何かあった未来のイブキ(17)がやってきたがPart5

  • 1二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 03:45:24
  • 2二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 03:46:10

    保守だけして落ちます。
    カテミスったのを教えてくださった方改めてありがとうございます

  • 3二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 03:46:39

    1

  • 4二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 03:47:11

    2

  • 5二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 03:47:23

    3

  • 6二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 03:47:34

    4

  • 7二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 03:47:44

    5

  • 8二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 03:48:10

    ksk

  • 9二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 04:13:53

    九十九里浜

  • 10二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 04:14:27

    ベン10

  • 11二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 05:10:30

    何かあった未来のミカはラフをもう少し荒れて汚れてる感じになってそう。

  • 12二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 12:30:18

    懐かしい、続き見たいけど忙しそうだったし厳しいかな

    ミカは服とかは傷んだものが多いけど清潔感は保ってそう

  • 13二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 13:57:01

    クロコvsミカの戦闘を中断する方法はあるのだろうか

  • 14二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 14:58:53

    いつか思い出して続き書いてくれたら嬉しいな

  • 15二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 21:03:14

    サキは小さい子から貰ったものを小さな箱に入れて大切にしてそう。

  • 16二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 22:52:12

    未来世界、アビドスが物資のやり取りできる程度に自活できているのが気になっている
    立地の過酷さやホシノの存在で相対的な被害が少なかったとかだろうか

    相変わらず物資の余裕まではなさそうだし……砂漠であることを活かして太陽光発電でエネルギー供給を売りにしているとか?

  • 17二次元好きの匿名さん25/05/25(日) 23:16:12

  • 18二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 01:20:16

    >>16

    太陽光発電はありそう

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 10:32:57

    このレスは削除されています

  • 20二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 10:34:10

    >>16

    メガソーラー作れる分の土地はあるだろうし、カイザーも何か滅びてるみたいしな…

  • 21二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 18:46:02

    改めて思ったけどさ、別のスレに出てくる、大人になってシャーレの先生になった元生徒の助けが必要なタイプよなこのスレのイブキ…

  • 22二次元好きの匿名さん25/05/26(月) 22:38:20

    待機

  • 23二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 00:11:27

    未来世界、青春をちゃんと終わらせられず必要に迫られて大人になっているって印象
    それでもまあ、元のキヴォトスもそんなとこあったからどうにかノウハウがあるというか

  • 24二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 07:26:50

    待機

  • 25二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 10:04:55

    (SS書いてた者です。リアル生活が先月からずっと地獄ですが、たまたま覗いたら新しいスレ立ってて驚きました。)

  • 26二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 11:04:53

    >>25

    無事ではないけど無事でなにより

    落ち着かれたときに続きとか見たいですね…

  • 27二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 12:57:29

    (では少しですが書き溜めあるので後で貼ります)

  • 28二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 17:34:32

    【Part3 193より継続】


    「へえ、じゃあゲヘナから迷子を探しに?」

    ふわふわとした体毛を揺らしてラーメンを作るその獣人種は、しかしその愛らしい姿に反して人生の酸い甘いを知る壮年期の男性が出す重厚な声音を声帯から奏で出す。
    場所は砂漠の侵入を許していないアビドス中心部の一隅、小さいが素朴な移動式屋台である。
    「迷子といえば迷子ですね。アビドスの皆さんに御協力を頂きまして絶賛捜索中です。」
    それに対して人の身ながら豊かでウェーブした長い頭髪を湛えた少女が応える。
    獣人種の男は豪快に笑い声を上げた。
    「ハハハッそうかいそうかい!そいつはしっかり精を付けて頑張らねえとな!はいよお待ちどお!」
    目の前に置かれる幾つかの器。
    そこからは空腹を訴える胃袋を刺激し耐え難い食欲を誘う香りが立ち上る。
    満々と湛えられた熱いスープの中には縮れた茹で麺が入り、その上から叉焼に煮卵にメンマ、刻んだネギなどが載せられている。
    「大将のラーメンは本当に美味しいんだから!」
    と誇らしげに屋台の店長である柴大将を褒める店員。あるいはアビドス対策委員会の一人、黒見セリカは胸を張る。
    目前にラーメンの器を並べられたゲヘナの少女達…棗イロハ•丹花イブキ両名とその護衛達は割り箸を割って勢いよく麺を啜り始めた。

  • 29二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 17:39:42

    おおよそ滞在する日数は後続の捜索隊が到着するまでの一週間を予定していた。
    顔を出して二日くらいイブキの気分転換に付き合いすぐ帰るという手もあったが、他校に無理くり協力を要請しておいて「顔は出したから後はよろしく」などという外交上あまりに馬鹿げた態度を取れるわけがない。
    『面倒事はサボる』を基本姿勢とするイロハではあったが、ここを放り出せば後で外交問題でも起きて更なる面倒ごとに発展しかねない。
    いけない。それは実に面倒だ。こんな砂だらけの土地に一週間というのも業腹な話ではあるが万魔殿の幹部として、面倒事を忌避する博愛の徒としては致し方ない事だろう。
    そしてそれだけ長く滞在するからには懸念材料は早いうちに取り除かねばならない。
    これもまた致し方ない事だ。

    「イブキ、スケッチブックの事ですけど……」
    「んぐ?」
    問われたイブキは疑問の音階を表すように数本の麺を口から垂れ伸ばし、次いで勢いよく啜り上げる。
    彼女は先ほどまでの不機嫌が嘘のように満面の笑顔でラーメンを食していた。
    子供の興味関心は移ろいやすい。特に美味しい食べ物なんて興味を逸らさせるには絶好のものだろう。
    店据え付けのペーパーナプキンを2枚ほど取り、彼女の口を拭ってやり質問を続ける。
    「明日はまた色んな所に行くと思いますけど、どんなものをイブキは描きたいですか?」

  • 30二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 17:40:27

    不機嫌の元凶を話題に出すのは逆効果かもしれないが、話題に出すたびに顔を曇らせるイブキは何度も見たくはないので今のうちに工夫が必要だ。
    ならば彼女の目線と指針を未来へ向ける。
    明日はどうしよう?何をしよう?という未知への期待は老若男女を問わない全人類の特権だ。
    殊、未来を期待する時間の多いイブキならば抱く期待の総量は過去への不満を過不足なく埋め立てる筈だ。
    「えっと、じゃあねじゃあね、お外にすっごく広い砂場があったでしょ?あれ描きたい!」
    「砂漠ですか…?大きく出ましたね。じゃあ、あるかは分かりませんけど砂色のクレヨンか色鉛筆を帰りに買い込みましょうか。絶対に一本じゃ足りませんから。」
    …明日の面倒事が増えたが策は見事にハマったらしい。
    だが一手間で滞在期間が良いものになるなら安い買い物だ。
    イブキはすっかり上機嫌で最近の絵のことを語り、護衛達も微笑みながら相槌を打っている。
    我らが議長が居なくてもウチのアイドルはもう大丈夫だろう。
    そう思った時だった。

    「あ〜やっぱダメだな。セリカちゃん、お願いできるかい?」
    「はいはーい、も〜何なんですかねほんと!」

  • 31二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 17:40:55

    イロハが目線を上げると、大将がスマホを片手にセリカに声を掛けている。
    「…ネットだけじゃなくて電話もですか?」
    イロハの問いに困り顔で振り向いた大将が応える。
    「そうなんだよ、全部不通。昨日頼んだ仕入れ業者とも連絡取れなくてね。セリカちゃんにひとっ走り頼まないといけないし困ったもんさ。」

    駆け出すセリナを見送りつつ、イロハも自身のスマホを取り出し画面を見る。
    起動はできる。しかし本来表示されるべきアイコンが幾つか表示されず、全回線の不通を示していた。
    アビドス到着から数時間後に起こった異常。キヴォトス全域における電波通信障害。
    今朝から人海戦術で各都市に号外新聞という形で情報を届けているクロノス曰く、衛星経由の連絡すらも途絶しておりキヴォトス全域が完全に麻痺状態に陥っているとの事だ。
    情報共有のため万魔殿や先生と連絡を取ろうにも、モモトークも砂漠に入った時点で止まっていて新しい通知はない。

    「もしかしてまた何かに先生が巻き込まれたりしてるんでしょうかね。」

    今この段階で考えても埒もない事だと思考を切り捨て、僅かに滲む不安を呟きと共に麺とスープで飲み下す。
    やっぱり美味しい。絶品だ。
    アビドスに来た甲斐を器の中の小宇宙に感じつつ、この寂れた土地から大将をゲヘナに招けないだろうかと新たに生まれた不埒な未来に思考を巡らせるイロハであった。

  • 32二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 21:32:40

    一体アビドスで何が起きてるんだ…

  • 33二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 23:52:49

    続きありがたい……かんしゃあ~

    行き違いまくっている状況で連絡途絶しているのは厳しいな…
    未来世界と繋がりかかっているのが何か悪さしているのかね

  • 34二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 07:36:32

    ──────────────

    残酷な夢を見ていた。

    何が起きるか分かっているのに何も出来ず、かつての幼い姿で惨劇を追体験して精神を削られ最後に何があったのか記憶を消される。
    そして目覚めた後にまるで口一杯に砂を詰め込まれたかのような最悪な気分と喉の乾きが襲ってくる。
    そんな悪夢を毎晩毎晩。
    起きた直後のルーティンが無ければ目覚めた瞬間に気でも触れてしまいそうな、そういう悪夢。

