- 1二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:12:15
――そこは奇妙な場所であった
風は暑くも冷たくもなく
視界は開かれども何も見えず
足場は板場のように滑らかで畳のような弾力があり
足下の浅い靄に降り注ぐ光は光源が全く判らず
その男の鼻の下にはタラコほどの唇があった――
「なんだ夢か……そんじゃゴロゴロしよお〜っと」
「いや待てェーい!」
「待つのだァー!」
男が腰を下ろして寝そべろうとした時、靄の中から二つの人影が躍り出て彼を甚だしく咎めた。
「おっ、ビコーにウインディ。お前ェ〜らも来てたんか」
「いやトレーナーさぁ、夢なら夢でもっとこう……あるだろ!?」
「夢の中で寝るとか計算外なのだよ!」
「いやしかし……こんな何も無ェ〜所で何するよ」
「ふっふっふ、よくぞ聞いたのだ。今日のウインディちゃん達は一味違うのだ」
「いつものアタシ達と違う所……判るかなトレーナー?」
「あ〜ん……?」
改めて二人の姿を見れば一目瞭然、普段の勝負服を踏襲しながらも布面積が激減している。つまり肌が矢鱈めったらに露出していた。
ビコーは白と紫を基調としつつもエナメル地のチューブトップにローライズ、ウインディに至っては僅かな紐とファーで辛うじて隠れている程度である。
この格好で走ればたちまち色々とレースでお見せできる姿ではなくなるだろう。 - 2二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:12:53
「!お前ェ〜らソレは……」
(ふふ……見てる見てる……)
(いつも涼しい顔のボンクラ子分もメロメロなのだ……)
「縮んだか?洗濯屋さんしくじったかなァ〜、朝イチで問い合わせしねェ〜とな。新しいの仕立てるまで予備の勝負服で保たせんと……」
「なんでだよ!」
「縮んでこうなる訳ないのだ!」
「ならど〜言う事ッたよ?」
「ここは夢の中だぞ……?全てはイマジネーションが、ものを言う、のだ」
「でも二対一じゃ、トレーナーに分が悪いかもね……?ヒーロー的には、燃えるシチュエーション、だけど……!」
二人は赤い顔で体をくねらせ様々にポーズをとり――おそらくは色仕掛けを試みているのだろう。だが全く板についておらず、露出の多さが却って滑稽でさえある。
「あっソレ自分らで出したんか?じゃあこ〜言うのも……アリか」
男が指を鳴らすと、三人の足下が小さく揺れた。と次の瞬間、傍らの靄の中から二畳ほどの白いものがせり上がる。
「おわっ!と……豆腐?」
「お腹減ってたのかトレーナー?」
「造形がイマイチ、もいっちょ」
再度指を鳴らすと巨大な豆腐の表面に縦横の縫い目が走る。
「体育マットみたいだな……もう一声」
三度目、今度は角が落ちて丸みを帯び、大小無数の枕が湧いて出た。男はノソノソと這い上がる。
「よし、こんなモンか」
「……ベッドだ……」
「……ふふん、話が早いのだ。カモネギとはこの事!二人掛かりで蕩かし尽くしてやるから覚悟するのだ!」 - 3二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:13:23
自分達のペースで事を運べなかったせいか些か調子が崩れたが、二人もベッドに膝を乗せる。
その重みでベッドが沈み込んで男の脚を揺らした時。ウインディとビコーは生々しい実感に喉を鳴らし、顔を見合わせた。そしてひと呼吸して決意を固め、更に膝を進めた。
「お前ェ〜らも好きなの造れや。んじゃな、起こすなよ」
「だからなんでだよ!」
「寝るな!なのだ!」
おずおずとした動きが一転、男の両サイドに飛び込む。
「ホラ見てって!う、うふ〜ん?」 「布団出すの忘れんなよ」
「違うのだ!ここまでされてノーリアクションとか傷つくのだ!」
「うるせぇな全く」
男は少し上体を起こして二人の肩を抱き、再び倒れ込んだ。そして腕枕の形にしてから指を鳴らし、布団が三人を包む。
「あんま手間かけさせんな、ここで良いからもう大人しく寝ろって……」
「離せ子分、起きろ!」
「あっでもトレーナーの腕枕なんだか気持ちいい……」
「こらビコーしっかりしろ!……!
…………」 - 4二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:13:53
その日の朝練はシンコウウインディとビコーペガサスにとって少々苦行であった。
「おはよ、先輩……なんか疲れてるね」
「ビコーもなのだ」
「……ウン、あっトレーナー来たよ」
「オイ〜ッス揃っとるようだな感心々々、しかしその顔夜更かしでもしたのか?栗東寮美浦寮マイナス10点」
「なんか夢見が悪かったのだ」
「アタシも」
「フ〜ンそう、俺は面白い夢を見たぞ、お前ェ〜らが出て来てな」
「どんな?」
「ま〜憶えちゃおらんが面白いのは確かだろう、お前ェ〜らが居んなら」
「……なんか納得いかないのだ、ウインディちゃん達を引っ張り回して一人楽しむなんて」
「先輩もそう思うよね?」
「お前ェ〜らが勝手に俺の所にやって来て何言ってんだ、ほれアップ始めんぞ」
クリップボードに記録用紙を留める腕にウインディが飛びついた。
「成敗なのだ!あむーっ!」
「あ痛った!こらお前、このジャージまだ新しいんだから噛むなっての!剥がすの手伝えビコー!」
「……あむっ!」
「なんでお前も噛んで来んだよ!」
『……またあのチームよ、毎度よくやるわね』
『……ウチもやってみる?トレーナーさんにあむーっ♡って』
『……ソレはちょっと照れちゃうわ、ウチのトレーナーまあまあ格好良いからさ』
『……そうよね、アレくらいなら気を使わなくて良いんだけど……』
(でけェ小声だな全く……まぁ本当の事ッたからしょうがねェ〜けど)
その男の鼻の下にはタラコほどの―― - 5二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 00:14:22
終了 新しい事が出来て楽しかったです
- 6二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 01:55:26
- 7二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 06:54:01
タラコ唇トレーナーだけど担当からモテモテだからええんや
- 8二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 07:00:06
- 9125/05/20(火) 08:08:02
- 10二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 08:45:30
このジャスティス(大嘘)・ビコーの相棒兼ウインディさまの子分なトレーナー像がめっっっちゃ気になるのもあるけど…どうしてタラコ唇になっちゃったんでしょうねぇ!?
きっと夢の中で、現実で何かあったに違いない!!! - 11二次元好きの匿名さん25/05/20(火) 08:46:16
大きな声では言えないけど小さい子の方がサキュバス化が映えるよね
- 12125/05/20(火) 09:30:10