“重さ”の違う物があった。

    冴は一切の迷いなく、書類を横に避け、その下を覗き込む。


    冴「……やはりな」

    そこにあったのは、小さな金属製の鍵。
    丸みを帯びたシルエットの持ち手には、【NURSE】の文字が刻まれていた。

    冴「刻印入り……部屋名を示しているなら、“看護師関連”の扉だな」

    冴は慎重に鍵を持ち上げると、光にかざして状態を確認する。
    少し錆が浮いているものの、使用に支障はなさそうだった。


    冴「ここに隠しておく意味があるとすれば──この鍵は“持ち出されるとまずい”ものだった、ということだ」

    鍵をポーチに収め、冴は音もなく引き出しを閉じた。

    誰にも気づかれないように、
    誰にも触れられないように──
    この鍵は、ずっと“ここ”にあったのだ。

  • 123スレ主25/05/22(木) 19:25:27

    探索を終え、4人は再びテーブルを囲むように集まった。
    それぞれが手にした成果を順に差し出していく。


    千切「俺、これ拾った」

    千切がポーチから小さなファイルを取り出し、表紙をトンと指先で叩いた。

    【医師用内部資料】──そう印字された古い書類。


    千切「看護師、封鎖、追跡禁止って。……どういう意味なんだろうな」

    千切が言いながら眉をひそめる。

    凛「職員が“何かに”なったってことじゃねえか?」

    凛が無感情に返す。

    凪「気持ち悪いなあ、ここほんと……」

    凪がふとロッカーの方へ目をやったが──
    彼自身と凛は結局、有力な情報を得られていなかった。


    冴「こっちは鍵だ」

    冴がテーブルに小さな金属の鍵を置く。

  • 124スレ主25/05/22(木) 19:27:08

    凪「“看護師休憩室”って、書類に出てきた部屋だね」

    凪が指摘すると、冴は頷く。

    冴「一致している。おそらくこの先、何かがある」


    その時だった。

    凛がふと、自分の腕時計に目を落とす。

    凛「……時刻、変わってる。1:00になってるぞ」

    他の3人も、自分の腕に巻かれたデジタル時計を見る。
    静かに、確かに表示は「1:00」。

    千切「えっ、時間進んでんじゃん!これ、24:00になったらヤバいやつだろ!?」

    千切が焦ったように声を上げる。

    冴「心配すんな。探索は順調だ」

    冴が低く断言する。


    冴「……焦ると周りが見えなくなる。むしろ、それが一番危険だ」

    千切は少し肩をすくめて「……うん、わかった」とだけ答えた。

    小さく、だが確実に、空気が張り詰め始めていた。

  • 125スレ主25/05/22(木) 19:31:01

    情報共有が終わった後も、冴はロッカーの方をしばらく見つめていた。

    その目は、まるで見えない“図面”を読み取っているかのように、微かな違和感を拾っている。



    冴「……凛。もう一度だ」


    唐突な一言に、凛は目を細めて冴を見る。


    一瞬の沈黙ののち、何も言わずにうなずいた。


    凛「……わかった」


    そのまま静かに立ち上がり、再びロッカーの前へ歩いていく。



    ──冴の固有能力【最適解】発動。

    糸師凛のロッカー探索、再試行。



    凛は何も言わずに、先ほど確認したロッカーの並びをもう一度じっくりと見渡す。


    ほんのわずかなズレ、指紋の跡、開閉の抵抗──

    すべてを、今度は見逃さないつもりで。



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 126スレ主25/05/22(木) 19:56:09

    【探索再試行:成功】0:00


    ロッカーの並び──
    凛はもう一度、先ほど見逃した“違和感のあった扉”に手をかける。

    指先で触れた瞬間、細かい指紋の跡に気づいた。
    この一台だけ、最近になって開閉された痕跡がある。


    凛「……ここか」

    扉を静かに開け、内部を照らすと──
    底の板と背面の間に、何かが滑り込ませてあるのが見えた。

    凛は器用に指を差し入れ、薄く折り畳まれた紙の束を引き出す。

    それは、古びたメモ用紙に書き殴られた看護記録。
    読みやすい字ではないが、内容は明確だった。


    『職員O・Y(看護師)に対し、三度目の安定処置を実施。』
    『効果なし。処置中、被験体37の幻覚を訴える。』
    『以降、言動に自己認識の乖離あり。』
    『封鎖区域での徘徊記録あり。退職処理は未完。』

  • 127スレ主25/05/22(木) 19:56:55

    (……処置失敗。幻覚。“徘徊”……)