    だから今回もそうだと思った。
    いつもの気分で目覚めるのだろうと。
    いつも出て来る「あいつ」に嫌味か憎まれ事を叩かれて追い出されるのだろうと。

    しかしいつもの追体験が終わってその内容を全部忘れてもあいつは現れない。

    「……なに?遊びのルールでも変えたの?」
    相変わらず幼い姿の自分は武器を持っていない。だからいつ何が来てもいいようにサキ教官に仕込まれた格闘術の構えを取り、拳を強く握り込む。
    一体何を考えている。
    夢の住人のくせに生意気に新しい趣向でも用意しているのか?
    警戒を強め周囲を見回す。
    一歩二歩と踏み出して直後、足先に何か固いものが当たる感触があった。
    「!!」
    地雷!?あるいは何か脅威となるものか?
    飛び退った後方から対象を見ると、そこにあったのは──

    「スケッチ…ブック………?」

  • 35二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 07:40:45

    スケッチブック。絵を描くための簡易なキャンパス。
    だがそれはただのスケッチブックではない。
    見覚えがある。見間違うはずがない。それはイブキがかつて何処かに置いて無くした…

    「これ……ッ」
    思わず駆け寄る。
    警戒という言葉は駆け寄る直前にイブキの脳内から霧散し完全に消え失せている。
    ページを捲る。
    目に飛び込んでくるのは色鮮やかな世界。色んな物、色んな風景、色んな人々。
    全てのタッチが拙く幾つか覚えがない絵もあるけれど、それは間違いなく「イブキ」がかつて生み出した極彩色の王国だった。
    見覚えのある絵が次第にぼやけて霞む。
    もっと見たいのに見えない。どうして見えないんだろう。
    スケッチブックの上に幾つもの水滴が止まることなく落ち続け、その落下に従うかのようにイブキも立っていられず地面に座り込んだ。

    何処かから誰かが大声を上げて泣いているのが聴こえる。
    子供のようだが少し違う。
    大人になりかけている少女の泣き声。
    とても大きい声だ。この声の主が泣いている所など寡聞にして聞いた事がない。

    ほんの6年前までは。

    夢の中に声の主、丹花イブキの泣き声が響く。
    開かれたスケッチブックの中には、もう写真も残っていないイブキの大事な人々の姿があった。
    万魔殿の人々。
    マコトを筆頭としたあの日が訪れる前の在りし日の姿。

    残酷な夢を見ていた。
    夢の中でしか取り出せない絵。
    しかしイブキにとって、夢であってもそれは忘れることのなかった日々との再会だった。

  • 36二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 14:15:50

    未来イブキが割と無事に生きててよかった

  • 37二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 15:23:26

    苦しすぎる

  • 38二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 21:01:28

    毎夜見せられるのはさすがにキツすぎる
    そりゃ性格が変貌するよね

  • 39二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 22:42:01

    素晴らしい過ぎる続きをありがとう

  • 401溝回突破アニキ25/05/29(木) 07:14:51

    保守ん

  • 41二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 07:41:07

    今更だけどまた立ってたから来ました
    本当に良い概念だよね…

  • 42二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 12:32:21

    ─────────────────

    目を開ける。

    起き抜けの儀式をする気力は起きない。それをしなくても彼女…イブキは正気を保てている。
    むしろ出来るならもう一度夢の中に戻りたい。6年間一度も思わなかった感情だ。

    ──しかし襲ってきた身体中の痛みには目を開けざるを得ない。

    「…………あれ?」
    目を開ける直前、イブキは自身の状況に疑問を抱いた。意識を手放す瞬間の記憶が蘇ってくる。
    塩梅を誤って崩壊してきた廃ビル。上層から雪崩落ちてくる砂の濁流。そして…
    「ッ…小鳥遊さん!?」
    痛みを忘れて身体を引き起こす。
    そこで初めて自身がベッドの上に寝かされていることに気がついた。弾力は少なく硬いが一晩休むには十二分な広さと快適さ。先程まで居た谷底では見なかったものだ。
    ぐるりと顔を巡らせ周囲を見回す。
    全方向コンクリートの壁面。しかしそこには棚が据えられ照明が置かれている。杭が打ち込まれた壁には紐が通され身の丈が小さい誰かが着るための服が数着ハンガーに掛けられている。服…とは言うがそれはボディアーマーなど命を守ための装備だ。壁際には数種類の銃火器と木箱が置かれ、床には気持ち程度のカーペットが幅を利かせている。
    一目見た感想を素直に表現するならば、『秘密基地』といった趣だ。

    「はいはい、ここにいるよ」
    声のした方を振り返る。

  • 43二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 12:34:36

    「や〜全然起きないから焦っちゃった。でも幸せそうな顔して寝てるから叩き起こすか放っておくかしばらく悩んだよ。」
    「…よかった」
    顔や服が埃で汚れているが、見たところホシノに目立って負傷した箇所は見受けられない。
    そう言えばと自身の身体を見下ろすがこれもまた無傷。しかし身体中が悲鳴を上げている。きっと一日中サーベルを扱っていたせいだと思い当たり、イブキは再びホシノの方に目線を送る。
    「えっと…あの…これ…」
    何を言うべきかが次々湧いて出ては流れて消える。気を失う前に質された未来のこと、なぜ自分たちは無事なのか、ここは一体どこなのか。
    そんなイブキの様子を見てホシノは苦笑すると、皿に満たされたスープと缶詰、そしてパンを一つ差し出してきた。
    「えっ…食料?なんで…」
    嗅覚に暴力的なまでの情報を叩き込まれ意識下から排除していた食欲が急激に起立してくる。
    脱出が不発に終わって食料が尽き、自分たちは最後の挑戦を行なっていたのではなかったか。
    「まあまあ、一個ずつ話そうよ。食べながらでいいから。ちゃんと噛み砕いてゆっくりね。」

    ベッド脇の机に置かれた食事が放つ香りに耐えきれず、器を取り上げゆっくりとスープを口に流し込む。
    「……美味しい。」

  • 44二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 12:38:54

    ホシノの忠告など人間の備える三大欲求の前では意味を成さない。
    少ない食事を食欲を満たすため一気に掻き込んだ。摂れる栄養はすぐさま取り込む。そうしなければ生き残れない世界で彼女は生きてきたのだ。
    未来流だねぇ〜と気の抜けたホシノの声を背景に食事を終える。
    「…………よし」
    食欲は満ちた。ホシノもイブキも五体満足。身体は疲労を除けば問題なし。起き抜けの混乱によって乱れていた思考が冷静さを取り戻していくのが分かる。
    最後に残ったパン一切れを勢いよく口に放り込み咀嚼し飲み込むと、イブキは再びホシノを見据えた。
    その視線に応えるかのように彼女はイブキを見通すように薄く微笑む。
    「ねえ、イブキちゃん?」
    左右異なる瞳の色がイブキを見据える。
    意識が途絶える前のやりとり。お互いを知るということ。イブキの居た未来のこと…
    ホシノは一体、イブキに何を聞いてくるのだろうか?
    瞳に讃えられた色の放つ意味は──

    「まずお水飲もっか?」
    「……ンぐ」

    最初にスープを飲み干したのがダメだったらしい。
    一気に取り込んだ食事はイブキの喉に抵抗し、それはホシノが手渡したコップの水が喉に落ちるまでイブキを苦しめた。

  • 45二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 17:12:27

    このレスは削除されています

  • 46二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 17:15:35

    レス再開来たぁ~!
    このまま完結まで頼むよ頼むよ~
    そろそろ現ゲヘナ組と未来イブキとの邂逅見たい……

  • 47二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 20:27:00

  • 48二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 00:46:40

    保守

  • 49二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 00:56:28

    断片的な未来の話、イブキの口から語られるのかねえ
    クロコ世界ほどではないけどテクスチャ剥がれたっぽいよね

  • 50二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 04:37:21

    続きが染みる。素晴らしい

  • 51二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 10:16:35

    このレスは削除されています

  • 52二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 10:19:21

    このレスは削除されています

  • 53二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 10:20:38

    このレスは削除されています

  • 54二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 10:29:05

    (投げるもの間違えたので投稿を訂正しました)

  • 55保守ぅ25/05/30(金) 19:24:16

    .

