【SS】学マス 翼の折れた氷上の白鳥

  • 1◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:44:33

    閲覧前に御一読ください
    ・初書き込み&初投稿です
    ・SS書くのが2年振りです
    ・学マスSS処女作です
    ・学マスのプロデューサーにオリジナルの設定を付け加えた二次創作SSです
    ・紫雲清夏ちゃんの親愛度20話までの読了を推奨します
    他の場所に投稿出来る自信が無かったので、皆さんの色んな感想をお聞かせ願えると助かります
    以下連投します

  • 2◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:45:20

    寒い冬のある日
    教室の窓から見える夕焼けの景色には、薄く積もった雪が見える

    清夏「アイスショー?」
    学P「はい。毎年この時期の天川市では期間限定の屋外スケートリンクが開放されるのですが、開放記念に初星のアイドルが氷上で軽いショーを行う様子をテレビで生放送する仕事が回ってくるそうです」
    学P「テレビ出演は知名度向上に繋がりやすいですが、次のH.I.Fまでのスケジュールを考慮すると少しタイトな日程になるかと…」
    清夏「やるやる!!スケート、やってみたかったんだよね〜!!」
    学P「…では前後の日程の調整と、事前のスケート講習を準備しておきます」
    清夏「Pっちありがと〜!あ、ねえねえリーリヤも一緒にできない?」
    学P「もちろん大丈夫ですよ。葛城さんにも確認をとって、2人で一緒にお仕事が出来るように調整しておきますね」
    清夏「ありがとPっち!大好き!」
    学P「それから今日のレッスンメニューです。これからアイスショーに関する打ち合わせに行ってきますので、今日の詳しい内容はトレーナーから聞いてください」
    清夏「はいはーい!じゃあいってくるね〜♪」

    彼女が教室を出て楽しそうにステップを踏みながらレッスン室へ向かうのを見送り、荷物をまとめてコートを羽織る

    学P「さて、打ち合わせに向かうか」

  • 3◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:46:14

    学P「ハァ……」

    寮へ帰ってきた俺は自室のベッドに腰を掛け、重いため息を吐く
    こんな情けない姿をを清夏さんに見られたら揶揄われてしまうだろうか
    でも仕方のないことだ

    学P「まさか名前を知られていたとは…」

    自分にとっての暗い暗い過去、挫折した道に顔を出したのだ

    学P「まさか、でもないか…」
    学P「清夏さんには、近いうちに話さないといけないな…」

    気持ちが落ち着かない
    今日はもうこのまま寝てしまおう

  • 4◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:47:16

    清夏「おはよう、Pっち!」
    学P「おはようございます、清夏さん」
    学P「早速先日のアイスショーの件ですが、こちらの資料をご確認ください」
    清夏「どれどれ〜?」

    パソコンを開いて今朝急ぎ作成したばかりの資料を映す
    学園長に掛け合ってレッスンの合間に学園から近いリンクを貸し切って、応募した学園生の講習に使えるようにしてもらった
    H.I.Fが近いこともあってか応募者はそこまで多くないが…

    清夏「って、Pっちが教えてくれるの!?」
    学P「はい、実は俺スケートが少し出来るんです。他の応募生徒にも講師がつくのですが、講師の方の1人が怪我で参加出来ないそうで、清夏さんと葛城さんには俺が教えることに…」

  • 5◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:48:02

    清夏「待って待って、Pっち教えられるほどスケートが上手いの!?」
    学P「それに関しては講習が終わったらお話しします」
    清夏「う〜…めっちゃ気になるけど、約束だからね!!」
    学P「それから放送中に1人、シングルジャンプに挑戦するという企画があるのですが…」

    清夏さんの膝を考慮するならば不安要素は一つでも少ない方が良い、それは分かっている
    だが彼女が望むのであれば挑戦しない理由はない
    コンディションを調整するのは俺の仕事だ

    清夏「…!やる!やりたい!」
    学P「わかりました。ではジャンプに関する指導も用意しておきますね」

  • 6◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:48:54

    生放送は無事終了した
    打ち合わせ通りに多くの人が遊びに来ている様子から始まり、軽いアイスショーを行い、清夏さんが一回転に挑戦、無事披露して終了
    中々厳しいスケジュールでの挑戦だったが、上手くいって本当に良かった