    凛は声に出さず、情報を頭の中で整理する。


    凛「これが、“追跡を禁止された看護師”ってわけか」


    ロッカーの奥、さっきとは違う“空気の重さ”があった。

    まるでその情報だけが、まだ“この病院に留まっている”ような感覚。

    凛は紙束をポーチにしまい、振り返らずにロッカーを閉じた。

  • 128二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 20:02:55

    このレスは削除されています

  • 129スレ主25/05/22(木) 20:04:04

    凛が再びロッカーから戻ってきた。
    手にしていたのは、折り畳まれた古い看護記録の束。


    凛「……見つけた。看護師の記録だ」

    無言で差し出した紙束を冴が受け取り、その場で目を走らせる。
    内容を読み進めるうちに、冴の表情がほんのわずかに変わった。

    冴「……よくやった、凛」

    その一言は、簡潔で、だが確かな“評価”だった。

    凛「……うん」

    凛はわずかに目線を逸らしながら、小さく返す。
    ──耳がほんのり赤かった。

    千切「えっ、素直!」

    千切がちょっと驚いたように笑いながら凛を見た。


    凪「看護師の記録をこの部屋で見つけるって、偶然にしては出来すぎてるよね」

    凪がメモを覗き込みながら、自然な口調で言った。

    冴「“ここにいる”可能性もある。処置失敗、退職処理未完。徘徊記録……」

    冴の声が低くなる。

  • 130スレ主25/05/22(木) 20:08:52

    その瞬間──室内の空気が一段、冷えた。


    カシャン……ッ

    テーブルの上に置いていたティーカップが、小さく揺れた。


    千切「……っ、今揺れた?」

    千切が一歩後退る。

    簡易ベッドのひとつ──シーツが音もなく、ずるりと落ちる。


    凛「──まさか、“この部屋にいる”とか言わないよな?」

    凛の言葉が落ちると同時に、空気が凍りついた。

  • 131スレ主25/05/22(木) 20:10:41

    ベッドの陰から、“何か”が起き上がる音がした。


    ギギ……バキッ……と関節が軋むような、明らかに人のそれではない音。



    黄ばんだ看護衣。折れ曲がった腕と足。空洞のような瞳。


    “それ”は確かに人間の形をしていたが──“人ではなかった”。



    凪「……いた、O・Y……!」


    凪が低く呟く。


    冴がすでに前へ出ていた。


    冴「戦闘態勢。ここから先は、“死者”が歩く領域だ──」



    【医師休憩室】《職員O・Y:看護師》

    (4人攻撃成功で討伐完了/25以上で攻撃成功)

    千切:dice1d100=34 (34)

    凪:dice1d100=74 (74)

    凛:dice1d100=38 (38)

    冴:dice1d100=86 (86)

    ※職員O・Yの情報入手:+5補正

  • 132二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 20:12:03

    一撃!
    成功率低い間はできるだけ短いターンで倒し切ってSANを温存したいね

  • 133二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 20:18:03

    戦闘強いの安心感ある

  • 134スレ主25/05/22(木) 20:23:20

    >>132 ここから先もストレートに倒して温存しておきたいですね!

    >>133 前・廃病院も強かったので、やっぱりブルーロックスはみんな戦闘強者なんでしょうね…。

  • 135スレ主25/05/22(木) 20:34:44

    【戦闘開始】0:00


    “それ”── O・Yは、崩れかけた姿勢のまま、不規則に床を這いながら近づいてくる。

    だが、4人は動じなかった。


    千切「こいつ速いけど──でも、俺の方が速い!!」

    千切が真っ向から飛び込んだ。
    床を滑るように動き、O・Yの腕が届くよりも先に、胴体に思いきりタックルを叩き込む。

    ガシャンッ!

    O・Yは、ベッドに倒れ込むように吹き飛んだ。


    凛「動きは遅くねぇ……けど、パターンは単純だ」

    凛は動きを完全に読み切っていた。
    起き上がり、振りかぶってきたO・Yの腕をすり抜け、手にした金属トレイでこめかみに横打ちを入れる。

    頭部が跳ね、O・Yがよろける。

  • 136スレ主25/05/22(木) 20:35:30

    凪「よっと……じゃあ、俺の番」

    凪は物静かに、しかし正確に背後を取る。
    看護衣のすそを掴んでバランスを崩し、そこに思い切り肘を叩き込む。


    冴「……もう倒れていいぞ」

    冴が最後に踏み込む。
    無駄のない一撃、O・Yの胸部へ掌底。
    その動きには、まったく迷いがなかった。

    ゴッ……バキン……!