  • 56二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 22:13:16

    ──────────────

    「最近変な夢を見るの」
    そう言ったイブキの真剣な表情にイロハは顔を向け、読んでいた小説を伏せる。

    イロハ•イブキ両名のアビドス高校到着から1日が経過した2日目の夜。時刻は午後8時。

    すでに二人とも夕食と入浴を終えイブキは就寝準備を進めているが、どうやらまだ夢の階への一歩を踏み出すまでではないらしい。寝る前に少しおしゃべりがしたいと言ったところだろうか。
    当然イロハもそれに対応するにやぶさかではない。イブキが安眠する手助けができるなら喜んで手を貸すとしよう。
    「どんな夢ですか?たとえばマコト先輩がまた変な事をしてる夢とか。」
    「それもあるんだけどね〜」
    あるらしい。
    「……愛すべき後輩の夢にまで出てきてまで何をトンチキやってんですかねあの人。」
    そんなイロハの悪態と顰め面に気付かず、イブキは夢の内容を語って行く。

    「イブキはね、かっこいい大人になっててね。」
    「へえ…大人のイブキ」
    ふと、件の動画の人物を想像する。隻眼、不格好でボロボロなマント、人間離れした動きと殺意に満ちた他者への攻撃。
    すぐにかぶりを振って打ち消す。馬鹿馬鹿しい。所詮はマコトが彼女を「そう」だと言い放っただけの事。
    「未来のイブキは… そうですね、万魔殿の議長にでもなってますかね?」

  • 57二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 22:14:23

    陰鬱な未来を華やかな想像で上書きする。年齢的にはまだ子供と呼べるが、大人びて身長も仕草も声も女性らしくなったイブキが部下たちを率いてゲヘナを颯爽と歩く姿だ。
    現時点においてイブキが先輩と呼ぶ人々はその頃既にキヴォトスから去っているだろうし、当然イロハもその光景は見れないだろう。しかしそれはきっと理想的な光景になるはずだ。
    「う〜〜ん…」
    おっと、どうやら違うらしい。
    「おや、イブキはマコト先輩の後釜はお気に召しませんか?」
    「そ、そんなことないもん!」
    意地悪な問いに頬を膨らませて可愛く抗議の意を示すイブキの頭をイロハは撫でてやる。
    「すみません。…それで?大人なイブキは夢の中でどんな大活躍を?」
    「かつやく…っていうか…」
    「……」
    歯切れが悪い。
    もう一つからかいでもして和ませようとも考えたが、しかしさすがにこれ以上話を遮るのは不粋だろう。怒って話さなくなってしまったら余計なストレスを抱えさせるだけだ。
    「それで何をしてるんです?未来のイブキは」

    イブキが話し出すまで待つと、次に出す言葉を選び終えた彼女はゆっくりと口を開いた。

    「あのね?」




    誰もいない場所で一人で泣いてるの

  • 58二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 01:04:34

    途中で落ちたから追えなくなったスレにまた会えるとは…

  • 59二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 07:16:22

  • 60二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 08:37:25

    ────────────────

    クレヨンの基本セットの中に砂色というものは存在しない。
    黄色いクレヨンやそれに類似する色を砂色だと主張するか、基本色を混ぜ合わせ被写体に近い色を創造するのが一般的だろう。
    しかし例えばこういう仮定があるとしよう。
    クレヨンを使う子供達にとって砂とそれの堆積体である砂漠が身近にあったとしたら?
    砂漠を描くことのニーズに企業が応え、砂色のクレヨンや色鉛筆を大量生産したとしたら?

    「アビドスの衰退前夜の遺産というわけですか」

    ゲヘナ先行派遣部隊がアビドス高校に到着して3日目、及び捜索2日目。
    アビドス自治区内に未だ残っていた寂れた画材店。その倉庫内に溢れ返る「すないろ」クレヨンの在庫の山を見て、イロハは嘆息した。

  • 61二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 08:37:55

    隆盛華やかなりし頃のアビドス。砂漠の拡大という災禍の結末を予期し得なかった人々にとって、郊外に広がる砂漠とオアシス群は生活と切っても切れない関係だった。そして必然的にそこには商業的な需要と供給が生まれる。こと学園都市であるキヴォトスにおいて、アビドスの教育機関が砂漠を教材として利用しない理由がない。
    特に衰退前のアビドスはキヴォトスで群を抜くマンモス校。初等部の生徒数も砂漠の砂粒よりも数があったはずだ。図工の時間など格好のモチーフとなったろう。
    そして「すないろ」クレヨンはアビドスの衰退が決定的になるまで永遠と作られ続けたのだった。

    「在庫の処分に困ってたんだ、無料で好きなだけ持って行ってくれていい。」
    砂色のクレヨンを求めている子供がいると聞き、喜色満面の笑顔になった獣人の店主はイロハを倉庫に案内した。
    そして待っていたのはイロハの眼前に聳えるアビドス高校に来るまでに見た廃墟群のビルを彷彿とさせるダンボールの山。
    …まさかこれを全部持って行くわけにはいくまい。
    「いいえ、この砂色セットを数個で十分です。それとお代も払います。」
    「いいのかい?」
    それはどちらの意味だろうか。在庫が捌けないことへの無念さか、収支が発生することへの思わぬ喜びか。
    しかしおそらく両方だろうとイロハは確信する。商人というのはいつの世でもどんな場所でも強く根を張り生き抜こうとするものだ。
    「はい。我々が店にお金を落とさなかったという事実がどう外に伝わるか分かったものではないので」
    イロハがゲヘナ生というのは見ればわかる。店主も首を傾げているがこのあとの発言で万魔殿の人間だということも知れるだろう。
    いずれ来るイブキの未来のため、後輩たちの将来のためを考えるならば出張先の経済を回し好印象を与えておくに如くはない。
    「それとこの在庫を全部ゲヘナの万魔殿へ送ってください。支払いは現金、名義は棗イロハで。」

  • 62二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 08:39:32

    心の底からのにこやかな笑顔で見送ってくれた店主に礼を言い店を出て数分。
    待機させていた護衛達とイブキに駆け寄りクレヨンを見せると、殊の外イブキが顔いっぱいに喜色を浮かべて喜んでくれた。
    「すごいよイロハ先輩!この箱の中ぜんぶ砂色のクレヨンだよ!」
    アビドスの枯れ具合は好きになれないが、校区は違えど時を超えてイブキの心を満たした教育関係者と企業の努力に内心で拍手喝采を送る。これで今日も一日捜索という名のイブキ慰安旅行が上手くいくというものだ。
    「それはよかった。じゃあさっそく砂漠に向かいましょう。」
    今日の予定は砂漠へ出て捜索(という体でイブキの砂漠スケッチ)。その後アビドス高校へ戻り対策委員会が収集した情報を精査、明日以降のハイランダーとの協力体制の打ち合わせを行う手筈となっている。
    それなりの体を整えそれなりにやってそれなりに満足する。マコトの暴走から始まった仕事の処理としてはとても妥当でちょうどいい塩梅と言えよう。

  • 63二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 08:41:01

    「イロハさん」
    「どうしました?」
    そんな気分でイブキを横目に1日のスケジュールを考えていると、護衛の一人が声を掛けてきた。その手に握られているのはクロノスが発行している号外新聞。
    ここ数日の通信障害によりキヴォトス各地と連絡が取りにくい状況となっている。その穴を埋めるため自称ジャーナリズムの徒であるクロノスが急遽発行した昔ながらの情報媒体だ。
    微に入り細を穿つとまではいかないが記者達の東奔西走によって各地の情報がまとめられ掲載されている。情報の遅れは確かにあるが、こんな時こそだから出来る趣のある活動と言えなくもない。
    「何か問題でも発生しましたか?」
    この問いに対して返ってくるのは真剣かつ青ざめた表情と、無言。ただ紙面を見ろということか?

    受け取った新聞を広げる。
    真新しいインクの匂いが鼻腔をつく。もし文明が滅び電波とデジタルが死滅したとして、情報を伝える情熱と人と輪転機が生きているなら人々はきっと新鮮な情報にありつけるだろう。そう思わせる鮮烈な香り。

    …ただしイロハの目に飛び込んできたのは、そんな鮮やかな思いを一面の砂色にかえる身に覚えのない凶報だった。

    【アビドスがゲヘナに宣戦を布告? 万魔殿幹部2名を拘束か。】

  • 64二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 12:24:55

    遂に誤報に気付いたか

  • 65二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 15:36:40

    ようやく事態が好転する兆しが……
    しかし現代イブキと未来イブキが精神的にリンクか、向こうで最期まで一緒にいたイロハが彼女を最初に知るかもなのは皮肉だな……

  • 66二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 16:06:52

    どう動けば収束できるんだろうね
    タイミング的にミカvsクロコ、RABBITvsゲヘナ本隊が始まっている頃だが

  • 67二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 21:47:43

    いや違った、明日以降にハイランダーと協力だからカvsクロコ、RABBITvsゲヘナ本隊の前日か
    1日時間があればある程度動けそうだけど、逆に言えば衝突を止めるような動きは出来なかったのか? なんか未来世界の結末をなぞらされているようだ

  • 68二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 06:35:12

  • 69二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 12:41:45

    ─────────────────

    「谷底のセーフハウス」とホシノは言った。

    未来のホシノと今のホシノは違う。良くも悪くもそう感じていたが、しかしやはり何だかんだ根っこはちゃんと同一人物だとイブキはしみじみ思う。
    「つまり…私達が居た谷の下には地下鉄の廃路線があって、小鳥遊さんはそこの一部をセーフハウスにしていたと?」
    「そうそう」
    にへらとした笑顔で笑うホシノに悪気は見えない。
    「食料備蓄も1ヶ月分はあって、さらに脱出路がこの先に伸びていると?」
    「そ〜なんだよ〜」
    「……それで私の動向を余裕を持ってずっっっっっと観察してたと?焦る姿を見て内心『頑張ってるね〜☆』と笑って見ていたと?ちょっと私の実力を試すために?」
    「う、うへ… なんか眼が怖いよぉ??」
    次第に圧を強めるとさすがに怒気が伝わったのかホシノが二、三歩後退した。
    彼女を見つめるイブキの姿は、彼女の世界では形式が残るだけとなったゲヘナ風紀委員長代行の肩書を思い出させるに足る物だった。

  • 70二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 12:42:39

    事の次第はこうである。
    イブキたちが自ら捕らわれた谷底はホシノが砂漠を巡回するルートに以前から組み込まれているものだった。そういう場所はやりようによってはアビドスに流れる不穏分子の潜伏先になりやすい。
    だから彼女はここを定期的に見回っていたのだ。
    いまだに信じられないが、実際のところホシノは一人でかなり無茶をすれば谷を上り下りできるらしい。
    「まあ命懸けになっちゃうからそう何度もやらないけど」
    ……と言っていたが一度できるだけでもおかしい。
    兎にも角にもその捜索をするうちに彼女は谷底にかつての地下鉄の遺構を発見する。
    その廃路線を1時間ほど歩くと比較的地上に近い廃駅に通じており、彼女はそれを利用して今イブキたちのいる廃駅をベースキャンプ化していたのだ。

