- 1二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 20:55:19
- 2二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 20:55:50
コンセントレーション……
- 3二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 20:57:04
波立つ川面は刻一刻と紋様を変えていて、彼方に架かる鉄橋では列車が線路を揺らしている。
河川敷にはキャッチボールをする親子連れや、ボールを蹴り合うサッカーチームの姿があり、残りわずかな休日を目一杯楽しんでいる。
それらを脇目に、カラスが鳴く遊歩道を、トレーナーとファインモーションは並んで歩いていた。
ごう、と風が吹いて木々がざわめくと、トレーナーは身震いをするように肩をすくめる。
ファインモーションも同じような仕草をすると、隣にぶら下がっていたトレーナーの左手を握った。
とん、とん、と、彼女のほっそりとした指がトレーナーの手の甲を叩く。
すり、すり、と、彼女の透き通るような指がトレーナーの手のひらを撫でる。
つん、つん、と、彼女のなめらかな指がトレーナーの指をつついて、お互いの指が重なって、混ざって、絡み合った。 - 4二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 20:58:09
ファインモーションの歩みは、手が結ばれるにつれて、徐々に勢いを失っていった。
トレーナーはその歩調に合わせて足を緩めていたが、あまりにも遅くなってきたため、ここにきてようやく彼女に声をかけた。
「ファイン」
トレーナーは彼女の顔を覗き込むように身体を傾けた。
彼女はその呼びかけに対して、繋いだ手を一層強く握って、ついに立ち止まってしまった。
「ファイン、どうしたの?」
トレーナーがもう一度問いかけると、彼女はゆっくりと顔を上げて、わずかに眉を曇らせているトレーナーを向いて、ふっと微笑んだ。
トレーナーの目には、その表情があまりにも儚げに見えた。彼女がこのまま消えてしまうのではないかとさえ思えるほど、薄く、弱々しい笑顔だった。
ファインモーションはその笑みのまま、朱く色づいた空を仰いで、目を細めて、かすかに震えた、蚊の鳴くような声で呟いた。
――あとどれくらい、こうしてキミと一緒にいられるんだろうね
トレーナーは彼女の一言を聞き逃さなかった。そして、彼女の運命を再確認させられて、肺をきつく締め付けられてしまって、上手く言葉を返すことができなかった。寂寥と憂愁と、渦巻く感情が綯い交ぜになった目で、黄昏に佇むファインモーションを、ただ見つめることしかできなかった。
二人の手は、まだ繋がれたままだった。
やがて太陽は沈み、夕闇は月の輝きへと変わっていく。
終わりはもう、目の前に迫っている。 - 5二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 20:59:47
少し泣く。
- 6二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 21:02:05
おおう……
重くて美しい……
情景が詩的でいいね - 7二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 21:22:14
アーイイ…遥かにいい…
オラァ!後で幸せになるんだよ! - 8二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 21:40:39
- 9二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 21:43:46
語彙がないんでアレなんですけどなんかこう上手いっすね
- 10二次元好きの匿名さん22/04/02(土) 21:47:36
普段は微塵もそんなふうに感じさせないファインが堪らずふと零してしまうのが本当に好き
- 11二次元好きの匿名さん22/04/03(日) 08:47:39
すげぇいい...スレ主のssめっちゃ好き