    O・Yの体がぐらりと揺れ、そのまま崩れ落ちた。
    異様な姿勢で四つん這いになったまま、動かなくなった。

  • 137スレ主25/05/22(木) 21:00:51

    【戦闘終了】0:00

    【撃破報酬/1ターン撃破報酬:取得】


    崩れ落ちたO・Yの歪んだ四肢は元には戻らず、空洞の瞳だけが、ぽっかりと天井を見つめている。

    その身体の下から、カラン……と音を立てて転がり出たものがあった。

    ひとつは、淡い光を放つ小さなカプセル。
    もうひとつは、封がされたままの透明な注射器。

    どちらも、明らかに“ただの医療品”ではなかった。

     
    冴が歩み寄り、二つを拾い上げる。


    千切「うわ、薬っぽいけど……こーいうの、怖くない? 副作用とか」

    千切が少し身を引きながら言う。

    冴「これは《沈静カプセル》だな。精神安定作用がある」

    冴がカプセルをかざしながら淡々と説明する。

  • 138スレ主25/05/22(木) 21:02:09

    冴「こっちの注射は……《遮断注射》。一度だけ精神的ショックを遮断できるらしい」

    凪「へえ〜〜……それ、俺に使ってくれない?」

    凪が興味なさげな顔で言いつつ、手を伸ばしかける。

    千切「いやいやいや!お前全然怖がってねーだろ!!そういうのは俺みたいにダメージ受けてる奴が使うもんだろ!」

    千切が即座に遮り、注射器を引き寄せる。

    凛「使うタイミング、考えた方がいいと思うぞ」

    凛が椅子に座ったままぼそっと言いながら、目線だけは注射器をじっと追っていた。


    冴「使わず済むのが一番だが、準備はしておくべきだ」

    冴が両方のアイテムをテーブルの中央に置く。

    光を帯びたカプセルと、澄んだ液体を湛えた注射器。
    静かなテーブルの上で、それらはまるで“この部屋に残された警告”のように、静かに存在感を放っていた。


    ■入手アイテム
    ・《沈静カプセル》×1:SAN値+1回復
    ・《遮断注射》:SAN値減少を1回無効化

  • 139スレ主25/05/22(木) 21:09:19

    医師休憩室が静寂に包まれてから、少し経った時。


    千切「はぁぁああ〜〜〜、終わった……! 疲れた〜〜〜〜ッ!!」

    千切がどさっとベッドに座り込む。

    千切「なあ、ちょっと休憩しね? なんか静かになったし。さーて……しりとりでもしよーぜ!!」

    突然の提案に、3人が揃って千切を見る。


    凛「……は?」

    凛が、呆れ気味に言う。

    凪「……まぁ、忙しいよりはマシかな」

    凪があくび混じりに肩をすくめた。

    冴「短時間なら。緊張の緩急は必要だ」

    冴が淡々と許可を出す。


    こうして、廃病院の奥──戦闘の直後に、とても場違いなしりとりが始まろうとしていた。

  • 140スレ主25/05/22(木) 21:23:16

    戦闘の緊張が薄れた医師休憩室に、ちょっとだけ緩んだ空気が流れる。

    椅子を引き、テーブルの周囲に4人が集まると、千切が両手を叩いた。


    千切「よーし、それじゃあ、しりとりスタート!!」

    凪「しりとりとか、久しぶりなんだけど」

    凪が椅子にだらしなく座りながら、苦笑を浮かべる。

    凛「俺、最後」

    凛が腕を組みながら言う。


    千切「じゃあ俺から、凪、冴、凛な!」

    千切が張り切って宣言すると、皆一応うなずいた。

  • 141スレ主25/05/22(木) 22:26:41

    すみません、意識が飛んでましたので、スレ主は寝ます。明日はしりとりからスタートします(なぜしりとりをしようと思ったのか、疲労困憊なスレ主には不明です。でも千切が楽しそうなので良しとします)。明日もよろしくお願いします!

  • 142二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 22:30:49

    スレ主今日も更新乙でした!
    眠いときに文章書いていると怪文書になるの凄くわかります
    よし!これで完璧!って思って翌朝見返すと内容頓珍漢だったこと何回もありましたww

  • 143二次元好きの匿名さん25/05/22(木) 22:44:54

    唐突なしりとりでめちゃくちゃ笑ってる
    スレ主お疲れ様!!明日も楽しみにしてます

  • 144二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 01:46:23

    今日も更新ありがとうございました!
    明日は癒しのしりとり回になりそうですね
    誰が勝つのかどんな言葉が飛び出すのか、わくわくしながらお待ちしてますね

  • 145スレ主25/05/23(金) 08:28:22

    >>142 ありがとうございます!眠気強い時は素直に寝るのがいいですね…なんでしりとりしてるんだろ…

    >>143 ありがとうございます!スレ主も自分で書いたくせにしりとりに笑ってました。

    >>144 ありがとうございます!折角なのでしっかりしりとりしている様子を書きます!


