- 1◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:05:32【これまでのあらすじ】 
 ある朝、久田イズナが目を覚ますと、なんとゲヘナの獅子堂イズミと身体が入れ替わっていた!
 どうやら黒服の実験の失敗が原因で、キヴォトス全土で生徒同士の魂の入れ替わりが起きているらしい。
 入れ替わる法則は「名前が一文字違いであること」。
 先生は黒服から原因とその解決方法を知り、解決に向けて動き出した。
 解決にはキヴォトス各地に出現した4体のボスを倒す必要がある。うち3体は倒したが、残る1体……D.U.市街地に現れたペロロジラが中々倒せない。
 美食研究会と放課後スイーツ部、そしてイズナとアズサとレイサが共同戦線を張るが、それでも中々に難航していたその時、アズサがある作戦を思いつく!
 さあどうなる2スレ目!
- 2◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:06:18
- 3◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:06:53【これまでに登場したキャラの入れ替わり状況】 
 イズナ/イズミ アズサ/カズサ アイリ/アカリ レイサ/レイジョ
 サオリ/イオリ ヒマリ/ヒヨリ キサキ/ミサキ
 アコ/アル サツキ/ムツキ ハルナ/ハルカ フブキ/イブキ
 ミカ/ミネ ナギサ/ナグサ ツルギ/ツムギ ハスミ/カスミ
 ヒカリ/ユカリ ノゾミ/ノノミ セナ/ヒナ シュン/シュロ フウカ/ユウカ レイ/ウイ ネル/メル アカネ/ アヤネ チェリノ/キリノ セリナ/セリカ ハナコ/ハナエ シロコ/シロコ(テラー)
- 4◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:07:52~次から本編~ 
- 5◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:08:35「皆、聞いてくれ。ひとつ作戦を思いついた」 
 「作戦ってなんでしょう?」
 アズサの言葉にイズナが聞き返す。
 「あのペロロジラは多分ぬいぐるみだ。であればきっと、背中にはジッパーがあるはず」
 「そ、そうなの……?」
 「ああ。前に……その、知り合いにとある贈り物をするときに見た。要するに中に綿を入れるためのパーツだ」
 「いや、それくらいは分かるわよ……」
 「ヤツが攻撃を跳ね返すのは、おそらくはぬいぐるみだからで、ぬいぐるみ自体がスポンジのような弾力を持っているからだ」
 アズサは淡々と説明を続ける。
- 6◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:09:06「しかし、ジッパー部分までその弾力があるとは思えない。つまり、そこの一か所を狙えば攻撃が通じるだろう」 
 「それで、ジッパーってのはどこにあるんですか?」
 「おそらくは背中、一番上の背びれの付け根だろう。さっき、日に照らされて僅かに反射するのが見えたんだ」
 「なるほどね、その一点を例の弾丸で狙い撃てば……いける、かも」
 「いい作戦だと思います!」
 「あの!!!!!!ちょっとこっちがそろそろ限界なんですが!!!!!!!皆さん大丈夫ですか!!!!!!!!!」
 隣のビルからレイサの大声が聞こえてきた。
 「……あいつホントに限界かってくらい声出てるけど……」
 「まあいい、とりあえず決行だ」
- 7◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:09:31「ごめん宇沢!!あと5分持ちこたえて!!背中の弱点狙うから、こっち向かれると厳しいの!!」 
 「ええっ!!!ま、まあいいでしょう!!自警団のスーパースター!!宇沢レイサにお任せ……ふぎゃるっ!?!?」
 体力の限界か、レイサの脚がもつれて転んでしまった。
 [----!!]