    そしてある日哀れな子ウサギがこの谷底に囚われる。

  • 71二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 12:43:14

    ホシノが焦らないのは当然だ。すぐ足元には逃げ道があり食料が豊富にある。本人曰くいざとなったらネタばらしするつもりだったらしいが、本当かどうか疑わしいところだ。
    一切の情報を開示せず交流を拒絶した人間に警戒をしていたというのはイブキにもわかる。
    しかし本気で追い詰められるまで何も言わず、どころかビル倒壊の方針を打ち出した時に明らかに目の色が好奇心で満ちていたのは言い逃れのしようもない。
    目は口ほどに物を言う。ホシノは彼女が難局をどう切り抜けるか、きっと楽しんで見ていたに違いないのだ。
    そんなホシノの姿に未来の彼女の出発点を目の当たりにしたようで、何やら複雑な心境になるイブキであった。

  • 72二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 15:13:49

    うーんこのおじさんホンマ愉快犯……

  • 73二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 18:29:08

    ずっとイブキが焦ってる姿をみながら内心で笑ってたのかホシノ…

  • 74二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 22:53:24

    >>71

    ホシノさぁ…

  • 75二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 00:05:03

    まあ見極める意味もあったんだろうけど、せめてビル切り倒しとか提案したあたりでネタバラシしてもろて…

  • 76二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 07:00:22

    ここに至るまで「いざというとき」と捉えていなかったと言うのもそれはそれで怖い話だよ

  • 77二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 08:51:59

    「うう…おじさんそんな悪趣味じゃないよ?」
    「…本当ですか?」
    「ほんとだよぉ。様子見は確かにしたけどあのビルの案は確実に上に行けたから乗ったんだし、私ならまず間違いなくこうして助けられたし。それに意地悪するならもっと色々方法あるじゃない?」
    「……」
    色々な方法とやらはきかないことにしておいて、少し可哀想に思えるほど落ち込み泣き言を発するホシノに溜飲を下げる。
    たしかにホシノはあの危急でもこうしてホシノ自身とイブキをあっさりと救い出した。いつでも救い出せる自信があったのだろう。窮地を楽しみ命をチップにギャンブルする彼女であったなら、イブキを置いてさっさと一人で退避した筈だ。
    ───また未来の認識に引きずられた。
    根っこは同じでも過程は違う。たとえばキヴォトスの何処かにいる子供のイブキは今ここにいるイブキと本質は同じだが、まだただの子供だ。ホシノも、サキ教官も。生き抜くために全てを犠牲にしたり試すような人々ではない。
    過去と未来の齟齬で起きる問題を、知ることで正そうと気絶する直前に決めたばかりではなかったか。
    「……すみません、言い過ぎました。未来の小鳥遊さんなら私を置いて退避してたと思って。」
    「未来のおじさんが鬼畜すぎるね相変わらず。でも、こっちも早く言うべきだったよ。ごめんね?」
    ホシノの笑顔を見て、イブキは何かが一歩前進できたのではないかと思う。
    「ちょっと面白いなこの子ってワクワクしちゃったのは確かだけど」

    ……しかしやはり引きずられてはいないかもしれない。

  • 78二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 08:53:24

    言い合いが終わりしばらくし、解けて弛緩した空気に息を吐く。
    どうやら無事だった携帯を取り出して時刻を見ると、気絶してから約3時間ほどが経過していた。上はもう宵闇が空を覆う時刻だろう。
    夜間なら容易に移動が可能だ。
    「…じゃあ脱出しましょう。出口まで1時間でしたっけ?いくらここが安全でも倒れたビルの重量が──」
    「待った」
    言いかけて目の前に人差し指を立てたホシノの手が差し出される。
    彼女の顔は先ほどまでの情けないものとは反し真剣さを帯びていた。
    「おじさんも隠し事全部話したんだからさ、イブキちゃんの事も話してほしいな。」
    でも、と少し抵抗を示すとホシノの指がイブキの手足数カ所を突いた。じわりと鈍く重い痛みが生じ、薄れつつも鈍い怠さがそれに続く。
    バレていた。
    「痛いでしょ〜?全身筋肉痛。そのまま動かれて途中で倒れられても困るし、一晩くらいゆっくりお話ししよ?」

    ああ───
    と自身の身体を見下ろし嘆息すると、重力に身を任せベッドに沈み込む。
    いざという時に動かないこの身体。
    本当に根っこは何も変わらない。


    「……未来の話でしたっけ?」
    そう問うとホシノは無言で首肯する。話を聞く姿勢をとるように壁際に置かれた椅子に腰掛けた。
    「そ。お互いを知らなきゃ何にもならないって言ったでしょ?」
    「面白い話じゃないですよ」
    「面白くても面白くなくても、いいんだよ」
    イブキの顰めっ面に対しホシノは終始朗らかな笑顔を浮かべて優しく話す。今のこの人がこのまま大人になったとしたら、きっといい教師か何かになるに違いない。

  • 79二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 08:54:39

    「そうだ、話しやすいようにコーヒーでも淹れようか?」
    ふと見るといつの間にか用意されたコップ二つと据え付けの発電機に繋がったケトルが一台。
    ホシノはすでにコーヒーの粉をコップに入れ始めている。
    ………快適空間が過ぎる。
    「そうですね、助かります。実は喉がからからで。」
    「ありゃ、白湯の方がよかったかな。」
    かと言ってホシノは方針を変えるつもりはないらしく、ケトルを手に取ると粉の入った器に熱湯を注ぐ。
    熱湯でコーヒーが溶け出し狭い部屋の中に心地良い香りが広がると、イブキの脳裏に一つの光景が浮かんできた。

    万魔殿議長室の風景。
    あの場ではよくコーヒーが出されていた。
    マコトがいる、イロハがいる、サツキもチアキもいるし当然イブキもそこに居る。
    イブキは特別にココアを入れてもらっていたと記憶している。子供の舌では苦いコーヒーは飲み下せない。
    あんな苦い物を美味しそうに飲む先輩達がとてもカッコよく見えた。
    今ではもう思い出せない美しい日々の味。
    あの頃から根は変わらないのに、変わりたくなかった部分だけ変わってしまったとその光景を見つめていると、思い出の中の小さいイブキがこちらを振り返り糺してくる。


    『……思い出していいの?』
    ──いいんだ


    「私はもう、苦い味が大丈夫になっちゃったから。」

  • 80二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 15:21:07

    ああ、やっと未来イブキがある意味少しは救われる展開に……
    まあおじさんの方は未来のあんまりな世紀末ぶりにドン引きしそうだけど

  • 81二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 19:52:49

  • 82二次元好きの匿名さん25/06/02(月) 23:29:54

    >>79

    まぁプリンどころか食べ物にありつけるかどうか分からない生活が続けばな…

  • 83二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 00:28:54

    幸せだったからこそ苦い思いになる記憶も、先輩たちの象徴だったコーヒーも、飲み下せてしまうのが侘しいですね…

  • 84二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 02:43:43

    >>82

    初代スレでもあったけど、弱い自分の象徴として未来イブキはプリン嫌いになってそうだな

    あの地獄じゃ間違いなく貴重品だろうしそんなものが好物とか自分が許せないとか思ってそう

  • 85二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 08:27:44

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    【アビドスがゲヘナに宣戦を布告? 万魔殿幹部2名を拘束か。】

    本日未明、謎の異常事態により通信インフラが壊滅的な打撃を受ける中で衝撃的なニュースが飛び込んできた。
    有力な情報筋によると、なんとゲヘナ学園生徒会であるところの万魔殿〔パンデモニウム•ソサエティ〕に対しアビドス高等学校からの宣戦布告が行われたというのだ。
    実際のところは調査中だが情報提供者の立場を鑑みるに確かな情報である可能性が非常に高い。
    先日の未確認飛行物体の一件といい、読者諸氏に正確な情報を届けられない事に忸怩たる思いを禁じ得ないが、我々クロノス報道部はこの情報をさらに追求していく事をお約束する。

                                取材 : 川流シノン  取材、筆 : 風巻マイ

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  • 86二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 08:29:31

    行動は速やかに行われた。
    イブキの安全を確保しつつ車に乗り込むと、エンジンを始動させゆっくりと市街を走る。
    「イロハ先輩もう戻るの?」
    突然無言で動き出したイロハ達にイブキが不安げな声で聞いてくる。
    「大丈夫ですよイブキ。急に予定が変わったんです。」
    普段のイブキならここで砂漠へ向かわない事に頬を膨らませるだろう。しかし今のイロハ達の様子はいつもと明らかに様子が違う。
    小さいながら何らかの危機を感じているのかもしれない。
    護衛がイブキを慰める姿を横目にイロハは周囲に警戒の目を向けた。

    市街を大きく迂回しつつ宿泊施設に向かい走る。
    しかし目をこらしても不審な人物や追尾してくる車などは見られない。何かあるとすれば道行く人たちがこちらに不審の目を向ける事だろうか。ゲヘナ生ですし詰めの車には当然の反応だろう。
    「やはりクロノスの誤報では?」
    車内は身内だけ。動向を探るスパイも居なければ追手らしき影も見えない。当然だが自分達はアビドスから拘束を受けてなどいない。
    「クロノスの情報ですからその可能性の方が大きいのも確かです。」
    しかし、だ。確証のない情報を一面で大々的に載せるなどあるだろうかという疑念もある。