    おはようございます。本日もよろしくお願いします。今日頑張れば休みなので、仕事の合間に更新頑張ります。まずはしりとりを見守ってくださいませ。

  • 146スレ主25/05/23(金) 10:01:50

    【小休憩:医師休憩室しりとり大会・第1部】


    千切「よし、じゃあ俺から! “すいか”!」

    凪「か……“カニバロウ”」


    千切「バロウ!?」
    凪「だって馬狼、カニの殻似合いそうじゃん」


    冴「“ウイングバック”」

    凛「“クラブチーム”」

    千切「む……“むささび!”」

    凪「“ビーストバロウ”」


    千切「なんだそのバロウシリーズ!?」
    凪「獣タイプ」

  • 147スレ主25/05/23(金) 11:33:12

    冴「“ウルグアイ”」

    凛「“イブラヒモビ ッチ”」

    千切「“チョコレート”!」

    凪「“トーストバロウ”」


    千切「……普通に朝食じゃね?」


    冴「“unodostres”」

    凛「兄ちゃん、スペイン語……」

    冴「悪い。“す”だ」

    凛「じゃあ“スライディング”」

    千切「……“グリフォン!”」


    ……
    ……


    凛「“ん”ついてんぞ」

  • 148スレ主25/05/23(金) 11:33:56

    千切「……あああっっ!!」

    千切が崩れ落ちる。


    千切「なんで“グリフォン”なんか言った俺ぇぇぇっ!!」

    凪「ほら、“バロウ”にしとけばよかったのに」

    千切「どう使うんだよ“グ”でバロウって!?」


    冴「よし、再スタートだ」

    冴が静かに言って、また新たなゲームが始まった。

  • 149スレ主25/05/23(金) 11:50:41

    【小休憩:医師休憩室しりとり大会・第2部】


    凪「じゃ、“バロウゴーレム”」

    凛「“ムバッペ”」

    冴「“España”」


    凛「兄ちゃん、それ何?」
    冴「気にするな。“あ”でいい」


    凪「“アボカドバロウ”」

    凛「“ウィング”」

    冴「“Golazo”」


    凛「おい、また日本語じゃないぞ」
    冴「“o”で繋がってる」

  • 150スレ主25/05/23(金) 11:54:11

    凪「“オムレツバロウ”」

    千切「完全に料理担当じゃんバロウ……」

    凛「“ウクライナ”」

    冴「“Afición”」


    凛「兄ちゃん、それ絶対“ん”じゃん」
    冴「……」


    凪「しりとり、終了ー」

    千切「冴………まさかの“ん”かよ……」


    冴、無言で腕を組み直す。

    静かな敗北を受け入れるその姿に、ほんの少しだけ悔しさがにじんだ。

  • 151スレ主25/05/23(金) 11:55:04

    スレ主スペイン語分からないので、AIに頼んでます。言葉が繋がってなくてもお許しください。

  • 152スレ主25/05/23(金) 12:02:01

    【小休憩:医師休憩室しりとり大会・第3部】


    凪「……“ウニバロウ”」


    凛「なんだその生っぽいやつ」
    千切「こいつ“ウ”で攻めてくる気だ!」
    冴「定型戦術。相手に不利な文字を押し付ける型だな」


    凛「……“ウーデゴール”」

    凪「“ルビー・バロウ”」

    凛「“ウーゴ・ロリス”」

    凪「“スイミングバロウ”」


    千切「もう意味わかんねぇよ!馬狼泳ぐのか!?」
    冴「そこまでされる馬狼照英も不憫だな」

  • 153スレ主25/05/23(金) 12:05:41

    凛「“ウルグアイ”」

    凪「“イスカリオテバロウ”」


    千切「どこで覚えた単語!?」


    凛「……“ウイイレ”」

    凪「“レジェンドバロウ”」

    凛「“ウィリアン”」


    千切「“ん”!!」

    凛「……!!!」

    凪「よっし」

    冴「……終了だな」

    千切「……まじで、バロウが……勝った」


    【勝者:凪 誠士郎(バロウ)】

  • 154スレ主25/05/23(金) 12:08:37

    静かに、しかしどこか悔しげに凛が目を伏せた。

    完璧な守備と攻撃を重ねていたはずの男が、たった一つの“バロウ”に敗れた瞬間。


    冴「どうやらこの病院で一番強いのは……バロウらしい」

    冴が淡々と総括する。


    千切「……あーあ、これでまたバロウが調子乗るじゃん……」

    千切が苦笑しながら天井を見上げた。


    凪「今度“バロウ辞典”作ろうかな〜」

    凪が満足げに言うと、3人の表情が一瞬で曇った。


    「絶対やめてくれ」

  • 155スレ主25/05/23(金) 12:10:01

    しりとりと言った責任(記憶にない)は取りました。ここからホラーに戻りますのでよろしくお願いします。馬狼は今頃クシャミをしているでしょう。

  • 156スレ主25/05/23(金) 13:50:08

    医師休憩室の扉が、静かに軋んだ音を立てて開く。

    廊下に漂う空気は、先ほどよりも冷たく、湿っていた。照明はほとんど点いておらず、ぼんやりと非常灯が灯るだけ。

    その中心に――黒猫・ヨイチがいた。

    ヨイチは、彼らをじっと見上げると、小さく三回、鳴いた。

    「みゃう、みゃう、みゃうっ」

    短く、鋭く、どこか抗議するような鳴き声だった。


    千切が小さく首を傾げる。

    千切「……あれ、怒ってる? もしかして、しりとり参加したかったのか……?」

    その言葉に、ヨイチは唐突に「シャーッ」と威嚇した。

    空気が、ぴんと張り詰める。
    ……が、それ以上は何もせず、くるりと背を向けると、猫は廊下を歩き出した。音もなく、まるで床を滑るように。

    凪が肩をすくめる。

    凪「……あー、また案内してくれるっぽいね」

    四人は言葉少なに歩き始める。
    靴音が、湿った床に鈍く響いた。

    病院は静かだった。だがその静けさが、耳鳴りのように、不快に長く続いていた。

  • 157スレ主25/05/23(金) 18:47:36

    ヨイチのしなやかな足取りは、廊下を迷いなく進んでいく。

    4人はその後ろをついていきながら、少しずつ周囲の空気の変化に気づき始めていた。


    千切「……なんか、静かすぎね?」

    千切が小声で言った。

    冴「空気が重い。さっきまでとは違う」

    冴が足を止めずに返す。


    薄暗い廊下の先。
    そこに、一枚の白いプレートが掲げられていた。

    プレートには、かすれた文字でこう記されていた。


    ──“検査室”

    その下にある扉は、他の部屋と同様、古びた木製のドア。
    だが、近づくごとに──胸の奥を圧迫するような重苦しさが増していく。

  • 158スレ主25/05/23(金) 18:48:28

    凪「……何ここ、息苦しい」

    凪が眉をひそめる。

    凛「変だな。別に空気がこもってるわけじゃねえのに」

    凛も違和感を感じ取り、扉を睨むように見つめた。

    千切は、ぐっと唾を飲み込んだ。


    ヨイチはというと、その場でぴたりと立ち止まり、背後を見上げる。
    その瞳が「ここだ」と語っていた。


    冴「……よし、開けるぞ」

    冴が一歩前に出て、ドアノブに手をかける。


    ギィ──……
    音を立てて、検査室の扉が開きはじめた。

  • 159スレ主25/05/23(金) 18:58:25

    【探索進行】1:00


    扉を開けた瞬間──ひんやりとした空気が、肌を撫でた。

    そこは、異様なまでに静かな空間だった。まるで、音そのものがこの部屋だけを避けているかのように、物音一つ聞こえない。

    室内は、四角く整った形状をしていた。壁も床も、どこか無機質な白を基調としている。
    けれど、その白さには、清潔感ではなく……人の温度を徹底的に排除したような不自然さがあった。


    凪「……なんか、ここ……“作り物”みたい」

    凪がぽつりと呟く。

    千切は壁をそっと指でなぞるが、妙にさらさらとした、現実感のない感触に戸惑いを覚えた。


    中央には、鉄製の検査台が無機質に置かれていた。その表面はうっすらと埃をかぶっているようで、誰かが最近使った形跡はない。……だが、だからこそ気味が悪かった。“このまま”の状態で長く放置されている異常さが、沈黙の中に漂っている。