 「マズい、ペロロジラが向きを変える!!」
 その隙を見て、ペロロジラがレイサのいたビルからアズサたちのいたビルへと向き直る。
 「今のうちにっ……!Vanitas vanitatum!」
 アズサは狙いを定めて引き金を引いた。しかし、焦りや動揺から狙いが僅かに逸れ、弾丸は背びれに当たって跳ね返された。
- 8◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:10:38「外れたっ!?ど、どうしよう!?」 
 「……イズミ殿、跳べますか!?」
 慌てるイズミに、真剣な顔でイズナが尋ねる。
 「え、多分この身体なら軽いし跳べると思うけど……」
 「では今からイズミ殿を跳ばしますので、イズミ殿は空中であの弾丸を蹴り込んでください!!」
 「む、無茶だよぅ!」
 「いいえ、できます!」
 「今イズミ殿が使っているのはイズナの身体です!イズナの身体のことはイズナが一番よく知っています!どれだけ跳べるか、空中でどれくらい動けるか、どれくらいのキック力か……全て把握したうえでイズミ殿に頼んでいるのですっ!」
 自分のことは誰よりも知っている。
 それは入れ替わりに巻き込まれた誰もがそう感じるところだった。
 生まれて十何年、片時も離したことのない自らの身体の限界は、自分自身が知っている。
- 9◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:11:14「イズミ殿!」 
 「……うん、分かった!」
 「「せぇーのっ!!」」
 イズナがバレーボールのレシーブのようにイズミを投げ飛ばす。
 イズミが、いやイズナの身体が宙に浮く。
 半日ほど過ごして尻尾の使い方も分かってきた。イズミは四肢と尻尾を器用に使い、空中で体勢を整える。
 跳びあがった勢いのまま、イズナは空中で回転する。
 「今ですっ!」
 下からイズナが合図を出す。
 「イズミ流忍術っ!!?」
 足の甲がピンクの弾丸を捉える。イズナは渾身の力を込めて、ペロロジラの背中へ向けて弾丸を蹴った。
 弾丸は命中した。
 [-------------……!!!]
 ペロロジラの姿は、断末魔と共に夕日に溶けていった。
- 10◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:11:55「……や、やりました!!イズミ殿、やりましたよ!!」 
 「お、落ちるぅ!?……あれ?」
 イズナは、蹴った勢いで体勢を崩したイズミを上手に受け止める。
 そして、イズミを腕から下ろした途端、急激な眩暈に襲われ──
 「……あれ?身体が軽い……!!」
 次に目を開くと、身体が元の自分の身体に戻っていた。
 「わぁ、私だぁ~!うんうん、やっぱりこれが一番落ち着く~!」
 「あっ、戻ってる!」「これで本当に一件落着ですね☆」
 ”みんな、お疲れ様。こちらでも他のみんなが元に戻ったのを確認したよ。……体調に異変がある子とかはいないかな?”
 「う、うぷ……あ、アカリさん、私の身体でどれくらいの量食べましたか……?」
 「えーと、ホールケーキ2個とチョコレート3箱、ロールケーキ2本程度でしょうか?これでもセーブした方ですよ?」
 「明らかに食べ過ぎですよ……けぷ……」
 「あはは!アイリは明日からダイエット確定ね!安心して、私も手伝うから!」
 ”あははは……無理はしないでね……”
 既に日は沈み、深い青色の空に皆の笑い声が響いていた。
- 11◆8kXeI1ONP625/05/26(月) 21:14:05本日の更新は以上です! 
 明日か明後日には完結予定ですが、そのあとも少し幕間的なエピソードを投げようかと思ってます。
 もう少々お付き合いいただけると幸いです!
- 12二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 00:12:00乙 
 アカリ…他人の体でよくもそこまで……
- 13二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 08:18:38ほし 
- 14二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 14:42:16ほ 
- 15二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 18:17:16完結したか!面白いストーリーを読ませてもらいました。ありがとう! 