  • 87二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 08:30:31

    推測される可能性は三つ。
    1、完全な誤報でクロノスの飛ばし記事という可能性。もしそうならアビドスと連名で抗議文を送りつけてやろう。
    2、記事内容を推察させるに足る何かが起こっている。イブキが居ないことにキレた我らの議長が暴走してチアキあたりが面白がって話したのかもしれない。
    3、あってほしくない最後の一つ。
    「アビドスがゲヘナに本当に宣戦布告をした…か」
    あり得ない。
    あの素朴な人達がそんな事をするようには思えなかった。それに言葉は悪いがこんな枯れて寂れかけた学校が、しかも軍事に長けると言っていいゲヘナに戦争を仕掛けるなど有り得るだろうか?
    イロハの中の警戒信号は赤色灯を回してはいるが、いかんせん杞憂という念が拭えない。
    「兎にも角にも宿の荷物を回収しましょう。仮に記事が本当だったとして、目立った異変が無いなら今すぐ向こうも事を構えるつもりがないと考えられます。」
    あるいは記事に向こうも気付き、すぐにでも追っ手を差し向ける可能性も無くはない。
    「荷物を回収したら捜索活動という体でハイランダーの駅に向かいます。ハイランダーは線路上の自治区や各地の資本企業との縁が深い。捜索の協力はしていても無謀な冒険に同調するような事はないはずです。」

  • 88二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 08:33:43

    このレスは削除されています

  • 89二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 08:39:49

    「イロハさん」
    無機質な護衛の声に振り返る。
    先程までイブキに対応していた優しい声音はもうそこには無い。
    「もし途上で進路を妨害する者が現れたら?」
    「……排除します。」

    言うと同時にイロハは銃の安全装置を解除する。万魔殿制式拳銃。戦車で戦うイロハにとってそれを使う機会は限られる。
    あるとすれば戦車を無くし追い詰められ、命を繋ぐ最後の悪足掻きをする時だ。
    どうかそんな機会が訪れませんように。

    そんな祈りを銃に込めたその直後、イロハにとって死神の声にしか聞こえない声が頭上から降り注いだ。



    「ああ、それは困ります」

  • 90二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 15:14:17

    ……え?
    マジで誰だ、未来イブキへのメール送り主か?

  • 91二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 18:28:49

  • 92二次元好きの匿名さん25/06/03(火) 23:30:32

    ここで掣肘してくるやつが思い浮かばないが……窓を開けていた奴が誰かにコンタクトを取っていたから、その相手が出張ってきた?
    ちょっと黒服あじがある気がする

  • 93二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 06:10:45

    保守

  • 94二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 07:52:06

    (ss書いてる者です。書き溜めとっくに消費して毎日書いてる状態ですが、今日難しいので保守しておきます)

  • 95二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 14:51:39

  • 96二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 18:32:48

    保守

  • 97二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 22:03:15

    >>94

    おつです、ごゆっくり

  • 98二次元好きの匿名さん25/06/04(水) 22:18:21

    >>94

    了解です。

  • 99二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 00:25:31

    期待保守

  • 100二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 06:46:08

    朝保守

  • 101二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 08:44:56

    (未来原因編を書いていきますが、解釈違いや「そんな事起こらへんやろ」と思う描写があると思います。この時空ではそれが起こったという事でどうかひとつ。)

  • 102二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 08:45:28

    >>101

    了解です。

  • 103二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 08:47:09

    ────────

    「小鳥遊さんって、銃弾を何回受けたら死んじゃいますか?」
    「えっ、なに急に。」
    未来の話を始めた筈のイブキの問いに驚くが、別に今の二人は敵同士では無い。銃を向け合ってるわけでもないし追う追われるの関係も現在保留中だ。
    少し考えホシノは口を開く。
    「正確な数は分かんないかな。めちゃくちゃ当たって痛みが『ヤバい』って思ったあたりが限界。そしたら逃げちゃう。」
    相変わらず化け物だなぁと感心しつつ、イブキは腕を持ち上げ自身のヘイローに指を向ける。

    「私は大体10発です」

    もしもシャーレの先生がそれを見たならば、ただの円しか形がなく、極めて薄く、ヒビ割れだらけだと評するであろう儚いヘイローを。

  • 104二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 08:49:48

    ===============

    エデン条約。

    飛ばされたこの世界では、混乱と乱戦のうちに結局破談を見た幻の条約。
    ホシノやイブキには知り得ないことだが、締結を妨害したアリウスの暗躍とそれに関する一連の顛末が決着を見た事件でもあった。

    しかしイブキが居た世界ではたしかにそれは『締結』された。

    しかもゲヘナとトリニティのみではない。
    全ての学校が包括的に参加し、賛同し、混乱も問題もなにも起きず締結された。円満かつ平和裡に。
    全ての学園間の紛争を調停し解決する、《エデンの園を創造する》かのような条約機構。
    ニュース映像で演説をする各校代表と連邦生徒会の面々、そしてそれを見て微笑むシャーレの先生の姿を覚えている。
    キヴォトスに齎された平和と安寧。それを象徴する世紀の瞬間だとレポーターは大興奮といったように語っていた。
    実際そうだったのだろう。
    日常は何も変わらないが、キヴォトスから争いの種が消え去ったと言えるのだろう。

    しかしそれが間違いの始まりだった。

  • 105二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 08:50:38

    ==============

    「私は当時の記憶を殆ど覚えてないんです。ですからここから先は座学で教えて貰った話なんですが…」
    締結式後の混乱の記憶に関してそう前置きすると、ホシノはそれでもいいと先を促した。
    こちらに飛ばされ約1ヶ月。誰にも話さなかった情報を口にするには少し抵抗があったが、ゆっくりと口を開く。

    「エデンの園はその日成立してしまった。」

  • 106二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 09:36:02

    ==============

    最初の異変は急激に増加した死亡事故だった。

    ちょっとした抗争で人が命を落とした。
    いつもは問題ない高さから落ちて誰かが死亡した。
    爆発事故で人が大勢死んだ。
    ヘイローがあるのに。いつもは問題ない事なのに。なんでそんなに簡単に……
    その後ヘイローを識別出来るシャーレの先生が気付いた事を発端として、キヴォトス中に大混乱が広がる事になる。

    “ヘイローが薄まりそれが消滅している者もいる”

    与えられた衝撃は甚大だった。
    右往左往する者、これ幸いと今まで敵わなかった者を討ち取る者、誰かを自らの手で葬り罪悪感に耐えきれず「そうなって」しまった者。
    さらに混乱に拍車を掛けたのが「ヘイロー破壊兵器」と呼ばれる兵器群である。
    何処からか運び込まれたそれらは悪意ある人々の手に渡りキヴォトス各地で使用された。
    小型のものから大型のもの。対人から学校一つを消し飛ばすような非人道的なものまで。多種多様なそれによって本当に多くの人々が命を落とした。

    原因は何だったのか?
    何がこの問題の発端だったのか?
    それはトリニティとゲヘナの壊滅によって「エデン条約」の効力が失効された時に初めて判明した。

  • 107二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 09:40:40

    ===============

    「『エデンの園』は争いのない理想郷。エデン条約は曲解して捉えてしまうなら「神秘など無くても誰も傷付かない場所」を築く条約。このキヴォトスにおいては『契約』が重い意味を持ちます。たった二校間ならただの紛争調停の条約で終わった筈です。だけど全校を巻き込んだ向こうの私達がやった事は世界の書き換えに等しい。そして築かれたエデンの園には───」
    「…身を守る物なんか必要ないって?」

    ホシノを見ると未来でも過去でも見たことのない沈痛な顔を浮かべていた。
    地面を見つめ眉根を寄せた彼女は、何か自身の失敗を後悔する表情を浮かべているようさえ見える。

    「はい。条約は何処かの誰か何か…世界とか神様とか、そういうものによって『そう』解釈されてしまったんじゃないかって、教えてくれた人は言ってました。」
    座学を執った参謀長はこの話をする時はいつも今のホシノのような顔を浮かべていた。
    重く、苦しみを滲ませ、後悔を孕んだ顔。

    そして、イブキにとっては現実でありホシノにとってはあったかもしれない未来史の概略は、『現在』に向けて歩き出す。

  • 108二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 10:19:30

    (見直してから「そう言えばホシノ現場に居たわ」ってなったのでお許しください。続きは明日)

  • 109二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 11:31:48

    乙です
    あ、悪意に溢れすぎた曲解……せめて武器の方を消してくれよ

  • 110二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 13:59:25

    神秘の力が無くても楽園を作れるという意思表示と思われたから「じゃあ神様の手や神秘はもういらないね。人の手だけで平和を作れるよう頑張ってね」ってされたのか

  • 111二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 15:33:56

  • 112二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 15:40:34

    何だろう、普通のマンガやゲームのストーリーとかなら人の手で平和を探すグッドエンドで終わりそうな概念なのに。
    「大人」も「主人公」もいない子供だけの世界だから悲劇になっちまったのかな。
    多分先生はゲヘナトリニティ共倒れの前に退場したんだろうな……

  • 113二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 15:44:57

    今までは銃や爆弾を使っても殺人など無かった世界だからな
    復讐の連鎖で週に何千人も死んだ感じか

  • 114二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 18:05:03

    ある意味では健全に戻ったお話でもあるんだよね
    銃の危険性を知られず引き金が軽かった今までの方がおかしい訳だし

  • 115二次元好きの匿名さん25/06/05(木) 19:52:26

    でもトリニティ・ゲヘナの壊滅で失効したのに、イブキとかはちょっと耐えられる程度なんだよな
    条約破りとみなされて元通りには戻らなかったとか?