  • 160スレ主25/05/23(金) 18:59:40

    壁際には、医療機器やモニター、小さな棚やロッカーが整然と並んでいた。整いすぎた配置が、逆にぞっとするような人工的さを引き立てていた。

    そして、床──

    そこには、無数の細かいキズ跡が刻まれていた。足跡ではない。何かを引きずったような、不規則な線が四方に走っている。


    凛「……これ、患者の移動跡とか、そういうのじゃないよな」

    凛が、床の線を見つめながら言う。

    冴「ああ。これは人間の重さじゃない」

    冴が即座に断言する。


    その場に立っているだけで、背中に汗が滲むような、理由のない不安感。まるで、目を離したらすぐに“何か”が現れそうな、そんな気配がこの部屋にはあった。

  • 161スレ主25/05/23(金) 21:15:05

    【検査室エリア】


    ①中央検査台
    布がかけられた検査用ベッド

    ②医療モニター類
    壁際に並ぶ使用不明の機器類

    ③収納棚
    医療道具、記録類が詰め込まれている

    ④小型ロッカー
    スタッフ専用の私物置き場

  • 162スレ主25/05/23(金) 21:18:49

    検査室の無機質な静けさの中、4人はそれぞれ部屋の様子を見渡した。


    冴「探索範囲、分担するぞ」

    冴がいつもの調子で淡々と提案する。


    千切「じゃあ、俺は──これ行くか」

    千切は部屋の中央にぽつんと置かれた、①鉄製の検査台を見つめた。
    そこには布がかけられており、何かが下に“隠されている”ように見えた。

    千切「絶対なんかあるけど……行く!」

    少し引きつった笑みを浮かべながら、千切は勇気を振り絞ってベッドに近づいていく。


    凪「んー、じゃあ俺はこっちでいいや」

    凪が壁際に並ぶ②医療モニター群に目を向けた。
    「なんか電源入れたら爆発しそう……」とつぶやきながらも、どこか楽しげに歩いていく。

  • 163スレ主25/05/23(金) 21:20:31

    冴はというと、部屋の奥に置かれた③収納棚の前で立ち止まっていた。

    冴「資料や道具があるなら、ここだろ」

    埃をかぶったファイルの背表紙を一瞥し、引き出しに手をかける。


    凛「……残ったのはロッカーか」

    凛がぼそりと呟きながら、部屋の隅のスタッフ用④小型ロッカーへと向かった。
    金属の扉は何となく不気味に見えたが、目を逸らすことなく近づいていく。


    千切「じゃ、探索開始っと」

    千切が振り返り、軽く拳を掲げた。

  • 164スレ主25/05/23(金) 21:24:44

    【検査室探索:①中央検査台・千切豹馬】


    【探索開始】1:00



    部屋の中央にぽつんと置かれた鉄製の検査台。

    その存在感は、静かな部屋の中で異様なまでに浮いていた。


    千切は一歩ずつ、慎重に近づいていく。

    足元の床がわずかに軋む音が、やけに大きく響く。



    千切「……なんだろ、これ……」


    検査台の上には、白い布が丁寧にかけられていた。

    ピシッと角まで整えられ、まるで“展示物”のような整い方。



    千切「さすがに……寝てる人はいないよな……?」


    千切は小さく息を吸い、そっと布の端に指をかける。



    その下に、何があるのか──

    見たくないような、でも目を逸らせないような──

    そんな“予感”が、喉の奥にまとわりついていた。



    dice1d2=2 (2)

    1:成功 2:失敗

  • 165二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 21:41:16

    初めて失敗した!
    やっぱり怖そうな雰囲気の所は苦手なのかな?

  • 166スレ主25/05/23(金) 21:44:09

    >>165 怖くて集中できなかったか、しりとりではしゃぎ過ぎて疲れたかの2択ですね…!

  • 167スレ主25/05/23(金) 21:48:18

    【探索失敗】1:00

    【SAN値-1:22→21】


    千切はそっと、白い布の端をつまみ、ゆっくりと持ち上げた。


    ──ふわり。

    布の裏から冷気のようなものが、顔にまとわりついた気がした。

    その下にあったのは、空の検査台。
    何もない。ただ、金属の光沢をわずかに反射する、硬く冷たい台。


    千切「……なんだ、何もないじゃ──」

    言いかけたその瞬間。


    ガリ、ガリ……

    何かが、金属を爪で引っかくような音が、耳元で鳴った。

    千切「……ッッ!!?」


    驚いて振り返るも、誰もいない。
    他の3人はそれぞれの探索ポイントに集中していて、こちらを見ていない。

  • 168スレ主25/05/23(金) 21:49:22

    だが──まだ音は続いていた。


    ガリ……ガリ……ガリ……

    それはまるで、自分の背中のすぐ後ろから──“検査台の下”から聞こえてくるような気さえした。


    千切は恐る恐る、もう一度台の下をのぞき込む。


    ……何もない。

    だけど、確かに“気配だけがそこにいた”。


    千切「やば……ここ、やっぱヤバいって……!」


    喉の奥が震える。言葉がかすれる。

    何も見えなかったのに、“何かを見た”ような心のざらつきが、じわじわと精神を削っていった。

  • 169スレ主25/05/23(金) 22:02:24

    【検査室探索:②医療モニター類・凪誠士郎】

    【探索開始】1:00


    凪は、壁際に並んだ医療モニターや診断装置の前で足を止めた。

    無機質な白い壁に黒々と埋め込まれたパネル群は、どれも無表示。


    だが──


    凪「……通電、してる?」

    いくつかのモニターには、かすかな待機ランプの点滅が見えた。
    その赤い光は、まるで心臓の鼓動のように淡く、規則的に明滅していた。


    凪「へえ……機械はまだ生きてんだ」

    凪は興味なさげに言いながら、モニターのひとつに指先を添える。
    ガラスの表面は冷たく、わずかに静電気を帯びていた。

    横には、使用目的の分からない細長いスキャナや配線の束。
    どれも型が古く、今では廃棄されていそうなものばかり。

  • 170スレ主25/05/23(金) 22:03:13

    凪「……これ、起動したら人間とか分析されんのかな。面倒だなー」


    凪はつぶやきながら、ゆっくりと装置の電源周辺やモニター下の収納を覗き込んだ。



    そのとき、背後のモニターが──小さく“カチッ”と音を立てたような気がした。



    凪「……ん?」


    凪が振り返るが、そこには何も表示されていない。



    ただ、ほんのわずかに角度が変わった気がする。


    気のせいなのか、それとも──



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 171二次元好きの匿名さん25/05/23(金) 22:10:18

    お!凪が成功してる!おめでとう

  • 172スレ主25/05/23(金) 22:16:13

    >>171 千切の失敗を取り返してくれましたね!