- 16◆8kXeI1ONP625/05/27(火) 18:22:10
- 17◆8kXeI1ONP625/05/27(火) 18:42:51そして、精神入れ替わり騒動から1週間後。 
 百鬼夜行の学生寮、朝7時。
 「ふわぁ……よく寝ました……」
 いつものように目を覚ましたイズナは、毎朝のルーティンのようにテレビの電源を入れる。
 『……キヴォトス全土で発生した、生徒同士の魂の入れ替わり事件から今日で1週間です。これに伴う混乱による死傷者はゼロでしたが、シャーレの先生の指揮の下で起きた「ユガミ」の討伐で各地の建築物が一部損壊しており……』
 ここ数日、巷では精神交代事件の話題で持ちきりだった。
 生徒間でささやかれる噂だったり、ワイドショーのゴシップ扱いだったり、シャーレの公式発表だったりと規模は様々だが、多くの生徒が他人に会ったらとりあえずこの事件の話をするほどだった。
 ベッドサイドに置いてあるスマホがモモトークの着信を知らせる。
 『イズナ!シャーレのパーティーって今日だったよね?一緒に行こっ!』
 送り主は自らの身体を貸した相手……獅子堂イズミからだった。
- 18◆8kXeI1ONP625/05/27(火) 18:43:43D.U.アオバ区、朝9時半。 
 「ねえキリノ。本当にパトロールしなきゃいけないの?まだ瓦礫がいっぱいあって通行止めのまんまじゃん」
 「ダメですよフブキ。この混乱に乗じて不良がたむろしたり、空き巣が増えたりといった通報が増えているんです。今こそ頑張るべきです!」
 「はいはーい。……あ、そうだ、そういやこの辺にドーナッツが美味しいカフェがあるらしいよ。イロハさんが言ってた」
 D.U.アオバ区をパトロールするフブキとキリノ。
 フブキは定期的にオススメのサボりスポットをイロハと教え合う仲になっていた。
 「あ、あれ。そこの角のお店。プレーンシュガードーナツとツナマヨパイがオススメなんだって」
 「へぇ、それは美味しそうですね!休憩時間はそこで食べますか」
 「賛成。……あれ?あの子どうしたんだろ」
 フブキが指さす先には、地面でうずくまる小さな女の子がいた。
 「大変です!何か怪我をしたのかも!どうかしましたか!?本官にお手伝いできることは……」
 「うわぁん……お姉ちゃんどこ……?」
 その子はどうやら家族とはぐれて迷子になってしまったようだ。
- 19◆8kXeI1ONP625/05/27(火) 18:44:09「迷子でしょうか?うーん、とりあえず泣き止んでほしいですが……あ、そうだ!」 
 キリノは閃いたことがあるらしく、自分の上着のポケットの中から何かを取り出した。
 「ふぉっふぉっふぉー。お嬢ちゃん、どうしたのかな?」
 「ふぇ……?……ぷっ、あはは!お巡りさん、おヒゲ生えてる!」
 それはチェリノの付け髭だった。
 キリノはそれをつけ、昔話に出てくる老人のような口調で少女に声をかけた。
 「私が来たからにはもう安心じゃー。お姉さんを探してくるからここで良い子にして待っているのじゃぞー?」
 「うん!分かった!」
- 20◆8kXeI1ONP625/05/27(火) 18:44:48「……その髭、まだ持ってたんだ」 
 「あ、フブキ。そうなんです、先日チェリノさんをお手伝いしたら『偉大なるチェリノ様に身体を貸すことを光栄に思うがいい。その髭は勲章代わりにくれてやる!』ってもらったんですよ。これ、こんな風に泣いてる子を笑わせるのに使えるから結構役に立ちますよ!」
 「うん、よく似合ってるよ」
 「そ、そうですか?……っと、じゃあ私はこの子のお姉さんを探してくるのでフブキはこの子を見ていてもらえますか?」
 「了解。じゃあ、私と一緒にそこのカフェで待っとこうか」
 フブキは少女の手を引いてカフェの方に、キリノは少女の姉の名前を呼びながら、それぞれ歩いて行った。
- 21◆8kXeI1ONP625/05/27(火) 18:45:40ゲヘナ学園、午前11時。 
 風紀委員会の面々は入れ替わり事件の後処理に追われていた。
 「アコ、混乱に乗じて無銭飲食の被害に遭った店舗はこのリストで終わり?じゃあ次は詐欺行為に加担した不良グループのリストアップをお願い」
 「はい、ヒナ委員長!各エリアからの被害届がこの束で……どうしました、イオリ?ええ、この決算書はこの書式で……」
 「ヒナ委員長、失礼します!現在、西区のブラックマーケットで便利屋68がマーケットガードと交戦中!支署から救援要請が来ていますが……!」
 慌ただしい風紀委員会の部室に届く報告。
 「ええい、この忙しい時に!アコちゃん、私行ってくる!」
 「待ってください、イオリ。介入は不要です。それより書類仕事を優先してください」
 飛び出そうとするイオリをアコが制止する。
- 22◆8kXeI1ONP625/05/27(火) 18:45:56「えっ!?アコちゃんなんか変なもの食べた!?」 
 「失敬ですね……報告ありがとうございます。支署に伝えてください。『強制的な鎮圧は不要。ブラックマーケット外のエリアに騒動が波及しそうになった場合に限り、双方を鎮圧』」
 「ええっ……!?は、はい、分かりました!」
 報告に上がった風紀委員は、戸惑ったような顔をしつつもそのまま部室を後にした。
 「……アコも丸くなったわね」
 「いえ、そんなことは。これは私なりの義理ですよ。便利屋68にはゲブラの狙撃を『依頼』しましたから」
 「……そう」
 そう呟いてヒナはコーヒーを啜り、僅かに顔をしかめた。
- 23◆8kXeI1ONP625/05/27(火) 18:47:03あれから、人間関係や仕事に多少変化が訪れた生徒も少なくなかった。 
 対立していた組織のメンバーと入れ替わったことで態度が少し軟化した生徒や、他所の学園の事情を知ったことで、自分の学園にも導入しようと働きかけを始めた生徒。あるいは、ただ単純に他校の友達が増えた生徒。そのいずれもが、今までになかった変化をこのキヴォトスにもたらしていた。
- 24◆8kXeI1ONP625/05/27(火) 18:48:01本日の更新は以上です! 