  • 116二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 00:35:05

    保守

  • 117二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 01:33:37

    元から治安悪いゲヘナと陰湿疑心真っ黒なトリニティならまあ壊滅するよね
    真っ当なミレニアムは外部からの侵入による滅びを恐れて鎖国
    アビドスは人数が人数だからおじさん先鋭化
    ……よくイブキだけでも脱出できたもんだ

  • 118二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 06:43:14

  • 119二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 08:41:56

    ================

    エデン条約締結の二本柱であった2校が消滅した時、生徒達の頭上で消滅しかけていたヘイローはその姿を取り戻した。
    …正確に言えば取り戻したという推定が下された。
    それが分かる先生は戦禍の中で消息を絶っていたし、撃たれて斃れるまでの時間が長引いた状態をそうだと明確に答えられる者は他に誰も居なかったからだ。
    エデン条約が解消された事で楽園も消失したとされたのか、それはもう誰にも分からない。

    そしてエデンの園から追放された物は永遠の命を奪われ定命の命へと堕とされる。

    復活したヘイローで耐えられる銃弾数は多くて5〜10発、少なければたったの1発。おそらく本来のものより明らかな減衰を遂げたヘイローは、しかし僅かばかりながら混乱を収めるには有効だった。
    それは生徒達に一時的な安心を与え事態は沈静化を迎えた。
    しかし同時に、事態の犯人を探させる時間をも与えてしまった。

  • 120二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 08:43:22

    全てが条約に起因すると分かった時、僅かに残っていたゲヘナとトリニティの生徒達は魔女狩りの火中に放り込まれた。

    ……それはとても嫌な匂い。

    大勢の人が生きながらまとめて焼かれる記憶。五感…特に嗅覚が覚えている。
    イブキの記憶は「あの日」の途中で途切れ、街中で燃え上がる骸の山と燃焼される人体から立ち上る強烈な臭いから再開していた。
    積み上げられた亡者達の山から転がり落ち、たまたま命を拾った時が彼女の第二の人生の始まりだった。

  • 121二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 08:47:03

    地獄だぁ
    そういえば未来イブキの角ってもしかして自分で折った物なの?

  • 122二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 09:03:41

    =================

    「あとはもう、教えてくれた人もよく分からないんだそうです。」

    人々はさらなる争いを引き起こし、また多くの人が死んだ。
    詳細なんて分からない。毎日どこかで何かがあって朝になったら道端に死体が転がっているのだ。
    そしてある日突然、まるでそんな地獄に呼応するように正体不明の機械の軍団がどこからともなく現れキヴォトスを蹂躙して行った。
    すでに各学園には組織的抵抗を可能とする力は無く、遂には学園という枠組みはほんの一部を残してその殆どが消滅し、ただひたすら弱肉強食のみがキヴォトスで生きるための理となった。
    謎の機械の軍団。
    さすがに嘘くさいだろうか。この世界では確かに機械の身体を持つ者や大きな機械の怪物が居ると聞く。
    しかしこれを喋ることでホシノの不信を買わないかと不安を抱いたが、彼女の反応は予想外のものだった。

    「…そいつら、もしかしたら知ってるかも」
    「ッ!本当ですか!?」
    思わぬホシノの言葉に身体を浮かす。もしかして連中を駆逐する術があるのだろうか?
    しかしそこに突き付けられたのは希望を砕く一言だった。
    「あの時は先生と色んな学校の皆が協力してどうにかなった。…そっか。原因は全然違うけど、そっちもそんな風になってたんだ。」

  • 123二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 09:05:18

    ふらと目眩に近い感覚を感じイブキは再びベッドに身体を横たえる。
    楽園なんか作らなければ。
    一度冷静になって人々が手を取り合っていれば。
    そうすれば希望に溢れてた頃とまでは言わないが平和なキヴォトスを再建することが出来たかもしれない。
    しかしあそこには悲鳴と血が溢れ、頭上に浮かぶ儚い命綱と荒れ果てた大地がそれを暗黙のうちに肯定しあらゆる命を飲み込んでいた。
    青春の物語というテクスチャの剥がれたあの世界は、荒廃と絶望を相手に輪舞曲を踊り狂いながら滅亡の淵へ今もまだ延々と転がり堕ちているのだ。

    イブキはかつて見た地獄を振り返り終えると息を吐く。
    ヘイロー破壊兵器を用いた戦争はまだあちらで続いているだろう。
    人を殺める事を生業とするかつて子供だった大人達が暴れ回り、機械の怪物が闊歩する。
    イブキが抜けた事でサキ教官や参謀長の負担が著しく増えたに違いない。
    小鳥遊さん達の集落は達は助けてくれるだろうか?
    もしかしたらもうみんな死んでしまっただろうか?
    希望も明日への出口も見えない深い濃霧の中にある世界で、まだ戦い続けてくれているだろうか。


    「帰りたいな……」


    泣き出したくなるような希望を紡ぐ世界を目にしたからこそ、終わり行くあの世界のためにイブキは帰りたかった。   

  • 124二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 09:14:42

    もしかして未来世界の先生って殺されたんじゃなくて自分で命絶ったとかかなぁ
    良かれと思って協力した結果がこの地獄に繋がって精神破壊されたとかで

  • 125二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 09:47:11

    >>124

    面白いなという興味と、先生にはそう責任逃れするような大人であってほしくないという気持ちの2つがある解釈

  • 126二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 15:05:05

    イブキの心は今でもその絶望の中にいるんだろな…
    そこでは絶望の中でもなんとか必死に生き延びようとしてる子達がいる訳だし

  • 127二次元好きの匿名さん25/06/06(金) 19:37:21

    >>126

    そういやサキ、ミカ、ホシノ以外の生存者を聞かんな…ネームドは殆どヘイロー吹き飛んでしまったのか?

  • 128二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 00:54:05

    良くも悪くも、目立つネームドは争いの場に関わることが多くて戦乱の中で斃れていったのかも

    というか争い自体は収束してると思っていたので、今でも続いているのはだいぶ絶望的だあ…

  • 129二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 06:52:25

    ヒナみたいな防御力が高いタイプやツルギみたいな回復力持ちは戦い方からしてこの状況だと戦死しやすそう
    逆にホシノのような盾持ちや回避タイプは生き残ってそう

  • 130二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 10:46:51

    >>129

    そう考えると、SRTの地に足付いた戦術知識を持っているサキの存在が大事っすね

    ヘイロー頼みのゴリ押しが効かないし、被弾せず集団でカバーする戦い方が求められる

  • 131二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 13:33:13

  • 132二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 20:55:17

    ──────────────
    「痛ったたたたた……ァアあああッ!!!」

    バチバチと身体を叩く衝撃音と弾ける火花。しかしそれを受ける本人はまるで動じない。
    どころか叩き付けられる銃弾を全て受け止め弾きながらその生き物は無謀にも突進を仕掛けてくる。
    しかし決してその勢いは止まらない。
    「……ッ!」
    それをバックステップから横への跳躍で躱すと彼女…シロコ*テラーは、その脅威が柱を砕き壁まで吹き飛ばし、廃ビル側面に大穴を穿つまでの一連の破壊に些かばかり冷や汗が頬を伝った。
    神秘が蔓延るキヴォトスにおいても常軌を逸したその力に、シロコは最大限度の警戒を常に保ち対峙しなければならない。

    「どうかな?少しは冷静になった?」
    粉塵の中から現れたのはトリニティティーパーティーのホストの一角、あるいはパテル分派の暫置代表、あるいは現RABBIT小隊の臨時参謀長…聖園ミカである。
    その美貌を十全に活かしていた彼女の私服は傷と埃でデコレーションされ、戦場に似つかわしい戦闘服の趣きへと変貌している。
    団子状にまとめられていた髪も解れててんでバラバラ。しかし枝垂れた前髪から覗く双眸は肉食獣の如き獰猛な光を宿し、死の神の権能を持つシロコをして怯ませるほどの狂気をもって見つめ射抜いていた。
    「……あなた達がゲヘナじゃないって事は、分かった。」
    シロコが口を開く。
    同時に爆音。

  • 133二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 21:01:17

    言い終わるやいなや撃ち込まれた攻撃はゲヘナの軍勢によるものだ。
    ミカも先程状況を確認したが、地上を侵攻してくるゲヘナの部隊が居て、それがなぜかこちらに気付き攻撃を開始して来たらしい。
    まさしく青天の霹靂。まさかゲヘナの連中にティーパーティーの思惑が看破された?
    状況を確認しようにも耳に付けていた通信機器はとっくの昔に何処かへ飛んで行って見つからない。そういえば目の前の不景気な面をした女との喧嘩を始めた時点でサキが何かを叫んでいた気がするがこの事だったのだろうか。
    「そうそう、アレがゲヘナ。だから私達がここで殴り合う意味なんか無いの。分かるかなワンコちゃん?」
    だからこんなのを相手にはしていられないとばかりにミカは事態の終息を図る。
    ただこの時彼女は少し早計に過ぎたと言える。桐藤ナギサが見れば頭を抱え、百合園セイアが見れば嘆息して紅茶を一杯啜っただろう。
    トリニティは皮肉と挑発がお家芸と言われることがある。回りくどい言葉遊びで相手を扱き下ろしマウントを仕掛け自身の優位的立場を作り上げるのだ。
    しかしミカの発した言葉は簡易的に過ぎた。シロコはそれが分からないほど愚かではない。
    オオカミは舐められたら過酷な世界を生きては行けない。