  • 173スレ主25/05/23(金) 22:24:45

    【探索成功】1:00


    凪はしゃがみ込んで、モニターの下に設置された小型の収納扉を開いた。

    中には、埃をかぶったファイルが数冊、無造作に突っ込まれている。


    凪「……紙の資料か。アナログすぎる」

    その中の1冊、表紙に手書きで「観察記録23」と書かれたファイルが、他より新しい。

    凪はそれを取り出し、ざっとページをめくる。


    記録は断片的で、明らかに途中から内容が消されていたり、書き直されていたりする。

    けれど、ページの隙間から、決定的な単語がいくつも目に飛び込んできた。

  • 174スレ主25/05/23(金) 22:25:40

    『被験体23──構造不明』
    『形状:人型に近似。頭部消失。腕部の異常増殖。』
    『接近時、確認される音響異常:ノイズと呻き声に近い周波』
    『目視時、精神安定指数が著しく低下。長時間の対峙は非推奨』
    『応答性:なし。敵意:継続的』


    凪「……人型じゃないのに、人っぽいって……」

    凪は眉をひそめ、ページを閉じた。


    ふと、壁際のモニターに目をやる。そこに、薄く人影のような残像が映った気がした。


    ──ただの反射だ、と言い聞かせながら、ファイルをしっかりとポーチに収め、凪は立ち上がった。

  • 175スレ主25/05/23(金) 22:32:21

    【検査室探索:③収納棚・糸師冴】

    【探索開始】1:00


    冴は、壁際に並ぶ収納棚の前で立ち止まる。

    棚には医療器具、記録類、瓶詰の薬品──用途不明のものまでが、雑然と詰め込まれていた。

    引き出しをひとつ開けると、そこからかすかに薬品と古紙の混ざったにおいが立ちのぼる。

    医療器具はステンレス製のピンセット、注射器、バイアル瓶など。

    書類は破れかけたカルテやラベル、名前のないリスト。

    そして、見慣れない深い緑色の液体が入ったボトル。

    ──ラベルは擦れて読み取れない。

  • 176スレ主25/05/23(金) 22:33:21

    冴「……乱雑だな。だが──」


    冴の目が、ふと止まる。



    一見すると、ただのごちゃついた棚。

    だが、その中に不自然な秩序が潜んでいた。


    器具の並び。埃の層の薄さ。

    器具同士の微妙な間隔。


    「触られたもの」と「触られていないもの」の境界線が、わずかに浮かび上がっていた。



    冴「……ここだけ違う」


    冴は静かに、違和感のある一角に指を伸ばす。



    dice1d2=2 (2)

    1:成功 2:失敗

  • 177スレ主25/05/23(金) 22:52:21

    【探索失敗】1:00

    【SAN値-1:23→22】


    冴は、わずかな違和感に従って、器具の間へ指を差し入れた。

    重なるピンセット、割れたメスの柄、古びたガーゼ。

    それらをゆっくりと退け、奥を探る。


    だが──


    何もない。


    “ありそうだった”場所には、埃しかなかった。

    さっきまで自信を持っていた直感は、どこかへ滑り落ちていった。


    冴「……」

    静かにため息をつき、器具を元に戻す。


    そのとき、不意に──背後の薬品ボトルのラベルが、ペリッと自然に剥がれた。

  • 178スレ主25/05/23(金) 22:53:21

    冴「……?」

    見ると、液体が微かに揺れている。

    振動はなかった。誰も触っていない。
    なのに、中身だけが揺れていた。


    冴は一瞬、静止した。

    そのボトルの奥に、自分の顔がぼんやりと映っていた。


    ──いや、“顔のような何か”が、一瞬だけ重なっていたように見えた。

    目を細めたときには、もう元通り。
    ラベルの剥がれたボトルだけが、そこに残っていた。


    冴「……錯覚、か」

    自分にそう言い聞かせながらも、胸の奥に冷たいしこりが残る。

    見えないはずの何かを、見てしまったような気分だけが、じわじわと精神を蝕んでいた。

  • 179スレ主25/05/23(金) 22:56:41

    そろそろホスト規制がかかりますので、スレ主は寝ます。明日は凛ちゃんの探索からスタートです。
    別スレはスレ主の体調の都合上ストップしますので、体調良くなりましたらいずれ再開します!
    そして、今後の作品ネタを考えてましたが、参加型謎解きって皆様ご興味(需要)ありますかね。気の早い話ですが、色々考えてます。

  • 180二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 04:15:46

    お疲れ様です!しりとりも探索も楽しかったです!
    参加型謎解き、楽しそうですね
    もしやるのであれば是非参加したいです!
    体調不良とのことなので、無理せずお大事にしてくださいね!

  • 181スレ主25/05/24(土) 09:30:35

    >>180 ありがとうございます!それでは次回作は参加型謎解きにしたいと思います!お時間ある歳、是非ご参加くださいね。


    おはようございます。更新再開しますので、本日もよろしくお願いします。お昼寝したり等で外すこともありますが、ご容赦くださいませ。

  • 182スレ主25/05/24(土) 09:40:23

    【検査室探索:④小型ロッカー・糸師凛】

    【探索開始】1:00


    検査室の隅に並ぶ金属製のロッカー群。
    色褪せたラベル、凹み、剥がれかけた鍵穴。

    ここは、かつて医師や職員が私物を保管していたスペースなのだろう。

    だが、そのエリアだけ──明らかに空気の密度が違った。


    凛「……圧があるな」

    凛は眉をひそめながら、扉の前に立つ。

    金属が放つ微かな鉄臭と、誰かの体温が染み付いたような名残りのにおい。


    だが、それ以上に気になるのは──

    背後にぴたりと張り付く“気配”。

    見られている。
    触れられそうだ。
    ──それでいて、何もいない。

  • 183スレ主25/05/24(土) 09:41:31

    凛「……嫌な感じしかしねぇな」


    それでも、凛は一歩も引かない。



    ゆっくりと、ひとつ目のロッカーの取っ手に手をかける。


    軽くひねると、ギィ……という、ゆっくりとした金属音が静寂に響いた。


    中は、暗い。


    だが、何かがあるような、ないような──



    凛「さっさと終わらせるか」


    低くつぶやきながら、凛は次の扉にも手をかけた。



    dice1d2=1 (1)