 明日で完結予定です!!よろしくお願いします。
- 25二次元好きの匿名さん25/05/27(火) 20:28:40おつです! 
 やっぱ視点を変えるのは大事だな…
- 26二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 01:00:33寝る前保守 
- 27二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 07:29:42ほ 
- 28◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 13:37:13新章読んだらかなり似てるテーマなことが分かったから、今用意してある結末を少し変えようかと思ってるんですけど、公開当日の話を盛り込むのって避けた方がいいのかな…… 
- 29◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 17:36:29
- 30◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 17:37:04「主殿!イズナ、只今参上いたしました!」 
 「私達もいるよ〜っ!」
 シャーレ、夜6時半。
 キヴォトスを巻き込んだ騒動の解決を祝して、今夜はパーティが開かれる予定だ。
 その準備を手伝うため、イズナとイズミ、そして美食研の一同は一緒にシャーレにやってきた。
 "みんな、いらっしゃい"
 "スイーツ部が選んでくれたケーキを頼んであるんだ。結構量があるから、みんなで受け取ってきてくれる?"
 「はーい!」
- 31◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 17:37:30シャーレ近くのケーキ屋まで歩く5人。 
 「そういえば、皆さんはあの件以降何か変化はありましたか?」
 イズナが美食の4人に尋ねる。
 「そうね……私は入れ替わらなかったから直接的にはあんまり変わってないけど……アカリがアイリさんと入れ替わったのをきっかけに、今度スイーツ部の皆とスイーツ巡りに行こうって話が出てるわね」
 「そうなんですよ~☆ただ、トリニティとゲヘナだとお互いの自治区では活動しにくいですから、場所選びに難航してまして……」
 「あ、じゃあ百鬼夜行はどうでしょう?百夜堂のシズコ殿は友達ですし、イズナが案内しますよ!」
 「あら、それは魅力的ですわね」
 「うん、賛成!修学旅行のときはあんまり自由に食べ歩きできなかったし!」
 「ではまたシズコ殿と相談してご連絡しますっ!」
 そんなことを話しているうちに、一行はケーキ屋に着き、無事に目的のものを受け取ることができた。
- 32◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 17:37:56「先生、来たよ」 
 百鬼夜行のナグサがシャーレに顔を出す。
 それを見つけたミカが駆け寄ってくる。
 「あっ、ナグサちゃんじゃーん!元気してた?」
 「えっと……あ、うん……これ、お土産。贔屓の店の焼き鳥」
 そういってナグサは小包を先生に渡した。
 「焼き鳥ですか。鶏肉のグリルはトリニティでもよく食べますが、串に刺さったものは初めてですね」
 「甘辛いタレがかかってて美味しいよ。……紅茶が合うかは分からないけど」
- 33◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 17:38:29ティーパーティとナグサの和やかな交流を遠巻きに見守る影が一人。 
 「げっ、ナグサちゃんじゃないですかぁ……手前もなんとなくの流れで先生からパーティに誘われましたけど、ここは退散するとしましょうかぁ……」
 忍び足で部屋を出ようとするシュロを、何者かが引き留めた。
 「あら?シュロさんは何か問題でも?」
 「あっ……そ、その顔は……!」
 「先日はお世話になりました、梅花園のシュンですよ~♪世界には色んな子がいるので、みんなと仲良くなることは難しいですが……だからといって相手から逃げるのは、良い子とは言えませんよ?さあ、こっちでみんなと仲良くしましょう?」
 「うぅ……こ、コクリコさまぁ……助けて……」
 そのまま、シュロはシュンによってパーティ会場の中心部へと連れ戻されたのだった。
- 34◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 17:39:05そして、パーティの準備が一通り済んで、あとは開会を待つだけになった頃。 
 「先生、お待たせ。仕事が結構長引いちゃって」
 「すまない、地図アプリが通じにくい場所で道に迷ってしまってな……」
 「失礼。車いすが通れないルートを迂回していたら時間ギリギリになってしまいました」
 ゲヘナ風紀委員とアリウススクワッドと特異現象捜査部のメンバーが同時にやってきた。
 ”みんな、お疲れさま。まだ始まってないから大丈夫だよ”
 先生は彼女らを優しく迎え入れる。
 ”さて、これで予定してたメンバーは揃ったかな?”