    「ん。それはそれとしてカバみたいに凶暴な猛獣は先に倒しておいた方が何かと好都合。間違えた。カバじゃなくてバカ。」
    「……………あはっ⭐︎」

    自身の持つ物に自信と誇りを持ち、大事な人を守るためなら身を粉にして戦いに身を投じ、そして何よりプライドが高く吐かれた悪口にはさらなる悪言を贈答用の包装紙に包んで殴りつける。
    そんな獣二匹が向かい合ったらどうなるか。
    それは再び始まった攻防と破壊が答えだった。

    同族嫌悪
    相性最悪

    ───────────────────

  • 134二次元好きの匿名さん25/06/07(土) 21:04:05

    >>133

    アカン(アカン)

  • 135二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 04:49:43

  • 136二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 11:47:09

  • 137二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 14:34:55

    過去にどえらいやらかししてるも追加で
    ……マジで劉邦とカズマみてーだなこの獣ども

  • 138二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 14:52:05

    そ…そんなところでガキっぽさを発揮しなくてもいいんだよ二人とも!
    まあここが取っ組み合ってること自体はさほど事態の悪化には繋がらなさそうなのが不幸中の幸いか

  • 139二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 20:37:43

    更地になりそう

  • 140二次元好きの匿名さん25/06/08(日) 22:56:38

    このレスは削除されています

  • 141二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 01:18:11

    RABBIT小隊との通信機を失ってるのも不安だなあ
    今は戦闘中だからさして気にならないけど、この後合流できなかったりするとミカがノーブレーキになっちゃう

  • 142二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 08:14:00

    保守

  • 143二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 13:24:27

    待機

  • 144二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 15:04:17

    (いま仕事列車無限編なので明日続き書きます)

  • 145二次元好きの匿名さん25/06/09(月) 20:03:26

    >>144

    了解です。

  • 146二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 01:41:04

    ごゆっくり~

    クロコとサシで互角っぽいミカ、よくよく考えるととんでもないことでは?

  • 147二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 09:27:20

    ほす

  • 148二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 14:38:18

    >>146

    普通にとんでもない事態だよマジで

  • 149二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 17:53:21

    「撃て撃て!とりあえず撃て!!」

    号令と共に廃ビルに向かって雨のような砲撃が加えられる。
    砲撃、といってもキヴォトスの基準で言えばそこまで強力な物ではない。
    後方にはまだ機械化部隊が控えているが、現在砲撃を行なっているのは迫撃砲数門、戦車数台。その許容するところの飽和攻撃である。
    キヴォトスの人間を一時的に行動不能にするに十分な物量であり、建造物の破壊による示威行為としても十全の効力を発揮する。

    「おいおい…本当に殺したりしないよな?」
    それを眺めるのは開戦前に横転し砂丘へと転がり落ちたジープから這い出てきた銀鏡イオリである。
    同乗していた運転手、羽沼マコト、元宮チアキの3名はギャグ漫画の登場人物よろしくといった体で気絶しており、イオリのみが状況を俯瞰で見れる位置にその身を置いていた。
    誰かが誰かを一方的に叩きつけるのを観戦するというのはなんだか嫌な特等席だ。自分も普段からこういう目で見られてるんだろうか?とも思い良い気分はしない。

  • 150二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 18:02:30

    敵は最少でもスナイパー1名。狙撃に即応しての敵側からの攻撃が見られない事から、スナイパー単独、あるいは独断。もしかしたら遠隔での無人攻撃の可能性も高い。アビドスは少数精鋭と聞いているのでそれなら納得は行く。
    それに対してオーバーキルと言える攻撃。
    いま目の前でド派手に弾を撃っている連中から予算を削られ、弾一つとってもしっかり予算内で使用限度を決められ、使い過ぎれば運営が苦しくなる風紀委員とは大違いだ。
    まったく我らが羽沼議長に蹴りの一発でも入れといてやろうかと嘆息する。

    「さて…と」
    こちらに駆けてくる数名を認めイオリは砂丘から身を起こした。
    マコト達を助け出しに来た万魔殿の生徒が10名ほどとイオリが風紀委員から同行させた部隊の生徒が数名。
    「私達は無事だ!」
    立ち止まる生徒達の顔には一様に安堵が浮かぶ。しかしイオリは彼女達の安堵を一変させる事をこの時考えていた。
    突然押し付けられた役目に鬱屈していた所でマコト達の不在という状況。これを風紀委員のために、ひいてはストレス解消のために利用出来ないかと考えたのだ。
    肺一杯に息を吸い込み力の限りの声を張り上げる。
    「私以外は気絶している!マコト議長は気絶する前に私に部隊の臨時指揮を任せた!!よってここからは私が指揮統括を引き継ぐ!」

  • 151二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 18:04:27

    先程までの安堵に走る困惑、疑念、敵意。
    だが次のワードがそれを制した。
    「責任は全て『私が』負う!」

    指揮系統は混乱をきたしている。
    先程から砲手達の行動に迷いが見て取れる。まだ撃つべきか否か?これ以上撃ったら本当にまずいのではないか?誰が判断してくれるのか?
    独裁やワンマン経営にありがちなトップダウン方式は現場の意識決定力を削ぎ、常に上に確認を取る慣習を作り、責任の所在を負うまいとして他責者を探す悪循環を生み出す。
    羽沼マコトは万魔殿の部下達からも呆れられるような奴だが人望はそれなりにある。曲がりなりにもゲヘナ万魔殿を統率する傑物だ。イオリが見たところその統率力は指導者として確かな物に見える。
    ……まあ基本的にバカなのだが。
    部下達はマコトのトップダウン方式に頭のてっぺんまで浸かっているのだろう。
    いつもはぞんざいに扱っていても指導者は指導者。その資質を持つ者が居なくなれば代わりが容易に現れる筈もない。

  • 152二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 18:07:06

    竜頭を失った蛇尾は結局龍にはなれないし首を失ったなら生きてはいけない。必ず大なり小なり生きるための頭を必要とする。
    そして代わりの頭…否、イオリの提案を万魔殿の生徒達は不承不承といった体で受け入れた。『責任を取ってくれる誰か』が登板したのだ。
    必要な措置でもあった。
    指揮系統を失った烏合の衆は暴発した時に抑えが効かないし放置しておく事ほど危険な事はない。いずれ万魔殿の誰かが指揮を引き継ぐにしても現状で誰も名乗り出ないならイオリがやらなくては。

  • 153二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 18:09:01

    しかしもちろん大きな旨味もある。
    手柄を立てて自分を送り込んだ風紀委員の株を上げ、ヒナの面目を躍如し、万魔殿に恩を売り、ついでにアビドスに以前のリベンジを果たし、あわよくば万魔殿の戦力を疲弊させて風紀委員の発言権を強化する。
    一石二鳥どころか一発の狙撃による鳥の乱獲だ。
    思い通りにならなくても煩わしいマコト達が気絶してる中、面倒な重石が取れて好き放題出来ると彼女はほくそ笑んだ。

    ……余談だが彼女はここぞという場で大きな失敗をする。
    先生に足を舐められ周りから変な目で見られる原因となった一言もそうだし、列車でテロリストと大騒動を起こした際に真の危険人物に気付けなかった時もそうだった。
    これもまた、その一端と言えた。

  • 154二次元好きの匿名さん25/06/10(火) 23:29:39

    イオリかっこいいやん

  • 155二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 08:12:00

    さて何のフラグやら

  • 156二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 18:06:57

    保守

  • 157二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 22:11:22

    待機

  • 158二次元好きの匿名さん25/06/11(水) 22:30:55

    そもそも切り込み役のイオリにそんなアレコレと欲目を出しつつ混合部隊の指揮が取れるのかというと、ねえ……

  • 159二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 07:34:12

    保守

  • 160二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 07:42:21

    そもそもイオリは未来イブキの事に関与してないから風紀委員としての本当の狙いと万魔殿の裏の目的を分かってないんだよね

  • 161二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 14:23:04

    >>160

    そういやそうだな…

  • 162二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 16:53:43

    >>160

    確か未来イブキの正体知ってるの

    ヴァルキューレ カンナ

    ゲヘナ ヒナ アコ

    シャーレ ミレニアム リオ他数名?

    アビドス クロコ ホシノ←new!