    1:成功 2:失敗

  • 184スレ主25/05/24(土) 09:59:10

    【探索成功】1:00


    凛は2つ目、3つ目と、順にロッカーを開けていく。

    中には、使い古されたタオル。
    割れたマグカップ。破れかけの診察着。

    どれも役には立たない。
    けれど、ある意味では“生々しすぎる”。


    凛「……人の匂いだけが、妙に残ってるな」


    4つ目のロッカーを開けたときだった。


    扉の内側に、小さなポーチが磁石フックで引っかけられていた。

    凛は中身を慎重に取り出す。

  • 185スレ主25/05/24(土) 10:00:15

    それは、細身のアンプル瓶と金属キャップがついた注射型ディスペンサー。

    小さなラベルに、英語でこう書かれていた。


    ──“Lucid Drop”


    中には、透き通った淡青色の液体。
    開封痕はなく、保存状態も良好。


    凛「……精神安定剤か。医療施設にしては、妙に洗練された見た目だな」


    揺れる液体を見つめながら、凛はポーチごと回収する。

    開けたロッカーの奥から、再び気配を感じた気がしたが── 彼はもう、振り返らなかった。

  • 186スレ主25/05/24(土) 10:05:57

    4人は再び検査室の中央に集まった。

    それぞれの探索を終え、表情はまちまちだった。


    千切「俺の方は……うん、何もなかった!!むしろ変な音聞こえてマジで怖かった!!」

    千切が検査台を振り返りながら、やや涙目で叫ぶ。


    冴「……特に成果はねえ。見えない気配ばかりで、精神的に無駄な消耗をした」

    冴も静かに棚の方を振り返る。


    凛「……俺は、これ」

    凛がポーチから小瓶を取り出す。淡い青の液体が光を反射する。


    凪「へえ〜、おしゃれな見た目だね」

    凪がちらっと覗き込む。

    凛「見た目で選んだわけじゃねえから」

  • 187スレ主25/05/24(土) 10:09:09

    千切「で、凪は?」

    千切の問いかけに、凪は折れたファイルの束をヒラヒラと振ってみせた。

    凪「“観察記録23”。被験体に関する情報、あった」

    全員の視線が集まる中、凪は淡々と内容を読み上げていった。


    千切「……やべぇのがいるな、確実に」

    千切が息をのむ。

    凛「頭ないのに、呻いてくんのかよ……」

    凛が顔をしかめる。

    冴「ノイズ系……厄介だな。精神攻撃型かもしれねえ」

    冴が淡々と補足する。

    凪「……この部屋に、“いる”んじゃない?」

    凪の一言が、じわりと空気を冷やした。


    ──誰もが、肌で感じ始めていた。
    何かが、この空間に潜んでいる。

    ただし、それは“まだ”姿を見せていないだけで。

  • 188スレ主25/05/24(土) 10:19:03

    全員の情報共有が終わった直後、冴が静かに千切を見た。


    冴「千切豹馬、もう一度──検査台を調べろ。」

    千切「ええっ!?いやいやいや、俺あそこからめっちゃ嫌な音したんだけど!?引っ掻くみたいなやつ!」

    冴「それでも、見落としがある可能性が高い。お前が言った“音”が事実なら、なおさらだ」

    冴の声には、一切の感情がない。
    だが、そこには確かな指揮と判断があった。


    千切「くっ……マジかよ……!」

    ぶつぶつと文句を言いながらも、千切は再び検査台へと向かう。


    ──冴の固有能力【最適解】発動。

    千切豹馬の中央検査台探索、再試行。

  • 189スレ主25/05/24(土) 10:20:47

    部屋の中央。


    冷たく沈黙する鉄製の検査台の上には、さきほど千切がめくった白い布が、どこか不自然に戻されていた。



    千切「……え、これ、誰か戻した? いや俺じゃねーぞ?」


    誰も返事をしない。

    代わりに、ただ空気だけが重く、冷たくなる。



    千切「マジでやばいってココ……」


    千切は、再び布の端に指をかける。



    冴の“命令”に応えるように、

    ゆっくりと、慎重に──



    dice1d2=2 (2)