 ”じゃあ、みんな、飲み物はある?乾杯しようか!”
 会場の皆がそれぞれ自分のコップを手に持つ。
 ”先日の作戦参加、お疲れ様!みんなのおかげで騒動も解決できたことを祝して”
 ”乾杯!”
 「「「「乾杯!!」」」」
 その言葉をきっかけに、会場は一気ににぎやかになる。
 対立したり、協力したり、関係性が様々な生徒や集団が和気あいあいと話に花を咲かせる。それも、以前よりももっと自然で打ち解けた様子で。
- 35◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 17:39:50『理解できないものを通じて、私たちは理解することができるのか』 
 『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか 』
 かつて、先生の前に現れた2つの古則。
 『お前は、どんな仮面を被っている?』
 かつて、先生の前に現れたとある怪談。
 理解できない他者の目と身体を通して世界を眺めることで、彼女たちが何を思っているのかを知ることができた。
 自らの身体性は本来、自分以外の誰にも伝えられない。しかし、相手の体を借りてその一端を垣間見ることができた。
 そして、本来の自分から離れてみたとき、自分は何を求め、どうありたいかを見つめることができた。
 これを古則の答えだとするには状況が特殊すぎるかもしれないが、今のキヴォトスなら古則を理解するための有効な手段になりえるかもしれない。
 先生はそんなことをぼんやりと考えながら会場を眺めていた。
- 36◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 17:40:23「あ、先生!ちょっとこの前の授業のことで聴きたいことあるんだけどー」 
 不意に誰かが先生を呼ぶ。
 ”うん、いいよ。どの科目?”
 先生はいつものように気さくに応じる。
 相手が誰であれ、どんな見た目であれ、それが頼れる先生としての役目だから。
 空は青みがかった黒色。いつもと変わらない、僅かに輝くヘイローが空のどこまでも広がっていた。
 名とは自らの楔なり 完
- 37◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 17:42:27これにてSS本編完結です! 
 2週間ちょっとの間、読んでいただきありがとうございました!!
 (このSSは後でPixivの方にまとめようと考えているので、もし見かけることがあればよろしくお願いします)
- 38二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 19:02:31おつ。いい話だった 
- 39二次元好きの匿名さん25/05/28(水) 19:03:25完結乙です! 
 楽しかったです!