    学P「清夏さん、お疲れ様です」
    清夏「どうだった?あたしのジャンプ!」
    学P「美しかったです、見惚れてしまいました」
    清夏「Pっちべた褒めじゃん!」
    学P「この短い期間でシングルジャンプが飛べるようになるとは思いませんでしたから、清夏さんの才能を甘く見ていました」
    清夏「Pっちの教え方が上手かったからね〜♪流石に生放送でってなると緊張感ヤバかったけど、なんとかなって良かった〜」
    清夏「それでお仕事終わったし、ちゃんと話してくれる?」
    学P「もちろんです。約束ですから」
    学P「もう15時過ぎで学園に戻るには遅いので、このまま寮の俺の部屋に行きましょう。事前に申請は済ませてあります」
    清夏「Pっちの部屋!行く!」

  • 7◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:49:41

    学P「どうぞあがってください。あまり面白い部屋ではないですが」
    清夏「おっじゃましまーす!」

    ここがPっちの部屋…!!
    ずっと来てみたかったけど、付き合ってないも女の子が男の子の部屋に行くのは流石に気が引けてたから、このチャンスを見逃すわけにはいかない!

    清夏「すっごいキレイじゃん!イメージぴったりかも!」
    学P「そうでしょうか?」
    清夏「Pっち観葉植物好きなの?結構あるんだね〜」
    学P「ええ、何かを育てるのが好きなんです」
    清夏「もしかして〜、あたしもその対象だったり?」
    学P「どうでしょうね」

    でた!はぐらかし!
    Pっちのそういうところがほんとにずるいよ…

    学P「そこの椅子に座って待っていてください。話の前に温かい紅茶を淹れてきます」
    清夏「はーい!」

  • 8◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:50:46

    待ってるだけなのも退屈だから、部屋の中をゆっくり観察していく

    清夏「ん?あれは…」

    Pっちの机の上にトロフィーが置いてある
    椅子を立って気になる物の正体を掴みに席を立つ

    清夏「全日本フィギュアスケートジュニア選手権大会準優勝…」

    ………えっ!?
    全日本って、全日本だよね???
    6年前って…Pっちが13歳の時の物かな
    もしかして、Pっちの話ってコレのことなのかな

    学P「お待たせしました、清夏さ…」
    清夏「あっ」
    学P「気付かれてしまいましたね」
    清夏「えっと…その…」
    学P「良いんです。今日清夏さんを連れてきたのは、その話をするためですから」

  • 9◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:51:22

    学P「こちらに座ってください。お茶を飲みながらゆっくり話しましょう。今日の労いも兼ねてケーキを用意してあります」
    清夏「マ!?Pっち大好き〜!」

    清夏「ケーキおいし〜!」
    学P「お口に合って良かったです」
    清夏「それで〜、Pっちがスケートを教えられるほど上手かったのって?」
    学P「そうです。経験者だったからです」
    清夏「イヤ、ただの経験者だったら全日本とか出てないんだわ…」
    学P「まずはそうですね…俺の昔話からしましょうか」

    今から5年前の事です
    当時14の俺はフィギュアスケートのジュニア強化選手でした
    自分で言うことではないと思いますが、それなりに多くの期待を背負っていました

    清夏「そんなに凄い人だったの!?なんで言ってくれなかったの!?」
    学P「機会を逃してしまいましたから」
    清夏「ほんとにそれだけ?」
    学P「…」

  • 10◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:52:08

    当時の自分はジュニアにしては体が硬く、ステップやスピンが苦手で、ジャンプを武器に戦う選手でした
    同年代の選手が大きな成果を挙げていく中、伸び悩んでいた俺はオーバーワークな程に練習に打ち込みました
    そうして14歳の時の全日本で俺は
    大失敗をしました
    ショートで飛んだ3回転ルッツの着地に失敗した俺は、足をケガしてフリープログラムを欠場しました