    だったっけ、そういやイオリ知らなかったか

  • 163二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 17:56:41

    イオリの判断がおかしいかと言われると宣戦布告してきた学校に向かってる中で明確にリーダーを狙撃された訳だから敵の襲撃と思って反撃するのは全然間違ってないからね

  • 164二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 19:57:53

    「おいおいおい!やばいぞどうするんだこれ!!」

    シロコVSミカの対決とゲヘナからの攻撃。
    内と外からの破壊によって拠点は加速度的に崩壊の危機を迎えていた。
    すでに暴走状態のミカ以外の小隊メンバーは屋上へ集まり、ヘリの周囲に陣取って脱出の機会を伺っている。
    しかし下方から集中する攻撃によって身動きが取れず、各員が地面に伏せて降り注ぐ弾と炸裂し砕け飛ぶ瓦礫から身を守るしかない現状だ。
    「AI!先生がどうとか言ったんだよな!?お前なにか知ってるのか!?」
    【………な、なんの事かしら?その質問はAIの私には理解できないわ】
    サキの鬼気迫る絶叫混じりの問いに対し、まさかの三文芝居が返ってくる。

  • 165二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 20:01:03

    前々から受け答えが不自然すぎて怪しいと思っていた。機械なら排除されるはずの迷いや躊躇いがあまりにも多過ぎる。
    『彼女』の正体は間違いなくドローンなどではなく、ドローンを遠隔で操っている人間だ。
    「小芝居はやめろ!とにかくおっ始めたんなら何か考えがあるんだよな!?」
    言い終わると同時に再び階下から破砕音が響き、ただでさえ脆いビルがぐらりと揺れる。ミカと正体不明の敵との攻防は続いているようだ。
    […今はまだ言えないわ。でも──]
    再び着弾音。
    今回は極めて至近、そしてあまりに致命的だ。

    「ぎゃーーー!!ヘリのローターが!!!?」
    この世の終わりかのように叫ぶモエの声が耳朶を打つ。
    最大仰角で放たれた敵軍の弾がヘリの真横に着弾。兵器としての機能を十全に果たし爆散して瓦礫を巻き込み、それがヘリ側面を満遍なく破砕したのだ。
    殊更メインローター部分の損傷は大きい。
    ブレードを回し揚力を生み出すための要が失われたという事はここからの脱出が不可能になった事を意味する。モエの叫びも当然だろう。
    ……ただそれに若干の悦びが混ざっていたのは忘れておくことにする。

  • 166二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 20:06:25

    「RABBIT4、敵砲手を狙えますか?」
    「む、無理です。さっき二人倒しましたけどあとは粉塵が酷くてまともに見えません…」
    ミヤコの問いに頭を抱えて縮こまったミユが答える。
    「焼け石に水ですね…」
    そもそもサキ達は軍団規模の敵と真正面から対峙するなどという訓練は受けていない。少数精鋭で敵集団を撹乱し各個撃破により制圧するのがRABBIT小隊の強みだ。
    面で押してくる敵に点の集まりで敵う道理がない。
    「ドローンは?敵に突っ込ませて時間稼ぎが出来ないか?」
    [あの子達に戦闘能力は無いわ。確かに体当たりでしばらく時間は稼げるでしょうけど、そう長くは持たない。たとえ一部のドローンをここに呼び戻すにも丸一日掛かるし、あなた達の仲間が居る渓谷までのマーカーを喪失する事になる。コストと効果があまりにも見合わない。]
    サキの問いに対するそれが自称AIドローンの返答だった。二兎追う者は一兎をも得ず。
    成果を求めるなら必ずどちらかを切り捨てなければならないらしい。
    切れるカードはあまりに少ない。しかしその時すでに賽は投げられ、気が付けば彼女達はとっくにルビコンを渡り終えてしまっていた。

  • 167二次元好きの匿名さん25/06/12(木) 21:08:55

    AIだと言い張るならもっと機械的な対応しろよ
    某ポンコツ傭兵支援システムじゃねえんだぞ

  • 168二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 00:16:29

    AIドローンとは無関係だけど、リオにそんな気の利いた対応ができるわけないじゃないか
    AIドローンとは無関係だけど

  • 169二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 08:52:23

    保守

  • 170二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 12:40:52

    ほしゅ

  • 171二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 15:18:19

    …ひょっとしてこのままこの子達に潰れてもらえばAI的には何か得があるからわざと思わせぶりな事言って戦うしかないように仕向けてるんじゃ(疑心暗鬼)

  • 172二次元好きの匿名さん25/06/13(金) 22:30:52

    待機

  • 173二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 05:41:18

    一方、ゲヘナ側では状況が急転を始めている。
    「これから複数の部隊に分かれビル内部に突入し敵戦力を発見次第制圧する!部隊の長には風紀委員の要員が就くのでその指示に従え!」

    万魔殿生徒の中には不平を漏らす者、それを嗜め「めんどくさいから従おうよ」と適当に流す者、なんだかんだグダグダになりがちな万魔殿らしくない動きに目を輝かせる者など、多種多様の顔と態度が浮かんでいる。
    しかし責任の所在が自身に無いという安堵感からか、比較的素直に指示に従ってくれていた。
    普段は小隊から中隊規模の人員しか動かせないイオリだが、自身の指先一つで大勢が動き一つの形を成して行く得も言えぬ高揚感に浮き足立ち、そこに混ざる僅かばかりの背徳感に背筋が震えるのを感じていた。
    責任に伴う重責に勝る甘美な支配欲。
    イオリは危険な戸口を開かないよう精神力の全てを賭していたが、その思いは口から滑り出て自然と言葉に色が滲む。

  • 174二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 05:44:16

    「気分がいいな、こういうのも」
    あるいはヒナも似たような思いをいつも抱いているのだろうか?
    だとすれば私がヒナ委員長から風紀委員を受け継いだらこの光景をいつも見ることになるのだろうか?

    この時のイオリの考えは例えるなら初めてチェスや将棋などの戦略ゲームをした人間の感想とも言えた。俯瞰した高さで駒を動かし敵の軍勢と渡り合う行為は、今までのイオリには無かった視点だった。
    初めての経験に高揚感を抱くなと言うのは無理筋と言える。
    ミレニアムサイエンススクールの一角に拠を構える某ゲーム好きの集まる部活動の面々が見たらこう言うかもしれない。
    「動かせる軍勢多いと楽しいけど外交とか経済とかめんどくさいんだよねあのジャンル。」

    そしてまた、一言を付け加えるに違いない。
    「初期に戦略間違えると小さい国にあっさり負けたりするし。」

  • 175二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 14:53:35

    保守

  • 176二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 19:38:23

    保守

  • 177二次元好きの匿名さん25/06/14(土) 23:07:39

    そんな考えで大丈夫か??

  • 178二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 08:56:06

    保守

  • 179二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 16:24:09

    慢心ダメ絶対

  • 180二次元好きの匿名さん25/06/15(日) 23:51:33

    保守

  • 181二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 00:00:02

    まあイオリは現状目の前の相手しか見えてないけど、RABBIT視点では耐えれば何かが来ることは確定している(3スレ目90)しねえ

    SRPGでは増援は突然湧くもの、ゲーマーなら定番ですねえ

  • 182二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 05:16:54

    軍が軍である事の最大のメリットは『多勢』であるということだ。
    絶対的な数の暴力。強力な力を持つ個人がこれに挑もうとすれば、最初こそ敵を蹴散らす事が出来たとしてもいずれ疲弊し次から次へと襲い掛かる敵に討ち取られるだろう。
    所詮個人とは一個の『点』に過ぎない。軍団のように一個一個が集合し点が集まった『面』の前ではどうしても弱い。
    小さな虫を踏み潰す巨大なゾウの足裏。
    よほど愚かな策を弄さなければその数だけで容易に少数を圧することが出来るのだ。

    イオリの指揮のもと分割された部隊が進軍を開始する。
    龍の身体から伸びる蛇の頭の群れはゆっくりとした速度で忍び寄り、ビルの中に居る小動物達を仕留めようと舌舐めずりをしている。
    そして頭上からは愚にもつかない僅かな反撃。
    「勝ったな」
    勝利を確信したイオリは意気揚々とさらなる一歩を踏み出した。

  • 183二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 05:26:04

    余談だが、軍を運用する上で愚策と呼ばれる物の中に戦力の逐次投入というものがある。

    圧倒的な戦力を面として運用せず、巨大な損耗を恐れて小出しの点として定期的に戦場に送り出すやり方だ。
    対応側としては後詰めの戦力を警戒する必要があるが、眼前にやってくる敵は少数であり倒すに労はなく、削り続ければ味方後方からの追加支援も見込める最もやり易い形なのだ。

    この時イオリが取った行動は少し異なるがこれに相当する。
    わざわざ軍団を小分けの部隊にして主戦力を残置し、少数による敵拠点突入に乗り出した。
    彼女の視点は広がり新しい物の見方を会得したが、だからといって地上の獣が急に空を飛ぶ術を得るわけではない。
    身に染みた方法で、いつも通りの作戦を、潤沢な戦力で。
    この時彼女は軍団の人員を手足ではなく「いつでも交代できる戦闘員」として捉えてしまった。

    そして伸びた蛇の頭はビルの至近に達した所で一斉に刈り取られる事になる。

  • 184二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 14:48:58

    保守

  • 185二次元好きの匿名さん25/06/16(月) 21:37:19

    >>「勝ったな」

    何て使い古された美しいまでのフラグを……

  • 186二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 00:22:03

    何が悪かったのかねえ、全軍で殴り掛かるのもそれはそれで危うい気がするし
    というか何に反撃されてたんだ

  • 187二次元好きの匿名さん25/06/17(火) 08:20:38

    そろそろ次スレになるか

スレッドは6/17 18:20頃に落ちます

オススメ

レス投稿

1.アンカーはレス番号をクリックで自動入力できます。
2.誹謗中傷・暴言・煽り・スレッドと無関係な投稿は削除・規制対象です。
 他サイト・特定個人への中傷・暴言は禁止です。
※規約違反は各レスの『報告』からお知らせください。削除依頼は『お問い合わせ』からお願いします。
3.二次創作画像は、作者本人でない場合は必ずURLで貼ってください。サムネとリンク先が表示されます。
4.巻き添え規制を受けている方や荒らしを反省した方はお問い合わせから連絡をください。