- 40◆8kXeI1ONP625/05/28(水) 23:31:35そうだ、番外編的にいくつか本編で扱えなかったペアの様子を2〜3レス分くらいの長さで書いていきたいな〜と思ってるので、もしこの組み合わせの入れ替わりが見たいとかあれば教えてください 
 キャラ選の参考にします
- 41二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 00:12:48連邦生徒会組がどうなってたかみたい 
 思い付いた組み合わせだと
 リン⇔リオ、モモカ⇔モモイ、アオイ⇔アオバ
 かな
- 42二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 07:31:30ほ 
- 43二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 16:43:42保守 
- 44◆8kXeI1ONP625/05/29(木) 17:14:09【番外 連邦生徒会】 
 連邦生徒会内部は、朝から大混乱だった。
 「モモカ室長ってまだ来られてないんですか!?」
 「今電話してる!……あ、モモカさん!やっと電話に出た!ハイランダーの指揮系統がしっちゃかめっちゃかになってて……え?何言ってるんですか早く出勤してください!!」
 「あの……ハイランダーのダメ幹部陣のことなら多少分かるんですけど……私も手伝った方がいいですか?」
 「アオイ先輩!?え、まあ助けていただけるなら……いやなんかキャラ違くないですか?」
 「ちょっと!ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ?一体どこの……あれ、ミレニアムの生徒会長!?いやいや、それでもダメです!!」
 突然発生した精神入れ替わり事件。その影響は連邦生徒会も例外ではなかった。
 『み、皆さん!!』
 混沌とする連邦生徒会庁舎に、アユムの声が響く。
 放送室から連絡しているらしい。
 『いったん落ち着きましょう!その……情報の整理のために、幹部は大会議室に一度集まってください!それと、「自分は連邦生徒会所属じゃない」って自認の方は1階ロビーに、逆に「服装が違うけど連邦生徒会だって人は3階の会議室Bで待機してください!」』
 それだけ言って放送は切れた。
- 45◆8kXeI1ONP625/05/29(木) 17:14:47「……で、アユム。僕たちはどうすればいい?」 
 「ふあぁ……」
 現職の連邦生徒会幹部で入れ替わりを免れたのは、アユム、ハイネにスモモの3人だった。
 「えっと……来てないのはモモカちゃんだけですか……巻き込まれたのはリン行政官とミレニアムの調月リオ先輩」
 「……貴女、本当に身を隠すのが巧いのですね。目が覚めたらとんでもないところにいましたから。エリアの外に出るだけで一苦労でした」
 「……必要なことなのよ」
 「そして、アオイ室長と……」
 「は、ハイランダー2年の内海アオバなんですけど!隣の人がつけてる名札も見えてないんですか……?」
 「し、失礼しました!アオバさんですね!」
 アユムは慌てて頭を下げた。
 「で、モモカ交通室長のことですが」
 リオがリンの口を借りて話す。
 「さっきリン行政官のスマホ宛に連絡があったの。それによると彼女はミレニアムの1年生、才羽モモイと入れ替わったみたいよ」
 「報告ありがとうございます。他、何か共有しておくことはありますでしょうか?」
 「あ、僕いいかな?さっきヴァルキューレから連絡あって、カヤ元室長は七囚人の申谷カイと入れ替わってしまったけど、いずれにせよ獄中だし、警備も手厚い部門の監視下だから大丈夫だって……大丈夫かな?」
 その報告を聞いて、何人かが軽い頭痛でも感じたように頭を抑えた。
- 46◆8kXeI1ONP625/05/29(木) 17:15:23「そっ、それではブリーフィングは一旦終わりましょう!それで、これからは……入れ替わったチームは相手とペアで各業務に当たってください!」 
 「……なんでよりによってド激務の相手と入れ替わるんですかね……ハイランダーから離れた意味がないんですけど!」
 「まあまあ、そういわないでちょうだい。2人分なら早く終わるわよ……多分」
 「今この人多分って言ったんですけど!?」
 「いつまで長引くかは不明ですが、よろしくお願いしますね。リオ会長の能力は信頼していますから」
 「そう。……こういうときは素直にお礼を言った方がいいのかしら?」
 「そういうところは相変わらずですね」
- 47◆8kXeI1ONP625/05/29(木) 17:16:10一方その頃、ミレニアム。 
 「さあ立てよ同志!!見ろ!このゲームソフトが氾濫する汚部屋を!!搾取によって大量に作り、大量に消費する資本主義の体現だ!!聞いているぞ、ミレニアムサイエンススクールでは各部活への資金配分が平等ではなく、学園内で貧富の格差が生じていると!!あたし達がそのような横暴を許すはずがない!これより直ちに早瀬ユウカ会計の弾劾を開始する!!」
 「ミ、ミドリ、急にどうしちゃったの……?」
 「うわーん、ミドリがバグってます!!モモイ!なんとかしてください!!」
 (あ、これカヤ室長のクーデターの時に見たやつだな……)
 「ユウカちゃん、ミドリちゃんがおかしなデモを起こして……あら?ユウカちゃん?」
 「눈 눈」
- 48◆8kXeI1ONP625/05/29(木) 17:17:13連邦生徒会編は以上です! 