    清夏「…えっ」

    着地に失敗し転倒した俺は左脚を強く打ち付け、骨を折りました
    原因は過労による左足首の疲労骨折
    打ち付けた左脚の治療に半年、リンクに立てるようになるまでに1年掛かりました
    1年振りにシューズを履き立ち上がったそのとき、脚が震えて動けなくなりました
    鮮明に思い出す、あの時の感覚、踏み切ったその瞬間、足が取れたような感覚
    その時実感したんです
    俺は、俺の選手生命は、終わったのだと

  • 11◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:52:48

    清夏「…」

    明日を生きる理由を失っていた俺に、再び動き出す熱を与えたのは、当時のとあるアイドルの特集番組でした
    テレビに映る彼女の姿は俺にとてつもない衝撃を与えました
    どうすれば頑張る人たちの力になれるのだろうか
    沢山調べて、沢山勉強をしました
    その日から俺の新たな目標が出来たんです
    世界一のプロデューサーになる
    世界一のアイドルを育て上げたい

    学P「そのために初星学園に入学しました。もしかしたらフィギュアの道に戻る勇気が無くて、そのことから目を背けて逃げただけなのかもしれないですが」
    清夏「…っ」
    学P「清夏さん?」
    清夏「Pっちの夢を叶えるなら、もっといい子がいたんじゃない?リーリヤとか咲季っちとか」
    学P「名簿を見て清夏さんの名前を見つけたとき、他の誰よりも真っ先に、初星学園でのあなたを調べました」
    清夏「えっ?」

  • 12◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:53:40

    学P「俺は幼い頃の清夏さんを知っています。とは言っても濃い関係性があった訳ではないですが」
    清夏「待って待って、どういうこと!?」
    学P「フィギュアの選手は体幹や柔軟のトレーニングのためにバレエのレッスンを受けるんです。俺のコーチはよく体格の近い人のバレエの映像を持ってきてくれていたのですが」
    学P「その中に当時の清夏さんの映像がありました。同年代の日本人で、新しい映像だったので何度も見ましたよ」
    清夏「な、なんか恥ずかしいんですけど…」
    学P「初星学園に来てからの清夏さんの評価は、まさしく期待の新星といった感じでした」
    学P「このまま成長を続けたら、首席も内部進学生も越えていずれ『一番星』に届きうる逸材で…」
    清夏「でもそのあとすぐにレッスンをサボるようになった、だよね?」
    学P「…よく自分を理解していますね」
    清夏「まあねー。…今はあんまりサボってないけどね?」
    学P「分かっていますよ。信頼していますから」

    安心したような息をついた彼女の顔が、少し紅く染まった

  • 13◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:55:05

    学P「急にレッスンをサボりだした清夏さんは、何か言えない理由を抱えていると思いました」
    清夏「えぇ…?そんなことまで分かっちゃうの…?」
    学P「プロデューサーですから」
    清夏「イヤ…理由になってないし…」
    学P「学園の清夏さんの評価を見ていて不思議に思っていたんです。ダンスの評価が芳しくないことを」
    清夏「えっ?」
    学P「ボーカルレッスンや普段の授業はちゃんと出ているのにも関わらず、ダンスレッスンや体を動かし基礎体力を作る授業はある日を境にサボるようになった」
    清夏「バ…バレてる…」

    プロデューサー科の生徒には、スカウト前にアイドルの情報を教員から収集することが許可されている
    授業態度やトレーナーによる評価を基にしたレーダーチャートを貰うことができるのだ

    学P「それに清夏さんのケガは治療に失敗した形跡もなければ再発した形跡もない」
    清夏「そのときにはケガのことも知ってたの…?」
    学P「ケガしてバレエを引退した、ということは知っていました。」