    1:成功 2:失敗

  • 190スレ主25/05/24(土) 10:32:31

    【再試行失敗】1:00

    【再試行のため、SAN値減少なし】


    千切は、再び白い布の端をつまみ、慎重にめくった。

    ぎゅっ……と指先に力が入る。

    冴の指示がある以上、今度こそ“何か”を見つけ出す必要がある──そう思っていた。


    ──だが。


    千切「……やっぱ、何もねぇ……」

    鉄製の検査台は、変わらずそこにあった。
    布の下には血痕も、器具も、物体すらもない。

    ただ、冷たく空虚な金属の面が、無言で彼を見返していた。


    千切「チッ……俺のビビリ損かよ……」

    千切は悔しげに舌打ちしながら、布を戻そうとした。


    ──そのとき、背後で“きぃ……”とドアの軋むような音がした。

  • 191スレ主25/05/24(土) 10:33:19

    千切「……!」

    振り返る。
    だが、扉は閉まったまま。誰もいない。

    他の3人も、それぞれの位置で静かにこちらを見ていた。


    千切「……今、音、したよな……?」

    誰も返事をしない。
    けれど、千切の耳には──まだ音が、聞こえていた。


    ガリ、ガリ、ガリ……


    それは、今や心の中で鳴っているかのような、“掻きむしる音”だった。


    ──けれど、何もない。

    それこそが一番、怖かった。

  • 192スレ主25/05/24(土) 10:41:51

    静まり返った検査室。

    探索を終えた4人は、共有した情報をもとにそれぞれの位置で警戒を強めていた。

    凪が手にしたファイル──“観察記録23”。
    その内容が、じわじわと現実味を帯びてくる。


    ──『形状:人型に近似。頭部消失。腕部の異常増殖。』

    ──『ノイズと呻き声』

    ──『敵意:継続的』


    そのときだった。


    ブツ、ブツ、……ジジッ……ジ……ガア……


    壁際に並んだ医療モニターが、一斉に点滅を始めた。
    画面に何の映像も映らないまま、電子音だけが不規則に鳴り始める。


    冴「ノイズ……来るな」

    冴が低く呟いたその瞬間──

    床に刻まれた引きずり跡が、ピクリと震えた。

  • 193スレ主25/05/24(土) 10:43:49

    凛「……!」

    凛が即座に身構える。


    検査台の奥、壁際の影が、不自然に“膨らむ”。

    次の瞬間、そこから這い出てきたのは──“シルエットのような何か”だった。


    それは、人のようで、人でない。


    頭部はない。
    その首元から上には、ただ“闇”のような空洞が空いている。

    胴体からは、異常に発達した無数の腕が、うねるように絡み合い、床を這いながら迫ってくる。

    口のない“首”からは、呻きとも機械ノイズともつかない音が響いていた。


    ──「ガァ……ギギ……ァァ……」

  • 194スレ主25/05/24(土) 10:45:35

    冴「出たな……被験体23」


    冴が低く言う。



    千切「わぁぁ……キモいってこれぇぇぇぇぇ!!!」


    千切が検査台から飛びのく。


    凪「俺が当てたら終わらせていい?」


    凪が腰を落としながら淡々と言う。


    冴「先手を取る。囲むぞ。短期決戦で潰す」


    冴の声に、全員が頷く。



    凛「……さっさと終わらせるぞ」


    凛は、ふっと笑い、一歩、前へと踏み出した。



    【検査室】《被験体23:異形》

    (4人攻撃成功で討伐完了/30以上で攻撃成功)

    千切:dice1d100=47 (47)

    凪:dice1d100=70 (70)

    凛:dice1d100=4 (4)

    冴:dice1d100=81 (81)

    ※被験体23の情報入手:+5補正

  • 195スレ主25/05/24(土) 12:53:01

    【戦闘開始】1:00

    【冴の固有能力:断罪の策略──発動】
    【凛のファンブル:千切の攻撃を失敗に変換】


    呻き声とノイズが、検査室の空間を歪ませていく。

    被験体23が、無数の腕をうねらせながらゆっくりと迫ってくる。


    千切「行くぞ……!」

    千切が勢いよく飛び出した、その瞬間──


    ガンッ!!


    千切「うわっ──っ!」

    不意に、凛の足が引っかかり、検査台の端を蹴り飛ばす。

    千切「いってぇ!!なにやってんだ凛!!」

    千切が軽く怒りながら振り返る。

    凛「……ミスった」

    凛は顔をしかめながらも素直に謝る。

  • 196スレ主25/05/24(土) 12:53:53

    その隙に──

    凪「いいからさっさと下がって」

    凪が低く呟き、するりと前へ出た。


    シュッ──!

    足元から跳ね上がる腕の隙をついて、見事な一撃を放つ。

    凪「手、無駄に多いな……」

    凪の蹴りが、絡み合った腕の一本を切り裂く。


    続いて──

    冴「対象、隙あり。処理するぞ」

    冴が正確無比な踏み込みから、関節の束を鋭く撃ち抜いた。

    打点は、構造上の中心──“空白の首”の根元。

    そこに、追撃の一手が、寸分の狂いもなく突き刺さる。

    冴「……あと、少しだ」

    冴の声が静かに響いた。

  • 197スレ主25/05/24(土) 12:56:57

    呻き声が高まり、被験体23が反撃を開始する。


    空洞のような“顔”から、激しいノイズが放たれ、床を這う無数の腕が、まるで意思を持つ蛇のように、四人へと襲いかかってくる。



    千切「来るぞ……避けろ!!」


    千切が叫ぶ。



    【検査室】《被験体23:異形》

    (1回攻撃成功で討伐完了/30以上で回避成功)

    千切:dice1d100=23 (23)

    凪:dice1d100=81 (81)

    凛:dice1d100=93 (93)

    冴:dice1d100=29 (29)

    ※被験体23の情報入手:+5補正

  • 198スレ主25/05/24(土) 12:58:38

    次スレ立ててきますのでお待ちくださいませ。

  • 199スレ主25/05/24(土) 13:15:42
  • 200スレ主25/05/24(土) 13:19:09

    ここまでのダイス成功確率と、ファンブル/クリティカル回数です。

    ●ダイス成功確率(探索)

    ・千切豹馬:3/4(最適解:0/1)
    ・凪誠士郎:1/4(最適解:0/1)
    ・糸師凛:2/4(最適解:1/1)
    ・糸師冴:3/4(最適解:1/1)

    ●ダイス成功確率(戦闘・回避)

    ・千切豹馬:5/6(ファンブル影響除く)
    ・凪誠士郎:5/6
    ・糸師凛:4/6
    ・糸師冴:6/6

    ●ファンブル/クリティカル

    ・糸師凛:ファンブル(1回:4)

オススメ

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