 あんまり話が膨らまなくなっちゃった……申し訳ない
- 49二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 17:21:01前スレの149でも言われてたけど、生徒じゃないけどゴズとユズが入れ替わったら面白い事になりそう(まぁ生徒同士って前提だからあり得ないだろうけど⋯⋯) 
 あとはアザミとアケミの入れ替わりとか、アヤメがアヤネ辺りと入れ替わってたら面白そう(こっちもアカネとのペアになってるからあり得ないとは思うけど⋯⋯)
- 50二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 17:24:17ニヤ(開眼)↔ニコ(糸目)とか 
- 51二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 22:39:50
- 52二次元好きの匿名さん25/05/29(木) 22:49:31
- 53二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 00:20:27乙乙 
 こんなのミドリじゃないわ!アカよ!
- 54二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 09:32:48待ちます 
- 55二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 18:31:40ss待機保守 
- 56◆8kXeI1ONP625/05/30(金) 19:49:43【番外 百鬼夜行連合学院】 
 「……あら?ここは矯正局、じゃない?」
 目を覚ましたニコは、自らが置かれた異変に気づくと即座に臨戦態勢になる。
 (この内装……百鬼夜行に特徴的な様式。矯正局から百鬼夜行に運ぶには距離がかなりある……それに、睡眠薬を盛られたりして気を失ったとしても、FOX小隊の私が途中で気づかないはずがない)
 警戒して周囲を見回す中、部屋に置かれた姿見が視界に入る。
 「……はい?」
 天地ニヤの姿が映っていた。
- 57◆8kXeI1ONP625/05/30(金) 19:50:16思わず自分の頬をつねる。 
 痛い。
 ということは、多分夢じゃない。
 ニコは寝間着姿のまま、それとなく部屋の中に盗聴器や監視カメラがないかを探し、設置されてないことを確認して一息ついた。
 「……ふう、まずは情報収集だね」
 ニコはかつて新聞やテレビで見たニヤの姿の記憶を頼りに、彼女の制服に着替えた。潜入捜査の訓練として各学校の制服を着る授業が活きたと思った。
 外に出ると、百鬼夜行の生徒会……陰陽部が各地で事態の収拾を試みていた。
 ニコはそれとなくその一人に接触を試みた。
 「や、お疲れ様。何が起きてるか、何か手伝えることなんかは……」
 「ニヤ様!!!」
 話しかけた相手……淡い金髪の狐耳の生徒はニコを睨みつけた。
 「今までどこにいらしたのですか!?学園中、いえキヴォトス中で生徒の入れ替わりが起きてしっちゃかめっちゃかなんですよ!?陰陽部と百花繚乱を総動員して対応していますが、そのせいで本部での根本的な対策が……!その百花繚乱も、ユカリさんは電車でどっかに行ってしまうし、ナグサさんはどうやらトリニティのティーパーティと入れ替わったようでそちらの会議に出ていらっしゃいます!」
- 58◆8kXeI1ONP625/05/30(金) 19:51:17「ま、まあまあ……その、こちらでも前例にないからどうしたもんか悩んでて……資料を当たったりとか……」 
 「……?」
 カホの目がさらに鋭くなる。
 しまった、ボロが出たか。ニコはそう思った。
 「あなた、ニヤ様じゃないんですね?……仕方ないですね、本名を教えていただけますか?」
 「……SRT特殊学園、ニコだよ」
 「SRTって……ワカモを捕らえたっていう……」
 「ああ、そうだね。ワカモを捕まえたのは私達FOX小隊。それから訳あって獄中にいたんだけど……入れ替わりに巻き込まれて今はここ」
 「え、ちょっと待ってください、ニヤ様の魂は矯正局に居るってことですか!?」
 「……多分そうなんじゃない?」
 「よりにもよって……」
 カホは頭を抱えた。
 「仕方ありませんね。ニコさん、混乱の中で喧嘩を起こす生徒が各地にいますから、その鎮圧のお手伝いをお願いしてもよろしいですか?」
 「うん、了解」
 そう言ってニコは出発した。
 その後、百鬼夜行には「喧嘩をしていると開眼したニヤが背後にいて何も分からぬまま気絶させられる」という噂がしばらくの間流布したのだった……
 百鬼夜行編 終わり
- 59◆8kXeI1ONP625/05/30(金) 19:53:21ということで、ネタ切れしてきたので、番外編もこれにて完結とさせてください 
 半月程ですがお付き合いいただきありがとうございました!!
 またどこかのスレで巡り合えたら、その時も是非よろしくお願いします。
- 60二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 21:29:38お疲れさまでした。楽しかったよ 
- 61二次元好きの匿名さん25/05/30(金) 22:23:08