    若干引いた顔をする彼女を気に止めず、淡々と話を続ける

  • 14◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:56:09

    学P「バレエのケガにも様々な種類があります。軽いものならひと月で練習に復帰できますし、靭帯の断裂なら半年と少しで治療を終える方も多いです」
    清夏「うん、あたしもバレエの先生に教えてもらったからわかるよ」
    学P「ケガをしてから数年が経過し、学園にいる清夏さんは治療が失敗している様には見えませんでしたから、サボりが始まる前の日に何かしら大きな転換点があったと思ったんです」
    学P「ケガが再発したわけではない。でもそれと等しいほどの何かがあった。俺には"それ"に心当たりがありました」
    清夏「…あっ」
    学P「トラウマです。自分の意識がケガをした所に集中すると、その時の痛みや恐怖を思い出す。言わばイップスですね。清夏さんはケガのトラウマからダンスレッスンをサボるようになったと確信しました」
    学P「それならば彼女の手を取って居場所を与えられないだろうか、俺の右脚が彼女の右脚の代わりになれないだろうか」
    学P「そんな気持ちは俺を清夏さんの元へ連れて行きました。」

  • 15◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:57:27

    清夏「そんな背景があったなんて…」
    学P「こんな重い執着は悟られないように気をつけていましたから」

    部屋の中に一瞬の沈黙が落ちる

    清夏「てかPっちの左脚はどうなの?」
    学P「俺の左脚、ですか?」
    清夏「あたしがトラウマを抱えてるって気付いた理由、Pっちもそうだからでしょ?スケートの講習の時には普通に滑ってたと思ったんだけど」
    学P「…そうですね。今はもう大丈夫です。清夏さんが俺の心を支えてくれていますから」
    清夏「え?」
    学P「生涯を賭けて清夏さんを支えると決めたときから、昔の俺の事情で心配を掛けたくないと思っていたんです。そう思ったら、自然と左脚の事は気にならなくなりました」

    堂々と告白紛いな台詞を口にするプロデューサーを前に、照れている顔を見られたくないのか、彼女が椅子から立って部屋の窓際へ歩く

  • 16◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 21:58:50

    視線は自然と彼女を追い続ける

    清夏「…あたしたち、夫婦みたいだね」
    学P「清夏さん?それはどういう…」
    清夏「バレエもアイドルも、あたしは大好きだったものから逃げて、目を背けて隠し続けてた。でもPっちが側で支えてくれるから、あたしはアイドルを続けられてる。」
    清夏「ケガのトラウマに向き合うのはとても怖いし、これからもフラッシュバックする時が来ると思う」
    清夏「でもPっちがあたしの右脚になってくれるって言ってくれたから、あたしはそれに応えないとね♪」
    学P「清夏さん…」

    夕暮れの陽光が窓から差し込み、彼女を照らす
    まるで舞台の上に立つ彼女を照らすスポットライトのように

    清夏「なってみせるよ、アイドルのトップ。あなたが見た夢を、あたしが叶えてみせるよ」

    一瞬の間が、無限の時間にも感じられた
    きっと続く言葉は告白の返事で、今の彼女だから言える、弱みを共有して支え合う覚悟を決めた、誓いの言葉

    清夏「ふたりで強くなろーね!あたしのプロデューサー!」

  • 17◆JgxebIBmqA25/05/31(土) 22:02:31

    以上で完結になります
    最後まで読んで頂きありがとうございます!
    こうした掲示板にSSを載せるのは初めてだったので不安でいっぱいですが、いろんな方にお読み頂けたら幸いです…!
    活動の励みになりますので、ぜひ皆様の感想を聞かせて下さい!

  • 18二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 22:07:17

    いいね…読みやすいしスケートやってた学P概念良すぎる…好き♡

  • 19二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 22:20:36

    めちゃくちゃよかったです!
    特に口調とか違和感もありませんでしたし、何より2人が似た過去を持っているから一緒に強くなろうというところが好きです!
    Pっちにはこんな過去があっても良いなと思いました!
    できればここだけでなくpixivとかでもこの作品やもっとスレ主の書くSSが読みたいと思いました!
    ありがとうございました!

  • 20二次元好きの匿名さん25/05/31(土) 22:39:54

    とてもよかった

  • 21◆JgxebIBmqA25/06/01(日) 06:07:32

    感想をありがとうございます!
    Pっちにちょっと重めな過去があったら良いなーって思いながら書いたので、共感を得られて良かったです!
    これからもたまーーにSSを書いていきたいと思っているので、ぜひよろしくお願いしますね!

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