- 1125/05/31(土) 20:42:59
「……いえ? 千年難題とか、ミレニアムを襲う兵器と対抗する為とか、キヴォトスに降り注ぐ厄災に抗うとか……そんな高尚な理由じゃないですよ」
「切っ掛けは、ゲヘナのカフェに足を延ばした時ですね」
「普通の材料、普通の調理法、普通の配膳……だと言うのに自立行動を起こし、生物の様に動き回る……」
「あっ、彼女のことはご存じですか。私たちは知らなかったのですけど……まあ、良いでしょう」
「普遍的で一般的で常識的な行動から飛びぬけた結果……」
「彼女の一挙手一投足を盗さ……もとい、資料として記録して私たちが真似をしてみても当然、あの紫色の怪物が生まれる事はありませんでした」
「何がダメなのか、何がおかしいのか、何が足りていないのか……」
「私たちはセミナーから問題児扱いはされていましたが、それでもミレニアム生でした」
「科学的なアプローチに基づき、誰でも同じような結果に辿り着くために必要な鍵」
「――それを私たちは神秘と呼称しました」 - 2125/05/31(土) 20:43:12
「アプローチは多岐にわたりましたよ?」
「似たような現象を起こせる……強いて言えば、私たちの誰が真似をしても真似できないような特異現象を起こせる者が居ないか、キヴォトス中を駆け回ったり」
「紫色の怪物をひっ捕らえて、元のパンケーキに戻す研究をしたり」
「全身の力を手と手の間に込めて中段に構えたり――ああ、そうそう。そんな感じです。かめ〇め波は結局出なかったんですけど」
「とにかく、色々、やったんですよ」
「ですが、私たちは不覚にも忘れてしまっていたんです」
「生命すら生み出すことが出来る理を読み解こうとする意味を」
「私たちにも神秘が宿っている事実を」
「古い言葉にこんなことわざがありますよね」
「“怪物と闘うときは、自らも怪物にならぬよう、気をつけなさい。深淵を覗きこむときは、深淵からもあなたは覗かれている”……と」
「ええ、はい。だいぶ遠回りにはなりましたが、ご理解頂けましたか?」
「私たちは幽霊でも無ければ守護霊でもありません……」
「単なる神秘の成れの果て」
「――生徒、だったモノです」
ここだけ、神秘の研究をしてた今は無きミレニアム生徒の独り言の話 - 3125/05/31(土) 21:36:31
「……まあ、正直な所驚いているんですよ」
「こう成ってしまってから、皆さんと接触できるかなんて文字通り世界が何回滅んだか分からないくらい試しましたもの」
「……まさかミレニアムを徘徊するおばけ、なんて。そんな噂を立てられるとは思いもしませんでしたが」
「――セミナーに声をかけなくていいのか、ですか?」
「相変わらずナンセンス、と言いますか……」
「先程も言った通り、私たちはもう生徒ではありませんよ。そもそも、ここの調月会長やノアとも知り合いではありませんし」
「関りの深い方だったユウカも、覚えていることは決して無いでしょうね」
「今の私たちの状態を簡単に説明しますと……トリニティで見たミメシスに近いですかね?」
「と言うか人の手で作ることが出来たんですか……なんて冒涜的な……」
「とにかく、過去の残光である私たちが話しかけた所で、向こうは戸惑うに過ぎない、という話です」
「わかって、いただけました?」 - 4125/05/31(土) 21:36:41
「はい、それでは質疑応答に移ります。気になることがあったら手を挙げてください」
「……なんですか、その反応は。これでもミレニアムに名を残す為に努力した成果で結果なんですよ? 少しは乗ってくれてもいいじゃないですか」
「……実地試験で私たちの研究が間違ってないか最終確認をしてこうなったせいで、碌に発表も出来なかったんですよ? 面倒な原稿も書いたって言うのに……」
「あっ、良いですね。元気いっぱいで珍しい反応です」
「――戻ることは出来ないのか、ですか」
「……なるほどぉ、先生」
「梔子ユメと言う生徒に聞き覚えはありますでしょう?」
「…………零れ落ちない為にはレールに乗らなければなりません」
「私たちは既にレールから落ちて凄まじい年月が経過しているのです」
「貴方の握るその奇跡は、何でも出来る訳じゃない」
「色彩に落ちた生徒は戻せないし」
「黄昏に呑まれた生徒も戻せない」
「命を溢した生徒は、戻せますか?」
「――そりゃあ、詳しいですよ。貴方よりも知っている世界は多いのですから」
「では、どちらが聞きたいですかね? 私たちの研究か、滅び去った過去の話か」 - 5二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 23:10:17
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- 6二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 23:10:32
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- 7二次元好きの匿名さん25/06/01(日) 07:28:39
結構好きやで