- 1二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:37:51
「今度、ASMR動画配信に挑戦してみようと思うのよ」
「……えっと、なんて?」
それは、突然の宣言であった。
華やかな赤いロングヘア、くるりとした毛先、左耳にはハートを模したの髪飾り。
担当ウマ娘のラヴズオンリーユーは、どこかワクワクしたように瞳を輝かせている。
まあ、彼女がこういうことを言い出すのは珍しくはなかった。
見てくれる人達へ愛を届けていくために、どんどん新しいことに挑戦しようとするのは良く知っているから。
ただ、肝心の部分の単語があまりにも馴染みがなく、良く聞き取れなかったのである。
俺が心の中で首を傾げていると、彼女は意外そうな表情を浮かべた。
「もしかしてトレーナーくん、ASMRを知らない? これの配信をメインにしている人とかもいるんだよ」
「キミ以外の配信はあまり見ないからなあ、勉強不足でごめん、今度調べておくよ」
「ううん、それなら私がちゃーんと教えてあ・げ・る♡ ………………だから他の子の配信は見なくてもいいから」
「あ、ああ、それは助かるよ」
ぱちりとウインクを飛ばしてから、俺が座るソファーの隣へと腰掛けるラヴズ。
一瞬だけ声が低くなった気がするけれど、多分気のせいなのだろう。
そして俺は彼女から“ASMR”について教え込まれるのであった。
ラヴズからの説明をざっくり纏めるなら、聴覚の刺激から得られる体験、といったところだろうか。
雨音や焚火の音、人工的な環境音からヒーリング系の音楽まで。
眠る時や集中したい時、リラックスしたい時などにそれを流して、その効率を上げられるとか何とか。
効果のほどは証明されていないものの、お気に入りのBGMを聞くようなものと考えれば納得は出来る。 - 2二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:38:18
「私がやってみたいのは、私自身が音を作り出して配信していくタイプね」
「なるほど……ちなみに、どういう音を作りたいとかは決まっているの?」
「ええ、もちろん────私がやりたいのは“これ”よ」
ラヴズはそう言いながら、傍らに置いてあった小さなバッグを開ける。
そして中から取り出したのは、一本の細長い竹の棒。
先端は匙、末端には綿のようなもの。
それはいわゆる。
「…………耳かき?」
「今、トレーナーくん、そんなもので? なーんて顔したでしょ?」
「いっ、いや、そんなことはないよ、ただちょっと予想外だっただけで」
「むしろ定番で激戦区なのよ? 人によっては、何百万もする機材や専用のスタジオを用意するんだから」
「そんなに」
「さすがにそこまでの用意出来ないけど、せめてしっかり練習はしておきたいなーって」
くるくると指先で耳かき棒を回しながら、ラヴズはそう話す。
器用なものだなあと感心しつつも、ふと、脳裏に浮かび上がる疑問が一つあった。
「ところで、なんで急にこれをやりたいと思ったんだ?」
「……」
一瞬、ラヴズの表情がぴたりと止まる。
じっとこちらを見つめたままって語って、やがて、誤魔化すように微笑んでみせた。 - 3二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:38:31
「ふふ、コミュメンからリクエストなの♡」
「……そっか」
そんなコメント見た覚えないけど、という言葉は飲み込む。
配信は全てチェックしているとはいえ、コメントまで全て追えている自身はなかった。
だから、多分俺が見逃している何処かにそういうコメントがあったのだろう。
そしてラヴズは眉尻を優しげに垂らしながら、言葉を続けた。
「それに、最近疲れているみたいだから、たーっぷり愛を込めて癒してあげたいと思って」
「…………なる、ほど?」
長く配信を続けていると、コメントから疲労の具合とか読み取れるものなのかもしれない。
本当に、ラヴズはいつも誰かのことを考えているんだな、暖かな気持ちになる。
そんな彼女の背中を押すのがコミュメンの皆の、そしてトレーナーとしての俺の役目でもあった。
「わかった、俺に出来ることならなんでも協力させて」
「ありがと♪ それじゃあ、早速練習をさせてね?」
「ああ、もちろん…………はい?」
ラヴズは耳かき片手にゆっくりと身体を寄せて来る。
そして、耳かきの匙の部分をこちらへと向けながら、囁くように言葉を紡いだ。
「……トレーナーくんのお耳で♡」 - 4二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:39:08
「それじゃあ、始めていくね? 目を閉じて、力を抜いて、リラックスリラックス♪」
左耳のすぐ傍から聞こえてくる、ラヴズの楽しげな声。
俺は言われるがままに目を閉じて、大きく深呼吸をしていく。
……流石に色々と初体験過ぎて、緊張が解けることはなかったけれども。
まさか、耳掃除を彼女にしてもらう日が来るなど思いもしなかった。
トレーナーとしてどうなのかと思いもしたが、手伝うといった手前断ることも出来ない。
一体どういう形で行われるのだろう、不安半分期待半分でそわそわ待っていると────。
「ふぅー♡」
突然、生暖かい吐息が耳の中へと吹き込まれた。
ぞわりと背筋にくすぐったい寒気が走り、びくりと身体が跳ねてしまう。
反射的に目が開き、視線を隣へと向けると、くすくす微笑むラヴズがいた。
「ふふ、びくっとしちゃってカワイイ……悪戯じゃないわよ、耳ふーは耳かきASMRの基本なの」
────これから何回もしてあげるから、ちゃんと慣れてね?
告げられる最終宣告のような言葉に、これは安請け合いしたかもしれないという後悔の念が襲い掛かる。
だがもう遅い、男に、トレーナーに、コミュメンに二言はないのだ。
俺は再び目を閉じて、気合を入れるべく背筋を伸ばした。
「……トレーナーくんには、楽にして欲しいんだけどなあ」
少し困ったような声とともに、ラヴズの気配が近づいて来る。
彼女の微かな息遣いすら聞こえてくるような距離、甘えるようなウィスパーボイスが鼓膜を揺らした。 - 5二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:39:27
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- 6二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:39:37
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- 7二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:39:38
「ラヴミー♡ ラヴユー♡ 今日は、トレーナーくんのお耳を、たーっぷり、癒していくわよ?」
ふぅ、と先ほどよりも細く短い息が吹きかけられる。
二回目となれば少しドキリとはするものの、身体の反応は最低限に抑えることが出来た。
「我慢出来てえらいえらい♪ じゃあ耳掃除の前に、お耳をふきふきなでなで、してあげるね」
何だかむずがゆくなってくる言葉とともに、ぴとりと耳に冷たい感触が触れた。
ウエットティッシュだろうか、細い指先によって丁寧に耳の外側が拭われていく。
すりすり、と伝わってくる小さくも優しい音色。
何気ない単調な音ではあるが、それが妙に心地良く感じる気がした。
「ついでに耳のマッサージもしていくよー……もみもみ、ぐにぐに……」
ひんやりとした感触が広がっていく中、ぎゅぎゅっとラヴズの指が押されていく。
微かな鈍い痛みとそれ以上の気持ち良さ、程良い力加減によって、徐々に耳が解されていくような感覚を覚える。
ウエットティッシュで冷やされているのに、耳そのものはマッサージで熱がこもる、奇妙な心地。
でも、決して悪くはなくて、ほっと小さく息を吐いてしまうほどだった。
「ふふ、トレーナーくんの顔、きもちいーってなってるー♡ ……でも、本番はこれからだからね?」
ああ、そうだった。
それに気づいた瞬間、そっとウエットティッシュとラヴズの指先が離れていく。
耳は少し熱くなりながらも、どこかで感じる寂しい気持ち。
「ふっ、ふっ、ふぅー♪」
────そして、その寂寥感を慰めるように流し込まれる吐息。
背中に寒気とは違う、むずむずともどかしい感覚。
その正体を自分でも理解出来ず、ただただぎゅっと堪えるだけだった。 - 8二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:39:48
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- 9二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:39:51
「じゃあお待ちかね、耳かきを入れていくわよ…………危ないから、もっと近づくね?」
直後、左腕が柔らかな温もりに包み込まれる。
マシュマロのようにふわふわで、それでいてむっちりとした肉感があって。
それがラヴズの身体の感触であることは、何故か見ないでも理解することが出来た。
彼女はむぎゅっと密着させてながら、そっと囁く。
「…………私も、ちょっと緊張してるから、動いちゃ、ダメよ?」
トクントクンと響く小さな鼓動。
それがラヴズの心臓の音だと気づくのは、その言葉を聞いてからだった。
一瞬、彼女の息遣いが止まる。
そして数秒後、ゆっくりと慎重な動きで、耳の中へと細長い何かが入り込んで来た。
小さくて、しなやかな肌触り、それは随分と久しぶりに感じた、耳かき棒の先端の感触だった。
匙はまず、耳の入り口辺りを軽く撫でるように搔き始める。
「かりかり……さりさり…………その、痛くは、ないかしら?」
穏やかな声色のオノマトペ、耳の中に響く擦れる音。
それは耳の中に異物が入ったという警戒心を、解していくようであった。
微かなくすぐったさの中にある、心地良いという確かな刺激。
大丈夫、気持ち良いよ────俺は気が付いたら、そう答えていた。
「ふふ、そっか」
ぱたぱたと尻尾が揺れる音。
ラヴズは安堵の息を吐きながら、嬉しそうな言葉を紡ぐのであった。 - 10二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:39:59
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- 11二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:40:09
「がりがり……んっ……ごりごり……はぁ…………かりかり」
時間をかけて丁寧に、耳掃除は進められていく。
ラヴズも集中しているのか、オノマトペ以外の言葉は徐々に少なくなっていった。
時が過ぎていくに連れて、耳の中から伝わってくる快感はその度合いを増して行く。
そして、密着している身体の熱も、お互いに汗ばむほどにであった。
気持ち良くて、くすぐったくて、暑苦しくて、どうしようもないほどに、気持ち良くて。
ずっと、この地獄のような快楽に、浸っていたくて。
「…………はい、こっちはおしまい」
少しだけ、寂しそうな声。
それと共に、耳かきの感触が耳の中から離れていく。
やっと来たかという気持ちと、遂に来てしまったかという気持ち。
複雑な胸の内を全て吐き出すように、俺は大きなため息をついて────。
「まだ、仕上げが終わってないよ…………ちゅっ」
刹那、左耳に触れる湿っぽく柔らかな感触。
死角を突かれたかのような行動に、俺の思考は全て停止して、頭の中が真っ白になる。
「ふうぅーー……♡」
触れ合うラヴズの唇から、長く、深く、熱い息がゆっくりと吐き出された。
まるで神経や理性を直接弄んでいるかのような、強烈で甘い刺激。
頭の中を一瞬で彼女一色に染め上げられて、奥底の本能を逆撫でされている感覚。 - 12二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:40:09
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- 13二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:40:19
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- 14二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:40:23
「…………トレーナーくんの、とろーんってした顔、とーっても、ラヴいね♡」
視線を向ければ、愉しげな小悪魔の微笑み。
やがて、密着していたラヴズの身体ごと、彼女の唇は勿体ぶるようにゆっくりと離れていく。
微かに頬を染めた彼女は、ソファーの端まで距離を取っている。
残されたのか甘い香りと湿っぽい温もり、そして火傷したかのような熱を帯びた左耳。
そして大きく早鐘を鳴らし続けている、俺の心臓だった。
「それじゃあ、反対側もお願いね♪」
ああ、そういえば俺の耳って二つあったな。
当然過ぎる情報は、今の俺にとってはあまりに絶望的で、魅惑的であった。
耐えなければいけない、何に耐えるのかもわからないが、耐えなくてはいけない。
大きく深呼吸を一つ。
冷たい空気を取り込んで頭を冷やす、少しだけ平静を取り戻すことが出来た。
さてと、反対側を同じことをするならば座り位置を変えないといけないが────。
「そのままでいいわよ、えい」
刹那、ラヴズの手によってぐいっと身体が引っ張られた。
あまりにも突然の行動、そこまで強くはない物の、俺の身体は堪えきれずあっさりと傾いてしまう。
そして、そのまま横へと倒れ込んで────やがて頭は、むっちりとした感触に辿り着いた。
しっかりと鍛えあげられた、良質でハリのある肉感。
俺が頭を乗せているのは、彼女の太腿の上であった。
顔の左側が、じんわりとした温もりに沈み込んでいく。
それはどこか、二度と出ることの出来ない底なし沼に踏み入れたようでもあった。 - 15二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:40:29
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- 16二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:40:36
「…………あっ、これじゃあ、ASMRは関係なくなっちゃうわね?」
ふと、最初の目的を思い出す。
そもそもは、ラヴズのASMR動画配信の練習に付き合う、というものであった。
……冷静に考えると大分前から関係なくなっていたような気もするが、それはともかく。
だったらもう終わりにするのだろうか、そんな淡い期待と失望を覚えながら、ちらりと彼女の様子を窺う。
彼女は────双眸を煌めかせながら、にんまりと妖艶な笑みを浮かべていた。
「それじゃあここからは、トレーナーくん限定ってことで♪」
ぴょこぴょこと動き回る耳、しゅるりと身体に巻き付いた尻尾、迷うを感じさせない瞳。
ここに至ってようやく俺は、ここが目的地だったのだと気づいてしまった。
ラヴズの顔が近づいて来て、小さく右耳へと吹きかけられる。
散々“練習”をしてきた身体は、それだけであっさりと骨抜きにされて、夢心地になってしまう。
そして追い打ちをかけるように、彼女の言葉が耳元で響き渡った。
「…………ラヴミー♡ ラヴユー♡ ラヴズオンリーユーでした♡」 - 17二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:40:40
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- 18二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:40:51
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- 19二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:40:57
お わ り
白銀ノエルが好きです - 20二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:41:01
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- 21二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:41:11
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- 22二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:41:21
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- 23二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:41:31
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- 24二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:41:41
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- 25二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:41:51
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- 26二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:42:03
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- 27二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:42:10
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- 28二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:42:13
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- 29二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:42:24
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- 30二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:42:36
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- 31二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:42:49
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- 32二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:42:59
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- 33二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:43:09
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- 34二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:43:19
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- 35二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:43:30
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- 36二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:45:37
すっげー良かった…あなた絶対神でしょ
- 37二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:47:30
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- 38二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:47:40
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- 39二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:47:48
うおっすっげええっちだ…さては最初からトレーナーに耳かきしたいだけだったな?
- 40二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:47:51
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- 41二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:48:04
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- 42二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:48:14
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- 43二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:48:24
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- 44二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:48:34
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- 45二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:48:44
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- 46二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:49:16
めっちゃ良かったありがとうお疲れ様
- 47二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:50:15
ウマ娘のASMRとか天国じゃん……
羨ましいわ……… - 48二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:50:31
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- 49二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:50:41
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- 50二次元好きの匿名さん25/05/24(土) 00:50:51
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